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うつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善

 大うつ病性障害(MDD)に対する低用量アリピプラゾールの強化療法について、プラセボと比べてうつ病サブスケールについては有意な改善が示されることが明らかになった。米国・マサチューセッツ総合病院のChristina Dording氏らによる検討の結果で、忍容性については身体症状の悪化がない場合に良好である可能性が示された。結果を踏まえて著者は、さらなる前向き試験において同療法がもたらす効果をMDDの症状別に検討する必要があるとまとめている。International Clinical Psychopharmacology誌2013年9月号の掲載報告。 研究グループは最近、MDDに対する低用量アリピプラゾール強化療法についての検討を行い、有意ではなくとも有益であることが認められたとした。また、二次的研究において、アリピプラゾールがケルナー症状質問票(KSQ)の4つのサブスケール(抑うつ、不安、身体症状、敵意)について改善をもたらすかを調べた。本検討では、SSRIまたはSNRIに対する十分な反応を示さなかったMDD患者221例の主要アウトカム試験のデータを再解析した。被験者は、経時的並行群間比較デザインを用いて、30日間ずつの2つのフェーズからなる次の3つの投与群、(1)試験薬(アリピプラゾール2mg/日)/ 試験薬(アリピプラゾール5mg/日)投与群、(2)プラセボ/ 試験薬(アリピプラゾール2mg/日)投与群、(3)プラセボ/ プラセボ投与群、に無作為に割り付けられ追跡された。Well-beingサブスケールとReversal Distressed Anxiety Subscalesについて、ベースラインからエンドポイントまでのKSQスコアの変化を調べた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病サブスケールについてのKSQスコア変化は、プラセボよりもアリピプラゾールのほうが有意に改善したことが示された(p=0.0327)。・不安および敵意サブスケールにおいても、アリピプラゾールの改善がプラセボよりも優れていたが、有意ではなかった。・身体症状サブスケールは、有意な変化がみられなかった。・以上のように、アリピプラゾール強化療法はプラセボと比べて、KSQのうつ病サブスケールにおいてのみ有意な改善を示した。低用量投与は、不安と敵意のスケールには十分な影響を及ぼさない可能性が示された。・低用量の良好な忍容性は、身体症状の悪化がない場合に認められる可能性があった。・MDDの症状別に、低用量アリピプラゾール強化療法の効果をより明らかにする前向き研究が必要である。関連医療ニュース アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か 各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学 抗精神病薬による高プロラクチン血症に関するレビュー

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円形脱毛症に多血小板血漿療法が有望

 円形脱毛症治療について、多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)療法が安全で有効な治療選択肢となる可能性が示された。イタリア・国際毛髪研究財団(IHRF)のA. Trink氏らが無作為化二重盲検試験による予備的研究の結果、報告した。円形脱毛症は自己免疫疾患であり、炎症性の脱毛が引き起こされる。治療可能性は限られており、治癒的または予防的治療法はない。PRP療法は、皮膚科領域に新たに登場した治療法であり、発毛に有益な役割を果たす可能性が予備的エビデンスとして示唆されていた。British Journal of Dermatology誌2013年9月号(オンライン版2013年4月22日号)の掲載報告。 研究グループは、円形脱毛症におけるPRP療法の有効性と安全性を評価するため、頭皮の2分の1において行う、無作為化二重盲検プラセボおよび実薬対照並行群間試験を行った。 45例の被験者が、頭皮の2分の1に、PRPもしくはトリアムシノロンアセトニド(TrA、商品名:レダコートほか)またはプラセボの病変部注射を受ける群に無作為化された。残る半分の頭皮には治療が行われなかった。 エンドポイントは、毛髪再生、ダーモスコピーで認められた毛髪形質異常、灼熱感/かゆみ、Ki-67評価による細胞増殖とした。 主な結果は以下のとおり。・治療は計3回、1ヵ月間隔で各患者に対して行われ、1年間経過観察された。・TrA治療群またはプラセボ群と比較して、PRP群は毛髪の再生が有意に増大した。・また、毛髪形質異常、灼熱感/かゆみは減少し、細胞増殖は有意に増大した。・治療期間中、有害事象は示されなかった。・円形脱毛症におけるPRPの有効性を調べる初めての検討である今回の予備的研究において、PRPが安全かつ有効な円形脱毛症治療の選択肢となる可能性が示唆された。さらなる大規模対照試験が求められる。

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急性心筋梗塞の再潅流療法において血栓吸引は有用か?(コメンテーター:上田 恭敬 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(131)より-

本論文は、スウェーデンの国家的レジストリーであるSwedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry(SCAAR)に登録されている患者に加えて、デンマークの追加施設から同レジストリーシステムへ登録される患者を対象として行われた多施設、前向き、オープンラベル、無作為化比較対照試験Thrombus Aspiration in ST-Elevation Myocardial Infarction in Scandinavia(TASTE) trialの結果についての報告である。 対象症例は発症24時間以内のST上昇型急性心筋梗塞であり、マニュアルによる血栓吸引療法の有用性を30日以内の全死亡(一次エンドポイント)で評価している。二次エンドポイントは、30日以内の再梗塞による入院、ステント血栓症、標的血管再血行再建術(TVR)施行、標的病変再血行再建術(TLR)施行、および全死亡と再梗塞の複合エンドポイントとしている。7,244例がランダム化され、結果としてはいずれのエンドポイントにも群間に有意差を認めなかったことから、血栓吸引療法に有用性を認めないとしている。 たしかに、ここで設定されたエンドポイントに著明な有意差がつくほどの効果はないのであろう。しかし、もともと血栓吸引療法をしない場合に、血栓の末梢塞栓やslow flow/no flowが生じてSTの再上昇や梗塞サイズの増大を生じたと思われる症例はまれであり、さらにそれらを生じた症例中にはプラーク内容物の末梢塞栓が原因で、血栓吸引療法では予防できない症例も含まれていることを考慮すると、血栓吸引療法が単独で心機能保護に役立つ症例は非常にまれと思われ、死亡率低下にまで役立つ症例はさらにまれと思われる。ただし、末梢の血管構築が見えるようになることで、その後のPCI手技が容易になるために合併症が減るといった効果も、とくに未熟な術者に対しては期待される。 さらに、特定のサブ集団では血栓吸引療法の有用性が示される可能性も残されていると考える。実際、この試験において4,697例がランダム化されずに除外されており、血栓吸引療法が必要との判断で除外された症例も7%含まれることや、血栓吸引療法非施行群に割り付けられたのに実際には施行された症例や、その逆のクロスオーバー症例がそれぞれ5%、6%含まれることが記載されており、これらのために血栓吸引療法の効果が過小評価されてしまったのではないかとの危惧が残る。 これらのことを考慮すれば、本試験の結果の解釈は、血栓吸引療法には「ルーチン使用した場合に死亡などのアウトカムを有意に改善するほどの著明な効果はないが、逆に有害でもない」、さらに「有用性が示される特定のサブ集団が存在するか否かについてはさらに検討が必要である」とすべきである。有害でないことが示され、有用性が完全には否定されていないと思われる血栓吸引療法に関しては、現時点ではその施行を容認すべきではないだろうか。 同様の状況は末梢保護デバイスについてもあてはまる。これまでに存在するエビデンスからは、急性冠症候群や安定狭心症症例全体において末梢保護デバイスの有用性は示されていないが、slow flow/no flowの高リスク症例を対象とすることによってその有用性を示そうとする臨床試験がいくつか進行中である。末梢保護デバイスが有用な症例が存在することは、経験的には多くの循環器専門医が認めるだろうが、それをエビデンスとして示すことは難しいようである。 本当にその治療法を必要とする対象をランダム化できない限り、その効果を正しく判断することはできない。本論文のような結果に基づいて血栓吸引療法をすべきでないと短絡的に主張する者が現れ、実際は有用である可能性がある治療法を葬り去ることにならないかと危惧する。

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眼疾患の早期発見につながる行動がとられていないことが明らかに

