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血液透析患者は「肉・魚・野菜」をバランスよく

 血液透析患者の実際の食事パターンと臨床転帰との関連性については、ほとんど知られていない。九州大学の鶴屋 和彦氏らは、わが国の血液透析患者における食事パターンを特定し、臨床転帰との関連を調べた。その結果、肉・魚・野菜のバランスが悪い食事(肉・魚に比べて野菜の摂取量がかなり多い)は重大な臨床転帰と関連していた。この結果から著者らは「血液透析患者は食物摂取の制限だけではなく、この3群についてバランスのよい食事をするように努力すべきであることを示している」と指摘した。PLoS One誌2015年1月21日号に掲載。 著者らは、久山町研究(2007年)における一般集団の参加者3,080人のデータ、およびJapan Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(JDOPPS、2005~2007年)における血液透析患者1,355人のデータを使用し検討した。食物摂取量は、簡易式自記式食事歴法質問票(BDHQ)を用いて測定した。食事パターンと有害な臨床転帰(心血管疾患による入院または全死亡)の関連性について、Cox回帰を用いて検討した。  主な結果は以下のとおり。・肉、魚、野菜の3つの食品群を同定し、これらを基に「バランスのよい食事」「バランスの悪い食事」「その他」の3つの食事パターンに分類した。・潜在的交絡因子の調整後、「バランスの悪い食事」と重大な臨床イベントとの間に関連性が認められた(ハザード比1.90、95%CI:1.19~3.04)。

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在宅で診る肺炎診療の実際

■在宅高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎在宅高齢者の発熱の原因として最も多いのは肺炎である1)。在宅医療を受けている患者の多くは嚥下障害を起こしやすい、脳血管性障害、中枢性変性疾患、認知症を患っており、寝たきり状態の患者や経管栄養を行っている患者も含まれていて、肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎である。日本呼吸器学会は2005年に「成人市中肺炎診療ガイドライン(改訂版)」を、2008年には「成人院内肺炎診療ガイドライン」を作成したが、在宅高齢者の肺炎診療に適するものではなかった。その後、2011年に「医療介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン」が作成された。NHCAPの定義と発症機序は表1 2)および表2 2)に示されるように、在宅療養患者が該当しており、その特徴は市中肺炎と院内肺炎の中間に位置し、その本質は高齢者における誤嚥性肺炎を中心とした予後不良肺炎と、高度医療の結果生じた耐性菌性肺炎の混在したもの、としている。本稿では、NHCAPガイドライン(以下「ガイドライン」と略す)に沿って、実際に在宅医療の現場で行っている肺炎診療を紹介していく。表1 NHCAP の定義1.長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している(精神病床も含む)2.90日以内に病院を退院した3.介護を必要とする高齢者、身障者4.通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬などによる治療)を受けている・介護の基準PS3: 限られた自分の身の回りのことしかできない、日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす、以上を目安とする表2 NHCAP の主な発症機序1.誤嚥性肺炎2.インフルエンザ後の2次性細菌性肺炎3.透析などの血管内治療による耐性菌性肺炎(MRSA肺炎など)4.免疫抑制薬や抗がん剤による治療中に発症した日和見感染症としての肺炎を受けている■在宅での肺炎診断在宅患者の診察では、平素より経皮的酸素飽和度(SpO2)を測定しておき、発熱時には変化がないかを必ず確認する。高齢者は、咳や痰などの一般的症状に乏しいが、多くの場合で発熱を伴う。しかし、発熱を伴わない場合もあるので注意する。聴診所見では、必ずしも特異的な所見がなく、脱水を伴っている場合はcoarse crackleは聴取しにくくなる。血液検査では、発症直後でも上昇しやすい白血球数を参考にするが、数が正常でも左方移動がみられれば有意と考える。CRPは、発症直後には上昇しにくいので、発症当日のCRP 値で重症度を評価することはできない。必要に応じてX線ポータブル検査を依頼する。■NHCAPにおける原因菌ガイドラインによると原因菌として表3 2)が考えられている。表3 NHCAP における原因菌●耐性菌のリスクがない場合肺炎球菌MSSAグラム陰性腸内細菌(クレブシエラ属、大腸菌など)インフルエンザ菌口腔内レンサ球菌非定型病原体(とくにクラミドフィラ属)●耐性菌のリスクがある場合(上記の菌種に加え、下記の菌を考慮する)緑膿菌MRSAアシネトバクター属ESBL産生腸内細菌ガイドラインでは、在宅療養している高齢者や寝たきりの患者では、喀出痰の採取は困難であり、また口腔内常在菌や気道内定着菌が混入するため、起因菌同定の意義は低く、診断や治療の相対的な判断材料として用い、抗菌薬の選択にはエンピリック治療を優先すべきである、とされている。実際の現場では、喀出痰が採取できる患者は肺炎が疑われた場合、抗菌薬を開始する前にグラム染色と好気性培養検査を依頼し、初期のエンピリック治療に反応が不十分な場合、その結果を参考に抗菌薬の変更を考慮している。■ガイドラインで示された治療区分とはガイドラインでは、市中肺炎診療ガイドラインで示しているような重症度基準(A-DROP分類)では、予後との関連がはっきりしなかったため、治療区分という考え方が導入された。この治療区分(図1)2)に沿って抗菌薬が推奨されている(図2)2)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するここでのポイントは、耐性菌のリスクの有無(90日以内の抗菌薬の投与、経管栄養があり、MRSAが分離された既往歴)が、問われていることである。■在宅患者における肺炎の重症度判断PSI(pneumonia severity index)は、患者を年齢、既往歴、身体所見・検査所見の異常など20因子による総得点により、最も正確に肺炎の重症度判定ができる尺度として有名である。そこで筆者の診療所では在宅診療対象患者のみを対象に、血液検査・画像所見の結果がなくても肺炎の重症度を推定できる方法はないかを検討した。身体所見や患者背景から得られた総得点をPSI for home-care based patients(PSI-HC)と名付け、この得点を基に患者を分類したところ、血液検査や画像所見がなくても予後を反映するものであった3)。当院ではそれを基に「発熱フェイスシート」を作成し、重症度の把握と家族への説明に利用している(図3)。なお、図中の死亡率は1年間における97人の肺炎患者をレトロスペクティブにみた値であり、今後さらなる検討が必要な参考値である。画像を拡大する■在宅における肺炎治療の実際実際の現場では、治療区分で入院が必要とされるB群でも、連日の抗菌薬投与ができるようであれば在宅での治療も可能である。先述したように、喀出痰が採取できない症例が多いため、在宅高齢者の肺炎の起因菌についての大規模なデータはないが、グラム陰性菌、嫌気性菌が主な起因菌であるといわれている。グラム陰性菌に抗菌力が強く、ブドウ球菌や肺炎球菌などのグラム陽性菌や一部の嫌気性菌を広くカバーする、ニューセフェムやレスピラトリーキノロンを第1選択としている。●経口投与の場合:レボフロキサシン(商品名:クラビット[LVFX])、モキシフロキサシン(同:アベロックス[MFLX])LVFXは1日1回500mgを標準投与量・法とする。腎排泄型の抗菌薬であり、糸球体濾過量(GFR)に応じて減量する。MFLXは主に肝代謝排泄型の抗菌薬であり、腎機能にかかわらず、1日1回400mgを標準投与量とする。●静脈投与の場合:セフトリアキソン(同:ロセフィン[CTRX])血中半減期が7~8時間と最も長いので1日1回投与でも十分な効果を発揮し、胆汁排泄型であることからGFRの低下を認める高齢者にも安心して使用できる。CTRXは緑膿菌に対して抗菌力がほとんどなく、ブドウ球菌、嫌気性菌などにも強い抗菌力はないといわれており、ガイドライン上でも誤嚥性肺炎には不適と記載されているが、筆者らは誤嚥性肺炎を含む、肺炎初期治療としてほとんどの患者に使用し、十分な効果を認めている。また、過去90日以内に抗菌薬の使用がある場合にも、同様に効果を認めている。3日間投与して解熱傾向を認めないときには、耐性菌や緑膿菌を考慮した抗菌薬に変更する。嫌気性菌をカバーする目的で、クリンダマイシン内服の併用やブドウ球菌や嫌気性菌に、より効果の強いニューキノロン内服を併用することもある。■入院適用はどのような場合か在宅では、病院と比較すると正確な診断は困難である。しかし、全身状態が保たれ、介護する家族など条件に恵まれれば、在宅で治療可能な場合が多い。筆者らは、先述した在宅患者の肺炎の重症度(PSI-HC)を利用して重症度の把握、家族への説明を行ったうえで、患者や家族の意思を尊重し、入院治療にするか在宅治療にするかを決定している。在宅高齢者が入院という環境変化により、肺炎は治癒したけれども、認知機能の悪化やADL低下などを経験している場合も少なくない。過去にそのような体験がある場合には、在宅でできる最大限の治療を行ってほしいと所望されることが多い。ただ、医療的には、高度の低酸素血症、意識低下や血圧低下を伴う重症肺炎や、エンピリック治療で正しく選択された抗菌薬を使い、3日~1週間近く治療を行っても改善傾向が明らかでない場合に入院を検討している。また、介護面では重症度にかかわらず、介護量が増えて家族や介護者が対応できない場合にも入院を考慮している。■肺炎予防と再発対策誤嚥性肺炎の治療および予防として表42)が挙げられる。表4 NHCAP における誤嚥性肺炎の治療方針1)抗菌薬治療(口腔内常在菌、嫌気菌に有効な薬剤を優先する)2)PPV 接種は可能であれば実施(重症化を防ぐためにインフルエンザワクチンの接種が望ましい)3)口腔ケアを行う4)摂食・嚥下リハビリテーションを行う5)嚥下機能を改善させる薬物療法を考慮(ACE阻害薬、シロスタゾール、など)6)意識レベルを高める努力(鎮静薬、睡眠薬の減量、中止、など)7)嚥下困難を生ずる薬剤の減量、中止8)栄養状態の改善を図る(ただし、PEG〔胃ろう〕自体に肺炎予防のエビデンスはない)9)就寝時の体位は頭位(上半身)の軽度挙上が望ましいガイドラインではNHCAPの主な発症機序として誤嚥性肺炎のほか、インフルエンザと関連する2次性細菌性肺炎の重要性が提案されており、わが国でも高齢者施設におけるインフルエンザワクチン、そして肺炎球菌ワクチンの効果がはっきり示されたこともあり、両ワクチンの接種が勧められる4)。日々の生活の中では、口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーションは重要であり、歯科医師・歯科衛生士や言語聴覚士との連携で、より質の高いケアを提供することができる。●文献1)Yokobayashi K,et al. BMJ Open. 2014 Jul 9;4(7):e004998.2)日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会. 医療・介護関連肺炎診療ガイドライン. 2011.3)Ishibashi F, et al. Geriatr Gerontol Int. 2014 Mar 12 . [Epub ahead of print].4)Maruyama T,et al. BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.●関連リンク日本呼吸器学会 医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン

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キーワードで記憶する糖尿病合併症

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 どんな合併症が起こるんですか?医師 糖尿病は別名、血管の病気といわれていますから、全身のあらゆる場所に、ありとあらゆる合併症が起こる可能性があります。患者医師血管の病気ってなんですか?特に、糖尿病の人に起こりやすいのが、糖尿病の3大合併症ともいわれています。患者医師それは何ですか?手足のしびれやこむら返りなどの神経障害、失明の原因となる眼の合併症、透析の原因となる腎臓の合併症です。患者医師なるほど。神経障害、眼、腎臓の頭文字をとって「し・め・じ」と覚えておくといいですね。画 いわみせいじ患者 キノコのしめじですね。しめじは大好きです。それなら覚えられそうです。●糖尿病の3大合併症1.し しんけい(神経)障害2.め め(眼)の合併症(網膜症)3.じ じん(腎)症ポイント語呂合わせで教えることで、記憶に残りますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート2

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。体重を3kg程度減らすとされていますが、その現象がなぜ1年ほどで止まってしまうのか、ご教示ください。SGLT2阻害薬は、尿糖排泄を促進することによりエネルギー収支を負に傾け、体重を減少させます。その体重減少効果はおおむね6ヵ月で底値(平均約3kg減少)に達し、観察期間2年の報告では、その後有意な増加はなく維持されています。しかし、質問にありますように、投与後6ヵ月以降ではさらなる体重減少は認めにくいようです。観察期間2年の報告を見ても経過中の尿糖排泄量に変化はないようです。理論的には、一定の食事と運動を継続する限り、体重はどこかで安定すると考えられます。しかし、体重減少作用減弱の原因として摂食量の増加や糖の消費に伴うエネルギー消費効率の低下もある程度寄与する可能性は否定できません。SGLT2阻害薬投与マウスやSGLT2ノックアウトマウスでは、コントロール群と比較し観察期間を通して摂餌量が増加し、SGLT1、2ノックアウトマウスではさらに摂餌量が増加します。また、SGLT2阻害薬投与後のエネルギー消費を確認したヒトや動物での研究はまだ少ないですが、体重減少効果が減弱した時期に酸素消費量や呼吸商を検討した報告では、コントロール群とSGLT2阻害薬群で差はないとされています。(保険診療外において)糖尿病ではない患者に対し、体重減少を目的として使用した場合、その効果は期待できるのかどうか、ご教示ください。健常者にSGLT2阻害薬を投与した場合においても、尿糖排泄が増加します。通常使用量では25~60g/日の尿糖排泄が確認されており、100~240kcal/日のエネルギー喪失となるため、非糖尿病肥満者でも体重減少効果が認められると考えます。しかし、安易な使用は、中止後の体重のリバウンドや、尿糖排泄に伴う尿路・性器系感染症のリスクといった問題点を引き起こしかねず、非糖尿病者での使用は厳に慎むべきです。SGLT2阻害薬と併用薬による改善効果の違いはどの程度でしょうか、ご教示ください。SGLT2阻害薬は、既存の糖尿病治療薬とまったく異なる作用機序を有する薬剤であり、すべての糖尿病治療薬で併用効果があります。日本人2型糖尿病患者対象の、既存糖尿病治療薬との52週間併用試験の結果では、スルホニル尿素(SU)薬:-0.63~0.84%、グリニド薬:-0.59~0.76%、DPP-4阻害薬:-0.52~0.81%、ビグアナイド薬:-0.61~0.95%、チアゾリジン薬:-0.6~0.86%、α-グルコシダーゼ阻害薬:-0.68~0.84%と、既存薬間での違いは見られません。観察期間中の低血糖発現率は、SU薬:3.0~14.7%、グリニド薬:0~6.1%で、その他の薬剤:3%未満で、SU薬やインスリン製剤と併用する場合にはとくに低血糖に注意が必要です。体重減少効果は、SU薬とチアゾリジン薬で乏しい傾向ですが、52週時点でもSGLT2阻害薬投与前と比較し体重減少は少なく、SU薬とチアゾリジン薬のデメリットを低減すると考えます。その他既存薬との併用では-2.5~3.0kgの体重減少効果があります。腎機能が低下しつつある患者さんにも効果が期待できるでしょうか、ご教示ください。SGLT2阻害薬非投与時の2型糖尿病患者の尿糖排泄量(平均±標準偏差)は、腎機能低下に伴い、正常腎機能6.71±8.77g/日、軽度腎機能障害8.80±17.0g/日、中等度腎機能障害2.00±3.76g/日、重度腎機能障害0.553±0.247g/日と減少します(トホグリフロジン添付文書)。また、SGLT2阻害薬自体も腎機能低下に伴い、糸球体濾過量が減少します。このように、腎機能低下例では、糖およびSGLT2阻害薬の糸球体での濾過量が減少するため、SGLT2阻害薬投与時の2型糖尿病患者の24時間尿糖排泄量は、正常腎機能70~90g/日、軽度50~70g/日、中等度20~40g/日、重度腎機能障害10g/日と、腎機能低下とともに減少します。このような理由から、中等度腎機能低下例(30≦eGFR≦59mL/min/1.73 m2)のHbA1c改善度は-0.1~0.3%程度と減弱します。しかし、興味深いことに、腎機能正常例と比較し体重減少効果の減弱は認められず、その原因は現時点では不明です。また、高度腎機能低下または透析中の末期腎不全例では、効果がないことや副作用発現リスクを考慮し投与しないことになっています。副作用の発現時に、すぐに休薬すべきか、しばらく様子をみるかどうか、また、休薬時のポイントをご教示ください。●低血糖とくにインスリン製剤やスルホニル尿素(SU)薬と併用する場合に留意する必要があります。インスリン製剤やSU薬は血糖管理不良例で使用されていることが多いですが、SGLT2阻害薬の血糖低下作用は血糖管理不良例ほど大きく、インスリン製剤やSU薬と併用する場合には予期せぬ低血糖が起こる場合があり、低血糖リスク軽減のためインスリンやSU薬の減量を考慮する必要があります。ただし、インスリン製剤やSU薬使用例はインスリン分泌能低下例も多く、早めの受診を促し病態悪化阻止に努めるべきです。低血糖出現時には糖質摂取を促し、インスリンやSU薬を減量してください。●脱水投与早期(とくに1ヵ月以内)に多く、とくに、高齢者、利尿剤投与例、血糖コントロール不良例で注意が必要です。SGLT2阻害薬による尿量増加は200~600mL/日とされており、予防として500mL/日程度の飲水を促し、脱水を認めた場合は休薬と補液を考慮ください。●尿路/性器感染症とくに既往を有する例で注意が必要です。清潔を保持することで多くは予防可能ですが、症状出現時には速やかに受診するよう事前指導し、感染症治療を行うとともに、症状に応じて休薬を考慮ください。●ケトン体増加インスリン作用不足に起因する場合にはインスリン補充が必要であり、糖尿病性ケトアシドーシスの場合には、とくに速やかな対応が必要です。糖尿病性ケトアシドーシスでは3-ヒドロキシ酪酸が顕著に増加しますが、尿ケトン体定性検査は3-ヒドロキシ酪酸を検出できないため、過小評価となる危険性があるので注意してください。●休薬時の対応SGLT2阻害薬の休薬時には、病態に応じて薬剤の変更や追加が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part1はこちら

