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TAVR後の院内死亡率5.5%、脳卒中2.0%/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement:TAVR)を受けた米国患者のデバイス植込み成功率は92%であり、全院内死亡率は5.5%、脳卒中の発生は2.0%であったことなどが、Edwards Sapien XTデバイスの市販後調査報告として発表された。TAVRは2011年に米国食品医薬品局(FDA)によって、重症の症候性大動脈弁狭窄症で手術不能の患者に対する治療法として承認され、2012年には高リスクだが手術可能な症例にも適応となり施術が行われている。JAMA誌2013年11月20日号掲載の報告より。デバイス承認後の全米224病院・7,710例のアウトカムを分析 調査は、全米レジストリ(Society of Thoracic Surgeons/American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy:STS/ACC TVT)の登録患者を対象に行われた。STS/ACC TVTはメディケアでカバーするための条件を満たすために開始されたもので、アウトカムの評価や他試験や国際的なレジストリとの比較も容易にするものである。今回の検討は、2011年11月~2013年5月の間に224病院から登録されたすべてのTAVR症例7,710例の結果を入手して分析が行われた。 主要アウトカムは、TAVR後のすべての院内死亡と脳卒中であった。2次解析には、手術による合併症と臨床症状や手術部位などのアウトカムを含んだ。入院期間中央値6日間、63%が自宅に退院 TAVRを受けた7,710例のうち、手術不能例は1,559例(20%)で、残り6,151例(80%)は高リスクだが手術可能な症例であった。年齢中央値は84歳(範囲:78~88歳)、3,783例(49%)が女性であり、死亡リスク予測のSTS中央値は7%(範囲:5~11%)だった。 ベースライン時に、2,176例(75%)が症状の現状について「まったく満足していない」(45%)か「ほとんど満足していない」(30%)と回答していた。2,198例(72%)が、5m歩行時間が6秒以上(歩行速度が遅い)であった。 バスキュラーアクセスのアプローチ法として最も多かったのは、経大腿アプローチ(64%)で、次いで経心尖アプローチ(29%)、その他代替アプローチ(7%)であった。 デバイス植込み成功例は7,069例(92%、95%信頼区間[CI]:91~92%)、院内死亡率は5.5%(95%CI:5.0~6.1%)だった。その他の重大合併症は、脳卒中(2.0%、95%CI:1.7~2.4%)、透析が必要な腎不全(1.9%、同:1.6~2.2%)、重大血管損傷(6.4%:同:5.8~6.9%)だった。 入院期間中央値は6日間(範囲:4~10日間)で、4,613例(63%)が自宅に退院した。 30日アウトカムは、代表的な114施設・3,133例(40.6%)で評価された(フォローアップ報告の80%以上を占めていた)。同患者における死亡率は7.6%(95%CI:6.7~8.6%)だった(非心血管系原因52%)。脳卒中の発生は2.8%(同:2.3~3.5%)、透析新規導入は2.5%(同:2.0~3.1%)、再介入率は0.5%(同:0.3~0.8%)だった。

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首や腰の痛みと精神的苦痛は相互に関連する

 頚部や腰部の疼痛と精神的苦痛との相互作用に関する理解は、公衆衛生の観点から重要である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のKari Paanalahti氏らは、大規模な地域住民を対象とした前向きコホート研究を行い、脊椎痛および精神的苦痛の併存は、女性に多く、男女いずれにおいても回復が不良で、脊椎痛と精神的苦痛は双方向の関連性があることを確認した。Spine Journal誌オンライン版2013年11月18日号の掲載報告。 本検討は、無作為に抽出したストックホルム在住の一般住民1万9,774人(18~84歳)を対象とし、調査開始時(2002年)および追跡調査時(2007年)に、郵送にてアンケート調査を行った。 脊椎痛は、modified Nordic Pain Questionnaireを、精神的苦痛は、精神健康調査票(GHQ-12)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査開始時における脊椎痛と精神的苦痛の併存率は、女性11%、男性4%であった(リスク比[RR]:2.4、95%信頼区間[CI]:2.1~2.7)。 ・脊椎痛のみの有病率は女性20%、男性14%、精神的苦痛のみの有病率はそれぞれ15%、12%で、いずれも女性で高率であった。・追跡調査時における回復率は、脊椎痛と精神的苦痛が併存していた場合が(女性26%、男性27%)、脊椎痛のみ(女性41%、男性44%)や、精神的苦痛のみ(女性49%、男性52%)と比較して低かった。・調査開始時に脊椎痛のみを有していた人のうち、追跡調査時に精神的苦痛も有していたのは女性24%、男性17%であった。・調査開始時に精神的苦痛のみを有していた人のうち、追跡調査時に脊椎痛も有していたのは女性24%、男性20%であった。・脊椎痛は精神的苦痛の決定因子(オッズ比[OR]:2.6、95%CI:2.3~2.9)、精神的苦痛は脊椎痛の決定因子(OR:2.0、95%CI:1.8~2.2)であることが認められた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか

 抗精神病薬治療中の患者では、いくつかの心血管リスク因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質異常症)を有する割合が高く、脳卒中の有病率が有意に高いことなどが明らかにされた。これには、服用する抗精神病薬が定型あるいは非定型かによる違いはみられなかったという。スペイン・Institut Catala de la SalutのX Mundet-Tuduri氏らがバルセロナで行った断面調査の結果、報告した。Revista de Neurologia誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、プライマリ・ケアでの長期の抗精神病薬治療における心血管リスク因子(CVRF)および血管イベントについて明らかにするため断面調査を行い、抗精神病薬の治療を受けている患者と受けていない患者とを比較した。対象は、2008~2010年にバルセロナのプライマリ・ヘルスケアセンターを受診した患者。身体測定、臨床検査値、CVRFを評価し、また被験者を成人/ 高齢者、服用している抗精神病薬(定型/ 非定型)でそれぞれ層別化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、抗精神病薬を処方されていた1万4,087例(治療群)と、受けていなかった1万3,724例(処方を受けていた患者と同一の年齢・性別:非治療群)の合計2万7,811例であった。・治療群の患者のうち、非定型薬を処方されていたのは63.4%であり、リスペリドンの処方が最も多かった。・治療群は、肥満(16.9% vs. 11.9%)、喫煙(22.2% vs. 11.1%)、糖尿病(16% vs. 11.9%)、脂質異常症(32.8% vs. 25.8%)の有病率が非治療群よりも有意に高かった(p<0.001)。・また、治療群では脳卒中の有病率が、成人患者群(オッズ比[OR]:2.33)、高齢者群(同:1.64)のいずれにおいても、非治療群より有意に高かった。冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、両群で同程度であった(OR:0.97)。・治療群の患者において、抗精神病薬の定型または非定型の違いによる差はみられなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

