サイト内検索|page:407

検索結果 合計:10293件 表示位置:8121 - 8140

8121.

運動療法は効果的

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド“お得”が積み重なる運動療法!メモ体脂肪を減らせば血圧は下がります!おすすめは、早歩き、ジョギング、自転車(ゆっくり)、水泳(ゆっくり)などの全身運動。運動療法は効果が出るまで4週間。長い目をもって。薬を飲んでいる人にも効果的です。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8122.

塩分の摂り過ぎに注意

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド塩 はごく少量あれば生きていける!目標は、1日6gメモ日本人の塩分摂取量は1日平均約10g。しかし、海外には1日1g以下で生活している民族もいます。とくに日本人は塩分を摂ると血圧が高くなりやすい人種だといわれています。塩分の摂り過ぎには注意しましょう。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8123.

入浴時の血圧変化に注意

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド“お風呂場” での血圧はジェットコースターメモ入浴時における死亡件数は年間1万2千人以上。交通事故の死亡者数より多い!70歳以上のお年寄りに多く、冬期に集中します。①脱衣所と浴槽内の温度差で、血圧が急に上昇②血圧の高い状態での長風呂が、急な低血圧を招く③浴槽から出ると、サーっと血が引き「のぼせ(低血圧)」の状態に監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8124.

入浴時の事故を防ぐ工夫

Dr.桑島の高血圧をわかりやすく説明できるスライド“お風呂場” での事故を防ごうメモ高血圧患者さんは、とくにお風呂での注意が必要。脱衣場と浴槽の温度差が大きい“一番風呂”は避ける。冬季は、脱衣場に暖房器具を入れて暖める。入浴前にお風呂のフタをあけたり、温水シャワーを出したりして浴室を暖める(湯船との温度差を少なくするため)。お風呂の温度は39~40度。熱くしすぎないように。監修:東京都健康長寿医療センター顧問 桑島 巌 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8125.

【GET!ザ・トレンド】心臓再生医療 臨床への応用

近年になり医学界の定説を覆す発見、心臓幹細胞による心臓再生医療。今回は、東海大学創造科学技術研究機構 細田徹氏から臨床への応用について最新の知見を聞いた。すでに始まっている心臓幹細胞による臨床試験心臓幹細胞の臨床への応用は進んでいるのでしょうか?2009年より米国で初の臨床第一相試験であるSCIPIO trialが行われています。オープンラベルのランダム比較試験です。対象は陳旧性心筋梗塞のCABG手術例で、術後4ヵ月時点で左室駆出率(LVEF)40%以下の症例です。この対象を2群に分け、本人のc-kit陽性心臓幹細胞をカテーテルで注入した群とCABG手術のみの群を比較しています。結果、LVEFはCABGのみの群では、術後4ヵ月と比べてその1年後も変化はみられませんでしたが、心臓幹細胞注入群では術後4ヵ月の30%から1年後には38%へ、2年後には42%と改善しました。MRIで確認した梗塞巣のサイズは試験前と比べて2年後には約半分に。つまり、梗塞部の約半分が生きた細胞と置き換わったことになります。それに伴い自覚症状も改善していました。心臓幹細胞による初の臨床試験SCIPIOtrialの内容と結果 (細田徹氏解説:3’40”)参考:Bolli R, et al. Lancet. 2011; 378:1847-57課題の残る重症心不全治療。心臓幹細胞に期待心臓幹細胞治療は具体的にどのような臨床活用方法が期待できますか?心臓幹細胞治療は、その利点を活かし以下のように活用できると思います。LVAD(左室補助人工心臓)を介した再生医療への応用:LVADは心臓幹細胞が多く存在する心尖部に設置します。LVAD設置時に取り除かれる組織から心臓幹細胞を抽出し、培養して注入することにより再生を促し、LVADからの離脱が可能になるかも知れません。手術対象でない患者さんへの治療:末期の心不全のわずか5mgの組織からでも治療に適した質と量の心臓幹細胞を得られるというエビデンスがあります。バイオプシーサンプルから心臓幹細胞を培養すれば、手術適応でない重症症例、手術難易度の高い小児症例にも応用することができます。持続的な治療:心臓幹細胞は、凍結保存組織や培養して凍結保存した幹細胞を使うことで、繰り返し投与できます。たとえば先天性心臓病患者さんの場合、小児期に組織を採取しておけば、成長の過程で悪化しても繰り返し使用することができます。重症例への低コスト治療:心臓幹細胞は、細胞培養の施設以外はあまり費用がかかりません。移植を含め莫大なコストがかかる重症心臓疾患の治療にあって、低コストで実現可能な治療法として医療経済にもメリットが与えられると思います。本邦において、心臓幹細胞治療の対象となる重症心不全は治療手段が限られているとお聞きしましたが?心筋梗塞など虚血性心筋症は心不全の原因としてもっとも多く、今後も増えていくと予想されます。しかし、現在の日本では重症心不全の治療は薬剤が効かなければ心臓移植しか方法がありません。ところが、高齢者は心臓移植の対象外であり、重症心不全の治療法がほとんどない状況です。また、心臓移植のドナーが不足しており、特に小児にいたってはドナーがほとんど見つからない状態です。たとえ心臓移植の適応となっても受けられない患者さんもおられるのです。沢山の患者さんがおられ、今後も増加が予想される領域でありながら治療方法がない。そういった方々に対し、心臓幹細胞治療は非常に魅力的な選択肢だと思います。心臓幹細胞は他の細胞・再生医療とどのような違いがありますか?心臓幹細胞治療以外にも再生・細胞医療にはいくつかのものがあります。ES細胞やiPS細胞は低分化の細胞で、増殖機能が高くあらゆる細胞に分化させられます。また、心不全治療に関しては骨髄や血液中細胞による治療も進められています。多くの注目が集まっているものの、がん化や分化制御などまだ乗り越えなければならない壁も存在します。心臓幹細胞は、ES細胞やiPS細胞ほど高い増殖機能はありませんが、心臓の内因性細胞を用いて心臓特異的な組織を高い確率で作ることができ、がん化の可能性も低いという利点があります。一刻も早く患者さんに届けたい細田徹氏からのメッセージ私が米国に留学した当時は心臓に幹細胞があること自体信用されない状態でしたが、同様の研究データが発表され、徐々に流れが変わってきました。そのようななかSCIPIO trialの結果は我々の予想を超えるものでした。心不全で苦しんでいる方に一刻も早くこの医療を届けられるように、多くの方に心臓幹細胞治療の今を知っていただきたいと思います。細田徹氏からのメッセージ:1’45”(聞き手 ケアネット 細田 雅之)

