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アトピー性皮膚炎、ブドウ球菌がバイオフィルム形成に関与

 アトピー性皮膚炎(AD)において、ブドウ球菌がバイオフィルム形成に関与しており、汗腺の閉塞に重要な役割を果たすことで炎症およびそう痒につながることが、米国・ドレクセル大学医学校のHerbert B. Allen氏らにより明らかにされた。ADにおける黄色ブドウ球菌の存在は20年以上前に報告されていたが、ADとの関連についてはなかなか確認されなかった。著者は、「これまでADは未知の環境要因とのダブルヒット現象であり、フィラグリン遺伝子に遺伝的異常が集約していると考えられてきた。今回の知見は、ADの環境的要因にはブドウ球菌と、そのバイオフィルムが関連しており、これが汗腺を閉塞していると確信する」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年1月22日号の掲載報告。 研究グループは本検討において、AD病変部でバイオフィルムを形成するバクテリア、およびそれらバイオフィルムの免疫システムが汗腺閉塞を引き起こす反応を、とくにToll様受容体2を評価して調べることを目的とした。 大学病院の皮膚科部門で、ADの特徴、ブドウ球菌との相関性および影響、バイオフィルムと関連している影響要因を検討した。AD患者の病変部と非病変部でルーチンの皮膚スワブを行い擦過標本作成と生検を行った。また、対照検体も入手し評価した。グラム染色、明視野顕微鏡、ヘマトキシリン・エオジン染色、過ヨウ素酸シッフ反応、コンゴレッド染色、光学顕微鏡検査などを行った。 主要評価項目は、ブドウ球菌性バイオフィルムとAD病因との関連であった。 主な内容は以下のとおり。・検討したAD患者は40例、対照検体は20例(炎症皮膚標本10例、健常皮膚標本10例)であった。・すべてのAD検体は、多剤耐性ブドウ球菌を有していた。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)42.0%、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)20.0%が優勢種属であった。・すべての分離株は、細胞外多糖とバイオフィルムに対して陽性反応を示した。85.0%が強力なバイオフィルム形成者であり、陽性反応がわずかであったものは15.0%であった。・PCR法によりバイオフィルム媒介遺伝子としてicaD遺伝子(93.0%)と、aap遺伝子(12.5%)が明らかになった。・検討では、皮膚組織における微生物同定、細胞外バイオマス生成、バイオフィルム形成、ブドウ球菌性バイオフィルムの存在についても調べた。過ヨウ素酸シッフ反応陽性、コンゴレッド染色陽性であった汗腺閉塞は、顕微鏡的組織検査で観察された。・Toll様受容体2は、AD病変皮膚(汗腺に最も近い)において活性化が認められた。同部位は、プロテアーゼ活性化受容体2を介したそう痒と、MyD88を介した海綿状態の発生に関与している可能性が示唆された。

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統合失調症へのアリピプラゾール+リハビリ、認知機能に相乗効果:奈良県立医大

 統合失調症患者における認知機能障害を改善する手段に関する研究には、強い関心が寄せられている。奈良県立医科大学の松田 康裕氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬治療と認知機能リハビリテーションとの相乗効果について調べた。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2014年2月10日号の掲載報告。 研究グループは、認知機能リハビリテーションの有効性について検討した無作為化試験や、裏付けのための準無作為化実験的試験の参加者で、統合失調症または統合失調感情障害と診断された患者を対象とし、認知機能リハビリテーションへのアリピプラゾールとリスペリドンとの影響について検討した。被験者(43例)を、(1)対照-リスペリドン(CR群、13例)、(2)リハビリテーション-リスペリドン(RR群、9例)、(3)対照-アリピプラゾール(CA群、10例)、(4)リハビリテーション-アリピプラゾール(RA群、11例)に分類し、リハビリテーション群の被験者は、コンピュータベースの認知エクササイズ(24セッション)をブリッジング(12セッション)とともに12週間受けた。ベースライン時と12週時点で、精神症状、認知機能および社会的機能の評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・認知機能リハビリテーションと抗精神病薬投与を2要因とした分散分析の結果、運動速度について有意な相互作用の効果があることが判明した。・作業記憶と運動速度は、CA群と比較してRA群において有意に向上した。・CR群とRR群の間には、有意な改善がみられなかった。・アリピプラゾール治療患者における認知機能リハビリテーションとの相乗効果は、運動速度の改善として観察された。・アリピプラゾール治療患者において、認知機能リハビリテーションは、作業記憶と運動速度を改善すると思われた。・今回の結果を確認するために、抗精神病薬投与と認知機能リハビリテーションの相乗効果について、さらなる研究が必要である。関連医療ニュース 統合失調症の寛解に認知機能はどの程度影響するか:大阪大学 統合失調症患者は処理速度が著しく低下、日本人でも明らかに:大阪大学 統合失調症患者へのセロトニン作動薬のアドオン、臨床効果と認知機能を増大

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日本人も肺炎クラミジア感染で冠動脈疾患リスクが上がる~約5万人のコホート研究

 欧米では、肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)感染がアテローム性動脈硬化症と冠動脈疾患の危険因子と考えられている。しかし、日本人は欧米人に比べて冠動脈疾患リスクが低いため、日本人におけるエビデンスは非常に少ない。今回、日本人における肺炎クラミジア感染と冠動脈疾患リスクとの関連について、JPHCスタディ(厚生労働省がん研究班による多目的コホート研究)で検討した。その結果、肺炎クラミジア感染と冠動脈疾患リスクとの間に正の相関が認められた。Atherosclerosis誌オンライン版2014年1月23日号に掲載。 本研究は、JPHCスタディに参加した日本人男女4万9,011人のコホート内症例対照研究である。2004年末までに記録されたケース(冠動脈疾患196例、心筋梗塞155例)に対し、それぞれコントロールを選択し、血清肺炎クラミジアIgA抗体およびIgG抗体と冠動脈疾患リスクとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・肺炎クラミジアIgA抗体濃度は、冠動脈疾患、心筋梗塞と相関が認められた。・IgA抗体の最も高い四分位では最も低い四分位と比べ、冠動脈疾患リスクが2.29倍(95%CI:1.21~4.33)、心筋梗塞リスクが2.58倍(95%CI:1.29~5.19)であった。・IgG抗体では、この関連は認められなかった。

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遅発性ジスキネジアが発現するD2受容体占有率は:慶應義塾大学

 慶應義塾大学の吉田 和生氏らは、統合失調症患者にみられる抗精神病薬使用後の遅発性ジスキネジア(TD)と、ドパミンD2受容体占有状況との関連について検討を行った。その結果、不随意運動を認めた例では、認めなかった例に比べて、ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値が有意に高く、強力なドパミンD2受容体阻害がTDのリスクを増大させる可能性が示唆されたという。Schizophrenia Research誌オンライン版2014年2月1日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者において抗精神病薬により誘発されるTDと、ドパミンD2受容体占有状況との関連を評価するため、Clinical Antipsychotic Trials in Intervention Effectiveness(CATIE)のデータベースを用いて検討を行った。CATIEのデータセットから、同研究の第I相試験でベースライン時の異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale:AIMS)スコアが0、かつその状態が6ヵ月以上維持されていた被験者218例を登録した。母集団薬物動態解析ならびに著者らが開発したD2予測モデルを用いて、血漿中抗精神病薬濃度に基づくAIMS評価日におけるドパミンD2占有レベルのピーク値およびトラフ値を推定した。また、AIMSスコア2以上の患者とスコア0の患者の推定ドパミンD2受容体占有レベルを、Mann-Whitney U検定を用いて比較した。 主な結果は以下のとおり。・被験者218例の投与状況は、リスペリドン投与症例78例、オランザピン投与症例100例、ジプラシドン(国内未承認)投与症例40例であった。・不随意運動を認めた被験者(23例)は、不随意運動を認めなかった被検者(195例)と比較して、推定ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値が有意に高かった(71.7±14.4% vs. 64.3±19.3%、p<0.05)。・一方、推定ドパミンD2受容体占有レベルのピーク値に関しては、両者の間で有意差は認められなかった(75.4±8.7% vs. 72.1±9.9%、p=0.07)。・3種類の薬剤別に解析を行ったところ、ドパミンD2受容体占有レベルのトラフ値およびピーク値に薬剤間での有意な差はみられなかったが、不随意運動を呈した被験者では一貫してその値が高値であった。・以上のように、抗精神病薬によるドパミンD2受容体の強力な阻害は、遅発性の不随意運動のリスクを高める可能性が示唆された。大規模試験にて確認することが求められる。関連医療ニュース ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学 抗精神病薬で気をつけるべき横紋筋融解症 維持期統合失調症でどの程度のD2ブロックが必要か

9705.

