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上部消化管出血への輸血戦略、大規模RCTは可能か/Lancet

 論争の的となっている急性上部消化管出血への輸血戦略について、大規模な非盲検集団無作為化試験の実行可能性を探るTRIGGER試験が英国・オックスフォード大学のVipul Jairath氏らにより行われた。その結果、試験は実行可能であることが示され、著者は、「臨床診療ガイドラインで、すべての上部消化管出血患者に対する制限輸血戦略を推奨するよう記述を変える前に、その効果を評価する大規模な集団無作為化試験は実行可能であり、実施が必須である」と指摘した。これまで、同戦略に関する検討は小規模試験3件と単施設試験1件のみである。単施設試験の所見では、制限輸血(限定的な赤血球[RBC]輸血)群で死亡の低下が報告されており、研究グループは、同所見が多施設の集団無作為化試験によって立証されるか否かを検討することを目的とした。Lancet誌オンライン版2015年5月5日号掲載の報告より。英国6つの病院で試験の実行可能性を探る 検討は英国の6つの大学病院で、18歳以上の新規に急性上部消化管出血を発症した全患者を登録して行った。被験者について、併存疾患の有無は問わなかったが、大量出血例は除外した。  研究グループは病院単位で被験者を2群に割り付け、一方の群には制限輸血(ヘモグロビン濃度が80g/L未満で輸血)を、もう一方の群には非制限輸血(同100g/L未満で輸血)を行った。  実行可能性アウトカムは、被験者補充率、輸血戦略に対するアドヒアランス、ヘモグロビン濃度、RBC曝露、選択バイアス、および第III相試験のデザインおよび経済性評価に導くための情報とした。さらに28日時点の出血と死亡を主要な探索的臨床アウトカムとした。集団無作為化デザインでも制限輸血群でRBC輸血低下 2012年9月3日~2013年3月1日に、936例(制限輸血群の3病院で403例、非制限輸血群の3病院で533例)が登録された。  被験者補充率は制限輸血群よりも非制限輸血群で有意に高かった(62% vs. 55%、p=0.04)。  ベースラインでアンバランスな特性項目があったが、Rockallリスクスコア(両群とも2)およびBlatchfordリスクスコア(両群とも6)は両群で同一であった。  輸血戦略へのアドヒアランスは、制限輸血群96%(SD 10)、非制限輸血群83%(25)であった(差:14%、95%信頼区間[CI]:7~21、p=0.005)。  最後に記録された平均ヘモグロビン濃度は、制限輸血群116(SD 24)g/L、非制限輸血群118(20)g/Lであった(差:-2.0、95%CI:-12.0~7.0、p=0.50)。また、RBC輸血を受けたのは非制限輸血群(247例[46%])よりも制限輸血群(133例[33%])が少なかった(差:-12%、95%CI:-35~11、p=0.23)。RBCの平均輸血単位は、制限輸血群1.2(SD 2.1)、非制限輸血群1.9(2.8)であり(差:-0.7、-1.6~0.3、p=0.12)、いずれも有意差はみられなかった。  臨床的アウトカムについても有意な差はみられなかった。  これらを踏まえて著者は、「集団無作為化デザインは、両群で迅速な被験者補充、高いプロトコルアドヒアランス、貧血の解消に結び付き、制限輸血群で有意ではないがRBC輸血の減少に結び付いた」とまとめている。

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心臓手術の輸血、赤血球保存期間の違いで転帰は?/NEJM

 輸血用赤血球の保存期間と多臓器機能障害スコア(MODS)変化に、関連はないことが示された。米国・ミネソタ大学フェアビューメディカルセンターのM.E. Steiner氏らが、12歳以上の高難度の心臓手術を受ける患者を対象に行った多施設共同無作為化試験の結果、報告した。10日以下vs. 21日以上を検討したが差はみられなかったという。これまで一部の観察研究で、保存期間が2~3週を超えると、ときに致死的となる重大な有害転帰と関連するとの報告があった。NEJM誌2015年4月9日号掲載の報告より。多施設共同無作為化試験で10日以下vs. 21日以上を検証 研究グループは、心臓手術を受ける患者はとくに、輸血による有害な影響を受けやすい可能性があるとして、高難度の心臓手術を受ける12歳以上の、赤血球の輸血が見込まれる患者を対象に検討を行った。 被験者は、2010~2014年に米国内33病院から集められ、保存期間が10日以下(短期保存群)または21日以上(長期保存群)の白血球除去赤血球の輸血(術中・術後すべて)を受けるよう無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、術後7日、または死亡、退院までの期間における、MODSの術前スコアから複合スコアの最高値への変化である。MODSはスコア範囲0~24、スコアが高いほど臓器機能障害が重度であることを示す。MODS変化、7日および28日死亡率とも有意差なし 1,481例が無作為化を受け、輸血を受けた1,098例(短期保存群538例、長期保存群560例)について分析した。両群のベースラインの特性は似通っていた。年齢中央値は72歳(範囲:14~93歳)、男性が43%、ベースラインの平均MODSは0.7ポイントであった。 結果、各群が受けた輸血赤血球の保存期間中央値は、短期保存群7日、長期保存群28日であった。その間のMODSの変化は、短期保存群8.5ポイント、長期保存群8.7ポイントで、有意差はみられなかった(差の95%信頼区間[CI]:-0.6~0.3、p=0.44)。 また、7日死亡率はそれぞれ2.8%、2.0%(p=0.43)、28日死亡率は4.4%、5.3%(p=0.57)でいずれも有意差はみられなかった。 有害イベントの発生も、高ビリルビン血症の頻度が長期保存群でより高かったことを除き、両群間で有意差は示されなかった。

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PROTECT AF試験:経皮的左心耳閉鎖術~心房細動患者が抗凝固療法を中止できる日は本当に来るのか(解説:矢崎 義直 氏)-329

 PROTECT AF試験は、非弁膜症性心房細動に対する経皮的左心耳閉鎖術の有効性および安全性をワルファリン療法と比較した非盲検無作為化試験である。 経皮的左心耳閉鎖術とは、血栓の好発部位である左心耳の入口部に傘状のWATCHMANデバイス(Boston Scientific社製)を挿入し、左心耳を閉塞させ血栓形成を予防する方法である。心房細動患者に対する抗凝固療法の中止が期待できるのは、カテーテルアブレーションでの根治以外に、この左心耳閉鎖術が有力である。本試験の観察期間18ヵ月および2.3年の結果はすでに報告されているが、今回は3.8年と長期成績の報告である。 ワルファリン投与群のTTR(Time in Therapeutic Range)は70%であり、比較的良好な凝固コントロール群との比較である。左心耳閉鎖術は、ワルファリンと比較して、主要エンドポイントである複合イベント(脳卒中、全身性塞栓症、心血管死)について、非劣性であり全死亡を有意に抑制させた。 左心耳閉鎖術は、ワルファリン療法と同等以上の効果と安全性が示されたわけであるが、当然、NOACs(新規経口抗凝固薬)との比較が気になるところである。本試験の対象は707例であり、1万例を超えるNOACsの大規模臨床試験と直接の比較はできないが、それぞれのデータを見比べてみる。 本試験のCHADS2スコアは平均2.2とRELY試験(ダビガトラン)やARISTOTLE試験(アピキサバン)と類似する。複合イベント発生は有意に低下させたが、ワルファリン群と比べて虚血性脳卒中に差がついていない点は、RELY試験におけるダビガトラン300mg投与群を除くすべてのNOACsの試験と同様の傾向である。出血性脳卒中や心血管死、全死亡は低く、これらがエンドポイントに影響している可能性があり、これも他の試験と類似している。それぞれの試験デザイン、解析方法も違うが、効果に関してはNOACsと同等という印象である。 安全性の複合エンドポイント(頭蓋内出血、輸血を要する出血、LAA閉鎖術群では手技に関連する出血)の発生率は、左心耳閉鎖術はワルファリン群と同等となっているが、2つの点で改善の余地がある。まずは、左心耳閉鎖術はある程度のラーニングカーブが必要であり、手技の習得システムの確立と症例の経験により、周術期の出血の合併症を減らす事ができる。 もう1つ複合イベントの多くを占めているのが、術後の大出血である。デバイス挿入後の抗血栓療法は、ワルファリンとアスピリンの併用となる。動物実験の結果を基に、デバイスが内皮化するとされる術後45日頃に、経食道エコーで左心耳からのリークがなければワルファリンを中止する。代わりにクロピドグレルを追加し、半年間は抗血小板薬2剤となる。半年以降はアスピリン単剤となる。もとよりこのデバイスは出血のハイリスク症例が適応となるため、術後半年の抗血栓薬の併用療法が、大出血の要因となりかねない。小規模な試験ではあるが、術後の抗血栓療法なしの安全性も報告されており、今後のエビデンスの構築が望まれる。 また、本試験の対象はCHADS2スコアが比較的低く、発作性心房細動が43%も含まれており、このような症例にはアブレーションによる根治、抗凝固療法の中止が期待できるわけである。今後、より心耳閉鎖術の適応となるであろうROCKET AF試験(リバーロキサバン)のようなCHADS2スコアの高い、根治が困難な永続性心房細動を対象とした比較試験が必要と考える。さらには、本試験の症例は9割が白人であることには留意すべきで、とくに凝固能には人種間の差があるため、日本人独自の臨床試験が必要である。 WATCHMANデバイスによる左心耳閉鎖術が、つい先日(2015年3月13日)FDAにより承認されたので、近い将来この技術が日本にも入ってくる。デバイス挿入のサポートには経食道心エコーの技術が必須であり、当然全身麻酔も必要となる。日本のカテーテル検査室の現状を考えると、このデバイスを導入するにはいくつかのハードルを越えなければいけないが、抗凝固療法を中止できるのは非常に魅力的であり、脳梗塞予防における治療の選択肢の1つとして期待される。

