サイト内検索|page:339

検索結果 合計:10312件 表示位置:6761 - 6780

6761.

悪性黒色腫〔malignant melanoma〕

1 疾患概要■ 概念・定義悪性黒色腫(メラノーマ:malignant melanoma)は、メラノサイト(メラニン色素産生細胞)ががん化して生じる悪性腫瘍である。表皮基底層部のメラノサイトが、がん化して皮膚に生じることが多いが、粘膜(口腔、鼻腔、肛門部など)や眼内(脈絡膜など)に生じることもある。■ 疫学人種によって発生頻度が大きく異なる。日本人では1~2/10万人年と見積もられている。白人では15~30/10万人年、黒人では0.5/10万人年程度の発生率である。■ 分類表皮に沿った悪性黒色腫細胞の組織学的増殖様式の特徴によって、以下の4型に分けるClark分類が用いられている(図1)1)。(1)表在拡大型: 白人の悪性黒色腫の70~80%を占める病型で、男性の背部や女性の下肢などに好発する(図1a)。日本人では全悪性黒色腫の20%程度を占め、近年増加している。(2)末端黒子型: 掌蹠や爪部を侵す病型であって(図1b)、日本人の悪性黒色腫の最多病型で50%程度を占める。(3)悪性黒子型: 高齢者の顔面に好発する病型で(図1c)、日本人、白人のいずれでも10%程度を占める。(4)結節型: 病変周囲に色素斑を伴わない病型で(図1d)、全身各所に生じうる。日本人の悪性黒色腫の15~20%を占める。なお最近、Bastianらによる新たな分類法が提案され、遺伝子変異を反映する分類として注目されている2)。■ 病因日光からの紫外線が主要発がん因子であり、表在拡大型は強い紫外線への間欠的曝露が、悪性黒子型は長年月にわたる慢性的な紫外線曝露が発生に関与するとされている。ただし、末端黒子型の発生には紫外線は関与せず、機械的刺激の関与が推定されている。■ 症状腫瘍細胞によるメラニン色素産生のために黒褐色調の病変としてみられることが多い1)。臨床的には濃淡不整な不規則形状の黒褐色斑として生じてくる。その後、一部に隆起性結節が生じ、さらに進行すれば潰瘍化を来す。■ 予後Tumor thickness(表皮顆粒層から最深部の悪性黒色腫細胞までの垂直距離をmm単位で表すもの)が最も重要な予後因子であり、T分類もこれによって規定される。AJCC(American Joint Committee on Cancer)の病期別の5年生存率は(同一病期でも亜病期によってかなり大きな差があるが)、病期Iが90%以上、病期IIが50~80%、病期IIIが25~60%程度、病期IVが10%程度である3)。後掲の表に各病期の概要を示した。なお、AJCCの予後予測ツールがネット上に公開されているので参考にされたい(http://www.melanomaprognosis.net/)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断悪性黒色腫の原発巣は、臨床的には大型で不整形状の黒褐色病変としてみられ、多くは色調に無秩序な濃淡差が認められる(図2a)。黒褐色調を呈する皮膚病変は悪性黒色腫以外にも多数存在するので、慎重に鑑別しなければならない1)。主要な鑑別診断と鑑別のポイントは、以下のとおりである。(1)色素細胞母斑: 径7mm程度までの小型の病変で、形状・色調に不規則、不整は目立たない(図2b)。ただし、先天性母斑は大きなことがある。(2)脂漏性角化症: 境界きわめて明瞭な隆起性結節としてみられ、表面が角化性で規則的な顆粒状凹凸を示すことが多い(図2c)。(3)基底細胞がん: 高齢者の頭頸部に好発し、青黒色調の局面、結節としてみられ、潰瘍化することも多い。周囲に色素斑を伴わないこと、病変表面が平滑で、透明感を呈することが特徴である(図2d)。■ ダーモスコピー診断近年、皮膚科診療に導入された診断法であり、乱反射を防止したうえで病変部に白色光を照射しながら10~20倍の拡大像を観察する。肉眼的に認識できないさまざまな所見を明瞭に観察することができ、とくに色素性皮膚病変の診断に有用である。その詳細は成書に譲るが4)、一点だけ日本人に多い掌蹠の悪性黒色腫の診断への有用性を記載する。掌蹠の悪性黒色腫は、ダーモスコピーにて早期段階から皮野(指紋)の隆起部(皮丘)に一致する色素沈着(parallel ridge pattern)を呈するのに対し、良性の母斑は皮野の溝(皮溝)に一致する色素沈着(parallel furrow pattern)を呈する(図3)。この所見の差異は両者の鑑別にきわめて有用であり、掌蹠の悪性黒色腫の早期検出と診断確定に役立つ4、5)。■ 病理組織診断臨床所見やダーモスコピー所見にて診断が確定できない場合は、生検して病理組織学的に診断を確定する。生検は可能ならば全摘生検が望ましい。生検することにより、もっとも重要な予後因子であるtumor thicknessを計測することもできる。悪性黒色腫は病理組織診断も難しいことが知られている。悪性黒色腫早期病変と良性のClark母斑の鑑別、結節型などの悪性黒色腫とSpitz母斑(良性の母斑の一種で、増殖するメラノサイトが顕著な核異型を示す)との鑑別がしばしば問題になる。疑わしい症例は、この方面のエキスパートにコンサルテーションすることが望ましい。■ 画像検査と病期の確定悪性黒色腫と診断されたら、AJCCの病期を決定する。原発巣のtumor thicknessを評価するとともに、理学的に所属リンパ節やその他の部位・臓器への転移がないかを検討する。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査も施行する。PETも悪性黒色腫の転移の検出に、きわめて有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)AJCCの病期に対応して表のような治療を施行することが推奨されている。病期I、IIの段階ならば、原発巣の外科的切除を施行する。切除マージンはtumor thicknessによって規定されるが、早期病変は0.5~1cmのマージン、進行病変は2~3cmのマージンが推奨されている。症例によってはセンチネルリンパ節生検の実施を考慮する。病期IIIには原発巣の切除に加えて、所属リンパ節の郭清術を施行する。メラノーマは化学療法に抵抗性で、標準薬とされてきたダカルバジン(商品名:同)でも奏効率は15%程度に過ぎない。近年、分子標的薬が病期IVあるいは外科的根治術不能な病期IIICのメラノーマ患者に有効なことが明らかにされ、治療方針が激変した。病期IVにはMAPK経路の阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬が選択される6)。現在、わが国で保険適用となっているのは、MAPK阻害薬では変異BRAF阻害薬のベムラフェニブ(同:ゼルボラフ)、ダブラフェニブ(同:タフィンラー)とMEK阻害薬のトラメチニブ(同:メキニスト)である。免疫チェックポイント阻害薬ではニボルマブ(抗PD-1抗体、同:オプジーボ)、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体、同:キイトルーダ)とイピリムマブ(抗CTLA-4抗体、同:ヤーボイ)である。いずれの薬剤も特有の強い有害反応を有するので、施設内で治療チームを設けて対応することが望ましい。薬剤の選択順位は、確定的な推奨ではないが、増殖スピードの速いメラノーマにはまずベムラフェニブ単独またはベムラフェニブとトラメチニブの併用療法を考える。増殖スピードの遅いメラノーマには当初から抗PD-1抗体(ニボルマブまたはペムブロリズマブ)あるいはイピリムマブを用いる。抗PD-1抗体はイピリムマブよりも奏効率、有害反応の点から臨床的意義が高い可能性がある。ただし、腫瘍細胞がPD-L1陰性の場合はイピリムマブを選択する。これらの治療に抵抗性となった高度進行例には、適切な緩和療法を施行する。4 今後の展望ニボルマブとイピリムマブの併用療法の治験が進んでいる。また、上記以外の分子標的薬も続々と開発され、わが国においても臨床治験が進められている。術後補助療法としてニボルマブとイピリムマブの有用性の比較やペムブロリズマブの有用性も治験が実施されている。5 主たる診療科皮膚科が主たる診療科であり、診断から治療まで一貫した対応ができる。病理組織診断には病理科が、切除後の外科的再建などには形成外科が対応することもある。分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の使用にあたっては施設内に多職種診療チームを発足させることが望ましい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本皮膚悪性腫瘍学会が作成した日本皮膚科学会皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン(ほぼ同じものがMindsと日本がん治療学会のホームページにも掲載されている)(医療従事者向けのまとまった情報)米国NCCNの診療ガイドライン(リスト中“Melanoma”の項を参照)(医療従事者向けの英文のまとまった情報)国立がん研究センターがん情報サービス:「悪性黒色腫」患者用解説冊子(一般利用者向けのまとまった情報)1)斎田俊明ほか編. 1冊でわかる皮膚がん. 文光堂;2011.p.220-237.2)Curtin JA, et al. N Engl J Med. 2005;353:2135-2147.3)Balch CM, et al. J Clin Oncol. 2009;27:6199-6206.4)斎田俊明編. ダーモスコピーのすべて 皮膚科の新しい診断法.南江堂;2012.5)Saida T, et al. J Dermatol. 2011;38:25-34.6)宇原 久. 癌と化学療法. 2016;43:404-407.公開履歴初回2014年02月27日更新2017年02月21日

