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再発・難治ATLLにバレメトスタット発売/第一三共

 第一三共株は、バレメトスタット(製品名:エザルミア)について、2022年12月20日、国内で新発売したと発表。 同剤は、再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)患者を対象とした国内第II相臨床試験の結果に基づき、2021年11月に希少疾病用医薬品の指定を受け、2022年9月に「再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫」を適応として国内製造販売承認を取得した。 バレメトスタットは、多くの血液がんで発現しているヒストンメチル化酵素であるEZH1およびEZH2を選択的に阻害する薬剤として第一三共が創製し、世界で初めて発売した薬剤である。・販売名:エザルミア錠50mg、同錠100mg・一般名:バレメトスタットトシル酸塩・効能又は効果:再発又は難治性の成人T細胞白血病リンパ腫・用法及び用量:通常、成人にはバレメトスタットとして200mgを1日1回空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。・薬価:エザルミア錠50mg 1錠 6,267.70円、エザルミア錠100mg 1錠 12,017.00円・製造販売承認日:2022年9月26日・薬価基準収載日:2022年11月16日・発売日:2022年12月20日・製造販売元:第一三共株式会社

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2022年の肺がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 肺がん編】【肺がんインタビュー】 第90回

1.ソトラシブの承認(CodeBreaK 100試験とCodeBreaK 200試験)KRAS遺伝子変異陽性は、EGFR遺伝子変異に次いで本邦では多い遺伝子変異である。このKRAS遺伝子変異のうち、KRAS G12C遺伝子変異陽性を対象としたソトラシブが2次療法以降での使用で日常臨床に導入された。ソトラシブの重要な試験としては、KRAS G12C遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(126例)を対象としたPhase II試験(CodeBreaK 100試験:Skoulidis F, et al. N Engl J Med. 2021;384:2371-2381.)において、奏効率37.1%、無増悪生存期間(PFS)中央値6.8ヵ月、全生存期間(OS)中央値12.5ヵ月であり、毒性も下痢・悪心・倦怠感・肝障害を認めるものの比較的軽度であった。また、ソトラシブとドセタキセルを比較したPhase III試験(CodeBreaK 200試験:Johnson ML, et al. ESMO 2022.)も報告され、PFS中央値はソトラシブ群が5.6ヵ月、ドセタキセル群が4.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.66(95%信頼区間[CI]:0.51~0.86)であった。奏効率はソトラシブ群が28.1%、ドセタキセル群が13.2%でp<0.001とソトラシブ群が有意に高かった。また、OS中央値はソトラシブ群が10.6ヵ月、ドセタキセル群が11.3ヵ月でHRは1.01(95%CI:0.77~1.33)で有意差は認めなかった(クロスオーバー率26.4%)。2.術前化学療法:ニボルマブ・プラチナ併用療法(CheckMate-816試験)本年度のトピックは周術期治療が中心であったと思われるが、切除可能非小細胞肺がん(腫瘍径≧4cmまたはリンパ節転移陽性)に対するニボルマブ・プラチナ併用療法(3週間ごとに3サイクル)のネオアジュバント療法については、CheckMate-816試験(Forde PM, et al. N Engl J Med. 2022;386:1973-1985.)が報告されている。この試験は、ニボルマブ・プラチナ併用療法とプラチナ併用療法の術前化学療法を比較するPhase III試験で行われ、中間解析におけるイベントフリー生存期間(EFS)中央値は、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で31.6ヵ月、プラチナ併用療法群では20.8ヵ月で、ニボルマブ・プラチナ併用療法群で有意に改善した(HR:0.63、97.38%CI:0.43〜0.91、p=0.005)。また、病理学的complete response(pCR)はニボルマブ・プラチナ併用療法群の24%に対し、プラチナ併用療法群は2.2%であった(p<0.0001)。OSのHRは0.57(99.67%CI:0.3〜1.07)とニボルマブ・プラチナ併用療法群で良好だが統計学的有意差は示しておらず、長期フォローアップの結果が待たれるところである。3.術後化学療法:アテゾリズマブ(IMPower010試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、プラチナ併用療法による術後化学療法終了後のアテゾリズマブ療法(3週間ごと、1年投与)が日常臨床に導入された。術後化学療法アテゾリズマブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)の非小細胞肺がん患者を対象とし、アテゾリズマブを支持療法と比較したPhase III試験(IMPower010試験:Felip E, et al. Lancet. 2021;398:1344-1357.)が報告された。その結果、PD-L1陽性のII-IIIA期(882例)における無再発生存期間(DFS)中央値は、アテゾリズマブ群で未到達、支持療法群で35.3ヵ月であり、HRは0.66(95%CI:0.50~0.88)と統計学的に有意に改善した。なお、DFSのHRは、PD-L1 50%以上では0.43(95%CI:0.27~0.68)と良好であったのに対して、PD-L1 1-49%では0.87(95%CI:0.6~1.26)であり、PD-L1の発現で効果が異なる傾向が示された。さらに、先日のWCLC 2022(Felip E, et al. WCLC 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、36ヵ月時点での生存率はそれぞれ82.1%と78.9%であった(HR:0.71、95%CI:0.49~1.03)。4.術後化学療法:オシメルチニブ(ADAURA試験)完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、3年間のオシメルチニブ療法(1日80mg[1錠])が日常臨床に導入された。術後化学療法オシメルチニブの重要な試験として、完全切除されたIB-IIIA期(TMS分類第7版)に対するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者を対象とし、オシメルチニブをプラセボと比較したPhase III試験(ADAURA試験:Wu YL, et al. N Engl J Med. 2020;383:1711-1723.)(682例)が報告され、EGFR遺伝子変異陽性のII-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で90%、プラセボ群で44%、HRは0.17(99.06%CI:0.11~0.26)と統計学的に有意に大きく改善した。なお、EGFR遺伝子変異陽性のIB-IIIA期における24ヵ月時点での無再発生存率は、オシメルチニブ群で89%、プラセボ群で52%であり、HRは0.20(99.12%CI:0.14~0.30)で、統計学的に有意に改善した。さらに、先日のESMO 2022(Tsuboi M, et al. ESMO 2022.)では、フォローアップ期間延長の結果が示され、Stage II/IIIAのDFS中央値は、オシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群21.9ヵ月で、HRは0.23(95%CI:0.18〜0.30)であった。また、Stage IB-IIIAのDFS中央値はオシメルチニブ群65.8ヵ月、プラセボ群28.1ヵ月で、HRは0.27(95%CI:0.21〜0.34)であった。5.外科の切除 肺葉切除vs.肺区域切除2cm以内の小細胞はいがんにおける肺区域切除と肺葉切除を比較したPhase III試験(JCOG0802/WJOG4607L: Saji H, et al. Lancet 2022:399:1607-1617.)が報告された。登録患者は、無作為割り付けの後、肺葉切除術(554例)または肺区域切除術(552例)(肺区域切除術群では、22例が肺葉切除に変更)が施行されている。5年全生存率は肺区域切除術群で94.3%、肺葉切除術群で91.1%であり、HRは0.663(95%CI:0.474~0.927、非劣性p<0.0001、優位性p=0.0082)と肺区域切除術群が統計学的に有意に良好であった。また、5年無再発生存率は肺区域切除術群で88.0%、肺葉切除術群で87.9%であり、HRは0.998(95%CI:0.753~1.323、p=0.9889)であった。局所再発率は肺区域切除術群で10.5%、肺葉切除術群で5.4%(p=0.0018)であり、肺区域切除術群で高いものの、術後呼吸機能低下については肺区域切除術群のほうが肺葉切除術群より有意に軽いことが報告され、条件がそろった場合の縮小手術の有用性が証明された。6.HER2陽性非小細胞肺がんのトラスツズマブ デルクステカン(ADC)トラスツズマブ デルクステカンは、抗体にトラスツズマブ、薬物がデルクステカンで構成されている。HER2陽性非小細胞肺がんにおけるトラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性を確認したPhase II試験(DESTINY-Lung01試験:Li BT, et al. N Engl J Med. 2022;386:241-251.)が報告された。非小細胞肺がんでは初となる免疫薬物複合体(ADC)の有効性を示した報告である。91例の患者が参加しており、奏効率55%(95%CI:44~65)で、病勢コントロール率は92%(95%CI:85~97)であった。また、治療奏効期間は9.3ヵ月(95%CI:5.7~14.7)、PFS中央値は8.2ヵ月(95%CI:6.0~11.9)、OS中央値は17.8ヵ月(95%CI:13.8~22.1)であった。主な毒性は血液毒性であったが、死亡例も含む肺障害も報告されている。今後、日常臨床への導入が進むと思われるが、毒性にも注意を払う必要があるといえる。7.ICI+Chemo、ICI+ICIの5年生存の発表PD-L1 50%以上のペムブロリズマブの5年生存率が31.9%と報告(Reck M, et al. J Clin Oncol. 2021;39:2339-2349.)され、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存の期待が高まってきている中、今年はESMO 2022において、扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-407試験の5年生存率(Nivello S, et al. ESMO2022.)と非扁平上皮がんのPhase III試験であるKEYNOTE-189試験の5年生存率(Garassino MC, et al. ESMO2022.)が報告された。5年生存率は、PD-L1の発現に関わらない全体集団において、KEYNOTE-407試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で18.4%、KEYNOTE-189試験ではペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群で19.4%であった。さらにPD-L1 50%以上、PD-L1 1-49%、PD-L1陰性におけるペムブロリズマブ・プラチナ併用療法群の5年生存率は、KEYNOTE-407試験では、それぞれ23.3%、20.6%、10.7%であり、KEYNOTE-189試験では、それぞれ29.6%、19.8%、9.6%であった。プラチナ併用療法は短期の病勢増悪を防ぐという意味では重要であるが、長期生存への寄与という点では十分でないのかもしれない結果であった。また、同時期にニボルマブ+イピリムマブ療法の5年生存の結果も報告された(Brahmer JR, et al. J Clin Oncol. 2022 Oct 12. [Epub ahead of print])。同試験ではPD-L1陽性の5年生存率は24%であり、その中でもPD-L1 50%以上の5年生存率は32%、PD-L1 1-49%の5年生存率は16%であった。それに対して、PD-L1陰性の5年生存率は19%であった。長期生存の観点からは、ニボルマブ+イピリムマブ療法はPD-L1陰性では良好な生存率を示したのに対し、PD-L1陽性ではイピリムマブの上乗せ効果が限定的である可能性が示されており、イピリムマブの効果を予測するバイオマーカーの開発が待たれるところである。免疫チェックポイント阻害薬の日常臨床導入により、一般臨床においても、ドライバー遺伝子変異陰性非小細胞肺がんでも長期生存が期待できるようになりつつあることは、意義が大きいことである。

