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ケアネット白書~糖尿病編2012

1.調査目的と方法本調査の目的は、糖尿病診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている糖尿病治療薬を評価することである。2型糖尿病患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師502人を対象に、(株)ケアネットのウェブサイトにて、アンケート調査への協力を依頼し、2012年3月19日~26日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師502人の主診療科は、一般内科が36.5%で最も多く、次いで糖尿病・代謝・内分泌科で35.9%、循環器科で12.4%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が72.7%、診療所(19床以下)が27.3%となっている。医師の年齢層は40-49歳が最も多く33.1%、次いで50-59歳以下が30.9%、39歳以下が30.1%と続く。40代から50代の医師が全体の6割以上を占めている(表1)。表1画像を拡大する2)2型糖尿病患者の背景1ヵ月に診察している2型糖尿病患者数最近(2012年3月基準)1ヵ月に、外来で診察している2型糖尿病患者は全体平均138.0人である。診療科別で見ると、糖尿病・代謝・内分泌科は平均266.8人、その他の診療科では平均65.9人であった。その2型糖尿病患者について、過去1~2ヵ月の血糖コントロールの指標であるHbA1c(NGSP:以下同)値をそれぞれ層別に分類して患者数を聞いている。HbA1c値別の2型糖尿病患者数HbA1c値については、糖尿病治療ガイド2012-2013(日本糖尿病学会編)に基づき、6.2%未満(血糖コントロール優)6.2%以上6.9%未満(血糖コントロール良)6.9%以上7.4%未満(血糖コントロール不十分)7.4%以上8.4%未満(血糖コントロール不良)8.4%以上(血糖コントロール不可)――の5つの階層に分けた。最近1ヵ月に診察している2型糖尿病患者(平均138.0人)のうち、HbA1c 6.9%未満と血糖コントロールが比較的良好なのは36.2%で、全体の63.8%は良好な血糖コントロールが得られていない状態である。その中でも血糖コントロールの指標で『不可』に相当するHbA1c 8.4%以上の患者が14.5%みられている(図1)。図1画像を拡大する3)2型糖尿病の治療管理目標値2型糖尿病治療におけるHbA1c値の管理目標値を患者の年代別に聞いたところ、患者が「若年者・中年者(65歳未満)」の場合には6.65%であったのに対し、「高齢者(65歳以上)」では7.05%であった。若年・中年者と比べて、高齢者の管理目標値はやや甘く設定されている実態が明らかになった。血糖コントロールの指標血糖コントロール指標として、HbA1c値に加えてとくに重要視する項目としては、「空腹時血糖値」「食後2時間血糖値」が多く、次いで「随時血糖値」「SMBGでの血糖変動」が続いた。診療科別では、糖尿病・代謝・内分泌科では「食後2時間血糖値」を重視する割合が最も高く、その他の診療科では「空腹時血糖値」を重視する割合のほうが高かった(図2)。図2画像を拡大する初期治療最近1ヵ月に診察している2型糖尿病患者(平均138.0人)のうち、約9%が食事・運動療法のみで治療を行っており、約90%は食事・運動療法に加え、何らかの薬物療法を行っている(図3)。図3画像を拡大する4)薬剤の使用状況2型糖尿病患者に対する薬剤の併用状況「食事・運動療法+薬物療法で治療している患者数」を100%としたとき、1剤のみを処方している患者は32.6%で、2剤併用が39.8%、3剤以上の併用が27.5%であった。薬物治療を行っている約2/3にあたる67.3%の患者では、何らかの薬剤を併用している(図4)。図4画像を拡大する2型糖尿病に対する糖尿病治療薬の使用状況について2型糖尿病に対する糖尿病治療薬をSU薬、速効型インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)、ビグアナイド(BG)薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン製剤、その他――のカテゴリーに分けて、食事・運動療法に加えて薬物療法を実施する際の第一選択薬を聞いた(図5)。図5画像を拡大する使用が最も多いのはDPP-4阻害薬で、回答した医師全体の26.9%が第一選択薬として使っている(図5上)。次いで多いのがBG薬で、20.9%。以下、SU薬が18.4%、α-GIが15.0%、速効型インスリン分泌促進薬が5.7 %となっている。<糖尿病・代謝・内分泌科での第一選択薬>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、最も選択の多いのがBG薬で33.4%であった(図5中央)。次いで多いのがDPP-4阻害薬で28.5%、SU薬13.0%、α-GIは8.1%であった。<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での第一選択薬>回答医師の属性がその他の診療科の場合、最も選択の多いのがDPP-4阻害薬で26.0%を占めている(図5下)。以下、SU薬が21.4%、α-GIが18.9%、BG薬が14.0%などとなっている。糖尿病・代謝・内分泌科(図5中央)と比べると、SU薬、α-GIの割合が増加し、その分、BG薬の割合が減少している。5)薬剤選択の際に重要視する項目なお、薬剤を選択する際に重要視する項目についても聞いている(複数回答)。最も多いのは「低血糖をきたしにくい」で、69.5%の医師が挙げている。以下、インスリン抵抗性改善(66.9%)、食後高血糖改善(66.3%)などが主なものである(図6左)。図6画像を拡大する<糖尿病・代謝・内分泌科での重要視項目>回答医師の属性が糖尿病・代謝・内分泌科の場合、薬剤選択で重要視する項目として最も多いのは「低血糖をきたしにくい」で、78.9%の医師が挙げている(図6中央)。以下、体重増加をきたしにくい(73.9%)、血糖降下作用(70.6%)などが主なものである。<その他の診療科(糖尿病・代謝・内分泌科以外)での重要視項目>回答医師の属性がその他の診療科の場合、薬剤選択で重要視する項目として最も多いのは「インスリン抵抗性を改善する」で、70.5%の医師が挙げている(図6右)。以下、食後高血糖を改善する(68.0%)、低血糖をきたしにくい(64.3%)などが主なものである。全体的な傾向をまとめると、専門医の方が「低血糖をきたしにくい」薬剤を最重要視し、「体重増加をきたしにくい」薬剤を重要視することが多く、非専門医の場合は「インスリン抵抗性を改善する」薬剤を重要視する傾向がある。とはいえ、診療科を問わず、「低血糖をきたしにくい」薬剤が重要視されていることが明らかとなった。6)新薬の情報源として役に立つものここ数年、糖尿病領域においては新薬の発売が続いている。そこで、糖尿病の新薬の情報を得る際に、役に立つと感じる情報源についても調査した(図7)。最も多いのは、製薬会社MRで66.9%、次いで製薬会社主催の講演会(65.3%)であった。以下、研究会(46.4%)、学会のセミナー(43.8%)、医療専門サイト(41.4%)と続いた。図7画像を拡大する

