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プロバイオティクスはアトピー感作や喘息のリスクを低下させるのか?

 出生前や出生後早期に、プロバイオティクスを投与することは、アトピー感作リスクや総IgEを低下させるが、喘息・喘鳴発症のリスクは低下させないことが、米国マイアミ大学小児科学のNancy Elazab氏らにより報告された。Pediatrics誌オンライン版2013年8月19日号の掲載報告。  プロバイオティクスは小児のアトピーや喘息発症のリスクを低下させる可能性があるとされているが、これまでの臨床試験では、矛盾する結果が出ていたり、試験自体が検出力不足だったりしていた。そこで著者らは、プロバイオティクスが小児のアトピーや喘息・喘鳴の発症に対し、予防効果があるのかを調べるため、無作為化プラセボ対照試験のメタアナリシスを行った。累積リスクの計算にはランダム効果モデルを用いた。プロバイオティクスの効果に影響する潜在的な因子を調べるため、メタ回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・プロバイオティクスの投与は総IgEを有意に低下させた(平均低下値:-7.59 U/mL、95%信頼区間[Cl]:-14.96~-0.22、p=0.044)。・メタ回帰分析では、フォローアップ期間が長いほどIgEの低下がより顕著であることが示された。・出生前投与、出生後投与のいずれにおいても、アトピー感作リスクは有意に低下した。[出生前]皮膚プリックテスト陽性と一般的なアレルゲンに対する特異的IgEの上昇(両方またはどちらか)の相対リスク:0.88、95%CI:0.78~0.99、p=0.035。[出生後]皮膚プリックテスト陽性の相対リスク:0.86、95%CI:0.75~0.98、p=0.027。・好酸性乳酸桿菌(ラクトバチルス・アシドフィルス)の投与は、アトピー感作のリスク上昇と関係していた(p=0.002)。・プロバイオティクスの投与による喘息・喘鳴リスクの有意な減少はみられなかった(相対リスク:0.96、 95%CI:0.85~1.07)。 本研究により、プロバイオティクスの効果はフォローアップ期間と菌種により、大きく変わることがわかった。今後、喘息の抑制に関するプロバイオティクスの試験を行う場合は、注意深く菌種を選定し、より長いフォローアップ期間を考慮すべきである。

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欧州では小児アトピーに免疫抑制薬を処方

 難治性小児アトピー性皮膚炎の処方薬について、欧州8ヵ国で行われたインターネットサーベイの結果、全身性の免疫抑制薬が幅広く多岐にわたって用いられていることが明らかにされた。英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのL.E. Proudfoot氏ら、ヨーロッパ皮膚疾患疫学ネットワーク(EDEN)のヨーロッパ重症小児アトピー性皮膚炎治療タスクフォース(ヨーロッパTREAT)が報告した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月16日号の掲載報告。 従来療法に対し難治性を示す小児アトピー性皮膚炎において、全身性治療薬を用いることのエビデンスは不足している。そのため、患者の治療は、バリエーションが多いものになっている。 ヨーロッパTREATサーベイは、臨床における最新の処方データを集めて、特定の全身性治療薬の使用に影響している因子を特定すること、および適切な介入による臨床試験を行うための情報提供を目的に行われた。 Webベースで行われたサーベイには、ヨーロッパ8ヵ国の小児皮膚科学会および団体に所属する専門医が参加した。複数回答形式の質問票で、一般的診療データと同時に、難治性小児アトピー性皮膚炎での全身性治療薬に関する詳細な情報が集められた。 主な結果は以下のとおり。・サーベイ参加を呼びかけたeメールに対し、765人のうち343人(44.8%)から回答を得られた。回答者のうち、89.2%が皮膚科医であった。・重症アトピー性皮膚炎の子どもに対して、71%が全身性免疫抑制薬による治療を開始していた。・第一選択薬は、シクロスポリン(43.0%)、経口コルチコステロイド(30.7%)、アザチオプリン(21.7%)であった。・第二選択薬も、シクロスポリンが最も多かった(33.6%)。・第三選択薬は、メトトレキサートが最も多かった(26.2%)。・53.7%は、ルーチンで皮膚感染について調べ、全身性治療薬投与の開始に先立って皮膚感染症の治療を行うと回答した。・ヨーロッパ8ヵ国全体で、ペニシリンは抗菌薬の第一選択薬であった(78.3%)。・以上の結果を踏まえて著者は、「明らかなエビデンスベースがない中で、ヨーロッパTREATサーベイにより、難治性小児アトピー性皮膚炎において全身性の免疫抑制薬の処方が幅広く多岐にわたって用いられていることが確認された。この結果は、ヨーロッパ全体の患者の治療に関連する無作為化試験のデザインに活用すべきであろう」と結論している。

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ビタミンDが健康に及ぼす影響(まとめ)