6762.

うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

 うつ病治療に用いられる薬剤に関連する相対的な罹患率および死亡率を測定し、重大なアウトカムに関連する特定の臨床的影響について、米国・カリフォルニア大学のJ Craig Nelson氏らが検討を行った。The American journal of psychiatry誌オンライン版2017年1月31日号の報告。 米国、プエルトリコ、ワシントンD.C.に拠点を置く中毒センターから報告を受けた全米中毒情報データシステム(National Poison Data System)より、2000~14年の12歳以上に対する1回の薬剤曝露情報を照会した。薬剤は、抗うつ薬、非定型抗精神病薬、抗痙攣薬、リチウム、およびうつ病治療に用いられるその他の薬剤であった。主要アウトカムは、罹患率(1,000曝露当たりの重大なアウトカム数)、死亡率(1万曝露当たりの死亡アウトカム数)とした。 主な結果は以下のとおり。・15年間で、調査した48薬剤の単一薬剤曝露は、96万2,222件であった。・重大なアウトカムは15年間で2.26倍に線形に増加した。・三環系抗うつ薬やMAO阻害薬による薬物療法は、高い罹患率および死亡率と関連していたが、他の新規薬剤のいくつかは、危険な可能性があった。・リチウム、クエチアピン、オランザピン、bupropion、カルバマゼピンは、高い罹患率指標と関連していた。・リチウム、ベンラファキシン、bupropion、クエチアピン、オランザピン、ziprasidone、バルプロ酸、カルバマゼピン、citalopramは、より高い死亡率指数と関連していた。 著者らは「うつ病治療に用いられる薬剤に対する過量服薬や意図しない曝露による重大なアウトカムは、過去15年間で劇的に上昇した。現在のデータでは、罹患および死亡リスクが、薬剤間で異なることを示唆している。この違いは、うつ病患者、とくに自殺リスクの高い患者における治療法を選択する際に重要となる」としている。関連医療ニュース うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは うつ病への薬物療法 vs.精神療法 vs.併用療法 ADHD治療薬は将来のうつ病発症に影響するか

6763.

胆汁性胆管炎の皮膚そう痒、画期的新薬が有望/Lancet

 原発性胆汁性胆管炎では、患者の最大70%に皮膚そう痒が発現する。開発中の回腸型胆汁酸トランスポータ(IBAT)阻害薬GSK2330672は、皮膚そう痒の重症度を軽減し、重篤な有害事象の発現もなく耐用可能との研究結果が、Lancet誌オンライン版2017年2月7日号に掲載された。報告を行った英国・ニューカッスル大学のVinod S Hegade氏らの研究グループは、「本薬は原発性胆汁性胆管炎患者の皮膚そう痒の治療における画期的新薬(first-in-class)であり、新たな重要な進歩となる可能性があるが、下痢の頻度が高いため、長期投与には限界があるかもしれない」と指摘している。安全性と皮膚そう痒を無作為化クロスオーバー試験で評価 本研究は、皮膚そう痒を伴う原発性胆汁性胆管炎患者における、ヒトIBATの選択的阻害薬GSK2330672の有効性と安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化クロスオーバー第IIa相試験(BAT117213試験、GlaxoSmithKline社などの助成による)。 年齢18~75歳の患者が、非盲検下にプラセボを投与する2週間の導入期間の後、GSK2330672またはプラセボを1日2回経口投与する群に無作為に割り付けられ、2週間の治療が行われた。引き続き、ウオッシュアウト期間を置かずに薬剤をクロスオーバーして2週間の治療が行われ、さらに単盲検下にプラセボを投与する2週間のフォローアップが実施された。 主要評価項目は、臨床検査値に基づく安全性および消化器症状評価尺度(Gastrointestinal Symptom Rating Scale:GSRS)による耐用性とした。副次評価項目には、そう痒スコア、原発性胆汁性胆管炎-40(PBC-40)のかゆみスコア、5-Dかゆみスケールのほか、血清総胆汁酸、胆汁酸合成のマーカーである7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(C4)などが含まれた。 2014年3月10日~2015年10月7日に22例が登録された。被験薬→プラセボに11例、プラセボ→被験薬にも11例が割り付けられ、後者の1例が治療開始前に脱落した。1例が、プラセボによるフォローアップを受けなかったが、最終解析に含めた。3つの患者報告によるそう痒尺度が改善 ベースラインの全体の平均年齢は52.9(SD 10.6)歳、女性が19例(86%)を占めた。平均罹患期間は5(SD 4.8)年だった。 有害事象の発現率は被験薬、プラセボとも81%であった。22例の14日の治療で、被験薬による重篤な有害事象は発現しなかった。 最も頻度の高い有害事象は、被験薬が下痢(7例、プラセボは1例)、プラセボは頭痛(7例、被験薬は6例)であった。被験薬による下痢は軽度であり、最長で4日持続したが、日常生活にはほとんど影響はなく、治療中止や減量も認めなかった。 被験薬の皮膚そう痒に関する評価項目のベースラインからの変化率は、そう痒スコアが-57%(95%信頼区間[CI]:-73~-42、p<0.0001)、PBC-40かゆみスコアが-30%(-42~-20、p<0.0001)、5-Dかゆみスケールは-35%(-45~-25、p<0.0001)であった。これらは、いずれもプラセボに比べ有意に良好であった(そう痒スコア:-23%[p=0.0374]、PBC-40かゆみスコア:-14%[p=0.0335]、5-Dかゆみスケール:-20%[p=0.0045])。 被験薬では、血清総胆汁酸濃度がベースラインの30μMから15μMへと50%低下した(95%CI:-37~-61、p<0.0001)のに対し、プラセボでは12%上昇した(-12~42、p=0.3540)。被験薬の投与を中止すると、血清総胆汁酸濃度は2週間以内にほぼベースライン値に戻った。また、血清C4濃度は、ベースラインの7.9ng/mLから24.7ng/mLへと3.1倍(95%CI:2.4~4.0、p<0.0001)に上昇した。

