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募集した質問にエキスパートが答える!骨粗鬆症診療 Q&A (Part.2)

今回、骨粗鬆診療に関連する3つの質問に回答します。「骨折ハイリスク例の見分け方」「薬剤の併用療法」。日頃の悩みがこれで解決。骨折のハイリスク例の見分け方について教えてください。既存椎体骨折、大腿骨近位部骨折の既往は骨折ハイリスク例となります。今年、改訂された「原発性骨粗鬆症診断基準(2012年度改訂版)」と「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン(2011年版)」ではこれらの骨折既往がある場合には骨密度検査をせずに骨粗鬆症と診断し薬物治療を開始することが推奨されています(図)。その他のハイリスク例として、ステロイド性骨粗鬆症があげられます。プレドニン換算で5mg/日を3ヵ月以上投与する患者には、ステロイド開始と同時にビスホスホネート製剤などの薬物治療を開始することが推奨されています。図画像を拡大する併用療法について教えてください。現在の薬剤は単剤治療の効果のエビデンスに基づいているので、原則的には単剤治療を行うべきでしょう。併用にはいろいろなパターンがありますが、複数薬を併用する場合には互いに薬剤効果が相殺されないこと、有害事象がおきないこと、単剤使用の場合よりも明らかに相乗効果が認められることが条件になります。近年、活性型ビタミンD3はビスホスホネート製剤と併用すると、重症患者ではビスホスホネート製剤単独で使用するより骨折予防効果が高いことが報告されています(A-TOP研究)。

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募集した質問にエキスパートが答える!骨粗鬆症診療 Q&A (Part.1)

今回、骨粗鬆診療に関連する3つの質問に回答します。「治療薬の使い分け」「薬剤投与は何歳まで?」「ビスホスの休薬期間」。日頃の悩みがこれで解決。治療薬の使い分け法について教えてください。骨粗鬆症治療薬は1)サプリメント的薬剤(活性型ビタミンD3、ビタミンK2など)、2)骨吸収抑制剤(ビスホスホネート製剤、SERM、抗RANKL抗体)、3)骨形成促進剤(テリパラチド)に分類されます。重症な骨粗鬆症にはテリパラチドが使用されますが、その使用期間は約2年という制限があります。骨吸収抑制剤の中でビスホスホネート製剤は大腿骨近位部骨折を抑制するエビデンスがあり、脆弱性骨折の既往があるなど比較的進行した骨粗鬆症患者に使用します。ただし、近年、長期投与患者に顎骨壊死や非定型骨折が発生した事例が報告されているので、長期投与する場合は慎重に使用しなければなりません。SERMは脆弱性骨折の既往のない比較的初期の骨粗鬆症に使いやすい薬剤です。活性型ビタミンD3、ビタミンK2も比較的初期の骨粗鬆症に使用する薬剤となります。また、ビスホスホネート製剤は食道通過遅延障害、SERMは静脈血栓症、ビタミンK2はワルファリン投与中の患者には投与が禁忌であることも忘れずに確認しましょう。薬剤の投与を続けるべき患者さんの年齢について、教えてください。また、80歳以上でも効果はあるのでしょうか?骨粗鬆症で最も重篤な骨折で70歳代後半から多くなる大腿骨近位部骨折患者にも薬物治療をすることで2次骨折(反対側の骨折)を予防できる、生命予後が改善されるという報告があります。骨粗鬆症は高齢になるほど重症化して骨折しやすくなる疾患です。患者さんがお薬を受け入れるならばぜひ、年齢制限なく薬剤の投与を続けていただきたいと思います。最近では、1ヵ月に一度の内服でよいお薬や1ヵ月に一度の点滴剤なども使用できるので、内服が困難な方にも対処できます。ビスホスホネート製剤の休薬期間について教えてください。近年、ビスホスホネート製剤の長期投与で顎骨壊死や非定型骨折が発生した事例が報告され、長期投与に対して否定的なコメントを目にすることがありますが、現時点で長期投与の是非を確定できるエビデンスがないのが現状です。現時点でアレンドロネートの10年継続投与データが最も長期のものですが、それによると5年間で休薬した場合、多くの症例で骨折危険率は上がらなかったが、重症な骨粗鬆症患者では骨折が増加したと報告されています。ビスホスホネート製剤を5年以上継続している患者さんの休薬を考える場合には、顎骨壊死や非定型骨折を危惧するばかりでなく、休薬により骨折が発生するかもしれないという危険性も考え、個々の患者さんの脆弱性骨折の発生状況や骨密度、骨代謝マーカーなどの情報をもとに慎重に判断すべきでしょう。

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腰部硬膜外ステロイド注射によって椎体骨折のリスクが増加

 腰部硬膜外ステロイド注射(LESI)は神経根障害や脊髄神経の圧迫から生じる神経性跛行の治療に用いられるが、副腎皮質ステロイドは骨形成を低下し骨吸収を促進することで骨強度に悪影響を及ぼすことが示唆されている。米国・ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のShlomo Mandel氏らは、後ろ向きコホート研究において、LESIが椎体骨折の増加と関連していることを明らかにした。LESIの使用はこれまで考えられていたより大きなリスクを伴う可能性があり、骨粗鬆症性骨折のリスクを有する患者には慎重に行わなければならないとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年6月5日の掲載報告。 本研究の目的は、LESIが、椎体骨折のリスクを増加するのかについて評価をすることであった。 ヘンリーフォード ウェストブルームフィールド病院のデータベースから、ICD-9診断コードを用いて、椎間板障害など脊椎に関連した疾患を有する患者計5万345例(うち1回以上のLESIを受けていた患者は3,415例)を特定した。 LESI施行例3,000例を無作為に抽出するとともに、傾向スコアマッチングによりLESI非施行例3,000例を選び出し、両群における椎体骨折の発生率を生存時間分析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・LESI施行群と非施行群で、年齢、傾向スコア、性別、人種、甲状腺機能亢進症、ステロイド使用に差はなかった。・生存時間分析の結果、注射回数の増加は骨折リスクの増加と関連していた。・注射が1回増えるごとに、骨折リスク(共変量調整後)は1.21倍(95%信頼区間:1.08~1.30)増加した(p=0.003)。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・無視できない慢性腰痛の心理社会的要因…「BS-POP」とは?・「天気痛」とは?低気圧が来ると痛くなる…それ、患者さんの思い込みではないかも!?・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説