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山中伸弥氏が語るiPS細胞研究の発展と課題

 2015年3月19日、日本再生医療学会にて、京都大学 iPS細胞研究所(Center for iPS Cell Research and Application, Kyoto University、以下CiRA)の山中 伸弥氏が「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」と題して講演した。進むiPS細胞再生医療 理化学研究所などのiPS細胞を使った加齢黄斑変性患者を対象とした臨床研究が承認され、iPS細胞研究の医療応用に向けて大きな一歩を踏み出した。CiRAでもいくつもの研究が進んでいる。パーキンソン病:ドパミン産生神経細胞の高純度の作製に成功し、現在サルのパーキンソン病モデルを用いて効果と安全性を検証中である。良好な結果であることから、年内に臨床研究の申請へと進める予定である。iPS細胞による輸血:血小板の元である巨核球、赤血球前駆細胞作製に成功。とくに血小板は大量培養のシステムを確立している。早い段階で臨床研究に入ると予想される。血小板も赤血球も放射線を当てることができ、増殖性の残っている細胞はすべて殺せるため安全性を確保できるという。本邦は急速な高齢化により今後10年以内に献血だけでは輸血が補えなくなると予想される。このように献血を補うアプローチは喫緊の課題だ。糖尿病:2次元カルチャーと3次元カルチャーでアプローチしている。2次元カルチャーでは、すでにiPS細胞からインスリン産生細胞の作製に成功している。マウスへの移植で血中のヒトC-ペプチドが増加することも確認されている。将来糖尿病の再生医療を実現。また3次元カルチャーでは、iPS細胞から膵臓を丸ごとつくることを目指す。現在、膵臓のオルガノイド作製に成功しており、今後の発展に期待がかかる。心筋再生治療:大阪大学では、すでに骨格筋芽細胞シートで重症心不全に対する良好な成績をあげているが、iPS細胞由来の心筋細胞シートについても大阪大学との共同研究で、作製に成功。動物での改善が示されている。さらに、心筋細胞シートに加え、心筋、内皮細胞、血管壁細胞で構成された心臓細胞シートの作製に成功。こちらも動物モデルで有意な心機能の改善が確認されている。心臓移植の待機中に亡くなる方も少なくない。そのような患者の延命につながると期待される。関節疾患:関節軟部疾患に対する再生医療アプローチを行っており、ヒトiPS細胞からの軟骨細胞作製に成功している。iPS細胞由来の軟骨細胞の移植により外傷等比較的欠損が小さい症例への治療に期待がかかる。筋ジストロフィー:筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞から骨格筋幹細胞を作製し、この細胞を筋ジストロフィーモデルの免疫不全マウスへ移植することで病態の再現に成功。今後臨床応用を目指す。iPS細胞によるがん免疫の若返り:T細胞などの免疫細胞はがん細胞を攻撃するが、加齢に伴い免疫細胞は疲弊し、がん細胞の増殖転移が進む。そこで、がん細胞を攻撃する特定のT細胞を採取し、その細胞からiPS細胞を誘導・増殖させ、攻撃特性を持ったT細胞を再び作製することに成功している。がんに対する将来の治療として期待される。再生医療用iPS細胞ストック 倫理問題、費用、時間など多くの面で自家移植には限界がある。iPS細胞による再生医療を実現するためには、他家移植が主流となる。CiRAではiPS細胞をストックする計画を進めている。京大病院のiPS外来では患者の診察とともにiPS細胞ドナー候補ボランティアから献血を行っている。採取した血液はCiRA内のCPCに持ち込まれ、iPS細胞の樹立を行っている。  しかしながら、拒絶反応を減らすためにはHLAの一致が必要。HLAは膨大なバリエーションがあり、一致する確率はきわめて低い。効率よく一致させるためには、HLAホモドナーからの細胞作製が必須だ。日本人で最頻度のHLAタイプのホモドナー1人からiPS細胞をつくると、日本人の20%をカバーできる。違うホモで作製すると80%、140人で95%がカバーできる。最初の目標は日本人の50%のカバーだという。とはいえ、数十人のホモドナーを見つけるには数十万人を調べる必要がある。そのため、臍帯血バンク、日本赤十字社、骨髄バンクといったHLAの情報を管理している外部との連携を進めている。医療応用に必要な人材の確保 iPS細胞の研究には研究者だけでなく、優秀な技術員、規制専門家、契約専門家、知財専門家、広報専門家、事務職員など多くの人材が必要である。一方、国立大学の定員ポストは研究員のみである。実際のCiRAでは300人以上が雇用されているが、無期雇用は1割で、残りの9割は有期雇用である。これは国立大学の研究機関に共通する課題であり、安定雇用に活用できる運営費交付金の割合を増やすよう要望している。 とはいえ、米国では州からの援助は予算の5%。残りの95%はトップがさまざまなスポンサーから集め、安定的な雇用を確保している。そのため、CiRAもiPS細胞基金を立ち上げ、山中氏自ら活動し、研究者の長期雇用、研究環境改善、若手研究者教育に資金を募っているという。iPS細胞研究基金HP

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ビタミンK拮抗薬の急速中和製剤(4F-PCC)の効果は?/Lancet

 緊急の外科的・侵襲的手技においてビタミンK拮抗薬(VKA)投与を必要とする患者について、4因子含有プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)の血漿製剤に対する、急速VKA中和および止血効果に関する非劣性と優越性が確認された。米国・マサチューセッツ総合病院のJoshua N Goldstein氏らによる第IIIb相の非盲検非劣性無作為化試験の結果、示された。VKAによる抗凝固療法は、緊急外科的・侵襲的手技を要する患者に関して迅速中和を必要とする頻度が高い。しかしこれまでその至適な手法について、臨床比較試験による確定は行われていなかったという。Lancet誌オンライン版2015年2月26日号掲載の報告より。止血効果と急速INR低下の2つを主要エンドポイントに比較 研究グループは、4F-PCCの有効性と安全性を血漿製剤と比較して検討した。試験は国際多施設共同(33病院;米国18、ベラルーシ2、ブルガリア4、レバノン2、ルーマニア1、ロシア6)にて行われ、緊急外科的・侵襲的手技の前に急速VKA中和を必要とする18歳以上の患者を登録した。 患者を、VKA投与と共に4F-PCC(Beriplex/Kcentra/Confidex;ドイツ・CSLベーリング社製)または血漿製剤を単回投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。投与量は国際標準化比(INR)と体重に基づき調整した。 主要エンドポイントは2つで、止血効果と急速INR低下(投与後0.5時間時点で1.3以下)。 解析は、最初に両エンドポイントについて非劣性(両群差の95%信頼区間[CI]下限値が-10%超と定義)を評価し、次いで非劣性が認められた場合に優越性(同0%超と定義)を評価した。 有害事象と重篤有害事象は、それぞれ10日時点、45日時点まで報告された。いずれのエンドポイントも4F-PCCの非劣性、優越性を確認 181例の患者が無作為に割り付けられた(4F-PCC群90例、血漿製剤群91例)。有効であったintention-to-treat比較集団は168例(それぞれ87例、81例)であった。 止血効果が認められたのは、4F-PCC群78例(90%)に対し血漿製剤群61例(75%)で、4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差14.3%、95%CI:2.8~25.8%)。 また、急速INR低下を達成したのは、4F-PCC群48例(55%)に対し血漿製剤群8例(10%)で、こちらについても4F-PCCの血漿製剤に対する非劣性および優越性が確認された(両群差45.3%、95%CI:31.9~56.4%)。 4F-PCCと血漿製剤の安全性プロファイルは類似していた。有害事象の発現は4F-PCC群49例(56%)、血漿製剤群53例(60%)であった。とくに注目された有害事象は、血栓塞栓イベント(4F-PCC群6例[7%] vs. 血漿製剤群7例[8%])、輸液過剰または関連心イベント(3例[3%] vs. 11例[13%])、遅発性出血イベント(3例[3%] vs. 4例[5%])であった。

