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1型糖尿病の臓器障害に、RA系阻害薬は有効か?(解説:石上友章氏)-776

 糖尿病は、特異的な微小血管障害をもたらすことで、腎不全、網膜症、神経障害の原因になる。糖尿病治療のゴールは、こうした合併症を抑制し、健康長寿を全うすることにある。RA系阻害薬に、降圧を超えた臓器保護効果があるとされた結果、本邦のガイドラインでは、糖尿病合併高血圧の第1選択にRA系阻害薬が推奨されている。しかし、臨床研究の結果は、必ずしもRA系阻害薬の降圧を超えた腎保護効果を支持しているわけではない。ONTARGET試験・TRANSCEND試験1,2)を皮切りに、最近ではBMJ誌に掲載された報告3)(腎保護効果は、見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~)も、観察研究ではあるが、否定的な結果に終わっている。 1型糖尿病の腎保護については、ミネソタ大学のMauerらのRASS試験4)が、決定的な結果を報告している。本研究では、ARB(ロサルタン)、ACEI(エナラプリル)とplaceboの3群に分けた対象で、腎保護作用を検討している。本研究の特筆すべき点は、腎保護効果について、腎生検標本を用いて、厳密に評価していることにある。その結果は、メサンギウム分画容積をはじめとした、すべての病理学的評価指標に、3群間で差が認められなかった。 この結果を受けて、NKF(米国腎臓財団)によるKDOQI Clinical Practice Guideline For Diabetes And CKD/2012 Updateには、6章の6.1として、“We recommend not using an ACE-I or an ARB for the primary prevention of DKD in normotensive normoalbuminuric patients with diabetes.(1A)”とされた5)。この一文には、RA系阻害薬の糖尿病性腎障害抑制作用は、病理学的な変化をもたらすほどの効果はなく、微量アルブミン尿のような不正確な指標で評価された、見かけ上の効果でしかないとの意味が込められている。 英国・ケンブリッジ大学のM Loredana Marcovecchioらが行い、NEJM誌2017年11月2日号に掲載されたAdDIT試験は、スタチンとACE阻害薬を試験薬とし、2×2要因デザインで行われたRCTである。結果は、両試験薬ともに、primary endpointを達成することはできなかった。副次評価項目である、微量アルブミン尿の累積発症率には有意差が認められたが、EBMの原則に従って、著者らはこの結果を採用しなかった。しかしながら、“Many secondary outcomes in the published protocol were exploratory but considered to be clinically relevant in this population of adolescents.”とは、「夢の続きを見ていたい」という著者らの率直な心情の吐露なのかもしれない。

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中国における高血圧管理の現状から学ぶべきこと(解説:有馬久富氏)-771

 中国における高血圧管理の現状について、北京協和医科大学のグループよりLancetに報告された。本研究では、中国全土の31省において35~75歳の一般住民170万人の横断調査が実施された。その結果、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、あるいは降圧薬服用で定義した高血圧の有病率は約45%であった。そのうち、高血圧であることを知らなかった者が約半数、治療していなかった者が約3分の2いた。治療を受けている高血圧者においても、ほとんどが1種類の降圧薬しか服用しておらず、140/90mmHg未満の降圧目標を達成できている者は4分の1以下であった。 中国における未治療あるいはコントロールされていない高血圧者の数はあまりにも多く、循環器疾患、とくに脳卒中の多くが高血圧により引き起こされているものと推測される。このような現状を打破するためには、健康教育による高血圧の1次予防、定期的な健康診断による高血圧の早期発見と早期治療、医療保険の整備など未治療者が受診しやすい環境の整備、費用対効果の高い降圧薬の併用など積極的降圧療法の普及等を実施していくことが急務である。 わが国において平成27年に実施された国民健康・栄養調査の成績をみると、20歳以上の成人における高血圧の有病率は46.9%であった。年齢の範囲や構成が中国のそれとは異なるため単純な比較はできないが、日本と中国の高血圧有病率はそれほど変わらないのかもしれない。一方、高血圧者のうち治療を受けている者の頻度をみると、今回の中国における報告では30.1%であったのに対して、わが国の国民健康・栄養調査(平成27年)では59.4%と高かった。しかし、日本においても未治療の高血圧者は、全体の約4割に及ぶことがわかる。 わが国において高齢化とともに今後増加すると推測される循環器疾患を減らしていくためには、未治療者の受診勧奨・治療者の血圧コントロール徹底等の高リスク戦略と、国民全体の血圧分布を低い方向にシフトさせるポピュレーション戦略を組み合わせていく必要がある。

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降圧治療のベネフィットがある血圧は何mmHg以上?

 高血圧は、死亡および心血管疾患(CVD)の最も重要な危険因子だが、降圧治療の最適なカットオフが議論されている。今回、スウェーデン・ウメオ大学のMattias Brunström氏らのシステマティックレビューとメタ解析により、1次予防における降圧治療は、ベースラインのSBPが140mmHg以上であれば、死亡リスクとCVDリスクの低下に関連することがわかった。また、ベースラインのSBPが低い場合の降圧治療は、1次予防におけるベネフィットはないが、CHD患者では付加的な保護効果がある可能性が示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月13日号に掲載。 本研究では、ベースラインの血圧レベルごとに、降圧治療と死亡およびCVDとの関連を検討した。著者らは、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Database of Abstracts of Reviews of Effectから過去のシステマティックレビューを同定し、これらの引用文献から無作為化臨床試験を検索した。また、2017年2月にPubMedとCochrane Central Register for Controlled Trialsで、2015年11月1日以降に発表された無作為化臨床試験を検索した。少なくとも1,000患者年のフォローアップ、降圧薬とプラセボ、もしくは異なる血圧目標を比較した無作為化臨床試験を選択した。また、著者らは元文献からデータを抽出し、Cochrane Collaborations評価ツールを使用してバイアスリスクを評価した。相対リスク(RR)は、Knapp-Hartung法で補正されたランダム効果メタ解析により統合した。事前に規定したアウトカムは、全死亡、心血管死亡、主要心血管イベント、冠動脈疾患(CHD)、脳卒中、心不全、末期腎不全であった。 主な結果は以下のとおり。・74試験がメタ解析に組み入れられ、参加者は30万6,273例(女性39.9%、男性60.1%、平均年齢63.6歳)、フォローアップは120万人年であった。・1次予防における降圧治療と主要心血管イベントの関連は、ベースラインの収縮期血圧(SBP)に依存していた。-ベースラインのSBPが160mmHg以上死亡率の減少(RR:0.93、95%CI:0.87~1.00)、主要心血管イベントの大幅な減少(RR:0.78、95%CI:0.70~0.87)と関連していた。-ベースラインのSBPが140~159mmHg死亡率との関連は160mmHg以上の場合と同様(RR:0.87、95%CI:0.75~1.00)であったが、主要心血管イベントとの関連はあまり強くなかった(RR:0.88、95%CI:0.80~0.96)。-ベースラインのSBPが140mmHg未満死亡率(RR:0.98、95%CI:0.90~1.06)、主要心血管イベント(RR:0.97、95%CI:0.90~1.04)とも関連はみられなかった。・CHD既往例でベースラインの平均SBPが138mmHgであった試験では、主要心血管イベントリスクの低下と関連していた(RR:0.90、95%CI:0.84~0.97)が、生存率とは関連していなかった(RR:0.98、95%CI:0.89~1.07)。