8126.

新規不眠症治療薬は安全に使用できるか

 不眠症治療薬として米国で認可されたオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサント(MK4305、2014年9月26日に国内でも承認、商品名:ベルソムラ)の有効性と安全性を評価するため、米国・ニューヨーク医科大学のL. Citrome氏が、システマティックレビューを行った。その結果、スボレキサントは、ポリソムノグラフィによる客観的評価および患者による主観的評価の両方で、プラセボに比べ入眠時ならびに睡眠維持において優れること、主な有害事象として傾眠に注意が必要であることを報告した。International Journal of Clinical Practice誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。 検討は、Pub Med、ClinicalTrials.govサイトで、「スボレキサント」「MK4305」を検索用語として論文検索を行い、またFDAのPeripheral & Central Nervous System Drugs Advisory Committeeによる要約のほか、添付文書から追加の情報を得て行われた。また、適用可能な臨床研究の報告を特定し、その他の情報源と合わせ、主要な結果と、代表的な二値アウトカムに対して算出された治療必要数(NNT)および有害事象必要数(NNH)を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・スボレキサントは、試験デザインが同じ2件の第III相臨床試験の成績に基づき承認された。それら試験は3ヵ月、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間試験で、非高齢者(65歳未満)には40および20mgを、高齢者(65歳以上)には30および15mgを投与し、検討が行われた。・スボレキサントは、ポリソムノグラフィによる客観的評価および患者による主観的評価の両方で、プラセボに比べ入眠時において優れる結果が示された。・また、睡眠維持においても優れる結果が示された。・3ヵ月時点で、Insomnia Severity Indexの6ポイント以上の改善を反応ありとした場合のプラセボに対するNNTは、高用量および低用量レジメンともに8(95%信頼区間[CI]:6~14)であった。・添付文書で示されている主な有害事象(発現頻度が5%以上かつプラセボの2倍以上の頻度)は傾眠で、対プラセボのNNHは、スボレキサント40および30mgで13(95%CI:11~18)、同20および15mgで28(同:17~82)であった。・スボレキサントの有効性および忍容性プロファイルは、65歳未満と65歳以上で同様であった。・スボレキサント毎夜使用を中止して3ヵ月後または12ヵ月後、不眠のリバウンドおよび退薬の影響は観察されなかった。・鎮静をはじめとする翌日への持ち越し効果が懸念されるため、用量は10~20mgの範囲が勧められた。 結果を踏まえて、著者は「スボレキサントは、既存の睡眠薬とは異なる作用メカニズム、および潜在的に異なる安全性・忍容性プロファイルを示すことから、不眠症治療の新たな選択肢と言える」とまとめている。関連医療ニュース 期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は 不眠の薬物療法を減らすには 睡眠薬、長期使用でも効果は持続  担当者へのご意見箱はこちら

8127.

エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part1

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、脳梗塞に対する質問に対し、北里大学 西山和利先生に回答いただきました。今回は、一般内科初診で血栓症を疑うべき注意すべき訴え、アテローム血栓性梗塞とラクナ梗塞の境界、アスピリンは心原性血栓症に対しては効果が弱い?について回答いただきます。一般内科初診で血栓症を疑うべき注意すべき訴えとして、どういったものがありますか?脳血栓症、即ち脳梗塞、を疑うべき注意点というご質問を拝聴しました。次のような症状が出現している場合に、脳梗塞を疑いましょう。片側半身の運動麻痺片側半身の感覚障害話にくさ(構音障害や失語)運動失調また脳梗塞の特徴は、症状が急性に発症するということです。ですので、上記のような症状が突然に出現したと患者さんが訴える場合には、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害を疑い、専門医療機関を受診させる必要があります。専門医療機関としては、神経内科、脳神経外科、脳卒中科などを標榜している病院が望ましい受診先と考えられます。一方で、一般医家の先生にも誤解があるのが、めまいや頭痛を訴える患者で脳梗塞を考えるべきかどうかです。即ち、めまいという症状は、それ単独では脳梗塞の症状とは考えません。運動失調や構音障害などを合併する眩暈は脳梗塞の可能性がありますが、めまい単独の場合は耳鼻科疾患である可能性が高く、眩暈だけを生じる脳梗塞というものは稀と考えられています。また、頭痛も脳梗塞の症状としては頻度の低い症状です。頭痛を呈する脳血管障害はくも膜下出血や脳出血ですが、脳梗塞では頭痛を呈するものは、動脈解離に起因する脳梗塞など稀な病態ですし、動脈解離を伴う脳梗塞であっても頭痛だけ単独で生じることということは稀です。よって、頭痛や眩暈だけの患者では脳梗塞を積極的に疑う必要はありません。脳梗塞はアテローム性動脈硬化ですが、ラクナ梗塞との明確な境界はあるのですか?非心原性脳梗塞にはラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞があります。この二つはいずれも動脈硬化に伴う脳梗塞ですが、病態には明確な違いがあります。ラクナ梗塞は、脳実質をつらぬくように走行する穿通枝と呼ばれる細い動脈の閉塞で生じる脳梗塞です。ラクナ梗塞は閉塞する動脈が細いために、頭部MRI画像などの画像検査では直径15㎜以下のサイズとして検出されます。一方、アテローム血栓脳梗塞は、主幹動脈の狭窄や閉塞によって生じる脳梗塞であり、脳梗塞が生じる部位が穿通枝ではありません。脳梗塞巣は主幹動脈の走行にそって広範囲にわたり、脳梗塞のサイズもラクナ梗塞よりも大きくなることが多いです。このように脳梗塞の出現する部位、梗塞のサイズによって、ラクナとアテロームは区別することが可能です。またMRA(magnetic resonance imaging angiography)や脳血管撮影などで脳の主幹動脈の狭窄度を調べることで、ラクナ梗塞とアテローム血栓性梗塞を区別することができます。即ちラクナ梗塞では主幹動脈に狭窄が乏しいわけですが(穿通枝は血管撮影でも描出は困難)、アテローム血栓性脳梗塞では主幹動脈に狭窄が存在しているわけです。アスピリンは心原性血栓症に対しては効果が弱いのでしょうか?昨今の大規模研究の結果では、アスピリンは心原性脳塞栓の予防に関しては効果が弱いというよりも、効果がないというのが真実に近いと考えられています。大規模研究では、アスピリン投与群でもプラセボ群よりも脳梗塞発症率は減じているように見えます。が、これは対象症例が心原性脳塞栓以外の脳梗塞、即ちラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞を発症することもあり、アスピリンはこのような非心原性脳梗塞の部分に対しての予防効果があるため、一見するとアスピリンが心原性脳塞栓の予防においても一定の効果があるようにみえるだけです。最近の知見では、アスピリンは心房細動に起因する心原性脳塞栓症を予防する効果はないと考えるのが妥当なようです。そのため、心房細動に対する最近の治療ガイドラインでは、抗血栓療法の中からアスピリンは削除されて、抗凝固療法のみが推奨されるようになっています。

8128.

VTEの8つの治療戦略を比較/JAMA

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。カナダ・オタワ大学のLana A. Castellucci氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。JAMA誌2014年9月17日号掲載の報告より。VTE再発と重大出血を主要アウトカムにネットワークメタ解析 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった。 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。統計的有意差はないが、リバーロキサバン、アピキサバンが低リスク 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。

8129.

