サイト内検索|page:10

検索結果 合計:627件 表示位置:181 - 200

182.

赤ちゃんへの毎日の保湿剤、アトピー性皮膚炎を予防しない

 生後1年間、赤ちゃんに保湿剤を毎日塗布しても、アトピー性皮膚炎への予防効果は認められなかったことが、英国・ノッティンガム大学のLucy E. Bradshaw氏らが行った無作為化試験「Barrier Enhancement for Eczema Prevention(BEEP)試験」の結果、示された。食物アレルギー、喘息、花粉症への予防効果も認められなかった。保湿剤塗布のアトピー性皮膚炎/湿疹への予防効果については議論が分かれている。Allergy誌オンライン版2022年10月19日号掲載の報告。赤ちゃんに保湿剤を毎日塗布しても31%がアトピーと診断、対照群は28% BEEP試験では、アトピー性皮膚炎およびアトピー性の症状に対する生後1年間の毎日の保湿剤塗布の効果を、5歳まで評価した。 アトピー性疾患の家族歴がある新生児1,394人を、1対1の割合で無作為に2群に割り付け、毎日の保湿剤塗布+標準的スキンケアをアドバイス(保湿剤塗布群:693人)または標準的スキンケアのみをアドバイス(対照群:701人)した。 保護者に対する質問票により、3歳、4歳、5歳時に長期フォローアップを行った。主要評価項目は、保護者の報告に基づくアトピー性皮膚炎および食物アレルギーの臨床診断とした。 アトピー性皮膚炎およびアトピー性の症状に対する生後1年間の毎日の保湿剤塗布の効果を5歳まで評価した主な結果は以下のとおり。・保湿剤塗布群の保護者のほうが、5年間にわたり保湿剤塗布の頻度が高かったと回答した。・生後12~60ヵ月(5歳)にアトピー性皮膚炎と臨床診断されたのは、保湿剤塗布群188/608例(31%)、対照群178/631例(28%)であった(補正後相対リスク:1.10、95%信頼区間[CI]:0.93~1.30)。・保湿剤塗布群でも、3歳時、4歳時時点ですでに前年度の食物反応について報告した保護者がいたが、5歳時までに医師により診断された食物アレルギーの累積発生率は、保湿剤塗布群15%(92/609例)、対照群14%(87/632例)で、同程度であった(補正後相対リスク:1.11、95%CI:0.84~1.45)。・喘息、花粉症の累積発生率も両群で類似していた。

183.

ガイドライン改訂ーアナフィラキシーによる悲劇をなくそう

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1.定義と診断基準」が変更になった。そこで、この改訂における背景やアナフィラキシー対応における院内での注意点についてAnaphylaxis対策委員会の委員長である海老澤 元宏氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター長)に話を聞いた。アナフィラキシーガイドライン2022で診断基準が改訂 改訂となったアナフィラキシーガイドライン2022の診断基準では、世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約された。アナフィラキシーの定義は『重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある』としている。海老澤氏は「基準はまず皮膚症状の有無で区分されており皮膚症状がなくても、アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状のいずれかを発症していれば診断可能」と説明した。◆診断基準[アナフィラキシーガイドライン2022 p.2]※詳細はガイドライン参照 以下の2つの基準のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い。1.皮膚、粘膜、またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、掻痒または紅潮、口唇・下・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症した場合。さらに、A~Cのうち少なくとも1つを伴う。  A. 気道/呼吸:呼吸不全(呼吸困難、呼気性喘鳴・気管支攣縮、吸気性喘鳴、PEF低下、低酸素血症など)  B. 循環器:血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下[虚脱]、失神、失禁など)  C. その他:重度の消化器症状(重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐など[特に食物以外のアレルゲンへの曝露後])2.典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合。 また、アナフィラキシーガイドライン2022はさまざまな国内の研究結果やWAOアナフィラキシーガイダンス2020に基づいて作成されているが、これについて「国内でもアナフィラキシーに関する疫学的な調査が進み、ようやくアナフィラキシーガイドライン2022に反映させることができた」と、前回よりも国内でのアナフィラキシーの誘因に関する調査や症例解析が進んだことを強調した。アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた変更点 今回の取材にて、同氏は「アナフィラキシーに対し、アドレナリン筋注を第一選択にする」ことを強く訴えた。その理由の一つとして、「2015年10月1日~2017年9月30日の2年間に医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書476件のうち、アナフィラキシーが死因となる事例が12件もあった。これらの誘因はすべて注射剤で、造影剤、抗生物質、筋弛緩剤などだった。アドレナリン筋注による治療を迅速に行っていれば死亡を防げた可能性が高いにもかかわらず、このような事例が未だに存在する」と、アドレナリン筋注が必要な事例へ適切に行われていないことに警鐘を鳴らした。 ではなぜ、アナフィラキシーに対しアドレナリン筋注が適切に行われないのか? これについて「アドレナリンと聞くと心肺蘇生に用いるイメージが固定化されている医師が一定数いる。また、アドレナリン筋注を経験したことがない医師の場合は最初に抗ヒスタミン薬やステロイドを用いて経過を見ようとする」と述べ、「アドレナリン筋注をプレホスピタルケアとして患者本人や学校の教員ですら投与していることを考えれば、診断が明確でさえあれば躊躇する必要はない」と話した。 アナフィラキシーを生じやすい造影剤や静脈注射、輸血の場合、症状出現までの時間はおよそ5~10分で時間的猶予はない。上記に述べたような症状が出現した場合には、原因を速やかに排除(投与の中止)しアドレナリン筋注を行った上で集中治療の専門家に委ねる必要がある。 また、アドレナリン筋注と並行して行う処置として併せて読んでおきたいのが“補液”の項目(p.24)である。「これまでは初期対応に力を入れて作成していたが、今回はアナフィラキシーの治療に関しても委員より盛り込むことの提案があった」と話した。 以下にはWAOガイダンスでも述べられ、アナフィラキシーガイドライン2022に盛り込まれた点を抜粋する。◆治療 2.薬物治療:第一選択薬(アドレナリン)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.21]・心疾患、コントロール不良の高血圧、大動脈瘤などの既往を有する患者、合併症の多い高齢患者では、アドレナリン投与によるベネフィットと潜在的有害事象のリスクのバランスをとる必要があるものの、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しない1)・アドレナリンを使用しない場合でもアナフィラキシーの症状として急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞、不整脈)をきたすことがある、アドレナリンの使用は、既知または疑いのある心血管疾患患者のアナフィラキシー治療においてもその使用は禁忌とされない1)・経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い状態では必要であるが、それ以外では不整脈、高血圧などの有害作用を起こす可能性があるので、推奨されない2)◆治療 2.薬物治療:第二選択薬(アドレナリン以外)[アナフィラキシーガイドライン2022 p.23]・H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和するが、その他の症状への効果は確認されていない3) このほか、同氏は「食物アレルギーの集積調査が進み、国内でも落花生やクルミなどのナッツ類や果物がソバや甲殻類よりも誘因として高い割合を示すことが明らかになった」と話した。さらに「病歴の聞き取りが不十分なことで起こるNSAIDs不耐症への鎮痛薬処方なども問題になっている」と指摘した。 なお、アナフィラキシーガイドライン2022は小児から成人までのアナフィラキシー患者に対する診断・治療・管理のレベル向上と、患者の生活の質の改善を目的にすべての医師向けに作成されている。日本アレルギー学会のWebからPDFが無料でダウンロードできるのでさまざまな場面でのアナフィラキシー対策に役立てて欲しい。

184.

