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米国では約10年で家族介護者数が30%以上増加

 米国では、2011年から2022年の間に自宅や介護施設で暮らす高齢者を介護する家族や友人などの数が32%増加し、このような介護者が介護に費やした時間も50%近く増加したことが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJennifer L. Wolff氏らによるこの研究は、「Health Affairs」2月号に掲載された。 この研究では、National Health and Aging Trends Study(NHATS)とNational Study of Caregiving(NSOC)の2011年と2022年のデータの分析が行われた。NHATSは、米国の65歳以上のメディケア受給者を対象にした全国調査で、高齢者の日常動作に関する情報を収集している。一方、NSOCは、家族や友人などの無償で介護を提供している人(以下、無償の介護者)に関する情報を収集している。2022年のデータでは、無償の介護者の約12%は家族以外の人(友人や近隣の人など)であり、残りは親族であった。 高齢者を介護する無償の介護者の数は2011年は1820万人であったのが2022年には2410万人と32%増加していた。また、無償の介護者が介護に費やす時間も、2011年の週平均21.4時間から2022年には週平均31時間と、ほぼ50%増加していた。被介護者の介護ネットワークの規模は2011年と2022年で変化はなく、1人当たり2人であった。2022年に無償の介護者が介護していた人は、2011年の無償の介護者が介護していた人と比較して、若く、教育水準が高く、男性の割合が高く、認知症である可能性が低かった。また、無償の介護者は、レスパイトケア(介護者が休息を取れるように支援するサービス)や支援グループなどの支援サービスへの依存が減ったと報告していたにもかかわらず、介護の難しさや雇用と育児の両立に対する責任については、ほとんど変化がないと報告していた。 Wolff氏は、「われわれの調査結果は、介護者の数が大幅に増加しているにもかかわらず、彼らの状況は驚くほど変化がないことを示している。これは、政策に関わる人々が口にする『家族介護者の負担が増加の一途をたどっている』という懸念とは異なる結果だ。それでもわれわれは、特に認知症患者の介護に関わる人が直面する特定の課題に対応する必要がある」とジョンズ・ホプキンス大学のニュースリリースで述べている。 本研究では、介護の責任は依然として主に女性が負わされており、また、認知症患者の介護者や経済的に余裕のない人は特に悪影響を受けるリスクが高いことも示されたという。研究グループは、85歳以上の人口は2050年までに3倍になると予測されていることに言及し、介護者の経験における格差に対処することが喫緊の課題だと主張している。 さらに研究グループは、政策立案者が、州レベルの有給家族休暇政策を含む、家族介護者に対する強力な支援策を策定するべきだとしている。Wolff氏は、「家族介護者は、介護提供システムにとって極めて重要だ。将来を見据えて、何百万人もの高齢者が頼りにしている重要なサポートを今後も提供し続けられるように、家族介護者のニーズを把握し、サポートする必要がある」と話している。

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リファンピシン耐性キノロン感性結核に対する経口抗菌薬(解説:寺田教彦氏)

 結核は、依然として世界的な公衆衛生の問題であり、2023年WHO世界結核対策報告書によると、2022年には約1,060万人が結核を発症し、130万人が死亡したとされる。結核治療を困難にする要因の1つに薬剤耐性結核(MDR/RR-TB)があり、今回の対象であるリファンピシン耐性結核は、毎年約41万人が罹患すると推定されている。このうち治療を受けたのは40%にすぎず、その治療成功率は65%にとどまっている(WHO. Global tuberculosis report 2023.)。これは、従来のレジメンが18~24ヵ月と治療期間が長く、アミノグリコシド系やポリペプチド系の注射製剤が含まれ、副作用の問題もあったためと考えられる。 2016年から2017年にかけて、本研究(endTB試験)を含めた3つの多国籍ランダム化比較試験(STREAM2試験、TB-PRACTECAL試験)が開始され、リファンピシン耐性結核に対する6ヵ月または9ヵ月の全経口短期レジメンの安全性と有効性が評価された。 本研究は、15歳以上のリファンピシン耐性・フルオロキノロン感性の結核患者を対象に、ベダキリン(B)、デラマニド(D)、リネゾリド(L)、レボフロキサシン(Lfx)またはモキシフロキサシン(M)、クロファジミン(C)、ピラジナミド(Z)から成る5つの併用レジメン(BLMZ、BCLLfxZ、BDLLfxZ、DCLLfxZ、DCMZ)と、当時のWHOガイドラインに準拠した標準治療群の計6つの治療群を比較した。その結果、3つのレジメンが標準治療に対して非劣性を示した(詳細は「リファンピシン耐性/キノロン感受性結核に有効な経口レジメンは?/NEJM」参照)。 WHOは2024年8月に発表したKey updates to the treatment of drug-resistant tuberculosis: rapid communication, June 2024において、本試験(endTB)の結果を解釈し、内容を更新している。ガイドライン開発グループの解釈では、フルオロキノロン感受性が確認されたMDR/RR-TB患者において、BLMZ、BLLfxCZ、BDLLfxZの3種類の9ヵ月全経口レジメンは、長期(≧18ヵ月)レジメンの代替として効果的かつ安全に使用できるが、DCLLfxZおよびDCMZレジメンは治療失敗・再発率および獲得耐性率が高いため推奨されないとされた。そのため、WHOはフルオロキノロン感性MDR/RR-TB患者に対し、9ヵ月の全経口レジメン(優先順位:BLMZ>BLLfxCZ>BDLLfxZ)を従来の長期レジメンに代わる選択肢の1つとして提案した(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)。 本研究のレジメンは小児用製剤もあり、妊娠中の使用も検討可能である。今後、2025年のWHOガイドライン改訂にも反映され、より多くの患者に適用可能な治療法の1つとなることが期待される。

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切除不能進行胃がん1次治療、sugemalimab追加でOS・PFS改善(GEMSTONE-303)/JAMA

 未治療の切除不能な局所進行または転移を有する胃・食道胃接合部腺がんの治療において、プラセボ+化学療法と比較してsugemalimab(完全ヒト型抗プログラム細胞死リガンド1[PD-L1]抗体)+化学療法は、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・北京大学のXiaotian Zhang氏らGEMSTONE-303 Investigatorsが実施した「GEMSTONE-303試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年2月24日号に掲載された。中国の無作為化プラセボ対照第III相試験 GEMSTONE-303試験は、切除不能な局所進行または転移を有する胃・食道胃接合部腺がんの1次治療における化学療法(カペシタビン+オキサリプラチン[CAPOX])へのsugemalimab追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年4月~2021年12月に中国の54施設で患者を登録した(CStone Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 PD-L1の複合発現スコア(CPS)が5点以上、全身療法による前治療を受けていない患者479例を対象とした。これらの患者を、3週間ごとに最長24ヵ月間sugemalimab 1,200mgを静脈内投与する群(241例)またはプラセボを投与する群(238例)に割り付け、全例に3週間ごとに最長6サイクルCAPOXを投与した。 主要評価項目は、OSおよび担当医評価によるPFSであった。中央判定によるPFS、客観的奏効率も優れる 全例がアジア人であった。sugemalimab群の年齢中央値は63歳(範囲:25~75)、男性が71.4%、PD-L1 CPSが10点以上の患者の割合は53.9%であり、プラセボ群はそれぞれ63歳(26~75)、74.8%、53.8%だった。追跡期間中央値は、それぞれ25.1ヵ月および26.3ヵ月であった。 OS中央値は、プラセボ群が12.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:10.6~14.1)であったのに対し、sugemalimab群は15.6ヵ月(13.3~17.8)と有意に延長した(ハザード比[HR]:0.75[95%CI:0.61~0.92]、p=0.006)。 また、PFS中央値は、プラセボ群の6.1ヵ月(95%CI:5.1~6.4)に比べ、sugemalimab群は7.6ヵ月(6.4~7.9)であり有意に優れた(HR:0.66[95%CI:0.54~0.81]、p<0.001)。 副次評価項目である盲検下独立中央判定のPFS中央値(PD-L1 CPS 5点以上の患者のHR:0.72[p=0.002]、同10点以上の患者のHR:0.70[p=0.02])、および客観的奏効率(sugemalimab群68.6%vs.プラセボ群52.7%、群間差:15.9%[95%CI:6.6~25.2]、p=0.001)はsugemalimab群で有意に優れ、奏効期間中央値(PD-L1 CPS 5点以上の患者:6.9ヵ月vs.4.6ヵ月、同10点以上の患者:7.2ヵ月vs.5.6ヵ月)もsugemalimab群で良好であった。新たな安全性シグナルは認めない Grade3~5の治療関連有害事象は、sugemalimab群で53.9%、プラセボ群で50.6%に発現した。Grade3~5の治療関連有害事象のうち最も頻度が高かったのは血小板数の減少(sugemalimab群18.3%vs.プラセボ群16.0%)であった。 試験薬の投与中止に至った有害事象は、sugemalimab群17.8%、プラセボ群12.2%に認めた。治療関連の重篤な有害事象はそれぞれ33.2%および25.3%にみられ、最も頻度が高かったのは血小板数の減少(6.2%vs.6.8%)、貧血(3.3%vs.2.1%)、好中球数の減少(2.5%vs.1.7%)であった。死亡の原因となった有害事象は、それぞれ7例(2.9%)および9例(3.8%)に発現した。新たな安全性シグナルは認めなかった。 著者は、「PFSのHRはCPS 5~9点の患者で0.78、10点以上の患者で0.58、OSのHRはそれぞれ0.88および0.65であり、これはCPSが高いほどsugemalimabの有益性が優れるとの予測が可能であることを裏付けている」「これらの知見は、PD-L1 CPSが5点以上の患者の1次治療における新たな治療選択肢としてのsugemalimab+化学療法の併用を支持するものである」としている。