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薬剤性アナフィラキシー

概説 アナフィラキシーのtrigger(誘因)は蜂毒、食物、薬剤、運動など多彩であり、頻度が最も高いものは食物である。それに対し、アナフィラキシーによる死亡例に限ると、最も多い誘因は薬剤である。薬剤がアナフィラキシーを起こす場合には、投与直後から症状を生じ重症化しやすい(誘因に曝露されてから速やかにアナフィラキシーを発症するほど、重症化しやすいという一般的傾向がある)ということに加えて、過去に既往がなく不意打ちの形で生じるため、アドレナリン自己注射薬を携帯していないことがほとんどであるという特徴がある。 欧米の疫学調査においても、薬剤性アナフィラキシーによる死亡例は漸増傾向にあり、これは、世界的に薬剤が多様化し、薬剤総数が増加の一途をたどっていることが背景に挙げられている。薬剤によりアナフィラキシーを起こさないのは水と塩分くらいのものであり、われわれが処方する薬剤や日常の処置で曝露される物質(薬剤としては認識されない、皮膚消毒液、ラテックス、器具の消毒薬の残留にも配慮する)は無数に存在する。常識的なことであるが、必要性が曖昧な処置は行わない・薬剤は投与しないことが基本姿勢として重要である。 発症機序と分類 IgEが関与するI型反応が典型的であるが、X線造影剤やNSAIDsなどはIgEが通常関与することなくアナフィラキシーを起こす。従来は、前者(IgEが関与するもの)をアナフィラキシー、後者(IgEが関与しないもの)をアナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)と呼んだが、世界的な趨勢で両者ともアナフィラキシーと呼ばれるようになってきており、日本アレルギー学会の「アナフィラキシーガイドライン1)」でもこの立場をとっている。今でもアナフィラキシーとアナフィラキシー様反応に区別する方法が用いられることはあるが、将来的にはアナフィラキシーの診断名の下でアレルギー性(IgEが関与するもの・IgE以外の免疫機構が関与するものに分けられる)、非アレルギー性に大別される方向に向かうと考えられる。 たとえば、ペニシリンとNSAIDを内服してアナフィラキシーを発症した場合、従来はアナフィラキシー(様)反応とまず診断し、後日の精査で原因がペニシリンであればアナフィラキシー、NSAIDであればアナフィラキシー様反応と診断名を書き換えていたが、「様反応」を用いないことにしておけば、救急診療で付けられたアナフィラキシーの診断名は、後日原因薬が特定されても書き換えられることなく、踏襲されていくことになる。 診療上の注意点アナフィラキシー発症時は、原因の可能性がある薬剤の中止(たとえば、点滴投与中の抗菌薬を中止し、薬剤を含まない輸液に変更する)とアドレナリン筋注を行い、循環と呼吸の状態を把握する。アナフィラキシーから回復後、あるいは既往を有する患者に対しては、再発を回避するよう、適切な指導を行う。「アナフィラキシーガイドライン」では誘因となる医薬品として、抗菌薬、解熱鎮痛薬(NSAIDs等)、抗腫瘍薬、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤、輸血等、生物学的製剤、アレルゲン免疫療法を挙げ、これらによるアナフィラキシーの特徴を簡潔に述べるとともに、手術中に生ずるアナフィラキシーの主な誘因(とくに筋弛緩薬、抗菌薬、ラテックス)にも触れているので、それらに関してはガイドラインを参照されたい。実地診療に当たっておられる先生方に留意していただきたいこととしては、以下のものが挙げられる。 内服薬を誘因とするアナフィラキシーについては、複数薬剤が誘因に挙げられ、病歴だけでは特定に至らないことが多い。また、食後に内服した場合、食事内容が誘因である可能性も念頭に置く必要がある。 医療処置に伴ってアナフィラキシーを発症した場合には、ラテックスが原因候補の1つに挙げられることが多い。ラテックスおよび交差反応性のあるシラカンバ、ハンノキ花粉の特異的IgEは、どの医師においても測定が可能であり参考になる(診断が確定するわけではないが)。 アナフィラキシーの発症前に投与された薬剤、摂取した食品と摂取時刻、症状の経過を、詳細に患者に記録しておいていただくことが重要。この情報は誘因の特定に大変に役立つ。 誘因の特定や安全に使用可能な薬剤の選定、あえて誘因となった薬剤を使わざるを得ない(脱感作が必要)といった場面では、ぜひアレルギー専門医に紹介いただきたい。アレルギー専門医にとって薬剤アレルギーへの対応は時間と労力を要するのだが、薬剤性アナフィラキシーは患者のQOLのためにも、生命予後のためにも重要な疾患であることは昔から一貫している。なお、薬剤を用いた即時型皮膚反応検査(プリックテストや皮内テスト)は、IgEが関与する反応において有用性が高いが、アナフィラキシーを起こした患者に不用意に行うとアナフィラキシーを誘発する可能性があるため、外来ですぐに施行できるわけではないことをご承知おきいただきたい。1)日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014.

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吸収性局所止血材、膝関節全置換術後リスクを低下

 人工膝関節全置換術(TKA)において、術後出血は重大な合併症の原因となり輸血を要することもある。米国・St. Francis Memorial HospitalのJohn H. Velyvis氏は、ヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材の使用がTKA術後ドレーン排液量および輸血予測確率を低下させることを報告した。結果について著者は「今後、多施設無作為化試験などさらなる研究が必要である」とまとめている。Orthopedics誌2015年2月号の掲載報告。 検討は、初回TKAを受ける連続症例を前向きに登録し、74例にヒトトロンビン含有ゼラチン使用吸収性局所止血材(商品名:フロシール)5mLを用いた。さらに83例に10mLを用いて評価した。 フロシール群の登録に先立ち、対照群としてフロシールを使用しなかったTKA施行連続100例のデータを診療記録より抽出した。 なお、全例、手術の翌日から血栓予防としてワルファリンが投与された。 主な結果は以下のとおり。・術後ドレーン排液量は、フロシール5mL群236.9mL、10mL群120.5mLで、どちらも対照群(430.8mL)より有意に少なかった(ともにp<0.0001)。・また、フロシール5mL群と比較するとフロシール10mL群が有意に低値であった(p<0.0001)。・輸血予測確率は、フロシール5mL群と対照群とで差はなかったが(6.0% vs 7.6%、p=0.650)、フロシール10mL群は対照群より有意に低率であった(0.5% vs 5.5%、p=0.004)。・フロシール10mL群のうちフロシールの使用が止血帯解除前であった群と解除後であった群のどちらも、対照群との間で排液量ならびに輸血予測確率が有意に低かった。・使用された麻酔の種類は、転帰に影響を及ぼさなかった。・フロシール使用に関連した有害事象は認められなかった。