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」【下平博士のDIノート】第109回

痒みを速やかに改善するアトピー性皮膚炎抗体薬「ミチーガ皮下注用60mgシリンジ」今回は、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体「ネモリズマブ(遺伝子組換え)注射剤(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を標的とした抗体医薬品であり、掻破行動による皮膚症状の悪化やそう痒の増強を防ぐことで、患者QOLの向上が期待されています。<効能・効果>アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)の適応で、2022年3月28日に承認され、8月8日より販売されています。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬および抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者に投与します。<用法・用量>通常、成人および13歳以上の小児にはネモリズマブ(遺伝子組換え)として1回60mgを4週間の間隔で皮下投与します。本剤はそう痒を治療する薬剤であり、そう痒が改善した場合であっても本剤投与中はアトピー性皮膚炎の必要な治療を継続します。<安全性>国内第III相試験において、本剤投与群210例中122例(58.1%)に副作用が認められました。主な副作用は、アトピー性皮膚炎34例(16.2%)、サイトカイン異常11例(5.2%)、好酸球数増加および上咽頭炎各8例(3.8%)、蜂巣炎および蕁麻疹各7例(3.3%)でした。重大な副作用として、ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症(3.4%)、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹)などの重篤な過敏症(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、体内のリンパ球が産生するIL-31の働きを抑えることで、アトピー性皮膚炎のそう痒を改善します。2.血圧低下、息苦しさ、意識の低下、ふらつき、めまい、吐き気、嘔吐、発熱、咳、のどの痛みなどの症状が現れた場合はご連絡ください。3.そう痒が治まっていても、普段と異なる新たな皮疹が生じたり、悪化したりした場合は受診してください。4.刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控え、身体を清潔にして規則正しい生活を心がけましょう。睡眠中に皮膚をかかないように工夫して、皮膚刺激の少ない衣類を選択し、アレルゲン対策などにも留意しましょう。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を誘発するサイトカインであるIL-31をターゲットとした世界初のヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体製剤です。そう痒に伴う掻破行動は、皮膚症状を悪化させ、さらに痒みが増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状などの合併症を誘引する恐れがあります。また、そう痒はアトピー性皮膚炎患者において、寝られない、仕事や勉強に集中できない、など大きな悩みであり、そう痒が解消されることでQOLの改善が期待できます。アトピー性皮膚炎のそう痒に対する治療法としては、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬の併用のもとで、抗ヒスタミン薬の内服が推奨されています。シクロスポリン内服液も痒みを軽快させることが知られていますが、安全性の観点から対象患者や投与期間が限定されています。抗体医薬品としては、デュピルマブ皮下注(商品名:デュピクセント)が承認されていますが、皮疹の炎症が強い場合はデュピルマブ、そう痒を主訴とする場合はネモリズマブが選択されるなど、投与対象患者は異なると考えられます。本剤はアトピー性皮膚炎に伴うそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中はそう痒が改善した場合であっても、ステロイド外用薬、タクロリムス外用薬、デルゴシチニブ外用薬、保湿外用薬など、アトピー性皮膚炎の他の症状に対する治療は中止せずに継続します。経口ステロイド薬の急な中断にも注意が必要です。既存治療を実施したにも関わらず中等度以上のそう痒を有するアトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相試験において、本剤投与開始16週後のそう痒変化率は、プラセボ群に比べて有意に改善しました。臨床試験において、投与翌日よりプラセボに対して有意な改善が認められ、多くの患者は治療開始から16週頃までには効果が発現しています。なお、2023年6月1日より、本剤は在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となり、在宅自己注射が保険適用となりました。

185.

小児アトピー性皮膚炎と神経発達に関連はあるか?

 2歳以前にアトピー性皮膚炎(AD)を発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが報告された。Allergology International誌オンライン版2022年9月1日号掲載の報告。 小児におけるADと認知機能障害との関連を報告した研究はほとんどない。韓国・翰林大学校のJu Hee Kim氏らは、小児におけるADと神経発達障害との関連を評価した。 2008~12年に韓国で生まれた239万5,966例の小児を分析した。すべてのデータは、韓国国民健康保険制度のデータベースより用いられた。ADは、生後24ヵ月までに5つ以上の診断を受けたものと定義した。アウトカムは、6歳時の韓国乳幼児発達スクリーニングテストの粗大運動能力、微細運動能力、認知、言語、社会性、セルフケア領域における神経発達障害の疑いであった。陽性対照アウトカムは、注意欠陥多動性障害(ADHD)とした。喘息とアレルギー性鼻炎を調整した順序ロジスティック回帰を用いて関連性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象小児のうち、8万9,452例が対照群に、3万557例がAD群に割り付けられ、加重データでは、AD群は対照群に比べ、総スコア(加重調整オッズ比:1.10、95%信頼区間:1.05~1.16)、粗大運動能力(1.14、1.04~1.25)、微細運動能力(1.15、1.06~1.25)で神経発達障害の疑いリスクが高いことが明らかにされた。・ADにステロイドを使用した群や入院した群では、神経発達障害の疑いリスクの上昇が認められた。また、AD群ではADHDと同様に精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害との有意な関連性が認められた。 ただし、単一時点(6歳時)の結果だけでは全体的な発達の成果を判断することは困難であること、個々の子供の発達速度はまちまちであり、発達遅滞が疑われる子供であっても、最終的には正常な発達を示すことが多いことなどを、研究グループは述べている。 著者らは「この研究により、2歳以前にADを発症した子供は、6歳時の発達スクリーニング検査における神経発達障害と有意な関連があることが示された。さらに、ADのある子供は、ADHD、精神遅滞、心理的発達障害、行動・情緒障害などの神経発達障害のリスクが高いことがわかった。これらの関連性の基礎となるメカニズムは依然として不明であるため、さらなる研究が必要である」と結んでいる。

186.

世界初・日本発、アトピー性皮膚炎の「かゆみ」治療薬で患者QOLの早期改善に期待/マルホ

 2022年9月15日、マルホ主催によるプレスセミナーが開催され、同年8月に発売されたアトピー性皮膚炎(AD)のかゆみの治療薬、抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)について、京都大学医学研究科の椛島 健治氏が講演を行った。かゆみは、AD患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を著しく低下させる。椛島氏は、「これまでADのかゆみを有効に抑えることが困難だった。かゆみを改善し、ADを早期に良くしていくことが本剤の狙いであり、画期的ではないか」と述べた。 ADは、増悪・寛解を繰り返す、かゆみのある湿疹を特徴とする慢性の皮膚疾患である。その病態は、皮膚バリア機能異常、アレルギー炎症、かゆみの3要素が互いに連動し、形成される(三位一体病態論)。国内には推計約600万人のAD患者がおり、年々増加傾向にある。このように身近な疾患であるADは、治療法も確立されているかのように見える。しかし、AD患者の悩みは深刻だ。かゆみで「眠れない」「集中できない」悩めるAD患者 AD患者は、蕁麻疹、乾癬、ざ瘡や脱毛症患者の中でQOLが最も障害されている。その要因の1つに、かゆみ症状が挙げられる。かゆみに伴う掻破行動は、皮膚症状の悪化を招くだけでなく、さらにかゆみを増強させる悪循環(イッチ・スクラッチサイクル)を引き起こす。ADのかゆみは強く、かゆみ閾値の低下、抗ヒスタミン薬が効きにくい、嗜癖的掻破行動、夜間の強いかゆみ、増悪因子が多数あるなどの特徴があり、治療に難渋する医師も多いという。実際、医師のアンケート調査において、13歳以上のAD患者の約30%はかゆみコントロールが不十分であるとされている。 AD患者にとって、治療目標の最たるものは「かゆみをなくしたい」である。AD患者は、とくに夜~就寝後の時間帯でかゆみを強く感じる。約半数がかゆみによって寝付けず、途中で目覚めるともいわれ、睡眠が大きく障害されていることがわかる。さらに、仕事への影響も深刻であり、約30%が「仕事ができない」という。それにもかかわらず、AD患者に薬物治療で不満な点を尋ねると、「かゆみが十分に改善されない」が最も多く、「皮膚症状が十分に改善されない」よりも多かった。かゆみの対策は、長く臨床上のアンメットニーズとなっていた。アトピー性皮膚炎のかゆみメディエーター IL-31の登場 IL-31は、かゆみを誘発するサイトカインであり、ADに伴うかゆみの発生に深く関与している。ADの病態において、活性化Th2細胞から産生されたIL-31は、神経細胞などに発現するIL-31受容体Aに結合し、神経伝達を介して脳にかゆみを伝える。同氏らは、十数年前よりIL-31に着目し、抗IL-31受容体A抗体ミチーガの創製元である中外製薬および、製造販売元であるマルホと共に開発を行ってきた。ミチーガは早期からかゆみを改善 ミチーガは、IL-31受容体Aを競合的に阻害することでかゆみの抑制作用を示す、世界初の抗体医薬品である。全国69施設が参加した国内第III相臨床試験において、既存治療を実施したにもかかわらず中等度以上のそう痒を有するAD患者を対象に、有効性と安全性が検討された。 主要評価項目である投与開始16週後のそう痒VAS※変化率は、プラセボ群(72例)で-21.39%、ミチーガ群(143例)で-42.84%であり、ミチーガ群で有意にかゆみが改善した。かゆみの改善は初回投与の1日後から観察され、「かゆみを抑える効果が非常に早い」(同氏)。そのほか、睡眠やQOLも有意に改善したことが示された。一方、主な副作用は、皮膚感染症(18.8%)、AD(18.5%)であった。同氏は、本剤使用時の留意点として「かゆみが治まってもしっかり塗り薬は続けてほしい」ことを患者に伝えるべき、とした。 従来の治療法は炎症抑制作用を主なターゲットとする一方、本剤は、患者の主訴であるかゆみに着目した薬剤である。かゆみに対する新たな治療選択肢が広がることにより、AD患者の早期のかゆみ改善およびQOL改善に寄与することを期待したい。 なお、本剤は最適使用推進ガイドライン対象品目となっている。※そう痒VAS(Visual Analogue Scale):0をかゆみなし、100を想像されうる最悪のかゆみとして患者が評価

187.

