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Vol. 4 No. 2 実地臨床における抗血小板薬選択のポイント

小田倉 弘典 氏土橋内科医院はじめに臨床医が抗血小板薬を使用する機会は多い。実地医家が最低限知っておくべき薬理学的知識をおさえ、疾患ごとに、1次予防と脳心血管疾患慢性期の2次予防において、どの場面でどういった薬剤を選べばよいか、あくまで現場からの視点で概説する。抗血小板薬でおさえるべき薬理学的知識実地臨床における抗血小板薬の使い分けについて論じる前に、人の止血機構とそこに抗血小板薬がどう働くかについての理解が欠かせない。筆者は止血血栓が専門ではないが、近年抗血栓薬に注目が集まっていることから、プライマリ・ケア医としておおよそ以下のように止血機構を把握することにしている。ヒトの血管壁が傷害された場合、1次血栓(血小板血栓)→ 2次血栓(フィブリン血栓)が形成される1次血栓:血小板が活性化され凝集することで形成される2次血栓:活性化された血小板表面で凝固系カスケードが駆動し、フィブリンが生成され強固な2次血栓(フィブリン塊)が形成される動脈系の血栓(非心原性脳塞栓、急性冠症候群など)では血小板血栓の関与が大きく、抗血小板薬が有効である。静脈系および心房内の血栓(心房細動、深部静脈血栓症など)ではフィブリン血栓の関与が大きく、抗凝固薬が有効である血小板活性化には濃染顆粒から分泌されるトロンボキサンA2(TXA2)とアデノシン2リン酸(ADP)による2つの正のフィードバック回路が大きく関与するアスピリンは、アラキドン酸カスケードを開始させるシクロオキシゲナーゼ(COX)-1を阻害することで、TXA2を抑制し血小板の活性化を阻害するチエノピリジン系(クロピドグレル、チクロピジン)はADP受容体P2Y12の拮抗作用により血小板の活性化を阻害するシロスタゾールは、血小板の活性化を抑制するcAMPの代謝を阻害するホスホジエステラーゼ3を阻害することで血小板凝集を抑制する虚血性心疾患のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防古くは、Physicians’ Health Study1)において、虚血性心疾患の既往のない人へのアスピリン投与は、心血管死は減少させないものの心筋梗塞発症はアスピリン群のほうが低かったため、処方の機運が高まった時期がある。しかし、日本人の2型糖尿病患者2,539人を対象としたJPAD試験2)において、アスピリン群は対照群に比べ1次評価項目(複合項目)を減らさなかった(5.4% vs. 6.7%)。2次評価項目(致死性心筋梗塞、致死性脳卒中)および65歳以上のサブグループ解析における1次評価項目においては、アスピリン群で有意に少なかった。日本循環器学会の『循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版)』においても、高リスクの脂質異常症におけるイコサペント酸エチル投与の考慮が推奨度クラスI、複数の冠危険因子をもつ高齢者に対するアスピリン投与がクラスIIとされているのみである。現時点では、虚血性心疾患を標的とした抗血小板薬の1次予防は有効性が確立されておらず、65歳以上の糖尿病患者で多数の冠危険因子を有する場合以外は、投与は控えるべきと考えられる。2. 2次予防(慢性期)2009年のATT4)によるメタ解析において、心筋梗塞(6試験)または脳卒中(10試験)の既往患者に対して、アスピリン投与群は対照群と比較して1次評価項目(心筋梗塞、脳卒中、血管死)を有意に低下させたが(6.7% vs. 8.2%、p<0.0001)、出血性合併症は増加させなかった。一方、脳心血管イベントの既往例19,815例を対象として、アスピリンとクロピドグレルを比較したCAPRIE試験5)においては、クロピドグレルはアスピリンに比較して心血管イベントの発生を有意に抑制した(5.3% vs. 5.8%、p=0.043)。一方、重篤な出血性イベントは、両群間で差はなかった。3. 冠動脈ステント治療後現在、日本循環器学会のガイドライン6)では、ベアメタルステント(BMS)植込み後は1か月、薬剤溶出性ステント(DES)植込み後は1年(可能であればそれ以上)のアスピリンとクロピドグレル併用療法(DAPT)が推奨されている(推奨クラスI、エビデンスレベルA)。ただし、いわゆる第二世代のDESでは遅発性血栓症リスクが低いため、DAPT期間の短縮を検証する大規模試験が現在進行中である。4. その他の抗血小板薬チエノピリジン系であるチクロピジンのアスピリンとの併用によるステント血栓予防効果は、確立したエビデンスがある。ただし、チクロピジンは肝障害や顆粒球減少などの副作用が多く、CLEAN試験7)の結果からも、アスピリンとの併用はクロピドグレルが第1選択と考えられる。プラスグレルは、クロピドグレル同様P2Y12受容体拮抗薬だが、クロピドグレルより効果発現が早く、CYP2C19の関与が少ないため、日本人に多いといわれている薬剤耐性に対しても有利と考えられている。今後の経験の蓄積が期待される。シロスタゾールは上記抗血小板薬に比べて抗血小板作用が弱いため、これらの薬剤が何らかの理由により使用困難な場合にその使用を考慮する。5. 抗凝固薬併用時2014年8月に、欧州心臓病学会(ESC)のワーキンググループから抗凝固薬併用時に関するコンセンサス文書が示され、注目されている8)。それによると、PCIを施行されたすべての抗凝固薬服用患者で、導入期には3剤併用(抗凝固薬+アスピリン+クロピドグレル)が推奨される。ただし、出血高リスク(HAS-BLEDスコア3点以上)かつ低ステント血栓リスク(CHA2DS2-VAScスコア1点以下)の場合はアスピリンが除かれる。その後3剤併用は、待機的PCIの場合、BMSは1か月間、新世代DESは6か月、急性冠症候群ではステントの種類を問わず6か月(ただし高出血リスクで新世代ステントの場合は1か月)を考慮するとされ、その後抗凝固薬+抗血小板薬1剤の維持期へと移行する。この際、抗血小板薬としてはアスピリンはステント血栓症や、心血管イベント率の点で抗血小板薬2剤よりも高率であることが知られているが9)、一方、アスピリンとクロピドグレルの直接比較はないため、個々の出血とステント血栓症リスクにより決めることが必要である。施行後12か月を経た場合の長期管理については、1つの抗血小板薬を中止することが、コンセンサスとして明記されている。ただしステント血栓症が致命的となるような左主幹部、びまん性冠動脈狭窄、ステント血栓症の既往や心血管イベントを繰り返す例では、抗凝固薬+抗血小板薬1剤を継続する必要がある。脳卒中(非心原性脳梗塞)のエビデンス・ガイドライン1. 1次予防脳梗塞の既往はないが、MRIで無症候性脳梗塞(特にラクナ梗塞)が見つかった場合、日本脳卒中学会の『脳卒中治療ガイドライン2009』10)においては、「無症候性ラクナ梗塞に対する抗血小板療法は慎重に行うべきである」として推奨度はグレードC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)とされている。また最近の日本人高齢者約14,000人を対象としたJPPP試験11)では、心血管死+非致死的脳卒中+非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの5年発生率はアスピリン群、対照群で同等であった。脳卒中の1次予防に対する抗血小板薬の高度なエビデンスはまだなく、治療としては血圧をはじめとする全身的な動脈硬化予防をまず行うべきである。2. 2次予防『脳卒中治療ガイドライン2009』において、非心原性脳梗塞の再発予防にはアスピリン、クロピドグレルがグレードA、シロスタゾール、チクロピジンはグレードBの推奨度である。2014年米国心臓病協会(AHA)の虚血性脳卒中の治療指針12)では、非心原性脳梗塞、TIAに対しアスピリン(推奨度クラスI、エビデンスレベルA)、アスピリンと徐放性ジピリダモール併用(クラスI、レベルB、日本では未承認)、クロピドグレル(クラスIIa、レベルB)となっている。現時点ではアスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールの3剤のいずれかのうち、エビデンス、患者の好みと状況、医者の専門性を考慮して選択すべきと考えられる。エビデンスとしては、上記のCAPRIE試験において、脳梗塞、心筋梗塞、血管死の年間発症率は、クロピドグレル単独投与群(75mg/日)が、アスピリン単独投与群(325mg/日)より有意に少なかった。またCSPS試験13)では、シロスタゾール(200mg/日、2分服)はプラセボ群に比し有意な脳卒中の再発低減効果を有し(プラセボ群に比し41.7%低減)、層別解析では、ラクナ梗塞の再発予防に有効であった。日本で行われたCSPS214)ではアスピリンとシロスタゾールの比較が行われ、脳梗塞再発抑制効果は両者で同等であり、出血性合併症がシロスタゾールで少ないことが報告されている。副作用として、アスピリンによる消化管出血、クロピドグレルによる肝障害、シロスタゾールによる頭痛、頻脈はよく経験されるものであり、これらとコストなどを考えながら選択するのが適切と考える。末梢血管疾患のエビデンス・ガイドライン下肢虚血症状(間歇性跛行)の治療と併存するリスクの高い心血管イベント予防とに分けて考える。下肢虚血症状に対する効果のエビデンスとしてはシロスタゾールおよびヒスタミン拮抗薬があることから、本邦および米国のガイドラインでは、まずシロスタゾールが推奨されている15)。心血管イベントの予防については、上記記載を参照されたい。現時点における抗血小板薬の使い方の実際以上をまとめると、虚血性心疾患、脳卒中ともに、1次予防に有効であるというアスピリンのエビデンスは確立されておらず、現時点では慎重に考えるべきであろう。また、2次予防に関しては、冠動脈ステント治療後の一定期間はアスピリンとクロピドグレルが推奨されるが、ステント治療後以外の虚血性心疾患および非心原性脳塞栓では、抗血小板薬いずれか1剤の投与が推奨されている。その際、複合心血管イベントの抑制という点で、クロピドグレルあるいはシロスタゾールがアスピリンを上回り出血は増加させないとのエビデンスが報告されている。現時点では、状況に応じてクロピドグレルあるいはシロスタゾールの使用が、アスピリンに優先する状況が増えているかもしれない。一方、アスピリンは上記以外にも虚血性心疾患、非心原性脳塞栓の2次予防に関して豊富なエビデンスを有する。またコストを考えた場合、アスピリン100mg1日1回の場合、1か月の自己負担金は50.4円(3割負担)に対し、クロピドグレル75mg1日1回の場合は2,475円とかなり差がある(表)。また、各抗血小板薬の副作用として、アスピリンは消化管出血、クロピドグレルは肝障害、シロスタゾールは頭痛と頻脈に注意すべきである。一律な処方ではなく、症例ごとにエビデンス、副作用(出血)リスク、医師の経験、コストなどを考慮に入れた選択が適切と考えられる。さらに、抗血小板薬2剤併用をいつまでつづけるか、周術期の抗血小板薬の休薬をどうするかといった問題に関しては、専門医とプライマリ・ケア医との連携が不可欠である。こうした問題に遭遇した際に情報共有が円滑に進むように、日頃から良好な関係を保つことが大切であると考える。表 抗血小板薬のコスト画像を拡大する文献1)Steering Committee of the Physicians' Health Study Research Group. Final report on the aspirin component of the ongoing Physicians' Health Study. N Engl J Med 1989; 321: 129-135.2)Ogawa H et al. Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial. JAMA 2008; 300: 2134-2141.3)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 循環器疾患における抗凝固・抗血小板療法に関するガイドライン(2009年改訂版).4)Antithrombotic Trialists' (ATT) Collaboration. Aspirin in the primary and secondary prevention of vascular disease: collaborative meta-analysis of individual participant data from randomised trials. Lancet 2009; 373: 1849-1860.5)CAPRIE Steering Committee: A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). Lancet 1996; 348: 1329-1339.6)日本循環器学会ほか. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).7)Isshiki T et al. Clopidogrel trial in patients with elective percutaneous coronary intervention for stable angina and old myocardial infarction (CLEAN). Int Heart J 2012; 53: 91-101.8)Lip GY et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA)endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014; 35: 3155-3179.9)Karjalainen PP et al. Safety and efficacy of combined antiplatelet-warfarin therapy after coronary stenting. Eur Heart J 2007; 28: 726-732.10)篠原幸人ほか. 脳卒中治療ガイドライン2009. 協和企画, 東京, 2009.11)Ikeda Y et al. Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older with atherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial. JAMA 2014; 312: 2510-2520.12)Kernan WN et al. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke and transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2014; 45: 2160-2236.13)Gotoh F et al. Cilostazol stroke prevention study: a placebo-controlled double-blind trial for secondary prevention of cerebral infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis 2000; 9: 147-157.14)Shinohara Y et al. Cilostazol for prevention of secondary stroke (CSPS 2): an aspirin-controlled, double-blind, randomised non-inferiority trial. Lancet Neurol 2010; 9: 959-968.15)Rooke TW et al. 2011 ACCF/AHA Focused Update of the Guideline for the Management of Patients With Peripheral Artery Disease (updating the 2005 guideline): a report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol 2011; 58: 2020-2045.

