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真性多血症(真性赤血球増加症)〔PV:polycythemia vera〕

1 疾患概要■ 定義真性多血症(PV)は、造血幹細胞レベルで生じる遺伝子変異により汎血球増加、特に赤血球数の著増を来す骨髄増殖性腫瘍である。■ 疫学発症率は人口10万あたり年間約2人、発症年齢中央値は65歳、男女比は約1.5:1である。■ 病因エリスロポエチン(Epo)、トロンボポエチン、顆粒球コロニー刺激因子などのサイトカインのシグナル伝達に必須なJAK2の変異により、これらレセプターの下流のシグナル伝達経路が恒常的に活性化して生じる。JAK2変異は95%以上の例に検出されるが、それ以外に、TET2、DNMT3などのエピゲノム関連分子の変異がそれぞれ10~20%、5~10%にみられる。■ 症状頭痛、頭重感、赤ら顔(深紅色の口唇、鼻尖)、発熱、体重減少、倦怠感、掻痒、骨痛などがみられる。皮膚掻痒感は入浴後に悪化することが多い。血小板増加例では、四肢末端に非対称性の灼熱感を伴う発赤腫脹を来す肢端紅痛症がみられる。触知可能な脾腫が15~20%に認められる。■ 分類血栓症の発症リスクに応じて、低リスク群(年齢60未満、かつ血栓症の既往がない)と高リスク群(年齢60歳以上、血栓症の既往の、いずれか、あるいは両方を認める)に分類する。■ 予後生命予後は比較的良好であり、10年総生存率は約85%である。10年の血栓症を生じない生存率、出血を伴わない生存率は、それぞれ約90%である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多血、骨髄生検所見、JAK2変異の大基準のうち3項目以上、あるいは大基準の多血と骨髄生検所見に加え、小基準である血清Epo値が低値を示すときにPVと診断する。多血はPVを最初に疑う所見である。PVの診断基準では、Hb値が男性>16.5g/dL、女性>16.0g/dL、ヘマトクリット(Ht)値が男性>49%、女性>48%、もしくは循環赤血球量が予測値の25%を超えて増加している場合を多血とする。赤血球数のみならず、PVでは好中球、血小板数も増加することが多い。PVの骨髄生検所見は過形成であり、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞の3系統の細胞の増生がみられる。ただし、3系統の細胞数の比は正常と比べてほぼ同等である。巨核球の分化障害も認めない。線維化はあってもごく軽度である。JAK2変異はPVの95%以上の例に認められる。大部分はV617F変異であり、少数例はexon12の変異を示す。大多数のPVにJAK2変異を認めるため、その存在はPV診断に有用であるものの、JAK2変異はPVに特有ではなく、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症の約50%の例にも検出されることに留意が必要である。つまり、JAK2変異を認めない場合のPV診断は慎重に進めるべきであるが、逆にJAK2変異を認めた場合、PV、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症のいずれかであると言ってよい。ただし、JAK2変異の存在だけでPVとは診断できない。血清Epoは低値を示すことが多い。PV診断においてEpo値の低下の特異度は高いものの、感度は中等度である。つまり、血清Epo値が低い場合はPVである可能性が高いが、Epoが高いからといってPVを否定できるわけではない。鑑別すべき主な疾患は、相対性赤血球増加症と2次性赤血球増加症である。相対性赤血球増加症は、循環赤血球量の増大は認めないものの、脱水などによりHt値やHb値が上昇している場合をいう。嘔吐、下痢などの有無、利尿薬の服薬状況の確認が必要である。相対性赤血球増加症に分類されるストレス多血症は、中年の男性に好発し、喫煙者に多い。赤血球数やHb値、Ht値の上昇を認めるが、白血球数や血小板数は正常であり、脾腫も認めない。また、血清Epo値は上昇していることが多い。2次性赤血球増加症は、血清Epo濃度の上昇により生じる赤血球数の増加である。低酸素(高地や慢性閉塞性肺疾患、右左シャントを伴う心疾患など)が続くと、反応性に腎臓からのEpo産生が増加して、また腫瘍性にEpoが産生されると赤血球数増加を来す。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)生命予後は良好であり、治療の基本は血栓症の予防である(図)図 血栓症リスクに基づくPVの治療方針画像を拡大するはじめに心血管系合併症の危険因子(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)の評価を行い、該当する場合は禁煙指導、生活習慣の改善、生活習慣病の治療を行う。