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献血後のHb回復に鉄サプリが有効/JAMA

 献血後の低用量鉄分サプリメント服用は、非服用と比較して、ヘモグロビン値の80%回復までの期間を短縮することが、米国・輸血医療研究所(Institute for Transfusion Medicine、ピッツバーグ)のJoseph E. Kiss氏らによる非盲検無作為化試験の結果、示された。服用群の回復までの期間中央値は76日だった。また期間の短縮は、試験のベースラインで層別化したフェリチン値低値(26ng/mL以下)群または高値(26ng/mL超)群ともにみられたという。米国では献血の間隔を8週間空けることとされているが、献血者のヘモグロビン値標準値(12.5g/dL)への回復が遅れる頻度が高く、一部の献血者では貧血になることがみられるという。研究グループは、献血後の鉄分貯蔵状態への鉄サプリ服用の効果を調べるため本検討を行った。JAMA誌2015年2月10日号掲載の報告より。全血献血後24週間、鉄サプリ服用vs. 非服用で検討 試験は2012年、米国内4地域の輸血センターで行われた。被験者は、過去4ヵ月以内に全血または赤血球の献血歴のなかった18~79歳の215例で、フェリチン値、性別、年齢で層別化して検討した。 被験者を、全血1単位(500mL)を献血後24週間、経口グルコン酸第一鉄(元素鉄37.5mg含有)を毎日服用する群または服用しない群に、非盲検下で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、ヘモグロビン値の献血後低下から80%回復までの期間、およびフェリチン値のベースライン値回復までの期間とした。鉄分貯蔵状態の回復までにかかった期間中央値、服用群76日、非服用群は168日超 ベースライン時の平均ヘモグロビン値は、鉄分補充群と非補充群で類似していた。 同値は、フェリチン低値群は、13.4(SD 1.1)g/dLから献血後は12.0(1.2)g/dLに、同高値群は14.2(1.1)g/dLから12.9(1.2)g/dLにそれぞれ低下していた。 ヘモグロビン値80%回復までの期間は、鉄サプリ服用群が非服用群と比較して、フェリチン低値群(補充群32日[IQR:30~34] vs. 非補充群158日[126~>168])、高値群(31日[29~33] vs. 78日[66~95])ともに短縮が認められた。 フェリチン値のベースライン値回復までの期間中央値は、フェリチン値低値群・鉄サプリ服用群では21日(IQR:12~84)であった。一方、同低値群・非服用群の回復は168日より長期間を要した(同:128~>168)。フェリチン値高値群・鉄サプリ服用群は107日(同:75~141)、同非服用群は168日より長期(同:>168~>168)であった。 鉄サプリを服用した全被験者の鉄分貯蔵状態の回復までにかかった期間中央値は、76日であった(IQR:20~126)。一方、非服用者は、168日より長期間を要し(同:147~>168)、有意差が認められた(p<0.001)。非服用群では、67%が、168日までに鉄分貯蔵状態が回復しなかった。

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非制限的な輸血でも長期死亡を抑制せず/Lancet

 心血管疾患あるいはリスク因子を有する高齢の高リスク群において、非制限的輸血戦略は制限的輸血戦略と比べて死亡率に影響を及ぼさないことが、米国ロバート・ウッド・ジョンソン大学病院のJeffrey L Carson氏らによる無作為化試験FOCUSの3年生存と死因分析の結果、報告された。死因について群間で差はみられず、著者は、「今回の所見は、輸血は長期的な免疫抑制に結び付き、長期的な死亡率に重篤な影響を与えるという仮説を支持しないものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年12月9日号掲載の報告より。長期死亡率を比較分析 輸血は免疫機能を変化させ、そのため感染症やがん再発リスクを増し、長期死亡率に影響を与える可能性がある。限定的な輸血戦略と比較して、よりリベラルに行う非制限な輸血戦略は、心筋に与えるダメージを減らし心合併症を低下し、将来的な心血管疾患による死亡を抑制する可能性が示唆されていた。 研究グループは、非制限的な輸血戦略の有効性を検討するため、限定的な輸血戦略と比較し長期生存への影響を調べた。 FOCUS試験には、50歳以上で心血管疾患の病歴またはリスク因子を有しており、股関節骨折手術後3日以内で100g/L未満のヘモグロビン濃度を呈した患者が適格として、米国とカナダの47病院から登録された。 被験者は無作為に1対1の割合で、一括電話システムによって、非制限的輸血群と限定的輸血群に割り付けられた。非制限的輸血群は、ヘモグロビン濃度が100g/Lを維持するよう輸血が行われ、限定的輸血群は、80g/L未満もしくは貧血症状を呈した場合に輸血が行われた。 なお本検討は、FOCUS試験の副次アウトカムである長期死亡率を分析したものである。長期死亡率は、米国とカナダの死亡レジストリと結び付けて確認した。追跡期間中央値3.1年の死亡率は両群で有意差みられず 2004年7月19日~2009年2月28日の間に、非制限的輸血群に1,007例が、限定的輸血群に1,009例が登録され無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値3.1年(IQR:2.4~4.1年)において、841例(42%)が死亡した。 非制限的輸血群の死亡は432例、限定的輸血群の死亡は409例であり、両群間で有意差はみられなかった(ハザード比:1.09、95%信頼区間:0.95~1.25、p=0.21)。 著者は、「輸血が、長期間の免疫抑制につながり、長期死亡を20~25%以上増大したり、死因の要因となるという仮説を支持しない所見が示された」と述べている。

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新規第XI因子阻害薬、TKA後のVTEを予防/NEJM

 第XI因子阻害薬FXI-ASO(ISIS 416858)は、人工膝関節置換術(TKA)後の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防に有効で、出血リスクに関しても良好な安全性を有することが、オランダ・アムステルダム大学のHarry R Buller氏らが行ったFXI-ASO TKA試験で示された。TKA後のVTEの予防には従来、外因系凝固因子である第Xa因子を阻害するエノキサパリン(ENO)などが使用されているが、これらの薬剤は有効ではあるものの出血のリスクを伴う。一方、内因系凝固因子である第XI因子を減少させると、出血を起こさずに血栓を抑制することが知られていた。FXI-ASOは、第2世代のアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、肝臓において第XI因子mRNAの発現を特異的に低下させる可能性がある。NEJM誌オンライン版2014年12月7日号掲載の報告。2種の用量と標準治療を無作為化第II相試験で評価 FXI-ASO TKA試験は、TKA後のVTEの予防における2種の用量のFXI-ASOとENOの有効性と安全性を比較する非盲検無作為化第II相試験(資金提供:Isis Pharmaceuticals社)。対象は、待機的初回片側TKAを施行された年齢18~80歳の患者であった。 被験者は、FXI-ASO 200mg/日、同300mg/日を皮下投与する群またはENO 40mg/日を皮下投与する群に無作為に割り付けられた。FXI-ASOの投与は手術の36日前(Day 1)に開始し、第1週目はDay 3、5に、その後は週1回、4週間(Day 8、15、22、29)投与した。手術日のDay 36には術後6時間に投与し、Day 39にも投与した。 有効性の主要評価項目はVTEの発症(静脈造影または症候性のイベントの報告で評価)とし、安全性の主要評価項目は大出血または大出血以外の臨床的に意義のある出血であった。有効性については、非劣性の評価を行い、非劣性が確認された場合は優越性の評価を実施した。200mg群27%、300mg群4%、ENO群30% 2013年7月~2014年3月までに5ヵ国19施設から300例が登録され、FXI-ASO 200mg群に147例(平均年齢63歳、女性82%)、同300mg群に78例(63歳、78%)、ENO群には75例(64歳、83%)が割り付けられた。有効性解析は274例(200mg群:134例、300mg群:71例、ENO群:69例)のper-protocol集団で行われ、安全性解析は293例(144例、77例、72例)で実施された。 Day 36~39のFXI-ASOの平均値(±標準誤差)は、FXI-ASO 200mg群が0.38±0.01U/mL、300mg群が0.20±0.01U/mL、ENO群は0.93±0.02U/mLであった。 per-protocol解析によるVTEの発症率は、FXI-ASO 200mg群が27%(36/134例)、300mg群が4%(3/71例)、ENO群は30%(21/69例)であった。ENO群との比較では、FXI-ASO 200mg群の非劣性および300mg群の優越性(p<0.001)が確認された。 大出血または大出血以外の臨床的に意義のある出血の発症率は、FXI-ASO 200mg群が3%(4/144例)、300mg群が3%(2/77例)、ENO群は8%(6/72例)であり、ENO群との比較で有意な差は認めなかった(それぞれ、p=0.09、p=0.16)。大出血はFXI-ASO 300mg群の1例のみに認められた。また、輸血はそれぞれ38%(55例)、29%(22例)、32%(23例)で行われた。 重篤な有害事象はFXI-ASO 200mg群の3例(一過性脳虚血発作、術後瘢痕部瘻孔形成、結紮部瘻孔形成)、300mg群の1例(人工膝関節周囲感染症)に、恒久的な治療中止の原因となった有害事象はそれぞれ1例(そう痒と既存の動脈性高血圧の増悪)、1例(手術部位の出血)にみられたが、ENO群ではいずれも認めなかった。注射部位関連有害事象(紅斑、疼痛、そう痒、腫脹、血腫)はそれぞれ32例、25例、2例にみられた。 著者は、「これらの知見は、第XI因子の術後VTEへの関与を示すもの」とし、「待機的初回片側TKA施行例における第XI因子の抑制は術後VTEの予防に有効であり、出血リスクに関する安全性も良好である」と結論している。

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【2014年コンテンツ閲覧ランキング】人気を集めた記事・スライド・動画のトップ30を発表!

