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造血器腫瘍患者への予防的血小板輸血戦略は出血の減少に結びつく/NEJM

 造血器腫瘍患者に対して、出血予防を目的とした血小板輸血戦略は、予防的血小板輸血を行わない場合と比較して出血の減少に結びつき、有用であることが、英国・オックスフォード大学のSimon J. Stanworth氏らによる無作為化試験の結果、明らかにされた。これまで、造血器腫瘍患者における予防的血小板輸血のベネフィットは明らかになっていなかった。一方で、最近の予防的血小板輸血に関する試験では、以前のように輸血量ではなく、臨床アウトカムとしての出血に重点を置くようになっており、研究グループは、造血器腫瘍患者のための時代に即した治療戦略を検討するため、予防的輸血を行わないとする指針が、行うとする指針に対して出血の頻度に関して非劣性であるのか試験を行った。NEJM誌2013年5月9日号掲載の報告より。幹細胞移植後の血小板減少例を無作為化 研究グループは、イギリスとオーストラリアの14施設で無作為化非盲検非劣性試験を行った。朝の血小板数が10×109/L未満である患者を、予防的血小板輸血を受ける群と受けない群に無作為に割り付けた。適格患者は16歳以上で、化学療法または幹細胞移植を受けた患者で、血小板減少症をすでに発症したか、発症が予測される症例とした。 主要エンドポイントは、無作為化の30日後までに起きた、世界保健機関(WHO)グレード2、3、4の出血とした。出血日数、出血までの日数ともに予防的輸血を支持する結果 2006年~2011年にかけて、合計600例(非予防的血小板輸血群301例、予防的血小板輸血群299例)が無作為化の対象となった。 試験の結果、WHOグレード2、3、4の出血は、非輸血群300例中151例(50%)で発生し、輸血群では298例中128例(43%)であった(補正後の比率の差:8.4ポイント、90%信頼区間:1.7~15.2、非劣性のp=0.06)。 非輸血群の患者は輸血群の患者と比べて、出血した日数が多く、初回出血事例までの期間も短かった。また、非輸血群では血小板の使用が顕著に減少していた。 事前に特定したサブグループ解析の結果、自家幹細胞移植を受けた両試験群の患者の出血発生率は同程度であった。 これらの結果を踏まえて著者は、「血小板の予防的輸血を継続的に行う必要性を支持する所見が示された」と述べ、「予防的血小板輸血を行わない場合と比較して、予防的血小板輸血は出血の減少にとって有用であることが示された」と結論している。一方で最後に、予防的血小板輸血群の出血例は非輸血群よりも7%低かったが、それでも有意な数の患者において出血がみられたことにも言及している。

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rhBMP-2を用いた椎体間固定術で注意すべきこと

 遺伝子組換えヒト骨形成タンパク質-2(rhBMP-2)は、すでに欧米では脊椎固定などに広く使用されているが、異所性骨形成、局所の骨吸収、神経根炎などさまざまな合併症が知られている。米国・ニューヨーク大学病院のShaun D. Rodgers氏らは、rhBMP-2を用いた椎体間固定術後の再手術中に致命的な血管損傷が発生した症例について考察した。その結果、rhBMP-2によって誘発された宿主炎症反応が、血管線維化と瘢痕化の一因となり血管損傷が引き起こされた可能性を指摘し、「脊椎外科医はrhBMP-2使用時の合併症として炎症性線維化に注意しなければならない」とまとめている。Journal of Neurosurgery: Spine誌オンライン版2013年4月5日の掲載報告。 本論文は症例報告である。症例は、L4-5の脊椎すべり症(グレード1)を有する63歳の男性。1年前より難治性腰痛および神経根障害の悪化を来し、rhBMP-2を充填した椎体間ケージを用いた経椎間孔腰椎椎体間固定術(TLIF)が施行された。 その後の経過は以下のとおりであった。・症状はわずかに改善したが、1年半後には保存的治療に反応しない慢性腰痛と神経性跛行を呈した。 ・放射線学的画像診断の結果、ネジのゆるみと偽関節が認められた。・ケージの除去、椎間板切除および大腿輪留置を行うため、前方後腹膜アプローチにて再手術を施行した。・アプローチ中、腸骨静脈が瘢痕化および線維化を伴い以前手術したL4-5椎体間スペースに癒着していることが観察された。・モビライゼーション中に左腸骨静脈が破れ失血と心停止を来したが、心臓マッサージ、除細動および輸血にて回復し、手術は終了した。 ・数日後、患者の神経学的症状は消失した。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(60)〕 The WOEST study:長期間抗凝固療法を受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンは不要でクロピドグレルのみの併用で良い

PCIを施行する際には、血栓症を予防するためにアスピリンとチエノピリジン系の抗血小板薬を併用することが標準とされてきた。 一方、65歳以上の年齢層の8%に非弁膜症性の心房細動が発症することが知られている。心房細動の治療は、心原性血栓による脳塞栓症と心房細動性頻拍症の持続による心不全の予防が基本であり、抗凝固薬とβ遮断薬の併用が標準治療とされている。抗凝固薬を服用中の患者にPCIを行う際の抗血小板薬の組み合わせは、臨床上きわめて重要な問題である。 本研究は、ベルギーとオランダの15の施設で抗凝固療法を受けている573人の患者をクロピドグレルとアスピリンの3剤併用群とクロピドグレルだけの2剤併用群に無作為に割り付けた。試験期間は3年で主要評価項目はPCI後1年以内の出血の合併症である。 PCI後1年のデータが得られた症例数は、2剤併用群で279例(98.2%)、3剤併用群で284例(98.3%)であった。出血の合併症の頻度は2剤併用群で54例(19.4%)で、3剤併用群の126例(44.4%)よりも有意(p<0.0001)に低かった。また、多発性出血と輸血の頻度についても、2剤併用群は3剤併用群よりも有意(p=0.011)に低いことが示され、また血栓症の増加もなかった。 以上の結果から、抗凝固療法を長期にわたって受けている患者にPCIを行う際には、アスピリンを併用せずにクロピドグレルのみを抗凝固薬と併用することが効果は同等で安全性に優れているという、臨床上きわめて有用な薬の使い方が示唆された。

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腰椎椎間板切除術、日帰り手術により短期合併症が減少

 腰椎椎間板切除術は最も頻度の高い脊椎手術で、外来でも実施可能である。同外来手術は、低コストでより大きな患者満足度が得られ安全性に問題はないことがこれまで報告されていたが、今回、米国・アイオワ大学病院のAndrew J. Pugely氏らによる前向きコホート研究において、入院手術に比べ術後短期合併症が少ないことが確認された。腰椎椎間板切除術を行う場合、適切な症例には外来手術を考慮すべきであるとまとめている。Spine誌2月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、単一レベル腰椎椎間板切除術後30日以内の合併症発生率を入院手術および外来手術で比較するとともに、合併症の独立した危険因子を同定することであった。 2005~2010年に、米国外科学会の外科手術質改善プログラム(NSQIP)データベースを用い医師診療行為用語(CPT)コードに基づいて初回単一レベル腰椎椎間板切除術を受ける患者4,310例を選出した。 術後30日以内の合併症発生率ならびに術前患者特性について検討した。統計解析は、傾向スコアマッチング法および多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・4,310例中、2,658例(61.7%)が入院手術、1,652例(38.3%)が外来手術であった。・合併症発生率は、未調整時ならびに傾向スコアマッチング後のいずれも入院手術群が外来手術群より高率であった(未調整時6.5% vs 3.5%、p<0.0001/マッチング後5.4% vs 3.5%、p=0.0068)。・多変量ロジスティック回帰分析でも、入院手術で合併症発生率が有意に高率となることが示された(調整済みオッズ比:1.521、95%CI:1.048~2.206)。・年齢、糖尿病、術前創傷感染、輸血、手術時間および入院手術が術後短期合併症の独立した危険因子であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

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抗凝固薬服用PCI患者にはクロピドグレル単独追加が出血リスクを有意に減少/Lancet

 経口抗凝固薬を服用中で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要とされる患者には、アスピリンやクロピドグレル(商品名:プラビックス)の抗血小板薬療法が推奨されている。その場合3剤併用療法は深刻な出血リスクを招くが、オランダ・Twee Steden HospitalのWillem J M Dewilde氏らの研究グループは、クロピドグレル単独と、クロピドグレル+アスピリンを併用した場合の有効性および安全性を調べる非盲検無作為化比較対照試験を行った。その結果、クロピドグレル単独追加群では出血性合併症が有意に減少し、血栓性イベントが増加しなかったことを報告した。Lancet誌オンライン版2013年2月13日号より。PCI後1年以内の全出血イベントの発生を評価 研究グループは、ベルギーとオランダの15施設で非盲検多施設無作為化比較対照試験を行った。期間は2008年11月~2011年11月の間で、経口抗凝固薬を服用中でPCIを受けた成人患者(18~80歳)を無作為に、クロピドグレル単独(抗凝固療法と合わせて2剤併用)またはクロピドグレル+アスピリン(3剤併用療法)のいずれかに割り付け追跡した。 主要アウトカムは、PCI後1年以内の全出血イベントとし、intention to treat解析にて評価した。クロピドグレル単独群は出血イベントが有意に減少 573例の患者が登録され、そのうち1年間のデータが得られたのは、2剤併用療法群284例中279例(98.2%)、3剤併用療法群289例中284例(98.3%)だった。平均年齢はそれぞれ70.3(SD 7.0)歳、69.5(同8.0)歳であった。 出血エピソードは、2剤併用療法群が54例(19.4%)、3剤併用療法群は126例(44.4%)で認められた[ハザード比(HR):0.36、95%信頼区間(CI):0.26~0.50、p<0.0001]。 多発性の出血イベントは、3剤併用療法群34例(12.0%)であったのに対し、2剤併用療法群では6例(2.2%)だった。 1単位以上の輸血を必要とした患者は、3剤併用療法群27例(9.5%)であったが、2剤併用療法群では11例(3.9%)だった(Kaplan-Meier解析によるオッズ比:0.39、95%CI:0.17~0.84、p=0.011)。 結果を踏まえて著者は、「経口抗凝固薬服用中でPCIを受けた患者には、クロピドグレル+経口抗凝固薬による治療が出血性合併症の有意に低いリスクと関連していた」と結論。「試験は小規模であったが、アスピリンを控えたことによる血栓イベントリスク増大のエビデンスは見いだすことができなかった」とも述べている。

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「ヒヤリ・ハット」、先生は報告してますか?記名or匿名?電子or紙?実態大公開