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2型DMの血糖コントロールなど、予測モデルによる治療最適化で改善/Lancet

 英国・エクセター大学のJohn M. Dennis氏らMASTERMIND Consortiumは、2型糖尿病患者に対する最適な血糖降下療法を確立するために、日常臨床データを用いた5つの薬剤クラスのモデルを開発し、妥当性の検証を行った。その結果、モデルによって予測された最適な治療を受けていない2型糖尿病患者と比較して、最適な治療を受けている患者は、12ヵ月間の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が低く、追加的な血糖降下療法を必要とする可能性が低下し、糖尿病合併症のリスクが減少することが示された。研究の成果は、Lancet誌2025年3月1日号で報告された。モデルの予測因子は、日常的に入手可能な9つの要因 研究グループは、2型糖尿病患者の日常臨床で利用可能なデータを用いて、5つの薬剤クラス(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、スルホニル尿素薬、チアゾリジン薬)の血糖降下薬に関して、相対的な血糖降下作用の予測が可能かを明らかにする目的で、モデルを開発しその妥当性を検証した(英国医学研究審議会[MRC]の助成を受けた)。 モデルには、予測因子として、薬剤投与開始時の2型糖尿病患者の日常臨床で入手可能な9つの要因(年齢、糖尿病罹病期間、性別、ベースラインのHbA1c・BMI・推算糸球体濾過量[eGFR]・HDLコレステロール・総コレステロール・ALTの値)を用いた。 モデルの開発と初期検証には、Clinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumのデータベースの観察データを用い、2004年1月1日~2020年10月14日に5つの薬剤クラスのうち1つの投与を開始した年齢18~79歳の2型糖尿病患者を対象とした(データへのアクセス時に英国の人口の19.3%を網羅)。 モデルの検証には、2型糖尿病患者を対象とした3つの無作為化臨床試験の個人レベルのデータを用いた。また、CPRDを用いた検証では、モデルで予測された最適な治療(予測された血糖降下作用が最も高い[すなわち、12ヵ月時のHbA1c値が最も低い]薬剤クラスと定義)と一致する治療を受けた群と、一致しない治療を受けた群で観察された血糖降下作用の差を評価した。血糖値異常の5年リスクも良好 5つの薬剤クラスのモデル開発には、CPRDの10万107件の薬剤投与開始時のデータを用いた。CPRDコホート全体(開発コホート+検証コホート)では、21万2,166件の薬剤投与開始のうち3万2,305件(15.2%)がモデルによる予測で最適な治療法とされた。 モデルによって予測された最適な治療を受けなかった群に比べ、これを受けた群は、観察期間12ヵ月の時点での平均HbA1c値の有益性が、CPRDの地理的検証コホート(薬剤投与開始群2万4,746例、背景因子をマッチさせた群1万2,373例)で5.3mmol/mol(95%信頼区間[CI]:4.9~5.7)、CPRDの時間的検証コホート(9,682例、4,841例)では5.0mmol/mol(4.3~5.6)であった。 予測されたHbA1c値の差は、3つの臨床試験における薬剤クラスのpairwise比較、およびCPRDにおける5つの薬剤クラスのpairwise比較で観察されたHbA1c値の差で良好にキャリブレーション(較正)されていた。 また、CPRDにおける血糖値異常の5年リスクは、モデルによって予測された最適な治療を受けなかった群に比べこれを受けた群で低かった(補正後ハザード比[aHR]:0.62[95%CI:0.59~0.64])。MACE-HF、腎疾患進行、細小血管合併症が改善 血糖値以外の長期のアウトカムについては、全死因死亡の5年リスクには差がなかった(aHR:0.95[95%CI:0.83~1.09])が、主要有害心血管イベントまたは心不全(MACE-HF、心筋梗塞、脳卒中、心不全が主な原因の入院、心血管疾患、心不全が主な原因の死亡)アウトカム(0.85[0.76~0.95])、腎疾患の進行(eGFRの40%超の低下、末期腎不全)(0.71[0.64~0.79])、細小血管合併症(臨床的に有意なアルブミン尿[尿中アルブミン/クレアチニン比>30mg/g]の進行または重度の網膜症のいずれか先に発現した病態に基づく複合)(0.86[0.78~0.96])は、いずれもモデルによって予測された最適な治療を受けた群で優れた。 著者は、「このモデルは、日常臨床で収集されるパラメータのみを使用することから、世界中のほとんどの国で、低コストで容易に臨床への導入が可能と考えられる」「このモデルの導入により、血糖コントロールの改善、追加治療による治療強化前の安定的な血糖降下療法の期間の大幅な延長、および糖尿病合併症の減少につながる可能性がある」としている。

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成人CAR-T療法を最大限生かすために【Oncologyインタビュー】第47回

出演:京都大学医学部付属病院 血液内科 北脇 年雄氏CAR-T療法は今や造血器腫瘍治療に欠かせないものとなった。その一方、複雑な治療工程や有害事象の管理など紹介元施設にとって押さえておくべき情報は多い。成人CAR-T療法の治療準備、有害事象管理、紹介・逆紹介のポイントなどを京都大学附属病院の北脇年雄氏に解説いただいた。参考CAR-T細胞療法のトリセツ(中外医学社)血液内科治療のトリセツ(中外医学社)

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治療抵抗性強迫症に対するSSRI+ブレクスピプラゾールの有用性