SIGNIFY試験:心拍数を越えて(解説:香坂 俊 氏)-256

安静時心拍数は、心血管系イベントを予測する独立した因子である  このことは昔から知られている。急性冠症候群患者1)、そして安定狭心症患者で2)、安静時心拍数の増加は心血管系のイベントと関連することが示されている。その背景には、生理学的に心拍数が高いと、心筋酸素消費量の増加と拡張期時相の短縮(冠動脈の血流は拡張期に流れる)により心筋虚血を起こしやすくなることがある。 これまでは、主にβブロッカーが心拍数を下げる目的に使われており、βブロッカーの予後改善効果が、心拍数減少と関連していることも、すでに検証されている。そこに、異なるメカニズムで心拍数を下げる薬剤として登場してきたのがイバブラジンである。 イバブラジンは、If 電流(洞結節のペースメーカー電流)を抑制する薬で、血圧や左室収縮機能に影響を与えずに心拍数だけ落とすことができる。かつてβブロッカーが至適量投与されているにもかかわらず、安静時心拍数が70拍/分以上の「慢性心不全患者」にイバブラジンを投与した無作為化試験SHIFT3)の結果が報告され、イバブラジン投与群において心血管死亡または心不全悪化による入院が少ないことが示された。ほか、イバブラジンは冠動脈造影CT撮影時の安全な心拍数抑制にも期待が持たれている。 この新しい薬を用いて、心拍数を低下させれば【安定狭心症】の予後は改善するか?という臨床的疑問に答える臨床研究が、SIGNIFYであった。患者をプラセボ群とイバブラジン群に無作為に割り付け、目標心拍数である 55~60 拍/分を達成するように用量が調節された。3ヵ月の時点で、患者の平均心拍数は、イバブラジン群で 60.7±9.0 拍/分であったのに対し、プラセボ群では 70.6±10.1 拍/分であった。だが、主要評価項目の発生率に有意差は認めるには至らなかった。 これまでの観察研究では、安定冠動脈疾患において、心拍数が上昇するほど心血管イベント率が上昇する結果が得られているにもかかわらず、イバブラジンによる心拍数の減少が転帰を変えなかったのはなぜであろうか? そもそも、心拍数を上昇させている病態生理学的機序が、心不全患者と安定狭心症患者とでは異なっている。心不全では、神経体液性因子の活性化が、心拍数を増加させ、心室のリモデリングを進行させ、さらなる、神経体液性因子の活性化を招くという悪循環が成立している。一方で、臨床的心不全を伴わない安定冠動脈疾患者では、神経体液性因子の活性化は起こっていない。 危険因子を見つけてくることは、比較的容易である。しかし、それを乗り越えて、患者の予後を改善することは非常に難しい。それは遠い昔のCAST試験の時代からわかっており、「うわべだけ」の治療ではそこに切り込むことはできない。今回は残念ながら新規の介入が「跳ね返される」結果となったが、単なる心拍数抑制を越えた効果を求めてのチャレンジは、今後も続いていくものと思われる。

8130.

英プライマリケアの抗菌治療失敗が増加/BMJ

 英国では、1990年代後半にプライマリケアでの抗菌薬の処方が減少しプラトーに達した後、2000年以降再び増加し、耐性菌増加の懸念が出てきている。 英・カーディフ大学のCraig J Currie氏らは、1991~2012年における英国のプライマリケアでの主な4つの感染症における抗菌薬の治療失敗率について検討した。その結果、各感染症に対して初期治療で用いられる抗菌薬の上位10剤のうち、1剤以上が治療失敗と関連していた。また、この期間中に全体的な治療失敗率が12%増加し、その増加のほとんどは、プライマリケアでの抗菌薬処方が再び増加してきた2000年以降であることが報告された。BMJ誌2014年9月23日号に掲載。 著者らは、UK Clinical Practice Research Datalink(CPRD)のデータを用いて、上気道感染症、下気道感染症、皮膚・軟部組織感染症、急性中耳炎に対する抗菌薬単剤での初期治療の失敗率を縦断的に分析した。主な評価項目は、標準化した基準で定義された調整治療失敗率(1991年を100とした指数)とした。 主な結果は以下のとおり。・CPRDの抗菌薬処方箋約5,800万枚から、4つの適応症に対する単剤治療の1,096万7,607エピソードを分析した。それぞれのエピソードは、上気道感染症が423万6,574(38.6%)、下気道感染症が314万8,947(28.7%)、皮膚・軟部組織感染症が256万8,230(23.4%)、急性中耳炎が101万3,856(9.2%)であった。・1991年における全体的な治療失敗率は13.9%であり、上気道感染症12.0%、下気道感染症16.9%、皮膚・軟部組織感染症12.8%、急性中耳炎13.9%であった。・2012年における全体的な治療失敗率は15.4%で、1991年と比較し12%増加していた(1991年を100とした調整値:112、95%CI:112~113)。最も高かったのは下気道感染症であった(同調整値:135、95%CI:134~136)。・最もよく処方される抗菌薬(アモキシシリン、フェノキシメチルペニシリン、フルクロキサシリン)の治療失敗率は20%以下であった。一方、上気道感染症治療におけるトリメトプリム(1991~1995年:29.2% → 2008~2012年:70.1%)、下気道感染症治療におけるシプロフロキサシン(同22.3% → 30.8%)とセファレキシン(同22.0% → 30.8%)は顕著な増加が認められた。・広域スペクトルのペニシリン、マクロライド、フルクロキサシリンの治療失敗率は、ほぼ変化がなかった。

8131.

