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転移乳がんへのDato-DXd、医師選択化療よりPFS延長(TROPION-Breast01)/ESMO2023

 化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR陽性(+)/HER2陰性(-)の乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験の結果、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、医師選択化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は半数以下であったことを、米国・Massachussetts General Hospital/Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialで報告した。・対象:HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移を有する乳がん患者 732例・試験群:Dato-DXd(6mg/kg、3週ごと)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(Dato-DXd群:365例)・対照群:医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(化学療法群:367例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]治験担当医評価によるPFS、安全性・層別化因子:前治療のライン数、地域、CDK4/6阻害薬の治療歴の有無 Dato-DXdは、第I相TROPION-PanTumor01試験において、手術不能または転移を有するHR+/HER2-の前治療歴のある乳がん患者において有望な活性を示している。今回は、グローバル第III相TROPION-Breast01試験の主要評価項目の1つであるPFSの結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・Dato-DXd群と化学療法群の年齢中央値は56歳(範囲:29~86)/54歳(28~86)、白人が49%/46%、アジア系が40%/41%、1ラインの前治療歴が63%/61%、CDK4/6阻害薬の治療歴ありが82%/78%、タキサン系and/orアントラサイクリン系の治療歴ありが90%/92%で、両群でバランスがとれていた。・データカットオフ(2023年7月17日)時点の追跡期間中央値は10.8ヵ月で、Dato-DXdの93例と化学療法群の39例が治療を継続していた。・主要評価項目であるBICRによるPFSは、Dato-DXd群6.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~7.4)、化学療法群4.9ヵ月(95%CI:4.2~5.5)であり、Dato-DXd群で有意にPFSが改善された(HR:0.63[95%CI:0.52~0.76]、p

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切除不能または転移を有する尿路上皮がん1次治療、化療へのニボルマブ追加でOS改善(CheckMate 901)/ESMO2023

 切除不能または転移を有する尿路上皮がんの1次治療として、シスプラチンベースの化学療法へのニボルマブの追加が全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。日本も参加している第III相CheckMate 901試験の結果を、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのMichiel S. van der Heijden氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。なお本結果は、2023年10月22日にNEJM誌オンライン版へ同時掲載されている。・対象:シスプラチン適格、未治療の切除不能または転移を有する尿路上皮がん患者(18歳以上、ECOG PS 0~1)・試験群:ニボルマブ(360mg、1日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2、1日目・8日目)+シスプラチン(70mg/m2、1日目)を3週ごとに最大6サイクルまで→ニボルマブ(480mg)を4週ごとに疾患進行/許容できない毒性の発現または最大2年まで 304例・対照群:ゲムシタビン+シスプラチン 304例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるOS、PFS[副次評価項目]PD-L1≧1%におけるOS、PFS、健康関連QOL(HRQOL)[探索的評価項目]BICRによる奏効率(ORR)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況(≧1% vs.

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年齢別、コロナ後遺症の発生頻度

“コロナ後遺症(罹患後症状)”どのくらいの頻度で報告されている?[年齢別]6.0%およそ新型コロナウイルス感染後、3ヵ月以上続く何らかの症状があった人の割合20人に1人5.0%4.7%およそ30人に1人3.8%4.0%およそ40人に1人およそ45人に1人3.0%2.7%2.3%2.0%およそ125人に1人およそ1.0%500人に1人およそ330人に1人0.2%0.3%0~5歳6~11歳0.8%0.0%12~17歳18~34歳35~49歳50~64歳65歳以上出典:CDC「Update: Epidemiologic Characteristics of Long COVID」2023 Sep 12.米国の「2022 National Health Interview Survey」データよりCopyright © 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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英語で「注意を払う」は?【1分★医療英語】第102回

第102回 英語で「注意を払う」は?《例文1》医師ACan you put this patient on your radar?(この患者さんに注意を払ってもらえますか?)医師BSure, I can.(いいですよ)《例文2》医師I am sorry but this patient was not on my radar.(申し訳ないが、この患者のことは知りませんでした)看護師No worries, Dr.(大丈夫ですよ)《解説》“put(be) on one's radar”という表現は、医療現場以外でも使われる、知っておくと有用な表現の1つです。イメージとしては、直訳した「誰かのレーダーに映す」という表現から、「“何か”を“誰か”の意識下におく」といった意味になります。日本語としては「(誰かの)耳に入れる」「注意を払う」「知っておく」といった意味になります。医療現場では、気になる患者さんや情報を誰かと共有したい場合に、主に医師同士の会話で使うことが多いです。日本で学習する表現の中にはまず出てこないと思いますので、ぜひ覚えて使ってみてください。逆に、「意識下から外れている」、つまり「把握していない」と言いたいときには、“under the radar”という表現を使います。講師紹介

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第186回 手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された

手術不要の狙いどおりの脳深部刺激がヒトに初めて施された手術で脳内に移植した電極による脳深部刺激(DBS)はパーキンソン病などの重度の運動疾患や強迫性障害(強迫症)などの気分障害の治療手段として世界で広く使われています。用途の拡大も期待され、たとえば治療抵抗性うつ病やアルツハイマー病へのDBSの試験が実施されています。しかし脳手術につきものの危険性や合併症がDBSの可能性を狭めています。手術不要のDBSの実用化を目指し、頭の外側からの磁気や電気を送る手段が多くの臨床試験で検討されてきました。そのような経頭蓋磁気/電気刺激を基底核や海馬などの脳の奥深くの領域に到達させるにはそれらを覆う脳領域も広く一緒に刺激してしまうことが避けられず、余計な副作用の心配があります。そこで英国のImperial College Londonの認知症研究者Nir Grossman氏らは脳に置いた電極が発する電場によって脳の奥深くのみを遠隔刺激しうる手段を編み出し、その意図どおりの効果を示したマウス実験成果を2017年に報告しました1)。Grossman氏らがtemporal interference(TI)と呼ぶその手術不要の手段はマウスの海馬をそれに被さる領域に手出しすることなく刺激することができました。検討はその後さらに進み、先週Nature Neuroscience誌に発表された臨床試験の結果、いまやTIはマウスと同様にヒトの脳の奥深くも刺激しうることが裏付けられました2)。Grossman氏らはまず死者の脳を使った検討で電場が海馬のみ相手しうることを確認し、続いて健康な20例を募ってTIによる海馬刺激を試みました。被験者には顔と名前の組み合わせを記憶する課題をしてもらい、その最中の被験者の脳にTIを施しました。海馬は言わずもがな記憶や学習を司る脳領域であり、被験者がした課題は海馬の働きを必要とします3)。fMRIで被験者の脳の活動を測定したところ、TIは海馬の活性のみ調節し、記憶の正確さが改善しました。Nature Neuroscience誌に時を同じくして発表された別の報告4)ではヒトの線条体をTIによって活性化し、運動記憶機能が改善したことが確認されています。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)が率いた研究の成果です。Grossman氏らの成果はまったく新しいアルツハイマー病治療の道を切り開くものです。初期段階のアルツハイマー病患者へのTIの臨床試験が早くもGrossman氏の指揮の下で始まっており、被験者集めが進行中です5)。アルツハイマー病で侵された脳領域の活動がTIを繰り返すことで正常化し、記憶障害の症状が改善することを期待しているとGrossman氏は述べています3)。参考1)Grossman N, et al. Cell;169:1029-1041.2)Violante IR, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]3)Surgery-free brain stimulation could provide new treatment for dementia / Imperial College London4)Wessel MJ, et al. Nat Neurosci. 2023 Oct 19. [Epub ahead of print]5)Recruiting to a new landmark trial to treat dementia by sending electrical currents deep into the brain.