診療中、検査中、手術中、「おっと危ない」と心のなかでつぶやいたこと、ありませんか?「ひょっとしてとんでもない事態になっていたかも」と大汗をかいても、喉元過ぎれば…でまた繰り返してしまったり。最近は「とにかく報告をあげろ」という病院も増えているようですが、果たして防止策につながっているのか?責任追及や懲罰は?具体的なエピソードと共に、一挙公開します!コメントはこちら結果概要3人に1人が月に一度以上ヒヤリ・ハットを経験、最も多いシーンは『薬剤の処方・投与』日々の診療でのヒヤリ・ハットの経験頻度について尋ねたところ、『週に一度』(5.7%)『月に一度』(26.3%)を合わせ3人に1人が月に一度以上は何らかの形でヒヤリ・ハットに遭遇していると回答。一方『なし』とした医師は全体の14.4%。内容別では『薬剤の処方・投与』『治療・処置』『転倒・転落』と続くが、「報告は形式的で成果が上がっていない。誤薬と転倒のみが表立っていて、もっと問題視すべき事象は表に出ないまま」「報告数を増やすため些細なものも報告している」などの他、「“報告すること”が目的化してしまい、有効な対策の検討にはつながっていない」といった声も挙がった。経験医師の約6割が『報告しないことがある』、最も多い理由は『レポート作成が手間』そうしたケースに遭遇した場合の報告の有無について尋ねると、全体の41.1%が『全て報告する』と回答。その他の医師の“報告しない理由”として、『レポート作成に手間がかかるため』46.0%、次いで『院内に報告の仕組みがないため』『報告しても事故予防に役立たないと思うため』と続く。『責任追及される、評価・懲罰に関わるため』とした医師は全体の2.2%。しかしその内訳は勤務施設によって異なり、診療所・クリニックにおいては『報告の仕組みがない』が約6割に上った。報告システムの電子化進むが、「かえって面倒」との声も施設の報告体制・安全対策として、4割近い医師が『スタッフ用マニュアル』『定期会議での検討・分析』『研修・セミナー』があると回答。当事者を明らかにするか否かについては、『記名式』35.5%、『匿名式』17.2%であった。報告手段については『紙ベース』44.9%、『電子化された報告システム』32.3%となったが、電子化システムの導入について施設別に見ると、一般の病院では26.5%だったのに対し、参加登録申請医療機関では60.2%、報告義務医療機関では70.1%となった。しかし前述の“報告しない理由”で『レポート作成が手間』とした医師は、報告義務医療機関では66.3%に上り「紙ベースの時のほうが報告しやすかった」「面倒なシステムだと、文化以前の段階で敬遠されてしまう」といった声も見られた。設問詳細ヒヤリ・ハットおよびその報告についてお尋ねします。昨年12月21日のCB医療介護ニュースによると、『日本医療機能評価機構は20日、今年7-9月の四半期に報告を受けた医療事故情報が、同機構が医療事故情報収集・分析・提供事業を始めた2004年10月以降で最多の814件だったことを明らかにした。(中略)同機構によると、9月末現在、報告が義務付けられている国立病院や特定機能病院など「報告義務対象医療機関」は273施設で、自主的に事業に参加している「参加登録申請医療機関」は637施設。7-9月は、157施設の報告義務対象医療機関から計726件、29施設の参加登録申請医療機関から計88件が報告された。同機構の担当者は、前年の報告数が約2800件に上ったことや、今回、四半期としての記録を更新したことから、「事故を報告する文化が定着しつつあるのではないか」と話している(略)』とのこと。医療事故につながる事例として「ヒヤリ・ハット」あるいは「インシデント」があります。日本医療機能評価機構による「ヒヤリ・ハット」の定義は以下です。(1)医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。(2)誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・治療を要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。(3)誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。そこで先生にお尋ねします。Q1.日々の診療におけるヒヤリ・ハットのご経験について過去1年間で最も近い頻度をお選び下さい。週に一度月に一度半年に一度年に一度なし(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q2.どのような場面でヒヤリ・ハットを経験しましたか?当てはまること全てをお選び下さい。治療・処置薬剤の処方・投与ドレーン・チューブ類の使用転倒・転落検査医療機器の使用輸血その他(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q3.経験したヒヤリ・ハットへの報告の有無についてお答え下さい。全て報告している報告しないことがある全く報告しない(Q3「全て報告している」を選んだ方以外)Q4.報告しない理由について最も当てはまるものをお選び下さい。レポート作成等に手間がかかるため責任追及されるあるいは評価・懲罰に関わるため報告しても事故予防に役立たないと思うため院内に報告の仕組みがないためその他Q5.ご勤務施設のヒヤリ・ハット報告体制、および医療安全対策について当てはまることを全てお選び下さい。電子化された報告システムを導入している報告書は紙ベースである報告は匿名式である報告は記名式である報告されたヒヤリ・ハットに関し定期的な会議にて検討・分析している報告件数・内容などが集計され院内に発表される医療安全に関わる研修・セミナーを実施しているスタッフ用医療安全マニュアルがある上記全て当てはまらないQ6. コメントをお願いします(具体的なエピソード、防止策、報告に関する勤務施設内での対応方針、報告したことによる評価・責任追及・懲罰の有無、その他ご意見など何でも結構です)F1. 先生が勤務されている施設を以下からお選び下さい。おわかりにならない先生は「上記以外」からお選び下さい。「報告義務医療機関」とは国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所独立行政法人国立病院機構の開設する病院学校教育法に基づく大学の付属施設である病院(病院分院を除く)特定機能病院「参加登録申請医療機関」とは上記以外で医療事故情報収集等事業の参加に希望する医療機関報告義務医療機関参加登録申請医療機関上記以外の病院(20床以上)上記以外の一般診療所・クリニック(19床以下)その他F2. 年代F3. 診療科2013年1月17日(木)~18日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「報告自体が医師の負荷を増しているのが悩ましい」(40代,内科,上記以外の病院)「同じような失敗が性懲りもなく繰り返されるが、対策を立てると減少する事例、患者サイドの要因が大きくなかなか減少しない事例がある。」(40代,脳神経外科,上記以外の病院)「報告システムはあるが形式的で結局なにも成果があがっていない。 誤薬と転倒のみが表立っていてもっと問題とするべき事項は表に出ないまま終わっている」(50代,神経内科,報告義務医療機関)「薬剤名の間違い(電子カルテで上下の段にある薬を誤って処方してしまう)がほとんど」(60代以上,耳鼻咽喉科,上記以外の一般診療所・クリニック)「他職種のヒヤリハットであっても、全て医師が患者や家族に説明する体制になっていてなんとなく腑に落ちないときがある」(40代,精神・神経科,上記以外の病院)「どの程度から報告したらよいか悩むことがある。今回、報告しなかったのは子どもが診察室の椅子で暴れて落ちそうになったことであり、ヒヤリハットの定義に当てはまらないと思われるが、転落してケガをしたら報告しなくてはならない。小児科であり、今回と同様のことをすべて報告していたらきりがない。以前の病院では、名前を伏せたレポートを冊子化しており、“こんなことが起こりうるのか”“このように注意したらよいのか”など参考になることがあった。レポートを提出することで注意されたり非難されたりしたことは一切なかったので、その環境はレポートを提出しやすくなるので大切」(60代以上,小児科,上記以外の病院)「ただ単に報告するだけでは、重大事故は防げないと思う。重大事故が既に過去に生じているから「ヒヤリ・ハット」と認識できるのであり、それだけでは新たな重大事故防止に不十分であると思うからです。報告することが目的のように勘違いされている風潮があります。重大事故を想像・想定する一歩進めたKYT(危険予知トレーニング)をもっと重視するべき」(50代,外科,上記以外の病院)「エピソードの報告があっても、原因・対応策の真剣な取り組みが見られないし、指導する者が居ない」(60代以上,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「医師は本来業務が煩雑で、ヒヤリ・ハットが多いが、忙しすぎていちいち報告できないのが現状」(40代,内科,上記以外の病院)「インシデント・アクシデントの報告は病院にとって宝であり、原則責任追及や懲罰はなく、特に発見者や対応策の提示者には表彰があります。」(40代,内科,上記以外の病院)「ピリン禁忌の患者にピリン系薬剤を処方し薬剤師より注意された。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「電子カルテを最近導入したが,処方の際に小数点が落ちてしまったり,前回処方をコピーしようとして 前々回の処方をコピーしたりすることがある。電子カルテの操作性や,日付順に記載内容が表示されない など,電子カルテそのもののできが悪いとしか言いようがない。」(50代,小児科,報告義務医療機関)「昔なら問題にすらならないようなことまで、問題にされる傾向である。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「事故を起こした個人の責任とせず、組織で再発防止を考える最近の流れに、大いに賛成しています。 昔は、ひどかった・・・。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「ミスは誰にでもあるので、個人的な責任を問わないという姿勢も大事だとは思うが、明らかにミスを繰り返す傾向のある人もいる。その人に対して、どう対応すればいいのか?」(50代,小児科,上記以外の病院)「事故を報告する文化の醸成が重要、文化のないところにシステムを構築しても機能しないのではないかと思う。それと、報告システムの手間の軽減策、あまりに面倒なシステムだと、それが足かせとなって文化以前の段階で敬遠されてしまう。」(50代,消化器科,報告義務医療機関)「後日、重要なものについては医療安全管理室から事情聴取がある。」(60代以上,麻酔科,その他)「codeblueの館内放送が流れない部屋があったり、ブレーキの壊れた車椅子で院外に出た患者が危うく交通事故に合いそうになったりなど。」(60代以上,救急医療科,その他)「対策はしても責任追及はしない。あまりに報告が少ない部署は、むしろ要注意。」(50代,整形外科,上記以外の病院)「オカーレンスレポートを提出した事がありますが、某教授から退職するように強要されました。責任を追及しないなんて全くの嘘ですので。」(50代,循環器科,上記以外の一般診療所・クリニック)「責任追及ではないので、報告することで病院機能改善の方向に向かうと考えている。」(50代,耳鼻咽喉科,参加登録申請医療機関)「自身も含めインシデント・アクシデントの報告・連絡・相談は思うように行かない・・というのが実感」(40代,内科,上記以外の病院)「玄関前が凍結しており、患者が転倒することがあった。打撲程度であり、患者家族にも理解をしてもらえた。それ以後、翌朝凍結が予想されるときには診察終了時に玄関前に凍結防止剤(塩)を散布し、朝には湯をかけて凍結転倒しないよう配慮している。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告件数・内容などが集計され院内に発表され対策会議にて再発予防策を策定しています。」(50代,泌尿器科,上記以外の病院)「自分自身、規格違いの内服薬の誤処方、静注薬の過量投与などを起こしたことがあるが、インシデントが起きたことを患者に説明すると、院長名の文書で具体的な改善策を求められ、患者側の意識が以前より高くなっていると感じる。当院ではレベル3b以上では、緊急に医療安全管理委員会が開かれて対応を協議している。報告は原則として安全管理システムの向上を目的としており、当事者の責任追及や懲罰はなされないのが通常の対応であるが、分析によって明らかに当事者個人の対応に問題があった場合はあり得る。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「以前勤めていた病院で、手術中のエピソード(腰椎麻酔下での血圧低下と一過性の呼吸抑制のため一時術野から手をおろし対応)を報告したら、現場を知らない事務方に医療事故対応をとられる寸前のところだった。県立大野病院の事件の直後の頃である。ヒヤリ・ハットの報告も大事だが、関わるすべての人にきちんと責任をもってもらいたい。」(40代,産婦人科,上記以外の一般診療所・クリニック)「絶対ベッド上安静の患者(認知症なし)が勝手にベッドから降りようとして転倒した。 少ないスタッフでの看護にも限界あり。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「外来での処方忘れや、看護師への細かい指示の行違い等、報告しているとキリがない。これらを無くすることは現実的には無理だと思う。 報告すべき事例と、しなくても良い事例の線引きが困難である。 」(40代,循環器科,報告義務医療機関)「ヒヤリハットの範囲が不明確である。処方での入力ミス(非危険薬):用法用量などがキーの入力ミスで 入力後気づく、あるいは薬剤師からの疑義解釈で気づくなどの場合、ヒヤリハットといえるか必ずしも明確でない(手書きでは起こらないことが電カルでは頻繁に起こる)。」(60代以上,リウマチ科,上記以外の病院)「電子カルテシルテムの様式が煩雑でハードルが高い」(50代,眼科,参加登録申請医療機関)「無床クリニックでの安全体制って、皆様いかが取り組んでいらっしゃるのか、知りたいところです。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「研修医は直属の上司がはっきりしないため、報告システムが確立していない。」(30代以下,内科,報告義務医療機関)「よく似た名前の患者は、呼名で確認しても患者がハイと返事するので困った。番号で呼ぶのが良いかもしれない。」(50代,腎臓内科,上記以外の病院)「定期的に発信していかないと、報告数が減少してしまいます。報告者への責任や懲罰はありませんが、個別にはいろいろともめる原因になっているようです。」(40代,産婦人科,参加登録申請医療機関)「日常業務に差し支えのない程度の簡単な報告様式にするか、事務が書いてくれるなどしてくれるといいのだが。」(30代以下,産婦人科,報告義務医療機関)「外来処方時の日数間違えなどは登録していません。 入院中の点滴オーダー忘れや検査で有害事象が起きたときはすべて報告しています。」(30代以下,循環器科,その他)「当院では報告しても周囲に報告やお知らせなどせず、反映されていない」(40代,整形外科,報告義務医療機関)「もっと簡単なフォーマットになっていればいいと思います。」(40代,その他,報告義務医療機関)「うちの施設では、犯人探しになってしまうことが多い」(40代,呼吸器科,上記以外の病院)「電子カルテになって、電子化された報告システムになったが、紙ベースのときの方が報告しやすかった」(50代,外科,上記以外の病院)「懲罰はないが、あまりにひどい場合には依願退職した人もいる。」(60代以上,放射線科,参加登録申請医療機関)「報告による評価・責任追及・懲罰の有無はないとされているが、長期的に見た場合、全くヒヤリハット報告がない医師と、正直にすべて報告した医師とで、本当に評価の差が無いのか不安。」(30代以下,小児科,その他)「報告はある程度保存したあとは、残さないというルールでなければ報告は増えないと思います。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「どこの病院でも医師からのインシデントレポート(ヒヤリ・ハット)は少ない。関係者が複数の場合、だれが報告を上げるかでも病院幹部の考え方が違っており統一されていない点が問題である。医療評価機構などが報告数を上げることを目的にしているように医師には思えてくるのではないか?真の医療の質の向上に結びついているという実感がないことが多いため報告しない可能性が高いと思う。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「安全に対する対策費の増額が必要であるが、現状の医療環境の中で捻出が困難」(50代,消化器科,その他)「ワクチンの打ち間違えは痛かった。院長である以上、スタッフ全員に目を配らなければ。」(50代,小児科,上記以外の一般診療所・クリニック)「看護師による誤投薬で責任を取らされたことがあり腑に落ちない」(30代以下,呼吸器科,上記以外の病院)「処方箋の記入間違いがどうしても減らず困っています。」(50代,内科,参加登録申請医療機関)「医者は基本的にインシデント報告をしない人が多い気がします」(30代以下,精神・神経科,報告義務医療機関)「報告により責任追及は行われないことになっているが、誰が見ても防げる単純なミスなどはみっともないと思われるのは通常。どこまでを報告範囲とすべきか、決まっていないものもあり、手術時間の延長についても報告されない場合とされる場合がある」(40代,外科,報告義務医療機関)「MRM委員会と事例検討会が毎月開催されています。」(40代,呼吸器科,その他)「ヒューマンエラーは決してゼロにはならないとの観点から、ヒヤリハットの報告システムは重要と考える。しかし、報告したことや情報を収集したことで満足し、業務内容の改善等に生かされないのであれば意味がない。」(40代,血液内科,報告義務医療機関)「外来診察で高度の認知症のある別の患者が入室したことがあったが、診察終了までそれに気がつきませんでした。」(30代以下,皮膚科,報告義務医療機関)「病院首脳でヒヤリハット会議に出席しているメンバーに、ヒヤリハット事例の常連メンバーがおり、会議自体が形骸化している」(40代,内科,参加登録申請医療機関)「医師からの報告が少ないので、数字を増やすため、些細なものも報告している」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告しても、防ぐ手立てがないものが多い。今後、お互いに気をつけましょうで終わってしまう。」(50代,精神・神経科,上記以外の病院)

