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慢性期外傷性脳損傷に初の再生医療 バンデフィテムセル発売/サンバイオ

 サンバイオが開発した細胞治療薬バンデフィテムセル(商品名:アクーゴ)が慢性期外傷性脳損傷(TBI)の治療に承認・発売された。2026年6月に行われた「アクーゴ脳内移植用注発売メディアセミナー」で紹介された基礎と臨床の専門家の知見を詳報する。不可能だと考えられていた脳神経細胞の再活性化を実現 再生医療においては幹細胞が非常に大きな役割を果たす。幹細胞には体を構成するほぼすべての組織に分化可能な多能性幹細胞(iPS細胞やES細胞)と一定の限られた細胞種に分化する体性幹細胞(間葉系幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞など)がある。体性幹細胞は生体組織に存在するため、選択的に増やすあるいは分離することで再生医療に活用できる。 サンバイオ創業科学者で慶応義塾大学再生医療リサーチセンターの岡野 栄之氏による、神経幹細胞マーカーであるRNA結合蛋白質Musashi-1の同定からバンデフィテムセル開発の歴史は始まる。岡野氏らはMusashi-1を活用し、ヒト成人脳に幹細胞があること、脳細胞が新たにニューロンを作っていることを見いだし、サンバイオと製品化に向けた共同研究をスタートした。 バンデフィテムセルはNotch-1細胞内ドメイン遺伝子をヒト骨髄由来の間葉系幹細胞に導入したヒト体性幹細胞加工製品。同細胞は脳内に元々存在するFGF-2などの増殖因子を分泌させることで、神経細胞が本来持つ再生能力を活性化して神経細胞の増殖・分化を促進する。STEMTRA試験が証明したバンデフィテムセルによる慢性期TBIの機能改善1) 川堀 真人氏が所属する北海道大学大学院医学研究科 脳神経外科はバンデフィテムセルの臨床試験であるSTEMTRA試験で最も多くの症例を登録した。川堀氏はTBI診療の最前線で、治らないと宣告される患者の絶望を目の当たりにしてきた。TBIは転落などの日常的な原因で発生し、多様な神経・認知機能障害を伴う疾患である。日本国内では年間約6万人発症、入院患者は1万2,000人とされる。急性期から回復期においては高次脳機能障害や運動機能障害が残る。 バンデフィテムセルを用いた国際共同治験STEMTRA試験は、日・米・ウクライナの多施設で実施された。プラセボ群に偽手術を採用した厳格な二重盲検試験である。頭部外傷後12ヵ月以上経過した患者を対象に、バンデフィテムセルを0個(プラセボ)、250万個、500万個、1,000万個投与の群に無作為に割り付けた。結果として、バンデフィテムセル(500万個)投与群ではFugl-Meyer運動機能スコア(FMMスコア)がプラセボ群に比べ6点(8.3点vs.2.3点)、有意に改善した(p=0.04)。川堀氏は「改善が目で見てわかるのはFMMスコア10点程度」だと言う。FMMスコア10点改善が見られた患者はバンデフィテムセル群で40%、プラセボ群では6%であった。 TBI後の機能改善が確認されたものの、バンデフィテムセルの効果には未解明な点も多々ある。川堀氏は「どの部位に、どの程度の細胞量を投与するのが最適か、そして高次脳機能障害への具体的な効果はどの程度か。これらは今後、実際の臨床現場で医師たちがデータを蓄積し、解明していくべき課題」と述べ、今後のエビデンス構築の重要性を訴えた。再生医療とリハビリテーションの新たな融合 慶應義塾大学リハビリテーション医学教室の川上 途行氏は、再生医療とリハビリテーションの融合が今後重要になると説く。 脳損傷において、急性期と回復期の間はリハビリテーション効果が発揮されるが、この期間を過ぎて慢性期になると治療選択肢は非常に少なくなる。多くのTBI患者は、この後どうやっていけばいいのかと不安を抱えることになる。 STEMTRA試験の成績について川上氏は「通常みられるFMMスコアの改善は2~3点程度。この数値であれば、患者さんも体が動くようになっていることを実感できるのではないか。最適なリハビリテーションを上乗せしたら、スコアはさらに上がる可能性がある」と言う。未来へのビジョン―適応疾患の拡大とグローバル展開 サンバイオ代表取締役社長である森 敬太氏は、25年にわたる開発の道のりを回顧しつつ、未来を見越す。TBIからはじまり、今後は脳梗塞、認知症、アルツハイマーなど、多くのアンメット・メディカル・ニーズに応えるべくバンデフィテムセルの疾患領域を拡大していくと表明した。また、日本だけでなく米国そして世界へと展開させる意向も示した。

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再発・難治性多発性骨髄腫、テクリスタマブ単剤でPFS延長(MajesTEC-9)/NEJM

 1~3ラインの治療歴のある再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療では、担当医選択のレジメンと比較してテクリスタマブは、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善し、その一方でGrade3または4の感染症の頻度が高いことが、フランス・ナント大学病院のCyrille Touzeau氏らが実施した「MajesTEC-9試験」で示された。テクリスタマブは、多発性骨髄腫細胞上に発現するB細胞成熟抗原(BCMA)とT細胞上に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年5月29日号で報告された。24ヵ国の無作為化第III相試験 MajesTEC-9試験は、日本を含む24ヵ国162施設で実施した非盲検無作為化第III相試験(Johnson & Johnsonの助成を受けた)。2023年4月~2025年4月に参加者を登録した。 対象は、抗CD38モノクローナル抗体およびレナリドミドを含む1~3ラインのレジメンによる治療歴があり、病勢が進行または直近のレジメンが奏効しなかった再発・難治性多発性骨髄腫の患者であった。 被験者を、テクリスタマブ(皮下投与)または担当医が選択したレジメン(ポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン[PVd]、カルフィルゾミブ+デキサメタゾン[Kd]のいずれか)を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。抗菌薬の予防投与と免疫グロブリン補充療法が推奨された。 主要評価項目はPFS(無作為化の日から病勢進行または死亡の日までの期間)とし、独立審査委員会が評価した。CR以上の達成率も有意に優れる 593例を登録し、テクリスタマブ群に296例、PVd/Kd群に297例を割り付けた。574例(テクリスタマブ群291例、PVd/Kd群283例)が実際に試験薬の投与を受け、PVd/Kd群のうち86例(30.4%)がPVd、197例(69.6%)はKdを受けた。 全体の年齢中央値は70歳(範囲:34~86)、173例(29.2%)が75歳以上で、290例(48.9%)が女性であった。前治療ライン数中央値は2(範囲:1~3)であり、128例(21.6%)が1ラインのみを受けていた。治療期間中央値は、テクリスタマブ群が13.1ヵ月、PVd/Kd群は7.0ヵ月だった。 追跡期間中央値17.3ヵ月の時点における推定18ヵ月PFS率は、PVd/Kd群が26.9%(95%信頼区間[CI]:21.1~33.0)であったのに対し、テクリスタマブ群は69.8%(95%CI:63.7~75.1)と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.29、95%CI:0.23~0.38、p<0.001)。 完全奏効(CR)以上(65.9%vs.16.8%、リスク比:3.95、95%CI:3.03~5.14、p<0.001)の達成率はテクリスタマブ群で有意に高く、全奏効(部分奏効[PR]以上:84.5%vs.54.2%、リスク比:1.56[95%CI:1.39~1.75])の達成率もテクリスタマブ群で高かった。 また、推定18ヵ月OS率についても、テクリスタマブ群で有意に良好だった(79.2%[95%CI:73.5~83.8]vs.68.6%[95%CI:62.4~74.0]、HR:0.60[95%CI:0.43~0.83]、p=0.002)。Grade3、4の有害事象の頻度が高い、厳密な感染予防策が重要 Grade3または4の有害事象は、テクリスタマブ群の84.9%、PVd/Kd群の76.3%に発生し、Grade5(死亡)の有害事象の発生率はそれぞれ6.5%および3.5%であった。 テクリスタマブ群では、サイトカイン放出症候群が66.0%に発生し、そのほとんどがGrade1(48.8%)または2(16.5%)で、Grade3は2例のみであり、Grade4または5は認めなかった。免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は4.1%にみられ、Grade1が2.4%、Grade2が1.4%で、Grade3の1例はテクリスタマブの投与中止に至った。 Grade3または4の感染症は、テクリスタマブ群で頻度が高かった(41.6%vs.29.0%)。致死的感染症は、テクリスタマブ群で16例(5.5%)、PVd/Kd群で8例(2.8%)に発生した。 著者は、「PVd/Kd群の3分の2以上が、後治療として二重特異性抗体療法またはCAR-T細胞療法を開始したにもかかわらず、テクリスタマブ群はCRの確率がより高く、OSがより延長した」「重篤な感染症のリスクがあるため、感染症管理では厳密な感染予防策と免疫グロブリン補充療法が不可欠である」としている。 また、「これらの結果は、多発性骨髄腫の2次治療およびそれ以降の治療選択肢として、テクリスタマブを基盤とし、グルココルチコイドの使用を控えるレジメンを支持するものである」と指摘している。

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外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺への細胞治療薬「アクーゴ脳内移植用注」発売/サンバイオ

 サンバイオは2026年5月21日に、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善を効能、効果又は性能とした細胞治療薬「アクーゴ脳内移植用注」(一般名:パンデフィテムセル、以下「アクーゴ」)の販売を開始したことを発表した。 アクーゴは、健康なドナーの骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養した後、神経再生能力を高めるためのヒトNotch-1細胞内ドメイン遺伝子を導入して作られる、ヒト(他家)骨髄由来加工間葉系幹細胞である。脳内の損傷した神経組織に移植することで、タンパク質の一種であるFGF-2などが放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する作用が示唆されている。 国内においては、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定され、2024年7月31日に条件及び期限付き製造販売承認を取得していた。また海外においては、米国食品医薬品局(FDA)よりRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定を、欧州では欧州医薬品庁(EMA)より先端医療医薬品(ATMP)の指定を受けている。 外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭部に外部から強い力が加わることで脳機能に障害をもたらす疾患であり、長期にわたり身体機能や認知機能、社会生活に影響を及ぼす慢性的な機能障害を伴うことから、大きなアンメットメディカル・ニーズが存在している。 アクーゴの有効性評価について、国際共同第II相臨床試験(TBI-01試験)の多施設共同偽手術対照無作為化二重盲検比較試験が米国、日本、ウクライナで実施された。主要評価項目である「24週目におけるFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの変化量」において、各用量群を併合したSB623群(46例)では8.3±10.6、偽手術群(15例)では2.3±4.7となり、有意な改善効果が認められた(p=0.0401)1)。【製品概要】販売名:アクーゴ脳内移植用注一般名:バンデフィテムセル効能、効果又は性能:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善薬価:72,716,528円用法及び用量又は使用方法:通常、成人にはヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞として、生細胞5×106個(300μL)の細胞調製液を、専用投与機器セットを用いた定位脳手術により、損傷した組織の周辺部に移植する。頭蓋骨の小孔1箇所を通り損傷周辺部に至る3つの移植経路から、1移植経路あたり細胞懸濁液100μLを最深部から5~6mm間隔で5箇所に、1箇所あたり20μL移植する。注入速度は約10μL/minとする。移植に際しては、以下を行うこと。1.手術開始前に脳神経外科用侵襲式頭部固定具に専用投与機器セットのガイド&ストップ、スタイレットを備えたインサーターを取り付ける。2.脳内移植用細胞剤を融解し、専用調製液を用いて洗浄した後、移植濃度1.67×106個/100μLになるように専用調製液で調製し、細胞懸濁液とする。専用投与機器セットの投与カニューラを固定したマイクロシリンジを専用調製液により清浄化した後、細胞懸濁液を充填する。製造販売承認取得日:2024年7月31日発売日:2026年5月21日製造販売元:サンバイオ株式会社

