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心臓カテーテル検査によって脳血管障害を来し死亡したケース

循環器最終判決判例タイムズ 824号183-197頁概要胸痛の精査目的で心臓カテーテル検査が行われた61歳男性。検査中に250を超える血圧上昇、意識障害がみられたため、ニトログリセリン、ニフェジピン(商品名:アダラート)などを投与しながら検査を続行した。検査後も意識障害が継続したが頭部CTでは出血なし。脳梗塞を念頭においた治療を行ったが、検査翌日に痙攣重積となり、気管切開、人工呼吸器管理となった。検査後9日目でようやく意識清明となり、検査後2週間で一般病室へ転室したが、その直後に消化管出血を合併。輸血をはじめとするさまざまな処置が講じられたものの、やがて播種性血管内凝固症候群、多臓器不全を併発し、検査から19日後に死亡した。詳細な経過患者情報高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害を指摘されていた61歳男性経過1983年1月12日胸がモヤモヤし少し苦しい感じが出現。1月18日胸が重苦しく圧迫感あり、近医を受診して狭心症と診断され、ニトログリセリンを処方された。1月26日某大学病院を受診、胸痛の訴えがあり狭心症が疑われた。初診時血圧200/92、心電図は正常。2月2日血圧160/105、心電図では左室肥大。3月初診から1ヵ月以上経過しても胸痛が治まらないので心臓カテーテル検査を勧めたが、患者の都合により延期された。9月胸痛の訴えあり。10月同様に胸痛の訴えあり。1983年5月25日左手親指の痺れ、麻痺が出現、運動は正常で感覚のみの麻痺。7月8日脳梗塞を疑って頭部CTスキャン施行、中等度の脳萎縮があるものの、明らかな異常なし。1985年9月血圧190/100、心電図上左軸偏位あり。1986年7月健康診断の結果、肥満(肥満度26%)、心電図上の左軸偏位、心肥大、動脈硬化症などを指摘され、「要精査」と判断された。冠状動脈の狭窄を疑う所見がみられたので、担当医師は心臓カテーテル検査を勧めた。9月17日心臓カテーテル検査目的で某大学病院に入院。9月18日12:30検査前投薬としてヒドロキシジン(同:アタラックス-P)50mg経口投与。検査開始前の血圧158/90、脈拍71。13:30血圧154/96。右肘よりカテーテルを挿入。13:48右心系カテーテル検査開始(肺動脈楔入圧、右肺動脈圧)。13:51心拍出量測定。13:57右心系カテーテル検査終了。この間とくに訴えなく異常なし。14:07左心系カテーテル検査開始、血圧169/9114:13左心室圧測定後間もなく血圧が200以上に上昇。14:21血圧232/117、胸の苦しさ、顔色口唇色が不良となる。ニトログリセリン1錠舌下。14:27血圧181/111と低下したので検査を再開。14:28左冠状動脈造影施行(結果は左冠状動脈に狭窄なし)、血圧は150-170で推移。左冠状動脈造影直後に約5.1秒間の心停止。咳をさせたところ脈は戻ったが、徐脈(45)、傾眠傾向がみられたので硫酸アトロピン0.5mg静注。血圧171/10214:36左心室撮影。血圧17514:40左心室のカテーテルを再び大動脈まで戻したところ、再度血圧上昇。14:45血圧253/130、アダラート®10mg舌下。14:50血圧234/12314:56血圧220程度まで低下したので、右冠状動脈造影再開。14:59血圧183/105。右冠状動脈造影終了(25~50%の狭窄病変あり)、直後に約1.8秒の心停止出現。15:01検査終了後の血管修復中に血圧230/117、ニトログリセリン4錠舌下。15:04カテーテル抜去、血圧224/11715:30検査室退室。血圧150/100、脈拍77、呼びかけに対し返答はするものの、すぐに眠り込む状態。15:40病室に帰室、血圧144/100、うとうとしていて声かけにも今ひとつ返答が得られない傾眠状態が継続。19:00呼名反応やうなずきはあるがすぐに閉眼してしまう状態。検査から3時間半後になってはじめて脳圧亢進による意識障害の可能性を考慮し、脳圧降下薬、ステロイド薬の投与開始。9月19日08:00左上肢屈曲位、傾眠傾向が継続したため頭部CT施行、脳出血は否定された。ところが検査後から意識レベルの低下(呼名反応消失)、左上肢の筋緊張が強くなり、左への共同偏視、左バビンスキー反射陽性がみられた。15:00神経内科医が往診し、脳塞栓がもっとも疑われるとのコメントあり。9月20日全身性の痙攣発作が頻発、意識レベルは昏睡状態となる。気管切開を施行し、人工呼吸器管理。痙攣重積状態に対しチオペンタールナトリウム(同:ラボナール)の持続静注開始。9月24日痙攣発作は消失し、意識レベルやや改善。9月27日ほぼ意識清明な状態にまで回復したが、腎機能の悪化傾向あり。9月30日人工呼吸器より離脱。10月3日09:30状態が改善したためICUから一般病室へ転室となる。13:00顔面紅潮、意識レベルの低下、大量の消化管出血が出現。10月4日上部消化管内視鏡検査施行、明らかな出血源は指摘できず、散在性出血がみられたためAGML(急性胃粘膜病変)と診断された。ところが、その後肝機能、腎機能の悪化、慢性膵炎の急性増悪、腎不全などとともに、血小板数の低下、フィブリノーゲンの著明な減少などからDICと診断。10月8日15:53全身状態の急激な悪化により死亡。当事者の主張患者側(原告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応検査前に狭心症に罹患していたとしても軽度なものであり、心臓カテーテル検査を行う医学的必要性はなかった。また、検査の3年前から脳梗塞の疑いがもたれていたにもかかわらず、脳梗塞の症状がある患者にとってはきわめて危険な心臓カテーテル検査を行った2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇を来した時点で、事故の発生を未然に防止するために検査を中止すべき注意義務があったのに、検査を強行した3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了時点で意識障害があり、脳塞栓が疑われる状況であったのに、神経内科専門医の診察を依頼したのは検査後24時間も経過してからであり、適切な処置が遅れた4.死因医学的に必要のない検査を行ったうえに、検査中の脳梗塞発症に気付かず検査を続行し、検査後もただちに専門医の診察を依頼しなかったことが原因で、最終的には胃出血によるDICおよび多臓器不全により死亡に至ったものである病院側(被告)の主張1.心臓カテーテル検査の適応患者には胸痛のほか、高血圧、肥満、長期の飲酒歴、喫煙歴、高脂血症、軽度腎障害などの冠状動脈狭窄を疑わせる所見が揃っており、冠状動脈を精査し、手術なり薬剤投与なりを開始することが治療上不可欠であった。脳梗塞については、検査の3年前に施行した頭部CTスキャンで異常はなく、自覚症状としてみられた左手親指、人差し指の感覚障害は末梢神経または神経根障害と考えられ、改めて脳梗塞を疑うべき症状は認められなかった2.異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失心臓カテーテル検査中に最高血圧が230-250になるのは臨床上起こり得ることであり、血圧上昇時には必要に応じて降圧薬を投与し、経過を観察しながら検査を継続するものである。そして、200以上の血圧上昇がもつ意味は患者によって個体差があり、普段の血圧が170-190くらいであった本件の場合には検査時のストレスによって血圧が200以上になっても特別に異常な反応ではない3.