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FRISC-II試験:死ぬまで大規模臨床試験!(解説:中野 明彦 氏)-597

【はじめに:非ST上昇ACSに対する治療法の変遷】 現在日本の循環器専門施設において、非ST上昇といえどACS患者に冠動脈造影(必要ならPCIやCABG)を行わないところはまずないであろう。しかし、FRISC-II試験が登録された1990年代後半には、その是非は賛否両論だった。 血行再建術が成熟していなかった影響も大きいが、不安定狭心症を対象としたVA studyや非Q波心筋梗塞・不安定狭心症で比較したVANQWISH・TIMI-IIIB試験では、早期侵襲的治療群(侵襲群)の非侵襲的治療群(非侵襲群)に対する優位性は示せなかった。 FRISC-II試験は、侵襲群の優位性を示した最初のランダム化試験で、TACTICS-TIMI18・RITA-3・ISAR-COOLなどがこれに続き、最新のガイドラインにも反映されている。その優位性はACS再発による再入院にとどまらず、死亡・心筋梗塞といった重大イベント抑制に及び、patient riskが高いサブグループほど絶対リスクの差が大きい。また、原則的にそうしたhigh risk群ほど早い介入が望まれる。【FRISC-II試験と本論文について】 FRISC-II試験は、1996~98年に登録された。当然ベアメタルステントの時代である。侵襲群において、その後の一連の試験に比して、冠動脈造影まで要した時間は最も長く(中央値96時間)、ステントやスタチン併用が最も少ない。一方、非侵襲群からのクロスオーバーは最も少なく(14%)、これが侵襲群の優位性を際立たせ、血行再建の遅れによるマイナス面を相殺したと考えられる。総死亡+非致死性心筋梗塞を1次エンドポイントとして、6ヵ月・1年・2年・5年の結果が報告されている。 そして、本論文は15 年の集大成である。 15年間に血行再建術が施行された患者は82% vs.58%だったが、最終的な心臓死の割合は14.5% vs.16.3%(p=0.292)で有意差がなかった。 総じて、侵襲群では当初の3~4年間、心臓死や心筋梗塞発症が抑制されたものの、5年後には予後に関するアドバンテージは消失4)、新たな心筋梗塞発症も以降平行線を辿っている。つまり、急性期積極的血行再建の賞味期限は3~4年ということらしい。【15年経つ、15年観る、ということ】 誰が決めたか知らないが、循環器系の(も?)大規模臨床試験の観察期間は長くて5年である。企業主導であろうが医師主導であろうが、多くの症例を厳密にfollow-upする努力・モチベーション・予算は5年が限界なのかもしれない。また、その頃には別なテーマやデバイスが浮上し、人々の興味も次へとシフトする。 つまり、本論文で特筆すべきはその観察期間の長さである。さらにデータ回収率が高く、生死および死因に関する情報は99%、イベントに関する情報も89%の症例で確認されている。それを裏支えしているのは、スカンジナビア諸国で行われている公衆衛生の登録制度である。個人識別番号と疾病・負傷、入退院、死亡(死因)、処方薬などのさまざまな医療情報をリンクさせ、それを関係者で共有することにより、人・金・施設などの限られた資源を有効活用し、包括的で質の高い医療を目指そうという国家的プロジェクトである。 FRISC-II試験の登録症例の年齢(中央値)は66歳、スカンジナビア諸国の平均寿命は78~81歳。つまり、15年というのは半数の患者が平均寿命に達する期間である。割り付けられた介入の影響がどんどん薄まっていき、原疾患たる冠動脈疾患や心疾患、さらには高齢者故の心臓以外の疾患により予後やQOLが損なわれていくのは当然である。逆にいえば、平均寿命まで追跡することによって、その介入が患者の一生にどう関わるかを判定しようという壮大な視点が垣間みえる。 ノルディックモデルと称される社会民主主義的福祉レジームによる制度的再配分福祉を整備するスカンジナビア諸国では、高い租税率を代償として国営に近い形で医療が遂行されている。だからこそ可能になった登録制度を、医療制度・文化の異なる他国に当てはめるのは現実的ではないが、一方日本の現状を顧みると、個人情報保護の高い壁と相次ぐ医療不信により大規模臨床試験の未来はあまり明るくはない。 対象疾患のリスクで異なるであろうが、大規模臨床試験の適切な観察期間はどのくらいなのか? ガイドラインで示される治療介入が長期的にみて本当に有効なのか? またその賞味期限はどの程度なのか? ―今後さらに発信されるであろうスカンジナビアからの情報を、遠くからしっかり見守りたいと思う。

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肥満遺伝子は減量介入の効果に影響するのか/BMJ

 脂肪量および肥満関連(fat mass and obesity associated:FTO)遺伝子のマイナーアレルは、生活様式の変容や薬剤による減量介入の効果に影響を及ぼさないことが、英国・ニューカッスル大学のKatherine M Livingstone氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月20日号に掲載された。肥満は公的医療の主要な負担であり、有病率は世界的に増加している。FTO遺伝子ホモ接合体(rs9939609)のマイナーアレルは、肥満のリスク増加と関連することが報告されている。FTO遺伝子と減量効果の関連をメタ解析で評価 研究グループは、食事、身体活動、薬剤ベースの介入による減量に及ぼすFTO遺伝子の影響の評価を目的に、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。 2015年11月までに医学データベース(Ovid Medline、Scopus、Embase、Cochrane)に登録された文献を検索した。 過体重および肥満の成人において、食事、身体活動、薬剤ベースの介入時に、FTO遺伝子型(rs9939609またはプロキシ)でBMI、体重、ウエスト周囲長の減少効果を評価した無作為化対照比較試験を対象とした。他の遺伝子変異の検討を進めるべき 8つの無作為化対照比較試験に参加した9,563例が解析に含まれた。ベースラインの平均年齢は51.6歳(範囲:28~74歳)、BMIは32.2(範囲:23.8~43.2)であった。 FTO遺伝子マイナーアレルを有する集団では、個々の試験の介入群の対照群に対するBMIの平均差は、-0.33(95%信頼区間[CI]:-1.13~0.47)から0.14(-0.06~0.35)までの幅が認められ、いずれにおいても有意な差はなかった。体重、ウエスト周囲長についても、全般的に同様の結果であった。 FTO遺伝子マイナーアレルを有する集団では、介入群は、対照群の自然な変化として予測される値に比べ、BMIが0.02(95%CI:-0.13~0.09)、体重が0.04kg(-0.34~0.26)、ウエスト周囲長は0.06cm(-0.43~0.31)減少したが、いずれも有意な差を認めなかった。 FTO遺伝子の優性モデル(AA/AT vs.TT)を用いた解析では、FTO遺伝子マイナーアレル保因者は非保因者に比べ、BMIが0.05(95%CI:-0.21~0.11、p=0.558)、体重が0.15kg(-0.60~0.30、p=0.524)、ウエスト周囲長は0.22cm(-0.77~0.33、p=0.437)減少したが、いずれも有意な差を認めなかった。 感度分析では、FTO遺伝子型がBMI、体重、ウエスト周囲長に及ぼす変化には、介入のタイプ(食事、運動、生活様式、薬剤)、介入の期間(10週~3年)、民族(多民族、白人)、サンプルサイズ(264~3,637例)、性別、ベースラインのBMI、年齢による差はなかった。 著者は、「他のFTO遺伝子型を含め、介入による肥満者の体重減少に影響を及ぼす他の遺伝子変異について検討を進める必要がある」としている。

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多発性骨髄腫〔MM : multiple myeloma〕