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上部消化管出血への輸血、ヘモグロビン値7g/dL未満の制限輸血で死亡リスク半減/NEJM

 急性上部消化管出血への輸血戦略では、ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血をする「制限輸血」のほうが、同値9g/dL未満での輸血戦略よりも、死亡リスクが約半減するなどアウトカムが良好であることが明らかにされた。スペイン・Hospital de Sant PauのCandid Villanueva氏らが900人超について行った無作為化試験の結果、報告したもので、NEJM誌2013年1月3日号で発表した。急性消化管出血への輸血について、ヘモグロビン値を基準に実施を判断する治療法については議論が分かれていた。制限輸血群の51%、非制限輸血群の15%で輸血行わず 研究グループは、重度急性上部消化管出血の患者921人を無作為に2群に分け、一方の群(461人)には制限輸血(ヘモグロビン値7g/dL未満で輸血)を、もう一方の群(460人)には非制限輸血(ヘモグロビン値9g/dL未満で輸血)を行い、有効性および安全性について比較した。被験者のうち肝硬変が認められた277人(31%)については、両群均等に割り付けを行った。 結果、輸血を受けなかったのは、制限輸血群225人(51%)、非制限輸血群は65人(15%)だった(p<0.001)6週間死亡リスク、制限輸血群は非制限輸血群の0.55倍 6週間後の生存率は、非制限輸血群が91%に対し、制限輸血群が95%と有意に高率だった(p=0.02)。死亡に関する、制限輸血群の非制限輸血群に対するハザード比は、0.55(95%信頼区間:0.33~0.92)だった。 再出血が発生したのは、非制限輸血群が16%に対し、制限輸血群は10%と有意に低率だった(p=0.01)。有害事象発生率は、非制限輸血群が48%に対し、制限輸血群は40%と有意に低率だった(p=0.02)。 サブグループ分析では、消化性潰瘍に関連した出血群の生存率については、制限輸血群のほうがわずかに高値であった(ハザード比:0.70、95%信頼区間:0.26~1.25、p=0.26)。肝硬変Child–Pugh分類別にみると、AまたはBの人については有意に高かったが(同:0.30、0.11~0.85、p=0.02)、Cの人については両群で同程度だった(同:1.04、0.45~2.37、p=0.91)。 また、非制限輸血群では当初5日間に肝静脈圧較差の増大が有意であった(p=0.03)。制限輸血群では有意な増大はみられなかった。

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第10回 療養指導義務:「何かあったら受診ください」ではダメ!どうする患者指導!!

