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3剤配合剤抵抗性の高血圧、腎デナベーションが有効/Lancet

 利尿薬を含む3剤配合降圧薬に抵抗性を示す高血圧患者に対し、超音波腎デナベーションは、2ヵ月後の収縮期血圧低下に有効であることが示された。偽治療に比べ、収縮期血圧値は中央値5.8mmHg低下したという。フランス・パリ大学のMichel Azizi氏らが、米国・欧州50ヵ所以上の医療機関を通じて行った無作為化単盲検偽治療対照試験の結果を報告した。血管内腎デナベーションは、軽症~中等症高血圧患者の降圧に有効だが、真性の抵抗性高血圧患者の有効性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「降圧効果と腎デナベーションの安全性が長期的に維持されるのならば、抵抗性高血圧患者にとって腎デナベーションは降圧薬に追加しうる治療法となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値をITT解析で比較 研究グループは、米国28ヵ所、欧州25ヵ所の3次医療機関を通じて、利尿薬を含む3種以上の降圧薬を服用しながら、診察室血圧が140/90mmHg以上の18~75歳を対象に試験を行った。被験者は、試験開始後4週間は、Ca拮抗薬・ARB・サイアザイド系利尿薬の配合剤(投与量一定)の1日1回服用に切り替えた。 その後、日中自由行動下血圧が135/85mmHg以上の被験者を施設で層別化し1対1の割合で無作為に2群に分け、一方には超音波腎デナベーションを、もう一方には偽治療を行った。患者とアウトカム評価者は割り付けをマスクされ、規定した血圧値を超えた場合には、追加の降圧薬投与を可能とした。 主要エンドポイントは、ITT解析で評価した2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化だった。安全性もITT解析にて評価した。腎デナベーション群、2ヵ月後収縮期血圧値は8.0mmHg低下 2016年3月11日~2020年3月13日に、989例が試験に登録され、そのうち136例が無作為化を受けた。腎デナベーション群69例、偽治療群67例だった。 尿検査で確認した2ヵ月時点の配合剤の服用アドヒアランスは、腎デナベーション群82%(42/51例)、偽治療群82%(47/57例)と同等だった(p=0.99)。 2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化は中央値で、腎デナベーション群-8.0mmHg(四分位範囲[IQR]:-16.4~0.0)、偽治療群-3.0mmHg(-10.3~1.8)と腎デナベーション群で有意な降圧が認められた(群間差中央値:-4.5mmHg[95%信頼区間[CI]:-8.5~-0.3]、補正後p=0.022)。完全なデータが得られた被験者における群間差中央値は-5.8mmHg(-9.7~-1.6、補正後p=0.0051)だった。 なお、安全性アウトカムについては、両群で差はみられなかった。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける予防効果はなぜ国/地域によって異なるのか?(解説:山口佳寿博氏)-1400

 mRNAワクチンであるBNT162b2(以下、ワクチン)の第III相試験が終了した後、real-world settingでの実際の予防効果が、ワクチン接種が早期に開始された中東諸国(イスラエル、カタール)、英国、米国などから相次いで報告されている。各国で報告された予防効果は、必ずしも一致せず背景因子に何らかの差が存在するものと考えられる。本論評では、Angel氏らの論文(Angel Y, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])を基礎としながら、なぜ、各国からの報告でワクチンの予防効果に差を認めたのか、その原因について考察する。Angel氏らは、2020年12月20日~2021年2月25日の2ヵ月の間にワクチンを2回接種したイスラエルの医療従事者を対象(接種者:5,517人、非接種者:757人)として2回目ワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染、無症候性感染に対するワクチンの予防効果を検討した。その結果、有症候性感染に対する予防効果は97%、無症候性感染に対する予防効果は86%であることが示された。一方、Dagan氏らは、ほぼ同じ時期(2020年12月20日~2021年2月1日)にワクチンを接種したイスラエルの一般住民を対象(接種者と非接種は同数で各59万6,681人、総数はイスラエルの総人口の13%に相当)とした解析で、2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染に対する予防効果が94%、無症候性感染を含む感染全体に対する予防効果が92%、入院予防効果が87%、重症化予防効果が92%であると報告した(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。対象者数、従事する仕事の内容に差を認める両解析ではあるが、最も信頼できる有症候性感染予防効果に関しては2つの論文でほぼ同じ値が報告された。この時期のイスラエルでは、従来株(D614G株)から英国株(B.1.1.7)に蔓延ウイルスの置換が進んでいた時期で、上記の2つの論文は、従来株と英国株が混在した状況下でのワクチンの有効性を示したものだと判断できる。この予防効果は、従来株が主流を占めた2020年の夏から秋にかけて施行されたワクチンの第III相試験によって示された予防効果(95%)とほぼ同じであり(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)、英国株に対するワクチンの予防効果は従来株に対するそれと同等であると結論できる。 英国株が主体を占めた英国からの報告では、80歳以上の高齢者にあって、有症候性感染に対するワクチン2回接種後の予防効果は89%であり、年齢と無関係にワクチンの予防効果はほぼ維持されることが判明した(Bernal JL, et al. BMJ. 2021;373:n1088.)。 カタールでは、2021年3月31日までに26万5,410人が2回目のワクチン接種を終了した。この時期、カタールを席巻していたウイルスは、44.5%が英国株、50%が南アフリカ株(B.1.351)であり、同じ中東のイスラエルとは異なったウイルス分布を示していた。このような状況下で、Abu-Raddad氏らは英国株、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果を検証した(Abu-Raddad LJ, et al. N Engl J Med. 2021 May 5. [Epub ahead of print])。ワクチン2回接種後14日以上経過した時点での英国株の有症候性感染に対する予防効果は89.5%、南アフリカ株の有症候性感染に対する予防効果は75%で、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果は英国株に対する予防効果より14.5ポイント低いことが示された。この結果は、南アフリカ株が液性免疫回避変異を有し(山口. J-CLEAR論評-1381, 2021 April 28)、ワクチン接種後のウイルス中和作用を抑制したことが原因の一つであることを示唆する。 2020年12月17日~2021年3月20日の間に米国で施行されたワクチン予防効果に関する検討では(2回接種:2,776人、1回接種:3,052人、非接種:2,165人)、有症候性感染に対する予防効果が84%、無症候性感染に対する予防効果が72%であることが示された(Tang L, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])。これらの値はAngel氏らがイスラエルから報告した値に比べ13~14ポイント低い。米国において蔓延しているウイルスの種類は複雑で、米国CDCは、2021年4月30日現在、米国全土で英国株、米国株(B.1.427/429)、ブラジル株(P.1)、南アフリカ株と多数の変異ウイルスが混在して流布していると報告した(CDC COVID-19 Vaccine Breakthrough Case Investigations Team. MMWR; Vol. 70, 2021 May 25)。これらの変異ウイルスの多くは、ワクチン接種によって形成される中和抗体に対して抵抗性を有し、ワクチンの予防効果を低下させる(山口. 日本医事新報 2021;5053:32-38)。 以上のように、ワクチンの予防効果は国によって異なり、その地域に流布しているウイルスの種類が主たる規定因子として作用する。それ故、いかなるウイルスが蔓延しているかを念頭に置いて各国から報告された予防効果に関するデータを読み解く必要がある。

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キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?【臨床留学通信 from NY】第21回

