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1.

インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。 世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2009~2020年の北欧4カ国の医療データ、2012~2021年の米国の医療データ、2009~2020年のイスラエルの医療データが用いられた。それらのデータベースから2型糖尿病妊婦を抽出し、児の生後1年までの医療記録を追跡調査した。リスクを評価した薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、DPP-4阻害薬(DPP-4i)、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、SGLT2阻害薬(SGLT2i)の4種。それらの薬剤が、妊娠の90日前から妊娠第1三半期に1回以上処方されていたケースを、曝露された症例とした。比較対照はインスリンのみによって治療されていたケースとした(アクティブコンパレータ)。主要評価項目は、MCMの相対リスクであり、年齢、併存疾患(肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病合併症、多嚢胞性卵巣症候群)、他の処方薬(降圧薬、脂質低下薬)などの交絡因子の影響は調整した。 MCMの標準化有病率は全体で3.7%であった。それに対して2型糖尿病妊婦の児では5.3%であり、SU薬に曝露された児では9.7%、DPP-4i曝露では6.1%、GLP-1RA曝露で8.3%、SGLT2i曝露で7.0%であって、インスリンのみで治療されていた群は7.8%だった。インスリンのみで治療されていた群を基準とした交絡因子調整後のMCM相対リスクは、SU薬曝露で1.18(95%信頼区間0.94~1.48)、DPP-4i曝露0.83(同0.64~1.06)、GLP-1RA曝露0.95(0.72~1.26)、SGLT2i曝露0.98(0.65~1.46)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「インスリン製剤によらない糖尿病治療の普及とともに、妊娠初期の非インスリン製剤への曝露が急速に増加している。われわれの研究結果は、そのような非インスリン製剤への曝露によるMCMリスクの有意な上昇を示しておらず、安心につながるデータが得られた。ただし、より正確なデータが必要であり、他の研究での検証が求められる」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

2.

GLP-1受容体作動薬、従来薬と比較して大腸がんリスク低下

 グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬は、2型糖尿病の治療薬として日本をはじめ海外でも広く承認されている。GLP-1受容体作動薬には、血糖低下、体重減少、免疫機能調節などの作用があり、肥満・過体重は大腸がんの主要な危険因子である。GLP-1受容体作動薬が大腸がんリスク低下と関連するかどうかを調査した研究がJAMA Oncology誌2023年12月7日号オンライン版Research Letterに掲載された。 米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学のLindsey Wang氏らの研究者は、TriNetXプラットフォームを用い、米国1億120万人の非識別化された電子カルテデータにアクセスした。GLP-1受容体作動薬と、インスリン、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤(ただし、SGLT2阻害薬は2013年、DPP-4阻害薬は2006年が開始年)の7薬剤を比較する、全国規模の後ろ向きコホート研究を実施した。 コホートは、人口統計、社会経済的な健康決定要因、既往症、がんや大腸ポリープの家族歴および個人歴、生活習慣要因などで調整され、ハザード比(HR)および95%信頼区間[CI]を用いた解析を行った。次いで、肥満・過体重、性別で層別化した患者を対象にした解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2005~2019年に2型糖尿病を理由に医療機関を受診し、それまでに抗糖尿病薬の使用歴がなく、受診後に抗糖尿病薬を処方された、大腸がんの診断歴がない122万1,218例が対象となった。・追跡期間15年時点で、GLP-1受容体作動薬はインスリン(HR:0.56、95%CI:0.44~0.72)、メトホルミン(HR:0.75、95%CI:0.58~0.97)と比較して、大腸がんのリスク低下と有意に関連していた。この有意差は男女でも一貫しており、肥満・過体重の患者ではインスリン(HR:0.50、95%CI:0.33~0.75)、メトホルミン(HR:0.58、95%CI:0.38~0.89)と、さらなるリスク低下が見られた。・SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン系薬剤との比較でもリスク低下は見られたが、インスリン、メトホルミンほどではなかった。α-グルコシダーゼ阻害薬とDPP-4阻害薬との比較では、統計学的有意差は見出されなかった。 研究者らは、本研究の限界として「未測定または未制御の交絡因子、自己選択、逆因果、観察研究に特有のその他のバイアスの可能性があるため、本試験の結果は他のデータや研究集団による検証が必要である。また、抗糖尿病治療歴のある患者における効果、基礎となる機序、GLP-1受容体作動薬がほかの肥満関連がんに及ぼす効果についても、さらなる研究が必要である」としている。

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SGLT2阻害薬の使用が痛風リスク低下と関連

 SGLT2阻害薬(SGLT2i)の使用が痛風リスクの低下と関連していることを示すデータが報告された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のNatalie McCormick氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月25日掲載された。DPP-4阻害薬(DPP-4i)を使用した場合と比較した結果であり、痛風以外に心筋梗塞についてもリスクに有意差が見られたという。 SGLT2iは血糖低下作用とともに尿酸値を低下させる作用のあることが知られている。この作用が痛風患者の発作リスク抑制につながる可能性があるが、そのような視点での研究はまだ十分でない。McCormick氏らはこの点について、2014年1月~2022年6月の医療データを用いて検討した。 解析対象期間にSGLT2iまたはDPP-4iで治療が開始されていた痛風を有する2型糖尿病患者を、傾向スコアマッチングによって背景因子を一致させたデータセットを作成。主要アウトカムを、救急部門や一般外来の受診または入院、および薬剤処方によって確認された痛風発作の再発とし、副次的に心筋梗塞と脳卒中の発症も評価した。また、陽性対照として性器感染症、陰性対照として変形性関節症の発症を評価した。 痛風の再発は、SGLT2iで治療開始されていた群が1,000人年当たり52.4件、DPP-4iで治療開始されていた群では同79.7件であり、率比(RR)0.66(95%信頼区間0.57~0.75)で、率差(RD)は1,000人年当たり-27.4(同-36.0~-18.7)であって、SGLT2i群の方が有意に少なかった。また、痛風発作による救急部門の初回受診または入院のRRおよびRDは、1,000人年当たりそれぞれ0.52(0.32~0.84)、-3.4(-5.8~-0.9)だった。 副次的評価項目である心筋梗塞は、ハザード比(HR)が0.69(0.54~0.88)、RDは1,000人年当たり-7.6(-12.4~-2.8)であり、SGLT2i群の方が低リスクだった。ただし脳卒中についてはHR0.81(0.62~1.05)で有意差がなかった。性器感染症についてはSGLT2i群のリスクの方が高く〔HR2.15(1.39~3.30)〕、変形性関節症のリスクは同等だった〔HR1.07(0.95~1.20)〕。 以上を基に著者らは、「痛風患者においてSGLT2iは発作の再発や、発作に伴う救急部門の初回受診または入院を減らし、心血管系に有益な効果をもたらす可能性もある」と結論付けている。また、「2型糖尿病患者に対してSGLT2iが、糖代謝や心血管合併症リスクを抑制する多面的なメリットが示されていることを考慮すると、このクラスの薬剤は尿酸降下療法としても魅力的な治療手段となる可能性がある」と付け加えている。

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DPP-4阻害薬の副作用「類天疱瘡」、適切な処置の注意喚起/PMDA

