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COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。  本研究は、2020年4月と2022年4月の2つの評価を含めたプロスペクティブ研究である。ベースライン時(2020年4月)に、SARS-CoV-2感染が現在または過去にない参加者において、睡眠の質/時間、不眠症状を評価した。睡眠状態の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、不眠症重症度質問票(ISI)を用いた。フォローアップ時(2022年4月)には、COVID-19生存者に対し、罹患後1ヵ月(713例、2020年4月~2022年2月に感染)および3ヵ月(333例、2020年4月~2021年12月に感染)の21症状の有無をレトロスペクティブに調査した。また、COVID-19から完全に回復するまでの期間も調査した。長期的な罹患後症状の数に対する感染前の睡眠状態の影響を推定するため、zero-inflated負の二項回帰モデルを用いた。睡眠変数、罹患後症状それぞれの発生率と、感染4週後/12週後の回復割合との関連性の評価には、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・感染前の睡眠状態が、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の罹患後症状の数に大きく影響していることが明らかとなった。・過去にPSQIスコア、ISIスコアが高く、睡眠時間が短い人では、COVID-19後1ヵ月/3ヵ月の時点におけるほぼすべての長期的な罹患後症状のリスクが有意に高かった。・ベースライン時の睡眠障害は、COVID-19後、感染前の日常的な機能レベルに戻るまでの期間が長期化することとも関連していた。

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英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(3)スムーズに伝えるコツ【学会発表で伝わる!英語スライド&プレゼン術】第19回

英語プレゼン、数字の基本的な口語表現(3)スムーズに伝えるコツ前回、前々回で紹介したように、科学的な内容の発表・議論では、数字の口語表現を素早く正確に理解することがきわめて重要です。今回は、そのために個人的に有効だと感じている「コツ」を紹介します。1)桁数の多い数字は省略して読み上げる科学的な研究発表では、桁数が多い数字をスライドに表示することがよくあります。前々回で紹介したように、英語の数字の読み方は、単純なルールを覚えていればさほど難しくはありません。ただし、数字の桁数が多くなると、スムーズに読み上げることは簡単ではありません。たとえば、「1,234.56」という数字を、“one thousand two hundred thirty-four point five six”と読むためのルールを学習することは難しくはありませんが、これをプレゼンの中でスムーズに読み上げることは意外と困難です。試しに早口言葉のように口に出して2、3回読んでみてください。プレゼンの現場では、頭で計算して得られたこの数字を瞬時に口に出して伝える技能も必要です。この対策としては、シンプルですが、「省略して読み上げる」ことをお勧めします。スライドには実際の数字をすべて記載しますが、それを読み上げる際には省略しても問題はありません。むしろ、省略したほうが発表者の解釈を含むことができるので、聞きやすくなることも多いのです。以下の表のように、“more than”や“less than”の表現を使うと読みやすさは圧倒的に改善されますし、また「数字の大小のどちらに意義があるのか」を伝えることができます。たとえば、「1,234,567人の患者ががんに罹患している」というスライドがあり、その数字の大きさを伝える時に、“one million two hundred thirty-four thousand five hundred sixty-seven patients have cancer”とそのまま読み上げるよりも、“more than one million patients have cancer”と言ったほうが、話しやすく、伝わりやすく、理解もされやすいはずです。「おおよそ」「だいたい」「約」を表現する“about”、“approximately”、“roughly”は、主観や解釈を交えず客観的な数字として伝えたい場合に、より適しています。〈表〉画像を拡大する2)話しやすい表現を選択する数字の表現が行き交う英語の議論では、数字の概念のインプット、理解・考察、アウトプットまでを正確かつ遅滞なく行うことが必要です。そのためには、自分が理解して使いやすい表現を知っておくことも重要です。たとえば、割合の表現は「分数」でも「パーセント」でも表現できますが、個人的にはパーセントのほうが使いやすいと感じます。“two fifths of the cases”(このケースの5分の2は…)と言うよりも、“40% of the cases”(このケースの40%は…)と言ったほうが発音しやすく、多くの日本人にとって使いやすいでしょう。また、「患者23/30例(76.7%)」という表現は、臨床研究で頻用されます。私は“out of”の“v”音を明確に発音することが苦手なので、“23 out of 30”よりも、“23 in 30”を使います。また、その後の“76.7%”をそのまま読み上げているとスピーキングの流れが滞ってしまうので、省略した表現にします。よって、私であれば「患者23/30(76.7%)」というスライドの記載であれば、“23 in 30 patients, which is about 80%”と読み上げます。3)Practice makes perfect!英会話全般に共通することですが、単語・文法などの知識を詰め込むだけでは自然なスピードで会話や議論をすることは難しく、反復練習で耳と脳と構音機能を鍛えることがきわめて重要です。数字が飛び交う英語の議論に付いていくうえでは、スピーキング、リスニングの両方において、数字の概念と英語表現が頭の中で直接リンクして、日本語を介在させないで理解できることが不可欠です。私の経験では、この数字と英語の強固なリンクの形成には、臨床留学をして、日常的にバイタルサインや検査値などを回診で話し合う状況に身を置いてから、さらに数ヵ月を要したので、日本で習得をするためには十分な学習時間を確保する必要があるでしょう。講師紹介

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第169回 深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかも?アルツハイマー病治療薬・レカネマブ、米国正式承認のインパクト

あの市立大津市民病院院長がテレビにこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。7月7日金曜日の夜、テレビ東京系列の報道番組「ガイアの夜明け」のテーマは、「病院経営」でした。「病院を再生せよ!〜医療崩壊の危機との闘い〜」のタイトルで取り上げられていたのは、この連載でも何度も書いた、昨年医師の大量退職があった大津市民病院でした。「第121回 大量退職の市立大津市民病院その後、今まことしやかに噂されるもう一つの“真相”」で書いた、昨年赴任した日野 明彦院長の奮闘ぶり(院長なのに脳外科手術や外来診療も行っていました)を伝えており、それはそれで見ごたえはあったのですが、肝心の京都府立医大と京大との間の軋轢や、市立大津市民病院の医療圏での立ち位置については、あまり掘り下げていませんでした。最後、ヒューマンな感じで前向きに終わらせるのはテレビ番組の定石ですが、「第148回 相変わらず自己犠牲と滅私奉公で医療を行うコトー、日本の医療提供体制の“汚点”を描く映画『Dr.コトー診療所』」でも書いた、“赤ひげ”を未だに美化してそこに解決策があるかのように報じる、日本の医療報道(とくにテレビ)の限界も感じました。さて、今回は7月6日(現地時間)に米国食品医薬品局(FDA)が正式承認した、エーザイと米国バイオジェン社が共同開発したアルツハイマー病治療薬・レカネマブ(LEQEMBI)について書いてみたいと思います。レカネマブをFDAが正式承認レカネマブは、アルツハイマー病の原因物質とされるアミロイドβプラークに対するヒト化IgG1モノクローナル抗体で、アミロイドβの脳内への蓄積を抑制する効果があるとされる薬剤です。2023年1月6日、856例を対象とした第II相臨床試験で、レカネマブの投与によりアミロイドβ(Aβ)プラークの減少が確認されたことに基づいて、迅速承認されていました(「第143回 アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」FDA迅速承認を聞いて頭をもたげたある疑問、「結局高くつくのでは?」参照)。この時FDAは臨床効果を検証する確認試験のデータを要求。これに対してエーザイは、2022年11月に結果を発表していた第III相臨床試験(Clarity AD試験)のデータに基づく一部変更承認申請を行いました。FDAは確認試験により臨床上の利点が証明されたと判断、迅速承認から正式承認に切り替えたわけです。この正式承認によって、レカネマブはアルツハイマー病の進行スピードを緩やかにする効果を証明した世界初の医薬品となりました。症状の進行を7ヵ月半遅らせる効果先週、7月7日に急遽開かれたメディア・投資家説明会でエーザイの内藤 晴夫最高責任者(CEO)は「アリセプトの研究開始から約40年を経て、アルツハイマー病の根本病理に関わる治療薬を開発し、まず米国の患者に届けられるのは、製薬産業に身を置くものとして大きな喜びだ」と語りました。さらに、Clarity AD試験の主要評価項目、重要な副次評価項目、QOL関連評価項目を示し、「このすべての評価項目において、高度に統計的な有意差を持って有効性が示された。P値で0が4つ並んでるというのは、私も長くこの業界に身を置いているが、見たことも聞いたこともないような圧倒的な統計的有意性である」と、レカネマブの有効性を強調しました。主要評価項目となった認知機能と日常生活動作をみるCDR-SB(Clinical Dementia Rating Sum of boxes)で、レカネマブの効果は対プラセボで27%の悪化抑制、P値=0.00005(小数点以下にゼロが4つ)でした。ちなみに、27%の悪化抑制とは、推計では症状の進行を7ヵ月半、遅らせる効果だそうです。適応はアルツハイマー病の治療で軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者正式承認での適応は、迅速承認の時と同様、アルツハイマー病の治療で、軽度認知障害(MCI)または軽度認知症の患者とされました。また用法用量は、Aβ病理が確認された患者に対して、10mg/kgを2週間に1回点滴静注です。なお、投与開始前に、ベースライン時の脳MRI、および投与後のMRIによる定期的なモニタリング(5回目、7回目、14回目投与前)が必要とされます。最も一般的な副作用は、静注に関連する副作用、浮腫やヘモジデリン沈着を伴うアミロイド関連画像異常(ARIA)、頭痛とのことです。米国での薬価は年2万6,500ドル今回の承認で米国の高齢者の多くが加入するメディケアで保険適用が始まりました。なお、米国での薬価は年2万6,500ドル(約380万円)です。この価格は、同社が2021年に開発するも効果が限られ、正式承認されなかったアデュカヌマブ(「第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)」、「第63回 同(後編)」参照)の当初価格(5万6,000ドル)の約半額ですが、高額なことに変わりはありません。この高い薬価に対し、米国では医療費増につながる危険性がすでに指摘されています。7月8日付の日本経済新聞は、「米国の認知症患者は600万人以上いるとされる。非営利団体の米KFFは、高齢者の5%が今回の薬価で使用した場合、メディケアの支出が年89億ドルと予測。メディケア全体の保険料が増額される懸念がある」と書いています。日本承認後に待ち受ける2つの高いハードルさて、レカネマブの日本での承認はどうなるでしょう。エーザイは日本でも2023年1月に薬事承認を申請、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が優先審査の品目に指定しています。7月7日の説明会でエーザイの担当者は、「審査状況は非常に順調。レカネマブだけではなく、AβのPETの検査薬のMCIへの適応についても、順調に審査が進んでいる。9月までには承認を取得できると考えている」と話していました。日本でも9月までに承認され、年内には薬価が決まる可能性が高いとなると、アルツハイマー病の早期患者やMCIの患者が普通に使えるようになると考えてしまいますが、なかなかハードルは高そうです。一つは検査体制です。使用にはAβ病理所見の確認が必要で、そのためのPET検査または脳脊髄液検査を行わなければなりません。ARIAなどの副作用のチェックにも定期的なMRI検査が必要なため、処方できる医療機関は当面は相当限られそうです。もう一つは薬価です。米国で年間約370万円の薬価が付いたということは、日本の薬価も年間300万円前後になると予想されます。国内の認知症患者数は2025年には約730万人になると推定されており、アルツハイマー病の早期患者とMCI患者に限っても、レカネマブの対象になる患者は相当な数になると考えられます。根本治療薬ではなく、単に進行を遅らせるだけの薬剤に年間300万円も使う必要があるのか……。医療財政の面からも使用に関して何らかの制約が出てくる可能性もあります。そう考えると、レカネマブが日本で発売されても、使いたくても使えない認知症患者が多数出るという、深刻なドラッグ・ラグ問題が起こるかもしれません。アルツハイマー病患者の社会的価値を上げることと割増となる医療・介護費をどう考えるかもう1点気になるのは、以前にも書いた次の問題です。それは、「アルツハイマー病の進行を遅らせるということは、結果その人のアルツハイマー病の罹患期間を長くしてしまい、最終的にその人にかかる医療・介護費が高くついてしまうのではないか」ということです。エーザイCEOの内藤氏がいつも強調するように、アルツハイマー病やMCIの人のレカネマブ投与中の社会的価値(内藤氏はかつて「レカネマブの米国における治療を受ける患者1人当たりの社会的価値は年間3万7,600ドル」と話していました)は確かに上がり、介護者の負担も減るかもしれませんが、いずれは中等度・重度に移行していきます。罹患期間が長くなることで、1人当たりのトータルの医療費・介護費はこれまでよりも相当かさむ結果になると考えられます。アルツハイマー病患者の社会的価値を上げることと、一生で考えると割増となってしまうだろう医療・介護費をどう考えればいいのか……。医療経済学者にとっては、研究に値するかなり興味深いテーマだと思います。