増加している赤血球体積を減少させるため、原則として全例に瀉血療法を行う。ヘマトクリット値0.45未満を目標に、血圧、脈拍などの循環動態をみながら1回200~400mLの瀉血を月に1~2度のペースで行う。高齢者や心血管障害を有する例では、循環動態の急激な変化がないように、少量(100~200mL)、頻回の瀉血が望ましい。また、瀉血後に同量の補液を行うと、血行動態の変化を抑えられるだけでなく、ヘマトクリット値が希釈により低下することも期待される。これに加えて、出血や消化器潰瘍症状などの禁忌がなければ低用量アスピリン(商品名:バイアスピリン)投与により血栓症の予防をはかる。血小板数の増加がある場合、von Willebrand 因子(vWF)活性が低下していることがあり(後天性のvWF症候群)、アスピリン投与により出血を来す可能性がある。そのためvWFが30%以下の場合にはアスピリンの投与は行わない。上記に加えて、血栓症の高リスク群(年齢60歳以上、あるいは血栓症の既往がある場合)では、細胞減少療法を行う。細胞減少療法の第1選択薬はヒドロキシカルバミド(同:ハイドレア)、またはロペグインターフェロンα-2b(同:ベスレミ)である。ヒドロキシカルバミドの必要量は症例により大きく異なるため、少量から開始し、Ht<0.45となるように調節する。ロペグインターフェロンα-2bは100μgを開始用量とし、2週間に1回皮下注を行う。増量は50μgずつ行い、最大用量は500μgである。自己注射も可能である。個々の患者に応じた最大量のヒドロキシカルバミドを投与してもHt値0.45以下、白血球数10,000/μL以下、血小板数40万/μL以下にコントロールできない場合をヒドロキシカルバミド抵抗性と、ヒドロキシカルバミド投与によりHb<10g/dL、好中球数<1,000/μL、血小板数<10万/μLと血球減少が生じる場合、あるいはヒドロキシカルバミドによる下肢潰瘍などのためにヒドロキシカルバミド治療が継続できない場合を「ヒドロキシカルバミド不耐容」と呼ぶ。ヒドロキシカルバミド治療を開始された患者の20~40%はヒドロキシカルバミド抵抗性/不耐容となる。このような場合は、JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブ(同:ジャカビ)投与により、血球数のコントロールのみならず、血栓症の減少も期待できる。1回10mgを開始用量とし、1日2回経口投与する。最大用量は1回25mg(1日50mg)である。真性多血症の3~6%は2次性の骨髄線維症へと、数%の例は急性骨髄性白血病へと病型進展する。治療が一定であるにもかかわらず経過中に血球数が減少する場合や、末梢血に芽球が出現する場合は、骨髄線維症、急性白血病への移行を疑い、骨髄生検を行う。4 今後の展望PVの生命予後は比較的良好なものの、約10~20%の例が血栓症、出血を合併する。現在用いられている血栓症のリスク分類は、細胞減少療法の適応を決めるためのものであり、標準的な治療法が選択された患者における血栓症、出血の発症リスクが明らかになることが望まれる。またロペグインターフェロンα-2bやルキソリチニブ治療により、一部の症例ではJAK2V617F allele burdenの減少が認められる。JAK2V617F allele burdenが治療前値と較べ50%以上減少した症例は、そうでない症例と較べ主要血栓症、出血、骨髄線維症や急性骨髄性白血病への進展、死亡を認めない生存率が良好であることが報告されており、血栓症の予防のみならず、腫瘍量の減少を目指す治療戦略が現実的になりつつある。5 主たる診療科血液内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。1)日本血液学会編. 造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版(第3.1版). 金原出版;2024.2)Harrison et al. WHO Classification of Tumours of Haematolopoetic and Lymphoid Tissues 5th edition. WHO;2022. p.p40-43.公開履歴初回2022年11月10日更新2025年6月30日

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動脈硬化症の身体所見【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q38

動脈硬化症の身体所見Q38動脈硬化症を評価する手段として、検査の他に身体所見もいくつか報告がみられている。発表されたのは1973年であるが、2000年頃から本邦でも全国的に認知され始めた、視診でとれる動脈硬化症を示唆する身体所見は?