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不眠症と自殺は関連があるのか

 不眠症患者は自殺念慮や自殺企図のリスクが高いことが報告されている。イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のM Pompili氏らは不眠と自殺関連の行動との関係を評価した。International journal of clinical practice誌オンライン版2013年12月号の報告。不眠症患者は自殺企図をより暴力的な方法を用いて行っていた 対象は、2010年1月から2011年12月までにサンタンドレア病院の救急部(ED)に入院した843例。ED入院患者に対し、精神科医による不眠症診断を実施し、関連因子の検討を行った。精神疾患簡易構造化面接法(MINI)に基づく面接と半構造化面接を行った。患者には継続的な自殺念慮や自殺計画について質問を行った。 不眠と自殺関連の行動との関係を評価した主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち48%が双極性障害、大うつ病性障害、不安障害と診断された。また、17.1%は統合失調症または他の非情動性機能的精神病であった。・不眠症患者では、そうでない患者と比較して双極性障害(23.9% vs 12.4%)、大うつ病性障害(13.3% vs 9.5%、p<0.001)が多かった。・不眠症患者は、そうでない患者と比較して過去24時間における自殺企図の頻度がより少なかった(5.3% vs 9.5%、p<0.05)。・しかし、不眠症患者はより暴力的な方法を用いて自殺企図を行っていた(64.3% vs 23.6%、p<0.01)。関連医療ニュース パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は? 日本人統合失調症患者における自殺企図の特徴は?:岩手医科大学 「抗てんかん薬による自殺リスク」どう対応すべきか?

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. Utility of new classification based on clinical and lesional factors after self-expandable nitinol stenting in the superficial femoral artery. J Vasc Surg 2011; 54: 1058-1066.3)Tosaka A et al. Classification and clinical impact of restenosis after femoropopliteal stenting. J Am Coll Cardiol 2012; 59: 16-23.4)Iida O et al. Endovascular Treatment for Infrainguinal Vessels in Patients with Critical Limb Ischemia: OLIVE Registry, a Prospective, Multicenter Study in Japan with 12-month Followup. Circulation Cardiovasc Interv 2013, in press.5)Romiti M et al. Mata-analysis of infrapopliteal angioplasty for chronic critical limb ischemia. J Vasc Surg 2008; 47: 975-981.6)Laird JR et al. Nitinol stent implantation vs balloon angioplasty for lesions in the superficial femoral and proximal popliteal arteries of patients with claudication: Three-year follow-up from RESILIENT randomized trial. J Endvasc Ther 2012; 19: 1-9.7)Dake MD et al. Paclitaxel-eluting stents show superiority to balloon angioplasty and bare metal stents in femoropopliteal disease. Twelve-month Zilver PTX Randomized study results. Circ Cardiovasc Interv 2011; 4: 495-504.8)Dake MD et al. Nitinol stents with polymer-free paclitaxel coating for lesions in the superficial femoral and popliteal arteries above the knee; Twelve month safety and effectiveness results from the Zilver PTX single-arm clinical study. J Endvasc Therapy 2011; 18: 613-623.9)Bosiers M et al. Randomized comparison of evelolimus-eluting versus bare-metal stents in patients with critical limb ischemia and infrapopliteal arterial occlusive disease. J Vasc Surg 2012; 55: 390-398.10)Saxon RR et al. Randomized, multicenter study comparing expanded polytetrafluoroethylene covered endoprosthesis placement with percutaneous transluminal angioplasty in the treatment of superficial femoral artery occlusive disease. J Vasc Interv Radiol 2008; 19: 823-832.11)Welten GMJM et al. Long-term prognosis of patients with peripheral artery disease. A comparison in patients with coronary artert disease. JACC 2008; 51: 1588-1596.12)Pande RL et al. Secondary prevention and mortality in peripheral artery disease: national health and nutrition exsamination study, 1999 to 2004. Circulation 2011; 124: 17-23.13)Sigvant B et al. Asymptomatic peripheral arterial disease; is pharmacological prevention of cardiovascular risk cost-effective? European J of cardiovasc prevent & rehabilitation 2011; 18: 254-261.14)Hussein AA et al. Peripheral arterial disease and progression atherosclerosis. J Am Coll Cardiol 2011; 57: 1220-1225.15)Berger JS et al. Aspirin for the prevention of cardiovascular events in patients with peripheral artery disease. A mata-analysis of randomized trials. JAMA 2009; 301: 1909-1919.16)CAPRIE Steering Committee. A randomized, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischemic events(CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.17)Ishikawa Y et al. Preventive effects of eicosapentaenoic acid on coronary artery disease in patients with peripheral artery disease-subanalysis of the JELIS trial-. Circ J 2010; 74: 1451-1457.

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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:知られざる喘息のリスク因子