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血液がん、今年押さえておくべき論文&学会発表【Oncology主要トピックス2022 造血器腫瘍編】

2022年に発表、論文化された造血器腫瘍の重要トピックを大阪医療センター 柴山 浩彦氏が一挙に解説。今年の造血器腫瘍領域におけるプラクティスチェンジの要点がわかる。1)Polatuzumab vedotin in previously untreated diffuse large B-cell Lymphoma. (Tilly H, et al. N Engl J Med. 2022;386:351-363.)未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する標準治療は、2000年代初頭に抗CD20抗体薬のリツキシマブが登場して以降、CHOP療法と併用するR-CHOP療法が、約20年間、標準治療であった。これまで、さまざまな治療法がR-CHOPと比較されてきたがR-CHOPを凌駕する治療法はなかった。抗CD79b抗体にリンカーを介してMMAEを結合した抗体薬物複合体のポラツズマブ ベドチン(Pola)をオンコビンと入れ替えたPola-R-CHP療法を二重盲検法でR-CHOPと比較したPOLARIX試験において、主要評価項目のPFSについて有意にPola-R-CHP療法が優る結果が示された。本試験の結果を基に、日本でも未治療DLBCLに対し、Pola-R-CHP療法が保険適応となり、新たな標準治療となる可能性が示された。2)Overall survival with brentuximab vedotin in stage III or IV Hodgkin’s lymphoma.(Ansell SM, et al. N Engl J Med. 2022;387:310-320.)未治療の進行期ホジキンリンパ腫に対し、標準治療であったABVD療法と、抗CD30抗体にリンカーを介してMMAEを結合した抗体薬物複合体のブレンツキシマブ ベドチン(アドセトリス)をブレオマイシンと入れ替えたA-AVD療法を比較した試験(ECHELON-1試験)にて、主要評価項目のmodified PFSは有意にA-AVD療法が優り、その結果は、NEJM誌に報告された。この結果によって、日本では未治療ホジキンリンパ腫に対するA-AVD療法が保険適用で使用可能となっている。その後、ECHELON-1試験は6年間のフォローアップが実施され、全生存期間(OS)についても、有意にA-AVDを受けた患者群がABVDを受けた患者群よりも優れていることが示された。この結果によって、A-AVD療法は未治療の進行期ホジキンリンパ腫に対する真の標準治療とみなすことができると考えられた。3)Ibrutinib plus bendamustine and rituximab in untreated mantle-cell lymphoma.(Wang ML et al. N Engl J Med. 2022;386:2482-2494.)Efficacy and safety of ibrutinib combined with standard first-line treatment as substitute for autologous stem cell transplantation in younger patients with mantle cell lymphoma: results from randomized triangle trial by the European MCL network.(ASH 2022 #1:プレナリー演題)再発・難治のマントル細胞リンパ腫(MCL)に対し、BTK阻害薬のイブルチニブは、保険適用での単剤治療が認められている。自家移植併用大量化学療法の適応とならない高齢未治療MCLに対し、BR療法との併用の第III相試験(プラセボとの比較、SHINE試験)の結果が約7年のフォローアップののちに2022年のASCOにて発表され、NEJM誌にpublishされた。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)においてイブルチニブ併用群が有意に優れているという結果であった。同様に、自家移植の適応となる未治療MCLに対し、自家移植を行わずとも、イブルチニブをR-CHOP/R-DHAP療法に併用し、その後、イブルチニブの維持療法を行うことで、FFS、OSともに差がみられなかったという結果が2022年ASHにおいてプレナリー演題として報告された。以上の2試験の結果、未治療MCLに対してはイブルチニブ併用の化学療法ののち、イブルチニブを維持療法として継続する治療が新たな標準治療となることが示された(日本では、2022年12月10日時点で未治療MCLに対するイブルチニブは未承認)。4)Triplet therapy, transplantation, and maintenance until progression in myeloma.(Richardson PG, et al. N Engl J Med. 2022;387:132-147.)自家移植併用メルファラン大量化学療法(Auto)の適応となる未治療多発性骨髄腫患者においては、ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメサゾン併用療法(VRD療法)を3~4サイクル行い、自家末梢血幹細胞採取を行ったあと、Autoを行い、その後、レナリドミドやイキザゾミブによる維持療法を行うのが標準療法とされている。本試験(DETERMINATION試験)では、VRDを8サイクル行い、その後レナリドミドの維持療法を行う群と、3サイクル後にAutoを行い、その後2サイクルのVRDを追加したあとレナリドミドの維持療法を行う群にランダム化し、PFS、奏効率、OSを比較している。その結果、主要評価項目のPFSではAutoを行った群で有意に優れていたがCR以上の奏効率、OSには差を認めなかった。この試験の結果から、Up-frontのAuto治療は、全患者に画一的に行うより、患者ごとに決定することも許容されることが示された。5)Treatment of adults with Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic Leukemia-from intensive chemotherapy combinations to chemotherapy-free regimens: A review.TKIが登場し、Ph+ALLの治療成績は格段に向上した。現在の未治療Ph+ALLの標準治療は、TKIと化学療法の併用治療を行い、血液学的寛解を得たのちに、適格症例においては同種移植を行うこととなっている。最近になって、TKI(ダサチニブやポナチニブ)とCD3XCD19二重抗体薬のブリナツモマブを併用したケモフリー治療によるPh+ALLに対する良好な治療成績が報告されている。本論文では、それらの臨床試験の結果をレビューしており、第1寛解期における同種移植の役割を疑問視している。今後、TKI+ブリナツモマブのケモフリーレジメンによる治療で、分子学的寛解が得られた場合は、従来の化学療法や同種移植は不要となる可能性が示唆されている。6)Second-line Tisagenlecleucel or standard care in aggressive B-cell lymphoma. (Bishop MR, et al. N Engl J Med. 2022;386:629-639.)Axicabtagene Ciloleucel as second-line therapy for large-B cell lymphoma.(Locke FL, et al. N Engl J Med. 2022; 386:640-654.)Lisocabtagene maraleucel versus standard of care with salvage chemotherapy followed by autologous stem cell transplantation as second-line treatment in patients with relapsed or refractory large B-cell lymphoma (TRANSFORM): results from an interim analysis of an open-label, randomised, phase 3 trial. (Kamdar M, et al. Lancet. 2022;399:2294-2308.)再発・難治性DLBCLに対し、現在、日本では3種類のCD19-CAR-T細胞治療(Tisa-cel、Axi-celLiso-cel)を保険適用で行うことができる。それぞれのCAR-T治療をDLBCLの標準的2次治療(自家移植併用大量化学療法:Auto)と比較する試験が実施され、その結果が発表された。対象となる患者背景に違いを認めたり、標準治療群で、実際に、Autoが実施できた患者の割合が異なったりしており、これらの試験を横並びに比較することはできないが、主要評価項目のEFS(Event-free survival)において、Axi-celとLiso-celは標準治療群よりも有意に優れていたが、Tisa-celは差がなかった。これらの試験結果より、一部の患者において、2次治療としてのCAR-T治療の有用性が認められることが明らかとなったが、CAR-T治療は高額であり、実施できる施設も限られていることから、どのような患者に2次治療としてCAR-T治療を行うべきか、今後の実臨床での症例の蓄積を待つ必要がある。7)Treatment outcomes after undetectable MRD with first-line ibrutinib (Ibr) plus venetoclax (Ven): Fixed duration treatment (placebo) versus continued Ibr with up to 5 years median follow-up in the CAPTIVATE study.(ASH 2022 #92)CLLの治療において、BTK阻害薬(イブルチニブやアカラブルチニブ)単剤治療が、抗CD20抗体と化学療法薬を組み合わせた免疫化学療法よりもPFSやOSが優れていることが示されている。ただし、BTK阻害薬単剤治療では、深い奏効が得られることは稀であり、長い期間治療を継続する必要がある。BTK阻害薬のイブルチニブとBCL-2阻害薬のベネトクラクスを併用することで、約1年間の固定期間の治療で、MRD陰性の深い奏効が得られ、MRD陰性が得られた症例では、継続治療が不要であることが、本年のASHにおいて、4~5年のフォローアップのデータとして示された。今後、とくに、若年のCLL患者に対しては、BTK阻害薬、BCL-2阻害薬、さらに抗CD20抗体薬を併用するケモフリーレジメンで、約1年程度の固定期間の治療を行い、MRD陰性を目指す治療法が標準治療となる可能性が示された。

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第Xa因子阻害剤による出血時の迅速な薬剤特定システムを構築/AZ