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家庭の味が認知症ケアには必要

 伝統的な食品は、帰属感、アイデンティティ、伝統の感情を強め、認知症患者の文化的アンデンティティやQOLの保持や強化に役立っている。味覚は、生理学的というよりも文化的なものである。食習慣は、人生の早い段階で確立され、その変更は難しい場合がある。また、なじみのない料理は、失望や裏切られたような気持ち、愛されていない感覚につながる可能性がある。ノルウェー・Lovisenberg diakonale hogskoleのIngrid Hanssen氏らは、施設に入居する認知症患者に対する伝統的な食品の意味について検討を行った。Journal of clinical nursing誌オンライン版2016年1月11日号の報告。 使用した3つの研究は定性的なデザインであった。認知症ケアを経験した家族や看護師へのより綿密なインタビューは、南アフリカ、エスニックノルウェー人、ノルウェーのサーミ人で行われた。文字説明によるContent-focused分析は、思考、感情、文化的意味を説明するために使用された。 主な結果は以下のとおり。・伝統的な食品は、帰属感や喜びを生み出した。・なじみのある味や匂いは、患者の楽しい思い出を呼び起こし、幸福感やアイデンティティ、帰属感を後押しし、普段話せなかった人にも発言をもたらした。・認知症者の子供のころから覚えている料理を提供することは、維持、文化的アイデンティティの強化、喜びの醸成、患者の帰属感向上、尊重や配慮されることに役立つ。・さらに伝統的な食品は、患者の食欲、栄養摂取、QOLを向上させる。・特別養護老人ホームで伝統的な食品を提供するためには、追加の計画やリソース、伝統的な知識、クリエイティビティ、患者の個人的な好みを知ることが必要である。関連医療ニュース 認知症に対する回想法、そのメリットは 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? アルツハイマー病、進行前の早期発見が可能となるか

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心不全への遺伝子治療、AAV1/SERCA2aは予後を改善するか/Lancet

 アデノ随伴ウイルス1(AAV1)をベクターとして筋小胞体/小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)を導入する遺伝子治療(AAV1/SERCA2a)は、試験用量では心不全患者の予後を改善しないことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のBarry Greenberg氏らが行ったCUPID 2試験で示された。SERCA2aは、心臓拡張期にサイトゾル由来のCa2+を筋小胞体内へ輸送することで心筋細胞の収縮と弛緩を調整している。心不全患者はSERCA2a活性が不足しており、遺伝子導入によってこの異常を是正することで心機能が改善する可能性が示唆されている。Lancet誌オンライン版2016年1月20日号掲載の報告。250例を登録した無作為化第IIb相試験 CUPID 2試験は、左室駆出率が低下した心不全患者に対して、AAV1/SERCA2aによる遺伝子導入治療の臨床的な有効性と安全性を評価する、多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験(Celladon Corporation社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳、虚血性または非虚血性の心筋症に起因する安定期慢性心不全(NYHA心機能分類:II~IV)で、左室駆出率≦0.35、最適な薬物療法を安定的に30日以上受けていた高リスクの外来患者であった。 被験者は、AAV1/SERCA2aのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)耐性粒子(1×1013)を冠動脈内に1回、経皮的に注入する群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。国および6分間歩行距離で層別化した。 主要評価項目は再発イベント(心不全関連の入院、心不全の増悪に対する外来治療)、副次評価項目は末期イベント(全死因死亡、心臓移植、機械的循環補助デバイスの恒久的な装着)の発生までの期間とした。 2012年7月9日~14年2月5日に、米国、欧州、イスラエルの67施設に250例が登録され、AAV1/SERCA2a群に123例、プラセボ群には127例が割り付けられた。243例(97%、AAV1/SERCA2a群:122例、プラセボ群:121例)が、修正ITT解析の対象となった。試験用量では効果なし、増量が必要か? 平均年齢はAAV1/SERCA2a群が60.3(±9.77)歳、プラセボ群は58.4(±12.26)歳で、女性はそれぞれ17%、20%であった。全体で、冠動脈疾患患者が56%、虚血性の心不全患者が約半数含まれた。 フォローアップ期間中央値17.5ヵ月の時点における再発イベント発生率は、AAV1/SERCA2a群が62.8/100人年、プラセボ群は73.9/100人年であり、両群間に有意な差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.53~1.65、p=0.81)。 末期イベント発生率にも有意差はみられず(21.7 vs.16.7/100人年、HR:1.27、95%CI:0.72~2.24、p=0.41)、全死因死亡も改善されなかった(HR:1.31、95%CI:0.73~2.36、p=0.37)。 死亡は、AAV1/SERCA2a群が25例(21%)、プラセボ群は20例(16%)で、このうち心血管死がそれぞれ22例、18例だった。 事後解析として、AAV1/SERCA2aの有効性が示されたCUPID 1試験(用量設定試験 、23例)との違いを検討したところ、導入効率に影響を及ぼす可能性のある中空ウイルスカプシド(empty viral capsid、蛋白カプシドのみを含み単鎖DNAは含まない)の含有率に差があることがわかった(CUPID 1試験:85%、CUPID 2試験:25%)。 著者は、「CUPID 1試験の有望な結果にもかかわらず、試験用量のAAV1/SERCA2aでは、左室駆出率が低下した心不全患者の臨床経過は改善しなかった」とまとめ、「増量により中空ウイルスカプシド数を増やした試験を行う十分な根拠があるが、心不全以外の患者を含めるなど試験デザインを見直す必要もあるだろう」と指摘している。

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術後補助化学療法が有効なStageII大腸がんのバイオマーカー/NEJM

 StageII大腸がんのうち、腫瘍細胞にcaudal-type homeobox transcription factor 2(CDX2)の発現がみられない患者は再発リスクが高く、術後補助化学療法からベネフィットを得る可能性が高いことが、米国・コロンビア大学のPiero Dalerba氏らの検討で明らかとなった。高リスクStageII大腸がんの同定は、術後補助化学療法を要する患者の選択において重要とされる。マイクロアレイによる幹細胞や前駆細胞由来の多遺伝子発現解析が期待されているが、臨床での使用は困難だという。NEJM誌2016年1月21日号掲載の報告。臨床で使用可能なバイオマーカーを探索、検証 研究グループは、臨床で使用できるStageII/III大腸がんの予後を予測するバイオマーカーを確立するための検討を行った(National Comprehensive Cancer Networkなどの助成による)。 新たなバイオインフォマティクスのアプローチを用いて、遺伝子発現アレイで結腸上皮の分化のバイオマーカーを探索し、臨床での診断検査に使用可能かを基準に、候補遺伝子を順位付けした。 独立のレトロスペクティブなStageII/III大腸がん患者コホートのサブグループ解析を行い、最上位の候補遺伝子と無病生存(DFS、転移・再発のない生存)および術後補助療法のベネフィットとの関連を検証した。陰性例は再発リスクが高く、補助化学療法の効果が高い スクリーニング検査では、転写因子CDX2が最上位であった。2,115の腫瘍検体のうち87検体(4.1%)ではCDX2の発現を認めなかった。 探索データセットは466例で、そのうちCDX2陰性大腸がんが32例(6.9%)、陽性大腸がんは434例(93.1%)であった。5年DFS率は、陰性例が41%であり、陽性例の74%に比べ有意に不良であった(p<0.001)。このうち病理所見のある216例で多変量解析を行ったところ、CDX2陰性例は陽性よりも再発リスクが有意に高かった(再発のハザード比[HR]:3.44、95%信頼区間[CI]:1.60~7.38、p=0.002)。 検証データセットは314例で、CDX2蛋白陰性大腸がんが38例(12.1%)、陽性大腸がん患者は276例(87.9%)であった。5年DFS率は、陰性例が48%と、陽性例の71%に比し有意に不良であり(p<0.001)、全生存率にも有意差がみられた(33 vs. 59%、p<0.001)。多変量解析では、陰性例は陽性例よりも再発リスクが有意に高かった(HR:2.42、95%CI:1.36~4.29、p=0.003)。 この2つのサブグループのいずれにおいても、これらの知見は患者の年齢、性別、腫瘍のStageやGradeとは独立していた。 StageII大腸がん患者に限定した5年DFS率の解析を行ったところ、探索データセットではCDX2陰性例(15例)が49%と、陽性例(191例)の87%に比べ有意に低く(p=0.003)、検証データセットでは陰性例(15例)が51%であり、陽性例(106例)の80%に比し有意に低値であった(p=0.004)。 全患者コホートの統合データベースの解析では、5年DFS率はCDX2陰性StageII大腸がんで補助化学療法を受けた23例が91%と、補助化学療法を受けなかった25例の56%よりも高値を示した(p=0.006)。 著者は「CDX2発現の欠損により、術後補助化学療法からベネフィットが得られると考えられる高リスクのStageII大腸がん患者のサブグループが同定された」とまとめ、「通常は手術のみとされるStageII大腸がんのうち、CDX2陰性例には術後補助化学療法が治療選択肢となる可能性がある。本試験は探索的でレトロスペクティブな検討であるため、さらなる検証を要する」と指摘している。