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臨床研究における腎予後のエンドポイントはeGFRで検討する必要がある(解説:木村 健二郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(218)より-

eGFRの短期間での低下はそれがたとえ小さくてもESRDと死亡に関係することを170万人のデータのメタ解析で示している。 従来の疫学研究では腎機能は血清クレアチニンで評価せざるを得なかったが、eGFRという指標を導入することにより、より軽微な腎機能の変化と予後の関係を検討することができるようになった。このことは、腎疾患の臨床上きわめて重要なことである。 現在、腎疾患の予後を検証する臨床研究におけるハードエンドポイントには、血清クレアチニンの倍化または透析導入が採用されることが多い。 この血清クレアチニンの倍化はeGFRにしたら50~60%の低下に相当する。ここまでのeGFRの低下があれば、予後が悪いということは常識的に納得できることである。しかし、本論文ではeGFRのわずか30%の低下でもESRD発症のHRは5.4と有意に高くなることが示された。 このことは、今後、腎疾患の臨床研究では血清クレアチニンの倍化に代わるeGFRによる、より適切なエンドポイントを検討する必要性を示している。

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CKD進行、eGFRの小幅な低下にも注意を/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)の進行エンドポイントとして、推定糸球体濾過量(eGFR)の小幅な低下(たとえば2年間で30%低下)が有用であることが、米国ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJosef Coresh氏らにより明らかにされた。CKDの進行エンドポイントとしては、末期腎不全(ESRD)または血清クレアチニン値の倍増(eGFRの57%低下に相当)が確立しているが、いずれも末期のイベントである。今回の検討で、eGFRの小幅な低下はクレアチニン値の倍増よりも発生頻度が高く、その後のESRDや死亡リスクと強固に関連していたことが明らかにされた。JAMA誌オンライン版2014年6月3日号掲載の報告より。170万例のデータからeGFR低下とESRD、死亡との関連を分析 研究グループは、CKD Prognosis Consortiumの35コホート・170万例の個人データを用いたメタ解析にて、eGFR低下とその後のESRDへの進行との関連を特徴づけることで、eGFR低下がCKD進行の代替エンドポイントとなりうるかを調べた。また、CKD患者の大半がESRDに至る前に死亡していることから、死亡リスクとの関連についても調べた。 データには、ESRD 1万2,344例、死亡22万3,944例のアウトカムデータが、血清クレアチニン値のデータ(1~3年の間に複数回測定)とともに記録されていた。 2012年7月~2013年9月の個々の参加者データを抽出または標準化された抽出分析法によりランダムエフェクトメタ解析を行った。ベースライン時のeGFRは1975~2012年分を集めて検討した。 主要評価項目は、ESRD(透析開始か移植の実施)、または2年間のeGFRの変化率と関連した全死因死亡リスクで、交絡因子や当初のeGFRで補正を行い評価した。ESRDと死亡のハザード比、eGFR 57%低下で32.1、同30%低下で5.4 ESRDと死亡の補正後ハザード比(HR)は、eGFR低下が大きいほど増大した。ベースライン時eGFRが60mL/分/1.73m2未満だった被験者で、ESRD発生の補正後HRは、eGFR低下が57%の場合は32.1(95%信頼区間[CI]:22.3~46.3)、同30%低下の場合は5.4(同:4.5~6.4)であった。一方で、30%以上の低下例は、全コホートの6.9%(95%CI:6.4~7.4%)でみられ、57%の低下例0.79%(同:0.52~1.06%)と比べて頻度が高かった。 これらの関連は、ベースライン期間(1~3年)、ベースライン時eGFR、年齢、糖尿病の状態、アルブミン尿でみた場合も強く一貫していた。 ベースライン時eGFR 35mL/分/1.73m2の患者について、ESRDの平均補正後10年リスクは、eGFR 57%低下では99%(95%CI:95~100%)、40%低下では83%(同:71~93%)、30%低下では64%(同:52~77%)、低下が0%では18%(同:15~22%)だった。 死亡リスクはそれぞれ、77%(同:71~82%)、60%(同:56~63%)、50%(同:47~52%)、32%(同:31~33%)で、ESRDと関連パターンは類似していたがやや弱かった。

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乳幼児専用の腎代替療法機器が登場/Lancet

 多臓器不全を伴う新生児や乳幼児への持続的腎代替療法(CRRT)機器として開発された「CARPEDIEM」は、多様な治療やサポートを提供し有用であることがイタリア・聖ボルトロ病院のClaudio Ronco氏らにより報告された。腹膜透析導入を減らし、CRRT適用範囲を拡大し、CRRTによる外傷を減らし、その他の腎代替療法がなくても支持療法として用いることができるという。新生児の急性腎不全(AKI)例では腹膜透析が選択肢となるが、適用できなかったり効果的ではない場合がある。従来CRRT機器は、15kg未満の新生児には未承認使用されており、乳幼児向けにデザインされたものはなかった。Lancet誌2014年5月24日号掲載の報告より。承認後初となるヒトへの適用例を報告 CARPEDIEM(Cardio-Renal Pediatric Dialysis Emergency Machine)は、新生児および乳幼児向けに開発されたCRRT機器で、研究グループにより5年間の前向き開発プロジェクトによって考案、デザイン、作製されものだった。in-vitro試験評価と開発目的基準を満たし、ヒトでの使用ライセンスを取得。本報告は承認後初となる、重篤な新生児例への使用を評価したものであった。2.9kgの新生児に400時間適用、軽度腎機能障害のみで生存退院 CARPEDIEMの主な特徴は、低血流量(30mL未満)、小型ポンプ、1gの精度で調整可能な正確な濾過機能などで、in-vitro試験では、ハード面およびソフト面の両者で設計仕様が満たされたことが確認されていた。 研究グループは同機器を、出血性ショック、多臓器不全、重度体液過剰を伴う2.9kgの新生児に400時間超適用した。結果、65%体液過剰、クレアチニンおよびビリルビン値上昇、重度アシドーシスはすべて安全かつ効果的に管理され、重篤な疾患であったが、臓器機能は回復。新生児は命を取り留め、軽度腎機能障害のみで病院から腎代替療法を要しない状態で退院となったと報告されている。

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透析原因の4割は糖尿病

透析を始める患者さんの約4割は「糖尿病」が原因2012年に人工透析をはじめた患者さんのうち、44.1%は糖尿病性腎症を原因とした導入でした。%70年別透析導入患者の主要原疾患の割合推移2012年糖尿病性腎症:44.1%慢性糸球体腎炎:19.4%腎硬化症:12.3%多発性嚢胞腎:2.6%慢性腎盂腎炎:0.8%急速進行性糸球体腎炎:1.3%SLE腎炎:0.7%不明:11.2%60504030糖尿病性腎症慢性糸球体腎炎腎硬化症多発性嚢胞腎慢性腎盂腎炎急速進行性糸球体腎炎SLE腎炎不明201001983 8485868788989091929394959697989900010203040506070809101112年患者調査による集計『一般社団法人 日本透析医学会 統計調査委員会「図説 わが国の慢性透析療法の現況(2012年12月31日現在)」』Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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偽膜性大腸炎を診断できずに死亡に至ったケース

