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現代でも通用する、「医食同源」のライフスタイル・健康長寿の秘訣は、食にあり(解説:石上友章氏)-723

 高血圧は、減塩だけではない。DASH食は、降圧だけでなく痛風・高尿酸血症にも効果的な、健康長寿食であった(DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!)。医食同源・薬食同源といわれ、経口摂取する食材のなかには、薬効があるものもあるとされている。東洋医学をひもとけば、草根木皮といわれる植物資源だけではなく、場合によっては、動物資源(庶虫、水蛭など)ですら特定の薬効があるといわれている。不老不死・健康長寿は、東洋医学の究極の課題であり、4大古典のひとつである薬学書の『神農本草経』では、薬物を上品・中品・下品の3種類に分けている。上品薬に分類される薬物は、無毒であり長期間服用可能で、生命を養う作用があるとされており、身を軽くし、体力を増し、不老長生を可能にする、とされている。医食同源・薬食同源の考え方は、食養生といわれて重要視されている。本邦でも、『養生訓』を残した貝原益軒は、記録によると1600年代に活躍し、84歳で天寿を全うしている。 今回、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMercedes Sotos-Prieto氏らは、DASH食だけではなく、AHEI(Alternative Healthy Eating Index:代替健康食指数)、AMED(Alternative Mediterranean Diet:代替地中海食)で推奨されている食パターンをスコア化して評価し、その変化が、健康長寿に与える影響を検討した結果を公表した。Sotos-Prieto M, et al. N Engl J Med. 2017;377:143-153. その結果、図に示すように、心血管死亡率について、すべての健康食スコアの改善が、統計学的に有意に抑制することが明らかになった。 この結果は、網羅的な感受性分析によってrobustnessを証明していることから、十分支持される。全死亡についても同様の結果が得られているが、疾患別にするとがんについては必ずしも有意ではない。またDASH食については、AHE食・AMED食に比較すると、若干効果が劣る傾向にある。魚食と、ω3系脂肪酸および、ごく軽度のアルコール摂取に差があるとされている。 21世紀になって、どの先進国も増大する医療費に悩まされている。健康長寿は、人類共通の課題になっている。あらゆる世代が、恐怖と欠乏から自由でいられるために、食生活を見直すことが重要なのは間違いない。

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降圧薬と乳がんリスクの関連~SEERデータ

 米国Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのLu Chen氏らは、Surveillance, Epidemiology and End-Results(SEER)-Medicareデータベースを用いて、主要な降圧薬と乳がんリスクの関連を検討し、利尿薬とβ遮断薬が高齢女性の乳がんリスクを増加させる可能性があることを報告した。「ほとんどの降圧薬は乳がん発症に関して安全だが、利尿薬とβ遮断薬についてはさらなる研究が必要」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2017年8月14日号に掲載。 本研究では、2007~11年にStage I/II乳がんと診断された66~80歳の女性1万4,766例を同定した。がん発症後の各種降圧薬の使用についてMedicare Part Dデータで調べた。アウトカムは、SBCE(second breast cancer event、初回の再発または2次対側原発乳がんの複合)、乳がんの再発、乳がんによる死亡とした。時間変動Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3年で、SBCEが791例、乳がんの再発が627例、乳がん死亡が237例であった。・乳がん診断後に利尿薬を使用した患者(8,517例)では非使用者と比較して、SBCEリスクは29%(95%CI:1.10~1.51)、再発リスクは36%(同:1.14~1.63)、乳がん死亡リスクは51%(同:1.11~2.04)、それぞれ高かった。・β遮断薬を使用した患者(7,145例)では非使用者と比較して、乳がん死亡リスクが41%(95%CI:1.07~1.84)高かった。・アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用は、乳がんリスクに関連していなかった。

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高齢糖尿病患者の降圧薬アドヒアランスと効果の関連

 米国Kaiser Permanente Institute for Health ResearchのMarsha A. Raebel氏らによる約13万例の高齢糖尿病患者の後ろ向きコホート研究で、85歳以上もしくは複数の併存疾患を持つ糖尿病患者では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体遮断薬(ACEI/ARB)の服薬アドヒアランスと血圧低下が関連しないことが示された。一方、スタチンのアドヒアランスはLDLコレステロール(LDL-C)の低下と関連していた。Pharmacotherapy誌オンライン版2017年7月28日号に掲載。 米国Centers for Medicare and Medicaid ServicesのMedicare Starプログラムでは、糖尿病患者がACEI/ARBとスタチンの服薬アドヒアランスの目標を満たした場合、ヘルスプランにインセンティブを与えている。これまでに、アドヒアランスと心血管リスク因子のコントロールとの関連は報告されているが、ほとんどの研究が併存疾患のほとんどない若年の患者が含まれており、併存疾患の多い高齢患者における関連はよくわかっていない。そこで著者らは、Medicareでの65歳以上の糖尿病患者12万9,040例において、Starアドヒアランスの目標達成(8割以上の日数)が血圧(140/90mmHg未満)およびLDL-C(100mg/dL未満)に及ぼす影響を調べた。 主な結果は以下のとおり。・アドヒアランスは、高齢者のどの年代群でもほとんど差がなかった。・併存疾患なし患者に比べ、併存疾患4以上の患者ではACEI/ARB(RR:0.88、95%CI:0.87~0.89)やスタチン(RR:0.91、95%CI:0.90~0.92)のアドヒアランスが低かった。・ACEI/ARBのアドヒアランスは、85歳以上の患者における血圧140/90mmHg未満(RR:1.01、95%CI:0.96~1.07)、複数の併存疾患(たとえば、併存疾患3つでのRR:1.04、95%CI:0.99~1.08)と関連がみられなかった。・スタチンのアドヒアランスは、高齢者のすべての年代群(たとえば、85歳以上のRR:1.13、95%CI:1.09~1.16)、すべての併存疾患数(たとえば、4つ以上でのRR:1.13、95%CI:1.12~1.15)でLDL-C 100mg/dL未満と関連していた。

