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新型コロナウイルス、推計感染者数は約7万6,000人か/Lancet

 中国湖北省・武漢市で発生し、急速に拡大している新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を巡り、中国・香港大学李嘉誠医学院のJoseph T Wu氏ら研究グループは、2019年12月以降の感染の広がりについて予測。1月25日時点で、武漢市および周辺都市における感染者数は約7万6,000人に上ると見られる推計値を発表した。なお、中国保健当局が2月4日付で公表した中国国内の感染者数は約2万400例で、本研究の推計値とは3倍超の大きな開きがある。Lancet誌オンライン版1月31日号掲載の報告。 研究グループは、中国疾病管理予防センターが公表した症例報告数を基に、2019年12月1日~20年1月25日の間に、武漢市から国内外にさまざまな交通機関を利用して移動した人の追跡データを分析、移動先で確認された症例数からモンテカルロ法によって推定値を算出した。 主な結果は以下のとおり。・推定基本再生産数は2.68(95%信頼区間[CI]:2.47~2.86)。・感染者数が2倍となるのに要したのは6.4日であった(95%CI:5.8~7.1)。・これらの計算から、武漢の患者数は1月25日時点で7万5,815人と推定(95%CI:3万7,304~13万330)。・武漢以外の主要都市でも局所的な感染の流行が見られ、重慶461例(95%CI:227~805)、北京113例(95%CI:57~193)、広州111例(95%CI:56~191)、上海98例(95%CI:49~168)、深セン80例(95%CI:40~139)などと推定。 著者らは、「人口レベルおよび個人レベルの両方で実質的かつ公衆衛生的な介入が即座に実施されなければ、中国と密接な交通輸送手段を有する海外の大都市においても、今後アウトブレイクの中心となる可能性がある」と述べている。

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出血ハイリスクの重症患者に対する予防的なPPI・H2RAは有用か?(解説:上村直実氏)-1177

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)など酸分泌抑制薬は胃食道逆流症に対する有用性により世界中で頻用されている一方、長期投与による肺炎や骨折のリスク、腸内細菌叢の変化に伴うClostridium difficile(CD)感染症のリスク増加などを危惧する報告が散見されている。このように酸分泌抑制薬の有用性と安全性のバランスは臨床現場で最も注目されている課題の1つである。 重症患者が主体のICUにおいて消化管出血の予防処置としてPPIやH2RAが当然のように投与されているが、薬剤のリスクを考慮した有用性に関する確実なコンセンサスが得られていないのが現状である。今回、この予防投与の有用性を検証するために、研究デザインの質やバイアスリスクを詳細に吟味したシステマティックレビュー/ネットワークメタ解析の結果がBMJ誌に掲載された。選択された72研究1万2,660例について検討した結果、消化管出血のハイリスク患者ではPPIやH2RAの予防投与は臨床的に消化管出血を減少する成績が示された一方、リスクの低い患者においては出血予防の有用性は統計学的には少ないものとされている。 ICUでは抗菌薬の使用が多く、PPI併用によるCD感染症の増加が危惧されるが、本研究の結果からCD感染症は予想より少ないと思われた。一方、酸分泌抑制薬により肺炎を惹起するリスクが増加することは確かなようであり、医療現場ではさらなる注意が必要である。 最も高いレベルの『エビデンス』とされるメタ解析やシステマティックレビューの評価には、選択された研究論文の質はもとより結果の解釈が大切であり、さらに選択論文のアウトカムのみでなく各研究の調査因子の違いにも注意が必要であること、調査因子が多くなると研究結果が不均一になる傾向にあること等、本研究論文から得られる教訓は多かった。EBM全盛時代となっているが、エビデンスレベルを研究デザインにより設定することが適切であるのか、また実際の診療現場では『エビデンス』を参考資料として個々の患者に対する最善の対処を行っているのか考えさせられた次第である。

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全身性強皮症〔SSc:systemic sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)は、指趾から左右対称性に中枢側へと及ぶ線維性皮膚硬化を主徴とし、しばしば内臓(肺、食道病変の頻度が高い)にも線維性硬化を伴う慢性疾患である。■ 疫学わが国では約2万人が特定疾患として認定されている。しかし、見逃されている症例や他の膠原病とされている症例、軽症例では患者自身が受診していないことも多く、正確な患者数は不明である。男女比は1:12で、30~50歳代の女性に好発する。まれに、幼児期~小児期、70歳以降の高齢者に発症することもある。■ 病因SScの病因は不明である。本症は、(1)線維性硬化(皮膚におけるコラーゲンの過剰蓄積。内臓病変では臓器傷害部位をコラーゲンが置換する)、(2)末梢循環障害(レイノー現象、指趾潰瘍など)、(3)免疫異常(抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼ(Scl-70)抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体などの自己抗体産生)の3要素によって特徴付けることができる。ただし、自己抗体そのものが疾患を惹起しているわけではなく、SSc特異的自己抗体を産生しやすい遺伝的背景とSScを発症させる疾患感受性の遺伝的背景とが密接にリンクしていると考えられる。■ 症状初発症状としてはレイノー現象(典型例では、寒冷刺激などによって手指が白色、紫藍色、赤色の3相性に変化する。図1)、手指の腫脹・こわばり(図2)が多い。その後、強指症に代表される皮膚硬化が明確となり、皮膚潰瘍・壊疽、肺線維症(図3)、逆流性食道炎をしばしば伴う。手指の屈曲拘縮、肺高血圧症、心外膜炎、不整脈、右心不全、腎クリーゼ(乏尿と高血圧)、関節炎、筋炎、偽性イレウス(腸閉塞)(図4)、吸収不良、便秘、下痢など合併することがある。図1 レイノー現象による手指の蒼白化画像を拡大する図2 手指の浮腫性硬化画像を拡大する図3 肺線維症画像を拡大する図4 偽性イレウス画像を拡大する■ 分類強皮症にはSScと限局性強皮症(Localized scleroderma)とがある。SScは皮膚硬化が肘・膝を超えるびまん皮膚硬化型(diffuse cutaneous type SSc)と肘・膝より遠位側に留まる限局皮膚硬化型(limited cutaneous type SSc)とに分類される。びまん皮膚硬化型は内臓病変が重症である確率が高い。びまん皮膚硬化型では、抗トポイソメラーゼ(Scl-70)抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体の陽性率が高く、内臓病変は重症化しやすい。限局皮膚硬化型では抗セントロメア抗体の陽性率が高く、生命予後に関わる内臓病変として肺高血圧症がある。SSc特異的自己抗体の有無は病型判別に役立つ。なお、皮膚硬化が部分的に生じる限局性強皮症(localized scleroderma)とSScの限局皮膚硬化型(limited cutaneous type SSc)とは別疾患であり、混同してはならない。■ 予後日本人の成人発症SSc患者の10年生存率は88%である。先に述べたように、びまん皮膚硬化型SScでは内臓病変が重症化しやすく、内臓病変が生命予後を左右する。内臓病変は慢性に進行するわけではなく、重症例は発症5、6年以内に急速に進行することが多い。このような症例を正確に見極め、できるかぎり早期に治療を開始して組織破壊を抑制し、組織損傷を軽減することが重要である。一方、限局皮膚硬化型SScでは、肺高血圧症以外に重篤な内臓病変を合併することは少なく、生命予後について過度の心配は不要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)SScは、症例毎に多彩な症状を呈するため、診断に際しては皮膚病変、内臓病変の正確な評価が不可欠である。分類(診断)基準案として厚生労働省研究班(表1)のものと、欧米リウマチ学会のもの(表2)を示す。表2はポイント制であり、早期例の診断に有用性が高い。特に、爪上皮の出血、後爪郭部毛細血管異常は早期診断には重要である(図5)鑑別すべき疾患として、腎性全身性線維症(造影剤を使用された腎不全患者に発症)、汎発型限局性強皮症(斑状強皮症、帯状強皮症などの限局性病変が多発したもの)、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、ポルフィリン症、移植片宿主病(GVHD)、糖尿病性手関節症、クロウ-フカセ症候群、ウェルナー症候群などが挙げられる(表1)。表1 全身性強皮症診断基準(厚生労働省研究班,2014)◎大基準両側性の手指を超える皮膚硬化◎小基準(1)手指に限局する皮膚硬化*1(2)爪郭部毛細血管異常*2(3)手指尖端の陥凹性瘢痕,あるいは指尖潰瘍*3(4)両側下肺野の間質性陰影(5)抗トポイソメラーゼI(Scl-70)抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体の何れかが陽性◎除外基準以下の疾患を除外すること腎性全身性線維症、汎発型限局性強皮、好酸球性筋膜炎、糖尿病性浮腫性硬化症、硬化性粘液水腫、ポルフィリン症、移植片宿主病(GVHD)、糖尿病性手関節症、クロウ-フカセ症候群、ウェルナー症候群【診断の判定】大基準、あるいは小基準(1)および(2)~(5)のうち1項目以上を満たせば全身性強皮症と診断する【注釈】*1:MCP関節よりも遠位に留まり、かつPIP関節よりも近位に及ぶものに限る*2:肉眼的に爪上皮出血点が2本以上の指に認められる、またはcapillaroscopyあるいはdermoscopyで全身性強皮症に特徴的な所見が認められる*3:手指の循環障害によるもので、外傷などによるものを除く表2 アメリカリウマチ学会と欧州リウマチ学会の分類(診断)基準(2013)画像を拡大する図5 後爪郭部の毛細血管拡張と爪上皮内の点状出血画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現時点でSScを完治させる、あるいは進行を完全に抑制できる薬剤はない。しかし、ある程度の効果が期待できる治療薬は揃いつつある。(1)皮膚硬化に対する副腎皮質ステロイド(少量内服、20mg/日以下)(2)肺線維症(間質性肺炎)に対するシクロフォスファミド・パルス療法(点滴静注を1回/月、6回)(3)逆流性食道炎に対するプロトンポンプ阻害薬(内服)(4)末梢循環障害に対するプロスタサイクリンなど(5)肺高血圧症、手指潰瘍再発に対するエンドセリン受容体拮抗薬(内服)(6)腎クリーゼに対するアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(内服)4 今後の展望強皮症を含む自己免疫性リウマチ性疾患の発症機序は不明である。近年の研究成果からは、自然免疫(innate immunity)の制御異常が注目されている。自然免疫は獲得免疫(acquired immunity)が成立するまでの期間に働く生体防御システムであり、外来性病原体に由来する、あるいは我々自身の体細胞に由来する物質の刺激によって始動する。これらの物質は生体の恒常性を破綻させる可能性があるため、自然免疫システムは炎症を起こしてこれら物質を排除しようとする。この炎症が上手くコントロールされて適切な段階で終息すれば正常状態であるが、炎症が遷延化して臓器損傷が慢性に進行するのが異常状態であり、これこそが自己免疫性リウマチ性疾患の発症機序ではないかと推測されている。したがって、最初にスイッチオンする物質の種類、その後の自然免疫による炎症の強弱によって患者さんごとの多様な病態が形成されると考えられる。根本治療薬の開発は、発症機序の解明を待たねばならないが、炎症制御に関わるさまざまな生体物質を制御する薬剤(分子標的薬)の探索へと向かうであろう。5 主たる診療科皮膚科、膠原病内科(SScを専門とする医師がいることが望ましい)。罹患臓器の重症度によって呼吸器内科、循環器内科、消化器内科などに診療する。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター全身性強皮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)平成26年度厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「強皮症・皮膚線維化疾患の診断基準・重症度分類・診断ガイドライン作成事業」(医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2020年02月10日