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テネリグリプチンの日本人での有効性

2012年6月に国内での製造販売承認を取得した、新規DPP-4阻害薬「テネリグリプチン(商品名:テネリア)」の日本人2 型糖尿病患者におけるデータが発表された。テネリグリプチン1日1回投与の安全性および24時間にわたる血糖コントロールを評価したところ、テネリグリプチンが、プラセボと比較して低血糖の発現なく、食後2時間血糖値、24時間平均血糖値、空腹時血糖値を有意に改善することが明らかになった。この結果は、ピーエスクリニックの江藤氏らによりDiabetes Obes Metab誌Early Online Publication 2012年7月10日付で報告された。対象は、食事・運動療法でコントロール不十分な日本人2 型糖尿病患者99例。被験者を無作為にテネリグリプチン10mg群、同20 mg群、プラセボ群に割り付け、4週間、朝食前投与を行った。無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験である。主な結果は以下のとおり。 ・テネリグリプチン投与群は10mg、20mg両群とも、プラセボ群に比べ、食後2時間血糖値、24時間平均血糖値、空腹時血糖値を有意に低下させた。・食後2時間血糖値について、テネリグリプチン10mg群のプラセボ群に対する差は、朝食後:-50.7±7.8 mg/dL、昼食後:-34.8±9.2 mg/dL、夕食後:-37.5±7.5 mg/dLであった(最小二乗平均(LS means)±標準誤差(SE)、すべてp

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シタグリプチンの上乗せ効果~54週の試験~

複数薬剤での併用療法がしばしば必要となる進行した2型糖尿病患者の血糖コントロールには、新たな治療手段が必要とされている。今回、メトホルミン(商品名:メトグルコなど)とロシグリタゾン(国内未発売)で継続治療中の2型糖尿病患者に54週間、DPP-4阻害薬であるシタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)を上乗せしたところ、プラセボと比較して血糖コントロールを有意に改善し、有害事象発現率も同程度であることが示された。Dobs AS氏らによりJ Diabetes誌Early Online Publication 2012年6月28日付で報告された。対象はメトホルミン(≥1500 mg/日)とロシグリタゾン(≥4 mg /日)の併用療法にもかかわらず、HbA1c(NGSP:以下同)値が7.5%以上11.0%以内にある2型糖尿病患者278例。対象患者は、1日1回シタグリプチン100 mg投与群とプラセボ群とに無作為に割り付けられた。北米、南米、ヨーロッパ、およびアジアの41施設において実施された54週にわたる無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験。主要アウトカムは18週時のHbA1c値のベースライン時からの変化とされた。主な結果は以下のとおり。 ・ベースライン時のHbA1c値の平均は8.8%・HbA1c値のプラセボ調整平均変化量は、シタグリプチン群で18週で -0.7%(P

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リナグリプチンは、SU薬に比べ低血糖リスクを減らし、HbA1c値低下効果は非劣性

メトホルミン投与下の2型糖尿病患者へのDPP-4阻害薬、リナグリプチン(商品名:トラゼンタ)追加投与の有効性と安全性に関するデータが示された。対照薬であるSU薬グリメピリド(商品名:アマリールなど)に比べ、主要評価項目であるHbA1c値低下効果においてリナグリプチンの非劣性が証明され、低血糖発現頻度が低いことが明らかになった。Baptist Gallwitz氏らによりLancet誌Early Online Publication 2012年6月28日付で報告された。対象は、メトホルミン単独、またはメトホルミンにほかの経口糖尿病治療薬1剤を追加されたHbA1c(NGSP)値6.5 ~10%の外来患者。対象患者はリナグリプチン(5 mg/日)群777例またはグリメピリド(1〜4 mg/日)群775例に無作為に割り付けられ、104週後のHbA1c値の変化を主要評価項目とし、安全性と有効性について検討された。2年間にわたる並行群間非劣性二重盲検試験。主な結果は以下のとおり。 ・主要評価項目の解析対象は、リナグリプチン群764名、グリメピリド群755名であった。・ベースラインHbA1c値は両群ともに7.69%[標準誤差(SE):0.03]・調整後の平均HbA1c値の変化は、リナグリプチン群で-0.16%[SE:0.03]、グリメピリド群で-0.36%[SE:0.03]であった。群間差は0.20%(97.5%CI:0.09~0.30)と、事前に定義された非劣性基準の群間差0.35%以内を満たしており、リナグリプチンのグリメピリドに対する非劣性が証明された。・低血糖発現率はリナグリプチン群7%(58例/776例)と、グリメピリド群の36%(280例/775例)に比べ、有意に少なかった(P

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DPP-4阻害薬か、基礎インスリンか? -メトホルミン難治性2型糖尿病-(Lancet 6月16日発表)

コロンビア ハベリアナ大学のPablo Aschner氏は、16日、メトホルミン血糖コントロール不十分で、インスリン投与経験のない2型糖尿病における追加併用薬は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)より持効型インスリン (インスリングラルギン)が効果の面で優れており、安全面でも大きな問題がないことをLancet誌に発表した。これは17ヵ国、96施設が参加して実施されたEASIE(Evaluation of Insulin Glargine versus Sitagliptin in Insulin-naive Patients)試験の結果。研究費提供元はサノフィ。[国内での主たる販売名] メトホルミン・・・メトグルコ シタグリプチン・・・ジャヌビア、グラクティブ インスリングラルギン・・・ランタスメトホルミンを投与してもコントロール不良(HbA1cが7~11%)の、インスリン未治療の2型糖尿病患者(BMI 25~45、35~70歳)が対象となった。対象患者はメトホルミン+インスリングラルギン併用群250例(以下、基礎インスリン併用群)、メトホルミン+シタグリプチン併用群265例(以下、シタグリプチン併用群)のいずれかに無作為に割り付けられた。主要評価項目は、治療24週後のHbA1cの変化。主な結果は、下記のとおり。1. 治療24週後のHbA1cの低下は、基礎インスリン併用群で有意に大きかった (基礎インスリン併用群1.72%低下 vs シタグリプチン併用群1.13%低下、  平均差=-0.59%、95%信頼区間=-0.77--0.42、P<0.0001)。2. HbA1c 7.0%未満達成率は、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (68% vs 42%、P<0.0001)。3. HbA1c 6.5%未満達成率も、基礎インスリン併用群で有意に多かった  (40% vs 17%、P<0.0001)。4. 低血糖の頻度は基礎インスリン併用群のほうが有意に多かった (4.21回/患者・年 vs 0.50回/患者・年、P<0.0001)。  重篤な低血糖は3例 vs 1例。5. 重篤な有害事象は基礎インスリン併用群で15例(6%)、  シタグリプチン併用群で 8例(3%)。  有害事象による治療中止例は2例 vs 4例。(ケアネット 藤原 健次)