消化器最終判決判例時報 1654号102-111頁概要高血圧性小脳出血を発症した65歳男性、糖尿病、腎障害、および軽度の肝障害がみられていた。発症4日目に局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術を施行し、抗菌薬としてセフォタキシムナトリウム(商品名:クラフォラン)、ピペラシリンナトリウム(同:ペントシリン)を開始した。術後2日目から下痢が始まり、術後4日目から次第に頻度が増加し、38℃台の発熱と白血球増多、CRP上昇など、炎症所見が顕著となった。術後6日目にはDICが疑われる状態で、腎不全、呼吸・循環不全となり、術後12日目に死亡した。解剖の結果、空腸から直腸にかけて著しい偽膜性大腸炎の所見が得られた。詳細な経過患者情報65歳男性経過1991年3月2日11:00頃法事の最中に眩暈と嘔吐を来して歩行不能となり、近医を経てA総合病院脳神経外科に搬送され、頭部CTスキャンで右小脳出血(血腫の大きさは3.8×2.5×2.0cm)と診断された。意識清明であったが言語障害があり、脳圧降下薬の投与、高血圧の管理を中心とした保存的治療が行われた。3月6日若干の意識障害、右上肢の運動失調がみられたため、局所麻酔下にCT定位脳内血腫吸引術が行われた。術後感染防止のため、第3世代セフェム(クラフォラン®)、広域ペニシリン(ペントシリン®)の静注投与が行われた。3月8日焦げ茶色の下痢と発熱。腰椎穿刺では髄膜炎が否定された。3月9日白血球15,000、CRP 0.5。3月10日下痢が5回あり、ロペラミド(同:ロペミン)投与(以後も継続された)。3月11日下痢が3回、白血球42,300、CRP 3.9。敗血症を疑い、γグロブリン追加。胸部X線写真異常なし、血液培養陰性。3月12日下痢が3回、チェーンストークス様呼吸出現。3月13日下痢が2回、血圧低下、腎機能低下、人工呼吸器装着、播種性血管内凝固症候群を疑い、メシル酸ガベキサート(同:エフオーワイ)開始。抗菌薬をアンピシリン(同:ビクシリン)、第3世代セフェム・セフタジジム(同:モダシン)、ミノサイクリン(同:ミノマイシン)に変更。以後徐々に尿量が減少して腎不全が進行し、感染や血圧低下などの全身状態悪化から人工透析もできないままであった。3月18日死亡。死体解剖の結果、空腸から直腸にかけて、著しい偽膜性大腸炎の所見が得られ、また、エンドトキシン血症の関与を示唆する肝臓小葉中心性新鮮壊死、著しい急性肝炎、下部尿管ネフローシス(ショック腎)が認められたため、偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、細菌が血中に侵入し、その産生するエンドトキシンによる敗血症が惹起されエンドトキシンショックとなって急性循環不全が引き起こされた結果の死亡と判断された。当事者の主張患者側(原告)の主張小脳出血は保存的に様子をみても血腫の自然吸収が期待できる症状であり、手術の適応がなかったのに手術を実施した。1.死因クラフォラン®およびペントシリン®を中心として、このほかにビクシリン®、モダシン®、ミノマイシン®などの抗菌薬を投与されたことによって偽膜性大腸炎を発症し、その症状が増悪して死亡したものである2.偽膜性大腸炎について3月10~13日頃までには抗菌薬に起因する偽膜性大腸炎を疑い、確定診断ができなくても原因と疑われる抗菌薬を中止し、偽膜性大腸炎に効果があるバンコマイシン®を投与すべきであったのに怠った。さらに偽膜性大腸炎には禁忌とされているロペミン®(腸管蠕動抑制剤)を投与し続けた病院側(被告)の主張高血圧性小脳出血の手術適応は、一般的には血腫の最大経が3cm以上とされており、最大経が3.8cmの小脳出血で、保存的加療を行ううちに軽い意識障害および脳幹症状が発現し、脳ヘルニアへの急速な移行が懸念されたため、手術適応はあったというべきである。1.死因初診時から高血圧性腎症、糖尿病性腎症、感染によるショックなどの基礎疾患を有し、これにより腎不全が進行して死亡した。偽膜性大腸炎の起炎菌Clostridium difficileの産生する毒素はエンテロトキシンおよびサイトトキシンであるから、本件でみられたエンドトキシン血症は、偽膜性大腸炎に起因するとは考えがたい。むしろエンドトキシンを産生するグラム陰性桿菌が腸管壁を通過し、糖尿病、肝障害などの基礎疾患により免疫機能が低下していたため、敗血症を発症し、多臓器不全に至ったものと考えられる2.偽膜性大腸炎について偽膜性大腸炎による症状は、腹痛、頻回の下痢(1日30回にも及ぶ下痢がみられることがある)、発熱、腸管麻痺による腹部膨満などであり、検査所見では白血球増加、電解質異常(とくに低カリウム血症)、低蛋白血症などを来す。本件の下痢は腐敗性下痢である可能性や、解熱薬の坐薬の影響が考えられた。本件の下痢は回数的にみて頻回とまではいえない。また、腹痛や腹部膨満はなく、血清カリウム値はむしろ上昇しており、白血球やCRPから炎症所見が著明であったので肺炎や敗血症は疑われたものの、偽膜性大腸炎を疑うことは困難であった裁判所の判断1. 死因本件ではClostridium difficileの存否を確認するための検査は行われていないが、抗菌薬以外に偽膜性大腸炎を発生させ得る具体的原因は窺われず、また、偽膜性大腸炎はClostridium difficileを起炎菌とする場合がきわめて多いため、本件で発症した偽膜性大腸炎は抗菌薬が原因と推認するのが合理的である。そして、Clostridium difficileにより発生した偽膜性大腸炎により腸管の防御機能が障害され、腸管から血中にグラム陰性菌が侵入し、その産生するエンドトキシンにより敗血症が惹起され、ショック状態となって急性循環不全により死亡したものと推認することができる。2. 偽膜性大腸炎について一般的に医師にはさまざまな疾病の発生の可能性を考慮して治療に従事すべき医療専門家としての高度の注意義務があるのであって、本件の下痢の状況や白血球数などの炎症反応所見の推移は、かなり強く偽膜性大腸炎の発生を疑わせるものであると評価するのが相当である。病院側の主張する事実は、いずれも偽膜性大腸炎が発生していたことを疑いにくくする事情ではあるが、ロペミン®により下痢の回数がおさえられていた可能性を考慮して下痢の症状を観察するべきであった。そのため、3月11日から翌12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であり、その時点でバンコマイシン®の投与を開始し、かつロペミン®の投与を中止すれば、偽膜性大腸炎を軽快させることが可能であり、エンドトキシンショック状態に陥ることを未然に回避できた蓋然性が高い。2. 手術適応について高血圧性小脳出血を手術するべきであったかどうかの判断は示されなかった。原告側合計3,700万円の請求に対し、2,354万円の判決考察このケースは、脳外科手術後にみられた「下痢」に対し、かなり難しい判断を要求していると思います。判決文を読んでみると、頻回の下痢症状がみられたならばただちに(少なくとも下痢とひどい炎症所見がみられた翌日には)偽膜性大腸炎を疑い、確定診断のために大腸内視鏡検査などができないのならば、それまでの抗菌薬や止痢薬は中止してバンコマイシン®を投与せよ、という極端な結論となっています。もちろん、一般論として偽膜性大腸炎をまったく鑑別診断に挙げることができなかった点は問題なしとはいえませんが、日常臨床で抗菌薬を使用した場合、「下痢」というのはしばしばみられる合併症の一つであり、その場合程度がひどいと(たとえ偽膜性大腸炎を起こしていなくても)頻回の水様便になることはしばしば経験されます。そして、術後2日目にはじめて下痢が出現し、術後4日目から下痢が頻回になったという状況からみて、最初のうちは単純な抗菌薬の副作用による下痢と考え、止痢薬を投与するのはごく一般的かつ常識的な措置であったと思います。その上、術後に発熱をみた場合には腸以外の感染症、とくに脳外科の手術後であったので髄膜炎や肺炎、尿路感染症などをまず疑うのが普通でしょう。そのため、担当医師は術後2日目には腰椎穿刺による髄液検査を行っていますし(結果は髄膜炎なし)、胸部X線写真や血液検査も頻回に調べていますので、一般的な注意義務は果たしているのではないかと思います。ところが判決では、「頻回の下痢が始まった翌日の3月11日から3月12日午前中までには偽膜性大腸炎が発生していることを疑うことが可能であった」と断定しています。はたして、脳外科の手術後4日目に、頻回に下痢がみられたから即座に偽膜性大腸炎を疑い、発熱が続いていてもそれまでの抗菌薬をすべて中止して、バンコマイシン®だけを投与することができるのでしょうか。この時期はやはり脳外科術後の髄膜炎がもっとも心配されるので、そう簡単には抗菌薬を止めるわけにはいかないと考えるのがむしろ脳外科的常識ではないかと思います。実際のところ、脳外科手術後に偽膜性大腸炎がみられるのは比較的まれであり、それよりも髄膜炎とか肺炎の発症率の方が、はるかに高いのではないかと思います。にもかかわらず、まれな病態である偽膜性大腸炎を最初から重視するのは、少々危険な考え方ではないかという気までします。あくまでも推測ですが、脳外科の専門医であれば偽膜性大腸炎よりも髄膜炎、肺炎の方をまず心配するでしょうし、一方で消化器内科の専門医であればどちらかというと偽膜性大腸炎の可能性をすぐに考えるのではないかと思います。以上のように、本件は偽膜性大腸炎のことをまったく念頭に置かなかったために医療過誤とされてしまいましたが、今後はこの判例の考え方が裁判上のスタンダードとなる可能性が高いため、頻回の下痢と発熱、著しい炎症所見をみたならば、必ず偽膜性大腸炎のことを念頭に置いて検査を進め、便培養(嫌気性培養も含む)を行うことそして、事情が許すならば大腸内視鏡検査を行って確定診断をつけておくこと通常の抗菌薬を中止するのがためらわれたり、バンコマイシン®を投与したくないのであれば、その理由をきちんとカルテに記載することというような予防策を講じないと、医師側のミスと判断されてしまうことになると思います。なお本件でもう一つ気になることは、本件では手術直後から予防的な抗菌薬として、2種類もの抗菌薬が使用されている点です。クラフォラン®、ペントシリン®はともに髄液移行の良い抗菌薬ですので、その選択には問題ありません。しかし、手術時には明らかな感染症は確認されていないようなので、なぜ予防的な抗菌薬を1剤ではなくあえて2剤にしたのでしょうか。これについてはいろいろとご意見があろうかと思いますが、ことに本件のようなケースを知ると、抗菌薬の使用は必要最小限にするべきではないかと思います。消化器

