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強化スタチン治療中患者に対するナイアシン併用の付加効果は?:AIM-HIGH

アテローム硬化性心血管疾患を有するLDLコレステロール値が70mg/dL未満の患者に対して、スタチン治療に加えてナイアシンを併用投与した結果、HDLコレステロール値とトリグリセリド値は有意に改善されたが、臨床的ベネフィットの増加は認められなかったことが明らかにされた。心血管疾患を有する患者は、スタチン療法でLDL目標値が達成されても心血管リスクは残存する。一方で、シンバスタチンと拡張徐放性ナイアシン併用との検討で、シンバスタチン単独よりも併用投与のほうがHDL値を上げるのに優れることは知られるが、そのような残存リスク低減に優れるかどうかは明らかになっていなかった。報告は、米国・バッファロー大学のWilliam E. Boden氏ら「AIM-HIGH」試験グループの検討によるもので、NEJM誌2011年12月15日号(オンライン版2011年11月15日)にて掲載された。3,414例を対象にプラセボ対照無作為化試験 AIM-HIGH試験は、被験者3,414例を、徐放性ナイアシン1,500~2,000mg/日投与群(1,718例)、またはプラセボ投与群(1,696例)に無作為に割り付け行われた。被験者全員、LDL値40~80mg/dLを維持するため、必要に応じてシンバスタチン40~80mg/日と、エゼチミブ(10mg/日)を投与された。主要エンドポイントは、冠動脈疾患による死亡・非致死的心筋梗塞・脳梗塞・急性冠症候群による入院・症状に応じた冠動脈または脳の血行再建の複合の初発イベントとした。HDL値、TG値は有意に改善したが本治験は平均追跡期間3年を経た時点で、有効性に欠けるとして中止された。解析の結果、2年時点で、ナイアシン治療によってHDL値は中央値35mg/dLから42mg/dLまで有意に上昇し、トリグリセリド値は164mgから122mg/dLまで低下し、LDL値は74mg/dLから62mg/dLまで低下した。一方で、主要エンドポイントの発生は、ナイアシン群で282例(16.4%)、プラセボ群で274例(16.2%)で発生し、ハザード比は1.02(95%信頼区間:0.87~1.21)で有意差は認められなかった(P=0.79)。(朝田哲明:医療ライター)

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動脈硬化性疾患の主な症状と危険因子は? 家族の「動脈硬化」に関する意識調査より

ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーは12月27日、全国の20代から50代の男女800名を対象に行った「動脈硬化に関する意識」調査を2011年12月上旬に実施し、調査結果を発表した。調査は、国内に居住する男女800名(20~50代、各セグメント100名)を対象に、インターネット上で行われた。同社はこの調査結果から、動脈硬化についての認知度や理解度、また、家族の健康への関心度についてをまとめた。概要は以下の通り。狭心症や心筋梗塞などの動脈硬化性の心臓病がある場合、その他の血管にも動脈硬化が起こっている可能性があることを知っていると回答した人は約5割(55.4%)であった。また、全身の動脈硬化が重症化した場合の主な症状について調査したところ、サンプルにあげた「心筋梗塞」「脳梗塞」「足切断」「失明」「腎不全」「麻痺」「言語障害」に対する認知度は、「心筋梗塞」が92%と最も高く、続いて「脳梗塞」91%、「言語障害」65.6%となり、最も低い「足切断」でも42.9%の人が知っていると回答した。その一方で、代表的な動脈硬化性疾患について、その症状などについて調査したところ、どの疾患についても約8割が知らないと回答した。また、家族の動脈硬化性疾患の危険因子について調査したところ、父母、祖父母ともにあてはまるリスクの1位に「高血圧」が、3位に「糖尿病」があげられた。あてはまるリスクの2位は、父・祖父では「喫煙習慣があること」で、母では「肥満」であった。さらに祖母においては「過去に狭心症・心筋梗塞や脳卒中を起こしたこと」が2位となり、これは父母・祖父にあてはまるリスクの4位にもあがっていた。詳細はプレスリリースへhttp://www.jnj.co.jp/jjmkk/press/2011/1227/index.html

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心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。18,201例を対象とした国際多施設共同無作為化二重盲検試験ARISTOTLE(Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation)試験は、39ヵ国1,034施設から登録された1つ以上の脳卒中リスクを有する心房細動患者18,201例を対象に行われた、国際多施設共同無作為化二重盲検試験であった。被験者は無作為に、apixaban投与群(5mgを1日2回)かワルファリン投与群(目標INR:2.0~3.0)に割り付けられ、中央値1.8年の間追跡された。主要アウトカムは、脳梗塞、脳出血、全身性塞栓症のいずれかの発生とされた。試験は非劣性を検討するようデザインされ、副次評価において主要アウトカムに関する優位性、大出血や全死因死亡に関する優位性が検討された。主要アウトカム発生について、apixaban群の非劣性、優位性が認められる結果、主要アウトカムの発生は、apixaban群1.27%/年、ワルファリン群1.60%/年、ハザード比0.79(95%信頼区間:0.66~0.95)で、apixaban群の非劣性(p<0.001)、優位性(p=0.01)が認められた。大出血の発生は、apixaban群2.13%/年、ワルファリン群3.09%/年、ハザード比0.69(同:0.60~0.80)で、apixaban群の優位性が認められた(p<0.001)。全死因死亡についても、apixaban群3.52%/年、ワルファリン群3.94%/年、ハザード比0.89(同:0.80~0.99)で、apixaban群の優位性が認められた(p=0.047)。また、脳出血の発生は、apixaban投与群0.24%/年に対し、ワルファリン群0.47%/年(ハザード比:0.51、95%CI:0.35~0.75、p<0.001)、脳梗塞または病型不明の脳卒中発生については、apixaban群0.97%/年、ワルファリン群1.05%/年(ハザード比:0.92、95%CI:0.74~1.13、p=0.42)であった。(朝田哲明:医療ライター)