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「Breaking up with Diabetes」にむけて ~第55回日本糖尿病学会年次学術集会 レポート~

 参加者が約1万3千人と、過去最大の規模となった今回の学術集会。演題数は2,284題と過去最高となり、「糖尿病領域」の盛り上がりを肌で感じられる学会であった。【依然、注目度の高い糖尿病領域】 実際、4月1日から実施となったHbA1c国際標準化や「糖尿病治療ガイド2012-2013」の発行など、今春も糖尿病領域の話題は豊富だ。理事長声明においても、理事長の門脇氏がHbA1c国際標準化に触れ、「糖尿病臨床・研究・治験のさらなる国際化を目指す」とともに、「診療におけるHbA1cの認知向上につなげたい」と述べた。 また、エビデンス構築の一環としてJ-DOIT3の概要が発表された。本試験では、強力な治療介入が糖尿病患者の健康寿命やQOLをどれだけ改善するかを検討する。門脇氏は、「重症低血糖は2例のみでありACCORD試験の200分の1にとどまっている」点から「過去の大規模臨床試験とは異なる新しい結論がみえてくるのでは」と期待を語った。【インクレチン関連薬の演題が急増】 注目が集まる糖尿病領域だが、やはりその引き金は「インクレチン関連薬」ではないだろうか。発売から一定期間を経て多くの臨床成績が集積され、インクレチン関連薬の演題はこの3年で格段に増加したという。 昨年までは各薬剤の「有効性」「安全性」の演題がほとんどであったが、今年は「1年間にわたる長期投与試験」「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」「DPP-4阻害薬間の切り替え症例」など一歩踏み込んだ切り口でのインクレチン関連薬の口演、ポスター発表を目にした。【見えてきた、2次無効例の存在】 長期投与試験の結果で印象的だったのは、一部で2次無効例の存在がみられたことであった。集積途中のデータとはいえ、期待のインクレチン関連薬でも、長期の血糖コントロールは一筋縄ではいかないという事実に、糖尿病治療の難しさを再認識させられた。患者自身の生活習慣の悪化という根本原因に、歯止めをかける治療が求められているのかもしれない。「レスポンダー/ノンレスポンダーの検討」は、昨年よりは踏み込んだ研究であったものの、残念ながら、「今後の長期的検討が必要」「多くの症例蓄積が必要」というまとめに変化はなく、今後予定される大規模臨床試験に期待がかかる。【インスリンからの切り替え・離脱例の増加】 一部の適応追加が影響したのかGLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬ともに「インスリン使用者への投与・離脱例の紹介」がみられた。インスリン分泌能の保持された患者での順調な離脱例の報告もあったが、症例によってはやや危険と思われる離脱報告もあり、適正使用が重要と感じた。とくに、インスリン使用者のDPP-4阻害薬への切り替えについては血糖コントロールの点からも慎重さが求められるのではないだろうか。【次世代の薬 :SGLT2選択的阻害薬】 さて、インクレチン関連薬に続く新しい波、として期待される薬剤がある。「SGLT2選択的阻害薬」だ。原尿からのブドウ糖の再吸収を減らし、ブドウ糖を尿から排泄させる、という新規作用機序をもつ薬剤でありポスター、演題で取り上げられた。新薬セッションでは各開発メーカー担当者が座長より質問を受ける一幕もみられ、注目度の高さがうかがわれる。 現在開発中のSGLT2選択的阻害薬には、イプラグリフロジン(アステラス製薬/寿製薬)、ダパグリフロジン(米ブリストル・マイヤーズスクイブ/英アストラゼネカ)、トホグリフロジン(中外製薬)、カナグリフロジン(田辺三菱製薬)、ルセオグリフロジン(大正富山)、エンパグリフロジン(日本ベーリンガーインゲルハイム/リリー)等がある。【新規超持効型インスリン:デグルデクへの期待】 インスリンのトピックスとしては、開発中の新規超持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデク(以下、デグルデク)に注目したい。 デグルデクは、皮下でマルチヘキサマー(インスリン6量体の長鎖)を形成し、その後、亜鉛(Zn)の解離とともに端から1つずつモノマーとなって血中へ移行する。これにより緩徐に血中に吸収され、長時間にわたる作用を示す。今回、インスリン グラルギン(以下、グラルギン)に対する非劣性試験結果においてグラルギンと同等の血糖改善と低血糖のリスク低下が報告された。低血糖をきたしにくいインスリン製剤として期待される。【まとめ】 インクレチン関連薬発売から一定期間を経過し、臨床データは増加傾向にある。とはいえ、解明されていない事は多い。かたや、糖尿病有病率については依然増加し続けている。 門脇氏は「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」こそが糖尿病治療の最終目標である、と述べる。目標達成のためには根本的な糖尿病の予防・治療法の開発に継続して取り組む必要がありそうだ。【編集後記】 インクレチン関連薬発売を経て、糖尿病領域はにわかに活性化している。今がまさに過渡期であり、近い将来、新しいエビデンスや新薬、画期的な治療が現れ、「糖尿病治療を取り巻く現況」は大きく変化していくのかもしれない。今回はその前触れを感じさせる学会であった。 変化を迎えようとしているこの時代に糖尿病の予防・治療に関わる最新情報を発信できることは医療情報を発信する側の人間として幸運なことといえよう。 「Breaking up with Diabetes(糖尿病よ、さようなら)」の実現にむけ、我々も、タイムリーで適切な医療情報の伝達に努めていきたい。

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DPP-4阻害薬、メトホルミン単独で目標血糖値非達成例の二次治療として有効

 ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を発揮することが、ギリシャ・アリストテレス大学のThomas Karagiannis氏らの検討で示された。経口血糖降下薬であるDPP-4阻害薬は、2型糖尿病患者のHbA1cを著明に低下させ、体重増加や低血糖のリスクも少ない。種々の血糖降下薬に関する間接的なメタ解析では、二次治療薬としてのDPP-4阻害薬は他の薬剤と同等のHbA1c低下効果を有することが示唆されているが、既存の2型糖尿病の治療ガイドラインはDPP-4阻害薬の使用に関するエビデンスが十分ではないという。BMJ誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月12日号)掲載の報告。DPP-4阻害薬の有効性と安全性をメタ解析で評価研究グループは、2型糖尿病の成人患者におけるDPP-4阻害薬の有効性と安全性の評価を目的に、無作為化試験の系統的なレビューとメタ解析を行った。論文の収集には、データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)、会議記録、試験登録、製薬会社のウェブサイトを使用した。解析の対象は、単独療法としてのDPP-4阻害薬とメトホルミンあるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬と他の血糖降下薬(スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、グルカゴン様ペプチド1[GLP-1]作動薬、基礎インスリン)を比較した無作為化対照比較試験であり、HbA1cのベースラインからの変動について評価した試験とした。主要評価項目はHbA1cの変動、副次的評価項目はHbA1c<7%達成率、体重の変化、有害事象による治療中止率、重篤な有害事象の発生率などとした。HbA1c低下効果はメトホルミンに劣るが、悪心、下痢、嘔吐が少ない1万3,881例が参加した19試験に関する27編の論文が解析の対象となった。DPP-4阻害薬群は7,136例、他の血糖降下薬群は6,745例だった。抄録のみの1試験を除き、主要評価項目に関するバイアスのリスク評価を行ったところ、3論文では低かったが、9論文は不明、14論文は高いという結果だった。メトホルミン単独療法との比較では、DPP-4阻害薬はHbA1c低下効果(加重平均差[WMD]:0.20、95%信頼区間[CI]:0.08~0.32)および体重減少効果(WMD:1.5、95%CI:0.9~2.11)が低かった。二次治療におけるDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果はGLP-1作動薬に比べて劣り(WMD:0.49、95%CI:0.31~0.67)、ピオグリタゾンとは同等で(WMD:0.09、95%CI:-0.07~0.24)、HbA1c<7%の達成率はスルホニル尿素薬を上回らなかった(リスク比:1.06、95%CI:0.98~1.14)。体重の変動については、DPP-4阻害薬はスルホニル尿素薬(WMD:-1.92、95%CI:-2.34~-1.49)やピオグリタゾン(WMD:-2.96、95%CI:-4.13~-1.78)よりも良好だったが、GLP-1作動薬ほどではなかった(WMD:1.56、95%CI:0.94~2.18)。二次治療としてのDPP-4阻害薬とメトホルミン単独あるいはメトホルミンとの併用におけるDPP-4阻害薬、ピオグリタゾン、GLP-1作動薬に関する試験では、いずれの治療群も低血糖の発生数は最小限であった。メトホルミン+DPP-4阻害薬とメトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の比較試験のほとんどでは、低血糖のリスクはスルホニル尿素薬を含む群でより高かった。重篤な有害事象の発生率はピオグリタゾンよりもDPP-4阻害薬で低かった。悪心、下痢、嘔吐の発生率はDPP-4阻害薬よりもメトホルミンやGLP-1作動薬で高かった。鼻咽頭炎、上気道感染症、尿路感染症のリスクはDPP-4阻害薬と他の薬剤で差はなかった。著者は、「DPP-4阻害薬は、メトホルミン単独療法で目標血糖値が達成されなかった2型糖尿病患者の二次治療としてHbA1cの低下効果を有するが、コストや長期的な安全性についても考慮する必要がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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2型糖尿病治療薬 リオベル(一般名:アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠)

 2011年7月、アログリプチン安息香酸塩/ピオグリタゾン塩酸塩配合錠(商品名:リオベル配合錠LD,同配合錠HD)が2型糖尿病を適応として製造販売承認を取得した。製剤は低用量のLD製剤と高用量のHD製剤の2規格。アログリプチン(商品名:ネシーナ)の含量(25mg)が一定で、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)の含量(15mg、30mg)のみ差がある。糖尿病の2大病態を改善 アログリプチンとピオグリタゾンの組み合わせは、薬理学的作用から糖尿病の2大病態であるインスリン分泌不全とインスリン抵抗性を改善すると期待される。DPP-4阻害薬であるアログリプチンのインスリン分泌促進作用はブドウ糖濃度依存性であり単独投与では低血糖をおこしにくい。またアログリプチンは他のDPP-4阻害薬と比べ、DPP-4に対する選択性が高い1)という特徴をもつ。一方のピオグリタゾンはインスリン抵抗性の改善を介して血糖降下作用を発揮する薬剤であり、インスリン分泌促進作用がないため単独投与での低血糖の危険は少ないといわれる。また大血管障害既往例への心血管イベント発症抑制2)を示したPROactiveに代表される多数のエビデンスを有している。組み合わせにより期待される相乗効果 2剤の併用による血糖改善作用は承認時のデータで示されている。ピオグリタゾン単独療法で効果不十分例に対し、アログリプチン25mgを追加投与したところ、投与12週時点におけるHbA1c変化量は-0.97%3)であった。また血糖降下作用に加え、db/db マウスを用いた膵保護作用の検討では、アログリプチンならびにピオグリタゾン単独投与でも、膵のインスリン含量はプラセボ群よりも有意に増加したが、両剤の併用でさらに相乗的な膵インスリン含量の増加が認められた4)。アドヒアランスの向上は糖尿病治療に好影響を与える 糖尿病患者の多くは高血圧や脂質異常症などの他疾患を合併しているため、服薬錠数が多く服薬タイミングも様々である。リオベル配合錠は、1日1回1錠の服用で済むことから、服薬アドヒアランスの向上に有効である。アドヒアランスの向上は、より良好な血糖コントロールの達成につながるとの報告もあり、糖尿病治療ではアドヒアランスを意識した治療が重要といえる。使用にあたっての注意点 リオベル配合錠は、既に発売されている配合剤のソニアスやメタクト同様、「2型糖尿病の第一選択薬としないこと」と添付文書に記載されており、投与対象は、原則として両剤を併用し常態が安定している患者、もしくはピオグリタゾン単独で効果不十分な患者となる。承認時までの臨床試験では165例中の42例(25.5%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められており、これらを含め、各単剤で報告のある副作用にも十分な注意が必要である。ピオグリタゾンとアログリプチンでは、これまでに重大な副作用として、心不全の増悪あるいは発症、浮腫、肝機能障害、黄疸、低血糖症状、横紋筋融解症、間質性肺炎、胃潰瘍の再燃が報告されているので、使用に当たってはこれらの副作用にも十分に注意したい。ピオグリタゾンについては、海外の疫学研究5)において、主要解析である全体の解析では膀胱癌の発生リスクの増加はみられないものの、治療期間による層別解析ではピオグリタゾンの長期間の投与によりわずかなリスクの増加という注意喚起もあるため、本剤の有効性と膀胱癌のリスクを事前に説明し、投与後は血尿、頻尿、排尿痛等の症状を経過観察する等、適切に使用することが重要である。まとめ 糖尿病治療では患者さんの病態の多様性に応じて薬剤を使い分けることが多い。そのため、配合剤の選択が一様に普及しづらい一面もある。しかし、服薬錠数が減れば、患者さんにとっての負担が軽減されるのも事実だ。患者さんがインスリン分泌不全とインスリン抵抗性とを併せ持つ病態の場合、今後は、リオベル配合錠が有用な治療選択肢のひとつとなるだろう。

