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末梢動脈疾患ガイドライン、7年ぶりの改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会と日本血管外科学会の合同ガイドライン『末梢動脈疾患ガイドライン(2022年改訂版)』が、7年ぶりの改訂となった。2度目の改訂となる今回は、末梢動脈疾患の疾病構造の変化と、それに伴う疾患概念の変遷、新たな診断アルゴリズムや分類法の登場、治療デバイスの進歩、患者背景にある生活習慣病管理やその治療薬の進歩などを踏まえた大幅な改訂となっている。第86回日本循環器学会学術集会(3月11~13日)で、末梢動脈疾患ガイドライン作成の合同研究班班長である東 信良氏(旭川医科大学外科学講座血管外科学分野)が、ガイドライン改訂のポイント、とくに第4章「慢性下肢動脈閉塞(下肢閉塞性動脈硬化症)」について重点的に解説した。末梢動脈疾患ガイドラインでは下肢閉塞性動脈疾患をLEADと区別 末梢動脈疾患ガイドラインで扱う末梢動脈疾患(Peripheral Arterial Disease:PAD)は、冠動脈以外の末梢動脈である四肢動脈、頸動脈、腹部内臓動脈、腎動脈、および大動脈の閉塞性疾患を指す。同じくPADと称されている上下肢閉塞性動脈疾患(Peripheral Artery Disease:PAD)との混同を避けるため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、下肢閉塞性動脈疾患についてはLEAD、上肢閉塞性動脈疾患についてはUEADと称し、区別している。 末梢動脈疾患ガイドラインは全20章で構成されており、各章・各節の冒頭で、診療の基本となるエッセンスや最も伝えたい概念を「ステートメント」として紹介している。また、Practical Question:PQとして、12個の臨床的話題を取り上げ、実臨床でいまだ明確な方針が示されていない臨床的課題について解説している。 PADの中で最も多くかつ重要な疾患がLEADである。LEADのリスクファクターや背景疾患の管理については、心血管イベントのリスクが高く、動脈硬化の4大因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙の管理が基本となる。末梢動脈疾患ガイドラインでは、とくに脂質異常症について厳しい管理を推奨している。本邦では、腎不全・透析もLEAD発症の独立した危険因子として非常に頻度が高いため、今回の末梢動脈疾患ガイドラインより新たに追加された。LEADの抗血栓療法については、前回のガイドラインに記載されていた抗血小板療法に加え、DOACの登場によって抗凝固療法の項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインではLEADの症候別アプローチを記載 LEADは、症状や虚血の程度により治療方針が大きく変化する。そのため、末梢動脈疾患ガイドラインでは、無症候性LEAD、間歇性跛行、包括的高度慢性下肢虚血(Chronic Limb-Threatening Ischemia:CLTI)の3つに分類し、診断・治療の症候別アプローチを記載している。【無症候性LEAD】・無症候性LEADは、総じて下肢の予後が良好であるが、潜在的重症下肢虚血が一部含まれるため注意が必要である。下肢動脈病変の予防的血行再建術を行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【間歇性跛行】・間歇性跛行を訴える患者には、鑑別診断も兼ねた詳細な問診と身体診察を行う。下肢虚血の程度や間歇性跛行の機序を総合的に判断することが重要になる。病変評価には足関節上腕血圧比(ABI)の測定を行い、安静時のABIに異常を認めない場合は運動後のABI測定も推奨されている。・間歇性跛行の治療について、血行再建の要否は、日常生活で歩行機能の改善を見込めるか、運動を制限する合併疾患(狭心症、心不全、慢性呼吸器障害、筋骨格系の制限や神経障害など)の有無を評価したうえで決定する。保存的治療が優先され、末梢動脈疾患ガイドラインではとくに、運動療法の推奨が詳細に記載されている。・動脈硬化リスクファクターの是正、薬物療法、運動療法の検討を実施していない間歇性跛行患者には血行再建術は推奨されない。しかし、必要であれば次のとおり血行再建術を施行する。大動脈腸骨動脈領域はEVTを第1選択とする。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除を第1選択とする。大腿膝窩動脈病変領域は、25cm未満の短~中区域病変はEVT、長区域病変は外科的血行再建を第1選択とする。膝下動脈病変領域では、EVTは推奨されない(推奨クラスIII No benefit)、同様に、人工血管による大腿-下腿動脈バイパスも行うべきではない(推奨クラスIII Harm)としている。【CLTI】・包括的高度慢性下肢虚血(CLTI)は、下肢虚血、組織欠損、神経障害、感染などの肢切断リスクがあり、治療介入が必要な下肢を総称する概念だ。これまでは、「重症下肢虚血(Critical Limb Ischemia:CLI)」という用語が使われていたが、背景にある生活習慣病、とくに糖尿病や腎不全の増加といった疾病構造の変化から、高度虚血だけでなく、感染等が原因で肢切断になることもありうるため、近年の実臨床を反映したCLTIという用語が使われている。・CLTIの治療方針を決定する際は、全身のリスク評価、WIfI分類での局所評価、解剖学的評価の3点について、PLANコンセプトに基づくアルゴリズムで総合的に検討する。CLTIへの血行再建を施行する際は、全身リスクと創傷範囲の評価が重要だ。血行再建の推奨は次のとおり。総大腿動脈病変は血栓内膜摘除術を第1選択とする。下腿足部動脈病変は、2年以上の生命予後が期待され、使用可能な自家静脈がある場合は、自家静脈バイパスを行うとしている。・末梢動脈疾患ガイドラインの今回の改訂で、創傷治癒、リハビリテーション、大切断、血行再建術後の薬物療法、血行再建術後の予後と二次予防といった項目が新たに追加された。末梢動脈疾患ガイドラインに動脈硬化症以外のさまざまな疾患 末梢動脈疾患ガイドラインの第6~19章には、動脈硬化症以外の原因によるPADについて、診断や治療に関する解説がなされている。東氏は「欧米のガイドラインではあまり記載されていないものも多く含んでおり、PADには動脈硬化症以外のさまざまな病因・疾患が潜んでいることを今一度振り返っていただき、治療法を誤らないためにも、ぜひ参考にしていただきたい」と、末梢動脈疾患ガイドラインの第4章以外の章の重要性についても強調。 PADは、冠動脈疾患や脳血管疾患に比べてはるかに国民の認知度が低く、予防や早期発見が遅れている。そのため、一般市民への啓発を目的として、末梢動脈疾患ガイドラインには第20章「市民・患者への情報提供」が、今回の改訂で新たに設けられた。本章では、とくに生活習慣病に伴うLEADを中心に概説している。 東氏は、今回の末梢動脈疾患ガイドライン改訂の要点として「主軸は欧米のガイドラインと呼応するように改訂したが、本邦のエビデンスをより多く取り入れ、実情に合う治療方針を目指した。本ガイドラインの英語版も作成中で、とくに民族性や文化が似ているアジア諸国の診断に役立つことを期待している」と発表を締めくくった。

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一般的な指標だけから急性腎障害を予測できるか?(解説:今中和人氏)

 急性腎障害(AKI)発生の影響は大きい。複数の新規バイオマーカーと開心術後AKIとの関連が報告されているが、実用面のハードル(結果判明の迅速さ、検体の取り扱い、コストはスクリーニング検査として容認可能か、など)があるのか、あまり普及していない。確かに、たとえば無尿になった後に結果が出るのでは実臨床では使い物にならないが、術前血清クレアチニン(Cr)などの一般的な指標のAKI予測力は不十分である。 本論文は2000~19年のクリーブランド・クリニック本院における成人開心術5万8,526例からAKI予測モデルを作成し、その有用性を3つの関連市中病院の4,734例で確認した(術前Cr 4mg/dl以上や透析患者は除外。術中も含め早々にAKIが明らかな患者も除外)。患者背景は似通っており、年齢中央値60代後半、男性70%前後、白人が90%前後、体重は82~85kg、糖尿病は20%台で、96%が人工心肺下の手術であった。 対象アウトカムは4つで、術後72時間以内または14日以内に生じた、stage 2以上のAKIまたは透析実施とし、説明変数に術前Cr、術後1回目の採血でのCrの変動、血清アルブミン、ナトリウム、カリウム、重炭酸、尿素窒素と、手術終了から1回目の採血までの時間、を採用した。4つのアウトカムそれぞれについて係数の異なる予測数式を作成し、対象アウトカムの発生リスク1%、5%、10%、20%をメルクマールに的中率も検討した。 クリーブランド・クリニック本院では、術後72時間以内に生じたstage 2以上のAKIが4.6%、透析実施が1.48%、14日以内ではそれぞれ5.4%、1.74%であり、関連病院でもほぼ同等のアウトカム発生率だった。術後1回目の採血は、本院では中央値10時間後、関連病院では6時間後に行われた。本論文の主題である予測モデルは、本院症例で術後72時間以内のイベント発生のAUCがそれぞれ0.876、0.916、14日以内発生ではAUC 0.854、0.900で、クリーブランド・クリニックが過去に発表した予測モデル以上に精度が高かった。このモデルを関連病院症例に適用したところ、72時間以内のAUCが0.860、0.879、14日以内だとAUC 0.842、0.873と、良好な予測識別力が実証された。 そもそもAKIは主に術後のCr上昇で定義されるが、これと独立していない説明変数(もちろん、ナトリウムや重炭酸とはオッズ比が桁違い)が含まれること、本モデルはほぼ腎要因だけで構成されているが、AKI発生には人工心肺時間やカテコラミン量など、術中要因・腎前性要因の影響も大きいこと、透析開始の基準が詳述されていないこと、陰性的中率は95%以上、透析に限定すると99%以上と非常に高いが、そもそも事象発生が2%未満と少なく陽性的中率はいま一歩なことなど、気になる点は若干ある。しかし開心術後に必ずチェックし、迅速に結果が得られる指標のみで高精度にAKI発生を予測できた意義は大きい。なお近年は薬剤で尿量を確保することで、AKIはともかく透析は回避できるケースが増えているので、遠からず新バージョンが登場すると思われる。

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心臓手術後の急性腎障害、基礎代謝パネルで予測可能か/JAMA

