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抗凝固薬服用のまま可能な大腸ポリープ新治療法が有用~大阪国際がんセンター

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)の竹内洋司氏(消化管内科副部長)らの研究グループが、10mm未満の大腸ポリープに対し、電気を使わずにポリープを切除する「コールドスネアポリペクトミー」が、抗凝固薬を服用したままでも従来の治療法より出血が少なく、入院が不要で、治療時間が短いことを、多施設研究において世界で初めて証明した。この研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2019年6月16日号に掲載。 大腸ポリープの多くは、将来的に大腸がんの原因となり得るため、一般的に内視鏡切除が行われる。その際、通電して焼灼し、血液を凝固させながら切除する方法が従来は一般的であった。 近年、不整脈などの心臓疾患による血栓症を防ぐために、ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬を服用する患者が増加しているが、抗凝固薬を服用していると、ポリープ切除に伴う出血が増加する恐れがある。そのため、術前に服用を一時的に中止してヘパリンを点滴投与し、治療後に抗凝固薬を再開する「ヘパリン置換」が行われてきた。しかし、この処置は手順が煩雑であり、より簡便な方法が求められていた。 今回の研究では、抗凝固薬を服用し、10mm未満の大腸ポリープを有する患者182例が国内30施設から計184例が登録された。「ヘパリン置換+通電切除」群(90例)と、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群(92例)に無作為に割り付け、ポリープ切除から28日後に追跡調査を行い、各々の予後を検証した(2例が登録後に不参加)。主要評価項目は、ポリープ切除に関連した大出血の発生頻度であった。 その結果、「ヘパリン置換+通電切除」群では患者の12.0%で治療後に出血が見られたが(95%信頼区間[CI]:5.0~19.1)、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では4.7%にとどまった(95%CI:0.2~9.2)。また、「ヘパリン置換+通電切除」群では5日程度の入院が必要で、ポリープの処置にも時間を要していたが、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では、入院が不要で外来治療が可能であり、ポリープ切除にかかる平均処置時間は、約90秒から約60秒に短縮された。 今回の研究により、抗凝固薬を服用している患者の10mm未満の大腸ポリープであれば、服用を継続したままコールドスネアポリペクトミーによる切除のほうが治療後の経過が良いことがわかった。また本結果は、抗凝固薬を服用する患者だけでなく、服用しない患者とっても、コールドスネアポリペクトミーのメリットがあることを示すものである。

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心房細動アブレーションに対するエドキサバン継続 vs.ワルファリン継続(ELIMINATE-AF)【Dr.河田pick up】

 エドキサバンはFXa(活性化血液凝固第X因子)を選択的に阻害することにより、心房細動患者において脳梗塞を予防する。心房細動アブレーションを受ける患者に対するエドキサバンの継続療法に関しては、これまで試験が行われていない。 ELIMINATE-AF試験は、多国籍、多施設共同、オープンラベルの無作為化並行群間比較試験。カテーテルアブレーションを受ける心房細動患者における、ワルファリンと比較したエドキサバン(1日1回60mg、減量投与が必要な患者には30mg)の安全性と有効性を評価するために行われた。ドイツのStefan H. Hohnloser氏、チェコのJosef Kautzner氏らヨーロッパのグループによる、European Heart Journal誌オンライン版4月11日号への報告。プライマリーエンドポイントは全死亡、脳卒中、大出血イベント 患者は2:1の割合でエドキサバン群とワルファリン群に無作為に割り付けられた。プライマリーエンドポイントは、アブレーション終了から治療終了まで(90日)の、全死亡、脳卒中、国際血栓止血学会が定めた大出血の最初の発生までの期間とされた。ヨーロッパ、アジア、カナダの11ヵ国の58施設から全体で632例が組み入れられ、614例が無作為化された。553例が割り当てられた薬剤を投与され、アブレーションを受けた。そのうち177例は、無症候性の脳梗塞を評価するために頭部MRIを受けている。プロトコールを遵守して最終的な解析(パー・プロトコール解析)を受けたのは417例(エドキサバン316例、ワルファリン101例)であった。 アブレーション前の抗凝固療法は、ガイドラインに準じて21~28日間行われた。また、アブレーション前に経食道エコーが行われ心内血栓が見つかった場合、手技は中止された。内因性のXa因子の阻害を保つため、最後のエドキサバン投与からアブレーションまでの時間は最大で18時間とした。プライマリーエンドポイントの発生はエドキサバン群2.7%、ワルファリン群1.7% プライマリーエンドポイント(大出血のみ発生)は、エドキサバン群で0.3%(1例)、ワルファリン群で2.0%(2例)であった(ハザード比:0.16、95%信頼区間:0.02~1.73)。アブレーションを受けた患者において(アブレーション患者を含む修正intention-to-treat[ITT]解析集団)、プライマリーエンドポイントは、アブレーション開始から治療終了時までの間にエドキサバン群で2.7%(10例)、ワルファリン群で1.7%(3例)に発生した。虚血性脳梗塞、脳出血による脳梗塞が1例ずつ発生し、ともにエドキサバン群であった。微小脳梗塞はエドキサバン群で13.8%(16例)、ワルファリン群で9.6%(5例)に認められた(名目上のp=0.62)。 全期間を通しての大出血イベントはエドキサバン群(1日1回60mg)2.5%であり、これはRE-CIRCUIT試験におけるダビガトラン(1日2回150mg)での1.6%、とAXAFA試験におけるアピキサバン(1日2回5mg)での3.1%と同様であったとしている。 また、ワルファリン群とエドキサバン群の間で大出血に統計学的な有意差は認められなかったが、臨床経過中に認められた非大出血はエドキサバン群で多い傾向にあり、これらのほとんどが術後48時間以内に起こったものであった。エドキサバンとワルファリン、プライマリーエンドポイントで有意差は認められず 結論として筆者らは、心房細動アブレーションを受ける患者においてエドキサバンの継続はワルファリンの継続の代替となりうるとしている。また、これまでの研究結果と同様、DOAC投与群で術後のMRIで無症候性の微小脳梗塞が高頻度で認められていたことも重要であろう。