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女性は幸せでも長生きできない?―Million Women Studyの結果が警告するもの―(解説:加藤 恵理 氏)-473

 幸福であること、または不幸であることは死亡率に直接的影響を与えない、という結果がLancet誌に掲載された1)。この論文の共著者であるオックスフォード大学のRichard Peto氏は、今までも生物統計学のあり方についてさまざまな切り口で論じてきた。そのなかでも有名なのは、ISIS-2のサブ解析、通称Gemini and Libraだろう。全体では明らかに有効であったアスピリン治療が、12星座別に解析すると、双子座(Gemini)と天秤座 (Libra)の患者グループでは有効でなかった、という結果をLancet誌に発表したのだ2)。もちろん、Peto氏は本気で星座ごとにアスピリン治療の有効性が違うと信じていたわけではなく、サブグループ解析を繰り返せば、偶然に誤差を招く可能性(play of chance)があることを統計学的に証明し、当時のサブグループ解析を重要視する風潮を警告したのである。 それから17年経て、オックスフォードグループは同じくLancet誌で、統計学的手法の違いによりいかに異なる解析結果が出るか、ということを証明してみせた。今回著者たちが挑んだのは、幸福度と死亡率、という興味深いが難しいテーマである。幸せであると、免疫および代謝を活発化させ寿命が延びる、という仮説に対して、英国の全国調査Million Women Studyのデータを解析、検証した。 Million Women Studyは、1996年から2001年の間、50~69歳の英国女性約130万人を登録し、女性の健康について調べた国家事業である。参加者には、登録から3年経過した時点で、健康状態、生活様式などを含むベースラインの質問票が送付され、約10年の間追跡された3)。今回の解析では、逆因果関係の可能性を排除するため、悪性腫瘍、心疾患、脳卒中、COPDの既往を有する女性は除外し、約72万人を解析対象としている。解析の結果、ベースライン時における健康状態(自己評価)と幸福度(不幸)には強い相関が認められた(Oradj:0.298、99%CI:0.293~0.303) 。しかし、幸福度(不幸)を年齢、健康状態、高血圧・糖尿病・喘息・関節炎・うつ状態・不安神経症の治療、社会的因子、生活様式因子で補正すると、幸福度と総死亡率の相関性は失われた(RRadj:1.02、95%CI:0.98~1.05)。したがって、筆者らは、“不健康は不幸の原因となる可能性はあるが、幸福度は総死亡率には直接的な影響はない”と結論付けている。 この研究論文の強みはなんといっても、約70万人の10年間ものデータという、とてつもなく膨大な情報量であろう。また、筆者らがさまざまな交絡因子を考慮し、洗練された解析を行っていることも評価できる。一方で、limitationも多い。なによりも、当スタディの対象者は、National Breast Cancer Screening Programに訪れた50~69歳の英国女性、という特定のグループでしかない。したがって、同研究の結果は今までの仮説を否定するものでも肯定するものでもなく、男性、異なる年齢層の女性、異なる人種を対象にしても同様の結果が出て、初めて重みを持つ。 しかし、おそらく筆者らはこのようなlimitationも重々承知だったと考えられる。Million Women Studyは、女性のさまざまな健康問題について解明することを目的としたものではあるが、質問票の内容、順番などから、幸福度と死亡率の相関関係の究明を想定してつくられたものではないことが容易にうかがえる。この論文は、統計学的pitfallを証明するためのツールであり、いわば、第2のGemini and Libraといえるだろう。 Evidence based medicineの提唱により、多くの論文が世に出回るようになったが、一流雑誌といわれる医学雑誌にでさえ、バイアスや交絡因子が適切に処理されていない、または意図的に操作されているものを見受ける。また、昨今、有用なデータはオープン化し共有していくべき、という動きが盛んだ。これは新たな可能性を生む反面、正しい解析知識がなければ、偽の情報に操られてしまう危険性をはらむ。 Million Womenの長寿のカギを握るもの ──それは幸か不幸ではなく、正しい解析知識とデータを正しく読む力、ということをこの研究論文を通じて伝えたかったのではないだろうか。参考文献はこちら1)Liu B, et al. Lancet. 2015 Dec 9.[Epub ahead of print]2)ISIS-2 Collaborative Group. Lancet. 1988;2:349-360.3)The Million Women Study: Million Women Study.http://www.millionwomenstudy.org/introduction/ (Accessed 2016-01-28).

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子供は親の喫煙習慣を真似る

子供は親のマネをする?! 両親に喫煙者がいると、子供の喫煙率が高くなることが知られています。 子供は親の言うことを聞くよりも親の行動をマネします。両親の喫煙が子供の喫煙に与える影響(高校生男子 2,012名)倍3過去また 2は現喫煙リ 1スク-父親の喫煙によりリスクは1.7倍父母の喫煙によりリスクは3倍-父(ー)母(ー)父(+)母(ー)父(ー)母(+)父(+)母(+)両親の喫煙の有無Ozawa M, et al.Asian Pac J Cancer Prev.2008;9:239-245.お子さんに自分と同じ苦しみを与えないためにも、タバコのない生活を!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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てんかんと自殺企図、病因は共通している

 てんかん発症患者は非発症者と比べて、てんかん診断前でも初回自殺企図のリスクが2.9倍高く、また自殺企図の再発リスクも1.8倍高いことが、米国・コロンビア大学のDale C. Hesdorffer氏らによる、住民ベースの後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。JAMA Psychiatry誌2016年1月号の掲載報告。てんかんと自殺企図およびその再発の関連が診断前でもみられた 先行研究で、てんかん患者は自殺リスクが5倍高いことが示されているが、自殺企図に関してや、精神障害や抗てんかん薬が自殺企図リスクに影響を及ぼすかどうかは、ほとんど明らかとなっていない。そこで研究グループは、自殺企図とてんかんとの関連の程度を評価するため、てんかん診断以前に初回の自殺企図および2回目の自殺企図(自殺企図の再発)を試みた患者(症例患者)と、てんかんを認めず初回および再発の自殺企図がみられた患者(対照患者)を比較する検討を行った。また、同関連について、精神障害の併存、および抗てんかん薬処方の除外による影響についても評価した。検討は、住民ベースの後ろ向きコホート研究にて、英国のClinical Practice Research Datalinkを用いて、一般診療を受けている人から症例患者と対照患者を特定して行った。症例患者は1987~2013年に診断を受けた10~60歳。対照患者は、各症例患者のてんかん診断日以前にてんかんの診断を受けていない、誕生年、性別、一般診療を適合させた各4例(症例患者1例に対し、対照患者4例)を無作為に選定した。主要評価項目は、症例患者と対照患者の初回自殺企図および自殺企図再発のハザード比(HR)であった。 てんかんと自殺企図との関連の程度を評価した主な結果は以下のとおり。・症例患者1万4,059例(年齢中央値:36歳)vs.対照患者5万6, 184例(同36歳)において(年齢範囲は両群とも10~60歳)、症例患者のてんかん診断前における初回自殺企図リスクは2.9倍(95%信頼区間[CI]:2.5~3.4)高率であった。・症例患者278例(年齢中央値:37歳)vs.対照患者434例(同35歳)において(年齢範囲は両群とも10~61歳)、症例患者のてんかん診断前における自殺企図再発リスクは1.8倍(95%CI:1.3~2.5)高率であった。・診断日以前の抗てんかん薬処方を除外しても、自殺企図リスクについて結果に意味のある変化は認められなかった。・精神障害の有無別の解析でも、自殺企図リスクについての結果に意味のある変化は認められなかった。 著者らは、「てんかんと自殺企図およびその再発の関連が発症前でもみられたことは、両者の生物学的基盤が共通していることを示唆するものである」と述べ、「自殺企図およびその再発は、抗てんかん薬の服用がなくても、また精神障害の診断がなくても関連がみられ、機序は不明だが病因が共通しているとのエビデンスを強化する所見が示された」とまとめている。関連医療ニュース 自殺念慮と自殺の関連が高い精神疾患は何か てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか 寛解後、抗てんかん薬はすぐに中止すべきか

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小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善、治療曝露量の減量が寄与/NEJM