 糖尿病治療薬DPP-4阻害薬やその配合剤の副作用として知られている類天疱瘡。DPP-4阻害薬服用後にこの副作用を疑う皮膚異常がみられたにもかかわらず、投与が継続され類天疱瘡の悪化を来し入院するケースが報告されているという。これに対して医薬品医療機器総合機構PMDAは7月27日に医薬品適正使用のお願いを発出した。 PMDAは以下のように注意を呼びかけている。<DPP-4阻害薬による類天疱瘡への適切な処置について>DPP-4阻害薬の使用中に、そう痒を伴う浮腫性紅斑、水疱、びらん等が現れ、類天疱瘡の発現が疑われる場合には、速やかに皮膚科医と相談し、DPP-4阻害薬の投与を中止するなどの適切な処置を行うよう、注意をお願いいたします。【代表的な症例】70代・男性。シタグリプチン投与開始後、3~4ヵ月目に水疱出現、自然軽快を繰り返し、投与7ヵ月目に水疱が多発し全身に広がり、投与8ヵ月目にクリニック受診。内服薬および外用薬で治療したが改善せず、皮膚科を受診。水疱性類天疱瘡の診断となり、入院。治療により改善しプレドニゾロン減量のうえで、投与9ヵ月目に退院となったが、再度水疱が出現し、水疱形成増悪が確認され、再入院。プレドニゾロンを増量したが改善せず、血漿交換療法を施行。薬剤性の水疱性類天疱瘡が疑われ、シタグリプチンの投与を中止。プレドニゾロンを減量し、シタグリプチンの中止11日後、水疱性類天疱瘡は回復し、退院した。――― 類天疱瘡は、血液中に存在する皮膚の基底膜に対する自己抗体が自己抗原に反応して、皮膚を傷害し、皮膚に水ぶくれ(水疱)を作る病気1)。DPP-4阻害薬やその配合薬の各添付文書には以前から副作用として記され、日本糖尿病学会での演題にも上がるほど比較的認知度の高い副作用ではある。しかし、副作用報告数は2018年(365件)をピークに右肩下がりではあるものの、2022年時点でもなお149件報告されている。<該当医薬品>アナグリプチン含有製剤(商品名:スイニー錠、メトアナ配合錠LD/HD)アログリプチン安息香酸塩含有製剤(ネシーナ錠、イニシンク配合錠、リオベル配合錠LD/HD)オマリグリプチン(マリゼブ錠)サキサグリプチン水和物(オングリザ錠)シタグリプチンリン酸塩水和物含有製剤(グラクティブ錠、ジャヌビア錠、スージャヌ配合錠)テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物含有製剤(テネリア錠/OD錠、カナリア配合錠)トレラグリプチンコハク酸塩(ザファテック錠)ビルダグリプチン含有製剤(エクア錠、エクメット配合錠LD/HD)リナグリプチン含有製剤(トラゼンタ錠、トラディアンス配合錠AP/BP)

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GLP-1RAの上乗せが糖尿病患者のMACE、心不全リスクの低下と関連

 糖尿病患者に対する心血管疾患一次予防目的での血糖降下薬の上乗せにおいて、DPP4阻害薬(DPP4i)に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の優位性を示唆するデータが報告された。米退役軍人省テネシーバレー・ヘルスケアシステム高齢者研究教育臨床センターのTadarro L. Richardson Jr.氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に5月9日掲載された。主要心血管イベント(MACE)と心不全の発症率に有意差が認められたという。 心不全リスクのある患者に対するGLP-1RAやSGLT2阻害薬(SGLT2i)のエビデンスが蓄積されてきているが、MACEの一次予防におけるそれら薬剤の有用性は必ずしも明確でない。今回報告された研究では、MACE未発症の糖尿病患者に血糖降下薬を上乗せした場合に、その後のMACEや心不全発症リスクが、追加された薬剤によって異なるかが検討された。研究仮説として、DPP4iよりもGLP-1RAまたはSGLT2iを上乗せした方が、イベント発生率が抑制されると予測された。 研究デザインは米国の退役軍人を対象とした遡及的コホート研究で、2001~2019年に治療を受けた18歳以上の糖尿病患者のデータを解析に利用。メトホルミン、SU薬、またはインスリンが処方された状態で、DPP4i、GLP-1RA、SGLT2iが追加処方されていた、心血管疾患の既往のない患者を抽出。MACE(急性心筋梗塞、脳卒中、心血管死)、心不全入院の発生率を比較した。解析対象者数は、GLP-1RAとDPP4iを比較するコホートでは同順に2万8,759人、2万8,628人、SGLT2iとDPP4iを比較するコホートでは2万1,200人、2万1,170人であり、年齢は中央値67歳、糖尿病罹病期間は8.5年だった。 共変量を調整後、GLP-1RAが上乗せされていた群はDPP4iが上乗せされていた群に比べて、MACEと心不全入院のリスクが有意に低かった〔調整ハザード比(aHR)0.82(95%信頼区間0.72~0.94)、1,000人年当たりのイベント数の調整リスク差(aRD)3.2(同1.1~5.0)〕。一方、SGLT2iが上乗せされていた群のMACE、心不全入院リスクは、DPP4iが上乗せされていた群と有意差がなかった〔aHR0.91(0.78〜1.08)、aRD1.28(−1.12〜3.32)〕。 以上より著者らは、「心血管疾患の既往のない糖尿病患者に対するGLP-1RAの追加処方は、DPP4iを追加した場合に比べて、MACEおよび心不全入院のリスクが低いという関連が認められた。SGLT2iの追加は有意な関連がなかった」と結論。「これらの知見は、糖尿病患者の心血管疾患抑制戦略に関する新たな仮説を生み出すものであり、一次予防におけるこれら薬剤の有用性の評価を継続していく必要がある」と付け加えている。なお、本研究の限界点としては、残余交絡が存在する可能性、および、第一選択薬としてDPP4i、GLP-1RA、SGLT2iが用いられていた場合の影響が検討されていないことが挙げられるとしている。

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肥満2型DMでのチルゼパチド、体重減少にも有効/Lancet

 過体重または肥満の2型糖尿病患者において、チルゼパチド10mgおよび15mgの週1回72週間皮下投与は、体重管理を目的とした他のインクレチン関連薬と同様の安全性プロファイルを示し、臨床的に意義のある大幅な体重減少をもたらしたことが示された。米国・アラバマ大学バーミンガム校のW Timothy Garvey氏らが、7ヵ国の77施設で実施された第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SURMOUNT-2試験」の結果を報告した。肥満2型糖尿病患者の健康状態を改善するためには、体重減少が不可欠である。チルゼパチドは持続性のGIP/GLP-1受容体作動薬で、非2型糖尿病の肥満患者を対象としたSURMOUNT-1試験では、72週間のチルゼパチドによる治療で体重が最大20.9%減少することが認められていた。Lancet誌オンライン版2023年6月24日号掲載の報告。BMI 27以上の2型DM患者で、チルゼパチド10mgまたは15mgをプラセボと比較 研究グループは、BMI値27以上、HbA1c 7~10%の2型糖尿病成人患者(18歳以上)を、チルゼパチド10mg群、15mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、週1回72週間皮下投与した(週1回2.5mgから投与を開始し、4週ごとに2.5mgずつ増量)。スクリーニング前3ヵ月以内に体重が5kg以上変化した患者、肥満に対する外科的治療を受けたことがあるまたは予定されている患者、抗肥満薬、DPP-4阻害薬、経口GLP-1受容体作動薬または2型糖尿病の注射薬を投与されていた患者は除外した。すべての試験参加患者、研究者およびスポンサーは治療割り付けをマスクされた。 主要エンドポイントは2つで、ベースラインから72週までの体重変化率および72週時点のベースラインからの体重減少が5%以上を達成した患者の割合とした。治療レジメンの推定は、治療の中止または抗高血糖レスキュー治療開始を問わず有効性を評価した。 有効性と安全性のエンドポイントの解析評価は、無作為化されたすべての患者のデータを用いて行われた。72週間で体重減少最大14.7%、5%以上体重減少の達成率は79~83% 2021年3月29日~2023年4月10日に1,514例が適格性の評価を受け、938例が無作為化された(チルゼパチド10mg群312例、15mg群311例、プラセボ群315例)。患者背景は、平均年齢54.2±10.6歳、女性476例(51%)、白人710例(76%)、ヒスパニック系/ラテン系561例(60%)であった。また、ベースラインの平均体重は100.7±21.1kg、BMIは36.1±6.6、HbA1cは8.02±0.89%であった。 72週時の体重のベースラインからの最小二乗平均変化率はチルゼパチド10mg群-12.8%(標準誤差[SE]0.6)、15mg群-14.7%(0.5)、プラセボ群-3.2%(0.5)であり、プラセボとの群間差はチルゼパチド10mg群-9.6ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.1~-8.1)、15mg群-11.6ポイント(95%CI:-13.0~-10.1)であった(いずれもp<0.0001)。また、72週時の5%以上体重減少達成率は、プラセボ群32%に対し、チルゼパチド10mg群79%、15mg群83%であり、チルゼパチド群で高かった(いずれもp<0.0001)。 チルゼパチドの主な有害事象は、悪心、嘔吐、下痢などの胃腸障害で、多くが軽度~中等度であり、治療中止に至った有害事象はほとんどなかった(<5%)。重篤な有害事象は、全体で68例(7%)が報告された。チルゼパチド10mg群で死亡が2例確認されたが、治験責任医師によりチルゼパチドとの関連はないと判断された。

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肥満2型DMへの経口セマグルチド、最適な用量・期間は?/Lancet