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コロナ緊急事態宣言中、急性疾患の院内死亡率は1.7倍に

 新型コロナウイルス感染流行は、医療機関の救急外来受け入れや入院の制限など、他疾患の患者にも大きな影響を与えた。日本国内のこれまでの感染流行時において、その影響はどの程度であったのか。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院の阿部 計大氏らによる研究がJAMA Network Open誌2023年6月22日号に掲載された。 研究者らは、最初の緊急事態宣言期間(2020年4月7日~5月14日)の前後における「ACSC」(=Ambulatory Care-Sensitive Conditions:プライマリ・ケアの適切な介入により、重症化による入院を予防できる可能性のある疾患群)の患者の転帰を比較した。期間前は2015年1月1日~2019年12月31日、期間後は2020年1月1日~12月31日とし、日本全国242の急性期病院の退院サマリーデータを用いた。データ解析は2022年8月16日~12月7日に行われた。 主要アウトカムはACSC疾患の入院数、院内死亡数、院内死亡率であった。院内死亡数は病院到着後24時間以内と以降に分けられた。日本ではACSCの定義が確立されていないため、英国国民保健サービスの定義を使用し、全体解析と合わせ、慢性疾患(喘息やうっ血性心不全など)、急性疾患(脱水症や胃腸炎など)、ワクチンで予防可能な疾患(細菌性肺炎など)に分けて解析した。 主な結果は以下のとおり。・期間中に2万8,321例のACSC関連入院があり、男性1万5,318例(54.1%)、年齢中央値76(四分位範囲[IQR]:58~85)歳だった。2万4,261例が期間前、4,060例が期間後だった。・院内死亡数は2,117例(7.5%)であった。全体の入院件数は減少(発生率比[IRR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.75~0.94)しており、慢性疾患(IRR:0.84、95%CI:0.77~0.92)、ワクチンで予防可能な疾患(IRR:0.58、95%CI:0.44~0.76)で減少した。・一方、急性疾患では院内死亡数(IRR:1.66、95%CI:1.15~2.39)および24時間以内の院内死亡数(IRR:7.27×106、95%CI:1.83×106~2.89×107)が増加した。急性疾患は院内死亡率も増加し(IRR:1.71、95%CI:1.16~2.54)、24時間以内の院内死亡率も全体(IRR:1.87、95%CI:1.19~2.96)、急性疾患(IRR:2.15×106、95%CI:5.25×105~8.79×106)、ワクチンで予防可能な疾患(IRR:4.64、95%CI:1.28~16.77)で増加した。 研究者らは「パンデミック中にACSC関連の入院が全体的に減少したことは、日本や他国で行われた先行研究と一致している。医療現場での感染の恐れ、プライマリ・ケアへのアクセスの減少、医療を求める行動の変化などがこの説明となり得る。さらにワクチン接種キャンペーンなどの予防策が、ワクチンで予防可能な疾患による入院減少に寄与した可能性がある。しかし、急性疾患の院内死亡数と院内死亡率の増加は懸念され、入院後24時間以内の死亡リスク増加は適切な医療サービスを利用することが遅れた可能性を示唆している。今後は急性期の患者にとって必要不可欠な医療サービスの継続性と利用しやすさを確保する努力が極めて重要である」としている。

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英語で「めまいがします」は?【1分★医療英語】第88回

第88回 英語で「めまいがします」は?Could you describe what you mean by feeling dizzy?(めまいがするというのはどのような感じか説明してもらえますか?)It’s like the room is spinning. (部屋が回っているような感じがします)《例文1》I feel dizzy when I move my head. (頭を動かすとめまいがします)《例文2》I have had a spinning sensation since this morning.(今朝からぐるぐる回るような感覚があります)《解説》「めまい」に関する訴えは英語でもさまざまな表現があります。代表的なものは「めまいがする」という意味の“to feel dizzy”ですが、「部屋が回っているような感じがする」という意味になる“I have a spinning sensation”、“ I feel like the room is spinning”などという訴えもよく聞かれます。また、単に「ぐるぐるする感覚がある」という意味で、“to feel giddy”などの表現も使われます。たとえば、“I felt a bit giddy when I got out of bed this morning.”(今朝ベッドから出た時に、少しぐるぐるする感覚がありました)となります。そのほか、同じような状況で使われる表現として、「気が遠くなる感じがする」や「気を失いそうになる感じがする」というのは、“I feel faint”、“ I have a lightheadedness”などと表現します。また、バランスを失いそうになる感覚がある時には“I feel woozy”という言い方があり、めまい感を表現する時にもよく使われます。講師紹介

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第171回 米国でフル承認のアルツハイマー病薬lecanemabの患者負担のほどは?

