サイト内検索|page:26

検索結果 合計:699件 表示位置:501 - 520

501.

脳卒中急性期の高血圧管理は、効果がない? ~無数のCQに、臨床試験は応えられるのか -ENOS試験の教訓~(解説:石上 友章 氏)-279

 臨床試験は、臨床現場の葛藤に回答を与えてくれることが期待されている。結果の不確実な選択肢に対して、丁半博打のような行為を繰り返す愚を回避するための、有力で科学的な解決策である。しかし、臨床現場のクリニカル・クエスチョン(CQ)は、有限個であるとはいっても、無数に存在する。1つのCQに、1つの臨床試験が確度の高い回答を与えてくれるとは限らない。CQを解決するつもりで行った臨床試験が、未知のCQを発掘することもある。また、臨床試験にかかるコストは、費用だけではない。人的なコスト、時間的なコストも莫大にかかるので、こうしたコストに見合った結果が得られるのかは、重大な関心事であろう。 ENOS試験の結果、脳卒中急性期の高血圧を有する患者の90日後のmodified Rankin Scoreで評価する脳卒中後のperformanceについて、ニトログリセリン貼付剤の有効性は証明されなかった。一方、ニトログリセリン貼付剤による降圧効果は、有意に認められた。同時に、降圧薬を内服中だった対象について、降圧薬のon/offを比較したデザインの試験も実施したが、こちらも有意差がなかった。しかしながら、後者については、Barthel Index、 t-MMSE score、 TICS-M scoreには有意差がついており、発症前の降圧療法の継続は正当化される可能性がある。 脳卒中急性期の血圧上昇は、病態を修正する生理学的な適応なのか、あるいは出血を拡大する病態なのか、脳血流の維持をもたらす前者のような現象であれば、降圧療法は正当化されない可能性があるし、後者のような病態であれば、降圧療法は正当化されるであろう。ENOS試験では、急性期のニトログリセリン貼付剤による降圧は正当化されなかった。しかし、他の降圧薬の使用による降圧の有効性について、疑問を解決してはいない、新たな臨床試験が必要であろう。一方、ベースラインの降圧療法の継続は、正当化されそうである。 ENOS試験の結果は、脳卒中診療における重要なCQに回答を与える。しかし、本研究が、約12年にわたる(2001年7月20日~2013年10月14日)エントリー期間をかけていることは、少なからず驚愕に値する。本研究では、脳卒中急性期の誤嚥を意識して、経口薬ではなく貼付剤を選択している。研究に関わる資金源は、各国の公的な資金を元にしており、COIについても、中立性が高い。これほどの長期間にわたるサポートがなされたことは、敬意に値する。しかし12年の間に、脳卒中診療も激変しているだろう。どこまで時宜に即している研究か、一定の基準に基づいたEBMの定性的な評価も必要であろう。

503.

肥満者の降圧治療、心血管効果に差はない/Lancet

 降圧治療の心血管イベントへの影響は、痩せている患者と肥満患者で、降圧薬の選択によって大きく変わることはほとんどないことが示された。オーストラリア・シドニー大学のAndrew Ying氏らが、無作為化試験22試験・13万5,715例の被験者データをメタ解析した結果、報告した。本検討は、標準体重の人と比べて肥満者の降圧による心血管ベネフィットが、選択した薬によって異なるのではないかとの仮説に基づき行われたものであった。Lancet誌オンライン版2014年11月4日号掲載の報告より。22試験13万5,715例のデータを分析 研究グループは、降圧治療の心血管リスクに対する影響について、ベースライン時のBMI値で分類した患者間で比較を行った。 Ovid Medline、Embaseなどを介して1966年1月1日~2014年5月1日に発表された降圧治療に関する無作為化試験で、BMI値の主要心血管イベントまたは死亡への交互作用を報告していたものを特定し、試験の被験者個人データを用いて、種々のクラスの降圧レジメン間の比較を行った。比較検討は主要6つ(ACE阻害薬vs.プラセボ、Ca拮抗薬vs.プラセボ、強化療法vs.標準療法、ACE阻害薬vs.利尿薬またはβブロッカー、Ca拮抗薬vs.利尿薬またはβブロッカー、ACE阻害薬vs.Ca拮抗薬)について行った。また、BMI値の分類は、3分類(25未満、25~30未満、30以上)または連続変数分類で行った。 検索の結果、分析は31の異なる治療比較が行われていた22試験・13万5,715例の個人データに基づき行われた。主要心血管イベントの発生例は、1万4,353件であった。高度肥満者ではACE阻害薬が若干の保護効果を期待できる? 主要6比較において、BMI値3分類間の保護効果が降圧薬のクラスによって異なるというエビデンスは示されなかった(すべての傾向p>0.20)。 BMI値を連続変数として分析した場合、ACE阻害薬が、Ca拮抗薬(BMI値が5増すごとのハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.98、p=0.004)、利尿薬(同:0.93、0.89~0.98、p=0.002)よりも、わずかだが保護効果が認められた。 一方でメタ回帰分析の結果、BMI値と収縮期血圧の低下におけるリスク低下との関連性は示されなかった。また、これまでの報告とは対照的に、BMI値と、Ca拮抗薬の有効性(vs.利尿薬)との相関も認めることができなかった。 著者は、「結論として、今回の分析は、降圧治療効果の修正因子としてBMI値は影響はあるだろうとの洞察を十分に与えるものである。ACE阻害薬は最もBMI値によって異なる効果があると思われ、おそらくBMIがより高値な人では心血管保護効果がわずかだがあると思われる。しかし、十分な説得力のあるエビデンスはない。また、データ的に、臨床に変化を提供するような強力なケースはなく、とくに肥満患者向けにというクラスの降圧薬はない」とまとめている。

504.