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症候性AFの第一選択にアブレーション加わる/不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)

 「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは2011年改訂の「不整脈非薬物治療ガイドライン」、および2012年発表の「カテーテルアブレーションの適応と手技に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)で、ガイドライン作成の合同研究班班長である栗田 隆志氏(近畿大学病院 心臓血管センター)、野上 昭彦氏(筑波大学医学医療系 循環器不整脈学)が、植込み型心臓電気デバイス(CIED)とカテーテルアブレーションの主な改訂点についてそれぞれ講演した。ICD適応を日本のエビデンスで裏付け CIEDでは、虚血性の冠動脈疾患および非虚血性心筋症に対する植込み型除細動器(ICD)の適応を、フローチャートの形で整理。ともに考え方や推奨度そのものは、2011年版から大きな変化はない。しかし非虚血性心筋症に対する一次予防では、DANISH試験を含むメタ解析や日本発のエビデンスなど、最新試験結果による推奨度の裏付けがなされた。 栗田氏は、「とくに2つの日本のデータから、非虚血性心筋症の一次予防におけるICD適応の根拠を得ることができたことは大きい。2015年発表のCHART-2試験によって示された、1次予防適応のクラスIならびにクラスIIa相当の患者における致死的不整脈の発生率はこの推奨度を支持する。また、2018年発表のNippon Stormからは、非虚血性の一次予防における適切作動率が、虚血性の二次予防と同程度という結果が得られており、有用性が示されている」と述べた。ESCではQRS幅130ms未満はCRT禁忌、しかし日本では? 心臓再同期療法(CRT)の適応は非常に複雑なため、NYHA心機能分類、薬物治療の施行、LVEF、QRS波形、QRS幅、調律に応じた推奨度を一覧化した表を不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)で初めて掲載している。この中で議論となったのが、CRT 適応とするQRS幅の下限値だ。2013年のEchoCRT試験の結果を受けて、ESC(欧州心臓病学会)の2016年のガイドラインでは、130ms未満はクラスIII(禁忌)となっている。 しかし、日本では120~130msの心筋症患者でもCRTレスポンダーの報告があること、またEchoCRT試験のサブ解析では、左室拡張末期容量(LVEDV)の小さな症例ではCRTの有用性が示されていることなどから、本改訂版では変更なく、下限値を120msとしている。 その他、旧版以降に登場した、リードレスペースメーカ、ヒス束ペーシング、経皮的リード抜去術などの新たな治療法についてもガイドラインでは項目立てされ、エビデンスが整理されている。症候性AFでは、薬物治療とカテーテルアブレーションが第一選択に 野上氏は、まず大前提として甲状腺機能亢進症、肥満、高血圧、糖尿病といった心房細動(AF)のリスク因子の適切な治療なくして、カテーテルアブレーションの施行はないことを強調。そのうえで、症候性AFにおいては、近年発表された3つのRCTやメタ解析でその有用性が示されたことから、抗不整脈薬の投与を経ないカテーテルアブレーションの施行を、抗不整脈薬投与とともに第一選択としてガイドラインでは推奨したと説明した。発作性/持続性AFでは、第一選択としてクラスIIaの推奨度が示されている。長期持続性AFについてはエビデンスが十分ではないが、抗不整脈薬による治療効果が乏しいため、同じくIIbの推奨度がガイドラインでは示されている。 一方、無症候性AFでは、長期予後を改善するというエビデンスは十分ではない。そのため不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では2012年版と変更なく、推奨度はIIbのままとなっている。周術期の抗凝固療法についての改訂点は まず、ワルファリンとダビガトランを投薬中の患者については、休薬なしでAFアブレーションを施行することにクラスI、その他のDOACについてはクラスIIaの推奨度が不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)では示された。一方、多くの病院で行われている、DOACの術前1回ないし2回の休薬についても、ABRIDGE-J試験の結果などからIIaの推奨度となっている。 その他、単形性持続性心室頻拍(VT)におけるアミオダロン投与有の患者、右室流出路あるいは末梢プルキンエ線維起源の心室期外収縮(PVC)契機の多形性VT・心室細動(VF)に対するアブレーションに、クラスIの推奨度が示されている。■関連記事「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会急性冠症候群ガイドラインの改定点は?/日本循環器学会

