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1.

(シタグリプチンと比べて)チルゼパチドでMACEリスク32%低減(解説:小川大輔氏)

 GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬には、主要心血管イベント(MACE:心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中)のリスクを抑制する効果が認められている。ただ、実際にどの程度抑制する効果が認められるかは明らかではない。最近、GIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドの実臨床における心血管イベント抑制効果を検討した研究結果が報告された1)。 この研究は米国の保険請求データベースを用いて、心筋梗塞や脳卒中などアテローム動脈硬化性心血管疾患の既往のある2型糖尿病のデータを解析したコホート研究である。標準治療にチルゼパチドの投与を開始した群と、その対照としてDPP-4阻害薬のシタグリプチンの投与を開始した群の合計5万2,971例の解析が行われ、チルゼパチド投与群はシタグリプチン投与群と比較してMACEの発生を32%抑制したという結果であった。 MACEの個別の構成要素の解析において、チルゼパチド群で虚血性脳卒中のリスク低下は認めず、心筋梗塞のリスク低下が全体を牽引していた点は興味深い。しかし、チルゼパチドがシタグリプチンと比べて心血管イベントの発症を抑制したという内容は、それ自体とくに驚きはない。従来DPP-4阻害薬には心保護効果は認められず、GLP-1受容体作動薬には認められることが知られており、GIP/GLP-1受容体作動薬で認められても違和感はない。 ちょうど1年前にチルゼパチドのMACE抑制効果をGLP-1受容体作動薬のデュラグルチドと比較した試験(SURPASS-CVOT試験)の結果が欧州糖尿病学会で発表され、その後NEJM誌に掲載2)、ジャーナル四天王でも取り上げられた3)。結論はチルゼパチドのデュラグルチドに対する非劣性が認められたが、優越性は認められなかったというものであった。このSURPASS-CVOT試験は30ヵ国640施設で行われた無作為化二重盲検実薬対照試験であり、今回の米国の保険請求データベースを用いる試験とはまったく異なるデザインである。今回の試験でチルゼパチドの対照薬がDPP-4阻害薬のシタグリプチンに選定されているが、SURPASS-CVOT試験ではGLP-1受容体作動薬のデュラグルチドに対する優越性を認めなかったので、個人的にはデュラグルチドやセマグルチドと比較して優越性があるかどうかのほうに興味がある。データはあるはずなので再調査してほしいものだ。

2.

GLP-1RA使用は脱毛を起こす可能性があるが、非瘢痕性で可逆的であるため、丁寧な説明をすることで患者さんの不安解消への配慮を忘れないでほしい(解説:島田俊夫氏)

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、2型糖尿病治療において体重減少・心血管保護効果を含む多面的な利点を有し、近年その使用が急速に拡大している。一方で、これら薬剤の導入後に脱毛を訴える症例が散見され、FDAも2023年以降、安全性シグナルとして評価を開始している1)。本稿では、BMJ誌2026年7月22日号に報告された大規模ターゲットトライアル・エミュレーション研究の結果2)を踏まえ、一般内科医が臨床で留意すべきポイントを整理する。 Penn Medicineの電子カルテデータ(2019~24年)を用いた本研究では、GLP-1RA新規使用者1万2,004例を対象に、SGLT2阻害薬1万5,221例およびDPP-4阻害薬1万1,233例との比較が行われた。主要アウトカムは新規発症の脱毛(ICD-10コード)であり、安定化逆確率重み付け(sIPTW)により背景因子を調整したうえでハザード比(HR)が推定された。 結果として、GLP-1RA使用は脱毛リスクの上昇と有意に関連していた。SGLT2阻害薬との比較ではHR:1.37(95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)、DPP-4阻害薬との比較ではHR:1.68(95%CI:1.28~2.20)と、いずれも有意な増加を示した。さらにサブ解析では、この関連は非瘢痕性脱毛(telogen effluviumを含む)に特異的であり、SGLT2阻害薬比較でHR:1.53、DPP-4阻害薬比較でHR:1.72と、より明瞭なリスク上昇が確認された。一方、瘢痕性脱毛(cicatricial alopecia)では有意差は認められず、炎症性・破壊性の脱毛症を誘発する可能性は低いと考えられる。 GLP-1RAによる急速な体重減少や栄養摂取量の変化は、telogen effluviumの既知の誘因であり、本研究結果と整合的である。とくにセマグルチドやチルゼパチドなど、強力な減量効果を持つ薬剤では、体重減少速度が速い症例ほど脱毛を訴える可能性が高い。絶対リスクは低いものの、脱毛は患者の心への影響が大きく、治療継続に影響する場合もあるため、薬剤選択時のshared decision-makingにおいて忘れず説明すべき副作用の1つといえる。 臨床的には、GLP-1RA開始後の急激な体重減少を避けるため、栄養状態の維持(とくに蛋白摂取)を指導し、脱毛が生じた場合には非瘢痕性で多くが可逆的であることを説明することが重要である。心血管・腎保護効果などGLP-1RAの利点は大きく、本副作用は治療中止を要するものではないが、患者の不安軽減のため事前説明が望ましい。

3.

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。高齢糖尿病患者へのSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の使用で違いはあるか 研究グループは、わが国のレセプトデータと健康診断データを連結し、標的試験エミュレーションを実施。SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を新たに開始した75歳以上の2型糖尿病患者を対象に、死亡、心血管および腎臓の転帰について、1ヵ月の導入期間を設けたうえで、逆確率重み付け法を用いてITT(治療意図)解析による効果を推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究では8,486例(SGLT2阻害薬群2,204例、DPP-4阻害薬群6,282例)が解析された。・1ヵ月の導入後、SGLT2阻害薬群では全死因死亡リスクの低下(ハザード比[HR]:0.677、95%信頼区間[CI]:0.500~0.916)および末期腎不全または透析導入リスクの低下(HR:0.374、95%CI:0.157~0.890)に関連していた。・ITT解析において、心不全による入院(HR:1.103、95%CI:0.854~1.426)や心筋梗塞(HR:1.015、95%CI:0.768~1.341)については、明確な差は認められなかった。・脳卒中の発生頻度はSGLT2阻害薬群で高かった(HR:1.420、95%CI:1.165~1.828)が、この結果の解釈には慎重な検討が必要である。 以上の結果から研究グループは、「75歳以上の2型糖尿病患者においては、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。観察された脳卒中リスクの上昇については、残存交絡因子、競合する死亡要因、および脆弱な高齢者における異質性がこの傾向に寄与している可能性があるため、慎重な解釈が必要」と結論付けている。

4.

GLP-1薬は骨折リスクを上げる?下げる?