第21回:キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?こちらニューヨーク州では、コロナ陽性者が1日5,000人くらいであった1ヵ月前に比べ、2,000人台まで減少してきました。そして5月16日現在、12歳までワクチン接種が可能になっていますが、打ちたがらない人も少なくないようで、接種率は思うように上がっていないのが実情です。そのため、ワクチン接種者に対し、ハンバーガーショップShake Shackのフリーポテトサービスや、Krispy Kreme Doughnutsのフリードーナッツサービスなど、あの手この手の優遇施策が取られているようです。さて、こうした状況下ですが、今年のフェロー候補者は現在、7月中旬までに出さなければならないアプリケーションの書類整理に追われています。私もコロナ禍の中、去年同じプロセスを経験しました。フェローのマッチングの書類は基本的にはレジデントの時と同じです。重要なのは推薦状4通で、そのほかにもCurriculum Vitae(履歴書)の充実、そしてPersonal Statement(なぜ自分がその道のフェローになりたいか、その後目指すゴールは、など)の作成があります。レジデントのマッチングにおいては、日本国内で働いていると、どうしても米国からの推薦状を得にくいことが不利になります。あらゆる手段で米国の病院の指導医からオブザーバーシップ等で推薦状を作ってもらうほか、海軍病院に勤務して推薦状をもらうなどの方法があります。ただ、いったんレジデントに入ってしまうとその先の心配はありません。大事なのは、どのような内容を誰からもらうかです。スケジュールとしては、レジデント3年目早々にアプリケーションを揃えなければいけないため、実質2年しか準備期間がありません。まず、内科のプログラムディレクター(PD)に作成してもらう書類ですが、このPDレターをいかに良い内容にしてもらうかが最も重要です。例えば普段の病棟業務も、指導医からの評価、インターン(1年目)であれば、2年目もしくは3年目のレジデントとの相互評価になります。日本と違ってweb basedの指導医からは実名ですが、レジデント同士は匿名の評価なので、悪いことを書かれると、おのずとPDからのレターのレベルも下がってしまいます。しかし、そこは日本人の勤勉さで日々真面目に働いていれば、とくに問題になることはありません。また年に1度、7~8時間ほど掛けてACP(American College of Physicians)の模試を受けるのですが、この点数も良いに越したことはないので、試験直前はMKSAP18で勉強しておきました。これは内科専門医試験の勉強にも使える教材ですが、内容は日本の専門医試験より格段に難しいです。私自身としては、真面目に働いてきたつもりで、模試の点数も悪くはなかったので、PDレターはStrongという評価だったようです(候補者には非公開で推薦者がウェブ上にアップロードするので、最後までレターの内容はわからない仕組みです)。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33987794/2)https://www.kinpodo-pub.co.jp/book/1806-8/Column画像を拡大するCOVID-19患者約9,500例の患者のデータを使用し、回復期血漿についてRで解析した論文が先日オンラインとなりました1)。結果はeven、RCTの結果に沿う形となりました。昨年は入院時の血清antibodyが陰性なら全員に使用していましたが、現在、私の病院では、high titerを免疫不全の場合のみ、と限定されています。今回2,000万行を超えるデータを扱う解析のためにRを一から勉強したのですが、この本2)が大変参考になりました。お勧めです。

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高齢患者の術後の記憶力低下、CABG vs.PCI/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈血行再建術を受けた患者では、記憶力低下に関して、術式の違いによる差はないが、off-pump CABGはPCIと比較して、記憶力低下の割合が有意に高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のElizabeth L. Whitlock氏らの調査で示された。JAMA誌2021年5月18日号掲載の報告。HRSのデータを用いた後ろ向きコホート研究 研究グループは、CABGはPCIに比べ記憶力低下率が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で後ろ向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。 解析には、米国のHealth and Retirement Study(HRS)の参加者で、1998~2015年の期間に、65歳以上の年齢でCABGまたはPCIを受けた患者のデータを使用した。血行再建術施行前の最長5年間と、施行後の10年間または死亡、脱落、2016~17年の受診までのデータがモデル化された。最終フォローアップは2017年11月だった。 主要アウトカムは、記憶力スコア(点数が高いほど複合的な記憶機能が良好)とした。記憶力スコアは、HRSで2年ごとに行われた認知検査スコアと代理人による認知報告の要約指標であり、1995年に72歳以上であったHRS参加者のzスコア(平均値0、SD 1)として標準化された。on-pump CABGが認知機能に有益な可能性 1,680例(施術時の平均年齢75歳、女性41%)が解析に含まれた。CABG群が665例(off-pump手術168例、on-pump手術497例)、PCI群は1,015例であった。 PCI群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.064記憶単位/年(95%信頼区間[CI]:0.052~0.078)、施行後は0.060記憶単位/年(0.048~0.071)であった(群内の変化:0.004記憶単位/年[-0.010~0.018])。また、CABG群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.049記憶単位/年(0.033~0.065)、施行後は0.059記憶単位/年(0.047~0.072)であった(群内の変化:-0.011記憶単位/年[-0.029~0.008])。 差分の差分法による両群間の記憶力低下の差の推定値は0.015記憶単位/年(95%CI:-0.008~0.038)であり、有意差は認められなかった(p=0.21)。 一方、off-pump CABG群では、PCI群と比較して、記憶力低下率が統計学的に有意に増加した(差分の差分法によるoff-pump CABG施行後の記憶力低下率増加の平均値:0.046記憶単位/年[95%CI:0.008~0.084])が、on-pump CABG群はPCI群に比べ有意な増加は示さなかった(差分の差分法によるon-pump CABG施行後の記憶力低下率の減速化の平均値:0.003記憶単位/年[95%CI:-0.024~0.031])。 著者は、「PCIとCABGで、晩年期の認知機能の変化率に有意差がなかったことは、血行再建の方法が、その後の認知機能の老化の強力な規定因子ではないことを示唆する。また、off-pump CABGはPCIに比べ長期的な認知機能が劣っていたことから、on-pump CABGで達成された、より耐久性に優れ完成度の高い血行再建が、認知機能に有益な影響を与えるのではないかとの仮説がもたらされた」としている。

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皮膚がん再発率、広範囲切除術vs.モース手術vs.段階的切除術

 頭頸部皮膚がんの再発率について、術式による違いはあるのか。米国・インディアナ大学のPeter G. Bittar氏らはシステマティックレビューとメタ解析により、広範切除術(WLE)とモース顕微鏡手術(MMS)または段階的切除術の術後再発率を調べた結果、MMSまたは段階的切除術のほうがWLEと比べて再発率が低いことが示された。これまでに、異なる術式を比較した前向き試験は行われておらず、研究グループは各術式後の局所再発率を明らかにする目的で本検討を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年5月4日号掲載の報告。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Web of Scienceを用いてシステマティックレビューを行い、頭頸部皮膚がんの手術後の局所再発率を報告しているあらゆる英語論文のケースシリーズ、コホート研究および無作為化試験を特定した。 メタ解析はランダム効果モデルを用い、各種の手術手技について、およびMMSと段階的切除のサブグループについて、加重局所再発率と信頼区間(CI)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、100本の論文原稿、1万3,998例の頭頸部皮膚がんを特定した。・1万3,998例のうち、WLEによる治療例が51.0%(7,138例)、MMSが34.5%(4,826例)、また段階的切除術は14.5%(2,034例)であった。・局所再発率は、MMSが最も低く0.61%(95%CI:0.1~1.4)であった。・次いで、段階的切除術が1.8%(95%CI:0.1~2.9)と続き、WLEは7.8%(6.4~9.3)であった。

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治療抵抗性片頭痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体fremanezumab~FOCUS試験

 FOCUS試験では、世界各国の片頭痛患者、とくに治療困難な患者に対する予防薬の有効性や安全性を検討している。米国・Boston PainCareのEgilius L. H. Spierings氏らは、FOCUS試験のサブグループ解析として、既存の片頭痛予防の2~4つのクラスを用いた治療に奏効しなかった反復性および慢性片頭痛成人患者に対する抗CGRPモノクローナル抗体fremanezumabによる治療の有効性を評価した。The Journal of Headache and Pain誌2021年4月16日号の報告。 対象は、欧州および北米の104施設で実施されたランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間第IIIb相臨床試験であるFOCUS試験に登録された片頭痛患者838例。対象患者は、fremanezumab四半期ごと投与群、fremanezumab月1回投与群、プラセボ群にランダムに割り付けられ、12週間の二重盲検治療を実施した。有効性の主要エンドポイントは、12週間の治療における平均月間片頭痛日数のベースラインからの平均変化とし、国ごとに評価した。 主な結果は以下のとおり。・データを提供した14ヵ国のうち、登録患者数が多かったチェコ(188例[22%])、米国(120例[14%])、フィンランド(85例[10%])において、12週間の平均月間片頭痛日数のベースラインからの変化は、プラセボ群と比較し、fremanezumab群で有意な減少が認められた。3ヵ国の対プラセボ最小二乗平均差および95%信頼区間(CI)は以下のとおりであった。【チェコ】 ●fremanezumab四半期ごと投与:-1.9(95%CI:-3.25~-0.47)、p=0.009 ●fremanezumab月1回投与:-3.0(95%CI:-4.39~-1.59)、p<0.001【米国】 ●fremanezumab四半期ごと投与:-3.7(95%CI:-5.77~-1.58)、p<0.001 ●fremanezumab月1回投与:-4.2(95%CI:-6.23~-2.13)、p<0.001【フィンランド】 ●fremanezumab四半期ごと投与:-3.0(95%CI:-5.32~-0.63)、p=0.014 ●fremanezumab月1回投与:-3.9(95%CI:-6.27~-1.44)、p=0.002・残る9ヵ国の結果も同様であり、対プラセボ最小二乗平均差は、fremanezumab四半期ごと投与で-5.6~-2.4、fremanezumab月1回投与で-5.3~-1.5の範囲であった。・重篤な有害事象および治療中止につながる有害事象の発生率は低く、国家間や治療群間で同様であった。 著者らは「fremanezumab月1回および四半期ごとの投与は、2~4つのクラスの片頭痛予防薬を用いた治療に奏効しなかった片頭痛患者において、平均月間片頭痛日数の有意な減少が期待できる治療方法であり、その効果は、国家間での差は認められなかった」としている。

