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透析中の骨粗鬆症患者へのデノスマブは心血管イベントリスクを上げる可能性/京都大

 透析患者の骨粗鬆症の治療では、腎排泄に頼らないデノスマブが使用されている。しかし、その有効性、安全性を他の骨粗鬆症治療薬と比較した大規模研究はこれまでなかった。そこで、桝田 崇一郎氏(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野)らの研究グループは、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブは、ビスホスホネートと比較し、骨折リスクを低減させる一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があることを、電子レセプトデータを用いたコホート研究により明らかにした。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2025年1月7日オンライン版に掲載された。1,032例でデノスマブと経口ビスホスホネートの効果を比較 研究グループは、DeSCヘルスケアが保有する電子レセプトデータを利用し、標的試験エミュレーションの枠組みのもと、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの有効性と安全性を比較するコホート研究を実施した。 対象は50歳以上の透析患者で、骨粗鬆症の診断を受け、2015年4月~2021年10月までの間にデノスマブもしくは経口ビスホスホネートを新規に開始した患者。主要評価項目は、薬剤使用開始から3年間の骨折と主要心血管イベント(MACE)の発生リスク。 主な結果は以下のとおり。・患者は合計で1,032例が同定された(デノスマブ群658例、経口ビスホスホネート群374例)。・全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性だった。・MACEの3年間の発生率はデノスマブ群のほうが高く、リスク差は8.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~16.7)、リスク比は1.36(95%CI:0.99~1.87)だった。・複合骨折の3年間の発生率はデノスマブ群のほうが低く、リスク差は-5.3%(95%CI:-11.3~-0.6)、加重3年リスク比は0.55(95%CI:0.28~0.93)だった。 この結果を受け研究グループは、腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足し、交絡が残存していたこと、安全性アウトカムには腎臓のエンドポイントが含まれていなかったことを研究の限界として指摘し、「経口ビスホスホネートと比較し、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。しかし、この推定値は不正確であり、今後も研究が必要である」と述べている。

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酸化Mg服用患者へのNSAIDs、相互作用を最小限に抑える消化管保護薬は?【うまくいく!処方提案プラクティス】第65回

 今回は、慢性腰痛に対するアセトアミノフェンをセレコキシブへ変更する際の消化管保護薬の選択について、既存の酸化マグネシウムとの相互作用を考慮して処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患脊柱管狭窄症、前立腺肥大症、認知症、骨粗鬆症在宅環境訪問診療を2週間に1回訪問看護毎週金曜日通所介護毎週水・土曜日処方内容1.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後2.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後3.セレコキシブ100mg 2錠 分2 朝夕食後4.酸化マグネシウム錠500mg 2錠 分2 朝夕食後5.アルファカルシドール05μg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんは、腰部脊柱管狭窄症による慢性腰痛でアセトアミノフェンを服用していましたが、効果不十分のためセレコキシブ200mg/日への変更が検討されました。NSAIDsへの変更に伴い、高齢者は消化性潰瘍リスクが高い1)ため消化管保護薬の追加が必要と考えましたが、それに加えて酸化マグネシウムへの影響2)が懸念されました。酸化マグネシウムは胃内で水和・溶解することで薬効を発揮するため、胃内pHの上昇は本剤の溶解性と吸収に影響を与え、作用の減弱につながります。そのため、従来のPPIでは胃内pHの上昇により便秘を悪化させる可能性があります。そこで、P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)であるボノプラザンの併用を提案することにしました。ボノプラザンは、従来のPPIと比較して、(1)24時間を通じて安定した胃酸抑制効果がある、(2)食事の影響を受けにくい、(3)酸化マグネシウムの溶解性への影響が比較的少ない、などの特徴があります2)。酸化マグネシウムとの相互作用が最小限であるということは、本症例のような高齢者の便秘管理において重要なポイントとなります。医師への提案と経過訪問診療に同行した際、医師と直接話をする機会を得ました。その場で、ボノプラザンの併用を提案しました。提案の際は、以下の点を具体的に説明しました2)。従来のPPIと異なる作用機序により、24時間を通じて安定した胃酸抑制効果が期待できる。食事の影響を受けにくく、服用タイミングの自由度が高い。従来のPPIと比較して酸化マグネシウムの溶解性への影響が少なく、便秘への影響を最小限に抑えられる可能性がある。医師からは、「高齢者の便秘管理は生活の質に直結する重要な問題であり、薬剤の相互作用を考慮した提案は非常に有用」と評価いただき、ボノプラザンが追加となりました。その後、患者さんは胃部不快感などの症状変化もなく、疼痛増悪もなく経過しています。このように、訪問診療という場面を生かした直接的なディスカッションにより、より深い薬学的介入が可能となった症例でした。なお、医療経済的考察として、P-CABを選択することで薬剤費が増加(約8倍)することが懸念されますが、便秘悪化による追加処方の回避、消化性潰瘍発症リスクの低減、服薬アドヒアランス向上による治療効果の安定化が期待できることから、潜在的なコスト削減効果があると思っています。1)日本消化器病学会編. 消化性潰瘍診療ガイドライン2020(改訂第3版). 2020:BQ5-7.2)タケキャブ錠 インタビューフォーム

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疾患の検出や発症予測、血液検査が一助に?

 定期健診で一般的に行われている血液検査の検体には、検査を受けた人の健康状態について現在医師が得ている情報よりも多くの情報が隠されているようだ。全血球計算(complete blood count;CBC)と呼ばれるルーチンで行われている血液検査が、心疾患や2型糖尿病、骨粗鬆症、腎疾患など数多くの疾患の検出や発症の予測に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。米マサチューセッツ総合病院の病理医であるJohn Higgins氏らによるこの研究は、「Nature」に12月11日掲載された。 CBCでは、全身を循環している血液中の赤血球、白血球、血小板数を測定する。Higgins氏は、「CBCは一般的な検査だ。われわれの研究では、CBCは完全に健康な人であっても個人差が大きく、より個別化されたプレシジョンメディシン(精密医療)のアプローチによって、その人の健康状態や疾患の実態をより詳細に把握できる可能性のあることが示された」と説明する。 Higgins氏らは今回、1万2,407人の健常者から採取された血液を用いて、CBCによって測定される10種類の血液成分について調査し、患者ごとのばらつきを計算した。調査した成分は、赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘマトクリット値(HCT)、ヘモグロビン濃度(HGB)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均血小板容積(MPV)、赤血球分布幅(RDW)である。その結果、性別や人種/民族、年齢の影響を受けることのない、それぞれの患者に固有の「セットポイント(基準値)」が存在することが明らかになった。研究グループは、これらのセットポイントを活用することで、医師は一見健康そうに見える人でも早期の段階で疾患を診断できる可能性があると話す。 次に、セットポイントが推定されてから15年間の追跡データがそろう1万4,371人のデータを用いて、セットポイントと全死亡リスクや主要疾患の発症リスクとの関連を検討した。その結果、多くの指標において、セットポイントの値が高くなるか低くなるにつれ10年間の死亡リスクが上昇することが明らかになった。ただし、HCTとHGBに関しては、セットポイントの値が中間で最もリスクが低く、両極端の値(高過ぎる、低過ぎる)でリスクが上昇することが示された。また、MCHCのセットポイントが低いことは心筋梗塞や脳卒中、心不全(主要心血管イベント〔MACE〕)のリスク上昇と関連し、WBCの高いセットポイントは2型糖尿病、MCVの高いセットポイントは骨粗鬆症、HCTの低いセットポイントは慢性腎臓病、RDWの高いセットポイントは心房細動、RBCの低いセットポイントは骨髄異形成症候群のリスク増加と関連していた。 Higgins氏らは、「セットポイントを調べることで、本研究で対象となった健康な成人の20%以上が、その値の逸脱により、10年間での全死亡や心血管疾患や糖尿病などの早期介入が有効な主要疾患の診断の絶対リスクが2〜5%以上増加することが示唆された」と述べている。 なお、今回の研究の結果は先行研究の結果とも一致しているという。例えば、HGBの低下は心筋梗塞のアウトカムに関連し、MCVは大腿骨近位部骨折に、またWBCは糖尿病に関連していることが示されている。 Higgins氏らは、「これらの関連が生じるメカニズムの解明にはさらなる研究が必要だが、今回の研究では、セットポイントが複数の疾患において、2〜4倍の相対リスクの層別化を可能にすることが示された。これは、家族歴や一部の遺伝子変異を含む一般的な疾患のスクリーニング因子による相対リスクの層別化に匹敵する」と結論付けている。