 GLP-1受容体作動薬(以下「GLP-1薬」)の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、2型糖尿病患者における脆弱性骨折リスクの低下と関連することが、米国・カリフォルニア大学のChristopher D. Hamad氏らの研究で示された。一方、GLP-1薬開始群と非開始群を比較した糖尿病の有無別の感度分析では、非2型糖尿病患者においてGLP-1薬使用は骨折リスク増加と関連していた。JAMA Network Open誌オンライン版2026年7月24日号掲載の報告。 これまでの研究では、BMIと脆弱性骨折リスクとの間にはU字型の関連があり、低体重や肥満では骨折リスクが高くなること、急速または大幅な体重減少でも骨折リスクが高くなることが報告されている。GLP-1薬は臨床試験で有意な体重減少をもたらしているため、骨への影響が懸念されているものの、その影響については十分なエビデンスが得られていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬開始と脆弱性骨折リスクとの関連について、DPP-4阻害薬開始を比較対照として検討する標的試験エミュレーションを実施した。 米国の電子カルテデータベースTriNetXを用いて、2015年1月1日~2022年12月31日に新たにGLP-1薬またはDPP-4阻害薬を開始した50~90歳の2型糖尿病患者を対象とした。患者は骨折、死亡、365日を超える医療受診の中断、または3年間の追跡終了まで追跡された。主要評価項目は、立位からの転倒など低エネルギー外傷による脆弱性骨折の発生とした。糖尿病の有無による違いを検討するため、GLP-1薬開始群と非開始群を比較する感度分析を実施したほか、BMIおよびHbA1cの変化が骨折リスクとの関連を媒介するかどうかについても解析した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、13万3,606例(各群6万6,803例)の患者が解析に含まれた。GLP-1薬開始群およびDPP-4阻害薬開始群の平均年齢は63.2歳vs.63.8歳、男性が52.7%vs.54.0%、平均BMIは33.0 vs.32.9、平均HbA1cは8.48 vs.8.40であった。・3年間の追跡調査期間中、GLP-1薬開始群2,030例とDPP-4阻害薬開始群2,484例に脆弱性骨折が発生した。・GLP-1薬の開始は、DPP-4阻害薬の開始と比較して脆弱性骨折リスクの低下と関連していた。 -ハザード比(HR):0.79(95%信頼区間[CI]:0.76~0.83) -絶対リスク減少:0.79%(95%CI:0.60~0.99) -治療必要数:126(95%CI:101~168)・骨折リスク低下との関連は1年目と2年目で有意に認められたが、3年目には有意ではなくなった。 -1年目 HR:0.72(95%CI:0.67~0.78) -2年目 HR:0.77(95%CI:0.71~0.83) -3年目 HR:0.94(95%CI:0.86~1.02)・骨折リスク低下との関連は年齢、性別、フレイルの程度にかかわらず一貫して認められた。最も大きなリスク低下は、椎骨骨折および股関節・大腿骨骨折であった。・媒介分析では、GLP-1薬使用による骨折リスク低下の大部分は、BMIやHbA1cの低下を介さない直接効果によることが示唆された(HR:0.81[95%CI:0.76~0.86])。・糖尿病の有無別にGLP-1薬開始群と非開始群を比較した感度分析では、GLP-1薬使用は2型糖尿病患者では骨折リスク低下と関連した一方、非2型糖尿病患者では骨折リスク増加と関連していた(交互作用のp<0.001)。 -2型糖尿病患者 HR:0.91(95%CI:0.88~0.95) -非2型糖尿病患者 HR:1.13(95%CI:1.04~1.23) これらの結果より、研究グループは「2型糖尿病患者へのGLP-1薬の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、BMIおよびHbA1cの変化では説明されない形で3年間の脆弱性骨折リスク低下と関連していた。因果関係を確立し、骨への長期的な影響を明らかにするためには前向き研究が必要である」とまとめた。

5.

GLP-1受容体作動薬、脱毛症リスクは高いか/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の潜在的な有害作用として、脱毛(脱毛症)が市販後調査により報告されている。米国・ペンシルベニア大学のHuilin Tang氏らは、2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と比較して、臨床的に記録された脱毛症、とくに非瘢痕性脱毛症のリスク上昇と関連することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月22日号に掲載された。脱毛症リスクを標的試験エミュレーションで評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の脱毛症リスクを評価する目的で標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 データの収集には、ペンシルベニア大学健康システム(Penn Medicine)の電子健康記録を用いた。対象は、年齢18歳以上、2019年1月~2024年9月に新たにGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の投与を開始した2型糖尿病患者であった。 主要評価項目は、新規発症の脱毛症およびその亜型とした。sIPTW調整後の発生率が高い GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の比較では、それぞれ1万2,004例(平均年齢58.1歳、女性55.5%)および1万5,221例(平均年齢64.5歳、女性38.1%)の新規投与開始例を、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の比較では、それぞれ1万1,964例(平均年齢58.0歳、女性55.5%)および1万1,233例(平均年齢66.9歳、女性48.1%)を登録した。 安定化逆確率重み付け(sIPTW)で調整後の脱毛症の発生率は、SGLT2阻害薬群(平均追跡期間2.36年)が5.04/1,000人年であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.39年)は6.91/1,000人年と高い値を示した(ハザード比[HR]:1.37、95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)。 同様に、DPP-4阻害薬群(平均追跡期間2.95年)のsIPTW調整後の脱毛症発生率が3.89/1,000人年であったのに比べ、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.91年)は6.53/1,000人年であり、より高率だった(HR:1.68、95%CI:1.28~2.20)。円形・アンドロゲン性などとの関連はない 脱毛症の亜型別の解析では、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性は非瘢痕性脱毛症に特有のものだった。SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群と比較したGLP-1受容体作動薬群における非瘢痕性脱毛症のハザード比は、それぞれ1.53(95%CI:1.18~1.97)および1.72(95%CI:1.28~2.31)であった。一方、GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群に比べ、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、瘢痕性脱毛症の発生率が高かったが、いずれも有意な関連は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、GLP-1受容体作動薬による治療を検討する際の共有意思決定に役立つ可能性があり、今後の研究において皮膚科関連アウトカムの評価をさらに進める必要性を強調するものである」としている。 また、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性の基盤となる最も可能性の高いメカニズムとして、治療による体重減少およびカロリー摂取量の減少を挙げ、「これが生理的ストレスや微量栄養素(鉄、亜鉛、ビオチンなど)の欠乏を招き、毛髪の成長サイクルを乱す可能性がある」とし、「すなわち、脱毛は薬剤の直接的な作用というよりは、代謝性変化による下流の影響を反映している可能性が示唆される」と指摘する。 さらに、「最も頻度の高い亜型である非瘢痕性脱毛症は、急速な体重減少と関連することが多く、通常は可逆的である。この事実は、患者を安心させ、治療継続を支援する一助となりうる」と指摘している。

6.

GLP-1受容体作動薬、肥満関連がんの進行を抑制か

 新たな研究により、GLP-1受容体作動薬が一部の肥満関連がんの転移進行リスクを抑制する可能性が示された。GLP-1受容体作動薬はもともと糖尿病治療薬として開発されたが、現在は肥満症や心血管疾患の治療にも広く用いられている。米Taussig Cancer InstituteのMark David Orland氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2026、5月29~6月2日、米シカゴ)で発表された。 米フォックス・チェイスがんセンターで支持療法腫瘍学・緩和ケアプログラム責任者を務めるMarcin Chwistek氏は、「GLP-1受容体作動薬は、これまでも単なる血糖降下薬ではなかった。その抗炎症作用および免疫調節作用から、以前より幅広い作用を持つことが示唆されている」と述べている。 今回の研究でOrland氏らは、TriNetXの国際的なリアルワールドデータネットワークを用いて、ステージ1~3のがんの診断を受け、診断後にGLP-1受容体作動薬による治療を開始した1万225人の健康データを解析した。対象としたがんは、乳がん、前立腺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、大腸がん、肝細胞がん、腎細胞がん、膵臓がんの7種類とした。これらの患者と社会人口統計学的特徴やBMI、血糖関連因子などを一致させた、診断後にDPP-4阻害薬による治療を開始した患者を対照とし、ステージ4(転移がん)への進行リスクを比較した。 その結果、GLP-1受容体作動薬群では7種類中6種類のがんで転移がんへの進行リスクの低下が認められ、うち4種類(NSCLC、乳がん、大腸がん、肝細胞がん)での低下は統計学的に有意であった。進行リスクは、NSCLCで50%、乳がんで43%、大腸がんで31%、肝細胞がんで38%の低下であった。GLP-1受容体作動薬群において、新たな安全性シグナルや有害事象の増加は認められなかった。さらに、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の遺伝子データを解析して、GLP-1受容体の発現と全生存期間との関連を検討した。その結果、腫瘍でのGLP-1受容体の発現が高い患者では、死亡リスクが33%低いことが示された。がん種ごとに検討すると、特に乳がんでのリスク低下は45%と顕著であった。 Orland氏らは、これらの結果は、GLP-1受容体作動薬の抗炎症作用および免疫調節作用により説明される可能性があるとしている。また、本研究は観察研究であり、因果関係を証明するものではないとして慎重な解釈を求める一方で、「将来、臨床試験を実施する上で十分な根拠となる有望な結果だ」との見方も示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

7.