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鳴り物入りで登場しても…(解説:後藤信哉氏)-1025

 いわゆるDOACは使いやすい。しかし、選択的・可逆的な凝固因子阻害薬では、血栓イベントリスクの高い症例では効果を期待できない。静脈血栓症も再発リスクの高い、体内局所の血栓性が亢進する病態に通用するか否か疑問があった。本研究では、1)がん、2)静脈血栓リスクが高い、3)抗がん剤治療開始、の3条件のそろった症例を、リバーロキサバンとプラセボにランダム化した。相手がプラセボであってもリバーロキサバンは静脈血栓発症予防効果を示せなかった。 抗がん剤治療は進歩したが、上記の3条件を満たすがん症例の死亡率は高い。死亡率に比較すれば血栓イベントリスク、出血イベントリスクは低い。リバーロキサバンは10mg/日が使用された。狭い適応を確実に守ろうとする他の2種の抗Xa薬の戦略と異なり、リバーロキサバンはさまざまな病態、用量が試みられた。直接的な凝固因子阻害薬が本当に有用な病態は少ないことを示す臨床試験を、数多く施行していることを評価すべきであろう。

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「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」発表/日本循環器学会

 「心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)」が、2019年3月29日に発表された。本ガイドラインは「肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)」および2011年発表の「拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン」の統合・改訂版。第83回日本循環器学会学術集会(3月29~31日、横浜)において、心筋症診療ガイドライン作成の合同研究班班長を務めた北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学)が、その内容について講演した。 同氏は、心筋症診療ガイドラインの本改訂において重視した点として下記3つのポイントを挙げたうえで、心筋症全体の定義と分類、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)の診断・治療について、主な改訂点を解説した。1.これまでの心筋症の分類法を参考にしながら、わが国の診療実態に即した心筋症の新しい定義の作成2.HCMは、EBMの十分でない疾患であるため、ACCF/AHA、ESCのガイドラインを参考に、わが国より発信されたエビデンスを盛り込みながら、診療現場での実際の意思決定に有用であること3.DCMにおける病因解明の進歩を折り込み、本症が左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)の代表的な疾患であることより、急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参照した最新の診療・治療方針を明示すること心筋症診療ガイドラインでは心筋症を4つの基本病態に整理 心筋症の分類としては、米国心臓協会(AHA)の病因による分類(2006年発表)、欧州心臓病学会(ESC)の形態による分類(2008年発表)が知られる。心筋症診療ガイドラインでは、従来通り形態や機能から心筋症を診断する。その際には、“常に病因としての遺伝性/非遺伝性を意識し、心アミロイドーシスやファブリー病など二次性心筋症を鑑別したうえで確定されるべきである”とされた。 原発性(特発性)心筋症としての病名を、肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈原性右室心筋症、拘束型心筋症の4つに分類している。さらに“これらの病型にOverlapがあることを明示した”ことも重要なポイントである。新ガイドラインでは肥大型心筋症は安静時に圧較差がなくても負荷をかけて心エコー推奨 肥大型心筋症については、近年の報告から「左室壁15mm(家族歴がある場合は13 mm)以上の心肥大」と診断上の定義を心筋症診療ガイドラインでは明記。そして閉塞性肥大型心筋症(HOCM)については、安静時に圧較差がある症例に加えて、負荷によって30mmHg以上の圧較差を認める場合もHOCMとして定義している。北岡氏は、「従来、HOCMは安静時の圧較差30mmHg以上と提唱されてきた。しかしこの10年ほどで、安静時には圧較差が認められなくても、負荷をかけると認められる症例が多く存在し、HCM全体の7割程度で、圧較差が病態と関係するということが分かってきた」とその背景を解説した。HCMと確定診断された患者では、バルサルバ手技などによる負荷を、心エコー検査中に行うことを推奨している。 そのほか新たな心筋症診療ガイドラインでは、MRIは形態学的評価だけでなく、二次性心筋症との鑑別あるいは予後予測において、最も推奨度の高いクラスIに変更された。心筋生検については、MRIの進歩などによりルーチンでの実施は不要と位置付けられている。「ただし、決して心筋生検の重要性が後退したということではなく、不明の場合の最終検査としては非常に重要」と同氏は補足。また、遺伝子診断についての推奨度が2012年版から大きく再整理・変更されていることも説明された。肥大型心筋症の突然死予防にガイドラインでICD植込み適応をフローチャート化 肥大型心筋症の薬物治療については、従来通りで新ガイドラインに大きな変更はない。突然死予防は、ICD植込み適応の考え方が再整理された。2012年度版から5つの主要リスク因子および修飾因子を一部変更。これまで重みづけされていなかった各主要リスク因子についてエビデンスを基に重みづけし、フローチャートの形でICD植込み適応の推奨度を示した。 そのほか、圧較差と不整脈に対する治療法は、近年の知見を盛り込んだ形に一部変更されている。不整脈については、心房細動患者に対する抗凝固療法にクラスIの推奨度とエビデンスレベルが記された。エビデンスの充実からワルファリン使用の推奨が明記され、DOACについても「有用性が期待される」という形で新たに記載された。抗がん剤によるリスクを整理、またクラスIの推奨となった遺伝子検査も(DCM) 新たな心筋症診療ガイドラインでは、DCMの定義に大きな変更はないが、近年左室機能障害を引き起こす重要な原因として指摘されている抗がん剤について、報告されている発症率とともに一覧化された表が初めて掲載された。 検査に関しては、HCM同様二次性心筋症との鑑別や予後予測においてもMRIによる評価に推奨度が記載された。「ただし、HCMほどデータが十分ではないという判断から、クラスIIaの推奨度となっている」と同氏は話した。心筋生検の位置づけはHCMと同様となっている。 DCMにおける遺伝子検査については、「40以上ある原因遺伝子の中で、特にタイチンとラミンについては検査に臨床的意義があると判断された」と述べ、タイチンにIIa、ラミンにIの推奨度が記載されている。MitraClipの COAPT試験の結果を反映 DCMの治療に関しては、「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」に基づく内容となっている。加えて、その後の知見としてMitraClipの COAPT試験の結果も反映された。 また、ラミンA/C変異を有する患者は予後が悪いことが、日本人を対象とした試験でも報告されている。そのため、新たな心筋症診療ガイドラインでは“提言”の形で、ESCあるいはAHA/ACC/HRSガイドラインにおけるICD植込み適応(リスク因子と推奨度)を紹介している。