神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査後に意識レベルが低下し、四肢硬直がおきたため脳梗塞、脳幹部循環障害などの可能性を考え、治療を開始するとともに神経内科などに相談しながら、最良の治療を行った4.死因死因は脳病変に基づくものではなく、意識障害が回復した後の消化管出血によるDIC、および多臓器不全に伴った心不全である。この消化管出血にはステロイド薬の使用、ストレスなどが関与したものであるが、抗潰瘍薬の投与などできるだけ予防策は講じていたのであるから、やむを得ないものであった裁判所の判断1. 心臓カテーテル検査の適応患者には検査前から高血圧、肥満、長期の喫煙歴、軽度の腎障害など、虚血性心疾患の危険因子のうちいくつかが明らかに存在し、さらに心電図で左室肥大および左軸偏位が認められ、胸痛という自覚症状もあったので、狭心症を疑って心臓カテーテル検査を行ったことに誤りはない。さらに急性期の脳梗塞患者、発症直後の脳卒中患者には冠状動脈造影を行ってはならないとされているが、本件の場合には検査前に急性期の脳梗塞が疑われるような症状はないので、心臓カテーテル検査を差し控えなければならないとはいえない。2. 異常高血圧にもかかわらず検査を中止しなかった過失250を越える異常な血圧の上昇がみられた時点で、検査のストレスによる血圧上昇だけでは説明できない急激な血圧の上昇であることに気付き、脳出血を主とする脳血管障害発生の可能性を考え、検査を中止するべきであった。さらに検査で用いた76%ウログラフィン®(滲透圧の高い造影剤)のため、脳梗塞によって生じた脳浮腫をさらに増強させる結果になった。3. 神経内科の診察を早期に手配しなかった過失検査終了後は、ただちに専門の神経内科医に相談するなどして合併症の治療を開始するべきであったのに、担当医らが脳血管障害の可能性に気付いたのは、検査終了から3時間半後であり、その間適切な治療を開始するのが遅れた。4. 死因脳梗塞が発症したにもかかわらず、検査を続行したことによって脳浮腫が助長され、意識障害が悪化した。さらに検査終了後もただちに適切な処置が行われなかったことが、胃からの大量出血を惹起し死亡にまで至らしめた大きな原因の一つになっている。原告側合計8,276万円の請求に対し4,528万円の判決考察心臓カテーテル検査に伴う死亡率は、1970年代までは多くの施設で1%を越えていましたが、技術の進歩とヘパリン使用の普及により、現在は0.1~0.3%の低水準に落ち着いています。また、心臓カテーテル検査に伴う脳血管障害の合併についても、0.1~0.2%の低水準であり、「組織だった抗凝固処置」によって大部分の脳血管系の事故が防止できるという考え方が主流になっています。カテーテル検査中に脳塞栓を生じる機序としては、(1)カテーテルによって動脈硬化を起こした血管に形成された壁在血栓が剥離されて飛ばされ、脳の血管に流れた結果脳梗塞を生じる(2)カテーテルの周囲に形成された血栓またはカテーテルのなかに形成された血栓が飛ばされ、脳の血管に移行して脳梗塞を生じる(3)粥状硬化、動脈硬化を起こした血管の粥腫(アテローム)がカテーテルによって剥離されて飛ばされ、脳の血管に流された結果脳梗塞を生じるの3つが想定されています。これに対する処置としては、(1)十分なヘパリン投与を行った患者においても、カテーテルのフラッシュは十分注意しかつ的確に行うこと(2)ガイドワイヤーは使用する前に十分に拭い、血液を付着させないこと(3)ガイドワイヤーを入れたままのカテーテル操作は、1回あたり2分以内にとどめること(2分経過後はガイドワイヤーを必ず抜き出して拭い、再度ガイドワイヤーを用いる時はカテーテルをフラッシュする)(4)リスクの高い患者では不必要にカテーテルやガイドワイヤーを頸動脈や椎骨脳底動脈に進めないなどが教科書的には重要とされていますが、現在心臓カテーテル検査を担当されている先生方にとってはもはや常識的なことではないかと思います。つまり本件では、心臓カテーテル検査中に発症した脳血管障害というまれな合併症に対し、どのように対処するべきであったのか、という点が最大のポイントでした。裁判所の判断では、心臓カテーテル検査中に「血圧が250以上に上昇した時点ですぐに検査を中止せよ」ということでしたが、循環器内科医にとってすぐさまこのような判断をすることは実際的ではないと思います。ここで問題となるのが、(1)コントロールはこれでよかったか(2)障害の可能性を念頭に置いていたかという2点にまとめられると思います。この当時の状況を推測すると、大学病院の循環器内科に入院して治療が行われていましたので、1日に数件の心臓カテーテル検査が予定され、全例を何とか(無事かつ迅速に)こなすことに主眼がおかれていたと思います。そして、検査中にみられた高血圧に対しては、とりあえずニトログリセリン、アダラート®などを適宜使用するのがいわば常識であり、通常のケースであれば何とか検査を終了することができたと思います。にもかかわらず、本件では降圧薬使用後も250を越える高血圧が持続していました。この次の判断として、血圧は高いながらも一見神経症状はなく大丈夫そうなので検査を続行してしまうか、それとも(少々面倒ではありますが)ニトログリセリン(同:ミリスロール)などの降圧薬を持続静注することによって血圧を厳重にコントロールするか、ということになると思います。結果的には前者を選択したために、裁判所からは「異常高血圧を認めた時点で検査中止するのが正しい」と判断されました。日常の心臓カテーテル検査では、時に200を超える血圧上昇をみることがありますが、ほとんどのケースでは無事に検査を終了できると思います。さらに、心臓カテーテル検査中に脳梗塞へ至るのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、当時の状況からして、急いで微量注入器を準備して降圧薬の持続静注をするとか、血圧が安定するまでしばらく様子をみるなどといった判断はなかなか付きにくいのではないかと思います。しかし、本件のように心臓カテーテル検査中に脳血管障害が発症しますと、あとからどのような抗弁をしようとも、「異常高血圧に対して適切な処置をせず検査を強行するのはけしからん」とされてしまいますので、たとえ時間がかかって面倒に思っても、厳重な血圧管理をしなければあとで後悔することになると思います。次に問題となるのが、心臓カテーテル検査中に生じた「少々ボーっとしている」という軽度の意識障害をどのくらい重要視できたかという点です。後方視的にみれば、誰がみてもこの時の意識障害が脳梗塞に関連したものであったことがわかりますが、当時の担当医は「検査前投薬の影響が残っていて少しボーっとしているのであろう」と考えたため、脳梗塞発症を認識したのは検査から3時間半も経過したあとでした。前述したように、心臓カテーテル検査で脳梗塞を合併するのは1,000例ないし500例に1例という頻度ですから、ある意味では滅多に遭遇することのないリスクともいえます。しかし、日常的にこなしている(安全と思いがちな)検査であっても、どこにジョーカーが潜んでいるのか予測はまったくつかないため、本件のような事例があることを常に認識することによって早めの処置が可能になると思います。本件でも脳梗塞発症の可能性をいち早く念頭においていれば、たとえ最悪の結果に至ってしまっても医事紛争にまでは発展しなかった可能性が十分に考えられると思います。判決文全体を通読してみて、今回この事例を担当された先生方は真摯に医療の取り組まれているという印象が強く、けっして怠慢であるとか、レベルが低いなどという次元の問題ではありません。それだけに、このような医事紛争へ発展してしまうのは大変残念なことですので、少しでも侵襲を伴う医療行為には「最悪の事態」を想定しながら臨むべきではないかと思います。循環器

