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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q25

Q25 尿路感染予防のための尿道カテーテルの交換時期は、どれくらいがいいのでしょうか? 定期的に尿道カテーテルを交換して尿路感染症が減るかどうかはよくわかっていません。ですので、尿路感染症の予防を目的とした定期的な交換は必要ないと思います。 ただし、物理的に閉塞すれば入れ替えざるを得ません。やや古い研究ですが、平均33.2日間で入れ替えが必要になったという報告があります1)。一般的には1ヵ月ごとくらいに交換すればよいと思いますが、「平均」ですので、これより長い人もいれば短い人もいたということになります。筆者が総合診療科の後期研修医をしていた頃、在宅に往診に行っていたことがありました。尿道カテーテルを長期留置している方が何人かいらして、大体は1ヵ月ごとの交換でよかったのですが、1ヶ月ごとだと途中で閉塞してしまい、実質2週間ごとくらいで交換している人はおられました。2~4週間ごとの交換というのが現実的なところではないかと思います。 1)Kunin CM, et al. Am J Med. 1987;82:405-411.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q23

Q23 寝たきり、認知障害、膀胱機能低下などで、無症候か否か判断しにくい患者における細菌尿の治療の要否について教えてください。 発熱があってほかの熱源が考えにくいのであれば、尿路感染症として治療を開始して、血液培養、尿培養の結果と経過を踏まえて判断します。 発熱がなくて症状があるかどうかわからない、少なくとも本人が困っているようでなければ治療対象にはしないほうがよいと思います。というのも、無症候性細菌尿のスクリーニングを行って抗菌薬で治療をしても、症候性の尿路感染症や入院を減らさないとされるからです1)。抗菌薬を使えば使うほど耐性菌が残っていきますし、抗菌薬自体の副作用もあるので、無症候性細菌尿は原則治療するべきではありません(例外は泌尿器科的手技前と妊婦です)。 1)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:643-654.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q22

Q22 膀胱炎に本当に抗菌薬は必要でしょうか? 普通は使ったほうがよいと思います。 とはいえ、使わなければ治らないかというとそうでもないようです。膀胱炎とはいえ、通常プラセボとの比較試験は倫理的な問題で困難ですが、皆無ではありません。たとえば、小規模ですが、15~54歳の急性膀胱炎の女性を対象にしたnitrofurantoin(国内未承認)とプラセボの二重盲検ランダム化比較試験では、7日目の時点の評価でnitrofurantoin群が34例中30例(88%)で改善もしくは治癒、プラセボ群が33例中17例(51%)で改善もしくは治癒ということで、プラセボでも約半数が改善しています1)。しかし、NNT(=Number Needed to Treat)は2.7ということで、約3人に1人が抗菌薬による恩恵を受けたという計算になります。膀胱炎の症状は不快なものですし(筆者自身はなったことはありませんが)、よほどの理由がなければやはり抗菌薬で治療したほうがよいと思います。1)Christiaens TC, et al. Br J Gen Pract. 2002; 52: 729-734.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q21

Q21 高齢者の繰り返す尿路感染では、いつまで抗菌薬を使用すべきでしょうか? 繰り返している理由によります。 もし短期間に再発しているようなら、実は腎膿瘍ができていて、治療期間が不十分なために再発を繰り返しているのかもしれません。その場合は膿瘍のドレナージが必要になり、4~6週間と長期間の治療が必要です。尿道カテーテルを留置しているために繰り返しているのであれば、本当にカテーテルが必要か、抜去できないかを真剣に検討したほうがよいです。本当に留置が必要な場合も、尿路感染症を起こしたら交換は必要です。カテーテルにバイオフィルムを作って細菌が定着すると抗菌薬だけでは除去が困難なので、交換しないことが再発の原因かもしれません。カテーテル関連の尿路感染症で、治療開始後速やかに軽快すれば治療期間は7日間で良いとされます。良くなるまで少し時間がかかった場合は10~14日間です1)。複雑性尿路感染症の治療は3週間と言われますが、長めに治療しても繰り返す人は繰り返します。繰り返す理由が改善可能なものであれば、それを除去することが必須です。しかし、長めに治療しても繰り返す人は、治療期間の問題で繰り返しているわけではないでしょうから、耐性菌を増やさないようにあえて短めに治療を終えることもあります。 1)Hooton TM, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:625-663.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q19

