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認知症患者に対するベンゾジアゼピン、Z薬の使用

 世界中のガイドラインにおいて、認知症のBPSDや不眠の治療に対し、ベンゾジアゼピンやZ薬などのベンゾジアゼピン受容体アゴニスト(BZRA)の使用が制限下で推奨されている。オランダ・Center for Specialized Geriatric CareのDirk O. C. Rijksen氏らは、認知症ナーシングホームの入居者に対するBZRAの使用率と適切性についての評価を行った。Journal of Alzheimer's Disease Reports誌2021年12月9日号の報告。 2016~18年に実施した向精神薬使用に関する2つの介入研究より、BZRA使用に関して事後分析を実施した。対象は、24のオランダ介護組織の認知症特別ケアユニットに入居している患者1,111例。継続的および頓服のBZRAの使用率と患者の症状との関連を評価した。継続的なBZRA使用の適切性(適応症、投与量、投与期間、認知症や睡眠障害の治療ガイドラインに準じた評価)について評価した。 主な結果は以下のとおり。・BZRAの使用率は39.2%(95%信頼区間[CI]:36.3~42.0)、そのうち継続的な使用は22.9%、頓服使用は16.3%であった。・継続的なBZRA使用患者における適応症は、抗不安薬としての使用19.0%、睡眠薬としての使用44.8%であった。・不適切な適応に対するBZRAの使用は、攻撃性/興奮に対する抗不安薬の使用(継続的:75.7%、頓服:40.3%)、夜間の興奮に対する睡眠薬の使用(継続的:40.3%、頓服:26.7%)であった。・適切な適応症に対する継続的なBZRA使用は、他のすべての項目については適切に使用されていなかった。・ほとんどの使用において、評価期間および使用期間は4週間超であった。 著者らは「BZRAは、認知症ナーシングホームの入居者に対して頻繁に使用されていた。使用されていた患者の大部分は、ガイドラインに従っておらず、推奨期間を超えて使用されており、タイムリーな評価が行われていなかった。エビデンスに基づくガイドラインと日常診療との不一致を考慮すると、不適切なBZRA使用の要因を明らかにするための調査が求められる」としている。

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アテゾリズマブによるNSCLCアジュバント アジア人の成績(IMpower010)/日本臨床腫瘍学会

 完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)における化学療法アジュバント後のアテゾリズマブを評価した無作為化第III相非盲検試験IMpower010のアジア人解析を、静岡県立静岡がんセンターの釼持広知氏が第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表。全体集団と同じく、アジア人集団でもアテゾリズマブの良好な成績が示された。・対象:Stage IB~IIIAで術後化学療法(プラチナ+ペメトレキセド/ドセタキセル/ゲムシタビン/ビノレルビン)、21日ごと最大4回サイクル)受けた完全切除NSCLC患者(ECOG PS 0~1)・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日 3週ごと16サイクル(Atezo群)・対照群:ベストサポーティブケア(BSC群)・評価項目[主要評価項目]治験責任医評価の無病生存期間(DFS)と全生存期間(OS)[副次評価項目]Stage II~IIIAのPD-L1(TC)≥1%のDFS、Stage II~IIIA全患者の DFS、ITT集団(Stage IB-IIIA)のDFS、ITT集団のOS(階層的に検証)、安全性 主な結果は以下のとおり。・アジア人集団(日本、中国、台湾、韓国、香港)は223例で全体の23.2%を占めた。・アジア人集団のPFS中央値はAtezo群42.3ヵ月、BSC群で31.4ヵ月、ハザード比(HR)は0.63(95%CI:0.37〜1.09)であった。また、この成績は全体集団の結果と同様であった。・OS中央値は未到達であった。・アジア人集団におけるAetzo群の安全性プロファイルは、全集団と同様に既知のものであったが、肝炎、皮疹はアジア人集団で多い傾向にあった。

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症例報告は自分のキャリア形成である【ちょっくら症例報告を書いてみよう】第2話

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。大阪大学の忽那です。この連載では、臨床医が症例報告を書くことについて考えてみたいと思います。連載を読んでちょっとでも皆さまが症例報告を書くお役に立てましたら幸いです。前回は「自分が得た知識・経験を共有することの意義」について述べました。今回は症例報告をすることによる自身のキャリアにとってのメリットについて述べたいと思います。症例報告を積み重ねると「専門家」になる「症例報告なんて大した実績にならないし、自分のキャリアにとって無駄なんで…」なんて思っていませんか。症例報告が実績にならないというのは大きな誤解です。もちろん症例報告だけでアカデミックな地位が得られるわけではありませんが、自分の専門性を高めるためには大いに役に立ちます。私の人生最初の症例報告は、「回帰熱」という珍しい輸入感染症の症例でした。Kutsuna S, et al. The first case of imported relapsing fever in Japan. Am J Trop Med Hyg. 2013;89:460-461.〔被引用数:17〕「回帰熱ってなんやねん」と思われたかと思いますが、数日間熱が続いた後、1週間くらいの無熱期があり、また数日間発熱し…という発熱を繰り返す珍しい感染症です。記録が残っている範囲では、この報告が最初の日本での回帰熱の報告になります(ちなみに日本ではこれまでに2例の回帰熱が報告されており、どちらも私が診断しています)。このような珍しい症例報告をすると、何が起こるかというと、ときどき症例相談が舞い込んでくることになります。「この周期性発熱の患者さん、回帰熱の可能性ないですか?」「回帰熱の検査ってどこでできるんですか?」とかそういう相談です。こうした相談を受けていると、そのうち「回帰熱のことは忽那に相談すればいい」という流れになります。回帰熱なんて激レアな感染症なので、そんなに活躍の場はありませんが、とりあえず「誰も診たことがない疾患を診たことがある」というのは大きなアドバンテージです。症例報告は連鎖するさて、回帰熱の症例報告の影響は回帰熱だけに留まりません。たとえば私が書いた症例報告をインターネットでみつけた患者さん自身が「私も熱を周期的に繰り返してるんですが、回帰熱じゃないですか?」と受診されたことがありました。この方は回帰熱ではなく最終的に「成人発症PFAPA症候群」というこれまた日本初の症例ということがわかりました。Kutsuna S, et al. The first case of adult-onset PFAPA syndrome in Japan. Mod Rheumatol. 2016;26:286-287.〔引用数:19〕ここから私の興味は周期性発熱にも波及することになります。また、輸入感染症の世界にも足を踏み入れることになった私は、とりあえず自分の経験した珍しい輸入感染症の症例をひたすら報告していきました。当時はこれが自分の将来にどういう影響を与えるかなんてことはもちろん考えずに書いていました。その中に、「ジカウイルス感染症」の報告があります。Kutsuna S, et al. Two cases of Zika fever imported from French Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014. Euro Surveill. 2014;19:20683.〔被引用数:212〕ジカウイルス感染症という、当時まったく不明であった蚊媒介感染症による輸入例を“Eurosurveillance”というヨーロッパCDCの学術誌に報告したものです。これも当時は日本第1例目と2例目だったわけですが、報告した当初は「また忽那がマニアックな症例報告を書いとるわ…ホンマしょーもない…」くらいに思われていたわけです。しかし、この後ブラジルでジカウイルス感染症がアウトブレイクし、「妊婦さんが感染すると児が小頭症になることがある」ということがわかりジカウイルス感染症は世界な注目を集めます。私の“Eurosurveillance”の報告は、日本最初の報告であったというだけでなく、尿からジカウイルスを検出したのが世界で初めてということもあって、尿検体を使った診断という点でも評価されました。症例報告で被引用数が200超えというのはなかなかではないでしょうか。こうした症例報告を経て、私は蚊媒介感染症の専門家としての確固たる地位を固めていったわけです(自分で言う)!症例報告は連鎖して、それがいつしか大きな円となり専門性へと繋がることがあるということですね。症例報告は医師の職務経歴書ということで、たかが症例報告、されど症例報告です。症例報告とは、自分はこういう症例を経験してきました、という言わば自己紹介のようなものであり、症例報告が自分自身のキャリアを形成していくことがあります。そして、その症例報告から派生して、別の症例報告に繋がることもあるし、それらの症例報告が繋がることでより広いカテゴリーでの専門性を身に付けることも可能になります。自分が経験した症例を報告することで発生するポジティブ・フィードバックを期待して、ガンガン症例報告していきましょう!!

