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1.

2型糖尿病治療薬、国際的持続評価システムの最新結果/BMJ

 中国・四川大学のKailei Nong氏らは、2型糖尿病治療薬の無作為化比較試験についてリビングシステマティックレビュー(living systematic review:LSR)とネットワークメタ解析(NMA)を用いて評価するシステムを開発。SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、フィネレノンおよびチルゼパチドは、死亡、心血管疾患、慢性腎臓病および体重減少に関してリスク依存的に異なる有益性をもたらすが、薬剤特有の有害事象があることを明らかにした。著者は、「本評価システムは、最新のエビデンスを随時統合できるよう設計されている。エビデンスを持続的に更新する国際的なシステムとして、政策立案者、臨床医および患者の情報に基づく意思決定を支援し、研究の無駄を減らす可能性がある」と述べている。BMJ誌2025年8月14日号掲載の報告。869試験、49万3,168例のデータを解析 研究グループは、MedlineおよびEmbaseを用い、2型糖尿病治療薬を相互に、またはプラセボあるいは標準治療と比較した24週以上の無作為化並行群間比較試験について、毎月検索を実施し(本報告では2024年7月31日までの検索を対象)、頻度(frequentist)ランダム効果モデルとGRADEアプローチを用いたLSRおよびNMAを行った。 LSRとNMAは、少なくとも年2回更新。本報告のLSRとNMAには、869試験(2022年10月以降に53試験を追加)の計49万3,168例の患者が含まれ、13の薬剤クラス(63種類の薬剤)と26の重要なアウトカムに関するデータが報告された。薬剤ごとに有益性が異なり、薬剤特有の有害事象も確認 有益性は、SGLT-2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、およびフィネレノン(慢性腎臓病を有する患者に限る)について、心血管および腎臓へのベネフィットが確認された(エビデンスの確実性:中~高)。 体重減少に最も有効な薬剤は、チルゼパチド(平均差[MD]:-8.63kg[95%信頼区間[CI]:-9.34~-7.93]、エビデンスの確実性:中)、およびorforglipron(-7.87kg[-10.24~-5.50]、エビデンスの確実性:低)の順で、次いで他の8種類のGLP-1受容体作動薬(エビデンスの確実性:高~中)であった。 薬剤の絶対的有益性は、心血管および腎アウトカムに対するベースラインのリスクによって大きく異なっていた。リスク層別化された薬剤の絶対効果は、インタラクティブツールにまとめている。 薬剤特有の有害事象については、SGLT-2阻害薬は性器感染症(オッズ比[OR]:3.29[95%CI:2.88~3.77]、エビデンスの確実性:高)、糖尿病性ケトアシドーシス(2.08[1.45~2.99]、エビデンスの確実性:高)、切断(1.27[1.01~1.61]、エビデンスの確実性:中)を、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬は重度胃腸障害(チルゼパチドで最もリスクが増加、OR:4.21[95%CI:1.87~9.49]、エビデンスの確実性:中)、フィネレノンは重度高カリウム血症(OR:5.92[95%CI:3.02~11.62]、エビデンスの確実性:高)を、チアゾリジン系薬剤は主要な骨粗鬆症性骨折および心不全による入院、スルホニル尿素薬とインスリンおよびDPP-4阻害薬は重度低血糖のリスクをそれぞれ増加させる可能性が示された。 神経障害や視覚障害などその他の糖尿病関連合併症に対する効果については、エビデンスの確実性が低または非常に低の結果しか得られなかった。また、関心が高い認知症に関しても、GLP-1受容体作動薬が認知症を軽減するかどうかは不確実であった(OR:0.92[95%CI:0.83~1.02]、エビデンスの確実性:低)。

2.

経口GLP-1受容体作動薬の進化:orforglipronがもたらす可能性と課題(解説:永井聡氏)

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の注射製剤として、すでに15年以上の歴史がある。減量効果だけでなく、心血管疾患や腎予後改善のエビデンスが示されるようになり、さらに経口セマグルチド(商品名:リベルサス)の登場により使用者が増加している。しかし、本剤が臨床効果を発揮するためには、空腹かつ少量の水で服用することが必須であり、服薬条件により投与が困難な場合もあった。 今回、経口薬であり非ペプチドGLP-1製剤であるorforglipronの2型糖尿病を対象とした第III相ACHIEVE-1試験が発表された。orforglipronは、もともと中外製薬が開発した中分子化合物で、GLP-1受容体に結合すると、細胞内でG蛋白依存性シグナルを特異的に活性化する“バイアスリガンド”という、新しい機序の薬剤である。経口セマグルチドのようなペプチド医薬品と異なり、胃内で分解されにくく、吸収を助ける添加剤を必要としない。そのため、空腹時の服用や飲水制限といった条件を課さず、日常生活における服薬の自由度が格段に向上することが特徴である。 試験の結果では、血糖降下作用や減量効果は、週1回セマグルチド注射製剤と同等かやや上回るほどであった。注射製剤の受け入れや空腹での服用条件により、経口セマグルチドの投与が困難だった人にも使用が可能になるという「投与条件の容易さ」は大きなインパクトである。 orforglipronが臨床現場に与える影響は少なくない。投与方法に制限がないことにより、「GLP-1受容体作動薬は特別な治療」という印象が減り、切り替えや他剤と同時服用も可能になり、DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬と同様に、早期導入が一般的になる可能性がある。投与方法が容易であることは、治療自体のQOLの向上を意味し、セルフケア行動を促進しアウトカムをより一層改善する「好循環」を後押しする。現在でも、GLP-1受容体作動薬により減量が進んでから運動を始める人がいる。その人は「体が軽くなった」から運動する気持ちになったと言うが、本当は減量できた成功体験によって「気持ちが軽くなった」から運動できると思い始めたのである。 処方が増加しても、錠剤は一般的に注射剤より生産工程が容易で大量生産可能であり、輸送コストも低く、世界的な需要拡大にも対応が可能と考えられる(近年問題となった某GLP-1受容体作動薬関連の処方制限を思い出してほしい)。 懸念点はないだろうか。有害事象は、他のGLP-1受容体作動薬と同様、嘔気や下痢といった消化器症状が中心であるが、第III相ACHIEVE-1試験では4~8%の症例で投与中止に至っている。さらに、本剤は分子量が小さく、血液脳関門を通過し、中枢性の嘔気症状が増える可能性が指摘されているため、消化器症状のため内服できなかった人が服用できるようになるわけではないと思われる。また、新しい機序の薬剤は、中長期的な有害事象も既存のGLP-1受容体作動薬と同様なのか、良くも悪くも現時点では何とも言えない。さらに、「多くの患者に使える薬」になるということは、裏を返せば「不適切に使われるリスク」も増すということである。フレイルを伴う高齢者への投与や安価な薬剤で十分な患者でも漫然と投与される可能性がある。保険財政への影響も懸念がある。 これからの糖尿病治療において重要なのは、薬剤選択肢の拡大そのものではなく、それをいかに適切に、患者個々の病態や背景を踏まえて用いるかである。適切な患者選択と丁寧なモニタリングを通じて、本剤の真価を最大限に引き出し、「糖尿病のない人と変わらぬQOLの実現」を後押しできるかが医療者に期待されることである。

3.