 バイエル薬品は19日、2013年8月に全国の50代から70代の男女1,034名を対象に実施した目の健康に関する意識調査、および関東地方中心の50代から90代の加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、以下 AMD)の患者80名を対象としたアンケート調査の結果を発表した。 その結果、昨今の iPS臨床研究に関する報道などから AMDの疾患認知率は77.6%と高まっており、50代から70代の一般の人々は、他の部位の健康に比べ、目の健康について意識している人が多い(40.5%)ことがわかった。しかし、高い視力検査受診率(63.5%)と比較して、眼科での検査受診率は43.0%と低く、定期的な検査として受診している割合は全体のわずか10.6%であった。また片目ずつの見え方の自己チェックを行っている割合も37.1%にとどまっていた。AMDなどの深刻な眼疾患に気づくための行動が十分取られていないことが明らかになったという。 一方、患者のアンケートからは、外見からは目の病気であることはわからないため、「何度説明しても症状が相手には理解されない」「相手の顔がわからないので知り合いだと気づかず、『挨拶してくれなかった』と誤解されてしまった」など、“見たいものが見えない”という AMD による中心視力の低下により、誤解を受けた経験がある人が 68.8%にのぼっていた。詳細はプレスリリースへ(PDF)http://byl.bayer.co.jp/html/press_release/2013/news2013-09-19.pdf

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ドライアイスを飲み込んだらどうなる?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第3回

ドライアイスを飲み込んだらどうなる?まだ早朝にクマゼミがジージーと鳴いている地域もあるでしょうか、残暑が続きますね。まだまだアイスクリームがおいしい季節です。60kcal程度のアイスクリームなら…と毎日のようにアイスクリームをむさぼっている最近です。さて今回は少し涼しくなるような医学論文を2つ紹介します。といっても、テーマはアイスクリームではなくドライアイスですが。ドライアイスはマイナス79℃の二酸化炭素の固体であり、触ると粘膜に熱傷のような表皮剥離を来して痛くなることは、誰しもご存じと思います。氷と違ってドライアイスは固体から気化するため、水分が無いから痛いのだろうと思います。そんなドライアイスを飲み込んでしまったらいったいどうなるのか、想像したことはあるでしょうか。救急医だとドライアイスを飲み込んだ症例を経験したことがあるかもしれませんが、実際に医学論文として報告されている例は多くないようです。検索した限りで、ドライアイスを飲み込んだ症例報告が過去に2例あったのでご紹介します。Shirkey BL, et alFrostbite of the esophagus.J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007 Sep;45:361-2.この論文は15歳の男の子の症例で、高校の化学の実験の最中にドライアイス入りの水を飲んだようです。ドライアイスが溶けきっていなかったため、飲んだ直後に強い咽頭痛を訴えました。H2受容体拮抗薬などが投与され、20時間後に上部消化管内視鏡検査が行われました。その結果、食道には出血を伴う粘膜病変が観察されました。幸いにも胃粘膜には異常はみられませんでした。彼の症状は次第に改善し、ステロイドと抗菌薬を投与された後退院することができたそうです。この病変は食道異所性胃粘膜 (inlet patch)ではないかという指摘もあったようですが、その後の著者の回答によって臨床的にはドライアイスによる消化管の粘膜障害と結論づけられています(J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2008 Apr;46:472-3; author reply 473.)。Li WC, et al.Gastric hypothermic injury caused by accidental ingestion of dry ice: endoscopic features.Gastrointest Endosc. 2004 May;59737-8.一方、16歳の女の子が誤ってドライアイスを飲み込んでしまったという症例報告もあります。ドライアイスによって、胃粘膜にはびらんを伴う発赤と線状の多発出血性病変がみられ、多発性の潰瘍も観察されました。この症例報告は、ドライアイスによって胃粘膜に障害を来すことを明らかにしました。そういえば子どものころ、ドライアイスを水に入れて、出てきた煙(二酸化炭素)に手をかざして絵本に登場する“魔法使い”のようなことをして遊んでいた記憶があります。昔のテレビのCMでも、ドライアイスが頻繁に使われていたような気がします。ドライアイスは一見すると氷と間違えそうになるので、子どもは誤って飲み込まないよう注意したいですね。多くの場合、口にひっつくので飲み込むことすらできないと思いますが、小さいものだと今回紹介した症例のように水と一緒に飲み込める可能性もあります。飲料にドライアイスを入れて炭酸水を作っている人を見たことがありますが、そもそもドライアイスは食品として作られることはありませんので、衛生上の観点からも避けた方がよいと思います。最近は、吸水ポリマーが原料の保冷剤が普及してきているため、ドライアイスを見かけることは少なくなりましたね。昔は、魚屋さんの裏手にたくさん転がっていたものですが。

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レニン阻害薬、動脈硬化進展を抑制せず/JAMA

 冠動脈疾患を有する高血圧前症患者へのレニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)投与はプラセボと比較して、アテローム性動脈硬化の進展を抑制しないことが、南オーストラリア健康・医療研究所(SAHMRI)のStephen J. Nicholls氏らによる無作為化試験AQUARIUSの結果、示された。著者は、「今回の結果は、アテローム性動脈硬化症の退縮または予防についてアリスキレン使用を支持しないものであった」と結論している。JAMA誌オンライン版2013年9月3日号掲載の報告より。アリスキレン300mg/日またはプラセボを104週間投与 アテローム性動脈硬化症では、血圧降下とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害が治療目標となる。一方、動脈硬化の進展に対するレニン阻害の効果はこれまで検討されていなかったことから、アリスキレンとプラセボを比較検討する本試験が行われた。 AQUARIUS(Aliskiren Quantitative Atherosclerosis Regression Intravascular Ultrasound Study)は前向き多施設共同二重盲検法にて2009年3月~2011年2月に、ヨーロッパ、オーストラリア、南北アメリカの103施設で被験者を募って行われた。 被験者は、冠動脈疾患、高血圧前症(収縮期血圧125~139mmHg)、2つ以上の心血管リスク因子(心筋梗塞等の既往歴あり、尿中アルブミン/クレアチニン比30~300mg/g、2型糖尿病など9因子のうち)を有する613例であった。冠動脈血管内超音波法(IVUS)検査による画像診断を受け、305例がアリスキレン300mg/日の経口投与を、308例がプラセボをそれぞれ104週間投与された。 治療72週以降にIVUS検査を行い、疾患進行について評価を行った。主要有効性指標は、アテローム容積率(PAV)のベースラインから試験終了までの変化とし、副次有効性指標は、標準化総アテローム容積(TAV)の変化およびアテロームが退縮した患者の割合などが含まれた。安全性および忍容性も評価された。主要有効性指標PAV、副次有効性指標TAVともに有意差がみられず ベースラインと追跡調査時の画像診断データが入手できたのは、458例(74.7%、アリスキレン群は225例)であった。 主要有効性指標のPAVは、両群間で有意差はみられなかった。アリスキレン群-0.33%(95%信頼区間[CI]:-0.68~0.02%)、プラセボ群0.11%(同:-0.24~0.45%)で群間差は-0.43%(同:-0.92~0.05%、p=0.08)だった。 副次有効性指標のTAVも差がみられなかった。アリスキレン群-4.1m3(95%CI:-6.27~-1.94m3)、プラセボ群-2.1m3(同:-4.21~0.07m3)で群間差は-2.04m3(同:-5.03~0.95m3、p=0.18)だった。 PAV、TAVの改善を示した患者の割合も両群間で有意差はなかった。PAV(アリスキレン群56.9%対プラセボ群48.9%、p=0.08)、TAV(同:64.4%対57.5%、p=0.13)だった。 有害事象については、低血圧症(同:7.2%対3.9%、p=0.04)、腎および尿路障害(6.9%対4.9%、p=0.38)の発生(試験担当者が報告)が、プラセボ群よりもアリスキレン群のほうがより多くみられる傾向があった。高カリウム血症(≧5.5mEq/L)の発生は、両群で同程度だった(アリスキレン群10.7%対プラセボ群9.8%、p=0.76)。なお有害事象による試験中断はアリスキレン群のほうが多かった(同:8.2%対4.5%)。