回復期リハ退院後の30日再入院率は11.8%/JAMA

 米国でメディケア受給者の急性期後(回復期)リハビリテーション(postacute inpatient rehabilitation)後の30日再入院率を調べた結果、最も低かったのが下肢関節置換術後の患者で5.8%、最も高かったのが患者の衰弱の18.8%であったことなどが、テキサス・メディカル・ブランチ大学のKenneth J. Ottenbacher氏らによる調査の結果、明らかにされた。米国のメディケア・メディケイドサービスセンターでは最近、リハビリテーション施設に対して、医療の質の評価指標として30日再入院率を定義づけた。Ottenbacher氏らは、この動きを受けて同施設の再入院率とその因子を明らかにするため、メディケア受給者73万6,536例を対象とした後ろ向きコホート研究を行った。JAMA誌2014年2月12日号掲載の報告より。リハ施設から地域へ退院した73万6,536例の再入院率を6診断群別に評価 対象者は2006~2011年に、1,365ヵ所のリハビリテーション施設から地域へ退院したメディケア受給者73万6,536例(平均年齢78.0[SD 7.3]歳)であった。63%が女性で、85.1%は非ヒスパニック系白人だった。 これら対象者について、6つの診断群(脳卒中、下肢骨折、下肢関節置換、衰弱、神経障害、脳の障害)別にみた30日再入院率を主要評価項目として評価した。最小は下肢関節置換5.8%、最大は衰弱18.8% 全体の平均入院期間は12.4(SD 5.3)日、全30日再入院率は11.8%(95%信頼区間[CI]: 11.7~11.8%)だった。 再入院率は、最小5.8%(下肢関節置換)から最大18.8%(衰弱)にわたった。その他はそれぞれ脳卒中12.7%、下肢骨折9.4%、神経障害、17.4%、脳の障害16.4%だった。 再入院率は、男性が女性よりも高く(13.0%vs. 11.0%)、人種別では非ヒスパニック系黒人が最も高かった。また、メディケイドとの複合受給者がメディケアのみ受給者よりも高い(15.1%vs. 11.1%)、共存症が1つの患者(25.6%)が2つ(18.9%)、3つ(15.1%)、なし(9.9%)の患者よりも高いなどの特徴も明らかになった。 6診断群では、運動および認知機能が高いと再入院率は低かった。 州で補正後の再入院率は、最小9.2%(アイダホ州、オレゴン州)から最大13.6%(ミシガン州)にわたった。 30日以内に再入院した患者の約50%は11日以内で退院に至った。再入院の理由(Medicare Severity Diagnosis-Related Groupコードによる)は、心不全、尿路感染症、肺炎、敗血症、栄養・代謝障害、食道炎、胃腸炎、消化不良などが一般的であった。 著者は、「再入院の原因を明らかにするためにさらなる研究が必要だ」とまとめている。

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睡眠検査の最新技術 睡眠の質を手軽に可視化

小さなデバイスが、睡眠へのアプローチに大きな変化をもたらす小型睡眠脳波測定器「スリープスコープ」医療機器として認証された、手の平に納まる小型睡眠脳波測定器があることを、ご存知だろうか。日常生活の中で手軽に測定できるというだけでなく、様々な可能性がそこにあった。この小型睡眠脳波測定器「スリープスコープ」を開発したスリープウェル株式会社代表 吉田政樹氏に聞いた。睡眠の質の客観的評価へのニーズが増加近年、睡眠は医療・健康分野において、その重要性が大いに注目されている。従来、睡眠の質を客観的に捉えるには終夜睡眠ポリグラフ(以下 PSG)を行う必要あった。しかし、この検査が実施可能なのは少数の専門機関に限られ、またその実施には多くの制約があった。そのため、ニーズはあるもののエビデンスが取得しにくく、なかなか研究が進まない状況であった。このようななか、小型で高性能のスリープスコープが開発され、睡眠の質を容易に可視化できるようなった。睡眠の質の客観的評価へのニーズが増加スリープウェル株式会社の出発点は、大阪市などが母体となる公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所(以下OBI)。同研究所の研究者たちが小型脳波計の製品化を目的に設立した睡眠基礎研究発のベンチャー企業である。つまり、スリープスコープは睡眠研究の専門家が開発した機器である。ヒトでは30カ所以上の電極を付けPSGを行う。OBIではマウス、ラットの睡眠実験をしていたが、マウスの脳は小さく2つの電極で睡眠を評価していた。睡眠の実態を考えると、大脳の活動レベルは全体に低下する。大脳全体の活動さえ拾い上げられれば、2つの電極で、睡眠情報は正確にわかるという考えのもと、スリープスコープは開発された。スリープスコープの特徴と精度スリープスコープは小型脳波計では初めて、高度管理医療機器(クラスⅡ)に認証された。10x6cmの小さなボディで、睡眠時の脳波を計測し、その脳波の状況から、睡眠に関する客観的、定量的アウトプットを提供する。具体的には、就床時間、睡眠潜時、熟眠度、中途覚醒、睡眠効率、睡眠リズム、デルタ波*量の推移も測定可能である。精度も高く、スリープスコープとPSGを同時計測して性能検証を行った結果、PSGで取得したものと同様の脳波形を各睡眠ステージで示し、PSGとのステージ判定一致率は86.89%であった。さらに、装着も簡単で、特殊なトレーニングも必要ない。自宅で被験者本人が計測できる。*デルタ波:周波数の低い脳波で、深い睡眠時に出現、成長ホルモンとも相関する。スリープスコープとPSGの睡眠グラフ比較スリープスコープの現在の用途は、研究開発と実臨床スリープスコープの現在の用途は、研究開発と実臨床である。研究開発では、医薬品・医療機器企業、食品企業の活用が多い。たとえば、睡眠薬、快眠食品、快眠グッズなどの効果検証などに用いられる。また、医学研究では、睡眠を悪化させる原疾患や症状(GERD、睡眠時無呼吸症候群、痒み、痛みetc)と睡眠の相関についての研究に活用されている。実臨床においても人間ドッグや、一般臨床科で徐々に使われるようになってきている。とくに、人間ドックでは、検査項目のオプションとして、スリープスコープを活用した睡眠検査を行い、睡眠検査報告書で睡眠の質をわかりやすく説明するサービスを導入している施設もある。睡眠検査報告書では、スリープウェルが有する2万例の健康成人の睡眠データを利用した熟眠年齢(睡眠時に出現するデルタ波量年齢平均値から算出)という指標を提供している。スリープスコープでわかる「睡眠脳波検査結果」スリープスコープの持つ可能性スリープスコープはPSGと異なり、日常の睡眠状態を長期間連続して計測できる。その特性が簡便さ以外のさまざまな可能性をもたらす。その一つが、睡眠脳波と精神疾患の関係解明である。睡眠時の脳波は夜間の無自覚・無意識下の神経活動である。実際、スリープスコープを用いて精神疾患患者の脳波を測定したところ、うつ病をはじめとする精神疾患患者には徐波睡眠がほとんどみられず、入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率に関しても大きな差異がみられることがわかった。また、精神疾患患者では、健康成人と異なる特徴的な脳波を示すことも判明した。そこで、スリープスコープ社では、うつ病や双極性障害の診断についての脳波形データ解析の特許を、2013年5月に取得した。さらに、滋賀医大と共同で臨床試験を行い、精神疾患の診断マーカーとしての臨床での実用化を目指している。精神疾患の診断は医師の問診による判断に委ねられており、客観的データとしてはやや乏しい。脳波分析による客観的データが早期診断に貢献できれば画期的だといえよう。また、古川飛行士、星出飛行士の二人が国際宇宙ステーション滞在中にスリープスコープを使用し実験データをとるなど宇宙医療研究にも応用されている。スリープスコープの登場により、今まで特定の施設でしかとれなかった睡眠脳波が多くの医療機関で測定可能となった。今後、睡眠脳波を用いた研究は加速化し、多くのデータが臨床に応用される日も遠くはないであろう。スリープスコープについての問い合わせはスリープウェル株式会社へhttp://sleepwell.co.jp/スリープスコープの取り扱い方法http://sleepwell.co.jp/411/テレビ東京ワールドビジネスサテライト「拡大する快眠ビジネス」http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_52627