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「がん免疫」ってわかりにくい?【そこからですか!?のがん免疫講座】第1回

はじめに約1世紀前にW. Coleyが「感染症によりがんが縮む」と報告したことが「がん免疫」の最初とされています1)。その後、20世紀初頭にP. Ehrlichが「免疫ががんから生体を防御している」という考えを唱え、M. BurnetとL. Thomasにより「がん免疫監視機構」としてまとめられました2)。がん免疫療法は期待されつつも長らく臨床応用されないままで、懐疑的に見られた時代もありましたが、近年ついに免疫チェックポイント阻害薬の効果がさまざまながんで証明されたことから、がん治療にパラダイムシフトをもたらしています3,4)。従来の抗がん剤やEGFR阻害薬といった分子標的薬は、一部の薬剤を除き、がん細胞を直接標的にすることでがん細胞の増殖を止めたり殺したりしています。一方、免疫チェックポイント阻害薬は、薬剤ががん細胞に直接作用するわけではなく、免疫細胞に作用することでがんを治療しています。さらに免疫細胞にもさまざまな種類が存在しており、これらのことががん免疫療法の理解を難しくしてしまっています。本連載では、あまり「がん免疫」に詳しくない方にも理解しやすい内容で、5回にわたってがん免疫の基礎から今後の展望まで紹介します。そもそも免疫って何しているの?「がんに対する免疫」について書く前に、「普通の免疫」について簡単に触れたいと思います。現在の死因第1位は皆さんご存じのように「悪性新生物」ですが、過去には死因第1位は「感染症」でした。これは、感染症が生物の生きていくうえで大きな問題になってきたことを示しています。現代でも肺炎は死因として大きなウエイトを占めていますし、悪性新生物という死因であっても最終的には感染症が原因で亡くなる方は非常に多く、常に問題になっています。その感染症の原因となる細菌やウイルスといった病原体から、自分の身を守るために身体に備わっているシステムが「免疫」です。つまり免疫とは、細菌やウイルスといった自分とは違う外来の異物(非自己)を排除し、自分の身体(自己)を守るためのシステムです。皆さんがインフルエンザにかかれば高熱が出ますが、あれは免疫が頑張ってインフルエンザウイルスを排除しようとしている証拠です。「自然免疫」と「獲得免疫」があるヒトの免疫は、大きく「自然免疫」と「獲得免疫」に分けられます(図1)。画像を拡大する自然免疫とは、病原体をいち早く感知し、それを排除する仕組みで、身体を守る最前線に位置しています。主に好中球やマクロファージ、樹状細胞といったものがこの役割を担っており、獲得免疫へ情報を伝達する橋渡しの役割も果たしています。獲得免疫とは、病原体を特異的に見分け、それを「記憶」することで同じ病原体に出会ったときに効率的に病原体を排除できる仕組みです。自然免疫に比べると、応答までにかかる時間は数日と長いですが、一度病原体を「記憶」してしまえば効率よく反応することができます。主にT細胞やB細胞といったリンパ球がこの役割を担っています。自然免疫は特定の病原体に繰り返し感染しても増強することはなく、この点が獲得免疫と異なります。「自己」を免疫が攻撃すると大変なことになる免疫は細菌やウイルスのような「非自己」を攻撃して自分の身体である「自己」を守る、と述べました。ですので、免疫はさまざまな仕組みで「自己」を攻撃しないようにしています。たとえば、われわれの身体ではT細胞ができてくる過程で「自己」を攻撃するようなT細胞を身体の中に極力残さないようにしています。さらに、万が一そういったT細胞が身体の中に残ってしまっても、それらが「自己」を攻撃しないようにする「免疫寛容」というセーフティーネットの仕組みを持っていたりもします。もし、これらの仕組みが働かず、免疫が「自己」を攻撃してしまうと、関節リウマチやSLEに代表される「自己免疫疾患」になってしまいます。このことはがん免疫療法特有の副作用につながってきますので、また次回以降に述べたいと思います。がん細胞も「非自己」として認識されれば免疫系が作用するさて、話をがんに戻します。段々おわかりかと思いますが、がん細胞も細菌やウイルスなどと同じように「非自己」として認識されれば、免疫にとっては排除の対象となるわけなのです。それが「がん免疫」です。「高齢の方は免疫系が落ちていてがんになりやすい」だとか「免疫抑制薬を使用している患者さんはがんになりやすい」といった事実から、「がん細胞に対しても免疫系が働いている」というのは感覚的には理解できるかと思います。それを証明したのがマウスの実験です。遺伝子改変で免疫不全状態になったマウスは、普通の野生型マウスに比べて、明らかに発がんしやすいことが報告されました。一時はがん免疫に対して懐疑的な時代もありましたが、これにより「やはりがん免疫は存在する」ということが徐々に受け入れられ、ついにはがん免疫療法の効果が証明されたのです。がん免疫に大事な「がん免疫編集」という考え方われわれ人間の身体では、1日3,000個くらいのがん細胞ができているといわれます。それが、そう簡単に「がん」になってしまったら大変です。今まで述べてきたように、免疫系が正常に働き、がん細胞を「非自己」として認識して排除することで臨床的な「がん」にはならないとされ、その段階を「排除相」と呼んでいます。一方で、がん細胞の中でも排除されにくいものが残ってしまい、完全には排除されていないものの進展が抑制されている平衡状態の「平衡相」になり、最終的には生存に適したがん細胞が選択され、積極的に免疫を抑制する環境を作り上げて免疫系から逃避してしまう「逃避相」として、臨床的な「がん」になるといわれています。がん細胞と免疫系の関係性をこの「排除相」「平衡相」「逃避相」の3つにまとめた考え方は「がん免疫編集」と呼ばれ5)、現代のがん免疫・がん免疫療法を考えるうえで非常に重要な概念です(図2)。英語ではそれぞれ“exclude”、“equivalent”、“escape”となるので、頭文字をとって“3E”とも呼ばれています。画像を拡大する基本的な話はこの辺にして、次回以降はもう少し臨床に近い話をしたいと思います。1)Wiemann B, et al. Pharmacol Ther. 1994;64:529-564.2)BURNET M. Br Med J. 1957;1:779-786.3)Topalian SL, et al. N Engl J Med. 2012;366:2443-2454.4)Brahmer JR, et al. N Engl J Med. 2012;366:2455-2465.5)Schreiber RD, et al. Science. 2011;331:1565-1570.