 5年生存を達成した小児がん患者の晩期死亡率を低減する治療戦略として、治療曝露量の減量が有効であることが、米国・聖ジュード小児研究病院のGregory T. Armstrong氏らの調査で明らかとなった。米国で1970~80年代に小児がんと診断され、5年生存を達成した患者の18%が、その後の25年以内に死亡している。そのため、最近の小児がん治療の目標は、晩発性の生命を脅かす作用をいかに減じるかに置かれているという。NEJM誌オンライン版2016年1月13日号掲載の報告より。約3万4,000例で晩期死亡を治療開始年代別に検討 研究グループは、小児がんサバイバーを長期にフォローアップする病院ベースのレトロスペクティブな多施設共同コホート試験(Childhood Cancer Survivor Study[CCSS])を実施した(米国国立がん研究所[NCI]などの助成による)。 対象は、21歳以前にがんと診断され、1970~99年に治療を開始し、5年以上生存した患者であり、北米の31施設に3万4,033例が登録された。これは、試験期間中の小児がんサバイバーの約20%に相当した。 フォローアップ期間中央値は21年(範囲:5~38)であった。人口統計学的因子および健康関連死因による死亡に影響を及ぼす疾患の因子の評価を行った。疾患因子には、原発がんの再発や進行は含まないが、がん治療による晩発性の作用が含まれた。 3万4,033例の内訳は、男性が1万8,983例、女性が1万5,050例で、治療開始時期は1970年代が9,416例、80年代が1万3,181例、90年代が1万1,436例であり、診断時年齢は0~4歳が1万3,463例、5~9歳が7,826例、10~14歳が7,144例、15~20歳は5,600例であった。 診断名は、白血病(1万0,199例)、ホジキンリンパ腫(4,332例)、非ホジキンリンパ腫(2,837例)、中枢神経系腫瘍(6,369例)、ウィルムス腫瘍(3,055例)、神経芽細胞腫(2,632)、横紋筋肉腫(1,679例)、骨腫瘍(2,930例)だった。晩発性作用の早期検出や対処法の改善も寄与 サバイバーの最終フォローアップ時の年齢中央値は28.5歳(範囲:5.5~58.5)で、30~39歳が全体の30%、40歳以上が15%であった。 試験期間中に3,958例(11.6%)が死亡した(原発がんの再発、進行による死亡2,002例、外的要因による死亡338例を含む)。このうち1,618例(41%)が健康関連死因による死亡であり、2次がんが746例、心臓が241例、肺が137例、その他が494例であった。 15年死亡率は、全死因死亡が1970年代の10.7%から、80年代は7.9%、90年代には5.8%へ有意に低下した(傾向のp<0.001)。健康関連死因死亡も、3.1%から、2.4%、1.9%へと有意に減少した(傾向のp<0.001)。また、原発がんの再発、進行による死亡も、7.1%、4.9%、3.4%と有意に抑制されていた(傾向のp<0.001)。 このような死亡率の改善には、2次がん(p<0.001)、心臓(p=0.001)、肺(p=0.04)に関連する死亡率の有意な低下が反映していると考えられた。 年代別の治療の変遷としては、(1)急性リンパ性白血病に対する頭蓋内放射線照射の施行率が、70年代の85%から80年代には51%、90年代は19%に低下、(2)ウィルムス腫瘍への腹部放射線照射がそれぞれ78%、53%、43%へ、(3)ホジキンリンパ腫に対する胸部放射線照射が87%、79%、61%へと減少した。 急性リンパ性白血病、ホジキンリンパ腫、ウィルムス腫瘍、星状細胞腫では、アンスラサイクリン系薬剤の投与量も経時的に減少していた。これら4疾患は、治療曝露量が経時的に減量された後に、健康関連死因による15年死亡率が経時的に低下していた。 著者は、「小児がんサバイバーの晩期死亡率の改善には、治療の曝露量の低減が影響しており、治療の晩発性の作用のリスクや重症度が軽減するようにデザインされた治療レジメンの有効性が確認された」とまとめ、「晩発性作用を早期に検出する戦略の促進や対処法の改善とともに、治療レジメンを修正して放射線療法や化学療法の曝露量を低減することで、多くの小児がんサバイバーの余命が延長したことを示す定量的なエビデンスが得られた」としている。

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アリピプラゾールLAIのレビュー、メリット・デメリットは

 カナダ・アルバータ大学のPierre Chue氏らは、月1回アリピプラゾール持続性水懸筋注用の文献レビューを行った。Current medical research and opinion誌オンライン版2015年12月29日号の報告。 キーワードを用いて各種ウェブサイト(FDA、EMA、Otsuka、Lundbeck、NIH)のデータベースを検索し、関連論文のハンドサーチを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効性に関しては、52週のプラセボ対照試験、38週の経口アリピプラゾールとの非劣性試験、および急性再発統合失調症成人入院患者において再発防止が認められている。・アリピプラゾール持効性注射剤(LAI)は、パリペリドンLAIとの直接比較試験より、健康関連QOLや機能の改善が認められており、他の第2世代抗精神病薬と比べ、費用対効果が高いと考えられる。・6ヵ月のミラーイメージスイッチ試験より、従来の抗精神病薬治療と比較して、入院や関連コストの削減が認められた。・安全性・忍容性に関しては、新たな報告はなく、経口アリピプラゾールと同様であった。 結果を踏まえ、著者らは「経口アリピプラゾールの治療経験やLAIの現在の有用性は、臨床にさまざまな潜在的メリットをもたらすため、統合失調症の治療選択肢として検討すべきことが示唆された」としている。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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術後の栄養管理、診療科ごとの傾向と課題は?

 術後の栄養管理は、患者の回復に大きな影響を及ぼす。2010年より「栄養サポートチーム加算 200点(週1回)」の算定が可能となり、さまざまな病院で栄養サポートチーム(Nutrition Support Team、以下NST)の活動をはじめとした栄養管理に対する関心がますます高まっている。 そこで、今回は稲葉 毅氏(帝京大学医学部附属病院 外科)らによる、NSTなどの活動を通じて明らかになった各診療科の栄養管理における傾向と課題、さらにNSTの関わり方を考察した論文「外科系病棟の栄養管理 ―診療科による栄養管理の相違―」1)を紹介する。 著者の勤務する大学病院では、2006年にNSTが設置されたが、NSTへのコンサルト数は十分とは言えなかった。そこで、2010年度より褥瘡対策チームとの合同回診を開始し、栄養不良状態の患者に対応し始めた。その結果、褥瘡を有する患者には栄養不良患者が多いことが明らかになり、NSTが対応する診療科・症例が増加した。併せて、2008年から参加している欧州代謝栄養学会のnutritionDay栄養調査から、栄養管理のさらに詳しい状況を探ることができた。これらの活動における、従来NSTにコンサルトのなかった診療科との接触を通じて、術後における栄養管理の特色が明らかになった。内科系・外科系にみられる術後の栄養管理の傾向 2つの活動から示された、主な診療科における術後の栄養管理の傾向は以下のとおり。【外科系】・消化器外科:悪性腫瘍や消化管狭窄などのため、栄養状態不良の患者が多く、積極的な栄養療法が日常的に行われていた。・脳神経外科:手術後に経腸栄養を投与されているケースが多かった。術後高血糖を考慮し、糖尿病用の栄養剤を多く用いられていた。・心臓血管外科:栄養過多患者が多く、水分量を厳密に管理される傾向があるため、経腸栄養が必要なケースは少なかった。・耳鼻咽喉科:咽喉頭がんに対して栄養管理が必要なケースがあり、中心静脈栄養や末梢静脈栄養で対応されていた。また、経管栄養には習熟していない印象であった。【内科系】・神経内科:胃瘻を造設するケースが多く、経管栄養を積極的に用いる傾向にあった。しかし、栄養投与量は他科に比べて低かった(成人男性で900kcal/day程度であった)。・血液内科・呼吸器内科:慢性的に栄養不良な患者が多いが、基本的に経口摂取可能であるため栄養補助療法が十分に行われていない傾向にあった。各診療科における術後の栄養管理の課題とは さらに、著者は、各診療科において、患者の性質ごとに術後の栄養管理の課題が存在することを指摘した。 まず、内科系の診療科は、実際の摂食量にかかわらず、入院時に設定されたエネルギー制限食が漫然と投与されているケースがみられる。これに対して、外科系の診療科は、こうした漫然とした投与は少ないものの、中心静脈栄養使用時の脂肪製剤投与不足や、経腸栄養使用時の微量元素製剤の投与欠如などがみられる。 そのうえで著者は、今後このような問題症例をどのように発見していくかが課題であると強調した。さらに、NSTは自施設における各診療科の各特長を踏まえたうえで、各科の栄養治療法を学びながら栄養管理を進めていく必要があると考察した。 原著には、より詳細な調査結果や考察が記載されている。術後の栄養状態が不良な患者を抱えている先生方にはぜひ一読いただき、NSTへのコンサルトを含めた栄養管理方法を改めて検討していただきたい。

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循環器内科 米国臨床留学記 第5回

第5回:米国でよく使うけれど日本にない薬日本と米国の循環器領域の実臨床に、どのような違いがあるか見ていきたいと思います。米国で頻用されるわりに、日本で使われていない薬が幾つかあります。regadenoson 心筋シンチグラムアメリカで最も使用されている負荷薬剤はregadenoson(商品名:Lexiscan)で、80%以上のシェアを占めます。2008年にFDAに承認された比較的新しい薬剤です。負荷心筋シンチの薬剤として、日本ではアデノシンとジピリダモールが日本では使用されていると思います。これらの薬剤はアデノシンA2A受容体を介して、冠動脈の拡張を誘発します。しかしながら、同時にA1、A2Bなどの他のアデノシン受容体を刺激してしまうため、からだのほてり、息切れ、胸部不快感が起こり、房室ブロックや気管支れん縮を惹き起こすこともあります。regadenosonは、選択性adenosine A2A受容体刺激剤であり、副作用を起こす可能性が少なくて済みます。アデノシンと比べても急速に作用し、効果も長続きするため、持続静注が不要です。シリンジポンプも不要で、約10秒で静注すればよいので、きわめて使い勝手が良い薬です。 また、運動負荷試験で目標心拍数に到達しなかった場合は、アデノシンやジピリダモールでは、運動負荷を中止して、薬物負荷をやり直さなければなりません。運動負荷試験に費やした時間が無駄になります。regadenosonは運動負荷で目標心拍数に到達しないとわかった段階で、試験を薬物負荷に変更して、regadenosonを静注して使用することも可能です。regadenosonはアデノシンとの比較試験でも、有効性は同等でかつ副作用が少ないことが確認されています(Mahmarian JJ, et al. JACC Cardiovasc Imaging. 2009;2:959.)。実臨床でもregadenosonは痙攣の閾値を下げるため、てんかんの既往のある症例ではadenosineを使うことがありますが、基本的にはregadenosonを使うことがほとんどです。微小気泡コントラスト心エコーコントラスト心エコー法は、心腔内の異常構造物(腫瘍、血栓など)の同定や心室筋の壁運動、虚血性心疾患における心筋の灌流診断やviability評価にも非常に有用です。米国では、第2世代の微小気泡造影剤であるperflutoren脂肪マイクロスフェア(商品名:Definity)、perflutorenプロテイン型マイクロスフェア(同 Optison)が主に使用されています。 ご存じのように、米国の患者はBMIが高く、心エコーの解像度は日本人より悪いことが多いです。心エコーの20%以上で壁運動の描出が困難であるとの報告もあり、自然と微小気泡造影剤が必要な症例も多く、病院によっては技師の判断で使用が許されています。運動もしくはドブタミン負荷心エコーにも、微小気泡造影剤はよく使われます。われわれの施設では虚血性心疾患が疑われ、運動可能な症例に運動負荷心電図と心エコーを積極的に用いていますが、全例で微小気泡剤であるperflutorenを使用します。運動負荷心エコーは、時間や人手がかかりますし、運動直後は心臓が激しく左右に振れており、心筋の描出が難しいことが少なくありません。そういった事情のためか、日本では心筋シンチグラムに比べて、運動負荷心エコーを行っている施設は少ないと思われます。私自身も日本では負荷心エコーの経験は豊富ではありませんでしたが、負荷後の解像度が悪く、診断がつかないということが度々ありました。そのような症例でもperflutorenを使えば、収縮期の壁厚変化や心内膜の運動をより正確に評価できます。微小気泡造影剤は、血栓など異常構造物の描出にも有用です。図に示したのは、左室内に多数の小血栓を認めた症例です。perflutoren使用前は、解像度が悪く、心尖部は左室心内膜側の辺縁すらしっかり描出できません。perflutoren使用後は、左室心内膜側の辺縁が明確になり、血栓も容易に検出できています。 なお、perflutorenなどの第2世代微小気泡造影剤は、心内シャントが確認されている症例では、微小マイクロスフェアが細動脈にトラップされる可能性があるため、禁忌となっています。そのためperflutoren使用前に生理食塩水を使用したバブルテストを行い、心内シャントの存在を除外することが必要となります。私が日本にいた頃は、同じく第2世代であるレボビストが使用されていましたが、日本心エコー図学会によると供給が停止しており、日本で使用できる微小気泡造影剤の入手が難しいようです(参考:日本心エコー図学会 Q&A http://www.jse.gr.jp/QA/echo.html)。

