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軽中等症の高血圧、低用量3剤配合剤vs.通常ケア/JAMA

 軽症~中等症の高血圧症患者において、低用量3剤配合降圧薬による治療は通常ケアと比較して、目標血圧を達成した患者の割合が有意に高かったことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のRuth Webster氏らによる無作為化試験の結果、示された。著者は「低用量3剤配合を第一選択としたり、単剤治療と置き換えたりすることは、血圧コントロールを改善する有効な方法となる可能性がある」とまとめている。コントロール不良の高血圧症は世界的な公衆衛生上の問題となっており、新たな治療戦略が求められている。JAMA誌2018年8月14日号掲載の報告。テルミサルタン20mg/アムロジピン2.5mg/chlorthalidone 12.5mgの配合剤 研究グループは、低用量3剤配合降圧薬治療が通常ケアと比べて、より良好な血圧コントロールを達成するかを、無作為化非盲検試験にて検討した。被験者は、収縮期血圧>140mmHgおよび/または拡張期血圧>90mmHgの成人、および糖尿病/CKDで>130mmHgおよび/または>80mmHgの成人で、降圧治療の開始が必要(未治療)または漸増治療が必要(単剤療法を受けている)な患者とした。登録は、2016年2月~2017年5月までスリランカの11の市中病院で行われ、フォローアップは2017年10月に終了した。 被験者は、1日1回、固定用量の3剤配合降圧薬(テルミサルタン20mg量、アムロジピン2.5mg量、chlorthalidone 12.5mg量)治療を受ける群(349例)、通常ケア群(351例)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、6ヵ月時点の目標収縮期/拡張期血圧(140/90mmHg未満、または糖尿病/CKD患者は130/80mmHg未満)を達成した患者割合とした。副次評価項目は、フォローアップ中の平均収縮期/拡張期血圧の差、有害事象による降圧治療の中断などであった。6ヵ月後の目標血圧達成患者、70% vs.55% 無作為化された患者700例(平均年齢56歳、男性42%、糖尿病29%、平均収縮期/拡張期血圧154/90mmHg)のうち、675例(96%)が試験を完了した。 6ヵ月時点の評価で、3剤配合降圧薬群の目標血圧達成割合は、通常ケア群に比べて有意に高かった(70% vs.55%、リスク差:12.7%[95%信頼区間[CI]:3.2~22.0]、p<0.001)。 また、6ヵ月時の平均収縮期/拡張期血圧は、3剤配合降圧薬群125/76mmHgに対し、通常ケア群134/81mmHgであった。フォローアップ中の無作為化後の血圧の補正後差は、収縮期血圧-9.8mmHg(95%CI:-7.9~-11.6)、拡張期血圧-5.0mmHg(-3.9~-6.1であった(いずれもp<0.001)。 有害事象は全体で、被験者255例(3剤配合降圧薬群38.1% vs.通常ケア群34.8%)で419件が報告された。最も多く共通して認められたのは、筋骨格系疼痛(それぞれ6.0%、8.0%)、めまい、意識障害(presyncope)、失神(5.2%、2.8%)であった。有害事象のため治療中止となった患者の割合は両群間で有意な差はなかった(6.6% vs.6.8%)。

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2017ACC/AHA高血圧GLの定義にすると、日本の高血圧者は何人増えるか?(解説:有馬久富氏)-902

 2017ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧症の定義が、現行の140/90mmHg以上から130/80mmHg以上に改訂された。この新しい定義の米国・中国における高血圧有病率および数に及ぼす影響が、BMJに報告された。その結果、米国の45~75歳男女において、高血圧有病率は50%から63%まで増加し(絶対増加13%、相対増加27%)、高血圧者の数は1,480万人増加すると推測された。中国における増加はさらに顕著であり、45~75歳男女における高血圧有病率は38%から55%まで増加し(絶対増加17%、相対増加45%)、高血圧者の数は8,270万人増加すると推測された。 日本では、どの程度の影響があるのだろうか? 平成28年国民健康・栄養調査1)の成績を用いて、同様の検討を行った。残念ながら、国民健康・栄養調査で報告されている血圧分類が2017ACC/AHA高血圧ガイドラインのそれとは異なるため、血圧130/85mmHg以上あるいは降圧薬服用者の割合および数を平成29年推計人口から推定した。その結果、40歳以上の男女における高血圧有病率は140/90mmHg以上で定義した52%から130/85mmHg以上で定義した66%まで増加し(絶対増加14%、相対増加26%)、高血圧者の数は4,000万人から5,100万人まで1,000万人以上増加すると推測された。2017ACC/AHA高血圧ガイドラインどおりに130/80mmHg以上で定義した場合、この数はもう少し増えるものと推測される。 しかしながら、2017ACC/AHA高血圧ガイドラインは、130/80mmHg以上で定義したすべての高血圧者を薬物治療の対象とはしていない。したがって、新たに降圧療法の適応となる高血圧者の数は、有病者数の増加よりも少ないはずである。降圧療法の適応を拡大するにあたっては、Number needed to treat(NNT)や費用対効果を考慮に入れて総合的に議論してゆく必要があろう。■参考文献はこちら1)厚生労働省健康局健康課栄養指導室. 平成28年国民健康・栄養調査報告. 厚生労働省, 2017.

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心房細動患者の認知症発症、降圧薬やワルファリンで2割減

 1万例以上の心房細動患者を対象とした研究で、サイアザイド/レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬併用などの降圧薬処方やワルファリン使用が、認知症発症率の低下と関連していたことをスウェーデン・カロリンスカ研究所のPer Wandell氏らが報告した。International Journal of Cardiology誌オンライン版2018年7月21日号に掲載。 対象は、スウェーデンのプライマリケアで心房細動と診断された45歳以上の患者1万2,096例(男性6,580例、女性5,516例)。心房細動発症前に認知症と診断されていた患者は除外した。性別、年齢、社会経済的要因および併存疾患を調整し、Cox回帰を用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・平均5.6年間の追跡期間(6万9,214人年)に750例(6.2%)が認知症を発症した。・サイアザイド処方患者(HR:0.81、95%CI:0.66~0.99)およびワルファリン処方患者(HR:0.78、95%CI:0.66~0.92)は、処方されていない患者に比べて認知症リスクが低かった。・異なる降圧薬(サイアザイド、β遮断薬、Ca拮抗薬、RAAS阻害薬)の1~4種類の使用は、認知症の減少と関連していた。1剤または2剤の処方患者では、降圧薬を処方されていない患者に比べてHRが0.80(95%CI:0.64~1.00)、3剤または4剤の処方患者のHRは0.63(95%CI:0.46~0.84)であった。・RAAS阻害薬とサイアザイドの併用は、併用処方されていない患者に比べて有意に認知症リスクが低かった(HR:0.70、95%CI:0.53~0.92)。

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外来血圧から覚醒時自由行動下血圧を予測することは可能か?―真の血圧の探求(解説:石川讓治氏)-892