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ビタミンDと透析患者の抑うつ症状との関連

 うつ病は、末期腎不全(ESRD)患者において最も広く知られている心理的問題である。また、うつ病とビタミンD不足との関連が示唆されていた。中国・浙江大学のJisheng Zhang氏らは、透析患者における高感度C反応性蛋白(HsCRP)値、ビタミンD値とうつ病との関連を検討した。BMC Psychiatry誌オンライン版2014年4月28日号の掲載報告。 本検討では、透析患者におけるHsCRP値、ビタミンD値とうつ病との関連を前向きに検討すること、またうつ病透析患者へのビタミンD3製剤カルシトリオール投与の効果を明らかにすることを目的とした。中国南部の2病院から透析患者を登録し、中国版ベックうつ病調査表(BDI)を用いてうつ病の評価を行った。被験者は全員、夏季におけるうつレベルの評価に関するBDI質問票に回答。研究グループは、カットオフ値を16点として、非うつ病群(グループ1)とうつ病群(グループ2)に分類したうえで、両群被験者に、0.5μg/日のカルシトリオールを1年間投与した。その後、再度BDIスコアを測定した。社会人口統計学的および臨床的データや血清ビタミン値のデータも集めて分析した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、18~60歳の透析患者484例(血液透析患者382例、腹膜透析患者102例)で、うち男性は247例(51.0%)であった。・抑うつ症状が認められたのは、213例(44.0%)であった。・ベースライン時のビタミンD値(D2とD3の合計)は、17.6±7.7nmol/Lであった。・抑うつ症状がみられた患者は対照群と比較して、血清HsCRP値が有意に高く、血清ビタミンD値は有意に低かった。・追跡調査1年後、0.5ug/日のカルシトリオールの投与は、平均血清HsCRP値の低下、血清ビタミンD値の改善にみられるように微小な炎症性の状態をわずかに改善したことは示されたが、抑うつ症状を有意に改善しなかった。・以上より著者は、「カルシトリオールは、透析患者の抑うつ症状を有意に改善しなかった。一方で、血清ビタミンD値が低い透析患者では抑うつ症状がより強かったことが明らかになった」と結論している。・そのうえで、「さらなる前向き無作為化試験を行い、ビタミンD値と抑うつ症状の程度との因果関係、あるいはビタミンD値と透析患者の特定のサブタイプとの関連を明らかにすることが必要である」とまとめている。関連医療ニュース うつ病治療にビタミンD投与は有用か うつ病予防、抗酸化物質が豊富な食事を取るべき アルツハイマー病にビタミンD不足が関連

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駆出率が保持された心不全での抗アルドステロン薬の効果は?/NEJM

 抗アルドステロン薬は、左室駆出率が保持(45%以上)された心不全患者については、臨床転帰を有意に改善しないことが判明した。米国・ミシガン大学のBertram Pitt氏ら「TOPCAT」研究グループが行った3,445例を対象とした試験の結果、示された。同薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の予後を改善することが示されている。しかし駆出率が保持された患者については厳格な検討は行われていなかった。NEJM誌2014年4月10日号掲載の報告より。6ヵ国3,445例をスピロノラクトン投与かプラセボ投与に無作為化 TOPCAT(Treatment of Preserved Cardiac Function Heart Failure with an Aldosterone Antagonist)試験は、左室駆出率が保持された症候性心不全患者において、スピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)治療が臨床転帰を改善するかどうかを確定することを目的とした国際多施設共同の無作為化二重盲検プラセボ対照試験だった。試験は米国・国立心肺血液研究所(NHLBI)が資金提供をして行われた。 2006年8月10日~2012年1月31日に、6ヵ国(米国・カナダ、ブラジル、アルゼンチン、ロシア、グルジア)233施設で3,445例(左室駆出率45%以上の症候性心不全患者)が無作為化を受け、スピロノラクトン(15~45mg/日)もしくはプラセボの投与を受けた。 主要アウトカムは、心血管系による死亡・心停止蘇生・心不全入院の複合であった。総死亡、全原因入院のいずれも有意に減少しない スピロノラクトン群に1,722例、プラセボ群には1,723例が無作為に割り付けられた。 結果、平均追跡期間3.3年において、主要アウトカムの発生は、スピロノラクトン群320例(18.6%)、プラセボ群351例(20.4%)で、両群に有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.77~1.04、p=0.14)。 主要アウトカムのうち心不全入院についてのみ、スピロノラクトン群の発生が有意に低かった(12.0% vs. 14.2%、HR:0.83、95%CI:0.69~0.99、p=0.04)。総死亡および全原因入院のいずれも、スピロノラクトンによる有意な減少はみられなかった。 有害事象について、スピロノラクトン群では、高カリウム血症の頻度がプラセボ群よりも約2倍高かった(18.7% vs. 9.1%)。一方で、低カリウム血症の頻度は低かった(16.2% vs. 22.9%)。またスピロノラクトン群では、血清クレアチニン値が、標準範囲上限値の倍以上上昇した患者の割合が多くみられた(10.2% vs. 7.0%)。しかし、血清クレアチニン値3.0mg/dL超あるいは透析を要した患者の割合は、両群間で有意な差はなかった。

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28)超簡単!糖尿病三大合併症の覚え方【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者どんな合併症が起こるんですか?医師糖尿病は別名、血管の病気といわれていますから、全身のあらゆる場所に、ありとあらゆる合併症が起こる可能性があります。患者血管の病気ってなんですか?医師特に、糖尿病の人に起こりやすいのが、糖尿病の3大合併症ともいわれています。患者それは何ですか?医師手足のしびれやこむら返りなどの神経障害、失明の原因となる眼の合併症、透析の原因となる腎臓の合併症です。患者なるほど。医師神経障害、眼、腎臓の頭文字をとって「し・め・じ」と覚えておくといいですね。患者キノコのしめじですね。しめじは大好きです。それなら覚えられそうです。●糖尿病の3大合併症1.し しんけい(神経)障害2.め め(眼)の合併症(網膜症)3.じ じん(腎)症●ポイント語呂合わせで、教えることで記憶に残ります

