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第145回 5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府

<先週の動き>1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川1.5類移行でコロナ対策本部廃止、公費負担による無料検査などは中止へ/政府政府は、新型コロナウイルス感染の感染症法での位置付けが5月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行するのに伴い、新型コロナウイルス感染症対策本部を同日に廃止することを閣議決定した。5類移行後の公費負担での対応が大きく変わり、新型コロナウイルスのPCR検査や抗原検査を病院や診療所で行う場合も、検査キットを使用する場合も自己負担となる。また、各自治体による検査キット配布事業も終了となる。ただし、医療機関や介護施設などで陽性患者が発生した場合、医療スタッフなどへの検査を都道府県が実施する場合のみ行政検査として無料で実施される。そのほか、外来診療も従来は公費負担で行われていたものが、インフルエンザとほぼ同じ程度の自己負担が必要となり、入院時の医療費も同様に保険診療となるが、9月末までは、高額療養費制度の自己負担限度額から2万円を減額する措置が講じられる。5月8日以降は、医療機関では「コロナ患者である」ことだけを理由とした診療拒否は「応招義務違反」となり、自院での対応が困難な場合には他の「対応可能な医療機関に対応を依頼する」あるいは「患者に対して対応可能な医療機関を伝える」ことを行うことが必要となる。(参考)政府 「5類」移行に伴い新型コロナ対策本部の廃止を決定(NHK)コロナ5類 感染した時は? 医療費負担 外出 療養支援 相談 証明書(同)コロナ「5類」正式決定 5月8日からどうなる?(同)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」等の一部訂正について(厚労省)5月8日以降、「コロナ感染のみ」を理由とした診療拒否は不可、自院対応困難な際は「対応可能医療機関を患者に伝える」等の配慮を-厚労省(Gem Med) 2.コロナ後遺症の診療報酬、5月8日から特定疾患療養管理料を加算へ/厚労省厚生労働省は新型コロナウイルスに感染後のいわゆる「後遺症」について患者を診た医療機関の診療報酬を加算することを各都道府県に対して通知した。新型コロナ感染症の位置付けが「5類」に移行する5月8日から開始となる。加算対象は、新型コロナ感染と診断された3ヵ月目以降も後遺症が2ヵ月以上続く患者に対して、診療の手引きを参考にした診療に対して3ヵ月に1度、特定疾患療養管理料147点を加算する。支払いを受けるには、都道府県が公表している罹患後症状に悩む方の診療を行っている医療機関のリストに掲載されている必要がある。期限は令和6年3月31日。(参考)味覚・記憶障害など1年以上続くこともある「コロナ後遺症」、診療報酬を加算(読売新聞)コロナ後遺症の診療、3か月ごと147点 報酬特例で評価へ、来年3月まで(CB news)「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」にかかる疑義解釈資料の送付について[その2](厚労省)「コロナ後遺症の専門医療機関」を各都道府県で本年(2023年)4月28日までに選定し、公表せよ-厚労省(Gem Med)3.緊急避妊薬の市販化、パブコメで97%が賛成/厚労省厚生労働省は「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で緊急避妊薬を市販薬とするスイッチOTC化について検討を重ねてきた。去年12月から今年の1月にかけて厚生労働省が実施したパブリックコメントの結果、市販化に賛成の意見が約4万6,000件、反対の意見が約300件と、全体の約97%が賛成する内容だった。厚労省は5年前にも同様の検討を行ったが、このときは転売の可能性や不十分な性教育などを理由に「時期尚早」として見送られた経緯がある。しかし、2019年にはオンライン処方も可能になるなど環境の変化もあり、今後、同省は専門家を交えた検討会議の議論をもとに、結論を出す見込み。(参考)緊急避妊薬OTC化の議論、5月以降に 厚労省、パブコメ整理で大きくずれ込む(日刊薬業)緊急避妊薬の市販化 パブコメに4万6300件の意見 97%が賛成(毎日新聞)第22回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議(厚労省)4.進まぬ電子処方箋、普及に向け、導入拡大を加速化/厚労省厚生労働省は、4月28日に第2回電子処方箋推進協議会を開催した。この中で電子処方箋の導入状況は、4月23日時点で全国3,352施設で運用開始されていた。内訳は病院9、医科診療所250、歯科診療11、薬局3,082。同日公開された公的病院への導入計画に係る調査結果では、回答した施設のうち、令和5年度中に電子処方箋の導入予定の病院が214施設だった。寄せられた意見の中には、オンライン資格確認などシステム利用が伸び悩んでおり、導入後に電子処方箋の利用が伸びるのか疑問といった声が上げられている。電子処方箋導入施設の面的拡大を重点的に行うため、導入意欲が特に高く、稼働中または近日中に稼働予定の病院「気仙沼市立本吉病院」、「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」を中心に周辺施設の導入拡大を加速化する方針を固めた。(参考)第2回 電子処方箋推進協議会 資料(厚労省)電子処方箋「面的拡大」、導入意欲高い病院など中心に 厚労省(CB news)【電子処方箋】“面的拡大”、6病院を列挙/リフィル機能など先行検証/「気仙沼市立本吉病院」「静岡市立静岡病院」、「公立松任石川中央病院」、「公立西知多総合病院」、「徳島市民病院」、「長崎みなとメディカルセンター」(ドラビズ on-line)5.少子化対策の財源の議論開始、社会保険料や税で/財務省財務省は4月28日に財政制度等審議会を開催、少子化対策の議論に着手した。わが国でも、最終学歴が大卒以上の女性の出生こども数は近年増加しており、女性が出産・育児でキャリアを中断することに伴う機会費用が相当な額にのぼっていることが示唆されている。このため女性の出産支援がさらに必要であり、現時点では少子化対策予算として令和5年度の予算では国費6.3兆円が計上されているが、諸外国と比較すると、現金給付の割合が低いとの指摘もあり、財源について「企業を含む社会・経済の参加者全員が広く負担する新たな枠組みの検討が必要」と指摘がなされた。出席した委員からは社会保険料や税の組み合わせを財源とする意見が出た。この前日、内閣府は第2回のこども未来戦略会議を開催しており、財源について、社会保険料引き上げの案が浮上しているが、経済界や労働団体からは消費税を含む幅広い税財源の検討を求める声が出されていた。(参考)少子化財源、消費税含め議論を 労使、現役負担増に懸念-こども会議(時事通信)少子化財源、財制審で議論開始 「社会保険料や税で」(日経新聞)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(2)(財務省)財政制度等審議会 財政制度分科会 財政各論(3)(同)第2回 こども未来戦略会議(内閣府)6.認知症患者の遺族が寄付金3億円をめぐって金沢医科大学を提訴/石川認知症の疑いがある高齢患者の寄付をめぐって、3億円の寄付を患者にさせたのは無効だとして、患者の遺族が大学病院と当時の主治医を相手取って2億4,000万円余りの損害賠償請求を求める裁判を金沢地裁に起こした。訴えられたのは金沢医大病院。遺族によれば、患者は一昨年の1月に同院に入院し、認知機能の低下が指摘され検査結果で大脳の萎縮などが確認された。同年5月に大学創立50周年の募金に対して3億円を寄付し、同年10月に90歳で亡くなった。遺族がこの寄付を知ったのは死亡後。遺族らは「家族に確認することなく、認知機能の低下に乗じて非常識な金額を寄付させた」と主張し、金沢医科大学と当時の病院長で主治医だった男性に対し2億4,000万円余りの賠償を求めており、大学側は「寄付は正当な手続きをして受け入れている。今後、訴状内容を確認してから対応したい」としている。(参考)父親の3億円寄付「異常で不当」 遺族が金沢医大を提訴(産経新聞)認知症疑い患者の3億円寄付、原告代理人「寄付が原因で借金残る」「極めて異常な額」(読売新聞)認知症なのに「3億円を寄付させた」 遺族が金沢医大病院側を提訴(朝日新聞)認知機能低下の患者に巨額の寄付持ち掛け 遺族らが金沢医科大学を提訴(日テレ)

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骨粗鬆症患者の2型DM発症リスク、デノスマブvs 経口ビスホスホネート製剤/BMJ

 骨粗鬆症患者において、ヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤デノスマブの投与は経口ビスホスホネート製剤を投与した場合と比較して2型糖尿病(DM)の発症リスクが32%低下したことが、中国・The Chinese PLA General HospitalのHouchen Lyu氏らによるコホート研究で示された。2型DMのリスクが高い前糖尿病状態または肥満の患者では、デノスマブにより糖尿病発症リスクはさらに低下することも示唆され、著者は、「本研究は、デノスマブが経口ビスホスホネート製剤と比較し、糖代謝に対して付加的な有益性をもたらすというエビデンスを示している」とまとめている。これまで、観察研究や無作為化臨床試験の事後解析において、血糖変動に対するデノスマブの効果が示唆されていたが、デノスマブが2型DMのリスクを減少させるかどうかは明らかになっていなかった。BMJ誌2023年4月18日号掲載の報告。デノスマブで治療を開始/切り替えた患者vs.経口ビスホスホネート製剤投与患者で検討 研究グループは、英国のプライマリケアデータベースであるIQVIA Medical Research Data(IMRD)を用い、1995年1月1日~2021年12月31日に骨粗鬆症治療薬を初めて処方された45歳以上の患者を抽出し、このコホートの中からさらに2010年7月1日~2021年12月31日の間にデノスマブの投与を開始した患者(ビスホスホネートから切り替え、または未治療でデノスマブによる治療を開始)と、経口ビスホスホネート製剤の投与を受けた患者を特定し研究コホートとした。 デノスマブへ切り替えた症例1例に対し、切り替え日時点で同じ期間経口ビスホスホネート製剤を使用しておりかつ継続した症例を最大5例、未治療でデノスマブによる治療を開始した症例1例に対し、未治療で経口ビスホスホネート製剤による治療を開始した症例を最大5例、傾向スコアを用いてマッチングさせた。 主要アウトカムは、診断コードにより定義された2型DMの発症で、Cox比例ハザードモデルによりデノスマブ新規投与患者と経口ビスホスホネート製剤投与患者を比較し、補正後ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。デノスマブ投与群で2型DM発症リスクが32%低下 解析対象は、デノスマブ新規投与患者4,301例および経口ビスホスホネート製剤投与患者2万1,038例で、平均2.2年間追跡調査された。 2型DM発症頻度は、デノスマブ群で5.7/1,000人年(95%CI:4.3~7.3)、経口ビスホスホネート製剤群で8.3/1,000人年(95%CI:7.4~9.2)であり、デノスマブの投与開始は2型DMの発症リスク低下と関連していることが認められた(HR:0.68、95%CI:0.52~0.89)。 サブグループ解析の結果、前糖尿病状態の患者において、経口ビスホスホネート製剤と比較しデノスマブによる有益性がより高いことが示され(HR:0.54、95%CI:0.35~0.82)、BMI≧30の患者においても同様の結果であった(0.65、0.40~1.06)。