 アストラゼネカとSmart119は、12月14日付のプレスリリースで、医療機関と救急隊における第Xa因子阻害剤服用中の出血患者を対象とした情報共有システムを構築し、病院到着時に患者の服用薬剤を特定することで、迅速かつ適切な処置を目指すと発表した。 直接作用型第Xa因子阻害剤を含む抗凝固薬は、非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防や静脈血栓塞栓症の治療・再発予防を目的として広く使用されている。その一方で、服用中は通常より出血が起こりやすい状態となるため、事故や転倒などのきっかけで、大出血につながるリスクが高くなる。抗凝固薬服用中の患者において大出血が発現した際、抗凝固薬の中和剤を止血処置の一環として投与することで、出血の増大を抑えられる可能性がある。中和剤を適切に使用するためには、患者の服薬情報の把握が必要となるが、現状、救急隊の病院到着時に約30%の患者で、服用薬剤が特定できないと報告されている。  この現状を改善する1つの策として、アストラゼネカとSmart119の2社は、あらかじめ患者の服薬情報をデータベースに集約し、出血発現時に救急隊がSmart119を通じ、これらの情報を把握、搬送先の医療機関と迅速に情報共有できるシステムを構築するという。このシステムの構築は、i2.JP(アイツー・ドット・ジェイピー:Innovation Infusion Japan)―「患者中心」の実現に向けて、医療・ヘルスケア業界はどうあるべきか、といった難題の解決策を探るべく発足―というオープンなコミュニティにおいて、Smart119が運用する救急医療情報システム「Smart119」を活用するというアイデアから生まれた。 アストラゼネカは、「患者中心」の実現を目指す中で、抗凝固薬服用患者に対して、有事の際に一刻も早く適切な処置を届けることができるようSmart119と協力しながら取り組んでいく、としている。

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周産期アウトカムに人種・民族性は影響するか/Lancet

 世界の20の高所得国と上位中所得国の、周産期アウトカムに関する人種および民族性の影響について解析した結果、母体特性を調整後、白人女性の産児との比較において、十分なサービスを受けていないグループで黒人女性の産児の周産期アウトカムが、評価した項目すべてで不良であることが示された。他のグループ(南アジア系、ヒスパニック系、その他)では、アウトカム項目によりリスクに差異があった。また、周産期有害アウトカムへの人種・民族性の影響について、地域差は認められなかった。英国・バーミンガム大学のJameela Sheikh氏らInternational Prediction of Pregnancy Complications(IPPIC)Collaborative Networkが、妊娠219万8,655例のメタ解析を行い、Lancet誌2022年12月10日号で報告した。これまで、妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響に関するエビデンスは、特定の国および医療制度内で行われた個々の研究に限定されていた。新生児死亡、死産、早産、SGA児への人種・民族性の影響を評価 研究グループは、高所得国と上位中所得国の妊娠アウトカムへの人種・民族性の影響を評価し、格差がある場合はその大きさが地域によって異なるかを確認した。IPPICネットワークの妊娠合併症に関する試験データを用いて、個々の参加者データ(IPD)メタ解析を行った。 完全データセットは、94試験、53ヵ国の453万9,640例の妊娠から構成された。解析は、2以上の人種・民族グループ(白人、黒人、南アジア系、ヒスパニック系、その他)の周産期アウトカム(新生児死亡、死産、早産、在胎不当過小[SGA]児)を報告していた試験を対象とした。評価は2段階ランダム効果IPDメタ解析法にて行い、有向非巡回グラフ(directed acyclic graph:DAG)で選択した交絡変数(母親の年齢、BMI値、出産歴、教育レベル)に対する多重代入法を行った。 主要アウトカムは、新生児死亡と死産。副次アウトカムは、早産、SGA児であった。人種・民族と周産期アウトカムの関連を、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて推算。白人女性を対照群とするオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)値を報告し評価した。また、地域ごとの試験のサブグループ解析も行った。白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は、新生児死亡・死亡リスクは2倍 20の高所得国と上位中所得国からの51試験、妊娠219万8,655例が、今回のIPDメタ解析の包含基準を満たした。 新生児死亡のリスクは、白人女性の産児と比べて黒人女性の産児は2倍高かった(OR:2.00、95%CI:1.44~2.78)。死産も同様であり(2.16、1.46~3.19)、また早産のリスク(1.65、1.46~1.88)、SGA児のリスク(1.39、1.13~1.72)も高かった。 ヒスパニック系女性の産児は、白人女性の産児と比べて新生児死亡リスクが3倍高かった(OR:3.34、95%CI:2.77~4.02)。南アジア系女性の産児は早産(1.26、1.07~1.48)、SGA児(1.61、1.32~1.95)のリスクが高かった。人種・民族性の早産およびSGA児への影響は地域による差異はみられなかった。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、抗OX40抗体rocatinlimabの効果/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)の成人患者に対し、開発中のヒト型抗OX40モノクローナル抗体rocatinlimabは、プラセボと比較して症状スコアの有意な改善を示し、投与終了後もほとんどの患者で改善が維持された。忍容性は良好であった。米国・マウント・サイナイ・アイカーン医科大学のEmma Guttman-Yassky氏らが国際多施設第IIb相二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2022年12月9日号掲載の報告。4用量設定で対プラセボの有効性と安全性を評価 試験は、中等症~重症AD成人患者におけるrocatinlimabの有効性と安全性を評価することを目的とし、米国、カナダ、日本、ドイツの65の2次または3次医療センターで行われた。試験適格は、ADが確認された(American Academy of Dermatology Consensus Criteriaまたは各国診断基準による)中等症~重症の患者。重症度はEczema Area and Severity Index(EASI)スコア16超、検証済みInvestigator's Global Assessment for Atopic Dermatitisスコア3(中等症)または4(重症)で定義し、スクリーニングとベースラインにおいて皮疹が体表面積の10%以上にみられ、局所治療では効果不十分または局所治療が不適当の治療歴(1年以内)がある患者とした。 適格患者は二重盲検下で無作為に5群に割り付けられ(1対1対1対1対1)、rocatinlimabを4週ごと(150mgまたは600mg)もしくは2週ごと(300mgまたは600mg)あるいはプラセボの皮下投与を18週目まで受けた(最終投与は16週目)。被験者は18週時点で、18週間の延長試験(18~36週目)に組み込まれ実薬が投与された(rocatinlimab群に割り付けられていた被験者は同じ用量を、プラセボ群に割り付けられていた被験者は2週ごと600mgを投与)。さらに、投与中止後に20週間のフォローアップを受けた。 主要エンドポイントは、16週時点で評価したEASIスコアのベースラインからの変化率(%)。EASIスコアは延長試験期間、フォローアップ中にも評価した。評価対象は、無作為化を受け試験薬を投与され、ベースライン後(16週時点またはそれ以前で)EASIスコアが得られた全無作為化患者とした。 安全性は、無作為化を受け試験薬を投与された全患者を対象に評価(無作為に割り付けられた試験群で解析)した。16週時のEASIスコアの変化率、プラセボ群-15.0%、rocatinlimab群-61.1~-48.3% 2018年10月22日~2019年10月21日に、274例(女性114例[42%]、男性160例[58%]、平均年齢38.0歳[SD 14.5])がrocatinlimab群(217例[79%])またはプラセボ群(57例[21%])に無作為に割り付けられた。 ベースラインから16週のEASIスコアの最小二乗平均%変化は、プラセボ群(-15.0%[95%信頼区間[CI]:-28.6~-1.4])と比較して、rocatinlimab全用量群で有意に低かった。rocatinlimab各用量群の同変化率は、4週ごと150mg投与群-48.3%(-62.2~-34.0、p=0.0003)、4週ごと600mg投与群-49.7%(-64.3~-35.2、p=0.0002)、2週ごと300mg投与群-61.1%(-75.2~-47.0、p<0.0001)、2週ごと600mg投与群-57.4%(-71.3~-43.4、p<0.0001)。 二重盲検試験期間中にrocatinlimab群で最も一般的にみられた有害事象(rocatinlimab全投与群の患者の5%以上でプラゼボ群よりも一般的にみられた有害事象)は、発熱(36例[17%])、鼻咽頭炎(30例[14%])、悪寒(24例[11%])、頭痛(19例[9%])、アフタ性潰瘍(15例[7%])、悪心(13例[6%])であった。死亡例はなかった。

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貼付薬承認とgantenerumabの試験結果【コロナ時代の認知症診療】第22回

ドネペジルの貼付薬、使いどころは筆者は、コリンエステラーゼ阻害薬(ChE-I)の貼付薬を使うことが少なくない。ことに嚥下障害のある人、多剤・多量処方の人などではありがたい。また食欲不振の人で食欲が増すことを時に経験する。3種類のChE-Iのうち、リバスチグミンだけは貼付薬として流通している。本家のドネペジルでも以前から貼付薬開発の話があったが、容易でないという噂は前から聞いていた。この11月、帝國製薬のドネペジルを成分とする貼付薬であるアリドネパッチ27.5mgと55mgが承認された。適応は、アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制とされる。資料によれば、「通常、軽度~中等度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、1日1回27.5mgを貼付する。高度のアルツハイマー型認知症患者にはドネペジルとして、27.5mgで4週間以上経過後、55mgに増量する。なお、症状により1日1回27.5mgに減量できる。本剤は背部、上腕部、胸部のいずれかの正常で健康な皮膚に貼付し、24時間毎に貼り替える」とされる1)。本剤の登場で治療の選択肢が増すことはありがたい。やはり嚥下障害のある人、多剤・多量処方の人がターゲットだろう。筆者は、心密かに、「食欲に悪影響しないドネペジル張り薬」であって欲しいと期待している。というのはリバスチグミン治験に関する強い思い出があるからだ。この薬は、最初は飲み薬として試された。ところが胃腸症状と食欲不振が実に多くの患者で認められた。これを克服すべく貼付薬にリフォームしてなされた2回目の治験が成功した。筆者はいずれの治験にも参加したが、びっくりしたのは、食欲がむしろ改善するという効果が少なからぬ例で見られたことである。同じ成分の薬で、経口か皮膚吸収かで反対の効果なんて! という予想外の経験をしたわけだ。gantenerumabの試験結果をどう読み解く?さてこの数年、世界レベルの大きな治験がなされ、有力な疾患修飾薬として期待されていたのがgantenerumabであった。2022年11月、MCIと早期アルツハイマー病患者を対象にIgG1 mabである本剤の効果を評価したGRADUATE I試験、GRADUATE II試験の結果が発表された2)。両試験とも臨床症状の悪化抑制を検証した主要評価項目で有意差が得られなかった。この主要評価項目とは116週時点のCDR-SB(Clinical Dementia Rating-Sum of Boxes)のベースラインスコアからの変化量である。CDR-SBでは、記憶、見当識、判断力と問題解決、地域社会活動、家庭生活および趣味、介護状況を含む6つの領域について、認知機能と日常生活能を評価されたが、有意な効果が認められなかった。さらに、アミロイドβの除去レベルは想定より低かった。なお本剤の忍容性は、皮下による投与を含め、良好であった。実薬群において、浮腫または滲出液を伴うARIA-Eの発生は25%にみられたが、ほとんどが無症候性であり、投与の中断に至った例は少数であった。以上の結果は、副作用は少なかったが、効果も得られなかったと要約される。これらにより本剤の開発は中止になった。さてlecanemabに続くかと期待されたこのgantenerumabの失敗があっても、これからは疾患修飾薬の治験結果の発表・申請が続々となされるであろう。そこで承認されたとしても、今後の課題は少なくない。とくに重要と考えられるのは以下である。1)薬価と保険収載の有無、2)適応となるアルツハイマー病患者の特性、3)新薬が効く者・効かぬ者(レスポンダーか否か)の投与前判断が挙げられる。1)については、以前にも書いたが、保険収載にならず、費用が噂される年間数百万円であるのなら、新薬は多くの患者さんにとって福音とはならない。2)については若年性、遺伝性、初期・前駆期が基本である。しかしこの3項目に絞っても、投与要件の選び方によっては、数十万人の患者さんが投与対象になるかもしれない。となると国家財政にさえ少なからぬ影響を与えると役所側が考える可能性もある。3)が、臨床家にとって今後の最大の責務になるだろう。経験的にアミロイドPETや遺伝性の有無、発症年齢、認知機能テストの成績などと治療効果が相関するわけではない。それだけにエビデンスある予測の実現は容易ではない。おわりに、最近の新薬開発では、これまできわめて低いとされた脳血管関門(BBB)通過率をいかにして高めるかが大きなポイントだと聞く。ここが改善されたら、薬剤製造コストは下がり治療効率は上がって、これらの問題の克服につながるのではと期待される。参考1)厚生労働省「令和4年11月25日医薬品第一部会 事後ブリーフィング資料」2)Roche discontinues clinical trials of gantenerumab, after GRADUATE studies fail to meet their primary endpoints / Alzheimer Europe