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小児がんサバイバー、成人後の転帰の実態が明らかに/JAMA

 小児がんを克服した成人は、慢性疾患の有病率が90%以上に上り、多くの未診断の問題を抱えており、その割合は高齢になるほど増加する傾向にあることが、米国・セントジュード小児研究病院のMelissa M. Hudson氏らの検討で明らかとなった。小児がんの既往歴のある成人は、がん治療関連の有害な転帰のリスクを抱えるとされる。これら小児がんサバイバーにおける成人後の全身的な慢性疾患の罹患状況に関して、包括的な調査はこれまで行われていなかったという。JAMA誌2013年6月12日号掲載の報告。成人後の転帰を臓器別に検討 研究グループは、小児がんを克服した成人コホートにおける有害な転帰に関する調査を行った。 解析には、St. Jude Lifetime Cohort Study(SJLIFE)に登録された小児がんを克服した成人コホート1,713人[男性48.6%、年齢中央値32歳(18~60歳)、診断時年齢中央値6歳(0~24歳)、診断後経過期間中央値25年(10~47年)]の2007年10月1日~2012年10月31日までのデータを使用した。 小児がんに対する全身療法別の医療評価を行い、成人後の転帰との関連について検討した。また、臓器別、年齢別の有害な転帰の累積有病率を推算した。慢性疾患有病率98.2%、健康状態の継続的な監視が重要 小児がんサバイバーは、肺(肺機能異常65.2%)、聴覚(難聴62.1%)、内分泌/生殖器(視床下部-下垂体系障害、雄生殖細胞機能不全などの内分泌疾患62.0%)、心臓(心臓弁障害などの心疾患56.4%)、神経認知機能(神経認知機能障害48.0%)の有病率が高かったが、肝臓関連異常(肝機能障害13.0%)、骨格系(骨粗鬆症9.6%)、腎臓(腎機能障害5.0%)、造血機能(血球数異常3.0%)の有病率は比較的低かった。 小児がんサバイバーが50歳までに発症する疾患の推定累積有病率は、心筋症21.6%、心臓弁障害83.5%、肺機能障害81.3%、下垂体機能障害76.8%、難聴86.5%、原発性卵巣機能不全31.9%、ライディッヒ細胞機能不全31.1%、乳がん40.9%であった。 全体の慢性疾患有病率は98.2%に達し、重篤または生命に関わる慢性疾患(CTC-AE ver. 4.0のGrade 3、4)の有病率は67.6%であった。45歳時の慢性疾患の推定累積有病率は95.5%、35歳時は93.5%であり、重篤または生命に関わる慢性疾患の推定累積有病率は45歳が80.5%、35歳は75.1%だった。 著者は、「小児がんサバイバーは成人後の慢性疾患の有病率が高く、多くの未診断の問題を抱えており、その割合は高齢になるほど増加する傾向にあることが示された」と結論づけ、「これらの知見は、小児がんサバイバーにおける健康状態の継続的な監視の重要性を浮き彫りにするもの」と指摘している。

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聖路加GENERAL 【Dr.石松の帰してはいけない患者症例】

3.「腰痛篇」4.「腹痛篇」 3.「腰痛篇」特に高齢の方に多い腰痛。骨の疾患に加えて、中には重篤な疾患も含まれるため要注意です。【症例1】1年前に「ぎっくり腰」の診断を受けたことがある76歳の女性。今回は歩けなくなるほどの腰痛ということで救急で受診されました。診察の結果、圧迫骨折であることがわかりました。圧迫骨折は、骨粗鬆症を原因とする場合が多く、これをきっかけに寝たきりになるケースも多いことから、ぜひとも予防したい疾患です。そのためにも、骨密度検査を積極的に行うことが重要なポイントになります。【症例2】3日前から腰痛と右大腿部痛を自覚された79歳の女性。慢性糸球体腎炎、好酸球性心筋炎の治療中です。この症例を腰痛のRed flag signに照らしあわせて診察を進めていくと、重大な疾患が見つかりました。腰痛の原因となる重大な疾患をどう見つけるかについて詳しく解説します。【症例3】37歳の若い男性。腰背部痛は17年前からと長期にわたり、数年前からは、仰臥位を取ることができず、ソファで座って眠っているとのことです。身体所見、検査ともに大きな異常は見つかりませんでしたが、カギとなった項目がESR上昇でした。腰痛の原因となる重篤な疾患では、ESRが上昇することが多いのです。さっそく、状況から膠原病科にコンサルトしたところ、診断することができました。【症例4】2ヵ月前から腰痛が増悪している60歳の男性。変形性脊椎症を疑われていましたが、ついに激痛で立てなくなり救急外来を受診しました。前回紹介した腰痛のRed flag signに照らし合わせてみると、安静で軽快しないなど、どうやら重大な疾患が隠れていそうです。4.「腹痛篇」ひとえに腹痛といっても、その部位、痛みの性質、強さによって症状も原因もさまざまです。なかには、重篤な疾患も含まれているため、注意が必要です。【症例1】比較的急激に発症した心窩部痛で救急外来に訪れた37歳の男性。痛みもスケール10/10と激しい痛みです。このような急性腹症は、消化管の穿孔や肝胆系の急性炎症、大血管系の障害も考えられます。本症例では、多量の飲酒歴から、急性膵炎を疑い検査を進めます。【症例2】急激に上腹部痛を発症した55歳の男性。やはり、飲酒歴があります。腹膜刺激症状が出ていることから、CTを撮影したところ、アルコール性の急性膵炎であることがわかりました。他に、消化管穿孔の症例もご紹介します。【症例3】大動脈瘤を指摘されている84歳の男性。がまんできない下腹部痛で来院しました。さっそく"OPQRST"で診断したところ、腸管穿孔や大動脈瘤破裂が疑われました。検査を進めたところ、CTで腹腔内遊離ガスから、十二指腸潰瘍穿孔であることがわかりました。【症例4】糖尿病と高血圧の既往のある55歳の男性。がまんできない左側腹部痛で来院しました。こちらも、"OPQRST"で診断したところ、重篤な疾患であることはまちがいなさそうです。身体所見では、血圧が収縮期で90mmHgと低下し、ショックバイタルを示していました。急いで腹部造影CTを撮ったところ、大動脈瘤破裂が見つかりました。緊急性の高い急性腹症の重篤な疾患の見分け方についても詳しく解説します。