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中国プライマリケア施設、主要4種の降圧薬常備は3割

 中国における降圧薬の利活用(入手性、費用、処方)は著しく不十分で、とくにガイドラインで推奨される廉価で価値の高い薬剤が、率先して使用されてはいない実態が明らかとなった。中国医学科学院・北京協和医学院のMeng Su氏らが、中国のプライマリケア施設における降圧薬に関する全国調査の結果を報告した。中国の高血圧患者は約2億人と推定されているが、プライマリケアでの治療の実態は、ほとんど知られていなかった。著者は、「今後、高血圧の疾病負荷を減らすために、とくにプライマリケア従事者の活動を介して、価値の高い降圧薬の利用状況を改善する必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2017年10月25日号掲載の報告。中国のプライマリケア約3,400施設のデータを解析 研究グループは、2016年11月~2017年5月に実施された中国の全国断面調査(the China Patient-Centered Evaluative Assessment of Cardiac Events[PEACE]Million Persons Project[MPP]primary health care survey)のデータを用い、中国31省のプライマリケア施設3,362施設(地域衛生院203施設、地域衛生サービスステーション401施設、町衛生院284施設、村衛生室2,474施設)における降圧薬62種の入手性・費用・処方パターンを評価した。また、価値の高い降圧薬(ガイドラインで推奨され、かつ低価格)の利用についても評価し、降圧薬の費用と、入手性および処方パターンとの関連性も検証した。主要4種の降圧薬常備は33.8%、高価値の降圧薬常備は32.7% 計3,362施設、約100万例のデータを評価した(農村部:2,758施設、61万3,638例、都市部:604施設、47万8,393例)。 3,362施設中、8.1%(95%信頼区間[CI]:7.2~9.1)は降圧薬を置いておらず、通常使用される4種類(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、Ca拮抗薬)の降圧薬すべてを常備していたのは33.8%(95%CI:32.2~35.4%)であった。降圧薬の入手性が最も低かったのは、中国西部の村衛生室であった。 また、価値の高い降圧薬を常備していたのは、3,362施設中32.7%(95%CI:32.2~33.3%)のみで、それらの処方頻度は低かった(全処方記録の11.2%、95%CI:10.9~11.6)。価格が高い降圧薬のほうが、低価格の降圧薬より処方される傾向があった。

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中国成人の約半数が高血圧、うち7割は服薬なし/Lancet

 35~75歳の中国成人において、ほぼ半数が高血圧症を有し、治療を受けているのは3分の1未満で、血圧コントロールが良好なのは12分の1未満であることが明らかになった。中国医学科学院・北京協和医学院のJiapeng Lu氏らが、約170万例の代表サンプル成人を対象に行った、住民ベースのスクリーニング試験の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2017年10月25日号掲載の報告。サンプル対象170万例を26万4,475のサブグループに分け分析 研究グループは2014年9月15日~2017年6月20日の間に、中国本土31地域に住む35~75歳の成人約170万例を登録した、大規模な住民ベースの心イベントスクリーニングプロジェクト「China Patient-Centered Evaluative Assessment of Cardiac Events (PEACE) Million Persons Project」を行い、有病率や病識、治療やコントロール状況について調査した。 高血圧症の定義は、収縮期血圧140mmHg以上もしくは拡張期血圧90mmHg以上、または自己報告による直近2週間の降圧薬の服用とした。高血圧症に関する病識、治療、コントロールの定義は、それぞれ、高血圧症と診断されたことを自己申告、降圧薬を現在服用中、収縮期・拡張期血圧値が140/90mmHg未満とした。 年齢グループ(35~44、45~54、55~64、65~75歳)、男性/女性、中国西/中央/東部、都市部/地方、漢族/非漢族、農民/非農民、年収(<1万元、1~<5万元、≧5万元)、教育レベル(初等教育以下、中学、高校、大学以上)、心血管イベントの有無、喫煙の有無、糖尿病の有無など11の人口動態的および臨床的因子と、個人およびプライマリヘルスケア地域を可能な限り組み合わせた26万4,475のサブグループについて、高血圧症の病識、治療、コントロール率を分析した。コントロール不良の治療中患者、8割以上が降圧薬の服用は1種のみ サンプル調査対象として包含されたのは173万8,886例で、平均年齢は55.6歳(SD 9.7)、女性は59.5%で、高血圧症患者の割合は44.7%(95%信頼区間[CI]:44.6~44.8、77万7,637例)だった。 高血圧症患者のうち、高血圧症であることを自覚していたのは44.7%(同:44.6~44.8、34万7,755例)だった。また、高血圧症患者のうち、処方された降圧薬を服用していたのは30.1%(同:30.0~30.2)、血圧コントロールを達成していたのは7.2%(同:7.1~7.2)だった。 年齢・性別標準化後の高血圧症の有病率は37.2%(同:37.1~37.3)、病識率36.0%(同:35.8~36.2)、治療率22.9%(同:22.7~23.0)、コントロール率は5.7%(同:5.6~5.7)だった。 最も使用頻度の高かった降圧薬は、クラス分類でカルシウム拮抗薬だった(55.2%、95%CI:55.0~55.4)。また、降圧薬を服用しているがコントロール不良であった高血圧症患者のうち、81.5%が1種類の降圧薬しか服用していなかった。 高血圧症を自覚している患者の割合と、治療を受けていた患者の割合は、サブグループ間で顕著にばらつきが認められた。病識率および治療率が低い傾向との関連がみられたのは、男性、年齢が低い、低収入、心血管イベント既往、糖尿病、肥満、アルコール摂取だった(すべてp<0.01)。一方、血圧コントロール率はすべてのサブグループで30%未満と低かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「中国人のすべてのサブグループで、血圧コントロール率が低い集団が認められた。幅広くグローバルな戦略、たとえば予防へのさらなる取り組みや、優れたスクリーニング、より効果的で手頃な治療が必要であることを支持する結果であった」とまとめている。

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高血圧治療法の新たな展開?(解説:冨山博史 氏/椎名一紀 氏)-738