■今回のテーマのポイント1.療養指導義務は説明義務の一類型であるが、治療そのものである2.「重大な結果が生ずる可能性がある」場合には、たとえ当該可能性が低くとも、療養に関する指導をしなければならない3.「何か変わったことがあれば医師の診察を受けるように」といったような一般的、抽象的な指導では足りず、しっかりと症状等を説明し、どのような場合に医師の診察が要するか等具体的に指導しなければならない事件の概要母X2は、Y産婦人科医院にて、妊娠34週に2200gの第3子(児X1)を出産(吸引分娩)しました。低出生体重児ではありましたが、出生時に児の異状は認められませんでした。しかし、出生後、X1には早期黄疸が認められるようになり、徐々に黄疸は増強してきました。第一子、第二子出産の際にも新生児期に黄疸が出ていたことから、母X2の依頼によりX1の血液型検査をしたところ、母X2と同じO型と判定されました(後に再検査したところX1の血液型はO型ではなくA型と判明しました)。そのため、医師Yは、母X2に対し、黄疸について、「大丈夫だ。心配はいらない」と伝え、退院時(出生より10日目)にも母X2に対し「血液型不適合もなく、黄疸が遷延しているのは未熟児だからであり、心配はない」、「何か変わったことがあったらすぐに当院あるいは近所の小児科の診察を受けるように」とだけ説明をしました。ところが、退院3日後(出生より13日目)より黄疸の増強と哺乳力の減退が現れました。母X2は、医師Yの退院時説明や、受診を急ぐことはないとの夫からの意見もあり、様子をみることとし、結局、外来受診したのは退院から8日後となりました。その結果、X1は核黄疸が進行し、治療を受けたものの、強度の運動障害のため寝たきりとなりました。X1及び両親は、医師Yに対し、X1に対する処置及び退院時の療養指導に不備があったとして約1億円の損害賠償請求を行いました。第1審では「X1に対する処置及び療養指導について過失はない」として原告の請求を棄却しました。同様に控訴審においても、「新生児特に未熟児の場合は、核黄疸に限らず様々な致命的疾患に侵される危険を常に有しており、医師が新生児の看護者にそれら全部につき専門的な知識を与えることは不可能というべきところ、新生児がこのような疾患に罹患すれば普通食欲の不振等が現れ全身状態が悪くなるのであるから、退院時において特に核黄疸の危険性について注意を喚起し、退院後の療養方法について詳細な説明、指導をするまでの必要はなく、新生児の全身状態に注意し、何かあれば来院するか他の医師の診察を受けるよう指導すれば足りる」として原告の請求を棄却しました。これに対し原告が上告したところ、最高裁は、療養指導義務につき過失を認め、原判決を破棄差し戻しとし、下記の通り判示しました(差し戻し審後の認容額約6400万円)。なぜそうなったのかは、事件の経過からご覧ください。事件の経過母X2は、Y産婦人科医院にて、妊娠34週に2200gの第3子(児X1)を出産(吸引分娩)しました。低出生体重児ではありましたが、出生時に児の異状は認められませんでした。しかし、出生後、X1には早期黄疸が認められるようになり、徐々に黄疸は増強してきました。母X2は、第一子、第二子出産の際にも新生児期に黄疸が出ており、知人からこのような場合には、黄疸が強くなると児が死ぬかもしれないと聞かされていたことから不安に思い、医師YにX1の血液型検査を依頼しました。検査の結果、X1の血液型は、母X2と同じO型と判定されました(後に再検査したところX1の血液型はO型ではなくA型と判明しました)。X1の黄疸は、生後4日目には肉眼的に認められるようになり、生後6日目に測定した総ビリルビン値は 2.5mg/dLでしたが、その後、X1が退院するまで肉眼的には黄疸が増強することはありませんでした。医師Yは、母X2に対し、血液型不適合はなく、黄疸が遷延するのは未熟児だからであり心配はないと伝えました。そして、退院時(出生より10日目)にも母X2に対し「血液型不適合もなく、黄疸が遷延しているのは未熟児だからであり、心配はない」、「何か変わったことがあったらすぐに当院あるいは近所の小児科の診察を受けるように」とだけ説明をしました。ところが、退院3日後(出生より13日目)より黄疸の増強と哺乳力の減退が現れました。母X2は、医師Yの退院時説明や、受診を急ぐことはないとの夫からの意見もあり、様子をみることとし、結局、A病院の小児科外来を受診したのは退院から8日後となりました。A病院受診時のX1は、体重2040gで顕著な肉眼的黄疸が認められ、自発運動は弱く、診察上、軽度の落葉現象が認められ、モロー反射は認められるものの反射速度は遅くなっており、総ビリルビン値は 34.1mg/dL(間接ビリルビン値 32.2mg/dL)でした。直ちに交換輸血が行われたものの、X1は強度の運動障害のため寝たきりとなりました。事件の判決「新生児の疾患である核黄疸は、これに罹患すると死に至る危険が大きく、救命されても治癒不能の脳性麻痺等の後遺症を残すものであり、生後間もない新生児にとって最も注意を要する疾患の一つということができるが、核黄疸は、血液中の間接ビリルビンが増加することによって起こるものであり、間接ビリルビンの増加は、外形的症状としては黄疸の増強として現れるものであるから、新生児に黄疸が認められる場合には、それが生理的黄疸か、あるいは核黄疸の原因となり得るものかを見極めるために注意深く全身状態とその経過を観察し、必要に応じて母子間の血液型の検査、血清ビリルビン値の測定などを実施し、生理的黄疸とはいえない疑いがあるときは、観察をより一層慎重かつ頻繁にし、核黄疸についてのプラハの第一期症状が認められたら時機を逸ずることなく交換輸血実施の措置を執る必要があり、未熟児の場合には成熟児に比較して特に慎重な対応が必要であるが、このような核黄疸についての予防、治療方法は、上告人X1が出生した当時既に臨床医学の実践における医療水準となっていたものである。・・・・(中略)・・・・そうすると、本件において上告人X1を同月30日の時点で退院させることが相当でなかったとは直ちにいい難いとしても、産婦人科の専門医である被上告人Yとしては、退院させることによって自らは上告人X1の黄疸を観察することができなくなるのであるから、上告人X1を退院させるに当たって、これを看護する上告人母X2らに対し、黄疸が増強することがあり得ること、及び黄疸が増強して哺乳力の減退などの症状が現れたときは重篤な疾患に至る危険があることを説明し、黄疸症状を含む全身状態の観察に注意を払い、黄疸の増強や哺乳力の減退などの症状が現れたときは速やかに医師の診察を受けるよう指導すべき注意義務を負っていたというべきところ,被上告人Yは、上告人X1の黄疸について特段の言及もしないまま、何か変わったことがあれば医師の診察を受けるようにとの一般的な注意を与えたのみで退院させているのであって、かかる被上告人Yの措置は、不適切なものであったというほかはない」(最判平成7年5月30日民集175号319頁)ポイント解説今回は「療養指導義務」がテーマとなります。前回までのテーマであった説明義務には、大きく分類して2種類あり、一つはインフォームド・コンセントのための説明義務、もう一つが今回のテーマである療養指導義務です。糖尿病における食事療法、運動療法に代表されるように、疾患の治療は、医師のみが行うのではなく、患者自身が療養に努めることで、功を奏します。しかし、医療は高度に専門的な知識を必要としますので、患者自らが適切な療養をするために、専門家である医師が、患者がなすべき療養の方法等を指導しなければなりません。インフォームド・コンセントのための説明義務が患者の自己決定のために行われるのに対し、療養指導義務は、患者の疾病に対する治療そのものであることに大きな違いがあります。すなわち、インフォームド・コンセントのための説明義務違反があったとしても、通常は、自己決定権の侵害として、精神的慰謝料(数十~数百万円程度)が認められるにとどまりますが、療養指導義務違反においては、患者の身体に生じた損害(死傷)として場合によっては数千万~数億円単位の損害賠償責任を負うこととなります。療養指導義務が民事訴訟において争われる類型としては、(1)退院時の療養指導(2)経過観察時の療養指導(3)外来通院時の療養指導があります。特に注意が必要となるのが、本事例のように医師の管理が行き届きやすい入院から目の届かない外来へと変わる退院時の療養指導(1)及び、頭部外傷等で救急外来を受診した患者を帰宅させる際に行う療養指導(2)です。本事例以外に退院時の療養指導義務が争われた事例としては、退院時に処方された薬剤により中毒性表皮壊死症(TEN)を発症し死亡した事例で、「薬剤の投与に際しては、時間的な余裕のない緊急時等特別の場合を除いて、少なくとも薬剤を投与する目的やその具体的な効果とその副作用がもたらす危険性についての説明をすべきことは、診療を依頼された医師としての義務に含まれるというべきである。この説明によって、患者は自己の症状と薬剤の関係を理解し、投薬についても検討することが可能になると考えられる。・・・(中略)・・・患者の退院に際しては、医師の観察が及ばないところで服薬することになるのであるから、その副作用の結果が重大であれば、発症の可能性が極めて少ない場合であっても、もし副作用が生じたときには早期に治療することによって重大な結果を未然に防ぐことができるように、服薬上の留意点を具体的に指導すべき義務があるといわなくてはならない。即ち、投薬による副作用の重大な結果を回避するために、服薬中どのような場合に医師の診察を受けるべきか患者自身で判断できるように、具体的に情報を提供し、説明指導すべきである」(高松高判平成8年2月27日判タ908号232頁)と判示したものがあります。また、救急外来において頭部打撲(飲酒後階段から転落)患者の帰宅時の療養指導が争われた事例(患者は急性硬膜下血腫等により死亡)では、「このような自宅での経過観察に委ねる場合、診療義務を負担する医師としては、患者自身及び看護者に対して、十全な経過観察を尽くし、かつ病態の変化に適切に対処できるように、患者の受傷状況及び現症状から、発症の危険が想定される疾病、その発症のメルクマールとなる症状ないし病態の変化、右症状ないし病態変化が生起した場合に、患者及び看護者が取るべき措置の内容、とりわけ一刻も早く十分な診療能力を持つ病院へ搬送すべきことを具体的に説明し、かつ了知させる義務を負うと解するのが相当である」(神戸地判平成2年10月8日判時1394号128頁)と判示されています。本判決を含めた判例の傾向としては、1)「重大な結果が生ずる可能性がある」場合には、たとえ当該可能性が低くとも、療養に関する指導をしなければならないとしていること2)「何か変わったことがあれば医師の診察を受けるように」といったような一般的、抽象的な指導では足りず、しっかりと症状等を説明し、どのような場合に医師の診察が要するか等、具体的に指導することが求められています。患者の生命、身体に関する必要な情報は提供されるべきであることは当然ですが、この医師不足の中で医師は多忙を極めており、すべての患者に対し、上記内容を医師が直接、口頭で説明することは、残念ながら現実的には非常に困難であるといえます。だからといって、医師による直接、口頭にこだわる余り、説明、指導の内容を縮減することは患者のためになりません。したがって、療養指導義務の主体や方法については、第8回「説明義務 その2」で解説したように、書面による指導や他の医療従事者による指導を適宜用いることで、柔軟に対応すべきです。もちろん、このような方法により法的な療養指導義務や説明義務を果たした上で、医師患者関係の形成のための医師による直接、口頭の説明、指導を行うことは、法的責任とは離れた「医師のプロフェッションとしての責任」として、果たすべきであることも忘れてはなりません。裁判例のリンク次のサイトでさらに詳しい裁判の内容がご覧いただけます。(出現順)最判平成7年5月30日民集175号319頁高松高判平成8年2月27日判タ908号232頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。神戸地判平成2年10月8日判時1394号128頁本事件の判決については、最高裁のサイトでまだ公開されておりません。

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脊椎手術後の最大有害事象、外科医は死亡に10点、患者は脳卒中に9.2点と評価

