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英語で「それ自体」は?【1分★医療英語】第119回

第119回 英語で「それ自体」は?《例文1》It is not a perfect solution per se but better than nothing.(それは完全な解決策とはいえませんが、何もないよりは良いです)《例文2》The medication doesn’t cure the disease per se, but it relieves the symptoms and improve the patient’s quality of life.(その薬はそれ自体が病気を治すものではありませんが、症状を緩和し、患者の生活の質を改善させます)《解説》今回ご紹介した“per se”はラテン語由来の言葉で、英語の“by itself”や“itself”に当たります。しかし、この“per se”のままで英語表現として用いられることがありますので、覚えておきたい表現です。日本語に翻訳すると、「それ自体は」「本質的には」「正確には」といった意味を指す言葉で、例文にあるように文末に挟み、逆接の前に用いられることが多いフレーズです。逆接の間に見られる場合には、「一見すると矛盾しているように見えるものの、実際には矛盾していない」といった状況を説明する際に使われることが多いです。そのようなシチュエーションでは、“per se”の前に来る文章を「それ自体は」と補強してくれます。使い慣れないと適切な場面で使用するのが難しい表現かもしれませんが、英語ネイティブと話をしていると医療機関内のコミュニケーションでも時々耳にすることがあります。聞いたときに戸惑わないよう、表現の持つニュアンスをつかんでおくとよいでしょう。講師紹介

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第203回 1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い

1ヵ月以上続くコロナ感染は結構多い英国を代表する9万人強の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)配列を解析した結果によると、少なくとも100人に1人ほどの感染は1ヵ月以上長引くようです1,2)。試験では被験者からおよそ1ヵ月ごとに採取した検体のSARS-CoV-2配列が解析され、3,603人は2回以上の検体の配列解析が可能でした。得られたウイルス配列を照らし合わせたところ、それら3,603人のうち381人に1ヵ月以上の同一ウイルス感染が認められました。381人のうち54人にいたっては2ヵ月以上同じウイルスに感染していました。その結果に基づくと、感染者100人に1~4人弱(0.7~3.5%)のその感染は1ヵ月以上、感染者1,000人に1~5人(0.1~0.5%)の感染は2ヵ月以上続くと推定されました。SARS-CoV-2持続感染者381人のうち3回以上のRT-PCR検査がなされた65人のデータによると、感染し続けているSARS-CoV-2の多くは複製できる力を失っていないようです。それら65人のほとんどのウイルスはいったん減り、その後再び増加するというリバウンドの推移を示しました。研究者によると、そのようなリバウンドは複製できるウイルスが居続けていることを示唆しています。また、SARS-CoV-2の感染持続はやはりただでは済まないようで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)をより招くようです。SARS-CoV-2感染が1ヵ月以上持続した人の感染後12週時点以降でのlong COVID有病率は非持続感染者を55%上回りました。SARS-CoV-2感染持続とlong COVIDの関連を示した先立つ報告や今回の研究によるとSARS-CoV-2感染持続はlong COVIDの発生にどうやら寄与しうるようです。とはいえSARS-CoV-2感染持続で必ずlong COVIDが生じるというわけではありませんし、long COVIDのすべてが感染持続のせいというわけではなさそうです。実際、long COVIDに寄与するとみられる仕組みがこれまでにいくつも示唆されており、引き続き盛んに調べられています。たとえば先月にScience誌に掲載された最近の報告では、免疫機能の一翼である補体系の活性化亢進がlong COVIDで生じる細胞/組織損傷の原因となりうることが示唆されています3,4)。参考1)Ghafari M, et al. Nature. 2024 Feb 21. [Epub ahead of print]2)Study finds high number of persistent COVID-19 infections in the general population / Eurekalert3)Cervia-Hasler C, et al. Science. 2024;383:eadg7942.4)Complement system causes cell damage in Long Covid / Eurekalert

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睡眠が認知症発症に及ぼす影響

 睡眠障害と認知症との関係は、依然としてよくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のYing Xiong氏らは、高齢者(65歳以上)における睡眠対策と認知症との関係を調査し、これらの因果関係を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、若年高齢者の短時間睡眠者、高齢者および頻繁にアルコールを摂取する長時間睡眠者において、認知症リスクとの関連が示唆された。Psychiatry Research誌2024年3月号の報告。 高齢者における睡眠対策と認知症との関係を調査するため、English Longitudinal Study of Ageing(ELSA)のデータを用いた。さらに、Cox回帰モデルおよびメンデルランダム化(MR)分析を用いて、因果関係を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象高齢者7,223人のうち、5.7%が平均8±2.9年以内に認知症を発症した(アルツハイマー病は1.7%)。・8時間超の長時間睡眠は、理想的な睡眠時間(7~8時間)の場合と比較し、認知症発症リスクが64%増加し、アルツハイマー病のリスクが2倍高かった。・この関連は、とくに70歳以上およびアルコールを摂取する高齢者において、顕著であった。・7時間未満の短時間睡眠は、高齢になるほど認知症リスクが低く、比較的若年の高齢者では認知症発症リスクが高かった。・睡眠障害および自覚している睡眠の質は、認知症またはアルツハイマー病と関連していなかった。・MR分析では、睡眠時間と認知症との因果関係が確認されなかった。 著者らは「これらの睡眠パターンを早期に検出することは、認知症リスクの高い人の特定に役立つであろう」としている。

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PPIだけでない?P-CABでも胃がんリスク上昇か/東大病院ほか

 ピロリ菌除菌後の胃がん発症とプロトンポンプ阻害薬(PPI)との関連が報告されている。近年、PPIに替わってカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が用いられているが、P-CABでもピロリ菌除菌者の胃がん発症リスクの上昇が認められたことが、新井 絢也氏(東京大学医学部附属病院 消化器内科)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌オンライン版2024年2月12日号で報告された。 本研究では、約1,100万例の患者情報を有する大規模レセプトデータを用いて、ピロリ菌除菌後患者5万4,055例を抽出し、P-CABによる胃がん発症リスクを検討した。P-CABによる胃がん発症リスクの上昇の有無は、胃がん発症リスクと関連がないとされるヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)を内服する患者を対照群(H2RA群)とし、傾向スコアマッチングを行うことで評価した。また、感度分析として、P-CABを内服する患者(P-CAB群)とPPIを内服する患者(PPI群)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間3.65年時点において、5万4,055例のうち568例(1.05%)が胃がんを発症した。・P-CAB群の3~5年時の胃がん累積発症率は、3年時1.64%、4年時2.02%、5年時2.36%で、H2RA群はそれぞれ0.71%、1.04%、1.22%であった。・P-CAB群は、H2RA群と比較して胃がん発症リスクが有意に上昇した(ハザード比[HR]:1.92、95%信頼区間[CI]:1.13~3.25、p=0.016)。・P-CAB内服期間3年以上(HR:2.36)、P-CAB高用量(HR:3.01)ではさらにリスクが上昇し、用量・期間依存性も示された。・感度分析において、P-CAB群とPPI群を比較すると、胃がん発症リスクは同等であった(HR:0.88)。 著者らは、本研究結果について「P-CABはPPIと同様にピロリ菌除菌後の胃がん発症リスクを上昇させる可能性が考えられた。今後は、ピロリ菌除菌後患者に対する処方・内服期間の適正化や内視鏡サーベイランスの徹底が必要になる可能性がある」とまとめた。