 ロシアの外科医コロトコフによって、1905年に水銀血圧計が作成されてから100年以上の年月が過ぎた現在でも、“真の血圧値”を知ることは難しい。忙しい外来診療における外来血圧測定の不正確性のために、カフ・オシロメトリック法を用いた自動血圧計が使用されるようになり、白衣効果(医師の前でのストレスによる血圧上昇)の影響を減らすため、診察室外での血圧(Out-of-Office Blood Pressure)の測定がなされてきた。自由行動下血圧モニタリングは、患者の日常生活の中での血圧が測定可能であり、現在のところ最も“真の血圧値”に近いと考えられている。しかし、自由行動下血圧計は高価であり、繰り返す血圧測定が患者に不快感を与える場合があるため、家庭血圧計が診察室外の血圧として代用され、臨床応用されている。 Sheppardらは1)、既存の研究データの後ろ向き検討において、プライマリーケア医の外来血圧から家庭血圧を予測する回帰式を作成し、外来血圧から年齢、性別、血圧の測定間変化(1機会に3回測定した)、Body Mass Index、高血圧の診断、高血圧罹病期間、降圧薬の使用、脈圧といった情報で補正後に予測された血圧値が、自由行動下血圧における高血圧の診断率を改善したことを報告している1)。この研究結果に基づき、Sheppardらは2)、英国の10のプライマリーケア医における887名の患者を前向きに登録し、先行研究の予測式を用いて外来血圧から計算された血圧を用いることで、覚醒時自由行動下血圧での高血圧の診断の感度が97%、特異度が75.9%に改善しており、自由行動下血圧モニタリングの要否を判定するトリアージが可能であると報告した。 これらの研究において、さまざまな情報を考慮すれば外来血圧からもOut-of-Office BPの予測が改善することが明らかになったが、その回帰式は複雑である。論文ではインターネット上で計算できるサイトも紹介しているが、自動的にアルゴリズムを計算してくれる外来自動血圧がなければ、日常臨床に応用することは現在のところ難しい。また、Out-of-Office BPといっても自由行動下血圧と安静座位で測定される家庭血圧は必ずしも一致しない3)。筆者らは、家庭血圧は自由行動下血圧の代用ではなく、より正確に繰り返し測定可能な安静座位血圧であり、むしろ外来血圧に近いものと考えている。そのため、“真の血圧値”を知るうえでは、外来血圧から覚醒時自由行動下血圧を予測する予測式を作成する必要があるかもしれない。また、世界に先駆けて家庭血圧計が普及しているわが国では、家庭血圧値から覚醒時自由行動下血圧を予測する式も必要であろう。

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2017ACC/AHA高血圧GL導入で、米中の患者が激増/BMJ

 2017米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)高血圧ガイドラインが、米国と中国で採択された場合の影響を調べた結果、両国ともに高血圧症とされる人の数および治療対象者の数は激増し、米中45~75歳の半数超が高血圧症患者と呼ばれることになるとの見込みが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのRohan Khera氏らにより示された。高血圧症患者は米国で26.8%増、中国では45.1%増、新規の治療推奨対象者は米国750万人、中国5,530万人、また、新規の治療強化対象者は米国1,390万人、中国3,000万人と試算されるという。2017ACC/AHA高血圧ガイドラインでは、高血圧症定義の血圧値が、現行の140/90mmHgから130/80mmHgに改訂された。BMJ誌2018年7月11日号掲載の報告。改訂ガイドライン導入後の有病率、治療の推奨者・強化対象者を試算 研究グループは米中での2017ACC/AHA高血圧ガイドラインの導入による、高血圧症の有病率と、治療開始および治療強化の適格性への影響を調べるため、両国の代表集団を対象とする断面調査で観察的評価を行った。 調査対象集団は、米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)の直近2回(2013~14年、2015~16年)分と、China Health and Retirement Longitudinal Study(CHARLS)の2011~12年の参加者で、45~75歳で高血圧症と診断された者および治療予備軍(降圧治療開始および強化)について、2017ガイドラインに基づく場合と現行ガイドラインに基づく場合を比較した。米国45~75歳人口の63%、中国は55%が「高血圧症」ということに 2017ガイドラインを採択した場合、米国45~75歳人口の63%(95%信頼区間[CI]:60.6~65.4)を占める7,010万人(95%CI:6,490万~7,530万)が、また中国では同55%(95%CI:53.4~56.7)を占める2億6,690万人(95%CI:2億5,290万~2億8,080万)が高血圧症ということになることが示された。有病率の増加は、米国では26.8%(95%CI:23.2~30.9)、中国では45.1%(95%CI:41.3~48.9)と試算された。 また米国において高血圧で未治療者は、治療パターンと現行ガイドラインに基づく試算では810万人(95%CI:650万~970万)だが、2017ガイドライン採択後は1,560万人(95%CI:1,360万~1,770万)に増加すると予想された。同様の試算について中国では、現行7,450万(95%CI:6,410万~8,480万)が1億2,980万人(95%CI:1億1,870万~1億4,090万)に増加すると試算された。 さらに、高血圧だが降圧治療は不要(生活習慣の修正のみ推奨)とされる人は、米国では現行下150万人(95%CI:120万~210万)が870万人(95%CI:600万~1,150万)に、中国では同2,340万人(95%CI:1,210万~3,510万)が5,100万人(95%CI:4,030万~6,160万)に増加する。 治療を受けている人についても、2017ガイドライン導入後の治療強化の対象者は、米国では1,390万人(95%CI:1,220万~1,560万)増加(治療者に占める割合でみると24.0%から54.4%に増大)、中国では3,000万人(95%CI:2,430万~3,570万)増加(41.4%から76.2%に増大)すると試算された。

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腎交感神経除神経降圧療法と降圧薬(解説:冨山博史氏)-885

研究の概要 研究対象は、カルシウム拮抗薬、利尿薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ベータ遮断薬のいずれか、または複数の降圧薬の最大容量の50%以上の服用でも血圧コントロールが十分でない症例80例である。高周波カテーテルによる腎交感神経除神経(RND)実施群(38例)および対照群(42例)の治療後6ヵ月の血圧変化を24時間血圧測定にて評価した。RND群では、対照群に比べて24時間収縮期血圧が7.4mmHg有意に低下し、RNDの有意な降圧効果を示した。研究の背景と臨床的意義 RNDの降圧効果を評価するには、3つの重要確認事項がある。第1に血圧評価方法であり、診察室血圧では変動する血圧の降圧効果を評価することは不十分である。本研究では24時間血圧測定の結果よりRNDの有意な降圧効果を報告した。第2は、併用する降圧薬の影響である。RNDの対象は、難治性高血圧例が適切と現時点では考えられている。本研究に先行するSPYRAL OFF研究は、降圧薬非服用症例にてRNDの有意な降圧効果を報告した。しかし、実臨床では降圧治療服用下でのRNDの有効性を確認することが重要である。2014年に発表されたSYMPLICITY HTN-3研究では、RNDで有意な降圧効果を認めなかったことを報告した。しかし、その背景として降圧薬服用アドヒアランス不良が結果に影響した可能性が指摘されている。本研究では、血圧・尿検査にて降圧薬服用アドヒアランスを確認し、RND群、対照群に服薬アドヒアランスに差がないことを確認している。このように、本研究はRNDの降圧効果を検証するための2つの事項が確認されている。 3つ目の重要事項は、RND実施確実性の確認である。本研究では、RND実施確実性は直接検証されていない。しかし、24時間血圧評価にて降圧薬の最も影響の少ない朝夕のThroughの時間帯でもRND群では、血圧・心拍数の2重積が対照群に比べて有意に小さいことを確認している。この所見から、RNDにより腎交感神経活性が低下したと推察している。研究の今後 本研究では、服薬アドヒアランス良好例の割合が60%と報告しているが、研究症例数は80例と少ない。今後、RNDの効果と服薬アドヒアランスの関係(アドヒアランス不良群でRNDはより有効か)および降圧薬の種類によるRND有効性の差異を検証する必要がある。