 脊椎手術後のさまざまな有害事象の影響について、患者と医師の認識の度合いを調査した結果、双方ともに項目間にはかなりのばらつきがあり、全体的には患者の方が医師よりも有害事象の影響を強く認識していることが明らかになった。脊椎手術後の有害事象はなお多く発生しているが、これまで患者中心のアウトカム評価ツールは開発されていない。米国・オレゴン健康科学大学のRobert Hart氏らは、手術結果とQOLにおいて有害事象の影響を考慮することは重要なファーストステップであるとして、両者の認識について評価する、合併症発生シナリオベースのサーベイ調査を行った。Spine誌オンライン版2012年11月2日号の掲載報告。 サーベイ調査は22の潜在的な周術期の有害事象(心筋梗塞、脳卒中、脊髄損傷、神経根損傷、馬尾損傷、失明、硬膜損傷、輸血、深部静脈血栓症、肺塞栓症、表在性感染症、深在性感染症、呼吸不全、尿路感染症、偽関節、隣接椎間障害、脊柱変形が持続、インプラント治療失敗、死亡、腎機能不全、消化管系の合併症、性機能障害)を、14人の脊椎手術専門外科医と、16例の成人脊柱変形患者に対して示し行われた。 各合併症が起きた場合の影響スコアを、総合的な重症度、手術に対する満足度、QOLへの影響からなる3つのカテゴリーで評価してもらい、Wilcoxon/Kruskal-Wallis検定にて外科医と患者との比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・外科医と患者の各合併症の平均影響スコアは、イベント間でばらつきがみられた。外科医では、最低が0.9点(輸血)、最高が10.0点(死亡)であり、患者では最低が2.3点(尿路感染症)、最高が9.2点(脳卒中)であった。・患者のスコアでは、6つの潜在的な有害事象(脳卒中、呼吸不全、心筋梗塞、肺塞栓症、硬膜損傷、輸血)について、3つのすべてのカテゴリーの評価が、外科医より一貫して高かった(p<0.05)。・さらに3つの合併症(腎機能不全、偽関節、深部静脈血栓症)は、1つあるいは2つのカテゴリーについて、患者の評価の方が高かった。 これらの結果を踏まえて著者は、「患者本位の立場から有害事象を説明することで、より完成度の高い手術結果の提供が可能となるであろう」と結論している。

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自家造血幹細胞移植患者の血小板減少症、出血時に行う治療的輸血が有効

 自家造血幹細胞移植患者にみられる血小板減少症の治療では、従来の予防的血小板輸血よりも、出血発生時に行う治療的血小板輸血が有効なことが、ドイツ・Klinikum NurembergのHannes Wandt氏らの検討で示された。欧米では、血小板産生能低下に起因する重度の血小板減少症の標準治療は、毎朝の血小板数の測定値に基づくルーチンの予防的血小板輸血とされる。一方、治療的血小板輸血が新たな治療戦略として有望なことを示唆するパイロット試験の結果が知られているという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月7日号)掲載の報告。治療的血小板輸血の有用性を無作為化試験で評価研究グループは、血小板産生能低下による血小板減少症の新たな治療戦略である治療的血小板輸血の、輸血回数や安全性に及ぼす影響を評価する多施設共同非盲検無作為化試験を実施した。ドイツの8つの専門施設から強化化学療法を施行された急性骨髄性白血病患者(16~80歳)および自家造血幹細胞移植を施行された造血器腫瘍患者(16~68歳)が登録された。これらの患者が、出血の発生時に血小板輸血を行う群(治療的血小板輸血群)または毎朝血小板数を測定して≦10×109/Lの場合に予防的に血小板輸血を行う群(予防的血小板輸血群)に無作為に割り付けられた。 介入を行う担当医には治療割り付け情報がマスクされなかった。主要評価項目は血小板輸血の回数とした。平均輸血回数が33.5%低下、急性骨髄性白血病患者で非致死的重度出血が増加2005年2月1日~2010年3月31日までに396例(治療的血小板輸血群199例、予防的血小板輸血197例)が登録され、391例(197例、194例)が解析の対象となった。急性骨髄性白血病患者は190例で、そのうち治療的血小板輸血群が94例(年齢中央値54.0歳、男性49%)、予防的血小板輸血群は96例(54.0歳、48%)であり、自家造血幹細胞移植患者は201例で、そのうち治療的血小板輸血群が103例(55.0歳、60%)、予防的血小板輸血群は98例(56.5歳、63%)だった。患者1人当たりの平均輸血回数は、治療的血小板輸血群が1.63回と、予防的血小板輸血群の2.44回に比べ33.5%有意に低下した(p<0.0001)。そのうち急性骨髄性白血病患者では、治療的血小板輸血群が1.83回と、予防的血小板輸血群の2.68回よりも31.6%有意に低下し(p<0.0001)、自家造血幹細胞移植患者ではそれぞれ1.18回、1.80回と34.2%の抑制効果(p=0.0193)が認められた。自家造血幹細胞移植患者では大出血のリスクは増加しなかったが、急性骨髄性白血病患者では非致死的なgrade 4の出血(ほとんどが中枢神経系出血)のリスクが増大した。非致死的出血は15例にみられた。網膜出血が両群4例ずつのほか、治療的血小板輸血群で膣出血が1例、脳出血が6例に認められた。試験期間中に治療的血小板輸血群で致死的脳出血により2例が、大出血とは無関係の死因で両群5例ずつ、合計12例が死亡した。著者は、「治療的血小板輸血は自家造血幹細胞移植施行後の新たな標準的治療となる可能性があるが、急性骨髄性白血病では予防的血小板輸血を標準とすべきである」と結論し、「新たな治療戦略は、医療スタッフが十分な教育を受けて経験を積み、中枢神経系出血の初回徴候に対し適切なタイミングと方法で対処可能な場合に限り、血液疾患専門施設において使用すべきである」と指摘している。

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主幹動脈大血管閉塞脳卒中の血栓除去術、Trevoデバイスの有用性を確認:TREVO 2試験/Lancet

 主幹動脈大血管閉塞脳卒中に対する機械的血栓回収療法では、新たに開発されたTrevo血栓回収デバイスは従来のMerci血栓回収デバイスに比べ再開通率が優れることが、米国・エモリー大学医学部のRaul G Nogueira氏らの検討(TREVO 2試験)で示された。急性虚血性脳卒中の標準治療は遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による血栓溶解療法だが、適応が発症早期に限定されたり、広範な血栓では再開通率が不良などの限界がある。機械的血栓回収療法は血栓溶解療法よりも再開通率が優れる可能性があるが、現行の機械的デバイスは再開通不成功率が最大20~40%に達するという。Lancet誌2012年10月6日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。Trevoデバイスの有効性と安全性を無作為化非劣性試験で評価TREVO(Thrombectomy REvascularization of large Vessel Occlusions in acute ischemic stroke)2試験は、新たに開発されたステント様デバイスであるTrevo血栓回収デバイスの有効性と安全性を、すでに米国食品医薬品局(FDA)認可済みのMerci血栓回収デバイスと比較するプロスペクティブな非盲検無作為化非劣性試験。対象は、症状発現後8時間以内で、血管造影にて主幹動脈大血管閉塞脳卒中が確認されたNIHSS(NIH脳卒中スケール)スコア8~29の成人患者(18~85歳)であった。これらの患者が、TrevoデバイスまたはMerciデバイスによる血栓除去術を受ける群に無作為に割り付けられた。有効性に関する主要評価項目は、非盲検下に中央検査室で判定された割り付けデバイス単独による再開通率[脳梗塞血栓溶解(TICI)スコア≧2]であり、安全性の主要評価項目は治療関連有害事象の複合エンドポイント(血管穿孔/壁内解離、症候性頭蓋内出血、未閉塞血管部位の塞栓形成、手術や輸血を要する穿刺部位合併症、周術期死亡など)とした。非劣性が確認された場合は優越性の検証も行うこととした。再開通率:86% vs 60%、有害事象の複合エンドポイント:15% vs 23%2011年2月3日~12月1日までに、米国の26施設およびスペインの1施設から178例が登録され、Trevo群に88例(年齢中央値70.2歳、男性45%、NIHSSスコア中央値19、rt-PA無効例58%、症状発症から動脈穿刺までの時間中央値4.7時間)、Merci群には90例(同:70.8歳、40%、18、50%、4.2時間)が割り付けられた。再開通率はTrevo群が86%(76/88例)と、Merci群の60%(54/90例)に比べ有意に優れた[オッズ比(OR):4.22、95%信頼区間(CI):1.92~9.69、優越性検定:p<0.0001]。90日後の機能的自立率(修正Rankinスケールのスコアが0~2の患者の割合)は、Trevo群が40.0%(34/85例)であり、Merci群の21.8%(19/87例)よりも有意に良好だった(OR:2.39、95%CI:1.16~4.95、p=0.0130)。90日後の生存率は両群間に差を認めなかった(p=0.1845)。安全性の複合エンドポイントの発生率は、Trevo群が15%(13/88例)、Merci群は23%(21/90例)であり、両群間で同等だった(OR:0.57、95%CI:0.26~1.22、p=0.1826)。血管穿孔については、Trevo群が1%(1/88例)と、Merci群の10%(9/90例)よりも有意に少なかった(OR:0.10、95%CI:0.01~0.83、p=0.0182)。著者は、「rt-PAが適応外または無効であった主幹動脈大血管閉塞脳卒中患者では、Trevo血栓回収デバイスはMerci血栓回収デバイスよりも優先すべき治療法と考えられる」と結論している。

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扁桃摘出術後のステロイド全身投与、出血リスクに影響はないが・・・

 扁桃摘出術後の悪心・嘔吐の予防を目的に行われるステロイド全身投与は、出血イベントを増加させないが、出血が起きた場合の重症度が上がり、出血に対する再手術の施行率が高くなることが、カナダLaval大学(ケベックシティ)のJennifer Plante氏らの検討で示された。扁桃摘出術は耳鼻咽喉科領域で世界的に最もよく行われている手術だが、根本的な術後の有害事象として悪心・嘔吐が高頻度にみられる。対策としてステロイドの全身投与が行われ、最近のガイドラインでは5-HT3受容体拮抗薬の併用が推奨されている。ステロイドの全身投与により扁桃摘出術後の出血の発生率が増加するとの指摘があるという。BMJ誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月28日号)掲載の報告。術後出血、再介入のリスクをメタ解析で評価研究グループは、扁桃摘出術施行患者に対するステロイド全身投与の術後出血および再介入のリスクを評価するために、無作為化対照比較試験の系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。データベースを検索し、得られたレビュー論文や臨床試験論文の参考文献も精査した。対象は、扁桃摘出術時のステロイド全身投与と対照を比較した無作為化対照比較試験とした。主要評価項目は術後出血、副次的評価項目は出血による入院、出血による再介入、輸血、死亡とした。リスクとベネフィットのバランスを重視すべき29試験(2,674例)が解析の対象となった。7試験はバイアスのリスクが低いと判定されたが、術後出血の系統的な同定を意図してデザインされた試験はなかった。ステロイド全身投与によって扁桃摘出術後出血の発生率が増加することはなかった[29試験、2,674例、オッズ比:0.96、95%信頼区間(CI):0.66~1.40、I2=0%]。ステロイド全身投与で出血がみられた患者では、手術による再介入の頻度が有意に高かった(12試験、1,178例、オッズ比:2.27、95%CI:1.03~4.99、I2=0%)。死亡例の報告はなかった。ステロイド全身投与で出血による入院は増加しなかった(17試験、1,722例、オッズ比:1.16、95%CI:0.68~2.00、I2=19%)。輸血および死亡について検討した試験はなかった。異質性の可能性を把握し、結果の頑健性を評価するために感度分析を行ったところ、得られた知見の整合性が確認された。著者は、「ステロイド全身投与により扁桃摘出術後の出血イベントは増加しないが、出血が起きた場合の重症度が上がり、そのため出血に対する再手術の施行率が上昇する可能性がある」と結論し、「ステロイド全身投与の使用条件を明確化するにはさらなる検討を要する。現時点では、ステロイド全身投与は慎重に行うべきで、扁桃摘出術による術後の悪心・嘔吐の予防ではリスクとベネフィットのバランスを重視し、とくに子どもへのルーチン投与は行うべきではない」と指摘する。

