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今のところ順調なapo(a)アンチセンス療法(解説:興梠 貴英 氏)-599

 2015年に、心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であるLp(a)の血中濃度を低下させる、アンチセンス薬(IONIS-APO[a] Rx)の第I相試験の結果が報告された1)。本試験は、その続き(第II相試験)および元の薬剤にリガンドを結合させて特異的に肝細胞に取り込まれるように改変したもの(IONIS-APO[a]-LRx)の第I/IIa相試験の報告である。 ちなみに、リポ蛋白(a)(Lp[a])の構成成分であるアポリポ蛋白(a)は、サル目の進化途上で約4,000万年前にプラスミノーゲン遺伝子のコピーとして生まれたと考えられている。その生理的な役割はよくわかっていないが、プラスミノーゲンのKringleIV類似ドメインを12~50コピー、KringleV類似ドメインと活性を持たないタンパク質分解ドメインをそれぞれ1コピー持ち、さらにapoB100と共有結合してLp(a)となる。こうした構造からプラスミノーゲンを競合的に阻害し、線溶系の活性化を阻害すると考えられており、Lp(a)は心血管イベントおよび石灰化大動脈弁狭窄症のリスク因子であることが疫学研究の結果報告されている2)。 ところで、2015年にはISIS Pharmaceuticalsという会社名で、いわゆるイスラム国と間違えられそうだといらぬ心配をしていたところ、それが原因とは明言しないものの、Ionis Pharmaceuticalsと改名したようである。 さて、IONIS-APO(a) Rxの第II相試験の結果は元記事にあるように、第I相試験と同様に空腹時血漿Lp(a)を十分下げることができ、また安全性にも大きな問題は認められないというものであった。ただし、インフルエンザ様症状の一部を示す被験者が約10%おり、1例の被験者においては注射部において中等度の副作用が出現したため参加を中止した。ところで、第I相試験では47例中女性は1例もおらず、女性に関する情報は得られていなかったが、本試験では61例中28例が女性で、とくに性別による差は報告されていない。 一方、IONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相試験においても用量依存性に空腹時血漿Lp(a)濃度を下げることができたが、特異的に肝細胞に取り込まれるため、より少ない用量でより大きな低下率をもたらすことができるという結果であった。また、IONIS-APO(a)Rxで認められたインフルエンザ様症状の一部は認められず、注射部の大きな問題も認められなかった。 これらの結果は、Ionis社のアンチセンス薬が有効に安全に血漿Lp(a)濃度を下げられることを示しており、このまま問題が起きなければより後期のフェーズの治験へ進んでいくと思われる。しかし、臨床的に重要なのは本当にLp(a)を下げることによって心血管イベントや石灰化大動脈弁狭窄症のリスクを低下させられるか、ということである。そうした結果が出るにはまだかなり時間がかかりそうである。

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アンチセンスオリゴヌクレオチド、リポ蛋白(a)濃度低下を第II相で確認/Lancet

 低比重リポ蛋白(LDL)にアポリポ蛋白(a)(apo[a])が結合したリポ蛋白(a)(Lp[a])の増加は、心血管疾患および石灰化大動脈弁狭窄症の遺伝的リスク因子であることが知られている。現在、apo(a)を標的としたオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)Rxと、肝細胞に高度かつ選択的に取り込まれるようデザインされたリガンド結合アンチセンスオリゴヌクレオチドのIONIS-APO(a)-LRxが開発中であるが、とくに後者がLp(a)濃度を低下させる有効かつ忍容性のある新しい治療薬として有望であることが明らかとなった。米国・Ionis PharmaceuticalsのNicholas J Viney氏らが、IONIS-APO(a)Rxの第II相試験とIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相試験の2件の無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。IONIS-APO(a)Rxの健常成人を対象とした第I相試験では、用量依存的に血漿Lp(a)濃度が減少することが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2016年9月21日号掲載の報告。IONIS-APO(a)Rxの100~300mg投与でLp(a)濃度が約70%低下 まずIONIS-APO(a)Rxの第II相試験は、カナダ、オランダ、ドイツ、デンマーク、英国の13施設で実施された。2014年6月25日~2015年11月18日に、Lp(a)濃度が異なる2つのコホート(A[125~437nmol/L]51例、B:[≧438nmol/L]13例)の計64例を、IONIS-APO(a)Rx皮下投与用量漸増群(4週間ごとに週1回100mg、200mg、300mgと増量)またはプラセボ(生理食塩水)投与群(週1回12週間)に、コホートAは1対1、コホートBは4対1の割合で無作為に割り付けた(IONIS-APO(a)Rx群計35例、プラセボ群計29例)。 主要評価項目であるper-protocol集団(6回以上治験薬の投与を受けた被験者)における85日または99日時点での空腹時血漿Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率(平均±標準偏差[SD])は、IONIS-APO(a)Rx群のコホートAで-66.8±20.6%、コホートBで-71.6±13.0%であった(いずれもp<0.0001 vs.プラセボ(コホートA+B)群)。IONIS-APO(a)-LRx 40mg投与でLp(a)濃度が約90%低下 次にIONIS-APO(a)-LRxの第I/IIa相ヒト初回投与試験は、カナダ・トロントのBiopharma Servicesの第I相部門で実施された。2015年4月15日~2016年1月11日に、健常者(Lp[a]≧75nmol/L)58例が登録され、単回投与試験でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg、80mg、120mg)またはプラセボ群に3対1の割合で、反復投与試験(第1・3・5・8・15・22日の6回投与)でIONIS-APO(a)LRx皮下投与群(10mg、20mg、40mg)またはプラセボ群に8対2の割合で、それぞれ無作為に割り付けた(単回投与試験計28例:10mg群3例、20mg群3例、40mg群3例、80mg群6例、120mg群6例、プラセボ群7例/反復投与試験計30例:10mg群8例、20mg群8例、40mg群8例、プラセボ群6例)。 主要評価項目の解析対象集団は、無作為化されかつ治験薬の投与を最低1回以上受けた被験者であった。結果、単回投与試験では、IONIS-APO(a)-LRxのすべての用量群で主要評価項目である30日時点の平均Lp(a)濃度の用量依存的な有意な減少が認められた。一方、反復投与試験では、主要評価項目である36日時点での平均Lp(a)濃度のベースラインからの平均変化率が10mg群-66±21.8%、20mg群-80±13.7%、40mg群-92±6.5%であった(p=0.0007、IONIS-APO(a)-LRx全体 vs.プラセボ群)。 安全性については、どちらのアンチセンスオリゴヌクレオチドでも確認された。第II相試験において重篤な有害事象(心筋梗塞)がIONIS-APO(a)Rx群で1例、プラセボ群で1例確認されたが、治験薬に関連するものではないと判断された。注射部位反応がIONIS-APO(a)Rxでは12%に認められたが、IONIS-APO(a)-LRxでは確認されなかった。

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INTERSTROKE研究:脳卒中はどこまで予防できるか?(解説:有馬 久富 氏)-583