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多発血管炎性肉芽腫症〔GPA:granulomatosis with polyangiitis〕

1 疾患概要■ 概念多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の主要疾患の1つで、血清中に出現するANCAと小型血管(臓器内動静脈、細動静脈、毛細血管)の肉芽腫性炎を特徴とする。罹患血管には免疫複合体の沈着はほとんどみられない(pauci-immune)。■ 疫学GPAは国が定める指定難病で、2022年度末の指定難病受給者証所持者数は3,437人であり、登録患者数は徐々に増加している。世界的には100万人当たり96.8人の患者数が報告されている。GPAは、日本を含むアジアよりも欧州、とくに緯度が高い地域で多くみられる傾向がある。■ 病因GPAは他の自己免疫性リウマチ性疾患と同様に、遺伝的要因と環境要因が相まって発症すると考えられている。ヨーロッパおよび北米におけるヨーロッパ系集団を対象としたゲノムワイド関連解析では、HLA-DPA1、DPB1遺伝子領域との関連が報告されており、臨床分類よりもPR3-ANCAとの関連がより強くみられる。日本人集団においてもDPB1*04:01の増加傾向が認められている。非HLA領域では、SERPINA1、PRTN3がヨーロッパ系集団で、ETS1の発現低下に関連する単塩基バリアントが日本人集団で関連することが報告されている。■ 症状GPAは発熱・倦怠感、体重減少、筋痛、関節痛などの全身症状と多彩な臓器症状を呈する疾患である。臓器病変は、眼(34~61%)、耳・鼻・咽喉頭(83~99%)、肺(66~85%)、心臓(8~25%)、消化管(6~13%)、腎臓(66~77%)、皮膚(33~46%)、中枢神経(8~11%)、末梢神経(15~40%)に出現する。眼病変、上・下気道病変、腎病変がとくに重要である。眼病変として、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、眼球突出、鼻病変として鼻閉・膿性鼻汁・鼻出血、鼻粘膜の痂疲・潰瘍、鞍鼻、耳病変として滲出性または肉芽腫性中耳炎、咽喉頭病変として口腔内潰瘍、声門下狭窄による嗄声・呼吸困難がみられる。肺では肺肉芽腫性結節、肺胞出血、間質性肺炎がみられ、咳・息切れ・喀血などを呈する。腎では壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的であり、しばしば急速進行性糸球体腎炎として発症する。■ 予後国内の前向きコホート研究では、治療開始後6ヵ月までの死亡率は1.9%で、治療開始後6ヵ月までに末期腎不全に至ったのは3.7%あった。中長期的には、治療に関連した副作用・合併症が問題となる。欧州における検討では、AAV患者を平均7.3年追跡すると65.6%の患者で治療に関連した副作用・合併症(高血圧、骨粗鬆症、糖尿病、心血管イベント、白内障など)がみられ、グルココルチコイドの早期減量・中止が重要と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)国内における診断には指定難病の診断基準が広く用いられている。国際的には、米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で開発した分類基準(表1)を参考に診断することが多い。疾患特異的自己抗体として抗プロテイナーゼ3(抗PR3)抗体(PR3-ANCA)が知られている。活動期にはCRPが陽性となることが多い。GPAでみられる臓器病変を想定した問診と身体診察に血液検査と画像検査を組み合わせて診断および罹患臓器を検索し、活動性を評価する。表1 GPAの分類基準分類基準を使用する前に以下を考慮する。小・中型血管炎と診断された患者を多発血管炎性肉芽腫症に分類するために、本分類基準を適用すべきである。本分類基準を適用する前に、血管炎類似疾患の除外をすべきである。画像を拡大する10項目の中から該当項目のスコアを合計し、5点以上であれば多発血管炎性肉芽腫症に分類する。(難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班.多発血管炎性肉芽腫症の分類基準[2024年9月20日アクセス]より引用)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ANCA関連血管炎の中でGPAと顕微鏡的多発血管炎(MPA)の標準治療は同一であり、難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班が作成した診療ガイドラインに示されている。標準治療は、寛解導入治療と寛解維持治療で構成される。さらに、長期予後を改善するために、合併症リスクを最小限に抑える必要がある。寛解導入治療ではリツキシマブまたはシクロホスファミドのいずれかを、グルココルチコイドまたはアバコパン(商品名:タブネオス)またはその両者と併用する。リツキシマブはキメラ型抗CD20抗体で、375mg/体表面積1m2を週に1回、4週連続で投与する。シクロホスファミドは15mg/kgを0、2、4、7、10、13週に点滴静注で投与するパターンが標準だが、投与量は年齢と血清クレアチニン濃度で調整し(表2)、投与回数と投与間隔は原疾患の重症度と安全性のバランスで調整する。シクロホスファミドは経口投与(1~2mg/kg/日)も可能だが、副作用の観点から点滴静注が望ましい。表2 年齢および腎機能によるシクロホスファミド投与量の調節画像を拡大する(Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.より引用)アバコパンは経口の補体C5受容体阻害薬で、1回30mgを1日2回朝・夕に内服する。アバコパンは原則的にグルココルチコイドと併用する。アバコパンは腎機能改善に有用である可能性が示されている。アバコパンの副作用として重症肝機能障害(胆道消失症候群を含む)が報告されているので、血管炎の治療に精通した施設での使用が望ましい。標準的な寛解導入療法で使用するグルココルチコイドの投与量は2つの臨床試験結果から、以前よりも大幅に減量された(表3)。表3 寛解導入治療におけるグルココルチコイド減療法画像を拡大する(Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.およびFuruta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.より引用)血清クレアチニン濃度が5.7mg/dLを超える最重症の腎障害を伴うGPAでは、グルココルチコイドとシクロホスファミドに血漿交換が併用される場合がある。MPAおよびGPAに対する血漿交換のメタ解析から、欧州リウマチ学会の推奨では血清クレアチニン濃度が3.4mg/dLを超える腎障害で血漿交換を考慮する場合があるとされている。リツキシマブにより寛解導入した場合には、治療開始後6ヵ月から寛解維持治療に移行し、シクロホスファミド点滴静注の場合には、最終投与後3~4週間で寛解維持治療に移行する。寛解維持治療はリツキシマブまたはアザチオプリンを用いる。寛解維持療法におけるリツキシマブ投与方法は、375mg/体表面積1m2を6ヵ月ごと、500mg/回を6ヵ月ごと、1,000mg/回を4ヵ月または6ヵ月ごとなどがある。アザチオプリンは1~2mg/kg/日を使用し、開始前にNUDT15遺伝子多型検査を実施する。寛解維持治療における有効性はアザチオプリンよりもリツキシマブが有意に優れている。GPAはMPAよりも再発しやすい。寛解維持治療中は症状および検査をモニタリングし、早期に再発の兆候を把握する。腎病変は症状なく再発することがあるため、尿検査を定期的に実施する。寛解維持治療期間は、リツキシマブでは1年6ヵ月よりも4年、アザチオプリンでは1年よりも2年6ヵ月以上が有意に再発を防ぐことが示されている。個々の患者における寛解維持治療期間は、治療開始前の疾患活動性、治療経過、再発歴、合併症を参考に検討する。4 今後の展望GPAの分類基準が改訂され、診断に関する検討は一段落したと考えられる。治療に関する課題として、アバコパンを寛解導入に使用する際に適切なグルココルチコイドの使用方法、リツキシマブの寛解維持療法の標準化、アバコパンの安全性、新規の抗B細胞治療などが挙げられる。5 主たる診療科膠原病リウマチ内科、腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発血管炎性肉芽腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(患者とその家族および支援者の会)膠原病サポートネットワーク(患者とその家族および支援者の会)1)針谷正祥 責任編集. Evidence Base Medicineを活かす膠原病・リウマチ診療. メジカルビュー社.2020.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 針谷正祥ほか編集. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023. 診断と治療社.2023.3)Hellmich B, et al. Ann Rheum Dis. 20242;83:30-47.4)Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.5)Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.6)Furuta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.公開履歴初回2024年12月31日