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第41回 乗り遅れるな「論文検索はもうAIの時代」

ChatGPTだけじゃないこの連載では何度かChatGPTについて取り上げてきました。この分野、1週間経つともう賞味期限切れを起こすほど進歩していて、私もちょっとついていけてないです。私はCareNetで興味深い医学論文を紹介する連載「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」を持っているので、普段からPubMedを使っているのですが、AIに論文を探させる手法が出てきました。ChatGPTは課金しないと現状の最新版を体験できない仕様となっていますが、今話題になっているのが「Consensus」です。これは、世界の論文を検索し、質問に対する回答をまとめて一文要約してくれます。そして回答を数値化してくれるなど、論文から得られる情報をかみ砕いて提供できる機能を持ったオープンAIとなっています。キャッチコピー通り、「Evidence-Based Answers, Faster」というのがコンセプトです。Googleアカウントがある人は、ウェブサイトから簡単にログインできるようになっているので、一度試してみてください。Consensus使い方は割と簡単で、質問のところにある程度closed questionを入力することが重要です。ただし、基本的にはYes/Noの質問に対応できるようになってます。画像を拡大する(画像:Consensusより)たとえば、これは「吸入ステロイドが骨粗鬆症を引き起こすか?」という質問を入力したものですが、「吸入ステロイドの長期使用は骨粗鬆症を誘発し骨折リスクを高めるとする研究もあるが、骨への影響は小さいか不明とする研究もあり、これで喘息をコントロールすれば骨粗鬆症を防ぐことさえある」という要約が返って来ました。参考にされた文献は5文献で、下にずらっとシステマティックレビューした結果が出てきます。画像を拡大する(画像:Consensusより)「inhaled」を「systemic」に変えると、全身性ステロイドの骨粗鬆症に対する回答が提示されます。「全身性ステロイドは、とくに長期投与や大量投与で骨粗鬆症を引き起こす可能性があることが示唆されるが、一方で、低用量や隔日投与ではそれほどリスクが高まらない可能性を示す研究結果もあります。」という回答に変わります。なるほど、有能なAIですね。ただ、あの有名論文がなんで掲載されていないんだよ、という事態はしばしばあり、本当に質の高い論文を引っ張ってきているのかちょっと疑問です。試しに重症市中肺炎に対するステロイドのことを聞いても、最近の有名な論文がヒットしませんでした。しかしまぁ、これが正しいAI検索のひな形でしょう。間違いありません。ここからさらに精度を上げていってほしいと思います。Perplexityもう一つ人気なのが、「Perplexity」です。ウェブクローリングした情報を要約する生成系AIです。出典ソースを明記して、時事性のあるテーマにも正しく回答してくれる点が魅力です。Perplexityはウェブ検索結果を分析できれば、たとえそれが架空の内容であっても回答可能ですが、ChatGPTはそのあたりが難しいという差はあるようです。対話型なのでPerplexityのほうが好まれていますが、個人的にはChatGPT4.0(有料版)もなかなかおすすめです。3.5とは全然違います。画像を拡大する(画像:Perplexityより)Mycobacterium szulgaiというまれな呼吸器感染症の治療はどうすればよいか?と聞いてみました。とくにエビデンスが集積されているわけではないのですが、しっかりと報告を引用して治療レジメンが紹介されています。こういうAIで生成された文を、論文を書くのに使っちゃダメということになっていますが、「参考程度に」AIを動かすというのは皆さん今後やっていくのではないでしょうか。果たしてわれわれ医療の世界ではどのAIが生き残っていくでしょうか。楽しみですね。

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抗精神病薬とプロラクチンレベル上昇が骨折リスクに及ぼす影響

 抗精神病薬による治療が必要な患者は、骨粗鬆症関連の脆弱性骨折を含む骨折リスクが高いといわれている。これには、人口統計学的、疾患関連、治療関連の因子が関連していると考えられる。インド・National Institute of Mental Health and NeurosciencesのChittaranjan Andrade氏は、抗精神病薬治療と骨折リスクとの関連を調査し、プロラクチンレベルが骨折リスクに及ぼす影響について、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年1月30日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・たとえば、認知症患者では、認知機能低下や精神運動興奮により転倒リスクが高く、統合失調症患者では、身体的に落ち着きがない、身体攻撃に関連する外傷リスクが高く、抗精神病薬服用患者では鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連する転倒リスクが高くなる。・抗精神病薬は、長期にわたる高プロラクチン血症により生じる骨粗鬆症に関連する骨折リスクを高める可能性がある。・高齢者中心で実施された36件の観察研究のメタ解析では、抗精神病薬の使用が大腿骨近位部骨折リスクおよび骨折リスクの増加と関連していることが示唆された。この結果は、ほぼすべてのサブグループ解析でも同様であった。・適応疾患と疾患重症度の交絡因子で調整した観察研究では、統合失調症患者の脆弱性骨折は、1日投与量および累積投与量が多く、治療期間が長い場合に見られ、プロラクチンレベルを維持する抗精神病薬よりも、上昇させる抗精神病薬を使用した場合との関連が認められた。また、プロラクチンレベル上昇リスクの高い抗精神病薬を使用している患者では、アリピプラゾール併用により保護的に作用することが示唆された。・骨折の絶対リスクは不明だが、患者の年齢、性別、抗精神病薬の使用目的、抗精神病薬の特徴(鎮静、精神運動興奮、動作緩慢、起立性低血圧に関連するリスク)、1日投与量、抗精神病薬治療期間、ベースライン時の骨折リスク、その他のリスク因子により異なると考えられる。・社会人口統計学的、臨床的、治療に関連するリスク因子に関連する転倒および骨折リスクは、患者個々に評価し、リスクが特定された場合には、リスク軽減策を検討する必要がある。・プロラクチンレベルの上昇リスクの高い抗精神病薬による長期的な治療が必要な場合、プロラクチンレベルをモニタリングし、必要に応じてプロラクチンレベルを低下させる治療を検討する必要がある。・骨粗鬆症が認められた場合には、脆弱性骨折を予防するための調査やマネジメントが求められる。

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自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」【下平博士のDIノート】第115回

自己注射可能な週1回投与のMTX皮下注「メトジェクト皮下注シリンジ」今回は、抗リウマチ薬「メトトレキサート(MTX)皮下注(商品名:メトジェクト皮下注7.5mgシリンジ0.15mL/同10mgシリンジ0.20mL/同12.5mgシリンジ0.25mL/同15mgシリンジ0.30mL)、製造販売元:日本メダック」を紹介します。本剤は、国内初の自己注射可能なMTX皮下注製剤であり、関節リウマチ患者の服薬アドヒアランスの向上に加え、誤投与・過剰投与リスクの軽減が期待されています。<効能・効果>本剤は、関節リウマチの適応で、2022年9月26日に製造販売承認を取得し、同年11月16日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはMTXとして7.5mgを週に1回皮下注射します。患者の状態や忍容性などに応じて適宜増量できますが、15mgを超えることはできません。4週を目安に患者の状態を十分に確認し、増量は2.5mgずつ行います。<安全性>国内第III相臨床試験(MC-MTX.17/RA試験)において、83.8%(93/111例)に臨床検査値異常を含む有害事象が認められました。5%以上に認められたものは、悪心16.2%、口内炎14.4%、関節リウマチ11.7%、上咽頭炎10.8%、ALT増加9.9%、肝機能異常9.9%、白血球数減少8.1%、上腹部痛5.4%、高血圧5.4%などでした。なお、重大な副作用として、ショック/アナフィラキシー(頻度不明)、骨髄抑制(5%以上)、感染症(0.1~5%未満)、結核、劇症肝炎/肝不全、急性腎障害/尿細管壊死/重症ネフロパチー、間質性肺炎/肺線維症/胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)/皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、出血性腸炎/壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)、進行性多巣性白質脳症(PML)(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、異常な状態となっている免疫反応や炎症反応を抑えることで、関節リウマチによる関節の腫れや痛みを改善します。2.通常、週に1回、特定の曜日に皮下注射してください。3.注射部位は大腿部・腹部・上腕部の毎回異なる部位を選び、短期間に同一部位へ繰り返して投与しないでください。4.この薬を投与している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は医師に相談してください。5.発熱、倦怠感が現れた場合や、口内炎、激しい腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れた場合は直ちに医師に連絡してください。6.(妊娠可能年齢の女性やパートナーが妊娠する可能性のある男性に対して)この薬を投与中および投与終了後一定の期間は、適切な方法で避妊を行ってください。7.(授乳中の女性に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤の投与中は授乳しないでください。<Shimo's eyes> 関節リウマチ(RA)治療の基本は、疾患活動性を低く抑え、早期の臨床的寛解を達成・維持することです。MTXはRAの病態形成に関与する種々の細胞に対して、複数の分子作用機序を介して免疫および炎症性反応を抑制し、抗RA作用を発揮すると考えられています。日本リウマチ学会、米国リウマチ学会(ACR)、欧州リウマチ学会(EULAR)のガイドラインではMTXが第1選択薬として推奨されています。わが国においては、RAに対するMTXはこれまで経口薬のみが発売されていましたが、本剤は週1回の皮下投与のプレフィルドシリンジです。医師の管理・指導のもと、自己注射も可能です。2022年9月時点で、本剤は欧州を中心に世界49の国または地域で承認されており、2019年には欧州医薬品庁はMTXの誤投与の危険性を回避するため、RAなどの治療に対して週1回投与のMTX皮下注製剤を推奨しています。MTX経口薬から切り替えの際の投与初期量は、1週間当たりの投与量を対比させた添付文書の表などを参考に決定されます。安全性プロファイルは、注射部位反応を除いてMTX経口薬と同様と考えられています。主な副作用は白血球数減少、肝機能障害、悪心、口内炎などであり、重大な副作用である骨髄抑制、感染症、結核、劇症肝炎、肝不全、急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、出血性腸炎などに注意する必要があります。2020年10月の「医療安全情報No.167」では、MTXの過剰投与による骨髄抑制の事故が後を絶たないことを注意喚起しています。本剤の普及によって医療現場での投与過誤、あるいは患者さんの服用過誤が減少することを期待します。

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第134回 全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府