肥満合併高血圧に対してどの降圧薬が優れているか?:BPLTTCによるメタ解析(解説:桑島 巌 氏)-276

BPLTTCは世界で最も信頼性の高いメタ解析グループであり、近年相次いで降圧薬に関するメタ解析結果を発表している。 本論文は、以前から問題にされていた肥満に合併した降圧薬に対する心血管合併症予防効果について、4種類の降圧薬(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、降圧利尿薬、β遮断薬)のうちどの薬剤が最も優れているかについて、22トライアル約13万5,715人のデータから検討した結果である。 その結果、ACE阻害薬はプラセボと比較した場合、有意性が若干認められたが、連続変数としてみた場合にはその有意性は消失していた。 ACE阻害薬のCa拮抗薬に対する優位性はBMI 30以上の高度肥満に限定していたが、5kg体重上昇ごとの連続変数としてみた場合にはACE阻害薬の優位性が観察された。 このように肥満度ごとの比較と、連続変数として比較した場合に乖離がみられることから、結果は偶然性の可能性もあるとして、著者らは肥満に対する降圧薬の有効性には大きな差はみられなかったと結論している。むしろどのBMIレベルでも降圧に依存して心血管イベントリスクが減少することから、降圧薬の種類にかかわらず降圧そのものが重要ということになる。

505.

脳卒中患者への降圧治療、身体機能改善せず/Lancet

 高血圧を伴う脳卒中患者に対する降圧治療は、血圧の低下はもたらすものの、身体機能は改善しないことが、英国・ノッティンガム大学のPhilip M W Bath氏らが行ったENOS試験で示された。脳卒中発症後の高血圧は不良な予後と関連することが知られているが、発症後早期の降圧治療の必要性や、投与中の降圧薬継続の是非は明らかにされていないという。Lancet誌オンライン版2014年10月22日号掲載の報告。GTNパッチによる脳卒中の機能改善効果を評価 ENOS試験は、高血圧を伴う急性脳卒中に対するニトログリセリンの有用性を評価する国際無作為化試験。対象は、18歳以上、虚血性または出血性の脳卒中で入院し、四肢の運動障害がみられ、収縮期血圧が140~220mmHgの患者であった。 被験者は、発症後48時間以内にニトログリセリン経皮吸収型製剤(5mg/日)の投与を開始し、7日間継続する群(GTNパッチ群)または投与を行わない群(対照群)に無作為に割り付けられた。また、脳卒中発症前に降圧薬の投与を受けていた患者は、継続投与する群(継続群)または中止する群(中止群)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は90日後の身体機能(修正Rankinスケール)とし、治療割り付け情報を知らされていない研究者が判定を行った。今後は超早期の降圧治療の試験を 2001年7月20日~2013年10月14日までに、23ヵ国173施設から4,011例が登録され、GTNパッチ群に2,000例、対照群には2,011例が割り付けられた。2,097例(52%)が脳卒中発症前から降圧薬治療を受けており、継続群に1,053例、中止群には1,044例が割り付けられた。 4つの群の平均年齢は70~73歳、男性が50~57%で、虚血性脳卒中が83~88%であった。アジア人の割合は10~14%であった。 ベースライン(脳卒中発症から中央値で26時間後)の平均血圧は、GTNパッチ群が167(SD 19)/90(13)mmHg、非GTNパッチ群は167(19)/89(13)mmHgであり、継続群は166(19)/88(13)mmHg、中止群は168(19)/89(13)mmHgであった。 第1日目の血圧低下の程度は、GTNパッチ群が対照群に比べ有意に大きかった(群間差:-7.0/-3.5mmHg、収縮期、拡張期ともp<0.0001)。また、第7日目の継続群の血圧低下の程度は中止群よりも有意に大きかった(群間差:-9.5/-5.0mmHg、収縮期、拡張期ともp<0.0001)。 一方、90日目の身体機能は、GTNパッチ群および継続群のいずれにおいても改善しなかった。すなわち、不良な転帰に関する、対照群に対するGTNパッチ群の補正オッズ比(OR)は1.01(95%信頼区間[CI]:0.91~1.13、p=0.83)であり、中止群に対する継続群の補正ORは1.05(95%CI:0.90~1.22、p=0.55)であった。 著者は、「病態が安定して薬剤の再導入が安全に行えるようになるまで、降圧治療を控えるのが適切と考えられる。急性期以降の血管イベントのリスク低減には血圧のコントロールが重要であり、降圧治療の再開が必要となるだろう」とし、「今後は、発症後数時間以内の超早期の降圧治療に焦点を当てた試験を行うべき」と指摘している。

506.

ADVANCE-ON試験:一定期間の降圧治療の有無でも、長期的な心血管イベント発症に影響(解説:桑島 巌 氏)-260

2型糖尿病合併高血圧患者で、大血管障害を予防するためには、血糖管理に加えて、厳格な血圧管理が非常に重要であることは、UKPDS38という有名な臨床試験で証明されていた。しかし、厳格血圧コントロールといっても平均144/82mmHg、通常血圧管理群154/87mmHgという高いレベルでの比較だった。  2007年に発表されているADVANCE試験は、2型糖尿病合併高リスクの症例で平均145/81mmHg、41%が140/90mmHg未満の正常血圧症例を含む症例でのACE阻害薬+利尿薬の心血管合併症(macro, micro)予防効果をプラセボ治療群と比較した試験である。その平均4.4年間の結果では、厳格なACE阻害薬+利尿薬による血圧管理が、プラセボに比べて大血管および細小血管障害を有意に抑制したことが報告されている1)。また、血糖管理に関しても、HbA1c6.5%未満の厳格管理が、標準管理群よりも心血管イベント抑制に有用であることも示されていた。 今回発表のADVANCE-ON試験は、試験終了後ランダム化を終了したあと、さらに血圧管理試験では平均5.9年間、血糖管理試験では5.4年間延長して観察された結果である。延長期間中にはすでに厳格血圧管理群と通常管理群における血圧値の差は消失しており、血糖値もHbA1c6.5%未満の厳格血糖管理群と通常管理群の間でも差は消失していたという。 このことは糖尿病合併高血圧患者における4.4年間における降圧薬治療の違いが、試験終了後5~6年間までも全死亡や心血管死に強く影響することを示した試験として興味深い。 一方、血糖コントロールに関しての厳格管理群と通常管理群との間には、全死亡、心血管死、大血管イベント発症に差はみられず、長期的なメリットは保証されなかった。すなわち血糖管理の遺産効果(legacy effect)について否定的な結果となった。 これら一連の臨床試験結果は、糖尿病患者においては厳格な血圧管理こそ重要であることをあらためて教えてくれる。

507.

エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part2

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、脳梗塞に対する質問に対し、北里大学 西山和利先生に回答いただきました。今回は、"かくれ脳梗塞"に抗血小板薬を使うべき?緊急を要する場合の見極めと対処法は?、高齢患者の内服コンプライアンスを改善するには?についての質問です。俗に使われている言葉で「かくれ脳梗塞」がありますが、かかる病態に抗血栓療法として、抗血小板薬を使う必要性(エビデンスではなく、病理学的な意味)を御教授ください。俗に言う「かくれ脳梗塞」とは、側脳室周囲に無症候性に多発するラクナ梗塞のことかと思います。これを想定して回答いたしますと、ラクナ梗塞に対する抗血栓療法の適応はあります。保険適応としてもラクナ梗塞には抗血小板薬は適応ありとなっていますし、治療ガイドラインでも同様です。ですので、「かくれ脳梗塞」が有症候性であれば、治療の適応があるわけです。脳梗塞の直接的な症状である片麻痺や構音障害などがなくても、「かくれ脳梗塞」に伴う認知症やパーキンソン症候群などがある場合は、ある意味で有症候性と考えられますので、治療の対象と考えるべきです。しかしながら、全くの無症候性の「かくれ脳梗塞」の場合に治療の適応があるかどうかはcontroversialです。年齢相応の「かくれ脳梗塞」の場合に、敢えて抗血小板薬を使用すべきかどうかについては明確な推奨はありません。日本人では抗血小板薬、特にアスピリン、による脳出血の合併が多いので、軽度の「かくれ脳梗塞」では無用なアスピリンの使用は避けるべきです。ラクナ梗塞型の「かくれ脳梗塞」は高血圧に基づく脳梗塞が多いわけですので、抗血小板薬投与ではなく、むしろ厳格な高血圧の治療を最初に行うべきであると考えられます。年齢相応を超えるような「かくれ脳梗塞」がある場合には、厳格な降圧療法などを行ったうえで、それでも「かくれ脳梗塞」が増加する場合には、抗血小板薬の使用を検討すべきでしょう。その場合、日本人ではアスピリンは脳出血や頭蓋内出血の合併が欧米よりもはるかに多いことが知られていますが、シロスタゾールやクロピドグレルはこうした出血性合併症が少ないというデータがあります。薬剤を選択する上での参考になるかも知れません。緊急を要する場合の見極めと対処法は?脳梗塞は、新規発症の場合は常に緊急の対応を要します。なぜなら、血管が閉塞して生じる脳梗塞では、血管再開通を得て完治をめざすには、発症からの数時間がカギであるからです。ではどのように脳卒中急性期と診断するかですが、急に生じた次のような症状は脳梗塞や脳卒中の可能性があるので、すぐに対応が必要であると考えていただきます。片麻痺(片側半身の運動麻痺)片側の感覚障害、構音障害(話しにくさ)運動失調発症から4.5時間以内であれば、rt-PA(recombinant tissue plasminogen activator)(アルテプラーゼ)静注療法による脳梗塞への超急性期治療が可能かもしれません。また最近ではカテーテルを用いた血栓回収治療などの血管内治療も普及しつつあります。こうした超急性期の治療が奏功すれば、脳梗塞の症状は劇的に改善します。ですので、発症後の時間が浅い脳梗塞症例では緊急で専門医療機関を受診させる必要があります。rt-PA静注療法に関しては、医療機関に到着してから治療開始までに行う検査などに1時間程度かかることが一般的です。発症後4.5時間を経過してしまうと、rt-PA静注療法の効果が減じるだけでなく、治療に伴う脳出血などの合併症の率が跳ね上がります。ですので、発症後4.5時間以内に治療開始というのが本邦でのルールであり、そのためには急性期医療機関に発症後3.5時間以内に到着できるかどうかが治療適応判定の目安になります。睡眠中に発症した脳梗塞など、いつ脳梗塞を発症したのか判然としないの症例もいます。そのような場合には、最後にその患者さんが元気だったことが確認できている時間(これを最終未発症時間と呼びます)をもって発症時間と計算するルールになっています。たとえば、目が覚めた時に片麻痺になっていた症例であれば、睡眠前に元気だったことが確認されている時間をもって発症時間と推定するわけです。高齢患者の内服コンプライアンスを改善するにはどのようにしたらよいのか?高齢者における内服のコンプライアンス不良、これは抗凝固薬に限らず、大きな課題です。若年者や中年までの患者さんでの内服コンプライアンス不良は、仕事や家事が忙しいといった理由が多いようです。ですので、内服回数を少なくしたり、内服しやすい時間帯に内服できるような工夫をしたり、出先でも内服できるような剤型にしたり、ということが大切です。一方、高齢患者での内服コンプライアンスは上記の事項以外にも、認知症のために内服を忘れる、といった理由もあるようです。これに対しては介護者が内服忘れが生じないように協力することが必要ですし、医療機関への受診頻度を上げて、適切に内服しているかどうかの確認をかかりつけ医がまめに行っていくことも重要でしょう。もちろん、高齢患者においても、内服回数が少なくてすむように工夫する、合剤を利用して錠数を減らす、といったことはコンプライアンスの改善につながると考えられます。

508.

