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世界初、遺伝子編集ブタ腎臓の異種移植は成功か/NEJM

 米国・マサチューセッツ総合病院の河合 達郎氏らは、遺伝子編集ブタ腎臓をヒトへ移植した世界初の症例について報告した。症例は、62歳男性で、2型糖尿病による末期腎不全のため69の遺伝子編集が施されたブタ腎臓が移植された。移植された腎臓は直ちに機能し、クレアチニン値は速やかに低下して透析は不要となった。しかし、腎機能は維持されていたものの、移植から52日目に、予期しない心臓突然死を来した。剖検では、重度の冠動脈疾患と心室の瘢痕化が認められたが、明らかな移植腎の拒絶反応は認められなかった。著者は、「今回の結果は、末期腎不全患者への移植アクセスを拡大するため、遺伝子編集ブタ腎臓異種移植の臨床応用を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。69の遺伝子編集を組み込んだブタ腎臓を2型糖尿病による末期腎不全患者に移植 移植に用いたブタ(Yucatanミニブタ)は、3つの主要な糖鎖抗原を除去し、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を導入して過剰発現させ、ブタ内在性レトロウイルスを不活性化するなど、計69の遺伝子編集を組み込んだ。 レシピエントは、2型糖尿病による末期腎不全の62歳男性であった。心筋梗塞、副甲状腺摘出術が既往で、2018年に献腎移植を受けたが、2023年5月にBKウイルス感染および糖尿病性腎症の再発により移植腎が機能不全となり、血液透析中であった。 マサチューセッツ総合病院の集学的チームによる包括的評価と、独立した精神科医および倫理委員会による評価を経て、移植を実施した。 免疫抑制療法は、前臨床研究に基づき、抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、リツキシマブ、Fc修飾抗CD154モノクローナル抗体(tegoprubart)および抗C5抗体(ラブリズマブ)、タクロリムス、ミコフェノール酸とprednisoneを併用した。移植腎は機能していたが、糖尿病性虚血性心筋症に伴う不整脈で心臓突然死 移植手術は、冷虚血時間4時間38分で終了した。移植したブタ腎臓は移植後5分以内に尿を産生し、最初の48時間で6L超に達した。その後、尿量は1日1.5~2Lで安定した。患者の血漿クレアチニン値は、術前の11.8mg/dLから術後6日目には2.2mg/dLに低下した。 術後8日目に血漿クレアチニンが2.9mg/dLに上昇し、発熱、圧痛、尿量の減少を認めたが、感染症の検査は陰性であった。抗体介在性拒絶反応が疑われたため、メチルプレドニゾロン、トシリズマブを投与した。投与前の腎生検で、急性T細胞介在性拒絶反応(Banffグレード2A)が確認された。 術後9日目および10日目にメチルプレドニゾロンおよび抗胸腺細胞グロブリンを投与し、タクロリムスとミコフェノール酸を増量し、さらに補体C3阻害薬のペグセタコプランを投与した。トシリズマブの追加投与は行わなかった。その後、患者の尿量は増加し、血漿クレアチニン値は低下した。 術後18日目、血漿クレアチニン値2.5mg/dLで退院した。34日目に再び上昇したが、水分補給により1.57mg/dLまで低下した。推算糸球体濾過量(eGFR)は40~50mL/分/1.73m2であった。 術後25日目に皮下創感染症が発生し、外科的に一部切開するとともに、抗菌薬(リネゾリド、メロペネム)の投与を開始し、排膿ドレナージを実施した。緑膿菌陽性の後腹膜貯留液が排出された。切開は37日目に閉鎖し、2週間培養陰性および腹部CTにより貯留液の消失が確認されことから、51日目にドレーンを抜去した。 術後51日目、患者は外来を受診した。水分摂取量が少なく血漿クレアチニン値が2.7mg/dLと比較的高値であったため、補液を実施した。それ以外は、うっ血性心不全の症状はなく、身体所見も腎臓超音波検査でも異常は認められなかった。血圧、心拍数、呼吸数もすべて正常であった。 しかし、夕方に突然、呼吸困難に陥り、蘇生に努めたが術後52日目に亡くなった。剖検の結果、重度のびまん性冠動脈疾患を伴う心臓肥大、びまん性左室線維化などが認められ、これらはすべて糖尿病性虚血性心筋症によるものと考えられた。急性心筋梗塞、肺塞栓症、肺炎、他の臓器の炎症または薬物毒性は認められなかったことから、重症虚血性心筋症に伴う不整脈による心臓突然死と結論付けられている。

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検査等の定型的な手技、過失責任は?【医療訴訟の争点】第9回