1 疾患概要■ 概念・定義多発性骨髄腫(MM)は、Bリンパ球系列の最終分化段階にある形質細胞が、腫瘍性、単クローン性に増殖する疾患である。骨髄腫細胞から産生される単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)を特徴とし、貧血を主とする造血障害、易感染性、腎障害、溶骨性変化など多彩な臨床症状を呈する疾患である。■ 疫学わが国では人口10万人あたり男性5.5人、女性5.2人の推定罹患率であり、全悪性腫瘍の約1%、全造血器腫瘍の約10%を占める。発症年齢のピークは60代であり、年々増加傾向にある。40歳未満の発症はきわめてまれである。■ 病因慢性炎症や自己免疫疾患の存在、放射線被曝やベンゼン、ダイオキシンへの曝露により発症頻度が増加するが成因は明らかではない。MMに先行するMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)や無症候性(くすぶり型)骨髄腫においても免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子や13染色体の異常が認められることから、多くの遺伝子異常が関与し、多段階発がん過程を経て発症すると考えられる。■ 症状症候性骨髄腫ではCRABと呼ばれる臓器病変、すなわち高カルシウム血症(Ca level increased)、腎障害(Renal insufficiency)、貧血(Anemia)、骨病変(Bone lesion)がみられる(図1)。骨病変では溶骨性変化による腰痛、背部痛、脊椎圧迫骨折などを認める。貧血の症状として全身倦怠感・労作時動悸・息切れなどがみられる。腎障害はBence Jones蛋白(BJP)型に多く、腎不全やネフローゼ症候群を呈する(骨髄腫腎)。骨吸収の亢進による高カルシウム血症では、多飲、多尿、口渇、便秘、嘔吐、意識障害を認める。正常免疫グロブリンの低下や好中球減少により易感染性となり、肺炎などの感染症を起こしやすい。また、脊椎圧迫骨折や髄外腫瘤による脊髄圧迫症状、アミロイドーシス、過粘稠度症候群による出血や神経症状(頭痛、めまい、意識障害)、眼症状(視力障害、眼底出血)がみられる。画像を拡大する■ 分類骨髄にクローナルな形質細胞が10%以上、または生検で骨もしくは髄外の形質細胞腫が確認され、かつ骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)を1つ以上認めるものを多発性骨髄腫と診断する。骨髄腫診断事象には従来のCRAB症状に加え、3つの進行するリスクの高いバイオマーカーが加わった。これらはSLiM基準と呼ばれ、骨髄のクローナルな形質細胞60%以上、血清遊離軽鎖(Free light chain: FLC)比(M蛋白成分FLCとM蛋白成分以外のFLCの比)100以上、MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)2個以上というのがある。したがって、CRAB症状がなくてもSLiM基準の1つを満たしていれば多発性骨髄腫と診断されるため、症候性骨髄腫という呼称は削除された1)。くすぶり型骨髄腫は、骨髄診断事象およびアミロイドーシスを認めず、血清M蛋白量3g/dL以上もしくは尿中M蛋白500mg/24時間以上、または骨髄のクローナルな形質細胞10~60%と定義された。MGUSは3つの病型に区別され、その他、孤立性形質細胞腫の定義が改訂された1)(表1)。表1 多発性骨髄腫の改訂診断基準(国際骨髄腫ワーキンググループ: IMWG)■多発性骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)骨髄のクローナルな形質細胞割合≧10%、または生検で確認された骨もしくは髄外形質細胞腫を認める。(2)以下に示す骨髄腫診断事象(Myeloma defining events)の1項目以上を満たす。骨髄腫診断事象●形質細胞腫瘍に関連した臓器障害高カルシウム血症: 血清カルシウム>11mg/dLもしくは基準値より>1mg/dL高い腎障害: クレアチニンクリアランス<40mL/分もしくは血清クレアチニン>2mg/dL貧血: ヘモグロビン<10g/dLもしくは正常下限より>2g/dL低い骨病変: 全身骨単純X線写真、CTもしくはPET-CTで溶骨性骨病変を1ヵ所以上認める●進行するリスクが高いバイオマーカー骨髄のクローナルな形質細胞割合≧60%血清遊離軽鎖(FLC)比(M蛋白成分のFLCとM蛋白成分以外のFLCの比)≧100MRIで局所性の骨病変(径5mm以上)>1個■くすぶり型骨髄腫の定義以下の2項目を満たす(1)血清M蛋白(IgGもしくはIgA)量≧3g/dLもしくは尿中M蛋白量≧500mg/24時間、または骨髄のクローナルな形質細胞割合が10~60%(2)骨髄診断事象およびアミロイドーシスの合併がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)■ 予後治癒困難な疾患であるが、近年、新規薬剤の導入により予後の改善がみられる。生存期間は移植適応例では6~7年、移植非適応例では4~5年である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査血清および尿の蛋白電気泳動でβ-γ域にM蛋白を認める場合は、免疫電気泳動あるいは免疫固定法でクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)とタイプ(κ、λ)を決定する。BJP型では血清蛋白電気泳動でMピークを認めないので注意する。血清FLCはBJP型骨髄腫や非分泌型骨髄腫の診断に有用である。血液検査では、正球性貧血、白血球・血小板減少と塗抹標本で赤血球連銭形成がみられる。骨髄ではクローナルな形質細胞が増加する。生化学検査では、血清総蛋白増加、アルブミン(Alb)低下、CRP上昇、ZTT高値、クレアチニン、β2-ミクログロブリン(β2-MG)の上昇、赤沈の亢進がみられる。染色体異常としてt(4;14)、t(14;16)、t(11;14)や13染色体欠失などがみられる。全身骨X線所見では、打ち抜き像(punched out lesion)や骨粗鬆症、椎体圧迫骨折を認める。CTは骨病変の検出に、全脊椎MRIは骨髄病変の検出に有用である。PET-CTは骨病変や形質細胞腫の検出に有用である。■ 診断診断には、前述の国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)による基準が用いられる1)(表1、2)。また、血清Alb値とβ2-MG値の2つの予後因子に基づく国際病期分類(International Staging System:ISS)は予後の推定に有用である。最近、ISSに遺伝子異常とLDHを加味した改訂国際病期分類(R-ISS)が提唱されている2)(表3)。ISS病期1、2、3の生存期間はそれぞれ62ヵ月、44ヵ月、29ヵ月である。ただし、これは新規薬剤の登場以前のデータに基づいている。表2 意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)と類縁疾患の改訂診断基準■非IgG型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない■IgM型MGUSの定義血清M蛋白量<3g/dL骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%リンパ増殖性疾患に伴う貧血、全身症状、過粘稠症状、リンパ節腫脹、肝脾腫や臓器障害がない■軽鎖型MGUSの定義血清遊離軽鎖(FLC)比<0.26(λ型の場合)もしくは>1.65(κ型の場合)免疫固定法でモノクローナルな重鎖を認めない形質細胞腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)およびアミロイドーシスがない骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%尿中のM蛋白量<500mg/24時間■孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄にクローナルな形質細胞を認めない孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない■微小な骨髄浸潤を伴う孤立性形質細胞腫の定義骨もしくは軟部組織に生検で確認されたクローナルな形質細胞からなる孤立性病変を認める骨髄のクローナルな形質細胞割合<10%孤立性形質細胞腫以外に全身骨単純X線写真やMRI、CTで骨病変を認めないリンパ形質細胞性腫瘍に関連する臓器障害(CRAB)がない(Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 治療方針IMWGではCRAB症状を有するMMのほか、CRAB症状がなくてもSLiM基準を1つでも有する症例も治療の対象としている。この点について、わが国の診療指針では慎重に経過観察を行い、進行が認められる場合に治療を開始することでもよいとしている3)。MGUSやくすぶり型MMは治療対象としない。初期治療は、自家造血幹細胞移植併用大量化学療法(HDT/AHSCT)が実施可能かどうかで異なる治療が行われる3、4)。効果判定はIMWGの診断基準が用いられ、CR(完全奏効:免疫固定法でM蛋白陰性)達成例は予後良好であることから、深い奏効を得ることが、長期生存のサロゲートマーカーとなる5)。■ 大量化学療法併用移植適応患者年齢65歳以下で、重篤な感染症や肝・腎障害がなく、心肺機能に問題がなければHDT/AHSCTが行われる。初期治療としてボルテゾミブ(BOR、商品名:ベルケイド)やレナリドミド(LEN、同: レブラミド)などの新規薬剤を含む2剤あるいは3剤併用が推奨される3、4)(図2)。わが国では初期治療に保険適用を有する新規薬剤は現在BORとLENであり、BD(BOR、デキサメタゾン[DEX])、BCD(BOR、シクロホスファミド[CPA]、DEX)、BAD(BOR、ドキソルビシン[DXR]、DEX)、BLd(BOR、LEN、 DEX)、Ld(LEN、DEX)が行われる。画像を拡大する寛解導入後はCPA大量にG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を併用して末梢血幹細胞が採取され、メルファラン(MEL)大量(200mg/m2)後にAHSCTが行われる。BORを含む3剤併用による寛解導入後にAHSCTを行うことにより、60%以上の症例でVGPR(very good partial response)が得られる。自家移植後にも残存する腫瘍細胞を減少させる目的で、地固め・維持療法が検討されている。新規薬剤による維持療法は無増悪生存を延長させるが、サリドマイド(THAL)による末梢神経障害や薬剤耐性、レナリドミドによる二次発がんの問題が指摘されており、リスクとベネフィットを考慮して判断することが求められる3、4)。■ 大量化学療法併用移植非適応患者65歳以上の患者や65歳以下でもHDT/AHSCTの適応条件を満たさない患者が対象となる。これまでMELとプレドニゾロン(PSL)の併用(MP)が標準治療であったが、現在は新規薬剤を加えたMPT(MP、THAL)、MPB(MP、BOR)、LDが推奨されている3、4)(図3)。わが国でもLd、MPBが実施可能であり、BORの皮下投与は静脈投与と比較し、神経障害が減少するので推奨されている。画像を拡大する■ サルベージ療法初回治療終了6ヵ月以後の再発では、初回導入療法を再度試みてもよい。移植後2年以上の再発では、AHSCTも治療選択肢に上がる。6ヵ月以内の早期再発や治療中の進行や増悪、高リスク染色体異常を有する症例では、新規薬剤を含む2剤、3剤併用が推奨される3、4)。新規薬剤として、2015年にポマリドミド(同: ポマリスト)、パノビノスタット(同: ファリーダック)、2016年にカルフィルゾミブ(同: カイプロリス)が導入され、再発・難治性骨髄腫の治療戦略の幅が広まった。■ 放射線治療孤立性形質細胞腫や、溶骨性病変による骨痛に対しては、放射線照射が有効である。■ 支持療法骨痛の強い症例や骨病変の抑制にゾレドロン酸(同: ゾメタ)やデノスマブ(同: ランマーク)が推奨される。長期の使用にあたっては、顎骨壊死の発症に注意する。腎機能障害の予防には、十分量の水分を摂取させる。高カルシウム血症には生理食塩水とステロイドに加え、カルシトニン、ビスホスホネートを使用する。過粘稠度症候群に対しては、速やかに血漿交換を行う。4 今後の展望有望な新規薬剤として、第2世代のプロテアソーム阻害剤(イキサゾミブなど)のほか、抗体薬(elotuzumab、daratumumab、pembrolizumabなど)が開発中である。これらの薬剤の導入により、多くの症例で微少残存腫瘍(MRD)の陰性化が可能となり、生存期間の延長、ひいては治癒が得られることが期待される。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本骨髄腫学会(医療従事者向けの診療、研究情報)患者会情報日本骨髄腫患者の会(患者と患者家族の会の情報)1)Rajkumar SV, et al. Lancet Oncol.2014;15:e538-548.2)Palumbo A, et al. J Clin Oncol.2015;33:2863-2869.3)日本骨髄腫学会編. 多発性骨髄腫の診療指針 第4版.文光堂;2016.4)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン.金原出版;2013.p.268-307.5)Durie BGM, et al. Leukemia.2006.20:1467-1473.公開履歴初回2013年12月17日更新2016年10月04日