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新規骨粗鬆症治療薬カテプシンK阻害剤odanacatibの日本人患者における骨密度増加効果は?-二重盲検ランダム化比較試験-

 odanacatibは、骨再吸収を低下させ骨密度(BMD)を増加させる選択的かつ可逆的なカテプシンK阻害剤であり、2014年に承認申請が予定されている。本試験は、骨粗鬆症日本人患者においてodanacatibの有効性と安全性を評価するために行われた多施設共同二重盲検ランダム化比較試験である。この結果、52週間にわたるodanacatib治療が、腰椎およびすべての股関節部位で用量依存的にBMDを増加し、骨粗鬆症日本人患者における忍容性が高いことが示された。国立国際医療研究センターの中村 利孝氏らによる報告(Osteoporosis International誌オンライン版2013年5月29日号掲載)。 主な結果は以下のとおり。・対象は286例(94%が女性、平均年齢68.2(SD:7.1)歳)。・主要評価項目である腰椎(L1~L4)BMDにおける52週時のベースラインからの変化率は、プラセボ群、odanacatib 10mg、25mgおよび50mgにおいてそれぞれ0.5、4.1、5.7、および5.9%であった。・副次的評価項目である股関節BMDにおける変化率はそれぞれ-0.4、1.3、1.8、および2.7%であり、大腿骨頸部および転子部BMDの変化も股関節と同様であった。・骨代謝マーカーは用量依存的に減少したが、骨形成マーカーに対する影響は骨吸収マーカーに対する影響と比較して少なかった。・忍容性と安全性プロファイルは、どの有害事象でも用量相関がなくすべての治療群間で類似していた。

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乳がん予防にSERMは有効か?(コメンテーター:勝俣 範之 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(103)より-

女性ホルモンであるエストロゲンの欠乏は、骨粗鬆症や高脂血症の原因となる。また、エストロゲン補充療法は、これらの症状を改善させる作用を持つが、乳がんのリスクを増加させることが問題となる。SERMとは、選択的エストロゲン受容体モジュレーターのことであり、エストロゲン受容体に相互作用を示すことにより、臓器特異的に、アゴニスト作用あるいは、アンタゴニスト作用を有する治療薬として期待がされている。 第1世代のSERMであるタモキシフェンは、乳がんの治療薬としても有名であるが、化学予防薬として、乳がんの高リスク女性に対して予防効果を示し(NSABP-P-1試験)、世界で初めて、がん予防薬としてFDAで承認された(1998年)薬剤である。タモキシフェンの1つの問題点は、子宮内膜がん・血栓塞栓症を増加させることであった。第2世代のラロキシフェンは、骨組織およびコレステロール代謝に対してアゴニスト作用を示すとともに、乳腺組織および子宮に対してアンタゴニスト作用を有しており、その効果が期待され、乳がん予防をエンドポイントに、タモキシフェンとラロキシフェンのランダム化比較試験が行われた(STAR試験) 結果は、ラロキシフェンはタモキシフェンと同様に乳がん発症を抑える一方で、血栓塞栓症・子宮内膜がん発症をタモキシフェンと比べ低下させたが、子宮体がん発症に関しては、統計学的有意差は無かった。また、非浸潤性乳がんの予防効果は、タモキシフェンの方が優れていた。その後、STAR試験の結果と、これまでに行われたRUTH、CORE/MORE試験と合わせて、2007年にラロキシフェンは乳がん予防薬としてFDAで承認されている。Lasofoxifene、Arzoxifenは新しいSERMであり、今後の期待がなされるところである。 今回のLancetに掲載されたメタアナリシスは、これらSERMの乳がん予防に関するメタアナリシスであるが、結果としては、SERMはER陽性乳がん発症を予防するが、その効果は最初の5年間くらいであり、5年以上になると効果が減弱する、また、椎体骨折を減らすが血栓塞栓症を増やす、というものであった。SERMは、乳がん発症を予防し骨合併症を減らすという、女性にとっては有望な薬剤として期待がある一方、血栓塞栓症の増加というリスクもあり、現時点では、ベネフィットがリスクを大きく上回るものではないため、安易に処方されるべき薬剤ではないと考えられる。 日本では、本論文中の薬剤のうち、タモキシフェンは乳がん治療薬として承認されているが、乳がん予防薬としての適応はない。ラロキシフェン(商品名:エビスタ)は、骨粗鬆症の治療薬として承認されているが、乳がん予防薬としての適応はない。日本人の乳がん発症率が低いことを考えると、絶対リスクの低下は欧米人と比べると小さいことが推察されるため、やはり乳がん予防を目的に安易に処方されることは慎まれるべきである。 今後もSERMの開発は、世界中でなされていくと思われるが、乳がん予防薬としても期待されている薬剤であるため、日本人でのエビデンスにも期待したい。勝俣 範之先生のブログはこちら

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テリパラチド+デノスマブ、骨折リスクの高い患者に有用である可能性/Lancet