症例診療時の医療処置ではさまざまな手技が行われるが、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が異なるものと、患者の病態により左右されることの少ない定型化された機械的所作の手技とがある。今回は、機械的所作と言いうる要素が比較的大きいマンモトーム生検における局所麻酔の手技の過失の有無等が争われた東京地裁平成28年5月25日判決を紹介する。<登場人物>患者43歳(被告病院初診時)・女性人間ドックにて左乳腺腫瘤疑いと指摘されて被告病院を受診。原告患者本人被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成23年(2011年)1月12日人間ドックを受診し、左乳腺腫瘤疑いを指摘された。1月19日被告病院を紹介受診。被告病院にて、超音波検査やマンモグラフィ検査、細胞診等を受けたが、積極的に悪性を疑わせる所見が認められなかったことから、約6ヵ月後に経過観察をする方針となった。<以後、数ヵ月ごとに被告病院を受診し、穿刺吸引細胞診、乳腺MRI検査等を受けた>平成24年(2012年)10月17日超音波検査及びマンモグラフィ検査を受けた。10月19日被告病院を受診し、主治医のA医師(乳腺外科15年目)より説明を受け、エコーガイド下マンモトーム生検を受けることとなった。なお、A医師は、「治療に関する説明・同意書」を用いて、同生検の目的や方法を説明したほか、生じ得る合併症として、発生頻度の比較的高い出血や皮下血腫などについては説明したが、「予想される不利益」として気胸についての記載はなく、A医師も気胸が発生する可能性については説明しなかった。10月30日エコーガイド下マンモトーム生検を実施するにあたり、B医師(研修医終了後3年目)が局所麻酔を行ったところ、手技中に咳き込み、マンモトーム生検は中止となった。室内気でSpO2 100%、血圧は150 mmHg台と高かったものの、その後、111/75mmHgに戻り、心拍数は86/分、呼吸音にラ音はなく、皮下気腫が生じた場合に生じる頸部皮膚の握雪感も認めなかった。気胸が生じた可能性を考慮し胸部X線検査を行ったが、異常所見は認められなかった。10月31日原告は胸痛が出現したため被告病院の救急外来を受診した。胸部X線検査で左気胸が認められたため、被告病院の呼吸器外科を受診し、胸腔ドレーン挿入などの治療を受けた。実際の裁判結果裁判所は、以下の点を指摘し、「原告に生じた左気胸は、マンモトーム生検の局所麻酔を行った際に胸腔内まで麻酔針が貫通し、肺を穿刺したことによって生じた医原性気胸である」と認定した。一般に、気胸の病因による分類の一つに、医療行為に伴う医原性気胸があること本件では、マンモトーム生検の局所麻酔を行っている最中に原告に咳嗽が生じ、気分不快等を訴えたことマンモトーム生検中止の直後から原告には胸痛や息苦しさが生じていたものと認められることマンモトーム生検を行った平成24年10月30日当日の胸部X線検査では、原告に明らかな異常所見は認められなかったものの、翌31日も、原告の胸痛等の症状が持続し、同日の胸部X線検査及び胸部単純CT検査において、左気胸と診断されたこと裁判所は、本件の局所麻酔について、以下の点を指摘した。エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺による合併症として気胸を指摘する文献は証拠上見当たらないこと(生検に伴う「合併症」として「乳房が小さい場合や病変が深部にあるとき、まれに局所麻酔の注射針で気胸を生じることがある」旨の文献の記載があるが、これは直接的には摘出生検に係る記載であり、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺に関するものとは読めないこと)エコーガイド下マンモトーム生検の局所麻酔を行うに当たっては、筋層直上に位置しており胸腔やその内部にある肺と至近距離にある部位(レトロマンマリースペース)まで麻酔針を到達させることが重要とされていることレトロマンマリースペースの位置からすると、麻酔針が胸腔内まで貫通し、肺を穿刺する一般的な危険性を有することは否定できないこと術者はモニター画面上で針先を中心に継続的な確認を行いながら自ら針の刺入等の操作を行っており、針先が明確に確認できなくなれば、針を回転させる等の方法で針先位置を確認し直した上で穿刺を継続し、あるいは刺入し直す等の方法で対応していること針治療や肺・胸腔穿刺(胸膜穿刺)、胸膜生検、中心静脈栄養法のための鎖骨下静脈穿刺、気管支鏡による経気管支肺生検なども同様に胸腔近傍において針の穿刺を行う手技ではあるが、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の胸腔内への貫通によって気胸を生じる例が極めてまれであることエコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺については、一定の抽象的な危険性や制約はあるものの、突発的な体動の発生や超音波による描出が特に困難な事情等特段の事情があれば別論、一般的には前記のような手段を講じ通常の注意義務を尽くすことによって胸腔内への貫通を防止し得ることが通常であることかかる事項を指摘した上で、裁判所は、以下のとおり判示し、手技上の過失(注意義務違反)があったものと推認されるとした。「本件マンモトーム生検の局所麻酔において、超音波画像で麻酔針の針先が確実に描出できていなかった可能性をもって、原告に生じた医原性気胸が不可避であったものと断ずることはできず、本件マンモトーム生検の局所麻酔において原告の胸腔内まで麻酔針を貫通させ、肺を穿刺したことについて、B医師には、針先の十分な確認を怠り、あるいは、超音波画像の評価を誤って麻酔針を進入させた手技上の注意義務違反ないし過失があったものと推認せざるを得ない」その上で、過失を覆す証拠がないとして、本件マンモトーム生検の局所麻酔の手技の過失を認めた。注意ポイント解説本件は、専ら施術における機械的所作の手技により、発症率が極めて低い合併症が生じたことにつき、手技上の過失が認められた事案である。裁判所が、エコーガイド下マンモトーム生検の麻酔針の穿刺については、一定の抽象的な危険性や制約はあることを指摘し、これによる気胸の合併症報告が極めてまれであること等を指摘し、通常の注意義務を尽くすことによって胸腔内への貫通を防止し得るとした上で、発生した合併症(気胸)について、「針先の十分な確認を怠り、あるいは、超音波画像の評価を誤って麻酔針を進入させた手技上の注意義務違反ないし過失があったものと推認せざるを得ない」としたことが注目される。かかる裁判所の判断は、患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が左右されることの少ない機械的所作の手技については、同様に当てはまる可能性がある。このため、機械的所作の手技の結果、発生がまれな合併症が生じた場合には、医療者の過失(注意義務違反)が推認される可能性があることに留意する必要がある。この場合、処置時(手技実施時)において、通常のケースと異なる配慮が必要な状態であったことや予想外の事態が生じたことをカルテ記載等で示せない限り、責任を回避することは困難と考えられる。医療者の視点本事案の裁判所の判断は、機械的所作とされる手技においても、術者の適切な確認が求められることを示しています。たとえば、中心静脈穿刺では、エコーガイド下であっても患者の体動や解剖学的個体差により、血管穿刺が困難になり、誤って胸膜を穿刺するリスクがあります。このような状況では、針先の動きを慎重にモニタリングし、異常があれば即座に対応する判断力が重要です。また、術中に通常と異なる状況が生じた場合、それを記録し、客観的な説明ができるよう備えておくことが、後のリスク管理につながります。安全な医療の提供には、技術の習熟だけでなく、想定外の事態に対応する柔軟な判断力と、それを記録・説明する意識が不可欠です。Take home message患者の病態(原因疾患の部位や大きさ・進行度などを含む)に応じて手技内容が左右されることの少ない機械的所作の手技の結果、発生がまれな合併症が生じた場合には、医療者の過失(注意義務違反)が推認される可能性がある。処置時(手技実施時)に通常と異なる事態が生じていたのであれば、そのことを記録しておく必要がある。キーワード合併症と医療者の責任合併症の中には、医療行為により不可避的に生じるものと、医療者の過失(注意義務違反)により生じるものとがある。悪しき結果が生じた場合にそのすべてが医療者の責任とされるものではないが、医療者の過失(注意義務違反)により生じたものについては、医療者に責任が発生する。このため、医療事故をめぐる紛争においては、患者側に生じた悪しき結果が、患者側の主張する医療者の過失(注意義務違反)によって生じたものであるのか、不可避の合併症であるのかが争われることも多い。この場合、医学文献・論文を用いての立証に加え、協力医の意見書の提出がされることや、裁判所の選任する鑑定医による鑑定がなされることもある。

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ネフローゼ症候群疑い・腎静脈血栓症の検査【日常診療アップグレード】第24回

ネフローゼ症候群疑い・腎静脈血栓症の検査問題42歳男性。1ヵ月前から徐々に両下腿浮腫と体重増加を自覚している。最近2週間は倦怠感が強く、2日前から両側の腹痛も出現してきたため病院を受診した。既往歴はなく投薬は受けていない。バイタルサインは呼吸回数22回/分を除き異常なし。両下腿に著明な圧痕性浮腫を認める。血液検査ではアルブミン2.2g/dL、総コレステロール320mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL。尿検査はタンパク3+、赤血球10/hpf、白血球10/hpf、尿タンパク/クレアチニン比5600mg/gCrである。腹部〜骨盤CTでは、両側の腎静脈に血栓を認めた。抗核抗体は陰性で、補体低下は認めない。B型およびC型肝炎、HIV、梅毒の検査は陰性である。抗ホスホリパーゼA2受容体抗体(抗PLA2R抗体)をオーダーした。

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アルドステロン産生腺腫に対する超音波内視鏡下経胃高周波アブレーション/Lancet

 左側アルドステロン産生副腎腺腫(APA)の治療において、超音波内視鏡下経胃高周波アブレーション(EUS-RFA)は副腎摘出術に代わる安全な方法であることが示された。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のGiulia Argentesi氏らFABULAS study groupが、多施設共同前向き概念実証研究「FABULAS試験」の結果を報告した。片側性APAは高血圧症の原因の5%で治癒の可能性があるが、その局在診断には侵襲的手技が必要である。分子イメージングを用いたEUS-RFAは、胃に非常に近い左側APAの治療において新たな低侵襲治療となる可能性があった。著者は、「APAの大部分を切除すれば、原発性アルドステロン症と高血圧症を完全に治癒できる可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。EUS-RFAの安全性を検証する第I相試験を実施 FABULAS試験は、原発性アルドステロン症、分子イメージングおよびインターベンショナル消化器病学を専門とする英国の大学病院3施設で実施された。 対象は、内分泌学会の基準により原発性アルドステロン症と診断され、副腎静脈サンプリングまたはPET-CTで左側APAが確認された18歳以上の男女であった。3グループに分けて登録し、グループ2と3は、それぞれ前のグループの最初の4例のデータを独立安全性委員会で評価した後、次のグループの登録を開始することとした。 いずれのグループも、2回の分子イメージング(1回目でAPAの診断と位置の特定、2回目でアブレーションの程度の定量化)を実施後に、APA診断の確認のための穿刺生検に続き、19Gアブレーションカテーテルを用いてアブレーションを実施した。持続超音波ガイド下での操作により、試験の進行に伴って10~20秒の治療(焼灼)回数は漸増された。 主要エンドポイントは安全性で、アブレーション後24時間または48時間における事前に規定された主要ハザード(胃および副腎穿刺:穿孔、出血、または主要臓器の梗塞)の発生とした。副次エンドポイントは、3ヵ月後の分子イメージングにおける対側副腎と比較した切除APAの放射性トレーサー取り込みの減少、ならびに生化学的および臨床的成功の国際的コンセンサス基準(RFA後6ヵ月時の血漿アルドステロン濃度/血漿レニン比および血圧の低下)とした。主要ハザードの発生は確認されず 2018年2月21日~2023年2月10日に、44例がスクリーニングされ、28例が登録された(男性21例[75%]、女性7例[25%]、平均年齢57.7歳[SD 10.3]、白人16例[57%]、黒人11例[39%]、アジア人1例[4%])。28例のうち21例(75%)で1回、7例(25%)で2回、計35回のアブレーションを行った。すべてのPET-CT陽性結節は、超音波内視鏡プローブで特定され、生検カテーテルとアブレーションカテーテルによる穿通に成功した。 事前に規定された主要ハザードの発生は認められなかった。 3ヵ月後のPET-CT陽性APAによる放射性トレーサー取り込みの局所的減少は、21例(75%[95%信頼区間:55~91])で生化学的完全治癒または部分的治癒と関連しており、12例(43%[24~61])で高血圧の完全治癒または部分的治癒(臨床的治癒)と関連していた。4例では、分子イメージングでのAPA消失が、すべての降圧治療中止時の収縮期血圧135mmHg未満および拡張期血圧85mmHg未満と関連していた。

