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統合失調症の遺伝的リスク~併発する他疾患との関連性

 統合失調症は、重度の身体的および精神医学的な症状を伴う深刻な精神疾患である。併発する健康被害が遺伝的リスクにより発生するのか、統合失調症の影響で発生しているかは、よくわかっていない。スウェーデン・カロリンスカ研究所のRuyue Zhang氏らは、この課題に対し統合失調症の遺伝的リスクからアプローチを試みるため、英国バイオバンクより統合失調症と診断されていない40万6,929例を対象に、健康関連問題に対する統合失調症ポリジーンリスクスコア(PRS)の影響について調査を行った。Molecular Psychiatry誌オンライン版2021年11月19日号の報告。 各診断は、プライマリケアおよび入院患者の医療記録、がんや死亡に関連する情報を含む健康データを用いて判断した。統合失調症のPRSを生成し、線形回帰とロジスティック回帰を用いて、一般的な健康状態、ICD10における16の主要分類および603疾患との関連をテストした。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症PRSの高さは、全体的な健康評価の低下、入院診断の増加、特殊な疾患の増加との有意な関連が認められた。・ICD10の4つの主要分類との有意な関連が認められた。 ●正の関連:呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、妊娠・分娩・産褥 ●負の関連:筋骨格系の疾患・31の表現型は、統合失調症PRSとの有意な関連が認められ、19の新たな所見については、いくつかの筋骨格系の疾患、呼吸器系の疾患、消化器系の疾患、静脈瘤、下垂体機能亢進、その他の末梢神経障害との関連が認められた。 著者らは「これらの発見は、統合失調症の遺伝的リスクの多面的な影響に関する情報を提供し、統合失調症と併発するいくつかの疾患がどのように発生するかを考える上で役立つであろう。統合失調症の病態生理学におけるホルモン調節の遺伝的基礎や免疫機構との関連を含めた今後の研究により、統合失調症とその併存疾患の根底にある生物学的機構を解明できる可能性がある」としている。

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原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん【知って得する!?医療略語】第3回

第3回 原因はSAD?毎年秋から体調を崩す患者さん季節の変化で気持ちが落ち込むことがあるって本当ですか?コム太君、そうなんです。近年、知られるようになってきましたが、「季節性感情障害(SAD)」という疾患概念があります。とくに日照時間が減り、寒くなる秋~冬に多い印象です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】SAD【日本語】季節性感情障害・季節性気分障害【英字】seasonal affective disorder【分野】精神神経【診療科】精神科・内科・心療内科【関連】冬季うつ病・夏季うつ病実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。本シリーズでは皆様のお役に立つかもしれない医療略語をご紹介します。今回は『SAD』です。「だるい」「眠れない」「気力が出ない」「気が滅入る」「不安で仕方ない」ことを主訴に内科を受診される患者さんは少なくありません。各種検査をしても異常がなく、症状を一元的に説明できない不定愁訴の患者さんの中には、詳しくお話を伺うと、実は毎年、秋頃から体調が悪くなり始めることが分かります。症状出現が早い人は、夏の終わり頃から症状を自覚し始めます。そして、年末年始をピークに、春に近づくにつれて、知らず知らずのうちに症状が軽快していることが少なくありません。そんな患者さんにはSADの可能性があります。ご本人も季節的な気分障害を認識していないことが多く、冬季を過ぎると症状が改善する可能性をお伝えすると、それだけで安心される方も少なくありません。このSADですが、Rosenthal氏らが、以下の4項目を満たす疾患と定義しています1)。(1)RDC診断基準による大感情障害を有する(2)少なくとも2年以上連続して秋冬に発症し、春夏に寛解するうつ状態(3)他の精神障害を有さない(4)明確な心理・社会的要因を有しない外来レベルだけではなく、救急受診患者数を季節で検証した研究でも、冬季に増加する傾向が報告されています2)。SADの原因は、日照時間の減少、日照時間減少によるビタミンD低下、セロトニンへの影響、気温の低下など、諸説あります。ただ、臨床現場において、SADの概念があることを明確に認識しておくことは、患者さんへの症状推移の予測や治療方針の決定、病状説明に役立つかもしれません。1)Wehr TA, et al. Am J Psychiatry. 1989;146:829-839.2)大槻 秀樹ほか. 日本救急医学会. 2009;20:763-771.

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正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴

 正常な老化と認知症による認知機能の変化に関してその根底にあるメカニズムを解明するためには、脳ネットワークの空間的関係とそのレジリエンスのメカニズムを理解する必要がある。藤田医科大学の渡辺 宏久氏らは、正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴について報告を行った。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年11月22日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・異種感覚統合(multisensory integration)やデフォルト・モード・ネットワークなどの脳のハブ領域は、ネットワーク内およびネットワーク間の伝達において重要であり、老化の過程においても良好に維持され、これは代謝プロセスにおいても重要な役割を担っている。・一方、これらの脳のハブ領域は、アルツハイマー病などの神経変性認知症の病変に影響を及ぼす部位である。・聴覚、視覚、感覚運動のネットワークなどに問題が生じた一次情報処理ネットワークは、異種感覚統合ネットワークの過活動や認知症を引き起こす病理学的タンパク質の蓄積につながる可能性がある。・細胞レベルでは、脳のハブ領域には多数のシナプスが含まれており、大量のエネルギーが必要となる。・これらの領域では、ATP関連の遺伝子発現が多くみられ、PETで示されているように高いグルコース代謝が認められる。・重要なのは、ATP産生の中心にあるミトコンドリアの数とその機能が、10年ごとに約8%減少するということである。・認知症患者は、多くの場合大量のATPを必要とするユビキチン・プロテアソームおよびオートファジー・リソソームシステムの機能障害を有している。・エネルギーの供給が低いにもかかわらず需要が高い場合には、疾患リスクが上昇する可能性がある。・エネルギーの供給と需要のバランスが悪いと、病的なタンパク質の蓄積を誘発し、認知症発症に重大な影響を及ぼす可能性がある。・脳のハブ領域における認知症リスクの脆弱性は、このエネルギーバランスの不均衡により説明可能であると考えられる。