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低線量ヘリカルCTは早期肺がん検出能が高い/NEJM

 低線量ヘリカルCTによる毎年の肺がん検診は、胸部X線によるものに比べ、陽性適中率は低いものの、早期肺がんの検出能が高い傾向が明らかにされた。米国・カリフォルニア大学のDenise R. Aberle氏らが、低線量ヘリカルCTと胸部X線の肺がん検診のアウトカムを調べる全米肺検診試験(National Lung Screening Trial:NLST)の結果を分析し報告した。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告より。5万人超を無作為化、年1回の検診を3回実施 NLSTは、2002~2004年にかけて登録した被験者5万3,454人を無作為に2群に分け、2002~2007年に低線量ヘリカルCTまたは胸部X線による年1回の肺がん検診を計3回実施し(T0、T1、T2)、発生イベントについて2009年末まで追跡した。その結果、低線量ヘリカルCT群のほうが肺がん死亡率が胸部X線群よりも20%低かったことが先行研究において報告されている。 研究グループは本検討においてT1、T2の、被験者の検診アドヒアランス、検診および確定診断の結果、肺がん症例の特徴、ファーストライン治療を調べ、両検査実施の価値について評価した。 結果、検診受診率は、T1は低線量ヘリカルCT群94.0%、胸部X線群91.2%、T2はそれぞれ92.9%と89.4%だった。 また、T1とT2の検診結果が陽性だったのは、低線量ヘリカルCT群はそれぞれ27.9%と16.8%、胸部X線群は6.2%と5.0%だった。肺がんステージIAは低線量ヘリカルCT群48%、胸部X線群24% 低線量ヘリカルCT群の検診結果について分析した結果、T1は感度94.4%、特異度72.6%、陽性適中率2.4%、陰性適中率99.9%だった。陽性的中率はT2では5.2%に上昇していた。 一方、胸部X線群は、T1は感度59.6%、特異度94.1%、陽性適中率4.4%、陰性適中率99.8%であった。T2では感度が63.9%に、陽性適中率が6.7%へと改善していた。 肺がんステージが明らかになった人についてみると、T1では、低線量ヘリカルCT群はステージIAが47.5%(87例)で、31.1%(57例)がステージIIIまたはIVだった。一方、胸部X線群はステージIAが23.5%(31例)で、59.1%(78例)がステージIIIまたはIVで、低線量ヘリカルCT群で早期肺がんの検出が多い傾向が認められた。

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エキスパートQ&A

プライマリ・ケア医はどの範囲まで、がん患者さんを診るべきなのでしょうか?プライマリ・ケア医の定義がなかなか難しいところですが、地域の開業医の先生方であれ病院勤務の一般内科の先生方であれ、がん患者さんを診るべきだと思います。サブスペシャリティががんとは無関係の領域(循環器、神経、内分泌、腎臓、膠原病、感染症など)であったとしても同じことです。理由は単純です。患者さんは多いのに診る医者が少ないからです。がんは日本人の2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなるという非常にコモンな病気です。がん患者の診療において、専門医数(全国でがん薬物療法専門医<1000人、緩和医療専門医<100人)が少ないなどインフラの問題もありますが、一番大きい問題は患者さん側と医師側が日本のがん医療や一般診療に対してそれぞれが持つ固定観念だと思います。患者さん側は「大きな病院で専門医の先生にずっと診てもらわないと心配だ」、医師側は「がん診療は高度に専門化していて難しい。患者や家族の対応にもストレスを感じることが多い。治らずに亡くなっていく患者を診るのもつらいし、しんどい」といった気持ちがお互いにあるのではないでしょうか。これを少しずつでも変えていかないことには、がん対策基本法の理念である「すべてのがん患者さんに等しく適切な医療を提供する」を実現することは困難だと思います。がん診療はやりがいがあります。患者さんにとって一度は死を意識せざるを得ない疾患ですから、その患者さんや家族との対応の中で自分なりのさまざまな思索を巡らすことになります。また、自分や家族も将来罹患する可能性が高い疾患を目の前の患者さんを通じて経験し、人間の永遠のテーマである「生と死」について深く考えることができるのです。プライマリ・ケア医にできる身体的なケアにはどのようなものがあるでしょうか?がん患者さんの何を診るかについては議論のあるところですが、患者さんのQOL維持・向上のため少なくとも支持療法(緩和医療)についてはカバーすべきと考えています。支持療法の範囲は広く、緊急事態(オンコロジック・エマージェンシー)への対応、疼痛を含む症状コントロール、がん治療による有害事象対策、栄養療法、リハビリ、無再発患者の定期的フォロー(再発の有無、二次がんのチェック、骨粗鬆症、不妊、一般内科的マネジメント)などプライマリ・ケア医であればある程度対応可能な分野と考えています。抗がん薬治療はご自身のサブスペシャリティと、置かれている環境(開業医か病院勤務医か、地方か都市部か)で異なると思いますが、開業医の先生方が抗がん薬治療を扱うのは現状ではなかなか難しいかもしれません。基幹病院への紹介の仕方や、うまく機能しているシステムがあれば教えていただけますか?具体的に機能しているシステムはわかりませんが、病病連携や病診連携において大切なのはやはり「顔の見える関係」です。紙だけのやり取りでは関係が希薄になりがちですので、研究会等で基幹病院の先生と会って良い関係を築くことが重要ですし、いろいろな情報や知識も得られると思います。また紹介患者さんが基幹病院に入院したら、その病院に会いに行くことも重要だと思います。患者さんが喜ぶのはもちろん、基幹病院の医療スタッフも信頼を寄せますので、患者さんを逆紹介していただきやすくなると思います。可能であれば、基幹病院、地域の開業医、訪問看護ステーション、ケアマネージャーなどで症例を通じた多職種カンファレンスを開くのもよいと思います。日常診療でがんを早期発見するためには、どこに気を付ければよいですか?有症状か無症状かで考え方が異なります。有症状の場合、そのがんはすでに早期がんである確率は低いので、ご質問そのものに対する回答にはなっていませんが、個人的には以下のような症状があった場合には、がんを疑うことにしています。すなわち、体重減少、リンパ節腫脹、原因不明で夜間に増悪する腰痛・背部痛、不明熱、嚥下困難、下血・血便・タール便、黄疸、血痰、血尿などです。また過去のがんの既往があれば、より検査閾値を下げて精密検査を進めることになると思います。無症状のがんを診断するためには、基本的にはがん検診を定期的に受けていただくことだと思います。私はがん以外で診ている患者さんに「がんについては検診を受けてください。残念ながら、あなたががんになっていないかどうかについてまでは診られていないのです」と説明しています。高血圧や糖尿病で診ている患者さんでも、患者さん側からすればがんも含めて診てもらっていると思っている方がいらっしゃいます。しかし、がんでない患者さん全員にがんが無いかどうかを診ていくのは大変だと思います。ただ、がん検診については注意すべき点があります。がん検診は早期発見のみを目的にしているのではなく、早期発見を通じてがんによる死亡を減らすことを目標としていますし、その点についてある程度コンセンサスがあるがん種についてがん検診が行われているのです。したがって、がん検診の内容に満足できない患者さんには、賛否両論あるにせよ、人間ドックを受けていただく以外にないと考えています。また、がんをスクリーニングする方法としての腫瘍マーカー測定は勧められません。スクリーニングには高い感度が求められますが、腫瘍マーカーで感度の高い検査はないからです(PSAは前立腺がんのスクリーニングには適していますが、早期診断することで死亡割合を低下させるかどうかが専門家の間で見解が異なるため現時点でがん検診に用いられてはいません)。症状もないのに患者さんの希望のみで、安易に腫瘍マーカーを測定し少しでも異常があった場合には、患者側も医師側も必要以上にがんを心配することになってしまいます。健診受診を促していますが、嫌がる人が多いです。どうすべきでしょうか?どうして嫌がるのかその理由によると思います。がんが見つかるのが怖いのか、それともがんになっても構わないし、早期発見が重要と考えていないなど、いろいろ理由があると思います。まずは患者さんの考え方を十分に把握することから始めてみてはいかがでしょう。CKDにおける抗がん治療の注意点を教えてください。腎障害の程度や、抗がん薬が腎排泄か肝代謝・肝排泄かなどによって、投与量は変わってきますので一般化できません。また、透析患者さんの場合はまた別の因子(透析性、分布容積、蛋白結合率、投与するタイミングなど)を考慮する必要が出てきます。詳しくは各抗がん薬の添付文書をご覧ください。高齢患者さんの治療に関する注意点を教えてください。一般的に抗がん治療の治療目標は二つあります。すなわち、生存期間の延長とQOLの改善・維持です。高齢患者さんの場合、抗がん治療により得られるメリットは非高齢患者さんのそれに比して小さくなります。つまり、生存期間の延長も小さくなるでしょうし、QOLも低下する可能性が十分あります。大切なことは、何を治療目標にして個々の患者さんを治療しているのかについて主治医と患者さん・家族が十分話し合い、認識を共有しておくことだと思います。個々の抗がん治療(手術、抗がん薬、放射線)の注意点については紙面の関係でここでは割愛します。食欲不振に対する対処法を教えてください。食欲不振の原因によります。原疾患によるものか、抗がん薬治療によるものか、あるいはうつ病などの内因性精神疾患によるものか、など多岐にわたります。認知症患者におけるがん治療について教えてください。がん治療に関して、その患者さんに自己意思決定能力があるかどうかが最大の問題になります。認知症のために本人に意思決定ができない場合は、家族や友人などに代理意思決定をしていただく必要があります。その際に大切なのは、代理者の意向ではなく、患者さん本人の意思を代弁する(または推定する)ことです。あくまでも患者さんが主体です。また、認知症患者の抗がん治療自体も難しいものになります。認知症の患者さんは脳の脆弱性のため、せん妄を起こしやすく、脳以外の身体の脆弱性も伴っていることが多いことから、その他の合併症(肺炎など)も起こしやすいのです。前立腺がんにおける高濃度ビタミンCの有用性について教えてくださいマルチビタミン(ビタミンCを含む)とミネラル補充療法の前立腺がん発症や進行予防との関連についてはメタ解析により現時点では否定されています(Stratton J,et al. Family Practice. 2011; 28:243–252)。上部消化管検診においてペプシノゲンがBaや内視鏡に代行できるという考え方はもう一般的になっているのでしょうか?日本のガイドラインでは現時点においても胃透視を推奨しており、ペプシノゲンはピロリ抗体や胃内視鏡と共に胃透視に比べてエビデンスレベルは下位に位置づけられています(Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol 2008;38(4)259–267)。したがって、一般的にペプシノゲン測定はほかの検査の代用にはならないと考えられます。ただ、ABC検診と言って、血液検査でH. pylori感染とペプシノゲン値を調べ、胃がんのリスク評価を行う検診があり、リスクに応じて胃内視鏡検査による胃がんのスクリーニングを推奨する動きもあります。