364.

高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。 高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。高齢者の高血圧診療は高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。高齢者においても降圧治療による脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。高齢者高血圧には認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が示唆されているものの、一定の結論は得られていない。よって、現段階では認知機能の評価により、降圧治療を差し控える判断や降圧薬の種類を選択することにはつながらないため、原則として認知機能にかかわらず、降圧治療を行う。ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。高齢者高血圧への降圧治療で転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨 高齢者高血圧への降圧治療を開始する際には、骨折リスクを増大させる可能性があるので注意を要する。一方で、サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、合併症に伴う積極的適応を考慮したうえで、転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる可能性があるため、注意が必要である。高齢者高血圧への降圧治療でCa拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性 高齢者高血圧への降圧治療でもっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。しかし、「利尿薬」という名称から、高齢者高血圧患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。高齢者高血圧の降圧薬治療開始や降圧目標は個別判断が必要なケースも 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。エンドオブライフにある高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。高齢者高血圧の「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載 高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。 また、高齢者高血圧の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間~3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシーやアドヒアランスの対策などのポイントが挙げられている。

365.

高血圧家族歴を心血管病予防にどう生かすか?(解説:有馬 久富 氏)-695

 高血圧は遺伝することがよく知られている。しかし、過去に行われた研究では、問診による家族歴(両親の高血圧の有無)を用いて高血圧の遺伝性が検討されてきた。問診による家族歴は、記憶に基づいているために不正確であることが少なくない。とくに、健診や降圧療法が今ほど普及していなかった時代には、高血圧の診断自体が不正確であったと推測される。したがって、高血圧の遺伝性に関する信頼性の高いエビデンスは非常に限られていた。 今回、米国Framingham研究が、親世代および子供世代を対象に継続してきた健診成績を用いて高血圧の有無および発症年齢を正確に推定し、高血圧の遺伝性を検討した。1948年から70年近く継続してきたFramingham研究ならではの検討といえよう。その結果、母親あるいは父親が55歳未満で高血圧を発症している子供は、高血圧を発症するリスクが2倍(片親のみの場合)あるいは3.5倍(両親の場合)と有意に上昇していた。また、親世代を対象としたケース・コントロール解析では、高血圧を若年で発症するほど心血管病死亡のリスクが高かった。 今回のFramingham研究における検討から、比較的若年で発症する高血圧は遺伝性が強く、心血管病死亡のリスクが高いことが確認された。母親あるいは父親が55歳未満で高血圧を発症した場合、その子供は高リスク者と考えられるので、若いうちから生活習慣の改善を働きかけるとともに、高血圧の早期発見・早期治療を心掛け、心血管病を予防していくことが重要であろう。

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DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!(解説:石上 友章 氏)-688

 高血圧は、生活習慣病の代表的な疾患であり、重要な心血管リスクである。本邦では4,000万人が罹患している、国民病といっていい疾患である。生活習慣病というくらいなので、実のところ適切な生活習慣を守れば、血圧を上げることもなく、医師や降圧薬の厄介になる必要もなくなる可能性がある。医療費が増え続けるといっても、その源が、日々の乱れた食生活にあるのであれば、国をあげて節制すれば、医療費も節約できるはずだ。 こうした考えで、米国保健福祉省の国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所(NHLBI)が、高血圧を予防し治療するために推奨している食事療法が、DASHダイエットである。DASHダイエットのDASHは、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの頭文字からとられているように、「高血圧」対策のための食事療法である。DASH食の中身は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事で、とくにレシピの指定はなく、食材を選択することが勧められている1)。 米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らは、2017年5月9日号のBMJ誌に掲載した論文で、DASHダイエットが、高血圧のみならず、痛風・高尿酸血症の抑制にも効果があることを報告している。健康な生活を送る秘訣は、食生活にあった。この当たり前のようにもみえる研究は、実に26年間もの長期にわたる観察研究の成果である。26年間、1年おきに律儀にアンケート調査に答えた44,444人の参加者(男性の医療関係者)に、深甚なる敬意を表したい。 稲作や、牧畜が人類にもたらした恩恵は、計り知れない。定住と、食の供給を安定させることで、今日の人類の繁栄の礎となったのは、間違いない。しかし、より健康に、より長く生きて過ごしたいのであれば、穀類の精製をやめ、狩猟採集民の食生活に合わせることが必要らしい。直近のBMJ誌で、高尿酸血症が、腎結石と痛風以外に確実なヘルスケアアウトカムには影響を与えなかったと報告されている2)。両論文を合わせてご覧になると、理解が深まるかもしれません。