1. 背景 腎除神経の有意な降圧効果が確認され、高血圧発症・進展における交感神経の重要性が再注目されている。生体における循環動態は一定でなく体位や環境要因などで変動するが、恒常性を維持するために圧受容体反射が重要な役割を有する。圧受容体反射は、血圧上昇に伴う頸動脈伸展刺激が求心刺激となり、延髄循環調節中枢を介して徐脈・降圧に作用するオープンループシステムである。基礎実験にて、デバイスによる頸動脈伸展刺激は降圧効果を示すことが報告されている。2. 目的 上記の背景に基づき、内頸動脈へのステントデバイス留置が降圧作用を示すかを検証した。ただし、本研究では、降圧作用の検証はSecondary endpointであり、Primary endpointはステントデバイス留置に伴う合併症発生である。3. 方法 3-1 対象の選択条件の概要:難治性高血圧(利尿薬を含む3剤で血圧コントロールが不十分)30例(対照群なし)。問診にて服薬アドヒアランス80%以上の症例を選択。ステント植え込みに際してCTまたはMRAで内頸動脈径が5.00~11.75mmであり、かつ同部位に粥状硬化(plaque/ulceration)を認めない。腎機能障害、不整脈、心不全を合併しない。 3-2 手技:左右いずれかの内頸動脈にステントを留置(ステントサイズは5.00~7.00、6.25~9.00、8.00~11.75mmの3サイズから選択)。ステントデバイス留置は、トレーニングを受けた術者が実施。 3-3 診療経過:基本、研究期間中、降圧薬は変更しない。 3-4 評価項目:重症合併症、治療後7日、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月の外来血圧・24時間平均血圧。4. 結果 4-1 合併症:低血圧(2例:7%)、高血圧増悪(2例:7%)、一過性脳虚血発作(2例:7%)など。 4-2 降圧効果:24時間平均血圧(収縮期血圧/拡張期血圧)が3ヵ月後で15/8mmHg、6ヵ月後で21/12mmHg低下した。5. コメント 前回、SPYRAL HTN-OFF MED研究のコメントで述べさせていただいたが、こうしたデバイスによる降圧療法の有用性評価には、降圧薬服薬アドヒアランス、治療手技の確実性、血圧の評価方法などを吟味する必要がある。 5-1 降圧薬服薬アドヒアランス:本研究は問診にて服薬アドヒアランスを確認している。しかし、研究期間中、降圧薬は変更せずに継続しており、服薬アドヒアランスの変化の影響は除外できない。今後、SPYRAL HTN-OFF MED研究のように、降圧薬を中止してステントデバイスの降圧効果を検証する研究が必要である。現在、CALM-START研究として進行中である。 5-2 治療手技の確実性:本治療では内頸動脈径に合わせて3種類のサイズから適切なサイズのステントを選択し留置している。理論的には頸動脈内径が拡大することが刺激となり降圧効果を示すと考えられるが、術後の頸動脈内径の変化はCTや超音波検査では評価されていない。このように手技の確実性は検証されていない。 5-3 血圧の評価方法:血圧の評価は24時間平均血圧で評価している。しかし、対照群が存在しないため経時的血圧変化の影響を除外できていない。6. 本結果の臨床的意義 上述のごとく、降圧薬服薬アドヒアランス、治療手技の確実性、血圧評価方法のいずれにも限界を有する研究である。しかし、治療後6ヵ月の24時間平均血圧の低下度は収縮期血圧21mmHg/拡張期血圧12mmHgである。この結果は、軽症・中等症高血圧を対象としたSPYRAL HTN-OFF MED研究での結果(24時間平均血圧が対照群に比べて収縮期血圧5mmHg/拡張期血圧4.4mmHg低下した)に比べると大きな降圧作用を示している。ゆえに、上記の問題点を解決する新たな研究の成果(現在進行中)を待つ必要がある。 一方、合併症に関しては重大な合併症はないが、2/30例(7%)に一過性脳虚血発作を認めたことは、今後も発生する合併症の種類・頻度に注意を要する治療法であろう。

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新たな血管内デバイス、治療抵抗性高血圧を著明に改善?/Lancet

 治療抵抗性高血圧の新たな治療デバイスとして開発された血管内圧受容器増幅デバイス「MobiusHD」(米国Vascular Dynamics社製)について、持続的な降圧効果と安全性が確認されたことを、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのWilko Spiering氏らが、ヒトでは初となる前向き非盲検臨床試験「CALM-FIM_EUR試験」の結果、発表した。MobiusHDは、頸動脈洞を再構築(reshape)する血管内インプラントで、頸動脈の圧反射活性が血圧を低下するという原理を応用して開発された。Lancet誌オンライン版2017年9月1日号掲載の報告。片側頸動脈内に留置し6ヵ月時点で安全性と有効性を評価 CALM-FIM_EURはproof-of-principle試験で、欧州の6施設(オランダ5、ドイツ1)にて治療抵抗性高血圧の成人患者(18~80歳)を集めて行われた。 患者の適格要件は、利尿薬を含む3剤以上の降圧薬併用治療にもかかわらず診察室血圧が≧160mmHg、平均24時間ABPが130/80mmHg以上であった。主な除外基準は、高血圧が睡眠時無呼吸症候群以外に起因している患者、頸動脈または大動脈弓のプラークまたは潰瘍の形成あり、頸動脈の内径が5.00mm未満または11.75mm超、BMIが40以上、慢性心房細動、2剤併用抗血小板療法の禁忌あり、長期に経口抗凝固薬を服用中、過去3ヵ月に心筋梗塞または不安定狭心症、前年に脳血管系の発作、推定糸球体濾過量45mL/分/1.73m2以下、イミダゾリン受容体薬やその他の中枢性に作用する降圧薬の服用者などであった。 MobiusHDデバイスを片側の頸動脈内に留置。主要エンドポイントは6ヵ月時点の重篤有害事象の発現率とした。副次エンドポイントは、診察室血圧および24時間ABPの変化などであった。留置後半年で、診察室血圧24/12mmHg、24時間ABPは21/12mmHg降圧 2013年12月~2016年2月に、患者30例が登録されデバイスを成功裏に留置した。被験者の平均年齢は52歳(SD 12)、15例(50%)が男性、降圧薬の平均服用数は4.4剤(SD 1.4)であった。 ベースラインの平均診察室血圧は184/109mmHg(SD 18/14)であったが、6ヵ月時点で24/12mmHg(SD 13~34/6~18)の降圧が認められた(収縮期p=0.0003、拡張期p=0.0001)。 また、ベースラインの24時間ABPは166/100mmHg(SD 17/14)であったが、6ヵ月時点で21/12mmHg(SD 14~29/7~16)の降圧が認められた(収縮期、拡張期ともp<0.0001)。 6ヵ月間で重篤有害事象の発生は、患者4例(13%)において5件が報告された。低血圧症が2例、高血圧症の悪化が1例、間欠性跛行1例、創感染1例であった。