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活動性ループス腎炎、オビヌツズマブ+標準治療の有効性を確認/NEJM

 活動性ループス腎炎の成人患者において、タイプIIのヒト化抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ+標準治療は標準治療単独と比較して、完全腎反応をもたらすのに有効であることが、米国・Northwell HealthのRichard A. Furie氏らREGENCY Trial Investigatorsが行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で示された。オビヌツズマブは、標準治療を受けているループス腎炎患者を対象とした第II相試験において、プラセボと比較して有意に良好な腎反応をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。76週時点の完全腎反応を評価 試験は15ヵ国で行われ、生検で活動性ループス腎炎と診断された18~75歳の成人患者を、オビヌツズマブを2種類の投与スケジュール(1,000mgを1日目、2週目、24週目、26週目、50週目、52週目に投与もしくは50週目は投与しない)のいずれかで投与する群、もしくはプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。全患者は無作為化時にミコフェノール酸モフェチルと経口prednisoneによる標準治療を開始し、経口prednisoneは12週目までに7.5mg/日、24週目までに5mg/日を目標用量として投与した。 主要エンドポイントは76週時点の完全腎反応とし、尿蛋白/クレアチニン比<0.5(尿蛋白、クレアチニンともmg単位で測定)、推算糸球体濾過量(eGFR)値がベースライン値の85%以上、および中間事象(レスキュー治療、治療失敗、死亡または早期の試験中止など)がないことと定義した。 76週時の重要な副次エンドポイントには、64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で完全腎反応を得られていたこと、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がないことなどが含まれた。完全腎反応はオビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%で有意差 計271例が無作為化され、135例がオビヌツズマブ群(全投与スケジュール群)に、136例がプラセボ群に割り付けられた。ベースライン特性は両群でバランスが取れており、平均年齢(±標準偏差)はオビヌツズマブ群33.0±10.5歳、プラセボ群32.7±10.0歳、女性がそれぞれ114例(84.4%)および115例(84.6%)であった。また、ループス腎炎の初回診断時からの期間中央値は36.6ヵ月と34.3ヵ月、尿蛋白/クレアチニン比は3.14±2.99および3.53±2.76、eGFR値は102.8±29.3および101.9±32.2mL/分/1.73m2などであった。 76週時点で完全腎反応が認められた患者の割合は、オビヌツズマブ群46.4%、プラセボ群33.1%であった(補正後群間差:13.4%ポイント[95%信頼区間[CI]:2.0~24.8]、p=0.02)。 64~76週目のprednisone投与量が7.5mg/日以下で76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(42.7%vs.30.9%、補正後群間差:11.9%ポイント[95%CI:0.6~23.2]、p=0.04)。また、尿蛋白/クレアチニン比<0.8で中間事象がなく76週時点に完全腎反応が認められた被験者は、オビヌツズマブ群がプラセボ群と比較して有意に多かった(55.5%vs.41.9%、補正後群間差:13.7%ポイント[2.0~25.4]、p=0.02)。 新たな安全性シグナルは確認されなかった。重篤な有害事象は、主として感染症およびCOVID-19関連イベントで、COVID-19関連肺炎はオビヌツズマブ群(7例)がプラセボ群(0例)と比較してより多く報告された。

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尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入【とことん極める!腎盂腎炎】第12回

尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入Teaching point(1)急性期治療のみではなく前立腺肥大や神経因性膀胱などによる複雑性尿路感染症の原因にアプローチできるようになる(2)排尿障害を来す薬剤を把握し内服調整できるようになる《症例1》72歳、男性。発熱を主訴に救急外来を受診し、急性腎盂腎炎の診断で入院となった。抗菌薬加療で経過良好、尿培養で感受性良好な大腸菌が同定されたため経口スイッチし退院の日取りを計画していた。チームカンファレンスで再発予防のアセスメントについて指導医から質問された。《症例2》66歳、男性。下腹部痛、尿意切迫感を主訴に救急外来を受診した。腹部超音波検査で膀胱内尿貯留著明であり、導尿で800mL程度の排尿を認めた。前立腺肥大による尿閉を考えバルーン留置で帰宅、泌尿器科受診の方針としていた。今回急に尿閉に至った原因がないのか追加で問診するように指導医から提案された。はじめに腎盂腎炎を繰り返す場合や男性の尿路感染症では背景疾患の検索、治療が再発予防に重要である。本項では前立腺肥大や神経因性膀胱についての対応、排尿障害を来す薬剤についてまとめる。まず、排尿障害と治療を理解するために、前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体、その作用について図に示す。排尿筋は副交感神経によるコリン刺激で収縮、尿道括約筋にはα1受容体が分布しており、α1刺激で収縮する。また、β3受容体も分布しておりβ3刺激で弛緩する。β3受容体は膀胱の平滑筋細胞にも広く分布しており、β3刺激で膀胱を弛緩させる。図 前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体画像を拡大する1.前立腺肥大男性は解剖学的に尿路感染症を起こしにくいが、60歳以上から大幅に増加し女性と頻度が変わらなくなる。これは前立腺肥大の有病率の増加が大きく影響する1)。肥大していても症状を自覚していないこともあるので注意しよう。症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアを使用し聴取する2)。薬物療法として推奨グレードA2)であるα1遮断薬、5α還元酵素阻害薬とPDE5阻害薬を処方例とともに表1で解説する。生活指導(多飲・コーヒー・アルコールを含む水分を控える、膀胱訓練・促し排尿、刺激性食物の制限、排尿障害を来す薬情提供、排便コントロール、適度な運動、長時間の坐位や下半身の冷えを避ける)も症状改善に有効である2)。2.神経因性膀胱神経因性膀胱では、上流の原因検索と排尿機能廃絶のレッテルを早期に貼らないことが大事な2点であると筆者は考える。中枢神経障害(脳血管障害、脊髄疾患、神経変性疾患など)、末梢神経障害(骨盤内手術による直接的障害、帯状疱疹などの感染症や糖尿病性ニューロパチー)で分けて考える。機能からも、蓄尿機能と排尿機能のどちらに障害を来しているのか評価するが、両者を合併することも多い。薬物治療は蓄尿障害であれば抗コリン薬などが用いられ、排尿障害であればコリン作動薬やα1受容体遮断薬が用いられる(表1)。 表1 前立腺肥大症治療薬、神経因性膀胱治療薬の特徴と処方例画像を拡大する薬剤で奏功しない場合でも、尿道バルーンカテーテル留置はQOLの低下や感染リスクを伴うことから、間欠的自己導尿が対応可能か考慮しよう。臥位では腹圧をかけにくいため排尿姿勢の確認も大切である。急性期の状態を脱し、全身状態、ADLの改善とともに排泄機能も改善するため、看護師やリハビリを含めた多職種で協力して経時的に評価を行っていくことを忘れてはならない。看護記録の「自尿なし」という記載のみで排尿機能廃絶というレッテルを貼らないようにしよう。3.薬剤による排尿障害薬剤も排尿障害の原因となり、尿閉の原因の2~10%程度といわれている6,7)。抗コリン作用のある薬剤、α刺激のある薬剤、β遮断作用のある薬剤で尿閉が生じる。プロスタグランジンも排尿筋の収縮を促すため、合成を阻害するNSAIDsも原因となる8)。カルシウム拮抗薬も排尿筋弛緩により尿閉を来す。過活動性膀胱に対して使用されるβ3作動薬のミラベグロンで排尿障害となり尿路感染症の原因となる例もしばしば経験する。急性尿閉の原因がかぜ薬であったというケースは読者のみなさんも経験があるだろう。総合感冒薬には第1世代抗ヒスタミン薬やプソイドエフェドリンが含まれるものがあり、かぜに対して安易に処方された薬剤の結果で尿閉を来してしまうのである。排尿障害の原因検索という観点と自身の処方薬で排尿障害を起こさないためにも排尿障害を起こし得る薬剤(表2)9)を知っておこう。表2 排尿障害を来す薬剤リスト画像を拡大する《症例1(その後)》担当看護師に夜の様子を確認すると夜間頻尿があり排尿のために数回目覚めていた。IPSSを評価したところ16点、前立腺体積は42mLで中等症の前立腺肥大症が疑われた。退院後外来で泌尿器科を受診し前立腺肥大症と診断、タムスロシン処方開始となり夜間頻尿は改善し尿路感染症の再発も認めなかった。《症例2(その後)》追加問診で1週間前に感冒のため市販の総合感冒薬を内服していたことが判明した。抗ヒスタミン薬が含まれており抗コリン作用による薬剤性の急性尿閉と考えられた。感冒は改善しており薬剤の中止、バルーン留置し翌日の泌尿器科を受診した。前立腺肥大症が背景にあることが判明したが、内服中止後はバルーンを抜去しても自尿が得られたとのことであった。1)Sarma AV, Wei JT. N Engl J Med. 2012;367:248-257.2)日本泌尿器科学会 編. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン リッチヒルメディカル;2017.3)Fisher E, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014:CD006744.4)National Institute for health and care excellence. Lower urinary tract symptoms in men:management. 2010.5)Tsukamoto T, et al. Int J Urol. 2009;16:745-750.6)Tesfaye S, et al. N Engl J Med. 2005;352:341-350.7)Choong S, Emberton M. BJU Int. 2000;85:186-201.8)Verhamme KM, et al. Drug Saf. 2008;31:373-388.9)Barrisford GW, Steele GS. Acute urinary retention. UpToDate.(最終閲覧日:2021年)