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HER2+乳がんの術前薬物療法、アントラサイクリンの有無別の生存率/TRAIN-2試験2次解析

 Stage II/IIIのHER2陽性乳がんの術前薬物療法において、アンスラサイクリンを含む化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブと、アンスラサイクリンを含まない化学療法+トラスツズマブ+ペルツズマブを比較したTRAIN-2試験では、すでに病理学的完全奏効率に差がない(67% vs. 68%)ことが示されている。今回、オランダ・the Netherlands Cancer InstituteのAnna van der Voort氏らのフォローアップ解析により、3年無イベント生存率(EFS)および3年全生存率(OS)も差がないことが示された。また、アントラサイクリンの使用は、発熱性好中球減少症、心毒性、2次がん発症リスクの増加と関連していた。JAMA Oncology誌オンライン版2021年5月20日号に掲載。 TRAIN-2試験は非盲検無作為化第III相試験で、2013年12月9日~2016年1月14日にオランダの37病院で登録されたStage II/IIIのHER2陽性乳がん438例が対象。参加者は、年齢、Stage、リンパ節転移状況、エストロゲン受容体の有無で層別化され、FEC 3サイクル後パクリタキセル+カルボプラチン6サイクル(アントラサイクリン群)とパクリタキセル+カルボプラチン9サイクル(非アントラサイクリン群)に1:1で無作為に割り付けられた(両群ともトラスツズマブとペルツズマブを3週ごとに投与)。 主な結果は以下のとおり。・計438例が各群219例ずつに割り付けられ、年齢中央値はアントラサイクリン群が49歳(四分位範囲:43~55歳)、非アントラサイクリン群が48歳(同:43~56歳)だった。観察期間中央値は48.8ヵ月(四分位範囲:44.1〜55.2ヵ月)。・EFSイベントは、アントラサイクリン群で23(10.5%)、非アントラサイクリン群で21(9.6%)発生した(ハザード比:0.90、95%CI:0.50~1.63)。・3年EFSはアントラサイクリン群92.7%(95%CI:89.3~96.2%)、非アントラサイクリン群93.6%(同:90.4~96.9%)、3年OSはアントラサイクリン群97.7%(同:95.7~99.7%)、非アントラサイクリン群98.2%(同:96.4~100%)だった。・ホルモン受容体やリンパ節転移状況にかかわらず、EFSおよびOSの結果に差はなかった。・左室駆出率がベースラインから10%以上低下し50%未満になった患者の割合は、アントラサイクリン群が7.7%(220例中17例)で、非アントラサイクリン群の3.2%(218例中7例)より高かった(p=0.04)。・アントラサイクリン群の2例で急性白血病を発症した。

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腸内細菌叢から健康状態を測れるか

 健康的な食習慣に関連する腸内細菌群は、良好な心血管代謝および食後マーカーに関連する腸内細菌群と重なることが、イタリア・トレント大学のFrancesco Asnicar氏らによって示された。疾患を持たない個人では、健康レベルごとに腸内細菌叢を階層化できる可能性があるという。Nature Medicine誌2021年2月号の報告。 腸内細菌叢は食事によって形作られ、宿主の代謝に影響を与える。しかし、これらの関連性は複雑で、個人ごとに異なると考えられている。 したがって本研究では、Personalised Responses to Dietary Composition Trial(PREDICT 1)試験に登録された1,098人を対象に1,203の腸内細菌叢のメタゲノム解析を実施し、食習慣および、空腹時と食後の心血管代謝マーカーとの関連性を分析した。 主な結果は以下のとおり。・多くの微生物は、特定の栄養素や食品、食品群、普通食の指標との間に有意な関連性を示した。・微生物とこれらとの関連性は、植物由来の健康的な食品が複数種類含まれると、より強まった。・肥満の微生物バイオマーカーは、他のコホート研究の結果を再現しており、心血管疾患におけるリスク指標の血液循環代謝物と一致していた。・Prevotella copriやBlastocystis spp.などの一部の微生物は、良好な食後糖代謝の指標であることが示された。・腸内細菌叢全体の組成は、空腹時および食後血糖、高脂血症、炎症などの心血管代謝マーカーを包括的に予測していた。

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PCI後のDAPT終了後、クロピドグレル単剤が有効/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)として薬剤溶出ステント(DES)留置術を施行され、6~18ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を受けた後、抗血小板薬単剤による長期の維持療法を要する患者において、クロピドグレルはアスピリンと比較して、死亡や血栓性疾患、出血を含む複合エンドポイントのリスクが低いことが、韓国・ソウル大学病院のBon-Kwon Koo氏らが実施した「HOST-EXAM試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。韓国37施設の非盲検無作為化試験 本研究は、韓国の37施設が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2014年3月~2018年5月の期間に患者登録が行われた(韓国・ChongKunDangなどの助成による)。 対象は、年齢20歳以上、DESによるPCI施行後に、臨床的イベントを発症することなく6~18ヵ月のDAPTを終了した患者であった。虚血性および大出血性の合併症を有する患者は除外された。 被験者は、長期維持療法期の抗血小板薬単剤療法として、クロピドグレル(75mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)の経口投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は24ヵ月間であった。 主要エンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群(ACS)による再入院、BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準タイプ3以上の複合とされ、intention-to-treat解析が行われた。血栓関連エンドポイントや全出血も良好 5,530例が登録され、このうち5,438例(98.3%)が無作為化の対象となった。クロピドグレル群に2,710例(49.8%)、アスピリン群に2,728例(50.2%)が割り付けられた。主要エンドポイントの確認は5,338例(98.2%)で完了した。 全体の平均年齢は63.5(SD 10.7)歳で、74.5%が男性であった。PCI施行時の診断名の割合は、安定狭心症が25.5%、不安定狭心症が35.5%、非ST上昇型心筋梗塞が19.4%、ST上昇型心筋梗塞が17.2%だった。 24ヵ月の追跡期間における主要エンドポイントの発生は、クロピドグレル群が152例(5.7%)と、アスピリン群の207例(7.7%)に比べ有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.59~0.90、p=0.0035)。 血栓関連複合エンドポイント(心臓死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、ACSによる再入院、ステント血栓症[definite/probable])の発生は、クロピドグレル群が99例(3.7%)、アスピリン群は146例(5.5%)で(HR:0.68、95%CI:0.52~0.87、p=0.0028)、全出血(BARCタイプ2以上)の発生は、それぞれ61例(2.3%)および87例(3.3%)であり(0.70、0.51~0.98、p=0.036)、いずれも有意な差が認められた。 著者は、「これまでの研究で、PCI施行後の長期維持療法期にどの抗血小板薬単剤療法が最良の臨床結果をもたらすかに関して重要な仮説が提起されてきたが、DESによるPCI施行後の安定した同質の患者集団を対象とした今回の研究により、大規模な無作為化試験で初めてこれらの知見を確認することができた」としている。

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双極性障害治療における非定型抗精神病薬使用~RCTのシステマティックレビュー