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カナグリフロジン、CVリスク低下の一方で切断リスクは上昇/NEJM

 心血管疾患リスクが高い2型糖尿病に対し、SGLT2阻害薬カナグリフロジンの投与は、心血管リスクを約14%低減するものの、一方で足指や中足骨などの切断術リスクはおよそ2倍に増大することが明らかになった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、30ヵ国、1万例超を対象に行った2つのプラセボ対照無作為化比較試験「CANVAS」「CANVAS-R」の結果を分析し明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表した。平均188週間追跡し、心血管アウトカムを比較 試験は、30ヵ国、667ヵ所の医療機関を通じ、年齢30歳以上で症候性アテローム心血管疾患歴がある、または年齢50歳以上で(1)糖尿病歴10年以上、(2)1種以上の降圧薬を服用しながらも収縮期血圧140mmHg超、(3)喫煙者、(4)微量アルブミン尿症または顕性アルブミン尿症、(5)HDLコレステロール値1mmol/L未満、これらの心血管リスク因子のうち2項目以上があてはまる、2型糖尿病の患者1万142例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、カナグリフロジン(100~300mg/日)またはプラセボをそれぞれ投与し、平均188.2週間追跡した。主要アウトカムは、心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの複合だった。 被験者の平均年齢は63.3歳、女性は35.8%、平均糖尿病歴は13.5年だった。心血管イベントリスクは約14%減、一方で切断術リスクは2倍 主要アウトカムの発生率は、プラセボ群が31.5/1,000人年に対し、カナグリフロジン群は26.9/1,000人年と、約14%低率だった(ハザード比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.75~0.97、非劣性p<0.001、優越性p=0.02)。 仮説検定シーケンス法に基づく腎機能のアウトカムに関する評価は、統計的な有意差は示されなかった。具体的に、アルブミン尿症の進行について、カナグリフロジン群のプラセボ群に対するハザード比は0.73(95%CI:0.67~0.79)、また推定糸球体濾過量(GFR)の40%減少保持、腎機能代替療法の必要性、腎疾患による死亡のいずれかの複合エンドポイント発生に関する同ハザード比は0.60(同:0.47~0.77)だった。 一方で有害事象については、既知のカナグリフロジン有害事象のほか、切断術実施率がプラセボ群3.4/1,000人年だったのに対し、カナグリフロジン群は6.3/1,000人年と、およそ2倍に上った(ハザード比:1.97、95%CI:1.41~2.75)。主な切断部位は足指と中足骨だった。

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60歳未満の降圧薬服用者、血圧高いと認知症リスク高い

 血圧と認知症の関係については相反する疫学研究結果が報告されている。今回、ノルウェー科学技術大学HUNT研究センターのJessica Mira Gabin氏らが、認知症診断の最大27年前まで(平均17.6年)の血圧と認知症について調査したところ、60歳以上では収縮期血圧と認知症が逆相関を示したが、60歳未満の降圧薬使用者では収縮期血圧や脈圧の上昇とアルツハイマー病発症が関連していた。Alzheimer's research & therapy誌2017年5月31日号に掲載。 本研究では、ノルウェーのNord-Trondelag郡における1995~2011年の認知症発症データを収集し、専門家パネルが診断を検証した。さらに、このデータを被験者の個人識別番号を用いて、1984~86年(HUNT1)および1995~97年(HUNT2)に実施された大規模な住民健康調査であるNord-Trondelag Health Study(HUNT研究)データと結び付けた。HUNT研究の参加者2万4,638人のうち579人がアルツハイマー病、またはアルツハイマー病と血管性の混合型認知症、または血管性認知症と診断された。 主な結果は以下のとおり。・60歳以上においては、年齢、性別、教育およびその他の関連する共変量を調整後、認知症全体、アルツハイマー病/血管性の混合型認知症、アルツハイマー病では収縮期血圧との逆相関が一貫して認められたが、血管性認知症では認められなかった。・この結果は、降圧薬の使用にかかわらず、HUNT1とHUNT2の両方で観察された。・60歳未満の降圧薬服用者では、収縮期血圧および脈圧とアルツハイマー病との間に有害な関連がみられた。

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長門流 認定内科医試験BINGO! 総合内科専門医試験エッセンシャル Vol.3

