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うつ病の診断年齢を分析、とくに注意が必要なのは

 年齢、性別によるうつ病の診断および抗うつ薬の使用動向について、デンマーク・コペンハーゲン大学のCharlotte Wessel Skovlund氏らが分析を行った。Nordic journal of psychiatry誌オンライン版2017年3月31日号の報告。 2000~13年、デンマーク在住の10~49歳のすべての男女を含む全国コホート研究。精神医学および処方箋レジストリより、うつ病診断および抗うつ薬に関するデータを抽出した。発症率および1年間の有病率を算出した。主な結果は以下のとおり。・うつ病診断の発症率および1年間の有病率は、2000年から2013年にかけて増加していた。・男女比は、1年間のうつ病診断の有病率および抗うつ薬使用の両方について、女性が男性の2.0倍であった。・若年(adolescent)女性における増加絶対値は、うつ病診断で1,000人当たり3人、抗うつ薬使用で1,000人当たり8人であった。若年男性では、各々、1,000人当たり1.1人、3人の増加であった。・思春期(puberty)前の男女において、同期間中のうつ病診断および抗うつ薬使用の割合は、同程度であった。・思春期後では、女性は男性よりも発症率が有意に高く、研究期間中に男性よりも急激に増加していた。・うつ病診断の男女比を年齢別にみると、女性は、10~11歳の0.8から12~19歳の2.7へ増加し、以降45~49歳の1.5まで、年齢の増加とともに減少した。 著者らは「2000~13年におけるうつ病診断および抗うつ薬の初回使用は、12~19歳の女性において男性よりも多かった。思春期前の発症率は男女間で同様であったが、思春期以降は女性で高くなっていた」としている。関連医療ニュース たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能 SSRI治療抵抗性うつ病、治療前に識別可能か:大分大 うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

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IgG4関連疾患〔IgG4-related disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義IgG4関連疾患とは、リンパ球とIgG4 陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により、同時性あるいは異時性に全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である。罹患臓器としては膵臓、胆管、涙腺・唾液腺、中枢神経系、甲状腺、肺、肝臓、消化管、腎臓、前立腺、後腹膜、動脈、リンパ節、皮膚、乳腺などが知られている。病変が複数臓器に及び、全身疾患としての特徴を有することが多いが、単一臓器病変の場合もある。臨床的には各臓器病変により異なった症状を呈し、臓器腫大、肥厚による閉塞、圧迫症状や細胞浸潤、線維化に伴う臓器機能不全など、時に重篤な合併症を伴うことがある。治療にはステロイドが有効なことが多い。ステロイド抵抗性・依存性や臓器障害を生じたIgG4関連疾患症例は、2015年7月から難病に指定された。■ 疫学IgG4関連疾患の診療は、種々の診療科にまたがるので、その患者数の推定は困難である。石川県で行われた調査では、年間336~1,300人のIgG4関連疾患の新規発症があり、わが国では2万6,000人の患者がいると推定される。わが国で2016年に行われた自己免疫性膵炎の全国調査では、自己免疫性膵炎の年間推計受療者数は1万3,436人、年間罹患患者数は3,984人、有病率10.1人/10万人と推定され、2011年の調査時の罹患患者数より倍増した。臓器によって異なるが、高齢の男性に多く発症する傾向がある。■ 病因IgG4関連疾患の病因は解明されていないが、免疫遺伝学的背景に自然免疫系、Th2にシフトした獲得免疫系、制御性T細胞などの異常が病態形成に関与する可能性が報告されている。■ 症状臨床症状・徴候は、罹患した臓器によって異なるが、臓器腫大や肥厚による閉塞・圧迫症状が主体となる。自己免疫性膵炎やIgG4関連硬化性胆管炎では膵腫大や胆管閉塞による閉塞性黄疸、IgG4関連涙腺・唾液腺炎では涙腺・唾液腺腫大、後腹膜線維症では尿管圧迫による水腎症や腎機能障害などがみられる。また、病態が持続進行すると、涙腺・唾液腺機能障害による乾燥症状や、膵内外分泌機能低下などが生じうる。■ 分類自己免疫性膵炎以外は、罹患した臓器の前に「IgG4関連」をつけて呼ぶ。IgG4関連疾患はほぼ全身の諸臓器に認められるが、現在IgG4関連疾患として明らかに認知されている疾患・病態を表1に示す。表1 IgG4関連疾患に包括される疾患・病態■ 予後IgG4関連疾患はステロイドが奏効するので、短期的予後は良好であるが、再燃する例が少なからず存在し、長期的予後は不明である。自己免疫性膵炎では、再燃を繰り返す例で、膵石が形成されることがある。また、IgG4関連疾患では、悪性腫瘍を合併しやすいとの報告もあり、注意を要する。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ IgG4関連疾患包括診断基準いくつかのIgG4関連疾患には、その診断基準があるが、IgG4関連疾患を包括する診断基準が2011年に作られ、2020年に改訂された。この基準は、各臓器病変の専門医以外の臨床医の使用、各臓器の診断基準との併用、簡潔化、病理組織診断の重要視、ステロイドの診断的治療は推奨しないなどを基本的なコンセプトとして作成された。臨床的所見、血液所見、病理所見の組み合わせにより診断する(表2)。表2 2020改訂IgG4関連疾患包括診断基準できる限り組織診断を加えて、各臓器の悪性腫瘍(がんや悪性リンパ腫など)や類似疾患(原発性硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、2次性後腹膜線維症、ウェゲナー肉芽腫、サルコイドーシス、チャーグ・ストラウス症候群など)と鑑別することが大事である。また、この基準で確定診断ができなくても、各臓器の診断基準により診断が可能である。■ 自己免疫性膵炎1型自己免疫性膵炎は、IgG4が関連する1型と、IgG4とは無関係で好中球の膵管上皮内浸潤を特徴とする2型に分かれる。自己免疫性膵炎1型は、自己免疫性膵炎臨床診断基準2018(表3)を用いて診断する。表3-1 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018表3-2 自己免疫性膵炎臨床診断基準2018本症の診断においては、膵がんや胆管がんなどの腫瘍性の病変を否定することがきわめて重要である。診断基準では、膵腫大、主膵管の不整狭細像、高IgG4血症、病理所見、膵外病変とオプションとしてのステロイド治療の効果の組み合わせにより診断する。びまん性の膵腫大を呈する典型例では、高IgG4血症、病理所見か膵外病変のどれか1つを満たせば自己免疫性膵炎と診断できる。限局性膵腫大例では、膵がんとの鑑別がしばしば困難であり、ERP(内視鏡的逆行性膵管造影)による主膵管の膵管狭細像が必要であったが、改訂基準ではMRCP、EUS-FNAとステロイド治療の効果で確定診断できるようになった。膵のびまん性腫大は、本症に特異性の高い所見である。腹部ダイナミックCTでは遅延性増強パターンと被膜様構造(capsule-like rim)が特徴的である(図1)。画像を拡大するERPによる主膵管のびまん性不整狭細像も本症に特異的である。狭細像とは閉塞像や狭窄像と異なり、ある程度広い範囲に及んで、膵管径が通常より細くかつ不整を伴っている像を意味する(図2)。画像を拡大する限局性の病変では膵がんとの鑑別がとくに困難であるが、狭細部より上流側の主膵管には著しい拡張を認めない、狭細部からの分枝の派生や非連続性の複数の主膵管狭細像(skip lesions)は、膵がんとの鑑別に有用である。血中IgG4値の上昇は高率に認められるので、その診断的価値は高い。しかし、IgG4値の上昇は他疾患(アトピー性皮膚炎、天疱瘡、喘息など)や一部の膵臓がんや胆管がんでも認められるので注意を要する。病理組織像は、lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)と呼ばれる特徴的な所見で、高度のリンパ球とIgG4陽性の形質細胞の浸潤と、紡錘形細胞が錯綜配列を示す花筵状線維化(storiform fibrosis)と閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)を呈する(図3、4)。画像を拡大する画像を拡大する合併する他のIgG4関連疾患として、膵外胆管の硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺炎と後腹膜線維症が取り上げられている。ステロイド治療の効果判定は、画像で評価可能な病変が対象であり、臨床症状や血液所見は対象としない。ステロイド開始2週間後に効果不十分の場合には、再精査が必要である。できる限り病理組織を採取する努力をすべきであり、ステロイドによる安易な診断的治療は厳に慎むべきである。■ IgG4関連硬化性胆管炎IgG4関連硬化性胆管炎の診断は、IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020(表4)に基づいて、胆道画像検査、高IgG4血症、他のIgG4関連疾患(自己免疫性膵炎、IgG4関連涙腺・唾液腺炎、IgG4関連後腹膜線維症)の合併、胆管壁の病理組織所見、オプションとしてのステロイド治療の効果の組み合わせによって診断する。表4-1 IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020表4-2 IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2020IgG4関連硬化性胆管炎の胆管像では、下部胆管狭窄を呈することが多いが、上部~肝門部胆管狭窄や肝内胆管狭窄を呈する例では、肝門部胆管がんや原発性硬化性胆管炎(PSC)との鑑別が問題となる。自己免疫性膵炎を合併しないIgG4関連硬化性胆管炎では、診断がとくに困難である。PSCでよくみられる全周性の輪状狭窄(annular stricture)、数珠状変化(beaded appearance)や肝内胆管の減少(pruned-tree appearance)などはIgG4関連硬化性胆管炎ではほとんど認められない(図5)。画像を拡大するIgG4関連硬化性胆管炎では、CTやUSなどにおいて、胆管狭窄部だけでなく狭窄のない部位の胆管にも壁肥厚が高頻度に認められ、この所見は胆管がんとの鑑別に有用である。経乳頭的胆管生検では採取検体が小さいため、IgG4関連硬化性胆管炎と診断できるだけの材料を採取できる例が少ない。肝内胆管に病変が及ぶIgG4関連硬化性胆管炎では、肝生検がPSCとの鑑別に有効なこともある。ステロイドへの良好な反応性は、IgG4関連硬化性胆管炎の診断をより確実なものとするので、ステロイドトライアルも診断の一手段となる。しかし、診断目的の安易なステロイド投与は慎むべきである。■ IgG4関連涙腺・唾液腺炎従来ミクリッツ病やキュットナー腫瘍と呼ばれていた疾患で、診断にはIgG4関連ミクリッツ病の診断基準が用いられる。涙腺、耳下腺、顎下腺の持続性(3ヵ月)、対称性の2対以上の腫脹を基本として、高IgG4血症か、涙腺・唾液腺組織に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4陽性/IgG4陽性細胞が50%以上)のいずれかを満たした場合に診断される。多くは対称性に涙腺、耳下腺、顎下腺、舌下腺、小唾液腺のいずれかが腫脹する。シェーグレン症候群との鑑別が問題となるが、シェーグレン症候群に比べて、抗SS-A/SS-B抗体が陰性であり、乾燥性角結膜炎や唾液腺分泌障害が軽度である。■ IgG4関連腎臓病IgG4関連腎臓病診断基準(表5)により診断される。表5 IgG4関連腎臓病診断基準IgG4関連腎臓病では、びまん性腎腫大、腎実質の多発性造影不良域、腎腫瘤、腎盂壁肥厚などの特徴的な画像所見を呈することが多い。腎組織は間質性腎炎が主体であるが、膜性腎症などの糸球体病変を伴う場合もある。■ IgG4関連後腹膜線維症腹部大動脈周囲や尿管周囲の軟部組織の肥厚が特徴で、腫瘤を形成したり水腎症を起こしたりする。生検困難例も多く、悪性疾患や感染症などによる2次性後腹膜線維症との鑑別が問題となる。■ IgG4関連呼吸器病変画像上、肺門縦隔リンパ節腫大、気管支壁/気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚、結節影、浸潤影、胸膜病変などの胸郭内病変を呈する。また、病理組織学的には、気管支血管束周囲、小葉間隔壁、胸膜などの間質に、著明なリンパ球とIgG4陽性細胞の浸潤と線維化を認める。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)経口ステロイド治療が、IgG4関連疾患の標準治療法である。経口プレドニゾロン0.6mg/kg/日の初期投与量を2~4週間投与し、その後画像検査や血液検査所見などを参考に約2週間の間隔で5mgずつ漸減し、3~6ヵ月ぐらいで維持量まで減らす。治療への反応が悪い例では悪性腫瘍などを疑診して、再検査を行う必要がある。IgG4関連疾患では、ステロイド中止後にしばしば再燃が起こるので、再燃予防に少量のプレドニゾロン(5mg/日程度)の維持療法を1年前後行うことが多い。ただし、IgG4関連疾患は基本的に予後良好な疾患であることに加え、高齢者発症が多いので、ステロイド長期投与の副作用(腰椎圧迫骨折、大腿骨頭壊死、耐糖能異常など)を考慮して、画像診断および血液検査で十分な改善が得られた症例では、ステロイド投与の早期中止が望まれる。ステロイドを中止する際には、個々の症例における活動性を見極め、できるだけ少量投与に切り替えて中止するほうが安全である。また、ステロイド治療中止後も慎重な経過観察が必要である。ステロイド治療後に再燃を来しやすい因子として、治療後の画像上の改善が不十分、治療後も血中IgG4高値が続く、治療前の血中IgG4値が著しく高値である、などが挙げられる。再燃例では、ステロイドの再投与や増量により寛解が得られることが多い。欧米では、再燃例に対して、免疫抑制薬やリツキシマブを投与して、良好な成績が報告されている。2017年に作成された自己免疫性膵炎の治療に関する国際コンセンサスでは、ステロイドに抵抗性または副作用でステロイドが投与できない症例では、リツキシマブを第1選択とすると記載された。4 今後の展望IgG4の病因の解明と確実性のより高い血清学的マーカーの開発が望まれる。治療に関しては、Bリンパ球の表面免疫グロブリンのCD20抗原に対する抗体であるリツキシマブ(キメラ型抗CD20抗体、商品名:リツキサン)が、ステロイドや免疫抑制薬使用後に再燃したIgG4関連疾患に有効であったと海外で報告されている。しかし、リツキシマブは高価な薬剤であり、また、わが国ではIgG4関連疾患に対する投与は保険適用になっていない。5 主たる診療科消化器内科、リウマチ科、内分泌科、耳鼻咽喉科、腎臓内科、呼吸器内科、泌尿器科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報がん・感染症センター 都立駒込病院 IgG4関連疾患センター(世界で初めての専門外来センター)日本膵臓学会ホームページ さまざまなガイドライン(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター IgG4関連疾患(一般利用者向け、医療従事者向けのまとまった情報)1)厚生労働省難治性疾患等政策研究事業 IgG4関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究班. 日内誌. 2021;110:962-969.2)日本膵臓学会 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業) IgG4関連疾患の診断基準ならびに診療指針の確立を目指す研究班. 膵臓. 2018;33:902-913.3)中沢貴宏ほか. 胆道. 2021;35:593-601.4)IgG4関連腎臓病ワーキンググループ.日腎会誌.2011;53:1062-1073.公開履歴初回2015年10月20日更新2017年04月18日更新2022年07月28日