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これからの総合診療、そして緩和医療の未来を語ろう

私は総合診療に軸足を置きながら、レジデント教育、がん診療、膠原病診療、そして最近では緩和医療に携わる地域基幹病院に勤める勤務医です。私の立場は、開業医の先生方やがん専門病院の先生方、大学や総合病院の腫瘍内科や緩和医療科の先生方のそれとはやや異なり、その立場でお話しすることをご承知ください。総合診療の定義を語るとき、現在の立場や出自で大きく異なること、そのためかそのidentityに揺らぎを生じ、ともすればidentity crisisに陥る可能性が問題となります。私たちの天理よろづ相談所病院 総合診療教育部では、真の総合診療とは専門性や現在の立場を超えたところにあって、「患者・家族にとって真の主治医でありつづける」ことと考えており、レジデント(研修医)には常にそれを求めています(参照:「主治医力を磨くワークショップ」 )。個人的には「真の主治医」に必要な要素として、以下の2点を大切にしています。1. 真のEBMを実践できること患者の疾患だけを診るのではなく、患者の環境・患者の歩んできた人生の中でそれを「病(やまい)」としてとらえ、患者の価値観、エビデンス、医師の知識・経験(時には社会資源も含めて)の総合判断により真のEBMを実践できることを目指します。EBMは最近ではNarrative Medicine※1と融合し、NEBM(Narrative Evidence-based Medicine)とも呼ばれ、個々の患者をより重視する意識が芽生えてきています(Charon R, et al. Lancet.2008;371:296-297.)。2. 患者・家族にとって「潤いのある2.5人称の存在」になること作家 柳田邦男氏が「2.5人称」という概念を提唱しています。医療において、患者自身の立場は1人称、家族や親友は2人称ということになります。医療者は一般的に3人称の存在として、患者の生と死について科学的に分析、評価、治療、診断、時に死亡診断を行います。しかし、3人称も「乾いた」存在では時に冷たい存在となり、患者や家族を傷つけることになります。一方、2人称では主観的すぎて正確な判断・評価が難しくなります。そこで、人としての温かみや潤いのある2.5人称の視点が求められているのです。患者や家族に寄り添い、自己決定を支援し、より良き人生を送るためのナビゲーターとなる、そんな存在が「潤いのある2.5人称」としての主治医であると私は考えています。総合診療は、ともすればその病歴や身体診察からの診断力に注目される傾向がありますが、実際は治療を含めた診断後の経過にこそ、その醍醐味があると考えています。そしてそれは他の専門診療科の先生方や開業医の先生方とも共有したいパラダイムです。同じ診断であっても、年齢・性別・既往歴、社会や家庭での役割、そして本人の死生観を含む価値観により治療方針は異なりますし、経過も大きく異なるでしょう。私たち医師は、診療セッティングや専門性を超えて、患者に対し先述の2つの視点を持った主治医としての役割が求められているのです。多くの学会が自身の専門医不足を主張しますが、医療が高度に専門分化する中でそれぞれの領域で専門性を追求することにのみ専念すれば、いつまで経っても専門医が足りることはありませんし、「真の主治医」という視点がなければ専門医療の提供のみに終始し、患者の幸福に貢献できないかもしれません。自分の専門外であってもまずは一旦患者を引き受けようとする心意気、そして他の領域にも一歩踏み込んで関わろうとする積極的姿勢(オーバーラップ)がこれからの超高齢社会には何より必要と考えられます。そうすれば患者が転院しても自宅に帰っても切れ目のない、そしてしなやかな診療が提供できると考えます。最後に緩和医療についてお話ししたいと思います。私は、総合診療医(総合内科医)は緩和医療に積極的に関わるべきだと考えています。とくに終末期医療はがん患者であるか否かにかかわらず、2025年には非常に大きな問題になります※2。つまり病院であれ診療所であれ、看取りを抜きにこれからの医療は語れなくなるのです。WHO(2002年)による緩和医療の定義は「生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理・社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、苦しみを予防し和らげることでQOLを改善するアプローチである」とされています。まさしく、総合診療医(あるいはその素養を持つ臓器別専門医)が親和性を持つ領域であると思います。人はいつかは死を迎える、だからこそより良き生を考える緩和医療を提供する私たちは、患者に寄り添いながら、その人の生と死に立ち会いながら、人生をいかに生きるかという究極の命題に深い思索を巡らすことができるのかもしれません。※1病(やまい)を患者の人生という物語の中で位置づけ、その文脈の中で理解し医療を提供しようとする考え。この中では同じ疾患であっても、患者によって提供される医療には多様性がありうることを前提としている。※22015年には「団塊の世代」と呼ばれる人々が75歳以上の高齢者となり、高齢者人口ならびに年間死亡者数はそれぞれ推計で3,500万人、160万人と見込まれている(2011年は2,980万人、119万人)。これまでは高齢者割合の増加スピードが問題となっていたが、2015年以降は高齢者数という数が問題になる。死にゆく人を看取る場として、病院は90万人弱と推定されており、残り70万人強の人は自宅や施設で亡くなることになるが、その体制作りは緒に就いたばかりであり喫緊の課題である。ご意見がございましたら、tazuma@tenriyorozu.jp までお寄せいただければ大変光栄に存じます。