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妄想性障害と統合失調症患者の臨床アウトカムの違い

 妄想性障害は統合失調症と比較し、予後不良であるといわれているが、発症年齢の差異は十分に考慮されていなかった。香港大学のChristy Lai Ming Hui氏らは、年齢をマッチングした初発精神疾患の中国人患者において、4年後の妄想性障害および統合失調症の診断に関する安定性および臨床的・機能的・神経認知的差異を調査した。BMC Psychiatry誌2023年9月18日号の報告。 妄想性障害患者71例と年齢をマッチさせた統合失調症患者71例を対象に、初発エピソードから4年間のフォローアップ調査を実施した。4年経過時点での症状、精神疾患に関する洞察力、薬剤性副作用、服薬コンプライアンス、機能、神経認知能力を評価した。 主な結果は以下のとおり。・4年時点で、妄想性障害患者の25例は、診断が統合失調症へ変化していた。・分析には、診断が変化しなかった妄想性障害患者46例(65%)のみを含めた。・妄想性障害患者(46例)は、統合失調症患者(71例)と比較し、精神病理学的症状がより大きく、洞察力が低下していたが、服薬に対する態度は良好であった。・社会的機能、職業的機能、QOL、認知機能については、両疾患で同様であった。 著者らは、「妄想性障害の診断は、統合失調症の診断より安定性を欠いていることが示唆された。中国人集団における両疾患患者の臨床アウトカムが、年齢の交絡因子を除いた4年後においてほぼ同様であったことを踏まえると、妄想性障害と統合失調症は、これまで考えられていたほどには区別できない可能性がある」としている。

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MSI-H胃がん1次治療のニボルマブ+イピリブマブ、初回奏効率62%(NO LIMIT/WJOG13320G)/ESMO2023

 ニボルマブと低用量イピリムマブの併用は、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)大腸がんの第1みた選択療法として有用性を示している。一方、胃・胃食道接合部がん(G/GEJ)におけるMSI-Hの患者は5%程度とされ、同レジメンのMSI-H胃がん1次治療に対する有用性をみた、医師主導、国内単群非盲検第II相NO LIMIT(WJOG13320G/CA209-7W7)試験の初回解析結果を、愛知県がんセンターの室 圭氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療で切除不能の進行再発転移G/GEJ、MSI-H、PS0~1・試験群:ニボルマブ(240mg)2週ごと+イピリムマブ(1mg/kg)6週ごと、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2020年11月~2022年8月、国内75施設から935例がスクリーニングされ、29例が登録された。年齢中央値75(SD:54~84)歳、44.8%が男性であった。・データカットオフ(2022年12月12日)時点で、3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%信頼区間[CI]:42.3~79.3)であった。・DCRは79.3%(95%CI:60.3~92.0)であった。追跡期間中央値9.0ヵ月(SD:4.0~18.0)時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未達であった。・12ヵ月PFS率は73%(95%CI:52~86)、OS率は80%(95%CI:57~91)であった。・Grade3の有害事象が11例、Grade4が1例発現した。治療中止の最も多い理由は有害事象であったが、安全性プロファイルは既知のプロファイルと一致していた。治療関連死は観察されなかった。 室氏は「ニボルマブと低用量イピリムマブ併用によるケモフリー戦略は、MSI-HのG/GEJ患者において良好な忍容性とともに高く強固な有効性を示した。本試験は、胃がんMSI-H患者の1次治療における本レジメンの有用性を示した世界初の試験であり、引き続き長期フォローアップとバイオマーカー探索を行う予定」とした。 ディスカッサントのバレンシア大学病院・Tania C. Fleitas氏は、CheckMate 649試験(胃がん1次治療のニボルマブ+化学療法)、CheckMate 142試験(MSI-H大腸がんへのニボルマブ+イピリムマブ)を参照しつつ、「ニボルマブ+低用量イピリムマブは、MSI-H胃がん患者のORRに有意な影響を与えた。結果はほかの研究と一致しており、今後はさらに胃がん患者へのMSI検査、MSI-H患者への免疫療法を強く考慮すべきだろう」とした。

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ER+乳がんの術前化療にペムブロリズマブ追加、pCRを有意に改善(KEYNOTE-756)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相KEYNOTE-756試験の結果、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善したことを、ポルトガル・Champalimaud Clinical Centre/Champalimaud FoundationのFatima Cardoso氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、ER+/HER2–、Grade3、未治療の浸潤性乳管がん患者 1,278例・試験群(ペムブロリズマブ群):ペムブロリズマブ+パクリタキセル→ペムブロリズマブ+AC療法またはEC療法→手術→ペムブロリズマブ+内分泌療法 635例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法またはEC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 643例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)、無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR(ypT0 ypN0およびypT0/Tis)、全生存期間、安全性など・層別化因子:東ヨーロッパ:PD-L1発現状況、中国:なし、その他の国/地域:PD-L1発現状況、リンパ節転移、AC/EC療法の投与スケジュール、ER陽性率 今回がKEYNOTE-756試験結果の初報告で、主要評価項目の1つであるpCRの結果が報告された。EFSについては引き続き評価が行われる予定。 主な結果は以下のとおり。・pCRの最終解析(データカットオフ:2023年5月25日)における追跡期間中央値は33.2ヵ月(範囲:9.7~51.8)であった。・ペムブロリズマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は49歳(範囲:24~82)/49歳(19~78)、PD-L1 CPS≧1%が75.9%/76.0%、T3/4が36.7%/35.8%、リンパ節転移陽性が89.8%/90.5%、ER≧10%が94.6%/93.3%で、両群でバランスがとれていた。・主要評価項目のpCR(ypT0/Tis ypN0)は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示した(推定差8.5%[95%信頼区間[CI]:4.2~12.8]、p=0.00005)。・副次評価項目のpCRは、ypT0 ypN0がペムブロリズマブ群21.3%、プラセボ群12.8%(推定差8.3%[95%CI:4.2~12.4])、ypT0/Tisはペムブロリズマブ群29.4%、プラセボ群18.2%(推定差11.0%[95%CI:6.5~15.7])であった。・事前に規定したサブグループのpCRもペムブロリズマブ群のほうが良好であった。とくにER陽性率が10%以上の場合の推定差は8.0%であったが、10%未満の場合は25.6%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は、ペムブロリズマブ群52.5%、プラセボ群46.4%で、安全性プロファイルは既報と一致していた。Grade3以上の免疫関連有害事象はペムブロリズマブ群7.1%、プラセボ群1.2%であった。ペムブロリズマブ群では急性心筋梗塞による死亡が1例(0.2%)認められた。 これらの結果より、Cardoso氏は「PD-L1発現状況にかかわらず、術前化学療法にペムブロリズマブを追加することで、pCR(ypT0/Tis ypN0)は8.5%改善し、ypT0 ypN0およびypT0/Tisでも同様であった。安全性プロファイルはこれまでのものと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで、「今回の結果は、もう1つの主要評価項目であるEFSの評価を行うに値する結果である。現時点ではまだ不十分であるが、引き続き評価が必要である」とまとめた。