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乳児期の卵・ピーナッツ摂取でアレルギーのリスク低下/JAMA

 乳児食として、早期に卵およびピーナッツを導入すると、これらのアレルゲン食品によるアレルギー性疾患のリスクが低減することが、英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのDespo Ierodiakonou氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。アレルゲン食品の導入時期が、アレルギー性疾患や自己免疫疾患のリスクに及ぼす影響への関心が高まっている。乳児食のガイドラインは、両親にアレルゲン食品の導入を遅らせることを推奨しなくなっているが、多くの場合、早期の導入を勧めてもおらず、最近の6つのアレルゲン食品の早期導入の無作為化試験(EAT試験)では、いずれの食品でも予防効果は認められていない。導入時期の影響をメタ解析で評価 研究グループは、アレルギー性疾患および自己免疫疾患のリスクに及ぼすアレルゲン食品の導入時期の影響を評価するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国食品基準庁の助成による)。 医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Web of Science、CENTRAL、LILACS)を用いて、1946年1月~2016年3月までに報告された文献を検索した。 生後1年以内の乳児において、アレルゲン食品(牛乳、卵、魚類、甲殻類、ナッツ類[tree nuts]、小麦、ピーナッツ、大豆)の導入時期を検討し、アレルギー性疾患や自己免疫疾患、アレルギー感作との関連について報告した介入試験および観察試験を対象とした。 主要評価項目は、喘鳴、湿疹、アレルギー性鼻炎、食品アレルギー、アレルギー感作、1型糖尿病、セリアック病、炎症性腸疾患、自己免疫性甲状腺疾患、若年性関節リウマチであった。エビデンスレベルは低いが、魚類の早期導入が鼻炎を抑制 146試験の204編の論文が解析に含まれた。介入試験のうち、24件(39論文、1万3,298例)がアレルギー性疾患、5件(6論文、5,623例)は自己免疫疾患に関するものであった。また、観察試験のうち、69件(90論文、14万2,103例)がアレルギー性疾患、48件(69論文、6万3,576例)は自己免疫疾患に関するものだった。 日本の研究を含む5試験(1,915例)のメタ解析では、乳児食に早期(生後4~6ヵ月時)に卵を導入した乳児は、これより遅い時期に導入した乳児に比べ卵アレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンス(moderate-certainty evidence)が得られた(率比[RR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.87、I2=36%、p=0.009)。 卵アレルギーの発生率が5.4%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり24例(95%CI:7~35)であった。 また、2試験(1,550例)のメタ解析では、早期(生後4~11ヵ月時)にピーナッツを導入した乳児は、これより遅い時期に導入した場合に比べピーナッツアレルギーのリスクが低いことを示す、確実性が中等度のエビデンスが得られた(RR:0.29、95%CI:0.11~0.74、I2=66%、p=0.009)。 ピーナッツアレルギーの発生率が2.5%の集団における絶対リスク減少率は、1,000人当たり18例(95%CI:6~22)だった。 エビデンスの確実性は、効果の推定値の不正確性および試験の集団や介入の間接性によって、低下した。卵およびピーナッツの導入時期は、他の食品に対するアレルギーのリスクとは関連しなかった。 一方、早期の魚類導入のアレルギー感作および鼻炎の低減との関連を示す、確実性が非常に低い~低いエビデンスが確認された。グルテンの導入時期とセリアック病のリスク、アレルゲン食品の導入時期と他のアウトカムは、いずれも関連がないことを示す、確実性の高いエビデンスが得られた。 著者は、「これらの知見は、各試験の限界との関連を考慮して解釈すべきである」と指摘している。

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抗TNF薬で効果不十分の関節リウマチ、生物学的製剤が優れる/JAMA

 抗TNF薬の効果が不十分な関節リウマチ患者の治療では、TNF以外を標的とする生物学的製剤のほうが、他のTNF薬による治療よりも有効性が高いことが、フランス・ストラスブール大学病院のJacques-Eric Gottenberg氏らが行ったROC試験で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2016年9月20日号に掲載された。腫瘍壊死因子α(TNF-α)阻害薬は、メトトレキサートの効果が十分でない関節リウマチ患者のQOLを改善するが、約3分の1の患者は疾患活動性が持続し、効果は不十分とされる。これらの患者の治療選択肢の指針は確立されていない。治療医が薬剤を選択するプラグマティックな無作為化試験 ROC(Rotation or Change)は、TNF-α阻害薬の効果が不十分な関節リウマチ患者において、TNF以外を標的とする生物学的製剤と、他の抗TNF薬の有効性を比較するプラグマティックな非盲検無作為化試験(フランス保健省の助成による)。 患者登録は、2009年12月~2012年8月にフランスの47施設で行われた。対象は、年齢18歳以上、びらんを認め、疾患活動性スコア(DAS28-ESR)が≧3.2(範囲:0~9.3)であり、抗TNF薬の効果が十分でない関節リウマチ患者であった。 被験者は、TNF以外を標的とする生物学的製剤(non-TNF)に切り換える群または前治療薬とは異なる抗TNF薬(2nd anti-TNF)を投与する群に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 non-TNF群の薬剤は、アバタセプト、リツキシマブ、トシリズマブであり、2nd anti-TNF群にはアダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ゴリムマブが含まれた。各群の薬剤の選択は、治療医の裁量とした。 主要評価項目は、24週時の欧州リウマチ学会議(EULAR)の反応基準で良好(good:DAS28-ESRが1.2以上低下し、3.2以下となる)または中等度(moderate:同0.6以上低下し、5.1以下となる)の達成率であった。主要評価項目:69 vs.52%、他の抗TNF薬も約半数に有効 300例が登録された。両群に150例ずつが割り付けられ、146例ずつが解析の対象となった。ベースラインの平均年齢は57.1歳(SD 12.2)、女性が83.2%を占めた。 罹病期間中央値は10.0年(IQR:4.0~18.0)、合成DMARDの前投与数中央値は2.0(IQR:1.0~3.0)であり、DAS28-ESRは5.1(SD 1.1)、健康評価質問票(HAQ)の機能障害スコアは1.3(SD 0.6)であった。 24週時のEULAR反応基準で良好/中等度の達成率は、non-TNF群が69%(101/146例)であり、2nd anti-TNF群の52%(76/146例)に比べ有意に優れた(欠測値データ補完[各群4例ずつ]によるオッズ比[OR]:2.06、95%信頼区間[CI]:1.27~3.37、p=0.004、絶対差:17.2%、95%CI:6.2~28.2%)。 24週時のDAS28-ESRのベースラインからの変化の平均値は、non-TNF群が2nd anti-TNF群よりも大きく(補正平均差:-0.43、95%CI:-0.72~-0.14、p=0.004)、12週時(-0.40、-0.70~-0.10、p=0.008)、52週時(-0.38、-0.69~-0.08、p=0.01)にも有意差が認められた。 低疾患活動性(DAS28-ESR<3.2)の達成率は、24週時(45 vs.28%、OR:2.09、95%CI:1.27~3.43、p=0.004)、52週時(41 vs.23%、2.26、1.33~3.86、p=0.003)とも、non-TNF群が2nd anti-TNF群に比べ良好であった。 また、寛解(DAS28-ESR<2.6)の達成率も、non-TNF群が2nd anti-TNF群よりも優れた(12週時:p=0.02、52週時:p=0.008)。一方、HAQには両群間に有意な差はなかった(12週時:p=0.09、24週時:p=0.44、52週時:p=0.75)。 重篤な有害事象は、non-TNF群が16例(11%)に18件、2nd anti-TNF群は8例(5%)に13件発現した。重篤な感染症は、両群とも7例(5%)に認められた。 著者は、「治療効果はnon-TNF群のほうが高かったが、2nd anti-TNF群でも約半数の患者で臨床的改善効果が得られた」としている。

