サイト内検索|page:446

検索結果 合計:11816件 表示位置:8901 - 8920

8901.

シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。上乗せの安全性の非劣性を検証 TECOS試験は、心血管疾患を併発した2型糖尿病患者における通常治療へのシタグリプチンの上乗せの長期的な安全性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化非劣性試験(Merck Sharp & Dohme社の助成による)。 対象は、年齢50歳以上、1~2剤の安定用量の経口血糖降下薬(メトホルミン、ピオグリタゾン、スルホニル尿素薬)またはインスリン製剤により糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5~8.0%に保たれている患者とした。併存する心血管疾患は、重症冠動脈疾患、虚血性脳血管疾患、アテローム性末梢動脈硬化疾患とした。 被験者は、通常治療にシタグリプチン(100mg/日またはeGFR値が≧30、<50mL/分/1.73m2の場合は50mg/日)またはプラセボを併用する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。血糖降下薬は、個々の患者が適切な目標血糖値を達成できるようオープンラベルでの投与が推奨された。 主要複合アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院とした。シタグリプチン群の両側検定による相対リスクのハザード比(HR)の95%信頼区間(CI)上限値が1.3を超えない場合に非劣性と判定した。主要複合アウトカム発生率:11.4 vs. 11.6% 2008年12月~2012年7月までに、38ヵ国673施設に1万4,671例(intention-to-treat[ITT]集団)が登録され、シタグリプチン群に7,332例、プラセボ群には7,339例が割り付けられた。ベースラインの平均HbA1c値は7.2±0.5%、2型糖尿病の平均罹病期間は11.6±8.1年であり、フォローアップ期間中央値は3.0年だった。 HbA1c値は、4ヵ月時にシタグリプチン群がプラセボ群よりも0.4%低くなったが、この差はその後の試験期間を通じて徐々に小さくなった。全体のシタグリプチン群の最小二乗平均差は-0.29%(95%信頼区間[CI]:-0.32~-0.27)であった。 主要複合アウトカムのイベント発生は、シタグリプチン群が839例(11.4%、4.06/100人年)、プラセボ群は851例(11.6%、4.17/100人年)であった。非劣性のper-protocol(PP)解析では、シタグリプチン群のプラセボ群に対する非劣性が確認され(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.88~1.09、p<0.001)、優越性に関するITT解析(0.98、0.89~1.08、p=0.65)では有意な差を認めなかった。 副次複合アウトカムである心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の発生も、PP解析で非劣性であり(HR:0.99、95%CI:0.89~1.11、p<0.001)、ITT解析では優越性を認めなかった(0.99、0.89~1.10、p=0.84)。また、ITT解析では、心不全による入院(1.00、0.83~1.20、p=0.98)、心不全による入院または心血管死(1.02、0.90~1.15、p=0.74)、全死因死亡(1.01、0.90~1.14、p=0.88)も、シタグリプチン群での発生が多いことはなかった。 一方、非心血管アウトカムでは、感染症、がん、腎不全、重症低血糖の発生率は両群間に差がなかった。急性膵炎の頻度はシタグリプチンで高かった(0.3 vs. 0.2%)が、有意な差はなかった(ITT解析:p=0.07、PP解析:p=0.12)。膵がんはシタグリプチン群で少なかった(0.1 vs. 0.2%)が、有意差は認めなかった(p=0.32、p=0.85)。 また、重篤な有害事象(消化器、筋骨格・結合組織、呼吸器など)の発生率には、両群間に臨床に関連する差はみられなかった。 著者は、「シタグリプチンは、心血管疾患のリスクが高い多彩な病態の2型糖尿病患者に対し、心血管合併症を増加させずに使用可能と考えられるが、これらの結果は、より長期の治療やより複雑な併存疾患を有する患者では、ベネフィットとともにリスクの可能性も排除できないことを示唆する」と指摘している。

8902.