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動脈硬化の評価(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q37

動脈硬化の評価(2)Q37初診外来(or救急外来)の対応中に、誤嚥性肺炎を疑う病歴の高齢男性が受診された。胸部レントゲンでははっきりと陰影を指摘できず、両肺の過膨張程度であったため胸部単純CTまで施行した。せっかくCTを撮ったのだから、主目的の肺野評価以外に、一緒に評価できる動脈硬化を疑える所見は?

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手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き2022』が15年ぶりに改訂されるにあたり、9月17、18日にオンライン開催された第22回日本メンズヘルス医学会において、シンポジウム「LOHセッション」が開催された。本稿では検査値の改訂ポイントについて、伊藤 直樹氏(NTT東日本札幌病院泌尿器科 部長/外科診療部長)の発表内容からお伝えする(共催:株式会社コスミックコーポレーション)。 LOH症候群とは、“加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群”である。加齢に起因すると考えられる症状として大きく3つの項目があり、1)性腺機能症状(早期勃起の低下、性欲[リビドー]の低下、勃起障害など)、2)精神症状(うつ傾向、記憶力、集中力の低下、倦怠感・疲労感など)、3)身体症状(筋力の低下、骨塩量の減少、体脂肪の増加など)が挙げられる。見直された診断基準値、海外と違う理由 本手引きの改訂においてもっとも注目すべきは、主診断に用いる検査値が変わることである。2007年版の診断基準値では遊離テストステロン値(8.5pg/mL未満)のみが採用されていたが、2022年改訂版では総テストステロン値(250ng/dL未満)を主診断に用いることになる。その理由として、伊藤氏は「海外でのgold standardであること、総テストステロン値と臨床症状との関連性も認められること、健康男性のmean-2SD・海外ガイドラインも参考にしたこと」を挙げた。また、遊離テストステロン値は補助診断に用いることとし、LOH症候群が対象となり始める30~40歳代のmean-2SD値である7.5pg/mL未満とするに至った。これについて「RIA法の信頼性が問題視されていること、海外の値(欧州泌尿器学会では63.4pg/mLなど)と測定方法が異なり比較できないため」とコメントした。<LOH症候群の新たな診断基準>―――・総テストステロン値250ng/dL未満または・250ng/dL以上で遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する●注意点(1)血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。(2)2回採血について、日本では保険適用の問題もあるため、海外で推奨されているも本手引きではコメントなし。――― また、測定時に注意すべきは、総テストステロンの4割強は性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone brinding globulin)と強く結合しているため、SHBGに影響を与える疾患・状態にある患者の場合は値が左右される点である。同氏は「SHBGが増加する疾患として、甲状腺機能亢進症、肝硬変、体重減少などがある。一方で低下する疾患には、肥満、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性・糖尿病などがあるため、症状の原因となるようなリスクファクターの探索も重要であるとし、「メタボリックシンドローム(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)から悪性腫瘍などの消耗性疾患、副腎皮質・甲状腺など内分泌疾患、そしてうつ病などの精神疾患などLOH症候群に疑わしい疾患は多岐にわたるため、すぐに断定することは危険」と強調。「自覚症状、他覚的所見を総合的に判断し、ほかの疾患の存在も常に疑うべき」と指摘した。 さらに、診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という点について、「アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性がある」と説明した。 測定値とは別に、症状からLOH症候群か否かを定量的に判定する方法の1つとしてAMS(Aging Males' Symptoms)スコア1)が広く用いられている。これについて、同氏は「感度は高いが特異度は低いため、スクリーニングには推奨されない」と話した。一方でホルモン補充療法による臨床効果の監視には有用という報告もあることから、「全体の合計点だけを見るのではなく、それぞれの症状をピックアップし、患者に合わせて対応することが大切」と説明した。 最後に、診断を確定する前にはLOH症候群が原発性か二次性かの確認も必要なことから、「最終的にはLHおよびFSHを測定し二次性性腺機能低下症の有無を確認するために、その原因疾患を把握し、確認して欲しい」と締めくくった。