GLP-1受容体作動薬、高齢者はBMI低下の一方でサルコペニア加速

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、グルコースレベルを効果的に低下させ大幅な体重減少を促進することから、糖尿病や肥満症の治療薬として広く使用されている。一方、サルコペニアは筋肉量と筋力の低下を特徴とする進行性の疾患で、とくに高齢者に多くみられ、2型糖尿病の高齢者では、サルコペニアの有病率が非糖尿病患者に比べて2~3倍高いとされる。こうした背景から、GLP-1RAセマグルチドによる治療を受けた2型糖尿病の高齢者における筋肉量・筋力・筋機能の変化を調査したShijiazhuang People's Hospital(中国・河北)のQingjuan Ren氏らによる研究が、Drug Design, Development and Therapy誌オンライン版2025年7月3日号に掲載された。 2022年1月~12月にShijiazhuang People's Hospitalでセマグルチド治療を開始した2型糖尿病の高齢患者(65歳以上)を対象とした。年齢、性別、BMI(ベースライン時)、糖尿病罹患期間、併存疾患に基づいて傾向スコアマッチングを行った。対照群はベースライン時の特性は試験群と同等で、GLP-1RAやDPP-4阻害薬の投与を受けていなかった。ベースライン時と6ヵ月ごとに参加者の筋肉量・筋力・筋機能を評価し、24ヵ月追跡した。 主な結果は以下のとおり。・セマグルチドによる治療を受けた220例と対照群212例が解析対象となった。参加者のサルコペニアの有病率は27.7%であった。・両群の特性はベースライン時には有意差を認めなかったが、24ヵ月後にはセマグルチド治療群は対照群と比較して、BMIと筋肉量が有意に減少した。・セマグルチド治療群では、全例においてBMIが試験期間を通じて継続的に減少した。・セマグルチド治療群では、骨格筋量指数(SMI)の減少傾向は6ヵ月目から現れ、12ヵ月目から有意な減少となった。握力は男性では当初改善したがその後低下し、女性では低下し続けた。歩行速度は男女ともに有意に低下した。・多変量解析により、セマグルチドの投与量、ベースライン時のSMI、歩行速度が筋力低下の独立した予測因子であることが同定された。 研究者らは「セマグルチドの使用は、高齢の2型糖尿病患者において体重を効果的に減少させる一方で、筋肉量・筋力・筋機能を低下させた。この影響は高用量使用において、また元々サルコペニアを有する患者において、とくに顕著だった。セマグルチド投与時は高齢患者個々のリスクとベネフィットを評価し、適切なモニタリングと介入を実施することがきわめて重要である」とした。

4.

SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が、2型糖尿病患者の転倒リスクを高めることを示唆するデータが報告された。筑波大学システム情報系の鈴木康裕氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に3月17日掲載された。 転倒やそれに伴う骨折や傷害は、生活の質(QOL)低下や種々の健康リスクおよび死亡リスクの増大につながる。糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。ただし、実際にそのようなリスクが生じているか否かはこれまで検証されていなかった。 鈴木氏らは、同大学附属病院内分泌代謝・糖尿病内科に血糖管理のために入院した2型糖尿病患者471人を中央値2年(四分位範囲1~3)追跡し、転倒発生率を比較した。解析対象者の主な特徴は、年齢中央値63歳(四分位範囲51~71)、女性42.3%、HbA1c9.6±1.9%、転倒の既往あり21.2%で、退院時に全体の19.3%に対してSGLT2-i、14.9%に対してGLP-1RAが処方されていた。 1,013人年の追跡で1回以上の転倒を報告した患者は173人で、15人が転倒により骨折を来していた。転倒発生率は100人年当たり17.1であり、年齢、性別、身長、BMI、転倒の既往、処方薬、握力、体重変化、下肢筋力、増殖網膜症の存在などを調整後、転倒の独立したリスク因子として、SGLT2-iの使用と年齢、転倒の既往が特定された。 SGLT2-i、GLP-1RAがともに処方されていなかった群を基準とする転倒発生オッズ比(OR)は以下の通り。SGLT2-iの処方(GLP-1RAの併用なし)では1.90(1.13~3.15)、SGLT2-iとGLP-1RAの併用は3.13(1.29~7.55)。また年齢は1歳高齢であるごとに1.02(1.00~1.04)、転倒の既往は2.19(1.50~3.20)だった。 一方、GLP-1RAの処方(SGLT2-iの併用なし)は1.69(0.89~3.09)であり、転倒リスクの有意な上昇は認められなかった。また、インスリン、SU薬/グリニド薬、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬についても、転倒リスクへの有意な影響は認められなかった。 著者らは、「SGLT2-iの処方は転倒の独立したリスク因子であり、一方でGLP-1RAの処方の影響は統計的に非有意だった。ただし、SGLT2-iとGLP-1RAが併用されていた場合の転倒リスクは、SGLT2-i単独よりも高かった。従って、2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒リスクを考慮することが重要である」と述べている。

5.

医学的に説明困難な身体症状【日常診療アップグレード】第31回

医学的に説明困難な身体症状問題72歳男性。3ヵ月前から始まった夜間の息苦しさを主訴に来院した。高血圧、糖尿病、逆流性食道炎で近くのクリニックに通院中である。バルサルタン(ARB)、シタグリプチン(DPP-4阻害薬)、ランソプラゾール(PPI)を内服中である。血液検査、尿検査、心電図、心エコー検査、上部内視鏡検査で異常を認めない。説明が非常に難しい苦しみで、ある時にスッとよくなるという。バイタルサインは正常で、身体診察でも異常はない。患者は心疾患を心配している。冠動脈CT検査をオーダーした。

6.

SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は女性と高齢者に対しても有効か?(解説:住谷哲氏)