6764.

155)魚の効用で患者を引き付ける【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者魚って健康にいいんですか?医師いいですよ。中性脂肪を下げる効果が期待されています。患者魚を食べると、認知症予防になるって聞いたんですが、本当ですか?医師そうですね。…もっといい方法があるんですよ(少し間を置いてから)。患者それは何ですか?(興味津々)医師自分で魚を買いにいくことです。どんな魚を食べようかなと考えながら、買い物することで頭を使うでしょ。患者確かに! 買い物にいくのも運動になりますしね。医師それに、ちょっと凝った魚料理をすることで、さらに頭を使うので認知症予防につながりますよ。患者わかりました。実践してみます(納得した顔)。●ポイント魚を食べるだけでなく、買い物や調理などへの話に展開します1) Eslick GD, et al. Int J Cardiol. 2009;136:4-16.

6765.

アスピリン使用と膵がんリスク低下の関連性

 喫煙や肥満を避けること以外に、膵がんを予防するための方法はほとんど明らかになっていない。また、アスピリン使用と膵がんリスクとの関連性について、これまでの研究では一致した結果が得られていない。米国・イェール大学公衆衛生大学院のHarvey A. Risch氏らの研究で、アスピリンの定期的使用が膵がんリスクを低下させる可能性が示唆された。Cancer Epidemiology,Biomarkers&Prevention誌2017年1月号掲載の報告。 研究グループは、中国・上海で2006~11年に膵がん患者761人と性別・年齢が一致する対象群794人を抽出し、住民対象研究を実施。対象者には、アスピリンの定期的使用の有無、使用頻度(毎日あるいは毎週)、使用開始年齢と使用を中止した年齢について質問した。データは、年齢、性別、教育水準、体格指数(BMI)、喫煙年数、1日当たりの喫煙量、CagA陽性H. pylori、ABO血液型および糖尿病歴の調整を伴う無条件ロジスティック回帰分析を行った。また、文献調査にはメタ回帰分析が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・アスピリンの定期的使用は膵がんリスクの低下と関連した(OR:0.54、95%CI:0.40~0.73、p=10-4.2)。・アスピリン使用1年ごとに膵がんリスクは8%低下(OR trend:0.92、95%CI:0.87~0.97、p=0.0034)。・本研究とすでに発表されている18の研究によるデータの横断分析の結果、アスピリンの定期的使用による膵がんリスクのオッズ比は、各研究期間の後半になるにつれて、アスピリンの種類(p-trend=10-5.1)、用量(低用量アスピリンでp-trend=0.0014)にかかわらず減少傾向が強くなった。 この研究から、アスピリンの定期的使用は、膵がんのリスクを約50%低下させる可能性が示唆された。 心血管疾患と特定のがん予防について二重の利益をもたらす一方で、アスピリンの長期使用には出血性合併症のリスクが伴うため、個々の服用についての決定には今後リスク・ベネフィット分析が必要となる。

6766.

同じGPでの診療継続は、不要な入院を減らす/BMJ

 プライマリケアの継続性を促進することで、不必要な入院を回避し、とくに受診頻度の高い患者で医療費の抑制効果を改善する可能性があることが、英国・The Health FoundationのIsaac Barker氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年2月1日号に掲載された。予定外の入院を回避するために、多くのヘルスケアシステムが、プライマリケアへのアクセスの迅速性と公正性の改善に重点的に取り組んでいる。英国では、ケアの継続性が損なわれつつあるとされ、これはケアへのアクセスの促進と継続性はトレード・オフの関係にあるためと考えられている。また、ケアの継続性は、患者および医師の満足度と関連することが知られているが、入院との関連は不明だという。ケアの継続性とACSCによる入院の関連を横断的に評価 研究グループは、高齢患者を対象に、一般医(GP)によるケアの継続性と、「プライマリケアでの適切な処置により不必要な入院が回避可能な病態(ambulatory care sensitive conditions:ACSC)」に起因する入院との関連を評価するために、横断的研究を行った(研究助成は受けていない)。 解析には、英国の臨床試験研究データベース(Clinical Practice Research Datalink)に参加する200のGP施設のプライマリケアおよびセカンダリケアの記録を用いた。 ACSCには、喘息など質の高いケアで再燃エピソードを予防すべき長期的な病態や、壊疽など適切な時期に効果的なケアで発症を阻止すべき急性の病態、インフルエンザや肺炎などワクチン接種で予防可能な病態などが含まれた。 ケアの継続性は、最も受診回数の多いGPへの受診頻度(usual provider of care index)のスコアで評価した。たとえば、1例の患者がGPを10回受診し、そのうち6回が同一のGPの場合、継続性スコアは0.6(6/10)となる。 2011年4月~2013年3月の2年間に、GP施設を2回以上受診した年齢62~82歳の患者23万472例のデータが解析の対象となった。主要評価項目は、ACSCによる入院回数とした。受診頻度が高い患者は、ケアの継続性が低く、不必要な入院が多い ベースラインの全体の平均年齢は71.43(SD 5.88)歳、女性が53.63%を占めた。2年間で、1例がGPを受診した平均回数は11.40(SD 9.40)回、専門医への平均紹介数は0.45(SD 0.89)回、ACSCによる平均入院回数は0.16(SD 1.01)回であった。ACSCによる入院は0が89.57%、1回が7.70%、2回以上は2.73%だった。 ケアの継続性スコアの平均値は0.61であった。所属GPの多い大規模施設(常勤換算GP数≧7人)は、小規模施設(同:1~3人)よりもケアの継続性が低い傾向がみられた(平均継続性スコア:0.59 vs.0.70)。 年齢が高い患者ほど、専門医への紹介が多く、疾患が長期に及び、ACSCによる入院でGPを受診する頻度が高かった。また、ACSCによる入院の頻度は、女性が男性に比べて低く、社会経済的貧困度が高度の集団ほど高かった。 さらに、ケアの継続性が高い患者ほど、ACSCによる入院が少なかった。すなわち、ケアの継続性が中等度の群(継続性スコア:0.4~0.7)は低い群(同:0~0.4)に比べACSCによる入院が8.96%減少し(p<0.001)、高い群(同:0.7~1.0)は、低い群よりも12.49%(p<0.001)、中等度の群よりも3.87%(p=0.03)低下した。 人口統計学的特性と患者の臨床的背景因子で調整したモデルによる解析では、ケアの継続性スコアが0.2上昇すると、ACSCによる入院が6.22%(95%信頼区間[CI]:4.87~7.55、p<0.001)低下した。 プライマリケアの受診頻度が最も高い患者(GP受診回数≧18回/2年)は、最も低い患者(同:2~4回/2年)に比べ、ケアの継続性が低く(継続性スコア:0.56 vs.0.69)、ACSCによる入院は多い傾向がみられた(入院回数:0.36 vs.0.04)。 著者は、「GPによるケアの継続性を改善する戦略は、とくに受診頻度が最も高い患者においてセカンダリケアの医療費を抑制するとともに、患者および医療者の負担を軽減する可能性がある」とまとめ、「介入法については注意深い評価が求められる」と指摘している。

