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うつ病の5人に1人が双極性障害、躁症状どう見つける?

 わが国の気分障害患者は増加の一途をたどっている。気分障害の中でも、躁病エピソードとうつ病エピソードを繰り返す双極性障害の診断・治療への関心は高い。治療に関しては、双極性障害の適応を有する薬剤が最近いくつか承認された背景もあり、日本うつ病学会は本年(2012年)3月末に双極性障害治療ガイドラインの改訂を行っている。一方、診断に関しては、躁症状や軽躁状態を把握することが難しく、うつ病と診断されるケースも少なくない。Perugi氏らは、双極性障害の診断ツールとして開発され、国際的にテストされているHCL-32(Hypomania Checklist-32)の有用性を検討し、Psychopathology誌オンライン版2012年8月7日号で報告した。 対象として、DSM-IV基準により大うつ病と診断された571例(563例が適格)が継続的に登録され、多施設共同横断観察研究を行った。躁病エピソード(躁症状、軽躁状態)はHCL-32で評価し、うつ病エピソード(抑うつ症状、不安症状)はZungうつ病自己評価表にて評価した。主な結果は以下のとおり。・119例の患者は双極性障害(Ⅰ型またはⅡ型)と診断された。・HCL-32トータルスコアおよび14のサブスコアにおいて、双極性障害患者の躁病エピソードの発生は大うつ病患者に比べ有意に高く、感度は0.85、特異性は0.78であった。・若干の偽陽性がみられるものの、HCL-32は大うつ病患者における過去の軽躁病エピソードの把握に有用であると考えられる。関連医療ニュース ・双極性障害の再発予防に有効か?「Lam+Div療法」 ・双極性障害患者に対するオランザピン単剤 or 併用の忍容性 ・双極性障害に対する薬物療法レビュー

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バンデタニブが局所進行性/転移性分化型甲状腺がんのPFSを延長:無作為化二重盲検第2相試験

 放射性ヨード耐性の進行性分化型甲状腺がんに対する有効な標準的治療はまだない。Sophie Leboulleux氏らは、RET、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)、上皮成長因子受容体(EGFR)のシグナル伝達のチロシンキナーゼ阻害薬であるバンデタニブが、無作為化二重盲検第2相試験によって、局所進行性または転移性分化型甲状腺がんに対する有効性を示したことを報告した。著者らは、この疾患に対するチロシンキナーゼ阻害薬のさらなる研究が必要であるとしている。The Lancet Oncology誌オンライン版2012年8月13日号に掲載。 本試験は、ヨーロッパの16施設において、18歳以上の局所進行性または転移性分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん、または低分化がん)の患者が登録され、バンデタニブ群(バンデタニブ300mg/日)またはプラセボ群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における無増悪生存期間(PFS)である(治験責任医師の評価に基づく)。 主な結果は以下のとおり。・2007年9月28日~2008年10月16日に、バンデタニブ群72例、プラセボ群73例が割り付けられた。・データカットオフ(2009年12月2日)までに、113例(78%)の患者が進行(バンデタニブ群52例[72%]、プラセボ群61例[84%])、40例(28%)が死亡した(バンデタニブ群19例[26%]、プラセボ群21例[29%])。・PFS中央値は、バンテタニブ群11.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.7~14.0)、プラセボ群5.9ヵ月(4.0~8.9)であり、バンデタニブ投与によりPFSが延長した(ハザード比[HR]:0.63、60%CI:0.54~0.74;片側p=0.008)。・Grade3以上の主な有害事象は、QTc延長(バンデタニブ群10例[14%]対プラセボ群0例)、下痢(7例[10%]対0例)、無力症(5例[7%]対3例[4%])、疲労(4例[5%]対0例)であった。・治療関連の重篤な有害事象により、バンデタニブ群では2例(皮膚転移による出血および肺炎)、プラセボ群では1例(肺炎)が死亡した。

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ナイアシン/laropiprant併用の忍容性に疑問符。導入期間を含めおよそ1万5千例が脱落:HPS2-THRIVE試験

8月26日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート I」セッションでは、HPS2-THRIVE試験の安全性中間解析が報告された。今回の発表は主に安全性に関する中間解析報告であり、忍容性に疑問を投げかけるものとなった。オックスフォード大学(英国)のJane Armitage氏が報告した。本試験は、ナイアシンによる動脈硬化性イベント抑制効果を検討する試験である。「LDL-C低下療法+ナイアシン」による心血管系イベント抑制作用は、昨年のAHAで報告された二重盲検試験AIM-HIGH (Atherothrombosis Intervention in Metabolic Syndrome with Low HDL/High Triglycerides and Impact on Global Health Outcomes)で、すでに否定されている。しかしAIM-HIGHの試験規模は登録数3,424例であり、HPS2-THRIVEに比べると小さい。またナイアシンによる顔面潮紅で二重盲検化が破られぬよう、対照群にも低用量のナイアシンを服用させていた。一方、HPS2-THRIVEは、laropiprant(ナイアシンによる顔面潮紅抑制剤)で潮紅抑制を図っているため、プラセボ群はナイアシンを全く服用していない。AIM-HIGHと異なり、純粋な「ナイアシン vs プラセボ」の比較が企図されている。HPS2-THRIVE試験の対象は、心筋梗塞、脳卒中、PVDあるいは冠動脈疾患合併糖尿病例である。ナイアシン/laropiprant(2g/日)群とプラセボ群に無作為化された。HDLコレステロール(HDL-C)を増加させるナイアシンが血管系イベントを抑制させるか、現在も二重盲検法で追跡中である(ただし全例、シンバスタチン 40mg/日(±エゼチミブ 10mg/日)によるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法を受けている)。本試験では無作為化前、適格となった38,369例に、導入期間として8週間ナイアシン療法(ナイアシン/laropiprant)を行った。その結果、33.1%にあたる12,696例が脱落(服用中止)していた。うち76.9%(9,762例)は、薬剤が脱落の原因とされた。脱落理由として明らかな症状は、皮膚症状、消化管症状、筋症状などである。上記を経て、最終的に25,673例が無作為化された。42.6%は中国からの登録である。平均年齢は64.4歳、83%が男性だった。78%に冠動脈疾患、32%に脳血管障害、13%に末梢動脈疾患を認め、33%が糖尿病例(重複あり)だった。今回、「中間安全性解析」として報告されたのは、無作為化後平均3.4年間における試験薬服用中止例の割合とその理由である。ナイアシン療法群では、無作為化後さらに、24.0%(3,084例)が新たに脱落していた(15.7%が服用薬関連)。プラセボ群は15.4%である(服用薬関連は7.5%)。群間差の検定なし。ナイアシン療法群で発現率の高かった有害事象は、「皮膚症状」(5.1%)、「消化器症状」(3.6%)、「骨格筋症状」(1.6%)、「糖尿病関連」(0.9%)、「肝障害」(0.7%)である。いずれもプラセボ群よりも高い数値だった。ただし「肝障害」には一過性のものが含まれている。そのため重篤な肝障害に限れば、ナイアシン療法群、プラセボ群とも発現率は0.1%となった。また、ナイアシン療法群では「筋障害」発現率が0.54%と、プラセボ群の0.09%に比べ有意に高かった(リスク比:5.8、95%信頼区間:3.1~10.7)。この「筋障害」の増加は、主として中国人におけるリスク増加の結果だった(ナイアシン療法群:1.13% vs プラセボ群:0.18%)。Armitage氏によれば、2013年には臨床転帰を含む最終報告が行われるという。来年の結果報告が待たれる。関連リンク