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統合失調症の再発、コスト増加はどの程度

 カナダ・Groupe d'analyse LteeのMarie-Helene Lafeuille氏らは、コストの側面から統合失調症の再発について評価を行った。その結果、再発エピソード期間中は薬局、外来、入院・救急などのリソース活用が有意に増えてコスト増大を招くこと、とくに入院や救急などの病院診療がコスト増大に大きく関わることを報告した。Journal of Medical Economics誌オンライン版2013年9月5日号の掲載報告。 本研究は、統合失調症の再発ならびに再発の主要なコスト・ドライバーを、コストベースのアルゴリズムに基づいて明らかにすることを目的としたものであった。Multistate Medicaid dataを用いて、1997~2010年までに非定型抗精神病薬(AP)の投与を受けた成人統合失調症患者を抽出し、初めて統合失調症と診断されAP投与が開始された日をもってindex dateとした。再発エピソードは(1)index dateから2年以降に、ベースライン(index date前12ヵ月)から高額なコスト増加を認めた週、(2)週間絶対コスト高値とし、これら2つの基準によりcompound scoreを算出し、患者の54%でベースラインからの高額なコスト増加、および週間絶対コスト高値を認めた場合に再発とした。ベースラインおよび再発エピソード期間中のリソース使用とコストはincidence rate ratios (IRRs)およびブートストラップ法により比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・再発例は9,793例で、1例当たり平均9回の再発エピソードが認められた。・再発エピソードの期間は、経過とともに減少した(平均[中央]値:初回エピソードは34[4]週間、その後のエピソードは8[1]週間)。・しかし再発エピソード期間中は、薬局、外来および病院診療(入院、救急)におけるリソース活用が、ベースラインと比較して有意に増大していた(IRRsは1.9~2.4、すべてのp<0.0001)。・同様に1週間当たりの平均増分コストも、再発により2,459ドル(95%CI:2,384~2,539ドル)増加した。病院診療に関する増大が53%だった。・本研究には、以下の点で限界がある。再発例および再発エピソードをコストベースのアルゴリズムにより特定したが、これは臨床的再発の定義とは相反するものである。また、それらは統合失調症患者の約54%が2年間に1回以上の再発エピソードを経験するであろう、という文献からの仮定にすぎなかった。・以上を踏まえて、統合失調症の再発はコストを有意に増加することが認められた。それは主に入院、救急などの病院診療によるものであった。関連医療ニュース 統合失調症患者の再発を予測することは可能か? 統合失調症“再発”の危険因子は? 統合失調症の再燃や再入院を減少させるには:システマティックレビュ―

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乳幼児早期発症のアトピー性皮膚炎、約7割は寛解

 台湾の乳幼児早期に発症したアトピー性皮膚炎(AD)の子どもの自然経過について調べた結果、罹病期間は中央値4.2年、約70%が最終的には寛解に至り、アレルギー性鼻炎や喘息はADの疾患経過には影響しなかったことを、台湾・台北栄民総醫院のT-C Hua氏らが、住民ベースコホート研究の結果、報告した。ADは乳幼児期の早期発症の頻度が高いが、その後の疾患経過は患者個々によって多様である。ADの自然経過に関する先行研究は、一般にサンプルサイズが小さく、全国ベースで行われたものはなかった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年8月23日号の掲載報告。 研究グループは、台湾において早期に発症した小児AD患者(2歳未満で発症)について、罹病期間と寛解率を調べること、またアレルギー性鼻炎や喘息がADの疾患経過に影響を及ぼすかについて調べた。 被験者は、台湾のNational Health Insurance Research Databaseから選出し、誕生から10歳時点まで追跡した。AD罹病期間と寛解率の分析は、Kaplan-Meier生存分析法にて行い、log-rank検定法を用いて群間解析を行い疾患経過のリスク因子の影響を分析した。 主な結果は以下のとおり。・1,404例の早期発症小児AD患者が解析に含まれた。・罹病期間が1年未満であったのは19.4%であり、48.7%が罹病期間が4年未満であった。・10歳時までの追跡期間中、69.8%が寛解に至った。・性別、発症年齢、アレルギー性鼻炎、喘息、または両疾患(アレルギー性鼻炎と喘息)を有することの疾患経過への影響は、統計的に有意ではなかった。・以上より、早期発症小児AD患者の罹病期間は中央値4.2年、約70%が最終的に寛解に至り、アレルギー性鼻炎および喘息はADの疾患経過に影響を及ぼさないことが明らかになった。

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新規抗凝固薬、ワルファリンに非劣性-静脈血栓塞栓症の再発-/NEJM

 経口第Xa因子阻害薬エドキサバン(商品名:リクシアナ)は、症候性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療において、有効性がワルファリンに非劣性で、安全性は優れていることが、オランダ・アムステルダム大学のHarry R Buller氏らが行ったHokusai-VTE試験で示された。VTEは、心筋梗塞や脳卒中後にみられる心血管疾患として3番目に頻度が高く、北米では年間70万人以上が罹患しているという。従来の標準治療は低分子量ヘパリン+ビタミンK拮抗薬だが、ヘパリンの前投与の有無にかかわらず、新規経口抗凝固薬の有効性が確立されている。本研究は、2013年9月1日、アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。最大1年投与の有用性を非劣性試験で評価 Hokusai-VTE試験は、ヘパリンを投与された急性VTE患者の治療において、エドキサバンのワルファリンに対する非劣性を評価する二重盲検無作為化試験。対象は、年齢18歳以上で、膝窩静脈、大腿静脈、腸骨静脈の急性症候性深部静脈血栓症(DVT)または急性症候性肺塞栓症(PE)の患者とした。 被験者は、非盲検下にエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを5日以上投与された後、二重盲検、ダブルダミー下にエドキサバンまたはワルファリンを投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンの投与量は60mg/日とし、腎機能障害(Ccr:30~50mL/分)、低体重(≦60kg)、P糖蛋白阻害薬を併用している患者には30mg/日が投与された。投与期間は3~12ヵ月で、治験担当医が患者の臨床的特徴や意向に応じて決定した。 有効性の主要評価項目は症候性VTEの発症率、安全性の主要評価項目は大出血または臨床的に重大な出血の発症率であり、ハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.5未満の場合に非劣性と判定することとした。重症PE患者ではVTE発症が48%低減 2010年1月~2012年10月までに日本を含む37ヵ国439施設から8,292例が登録され、エドキサバン群に4,143例、ワルファリン群には4,149例が割り付けられた。治療を受けなかった患者を除く、それぞれ4,118例(DVT 2,468例、PE 1,650例、平均年齢55.7歳、男性57.3%、体重≦60kg 12.7%、Ccr 30~50mL/分 6.5%)、4,122例(2,453例、1,669例、55.9歳、57.2%、12.6%、6.6%)がmodified intention-to-treat集団として解析の対象となった。 12ヵ月間の治療が施行されたのは40%であった。エドキサバン群の服薬遵守率は80%であり、ワルファリン群の治療域(INR:2.0~3.0)達成時間の割合は63.5%だった。 有効性の主要評価項目は、エドキサバン群が3.2%(130例)、ワルファリン群は3.5%(146例)で、HRは0.89、95%CIは0.70~1.13であり、非劣性マージンが満たされた(非劣性のp<0.001)。安全性の主要評価項目は、エドキサバン群が8.5%(349例)、ワルファリン群は10.3%(423例)で、HRは0.81、95%CIは0.71~0.94と、有意な差が認められた(優越性のp=0.004)。他の有害事象の発症率は両群で同等であった。 PE患者のうち938例が右室機能不全(NT-proBNP≧500pg/mL)と判定された。この重症PEのサブグループにおける主要評価項目の発症率はエドキサバン群が3.3%と、ワルファリン群の6.2%に比べ有意に低値であった(HR:0.52、95%CI:0.28~0.98)。 著者は、「重症PEを含むVTE患者に対し、ヘパリン投与後のエドキサバン1日1回経口投与は、有効性が標準治療に劣らず、出血が有意に少なかった」とまとめ、「本試験では、有効性の評価は治療期間の長さにかかわらず12ヵ月時に行われており、実臨床で予測されるアウトカムをよりよく理解できるデザインとなっている」と指摘している。