 双極性障害の治療では、非定型抗精神病薬の使用が増加している。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のKamyar Keramatian氏らは、最近発表された双極性障害に対する非定型抗精神病薬の有効性および安全性に関するランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューを実施した。Current Psychiatry Reports誌2021年5月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・急性期双極I型および双極II型うつ病に対するクエチアピン治療の有効性は、いくつかの研究で支持されていた。・クエチアピン補助療法は、治療抵抗性双極性うつ病に対し、プラセボよりも優れた有効性が認められた。・双極I型うつ病に対しcariprazine1.5mgによる治療が有効であった。・月1回のアリピプラゾール持続性注射剤400mgによる治療は、代謝への影響を最小限にとどめたうえで、躁症状の予防に有効であった。・若年の双極性障害患者では、急性うつ病に対してルラシドンの有用性、忍容性が認められ、急性躁病および混合性エピソードに対してアセナピンの有効性が認められた。 著者らは「最近発表されたRCTでは、双極性障害のさまざまなステージにおける非定型抗精神病薬の有効性が支持されていた。今後の研究において、研究が不十分な小児期、老年期、双極II型障害などに焦点を当てるとともに、認知機能やQOLに注目した研究が求められる」としている。

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ホルモン感受性と年齢別、乳がん後の2次原発がんリスク

 乳がんサバイバーの2次原発がん(SPC)リスクは、ホルモン受容体(HR)の状態と初発がんの診断年齢によって大きく異なる可能性が示唆された。米国がん協会のHyuna Sung氏らによるCancer誌オンライン版2021年5月18日号掲載の報告より。 解析には、米国のSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)の12のレジストリのデータが用いられた。研究者らは1992~2015年までに20~84歳で診断された43万1,222人の乳がんサバイバー(1年以上の生存)を特定。SPCリスクは、標準化された発生率(SIR)および1万人年当たりの過剰絶対リスク(EAR)として測定した。ポアソン回帰モデルを用いてホルモン受容体の状態ごとのSIRが解析された。 主な結果は以下のとおり。・平均8.4年の追跡期間中に、HR陽性乳がんサバイバー(35万2,478人)で4万940件(絶対リスク:139.9/1万人年)、HR陰性乳がんサバイバー(7万8,744人)で9,682件(絶対リスク:147.3/1万人年)のSPCが発生した。・一般集団と比較すると、新たながん診断リスクはHR陽性乳がんサバイバーで 20%(SIR:1.20、95%信頼区間[CI]:1.19~1.21、EAR:23.3/1万人年)、HR陰性乳がんサバイバーでは44%高く(SIR:1.44、95%CI:1.41~1.47、EAR:45.2/1万人年)、ホルモン受容体の状態間のリスク差は統計的に有意であった。・一般集団と比較して、乳がんサバイバーでは7つのがん(急性非リンパ球性白血病、肉腫、乳がん、口腔/咽頭がん、子宮体がん、肺がん、結腸がん)のリスクが高かった。甲状腺がん、小腸がん、膵臓がん、膀胱がんおよび皮膚の黒色腫のリスクは、HR陽性乳がんサバイバーでのみ上昇し、食道がん、卵巣がん、および腹膜がんのリスクは、HR陰性乳がんサバイバーでのみ上昇した。 ・診断時の年齢別の1万人年あたりの総EARは、晩期発症(50~84歳)のHR陽性乳がん:15.8(95%CI:14.1~17.5、SIR:1.11)晩期発症のHR陰性乳がん:29.0(95%CI:25.0~33.0、SIR:1.22)早期発症(20~49歳)のHR陽性乳がん:41.3(95%CI:39.2~43.5、SIR:2.24)早期発症のHR陰性乳がん:69.4(95%CI:65.1~73.7、SIR:2.24)・二次原発の乳がんは各サバイバーグループの総EARの73~80%を占めていた。・乳がんを除くと、SPC で1万人年あたりのEARが大きかったのは、早期発症HR陰性乳がんサバイバーの卵巣がん、早期および晩期発症HR陰性乳がんサバイバーの肺がん、および晩期発症HR陽性乳がんサバイバーの子宮体がんであった。 著者らはこの結果を受けて、乳がんサバイバーのケア計画において、がん予防と早期発見戦略のためのより的を絞ったアプローチが必要であるとまとめている。

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非責任病変へのPCI追加、FFRガイドvs.血管造影ガイド/NEJM

 多枝病変を有するST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、梗塞関連病変へのPCI成功後の非責任病変の完全血行再建は、冠血流予備量比(FFR)ガイド下と血管造影ガイド下で有益性に差は認められなかった。フランス・パリ大学のEtienne Puymirat氏らが、Flow Evaluation to Guide Revascularization in Multivessel ST-Elevation Myocardial Infarction(FLOWER-MI)試験の結果を報告した。ただし、イベント発生率が予想より低く統計学的検出力が計画より低下したため、著者は、「FFRガイド下治療の有意な効果は認められなかったが、主要評価項目のハザード比の95%信頼区間(CI)が0.78~2.23と非常に広く、これはFFRガイド下治療により相対的に22%リスクが低下または123%リスクが上昇することを表しており、今回の結果を結論付ける解釈はできない」との見解を示している。非責任病変へのPCI追加による完全血行再建が、責任病変単独治療より優れているが、FFRガイド下治療が血管造影ガイド治療より優れているかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。多枝病変のSTEMI患者1,171例で、1年後の主要心血管イベントを比較 FLOWER-MI試験は、2016年12月18日~2018年12月6日に、フランス国内41施設で実施された医師主導の評価者盲検無作為化非盲検試験である。梗塞関連病変のPCIが成功した18歳以上の多枝病変STEMI患者で、50%以上狭窄の非責任病変が1つ以上存在し、PCIの適応と判断された患者1,171例を、FFRガイド群(590例)または血管造影ガイド群(581例)に1対1の割合で無作為に割り付け、入院中に完全血行再建術を行った。 主要評価項目は、1年時点での全死因死亡、非致死的MI、緊急血行再建に至る予定外入院の複合であった。FFRガイド下完全血行再建術、血管造影ガイド下と比べて有意差なし 各群4例が同意撤回等により除外され、intention-to-treat解析集団はFFRガイド群586例、血管造影ガイド群577例であった。PCIは、それぞれ388例(66.2%)、560例(97.1%)に実施され、非責任病変のステント留置数/例(平均±SD)は、FFRガイド群1.01±0.99、血管造影ガイド群1.50±0.86であった。 主要評価項目イベントは、FFRガイド群で5.5%(32/586例)、血管造影ガイド群で4.2%(24/577例)に発生し、ハザード比(HR)は1.32(95%CI:0.78~2.23、p=0.31)であった。 また、全死因死亡は1.5%(9例)vs.1.7%(10例)(HR:0.89、95%CI:0.36~2.20)、非致死的MIは3.1%(18例)vs.1.7%(10例)(1.77、0.82~3.84)、緊急血行再建に至る予定外入院は2.6%(15例)vs.1.9%(11例)(1.34、0.62~2.92)であった。

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BRCA変異、免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカーとなるか

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果に関するバイオマーカーとしては、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、PD-L1発現、DNAミスマッチ修復機能欠損が知られている。一方、BRCA1およびBRCA2はDNA修復において重要な役割を果たすが、免疫療法においてこれら遺伝子変異の役割は不明のままである。今回、米国・University of Oklahoma Health Sciences CenterのZhijun Zhou氏らは、BRCA1/2の変異がTMBに関連していると仮説を立て、コホート研究を実施した結果、TMBと組み合わせたBRCA2変異が、ICI治療のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。JAMA Network Open誌5月3日号に掲載。 本研究では、BRCA変異のデータをcBioPortalプラットフォームから取得した。生存分析には、Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSKCC)コホートでICI治療を受け、ゲノム配列を調べた各種がん患者が登録された。各がんにおけるTMBの上位10%を高TMB、下位90%を低TMBと定義した。主要評価項目は、ICI投与開始からの全生存期間(OS)で、BRCA1/2変異のある患者とない患者を比較した。データ分析は2020年7月~11月に実施した。 主な結果は以下のとおり。・BRCA1/2変異のある1,977例(5.3%)を含む3万7,259例の3万9,307の腫瘍サンプルを検討した。・BRCA1、BRCA2とも変異していたのは164例(0.4%)、BRCA1のみの変異は662例(1.8%)、BRCA2のみの変異1,151例(3.1%)だった。・BRCA1/2変異のある腫瘍のTMBの中央値は24.59(四分位範囲[IQR]:9.84~52.14)で、野生型(5.90、IQR:2.95~10.00)より高かった(p<0.001)。・BRCA1/2変異のある患者の49例(34.8%)が高TMBであるのに対し、野生型の患者の1,399例(92.0%)は低TMBであった(p<0.001)。・MSKCCコホートにおいてICI治療を受けゲノム配列が決定された1,661例のうち、141例(8.5%)でBRCA1/2変異を有していた。・BRCA1変異とOSの関連はみられなかった。・BRCA2変異のある患者のOS中央値は31.0ヵ月(IQR:10.0~80.0)で、変異のない患者(18.0ヵ月、IQR:6.0~58.0)より良好だった(p=0.02)。・低TMB でBRCA2変異のある患者のOS中央値は44.0ヵ月(IQR:10.0~67.0)で、高TMBの患者(41.0、IQR:13.0~80.0)と同等だった。どちらの群も、低TMBでBRCA2野生型の患者(16.0ヵ月、IQR:6.0~57.0)よりも良好だった(p<0.001)。