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SPYRAL HTN-OFF MED研究:腎除神経は降圧効果を有するか?(解説:冨山博史 氏)-733

 SPYRAL HTN-OFF MEDは、軽症・中等症高血圧症例80例を対象に腎除神経の降圧効果の有意性を検証した研究である。結果は、腎除神経群では治療3ヵ月後の外来収縮期血圧が10mmHg、24時間収縮期血圧が5.5mmHg低下した。一方、対照群(Sham手技)では外来収縮期血圧2.3mmHg、24時間収縮期血圧0.5mmHgの低下であり、両群間に有意差を確認した。ゆえに、本研究では腎除神経が有意な降圧作用を有すると結論している。 さて、SPYRAL HTN-OFF MED研究の筆頭著者はペンシルベニア大学のTownsend教授である。Townsend教授は腎除神経の有意な降圧作用を確認できなかったSYMPLICITY HTN-3 研究メンバーの一員であり1)、SPYRAL HTN-OFF MED論文の序論で、腎除神経の降圧作用の有意性が確認できなかった問題点として以下を述べている。 1. SYMPLICITY HTN-3 研究では腎除神経群の降圧薬服薬アドヒアランスが  不良であった。 2. SYMPLICITY HTN-3 研究では腎除神経の手技が不十分であった。 3. 収縮期高血圧症例は腎除神経の効果が小さいことが知られているが、  SYMPLICITY HTN-3 研究ではそうした症例が研究に含まれていた。  さらに、Townsend教授が述べた以外の問題点として、 4. これまで腎除神経の降圧効果を検討した研究では治療効果評価は外来血圧で実施  されたことが多く、家庭血圧や24時間測定血圧での評価が十分でない。 5. 除神経手技による腎除神経の確実性が検証されていない。などの問題が指摘されていた。 こうした観点からSPYRAL HTN-OFF MED研究を吟味すると: 1. 服薬アドヒアランスの問題:本研究は軽症・中等症高血圧症例(20~80歳)で、  研究開始前に3~4週の降圧薬休止期間を設け、腎除神経・Sham手技(腎血管造影  と検査台での20分の安静)実施後3ヵ月後の血圧評価まで降圧薬を服用しなかった  症例を対象としている。 2. 腎除神経の手技:SPYRAL HTN-OFF MED研究では腎除神経手技は、腎除神経手技  の十分な経験を有する術者が実施した。また、SYMPLICITY HTN-3 研究では除神経  電極は1個であったが、SPYRAL HTN-OFF MED研究では4個の電極を有する  カテーテル(Spyral)を使用した。さらに、これまでの研究では焼灼手技は腎動脈  本幹でのみ実施されていた。しかし、最近の研究で腎交感神経は腎動脈本幹末梢や  分枝後に腎動脈内膜側に移動し走行することが確認されており、こうした部位での  焼灼が有用とされている。SPYRAL HTN-OFF MED研究では本幹末梢と分枝腎動脈  の焼灼を複数回実施している。 3. 収縮期高血圧の問題:SPYRAL HTN-OFF MED研究では組み入れ基準で外来拡張期  血圧が90mmHg以上の症例を登録しており、収縮期高血圧は除外されている。 4. 治療効果の評価:いくつもの高血圧診療ガイドラインに記載されているごとく、  降圧治療の効果評価には外来血圧でなく、家庭血圧/24時間測定血圧が有用である。  SPYRAL HTN-OFF MED研究では24時間測定血圧で効果を評価し、対照群に比べて  収縮期血圧5mmHg/拡張期血圧4.4mmHgの有意な低下を示した。 5. 腎除神経の確実性の検証:腎除神経の確実性を評価する方法は確立していないが、  腎神経刺激による血圧反応評価が有用な方法として注目されている2)。  しかし、SPYRAL HTN-OFF MED研究では、こうした検証は実施されていない。SPYRAL HTN-OFF MED研究の臨床的意義 本研究は、腎除神経の降圧効果についてこれまで指摘された問題点をおおむね明らかにし、腎除神経治療法の有意な降圧効果を示した。しかし、降圧は治療後3ヵ月の評価であり、慢性効果の検証ではない。さらに腎除神経にて血圧は正常血圧域までは低下していない。これらの結果は、腎除神経は降圧効果を有するが、降圧薬治療の効果を凌駕するほど顕著な降圧作用は示さないことが推察された。ゆえに、侵襲性や必要な治療手技技術を考慮すると軽症・中等症高血圧の第1選択治療法としては適さないと考える。

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腎デナベーション、降圧薬非服用の高血圧を改善するか/Lancet

 診察室収縮期血圧が150~180mmHgで降圧薬を服用していない患者に対する腎デナベーションは、収縮期・拡張期血圧を5~10mmHg程度低下させる可能性があることが示された。米国・ペンシルベニア大学のRaymond R. Townsend氏らが、80例の患者を対象に行った概念実証試験「SPYRAL HTN-OFF MED」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年8月25日号で発表した。これまでに行われた腎デナベーションの無作為化試験では、一貫した降圧効果が示されていない。本検討では、降圧薬を服用していない場合の腎デナベーションの効果を明らかにすることが目的だった。米国、欧州、日本などの21ヵ所で試験を実施 SPYRAL HTN-OFF MED試験では、米国、欧州、日本、オーストラリアの21ヵ所の医療機関を通じて、降圧薬を未服用または服用を中断した患者を対象に、無作為化シャム(擬似的処置)対照単盲検試験を行った。被験者は、診察室収縮期血圧が150mmHg以上180mmHg未満、診察室拡張期血圧が90mmHg以上、24時間自由行動下の収縮期血圧が140mmHg以上170mmHg未満を適格とした。 研究グループは、被験者に対し腎血管撮影を行った後、無作為に2群に分け、一方には腎デナベーションを、もう一方にはシャム処置を行った。 主要エンドポイントは、3ヵ月後の血圧値変化だった。3ヵ月後に診察室収縮期血圧は10.0mmHg低下 2015年6月25日~2017年1月30日に被験者のスクリーニングを行い、80例を無作為化し、腎デナベーション(38例)またはシャム処置(42例)を行った。 3ヵ月後の診察室・24時間自由行動下の血圧は、腎デナベーション群ではいずれも有意に低下した。減少幅は、24時間自由行動下・収縮期血圧が-5.5mmHg(95%信頼区間[CI]:-9.1~-2.0、p=0.0031)、24時間自由行動下・拡張期血圧が-4.8mmHg(同:-7.0~-2.6、p<0.0001)、診察室収縮期血圧が-10.0mmHg(同:-15.1~-4.9、p=0.0004)、診察室拡張期血圧が-5.3mmHg(同:-7.8~-2.7、p=0.0002)だった。 一方、シャム処置のコントロール群では、診察室・24時間自由行動下の血圧はいずれも有意な低下は認められなかった。変化幅は、24時間自由行動下・収縮期血圧が-0.5mmHg(p=0.7644)、24時間自由行動下・拡張期血圧が-0.4mmHg(p=0.6448)、診察室収縮期血圧が-2.3mmHg(p=0.2381)、診察室拡張期血圧が-0.3mmHg(p=0.8052)と、いずれも有意差はなかった。 ベースラインから3ヵ月時点までの血圧低下幅の群間差は、24時間自由行動下・診療室血圧ともに腎デナベーションで大きかった。24時間自由行動下・収縮期血圧の同群間差は-5.0mmHg(p=0.0414)、24時間自由行動下・拡張期血圧は-4.4mmHg(p=0.0024)、診察室収縮期血圧は-7.7mmHg(p=0.0155)、診察室拡張期血圧が-4.9mmHg(p=0.0077)だった。 なお、両群ともに重大な有害イベントは認められなかった。