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動脈硬化の評価(1)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q36

動脈硬化の評価(1)Q36動脈硬化の評価について、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」では以前から形態学的検査法と血管機能検査法が複数あげられている。検査のモダリティ、項目の追加はないが、「超音波検査」の中に評価するべき血管として追加されたのは?

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動脈硬化のリスク因子【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q35

動脈硬化のリスク因子Q35脂質異常症は動脈硬化のリスクの1つとして知られており、その管理について「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」で解説されている。2017年版から2022年版への改訂の際に追加となったリスクは?

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時の効果を比較/NEJM

 米国では、2型糖尿病患者の治療においてメトホルミンとの併用で使用される血糖降下薬の相対的有効性のデータは十分でないという。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、メトホルミンと4種類の血糖降下薬の併用療法の効果を比較し、微小血管合併症や死亡の発生には4種類の薬剤で実質的な差はないが、心血管疾患の発生には群間差が存在する可能性があることを示した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号に掲載された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。本論では、主に副次アウトカムの結果が報告され、主要アウトカムは別の論文で詳報された。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、診断からの経過期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、糖化ヘモグロビン値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、メトホルミンに加え、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、グリメピリド、リラグルチド、シタグリプチンのうち1つの投与を受ける4つの群に無作為に割り付けられた。5,047例が登録され、このうちグラルギン群が1,263例、グリメピリド群が1,254例、リラグルチド群が1,262例、シタグリプチン群は1,268例だった。高血圧、脂質異常症、尿中アルブミン上昇にも、実質的な差はない ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、63.6%が男性だった。糖尿病の平均罹病期間は4.2±2.7年、メトホルミンの平均1日投与量は1,994±205mgであり、平均BMIは34.3±6.8、平均糖化ヘモグロビン値は7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年。 目標血糖値の維持(代謝に関する主要アウトカム)については、グラルギン群とリラグルチド群の効果がグリメピリド群、シタグリプチン群よりも優れ、4年時の糖化ヘモグロビン値はグラルギン群とリラグルチド群が7.1%であったのに対し、グリメピリド群は7.3%、シタグリプチン群は7.2%であった。 高血圧、脂質異常症の発生、および微小血管アウトカムに関しては、4つの治療群で実質的な差はなかった。また、全体的な尿中アルブミンの中等度上昇の発生割合の平均値は、100人年当たり2.57、尿中アルブミンの高度上昇は1.08、腎障害は2.91で、いずれも治療群間で差はなく、試験終了時の累積発生率はそれぞれ約15%、8%、20%であった。同様に、糖尿病性末梢神経障害の発生割合は100人年当たり16.7であり、追跡期間の1年目の発生率は約20%、試験終了時には約70%に達した。 試験期間中の全心血管疾患の発生割合は100人年当たり1.79で、試験終了時には4つの治療群の発生率は10~15%に達した。治療群別の発生割合は、100人年当たりグラルギン群が1.87、グリメピリド群が1.92、リラグルチド群が1.36、シタグリプチン群は2.00であり、わずかな差が認められた。 また、全体的な主要有害心血管イベント(MACE)の発生割合は100人年当たり0.98、心不全による入院は0.40、心血管系の原因による死亡は0.27、全死因死亡は0.59であり、治療群間で差はなかった。 一方、1つの治療を、他の3つの治療を統合した結果と比較すると、全心血管疾患のハザード比は、グラルギン群が1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)、グリメピリド群が1.12(0.90~1.39)、リラグルチド群が0.71(0.56~0.90)、シタグリプチン群は1.18(0.96~1.46)であった。 著者は、「2型糖尿病の治療薬を選択する際には、血糖値に対する効果とともに、微小血管合併症、心血管リスク因子、心血管アウトカムに及ぼすこれらの薬剤の異なる効果を考慮する必要があり、この試験の結果は、治療薬の選択において有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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男女別、心血管イベントのリスク因子は/Lancet