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新「内科専門医」と「総合内科専門医」の試験と位置付け教えます

 従前からアナウンスされていた、日本内科学会の専門医制度改革がいよいよ現実のものとなる。今年7月には、初めての「内科専門医」試験が実施され、今後、内科専門医が続々誕生していく一方、従来の「認定内科医」試験は今年6月が最後となる。近年受験者が急増していた「総合内科専門医」と内科専門医はどのようなすみ分けになるのか? 認定内科医との試験内容の違いは? CareNeTVで総合内科専門医試験対策のレクチャーを手がけている長門 直氏(JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科・感染症内科)に解説してもらった。=============== 内科の専門医制度変更に伴い、しばしば質問される3つのテーマについて述べていきたいと思います。1)内科専門医と認定内科医の位置付け 日本内科学会の専門医制度改革の大枠は、認定内科医・総合内科専門医→内科専門医・総合内科専門医への変更だといえます。他学会でも、認定医→専門医→指導医というステップアップ制度を採用していたところは過去ありましたが、何回も試験を受けないといけない医師側の負担、患者側から見てどちらが上位資格かわかりにくく誤解を招くといった理由から、次第に「認定医」がなくなって、専門医→指導医の2階建てとなり、現在この形がほぼスタンダードになっています。 内科に関しては、認定内科医取得と前後して、後期研修から循環器、呼吸器、消化器などのサブスペシャリティ診療科に分かれてしまい、体系的な内科診療、総合内科的な思考が十分に修得できないという問題点が指摘されていました。それにより、実際に患者が不利益を被る事例も少なくありません。たとえば、腹痛患者が時間外受診し、当直医が呼吸器内科であったりすると「専門外だから」と診療拒否して、離れた医療機関に搬送になり、搬送中に急変する、といった事態です。 内科医であるにもかかわらず、「臓器専門外だからお断り」といったことが次第に目立つようになってきて、地域の医療ネットワークにも支障が出てきたのです。そのため、日本内科学会は、内科の臓器別の専門研修に進む前に、内科全般の研修期間をしっかり設けて、体系的に内科診療ができるように制度を変更することにしたのです。それが従来の認定内科医より高い内科の臨床レベルが求められる、新しい内科専門医となります。 一方で、認定内科医は内科のサブスペシャリティ専門医取得のための必須条件となっています。実際に、認定内科医→サブスペシャリティ専門医という今までのプロセスを経ているベテラン内科医が数多く存在します。学会としては、その先生方に認定内科医を廃止するので、改めて内科専門医試験を受験してくださいというわけにもいかず、新規に「認定医」の認定は行わないが、既取得に限って更新を認めるという形に落ち着きました。 今後、新規に認定内科医を認定しなくなると、内科専門医の取得が内科のサブスペシャリティ専門医に進むための必須要件になります。端的に言うと、認定内科医は既存の内科サブスペシャリティ専門医の資格維持のためだけに存続するものとなり、将来的には「絶滅」する資格となります。2)内科専門医と総合内科専門医の試験の難易度 日本内科学会のホームページに、新内科専門医は「認定内科医試験と総合内科専門医試験の中間」、総合内科専門医は「(現行の)総合内科専門医」を踏襲すると明確に記載されています。そのうえで筆者が、後輩によく質問されるのは、「認定医試験と総合内科専門医試験の中間とは一体どういう意味?」ということです。 ここで「認定内科医試験」をまず振り返ります。 認定内科医の最後の資格試験は、昨年実施の予定だったのですが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、今年2021年6月にずれ込みました。問題数は300問で、一般問題と臨床問題の割合は非公表ですが、一般問題が臨床問題より多い、もしくは同数程度です。 新内科専門医試験は、問題数250問で一般問題100問・臨床問題150問と公表されており、臨床問題に比重が置かれています。一般問題はほぼ「暗記」で乗り切れるのですが、臨床問題は体系的な思考が要求されるので、当然難易度は上がります。 また、学会関連の会議や研修のたび、「内科専門医は初診患者や救急患者の初期対応がしっかりできるレベルを求めている」と聞いていますので、新内科専門医試験は希少疾患よりも患者数の多いいわゆるメジャー内科疾患中心に出題されると予想されます。この傾向は、認定内科医の臨床問題の傾向でもありましたので、新内科専門医試験は診断基準や法的問題・禁忌など暗記が必須である一般問題対策をしつつ、「内科初診や時間外で診ることの多いメジャーな内科疾患に関する臨床問題対策」に重きを置いて勉強することが大事だと考えます。 後輩たちからよく「up to date問題は出題されますか?」とよく質問されますが、新内科専門医試験でup to date問題はあまり出題されないと考えます。その理由は、抗体薬を含めた新規薬剤はよく話題にはなりますが、実際には、臓器別専門医がしっかりトレーニングした上で使用するものです。処方に当たっては、医師側にもいろいろと条件が定められているので、この種の知識は、大半が内科サブスペシャリティ専門医資格を有している医師が受験する「総合内科専門医試験」で問われる領域になると考えます。 なお、「総合内科専門医試験」は2021年度までは問題数250問で一般・臨床(up to date含む)の割合は非公表でしたが、2022年度より問題数は200問と少なくなり、一般50問・臨床150問(up to date含む)になることが公表されています。3)内科専門医と総合内科専門医の今後のキャリア 新しい内科専門医制度によって、内科専門医、総合内科専門医はそれぞれどのような意味を持ち、内科医のキャリアに影響してくるのでしょうか。ここでカギになるのは「内科指導医」です。 病院が内科研修プログラムを提供するためには、一定数の内科指導医が必要ですが、現在の認定内科医保有の内科指導医は2025年までの暫定措置とされました。現在、「認定内科医+サブスペシャリティ専門医」資格保有での内科指導医が依然多く、そのままだと、2025年をもって「内科指導医」から退かなくてはなりません。 2026年以降も指導医の継続を希望する場合、「総合内科専門医」もしくは「内科専門医」の資格が必要となります。また、内科指導医は「総合内科専門医であることが望ましい」と明記されており、さらに「内科専門医」は1回以上更新していることが条件なので、基幹病院で指導的な立場で仕事をしたいという気持ちがあるならば、事実上「総合内科専門医」は必須資格と言えるでしょう。 とくに近年の新型コロナ感染拡大による医療環境の変化や、それに伴う専門医試験実施内容の変更を踏まえると、心乱さず仕事するには、やはり「総合内科専門医」まで取得しておく必要があると考えます。実際、2026年に「内科指導医」の数が減ることも考えられるので、医療機関によっては研修に必要な指導医数が充足できないという事態も考えられます。2026年に指導医数が不足する恐れがある病院では、「総合内科専門医」資格はことさら重宝される可能性が高く、キャリア形成有利に働くと予想されます。■CareNeTV関連番組:『総合内科専門医試験2021』完全対策

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看護師1人当たりの患者数最小化で、患者転帰が改善/Lancet