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厳格降圧はCKD患者の死亡リスクを下げるのか~メタ解析

 高血圧患者における試験では、厳格な降圧が心血管疾患死や全死亡のリスクを低下させる一方、慢性腎臓病(CKD)の発症や進行のリスクを高める可能性が示唆されている。これまで、一般的なCKD患者において厳格な降圧が死亡におけるベネフィットと関連するのかどうか不明である。今回、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のRakesh Malhotra氏らが無作為化試験(RCT)の体系的レビューとメタ解析を行った結果、高血圧とCKD(ステージ3~5)の併存患者において、厳格な降圧が低強度の降圧より死亡リスクが低かった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年9月5日号に掲載。 本研究では、1950年1月1日~2016年6月1日において、定義された2つの血圧目標を比較した試験(降圧治療vs.プラセボまたは無治療、もしくは、厳格降圧vs.低強度降圧)で、18歳以上のステージ3~5(eGFR<60mL/分/1.73m2)のCKD患者が登録されたRCT、もしくはCKDのサブグループが記載されたRCTを、Ovid MEDLINE、Cochrane Library、EMBASE、PubMed、Science Citation Index、Google Scholar、clinicaltrials.govの電子データベースを用いて抽出した。2人の研究者が独立して試験の質を評価し、各試験の介入期間でのCKD患者の特徴と死亡を抽出した。CKD群での結果が公表されていなかった場合はCKDサブセットのデータを研究者に依頼した。主要アウトカムは治療期間中の全死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・選択基準に潜在的に合致する30のRCTを特定した。・CKDサブセットにおける死亡データは18試験で抽出され、1万5,924例のCKD患者のうち1,293例が死亡していた。・ベースラインの平均収縮期血圧は、厳格降圧および低強度降圧の両群で148(SD:16)mmHgであった。・平均収縮期血圧は、厳格降圧群では16mmHg低下し132mmHgに、低強度降圧群では8mmHg低下し140mmHgになった。・厳格降圧群の全死亡リスクは低強度降圧群より低く(オッズ比:0.86、95%CI:0.76~0.97、p=0.01)、この結果は有意な異質性がなく、複数のサブグループにわたって一貫していた。

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SPRINT試験、厳格な降圧でも生活の質は低下せず―しかしあくまでも臨床試験の中での結果であることは銘記すべき(解説:桑島 巖 氏)-728

 厳格な降圧は、脳や心臓の血流が減少して、自覚症状や生活の質を貶めるのではないかという懸念は古くからあり、それがJ-カーブ現象の存在を信じる研究者たちに強く信じられていた。 本研究は、厳格な降圧が患者報告による有害な健康アウトカムを増やすという仮説を実証する目的で行われたSPRINT試験のサブ解析である。 SPRINT試験とは、収縮期血圧120mmHgの厳格な降圧レベルが、140mmHgの標準的降圧に比べて心血管合併症予防効果が大きいことを示し、話題になった臨床試験である。 患者報告によるアウトカム指標としては、退役軍人RAND12項目票に基づく健康調査票の身体的要素(PCS)スコアと、メンタル要素(MCS)スコア、そして健康質問票のうつ病評価尺度(PHQ-9)スコア、患者報告による満足度、降圧薬のアドヒアランスなどについて、厳格降圧群と標準降圧群で比較した。 厳格降圧群のほうが、収縮期血圧で平均14.8mmHg低く、降圧薬の数も平均1種類多く服用していた。 結果として中央値3年で厳格降圧群の身体的要素、メンタル要素、うつ病スケールの平均値はいずれも標準降圧群と有意差がなかった。 降圧治療の満足度は両群とも高く、降圧薬アドヒアランスにも差がなかった。 厳格降圧は標準降圧群に比べて身体的、メンタル的に有害なアウトカムをもたらすことはなく心血管合併症を予防すると結論づけた。調査対象の28.2%は75歳以上の後期高齢者であるが、これらの患者はベースラインでは若年者よりも身体的要素スコアが低かったが、厳格降圧の身体スコア、メンタルスコアは75歳以上の症例でも標準治療と有意差がなかった。このことから高齢者での厳格降圧は身体機能やメンタル機能を低下させて生活の質を低下させるという仮説は否定される結果であった。 ただし、本研究にはいくつかのリミテーションがある。その第一は、厳格降圧による症状発現は降圧の比較的早期に一過性に生じる可能性があるが、それらが見逃されている可能性があること。第二に、SPRINT試験そのものが予定よりも早期に終了してしまったために、患者満足度やアドヒアランスなどにおいて長期的な評価がなされていない症例が多い可能性。比較的高リスクの症例が本試験に参加しているが、その結果がすべての高血圧患者に適用できるかという外的妥当性の問題、そして最後に本試験は二重盲検法ではないので群分けを患者が知っていることでそのことが患者の意識に影響した可能性も否定しきれない問題などである。 しかしSPRINT試験という米国の公的機関によって厳格に行われた臨床試験の結果ではあるが、その結果は多忙な日常診療で診るすべての症例、とくに高齢者には適用できず、やはり厳格な降圧には注意深く、慎重な姿勢が求められるのである。