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女はビタミンB6、男はビタミンB12でうつリスク低下か

 カナダの聖フランシスコ・ザビエル大学のL Gougeon氏らは、地域在住の健康な高齢男女について、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12の摂取量と3年間のうつ病発症率との関連を調べた。その結果、食物からのビタミンB6摂取量が多い女性とビタミンB12摂取量が多い男性は、うつ病の発症リスクが低いことを報告した。European Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2015年12月9日号の掲載報告。 本検討は、Quebec Longitudinal Study on Nutrition and Aging(NuAge)に参加し、ベースラインでうつ病を認めなかった住民(30項目の高齢者用うつ尺度[GDS]のスコアが11未満)を対象とし、年1回、うつ病の発症(GDSスコア11以上)、または抗うつ薬治療の状況を調べた。ベースラインで実施した3回の「24時間思い出し法」による非連続的調査の平均値から摂取量(食物のみ・食物+サプリメント)の三分位値を求めた。性別で層別化した多変量ロジスティック回帰モデルは、年齢、身体活動度、身体機能、ストレスのかかる出来事、総エネルギー摂取量で調整を行い、うつ病との関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は1,368人、74±4歳、女性50.5%であった。・3年間に170人がうつ病と診断された。・食物からのビタミンB6摂取量が最高三分位値の女性は、人口動態学的および健康要因を調整後、うつ病を発症する確率が43%低かった(多変量オッズ比[OR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.39~0.96)。ただし、エネルギー摂取量で調整後、影響は減弱した。・食物からのビタミンB12摂取量が最高三分位値の男性では、うつ病リスクが低かった(エネルギー量調整後の多変量OR:0.42、95%CI:0.20~0.90)。・このほかに、関連性を示すデータは得られなかった。・検討により、食物からのビタミンB6摂取量が多い女性においてうつ病リスクの低下を示すエビデンスが示されたが、総エネルギー摂取量に依存するものであった。・一方、食物からのビタミンB12摂取量が多い男性では、エネルギー摂取量にかかわらずうつ病リスクの低下がみられた。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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80歳以上の冠動脈疾患、侵襲的治療 vs.保存的治療/Lancet

 80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)または不安定狭心症の高齢患者に対して、侵襲的な治療は保存的治療よりも複合イベントを減少し、治療戦略の選択肢として優れることが、ノルウェー・オスロ大学のNicolai Tegn氏らが行った、非盲検無作為化試験の結果、明らかにされた。ただし戦略の有効性は、年齢の上昇(クレアチニンおよび効果修飾を補正後)とともに漸減する。出血性合併症については戦略間で差はなかったという。80歳以上のNSTEMIおよび不安定狭心症は入院要因として頻度が高いが、至適戦略に関する同集団対象の臨床試験は少なく、またガイドラインに則した治療が行われているかも不明であった。研究グループは、早期の侵襲的治療 vs.保存的治療を比較し、どちらの戦略がベネフィットをもたらすのかを調べた。Lancet誌オンライン版2016年1月12日号掲載の報告。心筋梗塞・緊急血行再建術の必要性・脳卒中・全死因死亡の複合アウトカムを評価 試験は、ノルウェー東南部の16病院に入院した患者457例を対象とし、侵襲的治療群(早期に冠動脈造影検査を行い即時にPCI、CABGを評価、および至適薬物療法について評価、229例、平均年齢84.7歳)または保存的治療群(至適薬物療法についてのみ評価、228例、84.9歳)に無作為に割り付け追跡評価した。 主要アウトカムは、心筋梗塞・緊急血行再建術の必要性・脳卒中・全死因死亡の複合で、評価は2010年12月10日~14年11月18日に行われた。途中、侵襲的治療群5例、保存的治療群1例が試験中断となったが、解析はintention-to-treatにて行った。侵襲的治療群のハザード比0.53、出血性合併症は同程度 被験者を募集した2010年12月10日~14年2月21日のフォローアップ中(中央値1.53年)に、主要アウトカムは、侵襲的治療群93/229例(40.6%)、保存的治療群140/228例(61.4%)が報告された(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.41~0.69、p=0.0001)。 主要複合アウトカムを項目別にみると、発生に関するHRは心筋梗塞0.52(95%CI:0.35~0.76、p=0.0010)、緊急血行再建術の必要性0.19(0.07~0.52、p=0.0010)、脳卒中0.60(0.25~1.46、p=0.2650)、全死因死亡0.89(0.62~1.28、p=0.5340)であった。 出血に関して、侵襲的治療群で重大出血4例(1.7%)、軽度出血23例(10.0%)、保存的治療群でそれぞれ4例(1.8%)、16例(7.0%)が認められた。大半は消化管での発生であった。 結果の傾向は、性別、2型糖尿病、クレアチニン血中濃度(103μmol/L以上)、ワルファリン使用、90歳超で層別化した場合も変わらなかったが、クレアチニン値について交絡作用と90歳超での効果修飾がみられた。また多変量Cox分析で、クレアチニン値と年齢で調節した侵襲的治療戦略の効果を調べた結果、侵襲的治療戦略と年齢間には有意な相互作用があり(p=0.009)、侵襲的治療の有効性は年齢の上昇とともに減弱することが示された。

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子宮頸がんも喫煙で増える?!

子宮頸がんも喫煙で増える?! 子宮頸がんは、一部のヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することにより生じやすくなると言われていますが、HPVに感染しただけで、がんになるとは限りません。 喫煙は、ウイルス感染 → 異形成 → がんへと進展させるリスク因子として知られています。 子宮頸がん以外の「感染症由来のがん」も、喫煙が影響している可能性があります子宮頸がん発症の原因に?社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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アスピリンの抗うつ効果をラットで確認

 ヒトのみならず実験モデルにおいても、炎症性メディエーターがうつ病の一因となることが数多くの研究で示唆されている。しかし、抗炎症薬による治療がうつ病を予防できるかどうかは議論の余地があることから、インド・L. J. Institute of Pharmacy(LJIP)のShailendra Bhatt氏らは、慢性軽度ストレス(CMS)モデルラットを用いた実験を行った。その結果、アスピリンの単独または抗うつ薬との併用投与はいずれも、うつ病治療に役立つ可能性が示唆されたという。著者らは、「ストレス負荷または他の生理・生化学的機序において、炎症性メディエーターの阻害は抗うつ効果に関与している可能性がある」とまとめている。Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology誌オンライン版2015年12月8日号の掲載報告。 研究グループは、雄性SDラットを用い、アスピリン(10mg/kg、経口投与)群、デキサメタゾン(1mg/kg、経口投与)群、アミトリプチリン(10mg/kg、経口投与)群、アスピリン+アミトリプチリン群、デキサメタゾン+アミトリプチリン群、疾患対照(無治療)群および正常対照群に分け、正常対照群を除いた全群のラットに28日間CMSを負荷するとともに、疾患対照群以外は各薬剤を投与した。試験終了時、スクロース嗜好性試験、行動テスト(強制水泳、高架式十字迷路、明暗箱、自発運動)、および生化学的評価(血清コルチゾール、脳神経伝達物質)を行った。 主な結果は以下のとおり。・疾患対照群では、有意な抑うつ行動が認められた。・アスピリン群およびアスピリン+アミトリプチリン群では、疾患対照群と比較しスクロース嗜好性の増加、強制水泳テストでの無動時間の減少、抗うつ性効果を意味する血清コルチゾール低下および脳内セロトニン濃度増加が示された。・デキサメタゾン群では、抑うつ行動が悪化した。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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学校でのADHD児ペアレンティング介入の実現性は

 英国・ノッティンガム大学のJohn A. Taylor氏らは、重度の注意欠如・多動症(ADHD)症状を抱える子供たちの親や教師のための、学校をベースとしたペアレンティング介入プログラムの実現性と受容性を検討する目的で、質的なプロセスを評価する実践的クラスター無作為化比較試験を実施した。その結果、学校内もしくは学校周辺でのペアレンティングプログラムは実施可能で受容性があることが示唆された。著者らは、今回の結果が、学校環境におけるペアレンティングプログラムへの参加を促すためのサービス提供や今後の研究に役立つとする一方で、「プログラムの継続率は高いが、参加者の募集が難しく、介入を最も必要としている親にプログラムを届けることが今後の課題」と述べている。BMC Psychiatry誌2015年11月17日号の掲載報告。 試験は、重度ADHD症状を有する子供の親22人および学校関係者29人を対象に行った。主要試験に続き、電話または面接による半構造化グループまたは個人インタビューを実施した。インタビューはデジタル録音され、文字起こしの後、分析した。 主な結果は以下のとおり。・ペアレンティング介入は、親や教師らに受け入れられた。・親と教師らは学校環境におけるペアレンティンググループの必要性を強く感じており、親と学校が協力することの重要性を強調した。・教師は特定の親を対象とする必要があるとする一方で、親のほうは概してこのようなプログラムへの全員参加を募る方法が好ましいと述べた。・少なくとも短期間では、ペアレンティングに参加した多くの親は、ペアレンティングが有効であり非常に役立ったと述べた。・1対1のセッションを望む親もいれば、より大きな集団セッションを好む親もいて、介入集団規模に関する好みには差がみられた。・未参加の親は参加への障壁として、グループに参加することの不安、以前にプログラムを利用したことがある、仕事および他の拘束を挙げた。・プログラムの改善点は、わかりやすいコミュニケーション、やる気を起こさせるセッションの提供、教師とのより良い協力体制であった。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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ソフトコンタクトレンズトラブルへの角膜再生医療、予後良好