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検査所見の確認が遅れて心筋炎を見落とし手遅れとなったケース

循環器最終判決判例時報 1698号98-107頁概要潰瘍性大腸炎に対しステロイドを投与されていた19歳男性。4日前から出現した頭痛、吐き気、血の混じった痰を主訴に近医受診、急性咽頭気管支炎と診断して抗菌薬、鎮咳薬などを処方した。この時胸部X線写真や血液検査を行ったが、結果は後日説明することにして帰宅を指示した。ところが翌日になっても容態は変わらず外来再診、担当医が前日の胸部X線写真を確認したところ肺水腫、心不全の状態であった。急性心筋炎と診断してただちに入院治療を開始したが、やがて急性腎不全を合併。翌日には大学病院へ転送し、人工透析を行うが、意識不明の状態が続き、初診から3日後に死亡した。詳細な経過患者情報19歳予備校生経過1992年4月10日潰瘍性大腸炎と診断されて近所の被告病院(77床、常勤内科医3名)に入院、サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン)が処方された。1993年1月上旬感冒症状に続き、発熱、皮膚の発赤、肝機能障害、リンパ球増多がみられたため、被告病院から大学病院に紹介。2月9日大学病院に入院、サラゾピリン®による中毒疹と診断されるとともに、ステロイドの内服治療が開始された。退院後も大学病院に通院し、ステロイドは7.5mg/日にまで減量されていた。7月10日頭痛を訴えて予備校を休む。次第に食欲が落ち、頭痛、吐き気が増強、血の混じった痰がでるようになった。7月14日10:00近所の被告病院を初診(以前担当した消化器内科医が診察)。咽頭発赤を認めたが、聴診では心音・肺音に異常はないと判断(カルテにはchest clearと記載)し、急性咽頭気管支炎の診断で、抗菌薬セフテラムピボキシル(同:トミロン)、制吐薬ドンペリドン(同:ナウゼリン)、鎮咳薬エプラジノン(同:レスプレン)、胃薬ジサイクロミン(同:コランチル)を処方。さらに胸部X線写真、血液検査、尿検査、喀痰培養(一般細菌・結核菌)を指示し、この日は検査結果を待つことなくそのまま帰宅させた(診察時間は約5分)。帰宅後嘔気・嘔吐は治まらず一段と症状は悪化。7月15日10:30被告病院に入院。11:00診察時顔面蒼白、軽度のチアノーゼあり。血圧70/50mmHg、湿性ラ音、奔馬調律(gallop rhythm)を聴取。ただちに前日に行った検査を取り寄せたところ、胸部X線写真:心臓の拡大(心胸郭比53%)、肺胞性浮腫、バタフライシャドウ、カーリーA・Bラインがみられた血液検査:CPK 162(20-100)、LDH 1,008(100-500)、白血球数15,300、尿アセトン体(4+)心電図検査:心筋梗塞様所見であり急性心不全、急性心筋炎(疑い)、上気道感染による肺炎と診断してただちに酸素投与、塩酸ドパミン(同:イノバン)、利尿薬フロセミド(同:ラシックス)、抗菌薬フロモキセフナトリウム(同:フルマリン)とトブラマイシン(同:トブラシン)の点滴、ニトログリセリン(同:ニトロダームTTS)貼付を行う。家族へは、ステロイドを服用していたため症状が隠されやすくなっていた可能性を説明した(この日主治医は定時に帰宅)。入院後も吐き気が続くとともに乏尿状態となったため、非常勤の当直医は制吐薬、昇圧剤および利尿薬を追加指示したが効果はなく、人工透析を含むより高度の治療が必要と判断した。7月16日主治医の出勤を待って転院の手配を行い、大学病院へ転送。11:00大学病院到着。腎不全、心不全、肺水腫の合併であると家族に説明。14:00人工透析開始。18:00容態急変し、意識不明となる。7月17日01:19死亡確認。当事者の主張患者側(原告)の主張1.病因解明義務初診時に胸部X線写真を撮っておきながら、それを当日確認せず心筋炎、肺水腫を診断できなかったのは明らかな過失である。そして、胸部X線で肺水腫があれば湿性ラ音を聴取することができたはずなのに、異常なしとしたのは聞き漏らしたからである2.転院義務初診時の病態はただちに入院させたうえで集中治療を開始しなければならない重篤なものであり、しかも適切な治療設備がない被告病院であればただちに治療可能な施設へ転院させるべきなのに、病因解明義務を怠ったために転院措置をとることができなかった初診時はいまだ危機的状況とまではいえなかったので、適切な診断を行って転院措置をとっていれば救命することができた病院側(被告)の主張1.病因解明義務初診時には急性咽頭気管支炎以外の異常所見がみられなかったので、その場でX線写真を検討しなかったのはやむを得なかった。また、心筋炎があったからといって必ず異常音が聴取されるとはいえないし、患者個人の身体的原因から異常音が聴取されなかった可能性がある2.転院義務初診時の症状を急性咽頭気管支炎と診断した点に過失がない以上、設備の整った病院に転院させる義務はない。仮に当初から心筋炎と診断して転院させたとしても、その重篤度からみて救命の可能性は低かったさらに大学病院の医師から提案されたPCPS(循環補助システム)による治療を家族らが拒否したことも、死亡に寄与していることは疑いない裁判所の判断当時の状況から推定して、初診時から胸部の異常音を聴取できるはずであり、さらにその時実施した胸部X線写真をすぐに確認することによって、肺水腫や急性心筋炎を診断することは可能であった。この時点ではKillip分類class 3であったのでただちに入院として薬物療法を開始し、1時間程度で病態の改善がない時には機械的補助循環法を行うことができる高度機能病院に転院させる必要があり、そうしていれば高度の蓋然性をもって救命することができた。初診患者に上記のような判断を求めるのは、主治医にとって酷に過ぎるのではないかという感もあるが、いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師に対しては、その業務の性質に照らし、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くすことが要求されることはやむを得ない。原告側合計7,998万円の請求に対し、7,655万円の判決考察「朝から混雑している外来に、『頭痛、吐き気、食欲がなく、痰に血が混じる』という若者が来院した。診察したところ喉が赤く腫れていて、肺音は悪くない。まず風邪だろう、ということでいつも良く出す風邪薬を処方。ただカルテをみると、半年前に潰瘍性大腸炎でうちの病院に入院し、その後大学病院に移ってしまった子だ。どんな治療をしているの?と聞くと、ステロイドを7.5mg内服しているという。それならば念のため胸部X線写真や採血、痰培をとっおけば安心だ。ハイ次の患者さんどうぞ・・・」初診時の診察時間は約5分間とのことですので、このようなやりとりがあったと思います。おそらくどこでも普通に行われているような治療であり、ほとんどの患者さんがこのような対処方法で大きな問題へと発展することはないと思います。ところが、本件では重篤な心筋炎という病態が背後に潜んでいて、それを早期に発見するチャンスはあったのに見逃してしまうことになりました。おそらく、プライマリケアを担当する医師すべてがこのような落とし穴にはまってしまうリスクを抱えていると思います。ではどのような対処方法を採ればリスク回避につながるかを考えてみると、次の2点が重要であると思います。1. 風邪と思っても基本的診察を慎重に行うこと今回の担当医は消化器内科が専門でした。もし循環器専門医が患者の心音を聴取していれば、裁判官のいうようにgallop rhythmや肺野の湿性ラ音をきちんと聴取できていたかも知れません。つまり、混雑している外来で、それもわずか5分間という限定された時間内に、循環器専門医ではない医師が、あとで判明した心筋炎・心不全に関する必要な情報を漏れなく入手することはかなり困難であったと思われます。ところが裁判では、「いやしくも人の生命および健康を管理する医業に従事する医師である以上、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を尽くさなければいけない」と判定されますので、医学生の時に勉強した聴打診などの基本的診察はけっしておろそかにしてはいけないということだと思います。私自身も反省しなければいけませんが、たとえば外来で看護師に「先生、風邪の患者さんをみてください」などといわれると、最初から風邪という先入観に支配されてしまい、とりあえずは聴診器をあてるけれどもざっと肺野を聞くだけで、つい心音を聞き漏らしてしまうこともあるのではないでしょうか。今回の担当医はカルテに「chest clear」と記載し、「心音・肺音は確かに聞いたけれども異常はなかった」と主張しました。ところが、この時撮影した胸部X線写真にはひどい肺水腫がみられたので、「異常音が聴取されなければおかしいし、それを聞こえなかったなどというのはけしからん」と判断されています。多分、このような危険は外来患者のわずか数%程度の頻度とは思いますが、たとえ厳しい条件のなかでも背後に潜む重篤な病気を見落とさないように、慎重かつ冷静な診察を行うことが、われわれ医師に求められることではないかと思います。2. 異常所見のバックアップ体制もう一つ本件では、せっかく外来で胸部X線写真を撮影しておきながら「急現」扱いとせず、フィルムをその日のうちに読影しなかった点が咎められました。そして、そのフィルムには誰がみてもわかるほどの異常所見(バタフライシャドウ)があっただけに、ほんの少しの配慮によってリスクが回避できたことになります。多くの先生方は、ご自身がオーダーした検査はなるべく早く事後処理されていることと思いますが、本件のように異常所見の確認が遅れて医事紛争へと発展すると、「見落とし」あるいは「注意義務違反」と判断される可能性が高いと思います。一方で、多忙な外来では次々と外来患者をこなさなければならないというような事情もありますので、すべての情報を担当医師一人が把握するにはどうしても限界があると思います。そこで考えられることは、普段からX線技師や看護師、臨床検査技師などのコメデイカルと連携を密にしておき、検査担当者が「おかしい」と感じたら(たとえ結果的に異常所見ではなくても)すぐに医師へ報告するような体制を準備しておくことが重要ではないかと思います。本件でも、撮影を担当したX線技師が19歳男子の真っ白なX線写真をみて緊急性を認識し、担当医師の注意を少しでも喚起していれば、医事紛争とはならないばかりか救命することができた可能性すらあると思います。往々にして組織が大きくなると縦割りの考え方が主流となり、医師とX線技師、医師と看護師の間には目にみえない壁ができてセクショナリズムに陥りやすいと思います。しかし、現代の医療はチームで行わなければならない面が多々ありますので、普段から勉強会を開いたり、症例検討会を行うなどして医療職同士がコミュニケーションを深めておく必要があると思います。循環器