遺族にNGな声かけとは…「遺族ケアガイドライン」発刊

 2022年6月、日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会の合同編集により「遺族ケアガイドライン」が発刊された。本ガイドラインには“がん等の身体疾患によって重要他者を失った遺族が経験する精神心理的苦痛の診療とケアに関するガイドライン”とあるが、がんにかかわらず死別を経験した誰もが必要とするケアについて書かれているため、ぜひ医療者も自身の経験を照らし合わせながら、自分ごととして読んでほしい一冊である。 だが、本邦初となるこのガイドラインをどのように読み解けばいいのか、非専門医にとっては難しい。そこで、なぜこのガイドラインが必要なのか、とくに読んでおくべき項目や臨床での実践の仕方などを伺うため、日本サイコオンコロジー学会ガイドライン策定委員会の遺族ケア小委員会委員長を務めた松岡 弘道氏(国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科/支持療法開発センター)を取材した。ガイドラインの概要 本書は4つに章立てられ、II章は医療者全般向けで、たとえば、「遺族とのコミュニケーション」(p29)には、役に立たない援助、遺族に対して慎みたい言葉の一例が掲載されている。III章は専門医向けになっており、臨床疑問(いわゆるClinical questionのような疑問)2点として、非薬物療法に関する「複雑性悲嘆の認知行動療法」と薬物療法に関する「一般的な薬物療法、特に向精神薬の使い方について」が盛り込まれている。第IV章は今後の検討課題や用語集などの資料が集約されている。遺族の心、喪失と回復を行ったり来たり 人の死というは“家族”という単位だけではなく、友人、恋人や同性愛者のパートナーのように社会的に公認されていない間柄でも生じ(公認されない悲嘆)、生きている限り誰もが必ず経験する。そして皮肉なことに、患者家族という言葉は患者が生存している時点の表現であり、亡くなった瞬間から“遺族”になる。そんな遺族の心のケアは緩和ケアの主たる要素として位置付けられるが、多くの場合は自分自身の力で死別後の悲しみから回復していく。ところが、死別の急性期にみられる強い悲嘆反応が長期的に持続し、社会生活や精神健康など重要な機能の障害をきたす『複雑性悲嘆(CG:complicated grief)』という状態になる方もいる。CGの特徴である“6ヵ月以上の期間を経ても強度に症状が継続していること、故人への強い思慕やとらわれなど複雑性悲嘆特有の症状が非常に苦痛で圧倒されるほど極度に激しいこと、それらにより日常生活に支障をきたしていること”の3点が重要視されるが、この場合は「薬物治療の必要性はない」と説明した。 一方でうつ病と診断される場合には、専門医による治療が必要になる。これを踏まえ松岡氏は「非専門医であっても通常の悲嘆反応なのかCGなのか、はたまた精神疾患なのかを見極めるためにも、CG・大うつ病性障害(MDD)・心的外傷後ストレス障害(PTSD)の併存と相違(p54図1)、悲嘆のプロセス(p15図1:死別へのコーピングの二重過程モデル)を踏まえ、通常の悲嘆反応がどのようなものなのかを理解しておいてほしい」と強調した。医師ができる援助と“役に立たない”援助 死別後の遺族の支援は「ビリーブメントケア(日本ではグリーフケア)」と呼ばれる。その担い手には医師も含まれ、遺族の辛さをなんとかするために言葉かけをする場面もあるだろう。そんな時に慎みたい言葉が『寿命だったのよ』『いつまでも悲しまないで』などのフレーズで、遺族が傷つく言葉の代表例である。言葉かけしたくも言葉が見つからないときは、正直にその旨を伝えることが良いとされる。一方、遺族から見て有用とされるのは、話し合いや感情を出す機会を持つことである。 そのような機会を提供する施設が国内でも設立されつつあるが、現時点で約50施設と、まだまだ多くの遺族が頼るには程遠い数である。この状況を踏まえ、同氏は「医師や医療者には患者の心理社会的背景を意識したうえで診療や支援にあたってほしいが、実際には多忙を極める医師がここまで介入することは難しい」と話し、「遺族の状況によってソーシャルワーカーなどに任せる」ことも必要であると話した。 なお、メンタルヘルスの専門家(精神科医、心療内科医、公認心理師など)に紹介すべき遺族もいる。それらをハイリスク群とし、特徴を以下のように示す。<強い死別反応に関連する遺族のリスク因子>(p62 表4より)(1)遺族の個人的背景・うつ病などの精神疾患の既往、虐待やネグレクト・アルコール、物質使用障害・死別後の睡眠障害・近親者(とくに配偶者や子供の死)・生前の患者に対する強い依存、不安定な愛着関係や葛藤・低い教育歴、経済的困窮・ソーシャルサポートの乏しさや社会的孤立(2)治療に関連した要因・治療に対する負担感や葛藤・副介護者の不在など、介護者のサポート不足・治療やケアに関する医療者への不満や怒り・治療や関わりに関する後悔・積極的治療介入(集中治療、心肺蘇生術、気管内挿管)の実施の有無(3)死に関連した要因・病院での死・ホスピス在院日数が短い・予測よりも早い死、突然の死・死への準備や受容が不十分・「望ましい死」であったかどうか・緩和ケアや終末期の患者のQOLに対する遺族の評価 上記を踏まえたうえで、遺族をサポートする必要がある。不定愁訴を訴える患者、実は誰かを亡くしているかも 一般内科には不定愁訴で来院される方も多いだろうが、「遺族になって不定愁訴を訴える」ケースがあるそうで、それを医療者が把握するためにも、原因不明の症状を訴える患者には、問診時に問いかけることも重要だと話した。<表5 遺族の心身症の代表例>(p64より一部抜粋)1.呼吸器系(気管支喘息、過換気症候群など)2.循環器系(本態性高血圧症など)3.消化器系(胃・十二指腸潰瘍、機能性ディスペプシア、過敏性腸症候群など)4.内分泌・代謝系(神経性過食症、単純性肥満症など)5.神経・筋肉系(緊張型頭痛、片頭痛など)6.その他(線維筋痛症、慢性蕁麻疹アトピー性皮膚炎など) 最後に同氏は高齢化社会特有の問題である『別れのないさよなら』について言及し、「これは死別のような確実な喪失とは異なり、あいまいで終結をみることのない喪失に対して提唱されたもの。高齢化が進み認知症患者の割合が高くなると『別れのないさよなら』も増える。そのような家族へのケアも今後の課題として取り上げていきたい」と締めくくった。書籍紹介『遺族ケアガイドライン』

188.