 心臓手術を受ける患者において、周術期の基礎代謝パネル検査値に基づく予測モデルは、術後72時間以内および14日以内の中等症~重症急性腎障害(AKI)について、良好な予測精度を有することが、米国・クリーブランドクリニックのSevag Demirjian氏らによる検討で示された。AKIの治療は、タイムリーな診断に基づけば効果的である一方、腎障害後の血清クレアチニン値の上昇の遅れが治療開始を遅らせてしまう可能性が示唆されていた。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、リスク予測ツールの利用が臨床アウトカムを改善するかどうかを確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2022年3月8日号掲載の報告。患者5万8,526例をベースに、多変数予測モデルを開発・検証 研究グループは、心臓手術後のAKIに関する予測モデルの開発と検証のための検討を行った。2000年1月~2019年12月に米国大学医療センター1施設で心臓手術を受けた成人患者を後ろ向きに観察したコホート(5万8,526例)をベースに、多変数予測モデルを開発。その後、同モデルについて米国の地域病院3施設からの外部コホート(4,734例)で検証した(最終フォローアップは2020年1月15日)。 血清クレアチニン値の周術期変化と心臓手術後の最初の代謝パネルから術後血中尿素窒素、血清ナトリウム、カリウム、重炭酸塩およびアルブミン値を用いてモデルを作成。主要評価項目は、手術後72時間以内および14日以内のKidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO)に基づく中等症~重症AKIと透析予測モデルを必要としたAKIの、受信者動作特性曲線下領域(AUC)およびキャリブレーション測定値とした。術後72時間以内・14日以内の中等症~重症AKIの予測良好 モデル開発コホート5万8,526例(年齢中央値66[IQR:56~74]歳、男性3万9,173例[67%]、白人種5万1,503例[91%])において、心臓手術後72時間以内の中等症~重症AKIは2,674例(4.6%)、透析を要したAKIは868例(1.48%)であり、14日間以内はそれぞれ3,156例(5.4%)、1,018例(1.74%)が認められた。 手術終了から初回代謝パネルまでの時間中央値は10(IQR:7~12)時間であった。 開発コホートにおいて代謝パネルベースのモデルは、中等症~重症AKIについて術後72時間以内(AUC:0.876、95%信頼区間[CI]:0.869~0.883)、14日以内(0.854、0.850~0.861)ともに優れた予測識別能を示した。透析を要したAKIについても、同72時間以内(0.916、0.907~0.926)、14日以内(0.900、0.889~0.909)と優れた予測識別能を示した。 検証コホート4,734例に(年齢中央値67[IQR:60~74]歳、男性3,361例[71%]、白人種3,977例[87%]おいて、作成モデルは、術後中等症~重症AKIについて72時間以内のAUCは0.860(95%CI:0.838~0.882)、14日以内のAUCは0.842(0.820~0.865)を示した。透析を要したAKIについては、術後72時間以内のAUCは0.879(95%CI:0.840~0.918)、14日以内のAUCは0.873(0.836~0.910)を示した。 Spiegelhalter z検定で評価したキャリブレーションはp>0.05で、開発および検証モデルいずれも適切なキャリブレーションであることが示唆された。

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腎不全患者の腎移植は特定の背景因子の違いに大きく影響されることなく、透析継続例の生命予後に勝る(解説:浦信行氏)

 BMJ誌に掲載された本論文のメタ解析の結果は大方の予想どおり、腎移植例の生命予後が透析継続例に勝るとの結論であり、そのハザード比(HR)は0.45ときわめて高いものであった。このような報告は従来も数多くあったが、比較的最近の2011年に発表されたシステマティックレビューは192万2,300例の解析であり、本研究より多数例の報告である。しかし、従来のものは対象の透析例が移植待機例以外も含んでおり、本来移植非適応の症例を含んでおり、対象の選択バイアスを含むものである。したがって本研究の症例の選択バイアスを除去した意義は大きい。 ところで、48の報告のうち11件が有意性を認めない層が特定されたと報告しているが、その11の報告の内容には一貫性がない。たとえば年齢層であるが、報告によって65~70歳、70歳以上、基礎疾患は糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症もしくは遺伝性疾患、糖尿病性腎症、また基礎疾患ではないがCOPD合併例など、まったく一定の傾向がない。移植後各時期の生命予後に関しては、術後3ヵ月目までは、手術そのものの影響や、化学療法開始時のリスク、麻酔のリスクなどでむしろ悪いが、その後は一貫して移植例の予後は良い。 メタアナリシスでは18の研究を対象としているが、地域性に関しては、南米の報告は研究が2報のみで統計学的な有意差はなかったが、他の地域との成績の有意差もなかった。また、生体腎移植と死体腎移植との成績の差はなく、60歳未満と60歳以上との差もなかったとのことである。腎移植も透析も技術的進歩は目覚ましいものがあるが、西暦2000年以前と以後を比較しても、やはり同様に腎移植例優位の結果であった。 やはり、腎移植希望例に対する移植腎の、確保、供給の困難性が最大の障害である。

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腎不全患者の生存有益性、腎移植vs.透析/BMJ

 ほとんどの腎不全患者において腎移植は全死因死亡を減少させる優れた治療法であるが、一部のサブグループでは生存有益性がない可能性があることを、英国・バーミンガム大学のDaoud Chaudhry氏らがシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、報告した。腎不全患者において、腎移植は透析よりも優れた生存率をもたらすが、進行慢性腎臓病患者や透析患者のほとんどは腎移植待機リストに載っていない。そのため、臨床診療の進化を踏まえた腎不全患者の生存有益性に関する検討の必要性が示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「ドナー臓器の不足が続いており、腎不全患者の意思決定に役立つより良い情報を提供するため、さらなるエビデンスが必要である」とまとめている。BMJ誌2022年3月1日号掲載の報告。腎移植vs.透析継続による死亡を比較した試験結果をメタ解析 研究グループは、MEDLINE、Ovid Embase、Web of Science、Cochrane CollectionおよびClinicalTrials.govを用い、2021年3月1日までに発表された研究について検索し、移植手術待機中の腎不全患者を対象に移植と透析の全死因死亡を評価した比較試験を特定した。 2人の評価者がそれぞれデータを抽出し、組み込まれた試験のバイアスリスクを評価するとともに、DerSimonian-Lairdランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施し、サブグループ解析、感度解析、メタ回帰により異質性を検討した。腎移植は全体として生存有益性あり、ただし一部のサブグループでは生存有益性なし 無作為化比較試験はなく、観察研究48件(合計124万5,850例)が特定された。 48件中44件(92%)の研究が、透析と比較し腎移植に関連する長期(最低1年)の生存有益性を報告していた。しかし、このうち11件の研究では、透析継続と比較して腎移植で統計学的に有意な有益性を認めない層が特定された。 メタ解析には18件が組み込まれ、腎移植の生存有益(ハザード比:0.45、95%信頼区間:0.39~0.54、p<0.001)が示されたが、サブグループ解析、感度解析あるいはメタ回帰解析でも有意な異質性が認められた。

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オミクロン株臨床像の更新ほか、診療の手引き7.0版/厚労省

 2月28日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第7.0版」を公開し、全国の自治体に通知を行った。 今版の主な改訂点は以下の通り。診療の手引き7.0版の主な改訂点【1 病原体・疫学】・変異株について更新・国内と海外の発生状況を更新【2 臨床像】・(特にオミクロン株の知見に関して)臨床像を更新・重症化リスク因子を更新・ワクチンによる重症化予防効果を追加・国内小児例の臨床的特徴・重症度、小児における家庭内感染率を更新・小児多系統炎症性症候群(MISC)について更新 経過、小児重症COVID19 registryの報告を追加・更新・妊婦例の特徴について更新 日本産婦人科学会の調査を更新、新たな知見およびCOVIREGI JPの結果を追加【3 症例定義・診断・届出】・症例定義を更新、疑似症に関してを追記【4 重症度分類とマネジメント】・重症度別マネジメントのまとめにニルマトレビル/リトナビルを追加・重症につき 国内における体外式膜型人工肺(ECMO)データを更新 透析患者のデータを更新・新たなレベル分類と医療逼迫時の対応を追加【5 薬物療法】・抗ウイルス薬と中和抗体薬の併用について十分な知見がなく現時点で推奨されないことを記載・モルヌピラビルの脱カプセル・(簡易)懸濁投与に関して記載・ニルマトレビル/リトナビルについて追加 研究結果を追加:重症化リスクのある非入院患者において、28日目までの入院または死亡が低下(0.7% vs.6.5%) 投与方法・投与時の注意点・入手方法について記載・軽症・中等症患者を対象とした治療薬の主な臨床試験を更新・妊婦に対する薬物療法を更新(ニルマトレビル/リトナビルを追加)・国内で開発中の薬剤を整理 PF07321332は削除(ニルマトレビル/リトナビルが認可されたため)【6 院内感染対策】・医療従事者が濃厚接触者となった場合の考え方を更新・妊婦および新生児への対応を更新【7 退院基準・解除基準】・オミクロン株の無症状患者の療養解除基準を追加・早期退院の目安を追加

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第97回 2022年診療報酬改定の内容決まる(後編)かかりつけ医、報酬は従来路線踏襲も制度化に向けた議論本格化へ