<先週の動き>1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府2.かかりつけ医機能を制度化へ、かかりつけ医機能報告制度創設/厚労省3.新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、次回は今年の秋から/厚労省4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警1.全世代型社会保障制度関連法案を閣議決定、75歳以上の健康保険料引き上げへ/内閣府政府は、2月10日に一定の収入(年収153万円以上)を超えるの75歳以上の高齢者の健康保険料の引き上げを含む、「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。少子高齢化で財政が厳しい中、子ども・子育て支援の拡充、高齢者医療を全世代で公平に支えあうための高齢者医療制度の見直し、医療保険制度の基盤強化、医療・介護の連携機能および提供体制などの基盤強化を柱としている。具体的には「出産育児一時金」が今年の4月から50万円に引き上げられる財源について、75歳以上の高齢者にも財源の一部を負担してもらうほか、一定の年収を超える75歳以上の高齢者の保険料を現在の66万円を2024年度に73万円、2025年度に80万円と段階的に引き上げる。さらに74歳までの前期高齢者の医療費を現役世代が支援する仕組みでも、大企業の健康保険組合の負担を増やす一方で、中小企業の従業員が加入する「協会けんぽ」の負担を軽くする。この他、都道府県に対して、医療費適正化計画の立案の段階から、保険者と協議を行うことで、医療費適正化に向けた都道府県の役割、責務を明確化する。現在開会中の通常国会に提出し、成立を目指す。施行期日は、一部を除いて2024年4月1日となる。(参考)全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案(厚労省)75歳以上医療保険料引き上げ、法案閣議決定 年収153万円超から(毎日新聞)75歳以上の医療保険料、引き上げへ 政府 全世代型法案を閣議決定(JOINT)2.「かかりつけ医機能報告」を創設、かかりつけ医機能が制度化へ/厚労省政府は2月10日、かかりつけ医機能の制度整備などを盛り込んだ「全世代社会保障法案」(全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)を閣議決定した。現行の医療機能情報提供制度を変更して、新たに「かかりつけ医機能報告制度」が創設される。厚生労働省によれば、慢性疾患を有する高齢者や継続的に医療を必要とする患者を地域で支えるために定められた機能([1]日常的な診療の総合的、継続的実施、[2]時間外診療、[3]急変時や入院時に患者を支援、[4]在宅医療の提供、[5]介護サービスなどとの連携など)について、医療機関から都道府県に報告を求める。都道府県知事はそのデータを確認し、地域の関係者との協議の場に報告するとともに公表する。厚生労働省は、かかりつけ医機能の報告が医療機関を縛るものではないとしており、必ずしもかかりつけ医制度を義務化するものではないとの立場。厚生労働省は医療法を改正して、2025年4月1日の施行を目指す。(参考)かかりつけ医機能が発揮される制度整備について(厚労省)「かかりつけ医機能」発揮へ制度整備、法案閣議決定 厚労相「地域で機能提供できる体制構築」(CB news)自民党厚労部会 全世代社会保障法案を部会長一任で了承 かかりつけ医機能の「確認」は行政行為にあらず(ミクスオンライン)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(上) 政府は患者登録制は見送り(東京新聞)「かかりつけ医」制度化、何が論点? 武藤正樹医師に聞く(下) 総合診療医の育成支援を(同)3. 新型コロナワクチン、無料接種は4月以降も継続、追加接種は今年の秋に実施/厚労省厚生労働省は2月8日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、今年3月末に無料接種の期限を迎える新型コロナウイルスワクチン接種について、4月以降もすべての接種対象者の無料接種を継続する方針を固め、さらに2023年度の追加接種の方針について、以下の通りとりまとめた。追加接種の対象者は高齢者などの重症化リスクがある人を優先するが、重症化リスクが高くない人であっても重症化が発生するため、引き続き無料接種を継続する。接種時期は、前回から1年が経過する今年秋から冬に実施予定だが、重症化リスクのある人については秋を前に接種を行う。また、子ども(5~11歳)や乳幼児(6ヵ月~4歳)は、接種開始から時間が短いため、接種期間を延長する。(参考)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針についての議論のとりまとめについて(厚労省)2023年度以降の新型コロナワクチンの接種の方針について(同)新型コロナワクチン、4月以降も無料接種継続へ 次回は今秋冬に(毎日新聞)新型コロナワクチン 秋から冬に次の接種 基本方針まとまる(NHK)コロナワクチン接種スケジュール「毎年秋冬が妥当」厚労省が厚科審部会に方針案提示(CB news)4.健康保険証廃止で「マイナ保険証」ない人には資格確認書を提供/政府政府は、2024年秋に行う健康保険証の廃止と、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への切り替えを前に、「マイナ保険証」の普及に向けて、取得を呼びかける広報を行っているが、2月5日時点マイナンバーカードの保有率は68.1%だが、健康保険証としての利用登録率は59.3%とまだ低い(2023年2月5日時点)。このため政府は、2024年の健康保険証の廃止後もマイナンバーカードを紛失した人や未取得の人が保険診療を受けられるように、保険証の情報を記載した「資格確認書」を提供する方向で検討を開始した。また、新生児についても、出生届の提出時に申請を受け付け、1歳未満の乳児には顔写真がないカードを交付する方針。政府は、具体化に向けてさらに検討を行い、法案を今国会に提出する見込み。(参考)“マイナ保険証”ない人には「資格確認書」提供で調整 政府(NHK)健康保険証廃止後の保険診療で具体案取りまとめ 政府(同)マイナ保険証未取得者に資格確認書 24年保険証廃止で政府調整(毎日新聞)マイナンバーカード交付状況について(総務省)政策データダッシュボード(ベータ版)(デジタル庁)5.臓器移植を無許可あっせんでNPO法人理事を逮捕、法外な料金も問題に/警視庁ベラルーシの病院での臓器移植を無許可であっせんしたとして、警視庁生活環境課は2月9日までに、NPO法人「難病患者支援の会」(横浜市)の理事を臓器移植法違反の疑いで逮捕した。同法人も同じ容疑で書類送検となる見込み。報道によると逮捕された菊池仁達容疑者らは、厚生労働省の許可を得ずに、臓器移植を希望する患者に対して海外渡航での臓器移植を斡旋し、手術後に合併症などで死亡するなど被害が出ているほか、費用を払い込んだにもかかわらず移植が行われず、死亡した患者の遺族へ返金がなされていないなど被害が発生していた。加藤厚労大臣は、記者会見でこの事件について「事実だとすれば大変遺憾」だとして、国内でも他に同様の事案が無いか、調査していく考えを示した。さらに「同様の事案が生じないよう、臓器提供に関する正確な情報を発信していく」と強調した。日本臓器移植ネットワークによれば、日本国内のドナー数は100万人当たり0.62とアメリカの41.88やドイツの11.22など世界各国に比べて、提供件数が低いままであり、今回のように待機患者が海外を目指すケースが後を絶たない。2008年の国際移植学会で「移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすること」という主旨のイスタンブール宣言が出されたことで、わが国でも2009年に改正臓器移植法が成立し、2010年7月に全面施行となっている。(参考)臓器あっせん、患者は徹底捜査求める「移植費用の行方解明して」(読売新聞)臓器あっせん、別の日本人患者も死亡…ベラルーシで肝臓・腎臓を同時移植(同)相場の2倍要求か 臓器移植、無許可あっせん容疑の理事(日経新聞)「不透明」な海外移植あっせん 増えぬドナー、減らぬ希望者が背景に(朝日新聞)6.未承認薬の緊急避妊薬やイベルメクチンのアフィリエイト広告で逮捕/兵庫県警兵庫県警生活経済課は2月9日、緊急避妊薬やうつ病の治療薬など未承認の医薬品のアフィリエイト広告をインターネット上に掲載したとして、医薬品医療機器法(未承認医薬品の広告禁止)違反の疑いで、群馬県高崎市の男性(39)を逮捕した。調べによると、男性は副業でアフィリエイト(ネット広告)用のウェブサイトを複数開設し、アフィリエイト仲介業者を通して、毎月10万円前後の報酬を得ていた。Webサイトには、未承認の緊急避妊薬、抗うつ薬に加え、新型コロナウイルス感染症治療薬として未承認の「イベルメクチン」も掲載されていた。厚生労働省は2021年8月に医薬品医療機器等法を改正しており、医薬品等の誇大広告の規制の強化を打ち出している。第66条の条文には「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」とされている。規制対象は、広告主だけではなく、広告代理店・アフィリエイターなどの個人も対象となる。また、健康食品・サプリメント、健康・美容器具であっても、医療品のような効果を訴求して、薬機法に抵触する表現をすると医薬品であるとみなされ、課徴金の対象となる可能性があり、課徴金として「売上額」の4.5%を支払う必要がある。(参考)未承認の緊急避妊薬などをネット広告に 県警が群馬の男逮捕「本当に悪いのは輸入代行者」(神戸新聞)医薬品等の広告規制について(厚労省)アフィリエイト広告のしくみと法規制(国民生活センター)薬機法改正のポイントを分かりやすく解説!企業は何を対策すべき?(Letro)

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「肥満」との違いは?肥満症診療ガイドライン改訂

 11月24日に日本肥満学会(理事長:横手 幸太郎氏[千葉大学医学部附属病院長])は、『肥満症診療ガイドライン2022』についてプレスセミナーを開催した。 セミナーでは、肥満症の現況や治療に関する解説と今回刊行されたガイドラインの概要が説明された。また、本ガイドラインは12月2・3日に那覇市で開催される第43回日本肥満学会(会長:益崎 裕章氏[琉球大学大学院 医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座 教授])で発刊される。肥満症とはBMI25以上で何らかの健康障害がある人 はじめに理事長の横手 幸太郎氏が「わが国における肥満症の現況と肥満症診療ガイドライン2022の位置づけ」をテーマに講演を行った。 肥満とは、「脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態」をいい、わが国ではBMI25以上が肥満とされている。その数は、年を経て全世界で増えており、とくにアメリカやアフリカで増加している。 肥満になると糖尿病、高血圧、脂質異常症などの健康障害のほか、膝・腰・足首などへの運動器障害、睡眠時無呼吸症候群などが生じるリスクが高くなる。 そこで、BMIが25以上あり、一定の健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風など11項目)がある人を「肥満症」として、医学的に治療が必要な対象者としている(BMI35以上は高度肥満症)。 肥満症の治療は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科療法と5つの考え方があり、他職種連携によるチーム医療がなされる必要がある。実際、一番身近な保健指導の介入により6ヵ月後のHbA1cは-0.2%減少、中性脂肪は-81.5%減少など改善効果が報告されている1)。 肥満に関して最近のトピックスとしては、若い女性にはBMI18.5未満の「やせ過ぎ」の女性がむしろ増えていることやそのやせ過ぎが将来的に骨粗鬆症や不妊のリスクとなること、高齢者の肥満ではフレイルなどとの関連も考慮し、無理な減量よりも筋肉量維持や増強に心がけることなども指摘されている。 横手氏は終わりに本ガイドラインの目的について「体重を減らすことにメリットがある。『やせるべき人』を選び出す、そして、適切に治療と予防を行うことである」と述べ講演を終えた。小児や高齢者の肥満にも言及 続いて、同学会のガイドライン作成委員会委員長の小川 渉氏(神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科 教授)が「肥満症診療ガイドライン2022の改訂のポイント」をテーマに、今回の改訂内容や今後の展望などを解説した。 本ガイドラインは、2006年、2016年と発刊され、今回の2022年版では、主に「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」「高度肥満症」「小児の肥満」「高齢者の肥満」「肥満症の治療薬」「コラム」について改訂が行われた。 「肥満症治療の目標と学会が目指すもの」と「高度肥満症」では、肥満症治療指針について「肥満症」と「高度肥満症」とで目標、治療などの治療方針が異なることが記載された。とくに肥満の外科治療の減量・代謝改善手術では保険適用の内容などが改訂された。薬物治療についてはGLP-1受容体作動薬の治験に関して言及され、セマグルチドの68週後の体重変化率についてプラセボ-2.1%に対し、セマグルチド-13.2%と有意な体重減少があったこと、また、本試験が学会の定める肥満症の診断基準に基づいて作成されたプロトコ-ルで実施された試験であることなどが記載されている2)。 「高齢者の肥満」では、日本老年医学会のガイドラインの内容 と統一性を考慮して改訂され、 高齢者肥満症の減量目標をフレイル予防と健康障害発症予防の両者も考慮し「BMI22~25」の範囲とすることが記載され、過剰な減量には留意が必要とされている。 「小児の肥満」では、将来の成長を考慮しBMIではなく、肥満度で判定し、身体面だけでなく、肥満に伴う「いじめ」など生活面への配慮も記載されている。 「肥満症の治療薬」では、「肥満の治療」ではなく、「肥満症の治療」という基本概念のもと、記載の整備と概念を明確化したほか、改訂では製薬企業の開発担当者とも意見交換を行い、評価基準と適応基準は必ず同一ではないことが記載されている。 その他、今回の改訂では「肥満へのスティグマ」についても触れられ、肥満の原因が個人への帰責事由という偏見からくる社会的スティグマと肥満を自分自身の責任とする個人的スティグマへの配慮が述べられている。 最後に小川氏は「肥満症の課題は、認知度がまだ低く、社会的な浸透もメタボリックシンドローム(72.5%)や肥満(81.8%)と比較しても、肥満症(58.3%)は低い。このガイドラインが、診療に役立つだけでなく社会の啓発に寄与することを期待する」と抱負を述べ、レクチャーを終えた。