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整形外科の病態と診察・診断

診断の精度を上げ、患者満足度を高める「ニュースタンダード整形外科の臨床」第1巻整形外科の実臨床に真に役立つテキストシリーズ。本シリーズは整形外科日常臨床で使える具体的な知識と技術を提供治療は保存療法を中心に解説リアルな診断・治療の動画を多数掲載最新知識、専門知識、Topics、診療のコツなどを適宜コラムやサイドメモで掲載を特長としている。シリーズ最初の第1巻では、整形外科の病態と診察法・診断法について各分野のエキスパートが執筆。第1章では骨・関節・靱帯・関節包・筋肉・末梢神経の病態生理と治癒機転を、第2章では体表解剖で痛みやしびれのある部位から想定される病態を、第3章では診察法を動画などを交えて解説。第4章では整形外科で代表的な障害・疾患と重要な周辺領域を含めて構成。臨床に役立つ動画多数(80ファイル)。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する整形外科の病態と診察・診断定価12,100円(税込)判型B5判頁数418頁(動画80ファイル)発行2024年11月専門編集・編集委員井尻 慎一郎(井尻整形外科)編集委員田中 栄(東京大学)松本守雄(慶應義塾大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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口の中でグミを細かくできないと要介護や死亡のリスクが高い―島根でのコホート研究

 口の中の健康状態が良くないこと(口腔の不健康状態)が、要介護や死亡のリスクの高さと関連のあることを示すデータが報告された。また、それらのリスクと最も強い関連があるのは、グミを15秒間咀嚼してどれだけ細かく分割できるかという検査の結果だという。島根大学研究・学術情報本部地域包括ケア教育研究センターの安部孝文氏らが、島根県歯科医師会、国立保健医療科学院と共同で行ったコホート研究によるもので、詳細は「The Lancet Healthy Longevity」に10月17日掲載された。 近年、口腔機能の脆弱状態を「オーラルフレイル」と呼び、全身の健康に悪影響を及ぼし得ることから、その予防や改善の取り組みが進められている。また75歳以上の高齢者に対しては、後期高齢者歯科口腔健康診査が全国的に行われている。安部氏らは島根県内でのその健診データを用いて、口腔機能の脆弱を含めた口腔の不健康状態と要介護および死亡リスクとの関連を検討した。 2016~2021年度に少なくとも1回は後期高齢者歯科口腔健康診査を受けた島根県内在住の後期高齢者から、ベースライン時点で介護保険を利用していた人とデータ欠落者を除外した2万2,747人(平均年齢78.34±2.89歳、男性42.74%)を死亡リスクとの関連の解析対象とした。介護保険を利用することなく死亡した人も除外した2万1,881人(同78.31±2.88歳、男性41.93%)を、要介護リスクとの関連の解析対象とした。なお、要介護の発生は、要介護度2以上と判定された場合と定義した。 ベースライン時に、13項目の指標(残存歯数、主観的および客観的咀嚼機能、歯周組織の状態、嚥下機能、構音障害、口腔乾燥など)により、口腔の不健康状態を評価。このうち、客観的咀嚼機能については、グミを口に含んで15秒間でできるだけ細かく咀嚼してもらい、分割できた数の四分位数により4段階に分類して評価した。22個以上に分割できた最高四分位群(上位4分の1)を最も咀嚼機能が優れている群とし、以下、13~21個の群、4~12個の群の順に、咀嚼機能が低いと判定。3個以下だった最低四分位群(下位4分の1)を最も咀嚼機能が低い群とした。 要介護または死亡の発生、もしくは2022年3月31日まで追跡した結果(平均追跡期間は死亡に関しては42.6カ月、要介護に関しては41.4カ月)、1,407人が死亡し、1,942人が要介護認定を受けていた。口腔の不健康状態との関連の解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、疾患〔高血圧、歯周病、脳血管疾患、肺炎、骨粗鬆症・骨折、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病など〕の既往歴、およびそれらに基づく傾向スコア)を統計学的に調整した。 その解析の結果、口腔の不健康状態に関する13項目の評価指標の全てが、死亡リスクと有意に関連していることが明らかになった。例えば残存歯数が28本以上の群を基準として、0本の群は63%リスクが高く(ハザード比〔HR〕1.63〔95%信頼区間1.27~2.09〕)、客観的咀嚼機能の最高四分位群を基準として最低四分位群は87%ハイリスクだった(HR1.87〔同1.60~2.19〕)。要介護リスクについても、口腔乾燥と口腔粘膜疾患を除く11項目が有意に関連していた。例えば残存歯数が0本ではHR1.50(1.21~1.87)、客観的咀嚼機能の最低四分位群はHR2.25(1.95~2.60)だった。 13項目の口腔の不健康状態の指標ごとの集団寄与危険割合を検討したところ、グミで評価した客観的咀嚼機能の低下が、要介護および死亡の発生との関連が最も強いことが分かった。例えば客観的咀嚼機能の最低四分位群の場合、死亡リスクに対する寄与割合が16.47%、要介護リスクに対する寄与割合は23.10%だった。 本研究により、口腔の不健康状態のさまざまな評価指標が要介護や死亡リスクと関連のあることが明らかになった。著者らは、「高齢者の口の中の健康を良好に保つことが、要介護や死亡リスクを抑制する可能性がある。研究の次のステップとして、歯科治療による介入効果の検証が求められる」と述べている。

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事例014 1,25-ジヒドロキシビタミンD3検査の査定【斬らレセプト シーズン4】

解説事例では骨粗鬆症の患者に「D007血液化学検査(63)1,25-ジヒドロキシビタミンD3」を行ったところ、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。同検査の留意事項には、「(前略)ビタミンD依存症I型(中略)の診断時またはそれらの疾患に対する活性型ビタミンD3剤による治療中に測定した場合に限り算定できる」とあります。事例の「骨粗鬆症」+「ビタミンD欠乏症」には適用がありません。また、「活性型ビタミンD3剤」の投与はありませんでした。したがって、算定要件を満たさないためにA事由が適用となったものと推測できます。カルテも参照したところ、オーダーには「D007(31)25-ヒドロキシビタミンD」の記述がありました。こちらは、「ビタミンD欠乏性くる病」もしくは「ビタミンD欠乏性骨軟化症」の診断時に使用する検査です。実際は、データ入力時に類似の検査を誤って選択していたことが判明しました。しかしながら、いずれの検査からみても該当する傷病名は見当たりません。査定対策として、医師には同様事例の場合に病名付与もしくは医学的必要性のコメントを入力いただけるようにお願いしました。また、入力担当には会計入力時に誤りやすい事例として院内共有しています。