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CKD(慢性腎臓病)の定義

CKD(慢性腎臓病)とは腎炎、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などの総称で、進行すると人工透析が必要になります定義は以下の通りです①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、とくに0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要②GFR<60mL/分/1.73m2①、②のいずれか、または両方が3ヵ月以上持続するCopyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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生体腎提供によって末期腎不全のリスクは高まるか/JAMA

 生体腎移植のドナーが末期腎不全(ESRD)を有するリスクは、適合健常非ドナーと比べ有意に高いが、非スクリーニング一般集団と比べると、絶対リスクの増加はわずかであることが明らかにされた。米国ジョンズ・ホプキンス大学のAbimereki D氏らが、米国の生体腎ドナー9万6,217例を追跡調査して報告した。これまで腎ドナーのESRDリスクについて、一般集団との比較は行われておりリスクが高いことが報告されていた。しかし、非スクリーニング一般集団という高リスク集団との比較は行われておらず、ドネーション後の後遺症をより適切に推定しうるスクリーニング健常非ドナーとの検討も十分ではなかった。著者は、「今回の結果は、生体腎提供を考えている人への検討材料の一助となるだろう」とまとめている。JAMA誌2014年2月12日号掲載の報告より。全米腎ドナー9万6,217例を最長15年追跡 研究グループは、ESRDのリスクについて、腎ドナーと健常非ドナーコホート(腎疾患リスクが低く、生体移植に対する支障がないことをスクリーニングで確認)を比較する検討を行った。また、人口統計学的(年齢、人種など)層別化による比較も行った。 被験者は、1994年4月~2011年11月に生体腎提供を行った全米9万6,217例の腎ドナーと、第3次全米健康栄養調査(NHANES III)の参加者2万24例(うち健常非ドナー参加者は9,364例)。後者の9,364例のデータから、前者と比較するために適合させた健常非ドナーコホート(9万6.217例)を作成した。メディケア&メディケイドセンターのデータからESRDの発症、維持透析開始、移植リスト登録、および生体もしくは死体腎移植を受けたかについて確認し、最長15.0年追跡し検討した(腎ドナー群7.6年、適合健常非ドナー群15.0年)。 主要評価項目は、ESRDの累積発生率と生涯リスクだった。推定生涯リスク、1万当たりドナー90、健常非ドナー14、一般集団326 追跡期間中、生体腎ドナーでESRDを発症したのは99例、発症までの期間はドネーション後平均8.6年(SD 3.6年)だった。一方、適合健常非ドナーでは36例※で、発症までの期間は登録後10.7年(SD 3.2年)だった。(※健常非ドナー9,364例におけるESRDイベント発生17例より算出) ドナー群の術後15年時点のESRD発症の推定リスクは、1万当たり30.8(95%信頼区間[CI]:24.3~38.5)、同期間の適合健常非ドナー群は3.9(同:0.8~8.9)だった(p<0.001)。 同様のドナーと適合健常非ドナー間の推定リスク差は、人種別にみた場合も有意な差がみられた。格差は黒人で最も大きく、ヒスパニックが続き,白人で最も小さかった。 また、生体腎ドナー群における累積発生率は、年齢によって有意差がみられた。50歳未満と比べて50歳以上で有意に高く(p<0.001)、また、累積発生率が最も低かったのは40~49歳群で1万当たり17.4、次いで18~39歳群29.4(対40~49歳群とのp=0.06)、50~59歳群54.6、60歳以上群70.2だった。累積発生率について、血縁の有無で有意差はみられなかった(p=0.15)。また追跡期間中の経時的傾向もみられていない(傾向p=0.92)。 一方、推定生涯リスクについてみると、1万当たり生体腎ドナー群は90、健常非ドナー群は14、非スクリーニング非ドナー(一般集団)では326であった。

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糖尿病患者のトータルケアを考える

 2014年2月19日(水)都内にて、糖尿病患者の意識と行動についての調査「T-CARE Survey」を題材にセミナーが開かれた(塩野義製薬株式会社 開催)。演者である横浜市立大学の寺内 康夫氏(分子内分泌・糖尿病内科学 教授)は、患者が治療に前向きに取り組むためには「治療効果の認識」「症状の理解」が重要と述べ、患者の認知・理解度に応じて個々に合ったアプローチをすべき、と述べた。 T-CAREとは 「塩野義製薬が考える“糖尿病患者さまのトータルケア”」を意味する名称とのこと。以下、セミナーの内容を記載する。【糖尿病患者の3割が治療ストレスを感じている】 『糖尿病患者の約30%が治療を続けることにストレスを感じている』これは、糖尿病患者の意識と行動を把握するためのインターネット調査「T-CARE Survey」の結果である。「T-CARE Survey」は全国の20代~60代の男女を対象に2013年10月に実施されたインターネット調査で、一般回答者2万254名、糖尿病患者3,437名の回答が得られている。その結果、糖尿病患者は高血圧や脂質異常症と比較してストレスを感じやすく、そのストレス度合いは、喘息やアレルギーなどの自覚症状がある疾患と同程度であることが明らかになった。糖尿病は症状が少ないにもかかわらず、患者さんはストレスや不安を感じやすいことから、リスクケアのみならず、生活環境や心理的不安も見据えたトータルケアが必要と考えられる。【心配事・不満の上位は、『合併症の不安』】 糖尿病患者は何に不安を感じているのだろうか。患者さんの心配事や不満の上位は「透析になるのが怖い」「失明するのが怖い」といった「合併症の不安」であった。また約1割が「足のしびれや痛みが我慢できない」と感じていることも明らかにされた。寺内氏は、この結果を基に「患者さんに医療機関との接点を持ち続けてもらう、つまり続けて通ってもらうことが不安解消にも重要」と述べた。【治療継続には『病状理解』と『治療効果の認識』】 では、患者さんに治療を続けてもらうにはどうすべきか。今回の調査では「糖尿病患者の治療モチベーションに関する検証」も行われた。糖尿病の知識、治療への評価、周囲との関係性といったいくつかの項目を仮説として設定し、重回帰分析等を用いて検証を行った結果、「自分の病状の理解」「治療効果の認識・理解」の2項目が治療モチベーション向上に寄与していることが明らかになった。医師やスタッフの説明を通じて患者さんに病状を理解してもらい、効果を認識させることが治療にも有用なようだ。【メディカルスタッフへの相談も有用】 患者さんが糖尿病疾患について相談する相手をみると、医師が83%、配偶者・パートナーが52.8%であった。一方、看護師・薬剤師・管理栄養士といったメディカルスタッフへの相談はいずれも30%未満であり、まだまだ少ないといえる。しかし、メディカルスタッフに相談している患者は相談していない患者に比べ、前向きに治療に取り組む割合が高いこともわかっており、チームサポートの重要性がうかがえる。【糖尿病療養指導士を要としたコミュニティサポート推進が望まれる】 患者さんの家庭環境はどうだろうか。「家族が治療やケアに協力してくれる」という回答は56.4%であった。家族ケア有りの場合、前向きに治療に取り組む割合は高く、医療従事者側も家族によるサポートを促すことができる。しかし、一人暮らしの高齢世帯の増加を鑑みると、今後は家族のみならず、地域のコミュニティによるサポートが推進されていくことを期待したい。自身が日本糖尿病療養指導士認定機構の役員を務める寺内氏は、今後、介護施設や在宅医療スタッフの中に糖尿病療養指導士の資格を持つ方が増え、地域のコミュニティサポートが推進されていくことを期待したい、と述べた。【編集後記】 講演の最後に寺内氏は、「トータルケアの実践には患者をタイプ分類し、タイプ別のアプローチを工夫することが有用」と述べた。タイプ別アプローチ方法が確立し、治療に不満を抱く方や疾患を放置する患者さんが、治療に前向きに取り組めるようになることを期待したい。