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抗うつ薬と骨量減少との関連~メタ解析

 うつ病や抗うつ薬の使用は、骨粗鬆症のリスク因子の1つであるといわれている。しかし、抗うつ薬の骨への影響やうつ病患者の年齢と骨の健康状態の自然な低下に関する研究では、一貫した結果が得られていない。イタリア・Magna Graecia UniversityのMichele Mercurio氏らは、抗うつ薬と骨密度(BMD)の関連を調査した。その結果、セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用がBMD減少と関連している可能性が示唆された。著者らは結果を踏まえ、抗うつ薬の使用と骨の脆弱性との潜在的な関連性に対する医師の意識を高め、骨の健康状態のモニタリング強化を目指すと述べている。Orthopedic Reviews誌2022年10月13日号の報告。 抗うつ薬およびBMDをキーワード(英語のみ)として、2021年6月までに公表された文献をPubMed/Medline、Cochraneデータベース、Scopusライブラリより検索し、PRISMAガイドラインに従ってシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。方法論的質の評価には、ニューカッスル・オタワスケールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・定性分析には18件、定量分析には5件の文献を含めた。・さまざまなサブタイプのうつ病患者4万2,656例を対象に分析を行った。・研究の内訳は、SSRIのみを使用した研究が10件、SSRIと三環系抗うつ薬を使用した研究が6件、2種類以上の抗うつ薬を併用した研究が2件であった。・最新カテゴリの抗うつ薬(ボルチオキセチン、esketamineなど)を使用した研究は含まれなかった。・全体として、SSRIによるBMD減少(平均:0.28、95%CI:0.08~0.39)の有意な影響が観察された。

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1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」【下平博士のDIノート】第110回

1日1回投与の新規骨形成促進薬「オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg」今回は、骨粗鬆症治療薬「アバロパラチド酢酸塩注射剤(商品名:オスタバロ皮下注カートリッジ1.5mg、帝人ファーマ)」を紹介します。本剤は、骨吸収作用に対して骨形成作用がより優位な新規の骨形成促進薬であり、1日1回の皮下投与により、骨量の増加と骨折の抑制が期待されています。<効能・効果>本剤は、骨折の危険性の高い骨粗鬆症の適応で、2022年8月31日に製造販売承認を取得しました。なお、オスタバロ皮下注3mgが2021年3月に同様の適応で製造販売承認されていますが、3mg製剤は28日投与の製剤であり、新薬の14日処方制限への対応が必要であったため現時点での薬価収載は見送られています。<用法・用量>通常、成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射します。本剤の投与期間は18ヵ月間までです。なお、本剤は使用開始前も開始後も冷蔵庫で保管します。<安全性>国内および海外の第III相試験を統合した結果、臨床検査値異常を含む副作用は962例中357例(37.1%)で報告されました。主な副作用は、高カルシウム尿症81例(8.4%)、浮動性めまい55例(5.7%)、悪心52例(5.4%)、頭痛34例(3.5%)、動悸33例(3.4%)などでした。重大な副作用として、アナフィラキシー(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、骨形成を促進して骨量を増やすことで、骨折を予防します。2.投与後30分程度はできる限り安静にして、高所での作業、自動車の運転など危険が伴う作業に従事する場合は注意してください。3.投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗などが生じた場合には、症状が治まるまで座ったり横になったりしてください。4.悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は受診してください。5.(妊娠可能な女性に対して)本剤の投与期間中は避妊してください。<Shimo's eyes>骨粗鬆症に伴う骨折は、日常生活動作やQOLの低下、生命予後の悪化につながるため、初回骨折の予防に加え、すでに骨折が生じた場合は次の骨折を予防して、骨折の連鎖を起こさないための治療が重要です。本剤はヒト副甲状腺ホルモン関連蛋白質(hPTHrP)のアミノ酸配列の一部を改変したアナログ製剤で、骨代謝に関わるPTH1型受容体のRG型を選択的に刺激するため、骨量の増加と骨折抑制が期待できます。既存の副甲状腺ホルモン製剤(PTH製剤)としては、テリパラチド(遺伝子組換え)(商品名:フォルテオ皮下注キット)、テリパラチド酢酸塩(同:テリボン皮下注用、テリボン皮下注オートインジェクター)などが発売されています。また、抗体薬としては、抗ランクル抗体のデノスマブ(遺伝子組換え)(同:プラリア皮下注)、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(遺伝子組換え)(同:イベニティ皮下注)が発売されており、超高齢社会に対応すべく効果の高い骨粗鬆症治療が近年続々と登場しています。本剤は、海外における骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆患者を対象とした海外第III相試験(BA058-05-003試験、ACTIVE試験)において、プラセボに比べて投与18ヵ月の新規椎体骨折の発生率が低く、最初の非椎体骨折の発生までの期間が有意に延長されました。また、本剤投与終了後のアレンドロネートによる継続治療により、プラセボ投与終了後のアレンドロネート治療群と比較して、ACTIVE試験の開始から投与後25ヵ月および43ヵ月までの新規椎体骨折発生率が有意に低く、最初の非椎体骨発生までの期間に有意な延長が認められました(BA058-05-005試験、ACTIVE延長試験)。本剤の電動式注入器(オスタバロインジェクター)は、製剤カートリッジを14日ごとに交換するよう設計されていて、液晶画面には操作手順、投与履歴、累計投与回数が表示されるとともに、カートリッジの交換や冷所保管忘れの通知機能なども備えられています。診察では、インジェクターに記録された投与履歴や累積回数を確認することができます。なお、本剤の使用にあたっては、インジェクターのほかに製剤カートリッジ、A型専用注射針、消毒用アルコール綿が別途必要となるので、処方の確認が必要です。安全面では、活性型ビタミンD製剤との併用は、血清カルシウム値が上昇する恐れがあるため避けることが望ましいとされています。本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下が現れることがあるので注意が必要です。また、一過性の血清カルシウム値上昇がみられることもあり、悪心、嘔吐、便秘、食欲減退、腹痛などが生じた場合は速やかに診察を受けるように患者さんに指導しましょう。