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インクレチン関連薬は、次のステップへ~ケアネット女性記者による第54回糖尿病学会レポート~

2011年5月19日(木)から3日間、札幌市にて、第54回日本糖尿病学会年次学術集会「糖尿病と合併症:克服へのProspects」が開催された。会長の羽田勝計氏(旭川医科大学)は、会長講演にて、「糖尿病治療における細小血管および大血管障害の発症・進展が阻止されれば、健常人と変わらないQOLの維持、寿命の確保が可能になる」と述べ、合併症の克服により本学会のテーマである「克服へのProspects」が10年後には「克服可能」となることを期待したい、とのメッセージを伝えた。また、今年3月に発生した東日本大震災を受けて、緊急シンポジウム「災害時の糖尿病医療」も開かれた。被災地での糖尿病医療や被災地外からの支援活動、阪神・淡路大震災などの過去の災害における経験が報告され、今後の災害時における糖尿病医療のあり方について討議された。その他、「IDFの新しい2型糖尿病の治療アルゴリズム アジアへの適応は」、「J-DOIT1,2,3,JDCPからのメッセージ」、「インクレチン関連薬の臨床」といった数多くのシンポジウムが開催された。多くのセッションが目白押しではあったが、今回、ケアネットでは特に「インクレチン関連薬」に注目した。昨年度のインクレチン関連薬発売ラッシュ以降、初の学会を迎えたことから、「インクレチン関連薬」にフォーカスしてレポートする。【注目を集めたインクレチン関連薬】昨年度は、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の発売が相次ぎ、糖尿病治療の歴史にとっても大きな変革の年となった。DPP-4阻害薬では、2009年12月のシタグリプチン(商品名:ジャヌビア/グラクティブ)を皮切りに、2010年にビルダグリプチン(商品名:エクア)、アログリプチン(商品名:ネシーナ)が発売、GLP-1受容体作動薬は、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)とエキセナチド(商品名:バイエッタ)が医療現場に登場した。2011年には各薬剤の14日間の投薬期間制限が順次解除されるため、長期投与が可能となり、普及の勢いはさらに増すだろう。本学会でも、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬を総称する「インクレチン関連薬」が注目を集め、シンポジウム、一般講演、ポスターなどで多くの臨床成績が発表された。【効果と安全性、薬剤間の明確な差は?】発表されたデータは、ほとんどが各薬剤の「有効性」と「安全性」に関するものであった。「既存薬からインクレチン関連薬への切り替えで、どの程度血糖値が低下するのか?本当に低血糖は起こさないのか?」という臨床現場の疑問が浮き彫りになった形だ。その結果、多くのデータで各薬剤の有効性と安全性が明らかになった。しかし、これはすべての薬剤で同様の結果が報告されており、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬との間での差はあるものの、同効薬群間での差は大きくはない。どの薬剤を使用しても一定の効果は得られそうだ。【DPP-4阻害薬市場の激化は必至】DPP-4阻害薬に関する各薬剤別の発表データについてみてみると、やはり先行して発売されたシタグリプチンを用いた報告症例が多い印象であった。ビルダグリプチン、アログリプチンについては適応上、透析を行うような重症腎機能障害例にも投与が可能(※ただし慎重投与)ということで、透析患者や腎機能低下症例への投与例の報告があった。ただし、これらはあくまで一部のデータであり、実際の臨床現場において薬剤の使い分けに関する明確な指針や投与患者像を確立することは難しいだろう。DPP-4阻害薬は期待が高いだけに、数多くの種類が市場に出回ることになる。どれを選択するかは現場の医師の手に委ねられることになるだろう。【今後必要となるのは、効果不応例を早期に見分ける指標】とはいえ、すべての患者にインクレチン関連薬が効果を示すというわけではなく、著効例と不応例に分かれる傾向が多くの報告で挙げられた。当然、どのような患者に効果があるのか(最適患者像の探索)、そして不応例を早期に見分けるにはどうすべきか(検査指標とそのカットオフ値)にも注目が集まった。その点に着目した解析結果も発表されたものの、サンプル数が少なく、発表により結果のばらつきがあり、多くの演題で「今後の長期的検討が必要」、「多くの症例蓄積が必要」というまとめに終わった。来年以降、各薬剤の著効例、不応例のそれぞれの臨床的特徴を検討したデータが増え、投与患者像の明確化も進むのではないかと期待される。【インスリンからの切り替え例の報告も】演題の中には、既存経口薬以外にも、BOTやインスリン療法など、すでにインスリン注射を導入している患者からインクレチン関連薬へ切り替える例も報告された。当然、インスリン単位数の少ない症例がメインではあるが、インスリン療法で糖毒性をいったん解除することで内因性の基礎インスリン分泌能の回復が期待でき、その後のインクレチン関連薬の切り替えも奏功する可能性が示唆された。切り替えが奏功した例の特徴としては、糖尿病の罹病期間が短く、合併症が少なく、食後のインスリン追加分泌が保たれたインスリン単位の少ない症例、などが挙げられた。インスリン療法からの切り替えがうまくいけば、患者にとっても朗報である。また、インクレチン関連薬による治療の可能性も広がるだろう。切り替え時の高血糖などに留意は必要だが、安全性に配慮しながら、今後、治療が確立されることを期待したい。【まとめ】今回、多くのインクレチン関連薬の臨床データが発表された。今後さらにDPP-4阻害薬の種類が増える(※アナグリプチン、テネリグリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチンが現在フェーズⅢの段階にある)ことを考えると、医師側は各患者にあった薬剤を医師自身の基準で選択していくことが求められそうだ。インクレチン関連薬の発売を契機に、糖尿病治療は大きく変わり始めた。糖尿病治療の目標が、細小血管および大血管障害の発症・進展の阻止とその後の患者のQOLや寿命の確保にある以上、インクレチン関連薬をベースとした早期のエビデンス構築にも期待がかかる。10年後の「克服可能」な糖尿病治療に向け、インクレチン関連薬の今後の動きに注目したい。(ケアネット 佐藤寿美)

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新規糖尿病治療薬リラグルチドとシタグリプチン、血糖降下作用はどちらが優れるか?