デング熱やエボラ出血熱の流行、高血圧治療の新しいガイドライン、人間ドック学会が発表した新たな健診基準値など、今年の医療界での出来事が反映された記事やスライド、動画を多数お届けしてまいりました。そのなかでもアクセス数の高かった人気コンテンツ30本を紹介します。 1位 デング熱、患者さんに聞かれたら・・・ 2位 NHK特集で報道された「シロスタゾールと認知症の関係」についての患者さん説明用パンフレットを作りました。 (Dr. 小田倉の心房細動な日々~ダイジェスト版~) 3位 頓服薬の査定のポイント (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 4位 岩田健太郎が緊急提言!エボラ出血熱にこう備えよ! (CareNeTV LiVE! アーカイブ) 5位 高血圧治療ガイドライン2014が発刊 6位 医療者は正しい理解を。人間ドック学会“基準値”の解釈 7位 Dr.山下のアリスミアのツボ 第1回 8位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(2)うつ病治療の基本 9位 カルベジロール査定のポイント (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 10位 ケアネットオリジナル『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.1~ 11位 デング熱での解熱剤に注意~厚労省がガイドライン配布 12位 ケアネットオリジナル 『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.2~ 13位 妊娠糖尿病の診断基準の覚え方 (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 14位 エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part2 15位 知識を整理!GERD診療(2)症状を診る 16位 レビー小体型認知症、アルツハイマー型との違いは? 17位 アシクロビル(商品名: ゾビラックス)の査定 (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 18位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(1)うつ病の現状と診断 19位 休診日(12月28日)の休日加算の査定 (斬らレセプト — 査定されるレセプトはこれ!) 20位 アジスロマイシンとレボフロキサシンは死亡・不整脈リスクを増加する (1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより~) 21位 休日診療をやってみた (スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草) 22位 内科医のための睡眠障害(1) 知って得する睡眠の話 23位 自分の適正なお寿司の皿数、わかりますか? (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 24位 ナトリウムから食品相当量への換算方法を教えるコツ (Dr. 坂根のすぐ使える患者指導画集 -糖尿病編-) 25位 金属がなくてもMRIで熱傷を起こすことがある (Dr. 倉原の”おどろき”医学論文) 26位 出血性ショックに対する輸血方法が不適切と判断されたケース (リスクマネジメント 救急医療) 27位 知識を整理!GERD診療(1)基本を整理 28位 ケアネットオリジナル 『患者説明用スライド』 ~高血圧Vol.5~ 29位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(4)抗うつ薬の副作用と対処法 30位 非専門医も知っておきたいうつ病診療(3)抗うつ薬の使い分け #feature2014 .dl_yy dt{width: 50px;} #feature2014 dl div{width: 600px;}

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低用量アスピリンで心血管イベント一次予防せず~高リスク日本人高齢者/JAMA

 アテローム性動脈硬化症のリスク因子を持つ日本人高齢者への、1日1回低用量アスピリン投与について、心血管イベントの一次予防効果は認められないことが示された。早稲田大学特命教授の池田康夫氏らが、約1万5,000例について行った非盲検無作為化比較試験「JPPP試験」の結果、明らかになった。試験は、追跡期間中央値約5年の時点で中止されている。JAMA誌2014年11月17日号掲載の報告。高血圧症、脂質異常症、糖尿病のある高齢者を対象に試験 研究グループは、アテローム性動脈硬化症のリスク因子を持つ日本人高齢者1万4,464例を対象に、低用量アスピリン1日1回投与と心血管イベントの一次予防効果について試験を行った。 被験者は、2005年3月~2007年6月にかけて国内1,007ヵ所の診療所において、動脈硬化性疾患歴はないが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病のいずれかが認められた60~85歳の高齢者であった。追跡期間は最長6.5年。最終追跡調査は2012年5月だった。 研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方には常用の治療薬に加えアスピリン100mg/日を投与し、もう一方の群にはアスピリンを投与しなかった。心血管イベントリスクは低下せず、非致死心筋梗塞リスクは約半減 複合主要評価項目は、心血管死(心筋梗塞、脳卒中、その他の心血管疾患)、非致死的脳卒中(虚血性、出血性、その他脳血管イベントを含む)、非致死的心筋梗塞のいずれかであった。 試験は、追跡期間中央値5.02年(範囲:4.55~5.33年)の時点で、データモニタリング委員会の判断で早期中止となった。 アスピリン群、対照群ともに、試験期間中の致死的イベントの発生は56件だった。 5年累積主要評価イベント発生率は、アスピリン群が2.77%(95%信頼区間:2.40~3.20%)に対し、対照群は2.96%(同:2.58~3.40%)と、両群で同等だった(ハザード比:0.94、同:0.77~1.15、p=0.54)。 低用量アスピリンは、非致死心筋梗塞(HR:0.53、同:0.31~0.91、p=0.02)や一過性脳虚血発作(同:0.57、同:0.32~0.99、p=0.04)の発生リスクを有意に減少した。しかし一方で、輸血または入院を要する頭蓋外出血リスクを有意に増大した(HR:1.85、同:1.22~2.81、p=0.004)。