はじめに喘息の患者さんを診療する場合、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。そのため、喘息治療薬を使いこなすだけでなく、患者さんの喘息発作の誘発因子を避ける必要があります。喘息発作のリスク因子として有名なのは、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎と同様のアレルゲンです。たとえば、スギ花粉、ブタクサ、ハウスダスト、ダニなどが挙げられます。しかし、世の中にはこんな因子によって喘息を起こすことがあるのか?という“軽視されがちなもの”や“知られざるもの”があります。教科書的なリスク因子はさておき、少し「へぇ」と思えるようなものを紹介しましょう。ストレス呼吸器内科医以外には実はあまり知られていませんが、ストレスは喘息のリスク因子として教科書的に重要です。これには炎症性サイトカインの産生亢進が関与していると考えられています。呼吸器疾患を診療している医師の間でも、ストレスは意外と軽視されがちなリスク因子だと思います。Busse WW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1995;151:249-252.徹夜明けや過労などの身体的ストレスによっても喘息発作が起こりやすいことが知られています。受験前、面接前、入社前、五月病といった精神的ストレスによっても喘息発作を起こすことがあります。私もそういった患者さんを何人か外来で診ています。世界的にも最大規模のストレスとして数多くの研究がなされたアメリカ同時多発テロ事件では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と喘息の関連が指摘されています。Shiratori Y, et al. J Psychosom Res. 2012;73:122-125.Centers for Disease Control and Prevention (CDC). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2002;51:781-784.水泳喘息に対する呼吸リハビリテーションの一環として水泳が知られていますが、その反面、水泳そのものが喘息のリスクではないかと考える研究グループもあります。しかしながら、メタアナリシスではその関連は強いとは結論づけられていません。私の外来にも、ある水泳競技をしていた喘息患者さんがいました。その患者さんが引退後に吸入ステロイド薬のステップダウンができたのは、水泳をやめたからなのかどうか、いまだに答えは出ていません。Paivinen MK, et al. Clin Respir J. 2010;4:97-103.Goodman M, et al. J Asthma. 2008;45:639-647.ちなみにスキューバダイビングは喘息のリスク因子ではないかという議論もありますが、現時点では明らかな答えは出ていません。スキューバダイビングでは、温度や呼吸動態の急激な変化が呼吸機能上よくないと考えられています。Koehle M, et al. Sports Med. 2003;33:109-116.感情負の感情(怒り、悲しみなど)は前述のストレスと同じ機序で喘息のリスク因子と考えられていますが、これにはあまりエビデンスはありません。自宅で怒りを爆発させて喘息発作を起こし救急搬送されてきた患者さんを一度診たことがあります。これはおそらく怒鳴り散らしたことが主な原因でしょうが。ちなみに、面白い映像を見た場合と面白くない映像を見た場合を比較すると、面白い映像を見た場合に気道過敏性が有意に改善したという報告もあります。Kimata H. Physiol Behav. 2004;81:681-684.その一方で、あまり笑うと喘息発作を誘発するのではないかという報告もありますので、あまり感情の起伏は喘息にとってよくないものかもしれませんね。Liangas G, et al. J Asthma. 2004;41:217-221.排便トイレできばりすぎて、喘息発作を起こすことがあるそうです。これについてもリスク因子といえる研究はありません。個人的には一度も排便喘息を診たことはありません(問診が甘かったのかもしれませんが)。排便によってアセチルコリンの分泌が誘発され、これによって気管支攣縮を惹起するのではないかと考えられています。Rossman L. J Emerg Med. 2000 ;18:195-197.Ano S, et al. Intern Med. 2013;52:685-687.鼻毛これもリスク因子として書くにはかなり強引な気もしますが、結論からいうと鼻毛は長いほうがよいです。アレルギー性鼻炎の患者さんにおける喘息の発症に鼻毛の密度が与える影響について解析した論文があります。これによれば、鼻毛の密度の低さは喘息発症の有意な因子であると報告されています。厳密には鼻毛の“長さ”と“密度”は異なるのかもしれませんが……。Ozturk AB, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2011;156:75-80.おわりにこれ以外にも、症例報告レベルも含めると、アイスクリーム、くしゃみ、温泉、オリンピックなど数多くの喘息のリスク因子や喘息発作を誘発する因子があります。本稿でなぜ珍しい因子を記載したかといいますと、実は喘息診療においては多くのヒントが患者さんとの会話の中にあるのです。「実は最近インコを飼い始めたんです」、「おととい引っ越ししたばかりなんです」、「そういえば先月からシャンプーを東洋医学系の製品に変えたんです」・・・などなど。実はアレルゲンが明らかな喘息の場合、原因を回避すればよくなることがあります。何年も吸入ステロイド薬を使わなくても済むケースもあります。

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コーヒー・緑茶と上部気道消化管がんリスクとの関連~コーヒーと緑茶では逆

 上部気道消化管がんリスクにおけるコーヒーや緑茶の影響ははっきりしていない。これらは通常摂取するときに高温であるため、その潜在的なリスク増加により、含まれる成分の抗発がん作用の評価に交絡が生じている。愛知県がんセンター研究所疫学・予防部の尾瀬 功氏らは、コーヒーや緑茶の摂取と上部気道消化管がんのリスクとの関連を評価するために、ケースコントロール研究を実施した。その結果、コーヒーの摂取は上部気道消化管がんのリスク低下と関連する一方、緑茶はリスク増加と関連する可能性があることを示唆した。International Journal of Cancer誌オンライン版2013年12月6日号に掲載。 本研究では、2001年~2005年に愛知県がんセンターを受診した上部気道消化管がん患者961例と、がんではない外来患者2,883例が登録された。コーヒーや緑茶の摂取量やその他のライフスタイル要因に関する情報は、自記式質問紙を用いて収集した。 主な結果は以下のとおり。・コーヒー3杯/日以上の摂取は、上部気道消化管がんと有意に逆相関していた(オッズ比:0.73、95%信頼区間:0.55~0.96)。・逆に、緑茶3杯/日以上の摂取は、上部気道消化管がんと有意な正の相関がみられた(オッズ比:1.39、95%信頼区間:1.13~1.70)。・これらの関連性は、頭頸部がんでは明らかであったが、食道がんでは明らかではなかった。・頭頸部がんとコーヒー摂取との関連は非喫煙者・飲酒者でのみ観察され、緑茶摂取との関連は非喫煙者・非飲酒者で認められた。・各交絡因子による層別においても、これらの関連は同様であった。

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脳梗塞急性期の積極的な降圧治療は2週間後の転帰を改善するか?/JAMA