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手術患者に対するトラネキサム酸、輸血リスク低減は確たる証拠あり

 手術における輸血リスクを低減するとされるトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)の有効性エビデンスについて、英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのKatharine Ker氏らによるシステマティックレビュー・累積メタ解析の結果、過去10年に遡って強いエビデンスがあり、輸血に関してはこれ以上試験を行っても新たな知見はもたらされないだろうと報告した。しかし、「血栓塞栓症イベントと死亡率に対する影響については、いまだ明らかではない」として、手術患者にその情報を提供し選択をさせるべきであると結論。小規模な臨床試験をこれ以上行うのではなく、種々雑多な患者を含む大規模プラグマティックな試験を行うことの必要性について言及した。BMJ誌2012年5月26日号(オンライン版2012年5月17日号)掲載報告より。システマティックレビューで129試験・総患者数1万488例を解析 Ker氏らは、手術患者へのトラネキサム酸投与に関する輸血、血栓塞栓症イベント、死亡に関する効果の評価を目的とした。Cochrane対照設定試験中央レジスター、Medline、Embaseの初刊行~2011年9月の間の発表論文、WHO国際臨床試験登録プラットフォームと関連論文参照リストを検索し、解析論文を特定した。 対象となったのは、手術患者についてトラネキサム酸投与と非投与またはプラセボ投与を比較した無作為化対照試験で、アウトカムとして、輸血を受けた患者数、血栓塞栓症イベント件数(心筋梗塞、脳卒中、深部静脈血栓症、肺塞栓症)、死亡件数を測定していたものとした。論文執筆の言語や刊行の有無などは問わなかった。 結果、1972~2011年の間の129試験・総患者数1万488例のデータが解析に含まれた。血栓塞栓症イベントに対する効果は不明、死亡に対する効果も不確定 トラネキサム酸投与は輸血を受ける確率を3分の1低減することが認められた(リスク比:0.62、95%信頼区間:0.58~0.65、P<0.001)。この効果は、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合も維持された(同:0.68、0.62~0.74、P<0.001)。 一方で、心筋梗塞(同;0.68、0.43~1.09、P=0.11)、脳卒中(同:1.14、0.65~2.00、P=0.65)、深部静脈血栓症(同:0.86、0.53~1.39、P=0.54)、肺塞栓症(同:0.61、0.25~1.47、P=0.27)については効果が明らかではなかった。 死亡の発生は少なかった(同:0.61、0.38~0.98、P=0.04)が、割付隠蔽化を用いて解析に制限をかけた場合は、考慮すべき不確定さが認められた(同:0.67、0.33~1.34、P=0.25)。 累積メタ解析の結果、輸血に対するトラネキサム酸の効果のエビデンスは確たるものであること、過去10年にわたってそのエビデンスは確実に入手できることが示された。

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在宅医療、ご関心ありますか?

