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静脈を動脈の代用として下肢切断を回避

 米ペンシルベニア州ハーミテージ市のCynthia Elfordさん(63歳)は、1型糖尿病が原因で左脚を失った。日焼けした足の親指がその後黒っぽく変色し、切断を余儀なくされたのだ。そして彼女は、右脚も同じ状態になりつつあると言われていた。 手足に血液を送る動脈が狭くなる末梢動脈疾患(PAD)があると、下肢の切断を要する状態になりやすい。治癒を促す血流があまりにも少ないと、小さな傷などでも壊死してしまうことがあるためだ。しかし、侵襲性が極めて低い"LimFlow"と呼ばれるシステムを用いた実験段階の治療法のおかげで、Elfordさんは今のところ右脚を切断することなく過ごしている。この治療法は、虚血状態にある脚に新鮮な血液を送るために、静脈を動脈にかえるというものだ。LimFlowの安全性と有効性について調べる目的で実施された臨床研究では、治療を受けた患者の76%が下肢切断を回避できたという。この結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」3月30日号に発表された。 ElfordさんがLimFlowによる治療を受けたのは2018年4月だった。その5年後、彼女の右脚は治癒し、痛みが消失した。Elfordさんの主治医で研究を主導した米ユニバーシティ・ホスピタルズ・ハリントン心臓血管研究所のMehdi Shishehbor氏は、「研究参加者は、もしこの研究に参加していなければ、膝下、あるいは膝上から脚を切断しなくてはならなかっただろう。彼らの脚を残せたのは、私にとっても喜びだ」と話す。 LimFlowでは、まず、閉塞した動脈と、新たな動脈として使う近くの静脈に1本ずつカテーテルを挿入する。次に、これらのカテーテルを使って、ステントグラフトで動脈と静脈をつなげて、静脈を動脈の代わりとなる血管にする。治療は鎮静下で行われるが全身麻酔は不要で、翌日には帰宅できるという。 Shishehbor氏らは今回、治療選択肢のない(ノーオプション)包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)の患者105人(平均年齢70歳)を米国内の20施設で試験に登録し、LimFlowによる治療を実施した。その結果、104人で静脈の経カテーテル動脈化に成功し、治療6カ月後の時点での切断回避生存率は66.1%と推定された。また、6カ月後の時点で足関節より上での切断を回避できた患者は67人(Kaplan-Meier解析で76.0%と推定)であり、傷が完全に治癒した患者の割合は25%(16/63人)、傷が治癒の過程にあることが確認された患者の割合は51%(32/63人)であった。 さらに、一部の患者では血流が回復したことにより、新たな毛細血管や小さな動脈が作られていることが確認され、これにはShishehbor氏らも驚かされたという。一方、副作用に関しては、体液の貯留によってある程度のむくみが出ることが予想されていたが、動脈化した静脈以外の静脈のおかげで広範な体液の貯留は起こらなかったという。また、デバイス関連の有害事象の報告はなかった。 LimFlowによる治療は、ノーオプションのCLTI患者にとって、新たな希望となる治療法として期待されているとShishehbor氏は言う。「こうした患者では、残念ながら約20~30%の確率で重症化かつ石灰化が進んでいるため、バイパス術や血管内手術を施行しても効果が得られない」と同氏は説明する。 PAD以外のCLTIのリスク因子は、慢性腎臓病、高血圧、脂質異常症などだ。今回の研究の背景情報によると、米国での下肢切断件数は年間約18万5,000件に上る。Shishehbor氏は、「米国では毎日約500人の患者が脚を失っている」と言う。 ただし、この治療は痛みを伴う。Elfordさんは「医師たちから、治療後にひどい痛みが出ることは伝えられていた」と振り返る。そして、「実際、それは経験したことのないような痛さだった。乗り越えるのは簡単ではなかったが、脚のない人生を送るのと、ある程度の痛みを耐えて私が経験したような結果を得るのと、どちらが良いだろうか?」と語っている。

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PCI後の慢性冠症候群患者では高尿酸血症がMACEリスクを高める可能性