 十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。BMI値25以上、HbA1c値8.0~10.5%の1,606例を対象 研究グループは、HbA1c値8.0~10.5%、BMI値25.0以上、メトホルミン、スルホニルウレア系薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬のうち1~3種類の経口血糖降下薬の安定用量を投与されている18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、セマグルチド14mg群、25mg群または50mg群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回朝空腹時の経口投与を68週間にわたって行った。 いずれの投与群もセマグルチド3mgから投与を開始し、4週時に7mg、8週時に14mg、その後、25mg群では12週時に25mg、50mg群では12週時に25mg、16週時に50mgに漸増した。また、ベースラインで服用していた経口血糖降下薬は、DPP-4阻害薬のみ中止とし、それ以外は同一の用法・用量で継続した。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから52週時までの変化、検証的副次エンドポイントは体重のベースラインから52週時までの変化とし、intention-to-treat集団を対象に治療指針に基づく推定使用量(試験薬の中止やレスキュー治療の有無を問わない用量)を用いて評価した。また、セマグルチドを1回以上服用した全患者を対象に安全性を評価した。 2021年1月15日~9月29日に2,294例がスクリーニングを受け、1,606例が無作為に割り付けられた(14mg群536例、25mg群535例、50mg群535例)。患者背景は、男性936例(58.3%)、女性670例(41.7%)、平均(±SD)年齢58.2±10.8歳、平均HbA1c値9.0±0.8%、平均体重96.4±21.6kgであった。52週時のHbA1c値と体重の低下、14mg群と比較し25mg群、50mg群が有意に優れる 52週時におけるHbA1cの平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-1.5%(SE 0.05)、25mg群-1.8%(0.06)、50mg群-2.0%(0.06)であった。治療指針に基づく推定使用量での評価の結果、セマグルチド14mg群に対する推定治療差(ETD)は、セマグルチド25mg群で-0.27%(95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.12、p=0.0006)、50mg群で-0.53%(-0.68~-0.38、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対する優越性が示された。 52週時における体重の平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-4.4kg(SE 0.3)、25mg群-6.7kg(0.3)、50mg群-8.0kg(0.3)であった。セマグルチド14mg群に対するETDは、セマグルチド25mg群で-2.32kg(95%CI:-3.11~-1.53、p<0.0001)、50mg群で-3.63kg(-4.42~-2.84、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対して優越性が示された。 有害事象は、セマグルチド14mg群で404例(76%)、25mg群で422例(79%)、50mg群で428例(80%)報告された。ほとんどが軽度から中等度であったが、胃腸障害が14mg群と比較して25mg群および50mg群で高率であった。死亡は10例報告されたが、治療との関連はないと判断された。 なお、著者は、用量漸増期間が最大16週と短期間であったこと、セマグルチド25mg群と50mg群の差は検証されていないこと、対象患者の大部分が白人であったことなどを研究の限界として挙げている。

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高齢者糖尿病診療ガイドライン、薬物療法のエビデンス増え7年ぶりに改訂

 日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同編集である『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』が5月に発刊された。2017年時にはなかった高齢者糖尿病における認知症、サルコペニア、併存疾患、糖尿病治療薬などのエビデンスが集積したことで7年ぶりの改訂に至った。今回、日本老年医学会の編集委員を務めた荒木 厚氏(東京都健康長寿医療センター糖尿病・代謝・内分泌内科)に改訂点について話を聞いた。 高齢者糖尿病とは、「65歳以上の糖尿病」と定義されるが、医学的な観点や治療、介護上でとくに注意すべき糖尿病高齢者として「75歳以上の高齢者と、身体機能や認知機能の低下がある65~74歳の糖尿病」と、より具体的な定義付けもなされている。 日本老年医学会、日本糖尿病学会の両学会は上記のような高齢者糖尿病患者における「低血糖による弊害」「認知症などの併存疾患の影響」などの課題解決のために2015年に合同委員会を設立、その2年後にガイドライン2017年版を発刊した。当時は治療薬のエビデンスなどが乏しかったが、国内外の新しいエビデンスが集積したこと、新薬が登場したこと、そして併存疾患に対する対策や治療目的が明確になったことから、今回6年ぶりの発刊となった。そのような背景のある本ガイドラインについて、荒木氏は改訂ポイント6点を示した。<注目すべき6つのポイント>1)2017年時点では得られていなかった認知症、フレイル、サルコペニア、悪性腫瘍、心不全などの併存疾患やmultimorbidityに関するエビデンスが記載されている、Question・CQ(Clinical Question)に反映2)血糖コントロール目標を設定するためのカテゴリー分類を行うことができる認知・生活機能質問票(DASC-21)を掲載[p.228付録3]3)運動療法が糖尿病のみならず認知機能やフレイルにも良い影響を与える4)薬物療法ではSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の心血管疾患や腎イベントに対するリスク低減効果に関するエビデンスも集積5)2型糖尿病患者の注射のアドヒアランス低下の対策として、インスリン治療の単純化を記載6)社会サポート制度の活用 このほか、「高齢者糖尿病患者の背景・特徴については第I章に、治療については第IX章p.151~170に掲載されているので一読してほしい」とし、「治療の基本的な内容は『糖尿病治療ガイド2022-2023』にのっとっているので、両書を併せて読むことが理解につながる」とも話した。インスリン治療の単純化はアドヒアランス向上だけでなく、低血糖を減らす 高齢者の場合、腎・肝機能低下による薬剤の排泄・代謝遅延から有害事象を来しやすい。そのため低血糖をはじめ、これまで注意点が強調されることが多かった。一方で、高齢者糖尿病ではポリファーマシーになりやすく、さらに認知機能障害のため服薬アドヒアランスの低下を来しやすい。そのため減薬だけでなく、複雑な処方をシンプルにする“治療の単純化”を行うことが必要になる。2型糖尿病のインスリン治療においても注射のアドヒアランス低下の対策としてインスリン治療の単純化を行う研究が行われている。 これについて同氏は「たとえば、インスリン注射を1日複数回注射している2型糖尿病患者の場合、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬などを追加することでインスリン投与回数を1日1回の持効型インスリンのみにすることが治療の単純化となる。このインスリン治療の単純化は、注射回数を1回にしても血糖コントロールは変わらない、もしくは改善し、インスリンの単位数が減ることで低血糖が減ることも報告されてきているため、インスリン治療の単純化は低血糖回避という観点からも有用であると考える。また、複数回のインスリン注射を週1回のGLP-1受容体作動薬やインスリンとGLP-1受容体作動薬の配合剤に変更にすることも治療の単純化となり、低血糖を減らすことが可能となる」とコメント。「これは高齢者のインスリン治療法の大きな進歩」だとも述べ、また、「絶食の不要な経口のGLP-1受容体作動薬において種々の製剤が開発中であり、今後のインスリン治療の単純化にも役立つ可能性がある」ともコメントした。SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は高齢者の心・腎イベントを抑制 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は心・腎イベントに関するCQが新たに盛り込まれた。―――CQ IX-2:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は心血管イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ IX-3:高齢者糖尿病でSGLT2阻害薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。CQ X-1:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は心血管イベントを抑制する【推奨グレードA】。CQ X-2:高齢者糖尿病でGLP-1受容体作動薬は複合腎イベントを抑制する可能性がある【推奨グレードB】。――― これについて「高齢者糖尿病においてもSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬の使用は心・腎イベントのリスクや心不全による再入院リスクを低減させるエビデンスがあり、additional benefitがあることが明らかになった。したがって、この両剤はこれらの心・腎に対するベネフィットと副作用のリスクのバランスを考慮しながら使用する必要がある」と同氏はコメントした。マルチコンポーネント運動の重要性 高齢者糖尿病でも若年者同様に運動療法は推奨され、血糖コントロールのみならず脂質異常症、高血圧、生命予後などの改善に有効とされ、本書でも推奨されている。また、糖尿病のない患者と比べ筋量が減少しやすいため、サルコペニア予防としても重要な位置付けにある。今回、有酸素運動・レジスタンス運動・バランス運動・ストレッチングを組み合わせたマルチコンポーネント運動も推奨されている。ただし、高齢者糖尿病患者が行う際には、年齢や合併症、併存疾患、生活スタイルに合わせることがポイントである。 最後に同氏は、地域社会で高齢者糖尿病患者を支えることが今後より一層求められる時代になることから、『社会サポート制度』(p.217)についても言及し、「認知症然り、糖尿病でも地域で生活を続けていけるように、各自治体で高齢者糖尿病のQOLに寄り添うサービスが設けられている場合がある。たとえば、デイケア、通いの場、訪問看護、訪問栄養指導、訪問薬剤指導がそうであるが、そのようなサービスの存在に踏み込んだことも、本改訂での大きな特徴とも言える」と話した。