中等度~重度肥満者、週1回GLP-1/グルカゴン二重作動薬mazdutideの減量効果/JAMA

 中等度~重度の肥満を有する中国人成人において、GLP-1/グルカゴン受容体二重作動薬mazdutideの9mg週1回60週間皮下投与により、プラセボと比較して消化器系の有害事象が多かったものの、臨床的に意義のある体重減少が認められたことを、中国・Peking University People’s HospitalのLeili Gao氏らが、同国の27施設で実施した第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「GLORY-2試験」の結果で報告した。肥満は世界的な問題であり、中国においても公衆衛生上の大きな課題となっていた。JAMA誌オンライン版2026年6月7日号掲載の報告。2型糖尿病不問の肥満成人対象に、mazdutide 9mgの有効性と安全性をプラセボと比較 GLORY-2試験の対象は、BMI値30以上で、食事療法および運動療法のみによる減量に少なくとも1回失敗し(自己申告)、スクリーニング前3ヵ月間の体重が安定している(自己申告で変動が5%以下)、18歳以上の成人であった。 スクリーニングの3ヵ月以上前に2型糖尿病と診断され、スクリーニング時にHbA1cが7.0~10.0%、空腹時血糖値が11.1mmol/L以下で、スクリーニング前2ヵ月以上食事療法と運動療法のみ、または最大3種類の経口糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬およびDPP-4阻害薬を除く)の安定用量で治療を受けていた場合は、組み入れ可能とした。 研究グループは、適格被験者をmazdutide 9mg群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、食事療法(低カロリー食)および運動療法(150分/週の中強度の運動)の順守に加えて、それぞれ週1回60週間皮下投与した。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから60週時までの体重の変化率、5%以上体重減少を達成した被験者の割合であった。 有効性および安全性の解析は、主要解析集団(試験薬を少なくとも1回投与された、すべての無作為化された被験者)を対象とし、有効性のエンドポイントは、治療レジメン推定(治療順守不問で60週時におけるプラセボに対するmazdutideの平均治療効果を表す)、および有効性推定(試験薬投与を60週間完了した場合のプラセボに対するmazdutideの平均治療効果を表す)の2つの解析が行われた。60週時の体重変化率はmazdutide 9mg群-16.65%、プラセボ群-1.50% 2023年12月~2024年6月に593例がスクリーニングを受け、うち462例が登録・無作為化され、主要解析対象集団には試験薬を投与された461例(mazdutide群307例、プラセボ群154例)が組み入れられた。 461例の背景は、女性295例(64.0%)、平均年齢33.9歳(SD 8.4)、平均体重94.0kg(SD 13.8)、平均BMI値34.3(SD 3.2)で、74例(16.1%)が2型糖尿病を有しており、399例(86.6%)は2型糖尿病以外の体重関連合併症を1つ以上有する被験者であった。 ベースラインから60週時の体重の平均変化率は、治療レジメン推定値でmazdutide群-16.65%(95%信頼区間[CI]:-18.19~-15.12)、プラセボ群-1.50%(95%CI:-3.43~0.43)であり、群間差は-15.15%(95%CI:-17.22~-13.09、p<0.001)であった。 5%以上体重減少を達成した被験者の割合は、治療レジメン推定値でmazdutide群84.3%(95%CI:80.0~88.5)、プラセボ群33.1%(95%CI:25.5~40.6)であり、群間差は51.6%(95%CI:43.0~60.1、p<0.001)であった。 両主要エンドポイントの有効性推定値は、治療レジメン推定値と類似していた。 有害事象はmazdutide群で98.7%、プラセボ群で93.5%に発生した。主な試験治療下における有害事象は、嘔吐(mazdutide群53.1%、プラセボ群1.3%)、悪心(同46.9%、3.2%)、下痢(同39.4%、6.5%)で、ほとんどは軽度~中等度であった。試験中止に至った有害事象は、mazdutide群で2.9%に認められたが、プラセボ群では報告されなかった。

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高齢の糖尿病を有する人の薬物治療の限界はどこか/日本糖尿病学会

 第69回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病本態だけでなく、心血管障害や認知障害、運動器障害などさまざまな疾患を併存しているケースが多く、治療薬の選択やアドヒアランスのフォローなど考慮することが多岐にわたる。実臨床ではどのように診療を進めるべきであろうか。そこで本稿では、シンポジウム34「超高齢時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか」(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同シンポジウム)より清野 祐介氏(藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学/関西電力医学研究所糖尿病研究センター)の「超高齢2型糖尿病の至適な薬物治療の限界」の講演概要をお届けする。治療薬の工夫が重要な高齢の糖尿病を有する人 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病は高血糖、低血糖、フレイル、サルコペニア、認知機能低下の危険因子となる。また、加齢による肝機能、腎機能の低下がみられることから治療薬の選択では、バランス調整が必要になる。『糖尿病治療ガイド2024』(編集:日本糖尿病学会)では、高齢の糖尿病を有する人の治療の留意点を示しており、「低血糖を避けながら、高血糖をおだやかに是正することが必要」としている。また、糖尿病合併症や他の疾患との併存が多く、服薬数が多くなるのも特徴である。 このような多剤併用はアドヒアランスの低下を来し、高血糖や重症低血糖など致死的なリスクが高くなる。そのために服薬回数の減少や服薬タイミングの統一、一包化、配合薬の選択などが行われているが、緊急時の対応への準備も必要となる。日本糖尿病学会と日本老年医学会が共同制作した『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』(編集:日本老年医学会)では、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が示されており、3つのカテゴリー別と重症低血糖が危惧される薬剤(インスリンやスルホニル尿素薬[SU薬]など)の使用の有無で、HbA1cの目標値と下限値が示されている。現段階で、超高齢の糖尿病を有する人にこのHbA1cの目標値があてはまるかどうかは不明である。よく理解しておきたい糖尿病治療薬の高齢の患者への影響 糖尿病の治療において、体重を減らすことは、インスリン感受性や糖代謝を改善するのに効果的とされているが、高齢の糖尿病を有する人では、筋肉量や骨量の低下があり、配慮する必要があるとされる。また、高齢の糖尿病を有する人に糖尿病治療薬を使用する際の懸念点としては、たとえばα-グルコシダーゼ阻害薬では服用回数が多い、SGLT2阻害薬では体重減少、チアゾリジン薬では心不全の増悪や女性では骨折リスクの増加、ビグアナイド薬では腎機能低下時に乳酸アシドーシスのリスクの出現、GLP-1受容体作動薬では体重減少、SU薬やグリニド薬では単独で低血糖のリスクが高くなるなどが挙げられる。そのほか、高齢の糖尿病を有する人に頻用されているDPP-4阻害薬では、演者の経験としては便秘など消化器症状の頻度も高く、重症例では腸閉塞を来す例もみられたという。とくに高齢の糖尿病を有する人は、在宅で診療をされている患者が多く、主治医が適切なタイミングでこうしたリスクを防ぐことができるか課題であると指摘する。高齢の糖尿病を有する人にはSU薬とDPP-4阻害薬の使用が多い 糖尿病治療薬の使用などについて、清野氏らが行った多施設共同研究の一端に触れた。この研究では、65歳以上の糖尿病、慢性腎疾患、そのいずれかまたは両方の疾患の患者を対象としたもので、参加施設は糖尿病、腎臓病の専門医を中心とした多職種連携が行われている施設。参加者は1,355例で、65~74歳は767例、75~84歳が523例、85歳以上が65例。これらの参加者のBMI、骨格筋量(SMI)、HbA1c、eGFRなどの数値を計測した。 その結果、85歳を区切りとしてみると、85歳以上では握力、筋力が65~84歳群との比較で顕著に低下していた。使用されている治療薬について85歳以上では体重減少に働くようなSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使用頻度が低くなっていた。また、乳酸アシドーシスのリスクからビグアナイド薬、心不全のリスクからチアゾリジン薬の使用頻度も低い一方で、SU薬とDPP-4阻害薬は高頻度で使用されていた。また、予想に反してグリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用が多く、その理由として「参加者の自己管理能力が高かったことが推定される」と述べた。 本研究では、糖尿病診療支援が整った医療施設で食事療法も薬物療法もしっかりでき、通院や歩行にも問題がない参加者を対象としていることから、このような結果につながったと推察している。しかし、実臨床の現場では、通院ができずに糖尿病非専門医による在宅医療を受けているケースが多く、治療薬剤の選択、血糖マネジメントの目標をどこにおくのかなど糖尿病学会の推奨があまり知られていないこと、あるいは超高齢の糖尿病を有する人の治療に関するガイドラインがないことが現状の問題点となっていると述べた。さらに90歳以上の2型糖尿病を有する人を対象とした大規模臨床試験は皆無であり、複雑な背景をもつ症例への的確なアプローチをいかに構築するかが課題であると指摘した。高齢の糖尿病を有する人の治療最適化には多職種・在宅医療連携が重要 高齢の糖尿病を有する人の症例を1つ挙げ、介護施設などでの診療の難しさを説明した。症例は施設入所している91歳女性(要介護3)で認知症があり、車いすを使用、BMIは15.7でやせ型。インフルエンザで突然の意識障害があり、救急搬送された。来院時の血糖値は35mg/dLで急性低血糖にてブドウ糖静脈投与で意識回復をした。普段は、DPP-4阻害薬と少量のSU薬を服用している。腎機能は保たれているがHbA1cは5.4%であり、高齢者にとっては過度な管理で、低血糖のリスクが予想される症例だったという。日常から糖尿病をきちんと診療できる環境ではないことが予想され、治療目標、とくに下限目標の情報が診療する人、介護する人にきちんと行き届いていないのではないかと警鐘を鳴らす。また、在宅医療など超高齢糖尿病を有する人の診療現場では糖尿病専門医が予想していないような治療上の悩みも多々見受けられる。そこで、日本糖尿病協会(JADEC)では、「JADEC在宅医療・介護支援Q&A集」を作成するとともに、在宅・介護の診療現場からの質問を募っている。清野氏は、今後、こうした診療現場の情報を集積し、在宅・介護の診療現場用のJADECカードシステムによる糖尿病支援ツールセットを作成していく必要があると提言を行った。 高齢の糖尿病を有する人の治療では、『高齢者糖尿病診療ガイドライン』があるものの、90歳以上の超高齢者を対象としたエビデンスは乏しい。実臨床では認知機能、ADL、介護力が治療を規定するが、高齢者では厳格な血糖管理より低血糖回避と何よりも患者の生活維持が重要だと考える。 おわりに清野氏は、「今後の高齢の糖尿病を有する人の診療では、患者の体重や握力測定など定期的な確認も大切であり、治療の最適化には多職種・在宅医療連携が重要になる」と語り、講演を終えた。