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血液凝固の難しいところ(解説:後藤信哉氏)-1011

 血液凝固、血栓の非専門医は、Xa阻害はトロンビン阻害の上流程度の認識をしている。Xa阻害薬とトロンビン阻害薬が商業的にNOAC、DOACなどと包括されたことも誤解を増した。実際にはトロンビン阻害薬とXa阻害薬には本質的な差異がある。Xaは活性化血小板などの細胞膜上にて、他の凝固因子、リン脂質とプロトロンビナーゼ複合体を形成してトロンビン産生速度を上昇させる。トロンビン阻害薬の効果を阻害するためには、液相のトロンビンの酵素阻害作用を解除させればよかった。Xaは、液相に存在するものよりも、細胞膜上にてプロトロンビナーゼ複合体を構成している役割のほうが大きい。トロンビン阻害薬の効果は抗体により阻害できた。Xa阻害薬では、細胞膜上のプロトロンビナーゼ複合体中のXaの機能も阻害されているため液相のXa阻害の中和に加えて細胞膜上のXa阻害の中和の工夫が必要である。 andexanet alfaはXa阻害薬の効果を中和する薬剤であるが、トロンビン阻害薬の効果を阻害する抗体とはまったく異なる。トロンビン阻害薬の中和薬の効果は凝固マーカーの計測により臨床効果を予測できた。しかし、Xa阻害薬の中和薬であるandexanet alfaの出血イベント予防効果は血液凝固マーカーにより予測できないことが本研究により示唆された。Xa阻害薬の中和薬としてXaのおとりを使用するとのコンセプトは科学的に革新的であった。しかし、血液凝固マーカーにより臨床イベント予測ができないことは当初から懸念された。本研究は当初の懸念が事実であることを示唆した。凝固マーカーにより臨床イベントを予測できないとなると、イベント発症率を比較するランダム化比較試験が必要となる。 本研究は重要である。血液凝固における「cell based coagulation」まで考慮すると薬剤の効果予測が困難となる。andexanet alfaの臨床開発が困難との解釈もできるし、これまで血液凝固マーカーを指標に薬剤スクリーニングを行ってきたが、意外なところに血栓イベントを予防可能な「cell based coagulation」阻害薬が隠れている可能性も示唆している。比較的単純な生体現象である「血液凝固の難しいところ」を示す貴重な研究であった。

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抗凝固薬の選択~上部消化管出血とPPIの必要性(解説:西垣和彦氏)-985