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心房細動の脳卒中予防に左心耳閉鎖術が有効/JAMA

 非弁膜症性心房細動(AF)への経皮的左心耳(LAA)閉鎖術は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死の複合エンドポイントについてワルファリン療法に対し非劣性であり、心血管死や全死因死亡を有意に抑制することが、米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y Reddy氏らが行ったPROTECT AF試験で示された。ワルファリンはAF患者の脳卒中予防に有効だが、狭い治療プロファイル、生涯にわたる凝固モニタリングの必要性、他剤や食事との相互作用という制限がある。LAAはAF患者における血栓の好発部位であり、これを機械的に閉鎖するアプローチ(WATCHMANデバイス)の開発が進められている。JAMA誌2014年11月19日号掲載の報告。機械的閉鎖術による局所療法の有用性を評価 PROTECT AF試験は、非弁膜症性AF患者の心血管イベントの予防における経皮的LAA閉鎖術による局所療法の、ワルファリンによる全身療法に対する非劣性および優越性を検証する非盲検無作為化試験。患者登録期間は2005年2月~2008年6月で、すでに平均フォローアップ期間18ヵ月および2.3年の結果が報告されており、今回は3.8年(2012年10月時点)の長期データの解析が行われた。 対象は、年齢18歳以上の非弁膜症性AFで、CHADS2スコア≧1、ワルファリンの長期投与を要する患者であった。被験者は、経食道的心エコーガイド下にLAA閉鎖術を施行後に45日間ワルファリン+アスピリンを投与する群またはワルファリン(目標国際標準比:2~3)を恒久的に投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死/原因不明死の複合エンドポイントとした。非劣性のベイズ事後確率を97.5%以上、優越性のベイズ事後確率を95%以上に設定した。 欧米の59施設に707例が登録され、LAA閉鎖術群に463例、ワルファリン群には244例が割り付けられた。平均年齢はLAA閉鎖術群が71.7歳、ワルファリン群は72.7歳、男性はそれぞれ70.4%、70.1%で、平均CHADS2スコアは2.2、2.3であった。ベースラインの脳卒中のリスク因子としては、高血圧がそれぞれ89.6%、90.2%、75歳以上が41.0%、47.1%、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴が17.7%、20.1%に認められた。複合エンドポイントが40%、心血管死が60%減少 複合エンドポイントの発生率は、LAA閉鎖術群が8.4%(39/463例、2.3/100人年)、ワルファリン群は13.9%(34/244例、3.8/100人年)であった(率比[RR]:0.60、95%確信区間[CI]:0.41~1.05)。非劣性の事後確率は>99.9%、優越性の事後確率は96.0%であり、いずれも事前に規定された判定基準を満たした。 全脳卒中の発生率は、LAA閉鎖術群が5.6%(26/463例、1.5/100人年)、ワルファリン群は8.2%(20/244例、2.2/100人年)であり(RR:0.68、95%CI:0.42~1.37)、非劣性(事後確率>99%)が確認された。このうち出血性脳卒中の発生率は、それぞれ0.6%(3/463例)、4.0%(10/244例)であり(0.15、0.03~0.49)、非劣性(>99%)および優越性(99%)が確認されたのに対し、虚血性脳卒中は5.2%(24/463例)、4.1%(10/244例)であり(1.26、0.72~3.28)、両群に差はみられなかった。 また、LAA閉鎖術群はワルファリン群に比べ、心血管死(3.7%[17/463例] vs. 9.0%[22/244例]、1.0/100人年 vs. 2.4/100人年、ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.21~0.75、p=0.005)および全死因死亡(12.3%[57/466例] vs. 18.0%[44/244例]、3.2/100人年 vs. 4.8/100人年、HR:0.66、95%CI:0.45~0.98、p=0.04)の発生率が有意に低い値を示した。 安全性の複合エンドポイント[頭蓋内出血、輸血を要する出血、LAA閉鎖術群では手技に関連するイベント(介入を要する心膜液浸出など)も含む]の発生率は、LAA閉鎖術群が3.6/100人年、ワルファリン群は3.1/100人年(RR:1.17、95%CI:0.78~1.95)で、事後確率は98.0%であり、非劣性基準を満たした。 LAA閉鎖術群で重篤な心膜液浸出が22例(4.8%)にみられたが、いずれも周術期(デバイス装着後7日間)に発生した。大出血はLAA閉鎖術群が22例(4.8%、7日以降が19例[4.1%])、ワルファリン群は18例(7.4%)に認められた。 著者は、絶対リスク減少率は、複合エンドポイントが1.5%、心血管死が1.4%、全死因死亡は5.7%であるが、死亡に関するエンドポイントには不確実性が残る。LAA閉鎖術群では早期の合併症の頻度が高かったが、長期的な安全性プロファイルは2つの治療群で類似していたとまとめている。

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肝移植後HCVへのIFNフリーレジメンの検討/NEJM

 肝移植後の再発C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1型感染症患者に対し、インターフェロンを用いない、NS5A阻害薬オムビタスビル+リトナビル・ブースト・プロテアーゼ阻害薬ABT-450(ABT-450/r)+非ヌクレオチド系NS5Bポリメラーゼ阻害薬ダサブビル+リバビリンの24週治療は、治療後のウイルス学的著効(SVR)が12週後、24週後ともに97%を示し、有効であることが示された。米国・インディアナ大学のPaul Y. Kwo氏らが、患者34例を対象とした試験で明らかにした。今回試験対象とした移植後再発患者は、従来の標準治療レジメンでは、治療反応率は13~43%に留まっていたという。NEJM誌オンライン版2014年11月11日号掲載の報告より。主要評価項目は治療終了12週後のSVR 被験者は、12ヵ月前までに肝移植を行い、HCV遺伝子型1型感染症の再発が認められ、線維症がないか軽度な患者34例で、オムビタスビル+ABT-450/rの合剤、ダサブビル、リバビリンを24週間投与した。 具体的なレジメンは、オムビタスビル-ABT-450/r(オムビタスビル25mg、ABT-450/r 150mg、リトナビル100mgをそれぞれ1日1回)、ダサブビル250mg1日2回と、リバビリン(初期投与量とその後の貧血症状に基づく用量調整は治験担当医の判断)を投与した。 主要評価項目は、SVR 12だった。12週後、24週後ともにSVRは97% その結果、治療終了12週後、24週後ともに、被験者34例中33例でSVR達成が認められ、その割合は97%(95%信頼区間:85~100)だった。 最も多くみられた有害事象は、疲労、頭痛、咳だった。また、エリスロポエチンの投与を要した人は5例(15%)で、輸血は0例。治療中の移植片拒絶は認められなかった。 治療中には、血中カルシニューリン濃度を測定し、用量を調節し治療レベルの維持が図られていた。

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ホスピスが入院や医療コストを抑制/JAMA

 米国の終末期がん患者のうちホスピスケアの利用者は非利用者に比べ、入院やICU入室、侵襲的手技の施行が少なく、医療コストも抑制されることが、ブリガム&ウィメンズ病院のZiad Obermeyer氏らの調査で示された。近年、米国ではがん患者のホスピス利用が増えている一方、ホスピス外でのケアの増加や入所期間が短縮しているが、ホスピスが保健医療の活用に及ぼす影響や、医療コストがホスピス利用に与える影響は明らかにされていなかった。JAMA誌2014年11月12日号掲載の報告。約3万6,000例の予後不良がん患者をホスピス利用の有無別に比較 研究グループは、終末期がん患者における保健医療の利用状況や医療コストを、ホスピスケア利用の有無別に検討した。対象は、1次診断で予後不良と判定されたがん(肺、膵、脳など)や転移性悪性腫瘍、再発・非寛解血液腫瘍などの患者であった。 解析には、2011年に死亡した出来高払制(fee-for-service)メディケア受給者の20%に相当する患者データを使用した。死亡前にホスピスに登録した患者と、ホスピスに入所せずに死亡した患者の背景因子(年齢、性別、地域、診断から死亡までの期間など)をマッチさせ、ホスピスケア開始前後の入院や処置などの医療サービスの利用、死亡場所、医療コストなどの評価を行った。 予後不良がん患者8万6,851例の診断から死亡までの期間中央値は13ヵ月(四分位範囲:3~34ヵ月)であり、このうち5万1,924例(60%)が死亡前にホスピスを利用した。 背景因子をマッチさせたホスピス利用者と非利用者、それぞれ1万8,165例を比較した。平均年齢は非ホスピス群、ホスピス群とも80歳、男性が48%ずつで、予後不良がんの診断から死亡までの期間中央値は213日、210日、固形がんが88.2%、91%であった。最後の1年間の医療コストが約8,700ドル安価に ホスピスケア開始後にがん治療を受けた患者は、ホスピス群が1%、同時期の非ホスピス群は11%であった。ホスピスケア期間中央値は11日であった。6ヵ月以上の利用患者は6%。 入院率は非ホスピス群が65.1%、ホスピス群は42.3%(リスク比[RR]:1.5、95%信頼区間[CI]:1.5~1.6)、ICU入室率はそれぞれ35.8%、14.8%(RR:2.4、95%CI:2.3~2.5)であり、いずれもホスピスケアを利用した患者で有意に低かった。 医療サービスの利用は非ホスピス群がホスピス群よりも多く、ほとんどががんとは直接に関連しない急性疾患の治療であった。侵襲的手技(動・静脈カテーテル、気管内挿管、輸血など)の施行率は非ホスピス群が51.0%、ホスピス群は26.7%(RR:1.9、95%CI:1.9~2.0)であり、長期療養型病院等での死亡率はそれぞれ74.1%、14.0%(RR:5.3、95%CI:5.1~5.5)と、いずれも大きな差が認められた。 ホスピスケア開始前1年間の1日平均医療コストは、ホスピス群が145ドル、非ホスピス群は148ドルであった。また、開始前1週間のホスピス群の1日平均医療コストは802ドルに達し、非ホスピス群よりも146ドル高額であった。これに対し、ホスピスケア開始以降、ホスピス群の医療コストは急激に減少し、死亡までの最後の1週間の1日平均医療コストはホスピス群の556ドルに比べ、非ホスピス群は1,760ドルに達し、その差は1,203ドルだった。 死亡までの最後の1年間のホスピス群の平均総医療コストは6万2,819ドルであり、非ホスピス群の7万1,517ドルよりも8,697ドル(95%CI:7,560~9,835)安価であった。 著者は、「非ホスピス群の患者の多くが、ホスピス群と同時期にがんとは直接関連しない急性疾患で入院またはICUへ入室していたが、その治療は患者の望むところではない可能性が高い」とし、「今回の知見は、終末期医療の現実について医師と患者間で率直に話し合うことの重要性を浮き彫りにするもの」と指摘している。