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新型コロナの後遺症、入院患者と自宅療養者で違い/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症での一般診療医(GP)受診率について、COVID-19で入院を要した患者(入院患者)と入院を必要とせずコミュニティで療養した患者(コミュニティ療養者)で差があることを、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのHannah R. Whittaker氏らがイングランド住民を対象としたコホート研究で明らかにした。コミュニティ療養者では、時間の経過とともに受診率が低下する後遺症もあったが、不安や抑うつなど受診が継続している後遺症があり、ワクチン接種後に受診率の低下が認められる後遺症があることも明らかにされた。これまでいくつかの観察研究で、COVID-19回復後の持続的な症状および新たな臓器機能障害は報告されているが、それらは主に重篤症状の入院患者でみられたもので、コミュニティ療養者の長期アウトカムを比較した研究はごくわずかで、いずれも小規模で選択バイアスの掛かったものであった。また、大規模な住民ベースのコホート研究での経時的評価やCOVID-19ワクチン接種後のアウトカムの評価も行われていなかった。BMJ誌2021年12月29日号掲載の報告。イングランドのCOVID-19後遺症によるGP受診率を調査 研究グループは、COVID-19入院患者とコミュニティ療養者の急性期症状回復後の後遺症でのGP受診率を調べるとともに、コミュニティ療養者の受診率の経時的変化およびワクチン接種後の受診率の変化を調べた。データソースとして、イングランドのGP 1,392人が寄与する臨床診療研究データリンク(Clinical Practice Research Datalink Aurum[CPRD Aurum])を用いた。 対象者は、2020年8月1日~2021年2月14日にCOVID-19と診断された45万6,002例(男性44.7%、年齢中央値61歳)。診断後、2週間以内に入院した患者(1万8,059例)もしくはコミュニティ療養を受けた患者(43万7,943例)で、フォローアップ期間は最長9.2ヵ月であった。解析では、非COVID-19患者からなるネガティブ対照群(3万8,511例)と、パンデミック前のインフルエンザ患者のコホート群(2万1,803例)も設定し評価が行われた。 主要アウトカムは、新規の症状、疾患、処方および医療サービス利用を目的としたGP受診率で、入院患者vs.コミュニティ療養者、感染前vs.感染後とそれぞれ比較した。医療サービス利用についてはCox回帰法および負の二項回帰法を用いた。 解析は、ネガティブ対照群とインフルエンザ患者群と順次実施。コミュニティ療養者については、COVD-19診断後のアウトカムを経時的に記録し、さらに、負の二項回帰法を用いて、COVID-19後の症状を有した療養者についてワクチン接種前後の比較も行った。コミュニティ療養者は嗅覚・味覚障害が、入院患者は静脈血栓塞栓症が最も高頻度 ネガティブ対照群およびインフルエンザ患者群と比較して、コミュニティ療養者群、入院患者群ともに、複数の後遺症でのGP受診率が有意に高率であった。 コミュニティ療養者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、嗅覚または味覚もしくは両方の障害(補正後ハザード比[HR]:5.28、95%信頼区間[CI]:3.89~7.17、p<0.001)、静脈血栓塞栓症(3.35、2.87~3.91、p<0.001)、肺線維症(2.41、1.37~4.25、p=0.002)、筋肉痛(1.89、1.63~2.20、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(1.15、1.14~1.15、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、関節痛(2.5%)、不安症(1.2%)、そしてNSAIDの処方(1.2%)であった。 入院患者群のGP受診で、感染前の12ヵ月間と比べて最も頻度が高かったのは、静脈血栓塞栓症(補正後HR:16.21、95%CI:11.28~23.31、p<0.001)、悪心(4.64、2.24~9.21、p<0.001)、パラセタモールの処方(3.68、2.86~4.74、p<0.001)、腎不全(3.42、2.67~4.38、p<0.001)。また、COVID-19診断後の医療サービス利用の増大も認められた(発生率比:1.68、95%CI:1.64~1.73、p<0.001)。COVID-19診断後4週以上で最も頻度の高かったアウトカム(絶対発生率)は、静脈血栓塞栓症(3.5%)、関節痛(2.7%)、および息切れ(2.8%)であった。 コミュニティ療養者群では、不安や抑うつ、腹痛、下痢、全身疼痛、悪心、胸部圧迫感、耳鳴での受診が、フォローアップ期間中継続して認められた。また、コミュニティ療養者群ではワクチン接種前と比べて1回目のワクチン接種後に、神経障害性疼痛、認知障害、強オピオイドおよびパラセタモール使用を除き、すべての症状、処方、医療サービス利用についてGP受診率の低下が認められた。虚血性心疾患、喘息、胃・食道疾患についてもGP受診率の低下がみられた。

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新型コロナ、異種ワクチン接種の有益性を確認/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの異種接種について、1回目接種がアデノウイルスベクターワクチンのChAdOx1 nCoV-19(ChAd、AstraZeneca製)またはmRNAワクチンのBNT162b2(BNT、Pfizer-BioNTech製)いずれの場合も、2回目接種がmRNAワクチンのmRNA-1273(m1273、Moderna製)の場合は、一過性の反応原性を増大することが示された。遺伝子組換えスパイク蛋白ナノ粒子ワクチンのNVX-CoV2373(NVX、Novavax製)は、BNTのプライム接種群で非劣性が示されなかった。英国・オックスフォード大学のArabella S. V. Stuart氏らによる無作為化試験の結果で、「複数のワクチンが、BNTまたはChAdでプライミング後の免疫完了に適していた。今回の結果は、異種ワクチンによる接種スケジュールを支持するもので、ワクチン接種の迅速なグローバル展開を促進することになるだろう」と述べている。Lancet誌2022年1月1日号掲載の報告。ChAd、BNT、m1273、NVXによる混合プライミングスケジュールを検討 研究グループは、同一スケジュールで異なるCOVID-19ワクチンを柔軟に用いることが、迅速な展開を促進するために重要であるとの認識から、ChAd、BNT、m1273、NVXを組み込んだ混合プライミングスケジュールについて検討した単盲検無作為化非劣性試験「Com-COV2試験」を実施した。 試験は、ChAdまたはBNTの単回接種を地域で受けた50歳以上を対象とし、各接種群内で3群(試験全体では計6群)に1対1対1の割合で無作為に割り付け、同一ワクチン、m1273またはNVXの2回目接種(初回接種後8~12週に)を行った。 主要エンドポイントは、異種vs.同種スケジュールのELISA法で測定した血清SARS-CoV-2抗スパイクIgG濃度の幾何平均比(GMR)で、2回目接種後28日時点で評価。GMRの片側98.75%信頼区間[CI]値が0.63超を非劣性と定義した。 主要解析は、ベースラインで血清陰性であったper-protocol集団で実施。安全性解析は、試験ワクチンの接種を受けた全被験者を対象に行われた。GMRは、ChAd/m1273群10.2、BNT/m1273群1.3 2021年4月19日~5月14日に、イングランドの9地点で、ChAd(540例、女性47%)またはBNT(532例、女性40%)の単回接種を受けた計1,072例が無作為化を受けた。ChAd群の異種ワクチンによる2回目接種までの期間中央値は9.4週間(範囲:4.7~12.0)、BNT群は同9.6週間(8.0~12.0)であった。 ChAd群では、2回目接種から28日後の幾何平均抗体濃度(GMC)は、ChAd/m1273群2万114 ELISA laboratory units[ELU]/ mL(95%CI:1万8,160~2万2,279)、ChAd/NVX群は5,597 ELU/mL(4,756~6,586)で、いずれもChAd/ChAd群(1,971 ELU/mL[1,718~2,262]に対して非劣性が認められた。ChAd/ChAd群と比較したGMRは、ChAd/m1273群10.2(片側98.75%CI:8.4~∞)、ChAd/NVX群2.8(2.2~∞)であった。 BNT群では、BNT/BNT群(GMC:1万6,929 ELU/mL[95%CI:1万5,025~1万9,075])に対する非劣性は、BNT/m1273群(2万2,978 ELU/mL[2万597~2万5,636])では示されたが、BNT/NVX群(8,874 ELU/mL[7,391~1万654])では示されなかった。BNT/BNT群と比較したGMRは、BNT/m1273群は1.3(片側98.75%CI:1.1~∞)、BNT/NVX群は0.5(0.4~∞)であった。ただし、NVX群もワクチン接種後28日のGMCは18倍の上昇が認められた。 重篤な有害事象は15件報告されたが、いずれも免疫獲得とは関連していないとみなされた。