病状進行を抑制し、認知機能や日常生活機能の低下を遅らせることが第III相試験(Clarity AD)で裏付けられたことを受けて、エーザイとバイオジェンのアルツハイマー病薬lecanemab(商品名:LEQEMBI)が米国で晴れて承認されました1,2,3)。これまでは取り急ぎの承認でしたが、今回フル承認(traditional approval)に至ったことで同国政府の公的保険メディケアの支払対象になる道が開けます4)。メディケアの受給者は65歳以上の高齢者です。ゆえに、高齢者に多いアルツハイマー病の治療のほとんどはメディケアの支払い対象となります。lecanemabの取り急ぎの承認が不動になったら、医師が治療の経過を記録して提出することを条件に同剤の費用を負担するとメディケアは先月発表しています。ただし全額負担ではありません。同剤の薬価は1年当たり2万6,500ドル(約378万円)です。メディケアは同剤の費用の約80%を支払います。残りの20%ほどを患者は自腹か何らかの手段で捻出する必要があります。米国のもう1つの公的保険メディケイドの受給対象でもある一部の低所得の患者は自己負担が一切なく同剤を使えますが、保険がメディケアだけという患者の同剤使用の1年あたりの自腹出費は6,600ドル(約94万円)にも達します5,6,7)。その額はメディケア受給者の所得中央値の5分の1ほどに相当します。日本でlecanemabは今年1月16日に承認申請されて承認審査段階にあります。今回の米国フル承認までのFDAの扱いと同様に国内でも優先審査されており、間もなく9月までには承認される見込みです。いわゆる“太り過ぎ”レベルのBMIのほうがむしろ死亡率が低い話は変わって肥満未満の太り過ぎの人の死亡率は高くなく、どちらかというとむしろ低いことを示した試験結果を紹介します。試験では米国の成人約50万人を体重指標BMIで9つに区切って中央値9年(0~20年)の経過を比較しました。その結果、BMIが30以上で肥満の域の人では適正とされるBMI範囲(22.5~24.9)の人に比べてさすがに死亡率が高かったものの、肥満域未満の太り過ぎの範囲のBMIの人の死亡率は高くありませんでした8)。BMIが肥満の域に達していない範囲で高い人の死亡率はむしろ低く、BMIが25~27.4の人の死亡率はBMIが22.5~24.9の人より5%低いことが示されました9)。BMIが肥満域により近い27.5~29.9の人はなんともっと死亡率が低く、22.5~24.9の人の死亡率を7%下回りました。病気が原因の体重減少の影響を排除することを目的として追跡開始2年以内の死亡例を除外して解析しても同様の結果となりました。目下の分類で太り過ぎの域にあるBMIの人がそれ以下のBMIの人に比べてより健やかと今回の結果をもって結論するのは時期尚早であり、さらなる検討が必要です。今回の結果から言えることは、BMIは死亡率のうってつけの指標というわけではなさそうということであり、脂肪の体内分布などの他の指標の考慮も必要なようです9,10,11)。カロリー制限時の代謝低下を防ぐホルモンを同定太っていることを一概に不健康と決めつけることはできませんが、体重を減らすことは病気治療の有効な手段の1つでもあります。たとえば、食事のカロリーを抑えて体重を減らすことは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)治療の有効な手立ての1つですし、2型糖尿病患者のインスリンの効きを良くする効果もあります。しかし多くの人の体重減少はたいてい長続きしません。エネルギー消費を抑えるように体が順応してしまうことがその一因ですが、その順応の仕組みはこれまでよくわかっていませんでした。GDF15というホルモンを高脂肪食のネズミに与えると肥満が減り、GDF15の受容体であるGFRALを介した摂食(あるいは食欲)抑制のおかげで血糖値推移が改善することが先立つ研究で知られています。エネルギー消費を抑えてしまう順応をそのGDF15が食い止め、カロリー制限中でもエネルギー消費が維持されるようにする働きを担うことがカナダ・マクマスター大学のチームによる研究で示されました12)。GDF15を与えたマウスの体重は摂取カロリーが同じのGDF15非投与マウスに比べて減り続け、その作用は脂肪ではなく筋肉でのエネルギー消費亢進によることが判明しました。人ではどうかを今後の研究で検証する必要があります。人でのGDF15の働きを調べることで食事に気を付けても体重がなかなか減らない人に有益な手立てをやがて生み出せるかもしれません13)。また、肥満治療として注目を集めるGLP-1標的薬との相乗効果も期待できそうです。今回の研究には肥満治療のGLP-1標的薬を他に先駆けて世に送り出したNovo Nordiskが協力しています。参考1)「LEQEMBI®」(レカネマブ)、アルツハイマー病治療薬として、米国FDAよりフル承認を取得 / エーザイ2)FDA Converts Novel Alzheimer's Disease Treatment to Traditional Approval / PRNewswire3)FDA Grants Traditional Approval for LEQEMBI? (lecanemab-irmb) for the Treatment of Alzheimer's Disease / PRNewswire4)US FDA grants standard approval of Eisai/Biogen Alzheimer's drug / Reuters5)Annual Medicare spending could increase by $2 to $5 billion if Medicare expands coverage for dementia drug lecanemab / UCLA Health6)Explainer: Who is eligible for the new FDA-approved Alzheimer's drug? / Reuters7)Arbanas JC, et al. JAMA Intern Med. 2023 2023 May 11. [Epub ahead of print]8)Visaria A, et al. PLoS One. 2023;18:e0287218. 9)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist10)‘Overweight’ BMI might be set too low / Nature11)No increase in mortality for most overweight people, study finds / Eurekalert12)Dongdong Wang D, et al. Nature. 2023;619:143-150.13)Having an 'overweight' BMI may not lead to an earlier death / New Scientist

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レンバチニブ+ペムブロリズマブの腎がん1次治療、4年超でも生存改善を維持(CLEAR)/ASCO2023

 進行期腎細胞がんの1次治療における、レンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法の生存期間延長効果は、長期追跡期間を経ても維持されていたというデータが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)において、米国・Texas OncologyのThomas E. Hutson氏より発表された。 国際共同非盲検第III相CLEAR試験(KEYNOTE-581)試験の追跡期間中央値4年超の最終結果報告である。・対象:全身薬物治療未実施の進行期淡明細胞型腎細胞がん・試験群:レンバチニブ+ペムブロリズマブ(LenPem群:355例)、レンバチニブ+エベロリムス(357例)・対照群:スニチニブ4週投与2週休薬(Suni群:357例)・評価項目:[主要評価項目]独立画像判定(IIR)による無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、安全性など 2021年、LenPem群の良好なPFS、OSの結果が論文発表されている。今回はLenPem群とSuni群のOS最終解析結果の報告である(追跡期間中央値:LenPem群49.8ヵ月、Suni群49.4ヵ月)。 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はLenPem群53.7ヵ月、Suni群が54.3ヵ月、ハザード比(HR)は0.79(95%信頼区間[CI]:0.63~0.99、p=0.0424)と両群間の有意な差を保っていた。24ヵ月OS率はLenPem群が80.4%、Suni群が69.6%、36ヵ月OS率はLenPem群66.4%、Suni群60.2%であった。・試験後の治療として、抗VEGF抗体がLenPem群の45.9%に、Suni群の45.4%に投与されていた。また抗PD-1/PD-L1抗体が使用されていたのはLenPem群15.8%、Suni群54.6%であった。・この後治療の影響を調整したOS中央値は、LenPem群は未到達、Suni群が32.0ヵ月で、HRは0.55(95%CI:0.44~0.69)であった。・IMDCリスク分類別にみたOSのHRは、Favorable risk群で0.94(95%CI:0.58~1.52)、Intermediate+Poor risk群で0.74(95%CI:0.57~0.96)であった。・PFS中央値はLenPem群が23.9ヵ月でSuni群9.2ヵ月、HRは0.47(95%CI:0.38~0.57、p<0.0001)であった。24ヵ月PFS率は、それぞれ49.0%と23.4%、36ヵ月PFS率は37.3%と17.6%であった。・IMDCリスク分類別にみたPFSのHRは、Favorable risk群で0.50(95%CI:0.35~0.71)、Intermediate+Poor risk群で0.43(95%CI:0.34~0.55)であった。・奏効期間(DOR)中央値は、LenPem群が26.7ヵ月、Suni群が14.7ヵ月、HRは0.57であった。・LenPem群において完全奏効(CR)を達成した症例のDOR中央値は43.7ヵ月であった。・LenPem群における新たな安全性シグナルは報告されなかった。