特別編 MERSに気を付けろッ!【新興再興感染症に気を付けろッ!】

2015年5月末からの韓国でのMERS流行を受けて、日本国内でも危機感が高まっています。今回、緊急特集として拙著『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』(中外医学社)でおなじみの忽那・上村コンビが「MERSの気を付け方」について語ります。韓国へ焼肉に行く前に 上村「くつな先生、ちょっとお願いがあるんですけどいいですか?」 忽那「なんだ?」 上村「明日から韓国に焼肉を食べに行ってきますので、その間の当直をお願いしてもいいですか? 当直代は僕がもらいますんで」 忽那「ちょっと待て。いい訳ないだろう」 上村「大丈夫ですよ、先生にもキムチを買ってきますから」 忽那「そうじゃない。おまえ、今の状況がわかってないのか」 上村「わかってますよ。今は日韓関係が冷えきっているから渡航は控えたほうがいいんじゃないかってことでしょ? でもね、先生…逆にそんな今だからこそ思うんですよ、僕が焼肉を食べることで日本と韓国の距離が縮まれば最高じゃないかってね…」 忽那「何が『逆に』なのかわからんが、オレが言ってるのは、日韓関係のことじゃない。MERSだよ、MERS」 上村「またまた~。マーズレンS®のことをそんなオシャレな言い方しちゃって~、胃でも荒れてるんですか~?」 忽那「マーズレンS®は今関係ない! おまえ、ホントにテレビとか見てないんだな。MERSと言ったら『中東呼吸器症候群』のことだろ。韓国は今MERSで大変なことになってるんだよ!」 上村「いつから韓国は中東になったんですか!」 忽那「ああ、もう!おまえと話してると話が一向に進まないな! 中東ではやってた感染症が、韓国でも流行してるんだよ!」 上村「ふーん…中東呼吸器症候群って名前なのに中東だけじゃないんですか」 忽那「そうだ。サウジアラビアを中心に中東で流行しているMERSだが、これまでに25ヵ国で症例が報告されている(図1)1)。MERSは中東以外でも発生しているのだッ!」画像を拡大する 上村「でも発端となったのは中東からの輸入例ってことですよね?」 忽那「そのとおり! そして、その中でもイギリス、フランス、チュニジアでは輸入例を発端とした国内でのヒト-ヒト感染事例が報告されているのだッ!1)」 上村「オソロシス!!」 忽那「そう、恐ろしいね……そして2015年5月現在、韓国でも輸入例を発端としたMERSのヒト-ヒト感染がこれまでにない規模で起こっているんだ」 上村「なるほど…韓国でMERSってのはそういう意味だったんですね。じゃあ今は韓国でも10人くらいの患者が出てるんですか?」 忽那「10人なんてもんじゃない。とっくに100人を超えているレベルだ」 上村「ワンハンドレッド・パーソンズ! チャバイじゃないですか!それ、チャバイじゃないですか!」 忽那「2015年5月24日に、中東地域に渡航歴のある60代男性の確定例が報告されてからというもの、日に日に症例は増え、7月22日現在感染者は186人、死者は36人に達している。今や4次感染例まで報告されているんだ(図2)2)」画像を拡大する 上村「そうか…さっきの言葉は『韓国に旅行するのは危ない』って意味だったんですね」 忽那「まあ『韓国に旅行するとMERSに感染するぞ』って意味ではないけどね」 上村「えっ? 言ってることがわからないんですけど! 韓国ではMERS患者があふれてるんじゃないんですか?」 忽那「いや、今のところ韓国で報告されているMERS患者はすべて疫学的なリンクが追えている症例ばかりだし、しかもそのほとんどが病院内での曝露によって感染していると考えられている」 上村「じゃあ韓国に焼肉を食べにいっても、感染しないってことですか?」 忽那「まあ現時点では可能性はきわめて低いだろうね…でも、わざわざ今韓国にいくのはお勧めしないけど。帰ってきてから熱が出ようものなら面倒なことになるよ?」 上村「確かに…焼肉はMERSが落ち着いてからにしようかな…」 忽那「その前に、われわれはいつMERSが来てもいいように、十分な準備をしておくべきではないだろうか」 上村「ほほん。つまり『MERSの気を付け方』を知っておくということですね」 忽那「そういうことだ」MERSの実体は何だ? 上村「でも、そもそもMERSってそんなに怖い病気なんですか? マーズレンS®は効かないんですか?」 忽那「現時点でMERSに有効な抗ウイルス薬はない。それは胃薬であるマーズレンS®も例外ではないッ!」 上村「頼みの綱のマーズレンS®が…」 忽那「2012年4月から2015年6月10日までに全世界で1,288例のMERS症例が報告されているが、そのうち498例が亡くなっている。つまり致死率は38.7%ということになる」 上村「38.7%って…エボラ並みじゃないですか! MERS激ヤバでしょ! 終わりだ…もう世界は終わりだ~!」 忽那「落ち着けッ! MERSが恐ろしい感染症であることは間違いない…だが、実際のMERSの致死率はここまでは高くないだろう」 上村「実際のって…実際のMERSの致死率が38.7%って話でしょ~がよ!なに訳わかんないこと言ってるんですか!?」 忽那「感染症はしばしば軽症では、検査が行われずに見逃されやすい。逆に重症例はしっかりと診断されることが多い。つまり、見かけの致死率は高くなりやすい傾向にあるんだ。現に、積極的な検査が行われている韓国では、致死率は10%前後と低い状態にある」 上村「10%でも十分高いでしょ!」 忽那「そのとおり。いずれにしても怖い感染症には間違いないね」 上村「MERSの怖さはわかったんですが…どういう症例でMERSを疑ったらいいんでしょうか?」MERSへの対応 忽那「厚生労働省は、1.中東地域・韓国などの感染地域から帰国後14日以内に、38℃以上の発熱及び咳を伴う急性呼吸器症状を呈し、臨床的又は放射線学的に肺炎、ARDSなどの実質性肺病変が疑われる場合 2.発症前14日以内にそれらの国において、医療機関を受診もしくは訪問した者、MERSであることが確定した者との接触歴がある者、ヒトコブラクダとの濃厚接触歴がある者で発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合 3.発症前14日以内にそれらの国によらず、MERSが疑われる患者を診察・看護もしくは介護していた者、MERSが疑われる患者と同居(当該患者が入院する病室又は病棟に滞在した場合を含む。)していた者、MERSが疑われる患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた者で発熱または急性呼吸器症状(軽症の場合を含む。)を呈する場合の3つのいずれかに該当し他の原因が明らかでない場合、MERS疑似症として対応するように、という通知を2015年6月4日に出している。これを念頭に置いておくことが重要だね」 上村「なんか言い回しが難しくてよくわからないんですけど!」 忽那「上村…『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』でさんざん教えただろう。輸入感染症で重要なのは『渡航地・潜伏期・曝露歴』の3つだと!」 上村「…ハッ! そうでした…友情ッ!努力ッ!勝利ッ!」 忽那「MERSの感染が持続的に見られているのは中東と韓国であること、MERSの潜伏期は2~14日であること3)、MERSの感染はラクダとの濃厚接触や病院内感染が多く、ヒト-ヒト感染では原則として飛沫感染であることを考えると、渡航地中東または韓国に渡航していたか潜伏期渡航から発症までが14日以内か曝露歴ラクダとの接触歴があるか、現地で病院を受診または入院しているか、MERS患者と接触があったかが重要ということになる。このポイントを覚えておくことが重要なんだ」 上村「なるほど…勉強になるっす!」 忽那「これらの疑似症に当てはまる症例は、ただちに保健所に連絡し、感染症指定医療機関(特定、第1種または第2種)に搬送され、地方衛生研究所で気道検体のPCR検査が行われることになる。ちなみに日本国内におけるMERS診断までの流れは厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20150604_01.pdf)で確認することができるので、これも確認しておこう」MERSの診断と対策 上村「了解です!ちなみに中東呼吸器症候群っていうくらいだから、まず間違いなく呼吸器症状があるんですよね?」 忽那「呼吸器症状の頻度は高いと言われている…が、100%ではない。サウジアラビアで診断された47人のMERS症例の臨床症状がまとめられている4)が、それによると、発熱(>38℃) - 46人(98%)悪寒と戦慄を伴った発熱 - 41人(87%)咳 - 39人(83%)(乾性47%、湿性36%)息切れ - 34人(72%)血痰- 8人(17%)咽頭痛 - 10人(21%)筋肉痛 - 15人(32%)下痢 - 12人(26%)嘔吐 - 10人(21%) 腹痛 - 8人(17%)胸痛- 7人(15%)頭痛- 6人(13%) 鼻炎- 2人(4%)胸部X線所見の異常 - 患者47人(100%)となっており、咳や息切れも100%ではなく、また消化器症状や頭痛・筋肉痛といった全身症状もみられることがある。つまり、呼吸器症状がなければMERSの可能性は下がるが、完全に除外することはできないということになる」 上村「難しいなあ…なんか見逃しちゃうのが怖いんですけど」 忽那「少しでも疑わしい症例をみたら、ひとりで抱え込まずに保健所に相談するほうが安全だろうね」 上村「わかりました!悩んだらくつな先生を呼びます」 忽那「うん、悩んだら保健所に相談しようね」 上村「頼りないなあ…もし本当に疑わしい症例の対応をすることになったら感染対策はどうすればいいんですか?」 忽那「現時点ではまだ完全にはわかっていないこともあるけど、MERS-CoVは飛沫感染および接触感染で伝播すると考えられている。なので、WHOは飛沫感染予防策と接触感染予防策の徹底を推奨している5)」 上村「ふーん、N95マスクは要らないんですか?」 忽那「気管挿管や気管内吸引などのエアロゾルが発生するような場合には、N95マスクの着用を含む空気感染予防策を推奨している」 上村「ですよね~。なんとなくN95がないと不安なんですよ…」 忽那「確かにCDCはエアロゾル発生手技に限らず、空気感染予防策を推奨してるけどな6)。この違いは、まだMERSという感染症がよくわかっていないからということもあるだろうし、CDCは資源が豊富なアメリカのための機関であり、WHOは世界中の感染症対策のことを考えないといけない機関であり、途上国の状況も配慮した感染症対策を提示しなければならないという、それぞれの立場の違いも関係しているのかもしれないね」 上村「じゃあN95マスクを付けておいたほうが無難ってことですね!」 忽那「いや、現時点ではなんとも言えないなあ…でも大事なことは、中東からの輸入例が報告された国の大半ではMERSは広がっていないということだ。N95マスクにこだわらなくても、適切な接触感染予防策と飛沫感染予防策を行えばMERSの伝播は抑えられると思うよ」 上村「んな~る」Take Home MessageMERSを疑う手がかりは渡航地・潜伏期・曝露歴!MERS疑似症を満たす症例は、ただちに保健所に連絡を!MERSに対する感染対策は、接触感染予防策と飛沫感染予防策が重要!エアロゾル発生手技のときには空気感染予防策も!1)European Centre for Disease Prevention and Control. RAPID RISK ASSESSMENT. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) 17th update, 11 June 2015.2)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) maps and epicurves. 3)Assiri A, et al. N Engl J Med. 2013;369:407-416.4)Assiri A, et al. Lancet Infect Dis. 2013;13:752-761.5)World Health Organization. Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS‐CoV) summary and literature update - as of 9 May 2014. 6)Centers for Disease Control and Prevention. Interim infection prevention and control recommendations for hospitalized patients with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV). ※ イラスト協力:中外医学社『症例から学ぶ 輸入感染症 A to Z』より転載

8903.