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デンマークの医療安全学会報告 その1【Dr. 中島の 新・徒然草】(034)

三十四の段 デンマークの医療安全学会報告 その1デンマークで行われた RHCN(Resilient Health Care Network)という医療安全の学会に出席してきたので、その時の様子を3回に分けて報告いたします。まず、デンマークという国です。私は今回が初めての訪問になり、曖昧なイメージしかありませんでした。人口 約560万人面積 約4.3万平方キロメートルつまり九州程度の面積に兵庫県程度の人口が住んでいるということになります。ヨーロッパ大陸から北の方角に突き出してスカンジナビア半島に向きあっており、いわゆる北欧の一部です。首都のコペンハーゲンで北緯55度、ということはおおよそ樺太の北端に相当します。ただし、グリーンランドもデンマーク領です。こちらは人口わずか5万人ですが、面積は216万平方キロメートルあるので日本の5倍ほどの大きさです。デンマークについて面白いのはEU(欧州連合)に所属していながら、通貨はユーロではなく、独自のデンマーククローネ(DKK)を発行していることです。デンマーククローネはユーロ(EUR)に対するレートが人為的に固定されているので、物の値段は DKK と EUR の両方で表示されており、どちらでも使えます。それなら独自通貨を発行する意味があるのでしょうか。おそらくギリシャのような経済危機に見舞われたときに、通貨発行権を持っていれば政府や中央銀行が舵取りをしやすいのだと思います。国土はフラットで山らしい山がなく、あちこちで風力発電の羽根が回っています。人々は北欧らしく長身、金髪で、日本人が張り合おうという気にならないくらいの美男美女揃い。しかも仕事ぶりが真面目で、どこもかしこも掃除が行き届いているのには感心しました。多くのヨーロッパ人がそうであるように、デンマークの人も複数の言語を操ります。少なくとも英語は皆さんペラペラでした。地続きであるドイツ語もペラペラなのではないかと思います。以前はドイツとの間に国境の検問所があり、パスポートのチェックもあったそうですが、今はありません。車を運転していて気づいたら周囲の看板がドイツ語になっていたということもよくあるそうです。「EUの中だったらどこで仕事しようが家を買おうが自由なんだ。いい時代になったものだ」と、あるデンマーク人男性が言っていました。首都のコペンハーゲンですらのんびりしており英語も通じるので、旅行するにはいい所だと思います。ちゃんと世界三大「がっかり名所」の人魚姫像もあり、多くの観光客が写真を撮っていました。この像のモデルはデンマーク王立劇場のプリマドンナのエレン・プライスですが、彼女が裸体を拒否したので首から下は製作した彫刻家エリクセンの奥さん、エリーネが代わりにモデルをつとめたそうです。デンマークの話はこのくらいにして、学会の話をしましょう。なにしろ時差ボケに苦しみながら4日間の英語責めだったので、死にそうな思いをしました。ミゼルファートという風光明媚な村の古城での三食付きの学会ですが、単なるカンヅメ合宿だったのです。resilient というのは、状況に応じて柔軟に対応する能力のことです。会長のホルナゲル先生は漢字の「弾」をあてているので、「柔軟」というよりも「弾力的」という表現がいいのかもしれません。すでに多くの産業において、安全を実現する目的で resilient という考え方が入ってきているそうです。これまでの医療安全と違っているのは、「失敗から学ぶ」のではなく、「成功からも学ぶ」。言い換えれば、成功も失敗も含めたすべての過程から学ぶ人体も医療も線型システム(linear system)ではなく、複雑系(complex system)である。したがって、因果関係で説明できないことはたくさんある。というか、その方が多い医療安全の実現は、単に医療事故のない状態をつくることではないという共通認識を前提にしていることです。「複雑系」というのは知っているような知らないような言葉です。定義するのは難しいので例を挙げたいと思います。複雑系として知られている世界としては、金融、戦争やテロなどの紛争、交通渋滞、台風の発生や地震など、多くのものがあります。生物の構成はそもそも複雑系ですが、とくに典型的なものとしては癌の成長、菌糸類の成長、免疫系の機能、感染症の流行などが挙げられます。株の暴落や地震の発生、疾病の発生などは、複雑系の中で突如起こってくる創発(emergence)と呼ばれる現象ですが、これを予測したり制御したりするのは極めて困難です。ほとんど不可能といってもいいでしょう。地震の発生や金融バブルの崩壊がいつどのような形で起こるのかを予測できれば多くの悲劇が防げるはずですが、地球物理学者や経済学者などの専門家をもってしても確実に予測することはできていません。逆に、予測できない創発が突如起こるのが典型的な複雑系なのです。それはさておき、resilient という合言葉のもとに世界中から集まった約50人が、朝から晩までそれぞれの主義主張を発表しては議論するさまは壮観でした。なんせ医療界にとっては全く新しい概念であり、各自が好きなように解釈しては自らの成果、というかアイデアを披露するわけですから、座って聴いている方はまことに苦しいものがあります。まずは複雑系を描写する FRAM(The Functional Resonance Analysis Method)という概念図。これは六角形をパズルのように組み合わせて、たとえば「輸血を行う」といった事象を記述するものです。「正しい血液をとってくる」「電子カルテで確認する」「輸血前に照合する」「輸血ラインにつなぐ」など、1つ1つの行為に input(入力)と output(出力)があるのは当然ですが、これに影響を及ぼすものとして time(時間的制約)、preconditions(準備)、control(制御)、resources(資源)などがあるとしています。頭文字をとって順に I O T P C R で6つになり、この6つで六角形を構成するのです。現実世界を複雑系として理解するためには相互に複雑に絡み合った多数の六角形を用いる必要があり、「輸血」という一見単純な医療行為であっても、FRAM を用いて記述するには10個以上の六角形を要します。その一方、正確に記述すれば複雑怪奇な図となってしまう「輸血」を、われわれがさほど難しく考えることもなくやってしまえるのは、現場の1人1人の「弾力的な」働きによるのです。つまり、医療従事者は非常に resilient なので、無意識のうちに複雑な行程をこなしているのです。もちろん各医療機関には輸血マニュアルというものがあり、それを守って輸血をしているには違いないのですが、実際の現場が万事想定どおりになっているとは限りません。機械の不調とか、バーコードの読み取りがうまくいかないとか、同じ処置室に別の急患が搬入されたとか、時々刻々と変わっていく状況の中で時間に追われながら輸血せざるを得ないのが現実です。ほとんどの場合、現場の人たちがうまく微調整を行い、結果として正しく輸血が行われているのです。ところが残念なことに、ごく稀に異型輸血のような事故が起こってしまいます。一見、単純に見える間違いが、実は機械やバーコードや他の患者など、思いもよらないいろいろな要素が複雑に絡まり合って起こっていることが FRAM からは読み取れます。世の中にはこの FRAM を駆使し、原子力発電から宇宙飛行、国際紛争に至るまでどのように記述するかを研究している人達がいるのは驚きです。そのうちの1人は学会の事務局を兼任していたデンマーク人女性ですが、もともとは化学プラントの安全を専門としており、数年前から医療安全にかかわっているとのこと。アメリカ人やオーストラリア人の医師たちに対し、一歩も引かずに英語で議論するところなど、只者ではありませんでした。

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事例20 HBs抗体の査定【斬らレセプト】

解説事例では、B型慢性肝炎で治療継続フォロー中の患者に実施した肝炎ウィルス検査4項目が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に3項目へ査定となった。不適当とされた項目はHBs抗体であった。HBs抗体は、主にB型急性肝炎の治癒判定やウィルス性肝炎の既往歴検索に有用な検査とされている。事例でも、現状の判定に有用だと思われるために実施されていた。しかし、治療継続フォロー中の事例で、HBs抗原検査でB型肝炎ウイルスの有無が把握できれば、HBs抗体を検査する必要はなく、過剰検査とみなされる。また、一度陽性になると体内に抗体が長期間にわたり存在して陽性反応が続くという性質上、肝炎の鑑別診断、B型肝炎の経過観察には適さないとされている。今回はこちらを理由に、「傷病名から見て算定は不適当」と判断されたものであろう。同様の理由で、輸血歴や垂直感染の恐れのない小児へのHBs抗体の実施も、査定対象とされているので留意されたい。