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急性冠症候群における早期SGLT2阻害薬使用の効果

 SGLT2阻害薬は糖尿病治療だけでなく、現在では心不全(HF)や腎不全の治療にその活躍のフィールドを拡大している。HFの臨床転帰を改善することは、すでにさまざまなエビデンスが報告されているが、早期の急性冠症候群(ACS)ではエビデンスは限定的であった。この疑問に対し、国立循環器病研究センターの金岡 幸嗣朗氏らの研究グループは、入院中の急性冠症候群患者に対し、SGLT2阻害薬の早期使用と非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の使用の関連を検討した結果を報告した。European Heart Journal-Cardiovascular Pharmacotherapy誌オンライン版2023年5月12日掲載。ACSへのSGLT2阻害薬の早期介入はイベント抑制につながる可能性 本研究は、レセプト情報・特定健診情報データベースを用いて後方視的コホート研究で行われた。対象は2014年4月~2021年3月までに20歳以上のACSで入院した患者。 主要アウトカムは、全死因死亡またはHF/ACS再入院の複合とした。1:1の傾向スコアマッチングを用いて、HF治療に応じて、非SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬と比較した早期SGLT2阻害薬使用(入院後14日以下)の転帰との関連を明らかにした。 対象となった38万8,185例のうち、重度のHFを有する患者は11万5,612例、有さない患者は27万2,573例であった。 主な結果は以下のとおり。・SGLT2阻害薬非使用者と比較し、SGLT2阻害薬使用者は、主要アウトカムとのハザード比(HR)が、重症HF群で低かった(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.76~0.91、p<0.001)・非症状HF群では有意差はなかった(HR:0.92、95%CI:0.82~1.03、p=0.16)・SGLT2阻害薬の使用は、DPP-4阻害薬と比較し、重症HFおよび糖尿病患者における転帰のリスクが低いことが示された(HR:0.83、95%CI:0.69~1.00、p=0.049) 以上の結果から金岡氏らの研究グループは、「早期ACS患者におけるSGLT2阻害薬の使用は、重症HF患者において主要転帰のリスクを低下させたが、重症HFではない患者ではその効果は不明だった。そのほか、HFあり群のうち、糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の開始は、わが国でよく用いられているDPP-4阻害薬の開始と比較しても、主要エンドポイントの減少と関連していた」と早期使用がイベント抑制につながる可能性を示唆した。

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併存症のある患者での注意点~高齢者糖尿病診療ガイドライン2023/糖尿病学会

 5月11日~13日に城山ホテル鹿児島をメイン会場に第66回 日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 高齢者の糖尿病患者では、糖尿病とは別に併存症があるケースが多い。では、糖尿病以外の疾病もある高齢者の糖尿病患者の診療はどうあるべきであろう。 本稿では、「シンポジウム10 より良い高齢糖尿病ケアを目指して」より「高齢者糖尿病の合併症と併存症」(杉本 研氏 [川崎医科大学総合老年医学])の口演をお届けする。 2023年5月に『高齢者糖尿病診療ガイドライン 2023』(以下「ガイドライン」と略す)が上梓され、今回の口演は、このガイドラインの内容を踏まえて構成されている。 今回のガイドラインの改訂では、合併症と併存症につき、「併存症」が独立して章立てされた。また、併存症の予防・管理が、健康寿命の延伸には重要となることが改めて確認され、引き続き、高齢の糖尿病患者の診療では、平均余命の減少と低血糖の高リスクをどのように防止するかが重要とされている。 とくに杉本氏は「高齢者の併存疾患で注意したいのが、動脈硬化性疾患であり、高齢者のADLとQOLを大きく損ない健康寿命などに影響を与える」と診療での注意点を強調した。 続いて先のガイドライン中で「高齢者の併存疾患」を取り上げ、重要なポイントを説明した。 なお、ガイドラインでは、「CQ」と「Q」に分けて、「CQ」は「推奨度(推奨グレード)を問う疑問として回答が可能な臨床的疑問」を、「Q」は「CQ以外の臨床的疑問(推奨グレードは付さない)」について記述している。■高齢者の糖尿病治療が認知機能などの低下抑制になるかは不明 CQ V-3「高齢者糖尿病における(厳格な)血糖コントロールは認知機能低下・認知症発症の抑制に有効か?」というCQでは「血糖コントロールが認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU:推奨するだけの明確根拠がない)、「糖尿病治療薬による治療が認知機能低下、認知症発症予防に有効であるかについては、結論が出ていない」(推奨グレードU)として研究の余地を残している。 Q V-4「高齢者糖尿病の高血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病または高血糖は、フレイル、サルコペニアの危険因子である」とされ、これについて杉本氏は「8つのメタ解析から糖尿病はフレイルの危険因子となり(オッズ比1.48)1)、サルコぺニアはBMI25以下で増加する」と説明した。 同様にQ V-5「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコペニアの危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病のHbA1c低値または低血糖はフレイル、サルコぺニアに危険因子である」としている。 Q V-6「高齢者糖尿病における血糖コントロールは筋量や筋力の維持に有効か?」というQでは「高齢者糖尿病の血糖コントロールが筋量や筋力の維持に有効かは明らかではない」としている。ただ、HbA1cとサルコぺニアの関係では、いくつかの論文で弱い相関を示唆するものもあり、今後研究が待たれる。また、薬物治療の影響については、フレイルとSGLT2阻害薬との関係は「現状では『明らかでない』としか言えない」と杉本氏は説明した。 Q V-8「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子か?」というQでは「高齢者糖尿病の高血糖または低血糖は転倒の危険因子であり、インスリン使用者ではとくに注意を要する」と転倒への注意を記載している。 Q V-9「高齢者糖尿病における血糖コントロールは転倒の予防に有用か?」というQでは「高齢者糖尿病における血糖コントロール状態は転倒に影響するが、厳格な血糖コントロールの影響は明らかではない」、「高齢者糖尿病における血糖コントロールの改善が転倒の予防に有用であるかは不明である」と研究の余地を残している。■高齢者糖尿病の心不全の予防・改善に糖尿病治療薬は有効か 悪性腫瘍や心不全、multimorbidity(多疾患罹患)についても触れ、とくに心不全、multimorbidityでは次の3つのQについて説明を行った。 Q V-16「高齢者糖尿病において糖尿病治療薬は心不全の予防・改善に有効か?」というQでは、「高齢者糖尿病においてSGLT2阻害薬は心不全の予防・改善に有効な可能性がある」とする一方で「高齢者糖尿病においてDPP-4阻害薬が心不全リスクに及ぼす影響は明らかではない」と記載している。 そして、このQに関して杉本氏は、SGLT2阻害薬による心不全への影響は70歳以上でより良かったとする報告2)がある一方で、有意なBNPの低下がなかったとする報告もある3)ことを述べ、自験例としながらもSGLT2阻害薬で左室心筋重量係数(LVMI)の低下がみられたことを報告した。 Q V-18「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすいか?」というQでは、「高齢者糖尿病はmultimorbidityとなりやすい」と記載している。 また、Q V-19「高齢者糖尿病のmultimorbidityではどのような点に注意すべきか?」というQでは「高齢者糖尿病のmultimorbidityにどのような対応を行うべきかのエビデンスは不足しているが、低血糖に注意し、多職種で患者・家族の意思決定の支援をしながら目標を設定していくことが望ましい」と記載している。 今回のガイドラインを受け杉本氏は75歳以上では4つ以上の疾患の合併割合が多くなること、とくに認知症、腎機能不全、骨折が多くなることを指摘するとともに、「重症低血糖では、糖尿病治療薬もインスリンやSU薬など3剤以上の併用も多くなり、ポリファーマシーへの配慮も必要」と述べ、口演を終えた。■参考文献1)Hanlon P, et al. Lancet Healthy Longev. 2020 Dec;1:e106-e116.2)Martinez FA, et al. Circulation. 2020;141:100-111.3)Tamaki S, et al. Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.