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透析高齢女性へのデノスマブ、重度低Ca血症が大幅に増加/JAMA

 65歳以上の透析女性患者において、デノスマブは経口ビスホスホネート製剤と比べて、重度~きわめて重度の低カルシウム血症の発現率がきわめて高率であることが、米国・食品医薬品局(FDA)のSteven T. Bird氏らによる検討で示された。透析患者は骨折を引き起こす割合が高いが、エビデンスのある最適な治療戦略はない。今回の結果を踏まえて著者は、「透析患者にきわめて一般的に存在する骨病態生理の診断の複雑さや、重度の低カルシウム血症のモニタリングおよび治療に複雑な戦略を要することを踏まえたうえで、デノスマブは、慎重に患者を選択し、十分なモニタリング計画を立てたうえで投与すべきである」と述べている。JAMA誌2024年2月13日号掲載の報告。デノスマブvs.経口ビスホスホネートのリスクを評価 研究グループは、骨粗鬆症治療を受ける透析患者における重度の低カルシウム血症の発現率とリスクを調べるため、デノスマブと経口ビスホスホネート製剤を比較する後ろ向きコホート研究を行った。対象は、2013~20年にデノスマブ(60mg)または経口ビスホスホネート製剤による治療を開始したメディケアに加入している65歳以上の透析女性患者とした。 毎月の血清カルシウム値を含む臨床パフォーマンスの指標を、透析や腎移植を受ける末期腎臓病患者に関するデータを集めたConsolidated Renal Operations in a Web-Enabled Network(CROWN)データベースを介して入手。 重度の低カルシウム血症は、アルブミン値補正後の総血清カルシウム値が7.5mg/dL(1.88mmol/L)未満、または一次病院や救急部門での低カルシウム血症診断(緊急治療)と定義し、きわめて重度の低カルシウム血症(血清カルシウム値が6.5mg/dL[1.63mmol/L]未満または緊急治療)とともに、骨粗鬆症治療の開始後12週間における逆確率治療重み付け(IPTW)累積発現率、重み付けリスク差、重み付けリスク比を算出し評価した。重度の低カルシウム血症、デノスマブ群は経口ビスホスホネート群の20.7倍 非重み付けコホートにおいて、重度の低カルシウム血症の発現は、デノスマブ治療群1,523例中607例、経口ビスホスホネート治療群1,281例中23例で認められた。 重度の低カルシウム血症の12週時における重み付け累積発現率は、デノスマブ群41.1% vs.経口ビスホスホネート群2.0%だった(重み付けリスク差:39.1%[95%信頼区間[CI]:36.3~41.9]、重み付けリスク比:20.7[13.2~41.2])。 きわめて重度の低カルシウム血症の12週時における重み付け累積発現率は、デノスマブ群10.9% vs.経口ビスホスホネート群0.4%だった(重み付けリスク差:10.5%[95%CI:8.8~12.0]、重み付けリスク比:26.4[9.7~449.5])。

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肝がん、乳がんが多い都道府県は?「がんの県民性」を知る

 企業でのがん対策を進めることを目的に厚生労働省が行うプロジェクト「がん対策推進企業アクション」は2月14日、プレス向けセミナーを行った。プロジェクトの推進役である東京大学特任教授の中川 恵一氏が「がんの県民性」をテーマに講演を行った。 世界中でも、国や人種によって多いがんと少ないがんがあるが、実は日本国内でも地域ごとに発生するがんの種類にバラツキがある。この要因はさまざまなものがあり、遺伝子、人口構成、食生活などが影響している。そして、最も大きな原因と考えられるのが、ウイルスの偏在と感染だ。【胃がん】 全国がん登録のデータ(2019年)を基に、人口調整後の10万人当たりの罹患率を見ると、胃がんの罹患率がもっとも高いのは、男女共に秋田県。胃がんはピロリ菌の感染が原因の9割近くを占めることがわかっており、ピロリ菌の検査と除菌するようになってから罹患者数は減少傾向にある。その中にあって秋田県の罹患率が依然として高いのは、塩分が多い食生活が大きな要因だと考えられている。マウスの実験では、ピロリ菌に感染しているマウスに塩分を過剰に摂取させると胃がんの発生率が上昇するという報告がある。秋田県に限らず、胃がんを減らすためには、減塩、胃がん検診、禁煙・節酒が有効だろう。【肝がん】 肝がんの罹患率が高いのは、佐賀県をはじめとした九州エリア。九州だけでなく、西日本全体が東日本と比べて高い傾向がある。これは肝がんの主な発症原因であるC型肝炎ウイルスが佐賀県一帯の東シナ海エリアに多いためだと考えられる。台湾なども同じ理由から罹患率が高い傾向がある。企業が行う健康診断では毎年肝機能検査を行っており、ここにウイルス性肝炎検査も加えることを要請している。【乳がん】 乳がんの罹患率が高いのは東京都などの首都圏。これは未婚で出産経験のない女性が多いことと関連している。乳がんは10万人当たりの年間罹患者数が40年で4倍と急増している。現在の日本人女性は平均して生涯に450回ほど月経があるとされるが、これは100年前の5倍超。かつては子沢山であり、妊娠・授乳期間を含めて子供1人当たり3年間ほど月経が止まる期間があった。この間、女性ホルモンによる刺激が減り、乳がんの罹患リスクが低下していた。現在の乳がんの新規罹患のピークが40代後半にある理由も閉経直前・閉経後に女性ホルモンの変化の影響を受けることが大きな理由だと考えられる。【白血病】 白血病の罹患率が高いのは沖縄県、鹿児島県など。白血病の中の成人T細胞白血病(ATL)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染によって生じることがわかっている。HTLV-1の感染経路は母乳による母子感染が多くを占め、このウイルスのキャリアが沖縄をはじめ、鹿児島、青森、岩手の一部などに多い。一方、このウイルスは中国・韓国ではほとんど見られない。この背景には、数千年前に日本に渡ってきた渡来人の遺伝子を受け継ぐ人々(弥生系)には感染者が少なく、縄文人が移行して弥生人になった人々(縄文系)には多い、という理由が考えられる。もっとも、人の移動の増加に伴い、HTLV-1感染は全国で見られるようになっており、とくに大阪などの大都市圏で増加している。【食道がんなど】 縄文系、弥生系の遺伝子は、飲酒時の分解酵素の有無にも関わる。アルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されるが、このアセトアルデヒドを分解するのが「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素2)」。縄文系はこのALDH2の活性が強い「正常型」が多く、日本人の55%を占める。一方で弥生系はALDH2の活性が弱い「低活性型」が多く、日本人の40%を占める。残り約5%は「不活性型」でALDH2の働きがまったくなく、酒を飲めない体質となる。問題は「低活性型」の人が飲み過ぎることで、こうした人が飲酒を続けることで、発がんリスク、とくに大腸がんや食道がんのリスクが急激に高まるとされる。低活性型は弥生系が多い近畿・中部・中国地方に多く分布している。 中川氏は「がんは決して一様な疾患ではなく、地域や人種によってリスクに差があり、それを生む大きな要因にウイルス感染がある。自分の居住するエリアの特性を知り、対策を知っておくことが重要になる」とまとめた。