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味覚障害に耐えられない症例に対する処方は注意せよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ゲーファピキサント(商品名:リフヌア)は、選択的P2X3受容体拮抗薬である。P2X3受容体は気道に分布する迷走神経のC線維と呼ばれる求心性神経線維末端にあるATP依存性イオンチャネルである。C線維は炎症や化学物質に反応して活性化される。ATPは炎症により気道粘膜から放出され、シグナル伝達を介して咳嗽反応を惹起させる。ゲーファピキサントはP2X3受容体を介したATPシグナル伝達を遮断することにより、感覚神経の活性化や咳嗽の抑制効果が期待されている薬剤である。現在、慢性咳嗽の原因となりうる病歴・職業歴・環境要因・検査結果などを踏まえた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が続く場合、いわゆる難治性の慢性咳嗽に適応となっている。実臨床下では、慢性咳嗽の症例に一般的な鎮咳薬や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬が適切に使用されても改善が得られない場合に処方を検討する薬剤となっている。 2005年に亀井らにより咳嗽にP2X3が関与していることが示唆(Kamei J, et al. Eur J Pharmacol. 2005;528:158-161.)されて以来、ゲーファピキサントの開発が進んできた。国際共同第III相試験である「COUGH-1試験」では、治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例732例を対象に、ゲーファピキサント15mg 1日2回群、45mg 1日2回群、プラセボの3群が比較検討された(McGarvey LP, et al. Lancet. 2022;399:909-923.)。主要評価項目としては有効性として12週での24時間当たりの咳嗽頻度が評価された。732例のうち、気管支喘息は40.7%、胃食道逆流症が40.5%、アレルギー性鼻炎が19.7%含まれた。主要評価項目である咳嗽頻度はゲーファピキサント45mg群でベースラインに1時間当たり28.5回認めていたものが、12週時点で14.4回に減少。プラセボ群に対する相対減少率も-18.45%と有意差をもって咳嗽頻度を改善したとされた。また24週時点でも評価された「COUGH-2試験」でも同様の結果が示された。 今回取り上げたKum氏らのCOUGH-1, 2試験を含むメタ解析でも、ゲーファピキサント45mg群はプラセボ群と比較し、覚醒時の咳嗽頻度を17.6%減少させ、咳嗽の重症度や咳嗽に起因するQOLも、わずかではあるが改善させるとの結果であった。実臨床においても、呼吸器内科医が詳細に問診をとり、診察を行い、各医療機関でできる検査を組み合わせて適切な診断や治療を行っても残ってしまう難治性咳嗽の症例は時々見掛けることがある。そのような症例に対し、奥の手としてゲーファピキサントが選択されることがある。ただ、もちろん他の治療や環境因子に介入しても改善しなかったしつこい咳嗽に対する処方なので、他の鎮咳薬などの治療選択肢と比べて劇的な効果への期待は難しいことが多い。COUGH-1, 2試験では「治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例」が含まれているが、ゲーファピキサントがより効果的な症例は喘息なのか、COPDなのか、間質性肺炎なのか、はたまた他の慢性咳嗽の原因となりうる疾患なのか、そのあたりが今後の臨床試験で明らかになると、ゲーファピキサントの立ち位置がよりはっきりしてくるのだろう。 またCOUGH-1, 2試験の併合解析でも指摘されているが、味覚に関する有害事象が高いことが知られている。ゲーファピキサントの承認時資料によると、味覚に関連する有害事象の発現時期としては、中央値で2.0日、1週間以内に52.7%の方が味覚に関する異常を訴えるとされている。さらに気になるところは、有害事象の平均持続期間が200日以上と想像以上に長いことも指摘されている。Kum氏らの報告でも味覚関連有害事象が100人当たり32人増加するとされ、効果に比べて有害事象の懸念が考えられた。 ゲーファピキサントはあくまで症状に対する対症療法に位置付けられる薬剤であり、原疾患に対する薬剤ではない。実際の現場において、内科の短い診療時間で味覚に対するきめ細やかな対応は困難であることが予想されるため、できれば歯科/口腔外科や、看護スタッフ、薬剤師、栄養士などの介入があるとよいだろう。味覚に関する有害事象で困るようであれば、1日1回に減量する、一定期間薬剤を中止するなどの対応も必要となる。承認時資料によると、通常用量の1/3量のゲーファピキサント15mgでは味覚障害の有害事象の頻度は17.5%と報告されているので、投与量の減量は有効な手段の1つと考えられる。また、有害事象を起こしやすい、あるいは起こしにくい患者背景がわかると、処方を勧める1つのきっかけになると考える。 実臨床では、慢性咳嗽で一般的な治療で難治と考えられる症例に、ゲーファピキサントが考慮される。エビデンスのない領域であるが、肥満が問題となっている喘息症例で適切な治療を行っても咳嗽が残ってしまう症例に対し、ゲーファピキサントで咳嗽が抑えられ、食欲も制限されたら、もしかしたら喘息のコントロールも改善するかもしれない。ただし、味覚に関連する有害事象の発現で致命的になりうるような悪液質状態の肺がん症例や、るい痩が進んできているCOPDや間質性肺炎に対する慢性咳嗽に対しては、安易に処方することのないようにされたい。

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金の話をする人間は卑しいのか?猫と暮らすQALYを考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第65回