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頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。頭蓋内動脈狭窄症患者451例を積極的薬物治療単独群とPTAS併用群に無作為化SAMMPRIS(Stenting and Aggressive Medical Management for Preventing Recurrent Stroke in Intracranial Stenosis)試験は、米国神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から資金提供を受けた50施設から登録された、直近の一過性脳虚血発作または主要頭蓋内動脈径の70~99%狭窄を原因とする脳梗塞患者を対象とした無作為化試験であった。被験者は、積極的薬物治療単独群(アスピリン、クロピドグレル、各種降圧薬、rosuvastatinなどによる)か、積極的薬物治療に加えてPTASを併用する群に割り付けられ前向きに追跡された。主要エンドポイントは、「試験登録後30日以内の脳梗塞または死亡」「追跡調査期間中に施行された適格病変部位への血管再生処置後30日以内の脳梗塞または死亡」「30日超での適格動脈領域における脳梗塞」とした。積極的薬物治療単独群がPTAS併用群を上回る好成績本試験は、脳梗塞または死亡の30日発生率が、PTAS併用群14.7%(非致死的脳梗塞12.5%、致死的脳梗塞2.2%)、薬物治療単独群5.8%(非致死的脳梗塞5.3%、脳梗塞と関連しない死亡0.4%)となったため(P=0.002)、無作為化された被験者数451例(PTAS併用群224例、薬物治療単独群227例)で登録中止となった。追跡期間は11.9ヵ月であった(2011年4月28日現在)。事前予想では、主要エンドポイントの評価には追跡期間2年が必要と推定していた。また過去の同様の試験結果からPTAS併用群の主要エンドポイント発生は29%、一方、薬物治療単独群の同発生は24.7%とそれぞれ推定し、必要被験者数各群382例と試算して試験をデザインされていた。追跡調査は、本論発表現在も続けられているという。30日超での適格動脈領域における脳梗塞は、両群ともに13例の発生であった。1年時点の主要エンドポイントのイベント発生率は、PTAS併用群20.0%に対し薬物治療単独群は12.2%で、時間経過とともに有意に異なっていた(P=0.009)。(朝田哲明:医療ライター)

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准教授 長谷部光泉 先生「すべては病気という敵と闘うために 医師としての強い気持ちを育みたい」