6767.

リバーロキサバンCAD、PAD患者のイベントを抑制

 ドイツ・バイエル社とヤンセン リサーチ&ディベロップメント社は2017年2月8日、冠動脈疾患(CAD)または末梢動脈疾患(PAD)を有する患者における心血管死、心筋梗塞、脳卒中を含む主要心血管イベント(MACE)の抑制に関し、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)の有効性と安全性を評価する第III相臨床試験COMPASSにおいて、主要評価項目を早期に達成したと発表。計画された中間解析を独立データモニタリング委員会(DMC)が実施したところ、主要評価項目であるMACEにおいて、事前に規定した優越性の基準が満たされたことから、DMC は治験を早期に中止することを推奨した。このことから、バイエル社、ヤンセン社およびポピュレーション・ヘルス・リサーチ・インスティチュート(PHRI)は、非盲検継続投与試験において被験者にリバーロキサバンを提供する予定である。COMPASS 試験は、リバーロキサバンではこれまでで最大規模の臨床試験。 第III相臨床試験COMPASSは、PHRIと共同で実施した試験であり、これまでに世界30ヵ国以上の600を超える施設から、2万7,402人が参加した。被験者はリバーロキサバン2.5mg×2/日とアスピリン 100mg×1/日の併用群、リバーロキサバン5mg×2/日単独投与群、または、アスピリン100mg×1/日単独投与群のいずれかに無作為割付された。本試験から得られたデータの詳細な解析結果は、2017年の医学学会で発表の予定。 CADによる死亡は、世界中で年間約730万人。患者数は増加しており、高所得国の中年男性・女性の3分の1から2分の1は生涯の間にCADを起こすリスクがあるという。PADは多くの場合、診断未確定であるものの、欧州と北米では2,700万人以上が罹患しており、世界的なスクリーニング調査では55歳以上の約20%にPADの兆候があることが示唆されている。バイエル薬品株式会社のプレスリリースこちら

6768.

しもやけ(凍瘡)

しもやけ(凍瘡)【皮膚疾患】◆症状冬の時季に手足や耳たぶなどが、腫れて、赤くなります。あたたまると、痒みを伴います。小児に多くみられます。◆原因寒さ(外気温約5℃くらい)により発症し、とくに寒暖の差の大きいところを行き来すると発症しやすいです。◆治療と予防・患部の保温と内服のお薬、外用薬で治療します。・予防では、肌の保温が大切です。●一言アドバイスとくに成人では、膠原病や動脈硬化による皮膚病変との鑑別が必要です。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

6769.

尿道に安全ピンを安全には入れられない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第85回

尿道に安全ピンを安全には入れられない FREEIMAGESより使用 世界にあまたある「異物論文」から1つご紹介しましょう。14歳の少年の話です。 Thummar HG, et al.An Unusual Case of a Metallic Foreign Body per Urethra.Pol J Radiol. 2016 Nov 1;81:519-521.14歳の少年が、会陰部の痛みと排尿困難を訴えて来院しました。彼によくよく話を聞いてみると、「尿道に安全ピンを入れたんだ」ということがわかりました。いやいや、いくら安全と名が付いていても、これをよく尿道に入れようと思いつきますね……。尿道異物の動機のほぼ100%が、性的興奮によるものとされています。彼もまた例に漏れず、安全ピンを入れることで性的に興奮していたのです。尿検査では当然血尿がみられ、レントゲン写真では、尿道の中にピンが外れた状態で細長く安全ピンが横たわっていました。幸い奥のほうまで陥入していなかったので、内視鏡的に摘出することができました(図)。これはやはり、一旦伸ばしてから安全ピンを入れたんでしょうね。奥のほうまで入れて楽しんでいたのでしょうか。(図)Copyright © Pol J Radiol, 2016安全ピンという名前ですが、決して安全ではありません。ましてや、自分の尿道に入れようなんて思わないように!インデックスページへ戻る

6770.