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にきび治療のイソトレチノイン、うつ病リスクは?

 ざ瘡(にきび)のisotretinoin治療と、うつ病リスクの増加に関連はあるのか。これまで定量分析は行われていなかったが、台湾・台北医学大学のYu-Chen Huang氏らはシステマティックレビューとメタ解析を行い、両者に関連性はなく、むしろざ瘡の治療は抑うつを改善する可能性があることを示した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年3月10日号掲載の報告。 研究グループは、isotretinoin治療を受けているざ瘡患者15例以上を対象にした対照試験または前向き非対照試験について、2016年9月30日までに公表された論文を検索し、うつ病の有病率ならびに抑うつスコアの変化を算出した。 主な結果は以下のとおり。・31試験がレビューに組み込まれた(無作為化試験はなし)。・対照試験では、isotretinoin治療群と他の治療群との間で、ベースラインからの抑うつスコアの変化に有意差はなかった(標準化平均差[SMD]:-0.334、95%信頼区間[CI]:-0.680~0.011)。・うつ病の有病率は、isotretinoin治療後に有意に低下した(相対リスク:0.588、95%CI:0.382~0.904)。・平均抑うつスコアは、ベースラインから有意に低下した(SMD:-0.335、95%CI:-0.498~-0.172)。・なお、試験間で大きなばらつきが観察された。