1969年9月14日生まれ。博士(医学)、博士(工学)。1994年3月慶應義塾大学医学部医学科卒業後、同大学病院にて研修94年4月同大学大学院医学研究科博士課程。96年11月ハーバード大学医学部放射線科心臓血管造影およびIVR部門留学(~99年)。98年4月同大学医学部助手。04年4月同大学理工学部機械工学科・鈴木哲也研究室共同研究員および医療班チームリーダー。05年4月国家公務員共済組合連合会立川病院放射線科医長。08年4月東邦大学医療センター佐倉病院放射線科講師。09年8月同病院放射線科准教授。日本血管内治療学会評議員。日本IVR学会代議員、他。10年日本学術振興会 榊奨励賞受賞、第96回北米放射線学会Certificate of Merit受賞、他多数。低侵襲治療としてIVRカテーテル治療に大きな魅力を感じた放射線科領域を大別すると、X線検査、CT、MRI、核医学検査などに代表される放射線診断学とがん治療に代表される放射線治療学があります。CT、MRIなどが登場する前から存在した「血管造影法」は、私が専門とする放射線診断学の根幹です。血管のない臓器は存在しないため、古くから重要な診断法として発展してきました。しかしながら、CT、MRIなどの医療機器の技術革新によって血管造影の役割も変わってきました。皮膚に局所麻酔をしてほんの2㎜だけの傷をつけるだけで血管内に「カテーテル」と呼ばれる管を挿入し、臓器に直接アプローチできるので、たとえば循環器領域であれば心臓にアプローチして狭心症や心筋梗塞を治す。消化器領域では、肝臓がんであれば肝動脈塞栓術のように大腿動脈から患部のすぐそばまで細いカテーテルを挿入して抗がん剤を流して腫瘍を兵糧攻めにする。脳神経領域では、急性期の脳梗塞の血栓溶解療法や動脈瘤を詰めることもできます。また、下肢の動脈硬化の場合、風船付きカテーテルを挿入し直接狭くなった血管を広げ、歩けなかった患者さんが歩いて帰えれるようになる。CTやエコー、MRIなどの画像支援の下に血管内だけでなく臓器を直接穿刺して治療する。画像を使った血管内治療および血管以外の臓器などに対する、画像支援下の低侵襲治療、これが私の専門領域です。医学の世界に入った当初から、IVR(インターベンショナルラジオロジー)に興味があり魅力を感じていました。これからの治療は、身体に大きくメスを入れて手術するだけではなく、患者さんに優しい治療でありながら効果的な治療が求められています。カテーテルの技術にせよ、医療器具にせよ、どんどん進歩してくるであろうと考えました。その進歩と共に、カテーテル治療が今後の医療現場において主流になってくるのではないかとも考えていました。それは現実になってきていると確信しています。IVR治療で劇的に変わる患者さんのQOLIVRでできることは血管を開く、詰める、溶かす、生検のための組織を切除して取り出す、直接腫瘍を穿刺して治療する、簡単にいうとこれらが主な分野です。具体的には、動脈硬化で詰まった血管を開き、血栓で詰まった血管を溶かすことができる。体を大きく切開することなく組織を取り出し診断を確定する、ドレナージといって体内の深い部分の膿をCT・エコー・MRIで見ながら吸い取る。詰めるは塞栓術といって、肝臓がん治療の他、体の中で緊急出血した場合、血圧が低下し、身体を大きく開くことはできないので、救急治療として金属のコイルを詰めて止血し、一命を救うこともできます。今までは大きく開腹、開胸しなくてはならなかった手術が、IVR治療によって足の付け根や腕の部分を局所麻酔で2から3mm切開し、動脈や静脈にカテーテルを挿入して治すことができるようになっています。これにより患者さんの入院日数は劇的に短縮されました。局所麻酔のため危険性も減りますし、入院期間も短くなり、痛みが少ないなど多くのメリットがあります。心臓疾患の場合、以前ならば最低でも1から3ヵ月の入院を余儀なくされましたが、IVR治療では、長くて10日、われわれは3日から1週間入院を目安にしています。ただし、入院期間が短縮されたからといって、簡単な病気だったと勘違いはしないでほしい。血管内で手術は行われていますから、それなりのリスクがあることも十分知っておいてほしいと思います。患者さんにとって簡単そうに思えるIVR治療ですが、医師としては熟練した手技と全身疾患に対して知識や経験がないとできない分野です。実際に治療を行えるようになるまでには、綿密なトレーニングが必要です。東邦大学では後期研修医あるいは大学院生の1年目から血管内治療のトレーニングを本格的に重ねてもらいます。われわれの科では、画像診断もやりながら低侵襲の治療をする、研究にも取り組み積極的に国内外の学会で発表するという3本の柱を忘れることなく、必死で若手の医師が毎日を過ごしています。臨床医としての経験を活かした研究開発私がこの世界に入った時にはすでに、血管内治療のデバイスであるステントやバルーンの8割が輸入品でした。許認可の問題もあって、欧米の製品を平均2年遅れで買わなければいけない現状があります。その上、必ずしも日本人に適しているデバイスではありません。日本人にとって使いにくくて直してもらうにしても、製品ができあがってくるまでに1年、2年、3年かかる場合もあります。目の前の患者さんを治せるツールがあるのに、サイズが合わないだけで使えないという現実にジレンマを感じていました。私が慶應の研修医だった当時、恩師で、放射線医の第一人者であり、日本のIVRの父ともいえる平松京一教授(当時)の計らいで、医師になってから2年半後にハーバード大学で研鑚(けんさん)を積むようにと言われました。そこで約3年半、留学することになってしまいました。研修医が終わったばかりで、何の実力もないし、研究歴もなかった。渡米前には、多くの上司にも心配されました。ハーバード大学で最初の数ヵ月はお客さん扱いでしたし、もう帰国しようかとどまろうかと考えながら細々と実験を始めました。その実験データを基に数ヵ月後に書きあげたプロトコールが運良く認められて潤沢な公的研究費が与えられて、それをきっかけに状況が変わりました。そこのチームのチーフに任命され、血管の中の遺伝子治療研究が始まりました。詰まった心臓血管の中にステント(金属のメッシュ状の筒)を入れると、再狭窄が起こります。ステントは血流を劇的に改善しますが、血管を無理に開くため血管の内皮細胞や血管平滑筋細胞に傷がつきます。血管には破れると修復する作用があって、傷を修復する過程で、金属の周囲に血栓が付き、その刺激が過剰平滑筋細胞の増殖を促し、血管がまた詰まってしまうのです。それを治すために特殊なバルーンカテーテルというのを用いてそこから薬剤を出す。当時は、ステント留置後、20%から40%は半年後には詰まるといわれていました。確かに、血管内の遺伝子治療は実験的に成功し、米国IVR学会やNIHなどで受賞しました。けれども、やはり金属ステントそのものの留置が「諸刃の剣」だということに気づき、帰国後、材料工学の研究を独学で始めました。体になじみにくい金属が、長期的によい成績をだせるわけがないと考えたからです。しかしながら、金属の特性としてしなやかさや耐腐食性などを上回る素材はなかなかありません。それならば、既存のものにコーティングを施したらどうか、と考えました。ただし、コーティングするにしても体に害を及ぼすものでは当然使えません。行き着いたのがダイヤモンド系のコーティングでした。ダイヤモンドは、「物質の王様」といわれるだけあって、非常につるつるしているばかりではなく、耐摩耗性という特性があり、さらに炭素は身体を構成する成分の一つなので、人体に悪影響を及ぼしません。現在、主流となっている薬剤溶出性ステントから出てくる薬剤は薬効が強く正常の血管内皮細胞にダメージを与えるものが主流ですが、ダイヤモンドというのは化学的に安定しているばかりでなく、細胞に毒性を与えない特性を持っています。われわれは、さらにダイヤモンド系コーティングにフッ素を混在させることによって、血液の付着も防げることを初めて発見しました。つまり、フッ素を添加したDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)というコーティングは、血液をはじき付着を防ぐので、血栓ができにくい。さらに、血管内に残るのは炭素を主流とするダイヤモンド系素材なので、身体に悪いものではありません。これらの研究開発には、医学の知識だけではなく工学知識の力が不可欠でした。そこで、臨床医の立場で工学との通訳をしなければいけないと痛感しました。なぜならば、工学の思考と医学の研究者の思考回路はまったく違うからです。ですが、工学者も研究の応用の幅を広げたいと考えているし、医学者もテクノロジーを利用する考えが必要です。互いの歩み寄りを円滑にするために、私は医学部の栗林幸夫教授のご指導の下、医学博士を取得し、その後、工学部の鈴木哲也教授の下で工学博士を取得しました。これからも研究開発において、医工連携のための通訳になれたらと思いますし、私に続く若い医師や研究者を育成することに力を注いでいます。ゼロからのスタートに惹かれ挑戦慶應からこちらへ来たのは、ここはほぼゼロからということに興味を持ちました。現在の教室の寺田一志教授の誘いもあり、今までやってきたことをここで一度リセットして挑戦してみるのもいいだろうと考えました。慶應もいい環境ではありましたが、東邦大学の伝統と自由な気風、研究に対しても「自由にやれ」というムードがありました。特に、東邦佐倉病院では、他の臨床医の方々も、慶應から来た新参者にすごく親切にしてくれて、雰囲気もよかったし、全体的にやる気の気運が高まっている瞬間でした。今では県内でもトップクラスのIVR症例数を誇る施設になりつつありますが、こちらに来た当時はIVR治療もあまり積極的に行われていませんでした。それでも、循環器センターや消化器センターなど各診療科の多くの先生のご協力があって、現在にいたっています。これは、東邦大学の気風とセンター単位で行われるチーム医療にうまく融合した結果だと思います。前病院長の白井教授が臨床・研究に対する基礎を構築し、現在の田上病院長を中心にした執行部の積極的な支援の賜物だと思います。当院循環器センターの専門外来である「血管内治療・IVR外来」は、循環器内科医、心臓血管外科医、臨床検査医、放射線科医、心臓リハビリ医、形成外科医、糖尿病代謝内科医など本当の意味でのチーム医療ができるように構築してきました。カンファレンスの意思が医師同士の間で一貫しているというのは、患者さんにとっても安心できることだと思います。臨床としては主に肝臓がんや救急出血や動脈瘤などの塞栓術と下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)に伴い、詰まってしまった血管の血管形成術がメインです。糖尿病や動脈硬化で足が壊死してしまうのを治療するのがメインです。私にとって医療器具の研究はライフワークですが、実は臨床が9割。この臨床の経験があるからこそ研究のテーマが明確に打ち出せるのだと思います。これからは教育にも力を注ぐ私がこれから望むものは、若い人の教育です。まだ私も若いですけど……(笑)。若い人を教育するということは、自分が教育されることでもあります。教えるというのは、教えられることでもあります。先入観のない眼で若い人と日本から何かを発信したい。座右の銘は「感謝して今日もニコニコ働きましょう」。決して一人で仕事をしているのではなく、周りのスタッフ、上司、親、自分の周りの人すべてが笑顔でいられる医療をやりたい。そのために臨床はもちろん、研究や医療器具の開発もしたい。若い医師には、どんどん広い世界を見て、自分のアイデンティティ、日本人であるとか医師になるという明確な自覚を持ってほしい。勇気を持って新しいことにもチャレンジしてほしい。それらを一緒にやっていきたい。だからうちの科では工学部との交流や留学なども積極的にプログラミングしています。若いうちから何でも経験させ、国際学会発表も全員が入局2年以内に経験するように指導しています。敵は病気なので、最高の技術、最高の人間性、患者さんを治したいという気持ちを強く身につけてほしいと考えています。是非、そんなピュアな高い志を持った若い先生と学閥や分野を越えて一緒に働きたいという希望を持っています。質問と回答を公開中!

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頭痛は、脳病変や認知機能障害と関連するか?