かかりつけ医関連の診療報酬に若干のテコ入れこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。NFLのスーパーボウル(ロサンゼルス・ラムズが第4クオーター残り6分から逆転のタッチダウンを決め、シンシナティ・ベンガルズを23対20で破って優勝)も北京オリンピック(女子スピードスケートだけ観戦していました)も終わっていよいよ球春到来、MLBと日本のプロ野球の開幕を待つばかりとなりました。が、心配なこともあります。米国のMLBの労使交渉が泥沼化し、まだ終わっていないのです。選手の年俸総額や最低保証額で溝が埋まっていないようです。労使間の新協定が締結できないため、広島からポスティング制度でメジャー移籍を目指す鈴木 誠也選手も、シアトル・マリナーズをフリーエージェントとなった菊池 雄星投手も入団交渉が進まず、所属チームが決まっていません。キャンプインも延期状態で、3月末の開幕に黄信号が灯っています。ロサンゼルス・エンジェルスの大谷 翔平選手の調整が今年もうまく進んでいるといいのですが…。さて、前回に引き続き、2月9日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で答申が行われた2022年度診療報酬改定の内容のうち、このコラムでも触れてきた政策的な意味合いが大きい項目について、その内容を見てみたいと思います。今回は、若干のテコ入れが行われた「かかりつけ医関連の診療報酬」と、財務省が強く求めたものの実現が見送られた「かかりつけ医制度化」について考えてみます。財務省が提案する「かかりつけ医の制度化」このコラムでは、「第85回 診療報酬改定シリーズ本格化、「躊躇なくマイナス改定すべき」と財務省、「躊躇なくプラス改定だ」と日医・中川会長」で、財務省が強く導入を求めてきた「かかりつけ医の制度化」について書きました。今回の診療報酬の改定議論が本格化する直前の2021年11月8日、財務省主計局は、財政制度等審議会・財政制度分科会において2014年度診療報酬改定での地域包括診療料、地域包括診療加算の創設以降、かかりつけ医については診療報酬上の評価が先行して実体が伴っておらず、「算定要件が相次いで緩和され、かかりつけ医機能の強化という政策目的と診療報酬上の評価がますますかけ離れることになった」と現行制度の問題点を指摘しました。加えてコロナ禍の中、「我が国医療保険制度の金看板とされてきたフリーアクセスは、肝心な時に十分に機能しなかった可能性が高い」と“有事”での診療所の診療機能を強く批判しました。その上で、「受診回数や医療行為の数で評価されがちであった『量重視』のフリーアクセスを、『必要な時に必要な医療にアクセスできる』という『質重視』のものに切り替えていく必要がある」として、「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化したうえで、これらの機能を担う医療機関を『かかりつけ医』として認定するなどの制度を設けること、こうした『かかりつけ医』に対して利用希望の者による事前登録・医療情報登録を促す仕組みを導入していくことを段階を踏んで検討していくべきである」と提言しました。第85回で私も、「もし、首相がかかりつけ医の制度化含め、医療提供体制の改革を真剣に行おうとするならば、ある程度プラスの改定率にして中川会長の面目を保ちつつ、かかりつけ医の制度化を一部飲ませる、というシナリオが一つの落とし所として考えられます」と書いたのですが、今回はかかりつけ医の制度化の議論は行われず、その予想は外れました。もっとも、財務省(と岸田政権)はもう一つの懸案事項でもあったリフィル処方導入を日本医師会にしっかり飲ませることができました。長年日本医師会が反対してきた政策がすんなり実現したという事実は、政府・財務省・厚労省・日医の関係性が微妙に変化していることを感じさせます。リフィル処方導入はひょっとしたら「かかりつけ医の制度化」という大きな改革に向けての楔となるかもしれません。機能強化加算の算定要件にかかりつけ医機能を明記というわけで、今回の診療改定では、かかりつけ医関連の診療報酬は、財務省が批判していた地域包括診療料、地域包括診療加算や機能強化加算など、従来路線の見直しに留まりました。ただ、「かかりつけ医関連の報酬が機能を評価したものであることが患者等に認識されていない」といった批判もあり、いくつかの要件や基準は厳格化されることになりました。まず、機能強化加算ですが、地域におけるかかりつけ医機能をより明確化するため、算定要件と施設基準が見直されます。算定要件では、かかりつけ医機能に関する対応として以下の5項目が明記されました。1)患者が受診する他の医療機関および処方薬を把握し、必要な管理を行い診療録に記載する2)専門医または専門医療機関への紹介を行う3)健康診断の結果等の健康管理に係る相談に応じる4)保健・福祉サービスに係る相談に応じる5)診療時間外を含む緊急時の対応方法等に係る情報提供を行うそして、施設基準では上記の対応について院内や医院のウェブサイト等に掲示することが要件に加わります。また、現行では地域包括診療料・地域包括診療加算や在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料(在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院に限る)等の届け出があれば算定できましたが、今改定では訪問診療や往診を行った患者数等の実績要件が盛り込まれます。在宅医療のニーズが今後さらに増えることを想定し、外来中心の医療機関であっても訪問診療等に関わってもらおう、という狙いからです。そもそも、かかりつけ医機能を評価する報酬と言いながら、地域包括診療料、地域包括診療加算等の届け出を行っていれば、自動的に初診患者に加算できること自体に無理がありました。今改定での機能強化加算への5項目の算定要件新設や、訪問診療や往診等の実績要件の導入は、かかりつけ医というものの機能が患者にもある程度見えるようになるという意味で、理に適ったことだと言えるでしょう。なお、地域包括診療料・地域包括診療加算については、慢性疾患を抱える患者に対するかかりつけ医機能の評価を推進する観点から、対象疾患に慢性心不全、慢性腎臓病(慢性維持透析を行っていない者に限る)が追加されます。外来機能報告制度にあわせ定額負担を徴収する病院の対象を拡大今改定では、外来の診療報酬として、2022年4月からスタートする「外来機能報告制度」にあわせた地域における外来機能の分化と連携を促す見直しも行われました。具体的には、紹介状なしで受診した患者から定額負担を徴収する責務のある医療機関の対象範囲を、従来の「特定機能病院」と「一般病床200床以上の地域医療支援病院」に加えて、「外来機能報告制度における紹介受診重点医療機関のうち一般病床200床以上の病院」にも広げるとともに、該当医療機関の入院機能を評価する紹介受診重点医療機関入院診療加算(800点、入院初日)が新設されます。なお、紹介状なしで受診した患者から追加徴収する定額負担は初診7,000円、再診3,000円とし、現行から初診2,000円、再診500円引き上げられます。外来医療の実施状況を都道府県へ報告する外来機能報告制度外来機能報告制度とは、外来医療の実施状況を都道府県へ報告するよう病院などに義務づける制度です。従来からある病床機能報告制度の外来版という位置づけで、2021年5月の医療法改正で創設され、この4月からスタートします。同制度では、各病院に「医療資源を重点的に活用する外来」をどの程度実施しているかの報告を求めます。集めるデータは抗がん剤を使う外来の化学療法、日帰り手術、CTやMRI撮影の実施件数など。紹介・逆紹介率、外来における人材の配置状況、高額な医療機器・設備の保有状況などに関する報告も含まれます。これらのデータを基に、都道府県は「地域における協議の場」を通じて、各地域で高度な外来を担う基幹病院を明確化します。初診と再診の「医療資源を重点的に活用する外来」が占める割合が初診40%以上、再診25%以上という基準を満たす場合、その病院の意向を踏まえた上で「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関:紹介受診重点医療機関」と見なされることになります。今改定では、この紹介受診重点医療機関のうち一般病床200床以上の病院も、定額負担を徴収する責務のある医療機関に加わったわけです。「首相≒財務省」vs.「厚労省≒日本医師会」の対立構造深まるか、追い込まれる日医はどうする外来機能報告制度は、外来医療においても入院同様に機能分化を進め、「かかりつけ医をまず受診し、そこから高機能の病院外来を紹介してもらう」という患者の流れを作るために創設されました。2022年度から外来機能報告制度がスタートすることで病院の外来機能の分化はある程度進みそうですが、その前の段階の「かかりつけ医」の制度化は今回の改定では手つかずで、議論もペンディングとなってしまいました。もっとも、財務省も手をこまぬいているわけではないようです。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会は2月16日、2021年12月にまとめた提言の22年度予算案への反映状況を確認、議論を交わしました。この中で、「かかりつけ医」の制度化について、引き続き推進を求める意見が出たとのことです。財政審は2021年11月の財政制度等審議会・財政制度分科会での提言に続き、12月3日にまとめた「令和4年度予算の編成等に関する建議」の中でも「かかりつけ医」の制度化を挙げていました。今改定では制度化は見送られたものの、政府の経済財政諮問会議が12月23日に取りまとめた新経済・財政再生計画(財政健全化計画)の「改革工程表2021」には、「かかりつけ医機能」を明確化し、それを有効に発揮するための具体策を2022〜2023年度に検討する、という方針が示されています。機能強化加算の算定要件として明示された5項目をベースとして、「かかりつけ医」の制度化に向けての議論がいよいよ本格化することになりそうです。「第80回 「首相≒財務省」vs.「厚労省≒日本医師会」の対立構造下で進む岸田政権の医療政策」でも書いた対立構造は、今後一層溝が深まっていくかもしれません。日医がそうした事態を避けるためには、自民党の安倍 晋三元首相や麻生 太郎自民党副総裁ら有力議員から自民党の政策に非協力的と見られている中川 俊男会長が次期会長選には出ず退陣、自民党とのパイプ作りに長けた人材を投入する、という手も考えられますが、さてどうなることか。参院選前、6月末に行われる予定の日医会長選の動きも気になります。

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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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COVID-19経口治療薬「モルヌピラビル」の有効性(解説:小金丸博氏)

 モルヌピラビルはSARS-CoV-2や他のRNAウイルスに対して活性を有するリボヌクレオシドアナログである。RNA依存性RNAポリメラーゼに作用することによりウイルスRNAの配列に変異を導入し、ウイルスの増殖を阻害する。今回、重症化リスクを有する非重症COVID-19患者に対するモルヌピラビルの有効性と安全性を検討した第III相プラセボ対象ランダム化二重盲検試験の結果がNEJM誌オンライン版に報告された。被験者1,433例を対象とした解析では、プラセボ投与群(699例)の重症化が68例(9.7%)だったのに対し、モルヌピラビル投与群(709例)では48例(6.8%)であった(相対リスク減少率:30%)。死亡者数はプラセボ投与群9例(1.3%)に対してモルヌピラビル投与群では1例(0.1%)であり、モルヌピラビル投与群で少数であった。劇的な効果とはいえないものの、非重症COVID-19に対して一定の重症化予防効果を示した。 サブグループ解析の結果をみてみると、発症4~5日目の患者、肥満患者(BMI 30以上)、ベースラインのSARS-CoV-2抗体陰性の患者(未感染者)でモルヌピラビルの有効性を認めた。既感染者より未感染者に対してモルヌピラビルが有効性を示す理由が明確でないが、発症時のウイルス量が多い方が有効性を期待できる結果となっており、関連が推察される。 高濃度酸素投与が必要な重症患者、発症6日目以降の患者、新型コロナウイルスワクチン接種者、人工透析患者等は、本試験から除外された。これらの患者に対する有効性は確立していないことに注意が必要である。 本試験の結果を参考に、本邦においても2021年12月24日に特例承認された。発症早期の重症化リスク因子を有するCOVID-19患者に対して適応があり、妊婦、または妊娠している可能性のある女性には投与できない。本薬剤は非重症COVID-19患者に対する国内初の経口抗ウイルス薬である。治療の選択肢が増えたこと、外来患者に対して投与できることは、医療者側にとっても大きなメリットとなる。副反応についての情報はまだ不十分であり、さらなる知見の集積が必要である。