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬が、心不全や慢性腎臓病を合併した2型糖尿病患者の予後を改善することは多数のRCTおよびそのメタ解析の結果から明らかにされている1)。しかし、その有効性が性別および年齢によって異なるのかはこれまで明らかではなかった。そこで本論文では既報のRCTの結果を基に、MACEとHbA1cとを主要評価項目として、年齢×治療、性別×治療の交互作用interactionsの有無をネットワークメタ解析により推定した。 592試験がHbA1cの解析対象となり、そのうちでGLP-1受容体作動薬の9試験、SGLT2阻害薬の8試験がMACEの解析対象となった。性別でみると男性の比率が最も高かったのはSGLT2阻害薬エンパグリフロジンのEMPA-REG OUTCOME試験で71.5%であり、最も低かったのはGLP-1受容体作動薬デュラグルチドのREWIND試験で53.7%であった。また年齢でみると、SGLT1/2阻害薬sotagliflozin(国内未発売)のSOLOIST-WHF試験で68.7歳が最高齢であり、SGLT2阻害薬カナグリフロジンのCREDENCE試験が56.4歳で最も若かった。 結果は、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の両薬剤ともに、HbA1cの低下およびMACEの減少に性別は有意な影響を及ぼさなかった。つまり性別を問わず両薬剤は有効であった。しかし年齢に関しては、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬とは異なる交互作用が認められた。HbA1cの低下については、SGLT2阻害薬では高齢者は若年者に比較して有意に小さく、逆にGLP-1受容体作動薬では高齢者は若年者に比較して有意に大きかった。MACEの減少については、SGLT2阻害薬では高齢者は若年者に比較して有意に大きく、逆にGLP-1受容体作動薬では高齢者は若年者に比較して有意に小さかった。これから考えると両薬剤のMACE減少効果とHbA1c低下作用とは関連がないことがわかる。 以上の結果から、MACE減少を期待するならば高齢者にはSGLT2阻害薬を、若年者にはGLP-1受容体作動薬の投与を積極的に考慮すべきだろうか? 注意すべきは、解析対象となった試験はすべて心血管イベントリスクのきわめて高い患者を対象としたCVOTであり、80歳以上の高齢者はほとんど対象に含まれていない点だろう。高齢者ではフレイルの有無が薬剤選択に影響することが少なくない。両薬剤ともに体重減少を伴うことが多い点は十分に考慮する必要がある。

7.

失明を来し得る眼疾患のリスクがセマグルチドでわずかに上昇

 2型糖尿病の治療や減量目的で処方されるセマグルチドによって、非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)という失明の可能性もある病気の発症リスクが、わずかに高まることを示唆するデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学ウィルマー眼研究所のCindy Cai氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Ophthalmology」に2月20日掲載された。 NAIONは、網膜で受け取った情報を脳へ送っている「視神経」への血流が途絶え、視野が欠けたり視力が低下したり、時には失明に至る病気。一方、セマグルチドはGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)という薬の一種で、血糖管理や減量のために処方される。2024年に、同薬がNAION発症リスクを高めるという論文が発表された。ただし、ほぼ同時期にその可能性を否定する研究結果も発表されたが、安全性の懸念が残されている。これらを背景としてCai氏は、複数のデータベースを統合した大規模サンプルを用いた後ろ向き研究を実施した。 解析には、医療費請求データや電子カルテなど計14件のデータを使用し、二つの手法でNAION発症リスクを検討した。一つ目は、セマグルチドが新たに処方された患者と、セマグルチド以外のGLP-1RA、およびGLP-1RA以外の血糖降下薬が処方された患者を比較する、実薬対照コホートデザインによる検討。二つ目は、同一患者内で当該薬剤を使用していた期間と使用していなかった期間とでリスクを比較する、自己対照研究デザインによる検討。 解析対象は3710万人の2型糖尿病患者であり、そのうち81万390人がセマグルチドの新規使用者だった。NAIONの発症リスクの検討には、1件の診断コードのみで定義した高感度モデルと、90日以内に2件以上の診断コードが記録されている場合で定義した高特異度モデルという2パターンを用いた。NAION発症率は、高感度モデルでは10万人年当たり14.5、高特異度モデルでは同8.7だった。 実薬対照コホートデザインの高感度モデルでは、セマグルチドはSGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、DPP-4阻害薬のシタグリプチン、SU薬のグリピジドとの比較でNAIONリスクに有意差はなかった。高特異度モデルでは、エンパグリフロジンとの比較でのみ、リスクが有意に高かった(ハザード比〔HR〕2.27〔95%信頼区間1.16~4.46〕)。 自己対照研究デザインにおいてセマグルチドは、高感度モデルで発生率比(IRR)1.32(同1.14~1.54)、高特異度モデルでIRR1.50(同1.26~1.79)と有意なリスク上昇が認められた。また、別のGLP-1RAであるエキセナチドも高特異度モデルでIRR1.62(同1.02~2.58)と有意なリスク上昇が認められた。 著者らは、「われわれの研究により、セマグルチドとNAIONリスクとの関連についての新たなエビデンスが示された。認められたリスクは先行研究に比べて小さかった。潜在的なメカニズムや因果関係の特定のために、さらなる研究が求められる」と述べている。またCai氏は、「セマグルチドは全身性の副次的効果が豊富な薬剤ではあるが、患者と医師はNAIONのリスクに留意する必要がある」としている。

8.

2型DMの血糖コントロールなど、予測モデルによる治療最適化で改善/Lancet

 英国・エクセター大学のJohn M. Dennis氏らMASTERMIND Consortiumは、2型糖尿病患者に対する最適な血糖降下療法を確立するために、日常臨床データを用いた5つの薬剤クラスのモデルを開発し、妥当性の検証を行った。その結果、モデルによって予測された最適な治療を受けていない2型糖尿病患者と比較して、最適な治療を受けている患者は、12ヵ月間の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が低く、追加的な血糖降下療法を必要とする可能性が低下し、糖尿病合併症のリスクが減少することが示された。研究の成果は、Lancet誌2025年3月1日号で報告された。モデルの予測因子は、日常的に入手可能な9つの要因 研究グループは、2型糖尿病患者の日常臨床で利用可能なデータを用いて、5つの薬剤クラス(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬)の血糖降下薬に関して、相対的な血糖降下作用の予測が可能かを明らかにする目的で、モデルを開発しその妥当性を検証した(英国医学研究審議会[MRC]の助成を受けた)。 モデルには、予測因子として、薬剤投与開始時の2型糖尿病患者の日常臨床で入手可能な9つの要因(年齢、糖尿病罹病期間、性別、ベースラインのHbA1c・BMI・推算糸球体濾過量[eGFR]・HDLコレステロール・総コレステロール・ALTの値)を用いた。 モデルの開発と初期検証には、Clinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumのデータベースの観察データを用い、2004年1月1日~2020年10月14日に5つの薬剤クラスのうち1つの投与を開始した年齢18~79歳の2型糖尿病患者を対象とした(データへのアクセス時に英国の人口の19.3%を網羅)。 モデルの検証には、2型糖尿病患者を対象とした3つの無作為化臨床試験の個人レベルのデータを用いた。また、CPRDを用いた検証では、モデルで予測された最適な治療(予測された血糖降下作用が最も高い[すなわち、12ヵ月時のHbA1c値が最も低い]薬剤クラスと定義)と一致する治療を受けた群と、一致しない治療を受けた群で観察された血糖降下作用の差を評価した。血糖値異常の5年リスクも良好 5つの薬剤クラスのモデル開発には、CPRDの10万107件の薬剤投与開始時のデータを用いた。CPRDコホート全体(開発コホート+検証コホート)では、21万2,166件の薬剤投与開始のうち3万2,305件(15.2%)がモデルによる予測で最適な治療法とされた。 モデルによって予測された最適な治療を受けなかった群に比べ、これを受けた群は、観察期間12ヵ月の時点での平均HbA1c値の有益性が、CPRDの地理的検証コホート(薬剤投与開始群2万4,746例、背景因子をマッチさせた群1万2,373例)で5.3mmol/mol(95%信頼区間[CI]:4.9~5.7)、CPRDの時間的検証コホート(9,682例、4,841例)では5.0mmol/mol(4.3~5.6)であった。 予測されたHbA1c値の差は、3つの臨床試験における薬剤クラスのpairwise比較、およびCPRDにおける5つの薬剤クラスのpairwise比較で観察されたHbA1c値の差で良好にキャリブレーション(較正)されていた。 また、CPRDにおける血糖値異常の5年リスクは、モデルによって予測された最適な治療を受けなかった群に比べこれを受けた群で低かった(補正後ハザード比[aHR]:0.62[95%CI:0.59~0.64])。MACE-HF、腎疾患進行、細小血管合併症が改善 血糖値以外の長期のアウトカムについては、全死因死亡の5年リスクには差がなかった(aHR:0.95[95%CI:0.83~1.09])が、主要有害心血管イベントまたは心不全(MACE-HF、心筋梗塞、脳卒中、心不全が主な原因の入院、心血管疾患、心不全が主な原因の死亡)アウトカム(0.85[0.76~0.95])、腎疾患の進行(eGFRの40%超の低下、末期腎不全)(0.71[0.64~0.79])、細小血管合併症(臨床的に有意なアルブミン尿[尿中アルブミン/クレアチニン比>30mg/g]の進行または重度の網膜症のいずれか先に発現した病態に基づく複合)(0.86[0.78~0.96])は、いずれもモデルによって予測された最適な治療を受けた群で優れた。 著者は、「このモデルは、日常臨床で収集されるパラメータのみを使用することから、世界中のほとんどの国で、低コストで容易に臨床への導入が可能と考えられる」「このモデルの導入により、血糖コントロールの改善、追加治療による治療強化前の安定的な血糖降下療法の期間の大幅な延長、および糖尿病合併症の減少につながる可能性がある」としている。