重度頭痛と大脳白質病変の大きさには関連があるが、脳梗塞との相関は前兆を伴う片頭痛に限られることが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)神経疫学のTobias Kurth氏らの検討で明らかとなった。これまでに、片頭痛は大脳白質病変の総容積と関連することが症例対照研究や地域住民ベースの調査で示されている。さらに、前兆を伴う片頭痛は臨床的または潜在的な脳梗塞と相関するとの知見もあるという。BMJ誌2011年1月22日号(オンライン版2011年1月18日号)掲載の報告。780人を対象とした地域住民ベースの横断的研究研究グループは、フランス西部のナント市で実施された地域住民ベースの横断的研究である「Epidemiology of Vascular Ageing study」において、頭痛一般あるいは特定の頭痛と大脳白質病変、脳梗塞、認知機能との関連について評価を行った。対象は、頭痛に関する詳細なデータが得られた780人(平均年齢69歳、58.5%が女性)。頭痛の評価は、「International Classification of Headache Disorders」改訂第2版に基づいて行った。MRIで大脳白質病変の大きさおよび梗塞の種類を決定し、認知機能はミニメンタルステート検査(MMSE)など複数の試験で評価した。認知機能障害との関連は認めず163人(20.9%)が重度頭痛(片頭痛116人、非片頭痛47人)の既往歴を報告した。片頭痛のうち前兆症状を伴うと答えたのは17人(14.7%)であった。大脳白質病変総容積を三分位数に分けて解析したところ、総容積が下位3分の1で重度頭痛歴のない集団に比べ、上位3分の1の集団では重度頭痛歴の補正オッズ比が2.0(95%信頼区間:1.3~3.1、傾向検定:p=0.002)であった。前兆を伴う片頭痛のみが、大脳深部白質病変の大きさ(総容積下位3分の1に対する上位3分の1の集団のオッズ比:12.4、95%信頼区間:1.6~99.4、傾向検定:p=0.005)および脳梗塞(同:3.4、1.2~9.3)と強い相関を示した。梗塞の大部分は小脳や脳幹以外の部位に認められた。認知機能が、頭痛や脳病変の有無と関連することを示すエビデンスは確認できなかった。著者は、「重度頭痛歴と大脳白質病変の大きさには相関関係がみられたが、脳梗塞との関連は前兆を伴う片頭痛に限られた。頭痛単独あるいは頭痛と大脳白質病変の併存が認知機能障害と関連することを示唆するエビデンスは得られなかった」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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今後の心房細動治療はシンプルになる

 2010年12月7日、「変わる!!心房細動治療」をタイトルとしたプレスセミナーが開催された。演者は、財団法人心臓血管研究所常務理事(研究本部長)の山下武志氏。 このプレスセミナーにおいて、山下氏は、心房細動治療における「CHANGE」と「SIMPLE」を強調した。その内容をレポートする。患者と治療ツールの変化 今後の心房細動治療を考える中で、まず、患者側の変化を考えなければならない。ここ30年の間に患者数は増加し、背景因子も多様化した。その結果、心房細動を原因とする心原性脳塞栓症の発症が増加した。久山町研究では、第一集団(1961-1973年)に比べ、第三集団(1988-2000年)では、ラクナ梗塞は約0.8倍、アテローム血栓性脳梗塞では約1.3倍、心原性脳塞栓症では約2.3倍と報告されており、いかに心原性脳塞栓症が増加してしまったかがわかる。 次に、治療ツールにも変化が起こった。新しい抗不整脈薬が次々に開発されたのである。それは、新たな分類としてSicilian Gambit分類が生まれるほどであった。また、これまでの単純な電気生理学から、より広範な理論構築が行われるようになった。 その結果、21世紀の心房細動治療では、患者ごとに最適の治療を行う「個別化診療」という複雑な診療が模索され始めた。しかし、その裏で、誰がその複雑な診療を担うのか、それほど複雑化する必要があるのか、どういう形で患者の役に立ちたいのか、といった疑問も生じてきた。エビデンスが変えた治療戦略 「疾患を病態生理から理解する」ことと、「疾患を病態整理から治療する」ことは違う。現在の知識レベルは、疾患の病態整理をすべて網羅しているわけではないため、妥当だと思われる治療を行っても、それが必ずしも臨床的メリットにつながるとは限らない。臨床的メリットにつながっているかを検証するのが臨床試験である。 例えば、有名なCAST試験では、心筋梗塞後の心室性不整脈を有する患者に心室性不整脈薬を投与すると、死亡率が増加することが示された。 AFFIRM試験では、心房細動症例に対してリズムコントールを行った群とレートコントロールを行った群での死亡率に変化はなかった。これは日本人のみを対象としたJ-RHYTHM試験でも同様の結果が示されている。 ACTIVE-W試験では、脳卒中の危険因子を有する心房細動患者にクロピドグレル+アスピリンを投与した群は、ワルファリン投与群に比べ、脳心血管疾患の発症抑制という点で劣ることが示された。日本人を対象としたJAST試験でも、抗血小板薬による治療が無投薬群と有意な差がないことが示された。 さらに、心房細動の再発抑制を一次エンドポイントとしたGISSI-AF試験では、心房細動既往例において通常治療にARBを追加投与しても、心房細動の再発を抑制できなかったと報告された。同様に、CCB群とARB群で心房細動の発症抑制を比較検討したJ-RHYTHM IIでも、ARBがCCBに比べて心房細動の発症を抑制することは認められなかった。 これらの心房細動に関連したエビデンスを受け、ある二つの概念が重要視されてきた。それは、「“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ」「“複雑”から“シンプル”へ」という二つの概念である。今後の心房細動治療は3ステップで考える 今後の心房細動は、3つのステップで考えるべきである。その3つとは「命を護る」「脳を護る」「生活を護る」の3つで、むしろ、他のステップや考えは必要ない。実際、2010年のESCから発表された心房細動ガイドラインは、従来に比べ、驚くほどシンプルな内容になっている。(1)命を護る 心房細動患者の生命予後は、心房細動の背景因子により規定されており、これはすべての試験で共通した結果である。つまり、患者の生命予後を是正するには、一度心房細動の存在を頭から解き放ち、患者の背景因子を再確認して、それを改善すれば良い。(2)脳を護る 心房細動患者において、脳を守るツールは現在のところワルファリンのみである。ワルファリンの投与対象患者は、CHADS2スコアを用いればすぐに割り出すことができる。(3)生活を護る 患者のQOLを向上させる必要があれば、洞調率維持を目指す。唯一残された「複雑」も「シンプル」に 唯一残された「複雑」はワルファリンである。ワルファリンは説明事項、注意事項といった制約が多く、医師からみても、患者から見ても複雑である。しかし、新しい抗凝固薬の登場により大きく緩和されると予想されている。 新しい抗凝固薬は、ワルファリンと異なり、薬物相互作用、食事制限の必要性、血中濃度の測定の必要がなく、誰もがわかりやすい薬剤である。また、脳卒中の発症予防効果は、ワルファリンに対する非劣性を示した。 最後に山下氏は、「心房細動の治療は、今後、“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ、さらに、“複雑”から“シンプル”へと変化し、誰でも同じ治療が行えるようになる。心房細動治療が激変する時は、もうすぐそこまで来ている」と結んだ。