メトホルミン単独では血糖値が十分にコントロールされない2型糖尿病患者において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬シタグリプチン(同:ジャヌビア、グラクティブ)に比べ糖化ヘモグロビン(HbA1c)の低下作用が優れることが、アメリカVermont大学医学部のRichard E Pratley氏らが実施した無作為化試験で示された。近年、2型糖尿病ではインクレチン系をターゲットとした治療が重要とされ、主なインクレチンホルモンとしてGLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)が挙げられる。GLP-1受容体作動薬がGLP-1の薬理活性を増強するのに対し、DPP-4阻害薬は内因性のGLP-1とGIPの濃度を上昇させるという。Lancet誌2010年4月24日号掲載の報告。13ヵ国158施設が参加したオープンラベル無作為化試験研究グループは、メトホルミン単独では適切な血糖値が達成されない2型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの補助療法としてのリラグルチドとシタグリプチンの効果および安全性を評価するオープンラベル無作為化試験を行った。2008年6月~2009年6月までに、ヨーロッパ11ヵ国、アメリカ、カナダの158施設から、メトホルミン≧1,500mg/日を3ヵ月以上投与してもHbA1c 7.5~10.0%と十分な血糖コントロールが得られない18~80歳の2型糖尿病患者665例が登録された。これらの患者が、リラグルチド1.2mg/日を皮下投与する群(225例)、同1.8mg/日を皮下投与する群(221例)あるいはシタグリプチン100mg/日を経口投与する群(219例)に無作為に割り付けられ、26週間の治療が行われた。主要評価項目はベースラインから26週までのHbA1cの変化とし、両薬剤の有効性の非劣性解析とともに優位性解析を行った。リラグルチド群でHbA1cが有意に低下、低血糖リスクは最小限リラグルチド群のうち7例(1.2mg群4例、1.8mg群3例)が実際には治療を受けなかったため解析から除外された。ベースライン時の平均HbA1cはリラグルチド1.2mg群が8.4%、1.8mg群が8.4%、シタグリプチン群が8.5%であり、全体では8.5%であった。優位性解析では、ベースラインからのHbA1cの低下はシタグリプチン群が0.9%であったのに対し、リラグルチド1.2mg群は1.24%、1.8mg群は1.50%であった。リラグルチド1.2mg群とシタグリプチン群の差は0.34%(p<0.0001)、1.8mg群とシタグリプチン群の差は0.60%(p<0.0001)であり、いずれもリラグルチド群が有意に優れた。2つのリラグルチド群間にも有意差を認めた(p<0.0013)。吐き気が、シタグリプチン群の5%(10例)に比べリラグルチド1.2mg群は21%(46例)、1.8mg群は27%(59例)と多くみられた。いずれの群でも、軽度の低血糖が約5%の患者に認められた。著者は、「リラグルチドはシタグリプチンに比べHbA1cの低下作用が優れ、低血糖のリスクも最小限で良好な耐用性を示した」と結論し、「これらの知見により、リラグルチドはメトホルミンとの併用において有効なGLP-1受容体作動薬として使用できる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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ベーリンガーインゲルハイム、2009年業績発表 ―日本ベーリンガーインゲルハイム、新規医薬品の上市も視野に―

 2010年4月27日、東京アーバンネット大手町ビルにて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社経営陣による2009年業績発表記者会見が行われた。  ベーリンガーインゲルハイム(本社:ドイツ)の2009年売上高は127億ユーロ(約1兆6,600億円、前年比9.7%増)となり、堅調な成長を示した。全体売上高の約50%を医療用医薬品の主要4製剤(スピリーバ、FLOMAX、ミカルディス、ビ・シフロール)の売上が担っている。 代表取締役会長兼社長のDr.トーマス・ハイル氏は、「今後の成長発展のために、研究開発にはさらなる投資を行い、将来の成功を担保していく」と話した。2010年の展望としては、ブロックバスターの米国における特許切れや研究開発費の増加のため、売上高は2009年と同水準になる見込みを示した。  日本ベーリンガー社としては、売上高は2009年では1,615億円(営業利益51.2億円、経常利益75.3億円、純利益64.8億円)となり、前年比2%の伸びを示した。また、エスエス製薬の完全子会社化が成立しており、日本ベーリンガーとエスエス製薬のシナジーを強化するとの方針を示した。 今後の成長の鍵となる新薬の開発状況については、「日本においては、スピリーバレスピマットが来月に発売を控えているほか、抗凝固・血栓塞栓症予防薬のダビガトラン エテキシラートや、DPP-4阻害薬であるリナグリプチンも順調に開発が進んでいる。特にダビガトランについては、1962年のワルファリン発売以来、約50年ぶりの新世代経口抗凝固薬(直接トロンビン阻害剤)として、抗凝固治療の医療ニーズを満たす薬剤として期待されている。」と医薬開発本部長Dr.トーマス・クーナー氏は語った。 日本ベーリンガー社は2010年4月に新卒の新入社員を150名採用。今後も人材育成に力を入れていく。

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DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(1)