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双極性うつ病に対するドパミン作動薬の効果は

 双極性うつ病のアウトカムに対するドパミン作動薬(モダフィニル、armodafinil、プラミペキソール、メチルフェニデート、アンフェタミン)の影響について、アルゼンチン・Favaloro UniversityのA G Szmulewicz氏らは、システマティックに検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年3月3日号の報告。 双極性うつ病に対するドパミン作動薬治療の有効性、安全性を評価するため、ランダム化比較試験のメタ解析を行った。2次解析として、無作為化比較試験と高品質の観察研究の両方から得られた知見を、ドパミン作動薬治療に関連する新規の躁症状を探るため、メタ解析手順によりプールした。 主な結果は以下のとおり。・無作為化比較試験のメタ解析には、9件の研究(1,716例)が含まれた。・ドパミン作動薬による双極性うつ病治療は、治療反応率(1,671例、RR:1.25、95%CI:1.05~1.50)および寛解率(1,671例、RR:1.40、95%CI:1.14~1.71)の増加と関連していた。・この治療による気分変動リスクの増加は認められなかった(1,646例、RR:0.96、95%CI:0.49~1.89)。・2次解析(1,231例)では、平均フォローアップ期間7.5ヵ月間の気分変動累積発生率は、3%(95%CI:1.0~5.0)であった。 著者らは「予備的知見では、ドパミン作動薬は、双極性うつ病治療のための有用な代替法でありうることを示唆しており、短期経過観察中の気分不安定化のリスク増加を来さない」としている。関連医療ニュース 双極性障害の再発リスク、1年目で4割超 難治性うつ病、抗うつ薬変更とアリピプラゾール追加、どちらが有用か 日本人うつ病患者に対するアリピプラゾール補助療法:名古屋大学

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世界の全死因、喫煙が占める割合は?/Lancet

 たばこ規制は、とくに「たばこの規制に関する枠組条約(FCTC)」の採択後に急速に拡大した。これは公衆衛生上の重要な成功談ではあるが、喫煙は現在も世界的に早期死亡や機能障害の主要なリスクであり続けており、それゆえ継続的な政治的取り組みが求められるという。Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study(GBD)の研究グループは、今回、GBD 2015の一環として、喫煙関連目標の達成に向けた世界および地域別・国別の進歩の評価を通じて、頑健な基盤を提示するために、喫煙率と喫煙の疾病負荷に関する系統的な解析の結果を報告した。研究の成果はLancet誌オンライン版2017年4月5日号に掲載された。25年間の195地域の毎日喫煙率、寄与疾病負荷を解析 研究グループは、2,818件のデータソースを時空間ガウス過程回帰分析で統合し、195の国と地域の1990~2015年の性別、年齢別の毎日喫煙率を年ごとに推算し、寄与疾病負荷の評価を行った(Bill & Melinda Gates Foundationなどの助成による)。 喫煙と38の健康転帰の因果関係を解析し、障害調整生存年数(DALY)を用いて喫煙寄与死亡率と疾病負荷の推算値を算出した。次いで、喫煙の実際の年齢パターンをよりよく理解するために、出生年別の喫煙状況のコホート解析を行った。 また、人口の増加や高齢化、喫煙率、リスク除外DALY率(risk-deleted DALY rate、リスク因子としての喫煙を除外したDALY率)の変化に起因する全原因喫煙寄与DALYの変化を明確にするために、分解分析を実施した。最終的に、社会人口統計指標(SDI:1人当たりの所得、学歴、合計特殊出生率に基づくサマリー指標)を用いて国・地域の発展の程度別の解析を行った。日本の毎日喫煙率は男女とも世界全体より高い 2015年の世界の年齢標準化毎日喫煙率は、男性が25.0%(95%不確定性区間[UI]:24.2~25.7)、女性は5.4%(5.1~5.7)であり、1990年以降それぞれ28.4%(25.8~31.1)、34.4%(29.4~38.6)低下した。 2015年の日本の喫煙者数は、男性が1,530万人、女性は490万人で世界第7位、15~19歳の喫煙者数は16位であった。年齢標準化毎日喫煙率は世界全体よりも高く、男性が26.6%(95%UI:26.1~27.1)、女性は9.3%(8.9~9.6)であり、1990~2015年の年間変化率はそれぞれ-2.4%(-2.5~-2.3)、-0.7%(-0.9~-0.5)とわずかに低下していた。 年間喫煙率の統計学的に有意な減少を達成した国・地域の割合は、2005~15年よりも1990~2005年のほうが高かったが、2005~15年に年間喫煙率が統計学的に有意に増加したのは4つの国・地域のみであった(男性:コンゴ共和国ブラザヴィル市、アゼルバイジャン、女性:クウェート、東ティモール)。 2015年の全死亡のうち喫煙の寄与による死亡は11.5%(640万人、95%UI:570~700万)であり、4つの国(中国、インド、米国、ロシア)でその52.2%を占めた。喫煙がDALYのリスク因子の上位5番目までに含まれる国・地域の数は、1990年の88から2015年には109に増加した。 出生年別コホート解析では、男性の喫煙率はSDIに基づく国・地域の発展の程度にかかわらず類似の年齢パターンを示したのに対し、女性喫煙者の年齢パターンは発展の程度によってかなりの異質性が認められた。 2005~15年の間に、喫煙率とリスク除外DALY率は、性別、SDIの五分位数、人口増加、人口高齢化あるいはこれらの組み合わせにかかわらず低下したが、SDIが低~中の地域の喫煙率とリスク除外DALY率は、喫煙寄与DALYの上昇を促進していた。 著者は、「喫煙率低下の進展速度は、地域やその発展の状況、性別によって異なり、最近の傾向として、とくに女性や低~中SDI国では、過去の低下率の維持は当然のこととは言えない状況が浮き彫りとなっている」と指摘し、「たばこ産業や社会規範のほかに、たばこ規制の取り組みが直面する重大な課題は、喫煙開始の防止と禁煙の促進が大幅に加速されない限り、人口動態の影響力によって喫煙の犠牲者が増加する可能性があることである。また、たばこ規制の成功の可能性は高まっているが、有効かつ包括的で適切に実施され、強化された施策が必要であり、過去25年間の成果を超える世界的、全国的な政治的取り組みを要する可能性がある」と考察している。