 経皮的冠動脈形成術(PCI)後の慢性冠症候群患者では、高尿酸血症が主要心血管イベント(MACE)のリスクを押し上げる可能性を示唆するデータが報告された。自治医科大学附属さいたま医療センター循環器内科の藤田英雄氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Cardiovascular Medicine」に1月10日掲載された。 高尿酸血症が心血管疾患の関連因子であることは確かだが、高尿酸血症に併存することの多い肥満や脂質異常症、高血圧などの影響を統計学的に調整すると、両者の関連性が減弱または消失するため、因果関係の有無についてはいまだ議論が続いている。ただし、一般住民に比べてイベントリスクが高い、例えばPCIによる治療後の集団を対象に検討すれば、高尿酸血症の影響をよりはっきり把握できる可能性がある。このような背景のもと藤田氏らは、高尿酸血症以外の交絡因子のデータもあってそれらの影響も考慮可能な、PCI後の慢性冠症候群患者を対象とする以下の検討を行った。 この研究は、国立循環器病研究センターと6大学の付属病院が参加しているレジストリ「Clinical Deep Data Accumulation System(CLIDAS)」のデータを用いた後方視的コホート研究として実施された。2013~2018年度にPCIが施行された連続9,936症例のうち、急性冠症候群以外の理由で再度PCIが施行された患者を慢性冠症候群症例と定義すると、5,138人が該当。それらの患者を解析対象とした。解析対象者の主な特徴は、年齢は中央値72歳(四分位範囲65~78)、男性78.4%で、BMIは中央値23.8(21.8~26.3)であり、尿酸値は同5.7mg/dL(4.8~6.6)。 ベースライン時(初回PCI施行時)に高尿酸血症(男性7.0mg/dL以上、女性6.0mg/dL以上、または尿酸降下薬の処方)が認められた患者は1,724人だった。高尿酸血症群と対照群を比較すると、BNP、クレアチニン、高血圧・心房細動・冠動脈バイパス術の既往や心不全入院歴を有する割合は高尿酸血症群の方が有意に高く、反対に糖尿病の既往者の割合、左室駆出率は対照群の方が有意に高かった。また、複雑病変(三枝病変、左冠動脈主幹部病変)は高尿酸血症群の方が多かった。一方、年齢と性別(男性の割合)は有意差がなかった。 主要評価項目は、追跡期間中のMACE(心血管死、心筋梗塞、心不全入院)の発生であり、副次的評価項目として、全死亡とMACEの各構成因子が設定されていた。中央値910日(範囲307~1,479日)の追跡で、MACEは445人に発生し、全死亡は381人だった。カプランマイヤー法による解析で、高尿酸血症群はMACE、全死亡、心血管死、心不全入院の発生率が有意に高いことが示され(全てP<0.001)、心筋梗塞の発症には有意差がなかった。 イベント発生リスクは以下の3種類のモデルで検討した。モデル1は年齢、性別、BMI、eGFR、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心筋梗塞の既往、心不全入院歴、複雑病変を調整。モデル2は、モデル1に利尿薬の使用を追加。モデル3はモデル2にBNPと左室駆出率を追加。 解析の結果、高尿酸血症群は対照群よりMACE発生リスクが有意に高いことが示された〔モデル3でのハザード比(HR)1.33(95%信頼区間1.01~1.77)〕。副次的評価項目のうち心不全入院は、モデル3でも高尿酸血症群が有意にハイリスクと示された〔HR1.71(同1.21~2.41)〕。全死亡はモデル1では高尿酸血症群がハイリスクだったが〔HR1.26(同1.01~1.57)〕、モデル2では非有意となり、心筋梗塞については交絡因子未調整でも非有意だった。 著者らは本研究の強みの一つとして、多数の交絡因子を調整していることを挙げ、その検討の結果、「慢性冠症候群患者では高尿酸血症がMACEの独立したリスク因子である可能性が示唆され、特に心不全リスクとの関連が強いことが明らかになった」と結論付けている。一方で、後方視的観察研究であるため因果関係については判断できないこと、栄養素摂取状況を評価できていないことなどの限界点があるとし、「尿酸降下療法が慢性冠症候群患者のMACE抑制につながるのか否かを確認するための介入研究が望まれる」と付け加えている。

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統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには

 地域在住の統合失調症患者における身体的、精神的、社会的な併存症は、日常生活を妨げ、再入院リスクを上昇させる可能性がある。しかし、日本において、統合失調症患者の併存症に関する調査は、包括的に行われていない。藤田医科大学の松永 眞章氏らは、日本人統合失調症患者のさまざまな併存症の有病率を調査するため、有病率ケースコントロール研究を実施した。その結果、統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、身体的、精神的、社会的な併存症を管理する効果的な介入が必要であることが示唆された。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2023年2月28日号の報告。 2022年2月に、有病率ケースコントロール研究として、統合失調症の有無にかかわらず20~75歳の日本人を対象とした自己申告によるインターネット調査を実施した。統合失調症患者と統合失調症でない対照群の身体的(過体重、高血圧、糖尿病など)、精神的(抑うつ症状、睡眠障害など)、社会的(雇用状態、世帯収入、社会的支援など)併存症の有病率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者223例および対照群1,776例が特定された。・統合失調症患者は対照群よりも、過体重である可能性が高く、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の有病率が高かった。・統合失調症患者は対照群と比較し、抑うつ症状、失業状態、非正規雇用の割合が高かった。・本結果は、地域在住の日本人統合失調症患者の身体的、精神的、社会的な併存症に対処する包括的な支援や介入の必要性を強調するものである。・統合失調症患者が地域社会で生活し続けるためには、併存症を管理する効果的な介入が必要である。

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身長が5mm低くなっただけで死亡リスクが有意に上昇―日本人での縦断研究