502.

米国の高血圧ガイドライン(JNC8)のインパクト/JAMA

 米国合同委員会(Joint National Committee:JNC)の第8次報告として新たに発表された高血圧ガイドラインにより、成人の降圧治療対象者が減少し、目標血圧達成者の割合が増大することが判明した。この影響はとくに高齢者で大きいという。米国・デューク大学医療センターのAnn Marie Navar-Boggan氏らが報告した。高血圧ガイドラインでは、60歳以上の血圧目標値を従来の140/90mmHg未満から150/90mmHg未満へと引き上げることが、また糖尿病あるいは慢性腎臓病(CKD)を有する患者についても130/80mmHg未満から140/90mmHgへと変更することが盛り込まれた。これら変更の影響について研究グループは、全米健康栄養調査(NHANES)のデータを使って検討した。JAMA誌2014年4月9日号掲載の報告より。NHANES参加者1万6,372例分のデータを用いて調査 検討に用いたのは2005~2010年のNHANES調査に参加した1万6,372例分のデータだった。 高血圧ガイドライン下、およびJNC7ガイドライン(高血圧予防・検出・評価治療ガイドライン)下での降圧治療対象者(それぞれのガイドラインで推奨されている目標値以上の血圧値の人)の割合を推定し評価した。18~59歳では1.6%が、60歳以上では27.6%が降圧治療の対象外に 結果、より若い成人(18~59歳)における降圧治療対象者は、JNC7ガイドライン下では20.3%(95%信頼区間[CI]:19.1~21.4%)だったのに対し、高血圧ガイドライン下では19.2%(同:18.1~20.4%)に減少した。 同様の減少は、高齢者(60歳以上)ではより大きく、68.9%(同:66.9~70.8%)から61.2%(同:59.3~63.0%)に減少した。 ガイドラインで示された血圧目標値をクリアしている人の割合は、より若い成人では41.2%(同:38.1~44.3%)から47.5%(同:44.4~50.6%)へと増大はわずかであったが、高齢者では40.0%(同:37.8~42.3)から65.8%(同:63.7~67.9%)へと大きく増大することが判明した。 全体的にJNC7下では、18~59歳では1.6%が、60歳以上では27.6%が降圧治療を受けてより厳しい目標値を達成していたことが示され、これらの患者は、高血圧ガイドラインでは降圧治療対象者とはならないことが示唆された。

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期待が大きいと失望も大きい:プラセボをおくことの重要性を教えてくれた試験。(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(194)より-

腎除神経術(RND)は治療抵抗性高血圧の非薬物治療としてここ数年、海外学会などで話題をさらってきた期待の治療法である。理論的には腎動脈から発信される神経刺激が中枢を刺激して交感神経を活性化させ高血圧をもたらすことは動物実験からも確認されており、腎臓からの神経遮断は血圧を下げることは理論にかなっている。しかしこの治療法の当初からの懸念は、白衣高血圧とプラセボ効果がきちんと除外されているのかということであった。 Symplicity HTN-3試験の最大の特徴は、単盲検法を採用したことと、対照群に偽手術を施していることである。このことで白衣効果やプラセボ効果を除去しようという狙いである。さらに服薬遵守についても厳格に調査していることも特徴である。 結果は、このような厳格な方法で行うと、腎除神経の降圧効果は偽手術群とほぼ同等であった。この結果は臨床医に大きな失望をもたらしたが、やはり高血圧治療は偽薬効果と白衣高血圧を除外しなければならないこと、さらに服薬アドヒアランスを確認すべきことも教訓として残した。 本試験の結果を受けてMedtronic社は、現在行われている臨床試験を中断するとの発表を行っている。 わが国では家庭血圧計あるいは24時間血圧計による治療抵抗性の確認が厳格になされていたためか、試験登録が進まなかったと言われるが、高血圧の診断と治療効果の確認には24時間血圧での評価は不可欠であることを教えてくれた試験である。 今回の結果で、RND自体が全面的に否定されたわけではない。今後どのような症例に適応があり、どの程度有効性があるかを今後の試験結果の分析から期待したい。

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治療抵抗性高血圧に対する効果の比較、腎除神経術vs擬似的手技/NEJM

 治療抵抗性高血圧に対する腎デナベーション(腎除神経術)の降圧効果を、盲検下でプラセボ(擬似的手技:シャム)と比較した「SYMPLICITY HTN-3」試験の結果が、同研究グループの米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らにより発表された。6ヵ月時点の評価において、腎除神経術による有意な降圧は認められなかったという。先行研究の非盲検試験では、カテーテルベースの腎除神経術の降圧効果が示唆され、現在80ヵ国以上で臨床導入されている。しかし先行研究は、サンプルサイズが小さく、限定的な24時間血圧の評価で、盲検化不足、シャム対照の不足といった、試験結果の信頼性を損なう多くの点が散見されていた。本試験は、先行研究の方法論の問題を解消するようデザインされた、前向き単盲検無作為化シャム対照試験であった。NEJM誌オンライン版2014年3月29日号掲載の報告より。全米88施設で535例対象、前向き単盲検無作為化試験で検討 SYMPLICITY HTN-3試験は、18~80歳の治療抵抗性高血圧患者を無作為に2対1の割合で、腎除神経術群とシャム群に割り付けて行われた。無作為化以前に患者は、利尿薬を含む3剤以上併用の降圧療法(最大投与量あり)を受けていた。 主要有効性エンドポイントは、6ヵ月時点で評価した診察室血圧の変化で、副次有効性エンドポイントは、24時間血圧平均値の変化であった。 主要安全性エンドポイントは、主要イベントの複合だった(死亡、末期腎不全、末端臓器障害による塞栓症イベント、腎血管系合併症の複合、または1ヵ月時点の高血圧クリーゼ、あるいは6ヵ月時点での新規の70%以上の腎動脈狭窄)。 2011年10月~2013年5月に全米88施設で、1,441例がスクリーニングを受け、そのうち535例(37.1%)が試験に登録され無作為化を受けた(腎除神経術群364例、シャム群171例)。6ヵ月時点の診察室血圧、24時間血圧とも有意差示されず、安全性も 結果、6ヵ月時点の収縮期血圧値の変化(±SD)は、腎除神経術群-14.13±23.93mmHg、シャム群-11.74±25.94mmHgで、両群ともベースライン時から有意な変化が認められた(p<0.001)。腎除神経術群のシャム群に対する差は-2.39mmHgで、群間の有意差は認められなかった(95%信頼区間[CI]:-6.89~2.12mmHg、優越性マージン5mmHgのp=0.26)。 24時間血圧平均値の変化(収縮期血圧)は、それぞれ-6.75±15.11mmHg、-4.79±17.25mmHg、群間差は-1.96mmHgで有意差は認められなかった(95%CI:-4.97~1.06mmHg、優越性マージン2mmHgのp=0.98)。 同様に安全性についても、主要有害イベントの発生は腎除神経術群5/361例(1.4%)、シャム群1/171例(0.6%)で、群間の有意差は認められなかった(%差のp=0.8)。

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血圧長期変動性よりも若年時の血圧が、冠状動脈石灰化スコアに影響を及ぼすことが明らかになる(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(186)より-

高血圧のもつリスクは、大きく二種類に分けることができる。固有の血圧値に由来するリスクと、変動する血圧値に由来するリスクの2つである1)。 近年、ABPMや家庭血圧計の普及により、高血圧治療の質を高めるために、日内変動や、日間変動といった血圧変動を評価することが勧められている2)。現時点では、それぞれの変動幅の抑制や、改善にどのクラスの降圧薬が有効なのかについては、探索的な研究の結果が報告されている程度にとどまっている3)。将来、降圧薬ではなく、変動性改善薬というような、新規の薬物が有効とされるかもしれないが、今後の研究成果を待たなければならないだろう。 Allenらによる本論文では、CARDIA研究のコホートを対象に、25年という長期間にわたるデータから、若年時の血圧値および、中年期にかけての血圧長期変動性の違いにより、対象が5種類のTrajectoryに分類(five discrete trajectory groups)されることを報告している。 さらに25年の時点での、マルチスライスCTによる冠状動脈石灰化スコアを指標にした解析の結果、観察開始時点で血圧が上昇している(Elevated)グループでは、その後の血圧が安定していても(Stable)、上昇(Increasing)しても、有意に冠状動脈石灰化スコアが高かった。開始時点で中等度の血圧を呈して、25年の間に高値安定群よりも血圧が高値になる、中等値-上昇(Moderate-increasing)群では、石灰化スコアに与える影響は有意ではなかった。このことは、血圧の長期変化よりも、起点となる血圧値が予後に影響を与えていることを示唆している。 冠動脈石灰化スコアという、静的なエンドポイントによる評価であり、プラーク破綻といった生命予後に直結する動的なエンドポイントに与える影響については、改めて検討しなくてはならないだろう。本研究では、交絡する複数のリスクについてModel 1~Model 3の3パターンで検討している。年齢、人種、教育歴、性別、降圧薬の使用、脂質、糖尿病、喫煙、BMI (以上Model 1)、さらには開始時血圧 (Model 2)、25年時血圧 (Model 3)で補正しても、この関係はかわらない。Model 2の解析による結果は、一見すると開始時血圧の重みについて一貫してないようにもみえるが、本論文では他の交絡因子についての詳細なデータの提示がないので、より深く検討することはできない。 今後は、本コホートに由来する続報や、他の報告による結果に期待したい。

506.