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糖尿病例の高リスク病変に対するPCI──、DES時代でもCABGに対する非劣性は証明できず:CARDia試験延長5年間追跡

8月27日の「クリニカルトライアル&レジストリ・アップデート II」セッションにおいて、CARDia(Coronary Artery Revascularisation in Diabetes)試験の延長5年間の追跡成績が報告された。当試験は、糖尿病例の高リスク冠動脈病変に対する予後改善作用を、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の間で比較した無作為化試験である。当初予定した1年間の追跡で、CABGに対するPCIの非劣性が証明されなかったため追跡期間を延長し(中央値:5.1年間)、今回の報告に至った。しかし、PCI群の約7割が薬物溶出ステント(DES)を用いていたにもかかわらず、CABGに対するPCIの非劣性は確認できなかった。そのため、DES登場前のBARI試験において示唆された「糖尿病例多枝病変ではCABGのほうが良好」との知見を覆すには至らなかった。イースト・アングリア大学(英国)のRoger Hall氏が報告した。CARDia試験の対象は、多枝病変、あるいは左前下行枝に複雑病変を認め、血行再建の適応があった糖尿病510例である。平均年齢は64歳、男性が74%を占めた。糖尿病罹患期間は10年。3枝病変は62%に認めた。これら510例は、CABG群(254例)とPCI群(256例)に無作為に割り付けられた。CABG群では、平均2.9枝に対しバイパスが行われた。グラフトの94%は左内胸動脈だった。一方PCI群では、平均3.6本のステントが留置された。うち69%はDES(シロリムス溶出)であった。第一評価項目は「死亡、初発の心筋梗塞および脳卒中」で、CABGに対するPCIの「非劣性」証明が目的とされた。しかし、結果としてCABGに対するPCIの「非劣性」は認められず、CABG群に比べPCI群では、一次評価項目のハザード比が増加傾向を示した(ハザード比:1.34、95%信頼区間:0.94~1.93)。有意差に至らなかったのは「検出力不足のため」とHall氏は説明している。事実、この症例数でも「十分な検出力を有する」(原著論文)とされた評価項目「一次評価項目+血行再建術再施行」のリスクは、PCI群で有意かつ著明に高かった(ハザード比:1.56、95%信頼区間:1.14~2.14)。また「非致死的心筋梗塞」リスクも、PCI群で有意に高かった。以上よりHall氏は、「多枝病変を認める糖尿病患者に対する、ルーチンなPCIを支持する明確なエビデンスは得られなかった」と述べた。一方、本試験では前出BARI試験と異なりPCI群における死亡の有意増加は認めなかったため、明らかにPCIが適している病変では考慮してもよいとの考えを示した。関連リンク

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抗凝固療法下の抗血小板療法DAPTよりもクロピドグレル単剤が出血リスクが低い:WOEST試験

心房細動(AF)など、抗凝固療法が必要な患者にステント留置を行う場合、抗血小板療法はアスピリン・クロピドグレル併用(DAPT)よりもクロピドグレル単剤のほうが、心血管系イベントを増加させることなく出血性合併症を有意に抑制することを、WOEST (What is Optimal antiplatelet and anticoagulant therapy in patients with oralanticoagulation and coronary stenting) 試験が明らかにした。この点を検討した初の無作為化試験である。8月28日の「ホットラインIII」セッションにて、聖アントニオ病院(オランダ)のWillem Dewilde氏が報告した。WOEST試験の対象は、抗凝固療法を1年以上継続し、無作為化後すぐに経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が予定されていた18歳以上の563例である。重篤な出血既往例は除外されている。平均年齢は70歳、約8割が男性だった。抗凝固療法を必要とする疾患の70%近くをAFが占めた。また抗凝固薬は7割がワルファリンだった。PCIの内訳は、薬物溶出ステントDES(ベアメタルステント [BMS]との併用含む )が70%弱、BMS単独が30%となっていた。これら563例は抗凝固療法を継続のうえ、DAPT群(284例)とクロピドグレル単剤群(279例)に無作為に割り付けられた。DAPT群ではアスピリン80mg/日+クロピドグレル75mg/日、クロピドグレル単剤群では75mg/日を服用した。抗血小板薬の服用期間は、BMS留置例では最低1ヵ月間(最大でも1年間)、DES留置例では最低1年間とした。その結果、一次評価項目である「1年間の全TIMI出血」は、DAPT群:44.9%に対しクロピドグレル単剤群では19.5%と有意に低値となっていた(ハザード比:0.36、95%信頼区間:0.26~0.50;p