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教授 白井厚治先生「「CAVI」千葉県・佐倉から世界へ 抗動脈硬化の治療戦略」

東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座の教授で、前院長。医局のモットーは総合力と専門性を両方備えた医師育成。一人でも多くを救うこと。加えて先端医療の開発をモットーにしている。最近では、血管機能検査CAVIの開発に参画し、国内から海外にも発信。肥満症治療については脂肪細胞、脂質代謝の基礎研究から心理学まで動員して新しい治療システムを構築中。動脈硬化の分野で新しい治療体制の扉を開く動脈硬化は、地味な分野ですが、ご存知のとおり、脳梗塞、心不全、さらには腎不全をもたらし大きく個人のQOLを低下させ、また社会的損失も大きい疾患です。これに対し、病変動脈、静脈の直接的治療を循環器グループが担う一方、「動脈」が水道管でなく、生きた機能を持った臓器とし見、それに細胞生物学と代謝学を応用して治療・予防法を打ち立てるというのが夢でした。実は、癌は最近の治療学の進歩は著しいのを目の当たりあたりにしますが、30年前には不治の印象が強く、生命現象そのものの解明が必要で、とても自分の能力では歯が立たないと思い避けたのも事実です。動脈硬化なら多少とも代謝学的側面から治療できるのではないかと思ったりもしました。これまで、副院長6年、院長3年と病院の経営面にも携わりましたが、医療現場は人間が担うものであり、かつ科学性を保って運営されるべきもので、根本原則は、病気を見ることと変わらないと思いました。みんなして誠意を尽くし、精一杯がんばれば、経営のほうが、なんだかんだといっても人の作った制度の運用ですから、患者さんがいる限り、道は開けると思います。しかし、対疾病への取り組みは、神が創った摂理と破綻への挑戦ですから、数段難しいと思います。でも、全身全霊、日々、改革、改良に向けやり続けるのが、医師の誠意だと思います。それには、効率よくみんなが取り組めるセンター方式が必要と、糖尿病・内分泌・代謝センターを9年前に立ち上げました。場所、人の問題で、思い立って3年ほどかかりましたが、皆さんの協力でできました。そのころから、病棟と外来が一体となった継続看護治療システムも導入され、看護師も病棟での看護結果が外来でどのように効果が出ているのか確認しあい、フィードバックをかけるシステムが導入、大きかったのは、患者さん全員に、「ヘルスケアファイル」という手書きのファイルをお渡しし、代謝要因の変化と日常生活管理がどのように結びつくかをグラフで表すシステムを導入したことです。患者と医師のみでなく、家族にも分り、医療スタッフも採血者、受付、看護師、栄養士も一目瞭然に個々の病態が把握でき、互いにコミュニケーションが取れやすくなったのがよかったです。若い研修医にとっても数年の治療経過を見れば、病態がわかり最大の教科書にもなっています。診療体制を分りやすく、すっきり整えることは、生活習慣病と呼ばれる一連の疾患にとても有用と思います。若い医師も情熱を持った人たちが幸運にも集まり、地に足をつけ、真に役立つ研究を進めてくれたのも、推進力になってくれました。動脈硬化発生機序の解明とCAVIの開発研究学会のマニュアル、ガイドラインは大切ですが、大学病院の使命はその先を見つめることにあります。その眼は、字づらで覚えたことではなく、自然との対話、すなわち研究の基盤なくして開かれないと思います。ささやかながら病理、細胞培養実験から、動脈硬化とコレステロールの関係は直接ではなく、コレステロール自身が酸化され、オキシステロールになると強力な組織障害性をもち、慢性炎症が引きおこすとしました。これに基づき、強力な抗酸化作用を持つ脂質低下剤プロブコール投与による糖尿病性腎症の抑制効果を見いだしました。結局、末期腎硬化症は動脈硬化と同じような機序で起こると考えたからです。また、動脈硬化の臨床研究には、簡便で経時的に測定できる指標が必要ですが、これまで必ずしも十分なものがなかったわけです。これに対して、血管弾性を直接反映するCAVIという検査法の開発に携わったところ、これまで見えなかった部分がどんどん見えるようになりました。これは、内科の循環器、代謝チーム、それに生理機能検査部が一体となり、精力的に仕事をしてきた結果です。循環動態を把握するうえで、血管抵抗を反映することがわかり、これは血圧計に匹敵する意味を持つわけで、まだまだその妥当性をさまざまな角度から検証する必要がありましたが、循環器、代謝領域の疾患や、薬物治療成績が英文論文となり、世界に向けて発信し始めたところです。今後、日常診療の中から、動脈硬化治療が見出される可能性もあり、楽しみです。肥満・メタボリックシンドロームへの低糖質食、フォーミュラー食の応用を中心に、チーム医療体制を確立動脈硬化診療は診断に加え、予防と治療が究極目標ですが、動脈硬化の主な原因として肥満の意味は大きく、糖尿病、高血圧、脂質異常を伴い、所謂メタボリックシンドロームを引き起こします。すでに当院では15年前から肥満への取り組みをチームで始めており、治療として低糖質食、その極みとして安全で効果のあるフォーミュラー食を実施しています。今、欧米では低糖質がよいとの論文が出始めましたが、当院では、入院時にも低糖質食を用いています。またフォーミュラー食は必須アミノ酸を含むたんぱく質とビタミン、ミネラルをパウダーにしたものを水で溶かして、飲んでもらうものです。それによる減量効果特に、内臓脂肪の減少度が高く、それに伴い代謝改善度も一般通常食より効果があり、そのメカニズムは、動物実験でも検証中です。脂肪細胞自身のインスリン感受性関連分子の発現が上がっていることが確認されました。研究面では脂肪細胞から分泌されるサイトカイン、分子、酵素、さらに脂肪細胞分化に加えて、「人」の行動様式にも興味を持ち、毎月、オベシテイカンファランスを開き、内科医、栄養士、看護師は無論のこと、精神科医、臨床心理士も加わり、症例への総合的アプローチを試みています。肥満が解消できない理由に、ハイラムダー型と呼ばれるパーソナリテイを持つ人が肥満患者さんに多いことも見出されました。また、入院中に、何らかの振り返りができ、周囲との関係も客観化できるようになると、長期予後がよいことも見出しており、メンタルサポートは必須と思われます。このような成功例に遭遇すると、チーム全体が活気づくのも不思議です。これから、これらチームのバックアップで肥満外科治療も始まります。患者さんデータを集約したヘルスケアファイルで真の地域連携の夢を糖尿病を中心とした生活習慣病は、結局、本人の自己努力に大きく依存します。人は決して命令で動くものでなく、自分で納得、わかって初めて真の治療が始まります。その際、さまざまな情報を錯綜させないために、1冊のノートをつくり、なるべくグラフ化、マンガで示す方式で、病態理解をはかっています。これをヘルスケアファイルと呼んでいます。きちんとしたデータの推移をみて、各種職域の人が適切なアドバイスができます。また、もっと重要なことは、患者本人が自分の経過を一覧すると、そこから、自分の特性が分かるというものです。医療者自身にも勉強になり、多職種の方々がのぞきこむことによって、患者さん個々の蓄積データに基づき、最適なアドバイスができるというメリットがあります。これは、病院内の代謝科、循環器、神経内科などにとどまらず、眼科とも共通に使えますが、さらに、これで院外の施設とも、真に患者さん中心の医療ができます。できれば、全国国民全員が持つべきで、これで、医療費削減、効率化、医学教育もでき、これを如何に全国的に広めてゆくか楽しみ考えているところです。若い医師へのメッセージ:自分の医学を打ちたてる現在、各種疾患は、学会がガイドラインなどを決め、医療の標準化が進み、それはそれで、一定のレベルにまであげることでは意味があるでしょう。現場に立てば、ほとんどがそれを基礎に幾つかのバリアンスがあり、物足りないはずです。確かに一杯本もあり、インターネットでも知識はふんだんに得られます。でも、結局医師は、自分の医学を自分で打ち立てるのが原則でしょう。決して独断に走れというのではなく、ささやかでも、自分のデータをまとめ、自分として言えるファイルを作ることです。それは、先輩の先生から呟きとしておそわりました、教えてくれるのを待っていたって本当のところは教えられないし、頭を下げても教えてもらえることは少なく、自分で、縦軸、横軸を引き、そこにプロットさせ因果関係を探れといわれましたが、その通りです。ささやかでも、自分の経験症例をまとめておき、そこから何が発信できるか日夜思考錯誤してください。それが、許される余裕と良き指導者がいるところで、研修はすべきでしょうし、後期研修もそんな環境で自己研鑽することが大切でしょう。専門分野の選考は、社会的にニーズが高いところに向かうべきで、無論雰囲気も大切ですが、はやり、楽というよりは、皆が困っているところに入り込こむ勇気が大切でしょう。そこで、頑張れば、面白く楽しく医師生活をやって行けるでしょう。今後も、佐倉病院でなければ、できないことに向けて頑張ってまいります。お待ちしています。質問と回答を公開中!