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再発・難治性DLBCLの第I~II相試験での奏効率、25年で倍増~メタ解析/Lancet Haematol

 再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の早期の相の試験における薬剤クラスごとの抗腫瘍効果と安全性の推移を系統的レビューおよびメタ解析で評価した結果を、オランダ・Amsterdam University Medical CenterのAnne M. Spanjaart氏らが報告した。2000~25年の25年間のデータを解析した結果、新規薬剤の登場により奏効率は2倍以上に向上し、治療関連死亡率は低く維持されていることが示された。Lancet Haematology誌2026年5月号に掲載。 本研究の対象は、2000年1月1日~2025年5月9日に公開された、成人の再発・難治性DLBCL患者を対象とした第I~II相試験で、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryを用いて検索し、試験薬剤単独またはCD20抗体併用療法のデータを抽出した。主要評価項目は奏効率(ORR)および完全奏効率(CRR)で、ランダム効果一般化線形混合モデルを用いて統合解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・最終的に132試験、7,786例(女性43%、男性57%)が解析対象となった。・全体のORRは30.5%(95%信頼区間[CI]:26.0~35.5)、CRRは14.3%(同:11.5~17.7)であった。・薬剤クラス別の奏効率は以下の順で高かった。 - CAR-T細胞療法ORR 70.0%/CRR 51.0% - 二重特異性抗体:ORR 46.0%/CRR 30.0% - 抗体薬物複合体:ORR 40.0%/CRR 18.0%・ORRは2000~08年の16.6%から、2018~2025年には36.8%へ2倍以上に向上した。・治療関連死亡率は0.6%(95%CI:0.4~1.0)と、期間を通じて1%未満を維持していた。・用量制限毒性/投与中止は6.0%、Grade3~4の有害事象は61.5%、非再発死亡は3.6%に認められた。 著者らは、「2000年以降、再発・難治性DLBCLの早期の相の試験における奏効率は、細胞療法や二重特異性抗体の導入により2倍以上に向上した。一方で治療関連死亡はきわめて低く抑えられており、これらのデータは臨床医や規制当局にとって、現在のリスク・ベネフィット傾向を把握するための重要な指標となる」としている。

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CD19-CAR-T細胞療法/日本造血・免疫細胞療法学会

 CD19キメラ抗原受容体T(CD19-CAR-T)細胞療法は、再発・難治性B細胞性悪性腫瘍に対する革新的な細胞免疫療法であり、急性リンパ芽球性白血病(ALL)や大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を中心に臨床実装が進んでいる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「CD19-CAR-T細胞療法」をテーマとしたシンポジウムが開催され、ALLやLBCLに対する治療の進化と課題、さらに治療アクセスの課題などを含めた包括的な議論が展開された。CD19-CAR-T細胞療法はすでに重要な治療選択肢として位置付けられている中で、その治療最適化に伴い、治療戦略の再設計や医療提供体制の整備などが同時に求められる段階に入っていることが示された。LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法の最前線 冒頭、米国のCaron Jacobson氏(米国・Dana-Farber Cancer Institute)は、LBCLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の現状と将来展望について、主要な臨床試験データを基に包括的に概説した。 まず、3つの主要臨床試験により、LBCLに対するCD19-CAR-T細胞療法(Axi-cel、Tisa-cel、Liso-cel)の長期寛解の可能性が示され、再発・難治性患者の約40%で長期寛解が達成されていることが確認された。さらに、長期寛解を維持している患者の多くが、CAR-T細胞投与後に微小残存病変(MRD)陰性を達成していることも示されている。 また、CD19-CAR-T細胞療法は治療戦略のタイミングにも大きなパラダイムシフトをもたらしている。ZUMA-7試験(Axi-cel)やTRANSFORM試験(Liso-cel)などの第III相試験では、ハイリスク患者に対して二次治療の段階でCAR-T細胞療法を早期導入することにより、従来の化学療法および自家幹細胞移植と比較して、無イベント生存率(EFS)が有意に改善することが示された。一方で、三次治療以降にCAR-T細胞療法を施行した患者では治療成績が低下する傾向がみられ、投与時期の遅れが治癒機会の減少につながる可能性が示唆された。さらに、リアルワールドデータ(CIBMTR解析)もこれらの知見を支持しており、併存疾患や攻撃的な疾患生物学的背景により臨床試験の対象外であった患者においても、有効性および安全性がおおむね再現されていることが示された。 続いて、次世代CAR-T細胞製品の開発動向が紹介された。CD19/CD20二重標的CAR-Tや、迅速製造プロセスを導入した製品(例:KITE-753)などが開発されており、T細胞の幹性(stemness)を維持・向上させながら毒性を抑制し、高い完全寛解率(CR)を確保することを目指している。また、CD19陰性再発への対応策として、CD22やB細胞活性化因子受容体(BAFF-R)を標的とするCAR-T細胞療法の可能性についても解説された。 さらに、患者側、T細胞側、腫瘍側の各因子は相互に影響し合い、CAR-T細胞療法の治療効果を規定していることが強調された。したがって、腫瘍微小環境、既存の免疫状態、ならびに最終的に投与されるT細胞製品の特性が治療アウトカムに及ぼす影響を総合的に理解することが、より精緻で多面的な治療戦略を構築するうえで不可欠となる。 最後にJacobson氏は、「現時点において、CD19-CAR-T細胞療法は高リスクLBCLに対する最も有力な治癒選択肢として確立されている。しかし、今後さらなる治療成績の向上を実現するためには、腫瘍微小環境の制御やT細胞機能の最適化に加え、患者個々の免疫学的背景を踏まえた個別化アプローチの導入が重要となる。これらを統合的に発展させることで、より安全かつ持続的な治療効果の達成が期待される」と締めくくった。ALLに対するCART療法の位置付け:小児・若年成人例を中心として 続いて、加藤 格氏(京都大学医学部附属病院 小児科)は、ALLにおけるCD19-CAR-T細胞療法の臨床的位置付けについて、小児および思春期・若年成人(AYA)世代を中心に概説した。 近年、ALLの治療成績は年代を追うごとに着実に向上している。治療プロトコールの改良や支持療法の進歩を背景に、生存率は全体として改善傾向にあり、とりわけ小児領域(0~14歳)では2000年ごろに5年全生存率が約90%に達するなど、きわめて良好な成績が得られている。一方で、初回治療後に再発を来した症例の予後は依然として不良であり、長年にわたり重要な臨床課題とされてきた。こうした状況の中、2014年以降(日本では2019年以降)にCD19-CAR-T細胞療法(Tisa-cel)が承認され、再発・難治例に対する治療戦略を大きく変える画期的治療法として位置付けられるようになった。 現在、日本で小児ALLに対するTisa-cel療法を実施可能な施設は35施設に及ぶ(造血幹細胞移植実施施設は71施設)。2019~21年にTisa-cel投与実績のあった11施設におけるリアルワールドデータ(42症例)の解析では、完全寛解率(CR/CRi)93%、MRD陰性化率97%と高率であり、1年全生存率(OS)は82%、1年EFSは56%と良好な成績が示された。これらは国際共同第III相試験(ELIANA試験)などと比較しても遜色のない結果であり、日本の実臨床においても高い有効性と再現性が確認された。 治療成績に影響を及ぼす因子についても検討が進んでいる。遺伝子異常は従来の化学療法では重要な予後因子であったが、CD19-CAR-T細胞療法の初期反応性には大きな影響を与えないとされる。ただし、KMT2A遺伝子再構成例では再発時に骨髄性白血病への形質転換を来しやすく、予後不良であることから慎重な経過観察が必要である。また、投与時の残存腫瘍量も重要であり、低腫瘍量であるほど望ましいが、造血細胞移植とは異なり、必ずしも投与前にMRD陰性化を達成する必要はない。骨髄中芽球比率が5%未満にコントロールされていれば、十分な治療効果が期待できるとされている。さらに、ブリナツモマブの先行使用については、理論上はCD19発現低下が懸念されるものの、現時点では治療成績に重大な悪影響を及ぼすとは示されていない。 CD19-CAR-T細胞療法後の造血幹細胞移植の適応については、「全例に実施するか」ではなく、「どの症例に実施すべきか」という個別化医療の観点から議論されている。再発リスクや持続的寛解の可否、CAR-T細胞の持続性などを踏まえたリスク層別化が重要である。とくに、B細胞無形成が6ヵ月未満で回復する症例や、投与後28日目の次世代シーケンシング(NGS)でMRD陽性が確認される症例では、再発リスクが高い可能性があり、追加移植を検討すべきとされる。 このように、CD19-CAR-T細胞療法はALL治療のパラダイムを大きく変革した。今後は、治療後に一律に移植を行うのではなく、B細胞回復動態や遺伝学的背景などを踏まえ、患者ごとに最適な後療法を選択する個別化治療の重要性がいっそう高まっている。CAR-T 治療アクセスを向上させる体制整備 最後に、加藤 光次氏(九州大学病院 血液・腫瘍・心血管内科)は、日本におけるCD19-CAR-T細胞療法のアクセス格差と、その解消に向けた体制整備に関する現状と課題について論じた。 CD19-CAR-T細胞療法は国内導入から7~8年が経過し、再発・難治性びまん性LBCLを中心に実臨床で定着している。累積症例数は3,000例以上に達し、全国レジストリを通じて長期フォローを含むリアルワールドデータが蓄積されつつある。細胞治療ワーキングの解析では、2019~21年と2022~23年を比較して治療成績は改善傾向を示した。支持療法の標準化、患者選択の適正化、治療プロセスの成熟がその背景にあると考えられる。一方で、患者からT細胞を採取するアフェレーシスから、製造されたCAR-T細胞を輸注するまでのVein-to-Vein(V2V)期間は中央値約60日と、大きな短縮には至っていない。海外では米国約50日、欧州約66日と報告され、約2週間の差が無増悪生存率に20%以上の影響を及ぼしうることが示唆されている。国内データでもV2V延長は予後不良と関連しており、時間的ボトルネックの解消は喫緊の課題である。V2Vは単なる製造期間ではなく、紹介タイミング、施設選択、情報共有など、医療システム全体の「アクセス設計」によって規定される指標となる。 こうした課題に対し、日本造血・免疫細胞療法学会主導の下、企業と連携して全国共通の紹介フォームが整備された。病歴、治療歴、病勢、検査値などを標準化フォーマットで共有することで、紹介の迅速化と情報の質向上を図るものである。これは同時にリアルワールドデータの精度向上にも寄与する。また、施設偏在の是正を目的としたマッチングアプリ構想も進行中である。紹介元が患者情報を入力すると、各施設の受け入れ状況を踏まえた候補が提示される仕組みで、地域研究を経て全国展開が検討されている。 約4%で発生し、現在治験薬として提供されている規格外製品(Out of Specification:OOS)への対応も重要な論点である。OOS投与例の解析では、Grade3以上のサイトカイン放出症候群(CRS)13%、Grade3以上の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)4.3%と、安全性はおおむね許容範囲内であった。完全寛解率も約40%と一定の有効性が示されている。薬機法改正により、市販後の枠内での適切な提供の位置付けと長期データの構築が求められる。 長期安全性の観点では、CAR-T細胞療法後二次がんが焦点となる。海外では発症率約4%と報告され、T細胞リンパ腫の発症もまれながら注目を集めている。CAR-T関連T細胞リンパ腫疑い例ではCAR遺伝子の確認や挿入部位解析を行い、企業と連携した検査体制が整備されつつある。さらに、妊娠例に対する対応や、全身性エリテマトーデスなど自己免疫疾患への応用も進み、診療科横断的な連携体制の構築が新たな課題となっている。 加藤氏は次のように述べて講演をまとめた。「経済面では、日本の薬価は欧米より低水準に設定されており、企業の採算性低下によるドラッグロスが懸念される。持続可能なアクセス確保には、アカデミアによる質の高いリアルワールドデータの提示、企業の開発意欲の維持、国による適正な価格・償還制度設計が不可欠である。CD19-CAR-T細胞療法の均てん化とは、紹介標準化、V2V短縮、安全性監視、経済的持続性を包含する包括的なアクセス再設計にほかならない。全国的な連携強化が、次世代細胞療法時代の基盤整備につながることが期待される。」