植え込み型デバイス治療がCPAPを続けられない閉塞性睡眠時無呼吸患者を救う?(コメンテーター:高田 佳史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(174)より-

中等から重症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は心血管リスクであり、治療の第一選択は持続的陽圧呼吸療法(CPAP)である。しかし、CPAP治療の効果にはアドヒアランスの良し悪しが大きく影響する。高血圧発症の予防、治療抵抗性高血圧の降圧、心不全患者の予後改善などにおいて、アドヒアランスが良好でなければ効果が期待できないことが報告されている。 本論文に登場する植え込み型上気道刺激デバイスは、外肋間筋と内肋間筋に間に、睡眠中の換気努力を感知する圧力センサーを置き、リード線を介して舌下神経を刺激することでオトガイ舌骨筋を活性化し、舌骨を前上方に移動させて上気道流路の開存性を高めることができる。 STAR試験において、CPAP施行が困難な中等~重症のOSA患者に対する植え込み型デバイスの12ヵ月の安全性と有効性が評価された。睡眠時無呼吸の重症度を有意に低下させ、無呼吸関連のQOLを有意に改善させる結果であった。治療に関連した重篤な有害事象は2%未満であったことから、CPAPアドヒアランスの不良な患者への新たな治療選択として、注目すべき重要な知見が得られたといえる。 しかし、先行研究(Van de Heyning PH et al. Laryngoscope. 2012; 122:1626-1633.)では、body mass index(BMI)が32以上、AHIが50/h以上の患者にはこのデバイスの効果は期待できないことが示されている。本試験の対象もBMI 32以下かつ無呼吸低呼吸指数(AHI) 20~50/hであり、混合性、中枢性無呼吸を除くなど、ある程度限定された患者を対象にした試験であることを知っておく必要がある。また、AHIの中央値は12ヵ月後には29.3から9.0に低下していたが、ベースラインから50%以上低下し、かつ20未満となった患者は全体の66%であり、ノンレスポンダーも存在する。植え込み前のレスポンダーの予知は今後の重要な課題となるであろう。 また、神経刺激が微小覚醒をきたして睡眠の質に影響しないか長期的にみていく必要を感じる。刺激部位の反応性の変化などに対するデバイスの設定変更やリード線の断線、電池寿命時の対応など長期的な管理について知りたいところである。 欧州ではすでに販売されていると聞くが、CPAPを継続できない場合に、日本のOSA患者の多くがこの植え込み型デバイス治療を希望するであろうか。デバイス治療のエビデンスの蓄積が必要であると同時に、OSAが治療すべき心血管リスクであることの啓蒙が重要である。

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カルシウム拮抗薬の酒さリスク増大は都市伝説

 スイス・バーゼル大学のJ. Spoendlin氏らは、カルシウム(Ca)拮抗薬、β遮断薬およびそのほかの降圧薬服用と酒さ発症との関連について調査を行った。その結果、Ca拮抗薬は酒さのリスクを増大するという一般的な概念を否定するデータが得られたこと、またβ遮断薬についてはわずかに酒さのリスクを低下し、その効果は紅斑毛細血管拡張性酒さの患者においてやや強い可能性があることを報告した。降圧薬と酒さのリスクについては、エビデンスが不足しているにもかかわらず、Ca拮抗薬の使用は酒さ患者を失望させるものとされる一方、β遮断薬は紅斑毛細血管拡張性酒さの適応外治療として推奨されている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2014年1月16日号の掲載報告。 研究グループは、英国のGeneral Practice Research Databaseを活用して、1995~2009年に初発の酒さが記録されていた症例を対象に降圧薬と酒さ発症との適合症例対照研究を行った。 各症例と対照は、年齢、性別、かかりつけ医(GP)、インデックス日付前のデータベースにおける既往歴の年数で適合された。被験者を、多変量条件付きロジスティック回帰モデルにて、降圧薬服用の開始時期(あるいはインデックス日付より180日超前)および期間(処方回数)で層別化して評価した。 主な結果は以下のとおり。・症例5万3,927例と対照5万3,927例について評価した。・全層別群でのCa拮抗薬服用者について統一オッズ比(OR)を用いて評価した結果、処方回数40回以上のジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の現在服用者について、わずかであるがORの減少が認められた(OR:0.77、95%信頼区間[CI]:0.69~0.86)。・服用開始時期や期間にかかわらず、β遮断薬のアテノロール(商品名:テノーミンほか)、ビソプロロール(同:メインテートほか)も、わずかだが全層別群にわたってORを低下した。プロプラノロール(同:インデラルほか)のORは1.0であった。・ACE阻害薬やARBの酒さリスクとの関連はいずれも変わらなかった。・著者は、「われわれのデータは、Ca拮抗薬は酒さのリスクを増すという一般的な概念を否定するものであった。β遮断薬は酒さのリスクをわずかに減少した。その効果は、紅斑毛細血管拡張性酒さの患者においてやや強い可能性がある」とまとめている。

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認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか

 最近の研究において、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)には降圧効果だけでなく、認知症に対する薬効もあることが示唆されている。はたして、ARBに認知症予防効果を期待できるのか。台湾国立大学のWei-Che Chiu氏らはこの答えを明らかにすべく同国住民ベースのコホート研究を行った。その結果、ARBは、血管系リスクが高い人の認知症リスクを低減することが示唆された。また、累積投与量が高い患者ほど、認知症およびそのサブタイプ(アルツハイマー病等)に対して、より高い予防効果がみられたという。Journal of Hypertension誌オンライン版2014年1月8日号の掲載報告。 研究グループは、認知症およびそのサブタイプへのARBの効果を調べることを目的に、台湾国民健康保険の研究データベースを利用した住民ベースのコホート研究を行った。ペア適合したARB服用患者と非服用患者、合計2万4,531例について、1997~2009年に個別に追跡して認知症発症例を特定し、ARBと認知症、アルツハイマー病、血管性認知症の関連を分析した。評価は、Cox比例ハザート回帰分析にて、ハザード比と95%信頼区間(CI)を算出して行った。 主な結果は以下のとおり。・11年の追跡期間中に認知症の発症が特定されたのは、ARB服用群1,322例(5.4%)、非服用群2,181例(8.9%)であった。・認知症およびサブタイプ別にみたARB服用群の多変量補正ハザード比は、認知症0.54(95%CI:0.51~0.59)、アルツハイマー病0.53(同:0.43~0.64)、血管性認知症0.63(同:0.54~0.73)であった。・累積投与量については、1日量1,460以上の患者で、同値未満の患者と比べて、有意なリスク減少がみられた(ハザード比:0.37vs. 0.61、p<0.05)。関連医療ニュース 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光 スタチン使用で認知症入院リスク減少 認知症に対するアロマテラピー、効果はあるか