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第45回 因果関係とは?【統計のそこが知りたい!】

第45回 因果関係とは?因果関係(Causal relationship)は、「項目間に原因と結果に関係があると言い切れる関係」を意味します。たとえば広告費と売り上げの関係をみると、「広告費を増やすと売り上げが多くなる」が通説です。「広告費を増やす」という行為が原因で、「売り上げが多くなる」という結果が導かれるので、両者の間には因果関係があります。原因と結果の関係は、「原因→結果」の一方通行です。「原因があって結果がある」という時間的順序が成り立っています。また、身長と体重の関係性でいえば、身長が高いと体重が重いのか、体重が重いと身長が高いのかがわからないので、両者の因果関係は定かではありません。因果関係があれば必ず相関関係は認められますが、相関関係があるからといって必ずしも因果関係が認められるわけではありません。因果関係と相関関係は、図のように2つの事象とA とBの関係性を表しています。「相関関係があるからといって因果関係がある」と言い切れないため、両項目の時間的順序などを検討して、因果関係を考察します。両者に因果関係があるかを解明するには、統計解析を行う必要があります。ちなみに、共分散構造解析は因果関係を解明するのに使われる代表的な統計解析手法です。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第12回 オッズ比は、なぜ臨床研究で使われるのか?「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問9 多変量解析を学ぶ前に知っておくべき統計の基礎を教えてください(その1)質問22 ロジスティック回帰分析の事例

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第94回 喫煙者はより孤立して孤独になっていく

英国イングランドを代表する50歳以上の8,780人を12年間追跡したところ喫煙者は齢を重ねるほどに非喫煙者に比べてより社会的に孤立して孤独になっていました1,2)。孤立して孤独な人ほど喫煙することが先立つ試験で示されていますが、今回の試験は喫煙のせいで孤立や孤独の度合いがどうやら深まっていくことを初めて明らかにしました1)。喫煙は社交の助けになるとの主張を今回の結果は支持していません。むしろその逆で、非喫煙者に比べて喫煙者は家族や友人との交流をより失っていき、近所付き合いや趣味がより乏しくなり、一人で住むことが多くなります。そのような傾向は年齢、性別、貧困や社会的地位を考慮しても認められました。推移を追った今回の観察試験では喫煙と孤立や孤独の関連の原因を突き止めることはできていませんが、喫煙で身体が傷むことで出不精になってしまうことがその一因かもしれません。喫煙は息切れ、肺や心臓などの病気を生じやすくし、その結果社交が途絶えがちなる恐れがあります。または、喫煙で生じ易くなる不安やうつなどの精神の不調が人との関わりを減らしているとも考えられます。あるいは、喫煙者の友人もまた喫煙者であることが多く、ゆえに早く死んでしまって寂しくなっていくのかもしれません。社会が喫煙を相容れなくなりつつあること、とくに間接喫煙の害を減らすための禁煙の決まりが広がっているなどの環境要因の寄与もありそうです。今後の試験で喫煙が孤立/孤独を招く原因を調べる必要がありますが、ともあれ喫煙が社交を促すという考えはおよそ正しくないようです2)。すでに判明している身体への数々の悪影響に加えて喫煙が気の持ちようや社会生活も害しうることを示唆した今回の試験結果が新年に際して禁煙を誓う人のそのいっそうの動機づけとなることを研究者は望んでいます1)。参考1)New findings suggest smoking increases social isolation and loneliness / Imperial College London2)Philip KE, et al.Lancet Reg Health Eur. 2022 Jan 2. [Epub ahead of print]

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コロナワクチン副反応、もっとも影響する因子は?

 カルフォルニア大学のAlexis L Beatty氏らは新型コロナワクチン接種後に参加者が報告した副反応に関連する可能性のある因子を評価した。ワクチンを商品ごとで比較することで、その要因が、フルドーズのワクチン接種、ワクチン商品名、年齢の若さ、女性、新型コロナウイルス既感染であることが明らかになった。JAMA Network Open誌2021年12月22日号で掲載の報告。 研究者らは、本研究をオンライン上で実施。対象者は2020年3月26日~2021年5月19日に新型コロナワクチンを1回以上接種し、スマートフォンまたはインターネットにアクセスできる18歳以上で、参加者は健康状態(新型コロナ関連のイベント含む)に対する毎日、毎週、毎月の調査を完了した。 参加者から報告された副反応とその重症度を多変量ロジスティック回帰モデルで解析し、候補因子には、年齢、性別、人種、民族性、主観的な社会的地位、新型コロナ感染歴、持病の有無、薬物の使用、ワクチン接種量、およびワクチン商品名が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・参加者1万9,586例の年齢中央値(IQR)は54歳(38~66歳)で、そのうち1万3,420例(68.8%)は女性だった。・アレルギー反応またはアナフィラキシーは、ファイザー製(BNT162b2)またはモデルナ製(mRNA-1273)を1回接種した8,680例のうち26例(0.3%)で、ファイザー製またはモデルナ製を2回接種またはJ&J製(JNJ-78436735)を1回接種した1万1,141例のうち27例(0.2%)で報告された。・副反応に関連する最も強い因子はワクチンの投与量(ファイザー製かモデルナ製2回接種、またはJ&J製1回接種vs.ファイザー製かモデルナ製1回接種)で、オッズ比[OR]は3.10(95%信頼区間[CI]:2.89~3.34、p

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日本の入院患者における向精神薬使用と転倒リスク~症例対照研究