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第314回 1人の女性の3つの自己免疫疾患が元凶のB細胞を駆除する自己T細胞投与で解消

ドイツの1人の女性を苛む3つの自己免疫疾患が、それらの元凶の悪辣なB細胞を駆除するように仕立てた自己T細胞で雲散霧消し、かつては10あまりの治療を受けたのが嘘のように、さらなる治療なしで1年超を無事で過ごせています1-3)。3つの自己免疫疾患はどれも免疫系の狼藉なB細胞が作る自己抗体に端を発します。その1つの自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、自己抗体が赤血球を破壊することを原因とします。あと2つの自己免疫疾患の症状はまるで正反対で、その1つは血小板への自己抗体を原因とする免疫性血小板減少症(ITP)で、出血を生じやすくします。もう1つの抗リン脂質症候群は、凝固を防ぐタンパク質への自己抗体を原因とし、ITPとは反対に血栓症を生じやすくします。診断の後に女性は抗体薬、ステロイド、免疫抑制薬を含む9種類の治療を試みました。長期の高用量ステロイド投与は唯一のめぼしい治療ですが、免疫系全般を抑制する故に感染症の危険と背中合わせです。そのステロイドでさえ歯が立たず、さらには最先端も免疫抑制薬の手にも負えず、女性は診断から10年超を経た2025年、47歳のときにドイツのエルランゲン大学病院の血液専門医Fabian Muller氏のチームの下へ救急搬送されました。Muller氏のチームは、自己免疫疾患のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の先駆けの試験で知られ、2022年には全身性エリテマトーデス(SLE)患者5例がその治療で寛解したことを報告しています4)。貧血の治療に毎日の輸血を要し、血栓症を防ぐための抗凝固薬を続けていた女性にMuller氏らは、同氏いわく最後の砦であったCAR-T細胞療法を施しました。投与したCAR-T細胞は女性から採取したT細胞を加工して作られ、B細胞のタンパク質のCD19を認識します。その働きによりB細胞を見つけ出し、除去することができます。体内で分裂でき、その効果は投与後に数年、なんなら10年も持続しうることが知られます。痛みや疲れで何週間も寝たきりで過ごすこともあった女性へのCAR-T細胞投与の効果は目覚ましく、その投与の1週間後を最後に輸血が不要になりました。2週間も経つと女性はより力がみなぎっていると感じ、日々の所作が可能になりました。3週間後には赤血球のタンパク質のヘモグロビン量が倍増して正常域となり、どうやら免疫系は赤血球を破壊しなくなっているようでした。血栓と関連する抗リン脂質抗体は徐々に減って見当たらなくなり、血小板数も安定に推移するようになりました。一回きりのCAR-T細胞投与から14ヵ月経つ今日、女性は薬を一切使うことなく無症状で過ごせています3)。がんのCAR-T細胞療法の先駆者の1人のCarl June氏によると、今や種々の自己免疫疾患のCAR-T細胞療法の200あまりの臨床試験が進行中です。これまではCAR-T細胞療法といえば主に白血病などの血液がんが相手でしたが、自己免疫疾患を治療するCAR-T細胞療法の承認がSLE、筋炎、強皮症用途を皮切りにして続くだろうとJune氏は予想しています3)。いくつかは向こう2~3年以内に米国で承認に漕ぎ着けそうです。参考1)Korte IK, et al. Med. 2026 Apr 9. [Epub ahead of print]2)CAR-T therapy drives remission in patient with three autoimmune diseases / Eurekalert3)One woman, three autoimmune diseases: CAR-T therapy vanquishes ultra-rare disease trio / Nature4)Mackensen A, et al. Nat Med. 2022;28:2124-2132.

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CAR-T liso-cel、再発・難治性辺縁帯リンパ腫に有効/Lancet

 再発または難治性の辺縁帯リンパ腫(MZL)患者において、CD19を標的とするCAR-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel、商品名:ブレヤンジ)は持続的な高い奏効率を示し、安全性プロファイルは管理可能であり、新たな安全性シグナルは認められなかった。米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのM. Lia Palomba氏らが、米国、カナダ、欧州、日本の30施設で実施した国際共同第II相試験「TRANSCEND FL試験」におけるMZLコホートの主要解析結果を報告した。再発または難治性のMZLに対する持続的で深い奏効を示す有効な治療法は、いまだ確立されていない。著者は、「今回の結果は、再発または難治性MZLに対する新たな治療選択肢としてリソカブタゲン マラルユーセルを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年2月12日号掲載の報告。2レジメン以上の治療歴がある再発・難治性MZL患者が対象 研究グループは、少なくとも1レジメンの抗CD20抗体とアルキル化剤による併用療法を含む2レジメン以上の全身療法を受けた再発または難治性のMZL(スクリーニング前6ヵ月以内に組織学的に確認)成人患者に、リソカブタゲン マラルユーセル(CAR発現生T細胞100×106個)を投与した。 リソカブタゲン マラルユーセルの製造中は、必要に応じて病勢コントロールのためのブリッジング療法は可とした。ブリッジング療法を実施した場合は、リンパ球除去化学療法開始前にCTによる測定可能病変の再評価を必須とした。 主要エンドポイントは、Lugano分類(2014)に基づきCTにより独立評価委員会が判定した奏効率(ORR)で、帰無仮説は≦50%とした。ORRは95%、24ヵ月奏効持続割合は89% 2020年11月11日~2023年8月24日に77例が登録され、白血球アフェレーシスが実施された。このうち67例にリソカブタゲン マラルユーセルが投与され、ブリッジング療法後のCTによる再評価がなかった1例を除く66例が有効性解析対象集団となった。 67例の患者背景は、年齢中央値が62歳(四分位範囲[IQR]:57~71)で、MZLのサブタイプは節性MZLが32例(48%)、脾MZLが18例(27%)、節外性-粘膜関連リンパ組織MZLが17例(25%)であり、前治療レジメン数中央値は3(IQR:2~4)であった。 追跡期間中央値24.1ヵ月において、ORRは95%(63例)(95%信頼区間[CI]:87.3~99.1)であり、主要エンドポイントは達成された(片側p<0.0001)。 副次エンドポイントである奏効期間は、中央値に未到達で、24ヵ月奏効持続割合は89%(95%CI:72.4~95.6)であった。 治療中に発現した有害事象は、67例全例に認められた。Grade3のサイトカイン放出症候群ならびに神経学的イベントはそれぞれ3例(4%)に発現が認められた(両群ともGrade4~5の事象はなし)。Grade3以上の感染症は11例(16%)にみられ、6例(9%)は投与終了後90日以内の発症で、7例(10%)は同90日後以降の発症であった。

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第304回 iPS細胞治療の心筋シートとドパミン神経前駆細胞に「仮免許」、承認期限7年、待ち受ける有効性証明の高くて険しい壁