糖尿病患者への降圧治療、長期死亡リスク減/NEJM

 オーストラリア・ジョージ国際保健研究所のSophia Zoungas氏らは、ADVANCE試験被験者について試験後フォローアップしたADVANCE-ON試験6年時点の結果を発表した。2型糖尿病患者への降圧治療および強化血糖コントロール介入の、長期的なベネフィットについて評価した本検討において、降圧治療の死亡に対する有益性は介入終了後も減弱はするものの明白に認められた。その一方で、強化血糖コントロールの影響については、長期的な死亡および大血管イベントに対する有益性のエビデンスが認められなかったという。NEJM誌オンライン版2014年9月19日号掲載の報告より。ADVANCE被験者を試験後フォローアップ ADVANCE試験は、心血管疾患リスク因子を有する55歳以上の2型糖尿病患者1万1,140例を対象に行われた試験。ACE阻害薬ペリンドプリル(商品名:コバシルほか)+利尿薬インダパミド(同:テナキシル、ナトリックス)の併用療法による降圧治療による死亡の抑制効果が認められた一方、目標HbA1c値6.5%以下とした強化血糖コントロールの死亡に対する抑制効果は示されなかった。 研究グループは、同試験参加者を試験終了後にフォローアップ(ADVANCE-ON試験)。主要エンドポイントは、全死因死亡、主要大血管イベントであった。 ADVANCE試験において被験者は、ペリンドプリル+インダパミド併用またはプラセボ、厳格または標準血糖コントロールを受ける群に無作為に割り付けられていた。降圧群のリスク低下は維持、強化血糖コントロール群はやはりリスク低下みられず ADVANCE試験の被験者1万1,140例のベースライン時特性は同等であった。ADVANCE-ON試験には、そのうち8,494例が参加。追跡期間中央値は、降圧群5.9年、強化血糖コントロール群5.4年であった。試験後初回受診時までに、ADVANCE試験中にみられた両群間の血圧値および血糖値の差は認められなくなっていた。 結果、試験中に降圧群で認められた全死因死亡および心血管死リスクの有意な低下は、試験終了後も減弱はしていたものの維持されたことが認められた。リスク低下のハザード比は、全死因死亡は0.91(95%信頼区間[CI]:0.84~0.99、p=0.03)、主要大血管イベントは0.88(同:0.77~0.99、p=0.04)であった。 一方、強化血糖コントロール群と標準血糖コントロール群間の全死因死亡または主要大血管イベントリスクの差は、フォローアップ期間中において観察されなかった。ハザード比は、全死因死亡1.00(95%CI:0.92~1.08)、主要大血管イベント1.00(同:0.92~1.08)であった。

509.

残業時間と高血圧は逆相関~日本の横断研究

 長時間労働は、心血管疾患リスクの増加と関連しているが高血圧との関係は不明である。J-ECOH(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health)スタディグループの今井 鉄平氏らは、日本の大規模企業研究データを使用して、残業と高血圧の関係を横断研究により検討した。その結果、残業時間と高血圧は逆相関することが示唆された。Chronobiology International誌オンライン版2014年9月17日号に掲載。 参加者は、健康診断データと自己報告の残業データがある4社の労働者5万2,365人。収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬服用者(もしくはその両方)を高血圧と定義した。ロジスティック回帰分析を用いて、残業時間によるカテゴリ(月間45時間未満、45~79時間、80~99時間、100時間以上)別に高血圧のオッズ比(年齢・性別・会社・喫煙状態・BMIを調整)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・高血圧の有病率は残業時間の増加に伴って減少する傾向があった(残業時間の少ないカテゴリから順に17.5%、12.0%、11.1%、9.1%)。・年齢、性別、会社の調整オッズ比(95%信頼区間)は、それぞれ1.00(基準)、0.81(0.75~0.86)、0.73(0.62~0.86)、0.58(0.44~0.76)であった(線形傾向のp<0.001)。・サブコホートにおいて、この逆相関は、他の潜在的な交絡因子を追加調整後も統計的に有意であった。

510.

ガイドラインの正当性の検証は、大規模登録観察研究で!~219万3,425件に上る分娩登録からみた、分娩後急性腎不全のリスクと対策(解説:石上 友章 氏)-244

医療、医学の進歩によって、出産、分娩の安全性が高くなったにもかかわらず、米国・カナダでは、分娩後急性腎不全が増加している。カナダでは、1,000分娩あたり1.6の発生率(2003年)であったのが2.3(2007年)に、米国では、2.3(1998年)が4.5(2008年)に増加している。分娩後急性腎不全は、母親の約2.9%もの高い死亡率をもたらしており、先進国として異例の事態を呈している。 そこで著者らは、同時期に発生率が増加している分娩時異常出血による循環血液量減少、あるいは妊娠高血圧のいずれかが、この逆説的な分娩後急性腎不全の増加に寄与しているのではないかと仮説を立てて、今回の解析を行った。 このような仮説を着想するに至った背景には、周産期の高血圧性疾患の管理ガイドライン(カナダ)において、肺水腫予防のための水分制限、ならびに疼痛管理のための薬剤のコンビネーションが変更されたことがあり、hypovolemia, renal hypoperfusion, nephrotoxicityに由来する急性腎不全が増加した懸念があるためである1)。 ケベック州を除いた全カナダにわたるレジストリーを解析した結果は、分娩時異常出血は、分娩後急性腎不全の増加を説明するものではなかった。意外にも、その増加の原因は、分娩時高血圧、なかでも蛋白尿・子癇前症を伴った高血圧(いわゆる妊娠中毒症)にあった。 ガイドラインは、エビデンスによる最適な治療方針を提供している。分娩時高血圧に対しても、適切な降圧薬や、水分制限を推奨している。本研究の結果からは、こうしたガイドラインの推奨が、現実の分娩時高血圧の臓器保護に無力であったことを示している。 観察研究は、探索的に応用することで、疾病の予後改善につながる治療介入を仮説的に提示することも可能である。本邦でも、本研究のような精度の高い、大規模データベースを実用化することで、医療の標準化につながる重要な仮説提示がなされることが期待されている。

511.