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緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには【非専門医のための緩和ケアTips】第18回

第18回 緩和ケアはがん患者だけのものではない!ニーズに基づいた提供をするには緩和ケアといえば「がん」患者さんのためのもの、というイメージを持つ方は医療者にも多いのですが、近年、緩和ケアの概念はどんどん広がっています。まさに、パラダイムシフトを迎えている緩和ケアについて、少し紹介しましょう。今日の質問最近、末期心不全患者も緩和ケアの対象となり、診療報酬に収載されたと聞きました。以前から、がん患者にばかり緩和ケアが手厚く提供されるのは違和感があったのですが、今後の動きはどうなっていくのでしょうか?ここでいう診療報酬とは、入院時に緩和ケアチームが緩和ケアを提供した際に算定される「緩和ケア診療加算」のことです。長らく、がんとHIV感染症に限って算定可能だったものが、2018年の診療報酬改定で対象疾患が末期心不全にも拡大された、という背景があります。以前から、特定の疾患に限って緩和ケアを提供する制度設計には批判も多く、わが国の緩和ケア提供の課題の一つでした。なので、対象拡大は大きな一歩といえるでしょう。われわれのように現場で緩和ケアを実践する立場からすれば、重篤な疾患を抱えた患者さんやご家族に、疾患の種類を問わず、幅広くケアを提供したいのは当然の思いです。さらに最近のトピックスは、透析患者の透析中止や慢性呼吸器疾患に対する緩和ケアに対する議論が広まっています。日本呼吸器学会は「非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021」を公開、COPDなど非がん患者の終末期ケアの原則や考え方を提示しました。外来で呼吸器疾患の患者さんを見ているプライマリ・ケア医にとって、待望の指針でしょう。今後もこのような緩和ケアの対象疾患の拡大傾向は続くと思います。このように緩和ケアの概念が広がっていくことは、緩和ケアニーズがある方に広く緩和ケアを届ける、という意味で好ましいことです。そしてそれを実現するためには、外来診療などのプライマリ・ケアの場で緩和ケアを実践する人が増える必要があります。学会や勉強会などでこうした話をすると、「外来診療だけなので、緩和ケアは要らないんですよ」というコメントをいただくことがあります。でも、本当にそうでしょうか? 確かに外来に来られるくらいの患者さんであれば「すぐに対応が必要な症状」や「今日どうしても話し合わなければならない病状」はないかもしれません。しかし、そんな患者さんも、人生の最終段階についての気掛かりがあり、支援を必要としていながら、それを医療者に伝えられていないだけかもしれません。2017年に厚生労働省が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」では、「人生の最終段階における医療について話し合ったことがない」人の割合が55.1%と半数以上でした。一方で、その理由を尋ねたところ「話し合いたくない」という回答は5.8%にすぎず、「話し合うきっかけがなかった」との回答が最多の56%でした。病状が安定している方が多く、時間も取りにくい外来診療ですが、数年単位で患者さんとのお付き合いができることが強みです。ぜひ、疾患にとらわれない緩和ケアのニーズに目を向けてみてください。今回のTips今回のTips緩和ケアはがん患者だけのものではない。外来にも多くのニーズがあります。

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CKDの早期透析導入の意義は?(解説:浦信行氏)

 末期腎不全(ESKD)では、その時点での腎移植が望めない場合には生命維持のための透析導入は必須である。あまりに導入が遅ければ、導入後の病状改善に時間を必要とし、また、回復にたどり着く以前に重症感染症や心血管事故などで不幸な転機を取る危険性も増加する。しかし、ほとんどすべての症例は透析導入には抵抗感が大きく、可能な限りの先延ばしを望む。 20年ほど前なので数字の記憶は曖昧であるが、実際に経験した症例では透析導入の必要性をお話ししたところ、了解を頂けずに間もなく連絡先不明となった。1年後に重度の倦怠感のため再診された時のBUNが230mg/dL程度であったと思うが、低Na血症が少し血清浸透圧上昇に代償的に働いたのと、若い男性であったので何とかイベントもなく経過したと考えられる。緊急透析はきわめて低い血流量と透析液流量で始めたが、一過性に脳浮腫を発症したか、中程度の意識障害を来した苦い経験がある。このような危険を避ける意味でも透析導入時期の適正化が必要であるが、明らかな臨床指標はないのが現状で、症例の病態、自覚症状、臨床検査値を総合的に勘案して開始時期を決定する。 このたび、BMJ誌に透析導入の際の最適eGFRに関する研究結果が報告された。透析開始時のeGFRが4~19mL/min/1.73m2の15段階で検討した結果、eGFRが15~16の早期の開始が、eGFRで6~7での開始より死亡の5年絶対リスクが5.1%低下し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが2.9%低下したと報告された。すなわち早期の導入は死亡やMACEを有意に減少させたとする結果であった。しかし、死亡に関する絶対リスクの5.1%低下は5年の追跡期間中で1.6ヵ月の死亡の延期につながるが、一方で透析導入を4年早めることが必要との結果である。 この結果は、ほとんどの症例は透析導入に強い抵抗感があるため、臨床的な意義はほとんど考えられない。この成績は基礎疾患、年齢、血圧値、Ca、P、ヘモグロビン、アルブミンで調整していることから、これらが結果に影響している可能性は考えにくく、尿蛋白やK値も有意な影響はなかった。しかし、いくつかの限界がある。早期に透析導入に至った経緯が不明なのである。透析導入の理由が不明であり、栄養状態、筋肉量、自覚症状、体液量、QOL、ADLなど、透析導入時期に関連する因子が不明である。したがって、早期導入に至った背景の違いが結果を過小評価させた可能性は必ずしも否定できない。その点を勘案しても、4年前倒しの透析導入は臨床現場では受け入れられないであろう。

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『はたらく細胞』コラボ漫画で疾患啓発を全国に【足の血管を守ろうPROJECTインタビュー・後編】

『はたらく細胞』コラボ漫画で疾患啓発を全国に【足の血管を守ろうPROJECTインタビュー・後編】<お話を伺った先生方>仲間 達也氏(左)東京ベイ・浦安市川医療センター 循環器内科 副部長鈴木 健之氏(中)東京都済生会中央病院 循環器内科/TECC2021大会長宇都宮 誠氏(右)TOWN訪問診療所城南院院長/東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科――漫画『はたらく細胞』とタイアップした経緯について教えてください。これまで、TECCで若手育成などさまざまなことを試みてきた中で、ここからさらに自分たちの使命として何ができるかと考えたとき、末梢動脈疾患(PAD)の啓発を社会貢献活動の一環として取り組むのはどうかという話になりました。その中で『はたらく細胞』とタイアップすることになったわけです。この漫画は、ヒトの体内で起こっていること、たとえば傷口から侵入した細菌を白血球が攻撃するなどの生体防御を、擬人化された細胞たちによってわかりやすく伝えています。認知度の高い作品とタイアップすることで、「われわれが専門とするPADやEVTをわかりやすく伝えることができるのではないか」という思いから、講談社へ企画を持ちかけました。医療のプロであるわれわれと、漫画企画・編集のプロである講談社が何度も打ち合わせを重ねた結果として、とても素晴らしい作品が出来上がったと思います。――完成した漫画作品はどんな内容ですか?漫画の内容は、原作の世界観を大事にしながら、PADという疾患の重要性や病態を自然と理解できるストーリーになっています。個人的に一番の見どころは、チーム医療が垣間見えるラストシーンですね。あと、かわいらしい「血小板ちゃん」が、文句を言う赤血球集団に激ギレしているシーンも好きです(笑)。生活習慣の重要性がよく伝わると思います。私はよく、患者さんに「治療が成功しても50%の成功だよ」と言っています。「残りはあなたが今後の生活習慣を改善することで100%になります」とね。ここだけの話、今回の漫画はハッピーエンドなので、前回話したような足や指をなくすなどのシビアな事実は表現しきれていません。漫画だけではPADの深刻さや悲惨な一面を伝えにくい部分もあるので、医療者からは、「皆が漫画のようにうまく治療できるわけではない」と、漫画を読んだ患者さんにやんわり伝えていただいてもいいかなと思います。漫画と現実のギャップを埋めるというか。そうですね。実際は、糖尿病や透析の患者さんで足を膝上・膝下で切断しなきゃいけなくなる人や、足が痛くて歩けないまま原因不明で寝たきりになってしまう人も少なくありませんから。正しい情報が広く伝わって、適切な治療につながってくれたら、PADによるいろんな不幸を防げるのではないかと思います。全国の医療機関に配られる予定の漫画は、患者さんが手に取るだけではなくて、まずは医療者一人ひとりに読んでもらいたいという思いがあります。漫画はあくまでもきっかけとして、自分たちに何ができるのか、足の血管の詰まりを放置したらどうなるのか、ぜひ興味を持って学んでいただきたいですね。われわれがこのような形で地域の先生方にメッセージを発すると同時に、循環器や血管系の専門医の皆さんにも、TECCの活動を通して、PADに対して真剣に取り組んでいただくように訴えていく必要があると考えています。また、紹介が来たら常にオープンに受けて、使命感をもって取り組むべき疾患であることも啓発していきたいです。医療者側へ、そして患者さんへ、双方向での活動が実って初めて、世の中に大きいムーブメントを生み出すことができると思います。現在、この漫画を全国の医療機関に紙媒体で配りたいと考え、クラウドファンディングを実施中です。医療者や患者さんにぜひ直接読んでいただきたいと考えています。現実的には、PADの罹患リスクが高い人は主に高齢者なので、患者さんに同行するご家族などに漫画を読んでもらうことになるかもしれないですね。子供や孫に読んでもらえれば、「うちのお父さん(おじいちゃん)、もしかして…?」と、循環器科の受診につながるかもしれません。また、PADの患者さんは、どちらかというと自分の健康に興味がない、もしくは糖尿病などで視力が悪く、自分の体の状況がよく見えない人などが多いので、なかなか危機感を持ってもらえず、情報が届きにくい層なんですよね。漫画が全国にじわじわと浸透した結果、「『はたらく細胞』を読んだ」と循環器科外来を受診する患者さんが増えるかもしれないし、かかりつけのクリニックに漫画が置いてあって、患者さんから「私の足は大丈夫なの?」と医師に尋ねてくれるかもしれない。あるいは、看護師さんが読んで、「自分たちでもチェックしよう」などと働きかけてくれるかもしれない…。もしかしたら、自分たちの想像とはまったく違う形で、全国の皆さまに影響をもたらしてくれるかもしれない。医療系の学会や研究会が、これまで行ったことがないようなチャレンジなので、結果は未知数ですが、それが楽しみでもあります。私としては、この漫画を通じて1人でも足を失う患者さんが減ったら良いなと思います。――最後に、今後の展望と活動にかける先生方の思いを聞かせてください。今回、一般向けの情報発信を試みる中で最も難しいと感じたのが、循環器内科を受診すればどこでも足の血管を診てくれるわけではないという点です。循環器内科医にもそれぞれで専門領域があります。PADの診察や足の血管治療が得意な人もいれば、あまり詳しくない人もいます。だからこそ、TECCとしてまずは専門医向けに情報発信を始めたという経緯があります。なので、引き続きTECCの活動も頑張りつつ、かかりつけ医にも広く伝えていくことが大事だと考えています。この漫画をきっかけに、今まではあまりPADに注目していなかった循環器や血管系の先生方にも、「漫画とコラボした病気だ」と興味を持ってもらえるのではないかと期待しています。将来的に、若手の医師が「自分もPADの診療やEVTをやってみようかな」と考えてくれるようになったらとてもうれしいです。循環器のメインストリームは心臓ですので、われわれのようにPADに注力している医師は「少し変わっている」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、われわれがアクティブにいろいろな活動に取り組み、とくに社会貢献活動に参入したということは、一般市民へのPADの啓発だけでなく、循環器領域においてPAD診療の価値を高めることにつながると思っています。これから循環器領域の診療を志す若い医師たちに、PADという専門領域がもっともっと、魅力的に映ってほしいですね。そのような意味でも、大きな意義があることだと思います。今回、医療者・一般人問わず、なるべく多くの人に活動を知ってもらいたいと考えて、プロジェクトの準備を進めてきました。地域医療が1つのチームとなれるかというミッションもあると感じています。もし、われわれの活動に興味を持っていただけたら、ぜひTECCのホームページを見に来てください。今後、PADを正しく治療できる医療機関を探せるシステムなども作ろうと取り組んでいるところです。患者さんにとって一番身近なかかりつけ医の皆さんにも役立つ取り組みをこれからも考えていきたいです。ぜひ、クラウドファンディングへのご賛同・ご支援もよろしくお願いいたします。