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第253回 米国バイオテックの遺伝子編集ブタ腎臓の2例目移植が成功

多くのニュースで取り上げられた米国のマサチューセッツ総合病院での世界初のブタ腎臓のヒトへの移植成功からおよそ1年が過ぎ、同病院で2例目のその試みが主執刀医の河合 達郎氏らの手によって先月1月25日に無事完了しました1,2)。昨春2024年3月の最初の移植も河合氏らに手によるものでした3)。移植されたのは、河合氏が勤めるマサチューセッツ総合病院があるボストンの隣のケンブリッジを拠点とするバイオテクノロジー企業eGenesis社が開発している遺伝子編集ブタ腎臓です。EGEN-2784と呼ばれるそのブタ腎臓はよりヒトに順応するようにし、感染の害が及ばないようするための69のCRISPR-Cas9遺伝子編集を経ています。具体的には、主要な3つの糖鎖抗原が省かれており、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を盛んに発現し、ブタ内在性レトロウイルスが働けないように不活性化されています。EGEN-2784はヒトへの最初の移植例となった62歳の末期腎疾患患者Rick Slayman氏の体内ですぐに機能し始め、11.8mg/dLだった血漿クレアチニン濃度が移植後6日目までに2.2mg/dLに下がりました。Slayman氏は透析が不要になるほどに回復しました4)。しかし腎機能維持にもかかわらず、Slayman氏は移植から2ヵ月ほど(52日目)で呼吸困難に陥って急逝しました。持病の糖尿病や虚血性心筋症によって生じたとされる冠動脈疾患を伴う心肥大、左室線維化、後壁梗塞が剖検で見受けられました。移植腎臓の拒絶反応や血栓性微小血管症の所見は認められませんでした。移植したブタ腎臓のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)障害に起因しうる血液量(intravascular volume)の頻繁な変動がSlayman氏の不整脈リスクを高めた可能性はありますが、同氏はどうやら重度の虚血性心筋症と関連するリズム障害で突然心臓死(SCD)したようです。Slayman氏は生きるために移植を必要とする数千もの人々が希望を持てることを願ってEGEN-2784の移植を決めました5)。Slayman氏の遺志が引き継がれることを願う同氏の家族の期待を背に、河合氏らは66歳の男性Tim Andrews氏への2例目となるEGEN-2784移植手術を先月1月25日に無事終えました。2月7日のマサチューセッツ総合病院の発表によると、移植した腎臓は見込みどおり機能しており、Andrews氏は手術の1週間後の2月1日には早くも退院して透析いらずの生活を送っています1,2)。日本での開発も進むほかでもない日本のバイオテクノロジー企業のポル・メド・テックがeGenesis社と提携しており、昨年2月にはEGEN-2784の遺伝子編集技術を利用した移植医療用のブタを日本で生産できたことが発表されています6)。その9ヵ月ほど後の11月24日には、そうして作られた遺伝子改変ブタ腎臓のサルへの移植が実施されました7)。ことはさらに進み、先週5日にポル・メド・テックは実用化に向けた取り組みのための資金5億1千万円を調達したことを発表しています。ポル・メド・テックの遺伝子改変ブタ生産力は今のところ1年間あたり50頭です。2年後には1年間に数百頭生産できるようにし、移植実施医療機関への円滑な臓器の供給を目指します8)。参考1)Massachusetts General Hospital Performs Second Groundbreaking Xenotransplant of Genetically-Edited Pig Kidney into Living Recipient / Massachusetts General Hospital 2)eGenesis Announces Second Patient Successfully Transplanted with Genetically Engineered Porcine Kidney / BUSINESS WIRE3)World’s First Genetically-Edited Pig Kidney Transplant into Living Recipient Performed at Massachusetts General Hospital / Massachusetts General Hospital 4)Kawai T, et al. N Engl J Med.2025 Feb 7. [Epub ahead of print] 5)An Update on Mr. Rick Slayman, World’s First Recipient of a Genetically-Modified Pig Kidney / Massachusetts General Hospital6)eGenesis and PorMedTec Announce Successful Production of Genetically Engineered Porcine Donors in Japan / BUSINESS WIRE7)霊長類への遺伝子改変ブタ腎臓移植試験の実施について / PorMedTec8)第三者割当増資による資金調達実施のお知らせ / PorMedTec

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CKDを伴う関節リウマチにおけるJAK阻害薬の安全性・有効性

 虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らが慢性腎臓病(CKD)を伴う関節リウマチ(RA)患者におけるJAK阻害薬の有効性・安全性を評価し、腎機能が低下した患者における薬剤継続率を明らかにした。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者については、帯状疱疹や深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考慮する必要があることも示唆した。Rheumatology誌2025年1月25日号掲載の報告。 研究者らは、2013~22年にJAK阻害薬を新規処方されたRA患者216例について、多施設共同観察研究を実施。腎機能に応じたJAK阻害薬の減量ならびに禁忌については添付文書に従い、患者を腎機能とJAK阻害薬の各薬剤で分類した。主要評価項目は24ヵ月間の薬剤継続率で、副次評価項目は関節リウマチの疾患活動性評価の指標の1つであるDAS28-CRPの変化、プレドニゾロン投与量、およびJAK阻害薬の中止理由だった。 主な結果は以下のとおり。・eGFR(mL/分/1.73m2)を60以上、30~60、30未満に分類した。・eGFR分類ごとの24ヵ月薬剤継続率は、全JAK阻害薬では46.0%、44.1%、47.1%で、トファシチニブは55.9%、53.3%、66.7%だった。また、バリシチニブ*は64.2%、42.0%で、ペフィシチニブは36.4%、44.1%、40.0%であった。・腎機能が低下したグループでも、薬剤継続率は維持された(調整ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.81~1.62、p=0.45)。・JAK阻害薬開始後6ヵ月で、患者のDAS28-CRPは低下し、プレドニゾロンの投与量も減少した。・帯状疱疹とDVTの発生率はeGFR30未満のグループで高かったものの、統計学的に有意ではなかった。・eGFR30未満は、JAK阻害薬の無効または感染による中止の危険因子ではなかった。*バリシチニブはeGFR30未満への投与は禁忌 同グループは2024年に生物学的製剤についてもCKD合併RA患者に対する安全性・有効性を報告している1)。今回のJAK阻害薬の報告とあわせて、メトトレキサートや非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限されるCKD合併RA患者に対して、生物学的製剤、JAK阻害薬いずれもの安全性・有効性を示したことになる。

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線形回帰(重回帰)分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第51回