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電子タバコは禁煙継続に有効?/NEJM

 標準的な禁煙カウンセリングに電子ニコチン送達システム(電子タバコ[e-cigarettes]とも呼ばれる)の無料提供を追加すると、禁煙カウンセリングのみより6ヵ月間の禁煙継続率が高まったことが、スイス・ベルン大学のReto Auer氏らが、スイス国内5施設で実施した非盲検比較試験「Efficacy, Safety and Toxicology of Electronic Nicotine Delivery Systems as an Aid for Smoking Cessation:ESTxENDS試験」の結果で示された。電子ニコチン送達システムは、禁煙を補助するため禁煙者に使用されることがあるが、このシステムの有効性と安全性に関するエビデンスが必要とされていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。禁煙に対する電子タバコの有効性と安全性を、禁煙カウンセリングのみと比較 研究グループは2018年7月~2021年6月に、一般紙やソーシャルメディア、ならびに医療施設や公共交通機関での広告により、1日5本以上の喫煙を12ヵ月以上継続し、登録後3ヵ月以内に禁煙を希望する18歳以上の成人を募集し、適格者を介入群と対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群では、標準的な禁煙カウンセリングに加え電子タバコおよび電子タバコ用リキッド(e-liquid)の無料提供、ならびにオプション(有料)でニコチン代替療法を実施した。対照群では、標準的な禁煙カウンセリングを行い、ニコチン代替療法を含むあらゆる目的に使用できるクーポン券を配布した。 主要アウトカムは生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続、副次アウトカムは自己報告による6ヵ月時点での禁煙(タバコ、電子タバコ、ニコチン代替療法を含む)、呼吸器症状、重篤な有害事象とした。生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続率は介入群28.9% vs.対照群16.3% 2,027例がスクリーニングを受け、計1,246例が無作為化された(介入群622例、対照群624例)。 生化学的に確認された6ヵ月間の禁煙継続率は、介入群で28.9%、対照群で16.3%に認められた。両群の絶対差は12.6%(95%信頼区間[CI]:8.0~17.2)、粗相対リスクは1.77(95%CI:1.43~2.20)であった。 6ヵ月後の受診前7日間にタバコを使用しなかったと報告した参加者の割合は、介入群59.6%、対照群38.5%であった。一方、ニコチン(タバコ、ニコチン入り電子タバコ、ニコチン代替療法)の使用を一切やめた参加者の割合は、介入群20.1%、対照群で33.7%であった。 重篤な有害事象は介入群で25例(4.0%)、対照群で31例(5.0%)が、有害事象はそれぞれ272例(43.7%)および229例(36.7%)に発現した。

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生涯を通した楽器の演奏は脳の健康に有益

 楽器、特にピアノなどの鍵盤楽器を演奏することは、記憶力(作業記憶)や複雑な課題を解決する能力(実行機能)の向上につながることが、新たな研究で示唆された。英エクセター大学認知症研究教授のAnne Corbett氏らによるこの研究の詳細は、「International Journal of Geriatric Psychiatry」に1月28日掲載された。 この研究は、40歳以上を対象にした脳の老化や認知症発症に関するオンライン研究であるPROTECT研究のデータを用いて、楽器の演奏や歌を歌うことが脳の健康に与える影響を検討したもの。対象とされたのは1,570人で、このうちの89%(1,392人)に楽器演奏の経験があり、また44%(690人)は現在も演奏を続けていた。対象者の音楽の熟練度は、Edinburgh Lifetime Musical Experience Questionnaire(ELMEQ)を用いて、楽器の演奏、歌唱、読譜、音楽鑑賞の4つの観点で評価した。対象者はまた、PROTECT研究のプラットフォームに組み込まれた認知テストシステムを使用して、最大3回の認知テストを受けた。最終的に1,107人(平均年齢67.82歳)が解析対象とされた。 解析の結果、楽器を演奏することは作業記憶と実行機能の良好なパフォーマンスと関連することが明らかになった。特に、鍵盤楽器の演奏と作業記憶の良好なパフォーマンスとの関連は強かった。また、歌を歌うことと実行機能との間にも有意な関連が認められた。ただしこの結果について研究グループは、「歌を歌うことがもたらすこのような効果は、コーラスや何らかの集団に属しているという社会的要因に起因する可能性がある」との見方を示している。さらに、作業記憶と実行機能に対する楽器演奏の効果は、高齢になっても演奏を続けていた人の方が、過去に演奏していたがやめてしまった人よりも大きいことも示された。 Corbett氏は、「総じて、われわれは音楽に関わりを持ち続けることが、認知予備能として知られる脳の敏捷性と回復力を養う方法だと考えている」と述べている。そして、「両者の関連をより詳細に調査する必要はあるが、今回の結果は、脳の健康に保護的に働くライフスタイルを促進するための公衆衛生上の取り組みにおいて、音楽教育の推進が貴重な構成要素であることを示すものだ」との見方を示している。その上で、「集団で行う音楽活動が認知症患者に有益であることを示すエビデンスは豊富にある。このアプローチは、高齢者が積極的にリスクを軽減し、脳の健康を促進するための健康プログラムなどの一部として取り入れられるのではないか」と付言している。 英コーンウォールに住む78歳のStuart Douglasさんは、生涯にわたって楽器を演奏してきた高齢者の一人だ。現役のアコーディオン奏者であるDouglasさんは、「私は、ファイフ炭田の村に住んでいた少年の頃にアコーディオンを習い、警察官になってからもずっと演奏を続けてきたし、今でも定期的に演奏している。私のバンドは人前で演奏することも多いため、私の手帳は常に演奏スケジュールで埋まっている」と話す。 Douglasさんは、「私たちは、定期的にメモリーカフェ(認知症患者やその家族などの交流の場)で演奏し、音楽が記憶喪失の人に与える効果を目の当たりにしてきた。また、私たち自身も高齢のミュージシャンであるため、年を重ねても音楽を続けることが、私たちの脳を健康に保つ上で重要な役割を果たしていることを実感している」と話している。