9.

GLP-1受容体作動薬、自殺リスクと関連せず/BMJ

 英国の大規模コホート研究において、2型糖尿病患者のGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬またはSGLT-2阻害薬の使用と比較し、自殺傾向のリスク増加とは関連していないことが示された。カナダ・Lady Davis InstituteのSamantha B. Shapiro氏らが報告した。GLP-1受容体作動薬と自殺傾向との関連性が懸念されており、これを調査する観察研究がいくつか実施されているものの、結論には至っていなかった。BMJ誌2025年2月26日号掲載の報告。2型糖尿病患者の使用者について、DPP4阻害薬、SGLT-2阻害薬と比較 研究グループは、英国の一般診療所2,000施設以上、患者6,000万例を網羅する大規模プライマリケアデータベース「Clinical Practice Research Datalink(CPRD)AurumおよびGOLD」のデータを用いた。このデータベースは、英国の国民保健サービス(NHS)の入院記録「Hospital Episode Statistics Admitted Patient Care」および国家統計局の死亡登録データベース「Office for National Statistics(ONS)Death Registration」と連携している。 対象は2型糖尿病患者で、次の2つのコホートを特定した。(1)2007年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬の服用を開始し継続した患者(コホート1)、(2)2013年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の服用を開始し継続した患者(コホート2)。いずれも、2021年3月29日まで追跡した。 主要アウトカムは自殺傾向(自殺念慮、自傷行為および自殺の複合と定義)とし、副次アウトカムはこれらの各イベントとした。傾向スコアによる層別化および重み付けCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、治療を受けた患者における平均処置効果を推定した。GLP-1受容体作動薬は、自殺念慮、自傷行為、自殺のリスク増加と関連なし コホート1には、GLP-1受容体作動薬使用者3万6,082例(追跡期間中央値1.3年)とDPP-4阻害薬使用者23万4,028例(追跡期間中央値1.7年)が含まれた。粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はDPP-4阻害薬と比較して、自殺傾向の発生率増加と関連していた(粗発生率1,000人年当たり3.9 vs.1.8、HR:2.08、95%CI:1.83~2.36)。しかし、交絡因子補正後は、関連は認められなかった(HR:1.02、95%CI:0.85~1.23)。 コホート2には、GLP-1受容体作動薬使用者3万2,336例(追跡期間中央値1.2年)とSGLT-2阻害薬使用者9万6,212例(追跡期間中央値1.2年)が含まれた。同様に、粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT-2阻害薬と比較して、自殺傾向のリスクが高かったが(粗発生率1,000人年当たり4.3 vs.2.7、HR:1.60、95%CI:1.37~1.87)、交絡因子補正後は、関連は認められなかった(HR:0.91、95%CI:0.73~1.12)。 両コホートとも、自殺念慮、自傷行為、自殺を個別に解析した場合も、同様の結果であった。

10.

GLP-1RAの腎保護効果はDPP-4iを上回る

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は慢性腎臓病(CKD)進行抑制という点で、DPP-4阻害薬(DPP-4i)より優れていることを示唆するデータが報告された。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのShuyao Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に12月5日掲載され、2月10日には同大学からニュースリリースが発行された。Zhang氏は、「血糖管理におけるGLP-1RAの有用性は既によく知られていた。一方、われわれの研究によって新たに、CKDハイリスク患者におけるGLP-1RAの腎保護効果を裏付ける、待望のエビデンスが得られた」と述べている。 この研究は、米退役軍人保健局の医療データを用い、臨床試験を模倣した研究として実施された。腎機能低下が中等度(eGFR45mL/分/1.73m2未満)以上に進行したCKDを有する35歳以上の2型糖尿病患者のうち、GLP-1RAまたはDPP-4iで治療されていた9万1,132人から、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万6,076人から成る2群を設定。この2群はベースライン時点で、平均年齢(GLP-1RA群71.9歳、DPP-4i群71.8歳)、男性の割合(両群とも95%)、BMI(同33.5)、HbA1c(8.0%)、および併発症や治療薬なども含めて、背景因子がよく一致していた。 事前に設定されていた主要評価項目は急性期医療(救急外来の受診・入院など)の利用率であり、副次評価項目は全死亡および心血管イベントの発生率だった。このほか、事後解析として、CKD進行リスク(血清クレアチニンの倍化、CKDステージ5への進行で構成される複合アウトカム)も評価した。 2.2±1.9年の追跡で、1人1年当たりの急性期医療利用率は、GLP-1RA群が1.52±4.8%、DPP-4i群は1.67±4.4%で、前者の方が有意に低かった(P=0.004)。また、全死亡は同順に17.7%、20.5%に発生していて、やはりGLP-1RA群の方が少なかった(オッズ比〔OR〕0.84〔95%信頼区間0.79~0.89〕、P<0.001)。CKD進行についても2.23%、3.46%で、GLP-1RA群の方が少なかった(OR0.64〔同0.56~0.73〕、P<0.001)。心血管イベントに関しては有意差がなかった(OR0.98〔0.92~1.06〕、P=0.66)。 著者らは、本研究結果が糖尿病の臨床を変化させるのではないかと考えている。論文の共著者の1人である同医療センターのIldiko Lingvay氏は、「糖尿病でCKDを有する患者は、低血糖、感染症、心血管疾患などの合併症のリスクが非常に高いにもかかわらず、有効な薬剤が非常に少なく、かつ、そのような患者は臨床試験に参加する機会が限られている。われわれの研究結果は、GLP-1RAがCKDの進行の抑制や医療費の削減につながることを示している」と話す。 Zhang氏もLingvay氏と同様に、今回の研究結果が糖尿病臨床を変え得るとしている。同氏は、「歴史的に見て、糖尿病によるCKDの治療は困難なものであった」と解説。そして、「今後の研究次第では、糖尿病に伴うCKDの包括的治療アプローチの一部として、GLP-1RAを組み込んだ新しいガイドラインが策定される可能性がある。そのガイドラインに基づく治療によって、患者の長期的な転帰が改善し、生活の質の向上につながっていくのではないか」と付け加えている。