デュピルマブ、6歳未満のアトピー性皮膚炎にも有効/Lancet

 6歳未満のアトピー性皮膚炎患児の治療において、インターロイキン(IL)-4とIL-13を標的とする完全ヒト型モノクローナル抗体デュピルマブはプラセボと比較して、皮膚症状や徴候を有意に改善し、安全性プロファイルも許容範囲であることが、米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らが実施した「LIBERTY AD PRESCHOOL試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2022年9月17日号に掲載された。北米と欧州の第III相無作為化プラセボ対照比較試験 LIBERTY AD PRESCHOOL試験は、中等症~重症のアトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性と安全性の評価を目的とする第II/III相試験であり、今回は第III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験の結果が報告された(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成を受けた)。本研究は、北米と欧州の31施設で行われ、2020年6月30日~2021年2月12日の期間に参加者が登録された。 対象は、生後6ヵ月~<6歳の中等症~重症のアトピー性皮膚炎で、糖質コルチコイドによる局所治療の効果が不十分な患児であった。被験者は、low-potencyの糖質コルチコイド(酢酸ヒドロコルチゾン1%含有クリーム)による局所治療に加え、デュピルマブまたはプラセボを4週ごとに16週間、皮下投与する群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、16週時のInvestigator’s Global Assessment(IGA)スコア0~1点(皮膚症状が消失またはほぼ消失)とされた。主要エンドポイント:28% vs.4% 162例(年齢中央値4.0歳、男児61%)が登録され、デュピルマブ群に83例、プラセボ群に79例が割り付けられた。それぞれ82例(99%)および75例(95%)が、試験薬の投与を完遂した。 16週時に、IGAスコア0~1点を達成した患児は、デュピルマブ群が23例(28%)と、プラセボ群の3例(4%)に比べ有意に優れた(群間差:24%、95%信頼区間[CI]:13~34、p<0.0001)。 主な副次エンドポイントであるEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから16週までの75%以上の改善(EASI-75)を達成した患児は、それぞれ44例(53%)および8例(11%)であり、デュピルマブ群で有意に割合が高かった(群間差:42%、95%CI:29~55、p<0.0001)。 また、EASIのベースラインから16週までの変化率(デュピルマブ群-70.0% vs.プラセボ群-19.6%、群間差:-50.4%、95%CI:-62.4~-38.4、p<0.0001)および最悪の痒み/掻破の数値評価尺度(NRS)スコアのベースラインから16週までの変化率(-49.4% vs.-2.2%、-47.1%、-59.5~-34.8、p<0.0001)は、いずれもデュピルマブ群で有意に良好だった。 16週の投与期間中に、1つ以上の治療関連有害事象を発現した患児は、デュピルマブ群が83例中53例(64%)、プラセボ群は78例中58例(74%)であり、両群で同程度であった。とくに注目すべき有害事象として、デュピルマブ群で結膜炎が3例(4%)に認められた(プラセボ群は0例)。デュピルマブ関連の有害事象では、アトピー性皮膚炎のフレアによる治療中止が1例みられたが、重篤な有害事象は発現しなかった。 著者は、「これらの結果は、アトピー性皮膚炎の幼児におけるデュピルマブの有効性に関する重要な臨床データであり、世界中の臨床現場に有益な情報を提供し、変化をもたらす可能性がある」としている。

189.

曝露前の発症抑制の適応を取得したコロナ抗体薬「エバシェルド筋注セット」【下平博士のDIノート】第106回

曝露前の発症抑制の適応を取得したコロナ抗体薬「エバシェルド筋注セット」今回は、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)(商品名:エバシェルド筋注セット、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、SARS-CoV-2による感染症の治療に加え、曝露前の発症抑制にも使用することができる世界初の薬剤です。<効能・効果>本剤は、SARS-CoV-2による感染症およびその発症抑制の適応で、2022年8月30日に特例承認されました。<用法・用量>SARS-CoV-2による感染症通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射します。SARS-CoV-2による感染症の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射します。SARS-CoV2変異株の流行状況などに応じて、チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできます。なお、2剤は混和せずにそれぞれ筋肉内注射を行い、投与部位は左右の臀部とします。<安全性>主な副作用として、注射部位反応(発現頻度 1%以上)、発疹・蕁麻疹や注射に伴う反応(発現頻度 1%未満)が報告されています。なお、重大な副作用として、アナフィラキシーを含む重篤な過敏症(頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.本剤は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療または発症抑制に用いられる薬です。2種類の中和抗体を投与することで、新型コロナウイルスに対する中和作用を示します。2.過去に薬剤などで重篤なアレルギー症状を起こしたことのある方は必ず事前に申し出てください。3.投与中または投与後に、発熱、悪寒、吐き気、不整脈、胸痛、脱力感、頭痛のほか、過敏症やアレルギーのような症状が現れた場合は、すぐに医療者または医療機関に連絡してください。<Shimo's eyes>エバシェルド筋注セットは、新型コロナウイルス感染症の「治療」と「発症抑制」の適応を取得した抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体です。ワクチンを除き、新型コロナウイルス曝露前の発症抑制に用いることのできる初めての医薬品です。既承認薬のカシリビマブ/イムデビマブ(商品名:ロナプリーブ)も発症抑制の適応を有していますが、カシリビマブ/イムデビマブの対象患者は濃厚接触者であり、本剤の対象は濃厚接触者ではない曝露前の人という違いがあります。治療目的での投与対象は、軽症~中等症I相当で、重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者です。しかし、供給量が限られていることや治療を目的とした薬は他にもあることから、当面の間は発症抑制を目的とした投与に限って薬剤が供給されます。発症抑制目的での投与対象は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種が推奨されない人や、免疫機能低下などによりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人です。事務連絡では、日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方 第14版」(2022年8月30日)を踏まえて以下のようになっています。抗体産生不全あるいは複合免疫不全を呈する原発性免疫不全症の患者B細胞枯渇療法(リツキシマブなど)を受けてから1年以内の患者ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬を投与されている患者キメラ抗原受容体T細胞レシピエント慢性移植片対宿主病を患っている、または別の適応症のために免疫抑制薬を服用している造血細胞移植後のレシピエント積極的な治療を受けている血液悪性腫瘍の患者肺移植レシピエント固形臓器移植(肺移植以外)を受けてから1年以内の患者T細胞又はB細胞枯渇剤による急性拒絶反応で最近治療を受けた固形臓器移植レシピエントCD4Tリンパ球細胞数が50cells/μL未満の未治療のHIV患者発症抑制の効果については、海外第III相試験(PROVENT 試験)において、プラセボ群と比較して、RT-PCR検査で陽性が確認された患者の症状のリスク減少率は76.7%であり、統計学的に有意な差が認められました。また、1回投与後、少なくとも6ヵ月間は感染抑制効果が持続することが示されています。新型コロナウイルス感染症の予防の基本はワクチン接種ですが、ワクチンを接種することができない人や効果が不十分と考えられる人に対するワクチン以外の予防の選択肢として期待されます。また、筋注ということから、訪問診療において曝露前の患者への投与が簡便であることも利点の1つと考えられます。<流通・費用>本剤は一般流通を行わず、厚生労働省が所有した上で、流通委託先を通じて対象医療機関に配分・無償譲渡されます。発症抑制目的での投与に限って配分されるため、計画的な投与が可能であることから在庫配置は認められていません。患者負担については、本来は薬剤費を含めて全額自己負担となるところですが、本剤を必要とする対象者にとって過度な負担とならないように、投与時の自己負担分の徴収金額は3,100円以下となる方針です。

190.

アトピー性皮膚炎、JAK阻害薬はVTE発生と関連するか?

 アトピー性皮膚炎(AD)患者、とくにJAK阻害薬による治療を受ける患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが高くなるなのか。これまで明らかになっていなかったこの懸念について、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らがシステマティック・レビューとメタ解析を行い、現状で入手可能なエビデンスで、ADあるいはJAK阻害薬とVTEリスク増大の関連を示すものはないことを明らかにした。著者は、「今回の解析結果は、臨床医がAD患者にJAK阻害薬を処方する際の参考となるだろう」としている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月24日号掲載の報告。 研究グループは、ADとVTE発生の関連を調べ、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発生リスクを評価した。 MEDLINE、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceのデータベースを、それぞれ創刊から2022年2月5日まで、言語や地理的制限を設けずに検索。ADとVTEの関連を調べたコホート試験、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTEイベントを報告していた無作為化比較試験(RCT)を適格とした。最初に検索した論文の約0.7%が適格基準を満たした。 データは、Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ガイドラインに準拠して抽出・包含し、包含したコホート試験とRCTのバイアスリスクは、Newcastle-Ottawa ScaleおよびCochrane Risk of Bias Tool 2で評価。ランダム効果モデル解析で、VTE発生の統合ハザード比(HR)およびリスク差を算出し、評価した。 主要評価項目は、VTE発生とADのHR、およびJAK阻害薬治療を受けるAD患者とプラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発生のリスク差であった。 主な結果は以下のとおり。・コホート試験2件とRCT 15件の被験者46万6,993例が包含された。・メタ解析では、ADとVTE発生の有意な関連は認められなかった(HR:0.95、95%信頼区間[CI]:0.62~1.45、VTE発生率:0.23イベント/100患者年)。・全体では、JAK阻害薬治療を受けるAD患者におけるVTE発症者は0.05%(5,722例中3例)であったのに対して、プラセボまたはデュピルマブ治療を受けるAD患者のVTE発症者は0.03%(3,065例中1例)であった(Mantel-Haenszel検定によるリスク差:0[95%CI:0~0])。・VTE発生率は、JAK阻害薬を受けるAD患者で0.15イベント/100患者年、プラセボを受けるAD患者では0.12イベント/100患者年であった。・これらの解析所見は、4種のJAK阻害薬(アブロシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、SHR0302)においても同様だった。

191.

サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」【下平博士のDIノート】第105回

サル痘予防が追加された乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」今回は、「乾燥細胞培養痘そうワクチン(商品名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16[KMB]、製造販売元:KMバイオロジクス)」を紹介します。本剤は、世界で感染が拡大しているサル痘の発症予防に用いることができる国内唯一のワクチンです。<効能・効果>本剤は、2004年1月に「痘そうの予防」の適応で販売され、2022年8月に「サル痘の予防」が追加されました。<用法・用量>本剤は、添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種します。回数は15回程度を目安とし、血がにじむ程度に圧刺します。なお、他の生ワクチンを接種した人には、通常27日以上の間隔を置いて本剤を接種します。他のワクチンとは、医師が必要と認めた場合は同時に接種することができます。<安全性>主な副反応は、接種部位圧痛、熱感、接種部位紅斑などの局所反応ですが、約10日後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹を来すことがあります。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されています。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)、けいれん(0.1%未満)が設定されています。<使用上の注意>本剤は-20℃~-35℃で保存します。ゴム栓の劣化や破損などの可能性があるため、-35℃以下では保存できません。添加物としてチメロサール(保存剤)を含有してないため、栓を取り外した瓶の残液は廃棄します。<患者さんへの指導例>1.本剤を接種することで、痘そうウイルスおよびサル痘ウイルスに対する免疫ができ、発症や重症化を予防します。2.医師による問診や検温、診察の結果から接種できるかどうかが判断されます。発熱している人などは接種を受けることができません。3.本剤はゼラチンを含むため、これまでにゼラチンを含む薬や食品によって蕁麻疹、息苦しさ、口唇周囲の腫れ、喉の詰まりなどの異常が生じたことがある方は申し出てください。4.BCG、麻疹、風疹ワクチンなどの生ワクチンの接種を受けた場合は、27日以上の間隔を空けてから本剤を接種します。5.接種を受けた日は入浴せず、飲酒や激しい運動は避けてください。6.接種翌日まで接種を受けた場所を触らないようにしてください。接種翌日以後に、水ぶくれやかさぶたが出る場合がありますが、手などで触れないようにして、必要に応じてガーゼなどを当ててください。7.(妊娠可能な女性に対して)本剤接種前の約1ヵ月間、および接種後の約2ヵ月間は避妊してください。<Shimo's eyes>サル痘は、オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルスによる感染症です。これまでは主にアフリカ中央部から西部にかけて発生してきました。2022年5月以降は欧米を中心に2万7千例以上の感染者が報告されていて、常在国(アフリカ大陸)から7例、非常在国からの4例の死亡例が報告されています(8月10日時点)。WHOによると、現在報告されている患者の大部分は男性ですが、小児や女性の感染も報告されています。国内では感染症法において4類感染症に指定されていて、届出義務の対象です。サルという名前が付いていますが、もともとアフリカに生息するリスなどのげっ歯類が自然宿主とされています。感染した人や動物の体液・血液や皮膚病変、飛沫を介して感染します。潜伏期間は通常7~14日(最大5~21日)で、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状に続いて発疹が出現します。ただし、常在国以外での感染例では、これまでのサル痘の症状とは異なる所見が報告されています。確定診断は水疱などの組織を用いたPCR検査で行います。通常は発症から2~4週間後に自然軽快することが多いものの、小児や免疫不全者、曝露量が多い場合は重症化することがあります。国内ではサル痘に対する治療方法は対症療法のみで、承認されている治療薬はありません。欧米では、天然痘やサル痘に対する経口抗ウイルス薬のtecovirimatが承認されています。日本でも同薬を用いた特定臨床研究が始まりました。乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」は、もともと痘そう予防のワクチンとして承認を受けていましたが、2022年8月にサル痘予防の効能が追加されました。本剤はWHOの「サル痘に係るワクチンおよび予防接種の暫定ガイダンス(2022年6月14日付)」において、安全性の高いワクチンであり、サル痘予防のために使用が考慮されるべき痘そうワクチンの1つに挙げられています。本剤は、サル痘や天然痘ウイルスと同じオルソポックスウイルス属の1つであるワクチニアウイルス(LC16m8株)の弱毒化生ワクチンです。ウイルスへの曝露後、4日以内の接種で感染予防効果が得られ、14日以内の接種で重症化予防効果が得られるとされています。接種後10~14日に検診を行い、接種部位の跡がはっきりと付いて免疫が獲得されたことを示す善感反応があるかどうかを確認します。他の生ワクチンと同様に、ワクチンウイルスの感染を増強させる可能性があるので、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンなどの免疫抑制薬は併用禁忌となっています。

192.

アトピー性皮膚炎患者へのデュピルマブ、治療継続率と関連因子が明らかに

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者におけるデュピルマブによる治療継続率と関連因子が、オランダ・ユトレヒト大学のLotte S. Spekhorst氏らが行った多施設前向き日常臨床BioDayレジストリのデータを解析したコホート試験により示された。デュピルマブ治療継続率は、1年時90.3%、3年時も78.6%と良好であったこと、また、ベースラインで免疫抑制剤を使用していた患者や4週目で治療効果が示されない患者は、治療中断となる傾向があることなどが明らかにされた。著者は、「今回示されたデータは、アトピー性皮膚炎のデュピルマブ治療に関する、より多くの洞察と新しい視点を提供するもので、患者に最適なアウトカムをもたらすことに寄与するだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年8月10日号掲載の報告。 研究グループは、これまで不足していたアトピー性皮膚炎患者におけるデュピルマブ治療の継続率と、関連因子を特定するコホート試験を、多施設前向き日常臨床BioDayレジストリのデータをベースに行った。BioDayレジストリには、オランダの大学病院4施設および非大学病院10施設で被験者が募集され、解析には、4週以上追跡を受けていた18歳以上の患者が包含された。BioDayレジストリで、デュピルマブ治療を受けた最初の患者が記録されたのは2017年10月であった。2020年12月時点でデータをロックし、データ解析は2017年10月~2020年12月に行われた。 治療継続率はカプランマイヤー生存曲線で、また関連特性を単変量および多変量Cox回帰法を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・合計715例の成人AD患者(平均年齢41.8[SD 16.0]歳、男性418例[58.5%])が解析に含まれた。・デュピルマブの治療継続率は1年時90.3%、2年時85.9%、3年時78.6%であった。・無効性により治療の継続が短期となった特性として、ベースラインでの免疫抑制剤の使用(ハザード比[HR]:2.64、95%信頼区間[CI]:1.10~6.37)、4週時点で非レスポンダー(8.68、2.97~25.35)が特定された。・有害事象により治療の継続が短期であった特性としては、ベースラインでの免疫抑制剤の使用(HR:2.69、95%CI:1.32~5.48)、65歳以上(2.94、1.10~7.87)、そしてInvestigator Global Assessmentスコアできわめて重症なAD(3.51、1.20~10.28)が特定された。

193.

アトピー性皮膚炎、新規抗IL-13抗体tralokinumabの長期有用性確認

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に対するtralokinumab(トラロキヌマブ、本邦承認申請中)の長期治療について、最長2年治療の忍容性は良好であり、ADの徴候と症状のコントロール維持が確認された。tralokinumabは、アトピー性皮膚炎関連の皮膚の炎症やかゆみに関与するIL-13のみを選択的に阻害する生物学的製剤で、第III相試験では最長1年にわたり、中等症~重症アトピー性皮膚炎成人患者の病変範囲・重症度を持続的に改善することが確認されている。中等症~重症アトピー性皮膚炎患者においては長期にわたる治療が必要として現在、非盲検下で5年延長試験「ECZTEND試験」が進行中であり、米国・Oregon Medical Research CenterのAndrew Blauvelt氏らが、事後中間解析における最長2年のIL-13のみを選択的に阻害する生物学的製剤tralokinumabの安全性と有効性を評価した。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2022年7月18日号掲載の報告。IL-13のみを選択的に阻害するtralokinumabがアトピー性皮膚炎を改善 ECZTEND試験は、tralokinumabの先行試験(PT試験)に参加した中等症~重症AD患者を対象に、tralokinumab(2週ごとに300mg皮下投与)+局所コルチコステロイドの安全性と有効性を評価する5年延長試験。 安全性の解析は、tralokinumab曝露期間にかかわらず、ECZTEND試験に登録されたPT試験を完了した成人を対象とした。有効性の解析は、ECZTEND試験で1年以上tralokinumab治療を受けた成人参加者とし、サブグループ解析では、2年(PT試験で1年、ECZTEND試験で1年)治療を受けた成人参加者を評価対象とした。 主要エンドポイントは、延長試験期間中における有害事象(AE)の発生件数。副次エンドポイントは、PT試験と比較したIGAスコア0/1の達成患者割合およびEASI-75達成患者割合であった。 IL-13のみを選択的に阻害するtralokinumabの安全性と有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・安全性解析には1,174例(年齢中央値38.0歳、男性57.5%、罹病期間中央値27.0年)、2年有効性解析には345例(42.0歳、58.8%、30.0年)が含まれた。・安全性解析(1,174例)において、tralokinumab累積曝露は1,235.7患者年で、曝露補正後AE発生頻度は、100患者年曝露当たり237.8件であった。・頻度の高いAEの曝露補正後発生率は、PT試験と同程度か低率であった。・2年有効性解析(345例)において、ADの範囲・重症度の改善は持続しており、EASI-75達成患者割合は82.5%であった。・本解析は、選択バイアスの可能性、プラセボ群未設定、一部の被験者がPT試験とECZTEND試験で治療ギャップを経験した、などの点で限界がある。

194.