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SGLT2阻害薬の高齢者への処方の安全性-EMPA-ELDERLY/糖尿病学会

 5月11~13日に鹿児島で第66回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:西尾 善彦氏[鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授])が「糖尿病学維新-つなぐ医療 拓く未来-」をテーマに開催された。 本稿では、近年、心血管疾患への治療適応も拡大しているSGLT2阻害薬について、口演「日本人高齢2型糖尿病患者を対象としたエンパグリフロジンの製販後試験」(矢部 大介氏[岐阜大学医学系研究科糖尿病・内分泌代謝内科学/膠原病・免疫内科学 教授])をお届けする。SGLT2阻害薬の高齢者への有効性・安全性について検討したEMPA-ELDERLY試験 日本糖尿病学会の「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」によれば、SGLT2阻害薬の位置付けは、肥満の有無(インスリンの分泌不全/抵抗性)にかかわらずStep1で選択されることになっている。また、併存疾患として慢性腎臓病、心不全、心血管疾患でも選択が表記されている(Step3)。その一方、SGLT2阻害薬の使用頻度が増す中で、高齢2型糖尿病患者への安全性は十分に確立されていない現状がある。 そこで矢部氏は、高齢糖尿病患者への有効性・安全性について検討されたSGLT2阻害薬エンパグリフロジンの国内第IV相臨床試験であるEMPA-ELDERLY試験の内容を報告した。 EMPA-ELDERLY試験は、わが国の2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンの長期投与と血糖降下への効果、安全性、体組成・筋力などへの影響をプラセボと比較した多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験である。【主たる組み入れ基準】・65歳以上の日本人2型糖尿病患者・食事療法、運動療法のみ、または経口血糖降下薬(ビグアナイド、DPP-4阻害薬など)で血糖コントロール不十分な患者【評価項目】主要評価項目:ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量副次評価項目:ベースラインから52週間後までの体組成(筋肉量、体脂肪量、徐脂肪量など)の変化量、握力の変化量など【対象患者の背景】(127例)患者数:プラセボ(63例)、エンパグリフロジン(64例)年齢平均:プラセボ(74.0歳)、エンパグリフロジン(74.2歳)平均ベースラインBMI:プラセボ(25.4)、エンパグリフロジン(25.7)(*BMI22未満の痩身者は非対象として除外)罹病歴平均:プラセボ(11.8年)、エンパグリフロジン(12.4年)HbA1c平均:プラセボ(7.6%)、エンパグリフロジン(7.6%)EMPA-ELDERLY試験で高齢者でもSGLT2阻害薬が血糖コントロールを改善 SGLT2阻害薬の高齢者への有効性・安全性について検討したEMPA-ELDERLY試験の主な結果は以下のとおり。・ベースラインから52週間後までのHbA1c変化量推移は、プラセボ群と比べエンパグリフロジン群はHbA1cの低下が52週目まで続いていた。・HbA1c調整平均変化量では、プラセボ群-0.12%に対し、エンパグリフロジン群では-0.69%(調整平均の差-0.57%)とエンパグリフロジン群が有意に低下していた(p<0.0001)。・52週後のベースラインからの体重変化では、プラセボ群が-0.90kg、エンパグリフロジン群が-3.27kg(調整平均の差-2.37kg)とエンパグリフロジン群で有意に低下していた(p<0.0001)。・体組成では、体脂肪についてプラセボ群で+0.08kg、エンパグリフロジン群で-1.77kg(調整平均の差-1.84kg)と体脂肪で大きく変化がみられた(p<0.0001)。・筋力について、握力ではプラセボ群で-0.6kg、エンパグリフロジン群で-0.9kg(調整平均の差-0.3kg)と大きな差はなかった(p<0.4208)。また、5回椅子立ち上がりテスト(秒数)でもプラセボ群で-0.9秒、エンパグリフロジン群で-0.9秒(調整平均の差0秒)と差はなかった(p<0.9276)。・有害事象としては、重症度の軽い低血糖がプラセボ群、エンパグリフロジン群で各1例ずつ報告があったが、エンパグリフロジン群では死亡などは報告されなかった。 以上のEMPA-ELDERLY試験の結果を踏まえ、矢部氏は「高齢者においても、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは血糖コントロールを有意に改善した。また、脂肪量を減らすことで体重を低下させると同時に筋肉量減少などの変化は、プラセボ群と比較し、変化が認められなかった。エンパグリフロジンは忍容性も良好で、新たな有害事象もなかった」と報告をまとめた。

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日本初の肥満症治療薬「ウゴービ皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mgSD」【下平博士のDIノート】第120回

日本初の肥満症治療薬「ウゴービ皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mgSD」今回は、肥満症治療薬「セマグルチド(遺伝子組換え)(商品名:ウゴービ皮下注0.25mg/0.5mg/1.0mg/1.7mg/2.4mgSD、製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ)」を紹介します。本剤は肥満症を適応として承認された日本で初めてのGLP-1受容体作動薬であり、高血圧などを有し、食事・運動療法を行っても十分な効果が得られない肥満症患者の体重減少効果が期待されています。<効能・効果>肥満症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得しました。本剤は、高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、BMIが27kg/m2以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する患者、あるいはBMIが35kg/m2以上の患者に処方されます。<用法・用量>通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として0.25mgから投与を開始し、週1回皮下注射します。その後は4週間の間隔で、週1回0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの順に増量し、以降は2.4mgを週1回皮下注射します。患者さんの状態に応じて適宜減量します。<安全性>日本人被験者が参加した第III相試験(NN9536-4373試験、NN9536-4374試験、NN9536-4382試験)において、2,008例中1,359例(67.7%)に副作用が発現しました。主なものは、悪心(36.4%)、下痢(23.5%)、嘔吐(19.1%)、便秘(19.0%)などでした。なお、重大な副作用として、低血糖、急性膵炎(0.1%)、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸が設定されています(発現率の記載のないものは頻度不明)。<患者さんへの指導例>1.この薬には、脳に作用して食欲を抑えることで、体重を減らす作用があります。2.血糖値を下げる作用があるため、脱力感、倦怠感、高度の空腹感、めまいなどの低血糖症状が現れた場合は糖質を含む食品を取ってください。また、高所作業、自動車の運転などに注意してください。3.1週間に1回、同一曜日に皮下に注射してください。適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんまたはご家族は自己注射することができます。注射は、腹部、ふともも、上腕に行います。注射箇所は毎回変更し、少なくとも前回の場所から2~3cm離して注射してください。4.1回使い切りの注射薬です。5.嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などの症状が現れた場合は、使用を中止して速やかに医師の診察を受けてください。6.次回の投与日を忘れないように、カレンダーなどに書き留めることをお勧めします。7.凍結を避けて冷蔵庫(2~8℃)で保管してください。<Shimo's eyes>本剤は、肥満症治療薬として承認された唯一のGLP-1受容体作動薬です。固定注射針付きシリンジを注入器にセットした単回使用のコンビネーション製品で、週1回皮下投与します。名称の「SD」は、単回投与を意味するSingle Doseの頭文字に由来します。GLP-1は小腸のL細胞から分泌されるインクレチンホルモンであり、血糖降下作用のほか、中枢における摂食抑制作用を有するため、体重を減少させる効果があります。本剤とDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有しているため、2型糖尿病を有する患者において両剤が併用された際の有効性および安全性は確認されていません。投与する対象患者については厳しい条件が課せられていて、(1)高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有していること、(2)食事療法・運動療法を行っても効果が不十分であること、(3-1)BMIが27kg/m2以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有していること、または(3-2)BMIが35kg/m2以上であることが求められます。日本人が参加した国際共同第III相試験(NN9536-4373試験、NN9536-4374試験)および国際共同第III相試験(NN9536-4382試験)において、投与68週時までの体重変化率および5%以上の体重減少達成率でプラセボに対する優越性を示しました。重大な副作用として、低血糖、急性膵炎が現れることがあります。嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛などが現れた場合は急性膵炎の可能性を考慮し、使用を中止して速やかに医師の診察を受けるように指導しましょう。本剤と同じセマグルチドを有効成分とする薬剤として、週1回投与の注射剤であるオゼンピック皮下注が2018年3月に、1回使い切りの同SD製剤が2020年3月に、1日1回投与の経口薬であるリベルサス錠が2020年6月に、それぞれ2型糖尿病を効能・効果として承認されています。自由診療において、これらの薬剤がダイエット・美容目的で適応外処方されることが問題となっています。ウゴービ皮下注の臨床試験では、BMIならびに肥満に関連する健康障害の参加基準が厳格に定められていたことから、これらの薬剤の不適正使用について日本糖尿病学会から注意喚起されており、健康被害の防止と適正使用の推進が求められています。なお、本剤は「最適使用推進ガイドライン対象品目」であり、処方には条件が付く可能性があります。関連サイトGLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解