 これまでのいくつかの研究において、転倒のリスク因子の1つとして向精神薬の使用が挙げられている。しかし、これまでの研究では、管理データベースより取得したデータを用いる、向精神薬の使用から転倒や転落までの時間間隔に関する情報が欠如しているなど、いくつかの制限が含まれていた。東京医科大学の森下 千尋氏らは、カルテより収集した信頼できるデータを用いて、入院患者における向精神薬の使用と転倒や転落との関連について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年12月8日号の報告。 カルテから抽出したデータに基づき、東京医科大学病院に入院している患者を対象に、年齢、性別、入院部門をマッチさせた新規使用者デザイン(new -user design)の症例対照研究を実施した。アウトカムは、転倒・転落の発生率とした。抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬の4つのクラスの向精神薬の使用について、転倒経験患者254例と転倒経験のない対照患者254例の間で比較を行った。転倒や転落とこれら向精神薬の使用との関連を調査するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・単変量分析では、すべてのクラスの向精神薬使用と転倒リスクとの間に統計学的に有意な関連が認められた。・年齢、性別、入院部門、BMI、入院時の転倒リスク評価スコア、他の向精神薬使用などの潜在的な交絡因子で構築された多変量ロジスティック回帰分析では、睡眠薬の使用と転倒リスクとの関連は、有意なままであった。 著者らは「入院患者において睡眠薬の使用は、転倒や転落の危険因子であることが示唆された。転倒や転落の発生率の低減させるためには、睡眠薬の使用を可能な限り控えることが重要であろう」としている。

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転移のない前立腺がん、アビラテロン+エンザルタミドで無転移生存期間延長/Lancet

 転移のない高リスク前立腺がん男性の治療において、アンドロゲン除去療法(ADT)による3年間の標準治療にアビラテロン酢酸エステル(アビラテロン)+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミドを併用すると、標準治療単独と比較して、全生存期間の代替指標とされる無転移生存期間が延長し、前立腺がん特異的生存期間や生化学的無再発生存期間も改善されることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGerhardt Attard氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年12月23日号で報告された。2つの第III相STAMPEDE試験のメタ解析 研究グループは、非転移性前立腺がん男性の治療における、ADTへのアビラテロン+プレドニゾロンまたはアビラテロン+プレドニゾロン+エンザルタミド併用の有効性を評価する目的で、STAMPEDEプラットホームプロトコールに基づく2つの第III相非盲検無作為化対照比較試験のメタ解析を行った(Cancer Research UKなどの助成を受けた)。これら2つの試験は、英国とスイスの113施設が参加し、2011年11月~2016年3月の期間に実施された。 対象は、年齢制限はなく、高リスク(リンパ節転移陽性、または陰性の場合は次の要件のうち少なくとも2つを有する:腫瘍Stage T3/T4、Gleasonスコア8~10点、前立腺特異抗原[PSA]値40ng/mL以上)あるいは、高リスクの特徴(ADTの全期間が12ヵ月以下で治療なしの間隔が12ヵ月以上でありPSA値4ng/mL以上で倍加時間が6ヵ月未満、またはPSA値20ng/mL以上、またはリンパ節再発)を持つ再発の非転移性前立腺がんで、WHO performance statusが0~2の患者であった。放射線療法は、リンパ節転移陰性例では行い、陽性例では推奨された。 2つの試験(第1試験、第2試験)とも、被験者は、ADT単独(手術、黄体形成ホルモン放出ホルモンの作動薬と拮抗薬)による治療を受ける群(対照群)、またはADT+経口アビラテロン酢酸エステル(1,000mg/日)+経口プレドニゾロン(5mg/日)を受ける群(併用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。第2試験の併用群は、さらにエンザルタミド(160mg/日、経口投与)が追加された。ADTは3年間、併用治療は2年間行われたが、放射線療法を受けなかった患者では、病勢が進行するまで治療を継続できることとされた。 主要エンドポイントは無転移生存期間とし、無作為化の時点から全死因死亡または遠隔転移(画像で確定)の発現までの期間と定義された。両群とも期間中央値には未到達だが、併用群で47%延長 1,974例が解析に含まれた。第1試験(2011年11月~2014年1月)では、併用群に459例、対照群に455例が、エンザルタミドを含む第2試験(2014年7月~2016年3月)では、それぞれ527例および533例が割り付けられた。全体の年齢中央値は68歳(IQR:63~73)、PSA中央値は34ng/mL(IQR:14.7~47)であった。また、39%がリンパ節転移陽性で、85%は標準治療として放射線療法を受けていた。 追跡期間中央値は72ヵ月(IQR:60~84)で、この間に無転移生存イベントが併用群で180件、対照群で306件発生した。 無転移生存期間中央値(月)は、両群とも未到達(IQRは併用群が評価不能[NE]~NE、対照群は97~NE)であり、併用群で有意に延長していた(ハザード比[HR]:0.53、95%信頼区間[CI]:0.44~0.64、p<0.0001)。6年無転移生存率は、併用群が82%(95%CI:79~85)、対照群は69%(65~72)であった。 また、全生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.60[95%CI:0.48~0.73]、p<0.0001)、前立腺がん特異的生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群はNE~NE、HR:0.49[0.37~0.65]、p<0.0001)、生化学的無再発生存期間(併用群は中央値未到達でIQRはNE~NE、対照群は中央値86ヵ月でIQRは83~NE、HR:0.39[0.33~0.47]、p<0.0001)、無増悪生存期間(両群とも中央値には未到達で、IQRは併用群がNE~NE、対照群は103~NE、HR:0.44[0.36~0.54]、p<0.0001)は、いずれも併用群で有意に長かった。 治療開始から24ヵ月の期間に、Grade3以上の有害事象は、第1試験の併用群で37%(169/451例)、対照群で29%(130/455例)に、第2試験ではそれぞれ58%(298/513例)および32%(172/533例)に認められた。併用群で頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、高血圧(第1試験の併用群は5%[23/451例]、対照群は1%[6/455例]、第2試験はそれぞれ14%[73/513例]および2%[8/533例])と、高アラニントランスアミナーゼ血症(第1試験の併用群は6%[25/451例]、対照群は<1%[1/455例]、第2試験はそれぞれ13%[69/513例]および1%[4/533例])であった。 Grade5の有害事象は7件が報告された。第1試験の併用群で3件(直腸腺がん、肺出血、呼吸不全)、第2試験の併用群で4件(敗血症性ショック2件、突然死2件)であり、2つの試験とも対照群では発現しなかった。 著者は、「アビラテロン+プレドニゾロンは、転移のない高リスク前立腺がんの新たな治療法として考慮すべきである」としている。

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抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。 カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・過去6ヵ月間でソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した患者は、ミラベグロンを使用した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。 ●ソリフェナシンのOR:1.24(95%信頼区間[CI]:1.08~1.43) ●darifenacinのOR:1.30(95%CI:1.08~1.56)・診断前6ヵ月~1年間でソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した患者は、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症率の上昇との関連が認められた。 ●ソリフェナシンのOR:1.34(95%CI:1.11~1.60) ●darifenacinのOR:1.49(95%CI:1.19~1.86) ●トルテロジンのOR:1.21(95%CI:1.02~1.45) ●フェソテロジンのOR:1.39(95%CI:1.14~1.71)・オキシブチニンまたはtrospiumでは、影響が認められなかった。この原因として、プロトパシーバイアスが考えられる。・本研究の限界として、アウトカムの誤分類や健康関連データベース使用による交絡因子の影響が挙げられる。 著者らは「診断6ヵ月前にソリフェナシンおよびdarifenacinを使用した高齢者、診断前年にソリフェナシン、darifenacin、トルテロジン、フェソテロジンを使用した高齢者では、ミラベグロンを投与した患者と比較し、認知症発症リスクが高かった。OAB患者の治療に際して、慎重な薬剤選択が求められる」としている。