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C型慢性肝炎に対する治療法の開発は最終段階へ!―IFN freeの経口薬併用療法の報告―(コメンテーター:中村 郁夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(175)より-

C型慢性肝炎のうち、1型高ウイルス量の患者に対する現時点での標準治療はPEG-InterferonとRibavirin・Protease阻害薬(Telaprevir またはSimeprevir)の併用療法(24週)である。この治療法により、Sustained Virological Response(SVR:治療終了後6ヵ月の時点での血中HCV陰性化)を得られる頻度は、初回治療例、前治療無効例で約80~90%とされている。 さらなる治療効果の向上、患者の負担軽減のために、さまざまな取り組みが進められている。その1つが、IFN freeの経口薬のみの併用療法の開発である。有用な薬剤として、(1) NS3 Protease阻害薬、(2) NS5B Polymerase 阻害薬(核酸型・非核酸型)、(3) NS5A阻害薬などが挙げられる。 一方、経口薬の併用療法の問題点の1つとして、薬剤に対する耐性変異の出現がある。核酸型のNS5B Polymerase 阻害薬に属するSofosbuvir(GS-7977, PSI-7977)は、どのgenotypeのHCVに対しても耐性ウイルスの出現率が低いことが報告されている。 本論文は米国におけるC型慢性肝炎に対するDaclatasvir(NS5A阻害薬)、 Sofosbuvir併用療法のopen-label studyに関する報告である。対象は、genotype1型167例(ナイーブ例(未治療例)126例、前治療無効例 41例)、genotype2型26例(ナイーブ例)、genotype 3型18例(ナイーブ例)とし、Daclatasvir(60mg)、Sofosbuvir(400mg)の1日1回の経口(Ribavirinの有無は無作為に割り付け)を12週、ないし、24週の10投与群に割り付けた(うち、2群でSofosbuvirのlead-inあり)。 治療終了後12週時点のSVR(SVR12)は、genotype 1型では未治療例・前治療無効例とも98%と高率であった。また、IFN・Ribavirin併用療法による治療効果が低いとされるIL28BのSNPが非CCの例においても98%と、CC例(93%)と同等の効果が認められた。 本邦においても同様の治験が進められており、その結果が注目される。いよいよ、C型慢性肝炎の治療法の開発は最後のステップに入ったと考えらえる。

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マンモグラフィ検診は乳がん死を抑制しない/BMJ

 40~59歳の女性に対するマンモグラフィ検診は、乳房触診検査や通常診療のみの場合に比べ乳がん死を低減しないことが、Canadian National Breast Screening Studyの最長25年に及ぶ追跡調査で示された。検診から15年後も、22%が過剰診断である可能性も示唆された。カナダ・トロント大学のAnthony B Miller氏らが発表したもの。BMJ誌オンライン版2014年2月11日号掲載の報告より。一般に、触知不能でマンモグラフィで検出された乳がん患者の生存期間は、触診で病変が見つかった患者よりも長期に及ぶ。これには、組織型検診(organized screening)やリードタイム・バイアス、過剰診断の影響があると考えられるが、その影響の程度は正確には知られていないという。マンモグラフィ検診の乳がん死への影響を無作為化試験で評価 Canadian National Breast Screening Studyは、マンモグラフィ検診が乳がんの発症率および死亡率に及ぼす影響の評価を目的とする無作為化試験である。1980~1985年に、カナダの6つの州の検診センターを受診した40~59歳の女性を対象とした。 これらの女性が、年1回のマンモグラフィ検診を5年間受ける群またはマンモグラフィ検診を受けない群(対照群)に無作為に割り付けられた。マンモグラフィ群の全員と対照群の50~59歳の女性は毎年、乳房触診検査を受けた。一方、対照群の40~49歳の女性は、1回のみ乳房触診検査を受けたのち、地域のプライマリ・ケア医による通常診療が行われた。最長で25年のフォローアップが実施された。乳がん死に差なし、検診424件に1件が過剰診断 本試験には8万9,835例(40~49歳:5万430例、50~59歳:3万9,405例)が登録された。マンモグラフィ群に4万4,925例(40~49歳:2万5,214例、50~59歳:1万9,711例)が、対照群には4万4,910例(乳房触診:1万9,694例、通常診療:2万5,216例)が割り付けられた。平均フォローアップ期間は21.9年であった。 フォローアップ期間中の全死因死亡率は10.6%(9,477例)で、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.98~1.06、p=0.28)。 5年間の検診期間中に浸潤性乳がんと診断されたのは、マンモグラフィ群が666例(454例(68.2%)が触知可能、中間期がん176例を含む)、対照群は524例であった。その後の乳がん死はそれぞれ180例、171例であり、両群間で乳がん特異的死亡率に差はみられなかった(HR:1.05、95%CI:0.85~1.30、p=0.63)。また、登録時年齢40~49歳(HR:1.09、95%CI:0.80~1.49、p=0.58)および50~59歳(HR:1.02、95%CI:0.77~1.36、p=0.88)の女性にも差は認めなかった。 全試験期間中にマンモグラフィ群の3,250例、対照群の3,133例が乳がんと診断された。フォローアップ期間中の乳がん死はそれぞれ500例、505例であり、両群間で累積乳がん死亡率に有意な差は認めなかった(HR:0.99、95%CI:0.88~1.12、p=0.87)。 検診期間終了時の乳がん診断件数はマンモグラフィ群が142件多く(666 vs. 524件)、フォローアップ期間15年時にもマンモグラフィ群で106件(22%)多かった。乳がん死亡率に差を認めなかったことから、これはマンモグラフィ検診による過剰診断と考えられ、検診424件に1件の割合で過剰診断が発生したことになる。また、過剰診断された乳がんはほぼすべてが触知不能と仮定すると、マンモグラフィ検診のみで検出された乳がんの半数(106/212例)が過剰診断と推察された。 著者は、「40~59歳の女性に対する毎年のマンモグラフィ検診は、乳房触診検査や通常診療のみの場合に比べ乳がん死を低減しなかった」とし、「マンモグラフィ検診の価値の再評価が求められる」と指摘している。

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レストレスレッグス症候群におけるプレガバリンの可能性/NEJM

 レストレスレッグス症候群(RLS、むずむず脚症候群、Willis–Ekbom病)の治療薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)はプラセボよりも有意に治療アウトカムを改善し、プラミペキソール(同:ビ・シフロールほか)に比べ症状の増強(augmentation)が少ないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRichard P Allen氏らの検討で確認された。RLSの症状はプラミペキソールなどの短時間作用型ドパミン作動薬によって軽減するが、長期間投与すると医原性の悪化(症状の増強)の原因となる可能性がある。プレガバリンは、鎮痛作用および抗痙攣作用を有する非ドパミン作動性の薬剤であり、最近、無作為化試験でRLSに対する効果が示されている。NEJM誌2014年2月13日号掲載の報告。プレガバリンの有用性を無作為化試験で評価 研究グループは、RLSに対するプレガバリンの有用性を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。対象は、年齢18歳以上、国際RLS(IRLS)研究グループ判定基準で中等度~重度のRLSと診断され、主に夜間に発現する症状が月に15日以上みられ、6ヵ月以上持続している患者とした。 これらの患者が、プレガバリン300mg/日(52週)群、プラミペキソール0.25mg/日(52週)群、プラミペキソール0.5mg/日(52週)群、またはプラセボを12週間投与後に無作為に割り付けた実薬を40週投与する群のいずれかに無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、1)12週投与後のプレガバリンとプラセボのIRLS研究グループ評価スケール(0~40点、スコアが高いほど症状が重度)、2)改善度の臨床全般印象(Clinical Global Impression of Improvement; CGI-I)の「きわめて大きく改善(very much improved)」または「大きく改善(much improved)」の割合、3)プレガバリンとプラミペキソールの40週または52週投与後の症状増強の発現であった。主要評価項目がすべて改善、長期投与の制限因子も 2008年12月~2011年6月に、欧米の102施設から719例が登録され、プレガバリン群に182例、プラミペキソール0.25mg群に178例、同0.5mg群に180例、プラセボ群には179例が割り付けられた。ベースラインの患者背景や治療完遂率は、各群間に差はみられなかった。 12週の投与後のIRLSスケールの平均スコアは、プレガバリン群がプラセボ群に比べ4.5点低下し、有意な改善効果が認められた(p<0.001)。プラミペキソール0.5mg群も、プラセボ群より3.2点低下したが(p<0.001)、0.25mg群では改善効果はみられなかった(p=0.36)。 CGI-Iで症状が「きわめて大きく改善」「大きく改善」の患者の割合も、プレガバリン群がプラセボ群よりも有意に良好であった(71.4 vs. 46.8%、p<0.001)。プラミペキソール0.5mg群も、プラセボ群に比べ有意に改善したが(p=0.002)、0.25mg群では改善効果は認めなかった(p=0.439)。 40週または52週投与後の全体の症状増強率は、プレガバリン群がプラミペキソール0.5mg群よりも有意に低かったが(2.1 vs. 7.7%、p=0.001)、0.25mg群との間には有意差はなかった(2.1 vs. 5.3%、p=0.08)。 治療中止の理由となった有害事象の発現率は、プレガバリン群(27.5%)がプラミペキソール群(0.25mg群18.5%、0.5mg群23.9%)よりも高かった。頻度の高い有害事象として、プレガバリン群でめまい(21.4%)、眠気(17.6%)、疲労(12.6%)、頭痛(12.1%)が、プラミペキソール群では頭痛、悪心、疲労、鼻咽頭炎が認められた。 有害事象の94.0%が軽度~中等度であり、重篤な有害事象は37例(50件)にみられた(プレガバリン群11件、プラミペキソール0.25mg群20件、0.5mg群12件、プラセボ群7件)。また、自殺念慮が11例に認められた(プレガバリン群6例、プラミペキソール0.25mg群3例、0.5mg群2例)。 著者は、「プレガバリンは、プラセボに比べ治療アウトカムを有意に改善し、症状増強率はプラミペキソール0.5mgよりも有意に低かった」とまとめ、「自殺念慮や眩暈、眠気が、プレガバリンの長期投与の制限因子となる可能性もある」と指摘している。