 強迫症(OCD)は、重大な機能障害を伴う慢性疾患である。OCDの治療では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)により、一部しか症状が改善しないことも少なくない。このような場合、一般的に確立された治療法として、抗精神病薬併用によるSSRI増強療法が多くの患者で行われている。イタリア・ミラノ大学のLuca Giacovelli氏らは、治療抵抗性OCD患者におけるSSRIとブレクスピプラゾール併用療法の有効性および忍容性を評価するため、予備的レトロスペクティブ観察研究を実施した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2025年2月6日号の報告。 対象は、治療抵抗性OCDと診断された患者10例。12週間のブレクスピプラゾール併用療法を行った。ブレクスピプラゾールの用量は、1mg/日から開始し、臨床判断に基づき調整した。治療反応の評価は、ベースラインから12週目までのYale-Brown強迫尺度(Y-BOCS)合計スコアの変化により行った。有害事象は、システマティックに記録した。 主な結果は以下のとおり。・12週間のブレクスピプラゾールにより、Y-BOCS合計スコアの有意な改善が認められた。・ベースライン時と比較した12週間後のY-BOCS合計スコアが25%以上低下した患者は7例(70%)、35%以上低下した患者は5例(50%)であった。・鎮静および体重増加などの軽度の副作用は、2例(20%)で報告された。 著者らは「治療抵抗性OCDに対するSSRI+ブレクスピプラゾール併用療法の有効性および忍容性プロファイルが確認された。治療抵抗性OCDのマネジメントにおいて、ブレクスピプラゾールは有望な併用薬である可能性が示唆された」と結論付けている。

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GLP-1受容体作動薬、自殺リスクと関連せず/BMJ

 英国の大規模コホート研究において、2型糖尿病患者のGLP-1受容体作動薬の使用は、DPP-4阻害薬またはSGLT-2阻害薬の使用と比較し、自殺傾向のリスク増加とは関連していないことが示された。カナダ・Lady Davis InstituteのSamantha B. Shapiro氏らが報告した。GLP-1受容体作動薬と自殺傾向との関連性が懸念されており、これを調査する観察研究がいくつか実施されているものの、結論には至っていなかった。BMJ誌2025年2月26日号掲載の報告。2型糖尿病患者の使用者について、DPP4阻害薬、SGLT-2阻害薬と比較 研究グループは、英国の一般診療所2,000施設以上、患者6,000万例を網羅する大規模プライマリケアデータベース「Clinical Practice Research Datalink(CPRD)AurumおよびGOLD」のデータを用いた。このデータベースは、英国の国民保健サービス(NHS)の入院記録「Hospital Episode Statistics Admitted Patient Care」および国家統計局の死亡登録データベース「Office for National Statistics(ONS)Death Registration」と連携している。 対象は2型糖尿病患者で、次の2つのコホートを特定した。(1)2007年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬の服用を開始し継続した患者(コホート1)、(2)2013年1月1日~2020年12月31日にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬の服用を開始し継続した患者(コホート2)。いずれも、2021年3月29日まで追跡した。 主要アウトカムは自殺傾向(自殺念慮、自傷行為および自殺の複合と定義)とし、副次アウトカムはこれらの各イベントとした。傾向スコアによる層別化および重み付けCox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出し、治療を受けた患者における平均処置効果を推定した。GLP-1受容体作動薬は、自殺念慮、自傷行為、自殺のリスク増加と関連なし コホート1には、GLP-1受容体作動薬使用者3万6,082例(追跡期間中央値1.3年)とDPP-4阻害薬使用者23万4,028例(追跡期間中央値1.7年)が含まれた。粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はDPP-4阻害薬と比較して、自殺傾向の発生率増加と関連していた(粗発生率1,000人年当たり3.9 vs.1.8、HR:2.08、95%CI:1.83~2.36)。しかし、交絡因子補正後は、関連は認められなかった(HR:1.02、95%CI:0.85~1.23)。 コホート2には、GLP-1受容体作動薬使用者3万2,336例(追跡期間中央値1.2年)とSGLT-2阻害薬使用者9万6,212例(追跡期間中央値1.2年)が含まれた。同様に、粗解析では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT-2阻害薬と比較して、自殺傾向のリスクが高かったが(粗発生率1,000人年当たり4.3 vs.2.7、HR:1.60、95%CI:1.37~1.87)、交絡因子補正後は、関連は認められなかった(HR:0.91、95%CI:0.73~1.12)。 両コホートとも、自殺念慮、自傷行為、自殺を個別に解析した場合も、同様の結果であった。

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硬膜外ステロイド注射は慢性腰痛に効果あり?

 特定のタイプの慢性腰痛患者において、痛みや障害の軽減を目的とした硬膜外ステロイド注射(epidural steroid injection;ESI)の効果は限定的であることが、米国神経学会(AAN)が発表した新たなシステマティックレビューにより明らかになった。このレビュー結果は、「Neurology」に2月12日掲載された。 ESIは、脊柱の硬膜外腔と呼ばれる部分にステロイド薬や局所麻酔薬を注入して炎症を抑え、痛みを軽減する治療法である。このレビューの筆頭著者である米ロマリンダ大学医学部のCarmel Armon氏は、「慢性腰痛は一般的だが、動作や睡眠、日常的な活動を困難にして、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし得る」とAANのニュースリリースで述べている。 今回のシステマティックレビューでは、2005年1月から2021年1月の間に発表された90件のESIに関するランダム化比較試験を対象に、神経根症および脊柱管狭窄症に対するESIの痛み軽減効果に焦点を当てて分析が行われた。神経根症は、主に頸椎や腰椎の変性により神経根が圧迫されることで、脊柱管狭窄症は脊柱管(背骨の中の神経の通り道)が狭くなって脊髄や神経が圧迫されることで生じ、いずれも痛みやしびれなどが生じる。分析結果は、研究ごとに有効性の指標が大きく異なるため、短期的(治療後3カ月まで)および長期的(治療後6カ月以上)に見て、ESIを受けた患者(ESI群)において治療により良好な転帰を達成した割合がESIを受けていない対照群と比べてどの程度多いか(success rate difference;SRD)に基づき報告された。 その結果、頸部または腰部神経根症の場合、ESI群では対照群と比較して短期的に痛みが軽減した人の割合が24%(SRD −24.0%、95%信頼区間−34.9〜−12.6)、障害が軽減した人の割合が16%(同−16.0%、−26.6〜−5)多いことが示された。また長期的に見ても、ESI群では障害が軽減した人の割合が対照群より約11%多い可能性が示された(同−11.1%、−25.3〜3.6)。ただし、対象研究の多くは腰部神経根症の人が中心であり、頸部の疾患に対する治療については十分な研究がなかった。そのため、頸部の神経根症に対するESIの効果は不明であるという。 一方、脊柱管狭窄症の場合、ESI群では対照群と比較して、短期的にも長期的にも障害が軽減した人の割合が、それぞれ26%(SRD −26.2%、95%信頼区間−52.4〜3.6)と12%(同−11.8%、−26.9〜3.8)多い可能性が示唆されたが、統計学的な有意性は確認されなかった。また、短期的に痛みを軽減する効果については、統計学的に有意な差は確認されず(同−3.5%、−12.6〜5.6)、長期的に痛みを軽減する効果については、エビデンスが十分ではなく不明とされた。全ての研究が腰部脊柱管狭窄症の人を対象にしていたため、頸部脊柱管狭窄症に対するESIの効果は不明であった。 共著者の1人である、米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのPushpa Narayanaswami氏は、「われわれの研究は、特定の慢性腰痛に対するESIの短期的な効果は限定的であることを裏付けている」とニュースリリースで述べている。同氏はまた、「治療を繰り返すことの有効性や、治療が日常生活や仕事復帰に及ぼす影響について検討した研究は見当たらなかった。今後の研究では、こうしたギャップを解消する必要がある」と付言している。

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クランベリーって意味あるの? ─再発予防に使える薬剤、その他について─【とことん極める!腎盂腎炎】第13回