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心肺停止時にカルシウム投与は無効(解説:香坂俊氏)

ACLSのプロトコールには「低カルシウム血症や高カリウム血症、さらにカルシウム拮抗薬のoverdose」といった、ごく限られた状況でカルシウム製剤の静注投与が推奨されている。今回デンマークで行われたRCTでは、このカルシウム製剤の有効性をより広範囲の一般的な院外心肺停止症例で検証したが、残念ながらその結果はカルシウム製剤側に害がある可能性が高いということで(ROSC[return of spontaneous circulation]がカルシウム製剤投与群で19%であったのに対し、プラセボ群で27%[リスク比:0.72、p=0.09])、途中で試験中止が勧告されるという結果となった。カルシウムは狭心作用があることが知られているが、その一方で細胞内のカルシウム濃度が上昇することで心筋細胞が過収縮してしまうことも知られており、今回の試験の結果はカルシウム製剤がこの悪い方に作用したものと考えられる(ほかに、カルシウムを投与することにより酸化ストレス反応が亢進することも知られている)。心肺停止症例の予後を改善することは容易ではなく、残念ながら今回のカルシウム投与に関しても否定的な結果となったが、それにしても北欧諸国のこの領域でのRCTの取り組みの多様さには恐れ入る。国や自治体レベルでの取り組みが功を奏しているものと思うが、こうした一つひとつの取り組みが心肺蘇生に対する「科学的」アプローチを徐々にひもといていくものと期待したい。

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そして父になる(続編・その3)【どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?(育てるスキル)】Part 6

(3)お目付け役良多が、新しい父親として琉晴に家族のルールを座って説明している間、新しい母親になるみどりは、離れたところで立って荷物の片付けをしながら聞いているだけで、琉晴に背を向け、何も言いません。あたかも良多が独りよがりに話を進めているように見えます。3つ目の取り組みは、お目付け役です(客観性)。これは、普段の行動に目を付ける(監視する)役職のように、いろいろな関係者の目を家庭に入れる親の取り組みです。ここで、野々宮家のように独断で細かいルールを押し付けると、厳格な家庭環境になります。逆に、斎木家のようにルールがはっきりせず、気まぐれで体罰があるだけだと、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、民主的に(ほどほどに)ルールを作るのです。たとえば、家族会議です。少なくとも、両親がいるなら、両親が揃ってそのルールを伝えることです。さらに、祖父母・叔父叔母などの親族やママ友などを立会人として同席させることです。もしも、一人親で立ち会える親族やママ友もいない場合は、地域の保健師に立ち会いをお願いすることもできます。心療内科・精神科で心理カウンセラーが対応することもできます。このように、なるべく多くの目(お目付役)を、子どもに向けるようにすることで、子どもにルールを守らせる良い意味でのプレッシャーをかけることができます。また、お小遣いルールだけでなく、家族のルールも書面化することです。そして、そもそものルールを作る理由として、家族の目標(ビジョン)を掲げることです。たとえば、ルールの理由として「自分で生きていける大人になるため」「家族で仲良くするため」「家族で助け合うため」などです。そうすることで、ルールを守る直接の理由だけでなく、そもそもルールが存在する意味を理解させることができます。とくに、「家族で助け合う」というビジョンを掲げておくと、先ほどご紹介したお手伝い給料制において、「お金がもらえないならお手伝いはしない」という発想になるのを未然に防ぐこともできるでしょう。さらに、年齢が上がれば、家族会議で、子どもにお小遣いアップやペナルティ変更を提案させることもできます。そして、その理由や根拠を示してもらうこともできます。これは、自分自身へのお目付役(客観性)になることであり、自分の行動に自覚(責任)を持たせ、子どもを大人扱いしていく取り組みでもあります。こうして、単に親(社会)が作ったルールに従うだけの認知能力ではなく、自分で考えて自分で自分(そして社会)のルールを作っていきたいと思う非認知能力が高まるでしょう。子どもが納得した形でルールが決まると、家族会議の参加者全員が署名(承認)を入れる儀式も効果的です。この取り組みは、ものごとは話し合いによって決めるというお手本を見せることにもなります。まさに民主主義の基本であり、民主主義型という自律的な子育てを下支えするものでしょう。なお、子どもを客観視させるスキルの詳細については、関連記事4をご覧ください。もっと言えば、このお目付役の取り組みは、ルールを課される側の子どもだけでなく、ルールを課す側の親にも効果があります。複数の目が家族のルールに向けられることによって、とくに良多のように、一人の親が暴走して、独りよがりなルールを一方的につくり、教育虐待を招くリスクを避けることができます。たとえば、それは、受験勉強のために「反抗禁止」「恋愛禁止」などの過剰なルールを設けることです。「ブラック校則」ならぬ、「ブラック家庭ルール」です。これは、明らかにやり過ぎであり、子どもの権利への侵害の恐れがあります。なぜなら、思春期の子どもが、反抗するかしないか、恋愛するかしないかは本人が決めることであり、本人の権利だからです。この点で、妻(または夫)が夫(または妻)に「私の子育てに口出ししないで」と当たり前のように言うのは、かなり危うさがあります。これは、夫婦の一方だけに決定権がある状況を子どもに見せることであり、夫婦関係(人間関係)のあり方の悪いお手本となります。子どもが、友達関係においていじめ加害者になったり、いじめ黙認者になる危うさもあるでしょう。ちなみに、受験勉強のために子どもの人権をないがしろにする親の関わりは、もはや過激思想と同じくらい合理主義的でも個人主義的でもないです。これは、教育虐待のリスクがあるばかりか、統合失調症を発症させる心理社会的ストレスのリスクがあることをその2ですでにご説明しました。「人育て」(人材育成)においても、まったく同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを職場の全員に考えてもらい、ペナルティを決めてもらうことです。これは、同調の心理を促し、ルール遵守の心理を高める効果があるでしょう。なお、同調させるスキルの詳細については、関連記事5をご覧ください。表4に示しているように、良い能力を促す取り組みも悪い「能力」を抑える取り組みについても、年齢が上がっていくにつれて、ほどほど度(介入レベル)を弱いものにシフトさせていくことが効果的です。なぜなら、それが大人扱いをしていくことであるからです。そして、それが、親に言われて生きて行くのではなく、親に言われなくても自分で生きていける大人にさせることであるからです。なお、最初にご説明した「足場作り」で、子育てを建築工事に例えました。さらに、愛着(親に愛着を持つ「能力」)は土台、非認知能力は柱、そして認知能力は外壁に例えることができます。早期英才教育をするということは、支える柱がしっかりしていないのに、親が外壁だけ無理やり作らせているようなものです。そんな家は、環境変化(心理社会的ストレス)という地震などの災害にとても脆弱でしょう。非認知能力という柱は、太ければ太いほど、子どものメンタルという家をより丈夫でしなやかにするでしょう。そんな家が、また次の世代で、同じように丈夫でしなやかな家を造ることができるでしょう。サブタイトル“Like father, like son”とは?ラストシーンで、慶多と琉晴を中心に、野々宮家と斎木家のみんなが、笑い合って、1つの家の中に入っていく様子は、感動的です。慶多と琉晴のために、2つの真逆の家庭環境が融合し中和して、「ほどほど」の家庭環境が生まれた象徴的なシーンです。サブタイトルであり、海外向けのタイトルでもある”Like father, like son”とは、「この親にしてこの子あり」「親が親なら子も子」という意味です。それは、子育てを通して、親の認知能力も非認知能力も試されているニュアンスがあるように思えてきます。結局、子育ての正解とは、認知能力を高めることそのものではなく、子どもが人生を楽しみ幸せを感じるトータルな「能力」を育むことではないでしょうか? そして、その「幸せ」はその子どもそれぞれであり、本人が決めることであることを私たちがよく理解した時、子育ての正解は「正解がない」または「正解がたくさんある」という逆説的な正解に納得できるのではないでしょうか? そして、子育てをもっと賢く楽しめるのではないでしょうか?1)非認知能力を伸ばすコツ:中山芳一、東京書籍、20202)自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学:森口佑介、講談社現代新書、20193)子どもにおこづかいをあげよう:西村隆男、主婦の友社、2020<< 前のページへ■関連記事Mother(後編)【家族機能】ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】3年B組金八先生(前編)【令和の金八先生になるには? 子どもにも大人にも使える!(叱るスキル)】Part 1ドラえもん【子どものメンタルヘルスに使えるひみつ道具は?】3年B組金八先生(続編)【令和の金八先生になるには?わがままにさせない!(同調させるスキル)】Part 1