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食直前投与が困難な血糖スパイクの患者、薬物動態から最適なα-GIを選択【うまくいく!処方提案プラクティス】第73回

 今回は、施設在住の高齢糖尿病患者の血糖スパイクに介入した事例を紹介します。担当医からα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)追加の方針が示されたものの、施設では食直前投与が困難という制約があり、薬物動態の観点から最適な薬剤を提案しました。施設や在宅の現場では、薬効だけでなく、その患者の生活環境で本当に飲み続けられるかを考えることが処方提案の出発点になります。患者情報90歳、男性(施設入居中)基礎疾患2型糖尿病(2021年~)、高血圧症、便秘症、心房中隔瘤、前立腺肥大症(2023年~)既往歴尿路感染症による入院ADLほぼ自立認知機能問題なし服薬管理施設職員が管理(キーパーソンは妹)介入時の検査値HbA1c 7.1%薬学的管理開始時の処方内容1.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.テルミサルタン・アムロジピン配合錠AP 1錠 分1 朝食後3.シロスタゾールOD錠50mg 2錠 分2 朝・夕食後4.ルビプロストンカプセル24μg 2カプセル 分2 朝・夕食後5.イメグリミン錠500mg 2錠 分2 朝・夕食後6.デュタステリドカプセル0.5mg 1カプセル 分1 朝食後7.ミラベグロン錠25mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイント本患者は尿路感染症で入院し、その際に糖尿病の管理方針が変更となりました。それまで服用していたSGLT2阻害薬が休薬となり、DPP-4阻害薬(リナグリプチン)単剤に切り替えられた状態で施設に入居しました。退院時の血糖コントロールは空腹時90~130mg/dL、食後180mg/dL前後とおおむね良好でしたが、施設入居後のモニタリングで食後血糖が313mg/dLに達する血糖スパイクが確認されました。心房中隔瘤を有し、心血管リスクも考慮が必要な患者であることから、食後高血糖の是正は重要な課題となりました。施設では食直前投与が困難担当医よりα-GI追加の意向が示され、候補としてボグリボースが挙がりました。しかし、ここで問題となったのが施設の服薬管理の制約です。施設では食事直前に薬を渡すことが難しく、食直前投与の薬剤の追加には現実的な壁がありました。ボグリボースやアカルボースは、食物とともに腸内に存在して初めて二糖類の消化・吸収を阻害するため、食直前投与が必須とされています1)。食後に投与した場合は消化・吸収が先行してしまい、治療効果が著しく減弱します。つまり、もし食後投与になってしまうと、処方は出たが効かないという状況になりかねません。この問題を解決するために、私はα-GIの中でも薬物動態が異なるミグリトールに着目しました。ミグリトールは他のα-GIとは異なり、小腸上皮に直接吸収されてα-グルコシダーゼを阻害する機序をもちます2)。この特性により、食後投与でもAUCは食前投与と同等であることが報告されており3)、施設の制約下でも十分な効果が期待できると判断しました。他の合併症との相性さらにもう1つのポイントとして、患者の合併症との相性がありました。患者はルビプロストンを服用している便秘症の患者です。ミグリトールは他のα-GIと比較して便秘よりも下痢を来しやすい特性があります2)。便秘傾向のある患者においては、この副作用プロファイルがむしろ適していると考えられました。医師への提案と経過担当医に対して、以下の内容をメディカルケアステーション(ICT)にて情報提供しました。【現状報告】施設の服薬管理上、食直前投与が困難な環境である。ボグリボースやアカルボースは食直前投与が必須であり、食後投与では効果が減弱する。【懸念事項】食直前投与が守られない場合、α-GI本来の食後血糖抑制効果が得られず、血糖スパイクの改善につながらない可能性がある。【提案内容】食後投与でも効果が保持されるミグリトール錠50mg 2錠 分2 朝夕食後への変更(超高齢、腎機能低下を考慮して2錠朝夕食後に減じる設計としました)。消化器副作用プロファイルが便秘症の患者に適している。担当医より提案が採用され、ミグリトール錠50mg 2錠 分2 朝夕食後に変更となりました。施設スタッフには食後投与のタイミングと、腹部膨満感や排便状況の悪化(下痢)の観察ポイントについて情報共有を行いました。ミグリトール開始1ヵ月後より食後血糖は200mg/dL前後へと改善傾向を示しました。2ヵ月の管理期間を通じて低血糖・消化器症状の著明な増悪は認められず、HbA1cは6.8と改善傾向で推移しました。施設での服薬管理上の問題も生じず、アドヒアランスは良好に維持されました。考察:この事例から学んだこと処方提案においては、何を提案するかと同じくらいその患者の環境で本当に実行できるかどうかが重要となります。薬効・薬物動態・患者背景・生活環境を掛け合わせて考える視点が、施設や在宅の現場ではとくに求められます。今回の症例は、薬剤師ならではの視点が患者のアドヒアランスと治療効果の両立につながった一例です。 1) 日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂;2024. 2) ミグリトール錠50mg「BMD」インタビューフォーム 3) Ito H, et al. J Diabetes Investig. 2014;5:165-170.