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第9回 SGLT2阻害薬による治療のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第9回】SGLT2阻害薬による治療のキホン―どのような患者さんに適しているのでしょうか。 健康成人では、1日に約180gのグルコースが腎臓の糸球体でろ過され、一旦、尿中に排泄されますが、尿中に排泄されたグルコースは、近位尿細管の細胞膜上に発現しているトランスポーター(共輸送体)であるSGLTを介して再吸収され、血液中に運ばれます。SGLTには1~5の5つのサブタイプがあり、腎臓にはSGLT1およびSGLT2が発現していますが、近位尿細管におけるグルコースの再吸収は、約90%はSGLT2が、残りの約10%をSGLT1が担っています1)。 SGLT2阻害薬は、選択的にSGLT2を阻害し、近位尿細管におけるグルコースの再吸収を阻害して、そのまま尿中に排泄させることで、血糖を低下させます。インスリン分泌を介さずに血糖を低下させるという特徴に加え、血糖低下以外にも、尿糖排泄によるエネルギー漏出の代償として、体重減少が期待できるという特徴があります(約65~80g程度のグルコースが排出され、1日当たり260~360kcalのエネルギー消費に相当2))。尿糖排泄は血糖依存性で、血糖値が高ければ高いほど尿糖排泄量は増加するため、食後の高血糖改善に適しているように思えますが、尿細管での再吸収阻害による尿糖排泄速度が、食後の腸管からの糖の吸収速度には追いつかないため、どちらかというと食後よりも空腹時に対する効果が期待できます。そのため、空腹時血糖値が高く、肥満があり、高インスリン血症を来しているような患者さんが適しています。 単独、併用、いずれにおいても血糖低下効果は期待できますが、これまでのインスリン分泌やインスリン感受性に働きかけて血糖を低下させる薬剤とまったく異なる作用機序であるため、第1選択薬として用いるよりも、第2、第3の薬剤として用いることで、他の薬剤との併用による上乗せ効果を得やすいという特徴があります。 SGLT2阻害薬は、インスリン分泌を介さずに、尿中への糖の排泄を促進することで、強力、かつ速やかに血糖を低下させるため、糖毒性が軽減できることが明らかになっています3)。他の経口血糖降下薬を使っていても血糖コントロール不良で、高血糖が持続し、糖毒性を来していると考えられる患者さんに上乗せすることで、膵β細胞を休ませながら、速やかに血糖を低下させ、糖毒性を解除するという使い方ができます。 糖毒性が解除されると、それまで使っていた薬剤の効果が増強されます。例えば、DPP-4阻害薬を使っていても血糖コントロール不良な患者さんの場合、高血糖状態の持続により、膵β細胞のGLP-1受容体の発現が低下してしまいます。そのため、DPP-4阻害薬の効果が十分発揮できていない可能性があります。そこにSGLT2阻害薬を上乗せすると、インスリン分泌を介さない速やかかつ強力な血糖低下作用により、急速に糖毒性が解除され、ブドウ糖応答インスリン分泌(食後のインスリン追加分泌)が回復します。加えて、低下していたGLP-1受容体の発現が増加し、それにより、高血糖状態が持続していた時に効きの悪かったDPP-4阻害薬の効果が増強されるようになります。実際に、フロリジンを投与した膵切除高血糖ラットで、膵臓β細胞におけるGLP-1受容体の増加がみられたことが報告されています4)。 糖毒性が解除され、既存の薬剤の効果が増強されると、急激に血糖値が下がってくる恐れがあるため、低血糖を惹起しやすいSU薬などを併用している場合は注意が必要です。高用量のSU薬を使っている場合は、SGLT2阻害薬を併用する際には、減量を検討したほうがよいでしょう。 SGLT2阻害薬については、血糖低下作用以外に、体重減少が期待でき、体重についても、血糖低下と同様、投与初期から効果がみられるため、それを期待して肥満の患者さんに投与することがありますが、前述したように、尿糖排泄により、エネルギーが漏出するため、最初は体重が減少するものの、しばらくするとエネルギーの枯渇により空腹感が増したり、甘いものが食べたくなるなどして、体重が増加してしまうケースがあります。実際に、自由摂餌下でSGLT-2阻害薬を投与した食餌性肥満ラットにおいて、摂餌量の増加が認められたことが報告されています5)。SGLT2阻害薬を投与した患者さんでは、定期的に食事療法をチェックし、問題があれば見直す必要があります。 SGLT2阻害薬を使っていて、体重が増加してしまうような患者さんに対して、食欲抑制効果を有するGLP-1受容体作動薬を併用するのも良い方法です※。実際に、海外で行われた、GLP-1受容体作動薬エキセナチド(商品名:ビデュリオン)と、ダパグリフロジンの併用療法の効果をみたDULATION-8試験で、それぞれの単独療法よりも、血糖低下および体重減少において効果が認められたことが示されています6)。 ※現在、日本でSGLT2阻害薬との併用が認められているのは、1日1回投与のリラグルチド(商品名:ビクトーザ)と週1回投与のデュラグルチド(商品名:トルリシティ)のみ。―各製剤の特徴について教えてください。 2014年に最初のSGLT2阻害薬が発売され、今では6種類7製剤のSGLT2阻害薬が臨床使用できるようになりました(2016年3月現在)。これらSGLT2阻害薬の血糖低下作用はおおむね同等と思っていますが、私は、腎でグルコースの再吸収を担うSGLT2と同じファミリーであるSGLT1に注目しています。 前述したように、腎における糖の再吸収の約90%はSGLT2阻害薬が主にターゲットとしているSGLT2によりますが、残り10%はSGLT1が担っています1)。SGLT1は主に小腸上部に存在し、腸管からの糖の吸収・再吸収という役割を担っています7)。SGLT2に選択性が高いSGLT2阻害薬の場合、腎における糖の再吸収抑制という点ではよいのですが、食直後に消化管から糖が吸収されるスピードに、尿細管での糖の再吸収阻害がどうしても追いつかない、つまり食後の高血糖を十分是正できない、という問題が出てきます。これがSGLT2阻害薬の弱点でもあるのですが、SGLT2阻害薬の中にはSGLT2に対する選択性が低い、つまりSGLT1の阻害作用を持つ薬剤もあり、そのような薬剤では、食後の小腸における糖の吸収遅延による食後高血糖の改善が期待できます。実際に、健康成人を対象に、SGLT2に対する選択性が低いカナグリフロジン(商品名:カナグル)とプラセボを投与した無作為化二重盲検比較試験で、カナグリフロジンで、小腸での糖の吸収を遅らせ、食後の血糖上昇を抑制したという報告があります8)。また、健康成人を対象に、カナグリフロジンと、カナグリフロジンに比べてSGLT2に対する選択性が高いダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)の薬力学的効果を比較した無作為化二重盲検クロスオーバー試験で、カナグリフロジンで食事負荷試験後の血糖上昇を抑制したことが報告されています9)。これは、小腸における糖の吸収遅延により食後高血糖を改善するα-GIと同じ作用と考えてよいでしょう。このSGLT1の小腸における糖の吸収・再吸収という作用に着目し、SGLT2とSGLT1の両方を阻害するデュアルインヒビターが現在、海外では開発中です。―尿路感染症や性器感染症が心配です。実際、どのくらいの頻度で発生するのでしょうか。 SGLT2阻害薬では、尿糖排泄作用により、尿中の糖が増えることで、尿路および生殖器が易感染状態となり、尿路感染症や性器感染症が発現しやすくなる可能性があります。発現頻度については、各薬剤の治験および市販後調査の結果が発表されていますので、そちらを参考にしていただければと思います。 SGLT2阻害薬を処方する際には、尿路感染症や性器感染症が発現しやすくなることをあらかじめ患者さんに伝えたうえで、尿意を我慢しないこと、陰部を清潔に保つことを心掛けてもらい、排尿痛や残尿感、陰部のかゆみ、尿の濁りなどがあればすぐに受診するよう、伝えます。また、適宜、問診や検査を行って発見に努めるようにします。―高齢者における安全性はどのように考えればよいのでしょうか。 尿糖排泄を促進するSGLT2阻害薬では、浸透圧利尿作用が働き、頻尿・多尿になり、体液量が減少するために、脱水症状を起こすことがあります。この循環動態の変化に基づく副作用として、引き続き重症の脱水と脳梗塞の発生が報告されているため、脱水には十分注意する必要があります。高齢者は特に脱水を起こしやすいため、高齢者への投与は無理をせず、慎重に行います。 日本糖尿病学会による「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(2016年5月12日改訂)」10)では、高齢者に対するSGLT2阻害薬の使用については、「75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する」としています。 SGLT2阻害薬の尿糖排泄促進作用は、血糖に依存します。つまり、血糖値が高ければ高いほど、尿へ排泄される糖の量が多くなるため、尿量も増加します。そのため、血糖値が高い投与初期は、とくに注意する必要があります。患者さんには、SGLT2阻害薬で脱水を生じる可能性があることを伝えたうえで、意識して水分を多く摂取するよう指導します。尿量が指標になるため、尿量が多いと感じたら、いつもより水分を多めに摂取するように、というのもよいでしょう。また、夜に糖質の多い食事をたくさん食べてしまうと、夜間の尿量が増え、排尿のために睡眠が妨げられてしまうことがあります。快適な睡眠のためにも、夜は糖質の多い食事を控えるのもよいでしょう。発熱や嘔吐・下痢などがあるとき、食欲がなく、食事が十分とれないときには(シックデイ)、脱水の原因にもなりますので、休薬してもらいます。 SGLT2阻害薬を投与しているときは、血液検査所見で脱水がないかどうかを定期的に観察します。脱水の代表的な指標はヘマトクリット(Ht)値ですが、腎に作用するSGLT2阻害薬では、腎から分泌され、赤血球の産生を促すホルモンである、エリスロポエチンに影響を及ぼす可能性が指摘されていますので、合わせてBUNやCreでみるのがよいと思います。1)Fujita Y, et al. J Diabetes Investig. 2014;5:265-275. 2)羽田勝計、門脇孝、荒木栄一編. 糖尿病最新の治療2016-2018. 南江堂;2016.3)Bailey CJ. Trends Pharmacol Sci. 2011;32:63-71.4)Gang Xu et al. Diabetes 2007; 56: 1551-15585)Devemy J et al. Obesity 2012; 20(8):1645-16526)Frias JP, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016;4:1004-1016.7)稲垣暢也編. 糖輸送体の基礎を知る. SGLT阻害薬のすべて. 先端医学社;2014.8)Polidori D, et al. Diabetes Care. 2013;36:2154-2161.9)Sha S, et al. Diabetes Obes Metab. 2015;17:188-197.10)SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation. 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」