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CKDの透析導入、最適なeGFRは?/BMJ

 進行した慢性腎臓病(CKD)患者において、非常に早期の透析導入は死亡および心血管イベントをわずかだが減少することが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、進行性CKD患者における透析導入の最適な推算糸球体濾過量(eGFR)を明らかにすることを目的とした観察コホート研究の結果を報告した。検討により、導入参照値と比べた死亡の5年絶対リスク低下は5.1%で、平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、透析導入を4年早める必要があることも示された。著者は、「ほとんどの患者にとって、今回の試験で示されたぐらいの減少では、透析期間がより長期化することに伴う負担を上回るものにはならないと思われる」と述べている。BMJ誌2021年11月29日号掲載の報告。透析を開始するeGFRを4~19mL/分/1.73m2の15段階で検討 研究グループは、腎臓専門医に紹介された患者を登録するスウェーデンの全国腎臓登録(National Swedish Renal Registry)を用い、2007年1月1日~2016年12月31日の期間にベースラインのeGFRが10~20mL/分/1.73m2の患者を対象として、2017年6月1日まで追跡調査を行った。 主要評価項目は5年全死因死亡率、副次評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)である。無イベント時間バイアス、リード・タイム・バイアス、生存者バイアスを排除して厳格な臨床試験デザインを模倣し、動的周辺構造モデルを用いて、eGFR(mL/分/1.73m2)値4から1単位刻みで19までの、15の透析導入戦略に関して、補正後ハザード比および絶対リスクを推算した(参照値はeGFR6~7)。eGFR15~16で、5年全死因死亡5.1%低下、心血管イベント2.9%低下 進行したCKD患者1万290例(年齢中央値73歳、女性3,739例[36%]、eGFR中央値16.8)において、3,822例が透析を開始し、死亡が4,160例、MACEが2,446例で確認された。 死亡率には放物線型の関連が認められ、eGFR15~16で最も死亡リスクが低かった。eGFR6~7での透析導入と比較して、eGFR15~16での透析導入による死亡の5年絶対リスク低下は5.1%(95%信頼区間[CI]:2.5~6.9)、MACEの同リスク低下は2.9%(0.2%~5.5%)で、ハザード比はそれぞれ0.89(95%CI:0.87~0.92)、0.94(0.91~0.98)であった。 死亡に関する絶対リスク差5.1%は、5年の追跡期間中で平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、一方で透析導入は4年早める必要があった。 Initiating Dialysis Early and Late(IDEAL)研究の強化戦略(eGFR10~14 vs.eGFR5~7)とIDEAL研究で達成されたeGFR(eGFR7~10 vs.eGFR5~7)を模倣した場合の全死因死亡のハザード比は、それぞれ0.96(95%CI:0.94~0.99)、0.97(95%CI:0.94~1.00)であり、無作為化試験のIDEAL研究の結果と一致していた。

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特発性基底核石灰化症〔IBGC:idiopathic basal ganglia calcification〕