第9回 血液第10回 循環器第11回 神経第12回 総合内科/救急 認定内科医試験に向けた全3巻の実践講座の第3巻です。重要ワードは「頻出」。長年試験問題を分析し続けている長門先生が、実際の試験問題に近い予想問題を作成し、頻出ポイントをテンポよく解説します。もちろん最新のガイドラインのアップデートにも対応。各科目で試験に問われやすいポイントを押さえていますので、認定内科医試験はもちろん、総合内科専門医試験を受ける先生方も確実に得点アップにつながります。年々難しくなっているといわれる内科系試験。このDVDでぜひ合格を勝ち取ってください。第9回 血液血液領域の中心はなんといっても白血病です。染色の特徴や検査データ、予後因子をしっかり確認しておきましょう。また、貧血に関する問題も例年多く出題されています。この番組で頻出ポイントをチェックして、効率よく勉強を進めてください。第10回 循環器循環器の領域では、弁膜症や心筋梗塞などの主要疾患はもちろん、高血圧や感染性心内膜炎の問題も毎年出題されています。長年試験問題を分析し続けている長門先生だからこそわかる頻出ポイントを確認して、得点アップにつなげましょう。第11回 神経神経の領域では、「脳卒中治療ガイドライン2015」からの出題が予想されます。後期高齢者の降圧目標や脳卒中のリスク因子は必ず押さえておきましょう。また、認知症スクリーニング検査の点数で認知症の有無を判定させる問題も毎年出題されています。長門流の予想問題を通して、試験の「出るところ」を確認してください。第12回 総合内科/救急総合内科/救急は出題数は少ないですが、確率統計に関する計算のように毎年出題される問題があるので、確実に点を取れるようにしておきましょう。また「心肺蘇生ガイドライン2015」と「日本版敗血症診療ガイドライン2016」からの出題も予想されます。全13科目の「頻出」「ポイント」「アップデート」のすべてがわかるこの番組で効率的に勉強し、ぜひ合格を勝ち取ってください。

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スタチンによる筋肉痛はnocebo effect?(解説:興梠 貴英 氏)-682

 スタチンに限らず、副作用が出現しうることを知らされたために患者がその副作用ではないかと訴えることは日常よく経験するところである。この現象は古くから知られており、nocebo effectと名付けられているそうである。 さて、本論文はASCOT-LLAの二重盲検期間中とオープンラベル期間中の副作用報告率を比較して本当にnocebo effectがあったのかを調べたものである。 ASCOT-LLA試験の背景を解説すると、最初にASCOT-BPLAという2つの降圧薬レジメン(アテノロール+サイアザイド vs.アムロジピン+ペリンドプリル)間で心血管系イベント発生に違いがあるかを評価した試験が計画された。さらに、その被験者群の中で心血管系リスクは高いが血清LDL-コレステロールが高くない(6.5mmol/L以下)患者に対してスタチンの投与が心血管系イベントを抑制するかを評価する試験ASCOT-LLAが計画された。ASCOT-BPLAがPROBEデザインであったのに対して、ASCOT-LLAにおけるアトルバスタチンおよびプラセボ服用については二重盲検であった。結局、ASCOT-BPLA全体の1万9,342人中、基準を満たした1万0,305人がASCOT-LLAに割り当てられた(アトルバスタチン群5,168人、プラセボ群5,137人)。さらにASCOT-LLAではアトルバスタチン投与群において早期に有意に心血管系イベントを抑制することが示されたために、追跡期間中央値3.3年で早期終了となったのに対して、ASCOT-BPLAは計画よりは早まったものの追跡期間中央値5.5年まで継続した。この差の期間中はアトルバスタチンの服用がオープンラベルになり、本論文の解析の元データとなった。 データを解析した結果、二重盲検期間中のプラセボ、アトルバスタチンの筋肉関連副作用報告率はそれぞれ2.00%、2.03%とほぼ同じで有意差がなかったのに対し、オープンラベル期間ではアトルバスタチン非服用者で1.00%、アトルバスタチン服用者で1.26%で有意差がつく、という差が認められた。つまり、nocebo effectがあり、スタチンは実際には筋肉関連の副作用をあまり増やさないのではないか、ということが示された。一方でランダム割付試験における副作用報告は患者選択によって低く出る傾向がある、もしくは導入期間を設けることで不耐性の患者が最初から取り除かれている、という批判がされることがあるが、本論文では盲検期間とオープンラベル期間は同じ患者群であり、導入期間も設けられていないため、そうした批判は当たらない。ほかに勃起障害、不眠、認知機能に関する副作用の検討も行っているが、それらについてもアトルバスタチンによる悪影響を認めない、という結果であった。 本論文の結果はスタチンによる筋肉関連副作用はその多くがnocebo effectによるものかもしれないということを客観的に示した点で興味深いが、ASCOTがAnglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trialの頭文字から成り立っていることから分かるように、これが日本人にも当てはまるかどうかは確実なことは言えず、またわが国では患者が筋肉関連の副作用を訴えたときにはCPKを測定して実際の筋肉障害の有無も確認しつつ中止するかどうかを決めることになるのではないだろうか。本論文でもCPKに関する報告があればより興味深い結果が得られたかもしれない。

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スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet

 スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。二重盲検試験期と非盲検延長試験期で、有害事象の発現を比較 研究グループは、ASCOT-降圧療法(BPLA)試験の対象者(40~79歳で、3つ以上の心血管危険因子を有し、心筋梗塞の既往歴がなく、狭心症未治療の高血圧患者)で、空腹時総コレステロール値6.5mmol/L以下、スタチンまたはフィブラート未使用者をASCOT-LLA試験に登録し、アトルバスタチン(10mg/日)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた(二重盲検試験期)。アトルバスタチンの有効性が確認されたためASCOT-LLA試験は早期中止となり、その後はASCOT-BPLA試験が終了するまでアトルバスタチン(10mg/日)を非無作為化非盲検下で投与する延長試験を行った(非盲検延長試験期)。 有害事象はMedDRAを用いて分類し、事前に特定された注目すべき有害事象とされる筋肉関連、勃起障害、睡眠障害および認知障害の4つの有害事象について、全報告を評価者盲検下で判定するとともに、それ以外の有害事象を器官別大分類(SOC)にて解析した。有害事象発現率は、1年当たりの割合(%)として表示した。非盲検延長試験期で筋肉関連有害事象の発現が増加 二重盲検試験期は1998年2月~2002年12月で、解析対象は1万180例(アトルバスタチン群5,101例、プラセボ群5,079例)、追跡期間中央値は3.3年(IQR:2.7~3.7)、非盲検延長試験期は2002年12月~2005年6月で、解析対象は9,899例(アトルバスタチン使用者6,409例:65%、未使用者3,490例:35%)、追跡期間中央値は2.3年(IQR:2.2~2.4)であった。 二重盲検試験期では、アトルバスタチン群とプラセボ群とで筋肉関連有害事象(2.03% vs.2.00%、ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.88~1.21、p=0.72)と、勃起障害(1.86% vs.2.14%、HR:0.88、95%CI:0.75~1.04、p=0.13)の発現率は同程度であったが、睡眠障害はアトルバスタチン群が有意に低かった(1.00% vs.1.46%、HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0005)。認知障害は発現例が少なく検出力不足であった(0.20% vs.0.22%、HR:0.94、95%CI:0.57~1.54、p=0.81)。同試験期で、有意差が認められたのは、腎および尿路障害(1.87% vs.1.51%、HR:1.23、95%CI:1.08~1.41、p=0.002)で、アトルバスタチン群で有意に高頻度であった。 一方、非盲検延長試験期では、スタチン使用者においてスタチン未使用者より筋肉関連有害事象の発現率が有意に増大した(1.26% vs.1.00%、HR:1.41、95%CI:1.10~1.79、p=0.006)。同様に、筋骨格系および結合組織障害(8.69% vs.7.45%、HR:1.17、95%CI:1.06~1.29、p=0.001)、また血液およびリンパ系障害(0.88% vs.0.64%、HR:1.40、95%CI:1.04~1.88、p=0.03)もスタチン使用者で多く、それ以外は両者で有意差は確認されなかった。 著者は、「今回の結果は、患者と医師の両方に対して、スタチンに関連するほとんどの有害事象は薬剤を服用したことによるものではないことを保証するものであり、スタチンの副作用を誇張する主張が公衆衛生に及ぼす有害な影響に対処する一助にすべきである」と述べている。

372.

ヒドロクロロチアジド使用量と口唇がんリスクが相関

 利尿薬であるヒドロクロロチアジドの使用により口唇がんリスクが高まることを示唆する報告がある。この関連を検討した南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らの症例対照研究において、ヒドロクロロチアジドの累積使用量と口唇がんリスクに強い相関が認められた。Journal of internal medicine誌オンライン版2017年5月8日号に掲載。 本研究は、デンマークの全国登録データを用いた症例対照研究である。がん登録(2004~12年)から、口唇の扁平上皮がん(SCC)633例を特定し、これらの症例をリスクセットサンプリングを用いて6万3,067人のコントロールにマッチさせた。また、処方箋登録からヒドロクロロチアジドの使用量(1995~2012年)を取得し、累積使用量により分類した。ヒドロクロロチアジド使用に関連するSCC口唇がんのオッズ比(OR)は、条件付きロジスティック回帰を用いて、人口統計学・処方箋・患者の登録から事前に定義された潜在的交絡因子を調整して計算した。 主な結果は以下のとおり。・ヒドロクロロチアジド使用によるSCC口唇がんの調整ORは2.1(95%信頼区間[CI]:1.7~2.6)で、累積使用量が多い場合(25,000mg以上)は3.9(同:3.0~4.9)に上昇した。・用量反応関係(p<0.001)が認められ、累積使用量が最も多いカテゴリー(100,000mg以上)のORは7.7(95%CI:5.7~10.5)であった。・ほかの利尿薬や利尿薬以外の降圧薬では、口唇がんとの関連はみられなかった。・因果関係があると仮定すると、SCC口唇がん症例の11%がヒドロクロロチアジドの使用に起因すると推定された。

373.