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高血圧・高脂血症の治療は認知症を予防するか

 アルツハイマー病(AD)と血管リスク因子(VRF)の関連について疫学的エビデンスはあるが、VRFの治療が認知症やADの発症率を低下させるのか不明である。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のSusanna C. Larsson氏らが、認知症およびADの発症におけるVRFの治療の影響について系統的レビューとメタ分析で検討した結果、降圧薬とスタチンが認知症やADの発症率を低下させる可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年6月9日号に掲載。 著者らは、PubMedで2018年1月1日までに公表された関連研究から、認知症とAD発症率に対するVRF治療の影響を調査した無作為化比較試験(RCT)と前向き研究を同定した。 主な結果は以下のとおり。・8件のRCTと52件の前向き研究が同定された。・降圧治療により、RCT(5件、相対リスク[RR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.69~1.02)および前向き研究(3件、RR:0.77、95%CI:0.58~1.01)では、有意ではないが認知症リスクが低下し、前向き研究(5件、RR:0.78、95%CI:0.66~0.91)ではADリスクが低下した。・前向き研究において、スタチンによる高脂血症治療により認知症(17件、RR:0.77、95%CI:0.63~0.95)およびAD(13件、RR:0.86、95%CI:0.80~0.92)のリスクが低下したが、スタチン以外の脂質降下薬では低下しなかった。1件のRCTで、スタチンと認知症発症との関連は示されなかった。・1件のRCTおよび6件の前向き研究のデータから、血糖降下薬またはインスリン療法による認知症リスクへの有益な影響は示されなかった。

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「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン」5年ぶりの改訂

CKD診療ガイドラインが全面改訂 日本腎臓学会は6月、5年ぶりの改訂となる「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」を発行した。今回は専門医だけではなく、かかりつけ医や非専門医の利用を想定して制作されており、全面改訂する際に「CKD診療ガイド2012」と「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」を一元化させている。 前回同様、全章がクリニカルクエスチョン(CQ)形式の構成。CKD診療ガイドライン2018の主な改訂ポイントとして“STOP-DKD宣言”で注目を集めた、糖尿病性腎臓病(DKD)が章立てられているほか、高血圧・心血管疾患(CVD)、高齢者CKDについても詳しく取り上げられている。CKD診療ガイドラインの役割 本ガイドラインはすべての重症度のCKD患者を対象とし、診療上で問題となる小児CKDの特徴と対処法、CKD患者の妊娠時についても簡潔に記載されている。ただし、末期腎不全(ESKD)に達した維持透析患者や急性腎障害(AKI)患者は除外されているため、必要に応じて他のガイドラインを参照する必要がある。本来であれば病診連携が必要とされる疾患だが、本ガイドラインは専門医が不在とする地域での、かかりつけ医によるCKD診療のサポートに配慮した構成となっている。CKD診療ガイドライン2018では75歳以上は150/90mmHg未満を推奨 CKD診療ガイドライン第4章の「高血圧・CVD」では、血圧基準値を「糖尿病の有無」「尿蛋白の有無(軽度尿蛋白[0.15g/gCr]以上を尿蛋白ありと判定)」「年齢(75歳で区分)」の3つのポイントで定めている。・75歳未満の場合 CKDステージを問わず、糖尿病および尿蛋白の有無で判定 糖尿病なし:尿蛋白(-)140/90mmHg未満、尿蛋白(+)130/80mmHg未満 糖尿病あり:尿蛋白(+)130/80mmHg未満・75歳以上の場合 糖尿病、尿蛋白の有無にかかわらず150/90mmHg未満 起立性低血圧やAKIなどの有害事象がなければ、140/90mmHg未満への降圧を目指すが、80歳以上の120/60mmHg以下での管理において、Jカーブ現象が見られたという研究報告もあることから過降圧への注意も提案されている。CKD診療ガイドライン2018では高齢者への対応に変化 CKD診療ガイドライン第12章「高齢者CKD」では、高齢者CKDの年齢が“75歳以上”と改訂されており、これは2017年に日本老年学会・日本老年医学会 高齢者に関する定義検討ワーキンググループ において、「75歳以上を高齢者」と定義付けたことが反映されている。また、同章にはフレイルに対する介入のCQが盛り込まれており、これは厚生労働省が今年度より本格実施を始めた「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に沿った改訂であることが伺える。DKDの推奨検査項目と管理目標値 CKD診療ガイドライン第16章「糖尿病性腎臓病(DKD)」では4つのCQが挙げられており、「尿アルブミン尿の測定」「浮腫を伴うDKDへのループ利尿薬投与」「HbA1c7.0%未満」「集約的治療」を推奨している。とくに血管合併症の発症・進行抑制ならびに総死亡率抑制のために集約的治療が重要とされ、以下の管理目標値を推奨としている。・BMI 22(生活習慣の修正[適切な体重管理、運動、禁煙、塩分制限食など])・HbA1c7.0%未満(現行のガイドラインで推奨されている血糖)・収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満・LDLコレステロール120mg/dl、HDLコレステロール40mg/dl、中性脂肪150mg/dl未満(早朝空腹時) ただし、「多因子の厳格な治療を推奨することで、投与薬剤数の増加や薬剤に関連する低血糖、過降圧、浮腫、高カリウム血症などのリスクが高まることにも注意が必要であり、適切なモニタリングと患者背景や生活環境を十分に勘案するように」といった注意事項も明記されている。PKD病診連携の架け橋に 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は透析導入原因の第4位となる疾患であるが、指定難病のため腎臓専門医・専門医療機関への紹介が必要となる。CKD診療ガイドライン第17章-3には、かかりつけ医による診療ポイントとして「脳動脈瘤」「トルバプタンによる治療」「血圧管理」について記載されているが、詳細については「エビデンスに基づく多発性嚢胞腎(PKD)診療ガイドライン2017」を参照とされている。今後の方針 今後の方針として「同改訂委員会が継続しメディカルスタッフや患者を利用者に想定したCKD療養ガイド2018を作成、出版する」と記され、医療者と患者が一体となって治療に取り組むことで、透析導入予防や医療費抑制につながることが期待される。

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降圧療法としての新たな腎除神経法(解説:冨山博史 氏)-867