 脂質マーカーとうつ病は、女性より男性で心血管リスクとの関連が強く、食事は男性よりも女性で心血管リスクとの関連が強いことが、カナダ・マックマスター大学のMarjan Walli-Attaei氏らによる大規模前向きコホート研究「Prospective Urban Rural Epidemiological:PURE研究」の解析の結果、示された。ただし、他のリスク因子と心血管リスクとの関連は女性と男性で類似していたことから、著者は、「男性と女性で同様の心血管疾患予防戦略をとることが重要である」とまとめている。Lancet誌2022年9月10日号掲載の報告。35~70歳の約15万6,000例で、各種リスク因子と主要心血管イベントの関連を解析 研究グループは、現在進行中のPURE研究における、高所得国(11%)および低・中所得国(89%)を含む21ヵ国のデータを用いて解析した。 解析対象は、2005年1日5日~2021年9月13日に登録され、ベースラインで35~70歳の心血管疾患既往がなく、少なくとも1回の追跡調査(3年時)を受けた参加者15万5,724例であった。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全の複合)とした。代謝リスク因子(収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト対ヒップ率、非HDLコレステロール)、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、総コレステロール/HDLコレステロール比、ApoA1、ApoB、ApoB/ApoA1比)、行動的リスク因子(喫煙、飲酒、身体活動、食事[PURE食事スコア])および心理社会的リスク因子(うつ症状、教育)と主要心血管イベントとの関連を男女別に解析し、ハザード比(HR)ならびに人口寄与割合(PAF)を算出した。脂質マーカーとうつ症状は、女性より男性で心血管リスク上昇 解析対象15万5,724例の内訳は、女性9万934例(58.4%)、男性6万4,790例(41.6%)、ベースラインの平均(±SD)年齢はそれぞれ49.8±9.7歳、男性50.8±9.8歳で、追跡期間中央値は10.1年(四分位範囲[IQR]:8.5~12.0)であった。 データカットオフ(2021年9月13日)時点で、主要心血管イベントは女性で4,280件(年齢調整罹患率は1,000人年当たり5.0件[95%信頼区間[CI]:4.9~5.2])、男性で4,911件(8.2件[8.0~8.4])発生した。男性と比較して、女性はとくに若年で心血管リスクプロファイルがより良好であった。 代謝リスク因子と主要心血管イベントとの関連は、非HDLコレステロールを除き、女性と男性で同様であった。非HDLコレステロール高値のHRは、女性で1.11(95%CI:1.01~1.21)、男性で1.28(1.19~1.39)であった。また、他の脂質マーカーも女性よりも男性のほうが一貫してHR値が高かった。 うつ症状と主要心血管イベントとの関連を示すHRは、女性で1.09(95%CI:0.98~1.21)、男性で1.42(1.25~1.60)であった。一方、PUREスコア(スコア範囲:0~8)が4以下の食事の摂取は、男性(HR:1.07[95%CI:0.99~1.15])よりも女性(1.17[1.08~1.26])で主要心血管イベントと関連していた。 主要心血管イベントに対する行動的および心理社会的リスク因子(合計)のPAFは、女性(8.4%)よりも男性(15.7%)で大きく、これは主に現在喫煙のPAFが男性で大きいためであった(女性1.3%[95%CI:0.5~2.1]、男性10.7%[95%CI:8.8~12.6])。

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日本人の脂質値の推移とコントロールの重要性(解説:三浦 伸一郎 氏)