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第100回 COVID-19ワクチン接種後の90分間の運動で抗体反応が増す

アイオワ州立大学の研究チームが実施した無作為化試験の結果、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)ワクチンやインフルエンザワクチン接種後すぐから心拍数およそ120~140/分の運動を1時間半(90分間)したところその後数週間の検査でのそれらワクチンへの抗体反応が一貫して非運動群を上回りました1,2)。ワクチン接種前の運動が抗体反応を改善することは先立つ研究ですでに知られており、去年スペインの研究者Pedro Valenzuela氏等は運動がCOVID-19ワクチンのアジュバント(増強役)を担いうる可能性を示唆し、接種前の運動習慣や接種直前の単発の運動のCOVID-19ワクチン免疫反応への効果を調べることを提案しました3)。アイオワ州立大学のJustus Hallam氏等はその提案を受けて上述の試験を実施したわけですが、一捻り加えています。ワクチンの接種後に身体に負荷をかけると抗体反応が増すことが示されていることを頼りに、接種前の運動の効果ではなく接種後の有酸素運動が抗体反応にどう影響するかを検討しました。試験は週に2回以上の程々にきついかきつめ(moderate or vigorous)の運動習慣がある人を募って実施され、Pfizer/BioNTechのSARS-CoV-2ワクチン接種後に90分間の軽め~程々にきつめ(light- to moderate-intensity)の運動をした群のその後の検査での抗体反応は接種後に運動しなかった群を上述の通り上回りました。重要なことにCOVID-19ワクチン接種後に運動しても副反応は増えませんでした。ワクチン接種後の運動が抗体反応を上向かせる効果はどうやらCOVID-19ワクチンに限ったことではないらしく、インフルエンザワクチン2種類を接種した42人の検討でも同様の抗体反応増強効果が認められています。抗体生成を増やす役割を担う1型インターフェロン(1型IFN)を誘発するアジュバントはワクチンへの抗体反応を促すことが知られており、試験の運動時間を90分としたことはその長さの運動が1型IFNの一種・インターフェロンα(IFNα)を有意に増やすことが未発表ながら確認されていることを根拠の一つとしています。Hallam氏等はマウスの実験でその根拠がどうやら正しいことを確認しています。運動がワクチン接種の抗体反応を高める効果がIFNα阻害抗体をワクチン接種時に投与したマウスでは弱く、運動のワクチン抗体反応増強にはIFNαがどうやら貢献しているようです。インフルエンザワクチンの試験では接種後90分間の運動に加えてその半分の45分間の運動の効果も検討されました。というのも齢を重ねた成人には90分間の運動より45分間の運動のほうがより容易いであろうからです。結果はというと残念ながら45分間の運動のワクチン効果増強は認められず、運動しなかった群の抗体反応を上回りませんでした。研究者は1時間の運動ならどうかを調べるつもりです2)。試験では運動習慣がある人を募ったように、日頃運動していない人がCOVID-19ワクチン接種後に運動するという選択肢を選ぶことはおそらく土台無理な話で、その選択肢を選べるようにするにはまずは日頃の運動習慣を身に付けてもらう必要がありそうです。COVID-19患者およそ5万人を調べた試験4)では運動習慣がCOVID-19重症化を防ぐ効果があることが示されています。常に運動不足な人は必要とされる運動を日頃こなしている人に比べてCOVID-19入院、集中治療、死亡をより多く被っており、運動を促す保健の取り組みを優先し、いつもの診療で運動を後押しすることが必要と著者は結論しています。体力をつけることは若いころから始めるに越したことはありません。スウェーデンでの試験の結果、若かりし18歳ごろの心肺機能が高かった男性は低かった男性に比べてSARS-CoV-2感染しても大事に至ることは少なく、入院、集中治療、死亡をより免れていました5,6)。心肺機能が良好だった男性のCOVID-19死亡率は最も悪かった男性のおよそ半分であり、若いころの筋力が高いこともCOVID-19重症化し難いことと関連しました。COVID-19重症化を防ぎ、ワクチンの効果も高めうる運動で世間みんなの体力を底上げすることは感染流行の阻止に大いに貢献するでしょう5)。参考1)Exercise post-vaccine bumps up antibodies, new study finds / Iowa State University2)Hallam J,et al. Brain Behav Immun. 2022 Feb 5;102:1-10. [Epub ahead of print]3)Valenzuela PL, et al. Brain Behav Immun. 2021 May;94:1-3. 4)Sallis R, et al.Br J Sports Med. 2021 Oct;55:1099-1105. 5)Af Geijerstam A, et al. BMJ Open. 2021 Jul 5;11:e051316. 6)Highly fit teenagers coped better with COVID-19 later in life / Eurekalert