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ESMO2022 レポート 乳がん

レポーター紹介今年度のESMOでは、現在の臨床を変えたり、今後の方向性に大きな影響を与えたりする重要な演題が発表されました。その中で、今回、進行乳がんではTROPiCS-02試験のOSの結果、MONARCH-3試験の中間解析でのOSの結果、経口SERDのランダム化比較試験の結果、周術期乳がんではDATA試験の結果を取り上げます。TROPiCS-02試験:sacituzumab govitecanがOSを改善sacituzumab govitecanは、抗Trop-2抗体とSN-38の抗体薬物複合体です。ランダム化比較第III相試験であるASCENT試験1)では、転移・再発ホルモン受容体(HR)陰性HER2陰性乳がん(トリプルネガティブ乳がん:TNBC)に対して2治療以内の化学療法歴がある症例が対象となりました。この結果、sacituzumab govitecanは、医師選択治療と比較して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の改善を示したため、すでにTNBCに対してFDAから承認されています。今回のTROPiCS-02試験(ClinicalTrials.gov、ID:NCT03901339)は、内分泌療法抵抗性のHR陽性HER2陰性進行乳がん患者において、sacituzumab govitecan(SG群)(n=272)と医師選択治療(TPC群)(n=271)を比較したランダム化比較第III相試験です。タキサン、内分泌療法、およびCDK4/6阻害薬、ならびに転移乳がんに対して2~4種類の化学療法レジメンを受けた患者が適格でした。TPC群の治療選択肢は、カペシタビン、ビノレルビン、ゲムシタビン、またはエリブリンでした。2022年のASCO年次集会では、追跡期間中央値10.2でのPFSの最終解析結果が報告されており、SG群は、TPC群よりもPFSの中央値が良好で、それぞれSG群5.5ヵ月に対してTPC群は4.0ヵ月でした(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.53~0.83、p=0.0003)2)。6ヵ月PFS割合はそれぞれ46%対30%、12ヵ月PFS割合はそれぞれ21%対7%と、いずれもSG群で良好な結果でした。OSについては第1回中間解析で、immatureな状況で、統計学的な有意差は認めませんでした。有害事象は、SG群で好中球減少症が51%、下痢9%といった結果でしたが、治療中断に至る重篤な有害事象はSG群で6%、TPC群で4%と大きな差を認めませんでした。今回、半年と経たず、2回目の中間解析結果として、OSのupdate結果が公表されました。今回のESMOでの発表は、追跡期間の中央値が12.5ヵ月時点で、OSはSG群で有意に良好でした。OSの中央値は、SG群で14.4ヵ月、TPC群で11.2ヵ月でした(HR:0.79、95%CI:0.65~0.96、p=0.020)。また、12ヵ月のOS割合はそれぞれ61%と47%でした。奏効割合はSG群で21%に対してTPC群は14%(p=0.035)と、有意にSG群が良好でした。sacituzumab govitecanは、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対して、他の抗がん剤と比較してPFSに加えてOSの改善を示した数少ない薬となりました。これにより、HR陽性HER2陰性進行乳がんに対しても標準治療の一つとして位置付けられることになります。現在、日本においてもギリアド・サイエンシズによる企業治験が実施中ですので、日本での承認が待たれます。また、一部はHER2低発現のHR陽性HER2陰性乳がんで、トラスツズマブデルクステカン(Destiny Breast 04試験3))と症例対象が重なっています。今後、両剤の位置付けについても、検討が進められると考えられます。MONARCH3試験:第2回中間解析では統計学的有意差は検証されなかったがアベマシクリブ群で良好な結果サイクリン依存性キナーゼ4/6阻害薬であるアベマシクリブは、プラセボ対照ランダム化比較第III相試験であるMONARCH3試験で、主要評価項目である無増悪生存期間の有意な改善をもとに、HR陽性HER2陰性閉経後進行乳がん患者に対する初回内分泌療法として非ステロイド性アロマターゼ阻害薬(NSAI)と組み合わせて承認されています4)。本試験における副次的評価項目であるOSについて、2回目の中間解析結果が公表されました。既にEMAの添付文書に記載されている結果が、明確に発表されたことになります。2回目の中間解析結果は追跡期間の中央値は5.8年時点で解析されました。全体集団(ITT集団)では、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値は67.1ヵ月に対して、プラセボ+NSAIは54.5ヵ月でした(ハザード比:0.754、95%CI:0.584~0.974、p=0.0301)。中間解析の事前設定されたp値は下回らず、統計学的な有意差は検証されていません。一方で、内臓転移あり患者のサブグループ(n=263)でも、アベマシクリブ+NSAIのOS中央値が65.1ヵ月であったのに対し、プラセボ+NSAIは48.8ヵ月であり(HR:0.708。95%CI:0.508~0.985、p=0.0392)、予後不良と考えられる内臓転移ありのサブグループでも全体集団のアベマシクリブによるOS改善傾向は維持されていました。まだOSにまで差があるとは言えないものの、最終解析が期待される結果でした。最終OS解析結果は来年発表される予定であり、現時点で臨床でのCDK4/6阻害薬の使い分けは決定的な差がない状況です。ただし、2022年ASCO年次集会で発表され、OSに統計学的有意差を認めなかったPALOMA-2試験の最終OS結果とは、今回の結果は異なっています。サブグループ解析も、内臓転移症例のような予後不良症例においてアベマシクリブの上乗せ効果が際立っており、これまでのPFSやMONARCH2のOS結果の特徴が維持されています。Adjuvantの様々なCDK4/6阻害薬の結果を含め、これまで同等と考えられていたパルボシクリブとアベマシクリブの薬剤の違いについて、より深い考察が求められます。acelERA BC試験とAMEERA-3試験:経口SERD単剤のPhase2試験が複数negative選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)は、フルベストラントが実臨床で用いられますが、筋注製剤であることが一つのハードルとなっています。また、AI治療中に出現し、AI耐性に関わるESR1遺伝子変異に対する耐性克服としても、経口SERDが期待され、その開発が進んでいます。先行しているelacestrantは、オープンラベルランダム化比較第III相試験において、医師選択の内分泌療法よりもelacestrantによるPFS改善が既に検証されています5)。一方で、複数の製薬企業が経口SERDの開発を進めており、今回は2つの経口SERD単剤のオープンラベルランダム化第II相試験の結果が報告されました。acelERA BC試験では、1-2ラインの治療歴を有するエストロゲン受容体陽性HER2陰性の局所進行または転移乳がんにおいて、経口SERDのgiredestrantが、医師選択の内分泌療法単剤(TPC群)と比較されました。この結果、giredestrantはPFSの有意な改善を示すことはできませんでした。追跡期間中央値は7.89ヵ月で、PFS-INV中央値はgiredestrant群5.6ヵ月、TPC群5.4ヵ月でハザード比は0.81(95%信頼区間:0.60~1.10、p=0.1757)で有意差はありません。6ヵ月PFS率はそれぞれ46.8%、39.6%でgiredestrant群において良好な傾向でした。ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFS中央値はgiredestrant群(51例)5.3ヵ月、TPC群(29例)3.5ヵ月で(ハザード比は0.60 95%CI; 0.35-1.03、p=0.0610)で、全集団よりもgiredestrant群で良好な傾向でしたが、有意差を認めませんでした。AMEERA-3試験では、閉経後女性あるいはLHRHアゴニストの投与を受けている閉経前女性または男性のER陽性HER2陰性進行乳がんで、進行乳がんに対する2ライン以下の内分泌療法、1ライン以下の化学療法あるいは1ライン以下の標的治療による前治療歴を有し、ECOG PS 0-1の患者を対象に、amcenestrantと医師選択内分泌療法の有効性と安全性が比較されました。この結果、PFS中央値はamcenestrant 群3.6ヵ月、医師選択内分泌療法群3.7ヵ月(ハザード比 1.051, 95%CI 0.789-1.4、p=0.6437)と、有意差を認めませんでした。さらに、ESR1遺伝子変異陽性例におけるPFSはamcenestrant群においてTPC群よりも良好な傾向で、中央値はそれぞれ3.7ヵ月対2.0ヵ月でハザード比は0.9(95%CI; 0.565-1.435、p=0.6437)でしたが、有意差を認めませんでした。以上をまとめると下記の表のようになります。画像を拡大する経口SERDの開発は、現在よりフロントラインで、初回治療の第III相試験が多数行われていますが、今回の結果で若干の暗雲が立ち込めています。ESR1遺伝子変異症例における経口SERDの有効性は、一貫してありそうと感じられました。ただし、今後も、既存のAIを始めとした内分泌療法やフルベストラントよりも本当に有効なのか、現在行われている第III相比較試験の結果が待たれます。(AMEERA-5試験は既にnegative trialであると発表されています)DATA試験の最終解析結果:一部の症例でExtended ANAの恩恵を受ける可能性DATA試験(ClinicalTrials.gov:NCT00301457)は、オランダで行われたタモキシフェンによる術後内分泌療法2〜3年投与後に再発がなかったHR陽性閉経後乳がん患者における追加AI治療の至適投与期間を調べるべく計画されたオープンラベルランダム化比較第III相試験です。患者は、アナストロゾール3年間の治療またはアナストロゾール6年間の治療のいずれかに無作為に割り付けられました。6年群の827人の患者と3年群の833人の患者が登録されました。この研究の主要評価項目はadapted DFS(aDFS)で、無作為化後3年後以降のDFSとして定義されました。10年aDFS割合はそれぞれ6年治療群69.1%および3年治療群66.0%(HR:0.86、95%CI:0.72~1.01、p=0.073)と、有意差は認めませんでした。同様に、10年型adapted OS(aOS)割合は、6年治療群で80.9%、3年治療群で79.2%(HR:0.93、95%CI:0.75~1.16、p=0.53)と、こちらも有意差を認めませんでした。サブグループ分析において、6年治療群が良い傾向を示したサブグループとして、腫瘍がER陽性およびプロゲステロン受容体(PR)陽性の患者 (HR:0.77、95%CI:0.63~0.93、p=0.018)、リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)といった因子が挙げられました。しかし、これらのサブグループのいずれにおいても、10年間のaOS率に有意な改善は認めませんでした。リンパ節転移陽性かつER陽性およびPR陽性疾患の患者(HR:0.74、95%CI:0.59~0.93、p=0.011)、腫瘍径2cm以上の腫瘍、かつリンパ節転移陽性、ならびにER陽性およびPR陽性の疾患を有する患者(HR:0.64、95%CI:0.47~0.88、p=0.005)DATA試験は以前のフォローアップ中央値5年時点の報告ではDFSの有意差が認められなかった6)ところ、今回の最終報告においてもDFSはnegative resultでした。これまで、5年の内分泌療法に対して、AIの5年以降投与(7-8年または10年)の有効性を検討した試験は、AERAS、MA17、NSABP-B33、NSABP-B42、DATA、GIM4、などの大規模ランダム化比較試験が存在します。乳がん学会診療ガイドライン2022年版では、これらの統合解析がなされているように、5年内分泌療法対5年以降にAI投与(extended AI)がなされた場合となると、5年以上の投与によるDFSは改善傾向が認められます。ただし、OSの改善が示されたランダム化比較試験はGIM4のみであり、統合解析でもextended AIは有意ではありませんでした。今回のDATA試験はnegative trialであった一方で、DFSでextended AI群で良好であるというこれまでと一貫した結果であったことから、上記の統合解析も大きな変化がないであろうと想定されます。さらに、extended AIによる骨粗鬆症の悪化や心血管イベントの増加など、有害事象も増えることが分かってきている現状から、ベースラインの再発リスクの見積もり、アロマターゼ阻害薬の忍容性、有害事象の追加といった要素をもとに、総合的にextended AIは検討されるべきと考えられます。一方で、近年は5年以上のアロマターゼ阻害薬投与の有効性を推定する指標が検討されてきました。FFPE検体を用いてRT- PCRから計算するBreast Cancer Index(BCI)、腫瘍径、グレード、年齢、リンパ節転移の個数から再発リスクを算出し、閉経後症例の5年目以降の内分泌療法の追加効果を予測するCTS5などが、晩期再発のリスク見積もりに有用であるとされています7)。日本ではBCIは使用しづらいですが、こういった指標も参考にしつつ、extended AIを検討するべきと考えられます。1)Bardia A, et al. N Engl J Med. 2021;384:1529-1541.2)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022 Aug 26. [Epub ahead of print]3)Modi S, et al. N Engl J Med.2022;387:9-20.4)Goetz MP,et al. J Clin Oncol. 2017;35:3638-3646.5)Bidard FC,et al.J Clin Oncol. 2022;40:3246-3256.6)Tjan-Heijnen VCG, et. al. Lancet Oncol.2017;18:1502-1511.7)Andre F,et al. J Clin Oncol 2022; 40:1816-1837.

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朝食時刻と乳がんリスクが関連

 1日の食事のサイクルと乳がんの関連が指摘されている。スペイン・Barcelona Institute for Global HealthのAnna Palomar-Cros氏らが朝食時刻および夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連について検討したところ、閉経前女性では朝食時刻が遅いほど乳がんリスクが高いことが示唆された。Frontiers in Nutrition誌2022年8月11日号に掲載。 本研究では、2008~13年に実施されたスペインのマルチケースコントロール研究(MCC-Spain)における乳がん症例1,181例と対照1,326例のデータを解析した。中年期の毎日の食事のサイクルは電話インタビューで聴取した。朝食時刻および夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連について、ロジスティック回帰を用いてオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。年齢、センター、教育、乳がん家族歴、初経年齢、子供の数、母乳育児、初産年齢、BMI、避妊薬使用、ホルモン補充療法で調整し、閉経状態で層別した。 主な結果は以下のとおり。・朝食時刻が遅くなるほど乳がんリスクが増加したが、有意ではなかった(1時間当たりのOR:1.05、95% CI:0.95~1.16)。・この関連は閉経前女性で強く、朝食時刻が1時間遅くなるごとに乳がんリスクが18%増加した(OR:1.18、95%CI:1.01~1.40)。閉経後女性ではこの関連はみられなかった。・朝食時刻を調整しても、夜間絶食時間と乳がんリスクとの関連はみられなかった。

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ビタミンD補給、中高年において骨折予防効果なし/NEJM