眼圧と心血管薬の使用、関連せず

 眼圧は、血圧やほかの心血管リスク因子と関連していることがよく知られている。眼圧に対する全身性の心血管薬、とくに降圧薬の影響はいまだ論争の的であるが、非緑内障者では眼圧と心血管薬(とくにβ遮断薬)との間に関連はないことを、ドイツ・マインツ大学のRene Hohn氏らが、コホート研究にて明らかにした。著者は、「局所および全身性β遮断薬の長期のドリフト現象(drift phenomenon)が、この結果を説明するかもしれない」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。 研究グループは、ドイツ中西部の住民1万3,527例を対象とした前向き観察コホート研究(グーテンベルク健康研究)において、全身性の心血管薬の使用と眼圧との関連について検討した。 眼圧は、非接触圧平眼圧計で測定された。調査した薬剤の種類は、末梢血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、硝酸薬、ほかの降圧薬、アスピリンおよびスタチンである。薬剤の使用と眼圧との関連について、多変量線形回帰分析を用いて解析した(p<0.0038)。なお、眼圧欠測例、眼圧低下点眼薬使用歴または眼手術既往歴のある参加者は解析から除外された。 主な結果は以下のとおり。・選択的β遮断薬も非選択的β遮断薬も、眼圧低下との間に統計学的に有意な関連は認められなかった(それぞれ、−0.12mmHg、p=0.054および−0.70mmHg、p=0.037)。・BMI、収縮期血圧および中心角膜厚を調整後、ACE阻害薬の使用と眼圧は関連しなかった(0.11mmHg、p=0.07)。

374.

腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

 CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。 『RA系阻害薬は全身血圧を降下させるとともに、輸出細動脈を拡張させて糸球体高血圧/糸球体過剰ろ過を是正するため、GFRが低下する場合がある。しかし、この低下は腎組織障害の進展を示すものではなく、投与を中止すればGFRが元の値に戻ることからも機能的変化である。』(JSH2014, p71) 図は、この考えの根拠となるアンジオテンシンIIと、尿細管・平滑筋細胞・輸入輸出細動脈との間の、量-反応関係を示している。アンジオテンシンIIは、選択的に輸出細動脈を収縮させる。いわば、糸球体の蛇口の栓の開け閉めを制御しており、クレアチニンが上昇しGFRが低下する現象は、薬剤効果であり、軽度であれば無害であるとされてきた。糖尿病合併高血圧では、Hyperfiltration説(Brenner, 1996)に基づいた解釈により、RA系阻害薬は糸球体高血圧を解消することから、腎保護効果を期待され、第一選択薬として排他的な地位を築いている。 しかしながら、こうした考えはエキスパート(専門家)の"期待"にとどまっているのが実情で、十分なエビデンスによる支持があるわけではなかった。 RA系阻害薬の腎保護効果について、その限界を示唆した臨床試験として、ONTARGET試験・TRANSCEND試験があげられる[1, 2]。本試験は、ARB臨床試験史上、最大規模のランダム化比較試験であり、エビデンスレベルはきわめて高い。その結果は、或る意味衝撃的であった。ONTARGET試験では、ACE阻害薬とARBとの併用で、有意に33%の腎機能障害を増加させていた。TRANSCEND試験に至っては、腎機能正常群を対象にしたサブ解析で、実薬使用群での、腎機能障害の相対リスクが2.70~3.06であったことが判明した。他にも、RA系阻害薬の腎保護効果に疑問を投げかける臨床試験は、複数認められる。  eGFRの変化は、アルブミン尿・タンパク尿の変化よりも、心血管イベント予測が鋭敏である[3]。Schmidtらの解析による報告[4]は、RA系阻害薬による”軽微”とされていた腎障害が、腎保護効果はおろか、心血管イベントの抑制にも効果がなかったことを証明した。ガイドラインは、過去の研究成果を積み上げた仮説にすぎない。クリニカル・クェスチョンは有限とはいえ、無数にある。あらゆる選択肢の結果を保証するものではない。専門家の推論や、学術的COIに抵触するような期待に溢れた、あいまいな推奨を断言するような記述は、どこまで許容されるのか。この10年あまりの間、糖尿病合併高血圧や、CKD合併高血圧にRA系阻害薬がどれだけ使用されたのか。そのアウトカムの現実を明らかにした本論文の意義は、学術的な価値だけにとどまらず、診療ガイドラインの限界を示しているともいえる。 1)ONTARGET Investigators, et al. N Engl J Med. 2008;358:1547-1559.2)Mann JF, et al. Ann Intern Med. 2009; 151: 1-10.3)Coresh J, et al. JAMA. 2014; 311: 2518-2531.4)Schmidt M. BMJ. 2017;356:j791.

375.

2型糖尿病患者、食事が頸動脈内膜中膜厚に関連

 カナダ・トロント大学のLaura Chiavaroli氏らが、2型糖尿病患者の食事と頸動脈超音波検査(CUS)による頸動脈内膜中膜厚(CIMT)との関連を調査したところ、CIMTの低値が、豆類・炭水化物の高い摂取量、総脂肪・飽和脂肪の低い摂取量と有意に関連していた。この結果は、2型糖尿病の心血管疾患リスク管理における食事の潜在的役割を示唆している。BMJ open誌2017年3月22日号に掲載。 本研究では、同様の方法で収集された3件の無作為化比較試験から、325例の2 型糖尿病患者(最近の心血管イベントなし、スクリーニング時にHbA1cが6.5~8.0%、経口糖尿病治療薬を服用中)について、CUSによるCIMT、7日間の食物記録による食物摂取量の登録時のデータを横断的に分析した。 主な結果は以下のとおり。・CIMTは、豆類の摂取(β=-0.019、p=0.009)、糖質の摂取(β=-0.004、p=0.008)、グリセミック負荷(β=-0.001、p=0.007)、デンプンの摂取(β=-0.126、p=0.010)と有意に逆相関していた。・年齢・喫煙・心血管イベントの既往・降圧薬・糖尿病治療薬・超音波検査技師で調整した多変量回帰モデルにおいて、CIMTは総脂肪(β=0.004、p=0.028)と飽和脂肪(β=0.012、p=0.006)摂取量と直接関連していた。

376.