クランベリーって意味あるの? ─再発予防に使える薬剤、その他について─Teaching point(1)クランベリーが尿路感染症を予防するという研究結果はたしかに存在するが、確固たるものではない(2)本人の嗜好と経済的事情が許すならクランベリージュースを飲用してもらってもよい(3)クランベリージュース以外の尿路感染症の予防方法を知っておく《症例》28歳女性、独身、百貨店の販売員。これまでに何度も排尿時痛や頻尿などの症状で近医受診歴があり、「膀胱炎」と診断され、その都度、経口抗菌薬の処方を受け治療されている。昼前から排尿時痛があり、「いつもと同じ」膀胱炎だろうと思って経過をみていたところ、夕方にかけて倦怠感とともに37.5℃の発熱を認めるようになったため当院の時間外外来を受診した。来院時38.0℃の発熱あり。左肋骨脊柱角に圧痛(CVA叩打痛)を認める。血液検査:WBC 12,000/μL(Neu 85%)、CRP 3.5mg/dLと炎症反応上昇あり。尿検査:WBC(+++)、亜硝酸塩(+)。一般的身体所見、血算・生化学検査では、それ以外の特記所見に乏しい。1.クランベリーとは?クランベリーとはツツジ科スノキ属ツルコケモモ亜属(Oxycoccos)に属する常緑低木の総称であり、Vaccinium oxycoccus(ツルコケモモ)、V. macrocarpon(オオミツルコケモモ)、V. microcarpum(ヒメツルコケモモ)、V. erythrocarpum(アクシバ)の4種類がある。北米原産三大フルーツの1つである酸味の強い果実は、菓子やジャム、そしてジュースによく加工され食用される。古くから尿路感染症予防の民間療法として使用されており、1920年代にはその効果は尿路の酸性化による結果と考えられていたが、クランベリーに含まれるA型プロアントシアニジンという物質がどうやら尿路上皮への細菌の付着を阻害しているらしいということが1980年代に明らかにされた1)。またクランベリーに含まれるD-マンノースもまた、細菌と結合することで尿路上皮への菌の付着を抑制することが知られている。2.クランベリーは尿路感染を予防するのか?クランベリーが尿路感染やその再発を予防するのかというテーマについては、これまで数多くの研究がなされてきた。まず、有効成分の1つである先述のD-マンノースを内服することが再発性尿路感染症の発生率が低下させると、ランダム化比較試験で証明されている2)。クランベリーそのものに関しては、プラセボに比して予防に効果的という結果が得られた研究もあれば、影響を与えないとする研究結果もあり、議論が分かれているところである。系統的レビューによるメタアナリシスでも報告によって異なった結論が得られており、たとえば2012年に合計1,616例の研究結果をまとめたメタアナリシスではクランベリー製品は有意に尿路感染の再発を減らすと報告している3)。半年間の飲用によるリスク比0.6、治療必要数(NNT)は11と推算されている。一方で、同じ2012年にアップデートされたコクランレビューでは4,473例が対象になっているが、プラセボや無治療に比してクランベリー製品は尿路感染症を減らすことはしないとし、尿路感染症予防としてのクランベリージュース飲用は推奨しないと結論づけられた4)。しかし2023年にアップデートされたバージョンでは、50件の研究から合計8,857例がレビューの対象となり、メタ解析の結果、クランベリー製品の摂取によって尿路感染リスクが有意に低減する(相対リスク:0.70、95%信頼区間:0.58~0.84)ことが明らかにされた。とくに、再発性尿路感染症の女性、小児、尿路カテーテル留置状態など尿路感染リスクを有する患者において低減するとされ、逆に、施設入所の高齢者、妊婦などでは有意差は得られなかった5)。わが国で行われたクランベリージュースもしくはプラセボ飲料125mLを毎日眠前に24週間内服して比較した多施設共同・ランダム化二重盲検試験の結果では、50歳以上の集団を対象としたサブ解析では有意な再発抑制効果がクランベリージュースに認められた(ただし、若年層の組み入れが少なかったためか全体解析では有意差が出なかった)6)。尿路感染症の再発歴がある患者が比較的多く含まれたことも有意差がついた要因の1つと考えられ、そうしたことを踏まえると、再発リスクが高い集団においてはクランベリージュースの感染予防の効果がある可能性があると思われる。米国・FDAも、尿路感染既往がある女性が摂取した際に感染症の再発リスクが低下する可能性があるとクランベリーサプリの製品ラベルへ掲載することを2020年に許可しており、日本の厚生労働省公式の情報発信サイトにもそのことが掲載されている7)。再発性の膀胱炎の最終手段として抗菌薬投与が選択されることもあるが、耐性菌のリスクの観点からも導入しやすい日常生活への指導からしっかりと介入していくことは大切である。生活へのアプローチは一人ひとりの事情もあるので、本人の生活について丁寧に聴取し生活に合わせた指導内容を一緒に考えていくことは、プライマリ・ケア医の重要な役割である。3.クランベリー摂取の副作用大量に摂取した場合、とくに低年齢児では嘔気や下痢を招く可能性がある。また、シュウ酸結石を生じるリスクになるともいわれている。しかし一般的には安全と考えられており7)、日本の研究でもクランベリー飲用の有害事象としては107人中1人のみ、初回飲用後の強いやけど感を自覚しただけであった6)。先に紹介したレビューでも、最頻の副作用は胃もたれなどの消化器症状であったが、対照群に比較して有意に増加はしなかった5)。クランベリー摂取により問題となる副作用はあまりないと思われ、そうすると、クランベリーを尿路感染再発予防目的で飲用するべきかどうかは、本人の嗜好や経済的余裕などによって決まると思われる。4.クランベリー以外での再発予防とくに女性では尿路感染症を繰り返す症例があるが、そうした再発例に対しては、飲水励行の推奨や排便後の清拭方法の指導(肛門部に付着する細菌の尿路への移行を防ぐために尿道口から肛門に向けて拭く)に代表される行動療法が推奨される(第11回参照)。それでも無効な場合は予防的抗菌薬投与の適応になりえ、数ヵ月から年単位で継続する方法と、性交渉後にのみ服薬する方法が一般的である。性交渉後に急性単純性膀胱炎を起こすことはよく知られており、抗菌薬の連日投与でなくても、セファレキシン、ST合剤、フルオロキノロンなどを性交渉後の単回内服するだけでも尿路感染症の予防に有効であることが示されている8)。再発性尿路感染症を呈する高齢者においても、予防的抗菌薬の内服が尿路感染症の発症予防に効果があるとされている9)。また、閉経後の女性では局所エストロゲン療法が尿路感染の再発予防に有効であるといわれている10)。《症例(その後)》腎盂腎炎と診断し、血液・尿培養採取のうえで、点滴抗菌薬加療を開始して入院とした。翌日には解熱、入院5日後に血液検査での炎症反応のpeak outと血液培養からの菌発育がないことを確認でき、尿培養から感受性良好な大腸菌(Escherichia coli)が同定されたため、内服抗菌薬にスイッチして退院とする方針とした。これまでに何度も膀胱炎になっているとのことで、再発性の尿路感染症と考えてリスク因子がないか確認したところ、販売員をしているため日中の尿回数を減らすべく、出勤日は飲水量を減らすように心がけているということであった。尿量・尿回数の減少が尿路感染症のリスクになるため飲水励行が勧められること、度重なる抗菌薬加療が将来的な耐性菌の出現を招くことによる弊害、会陰部を清潔に保つことが重要であることの説明に加え、排便後の清拭方法の一般的な指導を退院時に行った。クランベリージュースは話題には出してみたものの、ベリー系果実はあまりお好きではないとのだったので強くお勧めはしなかった。それでもなお尿路感染を繰り返すようであれば、さらなる予防策を講じる必要があると判断して、3ヵ月後に確認したところ、その後、膀胱炎症状はなく経過しているということであり終診とした。1)Howell AB, et al. Phytochemistry. 2005;66:2281-2291.2)Kranjcec B, et al. World J Urol. 2014;32:79-84.3)Wang CH, et al. Arch Intern Med. 2012;172:988-996.4)Jepson RG, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;10:CD001321.5)Williams G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2023;4:CD001321.6)Takahashi S, et al. J Infect Chemother. 2013;19:112-117.7)厚生労働省eJIM(イージム:「統合医療」情報発信サイト):「クランベリー」8)日本排尿機能学会, 日本泌尿器科学会 編. 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]. リッチヒルメディカル;2019.9)Ahmed H, et al. Age Ageing. 2019;48:228-234.10)Chen YY, et al. Int Urogynecol J. 2021;32:17-25.