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ムコ多糖症II型〔MPS II : Mucopolysaccharidosis II〕

ムコ多糖症II型のダイジェスト版はこちら1 疾患概要■ 概念・定義ムコ多糖症(Mucopolysaccharidosis: MPS)は、細胞内小器官のリソゾーム内でムコ多糖の一種であるグリコサミノグリカン(GAG)を加水分解する酵素の異常により、リソゾーム内にGAGが蓄積し、種々の臨床症状を引き起こす先天代謝異常症である。ムコ多糖症II型(MPSII型)は、1917年にCharles A. Hunterにより報告されハンター症候群と呼ばれていたが、1973年Bachらにより欠損酵素がイズロン酸-2-スルファターゼ(Iduronate-2-sulfatase)であることが明らかとなり、さらに1990年にはWilsonらにより本酵素がクローニングされ、遺伝子配列が明らかとなった。MPSII型は、リソゾーム酵素の1つであるイズロン酸-2-スルファターゼの異常によりリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が異常に蓄積するため、慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。MPSII型は他のムコ多糖症と異なりX染色体潜性(劣性)遺伝形式をとる。■ 疫学MPSの頻度は人種により異なり、欧米では2万4,000人に1人と多いが、わが国では5~6万人に1人とされる。しかし日本、韓国などの東アジアでは、II型が多く、その頻度はMPSの過半数を占める。■ 病因リソゾーム酵素の1つである、イズロン酸-2-スルファターゼをコードする遺伝子の変異に基づく遺伝性の疾患で、この酵素の欠損はリソゾーム内にGAGの一種であるデルマタン硫酸とヘパラン硫酸が異常に蓄積するため、MPSII型でもI型と同様、慢性で進行性の多様な臨床症状を呈する。デルマタン硫酸の蓄積は骨の変形に関与し、ヘパラン硫酸の蓄積は精神運動発達遅滞の原因となることはI型と同様である。■ 症状画像を拡大するリソゾームはほとんどすべての細胞に存在するため、障害も多臓器に及び、I型のハーラー症候群に類似した症状であるが、角膜混濁はなく皮膚に特徴的丘疹を認めることが多い。新生児期からヘルニアや蒙古斑の多発が認められる。その後、ガルゴイ様と呼ばれる粗な顔貌、関節拘縮、骨変形、肝脾腫、心弁膜症、精神運動発達遅滞、網膜変性、滲出性中耳炎、難聴、閉塞性呼吸障害、低身長などが出現する。重症型では、6ヵ月頃から胸腰椎移行部の突出が出現するが、関節拘縮は明らかではなく、3歳頃までは過成長(+2SD)が続く。それ以後、身長は横ばいとなり、関節拘縮が始まり、軽症型でも学童期までに気づかれるようになる。眼窩が浅く遠視となり、眼圧が上昇する症例では網膜変性が認められることもあるが、角膜混濁は来さない。■ 予後無治療の場合、重症型では小児期に死亡することが多いが、治療法の進歩により、生命予後はかなり改善している。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断1)胸部X線正面画像:肋骨のオール状変形が認められる。2)腰部X線側面画像:上部腰椎の卵形化、下部腰椎の椎体の下部が前方に突出する所見が認められる。3)手のX線画像:指の骨の弾丸状変形が認められる。4)頭部CT:水頭症5)眼科受診:角膜混濁は認めないが、眼圧の上昇による緑内障や網膜変性を引き起こすことがある。6)耳鼻科受診:滲出性中耳炎■ 生化学診断:尿中ムコ多糖分析1)尿中GAG定量値が高値である。2)GAG分画:デルマタン硫酸とヘパラン硫酸の増加が認められる。■ 酵素診断:イズロン酸-2-スルファターゼ活性の測定白血球のイズロン酸-2-スルファターゼ活性の低下を認める。■ 遺伝子診断確定診断に必須の検査ではないが、保因者診断や出生前診断には有用である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 対症療法1)中耳炎・難聴:鼓膜チューブ挿入や補聴器など耳鼻科的処置を行う。2)緑内障・網膜変性:眼圧を下げる眼科的処置を行う。3)骨変形:整形外科的手術を行う。4)睡眠時無呼吸:耳鼻咽喉科的手術や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行う。5)心弁膜症:弁置換術など心臓外科的手術を行う。6)水頭症:シャント術など脳外科的手術を行う。■ 造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)1)移植によるリスクがかなり軽減しているため、最も勧められる治療法である。2)肝脾腫の縮小、関節拘縮の軽度改善、心弁膜症の進行抑制、粘膜の肥厚の改善などが認められるが、骨変形や精神発達の退行を防ぐことは難しい。3)酵素補充療法の治療効果が減弱するような重症型症例では、早期の造血幹細胞移植を積極的に考慮すべきである。■ 酵素補充療法(Enzyme replacement therapy:ERT)1)遺伝子組み換えにより人工的に合成されたイズロン酸-2-スルファターゼ酵素を静脈内、あるいは脳室内に注射により補充する治療法で、以下の3製剤が薬価収載されている。(1)イデュルスルファーゼ(商品名:エラプレース)毎週点滴静注により酵素補充を行うが、血液脳関門(BBB)により酵素が中枢神経系に到達できないため中枢神経障害に対する効果は望めない。(2)イデュルスルファーゼベータ(同:ヒュンタラーゼ)4週に1回脳室内投与により髄液中に直接酵素補充を行うことで中枢神経症状の進行を抑制する効果が期待できる。この治療にはOmmayaリザーバーを頭皮下に設置し、脳室内にカテーテルを留置する外科的処置が必要である。また、脳以外の組織については(1)のイデュルスルファーゼの毎週点滴静注を併用する必要がある。造血幹細胞移植と併用することで中枢神経症状の治療効果を補強することが推奨されている。(3)パビナフスプアルファ(同:イズカーゴ)毎週点滴静注により酵素補充を行うBBB通過型酵素製剤である。トランスフェリンが脳内に取り込まれる経路を利用し、トランスフェリン受容体抗体と薬剤を融合させることでBBBを通過し脳内に酵素が届くため全身症状に加え中枢神経系に対する効果が望める。2)診断後すぐに治療が開始できるため、HSCTを施行するまでの繋ぎの治療として有効であるとされてきたが、HSCTよりも中枢神経系に対する効果が期待できる製剤が開発されたことによりERTが継続されるようになっている。3)血流が豊富な組織:粘膜の肥厚の改善による呼吸状態の改善、肝臓や脾臓の縮小、皮膚・関節拘縮の軽減などの効果が認められる。4)血流が豊富でない組織:骨の改善は困難である。5)酵素製剤の効果を減弱させるような高い抗体産生を認める症例では、早期の造血幹細胞移植を積極的に考慮すべきである。4 今後の展望リソゾーム酵素は、作られた細胞からいったん分泌され、血流により全身の臓器に運ばれた後、各臓器組織に取り込まれリソゾームに移行し、作用する性質がある。このため、移植された細胞から分泌された正常な酵素、あるいは人工的に作られた酵素を点滴で血液中に注入すると、各臓器組織に取り込まれて症状の改善が認められる。しかし、この治療法は各臓器組織における血流に依存するため、血流の豊富でない骨などの重要な臓器での症状の改善が認められない問題点がある。今後、これらの臓器組織への移行を改善した酵素製剤の開発が期待される。5 主たる診療科先天代謝異常症であるため、主たる診療科は小児科であるが、全身の臓器に異常が生じるため、該当するいくつかの診療科と並行して受診と治療が必要である。また、20歳を超えた成人症例には、小児科の入院は難しいため、必要となる診療科に入院し、小児科が共同で観察することが重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 76 ムコ多糖症II型(医療従事者向けのまとまった情報)ムコ多糖症Pro(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本ムコ多糖症患者家族の会(患者とその家族の会)LysoLife ムコ多糖症(患者とその家族向けの情報)1)先天代謝異常学会編集. ムコ多糖症(MPS)II型 診療ガイドライン2019. 診断と治療社;2019.2)日本造血細胞移植学会編集. 造血細胞移植ガイドライン 先天代謝異常症(第2版). 日本造血細胞移植学会発行;2019.3)厚生労働省難治性疾患頭政策研究事業編集. 診断の手引きに準拠したムコ多糖症診療マニュアル. 診断と治療社;2016.4)折居忠夫総監修. ムコ多糖症UPDATE. イーエヌメディックス;2011.公開履歴初回2014年2月20日更新2024年6月19日