1 疾患概要■ 概念・定義特発性基底核石灰化症(idiopathic basal ganglia calcification:IBGC)は従来、ファール病と呼ばれた疾患で、歴史的にも40近い疾患名が使われてきた経緯がある。欧米では主にprimary familial brain calcification(PFBC)の名称が用いられることが多い。基本は、脳内(両側の大脳基底核、小脳歯状核など)に生理的な範囲を超える石灰化を認める(図1)、その原因となる生化学的異常や脳内石灰化を来す基礎疾患がないことである。最近10年間で、原因遺伝子として、4つの常染色体優性(AD)遺伝子(SLC20A21)、PDGFRB2)、PDGFB3)、XPR14))、2つの常染色体劣性(AR)遺伝子(MYORG5)、JAM26))が報告された。日本神経学会で承認された診断基準が学会のホームページに公開されている(表)。図1  IBGCの典型的な頭部CT画像画像を拡大する69歳・男性。歯状核を中心とした小脳、両側の大脳基底核に加え、視床、大脳白質深部、大脳皮質脳回谷部などに広範な石灰化を認める。表 特発性基底核石灰化症診断基準<診断基準>1.頭部CT上、両側基底核を含む病的な石灰化を認める。脳以外には病的な石灰化を認めないのが特徴である。病的とする定義は、大きさとして斑状(長径で10mm以上のものを班状、10mmm未満は点状)以上のものか、あるいは点状の両側基底核石灰化に加えて小脳歯状核、視床、大脳皮質脳回谷部、大脳白質深部などに石灰化を認めるものと定義する。注1高齢者において生理的石灰化と思われるものは除く。注2石灰化の大きさによらず、原因遺伝子が判明したものや、家族性で類似の石灰化を来すものは病的石灰化と考える。2.下記に示すような脳内石灰化を二次的に来す疾患が除外できる。主なものとして、副甲状腺疾患(血清カルシウム(Ca)、無機リン(Pi)、iPTHが異常値)、偽性副甲状腺機能低下症(血清Ca低値)、偽性偽性副甲状腺機能低下症(Albright骨異栄養症)、コケイン(Cockayne)症候群、ミトコンドリア病、エカルディ・グティエール(Aicardi Goutieres)症候群、ダウン(Down)症候群、膠原病、血管炎、感染(HIV脳症など、EBウイルス感染症など)、中毒・外傷・放射線治療などを除外する。注1iPTH:intact parathyroid hormone インタクト副甲状腺ホルモン注2小児例では、上記のような先天代謝異常症に伴う脳内石灰化である可能性も推測され、全ゲノム解析などの遺伝子検索が望まれる。3.下記に示すような 緩徐進行性の精神・神経症状を呈する。頭痛、精神症状(脱抑制症状、アルコール依存症など)、てんかん、精神発達遅延、認知症、パーキンソニズム、不随意運動(PKDなど)、小脳症状などの精神・神経症状 がある。注1PKD:paroxysmal kinesigenic dyskinesia 発作性運動誘発性ジスキネジア注2無症状と思われる若年者でも、問診などにより、しばしば上記の症状を認めることがある。神経学的所見で軽度の運動機能障害(スキップができないなど)を認めることもある。4.遺伝子診断これまでに報告されているIBGCの原因遺伝子は常染色体優性遺伝形式ではSLC20A2、PDGFRB、PDGFB、XPR1、常染色体劣性遺伝形式ではMYORG、JAM2があり、これらに変異を認めるもの。5.病理学的所見病理学的に脳内に病的な石灰化を認め、DNTCを含む他の変性疾患、外傷、感染症、ミトコンドリア病などの代謝性疾患などが除外できるもの。注1 DNTC:Diffuse neurofibrillary tangles with calcification(別名、小阪-柴山病)この疾患の確定診断は病理学的診断であり、生前には臨床的にIBGCとの鑑別に苦慮する。●診断Definite1、2、3、4を満たすもの。1、2、3、5を満たすもの。Probable1、2、3を満たすもの。Possible1、2を満たすもの。日本神経学会ホームページ掲載のものに、下線を修正、追加(改訂申請中)してある。■ 疫学2011年に厚生労働省の支援により本症の研究班が立ち上がった。研究班に登録されている症例は、2021年現在で、家族例が40家系、孤発例が約200例である。症例の中には、頭部外傷などの際に撮影した頭部CT検査で偶発的にみつかったものもあり、実際にはこの数倍の症例は存在すると推定される。■ 病因2012年に中国から、IBGCの原因遺伝子としてリン酸トランスポーターであるPiT2をコードするSLC20A2の変異がみつかったことを契機に、上記のように4つの常染色体優性遺伝子と2つの常染色体劣性遺伝子が連続して報告されている。また、症例の中には、過去に全身性エリテマトーデス(SLE)の既往のある症例、腎透析を受けている症例もあり、2次性とも考えられるが、腎透析を受けている症例すべてが著明な脳内石灰化を呈するわけではなく、疾患感受性遺伝子の存在も示唆される。感染症も含めた基礎疾患の関与によるもの、外傷、薬剤、放射線など外的環境因子の作用も推測される。原因遺伝子がコードする分子の機能から、リン酸ホメオスタシスの異常、また、周皮細胞、血管内皮細胞とアストロサイトの関係を基軸とした脳血管関門の破綻がこの石灰化の病態、疾患の発症機構の基盤にあると考えられる。■ 症状症状は中枢神経系に限局するものである。無症状からパーキンソン症状など錐体外路症状、小脳症状、精神症状(前頭葉症状など)、認知症を来す症例まで極めて多様性がある。発症年齢も30~60歳と幅がある。自験例の全202例の検討では、パーキンソニズムが26%、認知機能低下26%、精神症状21%、てんかん14%、不随意運動4%であった7)。不随意運動の内訳はジストニアが4例、ジスキネジアが2例、発作性運動誘発性ジスキネジア(Paroxysmal kinesigenic dyskinesia:PKD)が2例であった。わが国では諸外国と比して、不随意運動の頻度が低かった8)。必ずしも遺伝子変異によって特徴的臨床所見があるわけではない。国内外でもSLC20A2遺伝子変異患者ではパーキンソニズムが最も多く、PDGFB遺伝子変異では頭痛が多く報告されている。筆者らの検索でも、PDGFB変異患者では頭痛の訴えが多く、患者の語りによる質的研究でも、QOLを低下させている一番の原因であった。PKDはSLC20A2遺伝子変異患者で多く報告されている。筆者らはIBGC患者、とくにSLC20A2変異患者の髄液中の無機リン(Pi、リン酸)が高いことを報告している9)。頭部CT画像にも各遺伝子変異に特徴的な画像所見はないが、JAM2遺伝子変異では、他ではあまりみられない橋などの脳幹に石灰化がみられることがある。■ 分類原因遺伝子によって分類される。遺伝子の検索がなされた家族例(FIBGC)では、40%がSLC20A2変異10)、10%がPBGFB変異11)で、他XPR-1変異が1家系、PDGFRB変異疑いが1家系で、この頻度は国内外でほぼ一致している。■ 予後緩徐進行性の経過を示すが、症状も多彩であり、詳しい予後、自然歴を調べた論文はない。石灰化の進行を評価するスケール(total calcification score:TCS)を用いて、遺伝子変異では、PDGFRB、PDGFB、SLC20A2の順で石灰化の進行が速く、さらに男性、高齢、男性でその進行速度が速くなるという報告がある12)。原因遺伝子、二次的な要因によっても、脳内石灰化の進行や予後は変わってくると推定される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)基本的には原因不明の脳内に限った石灰化症である。National Center for Biotechnology Information(NCBI)には、以下のPFBCの診断基準が挙げられている。(1)進行性の神経症状(2)両側性の基底核石灰化(3)生化学異常がない(4)感染、中毒、外傷の2次的原因がない(5)常染色体優性遺伝の家族歴がある常染色体優性遺伝形式の原因遺伝子として、すでにSLC20A2、PDGFB、PDGFRB、XPR1の4遺伝子が報告され、現在、常染色体劣性遺伝形式の原因遺伝子MYORG、JAM2がみつかってきており、上記の(5)は改訂が必要である。わが国では孤発例の症例も多く、疾患の名称に関する課題はあるが、診断は前述の「日本神経学会承認の診断基準」に準拠するのが良いと考える(上表)。鑑別診断では、主なものとして、副甲状腺疾患(血清カルシウム、Pi、iPTHが異常値)、偽性副甲状腺機能低下症(血清カルシウム低値)、偽性偽性副甲状腺機能低下症(オルブライト骨異栄養症)、コケイン症候群、ミトコンドリア脳筋症(MELASなど)、エカルディ・グティエール症候群(AGS)、ダウン症候群、膠原病、血管炎、感染(HIV脳症など、EBウイルス感染症など)、中毒・外傷・放射線治療などを除外する。IBGCの頭部CT画像は、タツノオトシゴ状、勾玉状などきれいな石灰化像を呈することが多いが、感染症後などの二次性の場合は、散発した乱れた石灰化像を呈することが多い。後述のDNTCの病理報告例の頭部CT所見は、斑状あるいは点状の石灰化である。IBGCは小児期、青年期は大方、症状は健常である。小児例では、AGSを始め、多くは何らかの先天代謝異常に伴う脳内石灰化症、脳炎後など主に二次性の脳内石灰化症が示唆されることが多い。今後の病態解明のためには、とくに家族例、いとこ婚などの血族結婚の症例を含め、エクソーム解析や全ゲノム解析などの遺伝子検索が望まれる。高齢者の場合は、淡蒼球の生理的石灰化、また、初老期以降で認知症を呈する“石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病”(diffuse neurofibrillary tangles with calcification:DNTC、別名「小阪・柴山病」)が鑑別に上がる。DNTCの確定診断は、病理学的所見に基づく。しかし、最近10年間の班研究で調べた中ではDNTCと病理所見も含めて診断しえた症例はなかった。脳内石灰化をみた場合の診断の流れを図2に提示する。図2 脳内石灰化の診断のフローチャート画像を拡大する脳内に石灰化をみた場合のフローチャートを示す。今後、病態機構によって、漸次、更新されるものである。全体をPFBCとして包括するには無理がある。名称として現在は、二次性のものを除外して、全体をPBCとしてまとめておくのが良いと考える。【略号】(DNTC:Diffuse neurofibrillary tangles with calcification、FIBGC:Familial Idiopathic Basal Ganglia Calcification、IBGC:Idiopathic Basal Ganglia Calcification、PBC:Primary Brain Calcification)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はまだみつかっていない。遺伝子変異を認めた患者の疾患特異的iPS細胞を用いて、PiT2、PDGFを基軸に創薬の研究を進めている。対症療法ではあるが、不随意運動や精神症状にクエチアピンなど抗精神病薬が用いられている。また、病理学的にもパーキンソン病を合併する症例があり、抗パーキンソン病薬が効果を認め、また、PKCではカルバマゼピンが効果を認めている。4 今後の展望中国からAR遺伝形式の原因遺伝子MYORG、JAM2が見出され、今後さらなるARの遺伝子がみつかる可能性がある。また、疾患感受異性遺伝子、環境因子の関与も想定される。IBGC、とくにSLC20A2変異症例では根底にリン酸ホメオスタシスの異常があることがわかってきた。ここ数年で、Pi代謝に関する研究が大いに進み、生体におけるPi代謝にはFGF23が中心的役割を果たす一方、石灰化にはリン酸とピロリン酸(二リン酸, pyrophosphate:PP)の比が重要である指摘やイノシトールピロリン酸 (inositol pyrophosphate:IP-PP)が生体内のリン酸代謝に重要であることが注目されている。最近では細胞内のPiレベルの調節にはイノシトールポリリン酸 (inositol polyphosphate: InsPs)、その代謝にはイノシトール-ヘキサキスリン酸キナーゼ、(inositol-hexakisphospate kinase:IP6K)がとくに重要で、InsP8が細胞内の重要なシグナル分子として働き、細胞内Pi濃度を制御するという報告がある。また、SLC20A2-XPR1が基軸となって、クロストークを起こすことによって、細胞内のPiやAPTのレベルを維持する作用があることも明らかとなってきた。生体内、細胞内でのPi代謝の解明が大きく進展している。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。IBGCでは通常は小児期には症状を呈さない。小児期における脳内石灰化の鑑別では小児神経内科医へのコンサルトが必要である。精神発達遅滞を呈する症例あり、脳内石灰化の視点から、多くの鑑別すべき先天代謝異常症がある。とくに、MELAS、AGS、副甲状腺関連疾患、コケイン症候群、Beta-propeller protein-associated Neurodegeneration (BPAN、 SENDA)などは重要である。また、家族例では、IRUD-P(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases in Pediatrics:小児希少・未診断疾患イニシアチブ)などを活用したエクソーム解析や全ゲノム解析などの遺伝子解析が望まれる。   そのほか、症例の中には、統合失調症様や躁病などの精神症状が前景となる症例もある。これらはある一群を呈するかは今後の課題であるが、精神科医との連携が必要なケースもまれならずある。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本神経学会診断基準(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)NCBI GeneReviews Primary Familial Brain Calcification Ramos EM, Oliveira J, Sobrido MJ, et al. 2004 Apr 18 [Updated 2017 Aug 24].(海外におけるPFBCの解説、医療従事者向けのまとまった情報)●謝辞本疾患の研究は、神経変性疾患領域の基盤的調査研究(20FC1049)、新学術領域(JP19H05767A02)の研究助成によってなされた。本稿の執筆にあたり、貴重なご意見をいただいた岐阜大学脳神経内科 下畑 享良先生、林 祐一先生、国際医療福祉大学 ゲノム医学研究所 田中 真生先生に深謝申し上げます。1)Wang C, et al. Nat Genet. 2012;44:254–256.2)Nicolas G, et al. Neurology. 2013;80:181-187.3)Keller A, et al. Nat Genet. 2013;45:1077-1082.4)Legati A, et al. Nat Genet. 2015;47:579-581.5)Yao XP et al. Neuron. 2018;98:1116-1123. 6)Cen Z, et al. Brain. 2020;143:491-502.7)山田 恵ほか. 臨床神経. 2014;54:S66.8)山田 恵ほか. 脳神経内科. 2020;92:56-62.9)Hozumi I, et al. J Neurol Sci. 2018;388:150-154.10)Yamada M, et al. Neurology. 2014;82:705-712.11)Sekine SI, et al. Sci Rep. 2019;9:5698.12)Nicolas G, et al. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2015;168:586-594.公開履歴初回2021年12月2日