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2022年のプラクティスチェンジ【Oncology主要トピックス2022 泌尿器がん編】【Oncologyインタビュー】第42回

2022年に発表、論文化された泌尿器がんの重要トピックを国立がん研究センター東病院 腫瘍内科 近藤千紘氏が一挙に解説。今年の泌尿器がんにおけるプラクティスチェンジの要点がわかる。2022年のプラクティスチェンジ進行腎がんにおける標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の併用療法およびICIと血管新生阻害チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の併用療法が主流になっている。2022年2月に、4種類目のICI+TKI療法である、ペムブロリズマブ+レンバチニブが適応承認となり、日常診療で用いられるようになった。この試験結果で、これまでの標準治療であったスニチニブと比較を行ったICI+TKI療法はすべて主要評価項目を達成したことになり、プラクティスチェンジとなったと結論付けられる。【CLEAR試験:307/KEYNOTE-581試験】また、腎がん領域では初となる術後薬物療法のペムブロリズマブが8月24日に保険適応を取得した。腎がんの術後薬物療法の開発は、TKIやmTOR阻害薬でこれまで評価されてきた。これらの薬剤は長期投与に伴う有害事象が問題となり、減量、中止をやむなくされることもあり、主要評価項目の無再発生存割合 (DFS)の延長は達成できても全生存割合 (OS)の改善までは示されず、各国で適応を取得するまでには至らなかった。ペムブロリズマブは、ICIで術後薬物療法の意義を検証した初の第III相試験であったが、DFSの延長という主要評価項目の達成のみで、保険適応を取得した。TKI単独療法と異なり、有害事象が比較的軽度であったことや、対象となる患者選択に成功した試験の結果を反映していると考えられる。【KEYNOTE-564試験】尿路上皮がんにおいて、ICIによる術後薬物療法として初となるニボルマブの保険適応が3月28日に承認された。尿路上皮がんのICIは、進行再発の2次治療としてペムブロリズマブが、1次治療のプラチナ併用化学療法後の維持療法としてアベルマブがすでに標準治療となっており、今回の保険承認は、さらに前の段階である術後における再発抑制効果を示したという薬物療法の歴史的な進歩の結果といえる。【CheckMate 274試験】非筋層浸潤性膀胱がんの術前化学療法では、長らくMVAC療法が無治療に比べてOSを改善する治療のエビデンスがあるとされてきた。しかしながら、毒性の強さには問題があることから、進行再発症例にて用いられるゲムシタビン+シスプラチン (GC)療法を用いることもガイドライン上では勧められてきた。進行再発症例におけるエビデンスとして、dose-dense MVAC療法は、MVAC療法に比べて安全性が高まり、病理学的奏効(pCR)割合が増加する治療法として注目され、術前化学療法での役割を期待された。2022年3月にJournal of Clinical Oncologyに出版された、筋層非浸潤性膀胱がんにおける術前療法としてのdose-dense MVAC(dd-MVAC)療法とGC療法のランダム化比較第III相試験の結果は、術前化学療法を考えさせられる重要なエビデンスであった。【VESPER試験:GETUG/AFU V05試験】【CLEAR試験; 307/KEYNOTE-581試験】1)2)CLEAR試験は、進行淡明細胞腎細胞がん患者を対象にレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法(Len+Pem)および、レンバチニブ+エベロリムス併用療法(Len+Eve)をスニチニブ単剤(Sun)と比較するランダム化比較第III相試験であり、1069例の対象症例が各群に1:1:1でランダム化割付された。主要評価項目は独立中央画像判定による無増悪生存期間(PFS)であり、2つの試験治療群のSunに対するハザード比(HR)は0.714と設定されていた。Len+Pemには90%の検出力および両側α=0.045を、Len+Eveには70%の検出力および両側α=0.0049で統計設定された。3群に割り付けられた患者背景に偏りはなく、Len+Pem群のIMDC予後因子分類ではFavorable/Intermediate/Poor riskに27.0/63.9/9.0%が含まれていた。PFS中央値は、Len+Pem群は23.9ヵ月、Len+Eve群は14.7ヵ月、Sun群は9.2ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.39(95%信頼区間[CI]:0.32~0.49、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは0.65(95%CI:0.53~0.80、p<0.001)であり、いずれも優越性が示された。Key Secondary endpointのOSにもαが配分されており、中間解析時点においてLen+Pem群でα=0.0227、Len+Eve群でα=0.0320が優越性の基準とされていた。観察期間中央値26.6ヵ月の時点のOS中央値は、Len+Pem群 到達せず、Len+Eve群 到達せず、Sun群 30.7ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.66 (95%CI:0.49~0.88、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは1.15(95% CI:0.88~1.50、p<0.30)であり、Len+Pem群のみ優越性が示された。客観的奏効割合(ORR)は、Len+Pem群で71.0%、Sun群で36.1%であり、奏効期間中央値はそれぞれ25.8ヵ月および14.6ヵ月であった。安全性において、Grade3以上の重篤な有害事象がLen+Pem群は82.4%、Sun群は71.8%であったが、プレドニゾロン換算で40mg以上のステロイド使用は15%と比較的少ない印象の結果となっている。【KEYNOTE-564試験】3)4)この試験は、腎がん術後で再発ハイリスクの定義にあてはまる症例を、ペムブロリズマブあるいはプラセボで1年間治療を行い、主要評価項目はDFS、HR:0.67を片側α=0.025、検出力95%で検証する統計設定であった。また1回目の中間解析において、α=0.0114を消費することとしていた。報告は、1回目の中間解析、観察期間中央値24.1ヵ月時点のものである。994人の患者が2群にランダムに割り付けられた。再発ハイリスクの定義は、T2で核異型度4あるいは肉腫様分化あり、T3以上、N1、転移巣切除後(M1 NED)であったが、実際のペムブロリズマブ群の患者背景はintermediate-to-highリスクのT2-3N0M0が86.1%、high riskのT4あるいはN1が8.1%、M1 NEDが5.8%であり、プラセボ群もほぼ同等の割合であった。DFSは両群ともに中央値に到達しなかったが、HR:0.68(95%CI:0.53~0.87、p=0.002)であり、ペムブロリズマブはプラセボと比較し再発のリスクを32%減少した。OSの結果はイベント数が少なく比較は困難であった。安全性に関し、重篤な有害事象はペムブロリズマブ群で32.4%、プラセボ群で17.7%とペムブロリズマブ群で多く認めたが、死亡はそれぞれ0.4%と0.2%と大きな差はなかった。なお、観察期間中央値30.1ヵ月時点のアップデートの結果が報告されたが、intermediate-to-highリスクのHRは0.68(95%CI:0.52~0.89)、highリスクのHRは0.60(95%CI:0.33~1.10)、M1 NEDのHRは0.28(95%CI:0.12~0.66)であり、いずれのリスクでも効果は十分ありそうだが、とくにM1 NEDにおいては治療の意義が大きいことが示唆される結果であった。【CheckMate 274試験】5)この試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後薬物療法として、ニボルマブとプラセボを比較したランダム化第III相試験であり、主要評価項目をDFSとし全体集団とPD-L1陽性(腫瘍のPD-L1発現;TPSで1%以上と定義)集団の両者に設定した。全体集団において、87%の検出力で両側α=0.025としHR:0.72、PD-L1陽性集団において、80%の検出力で両側α=0.025としHR:0.61を検証する統計設定となっていた。1回目の中間解析で全体集団ではα=0.01784、PD-L1陽性集団ではα=0.01282を消費することがあらかじめ決められていた。1回目の中間解析において、709例の患者がランダムに2群に割り付けられ、PD-L1陽性は282例であった。観察期間中央値は20.9ヵ月の時点であったが、全体集団のDFS中央値はニボルマブ群で20.8ヵ月、プラセボ群で10.8ヵ月であり、HR:0.70(95%CI:0.55~0.90)、p<0.001であった。またPD-L1陽性集団においては、HR:0.55(98.72%CI:0.35~0.85)、p<0.001と良好な結果を示した。なおOSの結果は現時点で報告はない。安全性においては、重篤な有害事象はニボルマブ群で42.7%、プラセボ群で36.8%であったが、新たなシグナルは認められなかった。本試験は、術後のニボルマブを検証した試験であったが、これまでの術後治療の試験にはない広い対象症例を含んでいた。シスプラチンに適格となる筋層浸潤膀胱がんでは術前化学療法(NAC)を行うことが標準であるため、このような集団では術後にypT2以上の残存病変がある場合に本試験に適格となった。一方シスプラチンに不適格となる筋層浸潤膀胱がんでは、NACのエビデンスはないため手術をまず行い、術後にカルボプラチンを含む化学療法を行うことを検討する。また上部尿路がんは術前の組織診断や病期診断が困難であるため、まず手術を選択することが多い。これらの手術先行症例においては、pT3以上であった場合にこの試験の対象となった。日常診療において、ニボルマブを必要な患者に届けるためには、術前からの治療計画を医療者だけでなく患者にも共有し、適切に治療を進めることが大切と思われる。【VESPER試験; GETUG/AFU V05試験】6)7)フランスで行われた周術期化学療法のランダム化比較第III相試験である。転移のない筋層浸潤性膀胱がんの患者をDose-dense MVAC療法(メトトレキサート30mg/m2 day1、ビンブラスチン3mg/m2 day2、ドキソルビシン30mg/m2 day2、シスプラチン70mg/m2 day2、G-CSF day3~9、2週ごと)6サイクルと、GC療法(ゲムシタビン1250mg/m2 day1、8、シスプラチン70mg/m2 day1、3週ごと)4サイクルの2群にランダムに割り付け、術前の症例は化学療法後に膀胱全摘術を行い、術後の症例は膀胱全摘後に化学療法を行った。主要評価項目は3年PFSであった。493例がランダム化され、PFS中央値はddMVAC群で64%、GC群で56%、HRは0.77(95%CI:0.57~1.02)、p=0.066であり、ネガティブな結果であった。副次評価項目であるpCR割合は、ddMVAC群で42%、GC群で36%(p=0.20)、OSはimmatureな段階ではあるが、ddMVAC群に良好な傾向(HR:0.74、95%CI:0.47~0.92)を認めていた。安全性では、重篤なものは両群同等であったが、ddMVAC群で多かったのは、貧血と無力症、消化器毒性であった。手術関連の合併症はGC群で20例、ddMVAC群で14例であった。NACかAdjuvantかを層別化因子に設定していたが、患者背景はAdjuvant症例においてリンパ節転移陽性がGC群73%、ddMVAC群60%、NAC症例ではcT4がGC群1.8%、ddMVAC群4.1%などと偏りがみられた。3年PFSにおける予後因子の多変量解析において、術前後の選択と化学療法の違いにinteractionがあったことから、Adjuvant症例とNAC症例は区別して検討することが望ましいと判明した。NAC症例においては、3年PFSはddMVAC群で66%、GC群で56%、HR:0.70(95%CI:0.51~0.96)、p=0.025であった。この結果を受けて米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインでは、ddMVAC療法をPreferred regimenに指定した。このレジメンを実際に適用する場合には、本試験に登録された患者背景から、63歳前後(最高でも68歳まで)であることも考慮して十分な副作用対策を講じる必要があると考える。参考1)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.2)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.3)Choueiri TK, Tomczak P, Park SH, et al. Adjuvant Pembrolizumab after Nephrectomy in Renal-Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 385:683.4)Powles T, Tomczak P, Park SH, et al. Pembrolizumab versus placebo as post-nephrectomy adjuvant therapy for clear cell renal cell carcinoma (KEYNOTE-564): 30-month follow-up analysis of a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol 2022,23:1133.5)Bajorin DF, Witjes JA, Gschwend JE, et al. Adjuvant Nivolumab versus Placebo in Muscle-Invasive Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:2102.6)Pfister C, Gravis G, Fléchon A, et al. Dose-Dense Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin or Gemcitabine and Cisplatin as Perioperative Chemotherapy for Patients With Nonmetastatic Muscle-Invasive Bladder Cancer: Results of the GETUG-AFU V05 VESPER Trial. J Clin Oncol 2022, 40:2013.7)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Bladder Cancer. Version 2.2022