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糖尿病患者、女性は男性より静脈血栓塞栓症を発症しやすい

 糖尿病患者は非糖尿病者よりも静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高いこと、特に女性患者でリスク差が大きく、かつ男性糖尿病患者との比較でもリスク差がある可能性を示すデータが報告された。ウィーン医科大学(オーストリア)のCarola Deischinger氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Research and Clinical Practice」12月号に掲載された。 糖尿病と心血管疾患(CVD)リスクとの関連については豊富なエビデンスがあり、糖尿病に伴う凝固亢進状態はCVDのみならずVTEリスクも押し上げることが想定される。ただし、糖尿病とCVDの関連に比べ、糖尿病とVTEに関するエビデンスはまだ十分でない。特に、性差についてはほとんど分かっていない。 Deischinger氏らの研究は、オーストリアの1997~2014年の医療費請求データベースを用いたレトロスペクティブなコホート研究として行われた。20~79歳の糖尿病患者18万34人と、年齢・性別が一致する糖尿病でない54万102人を対照群として設定し、VTEリスクを糖尿病の有無および性別・年齢層別に比較した。 その結果、非糖尿病群のVTEリスクは男女間で類似しているのに対して、糖尿病患者では男性より女性の方が、年齢にかかわらずほぼ一貫して相対リスクが高かった。具体的には、男性糖尿病患者は非糖尿病男性に比べてVTE診断のオッズ比(OR)が1.30(95%信頼区間1.26~1.35)であるのに対して、女性糖尿病患者は非糖尿病女性に比べてOR1.52(同1.46~1.58)だった(いずれもP<0.001)。女性糖尿病患者のオッズ比は男性糖尿病患者の1.17倍(同1.11~1.23)であり、女性糖尿病患者のVTE発症が有意に多かった。 年齢層別に見ると、20代は男性・女性ともに、糖尿病であっても有意なオッズ比の上昇は認められず、女性糖尿病患者と男性糖尿病患者との比較でも有意差はなかった。30代では男性・女性ともに、糖尿病患者で有意なオッズ比の上昇が認められたが、女性患者と男性患者の比較では有意差がなかった。40~70代は全て、男性・女性ともに糖尿病患者で有意なオッズ比の上昇が認められ、かつ女性患者は男性患者よりも有意にオッズ比が高かった。性別によるオッズ比の差が最も著しい年齢層は50代であり、女性糖尿病患者は女性非糖尿病者に対してOR2.14(1.91~2.40)、男性糖尿病患者は男性非糖尿病者に対してOR1.30(1.20~1.41)であって、女性糖尿病患者のオッズ比は男性糖尿病患者の1.65倍(1.43~1.89)に上った。 このほかに、処方されている血糖降下薬のカテゴリー別の解析も実施され、DPP-4阻害薬を処方されている女性患者は、同薬が処方されていない女性糖尿病患者に比較してVTE診断のオッズ比が有意に高いことが示された〔OR2.3(P=0.0096)〕。男性については、DPP-4阻害薬の処方の有無による有意差は見られなかった。また、インスリン、ビグアナイド薬、SU薬、チアゾリジン薬の処方の有無では、男性・女性ともに有意差がなかった。 著者らは、「われわれの研究結果は、女性糖尿病患者、特に閉経期の患者はVTEの発症を、より注意深く監視する必要があることを示唆している」と述べている。

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SGLT2阻害薬で腎結石リスク低下の可能性

 SGLT2阻害薬(SGLT2-i)が腎結石のリスクを抑制することを示唆するデータが報告された。患者データの解析や動物実験などによって明らかになったもので、東北医科薬科大学医学部腎臓内分泌内科の廣瀬卓男氏、同泌尿器科(現在は四谷メディカルキューブ泌尿器科)の阿南剛氏らによる論文が、「Pharmacological Research」12月発行号に掲載された。さらに同氏らは、経口血糖降下薬のタイプ別の解析を実施。唯一、SGLT2-iが処方されている患者のみ、尿路結石が有意に少ないという結果が、「Kidney International Reports」に2月2日、レターとして掲載された。 腎結石は健診などで偶然見つかることもあるが、しばしば突然、背中や腹部などの激痛を引き起こす。腎結石の大半はシュウ酸カルシウムの結晶が固まったもので、糖尿病やメタボリックシンドロームでは尿のpHが低下しやすいことなどのために、この結石ができやすいことが知られている。また、シュウ酸カルシウム結石ができる過程には、腎臓の尿細管でも産生されているオステオポンチンという糖タンパク質が、炎症を引き起こすことも関与していると考えられている。 一方、SGLT2-iは、尿中への糖排泄を促進して血糖値を下げる比較的新しい血糖降下薬である。血糖降下作用以外に、利尿作用や抗炎症作用をはじめとする多彩な作用を有しており、現在では慢性腎臓病や心不全の治療にも用いられている。さらにSGLT2-iが腎尿細管でのオステオポンチン産生を抑制することも報告されており、この作用は腎結石リスクの低下につながる可能性がある。ただし、実際にそのような効果があるかどうかを検討した研究結果は、これまで報告されていない。廣瀬氏らはこの点について、患者データの解析、動物実験、in vitro(試験管内)研究という3通りの研究手法で検討した。 まず、患者データの解析では、全国の急性期病院(DPC対象病院)の2020年1年間の20歳以上の糖尿病患者、男性90万9,628人、女性62万8,570人を対象として、SGLT2-iが処方されている群とされていない群に二分した上で、腎結石の診断を受けた患者の割合を比較した。その結果、男性糖尿病患者で腎結石の診断を受けた割合は、SGLT2-iが処方されていた群は2.28%、処方されていない群は2.54%であり、前者のほうが有意に低かった〔オッズ比(OR)0.89(95%信頼区間0.86~0.94)〕。女性患者は同順に1.58%、1.66%であり、有意差はなかった〔OR0.95(同0.89~1.02)〕。女性の群間差が有意でない理由として、「腎結石の有病率自体が男性より低いためではないか」と著者らは考察している。 次に、動物実験では、ラットに対してシュウ酸カルシウム結石の形成を促進する薬剤を14日間投与し、別の1群にはSGLT2-iも同時に投与した。腎結石の量をCT検査で比較したところ、SGLT2-iを同時投与されていたラットは、腎結石量が有意に少ないことが明らかになった(P<0.01)。加えて、SGLT2ノックアウトマウスに対してシュウ酸カルシウム結石の形成を促進しても、腎結石の形成が抑制されることが分かった。続いて行ったin vitro研究からは、SGLT2を阻害するとオステオポンチン遺伝子発現が抑制され、Kim1という腎障害のマーカーが低下することが明らかになった。 このようにSGLT2-iに腎結石を抑制する作用が認められたことから、再び患者データを用いて、SGLT2-iが処方されている患者と他の血糖降下薬が処方されている患者とで、尿路結石(腎結石と尿管結石)の罹患状況に差があるかを検討した。 まず、2021年の1年間の患者データを解析した結果、男性〔OR1.12(1.10~1.13)〕、女性〔OR1.70(1.67~1.73)〕ともに、糖尿病患者は糖尿病のない患者に比べて尿路結石のオッズ比が高いことが確認された。次に、糖尿病患者を対象として、SU薬、ビグアナイド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬、およびSGLT2-iという経口血糖降下薬について、その薬が処方されているか否かで二分し比較した。すると、SGLT2-i以外の全ての血糖降下薬で、処方されている群の方が、尿路結石の診断を受けた患者の割合が有意に高かった。それに対してSGLT2-iのみが処方されている患者は処方されていない患者に比べて、男性〔OR0.95(0.91~0.98)〕だけでなく、女性〔OR0.91(0.86~0.97)〕も尿路結石の診断を受けた患者の割合が有意に低かった。 また、糖尿病患者を除外し、慢性腎臓病や心不全の治療目的でSGLT2-iが処方されていた患者を対象とする検討からも、男性では同薬が処方されている群の方が、尿路結石が有意に少ないことも分かった〔OR0.42(0.35~0.51)〕。一方、女性では有意差がなかった〔OR0.90(0.68~1.19)〕。 以上、一連の結果を基に著者らは、「SGLT2-iは腎結石の形成とそれに伴う腎障害を抑制する、有力な治療アプローチになるのではないか」と総括している。その作用機序としては、「オステオポンチン遺伝子発現の抑制や抗炎症作用などの関与が想定され、また近位尿細管での重炭酸イオンの再吸収を阻害することで尿pHが上昇し、尿路結石のリスクも抑制されると考えられる」と述べている。

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triple agonist LY3437943はdual agonist チルゼパチドを凌駕する薬剤となりうるか?(解説:住谷哲氏)