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強化降圧 vs.標準降圧、患者にとって差は?/NEJM

 収縮期血圧の目標値を120mmHgとした強化治療を行っても、同目標を140mmHgとした標準治療を行った場合に比べ、患者報告による健康アウトカムや、降圧治療の満足度、降圧薬アドヒランスには有意差がないことが示された。米国・ベッドフォード退役軍人(VA)病院のDan R. Berlowitz氏らが、9,361例を対象に行った無作為化比較試験の結果明らかにし、NEJM誌2017年8月24日号で発表した。これまでに発表されたSystolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT試験)の結果では、非糖尿病の心血管リスクが高い高血圧症患者において、強化治療のほうが標準治療に比べ、心血管イベントリスクが低いことが示されていた。一方で、そのような強化治療が、患者報告アウトカムにどのような影響を与えるかは不明であった。 PCS、MCS、PHQ-9スコアを比較 研究グループは、高血圧症の患者9,361例を無作為に2群に分け、一方は収縮期血圧目標値を120mmHg(強化治療群)、もう一方は同目標値を140mmHg(標準治療群)とした降圧治療を行った。 患者報告によるアウトカムの指標としては、退役軍人RAND 12項目健康調査票の身体的サマリー(PCS)スコアと、精神的サマリー(MCS)スコア、患者健康質問票の9項目のうつ病評価尺度(PHQ-9)スコア、患者報告による血圧治療と降圧薬に関する満足度、降圧薬のアドヒランスとした。 強化治療群と標準治療群について、全被験者でスコアを比較したほか、身体・認知機能で層別化したグループ間の比較も行った。患者満足度は両群で同程度に高い 強化治療群は標準治療群に比べ、平均1種の降圧薬を多く服用しており、収縮期血圧値は14.8mmHg(95%信頼区間:14.3~15.4)低かった。 中央値3年の追跡期間中、患者報告によるPCS、MCS、PHQ-9のスコア平均値は相対的に安定しており、両群で有意差は認められなかった。ベースライン時の身体・認知機能で階層化したグループで比較しても、同スコアに有意差はなかった。 降圧治療の満足度は両群ともに高く、また降圧薬アドヒランスについても、両群で有意差はなかった。

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現代でも通用する、「医食同源」のライフスタイル・健康長寿の秘訣は、食にあり(解説:石上友章氏)-723

 高血圧は、減塩だけではない。DASH食は、降圧だけでなく痛風・高尿酸血症にも効果的な、健康長寿食であった(DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!)。医食同源・薬食同源といわれ、経口摂取する食材のなかには、薬効があるものもあるとされている。東洋医学をひもとけば、草根木皮といわれる植物資源だけではなく、場合によっては、動物資源(庶虫、水蛭など)ですら特定の薬効があるといわれている。不老不死・健康長寿は、東洋医学の究極の課題であり、4大古典のひとつである薬学書の『神農本草経』では、薬物を上品・中品・下品の3種類に分けている。上品薬に分類される薬物は、無毒であり長期間服用可能で、生命を養う作用があるとされており、身を軽くし、体力を増し、不老長生を可能にする、とされている。医食同源・薬食同源の考え方は、食養生といわれて重要視されている。本邦でも、『養生訓』を残した貝原益軒は、記録によると1600年代に活躍し、84歳で天寿を全うしている。 今回、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMercedes Sotos-Prieto氏らは、DASH食だけではなく、AHEI(Alternative Healthy Eating Index:代替健康食指数)、AMED(Alternative Mediterranean Diet:代替地中海食)で推奨されている食パターンをスコア化して評価し、その変化が、健康長寿に与える影響を検討した結果を公表した。Sotos-Prieto M, et al. N Engl J Med. 2017;377:143-153. その結果、図に示すように、心血管死亡率について、すべての健康食スコアの改善が、統計学的に有意に抑制することが明らかになった。 この結果は、網羅的な感受性分析によってrobustnessを証明していることから、十分支持される。全死亡についても同様の結果が得られているが、疾患別にするとがんについては必ずしも有意ではない。またDASH食については、AHE食・AMED食に比較すると、若干効果が劣る傾向にある。魚食と、ω3系脂肪酸および、ごく軽度のアルコール摂取に差があるとされている。 21世紀になって、どの先進国も増大する医療費に悩まされている。健康長寿は、人類共通の課題になっている。あらゆる世代が、恐怖と欠乏から自由でいられるために、食生活を見直すことが重要なのは間違いない。

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降圧薬と乳がんリスクの関連~SEERデータ

 米国Kaiser Permanente Washington Health Research InstituteのLu Chen氏らは、Surveillance, Epidemiology and End-Results(SEER)-Medicareデータベースを用いて、主要な降圧薬と乳がんリスクの関連を検討し、利尿薬とβ遮断薬が高齢女性の乳がんリスクを増加させる可能性があることを報告した。「ほとんどの降圧薬は乳がん発症に関して安全だが、利尿薬とβ遮断薬についてはさらなる研究が必要」としている。Cancer epidemiology, biomarkers & prevention誌オンライン版2017年8月14日号に掲載。 本研究では、2007~11年にStage I/II乳がんと診断された66~80歳の女性1万4,766例を同定した。がん発症後の各種降圧薬の使用についてMedicare Part Dデータで調べた。アウトカムは、SBCE(second breast cancer event、初回の再発または2次対側原発乳がんの複合)、乳がんの再発、乳がんによる死亡とした。時間変動Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値3年で、SBCEが791例、乳がんの再発が627例、乳がん死亡が237例であった。・乳がん診断後に利尿薬を使用した患者(8,517例)では非使用者と比較して、SBCEリスクは29%(95%CI:1.10~1.51)、再発リスクは36%(同:1.14~1.63)、乳がん死亡リスクは51%(同:1.11~2.04)、それぞれ高かった。・β遮断薬を使用した患者(7,145例)では非使用者と比較して、乳がん死亡リスクが41%(95%CI:1.07~1.84)高かった。・アンジオテンシンII受容体拮抗薬、Ca拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬の使用は、乳がんリスクに関連していなかった。

375.

高齢糖尿病患者の降圧薬アドヒアランスと効果の関連

 米国Kaiser Permanente Institute for Health ResearchのMarsha A. Raebel氏らによる約13万例の高齢糖尿病患者の後ろ向きコホート研究で、85歳以上もしくは複数の併存疾患を持つ糖尿病患者では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体遮断薬(ACEI/ARB)の服薬アドヒアランスと血圧低下が関連しないことが示された。一方、スタチンのアドヒアランスはLDLコレステロール(LDL-C)の低下と関連していた。Pharmacotherapy誌オンライン版2017年7月28日号に掲載。 米国Centers for Medicare and Medicaid ServicesのMedicare Starプログラムでは、糖尿病患者がACEI/ARBとスタチンの服薬アドヒアランスの目標を満たした場合、ヘルスプランにインセンティブを与えている。これまでに、アドヒアランスと心血管リスク因子のコントロールとの関連は報告されているが、ほとんどの研究が併存疾患のほとんどない若年の患者が含まれており、併存疾患の多い高齢患者における関連はよくわかっていない。そこで著者らは、Medicareでの65歳以上の糖尿病患者12万9,040例において、Starアドヒアランスの目標達成(8割以上の日数)が血圧(140/90mmHg未満)およびLDL-C(100mg/dL未満)に及ぼす影響を調べた。 主な結果は以下のとおり。・アドヒアランスは、高齢者のどの年代群でもほとんど差がなかった。・併存疾患なし患者に比べ、併存疾患4以上の患者ではACEI/ARB(RR:0.88、95%CI:0.87~0.89)やスタチン(RR:0.91、95%CI:0.90~0.92)のアドヒアランスが低かった。・ACEI/ARBのアドヒアランスは、85歳以上の患者における血圧140/90mmHg未満(RR:1.01、95%CI:0.96~1.07)、複数の併存疾患(たとえば、併存疾患3つでのRR:1.04、95%CI:0.99~1.08)と関連がみられなかった。・スタチンのアドヒアランスは、高齢者のすべての年代群(たとえば、85歳以上のRR:1.13、95%CI:1.09~1.16)、すべての併存疾患数(たとえば、4つ以上でのRR:1.13、95%CI:1.12~1.15)でLDL-C 100mg/dL未満と関連していた。