マスコミの多くは「世界初」を喧伝、心臓病やパーキンソン病の患者を登場させて「期待感」を語らせるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。冬季オリンピックが終わってしまいましたね。日本時間では深夜から早朝にかけての競技が多く、テレビ観戦するにはなかなか大変でしたが、スピードスケートの高木 美帆選手の試合を中心にいくつかの競技をライブで観ました。個人的に興味があり応援していたのは女子のチームパシュート(団体追い抜き)です。3人で走る姿が競輪のラインに似ているのと、1周ごとに相手チームとの差が目視できてハラハラするのがこの競技の魅力です。準決勝でオランダにわずか0.11秒差で負けましたが、3位決定戦では米国に完勝、「銅だ!すごい!」とマスコミはこぞって高木選手らを祝福しました。しかし、そうした祝福の陰で厳しい批評もありました。2月20日付の日本経済新聞朝刊スポーツ面のコラム「透視線」で日体大教授の青柳 徹氏(高木選手の日体大時代の恩師)は銅メダルについて「もっといい色にできるはずだし、やれることがあったのではないか」と書き、「最後の3人目のライン通過時が記録となるため、縦一列に並ぶより、最後の直線で後ろの選手が横に出て先頭に詰めた方がわずかでもタイムは縮まるはずだ」と縦一列ゴールに疑問を投げ掛けていました(優勝したカナダは確かにこの方式でした)。メダルを取っても厳しい言葉を掛けられるのは、恩師だからこそと言えそうです。それにしても、後ろの2人の選手が前の選手のお尻を押すプッシュ戦術や、ゴール前にバラける戦術など、チームパシュートという競技の面白さの一端を知ることができた冬のオリンピックでした。さて、今回は先週、製造販売が了承されたiPS細胞製品について書いてみたいと思います。厚生労働省の薬事審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は2月19日、iPS細胞から作った心臓病とパーキンソン病の再生医療製品2製品について、条件及び期限付きで製造販売を承認することを了承しました。2製品は近日中(1〜2ヵ月以内)に厚労相が正式に承認する予定です。承認されればiPS細胞として世界初、ES細胞を含む多能性幹細胞としても世界初の承認となるそうです。マスコミの多く(とくに民放のニュース)は、「世界初」を喧伝、心臓病やパーキンソン病の患者を登場させて「期待感」を語らせるなど、まるで金メダルを取ったかのような大騒ぎぶりでした。果たして、そんなに大きな期待を抱いてもよい「承認」なのでしょうか。左室駆出率が移植前と比較して改善していると評価された患者数は8例中2例のリハート製造販売が了承されたのは、大阪大学発のベンチャー、クオリプスが重症心不全を対象に承認申請していた他家iPS細胞由来心筋細胞シートの「リハート」と、住友ファーマがパーキンソン病を対象に承認申請していた他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞「アムシェプリ」です。リハートは京都大学iPS細胞研究財団が提供している他家iPS細胞株を心筋細胞に分化誘導し、未分化細胞を除去した上でシート状に成形した製品。標準治療で効果不十分な虚血性心筋症による重症心不全の治療を効能・効果または性能としています。開胸手術によって、シート3枚を患者の心臓表面に移植して使います。大阪大学大学院医学系研究科の澤 芳樹名誉教授の研究成果を基にしており、昨年の大阪・関西万博での展示でも大きな話題となりました。条件及び期限付承認の根拠となった臨床試験の成績では、主要評価項目である、移植後26週時点の心エコー図検査によるLVEF(左室駆出率)が移植前と比較して改善していると評価された患者数は8例中2例でした。その他の項目も踏まえ有効性を評価した結果、「有効性が示唆されると判断された」ものの、被験者が少なかったことから条件及び期限付承認となりました。承認期限は7年で、「正式承認を申請するまでの期間、リハートを使用する全症例に対する製造販売後承認条件評価を行うこと」、「正式承認を申請するまでの期間、リハートの作用機序を反映する生物学的特性に関して情報収集すること」などの条件が付けられ、「リハート群75例と対照群150例を比較する臨床研究として使用成績調査を行う」などの市販後調査も求められました。6例について主要評価項目でパーキンソン病の重症度を示すスコアが改善したアムシェプリ一方、アムシェプリは京都大学iPS細胞研究財団の髙橋 淳所長が開発を主導した薬剤です。同財団が提供している他家iPS細胞株からドパミン神経前駆細胞を誘導して作製します。「レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病患者の運動症状の改善」を効能・効果または性能としています。ドパミン神経前駆細胞を定位脳手術により、両側の被殻に移植(大脳被殻片側あたり5.4×10^6個を目標)して使います。ドパミン神経前駆細胞が患者の脳に生着し、ドパミンを産生して治療効果を示すことが期待されています。条件及び期限付承認の根拠となった臨床試験の成績では、7例を対象とし、片側にしか投与しなかった患者を除いた6例について、主要評価項目でパーキンソン病の重症度を示すスコアが改善したとのことです。また、6例全例で、移植後12ヵ月・24ヵ月時点で他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞が大脳被殻に生着していました。こちらも被験者が少なかったことから条件及び期限付承認となりました。承認期限も同じく7年で、「正式承認申請までの期間、アムシェプリを使用する全症例に対する製造販売後承認条件評価を行うこと」などの条件が付けられ、「既存の薬物治療で十分な効果が得られなかったパーキンソン病患者に対してアムシェプリの有効性と安全性を評価する製造販売後臨床試験」、「アムシェプリが移植された全ての患者に対する使用成績調査」などの市販後調査も求められました。なおリハートと異なり、ドパミンの作用がすでに明確であることから、作用機序の解明は承認条件に含まれませんでした。日本独自の再生医療等製品の条件及び期限付承認制度のおかげ日本経済新聞や朝日新聞などの報道では、記事の見出しに「仮免許」という言葉が使われています。リハート、アムシェプリともに被験者は1桁と少なく、「症状が改善した」と言っても比較対象試験が行われているわけではないので「効果あり」と科学的に判定されたわけではありません。7年以内にそこを証明しないと「仮免許」は取り上げられてしまいます。「承認」とは言え、なかなかに厳しい「条件及び期限」と言えます。そんな不十分な成績なのに「承認」されたのは、日本独自の再生医療等製品の条件及び期限付承認制度のおかげと言えます。2014年11月、薬事法が改正されて薬機法となった際に新たに導入された同制度は、対象患者が少なかったり対照群の設定が難しかったりなどで一般的な規模の第III相臨床試験を実施できない場合などに活用される仕組みです。有効性の確認前でも、早期の臨床試験データから有効性が推定されれば、条件や期限付きで承認が与えられますが、7年を超えない範囲で有効性、安全性を検証した上で、再度承認申請して正式承認を取得する必要があります。条件及び期限付承認を取得した製品はこれまで6つ、正式承認に至った製品はなく2つは撤退資金、労力、時間がかかる第III相臨床試験を実施しなくても製品を販売できる仕組みとして、再生医療等製品の開発に取り組む製薬メーカーは大きな期待をかけ、活用してきた同制度ですが、10年以上を経てその結果は芳しくありません。条件及び期限付承認を取得した製品はこれまで6つあるものの、有効性を確認して正式承認に至った製品はゼロです。「厚労省部会、他家iPS細胞由来のクオリプスの心筋細胞シートと住友ファーマのドパミン神経前駆細胞の条件及び期限付承認を了承」のタイトルで2月22日、今回の期限付承認を報じた日経バイオテクは、同制度について「近年は、条件及び期限付承認を取得しても、開発企業は安心できない実情が浮き彫りになってきた。というのも、条件及び期限付承認を取得して本承認を目指していた、アンジェスの『コラテジェン』(ベペルミノゲンペルプラスミド)とテルモの『ハートシート』(ヒト[自己]骨格筋由来細胞シート)が、それぞれの承認期限近くの2024年6~7月、相次いで市場から撤退したためだ。(中略)2製品が撤退したのは、市販後調査で良好なデータを示せなかったことの影響が大きい」と書いています。国としては、今のタイミングでiPS細胞治療の芽を摘んでしまうという選択肢はなかったのかもiPS細胞治療については、本連載の「第282回 なかなか実用化にこぎつけられないiPS細胞治療、神戸アイセンター病院の網膜細胞治療について『先進医療』とするのは『不適』の判断」で、神戸アイセンター病院の網膜細胞治療が昨年8月、厚生労働省の先進医療技術審査部会において「先進医療」とするのは「不適」であると判断されたというニュースを取り上げました。この時は、「治っているかどうか患者が実感できない高額な治療法に、先進医療とは言え、保険診療を併用させることはNG」という判断だったわけですが、今回については「治っているかどうかよくわからないが、とりあえず承認しておくから7年で有効性をちゃんと証明しろ」ということのようです。随分無責任な「仮免許」と言えますが、うがった見方をすれば、これも高市政権の成長戦略の影響ということができるかもしれません。政府の「日本成長戦略会議」において「直ちに実行すべき重要施策」として挙げられた17項目の戦略分野の中には「合成生物学・バイオ」と「創薬・先端医療」が入っており、「さあこれから」という時に、iPS細胞治療の芽を摘んでしまうという選択肢は国としてはなかった、と見る向きもあります。テルモのハートシートに比べ、リハートの市販後調査のエンドポイントはなぜだか緩いiPS細胞治療の業界に詳しい知人に、リハート・アムシェプリの正式承認の可能性について尋ねたところ、「リハートと類似の製品で、骨格筋由来細胞シートだったテルモのハートシートが良好なデータを示せず撤退を余儀なくされた理由の1つは、市販後調査において心臓疾患関連死までの期間など、かなりハードなエンドポイントを課せられていたためだ。リハートの市販後調査のエンドポイントは、なぜかそこまでハードに設定されておらず、とても緩い印象だ。本当に効くかどうかは別にして、ハートシートに比べると承認のハードルは低いと言える。一方、アムシェプリは、パーキンソン病の重症度を評価する国際尺度がエンドポイントに課せられているので、そこそこハードルは高い印象だ」と話していました。エンドポイントを低くして、承認を容易くしたとしても、実際の効きが悪ければ医師は使用しませんし、世界でも売れないでしょう。オリンピックと同様、世界標準で戦う必要がある製品だとしたら、手心(かどうかはわかりませんが)は結局はマイナスに働くのではないでしょうか。iPS細胞治療の実用化に向けては、長く険しくゴールが見えないレースがまだまだ続きそうです。

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自己免疫性溶血性貧血、抗CD19 CAR-T細胞療法が有用/NEJM

 難治性自己免疫性溶血性貧血(AIHA)患者において、CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法(抗CD19 CAR-T細胞療法)は予想された毒性を示し、持続的な寛解をもたらしたことを、中国・Institute of Hematology and Blood Diseases HospitalのRuonan Li氏らが報告した。AIHA患者は持続的な自己反応性B細胞活性により、再発のリスクが高い。難治性AIHAは3ライン以上の治療に対して寛解が得られない、より進行した病態であるが、抗CD19 CAR-T細胞療法はB細胞を著しく減少させて難治性AIHAに対するドラッグフリー寛解を達成する、有用な治療法となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2026年1月15日号掲載報告。適応外使用/第I相の試験参加者のうち、適格患者に抗CD19 CAR-T細胞を投与 研究グループは、適応外使用プログラムまたは第I相試験に参加していた原発性の難治性AIHA患者をスクリーニングし、本検討に登録した。適格基準は、温式、冷式または混合AIHA、もしくはエバンス症候群を含む原発性AIHAと診断され3ライン以上の治療を受けたが長期的な疾患コントロールが得られず、スクリーニングでヘモグロビン値が10g/dL未満、ECOG PSが2以下、肝臓や肺など臓器機能が十分あることであった。 自己の抗CD19 CAR-T細胞を、適応外使用プログラムの患者には1.0×106/kg、第I相試験の患者には0.5×106/kgまたは1.0×106/kgを単回投与した。 検討では、安全性(サイトカイン放出症候群および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群を含む有害事象の発現、特徴、重症度)の評価を第一とし、次いで有効性(完全奏効は、症状消失、ヘモグロビン値の上昇、溶血マーカーの正常化)および薬物動態を評価した。B細胞の再構築および再発の原因は、フローサイトメトリー、シングルセルRNAシーケンシング、およびシングルセルB細胞受容体シーケンシングによって解析された。安全性プロファイルは予想どおり、長期寛解を含む迅速な寛解を達成 2023年9月~2024年10月に、11例が登録され(適応外使用5例、第I相試験6例)、抗CD19 CAR-T細胞が投与された。 追跡期間中央値12.2ヵ月(範囲:7.3~21.9)において、11例全例が完全奏効を示し、完全奏効までの期間中央値は45日(範囲:21~153)、ドラッグフリー寛解期間の中央値は11.5ヵ月(範囲:6.8~21.0)であった。 Grade1または2のサイトカイン放出症候群が9例、Grade1の免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群が1例、Grade3の免疫エフェクター細胞関連血液毒性が1例に認められた。7例に計15件の感染症が発生したが、Grade4以上の感染症は認められなかった。 連続検体のマルチオミクス評価では、ドラッグフリー寛解が得られた患者における再構成B細胞集団はナイーブB細胞が優勢で、HLA-DRB5+B細胞、CD4+T細胞、およびB細胞成熟抗原を発現する長寿命形質細胞間のクロストークが、再発特異的B細胞ニッチの形成に寄与していた。

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ASCO多発性骨髄腫ガイドライン改訂、移植適応初回治療に4剤併用を推奨など/JCO

 米国臨床腫瘍学会(ASCO)・Ontario Health(Cancer Care Ontario)による多発性骨髄腫治療に関するガイドラインの改訂版が、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2026年1月6日号に公表された。ASCOおよびOntario Health(Cancer Care Ontario)の合同の専門家パネルが論文の系統的レビューを実施し、同定された161の無作為化試験における217論文を基に治療推奨が作成された。 改訂された主な推奨箇所は以下のとおり。・高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫には、積極的モニタリングのほかダラツムマブ(最長36ヵ月)が推奨される場合がある。・移植適応患者の初回治療には、ダラツムマブもしくはイサツキシマブ+ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾンの4剤併用療法(D-VRd/Isa-VRd)を実施すべきである。維持療法には、ダラツムマブ、カルフィルゾミブ、デキサメタゾンの併用の有無にかかわらず、少なくともレナリドミドによる維持療法を実施すべきである。・移植不適応患者には、D-VRd/Isa-VRdの4剤併用療法を実施すべきである。・再発・難治性多発性骨髄腫には、推奨される原則に基づいて3剤併用療法もしくはT細胞リダイレクト療法(CAR-T細胞療法、二重特異性抗体)を実施すべきである。

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大細胞型B細胞リンパ腫へのCAR-T細胞療法、投与時刻が効果に影響か/Blood