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GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

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こわいのは脳梗塞や心筋梗塞だけ? 動脈硬化に関する意識調査より

動脈硬化のうち、日本人の三大疾病である心筋梗塞や脳梗塞などに対する意識は高いものの、進行すればこれらの疾患の引き金となる可能性もある首や足、腎臓などに起こる動脈硬化については認知が低いという。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社メディカル カンパニーが行った調査からわかった。この調査は、10月29日の「世界脳卒中デー」に向け、全国の30代~60代の男女800名を対象に、同社が2009年9月下旬にインターネット上で実施したもの。頭や心臓に怒る動脈硬化と違って、足(26.9%)、首(23.5%)、腹部(18.1%)、腎臓(12.1%)など他の部位に起こる動脈硬化については、いずれも約20%程度と低いことがわかった。全身の動脈硬化が重症化した場合に起こりうる主な症状のうち、不安に思う症状の第1位は脳梗塞(78.0%)が最も多く、特に不安に思う症状でも脳梗塞(43.1%)が最も多く、心筋梗塞(26.6%)や失明(7.8%)と大きく差がついていた。一方で、脳梗塞を不安に思っているものの、脳梗塞の患者の約20%が罹患しているといわれる「頸動脈狭窄症」を知らないと回答した人は88.4%にのぼった。詳細はこちらhttp://www.jnj.co.jp/group/press/2009/1027/index.html

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高齢者の脳白質、変化が重度なほど障害・死亡の割合が高い

脳画像診断の際、多くの高齢者に大脳白質の経年変化が見られる。この変化は認知症、うつ、運動障害、尿失禁等をもたらすなど、高齢者の障害に関与していると言われる。イタリア・フローレンス大学のDomenico Inzitari氏らの研究グループは、重度な脳白質の経年変化が、高齢者の日常生活動作の障害に及ぼす程度をLADIS試験(leukoaraiosis and disability)コホートを対象に評価を行った。BMJ誌2009年8月1日号(オンライン版2009年7月6日号)より。「障害なし」から「障害あり」、死亡への移行を3年間追跡Inzitari氏らは、ヨーロッパ11施設で、疾病発症後、障害が残らなかった高齢者で、脳MRI検査を受けた集団を対象とし、3年間にわたる観察によるデータ収集と追跡調査を行った。脳MRI検査を受けた高齢患者639例[平均年齢74.1歳(SD:5.0)、男性45.1%]には、白質内に加齢にともなう軽度、中等度、重度(Fazekasスケールによる分類)の病変がみられた。この評価には脳梗塞および脳萎縮症患者も対象に含められた。主要評価項目は、追跡期間3年間での、「障害なし」(手段的日常生活動作判定でスコア0または1)と判定された状態から「障害あり」(スコア≧2)への移行、または死亡とした。2次評価項目は、認知症、脳卒中のインシデントとした。重度白質病変患者の障害・死亡率は、軽度病変患者の約2倍平均追跡期間2.42年(SD:0.97、中央値2.94年)にわたって、主要評価項目の情報が得られたのは633例だった。障害ありに移行した患者と死亡した患者の年率は、経年白質病変の程度が軽度、中等度、重度な場合で、それぞれ10.5%、15.1%、29.5%だった(カプランマイヤー・ログランク検定によるP

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前兆を伴う偏頭痛を経験した中年女性、小脳梗塞様病変の発生が約2倍

中年期に前兆を伴う偏頭痛を毎月経験した女性は、頭痛経験がなかった人に比べ、後年期に、小脳梗塞様病変が発生する割合が約2倍増加することがわかった。なお、前兆のない偏頭痛や、男性の前兆を伴う偏頭痛については、同関連は見られなかったという。米国Uniformed Services大学のAnn I. Scher氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年6月24日号で発表した。月1回以上の前兆のある偏頭痛で小脳梗塞様病変は1.4倍Scher氏らは、1907~1935年に生まれた4,689人について、1967年から追跡を始め、偏頭痛症状について診察やインタビュー調査を行った。症状について調査を行った時点の被験者の年齢は33~65歳で、平均年齢は51歳だった。その26年以上後に、MRIで脳の梗塞様病変の有無について調べた。その結果、前兆のある偏頭痛が1ヵ月に1回以上あった人(361人)は、頭痛がなかった人(3,243人)に比べ、後に脳梗塞様病変が認められる確率がおよそ1.4倍(補正後オッズ比:1.4、95%信頼区間:1.1~1.8)だった。女性の前兆のある偏頭痛は小脳梗塞様病変が1.9倍なかでも、女性の小脳梗塞様病変については、前兆のある偏頭痛を経験した人の同発生率は23.0%だったのに対し、頭痛のなかった人の同発生率は14.5%と、補正後オッズ比が1.9(95%信頼区間:1.4~2.6)だった。一方男性については、前兆のある偏頭痛を経験した人と頭痛のなかった人の間で、同発生率に有意差はなかった(補正オッズ比:1.0)。なお、前兆のない偏頭痛や、偏頭痛以外の頭痛と、梗塞様病変の発生率については、関連は認められなかった。同研究グループはこの結果を受けて、中年期に前兆のある偏頭痛を経験した女性は、後年の小脳部血管疾患の発生に関連がある可能性が支持されたとしている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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低用量アスピリン起因性消化管障害の予防に、ガスターが有効-米国消化器病学会にて発表・“FAMOUS試験”-