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統合失調症の再発に影響を及ぼす要因

 統合失調症は再発率が高い疾患である。再発は、患者だけでなくその家族にとっても大きな影響を及ぼすが、生物心理社会学的および精神医学的要因を見直すことで、改善する可能性がある。統合失調症の再発に影響を及ぼす潜在的なリスク因子を明らかにすることは、医師、患者およびその家族の意識を向上させるために役立つと考えられる。医師は、患者を診察し、マネジメントや教育を行い、再発を抑制することが求められる。インドネシア・エアランガ大学のMargarita M. Maramis氏らは、統合失調症患者の再発発生に影響を及ぼす生物心理社会学的および精神医学的要因について、分析を行った。International Journal of Social Psychiatry誌オンライン版2021年12月28日号の報告。 インドネシア・東ジャワの3施設Soetomo Academic Hospital Surabaya(33.2%)、Menur Hospital Surabaya(32.7%)、Radjiman Wediodiningrat Mental Hospital Lawang(34.1%)より統合失調症患者226例を対象とし、横断的観察分析研究を実施した。生物心理社会学的および精神医学的要因を含む33因子のデータを収集し、二変量および多変量ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1年間の再発率は、59.73%であった。・統合失調症の再発に有意な影響を及ぼした因子は以下の12因子であった。 ●妊娠中の母親における身体的疾患歴(p<0.001、B=27.31、95%信頼区間[CI]:3.96~188.52) ●トリガーの存在(p<0.000、B=6.25、95%CI:2.61~14.96) ●ネガティブな信念(p<0.000、B=4.94、95%CI:2.10~11.61) ●遺伝的要因(p<0.001、B=4.84、95%CI:1.93~12.10) ●洞察(p<0.003、B=4.27、95%CI:1.62~11.27) ●1年間のGAFスケール(p<0.015、B=3.79、95%CI:1.30~11.09) ●治療反応(p<0.006、B=3.68、95%CI:1.45~9.36) ●家族の理解(p<0.011、B=3.23、95%CI:1.31~7.93) ●頭部外傷歴(p<0.029、B=3.13、95%CI:1.13~8.69) ●薬剤の副作用(p<0.028、B=2.92、95%CI:1.12~7.61) ●薬物使用歴(p<0.031、B=2.86、95%CI:1.10~7.45) ●職業(p<0.040、B=2.40、95%CI:1.04~5.52) 著者らは「統合失調症の再発リスクを予測する生物心理社会学的および精神医学的要因の12因子が特定された。これらの因子は、介護や再発予防を目指すうえで、患者およびその家族の心理教育を行う際、取り入れるべきであろう」としている。

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GIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatide併用で、血糖コントロール改善/JAMA

 インスリン グラルギンで血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の治療において、インスリン グラルギンにデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideを追加する治療法はプラセボの追加と比較して、40週後の血糖コントロールが統計学的に有意に改善し、用量により5~9kgの体重減少が得られたとの研究結果が、ドイツ・Gemeinschaftspraxis fur innere Medizin und DiabetologieのDominik Dahl氏らによって報告された(SURPASS-5試験)。研究の成果は、JAMA誌2022年2月8日号に掲載された。8ヵ国45施設のプラセボ対照無作為化第III相試験 研究グループは、血糖コントロールが不良な2型糖尿病患者におけるインスリン グラルギンへのtirzepatide追加の有効性と安全性の評価を目的に、二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施し、2019年8月~2020年3月の期間に、日本を含む8ヵ国45施設で患者の登録を行った(Eli Lilly and Companyの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病の成人患者で、一定用量のインスリン グラルギン(>20 IU/日または>0.25 IU/kg/日)±メトホルミン(≧1,500mg/日)の投与を受け、ベースラインの糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が7.0~10.5%(53~91mmol/mol)、BMIが≧23の集団であった。 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mg、プラセボを週1回、40週間皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。tirzepatideの初回投与量は2.5mg/週とされ、割り付けられた用量に達するまで4週ごとに2.5mgずつ増量された。すべての患者が、インスリン グラルギンの1日1回の投与を継続した。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから40週までの変化量とされた。HbA1c値<7%達成率8割以上、インスリン用量も少ない 475例(平均年齢[SD]60.6[9.9]歳、女性211例[44%])が無作為化の対象となり、全例が試験薬の投与を少なくとも1回受けた(tirzepatide 5mg群116例、同10mg群119例、同15mg群120例、プラセボ群120例)。全体のベースラインの平均HbA1c値(SD)は8.31(0.85)%、平均BMIは33.4、平均糖尿病罹患期間は13.3年、インスリン グラルギンの投与量中央値は30.0 IU/日で、394例(82.9%)がメトホルミンの投与を受けていた。 451例(94.9%)が試験を完遂し、424例(89.3%)が試験治療をすべて終了した。早期の投与中止は、tirzepatide 5mg群が10%、同10mg群が12%、同15mg群が18%、プラセボ群は3%で発生した。 40週時の平均HbA1c値のベースラインからの変化量は、tirzepatide 10mg群が-2.40%、同15mg群は-2.34%であり、プラセボ群の-0.86%に比べいずれの用量とも有意に低下した(プラセボ群との差 10mg群:-1.53%[97.5%信頼区間[CI]:-1.80~-1.27]、15mg群:-1.47%[-1.75~-1.20]、いずれもp<0.001)。また、5mg群の平均HbA1c値のベースラインからの変化量は-2.11%であり、プラセボ群に比し有意に改善した(群間差:-1.24%、95%CI:-1.48~-1.01、p<0.001)。 平均体重のベースラインからの変化量は、tirzepatide 5mg群が-5.4kg、同10mgが-7.5kg、同15mg群は-8.8kgであり、プラセボ群の1.6kgに比べいずれも有意に減少した(プラセボ群との差 5mg群:-7.1kg[95%CI:-8.7~-5.4]、10mg群:-9.1kg[-10.7~-7.5]、15mg群:-10.5kg[-12.1~-8.8]、すべてp<0.001)。 40週時にHbA1c値<7%を達成した患者の割合は、tirzepatide 5mg群が87.3%、同10mgが89.6%、同15mgは84.7%であり、プラセボ群の34.5%と比較していずれも有意に高かった(すべてp<0.001)。また、空腹時血糖値のベースラインからの変化量は、tirzepatide群はそれぞれ-58.2mg/dL、-64.0mg/dL、-62.6mg/dLであり、プラセボ群の-39.2mg/dLに比べいずれも有意に低下した(すべてp<0.001)。インスリン グラルギンの用量の変化量も、3つの用量のtirzepatide群で有意に低かった(5mg群:4.4 IU、10mg:2.7 IU、15mg群:-3.8 IU、プラセボ群:25.1 IU、プラセボ群との差は3つの用量群のすべてでp<0.001)。 治療下で発現した有害事象が少なくとも1件認められた患者の割合は、tirzepatide 5mg群が73.3%、同10mg群が68.1%、同15mg群が78.3%、プラセボ群は67.5%であった。 最も頻度が高かったのは消化器症状で、下痢がtirzepatide 5mg群12.1%、同10mg群12.6%、同15mg群20.8%、プラセボ群10.0%で発現し、吐き気がそれぞれ12.9%、17.6%、18.3%、2.5%でみられたが、ほとんどが軽度~中等度であった。 重篤な有害事象は、tirzepatide 5mg群7.8%、同10mg群10.9%、同15mg群7.5%、プラセボ群8.3%で発現した。試験薬の投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ6.0%、8.4%、10.8%、2.5%で認められた。低血糖(血糖値<54mg/dL)の発現率は、15.5%、19.3%、14.2%、12.5%であり、重症低血糖は3例(10mg群2例、15mg群1例)で報告された。 著者は、「本試験の結果は、基礎インスリンとtirzepatideの併用に関する臨床的に重要な情報をもたらし、この治療選択肢を考慮する際に、臨床医にとって有用なものとなるだろう」としている。

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痙攣性発声障害〔SD:Spasmodic dysphonia〕