 2010年1月20日、国内で2成分目となるDPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」が承認された。ここでは、4月13日にアーバンネット大手町ビル(東京都千代田区)にて開催されたエクア記者説明会「これからの2型糖尿病治療の選択~低血糖・体重増加を助長しない、血糖コントロールをめざして~」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノバルティス ファーマ株式会社主催>について報告する。多くの患者が現在服用している薬剤の改善を望んでいる 門脇氏の説明会に先立ち、ノバルティス ファーマ株式会社の青野氏は、自社で行ったインターネット調査から、糖尿病患者の約6割が、現在服用している経口血糖降下薬に対してなんらかの不満を持っており、9割以上が薬剤の改善を希望し、具体的には「良好な血糖コントロールができる」薬剤を望んでいることを発表した。また、「半数以上が実際に低血糖を経験していないにもかかわらず、糖尿病患者の2人に1人が『低血糖が怖いと思っている』ことを報告し、「多くの2型糖尿病患者がアンメットメディカルニーズ(満たされていない治療上の要望)を感じている」と述べた。日本人2型糖尿病はインスリン分泌が不良 わが国の糖尿病患者は激増しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。日本人は、元々インスリン分泌能が低く、欧米型の生活習慣を続けることにより、内臓脂肪が蓄積し、インスリン抵抗性が増大し、容易に糖尿病を発症する。実際に、欧米人はBMI30以上の肥満で糖尿病を発症することが多いが、日本人では、小太り程度で発症することが多い。門脇氏は、日本人は欧米人より内臓脂肪を溜めやすいこと、そして最近解明されてきた遺伝子レベルでの日本人の発症機構について紹介し、「治療を始めるにあたり、まず病態をきちんと把握することが重要である。日本人は欧米人と異なり、インスリン分泌が不良であることを考える必要がある」と述べた。糖尿病と診断された時点で膵β細胞の機能は半分以下に 糖尿病では、発症した時点ですでに膵β細胞の機能は50%以下になっている。門脇氏は、これまで使われてきたどの経口血糖降下薬でも、その進行は食い止めることができないことを明らかにしたADOPT試験やUKPDS試験などの結果を報告し、今後は膵β細胞を守り、できる限り機能を温存させ、機能低下の進行を遅らせる治療が重要になると述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因として低血糖が考えられると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、早期から厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。DPP-4阻害薬は単独で低血糖を起こさず、体重に影響を与えない 食物を摂取すると、消化管からインクレチンというホルモンが分泌される。インクレチンには、主にGIPとGLP-1があり、GLP-1が、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる働きを持つ。しかしGLP-1は、DPP-4という酵素により不活性化されてしまうため、このGLP-1の不活性化を阻害するために作られたのがDPP-4阻害薬である。DPP-4阻害薬を投与するとGLP-1が増加し、インスリン分泌が促進されるが、GLP-1の分泌は、血中のグルコース濃度に依存するため、DPP-4阻害薬を単独で投与した場合、低血糖を起こしにくい。また、GLP-1は食欲抑制作用や胃の内容物の排出を遅らせる作用があることから、DPP-4阻害薬を投与しても、体重に影響を与えないといわれている。 引き続き、医療ニュース「DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(2)」をご覧ください。

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DPP-4阻害薬「エクア(一般名:ビルダグリプチン)」今月にも薬価収載へ(2)

エクアは24時間にわたって90%以上のDPP-4阻害作用を発揮する 2010年1月2日、エクア(一般名:ビルダグリプチン)が承認された。エクアは、食事・運動療法、あるいは食事・運動療法に加え、SU薬を処方しても血糖コントロール不良な2型糖尿病患者に対して、50mgを1日2回、朝夕に処方する。 すでに使用されている他のDPP-4阻害薬は1日1回投与であるが、門脇氏は、エクアは1日2回投与により、24時間以上にわたってDPP-4の活性を阻害していることを示し、それにより、安定してGLP-1の増加を維持していることを報告した。そして、エクア単独投与により、HbA1c値を1.2%改善し(プラセボとの比較)、食後血糖値も有意に改善したと報告した上で、エクアは1日2回投与により、90%以上のDPP-4阻害率を維持した結果、優れた血糖コントロールが得られていると述べた。また、1日1回のDPP-4 阻害薬と比較した臨床試験の成績から、エクアにおいて、食後2時間血糖値およびHbA1c値が低下していたことを報告した。 そして実際には、食事・運動療法を行っても目標値が達成できない場合の第一選択薬になるが、HbA1cが7.5~8.0%を超える患者では、単独投与では難しいため、他剤との併用が必要になると述べた。 また、門脇氏はラットを使った動物実験において、エクアが膵β細胞量を増加させたことを報告し、まだ臨床での成績はないが、エクアを投与することにより、膵β細胞の機能を改善させ、糖尿病の進行を阻止する可能性があると述べた。そして、将来的には、膵β細胞の機能を改善する可能性があるインクレチン関連薬は、発症前の前段階の人に対して、糖尿病発症予防の手段となり得るかを検討する余地があると述べた。SU薬との併用には十分注意を エクアはSU薬との併用が可能となるが、門脇氏は、すでにわが国で使用されているDPP-4阻害薬とSU薬の併用で重症低血糖が10例以上起こっていることを報告し、SU薬と併用する際には、低血糖の発現に十分注意する必要があると述べた。国内で報告されている重症低血糖例については、高用量のSU薬が処方されており、そのほとんどが65歳以上の高齢者であった。併用開始後2~4日後の早い時期に起こり、中には昏睡に至った例も報告されているが、すでに全例回復している。門脇氏は、「SU薬と併用する場合は、低血糖に注意する。生理的機能が低下しており、低血糖症状に気付きにくい高齢者の場合は特に注意する。使用しているSU薬を減量してから併用する(例えばアマリールであれば、2mg/日以下)」と強調した。なお、SU薬とDPP-4阻害薬併用における低血糖については、すでに門脇氏を含む数人の糖尿病専門医により検討が行われており、糖尿病協会および日本医師会を通じてrecommendation/勧告を出しているという。 昨年末から今年初めにかけて、待ち望まれていた全く新しい作用機序の経口血糖降下薬DPP-4阻害薬、そしてGLP-1受容体作動薬がわが国で発売された。エクアが16日付で薬価収載されれば、これで国内2成分目のDPP-4阻害薬となる。 これまでの糖尿病治療薬では、血糖低下作用が強いほど低血糖が発現しやすく、また体重も増加するという課題があった。そのため、DPP-4阻害薬などのインクレチン関連薬は、「(単独投与で)低血糖を起こさず、体重に影響を与えずに、血糖値を下げる」薬剤であることから、発売前から、非常に多くの期待が寄せられていた。また、本記者説明会でも門脇氏が述べているように、インスリン分泌が不良である日本人2型糖尿病ではより効果が得られることから、今後多くの患者に使用されるようになれば、これまでの海外での使用経験の報告では得られなかったより高い有効性の報告も期待できるだろう。 しかし一方で、わが国で多くの患者に使用されているSU薬との併用において、低血糖の発現が報告されている。長期にわたる安全性についても、現在のところ、まだ報告されているものはないが、海外での使用もまだ数年であるため、今後注意していく必要がある。 本説明会の最後に、門脇氏は、「1例1例大事に、安全性に対処しながら育てていきたい」と述べて、説明会を終えた。糖尿病では、個々の患者ごとに病態が異なり、治療法が異なるといっても過言でない。今後、その1例1例が臨床経験として蓄積されていくことで、その薬剤の有意義な使い方が確立されていくと考えられる。