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維持期うつ病治療の抗うつ薬比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の成人うつ病の治療に対する抗うつ薬の有効性、許容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期の成人うつ病に対する抗うつ薬治療において、妥当な有効性、許容性、忍容性が認められた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。 PubMed、Cochrane Library、Embaseデータベースより、エンリッチメントデザインを用いた二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(非盲検期間中に抗うつ薬治療で安定し、その後、同じ抗うつ薬群またはプラセボ群にランダム化)を検索した。アウトカムは、6ヵ月後の再発率(主要アウトカム、有効性)、すべての原因による治療中止(許容性)、有害事象による治療中止(忍容性)、個々の有害事象発生率とした。リスク比および95%信用区間を算出した。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、20種類の抗うつ薬およびプラセボに関する34件の研究が含まれた。・対象患者数は9,384例(平均年齢:43.80歳、女性の割合:68.10%)であった。・抗うつ薬には、agomelatine、アミトリプチリン、bupropion、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、エスシタロプラム、fluoxetine、フルボキサミン、levomilnacipran、ミルナシプラン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、vilazodone、ボルチオキセチンが含まれた。・6ヵ月後の再発率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、アミトリプチリン、citalopram、desvenlafaxine、デュロキセチン、fluoxetine、フルボキサミン、ミルタザピン、nefazodone、パロキセチン、reboxetine、セルトラリン、tianeptine、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。・すべての原因による治療中止率に関して、プラセボよりも優れていた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであった。ただし、セルトラリンは有害事象による治療中止率が高かった。・プラセボと比較した個々の有害事象発生率については、ベンラファキシンではめまいの発生率が低く、desvenlafaxine、セルトラリン、ボルチオキセチンでは嘔気/嘔吐の発生率が高かった。

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ネガティブな結果を超ポジティブに考える PROMINENT試験【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第55回

第55回 ネガティブな結果を超ポジティブに考える PROMINENT試験冠動脈疾患の危険因子の代表である脂質への介入で、最も目覚ましい成果を挙げている薬剤がスタチンです。多くの疫学研究から、中性脂肪(トリグリセライド:TG)は独立した心血管イベントのリスク因子とされます。しかしながら、スタチン治療下でも高TG血症を呈する症例にしばしば遭遇します。このような例での冠動脈疾患の残余リスク低減に、TG低下作用を持つフィブラート系薬であるペマフィブラートの効果を検証するための臨床研究が実施されました。PROMINENT試験と呼ばれ、十分量のスタチン治療下で、中性脂肪が高く、かつHDLコレステロールが低い2型糖尿病患者を対象に、この薬剤の心血管イベントの抑制作用を確認するデザインでした。2022年11月に米国シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会で結果が発表され、その詳細は臨床系の医学雑誌の最高峰であるNEJM誌に掲載されました(N Engl J Med. 2022;387:1923-1934)。この研究には日本人医師の多くが関心をもっていました。その理由は、本研究は日本人の患者を含む24ヵ国876施設から10,497例が登録されたグローバル試験であるだけでなく、本研究の鍵となるペマフィブラートが日本企業で創製され、その企業の研究開発組織からの資金提供により実施されたからです。つまり日本発の薬剤が世界に勝負を挑んだ大一番であったのです。残念!結果は期待どおりではありませんでした。ペマフィブラート群とプラセボ群のイベント発生率曲線は、観察期間中ほぼ一貫して重なっていました。事前設定されたサブグループ解析も、両群に有意差はありませんでした。つまり、心血管イベントの発生率の抑制作用は証明されなかったのです。PROMINENT試験の結果は、「negative results(否定的な結果)」でした。科学や学問の世界、とくに医療界では否定的な結果が公表されない傾向にあることが問題になっています。膨大なコストを要する臨床試験の実施には、利益を追求する企業として期待する結果があったと推察します。否定的な結果となったPROMINENT試験の結果を、公開することに同意した当該企業の高い倫理観と見識に敬意を表します。また、その否定的な結果を掲載するからこそNEJM誌は一流誌と言われるのだと納得します。否定的な結果が公表されにくい理由を考えてみましょう。単純にいえば、派手で注目を浴びるストーリーが欲しいという人間の根幹的な欲望があります。論文を掲載する側にも有効性を示すポジティブな論文を好むというバイアスがあります。ポジティブな論文のほうが被引用回数を稼ぐことも期待され、インパクトファクター上昇にも寄与します。否定的な研究結果はポジティブな結果よりも公表される可能性が低く、公表された論文を集めるとポジティブな結果に偏りやすいことを出版バイアスと言います。否定的な結果が公表されにくく、ポジティブな研究結果が多くなることによって、メタ解析による分析の結果が肯定的なほうへ偏るといった影響が出ます。メタ解析の結果は、EBMにおいて最も質の高い根拠とされ、診療ガイドラインの策定にも大きな影響を与えます。そのメタ解析の結果に誤認があれば、大勢の健康に影響を与えることに繋がります。PROMINENT試験の否定的な結果についても十分な考察が必要です。研究のベースライン時で95.7%がスタチンを投与されています。さらに、ACE阻害薬やARBの高率な使用や、GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬なども影響を与えていることでしょう。心血管イベント抑制作用がすでに確認された複数の薬剤が使用可能な現状で、中性脂肪への介入の上乗せ効果を獲得する余地があるのかどうかも議論すべきでしょう。観察研究と介入研究の違いもあります。観察研究では、中性脂肪の高い人にイベントが多く、中性脂肪の低い人にイベントが少ないことは事実かもしれません。しかし、高い中性脂肪を薬剤介入で低下させることにより、イベントを抑制することが可能かどうかは別の問題なのかもしれません。人は、人生においても辛くネガティブな経験に遭遇しながらも、それに対処しながら生きているものです。企業の運営や経営も人生になぞらえることができます。これが法人という言葉の由縁です。人も企業も、ネガティブな経験に苦しむだけでなく、それを乗り越え肯定的な意味に昇華させていくことが必要です。科学や医学の発展を望むならば、否定的な結果が論文として公表され、さらにそれが活かされるシステムが必要です。否定的な試験には、より良い新たな臨床試験を立案するためなど重要な存在意義があるからです。今回、PROMINENT試験の結果は残念ながら否定的な結果でした。しかし、その臨床研究に取り組む姿勢や志には共感するものがあります。エールを送りたい気持ちです。製薬企業の利益の実現のためだけではなく、人類がより健康になることを目指して活動していることが伝わってきます。今後も解決すべき健康上の課題は多く残されています。今も心筋梗塞で命を落とす患者さんが存在する残念な事実が、その証左です。さあ、ポジティブに前に進みましょう!