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認知症の急速な進行に関する原因調査

 急速進行性認知症(RPD)は、1~2年以内に急速な認知機能低下が認められ認知症を発症する臨床症候群である。RPDの評価に関する進歩は著しく、その有病率は時間とともに変化する可能性がある。ギリシャ・Attikon University HospitalのPetros Stamatelos氏らは、RPD診断の近年の進歩を考慮し、以前の結果と比較したRPD原因となる疾患の頻度を推定した。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌2021年10~12月号の報告。 5年間でRPDの疑いによりAttikon University Hospitalに紹介された患者47例を対象に、医療記録をレトロスペクティブに検討した。 主な結果は以下のとおり。・最も頻度の高い原因は、神経変性疾患(38%)であり、次いでプリオン病(19%)、自己免疫性脳炎(17%)であった。・自己免疫性脳炎の頻度は、以前の結果よりも増加していたが、他の2次的原因については有意な減少が認められた。・認知症発症までの平均期間は、神経変性疾患で9ヵ月、非神経変性疾患で5ヵ月であった。・すべての患者における主な臨床所見は、記憶障害(66%)、行動と感情の障害(48%)であった。 著者らは「神経変性疾患は、RPDの最も一般的な原因であり、非神経変性疾患よりも進行スピードは遅いようである。新たな診断方法の誕生により、自己免疫性脳炎の診断が可能となった。RPDの原因疾患の発見率が増加することにより、これまで一般的であった2次的原因は、1次的原因として診断されるようになっていると考えられる」としている。

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NSCLCの新たなドライバー遺伝子CLIP1-LTK発見

 国立がん研究センター東病院が中心に進める肺がんの遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」が、非小細胞肺がん(NSCLC)の新しいドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」を世界で初めて発見した。また、このドライバー遺伝子変異には、治療薬としてALK-TKIのロルラチニブが有効である可能性が示されている。 試験結果は、Nature誌2021年11月14日号に掲載され、第62回日本肺癌学会学術集会では、国立がん研究センター東病院の松本慎吾氏により発表された。さらなるドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められるNSCLC NSCLCでは、ドライバー遺伝子が相次いで発見されるととも、それに対応する分子標的薬が登場することで治療成績が著しく向上している。  とはいえ、50〜60%のNSCLCではドライバー遺伝子が存在しない。そのため、新たなドライバー遺伝子の発見と治療薬の開発が求められている。  そのような中、CLIP1-LTK融合遺伝子は、新たなドライバー遺伝子を検索するためLC-SCRUM-Asiaが行った、既知のドライバー遺伝子陰性のNSCLC対象の全RNAシークエンス検査により世界で初めて発見された。CLIP1-LTK融合遺伝子の頻度は0.4%、他ドライバー遺伝子とは相互排他的 CLIP1-LTKはLC-SCRUM-Asiaがスクリーニングした542例中2例で検出された。発現頻度は0.4%である。 検出例はすべて腺がんで、既知のドライバー遺伝子とは相互排他的に認められた。 基礎的検討の結果、CLIP1-LTK融合タンパクはLTKキナーゼの恒常的な活性化を引き起こすドライバー遺伝子であることが明らかになった。CLIP1-LTKはアクショナブル、治療薬はロルラチニブか LTK遺伝子はALK遺伝子と相同性が高いため、ALKキナーゼ阻害薬の多くはLTKキナーゼを阻害すると報告されている。このことから、7種のALK阻害薬の効果を細胞実験で検討した。 その結果、とくにロルラチニブのキナーゼ活性抑制が明らかとなった。また、ロルラチニブの抗腫瘍効果は動物実験でも示されている。 これら基礎研究の結果に基づき、CLIP1-LTK陽性のNSCLC患者にロルラチニブを投与したところ、著名な効果を示した。 LC-SCRUM-Asiaでは今後、CLIP1-LTKのスクリーニングと治療薬の有効性を検証する臨床試験を計画中である。

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モルヌピラビル、新型コロナの入院・死亡リスクを低減/NEJM