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高齢者の視力低下、認知障害と関連

 視力障害と認知障害は共に高齢者のQOLを左右する重要な問題であるが、両者には関連があるのだろうか。奈良県立医科大学眼科学教室の峯 正志氏らは、奈良県在住の65歳以上の高齢者を対象としたコホート研究「藤原京スタディ」を行い、認知障害は視力障害と有意に関連していることを明らかにした。著者は、「認知障害のリスクを減らすためには良好な視力を維持することが重要である」とまとめている。BioResearch Open Access誌2016年8月1日号掲載の報告。 藤原京スタディは、2007年に初回健康調査が実施された後、年1回のアンケート調査と5年ごとの追跡検診が予定されているが、眼科検診は2012年に初めて実施された。 今回研究グループは、眼科検診と認知機能検査(Mini Mental State Examination:MMSE)の両方を受けた68歳以上の計2,818例(平均76.3±4.8歳)について解析した。評価に際して、軽度視力障害は最高矯正視力(BCVA)が0.2logMAR超、認知障害はMMSEが23ポイント以下と定義した。 主な結果は以下のとおり。・左右眼の良いほうの平均BCVAは-0.02±0.13logMARで、軽度視力障害ありに分類されたのは6.6%であった。・平均MMSEスコアは27.3±2.3で、5.7%が認知障害ありと判定された。・認知障害または視力障害を有する人の割合は年齢に伴って増加し、視力とMMSEとの間に有意な関連が認められた(r=-0.10、p<0.0001)。・軽度視力障害を有する人は、有さない人と比較して、認知障害を有するリスクが2.4倍高かった(年齢、性別および教育期間で補正後のオッズ比:2.4、95%信頼区間[CI]:1.5~3.8、p<0.001)。

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心筋梗塞へのβ遮断薬、早期投与で死亡リスク半減/BMJ

 心不全や左心室機能不全を認めない急性心筋梗塞の患者に対し、入院後48時間以内にβ遮断薬の投与を始めることで、30日死亡リスクは半分以下に減少することが示された。一方で、退院時のβ遮断薬服用は1年死亡リスクの低減にはつながらず、1年後のβ遮断薬服用も5年死亡リスクの低減効果はないことも明らかになった。フランス・Georges Pompidou European HospitalのEtienne Puymirat氏らが、患者2,679例について行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、BMJ誌2016年9月20日号で発表した。フランス国内223ヵ所の医療センターで2,679例を追跡 研究グループは、2005年末時点の急性ST上昇・非ST上昇型心筋梗塞の全仏レジストリを基に、フランス国内223ヵ所の医療センターで治療を受け、心不全や左心室機能不全の認められない2,679例の急性心筋梗塞患者について、前向きコホート試験を行った。 早期(入院48時間以内)のβ遮断薬投与開始と30日死亡率、退院時β遮断薬投与の有無と1年死亡率、1年時点のβ遮断薬投与の有無と5年死亡率の関連について、それぞれ検証を行った。1年時点スタチン継続投与は5年死亡リスクを半減 早期にβ遮断薬の投与を開始した人の割合は、77%(2,679例中2,050例)、退院時に処方されていた人の割合は80%(2,217例中1,783例)、1年時点で服用していた人の割合は89%(1,383例中1,230例)だった。 30日死亡率についてみると、β遮断薬の早期投与は、同発症率を半分以下に低減した(補正後ハザード比:0.46、95%信頼区間[CI]:0.26~0.82)。 一方、退院時にβ遮断薬を処方された人の、そうでない人に対する1年死亡率の補正後ハザード比は、0.77(95%CI:0.46~1.30)で有意な低下は認められなかった。また、1年時点のβ遮断薬服用についても、5年死亡率の低下にはつながっていなかった(補正後ハザード比:1.19、95%CI:0.65~2.18)。傾向スコア分析および感度解析でも、同様の結果が示された。 なお、1年時点でスタチンを継続投与していた人は、そうでない人に比べ、5年死亡率が半分以下に減少した(補正後ハザード比:0.42、95%CI:0.25~0.72)。

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揚げ物はうつ病の天敵か:日医大

 感情の調整に対して、長鎖n-3、n-6系多価不飽和脂肪酸(LC n-3/n-6 PUFA)は重要な役割を担っている。以前の著者らの研究では、LC n-3 PUFAが豊富な魚類の消費量とうつ病へのレジリエンス(逆境に直面してストレスに対処する能力)との関連が報告されていた。魚類の高摂取は日本の伝統的な食事パターンであるが、現在の日本人の食事パターンは西欧化している。西洋食は、一般的に揚げ物に使用される植物油によるLC n-6 PUFAを多く含有し、うつ病リスクと関連する。日本医科大学 多摩永山病院の吉川 栄省氏らは、揚げ物の消費量とうつ病へのレジリエンスとの関連を検討した。Lipids in health and disease誌2016年9月15日号の報告。 対象は、日本企業に勤務する715人。抑うつ症状の測定には、うつ症状をうつ病自己評価尺度(CES-D)、レジリエンスを14-item Resilience Scale(RS-14)を用いて評価した。魚や揚げ物の摂取頻度は、自己記入式食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いて調査した。患者背景要因の調整、身体活動や魚類の摂取頻度は、Preacher and Hayesブートストラップ法を用いた回帰分析を使用した。 主な結果は以下のとおり。・揚げ物の消費量とCES-D合計スコアとの関連は有意であった(path c、B=0.72、p<0.01)。・揚げ物の消費量とRS-14合計スコアとの関連は有意であった(path a、B=-1.73、p<0.01)。・RS-14合計スコアとCES-D合計スコアとの関連も有意であった(path b、B=-0.35、p<0.01)。・RS-14合計スコアで調整した場合、揚げ物の消費量とCES-D合計スコアとの間に有意な関連はみられなかった。・ブートストラップ法により、RS-14スコアを介して揚げ物の消費量とCES-Dスコアが間接的に有意な関係にあることが示された(BCa信頼区間:0.34~0.92;95%信頼区間)。 著者らは「本検討により、揚げ物の消費量とうつ病への低レジリエンスとの関連が認められた。うつ病へのレジリエンスや予防のために、さらなる栄養介入研究が必要である」としている。関連医療ニュース 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か 日本食は認知症予防によい:東北大

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タバコとアトピー性皮膚炎、受動/能動喫煙いずれも関連

 タバコの煙は、アトピー性皮膚炎(AD)の危険因子かもしれない。米国・ノースウェスタン大学のRobert Kantor氏らのシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、能動喫煙および受動喫煙によるタバコの煙への曝露は、AD有病率の増加と関連していることが明らかとなった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年8月16日号掲載の報告。 研究グループは、アトピー性皮膚炎とタバコの煙への曝露との関連について検討する目的で、MEDLINE、EMBASE、ScopusおよびCochrane Libraryを用い1823~2015年に発表された論文を検索し、観察研究86報のシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。 エビデンスの質はNewcastle-Ottawa Scale(NOS)にて評価し、メタ解析はランダム効果モデルを用いて推定プールオッズ比(OR)を算出して行った。サブセット解析は、年齢(小児、成人)、地域、試験デザイン(横断、縦断)、研究の規模(<5,000、≧5,000)、研究の質(NOSスコア<6、≧6)、および喫煙量(少量、多量)に関して行われた。 主な結果は以下のとおり。・ADの診断は、能動喫煙(OR:1.87、95%信頼区間[CI]:1.32~2.63)および受動喫煙(OR:1.18、95%CI:1.01~1.38)でOR高値の関連が認められた。・一方、妊娠中における母親の喫煙(OR:1.06、95%CI:0.80~1.40)とは関連していなかった。・能動喫煙とADとの関連は、小児・成人、地域、研究の規模にかかわらず有意なままであった。ただし、研究はすべて横断研究でありNOSスコアは6以上であった。・受動喫煙については、小児・成人、横断研究、南部/中央アメリカおよびアフリカで行われた研究、研究の規模が5,000未満、NOSスコア6未満の研究において、ADとの関連が認められた。

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心房細動患者の血栓塞栓症や大出血予防に重要なこと

 非弁膜性心房細動患者の血栓塞栓症および大出血の予防には、高血圧症の既往歴やベースライン時の血圧よりも血圧コントロールが重要であることが、わが国のJ-RHYTHMレジストリの事後解析で示された。Journal of the American Heart Association誌2016年9月12日号に掲載。 医療機関158施設において連続して登録した外来の心房細動患者7,937例のうち、非弁膜症性心房細動7,406例(男性70.8%、69.8±10.0歳)を、2年間もしくはイベントが発生するまで追跡した。「収縮期血圧140mmHg以上」「拡張期血圧90mmHg以上」「高血圧症の既往歴あり」「降圧薬使用」のうち1つ以上あれば高血圧症と定義した。また、イベント発生に最も近い時点もしくは追跡期間終了時の収縮期血圧によって、患者を四分位に分け(Q1:114mmHg未満、Q2:114~125mmHg、Q3:126~135mmHg、Q4:136mmHg以上)、血栓塞栓症と大出血のオッズ比を検討した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧症は、大出血の独立した危険因子であった(ハザード比 1.52、95%CI 1.05~2.21、p=0.027)が、血栓塞栓症の危険因子ではなかった(ハザード比 1.05、95%CI 0.73~1.52、p=0.787)。・CHA2DS2-VASCスコア・ワルファリン使用・抗血小板薬使用における調整後の血栓塞栓症と大出血のオッズ比は、Q1よりQ4で有意に高かった(血栓塞栓症:オッズ比 2.88、95%CI 1.75~4.74、p<0.001、大出血:オッズ比 1.61、95%CI 1.02~2.53、p=0.041)。収縮期血圧136mmHg以上は、血栓塞栓症および大出血の独立した危険因子であった。