Q19 尿路感染において、セフトリアキソンのように100%肝臓代謝の薬でも完治するのが不思議です。血流があるからといっても、腎盂内や尿管、膀胱内には届きにくそうですが…… セフトリアキソンは100%肝臓代謝というわけではなく、33~67%が未変化体として尿中に排泄されるそうです1)。 蛋白結合能が高いせいか、非常にゆっくりとしか腎臓からは排泄されず、半減期は約8時間と長いです。腎不全があると約12時間とさらに半減期は長くなるようですが、重度肝障害がなければ腎機能による投与量調節は不要です2)。理論的には、末期腎不全があれば半減期が2.5倍くらいになるそうなのですが、腎不全があるとセフトリアキソンの蛋白結合が低下して(低アルブミン血症とは関係がなく、理由はよくわからないようですが)、フリーのセフトリアキソンが増加するそうです。腎不全で腎から排泄が低下する一方で、蛋白に結合していないセフトリアキソンが増加するため、これらの影響が相殺され、半減期はせいぜい1.5倍くらいにおさまるという説明がされています。1)Patel IH, et al. Am J Med. 1984;77(4C):17-25.2)Stoeckel K, et al. Am J Med. 1984;77(4C):26-32.

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104)脱水予防は、「水」か「お茶」で!【高血圧患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師この新しい薬(SGLT2阻害薬)の副作用として、膀胱炎など尿路感染症になるリスクが高まることが報告されています。患者他にはどんな副作用がありますか?医師糖分とともに水分も身体から出ていきます。つまり、脱水予防が大切です。とくに、薬を飲み始めてから最初の1ヵ月間は、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まることも報告されていますので、水分を積極的に摂取するように注意してください。患者はい。水分なら、何でもいいですか?医師いいえ。糖分が入っているコーラ、ジュース、砂糖入りの缶コーヒーやスポーツドリンクは控えてください。患者血糖値も上がりますしね。医師そうです。それに、ナトリウムを含んでいるダイエット飲料ではなく、できればお茶か水にしてください。患者はい。わかりました。●ポイントSGLT2阻害薬投与時には、脱水予防のためにお茶か水を積極的に摂取することを上手に説明します※お茶については、緑茶や紅茶以外のカフェインのないものを選ぶようにしましょう。1)Chao EC, et al. Nat Rev Drug Discov. 2010; 9: 551-559.

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ASPECT-cUTI試験:複雑性尿路感染症におけるセフトロザン/タゾバクタムの治療効果~レボフロキサシンとの第III相比較試験(解説:吉田 敦 氏)-401

 腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症の治療は、薬剤耐性菌の増加と蔓延によって選択できる薬剤が限られ、困難な状況に直面している。セファロスポリン系の注射薬であるセフトロザンとタゾバクタムの合剤である、セフトロザン/タゾバクタムは、βラクタマーゼを産生するグラム陰性桿菌に効果を有するとされ、これまで腹腔内感染症や院内肺炎で評価が行われてきた。今回、複雑性尿路感染症例を対象とした第III相試験が行われ、その効果と副作用が検証され、Lancet誌に発表された。用いられたランダム化比較試験 成人に1.5 gを8時間ごとに投与を行った、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験であり、欧州・北米・南米など25ヵ国で実施された。膿尿があり、複雑性下部尿路感染症ないし腎盂腎炎と診断された入院例を、ランダムにセフトロザン/タゾバクタム投与群と高用量レボフロキサシン投与群(750mg /日)に割り付けた。投与期間は7日間とし、微生物学的に菌が証明されなくなり、かつ、治療開始5~9日後に臨床的に治癒と判断できた状態をエンドポイントとした(Microbiological modified Intention-to-treat:MITT)。同時に、合併症・副作用の内容と出現頻度を比較した。レボフロキサシンに対して優れた成績 参加した1,083例のうち、800例(73.9%)で治療開始前の尿培養などの条件が満たされ、MITT解析を行った。うち656例(82.0%)が腎盂腎炎であり、2群間で年齢やBMI、腎機能、尿道カテーテル留置率、糖尿病・菌血症合併率に差はなかった。また776例は単一菌の感染であり、E. coliがほとんどを占め(629例)、K. pneumoniae(58例)、P. mirabilis(24例)、P. aeruginosa(23例)がこれに次いだ。なお、開始前(ベースライン)の感受性検査では、731例中、レボフロキサシン耐性は195例、セフトロザン/タゾバクタム耐性は20例に認めた。 結果として、セフトロザン/タゾバクタム群の治癒率は76.9%(398例中306例)、レボフロキサシン群のそれは68.4%(402例中275例)であり、さらに尿中の菌消失効果もセフトロザン/タゾバクタム群が優れていることが判明した。菌種別にみても、ESBL産生大腸菌の菌消失率はセフトロザン/タゾバクタムで75%、レボフロキサシンで50%であった。合併症と副作用に及ぼす影響 セフトロザン/タゾバクタム群では34.7%、レボフロキサシン群では34.4%で何らかの副作用が報告された。ほとんどは頭痛や消化器症状など軽症であり、重い合併症(腎盂腎炎や菌血症への進行、C. difficile感染症など)はそれぞれ2.8%、3.4%であった。副作用の内容を比べると、下痢や不眠はレボフロキサシン群で、嘔気や肝機能異常はセフトロザン/タゾバクタム群で多かった。今後のセフトロザン/タゾバクタムの位置付け セフトロザン/タゾバクタムは抗緑膿菌作用を含む幅広いスペクトラムを有し、耐性菌の関与が大きくなっている主要な感染症(複雑性尿路感染症、腹腔内感染症、人工呼吸器関連肺炎)で結果が得られつつある。今回の検討は、尿路感染症に最も多く用いられているフルオロキノロンを対照に置き、その臨床的・微生物効果を比較し、セフトロザン/タゾバクタム群の優位性と忍容性を示したものである。 しかしながら、ベースラインでの耐性菌の頻度からみれば、レボフロキサシン群の効果が劣るのは説明可能であるし、尿路の基礎疾患(尿路の狭窄・閉塞)による治療効果への影響についても本報告はあまり言及していない。そもそも緑膿菌も、さらにESBL産生菌も視野に入れた抗菌薬を当初から開始することの是非は、今回の検討では顧みられていない。また、腸管内の嫌気性菌抑制効果も想定され、これが常在菌叢の著しいかく乱と、カルバぺネム耐性腸内細菌科細菌のような耐性度の高いグラム陰性桿菌の選択に結び付くことは十分ありうる。実際に、治療開始後のC. difficile感染症はセフトロザン/タゾバクタム群でみられている。 セフトロザン/タゾバクタムをいずれの病態で使用する場合でも、その臨床応用前に、適応について十分な議論がなされることを期待する。販売し、いったん市場に委ねてしまうと、適応は不明確になってしまう。本剤のような抗菌薬は、適応の明確化のみならず、使用期間の制限が必要かもしれない。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q17

Q17 急性腎盂腎炎の抗菌薬の第1選択は何ですか? 地域の耐性菌の状況によって異なりますが、市中発症で最近の抗菌薬曝露歴がなければ、第2世代セファロスポリンのセフォチアムを点滴で開始することが多いです。ESBL産生菌までカバーしようとする場合は、重症例でなければセフメタゾールでもよいと思います。 市中発症の腎盂腎炎の原因菌の大部分は大腸菌で、従来は第2世代セファロスポリンのセフォチアムで十分カバーできていました。最近は市中発症でもESBL産生菌が増えてきており、エンピリックにESBL産生菌をカバーするべきかどうかは悩ましい問題です。ESBL産生菌による感染症ではカルバペネムが第1選択薬とされます。重症例では迷わずカルバペネムを使用しますが、軽症例までも「ESBL産生菌が心配だから」という理由でカルバペネムばかり使っているとキリがありませんし、カルバペネム耐性菌が増加していくことは目に見えています。最近、ESBL産生菌でも急性腎盂腎炎(あるいは菌血症でも)であれば、セフメタゾールがカルバペネムと大差なさそうである、という小規模な研究が国内から発表されており1)2)、筆者自身も重症例でなければ使用できるという実感を持っています。来院時に敗血症性ショックの状態であれば、初期からカルバペネム使用もやむを得ない場面も多いと思います。カルバペネムをセーブするもう一つの方法として、セファロスポリンにゲンタマイシンのようなアミノグリコシド系抗菌薬を、尿培養の結果が返ってくるまでの2~3日の間かぶせておく方法があります。 1)Doi A, et al. Int J Infect Dis. 2013;17:e159-163.2)Matsumura Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2015 Jun 22. [Epub ahead of print]