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病的なギャンブラーは、視床下部-下垂体-副腎系の反応が低下している【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第13回

病的なギャンブラーは、視床下部-下垂体-副腎系の反応が低下しているギャンブルといえば、カジノです。超党派の国会議員による国際観光産業振興議員連盟(IR議連=通称・カジノ議連)が、カジノ解禁推進法案を提出したことは知っている方も多いでしょう。ギャンブルには中毒性がありますが、その病態(病態と言っていいのか語弊がありますが)はいまだに詳しく解明されていません。Paris JJ, et al.Gambling pathology is associated with dampened cortisol response among men and women.Physiol Behav. 2010;99:230-233.病的なギャンブルは、薬物中毒と類似している点が多いとされています。そのため、ギャンブルに没頭する被験者に対して、これまで視床下部-下垂体-副腎系のさまざまな検査が行われてきました。この研究は、男女間においてこれらの機能に差がみられるかどうかを主に検証したものです。レクリエーションの一環としてギャンブルを好む21人と病的なギャンブラーである21人を集め(いずれも15人が男性、6人が女性)、彼らが好きなギャンブルのビデオ(スロットマシン、競馬、スクラッチ、ブラックジャックなど)を見せ、唾液中のコルチゾルを調べました。ギャンブル以外のジェットコースターのビデオも見せて、その差をみました。0点から10点までのスケールで興奮度合いをチェックすると、ギャンブルで勝つシーンを含むビデオとジェットコースターのビデオでは点数が高いという結果でした(負けるシナリオでは興奮しにくいようです)。ベースのコルチゾル値は、レクリエーションの一環としてギャンブルを好む人と病的なギャンブラーでは差はみられませんでした。しかしながら、ビデオを視聴し始めると、ギャンブラーの唾液中のコルチゾルは増加しました。しかし、病的なギャンブラーはさほど上昇しないという結果でした(図)。 画像を拡大する (文献より引用)著者らは、病的ギャンブラーは視床下部-下垂体-副腎系の反応が弱いということを指摘しています。すなわち、刺激が日常化しすぎて体が慣れてしまっているということでしょうか。かなり数が少ない被験者での検討ですので、これ以上は言及を避けますが。ベテランの競馬ファンがゴール前で「差せ!差せ!」と興奮して応援している姿もよくテレビで映っていますので、こればかりは個人の性格による差が大きいのではないかと思っています。

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CHD死亡率、10年で約43%低下/BMJ

 英国・グラスゴー大学のJoel W Hotchkiss氏らは、2000~2010年のスコットランドにおける冠動脈性心疾患(CHD)死亡の傾向について分析した。その結果、同期間にCHD死亡は約半減(43%減)しており、背景要因として薬物療法の選択肢が増大したこと、その有益性をスコットランド国民保健サービス(NHS)が社会経済的階級を問わず公正に供給したことがあったと思われたことを報告した。一方で、血圧やその他リスク因子の低下による、かなりの寄与は、肥満や糖尿病の有害性で減弱していたことも判明した。著者は、「次の10年におけるCHD死亡減少と不公正性の解消を図るために、付加的な広域集団への介入を急がなければならない」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年2月6日号掲載の報告より。IMPACTモデルを用いて、CHD死亡低下の要因を定量化 分析は、スコットランドにおけるCHD死亡に対する予防および治療の寄与を定量化することを目的とし、IMPACTSECモデルを用いて後ろ向きに行った。IMPACTモデルは、曝露リスク因子と取り入れた治療の経時的変化の寄与を定量化することで、CHD死亡低下の要因を示すことができるよう著者らが開発したものである。同モデルを用いて、9つの非オーバーラップ患者群の中で最近のCHD死亡低下を、主要心血管リスク因子の変化および40以上の治療の増大へと割り当てるように設計された。 被験者は、スコットランドの25歳超成人で、性別、年齢群、社会経済的指数(Scottish Index of Multiple Deprivation)で5群に層別化した。主要評価項目は、予防または延期された死亡であった。収縮期血圧の低下の寄与は37%、コレステロールや禁煙の寄与が意外に小さい 結果、2010年のCHD死亡は、2000年当時の死亡率が持続した場合に起こりえた件数より5,770件少ない発生であった(予測1万3,813件に対し観察されたのは8,042件)。これはCHD死亡率で約43%(95%信頼区間[CI]:33~61%)の低下(10万当たり262から148に)を示した。低下は治療の改善によるものであり、このベネフィットは5群の階層群全体に平等に認められた。 治療の寄与が顕著であったのは、高コレステロール血症(13%)の一次予防、二次的予防薬(11%)、慢性狭心症治療(7%)であった。 死亡率低下におけるリスク因子の改善の寄与は、約39%(95%CI:28~49%)(5群中最高位群では36%、最低位群では44%であった)。 社会経済的背景を考慮せずに評価した収縮期血圧の低下の寄与は、死亡率低下の3分の1以上(37%)であった。総コレステロール(9%)、喫煙(4%)、運動不足(2%)の改善からの寄与はいずれもわずかであった。加えて、肥満と糖尿病の増大が、これらのベネフィットの一部を相殺し、それぞれ潜在的に4%、8%の死亡率増加をもたらしていた。また糖尿病の死亡増大の寄与には、社会経済的背景により格差があること(5群中最高位群では5%増大、最低位群では12%増大)が示された。

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新規開発のEMA401、帯状疱疹後神経痛に有望/Lancet

 新規の神経障害性疼痛治療薬として開発中のアンジオテンシンIIタイプ2型受容体(AT2R)拮抗薬EMA401は、帯状疱疹後神経痛(PHN)の疼痛改善に有望であることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAndrew S C Rice氏らによる第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。1日2回100mgの経口投与による28日間の試験終了時点で、プラセボと比較してPHNの有意な緩和が認められ、忍容性も良好であった。PHNおよび一般的な神経障害性疼痛に対する既存治療は、効果がわずかで好ましくない副作用がある。AT2Rは、神経障害性疼痛の新しいターゲットで、EMA401はこのAT2Rに高い選択性を有するという。Lancet誌オンライン版2014年2月5日号掲載の報告より。6ヵ国29施設でPHN患者183例を対象に第2相無作為化試験 試験は、PHNを有する患者において、EMA401の治療薬としての可能性を評価することを目的とし、6ヵ国29施設の多施設共同にて、22~89歳で6ヵ月以上のPHNを有する患者を登録して行われた。 183例の患者を無作為に、EMA401(1日2回100mg)かプラセボを投与する群に割り付け、28日間治療を行った(EMA401群92例、プラセボ群91例)。患者と各試験サイトのスタッフは割り付け情報は知らされなかった。 EMA401の有効性、安全性、薬物動態を評価。主要有効性エンドポイントは、ベースライン時と投薬最終週(22~28日)との間の、平均疼痛強度[11ポイントの数値的評価スケール(NRS)で測定]の変化であった。プラセボ群と比べて疼痛スコア変化が有意に低下 結果、EMA401群はプラセボ群と比べて、同変化値が有意に低かった。平均疼痛スコアの低下は-2.29[SD 1.75] vs. -1.60 [1.66]、最小二乗平均値補正後の両群差は-0.69[SE 0.25](95%信頼区間[CI]:-1.19~-0.20、p=0.0066)だった。 EMA401に関連した重篤な有害事象は、発生がみられなかった。治療関連の有害事象はEMA401群で32例の患者が56件報告、プラセボ群でも29例の患者が45件報告した。

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慢性のかゆみは血液系・胆管系悪性疾患のリスク因子?