 INTERSTROKE研究は、脳卒中の危険因子を検討した大規模国際共同ケース・コントロール研究である。アジア、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、中東、アフリカの32ヵ国からリクルートされた、発症5日以内の急性期脳卒中患者1万3,447例と性・年齢をマッチしたコントロール1万3,472例を対象として、10の危険因子(高血圧、定期的な運動、アポリポ蛋白B/A1比、食習慣、ウエスト・ヒップ比、心理社会的要因、喫煙、心疾患、飲酒、糖尿病)が脳卒中発症に及ぼす影響を検討した。その結果、これらの危険因子の人口寄与危険割合(PAR)は90.7%であった。つまり、以前から知られている10の古典的危険因子を取り除く、あるいはきちんと治療することにより、現在起こっている脳卒中の約90%を予防できる可能性が示されたわけである。 INTERSTROKE研究は、脳卒中患者1万3,000例以上を対象とした非常に大規模な国際共同研究である。また、すべての国において標準化された方法で危険因子の調査が行われている。しかし、参加施設が脳卒中センターを有する病院に限定されているので、本研究のケースは各国の脳卒中患者を代表していないかもしれない。また、一部の施設でコントロールに入院・外来患者やその家族を用いているので、一般住民との比較とは言い難い。さらに、国ごとの対象者数や危険因子のばらつきが解析において考慮されていない。 前述のようなlimitationはあるものの、大規模な国際共同研究で古典的危険因子が脳卒中発症に及ぼす影響を明らかにした、INTERSTROKE研究の功績は大きい。 INTERSTROKE研究から得られた人口寄与危険割合(PAR)が、そのまま日本に当てはまるかどうかはわからないが、日本においてもすべての危険因子をコントロールすることで、脳卒中は激減するものと期待される。われわれ医療従事者および行政は、これら危険因子の未治療やコントロール不良を減らすよう最大限の努力をすべきであると考える。

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脂質異常症に対するPCSK9阻害薬の費用対効果/JAMA

 ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(FH)またはアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の患者に対し、スタチンに追加しPCSK9阻害薬を投与することで、ヘテロ接合性FHは約32万例、ASCVDは約430万例の主要有害心血管イベント(MACE)をそれぞれ予防可能であることが示された。一方で、それに伴う薬剤コストの上昇のため、2015年の薬価では、QALY当たりコストは年間40万ドル超を要することも示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDhruv S. Kazi氏らが、冠動脈疾患政策モデルを用いて行ったシミュレーションの結果、示したもので、JAMA誌2016年8月16日号で発表した。35~94歳の米国人を対象にシミュレーション 研究グループは、35~94歳の米国人を対象に、ヘテロ接合性FHとASCVDに対するスタチン+PCSK9阻害薬投与について、冠動脈疾患政策モデルを用い、スタチン+エゼチミブ投与の場合と比較した費用対効果のシミュレーションを行った。 シミュレーション・モデルでは、2015年のPCSK9阻害薬の年間コスト1万4,350ドルを適用し、生存期間中治療を継続すると仮定。また確率的感度分析により、不確実性(UI)を探求した。 主要評価項目は、生涯MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中)、QALY当たりの増加コスト、5年間の全米総医療費への影響だった。PCSK9阻害薬年間コストが4,536ドル以下なら、QALY当たりコスト増は10万ドル その結果、ヘテロ接合性FHに対して、スタチン+PCSK9阻害薬は、スタチン+エゼチミブと比べて、推定で31万6,300例のMACEを回避可能であったが、QALY当たりコスト増は50万3,000ドル(80%UI:49万3,000~173万7,000)だった。 ASCVDについても、PCSK9阻害薬追加群は、エゼチミブ追加群に比べ、推定430万例のMACEを予防可能で、QALY当たりコスト増は41万4,000ドル(80%UI:27万7,000~153万9,000)だった。 患者1人当たりのPCSK9阻害薬年間コストが4,536ドル以下に抑えられれば、QALY当たりコスト増は10万ドル未満に抑えられると推算された。 2015年時点のPCSK9阻害薬価格では、適応患者すべてに投与された場合、5年間で290億ドルの心血管疾患治療費の削減になるものの、薬剤費については推定5,920億ドル、対2015年で38%の処方薬コストの増大が見込まれた。 一方、ハイリスクグループでスタチン忍容性がある現在スタチン非投与患者に対し、スタチン投与を始めることで、120億ドルの治療費削減が見込まれた。

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新薬と医療経済―PCSK9は安いか?高いか?(解説:平山 篤志 氏)-582

 スタチンに併用することで、LDLコレステロールをさらに低下させるPCSK9阻害薬が発売され、次の点から注目されている。 1つは、スタチン使用下で70%以上LDL-コレステロールを低下させるという驚異的な効果、次に、PCSK9阻害薬(レパーサ皮下注140mgシリンジ)の薬価が 2万2,948円(1ヵ月4万5,896円、年間約55万円)と高価なことである。 コレステロール低下薬であるが、効果としては心血管事故の予防目的であることから、直接的な治療薬でなく、かつ長期間使用される薬剤であるため、これまでの抗がん剤や抗リウマチ薬とは違う意味を持つ生物製剤である。そのため、薬価としては高いのか?安いのか?が医療経済の面から評価される必要があった。 本論文では、米国で発売されている抗PCSK9抗体薬の価格が年間1万4,350ドルで、35歳から74歳までの家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)のヘテロ接合体患者(hFH)と、ハイリスクの心血管疾患患者(ASCVD:atherosclerotic cardiovascular disease)すべてに投与した場合、心血管イベントを予防する効果とそれに伴って節約できる価格を比較している。 hFHでは、1クエリ50万3,000ドル、ASCVDでは41万4,000ドルで、通常米国で受け入れられる1クエリ10万ドルをはるかに超えることになる。さらに、hFHでLDLコレステロール値の高値の患者、あるいは急性冠症候群発症患者のみに限定してもコストには見合わないとし、少なくとも3分の2以上の価格の低減が必要であると結論している。 わが国で発売された本剤は、ちょうど本論文の提示する価格ではある。ただ、わが国のイベント発生頻度を考慮すると、やはり現状では経済効果があるとは考えにくい。この薬剤を活かすには、よりハイリスクの患者を見出す工夫が必要であろう。ただ、この論文で記載されているように、抗PCSK9抗体の効果については、まだ十分なデータが出ているわけではない。今後発表されるFOURIER試験やODESSAY outcomes試験の結果での有効性、さらに長期的な安全性が示されることが必須である。今後明らかにされるCRTの結果で、真にこの薬剤のベネフィットのある患者さんを選別することができるかどうかで、薬価の結論を導き出せるかもしれない。

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脳卒中の原因の9割を占める、10のリスク因子とは/Lancet