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q16

Q16 急性膀胱炎の抗菌薬の第1選択は何ですか? 筆者の場合、急性膀胱炎であれば、セファレキシンかST合剤を使うことが多いです。 ST合剤は副作用が多いイメージがあるかもしれませんし、実際長期使用ではいろいろと起こりますが、膀胱炎に使用する3日程度であればほとんどの場合問題なく使用できます。腎機能が正常であれば、バクタ錠で1回2錠を1日2回の用量で使用します。ただし、ほかに血清カリウム値を上げるような薬(ACE阻害薬やARB、スピロノラクトンなど)を飲んでいる場合はカリウム上昇を助長し、不整脈、突然死のリスクを上げることには注意を要します1)。ST合剤は、クセのある薬であることは確かですし、副作用や相互作用に目配りができるという条件であれば良い薬だと思いますが、あまり使い慣れていないようであれば無理に使う必要はないと思います。 1)Antoniou T, et al. CMAJ. 2015;187:E138-43. Epub 2015 Feb 2.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q15

Q15-1 尿路感染症でニューキノロン系の経口抗菌薬を出す先生が多いですが、本当に第1選択薬でいいのでしょうか? 国内のガイドラインでは第1選択として挙がっていますが、筆者の好みではありません。 2013年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)のデータでは、レボフロキサシンに耐性を示す大腸菌の割合は約35%でした1)。(入院検体ですので、外来検体も含めればもう少し低くなるかもしれません)。急性腎盂腎炎の第1選択薬として使うのはちょっと怖いなと思います。 1)公開情報 2013年1月~12月年報 院内感染対策サーベイランス検査部門.厚生労働省 院内感染対策サーベイランス事業.(参照 2015.6.15)Q15-2 ミノサイクリンは尿路感染症に使用できますか? ミノサイクリンは尿路への移行があまりよくないので、積極的には使いませんが、ほかに選択肢がない場合に使用することはあります。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q14

Q14 泌尿器科以外の医師です。抗菌薬を出す前に尿検査をするべきでしょうか? 他科の医師でも可能な検査はありますでしょうか? 個人的には尿路感染症と診断したら抗菌薬を処方する前に尿検査、尿培養は行うべきだと思います。できれば尿のグラム染色もしたいところです。 しかし、急性膀胱炎の場合、治療期間は3~7日間ですから、培養結果が返ってくるころには治療は終了していることがほとんどです。また、外来での女性患者では、排尿時痛、頻尿、膣分泌物なしの3つのうち2つあれば90%以上で急性膀胱炎と診断可能とされ、典型的な症状であれば尿検査自体も治療方針に寄与しないとされます1)。以上の理由により、急性膀胱炎では尿検査、尿培養を採取しないことも許容されるという意見もあります2)。 それでも、尿培養はやはり採ったほうが良いと筆者は思います。地域や自分の診療所、病院において、尿路感染症の原因菌はどのようなものが多いか、感受性の割合はどうかを把握しておくことは、エンピリックな治療の選択において非常に大切だと思うからです。治療方針に影響を与えないCT検査を乱発するくらいなら、尿検査、尿培養は侵襲もコストも少ないですし、日本においてはまだ許容される検査ではないかと考えています。以上は急性膀胱炎についての話ですが、急性腎盂腎炎の治療では必ず尿検査、尿培養を採取するべきだと思います。1)Bent S, et al. JAMA. 2002 May;287:2701-2710. 2)Grigoryan L, et al. JAMA. 2014;312:1677-1684.