 加齢に伴い、わずかに身長が低くなっただけで、死亡リスクが有意に高くなる可能性を示唆するデータが報告された。2年間で5mm以上低くなった人は、そうでない人より26%ハイリスクだという。福島県立医科大学医学部腎臓高血圧内科の田中健一氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に3月3日掲載された。 身長は椎間板の変形や椎骨骨折などの影響を受けて、歳とともに徐々に低くなる。そのような身長短縮の影響は骨粗しょう症との関連でよく検討されており、また死亡リスクとの関連も検討されている。ただし後者については、2cm以上という顕著な身長短縮が見られた場合を評価した研究が多く、わずかな身長短縮と死亡リスクの関連は明らかになっていない。田中氏らは、特定健診研究(J-SHC study)のデータを用いて、軽微な身長短縮の死亡リスクへの影響を縦断的に検討した。 福島や大阪、沖縄などの7府県の2008年、2010年両年の特定健診受診者から、データ欠落者や測定誤差と見なされる身長の変化(2年間で5cm以上)が記録されていた人を除外した22万2,392人(平均年齢63.4±7.3歳、男性39.7%)を解析対象とした。このうち31.2%が、2年間で身長が5mm以上低くなっていた。身長短縮幅が5mm以上の群は5mm未満の群(対照群)に比べて、高齢で女性が多かった。また、ベースライン時データに関しては、身長が対照群より低く体重は軽くて、ウエスト周囲長が大きいという有意差が見られた。BMIについては同等だった。 平均4.8±1.1年の観察で、1,436人が死亡。死亡リスクの評価に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、ベースライン時の身長、BMI、喫煙習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳卒中・心血管疾患の既往)を調整後、身長短縮幅が5mm以上の群は、主要評価項目の全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが26%有意に高いことが示された〔対照群を基準とする調整ハザード比(aHR)1.26(95%信頼区間1.13~1.41)〕。性別に見ても、男性はaHR1.24(同1.08~1.43)、女性はaHR1.28(1.07~1.52)であり、ともに有意なリスク上昇が認められた。 二次評価項目として設定されていた心血管死については、全体解析〔aHR1.34(1.04~1.72)〕と女性〔aHR1.60(1.08~2.37)〕では、身長短縮幅が5mm以上の場合に有意なリスク上昇が認められたが、男性はこの関連が非有意だった〔aHR1.18(0.85~1.64)〕。男性では非有意となった理由として著者らは、心血管死が少なかったこと(全体で279人、男性は172人)が一因ではないかとの考察を加えている。 これらの結果を基に論文の結論は、「日本人を対象とする研究から、2年間でわずか5mmの身長短縮も全死亡リスクと関連のあることが明らかになった。身長の変化は、死亡リスクを層別化して評価するための、低コストで簡便なマーカーとして利用できるのではないか」とまとめられている。 なお、身長短縮が全死亡リスクを上昇させるメカニズムについては、既報研究に基づき、骨粗しょう症による骨折リスクや骨格筋量の減少、サルコペニア、フレイル、心肺機能や消化器機能への影響などを介した機序に言及。また、身長短縮を防ぐための介入として、骨粗しょう症の治療や身体活動が有効なのではないかとしている。ただし、身長短縮を防ぐという目的での介入が全死亡リスクを低下させ得るかは、「今後、検討されるべき課題」と述べている。

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若いほど心筋梗塞後の心肺停止リスクが高い―J-PCI Registryのデータ解析

 若年の急性心筋梗塞(AMI)患者は心肺停止(CPA)に至るリスクが高いことや、病院到着時にCPAだった若年AMI患者は院内死亡のオッズ比が14倍以上に上ることなどが明らかになった。愛知医科大学循環器内科の安藤博彦氏らが、日本心血管インターベンション治療学会の「J-PCI Registry」のデータを解析した結果であり、詳細は「JACC: Asia」10月発行号に掲載された。 動脈硬化性疾患の危険因子に対する一次予防が普及したことや、イベント発生後の積極的な二次予防が行われるようになったことで、高齢者のAMIは減少傾向にあると報告されている。その一方で、健診の対象外であることが多く一次予防がなされにくい若年世代のAMIは、依然として抑制傾向が見られない。ただ、若年者でのAMI発生件数自体が少ないため、この世代のAMI患者の危険因子や院内転帰などについての不明点が多い。安藤氏らは、J-PCI Registryのデータを用いてそれらを検討した。なお、J-PCI Registryには、国内で行われている経皮的冠動脈形成術(PCI)の9割以上が登録されている。 解析対象は、2014~2018年にJ-PCI Registryに登録された患者のうち、AMIに対する緊急PCIが施行されていた20~79歳の患者21万3,297人。このうち50歳未満を若年群としたところ、11.2%が該当した。 動脈硬化危険因子を比較すると、若年群は高齢群に比べて、男性(92.1対80.9%)、喫煙者(62.8対41.8%)、脂質異常症(65.5対58.7%)が多いという有意差が認められた。その反対に、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)は高齢群で有意に多かった(全てP<0.001)。血管造影検査の結果からは、多枝病変や左冠動脈主幹部(LMT)閉塞が若年群で少ないことが示された。 病院到着時にCPAだった患者は全体の6.6%だった。年齢(10歳ごと)、性別、喫煙、高血圧・糖尿病・脂質異常症・CKD・心不全・心筋梗塞の既往、多枝病変、LMT閉塞を交絡因子として調整した多変量解析の結果、若年であるほどCPAのオッズ比(OR)が高いことが明らかになった。具体的には70代を基準として、60代はOR1.279(95%信頼区間1.223~1.337)、50代はOR1.441(同1.365~1.521)、40代はOR1.548(1.447~1.655)、30代はOR1.650(1.430~1.903)と、いずれも有意にハイリスクだった。20代はOR1.389(0.856~2.253)だった。なお、50歳未満の若年群で、病院到着時にCPAだったのは1,711人であり、若年群の患者の7.2%、病院到着時にCPAだった患者の12.2%を占めていた。 一方、院内死亡率は全体で2.1%であり、若年であるほどオッズ比が低かった。50歳未満の若年群での院内死亡率は1.4%だった。ただし、これを病院到着時にCPAだった群とそうでない群に二分して比較すると、前者は13.6%、後者は0.46%と顕著な差が認められた。前記の交絡因子を調整後、病院到着時にCPAだった若年AMI患者の院内死亡のオッズ比は、14.21(9.201~21.949)と計算された。 著者らは、本研究の限界点として、PCIが行われた症例のみを対象に解析していること、川崎病や早発性AMIの家族歴など、若年者に多い危険因子の影響を考慮していないことなどを挙げている。その上で、「若年AMI患者はCPAのリスクが高く、若年患者のCPAは院内死亡率と強い関連が認められた。この結果は、若年者に対する動脈硬化性疾患一次予防の重要性を強調している。その予防戦略を確立することによって、若年者の心臓突然死と死亡率を大きく抑制できるのではないか」と結論付けている。