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新型コロナウイルスから医療現場を守るために/日本医師会

 相次ぐ新型コロナウイルス感染の報告を受け、厚生労働省は、国内でもヒト-ヒト感染が確認されたと発表した。日本医師会は、横倉 義武氏(会長)を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置し、対応している。 新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「指定感染症」(二類感染症相当)と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が閣議決定され、診療可能な医療機関として、第2種感染症指定医療機関(348施設)、第1種感染症指定医療機関(55施設)、特定感染症指定医療機関(4施設)が指定されている。 日本医師会・副会長の松原 謙二氏は、「武漢市から14日以内に帰国・入国した人あるいはこれらの人と接触した人で、咳や発熱などの疑わしい症状がある場合には、必ず医療機関を受診する前に、厚生労働省か最寄りの保健所に電話して指示を受けてほしい」と、正しい対応策の周知を呼び掛けた。・厚生労働省 電話相談窓口 電話番号:03-3595-2285(受付時間:9~21時) 日本医師会のホームページでは、新型コロナウイルス関連感染症に関する「患者さんへのお願い」として、掲示用の資料をダウンロードすることができる。・院内入口掲示用:患者さんへのお願い・院内掲示用:患者さんへのお願い

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新型肺炎で感染症2学会が声明「継続観察も、冷静な対応を」

 国内外で感染が拡大している新型コロナウイルス(2019-nCoV)を巡り、日本感染症学会と日本環境感染学会は、1月29日付で共同声明を出した。各学会員に対し、今後も本ウイルスについて継続的に観察および評価しつつも、「冷静な対応が必要」と呼び掛けている。 声明の主なポイントは以下のとおり。(1)感染症の専門家として冷静な対応を 情報が限られている中での難しい判断が必要だが、信頼できる情報を参考に本ウイルスの感染性、病原性を考慮した対応を指導してほしい。(2)2019-nCoVの病原性や伝播性が変化する可能性否定できず、継続観察が必要 2019-nCoVが、遺伝学的にSARS-CoVに近縁であることが報告されている。現段階で変異を起こしているという情報はないものの、外来遺伝子の獲得や突然変異により常に強毒化する可能性が考えられ、今後本ウイルスの病原性や伝播性が変化する可能性も否定できないことから、継続した観察が必要。(3)感染伝播の現状、広がりの可能性は推定難しい状況 現在、武漢市を中心に、ほぼ中国全土で感染例が報告されている。世界的には、日本をはじめ、アジア、米国、欧州など、20を超える国と地域で感染例が報告されている。これから数週間に渡って、検査人数の増加と相まって2019-nCoV感染患者の増加が予想されるが、感染源不明の2次感染例の検出頻度が重要な情報となる。2次感染例の推移を参考に、2019-nCoVの感染性および今後の広がりについての評価が重要となる。(4)2019-nCoVが直接原因の重症例・死亡例は、正しい評価困難 2019-nCoV感染例を巡っては、日々、刻々と状況が変化し、正確な数を把握できないことから、致死率および重症化率を推定することは困難。しかし、死亡数だけを見て国民がパニックになることが最も危険である。気を緩めることなく、感染症の専門家としての知識と経験を総動員し、冷静な対応が求められる。(5)感染対策は、標準予防策+飛沫・接触予防策の徹底 コロナウイルスは原則として飛沫感染で伝播し、現時点では空気感染の可能性はきわめて低い。そのため、感染対策は標準予防策に加えて飛沫・接触予防策の徹底が基本となる。ウイルスで汚染した手指を介した目・口の粘膜からの感染伝播にも注意。気管吸引、挿管などエアロゾル発生リスクが高い処置を行う場合には、一時的に空気感染のリスクが生じると考えられ、N95マスクを含めた空気予防策の実施も必要。(6)指定感染症となった2019-nCoV、公費負担で隔離可能に 1月28日、2019-nCoVを指定感染症とする政令が閣議決定され、2月1日から施行される。これにより、2019-nCoV患者を医療費の公費負担の下で隔離できるようになる。また、武漢市など中国からの訪問者で、臨床症状や検査から肺炎が疑われる場合には、ただちに行政機関に報告する必要がある。(7)2019-nCoV関連の重要情報 1.厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A 2.国立感染症研究所 3.CDC情報WHOが30日付で緊急事態宣言 WHO(世界保健機関)は、1月30日、2019-nCoVについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。緊急事態宣言は、アフリカ・コンゴで発生したエボラ出血熱の感染が拡大した2019年7月に出されて以来で、今回で6例目となる。

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日本人統合失調症患者に対するブロナンセリン経皮吸収型製剤の52週間長期投与試験