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q13

Q13 尿路感染症の中で完治しづらい症例への対応に関して、初めからそういった症例を見分ける方法はあるのでしょうか? 泌尿器科的手技が必要になるような合併症の予測因子として次のようなものが報告されています。 合併症を伴う糖尿病はオッズ比が3.8(95%信頼区間1.2~11.4)、腎疾患または尿管結石または尿路の解剖学的異常の既往はオッズ比が3.9(95%信頼区間1.6~9.3)でした。一方、血圧や発熱、悪性疾患、肝疾患、神経疾患、前立腺疾患、長期尿道カテーテル留置、CRP、白血球数は独立した予測因子とは同定されませんでした1)。別の報告でもやはり糖尿病と尿管結石の既往は治療失敗の危険因子と報告されています2)。Nieuwkoop氏らが提唱した予測ルールでは、尿路結石の既往、尿pH7以上、腎障害(eGFR 40/mL/min/1.73m2以下 ※)の3つを予測因子として、すべてなければ緊急を要する泌尿器科的異常の可能性はかなり低いとしています(因子を抽出したderivationコホートで感度93%、特異度59%、検証コホートでは感度100%、特異度62%)3)。pH7 以上の意味は、ウレアーゼを産生するプロテウス属による尿路感染症だと珊瑚状結石を形成しやすいので、尿がアルカリ性だとプロテウス属の存在の傍証になるだろうという意味のようです。 一般に、急性腎盂腎炎は解熱まで72時間ほどかかることも少なくなく、72時間以上発熱が続く場合に、閉塞や膿瘍を疑って画像検査が勧められています。急性腎盂腎炎の初診時に全例CT検査は被爆の問題もありますし、腎周囲の脂肪織濃度上昇がないから腎盂腎炎ではないといわれかねないので、止めておいたほうがよいと思います。しかし、日本では超音波検査へのアクセスがよいですし、使える人にとっては聴診器の延長のような感覚なので、超音波であからさまな水腎症がないかどうかくらいは(コストを取るかどうかは別にして)最初に確認してもよいのではないかと個人的には思います。とくに上記に示した治療失敗に関連する予測因子があるような患者を外来で治療しようとするような場合は、最低限超音波で水腎症がないかどうかを確認しておいたほうが無難だと思います。閉塞を伴う腎盂腎炎はあっという間にショックになることがあるためです。※元論文ではm3になっているが、m2の間違いと考えられる1)Sorensen SM, et al. Int J Infect Dis. 2013;17:e299-303. 2)Pertel PE and Haverstock D. BJU Int. 2006;98:141-147. 3)van Nieuwkoop C, et al. Clin Infect Dis. 2010;51:1266-1272.