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糖類の過剰摂取、心代謝疾患リスクを増大/BMJ

 食事による糖類(単糖類、二糖類、多価アルコール、遊離糖、添加糖)の過剰な摂取は、一般的に健康にとって益よりも害が大きく、とくに体重増加、異所性脂肪蓄積、心血管疾患などの心代謝疾患のリスク増大に寄与していることが、中国・四川大学のYin Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年4月5日号で報告された。糖類摂取と健康アウトカムの関連をアンブレラレビューで評価 研究グループは、食事による糖類の摂取と健康アウトカムの関連に関する入手可能なすべての研究のエビデンスの質、潜在的なバイアス、妥当性の評価を目的に、既存のメタ解析のアンブレラレビューを行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 データソースは、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Database of Systematic Reviews、および参考文献リスト。対象は、急性または慢性の疾患のないヒトにおいて、食事による糖類の摂取が健康アウトカムに及ぼす影響を評価した無作為化対照比較試験、コホート研究、症例対照研究、横断研究に関する系統的レビューとメタ解析であった。 8,601本の論文から、73件のメタ解析と83項目の健康アウトカム(観察研究のメタ解析から74項目、無作為化対照比較試験のメタ解析から9項目)が特定された。体重増加、異所性脂肪蓄積と有意な関連 83項目の健康アウトカムのうち、食事による糖類の摂取と有意な関連が認められたのは、有害な関連が45項目(内分泌/代謝系:18項目、心血管系:10項目、がん関連:7項目、その他:10項目[神経精神、歯科、肝、骨、アレルギーなど])、有益な関連が4項目であった。 エビデンスの質(GRADE)が「中」の有害な関連としては、食事による糖類の摂取量が最も少ない集団に比べ最も多い集団では、体重の増加(砂糖入り飲料)(エビデンスクラス:IV)および異所性脂肪の蓄積(添加糖)(エビデンスクラス:IV)との関連が認められた。 エビデンスの質が「低」の有害な関連では、砂糖入り飲料の摂取量が週に1回分増加するごとに痛風のリスクが4%(エビデンスクラス:III)増加し、1日に250mL増加するごとに、冠動脈疾患が17%(エビデンスクラス:II)、全死因死亡率が4%(エビデンスクラス:III)、それぞれ増加した。 また、エビデンスの質が「低」の有害な関連として、フルクトースの摂取量が1日に25g増加するごとに、膵がんのリスクが22%高くなることが示唆された(エビデンスクラス:III)。 著者は、「既存のエビデンスはほとんどが観察研究で、質が低いため、今後、新たな無作為化対照比較試験の実施が求められる」と指摘し、「糖類の健康への有害な影響を低減するには、遊離糖や添加糖の摂取量を1日25g(ほぼ小さじ6杯/日)未満に削減し、砂糖入り飲料の摂取量を週1回(ほぼ200~355mL/週)未満に制限することが推奨される」としている。

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認知症のリスクを下げる7種類の習慣

 心臓に良いことは、脳にも良い――。これは、心臓の健康を維持するための7種類の習慣が、認知症の発症リスクも抑制する可能性のあることを示した、新しい研究からのメッセージだ。この研究は、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のPamela Rist氏らによって行われ、第75回米国神経学会(AAN2023、4月22~27日、ボストン)での発表に先立ち、研究要旨が2月27日にオンラインで公開された。 この研究で認知症リスク抑制効果が評価された7項目のリストには、より多く体を動かすこと、より健康的な食事を取ること、適正体重を維持すること、タバコを吸わないこと、血圧とコレステロールおよび血糖値を良好に保つことが含まれている。これらは米国心臓協会(AHA)が、心臓の健康維持のために提唱していた「Life's Simple 7」と呼ばれるもの。なお、現在はこれらに加えて「睡眠」も留意すべき事柄とされ、「Life's Essential 8」と呼ばれている。 Rist氏は、「高血圧は無症候の段階の認知症リスク上昇を示す所見と関連性があり、糖尿病と高コレステロール血症も認知症のリスクを高める可能性がある。心臓の健康に良いとされる『Life's Simple 7』の7項目が、どのようなメカニズムで認知症のリスクをも低下させるのかは完全には解明されていないが、全てが相互に連携して機能しているのではないか」と述べている。 この研究には、米国で行われている女性対象の健康調査(Women's Health Study)のデータが用いられた。1992~1994年の研究参加登録時と約10年後の2004年に、Life's Simple 7の順守状況を調査。各項目について理想的な状態であれば1点、理想的でない場合は0点と評価した。解析対象1万3,720人のベースライン時の年齢は54.2±6.6歳で、Life's Simple 7のスコアは4.3±1.3点、10年後のスコアは4.2±1.3点だった。 2011~2018年まで約20年間の追跡で、1,771人(12.9%)が認知症を発症。年齢や教育歴などの認知症発症リスクに影響を及ぼし得る因子を調整後、Life's Simple 7のスコアが高いほど認知症を発症した人が少ないことが明らかになった。例えば、ベースライン時のLife's Simple 7のスコアが1点高いと、認知症発症が6%少ないという有意な関連があった〔オッズ比(OR)0.94(95%信頼区間0.90~0.98)〕。追跡10年目のLife's Simple 7のスコアについても、ほぼ同様の関連が認められた〔OR0.95(同0.91~1.00)〕。 この結果を基にRist氏は、「遺伝的背景などの変更できない認知症リスク因子もあるが、修正できるリスク因子は修正することが大切だ」とアドバイス。より具体的に、「Life's Simple 7のリストを見て、まだ実行していない項目を確認してほしい。もし血圧が高いのであれば、それを下げることに力を入れるべき。禁煙は必須だ」と語る。さらにAAN発のリリースの中では、「1日30分の運動や血圧コントロールによって、認知症の発症リスクを抑制できる」とも記している。 一方、この研究の限界点としては、喫煙者が禁煙した場合などの生活習慣の修正によって、認知症のリスクがどのように変化したかを評価できていない点が挙げられる。また、Life's Simple 7に含まれていない項目が、認知症リスクをさらに押し下げる可能性がある。現在その可能性が考えられているのは、生涯を通して継続的に教育を受けることと、質の高い睡眠、社会活動への参加などだ。「今後の研究では、Life's Simple 7にほかの要素を追加できるかどうかを検討する必要がある」とRist氏は話している。 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)のサポートにより実施された。なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