 近年、ビタミンDが健康、疾病に及ぼす影響を検証した臨床研究結果がケアネット・ドットコムでも散見されるようになってきた。そこで今回、編集部ではビタミンDに関する記事をまとめてみることにした。後半のいくつかはケアネット・ドットコムで初めて紹介するものも含まれている。“ビタミンD不足の高齢者は日常の活動に支障” 【高齢者】 ビタミンDの不足する高齢者は、着替えや階段を上るなどの日常的な身体活動に困難を来す可能性のあることが、新たな研究で示された。高齢集団では、ビタミンD値最低群の70%に少なくとも1つの身体的制限がみられたのに対し、ビタミンD値が中等度または高い群の多くでは身体的制限がみられなかったと報告されている。さらに、ビタミンD欠乏のみられる人には、時間の経過とともに新たな身体的制限が発生する可能性が高いことが判明した。(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌2013年7月17日オンライン版の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/hdn/35685“アルツハイマー病にビタミンD不足が関連” 【認知症】 ビタミンDの摂取が認知機能や認知症発症に与える影響をメタアナリシスにより検討した結果より、アルツハイマー病群ではコントロール群と比較し、ビタミンD濃度が低かったことが報告されている(Neurology誌2012年9月25日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/31480“うつ病治療にビタミンD投与は有用” 【うつ】 ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者におけるビタミンD投与の有用性を検討した結果より、ビタミンD投与がうつ状態を改善すると報告されている(Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年6月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34687“ビタミンDの摂取がパーキンソン病の症状を安定化させる” 【パーキンソン病】 東京慈恵会医科大学の鈴木正彦氏らは、ビタミンD受容体遺伝子多型のうちFokI T/T型またはFokI C/T型を持つ患者が、ビタミンD3を摂取することで、高カルシウム血症を引き起こすことなく、短期的にパーキンソン病の症状を安定化させる可能性を示唆している(The American Journal of Clinical Nutrition誌2013年5月号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/head/carenet/34819“高用量ビタミンD摂取、65歳以上の骨折リスクを低減” 【骨折予防】 11の二重盲検無作為化比較試験の被験者を対象に行ったメタ解析の結果、65歳以上高齢者の高用量ビタミンD摂取(毎日≧800 IU)は、大腿骨頸部骨折およびあらゆる非椎体骨折の予防に多少ではあるが有望であることが示されている(NEJM誌2012年7月5日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/29116“ビタミンD+カルシウム、高齢者の骨折予防に効果” 【骨折予防】 高齢者の骨折予防におけるビタミンD単剤の用量は10~20μg/日では不十分であるが、カルシウムと併用すると大腿骨頸部骨折および全骨折が有意に抑制されることが、報告されている(BMJ誌2010年1月16日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/11991“女性高齢者への年1回、高用量ビタミンD投与、転倒リスクを増大“ 【転倒】 70歳以上の女性高齢者2,200人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、高用量ビタミンDを年1回投与することで、転倒リスクが増大してしまうことが示唆された。また投与後3ヵ月間の転倒リスクは、約30%も増加したという(JAMA誌2010年5月12日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/14363“ビタミンDサプリ摂取で膝OA改善せず“ 【膝OA】 症候性変形性膝関節症(膝OA)患者に対して2年間にわたり、十分量のビタミンD3サプリメントとプラセボとを投与し比較検討した無作為化試験の結果より、サプリメント群はプラセボ群と比較して、膝の痛みの程度や軟骨減少について、低下はみられなかったことが報告されている(JAMA誌2013年1月9日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33205“母親の血中ビタミンD値、子どもの骨塩量とは無関係” 【妊婦】 妊娠中の母体における血中ビタミンD値と、その子どもの9~10歳時の骨塩量との関連について、約4,000組の母子について行った前向き調査「エイボン縦断試験」の結果より、有意な関連は認められなかったことが報告されている(Lancet誌2013年6月22日号[オンライン版2013年3月19日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34604“ビタミンDサプリ摂取はビタミンD欠乏小児の骨密度を改善する” 【小児骨密度改善】 ビタミンDサプリメントは、ビタミンDが正常レベルの小児、青少年の骨密度にベネフィットをもたらさないが、欠乏している場合は一定の改善効果が得られることが、メタ解析で明らかとなったと報告されている(BMJ誌2011年1月29日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19686“肺結核症に高用量ビタミンD補助薬は有効” 【肺結核】 肺結核症の集中治療期に標準的な抗生物質治療を受けている患者に、高用量のビタミンD補助薬を投与すると、ビタミンD受容体TaqI tt遺伝子型の患者で喀痰培養陰転時間の短縮効果を認めることが明らかとなった(Lancet誌2011年1月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/19346“ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない“ 【上気道感染症】 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、無作為化比較試験の結果より示されている(JAMA誌2012年10月3日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/31659“ビタミンD投与、左室心筋重量係数に変化なし-左室肥大を伴うCKD患者を対象としたRCTより-” 【心肥大抑制】 左室肥大を伴う慢性腎臓病(CKD)約230人に対する無作為化試験において、48週間にわたる活性型ビタミンD化合物paricalcitolを投与した結果、左室心筋重量係数に変化は認められなかったことが示されている(JAMA誌2012年2月15日号の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/27016“血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない” 【アトピー性皮膚炎】 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが報告されている。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた(Journal of the American Academy of Dermatology誌2013年7月号[オンライン版2013年2月14日号]の掲載報告)。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33851“ビタミンDサプリ摂取で血圧が低下” 【降圧効果】 アフリカ系米国人を対象とした大規模ランダム化比較試験を行った結果、ビタミンDサプリメントを摂取した群ではプラセボ群と比べ血圧が有意に低下したことが発表されている。この前向き試験では、対象者に3ヵ月間毎日ビタミンDサプリメントを摂取させたところ、収縮期血圧がサプリメントの摂取用量に応じて0.7~4.0mmHg低下した(Hypertension誌2013年4 月号の掲載報告)。“ビタミンDサプリ摂取で、コレステロール値は改善しない” 【コレステロール低下】 ビタミンD値の低い人がサプリメントを用いてビタミンDを増加させても血中コレステロール値は改善しないことが示唆された。研究者らはビタミンD欠乏例に、5万国際単位のビタミンD3を8週間投与した。その結果、ビタミンD投与群ではプラセボ群と比べてコレステロールの改善はみられず、副甲状腺ホルモン値が低下し、カルシウム値が上昇した。(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology 誌2012年10月号の掲載報告 )。“ビタミンD低値は2型糖尿病の発症リスクを高める“ 【糖尿病】 ビタミンD欠乏と不足状態は2型糖尿病の発症リスクを高める独立した危険因子である可能性が報告されている。研究者らは、2型糖尿病の危険因子を1つ以上有するが糖尿病を発症していない成人1,080人を平均32.3ヵ月間追跡。その結果、血清25ヒドロキシビタミンD低値はBMI、インスリン抵抗性、インスリン分泌指数とは独立して2型糖尿病発症リスクと関係していた(The American journal of clinical nutrition誌2013年3月号の掲載報告)。“血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患の発症リスクが増大” 【心疾患】 デンマーク人1万例以上の血中ビタミンD濃度と心疾患および死亡との関係を検討した結果、血中ビタミンD濃度の低い人では虚血性心疾患と心筋梗塞のリスクが著しく高いことが明らかにされている。 研究者らはCopenhagen City Heart Studyに参加した1万170例のうち、血中ビタミンD濃度が5パーセンタイル未満の者と50パーセンタイル以上の者を比較した。その結果、血中ビタミンD濃度が高い者と比べ、低い者では虚血性心疾患の発症リスクが40%、心筋梗塞の発症リスクが64%高かったことを発表している(Arteriosclerosis, thrombosis, and vascular biology誌2012年11月号の掲載報告)。“ビタミンD摂取不足が脳梗塞の発症リスクを高める” 【脳梗塞】 食事によるビタミンDの摂取不足は脳卒中、とくに脳梗塞の発症と関係することがホノルル心臓プログラムより発表されている。登録時の食事によるビタミンD摂取と追跡中の脳卒中発症との関係を検討した結果、ビタミンD摂取最高四分位群と比較した最低四分位群のハザード比は脳卒中全体が1.22(p=0.038)、脳梗塞が1.27(p=0.044)と有意に高かった(Stroke誌2012年8月号の掲載報告)。Kojima G, et al. Stroke. 2012; 43: 2163-2167.

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円形脱毛症患者は酸化ストレスや過酸化脂質が有意に増大

 円形脱毛症の人は、そうでない人と比較して、活性酸素(ROC)の増大に伴う酸化ストレスや過酸化脂質が有意に増大していることが、エジプト・ミヌーフィーヤ大学病院のOla Ahmed Bakry氏らによるケースコントロール試験の結果、明らかにされた。ROCや過酸化脂質の増大は、多くの皮膚障害(アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬・白斑症・ざ瘡・天疱瘡、扁平苔癬など)で認められる。円形脱毛症においては、ROCの産生が毛包周囲の炎症性細胞で増大することが知られていた。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2013年7月10日号の掲載報告。 研究グループは、円形脱毛症患者における酸化ストレス指数(OSI)、ならびに血清総値の酸化物質活性(TOC)および抗酸化物質活性(TAC)とマロンジアルデヒド(MDA)でみた過酸化脂質について評価することを目的とした。 円形脱毛症患者と、年齢・性を適合させた健常ボランティア対照群について、血清TOC、同TAC、同MDAの値を測定し、OSIを算出し、両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、円形脱毛症(AA)患者群35例、対照群30例であった。・TOC、MDAの各血清平均値およびOSIはいずれも、対照群よりもAA患者群で有意に高値であった(いずれもp<0.001)。・血清平均TAC値は、対照群よりもAA患者群で有意に低値であった(p<0.05)。・軽症~中等症AA患者よりも重症AA患者のほうが、MDA(p<0.001)、TOC(p<0.001)、OSI(p<0.001)が有意に高値であり、TAC(p<0.01)は有意に低値であった。・以上の結果を踏まえて著者は、「AA患者では酸化ストレスおよび過酸化脂質が認められることが確認された。これらの変化が、病因や炎症性プロセスに果たす役割については、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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治りにくい大人の湿疹、生後3ヵ月で決まる?

 湿疹は乳児期において一般的にみられる症状だが、その成人期までの自然史についてのエビデンスはほとんど示されていない。英国・カーディフ大学のM.L. Burr氏らは、とくにアトピーとの関連に着目して、誕生から若年成人期までの湿疹の自然史を明らかにすることを目的としたコホート追跡研究を行った。その結果、乳幼児期の湿疹は通常は成長とともに治癒するが、青年期以降になると治癒しにくくなる可能性があること、また成人期の湿疹は生後3ヵ月以降のアトピーと関連していることを明らかにした。British Journal of Dermatology誌2013年6月号の掲載報告。 研究グループは、アトピーの家族歴がある子どもの出生コホートを、23歳時点まで追跡した。 臨床検査を7歳まで行い、皮膚プリックテストと血清中総IgE値測定を乳児、7歳時、23歳時で行い記録した。また、湿疹症状についての質問票調査を15歳時と23歳時に行った。 主な結果は以下のとおり。・情報入手ができたのは、出生時497例、1歳時482例、7歳時440例、15歳時363例、そして23歳時は304例であった。・湿疹は通常、1歳から7歳までに治癒していた。しかし15歳以降になると持続的になり、これはとくにアトピーの場合に多かった。・成人期に湿疹を有する人は、湿疹を有さない人と比べて、各検査時点での総IgE値(相乗平均値の比較で)が有意に高かった。生後3ヵ月時点では3.0対1.7 kU L-1 (p=0.01)、7歳時点は107.9対45.2 kU L-1(p=0.01)、23歳時点では123.4対42.3 kU L-1(p=0.01)であった。また、1歳時の皮膚プリックテストが陽性であった人が多い傾向もみられた。・直近の湿疹は、乳児期および成人期のIgE値高値と関連していたが、小児期の値とは関連していなかった。・以上から、湿疹に罹患した乳幼児は、通常は治癒するが、成人期に湿疹になると症状が持続的になりやすい傾向があった。また成人期の湿疹は、生後3ヵ月以降のアトピーと関連していた。

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アトピー性皮膚炎児、喘息リスクは全員が一律に高いわけではない