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喘息マネジメントの穴埋めるチオトロピウム(ERS2013)

 2013年9月7~12日、スペインのバルセロナで行われたERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、標題テーマが議論された。 簡便な評価ツールや新たな薬剤の登場などにもかかわらず、コントロール不良の喘息(Uncontrolled asthma)の頻度は50%以上といまだ高い1)。デンマークUniversity of Southern DenmarkのSoren Pedersen氏は、「10年前と比較するとわずかに改善しているものの、依然として状況は変わらない。また、これは多くの国で同じ状況である」と述べた。同氏はまた「このようなケースでは、吸入ステロイド(以下ICS)や吸入ステロイド・長時間作用性β2刺激薬合剤(以下ICS/LABA)を吸入していてもコントロール不良であり、これを補う薬物療法として現在の選択肢以外にも有効な手段が望まれる」と述べた。 そのような中、新たな治療選択肢として、COPD治療薬として広く用いられている抗コリン薬チオトロピウム(商品名:スピリーバ2.5μレスピマット)の喘息に対する有効性が注目されている。チオトロピウムの喘息への使用については、重症例のICS/LABAや軽症・中等症例でのICSへのアドオンなど、いくつかの試験でその有効性が示されてきた2)3)。なかでもICS/LABAコントロール不良の重症持続型喘息でのチオトロピウムの有効性を示す大規模二重盲検試験PrimoTinATMの結果が昨年(2012年)発表されているが4)(http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31588)、今回のERSでは、中用量のICSでコントロールが得られない中等症持続型喘息に対する第3相試験Mezzo-TinATMの結果が、オランダUniversity of GroningenのHuib Kerstjens氏から発表された。 MezzoTinA-asthma 試験は、チオトロピウムレスピマット5μg群(以下チオトロピウム5μg群)、チオトロピウムレスピマット2.5μg群(以下チオトロピウム2.5μg群)、それにLABAであるサルメテロール(商品名:セレベント)50μg(50μgx2回/日投与)群を合わせた3つのActive treatment群とプラセボ群間で行われた。試験はダブルブラインド、ダブルダミーの並行群間比較で、中用量ICSの維持療法を継続しながら、24週にわたり各群の薬剤を追加投与し、その後3週間フォローアップするというものだ。プライマリエンドポイントは呼吸機能改善評価として24週後のピークFEV1*、同時期のトラフFEV1、そして臨床的評価として同時期のACQ*(asthma controlled questionnaire:喘息管理質問表)スコアの改善で、Trial1および2の2つの試験結果から解析されている。 患者条件は ・中等量ICS(ブデソニド換算400~800mg)単独、またはICS/LABAの使用にもかかわらずコントロール不良の中等症持続型喘息(LABAは試験期間中は中止) ・年齢18歳~75歳の男女 ・非喫煙者または過去に喫煙歴(10pack-years以下)がある非喫煙者 ・サルブタモール(短時間作用性β2刺激薬)400mg投与前の%FEV1*60%~90% ・気道可逆性(サルブタモール400mg投与後のFEV1の改善)12%以上かつ200mL以上など。試験期間中のロイコトリエン受容体拮抗薬、去痰剤、抗アレルギー薬などの使用は許可された。呼吸器疾患、心血管疾患を含む喘息以外の明らかな併存症のあるもの、試験開始前に内服ステロイド治療を受けた患者は除外された。 試験患者数は、Trial1 1,070例、Trial2 1,030例の総計2,100例。4群間の患者バックグラウンドは同様で、平均年齢43.1歳、平均ACQスコア2.18、気道可逆性22.4%、1秒率*(FEV1/FVC)65.8%、罹病期間は21.8年と長期にわたっていた。使用薬剤は、ICS以外ではLABAが60%と最も多く、その他はロイコトリエン受容体拮抗薬が10%、テオフィリンが4%であった。 試験結果は、 ・24週後のピークFEV1:チオトロピウム5μg群247mL、同2.5μg群285mL、サルメテロール群258mL、プラセボ群62mL。プラセボからの増加はそれぞれ、185mL、223mL、196mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・24週後のトラフFEV1:チオトロピウム5μg群119mL、同2.5μg群152mL、サルメテロール群87mL、プラセボ群 -27mL。プラセボからの増加はそれぞれ、146mL、182mL、114mLで、対プラセボp値はいずれの群とも<0.0001と有意に増加していた。 ・ACQスコアの改善:ACQレスポンダー(ACQスコア0.5点以上改善)の割合は、チオトロピウム5μg群64.3%、同2.5μg群64.5%、サルメテロール群66.5%、プラセボ群 57.7%。対プラセボORはそれぞれ1.32、1.33、1.46で、p値はそれぞれ0.035、0.031、0.039といずれの群ともプラセボに比べ有意に改善していた。 ・有害事象発現率は、チオトロピウム5μg群57.3%、同2.5μg群58.2%、サルメテロール群54.3%、プラセボ群59.1%。重篤な有害事象の発現はそれぞれ2.1%、2.3%、2.0%、2.7%と各群ともプラセボと同等であった。 Kerstjens氏は、「チオトロピウムについてのわれわれの疑問は、喘息に対する効果は重症持続型に限られるか?LABAとの効果比較は?などであった。今回の試験で、チオトロピウムレスピマットは、プラセボと比較し、両用量ともピークFEV1、トラフFEV1を有意に増加させ、ACQレスポンダーを有意に増加させていた。この結果から、チオトロピウムレスピマットは、ICS/LABAおよび高用量ICSの適応である重症持続型だけではなく、中等量ICS単独の適応である中等症持続型喘息への追加投与も効果的であることが示された。また、以前の試験結果と同じく、われわれの試験データでもチオトロピウムレスピマットの効果はサルメテロールと同等であることが示された。今回の試験結果は、チオトロピウムの追加投与によって、ガイドラインに則った治療をしても症状が改善しない多くの喘息患者にとって、意義ある結果だといえる」と述べた。※チオトロピウムの効能・効果は、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に基づく諸症状の緩解」であり、気管支喘息は承認外ですのでご注意ください。*FEV1:最大努力呼気の際に呼出開始から最初の1秒で呼出される肺気量。ピークFEV1は薬剤投与後、最も呼吸機能が上がった時点での数値、トラフFEV1は最も呼吸機能の下がった時点での数値。*ACQ:喘息管理質問表スコアasthma control questionnaire。7つの質問から構成され、0~6点の7段階で評価される(0をトータルコントロール、0.75未満をウェルコントロール)。治療後に1.5以上上昇した場合を“著明改善”、1.0以上を“中等度改善”、0.5以上を“やや改善”と定義した。スコアが大きいほど重症となる。*1秒率(FEV1/FVC):FEV1と努力肺活量(FVC)の比率。閉塞性喚気障害の診断指標。FEV1/FVC<70%が閉塞性喚気障害の基準となる。*%FEV:FEV1実測値/FEV1予測値(FEV1予測値=性別、身長、年齢から算出)1) Demoly P et al. Eur Respir Rev. 2012;21:66-74.2) Perters SP et al. N Engl J Med. 2010;363:1715-1725.3) Kerstjens HA et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;128:308-314.4) Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367:1198-1207.