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非肥満・非糖尿病でも、高インスリン血症でがん死亡増

 肥満や2 型糖尿病はがん関連死亡と関連しているが、肥満でも糖尿病でもない場合に高インスリン血症はがん死亡の危険因子となるのだろうか。国立国際医療研究センター病院の辻本 哲郎氏らの前向きコホート研究で、糖尿病ではない非肥満者において、高インスリン血症だとがん死亡リスクが高いことが示された。この結果から、肥満であるかどうかにかかわらず、高インスリン血症の改善はがん予防のための重要なアプローチとなりうる、と著者らは結論している。International journal of cancer誌オンライン版2017年4月8日号に掲載。 著者らは、1999~2010年の国民健康栄養調査のデータを用いて、前向きコホート研究を実施し、2011年12月31日まで追跡した。がん死亡率の主な解析は、Cox比例ハザードモデルを用いて、高インスリン血症の有無別にハザード比(HR)を算出した。高インスリン血症は空腹時インスリン10μU/mL以上と定義し、死亡原因は国際疾病分類第10版を使用した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、糖尿病やがんの既往のない20歳以上の9,778人が参加し、非肥満者が6,718人(高インスリン血症が2,057人[30.6%])、肥満者が3,060人(高インスリン血症が2,303人[75.3%])であった。全体の99.9%がフォローアップを完了した。・試験参加者全体において、高インスリン血症の患者はそうではない患者に比べ、がん死亡率が有意に高かった(HR:2.04、95%CI:1.24~3.34、p=0.005)。・非肥満者においても同様に、多変量解析により、高インスリン血症の患者はそうではない患者に比べ、がん死亡率が有意に高かった(調整HR:1.89、95%CI:1.07~3.35、p=0.02)。

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CAD患者、体重増加で心血管イベント増加/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)患者では、体重の変動は従来の心血管リスク因子とは独立に、死亡や心血管イベントの発生割合を高めることが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが実施したTreating to New Targets(TNT)試験の事後解析で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。体重変動は、心血管疾患(CVD)のない患者の死亡や冠動脈イベントのリスク因子であることが知られているが、CAD患者のアウトカムへの影響は不明とされていた。 9,509例を低変動群と高変動群に分けて比較 TNT試験は、臨床的に明らかなCADを有し、LDLコレステロール(LDL-C)値が130mg/dL未満の患者1万1例を対象に、アトルバスタチン(商品名:リピトールほか)10mg/日と80mg/日の心血管イベントの発生を比較する無作為化試験である(Pfizer社の助成による)。今回の研究は、この試験の事後解析として、体重の変動と心血管イベントのリスクの関連を探索するために行われた。 体重変動は、個々の患者の各受診時の体重の変化と定義し、連続測定値の平均絶対差(average successive variability:ASV)を用いて評価した。 主要評価項目は冠動脈イベント(冠動脈性心疾患[CHD]による死亡、非致死的心筋梗塞、心停止からの蘇生、血行再建術、狭心症の複合エンドポイント)とし、副次評価項目は心血管イベント(冠動脈イベント、脳血管イベント、末梢血管疾患、心不全)、死亡、心筋梗塞、脳卒中であった。 9,509例が事後解析の適格基準を満たし、ベースラインの平均体重は84.7±15.4kgであった。初回から最後の体重測定までの期間中央値は4.7年、測定回数中央値は12回(範囲:2~14)だった。ASVによる体重変動中央値は1.76kgであり、中央値未満を低変動群、中央値以上を高変動群とした。 過体重・肥満の高変動例はリスクが高い ベースラインの背景因子は、低変動群は高変動群に比べ高齢で(年齢中央値:63.4 vs.60.4歳)、65歳以上の割合が高く(43.4 vs.32.6%)、男性の割合が低く(78.9 vs.83.2%)、平均体重が軽かった(79.4±12.6 vs.90.1±16.1kg)(すべてp<0.001)。 リスク因子、ベースラインの脂質値、平均体重、体重の変化で完全補正したモデルでは、体重変動(ASVで測定し、時間依存性共変量とした場合)が1SD(1.5~1.9kg)増加するごとに、冠動脈イベント(イベント数:2,091件、ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.01~1.07、p=0.01)、心血管イベント(2,727件、1.04、1.02~1.07、p<0.001)、死亡(487件、1.09、1.07~1.12、p<0.001)のリスクが有意に増大し、心筋梗塞(HR:1.04、95%CI:0.98~1.09、p=0.17)および脳卒中(1.05、0.97~1.13、p=0.20)は、有意な差はないものの発生割合が増えていた。 五分位数による解析では、体重変動が第1五分位数(平均値:0.93kg)から第5五分位数(同:3.86kg)へと大きくなるに従って、冠動脈イベント、心血管イベント、死亡、心筋梗塞、脳卒中、新規糖尿病の発生割合が有意に増加した。また、第5五分位群は第1五分位群に比べ、冠動脈イベントのリスクが64%増加し(補正HR:1.64、95%CI:1.41~1.90)、心血管イベントは85%(1.85、1.62~2.11)、死亡は124%(2.24、1.74~2.89)、心筋梗塞は117%(2.17、1.59~2.97)、脳卒中は136%(2.36、1.56~3.58)、新規糖尿病は78%(1.78、1.32~2.40)増加した(すべてp<0.001)。 ベースラインの体重が標準の患者では、高変動群は低変動群よりも冠動脈イベントが発生した患者の割合が高かったものの有意差は認めなかった(19.8 vs.17.7%、p=0.17)のに対し、心血管イベントの割合は高変動群が有意に高かった(28.1 vs.23.4%、p=0.01)。一方、ベースライン時に過体重と肥満の患者は、冠動脈イベント(過体重例:24.4 vs.18.0%、肥満例:28.9 vs.22.2%)および心血管イベント(32.0 vs.22.9%、36.7 vs.28.4%)の発生割合が、いずれも高変動群で有意に高率であった(すべてp<0.001)。 著者は、「これらの関連性は、因果関係以外の原因による可能性がある」とし、「高度な体重変動は、より不良な予後をもたらす重篤な疾患がすでに存在することを示すマーカーとなる可能性がある」と指摘している。

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短期の放射線療法+テモゾロミドは、高齢膠芽腫患者の生存を延長(解説:中川原 譲二 氏)-667

 高齢者の膠芽腫は予後不良である。70歳以下の患者では、標準放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミドの追加により生存期間の延長が示されていた。一方、高齢患者にはより楽な短期の放射線療法が通常用いられているが、短期の放射線療法+テモゾロミド併用の有効性は不明であった。カナダ・オデットがんセンターのJames R Perry氏らは、65歳以上の初発膠芽腫患者を対象とした第III相無作為化試験によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミドは、放射線療法単独と比較して生存期間を延長させることを明らかにした(NEJM誌2017年3月16日号)。高齢膠芽腫患者で、短期の放射線療法単独とテモゾロミド併用を比較 研究グループは、新たに膠芽腫(WHO grade IV)と診断された65歳以上の高齢患者562例(年齢中央値73歳、範囲65~90歳)を、短期の放射線療法(40Gy/15分割/3週間)単独群と、放射線療法+テモゾロミド(75mg/m2/日を毎日、21日間)併用群に、281例ずつ無作為に割り付けた。主要評価項目は全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)で、有効性に関してはintention-to-treat解析を実施した。テモゾロミド併用により、全生存期間、無増悪生存期間のいずれも延長 その結果、テモゾロミド併用群のOS中央値は、放射線療法単独群に対し有意な延長が認められた(9.3ヵ月 vs.7.6ヵ月、死亡のハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.80、p<0.001)。同様に併用群のPFS中央値も有意に延長した(5.3ヵ月 vs.3.9ヵ月、増悪または死亡のHR:0.50、95%CI:0.41~0.60、p<0.001)。一方、O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ(MGMT)のメチル化がみられる症例165例では、OS中央値は、テモゾロミド併用群13.5ヵ月、放射線療法単独群7.7ヵ月(死亡のHR:0.53、95%CI:0.38~0.73、p<0.001)で、非メチル化症例189例では、それぞれ10.0ヵ月と7.9ヵ月(死亡のHR:0.75、95%CI:0.56~1.01、p=0.055、交互作用のp=0.08)であった。生活の質(QOL)は両群で同様であった。 比較的若年の膠芽腫患者に対する放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミド併用は、標準的治療として受け入れられているが、予後が不良な高齢の膠芽腫患者では、本邦においてもこれまで有効性の確認がないままに、患者負担の軽減の観点から短期の放射線療法が選択されてきた。本研究によって、高齢の膠芽腫患者に対する短期の放射線療法+テモゾロミド併用が有効であること、MGMTのメチル化がみられる症例でその有効性が高いことなどが明らかになり、今後は、わが国においても膠芽腫に対する放射線化学療法の治療プロトコールの精緻化が課題になるものと考えられる。

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2016年世界肺癌学会の動画レポートを公開:肺がん医療向上委員会