 これまで慢性そう痒症でほかの皮膚疾患を有していない患者の、悪性疾患の発生率については報告がなされていない。米国・ペンシルベニア大学 医学大学院のNicole Fett氏らは、慢性そう痒症でほかの皮膚疾患を有していない患者について、5年悪性疾患発生率を調べた。その結果、血液系の悪性疾患が約2倍、胆管系の悪性疾患が約4倍と両臓器系悪性疾患のリスクが高いことが判明したと報告。ただし慢性そう痒症患者におけるこれらの悪性疾患の全発生率は非常に低いとしている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2014年1月28日号の掲載報告。 検討は、Health Improvement Networkを基に住民ベースのコホート研究にて行われた。 主要アウトカムは悪性疾患イベントおよび悪性疾患サブタイプのハザード比(HR)であった。 主な内容は以下のとおり。・8,744例の慢性そう痒症患者と、性別・年齢・診断で適合した非慢性そう痒症患者3万1,580例を比較評価した。・慢性そう痒症患者の悪性疾患発生の完全補正後HRは1.14(95%信頼区間[CI]:0.98~1.33)であった。・慢性そう痒症患者の血液系悪性疾患の完全補正後HRは2.02(95%CI:1.48~2.75)、胆管系悪性疾患については同3.73(同:1.55~8.97)であった。・両臓器系疾患の発生率はそれぞれ0.0016、0.0003/人年であった。・本検討は、誤分類および検出バイアスの可能性の点で限定的であった。・以上を踏まえて著者は、「その他の皮膚疾患を有さない慢性そう痒症は、診断未確定の血液系および胆管系の悪性疾患を有するリスク因子であることが示唆された。しかしこれらの患者の悪性疾患の全発生率は非常に低いものであった」と結論している。

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治療抵抗性うつ病患者が望む、次の治療選択はどれ

 韓国・高麗大学校のChangsu Han氏らは、初回抗うつ薬治療に部分的反応もしくは反応しなかった大うつ病性障害(MDD)患者について、患者の選択により、(1)アリピプラゾール増強(AT群)、(2)他の抗うつ薬を追加(AC群)、(3)異なる抗うつ薬に切り替える(SW群)の3つの中から選択をしてもらい、有効性、忍容性を検証した。その結果、ATを選択した患者が最も多く、臨床的有益性も同群が最も大きかったことを報告した。このような検討は、これまで行われていなかったという。Journal of Psychiatric Research誌2014年2月号の掲載報告。 本検討は多施設共同にて行われた。初回抗うつ薬治療に部分的反応もしくは反応しなかったMDD患者について、患者の選択により、AT、AC、SWを選択してもらい評価を行った。主要有効性評価項目は、8週後に、Clinical Global Impression-Clinical Benefit(CGI-CB)スコアの改善を示した患者の割合とした。副次有効性評価項目は、CGI-CBの変化、CGI重症度(CGI-S)の変化、および主観的な満足度スコアの変化などであった。また、寛解および治療反応の分析も行われた。 主な結果は以下のとおり。・合計295例の患者が登録された。・患者が最も好んだ治療戦略は、ATであった(156例、52.9%)。続いてAC(93例、31,5%)、SW(46例、15.6%)であった。・スコア改善者は、AT群が74.1%と、AC群の48.1%と比べて有意に高く(p<0.001)、SW群(73.5%)とは同程度であった(p=0.948)。一方、AC群とSW群の間に有意差はみられなかった。・同様の結果は、副次エンドポイントの大半においてもみられ、ATのACに対する優位性、およびATとSWの間に差はないことが示された。・忍容性プロファイルは、3群全体で類似していた。しかしながら、平均体重増加量はSW群(-0.1kg)が、AC群(1.3kg)よりも有意に少なかった(p<0.05)。・以上のように、大うつ病性障害患者は抗うつ薬治療の効果が得られなかったとき、ACまたはSWよりもATを選択した。これら3つの治療戦略において、全体的にATは、ACまたはSWよりも臨床的な有益性が大きかった。・今回の知見について著者は、「方法論的に限界があった。強固な確証を得るには、検出力が適切であり管理が良好な臨床試験が望まれる」とまとめている。■関連記事難治性うつ病にアリピプラゾールはどの程度有用かうつ病に対するアリピプラゾール強化療法、低用量で改善SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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第55回米国血液学会(ASH 2013)トレンドビュー 血液腫瘍治療の最新知見