1 疾患概要■ 概念・定義痙攣性発声障害は、発声器官に器質的異常や運動麻痺を認めない機能性発声障害の1つで、発声時に喉頭筋の不随意的、断続的な収縮により音声障害を来す疾患である。1871年にTraubeが“spastic dysphonia”として初めて報告した。1968年にAronsonらが内転型と外転型の2つの病型に分類して“spasmodic dysphonia”という名称を提唱し、それ以降その名称が用いられている。発声時の声帯筋の筋緊張に関わるフィードバック機構の異常による喉頭の局所性ジストニア(focal dystonia)と考えられている。■ 病因痙攣性発声障害では約12%の患者でジストニアの家族歴がみられ、少なくとも一部の例では遺伝的要因が関与すると考えられている1)。ジストニア関連遺伝子のうちGNAL遺伝子変異の関与が指摘され、GNAL遺伝子変異を認めた例ではfunctional MRIにより前頭頭頂葉皮質の活動が亢進し、小脳の活動が低下していることが示されている。本症の病因は十分には解明されていないが、大脳白質における神経細胞の解剖学的異常、発声に関わる感覚-運動ネットワーク障害、中枢の神経伝達物質であるドーパミンやGABAの代謝異常などの関与が推測されている1)。■ 病型および症状本症は大きく内転型と外転型に分けられる。内転型では発声時に声帯が内転して声門が過閉鎖されることで発声中の呼気流が遮断され、発声時に断続的な声の途切れ、声の詰まり、努力性発声などを呈する。一方、外転型は発声時に声帯が外転して声門が開大することで、断続的な気息性嗄声、声の抜けなどの症状を呈する。いずれの病型においても、スムーズな会話が障害され日常生活上、大きな支障が生じる。■ 疫学筆者らが2013年に行った全国疫学調査などによると、病型別では内転型が90~95%と大部分を占め、男女比は約1:4で女性に多く、年齢は20および30歳代が約60%を占める2)。また、有病率は3.5~7.0人/10万人で、いわゆる希少疾病である。海外と比較するとわが国では女性の比率が高く、発症年齢は低い傾向にある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)数年前まで、国内外を通じて本症の明確な診断基準はなかったが、厚生労働省研究班により2017年に診断基準と重症度分類が作成された。診断基準は必須条件、主要症状、参考となる所見、発声時の所見、治療反応性からなる(表1)3)。主な鑑別疾患は、音声振戦症、過緊張性発声、心因性発声障害、吃音がある。表1 痙攣性発声障害の診断基準(概要)画像を拡大する重症度分類はまず主観的重症度と客観的重症度に分けて評価する(表2)。主観的重症度は、音声障害の自覚度評価法であるVoice Handicap Indexと社会的・心理的支障度(声の障害により社会生活にどの程度の支障があるか)をそれぞれ点数化する。客観的重症度は規定文朗読や自由会話を検者が聞きとって、声の異常度を点数評価する。そして、両者の点数の組み合わせから、疾患の総合的重症度を決定する(表3)3)。表2 主観的および客観的重症度基準画像を拡大する表3 痙攣性発声障害の総合的重症度分類3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 保存的治療1)音声治療内転型痙攣性発声障害は発声時に声門が過閉鎖することによる音声障害であることから、発声時の喉頭筋の緊張を軽減させることで、症状を軽減できる場合がある。具体的な手技として、発声と呼吸のパターンを整えて楽な発声を誘導する腹式発声、喉頭筋の過緊張を軽減するための喉頭リラクゼーション法、高音での発声などがある。ただし、いずれも根本治療ではなく音声治療のみでの効果は限定的である。2)ボツリヌストキシン治療ボツリヌストキシンを喉頭筋に注入することで、筋の異常収縮を抑えて音声症状を改善させる治療法である。侵襲性が少なく奏効率が高いことから、米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の「嗄声の診療ガイドライン」、わが国における「ジストニア診療ガイドライン」や「音声障害診療ガイドライン」において、本症に対する標準治療と位置付けられている。通常、内転型では輪状甲状間膜経由で甲状披裂筋に、外転型では輪状軟骨外側からのルートで後輪状披裂筋に、筋電図モニター下に投与する(図1)。治療効果は注入の1、2日後より現れ、平均15週間程度持続する。治療に伴う副作用としては、一過性の気息性嗄声や液体嚥下時のむせがある。国内では2018年にA型ボツリヌストキシン(商品名:ボトックス)の適用承認が得られた4)。先進国ではオーストラリアに次いで2ヵ国目である。図1 ボツリヌストキシン治療内転型では輪状甲状間膜経由で、外転型では輪状軟骨外側からのルートでそれぞれ標的筋に投与する。■ 外科的治療内転型痙攣性発声障害に対しては、以下に示す外科的治療があり、近年、適用症例が増えつつある。一方、外転型に対しては有効性が確立された外科的治療はない。1)甲状披裂筋切除術全身麻酔下に経口的に喉頭へアプローチし、声帯上面に切開を加えて責任筋である甲状披裂筋を両側性に鉗除する。手術手技が比較的簡単で皮膚切開を要しないという利点があるが、術後に気息性嗄声がみられる短所がある。2)選択的反回神経内転筋枝切断-再支配手術反回神経の内転筋枝を一旦切断したのちに再支配させる選択的反回神経内転筋枝切断-再支配手術(selective laryngeal adductor denervation-reinnervation surgery)が米国を中心に行われている。手技がやや煩雑でやはり術後に嗄声を来すことが多く、わが国ではあまり行われていない。3)甲状軟骨形成術2型局所麻酔下に甲状軟骨上に皮膚切開を置き、甲状軟骨を正中で縦切開して離断する。離断した軟骨を左右に開大することで、声帯前方を拡げて声帯の過閉鎖が起こらないようにする(図2)。術直後より音声が改善し、長期的にも安定した治療効果が得られることから5)、わが国を中心に手術例が増加しつつある。図2 内転型痙攣性発声障害に対する甲状軟骨形成術2型の模式図甲状軟骨を正中で切開し左右に開大してチタンブリッジにより固定することで、声帯内転による声門の過閉鎖を防止する。4 今後の展望近年の国内外における研究により、本症の病態は明らかになりつつある。また、治療においてもボツリヌストキシン治療や外科的治療の有効性が普及してきた。一方、本症に対する根治的治療法はまだない。発声に関わる中枢へのアプローチによる根治的治療法開発も進められており、今後のさらなる研究の発展が期待される。また、患者は耳鼻咽喉科のみならず、脳神経内科、脳神経外科、心療内科、精神科などさまざまな診療科を受診することが考えられる。本症の認知度はまだ十分とは言えず、早期診断や適切な治療に向けて、これらの診療科の医師や国民に対する啓発活動も望まれる。5 主たる診療科耳鼻咽喉科、脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診断・治療に関する情報日本音声言語医学会ホームページ(痙攣性発声障害の診断基準および重症度分類、ボツリヌストキシン治療実施可能施設一覧を掲載)患者会情報SDCP発声障害患者会(痙攣性発声障害を含む発声障害患者さんの交流と情報交換)1)兵頭政光. Clinical Neuroscience. 2020;38:1122-1124.2)Hyodo M, et al. Auris Nasus Larynx. 2021;48:179-184.3)鈴木則宏ほか編. Annual Review 神経 2020. 中外医学社;2020:229-235.4)Hyodo M, et al. Eur J Neurol. 2021;28:1548-1556.5)Sanuki T, et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;157: 80-84.公開履歴初回2022年2月21日