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重症化リスク因子を問わない軽症~中等症の新型コロナ治療薬「ゾコーバ錠125mg」【下平博士のDIノート】第112回

重症化リスク因子を問わない軽症~中等症の新型コロナ治療薬「ゾコーバ錠125mg」今回は、抗SARS-CoV-2剤「エンシトレルビル フマル酸錠(商品名:ゾコーバ錠125mg、製造販売元:塩野義製薬)」を紹介します。本剤は、重症化リスク因子の有無に関わらない軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症患者を対象とした初めての抗ウイルス薬であり、発熱、鼻水、喉の痛み、咳などの症状が消失するまでの期間を短くすることが期待されています。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症の適応で、2022年11月22日に緊急承認制度に基づく製造販売承認を取得しました。なお、重症度の高いSARS-CoV-2による感染症患者に対する有効性は検討されていません。<用法・用量>通常、12歳以上の小児および成人にはエンシトレルビルとして1日目は375mgを、2~5日目は125mgを1日1回経口投与します。SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始する必要があります。<安全性>国際共同第IIa相、第IIb相、第III相試験(T1221試験)において、5%以上に認められた副作用は、HDLコレステロール低下(16.6%)でした。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ウイルスの複製に必要な酵素を阻害することで、新型コロナウイルス感染症の症状を緩和します。発熱、鼻水、喉の痛み、咳などの症状が消失するまでの期間を短くすることが期待されています。2.初日は1日1回3錠を服用し、2~5日目は1日1回1錠を服用します。3.体調が良くなっても自己判断で中止せず、指示通りに服用を続けてください。4.飲み合わせに注意が必要な薬剤が多数ありますので、服用している薬剤や健康食品、サプリメント、嗜好品をすべて申告してください。5.妊婦または妊娠している可能性がある人はこの薬を使用することはできません。<Shimo's eyes>新型コロナウイルス感染症の治療で、重症化リスク因子のない軽症~中等症患者を対象とした初めての抗ウイルス薬が登場しました。本剤はタンパク質合成過程における3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、新型コロナウイルスの増殖を抑制します。この作用機序は既存類薬のニルマトレルビルと同様です。投与対象は、高熱、強い咳症状、強い咽頭痛などの臨床症状があり、重症度の高くない患者(おおむね中等症II未満)で、症状発現から遅くとも72時間以内に投与を開始します。初日は3錠を1日1回投与し、2~5日目は1錠を1日1回投与します。第II/III試験(T1221試験)において、軽症~中等症のSARS-CoV-2感染者に本剤を5日間経口投与したとき、オミクロン株に特徴的な5症状(1.倦怠感または疲労感、2.熱っぽさまたは発熱、3.鼻水または鼻づまり、4.喉の痛み、5.咳)が快復するまでの時間の中央値は、プラセボ群192.2時間に対し本剤群では167.9時間と有意差をもって約1日短縮しました。また、投与4日目のウイルス量は本剤群でプラセボ群に比べて有意に減少しました。本剤はCYP3Aの基質であり、強いCYP3A阻害作用を有するとともに、P-gp、BCRP、OATP1B1およびOATP1B3阻害作用も有します。このため、併用禁忌薬が多いので、服薬中のすべての薬剤を確認することが必要です。また、本剤で治療中に新たに他の薬剤を服用する場合、事前に相談するよう患者さんに伝えましょう。流通については、安定的な供給が難しいことから、パキロビッドやラゲブリオの一般流通前と同様に、当面の間は厚生労働省が所有した上で、指定された医療機関または薬局に無償で配分されます。当初はパキロビッドの処方実績がある医療機関・薬局に限定されていましたが、2022年12月15日よりその限定が撤廃され、対象が拡大されました。ゾコーバ登録センターに登録し、同センターを通じて配分依頼を行い、患者に交付した後は投与実績を入力します。処方に際しては患者の同意書が必要であり、院外処方に際しては、対応薬局に処方箋とともに記入済みの「適格性情報チェックリスト」を送付する必要があります。本剤の提供時は、自宅療養や宿泊療養の患者さんが来局しなくても済むように「患者の居所への配送・持参」が基本で、患者さんが薬局を訪れることは原則禁止となります。患者さんの過度な期待から安易な不適正使用が行われないように、薬剤師は情報提供をしっかりと行うとともに、併用禁忌薬が多いため安全性監視も行っていきましょう。なお、包装単位は、1箱28錠(14錠PTPシートが2枚)で4人分です。薬価収載されて一般流通する際には1人分の包装単位も販売されることが期待されます。

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英語で「私なら~します」は?【1分★医療英語】第59回

第59回 英語で「私なら~します」は?What do you think is the best next step in this case?(この症例で、次のステップとして何が最善だと思いますか?)I would order an abdominal CT.(私なら、腹部CTをオーダーします)《例文1》I would start empiric antibiotics.(私なら、経験的な抗菌薬治療を開始します)《例文2》What medication would you choose?(あなたなら、どの薬を選択しますか?)《解説》今回ご紹介するのは、「私なら」「あなたなら」という仮定法を用いた表現です。「仮定法」というと、“if”を使うイメージかもしれませんが、日常会話では、“if”を使わずに仮定法が使われることがよくあります。“I would order an abdominal CT.”という文頭の文章の前に、“If I were you~”(もし私があなたなら)が省略されている、と考えるとわかりやすいかもしれません。結果として、「私なら、腹部CTをオーダーします」という意味になります。ここで注意が必要なのは、“I will do it.”と“I would do it.”では、「音は似ていても、意味は大きく異なる」ということです。たとえば、指導医との会話で、指導医が“I will do it.”と言った場合、それをやるのは指導医であり、下級医は任せておけばよい状況です。一方で、指導医が“I would do it.”と言ったのであれば、指導医は「私なら、それをやる」と言っているだけで実際に指導医がやるわけではなく、上下関係の中での発言であれば、少し丁寧に「それをやってください」と言っているのに近く、命令に近いニュアンスです。実は私も渡米したばかりの頃に、この聞き間違いをしたことがあります。指導医が“I would order…”と言っていたのを“I will order…”と勘違いして、「指導医がやってくれるのか」と思い込んでいたら、後で、「やっておいてと言ったのに、なんでオーダーしていないの?」と怒られたのです。その時、“I would…”の恐ろしさを知りました。一語の違いで意味が180度変わってしまうのです。“if”が登場しない仮定法、聞き間違いをするとこんな風に大きく意味が変わってしまうので、ぜひ注意して聞くようにしてください。講師紹介

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第143回 運動意欲を腸内細菌が支える

病気の数々を防ぐ最も効果的な習慣である運動の意欲向上にどうやら腸内細菌が一役買っていることがマウス実験で示されました1)。先立つ研究で腸の微生物が筋肉や心肺機能、さらには脳の生理に関わることが知られています2)。ペンシルバニア大学の微生物学者Christoph Thaiss氏等はそれらの成果を紡ぎ、筋肉・心肺機能・脳を含むより多くの関わりによって生み出されるであろう運動能力への腸内微生物の貢献を調べることを試みました。Thaiss氏等はマウス199匹を用意し、抗生物質いくつかを使ってそれらマウスの腸内細菌を減らすか排除したときの運動性能を2つの手段を使って調べました2)。1つはしばらくの間走ることを強いて持久力を調べるトレッドミルで、もう1つはいつでも好きなだけ走ることができる回し車(wheel)です。どのマウスも飼育カゴの中で同様に自由に動き回ることが可能でしたが、腸内細菌が減ったマウスは腸内細菌がまともなマウスに比べてトレッドミル運動で疲れやすく、運動意欲が乏しくて回し車をあまり使いませんでした。行動を定着させる神経伝達物質・ドーパミンの生成に携わる脳の線条体神経の遺伝子の発現を調べたところ、運動の最中に発現するそれら遺伝子が腸微生物を欠くマウスでは鈍っていました。それらの神経を阻害して運動中のドーパミン生成を妨げたときの運動能力は腸微生物を制限するか完全に除去したときと同じように劣りました。以上の結果は脳でのドーパミン生成が運動意欲に確かに貢献しており、腸の微生物の構成がその調節に何らかの役割を担っていることを意味します。次の疑問は腸内細菌と脳のドーパミンを関連づける仕組みです。その解明のために胃腸と脳をつなぐ神経を阻害してトレッドミルと回し車の実験を再び行いました。その結果、腸-脳連結神経が遮断されていると腸微生物はまっとうでも腸微生物が乏しいマウスと同様の運動低下が生じ、マウスがどれだけ運動するかはその神経の刺激にかかっていると示唆されました。何がその神経を刺激するのかが次に調べられ、2つの細菌・Eubacterium rectale(ユウバクテリウム レクターレ)とCoprococcus eutactus(コプロコッカス ユウタクタス)が生み出す代謝物・脂肪酸アミド(FAA)から作られる神経伝達物質・内在性カンナビノイドが運動中に胃腸神経の受容体を刺激し、脳のドーパミン生成に至ることが判明しました。その腸-脳経路を刺激するとマウスはより走れるようになり、かたや末梢の内在性カンナビノイド受容体の阻害、脊髄の神経除去、ドーパミン阻害は腸微生物排除と同様にマウスをより走れなくしました。運動中の腸の細菌の働きのおかげで運動する意欲がより高まって運動がより身につくことを今回の結果は裏付けました。これまでの研究で運動能力が高いマウスは痛みの感じ難さを示すランナーズハイがより強烈であることが示されており、腸内細菌はよく知られるその高揚感にも携わっているかもしれません。今回のマウス実験で示されたのと同じ腸-脳経路がヒトでも存在するかどうかを研究チームは次に調べる予定です。ヒトでの研究が進めば巷の人に走る習慣を身に付けさせたり一流アスリートの運動能力を最適化する安上がりで安全な食事ベースの手段が実現するかもしれません。また、依存やうつ病で支障を来した気分や意欲の回復手段を生み出せる可能性もあります3)。参考1)Dohnalova L, et al. Nature. 2022 Dec 14. [Epub ahead of print]2)Mice With a Healthy Gut Microbiome Are More Motivated to Exercise / TheScientist3)Gut microbes can boost the motivation to exercise, Penn Medicine study finds / Eurekalert