 看護師1人当たりの患者数を最小化する施策により、死亡率、再入院率、在院日数が改善され、その結果として支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上に達したことが、米国・ペンシルベニア大学のMatthew D. McHugh氏らが実施した「RN4CAST-Australia試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年5月11日号で報告された。クイーンズランド州55病院の前向きパネル調査 研究グループは、2016年にオーストラリア・クイーンズランド州で制定された最小看護師-患者比率に関する施策が看護師の人員配置や患者転帰に及ぼす影響の評価および、同施策が人員配置と患者アウトカムに関連があるかを検討する目的で、前向きパネル調査を行った(オーストラリア・クイーンズランド州保健局などの助成による)。 クイーンズランド州の最小看護師-患者比率施策(午前と午後の勤務では1対4を超えない、夜間勤務では1対7を超えない)の対象となった病院(介入病院:27施設)と、退院患者が類似するがこの施策の対象ではない病院(対照病院:28施設)を、施策の導入前(ベースライン)と導入から2年の時点で比較した。 死亡記録と関連付けられた「標準化クイーンズランド州入院患者データ」を用いて、内科および外科病棟の患者の背景因子およびアウトカム(30日死亡、7日再入院、在院日数)のデータを取得し、施策導入の前後で対象病院の内科系および外科系の看護師1万7,010人の調査データを入手した。 看護師の調査データを用いて看護師の人員配置を評価し、標準化された患者データと関連付けた後、介入群と対照群の病院における患者転帰の変化を推定し、看護師の人員配置の変化との関連を検討した。 ベースライン(2016年)で評価を受けた患者23万1,902例(介入病院群14万2,986例、対照病院群8万8,916例)と、施策導入後(2018年)に評価を受けた患者25万7,253例(16万167例、9万7,086例)が解析に含まれた。1対4.5以上の病院の割合が、83%から58%に低下 看護師1人当たりの平均患者数は、対照病院群ではベースラインの6.13(SD 0.75)例から施策導入後2年の時点の5.96(0.98)例へとわずかに改善し、介入病院群では4.84(1.05)例から4.37(0.54)例に改善した。 ベースラインの30日死亡率は、対照病院群に比べ介入病院群で高かった(補正後オッズ比[OR]:1.34、95%信頼区間[CI]:1.09~1.64、p=0.0052)。導入後の30日死亡率は、対照病院群ではベースラインと有意な差は認められなかった(補正後OR:1.07、95%CI:0.97~1.17、p=0.18)が、介入病院群ではベースラインに比べ有意に低下した(0.89、0.84~0.95、p=0.0003)。 ベースラインから導入後2年までに、7日再入院率は対照病院群で増加した(補正後OR:1.06、95%CI:1.01~1.12、p=0.015)のに対し、介入病院群では増加しなかった(1.00、0.95~1.04、p=0.92)。 在院日数は、両群とも導入後に減少した(対照病院群:補正後発生率比[IRR]:0.95、95%CI:0.93~0.98、p=0.0001、介入病院群:0.91、0.89~0.94、p<0.0001)が、短縮の程度は介入病院群が対照病院群よりも顕著であった(補正後OR:0.95、0.92~0.99、p=0.010)。 ベースラインから導入後2年までに、病院の人員配置に変化がみられた。人員配置に関する信頼性の高いデータを持つ36病院のうち、ベースライン時に看護師1人当たりの患者数が4.5例以上の病院は30施設(83%)であったが、導入後は21施設(58%)に減少した。 これらの変化の大部分は介入病院群によるものであり、対照病院群と比較して介入病院群では、看護師1人当たりの患者数を1例削減することで、30日死亡率(OR:0.93、95%CI:0.86~0.99、p=0.045)、7日再入院率(0.93、0.89~0.97、p<0.0001)、在院日数(IRR:0.97、95%CI:0.94~0.99、p=0.035)がいずれも有意に改善された。 また、再入院率の抑制と在院日数の短縮で支出せずに済んだ費用は、看護師の増員に要した費用の2倍以上であった。 著者は、「最小限の看護師-患者比率を確立する施策は実行可能なアプローチであり、看護師の人員配置と患者転帰を改善し、投資利益率が向上すると考えられる」としている。

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バダデュスタットの貧血改善効果とMACEによる心血管安全性をダルベポエチンを対照薬として非劣性試験にて評価(解説:栗山哲氏)-1394

 バダデュスタット(Vadadustat:Vad)は、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)の阻害薬であり、HIFを安定化し内因性エリスロポエチン(EPO)の産生を刺激する。これに対して、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)であるダルベポエチンα(DA)は遺伝子組み換えEPOである。1990年代初頭から使われているESAは、腎性貧血改善による輸血量減少や患者QOL改善に加え、Cardio-Renal-Anemia(CRA:心・腎・貧血)症候群の改善が示唆されている。一方、HIF-PH阻害薬のCRA症候群に与える影響は現時点では不明である。 米国・スタンフォード大学Chertow氏らの研究グループは、Vadの有効性を評価した2件の第III相無作為化非盲検実薬対照非劣性試験(PRO2TECT study)の結果を報告した。研究では、ESAによる治療歴がなくヘモグロビン(Hb)値10g/dL未満の保存期CKD患者、およびESA治療歴がありHb値8~11g/dL(米国)または9~12g/dL(米国以外)の保存期CKD患者を、Vad群またはDA群に1対1の割合で無作為に割り付けた。主要安全性評価項目は、初発のMACE(全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)で、2件の試験を統合しtime-to-event解析により評価した。副次安全性評価項目には、拡張MACE(MACE+心不全あるいは血栓塞栓イベントによる入院)を組み入れた。 その結果、24~36週のHb値の平均変化量の群間差は、ESA未治療患者(1,751例)で0.05g/dL(95%CI:-0.04~0.15)、ESA既治療患者(1,725例)で-0.01g/dL(95%CI:-0.09~0.07)であり、事前に設定した非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。一方で、統合解析において、Vad群(1,739例)のDA群(1,732例)に対するMACEのハザード比は1.17(95%CI:1.01~1.36)で、事前に設定された非劣性マージン1.25を満たさなかった。つまり、Vadは貧血改善効果に関しては事前に設定した非劣性マージンを満たしたが、主要安全性評価項目であるMACEについては非劣性マージンを満たさなかった。本論文のMACEサブグループ解析をForest plotでみると、VadがDAに比較して非劣性を証明し得なかったことに影響した可能性のある因子(すなわちDAに有利に作用した可能性がある因子)として、(1)開始時Hb値が高い、(2)目標Hb値が高い(10~12g/dL)、(3)欧州民族(vs.米国)、(4)年齢が65歳未満、(5)ヒスパニックあるいはラテン系民族、(6)開始時eGFRが15mL/min/1.73m2以上、(7)開始時尿ACR 300g/kg以上、(8)開始時フェリチン値が中間値で277.5ng/mL以上、(9)開始時CRP 0.6mg/dL未満、などが示唆された。 本研究で用いられた実験デザイン「非劣性試験」は、なじみが少なく、その解釈に難渋する読者もあろう。“非劣性”とは、すでに有効な既存薬(この場合はDA)が存在し、新薬(Vad)は副作用が少ないなど既存薬よりも利点があるといった場合に、既存薬に対し有効性において優越性が証明できなくても、劣っていないことが証明できればそれでよし、とする研究に使われる。同等性を示すマージンが両側であるのに対し、非劣性試験では、新薬が既存薬より劣っていないかどうかのみに注目し、新薬が既存薬より優れているという優越性が成り立っても成り立たなくてもよいので、信頼区間は片側のみに注目する。本試験では事前に非劣性マージンとして1.25が心血管リスクの評価に用いられた。本研究のごとくMACEに関して「非劣性が証明されない」場合の解釈として、新薬(Vad)が既存薬(DA)に比べ「劣っている」のではなく、新薬が既存薬に比し「リスクが高い」ものでもない。本研究の結果を考えると、「VadがDAよりMACEリスク面で不利」とまでは言及できない。 以上、本研究のメッセージとしては、「VadはDAに比べてCKD患者の貧血改善効果は劣らないが、心血管安全性の面で結論が持ち越された」、と結論するのが妥当であろう。今後、HIF-PH阻害薬の治療目標、リスクとベネフィットなどをさらに明確にする目的で研究がデザインされ、その疑問に答える必要がある。

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DLBCL、研究・治療の最新状況を報告したNEJM論文をポイント解説【Oncologyインタビュー】第33回