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(10)〕 糖尿病患者の生命予後に関連する因子

糖尿病患者の死亡に関連するリスク因子を検討したTRIAD (Translating Research Into Action for Diabetes) study (McEwen LN et al. Diabetes Care. 2007; 30: 1736-1741.)では、総死亡と関連するリスクとして、高齢、低収入、長期の(9年以上)罹病期間、BMI26未満、性別(男性)、喫煙、腎疾患が統計学的に有意な因子として報告されている。本論文ではFramingham Offspring Study(FOS) など5つの長期コホート研究(観察期間:7~28年)についてpooled analysis を行い、40歳以上で糖尿病を発症した2,625人についてBMI 25未満を正常体重、BMI 25以上を過体重と分類して、全死亡、心血管死、非心血管死を主要アウトカムとしてその臨床背景を検討した成績である。“Obesity paradox…” 血圧、脂質、ウエスト周囲径、喫煙について補正を行った際の死亡に関するハザード比は、正常体重/過体重で総死亡は2.08(95%信頼区間:1.52-2.85)、非心血管死は2.32(95%信頼区間:1.55-3.48)と正常対照群で2倍以上となったが、心血管死については1.52(95%信頼区間:0.89-2.58)と統計学的な有意差は認めなかったと報告されている。 今回の検討では、BMI 25未満での糖尿病の発症が多いアジア系の人種を除いており、糖尿病を発症した時点で何らかの悪性疾患が潜んでいる可能性を除くため、糖尿病を発症後2年以上の経過を追跡できたものや、登録時点に比較してBMIが2kg/m2以上低下している症例も除外している。長期にわたるコホート研究が対象であるため、データ収集の間隔も2~5年とばらつきはあるが、末期腎不全や心血管疾患の患者では非肥満者よりも肥満者のほうが生命予後は良い(”obesity paradox”)という報告とも一致する内容である。 欧米人の非肥満患者における糖尿病の発症に関連している遺伝因子、脂肪組織の分布やアディポカイン、炎症反応、膵β細胞機能などがどのように関連し、生命予後とどう結び付くのか、また、運動量や運動能力(fitness)の関与はないのかなど、「肥満=悪」とは簡単につながらない「何か」を思わせるpooled analysisである。

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アジスロマイシン、非嚢胞性線維症性気管支拡張症の増悪を抑制:EMBRACE試験

 アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)は、嚢胞性線維症を原因としない気管支拡張症におけるイベントベースの増悪の予防治療として有効なことが、ニュージーランド・Middlemore病院(マヌカウ市)のConroy Wong氏らが実施したEMBRACE試験で示唆された。気管支拡張症は好中球性の気道炎症、慢性的な細菌感染、繰り返す肺の病態の増悪で特徴づけられ、大量の喀痰を伴う重篤な咳嗽や進行性の肺機能低下、QOL低下をきたし、死亡率の上昇をもたらす可能性がある。アジスロマイシンは抗炎症作用および免疫調節作用を有するマクロライド系抗菌薬で、嚢胞性線維症の病態の増悪を抑制することが示されている。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。気管支拡張症に対する効果をプラセボ対照無作為化試験で評価EMBRACE(Effectiveness of Macrolides in patients with BRonchiectasis using Azithromycin to Control Exacerbations)試験は、非嚢胞性線維症に起因する気管支拡張症の治療において、アジスロマイシンは増悪率を低減して肺機能を増強し、健康関連QOLを改善するとの仮説の検証を目的とする二重盲検プラセボ対照無作為化試験。2008年2月12日~2009年10月15日までに、ニュージーランドの3施設に、抗菌薬治療を要する増悪の既往歴があり、高解像度CT検査で気管支拡張症と診断された18歳以上の患者が登録された。これらの患者が、アジスロマイシン500mgあるいはプラセボを週3日(月、水、金曜日)、6ヵ月間投与する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、6ヵ月の治療期間中のイベントベースの増悪率、気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)のベースラインからの変化、St George呼吸器質問票(SGRQ:0~100点で表し値が低いほど良好、4点以上の変化で臨床的に有意と判定)総スコアの変化の複合エンドポイントとした。増悪率が有意に改善、FEV1、SGRQ総スコアは改善せず141例が登録され、アジスロマイシン群に71例、プラセボ群には70例が割り付けられた。治療期間中の増悪率はアジスロマイシン群が0.59/人と、プラセボ群の1.57/人に比べ有意に改善した(率比:0.38、95%信頼区間[CI]:0.26~0.54、p<0.0001)。拡張薬投与前FEV1は、アジスロマイシン群はベースラインから変化はなく、プラセボ群では0.04L低下したが、この差は有意ではなかった(群間差:0.04L、95%CI:-0.03~0.12、p=0.251)。さらに、SGRQ総スコアの変化についても、アジスロマイシン群は5.17点の低下、プラセボ群は1.92点の低下で、有意差は認めなかった(群間差:-3.25点、95%CI:-7.21~0.72、p=0.108)。著者は、「6ヵ月間のアジスロマイシン治療は、増悪率の低下に加え、初回増悪までの期間もプラセボ群に比し有意に延長し、これらの改善効果は治療終了後6ヵ月の時点でも継続していた。SGRQの症状関連項目の改善効果も確認された。それゆえ、アジスロマイシンは1回以上の増悪歴のある非嚢胞性線維症性気管支拡張症における増悪の予防治療の新たな選択肢である」と結論し、「長期治療の場合は、マクロライド系抗菌薬への耐性の発現を十分に考慮して患者を選択すべきである」と指摘している。

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低・中所得国は男性喫煙率が高く、女性の開始年齢が若年化:30億人の解析