費用対効果分析の意義世界的なインフレの波が日本にも押し寄せています。日本で物価が上がっていることを実感する機会が増えてきました。しかし、世界の先進国と比べると上昇率はまだ緩やかなのかもしれません。私は2023年8月末にオランダ・アムステルダムで開催された欧州心臓病学会(ESC2023)に参加しました。会場のキオスクで昼食を購入して驚きました。おいしくもないハンバーガーが、14.5ユーロでした。1ユーロが158円でしたので、日本円に換算すると2,291円となります。日本では500円ほど、絶対に1,000円を超えることはない質感でした。円安と日本の国力の低下を痛感しました。出費には、それに見合う対価が求められます。費用対効果、いわゆるコスパです。費用対効果分析は医療の現場でも意義を増し、この分野に特化した学問領域が進化しています。治療に掛かる費用は、安ければ良いというわけではありません。安価でも効かない薬や質の悪い医療では、「安物買いの銭失い」となります。一方で、効果が高くとも、法外に高額な治療では手が届かず、公的医療の枠組みを超えてしまいます。費用に見合う効果のバランスが取れていることが鍵となります。あらゆる疾患に共通する治療効果指標「QALY」医療における費用対効果を分析する場合に、効果をどのように測定するかが問題です。風邪を引いた場合には解熱することが求められ、がんの治療ならば再発せずに長生きすることが求められ、変形性膝関節症では痛みなく日常生活が可能となることが効果として求められます。風邪・がん・変形性膝関節症と、疾患ごとにバラバラの効果指標で費用対効果を算出すると、その解釈も疾患ごとにバラバラとなります。あらゆる疾患に共通する効果指標としてQALYが考案され国際的に活用されています。これは、Quality-Adjusted Life Yearの略語で、「クオリー」と呼ばれ日本語では「質調整生存年」と訳されます。瀕死の病の状態から、医療により同じ1年間を長生きすることができたとしても、思うままにできる元気な1年間と、寝たきりで身動きがとれない1年間では、多くの人は前者のほうが望ましいと考えます。生存期間で見ればどちらも1年ですが、前者は後者よりも質の高い状態なので、治療により得られる1年間の価値も大きくなります。このように、生存している期間に加えて質も同時に反映する評価指標がQALYです。QALYの値は、1(完全な健康)から0(死亡)までの値を取ります。完全な健康状態で過ごした1年間は1QALYであり、人がその年の価値の100%を得ることができたと解釈します。完全な健康状態ではない状態で生きた1年間は、価値の量が低下します。たとえば、効用が0.5の状態で1年間生きた場合、0.5QALYが得られます。この人は、その年に得られる最高の価値の量の50%しか得ていないという意味です。言い換えれば、0.5の健康状態で1年間を生きる価値の量は、完全な健康状態で半年間を生きることと同程度の価値の量があることを意味します。QALYは1QALY、2QALYと数えることができ、0.8の状態で10年間生存すれば0.8×10=8QALYとなります。ICER:1QALY延ばすために要するコスト従来からある標準的な治療と効果が高いと期待される新規治療と比べた場合に、QALYを1単位獲得するのにいくらコストが掛かるかを表す指標をICER(Incremental Cost-Effectiveness Ratio)と呼びます。要は、1QALYを延ばすために要するコストで、この値が医療行為を社会に導入する是非の基準となります。たとえば、新たな治療により比較対照と比べて500万円余分に掛かるけれども、2年間の延命が期待できれば、ICERは500万円/2年=250万円/年となります。これは、追加的に1年間生きるのにあと250万円のコストが掛かるということになります。イギリスでは、1QALY当たりに認めるコストの目安として2万~3万ポンドと設定しています。日本円に換算すると、1QALYを得るのに必要なコストは500万円程度までは容認されるという考えです。ICERが500万円/QALYを超える医薬品は、薬価の引き下げが検討されるなど医療政策に活用されています。今、議論に向き合わなければならないこのように医療の経済的な側面について考えることは、「金の話なんて、卑しいからするな」と感じる方もいるかもしれません。「人の命は地球よりも重い」という言葉がありますが、本当にそうでしょうか。医療費はだれかが負担しなければならないことは間違いありません。今を生きる私たちが費用を負担していないのであれば、いつか誰かがツケを支払わねばなりません。おそらく子や孫の世代です。一般の社会でも、支払い能力を考えずにただ金を使いまくる人間は愚か者と考えられています。国がなんとかしてくれると思考を放棄するのは「ドラ息子」の所業です。あえて目を背けたい事柄だからこそ、歯を食いしばって向き合う必要があります。今を生きる世代の人間は、次の世代や次の次の世代を巻き込むことは避けるべきであり、そのための議論を放棄してはならないと考えます。この困難な話題について原稿を書いていると、わが家の「ドラ息子」ともいえる愛猫の「レオ」が遊んでくれとやってきました。ゴロゴロいってスリスリしてきます。猫と暮らすことの費用対効果を考えてみます。猫の飼育コストには、食事、猫用品(トイレ、ベッド、おもちゃなど)、健康ケア(ワクチン、予防医療、獣医さんへの診療費)などが含まれます。遊んだり、トイレの世話をしたり、愛情を注いだりするために時間とエネルギーを費やすことも経費です。効果については、猫は癒しや楽しみを提供してくれます。彼らの愛らしい行動や一緒に過ごす時間は、ストレス軽減や幸福感向上に寄与します。猫と遊ぶことは、同居する人間にとってもアクティビティの機会になります。猫を飼うことは責任感を養う機会でもあります。猫と暮らす1年は2QALY、いや5QALY以上の価値があります。今回も結局は猫自慢の話になってしまいました。

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点滴用複合ビタミン剤でアナフィラキシー【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第243回

点滴用複合ビタミン剤でアナフィラキシーphoto-ACより使用長らく医師をしていると、いろいろな製剤によるアナフィラキシーを見聞きしたことがあるかと思います。私は大阪府に住んでいるので、お好み焼き粉の中のダニによるアナフィラキシーの話をよく耳にします。さて、わりと安全と思われるものであっても、アナフィラキシーは必ず報告されています。今回は、点滴用複合ビタミン剤です。熊谷 淳, 他.点滴用複合ビタミン剤中のビタミンB1誘導体によるアナフィラキシーの1例.アレルギー. 2023;72(5): 479-484.下部消化管感染症に対して、抗菌薬の点滴に加えて点滴用複合ビタミン剤を投与したところ、アナフィラキシーを発症したというものです。抗菌薬のアレルギーであればわかるのですが、点滴用複合ビタミン剤1%皮内テストが陽性となり、成分別検査ではビタミンB1誘導体のリン酸チアミンジスルフィドのプリックテストが陽性となりました。これによって、点滴用複合ビタミン剤中のリン酸チアミンジスルフィドによるアナフィラキシーということが診断されました。この症例ではフルスルチアミン塩酸塩で陽性を示し、交差反応の可能性が想定されました。いやー、これ結構怖いですよね。まさかビタミンが原因なんて、現場で予想できないかもしれません。ビタミンB1誘導体は、ビタミンB1の構造の一部分を変化させた化合物です。より吸収されやすく、組織移行性が高いとされています。極めてまれではありますが、どのような製剤でもアナフィラキシーの可能性を考えておく必要がありますね。あともうひとつ重要なポイントとして、ビタミンB1欠乏症の状況で急速に大量のビタミンB1を静注すると、クエン酸回路を経由してATPが産生されるカスケードが進みます。このATPによって喉頭に喘鳴を来し、あたかもアナフィラキシーに見えることがあります1)。これを「ビタミンB1ショック」といいます。1)川崎 武, 他. ビタミンB1ショックの1例. 日本内科学会雑誌. 1962;51(3):54-60.