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透析患者でもGLP-1薬開始で心血管イベント・死亡リスク低下と関連

 維持透析を受けている腎不全の2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の新規使用は、他の一般的な血糖降下薬と比較して心血管イベントおよび全死因死亡のリスク低下と関連していたことを、米国・Duke University School of MedicineのBenjamin Catanese氏らが示した。Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年3月12日号掲載の報告。 GLP-1薬は、透析を必要としない慢性腎臓病患者において心血管イベントリスクを低減することが報告されている。しかし、透析に至った腎不全患者におけるGLP-1薬の有益性は依然として不明であり、腎不全患者の心血管アウトカムを改善する治療選択肢は限られている。そこで研究グループは、腎不全と2型糖尿病を併発している患者を対象に、GLP-1薬または他の血糖降下薬を新たに使用開始した場合の心血管アウトカムを比較する観察研究を実施した。 電子カルテ、メディケア請求データ、米国腎臓データシステム(United States Renal Data System、2011~21年)を用いて、維持透析中の2型糖尿病患者におけるGLP-1薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬(SU薬)の新規使用者を特定した。主要解析では61の共変量を用いた傾向スコアマッチングにより、GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者を1対1で比較した。副次解析として、GLP-1薬とSU薬の開始者についても同様に比較した。 主要アウトカムは全死因死亡を含む修正主要心血管イベント(MACE)で、副次アウトカムには主要アウトカムの個々の構成要素と心不全による入院が含まれた。原因別Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・新規使用者は、GLP-1薬3,629例、DPP-4阻害薬2万1,369例、SU薬3万2,296例で、最大2年間追跡された。・GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者3,284組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACE、全死因死亡、心不全による入院のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.87(95%CI:0.78~0.97) 全死因死亡 HR:0.83(95%CI:0.74~0.94) 心不全による入院 HR:0.90(95%CI:0.83~0.99)・GLP-1薬とSU薬の開始者2,792組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACEおよび全死因死亡のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.83(95%CI:0.74~0.93) 全死因死亡 HR:0.80(95%CI:0.69~0.91)

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日本のインスリン治療、非インスリン薬併用が20年で2倍に

 日本におけるインスリン療法の実態とその変遷を解析した大規模リアルワールド研究「Insulin JP2DB Study」の結果が報告された。日本では近年、インスリンと非インスリン薬の併用が増加している。本研究では、その割合が約20年間で大きく増加していることが示された。京都府立医科大学の福井 道明氏らによる本研究はDiabetes Therapy誌オンライン版2026年1月27日号に掲載された。 日本の医療データベース(JP2DB)を用いて、インスリン治療の導入パターンおよび併用薬の使用動向を後ろ向きに解析した。解析は、年次ごとの治療動向を評価する「連続横断解析」と、インスリン導入後の治療法の推移を追跡(2型糖尿病は9ヵ月、1型糖尿病は21ヵ月)した「縦断コホート解析」の2つのデザインで実施された。 インスリン治療法は、bolus(追加インスリン)、basal(基礎インスリン)、premixed(混合型インスリン)、basal-bolus(強化インスリン)などに分類した。さらにDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬などの非インスリン血糖降下薬の併用状況を評価した。 主な結果は以下のとおり。・連続横断解析では、4,953例(2型糖尿病4,693例、1型糖尿病260例)が対象となった。2型糖尿病においてインスリン治療と非インスリン薬を併用する割合は、2002年の31%から2021年には61%へと倍増した。とくに2014年以降はインスリン使用者の30%以上がDPP-4阻害薬を併用した。SGLT2阻害薬の併用率は2013年の0%から2021年には20.2%に増加した。2018年以降は、1型糖尿病でも非インスリン薬併用の増加傾向が確認された。・縦断コホート解析では、2万7,492例(2型糖尿病2万7,031例、1型糖尿病461例)が対象となった。2型糖尿病では、入院中にインスリン療法を開始した患者は、導入時は追加インスリンが70.8%と高かったが、9ヵ月後には17.3%まで低下した。その代わりに基礎インスリン(6.3%→31.1%)、強化インスリン(17.0%→23.4%)が増加した。外来で開始した場合、導入時は基礎インスリンが最も多く、病院では53.9%、診療所では58.9%を占めた。・1型糖尿病患者では、入院時にインスリン療法を開始した患者の57.9%が追加インスリンを投与されたが、1ヵ月後には強化インスリンが主流(85.0%)となった。外来で開始した場合は、研究期間を通じて強化インスリンが主流であった。 著者らは「2型糖尿病では、導入環境によって治療法に違いが見られた。入院中は高血糖是正を目的に強化インスリンが行われることが多いが、時間の経過とともに退院後の外来管理を想定した治療法へ移行する傾向が示された。外来では低血糖リスクや治療負担を考慮し、初回治療は比較的簡便な基礎インスリンから開始する戦略が一般的であることが示唆された。一方、1型糖尿病では、入院導入例では約6割が追加インスリンで開始されたが、1ヵ月後には85.0%が強化インスリンへ移行していた。外来導入例でも研究期間を通じて強化インスリンが主流であり、導入環境による違いが少なかった。さらに、インスリン治療患者における非インスリン薬併用は年々増加しており、本試験は日本の糖尿病治療が多剤併用戦略へと移行していることを示す結果である」とまとめている。

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診療科別2025年下半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Antidiabetic agents and dementia risk in type 2 diabetes: A systematic review and network meta-analysisKato S et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28:256-264.<400万例以上対象のメタ解析>:糖尿病治療薬の種類と認知症リスク対象文献数67件(全408万8,683例)のネットワークメタアナリシスにて、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスク低下(オッズ比:0.69~0.86)、インスリンはリスク増加(オッズ比:1.26)と統計学的に有意に関連していました。ただし、観察研究が主体の解析なので因果関係を確定することはできません。Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of ObesityAronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:26-36.<SURMOUNT-5試験>:糖尿病のない肥満者への減量効果、チルゼパチドがセマグルチドに優れる糖尿病のない肥満者751例において、セマグルチド注(1.7mg/週または2.4mg/週)とチルゼパチド(10mg/週または15mg/週)による72週後の体重変化はそれぞれ-13.7%、-20.2%であり、チルゼパチドのほうが統計学的に有意に強度の減量効果がありました。Oral Semaglutide in an East Asian Population With Overweight or Obesity, With or Without Type 2 Diabetes: The OASIS 2 Randomized Clinical TrialKadowaki T, et al. JAMA Internal Medicine. 2025;185:1206-1217.<OASIS 2試験>:過体重または肥満の東アジア人で経口セマグルチドの体重減少効果を確認肥満関連合併症を有するBMI≧27.0の日本人・韓国人201例を対象とした68週間のRCTで、セマグルチド経口薬(50mg/日)はプラセボと比較し、統計学的に有意な体重減少効果(2群間差-13.1%ポイント)がありました。Cardiovascular Outcomes with Tirzepatide versus Dulaglutide in Type 2 DiabetesNicholls SJ, et al. N Engl J Med. 2025;393:2409-2420.<SURPASS-CVOT試験>:心血管疾患を有する肥満2型DM、MACEリスクはチルゼパチドがデュラグルチドに非劣性心血管疾患を有する肥満2型糖尿病患者1万3,165例を対象とした4年間(中央値)のRCTでチルゼパチド(最大15mg/週)とデュラグルチド(1.5mg/週)によるMACE(主要心血管イベント)リスクへの影響が検証されました。その結果、チルゼパチドはデュラグルチドと比較して非劣性でした。Parathyroidectomy and Cardiometabolic Risks in Patients With Primary HyperparathyroidismTsur N, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2544623.<原発性副甲状腺機能亢進症と心代謝リスク>:副甲状腺摘出後は2型糖尿病のみリスク低下原発性副甲状腺機能亢進症は高血圧症、2型糖尿病、心血管疾患、脳血管障害のリスク上昇(調整ハザード比:1.07~1.28)と統計学的に有意に関連していました。副甲状腺摘出後は2型糖尿病のみリスクが有意に低下する(調整ハザード比:0.56)可能性が示されました。ただし、観察研究なので効果を確定することはできません。