 概日リズムは免疫活性化とエフェクター機能を調節するが、日内リズムがキメラ抗原受容体(CAR)細胞療法のアウトカムに影響するかはわかっていない。今回、米国・Weill Cornell Medical CollegeのDanny Luan氏らによる再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者における国際多施設共同後ろ向き研究で、CAR-T細胞投与のタイミングが治療効果に影響しうることが初めて示唆された。Blood誌オンライン版2025年12月23日号に掲載。 本研究は、2017~25年に7施設でCD19標的CAR-T細胞療法を受けた再発・難治性LBCLの成人患者1,052例を対象に実施した。 主な結果は以下のとおり。・投与時刻の中央値は11:48am(四分位範囲:11:06am~12:45pm)であった。・投与時刻が1時間遅いと、施設・製剤・主な臨床変数を調整後も進行・再発・死亡リスクが増加した(ハザード比:1.11、95%信頼区間:1.03~1.20、p=0.004)。・1年無増悪生存(PFS)率は、12:00pmより前の早期投与群で51.4%、12:00pm以降投与群で35.2%であったが、全生存率は両群で同等であった。・PFSのベネフィットは、早期投与群における低い再発率と高い完全奏効率に起因していた。・免疫関連有害事象に差は認められなかったが、12:00pm以降投与群は炎症マーカーの高いピーク値と7日目の低いCAR-T細胞増殖と相関した。 著者らは「このデータはCAR-T細胞投与のタイミングが治療効果に影響する可能性を示す初の臨床的エビデンスであり、概日リズムを考慮した投与戦略の前向き評価を支持する」としている。

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ヌシネルセンの高用量処方はSMA患者のQOLをさらに改善する/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、2025年9月19日に脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬ヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤型(28mg製剤、50mg製剤)について、新用量医薬品/剤形追加の承認を取得した。わが国は世界初の両剤型の承認・販売国となり、この承認を受け、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、SMAの疾患概要、治療の変遷、患者のニーズなどに関する講演などが行われた。高用量ヌシネルセンで筋力維持などができる可能性へ 「脊髄性筋萎縮症の治療 スピンラザ高用量投与を迎えて」をテーマに、長年本疾患の研究に携わってきた齋藤 加代子 氏(東京女子医科大学名誉教授/瀬川記念小児神経学クリニック)が、SMAの疾患概要と治療の課題などを解説した。 SMAは、脊髄における前角細胞(運動神経細胞)の変性による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする下位運動ニューロン病であり、発症年齢などの区分により0~IV型まで5つの型がある。 わが国の発生率は出生1万人当たり0.51例、有病率は人口10万人当たり1例とされ、8割以上の患者が2歳までに発症しているために新生児マススクリーニングが早期発見のために重要と齋藤氏は指摘する1)。 SMAの治療で使用されるヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)であり、運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。 治療では開始時期により運動機能の改善効果もみられ2)、早期診断と早期治療が重要であり、現在では国の実証事業として新生児のマススクリーニング検査がほぼ全国で行われている。 こうした診療環境の中でSMAの全病型で最も多く報告されたアンメットニーズは「筋力の改善」であり、「呼吸機能と球機能(bulbar function)に関する項目(呼吸機能の改善、嚥下機能の改善など)では、I/II型のほうがIII型よりも重要である可能性が高い」と報告されている3)。また、PK/PDモデルを用いた予測では、脳脊髄液中のヌシネルセン濃度に対しニューロフィラメントの減少をはじめとする用量依存的な治療反応が示唆されていたことから高用量製剤の開発が待たれている。 そこで、高用量製剤の製品化に向け50/28mgの有効性および安全性を検討するため、3部構成のDEVOTE試験が行われた。とくにパートBでは、未治療の乳児型SMA患者(75例)および乳児型以外のSMA患者(25例)について国際共同第III相、二重盲検、並行群間比較試験が行われた。 その結果、乳児型SMA患者におけるフィラデルフィア小児病院乳児神経筋疾患検査(CHOP INTEND)総スコアについて183日目のベースラインからの変化量の最小二乗(LS)平均値は、50/28mg群15.1(95%信頼区間:12.4~17.8)、マッチングシャム処置群ー11.1(95%信頼区間:ー15.9~ー6.2)であり、LS平均値の差は26.2(95%信頼区間:20.7~31.7、p<0.0001、共分散分析および多重補完法)であったことから、優越性が検証された。 乳児型SMA患者における死亡または永続的換気までの期間について、カプランマイヤー法に基づいた期間の中央値は、50/28mg群では推定できず、12/12mg群で24.7週(95%信頼区間:14.4~NA、名目上のp=0.2775、罹患期間で層別したlog rank検定)だった。 302日目における乳児神経学的検査(HINE)第1項 哺乳/嚥下能力の低下がみられた患者の割合は、50/28mg群で6%(2/35例)、12/12mg群で33%(4/12例)であり、改善がみられた患者の割合は、50/28mg群で26%(9/35例)、12/12mg群で8%(1/12例)だった。 パートCでは日本人を含む乳児型SMA患者(2例)および乳児型以外のSMA患者18歳未満(14例)と18歳以上(24例)について、302日目における拡大Hammersmith運動機能評価スケール(HFMSE)、上肢機能モジュール改訂版(RULM)のベースラインからの変化量について評価がなされ、その結果変化量の平均値(標準誤差)は、HFMSEで1.8点(3.99点)、RULMで1.2点(2.14点)だった。 安全性は、50/28mg群では3/50例(6.0%)、12/12mg群では1/25例(4.0%)に副作用が認められ、貧血や発熱、不快などの発現が報告された一方で、本試験での死亡および投与中止に至った副作用は認められなかった。 齋藤氏はまとめとして、SMAにおいて疾患修飾治療薬3種の臨床試験が成功して実臨床で使える時代となったこと、発症抑制のための新生児マススクリーニングを拡充・推進する方針で実証事業開始されたことに触れ、最後に「ヌシネルセン高用量投与という新たな時代が今始まった」と期待を寄せた。患者の希望は「筋力アップ」 続いて「SMA家族の会」の理事長である大山 有子氏が、患者・患者家族のリアルな声と「SMA患者さん治療ニーズに関する調査結果」をテーマに講演を行った。 自身の子供がSMAI型であり、子供の日常生活を疾患介護の苦労とともに画像・動画で説明し、ヌシネルセンなどの治療薬の乳幼児期における劇的な症状改善の効果を紹介した。 次に家族会とバイオジェンが共同で行った患者・患者家族などへのアンケート内容を説明した。アンケートは、2025年9月3~14日にかけてSMA患者21人、介護者63人(計84人)に行ったもの。・「薬による治療」は96%が受けており、「治療でできるようになったこと」は「座位」、「寝返り」などの回答が多かった。・「リハビリテーション」については、「病院で実施」が69%、「自宅で実施」が76%だった。・「患者がもっとできるようになりたいこと」では、「トイレ」、「移動」などの回答が多く、「そのために必要な機能」について、「筋力」、「体幹」などの回答が多かった。

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ポンペ病〔Pompe Disease〕

1 疾患概要■ 定義ポンペ病(糖原病II型)は、グリコーゲンを分解するライソゾーム酵素である酸性アルファグルコシダーゼ活性の欠損または低下によるライソゾーム病である。疾患遺伝子はGAA、遺伝形式は常染色体潜性である。ポンペ病は、「乳児型」と「遅発型」に分類され、乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、遅発型では幼児期以降に肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋の筋力低下を発症する。■ 疫学ポンペ病の発生頻度は、およそ4万人に1人と推測され、約25%が乳児型であるとされる。■ 病因GAA遺伝子の両アレル性病的バリアントにより酸性アルファグルコシダーゼが欠損または低下し、組織のライソゾーム内に分解されないグリコーゲンが蓄積し、主に心筋や骨格筋が罹患する。オートファジーの機能不全も病態に関与することが明らかにされている。■ 症状乳児型では乳児期早期にフロッピーインファント、筋力低下、肥大型心筋症、呼吸不全を発症し、進行する。肝腫大、巨舌も出現する。遅発型では発症時期は小児期から成人期までさまざまであり、肢帯筋優位の筋力低下や呼吸筋筋力低下を発症し、緩徐に進行し、歩行障害や呼吸不全を来す。鼻声、翼状肩甲、傍脊柱筋萎縮を認めることが多い。ポンペ病の症状は、多器官に及んでいることが明らかになってきており、Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群などの不整脈、脳血管障害、聴力障害、胃腸症状などを来すこともある。■ 分類酸性アルファグルコシダーゼ活性の完全欠損による乳児型と活性低下(部分欠損)による遅発型に分類される。遅発型には小児型、若年型、成人型が含まれる。■ 予後乳児型ポンペ病では、生後2ヵ月~数ヵ月に、哺乳力低下、全身の筋力低下、運動発達の遅れ、体重増加不良、心不全症状などを発症し、自然経過では、多くは1歳頃までに死亡する。酵素補充療法により生命予後が改善され、人工呼吸管理を必要とするリスクが減少している。遅発型ポンペ病の自然経過では、1歳以降に、歩行障害、運動時易疲労が出現し、運動機能障害、呼吸不全が進行し、車椅子や人工呼吸管理が必要となる。酵素補充療法により呼吸機能の悪化が抑制され、運動機能が改善されている。2 診断■ 検査所見1)乳児型ポンペ病血液検査血清CK高値(5,000IU/L程度)AST、ALT高値、BNP高値胸部X線&nbsp心拡大心電図 P波振幅増大、PR間隔短縮、QRS高電位心臓超音波検査心筋肥厚、左室駆出率低下生検筋病理所見&nbsp:生検筋病理所見ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、多数の空胞PAS染色→空胞内PAS染色陽性物質の蓄積(グリコーゲン蓄積を示す)酸ホスファターゼ染色陽性2)遅発型ポンペ病血液検査血清CK高値骨格筋CT小児型では大腿部筋の高吸収域、成人型では低吸収または筋萎縮筋電図 筋原性変化、しばしばミオトニー放電が出現呼吸機能検査肺活量と努力肺活量の低下生検筋病理所見特徴的な所見は顕著ではない。■ 確定診断酸性アルファグルコシダーゼ活性低下またはGAA遺伝子に両アレル性の病的バリアントを認めた場合に診断確定とする。酸性アルファグルコシダーゼ活性は濾紙血、リンパ球、生検筋組織などを用いて測定される。酸性アルファグルコシダーゼ活性が低下するがポンペ病を発症しない偽欠損となるバリアントc.1726G>A(p.Gly576Ser)が存在するため診断の際に注意を要する。■ 鑑別疾患乳児型ポンペ病の鑑別すべき疾患には脊髄性筋萎縮症、先天性筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、ミトコンドリア病などがある。遅発型ポンペ病では、肢帯型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、多発性筋炎などが挙げられる。他の筋疾患と比較し、遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し、呼吸不全が出現することが特徴的とされる。3 治療■ 酵素補充療法ポンペ病に対し、2007年からヒト酸性アルファグルコシダーゼの遺伝子組み換え酵素製剤であるアルグルコシダーゼアルファ(商品名:マイオザイム)、2021年からアバルグルコシダーゼアルファ(同:ネクスビアザイム)による酵素補充療法が行われている。酵素はマンノース-6-リン酸(M6P)受容体を介し細胞内に取り込まれるが、アバルグルコシダーゼアルファは、横隔膜や骨格筋などへの酵素製剤の取り込みを増大させるため、酸化シアル酸残基にM6Pを結合させた改良型酵素製剤である。2025年からは遅発型ポンペ病に対し、高レベルのM6PやビスーM6P N-グリカンを結合させた酵素製剤シパグルコシダーゼアルファ(同:ポムビリティ)とポンペ病治療酵素安定化剤(シャペロン療法)としてミグルスタット(同:オプフォルダ)を併用する治療も行われるようになった。酵素製剤はいずれも2週間に1回静脈投与を行う。■ 呼吸機能の管理と治療ポンペ病の呼吸機能は、肋間筋や横隔膜の筋力低下を反映し、仰臥位の機能は座位に比し低下するので呼吸理学療法を行う。呼吸不全が進行した場合、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)または侵襲的陽圧換気療法(IPPV)を行う。遅発型ポンペ病では、歩行可能な時期に先行し呼吸不全が出現するため、呼吸機能を定期的に評価する。■ 心機能・不整脈の管理と治療乳児型では生後早期から心肥大が出現することが多い。酵素補充療法は、心肥大を改善させる。ポンペ病ではWPW症候群などの不整脈が高率に出現するため、不整脈に対する薬物療法やカテーテルアブレーションを必要とする症例がある。■ 脊柱側弯症の管理と治療脊柱側弯症に対し外科手術を行う。■ 理学療法関節の変形・拘縮予防のため、理学療法士の介入や、補装具を導入する。最大運動強度の60~70%までの有酸素運動が推奨されている。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)ポンペ病の新生児スクリーニング検査が広く実施されるようになっている。とくに乳児型ポンペ病においては、早期治療開始が重要であり、米国でもRUSP(Recommendation Uniform Screening Panel)により新生児スクリーニングを実施する疾患として推奨されている。2025年時点では、公費助成がある自治体は少ないが、今後さらに広がることが期待されている。ポンペ病に対する遺伝子治療の開発は、海外の臨床治験として肝臓を標的としたAAV8-GAAの静脈内投与が遅発型ポンペ病に対して実施され、心筋、骨格筋、中枢神経を標的としたAAV-9-GAAの静脈内投与が乳児型ポンペ病に対して実施された。遺伝子治療の臨床現場への導入が期待されている。5 主たる診療科・紹介すべき診療科主たる診療科:小児科(小児神経、小児循環器)、脳神経内科(運動機能、脳血管障害、白質病変)紹介すべき診療科:リハビリテーション科、循環器内科、呼吸器内科、脳外科(脳血管障害)、耳鼻咽喉科(難聴)、整形外科(脊柱側弯症)、産科(母胎管理)、遺伝子診療科など※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター ポンペ病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ライソゾーム病中のポンペ病 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)ライソゾーム病、ペルオキシゾーム病(副腎白質ジストロフィーを含む)における早期診断・早期治療を可能とする診療提供体制の確立に関する研究 (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)日本先天代謝異常学会 編集. ポンペ病診療ガイドライン2018. 診断と治療社.2018.2)Ditters IAM, et al. Lancet Child Adolesc Health. 2022;6:28-37.3)Sawada T, et al. Orphanet J Rare Dis. 2021;16:516.公開履歴初回2025年11月20日