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腰痛改善に地域薬局が重要なポジション

 腰痛に対するプライマリ・ケアの玄関口として、地域の薬局が重要な役割を担えることが明らかとなった。オーストラリア・カーティン大学のHelen Slater氏らによるクラスター無作為化比較試験において示されたもので、地域薬局を利用している腰痛患者のうちパンフレットを提供された患者は職業性腰痛に関する考え方が改善していたという。地域薬局はエビデンスに基づいた情報を提供するのに適しており、こうした簡単な介入が治療の一部として有用であることが示唆されたと報告している。PLoS One誌オンライン版2013年8月20日の掲載報告。 研究グループは、地域薬局を利用する腰痛患者の腰痛に対する考え方を改善できるかどうかについて、エビデンスに基づいた情報提供(パンフレット)による介入の有効性を検討した。 地域薬局35施設が、パンフレット提供とともに患者教育を行う(PE)群(11施設)、パンフレット提供のみを行う(PO)群(11施設)、通常ケア(対照)群(13施設)の3群に無作為に割り付けされ、それぞれの薬局において割り付けに即した介入が行われた。研究に参加した患者は、現在腰痛のために薬局を利用している18~65歳の317例であった。 検討では、介入前、介入2週後および8週後に、腰痛に対する考え方を評価する質問票(BBQ:Back Pain Beliefs Questionnaire)、恐怖回避思考質問票(FABQ:Fear Avoidance Beliefs Questionnaire)などを用いて評価した。なお、研究代表者、評価者および統計学者は盲検化され、薬局のスタッフおよび患者は非盲検であった。 主な結果は以下のとおり。・BBQスコアは、介入2週後および8週後のいずれも、パンフレット提供群(PE群+PO群)と対照群との間で有意差はなく、PE群とPO群との間も有意差は認められなかった。・FABQの職業関連の恐怖心に関するスコアは、パンフレット提供群(PE群+PO群)で対照群より有意に低かった(群間差:-2.3、95%CI:-4.4~-0.2)。PE群とPO群との間に有意差は認められなかった。・パンフレットの有効性に関する全般的印象度は、PE群がPO群より高値であった(群間差:0.9、95%CI:0.0~1.8)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?

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統合失調症、双極性障害で新たに注目される「アデノシン作用」

 アデノシン・モジュレータ補助療法は、統合失調症の精神病理全般(とくに陽性症状)および双極性障害の躁病エピソードの治療において、より大きなベネフィットをもたらすことが示唆された。米国・ヴァンダービルト大学メディカルセンターのTomoya Hirota氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。Schizophrenia Research誌2013年9月号の掲載報告。 アデノシンは現在、統合失調症の病態生理で注視されているドパミンとグルタミン酸と相互に作用することが報告されている。さらに、双極性障害患者にプリン作動性システムの病態生理学的変化をもたらすという新たな報告もなされていることから、Hirota氏らは本検討を行った。2013年4月25日までに発表されたPubMed、EMBASE、Cochrane Library databases、CINAHL、PsycINFOを検索し、統合失調症および双極性障害患者を対象にアデノシン・モジュレータ補助療法とプラセボを比較した無作為比較試験を選択した。主要評価項目は、陽性・陰性症状尺度(PANSS)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)とし、リスク比と95%信頼区間、標準化平均差(SMD)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症(457例)に関する6試験、双極性障害(289例)に関する3試験の計9試験が解析に組み込まれた。・全体として、統合失調症において、アデノシン・モジュレータ補助療法によるPANSS総スコアがプラセボより優れていた(SMD:-1.07、p=0.01)。症状サブスケールでみると陽性尺度および総合精神病理評価尺度で優れており、陰性尺度では優位性はみられなかった。・個別にみるとアロプリノールは、統合失調症におけるあらゆる主要転帰尺度についてプラセボに対する優位性がみられなかった。・双極性障害におけるアデノシン・モジュレータに関するプールデータの解析からは、プラセボと比較して、YMRSスコアの有意な減少(SMD:-0.39、p=0.004)が示された。・本検討において、アデノシン・モジュレータ補助療法は、統合失調症の精神病理(とくに陽性症状)の治療と双極性障害の躁病治療に有益であることが示唆された。ただし解析に組み込まれた試験はサンプルサイズが限られており、有効性と忍容性の評価についてはさらに多くの研究が必要であることが示された。関連医療ニュース 精神疾患のグルタミン酸仮説は支持されるか 統合失調症の治療ターゲット、新たな遺伝要因を特定 双極Ⅰ型障害患者の症状発症に関連する“キヌレン酸”

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酒さは片頭痛持ちの女性に多い

 スイス・バーゼル大学病院のJulia Spoendlin氏らは、住民ベースコホート研究の結果、片頭痛を有する女性において、わずかだが酒さ発症のリスクの増大が観察されたことを報告した。とくに50歳以上の重度の片頭痛を有する女性でリスク増大が認められたという。酒さは一般によくみられる皮膚疾患であり、神経性炎症や神経血管性調節障害を伴う。片頭痛は、血管性変化と無菌性炎症を伴う。両疾患の関連は数十年にわたり示唆されているが、エビデンスは不足している。Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年9月号(オンライン版2013年5月1日号)の掲載報告。 研究グループは本検討において、片頭痛と片頭痛薬のトリプタン(商品名:イミグランほか)、ならびに酒さの発症リスクとの関連について調べた。トリプタンは、血管収縮性および抗炎症作用を有するが、このクラスの薬剤による酒さへの潜在的影響については調べられていなかった。 そこで研究グループは、片頭痛またはトリプタン曝露と酒さ発症リスクとの関連について分析するため、英国のGeneral Practice Research Databaseを基に症例対照研究を行った。同データベースから1995~2009年の酒さ患者を特定し(症例群)、1症例につき1人の非酒さ対照被検者を適合し、多変量条件付きロジスティック回帰分析法を用いて、症例群と対照群の、初回酒さ診断前の片頭痛有病率とトリプタン曝露について比較した。 主な結果は以下のとおり。・症例群5万3,927例、対照群5万3,927例のうち女性の被験者において、全体的にわずかだが酒さと片頭痛の関連が認められた(補正後オッズ比:1.22、95%信頼区間[CI]:1.16~1.29)。男性では両者の関連はみられなかった。・同関連は、50~59歳の女性の片頭痛患者において、やや関連性が明確であった(同:1.36、1.21~1.53)。・また、トリプタン服用女性においても、年齢が高くなるほどわずかだがリスクの増大が認められた。オッズ比は、60歳以上の女性が最も高く、1.66(95%CI:1.30~2.10)であった。・本検討は、後向きの症例対照研究であり、特定のバイアスおよび交絡の程度を除外できない点で限界があった。・以上から著者は、「女性の片頭痛患者において、酒さを呈するリスクがわずかだが増大することが認められた。とくに50歳以上の重度の片頭痛女性患者にみられた」と報告した。

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肥満、メタボと健康に関する記事 まとめ

 肥満は心疾患や脳血管疾患、糖尿病のリスクが高くなるだけでなく、上肢痛や喘息を引き起こしやすいというデータもあるようだ。医学誌にもたびたび論文が掲載されているが、今回はそれらに関する記事をまとめて紹介する。母乳での哺乳で学童期の肥満リスクが低下~全国縦断調査データより これまでの研究では母乳での哺乳が子供の肥満を予防することが示唆されているが、社会経済的な状況や子供の生活習慣による交絡の可能性があるため、決定的なエビデンスはない。また、これまではほとんどが欧米先進国の子供での研究であったため、他の対象における研究が待たれている。岡山大学の山川路代氏らは、日本における母乳での哺乳と学童期の過体重・肥満との関連について、潜在的な交絡因子を調整して検討し、その結果をJAMA pediatrics誌オンライン版2013年8月12日号に報告した。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35907メタボは上肢痛のリスク因子か 内臓脂肪は上肢痛のリスク因子であるようだ。フィンランド労働衛生研究所のTapio Vehmas氏らが、コホート研究の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究にて、そのメカニズムを解明し、減量が疼痛管理に有用かどうかを明らかにすることが必要だ」とまとめている。Pain Medicine誌2013年7月号(オンライン版2013年5月3日号)の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35872肥満期間が長いと冠動脈心疾患リスクは増大する?/JAMA 若年期から肥満がみられ肥満期間が長いほど、冠動脈石灰化(CAC)が促進され、中年期の冠動脈心疾患リスクの増大につながることが、米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)のJared P Reis氏らの検討で示された。米国では過去30年間に肥満率が成人で2倍、青少年では3倍に上昇しており、若年の肥満者ほど生涯を通じて過剰な脂肪蓄積の累積量が多く、肥満期間が長くなるが、肥満の長期的な転帰に関する研究は少ないという。また、脂肪の蓄積量にかかわらず、全身肥満の期間が長期化するほど糖尿病罹患率や死亡率が上昇することが示されているが、肥満期間が動脈硬化の発症や進展に及ぼす影響については、これまで検討されていなかった。JAMA誌2013年7月17日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/35682メタボリックシンドローム患者は喘息を発症しやすいのか? メタボリックシンドロームや、その診断項目である基準以上の腹囲や高血糖・糖尿病があると成人喘息発症のリスクが高くなることが、ノルウェー科学技術大学のBen Michael Brumpton氏らにより報告された。The European respiratory journal誌オンライン版2013年7月11日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/35630アリピプラゾールと気分安定薬の併用、双極性障害患者の体重増加はどの程度? 双極I型障害(BPD)患者は多くの場合太りすぎか肥満であり、メタボリックシンドロームを合併している可能性が高い。いくつかのBPD治療薬では、体重増加や代謝パラメータの悪化が認められる。米国・ケースウエスタンリザーブ大学のDavid E. Kemp氏らは、アリピプラゾール(商品名:エビリファイ)と気分安定薬を併用した際のメタボリックシンドロームの発生率および代謝パラメーターの変化を調べた。Journal of affective disorders誌2013年5月15日号の報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/35009メタボ予防にコーヒーが有効か?―本邦での報告― 日本人において、コーヒーの消費量は、NCEP ATP III基準でメタボリックシンドロームと診断された場合の有病率と負の相関関係があることが、徳島大学大学院 高見栄喜氏らの研究で示された。Journal of Epidemiology誌オンライン版2012年10月6日付の報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/32383