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より取り見取りの学習ソース 米国の継続医学教育(CME)とは?【侍オンコロジスト奮闘記】第153回

第153回:より取り見取りの学習ソース 米国の継続医学教育(CME)とは?参考MedscapeMedscape CME & EDUCATIONResearch To PracticePhysicians’ Education ResourceClinical Care OptionsTargeted OncologyVuMediOncology Learning NetworkGRACE

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統合失調症の初回エピソード後の長期的な症状の軌跡~OPUS研究より

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarie Starzer氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者における初回エピソード後の陽性症状および陰性症状の20年間の軌跡を特定し、これらと関連する患者のベースライン特性と長期アウトカムについて調査するため、OPUS試験参加者の再評価を行った。World Psychiatry誌2023年10月号の報告。 対象は、ICD-10により統合失調症スペクトラム障害と診断された患者373例。症状は、陽性症状評価尺度(SAPS)および陰性症状評価尺度(SANS)を用いて、ベースライン時および1、2、5、10、20年後に評価を行った。潜在クラス成長混合モデルを用いて症状の軌跡を特定し、多項回帰分析を用いて特定された症状の軌跡の予測因子を調査した。 主な結果は以下のとおり。・陽性症状では、5つの軌跡が特定された。 ●継続的な寛解(50.9%) ●安定した改善(18.0%) ●断続的な症状(10.2%) ●中程度の症状を伴う再発(11.9%) ●重篤な症状の継続(9.1%)・中程度の症状を伴う再発の予測因子は、物質使用障害(オッズ比[OR]:2.82、95%信頼区間[CI]:1.09~7.38、p=0.033)、未治療期間の長さ(OR:1.02、95%CI:1.00~1.03、p=0.007)、陰性症状レベルの高さ(OR:1.60、95%CI:1.07~2.39、p=0.021)であった。・重篤な症状の継続の予測因子は、未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.030)のみであった。・陰性症状では、2つの軌跡が特定された。 ●症状の寛解(51.0%) ●症状の継続(49.0%)・症状の継続の予測因子は、男性(OR:3.03、95%CI:1.48~6.02、p=0.002)および未治療期間の長さ(OR:1.01、95%CI:1.00~1.02、p=0.034)であった。・陽性症状(Zスコア:-0.78、CI:-1.39~-0.17)および陰性症状(Zスコア:-0.33、CI:-0.53~-0.13)の継続は、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)で測定した認知機能低下と関連が認められた。・20年間のフォローアップ調査では、陽性症状(78%)および陰性症状(67%)の継続は、抗精神病薬の使用量増加とも関連が認められた。 まとめ・初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害患者の多くは、陽性症状の早期安定・寛解を伴う軌跡をたどっていることが示唆された。・長期にわたる未治療、薬物乱用の併発は、症状不良の修正可能な予測因子である。・統合失調症スペクトラム障害患者の半数は、時間が経過しても陰性症状の改善が認められなかった。・これらの症状は、社会的機能や認知機能の低下と関連していることに加え、患者が援助を求めることへの妨げとなっている可能性が示唆された。

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長時間睡眠で認知障害リスク増、特定のアミノ酸不足でさらに増~日本人での研究

 睡眠時間とアミノ酸摂取量は、独立して認知機能の低下と関連している。今回、国立長寿医療研究センターの木下 かほり氏らは、60歳以上の地域住民における睡眠時間と認知障害発症の長期的な関連と食事による19種類のアミノ酸摂取量の関与を調べた。その結果、長い睡眠時間(8時間超)が認知障害発症率と有意に関連し、さらに、長時間睡眠者でシスチン、プロリン、セリンの摂取量が少ない人は認知障害を発症しやすいことがわかった。BMC Geriatrics誌2023年10月11日号に掲載。 本研究は地域ベースの縦断的研究で、ベースラインで認知障害のない60〜83歳の成人623人のデータを分析した。睡眠時間は自己申告質問票から、アミノ酸摂取量は3日間の食事記録から取得した。認知障害はMMSE(ミニメンタルステート検査)スコアが27以下と定義した。ベースラインの睡眠時間で、短時間睡眠群(6時間以下)、中程度睡眠群(7~8時間)、長時間睡眠群(8時間超)に分類し、認知障害発症率について中程度睡眠を基準とした短時間睡眠と長時間睡眠でのオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を推定した。また、19種類のアミノ酸の摂取量の性別層別四分位数(Q)で、Q1を低摂取量群、Q2~Q4を中~高摂取量群とし、各睡眠時間群の認知障害発生率について中~高摂取量を基準とした低摂取量でのORと95%CIを推定した。 主な結果は以下のとおり。・平均追跡期間は 6.9±2.1年だった。・認知障害の調整後OR(95%CI)は、短時間睡眠群が0.81(0.49~1.35、p=0.423)、長時間睡眠群が1.41(1.05~1.87、p=0.020)だった。・とくに長時間(8時間超)睡眠者では、認知障害がシスチン(調整後OR:2.17、95%CI:1.15~4.11、p=0.017)、プロリン(調整後OR:1.86、95%CI:1.07~3.23、p=0.027)、セリン(調整後OR:2.21、95%CI:1.14~4.29、p=0.019)の低摂取と有意に関連していた。 著者らは「地域在住の60歳以上の成人において、睡眠時間が長い人は認知機能が低下する可能性が高い」とし、「長時間の睡眠をとる人は、穀物を減らし、豆類、野菜、魚介類、肉、卵、牛乳、乳製品を多く含む食事を取り入れて、シスチン、プロリン、セリンの欠乏に注意することが重要かもしれない」と考察している。

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術前ICI+化学療法でcCRの膀胱がん、膀胱温存可能か?/Nat Med