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高齢者の高血圧診療ガイドライン発表―日常診療の問題に焦点

 日本老年医学会は7月20日に「高齢者高血圧診療ガイドライン(JGS-HT2017)」を発表した。本ガイドラインでは、日常診療で生じる問題に基づいてClinical Question(CQ)を設定しており、診療における方針決定をするうえで、参考となる推奨を提示している。 高齢者においては、生活習慣病管理の目的は脳血管疾患予防だけでなく、生活機能全般の維持という側面もあるため、フレイルや認知症などの合併症を考慮したガイドラインが重要と考えられている。そのため、高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、治療介入によるアウトカムを認知症や日常生活活動(ADL)に設定して行われたシステマティックレビューが基盤となっている。以下にその概略を紹介する。高齢者の高血圧診療は高度機能障害がなければ年齢にかかわらず降圧治療 高齢者の高血圧診療の目的は健康寿命の延伸である。高齢者においても降圧治療による脳卒中や心筋梗塞、心不全をはじめとする脳血管疾患病や慢性腎臓病の1次予防、2次予防の有用性は確立しているため、高度に機能が障害されていない場合は、生命予後を改善するため年齢にかかわらず降圧治療が推奨される。ただし、病態の多様性や生活環境等に応じて個別判断が求められる、としている。生活習慣の修正についても、併存疾患等を考慮しつつ、積極的に行うことが推奨されている。高齢者高血圧には認知機能にかかわらず降圧治療は行うが服薬管理には注意 高齢者への降圧治療による認知症の発症抑制や、軽度認知障害(MCI)を含む認知機能障害のある高齢者高血圧への降圧治療が、認知機能悪化を抑制する可能性が示唆されているものの、一定の結論は得られていない。よって、現段階では認知機能の評価により、降圧治療を差し控える判断や降圧薬の種類を選択することにはつながらないため、原則として認知機能にかかわらず、降圧治療を行う。ただし、認知機能の低下がある場合などにおいては、服薬管理には注意する必要がある。 一方、過降圧は認知機能障害のある高齢者高血圧において、認知機能を悪化させる可能性があるので注意を要する。また、フレイルであっても基本的には降圧治療は推奨される。高齢者高血圧への降圧治療で転倒・骨折リスクが高い患者へはサイアザイド推奨 高齢者高血圧への降圧治療を開始する際には、骨折リスクを増大させる可能性があるので注意を要する。一方で、サイアザイド系利尿薬による骨折リスクの減少は多数の研究において一貫した結果が得られているため、合併症に伴う積極的適応を考慮したうえで、転倒リスクが高い患者や骨粗鬆症合併患者では積極的にサイアザイド系利尿薬を選択することが推奨される。しかし、ループ利尿薬については、骨折リスクを増加させる可能性があるため、注意が必要である。高齢者高血圧への降圧治療でCa拮抗薬・ループ利尿薬は頻尿を助長する可能性 高齢者高血圧への降圧治療でもっとも使用頻度が高く、有用性の高い降圧薬であるCa拮抗薬は夜間頻尿を助長する可能性が示唆されている。そのため、頻尿の症状がある患者においては、本剤の影響を評価することが推奨される。また、腎機能低下時にサイアザイド系利尿薬の代わりに使用されるループ利尿薬も頻尿の原因になり得る。 一方で、サイアザイド系利尿薬は夜間頻尿を増悪させる可能性が低い。しかし、「利尿薬」という名称から、高齢者高血圧患者が頻尿を懸念して内服をしない・自己調節することが少なくないため、患者に「尿量は増えない」ことを丁寧に説明する必要がある。高齢者高血圧の降圧薬治療開始や降圧目標は個別判断が必要なケースも 高齢者高血圧の降圧目標としては、日本高血圧学会によるJSH2014と同様に、65~74歳では140/90mmHg未満、75歳以上では150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満)が推奨されている。また、年齢だけでなく、病態や環境により、有用性と有害性を考慮することが提案されており、身体機能の低下や認知症を有する患者などでは、降圧薬治療開始や降圧目標を個別判断するよう求めている。エンドオブライフにある高齢者においては、降圧薬の中止も積極的に検討する。高齢者高血圧の「緩徐な降圧療法」の具体的な方法を記載 高齢者高血圧診療ガイドライン2017では、第1選択薬についてはJSH2014の推奨と同様に、原則、Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、サイアザイド系利尿薬となっている。心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対しては、β遮断薬を第1選択薬として考慮する。 また、高齢者高血圧の降圧療法の原則の1つである「緩徐な降圧療法」として、「降圧薬の初期量を常用量の1/2量とし、症状に注意しながら4週間~3ヵ月の間隔で増量する」などといった、具体的な方法が記載されている。さらには、降圧薬の調整に際し、留意すべき事項としてポリファーマシーやアドヒアランスの対策などのポイントが挙げられている。

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高血圧家族歴を心血管病予防にどう生かすか?(解説:有馬 久富 氏)-695

 高血圧は遺伝することがよく知られている。しかし、過去に行われた研究では、問診による家族歴(両親の高血圧の有無)を用いて高血圧の遺伝性が検討されてきた。問診による家族歴は、記憶に基づいているために不正確であることが少なくない。とくに、健診や降圧療法が今ほど普及していなかった時代には、高血圧の診断自体が不正確であったと推測される。したがって、高血圧の遺伝性に関する信頼性の高いエビデンスは非常に限られていた。 今回、米国Framingham研究が、親世代および子供世代を対象に継続してきた健診成績を用いて高血圧の有無および発症年齢を正確に推定し、高血圧の遺伝性を検討した。1948年から70年近く継続してきたFramingham研究ならではの検討といえよう。その結果、母親あるいは父親が55歳未満で高血圧を発症している子供は、高血圧を発症するリスクが2倍(片親のみの場合)あるいは3.5倍(両親の場合)と有意に上昇していた。また、親世代を対象としたケース・コントロール解析では、高血圧を若年で発症するほど心血管病死亡のリスクが高かった。 今回のFramingham研究における検討から、比較的若年で発症する高血圧は遺伝性が強く、心血管病死亡のリスクが高いことが確認された。母親あるいは父親が55歳未満で高血圧を発症した場合、その子供は高リスク者と考えられるので、若いうちから生活習慣の改善を働きかけるとともに、高血圧の早期発見・早期治療を心掛け、心血管病を予防していくことが重要であろう。

378.