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は悪性リンパ腫の一種であり、血液腫瘍の中で最も患者数が多い疾患である。2021年3月、NEJM誌に「Diffuse Large B-Cell Lymphoma」と題した、疾患名そのものをタイトルにした論文が掲載された。現在の初発・再発における治療戦略から今後の新薬の開発情報までがまとめられた、17ページにわたる本論文のポイントを、岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センターの遠西 大輔氏(血液・腫瘍内科 准教授)が解説する。インタビューはzoom形式で行われたこの論文は、著者2人がいずれも臨床医です。臨床医目線で病態の分類変更の背景など、最新知識をコンパクトにまとめたところに、まずは大きな価値があるでしょう。血液疾患の臨床に当たっている方であれば既知の情報も多いので、関心あるところと新たな知見の部分を重点的に読むとよいと思います。重要なポイントについて、パートごとに内容を読み解いていきましょう。Pathological Features and Molecular Classification最初は分子遺伝学的なまとめです。最近の分子の詳細な解析によって新たなサブタイプが登場している状況を解説しており、この内容はFigure 1Cにまとまっているのでこれを見るだけでもよいと思います。Staging and Response Assessment今後の臨床面で注目すべきは、一行だけ触れられている「リキッドバイオプシー」でしょう。世界的にも、血液腫瘍に対するリキッドバイオプシーを用いた遺伝子検査は保険承認されていませんが、数年内には臨床で使われるようになると予想されます。固形がん同様に、血液がんでも遺伝子変異のタイプに応じて治療戦略を選択し、効く薬剤を予測して使い分けるようになるかもしれません。ここで引用されている論文1)は、あまたあるDLBCLとリキッドバイオプシーに関する論文の中でも代表的なものなので、関心がある方はこちらの著者グループに注目するとよいと思います。Prognostic Factorsここでは長らく使われてきた、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)が改良され「NCCN-IPI」となったことが紹介されています。こちらの要旨はTable 3にまとまっているのでそれを確認するだけでもよいでしょう。Primary Managementここから進行期と限局期に分けて治療の話題に入っていきます。進行期の最適なレジメンを決めるまでのこれまでの経緯がまとめられていますが、CHOP療法にリツキシマブを追加したR-CHOP療法を6回投与、というのが現状の結論です。それに加え、現在進んでいるR-CHOPに他の薬剤を追加する複数の試験内容が紹介されています。この部分はこれからのDLBCL治療を考えるうえで非常に重要なポイントなのでじっくり読んでみてください。Management of Relapsed or Refractory Diseaseここでは、再発・難治のDLBCLに対する治療戦略が述べられています。若年層の患者には自家造血幹細胞移植(ASCT)を試みることがありますが、あまり成績がよくないことが示されています。次いで、現在の臨床を大きく変えつつあるCAR-T療法が紹介されています。CAR-T療法は国内では2年前に再発または難治性のDLBCLに対して承認され、ここでは臨床試験からリアルワールドまで最新のデータが紹介されています。承認当初に懸念されていた副作用についても想定より抑えられていることが示されています。そして最後は新薬の開発状況です。日本で今年3月に承認を受けたばかりの抗CD79bを標的とする抗体薬物複合体・ポラツズマブ ベドチンに関する臨床試験のデータをはじめ、現在開発中の新薬が、ターゲットとする分子や現状までの臨床試験の結果と共にまとまっています。それなりの数がありますが、今後臨床に登場してきそうな有望なものが選別されているのはさすがです(Table 4)。個人的には次世代の免疫チェックポイント阻害薬といわれる、マクロファージを使う抗CD47抗体にとくに注目しています。最終ページのfigure 2には、現在のDLBCL治療の全体がまとまっています。病態分類から始まり、再発や自家移植で寛解する割合や、それぞれの段階で行う治療戦略と薬剤が見やすくまとめられており、全体を俯瞰するうえで非常によくできた1枚です。図 原著論文のfigureを基にCareNet.com編集部作成画像を拡大する上部左の「High-Grade B-Cell Lymphoma」はWHO分類変更によって新たに登場したものです。特定の遺伝子変異を認める予後不良のものをDLBCLと分け、異なる治療戦略をとることになりました。真ん中の限局期・進行期では治療戦略には大きな変化はないものの、治験等で新たなレジメンを選択できる状況を示しています。そして右下のこれまで治療の手段がなかった2次・3次治療においても、CAR-T療法や免疫療法等によって治療を継続できる可能性が生まれており、今後も治療戦略は大きく進化していくでしょう。原著論文Sehn LH, et al. N Engl J Med. 2021;384:842-858.参考1)Kurtz DM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2845-2853.

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第61回 新たなコロナウイルス2つがヒトに侵入

マレーシアで2017~18年に肺炎で入院した患者8人からイヌのコロナウイルス、ハイチで2014~15年に急な発熱を呈した小児3人からブタのコロナウイルスが検出されました。マレーシアでの研究1-3)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行し始めの頃にデューク大学の感染症疫学者Gregory Gray氏が抱いた疑問に端を発しています4)。Gray氏は別の流行を引き起こしかねない他のコロナウイルスがすでにヒトを害しているかもしれないと考え、未知のものも含むあらゆるコロナウイルスの検出法の開発を大学院生に頼みました。大学院生のLeshan Xiu氏は期待以上に良い手法を生み出し、マレーシアのボルネオ島の病院に2017~18年に入院した肺炎患者301人の鼻拭い液検体がその手法で調べられました。その結果、1人を除いてあとはすべて小児の8人(2.7%)からそれまでにない新たなコロナウイルスが検出されました。見つかったウイルスのゲノムを調べたところイヌコロナウイルスとブタコロナウイルスの混成(キメラ)の様相を呈していましたが、大部分はイヌから過去に同定された2つのコロナウイルスに最も近く、培養イヌ細胞で増えることができました。オハイオ州立大学の動物コロナウイルス研究専門家で著者の一人Anastasia Vlasova氏によるとイヌのコロナウイルスがヒトに感染するとはこれまで考えられておらず、その報告もありませんでした4)。CCoV-HuPn-2018と名付けられたそのウイルスが患者の肺炎を引き起こしたのかどうかは不明ですが、もしそうであるならヒトを害する病原性コロナウイルスは8つに増えます。病原性が不明なのと同様にCCoV-HuPn-2018がヒトからヒトに感染するかどうかも分かっていません。他のイヌコロナウイルスにはなくてヒトに感染するコロナウイルスには存在する欠損変異がCCoV-HuPn-2018にはあります。その変異のおかげで種の垣根を越えうるようになったのかどうかを今後調べる必要がありますが、CCoV-HuPn-2018がヒトに広まる病原体となる可能性は否定できないとVlasova氏は言っています5)。今後の課題として、肺炎患者にCCoV-HuPn-2018がどれぐらい頻繁に認められるかどうかをさらに多くの検体を使って調べ、動物実験で病原性を確かめる必要があります。ハイチでの研究は同国の就学児の病気の把握を2012~20年に担当したチームの手によります6)。チームは急な発熱を呈した小児から2014~15年に採取した369の血液検体を調べ、その結果3人からブタのデルタ(δ)コロナウイルスが見つかりました。コロナウイルスはα、β、γ、δの4種類あり、ヒトに最も危険なコロナウイルス・SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoVはどれもβコロナウイルスに属します7)。ハイチの小児からの同定株が属するδコロナウイルスはかつて鳥にのみ感染すると考えられていました。しかしおそらく鳴禽類(songbird)から感染したらしいδコロナウイルスが2012年に香港のブタに認められています。2014年には同じδコロナウイルスが米国でブタに深刻な下痢疾患流行を引き起こしています。δコロナウイルスがヒトに流行した例はないもののヒト細胞に感染しうることは分かっています。マレーシアで新たに見つかったイヌ起源コロナウイルスが含まれるαコロナウイルスもδコロナウイルスと同様にヒトに流行したためしはありません。しかしいまやどちらもヒトで検出されており、今後も流行の心配はないと安心してはいられません5)。コロナウイルスはこれまで考えられていた以上に動物界を駆け巡っているようであり、調べれば調べるほどコロナウイルスが至るところで種の垣根を越えていることが判明するだろうとアイオワ大学のウイルス学者Stanley Perlman氏はScienceに話しています7)。われわれの与り知らないところですでにヒトに適応し始めている動物ウイルスが存在するかもしれず、ウイルスがヒトに病気を引き起こすようになる前にそれらを探し出さねばなりません。動物からヒトへのコロナウイルスの感染の頻度やヒトからヒトへの感染の可能性をもっと調べる必要があります7)。参考1)Vlasova AN, et al. Clin Infect Dis. 2021 May 20. [Epub ahead of print]2)New human coronavirus that originated in dogs identified/Ohio State University 3)Surveillance turns up new coronavirus threat to humans/Eurekalert4)New Coronavirus Detected In Patients At Malaysian Hospital; The Source May Be Dogs/NPR5)Two New Coronaviruses Make the Leap into Humans / TheScientist6)Emergence of porcine delta-coronavirus pathogenic infections among children in Haiti through independent zoonoses and convergent evolution. medRxiv. March 25, 2021.7)Two more coronaviruses can infect people, studies suggest/Science