 アトピー性皮膚炎と喘息との関連について、アレルゲンを多く有する子どものほうが喘息リスクが有意に高いことが明らかにされた。英国・Microsoft Research CambridgeのN. Lazic氏らが機械的に任意に抽出した2つの出生コホートを分析して報告した。従来定義の小児アトピー性皮膚炎患児のうち、喘息リスクが高いと判明したのは、3分の1以下であったという。アトピー性皮膚炎は喘息との関連が強いリスク因子の一つだが、その関連性はほとんど明らかになっていなかった。Lazic氏らは、アトピーといっても多様なサブタイプがあり、それぞれ喘息との関連は異なるのではないかと仮定し本検討を行った。Allergy誌2013年6月号(オンライン版2013年4月29日号)の掲載報告。 本研究は、英国の2つの異なる地域ベースの出生小児コホート(マンチェスターとワイト島)を対象に、機械学習法にて行われた。小児期および思春期を通じて実施したプリックテストとアレルゲン特異的IgE検査に基づき、教師なし学習を用いてアトピー性感作によりそれぞれクラス分類し、各群の質的特性と喘息および肺機能との関連性を調べた。 主な結果は以下のとおり。・両コホートのデータは、それぞれ5クラスに分類できた。それら分類クラスの内容は両コホートで非常に類似していた。・非感作群と比較して、多様なアレルゲン感作を有するクラスの子どものほう(従来定義の小児アトピー性皮膚炎児の3分の1以下)が喘息を有する傾向が認められた[補正後オッズ比aOR(95%信頼区間[CI]) マンチェスター:20.1(10.9~40.2)、ワイト島:11.9(7.3~19.4)]。・喘息と従来定義のアトピー性皮膚炎との関連は弱かった[同 マンチェスター:5.5(3.4~8.8)、ワイト島:5.8(4.1~8.3)]。・両コホートにおいて、これらのクラスの子どもの肺機能は有意に低く(FEV1/FVC低下はマンチェスター群4.4%、ワイト島群2.6%、p<0.001)、気道感作、呼気NO値(FeNO)高値、喘息による入院が有意に多かった(p<0.001)。

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高齢者の喘息、若年期発症と中高年発症で違いはあるのか?

 40歳以下で発症した喘息と40歳以上で発症した喘息を比べると、40歳以下で発症した喘息ではアトピー性が強く、ピークフローの測定が多く行われていた。一方、40歳以上で発症した喘息では呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)が高く、重症の喘息も多いことがミシガン大学内科のAlan P. Baptist氏らにより報告された。Journal of Asthma誌オンライン版2013年6月20日号の掲載報告。 高齢者の喘息には、小児期または若年期で発症し、それが高齢期まで継続している場合と、中高年で発症した場合があるが、この発症年齢の違いが、診断および治療のうえで何らかの影響をもたらしているかもしれない。今回の研究の目的は、喘息の発症年齢によって、人口動態、コントロール状況、QOL、医療サービスの利用にどのような違いがあるのかを明らかにすることである。 本研究では65歳以上の喘息患者に関する横断的研究のデータを分析した。小児・若年期の発症か中高年の発症かは40歳を基準とした。喘息の人口動態と重症度を分析し、プリックテストと肺機能検査(スパイロメトリー、FeNO測定)を行った。 主な結果は以下のとおり。・小児・若年期発症の喘息患者では中高年期発症に比べ、プリックテスト陽性が有意に多かった(92% vs 71% p=0.04)。これらの結果は両群とも過去の報告より多いものであった。・小児・若年期発症の喘息患者はピークフロー測定を有意に多く受けていた(p=0.07)。・中高年期発症の喘息患者は中等症または重症が有意に多く(オッズ比[OR]:3.1、p=0.05)、FeNOも有意に高かった(p=0.02)。・中高年期発症の喘息患者は入院率も有意に高かったが(p=0.04)、回帰分析後では有意差はなかった。・喘息の人口動態的な情報、併存症、スパイロメトリー、コンプライアンス、喘息のコントロール、QOLにおいては小児・若年期発症と中高年期発症との間に有意差はなかった。 高齢者の喘息では、発症年齢を定義することにより、推奨される治療やアウトカムが改善される可能性があると著者は述べている。

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「内科で遭遇する皮膚疾患」に関するアンケート結果 part 2

Q1皮膚疾患を診療する上で困っていることがありましたら教えてください<診断・治療について>「このほくろは大丈夫ですか」と聞かれることが多いが、皮膚科医へわざわざ紹介すべきか、経過観察でよいかの判断がつかない。 患者さんとしては、受診したついでに質問されていることなので、それを全例「皮膚科へ行ってください」では患者さんのニーズにこたえていないと思う。しかし実際のところ判断がつかないので「大丈夫です」とも言えない。(勤務医・内科)ステロイドを使用するかどうか迷う時がある。(勤務医・内科)どういう湿疹や病状なら皮膚科に紹介すべきか悩む。(開業医・内科)患者さんから皮膚科医の処方の継続を依頼されるが、薬剤の中止や変更の判断が困る。(開業医・内科)感染性の皮膚疾患が診断できなくて、困っている。(勤務医・内科)緊急性の有無がよく分からない。(開業医・内科)黒色の色素斑が、悪性なのかどうか聞かれることがあるが、難しい。かといって、すべてを紹介するわけにもいかず、悩むことが多い。(開業医・内科)初期の病状は何とかなるが、しばらくたってからの皮膚病変をどのようしたらよいかわからない。(開業医・内科)他の医師で比較的安易にステロイド含有剤を内服処方しているので、離脱が大変である。(開業医・内科)皮膚科と違い、内科では、外来でKOHなど迅速に検査することができず、白癬として抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきなのか、悩むことがある。(勤務医・内科)風疹などの感染症との鑑別。とくにウィルス性のカゼや溶連菌などで出てくる皮疹との鑑別。また、薬疹が疑われる場合の原因物質の究明。(開業医・内科)薬疹の原因薬剤が最終的に絞りきれない症例がある。(勤務医・内科)蕁麻疹と思われるが長期化している症例や受診時には皮疹が消失している症例がある。(勤務医・内科)<患者さんについて>あきらかに皮膚科的専門性のある疾患で、皮膚科受診を勧めるも、行きたがらないこと。(開業医・内科)皮膚に関して相談されたときは基本的に皮膚科に紹介している。ところがなぜか患者は”皮膚が悪いのは内臓から来ているのではないか”と内科を先に受診されることがままあり、困っている。(勤務医・内科)皮膚科受診を勧めても、当方での治療を希望される方が少なからずいる。今のところ大きなミスはないが、やはり専門医に行ってほしい。(開業医・内科)<その他>気軽に相談できる皮膚科医がそばにいない。(開業医・内科)当院は、総合病院でないため皮膚科医が在籍しない。外来患者で診断に困る場合や難治性の場合には他院の皮膚科専門医に紹介できるが、入院の場合には紹介しにくい。出来るだけ自分自身の診断能力の向上に努めているが限界がある。(勤務医・内科)疥癬など、急いで診断治療しないといけない疾患や薬疹を疑った時など、皮膚科にすぐコンサルトできる時は良いが、できないときに困る。(勤務医・内科)

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エキスパートに聞く!「内科医がおさえるべき皮膚診療ポイント」Q&A part2