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トランスジェンダーは自殺死が多いか/JAMA

 トランスジェンダーの人々は自殺企図や死亡のリスクが高い可能性が示唆されている。デンマーク・Mental Health Centre CopenhagenのAnnette Erlangsen氏らは、今回、トランスジェンダーは非トランスジェンダーと比較して、最近42年間における自殺企図、自殺による死亡、自殺と関連のない死亡、あらゆる原因による死亡のいずれもが、有意に高頻度であることを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年6月27日号で報告された。デンマークの後ろ向きコホート研究 研究グループは、デンマークにおけるトランスジェンダーの自殺企図、死亡の頻度を評価する目的で、全国規模の登録ベースの後ろ向きコホート研究を行った(Danish Health Foundationの助成を受けた)。 対象は、デンマークで生まれで、1980年1月1日~2021年12月31日に同国に居住していた15歳以上。トランスジェンダーを自認する人々の確認は、全国の病院記録と法的な性別変更の行政記録で行った。 全国入院・死因登録のデータを用いて、1980~2021年の自殺企図、自殺死(自殺既遂)、自殺以外による死亡、全死因死亡を同定した。暦年、出生時に割り当てられた性別、年齢で調整し、トランスジェンダーと非トランスジェンダーにおけるこれらのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 665万7,456人(出生時に割り当てられた性別は男女とも50.0%ずつ)が解析に含まれ、フォローアップ期間は1億7,102万3,873人年であった。このうち3,759人(0.06%)がトランスジェンダーと判定され、判定時の年齢中央値は22歳(四分位範囲[IQR]:18~31)だった。1,975人(52.5%)は出生時に男性、1,784人(47.5%)は女性に割り当てられていた。42年で企図、死亡は低下したが、aIRRは有意に高い 自殺企図は、トランスジェンダー群では92件(初回自殺企図年齢中央値27歳[IQR:19~40])、非トランスジェンダー群では11万9,093件(36歳[23~50])発生した。10万人年当たりの標準化自殺企図率は、トランスジェンダー群が498件、非トランスジェンダー群は71件で、10万人年当たりの標準化発生率の差は428件(95%CI:393~463)であり、aIRRは7.7(95%CI:5.9~10.2)とトランスジェンダー群で自殺企図率が有意に高かった。 また、10万人当たりの標準化自殺死亡率は、トランスジェンダー群が75件、非トランスジェンダー群は21件であり、aIRRは3.5(95%CI:2.0~6.3)とトランスジェンダー群で自殺死亡率が有意に高かった。 10万人年当たりの標準化非自殺性死亡率は、トランスジェンダー群が2,380件、非トランスジェンダー群は1,310件(aIRR:1.9、95%CI:1.6~2.2)、10万人年当たりの標準化全死因死亡率はそれぞれ2,559件、1,331件(2.0、1.7~2.4)であり、いずれもトランスジェンダー群で有意に高率だった。 42年の対象期間中に、自殺企図と死亡の割合は低下したにもかかわらず、いずれのアウトカムも最近のaIRRが有意に高く、2021年のaIRRは自殺企図が6.6(95%CI:4.5~9.5)、自殺死亡が2.8(1.3~5.9)、非自殺性死亡が1.7(1.5~2.1)、全死因死亡が1.7(1.4~2.1)と、いずれもトランスジェンダー群で高かった。これは、トランスジェンダーでは自殺企図と死亡のリスクが継続的に高いことを反映している。 著者は、「トランスジェンダーは、いじめ、差別、排除、偏見といった形で、トランスであることに関する組織的な否定にさらされる可能性があり、少なくとも部分的には、このようなマイノリティストレスの結果として、疎外感や内面化されたスティグマ、精神衛生上の問題、ひいては自殺行動につながる可能性がある」と指摘し、「トランスジェンダーの自殺を減らすための取り組みが求められ、これには個人的な苦悩がある場合に助けを求めるよう促すといった直接的な対策が含まれるほか、医療専門家による研修や最善の診療ガイドラインの実施、性別にとらわれない公衆浴場や更衣室の普及といった、構造的な差別を減らすための一般的な対策も提言されている」としている。

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重症度や地域、剤形によって患者の治療選好性が異なる?中等症~重症乾癬

 2023年6月5日、ブリストル マイヤーズ スクイブは、日本における「乾癬」の治療選好に関する、離散選択実験(Discrete choice experiment:以下、DCE)手法を用いた観察研究の結果を発表した。本研究の結果から、乾癬患者が治療を選択するうえで、有効性と同じく治療費や投与方法も重要な要素であることが、自治医科大学医学部 皮膚科学講座 小宮根 真弓氏らによって示された。結果は、2月20日付でJournal of Dermatology誌に掲載された。広がる乾癬の治療選択 皮膚の炎症性疾患である乾癬の治療は、ここ十数年で大きな進展を遂げてきた。その転機は、2010年に生物学的製剤の使用が初めて承認されたことにあり、最も患者数の多い尋常性乾癬では現在11製剤が臨床で使用されている。加えて最近は、経口剤の選択肢も増えている。乾癬治療の基本となる外用剤だけでなく、経口剤や生物学的製剤などのさまざまな選択肢の中から、患者に最適な治療法を選ぶことが重要だ。 しかし、治療効果、費用、投与方法が異なるこれらの治療選択肢に対する中等症~重症乾癬患者の嗜好性は十分に理解されていない。中等症~重症乾癬患者の選好性は? DCE手法は、複数の選択肢の中から最も好ましい選択を繰り返すアンケート調査によって、その選択における回答者の選好度を統計学的に算出する方法である。商品やサービスに対して人々が持つ多様な価値を相対的に評価でき、さまざまな業界で応用される。本研究では、20歳以上の生物学的製剤または経口剤による乾癬の全身療法を受けている中等症から重症の日本人乾癬患者222例(滴状乾癬、逆乾癬、膿胞性乾癬、乾癬性紅皮症、薬剤性乾癬を除く)を対象に、治療薬の有効性、安全性、投与方法、投与頻度、利便性、治療費などの治療因子に対する治療選択時の選好度についてオンラインによる定量調査が行われた。結果は以下のとおり。・乾癬治療を受ける際の重要な要素として、「長期有効性」に対する相対的重要度(RI)が最も高く(42%)、2番目が「費用」(24%)、3番目が「投与方法」(13%)だった。・患者選好度の感度分析において、「投与方法」では皮下注射剤よりも経口剤を好む傾向がみられた。・サブグループ解析により、乾癬患者の重症度や居住地域によって異なる傾向がみられた。すなわち、中等症の乾癬患者(191例)と重症の乾癬患者(31例)では、重症度に関係なくいずれも「長期有効性」のRIが最も高値だった(中等症:48%、重症:42%)が、2番目は、中等症患者では「費用」(21%)、重症患者では「短期有効性」(21%)だった。また、政令指定都市の乾癬患者(106例)と非政令指定都市の乾癬患者(116例)を比較したところ、居住地域に関係なく「長期有効性」のRIが最も高値だった(政令指定都市:56%、非政令指定都市:42%)。一方、2番目に高い値を示した特性は、政令指定都市の患者では「副作用(消化器系関連)」(14%)、非政令指定都市の患者では「費用」(28%)だった。 小宮根氏は結果を振り返り、「乾癬治療の好みは患者特性や臨床的特性によって異なり、実臨床で治療を決定する際には、患者さんの声を考慮した共有意思決定が必要であることが示唆されたことは、乾癬治療を行う医療従事者や患者さんにとって意義があるもの」と述べている。 今回得られた知見が、乾癬の全身療法における治療決定の一助になることが期待される。

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バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第237回

バイアグラと酒の併用が生んだ悲劇illust ACより使用シルデナフィル(商品名:バイアグラ)は、海綿体の血管系に存在するホスホジエステラーゼ5を阻害することで陰茎の勃起を助ける働きがあります。シルデナフィルとアルコールを併用しても、ネットでは「とくに相互作用があるわけではないため安全」という見解が主流で、適度の飲酒の内服は可能と書いているウェブサイトのほうが多いと思います。Pandit JN, et al.Rare fatal effect of combined use of sildenafil and alcohol leading to Cerebrovascular Accident.J Forensic Leg Med. 2023;95:102504.これはインドから報告された法医学の症例報告です。インドでは、とくに若年層におけるシルデナフィルの無認可の流通が増えており、不適切な使用が懸念されています。シルデナフィルの副作用として、頭痛、顔面紅潮、鼻づまり、血圧低下などが報告されています。軽度の頭痛であれば心配不要ですが、今回紹介するのは脳出血によって死亡した症例です。とくに既往歴のない41歳男性が、女性とホテルの一室に宿泊していました。夜にシルデナフィル50mgを2錠、そしてアルコールを摂取していました。翌朝、彼は気分不良を訴え病院に搬送されましたが、残念ながら到着時にはもう死亡していました。解剖では、右大脳基底核から両側脳室、大脳皮質にかけて約300gの凝血塊を伴う脳浮腫が観察されました。ミクロでは、心室壁の肥大、肝臓の脂肪変性、急性尿細管壊死、高血圧性変化などが確認されました。40代の男性がシルデナフィルとアルコールを併用して、脳出血を起こし搬送された症例がトルコからも報告されています1)。こちらの症例は一命を取りとめています。シルデナフィルをアルコールと併用することはそもそも推奨されているわけではありませんが、常識的な低量アルコールによる大きな副作用は報告されていません。本当に両者の併用に何らかのリスク上昇はないのか、規模の大きな検討が必要かと思われます。1)Antar V, et al. Subarachnoid and intracerebral hemorrhage after alcohol ingestion and illicit use of sildenafil. Turk Neurosurg. 2015;25(3):485-487.