RAS阻害薬によるクレアチニン値増加、30%未満でもリスク/BMJ

 RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)服用開始後のクレアチニン値の上昇は、ガイドラインで閾値とされる増大幅が30%未満であっても、末期腎不全や心筋梗塞などの心・腎臓有害イベントや死亡リスクが漸増する関連があることが明らかにされた。クレアチニン値10%未満との比較で、10~19%の増加で死亡リスクは約1.2倍に、20~29%の増加で約1.4倍に増大することが示されたという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のMorten Schmidt氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌2017年3月9日号掲載の報告。RAS阻害薬と末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連を検証 研究グループは1997~2014年の、英国プライマリケア医の電子診療録を含むデータベース「Clinical Practice Research Datalink」(CPRD)と病院エピソード統計「Hospital Episode Statistics」(HES)を基に、RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用を開始した12万2,363例を対象に、ACE・ARB開始後のクレアチニン値上昇と、心・腎臓アウトカムとの関連を調べた。 ポアソン回帰分析法を用いて、クレアチニン値30%以上の増加や10%増加ごとと、末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連についてそれぞれ検証した。解析では、年齢、性別、歴期間、社会経済状況、生活習慣、CKD、糖尿病、心血管の併存疾患、その他の降圧薬、NSAIDsの使用で補正を行った。RAS阻害薬服用後のクレアチニン値増加に伴い心・腎イベントリスクも段階的に増加 RAS阻害薬服用後にクレアチニン値が30%以上増加したのは、被験者の1.7%にあたる2,078例だった。クレアチニン値の30%以上の増加は、評価項目としたすべての心・腎イベントの発症と関連が認められた。 クレアチニン値の増加30%未満での発生と比較した補正後罹患率比は、末期腎不全については3.43(95%信頼区間[CI]:2.40~4.91)、心筋梗塞は1.46(同:1.16~1.84)、心不全は1.37(1.14~1.65)、死亡は1.84(1.65~2.05)だった。 クレアチニン値の増加幅に応じた心・腎アウトカムについて調べたところ、10%未満、10~19%、20~29%、30~39%、40%以上と段階的にすべての評価アウトカムについてリスクが増加する傾向が認められた(いずれも傾向のp<0.001)。 死亡に関する補正後罹患率比は、クレアチニン値10%未満の増加との比較で、10~19%の増加で1.15(1.09~1.22)、20~29%の増加で1.35(1.23~1.49)だった。 これらの結果は、歴期間、サブグループ、服用継続の有無などで検討した場合も一貫して認められた。

377.

男の美学【Dr. 中島の 新・徒然草】(160)

百六十の段 男の美学脳神経外科に通院している、ある40代の男性。ほかから出ている降圧薬の中にβ遮断薬があることに、ふと気づきました。中島「あれれ、この薬をのんでいたら男性機能が落ちてしまうんじゃなかったかな」患者「そうなんですか?」中島「確かそうだったと思いますよ」患者「でも、いいんです。僕なんか、相手もいないし」そういえば、この方は独身でした。中島「いやいや、男ってのはね」患者「……」中島「抜く抜かないにかかわらず、常に鞘の中の刀は研ぎ澄ませておくべきでしょ!」患者「それ、むちゃくちゃ説得力ありますね!」とっさにこんな説明ができるとは、自分でも驚きです。とはいえ、その患者さんは薬をやめることなく続けることを選択しました。それから半年後。患者「先生、大変な事になりました!」中島「どないしたんでっか?」患者「役に立ちません」中島「はあ?」患者「相手ができたのに、役に立たないんですよ(泣)」血相変えてやって来た患者さんの顔を見ながら、「そういえば以前、β遮断薬の話をしたなあ」と、ようやく思い出しました。中島「じゃあ、薬やめますか? 血圧が上がるかもしれんけど」患者「やめてみます」ほかから出されている薬を勝手にやめるのもいささか問題ですが、目の前の患者さんは切羽詰まった表情です。患者「僕にとっては、こっちのほうが先決です」中島「じゃあ、血圧が上がったら次の手を考えましょう」というわけで、とりあえずβ遮断薬を中止することになりました。そして、次の外来。患者「先生、復活しました!」中島「おおーっ、やったか!」患者「やりましたよ」中島「後学のために教えてほしいんですけど、薬をやめてからどのくらいで復活しました?」患者「2週間くらいです」というわけで、この患者さん、現在はハッピーな生活を送っておられます。薬の副作用は思わぬ形で出るので、注意しておくべきですね。ともあれ、めでたしめでたし。最後に1句抜かずとも 研いでおくべし 鞘の中

378.