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循環器内科 米国臨床留学記 第13回

第13回 米国でフェローに挑戦する方へのアドバイス(読者からの質問 Part 2)前回に引き続き、読者の方からの質問にお答えします。米国留学を検討されている方の参考になれば幸いです。質問:日本人が米国でフェローを考える場合に気をつけたほうがよいことはありますか。フェローから始める難しさまれなケースではありますが、フェローから始めることも可能です。実際、私の場合も、内科のレジデンシーや循環器内科のフェローシップを経ずに不整脈のフェローから始めました。レジデンシーを行っていない分、薬剤名やシステムがよくわからず、英語でもかなり苦労しました。幸い、日本で不整脈のトレーニングを修了していたため、不整脈の知識だけは他のフェローよりもあったことに加え、教授をはじめとする周囲のあたたかい理解とサポートのおかげで何とか乗り切ることができました。フェローから始める場合、専門分野で周囲より優れた知識や技術があれば、英語力などのマイナス面を補うことができます。英語に関して、仕事をこなすのには問題ありませんが、私は今でも苦労しています。勤勉なイメージがある日本人日本人が勤勉だと思われているのは、いろいろな分野の先達の努力のおかげだと感じていますし、日本人であることを本当に誇りに思っています。米国で、日本の医学部を卒業した日本人医師は各分野で数えるほどしかいません。外国医学部卒業生(FMG:Foreign Medical Graduates)が米国でレジデンシーを始めるには、ECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)を取得する必要があります。(ECFMGは、FMGが米国でレジデントやフェローの研修を行うための資格であり、医師免許ではありません。FMGが米国の各州で医師免許を取得するには、レジデンシーを2年行うことが必要です)。2015年のデータでは、ECFMGを取得している日本人が63人(FMG全体のわずか0.6%、インドは1,000人以上)、このうち内科のレジデンシーで実際にポジションを獲得したのが14人でした。インド人の475人という数字と比べると、日本人医師の数ははるかに少ないのですが、日本人と働いた経験がある米国人や外国人医師の多くは、「日本人は勤勉だ」と口を揃えて言います。シフト制と“patient ownership”日本と米国では、患者に対する責任の考え方が大きく異なります。私は初期研修(東京都済生会中央病院)の教育のおかげで、患者に対する責任感を自然と身に付けることができました。患者の状態が悪いと家に帰れないこともありましたが、良い経験だったと感謝しています。米国では、こういった事態に伴うレジデントの過労を防止するためにシフト制が発展しました。レジデントが24時間以上続けて働くことはありません。燃え尽き症候群や集中力低下によるミスを防ぐなど良い面もあるのですが、シフト制を重視するあまり、”patient ownership“(自分の患者であるという意識)という考えが失われてしまったように感じます。もちろん、なかには日本人医師と変わらない感覚で働く医師もいるのですが、受け持ちの患者に何が起きようが自分の勤務時間が終わったら帰宅するという米国のレジデントに、日本人の感覚としては違和感を覚えます。年配の米国人医師もこのことを嘆いていましたので、おそらくこれは最近の若い医師にとくに当てはまるのでしょう。若手の先生が米国へ研修に行かれるなら、日本で身に付けた受け持ちの患者に対する責任感を忘れずに仕事をすることをお勧めします。シフト制が定着しているとはいえ、そういった姿勢は必ず評価されると思います。

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前立腺がん、4つの治療法を患者報告アウトカムで評価/NEJM

 限局性前立腺がん治療後の排尿・腸・性機能の重症度、回復状況および機能低下のパターンやQOLは、治療法によって異なることが明らかにされた。英国・ブリストル大学のJ. L. Donovan氏らが、PSA監視療法、根治的前立腺摘除術および内分泌療法併用根治的放射線療法の有効性を検証したProstate Testing for Cancer and Treatment(ProtecT)試験の患者報告アウトカムを分析し、報告したもので、これまで、患者報告アウトカムを用いて臨床的限局性前立腺がんに対する治療効果を評価したデータはあまりない。NEJM誌オンライン版2016年9月14日号掲載の報告。限局性前立腺がん患者約1,600例で、6年間の患者報告アウトカムを解析 ProtecT試験は、1999~2009年にPSA検査で限局性前立腺がんと診断された男性1,643例を、PSA監視療法群(545例)、根治的前立腺摘除術群(553例)、ネオアジュバントアンドロゲン除去療法(内分泌療法)併用放射線療法群(545例)に無作為に割り付け、追跡期間中央値10年時の前立腺がん死亡を主要評価項目として各治療法を比較検討した臨床試験である。 今回、研究グループは、事前に定義された副次評価項目である患者報告アウトカムについて解析した。患者には診断前、無作為化後6ヵ月時、12ヵ月時、その後は毎年、質問票に記入してもらい、4領域(排尿機能、腸機能、性機能、不安・うつ・健康状態を含む健康関連QOL)について評価した。がん関連QOLの評価は5年時のみとし、6年間のデータについてintention-to-treat解析を行った。追跡期間中の質問票完遂率は、ほとんどの項目で85%以上であった。それぞれ治療が与える術後への影響は異なることが明確に 前立腺摘除術群では、性機能および排尿機能に対する悪影響が最も大きく、わずかに回復したものの試験期間を通して他の治療群に比べ悪影響が持続した。腸機能は変わらなかった。 内分泌療法併用放射線療法群では、性機能に対する悪影響が6ヵ月時で最大となったものの多少回復し、その後は安定した。他の治療群と比較すると、6ヵ月時に腸機能の低下が認められたが、血便頻度の増加を除きそれ以降腸機能は回復した。排尿調節にはほとんど影響がなかった。他の治療群と比較すると排尿症状スコアおよび夜間頻尿が6ヵ月時に悪化したが、その後はほとんど回復し、12ヵ月後は他の治療群と同程度であった。 監視療法群では、性機能および排尿機能が徐々に低下した。腸機能は変化しなかった。 QOLへの影響は、各機能の変化を反映していたが、不安・うつ・健康状態を含む健康関連QOL、ならびにがん関連QOLに関する評価では、治療群間で有意差は認められなかった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第32回

第32回:偶然肺結節を見つけたときには?監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 日本における悪性腫瘍による死亡の第1位は肺がんです。肺がんに対しては対策型検診として、40歳以上の男女に対する胸部単純X線撮影と、高危険群に対する喀痰細胞診による早期発見の努力が推進されてきました。CTによる肺がん検診は、日本では任意型検診として、受診者の自由意志により行われています。今回は偶然発見された孤発性肺結節の評価について、米国での対応を見てみましょう。 ちなみに日本CT検診学会から「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方第3版」2) 、「低線量マルチスライスCTによる肺がん検診:肺結節の判定と経過観察図」3) というものが公開されておりますので併せてご覧いただき、参考にしてください。 タイトル:孤立性肺結節の評価Evaluation of the Solitary Pulmonary Nodule以下、American family physician 2015年12月15日号1) より【孤立性肺結節の定義】 直径3cmまでの境界明瞭な単一の円形の不透明な領域で、含気肺によって完全に囲まれているもの。 直径3cmよりも大きい肺病変は肺腫瘤と呼ばれ、悪性の可能性を考慮しなければならない。 悪性腫瘍のリスクが高い喫煙者のがんスクリーニングでは、孤立性肺結節の有病率は8%~51%であった。【結節の特徴】 悪性のリスク:最大径20mm以上、倍加時間(Tumor Doubling Time)400日以内、非対称の石灰化を伴う病変、上葉に位置する病変、棘形成病変。 良性の可能性:最大径5mm以下、2年間サイズが不変、境界明瞭、中心または同心円パターンの石灰化結節。【メイヨークリニックからの最も一般的に使用されるモデル】年齢、胸郭外癌の病歴(結節検出5年以内)、結節直径、棘形成の有無、喫煙歴、結節位置(上葉か否か):6つの独立した予測因子を用いて、悪性腫瘍の確率を推定(計算方法はこちらを参照)。【フォローアップ評価】 外科的切除や非外科的な生検は、連続的な画像評価ではっきりと増大している充実性もしくは一部が充実性の孤発性肺結節の患者で実施すべきである。 少なくとも2年間安定している充実性の孤発性肺結節には、通常さらなる評価を必要としない。 直径8~30mmの結節に関しては、悪性リスクが低ければCTフォロー、リスクが中等度ならPET-CTで評価し必要に応じて生検や切除、リスクが高ければ転移の有無を確認した上で切除が検討される。直径8mm未満の場合には、大きさに応じて一定間隔でのCT画像フォローとなる。実際にはそれぞれの悪性のリスクを見積もり、リスクに応じた対応、患者の価値観などに応じて個別対応が求められる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Kikano GE, et al. Am Fam Physician. 2015;92:1084-1091. 2) 「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第3版」日本CT検診学会 肺がん診断基準部会編 3) 「低線量マルチスライスCTによる肺がん検診:肺結節の判定と経過観察図」日本CT検診学会 肺がん診断基準部会編

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その後のオンライン英会話【Dr. 中島の 新・徒然草】(137)