CareNet.comでは『内科で診る皮膚疾患特集』を配信するにあたり、事前に会員の先生より質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、三橋善比古先生にご回答いただきましたので、全2回でお届けします。患者さんから黒色の色素斑が良性か悪性か聞かれ、判断が難しいことがあります。すべてを皮膚科専門医に紹介するわけにもいかず困ります。どのように対処したらよいでしょうか?黒色の悪性皮膚疾患の代表は悪性黒色腫と考えます。臨床診断の目安としてABCDE基準を紹介します。Aはasymmetry、非対称性かどうかです。鑑別対象になる良性の色素細胞性母斑は、同じ速度でゆっくりと拡大するので円型が基本です。悪性黒色腫は拡大する速度が方向によって異なるので非対称性になることが多いのです。Bはborder、境界が明瞭でないことです。一方、母斑は明瞭であることが多いのです。Cはcolor、色調です。母斑は均一ですが、悪性黒色腫は黒色調にムラがあるほか、脱色素を生じて白い部分や、炎症のため赤いところなど、多彩な色調になるのです。Dはdiameter、直径です。母斑は先天性のものを除けば小さいものが多く、手掌と足底では4mm以下、それ以外では6mm以下がほとんどです。この大きさを超えたものは悪性黒色腫の可能性があります。最後のEはElevation、隆起に注意します。ただ、母斑も真皮内の母斑細胞が増加するとドーム状に隆起しています。平坦だった色素性病変が隆起してきたら、急速に細胞増殖が生じていると考えられます。悪性黒色腫の徴候です。基底細胞癌も黒色の悪性腫瘍です。中高年者の顔面や体の正中部に好発します。角化がみられず、表面がつるっとしています。良性で、中高齢者に好発する脂漏性角化症(老人性疣贅)と区別する必要があります。脂漏性角化症は角化していて、表面がくすんだ感じがあります。悪性黒色腫と色素細胞性母斑、基底細胞癌と脂漏性角化症は、ダーモスコピー検査で区別できることが多いです。慣れてくれば、基底細胞癌は直径1~2mm程度でも疑うことができるようになります。2種の塗り薬の重ね塗りはどんな場合に意味があるのでしょうか?外用薬の重ね塗りは、外用薬の相乗効果を期待して行われます。保湿薬とステロイド薬、ステロイド薬と亜鉛化軟膏などの組み合わせがあります。前者は乾燥皮膚で湿疹もみられるときに、乾燥した面に保湿薬を塗り、その後、湿疹性変化が見られる部分にステロイド薬を塗ってもらいます。相乗効果のほか、ステロイド薬の塗り過ぎを防ぐ効果も期待できます。後者は湿潤した湿疹性病変に、まずステロイド薬を塗り、その上に亜鉛化軟膏をかぶせて滲出液を軽減する効果を期待します。一方、2回塗ることは、患者には時間や労力の負担になり、コンプライアンスを下げる欠点があります。そのため、初めから2種類の外用薬を混合して処方することがあります。こちらの欠点は、組み合わせによってはpHや組成に変化を来して、期待した効果が得られなくなる可能性があることです。食物アレルギーと皮膚疾患にはどのような関連があるのでしょうか?食物アレルギーはI型アレルギーです。I型アレルギーの皮膚症状は蕁麻疹です。したがって、食物アレルギーでは蕁麻疹を生じ、重篤な場合はショックを引き起こします。一方、アトピー性皮膚炎でも食物の関連が指摘されています。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚病変は湿疹です。湿疹はIV型アレルギーで生じます。したがって、アトピー性皮膚炎における食物の関与は、単純なI型アレルギーとしてではないと考えられます。ただし、アトピー性皮膚炎患者が純粋な食物アレルギーを合併していることがあります。そのような、合併ではないアトピー性皮膚炎に対する食物の関与は、I型アレルギーの特殊型である遅延相反応や、IV型アレルギーの特殊型であるTh2型反応などで生じている可能性があります。これらの反応では、純粋なI型アレルギーのように蕁麻疹やショックを生じることはありません。分子標的薬の副作用対策とその予防法について教えてください薬剤がいったん体内に入った後で全身に生じる副作用は、従来は薬疹と呼ばれ、その対応は当該薬剤を中止することでした。中止する理由は、皮膚に生じた症状はアレルギーや中毒によるもので、そのまま薬剤摂取を続けると、いずれ障害は体内の全臓器に波及する可能性があると考えられるためでした。ところが、分子標的薬登場後、この考えを修正する必要が出てきました。分子標的薬は特定の分子を標的にしているため、アレルギーや中毒ではなく、作用の一つとして皮膚に症状が現れることが多いのです。ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)、エルロチニブ塩酸塩(同:タルセバ)などのEGFR阻害薬の場合は、EGFRが毛嚢細胞に大量に発現しているため、薬の作用として毛嚢を破壊し、その結果、毛嚢炎、ざ瘡、ざ瘡様発疹などと表現される皮膚病変を生じます。この場合、皮膚病変は薬の効果の一つと考えることもできます。そのため、中止する必要はないことになります。薬疹ではなく、皮膚障害と呼んで区別しているのはこのためです。皮膚病変を対症的に治療して、我慢できる程度であれば原疾患の治療を続けることになります。ところが、ここで大きな問題があります。このような分子標的薬も、従来通りのアレルギー性の薬疹を起こすことがあることです。中毒性表皮壊死症(TEN)やStevens-Johnson症候群などの重篤な病型も報告されています。発疹出現時、各分子標的薬に特有の皮膚障害か従来の薬疹かを区別することが大事です。これは、時に皮膚科専門医にも難しいことがあります。生検してはいけない皮膚病変にはどのようなものがあるのでしょうか?生検してはいけない皮膚病変はないと思います。生検のデメリットと生検で得る可能性がある情報のどちらが大きいかで決定するべきです。たとえば悪性黒色腫は生検すべきではない、とする考えがあります。しかし、生検しなければ診断できないことがあります。また、治療を決定するための深さを知るためには生検が必要です。悪性黒色腫が考えられるときの生検は、できる限り、病変内を切開するincisional biopsyではなく、病変全体を切除するexcisional biopsyを行います。また、生検の結果、悪性黒色腫の診断が確定することを考えて、1ヵ月以内に拡大切除ができることを確認しておきます。血管肉腫も必要最小限の生検にとどめるべき疾患です。生検によって転移を促進する可能性があります。しかし、診断確定のための生検は必要です。治療する環境を整えてから生検するのがよいでしょう。爪の生検は悪性疾患が考えられるときや、炎症性疾患でも、診断確定することで大きな利益がある場合にとどめるべきです。爪に不可逆的な変形を残す可能性があることをよく説明して、患者の同意を得て行うことが必須です。前胸部の生検は大きな瘢痕を残したり、ケロイド発生の危険性があります。組織検査のメリットがあるかどうか考え、患者に説明してから行うべきでしょう。

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重篤な職業性接触皮膚炎1,000例を検証、多発しやすい職業などが明らかに

 職業性接触皮膚炎は頻度が高いことが知られるが、重篤例の頻度も高いことが、デンマーク・コペンハーゲン大学ゲントフテ病院のJakob Ferlov Schwensen氏らによる調査の結果、明らかになった。また、刺激性接触皮膚炎のほうがアレルギー性接触皮膚炎よりも発症年齢が有意に低いことや、男女別にみた発症頻度の高い職業なども明らかになった。著者は「本研究は、職業性接触皮膚炎について、普遍的かつ特異的な予防のための新たなアプローチを示唆するものとなった」と結論している。Contact Dermatitis誌2013年5月号の掲載報告。 Schwensen氏らは、職業性接触皮膚炎は疫学的な解明が、その予防の基本的素地の改善につながる可能性があるとして、重篤な職業性接触皮膚炎のリスクがある職業を特定することを目的に、同院のナショナルアレルギー研究センターで治療が行われた1,000例について検証した。 主な結果は以下のとおり。・分析対象群は、女性618人、男性382人であった。・平均発症年齢は、男女ともアレルギー性接触皮膚炎よりも刺激性接触皮膚炎のほうが、アトピー性皮膚炎の併存の有無にかかわらず、有意に低かった。・女性でリスクの高い職業は、料理人、肉屋、美容師、パン屋で、発症例は年間1万人当たり23.3~96.8例であった。・男性でリスクの高い職業は、塗装工、料理人、機械工、錠前屋、パン屋で、発症例は年間1万人当たり16.5~32.3例であった。・以上の結果から職業性接触皮膚炎の重篤例は頻度が高いことが明らかになった。著者は、「長年にわたる問題として文書化され、職業リスクとリスク因子が明らかになっているにもかかわらず、ヨーロッパでは効果的で組織的な介入および予防の計画が手つかずであることが懸念される」と指摘したうえで、「本研究が、職業性接触皮膚炎の普遍的かつ具体的な予防のための新たなアプローチを示唆するものとなった」とまとめている。

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エキスパートに聞く!「内科医がおさえるべき皮膚診療ポイント」Q&A part1