骨髄異形成症候群の予後層別化、遺伝子変異解析で可能に/NEJM

 骨髄異形成症候群(MDS)患者に同種造血幹細胞移植を行う際は、遺伝子変異を解析することで、予後を層別化するとともに、骨髄破壊的または非破壊的前処置のどちらが有用かを特定することが可能なことを、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのR Coleman Lindsley氏らが、遺伝子プロファイリングによる研究の結果、明らかにした。同種造血幹細胞移植はMDSに対する唯一の根治療法であるが、再発後の死亡や移植関連合併症による移植後死亡率が高く、どのような患者が最も移植の恩恵を受けるかを予測することは重要な課題である。遺伝子変異はMDS発症の一因であり臨床表現型と密接に関連していることから、遺伝子変異によって同種造血幹細胞移植後の臨床転帰を予測できる可能性が示唆されていた。NEJM誌2017年2月9日号掲載の報告。MDS患者約1,500例の血液検体から129の遺伝子を解析 研究グループは、2005~14年に国際造血細胞移植研究機構(CIBMTR)に登録されたMDS患者1,514例の移植前に採取された血液検体を用い、骨髄性がんや骨髄不全症候群の病因であることが既知または疑われる129の遺伝子について標的変異解析を実施し、全生存期間、再発および無再発死亡など移植後転帰と遺伝子変異との関連を検証した。TP53変異患者の移植後予後は不良 TP53変異が19%の患者で確認され、変異なしと比較して年齢などの重要な臨床変数を補正しても生存期間および再発までの期間が有意に短いことが示された(いずれもp<0.001)。TP53変異のない40歳以上の患者においては、RASシグナル伝達経路の遺伝子変異ありで変異なしと比較し、再発のために生存期間が短く(p=0.004)、JAK2変異ありは無再発死亡のため生存期間が短かった(p=0.001)。 TP53変異による予後への有害な影響は、骨髄非破壊的前処置を受けた患者と骨髄破壊的前処置を受けた患者で類似していた。一方、RAS経路変異による再発への有害な影響は、骨髄非破壊的前処置を受けた患者のみ、RAS経路変異なしと比較して顕著であった。また、若年成人においては、4%の患者がTP53変異とともにシュワッハマン・ダイアモンド症候群関連遺伝子SBDSの複合ヘテロ接合体変異を有しており、予後不良と関連していた。 P53調節因子PPM1D変異は、原発性MDS患者(3%)と比較して、治療関連MDS患者(15%)で高率に認められた(p<0.001)。

6771.

米の入院患者の死亡率、海外出身医師のほうが低い/BMJ

 米国の病院に入院した高齢のメディケア受給患者のデータから、海外医学部出身医師の治療を受けた患者の死亡率は、米国内の医学部出身医師が治療した患者より低いことが明らかとなった。ハーバード公衆衛生大学院の津川 友介氏らが、治療した一般内科医が海外医学部卒業生か米国内医学部卒業生かで患者のアウトカムに違いがあるかどうかを観察研究で検証し、報告した。これまで、小規模な検討ではさまざまな結果が示されていたが、全国的なデータを用いた研究はなかった。BMJ誌2017年2月3日号掲載の報告。65歳以上の入院患者約122万人とその担当医約4万人のデータを解析 研究グループは、Medicare Inpatient Files、Medicare Carrier Files、米国病院協会年次調査、およびDoximity(医師専用SNS)によって収集された医師データベースの4つのデータベースを用い、2011年1月1日~2014年12月31日に内科疾患で急性期病院に入院した65歳以上のメディケア出来高払い受給者121万5,490人、ならびにその患者を治療した医師4万4,227人のデータを解析した。 主要評価項目は、患者の30日死亡率、退院後30日再入院率、および入院当たりの治療費用であった。患者特性(年齢、性別、人種、主要診断、重症度など)、医師特性(年齢、性別、治療した患者数など)、ならびに病院を固定効果(同一病院内の医師同士を比較)として補正した。また、感度解析として、入院患者の治療に特化した総合診療医(ホスピタリスト:主に交代制で働き、勤務予定に基づいて見かけ上無作為に患者を診療する)に絞った解析も行った。米国外医学部出身医師が治療した患者の死亡率が有意に低い 海外医学部出身医師が治療した患者は、米国内医学部出身医師が治療した患者と比較して、わずかに慢性疾患が多く、入院当たりの治療費(補正後)がわずかに高かった(1,145 vs.1,098ドル、差:47ドル、95%信頼区間[CI]:39~55ドル、p<0.001)、しかし、補正後30日死亡率は低かった(11.2 vs.11.6%、補正後オッズ比:0.95、95%CI:0.93~0.96、p<0.001)。再入院率は両群間で差はなかった。 患者アウトカムの違いは、ホスピタリストに限ってみた場合も同様であることが確認された。死亡率の差は、在院期間、支出費用、転院/退院先の場所の違いでは説明されなかった。 なお、著者は、米国外で出生した海外医学部卒業生と海外医学部に留学した米国市民を区別できなかったことや、30日死亡率と再入院率が必ずしも包括的に治療の質を評価できるわけではないことを研究の限界として挙げている。

6772.