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糖尿病患者に対する血糖・血圧・脂質低下薬処方中断の実態

 糖尿病患者への血糖降下薬、降圧薬、脂質低下薬の長期的な継続使用に関する研究結果が報告され、それらの薬剤の処方が開始された後に中断される患者が少なくないという実態が明らかになった。米エモリー大学のPuneet Kaur Chehal氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に1月30日掲載された。脂質低下薬については患者の43.3%で、処方の中断が認められたという。 近年行われた大規模スタディによって、糖尿病の血管合併症の発症・進展抑止には、血糖値だけでなく、血圧や血清脂質も厳格に管理することが重要であることが明らかになった。そのため、糖尿病患者に対しては血糖降下薬だけでなく、降圧薬や脂質低下薬など、複数の薬剤が必要とされることが増えてきている。それらの薬剤をアウトカム改善につなげるためには、長期間継続的に使用することが重要と考えられるが、処方開始後に中断されるケースも実際には少なくない。ただしその実態は明らかでない。 Chehal氏らは、米国医療研究品質局(AHRQ)の医療費パネル調査の2005~2019年のデータを用いた連続横断研究によって、それら薬剤の処方状況を検討した。2年間連続で処方されていた場合を「継続使用」と定義、処方が中断されたり再開されたりしていた場合を「一貫性のない使用」と定義した。解析対象は1万5,237人の糖尿病患者で、うち約半数(47.4%)は45~64歳、54.2%が女性だった。 解析対象期間全体で、血糖降下薬については19.5%(95%信頼区間18.6~20.3)で、継続使用されていない状況が確認された。また、降圧薬に関しては17.1%(同16.2~18.1)、脂質低下薬に関しては43.3%(42.2~44.3)で処方の中断が認められた。 経年的な変化に着目すると、2005~2006年に血糖降下薬が継続使用されていた患者は84.5%(81.8~87.3)であったのに対して、2018~2019年はその割合が77.4%(74.8~80.1)へと低下していた。一方で、血糖降下薬の一貫性のない使用の割合は、3.3%(1.9~4.7)から7.1%(5.6~8.6)へと増加し、また、血糖降下薬が使用されていない患者も8.1%(6.0~10.1)から12.9%(10.9~14.9)へと増加していた。降圧薬の一貫性のない使用は、3.9%(1.8~6.0)から9.0%(7.0~11.0)へと増加。脂質低下薬については2017~2018年に一貫性のない使用の割合が最も増え9.9%(7.0~12.7)に上り、ほぼ10人に1人の糖尿病患者に対して処方の中断や再開が行われていた。 サブグループ解析からは、女性患者は男性患者に比べて、血糖降下薬〔オッズ比(OR)1.23(1.06~1.42)〕や脂質低下薬〔OR1.25(1.13~1.39)〕が使用されないケースが有意に多いことが示された。 著者らは、「成人2型糖尿病患者に対しては、細小血管障害と大血管障害のリスク因子に対する包括的な長期間の介入がガイドラインで推奨されているにもかかわらず、われわれの研究結果はそれが行われていない患者の存在を示している」と述べている。 なお、数人の著者がメルク社を含む製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。また、本研究の研究資金の一部は、メルク社からエモリー大学への助成金が充てられた。

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既報のRCT 3研究の共同解析結果から、高感度CRPとLDLコレステロール濃度モニターでスタチン治療を成功に導く秘策を学ぶ!―(解説:島田俊夫氏)