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認知症リスク低減効果が高い糖尿病治療薬は?~メタ解析

 糖尿病治療薬の中には、血糖値を下げるだけでなく認知機能の低下を抑える可能性が示唆されている薬剤がある一方、認知症の発症・進展は抑制しないという報告もある。今回、国立病院機構京都医療センターの加藤 さやか氏らは、システマティックレビュー・ネットワークメタアナリシスにより、9種類の糖尿病治療薬について2型糖尿病患者の認知症リスクの低減効果があるのかどうか、あるのであればどの薬剤がより効果が高いのかを解析した。その結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が認知症リスクの低減効果を示し、その効果はこの順に高い可能性が示唆された。Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2025年10月22日号に掲載(2026年1月号に掲載予定)。 本研究では、PubMed、Cochrane Library、医中誌Webを開始時から2023年12月31日まで検索し、糖尿病治療薬の認知症への効果を評価した英語または日本語で報告された試験を選定した。 主な結果は以下のとおり。・67試験(408万8,683例)が対象となり、単剤療法と対照群(糖尿病治療薬の使用なし、プラセボ)の比較が3試験、単剤療法と追加療法の比較が1試験、リアルワールドデータベース研究が63試験であった。・解析の結果、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬が、対照群(プラセボ、糖尿病治療薬の使用なし、他の糖尿病治療薬)と比較して認知症リスクが低減し、その効果はこの順で高い可能性が示唆された。・インスリンは認知症リスクの上昇と関連していた。・メトホルミン、SU薬、グリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬は、認知症リスクとの有意な関連は認められなかった。

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2型糖尿病の低血糖入院が減少傾向、その背景を紐解く

 近年、2型糖尿病患者の低血糖入院が漸減傾向であることが明らかになった―。2017年に日本糖尿病学会の糖尿病治療に関連した重症低血糖の調査委員会が調査報告1)を行ってから8年、この間に低血糖による入院が減少したのには、いったいどんな対策や社会変化が功を奏したのだろうか。今回、この研究結果を報告し、日本糖尿病学会第9回医療スタッフ優秀演題賞を受賞した社会人大学院生の影山 美穂氏(東京薬科大学薬学部 医療薬物薬学科)と指導教官の堀井 剛史氏(武蔵野大学薬学部臨床薬学センター)から研究に至った経緯や考察などを聞いた。重症低血糖の現状、患者指導の影響は? 本研究のきっかけについて、影山氏は「薬剤師として糖尿病患者への低血糖予防指導はごく当たり前のこと。だがその一方で、低血糖発症リスクの現状や日頃の患者指導の効果が不明瞭であったため、薬剤師をはじめ医療者が頑張っている患者指導の可視化を目指した」と説明した。 実際、この20年における2型糖尿病治療薬や血糖コントロール目標値の変化は著しい。たとえば、治療薬に関しては、2009年よりDPP-4阻害薬が、2014年よりSGLT2阻害薬が発売され、2021年以降はGLP-1受容体作動薬の経口薬発売や肥満症治療薬としての適応拡大などが糖尿病治療薬市場の地殻変動を起こしている。それ故、低血糖リスクが高いとされるスルホニル尿素(SU)などの処方率は減少傾向にある。血糖目標値においては、2013年の糖尿病合併症予防のための血糖コントロール目標値に関する「熊本宣言」(HbA1c 7%未満)や2017年の高齢者糖尿病ガイドライン発刊(高齢者糖尿病の目標値が患者の特徴や健康状態を考慮した目標値「7.0~8.5%未満」)、「重症低血糖への提言」が周知されてきたことで、非専門医にも血糖値を下げ過ぎるリスクへの理解が進んできている。これについて堀井氏は「高齢者糖尿病ガイドライン2)において、HbA1cの具体的数値のみならず下限値も示されたことで糖尿病専門医ではなくても、患者へリスクをわかりやすく伝えることができるようになったのではないか。さらに、2024年の診療報酬改定では糖尿病治療薬の適正使用推進の観点から“調剤後薬剤管理指導加算”が新設されたことで、薬剤師の立場からもインスリンやSU薬服用中のフォローアップが手厚くなり、重症低血糖の減少につながっている可能性がある」と推測した。 ここで補足するが、「重症低血糖」とは、“回復に他者の援助を必要とする低血糖”と定義され、70歳以上、慢性腎臓病(CKD)ステージ3~5、SU薬内服中などの特徴を有する患者で発症しやすいとされる。その発症は主要心血管イベントや認知症の発症リスク増加にも関連することから、以前より日本糖尿病学会は警鐘を鳴らし、前述の調査委員会報告でも重症低血糖で救急搬送されるのは2型糖尿病が60%を占め、1型糖尿病患者よりも多く、処方薬剤別では、インスリン使用が約60%、SU薬使用が約30%であった3)。重症低血糖の患者推移、影響度が高い因子とは そこで、治療薬や血糖目標値の変遷、薬剤師指導の教育変化による“低血糖入院患者数推移や患者像”を捉えるために、同氏らはメディカル・データ・ビジョンの2009年1月1日~2022年12月31日までの診療データベースを活用し、2型糖尿病かつ初発低血糖患者を対象とした入院加療が必要な低血糖の発症リスクや使用薬剤について調査。主要評価項目は入院を必要とする低血糖発症に関連する要因の探索で、副次評価項目は夜間・早朝低血糖入院に関する要因、救急搬送による低血糖入院に関連する要因であった。 その結果、入院加療を必要とする低血糖発症率は、2型糖尿病患者全体では0.4→0.2%、75歳以上では0.85→0.3%、75歳未満では約0.2%微減、で推移していることが明らかになった。とはいえ、とくに高齢者では長期にDo処方が継続され、SU剤を使用している患者も一定数みられる。HBA1cが悪化すると他剤併用よりSU薬の増量が検討されるケースもあるため、「薬剤師も患者の低血糖リスクを意識して対応することで、重症低血糖の回避につながるのではないか」と影山氏はコメントした。 そして、低血糖入院の約6割が75歳以上であったことや低BMI患者(18.5kg/m2未満)での発症率の高さも示唆された。これについて、同氏は「低BMI患者にはインスリン分泌能低下者が多い、糖尿病歴が長い、グルカゴンの働きが悪くなっていることなどが推測される」と述べ、「高齢により低血糖の対応を自身ができない」「糖尿病歴が長くなることで痩せが生じ、インスリン分泌能が低下する。加えてフレイルにより低血糖を来しやすい」ことなどを挙げ、低BMI・低体重の関連性を考察した。 なお、本研究にはDPCデータを活用していることから、患者を夜間入院や救急入院などで層別化をすることができたものの、研究限界として「継続性が長くない、施設が代わると患者を追えなくなる」などを示し、「入院前データがない患者は除外」などの注意を払ったと堀井氏は説明した。 最後に両氏は「将来的に低血糖入院の因果関係を統計学的に示していきたい。そして、在宅ケアを受けている患者、低血糖を訴えられないような患者まで研究対象を掘り下げて解析していきたい」と今後の展望を語った。