急性心筋梗塞に匹敵するほど血清トロポニンが上昇するスポーツ【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第45回

急性心筋梗塞に匹敵するほど血清トロポニンが上昇するスポーツ >Wikipedeiaより使用 温泉旅館に行くと卓球台が必ずといっていいほど置いてありますね。私は卓球が恐ろしく下手で、これまでスマッシュが成功したことはおそらく一度もありません。卓球は非常に運動量が多く、とくに足にかかる負担はすさまじいものです。福原 愛選手がその昔、第5中足骨基部骨折(Jones骨折)を起こしたことがあります。これは、卓球の激しい動きによって身体の外側に体重がかかってしまい、それを繰り返すことによって第5中足骨に機械的ストレスがかかったためといわれています。 そんな激しいスポーツである卓球は、子供の頃から打ち込む選手も多いためか、成長期に整形外科的なトラブルを抱える選手もいます。 Ma G, et al. Influence of repeated bouts of table tennis training on cardiac biomarkers in children. Pediatr Cardiol. 2014;35:711-718. 激しい運動をすると血清トロポニンが上昇するといわれていますが、もちろんこれは心筋由来ではなく、骨格筋由来といわれています。この研究は、卓球に打ち込む子供の血清トロポニンを測定したものです。なぜこのような研究を企画したのかよくわかりませんが、興味深いですね。28人の小児が5分の休憩を挟みながら10分間のフォアハンド練習を6セット行いました。血清トロポニンT、トロポニンI、クレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)が運動前に測定され、最終運動直後、4時間後、24時間後、48時間後にも測定されました。また、心機能は安静時に超音波検査を行い評価しました。その結果、血清トロポニンT、トロポニンI、CK-MBは有意に運動直後で上昇していました。この上昇は48時間後には元に戻っていたそうですが、心筋障害を起こしているのではないかと思われるくらい上昇が大きかったそうです。運動4時間後の採血では、何人かの小児では急性心筋梗塞のカットオフ値を上回っていました。そのためトーナメントなどで1日に何度も試合に出場している小児は、血清トロポニンが上昇している可能性が高いです。「だから何がどうなんだ」といわれると、それまでの報告なのですが……。インデックスページへ戻る

8904.

幼若脳への放射線照射、どのような影響を及ぼすか

 放射線療法は小児脳腫瘍に対する一般的な治療であるが、しばしば認知機能低下を含む遅発性の後遺症を引き起こす。その機序としては、海馬でのニューロン新生の抑制が部分的に関与していると考えられている。しかし、若年者の成長過程にある脳への放射線照射が歯状回のニューロンネットワークにどのような変化をもたらすかはまだよくわかっていない。スウェーデン・ヨーテボリ大学のGinlia Zanni氏らは、マウスを用いた研究を行い、成熟脳への照射では長期増強(LTP)の減少のみが引き起こされるが幼若脳ではさらに長期抑圧(LTD)も生じ、成熟脳と幼若脳とで長期シナプス可塑性に対する全脳照射の影響が異なることを明らかにした。結果を踏まえて著者らは、「シナプス変性のメカニズムを解明する必要はあるが、今回の知見は発達過程の脳への放射線照射の影響、ならびに頭部放射線療法を受けた若年者にみられる認知機能障害の理解につながる」とまとめている。Developmental Neuroscience誌オンライン版2015年6月2日号の掲載報告。 研究グループは、生後11日目の雄のWistar系ラットに全脳照射(6Gyの単回照射)を行い、歯状回の電気生理学的な特性を解析した。 主な結果は以下のとおり。・細胞外野の興奮性シナプス後電位(fEPSP)と線維斉射(fiber volley)の比から内側貫通線維路(MPP)における興奮性伝達を評価すると、偽照射群と比較し照射群でシナプス効力が増加した。・MPP-顆粒細胞間シナプスのPaired-pulse ratio(PPR)は、照射により変化しなかったことから、神経伝達物質の放出確率は変化しないことが示唆された。・高周波刺激(4train)を加え歯状回での長期シナプス可塑性を誘導すると、偽照射群に比べ照射群ではLTPからLTDへの変化が認められた。・ダブルコルチンの免疫染色により形態学的変化を調べると、照射後はニューロン新生が完全に消失していたが、パルブアルブミン介在ニューロンの抑制性ネットワークは損傷されていなかった。・これらのデータは、幼若脳への照射がシナプス可塑性の永続的な変化を引き起こしたことを示唆しており、陳述学習の機能障害と一致する。・著者らによるマウスでの先行研究とは異なり、リチウムを投与しても研究パラメータは改善しなかった。関連医療ニュース マグネシウム摂取と脳内NMDA受容体の関与が明らかに 抗精神病薬は脳にどのような影響を与えるのか EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか  担当者へのご意見箱はこちら

8905.

タペンタドールはオキシコドンより有効で安全か

 オピオイドは慢性腰痛の治療にしばしば用いられるが、副作用のため長期投与の有益性は限られている。タペンタドールは、オピオイド受容体作動作用およびノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するオピオイド鎮痛薬で、他の強オピオイドと比較して有害事象の頻度が少なく重症度も低い可能性があることから、ポルトガル・リスボン大学のJoao Santos氏らはシステマティックレビューを行った。その結果、タペンタドール徐放性製剤は、プラセボおよびオキシコドンと比較して鎮痛効果があり、オキシコドンより安全性プロファイルおよび忍容性は良好であることが明らかとなった。ただし、著者は「鎮痛効果の差は大きくなく、治療中止率が高いことや、研究の結果に不均一性がみられることなどから、この結果の臨床的な意義は定かではない」とまとめている。Cochrane database of systematic reviews誌オンライン版2015年5月27日号の掲載報告。タペンタドールとプラセボまたはオキシコドンを比較 研究グループは、中等度から重度の疼痛に対するタペンタドール徐放性製剤の有効性、安全性および忍容性を評価することを目的として、慢性筋骨格系疼痛患者を対象にタペンタドールとプラセボまたは実薬(オキシコドン)を比較した無作為化試験について、2014年3月まで発表された論文を言語は問わず、電子データベース(CENTRAL、MEDLINE、EMBASE、Web of Science)を用いて検索した。また、製薬企業と連絡を取り追加情報を得た。 2人の研究者が独立して試験を選択し、バイアスリスクを評価するとともにデータを抽出して、タペンタドール徐放性製剤 vs.プラセボ、およびタペンタドール徐放性製剤 vs.オキシコドンを比較する2つのメタ解析を行った。有効性の主要評価項目は疼痛強度(11ポイントの数値的評価スケール)の変化量によって評価される鎮痛効果および有効率(疼痛強度が50%以上軽減した患者の割合)、安全性の主要評価項目は副作用による中止率であった。 タペンタドールの無作為化試験の主な結果は以下のとおり。・変形性関節症または腰痛患者を対象とした並行群間比較試験4件(計4,094例)が本レビューに組み込まれた。12週間の第III相試験3件と52週間の非盲検安全性評価試験1件で、対照薬は4件すべてがオキシコドン、そのうち3件ではプラセボも含まれた。対象患者は変形性膝関節症患者2件、腰痛患者1件、両方1件であった。・オキシコドン対照試験2件、プラセボ対照試験1件は有効率に関するデータがなかった。・2件の試験は、バイアスリスクが高いと判定された。・プラセボ群との比較の場合、タペンタドール群では12週時の疼痛強度が平均0.56ポイント(95%信頼区間[CI]:0.92~0.20)低下し、有効率は1.36倍増加(12週間における効果に関する治療必要人数:number needed to treat for an additional beneficial outcome[NNTB]=16、95%CI:9~57)したが、有効性の評価結果に関して中等度~高度の不均一性が認められた。・また、タペンタドール群で副作用による治療中止のリスクが2.7倍増加した(12週間における有害事象に関する治療必要人数:number needed to treat for an additional harmful outcome[NNTH]=10、95%CI:7~12)。・オキシコドン群との比較の場合、タペンタドール群では疼痛強度のベースラインからの低下量が0.24ポイント(95%CI:0.43~0.05)であり、有効率を評価した2件の研究では統計学的有意差はなかったものの有効率が1.46倍増加した(95%CI:0.92~2.32)。・また、タペンタドール群では、有害事象による治療中止のリスクが50%(95%CI:42%~60%)、有害事象の全リスクが9%(95%CI:4~15)、いずれも減少し、重篤な有害事象のリスクも有意差はないものの43%(95%CI:33~76)減少した。・しかしながら、主要評価項目を除く大部分の有効性に関する評価結果、および安全性に関する評価結果に、中等度から高度の不均一性が認められた。・サブグループ解析において、変形性膝関節症患者を対象とした研究、ならびに質が高く短期間の研究の統合解析で、タペンタドールは高い改善効果を示した。しかし、サブグループ間の効果量に統計学的な有意差は認められなかった。

8907.