 筋層浸潤性膀胱がんは、膀胱全体を摘出する膀胱全摘除術が標準治療とされているが、尿路変向の必要があり、合併症や死亡のリスクも存在する。抗PD-1抗体薬と化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)の併用による術前化学療法で膀胱がん患者の40~50%で病理学的完全奏効(pCR)が得られることが報告されているが1,2)、pCRは膀胱全摘除術後に判定する必要がある。そこで米国・マウントサイナイ・アイカーン医科大学のMatthew D. Galsky氏らの研究グループは、術前化学療法により臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者が安全に膀胱全摘除術を回避できるか検討した。その結果、cCRが得られた患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避し、32例における2年無転移生存率は97%であり、膀胱温存の可能性が示された。・試験デザイン:海外多施設共同第II相医師主導治験(HCRN GU16-257試験)・対象:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)に基づき筋層浸潤性膀胱がん(cT2-4N0M0)と診断され、シスプラチンに適格の18歳以上の患者76例・治療:ゲムシタビン(1、8日目に1,000mg/m2)+シスプラチン(1日目に70mg/m2)+ニボルマブ(1日目に360mg)を4サイクル(21日1サイクル)投与した。cCRを達成し、膀胱全摘除術を回避した患者はニボルマブ(240mg、隔週)を8サイクル投与した。cCRを達成しなかった患者は術前化学療法後に膀胱全摘除術を実施することとした。・評価項目:[複合主要評価項目]cCR(生検、細胞診で悪性腫瘍なし、画像検査で局所再発/転移なし)達成率、cCRの陽性的中率(膀胱全摘除術を回避した患者:2年無転移生存、膀胱全摘除術を実施した患者:pT1N0未満で評価、95%信頼区間[CI]の下限値が80%超で複合主要評価項目達成)[副次評価項目]体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)とcCRの陽性的中率の関連、無転移生存期間(MFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・4サイクルの治療終了後に病期の再分類評価が行われた72例中、43%(33/72例)がcCRを達成した。・cCRを達成した患者の観察期間中央値は30ヵ月(範囲:18~42)であった。・cCRを達成した患者33例中32例が膀胱全摘除術を回避した。・cCRの陽性的中率は97%(95%CI:0.91~1)であり、複合主要評価項目を達成した。・cCRを達成した患者は達成しなかった患者と比較して、MFSおよびOSが有意に延長した(それぞれp=0.007、p=0.003)。・体細胞変異(ERCC2、FANCC、ATM、RB1)およびTMB高値(≧10mut/Mb)はcCRの陽性的中率を改善しなかった。・Grade3以上の有害事象は75%の患者に発現し、主なものは好中球数減少(34%)、尿路感染(17%)、貧血(16%)であった。全Gradeの主な有害事象は疲労(76%)、貧血(75%)、好中球数減少(68%)、悪心(58%)であった。

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1型DM妊婦の血糖コントロール、クローズドループ療法vs.標準療法/NEJM

 1型糖尿病の妊婦において、ハイブリッドクローズドループ(HCL)療法は標準インスリン療法と比較し妊娠中の血糖コントロールを有意に改善することが示された。英国・Norfolk and Norwich University Hospitals NHS Foundation TrustのTara T. M. Lee氏らが、同国9施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Automated insulin Delivery Amongst Pregnant women with Type 1 diabetes trial:AiDAPT試験」の結果を報告した。HCL療法は、非妊娠成人および小児において血糖コントロールを改善することが報告されているが、妊娠中の1型糖尿病の管理における有効性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年10月5日号掲載の報告。1型糖尿病妊婦124例を、妊娠16週までに無作為化 研究グループは、1型糖尿病の罹病期間が12ヵ月以上の18~45歳の妊婦で、妊娠初期の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が6.5%以上の妊婦を、妊娠16週までにHCL群または標準インスリン療法(1日複数回の注射またはインスリンポンプによる強化インスリン療法)群に無作為に割り付け、両群とも持続血糖モニタリング(CGM)を行い追跡評価した。 主要アウトカムは、妊娠16週から出産までのCGMによる妊娠期特有目標血糖値範囲(63~140mg/dL)内の時間の割合とし、ITTの原則に従って解析した。 重要な副次アウトカムは、高血糖状態(血糖値>140mg/dL)の時間の割合、夜間における目標血糖値範囲内の時間、HbA1c値および安全性であった。 2019年9月~2022年5月の期間に、334例がスクリーニングされ、このうち124例が無作為化された(HCL群61例、標準療法群63例)。平均(±SD)年齢は31.1±5.3歳で、ベースライン時の平均HbA1c値は7.7±1.2%であった。目標血糖値範囲内の時間の割合は68% vs.56%で、HCL療法群が有意に高率 主要アウトカムである目標血糖値範囲内の時間の平均割合は、HCL群68.2±10.5%、標準インスリン療法55.6±12.5%、平均補正後群間差は10.5%(95%信頼区間[CI]:7.0~14.0、p<0.001)であった。 副次アウトカムの結果は主要アウトカムの結果と一致しており、HCL群が標準療法群より高血糖状態の時間の割合が少なく(群間差:-10.2%、95%CI:-13.8~-6.6)、夜間における目標範囲内の時間の割合が多く(12.3%、8.3~16.2)、HbA1c値が低かった(-0.31%、-0.50~-0.12)。 重度低血糖症イベントはHCL群で6件(被験者4例)、標準療法群で5件(5例)に、糖尿病性ケトアシドーシスは各群1例に認められた。HCL群におけるデバイス関連有害事象の発現頻度は24.3件/100人年で、HCLの使用に関連した事象が7件、CGMに関連した事象が7件であった。

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脳梗塞急性期の降圧治療開始、早期vs.8日目/BMJ

 発症から24~48時間以内の軽度~中等度急性虚血性脳卒中で、収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満かつ静脈内血栓溶解療法を受けなかった患者において、早期降圧治療は8日目以降開始の降圧治療と比較し、90日時点の機能的依存(後遺症)や死亡を低下させることはなかった。中国・首都医科大学のLiping Liu氏らが、多施設共同無作為化非盲検評価者盲検比較試験「China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke:CATIS-2試験」の結果を報告した。急性虚血性脳卒中患者において、発症後3日以内の早期降圧治療は無治療と比較し、90日時の機能的依存または死亡のリスクに影響を与えないことが示されていたが、早期降圧治療と遅延降圧治療の比較試験はなかった。BMJ誌2023年10月9日号掲載の報告。主要評価項目は90日後の機能依存または死亡 研究グループは、2018年6月13日~2022年7月10日の期間に、中国の病院106施設において、発症から24~48時間以内で収縮期血圧が140mmHg以上220mmHg未満の急性虚血性脳卒中患者4,810例(40歳以上)を登録し、降圧治療を無作為化直後に開始する早期治療群(2,413例)と無作為化後8日目に開始する遅延治療群(2,397例)に無作為に割り付けた。 早期治療群では、無作為化後すぐに降圧薬を投与し、最初の24時間以内に収縮期血圧を10~20%低下、7日以内の収縮期血圧/拡張期血圧を平均140/90mmHg未満とし、90日間の追跡期間中も維持することを目標とした。 遅延治療群では、無作為化後すべての降圧薬を中止し、8日目に降圧治療を開始し、追跡期間中に140/90mmHg未満を達成し維持することを目標とした。ただし、最初の7日間に収縮期血圧が200mmHg以上に上昇した場合は、試験担当医の判断により一時的な降圧治療は可とした。 主要アウトカムは、無作為化後90日以内の死亡または90日時の機能的依存(修正Rankinスケールスコア3~5)の複合で、ITT解析を実施した。主要アウトカムの発生、早期治療群12.0%、遅延治療群10.5%で、有意差なし 無作為化後24時間以内の平均収縮期血圧の低下は、早期治療群で9.7%(162.9mmHgから146.4mmHg)、遅延治療群で4.9%(162.8mmHgから154.3mmHg)であり(群間差のp<0.001)、7日目の平均収縮期血圧は早期治療群で139.1mmHg、遅延治療群で150.9mmHgとなった(群間差のp<0.001)。また、7日目の血圧が140/90mmHg未満の患者の割合は、早期治療群で54.6%、遅延治療群で22.4%であった(群間差のp<0.001)。 主要アウトカムのイベントは、90日時点において早期治療群では2,401例中289例(12.0%)、遅延治療群では2,382例中250例(10.5%)に認められた(オッズ比[OR]:1.18、95%信頼区間[CI]:0.98~1.41、p=0.083)。 両群間で、脳卒中再発や有害事象に有意差は報告されなかった。 なお、著者は、早期治療が遅延治療より優れているという仮説を検証するには検出力が不十分であったこと、早期治療群で最初の7日間に認められた血圧低下は中程度であったことなどを研究の限界として挙げている。