 ソフトコンタクトレンズの長期装用により、角膜輪部に存在する角膜上皮幹細胞が消失する角膜上皮幹細胞疲弊症(LSCD)を来すことがある。カナダ・University of Toronto Medical SchoolのCarl Shen氏らは、こうした患者に対する角膜上皮幹細胞(角膜輪部)移植の予後を後ろ向きに調査し、本移植術は若年のhealthy patients(健康な患者)におけるLSCD治療の有力な選択肢であることを明らかにした。著者は、「上皮下線維形成以前の早期介入が、角膜移植を必要とすることなく良好な視力予後につながる」としたうえで、「固形臓器移植の専門家と協力することで免疫抑制薬による有害事象を管理できる」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌2015年12月号(オンライン版2015年8月20日号)の掲載報告。 研究グループは、ソフトコンタクトレンズ装用に関連した角膜上皮幹細胞疲弊症に対する角膜輪部移植の予後を明らかにする目的で、Cincinnati Eye Instituteのデータベースを検索し、該当患者9例14眼を同定し後ろ向きに調査した。 評価項目は患者背景、症状、最高矯正視力(BVCA)、眼表面安定性、有害事象、追加手術の有無であった。 主な結果は以下のとおり。・手術時の患者の平均年齢は46.6±11.1歳(範囲20~60歳)であった。・追跡調査期間は平均28±19.1ヵ月(範囲12~70ヵ月)であった。・術前BCVAはすべての眼で20/40より悪く(平均:20/70、範囲:20/40~20/250)、異物感、流涙、充血、眼痛などの症状が認められた。・14眼中、4眼(29%)は生体結膜角膜輪部同種移植、10眼(71%)は死体角膜輪部同種移植で、全例に局所および全身性免疫抑制薬が用いられていた。・移植後の最終追跡調査時において、14眼中12眼(86%)は眼表面が安定しており、BCVAが20/30以上に改善し、1例を除き全例で症状が完全に消失していた。なお、その1例は、重度の酒さ性眼瞼角結膜炎が残存しており、BCVAは右眼20/150、左眼20/60であった。・最も頻度が高い有害事象は眼圧上昇で、14眼中8眼(57%)にみられ、抗緑内障薬の点眼を必要とした。・14眼中10眼(71%)は、局所ステロイド使用に関連した白内障摘出を受けた。・角膜輪部移植後に全層角膜移植を必要とした眼はなかった。

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Vol. 4 No. 2 アスピリンの評価とコントロバーシー(1) 循環器内科の立場から