診察室での血圧測定はもういらない?-高血圧診療は、自己測定と薬の自己調整の時代へ(解説:桑島 巌 氏)-240

わが国の高血圧診療は、家庭血圧計で測定した血圧値をもとに降圧薬の増減を判断することが一般的になってきた。診察室血圧値は白衣現象や仮面高血圧を見逃し、適切な血圧管理ができないからである。 さらに、家庭血圧は外来血圧測定に比べて、季節による血圧変化やストレスによる血圧変化を的確にとらえるのに優れている。そして、患者自身が医師による診療に先んじて、自分の普段の血圧値を知ることの利点はきわめて大きい。 したがって、血圧自己管理と降圧薬の自己調整によって、これまでよりも、きめ細かな血圧調整が可能となる。本論文は、まさにそのことを実証してみせたという点で、エポックメイキングの研究成果となろう。 本試験のプロトコールは、高リスクの高血圧症例で、家庭血圧目標を120/75mmHgと設定して降圧薬をあらかじめ決められた3ステップ法で増減してもらう群と、従来のように診察室血圧で血圧管理する群にランダム化して1年間追跡、1年後の診察室血圧を比較するというものである。一次エンドポイントは、1年後の診察室での両群の血圧値の差である。 その結果、ベースラインから1年後への収縮期/拡張期血圧低下は、介入(自己調整群)群のほうが通常診療群よりも9.2/3.4mmHgも大きかったというものである。介入群での1年後の家庭血圧平均値も128.2/73.8mmHgであり、通常診療群の137.8/76.3mmHgより明らかに低い。当然、自己管理群のほうが有意に多くの降圧薬を服用していた(2.22剤vs 1.73剤)にもかかわらず、有害事象には差がなく、安全に自己管理ができていたという。 しかし、本試験は、血圧が極端に高い症例や、起立性低血圧、認知症のある症例、降圧薬を3剤以上処方されている症例は除外されていることに注意が必要である。また、糖尿病、慢性腎臓病、心疾患などを合併する高リスク群が対象でありながら、降圧によるこれら合併症の悪化など、個々の症例で管理すべきことには触れられていない。さらに、家庭血圧が途中で下がりすぎた場合の対処などにも触れられていない。現実には、家庭血圧が極端に下がってきた場合には降圧薬を減らすように指示することはよくあるが、その点についての解析は述べられていない。 しかし、家庭血圧計が普及した今、高血圧診療のあり方を見直す重要なエビデンスではある。

512.

降圧薬投与量の自己調整の有用性/JAMA

 心血管疾患高リスクの高血圧患者の血圧管理について、家庭血圧(自己モニタリング)と降圧薬の自己調整投与を組み合わせた管理は、外来受診時に血圧を測定し医師が投薬を調整する通常ケアによる管理と比較した結果、12ヵ月時点の収縮期血圧は前者のほうが低下したことが示された。英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが行った無作為化試験TASMIN-SRの結果、報告された。これまでに同自己管理手法の有用性は報告されていたが、高リスク患者を対象としたデータは報告されていなかった。JAMA誌2014年8月27日号掲載の報告より。家庭血圧+降圧薬自己調整vs. 通常ケア管理について無作為化試験 試験は2011年3月~2013年1月に非盲検にて、プライマリ・ケアを受けている英国内59施設、552例の患者を対象に行われた。被験者は35歳以上で、脳卒中、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎臓病の病歴があり、試験ベースライン時の血圧値が130/80mmHg以上であった。 介入群(276例)には、自己モニタリングと降圧薬自己調整投与を組み合わせた血圧管理を行い、試験期間中の目標血圧値は、外来受診時130/80mmHg、家庭血圧は120/75mmHgとした。対照群には、健康管理担当医(health care clinician)による定期的な血圧測定と必要に応じた降圧薬の調整という通常ケアを行った。 主要アウトカムは、12ヵ月時点の受診時の介入群と対照群の収縮期血圧値の差とした。12ヵ月時点の収縮期血圧、自己管理群のほうが9.2mmHg低い 主要アウトカムのデータは、450例(81%)について入手できた。 ベースライン時の平均血圧値は、介入群(220例)143.1/80.5mmHg、対照群(230例)143.6/79.5mmHgであった。12ヵ月時点では、それぞれ128.2/73.8mmHg、137.8/76.3mmHgであり、ベースライン時から低下した血圧値の両群差は、収縮期血圧が9.2mmHg(95%信頼区間[CI]:5.7~12.7mmHg)、拡張期血圧が3.4mmHg(95%CI:1.8~5.0mmHg)だった。 データを入手できなかった全被験者についての分析でも、同様の結果が得られた。すなわち、ベースライン時の平均血圧値は、介入群(276例)143.5/80.2mmHg、対照群(276例)144.2/79.9mmHg、12ヵ月時点ではそれぞれ128.6/73.6mmHg、138.2/76.4mmHgであり、両群差は収縮期血圧が8.8 mmHg(95%CI:4.9~12.7mmHg)、拡張期血圧が3.1mmHg(95%CI:0.7~5.5mmHg)だった。 すべてのサブグループ比較においても同様の結果が得られ、過剰な有害事象もみられなかった。

513.

高血圧治療は個々のリスク因子合併を考慮した“トータルバスキュラーマネージメント”が重要(解説:桑島 巌 氏)-237

日本動脈硬化学会によるガイドラインでは、高脂血症の薬物治療開始基準を一律に決定するのではなく、性、年齢、血圧、糖尿病の有無など血管系リスク層別化を考慮した治療目標を設定すべきことが示されている。これは、これまでのメタ解析で、血管合併症のリスクの高い症例ほど薬物治療による絶対的リスク減少が大きいことが明らかになっているからである。 同じような考えが高血圧治療においてもいえることを実証したのが、このメタ解析である。 BPLTTCは、高血圧・高脂血症治療に関して、世界で最も信頼性の高いメタ解析を発表しているグループである。メタ解析で採用された臨床試験は、いずれも試験開始前に一次エンドポイント、二次エンドポイント、試験方法、症例数、解析方法など詳細に登録を行ったもののみを対象としており、そのエビデンスレベルは非常に高いことで知られている。 今回の報告は、高血圧治療効果についても、心血管合併症予防効果を絶対的リスク減少でみた場合、リスク因子を多く有している症例ほど有効性が大きいことを示している。 治療による有用性は相対的リスク減少で表される場合があるが、これはしばしば効果を誇大に表現することになる。たとえば、リスクの少ない症例100を対象とした場合、治療群の発症は1例、プラセボ群では2例とすると相対的リスク減少は50%(なんと半減!)になるが、絶対的リスク減少は100人中1例に過ぎない。NNT100、つまり100人治療してやっと1例の発症を予防できることになる。治療効果は絶対的リスク減少、あるいはNNT(Number Needed to Treat)で表すのが本当である。 本研究は11の臨床研究に参加した約5万2千例の対象症例を、プラセボ群のデータから予測された数式を用いて、11%未満の低リスク群、11~15%の軽度リスク群、15~21%の中等度リスク群、21%以上の高リスク群の4群に層別した。高リスク群は当然、喫煙率、心血管疾患既往、糖尿病、収縮期血圧のいずれもが他の群より高い。 その結果、5年間の心血管合併症発症は、相対的リスク減少でみた場合には4群間で差はなく、治療の有効性はどの群でも同じようにみえる。しかし、絶対的リスク減少でみると、高リスク群が最も高血圧治療薬による効果が大きく、ついで中等度、軽度、低リスクの順になっている。 この結果は、高血圧治療の開始基準あるいは降圧目標値の設定においても、血圧以外のリスク因子にも配慮した“トータルバスキュラーマネージメント”の考え方が重要であることを示している。当然ながら、高齢者はさまざまなリスク因子を併せもつ症例が多いことから、高リスク症例が多い。したがって、高齢者ほど厳格な高血圧治療が必要であることを意味しているのである。

514.