 世界の地域や人種、性別にかかわらず、全脳卒中発症の原因の約90%に関与する、10項目のリスク因子が明らかになった。たとえば、高血圧症または収縮期血圧/拡張期血圧が140/90mmHg以上だと、脳卒中発症リスクは約3倍、人口寄与危険度割合(PAR)は約48%に上るなどである。カナダ・マックマスター大学のMartin J. O’Donnell氏らが、32ヵ国142ヵ所の医療機関を通じて行った、標準化国際ケースコントロール試験「INTERSTROKE」の結果で、Lancet誌オンライン版2016年7月15日号で発表した。急性脳卒中患者とその対照症例、それぞれ約1万3,000例を分析 検討は、世界各地域において、またはキー集団および脳卒中原発性病理のサブタイプにおける、重大かつ修正可能な脳卒中リスク因子を定量化することを目的とした。2007年1月~2015年8月にかけて、アジア、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、中東、アフリカでケースコントロール試験を行い、急性脳卒中のリスク因子について評価した。 被験者は、発症5日以内で入院72時間以内の急性脳卒中患者1万3,447例(虚血性脳卒中1万388例、脳内出血3,059例)と、入院中または地域居住の対照症例1万3,472例だった。PARでみた上位3項目は、高血圧症、定期的運動、アポリポ蛋白B/A1比 結果、全脳卒中発症と関連した因子のうち、PAR値が高いほうから順に上位5項目は、(1)高血圧症または収縮期血圧/拡張期血圧が140/90mmHg以上(オッズ比[OR]:2.98、PAR:47.9%)、(2)定期的運動(0.60、35.8%)、(3)アポリポ蛋白B/A1比(最高三分位[T3]の最低三分位[T1]に対するOR:1.84、上位2三分位[T2+T3]のT1に対するPAR:26.8%)、(4)食事(修正代替健康食指数[mAHEI]T3のT1に対するOR:0.60、同T1+T2のT3に対するPAR:23.2%)、(5)ウエスト・ヒップ比(T3のT1に対するOR:1.44、T2+T3のT1に対するPAR:18.6%)だった。 続いてPARが高い5項目は、(6)日常生活、ライフイベント、うつ状態を含む精神的ストレス(OR:2.20、PAR:17.4%)、(7)喫煙(同:1.67、同:12.4%)、(8)心臓起因のもの(同:3.17、同:9.1%)、(9)アルコール摂取(高頻度または1回の摂取量が多い人の非摂取・元摂取者に対するOR:2.09、現摂取者の非摂取・元摂取者に対するPAR:5.8%)、(10)糖尿病(同:1.16、同:3.9%)、だった。 これら10項目のリスク因子を総合したPARは、世界における全脳卒中の90.7%だった(虚血性脳卒中91.5%、脳内出血87.1%)。また地域間で大きな差はなく(最も低いアフリカ地域で82.7%、最も高い東南アジアで97.4%)、性別間(男女ともに90.6%)、年齢群間(55歳以下92.2%、55歳超90.0%)でも、ばらつきはみられなかった。 一方で、個々のリスク因子の重要性について地域差があることが観察されている。それらは、ORの大きさの差や、リスク因子の占める割合の地域差に関与していた。また、高血圧症は脳内出血リスクに、一方で喫煙、糖尿病、アポリポ蛋白、心因子は虚血性脳卒中リスクに、それぞれ関連が大きかった(p<0.0001)。 以上を踏まえて著者は、「潜在的に修正可能な脳卒中の10のリスク因子が確認された。それらで世界の主要地域、多人種、男女および全年齢を含む脳卒中のPARの約90%と関連していた。一方で、個々のリスク因子については重大な地域差も認め、それらが、脳卒中の頻度や症例の世界的ばらつきに関連していることが示唆された」とまとめ、「これらの分析結果は、世界的および地域別の脳卒中予防プログラムの両方の作成を支持するものである」と述べている。

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わが国のLDL-C目標値達成とスタチン処方の実態は?

 わが国のリアルワールドでの心血管高リスク患者の集団における調査から、日本動脈硬化学会(JAS)ガイドラインが推奨しているLDLコレステロール(LDL-C)目標値の達成率は低く、スタチンや他の脂質修飾薬の処方率も低いことが、帝京大学臨床研究センターの寺本 民生氏らの研究で明らかになった。Atherosclerosis誌オンライン版2016年7月4日号に掲載。 LDL-Cは、心血管疾患発症においてキーとなる修正可能な危険因子である。JASが2012年に発行したガイドラインでは、心血管イベントリスクが高い患者ではLDL-Cを低下させるための薬物治療の第1選択薬として、スタチンを推奨している。本研究では、国内の心血管高リスク集団において、推奨されたLDL-C管理目標値の達成と脂質修飾薬(LMT)の使用について調査した。 本研究の対象は、わが国の病院ベースの請求データベースであるメディカル・データ・ビジョン(MDV)データベースから、以下の選択基準を満たした患者とした。[2013年にLDL-Cを測定、20歳以上、データベースに2年以上表出、心血管高リスクの状態(最近発症した急性冠症候群(ACS)、他の冠動脈疾患(CHD)、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患(PAD)、糖尿病)] LDL-C目標の達成は、JASガイドラインにおけるLDL-C目標値に基づいて評価した。 主な結果は以下のとおり。・3万3,325例の心血管高リスク患者が選択基準を満たした。・全体として、コホートの68%がガイドライン推奨のLDL-C目標を達成し、スタチン治療を受けていたのは42%にとどまった。・LDL-C目標の達成率は、ACS患者で68%、CHD患者で55%、虚血性脳卒中、PAD、糖尿病の患者でそれぞれ80%であった。・非スタチン系の脂質修飾薬の併用率は低かった。