 2022年8月23・30日号のJAMA誌に米国成人の脂質値の推移の研究が報告された。総コレステロール値は年齢調整後、2018年までの10年間で有意に改善していたが、注目されることはアジア人では改善を認めなかったことである。 日本人の脂質値の推移は、「健康日本21(第二次)」の計画の途中経過を見ると、2019年で血清総コレステロール値が240mg/dL以上の割合は男性12.9%、女性22.4%であった(「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」厚生労働省)。この10年間でみると、その割合は、男性で有意な変化はなかったが、女性では有意に増加していた。「健康日本21(第二次)」の脂質異常症(40~79歳)の減少目標は、総コレステロール240mg/dL以上の割合が男性10%、女性17%であり、かなり乖離があるのが現状である。 現在、脳心血管疾患の二次予防では、スタチンを中心とした脂質異常症治療薬による積極的脂質低下療法が実施されるようになってきたが、一次予防に対してはまだ議論の余地がある。JAMA誌の報告のもうひとつの要点は、スタチン服用者のコレステロールのコントロール率は10年間で有意な変化をもたらしていなかったことである。 日本では、2022年7月に日本動脈硬化学会より『動脈硬化性疾患予防ガイドライン』が発表され、久山町スコアによる予測される10年間の動脈硬化性疾患発症予測モデルが新たに作成されている。一次予防患者では、単にコレステロール値のみでなく、この予測モデルを利用し、個々人に合わせた脂質管理目標値を設定する必要がある。さらに、生活習慣の修正と共に、必要があれば、一次予防でも治療薬による積極的脂質低下療法を考慮すべきと考える。さらに、脂質値を考える場合、総コレステロール値やLDLコレステロール値のみでなく、トリグリセライド値やHDLコレステロール値も考慮に入れた脂質管理が必要である。

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英語で「問題ありません」は?【1分★医療英語】第46回

第46回 英語で「問題ありません」は?How was the test result?(検査の結果はどうでしたか?)Your diabetes is under control.(あなたの糖尿病は問題ありません)《例文1》Don’t worry. Everything is under control.(心配ありません、すべて順調です)《例文2》His drinking problem is not under control.(彼の飲酒癖は手に負えない状態です)《解説》“under control”の直訳は「支配下にある、コントロール下に置かれている」となりますが、「適切に管理されている」ということから派生して、日常会話では「うまくいっている、問題ない」という意味で使われます。医療現場では、糖尿病や脂質異常症などの慢性疾患が順調に管理されていることを“under control”と表すことができます。また、“get”を使うことで“I would like to get you diabetes under control.”(あなたの糖尿病をコントロールしたいのです)といった表現もできます。“under”は「下に」を表す前置詞ですが、“under construction”(建設中)、“under repair”(修理中)といったように、「~している最中である」という意味合いでも使われることも覚えておきましょう。講師紹介

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低BMIの蛋白尿リスクに“朝食抜き”が影響

 蛋白尿は心血管疾患と死亡率の重要な予測因子であり、いくつかの研究では、朝食を抜くことと蛋白尿の有病率との関連性が報告1)されている。また、朝食を抜くと肥満のリスクが高まることも明らかになっている。そこで、村津 淳氏(りんくう総合医療センター腎臓内科)らは蛋白尿が肥満の人でよく見られることに着目し、朝食を抜くことによる蛋白尿の有病率とBMIとの関連について調査を行った。その結果、蛋白尿は低BMIと関連性が見られ、低BMIの人の場合には、朝食を抜くことに注意する必要があることが示唆された。本研究結果はFront Endocrinol誌8月19日号に掲載された。. 本研究者らは、正常な腎機能者における朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連に対するBMIの臨床的影響を評価することを目的に、2008年4月~2018年12月までの期間に市中病院で健康診断を受け、腎疾患の既往がなく、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2 以上であった2万6,888例 (男性:1万5,875例、女性:1万1,013例) を対象に横断研究を実施した。 本研究では、週3日以上朝食を食べていない者を「朝食抜き」と定義。そのほか、対象者には喫煙、アルコール多飲、運動不足、睡眠不足、間食の有無、深夜/夕食時の生活行動、既往歴(高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・高尿酸血症・冠動脈疾患)についてアンケートを行った。また、朝食抜きと蛋白尿の有病率との関連性はBMI(kg/m2)を3つのサブグループ(男性:

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日本人高齢者における片頭痛有病率~糸魚川翡翠研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、日本人高齢者の頭痛、片頭痛、慢性連日性頭痛、痛み止めの使い過ぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)の有病率を調査するためアンケート調査を実施し、3ヵ月間の頭痛の有病率とその特徴を明らかにしようと試みた。結果を踏まえ著者らは、日本人高齢者の頭痛有病率は諸外国と比較し、決して高いものではないが、片頭痛による社会経済的損失は重大であり、疾患の理解、適切な治療や予防などが重要であると報告している。また、高齢者は、さまざまな併存疾患に関連する重度な頭痛といった特徴を持つ可能性が示唆された。Journal of Clinical Medicine誌2022年8月11日号掲載の報告。 2019年、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種後の待機時間を利用し、新潟県・糸魚川市の糸魚川総合病院と能生国民健康保険診療所で、65歳以上の高齢者を対象にアンケート調査を実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。慢性連日性頭痛は、1ヵ月に15日以上の頭痛発生と定義した。K-means++法を用いて、クラスタリングを行った。 主な結果は以下のとおり。・有効回答者2,858例における有病率は、頭痛11.97%、片頭痛0.91%、慢性連日性頭痛1.57%、薬物乱用頭痛0.70%であった。・鎮痛薬の併用や非オピオイド鎮痛薬の使用頻度が高かった。・予防薬を使用していた片頭痛患者は1例のみであった。・K-means++法を用いて薬物乱用頭痛患者332例を4つのクラスターに分類したところ、各クラスターの頭痛に下記の特徴が認められた。 ●クラスター1:緊張型頭痛様 ●クラスター2:薬物乱用頭痛様 ●クラスター3:脳卒中・脂質異常症・うつ病などを既往に持つ重症な頭痛 ●クラスター4:光恐怖症や音恐怖症を持つ片頭痛様

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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がん負担の世界最大のリスク因子は喫煙/Lancet

 2019年の世界におけるがん負担に寄与した最大のリスク因子は喫煙であり、また、2010年から2019年にかけて最も増大したのは代謝関連のリスク因子(高BMI、空腹時高血糖)であることが、米国・ワシントン大学のChristopher J. L. Murray氏ら世界疾病負荷研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2019 Cancer Risk Factors Collaboratorsの解析で明らかとなった。Lancet誌2022年8月20日号掲載の報告。GBD 2019を用いリスク因子に起因するがん負担について解析 研究グループは、GBD 2019の比較リスク評価フレームワークを用い、行動、環境・職業および代謝に関連したリスク因子に起因するがん負担について、2019年のがん死亡および障害調整生存年(DALY)を推定するとともに、これらの2010年から2019年までの変化を検討した。 比較リスク評価フレームワークには、23のがん種と世界がん研究基金の基準を用いて特定した34のリスク因子から成る82のがんリスクと転帰の組み合わせが含まれている。リスク因子起因がん死亡数は10年で約20%増加、主なリスク因子は喫煙、飲酒、高BMI 2019年の推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがん死亡数は、男女合わせて445万人(95%不確定区間[UI]:401万~494万)で、全がん死亡の44.4%(95%UI:41.3~48.4)を占めた。男女別では、男性288万人(95%UI:260万~318万)、女性158万人(95%UI:136万~184万)であり、それぞれ男性の全がん死亡の50.6%(95%UI:47.8~54.1)、女性の全がん死亡の36.3%(95%UI:32.5~41.3)であった。 また、推定されたすべてのリスク因子に起因する世界のがんDALYは、男女合わせて1億500万(95%UI:9,500万~1億1,600万)で、全がんDALYの42.0%(95%UI:39.1~45.6)を占めた。 2019年のリスク因子に起因するがん死亡とがんDALYに関して、世界全体でこれらに寄与する主なリスク因子は、男女合わせると、喫煙、飲酒、高BMIの順であった。リスク因子によるがん負担は、地域および社会人口統計学的指標(SDI)によって異なり、低SDI地域では2019年のリスク因子によるがんDALYの3大リスクは喫煙、危険な性行為、飲酒の順であったが、高SDI地域では世界のリスク因子の上位3つと同じであった。 2010~19年に、リスク因子に起因する世界のがん死亡数は20.4%(95%UI:12.6~28.4)、DALYは16.8%(95%UI:8.8~25.0)増加した。これらの増加率が最も高かったリスク因子は、代謝関連リスク(高BMI、空腹時血糖高値)であり、これらに起因する死亡数は34.7%(95%UI:27.9~42.8)、DALYは33.3%(95%UI:25.8~42.0)増加した。 著者は、「世界的にがん負担が増加していることを踏まえると、今回の解析結果は、世界、地域および国レベルでがん負担を減らす努力目標となる重要で修正可能なリスク因子を、政策立案者や研究者が特定するのに役立つと考えられる」とまとめている。