 重症化リスクがあるワクチン未接種の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)成人患者について、モルヌピラビルによる早期治療(発症後5日以内に開始)は、入院または死亡リスクを低減することが、コロンビア・IMAT OncomedicaのAngelica Jayk Bernal氏らによる第III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験で示された。試験は約1,400例を対象に行われ、29日間の入院または死亡の発生リスクは中間解析で-6.8ポイント差、全解析で-3.0ポイント差であったという。モルヌピラビルはSARS-CoV-2に対し活性を示す、経口小分子抗ウイルスプロドラッグである。NEJM誌オンライン版2021年12月16日号掲載の報告。発症後5日以内に治療開始、800mgを1日2回、5日間投与 研究グループは、検査によりCOVID-19が確認され、重症化リスクが少なくとも1つあるワクチン未接種の軽症~中等症の成人患者を対象に、症状発症後5日以内に開始したモルヌピラビルによる治療の有効性と完全性を検証した。 被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはモルヌピラビル800mgを1日2回5日間投与し、もう一方にはプラセボを投与した。 主要有効性エンドポイントは、29日時点での入院または死亡の発生。主要安全性エンドポイントは、有害事象の発現頻度とした。 目標登録患者数1,550例の50%が29日間の追跡を受けた時点で、事前に規定した中間解析を行った。対プラセボの入院/死亡リスク、中間解析で-6.8ポイント差 被験者1,433例が無作為化を受け、716例がモルヌピラビル群に、717例がプラセボ群に割り付けられた。両群のベースライン特性は、性別の偏り(女性がモルヌピラビル群のほうが多く、中間解析では7.6ポイント差、全解析では4.7ポイント差)を除けば類似していた。 中間解析(15ヵ国78地点で775例が登録)では、モルヌピラビル群の優越性が示された。29日間のあらゆる入院または死亡のリスクは、モルヌピラビル群(385例中28例、7.3%)がプラセボ群(377例中53例、14.1%)よりも有意に低下した(群間差:-6.8ポイント、95%信頼区間[CI]:-11.3~-2.4、p=0.001)。 無作為化を受けた全被験者を対象とした解析でも、29日間の入院または死亡の発生率は、プラセボ群(699例中68例、9.7%)よりも、モルヌピラビル群(709例中48例、6.8%)が低率だった(群間差:-3.0ポイント、95%CI:-5.9~-0.1)。 サブグループ解析は全体解析とほぼ一貫した結果だったが、SARS-CoV-2感染既往者や、ベースラインウイルス量が低値の感染者、糖尿病患者などでは、推定群間差がプラセボ群で良好だった。 29日間の死亡は、プラセボ群9例、モルヌピラビル群1例だった。有害事象の発生率は、それぞれ33.0%(701例中231例)、30.4%(710例中216例)だった。

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心が折れそうな時の心の薬、アガペー【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第43回

第43回 心が折れそうな時の心の薬、アガペー人生は、失敗や挫折の連続です。誰もが味わう経験ですが、その苦痛はけっして小さくありません。当科の若手医師が、苦労して英文の論文を仕上げ投稿しました。最初の投稿作業を完了した時には、自信に満ちた様子でした。査読者のレビューを経て、採択に向けて良い返事があるものと確信しているのでしょう。編集部からの返事を待ちわびています。結果はリジェクト(不採択)でした。内容としては決して悪いものではなく、解析法や英文のレベルも十分です。投稿先を変更して挑戦するも、何と6回続けてリジェクトでした。前向きに挑戦する気持ちも失われ、心が折れていく様子が傍目にも明らかでした。自信喪失です。論文を修正して内容を高める作業を応援することは勿論ですが、「頑張れ!」と励まし続けるだけでは解決しません。この挫折感を容認し、共有することも大切です。風邪をひいたときに身体をいたわるように、失敗や挫折を経験した時には、ゆっくり心をいたわる必要があります。シェル・シルヴァスタインの「おおきな木」という絵本をご存知でしょうか。1本のリンゴの木が1人の人間に限りない愛を捧げる美しくも悲しい物語です。日本を代表する作家である村上春樹が翻訳していることでも知られています。原題名は『The Giving Tree』といいます。困った時だけやって来て、リンゴの木に「~をくれるかい」と要求ばかりする坊やに、身を犠牲にして尽くす木は、「きは それで うれしかった」と応えるのです。大好きな坊やに、りんごを与え、枝を与え、切り株になっても見返りを求めない大きな木のお話です。ひたすら少年に尽くす木の姿が、心に余韻を残します。一読をおすすめします。立ち読みで完読できます(本屋さんごめんなさい)。古代ギリシャでいう「愛」の形の1つとして、アガペー(agape)があります。アガペーは、新約聖書の中でのイエス・キリストの受難と復活に象徴的に示される無条件的絶対愛です。自分が与えるということ、たとえ相手が何かをしてくれなくても、ひたすら自分が与えるのがアガペーです。親が子供を愛する気持ちは当然と思いますが、賢く勉強のできる優秀な子供をかわいいという気持ちと、バカな子ほどかわいいという気持ち、この一見矛盾する両方が存在します。バカな子を思う気持ちがアガペーに近く、優秀な子を尊ぶ気持ちがフィリア(philia)でしょうか。失敗や挫折に直面している者には、アガペーの愛情で接することが肝要です。7回目の論文投稿です。なんと見事に素晴らしいジャーナルに採択されました。七転八起ならぬ、六転七起です。苦労のすえに得られた成果への賛辞である、「Congratulations!」に相応しい快挙です。この連絡を受けた若手医師は、弱った生け花が水切りを受けたかのように瞬時に元気を回復しました。小生にとっても、我がことのように嬉しく、その喜びを共有させていただきました。短期間での成果が求められ、成功するまで長い気持ちで待つことができない世の中になっています。こんな時代だからこそ、挫折に苦しむ者を大きなアガペーで容認していきたいですね。

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第90回 新型コロナウイルスはヒトに感染することで弱体化する?国立遺伝研の研究で考えた「ヒト-ウイルス」生態系