 骨粗鬆症治療薬のテリパラチド(商品名:テリボン、フォルテオ)とデノスマブ(同:プラリア)について、併用して用いると、それぞれを単独かつ承認最大用量で用いた場合よりも骨密度が有意に増大することが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のJoy N Tsai氏らによる、閉経後骨粗鬆症患者を対象としたオープンラベル無作為化試験の結果で、「併用療法は骨折リスクの高い患者に対する治療として有用である可能性がある」と報告した。ここ数十年で骨粗鬆症の治療薬は選択肢が拡大したが、骨粗鬆症が進行した患者の骨を完全に正常に回復することは困難で、また重症患者の治療オプションはなお課題とされている。これまでの併用療法による治療改善の検討は、大半が不成功に終わっていた。テリパラチドについてもビスホスホネートとの併用による治療の改善は示されなかった。Lancet誌オンライン版2013年5月15日号掲載の報告より。テリパラチド単独、デノスマブ単独、併用群を比較 研究グループは2009年9月~2011年1月に、45歳以上の閉経後骨粗鬆症女性を登録し、テリパラチド単独療法(20μg/日)とデノスマブ単独療法(60mgを6ヵ月毎)の各単独療法と、併用療法(両方を投与)を比較する無作為化試験を行った。被験者は、脊椎、股関節部または大腿骨頸部のTスコアが-2.5未満、またはTスコアが-2.0未満で骨密度(BMD)に対する独立リスク因子(50歳以後の骨折歴、喫煙など)が1つ以上ある、またはTスコアが-1.0未満で脆弱性骨折歴ありを適格条件とする骨折リスクが高い患者であった。 0、3、6、12ヵ月時点でBMDを測定し評価した。評価は修正intention-to-treat解析にて、ベースライン後1回以上BMDを測定した被験者を組み込んで行われた。同条件を満たした適格患者は100例のうち94例(94%)であった。腰椎、大腿骨頸部、股関節のBMDいずれも併用群が各単独群よりも有意に増大 12ヵ月時点で、後方-前方腰椎BMDは3治療群とも有意に増大したが、併用群が9.1%(SD 3.9)と、テリパラチド単独群6.2%(同4.6)、デノスマブ単独群5.5%(同3.3)よりも有意に増大した(p=0.0139、p=0.0005)。 大腿骨頸部BMDも同様の結果が示され、併用群(4.2%、SD 3.0)がテリパラチド単独群(0.8%、SD 4.1、p=0.0007)、デノスマブ単独群(2.1%、SD 3.8、p=0.0238)よりも有意に増大した。股関節総BMDも同様の結果が示された[併用群4.9%(SD 2.9)、テリパラチド単独群0.7%(SD 2.7、p<0.0001)、デノスマブ単独群2.5%(SD 2.6、p=0.0011)]。

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遺伝性骨疾患とWNT1遺伝子変異の関連が明らかに/NEJM

 遺伝病である若年性骨粗鬆症と骨形成不全症はWNT1遺伝子変異と関連し、WNT1は骨形成のシグナル伝達経路の主要分子であり、骨量調節における重要なリガンドであることが、フィンランド・ヘルシンキ大学のChristine M. Laine氏らの検討で示された。近年、骨の形成や維持におけるWNTシグナル伝達経路の役割が広く研究されているが、主要な伝達物質である低密度リポ蛋白受容体関連蛋白(LRP)5/6を介する経路のWNTリガンドはみつかっていなかった。NEJM誌オンライン版5月9日号掲載の報告。若年性骨粗鬆症、骨形成不全症の2家系を調査 研究グループは、優性遺伝病である若年性骨粗鬆症の1家系および劣性遺伝病である骨形成不全症の1家系を調査し、ヒトの骨疾患とWNT1遺伝子変異の関連について検討した。 重度の若年性骨粗鬆症の家系では、X線検査で10人が低骨密度(BMD)および脊椎、末梢骨の骨折をともなう骨粗鬆症と診断された。カルシウムホメオスタシスや骨代謝回転の血清および尿中マーカーは正常だった。  腸骨間の骨生検標本の組織形態計測的解析で成人2例に骨代謝回転や骨形成の低下をともなう重度の骨粗鬆症が確認され、14歳の男子は骨量は正常なもののこの年齢にしては骨形成や骨再形成が低下していた。 もうひとつのLao Hmong族の家族は、姉妹である2例が重度の劣性遺伝骨形成不全症と推定された。姉は生後1ヵ月時に最初の骨折を起こし、ともにX線画像上で多発性骨折および経時的な続発症(脊椎圧迫骨折、後側弯症、重度の低身長、長骨の変形など)を発症していた。  姉(26歳)は骨疾患のため車いす生活だが日常生活にほとんど問題はなく、知能も正常であった。妹(23歳)には重度の知能障害がみられた。他の同胞や母親に異常はなく、父親には腰椎のBMD低値や椎体終板(L5)を含む軽度の圧迫変形がみられた。骨疾患のバイオマーカー、治療標的となる可能性も WNT1遺伝子変異の解析では、若年性骨粗鬆症の家系でヘテロ接合性ミスセンス変異(c.652T→G[p.Cys218Gly])が、骨形成不全症の家系でホモ接合性ナンセンス変異(c.884C→A, p.Ser295★)がみつかった。いずれの遺伝子変異も、WNT1のシグナル伝達を阻害し、骨形成の障害を引き起こす。  in vitro実験では、異常型WNT1蛋白により、古典的なWNTシグナル伝達(canonical WNT signaling)、その標的遺伝子および石灰化の誘導能が障害されることが示された。古典的WNTシグナル伝達は正常な骨の発育や恒常性の維持に不可欠とされる。 マウスを用いた実験では、骨髄(とくにB細胞系と造血前駆細胞)におけるWnt1遺伝子の発現が示され、細胞系譜解析(lineage tracing)により骨細胞サブセットでの強力な蛋白発現と、皮質骨での弱い蛋白発現が確認された。  これは、若年性骨粗鬆症や骨形成不全症では、骨髄の造血幹細胞発育環境における造血系細胞と骨芽系細胞間のクロストークに変化が生じていることを示唆する。正常な造血にはこのクロストークが必須であり、WNTシグナル伝達が重要な役割を担っている。 著者は、「これらの知見は、骨形成における造血細胞の役割を支持し、WNT1がこのシグナル伝達経路の主要分子であることを示す。また、WNT1はヒトの骨量調節における重要なリガンドであり、それゆえ骨疾患のバイオマーカーとなり、骨粗鬆症、骨形成不全の治療標的となる可能性がある」と考察している。