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DPP-4阻害薬でコントロール不十分な2型糖尿病にイメグリミン追加が有効~FAMILIAR試験

 食事療法・運動療法・DPP-4阻害薬投与で血糖コントロール不十分な成人2型糖尿病患者に対して、イメグリミンの追加により24週までにHbA1c値が有意に低下したことが、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験(FAMILIAR試験)の中間解析で示された。川崎医科大学の加来 浩平氏らがDiabetes, Obesity and Metabolism誌2025年6月号で報告した。 FAMILIAR試験は、国内21施設で実施中の二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、2022年6月22日~2023年8月1日に、推奨される食事療法と運動療法およびDPP-4阻害薬単剤療法を順守しているにもかかわらず血糖コントロールが不十分な成人2型糖尿病患者を、イメグリミン群とプラセボ群に無作為に1:1に割り付けた。24週間の二重盲検期間ではイメグリミン1,000mgまたはプラセボを1日2回経口投与、その後の80週間の非盲検期間では全例にイメグリミン1,000mgを1日2回経口投与した。主要評価項目は、24週目におけるHbA1c値のベースラインからの変化であった。ここでは24週までの中間解析(データカットオフ:2023年12月28日)の結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・117例がイメグリミン群(58例、うち65歳以上が33例)とプラセボ群(54例、うち65歳以上が31例)に無作為に割り付けられた(除外5例)。・24週目のHbA1c値の最小二乗平均のベースラインからの変化は、イメグリミン群で-0.65%(標準誤差[SE]:0.11%)、プラセボ群で0.38%(SE:0.11%)で、群間差は-1.02%(95%信頼区間[CI]:-1.33~-0.72、p<0.001)であった。65歳未満ではイメグリミン群で-0.47%(SE:0.17%)、プラセボ群で0.32%(SE:0.18%)で、群間差は-0.79%(95%CI:-1.29~-0.29、p=0.003)、65歳以上ではイメグリミン群で-0.80%(SE:0.14%)、プラセボ群で0.42%(SE:0.14%)で、群間差は-1.22%(95%CI:-1.61~-0.82、p<0.001)であった。・イメグリミン群で1例に軽度の低血糖が発現したが、安全性プロファイルは良好であった。 今回の結果から著者らは、「イメグリミンは、65歳以上の高齢者を含む、DPP-4阻害薬で十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病患者に新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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2型糖尿病治療薬、国際的持続評価システムの最新結果/BMJ

 中国・四川大学のKailei Nong氏らは、2型糖尿病治療薬の無作為化比較試験についてリビングシステマティックレビュー(living systematic review:LSR)とネットワークメタ解析(NMA)を用いて評価するシステムを開発。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、フィネレノンおよびチルゼパチドは、死亡、心血管疾患、慢性腎臓病および体重減少に関してリスク依存的に異なる有益性をもたらすが、薬剤特有の有害事象があることを明らかにした。著者は、「本評価システムは、最新のエビデンスを随時統合できるよう設計されている。エビデンスを持続的に更新する国際的なシステムとして、政策立案者、臨床医および患者の情報に基づく意思決定を支援し、研究の無駄を減らす可能性がある」と述べている。BMJ誌2025年8月14日号掲載の報告。869試験、49万3,168例のデータを解析 研究グループは、MedlineおよびEmbaseを用い、2型糖尿病治療薬を相互に、またはプラセボあるいは標準治療と比較した24週以上の無作為化並行群間比較試験について、毎月検索を実施し(本報告では2024年7月31日までの検索を対象)、頻度(frequentist)ランダム効果モデルとGRADEアプローチを用いたLSRおよびNMAを行った。 LSRとNMAは、少なくとも年2回更新。本報告のLSRとNMAには、869試験(2022年10月以降に53試験を追加)の計49万3,168例の患者が含まれ、13の薬剤クラス(63種類の薬剤)と26の重要なアウトカムに関するデータが報告された。薬剤ごとに有益性が異なり、薬剤特有の有害事象も確認 有益性は、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、およびフィネレノン(慢性腎臓病を有する患者に限る)について、心血管および腎臓へのベネフィットが確認された(エビデンスの確実性:中~高)。 体重減少に最も有効な薬剤は、チルゼパチド(平均差[MD]:-8.63kg[95%信頼区間[CI]:-9.34~-7.93]、エビデンスの確実性:中)、およびorforglipron(-7.87kg[-10.24~-5.50]、エビデンスの確実性:低)の順で、次いで他の8種類のGLP-1受容体作動薬(エビデンスの確実性:高~中)であった。 薬剤の絶対的有益性は、心血管および腎アウトカムに対するベースラインのリスクによって大きく異なっていた。リスク層別化された薬剤の絶対効果は、インタラクティブツールにまとめている。 薬剤特有の有害事象については、SGLT2阻害薬は性器感染症(オッズ比[OR]:3.29[95%CI:2.88~3.77]、エビデンスの確実性:高)、糖尿病性ケトアシドーシス(2.08[1.45~2.99]、エビデンスの確実性:高)、切断(1.27[1.01~1.61]、エビデンスの確実性:中)を、チルゼパチドとGLP-1受容体作動薬は重度胃腸障害(チルゼパチドで最もリスクが増加、OR:4.21[95%CI:1.87~9.49]、エビデンスの確実性:中)、フィネレノンは重度高カリウム血症(OR:5.92[95%CI:3.02~11.62]、エビデンスの確実性:高)を、チアゾリジン系薬剤は主要な骨粗鬆症性骨折および心不全による入院、スルホニル尿素薬とインスリンおよびDPP-4阻害薬は重度低血糖のリスクをそれぞれ増加させる可能性が示された。 神経障害や視覚障害などその他の糖尿病関連合併症に対する効果については、エビデンスの確実性が低または非常に低の結果しか得られなかった。また、関心が高い認知症に関しても、GLP-1受容体作動薬が認知症を軽減するかどうかは不確実であった(OR:0.92[95%CI:0.83~1.02]、エビデンスの確実性:低)。

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経口GLP-1受容体作動薬の進化:orforglipronがもたらす可能性と課題(解説:永井聡氏)

 GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病の注射製剤として、すでに15年以上の歴史がある。減量効果だけでなく、心血管疾患や腎予後改善のエビデンスが示されるようになり、さらに経口セマグルチド(商品名:リベルサス)の登場により使用者が増加している。しかし、本剤が臨床効果を発揮するためには、空腹かつ少量の水で服用することが必須であり、服薬条件により投与が困難な場合もあった。 今回、経口薬であり非ペプチドGLP-1製剤であるorforglipronの2型糖尿病を対象とした第III相ACHIEVE-1試験が発表された。orforglipronは、もともと中外製薬が開発した中分子化合物で、GLP-1受容体に結合すると、細胞内でG蛋白依存性シグナルを特異的に活性化する“バイアスリガンド”という、新しい機序の薬剤である。経口セマグルチドのようなペプチド医薬品と異なり、胃内で分解されにくく、吸収を助ける添加剤を必要としない。そのため、空腹時の服用や飲水制限といった条件を課さず、日常生活における服薬の自由度が格段に向上することが特徴である。 試験の結果では、血糖降下作用や減量効果は、週1回セマグルチド注射製剤と同等かやや上回るほどであった。注射製剤の受け入れや空腹での服用条件により、経口セマグルチドの投与が困難だった人にも使用が可能になるという「投与条件の容易さ」は大きなインパクトである。 orforglipronが臨床現場に与える影響は少なくない。投与方法に制限がないことにより、「GLP-1受容体作動薬は特別な治療」という印象が減り、切り替えや他剤と同時服用も可能になり、DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬と同様に、早期導入が一般的になる可能性がある。投与方法が容易であることは、治療自体のQOLの向上を意味し、セルフケア行動を促進しアウトカムをより一層改善する「好循環」を後押しする。現在でも、GLP-1受容体作動薬により減量が進んでから運動を始める人がいる。その人は「体が軽くなった」から運動する気持ちになったと言うが、本当は減量できた成功体験によって「気持ちが軽くなった」から運動できると思い始めたのである。 処方が増加しても、錠剤は一般的に注射剤より生産工程が容易で大量生産可能であり、輸送コストも低く、世界的な需要拡大にも対応が可能と考えられる(近年問題となった某GLP-1受容体作動薬関連の処方制限を思い出してほしい)。 懸念点はないだろうか。有害事象は、他のGLP-1受容体作動薬と同様、嘔気や下痢といった消化器症状が中心であるが、第III相ACHIEVE-1試験では4~8%の症例で投与中止に至っている。さらに、本剤は分子量が小さく、血液脳関門を通過し、中枢性の嘔気症状が増える可能性が指摘されているため、消化器症状のため内服できなかった人が服用できるようになるわけではないと思われる。また、新しい機序の薬剤は、中長期的な有害事象も既存のGLP-1受容体作動薬と同様なのか、良くも悪くも現時点では何とも言えない。さらに、「多くの患者に使える薬」になるということは、裏を返せば「不適切に使われるリスク」も増すということである。フレイルを伴う高齢者への投与や安価な薬剤で十分な患者でも漫然と投与される可能性がある。保険財政への影響も懸念がある。 これからの糖尿病治療において重要なのは、薬剤選択肢の拡大そのものではなく、それをいかに適切に、患者個々の病態や背景を踏まえて用いるかである。適切な患者選択と丁寧なモニタリングを通じて、本剤の真価を最大限に引き出し、「糖尿病のない人と変わらぬQOLの実現」を後押しできるかが医療者に期待されることである。