 虚血性脳卒中患者の急性期における降圧治療は、死亡や身体機能障害の抑制に寄与しないことが、米国・チューレーン大学のJiang He氏らが行ったCATIS試験で示された。高血圧患者や脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴を有する正常血圧者では、降圧治療により脳卒中のリスクが低減することが報告されている。脳卒中の1次および2次予防における降圧のベネフィットは確立されているが、血圧の上昇がみられる急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の効果は知られていないという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告。急性期の降圧治療の予後改善効果を無作為化試験で評価 CATIS(China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke)試験は、急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の有用性を評価する多施設共同単盲検無作為化試験。発症後48時間以内、血圧の上昇が認められる虚血性脳卒中患者を対象とした。 被験者は、入院期間中に降圧治療を施行する群または施行しない群に無作為に割り付けられた。降圧治療群は、割り付け後24時間以内に収縮期血圧を10~25%低下させ、7日以内に140/90mmHgを達成し、これを入院期間中維持することを目標とした。 割り付け情報は、治療医や看護師にはマスクされなかったが、患者やデータの収集を行った研究者にはマスクされた。主要評価項目は、割り付け後14日以内の死亡、14日時の重篤な身体機能障害(修正Rankinスケール:3~5)、14日以前に退院した場合は退院時の重篤な身体機能障害とした。収縮期血圧は有意に低下したが 2009年8月~2013年5月までに、中国の26施設から4,071例が登録され、降圧治療群に2,038例が、対照群には2,033例が割り付けられた。全体の平均年齢は62.0歳、男性が64.0%で、入院時に49.1%が降圧薬を投与されており、77.9%が血栓性脳卒中であった。 割り付けから24時間以内に、平均収縮期血圧は降圧治療群が166.7mmHgから144.7mmHgまで12.7%低下したのに対し、対照群は165.6mmHgから152.9mmHgまで7.2%の低下であり、有意な差が認められた(群間差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-4.9~-6.1、絶対差:-9.1mmHg、95%CI:-10.2~-8.1、p<0.001)。また、割り付けから7日の時点で、平均収縮期血圧は降圧治療群が137.3mmHg、対照群は146.5mmHgと、有意差がみられた(群間差:-9.3mmHg、95%CI:-10.1~-8.4、p<0.001)。 このように急性期の降圧効果に差を認めたにもかかわらず、14日または退院時の主要評価項目の発生には両群間に差はなかった(イベント発生数:降圧治療群683件、対照群681件、オッズ比:1.00、95%CI:0.88~1.14、p=0.98)。さらに、副次評価項目である3ヵ月後の死亡または重篤な身体機能障害の発生も、両群で同等であった(イベント発生数:降圧治療群500件、対照群502件、オッズ比:0.99、95%CI:0.86~1.15、p=0.93)。 著者は、「急性虚血性脳卒中患者では、降圧治療により血圧の低下を達成しても、入院中は降圧治療を中止した患者と比較して、急性期の死亡や重篤な身体機能障害の抑制にはつながらないことが示された」と結論し、「本試験は中国人患者のみを対象としており、全体の約3分の1にヘパリンが投与されるなど欧米の急性脳卒中の管理とは異なる部分もあるが、以前の検討では中国人と欧米人で急性脳卒中と血圧低下の関連に差はないことが報告されている」と考察している。

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慢性腰痛に対する腰椎固定術は長期転帰を改善しない

 慢性腰痛の治療において、保存療法に対する手術療法の有効性については議論の余地があり、長期転帰はほとんど知られていない。スイス・Schulthess KlinikのAnne F. Mannion氏らは、平均11年間にわたる追跡調査を行い、脊椎固定術と認知行動・運動療法とで患者の自己評価に差はないことを示した。保存療法で悪化しなかったことから、手術のリスクを考慮すれば慢性腰痛に対する腰椎固定術は支持されるべきではない、とまとめている。Spine Journal誌オンライン版2013年11月6日の掲載報告。 研究グループは、脊椎固定術と認知行動・運動療法の長期転帰を比較することを目的に、ノルウェーおよび英国の3施設において無作為化臨床試験を行った。 対象は、1年以上症状を有し脊椎固定術の適応があると考えられた慢性腰痛患者473例であった(手術療法群242例、認知行動・運動療法群231例)。 長期追跡後に、主要評価項目としてオスウェストリー障害指数(ODI:0~100)、副次的評価項目として疼痛強度(視覚的アナログスケール(VAS))、疼痛の頻度、鎮痛薬の使用、勤務状況、健康関連QOL(EuroQol VAS)、治療満足度などを調べた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間は初回治療後平均11.4年(範囲8~15年)で、長期追跡調査を完了したのは手術療法群140例、認知行動・運動療法群121例、計261例(55%)であった。・ODIは、両群間で統計学的および臨床的な差は認められなかった。・認知行動・運動療法群に対する手術療法群の調整済ODIスコア平均差は、intention-to-treat解析で-0.7(95%信頼区間:-5.5~4.2)、as-treated解析で-0.8(同:-5.9~4.3)であった。・副次的評価項目の結果は、ODIとほとんど一致し、両群で差はみられなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか

 ドイツ・ロイファナ大学リューネブルクのJo Annika Reins氏らは、大うつ病性障害(MDD)患者が入院治療の前に、Webベースの介入を行った場合の有効性を検討するための多施設共同無作為化試験のプロトコルを作成した。有効性が実証されれば、患者はうつ症状が軽減された状態で入院治療を開始でき、寛解率の向上、入院期間の短縮、コスト節減、待機期間の短縮につながる可能性があるという。BMC Psychiatry誌2013年11月26日号の掲載報告。 MDDは一般的、かつ重篤な障害である。MDDに対し効果的な治療が存在するものの、医療システムのキャパシティー不足などにより、多くの患者が未治療の状態にある。待機期間中は、慢性化のリスクとともに、苦しみや障害が長引く。うつ病において、Webベース介入の有効性に関するエビデンスが多くの研究で示されており、問題の軽減に役立つ可能性がある。そこで研究グループは、MDDに対する入院治療を待っている患者に関して特別に開発された新しいWebベースの自助介入方法「GET.ON-Mood Enhancer-WL」の評価を目的とした試験を行うこととした。 主な試験概要は以下のとおり。・2群ランダム化比較試験(200例)において、通常の治療(TAU)に「GET.ON-Mood Enhancer-WL」を追加し、TAUのみの場合と比較する。・「GET.ON-Mood Enhancer-WL」は6つのモジュールで構成される(精神教育、行動活性化I&II、問題解決I&II、うつ病に対する入院治療後の準備)。・被験者は、e-コーチのサポートを受ける。なお、コーチは各モジュールを実践した後、文書でフィードバックを行うこととする。・MDDと診断された適格例は、構造的臨床インタビュー(structured clinical interview:SCID)を実施し、入院治療の開始までに少なくとも3週間待機する。・主要アウトカムは、observer-rated depressive symptom severity(HRSD24)とする。さらに、入院中の患者において、Webベース介入により寛解がより早期に得られた者が多かったかどうか、探索的質問を行う。・以上により「GET.ON-Mood Enhancer-WL」の有効性が実証されれば、患者はうつ症状が軽減された状態で入院治療を開始でき、寛解率の向上、入院期間の短縮、コスト節減、待機期間の短縮につながる可能性がある。 関連医療ニュース 抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始 認知障害はうつ病の中核症状とみなすべきなのか 世界初!「WEB版」気分変動アンケート、その後の臨床に有益