研究背景 高血圧症例(とくに難治性高血圧)において、腎除神経は有効な降圧療法とする報告が増えている。これまでの報告は、腎動脈内腔側から高周波カテーテルを用いて腎除神経を行う方法であった。現在、経皮的除神経や超音波を用いた除神経など、高周波カテーテル以外の腎除神経法が開発中である。 本研究は、超音波カテーテルを用いた腎除神経法の降圧治療としての有効性を検証する目的で実施された。超音波除神経法 本方法は、腎動脈本幹遠位側をバルーンにて血行遮断し、中枢側に超音波バルーンを留置し超音波にて除神経を実施する方法である。腎動脈本幹では腎神経は腎動脈内腔側でなく外膜側を走行しており、本超音波除神経法は腎動脈内腔より1~6mmの部位の組織挫滅に有効な方法とされ、同部位を走行する腎神経を挫滅させる。研究対象 年齢18~75歳、降圧薬服用数2種類以下、同降圧薬を4週間中止した後の自由行動下血圧(ABPM)が135/85mmHg以上~170/105mmHg未満、かつ適切な腎動脈の解剖学的構造(上述のごとく、本超音波システムは腎動脈本幹中央に超音波カテーテルを留置する必要があり、腎動脈本幹に屈曲が少なく、分枝までに十分な距離が必要となる)を有する症例。研究実施方法 対象は無作為に除神経実施群と対照群(腎動脈造影のみ)に分けられた。Single blind法にて結果は評価された。評価方法 主評価項目は除神経実施2ヵ月後の日中のABPMの変化である。本研究の結果 欧州、米国の21施設で研究が実施され803例が登録された。このうち74例で腎除神経が実施され、72例が対照群となった。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧の低下は除神経群で-8.5mmHg、対照群で-2.2mmHg、腎除神経群で有意に大きい降圧を認めた。2ヵ月内では両群とも有意な腎動脈狭窄を認めなかった。研究の限界 本研究で著者らは以下5項目の研究限界を述べている。(1)長期の腎除神経の有効性は評価されていない。(2)腎動脈除神経が十分に実施されたかを手技直後に評価していない(除神経の評価方法として、腎カテコールアミン濃度測定、筋交感神経電位測定、求心神経刺激による血圧変化の評価などが実施されているが、確立された方法はない)。(3)有害事象の発生(安全性)評価には十分な症例数でない。(4)腎除神経のみでは降圧が不十分な症例が55%であった。(5)研究期間中の降圧薬服用状況の確認は、問診で実施され、血中・尿中の降圧薬濃度は測定していない。コメント■症例選択の制約:上述のごとく、超音波除神経法施行には腎動脈本幹の解剖学的構造に制約がある。超音波バルーン留置に必要な解剖学的特性(距離や非湾曲)を有する症例は87%であり、803例中103例(13%)が、超音波除神経困難な腎動脈本幹を有していた。■除神経の有効性・確実性:本研究では超音波腎除神経法の降圧効果は、SPYRAL研究などで報告されている高周波カテーテルで得られる降圧効果と同等としている。すなわち、高周波、超音波、その他、いずれの方法でも腎除神経が有意な降圧効果を示すことを示唆した研究成果である。しかし、SPYRAL研究など高周波カテーテル除神経は腎動脈本幹に加え腎動脈分枝部(腎神経の走行が動脈内腔側に移動する)で実施することで確実な除神経を行っている。しかし、超音波カテーテルでは、その特性から腎動脈本幹のみで除神経が施行され(腎動脈分枝の除神経は困難)、腎除神経の確実性は確認されていない。 今後、高周波カテーテル法と超音波カテーテル法の腎除神経の有効性・安全性を評価する大規模長期経過観察研究が実施されると考えられる。研究実施に際しては、腎除神経の確実性、研究実施期間中の正確な降圧薬服用有無の評価(腎除神経の降圧治療を評価するいずれの研究においても重要な評価課題として指摘されている)が望まれる。

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24時間自由行動下血圧は外来血圧よりも優れた予後予測指標である(解説:石川讓治氏)-863

研究の概要 24時間自由行動下血圧が、外来血圧や家庭血圧よりも優れた心血管イベントの予測因子であることが多くのコホート研究で報告されてきたが、本研究は、スペインの実地診療の中で測定された6万3,910名にも及ぶ多数の患者登録データを用いて、24時間自由行動下血圧が外来血圧よりも優れた総死亡や心血管死亡の予測因子であったことを追試した1)。結果の概要 24時間平均収縮期血圧が、1標準偏差(14/10mmHg)増加するごとに、総死亡が56%増加したにもかかわらず、外来収縮期血圧が1標準偏差(19/12mmHg)増加するごとのリスクは2%の増加しか認められなかった。夜間血圧のリスクは1.55倍、昼間の血圧のリスクは1.54倍であり、昼夜のリスクには差が認められなかった。また、24時間平均血圧と外来血圧の予後予測能の関連は、肥満、糖尿病、心血管死亡、降圧治療の有無で層別化しても同様であった。正常血圧(外来血圧<140/90mmHgかつ24時間平均血圧<130/80mmHg)と比較して、仮面高血圧(外来血圧<140/90mmHgかつ24時間平均血圧≧130/80mmHg)は2.83倍リスクが高く、持続性高血圧(1.80倍)や白衣高血圧(外来血圧≧140/90mmHgかつ24時間平均血圧<130/80mmHg)(1.79倍)よりも強い総死亡の予測因子であった。心血管死亡のリスクも総死亡と同様であった。本研究の新規性について 本研究においては、降圧薬の内服のない患者においてのみ定義される白衣高血圧や仮面高血圧と、降圧薬の内服患者において定義される白衣高血圧様の降圧不十分、仮面高血圧様の降圧不十分といった血圧フェノタイプを同時に比較検討したことに新規性があるものと思われる。白衣高血圧や仮面高血圧はPickering TGら2)によって提唱された言葉であるが、本来は持続性高血圧に移行する前段階の血圧パターンであると考えられてきた。その一方で、降圧薬内服下での仮面高血圧様現象は治療によっても完全には降圧できない血圧が残存する難治性高血圧に近い高血圧フェノタイプであると考えられている。そのため医師が外来血圧を十分コントロールしているにもかかわらず仮面高血圧様に不十分な降圧が残存してしまっている患者の方が、医師が十分に外来血圧をコントロールしようとしていない持続性高血圧よりもリスクが高いと考えられていた。しかし、未治療と降圧薬治療中の患者の血圧フェノタイプの違いを混同した報告も多く、また直接これらの血圧フェノタイプの予後予測能の違いを直接比較検討可能なデータはなかった。驚くことに、本研究では、降圧薬を内服してない患者の仮面高血圧が総死亡のリスクが最も高く、持続性高血圧や仮面高血圧様の降圧不十分であった患者よりもリスクが高かった1)。さらには白衣高血圧様の降圧不十分は、正常血圧や良好な降圧コントロールと同程度のリスクであった。注意する点 本研究が従来の研究と異なる点は、持続性高血圧の前段階と考えられていた白衣高血圧や仮面高血圧が、持続性高血圧と同様もしくはそれ以上にリスクが高かったことである。白衣効果は年齢とともに増加し高齢者に多く認められ、仮面効果は肥満者に多く認められる3)。外来血圧と24時間自由行動下血圧の差は、これらの因子に影響を受ける。本研究の対象は日常診療において24時間自由行動下血圧モニタリングが必要と判断された患者であり、医師が白衣効果や仮面効果があることを疑った患者である。そのため、白衣高血圧や仮面高血圧の患者のリスクが地域一般住民よりも高かった可能性がある。治療に応用できるか? 24時間自由行動下血圧は、外来血圧より優れた予後予測因子であり、リスクの層別化には重要である。しかし、24時間自由行動下血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした降圧治療より優れていることを示した報告は今のところはない。降圧治療については外来血圧を指標に行うことになるが、24時間自由行動下血圧の低下度は、外来血圧の低下度や家庭血圧の低下度よりも小さいことを4)、念頭におく必要がある。

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腎デナベーション、降圧薬服用患者への効果を確認/Lancet

