521.
米国での循環器専門医試験を終えて昨年の10月に、米国の循環器専門医試験を受けました。結果として無事に合格でき、晴れて日米総合内科、循環器内科専門医となれましたので、その過程を共通させていただきます。この専門医試験は、合格しなければ仕事にならない、もしくは仕事がみつからないほど重要な試験です。そのため真剣に試験を受ける必要があるのですが、今回はとくに過酷なスケジュールでした。10月下旬に試験が行われましたが、私は7月からMGH(マサチューセッツ総合病院)のカテーテルフェローとして昼夜問わず多忙で疲弊しきっていたため、正直なところ十分な準備時間を確保することができていませんでした。それでも試験の申し込み費用が2,500ドル(約40万円)と高額であることから、とりあえず不合格だけは避けることを目標に試験対策を行いました。主に使用した教材として、ACC(米国心臓病学会)に準拠した「ACCSAP」というアプリベースの問題集を、隙間時間に約600問解きました。総合内科は「MKSAP」という問題集がありましたが、それの循環器版です。循環器領域は馴染みがあるので難なく対応できるのですが、先天性心疾患など普段診ない専門性の高い疾患については特別な対策が必要でした。この分野に関しては、メイヨークリニックから出されているボードレビュー動画を活用しました。動画は35時間もあり、到底全部見ることはできませんが、弱点の分野を絞り込み、英語ですが1.5倍速で視聴しました。試験は2日間で行われました。1日目は2時間×4セッションで、知識問題をコンピューターベースで解答します。米国の試験はすべてコンピューターベースになっていて、日本のように東京の会場に集まるということはありません。ただし8時間もあるのがなかなか大変でした。合格点は320点、平均点が459点の中、私は567点で問題ありませんでした。2日目は心電図、心エコー、冠動脈造影の読影テストです。5つの選択肢から解答を1つ選ぶといったよくある形式だと楽なのですが、この試験はユニークな形式で、たとえば心電図所見の選択肢が100個ほどあり、その中から適切なものだけ選びます。選び過ぎると減点される過酷な形式でした。心電図を見て、洞調律、左房負荷、左室肥大、であればそれだけしか選べず、微妙な左軸偏位がないのにそう読んでしまうと減点、というようなものです。この試験はより対策が必要で、「ECG source」というウェブサイトで600問の問題をひたすら解きました。すべて解くのは到底無理で、効率も悪く、実際の感触は今ひとつでした。試験本番では、合格点が352点、平均点が463点の中で、私は542点を取得し、無事クリアしました。おそらく合格率は80~90%程度だと思われます。ほっと一息つくことができました。今年の11月にはInterventional Cardiologyの専門医試験があります。この試験の受験費用はなんと2,900ドルと45万円超。フェローの収入でこれだけの費用を捻出するのは厳しいので驚愕しています。Column今年は幸先良く、ACCの機関誌であるJACC(IF:21.7)に、私がcorresponding author/co-senior authorを担当した、STEMIに対する完全血行再建に関するメタ解析を掲載することができました1)。また、JAMA Cardiology(IF:14.7)に、co-first authorとしてApoBに関する論文を発表しました2)。カテーテル手技に多くの時間を費やしていますが、研究活動も続けていきたいと思います。1)Ueyama HA, Kuno T, et al. Optimal Strategy for Complete Revascularization in ST-Segment Elevation Myocardial Infarction and Multivessel Disease: A Network Meta-Analysis. J Am Coll Cardiol. 2025;85:19-38.2)Slipczuk L, Kuno T, et al. Heterogeneity of Apolipoprotein B Levels Among Hispanic or Latino Individuals Residing in the US. JAMA Cardiol. 2025 Jan 2. [Epub ahead of print]