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SGLT2阻害薬やGLP-1薬のベネフィット、年齢・性別で違いは?/JAMA

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが、英国・グラスゴー大学のPeter Hanlon氏らによる601試験のネットワークメタ解析の結果で示された。年齢×治療の交互作用の解析では、SGLT2阻害薬はヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低下は小さいものの、若年者より高齢者で心臓保護効果が高く、一方、GLP-1受容体作動薬は若年者のほうで心臓保護効果が高いことが示された。先行研究で、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP4阻害薬は高血糖を改善し、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者のMACEリスクを軽減することが示されているが、これらの有効性が年齢や性別によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2025年2月3日号掲載の報告。MEDLINEやEmbaseなどを2024年8月までレビュー 研究グループは、MEDLINE、Embase、および米国と中国の臨床試験登録について、2022年11月までに発表された論文を検索し、さらに試験結果を更新するため2024年8月に再検索した。 対象研究は、18歳以上の2型糖尿病成人患者を対象に、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬またはDPP4阻害薬と、プラセボや他の血糖降下薬を比較した無作為化臨床試験とし、2人の評価者が独立して適格性をスクリーニングした。 主要アウトカムはHbA1cとMACEで、個々の患者データおよび集計データを用い、マルチレベルネットワークメタ回帰モデルで年齢×治療の交互作用および性別×治療の交互作用を推定した。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はMACEリスク低下と関連 適格基準を満たした601試験が同定された。592試験はHbA1cを報告した試験(合計30万9,503例、平均年齢58.9±10.8歳、女性42.3%)、23試験がMACEを報告した試験(16万8,489例、64.0±8.6歳、35.3%)であった。なお、103試験で個々の患者データが得られた(HbA1c:103試験、MACE:6試験)。 SGLT2阻害薬の使用(プラセボとの比較)は、加齢に伴ってHbA1cの低下が少ないことと関連しており、30歳増加ごとの絶対低下率(AR)は、単剤療法で0.24%(95%信用区間[CrI]:0.10~0.38)、2剤併用療法で0.17%(0.10~0.24)、3剤併用療法で0.25%(0.20~0.30)であった。 GLP-1受容体作動薬の使用は、単剤療法(AR:-0.18%、95%CrI:-0.31~-0.05)および2剤併用療法(-0.24%、-0.40~-0.07)は加齢に伴ってHbA1cの低下が大きかったが、3剤併用療法(0.04%、-0.02~0.11)はHbA1cの低下と関連していなかった。 DPP4阻害薬の使用は、2剤併用療法では高齢者におけるHbA1cの低下がわずかに改善したが(AR:-0.09%、95%CrI:-0.15~-0.03)、単剤療法(-0.08%、-0.18%~0.01%)や3剤併用療法(-0.01%、-0.06%~0.05%)では改善がみられなかった。 MACEの相対的な減少は、SGLT2阻害薬の使用では、高齢者のほうが若年者より、30歳増加するごとの減少率が大きく(ハザード比:0.76、95%CrI:0.62~0.93)、GLP-1受容体作動薬の使用では、高齢者のほうが若年者よりも減少率が小さかった(1.47、1.07~2.02)。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用に関して、性別×治療の交互作用に関する一貫したエビデンスはなかった。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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SGLT2iはDPP-4iより網膜症リスクを抑制する可能性―国内リアルワールド研究

 合併症未発症段階の日本人2型糖尿病患者に対する早期治療として、DPP-4阻害薬(DPP-4i)ではなくSGLT2阻害薬(SGLT2i)を用いることで、糖尿病網膜症発症リスクがより低下することを示唆するデータが報告された。千葉大学予防医学センターの越坂理也氏、同眼科の辰巳智章氏らの研究グループが、大規模リアルワールドデータを用いて行ったコホート研究の結果であり、詳細は「Diabetes Therapy」に9月30日掲載された。 SGLT2iは血糖降下作用に加えて、血圧や脂質などの糖尿病網膜症(以下、網膜症)のリスク因子を改善する作用を持ち、また網膜症に関する観察研究の結果が海外から報告されている。ただし日本人でのエビデンスは少なく、特に早期介入のエビデンスは国際的にも少ない。これを背景として越坂氏らは、健康保険組合の約1,700万人分の医療費請求情報および健診データが登録されている大規模データベース(JMDC Claims Database)を用いた解析を行った。 2015年1月から2022年9月末の期間にSGLT2iまたはDPP-4iの処方が開始されていた患者から、18歳未満、両剤併用、合併症(網膜症を含む細小血管症や大血管症)診断の記録、および1型糖尿病や妊娠糖尿病の患者などを除外した上で、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万166人を解析対象とした。SGLT2iまたはDPP-4iの処方開始日から網膜症(黄斑浮腫を含む)の発症、治療中断、患者データ最終日、または死亡のいずれか最も早い日まで追跡した。追跡開始時点において、平均年齢(約50歳)、男性の割合(同80%)、BMI(29kg/m2)、HbA1c(7.7%)は両群間に大きな差はなく、また喫煙者率、血圧、血清脂質、eGFR、チャールソン併存疾患指数、併用薬剤、医療機関の規模、追跡開始年などもよく一致しており、標準化平均差が0.05未満だった。 SGLT2i群は1万5,012人年の追跡で694人が網膜症を発症し、1,000人年当たりの罹患率は46.23だった。DPP-4i群は1万3,954人年の追跡で797人が網膜症を発症し、1,000人年当たりの罹患率は57.12だった。Cox比例ハザードモデルによる解析で、DPP-4i群に比較しSGLT2i群は網膜症発症リスクが有意に低いことが示された(ハザード比0.83〔95%信頼区間0.75~0.92〕、P=0.0003)。 患者背景別のサブグループ解析でも、おおむね全体解析と同様にSGLT2i群において網膜症発症リスクが有意に低いことが示された。ただし、65歳以上、HbA1cが7~8%の範囲、脂質低下薬またはレニン-アンジオテンシン系降圧薬の併用、およびベースライン時点で何らかの血糖降下薬が既に処方されていたケースでは、DPP-4i群とのリスク差が非有意だった。 著者らは、本研究を「合併症のない日本人2型糖尿病患者を対象に、網膜症リスクに対するSGLT2iとDPP-4iの影響の違いを検討した初の大規模研究」と位置づけている。研究の限界点として、健康保険組合のデータを用いたため高齢者の割合が低いこと、および残余交絡が存在する可能性などを挙げた上で、「SGLT2iが処方された患者はDPP-4iが処方された患者よりも網膜症リスクが低い可能性が示された」と結論。また、研究参加者が比較的若年で合併症がない集団であり、かつサブグループ解析では血糖や脂質・血圧に対して既に介入がなされていた群でリスク差が非有意であったことから、「より早期からのSGLT2iによる治療が網膜症抑止において有益と考えられる」と付け加えている。