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予測能の高い認知症リスクスコアが英国で開発

 認知症発症を予測するリスクスコアが英国で新たに開発され、既存のリスクスコアより高い予測能を有することが確認された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMelis Anaturk氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Mental Health」に8月21日掲載された。 認知症患者数が世界的に増加し、その対策が各国の公衆衛生上の喫緊の課題となっている。認知症発症リスクを予測し予防介入を強化することが、疾病負担の抑制につながると考えられることから、種々のリスクスコアが開発されてきている。ただし、いずれも予測能の限界が存在する。これを背景としてAnaturk氏らは、英国の大規模ヘルスケア情報データベース「UKバイオバンク」のデータを用いて新たなリスクスコアを開発し、その予測能を検証した。 UKバイオバンクのデータの8割に当たる17万6,611件をリスクスコア開発用、残り2割に当たる4万4,151件を検証用に用いた。また、英国におけるUKバイオバンクとは別の大規模コホートである「Whitehall II」のデータ2,934件を用いた外部検証も行った。 UKバイオバンクにデータが収載されていて、かつプライマリケアで簡便に評価可能な28項目の認知症発症に関わる因子を抽出した上で、LASSO回帰モデルなどの統計学的手法により構築されたリスクスコアを「UKBDRS(U.K. Biobank Dementia Risk Score)」と命名。UKBDRSで評価する項目は、年齢、性別、家族歴(親の認知症)、教育歴、タウンゼント剥奪指数、糖尿病、脳卒中、うつ病、高血圧、高コレステロール血症、独居であり、遺伝子検査が可能な場合はこれにApoE4を加えた「UKBDRS-APOE」でリスクを評価する。 ROC解析で検討したUKBDRSの認知症発症予測能〔ROC曲線下面積(AUC)〕は、UKバイオバンク開発コホートで0.79(95%信頼区間0.78~0.79)、同検証コホートで0.80(同0.78~0.82)、Whitehall IIでは0.77(0.72~0.81)だった。UKBDRS-APOEでは同順に、0.81(0.81~0.81)、0.83(0.81~0.84)、0.80(0.75~0.85)だった。 これらの値は、現在臨床で使われている3種類のリスクスコアより優れていた。例えば、CAIDE(Cardiovascular Risk Factors, Aging and Dementia)はUKバイオバンク検証コホートでのAUCが0.60(0.58~0.63)、Whitehall IIでは0.69(0.64~0.74)であり、DRS(Dementia Risk Score)は同順に0.77(0.76~0.79)、0.74(0.69~0.78)、ANU-ADRI(Australian National University Alzheimer’s Disease Risk Index)は0.57(0.54~0.59)、0.52(0.45~0.58)だった。 論文共著者の1人である英オックスフォード大学のRaihaan Patel氏は、「異なる2種類の集団で高い予測能が確認されたことから、われわれはUKBDRSの精度に関して自信を深めているが、英国内のより多様な人々での精度検証も必要とされる」と述べている。

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ICIによる心筋炎、現時点でわかっていること/日本腫瘍循環器学会