リケッチア症に気を付けろッ!その4【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第26回となる今回は、「リケッチア症に気を付けろッ! その4」です。前回まではツツガムシ病と日本紅斑熱という、日本でみられるリケッチア症のビッグ2についてご紹介してきました。しかし、まだまだ日本国内には、ほかにもあまり知られていないリケッチア症が存在するのですッ!国内で報告された症例最初にご紹介するのは、2004年に福井県で報告されたR.helvetica感染症の事例です。“Helvetica”といってもフォントの話ではなく、こういうリケッチアの名前なのです。当初、この症例は「福井県初の紅斑熱群リケッチア症」として医学誌に報告されていました1、2)。しかし、もともと日本紅斑熱が出ている地域ではなく北陸、しかも豪雪地帯の山間で発生したことや、国内で日本紅斑熱以外の紅斑熱であるR.helveticaもマダニから見つかっていたことから、ウエスタンブロット法(WB)による精査を行ったところR.helvetica感染症と確定されたのです。しかも、この症例の感染推定地とされる荒島岳のヒトツトゲマダニからもR.helvetica が検出されたのですッ! 熱いッ! 熱すぎるッ! マダニにかけるほとばしる情熱ッ! 涙を禁じ得ないッ! というわけで、荒島岳に登山した後に発熱・皮疹を呈した症例ではR.helvetica感染症を疑うべし! という超マニアックな情報でした。まだまだあります。2008年、宮城県仙台市に住む30代の男性が発熱・皮疹を呈し病院に受診しました。受診時に痂皮が観察されたため生検を行いポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法にかけたところR.heilongjiangensisが陽性になりました3)。「なんだよR.heilongjiangensisって?」って感じですが、これはいわゆる“far eastern spotted fever”と呼ばれる感染症の原因となるリケッチアでして、中国北部や東アジアで報告されています。私としては「極東紅斑熱」という日本語での名前のほうがカッコ良くて好きであります。こんな珍しい感染症にどこでかかったのか不思議に思われるかと思いますが、この30代男性は、とくに登山やら森林浴やらそういったアウトドア活動歴はなく、犬の散歩で仙台市の川沿いを歩いていた程度だったのだそうです。そして、後ほどこの川付近のイスカチマダニ(H.concinna)を収集したところR.heilongjiangensisが見つかったのです。これまた熱い情熱ッ! 自分も一緒にマダニを捕まえたかったッ! というわけで、仙台在住の皆さま、極東紅斑熱にどうぞご注意ください。さらにさらに、全国の田村さんお待たせしました。田村界注目の感染症、R.tamuraeの登場です。2009年に島根県在住の70代男性が、マダニに咬まれたところが痛いということで病院を受診しました。なお、リケッチア症でよくみられる高熱、皮疹はこの症例ではみられなかったとのことです。それよりもこの男性、マダニを付けたまま受診しておりまして、その写真が論文に掲載されております。フリーで見られますので要チェックです4)。このくっついていたマダニは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を媒介することで有名なタカサゴキララマダニでした。このタカサゴキララマダニからR.tamuraeが検出され、この男性のR.tamurae抗体価も陽転化したとのことで、R.tamurae感染症と確定診断されています。国外で報告された症例いや~、世の中にはまだまだ知られていないリケッチア症がたくさんありますねえ(なんか水野晴郎みたいですが)。しかし、実はこれだけではないのです! 極めつけはCRTです! 最近のマダニ愛好家の間でのトピックスとして、Candidatus Rickettsia tarasevichiae(CRT)による感染例が海外で報告されています。2013年に中国の北東地域で新しい紅斑熱グループリケッチアによる5例の患者が報告5)されたんですが、さらに2016年になって、中国の北東地域の病院をSFTS様の症状で受診した患者のうち56例がCRT感染症であったと報告されました。この報告によりますと、CRT感染症はほかのリケッチア症と同様に、発熱、頭痛、関節痛などの非特異的な症状を呈するようです。しかし、リケッチア症でよくみられる皮疹を呈した患者はわずか2例(3.6%)のみであり、さらには痂皮がみられたのもたった16%だったそうです。われわれがイメージするリケッチア症とは臨床像が異なりますので、リケッチア症として認識することが難しいだろうと想像します。実は、わが国でもこのCRTが生息していることは知られているのですが、ヒトへの感染はまだ報告されていません。もしかしたらすでに発症者はいて、正しく診断されていないだけなのかもしれませんね。というわけで、誰も知らない日本のリケッチア症、についてお話しいたしました。次回は次に来るかもしれない新興感染症「マヤロ熱」について取り上げたいと思いますッ!1)Noji Y, et al. Jpn J Infect Dis. 2005;58:112-114.2)高田伸弘ほか. Infectious Agents Surveillance Rep. 2006;27:40-41.3)Ando S, et al. Emerg Infect Dis. 2010;16:1306-1308.4)Imaoka K, et al. Case Rep Dermatol. 2011;3:68-73.5)Jia N, et al. N Engl J Med. 2013;369:1178-1180.

6773.

抗精神病薬、賦活と鎮静の副作用を比較

 抗精神病薬の副作用である賦活や鎮静は、薬物治療の妨げとなる可能性がある。米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏は、第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について評価を行った。Journal of clinical psychopharmacology誌オンライン版2017年1月30日号の報告。 本研究では、統合失調症および大うつ病の補助的治療に適応を有する薬剤の製品ラベルで報告されている副作用の割合を調査し、第1選択薬として用いられる経口の第2世代抗精神病薬の賦活および鎮静特性を定量化し評価した。追加データソースとして、規定文書、調査概要、パブリッシュされた調査レポートを含んだ。副作用リスク増加とNNH(Number Needed to Harm:有害必要数)は、各薬剤対プラセボにて算出した。抗精神病薬の一部では賦活と鎮静の両方の副作用の可能性 抗精神病薬の賦活および鎮静の副作用について比較した主な結果は以下のとおり。・賦活や鎮静の副作用は、各抗精神病薬で違いが観察され、一部では賦活と鎮静の両方の副作用の可能性が示唆されている。・統合失調症に用いられる薬剤では、主な賦活系の抗精神病薬としてlurasidone(NNH:アカシジア11 vs.傾眠20)、cariprazine(NNH:アカシジア15 vs.傾眠65)が挙げられる。・リスペリドン(NNH:アカシジア15 vs.鎮静13)、アリピプラゾール(NNH:アカシジア31 vs.眠気34)の賦活と鎮静のバランスは同程度であった。・主な鎮静系の抗精神病薬は、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone、asenapine、iloperidoneが挙げられる。・賦活、鎮静に作用しない抗精神病薬は、パリペリドン、brexpiprazoleであった。・うつ病に用いられる抗精神病薬については、全体的に統合失調症と同様な所見であった。・抽出されたデータは、製品ラベルに含まれる有害事象表に寄与する登録研究からの入手可能なものに限られていた。その後の比較研究では、異なる結果が示される可能性がある。

6774.

侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第36回

第36回:肺がん免疫チェックポイント阻害薬 最近のまとめキーワードatezolizumabペムブロリズマブニボルマブイピリムマブN Engl J MedASCO-GIReck M, et al. N Engl J Med. 2016; 375: 1823-1833.2017 GI Cancers Symposium:Nivolumab Demonstrated Efficacy and Improved Survival in Patients With Previously Treated Advanced Gastric Cancer

6775.

突然やってくる!? 外国人患者さん対応エピソード集 第1回

第1回 手術スタッフは全員女性にしてください!第1回は、日本で最も外国人患者さんの受け入れが多い病院の1つである国立国際医療研究センター国際感染症センター国際診療部の堀 成美氏に、最近増えているムスリム(イスラム教徒)の患者さんへの対応についてお話を伺いました。<Case1>先日、ある病院に手術が必要なムスリムの女性患者さんがやってきました。イスラム教といえば、食事や慣習などにさまざまな規律があります。手術に際し、患者さんがまず希望したことは「手術を担当する医師や看護師をすべて女性にしてほしい!」ということでした。さて、同病院ではどのように対応したのでしょうか…。澤田:さて、今回はムスリム患者さんの対応についてですが、堀さんの病院でもムスリム患者さんの受け入れはされていますよね。堀:はい、受け入れを行っています。澤田:受け入れに際しどのような配慮をされていますか?堀:わかりやすいところでは、入院食としてムスリムの方々が食べられるように、豚肉やアルコールを排除した特別食を用意しています。それらの食材が調理中に混入することがないよう注意し、さらに間違って配膳されないよう、栄養士が考案したメニューを患者さんに提供しています。また、礼拝を行うことができる祈祷室も設置しています。画像を拡大する澤田:すごいですね。患者さんの文化を理解し、尊敬し、寄り添うためには、さまざまな体制整備が必要になるのですね。堀:はい、もちろんできること、できないことがありますので、優先順位をつけ、対応していくことが必要だと思います。当院では、外国人患者さんの入院を受け入れるという方針の中で、食事の提供や栄養管理について栄養士が熱意を持って取り組んでくれる素地があったこと、また、祈祷室については、ちょうどランドリースペースがほかに移転したことなど、現実的に検討できた事情がありました。澤田:なるほど。今回の事例についてはどのように考えますか?堀:この事例では、人員の関係上、男性医療者も入らざるを得ない旨伝えたところ、「それならば被っているスカーフを絶対に外したくない」との強い要望があったそうです。前例がなく難しいと思われたものの、オペ担当医師に事情を説明し、スカーフを被ったままオペができないか相談したところ、清潔なスカーフを用いて、毛髪を露出しないようにする形で、この要望は受け入れられたそうです。澤田:患者さんの希望に最大限に応えようとされている病院の努力が伺えますね。堀:そうですね。「習慣やルーチンだから無理」と決めてかからず、「できることもあるかも」と考え、患者さんや関係者と相談することが大事だということを学んだ事例です。当院でも、妊婦健診やお産の際に「全員女性スタッフで対応してくれないと困る」という要望がある場合は、対応が可能な近隣の医療機関を紹介することができるように、情報収集をして備えています。1つの医療機関では対応できないこともあるので、患者さんとよく話あい、スタッフの負担が増えないようにすることも重要だと思います。澤田:持続的な受入れを行う為にも忘れてはならない 視点ですね。多くの外国人患者さんを受け入れてきた経験から、取り組みのポイントを教えていただけますか?堀:優先すべきポイントは文化、言語、支払いだと思います。文化は今回取り上げたような食事や習慣への対応、言語は医療通訳にアクセスできる体制の整備、支払いは未収をなくすための仕組みや対策作りということになるかと思います。澤田:勉強になります! 堀さんにはまたお話を伺うことになると思いますので、引き続きよろしくお願いします。<本事例からの学び>「ルーチンだから無理」と決めてかからず「文化」、「言語」、「支払い」から体制整備を!