抗凝固薬の宿命 “出血しない抗凝固薬はない”。もともと抗凝固薬自体に出血をさせる力はないが、一旦出血したら止血するのに時間がかかるために出血が大事をもたらすこととなる。そもそも出血傾向をもたらすことが抗凝固薬の主作用であるので至極自明なことではあるのだが、直接経口抗凝固薬(DOAC)だけでなくビタミンK依存性凝固因子の生合成阻害薬であるワルファリンを含めて、“凝固薬自体が出血を起こさせた”と理解している方がいかに多いことか。 近年、わが国だけでなく欧米においても、心房細動により生成される心内血栓が遊離して塞栓となる心原性脳血栓塞栓症には多大な配慮を行っている。この理由として、この心原性脳血栓塞栓症の発症自体は年間3~4%と低い発症率と推定されてはいるが、脳梗塞の他の病態であるアテローマ性やラクナ梗塞と同程度の頻度があり決して少なくないという点、さらに一旦発症すると非常に大きな血栓塊であることが多いため、2割が急死、4割が要介護4以上という悲惨な病状に追い込まれ、由緒正しい重度の寝たきりとなる危険性があるためである。このことは、わが国だけでなく国際的にも医療費の膨大に頭を悩ませている関係者においても、由々しき疾患であることは間違いない。そこで、抗凝固薬をなるべく多くの心房細動患者に投与し、少しでも寝たきりとなる症例を減らそうということになるが、すべからく前述の消化管出血への適切な対応が問題として浮上してくる。この、抗凝固薬の宿命ともいえる命題に対して、(1)最も上部消化管出血が少ない抗凝固薬はどれか?(2)上部消化管出血をプロトンポンプ阻害薬(PPI)は本当に予防できるのか? の2点をコホートで検証したのが本論文である。本論文のポイントは? 本論文は、2011年1月1日~2015年9月30日までにおけるメディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。比較した抗凝固薬は、アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、そしてワルファリンの4剤で、上部消化管出血の頻度を比較し、PPI併用あるいはPPIなしで上部消化管出血の予防効果も比較している。主要評価項目は、上部消化管出血による入院とし、抗凝固療法1万人年当たりの補正後発生率およびリスク差(RD)、発生率比(IRR)を算出。解析対象は、新規に抗凝固薬が処方された171万3,183件、164万3,123例(平均76.4歳、追跡65万1,427人年、女性56.1%、心房細動患者74.9%)。 PPI併用のなかった75万4,389人年で、上部消化管出血の発生は7,119件、補正後発生率115件/1万人年であった。薬剤別では、リバーロキサバン144件/1万人年、アピキサバン73件/1万人年、ダビガトラン120件/1万人年、ワルファリン113件/1万人年であり、上部消化管出血発生率はリバーロキサバンが最も高率、アピキサバンはダビガトラン、ワルファリンよりも有意に低かった。 PPI併用のある26万4,447人年では、上部消化管出血の発生は2,245件、補正後発生率は76件/1万人年であり、PPI併用なしと比較して上部消化管出血による入院を大きく減らした(IRR:0.66)。このことは、抗凝固薬の種類によらず(アピキサバン[IRR:0.66、RD:-24]、ダビガトラン[IRR:0.49、RD:-61.1]、リバーロキサバン[IRR:0.75、RD:-35.5]、ワルファリン[IRR:0.65、RD:-39.3])、いずれにもPPIは有効であった。本論文の意義と読み方 本論文の結論は、以下の2点である。(1)上部消化管出血による入院率は、リバーロキサバンで最も高く、アピキサバンで最も低い。(2)各抗凝固薬いずれもPPIは有効であり、上部消化管出血による入院率を低減させる。 メディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究は、これまでも抗凝固薬に関連した多くの報告をしており、抗凝固薬の特性から到底割り付け困難と思われるワルファリンとの大規模無作為比較試験の結果を補正するリアルワールドの実臨床に則したデータを示してきた。DOAC間ではリバーロキサバンがアピキサバンに比べて明らかに大出血率が高い(HR:1.82)ことは以前にも報告されており1)、同じデータベースに基づくだけに結論が同じとなることは必定、新鮮味がないことは否めない。メディケアは、65歳以上の高齢者と障害者のための米国医療保険であり、国が運営する制度であるが、メディケアを受給できる人は一定の条件を満たす特別な米国人であることを忘れてはならない。あくまでも、保険請求のあった主観的な事後報告のコホート試験である。医師の薬剤選択によるバイアスや他の雑多な患者選択特性をプロペンシティ・スコア・マッチングでそろえて比較した試験であるので、エビデンスレベルとしてはお世辞にも決して高くはない。また何よりも抗凝固薬に対する大規模比較試験では、人種差や医療レベルの違いが副作用としての消化管出血の頻度に大きく影響することもすでに指摘されており、この論文の結果そのものがわが国でも当てはまるとは限らないことを強調したい。PPIの強力な上部消化管出血予防効果には既存の報告からも疑問の余地はないが、果たして万人に必要か否か、どのような患者に必要なのかという命題が依然残ることは致し方ない。最後に 確かに、近年報告される抗凝固薬を比較した大規模試験においては、リバーロキサバンの易出血性を結論付けている報告が多く、ある意味人種差を超越している。このことから、ある程度リバーロキサバンの持つ薬剤特性を捉えている可能性はあるが、DOAC相互を直接比較した無作為比較試験はいまだないことから、今なお断言できない。この命題から答えを導き出すには、わが国での製薬業界が定めた自主規制という名の行き過ぎたレギュレーションが大きな弊害となっていると憂慮するのは、私だけだろうか。

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高齢心房細動症例で心臓外科手術が行われる場合、外科的左心耳閉鎖術は有効か否か?(解説:今井靖氏)-896