第55回米国血液学会(American Society of Hematology 2013)が2013年12月7~10日、米国ルイジアナ州ニューオリンズにて開催された。同学会の内容から血液腫瘍治療の最新のトレンドを、がん研究会有明病院 血液腫瘍科部長/がん化学療法センター臨床部部長の畠 清彦氏に聞いた。iPS細胞研究と次世代シーケンス導入今回のASHでは、まずiPS細胞の基礎研究の広がりが印象的であった。iPS細胞の臨床応用にはまだ時間を要するが、血液系の分化・増殖という方向への展開が明確にみられた。また、次世代シーケンスの導入の活発化も最近の特徴であろう。治療の前後や治療抵抗性時における遺伝子の発現状況の比較や、急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などにおける遺伝子異常の解析が盛んに進められている。この流れはしばらく続くと予測される。急性骨髄性白血病(AML)AMLについては、有望な新規薬剤のエビデンスの報告はほとんどなかった。印象的だったのは、米国で2010年に販売中止となったゲムツズマブオゾガマイシンの自主研究が着実に進められており、投与スケジュールの変更や減量、他剤との併用により、予想以上に良好な成績が得られていることであった。販売が継続している日本でも、使用機会は減少しているが、工夫の余地は残されていると考えられる。急性リンパ性白血病(ALL)ALLに関しては、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性例(ABL-positive)に対するニロチニブと多剤併用化学療法(hyper-CVAD:シクロホスファミド+ビンクリスチン+ドキソルビシン+デキサメタゾン)の第II相試験で良好な成績が報告された。一方、Ph陰性例では有望な新薬は見当たらないが、B細胞性ALLに対するCD19抗体などの検討が進められている。慢性骨髄性白血病(CML)BCR-ABL遺伝子T315I変異陽性CMLの治療において、第3世代ABLキナーゼ阻害薬であるポナチニブの有効性が確認されている。米国では2012年に承認され、日本では現在申請中であるが、2次または3次治療薬として承認される見通しである。ただし、現在、T315I変異の検査が可能な施設は限られており、全国的な検査体制の構築が課題となる。慢性リンパ球性白血病(CLL)CLL領域では、プレナリー・セッションでオビヌツズマブ(GA101)+クロラムブシル(GClb)とリツキシマブ+クロラムブシル(RCbl)のhead-to-headの第III相試験(CLL11試験)の結果が報告された。GA101は糖鎖改変型タイプⅡ抗CD20モノクローナル抗体であり、B細胞上のCD20に選択的に結合し、リツキシマブに比べ抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性が強く、直接的な細胞死の誘導能も高いとされる。結果は、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値が、GClb群で26.7ヵ月と、RCbl群の15.2ヵ月よりも1年近く延長し(p<0.0001)、全生存期間(OS)中央値も良好な傾向がみられた(p=0.0849)。また、経口投与が可能なBurtonチロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブとリツキシマブ+ベンダムスチン(RB)との併用に関する第Ib相試験では、良好な安全性プロフィールが確認されるとともに、奏効率が90%を超え、推定1年PFSも90%に達しており、注目を集めた。現在、イブルチニブ+RBとプラセボ+RBを比較する無作為化第III相試験が進行中である。ONO-4059は、CLLの第I相試験で有望な結果が示されており、これから第II相試験が開始される。そのほか、イデラリシブ、BAY806946、IPI-145などのPI3キナーゼ阻害薬の開発が、今後、どのように展開するかに関心が集まっている。リンパ腫前述のCLLへの有効性が確認された薬剤の多くがリンパ腫にも効果がある可能性が示唆されている。活性化B細胞(ABC)型のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)に対するR-CHOPへのイブルチニブの上乗せ効果を評価する第III相試験が開始されている。また、イブルチニブは単剤で再発マントル細胞リンパ腫にも有効なことが示されている。前述の経口BTK阻害薬であるONO-4059は、CLLだけでなく、リンパ腫に対する有用性も示唆されている。また、リンパ腫に対するGA101の検討も進められている。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬では、RAD001やパノビノスタットの検討が進められている。DLBCLについては、胚細胞B細胞(GCB)型に有効な薬剤の開発が課題である。T細胞性リンパ腫では、CD30抗体薬であるブレンツキシマブベドチンの有効性が第II相試験で示され、日本でもまもなく承認が得られる予定である。また、ブレンツキシマブベドチンは未分化大細胞型リンパ腫やホジキンリンパ腫の治療として、多剤併用化学療法への上乗せ効果の検討が進められている。一方、BCL-2拮抗薬であるABT-199(GDC-0199)は、CLLのほか小リンパ球性リンパ腫(SLL)に有効な可能性が第I相試験で示された。骨髄異形成症候群(MDS)MDSの治療では、オーロラキナーゼ阻害薬の進歩がみられたが、その有用性を見極めるにはもう少し時間を要する状況である。多発性骨髄腫多発性骨髄腫の領域では、第2世代プロテアソーム阻害薬であるカーフィルゾミブを中心とする臨床試験が数多く行われている。カーフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(CRd)療法や、カーフィルゾミブ+ポマリドマイド+デキサメサゾン(CPd)療法の第II相試験で良好な成績が報告されていた。また、ダラツムマブなどいくつかの抗CD38抗体薬の開発が進められており、第I相試験で有望な成績が報告されている。さらに、経口プロテアソーム阻害薬であるMLN9708(クエン酸イクサゾミブ)とレナリドミド+デキサメタゾン(Rd)の併用療法は第I/II相試験で良好な成績が示され、現在、MLN9708+RdとRdを比較する第III相試験が進行中である。本試験は開始されたばかりであり、結果を得るには時間を要するが、有望視されている試験の1つである。最後に全体としては、BTK阻害薬のように、対象患者は限られるが有害事象が少ない薬剤を長期的に投与すると、QOLを良好に維持しつつ、徐々にCR例が増加するという状況がみられる。CML治療におけるイマチニブやダサチニブ、ニロチニブに相当する薬剤が、CLLやリンパ腫、マントル細胞リンパ腫の治療においても確立されつつあるという印象である。ただし、単剤で十分か、他剤との併用が必要となるかは、今後の検討課題である。

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Stop at one! 骨折連鎖を止める骨粗鬆症治療の最前線

 2月6日(木)、「骨で人生は変わる!忍び寄る“骨粗鬆症”の恐怖とその治療最前線」と題し、日本イーライリリー株式会社主催のプレスセミナーが開催された。 はじめに、同社の臨床開発医師 シニアメディカルアドバイザーの宗和 秀明氏が、骨粗鬆症治療薬テリパラチド(商品名:フォルテオ)の製造販売後調査の中間報告について説明した。 レポートの概要は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者1,671例(うち女性1,552例)について、1~24ヵ月時における安全性、有効性を評価したものである。対象患者の平均年齢は75.3歳、骨折歴が1,046例(62.6%)にあり、テリパラチド処方前の治療(上位3つ)はアレンドロネート(27.6%)、アルファカルシドール(17.2%)、リセドロネート(14.5%)というものであった。主な副作用(上位3つ)は悪心(0.78%)、めまい(0.48%)、頭痛(0.48%)の順で、12ヵ月後の治療継続率は71.9%であった。 効果として、すべての骨代謝マーカーがベースラインより有意に上昇したものの、骨吸収マーカーは骨形成マーカーほどの上昇はなく、骨密度の変化では、腰椎に有意な増加が認められる結果となった。また、投与12ヵ月後の椎体骨折の発生率は1.21%、非椎体骨折発生率は3.18%であり、背部痛では減少傾向を認めたと報告した。 続いて「骨で人生は変わる!忍び寄る“骨粗鬆症”の恐怖とその治療最前線」と題して、梅原 慶太氏(浜松南病院整形外科・リハビリテーション科 副部長)による、骨粗鬆症の概要(疫学、病態、症状)と治療薬についてのレクチャーが行われた。 骨粗鬆症は、周知のように患者のQOLを著しく阻害する疾患であり、とくに高齢女性の脊椎の圧迫骨折は、自覚症状なく突然起こり、これが連鎖骨折を引き起こすことで、予後を悪化させる怖い病気である。 わが国では、骨粗鬆症患者は1,300万人と推定され、うち治療を受けている患者は200万人程度といわれる。多くの患者が治療を受けず、骨折してはじめて骨粗鬆症に気づき治療を開始するのが現状である。そのため日本骨粗鬆症学会は「骨折連鎖を断つ!」、国際骨粗鬆症財団は「Stop at One!」を合言葉に、骨粗鬆症の啓発に努めている。 骨粗鬆症は、患者の身長が3~4cm低下した、問診で「戸棚の上が遠くなった」などの患者の気づきなどからおおよその診断がつく。また、60代に起こる手首の骨折は、骨粗鬆症のサインであり、このような患者にはとくに注意が必要であることが述べられた。 現在、骨粗鬆症の治療薬は、大きく骨吸収抑制薬と骨形成促進薬とに分けられる。前者は、破骨細胞を抑えることで骨強度・骨質の低下を防ぐもので、ビスホスホネート薬に代表され、内服・注射と種類も多彩である。後者は、骨芽細胞により骨形成を促進させることで骨強度・骨質の増加を促すもので、現在は注射薬のみである。 そして、今回は、骨形成促進薬のテリパラチドの使用と効果について詳しく報告が行われた。テリパラチドは、毎日自己注射を行うものと、週1回医療機関で注射を行うものがあるが、ここでは自己注射製剤フォルテオ®の効果が紹介され、骨密度の増加、微細構造の改善、骨石灰化分布の適正化などの効果や、腰椎骨密度で13.4%の増加、椎体骨折リスクで84%の低下が報告された。また、実際に24ヵ月使用した患者らの感想も動画で披露され、骨折連鎖が止まった症例などが報告された。 最後に梅原氏は、骨粗鬆症は「患者さんの骨を折るだけでなく、精神的にも疲弊させ心を折る疾患であること」、「高齢者であれば骨折による介護の負担も発生すること」を述べたうえで、「そうならないために、早期に骨粗鬆症予防と治療を行うことで健康寿命を延ばすことが、健康長寿社会の今、大事なことである」と結び、レクチャーを終えた。

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若いのに血圧が高い人は要注意!中年期の冠動脈石灰化の危険あり/JAMA