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喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。ICSへの追加はLABAとLAMAどちらが有用? 「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。 喘息の治療において、ICSの使用が基本となるが、ICS単剤で良好なコントロールが得られない場合も少なくない。JGL2024の治療ステップ2では、LABA、LAMA、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれか1剤をICSへ追加することが示されている1)。そのなかでも、一般的にICSへのLABAの追加が行われている。しかし、近年トリプル療法の有用性の報告、ICSとLAMAの併用による相乗効果の可能性の報告などから、LAMA追加が注目されており、LABAとLAMAの違いが話題となることがある。  そこで、ICS単剤でコントロール不十分な18歳以上の喘息患者を対象に、ICSへ追加する薬剤としてLABAとLAMAを比較した無作為化比較試験(RCT)について、既報のシステマティックレビュー(SR)2)のアップデートレビュー(UR)を実施した。 8試験の解析の結果、呼吸機能(PEF[ピークフロー]、トラフFEV1[1秒量] )についてはLAMAがLABAと比べて有意な改善を認め、QOL(Asthma Quality of Life Questionnaire[AQLQ])についてはLABAがLAMAと比べて有意な改善を認めたが、いずれも臨床的に意義のある差(MCID)には達しなかった。また、喘息コントロール、増悪、有害事象についてはLABAとLAMAに有意差はなく、同等であった。 以上から、「ICSへの追加治療としてLABAとLAMAはいずれも同等に推奨される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。ただし、谷村氏は「ICS/LAMA合剤は上市されていないため、アドヒアランス・吸入手技向上の観点からはICS/LABAが優先されうると考える。個別の症状への効果などの観点から、LABAとLAMAを使い分けることについては議論の余地がある」と述べた。中用量以上のICSでコントロール良好例のステップダウンは? 「CQ4:成人喘息患者の長期管理において中用量以上のICSによりコントロール良好な状態が12週間以上経過した場合にICS減量は推奨されるか?」について、岡田 直樹氏(東海大学医学部 内科学系呼吸器内科学)が解説した。 高用量のICSの長期使用はステロイド関連有害事象のリスクとなることが知られ、国際的なガイドライン(GINA[Global initiative for asthma]2024)3)では、12週間コントロール良好であれば50~70%の減量が提案されている。しかし、適切なステップダウンの時期や方法、安全性については十分な検討がなされていないのが現状であった。 そこで、中用量以上のICSで12週間以上コントロール良好な喘息患者を対象に、ICSのステップダウンを検討したRCTについて、既報のSR4)のURを実施した。 抽出された7文献の解析の結果、ICSのステップダウンは経口ステロイド薬による治療を要する増悪を増加させず、喘息コントロールやQOLへの影響も認められなかった。単一の文献で入院を要する増悪は増加傾向にあったが、イベント数が少なく有意差はみられなかった。一方、重篤な有害事象やステロイド関連有害事象もイベント数が少なく、明らかな減少は認められなかった。 以上から、「中用量以上のICSでコントロール良好な場合はICS減量を行うことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」という推奨となった1)。岡田氏は、今回の解析はすべての研究の観察期間が1年未満と短く、骨粗鬆症などの長期的なステロイド関連有害事象についての評価がなかったことに触れ、「長期的な高用量ICSの投与により、ステロイド関連有害事象のリスクが増加することも報告されているため、高用量ICSからのステップダウンにより、ステロイド関連有害事象の発現が低下することが期待される」と述べた。FeNOに基づく管理は有用か? 「CQ1:成人喘息患者の長期管理において呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)に基づく管理は有用か?」について、鶴巻 寛朗氏(群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 FeNOは、喘息におけるタイプ2炎症の評価に有用であることが報告されている。FeNOは、未治療の喘息患者ではICSの効果予測因子であり、治療中の喘息患者では経年的な肺機能の低下や気道可逆性の低下、増悪の予測における有用性が報告されている。しかし、治療中の喘息におけるFeNOに基づく長期管理の有用性に関するエビデンスの集積は十分ではない。 そこで、臨床症状とFeNO(あるいはFeNOのみ)に基づいた喘息治療を実施したRCTについて、既報のSR5)のURを実施した。 対象となった文献は13件であった。解析の結果、FeNOに基づいた喘息管理は1回以上の増悪を経験した患者数、52週当たりの増悪回数を有意に低下させた。しかし、経口ステロイド薬を要する増悪や入院を要する増悪については有意差がみられず、呼吸機能の改善も得られなかった。症状やQOLについても有意差はみられなかった。ICSの投与量については、減少傾向にはあったが、有意差はみられなかった。 以上から、「FeNOに基づく管理を行うことが提案される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。結語として、鶴巻氏は「FeNOに基づく長期管理は、増悪を起こす喘息患者には有用となる可能性があると考えられる」と述べた。喘息の長期管理薬としてのマクロライドの位置付けは? 「CQ5:成人喘息患者の長期管理においてマクロライド系抗菌薬の投与は有用か?」について、大西 広志氏(高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 小児を含む喘息患者に対するマクロライド系抗菌薬の持続投与は、重度の増悪を減らし、症状を軽減することが、過去のSRおよびメタ解析によって報告されている6)。しかし、成人喘息に限った解析は報告されていない。 そこで、既報のSR6)から小児を対象とした研究や英語以外の文献などを除外し、成人喘息患者の長期管理におけるマクロライド系抗菌薬の有用性について検討した適格なRCTを抽出した。 採用された17文献の解析の結果、マクロライド系抗菌薬は、入院を要する増悪や重度の増悪を減少させず、呼吸機能も改善しなかった。Asthma Control Test(ACT)については、アジスロマイシン群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。同様にAsthma Control Questionnaire(ACQ)、AQLQもマクロライド系抗菌薬群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。 以上から、本解析の結論は「マクロライド系抗菌薬の持続投与は、喘息患者に有用な可能性はあるものの、長期管理に用いることを推奨できる十分なエビデンスはない」というものであった。これを踏まえて、JGL2024の推奨は「マクロライド系抗菌薬を長期管理の目的で投与しないことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」となった1)。また、この結果を受けてJGL2024の「図6-5 難治例への対応のための生物学的製剤のフローチャート」における2型炎症の所見に乏しい喘息(Type2 low喘息)から、マクロライド系抗菌薬が削除された。■参考文献1)『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成. 喘息予防・管理ガイドライン2024.協和企画;2024.2)Kew KM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD011438.3)Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2024. Updated May 20244)Crossingham I, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;2:CD011802.5)Petsky HL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11:CD011439.6)Undela K, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021;11:CD002997.