 特定非営利活動法人 日本肺癌学会「肺がん医療向上委員会」は、昨年(2016年)12月にオーストリアのウィーンで開催された第17回世界肺癌会議(WCLC/IASLC 2016)を取材し、全16本の動画レポートを制作し、公開した。 IASLC の「ペイシェント・アドボカシーアワード(Patient Advocacy Awards)」を受賞し、WCLC/IASLC 2016 に招待された「日本肺がん患者連絡会」代表の長谷川 一男氏の協力を得て、アドボカシーの視点から世界肺癌学会を取材し、最先端の学術的発表、世界各国のアドボカシー活動の現状などをまとめたもの。 第3世代TKI、免疫チェックポイント阻害薬、新ステージ分類など最新の発表の模様と、日本肺癌学会理事長の光冨徹哉氏の解説も収録されている。(ケアネット 細田 雅之)参考日本肺癌学会ニュースリリース(PDF)世界肺癌学会レポート:アドボカシーの視点から(動画サイト)

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統合失調症の認知機能に関連する独立因子:産業医大

 アリピプラゾールは、統合失調症の認知機能にさまざまな影響を与えることが報告されている。産業医科大学の堀 輝氏らは、アリピプラゾールで治療中の統合失調症患者の認知機能に影響を及ぼす要因を特定し、生物学的マーカー、臨床データ、精神症状を評価した。International journal of molecular sciences誌2017年3月6日号の報告。 対象は、統合失調症患者51例。認知機能の評価には、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)を用い、患者背景、精神症状、カテコールアミン代謝物血漿ホモバニリン酸(HVA)、3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール(MHPG)、血清脳由来神経栄養因子(BDNF)との関連を評価した。認知機能と関連する独立した因子を同定するため、多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・BDNFレベル、入院回数、MHPGレベルは、言語記憶および学習と関連していた。・総入院期間とMHPGレベルは、作業記憶と関連していた。・初回入院年齢、教育年齢は、運動速度と関連していた。・入院回数、PANSS陰性症状サブスケールスコア、MHPGレベル、BDNFレベル、DIEPSSスコアは、言語流暢性と関連していた。・HVAレベル、MHPGレベル、罹病期間、PANSS陰性症状サブスケールスコアは、注意および処理速度と関連していた。・BDNFレベル、MHPGレベルは、執行機能と関連していた。 著者らは「これらの結果より、アリピプラゾール治療中の患者において、これら寄与因子をコントロールすることにより、精神症状や認知機能障害の治療が改善されることが示唆された」としている。関連医療ニュース 第2世代抗精神病薬、認知機能に対する影響を検証 初発統合失調症、陰性症状の経過と予測因子 抗精神病薬の高用量投与は悪か

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PSA監視療法は手術、放射線治療よりも短期的にはQOLで優位(解説:榎本 裕 氏)-666

 限局性前立腺がんの治療は大きく変化している。手術では、より侵襲の少ないロボット支援前立腺全摘除術(RARP)が普及している。放射線治療では、強度変調放射線照射(IMRT)によってより安全に高線量照射が可能になり、有害事象を増やすことなく治療成績が向上した。一方で、PSA監視療法(AS)は低リスク症例を中心に限局性前立腺がんの管理方法としての地位を確かなものにしている。 この領域で最近注目を浴びたのは、2016年に報告されたProtecT studyである。ProtecTでは限局性前立腺がん患者を前立腺全摘除術と外照射、ASにランダム化した前向き試験である。登録条件を低リスクがんに限定していなかったにもかかわらず、10年間のがん特異的生存率は各群で有意差なしという結果は衝撃的であった。ProtecTのQOLに関する報告が待たれるところであるが、登録期間が1999年から2009年までと古く、手術は開腹前立腺全摘、外照射は3D原体照射と、治療手法が現在のトレンドとは異なっている。また、実際には割り付け通りの治療を行わないcontaminationも12~29%含まれている。 本研究は、前立腺全摘、外照射、小線源治療、ASを選択した患者の2年後までのQOLの変化をみたものである。年齢、人種、医療保険、教育レベル、世帯収入といった社会的因子のほか、治療前のQOLスコアなど、治療後のQOLに影響を及ぼすと考えられる項目は、propensity weightingによって揃えることにより治療の影響のみを抽出した。一方、治療前のPSA値、Gleason score、Tステージといったがんの悪性度に関わる因子は考慮していない。前立腺全摘はASに比較して性機能と尿失禁のスコアが悪化し、外照射と小線源治療は短期的な尿路閉塞と尿路刺激症状が悪化、外照射ではさらに短期的な腸管症状の悪化がみられた。 その結果自体はおおむね過去の報告と異なるものではないが、いくつかの点で本研究はランダム化RCTであるProtecTよりも優れた点があると思われる。第1に本研究では前立腺全摘の86.6%はRARP、外照射の94.8%はIMRTを行っており、real worldにおける最近の診療傾向を反映していることである。また、propensity weightingにがんの悪性度を入れなかったことは逆に、現実的な治療選択の傾向を反映した解析になっていると思われる。その一方、がんの悪性度が群間で異なっているということは、治療成績や治療後のQOLに対する期待度などに差があるだろう。また、観察期間2年はさすがに短いのではないか。診断後2年ではAS群の多くはまだ治療に踏み切っていないのだからQOLが保たれているのは当然である。長期成績の報告を待ちたいと思う。

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統合失調症や双極性障害、心代謝合併率はなんと60%以上

 重篤な精神疾患は、心代謝合併症のリスク増加と関連している。米国・ジャッカー・ヒルサイド病院のChristoph U Correll氏らは、統合失調症または双極性障害を有する入院患者の心代謝合併症の有病率、入院アウトカムやコストとの関連を評価した。Annals of general psychiatry誌2017年2月10日号の報告。 本研究は、Premier Perspectiveデータベースより統合失調症または双極性障害の入院診断を有する患者をレビューした、レトロスペクティブデータベース分析である。患者は、ICD-9-CMの心代謝合併症数(0、1、2、3以上)に基づき、4つのコホートに分類された。アウトカムは、入院期間、入院中の死亡率、医療コスト、30日間の全原因による再入院とした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者5万7,506例のうち、心代謝合併症を有していた患者は66.1%、2つ以上の併存疾患を有していた患者は39.3%であった。・双極性障害患者12万4,803例のうち、心代謝合併症を有していた患者は60.5%、2つ以上の併存疾患を有していた患者は33.4%であった。・平均入院期間は、統合失調症で8.5日、双極性障害で5.2日であった。・さらなる心代謝合併症は、双極性障害の入院期間延長と関連していたが(p<0.001)、統合失調症では関連が認められなかった。・入院中の死亡率は、統合失調症で1.2%、双極性障害で0.7%であった。・さらなる心代謝合併症は、双極性障害患者の死亡率を有意に増加させ(OR:1.218、p<0.001)、統合失調症患者の死亡数は数的に増加させた(OR:1.014、p=0.727)。・より多くの心代謝合併症を有する患者は、30日間の再入院がより多く(統合失調症:9~13%、双極性障害:7~12%)、コストも高かった(統合失調症:1万0,606~1万5,355ドル、双極性障害:7,126~1万3,523ドル、各々p<0.01)。 著者らは「統合失調症または双極性障害を有する入院患者の60%以上が心代謝合併症を有していた。統合失調症または双極性障害患者における心代謝合併症は、再入院の増加、コストの増加、ならびに双極性障害患者における入院期間延長、死亡率の増加と関連していた」としている。関連医療ニュース 双極性障害の再発リスク、1年目で4割超 オランザピンの心血管副作用、メラトニンの保護可能 うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

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日本人心房細動患者における左心耳血栓、有病率と薬剤比較:医科歯科大

 心房細動(AF)は、一般的な心臓不整脈であり、血栓塞栓性事象を含む心血管罹患率および死亡率の増加と関連している。東京医科歯科大学の川端 美穂子氏らは、抗凝固療法中に前処置経食道心エコー(TEE)を受けている日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における左心耳(LAA)血栓の有病率を評価し、ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性の比較を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月7日号の報告。 抗凝固療法を3週間以上行ったのち、前処置TEEを受けたNVAF患者559例(男性:445例、年齢:62±11歳)をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・非発作性のAFは、275例(49%)で認められた。・LAA血栓は、15例(2.7%)で認められた。・LAA血栓の有病率は、DOAC群(2.6%)とワルファリン群(2.8%)で同様であった(p=0.86)。・CHA2DS2-VAScスコア0、脳卒中歴のない発作性AF、一過性虚血発作では、LAA血栓を有する患者はいなかった。・単変量解析では、LAA血栓と関連していた項目は、非発作性AF、心構造疾患、抗血小板療法、左心房の大きさ、高BNP、LAA流量の減少、CHA2DS2-VAScスコアの高さであった。・多変量解析では、BNP173pg/mL以上のみがLAA血栓の独立した予測因子であった。 著者らは「経口抗凝固療法を継続しているにもかかわらず、LAA血栓は、日本人NVAF患者の2.7%に認められた。血栓の発生率は、DOAC群、ワルファリン群で同様であった」としている。