アトピー性皮膚炎は皮膚リンパ腫のリスク因子?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者におけるリンパ腫のリスク増加について議論となっている。フランス・ポール サバティエ大学のLaureline Legendre氏らは、AD患者のリンパ腫リスクと局所治療の影響を検討する目的でシステマティックレビューを行い、AD患者ではリンパ腫のリスクがわずかに増加していることを明らかにした。ADの重症度が有意なリスク因子であった。この結果について著者は「重度ADと皮膚T細胞性リンパ腫の混同がリンパ腫リスクの増加の一因となっている可能性がある」と指摘したうえで、「局所ステロイド薬および局所カルシニューリン阻害薬が重大な影響を及ぼすことはなさそうだ」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌2015年6月号(オンライン版2015年4月1日号)の掲載報告。 研究グループは、症例対照研究とコホート研究について、系統的な文献検索とメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索で得られた論文3,979本中、基準を満たした24本が本レビューに組み込まれた。・コホート研究では、リンパ腫のリスクがわずかに増加していた(相対リスク:1.43、95%信頼区間[CI]:1.12~1.81)。・症例対照研究では、リンパ腫の有意なリスク増加はみられなかった(オッズ比:1.18、95%CI:0.94~1.47)。・ADの重症度は、リンパ腫の有意なリスク因子であった。・非常に強力な局所ステロイド薬は、リンパ腫のリスク増加と関連していた。・局所カルシニューリン阻害薬については、1論文でタクロリムスと皮膚リンパ腫との有意な関連が報告された。

8908.

統合失調症患者への抗うつ薬併用、効果はどの程度か

 抗精神病薬による適切な治療にもかかわらず、相当数の統合失調症患者が十分ではない臨床的アウトカムを示している。この問題の解決に向けて、これまでさまざまな精神薬理学を踏まえた併用療法が試みられており、その1つが抗精病薬治療への抗うつ薬の追加である。フィンランド・Kellokoski病院のViacheslav Terevnikov氏らは、統合失調症患者への治療について、抗精神病薬に種々の抗うつ薬を追加した際の有効性について検討した。その結果、抗うつ薬の種類によりさまざまな効果が認められたものの、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)に関しては明らかな有効性がみられなかったこと、抗うつ薬の追加により精神病の悪化はみられなかったことを報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月19日号の掲載報告。 研究グループは、統合失調症患者における陰性症状、陽性症状、認知機能、抑うつ、抗精神病薬に誘発される錐体外路症状に対する治療としての抗うつ薬追加投与の有効性を検討した。統合失調症に対する抗うつ薬による補助療法の有効性を評価した、公表されている無作為化対照試験(RCT)について、各種パラメーター(ベースライン時の臨床所見、患者数、実施中の抗精神病薬治療、抗うつ薬の追加用量、試験期間、有効性の評価方法とアウトカム)を用いてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・41ジャーナルに36件のRCTが掲載されていた(1,582例)。・使用されていた抗うつ薬は、SSRI、デュロキセチン、イミプラミン、ミアンセリン、ミルタザピン、ネファゾドン、レボキセチン、トラゾドン、ブプロピオンであった。・ミルタザピンとミアンセリンは陰性症状に対し一貫した有効性を示し、両薬剤とも神経認知機能を改善するように思われた。・トラゾドンとネファゾドンは、抗精神病薬に誘発される錐体外路症状を改善するようにみえた。・イミプラミンとデュロキセチンにおいては、抑うつ症状の改善傾向が認められた。・統合失調症の臨床所見に対するSSRIの有効性を支持する明らかなエビデンスは認められなかった。・抗うつ薬の追加により精神病が悪化することはなかった。 結果を踏まえ、著者らは「多数のRCTがあるにもかかわらず、統合失調症における抗うつ薬追加の全般的有効性は主に方法論的問題により明らかにされないままである。しかし、いくつかの統合失調症ドメインに対する有効性に抗うつ薬のサブグループによる相違があるようで、これは当然ながら作用機序の違いによって生じるものである。また、抗うつ薬が精神病を悪化させる可能性はないと思われたが、より優れたデザインの、大規模で長期のRCTが求められる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か:藤田保健衛生大学 抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か SSRI+非定型抗精神病薬の併用、抗うつ作用増強の可能性が示唆

8909.

チクングニア熱に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。前回はBorrelia miyamotoi感染症という激マニアックな感染症の気を付け方について学ぶという、ある意味貴重な回でしたが、今回は比較的「マジで気を付けたほうがいい」感染症であるチクングニア熱について学びたいと思います。爆発的な拡大をする「チクングニア熱」まず最初に、皆さまは「チクングニア熱」という感染症を聞いたことがありますでしょうか? いかにも戦闘力の高そうな名前の感染症ですが、「チクングニア」とはタンザニアの言葉で「身をかがめる」「猫背」などを意味し、これは本疾患の強い関節痛・関節炎に由来します。チクングニア熱に非常に似た病気としてデング熱がありますが、デング熱と比較すると関節痛の頻度が高く、関節炎まで起こすことがあるというのが特徴です。さて、なぜこのチクングニア熱が「マジで気を付けたほうがいい」感染症なのかといいますと、それはチクングニア熱が凄まじい勢いで世界中に広がっているからであります。その勢いたるや、シーズン中60本塁打を打ったときのヤクルトスワローズのバレンティン選手を彷彿とさせるものがあります。そう、手のつけようがないのです。しかし、バレンティン選手は敬遠すればホームランは打たれずに済みますが、チクングニア熱は敬遠が通用しません! なぜなら野球選手ではないからです!(自分で言ってて意味がわかりません)このチクングニア熱は、デング熱と同じく蚊が媒介するウイルス感染症であり、わが国では4類感染症および検疫感染症に指定されています。チクングニアウイルスが最初に発見されたのは1950年代にアフリカのタンザニアでしたが、その後、アフリカ、東南アジアや南アジアで散発的なアウトブレイクが報告されていました。図1は2001~2007年の頃のチクングニア熱の流行地図です。図1 2001~2007年におけるチクングニア熱症例の世界的状況1)画像を拡大するこの時期は南アジアを中心に、アフリカ、東南アジアで流行がみられています。まだまだ遠い国の珍しい感染症といった感じですね。しかし、2015年現在の流行地図(図2)をみてくださいッ!図2 チクングニア熱が報告された国と地域の一覧(2015年3月10日時点)2)画像を拡大するアフリカ、アジアはおろか、中南米まで流行地域に……。かなり凄まじい勢いで流行地域が広がっていることが、おわかりいただけるかと思います。そして、気が付かれましたでしょうか。そうです、アメリカ合衆国にも色が塗られているんですッ! 2013年末から始まったチクングニア熱の中南米での大流行は、ついにアメリカにまで飛び火し、フロリダ州では渡航歴のないチクングニア熱患者が出てしまうという事態にまで発展してしまいました。2014年、日本はデング熱でてんやわんやだったわけですが、アメリカ大陸の人々は、チクングニア熱できりきり舞いだったわけであります。すでに中南米だけで100万人以上の感染者が出ているといわれています。次は日本が危ないわれわれ日本人も、対岸の火事を眺めている場合ではありません。このチクングニア熱の大流行に、いつ日本も巻き込まれるかわからないのです。チクングニア熱を媒介する蚊の1種であるヒトスジシマカは日本にも生息していますし、近年チクングニアウイルスの中には、ウイルス変異によってヒトスジシマカの体内で増殖しやすくなっているウイルスも報告されています3)。最近は「今年の夏もデング熱は流行るのか?」という報道がテレビでも流れていますが、むしろ本命はチクングニア熱かもしれないのですッ!さて、さんざん煽るだけ煽ってしまいましたが、次回はそんなチクングニア熱の気を付け方、そして、敬遠の仕方についてもご紹介したいと思います。1)World Health Organaization. Weekly epidemiological record (WER). 2007;82:409-416.(参照 2015.6.3).2)Centers for Disease Control and Prevention. Countries and territories where chikungunya cases have been reported (as of January 13, 2015). (参照 2015.6.3).3)Schuffenecker I, et al. PLoS Med. 2006;3:e263.