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ロタウイルスワクチン、乳児けいれん発作に予防効果

 ロタウイルスワクチンを完全接種(RV5を3回またはRV1を2回)した乳児は、非接種児と比較して、けいれん発作リスクが統計的に有意に低下(初発けいれん発作リスクの18%低下、1年間の全けいれん発作リスクの21%低下)したことが明らかになった。米国国立予防接種・呼吸器疾患センター(NCIRD)のDaniel C. Payne氏らが、2006~2009年のVaccine Safety Datalink(VSD)登録の乳児25万人のデータを後ろ向きに分析し報告した。著者は、「今回示された乳児けいれん発作の減少は、ロタウイルスワクチン関連ベネフィットである、下痢による入院の予防効果を補完するものである」とまとめている。Clinical Infectious Disease誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。 ロタウイルス胃腸炎とけいれん発作については、同胃腸炎入院児の7%がけいれん発作を経験していたとの報告(カナダの多施設共同研究1,359人)や、ロタウイルス関連のけいれん発作で入院した児のうち18%が少なくとも1日ICUに入室した(米国1施設5年間の後ろ向き研究)など、関連があることが報告されている。同けいれん発作は24時間に1回超と頻度が高い一方、無熱性が特徴である。 研究グループは、ロタウイルスワクチン接種が、けいれん発作による入院あるいは救急外来受診について予防効果を有するかどうかについて検討した。 対象は、2006年2月28日(ロタウイルスワクチンが米国で承認された日)以降に生まれ、2009年11月までにVSDに登録された乳児であった。ロタウイルスワクチンの最終接種日以降4~55週間追跡し、その間のけいれん発作発生率を、接種状況(完全接種と非接種)で比較した。 予防効果の経時的変化を明らかにするため、けいれん発作発生までの時間をCox比例ハザードモデルを用いて分析し、接種状況で比較した追跡期間中の相対的けいれん発作発生率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、VSD登録児25万601例が組み込まれた。そのうち、ロタウイルスワクチンの完全接種群は18万6,502人(74.4%)、非接種群は6万4,099人(25.6%)であった。・けいれん発作発生率は、ロタウイルスワクチン接種状況と統計的に有意に関連していた。けいれん発作発生のうち、ロタウイルス胃腸炎シーズン(1~6月)の発生割合は、非接種群55%に対し、ワクチン接種群は48~49%であった(p=0.023)。・共変量(VSD登録地域、最終接種時年齢、性、けいれん発作発生月)で補正後、ロタウイルスワクチン接種による統計的に有意な予防効果が、初発けいれん発作(対非接種群とのリスク比[RR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.73~0.91)、全けいれん発作(同:0.79、95%CI:0.71~0.88)のいずれについても認められた。

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論文公表率はそんなに低くなかったが、やはり100%を目指してもらいたい。(コメンテーター:折笠 秀樹 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(158)より-

ClinicalTrials.govへ登録済みである585件の臨床試験の中で、29%が論文として公表されていなかった。また、試験完了から出版までの期間はおよそ30ヵ月であった。500症例以上の大規模試験に限った調査ではあるが、思ったほど悪くないというのが率直な感想である。 NEJM誌11月14日号でも同様の報告があった(Gordon D et al. N Engl J Med. 2013; 368: 1926-1934.)。NHLBIがスポンサーした臨床試験244件を調査したところ、36%が論文化されていなかった。論文出版までの期間は中央値で25ヵ月であった。BMIの調査結果とほぼ同様であった。 ただし、少し気になった事実があった。企業スポンサーの臨床試験で非公表割合が高かったことである(32% vs 18%, P=0.003)。公表の有無は結果次第であると伺わせる。結果によらず、あらゆる臨床試験は公表する義務のあることを、日本製薬工業協会や医薬品医療機器総合機構からもっと発信してもらいたい。 本研究の研究限界として、出版された研究を見落とした可能性が挙げられていた。たしかに、英語以外の出版物は見落とされることが多いだろう。MEDLINEに載っていない雑誌もたくさんある。日本心臓病学会の英文誌であるJournal of Cardiologyも、数年前はたしか載っていなかったはずである。日本動脈硬化学会英文誌のJATもそうであった。 第二の限界として、登録情報からはその試験は完了していたはずだが、実際にはまだ進行中という例は少なくないことが挙げられた。これも正しいだろう。この2点を考慮すればもっと公表率は高くなるわけだが、本当にそんなに良い成績なのだろうか? 生物医学研究のバイブルであるヘルシンキ宣言にも謳われているように、実施した臨床試験は必ず公表するというのが研究者の責務である。今回の調査結果から公表率はおよそ70%のようだが、ぜひ100%となるように願っている。

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複合性局所疼痛症候群に対するTNF-α阻害薬の効果

 複合性局所疼痛症候群(CRPS)には、TNF-αなどの炎症性サイトカインが関与していると考えられることから、TNF-α阻害薬の治療効果が期待されている。オランダ・エラスムス大学医療センターのMaaike Dirckx氏らは、インフリキシマブ(商品名:レミケード)による無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行った。試験は、統計学的な検出に必要な症例数に達する前に試験が中止されたものの、当初からTNF-α濃度が高い患者ではインフリキシマブ投与による効果がみられる傾向が示唆されたという。Pain Practice誌2013年11月(オンライン版2013年5月22日)の掲載報告。 研究グループは、局所炎症による臨床症状がインフリキシマブ全身投与後に減少するかどうかを確認することを目的とした。 対象はCRPS患者13例で、インフリキシマブ5mg/kg群(6例)またはプラセボ群(7例)に無作為化し、0、2および6週に投与した。 局所炎症による臨床症状をimpairment level sumscore(ISS)で評価するとともに、誘発された水疱液中のメディエーター濃度およびQOLについても調べた。 主な結果は以下のとおり。・インフリキシマブ群とプラセボ群との間で、ISS合計スコアに有意な変化はなかった。・サイトカイン濃度も両群で差は認められなかったが、プラセボ群に比べインフリキシマブ群でTNF-αの減少が大きい傾向がみられた。・プラセボ群と比較しインフリキシマブ群で、EuroQolサブスケールの健康状態が有意に低下した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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ツナ缶の蓋を食べた囚人【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第8回