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ダイエットの繰り返しは1型糖尿病患者の腎臓にも悪影響

 減量とリバウンドを繰り返すことは、1型糖尿病患者の腎臓にも悪影響を及ぼすことが明らかになった。ボルドー大学病院(フランス)のMarion Camoin氏らの研究によるもので、詳細は「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に2月4日掲載された。 減量とその後のリバウンドを繰り返す“ヨーヨーダイエット”と呼ばれるような体重の増減は、2型糖尿病患者や一般人口においてよく見られる。Camoin氏らの論文の研究背景には、一般人口におけるヨーヨーダイエットをしたことのある人の割合は、男性は35%、女性では55%に上ると記されている。一方、1型糖尿病患者は従来、やせた人に多い病気であって肥満やダイエットはあまり関係ないと考えられていた。しかし著者らは、1型糖尿病患者の間でも肥満が増えているとしている。 一般人口においては、体重の増減を繰り返すことが慢性腎臓病(CKD)リスクの上昇と関連していることが知られている。しかし、1型糖尿病患者ではその関連の有無が明らかにされていないことから著者らは、1型糖尿病患者対象の大規模臨床研究であるDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)と、DCCT終了後の追跡観察研究であるEDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)のデータを用いた検討を行った。 DCCT/EDICの参加者1,432人を、DCCTの追跡期間(6±2年)に生じていた体重変動の激しさの指標であるVIM(variability independent of the mean)で分類し、EDICを含めた追跡期間(21±4年)に生じていた、6種類のCKD関連指標の変化との関係を検討。その結果、他のCKDリスク因子や腎保護薬の使用の影響を統計学的に調整した後、VIMが高く体重変動が激しかった群で、CKD関連指標がより悪化していた。具体的には、高VIM群は、eGFRがベースラインから40%低下するリスクが25%高く(ハザード比〔HR〕1.25〔95%信頼区間1.09~1.41〕)、血清クレアチニンの倍化(HR1.34〔同1.13~1.57〕)、CKDステージ3への進行(HR1.36〔1.12~1.63〕)などのリスクも有意に高かった。 Camoin氏によると、1型糖尿病患者の体重変動の大きさとCKDリスクとの関連を明らかにした研究は、本研究が初めてだという。得られた結果に基づき同氏は、「1型糖尿病患者の体重変動は、既知のCKDリスク因子とは独立して腎臓に悪影響を及ぼすようだ」と述べている。 1型糖尿病患者の減量とリバウンドの繰り返しが、なぜ腎臓に悪影響を及ぼすのかというメカニズムの詳細は、まだ明らかになっていない。一つの可能性として研究者らは、血糖管理に用いるインスリンが体重変動を大きくすることがあり、そのことが腎機能の悪化に関係しているのではないかと指摘している。また、ヨーヨーダイエットは心臓に負担をかけ、それが腎臓や血管のダメージにつながるのではないかとする研究者もいる。一方で著者らは、「1型糖尿病患者の減量そのものは、体重の安定を通じて健康状態に良い影響を与える可能性がある」とし、「体重を長期間にわたって維持することに重点を置くべきだ」と総括している。

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生理食塩水での口腔ケアは、ICU死亡率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第5回

生理食塩水での口腔ケアは、ICU死亡率を低減集中治療室(ICU)にて機械的人工呼吸管理を行っている患者に、口腔ケアで酸化剤を使用することは人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を抑え、生理食塩水の使用ではICU死亡率を低下させる効果が示された。Qianqian He氏らの研究で、Australian Critical Care誌2025年1月号に掲載された。集中治療室患者における人工呼吸器関連の転帰と死亡率に対するさまざまなマウスウォッシュの効果:ネットワークメタアナリシス研究グループは、ICUにおける機械的人工呼吸管理患者に対する異なるマウスウォッシュの効果と安全性を、VAPの発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、および大腸菌定着率を指標に比較評価した。PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Libraryを検索し、生理食塩水、クロルヘキシジン(CHX)、重炭酸ナトリウム、酸化剤、ハーブ抽出物、ポビドンヨード(PI)を比較したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。14件のランダム化比較試験(RCT)に登録された1,644人のICU患者(平均年齢57.86歳、男性58.73%)が対象となった。評価項目は、VAP発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、大腸菌の定着率。統計手法は、Rソフトウェアを用いたネットワークメタアナリシスで、異質性はI2検定で評価され、優越率は累積順位曲線下面積(SUCRA)で推定された。主な結果は以下のとおり。VAP発生率:酸化剤はVAP発生率を低減する傾向を示した(リスク比[RR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.05~1.10)。ICU死亡率:生理食塩水はICU死亡率を有意に低下させた(RR:0.18、95%CI:0.04~0.88)。CHXやPIはICU死亡率に有意な影響を与えなかった。人工呼吸器装着期間:CHXおよびPIは人工呼吸器装着期間に有意な影響を与えなかった。大腸菌定着率:すべての介入群で統計的有意差は観察されなかった。クロルヘキシジンなどの抗菌性マウスウォッシュは、ICU患者に対して潜在的なリスクを伴う可能性がある。一方で、酸化剤は比較的安全であると考えられる。また、生理食塩水はICU死亡率を有意に低下させる有望な選択肢として示唆された。今後は、より大規模で高品質なRCTが必要である。この論文は、ICU患者における異なるマウスウォッシュの効果を比較検討したネットワークメタアナリシスです。特に、人工呼吸器関連肺炎の発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、大腸菌定着率に焦点を当てています。まず、最も注目すべきは生理食塩水に関する結果です。これまで生理食塩水は「標準的で無害な選択肢」にすぎず、口腔内に殺菌する成分が入っていたほうがよいという考えが強かったと思います。しかし、今回の研究では、生理食塩水の使用はICU死亡率を有意に低下させることが示されました。これは、抗菌薬を使用しないことで副作用を回避しつつ、安全に口腔ケアを行える点で重要な知見かと思います。論文での考察としては、生理食塩水は、抗菌性マウスウォッシュと比較すると口腔内の自然な細菌叢のバランスを崩さず、維持に貢献すると考えられるとされています。一方で、よく使用されるクロルヘキシジンやポビドンヨードについては、注意が必要です。日本国内では、クロルヘキシジンを海外のように高い濃度で口腔内へ使用することはできません。そのため、主流になっていくことはないかと思いますが、クロルヘキシジンは心臓外科手術後の患者には効果的である可能性がある一方、非心臓外科患者では死亡リスクが増加する可能性が示されています。また、味覚障害や歯の変色といった副作用があることも臨床現場では無視できません。次に、過酸化水素いわゆるオキシドールなどの酸化剤の効果も見逃せません。酸化剤は人工呼吸器関連肺炎の発生率を抑制する可能性があることが示唆されており、特にクロルヘキシジンの副作用を軽減する効果も期待されています。これにより、患者の快適性や口腔ケアの継続性が向上する可能性があります。しかし、臨床に看護師主導で酸化剤のマウスウォッシュを導入するのはハードルが高い印象です。これらをまとめると、すぐに導入でき、また日頃からも行われている、生理食塩水での口腔ケアは「意外とよい」と言えるでしょう。論文はこちらHe Q, et al. Aust Crit Care. 2025;38(1):101095.