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やはりワルファリンとの比較でないとDOACは対抗できない?(解説:後藤信哉氏)

 心房細動の脳卒中予防には、アピキサバンなどのDOACが多く使用されている。根拠となったランダム化比較試験では、PT-INR 2~3のワルファリンが対照薬であった。ワルファリン治療は心房細動の脳卒中予防の実態的な過去の標準治療ではなかった。さらに、PT-INR 2~3を標的とするのは実態医療とも乖離していた。今回は、心房の筋肉にcardiomyopathyを認めるが、心房細動ではない症例を対象として、奇異性塞栓によるアピキサバンの脳梗塞再発予防効果をアスピリンと比較した。心房筋に障害があるので、病態は心房細動に近い。心房細動例の脳卒中再発予防であれば、過去の標準治療(PT-INR 2~3を標的としたワルファリン)にDOACは有効性で劣らず安全性に勝った。しかし、本研究対象のように心房細動ではないとアピキサバンはアスピリンと有効性・安全性に差がなかった。心房細動の有無というリズムが結果に与えた影響が大きかったのだろうか? 筆者は見かけの差異は対象の差異によると考える。 試験中に心房細動に移行した症例もあった。しかし、アピキサバンは有効性においてアスピリンに勝らなかった。アピキサバン開発の早期には、心房細動の脳卒中予防におけるアピキサバンとアスピリンの有効性・安全性を比較したAVERROSE試験が施行された(Connolly SJ, et al. N Engl J Med. 2011;364:806-817.)。アスピリンに対するアピキサバンの優越性が確認されたとして、AVERROSE試験は早期に中止された。心房筋に異常がある塞栓性の奇異性脳卒中であっても、抗凝固薬アピキサバンの効果が抗血小板薬アスピリンに勝らなかった結果の解釈は難しい。 科学の基本は再現性である。ランダム化比較試験における臨床的仮説検証の結果は客観的であるが、コストの面から第三者による検証は困難である。本研究も多施設共同の二重盲検の第III相試験である。本研究であっても第三者による検証は難しい。ランダム化比較試験は、これまで臨床医学の科学の王道であったが、他の方法論を考える必要があるかもしれない。

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維持期双極性障害に対する抗精神病薬の剤形による治療中止後の再発率の比較

 統合失調症患者において長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、患者が治療を中止した場合、同等の経口抗精神病薬と比較し再発までの期間を延長させる可能性があることが、これまでに報告されている。これと同様のパターンが、維持期治療中の双極性障害患者で観察できるかはよくわかっていない。藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性障害の維持期治療におけるLAI抗精神病薬と経口抗精神病薬の中止後の再発率を比較するため、システマティックレビューを実施した。Psychiatry Research誌2024年3月号の報告。 双極性障害の維持期治療におけるLAI抗精神病薬のプラセボ対照ランダム化治療中止試験、LAI抗精神病薬に対応する経口抗精神病薬を用いた同等性の研究をシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・5件の研究を特定した。内訳は、アリピプラゾール月1回LAIの研究1件、経口アリピプラゾールの研究1件、リスペリドン2週間LAIの研究2件、経口パリペリドンの研究1件であった。・アリピプラゾール月1回LAIを中止した場合、経口アリピプラゾールを中止した場合と比較し、2週、4週、6週、8週、12週、16週、20週、26週時点での再発率が低かった。・リスペリドン2週間LAIを中止した場合、経口パリペリドンを中止した場合と比較し、2週、4週、6週、8週、16週時点での再発率が低かった。 著者らは、「LAI抗精神病薬または同等の経口抗精神病薬で安定していた躁病患者において治療中止が行われた場合、LAIの剤形のほうが同等の経口剤よりも、再発までの期間を大幅に延長すると解釈できるだろう」としている。

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低炭水化物ダイエット、肉食だと効果が続かない?

 低炭水化物ダイエットの体重に対する影響は一律ではないことが報告された。炭水化物を減らした分のエネルギーを植物性食品主体に置き換えて摂取した場合は減量効果が長期間続く一方、動物性食品に置き換えて摂取した場合は時間の経過とともに体重が増加に転じやすいという。米ハーバード大学T. H.チャン公衆衛生大学院のBinkai Liu氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に12月27日掲載された。論文の筆頭著者であるLiu氏は、「われわれの研究では、炭水化物を摂取すべきか摂取すべきでないかという単純な疑問の範囲を超え、食事の内容の違いが数週間や数カ月ではなく数年間にわたって、健康にどのような影響を与える可能性があるかを検討した」と述べている。 この研究は、米国で医療従事者を対象に現在も行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて行われた。一つは30~55歳の看護師を対象とする「Nurses' Health Study;NHS」で、別の一つは25~42歳の看護師対象の「NHS II」であり、残りの一つは男性医療従事者対象の「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。65歳以上や糖尿病などの慢性疾患罹患者を除外し、計12万3,332人(平均年齢45.0±9.7歳、女性83.8%)を解析対象とした。 食習慣は後述の5種類の指標で評価した。研究参加者は4年ごとにこれらのスコアが評価され、そのスコアと4年間での体重変化との関連が検討された。解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、人種/民族、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・高コレステロール血症の既往、摂取エネルギー量、糖尿病の家族歴、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン療法の施行など)を調整した。 全体的な炭水化物摂取量が少ないことを表すスコア(total low-carbohydrate diet)のプラスの変化(炭水化物摂取量がより少なくなること)は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(animal-based LCD)のプラスの変化も体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。植物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(vegetable-based LCD)の変化と体重変化との関連は非有意だった(傾向性P=0.16)。炭水化物は精製度の低いものとして、植物性食品からのタンパク質や健康的な脂質が多いことを表すスコア(healthy LCD)のプラスの変化は、体重の減少と関連していた(傾向性P<0.0001)。全粒穀物などの健康的な炭水化物の摂取が少なく、動物性食品からのタンパク質や脂質が多いことを表すスコア(unhealthy LCD)のプラスの変化は、体重の増加と関連していた(傾向性P<0.0001)。 サブグループ解析からは、これらの関連性は、過体重や肥満者、55歳未満、身体活動量が少ない群で、より強く認められた。論文の上席著者である同大学院のQi Sun氏は、「われわれの研究結果は、低炭水化物ダイエットをひと括りにしていたこれまでの捉え方の変更につながる知見と言えるのではないか。また、全粒穀物、果物、野菜、低脂肪乳製品などの摂取を推奨する公衆衛生対策を、より強く推進していく必要があると考えられる」と述べている。

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犬が興味を示す動画や映像はどんなもの?