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妊娠中のビタミンD摂取は子どもの骨を強くする

 妊娠中のビタミンDの摂取は、子どもの骨と筋肉の発達に良い影響をもたらすようだ。英サウサンプトン大学MRC Lifecourse Epidemiology CentreのRebecca Moon氏らによる研究で、妊娠中にビタミンDのサプリメントを摂取した女性の子どもは、摂取していなかった女性の子どもに比べて、6〜7歳時の骨密度(BMD)と除脂肪体重が高い傾向にあることが明らかにされた。この研究結果は、「The American Journal of Clinical Nutrition」11月号に掲載された。Moon氏は、「小児期に得られたこのような骨の健康への良い影響は、一生続く可能性がある」と話している。 ビタミンDは、人間の皮膚が日光(紫外線)を浴びると生成されるため「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の発達と健康に重要な役割を果たすことが知られている。具体的には、ビタミンDは、丈夫な骨、歯、筋肉の健康に必要なミネラルであるカルシウムとリン酸のレベルを調節する働きを持つ。 今回の研究では、妊娠14週未満で単胎妊娠中の英国の妊婦(体内でのビタミンDの過不足の指標である血液中の25-ヒドロキシビタミンD濃度が25~100nmol/L)を対象に、妊娠中のビタミンD摂取と子どもの骨の健康との関連がランダム化比較試験により検討された。対象とされた妊婦は、妊娠14~17週目から出産までの期間、1日1,000IUのコレカルシフェロール(ビタミンDの一種であるビタミンD3)を摂取する群(介入群)とプラセボを摂取する群(対照群)にランダムに割り付けられた。これらの妊婦から生まれた子どもは、4歳および6~7歳のときに追跡調査を受けた。 6〜7歳時の追跡調査を受けた454人のうち447人は、DXA法(二重エネルギーX線吸収法)により頭部を除く全身、および腰椎の骨の検査を受け、骨面積、骨塩量(BMC)、BMD、および骨塩見かけ密度(BMAD)が評価された。解析の結果、介入群の子どもではプラセボ群の子どもと比較して、6〜7歳時の頭部を除く全身のBMCが0.15標準偏差(SD)(95%信頼区間0.04~0.26)、BMDが0.18SD(同0.06~0.31)、BMADが0.18SD(同0.04~0.32)、除脂肪体重が0.09SD(同0.00~0.17)高いことが明らかになった。 こうした結果を受けてMoon氏は、「妊婦に対するビタミンD摂取による早期介入は、子どもの骨を強化し、将来の骨粗鬆症や骨折のリスク低下につながることから、重要な公衆衛生戦略となる」と述べている。 では、妊娠中のビタミンD摂取が、どのようにして子どもの骨の健康に良い影響を与えるのだろうか。Moon氏らはサウサンプトン大学のニュースリリースで、2018年に同氏らが行った研究では、子宮内の余分なビタミンDが、「ビタミンD代謝経路に関わる胎児の遺伝子の活動を変化させる」ことが示唆されたと述べている。さらに、2022年に同氏らが発表した研究では、妊娠中のビタミンD摂取により帝王切開と子どものアトピー性皮膚炎のリスクが低下する可能性が示されるなど、妊娠中のビタミンD摂取にはその他のベネフィットがあることも示唆されているという。

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11月8日 レントゲンの日【今日は何の日?】

【11月8日 レントゲンの日】〔由来〕1895年のこの日、ドイツの物理学者・レントゲンがX線を発見した日にちなみ制定。また、毎年11月2日~8日の1週間を「レントゲン週間」と定めている。関連コンテンツ腹部CT画像の見落としの有無【医療訴訟の争点】事例020 電子画像管理加算での査定【斬らレセプト シーズン3】X線検査でわかる骨粗鬆症【患者説明用スライド】スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?乳がん放射線療法の有効性、1980年代以前vs.以降/Lancet

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ビタミンD値が低いとサルコペニアのリスクが高い可能性

 血清ビタミンD値が低い高齢者は骨格質量指数(SMI)が低くて握力が弱く、サルコペニアのリスクが高い可能性のあることが報告された。大阪大学大学院医学系研究科老年・総合内科学の赤坂憲氏らの研究結果であり、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に8月1日掲載された。 サルコペニアは筋肉の量や筋力が低下した状態であり、移動困難や転倒・骨折、さらに寝たきりなどのリスクが高くなる。また日本の高齢者対象研究から、サルコペニア該当者は死亡リスクが男性で2.0倍、女性で2.3倍高いことも報告されている。 サルコペニアの予防・改善方法として現状では、筋肉に適度な負荷のかかる運動、および、タンパク質を中心とする十分な栄養素摂取が推奨されており、治療薬はまだない。一方、骨粗鬆症治療薬として用いられているビタミンD(VD)に、サルコペニアに対する保護的作用もある可能性が近年報告されてきている。ただし、一般人口におけるVDレベルとサルコペニアリスクとの関連は不明点が少なくない。これを背景として赤坂氏らは、東京都と兵庫県の地域住民対象に行われている高齢者長期縦断研究(SONIC研究)のデータを用いて、年齢層別に横断的解析を行った。 SONIC研究参加者のうち、年齢層で分けた際のサンプル数が十分な70歳代(平均年齢75.9±0.9歳、男性54.2%)と、90歳代(92.5±1.6歳、男性37.5%)を解析対象とした。全員が自立して生活していた。 血清25(OH)D(以下、血清VDと省略)の平均は、70歳代では21.6±5.0ng/mLであり、35.8%が欠乏症(20ng/mL未満)だった。90歳代では平均23.4±9.1ng/mLであり、43.8%が欠乏症だった。なお、VDは日光曝露によって皮膚で生成されるため、日照時間の違いを考慮して季節性を検討したところ、70歳代の男性では、冬季測定群に比べて夏季測定群の方が有意に高値だった。 サルコペニアのリスク評価に用いられている、SMI、握力、歩行速度、および、BMIや血清アルブミン、血清クレアチニンと、血清VDとの関連を単回帰分析で検討すると、年齢層にかかわらず、SMIと握力が血清VDと有意に正相関し、その他の因子は関連が見られなかった。それぞれの相関係数(r)は、以下の通り。70歳代の血清VDとSMIは0.21、血清VDと握力は0.30(ともにP<0.0001)、90歳代の血清VDとSMIは0.29(P=0.049)、血清VDと握力は0.34(P=0.018)。 続いて、SMIおよび握力を従属変数、性別を含むその他の因子を独立変数とする重回帰分析を施行した。その結果、70歳代のSMIについては、血清VDが有意な正の関連因子として特定された(β=0.066、P=0.013)。一方、70歳代の握力に関しては、血清VDは独立した関連が示されなかった。また90歳代では、SMI、握力ともに血清VDは独立した関連因子でなかった。 著者らは本研究の限界点として、横断的解析であり因果関係は不明なこと、日光曝露時間や栄養素摂取量が測定されていないことなどを挙げた上で、「地域在住の自立した高齢者では、血清VDレベルはSMIや握力と関連しているが、歩行速度とは関連のないことが明らかになった。この結果は90歳代よりも70歳代で明確だった」と総括。また、「さらなる研究が必要だが、血清VDレベルを維持することが骨格筋量の維持に寄与する可能性があるのではないか」と付け加えている。

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頬の内側の細胞を使った検査で寿命の予測が可能に?