がん疼痛緩和治療にステロイドがもたらすもの

 オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。 対象は、中等度から重度の疼痛でオピオイド治療を受けている18歳以上、直近24時間の平均NRSスコア4点以上のがん患者。登録患者は、メチルプレドニゾロン32mg/日群(以下MP群)とプラセボ群(以下PL群)に無作為に割り付けられ、7日間治療を受けた。 主要評価項目は7日時点の平均疼痛強度(NRSスコア、範囲0~10)。副次的評価項目は鎮痛薬使用量(経口モルヒネ換算)、疲労感および食欲不振 、患者満足度である。 主な結果は以下のとおり。・592例がスクリーニングされ、そのうち50例が無作為に割り付けられ、47例が解析対象となった。・患者の平均年齢は64歳、Karnofsky スコアの平均は66であった。・主ながん種は前立腺がん、肺がん、胃・食道がん、婦人科がんであった。・ベースラインのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、MP群269.9mg、PL群は160.4mgと差があった。・7日時点の平均疼痛強度はMP群3.60、PL群3.68と両群間で差は認められなかった(p=0.88)。・ベースラインからのオピオイド使用量の変化はMP群1.19 、PL群 1.20と両群間に差はなかった(p=0.95)。・疲労感はMP群では17ポイント改善、PL群で3ポイント悪化と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・食欲不振はMP群で24ポイント減少、PL群では2ポイント増加 と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・患者の全体的な治療満足度はMP群5.4ポイント、 PL群2.0ポイントと、MP群で有意に良好であった(p=0. 001)。・有害事象は両群間に差は認められなかった。 当試験では、メチルプレドニゾロン32mg/日によるオピオイドへの疼痛緩和追加効果は認められなかった。しかしながら、コルチコステロイド治療を受けた患者は、臨床的に有意な疲労感軽減、食欲不振の改善が認められ、患者満足度も高かった。今回の試験は、両群患者のベースラインにおいて、とくにオピオイド使用量に違いがあり、サンプルサイズも小さいものであった。今後は長期的な試験で臨床的利点を検証すべきであろう。

8132.

統合失調症治療、ドパミンD3の可能性は

 ドパミンD3受容体は、統合失調症の治療ターゲットとして有望であり、同受容体と既存の抗精神病薬の結び付きについて知識を改めることは、新薬およびより選択的な治療薬の開発において重要となる。ブラジルのリオグランデ・ド・スル国立大学のGeancarlo Zanatta氏らは、抗精神病薬ハロペリドールと、ヒトのドパミンD3受容体との結合について、改良版量子力学/分子力学(QM/MM)計算法を用いた検討を行った。本報告は、新たな統合失調症の治療薬発見にインパクトをもたらすQM/MM法という、コンピュータ量子生化学的なデザイン手法を用いた第一段階の検討であった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。 研究グループは、古典的抗精神病薬であるハロペリドールとの結び付きを、D3受容体アンタゴニストのエチクロプリドのX線分析データを予測テンプレートとして用いたドッキングエッセイにより検討した。その後、古典的計算法およびQM/MM法を用いた評価にて、結合予測の質を改善。シミュレーションのQM部分は、密度汎関数理論(DFT)を用いることで完遂させた。 主な所見は以下のとおり。・ドッキング後、算出されたQM改善の総相互作用エネルギーはEQMDI=-170.1kcal/molで、古典的量子力学での改善(ECLDI=-156.3kcal/mol)、粗ドッキング法(ECRDI=-137.6kcal/mol)よりも大きかった。・QM/MM計算法は、D3受容体とハロペリドールの結合においてAsp110アミノ酸残基が重要な役割を果たすことを明らかにした。次いで、Tyr365、Phe345、Ile183、Phe346、Tyr373、Cys114が明らかになった。・そのうえで、ハロペリドール・ヒドロキシル基の関連が強調され、それらは、Tyr365とThr369の残基と相互に作用し、ドパミン受容体との結び付きを強化することが示された。・最後に、4-clorophenylと4-hydroxypiperidin-1-yl fragments(OHまたはCOOHによりC3HおよびC12Hのhydrogen replacementのような)が、明らかなドパミン拮抗作用プロファイルを有するハロペリドール誘導体と結び付く可能性があることが示唆された。関連医療ニュース ドパミンD3受容体拮抗薬、統合失調症治療薬としての可能性は 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学

8133.