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片頭痛治療薬抗CGRP抗体の比較~メタ解析

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体は、新しい片頭痛予防薬である。また、米国においてCGRP受容体拮抗薬であるatogepantが片頭痛予防薬として承認された。中国・首都医科大学のWenfang Sun氏らは、将来の臨床試験の参考となるよう、さまざまな用量の抗CGRPモノクローナル抗体およびatogepantを含む片頭痛治療に対する有効性および安全性を評価するため、ネットワークメタ解析を実施した。その結果、すべての抗CGRP薬は片頭痛予防に効果的であり、とくにフレマネズマブ225mg/月、エレヌマブ140mg/月、atogepant 60mg/日は、副作用リスクが低く、効果的な介入であることが示唆された。The Clinical Journal of Pain誌オンライン版2023年6月2日号の報告。 2022年5月までに公表された文献をPubMed、Embase、およびコクランライブラリーより検索した。対象には、反復性または慢性片頭痛患者を対象にエレヌマブ、フレマネズマブ、eptinezumab、ガルカネズマブ、atogepantまたはプラセボによる治療を評価したランダム化比較試験(RCT)を含めた。主要アウトカムは、1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少、50%治療反応率、有害事象数とした。バイアスリスクの評価には、Cochrane Collaboration toolを用いた。 主な結果は以下のとおり。・24件の文献を分析対象に含めた。・有効性に関しては、すべての介入がプラセボよりも優れており、統計学的に有意な差が認められた。・もっとも効果的な介入は、以下のとおりであった。【1ヵ月当たりの片頭痛日数の減少】 フレマネズマブ225mg/月(標準化平均差[SMD]:-0.49、95%信頼区間[CI]:-0.62~-0.37)【50%治療反応率】 フレマネズマブ225mg/月(相対リスク:2.98、95%CI:2.16~4.10)【急性投薬日数の減少】 エレヌマブ140mg/月(SMD:-0.68、95%CI:-0.79~-0.58)・有害事象に関しては、ガルカネズマブ240mg/月およびフレマネズマブ675mg/四半期を除き、すべての治療においてプラセボとの統計学的な優位性は認められなかった。・有害事象による治療中止に関しては、介入群とプラセボ群との間に有意な差は認められなかった。

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軽症脳梗塞、4.5時間以内DAPT vs.アルテプラーゼ/JAMA

 日常生活や仕事上の障害につながらない(非障害性)軽症脳梗塞患者において、発症後4.5時間以内の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は90日後の機能的アウトカムに関して、アルテプラーゼ静注に対して非劣性であることが示された。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検非劣性試験「Antiplatelet vs R-tPA for Acute Mild Ischemic Stroke study:ARAMIS試験」の結果を報告した。軽症脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法の使用が増加しているが、軽症非障害性脳梗塞患者における有用性は不明であった。JAMA誌2023年6月27日号掲載の報告。中国38施設で760例を、DAPT群とアルテプラーゼ群に無作為化 研究グループは中国の38施設において、18歳以上で発症後4.5時間以内、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア(範囲:0~42)が5以下およびNIHSSのいくつかの主要項目スコアが1以下、かつ無作為化時に意識項目スコアが0の軽症非障害性の急性脳梗塞患者を、DAPT群またはアルテプラーゼ群に1対1の割合で無作為に割り付け、追跡評価した。 DAPT群では、クロピドグレルを1日目に300mg負荷投与、その後75mgを1日1回12(±2)日間投与+アスピリンを1日目に100mg、その後100mgを12(±2)日間、以降90日目まではガイドラインに基づいた抗血小板薬単剤療法またはDAPTを行った。 アルテプラーゼ群では、ガイドラインに従いアルテプラーゼ0.9mg/kg、最大90mgを静脈内投与し、その24時間後からガイドラインに基づいた抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、無作為化され1回以上の有効性評価を受けた全患者(full analysis set:FAS)における90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0~6)が0~1で定義される優れた機能的アウトカムで、DAPT群のアルテプラーゼ群に対する非劣性マージンは群間リスク差の片側97.5%信頼区間(CI)下限値が-4.5%とした。 安全性エンドポイントは、90日間の症候性頭蓋内出血およびあらゆる出血とした。 2018年10月~2022年4月に760例がDAPT群(393例)またはアルテプラーゼ群(367例)に無作為化された。最終追跡調査日は2022年7月18日であった。mRSスコア0~1のアウトカム達成、DAPTの非劣性を確認 無作為化された適格患者760例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:57~71]、女性223例[31.0%]、NIHSSスコア中央値2[IQR:1~3])で、同意撤回者などを除く719例(94.6%)が試験を完遂した。 90日時点で優れた機能的アウトカムを達成したのは、DAPT群93.8%(369例中346例)、アルテプラーゼ群91.4%(350例中320例)で、両群のリスク差は2.3%(95%CI:-1.5~6.2)、粗相対リスクは1.38(95%CI:0.81~2.32)であった。片側97.5%CI(両側95%CI)の補正前下限値は-1.5%で、非劣性マージン-4.5%を上回っていた(非劣性のp<0.001)。 90日時点での症候性頭蓋内出血の発現は、DAPT群で371例中1例(0.3%)、アルテプラーゼ群で351例中3例(0.9%)であった。

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肥満2型DMへの経口セマグルチド、最適な用量・期間は?/Lancet

 十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病成人患者において、経口セマグルチド25mgおよび50mgは糖化ヘモグロビン(HbA1c)値低下および体重減少に関して、同14mgに対する優越性が確認され、安全性に関して新たな懸念は認められなかった。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のVanita R. Aroda氏らが、14ヵ国177施設で実施された第IIIb相多施設共同無作為化二重盲検比較試験「PIONEER PLUS試験」の結果を報告した。セマグルチド1日1回経口投与は2型糖尿病の有効な治療法であり、セマグルチドの経口投与および皮下投与試験の曝露-反応解析では、曝露量の増加に伴いHbA1c値の低下および体重減少が大きくなることが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年6月26日号掲載の報告。BMI値25以上、HbA1c値8.0~10.5%の1,606例を対象 研究グループは、HbA1c値8.0~10.5%、BMI値25.0以上、メトホルミン、スルホニルウレア系薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬のうち1~3種類の経口血糖降下薬の安定用量を投与されている18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、セマグルチド14mg群、25mg群または50mg群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回朝空腹時の経口投与を68週間にわたって行った。 いずれの投与群もセマグルチド3mgから投与を開始し、4週時に7mg、8週時に14mg、その後、25mg群では12週時に25mg、50mg群では12週時に25mg、16週時に50mgに漸増した。また、ベースラインで服用していた経口血糖降下薬は、DPP-4阻害薬のみ中止とし、それ以外は同一の用法・用量で継続した。 主要エンドポイントは、HbA1c値のベースラインから52週時までの変化、検証的副次エンドポイントは体重のベースラインから52週時までの変化とし、intention-to-treat集団を対象に治療指針に基づく推定使用量(試験薬の中止やレスキュー治療の有無を問わない用量)を用いて評価した。また、セマグルチドを1回以上服用した全患者を対象に安全性を評価した。 2021年1月15日~9月29日に2,294例がスクリーニングを受け、1,606例が無作為に割り付けられた(14mg群536例、25mg群535例、50mg群535例)。患者背景は、男性936例(58.3%)、女性670例(41.7%)、平均(±SD)年齢58.2±10.8歳、平均HbA1c値9.0±0.8%、平均体重96.4±21.6kgであった。52週時のHbA1c値と体重の低下、14mg群と比較し25mg群、50mg群が有意に優れる 52週時におけるHbA1cの平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-1.5%(SE 0.05)、25mg群-1.8%(0.06)、50mg群-2.0%(0.06)であった。治療指針に基づく推定使用量での評価の結果、セマグルチド14mg群に対する推定治療差(ETD)は、セマグルチド25mg群で-0.27%(95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.12、p=0.0006)、50mg群で-0.53%(-0.68~-0.38、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対する優越性が示された。 52週時における体重の平均変化値(SE)は、セマグルチド14mg群-4.4kg(SE 0.3)、25mg群-6.7kg(0.3)、50mg群-8.0kg(0.3)であった。セマグルチド14mg群に対するETDは、セマグルチド25mg群で-2.32kg(95%CI:-3.11~-1.53、p<0.0001)、50mg群で-3.63kg(-4.42~-2.84、p<0.0001)であり、セマグルチド14mg群に対して優越性が示された。 有害事象は、セマグルチド14mg群で404例(76%)、25mg群で422例(79%)、50mg群で428例(80%)報告された。ほとんどが軽度から中等度であったが、胃腸障害が14mg群と比較して25mg群および50mg群で高率であった。死亡は10例報告されたが、治療との関連はないと判断された。 なお、著者は、用量漸増期間が最大16週と短期間であったこと、セマグルチド25mg群と50mg群の差は検証されていないこと、対象患者の大部分が白人であったことなどを研究の限界として挙げている。

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英語勉強法1【Dr. 中島の 新・徒然草】(484)