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tezepelumab、コントロール不良の重症喘息患者に有効/NEJM

 コントロール不良の重症喘息成人/思春期患者の治療において、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)のヒト型モノクローナル抗体であるtezepelumabはプラセボと比較して、喘息の増悪が少なく、肺機能や喘息コントロール、健康関連QOLの改善効果が良好であることが、英国・Royal Brompton HospitalのAndrew Menzies-Gow氏らが実施した「NAVIGATOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年5月13日号で報告された。18ヵ国297施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、18ヵ国297施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年11月~2020年9月の期間に行われた(AstraZenecaとAmgenの助成による)。 対象は、年齢12~80歳で喘息と診断され、スクリーニングの12ヵ月以上前の期間に、中~高用量の吸入グルココルチコイドの投与を受け、インフォームドコンセントの3ヵ月以上前の期間に、経口グルココルチコイドの有無を問わず、少なくとも1剤の長期管理薬の投与を受けていた患者であった。 被験者は、tezepelumab(210mg)の4週ごとの皮下投与を52週間行う群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、52週時の喘息増悪の年間発生率とした。 1,061例が無作為化の対象となった。tezepelumab群に529例、プラセボ群に532例が割り付けられ、それぞれ528例(平均年齢±SD 49.9±16.3歳、男性36.6%)および531例(49.0±15.9歳、36.5%)が有効性と安全性の評価に含まれた。好酸球数低値例でも年間発生率を抑制 喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.80~1.07)で、プラセボ群の2.10(1.84~2.39)に比べ良好であった(率比:0.44、95%CI:0.37~0.53、p<0.001)。また、ベースラインの血中好酸球数が300/μL未満の患者における喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が1.02(95%CI:0.84~1.23)、プラセボ群は1.73(1.46~2.05)であり、有意な差が認められた(率比:0.59、95%CI:0.46~0.75、p<0.001)。 tezepelumab群はプラセボ群に比べ、ベースラインから52週までの気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)の変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]:0.1L)が大きく改善された(0.23L vs.0.09L、群間差:0.13L、95%CI:0.08~0.18、p<0.001)。 さらに、tezepelumab群では、6項目喘息コントロール質問票(ACQ-6、0[障害なし]~6[最大限の障害]点、MCID:0.5点)のスコアのベースラインからの変化(最小二乗平均値:-1.55点vs.-1.22点、最小二乗平均値の差:-0.33点、95%CI:-0.46~-0.20、p<0.001)が良好で、喘息QOL質問票(AQLQ、1[最大限の障害]~7[障害なし]点、MCID:0.5点)のスコアの変化(1.49点vs.1.15点、0.34点、0.20~0.47、p<0.001)、および喘息症状日誌(ASD、0[症状なし]~4[起こりうる最悪の症状]点、MCID:0.5点)の週平均スコアの変化(-0.71点vs.-0.59点、-0.12点、-0.19~-0.04、p=0.002)についても、大幅に改善された。 有害事象は、tezepelumab群が77.1%、プラセボ群は80.8%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ9.8%および13.7%に認められた。有害事象で試験薬の投与を中止した患者は、tezepelumab群が2.1%、プラセボ群は3.6%だった。頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎、上気道感染症、頭痛、喘息などであった。重症感染症(8.7% vs.8.7%)や注射部位反応(3.6% vs.2.6%)の頻度は両群で同程度であり、治療関連のアナフィラキシー反応やギランバレー症候群はみられなかった。 著者は、「血中好酸球数と呼気中一酸化窒素(FENO)、IgEの値が同時に低下したことから、本薬は複数の炎症経路を抑制することが示唆される。TSLPの阻害は、2型サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)を標的とするよりも、広範な生理学的効果をもたらす可能性がある」としている。

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第66回日本透析医学会学術集会・総会の開催について【ご案内】

 第66回日本透析医学会学術集会・総会が2021年6月4日~6月6日にパシフィコ横浜において開催される。今回もチーム医療、アドバンス・ケア・プランニング、共同意思決定、コミュニケーションなど多くのプログラムが用意されており、もちろん、新型コロナに関する話題も盛り込まれている。主要プログラムは、十分な感染対策を講じLIVE配信を併用するハイブリッド形式とし、来場しなくても全国どこからでも視聴できる。なお、学術集会終了後のオンデマンド配信は実施されない。 開催概要は以下のとおり。【日時】2021年6月4日(金)~6日(日)【参加条件】登録方法:オンライン参加登録[6月6日(日)16:00まで]参加費:ホームページ参照【テーマ】チームの俯瞰・発想・行動力~良質な医療とケアの発信~【大会長】岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院 副院長)【大会概要】本学術集会・総会のテーマは「チームの俯瞰・発想・行動力~良質な医療とケアの発信~」。透析チームが力を結集して良質な医療とケアを提供するために、グローバルな視野で、客観的な視点で現状を見渡して新しい課題を考え、豊かな発想力でその課題を克服するための研究を行い、その成果を世界に向けて発信することを目指す。【会長講演】6月6日(日)11:00~12:00[現地開催+LIVE配信]「良質な医療とケアを提供するコミュニケーションの実践」岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院)【招待講演1】6月4日(金)~ 6日(日) 9:15~9:50[WEB動画配信]「A Black Swan Visits Nephrology: the Impact of COVID-19 on ESKD Incidence and Outcomes in the United States」Eric D. Weinhandl氏(Chronic Disease Research Group, Hennepin Healthcare Research Institute, USA/Department of Pharmaceutical Care and Health Systems, University of Minnesota, USA)【招待講演5】6月6日(日) 8:00~8:45[WEB動画配信]「Current Status of the COVID-19 Pandemic in the United States and CDC Recommended Practices/Diabetes and Chronic Kidney Disease: US trends and public health programs to improve outcomes」Nilka Rios Burrows氏(Centers for Disease Control and Prevention, Division of Diabetes Translation, USA)【会長特別企画3】6月5日(土) 10:05~12:00[現地開催+LIVE配信]「良質な医療とケアを提供する『透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言』の正しい理解と普及を目指して」小松 康宏氏(群馬大学大学院医学系研究科医療の質・安全学講座)ほか【特別講演1】6月4日(金) 8:20~9:20[現地開催+LIVE配信] 「医療技術とシステム(COVID-19対策を含む)のグローバル展開」横倉 義武氏(弘恵会ヨコクラ病院)【特別講演4】6月5日(土) 10:00~10:50[現地開催+LIVE配信]「虚血性心疾患を有する慢性腎不全症例に対する治療戦略」天野 篤氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院心臓血管外科)【特別講演6】6月5日(土) 15:55~16:45[現地開催+LIVE配信] COVID-19のこれまで、そしてこれから」尾身 茂氏(独立行政法人地域医療機能推進機構本部)【特別講演13】6月6日(日) 10:00~10:50[現地開催+LIVE配信]「チーム育成とコミュニケーションのコツ」武田 美保氏(アテネ五輪シンクロナイズドスイミング銀メダリスト)【ワークショップ8】6月6日(日) 14:40~16:35[現地開催+LIVE配信]「透析に関する共同意思決定とアドバンス・ケア・プランニングの実践」岡田 一義氏(社会医療法人川島会川島病院)ほか詳細はこちら【お問い合わせ】第66回日本透析医学会学術集会・総会 運営事務局株式会社コングレ内〒103-8276 東京都中央区日本橋3-10-5 オンワードビルディングE-mail:jsdt2021@congre.co.jp

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