長引くせん妄、その関連因子は

 これまで、せん妄回復例については研究されてきたが、持続するせん妄に関連する因子については十分な研究は行われていなかった。スイス・チューリッヒ大学病院のSoenke Boettger氏らは、せん妄持続例とせん妄回復例の社会人口学的特性および治療法を比較し、せん妄の持続に関連する因子について検討を行った。その結果、「高齢」「認知症の既往」「脳がん」「がん終末期」「感染症」などの存在がせん妄の持続に関連していることを報告した。Palliative and Supportive Care誌オンライン版2014年9月5日号の掲載報告。 研究グループは、Memorial Delirium Assessment Scale(MDAS)を用いてせん妄の回復に関連する因子を、またKarnofsky Performance Status(KPS)を用いて機能改善に関連する因子を明らかにする検討を行った。被験者は、Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)の精神科から登録、ベースライン時(T1)、2~3日目(T2)、4~7日目(T3)に、MDASおよびKPSの評価を実施。せん妄持続例とせん妄回復例の社会人口学的特性および医学的変数を比較した。 主な結果は以下のとおり。・111例中26例に持続的なせん妄がみられた。患者背景として「高齢」「男性」「認知症併存」の割合が高かった。・せん妄患者のうち、がんと診断された者では、「脳がん」および「終末期」が、せん妄の持続または反応遅延に関連していた。・「消化器がん」については、せん妄回復との関連がみられた。・せん妄の治療において、感染症を有する場合は反応が遅く、通常1週間かかった。・せん妄持続例はベースラインから1週間の重症度がより高かった。・ベースライン時のMDASスコアは、せん妄持続例は20.1、T2およびT3におけるせん妄回復例は17~18.8、治療1週後(T3)のスコアはそれぞれ15.2、4.7~7.4であった。・ 治療1週後、せん妄持続例は意識、認知、臓器、知覚、精神運動行動、睡眠-覚醒サイクルのドメインにおいてより重度の障害がみられ、さらに機能障害も重篤であった。・高齢、認知症の既往、脳がん、がん終末期、感染症は結果に有意差をもたらした。・せん妄の重症度は、せん妄の持続または反応遅延に関連しており、せん妄の経過の延長と難治性を示すとともに、治療1週後の重度の機能障害と関連していた。関連医療ニュース せん妄管理における各抗精神病薬の違いは がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は… 定型vs.非定型、せん妄治療における抗精神病薬  担当者へのご意見箱はこちら

8134.

統合失調症のQOLに及ぼす副作用の影響度は

 統合失調症における効用値(utility)に治療薬が及ぼす影響を検討した研究の大半は、疾患のさまざまな過程に焦点を当てたものであった。フランス・Creativ-Ceutical社のA Millier氏らは、観察研究のデータを用いて、統合失調症患者の効用値に及ぼす治療関連副作用の影響について評価、定量化した。その結果、統合失調症治療では、抗精神病薬に関連する主な副作用である、錐体外路症状(EPS)、鎮静、体重増加、性機能不全などが、効用値に有意な影響を及ぼしており、とくにEPSの影響が最も大きいことが明らかにされた。2年間にわたる、フランス、英国およびドイツの多施設コホート研究の結果、報告されたもの。Journal of medical economics誌オンライン版2014年9月11日号の掲載報告。 検討には2年間にわたる、フランス、英国およびドイツの多施設コホート研究であるEuropean Schizophrenia Cohort(EuroSC)のデータを使用した。被験者には、6ヵ月ごとにSubjective Side Effect Rating ScaleとEQ-5D質問票に記入してもらい、抗精神病薬の副作用としてEPS、体重増加、鎮静および性機能不全を評価した。解析は、最初に二変量解析を実施し、副作用の有無別に効用値を評価した。次に、効用値のランダム効果回帰解析を実施し、ランダム効果は同一人物の反復測定の結果を交絡因子で調整した。最後に、得られた結果を既報と比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者1,208例を対象に検討を行った。・ベースラインライン時、最も多く報告された副作用はEPS(患者の約60%)で、続いて鎮静、体重増加(それぞれ患者の50%)、性機能不全(患者の約30%)であった。・症状の重症度、機能的能力と効用値との間に、有意な関連がみられた。・副作用の訴えがなかった患者のEQ-5D indexスコアは0.81で、EPS(0.70)、性機能不全(0.67)、鎮静(0.70)または体重増加(0.72)を訴えた患者と比較して高値であった。・ランダム効果モデルにより、EPSでは効用値が0.042減少、体重増加では0.022、性機能不全では0.022、鎮静では0.019の減少がみられた。・今回得られた結果は、試験方法が多岐にわたることや、副作用の定義がさまざまであったこと、また体重増加、鎮静、性機能不全のデータが少なかったことから外的妥当性の検討は困難であったが、既報の結果と異なる点はほぼないと思われた。関連医療ニュース 統合失調症の陰性症状改善は何と相関するか 統合失調症の妄想低減へ、新たな介入方法 日本人統合失調症患者の自殺、そのリスク因子は:札幌医大  担当者へのご意見箱はこちら

8135.