直線回帰一方の連続変数x(説明変数)が大きくなると、他方の連続変数y(目的変数)が直線的に増加する、もしくは減少するような関係を直線回帰(linear regression)といいます。すなわち、説明変数xと目的変数yの関係がy=a+bx の式で表されます。これは中学校の数学で勉強する1次方程式です。bは回帰直線の傾き(回帰係数)で、xの値が1増加すると、yがどの程度増加するかを表しています。aは切片でxが0の時のyの値であり、回帰直線がy軸と交差する点のyの値に相当します。この式を用いてデータに最もよく合う1次方程式を求める、言い換えると、最も適当なa、bの値を決める、ということを考えます。前回、「2つの連続変数間の直線的な関係」を表す散布図を描き、最小二乗法を用いた回帰直線を描く手順を示しました(連載第50回参照)。今回は、前回描いた回帰直線の切片aと回帰係数bの求め方と結果の解釈について解説します。まず、以下の手順で仮想データ・セットをEZR(Eazy R)に取り込みます。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」次に「統計解析」→「連続変数の解析」→「線形回帰(単回帰、重回帰)」を選択、ポップアップウィンドウ(下図)のとおり、目的変数は「diff_eGFR5」を、説明変数は「age」を指定します。※「diff_eGFR5」は、われわれのResearch Question(RQ)のセカンダリO(アウトカム)に設定されている、ベースラインから5年後の糸球体濾過量(GFR)変化量「OK」をクリックすると。EZRの出力ウィンドウに下図の結果が表示されます。画像を拡大する“Intercept”は切片であり、y=a+bxにおける“a”の値です。“Intercept”の推定値は-12.6(以下、可読性を高めるために数値はすべて有効数字3桁で丸めます)とありますが、これは説明変数xが0の場合の目的変数yの推定値です。説明変数「age」の目的変数「diff_eGFR5」に対する回帰係数推定値は-0.038と表されています。これは説明変数「age」が1単位(1歳)増加した時の目的変数「diff_eGFR5」の変化量を示しており、回帰係数が負の値であるので、説明変数と目的変数は負の相関関係にあることを意味します。95%信頼区間(95%confidence interval:95%CI)の上限〜下限は-0.007〜-0.069で0をまたいでいません。またp値は1.57e-02と表記されています。この表記法は科学的記数法と呼ばれるもので、"e-02"は10の-2乗(0.01)を表しており、1.57×0.01=0.0157となり有意水準0.05を下回っています。ここのp値は回帰係数が0であるという帰無仮説が棄却される確率です(連載第44回参照)。p値が0.05未満であるので、説明変数「age」は目的変数「diff_eGFR5」に対して統計学的に有意な影響を与えていると判断されます。結果の解釈をまとめると下記のようになります。切片:-12.6⇒年齢が0の場合のベースラインから5年後の糸球体濾過量(GFR)変化量「diff_eGFR5」の推定値です。回帰係数:-0.038⇒年齢が1歳増加すると、「diff_eGFR5」は-0.038減少すると推定されます(p<0.05)。

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パニック値でとくに注意すべき血液検査の項目とは?死亡事例の分析と提言~医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、血液検査パニック値が関与していた死亡事例の分析を実施し、事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第20号)を公表した(2024年12月)1)。パニック値とは「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」とされ、緊急異常値や緊急報告検査値などとも呼ばれる。今回、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた12事例が分析対象とされ、分析を基に5つの提言が示された。血液検査パニック値、カリウムなど優先して設定すべき5項目 今回の提言では、医療事故調査・支援センターに届けられた医療事故報告(2015年10月~2023年8月)のうち院内調査結果報告書2,432件の中から、死亡に至った過程で血液検査パニック値が関与していた17例を抽出。パニック値は検査項目や閾値が医療機関により異なるため、今回の分析では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)で示された“パニック値の例”(今回の提言書では資料1として掲載、32の検査項目のパニック値の例が示されている)に該当した9例と、医療機関内で設定されていたパニック値に該当していた事例3例の計12例を対象としている。その他の5例は化学療法前の検査値に関連した2例と、パニック値の項目として取り扱うか議論があるDダイマーに関連する3例で、今回の分析では参考事例とされている。 12例中、カリウム(K)がパニック値として検出された事例は5例あり、4例で致死的な不整脈の出現を認めた。また、プロトロンビン時間-国際標準比(PT-INR)がパニック値であった事例は2例あり、脳出血に至っていた。 5つの提言は以下の通り。提言1(パニック値の項目と閾値の設定):医療機関は、診療状況に応じてパニック値の項目(グルコース[Glu]、K、ヘモグロビン[Hb]、血小板[Plt]、PT-INRなど)と閾値を検討し、設定する。※今回の提言書では、日本臨床検査医学会『臨床検査「パニック値」運用に関する提言書(2024年改定版)』2)からパニック値の例を示しており、上記とくに優先して設定することが望ましいとした5項目については、以下の数値が例示されている。Glu:低値50mg/dL、高値350mg/dL(外来)・500mg/dL(入院)K:低値1.5mmol/L、高値7.0mmol/LHb:低値5g/dL、高値20g/dLPlt:低値3万/μL、高値100万/μLINR:高値2.0(ワルファリン治療時は4.0)提言2(パニック値の報告):パニック値は、臨床検査技師から検査をオーダーした医師へ直接報告することを原則とする。また、臨床検査部門は報告漏れを防ぐため報告したことの履歴を残す。提言3(パニック値への対応):パニック値を報告された医師は、速やかにパニック値への対応を行い、記録する。また、医師がパニック値へ対応したことを組織として確認する方策を検討することが望まれる。提言4(パニック値の表示):パニック値の見落としを防ぐため、臨床検査情報システム・電子カルテ・検査結果報告書において、一目で「パニック値」であることがわかる表示を検討する。提言5(パニック値に関する院内の体制整備):パニック値に関する院内の運用を検討する担当者や担当部署の役割を明確にし、定期的に運用ルールを評価する体制を整備する。さらに、決定した運用ルールを院内で周知する。 提言書では、各事例の概要やパニック値検出時の対応フローのほか、Dダイマーをパニック値項目として扱う際の課題などについてもまとめられている。

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「別れた後が地獄」職場内恋愛経験者は約半数!/医師1,000人アンケート