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選択的エストロゲン受容体調節薬、高リスク女性の乳がん1次予防に長期効果/Lancet

 高リスク女性の乳がん1次予防において、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)はその発症を長期的に抑制することが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJack Cuzick氏らの検討で示された。タモキシフェン(商品名:ノルバデックスほか)による術後補助療法では対側乳がんの発症率が大幅に低下し、SERMによる骨粗鬆症女性の骨折予防試験でも乳がんの抑制効果が示唆されている。早期のメタ解析では、SERMによる高リスク女性の乳がんリスク低下効果が示唆されているが、その持続期間は明らかにされていなかった。Lancet誌オンライン版2013年4月30日号掲載の報告。4つのSERMの1次予防効果を最新データのメタ解析で評価 研究グループは、以前にタモキシフェンとラロキシフェン(同:エビスタ、骨粗鬆症薬)について行われた短期的な乳がん1次予防のデータに、これらの薬剤のその後の長期的なデータと、アルゾキシフェンとラソフォキシフェン(いずれも国内未承認)の短期的なデータを加え、これら4つのSERMに関する最新のメタ解析を行った。 SERMによる9つの乳がん予防試験(プラセボ対照比較試験:8試験、ラロキシフェンとタモキシフェンの比較試験:1試験)に参加した女性の個々のデータを用いた。対象は、乳がんリスクが高い女性、リスクは高くないが子宮摘出術を受けた女性、骨粗鬆症や冠動脈心疾患を有する閉経後女性などで、治療期間は4~8年であった。 主要評価項目は、フォローアップ期間10年における全乳がん[非浸潤性乳管がん(DCIS)を含む]の発症率とした。10年後の乳がん発症率が有意に38%低下 8万3,399人(30万6,617人年)の女性が解析の対象となり、フォローアップ期間中央値は65ヵ月だった。 SERMの投与により、10年後の乳がん発症率は有意に38%低下した(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.56~0.69)。投与開始から10年の間に、1人の乳がん発症を予防するのに要する投与例数(NNT)は42例だった。 投与開始から5年までの乳がん発症の低下率は42%(HR:0.58、95%CI:0.51~0.66、p<0.0001)で、5~10年までの25%(HR:0.75、0.61~0.93、p=0.007)に比べ良好であり、この2つの期間に統計学的に有意な異質性は認めなかった。 エストロゲン受容体(ER)陽性の浸潤性乳がんの発症は有意に51%低下した(HR:0.49、95%CI:0.42~0.57、NNT:53例)が、ER陰性浸潤性乳がんはむしろ増加傾向を認めたものの有意差はなかった(HR:1.14、95%CI:0.90~1.45)。DCISの発症率は、SERMの投与により有意に31%低下した(HR:0.69、95%CI:0.53~0.90)。 血栓塞栓性イベントはSERM投与群でプラセボよりも多く認められた(オッズ比[OR]:1.73、95%CI:1.47~2.05、p<0.0001)。SERM投与により脊椎骨折が有意に34%減少した(OR:0.66、95%CI:0.59~0.73)が、非脊椎骨折の抑制効果は小さなものだった(OR:0.93、95%CI:0.87~0.99)。 著者は、「SERMの予防投与は、高リスク女性の乳がん発症を長期的に抑制することが示された」と結論し、「SERMは乳がん予防効果が高いものの、毒性への懸念から有益性と有害性のバランスがよくないと考えられてきた。今回の長期的な結果では、以前の短期的な知見に比べ有益性-有害性バランスが改善されたことから、今後もSERMの評価を継続すべきと考えられる」と指摘している。