 ブロナンセリン経皮吸収型製剤は、日本において統合失調症治療に使用可能な薬剤であり、錠剤とは異なるいくつかの利点をもたらす可能性がある。藤田医科大学の岩田 仲生氏らは、日本人統合失調症患者におけるブロナンセリン経皮吸収型製剤の長期安全性および有効性の評価を行った。CNS Drugs誌オンライン版2019年12月27日号の報告。 日本の37施設において、成人の統合失調症患者を対象としたオープンラベル試験を実施した。対象患者は、コホート1またはコホート2のいずれかに登録された。コホート1は、ブロナンセリン錠8~16mg/日を6週間投与した後、ブロナンセリン経皮吸収型製剤40~80mg/日を52週間貼付した。経皮吸収型製剤の用量は、錠剤の用量に従って決定した。コホート2は、ブロナンセリン経皮吸収型製剤を40mg/日より開始し、40~80mg/日で52週間貼付した。両コホートともに、1~2週間のフォローアップを行った。 安全性のエンドポイントは、有害事象(AE)、治療関連AE、錐体外路系AE(DIEPSSスコアの変化量として評価)の発生、抗パーキンソン薬の併用、皮膚刺激を含む皮膚関連AEの発生とした。血清プロラクチン濃度、バイタルサイン、体重、心電図(ECG)の変化、補正QT(QTc)間隔などの検査値も評価した。自殺念慮は、コロンビア自殺重症度評価尺度(Columbia-Suicide Severity Rating Scale:C-SSRS)スコアを用いて評価した。有効性は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計およびサブスケールスコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアを用いて、経皮吸収型製剤での治療期間を通じて評価した。その他のエンドポイントは、薬に対する構えの調査票(Drug Attitude Inventory 10:DAI-10)合計スコア、健康関連QOL評価尺度(EuroQol-5 Dimension:EQ-5D)効用値、剤形に関する患者アンケートを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、同意が得られた223例(コホート1:117例、コホート2:106例)であった。・コホート1の117例中108例がブロナンセリンの錠剤で治療を開始し、その後経皮吸収型製剤へ移行した97例について安全性分析が行われた。・コホート2では106例中、ブロナンセリン経皮吸収型製剤で治療された103例について安全性分析を行った。・全体で、男性は91例(45.5%)であった。・平均年齢は43.8歳であった。・治療中止は、コホート1で40例(41.2%)、コホート2で44例(42.7%)であった。・中止理由は、AEが18.6%(コホート1)および11.7%(コホート2)、同意の撤回が13.4%(コホート1)および20.4%(コホート2)、皮膚関連AEは全体で7例であった。・AEは、174例(87.0%)で報告された。重篤なAEは、13件12例(コホート1:6例、コホート2:6例)で認められた。・重篤なAEは、統合失調症関連が6件、その他が7件(衝動制御障害、骨折、鼻出血、喘息、誤嚥性肺炎、ヘモフィルス性肺炎肺炎)であった。・主なAEは、鼻咽頭炎62例(31.0%)、適用部位紅斑45例(22.5%)、適用部位そう痒感23例(11.5%)、アカシジア20例(10.0%)であった。・AE発生率は、コホート1で84.5%、コホート2で89.3%であり、類似していた。・錐体外路系AEは51例(25.5%)、皮膚関連AEは83例(41.5%)で認められた。・これらのAEは、いずれも重篤ではなかった。・52週目におけるDIEPSS合計スコアのベースラインからの平均変化量は、-0.1±1.55であり、顕著な影響は認められなかった。・併用薬に関しては、抗パーキンソン薬が、コホート1で33.0%(97例中32例)、コホート2で22.3%(103例中23例)に認められた。・皮膚関連AEの大部分は治療初期に発生し、外用療法で適切に管理できた。・ベースライン時に、すべてのC-SSRSカテゴリで「いいえ」と回答した患者129例中、自殺念慮の出現ありと評価された患者は13例(10.1%)であった。・ベースライン時に、すべてのC-SSRS自殺行動カテゴリで「いいえ」と回答した患者172例中、経皮吸収型製剤での治療中に自殺行動が認められた患者は1例(0.6%)であった。・プロラクチンレベル、バイタルサイン、体重、ECG、代謝関連パラメータ、QTc間隔を含む臨床検査値に有意な変化は認められなかった。・体重の平均変化量は、コホート1で-0.04±4.561kg、コホート2で-0.67±6.841kgであった。・52週目におけるPANSS合計スコアのベースラインからの平均変化量は、コホート1で-0.1±11.6、コホート2で-3.4±15.3であった。・PANSSスコアは、コホート1においてブロナンセリンの錠剤から経皮吸収型製剤へ切り替え後も変化することなく、52週間の治療でスコアの低下が認められた。・52週目におけるCGI-Sスコアのベースラインからの平均変化量は、両コホートを合わせて-0.2±1.03であった。・52週間の経皮吸収型製剤での治療後、DAI-10合計スコアは、データが利用可能な129例中82例(63.6%)において、ベースラインと比較し、増加または変化なしであった。・両コホートを合わせた200例におけるintention-to-treat分析では、最終評価時点でのEQ-5Dのベースラインからの平均変化量は、-0.0365±0.17603であった。・ブロナンセリン経皮吸収型製剤に対する患者の印象は、おおむね肯定的であった。 著者らは「ブロナンセリン経皮吸収型製剤は、統合失調症の長期治療に安全かつ効果的に使用できる薬剤である」としている。

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新型肺炎で緊張高まる中、感染症予防連携プロジェクトが始動

 東京オリンピック・パラリンピックを迎える年となる2020年1月、日本感染症学会・日本環境感染学会は感染症予防連携プロジェクト「FUSEGU(ふせぐ)2020」を発足、発表会を行った。年頭から中国での新型コロナウイルス感染がニュースとなり、図らずとも感染症への一般の関心が高まる中でのスタートとなった。 挨拶に立った日本感染症学会理事長の舘田 一博氏は、本プロジェクトの意義を「オリンピックイヤーを迎え、マスギャザリング(一定期間、限定された地域において同一目的で多人数が集まること)に向けた注意喚起が重要。既に各学会・団体がさまざまな取り組みをしているがそれを連携させ、産官学が協働して一般市民を巻き込んで情報提供をしていく必要がある」と述べた。 東京オリンピックを昨年行われたラグビーW杯と比較すると、参加国・ボランティア数において約10倍の規模となり、政府は2020年の来日外国人旅行者数を過去最高の4,000万人と見込む。これまでもマスギャザリングにおける集団感染は頻繁に発生しており、前回のリオオリンピックではジカ熱、昨年のラグビーW杯では髄膜炎菌感染症の患者が出た。会期中のすべての感染症発生を防ぐことは難しくとも、予防と早期発見によりアウトブレイクにまで至らせないことが重要となる。 「FUSEGU」の具体的な活動として、昨年夏には患者の症状から考えられる感染症を解説する医療者向けサイト「感染症クイック・リファレンス」を開設したほか、一般市民/医療関係者/大会関係者/メディア関係者に区分けしたうえで「事前に受けておきたいワクチン」の推奨度を示す一覧表を作成し、メディア側にも発信を求めた。今後は「感染症に関する意識調査」をはじめ、大学生を対象にした感染症カレッジ、市民公開講座などを行っていく予定だ。 舘田氏は「1学会ができることには限界がある。各学会に連携を呼びかけたところ、すでにほかの9学会、製薬企業を中心とした12社から賛同表明をいただいた。今後もさらに各団体との連携を図っていきたい」とまとめた。

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新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が、急速に拡大している。中国・金銀潭医院のChaolin Huang氏らは、2020年1月2日までに新型コロナウイルスの感染が確認された入院患者について、現段階で判明している疫学的特徴と臨床転帰について前向きに調査、分析した。Lancet誌オンライン版1月24日号掲載の報告。 調査対象は、新型コロナウイルス感染が疑われ、武漢市内の指定病院に入院した患者のうち、RT-PCR法および次世代シーケンシングによって同症と特定された41例で、国際重症急性呼吸器・新興感染症協会(ISARIC)のデータを基に分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・41例中30例(73%)が男性であった。・年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)。・13例(32%)が何らかの基礎疾患を有していた(糖尿病:8例、高血圧:6例、心血管疾患:6例)。・27例(66%)が海鮮市場(華南海鮮城)に何らかの直接的関係があった。・最初に特定された症例の発症日は2019年12月1日で、当該例ではほかの家族に発熱や呼吸器症状は見られなかったが、その後1例の家族クラスターが判明している。・発症時の一般的症状は、発熱(98%)、咳(76%)および筋肉痛または疲労(44%)で、喀痰や頭痛、喀血および下痢などもわずかに見られた。・全症例で肺炎があり、胸部CTで異常な所見が認められ、98%で両側性病変を有していた。・40例中22例(55%)で呼吸困難が見られ、発症から呼吸困難までの期間の中央値は8.0日(四分位範囲:5.0~13.0)。・合併症として、急性呼吸促迫症候群(29%)、RNAaemia(15%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などが見られた。・32%がICUに入り、15%が死亡した。 著者らは、本研究以降も感染者および死亡者数が急速に増加していることを踏まえ、「今回の新型コロナウイルスが効率的なヒト-ヒト感染能力を獲得したのではないかと懸念している」とし、「パンデミックの可能性があるため、今後の宿主適応、ウイルスの進化、感染性、伝染性および病原性を注意深く監視しなければならない」と述べている。