 医師は、結婚したい職業ランキングで上位の常連となっている。では、医師の結婚・恋愛事情は、どのようになっているのだろうか。CareNet.comでは、20~40代の医師1,003人を対象に、結婚・恋愛事情に関するアンケートを実施した(2024年12月25~31日実施)。本アンケートでは、パートナーの有無や出会いのきっかけ・取り組み、パートナーの方の職業、職場内恋愛の経験について聞いた。また、職場内恋愛のエピソードも募集した。特定のパートナーがいる割合は約85% 「配偶者を含む特定のパートナー(結婚/恋愛)の有無」を聞いたところ、「いる」と回答した割合は全体で84.7%であり、男性87.5%、女性73.6%であった。年代別にみると、20代68.3%、30代83.9%、40代90.1%であり、年代が上がるほど「いる」と回答した割合が高い傾向にあった。出会いのきっかけは職場や学校が多い 次に「パートナーとの出会いのきっかけ」を聞いた。その結果「職場の同僚」が最も多く、34.7%であった。次点で「学校(大学・高校)」が多く20.9%であった。「マッチングアプリ・婚活サイト」の割合は6.9%であり、20代では20.2%にのぼった。少数ながら「患者」という回答も得られた(0.2%)。 「パートナーの職業(交際当初)」については、約70%を医療者が占めた。内訳は「看護師」が27.3%、「医師」が26.2%、「薬剤師」が4.1%、「その他の医療者」が11.9%であった。男性では「看護師」が多く(33.1%)、女性では「医師」が多かった(52.7%)。 特定のパートナーはいないと回答した方の「パートナー探しの取り組み」について聞いたところ、約半数(46.5%)が「パートナーは求めていない」と回答した。パートナー探しの取り組みとして多かったものは「友人・知人に紹介を求める」「合コン・イベント・飲み会へ参加する」「マッチングアプリ・婚活サイトを利用する」であった。職場内恋愛経験者は約半数 また、「職場内恋愛の経験」についても聞いた。その結果、「ある」と回答した割合は47.8%にのぼった。男性50.1%、女性38.3%であり、男性のほうが職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。年代別にみると、20代29.3%、30代45.0%、40代55.6%であり、年代が上がるほど職場内恋愛経験者が多い傾向にあった。 「職場内恋愛のエピソード(自身の経験以外でも可)」を募集したところ、「職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる」といったポジティブなコメントも得られたが、「別れた後が地獄」などの職場内恋愛の難しさ・気まずさに関するコメントも得られた。そのほか、「看護師長に出禁を食らっていた」「医師がモテるというのは幻想」など、さまざまなコメントが寄せられた。【ポジティブな意見・エピソード】・仕事内容(忙しいこと)を理解してくれて助かる(40代男性、放射線科)・職業への理解があるし当直の大変さなども共有できる(20代女性、臨床研修医)・看護師である妻と同じ寮に住んでおり、インフルエンザに罹患したときにいろいろと世話をしてくれて恋に落ちた(30代男性、腫瘍科)【バレる/バレない】・秘密にしてたのに、コロナで濃厚接触者になりバレてしまった(30代男性、精神科)・研修医の頃、同期の研修医がこっそりと病棟看護師さんと付き合っていたが、周りには全員知れ渡っていた。院内でのゴシップは隠せないことを研修医のころに学んだ(30代男性、泌尿器科)・結婚するまでばれなかった(30代男性、血液内科)・指導が厳しいことで有名な先生が特定の研修医にのみ優しい、当直によく一緒に入っているなど噂があり、「あの先生に限って」とみんな笑っていたが、臨床研修終了後に入籍していて驚いた(40代女性、内科)【職場内恋愛の難しさ・気まずさ】・お互いのシフトを完全に把握しているため、閉塞感・圧迫感がすごかった。不安になることも多々あった(20代男性、腎臓内科)・部内恋愛をしたことがあるが、別れた後が地獄だったので二度としないと誓った(20代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)・医局内で付き合ってる人が、ケンカや別れた時に正直、周りの人は空気が悪く、迷惑だと思う(40代女性、整形外科)・自分の周囲だと離婚率が高いので、その後が地獄。大抵は女性側が離れていくが、男性側も居心地は当然悪くなる(40代女性、内科)・同期の職員が付き合っていたが、別れた後の気まずさで片方は退職してしまった(30代男性、血液内科)【医師と看護師の関係】・看護師さんを一生懸命口説き落とした人がいる(30代男性、血液内科)・看護師さんから積極的に誘われる(30代男性、精神科)・看護師と医師で付き合っている人は多かった(30代男性、糖尿病・代謝・内分泌科)【不倫】・不倫バレ、職場追放の話を複数聞いて、自分では絶対しないと心に誓った(40代男性、総合診療科)・不倫している医師と看護師が忘年会で喧嘩を始め、なかなかの修羅場であった(40代男性、放射線科)・結婚しているにもかかわらず、いろんな若い女医さんに手を出している医師がいた。最終的には奥さんにばれて慰謝料を請求されたうえで離婚していた(30代女性、呼吸器内科)【交際や出会いのきっかけ】・行きつけの居酒屋が一緒で仲良くなり結婚した(30代男性、形成外科)・当直と夜勤が被ったのがきっかけ(40代男性、小児科)・院長の紹介(40代男性、耳鼻咽喉科)・研修医の同期同士で結婚した(40代男性、麻酔科)・受付のお姉さんに手を出してそのまま結婚した人がいた(30代女性、放射線科)・病院見学に来た学生と研修医が交際し、結婚(30代男性、放射線科)・医師同士での結婚は学生時代から付き合っていたパターンが多い(30代女性、精神科)・真面目に働いていると職場以外で出会う機会がない(40代男性、小児科)【その他のエピソード】・今まで朝早く来ていた人が来なくなって、気が付いたら看護師さんと2人でゆっくり出てくるようになって、当直も同じ日に合わせていた。その後、別の病院に同時に異動したがすぐに別れた(30代男性、呼吸器外科)・自分と別れた恋人が、1年後に後輩から届いた年賀状で結婚していて、驚いたと同時に複雑な感情となった(40代男性、精神科)・後輩女性医師は出入りしている担当MRと結婚し、夫は主夫となり、妻は専門医を取った(40代女性、外科)・同級生に各フロアに友達を作っていた猛者がいたが、看護師長に出禁を食らっていた(40代男性、呼吸器内科)・何もなさすぎて残念ながら書くことがない。巷で言われるような医師がモテるというのは幻想(20代男性、放射線科)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。https://www.carenet.com/enquete/drsvoice/cg005085_index.html

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MASLD患者の転帰、発症リスクに性差

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は世界的に増加傾向にあり、好ましくない肝臓や肝臓以外における転帰の主な原因となっている。米国のMASLD患者のデータを使用し、性別と肝臓および肝臓以外の転帰との関連性を調査した、米国・スタンフォード大学医療センターのTaotao Yan氏らによる研究がJAMA Network Open誌2024年12月4日号に掲載された。 研究者らは2007~22年のMerative MarketScanデータベースからMASLDの成人患者を特定し、傾向スコアマッチングを使用して男性/女性群のベースライン特性のバランスを取った。肝臓関連の転帰(肝硬変、肝代償不全、肝細胞がん[HCC])と肝臓以外の転帰(心血管系疾患[CVD]、慢性腎臓病[CKD]、肝臓以外の性別に関係ないがん)の発生率を推定し、性別ごとに比較した。 主な結果は以下のとおり。・MASLD患者76万1,403例のうち、ベースライン特性がマッチした男女34万4,436組が分析に含まれた。平均年齢(52.7歳/53.0歳)のほか、糖尿病や高血圧などの既往症、服薬状況などは2群間でバランスが取れていた。・女性は男性と比較して、1,000人年当たりのあらゆる肝臓関連の転帰(12.72対11.53)および肝硬変(12.68対11.55)の発生率が有意に高かった。・一方、男性は肝代償不全(10.40対9.37、ハザード比[HR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.08~1.14)、HCC(1.88対0.73、HR:2.59、95%CI:2.39~2.80)、CVD(17.89対12.89、HR:1.40、95%CI:1.37~1.43)、CKD(16.61対14.42、HR:1.16、95%CI:1.13~1.18)、および性別に関係のないがん(6.68対5.06、HR:1.32、95%CI:1.27~1.37)の発生率が高かった。 著者らは「これは性別とMASLDの好ましくない臨床転帰との関連性を調べるために設計された最大のコホート研究だ。女性のほうが肝硬変の発症率とリスクが高いことがわかったが、これはMASLDが米国の女性における肝移植の主な適応であるという観察結果と一致している。既存の研究結果と同様に、本研究でも、男性のMASLD患者はHCCリスク増との有意な関連性がわかった。さらに、男性のMASLD患者は女性よりもCVDと性別に関係のないがんのリスクが高いことで、一般集団では男性が女性よりもCVDとがんリスクが高いという既存の知識を裏付けた。私たちの研究は、MASLD患者の肝臓および肝臓以外の臨床転帰のリスクに有意な性差があるという証拠を提供し、性別に基づいたMASLD予防、モニタリング、および治療管理戦略の方針を支援するものである」とまとめた。

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透析中の骨粗鬆症患者へのデノスマブは心血管イベントリスクを上げる可能性/京都大

 透析患者の骨粗鬆症の治療では、腎排泄に頼らないデノスマブが使用されている。しかし、その有効性、安全性を他の骨粗鬆症治療薬と比較した大規模研究はこれまでなかった。そこで、桝田 崇一郎氏(京都大学大学院医学研究科薬剤疫学分野)らの研究グループは、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブは、ビスホスホネートと比較し、骨折リスクを低減させる一方で、心血管イベントのリスクを増加させる可能性があることを、電子レセプトデータを用いたコホート研究により明らかにした。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2025年1月7日オンライン版に掲載された。1,032例でデノスマブと経口ビスホスホネートの効果を比較 研究グループは、DeSCヘルスケアが保有する電子レセプトデータを利用し、標的試験エミュレーションの枠組みのもと、透析患者の骨粗鬆症に対するデノスマブと経口ビスホスホネートの有効性と安全性を比較するコホート研究を実施した。 対象は50歳以上の透析患者で、骨粗鬆症の診断を受け、2015年4月~2021年10月までの間にデノスマブもしくは経口ビスホスホネートを新規に開始した患者。主要評価項目は、薬剤使用開始から3年間の骨折と主要心血管イベント(MACE)の発生リスク。 主な結果は以下のとおり。・患者は合計で1,032例が同定された(デノスマブ群658例、経口ビスホスホネート群374例)。・全体の平均年齢は74.5歳で、62.9%が女性だった。・MACEの3年間の発生率はデノスマブ群のほうが高く、リスク差は8.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~16.7)、リスク比は1.36(95%CI:0.99~1.87)だった。・複合骨折の3年間の発生率はデノスマブ群のほうが低く、リスク差は-5.3%(95%CI:-11.3~-0.6)、加重3年リスク比は0.55(95%CI:0.28~0.93)だった。 この結果を受け研究グループは、腎臓または骨粗鬆症の重症度、心血管またはその他の代謝リスクに関する臨床データが不足し、交絡が残存していたこと、安全性アウトカムには腎臓のエンドポイントが含まれていなかったことを研究の限界として指摘し、「経口ビスホスホネートと比較し、デノスマブは骨折リスクを45%低下させ、MACEリスクを36%上昇させると推定された。しかし、この推定値は不正確であり、今後も研究が必要である」と述べている。