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慢性片頭痛と睡眠の質との関係

 最近の研究によると、片頭痛患者では睡眠に関する問題が高頻度に発生し、慢性的な睡眠不足に陥ることが示唆されているが、慢性片頭痛が睡眠の質に及ぼす影響に関するメカニズムは明らかになっていない。トルコ・Yozgat Bozok UniversityのHikmet Sacmaci氏らは、慢性片頭痛患者で一般的に報告される睡眠障害を分析し、睡眠の質に対する慢性片頭痛の影響を明らかにするため、本研究を行った。その結果、慢性片頭痛患者では睡眠障害が一般的に認められ、睡眠の質と片頭痛の慢性化とは相互に関連していることが示唆された。Nature and Science of Sleep誌2022年10月6日号の報告。 2022年3月までに公開された慢性片頭痛と睡眠の質に関する文献を包括的にレビューした。臨床試験、観察研究、20件以上のケースシリーズを対象に含めた。2人のレビュアーおよび1人のスーパーバイザーにより、すべての検索された文献のタイトルおよびアブストラクトが事前に定義した包括基準や除外基準を満たしているかをレビューした。慢性片頭痛、睡眠、不眠症、睡眠の質、睡眠ポリグラフ、ピッツバーグ睡眠質問票を検索キーワードとし、1983~2022年に英語で報告された慢性片頭痛と睡眠の質に関するランダム化比較試験およびオープンスタディをPubMedより検索した。 主な結果は以下のとおり。・関連研究として535件が抽出されたが、そのうち455件は包括基準を満たしていなかったため、レビューから除外した。・残りの研究のうち、睡眠の質と片頭痛との関連をレビューした臨床研究36件が特定され、これらを本レビューに含めた。・睡眠不足と片頭痛の慢性化は、他の併存疾患や概日リズム調節不全と相互に関連しており、革新的な治療方法により睡眠不足と片頭痛の両方を緩和する可能性が示唆された。・高頻度の片頭痛発作を伴う併存疾患を有する患者では、睡眠の質を低下させる可能性が示唆された。・不適切な疼痛に対するプロセスは睡眠を悪化させ、睡眠の質の不良も片頭痛に悪影響を及ぼす。・片頭痛発作の悪化による睡眠障害は、QOL、労働力の低下、経済的負担を引き起こすと考えられる。

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capivasertib+フルベストラント、CDK4/6治療歴によらずAI耐性進行乳がんでPFS延長(CAPItello-291)/SABCS2022

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のエスロトゲン受容体(ER)陽性/HER2陰性進行・再発(ABC)乳がん患者において、AKT阻害薬capivasertib+フルベストラントが、プラセボ+フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を約2倍に延長した。日本を含むグローバル第III相CAPItello-291試験の結果を、英国・王立マーズデン病院のNicholas Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で発表した。なお、本療法については第II相FAKTION試験で閉経後女性患者において全生存期間(OS)とPFSを有意に改善したことが報告されているが、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者は含まれていなかった。・対象:閉経前/後のER+/HER-の進行・再発乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、ABCに対する治療歴として≦2ラインの内分泌療法・≦1ラインの化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも可、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴ありは不可、HbA1c<8.0%) ・試験群(Capi群):capivasertib 400mgを4日間投与3日間休薬で1日2回経口投与+フルベストラント500mg 355例・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびAKT経路に変異(≧1のPIK3CA、AKT1、PTEN遺伝子変異)を有する患者におけるPFS[主要副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異を有する患者におけるOS、奏効率(ORR)[層別化因子]肝転移の有無、CDK4/6阻害薬治療歴の有無、地域 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はCapi群59歳vs.プラセボ群58歳、女性が両群とも約99%を占め、閉経後患者は81% vs.74%、アジア人が両群とも約27%、肝転移ありが44% vs.43%だった。・前治療歴は1ラインのABCに対する内分泌療法歴ありが81% vs.71%、CDK4/6阻害薬治療歴ありが両群とも約69%だった。また術前/術後化学療法歴ありが51% vs.48%だった。・AKT経路に変異を有する患者は44% vs.38%だった。・全体集団におけるPFS中央値は、プラセボ群3.6ヵ月に対しCapi群7.2ヵ月(ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.51~0.71、両側p<0.001)となり、Capi群で有意に改善した。・AKT経路に変異を有する患者におけるPFS中央値は、プラセボ群3.1ヵ月に対しCapi群7.3ヵ月(HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、両側p<0.001)となり、Capi群で有意に改善した。・サブグループ別にPFSをみると、肝転移の有無およびCDK4/6阻害薬治療歴の有無を問わず、Capi群で改善がみられた。・全体集団におけるORRはプラセボ群12.2%に対しCapi群22.9%(オッズ比[OR]:2.19、95%CI:1.42~3.36)だった。・AKT経路に変異を有する患者におけるORRはプラセボ群9.7%に対しCapi群28.8%(OR:3.93、95%CI:1.93~8.04)だった。・immatureなデータではあるが、全体集団におけるOSのHRは0.74(95%CI:0.56~0.98)、AKT経路に変異を有する患者におけるOSのHRは0.69(95%CI:0.45~1.05)だった。・Capi群で多く報告されたGrade3以上の有害事象は、下痢(9.3% vs.0.3%)、斑状丘疹(6.2% vs.0%)、発疹(5.4% vs.0.3%)、高血糖(2.3% vs.0.3%)だった。治療中止につながる有害事象の発生は、13.0% vs.2.3%だった。 Turner氏は「capivasertib+フルベストラント併用療法は、内分泌療法ベースのレジメンで治療し進行したホルモン受容体陽性進行・再発乳がん患者における将来の治療オプションになる可能性がある」と結論付けた。OSフォローアップは進行中である。

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ビメキズマブ、乾癬性関節炎の症状を改善/Lancet

 腫瘍壊死因子α(TNFα)阻害薬の効果が不十分または不耐の乾癬性関節炎患者の治療において、ビメキズマブはプラセボと比較して、16週の時点での関節および皮膚の症状の改善効果が有意に優れ、安全性も良好であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoseph F. Merola氏らが実施した「BE COMPLETE試験」で示された。ビメキズマブは、インターロイキン(IL)-17FとIL-17Aの双方を選択的に阻害するヒト化モノクローナルIgG1抗体。IL-17FまたはIL-17Aのいずれかの単独阻害と比較して、in vitroでの炎症性サイトカインの反応をより効果的に抑制することが知られている。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年12月5日号で報告された。11ヵ国のプラセボ対照第III相試験 BE COMPLETE試験は、日本を含む11ヵ国92施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月~2022年2月の期間に、患者の登録が行われた(UCB Pharmaの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、スクリーニングの6ヵ月以上前にClassification Criteria for Psoriatic Arthritisの基準を満たした成人期発症の乾癬性関節炎で、乾癬性関節炎または乾癬の治療として1または2剤のTNFα阻害薬の投与を受けたが、効果不十分か不耐の患者であった。 被験者は、ビメキズマブ(160mg、4週ごと)またはプラセボの皮下投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、16週の時点における米国リウマチ学会(ACR)基準の50%以上の改善(ACR50)を達成した患者の割合とされた。エンドポイントがすべて改善 400例(平均年齢50.5[SD 12.5]歳、女性53%、平均罹患期間9.5[SD 9.3]年)が登録され、ビメキズマブ群に267例、プラセボ群に133例が割り付けられた。体表面積の3%以上が乾癬病変の患者が66%(264例)であった。77%(306例)が1剤のTNFα阻害薬で効果不十分、11%(45例)が2剤で効果不十分、12%(49例)はTNFα阻害薬に不耐だった。 16週時の階層法に基づく統計解析では、主要エンドポイントと副次エンドポイント(4項目)がすべて達成された。 ACR50を達成した患者の割合は、ビメキズマブ群が43%(116/267例)と、プラセボ群の7%(9/133例)に比べ有意に高かった(補正後オッズ比[aOR]:11.1、95%信頼区間[CI]:5.4~23.0、p<0.0001)。 ベースラインで体表面積の3%以上が乾癬病変であった患者における、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)の90%以上の改善(PASI 90)は、ビメキズマブ群が69%(121/176例)の患者で得られ、プラセボ群の7%(6/88例)に比べ有意に良好であった(aOR:30.2、95%CI:12.4~73.9、p<0.0001)。 また、ビメキズマブ群では患者報告による身体機能にも改善が認められ、健康評価質問票機能障害指数(HAQ-DI)とSF-36の身体的側面のQOLサマリースコア(PCS)がプラセボ群に比べ有意に優れた(HAQ-DIのベースラインからの変化量:ビメキズマブ群-0.38 vs.プラセボ群-0.07、SF-36 PCSのベースラインからの変化量:7.3 vs.1.4、いずれもp<0.0001)。 16週までに発現した治療関連有害事象の頻度は、ビメキズマブ群が40%(108/267例)、プラセボ群は33%(44/132例)であった。重篤な有害事象は、ビメキズマブ群の5例(2%)で認められた。重篤または重度の治療関連有害事象による投与中止はみられなかった。ビメキズマブ群で頻度の高い治療関連有害事象は、鼻咽頭炎(10例[4%])、口腔カンジダ症(7例[3%])、上気道感染症(6例[2%])であった。新たな安全性シグナルはみられず、死亡例もなかった。 著者は、「これらの結果は、臨床的に関心が高いサブグループであるTNFα阻害薬で効果不十分または不耐の集団において、ビメキズマブの高い有効性と忍容性を示すものである」とまとめ、「ビメキズマブの治療効果の発現は迅速で、1回投与後の4週目には有効性に関してプラセボとの間に大きな差が認められた。これは、日常生活への影響を軽減するために症状の緩和を優先する患者にとって価値があると考えられる」と指摘している。現在、非盲検下に延長試験が進行中で、これによりビメキズマブの長期的な有効性と安全性の評価が可能になるという。