CareNet.comでは『内科で診る皮膚疾患特集』を配信するにあたり、事前に会員の先生より質問を募集しました。その中から、とくに多く寄せられた質問に対し、三橋善比古先生にご回答いただきましたので、全2回でお届けします。皮膚科専門医に紹介すべき疾患の見分け方、緊急性のある皮膚疾患の見分け方のポイントがあれば教えてください。発熱がある場合は緊急性があることが多いと思います。皮膚所見では、全身が赤い紅皮症状態、水疱形成や粘膜症状がある例が重症疾患のことが多いと思います。数日間観察して悪化傾向があれば、その後も悪化することが考えられるので紹介すべきです。この悪化傾向は必ずしも面積の拡大を意味しません。中毒疹は体幹に始まり、軽快するときに四肢に拡大していくことが多いのです。面積が拡大しているので悪化していると解釈されることが多いですが、実際は軽快していることもあります。この場合、色調や浸潤に注意すると、面積は拡大しても赤みが薄くなって浸潤が改善していることがあります。これは軽快の徴候です。プライマリ・ケアで注意すべき皮膚疾患はどのようなものがあるでしょうか?湿疹・皮膚炎群、蕁麻疹、表在性白癬で、全皮膚疾患患者の半分程度を占めるとされています。これらの疾患に対応できればかなりの部分をカバーできると思われます。白癬を疑うケース:内科外来では顕微鏡やKOH検査ができません。そのような場合、どのように対処すべきでしょうか? まず抗真菌薬を処方すべきか、ステロイド外用薬を処方すべきかなど悩みます。皮膚科でKOH検査を行っても湿疹か白癬か判別できないことがあります。このような場合は、必ず後日再来する約束をしてステロイド薬の外用を行い、再度、真菌鏡検を行って診断を確定することがあります。この場合、ステロイド薬外用は、湿疹性病変を治療することで白癬病変を明瞭化すること、かゆみを取り除くという意味があります。真菌鏡検ができないときはこの手は使えませんので、まず抗真菌薬を外用する方がよいと思います。ステロイド外用で真菌病変が悪化してしまうことを避けるためです。蕁麻疹について:受診時には皮疹が消失している症例にはどのように対処したらよいでしょうか?蕁麻疹は膨疹を特徴とする疾患です。膨疹は短時間で出没することが特徴です。出たり消えたりしているわけです。全体としては続いていることもあるし、全体が消えてしまうこともあります。従って、診察の時に発疹がまったくないことは珍しくありません。むしろこれが、他の疾患ではみられない蕁麻疹の特徴です。蕁麻疹はアレルギー性のほか、運動誘発性、寒冷、温熱、コリン性など原因は多彩です。蕁麻疹の治療は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服が第一選択です。ステロイド外用はあまり意味がありません。もし外用薬を処方する場合は、ジフェンヒドラミン(商品名:レスタミンコーワクリーム)などのステロイドを含まないものがよいでしょう。複数の皮膚病変が合併している場合の対処法について教えてください。複数の皮膚病変の合併と聞いて、真っ先に、水虫(足白癬)に細菌の二次感染が合併している状態を思い出しました。このような患者は、これから暑くなってくると毎日のように来院されます。また、足白癬の治療のための外用薬による接触皮膚炎を合併している患者もおられます。これら3疾患を併発していることもあります。このようなときの治療は、後で生じたものから治療するという原則があります。白癬に細菌感染では、細菌感染から治療します。接触皮膚炎を合併していたら、まず接触皮膚炎を治療します。原則にこだわるよりも、急を要するものから治療すると考えるのがいいかも知れません。いずれにしても、白癬の治療は最後でよいのです。

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アレルギーのフェノタイプがCOPDに及ぼす影響は?

 COPDと喘息は、いずれも種々の外来因子(アレルゲン、喫煙など)に肺組織が反応する病態である。オランダ仮説のように、これら2つの疾患は気道組織の傷害に対する感受性が亢進し、気道リモデリングが起こりやすいという共通病態に基づいた症候群であり、両疾患は単に表現型の違いを見ているにすぎないとする考え方もある。 このような背景の中、米国のジョンズ・ホプキンス大学Daniel B. Jamieson氏らにより、COPDとアレルギーのフェノタイプ(表現型)がどのように関係しているかについて研究が行われた。American journal of respiratory and critical care medicine誌オンライン版2013年5月13日号の掲載報告。 本研究はNHANES III(国民健康栄養調査)とCODE(COPD・国内エンドトキシン コホート)の2つを分析したものである。NHANES III からは、40歳超で喫煙歴があり、FEV1/FVCが70%未満かつ喘息と診断されていないCOPD患者1,381例が選ばれた。医師による花粉症、もしくはアレルギー性の上気道症状の診断を受けた患者について、アレルギーのフェノタイプありと定義した。CODEでは、喫煙歴を有するCOPD患者77例を抽出し、通年性のアレルゲンに対する特異的IgE反応検査によりアレルギー感作を評価した。アレルギーのフェノタイプが呼吸器症状やCOPD増悪と関係しているかの評価には、二変量解析または多変量解析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・NHANES IIIの多変量解析の結果、アレルギーのフェノタイプを有する患者(296例)では、喘鳴、慢性的な咳、慢性的な喀痰が有意に多く(それぞれ、オッズ比[OR]:2.1, p<0.01、OR:1.9, p=0.01、OR:1.5, p<0.05)、医師の迅速な処置を要するCOPD増悪のリスクも有意に高かった(OR:1.7, p=0.04)・CODEの多変量解析の結果、アレルギー感作を有する患者は喘鳴、咳による夜間の目覚め、医師の迅速な訪問が有意に多く(それぞれ、OR:5.91, p<0.01、OR:4.20, p=0.03、OR:11.05, p<0.01)、抗菌薬を必要とするCOPD増悪のリスクも有意に高かった(OR:3.79, p=0.02) このように、COPD患者では、アレルギーのフェノタイプが呼吸器症状の悪化やCOPD増悪のリスクと関連していることが示唆された。

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慢性蕁麻疹の血小板活性化、重症度と相関

 慢性蕁麻疹と血小板活性化との関連について、これまで十分に検討した報告はほとんどみられていない。インド・医学教育研究大学院ジャワハル研究所(JIPMER)のLaxmisha Chandrashekar氏らは、健康な対照との比較による横断的研究を行った。その結果、慢性蕁麻疹患者における血小板活性化は有意で、とくに自己反応性を有する患者で顕著であったことを報告した。Platelets誌オンライン版2013年4月15日号の掲載報告。 研究対象は、慢性蕁麻疹患者45例と、年齢・性をマッチさせた健康な対照45例であった。蕁麻疹重症度スコアを用いて、疾患重症度を評価し、患者群の被験者については全員に自己血清皮内検査(autologous plasma skin test:APST)を行った。 血小板数および指標は、血液自動レーザー光分析器によって算定した。また全被験者について、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値を評価した。 主な結果は以下のとおり。・対照群と比較して慢性蕁麻疹患者群では、平均血小板容積(MPV)と血小板分布幅(PDW)の値が有意に高いことが観察された。・血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値は、対照群と比較して慢性蕁麻疹患者群で有意に高かった。・蕁麻疹重症度スコアは、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値と明らかな関連性が認められた。・APST陽性患者はAPST陰性患者との比較において、血小板凝集能と血漿可溶性P-セレクチン値が有意に高かった。血小板活性化は自己免疫反応を有する群でとくに有意であった。

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専門職や技術職である妊婦の子どもは、アトピー性皮膚炎発症リスクが増大

 専門職や技術職に就く女性は、妊娠中の仕事のストレスが高まるほどに、生まれてくる子どものアトピー性皮膚炎発症リスクが増大することが、台湾・行政院衛生署台湾医院のI.J. Wang氏らによる前向きコホート研究の結果、明らかにされた。Wang氏らは、アトピー性皮膚炎は生後間もなく発症する頻度が高く、その問題を検討する際は生命を得た早期段階でのリスク因子について考えることが重要であるとして、これまで検討されていなかった、母体の職業的曝露と子どものアトピー性皮膚炎発症との関連について調べた。British Journal of Dermatology誌2013年4月号の掲載報告。 研究グループは、多段階層別化システマティックサンプリング法を用いて、台湾のバースレジストリから2万4,200組の母子を集めた。 出産後質問票を用いて、妊娠中の母親の職業、仕事上のストレス、勤務時間、勤務シフトおよび潜在的交絡因子の情報を集め、3歳時点で家庭面談を行い、アトピー性皮膚炎発症に関する情報を評価した。多変量ロジスティック回帰分析にて、母体の就労状況とアトピー性皮膚炎の関連について検討した。 主な結果は以下のとおり。・1万9,381例の母親のうち1万1,962例(61.7%)が、妊娠中も就労していた。・妊娠中も働いていた母親から生まれた子どもは、働いていなかった母親から生まれた子どもと比べてアトピー性皮膚炎発症のリスクが増大した(オッズ比[OR]:1.38、95%CI:1.25~1.53)。・同リスクは、専門職や技術職であった母親の子どもでは、より高かった(OR:1.64、95%CI:1.44~1.87)。・また同リスクは、妊娠中の仕事上のストレスが高まるほど上昇することが認められた(傾向のp<0.01)。・アトピー性皮膚炎を有した子どもの母親は、有さなかった子どもの母親と比べて勤務時間が有意に長かった(p<0.0001)。勤務シフトについては有意な関連はみられなかった。