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AFの抗凝固療法での骨折リスク、ダビガトランは低減/JAMA

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の抗凝固療法では、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)がワルファリンに比べ骨粗鬆症による骨折のリスクが低いことが、中国・香港大学のWallis C Y Lau氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。ワルファリンは、骨折リスクの増大が確認されているが、代替薬がないとの理由で数十年もの間、当然のように使用されている。一方、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)ダビガトランは、最近の動物実験で骨体積の増加、骨梁間隔の狭小化、骨代謝回転速度の低下をもたらすことが示され、骨粗鬆症性骨折のリスクを低減する可能性が示唆されている。リスクを後ろ向きに評価するコホート試験 本研究は、香港病院管理局が運営するClinical Data Analysis and Reporting System(CDARS)を用いて2つの抗凝固薬の骨粗鬆症性骨折リスクをレトロスペクティブに評価する地域住民ベースのコホート試験である。 CDARSの登録データから、2010年1月1日~2014年12月31日に新規にNVAFと診断された患者5万1,946例を同定した。このうち、傾向スコアを用いて1対2の割合で背景因子をマッチさせた初回投与例8,152例(ダビガトラン群:3,268例、ワルファリン群:4,884例)が解析の対象となった。 ポアソン回帰を用いて、2群の骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折および椎体骨折のリスクを比較した。罹患率比(IRR)および絶対リスク差(ARD)と、その95%信頼区間(CI)を算出した。転倒、骨折の既往例でリスク半減 ベースラインの全体の平均年齢は74(SD 11)歳、50%(4,052例)が女性であった。平均フォローアップ期間は501(SD 524)日だった。この間に、104例(1.3%)が骨粗鬆症性骨折を発症した(ダビガトラン群:32例[1.0%]、ワルファリン群:72例[1.5%])。初回投与から骨折発症までの期間中央値は、ダビガトラン群が222日(IQR:57~450)、ワルファリン群は267日(81~638)だった。 ポアソン回帰分析において、ダビガトラン群はワルファリン群に比べ骨粗鬆症性骨折のリスクが有意に低いことが示された。すなわち、100人年当たりの発症割合はそれぞれ0.7、1.1であり、100人年当たりの補正ARDは-0.68(95%CI:-0.38~-0.86)、補正IRRは0.38(0.22~0.66)であった(p<0.001)。また、投与期間が1年未満(1.1 vs.1.4/100人年、p=0.006)、1年以上(0.4 vs.0.9/100人年、p=0.002)の双方とも、ダビガトラン群のリスクが有意に低かった。 転倒、骨折、これら双方の既往歴がある患者では、ダビガトラン群のリスクが統計学的に有意に低かった(1.6 vs.3.6/100人年、ARD/100人年:-3.15、95%CI:-2.40~-3.45、IRR:0.12、95%CI:0.04~0.33、p<0.001)が、これらの既往歴がない患者では両群間に有意差は認めなかった(0.6 vs.0.7/100人年、ARD/100人年:-0.04、95%CI:0.67~-0.39、IRR:0.95、95%CI:0.45~1.96、p>0.99)(交互作用検定:p<0.001)。 事後解析では、ダビガトラン群は無治療の患者との比較でも、骨粗鬆症性骨折リスクが有意に良好であった(ARD/100人年:-0.62、95%CI:-0.25~-0.87、IRR:0.52、95%CI:0.33~0.81)。 著者は、「これら2つの薬剤と骨折リスクの関連の理解を深めるには、無作為化試験を含め、さらなる検討を要する」と指摘している。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第36回

第36回:急性副鼻腔炎に対する抗菌薬投与は、発症7~10日以内で症状改善しない場合に考慮する監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 急性副鼻腔炎とは「急性に発症し、罹病期間が1カ月以内と短く、鼻閉、鼻漏、後鼻漏、咳嗽を認め、頭痛、頬部痛、顔面圧迫感などを伴う疾患」と定義されている1)。原因としてはウイルス性、細菌性が挙げられるが、最近はアレルギー性鼻副鼻腔炎も増加している2)。このため抗菌薬投与が効果を示す細菌性副鼻腔炎か否かを鑑別する必要があるが、実臨床で正確に判断することは難しい。日本鼻科学会からは、重症度スコアと、小児および成人の重症度別治療アルゴリズムが提唱されている3)。 これによると、軽症の場合は小児、成人いずれの場合においても抗菌薬は使用せず、5日間の経過観察を行い、症状が改善しない場合にはAMPCなどの抗菌薬を考慮することになっている。したがって、急性副鼻腔炎に対しては、ルーチンで抗菌薬を処方せず、適正な使用が求められる。 以下、American Family Physician 2016年7月15日号より4)急性副鼻腔炎は、外来診療におけるcommon diseaseの一つである。多くの場合は、ウイルス性上気道炎が原因である。臨床所見だけでは、抗菌薬が効く細菌性副鼻腔炎かどうかの判断は難しい。次の4項目の所見がある場合は、細菌性副鼻腔炎の可能性が高まる。症状の再燃膿性鼻汁血沈1時間値>10mm鼻腔内の膿汁貯留ガイドラインによって違いはあるものの、7~10日間以内に副鼻腔炎症状が改善しない場合や、症状が増悪する場合は抗菌薬療法を考慮する。抗菌薬療法の第1選択は、AMPC(商品名:サワシリン)500mg 8時間毎、またはAMPC/CVA(同:オーグメンチン)500mg/125mg 8時間毎の5~10日間投与である。レスピラトリーキノロン(LVFX、MFLX)は、βラクタム系抗菌薬と比較して有益性は示されておらず、さまざまな副作用リスクを伴っているため、第1選択として推奨されていない。マクロライド系、ST合剤、第2世代および第3世代セファロスポリン系は、S.pneumoniaeやH. influenzaeに効かないことが多いため、初期治療として推奨されていない。最近のガイドラインでは、上気道症状を認めてから7~10日間の経過観察を推奨している。鎮痛薬、鼻腔内ステロイド投与、生食による鼻腔内洗浄による治療効果のエビデンスは乏しい。また、合併症のない急性副鼻腔炎の診断に対する放射線画像検査は推奨されない。治療反応性が乏しい症例では、合併症や解剖学的異常の有無について単純CTが有用である。十分に内科的治療を行っているにもかかわらず、症状が遷延する場合や、まれな合併症が疑われる場合は、耳鼻科への紹介が必要。専門医にコンサルトすべき一覧閉塞を引き起こすような解剖学的異常眼窩蜂窩織炎や骨膜下膿瘍、眼窩膿瘍、意識障害、髄膜炎、静脈洞血栓症、頭蓋内膿瘍、Pottʼs puffy tumorなどの合併症状を呈している(Pottʼs puffy tumorは1768年にSir Percival Pottが提唱した疾患概念で、前頭骨骨髄炎が原因で骨外に1つ以上の膿瘍を形成した状態をいう)アレルギー性鼻炎に対する免疫療法の評価頻回再発例(年3~4回の再発)真菌性副鼻腔炎、肉芽腫性疾患、悪性新生物の疑い免疫不全患者院内感染39度以上の発熱が続く重症感染症抗菌薬療法を延長投与したにもかかわらず治療効果がみられない場合非典型的な起炎菌、抗菌薬抵抗性起炎菌が検出された場合※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版 2) Suzuki K, Baba S: Local use of antibiotics for paranasal sinusitis. In: Proceedings of the XII international symposium of infection and allergy of the nose. Am J Rhinol 1994; 8: 306-307 3) 日本鼻科学会編:急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版(追補版). 4) Aring AM,et al. Am Fam Physician. 2016;94:97-105

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双極性障害の再発リスク、1年目で4割超

 双極性障害(BD)の再発、再燃率の報告は、研究間で著しく異なる。大部分のデータは、選択基準の狭いスポンサードランダム化比較試験に参加している高度に選択された患者を対象としている。リアルワールドでの再発、再燃の気分エピソード(subsequent mood episode:SME)の真のリスクを推定するため、スペイン・FIDMAG Germanes HospitalariesのJoaquim Radua氏らは、自然主義BD研究で報告されたSMEの割合についてメタ解析を行った。Psychotherapy and psychosomatics誌2017年号の報告。 PubMed、ScienceDirect、Scopus、Web of Knowledgeより2015年7月までの研究を検索した。個々のデータまたはKaplan-Meier plotよりSEM出現までの期間を報告した研究を含んだ。 主な結果は以下のとおり。・5,837例を含む12研究が、選択基準を満たした。・インデックスエピソード後の成人におけるSME出現までの平均期間は、1.44年であった。・SMEリスクは、最初の1年目で44%であった。この1年目のSME症例がいなくなったため、2年目は19%に低下した。・このリスクは、双極I型障害(BD-I)よりも双極II型障害(BD-II)において高かった(HR:1.5)。・BD-Iにおけるその後の躁病、混合性、うつ病エピソードリスクは、同じインデックスエピソード後に高かった(HR:1.89~5.14)。・SMEの全体的リスクは、亜症候群性症状が持続していた患者で高かった(HR:2.17)。 著者らは「本研究データより、リアルワールドでのBD患者のSMEリスクについて、より信頼性の高い推定値が算出できた。SMEのリスク要因を明らかにするためにも、BD-II患者を対象とした長期間のさらなる研究が必要とされる」としている。関連医療ニュース 双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は自殺リスク要因か 双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント 双極性障害の再発エピソード、持効性注射剤の効果は

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これで良いのかPD-L1測定…22C3と28-8の違いは?