 頬の内側を軽くこすって採取した口腔粘膜細胞を利用するCheekAgeと呼ばれる検査によって、寿命を予測できるようになる可能性があるとする研究結果が報告された。米ニューヨークの企業であるTally Health社とウェルカム・トラストの助成を受けて、Tally Health社計算生物学・データサイエンス部門の部門長であるMaxim Shokhirev氏らが実施したこの研究の詳細は、「Frontiers in Aging」10月1日号に掲載された。 CheekAge検査は「エピジェネティック・クロック」の一種で、頬の内側をこすって採取した細胞に含まれる特定のDNAメチル化の分析により、生涯を通じた環境や生活習慣が遺伝子の機能に影響を与える仕組み(エピジェネティクス)を調べるものである。DNAのメチル化は、エピジェネティクスの重要なメカニズムであり、遺伝子の塩基配列を変えることなくその働きに影響を与えるDNA領域での分子変化のことをいう。 この検査を開発しているTally Health社の研究者らによると、本研究では、DNAの特定のメチル化パターンは余命に関連している可能性が示されたという。Shokhirev氏は、「特定のメチル化の部位がこの関連に特に重要であり、特定の遺伝子やプロセスが、われわれのエピジェネティック・クロックで予測された死亡率と潜在的に関連している可能性のあることが明らかになった」と説明している。 Shokhirev氏らの研究は、英エジンバラ大学のロージアン出生コホート(Lothian Birth Cohorts)プログラムのデータに基づいたもの。このプログラムでは、1921年から1936年の間に生まれた1,513人(男性712人、女性801人)のスコットランド人の生活習慣、遺伝的特徴、健康状態を追跡している。研究参加者は3年ごとに血液細胞を用いたDNAメチル化の検査を受けた。検査では、参加者のゲノム上のおよそ45万カ所のメチル化の部位が分析された。最後に取得された参加者のメチル化データと死亡状況を組み合わせて、CheekAgeと死亡リスクの関連を評価した。 その結果、CheekAgeは縦断的データセットにおいて死亡率と有意に関連し、CheekAgeが1標準偏差上昇するごとに全死亡リスクが21%上昇することが示された。CheekAgeのパフォーマンスは、本研究で比較のためにテストした、血液データなどのデータセットで訓練された第一世代のどのクロックよりも優れていたという。 現在の標準的なエピジェネティクスの検査は血液ベースであるが、当然のことながら、血液を採取するよりも頬の内側を拭うだけのシンプルな検査の方が、患者にとっては抵抗が少ない。 Shokhirev氏らはまた、人がいつ死ぬかに関して最も重要な鍵を握っていると考えられるメチル化の部位についても検討した。その結果、そのような遺伝子部位はPDZRN4とALPK2で、前者はがんの抑制に、後者はがんと心臓の健康に関係していると考えられた。そのほかのメチル化部位は、骨粗鬆症や炎症、メタボリックシンドロームと関係しているという。 Shokhirev氏は、「今回の研究結果を踏まえれば、CheekAgeは血液検査の結果と一致しているようだ」と話す。同氏は、「頬の内側の細胞で訓練されたわれわれのエピジェネティック・クロックが、血液細胞のメチル化パターンを測定した際の死亡率を予測するという事実は、組織間で共通の死亡シグナルが存在することを示唆している。このことは、シンプルで非侵襲的な頬の粘膜を採取するこの検査が、老化の生物学的な仕組みの研究や調査における貴重な代替手段になり得ることを示唆している」と述べている。

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BRCA1/2変異保有者の避妊薬使用、乳がんリスクとの関連/JCO

 生殖細胞系列BRCA1/2変異保有者において、ホルモン避妊薬が乳がんリスクを増加させるかどうかは不明である。今回、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのKelly-Anne Phillips氏らの研究で、ホルモン避妊薬は、とくに長期使用で、BRCA1変異保有者の乳がんリスク上昇と関連することが示された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年10月2日号に掲載。 本研究では、4つの前向きコホート研究からプールされた観察データを用いて、避妊薬使用とBRCA1/2変異保有女性の乳がんリスクとの関連についてCox回帰を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・BRCA1変異保有者3,882人およびBRCA2変異保有者1,509人のうち、それぞれ53%および71%で1年以上の避妊薬使用歴があり、累積使用期間中央値はそれぞれ4.8年、5.7年だった。・BRCA1変異保有者488人とBRCA2変異保有者191人が、それぞれ追跡期間中央値5.9年と5.6年の間に乳がんを発症した。・BRCA1変異保有者では、現在/以前の使用とも1年以上の避妊薬使用歴は乳がんリスクと有意な関連はみられなかったが、使用歴ありは有意な関連がみられた。使用歴なしと比べたハザード比[HR](95%信頼区間[CI])は以下のとおり。 現在使用:1.40(0.94~2.08)、p=0.10 1~5年前に使用:1.16(0.80~1.69)、p=0.4 6~10年前に使用:1.40(0.99~1.97)、p=0.05 10年より前に使用:1.27(0.98~1.63)、p=0.07 使用歴あり:1.29(1.04~1.60)、p=0.02・避妊薬の累積使用期間が長いほど乳がんリスクが上昇し、1年増えるごとに3%(95%CI:1~5、p=0.002)のリスク上昇が推定された。・BRCA2変異保有者では、現在使用(HR:0.70、95%CI:0.33~1.47、p=0.3)および以前使用(HR:1.07、95%CI:0.73~1.57、p=0.7)とも乳がんリスクの上昇と関連していなかった。 これらの結果から、著者らは「BRCA1変異を有する女性における避妊薬の使用については、個々人のリスクとベネフィットを慎重に検討する必要がある」としている。

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10月8日 骨と関節の日【今日は何の日?】

【10月8日 骨と関節の日】〔由来〕ホネの「ホ」の文字が「十と八」に分かれ、10月8日が「体育の日」に近いことから、骨の健康にふさわしい季節として1999(平成11)年に日本整形外科学会が制定。「骨と関節の日」制定の目的は、整形外科の医療内容の理解の啓発、骨と関節を中心とした運動器官の健康がどれだけ健康維持に大切かを社会に認知してもらうこと。この日を中心にさまざまな行事が全国で行われている。関連コンテンツ関節痛への対応【日常診療アップグレード】骨折多発地帯はどこ?【患者説明用スライド】植物ベースの食事、内容で骨折リスクは変わるか?20代より身長4cm以上低下、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会過去1年に転倒、骨折リスクがより高いのは男性?女性?

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10月4日 徒歩の日【今日は何の日?】

【10月4日 徒歩の日】〔由来〕「と(10)four(4)」(徒歩)の語呂合わせから、日常生活で歩く習慣を付け、健康になることを目的に、「徒歩を楽しむ会」(宮崎県宮崎市)が2004(平成16)年に制定。関連コンテンツ週どのくらい身体を動かすと良い?[高齢者編]【患者説明用スライド】週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]【患者説明用スライド】身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?高齢者の身体活動量、推奨値を変更/厚労省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」歩行を守るために気付いてほしい脚の異常/日本フットケア・足病医学会