ツナ缶の蓋を食べた囚人一人暮らしをしていた医学生の頃、ツナ缶はチャーハンを作る油としても具材としても重宝していたので、個人的に思い入れのある食材です。当時からツナ缶は指で開けられるタイプのものでしたが、ツナ缶の蓋は結構鋭利で、指を幾度となく切ったものです。いやあ、懐かしい。医学部3年の頃からは近所の餃子チェーン店の無料券や割引券がポストに入っていたので、そこのチャーハンを食べるようになりましたが。そんなどうでもいい話はさておき、本日ご紹介するのは「ツナ缶を食べた囚人」ではなく、「ツナ缶の蓋を食べた囚人」の話。Abraham B, et al.An unusual foreign body ingestion in a schizophrenic patient: case report.Int J Psychiatry Med. 2005;35:313-318.ある刑務所で、丸まったツナ缶の蓋を飲み込んだという30歳の黒人男性の囚人が救急搬送されました。その男性は既往歴として、過去にうつ病や妄想型統合失調症を診断されていました。この囚人は最初の投獄の時期から手元にある物を飲み込む癖があったらしく、数年前にも針を飲み込んで救急受診していました。彼が救急受診した際、問診によってその理由がわかりました。もう長らく自分を刑務所に訪ねてくる者がいないこと(他者から必要とされていないこと)、また自分が投獄されたことによって母親が死んでしまったのではないかという不安な気持ちを吐露したそうです。彼は積極的に自殺するつもりがあったわけではなく、ツナ缶の蓋を飲み込むことでもしかして楽に死ねるかもしれないと思ったようです。外科チームのアセスメントによって、ツナ缶の蓋は開腹手術によって取り除かれました。そして囚人は合併症なく刑務所へ退院していったそうです。ちなみに、統合失調症による誤飲のケースの多くは、「○○を飲み込め・・・・・・」という幻聴に操作される形で救急搬送されることが多いそうです(この囚人の場合、他界した母親が「ツナ缶の蓋を飲み込まないで」という幻聴があったと記録されていますが、飲み込むに至ったプロセスはきわめて複雑です)。囚人が自殺をはかってカミソリなどを飲み込むことは、過去にいくつか報告されています。また、精神疾患によって誤飲した症例もあります。基本的に消化管異物は、鋭的なものであっても胃内に到達していれば8割以上は数日~1週間程度で自然排泄されるといわれています(日臨外会誌. 2010;71:1667-1672.)。しかし、これはあくまで飲み込める大きさの範囲のものであって、ツナ缶の蓋のように大きな消化管異物は想定外だろうと思います。そのため、本症例では手術によって摘出せざるを得ませんでした。

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院外心停止に対する機械的心肺蘇生、予後は手動と同等/JAMA

 院外心停止患者に対する、除細動併用の機械的心肺蘇生(CPR)と手動CPRとを比較した結果、4時間生存率に有意差は認められなかったことが判明した。スウェーデン・ウプサラ大学のSten Rubertsson氏らが、英・オランダを含めた3ヵ国6施設で登録された2,589例の院外心停止患者を対象に行った多施設共同無作為化試験「LINC」の結果、報告した。院外心停止に対する機械的CPRは、予後を改善する可能性が示唆されていたが、これまで大規模試験は行われていなかった。なお、6ヵ月時点までの神経学的アウトカムについても報告されているが、両群間に有意差はなく生存患者の94~99%のアウトカムが良好であったという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告より。3ヵ国6施設2,589例を対象に無作為化試験 LINC(LUCAS in Cardiac Arrest)試験は、胸部圧迫とともに除細動で機械的に心マッサージを行う機械的CPR(LUCAS Chest Compression System、米国Physio-Control社/スウェーデンJolife AB社製)アルゴリズムが、ガイドラインに即して手動で行うCPRと比較して、4時間生存率を改善するかを明らかにすることを目的とした。被験者は2008年1月~2013年2月に、救急サービスまたは搬送先病院(スウェーデン4施設、英国1施設、オランダ1施設)に登録された院外心停止患者2,589例であった。無作為に、機械的CPR群1,300例、手動CPR群1,289例に割り付けられ、6ヵ月間フォローアップを受けた。 主要アウトカムは、4時間生存率。また、副次エンドポイントとして6ヵ月時点の脳機能カテゴリー(CPC)スコアで測定した神経学的アウトカムなども評価した。CPCスコアは、1、2をアウトカム良好と定義した。4時間生存率、6ヵ月後神経学的アウトカムに有意差みられず 結果、4時間生存率は、機械的CPR群23.6%(307/1,300例)、手動的CPR群23.7%(305/1,289例)で、有意差はみられなかった(リスク差:-0.05%、95%信頼区間[CI]:-3.3~3.2%、p<0.99)。 CPCスコア1、2の患者は、ICU退室時点では機械的CPR群7.5%(98例)、手動的CPR群6.4%(82例)(リスク差:1.18%、95%CI、-0.78~3.1%、p=0.25)であった。また、病院退院時ではそれぞれ8.3%(108例)、7.8%(100例)(同:0.55%、-1.5~2.6%、p=0.61)、1ヵ月時点では8.1%(105例)、7.3%(94例)(同:0.78%、-1.3~2.8%、p=0.46)、そして6ヵ月時点では8.5%(110例)、7.6%(98例)(同:0.86%、-1.2~3.0%、p=0.43)だった。 6ヵ月時点で生存していた患者でCPCスコアが1、2であった患者は、機械的CPR群99%・110/111例(スコア1:103例、同2:7例)、手動的CPR群94%・98/104例(スコア1:88例、同2:10例)だった。 これらの結果を踏まえて著者は、「日常診療において、機械的CPRアルゴリズムは、手動的CPRと比べて効果の改善には結びつかなかった」と結論している。

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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:テオフィリンとコーヒーの関係って?