 心房細動患者において血栓塞栓症の発症リスクは約5倍と見積もられており、その塞栓症予防としてワルファリンが唯一の治療選択であったところに経口直接抗凝固薬(DOAC)が加わった。しかしながら抗凝固薬投与は出血傾向を生じるという負の側面があり、その点において主な塞栓源となる左心耳を閉塞することで抗凝固薬に並ぶ、あるいは抗凝固療法との併用効果について期待されるところである。 とくにカテーテル技術を利用した経皮的左心耳閉鎖デバイスが複数開発され、日本でも限定された施設でトライアルが行われており近日上市される見込みである。また、経皮的に心外膜側から左心耳を縛り、左心耳との血流遮断を行うデバイスについても報告がなされるに至っている。何らかの理由で心臓外科手術を受ける患者においては、心臓外科手術の折に左心耳を外科的に閉鎖することが行われるが、その有効性についてのエビデンスはほとんどない状況がある。 今回取り上げたJAMAの論文は、この点を明らかにするものである。米国における成人心臓血管外科におけるメディケアに関連した後ろ向きコホート研究であり、65歳以上で冠動脈バイパス、僧帽弁または大動脈弁手術(冠動脈バイパス同時実施あり、なし)を施行された症例(2011~12年)が対象であり、2014年末まで最大3年間の追跡、それらのなかで外科的左心耳閉鎖の有無で評価がなされた。主要エンドポイントは血栓塞栓症であり、副次エンドポイントは脳出血、全死亡、血栓塞栓症・脳出血・全死亡の複合とされた。1万524例の心臓血管手術症例が含まれ、中央値では年齢76歳、39%女性、CHA2DS2-VAScスコアは4点、追跡期間2.6年であり、それらのうち、3,892例(37%)において外科的左心耳閉鎖術が施行された。外科的左心耳閉鎖を実施された場合はそうでない場合と比較すると、背景因子の補正前において有意にイベント発生が抑制されていた。 血栓塞栓症(4.2% vs.6.2%)、全死亡(17.3% vs.23.9%)、複合エンドポイント(20.5% vs.28.7%)と抑制されていたが、出血性脳卒中においては有意差を認めなかった(0.9% vs.0.9%)。統計学的補正を行った後においても、外科的左心耳閉鎖術は有意に血栓塞栓症(ハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.81、p<0.001)、全死亡(HR:0.88、95%CI:0.79~0.97、p=0.001)、複合エンドポイント(HR:0.83、95%CI:0.76~0.91、p<0.001)を低下させた。しかしながら出血性脳卒中については有意差を認めなかった(HR:0.84、95%CI:0.53~1.32、p=0.44)。抗凝固療法実施のあり、なしで層別化したところ、抗凝固療法なしで退院した患者に限定すると血栓塞栓症(補正前:4.2% vs.6.0%、補正後HR:0.26、95%CI:0.17~0.40、p<0.001)の発生頻度を有意に抑制した。しかしながら逆に抗凝固療法がなされて退院した症例に限れば、左心耳閉鎖の有無による差異は認められなかった(補正前:4.1%vs 6.3%、補正後HR:0.88、95%CI:0.56~1.39、p=0.59)。心臓外科手術を実施される心房細動合併高齢症例においては、約3年間の追跡において血栓塞栓症における再入院を有意に低下させるという結果が示され、このエビデンスは外科的左心耳閉鎖の有用性を支持するものである。しかしながら、さらなるランダム化比較試験により、その有用性が確かめられる必要があると考えられる。 実臨床においては、発作性あるいは持続性心房細動を合併する症例で心臓血管外科手術が検討される場合に、外科・内科間で左心耳閉鎖の適否について十分に議論がなされるべきと考える。

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心房細動患者の心筋梗塞リスク、DOAC vs. ビタミンK拮抗薬【Dr.河田pick up】

 長い間、心房細動患者の血栓塞栓症予防にはビタミンK拮抗薬が使用されてきた。直接経口抗凝固薬(DOAC)が、ビタミンK拮抗薬に有効性および安全性で劣らないことからDOACの使用が増えてきているが、DOACとビタミンK拮抗薬のどちらがより心筋梗塞の予防に有効かについてのエビデンスは一致しておらず、結論が出ていない。この研究はアピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバンそしてビタミンK拮抗薬を服用中の心房細動患者における、心筋梗塞リスクを調べることを目的に実施された。Journal of American College of Cardiology誌2018年7月3日号掲載の、デンマークのグループが発表した後ろ向き観察研究の結果より。デンマークのレジストリより3万1,739例の心房細動患者を抽出 心房細動の患者はデンマークヘルスケアレジストリを用いて同定され、最初に処方された抗凝固薬によって層別化された。標準化された1年間の絶対リスクとして、心筋梗塞による入院と死亡に対するハザード比がCox回帰分析を用いて求められた。経口抗凝固薬に対する絶対リスクは別々に報告され、患者の特徴に応じて標準化された。2013~16年の間に心房細動と診断され、抗凝固薬未使用の患者3万4,755例のうち、弁膜症による心房細動患者、30歳未満もしくは100歳を超える患者、および慢性腎不全の患者が除かれた。DOACはビタミンK拮抗薬よりも心筋梗塞リスクが低い 試験に組み入れられた3万1,739例(平均年齢:74歳、47%が女性)のうち、標準化された1年間の心筋梗塞リスクは、ビタミンK拮抗薬1.6%(95%信頼区間[CI]:1.3~1.8)、アピキサバン1.2%(95%CI:0.9~1.4)、ダビガトラン1.2%(95%CI:1.0~1.5)、そしてリバーロキサバン1.1%(95%CI:0.8~1.3)であった。DOACの種類で標準化された1年間の心筋梗塞リスクに有意な差は認められなかった〔ダビガトラン vs.アピキサバン(0.04%、95%CI:-0.3~0.4%)、リバーロキサバンvs.アピキサバン(0.1%、95%CI:-0.4~0.3%)、リバーロキサバン vs.ダビガトラン(-0.1%、95%CI:-0.5~0.2)〕。DOACとビタミンK拮抗薬の間ではいずれも有意な差が認められた〔ビタミンK拮抗薬 vs.アピキサバン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.1)、 vs.ダビガトラン-0.4% (95%CI:-0.7~-0.03)、vs.リバーロキサバン-0.5% (95%CI:-0.8~-0.2)〕。 筆者らはDOACの種類では心筋梗塞リスクに違いはみられなかったが、ビタミンK拮抗薬と比べると、どのDOACも心筋梗塞のリスクが低かったと結論付けている。しかしながら、後ろ向き観察研究のため、なぜ医師がDOACでなくビタミンK拮抗薬を選んだかなどはわからず、交絡因子が隠されている可能性もあり、さらなる研究が必要と考えられる。(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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実臨床で安全性が高いDOACは?/BMJ