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ダプロデュスタットの透析患者での有効性と初発の主要有害心血管系イベントはESAと同等(解説:浦信行氏)

 CKDにおける腎性貧血の治療薬として低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬が透析の有無にかかわらず使用可能となり、これまでにロキサデュスタットをはじめとして5剤が使用可能となっている。HIF-PH阻害薬は転写因子であるHIF-αの分解を抑制して蓄積させ、HIF経路を活性化させる。その結果、生体が低酸素状態に曝露されたときに生じる赤血球造血反応と同様に、正常酸素状態でも赤血球造血が刺激され、貧血が改善する。 これまでの臨床試験は5剤いずれも赤血球造血刺激因子(ESA)を対象とした非劣性試験であり、いずれも有効性と有害事象の頻度には非劣性が確認されている。少なくとも有効性に関しては5剤間で大きな違いはないようである。今回はダプロデュスタットの貧血改善効果や有害事象のESAに対する非劣性評価に加えて、初発の主要有害心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)に対する評価が行われ、主な副次評価項目は、初発のMACEに加えて入院あるいは血栓塞栓イベントの発症であり、5月に発表されたバダデュスタットとほぼ同様の解析がなされている。 バダデュスタットでの報告と同様に貧血に対する有効性と有害事象の頻度はESA使用群に対して非劣性が示され、主要評価項目と主な副次評価項目のいずれについても非劣性が証明された。しかし、それらの結果にはこの2試験の間で若干の違いがあるかもしれない。その一つはMACEの発症頻度が今回のダプロデュスタットでやや多い印象である。これに関しては、評価法が違うため厳密な対比は困難であるが、透析歴がより長期の可能性がある。また、高血圧の増悪もやや多い印象があり、これには貧血の改善度がバダデュスタットより高いことが関係しているかもしれない。また、全有害事象に関しての頻度は同等だが、重症有害事象はバダデュスタットのほうが大きい数字である。異なる試験間の比較は好ましくはなく、これらの若干の結果の違いは対象やプロトコルの違いに基づくのではないかと考えられる。製剤間の違いがあるのかは直接比較か、各々の薬剤のより多数の対象で長期の検討が必要と思われる。

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第86回 世界で猛威を振るうランサムウェア、徳島の町立病院を襲う

ランサムウェアに感染、1ヵ月経つも電子カルテ復旧せずこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。今年の日本シリーズはとても見応えがありました。第1、2戦の日本を代表する投手たちによる息詰まる投手戦や、オリックスが神戸に戻るために必死で1勝を手にした第5戦など、野球の醍醐味が詰まったシリーズでした。私はヤクルト球団で働いている知人の伝手で、第3戦を東京ドームで観戦したのですが、ドームのカクテル光線にキラキラ光る大量の応援傘は壮観でした。それにしても、優勝したヤクルト、惜しくも敗れたオリックス共に打撃陣が抑え込まれたのは、やはりデータ野球の成果なのでしょう。もっとも、データ野球の先進国、米国のMLBのワールドシリーズは、乱打戦が多かった印象です。あちらのトップ選手には、データをねじ伏せるだけの技術とパワーが備わっているからでしょうか。今年の筒香 嘉智選手に続き、来年のメジャー移籍を目指す鈴木 誠也選手が少々心配です。さて、今回は徳島県内陸部、吉野川沿いにあるつるぎ町の町立半田病院(120床)を襲った、電子カルテのランサムウェア(身代金要求型ウイルス)感染事件について書いてみたいと思います。10月31日未明に同病院で起きたこの事件、1ヵ月経った現在も事態は収束していません。当初は地元紙が報じるだけだったのですが、NHKや全国紙も大きく扱う事態となっています。受付から、診察、会計まですべてのシステムがダウン事件が起こったのは、10月31日の未明でした。NHKや徳島新聞等の報道を基に、事件の流れを整理してみました。31日午前0時半ごろ、町立半田病院の電子カルテに不具合があり、複数プリンターから勝手に不審な書類が大量に印刷されはじめました。紙には英語で「あなたのデータは盗んで暗号化された。ランサムにお金を払わないとダークウェブにデータを公開する(Your data are stolen and encrypted. The data will be published on TOR website……,if you don‘t pay the ransom.)」などと書かれてありました。この時既に、バックアップ用も含めて、院内のサーバーのデータは暗号化されており、受付から、診察、会計まですべてのシステムがダウンしていました。英語の書類が大量に自動印刷されるのを見つけた当直の看護師が、システム担当の職員や電子カルテシステムのメーカーなどに連絡したものの対応不能で、同病院は早朝、開院前に美馬署と県警本部に連絡、ランサムウェアに感染した可能性があるとして被害届を提出しました。同病院は、31日朝から救急患者の受け入れを停止、11月1日以降の新規の外来や入院の受け入れの停止も決めました。同病院では平日1日当たり200~300人の外来患者がいるとのことです。なお、予約再診や予防接種、透析は実施することとしました。31日に同病院は会見を開き、被害にあった事実を公表しました。病院事業管理者の須藤泰史氏は「多くの方にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。警察と今後の対応を検討して参ります」と陳謝したとのことです。バックアップサーバーのデータも暗号化され使えず感染したのはシステムのメインサーバーとバックアップサーバーで、患者約8万5,000人分の個人記録が保存されていました。同日午後9時時点で、流出したデータが公開されているダークウェブには町立半田病院の情報はありませんでした。同病院によると、電子カルテシステムと連係した検査システムや画像システム、診療報酬システムなども使用不能となったとのことです。同病院の電子カルテシステムは、県内の医療ネットワークなどと専用回線のみで接続され、セキュリティーソフトなど不正アクセスを防ぐ対策も取っていたとしています。入院や外来患者のカルテは手書きの記録へ町立半田病院では災害対策本部を立ち上げ、対応に乗り出しました。しかし、その後の復旧は遅々として進みませんでした。電子カルテが使えないため、入院や外来患者のカルテは手書きで紙に記録することになりました。紹介状などの作成も手書きなので、職員の負担は相当なものとなりました。倉庫で眠っていた古いパソコンを再利用して共有データの入力も始めました。この間、システムのセキュリティー専門会社がメインサーバーの復旧作業にあたりましたが、効果はなかったそうです。なお、同病院とネットワークで患者情報共有している県内の97医療機関では、システム被害は報告されていません。その後、1週間たってもメインサーバーは復旧せず、外来診療は予約のある再診患者や透析、予防接種に限定しての対応が続き、休日診療や小児救急は、近隣の医療機関にサポートを頼んだりしたそうです。なお、会計もできないため診療費の請求は後日に延期しているとのことです。共同通信の取材に、病院事業管理者の須藤氏は「過去の診察記録が全部見られなくなった。災害レベルの事態だ。南海トラフ巨大地震を想定した非常事態と同じ対応をしている」と語ったそうです。身代金は支払わず、電子カルテのシステムを一からつくり直すことに11月30日現在、サーバーの復旧のメドは立っていません。紙カルテでの作業が続く中、小児科は11月15日から通常診療を開始、19日からは産科部門で新規妊産婦や救急患者の受け入れを始めました。内科や外科、泌尿器科などは新規患者を受け入れられない状態が続いています。同病院は11月26日に会見を開き、身代金は支払わず電子カルテのシステムを一からつくり直す、と表明しました。現在、ホームページには、「通常診療の再開は2022年1月4日(火)よりを予定しております」と掲示されています。プリンターを使用して脅迫文を自動印刷するランサムウェア「LockBit2.0」各紙報道によれば、町立半田病院のサーバーを襲ったのは、「LockBit2.0」と名乗る国際的なハッカー集団が仕掛けるランサムウェアとのことです。感染するとデータが勝手に暗号化され、LockBit2.0側が公開停止や復旧と引き換えに金を要求する、というものです。調べてみるとこのLockBit2.0、今年に入ってから世界中でさまざまな企業の攻撃を繰り返しているようです。2019年9月に「LockBit」という名前で出現したこのグループは、2021年6月に活動を再開。6月末にダークウェブ上のWebサイトで「アフィリエイト」と呼ばれる攻撃部隊の募集をはじめ、7月中旬からはダークウェブ上のリークサイトに、多数の被害組織への攻撃声明を掲載するようになりました。リークサイトには、被害組織の具体名を掲載。被害組織と交渉中(またはコンタクト待ち)の段階では組織名公開に留め、暗号化した窃取データは公開しない、としています。そして、窃取データの公開までの残り時間をサイトに表示し、身代金の支払いを促すという流れです。LockBit2.0の特徴の1つが、プリンターを使用して脅迫文を自動印刷することで、ランサムウェアでは珍しいタイプとのことです。なお、YouTubeでは、LockBit2.0によってプリンターが脅迫文を印刷する実際の様子の動画が公開されています。興味のある方は見てみて下さい(「LockBit2.0、印刷」で検索)。なぜ、町立半田病院が狙われたのか?LockBitの被害企業として有名なのは、米最大級の石油パイプライン企業「コロニアル・パイプライン」で、同社は440万ドル(約4億8,000万円)の身代金を支払っています。また、日本企業でも光学機器大手HOYAのアメリカの子会社が攻撃を受け、顧客の視力に関するデータを含む書類などが公開されたことが明らかになっています。また昨年11月には、ゲームソフト大手のカプコンが攻撃を受け、社員など1万5,000人余りの個人情報が流出しています。では、今回なぜ町立半田病院が狙われたのでしょうか。ハッカー側は、企業の大小や業態で攻撃対象を選別しているわけではなさそうです。11月20日のNHKニュースは、「セキュリティーの専門家によれば、半田病院を狙ったわけではなく、攻撃対象を無作為に探していたハッカー集団側が、弱点のあるシステムを見つけ、侵入できた先が、結果的に半田病院だったとみられている」と報じています。VPN経由での攻撃の可能性セキュリティー対策をしていた同院のシステムが、ウイルスに感染した原因もわかっていません。11月28日の朝日新聞によれば、「院内のネットに外部からアクセスできる『VPN(仮想プラベートネットワーク)』の通信機器が複数、接続されていた。電子カルテシステムを遠隔操作で業者がメンテナンスしたり、県内の医療機関と患者の情報を交換したりするため」とのことで、VPN経由での攻撃の可能性が示唆されています。同病院のVPNの機器は、過去に認証情報の流出が問題になった米国製のものだった、との報道もあります。NHKの報道によれば、「近年、ランサムウェアによる被害は、国内外で民間企業だけでなく、医療機関でも増えている」そうです。海外の病院では、カルテ情報の大量漏洩やシステム停止による診療中止によって、患者が死亡する事例も出ているとのことです。日本の病院、特に中小病院は、情報システムの担当者を置いていないことが多く、セキュリティー対策も専門業者任せのところがほとんどだと言われています。ハッカーたちは、「田舎の小さい病院だから攻撃は止めておこう」とは考えません。セキュリティーに穴があれば、すぐさまそこを突いてきます。感染症を引き起こすウイルスだけではなく、コンピュータウイルスに対しても、医療機関は万全の感染防止体制を求められる時代になった、と言えそうです。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3【「実践的」臨床研究入門】第14回