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「かくれ骨粗鬆症」を救うために

 2013年4月23日(火)、日本イーライリリー株式会社開催のセミナーにて、近畿大学医学部奈良病院の宗圓 聰氏(整形外科・リウマチ科)と聖隷浜松病院の森 諭史氏(骨・関節外科)が、原発性骨粗鬆症の診断基準ならびに椎体骨折評価基準の改訂がもたらす積極的な診断・治療の広がりと、臨床に潜む「かくれ骨粗鬆症」の実態について語った。 講演の中で、宗圓氏は「新たな診断基準を知ってもらうことで、自覚症状のない『かくれ骨粗鬆症』への積極的な治療介入につながれば」と期待を述べた。以下、内容を記載する。痛みを伴わない場合も・・・骨粗鬆症の脊椎骨折 わが国の骨粗鬆症の患者数は推計1,280万人だが、治療を受けている患者さんは200万人にとどまっている。要因として、骨粗鬆症と診断されていない「かくれ骨粗鬆症」の存在が考えられている。なぜ、診断されないのか。一つには、骨粗鬆症の脊椎骨折には痛みがなく、変形が進行する例が多いことが考えられている。実際、痛みを伴う骨折は全体の3分の1にすぎないとの報告もある。このため、背骨の骨折により円背の状態になっていても、痛みを伴わないため、いわゆる「老化」と判断されて、放置されている可能性がある。1~2回目の骨折を防ぐことを目標に治療介入を しかし椎体骨折は1度起こると、2回目以降の骨折リスクが高まるとの報告もあり、いわゆる「骨折ドミノ」の状態を助長してしまう。また大腿骨近位部骨折や椎体骨折は死亡率を増加させるとの報告もある。このことから、骨折に至る前の骨密度が下がってきた時点から介入し、最初の骨折を防ぐことが重要といえる。しかし、現実的には、まだ骨折を起こしていない方への治療介入は難しい。そこで、一旦骨折を起こした人が次の骨折を防ぐことを目標に診断、治療を行うことが望ましい。原発性骨粗鬆症の診断基準:改訂のポイント こうした背景から診断基準の改訂が行われ、「原発性骨粗鬆症の診断基準 2012年度改訂版」が作成された。旧診断基準では、WHOとの整合性がとれていないという問題点のほか、脆弱性骨折がある場合でも骨密度を測定し低骨量(骨密度がYAM※の80%未満、あるいは脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合)であることを確認する必要がある、といった治療介入までのハードルがあった。※YAM:Young Adalt Mean若年成人平均値(20~44歳) 今回の改訂により、すべての脆弱性骨折が対象ではないものの、とくにリスクとなる椎体骨折または大腿骨近位部骨折がある場合は骨密度と無関係に診断ができるようになった(※その他の部位の脆弱性骨折については骨密度のしばりあり)。これにより、椎体もしくは大腿部の骨折があれば薬物治療を行ってもよいことになり、治療介入の可能性が広がったといえる。椎体骨折評価基準も改訂 さらに椎体骨折評価基準の改訂によって、多くの診療科で共通に使える尺度が導入された。具体的には、椎体変形をX線画像で判定する際に、椎体の形のみから骨折のグレードを判定するSQ法(semi-quantitative method)の導入がある。計測が必要な従来のQM法(quantitative method)より簡便なことから、実臨床での有用性も高い。またMRIによる診断も付記された。これにより椎体骨折の評価がより簡便になったといえる。体型変化や患者の症状にも注意を ただし、すべての患者に検査を行うわけにはいかないとの指摘もある。自覚症状がないため診断は難しいが、閉経後女性や50歳以上の男性で、短期間で円背などの体型変化がある、-2~3cmの身長低下がみられる、といった場合には「かくれ骨粗鬆症」を疑ってみてもよいだろう。また、円背に伴って逆流性食道炎の症状を訴えるケースも多いので、参考にしていただきたい。まとめ 講演後、森氏から「今回の改訂内容を、内科や婦人科といった『かくれ骨粗鬆症』を診る可能性のある多くの医師に知ってほしい」といったコメントがあった。整形外科に来院した時にはすでに骨粗鬆症が進行し、処置が困難なケースもあるという。新たな診断基準が広く普及し、患者が健康的な生活を送る機会が増えることを期待したい。