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SGLT2阻害薬はがん発症を減らすか~日本の大規模疫学データ

 近年、SGLT2阻害薬は実験レベルでさまざまながん種に対する抗腫瘍効果が示唆されている。臨床においても、無作為化試験や観察研究などでSGLT2阻害薬とがん発症リスクとの関係が検討されているが結論は出ておらず、一般的にがん発症率が低いことを考慮すると大規模な疫学コホートでの検討が必要となる。今回、東京大学/国立保健医療科学院の鈴木 裕太氏らが全国規模の疫学データベースを用いて、SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された患者におけるがん発症率を調べた結果、SGLT2阻害薬のほうががん発症リスクが低く、とくに大腸がんの発症リスクが低いことがわかった。Diabetes & Metabolism誌2024年11月号に掲載。 大規模疫学データベースにおいて、新規でSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬を処方された糖尿病患者を解析した。主要評価項目はがん発生率とし、傾向スコアマッチングアルゴリズムを用いて、SGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群におけるがん発症率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・2万6,823例を1:2(SGLT2阻害薬群8,941例、DPP-4阻害薬群1万7,882例)に傾向スコアマッチングした。平均追跡期間2.0±1.6年の間に1,076例ががんを発症した。・SGLT2阻害薬投与はがんリスク低下と関連し(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.70~0.91)、とくに大腸がんリスクの低下と関連していた(HR:0.71、95%CI:0.50~0.998)。・この結果は、オーバーラップ重み付け解析(HR:0.79、95%CI:0.66~0.94)、治療の逆確率重み付け解析(HR:0.75、95%CI:0.65~0.86)、導入期間の設定(HR:0.78(95%CI:0.65~0.93)を含む種々の感度解析で一貫していた。・がん発症リスクはそれぞれのSGLT2阻害薬で同程度であった。 この全国のリアルワールドデータを用いた検討結果から、著者らは「糖尿病患者におけるがん発症抑制においてはDPP-4阻害薬よりSGLT2阻害薬のほうが有利である可能性が示された」としている。

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GLP-1RAが飲酒量を減らす?

 血糖降下薬であり近年では減量目的でも使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、飲酒量を減らすことを示唆する新たな論文が報告された。特に肥満者において、この作用が高い可能性があるという。英ノッティンガム大学のMohsan Subhani氏らによるシステマティックレビューの結果であり、詳細は「eClinicalMedicine」に11月14日掲載された。なお、本研究で言及されているエキセナチド等、GLP-1RAの禁酒・節酒目的での使用は日本を含めて承認されていない。一方で同薬が作用するGLP-1受容体は脳内にも分布しており、同薬が飲酒量を抑制するという前臨床試験のデータがある。 この研究では、Ovid Medline、EMBASE、PsycINFOなどのデータベースを用いて、2024年3月末までに報告された研究結果を検索、同年8月7日に新たに追加された報告の有無を確認した。主要評価項目は、GLP-1RAの使用と飲酒量の関連の評価であり、副次的に、GLP-1RAと飲酒関連イベントや機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータなどとの関連を評価した。 解析対象研究として、6件の報告が特定された。このうち2件はランダム化比較試験(RCT)、3件は後ろ向き観察研究、1件はケースシリーズ(複数の症例報告)であり、3件は欧州、2件は米国、1件はインドで行われていた。研究参加者数は合計8万8,190人で、このうち3万8,740人(43.9%)にGLP-1RAが投与されていた。ただし、エビデンスレベルが高いと評価されるRCTとして実施されていた研究の参加者は286人だった。平均年齢は49.6±10.5歳で、男性が56.9%だった。 RCTとして実施されていた研究では、GLP-1RAのエキセナチドによる24週間の治療後30日間での飲酒量は、プラセボと差がなかった(大量飲酒の日数の群間差がP=0.37)。ただし、サブグループ解析では、肥満者(BMI30超)では肯定的な影響が認められ、fMRIで脳内の報酬中枢の反応に差が認められた。また、RCTの二次解析では、GLP-1RAのデュラグルチド群はプラセボ群と比較して、飲酒量が減少する可能性が有意に高かった(相対効果量0.71〔95%信頼区間0.52~0.97〕、P=0.04)。 観察研究では、DPP-4阻害薬が処方されていた患者や無治療の患者に比べて、GLP-1RAによる治療が行われていた患者では飲酒量が有意に少なく、飲酒関連イベントの発生も少なかった。 Subhani氏は、「GLP-1RAが将来的には過度の飲酒を抑制するための潜在的な治療選択肢となり、結果的に飲酒関連の死亡者数の減少につながる可能性があるのではないか」と述べている。なお、論文には、「GLP-1RAは一部の人の飲酒量を減らす可能性があることが示唆された。ただし、研究の結果に一貫性がなく、飲酒量を抑える目的でのGLP-1RAの有効性と安全性を確立するため、さらなる研究が求められる」と付記されている。

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『糖尿病治療ガイド2024』発刊、GIP/GLP-1受容体作動薬を追加/糖尿病学会

 日本糖尿病学会は、糖尿病診療で頻用されている『糖尿病治療ガイド』の2024年版を11月に発刊した。本書は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめ、専門医だけでなく非専門の内科医、他科の医師、医療スタッフなどにも、広く活用されている。今回の改訂では、GIP/GLP-1受容体作動薬の追加をはじめ、2024年10月現在の最新の内容にアップデートされている。【主な改訂のポイント】・「糖尿病診療ガイドライン2024」に準拠しつつ、診療上必要な専門家のコンセンサスも掲載。・GIP/GLP-1受容体作動薬の追加など、最新の薬剤情報にアップデート。・「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」に基づいた経口薬療法および注射薬療法の解説。・緩徐進行1型糖尿病の診断基準や糖尿病患者の脂質管理目標値、糖尿病性腎症の病期分類など、最新の基準・目標値の内容を反映。※アドボカシー活動の進展による言葉の変更は、いまだ適切な基準がないため、全面的な変更は見送った。 編集委員会は序文で「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と期待を述べている。