はじめに 慢性炎症が血管障害、動脈硬化、がん等の発生に密接に関係していることは周知の事実である。Ridkerら1)は高感度CRP(hsCRP)の慢性炎症の評価マーカーとしての有用性に着目して多くの論文を発表しており、スタチン投与によるhsCRP濃度を下げることで、動脈硬化、血管障害、心血管イベント・死の評価に有用だと報告している。 とくに高LDLコレステロール(高LDL-C)血症、高血圧、糖尿病(DM)、肥満等の疾患を複数合併する患者へのスタチン投与でhsCRPが低下すれば、イベント抑制、予後の改善につながるとの期待を抱かせる。 一方で、高LDL-C血症が冠動脈疾患の重要なリスク因子であることは、欧米を中心に多数の研究論文の発表により周知されている。 今回取り上げた多国籍RCT 3研究の対象者(3万1,245例)はすべてが治療目的でスタチン投与を継続中であり、また、多くのDM患者を含んでいることは意味深長である。括弧内はDMを含むパーセントを示す。PROMINENT試験(100%)、REDUCE-IT試験(58%)、STRENGTH試験(70%)に参加し、かつ、スタチン投与が継続されているアテローム性動脈硬化症患者を対象に共同分析が行われた。Ridkerらによりその成果がLancet誌の2023年3月6日号にonlineで発表された。有益なメッセージを含んだ論文であり紹介する。hsCRPおよびLDL-C濃度の心血管死、全死亡および心血管障害の発生予測に関して 動脈硬化、DM、高血圧、高LDL-C血症、メタボ症候群らを有する患者では、hsCRP濃度が高値を示すことはよく知られている。これまでの研究から慢性炎症が関連する生活習慣病では、hsCRP濃度が上昇することがわかっている。 RCT 3研究においてもLDL-C、血清hsCRP濃度の四分位数データの解析結果から、今後発生する心血管イベント、心血管死および全死亡の予測マーカーとして両マーカーともにおしなべて有用であったが、調整済みハザード比による検討から心血管イベントおよび死亡への影響力に関しては、LDL-C濃度に比べてhsCRP濃度の影響力が勝っていた。結語 今回のRCT 3研究を要約すると、研究成果の共同解析結果からhsCRP(残存炎症リスク)とLDL-C濃度(残存LDL-Cリスク)を比較すると、残存炎症リスクマーカーのほうが残存LDL-Cリスクマーカーよりも、スタチン治療を受けている患者の心血管イベント・死に深く関連していることが明らかになった。両マーカーともに治療評価マーカーとして有用ではあるけれども、心血管イベント・死の評価にはhsCRPの影響力が優れていた。目的達成のためにはhsCRP濃度を目安に治療戦略を計画するほうが好ましいとのメッセージと理解する。 スタチン治療の評価には、治療後のLDL-C濃度(残存LDL-Cリスク)の重要性よりも、hsCRPの治療後の低下(残存炎症リスク)のほうが明らかに有用性は大きい。さらに、hsCRP濃度の低下が不十分な場合は、抗炎症剤の補助的使用2)も含んだ治療を考え、致命的な心血管イベント・死を回避するための補助治療の介入選択を示唆しているのではないか。

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スタチンのプレイオトロピック効果はあるの?(解説:平山篤志氏)

 4S試験以来スタチンによる心血管イベント抑制効果が明らかにされ、さらに追加解析でスタチンにはLDL-コレステロール(LDL-C)低下効果に加えて、抗炎症、抗酸化などのプレイオトロピック効果があると示唆されてきた。このような背景から機序の異なるLDL-C低下薬であるエゼチミブやPCSK-9阻害薬を用いた大規模臨床試験では、スタチンに追加することでLDL-Cを低下させる効果で有効性が示されてきた。 しかし、今回のベムペド酸(bempedoic acid)を用いたCLEAR Outcome試験では、対象がスタチン不耐性の患者であるためコントロール群にはスタチンが使用されていない。にもかかわらず、ベムペド酸治療群で、有意なLDL-Cと高感度CRPの低下とともに心血管イベントを有意に減少した。このことは、スタチン不耐性の患者でも使用可能な薬剤が示されたことだけでなく、スタチンのプレイオトロピック効果についても疑問を投げかけたことになる。 では、なぜ高LDL-Cが炎症を引き起こすのか? LDL-Cを低下させることで炎症が抑制されるのか?については、近年、血管内視鏡で大動脈の自然プラーク破綻を観察した小松らの研究から、プラーク内で生成されたコレステロール結晶が自然破綻した後に全身で炎症を惹起する可能性が注目されている。今後展開される多くの研究により解明されるであろう。 米国心臓病学会(ACC)で発表されたとき、ベムペド酸にエゼチミブを加えることでさらなるイベント抑止効果が得られたのではないか?という質問が出された。すでにエゼチミブ単独でイベント低下効果が示されている(EWTOPIA75)ことから、予測される結果であるが、FDAが試験での使用を認めなかったとのことであった。今後、実臨床ではエゼチミブの併用で多用されるであろう。ただ、ベムペド酸が高尿酸血症や痛風の頻度を上げることには注意が必要である。

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治療選択のないCLTI、経カテーテル的深部静脈動脈化が肢切断を回避/NEJM

 包括的高度慢性下肢虚血の患者の約20%は、血行再建の選択肢がなく、足関節より近位での肢切断に至るという。カテーテルを用いて深部静脈を動脈化する治療は、動脈と静脈を接続して酸素を含む血液を虚血肢に送ることで、肢切断を予防する経皮的なアプローチである。米国・University Hospitals Harrington Heart and Vascular InstituteのMehdi H. Shishehbor氏らは、従来の外科的血行再建や血管内血行再建による治療の選択肢がない包括的高度慢性下肢虚血の患者において、この経カテーテル的深部静脈動脈化術は安全に施行可能であり、下肢の切断を回避する可能性があることを「PROMISE II試験」において示した。研究の成果は、NEJM誌2023年3月30日号で報告された。米国の前向き単群試験 PROMISE II試験は、米国の20施設が参加した前向き単群試験であり、2019年12月~2022年3月に患者のスクリーニングが行われた(米国・LimFlowの助成を受けた)。 難治性潰瘍を有し、外科的血行再建術または血管内血行再建術の治療選択肢がない包括的高度慢性下肢虚血の患者に対し、経カテーテル的深部静脈動脈化術が施行された。 主要複合エンドポイントは、6ヵ月時の切断回避生存率(足関節より近位での肢切断がない、または全死因死亡がない状態と定義)とされ、事前に規定された目標の54%との比較が行われた。施術成功率99%、下肢救済・創治癒も良好 105例が登録された。年齢中央値は70歳(四分位範囲[IQR]:38~89)で、33例(31.4%)が女性であった。ほとんどの患者は、包括的高度慢性下肢虚血関連の複数の既存疾患(糖尿病77.1%、高血圧91.4%、脂質異常症69.5%)を有し、78例(74.3%)は下肢の治療目標部位への血行再建の既往歴があった。経カテーテル的動脈化術は104例(99.0%)で成功した。 6ヵ月時点の切断回避生存率は66.1%であった。ベイズ解析では、6ヵ月時の切断回避生存率が目標の54%を上回る事後確率は0.993であり、事前に規定された閾値である0.977よりも高かった。 下肢救済(足関節より近位での肢切断の回避)は67例(Kaplan-Meier解析で76.0%)で達成された。6ヵ月時点で、63例中16例(25%)で治療目標の創部が完全に治癒し、86例中24例(28%)ですべての創部が完全治癒した。63例中32例(51%)では、治療目標創部が治癒過程にあると判定された。予期せぬデバイス関連有害事象の報告はなかったが、105例中98例で有害事象が認められた。 著者は、「深部静脈を動脈化することで虚血を解消する方法は新しい概念ではなく、100年以上前に仮説が立てられ、さまざまな手術法の評価が行われてきたが、感染症や深い切開を要するなど、種々の合併症を伴うものであった。経カテーテル的動脈化術は大きな切開を回避し、動脈血を直接的に下肢の遠位部の静脈弓に導くことが可能であり、合併症のリスク低減も期待される」としている。