はじめにテオフィリンは、1888年にドイツ人の生物学者であるアルブレヒト・コッセルが茶葉から気管支拡張作用のある物質を抽出したことから開発が始まりました。テオフィリン、アミノフィリンなどのキサンチン誘導体の作用機序としては、ホスホジエステラーゼ阻害による細胞内cAMPの増加、アデノシン受容体拮抗作用、細胞内カルシウムイオン分布調節による気管支拡張作用、ヒストン脱アセチル化酵素を介した抗炎症作用などの説がありますが、いまだにそのすべては解明されていません。そんな難しいことはさておき、キサンチン誘導体は主に喘息に対して使用されます。慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対しても有効と考えられていますが、欧米諸国ではその効果に懐疑的である医師が多く、日本ほど汎用されていません。Town GI. Thorax. 2005 ;60:709.日本ではテオフィリンは主に長期管理薬として、アミノフィリンは主に発作時の点滴として使われているのが現状です。これらのうち、とくにテオフィリン徐放製剤の処方頻度が高いと思います。当院は他院から紹介される患者さんが多いため、閉塞性肺疾患の患者さんの3割程度はテオフィリン徐放製剤をすでに内服している印象があります。テオフィリンに構造が近いカフェインは、昔から喘息に効果的であると報告されています。Wikipediaによれば、1850年頃には認識されていたようです(大規模な臨床試験はありませんでした)。イギリスのヘンリー・ハイド・サルターが1860年に書いた『On Asthma : Its Pathology and Treatment』の中にコーヒーが気管支喘息に有効であるという記載があります。また、ある地域では小児喘息に対してコーヒーが多用されたという歴史もあるそうです。Sakula A. Thorax. 1985 ; 40: 887–888.私たち若手呼吸器科医にとっては、1980年代にCHEST誌に立て続けに報告された、コーヒーが喘息に対して有効であるという論文が有名です。Gong H Jr, et al. Chest. 1986 ;89:335-342.Pagano R, et al. Chest. 1988;94:386-389.ただ、実臨床で喘息患者さんとコーヒーの関連を意識する状況は皆無です。コーヒー好きにはキサンチン誘導体は禁忌?しかし、呼吸器科を勉強したことがある人ならば「コーヒーを飲んでいる患者さんには、キサンチン誘導体は投与しない方がよい」という格言を一度は聞いたことがあるはずです。これは「テオフィリン中毒」を惹起するからだといわれています。テオフィリンの血中濃度が20~30μg/mLを超え始めると、嘔吐、下痢、頻脈といった症状があらわれることがあります(急性と慢性の中毒で異なる動態を示すのですが詳しいことは割愛します)。重症のテオフィリン中毒になると、痙攣や致死的不整脈をきたすことがあります(図)。高齢者のテオフィリン中毒の場合、抑うつ症状と間違えられることがあるため、怪しいと思ったら必ずテオフィリンの血中濃度を測定してください。Robertson NJ. Ann Emerg Med. 1985;14:154-158.画像を拡大する図. テオフィリン血中濃度と中毒域ちなみに私は呼吸器内科医になってまだ5年しか経っていませんが、有症状のテオフィリン中毒は1例しか診たことがありません。かなりまれな病態だろうと思います。諸説ありますが、カフェインの致死量は約10g程度だろうと考えられています。コーヒー1杯には50 mg、多くて200 mgくらいのカフェインが含まれています。そのため、単純計算では濃いコーヒーならば50杯ほど服用すれば、致死的になりうるということになります。ただし、上記のGongらの報告によればかなり短時間で飲み干さないとダメそうです。どんぶり勘定ですが、1杯あたり30秒~1分くらいの速度で飲み続けると危険な感じがします。わんこそばではないので、そんなコーヒーを次々に飲み干す人はいないと思いますが……。テオフィリンを定期内服している患者さんでは、アミノフィリンの点滴投与量は調節しなければならないことは研修医にとっても重要なポイントです。また、喘息発作を起こす前後にコーヒーを大量に飲んだ患者さんの場合でも同様に、アミノフィリンの点滴は避けたほうがよさそうです。ただし、致死的なテオフィリンの急性中毒に陥るには、想定している血中濃度よりもかなり高いポイントに到達する必要があるのではないかという意見もあります。私自身キサンチン誘導体とカフェインの関連についてあまり気にしていなかったのですが、今年のJAMAから出版された「ビューポイント」を読んで、少し慎重になったほうがよいのかもしれないと感じました。5,000の司法解剖のうち、カフェイン血中濃度10μg/mLを超えるものが1%程度にみられたとのこと。これはカフェイン含有エナジードリンク(コーヒーよりもカフェイン濃度が多い)に対する警鐘なので、一概にコーヒーがよくないと論じているわけではありませんが。Sepkowitz KA. JAMA. 2013;309:243-244.おわりに循環器科医がジギタリスの投与に慎重になるのと同じように、呼吸器科医はキサンチン誘導体の投与に慎重な姿勢をとっています。それはひとえに治療域と中毒域が近接しているからにほかなりません。高齢や肥満の患者さん、マクロライド系・ニューキノロン系抗菌薬を内服している患者さんではテオフィリンの血中濃度が上昇することが知られているため、なおさら注意が必要です。カフェインが含まれている飲料には、コーヒーやエナジードリンク以外にも、緑茶や紅茶があります。もちろんお茶にはそこまで多くのカフェインは含まれていませんが、キサンチン誘導体とカフェインの関連については注意してもし過ぎることはありません。今後の報告に注目したいところです。

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消化管手術の創合併症発症率は真皮縫合とステープラーで同等である(コメンテーター:中澤 達 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(156)より-