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移植後再発抑止のための新規治療開発/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月11日、内田 直之氏(虎の門病院 血液内科)、Konstanze Dohner氏(ドイツ・University Hospital of Ulm)を座長に、JSH-EHA Jointシンポジウム「移植後再発抑止のための新規治療開発」が行われた。登壇者は、Luca Vago氏(イタリア・San Raffaele Scientific Institute)、河本 宏氏(京都大学医生物学研究所 再生免疫学分野)、中前 博久氏(大阪公立大学大学院医学系研究科 血液腫瘍制御学)、名島 悠峰氏(がん・感染症センター都立駒込病院 血液内科)。白血病の再発メカニズムを解明し、再発予防を目指す 急性白血病に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は、継続的に進歩している。しかし、再発は依然として大きな臨床課題であり、移植後の再発に対する普遍的に認められた標準治療はいまだ存在しない。ドナーリンパ球輸注(DLI)、サルベージ化学療法、二次移植などの介入はいずれも効果が限定的である。 また、治療耐性に関する新たな知見にも注目が集まっている。かつては、治療が十分に奏効しない場合は、薬剤の増量などで対応することが一般的であった。しかし近年は、治療そのものが腫瘍の変化を誘発し、多くの場合、初期治療で用いられた作用機序が再発メカニズムに影響を及ぼしている可能性が指摘されている。 最近の研究では、allo-HSCT後の再発は、多くの場合、白血病細胞がドナーの免疫系から逃れるために獲得した免疫回避機構に起因することが示唆されている。Vago氏は「allo-HSCTのメカニズムは非常に複雑であり、ドナーの種類や抗ウイルス薬などにより予期せぬ影響を受けると考えられる。そのため、臨床試験においては広範な適応症だけにとどまらず、個別のサブセットを対象とした検討が求められる。より詳細なデータを集積することで、さまざまな再発パターンやリスク因子をより適切に定義し、再発予防につなげることが可能となるであろう」と今後への期待を語った。多能性幹細胞から再生したT細胞製剤の開発状況 現在行われているCAR-T細胞療法をはじめとするadoptive T cell therapyは、主に「時間」「費用」「品質」という課題に直面している。これらの課題を解決するため、河本氏らは、ES細胞やiPS細胞(iPSC)といった多能性幹細胞を用いたT細胞作製法の開発を進めている。本講演では、その開発状況について解説が行われた。 まず、iPSC技術を用いて抗原特異的T細胞のクローニングと増殖を行い、抗原特異的CD8 T細胞をiPSCにリプログラム化する。さらにそのiPSCから、腫瘍抗原特異的CD8 T細胞を再生することに成功した。 また、CD8α-βヘテロダイマーを発現する強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を作製できる培養法も開発している。このアプローチをallo-HSCTに応用するため、T細胞由来ではないiPSCに外来性のTCR遺伝子を導入する方法も開発した。 そして現在、京都大学医学部附属病院では、2年後の開始を目指して、WT-1抗原特異的TCR導入HLAホモiPSCから再生した細胞傷害性CTLを用いた急性骨髄性白血病(AML)治療の臨床試験の準備を進めている。さらに、白血病プロジェクトと並行してCOVID-19に対するT細胞療法の開発にも着手している。COVID-19は免疫不全患者にとって依然として脅威であり、一定の頻度で長期化する。この課題に対処するため、ワクチン接種を受けた健康なボランティアから、日本人の約60%が保有するといわれているHLAクラスIアレルであるHLA-A*24:02に限定された複数のSタンパク質特異的TCR遺伝子のクローニングも行っている。その結果、Sタンパク質特異的TCRを効率的に発現するCTLは、SARS-CoV-2に感染した肺胞上皮細胞を殺傷することが示された。現在、藤田医科大学病院において本プロジェクトの臨床試験準備も進行中である。 これら複数のプロジェクトにおいてどのような結果が示されるのか、今後も注目される。Ph陽性ALLにおけるallo-HSCTの位置付けとTKI予防的投与への期待 フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)は、従来の治療では困難であるとされてきた。しかし近年、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)や二重特異性抗体の登場により、治療レジメンは一変した。これに伴い、これまで必須と考えられていたallo-HSCTを行わなくても長期生存を達成できる可能性が高まっている。移植適応は、画一的なアプローチから、遺伝子解析や微小残存病変(MRD)評価に基づく個別化アプローチへと移行しつつあり、有害事象の認められる患者に限定される傾向にある。 一方、移植適応患者においては、再発リスクを低減するためのTKI予防的投与が注目されている。しかし、allo-HSCT後のMRD陰性患者に対するTKI予防的投与と、MRD陽性を契機としたTKI先制的投与との間で、予後や有害事象発現率などの違いはいまだ明確でない。また、TKIが奏効する可能性の高い患者集団の特定、最適な薬剤選択、治療開始時期・期間の設定なども課題として残されている。TKIの移植片対白血病(GVL)効果への影響や、移植片対宿主病(GVHD)リスクを見極めつつ、有害事象を最小限に抑える最適な投与レジメンの確立が求められている。 実臨床では、MRD陰性で移植を受けた患者では最低2年間のTKI投与を行う傾向があるが、とくに高リスク患者では、患者の希望も考慮したうえで無期限に治療継続することが一般的となっている。これらの戦略の妥当性については、今後さらなる検証と評価が必要である。 中前氏は「TKIと二重特異性抗体の併用療法の可能性、予後に関連する新たな遺伝子異常の同定、次世代シークエンサーを用いた高精度・高感度MRDモニタリング技術の進歩は、Ph陽性ALLの治療成績を向上させ、さらにallo-HSCTの適応をより明確にすることが可能になる」と期待を述べた。移植後再発の克服を目指した最適な維持療法を探求 allo-HSCTは、AMLや骨髄異形成症候群(MDS)といった高リスク造血器悪性腫瘍に対する治療において欠かせない治療となっている。支持療法により非再発死亡率は低下したものの、移植後の再発は依然として治療失敗の主因となっている。とくに非寛解状態、複雑核型、TP53変異といった予後不良因子を有する患者において、移植後の再発は顕著である。強度減弱前処置の普及と適応拡大は、効果的な再発予防の必要性をさらに浮き彫りにしている。名島氏は、移植後維持療法戦略のための包括的な枠組みの原則に基づき、最新の臨床エビデンスとトランスレーショナルな視点に焦点を当て、本講演を行った。 再発の多くは allo-HSCT後6ヵ月以内に発生するため、早期介入が不可欠となる。維持療法は、寛解期の患者に対する「予防的アプローチ」とMRDに基づく「先制的アプローチ」の2つに大別される。予防的アプローチは再発予防の可能性を高める一方で、過剰治療のリスクを伴う。MRDに基づく治療戦略は、より標的を絞った治療といえるが、高感度な検出や最適な治療タイミングに留意する必要がある。 アザシチジン(AZA)は、その免疫調節作用と忍容性から、維持療法の候補として注目されている。名島氏らは、移植後のAZAの実現可能性を検証するため、日本で多施設共同第I相試験を実施している。さらに、AZAとゲムツズマブ オゾガマイシンの併用療法についても評価を行い、allo-HSCT後の維持療法としてAZAレジメンが忍容性と中程度の有効性を示したことを報告した。 FLT3-ITD変異陽性AMLは高リスクサブタイプであり、現在もFLT3阻害薬の評価が活発に行われている。移植後患者を対象としたMORPHO試験では、ギルテリチニブによる維持療法が検討されており、主要評価項目である無再発生存率は全体では有意差が得られなかったものの、MRD陽性患者では改善が認められた。フォローアップ解析により、MRD陽性が、とくにNPM1遺伝子重複症例で有益性を示す強力な予測因子であることが確認され、FLT3阻害薬はMRD依存的なベネフィットを示す可能性があると示唆されている。 現在の維持療法では薬理学的戦略が主流となっているが、免疫学的アプローチも注目されている。日本で広く使用されているDLIは、これまでの経験からも明らかなように、移植後の免疫学的維持療法として有望である。 最後に名島氏は「これらさまざまな研究やすべての努力が、最終的に allo-HSCTを通じてより多くの造血器悪性腫瘍患者の命を救うことに役立つことを願っている」と自身の思いを語り、講演を締めくくった。

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SMA治療薬ヌシネルセンの高用量剤形を発売/バイオジェン