今回の「医師1,000人に聞きました」、テーマは “在宅医療”。厚生労働省の方針により、2012年度から在宅・介護への支援策が大幅に拡充されることとなりました。市町村ごとに連携拠点を設け、スタッフの人件費を補助するなど、将来的な死亡者数の増加に向けて対応を進めるとのこと。既に在宅専門で開業されている方、ご自身のクリニックや中核病院で部分的に携わっている方など様々かと思いますが、先生はいかがお考えでしょうか?ということで今回は、在宅医療に対する関心や不安要素についてお尋ね!厚労省や家族、その他関係者に期待することなど、多数寄せられたコメントも必見です。結果概要はこちらコメントはこちら設問詳細在宅医療に対する先生方のお考えについてお尋ねします。1月30日の日本経済新聞によると厚生労働省は2012年度から在宅での医療・介護への支援策を大幅に拡充する。医療と介護サービスを一体提供するための連携拠点を2000カ所設けるほか、深夜の往診などの報酬を上げ、医師らが積極的に取り組むように促す。(中略)厚労省は12年度、地域の在宅医療の核となる連携拠点を現在の10倍の約100に増やす。在宅医療に積極的な病院や診療所などを拠点に選定。ケアマネジャーの資格を持つ看護師など、医療と介護の両方に詳しいスタッフの人件費を補助する。日本の死亡者数は20年後に現在より約40万人多い160万人程度まで増える見込み。厚労省はそれまでに連携拠点を各市町村で1カ所以上、計2000程度まで増やす方針だ。当初は予算措置で後押しするが、徐々に地域の医療関係者が自律的に進めるよう診療報酬などで促す。日本は1950年ごろには8割超の人が自宅で最期を迎えていたが、現在は12.4%。欧米より低く、その分、平均入院日数が米国の5倍、ドイツの3倍と長い。在宅の医療・介護が充実すれば、高齢者らが退院して自宅へ戻りやすくなる。長期入院が減り、病床不足の解消にもつながる。がん患者の自宅療養に備え、抗がん剤の調剤に必要な無菌室を整備し、地域の薬局が共同利用できるようにする。(後略)』とのこと。そこで先生にお尋ねします。Q1. 在宅医療に対する関心度をお聞かせください。在宅専門医療を行なっている/今後行いたいご自身のクリニックにて、外来診療と並行で在宅医療を行なっている/今後行いたい地域の中核病院にて、在宅医療に携わっている/今後携わりたい自分自身の患者さんで必要に迫られた場合のみ行なっている/今後行いたい在宅医療に携わることは考えていない(.Q1で 「在宅医療に携わることは考えていない」を選択された先生以外)Q2. 在宅医療を行なう、あるいは今後始める上で、障害もしくは不安に感じることがありましたらお選び下さい。24時間365日での対応が可能かどうか提携先病院との関係構築総合的な診療を行うこと患者、患者家族とのコミュニケーション多職種間でのコミュニケーション経営・報酬ご自身の時間(余暇)が減る可能性その他(         )Q3. コメントをお願いします(診療報酬の次回改定へのご意見、厚労省・勤務施設・メディアほか関係各所に期待すること、不安に感じること、患者から要望されること、既に行なっている方はご自身のご経験など、在宅医療に関することであればどういったことでも結構です)アンケート結果Q1. 在宅医療に対する関心度をお聞かせください。(.Q1で 「在宅医療に携わることは考えていない」を選択された先生以外)Q2. 在宅医療を行なう、あるいは今後始める上で、障害もしくは不安に感じることがありましたらお選び下さい。2012年5月7日(月)実施有効回答数:1,000件調査対象:CareNet.com医師会員結果概要『在宅医療に携わっている』『今後携わりたい』医師は全体の3割実施状況あるいは今後の意欲といった形で尋ねたところ、『在宅専門医療』で診療中あるいは実施したいとの回答は6.4%。在宅専門でなく外来診療と並行での形を希望する医師は、『自らのクリニック』10.4%、『地域の中核病院』14.0%となった。これらを合計した30.8%の医師が、現在在宅医療に携わっている、あるいは今後携わりたいと考えている結果となった。在宅医療を始める上での不安要素、最多は『24時間365日対応が可能かどうか』在宅医療に対し何らかの関心を持つ医師に、今後始める上で障害もしくは不安に感じることを尋ねたところ、74.5%の医師が『24時間365日対応』への不安を挙げた。次いで、患者急変時等に協力する『提携先病院との関係構築』47.0%、『自身の時間(余暇)が減る可能性』33.4%と続いた。24時間365日対応については、「複数の担当者で輪番できればかなりのことができる」といった意欲的な声も一部見られた。CareNet.comの会員医師に尋ねてみたいテーマを募集中です。採用させて頂いた方へは300ポイント進呈!応募はこちらコメント抜粋 (一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「付け焼き刃的な診療報酬改定では…。 本質的な問題として、医師の偏在や能力の検定、患者/患者家族及び、マスコミを含めた教育についての幅広い論議が必要であろう。 その内容として、実務担当している我々とすると、在宅で療養することは、先進的治療を行うことではなく、ケア中心の治療になるし、その過程で在宅での(想定内の)急変や看取りを行うことになる。今のように、何かあったらすぐに警察沙汰になる、マスコミの報道対象になる、といった風潮に対して、社会としてもっと成熟すべきである、といったことなど。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,神経内科)「“在宅の医療・介護が充実すれば、高齢者らが退院して自宅へ戻りやすくなる”というのを、“高齢者がどこに住むのか”という都市計画から政府が組み上げて行かないと、抜本的な改革にならないし長続きしないと思う。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「複数の担当者で輪番するしかない!グループ化できればかなりなことができる。」(勤務医(総合医志向),60代,脳神経外科)「そもそも一人事業所で24時間対応などできません。在宅医療の前提がそうであるなら、現在可能な範囲でしている在宅診療から撤退するしかありません。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,内科)「国が医療費削減を目指しているなら、方向性は間違っている。在宅医療には病院以上に費用がいるはず」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「現在勤務している病院が在宅医療も行っています。しかし、日中の仕事であればよいのですが、夜間対応は本来の仕事に影響ありますので、控えさせていただきたいと思っています。 従って、夜間対応専門の医師に対する診療報酬を期待します。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「訪問診療の点数を上げられても、その点数で請求するとレセプトの平均点数が上がってしまい、厚生局の個別指導の対象となってしまう。また訪問診療は監査の対象となるため、事務処理が面倒である。点数は低くても事務的に楽な往診で請求しなければならない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,内科)「在宅死に関する、意識改革が無ければ、結局、病院での死から施設での死に代わるだけで、医療費負担が介護費負担に代わるだけになるのではと懸念を感じる」(勤務医(総合医志向),50代,外科)「24時間体制に対する報酬はしっかり考えてもらえないと踏みこめません。」(勤務医(今後開業を検討),40代,消化器科)「在宅メインで開業したいと考えているが、まだまだ報酬などの面で不透明なので、一抹の不安はある。」(勤務医(専門医志向),30代,救急医療科)「24時間対応するためのスタッフを雇用するための、継続した財政的支援をお願いしたい。」(勤務医(総合医志向),50代,内科)「診療報酬の少なさとコメディカルへの給与が不安」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「かかりつけ医などのクリニックで診療する場合や、難病や重度障害者に対して拠点病院とかかりつけ医が協働する場合、さらに多職種が関わりカンファレンスを繰り返す場合などに、きめ細かく報酬を設定してもらいたい。」(勤務医(専門医志向),50代,神経内科)「名ばかりの在宅医療施設も多いと聞く。誠実にやっている医療機関の評価にも影響するので実績等の把握が必要。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),40代,消化器科)「現実に請求できるような点数設定にしてほしい。高額すぎると、地方では請求できない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),50代,循環器科)「今でも不当に安い診療報酬しか付いていないので、まともに引き合うだけの報酬をつける気があるのかどうか、在宅診療が常態化、一般化しありがたみが薄れれば現れるであろうモンスターペイシェントなどが気がかりだ。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),40代,眼科)「報酬の欲しい開業医が手を挙げるだろうが、夜間、休日など自分が遊びたい時間は全部総合病院に丸投げするのが目に見えている。」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「介護に携わる人に対する報酬が低すぎて、定着しないため、そうした方々の報酬体系を考えて頂きたい」(勤務医(今後開業を検討),40代,整形外科)「田舎の場合、訪問先どうしの距離が離れすぎていて移動時間ばかりかかって、採算が取れません。」(勤務医(総合医志向),30代,外科)「御家族の介護力が低下する中、在宅医療をフォローする地域の体制の整備が不十分なままで診療報酬による誘導がなされることはあるべき姿ではないと思われる。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「“病院にいるようなサービスは期待できないことを患者および家族に覚悟させる”覚悟が行政側にあるのか約束させるべき。 美辞麗句を並べて在宅を推進すると矛盾をすべて現場がかぶることになる。」(勤務医(総合医志向),50代,代謝・内分泌科)「在宅で看取るとおっしゃられていたご家族が急変時に混乱され方針を決定することの重要性を痛感した」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,内科)「必要性は十分に認識しているが、設備の整った場所での診療にこだわりたいので、今は関心がありません。」(勤務医(総合医志向),50代,消化器科)「国の医療政策に関する説明を現場に丸投げせずに、患者及び国民に直接積極的な啓蒙をしてほしい。 ・実際に行った医療政策の検証結果およびその責任を明確に国民に示すべき。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「在宅診療をするには、その家まで行く時間が必要。それをどう効率化するか。また夜間専門の開業医・クリニックが合ってもいいかなと思います。」(勤務医(総合医志向),50代,精神・神経科)「急速な高齢化で、どんなに制度を充実させても、在宅で看ることができる家族がいる場合の方が少ないように感じます。現実には在宅医療ができる家族は少ないと思います。」(勤務医(専門医志向),50代,外科)「今後、団塊世代の高齢化を控え、病院だけで支えることは困難。在宅による医療の必要性を感じています。」(勤務医(今後開業を検討),30代,その他)「都市部と地方で同じシステムの構築は難しいと思うのですが…。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「在宅ケアは理想的ですが、痴呆・寝たきり状態の様な患者は、家族の犠牲が大きすぎる。高齢者の対する検査・治療の制限も必要」(勤務医(専門医志向),50代,泌尿器科)「在宅医療が輪番制など医師の個人負担の軽減が肝要」(勤務医(総合医志向),50代,呼吸器科)「個人経営の医院で24時間365日対応は不可能であり、結果、地域の病院に対応をお願いする事になってしまうと考えます。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「老人ホームが多くありますが、ナースがいても些細な事でも全て主治医に電話で指示を仰ぐような指導がなされているところも多いです。往診そのものよりも、書類の多さや電話対応などを減らすことができれば中身の濃い往診を多数こなせるのではと思います。」(勤務医(総合医志向),30代,内科)「自分は向いていないと思うが、在宅に携わってくださる先生が多い地域は中核病院としても非常に助かり、かつトラブルも少ない。ぜひ押し進めていただきたい。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「懸念事項 ・患者さんを自宅で看取るというご家族の覚悟が あるのか、 ・在宅医療への過度な期待はないか、 ・在宅医療に何を求めるのかをきちんと患者さん 側が見据えているか」(勤務医(今後開業を検討),50代,精神・神経科)「在宅は、家族、しかも、主に女性を介護という終わりの見えない苦行に向かわせるだけのものにすぎない。自宅で過ごせる幸いな高齢者がどれだけいるというのだろう。それを推進する意図が何であるのか、まったく理解できない。」(勤務医(専門医志向),30代,救急医療科)「中核病院が遠方の、田舎の診療所では、いやでも在宅医療を行わなくてはならない。」(開業医(訪問診療の実施を掲げている),60代,内科)「家族の意欲が最も重要で、自宅の物理的な状況、家族を支援する力が大事だと思います。 また、在宅での主役は本人のはずですが、実際には家族が気持ちよく介護できるかどうか、が最重要課題だと思いますので、家族が主役だろうと考えています。 その家族を引き立てるために、医師は縁の下で支える程度で良いのだろうと思います。」(勤務医(総合医志向),40代,リウマチ科)「可能な限り対応したいとは思っているが、現在でもほぼ自由な時間がないほど多忙なため、現実的に行えない。在宅対応の医師を雇わないと難しい」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,泌尿器科)「結局連携体制とって協力しない方、施設も多く自分が他の 連携医の深夜帯の仕事をせざるを得ず、燃え尽きた経験があるので自分の出来る範囲でしている。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「何時呼ばれるかわからない状態での在宅診療を一人で行う事が不安です。夜もおちおち眠れません。日中は外来があります。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),50代,外科)「1人の医師に責任が重いシステムなため、出来れば携わりたくない。」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「環境整備がないと(交代制など)ないと疲弊するのでは?」(勤務医(専門医志向),40代,外科)「一人で365日は不可能。と言ってなかなか仲間は見つけられない。」(勤務医(専門医志向),60代,腎臓内科)「希望の無い仕事はしない」(勤務医(専門医志向),50代,皮膚科)「亡くなる人は増えるが、拠点の定員は満たされず、かえって医師不足が加速すると考える。」(勤務医(専門医志向),40代,精神・神経科)「在宅医療は時流だと思います。自宅で看取られたいのは、心情として理解できます。」(勤務医(総合医志向),40代,内科)「クリニックで行うときには、グループで夜間や休日の対応をシェアすることが不可欠と思う。また病院の場合、医師や看護師等は、複数で対応できるような人員確保が必要。」(勤務医(総合医志向),50代,小児科)「高齢者が多い中、家族の協力が得られないケースが多いように見受けられます。人任せ、といったところでしょうか?まず、家族が受け入れることのできる体制、あるいは、家族が受け入れてやっていくんだという体制を時間がかかってでも行わなければ、今のままでは医療体制は崩壊すると感じています。厚生省が動きだすのが遅すぎです!」(勤務医(総合医志向),30代,外科)「バス運転手には休みを取らせる義務があるのに、医者には休みを取らせないのか、国民も政府も矛盾を感じないのか。」(勤務医(総合医志向),50代,脳神経外科)「診療サイドには加算がついたけれども、在宅介護をする家族には解決しなければいけない多数の問題が残存している。この解決に乗りださなければ、根本的推進にはならない」(勤務医(総合医志向),50代,内科)「在宅での看取りを完遂することには、多くのハードルがあり、結局最後は病院に搬送されてくるケースが多い。往診医による見取りをぜひ進めていただきたい。また、これとは別に家族の受け入れが悪くなっている時代の流れがあり、なかなか在宅療養が進まないのが現実である。」(勤務医(今後開業を検討),50代,内科)「何かというと医療訴訟になってしまう昨今において、在宅でお看取りした後に、些細なことで訴えられてしまう可能性があるのではないか。」(勤務医(専門医志向),40代,代謝・内分泌科)「最新医療をやっていきたい」(勤務医(専門医志向),40代,循環器科)「金をかけずに(開業医等の善意に期待して)入院患者を減らそうという目論見で到底納得できない。満足の得られる医療を提供しようと思うのであれば、それ相当に金をかけるべき。」(勤務医(専門医志向),40代,小児科)「個人に負担がかからないか心配です。チーム医療の中で考えないと難しいと思います。」(勤務医(今後開業を検討),50代,呼吸器科)「受け入れ先の病院の確保が一番問題。受け入れ拒否することもあるので。」(開業医(外来のみ/外来に加えて必要に迫られた場合のみ往診),40代,内科)「今後、在宅医療は必要となることは必須であり、関わりたいとは考えますが、本院でも、医師不足が深刻であり、日常の診療にも支障が生じており、在宅医療を考えることすら、困難な状況です。」(勤務医(専門医志向),40代,消化器科)「自宅で臨終を迎えるようにするという方針は間違っていないと思うが、総合内科的な技量を持った医師を育てないと、患者家族への押し付けに終わってしまいそう。」(勤務医(総合医志向),40代,小児科)「24時間拘束のようになりはしないか、不安がある。」(勤務医(今後開業を検討),50代,内科)「重症心身障害児(者)医療を行っている。在宅重症心身障害児(者)のケアをやらねばと考えてはいるが、医師数・ナース数からして無理であり、悩んでいる。」(勤務医(専門医志向),60代,小児科)「在宅の件数を増やせば毎日夜の対応に追われて身体が持たない。在宅もインターネットの情報が氾濫して無理な要求をしてくる家族も多く不安である。」(勤務医(総合医志向),50代,循環器科)「介護を必要とする人をまとめたほうが経済的。無理して在宅にする必要はない。」(勤務医(専門医志向),60代,外科)「入院が必要な患者が在宅医療になってしまうことを危惧しています。」(勤務医(総合医志向),50代,小児科)「個人的には在宅医療は必要であるとは考えますが、自分が携わるつもりは今の所ありません。 在宅もいいのですが、大規模で比較的安い値段の施設は作れないものでしょうか? 在宅で介護している方をもっと社会に出したほうが経済的にいいような気がするのですが… 家族が過度な期待をしないように(やがてはモンスター化するでしょうから)説明をしないといけないでしょうね。」(勤務医(専門医志向),30代,脳神経外科)「無理な患者まで退院させて在宅にならなければいいが。」(勤務医(総合医志向),50代,基礎医学系)「小児における在宅医療には問題が山積みなため、今後は高齢者のみならず小児における検討を望む(NICU退院者や脳症、髄膜炎後遺症の寝たきり患者などニーズは多いので)」(勤務医(専門医志向),40代,小児科)「患者家族に在宅を勧めることが大変に感じます。」(勤務医(総合医志向),40代,小児科)「血液内科医として専門性を高めた医療を行いたいと考えているため。血液内科と在宅医療はなかなかリンクが難しい。 ただし、輸血などが在宅で行えることが望ましいと考えているため、一部血液内科でQOLを維持するために輸血を行える在宅医がいるとよいと思う。」(勤務医(専門医志向),20代,血液内科)