百三十七の段 その後のオンライン英会話試合前の恐怖がボクサーを練習に駆り立てるのだ、と耳にしたことがあります。実は私もオンライン英会話のレッスン前に恐怖を感じております。たとえば、フィリピン人講師相手にこんな話の展開になったらどうすべきでしょうか。講師「ハ~イ、今日1日どうだった?」中島「大変な1日でした」講師「何があったの?」中島「家のトイレが壊れてしまって」講師「あらら」中島「『小』のほうは風呂でして流すにしても」講師「はあ?」中島「『大』の場合はコンビニトイレですよ」講師「あらまあ」中島「幸い、家の近所に何軒かあるんです」講師「それは大変ね」ここで「トイレ」を bath room と表現すると、「風呂」も bath room なので混乱します。違いをうまく表現するためには、前者を toilet とし、後者を shower room とすれば良さそうですね。「風呂」を bath-tub と言ってしまうと、ちょっと怖い気もします。では、トイレが「壊れた」ってのは何と表現すべきなのでしょうか?broken というと、ハンマーか何かで物理的に壊したみたいに誤解されるかも。水を流すと排水管から漏れて床がビショビショになるわけですから、機能的なものです。そうすると out of order がいいですね。調べれば調べるほど、新たな恐怖が湧き上ってきます。「水を流す」は flush かな。「排水管」は drain pipe。「漏れる」は leak。「ビショビショ」は wet かも。恐怖のタネは次から次へと湧き上ってきます。1つずつ考えたり調べたりしているうちに、アッという間にレッスンの時間です。そして本番。中島「女房が出張中にトイレが壊れてしまって」講師「何よ、それ!」中島「仕方なく風呂でする羽目になりましてね」講師「ギャッハッハ!」「『大』のほうは近くのコンビニで」と言おうとした時、肝心の「大」を調べていなかったことに気付きました!中島「う~ん、う~ん」講師「どうしたの」こうなったら伝家の宝刀、医学用語を使うしかありません。中島「stool というか、defecation というか」講師「ギャッハッハ!」中島「私の英語、通じてますか?」講師「わかるわよ、もちろん!」ああ良かった、通じてた!中島「そっちのほうは近所のコンビニで」講師「それ、無茶苦茶不便じゃん」中島「そうなんですよ」敬虔なカソリック教徒であるはずのフィリピン人は、皆、やたら明るい!レッスンの25分間、トイレの話題で盛り上がってしまいました。とはいえ、体は正直です。レッスンが終わった時には全身汗だくでした。ということで最後に1句役立てろ レッスン前の あの恐怖

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高齢者の遅発性うつ病に影響する要因とは:東大

 これまでのうつ病に対する小児期の社会経済的地位(SES)の影響に関する研究は、欧米諸国の中年成人に焦点が当てられてきた。東京大学の谷 友香子氏らは、小児期SESが高齢者のうつ病発症に影響するかを検討した。The American journal of geriatric psychiatry誌2016年9月号の報告。 日本老年評価調査のデータを用いた前向きコホート研究。2010年のベースライン時点でうつ病でない65歳以上1万458人を対象に分析を行った。対象者は、基準に従って15歳時の小児期SESを評価した。ログリンク、既知および2013年までのうつ病発症リスク評価の潜在的なリスク因子による調整により二項ロジスティック回帰分析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、2013年までの新規うつ病発症率は13.9%であった。・年齢、性別で調整した後、低小児期SESは、うつ病発症と正の相関が認められた(ARR:1.44、95%CI:1.23~1.69)。・教育により調整した際、この関連は減少した(ARR:1.33、95%CI:1.13~1.57)。・しかし、成人期SES調整後、現在の疾患状態、健康行動、社会的関係は有意に残存した(ARR:1.27、95%CI:1.08~1.50)。・その関係は、75歳以上の高齢者よりも65~74歳の高齢者でより強かった。 著者らは「日本人高齢者における遅発性うつ病発症には、おそらく第2次世界大戦後の貧困による低小児期SESが関連していると考えられる。うつ病に対する小児期SESの影響は75歳以上では弱く、これは日本人高齢者のサバイバル効果を示唆している」とまとめている。関連医療ニュース うつ病の治療転帰を予測するには、臨床的要因 < 社会経済的要因 抑うつ症状は、がん罹患有無に関係なく高齢者の死亡に関連 なぜ高齢期うつ病は寛解率が低いのか

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重症/最重症COPD、3剤配合吸入薬の臨床効果/Lancet

 重症/最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入コルチコステロイド(ICS)+長時間作用型β2受容体刺激薬(LABA)+長時間作用型ムスカリン受容体拮抗薬(LAMA)の配合薬の吸入療法は、ICS+LABAよりも良好な臨床ベネフィットをもたらすことが、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏らが実施したTRILOGY試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。GOLDガイドラインは、COPDの増悪歴のある患者には、LAMAまたはICS+LABAを推奨しているが、これらを行っても多くの患者が増悪を来すため、実臨床ではICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へと治療が強化されることが多い。このレジメンを簡便化した、プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)+フマル酸フォルモテロール(FF)+グリコピロニウム臭化物(GB)の配合薬の開発が進められている。3剤配合薬の有用性を無作為化試験で評価 TRILOGYは、重症/最重症COPD患者において、BDP/FF/GBとBDP/FFの安全性と有効性を比較する二重盲検実薬対照無作為化試験(Chiesi Farmaceutici SpA社の助成による)。 対象は、年齢40歳以上、気管支拡張薬投与後の1秒量(FEV1)<50%、%FEV1<0.7で、過去1年以内に中等症~重症のCOPD増悪を1回以上発症し、COPDアセスメントテスト(CAT)スコア≧10点、ベースライン呼吸困難指数(BDI)スコア≦10点であり、スクリーニングの前に、ICS+LABA、ICS+LAMA、LABA+LAMA、LAMAによる2ヵ月以上の治療歴がある症候性COPD患者であった。 被験者は、全例が2週間の導入期間にBDP/FFの投与を受けたのち、BDP/FF/GBにステップアップする群またはBDP/FFを維持する群(加圧定量噴霧式吸入器[pMDI]を用いて1日2回吸入)に無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。 主要評価項目は、26週時の投与前(朝)FEV1および投与後2時間のFEV1のベースラインからの変化、呼吸困難変化指数(TDI)スコアの3つとした。副次評価項目は、52週時の中等症~重症のCOPD増悪の割合などであった。 2014年3月21日~2016年1月14日までに、14ヵ国159施設(1次医療機関:18、2次医療機関:99、3次医療機関:28、専門研究機関:14)に、1,368例が登録された。BDP/FF/GB群に687例、BDP/FF群には681例が割り付けられた。呼吸困難の改善効果には差がない 平均年齢は、BDP/FF/GB群が63.3歳、BDP/FF群は63.8歳で、男性がそれぞれ74%、77%を占めた。現在喫煙者は両群とも47%、COPD初回診断後の経過期間は両群とも7.7年であった。 26週時の投与前FEV1は、BDP/FF/GB群がBDP/FF群よりも0.081L改善し(95%信頼区間[CI]:0.052~0.109、p<0.001)、投与後2時間FEV1はBDP/FF/GB群が0.0117L改善した(95%CI:0.086~0.147、p<0.001)。これらのBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(いずれも、p<0.001)。 26週時の平均TDIスコアは、BDP/FF/GB群が1.71、BDP/FF群は1.50であり、両群に有意な差は認めなかった(群間差:0.21、95%CI:-0.08~0.51、p=0.160)。 QOL評価では、26週時のSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアの臨床的に重要な改善(ベースラインからの4単位以上の低下)の達成率は、BDP/FF/GB群が47%と、BDP/FF群の36%に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.52、95%CI:1.21~1.91、p<0.001)。このBDP/FF/GB群の優位性は、52週時も維持されていた(43 vs.36%、OR:1.33、95%CI:1.06~1.66、p=0.014)。 中等症~重症増悪の補正年間発生頻度は、BDP/FF/GB群が0.41と、BDP/FF群の0.53に比べ有意に23%少なかった(率比:0.77、95%CI:0.65~0.92、p=0.005)。 治療関連有害事象の発現率は、BDP/FF/GB群が54%、BDP/FF群は56%であった。BDP/FF/GB群で、1例に重篤な治療関連有害事象(心房細動)が認められた。 著者は、「BDP/FF/GBは、良好な気管支拡張作用を発揮し、呼吸困難の改善効果は有意ではなかったものの、健康関連QOLおよび中等症~重症の増悪の予防効果は有意に優れた」とまとめ、「本試験は、単一の吸入器を用いた、ICS+LABAからICS+LABA+LAMAの3剤併用療法へのステップアップ治療の、臨床ベネフィットのエビデンスをもたらした初めての研究である」としている。

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中枢性睡眠時無呼吸、経静脈的神経刺激デバイスが有用/Lancet