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風邪予防にビタミンDは効果なし?~メタ解析

 ビタミンD補充による急性呼吸器感染症(ARI)予防効果については、2021年に37件のランダム化比較試験(RCT)のメタ解析で有意な予防効果(オッズ比[OR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.86~0.99)が示されているが、それ以降に1件の大規模試験(1万5,804人)を含む6件の適格なRCTが完了している。そこで、英国・Queen Mary University of LondonのDavid A. Jolliffe氏らがRCTデータを更新し検討した結果、ビタミンD補充によるARI予防効果の点推定値は以前とほぼ同様であったが、統計学的に有意な予防効果がないことが示された。The Lancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版2025年2月21日号に掲載。 本研究では、ランダム効果モデルを用いて、ARI予防のためのビタミンDに関するRCTのデータを更新し、系統的レビューとメタ解析を行った。さらに、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD濃度、投与レジメン、年齢によってビタミンDの効果が異なるかどうかを調べるため、サブグループ解析を行った。2人の研究者が、2020年5月1日(前回のメタ解析の検索終了日)以降、2024年4月30日までに発表された研究を、MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、ClinicalTrials.govを用いて検索した。なお、言語は制限しなかった。著者から、ベースラインの25-ヒドロキシビタミンD濃度と年齢で層別化した集計データを入手した。 主な結果は以下のとおり。・新たに同定した6件のRCT(1万9,337人)のうち、3件の新規RCTにおける1万6,085人(83.2%)のデータを入手し、前回のメタ解析で同定された43件のRCTにおける4万8,488人のデータと合わせた。・ビタミンDとプラセボとの比較で、介入がARIリスクに統計学的に有意な影響を及ぼさなかった(OR:0.94、95%CI:0.88~1.00、p=0.057、40試験、6万1,589人、I2=26.4%)。・事前に指定されたサブグループ解析において、年齢、ベースラインにおけるビタミンDの状態、投与頻度、投与量による効果修飾のエビデンスは認められなかった。・ビタミンDは、重篤な有害事象を1つ以上経験した参加者の割合に影響を及ぼさなかった(OR:0.96、95%CI:0.90~1.04、38試験、I2=0.0%)。・Funnel plotは左側非対称性を示した(p=0.0020、Eggerの検定)。

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摂食障害の死亡率は10年間でどう変化しているか

 摂食障害患者では、死亡率の上昇が報告されている。しかし、過去10年間のメタ解析では、すべての摂取障害における死亡率の最新かつ包括的な評価は行われておらず、潜在的なリスク因子を調査した研究もない。オーストラリア・メルボルン大学のIsabel Krug氏らは、摂食障害のタイプ別死亡率を明らかにするため、2010〜24年の最新研究に基づくシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Clinical Psychology Review誌2025年3月号の報告。 2010〜24年10月29日に公表された研究を各種データベース(PsycINFO、MEDLINE、Embase、Web of Science)よりシステマティックに検索した。対象研究は、摂食障害と診断された患者における標準化死亡比(SMR)を検討した研究とした。摂食障害の診断には、正式な診断と自己報告によるものを含めた。ランダム効果メタ解析を実施し、研究全体の推定値をプールした。異質性の予測因子を調査するため、メタ解析を行った。 主な内容は以下のとおり。・エフェクトサイズのSMRのメタ解析では、摂食障害患者では死亡リスクが上昇していることが明らかとなった(加重SMR:3.39、95%信頼区間[CI]:2.90〜3.95、p<0.001、I2=95.1%、Q[df=68]:1492.39、p<0.001、k=74)。・摂食障害患者の死亡リスクは、サブタイプとは無関係であった。・SMRが最も高かったサブタイプは、神経性やせ症であり、次いで特定不能な摂食障害、神経性過食症、過食性障害の順であった。 【神経性やせ症】SMR:5.21、95%CI:4.10〜6.62、k=30 【特定不能な摂食障害】SMR:2.51、95%CI:1.84〜3.44、k=8 【神経性過食症】SMR:2.20、95%CI:1.77〜2.73、k=18 【過食性障害】SMR:1.46、95%CI:1.04〜2.03、k=3 著者らは「摂食障害患者は死亡リスクが著しく高く、とくに神経性やせ症患者で顕著だった。摂食障害の死亡率に影響する主要な因子を特定し、より適切な予防可能な介入に導くためにも、本研究結果は重要である」とまとめている。

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虚血性脳卒中、救急車内でのnerinetide投与は有効?/Lancet

 虚血性脳卒中が疑われるすべての患者では、入院前の救急車内でのプラセボ投与と比較して神経保護薬nerinetideは、神経学的機能アウトカムを改善しないものの、症状発現から3時間以内に再灌流療法が選択された急性期虚血性脳卒中確定例では有効である可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のJim Christenson氏らが実施した「FRONTIER試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2025年2月15日号で報告された。カナダ2州の無作為化プラセボ対照第II相試験 FRONTIER試験は、急性期脳卒中が疑われる徴候や症状を呈するすべての患者、および虚血性脳卒中が確認された患者のアウトカムを改善するために、血栓溶解療法や血管内血栓除去術による通常の治療に加えて、入院前の環境でnerinetideを投与する早期治療が有効か否かの検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2015年3月~2023年3月に、カナダのオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州の7施設で患者を登録した(Brain CanadaとNoNOの助成を受けた)。 年齢40~95歳、重症の脳卒中が疑われ、発症から3時間以内に試験薬の投与が可能で、Los Angeles Motor Scale(LAMS、0[症状なし]~5[最も重度の症状]点)の重症度スコアが2~5点の患者を対象とした。被験者を、nerinetide(2.6mg/kg)を静脈内投与する群、またはプラセボ群に無作為に割り付けた。救急隊員、病院の医療提供者、アウトカムの評価者には割り付け情報は知らされなかった。 主要アウトカムは、90日時点における修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)に基づくレスポンダー(mRSが0~2点と定義。LAMSが2~3点でmRSが0~1点の80歳未満の患者を除く)とした。虚血性脳卒中患者では良好な傾向 532例を登録し、nerinetide群に265例、プラセボ群に267例を割り付けた。脳卒中が疑われた修正ITT(mITT)集団(nerinetide群254例、プラセボ群253例)には、急性期虚血性脳卒中321例(63%)、頭蓋内出血93例(18%)、一過性脳虚血発作44例(9%)、脳卒中類似疾患49例(10%)が含まれた。 症状発現から治療開始までの時間中央値は64分(四分位範囲[IQR]:47~100)であった。また、プラセボ群に比べnerinetide群は脳卒中の重症度が高かった(mITT集団におけるNIHSSスコア中央値:nerinetide群12点[IQR:5~19]vs.プラセボ群10点[4~18]、急性期虚血性脳卒中のサブグループのNIHSSスコア中央値:14点[7~19]vs.10点[4~18])。 主要アウトカムである90日後の事前に規定された二分法(sliding dichotomy)による良好な機能アウトカムは、nerinetide群254例中145例(57%)、プラセボ群253例中147例(58%)で達成し、両群間に有意な差を認めなかった(補正後オッズ比[OR]:1.05[95%信頼区間[CI]:0.73~1.51]、補正後リスク比:1.04[95%CI:0.85~1.25])。 虚血性脳卒中の確定例302例の解析では、病院到着時NHISSスコアと年齢で補正した機能アウトカムは、nerinetide群で良好な傾向がみられた(OR:1.53[95%CI:0.93~2.52]、リスク比:1.21[95%CI:0.97~1.52])。また、再灌流療法(血栓溶解療法または血管内血栓除去療法、あるいはこれら両方)を受けた患者では、機能アウトカムに関して改善が得られた(補正後OR:1.84[95%CI:1.03~3.28]、補正後リスク比:1.29[95%CI:1.01~1.65])ため、今後、検討を進める必要がある。安全性に関する懸念はなかった 出血性脳卒中および再灌流が得られなかった急性期虚血性脳卒中患者では、nerinetideによる明確な有益性は確認されなかった。 少なくとも1つの重篤な治療関連有害事象を発現した患者は、nerinetide群が93例(35%)、プラセボ群は97例(36%)であった。重篤な神経系の疾患はそれぞれ30例(11%)および40例(15%)に、重篤なせん妄は93例(35%)および97例(36%)に認めた。nerinetide群で死亡率の上昇や脳卒中の悪化は確認されなかった。 著者は、「本試験は、院外の救急車の中で救急隊員が患者を登録し、試験薬を投与することの実行可能性を示した」「この方法は、症状発現から登録までの間隔が短いという利点があったが、不均一な患者集団を登録するという欠点があり、多くの患者が急性期虚血性脳卒中以外の診断を受けたため、試験全体の統計学的検出力が低下した」「nerinetideは、急性期虚血性脳卒中患者において再灌流療法の補助として臨床的有益性をもたらす可能性がある」「神経保護薬は、動脈再疎通に先立ち、虚血の続く早い時期に投与するととくに有効であるという仮説は、今後の試験で検証する必要がある」としている。