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耐性菌が増加する尿路感染症に有望な抗菌薬/Lancet

 複雑性下部尿路感染症や腎盂腎炎に対し、新規抗菌薬セフトロザン/タゾバクタム配合薬は、高用量レボフロキサシンに比べ高い細菌学的効果をもたらすことが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学のFlorian M Wagenlehner氏らが実施したASPECT-cUTI試験で示された。尿路感染症は生命を脅かす感染症の発生源となり、入院患者における敗血症の重要な原因であるが、抗菌薬耐性の増加が治療上の大きな課題となっている。本薬は、新規セファロスポリン系抗菌薬セフトロザンと、βラクタマーゼ阻害薬タゾバクタムの配合薬で、多剤耐性緑膿菌のほか、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生腸内細菌などのグラム陰性菌に対する効果がin vitroで確認されている。Lancet誌オンライン版2015年4月27日号掲載の報告。セフトロザン/タゾバクタム配合薬の有効性を非劣性試験で評価 ASPECT-cUTI試験は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬の高用量レボフロキサシンに対する非劣性を検証する二重盲検ダブルダミー無作為化試験。対象は、年齢18歳以上、膿尿を認め、複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎と診断され、治療開始前に尿培養検体が採取された入院患者であった。 被験者は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬(1.5g、8時間ごと、静脈内投与)または高用量レボフロキサシン(750mg、1日1回、静脈内投与)を7日間投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、治療終了後5~9日における細菌学的菌消失と臨床的治癒の複合エンドポイントであった。細菌学的菌消失は、治癒判定時の尿培養検査におけるベースラインの尿路病原菌の104コロニー形成単位(CFU)/mL以上の減少と定義した。また、臨床的治癒は、複雑性下部尿路感染症または腎盂腎炎の完全消失、著明改善、感染前の徴候、症状への回復であり、それ以上の抗菌薬治療を必要としない場合とした。 非劣性マージンは10%とし、両側検定による群間差の95%信頼区間(CI)の下限値が-10%より大きい場合に非劣性と判定した。また、95%CIの下限値が0を超える場合は優位性があるとした。セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性を確認 2011年7月~2013年9月に、25ヵ国209施設に1,083例が登録され、800例(73.9%)が解析の対象となった(セフトロザン/タゾバクタム配合薬群:398例、レボフロキサシン群:402例)。 656例(82.0%)が腎盂腎炎で、274例(34.3%)が軽度~中等度の腎機能障害を有し、199例(24.9%)が65歳以上であった。菌血症の62例(7.8%)の原因菌のほとんどは大腸菌で、多くが腎盂腎炎患者であった。また、776例(97.0%)が単一菌感染で、629例(78.6%)が大腸菌、58例(7.3%)が肺炎桿菌、24例(3.0%)がプロテウス・ミラビリス、23例(2.9%)が緑膿菌だった。 複合エンドポイントの達成率は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群が76.9%(306/398例)、レボフロキサシン群は68.4%(275/402例)であった(群間差:8.5%、95%CI:2.3~14.6)。95%CIの下限値が>0であったことから、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性が確証された。 副次的評価項目であるper-protocol集団における複合エンドポイントの達成率にも、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の優位性が認められた(83.3% vs. 75.4%、群間差:8.0%、95%CI:2.0~14.0)。セフトロザン/タゾバクタム配合薬の優位性は複雑性尿路感染症でも セフトロザン/タゾバクタム配合薬群で治癒判定時の複合エンドポイントの優位性がみられたサブグループとして、65歳以上、複雑性尿路感染症、レボフロキサシン耐性菌、ESBL産生菌、非菌血症が挙げられ、他のサブグループもレボフロキサシン群に比べ良好な傾向にあり、いずれも非劣性であった。 有害事象の発現率は、セフトロザン/タゾバクタム配合薬群が34.7%、レボフロキサシン群は34.4%であった。最も頻度の高い有害事象は、両群とも頭痛(5.8%、4.9%)および便秘(3.9%、3.2%)、悪心(2.8%、1.7%)、下痢(1.9%、4.3%)などの消化管症状であった。 重篤な有害事象はそれぞれ15例(2.8%)、18例(3.4%)に認められた。セフトロザン/タゾバクタム配合薬群の2例(クロストリジウム・ディフィシル感染)は治療関連と判定されたが、いずれも回復した。同群の1例が膀胱がんで死亡したが治療とは関連がなかった。 著者は、「この新規配合薬は、複雑性尿路感染症や腎盂腎炎の薬物療法の有用な手段に加えられるだろう。とくに、治療が困難なレボフロキサシン耐性菌やESBL産生菌の治療に有望と考えられる」としている。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q12

Q12-1 高齢者の尿検査で白血球(+)潜血(+)は治療の必要性があるのでしょうか? 症状を伴っていれば治療適応があります。 なければ無症候性膿尿または細菌尿の可能性が高いので、一般的に治療適応はありません1)。 1)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:643-654.Q12-2 急性腎盂腎炎において、尿培養検査で「偽陰性」と出ることはよくあることなのでしょうか? 具体的な頻度はわかりませんが、時々あります。 最も多いのは尿培養を採取する前に抗菌薬が投与されているケースです。また、尿管の完全閉塞があり、膿尿が膀胱まで降りてきていないときも尿培養が陰性になることがあります。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q11

Q11 腎盂腎炎を疑って泌尿器科にコンサルトすることがありますが、CT検査で腎周囲の脂肪織濃度の上昇がないと、尿検査が陽性でも腎盂腎炎ではない、といわれます。実際はどうなのでしょうか。 確かに、CTの腎周囲脂肪織濃度の上昇をもって腎盂腎炎の診断をなさる方に時々お目にかかります。 実際、症状や診察所見、尿検査から急性腎盂腎炎を疑うような人で、なぜだか撮られたCTで腎周囲の脂肪織濃度の上昇がみられることはしばしばあります。しかし、調べてみたところ、感度、特異度ともに不明です。急性腎盂腎炎の診療においてCTは、閉塞の有無の確認、膿瘍の検索、他疾患の除外といった点においては役に立ちますが、個人的な経験では、腎盂腎炎自体の存在診断にはあまり役に立たないように思います。 印象深かったのは、研修医から尿路感染症の疑いということで相談された症例です。高齢男性でインフルエンザ後に咳、痰が続き、いったん解熱した後に再度発熱してきたという病歴でした。この病歴だとインフルエンザ後の肺炎をまず疑うのになぁと思いながら見に行くと、なぜか尿検査はされずに腹部CTがオーダーされ、腎周囲の脂肪織濃度上昇をもって尿路感染症と考えたとのことでした。胸部レントゲンは撮影されていませんでしたが、腹部CTで肺の下葉が撮影範囲に入っていて、普通に肺炎像が写っていたのを見た時、この問題は闇が深いなと思いました。