 愛犬がテレビで何を見るのが一番好きか考えてみてほしい。自然のドキュメンタリー番組だろうか、動物の映像だろうか。米ウィスコンシン大学マディソン校獣医学部教授のFreya Mowat氏らが「Applied Animal Behavior Science」1月号に発表した研究によると、犬が最も興味を示す動画や映像は、他の動物、特に犬が登場するものであるという。 この研究は、犬の視覚をチェックするためのより良い方法の開発を目的にした研究の一部として実施された。Mowat氏は、「現在、われわれが犬の視力を評価する際に使っている方法は、人間で例えるなら、対象物が見えているかいないかを単にイエスかノーで答えさせるような、非常に低レベルのものしかない。犬の視力を評価するには、犬用の視力表(アイチャート)に相当するような、より高感度な方法が必要だ」と主張する。そして、「われわれは、動画を利用することで視覚機能の評価に必要な時間だけ犬の注意を引きつけることができると考えている。しかし、どのようなタイプのコンテンツが犬にとって最も魅力的なのかが不明だった」と研究背景を説明している。 この点を調べるためにMowat氏らは、飼い犬のテレビとの関わりに関するウェブベースの調査票を作成し、世界中の犬の飼い主に回答してもらった。調査は、家庭内のスクリーンの種類(テレビ、タブレット、パソコンのスクリーンなど)、犬の年齢や犬種などの基本情報に加え、動画や映像に対する反応や興味を示すコンテンツなどを問う41項目の質問で構成されていた。調査では、犬、交通、パートナー(飼い主)、鳥の4本のショート動画を犬に見せることもできた。得られた回答の中から、動画や映像に対する犬の興味について不明と答えたものなどを除外し、最終的に1,246件の回答を解析対象とした。 回答のほとんど(89%)は米国から寄せられたものだった。対象とされた犬の年齢中央値は4歳で、雌犬が51%、純血種の犬が54%を占めていた。全回答のうちの1,077件で飼い犬が動画や映像に興味を示すこと、残りの75件は興味を示さないことが報告されていた。動画や映像に興味を示す犬は、スクリーンに近付く(78%)、首を傾げる/耳を立てる(78%)、鳴き声を出す(76%)、鼻先でスクリーンに触れる(29%)などの反応を示すことが報告されていた。 調査結果からは、そのほかに以下のような結果が判明した。・動画や映像に興味を示す犬の間で最も人気があるコンテンツは、動物が登場するものだった(95%の犬が反応)。・動物が出てくる動画や映像の中でも、犬が出てくるものは、とりわけ犬の興味を引き付けた(93%の犬が反応)。・人間の出てくる動画や映像に対する犬の関心はあまり高くなく、17カテゴリー中9位だった(37%の犬が反応)。・年齢と視力は、犬が動画や映像に興味を示す頻度に関係するのに対し、年齢と犬種は犬が興味を示す動画や映像の内容に関係する。・スポーティングドッグ(鳥猟犬;ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーなど)と牧羊犬・牧畜犬(オーストラリアンシェパード、ボーダーコリーなど)は他の犬種の犬に比べて、あらゆるタイプの動画や映像に興味を示す傾向が強かった。・スクリーン上の動きは犬の注意を強く引いた。 Mowat氏は、「これらの結果は、動画をベースに犬の加齢に伴う視覚的注意の変化を追跡する方法の開発に役立てることができるだろう」と話す。そして、「犬の視力がどのように老化していくのかを理解することは、犬とともに暮らす人間にも役立つ。例えば、視覚に有害な環境要因や生活習慣の影響は、それが人間に現れる何十年も前に、人間よりもはるかに寿命の短い犬に現れる可能性がある。その意味で、犬は人間の『センチネル種』と言えるのかもしれない」と付け加えている。

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今後20年でオゾン関連の死亡者数はどうなる?

 気候変動が原因で、今後20年にわたり全世界のオゾンに関連した死亡者数が増加する可能性があるようだ。米イェール大学公衆衛生大学院のKai Chen氏らによる研究で、人類が地球温暖化を食い止めない限り、2050〜2054年の間に北米、欧州、アジア、オーストラリア、アフリカの20の国や地域の406都市だけで、地表レベルのオゾンによる死亡者数が年間6,200人増加すると推定された。この研究の詳細は、「One Earth」に1月23日掲載された。Chen氏は、「この研究は、より多くの国々がパリ協定を遵守することが健康上の利益につながることを裏付ける、さらなるエビデンスとなるものだ」と説明している。 研究の背景情報によると、オゾンは自動車や発電所、産業から排出される汚染物質が太陽光の下で化学反応を起こすことで生じるスモッグの主な成分で、呼吸器障害や心疾患、早期死亡に関連することが示されているという。米国環境保護庁(EPA)によると、オゾンは、都市部では晴れた暑い日に健康に有害なレベルに達する可能性が高いという。 Chen氏らは今回の研究で、北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、およびアフリカの20カ国、406都市での地表レベルのオゾンへの短期曝露により生じ得る、近い将来(2050〜2054年)の1日当たりの超過死亡を予測した。予測は、4つの社会経済シナリオ(Shared Socioeconomic Pathway;SSP)、すなわち、気候変動や大気汚染に対して厳格な対策が講じられる場合(シナリオ1)、中道的な対策が講じられる場合(シナリオ2)、地域対立的な発展のもと、気候変動や大気汚染に対して弱い対策が講じられる場合(シナリオ3)、気候変動対策が弱いが大気汚染対策は強力な場合(シナリオ4)、に基づき行われた。 その結果、気候変動や大気汚染に対して弱い対策が講じられる場合(シナリオ3)、これら406都市でオゾンに関連した年間の超過死亡が2010~2014年の平均45人から2050~2054年には約6,200人へと増加することが推定された。しかし、気候変動や大気汚染に対して厳格な対策を講じることで、それを変えることができる可能性も示された。すなわち、各国がパリ協定を遵守するシナリオ1では、2010年から2054年までの間に予測されるオゾンに関連した死亡者数は0.7%の増加にとどまっていたという。 一方、気候変動や大気汚染に対する対策が十分に講じられないシナリオ2〜4の場合、オゾンに関連した死亡者数は56~94%増加すると推定された。また、全体の死亡者数に対するオゾンに関連した死亡者数の寄与割合は、現在(2010〜2014年)の0.17%から、2050〜2054年には、シナリオ2と3で0.21%、シナリオ4で0.22%へと増加することが示された。これに対して、シナリオ1では0.15%へと減少することが示された。 Chen氏は、「今回われわれが調べた4パターンの気候変動のシナリオでは、パリ協定に従うシナリオのみで今後のオゾンに関連した死亡者数の寄与割合が減少することが判明した」と言う。 Chen氏らは、多くの国の気候や大気質の基準がこの流れを止めるために必要なレベルには達していないと指摘している。この研究では、人間の健康にとって好ましい数値として、オゾンの最大許容曝露量は大気1m3当たり70μgに設定されていた。一方、世界保健機関(WHO)の現在のオゾンの大気質基準は大気1m3当たり100μg、米国とメキシコでは137μg、中国では160μg、欧州では120μgとされている。 Chen氏らはニュースリリースの中で「われわれの研究は、より厳格なオゾンの曝露基準が必要なことを強調するものだ」と結論付けている。また、「より厳しい大気質規制の導入によって、オゾンに関連した短期的な超過死亡が抑制されるだけでなく、それにより、長期的なオゾン関連死亡率と気候変動の抑制にメリットがもたらされるため、さらなる恩恵を得られる可能性が高い」と述べている。