 GLP-1受容体およびGIP受容体のdual agonistであるチルゼパチドは昨年製造承認されたばかりであるが、すでにその次の薬剤としてのGLP-1受容体、GIP受容体およびグルカゴン受容体に対するtriple agonistであるLY3437943(triple Gと呼ばれている)の第Ib相試験の結果が報告された。その結果は、血糖降下作用および体重減少作用の点でGLP-1受容体作動薬デュラグルチドより優れており、有害事象の点でも問題はなく、第II相試験への移行を支持する結果であった。 DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬などのインクレチン関連薬の血糖降下作用を説明する際には、これまでインスリン分泌促進作用だけではなくグルカゴン作用の抑制も強調されてきた。グルカゴンはその名称が示すように肝臓での糖新生を促進するホルモンである。2型糖尿病患者の高血糖にはグルカゴン作用が影響しており、グルカゴン作用を抑制することが血糖降下につながると説明されてきた。つまり単純に考えるとグルカゴン作用を増強すれば血糖は上昇すると考えるのが普通だろう。そこが生命の神秘というか、グルカゴン作用を増強するtriple agonist LY3437943はGLP-1受容体作動薬単剤よりも血糖および体重をより低下させることが示された。グルカゴン作用を増強することで血糖および体重が低下したメカニズムは本試験の結果からは明らかではないが、グルカゴンの持つエネルギー消費量energy expenditureの増大、肝細胞での脂肪酸β酸化の増大などが関与しているのかもしれない。 タイトルにあるチルゼパチドとの直接比較ではないので現時点ではどちらの血糖降下作用、体重減少作用が勝っているかは明らかではない。しかしtriple Gがすべての点でチルゼパチドを凌駕していればチルゼパチドを処方する必要はなくなるので、Lillyとしては難しい経営判断が必要になりそうである。

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メトホルミンに追加する血糖降下薬としてはGLP-1受容体作動薬が他剤を一歩リードしている(解説:住谷哲氏)

 多くの心血管アウトカム試験CVOTの結果を踏まえて、臓器保護薬としてのSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の位置付けはほぼ確立したといってよいだろう。しかし罹病期間の短い、合併症のない低リスク2型糖尿病患者はCVOTの対象患者には含まれていない。したがって、CVOTの結果がこれらの低リスク患者にそのまま適用できるかどうかは不明である。 基礎治療薬としてのメトホルミンの有効性はUKPDS 34で明らかにされたが、メトホルミン単剤で血糖コントロールが維持できないときに追加すべき血糖降下薬としては何が適切かは実は明らかになっていない。そこでメトホルミンに追加する血糖降下薬としての持効型インスリンのグラルギン、SU薬のグリメピリド、GLP-1受容体作動薬のリラグルチドそしてDPP-4阻害薬のシタグリプチンの有効性を比較した比較有効性試験comparative-effectiveness studyが本試験GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Type 2 Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)である。製薬企業が自社製品でない薬剤の有効性を証明する試験を実施することはないので、本試験は米国国家予算で実施され、薬剤を含めたすべての介入は無償で提供された。したがって、本試験における有効性effectivenessは医療費を考慮しない状況下でのeffectivenessであることに注意が必要である。結果は、glycemic durabilityにおいてはリラグルチドとグラルギンが、体重減少においてはリラグルチドとシタグリプチンが他剤に比較してより有効性が高かった。 先日発表されたADA/EASDのコンセンサスステートメントでは、2型糖尿病管理の4本柱は血糖管理glycemic management、体重管理weight management、心血管リスク管理cardiovascular risk management、心腎保護薬の選択cardiorenal protection-choice of glucose-lowering medicationとされている1)。ハイリスク患者におけるGLP-1受容体作動薬の有効性はCVOTにおいてすでに報告されているが、本試験の別の報告においても心血管アウトカムに関してリラグルチドの有効性が示唆されている2)。したがって、血糖管理、体重管理、心腎保護薬の選択からメトホルミンに追加する薬剤としては、GLP-1受容体作動薬が他剤を一歩リードしているといってよいだろう。 本試験が企画された2012年ごろには、まだSGLT2阻害薬が市場に登場していなかった。また、ピオグリタゾンについては安全性に対する懸念が少なからずあったことと予算の関係から、選択肢として試験に組み込まれなかった。メトホルミンに追加した場合の両薬剤のglycemic durabilityについてもぜひ知りたいところである。

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世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」【下平博士のDIノート】第111回

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注アテオス」今回は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド注射液(商品名:マンジャロ皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、GIPとGLP-1の2つの受容体に単一分子として作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬であり、選択的かつ長時間にわたる血糖値の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgを4週間皮下投与した後、維持用量である週1回5mgに増量します。患者の状態に応じて適宜増減し、週1回5mgで効果不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて2.5mgずつ増量することができます。最大用量は週1回15mgです。<安全性>日本人および外国人2型糖尿病患者を対象とした国際共同第III相試験、日本人2型糖尿病患者を対象とした国内第III相試験の本剤5mg投与群において、副作用は544例中232例(42.6%)で報告されています。主なものは、悪心60例(11.0%)、下痢48例(8.8%)、食欲減退46例(8.5%)、便秘44例(8.1%)などでした。なお、重大な副作用として、低血糖(頻度不明)、急性膵炎(0.1%未満)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、GIP/GLP-1受容体作動薬と呼ばれる2型糖尿病の治療薬です。血糖値が高くなるとインスリンの分泌を促進し、またインスリンを効きやすくすることで血糖値を下げます。2.週1回、同じ曜日に投与してください。オートインジェクター型注入器は1回使い切りです。3.めまいやふらつき、動悸、冷や汗などの低血糖症状を起こすことがあるので、高所作業、自動車の運転など危険を伴う作業を行う際は注意してください。これらの症状が認められた場合は、ただちに糖質を含む食品を摂取してください。4.悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退が強い場合はご相談ください。5.嘔吐を伴う激しい腹痛が現れた場合は使用を中止し、速やかに受診してください。6.冷蔵庫内などで光が当たらないように保管してください。凍結は避けて、もし凍結した場合は使用しないでください。室温で保管する場合は、外箱から出さずに保管し、21日以内に使用してください。30℃を超える場所では保管しないでください。<Shimo's eyes>本剤は、39個のアミノ酸を含む合成ペプチドであり、単一分子でグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の双方に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。GIPとGLP-1はいずれも食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、血糖が高い場合には膵臓におけるインスリン分泌を促進するとともに、食欲減退や満腹感亢進による体重増加の抑制作用が期待されています。なお、米国では2022年5月に「成人2型糖尿病治療における血糖コントロール改善のための食事および運動療法の補助療法」として承認を取得しているので、わが国よりも早期のステージでの使用が想定されます。注入器のアテオスは、既存のトルリシティにも使用されているオートインジェクターで、1回使い切りのキットです。注射針付きのシリンジがあらかじめ装填されており、空打ちをすることなく、ボタンを押すだけで自動的に投与することができます。医療機関において、適切な在宅自己注射教育を受けた患者さんやご家族は本剤の自己注射が可能です。国内の実薬対照二重盲検比較試験(SURPASS J-mono試験)では、主要評価項目であるHbA1cのベースラインから投与52週時までの平均変化量について、デュラグルチド0.75mg(商品名:トルリシティ)に対する本剤5mg、10mg、15mgの優越性が認められました。また、非盲検長期安全性試験(SURPASS J-combo試験)では、本剤5mg、10mg、15mgを経口血糖降下薬単剤と併用し、安全性および有効性が確認されました。主な副作用として、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退などの消化器症状が報告されており、投与開始時の用量の漸増は、胃腸障害リスクの回避・軽減を目的としています。用量依存的な体重減少も認められているため、過度の体重減少にも注意する必要があります。投与開始時のBody Mass Index(BMI)が23kg/m2未満の患者での有効性および安全性は検討されていません。なお、本剤とDPP-4阻害薬はいずれもGLP-1受容体およびGIP受容体を介した血糖降下作用を有しています。両剤を併用した際の臨床試験成績はないため、併用処方の場合には疑義照会が必要です。

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非専門医が使える「糖尿病治療のエッセンス」2022年版/日本糖尿病対策推進会議