中等症~重症アトピーの外用薬併用、アブロシチニブvs.デュピルマブ/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者において、外用療法へのアブロシチニブ1日1回200mg併用はデュピルマブ併用と比較し、かゆみおよび皮膚症状の早期改善に優れており、忍容性は同様に良好であったことが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照ダブルダミー並行群間比較試験「JADE DARE試験」の結果、示された。先行の第III相試験では、中等症~重症の成人AD患者において、プラセボに対するアブロシチニブの有効性が確認されていた。Lancet誌2022年7月23日号掲載の報告。ステロイド外用薬等との併用で早期治療効果を評価 JADE DARE試験は、オーストラリア、ブルガリア、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、韓国、スペイン、台湾、米国の151施設で実施された(2021年7月13日試験終了)。全身療法を必要とする、または外用薬で効果不十分な18歳以上の中等症~重症のAD患者を対象とし、アブロシチニブ(1日1回200mg経口投与)群またはデュピルマブ(2週間ごと300mg皮下投与)群に1対1の割合で無作為に割り付け、26週間投与した。全例が、ステロイド外用薬(弱~中力価)、外用カルシニューリン阻害薬、または外用ホスホジエステラーゼ4阻害薬の併用を必須とした。 主要評価項目は、2週時のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)スコアがベースラインから4点以上改善(PP-NRS4)達成、4週時の湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI)スコアが90%以上改善(EASI-90)達成に基づく奏効率とした。 無作為に割り付けされ、治験薬を少なくとも1回投与された患者を有効性および安全性の解析対象集団とし、両側有意水準0.05で逐次多重検定によりファミリーワイズの第1種の過誤をコントロールした。2週時のかゆみと皮膚症状、アブロシチニブで有意に改善 2020年6月11日~12月16日の期間に940例がスクリーニングされ、727例が登録・割り付けされた(アブロシチニブ群362例、デュピルマブ群365例)。 2週時にPP-NRS4を達成した患者の割合は、アブロシチニブ群(172/357例、48%[95%信頼区間[CI]:43.0~53.4])がデュピルマブ群(93/364例、26%[21.1~30.0])より高く(群間差:22.6%[95%CI:15.8~29.5]、p<0.0001)、4週時にEASI-90を達成した患者の割合も同様(アブロシチニブ群101/354例・29%[23.8~33.2]vs.デュピルマブ群53/364例・15%[10.9~18.2]、群間差:14.1%[8.2~20.0]、p<0.0001)であり、アブロシチニブ群のほうが主要評価項目を達成した割合が高かった。 有害事象は、アブロシチニブ群で362例中268例(74%)、デュピルマブ群で365例中239例(65%)に認められた。治療に関連しない死亡がアブロシチニブ群で2例報告された。

195.

サル痘予防にKMバイオの天然痘ワクチンを承認/厚生労働省

 厚生労働省は8月2日のプレスリリースで、KMバイオロジクスの天然痘ワクチン(一般名:乾燥細胞培養痘そうワクチン、販売名:乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」)に対し、サル痘予防の効能追加を承認したことを発表した。二叉針を用いた多刺法により皮膚にワクチン接種 本ワクチンのサル痘予防の効能追加承認にあたり、添付文書が改訂された。主な追記部分は以下のとおり。<添付文書情報>【効能・効果】痘そう及びサル痘の予防【用法・用量】本剤を添付の溶剤(20vol%グリセリン加注射用水)0.5mLで溶解し、通常、二叉針を用いた多刺法により皮膚に接種する。【接種上の注意】4.副反応(1)重大な副反応1)ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明):ショック、アナフィラキシー(蕁麻疹、呼吸困難、口唇浮腫、喉頭浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。(2)その他の副反応(頻度不明)接種局所のほか、接種10日前後に全身反応として発熱、発疹、腋下リンパ節の腫脹をきたすことがある。また、アレルギー性皮膚炎、多形紅斑が報告されている。5.妊婦、産婦、授乳婦等への接種妊娠していることが明らかな者には接種しないこと。妊娠可能な女性においては、あらかじめ約1ヵ月間避妊した後接種すること、及びワクチン接種後約2ヵ月間は妊娠しないように注意させること。授乳婦においては、予防接種上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。6.接種時の注意(2)接種時本剤の溶解に当たっては、容器の栓及びその周囲をアルコールで消毒した後、添付の溶剤0.5mLで均一に溶解する。溶解後に金属の口金を切断してゴム栓を取り外す。二叉針の先端部を液につけワクチン1人分を吸い取る。溶解後のワクチン液は、専用の二叉針で50人分以上を採取することができる。(4)接種方法多刺法:二叉針を用いる方法で、針を皮膚に直角に保ち、針を持った手首を皮膚の上において、手首の動きで皮膚を圧刺する。圧刺回数は、通常、専用の二叉針を用いて15回を目安とし、血がにじむ程度に圧刺する。他の二叉針を用いる場合は、それらの二叉針の使用上の注意にも留意して圧刺すること。接種箇所は、上腕外側で上腕三頭筋起始部に直径約5mmの範囲とする。7.その他の注意(1)本剤接種後に被接種者が接種部位を手などで触り、自身の他の部位を触ることで、ワクチンウイルスが他の部位へ広がる自家接種(異所性接種)が報告されている。また、海外において、本剤とは異なるワクチニアウイルス株を用いた生ワクチン(注射剤)接種後に、ワクチン被接種者から非接種者へのワクチンウイルスの水平伝播が報告されている。接種部位の直接の接触を避け、また触れた場合はよく手指を水洗いすること。(2)WHOより発出されたサル痘に係るワクチン及び予防接種のガイダンスにおいて、サル痘ウイルス曝露後4日以内(症状がない場合は14日以内)に、第二世代又は第三世代の適切な痘そうワクチンを接種することが推奨されている。

196.