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若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?【とことん極める!腎盂腎炎】第11回

若い女性への再発予防の指導方法について 実際どう指導していますか?Teaching pointリスク因子を評価し適切な再発予防指導(飲水励行や排泄後の清拭など)までできるようになるはじめに女性は解剖学的に尿路感染症を起こしやすく、約3人に1人は24歳までに尿路感染症を少なくとも1回は経験する1)。尿路感染の既往をもつ女性のうち30〜44%が再発し、0.3〜7.6回/年生じるという報告もあり、生活の質(QOL)にかかわる重要な問題である2)。再発防止は本人のQOL維持、繰り返す抗菌薬曝露による耐性菌発生の予防の観点からも重要である。若い女性への尿路感染症の再発予防の生活指導方法について紹介する。1.若い女性の再発性尿路感染症のリスク因子閉経前の女性のリスク因子として、(1)性的活動の活発であること、(2)殺精子剤の使用、(3)新たな(1年以内の)性的パートナー、(4)尿路感染症の既往のある母親、(5)小児尿路感染症の既往がある。しかし、遺伝的な素因よりも性交や殺精子剤のリスクのほうが大きいとされ、行動への介入は予防可能なリスクとなる3)。2.再発予防への日常生活への指導防御機構とリスク因子を踏まえ予防的な介入を考えていく。本項では介入として日常生活への指導をまとめる(薬剤、サプリメントによる予防は第13回で紹介する)。日常生活への指導の有効性を裏づけるエビデンスは限られるが、介入によるリスクの低さから薬物などによる介入前に実践することが推奨されている。飲水量の増加は単施設であるがRCTで有効性が示されている4)。水分摂取量が少ない(1.5L/日未満)、再発性膀胱炎(3回以上繰り返す)を来たした成人女性において通常量の飲水に加えて、1.5L/日の追加飲水の介入を行ったところ非介入群と比較して、膀胱炎の発症が1年あたり1.5回減少した(1.7回[95%信頼区間[CI]:1.5~1.8]vs. 3.2回[95%CI:3.0~3.4])。筆者はさらに飲水行動について詳しく問診するようにしている。飲水量が少なかった場合、「なぜ飲水量が少ないか」を聞くとさらに背景に迫れることがある。気軽に排泄に行きづらい職場環境(例:コンビニ店員でトイレに行くタイミングがないなど)が背景にあり飲水を控えているというケースも経験する。その場合は、職場環境改善への働きかけなどに協力してあげることも大切となる。また、性交や殺精子剤は尿路感染症のリスク因子であり、性交を減らすことや殺精子剤を含む避妊具を避けることを、本人やパートナーとカウンセリングを行うこともリスクを減らすと期待される。その他、明確な関連は示されていない個別での相談や効果を評価する指導内容も含め表にまとめた4,5)。小児期から繰り返している場合や腎結石、尿路閉塞、間質性膀胱炎、尿路上皮がんが疑われるような場合は泌尿器科受診を勧めることも忘れてはならない。表 若年女性の単純性尿路感染症の再発を予防するための日常生活への指導画像を拡大する再発性の膀胱炎の最終手段として抗菌薬投与が選択されることもあるが、耐性菌のリスクの観点からも導入しやすい日常生活への指導からしっかりと介入していくことは大切である。生活へのアプローチは一人ひとりの事情もあるので、本人の生活について丁寧に聴取し生活に合わせた指導内容を一緒に考えていくことはプライマリ・ケア医の重要な役割である。1)Foxman B. Dis Mon. 2003;49:53-70.2)Gupta K, Trautner BW. BMJ 2013;346:f3140.3)Hooton TM, et al. N Engl J Med 1996;335:468-474.4)Hooton TM, et al. JAMA Intern Med 2018;178:1509-1515.5)Hooton TM. N Engl J Med 2012;366:1028-1037.

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16歳超55歳未満の男性は入院中にAKIリスクが上昇

 16歳超55歳未満の男児および男性は、入院中に急性腎障害(AKI)を発症するリスクが高いという研究結果が、「American Journal of Kidney Disease(AJKD)」に10月22日掲載された。 米イェール大学医学部のLadan Golestaneh氏らは、女性ホルモンが腎臓病の予防に効果があると示唆されていることに注目し、ライフサイクル上のホルモン的に異なる年齢層別に、性別とAKI発症率の関連の強さを検討する前向きコホート研究を実施した。2015年10月15日から2019年1月1日の間にモンテフィオーレ医療システム傘下の病院に入院した全患者から、腎不全または産科の診断を受けた患者を除外したデータが含まれた。 全体では、13万2,667人が23万5,629回の入院を経験した(総入院回数のうち女性が55%)。解析の結果、入院患者のうち黒人は30.5%、ヒスパニック系は10.3%であった。全体では、入院の22.9%でAKIが発生した。調整モデルでは、年齢と性別との間に有意な相互作用が見られた。全年齢層において、男児と男性のAKIリスクは高く、その関連性は16歳超55歳未満の年齢層でより顕著であり、この年齢の男性のオッズ比は1.7であった。事前に設定された入院の種類にかかわらず、年齢に基づくパターンは一貫していた。感度分析の結果、エストロゲンを処方された55歳以上の女性は、処方されていない女性よりもAKIのオッズが低いことが分かった。 Golestaneh氏は、「私たちの研究では、女性ホルモンによる保護効果が最も高いのは月経中の女性であり、思春期前の女性には見られず、閉経期の開始とともに低下することが示されている」と述べている。 なお複数人の著者が、Axon Therapies社、Horizon Therapeutics社、アストラゼネカ社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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豚由来の腎臓で健康に暮らす米国人女性

 遺伝子編集された豚からの腎臓移植を受けて、新たな人生を歩み始めた米国人の女性が、新しい臓器とともに1カ月以上健康に暮らしていることが報告された。 この女性はアラバマ州在住のTowana Looneyさん、53歳。Looneyさん自身の腎臓が後に腎不全まで進行する過程は、彼女の母親への“贈り物”から始まった。1999年、彼女は病気の母親のために、自分の腎臓の一つを提供したのだ。彼女の移植治療を行った米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン校の医師によると、Looneyさんはその後の妊娠時に血圧が急に高くなり、残っていた腎臓も機能不全に陥ったという。 2016年後半に、Looneyさんは透析療法を受ける必要が生じ、数カ月後には腎臓移植待機リストに名前が加えられた。しかし彼女の場合、免疫によってドナーの臓器に対する拒絶反応が強く現れる可能性が高いと予測されたために、より適した臓器が提供される機会を長く待たなければならなかった。 残された時間は少なくなっていった。なぜなら、透析療法開始後の8年間で、透析に利用可能な重要な血管が、徐々に失われていったからだ。最終的に米食品医薬品局(FDA)の「拡大アクセスプログラム」により、彼女に対する治療として、豚の腎臓を移植するという「異種移植」が許可された。FDAの拡大アクセスプログラムは、ほかに治療法がない重篤な患者に対して、いまだ実験的な段階にある治療を行おうとする際に、人道的な理由で特別にこれを許可するもの。 Looneyさんに移植された豚の腎臓には、ヒトへの移植に適したものにするために、10カ所の遺伝子編集が行われた。このような異種移植はまだ始まったばかりの治療法だが、医師らによると、移植から1カ月が経過した現在、Looneyさんの健康状態は良好だという。「これは本当にありがたいことだ。もう一度、人生のチャンスを与えられたように感じる。また旅行をして、家族や孫たちとともに、今まで以上に充実した時間を過ごせるようになることを待ちきれない」と彼女は語っている。 Looneyさんのケースは、遺伝子編集された豚の腎臓がヒトに移植された世界で3番目のケースであり、豚の臓器を移植され現在も生存している唯一のケースでもある。彼女はまた、10カ所の遺伝子編集が施された豚の腎臓を移植され、その臓器が人間の体内で正常に機能している唯一の人物でもある。 困難な移植手術を指揮したNYUランゴン校のRobert Montgomery氏は、「Looneyさんは、われわれが2021年に最初に異種移植の手術を行って以来、積み上げてきた進歩の集大成だ。彼女は腎不全に苦しむ人々にとって希望の光である。治療に関わった全ての医師、研究者、看護師、管理者、周術期ケアチームは、この成果にとても興奮している。Looneyさんの命を支えるために彼らが行ってきたことを、私はこの上なく誇りに感じている」と話している。 Looneyさんの腎臓移植を受けるまでの道のりは、彼女の故郷であるアラバマ州から始まった。彼女は当時、アラバマ大学バーミンガム校に勤務していた先進的な移植外科医、Jayme Locke氏の治療を受けることになった。彼女にFDAの拡大アクセスプログラムが適用されるように働きかけたのもLocke氏だ。そして同氏の研究により、遺伝子編集された豚の臓器が実際にLooneyさんの体内で適切に機能することが確認され、プログラム申請が承認されることになった。Montgomery氏はLocke氏の指導的立場にあり、2人のパートナーシップがこのプロセスの推進に役立った。 NYUランゴンヘルスのニュースリリースによると、現在、全米で約10万4,000人が臓器移植の待機リストに登録されており、そのうち9万400人以上は腎臓の移植を待っているという。多くの腎不全患者にとって、状況は明るいものとは言えない。現在、米国には80万8,000人以上の腎不全患者がいるが、2023年に新しい腎臓を移植されたのは、わずか2万7,000人だった。