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15の診断名・11の内服薬―この薬は本当に必要?【こんなときどうする?高齢者診療】第5回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年8月に扱ったテーマ「高齢者への使用を避けたい薬」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。老年医学の型「5つのM」の3つめにあたるのが「薬」です。患者の主訴を聞くときは、必ず薬の影響を念頭に置くのが老年医学のスタンダード。どのように診療・ケアに役立つのか、症例から考えてみましょう。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)病気のデパートのような診断名の多さです。薬の数は、5剤以上で多剤併用とするポリファーマシーの基準1)をはるかに超えています。この症例を「これらの診断名は正しいのか?」、「処方されている薬は必要だったのか?」このふたつの点から整理していきましょう。初診の高齢者には、必ず薬の副作用を疑った診察を!私は高齢者の診療で、コモンな老年症候群と同時に、さまざまな訴えや症状が薬の副作用である可能性を考慮にいれて診察しています。なぜなら、老年症候群と薬の副作用で生じる症状はとても似ているからです。たとえば、認知機能低下、抑うつ、起立性低血圧、転倒、高血圧、排尿障害、便秘、パーキンソン症状など2)があります。症状が多くて覚えられないという方にもおすすめのアセスメント方法は、第2回で解説したDEEP-INを使うことです。これに沿って問診する際、とくにD(認知機能)、P(身体機能)、I(失禁)、N(栄養状態)の機能低下や症状が服用している薬と関連していないか意識的に問診することで診療が効率的になります。処方カスケードを見つけ、不要な薬を特定するさて、はっきりしない既往歴や薬があまりに多いときは処方カスケードの可能性も考えます。薬剤による副作用で出現した症状に新しく診断名がついて、対処するための処方が追加されつづける流れを処方カスケードといいます。この患者では、変形性膝関節症に対する鎮痛薬(NSAIDs)→NSAIDsによる逆流性食道炎→制酸薬といったカスケードや、NSAIDs→血圧上昇→高血圧症の診断→降圧薬(アムロジピン)→下肢のむくみ→心不全疑い→利尿薬→血中尿酸値上昇→痛風発作→痛風薬→急性腎不全という流れが考えられます。このような流れで診断名や処方薬が増えたと想定すると、カスケードが起こる前は以下の診断名で、必要だったのはこれらの処方薬ではと考えることができます。90歳男性。初診外来に15種類の診断名と、内服薬11種類を伴って来院。【診断名】2型糖尿病、心不全、高血圧、冠動脈疾患、高脂血症、心房細動、COPD、白内障、逆流性食道炎、難聴、骨粗鬆症、変形性膝関節症、爪白癬、認知症、抑うつ【服用中の薬剤】処方薬(スタチン、アムロジピン、リシノプリル、ラシックス、グリメピリド、メトホルミン、アルプラゾラム、オメプラゾール)市販薬(抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、便秘薬)減薬の5ステップ減らせそうな薬の検討がついたら以下の5つをもとに減薬するかどうかを考えましょう。(1)中止/減量することを検討できそうな薬に注目する(2)利益と不利益を洗い出す(3)減薬が可能な状況か、できないとするとなぜか、を確認する(4)病状や併存疾患、認知・身体機能本人の大切にしていることや周辺環境をもとに優先順位を決める(第1回・5つのMを参照)(5)減薬後のフォローアップ方法を考え、調整する患者に利益をもたらす介入にするために(2)~(4)のステップはとても重要です。効果が見込めない薬でも本人の思い入れが強く、中止・減量が難しい場合もあります。またフォローアップが行える環境でないと、本当は必要な薬を中断してしまって健康を害する状況を見過ごしてしまうかもしれません。フォローアップのない介入は患者の不利益につながりかねません。どのような薬であっても、これらのプロセスを踏むことを減薬成功の鍵としてぜひ覚えておいてください! 高齢者への処方・減量の原則実際に高齢者へ処方を開始したり、減量・中止したりする際には、「Stand by, Start low, Go slow」3)に沿って進めます。Stand byまず様子をみる。不要な薬を開始しない。効果が見込めない薬を使い始めない。効果はあるが発現まで時間のかかる薬を使い始めない。Start lowより安全性が高い薬を少量、効果が期待できる最小量から使う。副作用が起こる確率が高い場合は、代替薬がないか確認する。Go slow増量する場合は、少しづつ、ゆっくりと。(*例外はあり)複数の薬を同時に開始/中止しない現場での実感として、1度に変更・増量・減量する薬は基本的に2剤以下に留めると介入の効果をモニタリングしやすく、安全に減量・中止または必要な調整が行えます。開始や増量、または中止を数日も待てない状況は意外に多くありませんから、焦らず時間をかけることもまたポイントです。つまり3つの原則は、薬を開始・増量するときにも有用です。ぜひ皆さんの診療に役立ててみてください! よりリアルな減薬のポイントはオンラインサロンでサロンでは、ふらつき・転倒・記憶力低下を主訴に来院した8剤併用中の78歳女性のケースを例に、クイズ形式で介入のポイントをディスカッションしています。高齢者によく処方される薬剤の副作用・副効果の解説に加えて、転倒につながりやすい処方の組み合わせや、アセトアミノフェンが効かないときに何を処方するのか?アメリカでの最先端をお話いただいています。参考1)Danijela Gnjidic,et al. J Clin Epidemiol. 2012;65(9):989-95.2)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 33. 2020. 丸善出版3)The 4Ms of Age Friendly Healthcare Delivery: Medications#104/Geriatric Fast Fact.上記サイトはstart low, go slow を含めた老年医学のまとめサイトです。翻訳ソフトなど用いてぜひ参照してみてください。実はオリジナルは「start low, go slow」だけなのですが、どうしても「診断して治療する」=検査・処方に走ってしまいがちな医師としての自分への自戒を込めて、stand by を追加して、反射的に処方しないことを忘れないようにしています。

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anorexia nervosa(神経性やせ症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第11回

言葉の由来「神経性やせ症」は英語で“anorexia nervosa”といいます。この病名はギリシャ語の“anorexia”とラテン語の“nervosa”に由来します。“anorexia”は、「否定」を表す“an”と「食欲」を表す“orexia”をつなげた単語で、文字通り「食欲がない」ことを意味します。一方、“nervosa”はラテン語で神経を表す“nervus”に由来し、「神経性の」という意味です。“anorexia nervosa”という病名は、19世紀後半に英国のウィリアム・ガル医師によって付けられたとされています。彼は、「主に若い女性に発生する、極度の衰弱を特徴とする特異な病気」について複数の症例を報告し、精神的および神経的な要因が関与するとして、このような病名を付けました。“anorexia nervosa”に関連する医学用語として、“bulimia nervosa”(神経性大食症)があります。“bulimia”は“anorexia”と同じくギリシャ語です。“bulimia”は牛を意味する“bous”と、飢えを意味する“limos”を組み合わせた単語で、「牛のような飢え」、つまり「異常な食欲」を意味します。“bulimia nervosa”は“anorexia nervosa”が名付けられた約100年後の1970年代に、英国の精神科医ジェラルド・ラッセル医師が命名しました。当時は“anorexia nervosa”の疾患の一部と考えられていましたが、過食とそれに続く補償行動を特徴とする精神的な障害である“bulimia nervosa”は、“anorexia nervosa”とは異なる病気である、と定義したのです。併せて覚えよう! 周辺単語無月経amenorrhea徐脈bradycardia骨粗鬆症osteoporosis栄養失調malnutrition認知行動療法cognitive behavioral therapyこの病気、英語で説明できますか?Anorexia nervosa is an eating disorder characterized by an intense fear of gaining weight, a distorted body image, and extreme efforts to control weight, often through severe calorie restriction and excessive exercise. This can lead to dangerous health complications due to malnutrition.講師紹介