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Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー Q9

Q9 急性腎盂腎炎の標準的治療期間は10~14日とされますが、外来診療において単純性であれば治療開始後数日で解熱することが多く、抗菌薬を2週間も継続する必要はないのではと思われる症例が多々あります。実際1週間で治療終了しても再燃しない方がほとんどですが、いかがお考えでしょうか? 『サンフォード感染症治療ガイド2014』によれば、腎盂腎炎の治療期間は14日間(シプロフロキサシンを使用する場合は7日間、750mgのレボフロキサシンを使用する場合は5日間)と記載されています1)。 14日間なんて長すぎる!と思う人も少なくないでしょう。かくいう筆者もそう思ったことがあります。 腎盂腎炎に限らず、感染症の治療期間に関する推奨は強い根拠に裏付けされているものは案外多くありません。近年、感染症全般に治療期間短縮化の傾向がありますが、現在の14日間というのはどれくらい根拠があるのか、それを探るために歴史を紐解いてみたいと思います。 1999年のIDSA(米国感染症学会)ガイドラインを読むと、昔は静注薬で6週間の治療が薦められていた時代もあったそうです2)。つまり、それほど治りにくく再発しやすい感染症という認識だったのでしょう。1987年のStammらの報告によれば、2週間と6週間の治療期間を比較し、両者は遜色なかったという結果でした3)。ほかにも比較試験ではありませんが、1980~1990年代の研究で10~14日間の治療でも結構大丈夫そうだということがわかりました4)-6)。一方、βラクタム薬を用いた1週間と3週間あるいは4週間治療の比較では、1週間治療のほうが再発は多かったとされます7)-8)。まとめると、1週間は短すぎるものの、2週間ならどうも大丈夫なようだということで、2週間治療に落ち着いたという経緯だったようです。筆者の単なる推測ですが、6週間治療が薦められていた1960~1970年代は腹部エコー・CT検査などの画像検査が今ほど発達していなかったでしょうから、腎膿瘍との区別が難しく、短期間治療での再発が多かったのではないかと思います。2000年以降になると、フルオロキノロンを用いた研究でさらに治療期間短縮が模索されます。シプロフロキサシンなら7日間、レボフロキサシン750mg/日なら5日間でも従来の治療期間と治療効果は遜色ないことが示されました9)-12)。2013年に発表されたメタ分析によると、菌血症症例を含む急性腎盂腎炎で7日間以下の治療は7日間よりも長い治療と比べて治療効果はほぼ差がないという結果でした13)。ただし、尿路に異常のある症例では、短期間治療のほうが再発のリスクが高くなるようです(リスク比1.78、95%信頼区間1.02~3.1)13)。尿路に異常があるようないわゆる複雑性腎盂腎炎でなければ、フルオロキノロンを用いる場合には、7日間治療でも十分そうです。しかし、国内では尿路感染症の代表的な起因菌である大腸菌のフルオロキノロンに対する耐性化が進んでいます。2013年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)のデータでは、レボフロキサシンに耐性を示す大腸菌の割合は約35%でした14)(入院検体ですので、外来検体も含めればもう少し低くなるかもしれません)。フルオロキノロンは腎盂腎炎の治療に第1選択薬としては使用しづらくなっています。筆者にとってフルオロキノロンはトランプに例えるとジョーカーのような存在です。スペクトラムは広く、肺炎球菌や緑膿菌、マイコプラズマやレジオネラにも活性があり、腸管吸収もよいので内服での外来治療にも向いています。しかし、トランプでジョーカーを使える機会が限られているように、フルオロキノロンは使用すると比較的容易に耐性を獲得されて使えなくなってしまいます。外来での尿路感染症治療が「ここぞ」という場面かどうかは個人の価値観によりますが、貴重なジョーカーが乱用されてしまった結果、すでに「ここぞ」という場面で使えなくなってしまっているのは非常に残念です。βラクタム薬やST合剤による急性腎盂腎炎の7日間治療を標準的治療にするには、まだデータが乏しいように感じますので、現状では14日間治療を標準と考えておいたほうがよいと思います。短期間治療でも再発が増える程度と考えれば、再発した場合に仕切り直す余裕がある場合は、慎重にフォローアップを行うという前提で、短期間で終了することもオプションの1つかもしれません。 参考文献 1) Gilbert DN, et al. 日本語版サンフォード感染症治療ガイド2014: ライフ・サイエンス出版; 2014. 2) Warren JW, et al. Clin Infect Dis. 1999; 29: 745-758. 3) Stamm WE, et al. Ann Intern Med. 1987; 106: 341-345. 4) Johnson JR, et al. J Infect Dis. 1991; 163: 325-330. 5) Ward G, et al. 1991; 20: 258-261. 6) Safrin S, et al. Am J Med. 1988; 85: 793-798. 7) Jernelius H, et al. Acta Med Scand. 1988; 223: 469-477. 8) Ode B, et al. Acta Med Scand. 1980; 207: 305-307. 9) Talan DA, et al. JAMA. 2000; 283: 1583-1590. 10) Klausner HA, et al. Curr Med Res Opin. 2007; 23: 2637-2645. 11) Peterson J, et al.Urology. 2008; 71: 17-22. 12) Sandberg T, et al. Lancet. 2012; 380: 484-490. 13) Eliakim-Raz N, et al. J Antimicrob Chemother. 2013; 68: 2183-2191. 14) JANIS. 公開情報 2013年1月~12月 年報 院内感染対策サーベイランス 検査部門(参照 2015.2.12)