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Fire and Forget vs.Treat to Target(解説:平山篤志氏)

 これまでの欧米での心血管イベントを低下させるためのガイドラインでは、ハイリスク患者に対してはLDL-コレステロール(LDL-C)を治療するために強力なスタチンの高用量をまず投与するというFire and Forgetの戦略が推奨されてきた。これはスタチンを用いた大規模臨床試験で、高用量と低用量を比較する、あるいはStrongとMildの高用量を比較する試験のメタ解析から得られた結論であった。また、管理目標値を設定するより、初期投与によるLDL-C低下の割合がイベント抑制には必要であるという考えもあった。 ただ、これまでのメタ解析からLDL-C達成値により心血管イベントが低下していること、また冠動脈プラークの退縮が認められることから、LDL-Cの管理目標値を目指す治療が重要であるとされていた(Treat to Target)。さらに、スタチン以外のコレステロール低下薬の有効性が示されると、リスクに応じたLDL-C管理目標値がガイドラインに記載されるようになった。 本試験は、Fire and Forget vs.Treat to Targetを検証するための試験であった。結果としては、両群で達成LDL-C値に差がなく、イベントにも差がなかったという結果であった。これまでのTreat to Targetを検証した試験では、目標値を達成することができず不十分な結果であったが、本試験では十分なコレステロール低下がTreat to Target群で達成できていたことが本試験成功の背景として挙げられる。これは管理目標値を設定しているガイドラインを後押しする結果である。ただ、わが国で通常使用可能なStrongスタチンの高用量は本試験の半量であるため、Treat to Targetで調整するよりはハイリスクの患者では、まずわが国の通常の高用量のStrongスタチンで治療を開始し、管理目標値を達成できない場合に薬剤を追加するFire and Forgetの戦略を選択するほうが実臨床に即していると考えられる。

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相補的に血中LDL-Cを低下させる高コレステロール血症薬「リバゼブ配合錠LD/HD」【下平博士のDIノート】第118回