ACE阻害薬を超える心不全治療薬/NEJM

 新規開発中のLCZ696は、ACE阻害薬エナラプリル(商品名:レニベースほか)よりも、駆出率低下の心不全を有する患者の死亡および入院リスクの抑制に優れることが示された。英国・グラスゴー大学のJohn J.V. McMurray氏らPARADIGM-HF研究グループが二重盲検無作為化試験の結果、報告した。LCZ696は、新規クラスのアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI:ネプリライシン阻害薬sacubitril[AHU377]とARBバルサルタンからなる)で、高血圧症および駆出率保持の心不全を有する患者を対象とした小規模試験において、ARB単剤よりも血行動態および神経ホルモンに関する効果が大きかったことが示されていた。NEJM誌オンライン版2014年8月30日号掲載の報告より。LCZ696 vs. エナラプリル 本検討では、駆出率が低下した心不全患者に対するLCZ696 vs. エナラプリルの有効性、安全性が比較された。先行研究では、これらの患者についてエナラプリルの改善効果が示されていた。 試験は、18歳以上、NYHA心機能分類II、III、IV、駆出率40%未満などを有する心不全患者を適格とし、推奨されている治療に加えて、LCZ696(1日2回200mg)またはエナラプリル(1日2回10mg)を受けるよう無作為に割り付けて行われた。 主要アウトカムは、心血管系による死亡または心不全による入院の複合とした。同時に、試験は心血管系による死亡率の両群差が検出できるようデザインされていた。 2009年12月8日~2012年11月23日の間に、47ヵ国1,043施設から、LCZ696群に4,187例、エナラプリル群に4,212例の計8,442例が無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は両群とも63.8歳、女性の割合は21.0%と22.6%など特性バランスは取れていた。また大半の患者が慢性心不全の推奨治療薬を服用していた(例:ACE阻害薬服用78.0%と77.5%など)。 なお本試験は、LCZ696の圧倒的な有益性が認められたため、追跡期間中央値27ヵ月で事前規定に従い早期に中断された。死亡・心不全入院の複合、LCZ696群が有意に優れる 試験中断終了時点における主要アウトカムの発生は、LCZ696群914例(21.8%)、エナラプリル群1,117例(26.5%)で認められた。LCZ696群のハザード比(HR)は0.80、95%信頼区間[CI]は0.73~0.87であった(p<0.001)。 全死因死亡は、LCZ696群711例(17.0%)、エナラプリル群835例(19.8%)であった(HR:0.84、95%CI:0.76~0.93、p<0.001)。これらの患者のうち心血管系が原因の死亡は、それぞれ558例(13.3%)、693例(16.5%)だった(同:0.80、0.71~0.89、p<0.001)。 また、エナラプリルと比較してLCZ696は、心不全による入院リスクを21%抑制し(p<0.001)、心不全の症状および運動制限も緩和したことが認められた(p=0.001)。 LCZ696群の患者のほうが、エナラプリル群の患者よりも降圧効果が大きく、血管浮腫は非重篤である割合が高く、また腎機能障害、高カリウム血症、咳の症状がみられる患者の割合が低かった。

515.

降圧薬の投与は治療前の心血管リスクで判断すべきか/Lancet

 降圧薬治療による心血管リスクの相対的な抑制効果は、ベースラインの絶対リスクの高低にかかわらずほぼ一定だが、絶対リスクの低下の程度は、ベースラインの絶対リスクが高いほど大きくなることが、スウェーデン・ウプサラ大学のJohan Sundstrom氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。この知見は、降圧薬治療は血圧の高い集団ではなく心血管リスクの高い集団をターゲットとすべきとの見解を支持するものだという。BPLTTCは本論文を、「リスクに基づくアプローチは、血圧に基づくアプローチよりも費用効果が優れるとともに、治療を要する患者数を減らし、薬剤費を抑制する一方で、脳卒中や心臓発作の回避数を増やす」と締めくくっている。Lancet誌2014年8月16日号掲載の報告。プラセボ群のデータでリスク予測式を開発 BPLTTCは、降圧薬治療で達成される相対的な心血管リスクの低下は、ベースラインの心血管リスクの程度が異なる集団間でほぼ同じであり、それゆえ絶対リスクの低下はベースラインの心血管リスクが高いサブグループのほうが大きいとの仮説を立て、これを検証する目的でメタ解析を行った。 解析には、降圧薬とプラセボ、あるいはより強力な降圧薬療法と弱い降圧薬療法の無作為化比較試験に参加した個々の患者データを用いた。主要評価項目は主要心血管イベント(脳卒中、心臓発作、心不全、心血管死)とした。 対象となった試験のプラセボ群のデータから開発されたリスク予測式を用いて、ベースラインの5年主要心血管リスクを、その程度によって4つのカテゴリーに分けた(<11%、11~15%、15~21%、>21%)。 11試験(26の治療群)に登録された6万7,475例が適格基準を満たした。このうち5万1,917例で、リスク予測式を用いてベースラインの心血管リスクの予測を行った。予測リスクが<11%の群が2万5,480例、11~15%の群が1万2,544例、15~21%の群が8,287例、>21%の群は5,606例で、全体の平均年齢は65.1歳、女性が44.5%を占めた。高リスク群ほど絶対リスク低下度が大きい、予測式は有用 ベースラインにおける全体の予測5年心血管イベントの絶対リスクの平均値は11.7%であり、各群の平均値は、<11%群が6.0%、11~15%群が12.1%、15~21%群が17.7%、>21%群は26.8%であった。プラセボ群の予測5年心血管リスクは11.5%であった。また、プラセボ群に比べ治療薬群は、平均血圧が5.4/3.1mmHg高かった。 フォローアップ期間中央値4.0年の時点で、4,167例(8%)が心血管イベントを発症した。5年間の降圧薬治療による心血管リスクの相対的な低下率は、ベースラインのリスクが低い群の順に18%、15%、13%、15%であり、群間に差はみられなかった(傾向性検定:p=0.30)。 これに対し、5年間の降圧薬治療による1,000例当たりの心血管イベント予防数は、それぞれ14件、20件、24件、38件であり、絶対リスクはベースラインのリスクが高い群ほど大きく低下した(傾向性検定:p=0.04)。 脳卒中、冠動脈心疾患、心不全、心血管死も、おおよそこれと同様のパターンを示したが、全死因死亡の絶対リスク低下はベースラインの高リスク群で大きいとはいえなかった。 著者は、「これらの結果は、すでに脂質異常症の治療で推奨されているように、降圧薬治療を決める際の情報として、ベースラインの心血管リスクの使用を支持するものであり、その手段として当リスク予測式は有用と考えられる」と指摘している。