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双極性障害患者の睡眠評価~主観的および客観的アプローチの比較

 双極性障害患者では、睡眠障害が頻繁に認められる。そのため、双極性障害患者の睡眠を正確に評価することは重要である。双極性障害患者の睡眠を評価するうえで、睡眠日誌や質問票などの主観的な睡眠評価ツールが用いられることが多いが、これらのツールがアクチグラフなどの客観的なツールと同程度の精度があるかはよくわかっていない。藤田医科大学の藤田 明里氏らは、双極性障害患者の睡眠を評価するための主観的および客観的ツールについての比較を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年12月13日号の報告。 双極性障害外来患者164例を対象に横断的研究を実施した。客観的な睡眠評価は、アクチグラフを用いて、7日間連続してプロスペクティブに評価し、主観的な睡眠評価は、睡眠日誌を用いてプロスペクティブに評価した。 主な結果は以下のとおり。・総睡眠時間と入眠潜時の評価では、睡眠日誌(r=0.81)とアクチグラフ(r=0.47)の相関性は高く、中程度であった。・これらの関連は、多重検定(総睡眠時間、入眠潜時のいずれもp<0.001)および正常状態(総睡眠時間:r=0.86、入眠潜時:r=0.51)と残存症状状態(総睡眠時間:r=0.77、入眠潜時:r=0.40)の患者いずれにおいて、補正後も有意なままであった。・総睡眠時間の割合の差(睡眠日誌パラメータからアクチグラフパラメータを引き、アクチグラフパラメータで割った値)の中央値(四分位範囲)は、比較的小さかった(6.2%[-0.2~13.6%])。 著者らは「アクチグラフまたは睡眠ポリグラフが実施できない場合、睡眠日誌を用いた総睡眠時間の評価は、臨床的に有用であると考えられる」としている。

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妊産婦の新型コロナ感染、産科合併症と関連/JAMA

 妊娠中および出産後の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、妊産婦死亡または重篤な産科合併症の複合アウトカムのリスク増加と関連していることが、米国・ユタ大学のTorri D. Metz氏ら国立小児保健・人間発達研究所(Eunice Kennedy Shriver NICHD)のMFMU(Maternal-Fetal Medicine Units)ネットワークによる「GRAVID(Gestational Research Assessments of COVID-19)研究」で明らかとなった。これまで、妊娠中または出産後のSARS-CoV-2感染が重篤な産科合併症のリスクを特異的に増加させるかどうかはわかっていなかった。JAMA誌オンライン版2022年2月7日号掲載の報告。2020年3月~12月に出産した妊産婦、SARS-CoV-2感染者vs.非感染者 研究グループは、GRAVID研究に参加している米国の17施設において、2020年3月1日~12月31日の期間に出産した妊産婦1万4,104例について後ろ向きに解析した(最終追跡調査2021年2月11日)。 妊娠中または産後6週間以内にPCR検査または抗原検査が陽性であった患者をSARS-CoV-2感染者とし、同期間の無作為に選んだ日に出産しSARS-CoV-2検査が陽性でない非感染者と比較した。SARS-CoV-2感染者は、COVID-19の重症度でさらに層別化した。 主要評価項目は、妊産婦死亡、または妊娠高血圧症候群、産褥出血、SARS-CoV-2以外の感染症に関連する重篤な疾患の複合、主要な副次評価項目は帝王切開による出産であった。中等度以上感染者で、妊産婦死亡/産科合併症、帝王切開の発生率が有意に高い 解析対象1万4,104例(平均年齢29.7歳)のうち、SARS-CoV-2感染者は2,352例、非感染者は1万1,752例であった。 SARS-CoV-2感染者は非感染者と比較し、主要評価項目のイベントと有意に関連していた(13.4% vs.9.2%、群間差:4.2%[95%信頼区間[CI]:2.8~5.6]、補正後相対リスク[aRR]:1.41[95%CI:1.23~1.61])。 妊産婦死亡の5例はすべてSARS-CoV-2感染者であった。SARS-CoV-2感染と帝王切開との間に有意な関連はなかった(34.7% vs.32.4%、aRR:1.05[95%CI:0.99~1.11])。 COVID-19の重症度が中等度以上のSARS-CoV-2感染者(586例)は、非感染者と比較して主要評価項目のイベント(26.1% vs.9.2%、群間差:16.9%[95%CI:13.3~20.4]、aRR:2.06[95%CI:1.73~2.46])、ならびに帝王切開による出産(45.4% vs.32.4%、12.8%[8.7~16.8]、1.17[1.07~1.28])と有意に関連していた。 一方、軽度または無症状のSARS-CoV-2感染者(1,766例)は非感染者と比較して、主要評価項目(9.2% vs.9.2%、群間差:0%[95%CI:-1.4~1.4]、aRR:1.11[95%CI:0.94~1.32])、ならびに帝王切開(31.2% vs.32.4%、-1.4%[-3.6~0.8]、1.00[0.93~1.07])のいずれも有意な関連はみられなかった。

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ワキ汗に困る女性の頻度は、〇%【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第204回

ワキ汗に困る女性の頻度は、〇%photo-ACより使用多汗症の女性って結構多いです。うちの妻も、手から源泉のごとく汗が湧き出る時期がありました。さて、日本における原発性腋窩多汗症の有病率は、5~64歳の人口で5.75%とされています。20人に1人以上が悩んでいることになります。かなり多いですね。女性のほうが多いのかなと思っていたら、意外にも男性6.06%、女性4.72%と男性のほうがメジャーな疾患でした。Murota H, et al.Cost-of-illness study for axillary hyperhidrosis in JapanJ Dermatol . 2021 Oct;48(10):1482-1490.この研究は、日本における腋窩多汗症の疾病コストを推定することを目的としたものです。全国の保険請求データベースの分析と、Webベースの横断的調査を実施しました。2012年11月~2019年10月の間、一度でも原発性腋窩多汗症と診断された患者のうち、1,447例の健康保険受給データを分析しました。また、16~59歳の腋窩多汗症患者321例を対象に、横断的なWebアンケートを実施し、衛生用品にかかったお金と、仕事の生産性と活動性の障害に関するアンケート調査を用いた生産性損失を算出しました。結果、腋窩多汗症患者さん1人当たりの年間直接医療費は、2016年が9万1,491円、2017年が9万3,155円、2018年が7万5,036円という結果でした。なかなかの医療費ですぞ!いずれも、ボツリヌス毒素注射が総費用の約9割を占めていることがわかりました。ボツリヌス毒素注射には、効果の持続に限りがあるので、いつの間にか元通りに戻ることが多いです。腋窩多汗症患者1人当たりの衛生用品の年間総費用は9,325円という結果でした。仕事の生産性も落ちますので、作業効率が低下することも今回の研究で示されています。そして、この研究では、腋窩多汗症によって年間3,365億円のコストが発生していることを記載しています。あなどれませんよ、多汗症――。