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GLP-1受容体作動薬、高齢者はBMI低下の一方でサルコペニア加速

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、グルコースレベルを効果的に低下させ大幅な体重減少を促進することから、糖尿病や肥満症の治療薬として広く使用されている。一方、サルコペニアは筋肉量と筋力の低下を特徴とする進行性の疾患で、とくに高齢者に多くみられ、2型糖尿病の高齢者では、サルコペニアの有病率が非糖尿病患者に比べて2~3倍高いとされる。こうした背景から、GLP-1RAセマグルチドによる治療を受けた2型糖尿病の高齢者における筋肉量・筋力・筋機能の変化を調査したShijiazhuang People's Hospital(中国・河北)のQingjuan Ren氏らによる研究が、Drug Design, Development and Therapy誌オンライン版2025年7月3日号に掲載された。 2022年1月~12月にShijiazhuang People's Hospitalでセマグルチド治療を開始した2型糖尿病の高齢患者(65歳以上)を対象とした。年齢、性別、BMI(ベースライン時)、糖尿病罹患期間、併存疾患に基づいて傾向スコアマッチングを行った。対照群はベースライン時の特性は試験群と同等で、GLP-1RAやDPP-4阻害薬の投与を受けていなかった。ベースライン時と6ヵ月ごとに参加者の筋肉量・筋力・筋機能を評価し、24ヵ月追跡した。 主な結果は以下のとおり。・セマグルチドによる治療を受けた220例と対照群212例が解析対象となった。参加者のサルコペニアの有病率は27.7%であった。・両群の特性はベースライン時には有意差を認めなかったが、24ヵ月後にはセマグルチド治療群は対照群と比較して、BMIと筋肉量が有意に減少した。・セマグルチド治療群では、全例においてBMIが試験期間を通じて継続的に減少した。・セマグルチド治療群では、骨格筋量指数(SMI)の減少傾向は6ヵ月目から現れ、12ヵ月目から有意な減少となった。握力は男性では当初改善したがその後低下し、女性では低下し続けた。歩行速度は男女ともに有意に低下した。・多変量解析により、セマグルチドの投与量、ベースライン時のSMI、歩行速度が筋力低下の独立した予測因子であることが同定された。 研究者らは「セマグルチドの使用は、高齢の2型糖尿病患者において体重を効果的に減少させる一方で、筋肉量・筋力・筋機能を低下させた。この影響は高用量使用において、また元々サルコペニアを有する患者において、とくに顕著だった。セマグルチド投与時は高齢患者個々のリスクとベネフィットを評価し、適切なモニタリングと介入を実施することがきわめて重要である」とした。

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SGLT2阻害薬で糖尿病患者の転倒リスク上昇

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が、2型糖尿病患者の転倒リスクを高めることを示唆するデータが報告された。筑波大学システム情報系の鈴木康裕氏らが行った研究の結果であり、詳細は「Scientific Reports」に3月17日掲載された。 転倒やそれに伴う骨折や傷害は、生活の質(QOL)低下や種々の健康リスクおよび死亡リスクの増大につながる。糖尿病患者は一般的に転倒リスクが高く、その理由として従来、神経障害や網膜症といった合併症の影響とともに、血糖降下薬使用による低血糖の影響が指摘されていた。さらに比較的近年になり、血糖降下以外の多面的作用が注目され多用されるようになった、SGLT2-iやGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)に関しては、体重減少とともに筋肉量を減少させることがあり、その作用を介して転倒リスクを高める可能性も考えられる。ただし、実際にそのようなリスクが生じているか否かはこれまで検証されていなかった。 鈴木氏らは、同大学附属病院内分泌代謝・糖尿病内科に血糖管理のために入院した2型糖尿病患者471人を中央値2年(四分位範囲1~3)追跡し、転倒発生率を比較した。解析対象者の主な特徴は、年齢中央値63歳(四分位範囲51~71)、女性42.3%、HbA1c9.6±1.9%、転倒の既往あり21.2%で、退院時に全体の19.3%に対してSGLT2-i、14.9%に対してGLP-1RAが処方されていた。 1,013人年の追跡で1回以上の転倒を報告した患者は173人で、15人が転倒により骨折を来していた。転倒発生率は100人年当たり17.1であり、年齢、性別、身長、BMI、転倒の既往、処方薬、握力、体重変化、下肢筋力、増殖網膜症の存在などを調整後、転倒の独立したリスク因子として、SGLT2-iの使用と年齢、転倒の既往が特定された。 SGLT2-i、GLP-1RAがともに処方されていなかった群を基準とする転倒発生オッズ比(OR)は以下の通り。SGLT2-iの処方(GLP-1RAの併用なし)では1.90(1.13~3.15)、SGLT2-iとGLP-1RAの併用は3.13(1.29~7.55)。また年齢は1歳高齢であるごとに1.02(1.00~1.04)、転倒の既往は2.19(1.50~3.20)だった。 一方、GLP-1RAの処方(SGLT2-iの併用なし)は1.69(0.89~3.09)であり、転倒リスクの有意な上昇は認められなかった。また、インスリン、SU薬/グリニド薬、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬についても、転倒リスクへの有意な影響は認められなかった。 著者らは、「SGLT2-iの処方は転倒の独立したリスク因子であり、一方でGLP-1RAの処方の影響は統計的に非有意だった。ただし、SGLT2-iとGLP-1RAが併用されていた場合の転倒リスクは、SGLT2-i単独よりも高かった。従って、2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒リスクを考慮することが重要である」と述べている。

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医学的に説明困難な身体症状【日常診療アップグレード】第31回

医学的に説明困難な身体症状問題72歳男性。3ヵ月前から始まった夜間の息苦しさを主訴に来院した。高血圧、糖尿病、逆流性食道炎で近くのクリニックに通院中である。バルサルタン(ARB)、シタグリプチン(DPP-4阻害薬)、ランソプラゾール(PPI)を内服中である。血液検査、尿検査、心電図、心エコー検査、上部内視鏡検査で異常を認めない。説明が非常に難しい苦しみで、ある時にスッとよくなるという。バイタルサインは正常で、身体診察でも異常はない。患者は心疾患を心配している。冠動脈CT検査をオーダーした。

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