アステラス製薬株式会社は2日、5月30日から6月4日まで米国・シカゴにて開催されている米国消化器病学会(American Gastroenterology Association:AGA)にて、低用量アスピリン起因性消化管障害の予防にH2受容体拮抗剤「ガスター」(一般名:ファモチジン)が有効であるという試験「FAMOUS」の結果を発表したと報告した。血小板凝集能抑制効果を持つ低用量アスピリンは、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈疾患や脳血管障害に対し有効性が確認されていて、幅広く処方されている薬剤だが、一方で消化管障害を高頻度で発症することが知られてる。消化管障害を発症した患者に対しては、低用量アスピリンの中止が望ましいものの、中止により原疾患の再発の危険性が高まるため、いかに消化管障害の発症を予防するかが課題となっている。FAMOUS(Famotidine for the Prevention of Peptic Ulcers in Users of Low-Dose Aspirin)試験は、英国・スコットランドで実施され、低用量アスピリン(75~325mg)服用中の患者404名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験。試験3ヶ月の内視鏡検査にて確認された食道及び胃・十二指腸病変は、ガスター40mg/日群で5.9%、placebo群で 33.0%と、ガスター群で有意に抑制されていた(p

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タケプロンの「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症抑制」の効能追加を申請 

武田薬品工業株式会社は、消化性潰瘍治療剤「タケプロン」(一般名:ランソプラゾール)について、「低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の発症抑制」にかかる効能追加を申請したと発表した。高齢化が進む日本では、脳梗塞や心筋梗塞の再発予防のために低用量アスピリンを服用する患者が増加しているが、国内において、低用量アスピリン投与時における潰瘍の発症抑制の効能・効果が認められた消化性潰瘍治療剤はなく、日本人の低用量アスピリン長期服用患者を対象として、タケプロンによる潰瘍発症抑制効果を検証する臨床第3相試験を行い、その結果に基づき、効能追加申請を実施したとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.takeda.co.jp/press/article_32546.html

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脳梗塞発症3~4.5時間後のrt-PA静注療法は有効だが……

急性期脳梗塞に対し唯一承認された治療法は、rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法だが、発症から3時間以上経過した後の投与については、有効性と安全性が確立されていなかった。ドイツ・ハイデルベルク大学のWerner Hacke氏らECASS(European Cooperative Acute Stroke Study)研究グループは、発症後3~4.5時間に投与されたrt-PAの有効性と安全性を検証した結果、「臨床転帰は改善するが、症候性頭蓋内出血を伴う所見が高頻度にみられる」と報告した。NEJM誌2008年9月25日号より。プラセボ投与と等分し90日後の障害の有無を比較急性期脳梗塞患者のうち、CT検査で脳内出血または重い梗塞のある患者を除き、rt-PA静注群(0.9mg/kg)またはプラセボ投与を受けるよう、等分に無作為二重盲検試験に割り付けた。主要エンドポイントは90日時点の障害とし、転帰良好(無症状を0、死亡を6とする0~6の尺度で0または1)か、転帰不良(同2~6)に分けた。副次エンドポイントは、4つの神経学的スコアと障害スコアを統合した総合的な転帰解析の結果とした。安全性エンドポイントは、死亡、症候性頭蓋内出血および他の深刻な有害事象とした。転帰はやや改善されるが症候性頭蓋内出血も高頻度登録された患者計821例を、rt-PA静注群418例、プラセボ群403例に割り付けた。rt-PA投与時間の中央値は3時間59分。rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰良好の患者がより多かった(52.4%対45.2%、オッズ比:1.34、95%信頼区間:1.02~1.76、P = 0.04)。総合解析の結果も、rt-PA群のほうがプラセボ群より転帰は改善された(1.28、1.00~1.65、P

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冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBは無効

総ホモシステイン濃度と心血管疾患とのリスクの関連性は観察研究によって報告されている。血漿総ホモシステイン濃度は、葉酸+ビタミンB12の内服によって低下させることができるが、Haukeland大学病院心臓疾患部門(ノルウェー)のMarta Ebbing氏らは、冠状動脈疾患もしくは大動脈弁狭窄症患者の2次予防として、葉酸+ビタミンB12の服用効果と、葉酸+ビタミンB6の服薬効果を、無作為化試験で比較評価した。JAMA誌2008年8月20日号より。冠動脈造影を受けた3,096例を群無作為化二重盲検対照試験1999~2006年に、ノルウェー西部の2つの大学病院で行われた無作為化二重盲検対照試験で、参加者は冠動脈造影を受けた計3,096例の成人(女性20.5%、平均年齢61.7歳)。基線で、59.3%が2種または3種の血管疾患があった。83.7%は安定性狭心症があり、14.9%が急性冠動脈症候群を有していた。22通りの要因を有する参加者は、「葉酸(0.8mg)+ビタミンB12(0.4mg)+ビタミンB6(40mg)」(n=772)、「葉酸+ビタミンB12」(n=772)、「ビタミンB6単独投与」(n=772)、「プラセボ投与」(n=780)の4つの経口投与群のうちの1つにランダムに割り当てられた。主要エンドポイントは、全死因、非致死性の急性心筋梗塞、不安定狭心症による緊急入院、非致死性の脳梗塞の複合とした。葉酸効果は認められるがビタミンB効果は確認できなかった「葉酸+ビタミンB12」を受けていた群では、服用1年後の血漿総ホモシステイン濃度の平均値は30%減少していた。本試験は、同時期に行われたNorwegian trialで介入による有害事象の報告がされたため早期に終了され、追跡調査は38ヵ月間だった。その間に主要エンドポイントが確認された参加者は計442例(13.7%)。このうち219例(14.2%)が「葉酸+ビタミンB12」の投与を受けており、203例(13.1%)がそれらの投与を受けていなかった。ハザード比は1.09(95%信頼区間:0.90~1.32、P=0.36)。また「ビタミンB6」の投与を受けていたのは200例(13.0%)、受けていなかったのは222例(14.3%)。ハザード比は0.90(0.74~1.09、P=0.28)だった。これら結果からEbbing氏は、「本試験では、葉酸+ビタミンB12あるいは+ビタミンB6の総死亡率、心血管イベントへの治療効果の違いを見いだすことはできなかった。我々の調査結果では、冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBを用いることを支持しない」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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脳MRIは無症候性の脳異常の発見に結びつく