デルタ株はワクチン接種によってではなく、ヒトに感染したことで収束かこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。年始年末は大学の先輩の住む長野県原村の別荘を訪ねた後、中央線で実家のある愛知に帰り、正月明け、大学時代の友人が住む浜松で新幹線を途中下車、一杯飲んで帰って来ました。原村と実家は例年以上に厳寒で、寒さが苦手な私にはとても堪えました。さて、浜松の友人は、同じ大学の理学部で生物学を学んだ生物学者(専門は発生学)です。卒業後米国に留学し、長年ニワトリの足の発生を研究、15年ほど前に日本に帰ってきました。浜松駅前の焼鳥屋で雑談する中、昨年夏のコロナのデルタ株による感染拡大が突然収束した理由について興味深い話をしてくれました。曰く、「変異株が次々現れても、流行は必ずピークを迎え、収束していくのが不思議だと思っていたが、秋頃、国立遺伝研究所の発表で『デルタ株はゲノムの変異を修復する酵素の変化が起こり、修復能力が低下して死滅し、収束したのでは』という説が報道されていた。マスクなどの感染予防やワクチン接種ではなく、むしろヒトに感染することで弱体化した、という説だが、説得力もあってなるほどと思ったよ」。というわけで、今回は、誰もデルタ株収束の理由を明快に説明してくれませんので、この説について少し考えてみたいと思います(年末にあった、アデュカヌマブ未承認や診療報酬改定率のニュースはまた別の機会に)。ゲノムのエラーを修復する「nsp14」に関わる遺伝子が変化、修復不全に帰京してからニュースを調べてみると、この研究に関する報道を見つけました。それは、国立遺伝学研究所と新潟大のチームが2021年10月に開かれた日本人類遺伝学会で発表した研究成果です。ウイルスは増殖する際にゲノムを複製しますが、時々ミスが起きてエラーが生じます。このエラーが積み重なると、やがて増殖できなくなります。このエラーを修復するのが「nsp14」と呼ばれる酵素で、これが正常に働けばエラーは修復されて増殖は続き、感染の流行も続く、というわけです。10月31日付の中日新聞等の報道によれば、国立遺伝学研究所と新潟大の研究チームは国内で検出した新型コロナのゲノムデータを分析しました。その結果、第5波では、nsp14の酵素活性に関わる遺伝子が変化したウイルスの割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼすべてを占めていた、とのことです。2020年秋から21年3月頃まで続いた第3波でも、同様の傾向が確認できたそうです。さらに、nsp14の遺伝子が変化したウイルスではエラーの修復が不十分となるため、新型コロナウイルスのゲノムの変異が通常の10〜20倍あったそうです。研究チームは、人間の体内でウイルスに変異を起こして壊す「APOBEC:apolipoprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like」という酵素がnsp14の遺伝子を変化させた、と推測しています。ヒトの身体の中にウイルスが侵入すると、危険信号ともいえるサイトカインというタンパク質が放出されます。このサイトカインによって誘導される酵素の一つがAPOBECです。APOBECが侵入してきたウイルスのnsp14の遺伝子に変化をもたらし、ゲノム複製時のエラーの修復が不十分となってウイルス増殖を阻害したのではないか、というのが研究チームの仮説です。なお、日本人をはじめとしたアジア・オセアニアにAPOBECの活性が強い人が多いそうです。友人は最後に、「RNAウイルスであるコロナウイルスは大型のウイルスで、そのRNAポリメラーゼは“高性能”なポリメラーゼ。“高性能”とは、複製のミスがあればそれを修復する酵素活性を含んでいる、ということ。だから、あまり突然変異は起こらない。この仮説のように、修復の酵素活性に関係するnsp14の変化で修復ができなくなれば、ウイルスのゲノム情報は複製の度にボロボロに壊れていき、最後には増殖できなくなる。感染が拡大しても3〜4ヵ月で収束するのはそのせいかもね。ただ、現場の医師があまりこの仮説に食いついていないのが気になる。ひょっとしたら内容をきちんと理解できていない可能性もある」と話していました。カンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動この仮説は、動物生態学(アニマル・エコロジー)の立場からも、とても理解しやすいと思います。すべての生物は適当な環境下にあれば絶えず数を増やす方向に働きます。しかし、繁殖能力をフルに発揮すれば、たちまち数が増え過ぎて“人口爆発”を起こします。そんな時、生き残った個体を殺すような「外力」が働き、今度は数が減少に転じます。ここで言う「外力」とは、食糧不足であったり、外敵の登場であったり、個体同士の争いであったりとさまざまで、各要素の消長によって個体の数のバランスが保たれていく、というのが生態学の一つのセオリーです。ちなみに、昔の生態学の教科書には、カナダの森林に住むカンジキウサギとオオヤマネコの個体数変動のグラフが必ず載っています。カンジキウサギが増えると、それを食べるオオヤマネコが増え、それに伴いカンジキウサギが減る。カンジキウサギが減れば、エサが減るのでオオヤマネコが減る……、というグラフで、その変動は約10年周期で繰り返されるそうです。今改めて見てみると、そのグラフの振幅の波は、さながらコロナの患者数の波のようでもあります。「ヒト-ウイルス」生態系がうまく働けば……ウイルスは厳密には生物とは言えず、動物生態学のセオリーが当てはまるかどうかはわかりませんが、仮にヒトもウイルスもそうした生態系の中に組み込まれた要素である、と考えれば、コロナの感染爆発の突然の収束にも納得がいきます。コロナウイルスはヒトに感染し健康上の害を及ぼしますが、逆にヒトは感染することによってコロナウイルスに対して増殖を抑制するような遺伝子的な「外力」を与えているわけです。人類全体としては、感染を避けるのではなく、むしろどんどん感染することでウイルスを弱らせることができるのだとしたら、それこそ“エコ”なことではないでしょうか。なにしろ、無用なモノや技術を使わないで済むのですから。マスクや手洗いといった目先の物理的な感染防御策や、ワクチンといった薬物(科学技術)による防御策ではなく、「ヒト-ウイルス」という何億年もかけて築き上げられてきた生態系のシステムによって、新型コロナウイルスは自然と弱毒化や増殖不能に向かうかもしれない……。久しぶりに旧友と会ったおかげで、そんな楽観論が頭の中をぐるぐる廻り、昨年よりもお酒が美味しく飲めた年始でした。

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普遍的なうつ病予防~メタ解析レビュー

 うつ病は、心身に影響を及ぼす、非常に蔓延している、しばしば慢性的に経過、治療困難、認知機能や社会的および経済的負荷が非常に大きいといった特徴を有する疾患である。がんなどの非感染性疾患では、治療ではなく予防に焦点が置かれるようになっていることを考えると、うつ病予防は、優先すべき公衆衛生上の課題であろう。オーストリア・ディーキン大学のErin Hoare氏らは、うつ病に対する普遍的に提供される予防的介入についてのメタ解析文献の包括的なシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychiatric Research誌2021年12月号の報告。 2021年3月18日にEBSCOHostを介してアクセスした各データベース(Allied and Complementary Medicine Database、CINAHL Complete、Global Health、Health Source: Nursing/Academic Edition、MEDLINE Complete、APA PsychArticles)より検索を行った。検索キーワードは、うつ病、予防、トライアルスタディデザインとした。2人独立したレビュアーが文献スクリーニングを実施し、3人目が不一致性を是正した。適格基準は、うつ病予防(うつ病発症率の低下)に対する普遍的な介入研究を調査したメタ解析とした。 主な結果は以下のとおり。・心理的介入に関するメタ解析6件、学校ベースのメタ解析2件、eHealthに関するメタ解析1件を包括的レビューに含めた。・特定されたすべての調査結果の質は高く、とくに1件は非常に高いものであった。・うつ病予防に対する身体活動の影響を調査した以前のメタ解析レビューは、8件のメタ解析に含まれていた。・予防的介入が成功する主な因子は、学校、地域社会、職場環境で提供される心理社会的介入の利用であった。・学校ベースおよびeHealthによる介入は、うつ病予防に対し一定程度の有用性が認められた。・身体活動は、うつ病予防に効果的であることが、メタ解析より示唆された。・普遍的な予防を一貫して定義することはできなかった。 著者らは「納得度の高いエビデンスによる推奨事項が広まる前に、うつ病予防に対する適切に設定されたランダム化比較試験を実施する必要がある」としている。

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