 英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らは、プライマリケアにおいて、直接経口抗凝固薬(DOAC)と出血・虚血性脳卒中・静脈血栓塞栓症・全死因死亡リスクの関連を、ワルファリンと比較検証する前向きコホート研究を行い、概してアピキサバンが最も安全で大出血・頭蓋内出血・消化管出血のリスクが減少したのに対して、リバーロキサバンと低用量アピキサバンは全死因死亡リスクの上昇と関連していたことを明らかにした。これまで、無作為化比較試験でワルファリンに対するDOACの非劣性が示されていたが、実臨床での観察試験はほとんどが心房細動患者を対象としていた。BMJ誌2018年7月4日号掲載の報告。DOAC 3剤とワルファリンの出血リスクを英国プライマリケアベースで比較 研究グループは、QResearchおよびClinical Practice Research Datalink(CPRD)の2つのデータベースから、それぞれ2011年1月〜2016年10月および3月に、英国のプライマリケアにおいてワルファリン(13万2,231例)、ダビガトラン(7,744例)、リバーロキサバン(3万7,863例)、アピキサバン(1万8,223例)を新規に処方された患者(新規処方前12ヶ月以内に抗凝固薬を処方されたことのある患者は除外)を特定し、心房細動患者と非心房細動患者に分け分析した。 主要評価項目は、入院や死亡に至った大出血。副次評価項目は虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症および全死亡であった。DOACではアピキサバンが最も安全 心房細動患者(10万3,270例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(補正後ハザード比[aHR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.54~0.79)および頭蓋内出血(0.40、0.25~0.64)のリスク減少と関連していることが、また、ダビガトランは頭蓋内出血(0.45、0.26~0.77)のリスク減少と関連していることが認められた。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.19、95%CI:1.09~1.29)、および低用量アピキサバン内服患者(1.27、95%CI:1.12~1.45)で確認された。 非心房細動患者(9万2,791例)では、ワルファリンと比較してアピキサバンが大出血(aHR:0.60、95%CI:0.46~0.79)、全消化管出血(0.55、0.37~0.83)、上部消化管出血(0.55、0.36~0.83)のリスク減少と関連していた。また、リバーロキサバンは、頭蓋内出血のリスク減少と関連がみられた(0.54、0.35~0.82)。一方、全死因死亡リスクの上昇が、リバーロキサバン内服患者(1.51、1.38~1.66)および低用量アピキサバン内服患者(1.34、1.13~1.58)において確認された。 なお著者は、英国のプライマリケアに限定されたものであり、アドヒアランスや処方の適応症に関する情報が不足していることなどを研究の限界として挙げている。

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NOACで頭蓋内出血は少なくなる?(解説:後藤信哉氏)-810