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高TG血症合併2型糖尿病患者を対象としたRCT研究(ペマフィブラート投与群 vs.対照群)の結果からTGレベルが十分に低下しても心血管イベントの抑制効果に差はみられなかった!―(解説:島田俊夫氏)

 脂質異常症が動脈硬化に悪影響を与えていることは以前から想定されているが、裏付けるエビデンスが乏しい。一方で高LDLコレステロール血症が動脈硬化を促進することは周知の事実となっている。また、コレステロールは細胞膜形成に不可欠な成分であり、ステロイドホルモンや胆汁酸の原料でもある。生命維持に必要不可欠な物質であることを忘れてはならないが、過剰なコレステロール血症の存在は動脈硬化、冠動脈疾患のリスクを増加させることは遍く認識されている。 これまでの多数のスタチンを使った大規模研究でLDLコレステロール値を下げることで、動脈硬化、冠動脈疾患のリスクが下げられることは証明済みである。 しかしながら、糖尿病、メタボ症候群などで高TG血症を随伴することも周知の事実であり、これらの随伴脂質異常症(TG-リッチリポ蛋白、小型高密度リポ蛋白などの増加)の是正が冠動脈疾患や脳血管障害リスク低下に寄与するか否かは定かではない。 今回、タイミングよくNEJM誌2022年11月24日号に掲載された米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAruna D. Pradhan氏らが発表した「PROMINENT」試験1):「2型糖尿病患者を対象としたRCT研究で高レムナント血症、高TG血症(200~499mg/dL)、低HDLコレステロール血症(40mg/dL以下)があり、高LDLコレステロール血症がスタチン投与等により比較的良好(100mg/dL以下)にコントロールされている対象を2群にランダム割り付けを行い、コントロール群とペマフィブラート(pemafibrate[PF])投与群に群分けし、心血管イベントがPF群で有意に低下するかを主要評価項目とした多施設共同二重盲検ランダム比較試験」の結果が掲載された。「PROMINENT」試験では治療効果を数年間(中央値3.4年)追跡し、primary outcomeを評価した。 つまり、高TG血症絡みの病態をPFで治療することで心血管発作が抑制できるか否かをprimary outcomeとして評価した研究であり、多くの方が関心を示すと考え、紹介する。 これまでの状況証拠としては高TG血症絡みの病態は糖尿病、メタボ症候群などでよくみられる脂質異常症であり、動脈硬化や血栓症をベースに血管疾患の発生に深く関与していると想定されているが、釈然としない。 本試験でのPFの心血管イベント抑制効果はハザード比[HR]:1.03(p=0.67)でPF投与群とプラセボ群(対照群)間に差はなかった。率直に言えば、目的としたイベント抑制効果はなかった。若干の懸念としては、これまでの論争がこれで完全に氷解したと考えるには臨床家としては多少の違和感を禁じ得ない。また、腎臓有害事象の発生率(HR:1.12[p=0.004])、静脈血栓症の発生率(HR:2.05[p<0.001])はPF群で有意に多かった。一方で、非アルコール性脂肪肝の発生率についてはPF群で有意に低かった(HR:0.78[p=0.02])。しかしながら、これらは副次的な情報と捉えるべきである。 PF群に認められたLDLコレステロール値上昇がTGやレムナント低下などのメリットを相殺した可能性も否定はできないが、つじつま合わせの印象は免れない。 いずれにしても“主テーマであった心血管イベントの抑制効果の差は、PFの上乗せにより得られなかった”というのが本論文の結論である。(2022年12月20日 記事を修正いたしました)

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術中の超生理的酸素投与、臓器損傷リスクを増大/BMJ

 手術中の超生理的な酸素投与の増量は、急性腎障害(AKI)、心筋傷害および肺損傷の発生増大と関連することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDavid R. McIlroy氏らによる検討で明らかにされた。全身麻酔下で手術を受けるほとんどの患者は、十分な動脈血酸素飽和度維持のために必要量以上の酸素を投与される。超生理的酸素投与の有害な影響は分子レベルで確認されているが、手術中のこれらの影響の臨床的関連は明らかになっていなかった。なお今回の結果について著者は、「示された臓器損傷の発生増大との関連について残余交絡を排除することはできない」として、「手術中の酸素投与に関する指針を示すために、些少でも臨床的に重要な影響が検出できる大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2022年11月30日号掲載の報告。観察コホート試験で調査 研究グループは、手術中の超生理的酸素投与が術後の腎臓・心筋・肺損傷の発生減少または増加と関連するかどうかを観察コホート試験で調べた。 米国内42の医療センターが参加するMulticenter Perioperative Outcomes Groupデータレジストリを用いた。参加者は、2016年1月~2018年11月に、全身麻酔と気管内挿管による120分以上の手術を受けた入院成人患者であった。 超生理的酸素投与は、SpO2 >92%の間(分当たり)のFIO2 >21%の曲線下面積で定義(AUCFIO2)した。 主要エンドポイントは、AKI(Kidney Disease Improving Global Outcomes基準を用いて定義)、心筋傷害(術後72時間以内の血清トロポニン値が0.04ng/mL超と定義)、肺損傷(国際疾病分類の退院診断コードを使用して定義)であった。酸素曝露の増大と臓器損傷リスク増大との関連を確認 対象コホートは35万647例の患者で構成され、年齢中央値59歳(四分位範囲[IQR]:46~69)、女性18万546例(51.5%)、手術時間中央値205分(IQR:158~279)であった。 AKIは29万7,554例中1万9,207例(6.5%)、心筋傷害は32万527例中8,972例(2.8%)、肺損傷は31万2,161例中1万3,789例(4.4%)が診断された。 FIO2中央値は54.0%(IQR:47.5~60.0)であり、AUCFIO2は7,951%分(5,870~1万1,107)であった。これは、135分の手術中の80%のFIO2に相当するものであった。 ベースラインの共変量およびその他の潜在的な交絡変数を調整後、酸素曝露の増大は、AKI、心筋傷害、肺損傷のリスク増加と関連していた。AUCFIO2の75パーセンタイルに該当する患者は25パーセンタイルに該当する患者と比較して、AKIのオッズが26%(95%信頼区間[CI]:22~30)高く、心筋傷害のオッズは12%(7~17)高く、肺損傷のオッズは14%(12~16)高かった。これらの観察結果は、曝露の代替定義を評価し、コホートを制限、操作変数分析を行った感度解析で確認された。

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2022年の消化器がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 消化器がん編】【消化器がんインタビュー】第12回

がんに対する薬物療法の開発は日進月歩の勢いで進んでおり、新たなエビデンスが日々生み出されている。かつて、消化器がんに対する薬物療法は、選択肢やその治療効果が限定的であったが、近年では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が実臨床に導入され、さらには抗体薬物複合体も標準治療に組み込まれるなど、目覚ましい進歩を遂げている。2022年はCheckMate 648試験を皮切りに、消化器がん薬物療法に関する学会発表や論文を含め多くの新知見が報告された印象的な1年であった。本稿ではその中でも実臨床に直結し得るインパクトのあった報告を、がん種ごとにまとめて概説する。がん種ごとのエビデンス1. 食道がん・CheckMate 648試験(Doki Y, et al. N Engl J Med 2022;386:449-462.)CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能な進行・再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FU(CF)療法を対照として、CFとニボルマブ併用療法の優越性、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の優越性を検証した国際共同第III相試験である。主要評価項目はPD-L1陽性(TPS≧1)例における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)と設定された。本試験には970例が登録され、PD-L1陽性例におけるOS中央値はCF療法群が9.1ヵ月、ニボルマブ併用群が15.4ヵ月と優越性(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p

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長時間労働に関連するうつ病リスクに対する身体活動の影響

 長時間労働がうつ病発症率の増加と関連していることを示唆する研究が増加している。しかし、長時間労働に関連するうつ病リスクに対する身体活動(PA)の影響を調査した研究はほとんどなかった。中国・Beijing Institute of Occupational Disease Prevention and TreatmentのTenglong Yan氏らは、PAが長時間労働に関連するうつ病リスクの修正可能な因子であるかを検討した。その結果、長時間労働はうつ病リスクと関連しており、PAはうつ病リスクをある程度修正可能であることが示唆された。Journal of Affective Disorders誌2023年1月15日号の報告。 2015~18年の国民健康栄養調査より得られた横断的データを分析した。国際労働機関(ILO)の基準により、長時間労働は、1週間当たり40時間以上と定義した。うつ病の特定には、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いた。長時間労働とうつ病との関連を推測し、PAとの関連を明らかにするため、バイナリロジスティック回帰および制限付き3次スプライン(RCS)モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・分析対象5,958人のうち、3,074人(51.6%)が長時間労働に該当していた。・うつ病の有病率は、7.7%であった。・ロジスティック回帰分析では、長時間労働とうつ病リスクとの関連が認められ(オッズ比[OR]:1.738、95%信頼区間[CI]:1.427~2.117)、他の交絡因子で調整した後でも、この関連は維持されていた。・RCSモデルでは、高度なPA群でうつ病リスクが最も低く、次いで低度PA群および非PA群であることが確認された。

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