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予後が改善されつつある難病LAL-D

 アレクシオンファーマ合同会社は、6月23日都内において、5月25日に発売されたライソゾーム酸性リパーゼ欠損症治療薬「カヌマ点滴静注液20mg」[一般名:セベリパーゼ アルファ(遺伝子組み換え)]に関するプレスセミナーを開催した。「ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症」(以下「LAL-D」と略す)は、遺伝子変異が原因でライソゾーム酸性リパーゼという酵素活性が低下または欠損することで発症するまれな代謝性疾患であり、患者の多くが肝硬変から肝不全、死亡へと至る予後不良の希少疾患である。セミナーでは、本症の最新知見について2人の研究者が講演を行った。「ちょっと気になる脂肪肝」への意識が大事 はじめに、「LAL-Dの疾患概要と自験例紹介」というテーマで、村上 潤氏(鳥取大学医学部附属病院 小児科 講師)が、診断の視点から自験例を交え、レクチャーを行った。 通常「脂肪肝」は、栄養性、薬剤性、先天代謝異常症などが原因で起こり、腹部エコーやCT、MRI、肝生検などで詳しく診断が行われる。しかし、小児の脂肪肝では、一定頻度で先天性代謝異常が存在し、注意が必要であるという。たとえば、小児で肥満がなく、肝腫大の程度が強く、体重増加不良、低血糖、発達遅滞などの症状や、乳酸、アンモニア高値などを伴う脂肪肝を見かけたら、先天代謝異常症を疑う必要がある。 この先天代謝異常症の一つにLAL-Dがあり、LAL-DにはLAL活性が完全欠損している乳児型のWolman病(WD)と、部分欠損している遅発型のコレステロールエステル蓄積症(CESD)の2つの表現型がある。 WDでは、顕著な肝・脾腫大や肝不全を観察し、持続性の嘔吐・下痢、腹部膨満、腸管の吸収不良、胆汁うっ滞などの症状があり、急速進行性で致死的である。一方、CESDでは、同じく肝・脾腫大が観察され、一般に肥満はないとされる。臨床所見では、ALT>正常上限の1.5倍以上、LDL-C≧182mg/dL、HDL-C<50mg/dLなどが見られ、肝生検では、小滴性脂肪沈着も観察される。患者の89%が12歳未満で発症、50%が21歳未満で死亡している。 LAL-Dの正確な罹患率は、疫学調査が行われていないため不明であるが、2013年までに全国でWDが12例、CESDが13例報告されている。 自験例として、11歳・男児について、小学校の健診で高脂血症を指摘されたことで精査へとつながり、LAL-Dと診断された例を紹介した。一見、一般的な脂肪肝と見なしがちで、臨床検査や画像診断ではなかなか見分けがつきにくいところが、本症の診断の難しい点であるという。 本症のスクリーニングについては、肝臓関連所見では持続性肝腫大、原因不明のトランスアミナーゼ値上昇、顕著な小滴性脂肪沈着、潜在性肝硬変、インスリン耐性がないメタボリックシンドロームと思われる患者が挙げられ、脂質関連所見では、高LDL-C値および/または低HDL-C値、家族歴不明の家族性高コレステロール血症(FH)疑い、LDLR、APO BおよびPCSK9をコードする遺伝子の検査結果陰性のFH疑いが挙げられる。 確定診断は、非侵襲的で簡便な方法である血中酵素活性測定によって診断される。 補充療法が予後を改善 続いて、「ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症の臨床像と治療」と題して、天野 克之氏(東京慈恵会医科大学附属病院 消化器肝臓内科 診療医長)が、治療の視点から本症と新治療薬について解説を行った。 従来、LAL-Dは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などと同じ治療法で、支持療法が行われてきた。また、臓器移植を行ってもその治療効果は弱いものであったという。 今回、本症の治療薬として発売されたセベリパーゼ アルファ(商品名:カヌマ)は、遺伝子組換えヒトライソゾーム酸性リパーゼ製剤であり、細胞内に取り込まれた後、ライソゾームに運ばれ、コレステロールエステル(CE)およびトリグリセリド(TG)を加水分解する作用を持つ。これにより脂肪量の減少、LDL-CやTGの低下、HDL-Cの上昇、脂質減少による成長障害の改善が期待されている。 臨床試験は、2歳未満の小児(n=9)と4歳以上の小児/成人(n=66)に分かれて実施され、報告された。 2歳未満の小児では、カヌマを週1回、最大5mg/kgまでを最長208週間投与した結果、生後12ヵ月で9例中6例が生存していたほか、ALT/ASTの顕著な減少、体重増加、リンパ節腫脹、血清アルブミン値の改善が認められた(II/III相試験)。 4歳以上の小児/成人では、30例をプラセボに、36例をカヌマ(1mg/kg、2週に1回投与)に割り付けて、20週の効果を比較した。その結果、ALTの正常化が認められた患者がプラセボ7%に対し、カヌマでは31%、同様にASTでプラセボ3%に対し、カヌマでは42%だった。また、肝脂肪量の減少(ベースラインからの平均変化率)では、プラセボ-4%に対し、カヌマでは-32%だったほか、LDL-C低下、脂質プロファイルの改善なども見られた(III相試験/20週後はオープンラベルで実施)。ALTのベースラインからの平均変化率推移では、投与後4週までに急激に下がり、肝機能が改善されることで以後はフラットに維持される。報告された有害事象は、尿路感染症、アナフィラキシー反応、不安症などで、いずれも重篤なものではないが、投与1年後までみられる場合があるという。 自験例として21歳・女性の例を紹介し、13歳でLAL-Dと診断されて以降、高脂血症などの対症療法が行われてきたが、カヌマによる治療で速やかに肝機能、脂質異常が改善し、対症療法の常用薬の中止も検討されていることを報告し、レクチャーを終えた。関連コンテンツ待望の治療薬登場、希少疾患に福音新薬情報:カヌマ点滴静注液20mg

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肥満治療薬5剤の体重減少効果を比較/JAMA

 米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている5つの肥満治療薬は、いずれも良好な体重減少効果を有し、とくにphentermine-トピラマート配合薬とリラグルチドの効果が高いことが、米国・アイオワ大学のRohan Khera氏らの検討で示された。2014年の報告では、世界には約19億人の成人の過体重者と約6億人の肥満者がおり、長期的に有効な治療戦略の確立がきわめて重要とされる。FDAは、1つ以上の体重関連の併存疾患(2型糖尿病、高血圧、脂質異常症)を有する肥満(BMI≧30)または過体重(BMI≧27)の治療として、5つの肥満治療薬を承認しているが、これらの薬剤を比較した無作為化臨床試験のエビデンスは少ないという。JAMA誌2016年6月14日号掲載の報告。5つの薬剤の体重減少効果と有害事象をネットワークメタ解析で評価 研究グループは、5つの肥満治療薬―orlistat、lorcaserin、naltrexone-bupropion配合薬、フェンテルミン/トピラマート配合薬、リラグルチドの、体重減少効果と有害事象を比較した論文を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(National Library of Medicineなどの助成による)。 2016年3月23日の時点で、MEDLINE、EMBASE、Web of Science、Scopus、Cochrane Centralに登録された文献を検索した。18歳以上の過体重者または肥満者を対象に、FDAの承認を得ている5つの肥満治療薬を他剤またはプラセボと比較した無作為化臨床試験(治療期間1年以上)の論文を選出した。 2人の研究者が、事前に規定されたプロトコルを用いて別個にデータを抽出した。ベイジアンネットワークメタ解析を行い、surface under the cumulative ranking(SUCRA)確率法を用いて薬剤の有効性の相対的な順位を評価した。エビデンスの質の評価にはGRADE基準を用いた。 主要評価項目は、治療1年時の体重減少率5%以上および10%以上を達成した患者の割合、減量の程度、有害事象による治療中止とした。リラグルチドは効果が高いが、有害事象関連の治療中止が多い 1998~2015年に報告された28件の無作為化臨床試験に参加した2万9,018例が解析の対象となった。ベースラインの全体の年齢中央値は46歳、女性が74%含まれ、体重中央値は100.5kg、BMI中央値は36.1だった。 1年時のプラセボ群の体重減少率5%以上の達成率は23%であった。これに対し、フェンテルミン/トピラマート配合薬群は75%(オッズ比[OR]:9.22、95%信用区間[credible interval:CrI]:6.63~12.85、SUCRA:0.95)、リラグルチド群は63%(5.54、4.16~7.78、0.83)、naltrexone-bupropion配合薬群は55%(3.96、3.03~5.11、0.60)、lorcaserin群は49%(3.10、2.38~4.05、0.39)、orlistat群は44%(2.70、2.34~3.09、0.22)であり、いずれも有意に良好であった。 体重減少率10%以上の達成率のORも、プラセボ群に比べ5つの肥満治療薬群が優れた。達成率は、プラセボ群の9%に対し、フェンテルミン/トピラマート配合薬群が54%、リラグルチド群が34%、naltrexone-bupropion配合薬群が30%、lorcaserin群が25%、orlistat群は20%だった。 1年時のプラセボ群と比較した超過体重減少(excess weight loss)は、フェンテルミン/トピラマート配合薬群が8.8kg(95%CrI:-10.20~-7.42)、リラグルチド群が5.3kg(-6.06~-4.52)、naltrexone-bupropion配合薬群が5.0kg(-5.94~-3.96)、lorcaserin群が3.2kg(-3.97~-2.46)、orlistat群は2.6kg(-3.04~-2.16kg)であった。 プラセボ群と比較した5つの肥満治療薬の有害事象関連の治療中止のORは1.34~2.95であった。lorcaserin群が最も低かった(OR:1.34、95%CrI:1.05~1.76、SUCRA:0.61)のに対し、リラグルチド群(2.95、2.11~4.23、0.20)が最も高く、次いでnaltrexone-bupropion配合薬群(2.64、2.10~3.35、0.23)が高かった。 全試験の脱落率は30~45%と高く、バイアスのリスクによりエビデンスの質は低くなった。GRADE基準を適用すると、体重減少5%以上の達成率のORのエビデンスの質は中等度であった。