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再入院抑制施策の導入で、死亡は増大したのか/BMJ

 米国では再入院率を低下させるため、インセンティブ付きのプログラム「Hospital Readmissions Reduction Program(HRRP)」が施行されている。しかしそのために、直近の退院患者では再入院が必要となった場合も入院を拒否される可能性があり、死亡リスクが増大するのではとの指摘がある。実際にここ数年、心不全で入院が必要になったメディケア受給者で退院後30日死亡が増加しており、全米で経過観察病棟や救命救急部門(ED)での治療の増加が報告されているという。米国・テキサス大学サウスウエスタン医療センターのRohan Khera氏らは、HRRP対象症状で入院した患者の退院後間もないEDなどの利用データと患者アウトカムについて、プログラムの影響を評価する必要があるとして調査を行った。結果、プログラムの影響はみられなかったことが判明したという。BMJ誌2020年1月15日号掲載の報告。退院後30日間の死亡について、急性期治療の利用状況を詳細に分析 研究グループは、HRRP対象症状の入院患者が退院後30日間に再入院はしなかったが経過観察病棟やEDで治療を受けており死亡リスクが増大していたか、またそれら患者の退院後の入院、ED、経過観察病棟での急性期治療利用の時間的経過を、後ろ向きコホート研究にて評価した。 2008~16年のメディケア支払いデータを用いて、HRRP対象症状(心不全、急性心筋梗塞、肺炎)で入院した65歳以上の患者の退院後30日死亡を、その間の急性期治療の利用状況(退院後30日間および31~90日間の入院、経過観察病棟、EDの利用)とともに分析した。死亡増加は心不全例のみ、その半数がホスピスへの退院例 HRRP対象症状の入院は、心不全377万2,924例、急性心筋梗塞157万113例、肺炎313万1,162例であった。 退院後30日全死亡率は、心不全例8.7%、急性心筋梗塞例7.3%、肺炎例8.4%であった。リスク補正後の死亡率は、心不全例では年間0.05%増加(95%信頼区間[CI]:0.02~0.08)していた一方、急性心筋梗塞例では年間0.06%減少(-0.09~-0.04)していた。肺炎例では有意な変化はみられなかった。 とくに心不全例で死亡の増加がみられたのは、退院後あらゆる急性期治療を受けていなかった患者であり、年間当たりの増加は0.08%(95%CI:0.05~0.12)で、心不全例の退院後死亡率の全体の年間絶対増加率を上回っていた。 また、死亡増加は経過観察病棟やEDではみられなかった。 一方で、30日再入院率の低下とともに、経過観察病棟での滞在やEDの受診は、全3症状ともに、退院後30日間およびそれ以降の期間についても増加していた。しかし、退院後30日間の急性期治療の全利用について、有意な変化はみられなかった。症状別にみると、急性心筋梗塞を除き、心不全例と肺炎例では有意に低下していた。 著者は「死亡の増加は、プログラムの公表前に起きていたもので、退院後急性期治療を受けていない患者に集中しており、その患者の半数の退院先はホスピスであった」と述べるとともに、「退院後、経過観察病棟とEDの利用は増加したが、これら部門での治療と死亡リスク増大に関連性はみられなかった」としている。

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国内2例目の新型肺炎感染確認、厚労省が積極的疫学調査実施へ

 中国湖北省・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が急速に広がっている問題で、厚生労働省は24日、日本国内で2例目となる新型コロナウイルスに関連した感染症の症例が確認されたことを発表した。患者は武漢市から渡航した40代男性で、今月19日に来日。22日に発熱、咽頭痛があったため医療機関を受診したところ、肺炎像を認め、東京都内の医療機関に入院。国立感染症研究所が調べたところ、今日未明に新型肺炎の感染が確認された。 新型肺炎を巡っては、これまでに少なくとも18人が死亡、感染者は中国本土だけでも600人超が確認されている。厚労省は、23日付で「新型コロナウイルスに関する検査対応について(協力依頼)」を発布。感染研が新型コロナウイルスの病原体検出のためのPCR用プライマーを作成して地方衛生研究所へ送り、医療機関に検査協力を呼び掛けるなど、積極的疫学調査に乗り出した。 一方、WHO(世界保健機関)は、日本時間の24日未明に緊急委員会を開いて協議した結果、現段階では「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC:Public Health Emergency of International Concern)」には該当しないと発表している。 中国は今日から春節で、30日まで1週間の大型連休に入る。日本国内はもとより、近隣のアジア諸国や米国でも新型肺炎の感染者が確認されている中、人の移動が増えることでさらに感染が拡大する恐れもある。 旅行者が不調を訴え受診した際には、武漢市への渡航歴や、「武漢市への渡航歴があり、発熱かつ呼吸器症状を有する人」との接触歴を聴取するなど、慎重に疑い例のスクリーニングを実施し、確定例および疑い例に対しては万全の感染対策を講じていただきたい。また、厚労省のウェブサイトでも特設ページで医療機関向けの情報が随時更新されている。

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マイコプラズマ市中肺炎児、皮膚粘膜疾患が有意に多い

 かつて、その流行周期から日本では「オリンピック肺炎」とも呼ばれたマイコプラズマ肺炎について、ほかの起炎菌による市中肺炎(CAP)児と比べた場合に、皮膚粘膜疾患が有意に多く認められることを、スイス・チューリッヒ大学小児病院のPatrick M. Meyer Sauteur氏らが明らかにした。現行の診断検査では、肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae)の感染と保菌を区別できないため、皮膚粘膜疾患の原因としてマイコプラズマ感染症を診断することは困難となっている。今回の検討では、M. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患は、全身性の炎症や罹患率および長期にわたる後遺症リスクの増大と関連していたことも示されたという。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年12月18日号掲載の報告。 研究グループはCAP児を対象に、改善した診断法を用いてM. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患の頻度と臨床的特性を調べる検討を行った。 2016年5月1日~2017年4月30日にチューリッヒ大学小児病院で登録されたCAP患者のうち、3~18歳の152例を対象に前向きコホート研究を実施。対象児は、英国胸部疾患学会(British Thoracic Society)のガイドラインに基づきCAPと臨床的に確認された、入院または外来患者であった。 データの解析は2017年7月10日~2018年6月29日に行われた。主要評価項目は、CAP児におけるM. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患の頻度と臨床特性とした。マイコプラズマ肺炎の診断は、口咽頭検体を用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で行い、ほかの病原菌によるCAPキャリアとM. pneumoniae感染患者を区別するため、酵素免疫測定法(ELISA)で特異的末梢血中IgM抗体分泌細胞の測定を行い、確認した。 皮膚粘膜疾患は、CAPのエピソード中に発生した、皮膚および/または粘膜に認められたあらゆる発疹と定義した。 主な結果は以下のとおり。・CAP児として登録された152例(年齢中央値5.7歳[四分位範囲:4.3~8.9]、84例[55.3%]が男子)において、PCR法でM. pneumoniae陽性が確認されたのは44例(28.9%)であった。・それら44例のうち、10例(22.7%)で皮膚粘膜病変が認められ、全例が特異的IgM抗体分泌細胞の検査結果で陽性であった。・一方、PCR法でM. pneumoniae陰性であったケースのうち、皮膚症状が認められたのは3例(2.8%)であった(p<0.001)。・M. pneumoniae誘発皮膚粘膜疾患は、発疹および粘膜炎(3例[6.8%])、蕁麻疹(2例[4.5%])、斑点状丘疹(5例[11.4%])であった。・2例に、眼粘膜症状(両側性前部ぶどう膜炎、非化膿性結膜炎)が認められた。・M. pneumoniaeによる皮膚粘膜疾患を有する患児は、M. pneumoniaeによるCAPを認めるが皮膚粘膜症状は認めない患児と比べ、前駆症状としての発熱期間が長く(中央値[四分位範囲]:10.5[8.3~11.8]vs.7.0[5.5~9.5]日、p=0.02)、CRP値が高かった(31[22~59]vs.16[7~23]mg/L、p=0.04)。また、より酸素吸入を必要とする傾向(5例[50%] vs.1例[5%]、p=0.007)、入院を必要とする傾向(7例[70%]vs.4例[19%]、p=0.01)、長期後遺症を発現する傾向(3例[30%]vs.0、p=0.03)も認められた。