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エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part1

レストレスレッグス症候群におけるドパミンアゴニストの使い方のコツは?本邦でレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)治療薬として承認されているドパミンアゴニストには、プラミペキソール(商品名:ビ・シフロール)とロチゴチン(同:ニュープロパッチ)がある。プラミペキソールが錠剤(内服)で、ロチゴチンが経皮吸収剤(貼付)と投与方法が異なる点が使い分けの大きなポイントとなる。どちらの薬剤も、RLSならびにRLSに高頻度に伴う周期性四肢運動の両者に有効性が高い点は共通であるが、夜間の症状を主体とする場合には、プラミペキソールを夜に1回内服することで十分効果が得られる。日中症状を有する場合は、プラミペキソールを日中にも追加して服用する、あるいは血中濃度が一日を通じて一定となる貼付剤(ロチゴチン)が良い適応となる。副作用の観点からは、消化器症状は共通してみられる。ただし、ロチゴチンでは、初回の貼付時に消化器症状が出現しても、血中濃度が安定すると以後は消化器症状がみられなくなる場合もある。貼付剤に特有の問題としては、貼付部位の適応部位反応があり、貼付部位を毎日変える、適度な保湿をするなどの対策が必要である。両薬剤は代謝・排泄経路が異なっており、プラミペキソールが腎排泄性の薬剤であるのに対し、ロチゴチンは肝臓で代謝される。腎不全患者ではRLSは高頻度にみられ、日中症状もしばしば伴うが、肝臓で代謝されるロチゴチンは、腎不全患者においても血中濃度が健常者とほぼ同様に推移することから、安全に使用できると考えられる。レストレスレッグス症候群の原因として、鉄不足以外にどういったものがありますか?レストレスレッグス症候群(RLS)は、特発性と二次性に大別される。RLSはあらゆる年齢層でみられるが、中年期以降のRLSでは二次性RLSの可能性が高まる。二次性RLSの原因疾患としては、鉄欠乏性貧血、胃切除後のほかに、慢性腎不全、妊娠、神経疾患(パーキンソン病、末梢神経障害、脊髄疾患等)、リウマチ性疾患などがあげられる。薬剤性RLSの原因としては、ドパミンに拮抗する薬剤(抗精神病薬、メトクロプラミド)、抗うつ薬(選択的セロトニン再取込み阻害薬)などがあり、アルコール、カフェイン、ニコチンもRLSの増悪因子である。慢性腎不全、とくに透析患者においてはRLSは高頻度で、国内外の報告では約2~4割にRLSがみられ、周期性四肢運動障害の合併も多い。妊娠中のRLSは、妊娠後期に増悪する傾向があり、出産前後に消失もしくは改善することが多い。妊娠を繰り返すごとに症状が増悪するケースもある。神経疾患に伴うRLSでは、下肢の異常感覚が神経疾患に伴うものか、神経疾患による二次性RLSによるものかの判断が時に困難であり、両者が併存する場合もある。こうした症例では、RLS治療薬の効果が必ずしも十分得られない。不眠症は薬物療法で改善する症例が少ないように感じるのですが、いかがでしょうか?プライマリ・ケアにおける不眠症治療は、(非)ベンゾジアゼピン系薬剤を中心とする薬物療法に偏りがちであるが、不眠の背景にある睡眠習慣や睡眠衛生の問題、不眠を呈する睡眠障害が見過ごされているケースも多い。不眠≠不眠症であり、不眠の背景要因の把握がまず不可欠といえる。たとえば、不眠があり夜眠れないからと日中に2時間以上も昼寝をしていれば、日中の長時間の昼寝が夜の入眠を妨げ、不眠の解消を阻害してしまう。高齢者では夜間の睡眠時間は減少する傾向となるが、9時間以上も寝床で過ごすことで、夜中に何度も目が覚める、熟眠感が得られないといった訴えにつながっている場合もあり、睡眠習慣の見直しが先決である。また、睡眠時無呼吸症候群では夜間の覚醒や熟眠障害を生じうるが、本人は多くの場合いびきや無呼吸を自覚しておらず、原因をそのままに睡眠薬を処方されても不眠は解消しない。薬物治療で改善がみられない多くの症例では、このような背景が見過ごされており、うつ病等の精神疾患による不眠の可能性も含めて、睡眠障害、睡眠衛生の問題にも留意する必要がある。不眠症治療薬についても、現状では薬剤の使い分けが必ずしも十分なされていない。たとえば、体内時計の乱れが不眠の背景にある場合には、睡眠・覚醒リズムの調整を図りつつ、体内時計機構に作用する薬剤を選択することが有用である。脳の覚醒システムであるオレキシンをターゲットとした新たな不眠症治療薬も現在承認申請中であり、治療の選択肢も増えつつある。高血圧や糖尿病などでは薬剤のタイプによる使い分けが一般的に行われており、不眠症治療においても病状に応じた薬剤の選択が行われるようになることが期待される。外来で睡眠時無呼吸症候群を疑うチェックポイントなどありますか?睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome : SAS)は、睡眠中の無呼吸・低呼吸といった呼吸イベントにより、睡眠の質的低下、低酸素状態を生じる疾患である。心疾患および循環疾患リスクを高めることが知られており、生活習慣病のマネジメントのうえでも注目すべき疾患といえる。しかし、患者の多くはいびきや無呼吸を症状として自覚しておらず、多くは周囲がこれらの症状に気づくことで受診につながっている。SASが注目されるようになったきっかけの一つは、新幹線運転手の居眠り事故である。これにより、SASと眠気の関連がクローズアップされたが、眠気を自覚していないSAS患者も少なくないことから、眠気の有無は必ずしもSASを疑う(あるいは否定する)ポイントとはなりえない。SASを疑ううえでは、いびきや無呼吸に気づいている可能性が高いベッドパートナーへの問診は非常に有用である。本人のみが受診している場合には、周囲からそのような指摘があるかどうかを尋ねるとよい。いびきによる覚醒、窒息感を伴う覚醒を本人が自覚している場合もある。無呼吸を指摘されたことがなくても、習慣的な大きないびきの指摘があれば、SASを疑い精査することが望ましい。本人が自覚しうるその他の症状としては、夜間頻回の(トイレ)覚醒、熟眠感の欠如、起床困難、起床時の頭痛、日中の眠気、集中力の低下などがあげられる。いびきの指摘に加えてこうした自覚症状を伴っていれば、SASを疑うポイントとなりうる。理学的所見も重要である。SASのリスクとして肥満はよく知られているが、扁桃腺肥大、顎顔面形態(小顎や下顎後退)も必ず確認する。とくにアジア人において非肥満のSASも多いことに留意する。逆に、不眠や夜間の異常行動といった何らかの睡眠の訴えがある場合には、その背景にSASが存在する可能性を常に考慮する必要があるともいえる。必ずしも自覚症状が明らかではない患者も多いこと、終夜パルスオキシメトリ等のスクリーニング検査が比較的安価に施行できることを考慮すれば、SASが多少なりとも疑わしい場合には積極的にスクリーニングすることが望ましい。※エキスパートに聞く!「睡眠障害」Q&A Part2はこちら

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