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夜間血圧は慢性腎臓病の発症に関連~大迫研究

 自由行動下血圧は標的臓器障害との関連が報告されているが、慢性腎臓病(CKD)発症の予測に意味を持つかどうかは確認されていない。仙台社会保険病院の菅野 厚博氏らは、大迫研究(Ohasama Study)において、一般の日本人843人のベースライン時の自由行動下血圧とCKDの発症率との関連を検討した。その結果、夜間血圧がCKD発症の予測因子として日中の血圧より優れており、CKDへの進行リスクの評価には自由行動下血圧測定が有用と考えられることを報告した。Journal of hypertension誌2013年12月号に掲載。 著者らは、ベースライン時にCKDを発症していなかった一般の日本人843人について、自由行動下血圧を測定し、その後のCKD[尿蛋白陽性もしくは推算糸球体濾過量(eGFR)60mL/分/1.73m2未満]の発症率を調べた。ベースライン時の自由行動下血圧とCKD発症率との関連について、性別、年齢、BMI、習慣的な喫煙、習慣的な飲酒、糖尿病、高コレステロール血症、心血管疾患の既往、降圧薬の服用、ベースライン時のeGFR、フォローアップ検査回数、ベースライン検査の年について調整したCox比例ハザード回帰モデルを用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・参加者の平均年齢は62.9±8.1歳で、71.3%が女性、23.7%が降圧薬を服用していた。・追跡期間中央値は8.3年で、その間に220人がCKDを発症した。・日中および夜間の収縮期血圧の1標準偏差増加によるCKDの調整ハザード比は、それぞれ、1.13(95%CI:0.97~1.30)、1.21(95%CI:1.04~1.39)であった。・日中と夜間の血圧を同じモデルに相互に調整した場合、夜間血圧のみがCKDの独立した予測因子のままであった。

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治療抵抗性高血圧に対する腎デナーベーションの治験、一時中断

 米Medtronic社は、1月9日、治療抵抗性高血圧患者を対象とした腎デナーベーションの臨床試験(SYMPLICITY HTN-3)において、試験実施前に計画していた降圧効果が得られなかったとの結果を公表した。なお、データ安全性モニタリング委員会は、試験において安全性には問題ないと発表している。この結果を受けて、倫理的な観点からMedtronic社は、腎デナーベーションに関するすべての臨床試験(日本でのHTN-Japanを含む)を一時中断し、詳細な分析結果より今後の方向性を判断するとしている。 腎デナーベーションは、脳と腎の間で血圧調整シグナルを伝えている腎交感神経を、腎動脈にカテーテルを挿入し、高周波によって遮断する治療法。腎デナーベーションが治療抵抗性高血圧患者の血圧を低下させることはすでに示されていた。治療中の高血圧者の10%以上で、異なるクラスの降圧薬を3剤以上投与しても血圧が目標値にまで下がらない治療抵抗性高血圧が存在すると報告されており、腎デナーベーションは治療抵抗性高血圧の革新的な治療法として期待されていた。【参照コンテンツ】カテーテルベースの腎除神経術、治療抵抗性高血圧の降圧に有用治療抵抗性高血圧の根治術:腎交感神経アブレーションの無作為比較試験・The Symplicity HTN-2 Trialのエビデンス治療抵抗性高血圧患者への腎アブレーション:施行3年後の成績/Lancet高血圧はカテーテルで治す時代がくるか? SYMPLICITY HTN-3 は、治療抵抗性高血圧症(収縮期血圧≧160 mmHg)を対象とし、腎デナーベーションの安全性と有効性を評価するために設計された無作為化盲検化比較試験で、腎動脈にカテーテルを挿入するが高周波を発生させないという対照群を置いた試験はこれが初めて。試験期間中、全対象が降圧薬の服用を継続するという設計であった。主要エンドポイントは、6ヵ月時点における外来血圧と主要な有害事象の発生率。 わが国でも迅速かつ慎重に本治療の導入活動をしてきた日本高血圧学会は、1月15日、このニュースを公式サイトで紹介している。腎神経焼灼術に基づいた高血圧治療についての米国からのニュース

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CPAPによって睡眠時無呼吸症候群の24時間血圧が低下/JAMA

 治療抵抗性高血圧と睡眠時無呼吸症候群(OSA)を有する患者について、12週間の持続的気道陽圧(CPAP)療法は、薬物療法のみの場合と比較して、24時間平均血圧や拡張期血圧が低下し、夜間血圧パターンを改善することが示された。スペイン・Hospital Universitario y Politecnico La FeのMiguel-Angel Martinez-Garcia氏らによる無作為化試験HIPARCOの結果、報告された。治療抵抗性高血圧患者では70%以上がOSAを有している。しかしこれまで、血圧へのCPAP療法の効果に関するエビデンスは、ほとんど示されていなかった。JAMA誌2013年12月11日号掲載の報告より。194例の患者を無作為化し12週間後に評価 HIPARCO試験は、OSAを有する治療抵抗性高血圧患者の血圧値と夜間血圧パターンについて、CPAP療法の効果を評価することを目的とした、オープンラベル無作為化多施設共同試験(スペイン国内の教育病院24施設)であった。エンドポイントはマスクされたパラレル群によるデザイン設定で行われた。 被験者は、無呼吸・低呼吸指数(AHI)15以上の治療抵抗性高血圧患者194例で、薬物療法で標準血圧コントロールを維持しながら、CPAPの介入または非介入を受けた。 2009年6月~2011年10月のデータが集められintention-to-treat(ITT)にて分析された。主要エンドポイントは、12週間後の24時間平均血圧の変化であった。副次エンドポイントには、その他血圧値の変化、夜間血圧パターンの変化などが含まれた。夜間血圧が10%低下するdipper型患者が、CPAP群は非CPAP群の2.4倍に 194例は、CPAP介入群98例、非介入(対照)群96例に無作為化された。平均AHIは40.4(SD 18.9)、1人当たりが服用していた降圧薬数は平均3.8剤だった。ベースライン時の24時間平均血圧は103.4mmHg、収縮期血圧(SBP)144.2mmHg、拡張期血圧(DBP)83mmHgだった。また、ベースライン時にdipper型(平均日中血圧と比べて平均夜間血圧が10%以上低下)を示していた患者は25.8%だった。 介入群で、CPAPを1日4時間以上使用した患者の割合は72.4%だった。 結果、試験期間全体における血圧の変化(ITT解析)は、24時間血圧[3.1mmHg、95%信頼区間[CI]:0.6~5.6、p=0.02]、24時間DBP[3.2mmHg、同:1.0~5.4、p=0.005]については、CPAP群のほうが有意に大きかった。24時間SBPについては、変化は有意ではなかった[3.1mmHg、同:-0.6~6.7、p=0.10]。 さらに、追跡12週間時点でdipper型を示した患者の割合は、CPAP群が有意に多かった(35.9%対21.6%、補正後オッズ比[OR]:2.4、95%CI:1.2~5.1、p=0.02)。 CPAP使用時間と、24時間平均血圧の低下(r=0.29、p=0.006)、SBPの低下(r=0.25、p=0.02)、DBPの低下(r=0.30、p=0.005)には、有意な正の相関関係が認められた。 これらの結果について著者は、さらなる研究により長期の健康アウトカムを評価していく必要があるとまとめている。