6776.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第35回

第35回:急性単関節炎の診断アプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 以前、多関節炎の鑑別(第29回)についての記事を掲載しましたが、今回は単関節炎の診断アプローチについて取り上げます。 単関節炎のcommonな原因としては変形性関節症・痛風・外傷が挙げられますが、プライマリ・ケア領域では全身性疾患の早期症状として単関節炎を診る可能性もあります。そのため、関節炎の評価に加えて「もう一歩踏み込んだ診察・病歴聴取」を行うことが診断の鍵となります。 以下、American Family Physician 2016年11月15日号 より1) 急性単関節炎の背景に潜む病態の手掛かりをつかむために、包括的な病歴と身体所見が必要となる。病歴聴取では次の項目がとくに大切である。年齢、随伴症状、併存疾患、内服歴、関節に関する既往症、外傷歴、ダニ刺傷の既往、静脈注射の使用歴、痛風の家族歴、性交歴、渡航歴、普段の食事内容、飲酒歴、職業歴など。また労作時に関節炎の症状が悪化するものの、安静時には改善する場合は物理的な原因が考えられる。一方、安静時でも症状が増悪する場合は炎症性疾患の可能性があり、その場合は朝のこわばりを認めることもある。以下、代表的な疾患やアプローチの仕方について述べる。1)頻度の多い疾患である変形性関節症は労作で症状増悪するのが典型的である。朝のこわばりを認めることがあるものの、30分以内に改善する。また安静時にこわばりの再発を認めることがある(Gelling現象)。しかし、関節リウマチと比較して変形性関節症における朝のこわばりの持続時間は短く、関節リウマチでは症状が45分以上も続く。2)典型的な痛風発作は夜間に始まり、24時間以内に症状はピークへ達する。また疼痛や発赤、腫脹を引き起こす。肥満、高カロリー食の摂取、アルコール摂取歴、そしてループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬の内服歴は、痛風発作を疑う手掛かりとなる。外傷を契機に痛風発作が起きる可能性もあり、化膿性関節炎と非常によく似た臨床症状を呈することがある。3)先行する関節痛症状が感染を示唆することがある。そのため本当に単関節の症状なのかどうか判断することは大切である。なお、淋菌性関節炎は遊走性の関節炎と腱鞘炎症状が先行する。4)末梢関節の炎症を伴う軸骨格の炎症性関節炎(例:仙腸関節炎)は、脊椎関節炎を示唆する。脊椎関節炎は、しばしば単関節炎として症状が現れ、遊走性または波及的に関節から関節へ進展する。その他の症状(筋腱付着部の痛みやソーセージ様に腫脹する指趾炎)がないかを患者へ尋ねることは重要である。またぶどう膜炎を認める患者や、尿道炎を認める患者(Reiter症候群)もいる。5)皮膚症状の病歴と乾癬の家族歴から、単関節炎を呈する乾癬性関節炎を病状早期に疑うこともある。以上のように、それぞれの疾患の特徴を押さえることで、診断につながる重要な手掛かりを得ることができる。※本内容にはプライマリ・ケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Becker JA, et al. Am Fam Physician. 2016;94:810-816.

6777.

うつ病の治療抵抗性と寛解を予測する因子とは

 うつ病に対する抗うつ薬使用は、汎用されている治療にもかかわらず、大うつ病患者の約3分の1には十分な効果を発揮しない。オーストリア・ウィーン大学のAlexander Kautzky氏らは、治療アウトカムのための臨床的、社会的、心理社会学的な48の予測因子による新たな洞察を、治療抵抗性の研究グループのデータと機械学習を利用し、検討を行った。The Journal of clinical psychiatry誌オンライン版2017年1月3日号の報告。 患者は、2000年1月より登録され、DSM-IVに従って診断した。治療抵抗性うつ病は、2種類以上の抗うつ薬による十分な投与量と期間で治療を行った後、ハミルトンうつ病評価尺度(17項目:HDRS)スコアが17以上とした。寛解は、HDRSスコア8未満とした。ランダムフォレストを用いたステップワイズ法を行い、治療アウトカムの分類に最適な数を見出した。重要値が生成された後、400例の患者サンプルで寛解と治療抵抗性の予測を実施した。予測のために、サンプル外の80例を使用し、レシーバの動作特性を計算した。 主な結果は以下のとおり。・治療アウトカムのもっとも有益な予測因子として、以下が挙げられる。 ●最初と最後のうつ病エピソードの間隔 ●最初のうつ病エピソードの年齢 ●最初の抗うつ薬治療に対するレスポンス ●重症度 ●自殺念慮 ●メランコリー ●生涯うつ病エピソード数 ●患者のアドミタンスタイプ ●教育 ●職業 ●糖尿病の併存 ●パニック症 ●甲状腺疾患・単一予測因子は、ランダム予測と異なる予測精度に達しなかったが、すべての予測変数を組み合わせることにより、治療抵抗性を0.737の精度で検出し、寛解を0.850の精度で検出できた。・その結果、治療抵抗性うつ病の65.5%、寛解の77.7%を正確に予測できた。関連医療ニュース 晩年期治療抵抗性うつ病の治療戦略に必要なものとは 治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのか 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か

6778.