8910.

問診のみで5年以内の死亡を予測可能?50万人の前向き研究/Lancet

 身体的な検査を行わなくても、通常の問診のみで得た情報が、中高年者の全死因死亡を最も強力に予測する可能性があることが、英国のバイオバンク(UK Biobank)の約50万人のデータを用いた検討で明らかとなった。スウェーデン・カロリンスカ研究所のAndrea Ganna氏とウプサラ大学のErik Ingelsson氏がLancet誌オンライン版2015年6月2日号で報告した。とくに中高年者の余命を正確に把握し、リスクを層別化することは、公衆衛生学上の重要な優先事項であり、臨床的な意思決定の中心的課題とされる。短期的な死亡に関する予後指標はすでに存在するが、これらは主に高齢者や高リスク集団を対象としており、サンプルサイズが小さい、リスク因子数が少ないなどの限界があるという。地域住民ベースの前向き研究で問診の予測スコアを開発 2人の研究者は、UK Biobankのデータを用いて全死因および死因別の5年死亡の評価を行い、個別の死亡リスクを推定するために、患者の自己申告による情報のみを用いて5年死亡の予後指標に基づく予測スコアを開発し、その妥当性の検証を行った。 UK Biobankへの参加者の登録は、2007年4月~2010年7月の間に、イングランド、ウェールズ、スコットランドの21施設で、標準化された方法を用いて行われた。約50万人から、採血、質問票、身体検査、生体試料に基づくデータが収集された。 血液検査、人口統計学、健康状態、生活様式などに関する10群、655項目のデータと、全死因死亡および6つの死因別の死亡カテゴリー(新生物、循環器系疾患、呼吸器系疾患、消化器系疾患、意図的自傷行為や転倒などの外因によるもの、その他)の関連を、Cox比例ハザードモデルを用いて男女別に評価した。参加者の80%以上で欠損した測定値や、サマリデータが得られなかったすべての心肺健康検査の測定値は除外した。 予測スコアの妥当性の検証は、スコットランドの施設で登録された参加者で実施した。英国の生命表と国勢調査の情報を用いて、スコアを英国の全人口に換算した。重篤な疾患がない場合の最大の死亡リスク因子は喫煙 37~73歳の49万8,103例が解析の対象となった。女性27万1,029例(平均年齢56.36歳)、男性22万7,074例(56.75歳)であった。 追跡期間中央値4.9年の間に8,532例(39%[3,308例]が女性)が死亡した。最も多い死因は、男性が肺がん(546例)、女性は乳がん(489例)だった。 男性では、自己申告による健康状態が最も強力な全死因死亡の予測因子であった(C-index:0.74、95%信頼区間[CI]:0.73~0.75)。女性では、がんの診断歴が全死因死亡を最も強力に予測した(0.73、0.72~0.74)。 重篤な疾患を有する者(Charlson comorbidity index:>0)を除外した35万5,043例(55%が女性)のうち、4.9年間に3,678例が死亡し、この集団における最も強力な全死因死亡の予測因子は男女とも喫煙習慣であった。 予測スコアは、男性が13項目、女性は11項目の自己申告による予測因子から成り、男女とも良好な識別能が達成された(男性のC-index:0.80、95%CI:0.77~0.83、女性は同:0.79、0.76~0.83)。死亡率は英国の一般人口より低かったため、生命表と国勢調査の情報に基づいて予測スコアを調整した。 専用のウェブサイト(http://ubble.co.uk/)では、対話形式のグラフ(Association Explorer)で655項目の変数と個々の死因の関連性を閲覧できると共に、オンライン問診票により5年死亡の個別のリスク計算(Risk Calculator)が可能である(正確な予測は40~70歳の英国居住者のみ)。 著者は、「この研究からはさまざま重要なメッセージが読み取れるが、最も重要な知見は、身体的な検査なしに通常の口頭での問診で得られる情報(たとえば、患者の自己申告による健康状態や日常的な歩調など)が、中高年者の全死因死亡の最も強力な予測因子であることが示唆される点である」と結論している。 また、「この予測スコアを用いれば、看護師などの医療者は、患者の自分の健康状態への認識を高め、医師は、死亡リスクの高い患者を同定して特定の介入の対象を絞り込み、政府や保健機関は、特定のリスク因子の負担を軽減することが可能と考えられる」と指摘している。

8911.

レビー小体病変を伴うアルツハイマー病、その特徴は

 遅発性アルツハイマー病(AD)では、しばしばレビー小体病変が認められる。韓国・仁済大学校医科大学のEun Joo Chung氏らは、レビー小体病変の存在がADの臨床表現型や症状進行に影響を及ぼすかどうかを検討する目的で、レトロスペクティブな病理学的コホート研究を行った。その結果、AD病変とレビー小体病変の両方を有する患者とAD病変のみの患者とでは臨床表現型が異なり、両者を識別できることが明らかとなった。著者らは、「ADにおけるレビー小体の頻度やレビー小体とAPOEε4アレルとの関係から、ADとレビー小体の病理学的なメカニズムは共通していることが示唆される」とまとめている。JAMA Neurology誌オンライン版2015年5月18日号の掲載報告。 研究グループは、米国・国立老化研究所とレーガン研究所による神経病理学的診断基準で、ADである可能性が高い(または中間)の基準を満たした531例の剖検例について、死亡前2年以内の臨床評価と剖検により得られた神経病理学的評価を解析した。主な結果は以下のとおり。・死亡年齢(平均[SD])は、レビー小体を伴うAD(LB併存AD)患者が、レビー小体を伴わないAD(非併存AD)患者より、統計学的に有意に低かった(77.9 [9.5]歳vs. 80.2 [11.1]歳、p=0.01)。・認知症発症年齢(平均[SD])も、LB併存AD患者が非併存AD患者より有意に低かった(70.0 [9.9]歳vs. 72.2 [12.3]歳、p=0.03)。・女性より男性のほうが、LB併存AD患者が多かった(p=0.01)。・1つ以上のAPOEε4アレル保有者の割合は、LB併存AD患者が非併存AD患者より有意に高かった(p=0.03)。・Neuropsychiatric Inventory Questionnaireスコア(平均[SD])は、年齢、性別、教育、老人斑/拡散斑の頻度、神経原線維変化ステージで補正後も、LB併存AD患者(6.59 [1.44]、95%信頼区間[CI]:3.75~9.42)が、非併存AD患者(5.49[1.39]、同:2.76~8.23)より有意に高かった(p=0.04)。・同様にパーキンソン病統一スケール(UPDRS)の運動スコアも、LB併存AD患者(0.81 [0.18]、95%CI:0.45~1.17)が、非併存AD患者(0.54 [0.18]、同:0.19~0.88)より有意に高かった(p<0.001)。関連医療ニュース 認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学 レビー小体型認知症、パーキンソン診断に有用な方法は せん妄はレビー小体型認知症のサイン

8912.