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6歳まで持続する牛乳アレルギー、約半数は12歳までに耐性獲得

 6歳の時点で牛乳アレルギー(cow's milk allergy;CMA)が持続していても、約半数の子どもは12歳になるまでに耐性を獲得するという調査結果を、国立病院機構相模原病院小児科の研究グループが「Pediatric Allergy and Immunology」に12月24日発表した。研究では学童期にCMAが持続する3つの危険因子を同定。危険因子を全て保有すると耐性を獲得しにくい可能性も示された。 即時型CMAを有する小児は、就学前までに約50~90%が耐性を獲得すると報告されている。しかし、これらの研究は乳幼児期に追跡調査を開始しているため、学童期にCMAが持続する場合の耐性獲得率は明らかになっていない。責任著者の柳田紀之氏らは同病院に通院し、6歳の時点でCMAが持続している児を12歳になるまで後ろ向きに調査し、牛乳への耐性を獲得する割合の推移を明らかにした。 対象は、6歳の時点でCMAが持続して見られた小児80人(男児69%)。38%(30人)は牛乳によるアナフィラキシーの既往があり、50%(40人)は食事から牛乳を完全に除去していた。6歳時点の牛乳特異的IgE抗体価(CM-sIgE)の中央値は12.0kUA/Lだった。なお、経口免疫療法を受けた児は解析から除外した。 耐性獲得は、非加熱牛乳200mLの食物経口負荷試験結果が陰性だった場合、または、アレルギー症状を呈することなく非加熱牛乳200mLを家庭で摂取可能な場合と定義し、どちらの基準も満たさない場合をCMA持続と判定した。主要評価項目は12歳までの牛乳に対する耐性獲得とし、CMA持続の危険因子についても評価した。 分析の結果、9歳までに25人(31%)が、12歳までに58%(46人)が耐性を獲得した。多変量Cox回帰分析から、CMAが持続する危険因子として、ベースライン時(6歳時点)のCM-sIgE高値(調整ハザード比2.29、95%信頼区間1.41~3.73、至適カットオフ値は12.7kUA/L)、牛乳によるアナフィラキシーの既往(同2.07、1.06~4.02)および牛乳の完全除去(同3.12、1.46~6.67)の3つが判明した。これらの危険因子をいずれも保有しなかった児の86%が12歳までに耐性を獲得したのに対し、危険因子を全て保有する14人のうち耐性を獲得した児はいなかった。 以上から、著者らは「IgE依存性即時型CMAの自然経過を検討した結果、6歳までCMAが持続していた児は、経口免疫療法を受けた子どもを除くと12歳までに58%が耐性を獲得することが分かった。この耐性獲得率はピーナツアレルギーの21.5%(4~20歳、海外からの報告)よりも高いが、われわれが過去に報告した鶏卵アレルギーの60.5%(6~12歳)とほぼ同程度だった」と結論。また、「本研究ではCMAが持続する3つの危険因子が判明し、経口免疫療法を考慮すべき小児についても特定することができた」と述べている。

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外国語習得のコツ【Dr. 中島の 新・徒然草】(517)

五百十七の段 外国語習得のコツ暖かい日が続きます。このまま春に突入するのか、それとも再び寒くなるのでしょうか?まだ2月なので、大阪でもあと1回か2回は凍りつきそうな寒さを経験させられるんじゃないかと恐れています。さて先日のこと、YouTubeチャンネル「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」の「【謎を解き明かす冒険家】世界最大級○○密造アジトに潜入した話【高野秀行】」を聞きながら皿洗いをしていた時のことです。ん、高野 秀行?どこかで聞いたことのある名前です。なんとこの「新・徒然草」の第二百三十五の段「1000年トリップ」で語っていたことを思い出しました。高野 秀行氏が著書『怪しいシンドバッド』の中で幻の幻覚剤にアマゾンの奥地で出合ったという話を紹介していたのです。彼が現地の人に差し出されたヤヘイ(別名:アヤウアスカ)の汁を飲み干したところ、自らがロケットになったり子供時代に戻ったり深海をさまよったりアラビアンナイトの世界を通ったり、わずか1時間ほどの間に1,000年分もの幻覚を見たのだとか。今回聴いたYouTubeでは、その冒険家、高野氏がどうやって25ヵ国語以上の言語に通じるようになったのか。何か、コツのようなものがあるのかと、司会の丸山 ゴンザレス氏が尋ねていました。「ありますね」と高野氏。必要なものを覚えるのだそうです。高野氏によれば、初級用のテキストを入手して「みんなでハイキングに行きました」という例文を覚えても、そんなものは一生使わないのだとか。この辺は大いにうなずけます。例として、ソマリアの海賊を取材するためにソマリ語を教えてもらった話がありました。その場合に必要な言葉は「拉致」とか「身代金」とかになるわけです。何だか恐ろしい取材ですね。一方、謎の魚を探しに行くときに覚えた例文はまったく別のものでした。「この魚を見たことがありますか」「この魚を見つけたらすぐ私に連絡してください」「もしこの魚を私の所に持ってきたら1万ルピー差し上げます」「でも、この魚と同じでなかったらお金はあげられません」こちらのほうは海賊に比べれば牧歌的ですが、本人は大真面目なのだと思います。彼は目的のために言葉を覚えるので、それぞれの場面に特化したものを中心に学ぶわけですが、これこそ究極の言語習得法ですね。考えてみれば、世界の観光名所の土産物店には何ヵ国語も操る店員さんが数多くいますが、あれも「物を売る」という目的があればこそ。われわれ医師も多くの外国人患者さんに接する時代になりました。彼らの母国語で診察してやろうという目的があれば、少しは成果が期待できるかもしれません。まずは英語での診療。その次に学ぶべきは、使用人口の多い中国語か、学生時代に学んだドイツ語か、それとも日本語に近いといわれる韓国語か?そう考えてみると日々の診療も楽しくなりそうですね。最後に1句花冷えに 母国語使い 診療す今回もChatGPTでイラストを作成してみました。何とも不思議な世界ですね。

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第85回 Googleの生成AI「Gemini」、ChatGPTを超えるか?