 降圧薬を服用中の高血圧患者において、主要腎動脈および分岐部の腎除神経(腎デナベーション)は、偽処置(シャム)と比較し、重大な安全性イベントを伴うことなく血圧を有意に低下させることが示された。米国・Piedmont Heart InstituteのDavid E. Kandzari氏らが「SPYRAL HTN-ON MED試験」の結果を報告した。カテーテルを用いた腎デナベーションの試験では、これまで一貫した有効性は報告されておらず、降圧薬服用中の患者における有効性は不明であった。Lancet誌オンライン版2018年5月23日号掲載の報告。降圧薬で血圧コントロール不良の患者、腎デナベーションとシャムで比較 研究グループは、米国、ドイツ、日本、英国、オーストラリア、オーストリア、ギリシャの25施設において、20~80歳の血圧コントロール不良の高血圧患者を対象に、無作為化単盲検概念実証試験を行った。適格基準を、診察室収縮期血圧(SBP)150~180mmHg、拡張期血圧(DBP)90mmHg以上、2回目のスクリーニング時に24時間自由行動下SBPが140~170mmHg、1~3種の降圧薬を6週間以上継続して服用している患者とし、腎血管造影後、腎デナベーション群またはシャム群に無作為に割り付けた。患者、介護者、血圧評価者は、割り付けについて盲検化された。 主要有効性評価項目は、自由行動下血圧測定に基づくベースラインから6ヵ月後の血圧変化で、服薬アドヒアランスについても評価した(intention-to-treat解析)。安全性については、6ヵ月間における主な有害事象を評価した。なお、本試験では現在も追跡調査が進行中である。6ヵ月後に腎デナベーション群で有意に低下、群間差7.0mmHg 2015年7月22日~2017年6月14日に467例が登録され、最初の80例が腎デナベーション群(38例)とシャム群(42例)に無作為に割り付けられた。 6ヵ月後におけるベースライン時からの診察室および24時間自由行動下の血圧値の低下は、ベースラインの血圧で調整した場合、シャム群に比べ腎デナベーション群で有意に大きかった。ベースライン補正後の平均群間差は、24時間SBPが-7.0mmHg(95%信頼区間[CI]:-12.0~-2.1、p=0.0059)、24時間DBPは-4.3mmHg(-7.8~-0.8、p=0.0174)、診察室SBPは-6.6mmHg(-12.4~-0.9、p=0.0250)、診察室DBPは-4.2mmHg(-7.7~-0.7、p=0.0190)であった。 ベースライン血圧非補正の場合も同様に、診察室SBP(群間差:-6.8mmHg、95%CI:-12.5~-1.1、p=0.0205)、24時間SBP(-7.4mmHg、-12.5~-2.3、p=0.0051)、診察室DBP(-3.5mmHg、-7.0~-0.0、p=0.0478)、24時間DBP(-4.1mmHg、-7.8~-0.4、p=0.0292)いずれにおいても、腎デナベーション群がシャム群より血圧値の低下が有意に大きいことが確認された。 24時間SBPおよびDBPの1時間ごとの変化を評価したところ、腎デナベーション群では24時間にわたって血圧値の低下が確認された。 なお、3ヵ月時点の評価では、両群間に有意差は認められなかった。また、服薬アドヒアランスは約60%であったが、試験期間中の個々の患者のアドヒアランスには、ばらつきがみられた。重大な有害事象は、両群とも報告されなかった。

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腎デナベーションは、降圧薬に代わりうるか/Lancet

 降圧薬服用を中止した軽度~中等度の収縮期/拡張期高血圧が認められる患者に対し、腎デナベーションを行うことで、2ヵ月後の収縮期血圧がシャム群に比べて有意に低下したことが示された。フランス・パリ第5大学のMichel Azizi氏らが行った「RADIANCE-HTN SOLO試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2018年5月23日号で発表された。初期の試験では、高周波腎デナベーションが、中等度の高血圧患者の血圧を低下することが示されている。研究グループは、腎デナベーションが、降圧薬服用を中止した外来高血圧患者の血圧を下げる代替治療技術となるのかを検討した。米国・欧州の39ヵ所でシャム対照試験 RADIANCE-HTN SOLO試験では、2016年3月28日~2017年12月28日にかけて、収縮期/拡張期高血圧の患者を対象に、米国21ヵ所、欧州18ヵ所の医療機関を通じて、無作為化シャム(擬似手術)対照単盲検比較試験が行われた。 被験者は、2種以下の降圧薬を中止してから4週間時点の収縮期/拡張期血圧値が135/85~170/105mmHgで、正常な腎動脈構造が認められた18~75歳の患者だった。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはParadiseカテーテル(ReCor Medical)を使用した腎デナベーションを、もう一方には腎血管造影のみ(シャム)を施行した。 有効性の主要エンドポイントは、ITT解析による2ヵ月時点における日中自由行動下収縮期血圧(SBP)の変化だった。被験者は、事前規定した血圧基準を超えない限りは、追跡2ヵ月間は降圧薬の服用をしなかった。 主要有害イベントは、全死因死亡、腎不全、末端器官障害を伴う塞栓症、30日以内の高血圧クリーゼによる入院などだった。施術2ヵ月後の日中自由行動下SBPは8.5mmHg低下 803例がスクリーニングを受け、試験適格だった146例(腎デナベーション群74例、シャム群72例)が対象となり試験を受けた。 日中自由行動下SBPの変化値は、シャム群-2.2mmHgに対し、腎デナベーション群は-8.5mmHgと有意に低下幅が大きかった(ベースライン補正後の群間差:-6.3 mmHg、95%信頼区間:-9.4~-3.1、p=0.0001)。 主要有害イベントは、両群ともに報告がなかった。

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降圧薬が皮膚がんのリスク増加に関連

 米国・マサチューセッツ総合病院のK.A. Su氏らによる調査の結果、光感作性のある降圧薬(AD)による治療を受けた患者では、皮膚の扁平上皮がん(cSCC)のリスクが軽度に増加することが明らかになった。多くのADは光感作性があり、皮膚の日光に対する反応性を高くする。先行の研究では、光感作性ADは口唇がんとの関連性が示唆されているが、cSCCの発症リスクに影響するかどうかは不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年5月3日号掲載の報告。 研究グループは、北カリフォルニア州の包括的で統合的なhealthcare delivery systemに登録され、高血圧症に罹患した非ヒスパニック系白人のコホート研究において、ADの使用とcSCCリスクとの関連を調べた。ADの使用については電子データを用いて分析。ADは、公表論文に基づいて、光感作性(α2刺激薬、利尿薬[ループ系、カリウム保持性、サイアザイド系および配合剤])、非光感作性(α遮断薬、β遮断薬、中枢性交感神経抑制薬およびARB)または光感作性不明(ACE阻害薬、Ca拮抗薬、血管拡張薬およびその他の配合剤)に分類された。 Coxモデルを用いて補正ハザード比(aHR)と95%信頼区間(CI)を推定した。共変量は、年齢、性別、喫煙、合併症、cSCCおよび日光角化症の既往歴、調査年、医療制度の利用、医療保険会員の期間、光感作性ADの使用歴とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中に、cSCCを3,010例が発症した。・AD不使用群と比較し、cSCCのリスクは、光感作性AD使用歴ありの群(aHR:1.17、95%CI:1.07~1.28)、光感作性不明AD使用歴ありの群(aHR:1.11、95%CI:1.02~1.20)で増加したが、非光感作性AD使用歴ありの群では関連は認められなかった(aHR:0.99、95%CI:0.91~1.07)。・光感作性ADの処方数の増加に伴い、cSCCのリスクが軽度に増加した。1~7剤(aHR:1.12[95%CI:1.02~1.24])、8~15剤(同:1.19[1.06~1.34])、16剤以上(同:1.41[1.20~1.67])。

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きっちり飲める降圧薬は2剤まで?