上妻 謙 氏帝京大学医学部内科学講座・循環器内科はじめに虚血性心疾患に対する治療は抗血小板療法の進歩とカテーテルインターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)の普及によって低侵襲かつ高い成功率で治療が可能となった。抗血小板療法ではアスピリンを常に標準薬として投与し、そこに血小板表面のP2Y12受容体のADPによる凝集を抑制するチエノピリジンなどの薬剤を追加する抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT)がステント血栓症予防とハイリスク患者の2次予防のために確立された治療となった。しかしDAPTによる出血合併症の増加が問題となり、近年P2Y12受容体拮抗薬に第3世代と呼ばれる新しい薬剤が登場して、より早期に有効性を発揮できるようになってきたことにより、アスピリンの役割、意義に見直しの気運がでてきた。アスピリンの抗血小板作用アスピリン(アセチルサリチル酸)は、何世紀にもわたって医学史上、代表的な薬物として使用されており、アテローム性血栓症の治療の主要な役割を担ってきた。アスピリンが合成できるようになって120年近くなるが、当初は消炎鎮痛薬として捉えられていた。抗血小板薬として認知されるようになったのは50年ほど前からで、日本で虚血性心疾患や脳梗塞予防に対する保険適応が認められたのは2000年と比較的最近のことである。アスピリンは、cyclooxygenase(COX)にあるsingle serine residue(Ser529)のアセチル化によって、アラキドン酸の代謝を阻害する。血小板が生きている間中、アスピリンはこのCOXを不可逆的に阻害する。また血小板の活性因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の産生が減少する結果、COXを阻害することができる。もともとアスピリンは、用量依存性でTXA2を減少させ、一度COXがアスピリンによってアセチル化された場合、巨核球によって新しい血小板が産生されるまで、TXA2は結合できない。COXは2つの異なるアイソフォームが存在し、COX-1は血小板、マクロファージ、そして血管内皮細胞に表れる構成型であり、もう一方のCOX-2は、炎症性刺激を求める誘導型である。アスピリンは、基本的には不可逆的なCOX-1阻害薬であり、高用量であればCOX-2阻害をすることができる。このため、アスピリンは大量投与すると抗血小板作用が減弱する可能性が知られており、アスピリンジレンマとも呼ばれ、1日100mgの投与で十分である。アスピリンの役割と問題点アスピリンは急性冠症候群をはじめとする虚血性心疾患の2次予防に対して、有効性が確立された薬物である。ISIS-2とRISC研究の両方の研究において、急性冠症候群発症後にアスピリン内服を継続していると、心筋梗塞の再発率を軽減させるという結果が示されている1, 2)。ISIS-2研究では、アスピリン160mg/日で内服治療を行う群と対照群とを無作為化して、5週間両群を比較検討したところ、血管イベントによる死亡率は減少したと報告された(9.4% vs. 11.8%; 95% CI 15-30; p<0.00001)。アスピリンの最大の問題点は出血合併症である。Antithrombotic Trialists' Collaborationは、アテローム性血栓症のハイリスク患者において、心筋梗塞、脳卒中、そして死亡を予防するための抗血小板療法を研究した、287の無作為化研究のメタ解析である3)。脳出血の合併は787人に起こり、そのうちの20%は致死的な出血であった。対照群と比較してアスピリンを内服していた患者は、脳出血発生のリスクが60%増加していたと報告している。このAntithrombotic Trialists' Collaboration研究において、重大な血管イベントを予防することに関して、アスピリンの1日内服用量、75~150、160~325、500~1,000mgの3群間にて、有意な差を示さなかった。アスピリンによる消化管出血および脳内出血発症のリスクを解析している、28の無作為化研究を用いたメタ解析では、対照群に割り振られた患者の消化管出血発生率は1.42%であったが、アスピリンを内服していた患者の消化管出血発生率は2.47%であることがわかった(OR 1.68; 95% CI 1.51-1.88)4)。また、心血管もしくは脳血管イベントの2次予防に対する6つの無作為化研究では、1日325mg以下のアスピリンを内服する患者は、対照群に比べると消化管出血の発症を2.5倍程度増加することが明らかにされた(95% CI 1.4-4.7; p= 0.001)5)。この解析は、アスピリンで治療を行った場合、67人の内1人の割合で死亡を防げた一方で、100人のうち1人の割合で非致死性の消化管出血が起こるということを示した。最近MAGIC試験の結果が発表され、日本人のデータとして低用量アスピリン内服中の患者の内視鏡所見で消化管障害を合併する頻度を明らかにしている6)。この報告では直径5mm以上の消化性潰瘍が6.5%に存在し、びらんは29.2%の頻度で存在した。もともとアスピリンをはじめとした非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)は上部消化管粘膜の障害を来す直接の作用があり、出血の元になる病変がアスピリンによって作られ、そこに他の抗血小板薬や抗凝固薬を併用することによって、臨床的に問題となる出血に発展するものと思われる。そして、消化管出血は心血管イベントの上昇につながることが示されている7)。そのため、海外のガイドラインでは低用量アスピリンに抗血小板薬や抗凝固薬を併用する時には、プロトンポンプ阻害薬を併用することを推奨するものが多い。DAPTにおけるアスピリンの役割現在、冠動脈ステント植え込み後の抗血小板療法として標準となっているのがアスピリンとチエノピリジン(クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジン)の2剤併用療法、すなわちDAPTである。日本ではほとんどのACSがPCIで治療されているため、ステント治療のDAPTと同義になっている傾向がある。もともとステント血栓症の予防のために始まったDAPTは、アスピリンにワルファリンを併用していたものを、ワルファリンからチクロピジンに変更したことで始まった。特にチクロピジンは作用が十分に発現するまで1週間程度かかり、チクロピジン単剤という発想はまったくなかった。クロピドグレル、プラスグレル、チクロピジンはチエノピリジン系薬剤といわれ、血小板表面上にあるP2Y12受容体に結合し、ADPによる血小板凝集を抑制し、またcAMP濃度を上昇させることによる血小板凝集抑制作用をもち、強力な抗血小板作用を有する薬剤である。プラスグレルやチカグレロルのような新しい抗血小板薬の特徴は作用発現の早さと効果の個人差が少ないことである。今まではクロピドグレルの効果発現の早さに個人差があることから、効果発現の早いアスピリンの併用は、その早期作用不足の補完の意味があったが、新規抗血小板薬ではその必要がなくなってきている可能性がある。1. ステント血栓症予防のためのDAPT最近の大きな話題の1つが、「DAPTをいつまでつづけるか」というDAPT期間の問題である。ステント血栓症予防のためのDAPT投与期間に対する考えは、ステントの進歩に伴い大きく変わってきている。現在標準のDAPT期間は、ベアメタルステント(BMS)留置後は最低30日間、理想的には12か月間が推奨されており、薬剤溶出性ステント(DES)留置後は12か月となっている。BMSでは、臨床使用され始めた頃から30日以内の早期のステント血栓症が問題であった。これがDESに関しては、30日以降の遅発性ステント血栓症、さらに1年以降の超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis:VLST)がクローズアップされ、2006年BASKET late試験では、6か月以降の心筋梗塞と死亡のイベントはDESのほうがBMSよりも高いと発表され、大きな問題点として取りざたされるようになった。2006年秋のヨーロッパ心臓病学会(ESC)においてその話題は一気に盛り上がり、その後追試もなされ、第1世代のDESでは5年経過しても年間0.2~0.5%程度のVLST発生がレポートされており8, 9)、一時は世界中で使用を控える動きがみられるようになった。以上の背景から、DES植え込み後のDAPT期間は無期限に延長される傾向があった。しかし、その後上市され現在使用されているDESは第2世代と呼ばれ、VLSTの問題が大きく改善されている。DAPTに関する臨床試験が多数行われており、3か月や6か月へのDAPT期間短縮が試みられるようになった。これまでに出版された6つの論文では、いずれも延長されたDAPTにイベント抑制のメリットが認められず、出血が増加するという結果となっており、6か月以上のDAPTに関してはデメリットがメリットを上回るとされている10-13)。したがって、最近改訂された2014年のESCのガイドラインでも待機的PCIのDAPTはDESでも6か月までに短縮された12)。しかし、2014年11月に発表されたDAPT試験の結果は、これまでの結果を否定するものとなった。DAPT試験は、DES植え込み後12か月経過した症例をランダマイズし、DAPTを30か月まで継続する群とアスピリン単剤とする群とに分けて検討した、FDA主導の産官学共同の臨床試験である。その結果、DAPTの継続によってステント血栓症、心筋梗塞の発症率は有意に抑制されることが示された。しかし重篤な出血はDAPT継続で有意に多く、死亡率もDAPT継続で高い傾向が示された。特にステント血栓症が少ないといわれるeverolimus-eluting stentが半数近くを占めており、現代のDES植え込み患者の実態で行われた試験のため、DAPTの継続が一定の意味をもつことが初めて示されたといえる。残された疑問は、DAPT終了後に残す薬剤として選択されているのが常にアスピリンであり、それがP2Y12受容体拮抗薬であったらどうかということである。この点について検討する臨床試験がGlobal Leadersで、1か月のDAPT後にP2Y12受容体拮抗薬(チカグレロル)を単剤で残す治療法と、12か月DAPT後にアスピリン単剤を残す従来療法とを比較する無作為化試験で、出血合併症と関連しやすいにもかかわらず、作用がP2Y12受容体拮抗薬よりも弱いというアスピリンの問題点について、解決策を示してくれる可能性がある。2. 急性冠症候群等アテローム血栓症2次予防としての抗血小板療法ステント血栓症予防で始まったDAPTであるが、ステント使用にかかわらず、抗血小板薬の内服治療でACS患者の心血管イベント抑制が得られることが多くの臨床試験で示され、DAPTを12か月間行うことがACS治療の標準となっている14)。不安定プラークを発症の基盤とするアテローム血栓症は同一患者に複数存在することが多く、同時期に心血管イベントを起こすことも多い。そのアテローム血栓症が症候性のACSや脳卒中として発症することを予防するために、強力な抗血小板療法が行われる。PCI施行患者の冠動脈3枝すべてをイメージングで解析し、その後3年間フォローしたPROSPECT試験では、PCI施行病変以外の病変に伴う心血管イベントは、治療病変と同等の頻度で起こることが示されている15)。さらに、そのイベントを起こす病変はもともと有意な狭窄病変であったものと、狭窄が存在しなかったところから急速に進展して発症したものがほぼ同頻度であることも示されている。したがって、一度アテローム血栓症によるイベントを発症した患者は、プラークが安定化するまで2次予防を厳重に行わなければならないわけである。末梢動脈疾患など、多臓器に病変がおよぶpolyvascular diseaseはアテローム血栓症発症のハイリスクであることが示されており、こういったリスクの高い疾患では、心血管イベントによる死亡率が末梢動脈疾患の存在しない患者と比較して1.76倍、心筋梗塞発症率が2.08倍という報告もあり16)、2次予防のための抗血小板薬としてアスピリン単剤では効果不十分な可能性があることがメタ解析によって指摘されている17)。そして、アスピリンよりもチエノピリジン系を中心としたアスピリン以外の抗血小板薬のほうが心血管イベントの抑制に有効であるというメタ解析も公表されている18)。20年前の臨床試験ではあるが、アスピリンとクロピドグレルを比較する二重盲検無作為化比較試験であるCAPRIE試験のサブ解析でも、末梢動脈疾患で組み入れられた患者では、アスピリンに比べクロピドグレルは心筋梗塞発症率を37%低減させたと発表されている19)。したがって末梢動脈疾患やpolyvascular diseaseなどのハイリスク患者については、アスピリンよりP2Y12受容体拮抗薬などのより強力な抗血小板薬の投与が推奨されてきている。DAPTとアスピリン単剤のどちらがよいかについては、CHARISMA試験が公表されている。2次予防患者については心筋梗塞発症などのリスク低下が示されているが、重篤でない出血合併症の増加が指摘されている20)。ここでもアスピリンが本当に必要なのかという点については、すべてのガイドラインでアスピリン投与が標準となっており、当初からのアスピリンoffについては今まで検討されたことがない。おわりに今まで述べてきたように、ゴールデンスタンダードとして常に投与が基本とされてきたアスピリンの有効性、安全性についてのエビデンスレベルは、近年急速に低下してきており、効果が確実で早いP2Y12受容体拮抗薬の普及もあり、治療の当初からP2Y12受容体拮抗薬単剤投与という選択肢を考慮していく必要が出てきた。今後のエビデンスの集積が望まれるが、アスピリンは安価であり、費用対効果も検討していく必要がある。文献1)Randomised trial of intravenous streptokinase, oral aspirin, both, or neither among 17,187 cases of suspected acute myocardial infarction: ISIS-2. ISIS-2 (Second International Study of Infarct Survival)Collaborative Group. Lancet 1988; 2: 349-360.2)Risk of myocardial infarction and death during treatment with low dose aspirin and intravenous heparin in men with unstable coronary artery disease. The RISC Group. Lancet 1990; 336: 827-830.3)Antithrombotic Trialists' Collaboration. Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke in high risk patients. BMJ 2002; 324: 71-86.4)Derry S, Loke YK. Risk of gastrointestinal haemorrhage with long term use of aspirin: metaanalysis. BMJ 2000; 321: 1183-1187.5)Weisman SM, Graham DY. Evaluation of the benefits and risks of low-dose aspirin in the secondary prevention of cardiovascular and cerebrovascular events. Arch Intern Med 2002; 162: 2197-2202.6)Uemura N et al. Risk factor profiles, drug usage, and prevalence of aspirin-associated gastroduodenal injuries among high-risk cardiovascular Japanese patients: the results from the MAGIC study. J Gastroenterol 2014; 49: 814-824.7)Nikolsky E et al. Gastrointestinal bleeding in patients with acute coronary syndromes: incidence, predictors, and clinical implications: analysis from the ACUITY (Acute Catheterization and Urgent Intervention Triage Strategy) trial. J Am Coll Cardiol 2009; 54: 1293-1302.8)Daemen J et al. Early and late coronary stent thrombosis of sirolimus-eluting and paclitaxel-eluting stents in routine clinical practice: data from a large two-institutional cohort study. Lancet 2007; 369: 667-678.9)Kimura T et al. Very late stent thrombosis and late target lesion revascularization after sirolimus-eluting stent implantation: five-year outcome of the j-Cypher Registry. Circulation 2012; 125: 584-591.10)Valgimigli M et al. Short- versus long-term duration of dual-antiplatelet therapy after coronary stenting: a randomized multicenter trial. Circulation 2012; 125: 2015-2026.11)Park SJ et al. Duration of dual antiplatelet therapy after implantation of drug-eluting stents. N Engl J Med 2010; 362: 1374-1382.12)Windecker S et al. 2014 ESC/EACTS Guidelines on myocardial revascularization: The Task Force on Myocardial Revascularization of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS)Developed with the special contribution of the European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI). Eur Heart J 2014; 35: 2541-2619.13)Cassese S et al. Clinical impact of extended dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary interventions in the drug-eluting stent era: a meta-analysis of randomized trials. 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SSRIなどで効果不十分なうつ病患者、新規抗うつ薬切り替えを検証

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の効果が不十分な大うつ病性障害(MDD)患者に対し、vortioxetineは他の抗うつ薬に比べて高い寛解率を示し、忍容性も良好であることを、フランス・Lundbeck SASのMelanie Brignonea氏らが検討の結果、報告した。結果を踏まえて著者らは、「vortioxetineが代替薬として妥当であることが示唆された」とまとめている。Current Medical Research and Opinion誌2016年2月号掲載の報告。 検討は、SSRIあるいはSNRIに対する効果不十分のMDD患者において、種々の抗うつ薬単剤と比較したvortioxetineの相対的有効性および忍容性の評価を目的とした。 初回治療の効果が不十分であったMDD患者を対象とした単剤治療の研究を系統的に検索。SSRI、SNRIおよびその他の抗うつ薬を治療薬とした研究を包含した。3段階のスクリーニング/データ抽出過程を経て、批判的吟味が行われた研究を特定した。システマティック文献レビューで示された結果の間接的な治療比較(ITC)をBucher's methodを用いて調整し、寛解率および有害事象(AE)による脱落率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は27件であった。National Institute of Health および Care Excellence のチェックリストで「質が高い」とされた研究も数件含まれていた。・3件の研究が、vortioxetineとagomelatine、セルトラリン、ベンラファキシンXR、bupropion SRを定量的評価により比較しており、エビデンスの構築に寄与していた。・vortioxetineは、agomelatineに比べて統計学的に有意な高い寛解率を示した(リスク差[RD]:-11.0%、95%CI:-19.4~-2.6)。また、vortioxetineはセルトラリン(同:-14.4%、-29.9~1.1)、ベンラファキシン(-7.20%、-24.3~9.9)、bupropion(-10.70%、-27.8~6.4)に比べ、寛解率が数値として高かった。・vortioxetineにおけるAEによる脱落率は、セルトラリン(RD:12.1%、95%CI:3.1~21.1)、ベンラファキシンXR(同:12.3%、0.8~23.8)、bupropion SR(18.3%、6.4~30.1)に比べて統計学的有意に低かった。・SSRI/SNRIの効果が不十分なMDD患者における単剤治療を評価した、質の高い切り替え試験が数件あった。間接的な比較により、vortioxetineへの切り替えが、他の抗うつ薬に比べて寛解率が高いことがわかった。vortioxetineの忍容性は良好で、他の抗うつ薬に比べてAEによる脱落率が低い。vortioxetineは、前治療のSSRIあるいはSNRIの効果不十分例に対する妥当な代替治療薬といえる。(鷹野 敦夫)精神科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/psychiatry/archive/news 