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術前補助療法+ニボルマブが乳がん患者の病理学的完全奏効を改善

 乳がんのタイプとして最も多いのは、エストロゲン受容体陽性(ER+)/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HER2−)乳がんであり、乳がん全体の70%を占める。このタイプの乳がん患者では、補助化学療法に対する病理学的完全奏効(pCR)の達成率が低いことが知られている。しかし、術前補助療法に免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(商品名オプジーボ)を追加することで、ER+/HER2−乳がん患者のpCR達成率が向上したとする第3相臨床試験の結果が発表された。オプジーボの製造元であるブリストル・マイヤーズ スクイブ社の資金提供を受けて米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのHeather McArthur氏らが実施したこの臨床試験の詳細は、「Nature Medicine」に1月21日掲載された。 多くのがん細胞は、PD-L1という分子を発現してT細胞表面のPD-1と結合することで、T細胞の攻撃から逃れることが知られている。抗PD-1抗体であるニボルマブは、T細胞のPD-1に結合してがん細胞との相互作用を阻害することで、免疫にかけられたブレーキを解除し、T細胞の免疫機能を活性化させる。 この試験では、新たに乳がんと診断された、腫瘍グレードが2または3でER発現率が1〜10%のER+/HER2−の原発性乳がん患者521人を対象に、術前補助療法にニボルマブを追加することで、患者のpCR達成率が向上するかどうかが評価された。対象者は、アントラサイクリン系抗がん薬とタキサン系抗がん薬をベースにした術前補助療法にニボルマブを追加する群(ニボルマブ群)とプラセボを追加する群(プラセボ群)にランダムに割り付けられた。 ニボルマブ群では、最初の12週間は、ニボルマブ360mgを3週間ごとに、タキサン系抗がん薬のパクリタキセルを毎週投与した。その後、ニボルマブ(360mgを3週間ごと、または240mgを2週間ごと)を、アントラサイクリン系抗がん薬とシクロホスファミドと併用した。プラセボ群では、同様のプロトコルでニボルマブの代わりにプラセボを投与した。最終的に、有効性に関してはニボルマブ群257人とプラセボ群253人を対象に、安全性に関してはそれぞれ262人と255人を対象に評価された。 その結果、pCR達成率は、ニボルマブ群で24.5%であったのに対しプラセボ群では13.8%にとどまっており、前者のpCR達成率の方が有意に高いことが明らかになった(P=0.0021)。特に、PD-L1の発現率が1%以上と判定された患者でのpCR達成率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%であり、ニボルマブ群で大きな効果が得られた。安全性に関しては、これまでに報告されていない有害事象は認められなかったが、ニボルマブ群では5人が死亡し、うち2人の死因はニボルマブの毒性であることが確認された。プラセボ群では死亡例は認められなかった。 McArthur氏は、「これらの結果が治療を決定する際の情報として役立ち、それにより乳がん患者の転帰が改善し、最終的には治癒率の向上につながることを期待している」と述べている。

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高カロリーの朝食はCVD患者のうつ病リスクを低減する

 心血管疾患(CVD)を持つ成人は、朝食を高カロリーにすることでうつ病の発症リスクを低下させられる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。ハルビン医科大学(中国)のHongquan Xie氏らによるこの研究結果は、「BMC Psychiatry」に1月31日掲載された。 研究グループによると、CVDを持つ人は一般集団と比べてうつ病を発症しやすいことに関するエビデンスは増えつつあるという。また、食事を摂取するタイミングは概日リズムに大きく影響し、概日リズムの乱れはうつ病の一因となる可能性も指摘されている。しかしながら、カロリーや主要栄養素の摂取タイミングとCVDを持つ人のうつ病発症との関連については明らかになっていない。 本研究では、2003年から2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した、CVDを持つ米国の成人3,490人を対象に、食事由来のカロリーまたは主要栄養素の摂取とうつ病発症との関連が検討された。3,490人中554人がうつ病の診断を受けていた。対象者は、24時間思い出し法を通じて測定された3食の摂取カロリーと主要栄養素のレベルに応じて、レベルが最も低い群(Q1群)から最も高い群(Q5群)までの5群に分類された。 ロジスティック回帰分析により、年齢や性別、教育レベル、喫煙状況などの交絡因子を調整して解析した結果、朝食の摂取カロリーのQ5群(565.1kcal以上)ではQ1群(197.0kcal未満)と比較してうつ病のリスクが低く、オッズ比(OR)は0.71(95%信頼区間0.51〜0.91)と推定された。これに対し、昼食や夕食の摂取カロリーについてのQ1群とQ5群の比較では、うつ病リスクについて両群で有意な差は認められなかった。さらに、夕食や昼食での摂取カロリーの5%を朝食に移すことで、うつ病リスクが5%低下することも示された(昼食から朝食:OR 0.95、95%信頼区間0.93〜0.97、夕食から朝食:同0.95、0.93〜0.96)。一方、タンパク質や炭水化物などの主要栄養素の摂取とうつ病リスクとの間には、統計学的に有意な関連は認められなかった。 こうした結果を受けて研究グループは、「本研究結果から言えることは、CVDを持つ人では、何を食べるかと同じくらい、いつ食べるかが重要だということだ。うつ病のリスクを低下させるには、食事によるカロリー摂取のタイミングを、体内時計のリズムに合わせて調整する必要がある」と述べている。

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急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A

2025年4月7日より急性呼吸器感染症が5類感染症に位置付けられます急性呼吸器感染症って何? インフルエンザや新型コロナウイルス感染症とは違う?⚫ 急性呼吸器感染症とは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)や下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)など、細菌やウイルスによる症候群の総称。⚫ インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなども含まれる。なぜ、急性呼吸器感染症が5類感染症に位置付けられるのか?⚫ 急性呼吸器感染症は飛沫感染などにより周囲の人にうつしやすい。新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえ、流行しやすい急性呼吸器感染症の流行の動向を把握すること、未知の呼吸器感染症が発生し増加し始めた場合にすぐに探知することができるように、平時からサーベイランスの対象とするため。患者さんには影響がある? 風邪のために病院に行く際の負担などが変わる?⚫ 影響はなく、診療上の扱いも変わらない。医療機関や高齢者施設などにおける面会制限は変わる?⚫ 変更はない。風邪も就業制限や登校制限の対象となる?⚫ 対象にはならない。インフルエンザなど個別の感染症について定められている運用についても変更はない。厚生労働省ホームページ「急性呼吸器感染症(ARI)に関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/ari_qa.htm)より抜粋Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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抗うつ薬の有用性比較、SSRI vs.SNRI vs.新規抗うつ薬