 高血圧症治療に対する医師の満足度は、2014年度時点で98.9%1)と高いにもかかわらず、降圧目標達成率は、2013年の研究によると男性30%、女性40%と低いことが報告されている2)。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は「医師および高血圧患者の高血圧治療に対する意識の実態調査」を実施し、その結果は医学雑誌「血圧」に調査研究として掲載された3)。 調査の結果、医師と患者の間で、治療説明の認識にずれが存在する可能性が示唆された。また、約半数の患者は薬剤を減らしたいと考えており、およそ70%の患者は、正しく服用できる降圧薬は多くても2剤までと答えている。患者は、よりシンプルでわかりやすい治療を求めている。 本研究は、1~3すべての条件を満たす医師321名(1.掲げる診療科名が循環器内科、代謝・内分泌科あるいは一般内科、2.1ヵ月間の高血圧症診察患者数が100例以上、3.30歳以上)と、1~3すべての条件を満たす高血圧症患者1,000例(1.高血圧症のため医療機関に2回以上通院したことがあり、現在も定期的に通院している、2.高血圧症治療の目的で薬物治療中、3.40歳以上)を対象とした、インターネットによる全国調査。なお、患者の抽出に際しては、事前の高血圧患者の調査分布に基づき、降圧薬配合剤服用中の患者200例、降圧薬単剤服用中の患者300例および降圧薬2剤以上を併用している患者500例となるように調整した。 主な結果は以下のとおり。≪診断や治療に関して≫・初診時に「治療の目的」を説明したと86%の医師が回答したのに対し、説明されたと答えた患者は39%だった。説明を受けていない、あるいは覚えていないと答えた患者は23%存在した。・処方決定前に治療選択肢を説明したと49%の医師が回答したが、患者での認識は18%だった。全体で54%の患者が、処方決定前に治療選択肢の説明を望んでいた。・「降圧目標値について説明した」と95%の医師が回答したのに対し、44%の患者は説明を受けていない、あるいは覚えていないと回答した。≪残薬と服薬アドヒアランスに関して≫・服薬アドヒアランスを重視する割合は、医師が78%であったのに対し、患者は48%と両者の間に乖離がみられた。・薬剤数を減らしたいと考えている患者は48%存在し、とくに3種類以上服用している患者でその傾向が強いという結果だった。・良好な服薬アドヒアランスで服用できる薬剤数について、医師は43%が「2種類まで」、36%が「3種類まで」と回答したのに対し、患者は33%が「1種類まで」、34%が「2種類まで」と、患者が考える薬剤数は、医師が考えているより少ないという結果だった。 本調査研究の筆者である檜垣 實男氏(愛媛大学名誉教授/医療法人 仁友会 南松山病院 病院長)は、「高血圧患者さんと医師のコミュニケーションギャップを改善し、患者さんが高血圧治療の目的や治療選択肢について理解し、医師と共に治療に向き合える体制を作ることが大切です。患者さんの服薬アドヒアランス向上のためには、配合剤という選択肢も有効であると考えられ、今後高齢化が進む中で、残薬を減らし血圧をしっかりと管理していくことが、心血管イベント抑制や、医療経済的な貢献にもつながると期待しています」とコメントしている。■参考文献1)平成27年度(2015年度)国内基盤技術調査報告書「60疾患の医療ニーズ調査と新たな医療ニーズII」【分析編】. 公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団. 2016.2)Miura K, et al. Circ J. 2013;77:2226-2231.3)西村誠一郎ほか. 血圧. 2018;25:364-376.■参考日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース

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かかりつけに必要な「薬剤師としての実績」にこんな資格は?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第1回

皆さんは、学会発表や論文執筆に取り組んでいますか? 薬剤師個人が何に取り組んできたのかという実績が重要視されるようになり、本年度からかかりつけ薬剤師に同意していただくには、自身の薬剤師としての経歴、論文発表の実績などを提示することが必要になりました。急に言われてできるものではないため、どうしたらいいのか…と戸惑われている薬剤師さんも多いのではないかと思います。そんな薬剤師さんのお役に立ちそうな情報がありますのでご紹介します。日本高血圧学会は、患者の降圧目標達成率を向上させる戦略として、「高血圧・循環器病予防療養指導士」を柱とした対策を19年版の高血圧治療ガイドラインに盛り込む方針だ。看護師や薬剤師、管理栄養士を中心に4,000人以上を育成し、高血圧や循環器病の指導を薬局や健診機関で行ってもらう。多くの薬剤を服用しなくても患者が降圧目標を達成できるようにするのが狙い。(RISFAX 2018年5月7日付)現在、2019年度の高血圧治療ガイドラインで、降圧目標が140/90mmHgから130/80mmHgへの引き下げが検討されており、もしそうなれば、高血圧患者は4,300万人から6,300万人になると言われています。2,000万人増ですから、医療機関での治療を受ける患者数も明らかに増えるのではないでしょうか。しかも境界域の患者さんには薬物療法だけでなく、とくに生活指導が必要と考えられます。医薬品に関する指導だけでなく、生活指導に関するアドバイスも薬剤師が参加するようになるため、地域における他職種との連携がより重要になることが予想されます。資格取得には学会参加や症例レポートが必要この認定制度の目的について、「第1条:この制度は、循環器病の主たる原因である高血圧等の生活習慣病の改善・予防、および、その他の危険因子の管理に関する療養指導を行うために有能な専門的知識および技術を有する職種の資質向上を図り、よって循環器病の予防や病態改善により国民の健康増進に貢献することを目的とする」(高血圧・循環器病予防療養指導士ホームページより)とあります。また、日本高血圧学会の会見では、「降圧剤を増やさなくても血圧が下がるという指導をしていきたい。多剤の問題も出てきており、薬剤師とも連携したい」という薬剤師に対する期待のコメントも出ています。すでに3回の試験が実施されており、各職種別の合格者数が開示されています。合格した薬剤師は、第1回は12名、第2回は41名でした。第2回は、保健師や看護師、臨床検査技師など、すべての医療系資格保有者の中で薬剤師がもっとも多く合格しています。現在の全認定者数は324人ですが、それをまず1,000人に増やし、将来的に4,000人以上を目指すとのこと。積極的に合格者を増やしたい今は、もしかしたら認定されやすいタイミングなのではないかとこっそり思っています。この試験の受験資格ですが、薬剤師の資格があるだけでは足りません。日本高血圧学会または日本循環器病予防学会への在籍が試験実施日までに1 年以上であることや、一定の学術大会やセミナーや試験当日の講習への参加などが必要になります。申し込み時には、「指導例記録5症例、またはそれに代わるもの」という薬歴に近い症例レポートの提出が必要です。学会への入会や症例レポート作成、もしかしたら学会発表など、かかりつけ薬剤師に求められることが一度に準備できる可能性があります。この高血圧・循環器病予防療養指導士はあくまで一例ですが、薬剤師のサポートが求められている領域に貢献でき、また、かかりつけ薬剤師に必要な実績に何から手を付ければいいかわからない薬剤師さんにとって、日々行っていることが成果として資格取得につなげられるいい機会だと思いますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。日本高血圧学会・日本循環器病予防学会・日本動脈硬化学会 認定 高血圧・循環器病予防療養指導士