四百八十四の段 英語勉強法1とうとう7月に入りました。朝からセミが鳴いています。チーーーという音なのでニイニイゼミかもしれません。8月後半になるとツクツクボウシが「オーシツクツク」と鳴き始めます。小学生の頃は、この鳴き声が「早く宿題やれよ」と聞こえてすごく嫌でした。さて、先日の会合でたまたま同じテーブルになった先生方と英語勉強法の話で盛り上がりました。私も含めて皆さん、それぞれに英語での苦労は尽きません。とくに、その場の瞬発力が問われる英会話が問題です。今回は私なりに工夫したり実行したりしている英語勉強法について述べましょう。これまでに何回も述べたことと重複する部分もあるかもしれませんが、ご容赦願います。その1 海外留学したら自然に英語ペラペラになる、ことは絶対にない子供であれば、海外に住んでいる間に自然に英語をしゃべるようになります。が、大人はそうはいきません。多少、外国人慣れするだけです。学問に王道なし、ひたすら勉強するのみ。その2 「聴く」技能が最も大切で最も難しい俗に英語4技能と言われるのが「読む」「書く」「話す」「聴く」です。これらの中で最も自分がコントロールできないのが「聴く」という状況です。なぜ聴いた英語が理解できないのか、それには多くの要因があるかと思います。音を拾えない知らない単語がある話すスピードが速すぎてついていけない会話が進むにつれて理解不十分なことが蓄積される文章構造や言い回しが難しすぎる最後のものは「仮に書かれていたとしても即座に理解できない」と言い換えることができます。こういった要因が少しずつ関与して「駄目だ、まったくわからん!」となるのでしょう。リスニングの技能不足を克服するのは地道な努力しかないと思います。YouTubeで教材を探すとすれば、ニック・ウィリアムソン先生の「ニック式英会話」ですね。第273の段や第280の段でも紹介いたしましたが、流暢な日本語でリスニングのコツを教えてくれます。とくに「リスニングトレーニング!」とか「聞き取れるかな?」とタイトルにあるものがお勧めです。一例を挙げると、「テリム」と聞こえたら“tell him”、「デュー」なら“do you”だとか。その3 リスニングの難しさにも段階があることを知っておこう初級対面の外国人との会話中級電話の応答上級洋画を字幕なしで見て理解する最上級外国人同士の超高速英会話を横で聴き取る対面の会話だと、相手もこちらの英語能力を察して、ゆっくりしゃべってくれます。頼めば繰り返し話してもらえることでしょう。因みに「もう一度ゆっくり言ってくれませんか?」という英語は“Could you repeat it slowly?”です。これまでに私が最もよく使ってきたフレーズの1つだと言っても過言ではありません。電話の応答は音だけの情報しか得られません。相手の表情とか身振り手振りがないので、それだけ難しくなるわけです。それでもホテルの宿泊予約なんかは決まり文句だけで済みます。でも、誰が何の用件で掛けてきたのかわからない電話を取るのは、在米中は恐怖そのものでした。上級と最上級については、これはもう自分が聴き取れなかった部分を1つずつつぶしていくしかありません。フィリピンやインドの人たちが普通にアメリカ人同士の会話に加わっているのを見ると、自分との差の大きさを思い知らされます。が、努力すれば出来るはず、と思って頑張りましょう。次回は「話す」技能について述べたいと思います。とりあえず1句蝉の声 同じに聞こえる 英会話

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第52回 「電動キックボード外傷」が急増しませんか?

電動キックボード解禁Unsplashより使用7月1日から改正道路交通法が施行され、最高時速20km以下で一定の要件を満たす電動キックボードに関して新制度がスタートしました。これまでは電動キックボードは「原動機付自転車」(原付バイク)の位置付けでしたが、今回から「特定小型原動機付自転車」となり、自転車と同じ交通ルールが適用されるようになります(図)。図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)図.電動キックボード新ルール(政府広報オンライン)つまり、運転免許は不要で、車道を走行し、自転車と同じようにヘルメット着用については努力義務扱いとなっています。街中を走る電動キックボードがノーヘルで走ることになり、自転車が逆走してもよい一方通行も逆走可能になります。要は時速20kmが出る原付が、自転車と同じ扱いになる点が懸念材料とされており、世間は賛否両論です。私個人としては電動キックボードを車で轢きそうになったことがあるので、解禁する方向へ動くのは、どちらかといえば反対なんですよね。いや私見で申し訳ないんですが。外傷リスク上記の速度で歩道を走ることはできず、最高時速を6km以下に設定し、緑色のライトを点滅させれば走行可能です。でも現時点で歩道をビュンビュン走っている電動キックボードが多いので、無法地帯になるのではと懸念しています。電動キックボードはタイヤが小径です。段差などの衝撃の影響は自転車よりもはるかに受けやすく、転倒リスクが高いです。自転車が乗れなくなった高齢者が電動キックボードを利用するようにならないか不安もあります。「今後高齢者の足として電動キックボードを利用してみたらどうか」という声もありますが、自転車に乗れなくなった人がスケボーに乗れるはずがないので、外傷リスクが増すだけだと思います。そして、電動キックボードで頭頚部外傷を起こした症例の2~3割は飲酒運転とされており1,2)、これが一番懸念されることかなと思っています。自転車も当然飲酒運転はダメなのですが、「まいっか」みたいな風潮がどこかにあります。参考文献・参考サイト1)Clough RA, et al. Major trauma among E-Scooter and bicycle users: a nationwide cohort study. Inj Prev. 2023 Apr;29(2):121-125.2)Kowalczewska J, et al. Characteristics of E-Scooter-Related Maxillofacial Injuries over 2019-2022-Retrospective Study from Poznan, Poland. J Clin Med. 2023 May 26;12(11):3690.

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多遺伝子リスクスコアと冠動脈石灰化スコアを比較することは適当なのか?(解説:野間重孝氏)

 pooled cohort equations(PCE)はACC/AHA心血管ガイドラインの一部門であるリスク評価作業部会によって開発されたもので、2013年のガイドラインにおいて、これを使用して一次治療においてアテローム性動脈硬化性心血管病のリスクが高いと判断された患者(7.5%以上)に対する高強度、中強度のスタチンレジメンが推奨され話題となった。現在PCEを計算するためのサイトが公開されているので、興味のある方は開いてみることをお勧めする(https://globalrph.com/medcalcs/pooled-cohort-2018-revised-10-year-risk/)。わが国であまり用いられないのは国情の相違によるものだろうが、米国ではPCE計算に用いられていない付加的指標を組み合わせることにより、精度の向上が議論されることが多く、現在その対象として注目されているのが冠動脈石灰化スコア(CACS)と多遺伝子リスクスコアだと考えて論文を読んでいただけると理解しやすいのではないかと思う。 「多遺伝子リスクスコア」とは一体何なのか、と疑問を持たれている方も多いのではないかと思う。少々極端なたとえになるが、臨床医ならばだれしも初診患者の診察をする際に家族歴を尋ねるのではないだろうか。また、少し年配の方で疫学に関係したことのある方なら、心筋症の家族歴の調査にかなりの時間を費やした経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思う。そこに2003年、ヒトゲノムが解読されるという大事件が起こったのである。その発症に遺伝が関係すると考えられる疾患の基礎研究で、研究方法がゲノム解析に向かって大きく舵を切られたことが容易に理解されるだろう。 一部のがんや難病では単一のドライバー遺伝子変異もしくは原因遺伝子によって説明できることがあるが、糖尿病・心筋梗塞・喘息・関節リウマチ・アルツハイマー認知症etc.など多くの問題疾患はいずれも多因子疾患であり、多数の遺伝的バリアントによって構成される多遺伝子モデル(ポリジェニック・モデル)に従うと考えられる。間接的、網羅的ゲノム解析であるSNPアレイを用いたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、この15年ほどの間に多くの多因子疾患の遺伝性を明らかにされた。さらに近年、数万人を超える大規模なGWASによって、非常に多数の遺伝因子を用いて多遺伝子モデルに従う予測スコア、すなわちいわゆる多遺伝子スコア(ポリジェニック・スコア)が構築され、医療への応用可能性を論じることが可能となってきた。しかしその一方で問題点や限界も明らかになってきており、直接的な臨床応用にはまだ限界があることを考えておかなければならない。また、GWASは主に欧州系の白人を対象に研究された経緯から、他の人種にどのように応用できるかには検討の余地がある。本研究で取り上げられた2つの大規模臨床モデルがいずれも欧州系白人を対象としているのは、このような理由によるものと考えられる。 一方冠動脈石灰化スコア(CACS)は造影剤を用いない心電図同期CTで計測可能な指標で、冠動脈全体の石灰化プラークの程度について石灰化の量にCT値で重み付けすることにより求められ、現在冠動脈全体の動脈硬化負荷の代替指標として確立しているといえる。しかし心筋梗塞や不安定狭心症は必ずしも高度狭窄から起こるわけではなく、プラークの不安定性を評価する指標も必要となる。CCTAでもプラークの不安定性を示す指標がいくつか知られているが、臨床応用にはまだ研究の余地があるといえる。とはいえ、FFR-CTまで含め、冠動脈CT検査は直接的な臨床応用が可能である点がゲノム解析にはない利点であることは確かだといえる。実際ゲノム解析には大変な手間・費用が掛かり、その将来性を否定するものではないが、現段階においてはその臨床応用範囲が、まだ限定的であることは否定できないだろう。 なお、多遺伝子リスクスコアがPCEに加えられることによって予想確度が上がるか否かについては2020年の段階で意見が分かれており、いずれもジャーナル四天王で取り上げられているのでご参考願いたい (「多遺伝子リスクスコアの追加、CADリスク予測をやや改善/JAMA」、「CHD予測モデルにおける多遺伝子リスクスコアの価値とは/JAMA」)。 今回の研究はさまざまな議論を踏まえ、多遺伝子リスクスコアを加えること、CACSを加えることのいずれがPCE予測値をより改善するかを検討したものである。結果は多遺伝子リスクスコア、CACSそれぞれ単独では冠動脈疾患発生を有意に予測したが、PCEに多遺伝子リスクスコアを加えても予測確度は上昇しなかった。一方CACSを加えることによりPCEの予測確度は有意に上昇した。 この研究の結論はそれ自体としては大変わかりやすいものなのだが、そもそも多遺伝子リスクスコアとCACSを同じ土俵で比較することが適当なのか、という疑問が残る。何故なら多遺伝子リスクスコアは原因・素因というべきであり、CACSはいわば結果であるからだ。素因と現にそこに起こっている現象とでは意味が違うのではないだろうか。こうした批判は関係する後天的な因子の果たす役割の大きい生活習慣病を考える場合、重要な視点なのではないかと思う。普段ゲノム研究を覗く機会の少ないものとしては大変勉強になる論文ではあったが、そんな素朴な疑問が残った。