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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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統合失調症に対するベンゾジアゼピン併用の影響

 統合失調症患者に対するベンゾジアゼピンの使用について、未使用、短期使用、長期使用の場合の疾患経過に対する影響を、トルコ・Usak UniversityのOkan Ekinci氏らが、検討を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2022年1月17日号の報告。 2015年1月~2019年1月に精神科病院に入院した統合失調症患者を対象にレトロスペクティブ研究を実施した。患者の臨床経過の特徴について、最初の入院から観察期間終了(24ヵ月)までレトロスペクティブに追跡した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1,710例のデータを分析に含めた。・ベンゾジアゼピンを短期使用している患者は、未使用患者や長期使用患者と比較し、精神科入院が少なく、精神科サービスの利用期間も短かった。・抗精神病薬の中止率および自殺関連行動の出現率についても、ベンゾジアゼピンを短期使用している患者は、未使用患者や長期使用患者と比較し、有意に低かった。 著者らは「統合失調症患者に対するベンゾジアゼピンの短期使用は、より良い臨床経過と関連していることが示唆された。今後の研究において、さまざまなベンゾジアゼピンの使用パターンが疾患予後に及ぼす影響を、長期フォローアップ調査やプロスペクティブ研究で評価し、併せて精神病理学的因子についても調査する必要がある」としている。

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新型コロナ感染の高齢者、32%が後遺症を発症/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した65歳以上の高齢者は、急性期後に診療を要する持続的または新規の後遺症のリスクが高いことが、米国・Optum LabsのKen Cohen氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、示された。後遺症は、呼吸不全、認知症、ウイルス感染後疲労を除くと、高齢者のウイルス性下気道疾患の後遺症と類似していたが、SARS-CoV-2感染後は、重要な後遺症が多岐にわたって発生することが明らかになったという。著者は、「後遺症のリスクは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した人で高いことが明らかで、いくつかの後遺症のリスクは男性、黒人、75歳以上で高かった。今回のデータは、高齢者におけるSARS-CoV-2感染急性期後の後遺症を定義し、これらの患者の適切な評価と管理に役立つと考えられる」とまとめている。BMJ誌2022年2月9日号掲載の報告。65歳以上のSARS-CoV-2感染者と非COVID-19患者を比較 研究グループは、UnitedHealth Group Clinical Research Database(匿名化された診療報酬請求と外来患者の臨床検査結果が含まれる)を用い、COVID-19を発症した65歳以上の高齢者(2019年1月からSARS-CoV-2感染の診断日まで継続してメディケア・アドバンテージプランに加入していた人)について、傾向スコアマッチングにより特定したCOVID-19を発症していない3つの比較群(2020年群8万7,337例、2019年群8万8,070例、ウイルス性下気道疾患群7万3,490例)と比較した。2020年群は2020年において65歳以上で、COVID-19の診断を受けていない、またはPCR検査が陽性ではない集団、2019年群はCOVID-19流行前の2019年における65歳以上の集団、ウイルス性下気道疾患群は2017~19年にインフルエンザ・非細菌性肺炎・急性気管支炎・急性下気道感染症・急性下気道感染を伴う慢性閉塞性肺疾患と診断された65歳以上の集団であった。 主要評価項目は、COVID-19診断後21日以降における持続的/新規後遺症の有無(ICD-10コードで同定)とし、急性期後120日間の後遺症の過剰リスクについてリスク差およびハザード比を算出した。また、後遺症の発症率を、年齢、人種、性別およびCOVID-19による入院の有無別に解析した。非COVID-19患者と比べて後遺症の発症は11%高い SARS-CoV-2感染が診断された65歳以上の高齢者のうち、32%(87,337例中27,698例)が急性期後に持続的/新規後遺症のために医療機関を受診し、これは2020年群と比較して11%高かった。 呼吸不全(リスク差:7.55、95%信頼区間[CI]:7.18~8.01)、疲労(5.66、5.03~6.27)、高血圧(4.43、2.27~6.37)、記憶障害(2.63、2.23~3.13)、腎障害(2.59、2.03~3.12)、精神的診断(2.50、2.04~3.04)、凝固能亢進(1.47、1.2~1.73)、心調律異常(2.19、1.76~2.57)は、2020年群と比較してリスク差が大きく、2019年群との比較でも同様の結果が得られた。 一方、ウイルス性下気道感染症群と比較した場合、呼吸不全(リスク差[100人当たり]:2.39、95%CI:1.79~2.94)、認知症(0.71、0.3~1.08)、ウイルス感染後疲労(0.18、0.11~0.26)のみ増加が認められた。 入院を必要とした重症COVID-19患者は、ほとんどのリスクが顕著に増加したが、すべてが後遺症というわけではなかった。

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再発卵巣がん、トラメチニブでPFS有意に延長/Lancet

 米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDavid M. Gershenson氏らは、再発低悪性度漿液性卵巣がん患者を対象とした多施設共同非盲検無作為化第II/III相試験「GOG 281/LOGS試験」において、MEK阻害薬トラメチニブが標準治療と比較して無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、新たな治療選択肢となる可能性があることを示した。卵巣または腹膜の低悪性度漿液性がんはMAPKシグナル伝達経路の異常が特徴であり、高悪性度漿液性がんに比べ化学療法に対する感受性が低い。これまでの研究で、MEK阻害薬は有効性が期待される治療戦略であることが示唆されていた。Lancet誌2022年2月5日号掲載の報告。トラメチニブの有効性および安全性を医師選択の標準治療と比較 研究グループは、米国および英国の84施設において、RECIST ver.1.1に基づく測定可能病変を有する18歳以上の再発低悪性度漿液性がん患者を、トラメチニブ群または標準治療群のいずれかに、地域(米国、英国)、前治療レジメン数(1、2、3以上)、PS(0、1)、計画された標準治療を層別因子として、1対1の割合で無作為に割り付けた。5つの標準治療薬すべてではなく、少なくとも1つのプラチナ製剤を含むレジメンによる治療を受けたことがある患者を適格とし、化学療法歴のレジメン数は問わなかった。また、漿液性境界型腫瘍、または低悪性度漿液性がんと高悪性度漿液性がんを含む腫瘍を有する患者は除外した。 トラメチニブ群は2mgを1日1回経口投与し、標準治療群は次の5つのうち医師が選択した治療を行った。パクリタキセル(80mg/m2を1、8、15日目に静脈内投与、28日ごと)、ペグ化リボソームドキソルビシン(40~50mg/m2を4週に1回静脈内投与)、トポテカン(4mg/m2を1、8、15日目に静脈内投与、28日ごと)、レトロゾール(2.5mg 1日1回経口投与)、タモキシフェン(20mgを1日2回経口投与)。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無作為化された治療を受けている間のPFS(治験責任医師評価)とし、ベースライン、続く15ヵ月間は8週ごと、それ以降は3ヵ月ごとに画像診断を行った。トラメチニブ群でPFS中央値が約6ヵ月有意に延長 2014年2月27日~2018年4月10日の期間に260例が登録され、トラメチニブ群(130例)と標準治療群(130例)に無作為化された。観察期間中央値は、トラメチニブ群31.5ヵ月(IQR:18.1~43.3)、標準治療群31.3ヵ月(15.7~41.9)であった。 主要解析において、PFSイベントは217例確認され、トラメチニブ群101例(78%)、標準治療群116例(89%)であった。PFS期間中央値は、トラメチニブ群13.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.9~15.0)、標準治療群7.2ヵ月(5.6~9.9)で、ハザード比は0.48(95%CI:0.36~0.64、p<0.0001)であった。 主なGrade3/4の有害事象は、トラメチニブ群(128例)が皮疹(17例、13%)、貧血(16例、13%)、高血圧(15例、12%)、下痢(13例、10%)、悪心(12例、9%)、疲労(10例、8%)であり、標準治療群(127例)が下腹部痛(22例、17%)、悪心(14例、11%)、貧血(12例、10%)、嘔吐(10例、8%)であった。治療に関連した死亡は確認されなかった。