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高齢者の処方見直しで諸リスク低減へ

 2018年5月11日、日本老年医学会は、「高齢者とポリファーマシー」に関するメディアセミナーを都内で開催した。本学会が策定した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を踏まえ、医療現場でポリファーマシー対策に取り組む3人の演者が講演を行った。ポリファーマシーが老年症候群に拍車をかける? はじめに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)が、ポリファーマシー対策の動向について語った。わが国では6剤以上がポリファーマシーと定義され、薬剤性老年症候群などの原因として懸念されている。老年症候群は、転倒、記憶障害、意欲低下や排泄機能障害など、加齢・疾患によるものも含まれるが、その症状がポリファーマシーにより助長されている可能性を秋下氏は指摘した。 同氏は、「ポリファーマシーは、例えればさまざまなお酒を一度に飲むと悪酔いするようなもので、多剤服用のみを指すのではない。薬を減らす際には生活習慣の是正など、非薬物療法がより重要になる。医師・薬剤師を中心に、医療スタッフが連携する必要がある」と語った。3剤以上の見直しでリスク低減の可能性 次に、溝神 文博氏(国立長寿医療研究センター 薬剤部)が、院内でポリファーマシーを提案する「高齢者薬物療法適正化チーム」の活動について紹介した。チームは、内科・循環器内科の医師、薬剤師を中心に構成され、週1回カンファレンスを実施している。 チーム介入症例の解析では、薬物有害事象などが疑われる58症例に対し、平均4剤の見直し提案を行った。対象薬は降圧薬が最も多く、次いで消化器薬、糖尿病薬、スタチン系が多かった。結果、3剤以上削減した群で薬物有害事象の発生頻度が53%から9%と7日間で有意に減少し、60日後まで維持されていた。一方で、3剤未満の削減だと有意差がなく、60日後には再燃する傾向がみられた。 溝神氏は、「チーム結成によって意識変化が起こり、慎重に処方を行う医師が増加した。しかし、服薬環境も適正化されないと十分ではない。患者・家族への説明でポリファーマシーへの正しい理解を促し、地域レベルで対策する必要がある」と語った。短時間の睡眠が不眠症とは限らない? 最後に、水上 勝義氏(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授)が、向精神薬の適正使用について説明した。回復可能な認知症の原因として、1位がうつ病、2位が薬剤性という報告1)を挙げ、原則として非薬物療法を優先し、向精神薬は慎重に使用するよう呼びかけた。 高齢者が訴える不眠症に対し、水上氏は、「高齢になると深睡眠が減る傾向にある。しかし、日中の生活に支障がなければ、睡眠時間が短くても不眠症にならない」と指摘した。また、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)などに使用される抗精神病薬には、新規投与後6ヵ月まで死亡リスクが上昇するという報告2)があるという。同氏は、漢方薬の過剰投与にも言及し、「十分な治療効果が認められた患者では減量・中止を検討すべきだ」と語った。 さらに、スルピリドによる錐体外路症状、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)によるアパシーの発現などの副作用を例に挙げ、「頻用される薬でも、高齢者には注意が必要。薬剤によって諸症状が出ている可能性も考慮すべき」と締めた。 本学会は、エビデンスが少ない高齢者医療における課題などに対し、具体的にどのような対応をするのか明確にするため、「健康長寿達成を支える老年医学推進5か年計画」を策定した。2018年6月、学術集会で発表予定。■参考文献1)Weytingh MD, et al. J Neurol. 1995;242:466-471.2)Arai H, et al. Alzheimers Dement. 2016;12:823-830.■参考一般社団法人 日本老年医学会第60回日本老年医学会学術集会■関連記事身体能力低下の悪循環を断つ診療

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身体能力低下の悪循環を断つ診療

 2018年4月19~21日の3日間、第104回 日本消化器病学会総会(会長 小池 和彦氏[東京大学医学部消化器内科 教授])が、「深化する多様性~消化器病学の未来を描く~」をテーマに、都内の京王プラザホテルにおいて開催された。期間中、消化器領域の最新の知見が、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップなどで講演された。 本稿では、その中で総会2日目に行われた招請講演の概要をお届けする。フレイル、サルコペニアに共通するのは「筋力と身体機能の低下」 招請講演は、肝疾患におけるサルコペニアとの関連から「フレイル・サルコペニアと慢性疾患管理」をテーマに、秋下 雅弘氏(東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 教授)を講師に迎えて行われた。 はじめに高齢者の亡くなる状態を概括、いわゆるピンピンコロリは1割程度であり、残りの高齢者は運動機能の低下により、寝たきりなどの介護状態で亡くなっていると述べ、その運動機能の低下にフレイルと(主に一次性)サルコペニアが関係していると指摘した。 フレイルは、「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を表し、要介護状態に至る前段階として位置付けられている(ただし、可逆性はあるとされる)。また、サルコペニアは「高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下」と定義される。両病態はお互いに包含するものであり、とくに筋力と身体機能の低下は重複する。フレイル、サルコペニアは世界初のガイドラインなどで診療 診療については、『フレイル診療ガイド 2018年版』と『サルコペニア診療ガイドライン 2017年版』が世界で初めて刊行され、詳しく解説されている(消化器領域では『肝疾患におけるサルコペニアの判定基準』により二次性サルコペニアの診療が行われている)。 フレイルの診断は、現在統一された基準はなく、一例として身体的フレイルの代表的な診断法と位置付けられている“Cardiovascular Health Study基準”(CHS基準)を修正した日本版CHS(J-CHS)基準が提唱され、体重減少、筋力低下、疲労感、歩行速度、身体活動の5項目のうち3つ以上の該当でフレイルと判定される。スクリーニングでは、質問形式で要介護認定ともシンクロする「簡易フレイルインデックス」など使いやすいものが開発されている。 一方、サルコペニアも同様に統一基準はないが、Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によってアジア人向けの診断基準が作られ、年齢、握力、歩行速度、筋肉量により診断されるが、歩行速度など、わが国の実情に合わない点もあり注意が必要という(先の二次性サルコペニアの診断ではCT画像所見による筋肉量の測定がある)。 また、両病態とも筋肉量の測定など容易ではないが、外来で簡単にできる「指輪っかテスト」なども開発され、利用されている。 治療に関しては両病態ともに、レジスタンス運動を追加した運動療法や、十分な栄養を摂る栄養療法が行われる。詳細は先述のガイドラインなどに譲るが、「タンパク質」の摂取を例に一部を概略的に示すと、慢性腎不全の患者では腎臓機能維持の都合上、タンパク質の摂取が制限されるが、その制限が過ぎるとサルコペニアに進んでしまう。そのため、透析に進展させない程度のタンパク質の摂取を許すなど、患者のリスクとベネフィットを比較、検討して決めることが重要という。薬剤が6種類を超えるとハイリスク 続いて「ポリファーマシー」に触れ、ポリファーマシーはフレイルの危険因子であり、薬剤数が6種類を超えるとハイリスクになると指摘する(5種類以上で転倒のリスクが増す)。また、6種類以上の服用はサルコペニアの発症を1.6倍高めるというKashiwa studyの報告を示すとともに、広島県呉市のレセプト報告を例に85~89歳が一番多くの薬を服用している実態を紹介した。 消化器領域につき、「食欲低下」では非ステロイド性抗炎症薬、アスピリン、緩下薬などが、「便秘」では睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン)、三環系抗うつ薬などが、「ふらつき・転倒」では降圧薬、睡眠薬・抗不安薬、三環系抗うつ薬などが関係すると考えられ、「高齢者への処方時は、優先順位を決めて処方し、非専門領域についても注意してほしい」と語った。とくに「便秘」は抗コリン薬が原因になることが多いという。また、「GERD」についてはH2ブロッカーが認知機能を低下させる恐れがあるため注意が必要であり、第1選択薬のPPIでも漫然とした長期使用は避けるなど、必要に応じた使い方が望ましいという。 まとめとして、高齢者の生活改善では「規則正しい食事」「排泄機能の維持」「適切な睡眠習慣」が大切で、とくに「食事は服薬のアドヒアランス維持のためにも気を付けてもらいたい」とその重要性を指摘した。最後に秋下氏は「フレイル、サルコペニアは、身体的な負の悪循環を形成することを理解してもらいたい」と述べ、レクチャーを終えた。■参考第104回 日本消化器病学会総会■関連記事ニュース 初の「サルコペニア診療ガイドライン」発刊

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死亡リスク予測、24時間血圧 vs.診察室血圧/NEJM