DASHダイエットは、痛風・高尿酸血症にも有効な「長生きダイエット」!(解説:石上 友章 氏)-688

 高血圧は、生活習慣病の代表的な疾患であり、重要な心血管リスクである。本邦では4,000万人が罹患している、国民病といっていい疾患である。生活習慣病というくらいなので、実のところ適切な生活習慣を守れば、血圧を上げることもなく、医師や降圧薬の厄介になる必要もなくなる可能性がある。医療費が増え続けるといっても、その源が、日々の乱れた食生活にあるのであれば、国をあげて節制すれば、医療費も節約できるはずだ。 こうした考えで、米国保健福祉省の国立衛生研究所に属する国立心肺血液研究所(NHLBI)が、高血圧を予防し治療するために推奨している食事療法が、DASHダイエットである。DASHダイエットのDASHは、Dietary Approaches to Stop Hypertensionの頭文字からとられているように、「高血圧」対策のための食事療法である。DASH食の中身は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事で、とくにレシピの指定はなく、食材を選択することが勧められている1)。 米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らは、2017年5月9日号のBMJ誌に掲載した論文で、DASHダイエットが、高血圧のみならず、痛風・高尿酸血症の抑制にも効果があることを報告している。健康な生活を送る秘訣は、食生活にあった。この当たり前のようにもみえる研究は、実に26年間もの長期にわたる観察研究の成果である。26年間、1年おきに律儀にアンケート調査に答えた44,444人の参加者(男性の医療関係者)に、深甚なる敬意を表したい。 稲作や、牧畜が人類にもたらした恩恵は、計り知れない。定住と、食の供給を安定させることで、今日の人類の繁栄の礎となったのは、間違いない。しかし、より健康に、より長く生きて過ごしたいのであれば、穀類の精製をやめ、狩猟採集民の食生活に合わせることが必要らしい。直近のBMJ誌で、高尿酸血症が、腎結石と痛風以外に確実なヘルスケアアウトカムには影響を与えなかったと報告されている2)。両論文を合わせてご覧になると、理解が深まるかもしれません。

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カナグリフロジン、CVリスク低下の一方で切断リスクは上昇/NEJM

 心血管疾患リスクが高い2型糖尿病に対し、SGLT2阻害薬カナグリフロジンの投与は、心血管リスクを約14%低減するものの、一方で足指や中足骨などの切断術リスクはおよそ2倍に増大することが明らかになった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、30ヵ国、1万例超を対象に行った2つのプラセボ対照無作為化比較試験「CANVAS」「CANVAS-R」の結果を分析し明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表した。平均188週間追跡し、心血管アウトカムを比較 試験は、30ヵ国、667ヵ所の医療機関を通じ、年齢30歳以上で症候性アテローム心血管疾患歴がある、または年齢50歳以上で(1)糖尿病歴10年以上、(2)1種以上の降圧薬を服用しながらも収縮期血圧140mmHg超、(3)喫煙者、(4)微量アルブミン尿症または顕性アルブミン尿症、(5)HDLコレステロール値1mmol/L未満、これらの心血管リスク因子のうち2項目以上があてはまる、2型糖尿病の患者1万142例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、カナグリフロジン(100~300mg/日)またはプラセボをそれぞれ投与し、平均188.2週間追跡した。主要アウトカムは、心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの複合だった。 被験者の平均年齢は63.3歳、女性は35.8%、平均糖尿病歴は13.5年だった。心血管イベントリスクは約14%減、一方で切断術リスクは2倍 主要アウトカムの発生率は、プラセボ群が31.5/1,000人年に対し、カナグリフロジン群は26.9/1,000人年と、約14%低率だった(ハザード比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.75~0.97、非劣性p<0.001、優越性p=0.02)。 仮説検定シーケンス法に基づく腎機能のアウトカムに関する評価は、統計的な有意差は示されなかった。具体的に、アルブミン尿症の進行について、カナグリフロジン群のプラセボ群に対するハザード比は0.73(95%CI:0.67~0.79)、また推定糸球体濾過量(GFR)の40%減少保持、腎機能代替療法の必要性、腎疾患による死亡のいずれかの複合エンドポイント発生に関する同ハザード比は0.60(同:0.47~0.77)だった。 一方で有害事象については、既知のカナグリフロジン有害事象のほか、切断術実施率がプラセボ群3.4/1,000人年だったのに対し、カナグリフロジン群は6.3/1,000人年と、およそ2倍に上った(ハザード比:1.97、95%CI:1.41~2.75)。主な切断部位は足指と中足骨だった。

380.

60歳未満の降圧薬服用者、血圧高いと認知症リスク高い

 血圧と認知症の関係については相反する疫学研究結果が報告されている。今回、ノルウェー科学技術大学HUNT研究センターのJessica Mira Gabin氏らが、認知症診断の最大27年前まで(平均17.6年)の血圧と認知症について調査したところ、60歳以上では収縮期血圧と認知症が逆相関を示したが、60歳未満の降圧薬使用者では収縮期血圧や脈圧の上昇とアルツハイマー病発症が関連していた。Alzheimer's research & therapy誌2017年5月31日号に掲載。 本研究では、ノルウェーのNord-Trondelag郡における1995~2011年の認知症発症データを収集し、専門家パネルが診断を検証した。さらに、このデータを被験者の個人識別番号を用いて、1984~86年(HUNT1)および1995~97年(HUNT2)に実施された大規模な住民健康調査であるNord-Trondelag Health Study(HUNT研究)データと結び付けた。HUNT研究の参加者2万4,638人のうち579人がアルツハイマー病、またはアルツハイマー病と血管性の混合型認知症、または血管性認知症と診断された。 主な結果は以下のとおり。・60歳以上においては、年齢、性別、教育およびその他の関連する共変量を調整後、認知症全体、アルツハイマー病/血管性の混合型認知症、アルツハイマー病では収縮期血圧との逆相関が一貫して認められたが、血管性認知症では認められなかった。・この結果は、降圧薬の使用にかかわらず、HUNT1とHUNT2の両方で観察された。・60歳未満の降圧薬服用者では、収縮期血圧および脈圧とアルツハイマー病との間に有害な関連がみられた。

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