家族性乳がんとPALB2遺伝子変異(解説:藤原 康弘 氏)-251

PALB2(Partner And Localizer of BRCA2)遺伝子はBRCAやPTENなどの次に高い乳がんリスク因子であることはすでに知られている(乳がんの遺伝子異常を俯瞰している最近の優れた総説はScience 2014年3月28日号を参照されるとよい)。 本論文では英連邦を中心とする世界14施設のデータを元に、PALB2の機能喪失型変異と乳がん(男性乳がんも含む)発症の生涯リスクが明らかにされた。 本論文で推定されているリスクは、一般集団の中でのPALB2遺伝子変異の頻度とPALB2遺伝子変異以外の理由による家族性リスク(遺伝、環境、生活習慣)の程度によって変わってくるため、日本人でのPALB2遺伝子変異の十分なデータがない現状では、結果をそのまま日本人集団へ適用できるとは限らない。その点に注意が必要である。 さらに、BRCA1、2遺伝子変異の診断に基づく医療と同様、日本の国民皆保険制度のもと、遺伝子変異に基づき乳がん発症の予防介入(抗エストロゲン剤の内服や、予防的乳房切除や卵巣・付属器切除)を積極的に実践するまでには、大規模コホートでのデータ集積、遺伝情報に基づく保険加入や就労を巡る差別禁止の法令整備、遺伝子検査の質確保など多くの障害をクリアする必要がある。

8136.

早期治療が大事

【関節リウマチ】まずは 早期発見・早期治療 をメモ症状が進んで骨の破壊が始まる前に治療開始を。・関節リウマチの診断は難しい。疑わしいと思ったら専門医に受診を。・近所のかかりつけの先生に紹介状を書いてもらうことも一つの方法。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 金子祐子氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8137.

関節が破壊される疾患

リウマチは痛いだけでなく、【関節リウマチ】関節が破壊 される疾患右手親指メモ診断時2年後4年後関節リウマチはきちんと治療しないと関節が破壊されていく。・関節は発症早期から徐々に破壊されるので、早期からきちんと治療することが⼤切。・痛みがないからといって治療を⽌めてはいけない。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 ⾦⼦祐⼦⽒Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8138.

継続的な診察が必要

【関節リウマチ】継続的な診察 で全身 に起こる変化をチェックすることが⼤切メモ関節リウマチは全身に病変があらわれるため、経過を注意深くチェックし、ケアしていくことが⼤切。・目の結膜や肺などにも影響することがある。・合併症の早期発⾒のためにも、継続的な診察が必要。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 ⾦⼦祐⼦⽒Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8139.

画像診断が有効

【関節リウマチ】画像診断 で関節の変化をチェック!メモ関節の変化をいち早く⾒つけるためにX線検査が有効。・関節破壊の進み具合も画像でチェックできる。・MR検査やエコー検査によって、細かな診断が可能に。監修:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 ⾦⼦祐⼦⽒Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

8140.

デンマークの医療安全学会報告 その2【Dr. 中島の 新・徒然草】(035)