 非小細胞肺がん(NSCLC)において、PD-L1阻害薬のバイオマーカーPD-L1免疫組織化学染色(IHC)は薬剤ごとに固有のアッセイが対応しているが、どのアッセイで判定してもPD-L1染色の結果は同じなのか? 承認済および臨床試験を含め、米国におけるPD-L1アッセイは、ニボルマブの28-8、ペムブロリズマブの22C3 、atezolizumabの SP142、durvalumabのSP263 という4種がある。Blueprint PD-L1 IHC Assay Comparisonプロジェクトは、この4種のPD-L1 のIHCアッセイを分析し、臨床的に比較し情報提供する初めての産学協同の試みである。22C3、28-8、SP263ではPD-L1染色陽性腫瘍細胞の割合は同等 合計39例のNSCLC腫瘍標本を、臨床試験と同様に上記4種のPD-L1 IHCアッセイで染色した。3名の専門家が、各々のアッセイの染色陽性強度を独立評価した。さらに各アッセイの固有カットオフを用いて患者を分類し、臨床的診断性能を比較した。各アッセイのカットオフ値は、28-8と22C3は腫瘍細胞1%(TC1%)、SP263は腫瘍細胞25%(TC25%)、SP142は腫瘍細胞1%そして/または免疫細胞1%(TC/IC 1%)であった。 ニボルマブの28-8、ペムブロリズマブの22C3 、atezolizumabの SP142、durvalumabのSP263 という4種のPD-L1アッセイを比較した主な結果は以下のとおり。・PD-L1染色陽性腫瘍細胞の割合は、22C3、28-8、SP263では同等であったが、SP142はそれら3種よりも低かった。・4種のアッセイでの染色のばらつきは、免疫細胞のほう腫瘍細胞よりも高かった。 ・38例中19例(50.0%)はすべてのアッセイで共通してカットオフ値以上に、5例(13%)はすべてのアッセイで共通してカットオフ以下に分類された。 ・38例中14例(37%)は、アッセイによってカットオフ値以上か以下か異なる結果となった。・各アッセイのカットオフ値以上の割合は、28-8では60.5%、22C3では60.5%、SP263では52.6%、SP142では78.9%と、SP142で高かった。 この試験では、3つのアッセイについてPD-L1発現の分析性能は同等ではあるものの、アッセイとカットオフ値を替えることで、PD-L1ステータスの誤分類につながる可能性が示された。 異なる特異的なPD-L1カットオフを踏まえた上での代替染色アッセイの活用については、多くのデータが必要である、と筆者は述べている。

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「歯は大切に」認知症発症にも影響:久山町研究

 日本人高齢者における、認知症発症に対する歯を失うことの影響を明らかにするため、九州大学の竹内 研時氏らは、久山町研究において調査を行った。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2017年3月8日号の報告。 認知症でない日本人成人(60歳以上)1,566例を対象に、5年間追跡調査を行った(2007~12年)。対象者をベースライン時の残存歯数により4群に分類した(20本以上、10~19本、1~9本、0本)。全ケースの認知症、アルツハイマー型認知症(AD)、脳血管性認知症(VaD)の発症に対する、歯を失うことによる影響のリスク推定値は、Cox比例ハザードモデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間中における全ケースの認知症発症は180例(11.5%)、AD発症は127例(8.1%)、VaD発症は42例(2.7%)であった。・潜在的な交絡因子で調整した後、残存歯数の減少に伴い、全ケースの認知症の多変量補正ハザード比が増加する傾向が示された(p for trend=0.04)。・全ケースの認知症は、20本以上群と比較し、10~19本群で1.62倍、1~9本群で1.81倍、0本群で1.63倍であった。・残存歯数とADリスクには逆相関が観察されたが(p for trend=0.08)、VaDリスクでは認められなかった(p for trend=0.20)。 著者らは「日本人において、歯を失うことは、全ケースの認知症およびADリスクの増加と関連している」としている。関連医療ニュース 認知症になりやすい職業は 「最近、睡眠時間が増えた」は認知症のサインかも 米国の認知症有病率が低下、その要因は

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前立腺がんの3つの治療戦略、QOLに差はあるか/JAMA

 局所前立腺がんの3つの治療戦略(根治的前立腺全摘除術、外部照射療法、小線源療法)は、有害事象の発現パターンがさまざまであり、積極的監視療法と比較して2年後のQOLにほとんど差はないことが、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のRonald C Chen氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月21日号に掲載された。前立腺がん患者の余命は延長しており、個々の治療選択肢のQOLへの影響は、患者の意思決定プロセスにおける中心的な関心事項となっている。QOLを積極的監視と比較する前向きコホート試験 本研究は、根治的前立腺全摘除術(RP)、外部照射療法(EBR)、小線源療法(BT)と積極的監視療法(AS)のQOLを比較する地域住民ベースの前向きコホート試験(米国患者中心アウトカム研究所[PCORI]などの助成による)。 North Carolina Central Cancer Registry(NCCCR)との共同で、2011年1月~2013年6月に前立腺がんと新規診断された男性1,141例を登録した。診断から登録までの期間中央値は5週間で、解析に含まれた最終フォローアップ日は2015年9月9日だった。 ベースライン(治療前)、治療後3、12、24ヵ月時に、Prostate Cancer Symptom Indices(PCSI)を用いてQOLの評価を行った。PCSIは4つのドメイン(性機能障害[5項目]、尿路閉塞・刺激[5項目]、尿失禁[3項目]、腸障害[6項目])から成り、それぞれのドメインを0~100点(点数が高いほど機能障害が重度)でスコア化した。 AS群が314例(27.5%)、RP群が469例(41.1%)、EBR群が249例(21.8%)、BT群は109例(9.6%)であった。RP群の86.6%がロボット手術を、EBR群の94.8%が強度変調放射線治療(IMRT)を受けた。ベースラインの各群間の人口統計学的背景因子およびQOLの差は、傾向重み付け(propensity weighting)を行って最小化した。24ヵ月時の臨床的に意味のある増悪は、RP群の尿失禁のみ ベースラインの傾向重み付け後の4群の年齢中央値は66~67歳、白人が77~80%を占め、QOLスコアの平均値は性機能障害が41.6~46.4点、尿路閉塞・刺激が20.8~22.8点、尿失禁が9.7~10.5点、腸障害は5.7~6.2点だった。 3ヵ月時の性機能障害の平均スコアのAS群との差は、RP群が36.2点(95%信頼区間[CI]:30.4~42.0)、EBR群が13.9点(6.7~21.2)、BT群は17.1点(7.8~26.6)であり、いずれもAS群に比べ有意に増悪していた(臨床的に意味のある差はRP群のみ)。 これ以外に、3ヵ月時の平均スコアが、AS群に比べ臨床的に意味のある差をもって有意に増悪したのは、EBR群とBT群の尿路閉塞・刺激(それぞれ、AS群との差:11.7点、95%CI:8.7~14.8、20.5点、15.1~25.9)、RP群の尿失禁(33.6点、27.8~39.2)、EBR群の腸障害(4.9点、2.4~7.4)であった。 12ヵ月時の平均スコアが、AS群に比べ臨床的に意味のある差をもって有意に増悪していたのは、RP群の性機能障害(AS群との差:27.6点、95%CI:21.8~33.4)と尿失禁(18.2点、12.9~23.5)で、24ヵ月時にはRP群の尿失禁(15.4点、8.9~21.9)のみとなり、性機能障害(17.1点、10.9~23.3)については、有意差はあるものの臨床的に意味のある差はなくなっていた。 著者は、「これらの知見は、患者の好みに基づく治療法の決定の推進に使用できると考えられる」としている。

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