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経口2型糖尿病治療薬「ジャヌビア錠」 製造承認を取得

万有製薬株式会社は16日、2型糖尿病治療薬「ジャヌビア錠」(一般名:シタグリプチンリン酸塩水和物)の製造販売承認を取得しました。ジャヌビアは、日本で初めての選択的DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)阻害薬で、国内では10年ぶりの新しい作用機序を持つ経口2型糖尿病治療薬となる。ジャヌビアはインクレチンを分解する酵素であるDPP-4を選択的に阻害する薬剤。インクレチンは食後に分泌される消化管ホルモンで、血糖依存的に膵臓からのインスリンの分泌を増加させ、グルカゴンの分泌を低下させるという、2つのメカニズムで血糖値をコントロールする。ジャヌビアはDPP-4を選択的に阻害することにより、活性型インクレチン濃度を上昇させ、血糖依存的に強力な血糖低下作用を示す。ジャヌビアは2004年11月に締結された米メルク社とと小野薬品工業株式会社とのライセンス契約に基づき、万有製薬と小野薬品が国内共同開発したもの。海外では米メルク社が2006年に世界初のDPP-4阻害薬として発売し、現在、世界85ヵ国以上で承認され、これまでに米国だけでも1,600万人以上の患者に処方されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2009/product_news_1016.html

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2型糖尿病治療薬「SYR-322」の心血管系リスク評価追加試験にFDAが合意

武田薬品工業株式会社は28日、米国の武田グローバル研究開発センター株式会社が、2型糖尿病治療薬として米国にて販売許可申請中のDPP-4阻害薬SYR-322(一般名:alogliptin)について、米国食品医薬品局(以下、FDA)より、心血管系リスク評価の追加試験(EXAMINE試験)デザインに関し合意を得たと発表した。同社では、2007年12月にFDAへSYR-322の販売許可申請を実施していたが、本年6月26日付の審査結果通知で、2008年12月の「新規糖尿病治療薬の心血管系リスク評価についてのガイダンス」の統計的要件を満たすための追加試験実施が必要であるとの要請を受けていた。EXAMINE試験は、このガイダンスの要件に準拠したデザインとしているという。詳細はプレスリリースへhttp://www.takeda.co.jp/press/article_35030.html

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2型糖尿病治療薬アログリプチン、チアゾリジン系薬剤との併用効能追加とアクトスとの合剤を製造販売承認を申請

 武田薬品工業株式会社は29日、厚生労働省に、2型糖尿病治療薬アログリプチン(一般名、開発コード:SYR-322)について、チアゾリジン系薬剤との併用効能追加申請およびピオグリタゾン(一般名、製品名:アクトス)との合剤の製造販売承認申請を行ったことを発表した。 今回の併用効能追加申請ならびに合剤の製造販売承認申請は、国内外におけるアログリプチンとアクトスの併用臨床試験結果に基づいて行われています。 アログリプチンは、武田サンディエゴ株式会社(米国)が創製した1日1回投与のDPP-4阻害薬であり、インスリン分泌を高めるホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)を選択的に分解する酵素、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害することにより、それらの血中濃度を維持して血糖値を下げる薬剤。一方、アクトスは、同社が発見したチアゾリジンジオン骨格を有する糖尿病治療剤で、2型糖尿病患者に特徴的な病態であるインスリン抵抗性を改善することによって効果を発揮する。 なお、同社は2008年9月29日に、厚生労働省にアログリプチン単剤の製造販売承認申請を行っており、現在は審査中とのこと。

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血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者にはリナグリプチンの追加投与が有効

独ベーリンガーインゲルハイム社は、メトホルミン治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者にリナグリプチンが有用であると、DPP-4(ジペプチジルペプチターゼ4)阻害薬のリナグリプチンを追加投与した際の同薬の有用性を検討する第2相臨床試験の成績が、米国糖尿病学会(ADA)年次総会で発表した。メトホルミン治療にリナグリプチンを追加投与した際の有用性を検証する臨床試験結果の発表は初めてのこと。この試験は、メトホルミン治療で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、DPP-4阻害薬のリナグリプチンを追加投与した際の同薬の安全性と有効性を12週間にわたり検討したプラセボ対照無作為化国際二重盲検比較試験。主要評価項目は、12週後のHbA1cのベースラインからの変化量です。無作為化された333例の患者のうち268例がリナグリプチン群またはプラセボ群に割り付けられ、リナグリプチン投与群は1mg、5mg、10mgという3用量群に割り付けられた。65例は効果比較対象として、オープンラベルでのグリメピリド投与群に割り付けられた。メトホルミン治療で血糖コントロール不十分な2型糖尿病患者に対し、リナグリプチンを12週間追加投与した結果、統計学的に有意なHbA1cおよび空腹時血糖値の低下が認められたという(p<0.05)。リナグリプチン(予定製品名:ONDERO)は、独ベーリンガーインゲルハイム社が開発中の2型糖尿病治療剤。DPP-4阻害薬の一つで、1日1回経口投与の錠剤として開発が進められている。現在、大規模な第3相臨床試験プログラムが展開されており、日本でも第3相臨床試験の段階にある。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=3603

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2型糖尿病治療薬アログリプチンの製造販売承認を申請

 武田薬品工業株式会社は、2型糖尿病治療薬アログリプチン(一般名、開発コード:SYR-322)の製造販売承認申請を行ったと発表した。アログリプチンは、武田サンディエゴ株式会社(米国カリフォルニア州、当社の100%子会社)が創製した1日1回投与のDPP-4阻害薬DPP-4阻害薬は、インスリン分泌を高めるホルモンであるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)を、選択的に分解する酵素ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)を阻害することにより、それらの血中濃度を維持して血糖値を下げる経口糖尿病治療薬。

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