 うつ病は、長期にわたる薬物療法を必要とすることが多く、有病率の高い衰弱性の疾患である。うつ病の薬物療法では、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)が一般的に用いられるが、一部の患者では有効性および忍容性に限界がある。最近の研究でも、さまざまな経路を標的とした新しい抗うつ薬の有用性が示されている。パキスタン・Azad Jammu and Kashmir Medical CollegeのAmber Nawaz氏らは、うつ病患者に対するSSRI、SNRI、新規抗うつ薬の有効性、QOL改善、副作用プロファイルを評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。Cureus誌2024年12月24日号の報告。 対象は、Abbas Institute of Medical Sciences の入院および外来うつ病患者300例。研究期間は、2024年3〜8月までの6ヵ月間。対象患者は、SSRI群、SNRI群、新規抗うつ薬群のいずれかに割り付けられた。うつ病の重症度の評価には、ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)、QOLの評価には、標準化されたQOLスコアを用いた。各群の比較を行うために、t検定、分散分析(ANOVA)、カイ二乗検定などの統計分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・すべての群において、HAM-Dスコアの顕著な低下が認められた。・新規抗うつ薬群におけるHAM-Dスコアの平均低下が最も高かった(17.2、p<0.001)。・すべての群において、QOLの改善が認められた。・新規抗うつ薬群におけるQOLスコアの平均上昇が最も高かった(19.7、p<0.01)。・軽度〜中等度の副作用発現率は、SSRI群で32%、SNRI群で37%、新規抗うつ薬群で25%であり(p=0.04)、重度の副作用発現率は、SSRI群で6%、SNRI群で5%、新規抗うつ薬群で2%であり、新規抗うつ薬群で最も低かった。・アドヒアランスは、SSRI群で84%、SNRI群で82%、新規抗うつ薬群で91%であり、新規抗うつ薬群が最も高かった。 著者らは「新規抗うつ薬は、SSRIやSNRIよりも有効性および忍容性が優れ、QOLやアドヒアランス向上に寄与することが確認された。これらの結果は、従来の治療で効果不十分な患者にとって、新規抗うつ薬は代替薬となりうる可能性を示唆している。より長期的な多施設研究により、これらの結果を確認する必要がある」と結論付けている。

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米国の医療支出に大きな地域差、その要因は?/JAMA

 米国では、3,110の郡の間で医療支出に顕著なばらつきがみられ、支出が最も多い健康状態は2型糖尿病であり、郡全体では支出のばらつきには治療の価格や強度よりも利用率のばらつきの影響が大きいことが、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L. Dieleman氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年2月14日号に掲載された。2010~19年の米国の郡別の観察研究 研究グループは2010~19年の期間に、米国の3,110の郡のそれぞれにおいて、4つの医療費支払元(メディケア、メディケイド、民間保険、自己負担)で、148の健康状態につき38の年齢/性別グループ別に7種の治療の医療支出を推定する目的で、400億件以上の保険請求と約10億件の施設記録を用いて観察研究を行った(Peterson Center on HealthcareとGates Venturesの助成を受けた)。 38の年齢/性別グループは、男女別の19の年齢層(0~<1歳から≧85歳)で、7種の治療とは、外来治療、歯科治療、救急治療、在宅治療、入院治療、介護施設での治療、処方された医薬品の購入であった。主要アウトカムは、2010~19年の医療支出および医療利用状況(たとえば、受診・入院・処方の回数)とした。1人当たりの支出、郡間で最大約1万ドルの差 本研究では、2010~19年における個人医療支出のうち76.6%を捕捉した。これは、人口の97.3%の支出を反映している。医療支出は、2010年の1兆7,000億ドルから2019年には2兆4,000億ドルに増加した。この支出に占める割合は、20歳未満が11.5%で、65歳以上は40.5%であった。 健康状態別の支出は、2型糖尿病が最も高額で、1,439億ドル(95%信頼区間[CI]:1,400億~1,472億)であった。次いで、関節痛や骨粗鬆症を含むその他の筋骨格系疾患が1,086億ドル(1,064億~1,103億)、口腔疾患が930億ドル(927億~933億)、虚血性心疾患が807億ドル(790億~824億)だった。 総支出のうち、外来医療費が42.2%(95%CI:42.2~42.2)、入院医療費が23.8%(23.8~23.8)、処方医薬品購入費が13.7%(13.7~13.7)を占めた。郡レベルの1人当たりの年齢標準化支出は、最も低かったアイダホ州クラーク郡の3,410ドル(95%CI:3,281~3,529)から、最も高かったニューヨーク州ナッソー郡の1万3,332ドル(1万3,177~1万3,489)の範囲にわたっていた。説明のつかない支出ばらつきの調査が、医療施策の立案に役立つ可能性 郡間で最もばらつきが大きかったのは、年齢標準化自己負担額で、次いで民間保険による支出であった。また、郡全体でのばらつきは、治療の価格や強度よりも医療利用率のばらつきによって大きく影響を受けた。 著者は、「このようなばらつきを、健康状態、性別、年齢、治療の種類、支払い元の違いで地域別に理解することが、異常値の特定、成長パターンの追跡、不平等の顕在化、医療能力の評価において重要な考察をもたらす」「最も支出の多い健康状態に焦点を当てて説明のつかない支出のばらつきをさらに調査することが、コストの削減と治療へのアクセスの改善を目的とした保健医療施策の立案に役立つ可能性がある」としている。

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GLP-1RAの腎保護効果はDPP-4iを上回る

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は慢性腎臓病(CKD)進行抑制という点で、DPP-4阻害薬(DPP-4i)より優れていることを示唆するデータが報告された。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのShuyao Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に12月5日掲載され、2月10日には同大学からニュースリリースが発行された。Zhang氏は、「血糖管理におけるGLP-1RAの有用性は既によく知られていた。一方、われわれの研究によって新たに、CKDハイリスク患者におけるGLP-1RAの腎保護効果を裏付ける、待望のエビデンスが得られた」と述べている。 この研究は、米退役軍人保健局の医療データを用い、臨床試験を模倣した研究として実施された。腎機能低下が中等度(eGFR45mL/分/1.73m2未満)以上に進行したCKDを有する35歳以上の2型糖尿病患者のうち、GLP-1RAまたはDPP-4iで治療されていた9万1,132人から、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万6,076人から成る2群を設定。この2群はベースライン時点で、平均年齢(GLP-1RA群71.9歳、DPP-4i群71.8歳)、男性の割合(両群とも95%)、BMI(同33.5)、HbA1c(8.0%)、および併発症や治療薬なども含めて、背景因子がよく一致していた。 事前に設定されていた主要評価項目は急性期医療(救急外来の受診・入院など)の利用率であり、副次評価項目は全死亡および心血管イベントの発生率だった。このほか、事後解析として、CKD進行リスク(血清クレアチニンの倍化、CKDステージ5への進行で構成される複合アウトカム)も評価した。 2.2±1.9年の追跡で、1人1年当たりの急性期医療利用率は、GLP-1RA群が1.52±4.8%、DPP-4i群は1.67±4.4%で、前者の方が有意に低かった(P=0.004)。また、全死亡は同順に17.7%、20.5%に発生していて、やはりGLP-1RA群の方が少なかった(オッズ比〔OR〕0.84〔95%信頼区間0.79~0.89〕、P<0.001)。CKD進行についても2.23%、3.46%で、GLP-1RA群の方が少なかった(OR0.64〔同0.56~0.73〕、P<0.001)。心血管イベントに関しては有意差がなかった(OR0.98〔0.92~1.06〕、P=0.66)。 著者らは、本研究結果が糖尿病の臨床を変化させるのではないかと考えている。論文の共著者の1人である同医療センターのIldiko Lingvay氏は、「糖尿病でCKDを有する患者は、低血糖、感染症、心血管疾患などの合併症のリスクが非常に高いにもかかわらず、有効な薬剤が非常に少なく、かつ、そのような患者は臨床試験に参加する機会が限られている。われわれの研究結果は、GLP-1RAがCKDの進行の抑制や医療費の削減につながることを示している」と話す。 Zhang氏もLingvay氏と同様に、今回の研究結果が糖尿病臨床を変え得るとしている。同氏は、「歴史的に見て、糖尿病によるCKDの治療は困難なものであった」と解説。そして、「今後の研究次第では、糖尿病に伴うCKDの包括的治療アプローチの一部として、GLP-1RAを組み込んだ新しいガイドラインが策定される可能性がある。そのガイドラインに基づく治療によって、患者の長期的な転帰が改善し、生活の質の向上につながっていくのではないか」と付け加えている。

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