photoACより使用生成AIのGemini Advancedが公開されましたので、さっそく使ってみました。これ何かと言いますと、Google Bardのことです。名前がBardからGeminiに変わったんです。Geminiのうち、高性能の大規模言語モデルを搭載しているのがGemini Advancedというサービスで、月19.99ドル払えば皆さんも使用可能です。「なんやねん、19.99ドルって!」と思われたかもしれませんが、GPT-4を使えるChatGPT Plusの課金が20ドルなんですよね。0.01ドル安く設定してきたことを考えると、Googleは間違いなくChatGPTのことをめちゃめちゃ意識しています。先にリリースされたGemini Proはちょっとイマイチな感じの生成AIだったのですが、「GPT-4を超える」という大々的なプロモーションでGemini Advancedが爆誕しました。多くのベンチマークでGPT-4を上回ったとされています。■Gemini:https://gemini.google.com拡張機能として、GoogleマップやYouTubeのプラグインがありますが、現時点ではChatGPTのように臨床医にマッチしたサービスは出ていないようです。私たち医師にとって、臨床や医学論文に応用できるかどうかが大事です。Gemini Advancedのデメリット先にデメリットを書きます。大事なポイントとして、英語で質問しないとまともな答えが返ってこないことがあります。これはBard時代からそうでした。なので、一度日本語から英語に翻訳して使う必要があります。また、医学的な質問をすると、途中まで答えてくれようとするのですが、途中で「あーすいません無理っす」とコメントを終了してしまう現象がしばしば起こります。上述したように、ChatGPTのようなプラグイン・GPTsといった拡張機能がまだほとんどなく、臨床医にとっては「Gemini Advancedでないとダメだ」というシーンは、そこまで多くないという現状があります。Gemini Advancedのメリットメリットとして、回答がむちゃくちゃスピーディです。ChatGPTの2倍くらい速いと思います。そして、質問すると3つ回答を準備してくれるのがありがたいです。また、ファクトチェック機能があって、Google検索で正しい内容なのかダブルチェックしてくれる機能もあります。さらに、Googleのストレージが2TB追加になるので、私はこの時点で割と契約アリではないかなと感じました。というのも、私はGoogleフォトで子供の写真と動画がかなり容量を食っていたので、助かったくらいなのです。冒頭で述べたように、月19.99ドルとなっていますが、最初の2ヵ月間は試用期間として無料で利用できます。まだリリースされたばかりですし、これからいろいろな拡張機能が登場すると予想しています。臨床や医学論文にどのように活かせるか、引き続き探っていきたいと思います。

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病名変更、定着した疾患は?/医師1,000人アンケート

 疾患の機序や病態、患者さんからの要望などで成人病が「生活習慣病」へ、痴呆症が「認知症」へ病名変更された例がある。現在では、糖尿病の呼称を「ダイアベティス」に変更する提案がなされ、「非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)」から「MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)」、「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」から「MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)」への病名変更も予定されている。 そこで、会員医師1,000人にこうした疾患の呼称や病名変更についての考えや病名変更の認知度を聞いた。呼称や病名を変更するなら病態をイメージできるものを 質問1で「『糖尿病がダイアベティス』へ呼称変更、『非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)からMASLD』、『非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からMASH』」への病名変更される動きについて」を聞いたところ、「両方とも知っている」が1番多く512人、「『糖尿病』のみ知っている」が302人、「両方とも知らない」が142人、「『NAFLD・NASH』のみ知っている」が82人の順で多く、半数以上の会員医師は最近の動きを知っていた。 質問2で「疾患の病名や呼称を変更する理由として、どれが重要か」を聞いたところ、「疾患の機序や病態」が453人、「社会的なイメージや要請」が324人、「疾患認知度の向上」が293人の順で多く、病名で病態が理解できるものが望まれていた。 質問3で「9つの疾患を挙げ、病名・呼称の変更で定着したもの」を聞いたところ、「成人病から生活習慣病」が1番多く886人、「痴呆症から認知症」が842人、「精神分裂病から統合失調症」が819人の順で多かった。一方で、「サル痘からエムポックス」が48人、「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」が72人と診療科により定着率の低い疾患もあった。 質問4で「9つの疾患を挙げ、病名・呼称変更でまだ定着したと思われないもの」を聞いたところ、「サル痘からエムポックス」が1番多く704人、「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」が621人、「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群(HDP)」が490人、「不安障害から不安症」が483人の順で多かった。あまりなじみのない疾患の病名変更は浸透しにくい様子がうかがえた。呼称・病名変更に受容的なのは20・30代の医師 以下は20・30代、40代、50代、60代以上の医師と4つの区分ごとにみたものである。 質問1では、20・30代~50代の会員医師の半数以上が、疾患の名称・病名変更の動きを「両方とも知っていた」と回答していた。60代以上の医師では「糖尿病のみ知っていた」の回答が40%を占めていた。 質問2では、すべての年代の医師で「疾患の機序や病態」を変更理由として1番多く挙げているのに対し、60代以上の医師では「社会的なイメージや要請」を挙げる方もほかの年代の医師よりも多かった。 質問3では、20・30代医師では「妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群(HDP)」と「先端巨人症から成長ホルモン分泌亢進症」の認知度が他の年代よりも高かった。また、50代医師では「すべて定着したとは思わない」と回答した数が他の年代の医師よりも多かった。 質問4では、40代医師で「痴呆症から認知症」について「定着していない」の回答数が少なかったことから、この年代では「認知症」という病名が広く浸透していることがうかがえた。また、「すべて定着したと思う」と回答した医師は20・30代で1番多かったことから呼称・病名変更への受容性がうかがえた。誤解されるイメージの病名は変更したほうがよい 質問5で「疾患の呼称や病名について、個別の疾患への思いや考え、疾患名にまつわるエピソード」を募集したところ、以下のようなコメントが寄せられた。・~奇形、~異常などの名称が付く疾患は変更したほうがよい(整形外科・60代)・糖尿病の呼称を「ダイアベティス」に変えるなら、まず尿崩症の名称を変えたほうがよい(糖尿病・代謝・内分泌内科・30代)・フレイルは、わかりにくいので適当な和訳が望ましい(呼吸器内科・50代)・水ぼうそう(水痘)と水いぼ(伝染性軟属腫)は混同される方が多い(皮膚科・50代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。疾患の呼称や病名変更に医師はこう考える/医師1,000人アンケート