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新型コロナウイルスに関連する患者への対応について/厚生労働省

 中国・湖北省武漢市当局は1月20日現在、新型コロナウイルスの感染者が136人増えて198人となり、3例の死亡が確認されたことを発表している。 一方わが国でも、神奈川県内の医療機関を受診した武漢市の滞在歴がある肺炎患者において、国内で初めて新型コロナウイルス陽性の結果が確認された。厚生労働省が発表している患者の情報は以下のとおり。■患者概要・年代:30代・性別:男性・居住都道府県:神奈川県・症状:1月3日から発熱あり。6日に帰国し、同日に医療機関を受診。10日から入院。15日に症状が軽快し、退院。・滞在国:中華人民共和国(湖北省武漢市)・滞在国での行動歴:本人からの報告によれば、「武漢市の海鮮市場(華南海鮮城)には立ち寄っていない」とのこと。ただし中国において、詳細不明の肺炎患者と濃厚接触の可能性がある。■疑い患者に関しても、保健所へ相談など慎重な対応を 日本医師会に向けて、厚生労働省健康局結核感染症課から「新型コロナウイルスに関連した肺炎患者の発生に係る注意喚起について」(令和2年1月17日 事務連絡)が発出されている。 新型コロナウイルスに関連した肺炎の疑いがある患者への対応に当たっては、「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策」を参考に、画像検査などで肺炎と診断された場合には、「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)」における「重症」の定義に合致しない場合でも、同サーベイランスの運用について保健所へ相談するよう呼び掛けている。

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高出血リスク重症例への予防的PPI・H2RAは有用か/BMJ

 出血リスクの高い成人重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)およびH2受容体拮抗薬(H2RA)の予防的投与は非投与群と比較して、消化管出血について臨床的に意味のある減少をもたらす可能性が示された。中国・首都医科大学のYing Wang氏らがシステマティックレビューとメタ解析を行い明らかにしたもので、リスクの低い患者ではPPIおよびH2RAの予防的投与による出血の減少は意味のないものであり、また、これらの予防的投与は、死亡率や集中治療室(ICU)滞在期間、入院日数などのアウトカムとの関連は認められなかった一方、肺炎を増加する可能性が示されたという。消化管出血リスクの高い患者の大半が、ICU入室中は胃酸抑制薬を投与されるが、消化管出血予防処置(多くの場合ストレス性潰瘍の予防とされる)については議論の的となっている。BMJ誌2020年1月6日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析、GRADEシステムでエビデンスの質も評価 研究グループは、重症患者に対するPPI、H2RA、スクラルファートの投与、または消化管出血予防(あるいはストレス潰瘍予防)未実施のアウトカムへの相対的影響を患者にとって重要であるか否かの観点から明らかにするため、Medline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験レジスタおよび灰色文献を2019年3月時点で検索し、システマティックレビューとメタ解析を行った。 成人重症患者に対し、PPI、H2RA、スクラルファートあるいはプラセボまたは予防的投与未実施による消化管出血予防について比較検討した無作為化試験を適格とした。2人のレビュアーがそれぞれ適格性について試験をスクリーニングし、データの抽出とバイアスリスクの評価を行った。また、パラレルガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)がシステマティックレビューの監視を行い、患者にとって重要なアウトカムを同定するなどした。 ランダム効果ペアワイズ/ネットワークメタ解析を行い、GRADEシステムを用いて、各アウトカムに関するエビデンスの質を評価。バイアスリスクが低い試験と高い試験の間で結果が異なった場合は、前者を最善の推定であるとした。高出血リスク群では、患者に恩恵をもたらす? 72試験、被験者合計1万2,660例が適格として解析に組み込まれた。 出血リスクが最高リスク(8%超)の患者と高リスク(4~8%)の患者については、PPIおよびH2RAの予防的投与は、プラセボまたは非予防的投与に比べて、臨床的に意味のある消化管出血を減少する可能性が示された。PPIのオッズ比(OR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.42~0.89)で、最高リスク患者では同リスクは3.3%減少、高リスク患者では2.3%減少した(確実性・中)。また、H2RAのORは0.46(0.27~0.79)で、最高リスク患者では4.6%減少、高リスク患者では3.1%減少した(確実性・中)。 一方でPPI、H2RA投与はいずれも、非予防的投与と比べて肺炎リスクを増加する可能性が示された(PPIのOR:1.39[95%CI:0.98~2.10]、5.0%増加)(H2RAのOR:1.26[0.89~1.85]、3.4%増加)(いずれも確実性・低)。また、死亡率との関連は認められないと考えられた(PPIのOR:1.06[0.90~1.28]、1.3%増加)(H2RAのOR:0.96[0.79~1.19]、0.9%減少)(いずれも確実性・中)。 そのほか予防的投与による、死亡率、クロストリジウム・ディフィシル感染症、ICU滞在期間、入院日数、人工呼吸器装着期間への影響を支持する結果は、エビデンスがばらついており示されなかった。

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中国で原因不明の肺炎59例、厚労省が注意呼び掛け

 中国・湖北省武漢市で、先月中旬から下旬にかけて、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されている。厚生労働省によると、現在までにヒト-ヒト感染は明らかになっておらず、爆発的な広がりが懸念される段階ではないが、引き続き情報収集を進めている。 国立感染症研究所などが今月5日時点でまとめた内容によると、症例数は59例で、臨床徴候と症状は主に発熱。いずれも2019年12月12日~29日に発症したとみられ、このうち7例が重症となっている。感染経路は不明であるが、ヒト-ヒト感染については明らかな証拠がなく、医療従事者における感染例も確認されていない。発生場所の疫学的な特徴としては、海鮮市場と関連した症例が多いとのこと。当該の海鮮市場(華南海鮮城)は、野生動物を販売する区画もあるが、現在は閉鎖中という。 なお、現段階でインフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)の可能性はいずれも否定されている。 日本は年末年始の休暇を利用した海外渡航者が一段落したところだが、中国では人の出入りが大きく増える春節(旧正月の大型連休)を2週間後に控えている。厚労省健康局結核感染症課は、「現段階においては、人から人への感染が確認されていないので、通常の診療で対応できると考える。ただし、咳や発熱等の症状がある患者が来院したら、直近の渡航歴はしっかり確認していただきたい。また、インフルエンザなどが否定され、原因が明らかでない肺炎患者を診察した際には、各自治体に報告してほしい」と話している。

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第5回 サルコペニアを合併する高齢患者に必要な心リハとは?【今さら聞けない心リハ】