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妊娠中のステロイド外用剤、胎児への影響

 イギリスで実施された、妊娠中の副腎皮質ステロイド外用剤塗布の母体曝露について、その影響を調査した後ろ向きコホート研究の結果が、台湾・長庚記念病院のChing-Chi Chi氏らによって報告された。 それによると、副腎皮質ステロイド外用剤塗布と、口唇口蓋裂、早産、胎児死亡、アプガースコア低値、分娩方法との間には相関がみられなかったこと、一方で、低出生体重に関しては、副腎皮質ステロイド外用剤の塗布量が関与することが示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2013年9月4日号掲載の報告。 調査はイギリスの国民保健サービスが主導し、参加者は、副腎皮質ステロイド外用剤を塗布している妊婦2,658人と、塗布していない妊婦7,246人であった。 主要アウトカムは、口唇口蓋裂、低出生体重児、早産、胎児死亡、アプガースコア低値、分娩方法であった。 主な結果は以下のとおり。・一次解析において、副腎皮質ステロイド外用剤の塗布と主要アウトカムに相関はみられなかった。[口唇口蓋裂(調整後リスク比:1.85、95%CI:0.22~15.20、p=0.57)、低出生体重(同:0.97、同:0.78~1.19、p=0.75)、早産(同:1.20、同:0.73~1.96、p=0.48)、胎児死亡(1.07、同:0.56~2.05、p=0.84)、アプガースコア低値(同:0.84、同:0.54~1.31、p=0.45)、分娩方法(p=0.76)]・薬剤の力価による層別解析においても、顕著な相関はみられなかった。・予備解析において、potent/ very potentクラス※の副腎皮質ステロイドを、全妊娠期間中に300g超使用した場合、低出生体重が有意に増加した(同:7.74、同:1.49~40.11、p=0.02)。※副腎皮質ステロイド外用剤の強さを、強いものからVery Potent、Potent、Moderate、 Mildの4段階に分類。

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EUコホート試験、重症喘息の個別化治療に道

 9月9日ERS(European Respiratory Society:欧州呼吸器学会)Annual Congressにて、3万件以上のサンプルを集めた2つのコホート試験の結果が発表された。 喘息はcommon diseaseであるにもかかわらず、さまざまなタイプがあることはあまり知られていない。その中で、なぜ特定の患者がより重症な病状を呈するのかは専門医もわかっていない。こうした背景のもと、The EU-funded U-BIOPRED*プロジェクトは、より個別化した治療を開発することを目的に、それぞれの重症喘息患者がどのように異なるのか、将来的に疾患をサブグル-プに分けられるかについて研究している。 一つ目の試験の結果、成人および小児の重症喘息には、それぞれ共通の特徴があることがわかった。この試験から得られた主な知見は下記である。<成人> ・55%の重症喘息患者は定期的に経口ステロイドを服用しているにもかかわらず、軽症~中等症喘息患者に比べ、重度の気道閉塞を有している。 ・重症喘息患者は、高用量のステロイドを使用しているにもかかわらず、今なお増悪などの重度の症状を経験している。<小児> ・気道閉塞のレベルは、重症であっても軽症~中等症と同程度である。 ・重症グループでは、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)レベルが高い。 当試験の筆頭著者であるDavid Gibeon氏は、「この初めての知見が、喘息患者に存在するサブグループの概要を示した。われわれが並行して行っている試験では、なぜより重症になるとより治療に反応しなくなるのかを、多くの異なる分子レベルで調べている。個々の喘息患者の治療と、より個別化したアプローチの開発に役立つであろう」と述べた。 二つ目のU-BIOPRED試験では、エレクトロニックノーズを用いて喘息患者の呼気サンプルを分析している。この調査の目的は従来の臨床的特徴ではなく、呼気の分子パターンで患者を分類することである。この試験では57例の患者の呼気サンプルから、重症患者の4つのサブグループの共通パターンを見つけることができた。 U-BIOPREDプロジェクトのリーダーPeter Sterk氏は、「この両方の試験から得られる知見は、われわれを重症喘息のより深い理解に一つ近づけた。このような条件の患者は増悪と症状を繰り返し、治療にもよく反応しないが、なぜこのようになるのかはわからない。このような方々の生活を改善するために、CTから喀痰、患者の遺伝子解析、気管支鏡の結果まで幅広いサンプルから、膨大な分析を開始して各々の患者の生物学的かつ臨床的な“指紋”を作る必要がある。U-BIOPREDプロジェクトは、このような患者の個別化医療の開発にわれわれを近づけるであろう」と述べている。*U-BIOPRED(Unbiased Biomarkers for the Prediction of Respiratory Disease):ヨーロッパにおける教育機関、製薬企業、患者団体の共同組織

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高齢の皮膚疾患患者におけるうつ病の有病率とリスク因子は

 皮膚疾患は、他の慢性疾患の罹患やそれに伴う精神的苦痛と同様に、高齢者におけるうつ病の原因のひとつとなることがある。韓国・カトリック大学校のEun Kyung Kim氏らは、高齢皮膚疾患患者のうつ病の有病率と、そのリスク因子を特定するため、調査を実施した。 その結果、高齢の皮膚疾患患者におけるうつ病の有病率は一般集団より顕著に高率であること、身体の健康、教育レベル、併存疾患の存在がリスク因子であることを報告した(Annals of dermatology誌2013年8月25日掲載報告)。 調査の対象は60歳以上の皮膚疾患患者。高齢者うつ病評価尺度(GDS:The Geriatric Depression Scale )による質問票を用い、うつ病の判定を実施した。さらに、人口統計学的情報や病歴を収集した。 主な結果は以下のとおり。・GDS質問票を完遂したのは313例であった。そのうち男性が39.94%、平均年齢は69.04歳、平均罹患期間は3.23年であった。・高齢皮膚疾患患者の平均GDSスコアは、30点満点中12.35点であり、皮膚疾患は、全体としてうつ病に有意な影響を及ぼしていた(χ2=177.13、p<0.0001)・高齢皮膚疾患患者のうち、中等度~重度のうつ病と評されるGDSスコア10点以上であったのは62.3%であった。一方、一般集団でGDSスコア10点以上であったのは、22.22%であった。・単変量解析によると、高齢皮膚疾患患者のうつ病のリスク因子は、身体の健康、教育レベル、併存疾患の存在であった。・しかし、うつ病の独立した予測因子となる人口統計学的変数および疾患関連の変数を特定するまでには至らなかった。

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