三十五の段 デンマークの医療安全学会報告 その2出席者の半分は医師など病院関係者、あとの半分は産業安全の専門家でしたが、なかには市民活動家というか、単なる60代カナダ人のおばちゃんも入っていました。この方は所属を independent としており、口演だけでは足りないのか自作のポスターを持ってきて壁に貼っていました。何でも御主人が病院で手術を受けたときに、順調な術後経過の中で突然に亡くなってしまったということでした。あとで医療行為の1つ1つを調べてみたのですが、どの時点でも最善の診療が行われていたとしかいえなかったそうです。でも、このおばちゃんは、残りの人生をかけて「なぜ夫は死んだのか」ということを理解したいために、医療安全の分野を独学で勉強し、最終的に RHCN に辿り着いたのだとか。確かに1つ1つの医療行為は間違っていないのに理屈どおりにいかず、結果が悪く出てしまうことは現実にあります。私がかかわった医療事故調査の中でも似たような事案をいくつか経験しました。ちょうど株式の暴落とかバブルの崩壊のように予測困難であり、評論家の後知恵で関係者たちが色々批判されるところまでそっくりです。ともあれ、このおばちゃんの発表、ポスターとも scientific paper として遜色のないものでした。誰かが休憩時間に「あんた素人と違うやろ?」と尋ねたのですが、最後まで「私はただのおばちゃんよ」と口を割らなかったそうです。出席者に共通してみられる傾向として、因果関係をかなり否定的に考えていることがありました。たとえば、「ここの部分はすみません、出席者の多くが嫌っているであろう RCA (root cause analysis) を使ったのですが」という言い訳を聞かされたりしたので、RCA は旧い考え方、もしくは全体のごく一部を説明できるに過ぎない考え方、と皆が思っているのだろうな、と感じたわけです。また、リーン生産方式(いわゆるトヨタ方式)が世界中のかなり多くの医療機関に取り入れられたのだけれども、なかなか上手く行っていない、というのも出席者たちの印象でした。「なるべく在庫を減らして just in time でツインルーメンカテーテルが時刻通りに来るっていってもね、現場は時刻通りに動いていないんだから無意味よ! だから私たちは病棟にツインルーメンカテーテルを隠しておいて、いつでも使えるようにしてあるの」とアメリカ人の女性医師が発言していましたが、混乱ぶりが目に浮かぶようです。とはいえ、リーン生産方式がうまくいっているというデータも、うまくいっていないというデータも、双方ともに不足しているので、「こんなものはやめちまおう」とはなかなかならないそうです。他の日本人出席者と話をしてみると、その先生も私と同じように、「いつまでこんな原理原則の議論を続けとるねん。さっさとどうやって現場に応用するかに入らんかい」と感じる一方で、「いやいやここは西洋医学の本家本元。この禅問答のような議論にも何か深淵な意味あるはず」とも感じておられたようです。私なんかは4日間その2つの気持ちの間で揺れ動いていました。で、度胆を抜かれたのが途中の午後を費やして行われたデンマークの病院見学です。3つの病院のうちの1つを選んでバスに乗って見学に行ったのですが、これが驚くべきものでした。私が行ったのは500床ほどのがん専門病院で、そのうちICUが8床なのでほぼ大阪医療センターと同規模ということになります。ICUの平均在室期間が2日ちょっと、病院全体の平均在院日数が3日余りってアァタ、どうやったらそんな芸当ができるのか教えて欲しいです。ICU は2人1組の個室で、日本でも見たことのないハイテクの最新式のモニターが据え付けてありましたが、スタッフはさほど忙しそうにしているわけでもなさそうでした。むしろ「ICUまで北欧デザインかよ」とツッコミを入れたくなるほど美しい病室でした。「医療安全についての当院の取り組みを紹介します」ということで、15人ほどの見学者に対してICU担当医、検査担当医(臨床検査技師さんかもしれん)、外科部長の3人からプレゼンがありました。特に面白かったのが50歳前後の外科部長で、「どうも責任者になってから手術室にいるより、オフィスにいる時間が長くなってしまった。これからわれわれのやっている術後管理の試みを説明するが、私は決して医療安全の専門家ではないので、もし皆さんから何かあればぜひアドバイスをしてほしい」という挨拶から始まったプレゼンが圧巻でした。この病院では数年前に続けて術後合併症で患者さんが亡くなるということがあったそうです。それは患者側だけでなく、医療側にとっても受け入れがたい(unacceptable)な出来事だったので、何とかそのような事態を避けるために安全のための努力が始まったのだそうです。その1つは全入院患者について毎日アセスメントを行い、グリーン、イエロー、レッドの3つに分けるようにしたということです。たとえば予定通りに手術が終わればグリーンですが、予想以上に出血量が多かった場合、術直後に外科医と麻酔科医とで話し合ってイエローにしたりするそうです。この情報は全スタッフが共有しており、たとえば「一昨日手術したミスター〇〇だが、本日のアセスメントでイエローになった。再手術も考えているので、一度見に来てくれないか」と、麻酔科とも共通言語で話ができるということです。これに対していくつかの質問が見学者からありました。見学「そのアセスメントは毎日やるのか?」外科「原則として毎日だ」見学「アセスメントの結果は患者にも知らせるのか?」外科「そうだ」見学「グリーンからイエローになったりしたら、患者はいい気がしないだろう」外科「それは逆だ。『ミスター〇〇。本日のわれわれのアセスメントの結果、貴方のアラートレベルを上げることにした。申し訳ないが、これからは今までよりも頻繁な身体チェックをさせてもらう』と説明した場合、むしろ患者は『キチンとアセスメントしてくれてありがとう!』と感謝してくれるのが普通だ」といったやりとりでした。この辺の医師患者関係というものは世界中変わらないものだと感心しました。一連のプレゼンテーションのスライドの中にさりげなくでてきたのが、「VAP(ventilator associated pneumonia)なし期間更新中! 現在 278 日」とか、「祝 CV(central venous)line 感染なし期間1年半達成!」という文言で、「すごい!」としか言いようがありません。数字はいい加減な記憶に基づくものですが、大体そんなものでした。在院期間といい、感染対策といい、その結果を数字にされると説得力があります。日本も先進国であり、医学・医療の分野においても世界をリードしていると思っていましたが、実際には単に人口が多く経済力があるというだけのことであり、医療の質といった分野ではまだまだなのかもしれません。デンマークのような小国からも、謙虚に学ぶべきところがたくさんあると思わされました。

検索結果 合計:10293件 表示位置:8121 - 8140