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事例19 網赤血球数(レチクロ)検査の査定【斬らレセプト】

解説網赤血球数が、A事由(医学的に適応と認められないもの)を理由に査定となった。A事由の多くは行った診療に対する病名が、レセプトに表示されていない、いわゆる「病名漏れ」を意味する。事例は膀胱炎にて初診来院の患者である。生化学的検査、血液形態・機能検査の網赤血球数と末梢血液一般検査が行われている。生化学的検査の項目選択は、初診時のスクリーニング的に行われたものとして、特に問題はない。網赤血球数と末梢血液一般検査を見てみる。診療報酬点数表の末梢血液一般検査の項には、赤血球数、白血球数、血色素測定(Hb)ヘマトクリット値(Ht)、血小板数の全部または一部を行った場合に算定するとある。したがって、網赤血球数と末梢血液一般検査の併算定は、網赤血球数と赤血球数の比率を見て、貧血の原因を鑑別する検査が行われたものと推測できる。しかしながら病名欄には、「貧血」があることを確定する病名がない。よって、検査を行う根拠がなく、適応と認められないとA査定されたものである。網赤血球は、「レチクロ」と称してよく行われる検査であるが、病名不足を理由に査定が多い検査でもあることにも留意が必要である。

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70)SGLT2阻害薬の副作用の上手な説明法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話 (肥満している患者に対し)患者今、飲んでいる薬の副作用は何ですか?医師この薬は腎臓でブドウ糖の再吸収を抑えて、尿に糖分をたくさんだす薬でしたね。患者はい。ちゃんと覚えています。医師それはよかったです。尿に糖がたくさんでますので、膀胱炎や性器などの感染症には気をつけて下さい。患者わかりました。清潔にするようにします。医師よろしくお願いします。次に、糖分と一緒に水分もでますので、おしっこが近くなったり(頻尿)、のどがよく渇く(口渇)場合があります。特に、脱水には気をつけて下さいね。患者なるほど。水分をこまめにとるようにします。医師この薬で、余分な糖分が尿に出るので体重は減ってきます。ただし、妙にだるくなってきた(全身倦怠感)などの症状があったら、すぐに教えて下さい。患者わかりました。●ポイント尿路・性器感染症、脱水、血中ケトン体上昇などの副作用を上手に説明しましょう●解説Neal Bらは(AHA 2013、ダラス)、SGLT2阻害薬に関する38報(21,078例)のメタ解析を行い、MACE*-plus(ハザード比=0.88、95%信頼区間0.72~1.07)と総死亡(ハザード比=0.71、95%信頼区間0.49~1.03)の低下とともに、低血圧リスク(ハザード比=2.43、95%信頼区間1.68~3.50)とヘマトクリット値の上昇、生殖器感染症の増加、尿路感染症の増加(女性のみ)がみられたと報告した*MACE: Major Adverse Cardiac Events(主要有害心血管イベント)

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