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は抗PD-1抗体のニボルマブが2014年に本邦で上市されて以来、抗PD-L1抗体や抗CTLA-4抗体も登場し、現在では臓器横断的に幅広いがん種に対し、単独投与のみならず併用投与も行われるようになった。しかし、その一方でさまざまな免疫関連有害事象(irAE)が報告されており、とくに循環器医も腫瘍医も恐れているirAEの1つに心筋炎がある。これは通常の心筋炎とは何が違い、どのように対処するべきなのだろうか―。9月30日~10月1日に開催された第6回日本腫瘍循環器学会学術集会のシンポジウム『免疫チェックポイント阻害薬関連有害事象として心筋炎の最新の理解と対応』において、3名の医師が心筋炎のメカニズムや病態、実臨床での事例やその対応について発表した。irAE心筋炎でわかっていること、わかっていないこと Onco-Cardiology教育に力を入れる田尻 和子氏(国立がん研究センター東病院 循環器科長)によると、あいにく現時点ではこの病態の解明には至っていないが、心筋炎を起こす免疫細胞の種類とその働き、免疫細胞を制御している分子・シグナル・液性因子、心臓のT細胞は何を敵だと思って攻撃しているのか、などの疑問が沸いている状況だという。同氏はこれらの疑問点を詳細に解説したうえで、「なぜICI投与患者の約1%だけが心筋炎を発症するのか、そして従来の心筋炎よりなぜ予後が悪いのか」と2つの疑問を挙げた。 前者については「ICI治療前に存在する患者固有の特徴によるのか、またはICI投与によって生じた何らかの事象に関連するのか」と問題提起。また、「心筋に特異的なタンパクであるαミオシンを免疫細胞が敵だと思いこみ自己免疫性心筋炎が発症することは明らかになっている1-4)ものの、心筋炎にならなかったICI投与患者の心筋にもαミオシン反応性T細胞が存在することから、なんらかのウイルス感染が引き起こしている可能性、根底にある遺伝的感受性や腸内細菌の関与も考えられる」とコメントした。 さらに後者の疑問に対しては「いわゆる一般的な心筋炎というのは治療介入しなくとも自然軽快していくが、irAE心筋炎はステロイド抵抗性であったり、免疫応答がより強力(マクロファージの比率が多い、より高密度のリンパ球浸潤)であったりするのではないか。T細胞がICIにより永久的にリプログラムされて抑制シグナルに耐性を持ち、ICI投与終了後数年にわたる可能性も否めない。さらに、ウイルス感染が原因であればそのウイルスを除去すれば終わりだが、irAE心筋炎のT細胞が認識する抗原が腫瘍や心筋だった場合はそれらが除去されないために炎症が収束しないのではないか」と、仮説を挙げた。心筋炎の発症頻度は1%超、致死率は25~40%の可能性 続いて発表した清田 尚臣氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍センター)はirAEの特徴と実際の発症頻度について解説。「当初の発症頻度は0.09%程度と言われていたが、現在のRCTメタ解析などによると最大で5.8%に上り、近年の報告の多くは1%を超えている。つまり、想定していたよりも頻度や致死率が非常に高く、発症までの期間中央値は30日前後であることが各種論文から明らかになってきた」と述べた。同氏の施設では年間290例(ICI延べ処方件数3,341件)がICI治療を行っているが、「irAEの発症頻度を3%、致死率を30%と想定した場合、当院では年間9人が発症し、約3人が死亡することになる」と、いかに発症を抑えることが重要かを示した。 同氏はオンコロジストとしてできることについて、JAVELIN Renal 101試験5)でのMACEの定義や頻度を示し、「ICIを使用する前には脂質異常症などの既往、ベースライン時点での心電図とトロポニン測定などを実施して評価をしておくことが必要。検査所見のみで無症状の場合もあるが、心筋炎を疑う症状(息切れ、胸痛、浮腫、動悸、ショック症状など)がみられたら躊躇せずに、心電図、トロポニンやBNPの測定、心エコーを実施してほしい」と述べ、「irAE心筋炎はCCU管理が必要になる場合もあるため、疑った時点で早期に循環器医にコンサルテーションすることも必要」と連携の重要性も説明した。心筋炎に遭遇、実臨床での適切な対応策 循環器医の立場で登壇した及川 雅啓氏(福島県立医科大学 循環器内科学講座)は、実際にirAE心筋炎に遭遇しており、その際の対処法としてのステロイドの有用性、irAE後のICI再投与について言及した。 同氏の施設ではICI外来を設置し、患者・医療者の双方に負担がない取り組みを行っている。概要は以下のとおり。<福島県立医科大学附属病院のICI外来>・ICI治療が予定される場合、がん治療を行う各科にてトロポニンI、心電図、心エコーのオーダーを行い、循環器内科ICI外来(カルテ診)へ紹介する。・検査結果をカルテにて確認し、ICI開始後約1ヵ月、3ヵ月、以後3ヵ月ごとにトロポニンI測定ならびに心電図検査を実施する。・問題が生じた場合には、各科主治医に連絡を取り、今後の方針を検討する。 上記のフォローアップを受けた全271例のうち、トロポニンIの上昇(>0.05ng/mL)を認めたのは15例(5.5%)で、そのうちirAE心筋炎と診断されたのは4例(1.4%)だったという。この4例に対しては「ESCガイドライン6)に基づく治療として、ICIを中止し、心電図モニターを行った後、メチルプレドニゾロン500~1,000mg/dayを最低3日間実施した。これで改善すれば経口プレドニゾロン1mg/kg/dayに切り替え、ステロイド抵抗性がみられた場合には2ndラインとして免疫抑制薬の投与に切り替えが必要となる。本症例ではステロイド治療が奏効したが、重篤化前の治療介入が非常に重要であることが明らかであった」。 また、irAE心筋炎を診断する際の検査値について、「トロポニンIの持続上昇は臨床的な心筋炎に至る可能性が高いため、綿密なフォローアップが必要である」と説明し、さらに「肝機能異常やCPK上昇を伴っていることも報告7)されているが、実際に当院の症例でも同様の傾向が見られた。このような検査値にも注意を払うことが診断精度向上につながる」と補足した。 ICI再投与についてはJAMA誌での報告8)を示し、「irAE発症者6,123例のうち452例(7.4%)に行われ、再投与により28.8%でirAEが再発している。irAE心筋炎を発症した3例に再投与が行われ再発は0例であったが、例数が少なく判断が難しい。この結果を見る限りでは、現時点で再投与を積極的に行うことは難しいのではないか」と個人的見解を示した。 なお、本シンポジウムでは発表後に症例検討のパネルディスカッションが行われ、会場からの質問や相談が尽きず、盛況に終わった。■参考文献日本腫瘍循環器学会1)Munz C, et al. Nat Rev Immunol. 2009;9:246-258.2)Tajiri K, et al. Int J Mol Sci. 2021;22:794.3)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:1116114)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818-826.5)Rini BI, et al. J Clin Oncol. 2022;40:1929-1938.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;44:4229-4361.7)Vasbinder A, et al. JACC CardioOncol. 2022;4:689-700.8)Dolladille C, et al. JAMA Oncol. 2020;6:865-871.

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ベジタリアン食で、胃がん罹患リスク6割減

 食事とがん発症リスクとの関連は多数の先行研究があり、果物、野菜、全粒穀物、豆類などの植物性食品の摂取量の増加はがん罹患の予防効果と関連し、赤身肉や加工肉の多量摂取はがん罹患リスク増加と関連している、という報告がある。こうした中、菜食(ベジタリアン食)と消化器がんリスクについて調査した研究結果が発表された。中国・香港中文大学Tongtong Bai氏らによるこのシステマティックレビューは、European Journal of Gastroenterology & Hepatology誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。 研究者らは、PubMed等で、2022年8月までに発表されたベジタリアン食と消化器がん罹患リスクに関する観察研究を検索した。ベジタリアン食は肉または肉製品を含まない食事と定義し、主要アウトカムは消化器がんの罹患率とした。 主な結果は以下のとおり。・8件の研究(コホート研究7件、ケースコントロール研究1件)が組み入れられ、参加者は68万6,691例(成人)だった。全研究がデータ解析で交絡因子を処理しており、交絡因子には性別、年齢、BMI、身体活動、喫煙と飲酒の状態が含まれた。・ベジタリアン食の消化器がん罹患リスクは、非ベジタリアン食と比較して低かった(相対リスク[RR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.65~0.90)。・サブグループ解析では、ベジタリアン食は胃がん(RR:0.41、95%CI:0.28~0.61)および大腸がん(RR:0.85、95%CI:0.76~0.95)のリスク減少と関連を示した。一方、胃を除く上部消化器がん(RR:0.93、95%CI:0.61~1.42)のリスクとは相関しなかった。・ベジタリアン食は、男性では消化器がんリスク減少と関連を示したが(RR:0.57、95%CI:0.36~0.91)、女性では相関しなかった(RR:0.89、95%CI:0.71~1.11)。・ベジタリアン食は、北米の集団(RR:0.76、95%CI:0.61~0.95)およびアジアの集団(RR:0.43、95%CI:0.26~0.72)では消化器がんのリスク減少と関連を示したが、ヨーロッパの集団(RR:0.83、95%CI:0.68~1.01)では相関しなかった。 研究者らは、「ベジタリアン食は消化器がんの罹患リスクを低下させる可能性が高いが、詳細については、きちんとコントロールされたコホート研究、およびそのほかの研究のデータが必要である」としている。

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