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米国成人の脂質値は改善傾向だがアジア人は変化なし/JAMA

 米国成人において、2007~08年から2017~18年の10年間で脂質値は改善しており、この傾向は非ヒスパニック系アジア人を除くすべての人種・民族のサブグループで一貫していたことが、米国・ハーバード大学医学大学院のRahul Aggarwal氏らの解析で明らかとなった。脂質高値は、心血管疾患の修正可能なリスク因子であるが、米国成人における過去10年の脂質値および脂質コントロールの傾向や、性別や人種・民族別の差異はほとんど知られていなかった。JAMA誌2022年8月23・30日号掲載の報告。2007~08年から2017~18年のNHANESから約3万3千人について分析 研究グループは、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の2007~08年から2017~18年のデータを用い、米国成人を代表するよう重み付けされた20歳以上の米国成人3万3,040例を対象に、連続横断分析を行った。 主要評価項目は脂質値(総コレステロール、HDL-C、LDL-C、および中性脂肪[TG])、副次評価項目はスタチン治療を受けている成人における脂質コントロール率(総コレステロール200mg/dL以下を達成と定義)であった。 解析対象集団は、平均年齢47.4歳、女性51.4%、非ヒスパニック系黒人12.0%、メキシコ系アメリカ人10.3%、他のヒスパニック系アメリカ人6.4%、非ヒスパニック系白人62.7%、他の人種・民族(非ヒスパニック系アジア人など)8.5%であった。脂質値は10年で改善も、スタチン服用者の脂質コントロール率には変化なし 米国成人の年齢調整総コレステロール値は、2007~08年の197mg/dLから、2017~18年には189mg/dLに有意に改善した(群間差:-8.6mg/dL、95%信頼区間[CI]:-12.2~-4.9mg/dL、傾向のp<0.001)。男女別でも同様の傾向であった。黒人、メキシコ系アメリカ人、他のヒスパニック系アメリカ人および白人では、総コレステロール値の有意な改善を認めたが、アジア人では有意な変化はみられなかった。 スタチン服用者における年齢調整脂質コントロール率は、2007~08年で78.5%、2017~18年で79.5%であり、有意な変化は認められなかった(群間差:1.1%、95%CI:-3.7~5.8、傾向のp=0.27)。この傾向は男女別でも類似していた。人種・民族別では、メキシコ系アメリカ人のみ有意な改善が確認された(2007~08年73.0%、2017~18年86.5%、群間差;13.5%、95%CI:-2.6%~29.6%、傾向のp=0.008)。 2015~18年の年齢調整脂質コントロール率は、男性より女性のほうが有意に低く(オッズ比[OR]:0.54、95%CI:0.40~0.72)、また、白人と比較して黒人(OR:0.66、95%CI:0.47~0.94)ならびに他のヒスパニック系(OR:0.59、95%CI:0.37~0.95)で有意に低かった。

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