あれは幻だったのか?RA系阻害薬の“降圧を超えた臓器保護作用”(解説:石上 友章 氏)-648

 米国・ニューヨーク大学のBangalore氏らは、“Renin angiotensin system inhibitors for patients with stable coronary artery disease without heart failure: systematic review and meta-analysis of randomized trials.”と題するメタ解析・システマティックレビューで、『改めて』RA系阻害薬に、降圧効果を超えて虚血性心疾患を抑制する効果がないことを明らかにした。 あえて『改めて』と紹介したのは、言うまでもない。一連のディオバン関連の臨床研究不正の不名誉な嚆矢の1つともいえる、KYOTO Heart Studyが発表された2009年ESC Hotline Commentaryとして、本試験に対する慎重な解釈を表明したのが、Bangalore氏ならびに、筆頭著者のMesserli氏であった1)。共著者の1人であるRuschitzka氏にいたっては、学会場で『These "wonderful" results "were almost too good to be true."』と言い放ったと伝えられている2)。  彼らの直感的なコメントは8年の時を経て、科学的に正当な手法によって堂々と証明された。不正を見抜く確かな洞察力と、洞察を洞察のままでおくことなく自らの手で科学的な手法を用いて証明する、真の科学的態度に最大限の敬意を表したい。本研究の成果は、アブストラクトの最後の一文に凝縮されている。“Evidence does not support a preferred status of RASi over other active controls. ” RA系阻害薬の降圧を超えた臓器保護作用は、作られたエビデンスにほかならなかったのではないのか?

379.

夜中のトイレ【Dr. 中島の 新・徒然草】(159)

百五十九の段 夜中のトイレ夜中に何回かトイレに起きる、という高齢患者さんの訴えを今までは聞き流していました。が、ついに自分にも夜中に1回はトイレに起きる時が来てしまったのです。周囲の話では、50代ならだいたいそんなもん。それを聞いて安心しておりました。ところが、いつの間にか夜中に3回もトイレに起きるようになってしまいました。2時、3時半、5時とか、そんな感じ。自分としては50代で夜中に1回、60代で2回、70代で3回くらいのトイレかな、と漠然と思っていたのに。完全に人生設計が狂った!50代で3回もトイレに起きていたら、70代になったらどないするねん。人として終わっちまったよ、これは。ところがある日のこと。夕食後にまとめてのんでいる薬のうちの1つが、降圧利尿薬であることに気付きました。ひょっとしてこれのせいか?そう思って、夜ではなく朝にのむようにしてみると。あら不思議、朝までグッスリ!気付いてみれば当たり前ですが、夕食後に降圧利尿薬をのんだら頻回トイレで眠れません。もしかして、そんな些細な事で患者さんたちを苦しめたりしていないか、自分が処方している薬のほうも確認しなくては、と思った次第です。最近は、便利な配合剤の中にそっと利尿薬が入れてあることもあるので、そちらにも注意しなくてはなりませんね。最後に1句利尿剤 夜にのんだら 眠れません

380.

ランダム化試験としては不十分、実用化にはさらなる検討が必要(解説:桑島 巖 氏)-645

 近年の高血圧治療の傾向として、降圧目標値が低くなっており、その達成のためには多剤併用は避けられなくなっている。そこで、RAS阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬、β遮断薬の標準用量の4分の1ずつを4剤組み合わせたQuadpillという薬剤を作り、その降圧効果をプラセボと二重盲検法で比較したのがこの論文である。 その結果、プラセボに比べて外来血圧は22/13mmHg、24時間血圧は19/14mmHg下降したという。 しかし、症例数が55例、追跡期間がたった4週間と、ランダム化試験としてはかなり不十分である。それをシステマティックレビューを追加して補っている。システマティックレビューといっても本試験と同じく4分の1用量を4剤組み合わせた論文は1論文に過ぎず、これも不十分である。Lancet誌に掲載されるレベルの論文ではないが、話題作りとしては悪くはない。 高齢者では降圧薬以外にも多くの薬を服用している例が多いことを考慮すると、配合剤で服薬錠数を減らすという発想は必要かもしれない。 本試験では症例数が不十分ながら18例中18例(100%)が140/90mmHgの降圧目標値を達成できたと述べている。 配合剤の問題点は、副作用が発現したときのさじ加減が困難なことであるが、おのおのが標準量の4分の1量であれば問題ないであろうというのがQuadpillである。 少量とはいっても、利尿薬、β遮断薬には有害事象の発現の懸念はある。さじ加減を重んじ、病態に応じた高血圧治療を推奨している専門家としては、この論文の結果を臨床医に推奨するには抵抗を感じる。単剤を増量した場合との降圧効果の比較データも欲しいところである。症例数を十分に増やし、もう少し追跡期間も延長して安全性を確認するなど、今後の慎重な研究が望まれる。

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