ステープラーによる皮膚縫合は消化器外科での開腹手術後に広く行われている反面、もう一つの手段である真皮縫合の潜在的な利点については評価されていない。 本研究はオープンラベル多施設ランダム化比較試験として、24施設が参加して行われた。適応基準は、20歳以上、臓器機能異常なし、上部消化管または下部消化管の開腹外科手術を施行された患者。手術前に真皮縫合とステープラー群に1:1で割り付けられた。主要アウトカムは手術後30日以内の創合併症発症率、副次アウトカムは術後6ヵ月以内の肥厚性瘢痕発症率とした。 1,072例が主要アウトカムの、1,058例が副次アウトカムの評価対象となった。真皮縫合群とステープラー群はそれぞれ558例(上部消化管382例、下部消化管176例)、514例(上部消化管413例、下部消化管101例)であった。 主要評価項目である創合併症発症率は、真皮縫合群で8.4%、ステープラー群では11.5%と、全体としては有意な差は確認できなかった(オッズ比:0.709、95%CI:0.474~1.062、p=0.12)。しかしながら、探索的データ解析によると創合併症発症率は、下部消化管においては真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群10.2%、ステープラー群19.8%、オッズ比:0.463、95%CI:0.217~0.978、p=0.0301)。 内訳をみると、表層手術部位感染については、下部消化管において真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群7.4%、ステープラー群15.8%、オッズ比:0.425、95%CI:0.179~0.992、p=0.0399)。表層手術部位感染以外の創合併症発症率については、全体では真皮縫合群で有意に少なく(真皮縫合群2.0%、ステープラー群4.5%、オッズ比:0.435、95%CI:0.189~0.940、p=0.0238)、上部消化管においても真皮縫合群で有意に少ないという結果であった(真皮縫合群1.6%、ステープラー群4.6%、オッズ比:0.331、95%CI:0.107~0.875、p=0.0149)。 副次アウトカムである肥厚性瘢痕の発症率については、全体では真皮縫合群で有意に少なく(真皮縫合群16.7%、ステープラー群21.6%、オッズ比:0.726、95%CI:0.528~0.998、p=0.0429)、上部消化管においても真皮縫合群で有意に少なかった(真皮縫合群17.3%、ステープラー群23.7%、オッズ比:0.672、95%CI:0.465~0.965、p=0.0282)。 サブセット解析では、男性、下部消化管手術、手術時間220分以上、手術後の抗凝固療法施行において、真皮縫合群で創合併症リスクが減少していた。また、ほとんどのサブセットにおいて、真皮縫合群で創合併症の頻度が減少していることが証明された。 消化器外科手術で、下部消化管手術が上部消化管手術より創部感染率が高いことはよく知られている。平成19年4月に施行された改正医療法により、すべての医療機関において、管理者の責任の下で院内感染対策のための体制の確保が義務化された。院内感染の発生状況や薬剤耐性菌の分離状況、および薬剤耐性菌による感染症の発生状況を調査し、わが国の院内感染の概況を把握して医療現場へ院内感染対策に有用な情報の還元等を行うため、厚生労働省により院内感染対策サーベイランス(JANIS)が始まった。そのSSI(surgical site infection)部門の最新結果(2013年1~6月)でも、創感染発症率は直腸手術14.7%、結腸手術12.7%、胃手術8.4%であった。 本研究は先行研究であるClass 1(clean)と同様に、Class 2(clean-contaminated)においても、真皮縫合がステープラーより創合併症発症率が低い結果を期待したが、全体では有意差が出なかった。腹腔鏡手術を除く上部、下部消化管手術のすべてを対象に設定されており、腹腔鏡手術が下部消化管手術でより普及しているため、上部消化管手術の比率が高くなったためと考えられる。下部消化管においては真皮縫合群で有意に低かったとしているが、サブグループ解析の本来の目的は有意差のある対象者を探し出すことではなく、1次エンドポイント結果の普遍性・汎用性を検証することである。上部、下部消化管手術の感染率が明らかに異なるのであるから、臓器別に研究計画を立て、検証するべきである。

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慢性腰痛の痛みや機能障害などの改善に水中療法の集中プログラムが有効

 水中療法の週5回2ヵ月間集中プログラムは、慢性腰痛患者の疼痛、機能障害、身体組成値および体力測定値を改善するとともにQOLを向上させることが認められた。スペイン・グラナダ大学のPedro Angel Baena-Beato氏らによる比較臨床試験で明らかとなった。Clinical Rehabilitation誌オンライン版2013年10月31日号の掲載報告。 対象は、慢性腰痛を有しあまり運動しない成人患者49例で、水中療法を週5回、2ヵ月間行う集中プログラムの実施群(24例)と、集中プログラムの順番待ちまたはプログラム空き時間に水中療法を行う対照群(25例)に分け、集中プログラムの効果を評価した。 評価項目は、疼痛強度(視覚的アナログスケール:VAS)、機能障害(オスウェストリー障害指数;ODI)スコア、SF-36による健康関連QOL、身体組成値(体重、BMI、体脂肪率、骨格筋量)および体力測定値(長座体前屈、握力、腹筋、1マイル歩行テスト)であった。 主な結果は以下のとおり。・実施群では、疼痛強度が3.83±0.35mm減少、ODIスコアが12.7±1.3減少、SF-36の身体に関するスコアが10.3±1.4増加し、いずれも有意(p<0.001)な改善であったが、SF-36の精神に関するスコアの改善はみられなかった(p=0.114)。・身体組成値と体力測定値は、実施群では有意な改善が認められたが(すべての項目がp<0.01)、対照群ではいずれの項目もまったく変化しなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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難治性てんかん患者に対するレベチラセタムの有用性はどの程度か

 新規抗てんかん薬は、他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない場合の併用療法に使用することが定められているが、どの程度の有効性が期待できるのだろうか。中国・復旦大学のYouxin Fang氏らは、てんかん患者に対しレベチラセタム(LEV)を併用した際の有効性と忍容性を明らかにするためメタ解析を実施した。その結果、LEVの追加はプラセボに比べ、発作を有意に減少させ、忍容性も良好であることを報告した。Journal of Clinical Neuroscience誌オンライン版2013年11月11日号の掲載報告。 研究グループは、特発性または二次性てんかんに罹患し多様な発作を呈する、成人および小児に対するLEV併用療法の有効性と忍容性に関する、現時点のエビデンスを収集し、概括することを目的にメタ解析を実施した。てんかんに対する併用療法としてLEVを用いた無作為化比較試験(RCT)を選択し、50%以上の発作頻度減少、発作なし、有害事象などのアウトカムについて評価した。 主な結果は以下のとおり。・13件のRCTを解析に組み込んだ。・LEVの追加効果は、50%以上の発作頻度減少(pooledオッズ比[OR]:3.36、95%信頼区間[CI]:2.78~4.07、Z=12.46、p<0.00001)と、発作なし(同:4.72、2.96~7.54、Z=6.50、p<0.00001)の項目において、プラセボに比べ優れていた。・不均質性は軽度であった(50%以上の発作頻度減少:χ2=12.28、I2=2%、発作なし:χ2=0.49、I2=0%)。・サブグループ解析において、成人患者のすべての用量で同様の有効性が示唆された。・LEV群とプラセボ群の間で、有害事象の発現頻度に有意差はなかった。・LEV群で多く発現した有害事象は、眠気、興奮、めまい、無力症、感染症であった。・発疹、白血球減少、血小板減少などの重篤な有害事象はきわめて低頻度であった。・成人および小児の部分てんかんおよび特発性全般てんかんにおいて、LEVの追加はプラセボに比べ発作を有意に減少させ、良好な忍容性を示した。■関連記事難治性の部分発作を有する日本人てんかん患者へのLEV追加の有用性はレベチラセタム、部分てんかん患者に対する1年間の使用結果レビュー:聖隷浜松病院新規の抗てんかん薬16種の相互作用を検証抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

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