 経静脈的神経刺激デバイスは、中枢性睡眠時無呼吸の重症度を軽減し、忍容性も良好であることが、米国・Advocate Heart InstituteのMaria Rosa Costanzo氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2016年9月3日号(オンライン版2016年9月1日号)に掲載された。中枢性睡眠時無呼吸は、呼吸調節中枢からの神経細胞アウトプットの一時的な遮断によって発症し、呼吸刺激の喪失や気流停止を来す。心血管や脳血管疾患など広範な疾患にみられ、酸化ストレスを増強して基礎疾患の進展を促し、不良な転帰をもたらす可能性が示唆されている。remedeシステムと呼ばれる神経刺激療法は、横隔膜を収縮させる神経を経静脈的に刺激して正常呼吸に近づける埋め込み型デバイスである。デバイスの安全性と有効性を無作為化対照比較試験で評価 研究グループは、種々の原因による中枢性睡眠時無呼吸における埋め込み型経静脈的神経刺激デバイスの安全性と有効性を評価する無作為化対照比較試験を行った(Respicardia Inc社の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、医学的に安定した状態にあり、ガイドラインが推奨する適切な治療を受け、デバイスの埋め込み術が忍容可能であり、試験要件に応じる意思と能力がある患者で、終夜睡眠ポリソムノグラフ検査で測定した無呼吸低呼吸指数(AHI)が≧20イベント/時の者とした。 被験者は、治療群または対照群に無作為に割り付けられ、すべての患者にデバイスが埋め込まれた。神経刺激装置は、左または右胸部に埋め込まれ、刺激用リードは左心膜横隔静脈または右腕頭静脈に留置された。 治療群は、埋め込み後1ヵ月の受診時にデバイスを作動させ、その6ヵ月後に有効性の主要エンドポイントの評価が行われた。対照群は、この評価が終了するまで、6ヵ月間デバイスを作動させず、評価終了後に作動させた。 有効性の主要エンドポイントは、治療群における6ヵ月時のAHIのベースラインから≧50%の低下とした。安全性の主要エンドポイントは、12ヵ月時の手技・デバイス・治療関連の重篤な有害事象であった。 2013年4月17日~2015年5月28日までに、ドイツの6施設、ポーランドの1施設、米国の24施設に151例が登録された。治療群に73例、対照群には78例が割り付けられ、有効性の主要エンドポイントの評価はそれぞれ68例、73例(ITT集団)で行われた。覚醒反応指数やREM睡眠、QOL、眠気も改善 全体の平均年齢は65(SD 13)歳、男性が89%、白人が95%で、BMIは31.1(SD 6.0)、心拍数は74.1(SD 13.3)拍/分、血圧は124.5(SD 17.9)/74.9(SD 11.0)mmHg、呼吸数は17.4(SD 2.7)回/分であり、AHIは46.2(SD 18.2)イベント/時であった。64例(42%)に、心デバイスが埋め込まれていた。 デバイスの埋め込みは147例(97%)で成功し、解剖学的問題により4例(両群2例ずつ)では埋め込みができなかった。埋め込み術の平均所要時間は2.7(SD 0.8)時間だった。 6ヵ月時に、AHIのベースラインから≧50%の低下を達成した患者の割合は、治療群が51%(35/68例)と、対照群の11%(8/73例)に比べ有意に良好であった(群間差:41%、95%信頼区間[CI]:25~54、p<0.0001)。 PP集団における有効性の副次エンドポイント(中枢性無呼吸指数[CAI]、AHI、覚醒反応指数、睡眠に占めるREM睡眠の割合、患者全般評価[PGA]の健康関連QOLの著明/中等度改善の患者割合、≧4%酸素飽和度低下指数[ODI4]、エプワース眠気尺度[ESS]スコア)のベースラインからの平均変化はすべて、治療群が対照群よりも有意に優れた。 12ヵ月時に、全体の91%(138/151例)では重篤な手技・デバイス・治療関連有害事象を認めなかった。重篤な関連有害事象の発現率は、治療群が8%(6/73例)、対照群は9%(7/78例)であった。 7例が死亡したが、いずれも手技・デバイス・治療とは関連がなかった。このうち4例(両群2例ずつ)は、デバイスが治療群でのみ作動し、対照群では作動していない初回受診から6ヵ月の間に死亡し、3例は全患者が神経刺激療法を受けている6~12ヵ月の間に死亡した。 治療群の27例(37%)が、重篤ではない治療関連有害事象を報告し、このうち26例(36%)はシステムプログラムの簡単な再調整で解決したが、1例(1%)は解決しなかった。 著者は、「このデバイスは、夜間に自動的に作動するため、患者のアドヒアランスの影響を受けず、中枢性睡眠時無呼吸の新たな治療アプローチとなる可能性がある」としている。