 低・中所得国は英米に比べ、男性の喫煙率が高く、女性の喫煙開始時期が男性と同じ年齢に若年化しつつあり、禁煙率も低いことが、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のGary A Giovino氏らGATS Collaborative Groupの調査で明らかとなった。現在、喫煙に起因する死亡率は高所得国が18%、中所得国が11%、低所得国は4%だが、喫煙率は高所得国で低下傾向にあるのに対し、低・中所得国では増加し死亡率も上昇している。WHOによれば、毎年約600万人が喫煙関連の原因で死亡しており、このままでは21世紀中に世界で約10億人が喫煙が原因で若年死するとされるが、低・中所得国の喫煙状況に関する信頼性の高いデータはないという。Lancet誌2012年8月18日号掲載の報告。14の低・中所得国と英米のデータを解析GATS Collaborative Groupは、低・中所得国における成人の喫煙パターンや喫煙関連因子を評価するために、横断的な国別の世帯調査である「世界成人喫煙調査(GATS)」のデータを用いて解析を行った。2008年10月1日~2010年3月15日までに、14ヵ国(バングラデシュ、ブラジル、中国、エジプト、インド、メキシコ、フィリピン、ポーランド、ロシア、タイ、トルコ、ウクライナ、ウルグアイ、ベトナム)の15歳以上を対象に世帯調査を行い、喫煙関連情報を収集した。14ヵ国間の喫煙の重み付き点推定(weighted point estimate)と95%信頼区間(CI)を算出し、2008年の英国のGeneral Lifestyle Survey、2006~2007年の米国のTobacco Use Supplement to the Current Population Surveyのデータと比較した。喫煙率は男性48.6%、女性11.3%、禁煙率は英米で高いGATS参加国と英米を合わせた16ヵ国の約30億人が解析の対象となった。そのうち喫煙者は約8億5,200万人で、中国が3億100万人、インドが2億7,500万人を占めた。GATS 14ヵ国の喫煙率は男性が48.6%(95%CI:47.6~49.6)、女性は11.3%(同:10.7~12.0)であった。そのうち、葉巻やパイプなどを除くタバコ製品の喫煙率は男性が40.7%(範囲:ブラジルの21.6%からロシアの60.2%)、女性は5.0%(同:エジプトの0.5%からポーランドの24.4%)だった。喫煙者の多く(82%)が既製のタバコ製品を好んだが、インドやバングラデシュでは無煙タバコや巻きタバコが一般的だった。ほとんどの国では、調査時に55~64歳の女性は同年代の男性に比べ喫煙開始年齢が高かったが、25~34歳では男女間の喫煙開始時期に差はなかった。禁煙率(喫煙経験があるが調査時は喫煙していない者の割合)は中国、インド、エジプト、ロシア、バングラデシュで低く(5ヵ国全体で20%未満)、英国、米国、ブラジル、ウルグアイで高かった(5ヵ国全体で35%以上)。著者は、「GATS参加14ヵ国は英米に比べ、男性の喫煙率が高く、女性の喫煙開始時期が若年化しており、禁煙率が低いことが示された」と結論し、「これらの知見は、喫煙関連の罹病率や死亡率を低下させるには、喫煙開始の予防や禁煙の促進に向けた努力が必要とのこれまでの見解を補強するもの」と指摘している。

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せん妄の早期発見が可能に

 高齢入院患者におけるせん妄発現は患者や家族の苦痛だけでなく、入院期間の延長や医療事故、医療スタッフの負荷増大などさまざまな弊害をもたらす。そのため対応方法の確立が急がれる。せん妄に対応するためには、早期発見が重要である。海外では、せん妄評価法(Confusion Assessment Method:CAM)が一般病棟におけるせん妄の早期発見に用いられている。Thomas氏らは、高リスク患者のせん妄のスクリーニングと診断についてICD-10およびDSM-IVと比較して、CAMアルゴリズムのせん妄判定基準が有用であるかを検討した。J Am Geriatr Soc誌オンライン版2012年8月6日号の報告。 対象は、大学病院に急性期内科疾患で入院した102名(年齢:80~100歳)。CAM診断アルゴリズム4項目を使用し、記録した。せん妄の診断は、専門家のコンセンサスによりDSM-IV、ICD-10に基づき評価を行った。主な結果は以下のとおり。・79名の入院患者にせん妄スクリーニングのためCAMを実施した(せん妄有病率はDSM-IV:24% 、ICD-10:14%)。・全CAM項目のうち、「急性発症または症状の動揺」は診断のために最も重要である(DSM-IV:AUC=0.92 、ICD-10:AUC=0.83)。・CAM診断アルゴリズムは、DSM-IVとの比較において感度74%、特異性100%、AUC=0.88であり、ICD-10との比較では感度82%、特異性91%、AUC=0.85であった。・ICD-10との比較においてCAMアルゴリズムに精神運動の変化を加えることで、特異性は97%に改善したが、感度は55%に減少した(AUC=0.96)。CAMアルゴリズムでせん妄でないと識別された群のみにそれぞれ精神運動の変化を適応すると、感度91%、特異性85%に改善した(AUC=0.95)。関連医療ニュース ・がん患者のせん妄治療に有効な抗精神病薬は… ・せん妄対策に「光療法」が有効! ・気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加

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統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか?

 統合失調症患者の喫煙率がなぜ高いのか? この理由に関してはいまだ明らかになっていない。従来、この疑問を評価した研究では、不均一な集団をサンプリングし、不一致な所見を示していた。Krishnadas氏らはスコットランドのNithsdale在住の統合失調症患者131例を対象に臨床像、社会的適応とニコチン依存の関係を横断的に調査した。Br J Psychiatry誌オンライン版2012年8月9日号の報告。主な結果は以下のとおり。・喫煙者は若く、主に男性、3回以上の失業経験があった。・ニコチン依存が重症であった患者は、PANSSの陽性尺度スコアがより高かった。また、抗精神病薬が高用量で投与されていた。・ニコチン依存が軽症であった患者は、PANSSの陰性症状スコアがより高かった。・ニコチン依存の重症度は社会的な適応不足と相関していた。 本研究では、統合失調症患者におけるニコチン依存と臨床症状・社会的適応との関係が示唆された。今後、これらの関係がさらに解明されれば、統合失調症治療における喫煙管理の意義が明らかになるかもしれない。関連医療ニュース ・統合失調症の病態にメラトニンが関与? ・メチルフェニデート使用で“喫煙”が加速 ・長期の睡眠薬服用、依存形成しない?