 バイオジェン・ジャパンは、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療薬であるヌシネルセン(商品名:スピンラザ)の高用量投与レジメンでの剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)について、2025年11月12日薬価収載と同時にわが国で販売を開始した。 高用量投与レジメンについては、2025年9月19日に新用量医薬品/剤形追加(28mg製剤、50mg製剤)に係る医薬品として承認を取得していた。なお、高用量投与レジメンでの剤形追加は、承認、販売ともにわが国が世界で最初となる。高用量投与で筋力の維持や呼吸機能などの改善に効果 SMAは、主に乳児期から小児期に発症する進行性の神経筋疾患で、運動神経細胞の変性・消失により筋力低下や筋萎縮を引き起こす。SMAは遺伝性疾患であり、SMN1遺伝子の欠失や変異が主な原因とされている。わが国を含む世界各国で患者が報告され、重症度や発症年齢によりI~IV型に分類される。SMAは、近年、治療法の進歩により患者さんの予後は大きく改善しているが、依然として「筋力の改善」、「呼吸・嚥下機能の改善」など、満たされていない医療ニーズが存在する。 SMA治療薬のヌシネルセンは、体内で生成される完全長Survival Motor Neuron(SMN)タンパクの量を継続的に増やすことで、運動ニューロン喪失の根本原因を標的にするアンチセンス・オリゴヌクレオチド(ASO)。SMAの発症部位に到達できるように運動ニューロンが存在する中枢神経系に直接投与される。ヌシネルセンは、最長10年間治療を受けた参加者データと他に類のないリアルワールドの経験に基づき、十分に確立された安全性プロファイルを有し、さまざまな年齢や異なるタイプのSMAに持続した有効性を示してきた。 今回発売されるヌシネルセンの高用量投与レジメンは、承認済みのヌシネルセン投与レジメンと比較し、より迅速な初期投与レジメン(50mgを14日間隔で2回投与)と、より高用量の維持投与レジメン(4ヵ月ごとに28mg投与)で構成されている。製剤は、既発売の12mg製剤に加え、28mgおよび50mgの高用量製剤を新たに加えたもので、より高い運動機能改善を期待するSMA患者さんに対する治療選択肢の拡充を目的としている。<製品概要>一般名:ヌシネルセン販売名:スピンラザ髄注 12mg/28mg/50mg効能または効果:脊髄性筋萎縮症用法および用量:・スピンラザ髄注 28mg/50mg通常、ヌシネルセンとして、初回および初回投与2週間後に50mgを投与し、以降4ヵ月の間隔で28mgの投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。・スピンラザ髄注 12mg(乳児型SMA、臨床所見は発現していないが遺伝子検査により発症が予測されるSMA)通常、ヌシネルセンとして、1回につき下記の用量(省略)を投与する。初回投与後、2週、4週および9週に投与し、以降4ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。・スピンラザ髄注 12mg(乳児型以外のSMA)通常、ヌシネルセンとして、1回につき下表の用量(省略)を投与する。初回投与後、4週および12週に投与し、以降6ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること。薬価(いずれも1瓶):スピンラザ髄注12mg:932万424円 同28mg:966万1,483円 同50mg:977万8,481円製造販売承認日:スピンラザ髄注12mg:2017年7月3日 同28mg/50mg:2025年9月19日販売開始日:スピンラザ髄注12mg:2017年8月30日 同28mg/50mg:2025年11月12日製造販売元:バイオジェン・ジャパン株式会社

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DLBCL 1次治療の動向と課題、今後の展望/日本血液学会

 第87回日本血液学会学術集会で企画されたシンポジウム「B細胞リンパ腫に対する新規治療」において、九州大学の加藤 光次氏が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する1次治療の動向と課題、今後の展望について講演した。標準治療はPola-R-CHOPへ DLBCLは悪性度が高いが治癒も望める疾患であり、1次治療の成否が予後を大きく左右する。1次治療は20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療であったが、「約30%の患者が再発または治療抵抗性となる点が大きな課題であった」と加藤氏は指摘した。 そのような中、ポラツズマブ ベドチンとR-CHOPを併用するPola-R-CHOPをR-CHOPと比較した国際共同第III相POLARIX試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、その効果は5年時点でも維持されていることを紹介した。この結果は国内の大規模リアルワールドデータ研究によっても裏付けられつつあり、Pola-R-CHOPは新たな標準治療として確立しつつあると述べた。DLBCL 1次治療における3つの課題 しかしながら、このような進歩にもかかわらず、治癒可能なDLBCLの1次治療には3つの重要な臨床的課題に直面していると加藤氏は述べ、1)初回治療抵抗性が残ること、2)初回治療後も20~30%が再発すること、3)患者の半数以上が70~80歳以上の高齢であることを挙げた。 なかでも高齢者治療は喫緊の課題である。リアルワールドデータでは、80歳以上の患者に対してもPola-R-CHOPは良好な奏効率(ORR:87.3%)を示しているが、実際には副作用を懸念して化学療法(とくにシクロホスファミドやドキソルビシン)が半量となっている場合が多く、最適な治療強度をいかに維持するかが鍵となると指摘した。 この課題に対し、日本では高齢者機能評価を導入し、高齢患者の治療前状態(Fit/Frail)を評価するG-POWER試験や、減量レジメン(R-mini-CHOP)とポラツズマブ ベドチンの併用を検討するPOLAR mini-CHP試験などが進行中であることを紹介した。分子サブタイプに基づく個別化医療へ 治療抵抗性や再発の根本的な原因として、加藤氏は、DLBCLが単一の疾患ではなく、生物学的に多様な不均一性を持つことを挙げた。 近年、DLBCLはABC型、GCB型といった従来の分類に加え、より詳細な分子サブタイプに分類されるようになり、特定のサブタイプに合わせた分子標的治療の開発が進行している。POLARIX試験のサブ解析においても、Pola-R-CHOPによるPFS改善は、DLBclassによる特定の分子サブタイプ(C5)で顕著であったことが報告されている。加藤氏は、これらの分子サブタイプ分類は、リスク層別化を強化し、今後プレシジョン・メディシンのアプローチにつながると期待を示した。今後の展望~ctDNAと新規薬剤 加藤氏は今後の展望として、治療効果をより早期かつ正確に判断するため、循環腫瘍DNA(ctDNA)や微小残存病変(MRD)評価の重要性を語った。POLARIX試験において、治療1コース後にctDNA量が多い患者は予後が悪かったことが報告されている。治療の早期にctDNAをモニタリングし、その後の再発リスクを予測することで、治療のescalationやde-escalationを判断するresponse-adapted strategyへの期待を語った。 加藤氏はその一例として第II相ZUMA-12試験を挙げ、1次治療早期に効果不十分な高リスク患者に対して、早期にCAR-T細胞療法に切り替えた場合、完全奏効率が86%と有望な成績が得られたことを紹介した。 現在、1次治療として二重特異性抗体、CAR-T療法、BTK阻害薬などの多くの新しい治療法が開発されている。加藤氏は「2028年には何を選ぶべきか決断を迫られるだろう」と予測し、さらに「将来の治療選択は、分子サブタイプ、患者特異的因子、response-oriented approachによって導かれるだろう」と述べ、講演を終えた。

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再発・難治性多発性骨髄腫への新たな二重特異性抗体トアルクエタマブのベネフィット、隔週投与も可能/J&J

 再発・難治性の多発性骨髄腫に対する新たな治療薬として二重特異性抗体トアルクエタマブ(遺伝子組換え)(商品名:タービー皮下注)が8月14日に発売されたことを受け、9月5日にJohnson & Johnson(日本における医療用医薬品事業の法人名:ヤンセンファーマ)による記者説明会が開催され、岩手医科大学の伊藤 薫樹氏が本剤の効果や有害事象の特徴、ベネフィットを紹介した。既発売の二重特異性抗体とは異なる標的、隔週投与も可能 トアルクエタマブは、多発性骨髄腫細胞表面に高発現するGPRC5D(Gタンパク質共役型受容体ファミリーCグループ5メンバーD)およびT細胞表面に発現するCD3を標的とする二重特異性抗体である。すでに発売されている二重特異性抗体にはエルラナタマブとテクリスタマブがあるが、どちらもBCMA(B細胞成熟抗原)とCD3を標的としている。効能・効果は、再発または難治性の多発性骨髄腫で、免疫調節薬・プロテアソーム阻害薬・高CD38モノクローナル抗体製剤を含む3つ以上の標準的な治療が無効、または治療後に再発した患者が適応となる。継続投与期における投与方法は、0.4mg/kg週1回投与と0.8mg/kg隔週1回投与の2つの方法がある。 本剤の国際共同第I/II相MMY1001試験の第II相パートは、T細胞ダイレクト療法(CAR-T細胞療法、二重特異性抗体など)による前治療歴のない患者を対象とし、2つの投与方法に分けて評価された。主要評価項目の全奏効率(ORR)はコホートA(0.4mg/kg週1回)が74.6%、日本人コホート(0.4mg/kg週1回)が77.8%、コホートC(0.8mg/kg隔週1回)が72.5%であった。欧州におけるLocoMMotion試験(3つの標準的な治療後に再発した患者に対して、残っている他の薬剤で治療)での奏効率が約30%であったのに対し、どのコホートも2倍以上の奏効率であり、伊藤氏は「非常に効果が高いという印象」という。さらに、完全奏効もコホートAで33.6%、日本人コホートで47.2%と高く、寛解期間が長い「深い」奏効が得られることが明らかになった。特徴的な有害事象は、味覚障害、皮膚障害、爪の障害 本試験で、最も多かった有害事象はサイトカイン放出症候群で、全Gradeでは75~78%に発現したがGrade3以上は少なく、伊藤氏は「しっかり管理をすれば多くの患者が問題なく治療継続できる」という。本剤の特徴的な有害事象は、味覚障害、皮膚障害、爪の障害の3つで、治療を長期間継続するために、投与前にこれらの有害事象が発現することを伝え、対処法を指導しながら投与するなどのマネージメントが必要だと述べた。 感染症は、全Gradeで64.0%、Grade3以上で18.6%と、BCMAを標的とするエルラナタマブとテクリスタマブに比べて低い。伊藤氏はこの理由として、BCMAは正常のB細胞にも発現するため、BCMAを標的とする薬剤は正常のB細胞も駆逐し液性免疫不全が発生することが比較的多いが、トアルクエタマブが標的とするGPRC5DはB細胞での発現が非常に少ないことから、感染症をコントロールしやすいと考えられる、と説明した。このような副作用プロファイルの違いから、感染症を起こしやすい患者にはトアルクエタマブ、味覚障害に敏感で、食事を摂れないことでQOLの大幅な低下が想定される患者にはBCMAを標的とする薬剤を先に使用する、といった使い分けが考えられるという。トアルクエタマブのベネフィットと今後の開発への期待 トアルクエタマブのベネフィットとして伊藤氏は、3つの標準的な治療に抵抗性となった患者に有効なこと、CAR-T細胞療法と異なりタイムラグがなくさまざまな地域で使用できること、CAR-T細胞療法の適応とならない高齢者や臓器障害がある患者にも使用できることを挙げ、さらに、0.4mg/kg毎週投与以外に通院回数を減らせる0.8mg/kg隔週投与が可能なこと、BCMA標的治療(CAR-T療法、二重特異性抗体、抗体薬物複合体)実施後に再発した場合にも使用可能なことを挙げた。最後に、現在は単剤で承認されているが、抗原の異なる薬剤との併用や従来の免疫調節薬やダラツムマブとの併用など、他剤との併用療法の開発が進んでおり、より高い有効性を期待できる治療法が開発されることに期待を示し、講演を終えた。

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乳児の脊髄性筋萎縮症、発症前にリスジプラムが有効/NEJM