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乾癬治療のターニングポイント

肉体的、精神的、社会的に大きな苦痛を強いる乾癬(Psoriasis)乾癬Psoriasisの歴史は古く、古代ギリシャの書物にも登場します。その後、19世紀初頭に英国のRobert Willanにより独立疾患として臨床的特徴が紹介されました。乾癬はよく目立つ紅斑、浸潤、鱗屑といったきわめて特徴的な皮膚症状を呈します。死に至る疾患ではないものの、進行すると全身に症状が拡大したり、関節炎を合併して重篤な状態に発展することがあります。患者さんにとっては肉体的のみならず精神的、社会的にも大きな苦痛やハンディキャップを強いられる疾患です。発症には遺伝的素因に加えさまざまな後天的、環境的因子が関与すると考えられています。典型的な乾癬皮疹画像を拡大する重症例(乾癬性紅皮症)画像を拡大する乾癬による関節炎と爪の変化画像を拡大する乾癬の病変部では表皮細胞(ケラチノサイト)の増殖亢進が生じています。そのため、乾癬病変でのケラチノサイトのターンオーバーは3~4日と、正常組織の4週間に比べ著しく短縮しています。その結果ケラチノサイトの角層への成熟・分化が不十分となり、臨床的特徴の一つである銀白色の厚い鱗屑を形成します。また、紅斑は病巣部に浸潤してくるリンパ球が産生するサイトカインにより起こる炎症の結果です。乾癬は病態論の進展に伴って治療法が著しく変化、進展した疾患の一つです。免疫抑制剤シクロスポリンの治療効果が明らかになる以前は、乾癬の発症機序はケラチノサイトの異常(増殖亢進、分化不全)にあると考えられていました。そのためケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的とした治療法が開発されてきました。ケラチノサイト増殖抑制を狙った光線療法の登場1931年にゲッケルマン療法が発表されています。これはコールタール軟膏を塗布して太陽灯(水銀灯紫外線)を照射するという治療法です。日光浴が乾癬を改善することは昔から知られており、機序は不明ながらコールタールの何等かの成分が紫外線の作用を増強し、ケラチノサイトの過剰増殖を減少させることで効果を発揮すると考えられます。炎症を抑制する作用もあると思われます。欧米では今日でも使用される療法ですが、我が国ではほとんど実施されていません。1970年代には別の光線療法であるPUVA療法が発表されました。PUVAとはソラレンPsoralenのPと長波長紫外線UVAを組み合わせた治療名です。ソラレンは光増感物質で長波長紫外線(UVA)を照射されると、励起状態となって反応性が高まり、細胞内DNAの二重螺旋の間に結合して細胞分裂を抑制することが知られています。やはりケラチノサイトの増殖亢進の抑制を目的として始められた治療ですが、炎症(紅斑)を抑制する効果も知られています。紫外線療法は21世紀に入っても進化し、より簡便な方法として中波長紫外線UVBの単独照射法、さらにはUVBに含まれる非常に狭い波長閾の紫外線ナローバンドUVBが照射されるようになりました。日常の診療で効果を発揮しています。ケラチノサイト増殖抑制を狙った薬物療法の登場膿疱化:ステロイドによる副作用その間に薬物療法も進化していきます。1950年代に入り、ステロイド外用療法が登場しました。当初の製剤は抗炎症効果がそれほど強くはなかったものの、従来の外用薬と比べれば確かな効果があり、当時としては大きな朗報でした。それ以降、より強い作用を有する外用ステロイド製剤が次々に開発され、今日まで乾癬外用療法の基本となっています。以前は内服ステロイドを用いることもあったのですが、全身性副作用に加えて、膿胞性乾癬を引き起こすなどの問題もあり、用いられなくなりました。1959年に抗腫瘍薬・免疫抑制薬であるメトトレキサートを乾癬の治療に用いる試みが報告されています。これも当初はケラチノサイトに対する増殖抑制効果を期待したものでしたが、後から考えればリンパ球に対する免疫抑制効果をも併せ持った(むしろこちらが主体?)治療法といえます。日本ではリウマチによく使用されますが、乾癬に対する適応はありません。欧米では乾癬にも使用されています。1975年には、ビタミンA誘導体であるレチノイドの治療成績が報告されました。ビタミンAは上皮組織に作用するビタミンで、ケラチノサイトの増殖および分化をコントロールすることで、効果を発揮すると考えられます。乾癬以外にも多くの角化異常症に使われています。 本邦でも1985年にレチノイドの一種エトレチナートが承認され、現在も乾癬治療薬の選択肢の一つとなっていますが、胎児催奇形性の問題から慎重な投与が求められる薬剤です。1990年代にはビタミンD3外用療法が治療法の一つとして加わりました。そのきっかけは、骨粗鬆症の患者さんにビタミンD3製剤を投与したところ、その患者さんが罹患していた乾癬の皮疹がきれいになったことでした。その少し前にビタミンD3の全く新しい作用(細胞の増殖抑制、分化誘導作用)が明らかにされており、乾癬表皮ケラチノサイトの増殖亢進、分化不全を是正することで効果を発揮することが想定されました。そこで研究が開始され、偶然の臨床的観察から始まった治療法が、新たな乾癬治療外用薬として実を結びました。今日ステロイドと並んで外用療法の主役を担っています。私はこの臨床研究に直接関係しましたが、医学の進歩における偶然の契機の重要性を強く感じた体験となりました。ビタミンD3外用の効果塗布前画像を拡大する塗布4週後 > 印画像を拡大する新たな薬物療法の流れ…自己免疫年代は少し戻りますが、別の治療の流れが起こってきます。1979年に免疫抑制薬シクロスポリン療法の難治性乾癬に対する有効性が報告されました。これは臓器移植を受けた乾癬の患者さんで効果が確認されたことがきっかけとなり、研究が始まったものです。シクロスポリンはTリンパ球の作用を阻害しますから、乾癬の病態におけるTリンパ球の重要性が認識され、免疫異常説が一挙に花開いたといえます。シクロスポリンは本邦でも1992年に乾癬に対する使用が認可され、次に紹介する生物学的製剤の登場まで、難治性症例に対する最も確かな治療法として用いられて来ました。乾癬の病態解明はその後も進展し、現在は自己免疫・炎症説が主流となっています。それには真皮樹状細胞、Th1細胞、Th17細胞が重要で、樹状細胞が産生するIL-12がTh1細胞を、IL-23がTh17細胞を刺激し、IFN-γ、TNF-α、IL-17、IL-22などを産生させます。樹状細胞自身もTNF-αを産生します。これらが複雑なネットワークを形成して反応し合い、炎症を持続させるとともに表皮ケラチノサイトを活性化し、乾癬に特徴的な皮膚症状を示すのです。2010年代に入ると、分子細胞工学的手技を応用した生物学的製剤が登場してきました。インフリキシマブ、アダリムマブ、ウステキヌマブなどです。インフリキシマブ、アダリムマブはTNF-α、ウステキヌマブはIL-12、IL-23といった前述の炎症ネットワークで重要な役割を演じるサイトカインを阻害することで治療効果を発揮します。難治重症例に対する効果は劇的で、乾癬治療の歴史に新たなページを開いたと言えるでしょう。ほかにも多くの生物学的製剤が続々と開発途上にあり、乾癬の治療は今後大きく変わって行くかも知れません。現在の乾癬治療以上、乾癬治療の変遷について述べましたが、現在の治療は、軽症例ではステロイド外用剤とビタミンD3外用剤の単独または併用です。併用の場合にはsequential therapyなど、効果を最大限に発揮させる工夫がなされます。痒みの強い例では抗アレルギー薬の内服を併用します。効果が不十分な例では症例に応じてこれらに紫外線療法やエトレチナートを上乗せします。重症・難治例ではシクロスポリンや生物学的製剤を用います。重症・難治性の評価には皮疹の広がりや強さ、QOLの低下をBSA(Body Surface Area)、PASI(Psoriasis Area Severity Index)、PDI(Psoriasis Disability Index)などで数値化して判断します。おおむねこれらが10以上の例が適応とされます。ただし、関節炎を合併する例では関節症状の進行を予防する意味で、皮疹の程度は軽くても生物学的製剤の使用が勧められます。本邦において使用される製剤種 類一般名製品名剤 形ビタミンD3タカルシトールボンアルファボンアルファハイ外用ビタミンD3カルシポトリオールドボネックス外用ビタミンD3マキサカルシトールオキサロール外用レチノイドエトレチナートチガソン内服免疫抑制剤シクロスポリンネオーラルサンディミュン内服生物学的製剤インフリキシマブレミケード点滴静注生物学的製剤アダリムマブヒュミラ皮下注生物学的製剤ウステキヌマブステラーラ皮下注※ ステロイド外用剤は種類が多いので省略。乾癬にはストロング以上の製剤が必要である。これらの薬剤を使いこなすコツは、副作用をいかに防止するかでしょう。ステロイド外用剤は強いほど効果も確かですが、長期使用による皮膚副作用が避けられません。それを押さえるためにはビタミンD3外用薬との併用が大切で、ステロイドの使用量をできるだけ減らすよう努力します。軽症例の外用薬によるコントロールでは生活指導も大切です。シクロスポリンや生物学的製剤の使用に際しては皮膚がん予防の観点から、紫外線療法との併用は避けるべきです。また感染症とくに結核の合併には注意が必要です。乾癬治療に関わる先生方へ私が皮膚科を始めた昭和40年には弱いステロイド、ゲッケルマン療法、メトトレキサート以外の治療法はまだ存在していませんでした。今日の治療リストを眺めると乾癬研究の進歩の跡は歴然で、まさに夢のようです。とはいえ治療はまだ対症的で副作用の心配も残っており、完全からはほど遠いと言わなければなりません。今後も研究がさらに進歩し、より良い治療法が生み出される事を願っております。