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CKDを有する高血圧患者にも厳格降圧は有益?

 SPRINT試験で認められた厳格降圧(収縮期血圧目標:120mmHg未満)および標準降圧(同:140mmHg未満)のリスク・ベネフィットが、慢性腎臓病(CKD)を有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用できるかどうかを調査した結果、SPRINT試験と同様に厳格降圧による予後改善効果は認められたものの、重篤な有害事象も多かったことを、米国・スタンフォード大学のManjula Kurella Tamura氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年1月7日号掲載の報告。 SPRINT試験において、糖尿病または脳卒中の既往がなく、心血管イベントリスクが高い高血圧患者では、厳格降圧のほうが標準降圧よりも死亡や心血管イベントなどのリスクが低減した。その一方で、急性腎障害などの特定の有害事象が増加したことや、進行したCKD患者では厳格降圧による心血管系へのメリットが減弱する可能性があることも示唆されている。そこで研究グループは、SPRINT試験の結果が、実臨床におけるCKDを有する高血圧患者にも適用可能かどうかを評価するために試験を実施した。 2019年1月1日~12月31日に米国退役軍人保健局(VHA)とカイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院(KPSC)の電子健康記録データベースから、CKDを有し、かつSPRINT試験の適格基準を満たす高血圧患者を抽出して、SPRINT試験のベースラインの共変量データ、治療データおよびアウトカムデータと、VHAとKPSC集団の共変量データを組み合わせ、治療効果を推定した。分析は2023年5月~2024年10月に実施された。主なアウトカムは、4年時点での主要な心血管イベント、全死因死亡、認知障害、CKD進行、有害事象などであった。 主な結果は以下のとおり。・VHAからは8万5,938例(平均年齢:75.7[SD 10.0]歳、男性:95.0%)、KPSCからは1万3,983例(77.4[9.6]歳、38.4%)が抽出された。SPRINT試験の参加者9,361例(67.9[9.4]歳、64.4%)と比較すると、年齢が高く、心血管疾患の有病率が低く、アルブミン尿を有する割合が高く、スタチンの使用量が多かった。・厳格降圧および標準降圧と主要な心血管イベント、全死因死亡、有害事象との関連は、SPRINT試験からVHAおよびKPSC集団の両方に適用可能であった。・厳格降圧群は、標準降圧群と比較して、4年時点での主要な心血管イベントの絶対リスクがVHA集団で5.1%、KPSC集団で3.0%低かった。・全死因死亡の絶対リスクは、厳格降圧群のほうがVHA集団で2.8%、KPSC集団で2.3%低かった。・重篤な有害事象のリスクは、厳格降圧群のほうがVHA集団で1.3%、KPSC集団で3.1%高かった。・VHA集団においてのみ厳格降圧による腎臓関連アウトカムとeGFRの50%超低下のリスク低減が認められたが、信頼区間が広く、メリットがない可能性も考えられた。 これらの結果より、研究グループは「SPRINT試験で観察された厳格降圧および標準降圧のリスク・ベネフィットは、臨床におけるCKDを有するSPRINT試験適格の高血圧患者にも適用可能であった。厳格降圧を実施する利点が示されたものの、有害事象のリスクは増大したことから、高血圧治療の決定では患者の希望を考慮することの重要性が強調された」とまとめた。

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慢性疾患の増加は腎機能を低下させる

 高齢者における多疾患併存は腎機能低下と強く関連しており、慢性疾患の数が増えるほど腎機能の低下度も大きくなることが、新たな研究で明らかになった。研究論文の筆頭著者であるカロリンスカ研究所(スウェーデン)のGiorgi Beridze氏は、「われわれの研究結果は、高齢者の腎機能低下のリスクを評価する際に、慢性疾患の全体的な負担だけでなく、疾患間の複雑な相互作用も考慮した包括的な評価の重要性を強調するものだ」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the American Geriatrics Society(JAGS)」に12月17日掲載された。 この研究でBeridze氏らは、老化研究(Swedish National study on Aging and Care in Kungsholmen;SNAC-K)の一環として、スウェーデンの高齢者3,094人(平均年齢73.9歳)の健康状態を15年間にわたって追跡調査した。多疾患併存として慢性疾患の数を調査してそのパターンを特定し、経時的な推算糸球体濾過量(eGFR)の絶対的変化および相対的変化(ベースラインからの25%以上の低下)との関連を検討した。対象者の87%が多疾患併存に該当した。 解析の結果、慢性疾患の数とeGFRの絶対的な低下および相対的な低下との間には独立した容量依存関係が認められることが明らかになった。具体的には、慢性疾患が1つ増えるごとに、eGFRは年平均0.05mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクは23%増加すると推定された。 多疾患併存には、「非特異的な低負荷パターン」「非特異的な高負荷パターン」「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」「精神疾患や呼吸器疾患を特徴とするパターン」「心代謝性疾患を特徴とするパターン」の5つが特定された。「非特異的な低負荷パターン」を基準として、それぞれのパターンとeGFRとの関連を解析した結果、「非特異的な高負荷パターン」および「心代謝性疾患を特徴とするパターン」は、eGFRの絶対的および相対的な低下と有意に関連することが示された。具体的には、「非特異的な高負荷パターン」では、慢性疾患が1つ増えるごとにeGFRは年平均0.15mL/分/1.73m2低下し、ベースラインからeGFRが25%以上低下するリスクが45%増加すると推定された。また、「心代謝性疾患を特徴とするパターン」では、eGFRは年平均0.77mL/分/1.73m2低下し、25%以上低下するリスクは245%増加すると推定された。さらに、「認知機能障害や感覚障害を特徴とするパターン」では、eGFRが25%以上低下するリスクが53%増加することも推定された。 研究グループは、「高血圧や心疾患などの慢性疾患は糖尿病と関連しているため、あるいは臓器にダメージを与える炎症を引き起こすため、腎臓にダメージを与える可能性がある」との見方を示している。そして、「加齢に伴うこのような疾患パターンを追跡し、慢性疾患を管理することが、腎臓の健康を維持するのに役立つ可能性がある」と結論付けている。 Beridze氏は、「高齢者で、高リスクの多疾患併存パターンに該当する患者には、腎機能のモニタリングを強化し、健康的なライフスタイルを推進し、タイムリーな薬理学的介入を行うことで患者にベネフィットがもたらされる可能性がある」と話している。

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高ナトリウム血症の治療【日常診療アップグレード】第21回

高ナトリウム血症の治療問題82歳男性。頻回の下痢による高ナトリウム血症のため、3日前に入院となった。生理食塩水を3L点滴した。意識混濁があり、経口で水分を摂取することはできない。今日の血圧は132/76mmHg、脈拍は82/分である。他のバイタルサインには異常はない。血液検査所見はNa 157mEq/L、K 3.3mEq/Lである。胃管を挿入して水分を補給した。

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