 わが国の糖尿病患者数は、糖尿病が強く疑われる予備群を含め約2,000万人いるとされているが、糖尿病の未治療者や治療中断者が少なくない。 そこで、糖尿病診療のさらなる普及を目指し、日本糖尿病学会をはじめとする日本糖尿病対策推進会議は、糖尿病治療のポイントをとりまとめて作成した『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』を制作し、日本医師会のホ-ムページより公開した。糖尿病治療のエッセンスの改訂は今回で5回目となる。 糖尿病治療のエッセンスの今改訂では、(1)かかりつけ医から糖尿病・腎臓の専門医・専門医療機関への照会基準を明確に解説、(2)最新の薬剤情報へアップデートなど、よりわかりやすい内容に見直しを行った。『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』主な内容と使用図表の一覧(主な内容)1)糖尿病患者初診のポイント2)治療目標・コントロール指標3)治療方針の立て方4)食事療法・運動療法 薬物療法のタイミングと処方の実際5)糖尿病合併症 医療連携 (使用図表)図1 糖尿病の臨床診断のフローチャート図2 血糖コントロール目標図3 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)図4 糖尿病患者の治療方針の立て方図5 有酸素運動とレジスタンス運動図6 かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準図7 かかりつけ医から腎臓専門医・専門医療機関への紹介基準表1 その他のコントロール指標表2 主な経口血糖降下薬の特徴(赤字は重要な副作用)表3 GLP-1受容体作動薬 (リベルサス以外は注射薬)表4 インスリン注射のタイミング、持続時間と主な製剤の比較表5 基礎インスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の配合注射薬表6 代表的なインスリンを用いた治療のパターン表7 糖尿病性腎症病期分類図 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム別表 安全な血糖管理達成のための糖尿病治療薬の血糖降下作用・低血糖リスク・禁忌・服薬継続率・コストのまとめ 同会議では「糖尿病診療は新しい取り組みや薬物療法など、そのとりまく環境は大きく変化している。本書を活用し、最新の知見について理解を深め、日常診療において、糖尿病患者の早期発見、治療に役立てて、糖尿病診療に携わる医療関係者にとって医療連携のツールとして、その発展につながることを願っている」と『糖尿病治療のエッセンス(2022年版)』に期待を寄せている。

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2型糖尿病のCOPD重症化、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬が有効か/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で2型糖尿病(DM)の患者において、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬は、スルホニル尿素(SU)薬と比べ、COPD増悪による入院リスクを約30~38%低減することが示された。また、GLP-1受容体作動薬は、中等度増悪リスクを37%低減した。一方でDPP-4阻害薬は、COPD増悪リスクの明らかな低減は認められなかったという。カナダ・マギル大学のRicheek Pradhan氏らが、英国国民保健サービス(NHS)データを基に行った住民ベースの3種実薬比較新規使用者デザインコホート試験の結果で、BMJ誌2022年11月1日号で発表した。3種の新規血糖降下薬vs.SU薬を評価 研究グループは、英国の全NHS病院入院データ「Hospital Episode Statistics Admitted Patient Care and Office for National Statistics」とリンクした、大規模プライマリケアデータ「Clinical Practice Research Datalink」を基に住民ベースコホート試験を行った。 被験者は、試験薬(GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬)のいずれか、またはSU薬を、新たに服用開始したCOPD既往の2型DM患者だった。 第1コホートにはGLP-1受容体作動薬の服用を開始した1,252例とSU薬服用を開始した1万4,259例が、第2コホートにはDPP-4阻害薬服用を開始した8,731例とSU薬服用を開始した1万8,204例が、第3コホートにはSGLT-2阻害薬服用を開始した2,956例とSU薬服用を開始した1万841例がそれぞれ含まれた。 主要アウトカムはCOPDの重症増悪(COPDによる入院と定義)で、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、SGLT-2阻害薬それぞれについて、傾向スコア層別化重み付けCox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)値を推算して評価した。また、これら3つの試験薬が中等度増悪(同日に、COPD急性増悪の外来診断と、経口コルチコステロイドと抗菌薬の同時処方と定義)のリスク減少と関連するかどうかも検証した。COPD重症増悪リスク、GLP-1受容体作動薬は30%、SGLT-2阻害薬は38%低減 SU薬と比較して、GLP-1受容体作動薬はCOPD重症増悪リスクを30%低減した(100人年当たり3.5 vs.5.0、HR:0.70、95%CI:0.49~0.99)。また中等度増悪リスクも37%低減した(0.63、0.43~0.94)。 同様にSGLT-2阻害薬も、COPD重症増悪リスクを38%低減した(100人年当たり2.4 vs.3.9、HR:0.62、95%CI:0.48~0.81)。一方で、中等度増悪リスクの低減は認められなかった(1.02、0.83~1.27)。 DPP-4阻害薬は、COPD重症増悪リスク、中等度増悪リスクともに低減はわずかだった(それぞれHR:0.91[95%CI:0.82~1.02]、0.93[0.82~1.07])。

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時のHbA1c値への効果に差は?/NEJM

 2型糖尿病患者では、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の目標値を維持するために、メトホルミンに加えいくつかの種類の血糖降下薬が投与されるが、その相対的有効性は明らかにされていない。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、4種類の血糖降下薬の効果を比較し、これらの薬剤はいずれもメトホルミンとの併用でHbA1c値を低下させたが、その目標値の達成と維持においては、グラルギンとリラグルチドが他の2剤よりもわずかながら有意に有効性が高いことを確認した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号で報告された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、糖尿病の罹病期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、過去6ヵ月間に他の血糖降下薬を使用しておらず、HbA1c値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、スルホニル尿素薬グリメピリド、GLP-1受容体作動薬リラグルチド、DPP-4阻害薬シタグリプチンを投与する群に無作為に割り付けられた。全例がメトホルミンの投与を継続した。 代謝に関する主要アウトカムは、HbA1c値≧7.0%とされ、年4回の測定が行われた。代謝に関する副次アウトカムは、HbA1c値>7.5%であった。体重減少はリラグルチドで最も大きい 5,047例が登録され、グラルギン群に1,263例、グリメピリド群に1,254例、リラグルチド群に1,262例、シタグリプチン群に1,268例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、10ヵ所の退役軍人省医療センターの参加を反映して63.6%が男性であり、白人が65.7%、黒人が19.8%、ヒスパニック/ラテン系が18.6%含まれた。 それぞれの平均値は、糖尿病の罹病期間4.2±2.7年、メトホルミンの1日投与量1,994±205mg、BMI 34.3±6.8、HbA1c値7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年であり、85.8%が4年以上の追跡を受けた。 HbA1c値≧7.0%の累積発生割合には、4つの治療群で有意な差が認められた(全体的な群間差の検定のp<0.001)。すなわち、100人年当たりグラルギン群が26.5、リラグルチド群は26.1とほぼ同様であり、これらはグリメピリド群の30.4、シタグリプチン群の38.1に比べて低かった。これは、HbA1c値<7.0%の期間が、シタグリプチンに比べグラルギンとリラグルチドで約半年間長くなることを意味する。 また、HbA1c値>7.5%の発生割合に関しては、群間差に主要アウトカムと同様の傾向がみられ、100人年当たりグラルギン群が10.7、リラグルチド群は13.0であり、グリメピリド群の14.8、シタグリプチン群の17.5よりも低かった。 事前に規定された性別、年齢、人種/民族別のサブグループでは、主要アウトカムに関して4つの治療群で実質的な差はみられなかった。一方、ベースラインのHbA1c値が高かった(7.8~8.5%)患者では、HbA1c値<7.0%の維持または達成において、シタグリプチン群は他の3剤と比較して効果が低かった。 重症低血糖はまれだったが、グリメピリド群(2.2%)は、グラルギン群(1.3%、p=0.02)、リラグルチド群(1.0%、p≦0.001)、シタグリプチン群(0.7%、p≦0.001)に比べ有意に高頻度であった。消化器系の副作用の頻度は、リラグルチド群(43.7%)が他の治療群(グラルギン群35.7%、グリメピリド群33.7%、シタグリプチン群34.3%)に比べて高かった。また、4年間の平均体重減少はリラグルチド群(3.5kg減)とシタグリプチン群(2.0kg減)が、グラルギン群(0.61kg減)とグリメピリド群(0.73kg減)よりも大きかった。 著者は、「本試験で得られた重要な示唆は、たとえすべての治療が無料で提供される臨床試験であっても、HbA1cの目標値の維持は困難なことである。このデータは、2型糖尿病患者における長期的な血糖コントロールの、より効果的な介入の必要性を強調するものである」と指摘し、「これらの知見は、メトホルミンへの追加の薬剤を選択する際に、医療者と患者の共有意思決定の基礎となるだろう」としている。

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