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日本人の死因の約6割を占めるNCD関連疾患、改善のカギは…

 不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒…。これらは、さまざまな疾患の入り口になりうる悪しき生活習慣だが、その改善により予防可能な疾患の総称であるNCD(non-communicable diseases、WHOの定義では「非感染性疾患」)への関心が世界的に高まっている。5月31日、NCD関連疾患の啓発や情報提供を行っている塩野義製薬株式会社が、国内のNCD関連疾患患者を対象にした実態調査の結果をまとめた。同日のセミナーに登壇した寺本 民生氏(帝京大学臨床研究センター)は、患者自身の疾患や治療に関するリテラシーの低さを指摘し、「前向きな治療意識と生活満足度が疾患コントロール意識と密接につながっている。医療従事者や家族、地域コミュニティの関わりなども含めたトータルケアが重要」と述べた。 NCDとは、高血圧や脂質異常症、糖尿病など、いわゆる生活習慣病を中心とした継続的な治療が必要な慢性疾患の総称である。厚生労働省の調査によれば、近年このNCDに関連した疾患は、日本人の死因の約6割、国民医療費の約3割を占めている。 塩野義製薬は今年3月、国内の20~60代のNCD関連疾患患者を対象にインターネット調査「T-CARE NCD Survey」を実施(n=3,031)。そこから、NCD関連疾患特有の患者像が浮かび上がってきた。現在抱えている病気の治療について尋ねた項目では、「治療を継続しなければならない」(77.2%)「前向きに治療に取り組んでいる」(58.1%)など、半数以上が高い意識で治療に臨んでいることをうかがわせたが、「自分なりの治療目標がきちんとある」と答えた人は27.8%にとどまっていた。さらに、「定期的に通院する」(87.1%)、「定期的に薬を服用する」(71.6%)など、治療への取り組みはきわめて真面目な人が多い一方、「自分の治療方法については、医師の判断に任せる」(66.1%)、「自分の治療方法は、自分で決めたい」(38.6%)など、受け身の姿勢で臨んでいる人が多いこともわかった。 では、こうしたNCD関連疾患患者に対して必要な施策とは一体何か。寺本氏は3つの意識を高めることが重要であると述べる。すなわち、「前向きな治療意識」「疾患コントロール意識」「生活満足度」、である。これらは、「前向きな治療意識」と「生活満足度」の高さが、相乗効果的に「疾患コントロール意識」を高めるという関係性にある。「前向きな治療意識」に影響を与えるのは、(1)薬への信頼・期待、(2)病状理解、(3)治療効果の理解、(4)医療従事者の患者視点に立った診療、(5)内科・専門内科の個人病院やクリニックにおける患者視点の診療および親しみやすさ、(6)内科・専門内科の総合病院や大学病院などの大規模病院における患者視点の診療および治療解説、の6項目である。一方、「生活満足度」には(1)治療の見通し、(2)心配事の解消、(3)家族との関係、自己開示および尊重、(4)職場や学校でのコミュニケーション、の4項目が影響するという。こうした意識をバランスよく、高く維持するには、患者の頑張りだけ、あるいは医師の一方的な働きかけだけでは不十分である。 寺本氏は、「NCDの治療は、他の疾患以上に患者自身が主体的に病気と向き合わなければならない。診療の場面で医師は、患者との“共同作業”において治療方針を考え、時には患者自身による決定を促すことが重要だ」と述べた。

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飲酒量と高血圧の関連、フラッシングと関係なし~NIPPON DATA2010

 高血圧における飲酒の影響はフラッシング反応の有無により異なる可能性があるが、確認されていない。今回、大規模コホートNIPPON DATA2010のデータを用いた研究で、日本人男性ではフラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧が正相関することを、東北大学の小暮 真奈氏らが報告した。Hypertension research誌オンライン版2016年5月12日号に掲載。 著者らは、日本人集団の代表的なサンプルにおいて飲酒量と高血圧との関係を、フラッシング反応に応じて調査した。NIPPON DATA2010のベースライン調査への参加を依頼された、2010年国民健康・栄養調査の参加者のデータを用いて、フラッシング反応に応じた飲酒量と高血圧との関係を検討した。年齢、BMI、喫煙状態、糖尿病の有無、脂質異常症の有無の調整後、多重ロジスティック回帰モデルを用いて横断的に統計解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・男性1,139人、女性1,263人のうち、それぞれ659人、463人が高血圧であった。・男性では、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧に正の相関がみられた(線形傾向のp<0.05)。この相関は、降圧薬使用の有無にかかわらず認められた。フラッシング反応による交互作用は認められなかった(交互作用のp=0.360)。・女性では、フラッシング反応が見られる人と見られない人で傾向が異なるが、フラッシング反応に関係なく飲酒量と高血圧との相関は有意ではなかった。

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飽和脂肪酸をω6-リノール酸で置換する食事療法はコレステロールを低下させるが冠動脈疾患イベントや死亡を改善せず、むしろ悪化させる可能性がある!(解説:島田 俊夫 氏)-532

 Anitschkowがウサギにコレステロールと飽和脂肪酸を食べさせることで大動脈に脂肪蓄積を誘導して以来、アテローム硬化発生への食事の役割は1世紀余りにわたり研究されてきた。血清コレステロールの増加と冠動脈疾患の関係について詳細に研究されたが、冠動脈疾患予防・治療に関する伝統的食事―心臓仮説(The traditional diet-heart hypothesis)の真偽に関してはいまだ結論に至らず、議論の多いところでもある1)。 食事で飽和脂肪酸をω6-リノール酸に置換することで、血清コレステロール、LDLリポタンパクが低下することは周知の事実であるが、冠動脈疾患イベント、死亡も減少すると短絡的に捉えることには問題がある2)。観察研究レベルのエビデンスはあっても、冠動脈疾患イベント、死亡の減少を肯定した無作為化比較対照試験による強固なエビデンスはない。 最近発表された、NIHのRamsden氏らのBMJ誌オンライン版2016年4月12日号掲載論文は、Minnesota Coronary Experiment(MCE)研究の未発表文書および生データの回復データに基づく再解析と、同種の無作為化比較対照試験を選択吟味し、システマティックレビューとメタ解析を行ったうえで作成された論文である。この論文は、飽和脂肪酸を食事によりリノール酸で置換する治療が、真に冠動脈疾患イベント、死亡を減らすか否かの真偽に一石を投じた意義深い論文である。施設設定 米国ミネソタ州の老人保健施設:1施設、州立精神病院:6施設参加者および関連データ 年齢20~97歳、男女9,423例を無作為に抽出したコホート集団に対して行われた解析からなる未発表文書、1年以上にわたり研究食を食べた2,355例の血清コレステロールに関する時間経過に従ったデータ149例の剖検実施ファイルに基づいて再解析が行われた。研究食 介入食は、飽和脂肪酸をリノール酸で置換する血清コレステロール低下食(コーンオイルとコーンオイル多価不飽和脂肪酸マーガリン由来)であり、コントロール食は動物脂肪、通常マーガリンおよびショートニングによる飽和脂肪酸の高い食事が使われた。主要評価尺度 総死亡、血清コレステロールの変化と死亡の関連および剖検で見つかったアテローム硬化と心筋梗塞とした。結果 介入群はコントロール群と比較して、血清コレステロールが有意に減少した(ベースラインからの平均変化-13.8% vs.-1.0%;p<0.001)。カプラン・マイヤー生存分析結果は、全無作為化抽出コホートでの介入群または事前に指定されたサブグループの死亡改善に無効であった。共変量調整Cox回帰モデル(ハザード比[HR] 1.22、95%信頼区間1.14~1.32;p<0.001)で、血清コレステロール30mg/dL(0.78mmol/L)の低下で、むしろ死亡リスクが22%上昇した。 冠動脈硬化、心筋梗塞に対して介入群にメリットを認めず、システマティックレビューに同種の無作為化比較対照試験(n=10,808)を選択吟味のうえでメタ解析を実施した結果についても、コレステロール低下介入は冠疾患死亡(HR 1.13、95%CI:0.83~1.54)または総死亡(HR 1.07、95%CI:0.90~1.27)の改善につながらなかったと報告した。 本論文は、リノール酸置換食事療法により、総コレステロール、悪玉コレステロールが低下すれば冠動脈疾患死やイベントが低下するとの短絡的な考えに疑念を示し、背景にある機序の多様性重視を示唆している。