 各種NOACの第III相ランダム化比較試験にて、INR 2-3を標的としたワルファリン群に比較してNOAC群にて頭蓋内出血が少ないとされても、筆者の心には響かなかった。INR 1.9であればワルファリンを増量し、INR 2.9であってもワルファリンを減量しないような治療は、自らの日常診療と大きく乖離していたためである。また、NOAC登場前の観察研究にて、日本も世界もワルファリン使用時の頭蓋内出血発現率は0.2%程度とされていたので、その3倍も頭蓋内出血が起こることを示した第III相試験のメッセージは「INR 2-3を標的としたワルファリン治療は頭蓋内出血を増やす」のみであった。 米国には各種registryがある。本研究はAHAが主導するGet With The Guidelines-Strokeのデータベースを用いた。第一著者はDuke大学に留学している日本人である。データベースはしっかり構築されており、Duke大学の解析チームのデータ解析は信頼できる。後ろ向きの解析であるためN Engl J Med, Circulationには届かない。JAMAではデータベースの大きさと質、トピックの重要性が重視されたと考える。 頭蓋内出血にて入院した141,311例の対象症例のうち、15%弱は抗凝固薬使用中の症例であった。抗凝固薬使用中の症例のほうが高齢で、心房細動の合併も多かった。しかし、これらのリスク因子を補正しても、院内死亡率は抗凝固療法使用歴のある患者で高かった。ワルファリン使用歴の長い私はINR 2-3を標的としたワルファリン治療をしたことがない。多くの症例はINR 1.7前後で2を超える症例も少ない。ワルファリン群に比較してNOAC群のほうが、院内死亡率が低いとしているが、私のように低いINRにコントロールしている場合はNOACと差がない。 4つのNOACの開発試験に強く寄与して、また実臨床においてNOACが広く使用されていく現状を観察して、一貫して自らの中で変化しなかったNOACの評価は「NOACは頭蓋内出血を増加させる」「INR 2-3を標的としたワルファリン治療では容認できない重篤な出血リスクをもたらす」の2つであった。抗凝固療法は、重篤な出血リスクを増やす怖い介入である。禁煙して運動習慣をつけ、各種リスク因子を補正して総合的に脳卒中、血栓塞栓イベントを減らす努力を継続すべきである。

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脳内出血後の院内死亡、ワルファリンvs. NOAC/JAMA

 脳内出血(ICH)患者の院内死亡リスクを、発症前の経口抗凝固薬(OAC)で比較したところ、OAC未使用群に比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)あるいはワルファリンの使用群で高く、また、NOAC使用群はワルファリン使用群に比べ低いことが示された。米国・デューク大学メディカルセンターの猪原拓氏らが、米国心臓協会(AHA)/米国脳卒中協会(ASA)による登録研究Get With The Guidelines-Stroke(GWTG-Stroke)のデータを用いた後ろ向きコホート研究の結果、明らかにした。NOACは血栓塞栓症予防としての使用が増加しているが、NOAC関連のICHに関するデータは限られていた。JAMA誌オンライン版2018年1月25日号掲載の報告。脳内出血患者約14万1,000例で、抗凝固療法と院内死亡率との関連を解析 研究グループはGWTG-Strokeに参加している1,662施設において、2013年10月~2016年12月にICHで入院した患者を対象に、ICH発症前(病院到着前7日以内)の抗凝固療法による院内死亡率について解析した。 抗凝固療法は、ワルファリン群・NOAC群・OAC未使用群に分類し、2種類の抗凝固薬(ワルファリンとNOACなど)を用いていた患者は解析から除外した。また、抗血小板療法については、抗血小板薬未使用・単剤群・2剤併用(DAPT)群に分類し、3群のいずれにも該当しない患者は解析から除外した。 解析対象は14万1,311例(平均[±SD]68.3±15.3歳、女性48.1%)で、ワルファリン群1万5,036例(10.6%)、NOAC群4,918例(3.5%)。抗血小板薬(単剤またはDAPT)を併用していた患者は、それぞれ3万9,585例(28.0%)および5,783例(4.1%)であった。ワルファリン群とNOAC群は、OAC未使用群より高齢で、心房細動や脳梗塞の既往歴を有する患者の割合が高かった。NOAC群は、未使用群よりは高いがワルファリン群よりも低い 急性ICHの重症度(NIHSSスコア)は、3群間で有意差は確認されなかった(中央値[四分位範囲]:ワルファリン群9[2~21]、NOAC群8[2~20]、OAC未使用群8[2~19])。 補正前院内死亡率は、ワルファリン群32.6%、NOAC群26.5%、OAC未使用群22.5%であった。OAC未使用群と比較した院内死亡リスクは、ワルファリン群で補正後リスク差(ARD)9.0%(97.5%信頼区間[CI]:7.9~10.1)、補正後オッズ比(AOR)1.62(97.5%CI:1.53~1.71)、NOAC群でARDは3.3%(97.5%CI:1.7~4.8)、AORは1.21(97.5%CI:1.11~1.32)であった。 ワルファリン群と比較して、NOAC群の院内死亡リスクは低かった(ARD:-5.7%[97.5%CI:-7.3~-4.2]、AOR:0.75[97.5%CI:0.69~0.81])。 NOAC群とワルファリン群の死亡率の差は、DAPT群(NOAC併用群32.7% vs.ワルファリン併用群47.1%、ARD:-15.0%[95.5%CI:-26.3~-3.8]、AOR:0.50[97.5%CI:0.29~0.86])において、抗血小板薬未使用群(NOAC併用群26.4% vs.ワルファリン併用群31.7%、ARD:-5.0%[97.5%CI:-6.8%~-3.2%]、AOR:0.77[97.5%CI:0.70~0.85])より数値上では大きかったが、交互作用p値は0.07で統計的有意差は認められなかった。 なお、著者は、GWTG-Strokeの登録データに限定していることや、NOAC群の症例が少なく検出力不足の可能性があることなどを、研究の限界として挙げている。

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