冠動脈疾患患者における心房細動の危険因子は?

 一般集団における心房細動の危険因子は明らかだが、特定の疾患を持つ患者への影響は不明である。今回、札幌医科大学の村上 直人氏らが、冠動脈疾患(CAD)患者と非CAD患者における心房細動の危険因子を調べた結果、CADの有無により心房細動の主要な危険因子が異なることが示唆された。CAD患者では血清尿酸値高値、非CAD患者ではスタチン非使用で心房細動が発症しやすいことが示された。Open heart誌オンライン版2017年1月16日号に掲載。 著者らは、BOREAS-CAGレジストリにおいて、2014年8月~2015年1月にCAD症状の評価のために冠動脈造影を実施した1,871例を連続して登録した。心臓弁膜症患者とPCI/心臓手術歴のある患者を除外した1,150例(非CAD群576例、CAD群574例)について、多変量ロジスティック回帰分析により心房細動の危険因子を同定した。また、2013年4月~2014年7月に札幌医科大学病院に入院したCAD患者361例のうち、BOREAS-CAGレジストリと同じ組み入れ基準と除外基準に合う166例のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・意外にも、CADが独立して「心房細動なし」に関連した。・CADの有無にかかわらず、脳性ナトリウム利尿ペプチドレベルが心房細動と強い関連を示した。・非CAD群では「スタチン非使用」が独立して心房細動に関連し、CAD群では「血清尿酸値高値」が心房細動の独立した説明変数となった。・札幌医科大学病院のCADコホートに登録された患者群(166例)で、心房細動と血清尿酸値との関連が確認された。

6779.

妊娠中の甲状腺ホルモン治療、流産・死産への影響は?/BMJ

 潜在性甲状腺機能低下症の妊婦では、甲状腺ホルモン薬の投与により妊娠喪失のリスクが低減するが、早産などのリスクは増加することが、米国・アーカンソー大学のSpyridoula Maraka氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年1月25日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症は妊婦に有害な転帰をもたらすことが、観察研究で示唆されている。甲状腺ホルモン薬のベネフィットを支持するエビデンスは十分でないにもかかわらず、米国の現行ガイドラインではレボチロキシンが推奨されているという。甲状腺ホルモン薬は5年間で約16%に投与 研究グループは、潜在性甲状腺機能低下症の妊婦における甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン、リオチロニン、甲状腺抽出物製剤)の有効性と安全性を評価するレトロスペクティブなコホート試験を実施した(Mayo Clinic Robert D. and Patricia E. Kern Center for the Science of Health Care Deliveryの助成による)。 米国の全国的なデータベース(Optum-Labs Data Warehouse)を検索し、2010年1月1日~2014年12月31日に登録された潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺刺激ホルモン[TSH]:2.5~10mIU/L)の妊婦のデータを抽出した。 主要評価項目は妊娠喪失(流産、死産)とし、副次評価項目には早産、早期破水、胎盤早期剥離、妊娠糖尿病、妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、胎児の発育不全などが含まれた。 解析の対象となった5,405例の妊婦のうち、843例(15.6%)が甲状腺ホルモン薬の投与を受け、4,562(84.4%)例は受けていなかった。832例(98.7%)がレボチロキシン、7例(0.8%)が甲状腺抽出物製剤、4例(0.5%)はレボチロキシン+リオチロニンを投与されていた。ベネフィットは治療前TSH 4.1~10.0mIU/Lに限定 甲状腺ホルモン薬の投与を受けた妊婦の割合は経時的に増加し(2010年:12%~2014年:19%)、地域差(北東部/西部>中西部/南部、p<0.01)がみられた。TSH検査から投与開始までの期間中央値は11日(IQR:4~15)、出産までの期間中央値は30.3週(IQR:25.4~32.7)だった。 ベースラインの平均年齢は、治療群が31.7(SD 4.7)歳、非治療群は31.3(SD 5.2)歳と差はなかったが、18~24歳が非治療群で多かった(5.8% vs.9.5%)。平均TSHは治療群が4.8(SD 1.7)mIU/Lと、非治療群の3.3(SD 0.9)mIU/Lに比べ高値であった(p<0.01)。また、治療群は妊娠喪失の既往(2.7% vs.1.1%、p<0.01)、甲状腺疾患の既往(6.2% vs.3.4%、p<0.01)のある妊婦が多かった。 解析の結果、妊娠喪失の発生率は治療群が10.6%と、非治療群の13.5%に比べ有意に低かった(補正オッズ比:0.62、95%信頼区間[CI]:0.48~0.82、p<0.01)。 一方、治療群では、早産(7.1% vs.5.2%、補正オッズ比:1.60、95%CI:1.14~2.24、p=0.01)、妊娠糖尿病(12.0% vs.8.8%、1.37、1.05~1.79、p=0.02)、妊娠高血圧腎症(5.5% vs.3.9%、1.61、1.10~2.37、p=0.01)の頻度が非治療群に比し高かった。その他の妊娠関連の有害な転帰の頻度は両群でほぼ同等であった。 さらに、妊娠喪失は、ベースラインのTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦では、治療群が非治療群よりも有意に抑制された(補正オッズ比:0.45、95%CI:0.30~0.65)のに対し、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療の有無で差はなく(0.91、0.65~1.23)、これらのサブグループの間に有意な差が認められた(p<0.01)。 逆に、妊娠高血圧は、TSH 4.1~10.0mIU/Lの妊婦では治療群と非治療群に有意な差はなかった(補正オッズ比:0.86、0.51~1.45)が、2.5~4.0mIU/Lの妊婦では治療群のほうが有意に多くみられ(1.76、1.13~2.74)、サブグループ間に有意差を認めた(p=0.04)。 著者は、「甲状腺ホルモン薬による妊娠喪失の抑制効果は、治療前のTSHが4.1~10.0mIU/Lの妊婦に限られ、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症はむしろ増加した」とまとめ、「甲状腺ホルモン薬の安全性を評価するために、さらなる検討を要する」と指摘している。

6780.

新型タバコは無煙で安心!?

新型タバコは無煙で安心!? 火を使わず、電気でタバコの葉を加熱することで、従来のタバコのような喫煙感を味わえると注目されている新型タバコ。 メディアでは、煙やにおいがほとんど出ない、火で燃やすことで生じるタールの心配もほとんどない、などと説明されています。しかし… 煙の代わりに、加熱して吸ったときに出る水蒸気には微量ながら有害成分が含まれていることが過去の研究でも明らかになっています。火を使わなくても、新型タバコから排出される有害物質はゼロではありません。煙が出ないから安心、とは言えないのです。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.Copyright © 2017 CareNet, Inc. All rights reserved.

検索結果 合計:10312件 表示位置:6761 - 6780