一般集団における知的障害、ゲノムワイド研究で判明/JAMA

 スイス・ローザンヌ大学のKatrin Mannik氏らは、一般集団を対象にヒト遺伝子のコピー数多型(copy number variations:CNV)と認知表現型(Cognitive Phenotypes)の関連を調べた。CNVと知的障害に関するような表現型との関連は、これまでほとんどが臨床的に確認された集団コホートにおいて評価されたものであった。研究グループは、臨床的プリセレクションのない成人キャリアにおけるCNVによる臨床的特性と既知の症候群との関連を調べ、また一般集団において、頻度やサイズがまれなCNVキャリアの学業成績(educational attainment)におけるゲノムワイドな影響と、知的障害の有病率を調べた。JAMA誌2015年5月26日号掲載の報告より。エストニアコホート7,877例で評価 検討は、エストニアの住民ベースのバイオバンクに、2002~2010年にかけて参加登録された5万2,000例を対象に行われた。  一般医(GP)が被験者の検診や、健康および生活習慣関連の質問アンケート記入を行い、診断を報告した。 CNV解析は無作為に抽出したサンプル7,877例(エストニアコホート)について行い、遺伝子型表現型と教育、疾患特性との関連を評価した。結果は、エストニア人993例の高機能群のほか、地理的に異なる英国、米国、イタリアの3つの国の住民コホートで再現した。 主要評価項目は、一般集団における遺伝的障害の表現型、常染色体CNVの有病率、これらの異型と学業成績(初等教育未満レベルの1から大学院レベルの7までで評価)との関連、知的障害の有病率であった。一般集団で10.5%が知的障害や低学業成績と関連するCNVキャリア エストニアコホート7,877例のうち、既知の症候群と関連したCNVキャリア56例が特定された。その表現型には、認知および精神医学的な問題、てんかん、神経障害、肥満、先天奇形などが含まれ、臨床コホートで確認された同一の再編成キャリアと類似したものであった。 希少なCNV(頻度0.05%以下、サイズ250kb以上)のゲノムワイド評価により、一般集団のうち831例(10.5%)が同キャリアであることが特定された。 エストニアコホートにおける知的障害の有病率は114/6,819例(1.7%)であった。これに対して、サイズ250kb以上の欠損キャリアの同有病率は11/216例(5.1%)(オッズ比[OR]:3.16、95%信頼区間[CI]:1.51~5.98、p=1.5e-03)、1Mb以上の重複キャリアは6/102(5.9%)(OR:3.67、95%CI:1.29~8.54、p=0.08)であった。 また平均学業成績は、250kb以上の欠損キャリアの評価対象248例では3.81(p=1.06e-04)、1Mb以上の重複キャリア115例では3.69(p=5.024e-05)であった。高校を卒業していなかった者は、欠損キャリアは33.5%(OR:1.48、95%CI:1.12~1.95、p=0.05)、重複キャリアは39.1%(同:1.89、1.27~2.8、p=1.6e-03)であった。 まれなCNVと学業成績が低いことの関連に関するエビデンスは、イタリア、米国の成人コホートおよび英国の青年コホートの分析でも裏付けられた。 結果を踏まえて著者は、「非選択的で健康である成人集団において、既知の病原性CNVは、未確認の臨床的な後遺症と関連している可能性が示唆された。さらに、まれだが一定数が有している中程度サイズのCNVは、ネガティブな学業成績と関連していることが示唆された」と述べ、「所見が追加集団でも再現されたことは、遺伝研究や臨床的な治療、公衆衛生において同様の観察が重要であることを示すものである」とまとめている。

8913.

9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係

 米国・デューク大学のTerrie E. Moffitt氏らは、成人期注意欠如・多動症(ADHD)と小児期発症神経発達症との関連を明らかにするため、ニュージーランドで1972~1973年に生まれた1,037例について解析を行った。その結果、成人期ADHDの90%が小児期ADHD歴を有していないことを報告した。成人期ADHDは小児期発症神経発達症であるとの仮説が広く知られているが、これまで成人期ADHD患者の小児期に言及した長期前向き試験はなかったという。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年5月22日号の掲載報告。 研究グループは、1コホートにおいて、成人期に診断されたADHD患者のフォローバック解析を、小児期に診断されたADHD患者のフォローフォワード解析と共に報告した。ニュージーランド、ダニーデンで1972~1973年に出生した1,037例の被験者を同時出生コホートとし、38歳まで追跡調査した(保持率95%)。ADHD症状、臨床的特徴、合併症、神経心理学的欠陥、ゲノムワイド関連研究による多遺伝子リスク、生活障害指標を評価した。データは、被験者、両親、教師、その他の情報提供者、神経心理学的検査の結果、薬歴などから収集した。成人期ADHDは研究アウトカムの評価基準に基づくDSM-5分類により診断し、発症年齢およびcross-settingによる確証は考慮しなかった。  主な結果は以下のとおり。・予想されたとおり、小児期ADHDは6%に認められ(大部分が男性)、小児期の合併症、神経認知障害、多遺伝子リスク、残された成人期の生活障害と関連した。・同じく予想どおり、成人期ADHDは3%(性差なし)に認められ、成人期の薬物依存、生活障害および受療との関連が認められた。・一方、予想に反して、小児期ADHD群と成人期ADHD群は実質的にまったく重複する部分がなかった。すなわち、成人期ADHDの90%が小児期ADHD歴を有していなかった。・同様に予想に反して、成人期ADHD群では小児期、成人期のいずれにおいても神経心理学的欠陥が認められず、また、小児期ADHD患者の多遺伝子リスクが認められなかった。 以上より、ADHDの臨床像を示す成人が小児期神経発達症を有していない可能性が考えられた。著者らは「もし結果が再現されれば、本疾患の分類体系における位置付けを再考するとともに、研究を行って成人期ADHDの病因を追及すべきと思われる」と指摘している。関連医療ニュース 成人ADHDをどう見極める メチルフェニデートへの反応性、ADHDサブタイプで異なる 成人発症精神疾患の背景に自閉スペクトラム症が関連

8914.