516.

認知症にイチョウ葉エキス、本当に有効なのか

 認知障害および認知症に対するイチョウ葉エキスの有益性および有害事象については、長年にわたって議論の的となっている。中国海洋大学のMeng-Shan Tan氏らは、認知障害および認知症に対しイチョウ葉エキス(EGb761)の有効性および有害性についてシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、同240mg/日の22~26週投与により、認知、機能、行動の低下および全般的な低下を、阻止あるいは遅らせうることが、とくに神経精神症状を伴う患者で示されたと報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2014年8月11日号の掲載報告。 2014年3月の時点でMEDLINE、EMBASE、Cochraneなどの関連データベースを、EGb761に関する無作為化試験(認知障害および認知症患者への治療として検討)を適格として検索し、評価した。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たした試験は、9件であった。試験期間は、22~26週間で、合計2,561例の患者が含まれていた。・メタ解析の結果、認知に関する変化スコアの加重平均差は、プラセボと比較してEGb761群で良好であった(-2.86、95%信頼区間[CI]:-3.18~-2.54)。・また、日常生活動作(ADL)に関する変化スコアの標準平均差も、同様にEGb761群で良好であった(-0.36、95%CI:-0.44~-0.28)。・Clinicians' Global Impression of Change(CGIC)尺度に関するプラセボとのPeto法オッズ比(OR)は、統計的に有意な差がみられた(OR 1.88、95%CI:1.54~2.29)。・これらすべての有益性は、主にEGb761用量が240mg/日で認められた。・神経精神症状を伴う患者のサブグループ解析では、全体グループと比べてEGb761の240mg/日投与は、認知機能、ADL、CGICおよび神経精神症状の改善が、統計的に優れていることが示された。・アルツハイマー型認知症群の解析では、全体グループと比べて主なアウトカムはほとんど同等で統計的な優越性はみられなかった。・安全性のデータから、EGb761の安全性について重大な懸念はないことが示された。関連医療ニュース 認知症にスタチンは有用か 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か  担当者へのご意見箱はこちら

517.

閉塞性睡眠時無呼吸への夜間酸素療法 ―CPAPよりアドヒアランスはよいが効果は劣る―(解説:高田 佳史 氏)-230

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者への持続陽圧呼吸(CPAP)療法は、高血圧の発症予防や降圧に有効であるが、その効果はアドヒアランスに依存することも知られている1,2)。本論文は、アドヒアランスに優れた夜間酸素療法との無作為割り付け試験の報告である。 高血圧、糖尿病、冠動脈疾患を高率に合併した高リスク患者を対象に、OSA患者へのCPAP療法、酸素療法、睡眠衛生指導のみの3群に無作為に割り付けがなされ、介入前、12週後に24時間自由行動下血圧測定(ABPM)による24時間平均動脈圧が比較された。CPAPの使用時間は3.5±2.7時間であり、酸素療法の4.8±2.4時間より有意に短かったが、CPAP群の24時間平均動脈圧は酸素療法群、睡眠衛生指導群よりも有意に低下しており、後の2群には有意差がなかった。 夜間酸素療法は、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)を合併した慢性心不全患者への治療選択の1つであることはわが国の循環器学会のガイドラインに示されているが、海外においては、CSAに対する夜間酸素療法に否定的な見解を示す医師が多い。そのような中で、上気道の狭窄・閉塞に起因するOSAに対して、無作為割り付け試験がなされたことは驚きであった。心血管疾患高リスク患者は、概して日中の眠気が少なく、CPAPアドヒアランスの低さが問題視されているのであろう。 酸素療法により低酸素血症の改善が得られたが、降圧効果を認めなかった理由として、CPAPと比較して胸腔内陰圧、高炭酸ガス血症、覚醒などに関連する交感神経活性亢進の抑制効果に劣ることが挙げられるが、簡易睡眠検査での評価であり、睡眠中の脳波記録やCO2モニターがなされていないので詳細は不明である。 近年注目されている血圧変動性に対する影響も、両治療で差がなかったかは知りたいところである。しかしながら、個人的には、CPAP治療拒否や継続不能なOSA患者に対しては、夜間酸素療法に期待するよりは、OSA患者(比較的重症例も含む)に対する無作為割り付け試験によって3)、アドヒアランスが良好な故にCPAPと同程度の降圧効果が示された口腔内装具による治療に期待したい。

518.