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CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。  被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について平均3.5年の追跡を受けた。 動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVSは、腎機能障害増悪を予防し、透析導入回避、血圧コントロール改善、さらに心血管疾患発症予防に有用である可能性が報告されてきた1)。たしかに、RRVSにて腎機能改善、血圧コントロール改善、心不全改善の症例を経験する。しかし、われわれがRRVSの効果を認める症例は一部であり、多くの症例はRRVSの効果を明確に確認できないことを経験的に知っている。しかし、RRVSの恩恵を受ける症例を選別する方法がなく、一方、RRVS実施がデメリットである十分な根拠もない。ゆえに、血圧・腎機能が安定した動脈硬化性腎動脈狭窄症例について、その診療方針は十分確立されていなかった1)。 ASTRAL研究は、2009年に報告された動脈硬化性腎動脈狭窄症例における腎機能・血圧に対するRRVSの効果を検討する前向き研究であり、RRVSの効果に否定的な研究結果であった2)。しかし、ASTRAL研究では、“腎動脈狭窄の程度評価が厳密でなく”、“重症狭窄例は各施設試験担当者がRRVSを実施していた”などの問題が指摘されていた。 CORAL研究は、こうした先行研究の限界に解答を提示した。CORAL研究は、腎動脈狭窄の程度はCore laboで確認され、薬物治療群、薬物+RRVS群の割り振りもランダム化して実施された。そして血圧コントロールが不良でなく、かつ、腎機能障害がないか軽度で増悪を認めない動脈硬化性腎動脈症例では、RRVSを実施する大きなメリット(腎機能障害改善、心血管疾患発症予防、顕著な降圧効果)がないことを示した。 一方、高齢者では潜在性の動脈硬化性腎臓脈狭窄の症例は多数存在するとする報告がある(65歳以上では6%に腎動脈狭窄を合併する)3)。しかし、そういった症例を積極的に検出する臨床的意義は明確にされていなかった。CORAL研究の結果は、高齢者で腎機能・血圧が安定している症例では、積極的に腎動脈狭窄を検出する必要性が少ないことも示唆している。 これまでRRVS実施が推奨される症例として、1.血圧コントロールが不良になった。2.腎機能障害が進展増悪している。3.原因不明の肺水腫、心不全を繰り返す。などが挙げられていた1)。 しかし、CORAL研究では難治性高血圧、3ヵ月以内の心不全発症、血清クレアチニン 3.0mg/dL以上の症例は除外している。ゆえに、CORAL研究はこのようなRRVS実施推奨例へのRRVS実施の妥当性を検証する研究ではない。 CORAL研究の結果を踏まえてわれわれができることは、1.降圧薬で血圧がコントロールされ、血清クレアチニン 3.0mg/dL以下で腎機能障害の増悪のない症例にはRRVS実施の必要はなく、慎重な経過観察を行う。そして、血圧コントロール不良・腎機能の増悪を認めた場合にRRVS実施の可否を検討する。ただし、今後こういった症例に対する新たな治療法が開発される可能性もある4)。2.難治性高血圧、腎機能障害増悪、原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全の症例については基本、これまでと同様の診療方針となる。ただし、CORAL研究では、RRVS施行は薬物治療単独実施群にくらべて有意に血圧を低下させるが、顕著な降圧は得られなかった。ゆえに、難治性高血圧症例にはRRVSと腎交感神経焼灼術の併用も将来的に検討する必要がある1)。また、CORAL研究では3ヵ月以上前に発症した心不全の既往はRRVSの効果への有意な影響因子でないことが確認されている。ゆえに、単に心不全の既往のみでRRVS実施の有用性を判断するのは否定的と考えられる。原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全をRRVS実施の根拠とする場合は慎重に適応を検討する必要がある。さらに、腎機能増悪については血清クレアチニン 3.0mg/dL以上への増加が一つの目安となるかも知れない。 いずれにしても、CORAL研究にて、動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVS実施の可否をIntervention実施医師のみで決定することは終焉を迎えた。今後、動脈硬化性腎動脈狭窄症例の診療には、高血圧専門医、腎臓専門医、循環器専門医が、密接なコミュニケーションをもってあたることが適切である。

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脳梗塞急性期の積極的な降圧治療は2週間後の転帰を改善するか?/JAMA

 虚血性脳卒中患者の急性期における降圧治療は、死亡や身体機能障害の抑制に寄与しないことが、米国・チューレーン大学のJiang He氏らが行ったCATIS試験で示された。高血圧患者や脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴を有する正常血圧者では、降圧治療により脳卒中のリスクが低減することが報告されている。脳卒中の1次および2次予防における降圧のベネフィットは確立されているが、血圧の上昇がみられる急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の効果は知られていないという。JAMA誌オンライン版2013年11月17日号掲載の報告。急性期の降圧治療の予後改善効果を無作為化試験で評価 CATIS(China Antihypertensive Trial in Acute Ischemic Stroke)試験は、急性虚血性脳卒中患者に対する降圧治療の有用性を評価する多施設共同単盲検無作為化試験。発症後48時間以内、血圧の上昇が認められる虚血性脳卒中患者を対象とした。 被験者は、入院期間中に降圧治療を施行する群または施行しない群に無作為に割り付けられた。降圧治療群は、割り付け後24時間以内に収縮期血圧を10~25%低下させ、7日以内に140/90mmHgを達成し、これを入院期間中維持することを目標とした。 割り付け情報は、治療医や看護師にはマスクされなかったが、患者やデータの収集を行った研究者にはマスクされた。主要評価項目は、割り付け後14日以内の死亡、14日時の重篤な身体機能障害(修正Rankinスケール:3~5)、14日以前に退院した場合は退院時の重篤な身体機能障害とした。収縮期血圧は有意に低下したが 2009年8月~2013年5月までに、中国の26施設から4,071例が登録され、降圧治療群に2,038例が、対照群には2,033例が割り付けられた。全体の平均年齢は62.0歳、男性が64.0%で、入院時に49.1%が降圧薬を投与されており、77.9%が血栓性脳卒中であった。 割り付けから24時間以内に、平均収縮期血圧は降圧治療群が166.7mmHgから144.7mmHgまで12.7%低下したのに対し、対照群は165.6mmHgから152.9mmHgまで7.2%の低下であり、有意な差が認められた(群間差:-5.5%、95%信頼区間[CI]:-4.9~-6.1、絶対差:-9.1mmHg、95%CI:-10.2~-8.1、p<0.001)。また、割り付けから7日の時点で、平均収縮期血圧は降圧治療群が137.3mmHg、対照群は146.5mmHgと、有意差がみられた(群間差:-9.3mmHg、95%CI:-10.1~-8.4、p<0.001)。 このように急性期の降圧効果に差を認めたにもかかわらず、14日または退院時の主要評価項目の発生には両群間に差はなかった(イベント発生数:降圧治療群683件、対照群681件、オッズ比:1.00、95%CI:0.88~1.14、p=0.98)。さらに、副次評価項目である3ヵ月後の死亡または重篤な身体機能障害の発生も、両群で同等であった(イベント発生数:降圧治療群500件、対照群502件、オッズ比:0.99、95%CI:0.86~1.15、p=0.93)。 著者は、「急性虚血性脳卒中患者では、降圧治療により血圧の低下を達成しても、入院中は降圧治療を中止した患者と比較して、急性期の死亡や重篤な身体機能障害の抑制にはつながらないことが示された」と結論し、「本試験は中国人患者のみを対象としており、全体の約3分の1にヘパリンが投与されるなど欧米の急性脳卒中の管理とは異なる部分もあるが、以前の検討では中国人と欧米人で急性脳卒中と血圧低下の関連に差はないことが報告されている」と考察している。