 ビタミンD欠乏症、骨量低下、骨粗鬆症を有していない概して健康な中高年以上の集団では、ビタミンD3を摂取してもプラセボと比較し骨折リスクは有意に低下しないことが、米国・ハーバード・メディカル・スクールのMeryl S. LeBoff氏らが行った「VITAL試験」の補助的研究で示された。ビタミンDサプリメントは、一般集団において骨の健康のために広く推奨されている。しかし、骨折予防に関するデータは一貫していなかった。NEJM誌2022年7月28日号掲載の報告。米国人男性50歳以上、女性55歳以上の計2万5,871例で骨折発生をプラセボと比較 VITAL試験は米国の50歳以上の男性と55歳以上の女性を対象に、ビタミンD3(2,000 IU/日)、n-3系脂肪酸(1g/日)、またはその両方の摂取により、がんや心血管疾患を予防できるどうかをプラセボと比較した2×2要因デザインの無作為化比較試験である。選択基準にビタミンD欠乏症、骨量低下、骨粗鬆症は含まれていない。 年1回、質問票によりレジメンの遵守、副作用、他のサプリメント(例:カルシウム、ビタミンD)や薬剤の使用、大きな病気、骨粗鬆症または関連する危険因子、身体活動、転倒、および骨折について調査し、骨折を報告した参加者にはさらに詳細な質問票を送付して調査するとともに、骨折の治療を行った施設から医療記録(股関節または大腿骨骨折の場合は放射線画像を含む)を入手し、中央判定を行った。 主要評価項目は全骨折、非椎体骨折、股関節骨折の初回発生で、intention-to-treat集団を解析対象として比例ハザードモデルを用いて治療効果を推定した。 計2万5,871例(女性50.6%、黒人20.2%)がビタミンD3+n-3系脂肪酸、ビタミンD3+プラセボ、n-3系脂肪酸+プラセボ、プラセボ+プラセボの4群に無作為に割り付けられた。全骨折、非椎体骨折および股関節骨折、いずれもプラセボ群と有意差なし 追跡期間中央値5.3年において、1,551例に1,991件の骨折が確認された。 初発全骨折は、ビタミンD群(ビタミンD3+n-3系脂肪酸群およびビタミンD3+プラセボ群)で1万2,927例中769例、プラセボ群(n-3系脂肪酸+プラセボ群およびプラセボ+プラセボ群)で1万2,944例中782例に認められた(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.89~1.08、p=0.70)。同様に非脊椎骨折はそれぞれ721例および744例(0.97、0.87~1.07、p=0.50)、股関節骨折は57例および56例(1.01、0.70~1.47、p=0.96)に認められ、いずれもビタミンD群とプラセボ群で有意差はなかった。 年齢、性別、人種/民族、BMI、血清25-ヒドロキシビタミンD値などベースラインの患者背景は、この結果に影響しなかった。 また有害事象は親試験で評価されたとおり、両群間で差はなかった。 なお、著者は研究の結果は限定的なものであり、骨粗鬆症または骨軟化症患者、高齢の施設入所者には一般化されない可能性があるとしている。

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高齢者の多疾患罹患とうつ病に関する性差

 これまでの研究では、多疾患罹患はうつ病リスクが高いといわれている。しかし、うつ病と多疾患罹患との関連において、性差を調査した研究はほとんどなかった。韓国・乙支大学校のSeoYeon Hwang氏らは、男女間でうつ病と多疾患罹患の関連に違いがあるかを調査した。その結果、韓国の高齢者において、多疾患罹患とうつ病との関連に性差が認められたとし、多疾患罹患の高齢者におけるうつ病の軽減には、性別ごとの適切なケアを提供する必要があることを報告した。Epidemiology and Health誌オンライン版2022年5月24日号の報告。 対象は、韓国の高齢者調査(2011~17年)より得られた65歳以上の3万138例。うつ病の評価には、老年期うつ病評価尺度の韓国語版(GDS-K)を用いた。多疾患罹患患者の定義は、関節炎、糖尿病、心臓病、高血圧、肺疾患、がん、脳卒中、骨粗鬆症のうち2つ以上の慢性疾患を有する患者とした。うつ病と多疾患罹患との関連を分析するため、多重ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・多疾患罹患患者のうつ病有病率は、男性で22.17%、女性で30.67%であった。・多疾患罹患患者は、そうでない人と比較し、うつ病リスクが高く、男性のリスク差は女性よりも大きかった。・とくに女性において、年齢はモデレーターである可能性が高かった。・統合分析では肺疾患、脳卒中、がんの影響が大きかったが、性差は、心臓病を有する患者の慢性疾患数で認められた。

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第113回 規制改革推進会議答申で気になったこと(後編)PPIもやっとスイッチOTC化?処方薬の市販化促進に向け厚労省に調査指示

処方薬の市販化促進を進めるため厚労省に調査を指示こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載を読んでくれている友人から、「今年はMLBの話題が少ないね」と言われてしまいました。確かに少ないです。理由の一つはご存じのようにロサンゼルス・エンジェルスの絶不調です。約1ヵ月前は今年こそポストシーズンに行けるかもと思い、秋の“米国取材”の準備を始めていました。しかし5月後半から負けが続き、ジョー・マドン監督解任、14連敗とバッド・ニュースが続きました。6月9日(現地時間)は大谷 翔平選手の久しぶり“2刀流”の活躍で、なんとか連敗は止まったものの、その後も勝ったり負けたりとチームの調子は今ひとつです。観戦していると、野手陣の守備や走塁が日本の高校野球以下の時があって気になります(特にジョー・アデル外野手!)。この守りでは、甲子園でも1回戦止まりでしょう・・・。救いは、まだ残り100試合近くあることです。ポストシーズン進出を願って、エンジェルスとダルビッシュ有投手のいるサンディエゴ・パドレスの応援を続けたいと思います。さて、今回も前回に引き続き、規制改革推進会議答申で気になったことについて書いてみたいと思います。今回は、薬関連(処方薬の市販化、SaMD)についてです。欧米と比べ、まったく進んでいない医療用医薬品のOTC化規制改革推進会議は今年の答申、「規制改革推進 に関する答申~コロナ後に向けた成長の「起動」~」1)において、「患者のための医薬品アクセスの円滑化」の項目で、処方薬の市販化促進を進めるため、厚生労働省に次のように調査を指示しました。「厚生労働省は、医療用医薬品から一般用医薬品への転用に関する申請品目(要指導[一般用]新有効成分含有医薬品)について、申請を受理したもののいまだ「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で検討されていないものの有無を確認するとともに、令和2年度以前の申請に対していまだ結論が出されていないものについて、(ア)その件数、(イ)申請ごとに、その理由、(ウ)(イ)のうち厚生労働省及びPMDAの事業者に対する指摘に対して事業者によって適切な対応が行われていないために審査が進まないとするものについては当該指摘の内容、(エ)申請ごとに、当該申請品目の成分に関して、海外主要国における一般用医薬品としての販売・承認状況及び承認年度を調査する。」国はかねてからセルフメディケーションを推進すると言っているのに、緊急避妊薬や抗潰瘍薬など、欧米と比べ医療用医薬品のOTC化がまったく進んでいないことに業を煮やした上での対応と言えます。実際、米国などに旅行に行くと、日本では市販されていない医薬品がOTCとして普通に売られていることに驚くことがあります。だからといって大きな薬害が起こった、という報道は聞いたことがありません。日本の医療用から要指導・一般用への転用が、他国と比べて慎重過ぎて大きく遅れているのは確かなようです。日本OTC医薬品協会が“塩漬け品目”を調査実は、同様の指示は昨年の答申の中の「重点的に取り組んだ事項」で、「一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大」として掲げられていましたが、検討はその後も進んでいませんでした。今回の規制改革推進会議の議論の過程では、2022年4月27日に開かれた「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」で スイッチOTCの選択肢拡大について議論されています。この場では、日本OTC医薬品協会が、新規性を有する品目における審査状況の調査結果(いわゆる“塩漬け品目”の実態)を報告。それを受け、厚労省による実態調査の早急な実施を22年度の答申に盛り込むことが提案され、今回の答申に至ったのです。同調査は、「スイッチOTC等新規性を有する品目について承認申請を行ったものの審査が開始されていないまたは審査中のまま停止している品目(塩漬け品目)」の実態を明らかにする目的で、同協会加盟者に実施されました。回答した16社から得られた結果によると、スイッチOTC(これまでにない医療用成分を配合する医薬品で厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議の審議対象)では10~15年経過が1品目、5~10年経過が4品目、5年以内が1品目あったとのことです。さらに報告では、これまでに評価検討会議でスイッチOTC化を拒否された項目と論点が示され、「いわゆる『塩漬け品目』では、これまでに拒否された理由と共通するような照会事項が多いと推測される」と、通り一遍の否決理由を批判しました2)。4年前にはプロトンポンプ阻害薬を巡り学会と内科医会で意見分かれる塩漬け品目の存在は、厚労省の「意図的な無為」によって生じていると考えられます。理由の一つとして言われるのは、スイッチOTCが増えることで医療機関の患者数が減ることを嫌う、日本医師会や診療所開業医からの反対です。かつてこんなことがありました。2018年3月に開かれた厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において、スイッチOTCの候補として要望があった成分のうち、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールなどプロトンポンプ阻害薬(PPI)3成分について、日本消化器病学会と日本臨床内科医会で意見が大きく分かれたのです。日本消化器病学会は3成分のOTC化を「可」とし、「14日以内の短期使用であれば特段注意すべき点はなく、OTCとすることに問題はない」としました。一方、日本臨床内科医会は「不可」とし、理由としてPPIの有害事象や重大疾患のマスク作用、薬物相互作用の懸念などを挙げ、「これらの問題点を薬剤師がきちんと理解し販売できるか、購入数の制限がきちんと担保されるか、という第1類医薬品の販売体制も問題」と反対しました。ちなみにこの時、日本医師会常任理事の鈴木 邦彦氏(当時)も、「PPIはあまりに強力な薬。安易にOTC化するべきでない」と強く反対しています。結局、PPIはその後もOTC化されず、先述の日本OTC医薬品協会の塩漬け品目に掲載されるに至ったわけです。開業医や日本医師会の反対は「リフィル処方」に似た構造専門学会等がOKを出しているのに、開業医や日本医師会が「危ない。薬剤師に任せられない」と反論する状況、似たような話を最近どこかで聞きませんでしたか? そうです、2022年診療報酬改定で導入されたリフィル処方を巡る動きです。リフィル処方については、「第105回 進まないリフィル処方に首相も『使用促進』を明言、日医や現場の“抵抗”の行方は?」でも書いたように、現場の開業医たちの反対がことのほか強いようです。そこから透けて見えるのは、患者の再診回数減少に対する危機感です。スイッチOTCはリフィル処方よりも深刻かもしれません。再診どころか初診すら減る可能性があるからです。仮にPPIがスイッチOTC化されれば、消化性潰瘍や逆流性食道炎の初診患者が激減するでしょう。ただ、患者にとっては薬局で薬を買うだけで治るならば、そうしたいのが山々でしょう。国にとってもセルフメディケーションで十分対応できる病気ならば、保険診療の頻度を減らし、医療費を抑えたいというのが本音でしょう。今回の規制改革推進会議の調査指示をきっかけに、厚労省の日本医師会などに対する“忖度”が解消され、医療用医薬品から一般用医薬品への転用が加速するかもしれません。厚労省の調査結果を待ちたいと思います。SaMDは緩く迅速に承認しようという流れ規制改革推進会議の答申で気になった薬関連のもう一つは、SaMD(Software as a Medical Device:プログラム医療機器)についてです。答申では「質の高い医療を支える先端的な医薬品・医療機器の開発の促進」の項で、SaMDの承認審査制度の見直しや、審査手続きの簡素化、SaMDに関する医療機器製造業規制などの見直しを求めています。例えば、機械学習を用いるものは、SaMDアップデート時の審査を省略または簡略できるよう提言、2022年度中の結論を求めています。全体として、「緩く迅速に承認しよう」という方針に見えます。しかし、本連載の「高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、『デジタル薬』が効く人・効かない人の微妙な線引き」でも書いたように、こと「治療用」のSaMDについては、拙速で承認を急ぐよりもその効果や有用性の検証をもっと厳密に行い、効く人と効かない人の線引きをきちんとすることのほうが重要ではないでしょうか。ところで、治療用のSaMDは、処方しても通常の薬剤と異なり、薬剤師や薬局の介入は基本的にはありません。患者がアプリをスマートフォンなどにインストールして、プログラムをスタートさせるだけです。ゆえに、リフィル処方やスイッチOTCのような「診察回数が減る」「薬剤師に任せられない」といった問題は起こらないでしょう。その意味では、開業医や日本医師会にとってSaMDはそれほどやっかいな存在ではないはずです。しかし、よくよく考えると、SaMDがどんどん進化していけば「医師もいらない」ということになりかねません。もし、国がそんな未来までを見据えてSaMDに前のめりになっているとしたら、それはそれで恐ろしいことです。参考1)規制改革推進に関する答申 ~コロナ後に向けた成長の「起動」~/規制改革推進会議2)医療用医薬品から要指導・一般用医薬品への転用(スイッチOTC化)の促進/日本OTC医薬品協会