第5回 サルコペニアを合併する高齢患者に必要な心リハとは?今回のポイント高齢心不全患者では半数以上でサルコペニアを合併しているサルコペニアは生活の質を低下させるだけでなく、生命予後の不良因子である高齢心不全患者こそ、心リハでの積極的介入が重要第2回でも紹介しましたが、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は、現在、心筋梗塞や狭心症だけではなく心不全患者にも保険適用となっています。日本人口の高齢化に伴い、心不全患者が増加し続けており、2020年には120万人を超えると予想されています。最近の日本の急性心不全入院患者の多施設前向き研究では、心不全入院患者の年齢中央値は80歳でした1)。さて、読者の皆さまは、高齢の急性心不全入院患者に心リハを行うべきと考えるでしょうか? よく内科医の方から、『高齢の急性心不全患者では足腰の問題もあり、エルゴメータやトレッドミルの運動ができないので、心リハは適応外ではないですか?』『急性心不全入院患者では循環動態が不安定なので、できるだけ負担をかけないために安静にしているほうがいいのでは?』といった質問を受けます。果たして、高齢の急性心不全入院患者では安静が良いのでしょうか? このような患者は、退院後も運動療法が適応外なのでしょうか?心リハ=エルゴメータ運動ではない通常、心リハの運動療法では、大腿四頭筋群を中心に使う律動的な運動を行いやすいエルゴメータ運動が用いられます。しかし、当然ながらエルゴメータの上で座位を保持できるバランス力に加え、自転車こぎ運動ができる最低限の筋力・持久力が必要になります。エルゴメータでは負荷量を調整できますが、通常のエルゴメータには機器の重みとして最低10W(ワット)の負荷がかかります。このため、10Wの負荷で持久的な自転車こぎ運動ができる患者でなければ、通常のエルゴメータによる有酸素運動の適応にはなりません。高齢者に限らず、重症心不全患者などで運動耐容能が高度に低下し通常のエルゴメータ運動ができない場合には、椅子からの立ち上がり運動(スクワット)やつま先立ち運動(カーフレイズ)などのごく軽度の筋力トレーニングを行ってもらいます。このような筋力トレーニング5~10回を1セットとして1日に頻回に行う方法により、体幹・下肢の筋量増加を目指します(「少量頻回」の原則)。また、このような患者では、歩行をはじめ日常生活動作(ADL)が不安定な患者も多いので、歩行訓練や移乗訓練などADL訓練を行います。いわゆる廃用症候群のリハビリと似たトレーニング内容となりますが、心不全患者ではリスク管理が重要です。リハビリを実施する際には、心電図モニタリング・血圧・Borg指数を確認し、専門医の監督のもとで行います。急性心不全では安静臥床が適切か?急性心不全により循環動態が悪化している際には安静が必要です。病状によっては、トイレ動作ですら、さらなる循環動態の悪化を招くことがあります。しかし、最近では循環動態のモニタリング機器の性能が格段に向上し、循環器救急患者のリハ中のリスク管理が容易になりました。そのような中で、リスク管理下での超急性期リハの安全性や有効性が検討された結果、現在では急性心不全患者でも「初期治療により循環動態の改善が認められれば、速やかに心リハを開始すべきである」と考えられています。安静臥床は筋萎縮だけでなく、せん妄や・無気肺・肺炎・自律神経機能異常などの合併症を来しやすく、それらの合併症により、治療は一層複雑化してしまいます。したがって、超急性期の心リハでは、初期治療により循環動態および自覚症状の改善傾向を認めたら速やかに(できれば治療開始後48時間以内に)リハ介入し、ベッド上あるいはベッド周囲での運動を開始することを目指します。循環動態・自覚症状の速やかな改善は心不全患者の長期予後とも関連することが知られており、早期の循環動態改善を目指した治療薬も開発が進められています。これらの治療に並行した早期リハ介入は、とくにサルコペニアに陥りやすい高齢心不全患者にとって重要です。近年の臨床研究にて、心不全患者の体重減少、すなわちサルコペニアはADLを低下させるだけではなく、生命予後不良因子であることがわかっています2)。心リハでサルコペニアの進行を予防することは、心不全患者のADLのみならず生命予後にも関わる重要な介入であるといえます。とくに高齢心不全患者では同化抵抗性によりトレーニングを行っても筋肉量が増加しにくいことや社会的事情により回復期の通院心リハへ参加することが困難なことも多いため、入院中に低下した筋量・身体機能を退院後に回復させることは容易ではありません。介護を要する高齢患者の増加を防ぐために、また介護負担を少しでも軽減するために、入院中の心リハがカギとなると考えられます。最後に臨床の現場では、入院中に積極的なリハがないまま、退院日前日まで“原則安静”とされている心不全患者が多いようです。退院後、患者は必要に応じて身体を動かす必要がありますが、医師の大半はそれに無関心で、「きつい活動は控えましょう」の一言のみ。疾患管理において安静や運動制限が本当に重要と考えるのであれば、入院中から患者がどの程度の身体活動を症状・循環動態の悪化なく行えるのかを医学的に評価した上で、退院時に「あなたはここまでの活動は問題なくできますが、これ以上のきつい活動は控えてくださいね」というように具体的に指導するべきではないでしょうか。高齢者診療に関わる医療者は、安静のもたらす功罪について今以上に意識を高める必要がありそうです。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>「心リハ=エルゴメータ運動ではない」と書きましたが、運動耐容能の低下した高齢心不全患者では通常のエルゴメータ運動が困難でも、ストレングスエルゴ8®(アシスト機能付きエルゴメータ)や、てらすエルゴ®(仰臥位用負荷量可変式エルゴメータ)などを用いれば、自転車こぎ運動が可能になることも多く、当院でもこれらの機器を用いて高齢心不全患者に対して有酸素運動の指導を行っています3)。また、当院では導入していませんが、アームエルゴ®など上肢を使うエルゴメータもあります。患者ごとに適切な運動の種類を検討することも運動処方のポイントです。運動に用いる器具はいくつかバリエーションを用意し、どのような器具を用いるのか、患者ごとに指導できると良いですね(図1)。画像を拡大する1)Yaku H, et al. Circ J. 2018;82:2811-2819.2)Anker SD, et al. Lancet. 2003;361:1077-1083.3)Ozasa N, et al. Circ J. 2012;76:1889-1894

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ワクチン接種における副反応、副反応疑い報告制度と救済制度【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第2回