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TIA後の心血管系イベントリスク、従来より低下/NEJM

 一過性脳虚血発作(TIA)発症後の心血管系イベントリスクは先行研究報告よりも低いことを、フランス・Bichat HospitalのPierre Amarenco氏らTIAregistry.org研究グループが、21ヵ国4,789例の患者を対象とした国際多施設共同前向き観察試験の結果、明らかにした。1997~2003年に行われた研究では、TIAまたは軽症脳卒中の発症後3ヵ月間の脳卒中または急性冠症候群発症のリスクは12~20%と推定されていた。その後、TIA治療は大きく変化したが、最近の患者の予後やリスクスコアシステムの有用性については明らかになっていない。研究グループによるTIAregistry.orgプロジェクトは、脳卒中専門医が緊急性を評価するようになった現行医療体制下で治療を受けた、TIAまたは軽症脳卒中患者の最新のプロファイル、再発等のリスク因子、そしてアウトカムを明らかにするようデザインされた研究であった。NEJM誌2016年4月21日号掲載の報告。21ヵ国61施設で4,789例を登録し前向き観察研究 試験は、2009~11年に21ヵ国61施設で4,789例を登録して行われた。 試験参加施設はいずれも、TIAの緊急性評価を行う体制が整備されており、被験者は発症から7日以内のTIAまたは軽症脳卒中患者であった。 研究グループは、1年後の脳卒中リスク、および脳卒中・急性冠症候群・心血管系が原因の死亡の複合アウトカムのリスクを推定。また、脳卒中リスクを評価するABCD2スコア(範囲:0[最低リスク]~7[最高リスク])、脳画像所見、およびTIAまたは軽症脳卒中発症と、1年間の脳卒中再発リスクとの関連を調べた。発症後1年時点の複合心血管転帰の発生率6.2%、脳卒中は5.1% 解析には被験者4,583例が組み込まれた。平均年齢は66歳、男性が60.2%を占め、病歴は高血圧が70.0%、脂質異常症69.9%など、元喫煙者は24.6%、現在喫煙者は21.9%などであった。入院期間中央値は4日、発症後24時間以内に脳卒中専門医の評価を受けたのは3,593例(78.4%)であった。臨床的症状で最もよくみられたのは、筋力低下(55.0%)、言語の異常(48.3%)。また、ABCD2スコアについて、発症後24時間以内に脳卒中専門医による評価を受けた患者のほうが(4.7±1.5)、24時間後に評価を受けた患者(3.8±1.6)よりも有意に高かった(p<0.001)。 また全体で、患者の33.4%(1,476/4,422例)で急性期脳梗塞が、23.2%に頭蓋外・頭蓋内血管の50%以上の狭窄が1ヵ所以上、および10.4%(410/3,960例)に心房細動が認められた。 被験者の91.0%(4,200例)が中央値27.2ヵ月の追跡を受けた。Kaplan-Meier法で推定した1年時点の複合心血管アウトカムの発生率は6.2%(95%信頼区間[CI]:5.5~7.0)であった。同法推定による脳卒中発生率は2日時点1.5%、7日時点2.1%、30日時点2.8%、90日時点3.7%、365日時点5.1%であった。 多変量解析において、「脳画像検査で認められた複数の梗塞」「大動脈のアテローム硬化」「ABCD2スコア6~7」のそれぞれについて、脳卒中リスク2倍超との関連が認められた。 著者は、「今回得られた所見は、現在のTIAまたは軽症脳卒中を発症した患者の、心血管イベント再発リスクが反映されたものである。ABCD2スコアは良好なリスク予測因子であることが明らかになった。脳画像検査で認めた複数梗塞、および大動脈アテローム硬化性疾患も血管系イベント再発の強力な独立予測因子であることが判明した」と述べ、今回の結果は将来的な無作為化試験の試験デザインと解釈に役立つだろうとまとめている。

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GAUSS-3試験:PCSK9抗体による新たなコレステロール低下療法の可能性―心血管イベント抑制につながるのか?(解説:平山 篤志 氏)-523

 冠危険因子としてのLDL-コレステロール(LDL-C)をスタチンにより低下させることによって、冠動脈疾患の1次予防、2次予防が有効になされることは、多くの大規模臨床試験で示されてきた。しかし、スタチンの服用により、筋肉痛あるいは無痛性の筋肉障害があることが知られている。その頻度は、1~5%、時には20%くらいあるといわれている。このようにスタチンで筋肉症状を訴える患者のコレステロール治療としては、吸収阻害薬であるエゼチミブが用いられていた。一方、LDL-Cと結合したLDL-C受容体は、血中のPCSK9が結合すると細胞内で壊され再利用ができなくなる。PCSK9を阻害する抗体であるエボロクマブにより、スタチン服用患者でもLDL-Cが60%以上減少することが示されている。 このGAUSS-3試験では、まずアトルバスタチンで筋肉痛により服薬できない患者を選択して、エゼチミブを投与する群とエボロクマブを月に1回投与する群で無作為化盲検試験を行った。その結果、22~24週後のLCL-Cの平均変化率がエゼチミブ群で-16.7%であったのに比べて、エボロクマブ群で-54.5%と有意な低下を認め、エボロクマブ単独でのLDL-C低下作用の有効性が確認された。 ただ、イベントの減少を検討した大規模臨床試験がスタチンを用いたものであったことから、2013年のACC/AHAガイドラインでは、スタチン投与の重要性が強調され、それ以外の薬剤や目標のLDL-C値が記載されていない。スタチン以外でLDL-C低下を可能としたIMPROVE-IT試験でも、エゼチミブの効果はLDL-C低下ではなく、吸収抑制による可能性が指摘されている。 エボロクマブは、LDL-レセプターパスウェーでスタチン以外にLDL-C低下作用が示された初めての薬剤である。この薬剤の効果を検証するFOURIER試験で心血管イベントの抑制がなされれば、LDL-Cの“The Lower the betterが示されることになる。 エボロクマブが、スタチンを服用できなかった患者に大きな福音となるかどうか、大規模臨床試験の結果を見守りたい。