認知症にスタチンは有用か

 アルツハイマー病(AD)や血管性認知症(VaD)へのスタチン治療は、比較的未開拓の領域である。先行文献において、ADではβ-アミロイド(Aβ)が細胞外プラークとして沈着し、Aβ生成はコレステロールに依存することが確認されている。また、VaDの病因に高コレステロール血症が関与していることも知られている。そこで、英国・Belfast Health and Social Care TrustのBernadette McGuinness氏らは、認知症に対するスタチン治療の有益性について、システマティックレビューとメタ解析により検討を行った。Cochrane Database Systematic Review誌オンライン版2014年7月8日号の掲載報告。 研究グループは、スタチンがコレステロールを低下させることから、ADやVaDの治療において有効であることが期待できるとして、臨床的有効性および安全性を評価した。今回の検討では、ADおよびVaDの治療におけるスタチンの効果が、コレステロール値、ApoE遺伝子型、認知レベルに左右されるかどうかを評価した。2014年1月20日時点で、ALOIS、Cochrane Dementia and Cognitive Improvement GroupのSpecialized Register、Cochrane Library、MEDLINEなどを検索。認知症と診断された人に6ヵ月以上スタチンを投与していた二重盲検無作為化臨床比較試験を適格とした。2名の著者がそれぞれデータの抽出と評価を行い、研究グループは必要に応じてデータをプールしメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・検索で特定したのは、4試験(被験者1,154例、年齢50~90歳)であった。著者らは、全試験のバイアスリスクは低いと評価した。・全被験者が、標準的な診断基準によりADがほぼ確実もしく疑いがあった(possible/ probable AD)。また、これらは、ほとんどの被験者でコリンエステラーゼ阻害因子に基づき確認されていた。・全試験が、ADAS-Cogのベースライン時からの変化を主要アウトカムとしていた。プールデータ解析の結果、ADAS-Cogへのスタチンによる有意な有益性は認められなかった(平均差:-0.26、95%信頼区間[CI]:-1.05~0.52、p=0.51)。・また、全試験で、MMSEのベースライン時からの変化が報告されていた。プールデータ解析の結果、MMSEへのスタチンによる有意な有益性はみられなかった(平均差:-0.32、95%CI:-0.71~0.06、p=0.10)。・治療関連の有害事象は、3試験で報告されていた。プールデータ解析の結果、スタチンとプラセボで有意差はみられなかった(オッズ比:1.09、95%CI:0.58~2.06、p=0.78)。・スタチンとプラセボとの間に、行動、全体的機能やADLに有意差はみられなかった。・VaDの治療におけるスタチンの役割について評価した試験は見つからなかった。関連医療ニュース スタチン使用で認知症入院リスク減少 アルツハイマーの予防にスタチン 認知症予防効果を降圧薬に期待してよいのか

519.

β遮断薬長期服用の乾癬発症リスク

 米国・ブラウン大学のShaowei Wu氏らによる前向きコホート研究の結果、長期にわたる高血圧症は乾癬リスクを増大すること、またβ遮断薬の常用も乾癬リスクを増大する可能性があることを報告した。これまで高血圧症と乾癬の関連、および降圧薬、とくにβ遮断薬が乾癬発症に結び付くことは示唆されていたが、前向きデータを用いた検討は行われていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2014年7月2日号の掲載報告。 検討は、1996年6月1日~2008年6月1日に米国で行われた看護師健康調査に参加し、高血圧症と降圧薬に関する2年ごとの更新データが入手できた7万7,728例の女性を対象とした。 主要評価項目は、医師に診断された乾癬であった。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ106万6,339人年において、乾癬を発症したのは843例であった。・正常血圧被験者と比べて高血圧症6年以上の被験者は、乾癬を発症するリスクが高率であった(ハザード比[HR]:1.27、95%信頼区間[CI]:1.03~1.57)。・層別化解析において乾癬リスクは、正常血圧・降圧薬非服用の患者と比較して、降圧薬非服用・高血圧症被験者(HR:1.49、95%CI:1.15~1.92)、降圧薬服用・高血圧症被験者(同:1.31、1.10~1.55)で高率であった。・β遮断薬非服用被験者と比較して、同常用被験者の多変量HRは、常用期間1~2年では1.11(95%CI:0.82~1.51)、3~5年では1.06(同:0.79~1.40)、6年以上では1.39(同:1.11~1.73)であった(傾向のp=0.009)。・その他の降圧薬使用と乾癬リスクとの関連は認められなかった。

520.

EBMがもたらした、究極の“心血管イベント抑制”薬ポリピルは、実現するか(解説:石上 友章 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(224)より-

Lawらは、2009年BMJ誌に、冠動脈疾患、脳卒中の発症の予防に対する異なるクラスの降圧薬の効果を定量的に決定するとともに、降圧薬治療の適切な対象を検討する目的で、5種類の主要降圧薬群(チアジド系薬剤、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬)を対象にした、1966年~2007年の間の臨床試験、全147試験のメタ解析を行った結果を報告した1)。 そのなかで、コホートデータと短期間の介入研究のデータから、降圧薬の効果は、年齢、治療前血圧、降圧薬服薬数にかかわらず、降圧(収縮期、拡張期)の程度に依存していることを明らかにするとともに、3種類の降圧薬を各標準用量の半量で併用すれば、同じ対象集団にいずれかの降圧薬を単剤標準用量にて投与した場合に比べ、冠動脈疾患・脳卒中のリスクはより低下するだろうと予測している。著者らはこの結果から、個々に血圧を測定し適応患者のみを治療するのではなく、一定の年齢を超えたらすべての人を対象に血圧を下げることを提案している。 同時期のLancet誌には、固定用量配合剤(Polypill)を用いた、The Indian Polycap Study(TIPS)の結果が報告されている2)。TIPSの観察値は、Law and Waldらの理論値と、必ずしも一致していないが、両論文によって生活習慣病に対する“populational approach”による、心血管病リスク抑制の戦略の正当性が、一部証明されたといえる。 ニュージーランドで行われた、Selakらの研究は、Polypillをプライマリ・ケアの現場で行った最新の研究の結果を報告している3)。アドヒアランスの改善はもたらされているものの、リスク因子のコントロール、心血管イベントの抑制には差がない。Polypill群で、37%が投与を中断しており、副作用による中断が72%であった。 Polypillは、公衆衛生的な効果をもたらしても、個人衛生には直結しないことを、あらためて示唆している。当分の間は、生活習慣病に対する医師の個々の裁量は、尊重されるのだろうか。

検索結果 合計:699件 表示位置:501 - 520