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腎動脈ステントは薬物療法を超えるか?/NEJM

 アテローム硬化性腎動脈狭窄で、高血圧あるいは慢性腎臓病を有する患者への腎動脈ステントは、薬物療法単独と比べて臨床イベントの予防に関して有意なベネフィットをもたらさないことが明らかになった。米国・トレド大学のChristopher J. Cooper氏らによる多施設共同オープンラベル無作為化対照試験「CORAL」の結果、報告された。高齢者に一般的にみられるアテローム硬化性腎動脈狭窄について、先行研究2件において、腎動脈ステントは腎機能改善にベネフィットがないことが示されていた。しかし、重大有害腎・心血管イベント予防に関しては不明であったことから本検討が行われた。NEJM誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。947例を薬物療法+ステント群と薬物療法単独群に無作為化して追跡 CORAL試験は、2005年5月16日~2010年1月30日の間に、5,322例がスクリーニングを受け、適格であった947例を無作為化して行われた。対象は、重症腎動脈狭窄で(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する患者であった。 被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について2012年9月28日まで追跡を受けた。 評価は、試験開始後に同意を得ていた1施設16例を除外した931例(ステント群459例、薬物療法単独群472例)をintention-to-treat解析して行われた主要複合エンドポイント、全死因死亡の発生に有意差みられない 追跡期間中央値は、43ヵ月(範囲:31~55ヵ月)だった。 ステント群は、狭窄が68±11%から16±8%に有意に改善した(p<0.001)。透析導入は、両群共に無作為化後30日以内ではいなかったが、ステント群で30~90日に1例で開始となった。また薬物療法単独群で、無作為化当日に致死的脳卒中が1例発生した。 主要複合エンドポイントの発生は、両群間で有意差はみられなかった(ステント群35.1%vs. 薬物療法単独群35.8%、ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.76~1.17、p=0.58)。 また、主要エンドポイントの各項目についても有意差はなかった。全死因死亡についても有意差はなかった(同:13.7%vs. 16.1%、0.80、0.58~1.12、p=0.20)。 ベースライン時の被験者の降圧薬服用数は、2.1±1.6剤だった。試験終了時の同服用数は、ステント群3.3±1.5剤、薬物療法単独群3.5±1.4剤で両群間に有意差はなかった(p=0.24)。 SBPの降圧は、ステント群16.6±21.2mmHg、薬物療法単独群15.6±25.8mmHgで、縦断的解析の結果、わずかだがステント群のほうが降圧効果は大きかった(-2.3mmHg、95%CI:-4.4~-0.2mmHg、p=0.03)。両群の差は追跡期間中、一貫してみられた。

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糖尿病患者の腎保護作用を期待できる降圧薬は?(コメンテーター:浦 信行 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(157)より-

まず、在来の臨床研究では尿蛋白低減効果をエンドポイントとしたものが多いが、このメタ解析のエンドポイントをハードエンドポイントである血清クレアチニン濃度の倍化、末期腎不全、死亡としたことに意義がある。われわれの最終目標は腎障害進展抑制、生命予後改善だからである。 結果は、クレアチニンの倍化に関しては、ACE阻害薬でのみ有意な抑制効果が認められた。また、有意とはならなかったものの、ACE阻害薬が他剤、とりわけARBよりも数字的には良好であったとのことである。ACE阻害薬の糖尿病性腎症に対する効果を改めて示したことには、大きな価値がある。 しかし、本来であればACE阻害薬とARB間でのhead to headの臨床研究で、血圧値をマッチさせた成績が最も価値がある。そのような研究で大規模なものが極めて少ないため、メタ解析で評価するのはやむを得ないが、限界があることを留意した解釈が必要である。著者も述べているように、メタ解析では同じクラスの薬剤でも種類が違い、使用量の違いがある。従来の報告では、同じARBの中での薬剤間の差を報告したものが複数で認められる。また、降圧度や血圧値の差も検討されていない。どのような薬剤で降圧しようが、腎保護作用はまず血圧値に依存する。少なくともRA阻害薬による降圧度は、RA系阻害の程度を表すものであるから、それに差があるとすれば正当な評価はできにくくなる。 したがって、著者らも結論で述べているように、今回のメタ解析では糖尿病における腎障害進展抑制効果はACE阻害薬で明らかであった。また、ARBに関してはACE阻害薬に対する優位性は認められなかった、ということで理解できると考えられる。

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β遮断薬はメラノーマの再発・死亡リスク低下に関連

 イタリア・フローレンス大学のVincenzo De Giorgi氏らは、1993~2009年にわたる741例の連続患者を対象に、メラノーマ(悪性黒色腫)の再発および死亡に対するβ遮断薬とそのほかの降圧薬の影響について検討した結果、β遮断薬は同リスク低下と関連しているという以前と同様の所見が得られたことを報告した。著者は、今回の結果は、その関連をより確定的なものとするために、無作為化試験による検討が必要であることをも強く示す結果であると述べている。Mayo Clinic Proceedings誌2013年11月号の掲載報告。 検討は、1993年1月1日~2009年12月31日の間、フローレンス大学の皮膚科部門でメラノーマと診断された全連続患者のデータを入手して行われた。 被験者は、ベースライン時にメラノーマの既往とその他難病を有する場合は除外された。また診断時に、臓器、リンパ、転移巣が認められた患者も除外された。 主な結果は以下のとおり。・メラノーマを有していた741例の連続患者のうち、β遮断薬を1年以上服用していた患者(大半が高血圧の治療目的のため)は、79例(11%)であった。非服用患者は662例(89%)であった。・多変量Coxモデル解析の結果、服用群はフォローアップ中央値4年後の全生存率が有意に改善された(p=0.005)。・β遮断薬服用者は、年間38%ずつリスクが減少していた。・高血圧の罹患、降圧薬服用が1年以上、あるいはそのほかの頻度の高い薬物服用は、メラノーマの患者の良好なアウトカムと関連がみられなかった。

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腎除神経術の降圧効果は3年間持続、しかし降圧薬使用量の減少はみられず(コメンテーター:桑島 巌 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(148)より-

利尿薬を含む3剤以上の降圧薬を使用しているにも関わらず収縮期血圧が160mmHg以上の、いわゆる“治療抵抗性高血圧”に対する、腎除神経術(RND)3年間の追跡結果である。 RNDの効果は一過性であるとの見方もあったが、結果的には降圧効果は3年後にも持続することが確認されたという点で意義のある論文といえる。また、経年的に降圧効果が増強していく傾向も認められている点や、腎機能、年齢に関わりなく降圧効果が持続することも確認されている。さらに手技にともなう有害事象も少ないことも証明されたと報告している。 本報告は、試験可能であった150例のうち、途中で試験完遂した35例、データ欠落や脱落の27例などは当然除かれており、3年間追跡しえた88例のみでの分析であることは、留意しておく必要がある。 また、降圧薬の使用量がRND後経年的に増えているのも気になる。術前に適切な治療が行われていたのか否かも問題となる。とくに本研究は、スポンサーであるMedtronic社がデータ収集と解析を行っている点も気になる点である。 しかし、これらのlimitationを考慮しても、RNDが治療抵抗性高血圧患者に対して福音であることはまちがいないであろうが、わが国ではなかなか治験が進行していないようである。その理由として、わが国のような家庭血圧や24時間血圧の臨床応用が進んでいる国では、本当の意味での治療抵抗性患者がそれほど多くないか、あるいはいたとしてもすでに腎機能が悪化しており、RND適応基準を満たさなくなっている症例が多いのではないかと推測される。※コメントの一部に誤りがありましたので訂正します。関係者にお詫び申し上げます。

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治療抵抗性高血圧患者への腎アブレーション:施行3年後の成績/Lancet