混合型経口避妊薬、静脈血栓塞栓症リスクが3倍/BMJ

 混合型経口避妊薬の服用は、静脈血栓塞栓症(VTE)発症リスクを3倍近く増大することが明らかにされた。なかでも新世代の避妊薬では約4倍と、第2世代避妊薬に比べ有意に高い。英国・ノッティンガム大学のYana Vinogradova氏らが、2件の大規模なプライマリケアデータベースを用いたコホート内ケース・コントロール試験を行い明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年5月26日号掲載の報告より。 英国一般診療所の2つのデータベースから抽出  研究グループは、2001~2013年にかけて、15~49歳でVTEの初回診断を受けた女性と、年齢などをマッチングしたコントロール群について試験を行い、混合型経口避妊薬とVTEの発症リスクの関連を分析した。 被験者は、英国の一般診療所が加入する、Clinical Practice Research Datalink(CPRD、618診療所が加入)とQResearch primary care database(722診療所が加入)の2つのデータベースから抽出した。服用1万人ごとのVTE追加発症数、デソゲストレルとcyproteroneは各14例 試験期間中にVTEを発症したのは、CPRDコホート5,062例、QResearchコホート5,500例だった。 混合型経口避妊薬の服用者は、前年の同非服用者に比べ、VTE発症リスクがおよそ3倍増大した(補正後オッズ比:2.97、95%信頼区間[CI]:2.78~3.17)。 同オッズ比は、新世代のデソゲストレルでは4.28(95%CI:3.66~5.01)、gestodeneは3.64(同:3.00~4.43)、ドロスピレノンは4.12(同:3.43~4.96)、cyproteroneは4.27(同:3.57~5.11)であり、第2世代避妊薬のレボノルゲストレルの同オッズ比2.38(同:2.18~2.59)、ノルエチステロンの2.56(同:2.15~3.06)、norgestimateの2.53(同:2.17~2.96)に比べ、リスクが顕著に高かった。 服用1万人につきVTE追加発症数は、最少がレボノルゲストレル6例(95%CI:5~7)、norgestimate6例(同:5~8)である一方、最大はデソゲストレル14例(同:11~17)、cyproterone14例(同:11~17)だった。

8915.

多発性骨髄腫治療薬「レナリドミド」、ワルファリンとの相互作用は

 多発性骨髄腫の治療において、レナリドミドは2次治療に位置付けられており、その効果の大きさから重要な役割を担っている。現在、初発の多発性骨髄腫に対して適応追加の申請中であり、その重要性はますます大きくなっていく可能性がある。 レナリドミドは重大な副作用として静脈血栓症があるため、予防目的でワルファリンが併用されていることも多い。ワルファリンは薬物相互作用が多い薬剤として有名であるが、米国・セルジーン社・Daniel Weiss氏らの調査の結果、レナリドミドとの併用は、薬物相互作用の観点において問題ないことが示唆された。Clinical Drug Investigation誌オンライン版2015年5月30日号にて掲載報告。 調査はプラセボ対照、無作為化二重盲検2期クロスオーバー試験にて行った。対象は18人の健康な男女で、レナリドミドを1日10mgまたはプラセボを9日間投与した。投与4日目に、両群に対して1日25mgのワルファリン単回経口投与を行った。採血を行い、両薬剤のINR・PT・AUC・Cmaxを測定した。 主な結果は以下のとおり。・レナリドミド、プラセボの両群間におけるAUCやCmaxの幾何平均値比は、ワルファリンの光学異性体(R体およびS体)について生物学的同等性の範囲内(80~125%)であった(90%信頼区間)。・ワルファリン投与後0時間~144時間のAUCINRとINRのピーク値は、レナリドミド群・プラセボ群ともに85~125%の範囲内であった(90%信頼区間)。・レナリドミドのAUCとCmaxはワルファリンの併用によって変化はなかった。

8916.

双極性障害、治療反応は予測できるか

 急性躁病または混合エピソードに対する抗精神病薬の一連の試験において、ヤング躁病評価尺度(YMRS)やMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)による治療前の重症度評価は、うつ病、躁病、睡眠障害、判断力/衝動性、焦燥/敵意といった精神症状の主要構成要素の複合因子を特定するために用いられる。しかし、これらの因子が治療効果を予測するかどうかは不明である。米国・スタンフォード大学のMichael J Ostacher氏らは、双極性障害の治療反応を予測する因子について検討した。International journal of bipolar disorders誌オンライン版2015年5月号の報告。 本検討では、成人双極I型障害患者の急性躁病または混合エピソードに対するアリピプラゾールの無作為化二重盲検比較試験6報のデータがプールされ、治療前の評価項目とそれらの値の治療後の変化を調査した。治療効果は、アリピプラゾール1,001例、ハロペリドール324例、リチウム155例、プラセボ694例について、ベースライン、4、7、10日目、その後毎週および試験終了時について調査した。ベースラインから3週目までの因子スコアの平均変化を、4日目、1週時点の変化率からROC曲線により評価した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール、ハロペリドール、リチウム投与を受けた患者では、プラセボと比較し躁病因子スコアの有意な改善が認められた。・アリピプラゾールのエンドポイントでの有効性を最も予測する因子は、4日目時点の判断力/衝動性と1週目時点の躁病であった。・転帰予測のための最適な因子スコアの改善は、約40~50%であった。・初期の有効性は、すべての因子において転帰を予測したが、1週時点での反応は4日時点での反応よりも優れた予測因子であった。・双極性躁病患者に対する早期の治療および評価が臨床的メリットをもたらすこと、混合または躁病エピソードにおける特定の症状が、治療反応を最も予測することが示唆された。関連医療ニュース うつ病と双極性障害、脳の感情調節メカニズムが異なる うつ病と双極性障害を見分けるポイントは 双極性障害の症状把握へ、初の質問票が登場  担当者へのご意見箱はこちら

8917.

大豆イソフラボン、喘息コントロール効果なし/JAMA

 コントロール不良の喘息患者に対し、1日100mgの大豆イソフラボンを24週間投与したが、喘息症状の改善には結び付かなかった。米国・ノースウェスタン大学のLewis J. Smith氏らが、386例の患者を対象に行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。複数の慢性疾患治療において、大豆イソフラボンが用いられているが、使用を裏づけるデータは限定的であった。コンロトール不良の喘息患者については、大豆イソフラボンが有望であることを示唆するいくつかのデータが示されていたという。JAMA誌2015年5月26日号掲載の報告。24週後に、FEV1や喘息コントロールテストのスコアなどを比較 研究グループは、2010年5月~2012年8月にかけて、米国の喘息治療に関する研究ネットワーク(American Lung Association Asthma Clinical Research Centers)に属する19ヵ所の医療機関を通じて試験を行った。症状をコントロールする薬を服用しながらも、喘息症状が認められ、大豆摂取量が少ない12歳以上の患者386例を対象に試験を行った。 同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には総イソフラボン量100mgを含む大豆イソフラボン・サプリメントを、もう一方にはプラセボを、それぞれ毎日24週間にわたり投与した。 主要評価項目は、24週時点における1秒間努力呼気容量(FEV1)だった。副次的評価項目は、症状、喘息のコントロール不良イベント、喘息コントロールテストのスコア、全身・気道の炎症バイオマーカー測定値だった。FEV1、喘息コントロール、コントロール不良イベント数など、いずれも両群で同等 結果、24週後の気管支拡張薬使用前FEV1値は、プラセボ群が0.03L(95%信頼区間:-0.01~0.08)に対し、イソフラボン群は0.01L(同:-0.07~0.07)と、両群で有意差はなかった(p=0.36)。 喘息コントロールテストの変化平均値は、プラセボ群が1.98に対しイソフラボン群が2.20(数値が高いほど症状減少を示す)、喘息のコントロール不良イベント数はそれぞれ3.3回と3.0回、呼気中一酸化窒素の変化量はそれぞれ-3.48ppbと1.39ppbであり、いずれも両群で有意差はなかった。 なお、サプリメントを投与された被験者では、平均血漿ゲニステイン値が4.87ng/mLから37.67ng/mLに有意に上昇していた(p<0.001)。

8918.