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リノール酸はヘルシーとは言えない?/BMJ

 リノール酸を多く含む食事により冠動脈疾患または全死亡のリスクが低下する、という伝統的な仮説に否定的な見解が示された。リノール酸を多く含む食事は飽和脂肪酸を多く含む食事と比較して、血清コレステロール値を低下させるが、その低下が大きすぎるとむしろ死亡リスクは高まり、これまで飽和脂肪酸を植物性脂肪に置き換える効果が過大評価されてきた可能性があるという。米国立衛生研究所(NIH)のChristopher E Ramsden氏らが、Minnesota Coronary Experiment(MCE)研究の未発表文書を発見し、生データを再解析するとともに、類似の無作為化比較試験も含めてシステマティックレビューならびにメタ解析を行った結果、報告した。BMJ誌オンライン版2016年4月12日号掲載の報告。MCE試験の未発表を再解析、類似の無作為化比較試験を含めてメタ解析 MCE研究(1968~73年)は、飽和脂肪酸を、リノール酸が豊富な植物油で置き換えることで、血清コレステロール値が下がり冠動脈疾患や全死亡は減少するとの仮説を検証する目的で、米国ミネソタ州の介護施設1施設および州立精神科病院6施設の患者を対象に行った、無作為化二重盲検比較試験である。介入群には、飽和脂肪酸をリノール酸(コーン油またはコーン油の多価不飽和脂肪酸を多く含むマーガリン)に置き換えた食事を、対照群には動物性脂肪など飽和脂肪酸の多い通常の食事が1年以上提供された。 研究グループは、無作為化された男女9,423例(20~97歳)について、解析が完了した未発表文書、ならびに1年以上の本研究の食事を取った2,355例の血清コレステロール値に関するデータ、剖検が実施された149例のファイルを精査した。さらに、システマティックレビューにより、飽和脂肪酸の代わりにリノール酸が豊富な植物油を提供し血清コレステロール値が低下した無作為化比較試験5件(計1万808例)を確認し、そのデータも包含したメタ解析を実施した。 主要評価項目は、全死因死亡、血清コレステロール値と死亡率との関連性、剖検で検出された冠動脈硬化症および心筋梗塞とした。介入群で血清コレステロール値は有意に減少するも、死亡リスクは上昇 介入群では、対照群と比較して血清コレステロール値が有意に減少した(ベースラインからの平均変化:-13.8% vs. -1.0%、p<0.001)。Kaplan Meier法により死亡率を評価した結果、全体またはサブグループいずれにおいても、介入による死亡への効果はみられなかった。 共変量(ベースラインの血清コレステロール値、年齢、性別、食事順守率、BMI、収縮期血圧)で調整したCox回帰モデル分析において、血清コレステロール値が30mg/dL低下するごとに、死亡リスクは22%上昇することが認められた(ハザード比[HR]:1.22、95%信頼区間[CI]:1.14~1.32、p<0.001)。介入群において、冠動脈硬化症や心筋梗塞に対する有効性は認められなかった。 メタ解析の結果、コレステロールを低下させる介入が冠動脈疾患による死亡(HR:1.13、95%CI:0.83~1.54)、または全死因死亡(1.07、95%CI:0.90~1.27)を低下させるというエビデンスは示されなかった。

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HOPE3試験:あまり新規性のない結果?(解説:興梠 貴英 氏)-517

 HOPE3試験は、心血管疾患を持たないが中等度の心血管リスクを有する人間に対して、降圧治療およびLDLコレステロール低下治療を行うことで、イベントを減らすことができるのかをみた試験である。 登録基準が男性55歳以上、女性65歳以上のほかに、ウェストヒップ値高値、最近または現在の喫煙、HDL-C値低値、血糖障害、軽度腎障害、一親等の虚血性心疾患早期発症の家族歴のいずれか1つ以上を持つことで、高血圧や高脂血症は登録基準には入っていない。また、除外基準に「記録された臨床的に明らかな動脈硬化性心血管疾患」が入っているため、比較的リスクが低い(著者らは「中等度」と表現)集団を対象としている。 この集団に対して、カンデサルタン16mg + HCTZ 12.5mgもしくはプラセボ×ロスバスタチン10mgまたはプラセボの2×2、合計4群を比較したもので、(1)双方とも実薬 vs.双方ともプラセボ、(2)降圧薬 vs.プラセボ、(3)スタチン vs.プラセボの3つの論文が報告されている。 簡単に結果を要約すると(2)では有意差がつかず、(1)(3)で実薬群がプラセボ群に比較して有意にエンドポイントを低下させた、ということになる。また、低下率は(1)での29%に対して、(3)では24%と、降圧の効果は相対的に小さいことが読み取れる。さて、これらの結果からいえることは何だろうか。 実は、筆頭著者のYusuf氏は以前から、心血管疾患患者に対して、降圧薬、スタチン、低用量アスピリンはそれぞれ単独で2次予防効果があるので、それらの合剤(polypill)を一律に投与することでよりリスクが減らせるはずだという仮説を持っており、これまでにpolypillを用いた臨床試験を行ったり1)、WHOにそうした提案を行ったりしている2)。HOPE3試験は1次予防であるが、(1)の結果のみをみると、血圧、コレステロール双方低下させる(=降圧薬とスタチンの合剤を服用させる)ことで心血管リスクを低下させられる、という結論になるかもしれない。しかし、(2)(3)と考え合わせるとスタチンの効果が大きく、降圧薬は小さいか、または有意な効果がない、ということになるだろう。 ところで、低~中等度のリスクを持つ患者に対してスタチンが心血管リスクを低下させる、ということは、過去のスタチンランダム比較試験の結果をメタ解析した結果でもすでに報告されている3)。このメタ解析で興味深いのは、リスクの高低にかかわらず、スタチンによるLDL-C低下により同じくらいの割合でイベントリスクが低下することが示された一方、絶対リスクの低下量はもともと患者が持っているリスクが大きいほど大きく、小さいと低下量が大幅に小さくなることである。HOPE3試験でも絶対リスクの低下量は小さく、この結果をもって高脂血症を持つとは限らない、中等度リスク患者に対してスタチンを投与すべきか否かは、費用対効果を検討したうえで決める必要があるだろう。 また、本質的なことではないかもしれないが、3つの論文に共通して奇妙なのは主要エンドポイントのKaplan-Meier曲線が示されていないことである。

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中等度リスク患者へのスタチン+降圧薬治療の効果は?/NEJM