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乳児期の重度のアトピーや食物アレルギー、小児期のマラセチア感作リスクと関連

 1歳未満の乳児期に重度のアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを有すると、小児期にマラセチアに対する感作を有するリスクが高くなっていたことを、フィンランド・タンペレ大学病院のO-M. Kekki氏らが10年間のフォローアップの結果、報告した。マラセチアは、ヒトの皮膚に常在する酵母様真菌だが、アトピー性皮膚炎では疾患の増悪に関与することが知られる。Pediatric Allergy and Immunology誌2013年5月号(オンライン版2013年4月3日号)の掲載報告。 研究グループは、乳児期から食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を有している小児について、10年フォローアップ時でのマラセチアに対する感作の有病率を調べた。 対象は、1歳未満でアトピー性皮膚炎かつ牛乳/小麦アレルギーと診断された乳児187例であった。アトピー性皮膚炎の部位は、初診時の診療記録で評価し、10年フォローアップ時はSCORADで評価した。また、11歳時にImmunoCAPにて、マラセチアに対する特異的IgEを評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験児187例は、24例(13%)が牛乳アレルギーを、71例(38%)が小麦アレルギーを、92例(49%)が牛乳と小麦アレルギーの両方を有していた。アトピー性皮膚炎の重症度の内訳は、軽度が94例(50%)、中等度が57例(30%)、重度が36例(19%)であった。・10年フォローアップ時点で、19例(10%)が継続して牛乳または小麦アレルギー(もしくはその両方)を有していた。アトピー性皮膚炎は147例(79%)が軽度であり、30例(16%)がSCORADスコア0であった。・被験児187例のうち、マラセチア属特異的IgE陽性(≧0.35kU/L)者は27%であった。M. sympodialis特異的IgE陽性者は20%であった。・乳児期のアトピー性皮膚炎の範囲は、10年フォローアップ時にマラセチア特異的IgEを有するより高いリスクと関連していた。・食物アレルギーのリスク比は、マラセチア特異的IgE陽性の場合、3.11(95%CI:2.05~4.72、p<0.001)であった。