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他SSRI切替、どの程度の効果?:北海道大学

 現在わが国では、うつ病患者に対し複数のSSRIが使用可能である。また、SNRIやNaSSAなど新たな作用機序を有する抗うつ薬も発売され、うつ病の治療選択肢は広がった。うつ病治療においては、寛解を目指すことが求められるが、最初に選択した薬剤で必ずしも寛解を達成できるわけではない。そのような際、第1選択薬のSSRIから同様なセロトニンの再取り込みを阻害作用を有するほかのSSRIへ切り替えることは、臨床的にメリットがあるのだろうか? 北海道大学 井上氏らは未寛解や治療不耐性の大うつ病患者に対し、ほかのSSRIからセルトラリンに切り替えた際の、長期有効性および安全性を検討した。Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry誌2012年8月7日号の報告。 対象は、パロキセチンまたはフルボキサミンを十分な量、十分な期間投与したにもかかわらず寛解未達成またはSSRIに耐性を示した大うつ病患者25例(非寛解例:22例[88%])。セルトラリンへの切り替えは漸増漸減法にて行われた。評価は、QIDS-SRJ(自己記入式簡易抑うつ症状尺度日本語版)、HDRS(ハミルトンうつ病評価尺度)、CGI(臨床全般印象度)を用い、試験開始時および切り替え後1、2、3、4、6、8、12、16、20、24週目に行った。主な結果は以下のとおり。・副作用および効果不十分のため8週目以前に治療を中止した症例は5例(20%)であった。・QIDS-SRJ、HDRSの平均スコアはベースラインと比較し、切り替え後8、24週目で有意に改善した。・寛解(QIDS-SRJが5点以下)を達成した症例は、8週目で2/25例(8%)、24週目で4/25例(16%)であった。・8、24週目の治療反応例(QIDS-SRJがベースラインから 50%以上低下)は、11/25例(44%)であった。関連医療ニュース ・うつ病の予測因子は青年期の「腹痛」 ・抗うつ薬切替のベストタイミングは? ・ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?!

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治験、臨床研究データをリアルタイム入力 EDCシステム開発

先端医療振興財団 臨床研究情報センター(以下、TRI)は24日、治験、臨床研究の症例データを、インターネットを介してリアルタイムで入力することで、スピードアップと効率化を図れるEDC(Electronic Data Capture)システム『eClinical Base』を独自に開発し、提供を開始したことを発表した。『eClinical Base』の大きな特徴は、症例報告書に関する内容を記載した設定仕様書(エクセル)をシステムにインポートすることにより試験設定が完了すること。つまり、試験設定が非常に簡便であり、症例報告書の変更等にも迅速に対応することができるという。登録割付機能や、SASデータセット出力機能のほか、「Part11(21CFR Part11)システム仕様対応」「GCP(Good Clinical Practice)システム仕様対応」「ERES(Electronic Records and Electronic Signature)準拠」さらに国際共同治験に適合するため、「CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)」や多言語での運用も可能だ。 これらもすべてTRIが開発し、運用している。TRIでは2003年の発足以来、一貫してアカデミアの臨床研究の立ち上げと運営を支援し、その数は2012年8月現在で165件に達している。また、EDCシステムを積極的に活用することで効率化を進め、現在稼動している研究の70%以上でEDCを利用している。今後『eClinical Base』を利用し、100%EDCにて実施する予定とのこと。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://www.tri-kobe.org/news/pdf/20120824_PressRelease.pdf

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薬物依存PTSD患者、PE法による統合治療でPTSD症状がより大きく改善

外傷後ストレス障害(PTSD)で薬物依存を有する患者に対して、PTSDの認知行動療法の1つである持続エクスポージャー法(prolonged exposure therapy:PE)を用いたPTSD・薬物依存の併用治療は、薬物依存の重症度を増大することなくPTSD症状をより大きく改善することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKatherine L. Mills氏らが、103人の患者について行った無作為化対照試験の結果報告したもので、JAMA誌2012年8月15日号で発表した。薬物依存を有するPTSD患者は少なくないが、そうした患者に対するPE法の適切性については明らかでなかったという。治療9ヵ月後に、PTSDと薬物依存症の重症度変化を評価研究グループは2007~2009年に、オーストラリア・シドニーの医療機関で、精神疾患の診断基準「DSM-IV-TR」によりPTSDと薬物依存症の診断を受けた患者103人について試験を開始した。被験者を無作為に2群に分け、一方には、PE法によるPTSDと薬物依存症の併用治療(COPE)と、薬物依存症に対する通常の治療を行った。もう一方の対照群には、薬物依存症に対する通常の治療のみを行った。主要エンドポイントは、治療開始9ヵ月後の臨床診断面接尺度(CAPS)によるPTSD重症度の変化と、国際比較診断用構造化面接(CIDI)による薬物依存症の重症度の変化だった。CAPSでは15ポイント、CIDIでは1ポイント以上の変化を臨床的に有意な変化とした。PTSD重症度はCOPE群でより大きく改善、薬物依存症重症度改善幅は両群で同等その結果、両群ともに、試験開始9ヵ月後までにPTSD重症度の有意な改善が認められた。CAPS変化の平均値は、COPE群が-38.24(95%信頼区間:-47.93~-28.54)、対照群は-22.14(同:-30.33~-13.95)だった。両群の平均格差は-16.09(同:-29.00~-3.19)で、COPE群のPTSD重症度改善幅が対照群に比べて有意に大きかった。薬物依存症の重症度についても、両群ともに9ヵ月間で有意な改善が認められたが、その改善幅は、COPE群が0.43に対し対照群が0.52と、両群に有意な差は認められなかった(罹患率比:0.85、同:0.60~1.21)。その他、薬物使用、うつ症状、不安症状の変化幅についても、両群で有意な差は認められなかった。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(8)〕 結果は正しいが・・・