 治療抵抗性高血圧患者に対するラジオ波アブレーション腎除神経術(RDN)は、3年時点でも十分な降圧効果が認められたことが報告された。オーストラリア・モナシュ大学のHenry Krum氏らが同施術患者を長期に追跡したSymplicity HTN-1試験の最終報告として発表した。すでに同試験における術後1ヵ月、12ヵ月時点の評価において、同施術は治療抵抗性高血圧患者の血圧を大幅に下げることが示されていた。Lancet誌オンライン版2013年11月6日号掲載の報告より。有効性と安全性を6ヵ月ごとに評価し1年ごとに報告 Symplicity HTN-1試験は、長期3年にわたる有効性と安全性について評価することを目的としたオープンラベル試験で、オーストラリア、ヨーロッパ、米国の19施設で登録され153例のうち、同意を得た111例がフォローアップを受けた。 被験者は、適量投与の利尿薬を含む、少なくとも3剤併用降圧治療を受けている収縮期血圧160mmHg以上の患者を適格とした。 フォローアップでは、6ヵ月ごとに診察室血圧と安全性の評価が行われ、12ヵ月ごとに評価の報告が行われた。36ヵ月時点の血圧の低下-32.0/-14.4mmHg、10mmHg超降圧達成93% 36ヵ月時点で、患者88例から完全なデータを入手できた。それら患者のベースライン時の平均年齢は57歳(SD 11)、女性患者が37例(42%)、2型糖尿病を有する患者は25例(28%)、平均eGFR値85(SD 19)mL/分/1.73m2、平均血圧値175/98(SD 16/14)mmHgであった。 結果、36ヵ月時点でも有意な変化が、収縮期血圧(-32.0mmHg、95%信頼区間[CI]:-35.7~-28.2)、拡張期血圧(-14.4 mmHg、同:-16.9~-11.9)にみられた。 収縮期血圧の10mmHg超降圧を達成した患者は、1ヵ月時点で69%、6ヵ月時点81%、12ヵ月時点85%、24ヵ月時点83%、36ヵ月時点では93%だった。また36ヵ月時点の20mmHg超降圧達成患者は77%だった。 降圧効果は、年齢、腎機能、2型糖尿病有無の別でみた場合も有意な格差はみられなかった。 服用降圧薬の平均剤数は、ベースライン時5.0剤(SD 1.7)(全被験者)、36ヵ月時点5.2剤(SD 1.7)(同時点評価者)だった。 安全性については、追跡期間中、腎動脈狭窄1例、死亡3例が発生したがRDNとは無関係だった。

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CKDでも、RA系阻害薬にBeyond Blood Pressure Lowering効果は認められない。(コメンテーター:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(146)より-

これまでの多くの基礎研究の成果から、RA系阻害薬には、他のクラスの降圧薬にはないextraordinaryな効果があるとされてきた。 ARBを対象にしたKyoto Heart Studyや、Jikei Heart Studyなどの日本発臨床研究は、このような基礎研究の成果によって導かれたConceptを証明する、いわばProof Of Conceptとなる研究であり、その意味で画期的であったが、データ改ざんによる不正によって論文撤回という事態を招いてしまった。 臨床研究であっても、基礎研究であっても、『RA系阻害薬に降圧を超えた効果があるか?』というClinical Questionに対する答えが複数存在するわけではない。基礎研究であるならば、対象となる実験動物特有のヒトと異なる生物学的背景(マウスには、レニンが複数存在するものもあり、I型アンジオテンシン受容体は2種類あるなど、必ずしもヒトと同一のRA系ではない)であったり、人為的な実験条件による結果のバイアスがもたらした誤った結論である可能性も無視はできない。 EBMでは、エビデンスのピラミッドとして一次文献、二次文献に階層的な地位を与えている。ランダム化比較試験の結果はEBMの最も重要な一次文献であるが、一次文献を集めたメタ解析、システマチック・レビューの結果が、より上位のエビデンスと考えられている。 BPLTTC(Blood Pressure Lowering Treatment Trialist Collaboration)は、WHOとISHという公的な団体が、降圧薬の薬効に関して、中立な立場から研究・解析を行ったメタ解析である1)。これまでに、ACE阻害薬とARBについて、虚血性心疾患をエンドポイントにして、降圧効果と心血管イベント抑制効果の違いを明らかにする成果を上げている2)。BPLTTCによる解析の精度を示すエピソードとして、ONTARGET研究の結果が両薬剤の回帰直線上にプロットされることがあげられ、BPLTTCによる解析がランダム化比較試験の結果を予測しうる精度をもっていると考えられる。 今回の研究は、BPLTTCグループのオーストラリア・シドニー大学のV Perkovic氏らによる、CKDに対する降圧薬の効果についてのメタ解析である。結果は、降圧による心血管イベント抑制効果を支持したが、降圧薬のクラスエフェクトは認められなかった。 CKD診療のミッションは、『心血管イベント抑制』と『腎保護』の両立にある。『腎保護』について、直近のVA NEPHRON-D研究の結果だけでなく、多くの研究がRA系阻害薬の限界を明らかにしている3)。降圧だけが治療の選択肢ではないが、『腎保護』に対する降圧の有効性について、BPLTTCによる質の高いメタ解析が待たれる。

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糖尿病患者へのベスト降圧薬は?/BMJ

 糖尿病患者における腎保護効果はACE阻害薬のみで認められ、ARBがACE阻害薬と比べて良好な効果を示すというエビデンスはみつからなかったことが、台湾・亜東記念医院のHon-Yen Wu氏らによるシステマティックレビューとベイズネットワークメタ解析の結果、報告された。結果を踏まえて著者は「薬剤コストを考慮した場合、今回の知見において、糖尿病患者の降圧薬の第一選択はACE阻害薬とすることを支持するものであった。そして十分な降圧が得られない場合は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用療法とするのが好ましいだろう」と結論している。BMJ誌オンライン版2013年10月24日号掲載の報告より。単独・併用を含む降圧治療についてベイズネットワークメタ解析 コストを考慮しない場合、主要なガイドラインでは、糖尿病を有する高血圧患者の降圧薬の第一選択は、ACE阻害薬またはARBを提唱している。しかしこれまでACE阻害薬とARBを比較した臨床試験は稀有であり、糖尿病患者に関する両薬剤間の腎保護効果の差は不確定で、RA系阻害薬との併用療法の選択についてコンセンサスは得られていなかった。 研究グループは本検討で、糖尿病患者における異なるクラスの降圧薬治療(単独・併用含む)の、生存への影響および主要腎転帰への効果について評価することを目的とした。 PubMed、Medline、Scopus、Cochrane Libraryの電子データベースで2011年12月までに公表された文献を検索した。適格とした試験は、糖尿病高血圧患者を対象とし、追跡期間が12ヵ月以上の降圧治療(ACE阻害薬、ARB、α遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、利尿薬、およびこれらの併用)の無作為化試験で、全死因死亡、透析導入または血清クレアチニン濃度倍増を報告していたものとした。 ベイズネットワークメタ解析では、直接的および間接的エビデンスを組み合わせ、治療間の効果の相対的評価、および保護効果に基づく治療ランキングの見込みを算出した。死亡抑制の最善治療はACE阻害薬+Ca拮抗薬 解析には、63試験・3万6,917例が組み込まれた。死亡例は2,400例、透析導入は766例、血清クレアチニン濃度倍増報告例は1,099例だった。 血清クレアチニン濃度倍増について、プラセボとの比較で有意に減少したのは、ACE阻害薬のみであった(オッズ比[OR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.32~0.90)。治療戦略間の比較(ACE阻害薬vs. ARB)では有意差は示されなかったが、最善の治療である確率はACE阻害薬が最も高かった。 末期腎不全(ESRD)への降圧治療の効果については、その転帰に関して治療間の有意差はみられなかったが、ESRD発生を最も抑制したのはACE阻害薬であった(OR:0.71)。次いでわずかな差でARBが続いていた(OR:0.73)。 死亡率で有意差が示されたのは、β遮断薬のみであった(同:7.13、1.37~41.39)。 ACE阻害薬の薬効は必ずしも有意ではなかったが、3つのアウトカムについて一貫してARBよりも効果が優れることを示す高位の位置を占めていた。 プラセボと比較した死亡を抑制する最善の治療は、ACE阻害薬+Ca拮抗薬が、統計的有意差は示されなかったが最も高率(73.9%)であることが示された。次いで、ACE阻害薬+利尿薬(12.5%)、ACE阻害薬(2.0%)、Ca拮抗薬(1.2%)、そしてARB(0.4%)であった。

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