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エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

 9月3日(水)、都内にて「西アフリカのエボラ出血熱ウイルス流行と国際社会の課題」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、実際に現地リベリアで患者の診療や医療従事者への指導を担当した医師も講演し、最新の情報が伝えられた。※画像は、出国時の体温検査(画像提供:国立国際医療研究センター 加藤 康幸氏)対応は1類感染症の疾患 「日本の医療機関における備え、感染対策の基礎」と題し、堀 成美氏(国立国際医療研究センター)が、わが国の感染症対策の概要について説明を行った。 エボラ出血熱は、感染症法上1類感染症として取り扱われており、特定の医療機関で診療を行うこと、また、現在、患者発生に備えて、厚生労働省検疫所や自治体と共同して感染症患者の移送などの訓練を行っていると述べた。ワクチン開発の現状 次に、「ワクチン、治療の現状と課題」をテーマに西條 政幸氏(国立感染症研究所)が、現在のワクチン開発の状況を説明した。 本格的なワクチン開発は、1995年のエボラ出血熱アウトブレイクより行われた。当初は、同疾患に罹患し回復した患者の血液輸血という、中和抗体投与療法から開始された。現在、ウイルス増殖を抑制する抗ウイルス薬T-705と中和活性を有する抗体製剤であるZMappが開発され、サルやマウスによる治験が行われている。 T-705は早い段階の投与で効果を発揮し、マウスについて感染6日後の投与では死亡例がなかったのに対し、8日後の投与では約半数が死亡する結果であったという。また、ZMappは、サルについて感染5日後に投与した群はすべて回復が認められたのに対し、コントロール群では8日以内にすべて死亡したことが報告された。 西條氏はワクチンの特徴として、感染を予防するものではなく、あくまで体内でのウイルス増殖を抑え、重症化を防ぐために使用されるものであることを強調した。 今後のワクチン使用の問題点としては、ヒトへの有効性のほか、安全性、情報開示などさまざまなことが挙げられると提起した。 また最後に、西アフリカの感染拡大について触れ、「ウイルスそのものに変化は見られないものの、感染拡大の阻止には苦慮している。拡大の阻止には、さらなる住民への教育、広報、医療機関への資材の提供などが期待される」と説明した。疾患への知識不足がさらなる感染を招く 続いて、「リベリアにおけるエボラ対策支援活動から」をテーマに、実際にリベリアで活動した加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター)が最新情報を紹介した。 リベリアは、乾季のある熱帯雨林気候に属し、人口約420万人。今回の感染拡大は内戦後、国連による平和維持状態が続いている中で起こったものである。 エボラ出血熱は、現在5種類が特定されており、今回の流行はその中でも最強のザイール型と呼ばれているもの。首都を含む広範囲の感染拡大は、新興感染症では世界が初めて経験する事態で、WHO予測では2万人の感染者が予想されているという。 WHOによればエボラ出血熱は、人-人感染でうつり、2~21日で症状を発現、生存率は47%という特徴をもつ。そして、加藤氏によれば、現地では看護をする患者家族や医療スタッフへの感染例が多いとのことである。 典型症状は、出血よりも発熱、下痢と嘔吐であり、現地では、マラリアが通年で流行していることもあり、初期診断時に発熱症状の患者の鑑別診断に苦慮しているとのこと。確定診断は、PCR法による診断が行われ、現地では疑い例の段階で治療・隔離ユニットに収容される。 流行を抑えるためには、隔離と検疫が重要で、現地でも対策が取られているが、医療システムが崩壊していることもあり、順調には進んでいない。そんな中で、さまざまな国、機関の支援により医療の再構築がなされており、今回の支援活動では、感染防止の教育、発熱外来の設置、治療ユニットの設置などが行われた。 現地では、患者の1割が医療従事者であることから、医療従事者の感染防護としては、ガウンなどを重層する国境なき医師団の対策を採用している。また、始業時の体温チェック、バディ体制での病室入室時の防護服チェックなど、万全の態勢を期して臨んでいることなどが紹介された。 治療に関しては、エンピリック治療として抗マラリア薬や抗菌薬の投与が、支持療法として点滴、輸血などが行われている。さらに、疾患啓発や感染防止教育のために、回復患者が医療機関を巡回する取り組みが行われているそうである。 今後の課題として、エボラ出血熱について現地住民への理解の促進、現地の医療システムの復旧、政府などへの信頼性の回復、孤立化による物資不足の解消などが待たれる、と講演を終えた。詳しくは次のサイトをご参照ください。 国立感染症研究所 エボラ出血熱  厚生労働省 感染症法に基づく医師の届け出のお願い

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腰椎変性疾患への手術、従来法 vs ナビシステムTLIF

 近年、最小侵襲経椎間孔腰椎椎体間固定術(MIS-TLIF)が普及してきているが、ナビゲーションシステムの使用によりさらに手術が容易になってきている。中国・清華大学のWei Tian氏らは、腰椎変性疾患に対する単椎間TLIFについて、ナビゲーションシステムを用いた方法(CAMISS-TLIF)と従来法(open-TLIF)の臨床予後をレトロスペクティブに比較。CAMISS-TLIFのほうが優れていることを報告した。CAMISS-TLIFはopen-TLIFより手術時間が長くなるものの、術中出血、術後ドレーンおよび疼痛が少なく入院期間が短縮されるなどの利点が認められたという。Journal of Spinal Disorders & Techniques誌オンライン版2014年8月1日号の掲載報告。 試験対象は、単椎間TLIFを施行した61例(CAMISS-TLIF 30例、open-TLIF 31例)であった。 患者背景、手術成績、疼痛(視覚的アナログ尺度による)および機能(Oswestry disability index:ODIによる)などを調査するとともに、CTを用いてスクリュー挿入を評価した。また、術後2年時に骨癒合を独立した研究者によって評価した。 主な結果は以下のとおり。・CAMISS-TLIF群はopen-TLIF群より、出血量、術後ドレーン、輸血の必要性および術後初期の腰痛が有意に少なく、リハビリテーションの開始時期が早く、入院期間が短かったが、手術時間は長かった。・術後3ヵ月、1年、2年における疼痛および機能は両群で差はなかった。・挿入したスクリューのうちCAMISS-TLIF群で93.33%、open-TLIF群で73.39%は椎弓根穿孔が認められなかった(p=0.016)。・骨癒合率は両群で同程度であった(p=0.787)。

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献血ドナーのHEV感染率は予想以上/Lancet

 英国の献血ドナー中の遺伝子3型E型肝炎ウイルス(HEV)感染者の割合は0.04%と、予想以上に高率で存在することが明らかになった。また、そうした感染者の献血を受けたレシピエントのうち、同ウイルスへの感染は4割以上で検出されたという。英国National Health Service Blood and TransplantのPatricia E Hewitt氏らが、同国で行われた献血後ろ向きに調査を行い報告した。Lancet誌オンライン版2014年7月28日号掲載の報告より。HEV RNAについてスクリーニング、レシピエントも追跡調査 研究グループは、2012年10月~2013年9月に、英国南東部で行われた22万5,000件の献血について、後ろ向きにHEV RNAのスクリーニングを行った。 HEV RNAの検出については、血清学的、ゲノムによる系統学的な分析を行った。同献血のレシピエントも特定し、献血による同ウイルス感染のアウトカムについて調査した。HEV感染ドナー、71%が献血時に血清学的陰性 その結果、79例のドナーで遺伝子3型HEVのウイルス血症が検出され、HEV RNAの有病率は、2,848件中1件(0.04%)相当であることが示された。なお、同ウイルス血症を持つドナーのうち56例(71%)が、献血時には血清学的陰性だった。 79例のドナーから129個の血液製剤がつくられ、そのうち62個が60例への輸血に使われていた。同輸血のレシピエント43例について調べたところ、18例(42%)で同感染が認められた。 研究グループは、献血ドナーのHEV RNA罹患率は予想より高かったとまとめている。また、2,848件中1件という有病率から推定すると、試験を行った年に英国内で発生した急性HEV感染の発生件数は8~10万件に上るとしている。

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