認知症と介護、望まれる生活環境は

 認知症患者が生活する環境デザインは納得できるもの、そして患者がパーソナルアイデンティティを強く保ち、彼らの能力を維持していけるようなものであるべきである。これまでは認知症患者がうまく生活することに重点を置いてきたため、終末期が近い患者の物理的環境支援へのニーズや希望が考慮されてこなかった。オーストラリア・ウーロンゴン大学のRichard Fleming氏らは、認知症患者が良好なQOLを保ちつつ人生の最期を迎えるのに適切な環境を明らかにするため、認知症患者、介護家族、医療従事者らからなるフォーカスグループインタビューを行った。その結果、環境デザインとして求められる15の特性についてコンセンサスが得られたことを発表した。BMC Palliative Care誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。 本研究では、フォーカスグループインタビューとデルファイ法とを組み合わせ、認知症患者、介護家族、専門家が、終末期に向けて良好なQOL維持をサポートするために重要とする物理的環境について調査した。 研究グループは、オーストラリア東海岸に位置する3都市で、文献レビューに基づくディスカッションガイドを用いて3つのフォーカスグループインタビューを実施。フォーカスグループは、最近遺族となった認知症患者の介護家族(FG1)、認知症患者と認知症の介護家族(FG2)、終末期あるいは終末期に近づいている認知症患者の診療にあたる医療従事者(FG3)の3つで、フォーカスグループの会話は参加者の同意を得て録音した。 オーディオファイルを基に速記録を作成し、人生の最期に向けて望ましい生活を提供するという目的の達成を促す環境的特性を判断するため、テーマ分析を実施した。フォーカスグループの録音記録分析より引き出されたデザイン特性リストを、認知症の各分野に携わるさまざまな専門家に確認してもらい、妥当性についてのコンセンサスを探り、終末期に近い認知症患者にとってふさわしい環境デザインの特性を判断した。 主な結果は以下のとおり。・3つのフォーカスグループへの参加者は18人であった(認知症患者2人、現在介護をしている家族、あるいは最近まで介護していた遺族介護者11人、医療従事者5人)。・重要だと考える環境に関する事項について、意見の相違が認められた。・認知症患者および介護家族は、関与全般を通しての快適性、心の安らぎ、穏やかな環境、プライバシーと尊厳、そして連続的な技術の活用が重要であるとした。・医療従事者らがとくに重要としたテーマは、介護業務を容易にするデザインと、制度面での業務への影響であった。・認知症の各分野に関わる専門家21人が、フォーカスグループの発言記録から分析された、環境デザインに求められる特性についてのコンセンサスを得るべく検討を行い、15項目の特性で意見が一致し認定した。・15の特性は、動くことができる認知症患者に対するデザイン方針と対応しているが、感覚的な関与により重点が置かれていた。 結果を踏まえ、著者らは「これら15の特性を介護の一環として考慮することにより、優れた介護の実現をサポートし、認知症患者に最後まで良い人生を提供し、また介護家族にも患者と共に生きる最期の日までより有意義な体験を与えることができるものと考える」とまとめている。関連医療ニュース 認知症治療、薬物療法にどの程度期待してよいのか 認知症への運動療法、効果はあるのか 複雑な薬物療法レジメン、認知症介護者の負担増加  担当者へのご意見箱はこちら

8919.

リウマチ患者の治療満足度はコミュニケーションで向上

 米国ファイザー社は5月28日(現地時間)、世界13ヵ国の成人関節リウマチ患者3,600人以上を対象に行った調査の結果を発表した。同社の日本法人であるファイザー株式会社が6月8日に報告した。データによると、患者と医療従事者の関係、そして関節リウマチとその治療に対する患者の認識が疾患管理に影響する可能性が示唆されたという。 RA NarRAtive患者調査は、2012年9月4日から2015年1月13日にかけて、ファイザー社に代わりHarris Poll社が世界13ヵ国の18歳以上の関節リウマチ患者3,649人 [アルゼンチン(217人)、オーストラリア(481人)、ブラジル(324人)、カナダ(237人)、フランス(122人)、ドイツ(525人)、イタリア(204人)、日本(354人)、韓国(168人)、スペイン(122人)、トルコ(123人)、英国(246人)、米国(526人)] を対象にインターネット上で調査を実施したもの。患者の治療や疾患管理における経験や満足度だけでなく、患者と医療従事者の関係やコミュニケーションについても同時に評価した今回の患者調査は、この種の調査としては初めてのケースとのこと。 調査データによると、患者の関節リウマチ治療に対する満足度、そして医療従事者との良好な関係が、疾患管理にプラスに影響する可能性があるという。調査では、心配事や不安を医師や医療従事者に相談できる患者のほうがそうでない患者と比べて、自身の健康状態全般について「とても良い」または「良い」と回答している割合が高かった(43% vs.29%)。 一方で、いくつかの問題も残っており、治療に対する満足度の自己報告と関節リウマチ管理に関わる病状の間にずれがあるという。調査では、関節リウマチ治療薬を処方されている患者の5人中4人(78%)が「治療法に満足している」と回答しているものの、同じ患者の中で自身の疾患が「コントロールできている」と答えたのはわずか30%であった。また、医療従事者によって病状が中等度から重度、または重度であると判断された患者の場合、患者本人の満足度と疾患管理に対する認識のずれがより顕著であった。 治療目標設定時にシェアード・ディシジョンメイキング(医師と患者がともに意思決定に関与すること)を実践することが最も望ましいとされているが、調査の結果、患者は治療目標や不安、とくに疾患管理や治療法について、医療従事者とよく話し合っていない可能性があることがわかったという。疾患管理のために現在医療従事者にかかっている患者の大多数(83%)が、関節リウマチ治療に関する医療従事者との話し合いに満足していると回答していた。一方で、やはり大多数(85%)が医療従事者との関係がよくなれば疾患管理がさらに改善されるであろうと回答している。 現在さまざまな治療薬や治療法があるにもかかわらず、一部の患者では最適な疾患管理が行われていない可能性があるという。今回調査を行った全関節リウマチ患者のうち47%が、日常生活の中で何らかの活動をあきらめたと回答していた。さらに、関節リウマチ治療薬に関しては、全回答者の42%が、関節リウマチの治療は関節リウマチとともに生きるのと同じくらい困難であると考えていた。詳細はファイザー株式会社のプレスリリースへ

8920.

標準外のITT解析は介入効果を過大評価/BMJ

 標準的ITT解析から逸脱した分析を行っている無作為化試験では、介入効果がより大きく示される傾向があることが、イタリア・ウンブリア州地方健康局疫学部門のIosief Abraha氏らが、300件以上の無作為化試験についてメタ疫学研究を行い明らかにした。ITT解析から逸脱した試験結果の報告例が増える中で、そうした試験が介入効果を過大評価するかどうかについては、これまで明らかではなかったという。BMJ誌オンライン版2015年5月27日号掲載の報告より。310件の無作為化試験について、ITT解析の内容で3群に分類 Abraha氏らは、2006~2010年にかけて、Medlineを用いて、43件のシステマティックレビュー(50件のメタ解析含む)、310件の無作為化試験について試験を行った。 分析対象とした試験について、(1)ITT群(標準的ITT解析を実施)、(2)mITT(modified intention to treat:標準的ではないITT解析を実施)、(3)no ITT(ITT解析について説明がない)の3群に分類した。 各メタ解析試験の中で、ITT群とmITT群、mITT群とno ITT群について、治療効果を比較した。mITT試験、補正後もITT試験に比べ介入効果が大 50件のメタ解析試験、322件の無作為化試験を比較分析した(12試験については、2回重複して分析)。 その結果、mITT試験はITT試験に比べ、介入効果がより大きく示された(統合オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.71~0.96、p=0.01、メタ解析間分散τ2=0.13)。 被験者数、試験センターの種類、資金源、バイアスリスク項目、無作為化後の被験者除外基準、ログオッズ比のばらつきについて補正後も、結果は変わらなかった(0.80、同:0.69~0.94、p=0.005、τ2=0.08)。 なおmITT群とno ITT群では、有意差は認められなかった(補正後統合オッズ比:0.92、同:0.70~1.23、τ2=0.57)。 結果を踏まえて著者は、「標準的ITT解析が実施不可能な試験については、分析に含んだ被験者について明記すべきである」と提言した。

検索結果 合計:11816件 表示位置:8901 - 8920