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早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれから【心不全診療Up to Date】第10回

第10回 早期発見、早期治療!心アミロイドーシス治療の今とこれからKey Points早期発見がなぜ重要か?心アミロイドーシスに対して今できる治療は?心アミロイドーシス治療のこれから早期発見がなぜ重要か?〜心アミロイドーシス治療の今とこれから〜前回は心アミロイドーシスの種類や特徴、有病率などに触れた。今回は早期発見の意義について触れていこう。早速だが、心アミロイドーシスの早期発見がなぜ必要なのだろうか。その理由はただ一つ、早期に治療を開始すればするほど、治療のメリットが大きいからである。ではなぜ早期治療のメリットが大きいかというと、アミロイドが沈着する過程を治療するには、『アミロイド前駆蛋白の産生やアミロイド線維の集積を阻害するか』『臓器に一旦沈着したアミロイドの除去を促すか』が標的となるが、現在われわれができる治療は前者のみで、後者は最近ようやく第I相試験の結果が出たところで1)、まだ日常診療には使用できない。つまり、今できる治療は今以上にアミロイドを沈着させないようにするしかないため、まだ臓器へのアミロイド沈着が少ない早期から治療を開始したほうが、予後改善効果が高いというわけである。それでは、具体的な治療法をみていこう。心アミロイドーシスの治療は、(1)合併症の治療と予防、(2)特異的な治療によるアミロイド沈着の停止または遅延、の2つに大きく分けられる。心アミロイドーシスの合併症への対策は、心不全以外にも、不整脈、伝導障害、血栓塞栓症、重度大動脈狭窄症に対する治療など、注意すべきものがさまざまあり、詳細は図5をご覧いただきたい。(図5)心アミロイドーシスの心臓合併症と併存疾患の治療画像を拡大するとくに、心不全を伴う場合、『心不全予後改善薬の投与をどうするか』はとても重要なポイントである。実臨床において、どの薬剤がどのように使用され、予後との関連はどうであるか、という点について、最近イギリスから興味深い報告があった2)。この研究は、2000~22年にNational Amyloidosis CentreでATTR心アミロイドーシスと診断された2,371例(平均年齢:78歳、男性:90%、ATTRwt:78%、平均LVEF:48%)を対象に、心不全予後改善薬(β遮断薬、RAS阻害薬[ACEi/ARB]、MR拮抗薬)の処方パターン、用量、中断率と予後との関連を調べたものである。その結果は図6の通りであるが、とくに予後との関連が興味深い。それぞれの処方率は、β遮断薬が55%、RAS阻害薬が57%、MR拮抗薬が39%で、β遮断薬とRAS阻害薬はしばしば中断されていたが、低用量のβ遮断薬は、HFrEF(EF≦40%)患者の死亡リスク軽減と関連していた。一方、MR拮抗薬はほとんどの症例で継続されており、すべての心不全症例(とくにEF>40%)に対して死亡リスク軽減と関連していた。もちろん、前向きRCTで確認する必要があるが、とても重要な報告であると考える。(図6)ATTR心アミロイドーシスに対する心不全従来治療と予後の関連画像を拡大するそして、近年の医学の進歩により、心アミロイドーシスに対する特異的な治療も出てきている。その治療法は心アミロイドーシスの病型により異なるため、病型ごとに説明していく。ALアミロイドーシスまず、ALアミロイドーシスに対する特異的な治療の基本は、アミロイド前駆蛋白であるFLC(free light chain)の産生を抑制することであり、基礎となる血液疾患に対する治療法に大きく依存している3,4)。具体的には、骨髄でモノクローナルに増殖しているCD38陽性形質細胞を選択的に攻撃する抗体薬であるダラツムマブ、プロテアソームを阻害する分子標的薬であるボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾン、メルファランなどの薬剤や自己末梢血幹細胞移植も治療の選択肢になるが、さらなる詳細は成書に譲ることとする。ATTRアミロイドーシス次に、ATTRアミロイドーシスに対する治療について、TTRの歴史とTTRアミロイド線維生成経路を見ながら考えていこう(図7)。(図7)ATTR心アミロイドーシス治療の今とこれから画像を拡大するTTRは127アミノ酸残基からなる血漿タンパク質で、ホモ四量体として肝臓で産生され、血液中においても四量体として存在する。1940年代後半から1950年代前半にかけて発見されたTTRは、栄養状態の指標として用いられていたことから、以前はプレアルブミンと呼ばれていた。この名前は、ゲル電気泳動でアルブミンよりも先に移動することに由来する。プレアルブミンはサイロキシンとレチノール結合タンパク質の輸送を行うことがその後にわかり、1980年にTTRという名称が正式に採用された5)。TTRがアミロイドを形成するには、自然構造である四量体から単量体への解離と単量体の変性が必要であることから、ATTRアミロイドーシスに対する特異的な治療としては、変異型および野生型TTRの産生を特異的に抑制する薬剤(TTR silencers)と、TTRの四量体を安定化し、単量体への解離を抑制する薬剤(TTR stabilizers)がある。なお、アミロイド線維を除去し、組織浸潤を回復させる薬剤(抗TTR抗体製剤)は現在第I相試験が終了1)したところで、まだ実用化には至っていないが、画期的な薬剤であり、今後の展開が大変期待されている(図7)。ちなみに、従来のTTR(プレアルブミン)測定法は、四量体のみを測定するものであるため、ATTRアミロイドーシス症例では血中TTR濃度は低下し、後で述べるTTR安定化薬投与後は上昇することになり、早期診断や予後予測に有用となる可能性があるという報告もある6,7)。これらの薬剤のなかで、RCTで効果が検証された最初の薬剤がタファミジスであり、現在本邦でも生存期間が十分に見込まれるATTR心アミロイドーシス患者に対して2019年3月から保険適用されている。タファミジスは、TTR四量体の2つのサイロキシン結合部位に結合し、その四量体構造を安定化させ、アミロイド形成を抑制するTTR安定化薬(TTR stabilizers)である。第III相ATTR-ACT試験(年齢中央値:75歳、男性:90%)では、ATTRvまたはATTRwt心筋症患者(ATTRwt:76%)において、プラセボと比較して、治療30ヵ月後に全死亡および心血管関連入院が30%減少し、QOL低下が緩やかになることが示された9)。つまり、ATTR-ACT試験は、(1)HFpEFにおける死亡率および心不全入院の減少が初めて示された薬物療法(2)ATTRアミロイドーシスにおける死亡率と病的状態の減少が初めて示された薬物療法(3)末梢性や神経ホルモン調節ではなく心筋に対して中心的に作用してハードエンドポイントへの効果を実証した初めての心不全治療薬これら“3つの初めて”を成し遂げた試験と言える8)。ただし、タファミジスはかなり高額な薬剤(2020年当時、1カプセル43,672.8円、年間の薬剤費は1人あたり6,376万円)であり、米国からも費用対効果に関する論文が発表9)され、費用対効果を高めるためには、92.6%(ビックリ!)の薬価引き下げが必要との報告もあるくらいであり、費用対効果もしっかり考えて処方すべき薬剤であろう。なお、同じTTR安定化薬であるAG10についても、症候性ATTR心筋症患者を対象に、第III相試験(ATTRibute-CM)が現在進行中である。また、TTR silencersとしては、TTR mRNAを選択的に分解して、遺伝子レベルでTTRの産生を特異的に抑制するsiRNA製剤(核酸医薬)であるパチシランが、ATTRvアミロイドーシスの治療薬として本邦でも2019年6月から保険適用されている。そして、現在ATTRwtも含めたATTR心筋症患者に対するパチシランの有効性を検証する第III相試験(APOLLO-B)が進行中である。そして、冒頭でも少し述べた通り、最も切望されている図7の(3)に相当する治療、つまり、抗体を介したATTR線維の貪食と組織からのATTR沈着物の除去を誘導することにより、ATTRを消失させる画期的な治療薬(遺伝子組換えヒト抗ATTRモノクローナルIgG1抗体)の研究も進みつつあり、今年5月に第I相試験(first-in-human)の結果がなんとNEJM誌に掲載され、安全性が確認された1)。その論文には実際に薬剤を使用した患者の画像所見が掲載されているが、沈着したアミロイドが除去されていることを示唆する所見が認められており、今後の第II相、第III相試験の結果が期待される。以上、今回は、早期診断、早期治療がきわめて重要な心アミロイドーシスを取り上げてみた。ぜひ明日からの診療に活かしていただければ幸いである。1)Garcia-Pavia P, et al. N Engl J Med. 2023 May 20.[Epub ahead of print]2)Ioannou A, et al. Eur Heart J. 2023 May 22. [Epub ahead of print]3)Palladini G, et al. Blood. 2016;128:159-168.4)Garcia-Pavia P, et al. Eur Heart J. 2021;42:1554-1568.5)Robbins J, et al.Clin Chem Lab Med. 2002;40:1183-1190.6)Hanson JLS, et al. Circ Heart Fail. 2018;11:e004000.7)Greve AM, et al. JAMA Cardiol. 2021;6:258-266.8)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.9)Kazi DS, et al. Circulation. 2020;141:1214-1224.