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HER2+乳がん2次治療へのT-DXd vs.T-DM1、アジア人サブグループ解析結果(DESTINY-Breast03)/日本臨床腫瘍学会

 DESTINY-Breast03試験の中間解析結果がESMO2021で発表され、トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2陽性の切除不能または転移を有する乳がん(mBC)患者に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)がトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長した。同試験のアジア人サブグループ解析結果を、韓国・Seoul National University HospitalのSeock-Ah Im氏が、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で発表した。[DESTINY-Breast03試験]・対象:トラスツズマブとタキサンによる治療歴のあるHER2+mBC患者・試験群:以下の2群に1対1の割合で無作為に割り付け T-DXd群:3週間間隔で5.4mg/kg投与 261例 T-DM1群:3週間間隔で3.6mg/kg投与 263例・層別化因子:ホルモン受容体の状態、ペルツズマブ治療歴、内臓転移の有無・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]OS、BICRおよび治験実施医師評価による客観的奏効率(ORR)、BICR評価による奏効期間(DOR)、治験実施医師評価によるPFS、安全性 主な結果は以下のとおり。・2021年5月21日までに15カ国から524例が無作為化され、うち309例(59%、T-DXd 群149例、T-DM1群160例)がアジアからの参加者だった(日本人は68例)。・アジア人サブグループにおける追跡期間中央値は、T-DXd 群16.5ヵ月、T-DM1群15.8ヵ月だった。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はT-DXd 群54.0歳vs.T-DM1群53.4歳、HER2status 3+が92.6% vs.88.8%、ホルモン受容体陽性が45.6% vs.46.3%、脳転移有が16.1% vs.18.8%、内臓転移有が76.5% vs.72.5%だった。・治療歴については全体集団と大きな差はみられなかったが、4ライン以上の治療歴を有する患者、抗HER2TKIによる治療歴を有する患者がアジア人サブグループで多かった。・主要評価項目のBICR評価によるPFS中央値は、T-Dxd群NE(95%信頼区間[CI]:16.8~NE) vs.T-DM1群5.6ヵ月(4.1~6.9)、ハザード比(HR):0.27(0.20~0.38)だった(全体集団ではNE vs. 6.8ヵ月、HR:0.28、p=7.8×10-22)。12ヵ月時点でのPFS率はT-Dxd群72.6%(64.3~79.3)vs.T-DM1群26.0%(18.6~34.1)となり(全体集団では75.8% vs. 34.1%)、アジア人においてもT-Dxdの有用性が示された。・副次評価項目の治験実施医師評価によるPFS中央値は、T-Dxd群25.1ヵ月(20.9~NE)vs.T-DM1群7.0ヵ月(5.5~8.1)、HR:0.26(0.19~0.37)だった(全体集団では25.1ヵ月vs. 7.2ヵ月、HR:0.27、p=6.5×10-24)。・OSデータは未成熟だが、T-Dxd群NE(19.9~NE)vs.T-DM1群NE(17.4~NE)、HR:0.51(0.25~1.02)だった(全体集団ではNE vs. NE、HR:0.56、p=0.007172)。・ORRはT-Dxd群76.5% vs.T-DM1群31.3%(全体集団では79.7% vs.34.2%)。・Grade3以上の治療関連有害事象はT-Dxd群46.9% vs.T-DM1群46.5%で発現し、全体集団(45.1% vs. 39.8%)と概ね一致していた。・T-Dxd群のGrade3以上の治療関連有害事象として多かったのは好中球減少症(24.5%)、血小板減少症(11.6%)、白血球減少症(9.5%)、吐き気(8.2%)だった(全体集団ではそれぞれ19.1%、7.0%、6.6%、5.8%)。・T-Dxd群でのILDは16例(10.9%)報告されたが(全体集団では10.5%)、Grade4以上の報告はない。日本人集団についてみると、Grade1~2のILD が8例(22.2%)報告されている。 Im氏は、全体集団と同様にアジア人集団においても、T-DXdはT-DM1と比較して臨床的に意味のあるPFSベネフィットを示したとし、安全性プロファイルについても全体集団と一致していたと結論付けている。一方で、日本人集団において全体集団およびアジア人集団と比較するとILDの報告が多い傾向がみられた点に触れ、Grade4以上は報告されていないものの、ILDについては注意深いモニタリングが必要としている。

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非小細胞肺がんの新たなドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」発見【肺がんインタビュー】 第75回

第75回 非小細胞肺がんの新たなドライバー遺伝子「CLIP1-LTK融合遺伝子」発見出演:国立がん研究センター東病院 泉 大樹氏非小細胞肺がんの新たなドライバー遺伝子CLIP1-LTK融合遺伝子が、わが国の研究で発見された。CLIP1-LTK融合遺伝子は、ドライバーであるとともにアクショナブルな遺伝子であり、Nature誌で発表されている。また、研究としても、臨床と研究の密接な連携から治療薬を同定する新たなスタイルを実現している。Nature誌掲載論文の筆頭著者である国立がん研究センター東病院の泉大樹氏に、発見の経緯や同遺伝子の詳細について聞いた。