無作為化試験のメタ解析で得られたエビデンスのレベルは最も高いとされるが、どの試験を解析対象とするかといった点に解析者の作為が入る余地があることからより注意深い批判的吟味(Critical Appraisal)が必要である。しかしCTT Collaborationは公平、中立な解析を行うグループであり、その点では安心してよい(高血圧領域ではBPLTTCが有名)。 CTT Collaborationは、2010年にもメタ解析を行っており(Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration, et al. Lancet. 2010; 376: 1670-1681.)、スタチンでLDL-Cを1mmol/L低下させることによりMVEが22%減少し、その減少効果は、冠動脈疾患の既往、糖尿病、高血圧治療、年齢、性別、肥満、喫煙習慣、CKDといった患者背景の影響を受けないこと、また試験開始時のLDL-C値にも影響されないことを明確に示している。したがって今回のメタ解析の結果は予想された結果である。 MVEを減少させるベネフィットが有害性を上回る治療はすべて行うべきであろうか?スタチンの1日の単価を100円とする。5年間1,000人に使用すると100×365×5×1,000=1億8,250万円かかり、これでMVEの5年発症リスクが10%未満の低リスク群では11人の血管イベントを予防するのだから約1,660万円で1人の血管イベントを減らすことになる。高リスク群と低リスク群の相対リスク減少効果がほぼ同じということは、絶対リスク減少効果は高リスク群の方が大きいことになり高リスク群で1人の血管イベントを減らすために必要な費用は少なくて済む。無尽蔵に医療費を使ってよいのならこういった医療経済評価は不要かもしれないが、限られた費用で最大幸福を得るためにはスタチン服用の優先順位を決める必要があろう。実は、改訂された「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」はこういった絶対リスクを考慮する姿勢を強く打ち出している。

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糖尿病発症時に正常体重の人、過体重・肥満の人に比べ死亡リスクが約2倍

 2型糖尿病発症時の体重が正常範囲(BMI 25未満)の人は、過体重や肥満の人に比べ、長期死亡リスクは約2倍に増大することが示された。米国・ノースウェスタン大学のMercedes R. Carnethon氏らが、5つのコホート試験を基に分析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月8日号で発表した。2型糖尿病発症時に正常体重の人は、いわゆる「隠れ肥満(metabolically obese normal-weight)」の代表と考えられている。しかしこれまで2型糖尿病発症時の体重と死亡との関連に関して、心不全や慢性腎臓病、高血圧などの慢性疾患でみられた「肥満パラドックス(obesity paradox:BMIが大きいほうが予後が良好)」が認められるかどうか、明らかでなかった。糖尿病発症の2,625人について、延べ2万7,125人・年追跡研究グループは、「Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)study」(1990~2006)、「Cardiovascular Health Study(CHS)」(1992~2008)、「Coronary Artery Risk Development in Young Adults(CARDIA)」(1987~2011)、「Framingham Offspring Study(FOS)」(1979~2007)、「Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis(MESA)」(2002~2011)の5つのコホート試験についてプール解析を行い、糖尿病患者の死亡と体重の関連を調べた。被験者のうち、40歳超で2型糖尿病を発症したのは2,625人で、追跡期間は延べ2万7,125人・年だった。被験者を、BMIが18.5~24.99を正常体重、BMIが25以上を過体重・肥満にそれぞれ分類し検討。主要アウトカムは、全死亡、心血管死、非心血管死だった。全死亡リスク2.08倍、心血管死1.52倍、非心血管死2.32倍2型糖尿病発症時に正常体重だった人の割合は、9%(ARIC)から21%(CHS)にわたった(全体では12%)。追跡期間中に死亡したのは449人で、そのうち原因が明らかだった人の中で心血管死は178人、非心血管死は253人だった。全死亡、心血管死、非心血管死の発症率は、いずれも、正常体重群が過体重・肥満群より高率だった。正常体重群の全死亡率は1万人・年当たり284.8、心血管死亡率は同99.8、非心血管死亡率は198.1だったのに対し、過体重・肥満群はそれぞれ、152.1、67.8、87.9だった。人口統計的特性や血圧、脂質値、喫煙などについて補正を行った後、過体重・肥満群に対する正常体重群の死亡に関するハザード比は、全死亡が2.08(95%信頼区間:1.52~2.85)、心血管死が1.52(同:0.89~2.58)、非心血管死が2.32(同:1.55~3.48)だった。著者は、今回の分析では、なぜ2型糖尿病発症時に正常体重の人の死亡率が高いのかは解明できなかったとしたうえで、先行研究で報告されている、2型糖尿病患者で正常体重の人と過体重・肥満の人との遺伝子プロファイルの違いに言及した。仮に、2型糖尿病患者で正常体重の遺伝子プロファイルが、糖尿病以外の疾患リスク増大を促すとすれば、そうした人の死亡率は遺伝的に高くなるのかもしれない、と考察している。そのため今後の研究では、そうした遺伝的素因による死亡率増大の可能性についても追究すべきだとした。そのうえで今回の結果は、米国民のうち、正常体重で2型糖尿病になりやすい、高齢者や非白人(アジア人、黒人など)といった人々にとって、重要な知見であるとまとめている。

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成人T細胞白血病リンパ腫におけるモガムリズマブ欧米第2相臨床試験開始

協和発酵キリン株式会社は23日、治療経験のある成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を対象としたモガムリズマブ(一般名、開発コード: KW-0761)の欧米第2相臨床試験を開始したことを発表した。モガムリズマブは、ATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を、米国食品医薬品局および欧州委員会から受けている。モガムリズマブは、ATL細胞など、様々な悪性T細胞に過剰発現しているCCR4に対するヒト化モノクローナル抗体。同剤は、同社独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT(ポテリジェント)」を応用した抗体で、ADCC活性による抗腫瘍効果を示すという。国内では、「ポテリジオ点滴静注20mg」という製品名で、再発又は難治性のCCR4陽性のATLの治療薬として、2012年5月29日から販売されている。同剤は、当社初の抗体医薬で、ポテリジェント技術を応用した抗体医薬としては、世界初である。今回の欧米第2相臨床試験の対象疾患は、治療経験のあるATL患者で、多施設ランダム化オープン比較試験(被験者をモガリズムマブ群と治験担当医師選択的治療群にランダムに割り付け、非盲検で比較を行う試験)を実施するという。予定試験期間 は、2012年7月~2015年6月。実施場所は米国、イギリス、フランス、ベルギーおよびその他の国で、目標症例数は70。主要評価項目は、全奏効率。詳細はプレスリリースへhttp://www.kyowa-kirin.co.jp/news/2012/20120823_01.html

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うつ病の予測因子は青年期の「腹痛」?