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双極性障害ラピッドサイクラーの特徴

 双極性障害(BD)におけるラピッドサイクリング(RC、1年当たりのエピソード回数:4回以上)の存在は、1970年代から認識されており、治療反応の低下と関連する。しかし、1年間のRCと全体的なRC率、長期罹患率、診断サブタイプとの関連は明らかになっていない。イタリア・パドヴァ大学のAlessandro Miola氏らは、RC-BD患者の臨床的特徴を明らかにするため、プロスペクティブに検討を行った。その結果、BD患者におけるRC生涯リスクは9.36%であり、女性、高齢、BD2患者でリスクが高かった。RC患者は再発率が高かったが、とくにうつ病では罹患率の影響が少なく、エピソードが短期である可能性が示唆された。RC歴を有する患者では転帰不良の一方、その後の再発率の減少などがみられており、RCが持続的な特徴ではなく、抗うつ薬の使用と関連している可能性があることが示唆された。International Journal of Bipolar Disorders誌2023年6月4日号の報告。 RCの有無にかかわらずBD患者1,261例を対象に、記述的および臨床的特徴を比較するため、病例および複数年のフォローアップによるプロスペクティブ調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・1年前にRCであったBD患者の割合は9.36%(BD1:3.74%、BD2:15.2%)であり、男性よりも女性のほうが若干多かった。・RC-BD患者の特徴は以下のとおりであった。 ●年間平均再発率が3.21倍高い(入院なし) ●罹患率の差異は小さい ●気分安定に対する治療がより多い ●自殺リスクが高い ●精神疾患の家族歴なし ●循環性気質 ●既婚率が高い ●兄弟や子供がより多い ●幼少期の性的虐待歴 ●薬物乱用(アルコール以外)、喫煙率が低い・多変量回帰モニタリングでは、RCと独立して関連した因子は、高齢、抗うつ薬による気分変調、BD2>BD1の診断、年間エピソード回数の増加であった。・過去にRC-BDであった患者の79.5%は、その後の平均再発率が1年当たり4回未満であり、48.1%は1年当たり2回未満であった。

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成人のアトピー性皮膚炎は静脈血栓塞栓症のリスクか

 アトピー性皮膚炎(AD)の成人患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクが高いことが、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らが実施した住民ベースの全国コホート研究で示唆された。AD成人と非AD成人のVTE発症の絶対差はわずかであったが、著者は、「VTEを示唆する症状を呈するAD成人患者には、心血管系の検査と指導管理を考慮すべきだろう」と述べ、「ADとVTEの関連の基礎をなす、病態生理を解明するため、さらなる研究が求められる」とまとめている。ADの病態メカニズムとして慢性全身性炎症があり、潜在的な血管への影響が考えられることから、複数の心血管疾患についてADとの関連が研究されているが、成人におけるADとVTEの関連はほとんど解明されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月31日号掲載の報告。 研究グループは、住民ベースの全国コホート研究によりADとVTE発症との関連を検討した。台湾のNational Health Insurance Research Databaseから20歳以上の成人(2003~17年に新規にADと診断された成人、および背景因子をマッチングさせた対照成人)を特定し解析した。主要アウトカムは、ADとVTE発症の関連であった。AD患者を重症度で層別化し、Cox比例ハザードモデルを用いて、VTEに関するハザード比(HR)を推算した。 主な結果は以下のとおり。・解析には28万4,858例が含まれた。AD群と非AD群はいずれも14万2,429例で、各群の年齢(平均値±標準偏差)は44.9±18.3歳、44.1±18.1歳、女性は7万8,213例、7万9,636例であった。・追跡期間中に、AD群1,066例(0.7%)、非AD群829例(0.6%)にVTE発症が認められた。・1,000人年当たりの発生率は、AD群1.05、非AD群0.82であり、AD成人は非AD成人と比べてVTE発症リスクが有意に高かった(HR:1.28、95%信頼区間[CI]:1.17~1.40)。・個々のアウトカム解析において、AD成人は深部静脈血栓症(HR:1.26、95%CI:1.14~1.40)および肺血栓塞栓症(同:1.30、1.08~1.57)の発症リスクが高くなることが示唆された。

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スコアに基づくコロナ罹患後症状の定義を提案した論文報告(解説:寺田教彦氏)

 新型コロナウイルス感染症罹患後、数週間から数ヵ月にわたってさまざまな症状が続くことがあり、海外では「long COVID」や「postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC」、本邦では新型コロナウイルス感染症の罹患後症状と呼称されている。世界各国から報告されているが、この罹患後症状の明確な診断基準はなく、病態も判明しきってはいない。WHOは「post COVID-19 condition」について、新型コロナウイルス感染症に罹患した人で、罹患後3ヵ月以上経過しており、少なくとも2ヵ月以上症状が持続し、他の疾患による症状として説明がつかない状態を定義しており(詳細はWHO HP、Coronavirus disease (COVID-19): Post COVID-19 condition.[2023/06/18最終確認]を参照)、本邦の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第2.0版」でも引用されている。 このPASC(本研究同様、コロナ罹患後症状をこの文章ではPASCと記載する)は世界各地から報告されているが、有病率や認められる罹患後症状の頻度は地域差がある。筆者らはこの有病率の違いについて、過去の報告は個々の症状の頻度に焦点を当てている点、後ろ向き研究である点や、非感染者といった比較群が存在しない点が理由ではないかと提案し、本研究では前向きコホート研究の結果に基づいてPASCの疾患定義を作成し、PASCの調査を行っている。 さて、一般に疾患定義は、医師や研究者に疾患の理解や研究を進めるための基準を提供し、原因や病態の推定・把握、治療方法の開発に役立ち、疾患の発生率や流行の推移を追跡するなどの疫学調査を行う場合にも重要である。PASCの定義を作成するに当たって、病態について考えると、PASCは単一の病態で説明することができるのか、先行するCOVID-19により引き起こされる複数の異なる病態なのかはわかっていない。病態が複合的に関与する可能性を提案する論文では(1)持続感染、(2)Epstein-Barrウイルスやヒトヘルペスウイルス6などのような再活性化、(3)腸内細菌叢に対するSARS-CoV-2の影響、(4)自己免疫、(5)微小血管血栓症、(6)脳幹・迷走神経の機能障害といった病態を指摘している(Davis HE, et al. Nat Rev Microbiol. 2023;21:133-146.)。PASCの病態が単一ではない場合は、患者の表現型となる症状も複数のパターンがある可能性があり、治療法も個々の病態で異なるかもしれない。 本研究でも、PASCが複数の病態から構成される可能性は検討しており、PASCのサブグループについても記載があるが、今後の研究によっては、PASCの診断は単一のスコアリングで判断するのではなく、PASCのクラスターごとに診断基準を作成する必要が出てくる可能性がある。また、仮に、診断基準が1つでまとめられることとなったとしても、筆者も述べているように、今回提案された診断定義は、今後のさらなるデータを追加して改良を重ねてゆくことが求められるとともに、世界的な基準とする場合は外的妥当性を確認するための追加研究も必要となる。 最後に、本研究から得られたPASCの特徴についても確認してゆく。 PASC陽性者の特徴は過去の報告と同様の傾向で、オミクロン株以前が流行していた時期の罹患者がオミクロン株流行時期よりもPASCの割合は高く、COVID-19ワクチン接種非完了者のほうが完了者よりも高く、初回感染よりも再感染の患者で罹患率が高かった。また、急性期に入院している患者や、女性でPASC陽性の割合は高かった。 PASCは、オミクロン株ではデルタ株などよりも罹患後症状有病率は低下しているが、COVID-19患者が増えれば、PASCも増加することが懸念される。抗ウイルス薬がPASC予防に有効であることを示唆する後ろ向きコホート研究(Xie Y, et al. JAMA Intern Med. 2023;183:554-564., Xie Y, et al. BMJ. 2023;381:e074572.)も報告されつつあるが、抗ウイルス薬は高価であり、不確定な情報を参考に、COVID-19患者というだけでやみくもに処方するわけにもゆかないだろう。PASCのために困っている患者さんがいることも事実であり、病態解明が進み、より正確な罹患後有病率や罹患因子の把握、抗ウイルス薬のエビデンスが確立して、現在および未来の患者さんによりよいCOVID-19の治療が行われることを願っている。

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