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アビエイター【強迫性障害】

ハワード・ヒューズ―完璧主義の光と影この映画の舞台は、20世紀前半のアメリカ。黎明期の航空業界と全盛期のハリウッドを股にかけて活躍した実在の人物、ハワード・ヒューズの激動の半生が描かれています。彼は若くして、資産家の両親を失い、その莫大な遺産を受け継ぎ、航空工学の才能と情熱により、飛行機作りと映画作りに明け暮れ、時代のパイオニアとして大成功をおさめます。また、数々のハリウッドの美女たちと浮名を流し、世界一の富と名声をほしいままにします。そんなハワードを衝(つ)き動かすものは、生まれながらの完璧主義と執着心でした。しかし、同時に、それらは諸刃の剣として、彼を苦しめ、数多い奇行の逸話を残しました。社会的な成功者としての強さと心の闇を持つ者としての脆さ、この彼のギャップは、私たちの好奇心を大いに焚きつけます。今回は、この映画を通して、みなさんといっしょにハワード・ヒューズの光と影をメンタルヘルスの視点から探っていきましょう。強迫観念―完璧さを求める心の囚われハワードは若くして、製作した映画で大ヒットを飛ばし、また、自身の設計、操縦した飛行機により世界最速の記録を塗り替えます。さらに、世界一周を4日で成し遂げるという新記録も樹立して、華やかなハリウッドで一躍スポットライトを浴びるようになります。これらの偉業の原動力は、ものごとを何でも丁寧に几帳面にやろうとする彼の完璧主義の性格によるものでした。映画製作では、撮影に納得しないと、時には同じシーンを100テイク近くも撮り直し、編集作業では同じ映像を繰り返し確認し、膨大な時間を費やしています。飛行機製作では、機体の流線形の美しさや操縦かんの触り心地にこだわり続けます。しかし、完璧主義は職業的に生かされる一方、完璧さを求めるあまり、完璧じゃないと気が済まなくなり、本人も周りも苦しむことにもなります。ハワードは、心を許した恋人に打ち明けます。「時々、本当はありえないかもしれないおかしな考えに取り憑(つ)かれ」「正気を失うんじゃないかと怖くなる」と。彼は、自分の心の闇にうすうす気付いていたのでした。自分の性分のおかげで、社会的に成功して、世の中をコントロールできるようになってはいます。しかし、同時に、その性分が裏目に出てしまい、自分でバカバカしい(不合理)と思えることにまでこだわり、その考えに心を囚われ(侵入思考)、自分の心をうまくコントロールできなくなっていくのです。これは、まさに心に強く迫ってくる考えで、強迫観念と呼ばれます。強迫行為―バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられないパーティ会場で、ハワードがトイレで手を洗うシーンが印象的です。彼は、恋人が上層部の男のご機嫌とりをしてベタベタしている様子に苛立ち、トイレに駆け込みます。そして、念入りな手洗いが始まるのです。その後のトイレでの手洗いでのシーンでは、血が出るまでゴシゴシと手洗いを続けます。その痛々しさは、見ている私たちにも伝わってきます。彼に一体、何が起きているのでしょうか?実は、彼の完璧主義は、美しさから清潔さへの追求においても発揮されていました。彼は、ちょっとしたストレスをきっかけに、手の不潔さが気になってしまい、手洗いをしなければ気が済まないという強迫観念で頭の中がいっぱいになります。そして、ついには、手洗いを始めてしまい、止めたいと思いながらも完璧だと自分で納得し安心するまで手洗いを止められないのでした。もはやきれい好きの度を越しています。このように、バカバカしいと分かっているのに、やらずにはいられない行為、やめられない行為を、強迫行為と言います。特に、手洗いを繰り返す行為を洗浄強迫と呼びます。また、確認を繰り返す行為は確認強迫と呼びますが、彼の映画作りや飛行機作りでの度を越した執拗な確認癖は、これに当てはまるとも言えそうです。強迫性恐怖―心の囚われが不安を招くハワードは、飛行機の操縦かんをセロフィンで包んで、清潔にしようとしています。また、トイレでは、たまたま居合わせた体の不自由な男性が、タオルを取ってほしいと頼みますが、彼は「できないんだ」と申し訳なさそうに断っています。もちろん、出る時にトイレのドアノブも触れません。そんな彼が、最愛の恋人が口を付けた牛乳ビンをちょっとためらいながらも思い切って飲むシーンは、また印象的です。その後、恋人とうまくいかなくなり、社会的にピンチになるなどのストレスが引き金となって、症状が悪化していくことが分かりやすく描かれています。強迫観念はエスカレートしていくと、恐怖が募ってきます(強迫性恐怖)。不潔さに対しての強迫観念から不安が強まる場合は、特に不潔恐怖と言います。いわゆる潔癖症です。きれい好きは、裏を返せば、不潔恐怖になりうるのです。彼自身、やがては不潔さを気にするあまり、部屋から出られなくなっていきます。また、不完全さに対しての強迫観念から不安が強まる場合、不完全恐怖と言います。やり直し―完璧でなければ最初から全てをやり直すハワードの浮気が原因でその最愛の恋人が家を出て行った直後のシーン。彼は、自分の衣類が雑然と部屋に投げ出されている状況が際立って目に入ってしまい、不潔さや不完全さへの強迫性恐怖が一気に押し寄せてきます。そして、衝動的に家にあった衣類を全て燃やし始めます。最後には、自分が着ていた服までも燃やし、生まれたままの姿で棒立ちになるのでした。過去を脱ぎ捨て、リセットを望むかのように。これは、完璧でなければ最初から全てをやり直すという、やり直し(取り消し)と呼ばれる心理メカニズム(防衛機制)でもあります。彼の完璧主義の信念に通じるものでもあります。完璧さを求めるあまり、言い換えれば、不完全恐怖から逃れるために、完璧か無のどちらかでなければ気が済まなくなり、無にしてやり直すという強迫行為です。強迫儀式―自分の行動の儀式化その後、ハワードは、飛行機事故で体が不自由になり、ライバル会社に自分の会社を乗っ取られそうになるというプレッシャーもあいまって、ついに、部屋にこもって出られなくなります。そして、彼は、紙、髭、爪が伸び放題のまま、顔も体も洗わずに、素っ裸で延々と自分自身に訴えかけます。「最初から繰り返せ!」と。そして、自分の行動を決められた手順で正確に実行しようとします。まるで儀式を執り行うかのように、同じ言葉や動きを繰り返すのです。これは、強迫儀式と呼ばれます。さらに、この儀式が心の中の言葉やイメージを思い浮かべる行為にまで及ぶと、体の動きがゆっくりになっていきます(強迫性緩慢)。例えるなら、ギアが硬すぎて吹かされ続けている車のエンジンです。こうして、彼の本来の才能や情熱は、食事の用意の仕方やばい菌に触れない方法などの儀式の確立に注がれていったのでした。もともと彼は欲しいものは全てを手に入れられる立場にあり、自分にできないことはないという感覚(万能感)が強かっただけに、誰も彼を止めることができませんでした。だからこそ、病状も深刻化していったと考えられます。強迫性障害―強迫観念と強迫行為を主とする部屋ごもりが長くなるにつれて、ハワードはゴミをため込むようになります。彼の部屋には、彼がものに触れる時に使ったティッシュが山のように床に散乱しています。そして、なんと自分のおしっこを入れたビンを整列させて並べています(強迫的ため込み、強迫的保存症)。潔癖な性格のはずなのに、自分の出した垢、爪、ティッシュ、おしっこなどは大丈夫なのでした。もはや清潔かどうかの判断基準は、彼の思い込み(認知の歪み)によって大きく狂ってしまっていたのです。彼の苦悩と狂気が強烈に描かれているシーンです。これは、最近、社会問題にもなっている「ゴミ屋敷」の主人の収集癖にもつながってくる症状とも言えます。そのゴミに価値があるかどうかは本人の思い込みによるものが大きいようです。また、彼は言葉を繰り返して言ってしまい、止まらなくなる症状がいくつかのシーンで見られます。「青写真を見せろ」「ミルクをもって来い」「最初からやり直せ」「風邪をうつしたくない」「未来への道だ」などの言葉でした。相手や周りに変だと思われることは重々自覚しており、苦しそうに手で口を塞いでいます。このように、やってはいけないと思えば思うほど(禁断的思考)、やらずにはいられなくなる行為も強迫行為と言えます。以上を振り返ると、ハワード・ヒューズは、強迫観念と強迫行為を主として、強迫性恐怖、強迫儀式、強迫性緩慢、強迫的ため込み、禁断的思考などの多彩な症状も見られる、重度の強迫性障害を患っていたことが伺えます。原因(1)―思い通りの子ども時代それでは、ハワードはなぜ強迫性障害になってしまったのでしょうか?すでに、彼の完璧主義で潔癖な性格とストレスについて触れましたが、そもそもなぜ彼はこんな性格になったのでしょうか? ハワードの生い立ちを調べると、14歳で飛行訓練を受けるなど、彼はとても裕福な家庭で育ちました。しかも、11歳にして故郷ヒューストンで第1号となる無線放送セットを作り上げるなど、頭も抜群に良かったようです。幼少期の病気による聴覚障害を除くと、彼は一貫してもてはやされ、自分の思うままの子ども時代を過ごし、挫折などの失敗体験が少なすぎていました。これが、彼の完璧主義の性格を作り上げたようです。原因(2)―母親の言いつけさらに、母親の絶大な影響がありました。彼が幼少期に母親から言いつけられる記憶を思い出すシーンがあります。裸の自分が母親に体を洗われている場面です。母親から「か・く・り(隔離)・・・、分かるかしら?」「伝染病がどんなに恐ろしいかも知っている?」「あなたは安全じゃないのよ」と言い諭されています。ここから、母親自身が不潔なものに対して神経質で過保護であることが伺えます。実際の伝記にも、母親は学校の先生、ボーイスカウトの隊長、サマーキャンプの指導員に「病気の人に近付けないで」との内容の手紙を書いていたというエピソードが残っています。彼の周りも母親の訴えに気を使って、彼を見かけると、「具合は悪くないか?」と過剰に気にかけていたようです。このようにして、幼い頃から、母親を中心として周りが病気を予防しようと過剰にかかわること(弁別刺激)により、彼は清潔であれば褒められるということを学び(オペラント学習)、潔癖は良いことであるという考え方(認知)が、繰り返し刷り込まれていった(強化)のです。これが、彼の潔癖な性格を形作りました。そして、大人になったハワードが具合を悪くした時につぶやくのは、「か・く・り・だ(隔離だ)」でした。あの母親の言葉です。この言葉は、彼の生涯において根深く付きまとっていることが伺えます。まさに、彼の人生の本質的な部分です。この隔離とは、もともとはコレラなど伝染病の患者を隔離する意味がありますが、自分の感情や行動に実感が伴わなくなる心理メカニズム(防衛機制)である「(感情の)隔離」「分離」をほのめかしているようにも思えます。部屋にこもって強迫儀式や強迫性緩慢に陥っている彼は、まさに、心を囚われ、自分自身が「隔離」されてしまっているのでした。ちなみに、最近、ばい菌や臭いをイメージ化した過剰な徐菌や消臭のテレビコマーシャルをよく見かけます。この影響が子どもたちをハワードのような不潔恐怖だけでなく、口臭・腋臭などの自分の匂いへの恐怖(自己臭恐怖)を持つ神経質な大人へと駆り立てていくのではないかと心配になってしまいます。実際に、清潔すぎる環境で育った子どもたちは、異物に対しての免疫が過敏に働き(アレルギー)、喘息や花粉症になりやすくなると言われています。さらには、体のアレルギー反応だけでなく、心の「アレルギー反応」として、汚れたものや臭うものへの恐怖が高まってしまうということも考えられるわけです。原因(3)―遺伝的な傾向ヒトが完璧さを求める欲求にもっと根源的な理由はないでしょうか?完璧さとは、対称性、正確性、美意識であり、そこには秩序があります。この秩序の欲求は、どうやら、動物の縄張りを守る習性(縄張り行動)に由来し、脈々と私たちの遺伝子にもそれぞれ多かれ少なかれ受け継がれ、組み込まれているようです。ですので、この遺伝的な傾向が強いだけで、強迫性障害になりやすくなるとも言えます。つまり、ハワードの強迫性障害は、子ども時代の裕福さや母親などの周りのかかわり、成人後のストレス(環境因子)だけでなく、ヒトそれぞれが元来持っている遺伝的な傾向(個体因子)も絡み合った結果として、出来上がったのではないかということが考えられます。治療―薬物療法と認知行動療法部屋にこもっていたハワードでしたが、ライバル会社と手を組んでいる議員から汚職の疑いをかけられ、ついに強制的に公聴会に呼び出されます。彼が外出を決意した時、助けにやってきた恋人とのやり取りが興味深いです。彼女は言います。「さあ、ここ(洗面所)で顔を洗いなさい」「私はどこにも行かないわよ」と。「きみには清潔に見えるかい?」というハワードに、彼女は「何も清潔なものなんかないわよ」「でも私たちはベストを尽くすものよ」と言い、彼に顔を洗わせる後押しをします。これは、あえて恐怖の対称に曝(さら)されて逃げ出したくなる反応を妨害し、馴らしていく(馴化)という治療法でもあります(曝露反応妨害法)。すっきりした彼は、思わず言います。「結婚しないか?」と。うわての彼女は「私のためにやってくれたのね」と受け流します。好ましい行動に対して賞賛を与えており、この行動を強化しようとしています(オペラント強化技法)。かつて幼少期に強化された潔癖な考え方を拭い去り(学習解除)、不潔にこだわらないという新しい考え方に修正しようとしています。このように、もともとの不潔なものに対する思考パターン(認知パターン)、行動パターンを変えていく治療法をまとめて認知行動療法と呼びます。現在の強迫性障害の治療は、薬物療法とこの認知行動療法が主流です。シネマセラピーラストシーンでハワードは、ついに、世界最大の飛行機を完成させ、自らが操縦し、飛行を達成させます。この飛行機は、今でも最長の翼幅を持つ航空機として、記録を保持し続けています。しかし、映画では描かれていない晩年の彼は、強迫性障害を悪化させ、事故による痛みの治療で覚えてしまった麻薬を乱用してしまい、薬物依存症にもなっていました。彼は、全財産をなげうってまで、飛行機作りに全てを賭けていました。そこまでして彼が飛行機をこよなく愛したのは、飛ぶことで全てを超越し、心の安らぎが得られるからだったようです。彼は、アビエイター(飛行機操縦士)として、自分の飛行機を完璧に操縦することができました。しかし、皮肉にも、自分の心は、完璧さを求めるあまりに制御が利かない「自動操縦」になってしまい、生涯最後まで「手動操縦」をうまく行うことはできなかったのでした。ハワード・ヒューズの生き様と心の病気は、まさにコインの裏と表です。私たちは、ハワードから完璧さや潔癖さを求めることの危うさを教わることで、ほどよい心の操縦法を見出していくことができるのではないでしょうか?1)エキスパートによる強迫性障害(OCD)(星和書店) 上島国利2)標準精神医学(医学書院) 野村総一郎3)STEP精神科(海馬書房) 岸本年史4)“Howard Hughes: His life and Madness”5)Donald L. Barlett & James B. Steele