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亜急性硬化性全脳炎〔SSPE : subacute sclerosing panencephalitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis: SSPE)は、1934年Dawsonにより急速進行する脳炎として初めて報告された。この疾患は、麻疹に感染してから数年の潜伏期間を経て発症する。発病後は数ヵ月から数年の経過(亜急性)で神経症状が進行し、病巣の性状はグリオーシス(硬化)であり、全脳を侵すことにより、亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる。このように潜伏期間が長く、緩徐に進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼び、ほかにはJCウイルスによる進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy: PML)が知られている。根本的治療法は確立されておらず、現在でも予後不良の疾患である。■ 疫学わが国での発症者は、麻疹ワクチンが普及する以前は年間10~15人程度であったが、麻疹ワクチン普及後は減少し、現在は年間5~10人程度となっている。男女比は2 : 1でやや男性に多く、潜伏期間、症状の発症とも女性と比較すると長く、遅くなっている。SSPEの発症年齢は平均12歳で、20代をピークに10~30歳代で96%を占める。麻疹ワクチンによるSSPEの発症は認められておらず、SSPE発症には直接的な麻疹ウイルス(MV)感染が必要であるため、発症予防には麻疹への感染予防が重要であるが、わが国では他の先進国に比べて麻疹ワクチンの接種率が低く、接種率向上が必要である。■ 病因SSPEの発症のメカニズムは現在まで十分には判明していないが、発症に関与する要因として、ウイルス側のものと宿主側のものが考えられている。1)ウイルス側の要因MVの変異株(SSPEウイルスと呼ぶ)が、中枢神経に持続感染することで起こる。SSPEウイルスは野生のMVと比較すると、M遺伝子やF遺伝子の変異が生じている。M遺伝子は、ウイルス粒子形成とカプシドからの粒子の遊離に重要なMタンパク質をコードし、Mタンパク質機能不全のため、SSPEウイルスは、感染性ウイルス粒子を産生できない。そのため隣接する細胞同士を融合させながら、感染を拡大していく。F遺伝子は、エンベロープ融合に関与するFタンパク質をコードし、一般にはSSPEウイルスはFタンパク質の膜融合が亢進しており、神経親和性が高くなっている。2)宿主側の要因幼少期にMV初感染を受けると免疫系や中枢神経系が十分に発達していないため、MVの脳内での持続感染が起こりやすく、SSPE発症リスクが上がる。ほかにSSPE発症に関わる遺伝的要因として、これまでにIL-4遺伝子多型とMxA遺伝子多型が報告されている。IL-4は、ヘルパーT細胞のTh1/Th2バランスをTh2(抗体産生)側に傾けるサイトカインで、SSPE患者ではIL-4産生が多いタイプの遺伝子多型を持つことが多いために、IL-4産生が亢進してTh2側に傾き、細胞傷害性T細胞の活性が抑えられて、MVの持続感染が起こりやすくなっていると考えられている。また、SSPE患者はインターフェロンによって誘導され、細胞内でのウイルス増殖を抑える機能を持つ、MxAの産生が多くなる遺伝子多型を持つことも知られている。MxA産生が多いと、中枢神経系のMV増殖が抑制され、MVに感染した神経細胞が免疫系から認識されにくくなり、中枢神経系での持続感染が起こりやすくなると考えられている。■ 症状と特徴初発症状として、学校の成績低下、記憶力低下、行動の異常、性格の変化があり、その後、歩行障害、ミオクローヌス、痙攣、自律神経症状、筋固縮を来し、最終的には無言・無動となり、死に至ることが多い。これらの症状の分類には、Jabbourが提唱した臨床病期分類が一般的に用いられる。■ Jabbourの分類第1期精神神経症状性格変化(無関心、反抗的)、学力低下、行動異常など第2期痙攣および運動徴候痙攣のタイプは全身強直発作、失神発作、複雑部分発作など運動徴候として運動機能低下、不随意運動(SSPEに特徴的な四肢の屈曲や進展を反復するミオクローヌス)第3期昏睡に至る意識障害の進行、筋緊張の亢進、球症状の出現による経口摂取困難、自律神経症状など第4期無言無動、ミオクローヌス消失全経過は通常数年だが、数ヵ月以内に死に至る急性型(約10%)、数年以上の経過を示す慢性型(約10%)がある。■ 予後SSPE症例は、無治療の場合は約80%が亜急性の経過をたどり、約1~3年の経過で第1期から第4期の順に進行し死亡する。約10%は発症後急速に進行し、3ヵ月以内に死亡する。また、残り約10%の進行は緩徐で、約4年以上生存する。無治療で寛解する症例や、寛解と増悪を繰り返す症例も報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は、臨床症状を軸に血液、髄液、脳波、画像検査を統合して行う。■ 特徴的な検査所見1)麻疹抗体価血清および髄液の麻疹抗体価が上昇する。髄液麻疹抗体価の上昇はSSPEに特異的であり、検出されれば診断的意義が高い。SSPE患者の抗体価は異常高値が特徴とされたが、最近では、軽度上昇にとどまる症例も多く、注意が必要である。また、抗体価の推移と臨床経過は必ずしも一致しない。2)髄液検査多くの場合は細胞数・糖・蛋白とも正常だが、細胞数・蛋白が軽度上昇することもある。また、髄液IgGおよびIgG indexの上昇も認める。3)脳波検査Jabbour2期から3期にかけて、左右同期性または非同期性で3~20秒間隔で出現する周期性同期性高振幅徐波をほとんどの症例で認めるが、Jabbour4期になると消失する(図)。画像を拡大する4)画像検査MRIは、疾患の推移を評価するのに有用である。画像変化は臨床病期とは一致せず、主に罹患期間に依存する。病初期のMRI所見では、正常または後頭葉の皮質・皮質下に非対称なT2強調画像での高信号の病変を認める。病期の進行とともに脳萎縮が進行し、側脳室周囲に対称性の白質病変が出現・拡大する。5)病理病理所見の特徴は、灰白質と白質の両方が障害される全脳炎であることと、線維性グリオーシスにより硬化性変化を示すことである。組織学的には、軟膜と血管周囲の炎症細胞浸潤、グリア細胞の増生、ニューロンの脱落および神経原線維変化の形成、脱髄などの所見がみられる。炎症所見は、発症からの経過が長いほど乏しくなる。麻疹ウイルス感染に関連した所見として、核内および細胞質の封入体を認める。■ 鑑別診断SSPEは急速に進行する認知症、ミオクローヌス、痙攣などを来す疾患の一部であり、ADEM(acute disseminated encephalomyelitis)、亜急性および慢性脳炎、脳腫瘍、多発性硬化症、代謝性白質脳症、進行性ミオクローヌスてんかんなどが鑑別に挙がる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ イノシンプラノベクスイノシンプラノベクス(商品名: イソプリノシン)は、抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せ持つ薬剤で、保険適用薬として認可されている。通常50~100mg/kg/日を3~4回に分割し、経口的に投与する。これにより生存期間の延長が得られるとされている。副作用として、血中および尿中の尿酸値の上昇(18.8%)があり、注意を要する。■ インターフェロン(IFN)インターフェロンは、ウイルス増殖阻害作用を持つ薬剤であり、IFNα、IFNγともに保険適用薬として認可されている。イノシンプラノベクスとの併用により有効であったとの報告例を多数認める。通常100~300万単位を週1~3回、脳室内に直接投与する。副作用として一過性の発熱をほぼ全例で認める。頻度は低いが、アレルギー反応を来す症例も認める。イノシンプラノベクス経口投与とIFN髄腔内または脳室内投与を併用するのが一般的で、有効性は言われているものの進行を阻止した例はまれであり、治療効果として不十分と考えられている。■ リバビリン近年、研究的治療(保険適用外)として、リバビリンの髄腔内または脳室内投与療法が試みられている。リバビリンは、広い抗ウイルススペクトラムを有する薬剤であり、麻疹(SSPE)ウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果を示す。直接脳室内に投与することで、髄液中のリバビリン濃度はウイルス増殖を完全に抑制する濃度に維持され、重篤な副作用を認めず、少数例ではあるが臨床的有効性が報告されている。しかし、病初期(Jabbour2期)に投与した症例においては、臨床症状に明らかな改善を認めたとする報告が多く、病期の進行した症例(Jabbour3期)では改善効果に乏しかったとする報告が多い。以上のことから、リバビリン療法は、リバビリンがウイルスの増殖を抑制して病期の進行を抑制する治療法であり、進行した神経障害を改善させるものではないと考えられている。■ 対症療法上記の治療のほかには対症療法として、ミオクローヌスのコントロールや呼吸管理、血圧コントロールなどの対症療法を行っていく必要がある。4 今後の展望SSPEの重症度の評価として、新たにトリプトファン代謝の主要経路であるキヌレニン経路の代謝産物の髄液中濃度について検討されている。SSPE群では対象例と比較し、髄液中のキノリン酸濃度が有意に高値であり、病期の進行とともに増加が認められている。代謝産物であるキノリン酸の増加はキヌレニン経路の活性化が示唆され、その活性化はSSPEにおける変異型麻疹ウイルスの持続感染に関与している可能性がある。さらにキノリン酸は NMDA型グルタミン酸受容体アゴニストとして興奮性神経毒性を持つため、SSPEにおける神経症状との関係が示唆されている。また、前述したが、研究的治療としてリバビリン髄腔内または脳室内投与が有望である可能性が考えられている。具体的な投与方法として、リバビリン1mg/kg/回、1日2回、5日間投与から開始し、1回量、投与回数を調整し、髄液リバビリン濃度を目標濃度(50~200μg/mL)にする。投与量が決定したら、5日間投与・9日間休薬を12クール(6ヵ月)継続するものとなっている。効果としては、国内で詳細に調査された9例において、治療前後の臨床スコアの平均は前が52.9、後が51.0であり、治療前後で有意差は認めなかった。しかし、イノシンプラノベクスとIFNの併用療法を施行された48症例では治療前後の臨床スコアは前が54.3、後が61.1と悪化を認めており、リバビリン脳室内投与群のほうが優る結果となっている。しかしSSPEは、症例により異なる経過をたどり、その経過も長いため、多数例の調査を行ったうえでの慎重な判断が必要である。5 主たる診療科神経内科および小児科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 亜急性硬化性全脳炎(一般利用者向けと医療従事者むけのまとまった情報)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究班(医療従事者向けの情報)患者会情報SSPE青空の会(SSPE患者とその家族の会)1)厚生労働省難治性疾患克服研究事業 プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班. 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)診療ガイドライン(案)2)平成27年度(2015年度)プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 総括研究報告書3)Gutierrez J, et al. Dev Med Child Neurol.2010;52:901-907.公開履歴初回2014年05月19日更新2016年09月20日

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授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

 授乳中の抗精神病薬使用に関する授乳論文の品質を確認するため、オランダ・フローニンゲン大学のHazel Hummels氏らは、米国FDAやInternational Lactation Consultant Association(ILCA)ドラフトガイドラインに従って検討を行った。European journal of clinical pharmacology誌オンライン版2016年8月24日号の報告。 授乳中の抗精神病薬使用を含む論文の品質を確認するため、FDAドラフト、ILCAガイドランを用いた。PubMed、Lactmedより文献検索を行った。さらなる研究は、相互参照により検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・51件の研究が抽出された。オランザピン1件、クエチアピン1件のみが、ミルク血漿比(M:P比)、絶対幼児投与量(AID)、相対幼児投与量(RID)を正しく計算していた。・その他の研究については、3つのエンドポイントのうち1つ以上が適切に決定されていなかった。・クロルプロマジン、chlorprothixene、クロザピン、ハロペリドール、スルピリド、trifluoperazine、ziprasidone、ゾニサミド、zuclopenthixolについては、正しいエンドポイントが計算されていなかった。・本レビューでは、母乳の採取方法に関する情報の欠如があった。・また、3つのエンドポイントの計算に必要な濃度は、単回投与中に5回以上の測定ではなく、主に単一測定に基づいていた。・多くの研究において、RIDは事実上、正しく計算されていなかった(母体中で正規化されていないまたは平均母体中70kgを標準的に使用)。 著者らは「2つの研究を除き、ほとんどの研究は、授乳中の抗精神病薬使用の安全性に関して、FDAドラフト、ILCAガイドライン基準を満たしていなかった。授乳しながら抗精神病薬を投与した際の安全性を評価するさらなる研究が必要である」としている。関連医療ニュース 抗精神病薬服用中の授乳、安全性は 統合失調症女性の妊娠・出産、気をつけるべきポイントは 授乳中の気分安定薬は中止すべきか

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歯科従事者の手湿疹有病率36.2%、そのリスク因子とは?

 歯科医療従事職は、手湿疹のリスクが高い職業の1つである。熊本大学大学院 公衆衛生学分野の皆本 景子氏らは、歯科医療従事者における職業性手湿疹の有病率とそのリスク因子を明らかにする目的でアンケート調査を行った。その結果、実際に歯科医療従事者の手湿疹有病率は高いことが明らかになり、著者は、「予防のための教育とより頻繁なパッチテストが必要」と述べている。Contact Dermatitis誌2016年10月号の掲載の報告。 研究グループは、熊本市内の全歯科医院に自己記入式アンケートを郵送するとともに、歯科医療に関連する24種のアレルゲンに対するパッチテストの希望者を募り、パッチテストを行った。 主な結果は以下のとおり。・97医院(全送付先の31.4%)の歯科医療従事者、計528人(全従事者の46.4%)から回答が得られた。・手湿疹の年間有病率は、36.2%であった。・ロジスティック回帰分析の結果、年間有病率の最も重要なリスク因子は、アトピー性皮膚炎(オッズ比[OR]:4.7、95%信頼区間[CI]:2.2~8.8)、喘息・アレルギー性鼻炎(OR:2.0、95%CI:1.3~3.0)、皮膚乾燥(OR:1.7、95%CI:1.1~2.7)、歯科医療従事期間が短いこと(10年以内の20年超に対するOR:2.0、95%CI:1.2~3.5)、手洗浄回数が>10回/日(OR:1.6、95%CI:1.0~2.5)であった。・54人がパッチテストを受けた。職業に関連した接触アレルゲンは、ゴム関連化学物質およびアクリルであった。

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