 うつ病患者の多くは身体症状を訴える。しかし、この身体症状がうつ病によって発現するのか、それとも身体症状のためにうつ病を発症するのか、ほとんどわかっていない。また、従来の研究において、機能的・物理的な身体症状に関する住民ベースの長期縦断研究が不足しているとの指摘がある。Bohman氏らは15年にわたる調査により、うつと身体症状の関係を明らかにし、うつ病の発症の危険因子を検討した。BMC Psychiatry誌オンライン版2012年7月27日号の報告。  対象は、スウェーデンのウプサラ在住の16-17歳の青年。身体症状の有無にかかわらず、1991~1993年にうつ病のスクリーニングを実施、うつ病患者と同数のコントロール群を選定し、それぞれ半構造化面接を行った。身体症状は21の異なる自己評価にて評価した。15年間の面接によるフォローアップ完遂率は64%であった。主な結果は以下のとおり。・青年期うつ病患者における身体症状合併数から、段階的な方法により成人期メンタルヘルス上のアウトカムが予測された。・5つ以上の身体症状を合併した青年期うつ病患者の1/4において、その後の転帰は、うつ病の再発68%、パニック障害44%、慢性うつ病30%、身体表現性障害26%、双極性障害22%、自殺企図16%、精神病性障害8% であった。・腹痛がうつ病、不安の強力で独立した危険因子であった。また、身体症状はうつ病でない青年において将来の精神障害を予測した。関連医療ニュース ・ゲームのやり過ぎは「うつ病」発症の原因か?! ・増加する青年期うつ病 、早期発見へ ・検証!「痛み」と「うつ」関係は?

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スタチンによるLDL-C低下療法、低リスク集団でも血管イベントを低減

 スタチンによるLDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、血管イベントの低リスク集団においても主要血管イベント(MVE)の抑制効果を発揮することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)Collaboratorsによる検討で示された。スタチンはLDL-Cを低下させることで血管イベントを予防するが、血管イベントのリスクが低い集団における効果は、これまで明らかにされていなかった。血管疾患の既往歴のない集団は血管イベントの絶対リスクが低いものの、血管イベントの半数以上はこの集団で発生しているため、とくにスタチン治療の1次予防効果は解明すべき重要な課題とされる。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載の報告。低リスク集団におけるスタチンの効果をメタ解析で評価研究グループは、血管イベントの低リスク集団におけるスタチンの効果を評価するために、27件の無作為化試験のメタ解析を行った。27試験のうち、22件は標準用量のスタチンと対照を比較し[13万4,537例、ベースラインの平均LDL-C値:3.70mmol/L(≒143mg/dL)、1年後のLDL-C値の差:1.08mmol/L(≒41.8mg/dL)、追跡期間中央値:4.8年]、5件は強化スタチン療法と低強化スタチン療法の比較試験[3万9,612例、2.53mmol/L(≒97.8mg/dL)、0.51mmol/L(≒19.7mg/dL)、5.1年)であった。MVEは、主要冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞、冠動脈死)、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。ベースラインにおける血管イベントの5年発生リスクで5つの群(<5%群、5~<10%群、10~<20%群、20~<30%群、≧30%群)に分け、LDL-C値1.0mmol/L(≒38.67mg/dL)低下当たりのMVE発生リスクの率比(RR)を算出した。<5%群と5~<10%群を低リスク群とした。ガイドラインの再考が必要スタチンのLDL-C低下効果により、年齢、性別、ベースラインのLDL-C値や血管疾患の既往歴にかかわらず、MVEのリスクが有意に低下した[LDL-C値1.0mmol/L低下当たりのMVE発生リスクのRR(以下、単にRRと表記):0.79、99%信頼区間(CI):0.77~0.81、p<0.0001]。スタチンによるMVEの低下効果は、低リスク群(RR:<5%群0.62、5~<10%群0.69)と高リスク群(同:10~<20%群0.79、20~<30%群0.81、≧30%群0.79)でほぼ同等だった(傾向性検定:p=0.04)。これは、主に低リスク群における主要冠動脈イベント(RR:<5%群0.57、p=0.0012、5~<10%群0.61、p<0.0001)および冠動脈血行再建術(同:<5%群0.52、p<0.0001、5~<10%群0.63、p<0.0001)のリスクの有意な低減を反映するものであった。10%未満の2つの低リスク群を合わせた集団における脳卒中の発生リスクのPRは0.76(p=0.0012)と良好だったが、10%以上の集団も同様に良好であったため差は認めなかった(傾向性検定:p=0.3)。血管疾患の既往歴のない集団では、スタチン治療によりMVE(RR:0.85、95%CI:0.77~0.95)および全死因死亡(RR:0.91、95%CI:0.85~0.97)のリスクが有意に低下した。スタチンによるLDL-C低下療法が、がんの発生率(RR:1.00、95%CI:0.96~1.04)やがん死亡率(RR:0.99、95%CI:0.93~1.06)、その他の非血管死亡率を増加させるとのエビデンスは認めなかった。著者は、「MVEの5年発生リスクが10%未満の低リスク群では、LDL-C値が1.0mmol/L低下するごとに、絶対値で5年間に1,000人当たり約11人の血管イベントを抑制することが示された。このベネフィットは、既知のスタチン治療の有害性を大きく上回るものである」と結論し、「現行のガイドラインでは、このような低リスク集団はスタチン治療の適応ではない。今回の知見は、ガイドラインの再考の必要性を示唆するもの」と指摘している。