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アトピー性皮膚炎患者の悩みの種、目の周りの黒ずみへのレーザー治療の有効性

 アトピー性皮膚炎患者の悩みの種となっている目の周りの黒ずみについて、レーザー治療が有効かつ安全に使用可能であることを、韓国・中央大学のKui Young Park氏らがパイロットスタディを行い報告した。アトピー性皮膚炎患者の多くに同症状がみられ治療への希求も高いが、同治療に関する文献的な報告はほとんどなかった。Journal of Cosmetic and Laser Therapy誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。 研究グループは、2790-nm Er:YSGG(2,790nmエルビウムyttrium scandium gallium garnet)によるレーザー治療について、アトピー性皮膚炎患者の目の周りの黒ずみに対する臨床的有効性と安全性を評価した。 被験者は、軽度のアトピー性皮膚炎患者である21歳超の韓国人10例。アトピー性皮膚炎活動期で治療を要する患者は、レーザー治療後に増悪の可能性があり除外された。 2790-nm Er:YSGGレーザー治療は、フルエンス1.8~2.2J/cm2、スポットサイズ6mm、10%重複でのパルス幅0.3msを指標として、目の周り全体に4週間に1回の間隔で行われた。 有効性の評価は、盲検下で研究者によって0~5の四分位階調度スコアを用いて行われた。また、患者に対して同一スコアを用いた書面で回答を求める満足度の評価を行った。副作用について起こりうるすべての事象について評価した。 主な結果は以下のとおり。・治療後2ヵ月時点の評価において、74.5%(スコア2.7)の改善を示し、患者満足度(スコアスケール)も平均74%(2.4)が改善を示した。・4ヵ月時点の評価では、同72.5%(2.5)、71.5%(2.3)の改善を示した。・重篤な副作用やアトピー性皮膚炎の増悪は報告されなかった。・アトピー性皮膚炎患者の目の周りの黒ずみについて、2790-nm Er:YSGGレーザー治療は有効かつ安全に使用できる可能性がある。

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大人の重症アトピー性皮膚炎、臨床経過は多様であり層別化が必要

 ドイツ・ボン大学のD. Garmhausen氏らは、青年期および成人期のアトピー性皮膚炎の自然経過を調べ、分類化および重症化するリスク因子の同定を行った。アトピー性皮膚炎は、大半が乳幼児期に発症し小児のうちに寛解に至る。しかし重症例では慢性化して成人に至るケースや、成人期に重症のアトピー性皮膚炎を発症し、重症化が起きるケースもある。これまで、大人のアトピー性皮膚炎の自然経過についてはあまり研究されていなかった。Allergy誌オンライン版2013年3月1日号の掲載報告。 本研究では、アトピー性皮膚炎を経過別に分類し、それらと重症化の特異的リスク因子とを関連づけることを目的とした。 青年期および成人期のアトピー性皮膚炎を有する725例について、詳細な臨床所見と病歴の後ろ向き評価を行った。評価したラボデータには、総・特異的IgE値などが含まれていた。 主な結果は以下のとおり。・研究対象患者725例のうち、607例が、経過タイプ別に分類可能であった。・経過タイプは全部で31コースが記録された。・607例のうち85.7%は、31コースのうちの主要な5コースタイプに分類可能であった。・アトピー性皮膚炎発症が早期で成人期まで慢性症状が持続したタイプの患者と、発症が20歳代以降と遅かったタイプの患者では、感作物質の数、血清総IgE値、皮膚病変の偏向における格差が最も大きかった。・著者は、「本検討から、アトピー性皮膚炎の自然経過は、臨床像によってサブグループに分類可能であることが示された」と結論した。・また、「青年期および成人期のアトピー性皮膚炎は多様であるとの仮説が支持されるとともに、アトピー性皮膚炎患者をさらに入念な層別化の必要性があることが強調された」とまとめている。

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血清ビタミンD値と小児アトピーの重症度、統計学的に有意な関連は認められない

 血清25ヒドロキシビタミンD値と小児アトピー性皮膚炎の重症度との関連について、統計学的に有意な関連はみられないことが、米国・ウィスコンシン医科大学のYvonne E. Chiuらによる検討の結果、報告された。両者の関連については、逆相関の関連性が示唆されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年2月14日号の掲載報告。 研究グループは、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について、統計学的に有意な関連が認められるかを評価することを目的に、断面研究を行った。 1~18歳のアトピー性皮膚炎患者を被験者とし、SCORAD(Severity Scoring of Atopic Dermatitis)と血清25ヒドロキシビタミンD値を測定し、単変量試験および多変量モデルを用いて統計学的解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・97例が登録され、94例が解析に組み込まれた。・被験者のうち、ビタミンD欠乏(血清25ヒドロキシビタミンD<20ng/mL)であったのは37例(39%)、不足(同21~29ng/mL)は33例(35%)、充足(同≧30ng/mL)は24例(26%)であった。・血清25ヒドロキシビタミンD値とSCORADの関連は、有意ではなかった(r=-0.001、p=0.99)。・多変量モデル解析の結果、血清25ヒドロキシビタミンDが低値であることと有意な関連が認められたのは、3歳以上(p<0.0001)、黒人(p<0.001)、冬季(p=0.084)であった。・一方で著者は本検討結果について、自然光曝露、ビタミンD摂取、アトピー性治療についてコントロールできていないこと、一時点のみを捕えた調査であることから限界を指摘した。その上で、今回検討した小児集団では、血清25ヒドロキシビタミンD値とアトピー性皮膚炎重症度について有意な関連はみられないと結論した。

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難治性の慢性特発性蕁麻疹、オマリズマブで症状改善/NEJM

 慢性特発性蕁麻疹(chronic idiopathic/spontaneous urticaria)で抗ヒスタミン薬(ヒスタミンH1拮抗薬)の高用量投与でも症状が改善されない患者について、抗IgEモノクローナル抗体オマリズマブの投与により症状が改善されたことが、ドイツ・Charite-UniversitatsmedizinのMarcus Maurer氏らによる第3相多施設共同無作為化二重盲検試験の結果、報告された。慢性特発性蕁麻疹患者の多くが、抗ヒスタミン薬の高用量投与でも症状が改善しない。抗IgE抗体オマリズマブ(商品名:ゾレア、本邦での適応は気管支喘息)の有効性については第2相試験で示され、本試験では有効性と安全性が検討された。NEJM誌オンライン版2013年2月24日号掲載報告より。323例をオマリズマブ75mg、150mg、300mg群とプラセボ群に割り付け検討 第3相試験は、成人および12歳以上の中程度~重度の慢性特発性蕁麻疹患者(抗ヒスタミン薬治療が無効)を対象とした28週間にわたるオマリズマブ治療の有効性と安全性を検討することを目的とした。 466例の患者がスクリーニングを受け、323例(42.5±13.7、76%が女性、平均体重82.4±21.9kg)が3つの皮下注治療(75mg、150mg、300mg)群またはプラセボ群に無作為化された。治療は4週間隔で行われた。12週の治療期間終了後、16週間にわたって追跡が行われた。 主要有効性アウトカムは、かゆみ重症度スコアのベースラインからの変化で週単位で評価が行われた(範囲:0~21週、最高スコアが最も重症度が高いことを示す)。150mg、300mg群で有意に症状が改善、重大有害イベントは300mg群が高い ベースラインのかゆみ重症度スコアは、年齢階層や性別、体重、罹患期間など、全4群において14階層群から得ていた。 12週時点において、プラセボ群のスコアのベースラインからの変化は、平均-5.1±5.6であり、75mg群は-5.9±6.5(p=0.46)、150mg群は-8.1±6.4(p=0.001)、300mg群は-9.8±6.0(p<0.001)であった。また同時点での、事前特定の副次アウトカムについてはほとんどが同等性を示した。有害事象の頻度も同程度であった。 重大な有害イベントの発生は概して低かったが、300mg群(6%)で、プラセボ群(3%)や75mg群および150mg群(いずれも1%)よりも高率だった。

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