コクラン・ライブラリー~該当フル・レビュー論文を読み込んでみる2今回は前回に引き続き、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)のブラッシュアップに参考となりそうな、コクラン・ライブラリーの検索で挙がった2編目のフル・レビュー論文(下記)を読み込んでみましょう。Protein restriction for diabetic renal disease(糖尿病性腎疾患に対する蛋白摂取制限)1)このシステマティック・レビュー(systematic review:SR)に組み入れられたランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は9編でした。末期腎不全(透析導入)というハードエンドポイント(連載第3回参照)についての解析に組み込まれたRCTは、前回読み込んだ非糖尿病の慢性腎臓病(Choronic kidney disease: CKD)患者を対象としたコクランSR2)では6編(解析対象患者数1,814名)でしたが、今回取り上げたフル・レビュー論文1)では1編(解析対象患者数72名)でした。したがって、複数の研究結果を統合するメタ解析は行われていませんが、下記のように1つのRCTで示された相対リスク(Rlative risk:RR)の点推定値と95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)は記述されています。0.6g/kg/標準体重/日の低たんぱく食群は対照群(通常食)と比較して末期腎不全(透析導入)または死亡に到るRRは0.23(95%CI:0.07~0.72)であった(筆者による意訳)。前回読み込んだ非糖尿病CKD患者における低たんぱく食の臨床効果を検証したフル・レビュー論文2)では、末期腎不全(透析導入)というハードエンドポイントについては6編のRCT(解析対象患者数1,814名)をメタ解析し、低たんぱく食群(0.5~0.6g/kg/標準体重/日)の対照群(通常食)に対する末期腎不全(透析導入)に到るRRは1.05(95%CI:0.73~1.53)であった(筆者による意訳)。と述べています2)。ここで着目したいのは、上述の2つの解析結果の95%CIの範囲の違いです。95%CIの範囲が狭いということは、その点推定値の精度の高さを示しており、解析対象患者数の増加によるメタ解析の「ご利益」のひとつです。さて、糖尿病性腎疾患に対する低たんぱく食の腎機能低下速度というサロゲートエンドポイント(連載第3回参照)についてはどうでしょうか。1型糖尿病患者のみを対象とした7編のRCT(解析対象患者数222名)を組み入れたメタ解析の結果1)が下記のように報告されています。対照群(通常食)と比較した低たんぱく食群での推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化は0.1 ml/分/月(95%CI:0.1~0.3)であり、統計学的有意ではなかった(筆者による意訳)。eGFR 低下速度0.1ml/分/月の改善は統計学的にだけでなく臨床的にも有意でない僅かな変化だと考えます。前回取り上げた非糖尿病CKD患者を対象としたフル・レビュー論文2)での結果も併せて、腎機能低下速度に対する低たんぱく食の効果は不確かであると言えるでしょう。下記はこれまでにブラシュアップしてきた、われわれのCQとRQ(PECO)です。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:腎予後まだ、O(アウトカム)が「腎予後」と漠然としています。これまで見てきたコクランSRや個別のRCTでは、末期腎不全(透析導入)やeGFR低下速度の変化、というように明確に定義されていました。われわれのRQのOもこれらの先行研究に準じて、下記のように改訂することとします。P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者↓E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:1)末期腎不全(透析導入)、 2)eGFR低下速度の変化 Oは1)プライマリと2)セカンダリに分けて設定されることが多くあります。一般的にプライマリなOはその研究で最もみたいOが置かれ、臨床的に重要なハードエンドポイントであればより望ましいかもしれません。セカンダリなOはプライマリの次に関心のあるOで、サロゲートエンドポイントが設定されることが多いかと思います。1)Robertson L et al. Protein restriction for diabetic renal disease. The Cochrane database of systematic reviews. 2007 Oct 17:CD0021812)Hahn D et al. Low protein diets for non-diabetic adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev 2020 Oct 29:CD001892.

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透析期の腎性貧血、ダプロデュスタットはESA薬に非劣性/NEJM

 透析治療を受けている貧血を有する慢性腎臓病(CKD)患者において、ダプロデュスタットは赤血球造血刺激因子薬(ESA)と比較し、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、非劣性であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAjay K. Singh氏らが実施した、無作為化非盲検第III相試験「ASCEND-D試験」で示された。CKD患者において貧血治療として用いられる遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン製剤およびその誘導体は、脳卒中、心筋梗塞などの有害事象のリスクを高める可能性があるが、低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬)はヘモグロビン値の増加においてESAと同等の効果があることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。ヘモグロビン変化と初回MACE発生を評価 研究グループは、90日以上透析を受けているCKD患者で、ESAを6週間以上投与され、ヘモグロビン値が8.0~11.5g/dLの患者を、ダプロデュスタット群またはESA群(血液透析患者はエポエチン アルファ、腹膜透析患者はダルベポエチン アルファ)に、1対1の割合に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ベースラインから主要評価期間(28週~52週)までの、ヘモグロビン値の平均変化量(非劣性マージン:-0.75g/dL)、および主要心血管イベント(MACE:全死因死亡、非致死的心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初回発生(非劣性マージン:1.25)であった。主要評価項目についてESAに対する非劣性を確認 2016年11月23日~2018年8月10日に、35ヵ国431施設で計2,964例が無作為化された(ダプロデュスタット群1,487例、ESA群1,477例)。ベースラインのヘモグロビン値(平均±SD)は、全体で10.4±1.0g/dLであった。 ベースラインから28週~52週までのヘモグロビン値の平均変化量(平均±SE)は、ダプロデュスタット群0.28±0.02g/dL、ESA群0.10±0.02g/dLであり、群間差0.18g/dL(95%信頼区間[CI]:0.12~0.24)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。 追跡期間中央値2.5年において、初回MACEはダプロデュスタット群で374/1,487例(25.2%)、ESA群で394/1,477例(26.7%)に発生し、ハザード比は0.93(95%CI:0.81~1.07)で、事前に規定したダプロデュスタットの非劣性マージンを満たした。 他の有害事象の発現頻度は、両群で類似していた。

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透析腎性貧血、ダプロデュスタットはESA薬に非劣性/NEJM

 透析治療を受けていない貧血を有する慢性腎臓病(CKD)患者において、ダプロデュスタットは、ダルベポエチン アルファと比較して、ベースラインからのヘモグロビン値の変化および心血管アウトカムに関して、非劣性であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAjay K. Singh氏らによる検討で示された。ダプロデュスタットは、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬(HIF-PH阻害薬)。これまで非透析CKD患者において、既存の赤血球造血刺激因子(ESA)薬ダルベポエチン アルファと比較した有効性および安全性は検討されていなかった。NEJM誌オンライン版2021年11月5日号掲載の報告。ヘモグロビン変化と初回MACE発生を評価 研究グループは、透析治療を受けていない貧血を有するCKD患者の治療について、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファを比較する、第III相非盲検無作為化試験(心血管アウトカムの判定は盲検化)を行った。スクリーニング適格とした対象は、CKDのステージ3~5、透析治療を受けていないまたは90日以内の開始予定がなく、ヘモグロビンとESAの基準を達成しており、血清フェリチン値100ng/mL超、血清トランスフェリチン飽和度20%超の成人とした。 主要アウトカムは、ベースラインから主要評価期間(28週~52週)までの、ヘモグロビン値の平均変化値と主要心血管イベント(MACE、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合)の初回発生であった。ダルベポエチン アルファに対する非劣性、安全性同等を確認 2016年12月5日~2020年12月7日に39ヵ国506施設で、計3,872例が無作為化を受けた(ダプロデュスタット群1,937例、ダルベポエチン アルファ群1,935例)。ベースラインの平均(±SD)ヘモグロビン値は、両群で類似しており、両群間で9.9±0.9g/dLであった。 ベースラインから28週~52週までの平均(±SD)ヘモグロビン変化値は、ダプロデュスタット群0.74±0.02g/dL、ダルベポエチン アルファ群0.66±0.02g/dLであり(群間差:0.08g/dL、95%信頼区間[CI]:0.03~0.13)、事前規定の非劣性マージン(-0.75g/dL)を満たした。 追跡期間中央値1.9年の間における初回MACEの発生は、ダプロデュスタット群378/1,937例(19.5%)、ダルベポエチン アルファ群371/1,935例(19.2%)で(ハザード比:1.03、95%CI:0.89~1.19)、事前規定の非劣性マージン(1.25)を満たした。 有害事象の発現頻度は、両群で同程度であった。

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「マーロックス」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第78回

第78回 「マーロックス」の名称の由来は?販売名マーロックス懸濁用配合顆粒一般名(和名[命名法])乾燥水酸化アルミニウムゲル水酸化マグネシウム(JAN)効能又は効果下記疾患における制酸作用と症状の改善胃・十二指腸潰瘍、胃炎、上部消化管機能異常用法及び用量通常成人には1日1.6g~4.8gを数回に分割し、本品1gに対し用時約10mLの水に懸濁して経口投与するか、または、そのまま経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由【禁忌(次の患者には投与しないこと)】透析療法を受けている患者[長期投与によりアルミニウム脳症、アルミニウム骨症、貧血等 があらわれることがある。]※本内容は2021年11月17日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年2月改訂(改訂第17版)医薬品インタビューフォーム「マーロックス®懸濁用配合顆粒」2)サノフィe-MR:製品情報

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