研究および臨床領域双方で利用が増している脳の磁気共鳴画像(MRI)は、一方ではスキャナやMRIシークエンスの改善がなされている。そうした画像診断技術の進歩は、脳腫瘍、動脈瘤、無症状の血管病変など予期しない無症候性の脳異常の発見に結びつく可能性があるとして、オランダのエラスムスMC大学医療センターのMeike W. Vernooij氏らは、偶発的な脳所見が一般集団で出現する割合を検討した。NEJM誌11月1日号より。2,000例のMRI画像を専門医が精査対象は、標準プロトコルに従って高解像度脳構造MRI(1.5T)検査を実施された、住民ベースのロッテルダム研究対象2,000例(平均年齢63.3歳、年齢範囲45.7~96.7歳)。訓練された評価者2名が、無症候性脳梗塞を含むすべての脳異常を記録した。白質病変量は、自動後処理法でミリリットル単位で定量化された。偶発的な所見の精査は、経験豊かな2名の神経放射線医が行い、診断はすべてMRI所見に基づいて行われ、組織学的検査は行っていない。加齢とともに増加した脳梗塞・髄膜腫・白質病変無症候性脳梗塞は145例(7.2%)にみられた。梗塞以外の所見では、脳動脈瘤(1.8%)と髄膜腫を主とする良性原発腫瘍(1.6%)が最も高頻度にみられた。無症候性脳梗塞と髄膜腫の有病率、および白質病変量は、加齢とともに増加していたが、動脈瘤の有病率には同様の年齢関連性はみられなかった。研究グループは、「無症状の血管病変を含めて、MRI画像による脳の偶発的な所見は一般集団でもよくみられた。最も頻度が高いのは脳梗塞であり、脳動脈瘤と良性原発腫瘍がこれに続いて多い」と報告。「臨床管理上これら病変の自然経過に関する情報が必要だ」と指摘している。(朝田哲明:医療ライター)

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高齢AF患者に対してもワルファリンはアスピリンよりも有用:BAFTAスタディ

これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。平均年齢81.5歳、血圧140/80mmHgの973例が対象BAFTA スタディの対象は一般医を受診している75歳以上のAF患者973例(平均年齢81.5歳)。ワルファリン(目標INR:2~3)群(488例)とアスピリン75mg/日群(485例)に無作為化され、オープンラベルで追跡され、イベント評価は割り付けをブラインドされた研究者が行なった。両群とも約 40%がワルファリンを服用していたが試験薬以外は服用を中止した。42%が服用していたアスピリンも同様だった。試験開始時の血圧は約140/80mmHg、収縮期血圧が160mmHgを超えていたのはワルファリン群13%、アスピリン群16%だった。ワルファリン群に出血性合併症増加なし平均2.7年間の追跡期間後、1次評価項目である「脳卒中死、後遺症を伴う脳卒中、その他の脳出血、確定診断のついた脳塞栓症」発生頻度はワルファリン群 1.8%/年(24件)、アスピリン群3.8%/年(48例)で、ワルファリン群において相対的に52%の有意(p=0.0027)な減少が認められた。年齢、性別等のサブグループ別に比較しても、ワルファリン群で増加傾向の見られたグループはなかった。一方、ワルファリン群で懸念されていた脳出血は、「死亡・後遺症を伴う脳出血」発生率が0.5%/年でアスピリン群の0.4%/年と同等(p=0.83)、また「その他の脳出血」も発生率はワルファリン群0.2%/年、アスピリン群0.1%/年と差はなかった(p=0.65)。筆者らはこれらより、高齢者AFに対する抗凝固療法の有用性は過小評価されているのではないかと主張する。しかし本試験で用いられたアスピリン75mg/日という用量はAFASAK試験においてすでに、虚血性脳イベント予防作用がプラセボと同等だと明らかになっている。(宇津貴史:医学レポーター)

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COX-2のrofecoxib、結腸直腸癌のアジュバント療法でも心血管有害事象増加

関節炎治療薬のCOX-2選択的阻害薬rofecoxib(商品名Vioxx)は、心血管有害事象を増加するおそれがあるとして2004年に全世界で販売が停止された。 一方でCOX-2には、癌の進行を遅らせる可能性があるとされている。David J. Kerr氏らVICTOR Trial Group(Vioxx in Colorectal Cancer Therapy: Definition of Optimal Regime)は、この特性に着目して行った、結腸直腸癌の再発低下を目的とするrofecoxib投与治験について、患者の心血管有害事象に関する報告を行った。詳細はNEJM誌7月26日号に掲載。ステージIIとIII の結腸直腸癌2,434例対象に無作為化プラセボ対照対象は、結腸直腸癌ステージIIまたはIIIの患者で、rofecoxibの無作為化プラセボ対照試験に参加した2,434例。心血管系の重篤な血栓性イベントの有害事象すべてが検討され、持続的なリスクを評価するため、試験終了24ヵ月後までの心血管イベント報告を含んで行われた。rofecoxibの投与は、腫瘍切除術、化学療法あるいは放射線療法といった加療が行われた後に、25mg/日で開始された。心血管イベントの相対リスクは1.50本試験はrofecoxibの販売停止で当初予定より早く終了となっている。実薬治療の継続期間の中央値は7.4ヵ月間。追跡調査期間中央値は投与群(1,167例)33.0ヵ月、プラセボ群(1,160例)33.4ヵ月だった。確認された23件の心血管イベントのうち16件がrofecoxib投与群で、治療期間中かもしくは治療期間後14日以内で発生していた。推定相対リスクは2.66(P=0.04)。Antiplatelet Trialists' Collaborationエンドポイント(心血管系・出血・原因不明による死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳梗塞ならびに脳出血の複合発生率)の解析では、相対リスク(未調整)は1.60だった(P=0.37)。また試験終了後2年以内に14件の心血管イベントが報告され、このうち6件がrofecoxib投与群だった。全体の相対リスク(未調整)は1.50と報告されている(P=0.24)。さらに、治療期間中もしくは治療期間後14日以内にrofecoxib投与群4例とプラセボ群2例で血栓症による死亡が確認され、追跡期間中にrofecoxib投与群1例とプラセボ群5例の心血管イベントによる死亡が確認された。Kerr氏らは、結腸直腸癌に対するアジュバント療法としての投与でも、rofecoxibは心血管系有害事象の増加と関連していたと結論している。(武藤まき:医療ライター)

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