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筋萎縮性側索硬化症〔ALS : amyotrophic lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、中年期以降に発症する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が侵される疾患である。構音・嚥下筋、呼吸筋を含む全身の筋萎縮と脱力が進行性に認められ、呼吸補助を行わなければ平均2~4年で死に至る神経難病の1つである。従来ALSは運動神経系に限局した疾患とされ、主に日本から報告されてきた認知症を伴ったALS(ALS with dementia:ALS-D)は特殊な亜型と考えられていた。ところが近年、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と病理所見、原因となる遺伝素因についての共通性が明らかとなり、ALSとFTLDを一連の疾患スペクトラムで捉えようとする考えが広まっている。■ 疫学2009年度の調査では、わが国におけるALSの発症率は、人口10万人当たり2.1~2.3人、有病率は10万人当たり9.7~10.1人とされ、ほぼ全世界で同じような数字を示し、人種差もないとされている。性別では、男性が女性に比して約1.3~1.5倍多く発症する。また、発症率は40歳代より上昇し、ピークは60~70歳代である。■ 病因ALSの約5~10%に家族歴が認められ、その多くが常染色体顕性(優性)遺伝を示す。常染色体顕性遺伝を示す家系の約20~30%は活性酸素を消去する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が原因と報告されている。この変異したSOD1遺伝子を強制発現したtransgenic mouseはALSと類似した神経症状を示すことから、変異SOD1が運動ニューロンの障害に働くことは間違いないが、その機序については明らかとなってはいない。SOD1以外の遺伝子座や原因遺伝子も次々に同定されてきているが、ALSの大多数を占める孤発例の原因についてはいまだ不明という状況である。病理で認められるユビキチン陽性封入体の本体としてTDP-43(transactive response DNA-binding protein 43 kDa)が同定され、病原蛋白質と想定されている。■ 症状上位と下位運動ニューロンが障害されるが、下記の症状がそれぞれの程度に応じて障害部位に認められる(表)。画像を拡大する上位運動ニューロンの障害巧緻運動の障害痙縮深部腱反射の亢進病的反射陽性(ホフマン反射、バビンスキー反射など)下位運動ニューロンの障害筋力低下筋萎縮筋緊張の低下筋線維束性収縮深部腱反射の減弱ないし消失また、前述したようにALSにおける認知機能障害が注目されるようになり、約半数の症例で何らかの障害を示すとされている。その特徴として、記銘力や見当識の障害は目立たず、行動異常、性格変化や意欲の低下、言語機能の低下として表れることが報告されている。ALSでは、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥創を来すことは少なく、陰性4徴候と呼ばれている。■ 分類上位・下位運動ニューロン徴候が四肢からみられ、体幹・脳神経領域に進展していく脊髄発症型(古典型)と、病初期に脳神経領域が強く障害され、四肢にはあまり目立たない球麻痺型(進行性球麻痺型)が病型の中核をなす。また、病初期には上位運動ニューロン徴候のみ、あるいは下位運動ニューロン徴候のみを示して進行性に悪化する症例があり、前者は原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、後者は脊髄性進行性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)あるいは単に進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)と診断されてきた。これらの疾患が独立した一疾患単位であるのか、あるいはALSの亜型と考えるべきなのか議論がいまだにあり、結論は得られていない。■ 予後ALSの経過には、個々人での差異もかなりみられることに留意する必要があるが、一般的には、発症から死亡もしくは呼吸補助が必要となるまで平均2~4年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ALSの診断は、構音障害や嚥下障害などの球麻痺症状を含む全身性、進行性の筋萎縮や脱力がみられるか、または筋電図検査において、広範な部位に脱神経所見が認められることにより診断される。画像検査においては後述するような所見が認められることもあるが、基本的には筋力低下や筋萎縮の原因となりうる脳幹や脊髄での圧迫、腫瘍病変などを除外する目的で行われる。なお、ALSの診断基準は診断感度を上げるための改定が行われており、改定El Escorial診断基準、Updated Awaji診断基準、Gold Coast診断基準などが出されている。表に示した診断基準は、改定El Escorial診断基準を取り入れながら,わが国において従来用いられてきた厚生労働省特定疾患神経変性疾患調査研究班の診断基準を改訂し、2003年度に神経変性疾患に関する研究班により作成されたものであり、指定難病の申請をする際に利用されている。1)針筋電図検査神経原性の場合、運動単位電位(muscle unit potential:MUP)の種類が減少し、高振幅、多相性のものが目立ち、干渉波が減少する。脱神経があると、安静時の検査で線維性収縮電位、陽性鋭波、線維束性収縮電位が認められる。脳幹領域、胸髄領域では各1筋、頸髄および腰仙髄領域では神経根支配と末梢神経支配の異なる2筋について検索を行うようにする。2)頭部MRIALSのMRI所見としては、T2強調画像における皮質脊髄路に沿った高信号域、中心溝を縁取るように線状の低信号領域などが報告されている。前者は皮質脊髄路における神経線維の変性・脱落、マクロファージの出現、グリオーシスによるものとされ、後者は鉄の沈着によるものと推定されている。いずれの所見もALSに特異的にみられるわけではなく、健常者でも同様の所見が認められるとの報告もある。現時点でALSに特異的なMRI所見はなく、筋萎縮や脱力を呈する他疾患を除外する目的で行われる。3)鑑別診断鑑別すべき疾患は先述の表の鑑別診断を参照。その他に鑑別すべき疾患として、ポリオ後症候群、重症筋無力症なども挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法ALSでは治療に関する高いエビデンスは少なく、その薬物療法に関して、長らくグルタミン酸拮抗剤であるリルゾール(商品名:リルテック)が唯一という状況であった。しかし、2015年6月、フリーラジカル消去剤として脳梗塞の治療薬として使用されていたエダラボン(同:ラジカット)が、ALSの進行を遅らせることが証明され、治療薬として認可された。当初点滴薬のみであったが、2022年12月に経口薬の製造販売が承認された。リルゾールは、生存期間を平均3ヵ月延長するとされる。ALSと診断された方に治療薬として処方することが勧められるが、同時に、投与する前に患者には薬の効果は顕著ではないこと、肝機能障害、貧血、その他の副作用が生じる可能性があることを充分説明した上で同意を得て使用する。なお、努力性肺活量(%FVC)が60%を切っている患者への投与は、効果が期待できないとの理由で避けるべきである。一般的には、1回50mgを朝、夕食前に内服する。エダラボンのALSに関する進行抑制効果は、発症後2年以内で、呼吸機能が保たれている患者群において確認された。一方、ALS重症度分類4度以上、%FVCが70%未満に低下している症例での有効性は確認されていない。実際の臨床では、病期・状態にかかわらず、すべてのALS患者に投与可能とされているが、投与はALSの治療経験を持つ医師と連携しながら実施する。経口剤は、1日1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に投与する。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、第1クールは14日間連続投与した後、14日間休薬する。第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬し、以後同様のサイクルで投与を続ける。家族性ALSのうちで最も頻度の高いSOD1遺伝子変異を有する症例に対して、蛋白合成を抑制するアンチセンスヌクレオチドである「トフェルセン」の髄腔内投与が米国および欧州において認可された。ALSの機能評価スケールでの有意な改善は認められなかったが、髄液中のSOD1蛋白質濃度が低下し、血漿中のNfL濃度の低下が認められた。対症療法として、痙縮に対する理学療法、抗痙縮薬の投与などを行う。流涎に対して、抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬などの効果が報告されている。ALS患者においてしばしば認められる強制泣き・笑いなどの情動調節障害に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬で効果があるとされ、試みる価値がある。米国ではデキストロメトルファンとキニジンの合剤が承認されているが、わが国では未承認である。疼痛や精神不安、不眠に対しては、呼吸抑制などのリスクがあることを患者および家族に説明した上で、麻薬を含む鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などの積極的薬物治療を行うべきである。■ 呼吸管理ALSは、呼吸筋を含む全身筋の脱力を来す疾患で、呼吸補助を行わなければ呼吸不全がその死因となることが多い。すなわち適切な呼吸補助と全身管理を行えば長期の生存も期待できるが、その際問題になることとして、一度装着した呼吸器を外すことは現在のわが国では難しいこと、呼吸器を装着した患者が長期入院できる医療施設が限られるため、在宅での療養を選択せざるを得ず、患者家族の負担が過大となる点が挙げられる。呼吸補助に関しても、まずマスクを用いた非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation:NIV)を選択し、その後気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheotomy (and)invasive ventilation:TIV)へと変更する方法、最初から侵襲的呼吸補助を行うなどの選択が考えられる。呼吸補助が検討されるべき時期として目安となる基準を提示しているガイドラインもあるが、遅くとも呼吸障害に関連した臨床症状(呼吸苦、朝の頭痛、小声など)が認められた段階で開始するようにする。以前は%FVCが65%未満での導入が検討されていたが、より早期に導入することで生存期間が延長するとの報告もある。■ 栄養管理ALSでは、嚥下障害の進行により、栄養不良、脱水、誤飲などの危険にもさらされる。栄養状態が不良だと予後不良となることが報告されており、適切な栄養管理を行う必要がある。現在、経皮的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が比較的安全に施行できることから、球麻痺症状のある患者では、窒息、誤飲の危険を回避するために早めにPEGを施行しておくことが勧められる。■ リハビリテーション比較的急速に進行する筋萎縮・脱力に対して、筋力増強あるいは維持を目的とした運動療法が有効か否かという疑問がある。現在でもこれに対する確かな答えはないが、定期的な軽い運動療法を施した群では、とくに運動療法を行わなかった群と比べて、有意性は認められないものの、一部のADL評価スケールで障害度が軽くなる傾向が報告されている。ただし一般的に筋力の改善は期待できない。強い運動強度を負荷することに関しては、逆に悪影響を及ぼした可能性を示唆するものが目立ち、積極的なリハビリを推奨することはできない。近年、ロボット・リハビリテーション医療が発展して装着型サイボーグ“Hybrid Assistive Limb”(商品名:HAL)が保険適用となり、歩行距離の延長、歩行システムの再構築に有用であるとの報告もある。4 今後の展望ここ数年、ALS患者より樹立したiPS細胞を利用した薬剤スクリーニングで、有効とされた薬剤をはじめとしたいくつかの薬剤の臨床試験が実施され、新たな薬剤として認可されるものがでることが期待される。また、10年ぶりにガイドラインの改定が行われ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023」が刊行された。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患に関する調査研究班(医療者向け診療、研究情報)JaCALS(医療者向け診療・研究情報)患者会情報日本ALS協会(患者とその家族会の情報)1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編集. 日本神経学会監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂;2023.公開履歴初回2013年6月13日更新2016年1月19日更新2024年8月22日

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