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血漿HDL-C高値、心筋梗塞のリスクを低下させない可能性が

 血漿HDLコレステロール(HDL-C)値の上昇が、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性があることが、米国・ペンシルバニア大学のBenjamin F Voight氏らの検討で明らかとなった。血漿HDL-C高値は心筋梗塞のリスク低減と関連するとされるが、その因果関係は不明である。遺伝子型は、減数分裂時にランダムに決定され、非遺伝子的な交絡因子の影響を受けず、疾患過程の修飾も受けないことから、バイオマーカーと疾患の因果関係の検証にはメンデル無作為化(mendelian randomization)解析が有用だという。Lancet誌2012年8月11日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。因果関係を2つのメンデル無作為化解析で評価研究グループは、血漿HDL-C高値と心筋梗塞のリスク低下の因果関係を検証するために、2つのメンデル無作為化解析を実施した。まず、20試験(心筋梗塞2万913例、対照9万5,407例)のデータを用いて、内皮リパーゼ遺伝子(LIPG Asn396Ser)の一塩基多型(SNP)の評価を行った。次いで、心筋梗塞1万2,482例および対照4万1,331例のデータを使用し、HDL-Cと関連する14の頻度の高いSNPから成る遺伝子型スコアについて検討した。また、陽性対照(positive control)として、LDLコレステロール(LDL-C)に関連する13のSNPの遺伝子型スコアの評価も行った。遺伝子型スコアによるHDL-C値上昇はリスクと関連なしLIPG 396Ser対立遺伝子の保有率は2.6%であった。LIPG 396Ser対立遺伝子保有群は、非保有群に比べHDL-C値が0.14mmol/L(≒5.4mg/dL)有意に高かった[p=8×10(-13)]が、心筋梗塞リスクに関連するその他の脂質および非脂質因子は両群間に差を認めなかった。このHDL-C値の差により、LIPG 396Ser対立遺伝子保有群では心筋梗塞のリスクが13%低下すると予測された[オッズ比(OR):0.87、95%信頼区間(CI):0.84~0.91]。しかし、対立遺伝子保有群における心筋梗塞のリスク低下は有意ではなかった(OR:0.99、95%CI:0.88~1.11、p=0.85)。観察疫学試験では、HDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に低下した(OR:0.62、95%CI:0.58~0.66)。しかし、遺伝子型スコアに基づくHDL-C値の1 SDの上昇は心筋梗塞のリスクとは関連しなかった(OR:0.93、95%CI:0.68~1.26、p=0.63)。一方、観察疫学試験におけるLDL-C値の1 SDの上昇により心筋梗塞リスクが有意に上昇し(OR:1.54、95%CI:1.45~1.63)、遺伝子型スコアによるLDL-C値の1 SDの上昇も心筋梗塞リスクの有意な上昇と有意な関連を示した[OR:2.13、95%CI:1.69~2.69、p=2×10(-10)]。著者は、「血漿HDL-C値の上昇をもたらす遺伝子的メカニズムが、必ずしも心筋梗塞のリスクを低減しない可能性が示唆される」と結論し、「これらの知見は、血漿HDL-C値の上昇が一律に心筋梗塞のリスク低下をもたらすとのコンセプトに疑問を呈するもの」としている。

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デポ剤使用で寛解率が向上!?

 統合失調症治療における最終ゴールである寛解。寛解を目指すため、さまざまな取り組みが行われている。近年、統合失調症治療薬は経口剤だけでなく、持効性注射製剤(LAI)も承認され、多くの患者に使用されるようになってきた。このLAIが寛解にどのような影響を与えるかについて、BMC Psychiatry誌オンライン版2012年8月10日号で報告された。 今日では、統合失調症患者の治療目標は臨床的寛解だけでなく、心理社会的寛解が重要であるとされており、従来の症状データに定量化可能な心理社会的変数を組み入れることが求められている。Barak氏らは抗精神病薬の投与や投与方法が寛解にどのような影響を与えるかを、大規模コホート研究により臨床的および心理社会的に評価し、統合失調症患者の寛解に持効性注射剤が好影響をもたらす可能性があることを報告した。 対象は、6ヵ月以上の治療期間を有する統合失調症患者とし、性別、年齢、薬物治療状況のテータを収集した。心理社会的寛解の評価にはPSRS(PsychoSocial Remission Scale)、臨床的寛解の評価にはRSWG(Remission in Schizophrenia Working Group symptomatic remission criteria)を用いた。主な結果は以下のとおり。・調査対象患者数は445例(平均年齢:43.4±13.1歳、男女比:61%:39%)。評価者別内訳は、精神科医268例(60%)、看護師161例(36%)、ソーシャルワーカー16例(4%)であった。・抗精神病薬別の内訳は、経口抗精神病薬(PO群)243例(55%)、定型抗精神病薬の持効性注射剤(LAT群)102例(23%)、リスペリドン持効性注射剤(RLAI群)100例(22%)であった。・全体としての臨床的寛解率は37%、心理社会的寛解率は31%であった。・臨床的寛解率は、PO群と比較しLAT群およびRLAI群で有意に高かった(それぞれ51% , 48% vs 29%、p=0.0003)。・心理社会的寛解率も、PO群と比較しLAT群およびRLAI群で有意に高かった(それぞれ43% , 41% vs 24%、p=0.003)。本研究では、統合失調症患者の1/3が寛解に至っていた。また、経口剤と比較し、持効性注射剤を使用した患者の方が、臨床的および心理社会的寛解率が高かった。関連医療ニュース ・「第二世代抗精神病薬」長期投与の課題は… ・厚労省も新制度義務化:精神疾患患者の「社会復帰」へ ・リスペリドン vs パリペリドン【安全性プロファイル】

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