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オフポンプCABG対オンポンプCABGの30日アウトカム

冠動脈バイパス術(CABG)の施行について、心拍動下(オフポンプ)CABGの人工心肺(オンポンプ)CABGに対する相対的な有益性とリスクを検討する国際多施設共同無作為化対照試験が行われた。カナダ・マクマスター大学のAndre Lamy氏ら研究グループによるもので、血液製剤や術中出血、合併症の減少など周術期の有益性は認められる一方、血行再建術の早期再施行リスクの上昇が認められたと報告している。NEJM誌2012年4月19日号掲載報告より。30日時点の優位性を79施設で比較研究グループは2006年11月~2011年10月の間に19ヵ国79施設から、CABGが予定されていた4,752例を登録して試験を行った。被験者は81%が男性、平均年齢は68歳だった。被験者は、オフポンプCABG群(2,375例)またはオンポンプCABG群(2,377例)に無作為に割り付けられた。第1の共通主要アウトカムは、無作為化30日後の死亡、非致死性の脳卒中、非致死性の心筋梗塞、または透析を必要とする腎不全の新規発症の複合とした。血行再建術の早期再施行リスクは増加結果、オフポンプCABGとオンポンプCABGの間に、主要複合アウトカムの発生率についての有意差はみられなかった(9.8%対10.3%、オフポンプ群のハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、P=0.59)。個々のアウトカムについても同様だった。オフポンプCABGはオンポンプCABGと比較して、血液製剤の輸注量(50.7%対63.3%、相対リスク:0.80、95%信頼区間:0.75~0.85、P

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「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」更新情報

平成24年4月25日付でPMDA(医薬品医療機器総合機構)より、医薬品・医療機器等安全性情報が更新されました。ぜひ、ご注意ください。【目次】1.輸血血液製剤の遡及調査について2.医薬品による重篤な皮膚障害について3.重要な副作用等に関する情報4.使用上の注意の改訂について(その235)  ピオグリタゾン塩酸塩・メトホルミン塩酸塩他(14件)5.市販直後調査の対象品目一覧(参考資料) 「妊娠と薬情報センター」事業における協力病院の拡大について ↓↓詳細はこちら↓↓http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_anzen/anzen2012.html ↓↓「医薬品・医療機器等安全性情報 No.290」PDFはこちら↓↓http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_anzen/file/PMDSI290.pdf 【医薬品医療機器情報提供ホームページ】http://www.info.pmda.go.jp

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ACC 2012 速報 動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

経口プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗剤は、「トロンビンによる血小板凝集」の抑制という、新たな機序を持つ抗血小板剤である。しかし、動脈硬化性疾患例全般に対する有用性は、TRA 2°P-TIMI 50試験の結果、疑問符がついた。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のDavid A. Morrow氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。なお、本試験は2月7日、米国Merck社から概要が公表されている。本試験の対象は、心筋梗塞(MI)、虚血性脳血管障害(iCVD)あるいは末梢動脈疾患(PAD)の既往を有する26,449例。全例、病態は安定しており、標準的薬物治療を受けていた。既往歴はMIが最多で67%、次いでiCVDの19%、PADの14%だった。チエノピリジン系を含む抗血小板薬併用(DAPT)は、MI既往例の80%弱、PADの28%、iCVDの8%に認められた。これら26,449例は、PAR-1拮抗剤 "vorapaxar" 2.5mg/日群(13,225例)とプラセボ群(13,224例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。しかし試験開始1年後、PAR-1拮抗剤群におけるiCVD既往例の頭蓋内出血増加を、安全性監視委員会から指摘される。iCVD例(4,883例)の追跡はこの時点で中止され、残り21,556例が、最終的に2.5年間〔中央値〕追跡された。ただし、評価項目の解析には、iCVD例も含めた。その結果、有効性の一次評価項目である「心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中」は、PAR-1拮抗剤群でプラセボ群に比べ有意に減少していた(9.3%/3年 vs 10.5%/3年、ハザード比 [HR]:0.87、95%信頼区間 [CI]:0.80~0.94、p<0.001)。iCVD例を除外しても同様で、PAR-1拮抗剤群におけるHRは0.84だった(p<0.001)。一方、PAR-1拮抗剤群では、出血も有意に増加していた。安全性一次評価項目である「GUSTO分類中等度~重度出血」(要輸血・血行動態著明増悪 [含む頭蓋内出血])発生率は、プラセボ群の「2.5%/3年」に対し「4.2%/3年」だった〔HR:1.66、p<0.001)。iCVD例を除外して解析しても同様だった(HR:1.55、p=0.049)。そこで、上記「有効性一次評価項目」と「安全性一次評価項目」を併せ、「全般的有効性」として発生リスクを比較した。その結果、PAR-1拮抗剤群とプラセボ群に有意差は認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.90-1.04、vsプラセボ群)。iCVD例を除いて解析しても、同様の結果だった(HR:0.96、95%CI:0.88~1.05) 。この結果を受けMorrow氏は、PAR-1拮抗剤が全ての動脈硬化性疾患例に適しているとは思わないとした上で、有用性が期待できる患者群の特定が重要だと述べた。本試験のサブ解析からは、体重60kg以上でiCVD既往のないMI患者における、有用性が示唆されている。

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ACC 2012 速報 "On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験

わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。

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術後輸血戦略は制限的輸血が妥当

術後輸血戦略について、非制限的に行う輸血(自由輸血)が制限的輸血と比較して、術後の死亡率を低下したり回復を促進はしないことが、股関節手術を受けた心血管リスクの高い高齢患者を対象とした無作為化試験の結果、明らかにされた。また被験者の特性の一つでもあった心血管疾患の院内発生率も抑制できなかったことも示された。術後輸血については、ヘモグロビン閾値が論争の的となっている。そこで米国・ニュージャージー医科歯科大学のJeffrey L. Carson氏らは、より閾値の高い輸血者のほうが術後回復が促進されるかどうかについて検証した。NEJM誌2011年12月29日号(オンライン版2011年12月14日号)掲載報告より。術後患者をヘモグロビン閾値8g/dL未満と10g/dLに無作為に割り付け試験は2004年7月~2008年2月の間に、米国とカナダの47の医療機関で被験者を登録して行われた。被験者は、心血管疾患の既往歴またはリスク因子のいずれかを有し、股関節骨折で手術を受け、術後ヘモグロビン値が10g/dL未満の50歳以上の患者2,016例(平均年齢81.6歳、年齢範囲:51~103歳)であった。研究グループは被験者を無作為に、自由輸血戦略群(ヘモグロビン閾値10g/dL)または制限的輸血戦略群(貧血症状があるか医師の裁量でヘモグロビン閾値<8g/dL)に割り付け追跡した。主要転帰は、追跡調査60日後の死亡または人の介助を受けずには部屋の端から端まで歩くことができない(自由歩行不能)の割合とした。副次転帰は、院内心筋梗塞・院内不安定狭心症・すべての院内死亡の複合とした。輸血自由戦略群、いずれの指標も改善できず輸血赤血球単位の中央値は、自由輸血戦略群で2単位、制限的輸血戦略群は0単位であった。主要転帰の発生率は、自由戦略群35.2%、制限戦略群34.7%で、自由戦略群のオッズ比は1.01(95%信頼区間:0.84~1.22、P=0.90)、絶対リスク差は0.5ポイント(95%信頼区間:-3.7~4.7)だった。オッズ比は男女差が認められ(P=0.03)、男性(オッズ比:1.45)が女性(同:0.91)よりも有意であった。追跡調査60日後の死亡率は自由戦略群7.6%、制限戦略群6.6%で(絶対リスク差:1.0%、99%信頼区間:-1.9~4.0)だった。また、副次転帰の発生率は、自由戦略群4.3%、制限戦略群5.2%(絶対リスク差:-0.9%、99%信頼区間:-3.3~1.6)であった。その他の合併症の発生率は両群で同程度だった。結果を踏まえてCarson氏は、「我々の所見は、貧血症状がない場合やヘモグロビン値が8g/dL以下に減少していない場合、さらには心血管疾患やリスク因子を有する高齢患者では、術後患者での輸血は控えることが妥当なことを示唆する」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に無作為化プラセボ対照試験トラネキサム酸は止血剤の中でも非常に安価で、最近の大規模無作為化試験で外傷大出血患者の死亡率を低下することが示されており、心臓外科では周術期輸血率を低下するため標準的となっている。整形外科手術、肝臓手術でもその有効性は示されているが、泌尿器科では明らかになっていなかった。そこでCrescenti氏らは、2008年4月~2010年5月にSan Raffaele大学病院で、18歳以上で本試験に参加することに同意した根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に試験を行った。本試験では、心房細動の人、薬剤溶出性ステント治療を受けた冠状動脈疾患の人、重症の慢性腎不全、先天性または後天性血栓形成傾向、トラネキサム酸に対するアレルギーがあるまたはその疑いがある人は除外された。被験者は無作為に、トラネキサム酸もしくはプラセボ(食塩水)を受ける群に割り付けられた。トラネキサム酸投与は、術前に負荷量500mg量を20分間、術中は250mg/時間の持続点滴が行われた。 主要アウトカムは、手術時に輸血を受けた患者数とし、副次アウトカムは術中の失血とした。トラネキサム酸群の輸血率、術中失血量が有意に低下被験者は200例全員が手術を受け、追跡も完了した。輸血患者の割合は、トラネキサム酸群34例(34%)、プラセボ群55例(55%)で、トラネキサム酸群の輸血率の有意な低下が認められた(P=0.004)。トラネキサム酸群の輸血率の絶対低下は21%(95%信頼区間:7~34)であり、相対的リスクは0.62(同:0.45~0.85)、治療必要数(NNT)は5(同:3~14)だった。術中の平均失血量は、プラセボ群よりトラネキサム酸群で有意に少なかった(P=0.02)。両群間の差は232 mL(同:29.7~370.7)だった。フォローアップにおいて死亡患者はいなかった。また血栓塞栓症イベント発生については、両群間に格差はなかった。

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