相補的に血中LDL-Cを低下させる高コレステロール血症薬「リバゼブ配合錠LD/HD」今回は、高コレステロール血症治療薬「ピタバスタチンカルシウム水和物・エゼチミブ配合錠(商品名:リバゼブ配合錠LD/同HD、製造販売元:興和)」を紹介します。本剤は異なる作用機序の薬剤を配合することで、相補的に血中コレステロールを低下させるとともに、両剤の併用投与が必要な患者のアドヒアランス向上が期待されています。<効能・効果>高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症の適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年12月6日より発売されています。なお、本剤を高コレステロール血症、家族性コレステロール血症治療の第1選択薬として用いることはできません。<用法・用量>通常、成人には1日1回1錠(ピタバスタチンカルシウム/エゼチミブとして2mg/10mgまたは4mg/10mg)を食後に経口投与します。ピタバスタチンカルシウム/エゼチミブの含量は、LD錠が2mg/10mg、HD錠が4mg/10mgとなっており、ピタバスタチンカルシウムの用量は年齢、症状により適宜増減可能です。<安全性>本剤の承認までの臨床試験において、1%以上の頻度で認められた副作用は、ALT上昇でした。なお、重大な副作用として、過敏症、横紋筋融解症、ミオパチー、免疫介在性壊死性ミオパチー、肝機能障害・黄疸、血小板減少、間質性肺炎(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤には、小腸からのコレステロール吸収を抑える成分と、コレステロールの合成を抑える成分が配合されています。心筋梗塞などの心血管系疾患の危険性を少なくすることが期待されています。2.手足のしびれ、筋力低下、筋肉痛、赤褐色の尿が現れた場合はお知らせください。3.だるさ、食欲不振、吐き気、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状があったら肝臓の機能が低下している場合がありますのでお知らせください。4.高コレステロール血症治療の基本は食事療法です。また、適度な運動や適正体重の維持、禁煙などの虚血性心疾患のリスクを減らす生活を心がけましょう。<Shimo's eyes>本剤は、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬であるエゼチミブと、HMG-CoA還元酵素阻害薬であるピタバスタチンカルシウム水和物の2剤を組み合わせた脂質異常症治療薬です。異なる作用機序を有する2剤を配合することで、相補的に血中コレステロールを低下させ、また両剤の併用投与が必要な患者のアドヒアランス向上も期待できます。スタチンとエゼチミブの配合薬としては、アトルバスタチン・エゼチミブ(商品名:アトーゼット配合錠)、ロスバスタチン・エゼチミブ(同:ロスーゼット配合錠)に続く3剤目となります。エゼチミブは、小腸壁におけるコレステロール輸送機能を担っている「小腸コレステロールトランスポーター」を阻害することで、小腸からのコレステロール吸収を抑制し、胆汁性および食事性コレステロールの吸収を抑制します。主にコレステロール値を低下させますが、トリグリセリドの低下作用も報告されています。一方、ピタバスタチンなどのスタチン系薬剤は、肝臓に分布するコレステロール合成時の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を阻害し、肝細胞内のコレステロール含量を低下させ、LDL受容体の発現を促進することで血液中のLDLコレステロール(LDL-C)の取り込みを増加させ、血清コレステロールを低下させます。臨床効果としては、高コレステロール血症患者に本剤LDまたはHD、もしくはピタバスタチン2mgまたは4mgを投与した実薬対照二重盲検比較試験の結果、LDL-Cのベースラインからの変化率は、HD群のピタバスタチン4mg群に対する優越性、LD群のピタバスタチン2mg群に対する優越性が認められました。相互作用では、シクロスポリンとピタバスタチンの併用により、ピタバスタチンの血漿中濃度が上昇し、またエゼチミブとの併用によりエゼチミブおよびシクロスポリンの血中濃度が上昇したという報告があり、シクロスポリンとの併用は禁忌となっています。これにはOATP1B1の関与が考えられています。一方、ピタバスタチンはCYPによる代謝をほとんど受けません。他のスタチンであるアトルバスタチンとシンバスタチンはCYP3A4、フルバスタチンはCYP2C9、ロスバスタチンはCYP2C9およびCYP2C19によって代謝されます。また、アトルバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチンは弱いながらもP-糖タンパク阻害作用があります。そのため、本剤は他のスタチンと比べて相互作用による影響が少ない薬剤と考えられます。服薬指導では、高コレステロール血症の管理には食事療法や運動療法をはじめとする生活習慣の改善が必要なため、個々の患者の環境に応じたアドバイスを心がけましょう。

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生活習慣の改善(11)運動療法1【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q59

生活習慣の改善(11)運動療法1Q59運動療法の指導の際に本邦では「運動療法指針」を掲げている。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版において、患者の生活スタイルに合わせるべく「運動の頻度・時間」に追加された目標は?(従来:毎日合計30分以上を目標に実施する。とある)

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CAD患者のLDL-C 50~70mg/dL目標の治療 、高強度スタチンに非劣性/JAMA

 冠動脈疾患(CAD)患者の治療において、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を50~70mg/dLとする目標達成に向けた治療(treat-to-target)は高強度スタチン療法に対し、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合に関して非劣性であり、これら4つの構成要素の個々の発生率には差がないことが、韓国・延世大学のSung-Jin Hong氏らが実施したLODESTAR試験で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2023年3月6日号に掲載された。韓国の無作為化非劣性試験 LODESTAR試験は、韓国の12施設が参加した医師主導の非盲検無作為化非劣性試験であり、2016年9月~2019年11月の期間に患者の登録が行われた(Samjin Pharmaceuticalなどの助成を受けた)。 CAD(安定虚血性心疾患または急性冠症候群[不安定狭心症、急性心筋梗塞])患者が、LDL-C値50~70mg/dLを目標とするtreat-to-target治療を受ける群、またはロスバスタチン20mgあるいはアトルバスタチン40mgによる高強度スタチン療法を受ける群に、無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、3年の時点での死亡、心筋梗塞、脳卒中、冠動脈血行再建術の複合であり、非劣性マージンは3.0%とされた。treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンス 4,400例(平均年齢65.1[SD 9.9]歳、女性27.9%)が登録され、2つの群に2,200例ずつが割り付けられた。4,341例(98.7%)が3年の追跡を完了した。ベースラインの平均LDL-C値は、treat-to-target群が86(SD 33)mg/dL、高強度スタチン群は87(SD 31)mg/dLであった。 高強度スタチン療法は、treat-to-target群では1年目に患者の53%、2年目に55%、3年目に56%が受けており、高強度スタチン群ではそれぞれ93%、91%、89%が受けていた。 試験期間中の平均LDL-C値は、treat-to-target群が69.1(SD 17.8)mg/dL、高強度スタチン群は68.4(SD 20.1)mg/dLであり、両群間に有意な差はなかった(p=0.21)。 3年時の主要エンドポイントの発生率は、treat-to-target群が8.1%(177例)、高強度スタチン群は8.7%(190例)で、絶対群間差は-0.6%(片側97.5%信頼区間[CI]:-∞~1.1)であり、treat-to-target群の高強度スタチン群に対する非劣性が示された。 死亡(treat-to-target群2.5% vs.高強度スタチン群2.5%、絶対群間差:<0.1%[95%CI:-0.9~0.9]、p=0.99)、心筋梗塞(1.6% vs.1.2%、0.4[-0.3~1.1]、p=0.23)、脳卒中(0.8% vs.1.3%、-0.5[-1.1~0.1]、p=0.13)、冠動脈血行再建術(5.2% vs.5.3%、-0.1[-1.4~1.2]、p=0.89)の発生率は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、スタチン治療における薬物反応の個人差を考慮した個別化治療を可能にする、treat-to-target戦略の適合性を支持する新たなエビデンスをもたらすものである」としている。

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