国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」【下平博士のDIノート】第103回

国内初、遅発性ジスキネジアの不随意運動を改善する「ジスバルカプセル40mg」今回は、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)阻害剤「バルベナジントシル酸塩カプセル(商品名:ジスバルカプセル40mg、製造販売元:田辺三菱製薬)」を紹介します。本剤は、わが国で初めて遅発性ジスキネジア治療薬として承認されました。これまで治療法がなかった遅発性ジスキネジアによる不随意運動の改善効果が期待されています。<効能・効果>本剤は、遅発性ジスキネジアの適応で、2022年3月28日に承認され、同年6月1日に発売されました。なお、「遅発性ジスキネジア」の診断は、米国精神医学会の『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』および『統合失調症治療ガイドライン第3版』が参考とされます。<用法・用量>通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与します。なお、症状により1日1回80mgを超えない範囲で適宜増減できます。増量については、1日1回40mgを1週間以上投与し、忍容性が確認され、効果不十分な場合にのみ検討します。<安全性>遅発性ジスキネジア患者を対象とした国内第II/III相試験で認められた主な副作用は、傾眠、流涎過多、アカシジア、倦怠感などでした。重大な副作用として、傾眠(16.9%)、流涎過多(11.2%)、振戦(7.2%)、アカシジア(6.8%)、パーキンソニズム(2.4%)、錐体外路障害(2.0%)、鎮静、運動緩慢(いずれも1.2%)、落ち着きのなさ、姿勢異常(いずれも0.8%)、重篤な発疹、ジストニア、表情減少、筋固縮、筋骨格硬直、歩行障害、突進性歩行、運動障害(いずれも0.4%)、悪性症候群、蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫(いずれも頻度不明)が現れることがあります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、過剰になった脳内の神経刺激伝達を抑えることで、自分の意志とは無関係に体が動いてしまう、または無意識に口や舌を動かしてしまうなどの症状が出る遅発性ジスキネジアを改善します。2.眠くなったり、ふらついたりすることがあるので、自動車の運転などの危険を伴う機械の操作は行わないでください。3.抑うつや不安などの精神症状が現れることがあるので、体調の変化に気が付いた場合には連絡してください。4.飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を使用している場合や新しい薬を使用する場合は、必ず医師または薬剤師に相談してください。5.不整脈が起きていないか確認するために、心電図検査が行われることがあります。<Shimo's eyes>画像:重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚労省)より本剤は、わが国初の遅発性ジスキネジア治療薬であり、1日1回服用の経口剤です。遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬などを長期間服用することで起こる不随意運動を特徴とした神経障害であり、ドパミン受容体の感受性増加などが原因と考えられています。症状は、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなど、顔面に主に現れますが、手や足が動いてしまうなど四肢や体幹部でも認められます。また、重症になれば嚥下障害や呼吸困難を引き起こす可能性もあります。本剤は、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)を阻害することにより、ドパミンなど神経伝達物質のシナプス前小胞への取り込みを減らし、不随意運動の発生に関わるドパミン神経系の機能を正常化させます。遅発性ジスキネジアを有する統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害または抑うつ障害の患者を対象とした国内第II/III相プラセボ対照二重盲検比較試験(MT-5199-J02)において、本剤40mg/日または80mg/日を投与した結果、両群で用量依存的な異常不随意運動の改善効果が認められました。本剤は重症度を問わず処方が可能です。ただし、遅発性ジスキネジアは、抗精神病薬の長期使用に関連して発現するとされているため、原因薬剤の減量または中止を検討する必要があります。したがって、本剤の投与対象となるのは抗精神病薬など原因薬剤の減量や中止ができない、あるいは減量や中止を行っても遅発性ジスキネジアが改善しない患者さんとなります。投与に関しては相互作用が多いため併用薬の厳格なチェックが欠かせません。本剤はプロドラッグであり、未変化体はP糖タンパク質(P-gp)を阻害します。また、体内では主にCYP3Aによって代謝された後、活性代謝物は主にCYP2D6およびCYP3Aで代謝されます。本剤とパロキセチンを併用したとき、未変化体の変化は認められませんでしたが、活性代謝産物のCmaxおよびAUCはそれぞれ1.4倍、1.9倍に上昇したことが報告されています。本剤は、強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン、ダコミチニブ等)や、強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)を使用中、または遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さんなどでは、投与量を1日40mgから増量しないこととされています。なお、これらの条件が2つ以上重なる場合は、活性代謝物の血中濃度が上昇し、過度なQT延長などの副作用を発現する恐れがあるため、本剤との併用は避けることとされています。一方、中程度以上のCYP3A誘導剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)を使用中の場合には、作用が弱まることを考慮して投与量を検討します。また、P-gpの基質薬剤(ジゴキシン、アリスキレン、ダビガトラン等)と併用するとこれらの血中濃度が上昇する恐れがあるので注意しましょう。中等度、あるいは高度の肝機能障害患者についても投与量に制限がかけられています。活性代謝産物の血中濃度が上昇した場合にはQT延長を引き起こす恐れがあるので、遺伝的にCYP2D6の活性が欠損している患者さん、QT延長を起こしやすい患者さん、相互作用に注意すべき薬剤を併用している患者さんでは定期的に心電図検査を行う必要があります。これまで、遅発性ジスキネジアについては原因薬の中止や他薬剤への変更に代わる対処法がありませんでした。よって、本剤の臨床的意義は高いと考えられます。なお、本剤は食事の影響を受けやすく、空腹時に服用すると食後投与と比較して血中濃度が上昇する恐れがあるため、副作用モニタリングと共に服用タイミングについても順守できているか確認しましょう。参考1)PMDA 添付文書 ジスバルカプセル40mg

197.

妊娠中のビタミンD補充、児のアトピー性皮膚炎を予防?

 母体へのビタミンD補充が、出生児の4歳時までのアトピー性湿疹リスクを減少させたことが、英国・サウサンプトン大学のSarah El-Heis氏らによる無作為化試験「UK Maternal Vitamin D Osteoporosis Study(MAVIDOS)」で示された。これまで、母体へのビタミンD補充と出生児のアトピー性湿疹リスクとを関連付けるエビデンスは一貫しておらず、大半が観察試験のデータに基づくものであった。著者は、「今回のデータは、乳児のアトピー性湿疹リスクに対する胎児期のビタミンD(コレカルシフェロール)補充の保護効果に関する無作為化試験初のエビデンスであり、保護効果が母乳中のコレカルシフェロール値上昇による可能性を示唆するものであった」と述べ、「所見は、アトピー性湿疹への発育上の影響と、アトピー性湿疹への周産期の影響は修正可能であることを支持するものである」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2022年6月28日号掲載の報告。 研究グループは、二重盲検無作為化プラセボ対照試験「MAVIDOS」の被験者データを用いて、妊娠中の母体へのコレカルシフェロール補充と、出産児のアトピー性湿疹リスクへの影響を月齢12、24、48ヵ月の時点で調べる検討を行った。 MAVIDOSでは、妊産婦は、コレカルシフェロールを投与する群(1,000 IU/日、介入群)または適合プラセボを投与する群(プラセボ群)に無作為に割り付けられ、おおよそ妊娠14週から出産まで服用した。主要アウトカムは、新生児の全身の骨ミネラル含有量であった。 主な結果は以下のとおり。・出生児のアトピー性湿疹(UK Working Party Criteria for the Definition of Atopic Dermatitisに基づく)の有病率の確認は、月齢12ヵ月で635例、同24ヵ月で610例、同48ヵ月で449例を対象に行われた。・母体および出生児の特性は、介入群のほうで授乳期間が長期であったことを除けば、両群で類似していた。・母乳育児期間を調整後、介入群の出生児のアトピー性湿疹のオッズ比(OR)は、月齢12ヵ月時点では有意に低かった(OR:0.55、95%信頼区間[CI]:0.32~0.97、p=0.04)。・介入の影響は徐々に減弱し、月齢24ヵ月時(OR:0.76、95%CI:0.47~1.23)、月齢48ヵ月時(0.75、0.37~1.52)は統計学的な有意差は認められなかった。・月齢12ヵ月時の湿疹に関連した介入と母乳育児期間の統計学的相互作用について、有意性はみられなかった(p=0.41)。・ただし、介入群の乳児湿疹リスクの低下は、母乳育児期間が1ヵ月以上の乳児では有意差が認められたが(OR:0.48、95%CI:0.24~0.94、p=0.03)、1ヵ月未満の乳児では有意差は認められなかった(0.80、0.29~2.17、p=0.66)。

198.