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非肥満2型糖尿病患者の心血管障害へのSGLT2阻害薬の効果は/京大

 糖尿病の薬物治療で頻用されているSGLT2阻害薬。しかし、SGLT2阻害薬の有効性を示した過去の大規模臨床研究の参加者は、平均BMIが30を超える肥満体型の糖尿病患者が多数を占めていた。 わが国の実臨床現場ではBMIが25を下回る糖尿病患者が多く、肥満のない患者でも糖分を尿から排泄するSGLT2阻害薬が本当に有効なのかどうかは、検証が不十分だった。そこで、森 雄一郎氏(京都大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、協会けんぽのデータベースを活用し、わが国のSGLT2阻害薬の効果検証を行った。その結果、肥満傾向~肥満の患者ではSGLT2阻害薬の有効性が確認できたが、BMI25未満の患者では明らかではなかったことがわかった。本研究の結果はCardiovascular Diabetology誌2024年10月22日号に掲載された。肥満者にSGLT2阻害薬の主要アウトカムの効果はみられた一方で非肥満者ではみられず この研究は、2型糖尿病でBMIが低~正常の患者におけるSGLT2阻害薬の心血管アウトカムに対する有効性を、従来の試験よりも細かい層別化を用いて検討することを目的に行われた。 研究グループは、2015年4月1日~2022年3月31日の協会けんぽのデータベースを活用し、3,000万例以上の現役世代の保険請求記録および健診記録を用い、標的試験エミュレーションの枠組みを用いたコホート研究を行った。 SGLT2阻害薬の新規使用者13万9,783例とDPP-4阻害薬の使用者13万9,783例をBMI区分(20.0未満、20.0~22.4、22.5~24.9、25.0~29.9、30.0~34.9、35.0以上)で層別化し、マッチングした。主要アウトカムは全死亡、心筋梗塞、脳卒中、心不全。 主な結果は以下のとおり。・参加者の17.3%(4万8,377例)が女性で、31.0%(8万6,536例)のBMIが低~正常だった(20.0未満:1.9%[5,350例]、20.0~22.4:8.5%[2万3,818例]、22.5~24.9:20.5%[5万7,368例])。・追跡期間中央値24ヵ月で、主要なアウトカムは参加者の2.9%(8,165例)に発現した。・SGLT2阻害薬は全集団において主要アウトカムの発生率低下と関連していた(ハザード比[HR]:0.92[95%信頼区間[CI]:0.89~0.96])。・BMIが低~正常の集団では、SGLT2阻害薬は主要アウトカム発生率の低下と関連しなかった(20.0未満のHR:1.08[95%CI:0.80~1.46]、20.0~22.4のHR:1.04[95%CI:0.90~1.20]、22.5~24.9のHR:0.92[95%CI:0.84~1.01])。 この結果から研究グループは、「2型糖尿病患者の心血管イベントに対するSGLT2阻害薬の効果は、BMIが低いほど低減するようであり、BMIが低~正常(25.0未満)の患者では有意ではなかった。これらの結果はSGLT2阻害薬の投与開始時にBMIを考慮することの重要性を示唆している」と述べている。

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DPP-4i既存治療の有無で腎予後に有意差

 2型糖尿病患者の腎予後がDPP-4阻害薬(DPP-4i)処方の有無で異なるとする研究結果が報告された。同薬が処方されている患者の方が、腎機能(eGFR)の低下速度が遅く、末期腎不全の発症リスクが低いという。東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の佐藤倫広氏、同大学医学部内科学第三(腎臓内分泌内科)教室の橋本英明氏らが行ったリアルワールド研究の結果であり、詳細は「Diabetes, Obesity & Metabolism」に7月31日掲載された。 インクレチン関連薬であるDPP-4iは、国内の2型糖尿病治療薬として、プライマリケアを中心に最も多く処方されている。同薬は、基礎研究では血糖降下以外の多面的な効果が示唆されており、腎保護的に作用することが知られているが、臨床研究のエビデンスは確立されていない。過去に行われた臨床研究は、参加者が心血管疾患ハイリスク患者である、またはDPP-4i以外の血糖降下薬の影響が調整されていないなどの点で、結果の一般化が困難となっている。これを背景として佐藤氏らは、医療情報の商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いて、実臨床に則した検討を行った。 2014~2021年のデータベースから、透析や腎移植の既往がなく、eGFR15mL/分/1.73m2超の30歳以上でデータ欠落のない2型糖尿病患者を抽出。eGFRが45mL/分/1.73m2以上のコホート(6万5,375人)ではeGFRの変化、eGFR45mL/分/1.73m2未満のコホート(9,866人)では末期腎不全への進行を評価アウトカムとして、ベースライン時点でのDPP-4iの処方(既存治療)の有無で比較した。 傾向スコアマッチングにより、患者数1対1のデータセットを作成。eGFR45以上のコホートは1万6,002のペア(計3万2,004人)となり平均年齢68.4±9.4歳、男性59.6%、eGFR45未満のコホートは2,086のペア(計4,172人)で76.5±8.5歳、男性60.3%となった。ベースライン特性をDPP-4i処方の有無で比較すると、両コホートともに年齢、性別、eGFR、各種臨床検査値、併存疾患、DPP-4i以外の血糖降下薬・降圧薬の処方などはよく一致していたが、DPP-4i処方あり群はHbA1cがわずかに高く(eGFR45以上は6.9±0.9対6.8±0.9%、eGFR45未満は6.8±1.0対6.7±0.9%)、服薬遵守率がわずかに良好だった(同順に84.1対80.4%、83.9対77.6%)。 解析の結果、eGFR45以上のコホートにおける2年後のeGFRは、DPP-4i処方群が-2.31mL/分/1.73m2、非処方群が-2.56mL/分/1.73m2で、群間差0.25mL/分/1.73m2(95%信頼区間0.06~0.44)と有意であり(P=0.010)、3年後の群間差は0.66mL/分/1.73m2(同0.39~0.93)に拡大していた(P<0.001)。ベースライン時に標準化平均差が10%以上の群間差が存在していた背景因子を調整した解析でも、同様の結果が得られた。 eGFR45未満のコホートでは、平均2.2年の観察期間中にDPP-4i処方群の1.15%、非処方群の2.30%が末期腎不全に進行し、カプランマイヤー法により有意差が認められた(P=0.005)。Cox回帰分析から、DPP-4iの処方は末期腎不全への進行抑制因子として特定された(ハザード比0.49〔95%信頼区間0.30~0.81〕)。 著者らは、「リアルワールドデータを用いた解析から、DPP-4iが処方されている2型糖尿病患者の腎予後改善が示唆された」と結論付けている。同薬の腎保護作用の機序としては、本研究において同薬処方群のHbA1cがわずかに高値であり、かつその差を調整後にもアウトカムに有意差が認められたことから、「血糖改善作用のみでは説明できない」とし、既報研究を基に「サブクリニカルに生じている可能性のある腎虚血や再灌流障害を抑制するなどの作用によるものではないか」との考察が述べられている。ただし本研究ではDPP-4i処方後の中止が考慮されていない。また、既存治療者を扱った研究デザインのため残余交絡の存在が考えられることから、新規治療者を対象とした研究デザインによる再検証の必要性が述べられている。