 青年期に血圧値が高値で推移した人ほど、中年期の冠動脈石灰化(CAC)リスクが大きいことを、米国・ノースウェスタン大学のNorrina B. Allen氏らが、CARDIA研究の参加者4,681例の前向き追跡データを分析し明らかにした。これまで、血圧の単回測定値とアテローム性動脈硬化進展との関連は示されていたが、血圧値の長期的推移が心血管疾患リスクに与える影響については、十分に解明されていなかった。今回の結果を踏まえて著者は、「血圧値の長期推移は、各人の無症候性アテローム性動脈硬化をより正確に特徴づけるのに役立つ可能性がある」とまとめている。JAMA誌2014年2月5日号掲載の報告。25年間追跡で血圧値の推移を特徴づけ、CAC高スコアリスクを評価 CARDIA研究は、1985~1986年に米国内4都市に住む18~30歳の黒人・白人男女が参加し、25年間のフォローアップを受けた(2010~2011年)前向きコホート研究である。研究グループは、同被験者データのベースライン時、2、5、7、10、15、20、25年時点の収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、また若年成人集団の重大な冠動脈性心疾患のリスク指標である中間血圧値([SBP+DBP]/2で算出)を調べ、潜在混合モデリングにて、各血圧値の推移を特徴づけた。 主要評価項目は、25年時点のCAC層別化スコアがAgatstonスコアで100 HU以上であることとした。CAC高スコアリスク、低値安定群と比べて血圧値が高い推移群ほどリスクが上昇 結果、中間血圧値について5つの推移を特徴づけることができた。(1)低値安定(21.8%95%信頼区間[CI]:19.9~23.7%、0年時SBP:100.5/DBP:61.7、25年時104.2/63.8)、(2)中等値安定(42.3%、同:40.3~44.3%、0年時109.0/67.6、25年時118.0/74.1)、(3)中等値から上昇(12.2%、同:10.4~14.0%、0年時111.3/68.5、25年時141.5/89.4)、(4)高値安定(19.0%、同:17.1~20.0%、0年時120.4/75.8、25年時122.6/77.3)、(5)高値から上昇(4.8%、同:4.0~5.5%、0年時125.0/80.3、25年時146.2/91.8)である。 低値安定群と比べて、血圧値が高い推移群ほど、CACスコアが100 HU以上を有する確率が高かった。低値安定群と比較した補正後オッズ比は、中等値安定群1.44(95%CI:0.83~2.49)、中等値上昇群1.86(同:0.91~3.82)、高値安定群2.28(同:1.24~4.18)、高値上昇群3.70(同:1.66~8.20)であった。 CACスコアが100 HU以上を有した人の補正後出現率は、低値安定群は5.8%だった。同オッズ比は絶対値で、中等値安定群では2.7ポイント、中等値上昇群5ポイント、高値安定群6.3ポイント、高値上昇群は12.9ポイントそれぞれ増大した。 上記のような関連は、ベースライン時と25年時の血圧値で補正後も変化はみられなかった。また、SBP単独推移での分析でも同様の関連性がみられたが、DBPでの分析では関連性が弱かった。

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カテーテルアブレーション後の再発リスクの予測精度を上げる方法/JAMA

 心房細動(AF)患者における遅延造影MRI上の心房組織の線維化は、カテーテルアブレーション施行後の不整脈再発リスクの独立の予測因子であることが、米国・ユタ大学のNassir F Marrouche氏らが行ったDECAAF試験で示された。AF患者では左心房線維症が高頻度にみられる。遅延造影MRIで同定された心房組織の線維症は、AFに対するカテーテルアブレーションの不良な転帰と関連することが示唆されている。JAMA誌2014年2月5日号掲載の報告。MRI所見とAFアブレーションの転帰との関連を前向き観察コホート試験で評価 DECAAF試験は、遅延造影MRIによる心房組織線維症の評価の実行可能性およびそのAFアブレーションの転帰との関連をプロスペクティブに検証する多施設共同観察コホート試験。Heart Rhythm Society Task Force on Catheter and Surgical Ablation of Atrial Fibrillation(2012年)の判定基準で発作性および持続性AFと診断され、初回カテーテルアブレーションが予定されている患者を対象とした。 アブレーション施行前30日以内に遅延造影MRIが実施された。線維化の定量は、参加施設やアブレーションの方法、アウトカムをブラインドした状態で中央判定によって行われた。また、治療医をブラインドした状態で、線維化をStage 1(心房壁の10%未満)、2(10~20%)、3(20~30%)、4(30%以上)に分類した。アブレーション施行後は、12誘導または携帯型心電図を用いて再発性不整脈の発生を追跡し、その結果について中央判定を行った。 アブレーション施行後90日間は、アブレーション誘導性の炎症関連不整脈の収束期間とし、その後325日、475日目のステージ別の累積不整脈再発率と再発リスクを評価した。再発予測モデルへの線維化の付加により予測精度が改善 2010年8月~2011年8月までに6ヵ国15施設から329例が登録され、MRIの質が不良と判定された57例(17.3%)などを除く260例が最終的な解析の対象となった。これら260例の平均年齢は59.1歳(SD 10.7)、女性が31.5%、発作性AFが64.6%で、アブレーション前に63.9%が抗不整脈薬の投与を受けていた。冠動脈疾患の既往歴は10.0%に認められ、うっ血性心不全が5.8%、糖尿病が12.3%にみられた。16例(6.2%)には冷却バルーンアブレーションが、それ以外の症例にはラジオ波アブレーションが施行された。 左心房線維化の1%増加ごとの再発性不整脈の未調整ハザード比は1.06(95%信頼区間[CI]:1.03~1.08、p<0.001)であった。325日後の未調整の推定累積不整脈再発率は、ステージ1の線維化が15.3%、ステージ2が32.6%、ステージ3が45.9%、ステージ4は51.1%であり、475日後はそれぞれ15.3%、35.8%、45.9%、69.4%だった。調整後の結果もほぼ同様であった。 従来の再発予測モデルの臨床的共変量に線維化を加えると、HarrellのC統計量が0.65から0.69へと上昇し(リスク差:0.05、95%CI:0.01~0.09)、予測精度が有意に改善した。 著者は、「カテーテルアブレーションを施行されたAF患者では、遅延造影MRIで判定された心房組織線維症は再発性不整脈の独立の予測因子であることが示された」とまとめ、「本研究は、われわれの知る限り、アブレーションが予定されているAF患者の管理における3次元遅延造影MRIの実行可能性と臨床的有用性を示した初めての多施設共同試験である」としている。

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殺虫剤でアルツハイマー病リスクが増加

 米国・ラトガース大学のJason R. Richardson氏らは、アルツハイマー病(AD)患者では殺虫剤成分の代謝物であるジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE)濃度が上昇していることに着目し、血清DDE濃度とADとの関連、およびアポリポ蛋白E(APOE)遺伝子型の関与を明らかにするためケースコントロール研究を行った。その結果、血清DDE高値はADのリスク上昇と関連していること、APOEε4アレルを保有する例でその関連が強くみられることを報告した。JAMA neurology誌オンライン版2014年1月27日号の報告。 遅発性ADの原因はいまだ不明であるが、遺伝的、環境的およびライフスタイルなどの要因が複合して発症に関与していると思われる。これまで、限られた疫学研究により、職業上の殺虫剤への曝露がADと関連していることが示唆されていることから、研究グループは以前、20例という少数例の検討ではあるが、AD患者で殺虫剤のジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)の代謝物であるDDEの血清濃度が上昇していることを報告した。本研究では、血清DDE濃度とADとの関連、およびその関連にAPOE遺伝子型が関与しているか否かを検討した。エモリー大学アルツハイマー病研究センターおよびテキサス大学サウスウェスタンメディカルスクール・アルツハイマー病センターから、AD例ならびに対照例を抽出しケースコントロール研究を行った。AD86例と対照79例において、血清DDE濃度を測定。Mini-Mental State Examination(MMSE)スコアによりADの診断と重症度を評価し、APOE4との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・AD例の血清DDE濃度(平均[SEM]:2.64[0.35]ng/mgコレステロール)は、対照(同:0.69[0.1]ng/mgコレステロール、p<0.001)と比較して3.8倍高かった。・DDE値の最高三分位におけるAD発症のオッズ比は、4.18(95%CI:2.54~5.82、p<0 .001)で、MMSEスコアは、より低スコアであった(-1.605、範囲:-3.095~-0.114、p<0 .0001)。・APOEε4アレルを保有するサブ集団のDDE値の最高三分位におけるMMSEスコアは、 APOEε3アレルを保有するサブ集団に比較して、-1.753ポイント低かった(相互作用p=0.04)。・血清DDE濃度と脳内DDE濃度との間に強い関連がみられた(ρ=0.95)。・ヒト神経芽細胞腫細胞にDDTまたはDDEを曝露させると、アミロイド前駆体蛋白レベルの増加がみられた。・以上のことから、血清DDE濃度の上昇はADリスクの増加と関連し、APOEε4アレルがより強く関与していることが推察された。DDTとDDEがアミロイド前駆体蛋白レベルを上昇させたことは、DDE曝露とADとの関連の妥当性を裏付ける知見と言える。血清DDE濃度が高く、APOEε4アレルを保有している例の特定が、ADの早期発見につながる可能性がある。関連医療ニュース アルツハイマー病、アミロイドβ蛋白による“炎症反応”が関与 日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加

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