 遺伝学的に脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された未発症の生後6週までの乳児において、SMA発症前のリスジプラムの投与は、自然経過研究における未治療SMA乳児と比較し、12ヵ月時および24ヵ月時の機能的および生存アウトカムが良好であった。米国・St. Jude Children's Research HospitalのRichard S. Finkel氏らRAINBOWFISH Study Groupが、同国と欧州など7ヵ国で実施した第II相非盲検試験「RAINBOWFISH試験」の結果を報告した。リスジプラムは、経口投与可能なmRNA前駆体スプライシング修飾薬で、臨床症状を有するSMA患者に対する有効な治療薬であるが、無症状の患者における有効性および安全性は不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「リスジプラムによる症状発現前の治療の相対的な有効性と安全性をさらに理解するために、より大規模な無作為化比較試験および長期追跡調査が必要である」とまとめている。NEJM誌2025年8月14日号掲載の報告。SMAと診断されたが症状を呈していない生後6週までの乳児を対象に試験 RAINBOWFISH試験の対象は、スクリーニング時に5番染色体長腕(5q)に変異がある常染色体劣性のSMA(遺伝学的SMA)との診断を有するが、SMAを強く示唆する臨床徴候または症状が認められない、初回投与時の年齢が生後1~42日(在胎期間は単胎で37~42週、双胎で34~42週)の乳児とした。SMN2遺伝子のコピー数は問わないこととしたが、SMN2遺伝子のコピー数が2でベースラインの複合筋活動電位(CMAP)振幅が1.5mV以上の患者(主要有効性解析対象集団)を、少なくとも5例に達するまで登録を継続した。自然経過研究では、SMN2遺伝子のコピー数2を有する未治療の乳児の大半は、重症SMAの表現型(I型)で、自立座位が不可であったり、永続的な人工呼吸管理および摂食支援を要する、あるいは生後13ヵ月までに死亡することが示されている。 研究グループは、適格登録患児全例にリスジプラムを平均血漿曝露量約2,000ng×時間/mLとなるよう1日1回経口投与した。最初の3例は0.04mg/kgで投与を開始し、薬物動態データに基づき投与開始後3~8週以内に全例0.2mg/kgに調整した。投与期間は、非盲検投与期を24ヵ月としてその後は非盲検延長期に移行し、計5年間とした。 主要アウトカムは、主要有効性解析対象集団における投与12ヵ月時点での、支持なし5秒以上の座位保持可能(BSID-IIIの項目22に基づく)な患児の割合とした。副次アウトカムは全例における臨床症状を伴うSMAの発症、生存期間、呼吸支援、発達マイルストーンおよび運動機能、栄養摂取などであった。支持なし5秒以上の座位保持可能な患児の割合は80% 2019年8月7日に最初の患児が登録され、SMN2遺伝子のコピー数が2、3または4以上の患児計26例が登録された(クリニカルカットオフ日は、主要解析[投与12ヵ月時]2023年2月20日、投与24ヵ月時2024年3月27日)。 投与12ヵ月時に、21例(81%)が支持なし30秒以上座位保持が可能、14例(54%)が起立可能、11例(42%)が自立歩行可能であった。 主要アウトカム(主要有効性解析対象集団5例)については、4例(80%、95%信頼区間:28~100)が支持なし5秒以上の座位保持が可能で、事前規定の達成基準5%(未治療I型SMA患者の自然経過研究に基づく)を上回った。 投与12ヵ月時の評価後に3例が試験を中断した(親または介護者によってオナセムノゲンアベパルボベクによる遺伝子治療に切り換えたため)が、24ヵ月間の治療を完了した23例は全例が永続的な人工呼吸管理および摂食支援なしで生存していた。 24ヵ月間に、7例の乳児で9件の治療関連有害事象が報告されたが、いずれも重篤ではなかった。

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髄外病変を有する多発性骨髄腫、CAR-T細胞vs.二重特異性抗体

 多発性骨髄腫で骨髄外に悪性形質細胞腫瘍がある場合は髄外病変(EMD)と定義され、通常は予後不良である。今回、ドイツ・University Hospital of WurzburgのMaximilian J. Steinhardtらは、再発多発性骨髄腫に有効なCAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル[ide-cel]、シルタカブタゲン オートルユーセル[cilta-cel])と二重特異性抗体療法(テクリスタマブ、トアルクエタマブ)のEMDへの効果を後ろ向きに評価した結果、CAR-T細胞療法が意味のあるベネフィットをもたらす可能性が示唆された。Blood Cancer Journal誌2025年7月30日号に掲載。 本研究では、ドイツの 3 つの大学病院でide-cel、cilta-cel、テクリスタマブ、トアルクエタマブによる治療を受けた、骨に隣接しないEMD患者80例を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者は複数の前治療歴があり、すべてのコホートにおいて5〜7ラインの治療歴(中央値)があった。患者の41%以上に高リスクの細胞遺伝学的プロファイルが認められた。cilta-cel、ide-cel、テクリスタマブを投与された患者の88%超はB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とした前治療歴はなかった。・奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:100%、ide-cel:82%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:29%、テクリスタマブ:36%)よりも有意に高かった(p<0.0001)。・完全奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:69%、ide-cel:41%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:18%、テクリスタマブ:24%)よりも高かった(p=0.001)。・追跡期間中央値は12.2ヵ月で、無増悪生存期間中央値はcilta-celは未到達、ide-celは7.3ヵ月で、トアルクエタマブ(4.0ヵ月)やテクリスタマブ(2.6ヵ月)より有意に延長していた。

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リンパ腫Expertsが語る、診断・治療のTips/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。 7月5日、三好 寛明氏(久留米大学医学部 病理学講座)、丸山 大氏(がん研究会有明病院 血液腫瘍科)を座長に行われた教育委員会企画セミナーでは、「Expertsに聞く!リンパ腫診断と治療のTips」と題して、低悪性度B細胞リンパ腫(LGBL)の鑑別診断を高田 尚良氏(富山大学学術研究部 医学系病態・病理学講座)、T濾胞ヘルパー細胞(TFH)リンパ腫の診断と変遷について佐藤 啓氏(名古屋大学医学部附属病院 病理部)、悩ましいシチュエーションにおけるFL治療の考え方を宮崎 香奈氏(三重大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)、二重特異性抗体療法の合理的な副作用マネジメントについては蒔田 真一氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)から講演が行われた。CD5陽性/CD23陽性だからといってCLL/SLLとは限らない LGBLは、臨床的には緩やかに進行するB細胞由来のリンパ腫であり、病理組織学的には小〜中型のリンパ腫細胞で構成され低増殖能を呈する腫瘍で定義される。このLGBLは、主に慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、脾臓原発悪性リンパ腫/白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)が含まれる。高田氏は、いくつかの症例について病理所見を提示しながらLGBL鑑別のコツを紹介した。まず、免疫組織化学のパネルとしてCD10、BCL6、cyclinD1、LEF1までは初回時の染色で行い、必要に応じてIRTA1、MNDA、SOX11などを追加することを推奨した。CD5陽性の場合には、CLL/SLLやMZL(稀にFL)も念頭に置き鑑別診断を行うと良い。また、CLL/SLLの診断では、CD5陽性およびCD23陽性であれば必ずしも診断できるわけではなく、鑑別診断ではLEF1、IRTA1、MNDAなどが必要になることがあり、場合によってはIGH::BCL2の転座の確認が必要となる。さらに、LGBL, NOSは、LGBL全体の5%程度であるが、治療選択肢を考慮し、できるだけ亜型分類を行うことが重要であると述べた。nTFHL診断時に病理医が着目する所見は Nodal TFHリンパ腫(nTFHL)はWHO分類第5版において、nTFHL, angioimmunoblastic type(nTFHL-AI)、nTFHL, follicular type、nTFHL-NOSへ名称変更が行われた成熟T細胞リンパ腫の1つである。これら3型に共通する特徴として、臨床像が類似しており、60代以降に多く、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、B症状、胸腹水がみられ、自己免疫疾患様の症状および検査所見を呈し、一般的に予後不良であるなどが挙げられる。免疫染色においては、PD-1、ICOS、CXCL13、BCL6、CD10などのTFHマーカーのうち2〜3個以上が陽性で、濾胞樹状細胞の増生が特徴となる。TFHマーカーの免疫染色で覚えておきたいポイントとして、PD-1、ICOSは「感度は高いが、特異度が低い」、CXCL13、CD10、BCL6は「特異度は高いが、感度が低い」点を挙げている。また、70〜95%の症例で非腫瘍性B細胞にEBER陽性を示すことも重要なポイントである。近年、次世代シークエンサーを用いた解析でも、3型において類似した遺伝子プロファイルが報告されており、ひとくくりにすることが支持される裏付けともなっている。最後に、とくに鑑別の難しいHodgkin/Reed-Sternberg(HRS)-like cellsの出現を伴うnTFHLと古典的ホジキンリンパ腫(CHL)との鑑別では、PD-L1、STAT6、pSTAT6の免疫染色が有用であることも紹介した。免疫細胞療法でFL治療は新たなステージに向かうのか 宮崎氏は、FL治療における悩ましいシチュエーションとして、初発低腫瘍量、初発高腫瘍量、POD24の具体的な3症例を取り上げ、解説を行った。低腫瘍量の初発FLに対する治療は、造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版において、未治療経過観察またはリツキシマブ単剤が推奨されているが、どちらを選択すべきなのか。経過観察は1つの選択肢であるとしながらも、リツキシマブ導入のメリットが大きいと述べている。その理由として、リツキシマブ単剤療法後、15年間の間に次の治療を行っていない患者が48%であり、次の治療の効果を減弱させない点、低腫瘍量であっても無イベント生存期間(EFS)が良好である点などを挙げられた。また、高腫瘍量の初発FLに対する維持療法の必要性に関しては、抗CD20抗体併用化学療法により奏効が得られた場合には、抗CD20抗体維持療法は、無増悪生存期間(PFS)の延長が期待できるとして推奨した。最後に、形質転換が高頻度でみられる予後不良なPOD24患者に対する治療について、さまざまなエビデンスを用いて解説した。CAR-T細胞療法、二重特異性抗体などの免疫細胞療法や新たな化学療法が治療選択肢として導入されつつあり、今後、至適治療が明らかになっていくことが望まれると述べた。二重特異性抗体登場で臨床医に求められるCRSマネジメント B細胞リンパ腫の治療では、CAR-T細胞療法の登場により、これまで治療困難であった殺細胞性抗がん剤に抵抗性を示す患者に対して持続的な奏効が得られるようになった。その一方で、CAR-T細胞療法は認定施設の少なさから多くの患者が容易にアクセスできる治療法ではないことが課題の1つとなっていた。より多くの患者がアクセス可能な免疫療法として、いくつかの抗CD3×CD20二重特異性抗体の開発が進められており、現在、4つの薬剤が承認あるいはまもなく承認される状況にある。また、二重特異性抗体の一次治療導入を検討したランダム化比較試験も進行中であり、B細胞リンパ腫における二重特異性抗体の位置付けは、今後ますます重要になると予想される。二重特異性抗体の使用に際しては、サイトカイン放出症候群(CRS)や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)のマネジメントが求められる。蒔田氏は「CRSマネジメントは、原則CAR-T細胞療法と同様である。発症のタイミングには個人差があるため、慎重なモニタリングを実施できる体制を構築し、速やかに支持療法を実施できるように整えておく必要がある。また、予防には比較的多量のステロイドが使用されるため、感染症や発熱を伴わないCRSにも注意する必要がある」とまとめた。

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