認知症と犯罪【コロナ時代の認知症診療】第16回

老年医学の名著「最不適者の生き残り」「よもぎ」は雑草と思われがちだが、実はハーブの女王とも呼ばれる。国内のいたるところで見られ、若芽は食用として餅に入れられることから、餅草とも呼ばれる。筆者にとってよもぎが、馴染みの深いのも実はこの餅にある。子供の頃、祖母に言われて道端のよもぎを摘んできて、よもぎ餅を一緒に作った記憶がある。この話を生物学に造詣の深いシステムエンジニアにした。にんまりと笑って言うには、子供の頃に私が摘んだものは道端の犬の小水がかかった汚いものだった可能性が高いと言う。「どうしてか? を観察すると散歩が楽しくなるかも」といった。そして分布ぶりから植物の生存競争の一端がわかるからと加えた。確かに色々な観察をした。最も記憶に残ったのは、背丈はたかだか1m以内とされるのに2mを超えるよもぎがあることだ。それらには共通性がある。ネット状フェンスや金属の柵にぴったり沿って生えていることだ。高い丈は子孫を伝えていく上で花粉が広く飛散しやすく有利だ。生物の生存競争では、最も環境に適した形質をもつ個体が生き残るとしたダーウィンの「適者生存」の法則が有名だ。よもぎの成長にとって重要な日光だが、フェンスや柵に寄り添ったよもぎは日陰に覆われる時なく十二分に太陽の光を浴びられる。もっと大切なのは風雨でも支えてもらえることだろう。さて「適者生存」と聞くと思い出すのが、“Survival of the unfittest”(最不適者生存の生き残り)1)という書である。これはイギリス老年医学の黎明期1972年にアイザック医師によってなされた著作である。私はこの書が出てから、10余年の後に留学先の図書館で読んだ。隅々まで頭にしみて、老年医学・医療が生まれた背景を理解できた気になれた。さまざまな背景により、高齢に至って多くのハンディキャップを背負った人がいかに生きていくか?そこで医者は何ができるかを問うた名著として読んだ。「生老病死」の「老」についての宗教観さえ感じた。初版時から50年以上が経過したが、その内容は日本における現状との違和感がない。それも残念だが…。ピック病とは限らない? 高齢者犯罪と疾患先頃、ある区役所の職員に連れ添われて60代初めの身寄りのない女性が来院した。記憶力はそう悪くないし、若い頃には窃盗歴などなかったのに、数ヵ月の間に万引きを重ね反省の色もなくおかしい。認知症があるのではないか調べて欲しいという。すぐにピック病を疑い、精査の結果でもピック病と確認した。1年に数人はこうした犯罪絡みの受診がある。認知症の犯罪となるとピック病と誰もが連想する。けれども、当院での経験では、意外なほどレビー小体型認知症が多い。この病気における意識・注意の変動や、てんかんの合併しやすさ、また認知機能の統合能低下などもあるのではないかと考えている。また認知症と並んで複雑部分発作などてんかん性の疾患が多い。裁判官にわかってもらう難しさ中には複数の犯罪を重ねて刑事裁判に至るケースもある。そこで意見書を求められると、「かくかくの認知症疾患があり、犯行当時の責任能力に影響を及ぼしたと推測される症状があったと考える」と書くことが多い。重度の認知症であれば、裁判官も本人と面接して、「ああこれでは」と思ってくれる。しかし軽度認知障害から軽度の認知症、それも前頭側頭型認知症だと難しい。というのは裁判官の世界では、精神神経疾患の犯罪とくると、統合失調症における放火や殺人事件に対する責任能力という古典的な命題が今も中核になっているのではと思えるからである。当方のケースは、統合失調症による幻覚や妄想に支配されてやってしまったかと分かるというレベルではない。長谷川式やMMSEは20点以上が多いから、裁判所における質問への理解力や発言、態度には不自然さがない。だから裁判官が私に向ける視線には、「これでも責任能力がないのですか?」と言いたげな気持ちがこもっている。8.5%で認知症性疾患罹患中に犯罪歴認知症患者における犯罪実態の系統的報告がある2)。研究対象は1999~2012年の間に認知症と診断され、米国の記憶・加齢センターで診察された2,397人の認知症患者である。米国、オーストラリア、スウェーデンの専門家により認知症性疾患と犯罪の関係が回顧的に調査された。全対象のうちの8.5%に認知症性疾患罹患中に犯罪歴があった。2,397人中の545人を占めたアルツハイマー病では犯罪率は7.4%であったのに対し、171人と総数では少ない前頭側頭型認知症における犯罪率は37.4%であった。この数字は本研究で調査対象となった5つの認知症性疾患の中で最多であった。この本報告は従来の小報告の結果を確認したと言える。さて米国における認知症の人の裁判状況は、私の経験とあまり違わないもののように思われる。と言うのは、本研究の結論として、「中年期以降に変性性の疾患と診断され、従来のその人らしさを失ってしまった患者に遭遇した医師は、その人が法的処罰の対象にならないように擁護に尽力すべきだ」と強調しているからである。終わりに。最近の生物界では、「適者生存」でなく「運者生存」が正しいとされるそうだ。フェンスの横におちたよもぎの種子は、まさにそれだろう。件の連続万引きの独居女性は、この事件のおかげで認知症がわかり、役所から手厚い支援が差し伸べられるようになったばかりか、不起訴にもなった。ある意味、幸運であった彼女は、“Survival of the unfittest”を実現したかなと考える。参考1)B. Isaacs, et al. Survival of the Unfittest: A Study of Geriatric Patients in Glasgow. Routledge and K. Paul;1972.2)Liljegren M, et al. JAMA Neurol. 2015 Mar;72:295-300.

199.

デュピクセント、日本人小児アトピー性皮膚炎患者に対し主要評価項目達成/サノフィ

 サノフィは2022年6月14日付のプレスリリースで、同社のデュピクセント(一般名:デュピルマブ)について、生後6ヵ月から18歳未満の日本人アトピー性皮膚炎患者を対象とした第III相試験の結果を発表した。本試験における主要評価項目EASI-75の達成割合は、プラセボ投与群と比較してデュピクセント投与群で有意に高く、小児アトピー性皮膚炎の症状軽減に対する同製剤の有効性が示された。安全性データは、これまでのデュピクセントの安全性プロファイルと一致していた。デュピクセントの小児患者のEASI-75達成割合は43%でプラセボ群は19% 中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者は、ステロイド外用剤(TCS)やタクロリムス外用剤による適切な治療を一定期間実施しても十分な効果が得られず、高頻度かつ長期間の再燃が認められる場合がある。しかし、若年層では治療選択肢が限られており、アンメットニーズが存在している。 デュピクセントは既に、既存治療で効果不十分な、成人のアトピー性皮膚炎患者に対して薬事承認されている。今回発表された試験は、多施設共同、ランダム化、プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験で、中等症から重症のアトピー性皮膚炎と診断され既存療法で効果不十分な、生後6ヵ月から18歳未満の日本人小児患者62名を対象としている。TCSを標準治療薬とし、デュピクセントを併用した群とプラセボ投与群との比較により、小児アトピー性皮膚炎に対するデュピクセントの有効性と安全性を評価した。 小児アトピー性皮膚炎に対するデュピクセントの有効性と安全性を評価した主な結果は以下の通り。・主要評価項目である、投与16週時点のベースラインからのEASI-75達成割合は、デュピクセント投与群で43%、プラセボ投与群で19%だった(p=0.0304)。・安全性データは、デュピクセントで確立している安全性プロファイルと一致するもので、新たな有害事象は報告されなかった。 本試験で確認されたデュピクセントの有効性と安全性の詳細は、今後学会で公表される見通し。現在、国内における小児アトピー性皮膚炎へのデュピクセントの使用は臨床開発中であり、今後、本試験の結果をもとに生後6ヵ月以上18歳未満の小児を対象とした、製造販売承認事項一部変更申請を国内で実施する予定としている。

200.

ニコニコ仮面は15枚限定【Dr. 中島の 新・徒然草】(426)

四百二十六の段 ニコニコ仮面は15枚限定連休は過ぎましたが、暑からず寒からずいい季節ですね。心なしか、花粉もちょっと減っているような気がします。さて、私はいつも研修医やレジデントに「病院にいる間はニコニコ仮面をつけておけ」と言ってます。もちろんそんな仮面が本当にあるわけではなく、あくまでも想像上の物。心の中では泣いたり怒ったりしていても、意識してニコニコした表情を保ち、患者さんや同僚から上機嫌に見えるよう努力しろ、という意味で言っているわけです。家で何があろうが、体調が悪かろうが、職場ではプロとして振る舞わなくてはなりません。そしてプロたるもの、患者さんの前では常にニコニコしておく必要があります。たとえ心の中で何を考えていたとしても、ですね。だから、出勤して1歩病院に入ったら、ニコニコ仮面の装着です。ところが、私のニコニコ仮面はディスポーザブル。とくに外来中は、仮面の消耗が激しいのが現実です。だから1人の患者さんあたり、1枚の仮面を使ってしまいます。今日の外来予約が15人とすれば、15枚分を準備しておかなくてはなりません。しか~し。医療現場では、常に予定外の事が起こります。予約外の新患の来院。他科からの想定外のコンサル。突然の急患。ドカン!とドアが開いたと思ったら、いきなりのストレッチャーの搬入。「僕、聞いてないんですけど」と言いかけた途端、患者さんの全身痙攣が始まったりします。それでもニコニコしながら「大丈夫ですよ、心配要りませんからね」などと言いながら、処置しなければなりません。予定外の仮面1枚を消費する瞬間です。ようやく嵐の外来が終了。そんなときに限って、別の患者さんの診察を頼まれたりするわけです。本来の担当医は病棟で急変があって、隣の診察室を飛び出していった後。もう仮面の予備は1枚も残っていません。仕方なしに、床に落ちていた仮面を拾って装着します。でも、あちこち破れていて……そもそも使い物になるのか?患者「会社の上司が一度ちゃんと調べてもらって来いって」えっ?カルテを見る限り、担当医は真面目に診ているようですが。中島「ちゃんと診るというのは、具体的にどのような事を仰っているのでしょうか?」患者「何だかこの先生、怖い!」ぬぬぬ。ついイラッとしたのがバレてしまったか?中島「怖がらせるような事は何も言ってませんけど!」患者「でも、目が怒ってる」ボロボロの仮面の裂け目から、素の表情が見えていたのかもしれません。すみません。そもそも私は、予定外の事に弱いです。にもかかわらず、予定外が多すぎます。1日に何度も予定外が降ってきます。下手したら休日まで。また、私はマルチタスクができません。にもかかわらず、右からも左からも話しかけられます。追い込まれた時に怒った表情を見せないために、ニコニコ仮面を準備しているというのに。全部使い切った私はどうしたらいいんでしょうか……嗚呼最後に1句初夏の午後 捨てた仮面を また使う

検索結果 合計:627件 表示位置:181 - 200