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薬剤性過敏症症候群、国際的コンセンサスを策定

 薬剤性過敏症症候群(DRESS:Drug Reaction with Eosinophilia and Systemic Symptoms)の重症度評価と治療に関する国際的なコンセンサスを策定する研究結果が、スイス・チューリヒ大学病院のMarie-Charlotte Bruggen氏らにより報告された。DRESSは、発現頻度は低いものの、死に至る可能性もある重症薬疹の1つである。研究グループはRAND/UCLA適切性評価法(デルファイ変法)を用いて100項目について検討を行い、93項目について合意形成に至った。著者は、「DRESSはさまざまな特徴を有する重度の皮膚有害反応を呈する薬疹で、臨床医は診断と治療管理に難渋する。今回のコンセンサスは、DRESS患者の診断、評価、治療を支援するものであり、将来的なガイドライン開発の基礎となるはすだ」と述べている。JAMA Dermatology誌2024年1月1日号掲載の報告。 研究グループは、DRESS患者の診断、重症度評価、治療に関する国際的なコンセンサスを策定することを目的に、デルファイ変法を用いて各国の専門家による検討を行った。DRESSの専門家57人に参加を呼び掛け、54人が2022年7~9月に実施された調査に参加。DRESSのベースライン診断、重症度評価、急性期および亜急性期の治療管理に関する100項目を評価した。合意形成の基準は、デルファイ変法(1点[きわめて不適切]~9点[きわめて適切])による評価の中央値が7点以上かつ見解不一致指数(disagreement index)が1点未満と定義した。 主な結果は以下のとおり。・第1回の適切性評価において、82項目について合意形成が得られた。・第2回評価で13項目が改訂・評価され、最終的に、全体で93項目の合意形成が得られた。・専門家らは、基本的な診断法や重症度評価、臓器固有のさらなる研究について合意した。・また、肝臓、腎臓、血液の関与の程度とその他臓器の損傷に基づく重症度評価(軽症、中等症、重症)について合意した。・DRESSの重症度に応じた治療管理の主な方針に関しても合意した。・DRESS患者の急性期後のフォローアップおよびアレルギー検査に関する一般的推奨事項も策定された。

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日本人統合失調症患者の死亡、入院、退職、病欠と関連する因子

 統合失調症の治療において、早期死亡リスク、入院リスクに影響を及ぼす再発、離職は、重要な課題である。北里大学の稲田 健氏らは、日本人統合失調症患者における重要なアウトカムである死亡、入院、退職、病欠のリスク因子を評価した。BMC Psychiatry誌2024年1月3日号の報告。 日本のレセプトデータベースより特定した統合失調症患者を対象に、ネステッドケースコントロール研究を実施した。各アウトカムは、年齢、性別、インデックス日、雇用状況(従業員または扶養家族)が一致した最大4つのコントロールと比較した。潜在的なリスク因子は、イベント発生前または発生月から3ヵ月以内の処方箋または診断により定義した。潜在的なリスク因子と各アウトカムとの関連性は、ステップワイズ変数選択を伴う多変数条件付きロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・各アウトカムにおけるケースと対象患者は以下のとおりであった。【死亡】144例、3万8,451例【入院】1,520例、3万5,225例【退職】811例、1万8,770例【病欠】4,590例、1万8,770例・抑うつ症状は、死亡(オッズ比[OR]:1.92、95%信頼区間[CI]:1.12~3.29)、入院(OR:1.22、95%CI:1.05~1.42)、病欠(OR:1.46、95%CI:1.36~1.57)のリスク因子であることが示唆された。・死亡に対するその他のリスク因子は、入院歴、チャールソン併存疾患指数(CCI)スコア、下剤の処方であった。・睡眠薬、下剤の処方、抗コリン薬の処方は、入院のリスク因子であった。・催眠薬と抗コリン薬の処方は退職のリスク因子であった。・CCIスコア、睡眠薬の処方、下剤の処方、糖尿病治療薬の処方は、病欠のリスク因子であった。 著者らは「われわれの知見は、統合失調症患者の重要な臨床アウトカムのリスク因子として、抑うつ症状および便秘、錐体外路症状など、いくつかの身体症状が特定されていることを示唆している。統合失調症の治療では、抑うつ症状と身体症状の両方に注意を払う必要がある」としている。

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痛風再燃の98%はベースライン尿酸値5mg/dL以上/JAMA

 痛風の既往歴のある患者において、ベースラインの血清尿酸値は、その後の痛風再燃および再発による入院のリスクと関連しており、再発リスクの評価の指標として使用可能であることが、米国・マサチューセッツ総合病院のNatalie McCormick氏らの調査で示唆された。研究の成果は、JAMA誌2024年2月6日号で報告された。英国の痛風既往例の後ろ向きコホート研究 本研究は、英国のプライマリケアにおいて、痛風の既往歴を有する患者における1回の血清尿酸値測定と、その後の急性痛風再燃および痛風の再発による入院のリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの後ろ向きコホート研究である(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 対象は、2006~10年に英国で確認された痛風の既往歴を有する患者3,613例(平均年齢60.2[SD 6.8]歳、男性3,104例[86%])であり、2020年まで追跡調査を行った。 主要アウトカムは急性痛風の再発率とし、負の二項回帰モデルを用いて補正済みの率比を算出した。痛風再燃の98%はベースライン尿酸値5mg/dL以上 平均追跡期間8.3年の時点で、3,613例に1,773件の痛風再燃を認め、患者はプライマリケア医の治療を受けるか入院した。このうち、1,679件(95%)はベースラインの血清尿酸値が6mg/dL以上の患者、1,731件(98%)はベースライン尿酸値5mg/dL以上の患者であった。 1,000人年当たりの急性痛風再燃率は、ベースライン尿酸値6mg/dL未満の患者で10.6、同6.0~6.9mg/dLの患者で40.1、同7.0~7.9mg/dLの患者で82.0、同8.0~8.9mg/dLの患者で101.3、同9.0~9.9mg/dLの患者で125.3、同10mg/dL以上の患者では132.8であった。 また、同様のベースライン尿酸値別の10年間における再燃の補正後率比は、それぞれ1.0(reference)、3.37、6.93、8.67、10.81、11.42だった(血清尿酸値1mg/dL上昇当たりの補正後率比:1.61、95%信頼区間[CI]:1.54~1.68)。ベースライン尿酸値が高いと入院率も上昇 追跡期間中の1,000人年当たりの入院率は、ベースライン尿酸値6mg/dL未満の患者で0.18、同6.0~6.9mg/dLの患者で0.97、同7.0~7.9mg/dLの患者で1.8、同8.0~8.9mg/dLの患者で2.2、同9.0~9.9mg/dLの患者で6.7、同10mg/dL以上の患者では9.7であった。 また、同様のベースライン尿酸値別の、年齢、性別、人種で補正した痛風による入院の補正後率比は、それぞれ1.0(reference)、4.70、8.94、10.37、33.92、45.29だった(血清尿酸値1mg/dL上昇当たりの補正後率比:1.87、95%CI:1.57~2.23)。 著者は、「尿酸降下薬の使用者と非使用者の双方において、血清尿酸値が高い患者では痛風再燃リスクが高かった」としており、「本研究の知見は、追跡期間が約10年までは、痛風の再発リスクの評価におけるベースラインの血清尿酸値の使用を支持するものである」と指摘している。

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