 心血管疾患既往のない、心血管イベントリスクが中等度の患者に対し、ロスバスタチンと、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドを投与しコレステロール値と血圧値を下げることで、主要心血管イベントリスクは約3割減少することが示された。カナダ・Population Health Research InstituteのS. Yusuf氏らが、約1万3,000例を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験HOPE-3の結果、明らかにした。NEJM誌オンライン版2016年4月2日号掲載の報告。ロスバスタチン+カンデサルタン/ヒドロクロロチアジドを投与し、イベント発生率を比較 研究グループは、21ヵ国228ヵ所の医療機関を通じて、55歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患の既往がなく、(1)ウエスト・ヒップ比が高い、(2)低HDLコレステロール値、(3)最近または現在喫煙、(4)糖代謝異常、(5)早期冠動脈疾患の家族歴、(6)軽度腎機能障害のいずれか1つ以上が認められる、1万2,705例を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。 同試験では、2×2要因デザインを用いて、カンデサルタン16mg/日+ヒドロクロロチアジド12.5mg/日と、脂質低下薬ロスバスタチン10mg/日の効果を検証。本論文では、ロスバスタチン+カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド投与群(3,180例)と、同非投与群(3,168例)について、その効果を比較した。 主要複合アウトカムは2つあり、第1主要複合アウトカムは心血管疾患死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中、第2主要複合アウトカムは、第1主要複合アウトカムに心肺停止からの蘇生、心不全、血行再建術を加えたものだった。治療群でイベントリスクは0.71倍に 追跡期間中央値は、5.6年だった。試験期間中、治療群がプラセボ群に比べLDLコレステロール値低下幅は33.7mg/dL大きく、また収縮期血圧低下幅はプラセボ群に比べ治療群が6.2mmHg大きかった。 第1主要複合アウトカムの発生率は、プラセボ群が5.0%(157例)に対し、治療群が3.6%(113例)と、有意に低率だった(ハザード比:0.71、95%信頼区間:0.56~0.90、p=0.005)。 第2主要複合アウトカムの発生率も、プラセボ群5.9%(187例)に対し、治療群が4.3%(136例)と低率だった(同:0.72、同:0.57~0.89、p=0.003)。 有害事象発生率については、筋肉症状やめまいは治療群で高率だったものの、治療中断率は両群で同等だった。

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スタチン不耐容患者へのエボロクマブ vs.エゼチミブ/JAMA

 筋肉関連の有害事象によるスタチン不耐容の患者において、新規開発の脂質低下薬エボロクマブはエゼチミブと比較して、24週後のLDL-コレステロール(LDL-C)値を有意に低下したことが、米国・クリーブランドクリニックのSteven E. Nissen氏による無作為化試験「GAUSS-3」試験の結果、示された。筋肉関連の有害事象によるスタチン不耐容の患者は5~20%と報告されており、スタチンの超低用量投与や間欠的投与あるいはエゼチミブ投与などが行われるが、ガイドラインで推奨される50%超低下を達成することはまれである。PCSK9阻害薬エボロクマブは、LDL-Cの低下が顕著で、スタチン不耐容患者の代替療法となる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2016年4月3日号掲載の報告より。24週投与し、エボロクマブとエゼチミブの脂質低下の有効性と安全性を比較 GAUSS-3試験は、スタチンを再投与し筋肉症状の発現を確認する(フェーズA)、エゼチミブとエボロクマブの2つの非スタチン薬の脂質低下の有効性を比較する(フェーズB)、2段階から成る無作為化試験であった。 2013年12月10日~14年11月28日に、LDL-C値コントロール不良、2剤以上のスタチン不耐容歴のある511例を登録。フェーズAにおいて、クロスオーバー法を用いて24週間、アトルバスタチン(20mg)あるいはプラセボを投与し、アトルバスタチン投与でのみ筋肉症状を認めた患者を確認した。2週間のウォッシュアウト後、フェーズBにおいて、患者を2対1の割合でエボロクマブ(月1回420mg皮下注)もしくはエゼチミブ(1日1回10mg経口投与)群に無作為に割り付け、24週間の投与を行った。 主要エンドポイントは2つで、LDL-C値のベースラインからの平均変化率を、22週と24週の平均値、および24週値について評価した。24週時の平均変化率、エボロクマブ群-52.8%、エゼチミブ群-16.7% フェーズAの被験者は491例であった。平均年齢60.7(SD 10.2)歳、女性246例(50.1%)、170例(34.6%)が冠動脈疾患歴あり、試験開始時の平均LDL-C値は212.3(SD 67.9)mg/dLであった。結果、アトルバスタチン服用時のみ筋肉症状が認められたのは209例(42.6%)であった。 209例のうちフェーズBには199例が参加した。また、クレアチンキナーゼ高値であった19例がフェーズBより参加し計218例で行われた。エゼチミブ群に73例、エボロクマブ群に145例が割り付けられた。試験開始時の平均LDL-C値は219.9(SD 72)mg/dLであった。 LDL-C値の22週と24週の平均値は、エゼチミブ群は183.0mg/dLで、ベースラインからの平均変化率は-16.7%(95%信頼区間[CI]:-20.5~-12.9%)、絶対変化値は-31.0mg/dLであった。一方、エボロクマブ群は103.6mg/dL、-54.5%(95%CI:-57.2~-51.8%)、-106.8mg/dLで変化が有意に大きかった(LDL-C値の両群差:-37.8%、絶対変化値差:-75.8mg/dL、p<0.001)。 また24週時のLDL-C値についても、エゼチミブ群は181.5mg/dL、平均変化率は-16.7%(95%CI:-20.8~-12.5%)、絶対変化値は-31.2mg/dLであった一方、エボロクマブ群は104.1mg/dL、-52.8%(95%CI:-55.8~-49.8%)、-102.9 mg/dLで変化が有意に大きかった(LDL-C値の両群差:-36.1%、絶対変化値差:-71.7mg/dL、p<0.001)。 筋肉症状の報告は、エゼチミブ治療群で28.8%、エボロクマブ群で20.7%で有意差はみられなかった(log-rank検討によるp=0.17)。なお、筋肉症状のために試験薬投与を中止したのは、エゼチミブ治療群73例中5例(6.8%)であったのに対し、エボロクマブ群は145例中1例(0.7%)であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「さらなる試験で、長期の有効性と安全性を評価する必要がある」とまとめている。

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統合失調症、喫煙と脂質プロファイルの関連は

 統合失調症では、喫煙および異常な脂質プロファイルの高い割合と関連している。中国・北京大学のHui-Mei An氏らは、統合失調症患者の喫煙者と非喫煙者のプロファイルが異なるかどうか、脂質プロファイルが精神病理的症状に関連しているかどうかを検討した。Neuroscience bulletin誌オンライン版2016年3月28日号の報告。 血清脂質プロファイルは、DSM-IVで定義された統合失調症男性患者130例(喫煙者:104例、非喫煙者:26例)で測定された。症状は、PANSSを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・PANSS陽性症状は非喫煙者よりも喫煙者で少なく、陰性症状はタバコをより多く吸っている人で少なかった。・総タンパク質およびグロブリンレベルは、非喫煙者よりも喫煙者で有意に低かった。・しかし、総コレステロール、トリグリセライド、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アポリポ蛋白A1またはBは、喫煙者と非喫煙者との間で有意な差は認められなかった。・PANSS陽性サブスケールは、喫煙者において、HDLコレステロールレベルとの間に有意な負の相関が示されたが、非喫煙者ではそうではなかった。・統合失調症患者の喫煙者は精神症状が少なく、予想に反して、喫煙は脂質プロファイルレベルに影響を与えなかった。関連医療ニュース 日本人統合失調症患者の脂質プロファイルを検証!:新潟大学 抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか

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