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事例050 骨粗鬆症治療のイベニティ皮下注で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説骨粗鬆症の患者にロモソズマブ(商品名:イベニティ皮下注)(以下「同注射薬」)を2筒皮下注射したところ、皮下注射の手技料がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。レセプトには注射部位の記入を求められていません。また、初回の投与であるため、通知にある再投与開始時の理由をコメント記載する場合には該当しませんでした。査定理由を調べるために、カルテを確認しました。前月に同注射薬投与の是非を判定するための検査が行われていました。皮下注射は部位を変えて2ヵ所に注入したことも記載されていました。不備はありません。再度、増減点票を確かめると、他にも同注射薬に皮下注射手技料に査定があることに気付きました。調べてみると同注射薬を投与している患者すべてにおいて、皮下注射手技料が1回に査定となっていました。同注射薬の添付文書をみると、「1回当たり210mgを皮下注射する」とあります。同注射薬1筒105mgを2本使用することになります。総量の指定があるために、「皮下注射手技料は1回しか認めない」と審査基準が変更されたようです。医師と会計担当者には、皮下注射手技は1回のみの算定となったことを伝え、レセプトチェックシステムの改修を行い査定対策としました。

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クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」【下平博士のDIノート】第98回

クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」今回は、副腎皮質ホルモン合成阻害剤「オシロドロスタットリン酸塩(商品名:イスツリサ錠1mg/5mg、製造販売元:レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン)」を紹介します。本剤は、副腎でのコルチゾール生合成を抑制し、高コルチゾール血症を是正することでクッシング症候群の症状を改善します。<効能・効果>本剤は、クッシング症候群(外科的処置で効果が不十分または施行が困難な場合)の適応で、2021年3月23日に承認され、同年6月30日に発売されました。<用法・用量>通常、成人にはオシロドロスタットとして1回1mgを1日2回経口投与から開始し、その後は患者の状態に応じて最高用量1回30mg(1日2回)を超えない範囲で適宜調節します。なお、用量を漸増する場合は1~2週間に1回、増量幅は1回1~2mgを目安とします。中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスB)では1回1mgを1日1回、重度(Child-Pugh分類クラスC)では1回1mgを2日に1回を目安に投与を開始し、服用タイミングは夕方とすることが望ましいとされます。<安全性>国内外の臨床試験では、主な副作用として疲労(30%以上)、低カリウム血症、食欲減退、浮動性めまい、頭痛、低血圧、悪心、嘔吐、下痢、男性型多毛症、ざ瘡、血中コルチコトロピン増加、血中テストステロン増加、浮腫、倦怠感(5~30%未満)が報告されています。なお、重大な副作用として低コルチゾール血症(53.9%)、QT延長(3.6%)が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.体内で過剰に分泌されている副腎からのコルチゾール合成を抑えて、高コルチゾール血症を改善する薬です。2.悪心、嘔吐、疲労、腹痛、食欲不振、めまいなどが認められた場合には、体内のコルチゾール濃度が低下し過ぎている恐れがあるので、すぐに主治医に連絡してください。3.この薬の服用により低カリウム血症になる可能性があります。体の力が抜ける感じ、手足のだるさ、こわばり、筋肉痛、呼吸困難、むくみ、高血圧などが現れた場合には医師に連絡してください。4.(妊娠する可能性がある人の場合)この薬の使用期間中および使用中止後1週間は適切な避妊をしてください。妊婦または妊娠している可能性のある方は服用できません。5.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>クッシング症候群は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)による刺激または副腎皮質の機能亢進により、副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌されることで、慢性的に高コルチゾール血症を呈する疾患です。治療しない場合、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの合併症や、免疫力の低下により易感染状態をまねきます。治療の第一選択は、国内外ともに原因となる病変の外科的切除であり、手術できない場合や切除後に寛解に至らなかった場合には、薬物療法および放射線療法が選択されます。また、速やかな高コルチゾール血症の是正が必要な場合にも薬物療法が適応となります1)。本剤は、クッシング症候群の原因となるコルチゾールの生合成の最終段階である11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへの変換を担う11β-水酸化酵素の阻害剤です。この機序により原疾患によらず、すべての内因性クッシング症候群患者において本剤の有効性が期待されます。血中濃度を安定させるため、本剤を1日2回で服用する場合は12時間間隔で、なるべく毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用し忘れた場合は、1回飛ばして次の回から服用を再開するように伝えましょう。重大な副作用として低コルチゾール血症が現れることがあり、副腎皮質機能不全に至る恐れがあります。そのため、定期的に血中・尿中コルチゾール値の測定が求められています。また、QT延長が現れることがあるので、投与開始前および投与開始後1週間以内、または増量時など、必要に応じた心電図検査が行われます。とくに高ストレス状態ではコルチゾール需要が増加するため、副腎不全症候群を発症する可能性があります。服薬フォローの際には、全身倦怠感、食欲不振、脱力などの症状が現れていないか聞き取ることが大切です。1)クッシング症候群診療マニュアル 改訂第2版. 診断と治療社;2015.(J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:2807-2831.)参考1)PMDA 添付文書 イスツリサ錠1mg/イスツリサ錠5mg

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高カルシウムだったら疑いたいMAH【知って得する!?医療略語】第11回

第11回 高カルシウムだったら疑いたいMAH高カルシウム(Ca)血症に遭遇した時に注意することを教えてください高Ca血症を見かけたら、悪性疾患も鑑別に想定します。悪性疾患に伴う高Ca血症と言っても、鑑別すべき病態は複数あるので注意が必要です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MAH【日本語】悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症・悪性腫瘍随伴高カルシウム血症【英字】malignancy-associated hypercalcemia【分野】腫瘍関連【診療科】全診療科【関連】局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)PTH非依存性活動性ビタミンD産生腫瘍(悪性リンパ腫)異所性PTH産生腫瘍実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。最近、ハッとしたことがありました。高Ca血症の鑑別を考えたとき、悪性腫瘍に伴う高Ca血症(MAH:malignancy-associated hypercalcemia)について、筆者自身が悪性疾患を念頭に置いてどれくらい血清Ca値に注意を払えていただろうか、という振り返る機会があったからです。高Ca血症の鑑別は多岐に及びますが、悪性腫瘍に関連する高Ca血症の病態だけでも、以下のように複数挙げられます。悪性腫瘍に関連した高カルシウム血症腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)(腫瘍細胞からのPTHrP過剰産生に基づく全身性液性機序)局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)(多発性骨髄腫・悪性疾患骨転移)悪性リンパ腫による活性型ビタミンD過剰産生異所性PTH産生腫瘍ただ、臨床現場では、血清Ca値の結果報告は、未補正値のみが表示されることが多く、意識してアルブミン値で補正しないと、軽度の高Ca血症は見落としてしまう可能性があります。また、血清Ca値が正常範囲内でも、過去のデータと見比べると上昇傾向になっている場合もあります。このため、過去のデータとの比較が重要となってきます。また、薬剤が血清Ca値を修飾する場合があります。高齢女性では骨粗鬆症の治療薬を使用している場合も多く、たとえばビスホスホネート製剤はその血中Ca濃度の低下作用から、血清Ca値の上昇をマスクしてしまう可能性も否定できません。血清Ca値を悪性疾患の早期発見やスクリーンニングという観点で利用することは難しいです。しかし、血清Caに異常を認めたときは悪性疾患をしっかり想定する必要があり、未診断の悪性疾患が潜んでいる可能性をきちんと想起したいものです。しばらく経ってから悪性疾患が見つかるという事態は極力避けたい状況であり、日常臨床で当たり前に検査している血清Caの解釈には、より一層の注意を払いたいと感じます。1)井上 大輔. 日内会誌. 2020;109:740-745.2)福原 傑. 日腎会誌. 2017;59:598-605.