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ニボルマブ+カボザンチニブ、腎細胞がん1次治療の2年間追跡で持続的な生存ベネフィットを示す(CheckMate-9ER)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブとExelixis社は、2022年2月14日、第III相CheckMate -9ER試験の2年間の追跡調査の解析結果を発表した。同解析では、進行腎細胞がん(RCC)のファーストライン治療において、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法が、スニチニブと比較して、持続的な生存および奏効ベネフィット、並びに健康関連の生活の質(HRQOL)の改善を示した。 これらの最新のデータは、米国臨床腫瘍学会(ASCO)2022年泌尿器がんシンポジウムのポスタープレゼンテーションで発表される。 全患者集団の結果は以下のとおり。・OS:OSの最終解析では、ニボルマブとカボザンチニブの併用療法群は、スニチニブ群と比較して、引き続き、OSの中央値(併用療法群37.7ヵ月 vs.スニチニブ群34.3ヵ月)で意義のある改善を示し、死亡リスクを30%低減した[ハザード比(HR):0.70、95%信頼区間(CI):0.55~0.90]。・PFS:PFSベネフィットは維持され、併用療法群はスニチニブ群と比較して、PFS中央値を2倍に延長した(併用療法群16.6ヵ月 vs.スニチニブ群8.3ヵ月、HR 0.56、95%CI:0.46〜0.68)。・ORRおよびDOR:ORRベネフィットは維持され、併用療法群は、スニチニブ群と比較して、2倍近くのORRを示した(55.7%vs.28.4%)。DOR中央値は、スニチニブ群の15.1ヵ月と比較して、併用療法群で23.1ヵ月であり、奏効期間もより持続的であった。・CR:CR率は、併用療法群で12.4%、スニチニブ群では5.2%であった。・安全性:全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)が、併用療法群(320例)の97.2%、スニチニブ群(320例)の93.1%に認められた。Grade3以上のTRAEは、併用療法群で60.5%%、スニチニブ群で54.1%であった。

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日本人重症脳梗塞、血管内治療+薬物療法は薬物療法単独より有益/NEJM

 日本で行われた試験で、主幹動脈閉塞を伴う梗塞が大きい患者に対する血管内治療と薬物療法の併用は薬物療法のみに比べ、90日アウトカムが良好であり、修正Rankinスケールスコア0~3の患者の割合が約2.4倍に上ることが示された。頭蓋内出血の発生率は、血管内治療併用群で高率だった。兵庫医科大学の吉村 紳一氏らが、国内203例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。急性虚血性脳卒中に対する血管内治療は、梗塞が大きい場合は一般的に回避されるが、これまで薬物療法単独と比較した血管内治療の効果について、十分な検討は行われていなかった。NEJM誌オンライン版2022年2月9日号掲載の報告。ASPECTS評価で3~5の患者を対象に試験 吉村氏らは、主幹動脈閉塞があり、画像上かなり大きな脳卒中が認められる、ASPECTS(Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score)評価で3~5の患者を対象に、日本国内で多施設共同非盲検無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、症状が認められてから6時間以内またはFLAIR画像で早期の変化が認められない場合には24時間以内に、一方の群には血管内治療と薬物治療を(血管内治療群)、もう一方の群には薬物治療のみを行った(対照群)。両群に対し、必要に応じてアルテプラーゼ(0.6mg/kg)を投与した。 主要アウトカムは、90日後の修正Rankinスケールスコア0~3とした。副次アウトカムは、90日後の同スコア改善の大きさと、48時間後のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアの8ポイント以上の改善であった。NIHSSスコア8ポイント以上改善、血管内治療群31%に対し対照群9% 計203例の患者が無作為化を受けた(血管内治療群101例、対照群102例)。アルテプラーゼを投与した患者は両群ともに約27%だった。 90日後の修正Rankinスケールスコア0~3の該当被験者割合は、血管内治療群31.0%、対照群12.7%だった(相対リスク:2.43、95%信頼区間[CI]:1.35~4.37、p=0.002)。 スコア別にみた修正Rankinスケールスコアの改善は、全般的に血管内治療群のほうが良好だった。 48時間後にNIHSSスコアの8ポイント以上改善が認められたのは、血管内治療群31.0%、対照群8.8%だった(相対リスク:3.51、95%CI:1.76~7.00)。あらゆる頭蓋内出血の発生は、それぞれ58.0%、31.4%に認められた(p<0.001)。

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低体温療法、冬の時代(解説:香坂俊氏)

低体温療法に関してはネガティブな結果の臨床試験の発表が続いている。以前取り上げたTTM2試験(「Question the Status Quo―ACLSの「常識」に挑んだ臨床試験」)において、院外心肺停止症例に関してtargeted hypothermia DID NOT lead to a lower incidence of death by 6 months than targeted normothermiaという結果が得られ、今回のHYPO-ECMO試験において対象とされたVA-ECMOを要した心原性ショック患者においても、early application of moderate hypothermia for 24 hours DID NOT significantly increase survival compared with normothermiaという結論となった。ただ、TTM2試験が、院外心肺停止症例に関して決定的ともいえる症例数(1,900例)をランダム化して半年間追跡したのに対し、このHYPO-ECMO試験の登録は374例にとどまり、かつ院内予後のみの評価しか行っていない。論文の結語の中にも、症例数の限界があるため有効な結論を出せない状況であるとの記載がなされている(these findings should be considered inconclusive)。心原性ショックは、循環器内科を専門とする者にとって苦い思いをさせずにはいられない疾患である。なかなか画期的な進歩がないまま20年が経過しようとしているが(SHOCK Trialによって急性心筋梗塞例で早期再灌流が良いとされたのが、最後のGood Newsではなかったか?)、今回のこのHYPO-ECMOの結果を踏まえ、より大規模なRCTが組まれるものと考えられるが、そこに期待をかけたい。

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ウパダシチニブ+TCS、日本人アトピー性皮膚炎患者への安全性確認

 日本人のアトピー性皮膚炎(AD)の治療として、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬ウパダシチニブ+ステロイド外用薬(TCS)併用の安全性を検討した、京都府立医科大学の加藤 則人氏らによる第III相無作為化二重盲検試験「Rising Up試験」の24週の中間解析結果が発表された。ウパダシチニブに関する既報の知見と、概して一致した結果が示され、安全性について新たなリスクは検出されなかったという。JAAD International誌2022年3月号掲載の報告。 Rising Up試験は、12~75歳の日本人の中等症~重症AD患者を対象とし、被験者を無作為に1対1対1の3群に割り付け、(1)ウパダシチニブ15mg+TCS、(2)ウパダシチニブ30mg+TCS、(3)プラセボ+TCSをそれぞれ投与した。安全性は、有害事象と検査データに基づき評価した。 主な結果は以下のとおり。・272例(成人243例、未成年29例)が無作為化を受けた(治療開始は2018年11月17日)。・重篤な有害事象の発現頻度は24週時点で、ウパダシチニブ+TCS投与の両群がプラセボ+TCS群よりも高率であったが、用量間では類似していた(15mg+TCS群:56%、30mg+TCS群:64%、プラセボ+TCS群:42%)。・ウパダシチニブ+TCS投与群はプラセボ+TCS群と比べて、にきびの発現頻度が高かった(すべて軽症~中等症、治療中止となった症例なし)。発現頻度は、15mg+TCS群13.2%、30mg+TCS群19.8%、プラセボ+TCS群5.6%。・さらに、15mg+TCS群よりも30mg+TCS群で、帯状疱疹(30mg+TCS群:4.4% vs.15mg+TCS群:0%)、貧血(1.1% vs.0%)、好中球減少症(4.4% vs.1.1%)の発現頻度が高かった。なお、これらのイベントはプラセボ+TCS群では報告されなかった。・血栓塞栓性イベント、悪性腫瘍、消化管穿孔、活動性結核、死亡の発生は報告されなかった。

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