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DPP-4iとBG薬で糖尿病性合併症発生率に差はない――4年間の後方視的解析

 血糖管理のための第一選択薬としてDPP-4阻害薬(DPP-4i)を処方した場合とビグアナイド(BG)薬を処方した場合とで、合併症発生率に差はないとする研究結果が報告された。静岡社会健康医学大学院大学(現在の所属は名古屋市立大学大学院医学研究科)の中谷英仁氏、アライドメディカル株式会社の大野浩充氏らが行った研究の結果であり、詳細は「PLOS ONE」に8月9日掲載された。 欧米では糖尿病の第一選択薬としてBG薬(メトホルミン)が広く使われているのに対して、国内ではまずDPP-4iが処方されることが多い。しかし、その両者で合併症の発生率に差があるかは明らかでなく、費用対効果の比較もほとんど行われていない。これを背景として中谷氏らは、静岡県の国民健康保険および後期高齢者医療制度のデータを用いた後方視的解析を行った。 2012年4月~2021年9月に2型糖尿病と診断され、BG薬またはDPP-4iによる治療が開始された患者を抽出した上で、心血管イベント・がん・透析の既往、糖尿病関連の入院歴、インスリン治療歴、遺伝性疾患などに該当する患者を除外。性別、年齢、BMI、HbA1c、併存疾患、腎機能、肝機能、降圧薬・脂質低下薬の処方、喫煙・飲酒・運動習慣など、多くの背景因子をマッチさせた1対5のデータセットを作成した。 主要評価項目は脳・心血管イベントと死亡で構成される複合エンドポイントとして、イベント発生まで追跡した。副次的に、糖尿病に特異的な合併症の発症、および1日当たりの糖尿病治療薬剤コストを比較した。追跡開始半年以内に評価対象イベントが発生した場合はイベントとして取り扱わなかった。 マッチング後のBG薬群(514人)とDPP-4i群(2,570人)の特徴を比較すると、平均年齢(68.39対68.67歳)、男性の割合(46.5対46.9%)、BMI(24.72対24.67)、HbA1c(7.24対7.22%)、収縮期血圧(133.01対133.68mmHg)、LDL-C(127.08対128.26mg/dL)、eGFR(72.40対72.32mL/分/1.73m2)などはよく一致しており、その他の臨床検査値や併存疾患有病率も有意差がなかった。また、BG薬、DPP-4i以外に追加された血糖降下薬の処方率、通院頻度も同等だった。 中央値4.0年、最大8.5年の追跡で、主要複合エンドポイントはBG薬群の9.5%、DPP-4i群の10.4%に発生し、発生率に有意差はなかった(ハザード比1.06〔95%信頼区間0.79~1.44〕、P=0.544)。また、心血管イベント、脳血管イベント、死亡の発生率を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。副次評価項目である糖尿病に特異的な合併症の発生率も有意差はなく(P=0.290)、糖尿病性の網膜症、腎症、神経障害を個別に比較しても、いずれも有意差はなかった。さらに、年齢、性別、BMI、HbA1c、高血圧・脂質異常症・肝疾患の有無で層別化した解析でも、イベント発生率が有意に異なるサブグループは特定されなかった。 1日当たり糖尿病治療薬剤コストに関しては、BG薬は60.5±70.9円、DPP-4iは123.6±64.3円であり、平均差63.1円(95%信頼区間56.9~69.3)で前者の方が安価だった(P<0.001)。 著者らは、本研究が静岡県内のデータを用いているために、地域特性の異なる他県に外挿できない可能性があることなどを限界点として挙げた上で、「2型糖尿病患者に対して新たに薬物療法を開始する場合、BG薬による脳・心血管イベントや死亡および糖尿病に特異的な合併症の長期的な抑制効果はDPP-4iと同程度であり、糖尿病治療薬剤コストは有意に低いと考えられる」と総括している。

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セマグルチドがタバコ使用障害リスクを下げる可能性

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドが処方されている患者は、タバコ使用障害(tobacco use disorder;TUD)関連の受療行動が、他の糖尿病用薬が処方されている患者よりも少ないという研究結果が、「Annals of Internal Medicine」に7月30日掲載された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部のWilliam Wang氏らが報告した。 2型糖尿病または肥満の治療のためにセマグルチドが処方されている患者で喫煙欲求が低下したとの報告があり、同薬のTUDに対する潜在的なメリットへの関心が高まっている。これを背景としてWang氏らは、米国における2017年12月~2023年3月の医療データベースを用いたエミュレーションターゲット研究を実施した。エミュレーションターゲット研究は、リアルワールドデータを用いて実際の臨床試験をエミュレート(模倣)する研究手法で、観察研究でありながら介入効果を予測し得る。 本研究では、血糖管理目的でセマグルチドと他の7種類の血糖降下薬(インスリン、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬、およびセマグルチド以外のGLP-1RA)が新規に処方された患者群での7件の比較対象試験を模倣した。12カ月間の追跡中にTUD関連の受療行動(TUD診断のための受診、禁煙補助薬の処方、禁煙カウンセリングの実施)を、Cox比例ハザードモデルとカプランマイヤー法により解析した。データセットに含まれる患者数は22万2,942人で、このうちセマグルチドが新規処方されていたのは5,967人だった。 解析の結果、セマグルチドは他の糖尿病用薬と比較してTUD診断のための受診が有意に少なく、特にインスリンとの比較において最も差が大きかった(ハザード比〔HR〕0.68〔95%信頼区間0.63~0.74〕)。一方、セマグルチド以外のGLP-1RAとの比較では最も差が小さかったが、統計学的に有意だった(HR0.88〔同0.81~0.96〕)。また、セマグルチドは禁煙補助薬の処方および禁煙カウンセリングの実施件数の低下とも関連していた。肥満の診断の有無で層別化した場合、いずれにおいても同様の関連が示された。なお、7件の比較対象試験の多くで、処方開始から30日以内にこれらの発生率の乖離が認められた。 著者らは本研究の限界点として、出版バイアスや残余交絡の存在、およびBMIや喫煙行動、薬剤使用コンプライアンスに関する情報が欠如していることを挙げている。その上で、「新たにセマグルチドが処方された患者は、セマグルチド以外のGLP-1RAを含む他の糖尿病用薬が新規処方された患者と比較して、TUD関連の受療行動が少ないことが示された。 これは、セマグルチドが禁煙に有益であるとする仮説と一致した結果と言えるかもしれないが、研究手法の限界により確固たる結論には至らず、臨床医が禁煙を目的としてセマグルチドを適応外使用することを正当化するものではない」と総括。また同薬によるTUD治療の可能性を評価するための臨床試験の必要性を指摘している。

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