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事例049 骨粗鬆症治療のプラリア皮下注で査定【斬らレセプト シーズン2】

解説骨粗鬆症の患者に行ったデノスマブ(商品名:プラリア皮下注)60mg(以下「同注射」)が、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。1筒当たりの薬価が高額のためにカルテを確認しました。カルテの前回受診日には、「次回来院予定は、6ヵ月後」と患者に説明したことが記載されていました。今回は、そろそろ6ヵ月となるからと来院された模様です。医師は、「実際には5ヵ月と少しの来院であるが、おおむね6ヵ月となるために注射は可能」と判断して実施されていました。レセプトには、前回と今回の注射施行日が記載されています。その他のコメントは記載がありませんでした。同注射の添付文書には、「骨粗鬆症の患者には60mg1筒を6ヵ月に1回、皮下注射する」と記載されています。審査支払機関では期間制限のある投与に対しては厳密に審査がなされます。このような事例では、計算時やレセプト点検時における対応ができません。大きな金額の査定につながることになります。査定対策として医師には、投与期間に期限のある薬剤に対しては患者に再度の来院を依頼していただき、医学的にやむを得ず期限を外れて必要と判断された場合には、カルテとレセプトにその旨を記載していただくことをお願いしました。

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第28回 原因は1つとは限らない【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)検査で異常値をみつけたからといって今回の原因とは限らない。2)検査で異常が認められないからといって異常なしとは限らない。3)症状を説明し得るか、結論付ける前に再考を!【症例】81歳男性。意識障害自宅で反応が乏しいところを仕事から帰宅した息子が発見し救急要請。●受診時のバイタルサイン意識20/JCS血圧148/81mmHg脈拍92回/分(整)呼吸18回/分SpO295%(RA)体温36.1℃瞳孔4/3.5 +/+既往歴認知症、高血圧、脂質異常症、便秘、不眠内服薬ドネペジル塩酸塩、トリクロルメチアジド、アトルバスタチンカルシウム水和物、酸化マグネシウム、ゾルピデム酒石酸塩所見顔面の麻痺ははっきりしないが、左上肢の運動障害あり検査の異常が今回の原因とは限らない採血、心電図、X線、CTなどの検査を行い異常がみつかることは、よくあります。特に高齢者の場合にはその頻度は高く、むしろまったく検査に異常が認められないことの方が多いでしょう。しかし、異常を認めるからといって今回の主訴の要因かというとそんなことはありません。腎機能障害、肝機能障害、貧血、電解質異常、中には急を要する場合もありますが、症状とは関係なく検査の異常が認められることはよくあるものです。そのため、検査結果は常に病歴や身体所見、バイタルサインを考慮した結果の解釈が重要です。以前から数値や所見が変わっていなければ、基本的には今回の症状とは関係ないことが多いですよね。慢性腎臓病患者のCr、Hb、心筋梗塞の既往のある患者の心電図など、けっして正常値でありません。急性の変化か否かが、1つのポイントとなりますので、以前の検査結果と比較することを徹底しましょう。検査で異常が認められないから原因ではないとは限らないコロナ禍となり早2年が経過しました。抗原検査、PCRなど何回施行したか覚えていないほど、皆さんも検査の機会があったと思います。抗原陰性だからコロナではない、PCR陰性だからコロナではない、そんなことないことは皆さんもよく理解していると思います。頭痛患者で頭部CTが陰性だからクモ膜下出血ではない、肺炎疑い患者でX線所見陰性だから肺炎ではない、CRPが陰性だから重篤な病気は否定的、CO中毒疑い患者の一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)が正常値だからCO中毒ではないなど、例を挙げたらきりがありません。皆さんも自身で施行した検査結果で異常の1つや2つ、経験ありますよね?!原因が1つとは限らない今回の症例の原因、皆さんは何だと思いますか? もちろんこれだけでは原因の特定は難しいかもしれませんが、高齢男性の急性経過の意識障害で麻痺もあるとなると脳梗塞や脳出血などの脳卒中が考えやすいと思います。低血糖や大動脈解離、痙攣なども“stroke mimics”の代表であるため考えますが、例えばMRI検査を実施し、画像所見が光っていたらどうでしょうか? MRIで高信号な部分があるのであれば、「原因は脳梗塞で決まり」。それでよいのでしょうか?脳梗塞の病巣から症状が完全に説明できる場合にはOKですが、「この病巣で意識障害来すかな…」「こんな症状でるのかなぁ…」こんなことってありますよね。このような場合には必ず「こんなこともあるのだろう」と思考停止するのではなく、他に症状を説明し得る原因があるのではないかと再考する必要があります。この患者さんの場合には、脳梗塞に加え低栄養状態に伴うビタミン欠乏、ゾルピデム酒石酸塩による薬剤性などの影響も考えられました。ビタミンB1欠乏に伴うウェルニッケ脳症は他疾患に合併することはけっして珍しくありません1)。また、高齢者の場合には「くすりもりすく」と考え、常に薬剤の影響を考える必要があります。きちんと薬は飲んでいるのに…患者さんが訴える症状が、内服している薬剤によるものであると疑うのは、どんなときでしょうか?新規の薬剤が導入され、その後からの症状であれば疑うことは簡単です。また、用法、用量を誤って内服してしまった場合なども、その情報が得られれば薬剤性を疑うのは容易ですよね。意外と見落とされがちなのが、腎機能や肝機能の悪化に伴う薬効の増強や電解質異常などです。フレイルの高齢者は大抵の場合、食事摂取量が減少しています。数日の単位では大きな変化はなくても、数ヵ月の単位でみると体重も減少し、食事だけでなく水分の摂取も減少していることがほとんどです。そのような場合に、「ご飯は食べてますか?」と聞くだけでは不十分で、具体的に「何をどれだけ食べているのか」「数ヵ月、半年前と比較してどの程度食事摂取量や体重が変化したか」を確認するとよいでしょう。「ご飯は食べてます」という本人や家族の返答をそのまま鵜呑みにするのではなく、具体的に確認することをお勧めします。骨粗鬆症に対するビタミンD製剤による高Ca血症、利尿薬内服に伴う脚気心、眠剤など、ありとあらゆる薬の血中濃度が増加することに伴う、さまざまな症状が引き起こされかねません。薬の変更、追加がなくても「くすりもりすく」を常に意識しておきましょう。最後に高齢者は複数の基礎疾患を併せ持ち、多数の薬剤を内服しています。そのような患者が急性疾患に罹患すると検査の異常は複数存在するでしょう。時には検査が優先される場面もあるとは思いますが、常にその変化がいつからのものなのか、症状を説明しうるものなのか、いちいち考え検査結果を解釈するようにしましょう。1)Leon G. Clinicians Who Miss Wernicke Encephalopathy Are Frequently Called Defendants. Toxicology Rounds. Emergency Medicine News. 2019;41:p.14.

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コロナ禍の運動不足や孤独対策、どうするか【コロナ時代の認知症診療】第14回

“couch potato”な生活スタイルが高齢者にも?わが国ではCOVID-19(コロナ)が流行り始めた2020年の春頃から、自粛が進んだ。当初から高齢者では運動不足や活動範囲の制限による心身機能低下のへの注意が喚起されてきた。そして世界中での遷延化とともに、高齢者における活動量や身体機能をコロナ前後で比較し、その低下を報告した研究が相次いでいる。そして最近では、こうした研究のレビュー報告もでてきている。それらのレビューは当然ながら、いずれも運動量、活動範囲、消費エネルギーの低下などを報告している。このような低下が、下肢筋力の減少や、運動能力あるいは心肺機能さらにはバランスにまで影響することは、言うまでもない。新しい観点として、座りがちな生活(sedentary lifestyle)が指摘されている。数十年前から有名になったcouch potatoという英語俗語があった。これはカウチ(寝椅子)にくつろいでポテトチップをかじりながらテレビやビデオを見て過ごす自分の殻にこもった生活スタイルを意味する。このような状態は本来、青年や中年層のライフスタイルと思われたが、最近ではこれが高齢者でもみられるようだ(というよりカウチ青・中年が老年に至ったのか?)。実際、私の外来に来られる高齢患者のご家族がそうした指摘をされる。意外にローテクな方法が効果的な場合も?高齢者の運動不足解消また、階段の昇降段数も減っている。階段の上りの重要性はともかく、下りも大切だ。降ろした足が下のステップに着く際に、踵に重力がかかることで骨粗鬆症防御の役割も果たすのだそうだ。運動量や身体機能が下がっているのは当然としても、知的機能低下や社会交流の減少も同時に進行している。それだけに、この時代において、いかにして運動量やその関連要因の低下がもたらす弊害に対処するかの策が問題になる。多くの医学関連雑誌や行政から、コロナ禍で身体活動量を増やすことだけでなく、メンタルヘルスや社会交流の促しも視野に入れて具体的な提言などもなされている。現実的には、高齢者のITリテラシーを考慮するならローテクであろうか? たとえば週1回の電話利用、あるいは家庭訪問である。運動の分野ではこうした活動によって運動の実践を促し、転倒の危険性を少なくするように推奨されている。またハイテクならWeb利用だが、ノルウェーから自治体主催の包括的ITサービスの実例なども報告されている1,2)。PCやタブレットを用いて双方向性にコミュニケーションができるシステムである。実はこうしたサービスをわが国でもコロナ以前から実践してきた自治体もある3)。この実装のポイントは、面倒な契約などなく、クラウドや通信をひっくるめたインフラ込みの提供にあると思う。具体的には民生委員が関わるような事柄、たとえば見守りとか緊急連絡などに代表される高齢者への包括的なサービスを行ってきたようだ。世界初「孤独担当大臣」を置く英国での孤独対策コロナ禍により、飛沫感染を避けるためディスタンスは当たり前になった。そしてマスク、フェイスシールドを介してのコミュニケーションとなり、会話しながらの食事はもってのほかとなった。筆者は、見知らぬもの同士がすぐに仲良くなれる秘訣は、飲食を共にすることだと思う。その逆で、「孤食の害」はわかっていてもそうならざるを得ないのが現状である。諸悪の根源は「孤独」にあるとも言える。つまり老年心理学の観点に立つなら、「孤独」とは自分が他者から必要とされているとは思えない状態だと筆者は考えるからである。ところで英国は2018年「孤独担当大臣」を世界で初めて設けた。孤独は、肥満や1日15本の喫煙以上に体に悪く、孤独な人は、そうでない人に比べ、天寿を全うできないリスクが1.5倍に上がるとされる。そして孤独で生じる経済的損失は、約4.8兆円(日本の年間予算100兆円強)に達するとされている。そこで全国各地には、孤独対策に取り組む無数の草の根活動的な慈善団体があって、読書、音楽、スポーツなどのグループを作っている。男性の孤独解消に効果が高いと注目されるものに、mens’shed(メンズ・シェッド:男たちの集い処)がある。ここでは主に定年退職した男性が定期的に集まって、大工仕事などを一緒に行う。たとえばテーブルやベンチを作って公園に置いたり、学校に手作りの遊具を寄付したりする。皆で一緒にものを作ることで一体感が生まれ、そこからコミュニティとの絆が生まれる。さらに感謝の言葉もかけられれば、他者から自分は必要とされていると思え、生き甲斐に通じるのだそうだ。それなら確かに孤独解消につながるだろうと思われる。孤独を和らげ、身体活動や社会交流を促すためのポイントとして、屋内は駄目でも、屋外ならいいのではと考えている。というのは、コロナ禍の今でも大勢の人が集まる場所としてはゴルフ場がある。最近は市場空前の大盛況だと聞く。広々としたグリーンなら、少々喋っても構わないということである。地域でのゲートボールやグランドゴルフはこれに準ずるだろう。古典的ながら根強いのが、ラジオ体操である。基本は朝の6時頃に一定の公園など戸外に集い短時間の運動をしてあいさつ程度の言葉を交わすだけだ。けれども往復のウォーキングも加えると、コロナの時代に最低限の運動量は確保される。太極拳や自彊術であっても同様。小規模ながら、注目すべきものに老人会が主催するような公園等の清掃や環境整備が、また小学生の集団登校の見守り等もある。いずれも戸外で、マスクはしても比較的遠慮なくしゃべれる。また社会的な交流ができる。さらには自分のした仕事に対して、感謝や労いの言葉が向けられるところが重要である。お金ではない、こうした報酬が運動量を促すかもしれない。参考1)Sogstad M, et al.Health Serv Insights. 2020 Jun 8;13:1178632920922221.2)Rostad HM,et al.J Med Internet Res. 2021 Aug 16;23:e22316.3)アイラ株式会社プレスリリース

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