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早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。 HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。 ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。 プレスセミナーでは、これら疾患と治療薬の概要が講演されたほか、ムコ多糖症や脊髄性筋萎縮症などを対象に衛生検査事業を同社が開始することが発表された。全世界で200例程度の患者・患児が存在 はじめに井原 健二氏(大分大学医学部医学科長 小児科学講座 教授)が、「HGPS/PDPL:病態・疫学・歴史と未来」をテーマに、主に疾患の概要について説明を行った。 ヒトは、小児期の発育(成長・発達・成熟)と成人期の老化(衰退・退行・退縮)の各要素により一生を終える。HGPS/PDPLなどの早老症は、老化の3要素が小児期から起こる疾患であり、発症年齢から先天性、乳児型、若年/成人型に分類される。 主な徴候としては、白髪・脱毛、難聴、白内障、強皮症様の皮膚症状、脂肪異栄養症、2型糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化および脳血管疾患などがある。また、100以上の症候群が報告され、乳児で発症すれば乳児早老症(コケイン症候群)、成人で発症すれば成人早老症(ウェルナー症候群)と発症年代の違いにより病名も変わってくる。 中でもHGPSは、出生児400万人に1人の発症とされ、患児は全世界に140例程度と推定されている。発症要因はLMNA遺伝子の病的変異が9割で、生後1年以内に発育不全、生後1~3年で特徴的な顔貌(下顎形成不全など)と早老徴候がみられ、平均余命は14.5歳。HGPSの老化には、Lamin A遺伝子の異常スプライシングによる翻訳時の欠失が知られ、異常ラミンが細胞核の物理的損傷や染色体クロマチン構造の異常を引き起こし、これらが病的変化の原因になることが判明している。また、核ラミナの変異が原因の遺伝性疾患であるラミノパチーはイコールで早老症ではなく、筋ジストロフィーや拡張型心筋症などもあり、これらの1つに早老症があるとされる。その代表疾患がHGPSであり、PDPLであるという。PDPL患者は、全世界で50例程度と推定され、生命予後は少し長く成人期まで生きることができる。 HGPSとPDPLの診断では、診察・問診後に遺伝子検査が必須となり、その結果遺伝子変異などの態様により分類される。 臨床症状としては、HGPSを例にとると「低身長(<3パーセンタイルなど)」、「不均衡な大頭などの顔の特徴」、「乳歯の萌出・脱落遅延などの歯科所見」、「さまざまな色素沈着などの皮膚所見」、「全禿頭や眉毛の喪失などの毛髪所見」、「末節の骨溶解などの骨格筋所見」、「細く甲高い声」などの症状がみられる。これらを大症状、小症状、遺伝学的検査の3つの組み合わせで確定または推定と診断される。医療者でも小児早老症の認知度は75%程度 HGPSとPDPLの疾患啓発については、「GeneReviews日本語版」や「プロジェリアハンドブック(日本語版)」などで医療者へ行っており、今後も医療者向けに2025年の診断基準の改訂情報や検査の高度化(血漿プロジェリン測定)を発信していくという。 また、啓発活動の一環として、「小児遺伝子疾患の診療経験・学習機会について」を医師51人に調査したアンケート結果を報告した。・「医学生時代に小児遺伝子疾患について学んだか」について聞いたところ、「はい」が53%、「いいえ/覚えていない」が47%だった。・「小児遺伝子疾患である早老症を知っているか」について聞いたところ、「はい」が75%、「いいえ」が25%だった。・「早老症のうちHGPS/PDPLなどの疾患群を知っているか」を聞いたところ、「はい」が27%、「いいえ」が73%だった。・「小児遺伝子疾患の診療で困ったこと」(複数回答)では、「治療に困った」が19人、「診断に困った」が18人と回答した医師が多かった。 まだ、医療者の中でも広く知られていないHGPSとPDPLの疾患啓発は、今後も続けられる。寿命の延伸に期待されるロナフェルニブ 「HGPSの治療の実際、および治療薬の登場により何が変わるのか?」をテーマに松尾 宗明氏(佐賀大学医学部小児科学 教授)が、HGPSの治療の概要やロナファルニブ登場の意義などを説明した。 はじめに自験例としてHGPSの患児について、生後3ヵ月で皮膚の硬化を主訴に診療を受けた症例を紹介した。その後、患児はHGPSが疑われ、生後5ヵ月でアメリカでの遺伝子検査により確定診断された。以降は、対症療法が行なわれ、10歳にときに無償提供プログラムでロナファルニブ単剤が投与され、現在も存命という。 ロナファルニブの作用機序は、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害することで死亡率を低下させ、生存期間を延長する。 臨床試験では、HGPSおよびPDPLを対象としたロナファルニブの観察コホート生存試験が行われ、ロナファルニブ投与被験者は未治療対照と比較して、平均生存期間が4.327年延長した(平均9.647年vs.5.320年、名目上のp<0.0001、層別log-rank検定)。また、死亡率はロナファルニブ投与群で38.7%(24/62例)、未治療対照群で59.7%(37/62例)で、ハザード比は0.28(95%信頼区間:0.154~0.521)だった。HGPSおよびPDPLでの死亡原因は、動脈硬化の進行が一番多く、治療薬の効果として血管の硬化を抑えている可能性が示唆された。 用法・用量は、通常、ロナファルニブとして開始用量115mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与し、4ヵ月後に維持用量150mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与する(なお、患者の状態に応じて適宜減量する)。 主な副作用では、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、とくに最初の4ヵ月に多いが、次第に慣れていくという。また、肝機能障害も初期に出現しやすく、QT延長もみられる場合もある。そのほか、潜在的なリスクとして、骨髄抑制、腎機能障害、眼障害、電解質異常も散見されるので注意しつつ処方する必要がある。 松尾氏はロナファルニブの登場により、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症抑制」、「患者QOLの向上」、「延命効果」、「国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供」などが変化すると期待をみせた。その一方で、「外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しいこと」、「心血管系に対する効果もまだ限定的であること」、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理」、「延命に伴う新たな問題(老化進行による予期せぬ合併症)」などが今後解決すべき課題と語り、講演を終えた。

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COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

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強い骨の形成を促す新しいホルモンを発見

 骨粗鬆症と闘い、骨折を早く治すのに役立つ可能性を秘めたホルモンが、マウスを用いた実験で発見された。それは、CCN3(cellular communication network factor 3)と呼ばれるホルモンで、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度の維持に役立っていることから「母体脳ホルモン(maternal brain hormone)」とも呼ばれている。実験では、CCN3が、年齢や性別にかかわりなく全てのマウスの骨を強化することが確認された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHolly Ingraham氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に7月10日掲載された。 骨粗鬆症患者の数は世界で2億人に上る。女性では、特に閉経後に骨の形成を促す女性ホルモンであるエストロゲンレベルが低下するため、骨粗鬆症リスクが上昇する。エストロゲンは授乳中にも低下するが、この時期に骨粗鬆症や骨折が生じることはまれである。このことから、授乳期にはエストロゲン以外の何かが骨の形成を促していると考えられている。 Ingraham氏らは過去の研究で、雌マウスの脳の狭い領域にある特定のニューロンのエストロゲン受容体を遮断することで、骨量が増加することを確認していた。このことから研究グループは、血液中のホルモンが骨の増強に役立っている可能性を考えていたが、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて、研究は中断されていた。 今回の研究では、特定の遺伝子操作により意図的に遺伝子を変異させた雌マウスを用いて、骨の形成を促すこのホルモンを突き止めるために徹底的な調査が行われた。その結果、CCN3が特定された。CCN3は、ニューロンから分泌されるホルモンの典型的な特徴が該当しないため、Ingraham氏らはこの結果に驚いたと話す。 しかし、この疑問は、授乳中の雌マウスの同じ脳領域でCCN3が発見されたことにより解消されたという。これらの特定のニューロンでCCN3が生成されなければ、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度が急速に低下し、子マウスの体重も減り始めることが確認されたからだ。これは、CCN3が授乳中の母マウスの骨の健康維持に重要な役割を果たしていることを意味する。 さらに、若年成体や高齢の雌雄のマウスを対象に、体内を循環するCCN3の量を増加させたところ、数週間のうちに骨量と骨の強度が劇的に増加することが確認された。また、CCN3を2週間かけてゆっくりと放出するハイドロゲルパッチを作成して、高齢マウスの骨折部位に貼り付けた。その結果、骨の形成が促進され、高齢マウスで通常見られるよりも早いプロセスで治癒することも示された。 論文の責任著者の1人である米カリフォルニア大学デイビス校のThomas Ambrosi氏は、「これまで、このような骨の石灰化と治癒を達成した方法は他になかった」と述べ、「われわれは今後も、このホルモンについての研究を進めること、また、軟骨再生など他の問題に応用する可能性を探ることを心から楽しみにしている」と述べている。

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