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100歳以上を理由に、股関節骨折手術の対象から除外すべきではない

 大腿骨近位部は骨粗鬆症により骨折しやすい部位である。米国では100歳以上の超高齢者における股関節骨折が増加しているが、こうした症例の機能的予後と死亡率に関する報告は少ない。米国・トーマス ジェファーソン大学病院のT. David Tarity氏らは、レトロスペクティブな調査を行い、100歳以上で手術した高齢者の死亡率は容認できるものであり、年齢を理由に股関節骨折手術の対象から除外すべきではないとの考えを示した。Orthopedics誌2013年3月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、100歳以上の股関節骨折患者の死亡率を評価し、手術介入が安全で適切であるかどうかを検討することであった。 2003年~2010年に股関節骨折の治療を受けた100歳以上の高齢者23例(女性22例、男性1例)について調査した。死亡日の確認は、患者のカルテや社会保障死亡指数を使用した。  主な結果は以下のとおり。・23例中21例は手術治療を、2例は保存的治療を受けていた。 ・Charlson併存疾患指数平均値は2(範囲0~5)であった。 ・股関節骨折時の平均年齢は101.9歳、死亡時の平均年齢は102.8歳であった。・手術治療群において、累積入院日数が30日未満、30日~、90日~、6ヵ月~、12ヵ月~、2年~、3年~および6年~である患者の死亡率はそれぞれ15%、20%、30%、45%、60%、70%、90%、95%であった。 ・保存的治療群は2例全例が90日以内に死亡した。 ・手術治療群のうち1例は、術後6年が経過してもなお生存している。・術後合併症は9例(43%)にみられた。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害

 難治性てんかんで抗てんかん薬を長期服用する患者における、骨粗鬆症など骨ミネラル障害の有病率が報告された。オランダ・マーストリヒト大学医療センターのK. Beerhorst氏らが同患者を対象に行った断面調査の結果、80%が低骨塩量(BMD)症状を有していたという。またそのうち半数超が50歳未満であった。著者は「本研究は、慢性てんかん患者における骨ミネラル障害の問題が大きいことを実証している」と結論している。Acta Neurologica Scandinavica誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。 抗てんかん薬の長期服用と、低BMD、骨折、骨代謝異常との関連は知られているが、研究グループは、同薬を服用する難治性てんかん患者における骨ミネラル障害の有病率を明らかにすることを目的に断面調査を行った。被験者は、重度てんかん医療センターの1病棟から集めた成人患者205例であった。骨ミネラル障害は、脊椎と大腿骨部の二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)スキャンによるスクリーニング(骨塩量と脊椎骨折の評価など)とラボ検査により解析した。被験者の人口統計学的情報やてんかん症状および医療情報などを記録し、DXA-Tスコアに基づき、骨ミネラル障害(骨減少症、骨粗鬆症)の割合を算出した。DXA-Tスコアと、てんかん尺度との相関性についても調べた。 主な結果は以下のとおり。・被験者205例のうち10例が途中脱落し、195例について解析した。・被験者のうち80%(156/195例)に低BMDが認められた。骨減少症を有していたのは48.2%、骨粗鬆症は31.8%に認められた。・低BMD患者のうち、51.9%(81/195例)は18~50歳であった。・大腿骨頚部のTスコアは、てんかん発作の総期間、薬物負荷の累積、骨折の病歴と有意な関連性がみられた。・線形回帰分析の結果、薬物負荷の累積だけが大腿骨頸部Tスコアの低値を有意に予測した(p=0.001)。関連医療ニュース ・てんかん患者の50%以上が不眠症を合併! ・統合失調症患者は“骨折”しやすいって本当? ・「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

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パーキンソン病患者は骨折リスクが高い

 パーキンソン病(PD)患者は非PD患者と比べ骨折リスクが有意に高いことが、オランダ・ユトレヒト大学のS. Pouwels氏らが行った後向きコホート研究で明らかになった。PD患者では、一般的な骨折リスクとされる高齢者および女性のほかにも、最近の選択的セロトニン再取込み阻害薬または高用量抗精神病薬の使用歴、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患がある場合は骨折リスクを評価することが望ましいと考えられる。Osteoporosis International誌オンライン版2013年2月22日掲載報告。 研究の目的は、新規発症PD患者の骨折リスクを治療、重症度、罹病期間および関連合併症で層別化し評価することであった。  英国のGeneral Practice Research Database(GPRD)を用い、1987年から2011年の間にPDと初めて診断された4,687例を同定し、年齢、性別、出生年および診療所をマッチさせた非PD患者(対照群)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・PD患者は対照群と比較して全骨折、骨粗鬆症性骨折および股関節骨折のいずれも骨折リスクが有意に増加した(全骨折 補正ハザード比(AHR):1.89、95%CI:1.67~2.14/骨粗鬆症性骨折 AHR:1.99、95%CI:1.72~2.30/股関節骨折 AHR:3.08、95%CI:2.43~3.89)。・骨折リスクは、骨折歴、転倒、BMI低値、腎疾患、抗うつ薬の使用および抗精神病薬の高用量使用により増加した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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