 24時間自由行動下収縮期血圧(ABP)は診察室血圧よりも、全死因死亡および心血管死について、より強い予測因子であることが示された。血圧値の1標準偏差(SD)上昇当たりの全死因死亡に関するハザード比は、24時間ABPが1.58だったのに対し、診察室血圧では1.02だったという。また、「仮面高血圧」(診察室血圧は正常値だが24時間ABPは高値)の全死因死亡に関するハザード比は2.83で、持続性高血圧の1.80よりも高かった。また、「白衣高血圧」(診察室血圧が高値で24時間ABPは正常)の同HRも1.79で良性とはいえないことが示されたという。スペイン・マドリード自治大学のJose R. Banegas氏らが、約6万4,000例を対象に行った大規模な前向きコホート試験の結果で、NEJM誌2018年4月19日号で発表した。24時間ABPが予後に与える影響について、これまでに発表されているエビデンスは、主に住民ベース試験や比較的規模の小さい臨床試験に基づくものだったという。診療室・24時間自由行動下血圧について、4分類し評価 研究グループは、プライマリケア患者を対象とした大規模コホートで、診察室血圧・24時間ABPと、全死因死亡・心血管死との関連を調べるため、スペインで2004~14年に登録を行った18歳以上、6万3,910例の多施設共同全国コホートのデータを基に分析を行った。 被験者の診療室血圧と24時間ABPについて、(1)持続性高血圧(診察室血圧、24時間ABPともに高値)、(2)白衣高血圧(診察室血圧は高値だが、24時間ABPは正常)、(3)仮面高血圧(診察室血圧は正常だが、24時間ABPは高値)、(4)正常血圧(診察室血圧、24時間ABPともに正常)の4つに分類。血圧と死亡との関連について、診察室血圧・24時間ABPと交絡因子で補正したCox回帰モデルを用いて解析した。白衣高血圧も持続性高血圧並みの関連性 中央値4.7年の追跡期間中の死亡は3,808例、うち心血管系が原因の死亡は1,295例だった。 診察室血圧と24時間ABPの両者を包含したモデルでは、24時間収縮期血圧と全死因死亡との関連(診察室血圧で補正後の血圧1SD上昇当たりのハザード比[HR]:1.58[95%信頼区間[CI]:1.56~1.60])は、診察室収縮期血圧と全死因死亡の関連(24時間血圧で補正後のHR:1.02[95%CI:1.00~1.04])よりも強かった。 夜間自由行動下収縮期血圧1SD上昇当たりの全死因死亡HR(診察室血圧と日中血圧で補正後)は1.55(95%CI:1.53~1.57)、日中自由行動下収縮期血圧の同HR(診察室血圧と夜間血圧で補正後)は1.54(同:1.52~1.56)だった。 こうした関連は、年齢、性別、肥満、糖尿病や心血管疾患、降圧薬使用についてみたサブグループでも一貫して認められた。 また全死因死亡との関連は、仮面高血圧(HR:2.83、95%CI:2.12~3.79)が、持続性高血圧(同:1.80、1.41~2.31)、白衣高血圧(同:1.79、1.38~2.32)よりも強かった。なお、心血管死に関する分析結果は、全死因死亡の結果と同様だった。

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床屋が医者の仕事、再び:ロス・バーバーショップ試験(解説:桑島巖氏)-841

 理髪店の店頭で、ぐるぐる回る、赤・青・白のらせん状マークは、元来理髪師が瀉血治療という医者の仕事も兼ねていたことからきているという説がある。再び床屋さんが医者の仕事にタッチするという興味ある論文が発表された。 米国の黒人男性は血圧コントロール不十分で、脳卒中や心筋梗塞などによる死亡が白人や黒人女性に比べて多い。その一因として高血圧に対する意識が低く、治療を受ける環境も十分でないことから、黒人の血圧管理の啓蒙と治療意識の促進が国策として求められている。このLos Angeles Barbershop試験はNIHの国立心肺血液研究所の支援によって行われたランダム化比較試験である。理髪店ごとにランダム化するクラスターランダム化が採用されている。 理髪店の常連客に自動血圧計によって血圧を測定してもらい、2回のスクリーニングで140mmHg以上の黒人男性を対象としている。介入群(介入理髪店群28店舗、139例)では、高血圧知識のある薬剤師による生活改善指導と降圧薬の処方を受けた。コントロール群(24店舗180例)では、理髪師が高血圧についての説明を行い、生活習慣の改善を促すとともに医療機関の受診を促した。 結果として6ヵ月後の平均血圧は、介入群では152.8mmHgから125.8mmHgに、コントロール群では154.6mmHgから145.4mmHに下降。その降圧度は各々27.0mmHg、9.3mmHgで、介入群の方が有意に大きかった。 理髪師は古来、外科治療も行っていたことは知られているが、一般人が定期的に接する理髪店が、生活習慣病の改善に寄与できる可能性を示している。 しかし、わが国とは事情が異なることも留意する必要がある。第一にわが国では職場や地域での定期健診が行き渡っており、高血圧をスクリーニングする環境が整備されているため、米国のような経済や人種による医療の恩恵に対する格差が格段はない。しかし、健康に無関心な中高年や中小企業で働く人々にとっては、高血圧を意識付ける1つの手段にはなりうる可能性がある。 本研究ではいくつかのLimitationがある。介入群では25ドル支給、薬剤費用と交通費を支給したとの記載があるが、それであれば被検者の治療に対するモチベーションも違ってくる可能性がある。また薬剤師は、米国のガイドラインに従い130mmHgを目標にしているのに対して、医師は140mmHgを降圧目標にしている可能性があり、このことが結果に影響しているかもしれない。

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降圧治療における家庭血圧測定の有効性(解説:石川讓治氏)-833

 家庭血圧が外来血圧よりも優れた高血圧性臓器障害や心血管イベントの予測因子であることが多くの疫学研究において報告されているが、家庭血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした血圧治療よりも優れていることを示した報告はない。Staessenらは同じ血圧レベルと目標値として降圧治療を行った場合、外来血圧を指標とした降圧治療の方が家庭血圧を指標とした降圧治療よりも、24時間自由行動下血圧レベルが低値であったことを報告しており、必ずしも家庭血圧を指標とした降圧治療が厳格な血圧コントロールとはならないと考えられてきた。しかし、過去の疫学研究において、外来血圧は家庭血圧よりやや高めになる傾向があることが報告されており、多くの高血圧治療ガイドラインにおいては外来血圧140/90mmHgに相当するのが家庭血圧135/85mmHgであると考えられている。そのため、Staessenら1)の研究結果を実際の臨床に当てはめるには困難があった。 TASMINH4研究では2)、現在の高血圧治療ガイドラインに沿った降圧レベルを目標として、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定、自己による家庭血圧測定、通常の外来血圧測定の3群に無作為割り付けして、外来血圧値を比較している。12ヵ月後の外来収縮期血圧は、通常外来血圧測定群と比較して、遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群で4.7mmHg、自己家庭血圧測定群で3.5mmHg低値であった。この差に起因する因子として、追加された降圧薬の数が有意に遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群および自己家庭血圧測定群に多かったことが起因しており、家庭血圧を指標とした方が医師患者ともに、躊躇なく降圧薬を増量できていた。遠隔モニタリングによる家庭血圧測定群では、定期的に家庭血圧値がウェブサイトでグラフ表示され、目標血圧よりも高ければ、テキストメールで患者に受診が促されている。また自己家庭血圧測定群においても、1ヵ月に1回封筒で血圧値を記入して医師に郵送し、目標血圧よりも高ければ患者に受診が勧められている。本研究におけるアウトカムが、24時間自由行動下血圧ではなく、介入対象である外来血圧値であることが本研究における結果の解釈を難しくさせているが、受診回数は各群で有意差なく、家庭血圧測定は複数日、複数回の“平均血圧値”であり、偶然の外来血圧上昇ではないとの判断が速やかに降圧薬を増量することの動機付けになっているものと思われる3)。遠隔モニタリングを用いた家庭血圧測定群と自己家庭血圧測定群では有意差は認められなかった。 TASMINH4研究対象者2)は平均66.9歳で、起立性低血圧、認知症、心房細動、慢性腎臓病の患者が除外されており、本研究の結果を家庭血圧測定が困難となる高齢者に当てはめることは困難である。正確な外来血圧測定を行えば、外来血圧が家庭血圧よりも低い値になることが報告されている4)。家庭血圧測定同様に、正確な外来血圧の測定も重要であることは、本研究の外来血圧がアウトカムであることよりも明らかである。

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