はじめにワクチンの予防接種は、個人と集団(社会)を感染症から守るために重要な予防的措置である。しかし、ほかの医薬品と同様に副作用が起こるリスクはゼロではなく、極めてまれではあるが、不可避的に健康被害が起こり得る。そのため、私たち医療者はワクチン接種における副作用(副反応)とその報告制度、健康被害時の救済制度について理解し、ワクチン接種を受ける方(被接種者)やその保護者に対して予診の際にこれらについて説明し、副反応や健康被害が発生した際にはサポートできるようにしておく必要がある。「有害事象」「副作用」「副反応」は何が違う?「有害事象」「副作用」「副反応」、これらはワクチン接種に関連して使用される用語だが、使い分けができているだろうか(表1)。「有害事象」や「副作用」は、ワクチンを含む医薬品や手術などの医療行為に関連して使用され、「副反応」はワクチン接種に関連した事象に限定して使用される。いずれも「ワクチン接種をしたあとに起こった症状」に対して使用される用語だが、しばしば混同されている。とくに一般の方やマスメディアでは、誤解して使用や理解されていることがあり、医療者として注意が必要である。(図1)1)有害事象因果関係の有無を問わず、ワクチン接種など医薬品の投与や手術や放射線治療など医療行為を受けたあと患者(被接種者)に生じた医療上のあらゆる好ましくない出来事のこと。医療行為と有害事象との間に時間的に関連がある、前後関係はあるが、因果関係の有無は問わないということになる。そのため有害事象には、ワクチン接種後に偶然あるいは別の原因で生じた出来事も含まれる。しばしば、この時間的な前後関係をただちに因果関係であるかのようにメディアが報じたり、一般の方がそのように誤解していることに注意する。2)副作用治療や予防のために用いる医薬品の主な作用を主作用といい、主作用と異なる作用を副作用という。広義の副作用(side effect)には、人体にとって有害な作用と有害でない(好ましい、肯定的な)作用の両方が含まれる。一般的には医薬品による副作用に対しては、有害な作用である狭義の副作用(adverse drug reaction)が用いられる。医薬品と副作用の間には前後関係があり、また、副作用は医薬品の「作用」であるため、医薬品と副作用(による症状)の間には、因果関係があるということになる。3)副反応ワクチン接種の主作用(ワクチン接種の目的)は、ワクチン接種によって免疫反応を起こし、ワクチンが対象とするVPD(Vaccine Preventable Diseases:ワクチンで防げる病気)に対する免疫を付与することである。一方、ワクチン接種に伴う、免疫の付与以外の反応や接種行為による有害事象を副反応という。言い換えると副反応とは「ワクチン接種による(狭義の)副作用と接種行為が誘因となった有害事象」のことである。そのため、ワクチン接種と副反応の間には前後関係があり、因果関係があるということになる。表1 有害事象、副作用、副反応の違い画像を拡大する図1 有害事象、副作用、副反応の概念図画像を拡大する副反応・有害事象の要因と症状副反応・有害事象の主な要因と症状を表2に示す。表2 副反応・有害事象の主な要因と症状画像を拡大する1)不活化ワクチン一般的な副反応として、接種した抗原・アジュバンドやワクチン構成成分などで誘起された炎症による局所反応(発赤、硬結、疼痛など)や全身反応(発熱、発疹など)がある。また、数10万〜100万分の1の確率とまれではあるが重篤な副反応として、アナフィラキシーや血小板減少性紫斑病、脳炎・脳症などがある。医療者はこれらの副反応について、事前に被接種者や保護者に説明を行う。とくに頻度の高い一般的な副反応については、症状出現時の対応(表3)まで含めて説明する。また、接種後のアナフィラキシーなどに対応するため、接種後30分は院内で経過観察を行う。2)生ワクチン弱毒化したワクチン株による感染、つまり病原性の再獲得によって生じる副反応がある。なお、局所の発赤や発熱などの高頻度な副反応は、軽微な症状であるため、単独では予防接種後副反応疑い報告基準(後述)における医療者の報告義務規定にはあたらない。表3 高頻度な副反応の経過と対応画像を拡大する予防接種後副反応疑い報告制度とは予防接種後副反応疑い報告制度とは、予防接種法に基づき、「医師などが予防接種を受けた者が一定の症状を呈していると知った場合に厚生労働大臣に報告しなければならない(報告義務がある)制度」である。この制度は、予防接種後に生じる種々の身体的反応や副反応疑いについて情報を収集し、ワクチンの安全性について管理・検討を行い、国民に情報を提供すること、および今後の予防接種行政の推進に資することを目的としている。本制度は、2013年の法改正により大幅に変更され、2014年11月から副反応疑い報告(予防接種法)と医薬品・医療機器等安全性情報報告(医薬品医療機器等法)の報告先は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に一元化され、報告の方法が簡素化された。報告基準1)定期接種の場合予防接種法に基づいて報告基準があり、ワクチン(対象疾患)ごとに報告すべき症状、症状発生までの時間(期間)が規定されている(表4)。この報告基準にある症状(「その他の反応」を除く)について、それぞれに定められている時間までに発症した場合は、因果関係の有無を問わず、医師などは報告する義務がある。「その他の反応」については(1)入院、(2)死亡または永続的な機能不全に陥るおそれがある場合で、それが予防接種との因果関係が疑われる症状について報告する。また、報告基準にある症状でこの時間を超えて発生した場合でも、因果関係が疑われるものについては「その他の反応」として報告する。2)任意接種の場合定期接種の場合のような報告基準はなく、医師などは予防接種後副反応疑い報告書に症状名を記載する。表4 報告基準の例(一部抜粋)画像を拡大する報告方法予防接種後副反応疑い報告書を厚生労働省のWebサイトよりダウンロードし記入、または国立感染症研究所のWebサイトより入力アプリをダウンロードし、報告書PDFを作成、印刷し、PMDAへFAX(FAX番号:0120-176-146)にて送信する。これら報告の流れを図2に示す。図2 予防接種後副反応疑い報告の流れ画像を拡大する救済制度についてきちんと説明していますか?インフルエンザワクチンの任意接種用の予診票の医師記入欄には「本人又は、保護者に対して、予防接種の効果、副反応及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済について説明しました。」と記載がある。あなたは被接種者や保護者に対して、ワクチン接種における救済制度についてきちんと説明ができているだろうか。予防接種後の健康被害に対する救済制度前述のとおり、予防接種は感染症から個人と社会を守るための重要な施策であるが、極めてまれに健康被害が起こり得る。そのため、予防接種によって健康被害を受けた方に対する特別な配慮が必要であり、公的な救済制度が設けられている。救済制度は一律ではなく、定期接種、任意接種によって異なることに注意する。いずれの場合も給付の請求者は健康被害を受けた本人や家族であるため、医師は救済制度を紹介し、診断書や証明書の作成に協力する。ワクチン接種と健康被害との間に因果関係が認められた場合に救済給付が実施される(表5)。表5 予防接種後の健康被害救済制度の違い画像を拡大する給付の種類には、(1)医療機関での治療に要した医療費や医療手当(医療を受けるために要した諸費用)、(2)障害が残った場合の障害児養育年金または障害年金、(3)死亡時の葬祭料および一時金、遺族年金があるが、各制度によって給付額は大きく異なる。なお、国内未承認ワクチン(いわゆる輸入ワクチン)に対しては、輸入業者が独自の補償制度を設定している場合もあるが、これらの公的な制度は適応されないことにも注意する。1)定期接種の場合:予防接種健康被害救済制度予防接種健康被害救済制度は、予防接種法に基づく定期の予防接種(定期接種)により健康被害を受けた方を救済するための公的な制度である。定期接種を受けた方に健康被害が生じた場合、対象となる予防接種と健康被害との因果関係があるかどうかを疾病・障害認定審査会で個別に審査し、厚生労働大臣が因果関係を認定した場合は、市町村長は健康被害に対する給付を行う。給付の内容は、定期接種のうちA類疾病(B型肝炎、Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核、麻しん・風しん、水痘、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス感染症)とB類疾病(インフルエンザ、高齢者の肺炎球菌感染症)で異なる。B類疾病による健康被害の請求の期限は、その内容によって2年または5年となっているため、とくに留意する。なお、健康被害について賠償責任が生じた場合であっても、その責任は市町村、都道府県または国が負うものであり、当該医師は故意または重大な過失がない限り、責任を問われるものではない。2)任意接種の場合:医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構法(PMDA法)に基づく公的な制度である。これらの制度は、医薬品などを適正に使用したにもかかわらず発生した副作用による入院が必要な程度の疾病や日常生活が著しく制限される程度の障害などの健康被害を受けた方に対して、医療費などの給付を行い、被害を受けた方の迅速な救済(民事責任との切り離し)を図ることを目的としている。どちらの制度が適用されるかは、健康被害の内容や原因によって異なるが、申請窓口はいずれもPMDAであるため、患者や家族から健康被害の相談を受けた際にはPMDAの相談窓口(電話番号:0120-149-931)を紹介する。被接種者・保護者への説明資料以下のような一般の方向けの資料を活用する。日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」〔予防接種の副反応と有害事象〕医薬品副作用被害救済制度リーフレットまとめ「有害事象」「副作用」「副反応」はしばしば混同されて使用されており、医療者としてこれらの違いを理解する。医師などには予防接種後の副反応を疑った際に報告する義務がある。報告制度は定期接種、任意接種によって異なるが、報告先はPMDAに一元化されている。予防接種後の健康被害に対する公的な救済制度は、定期接種、任意接種によって異なるが、いずれもその請求は本人・家族が行うため、医療者はこれらの制度を紹介しサポートする。副反応疑い報告制度と救済制度制度の詳細については、「参考になるサイト」に示した、それぞれ厚生労働省やPMDAのWebサイトおよび『予防接種必携』1)を参照していただきたい。1)予防接種実施者のための予防接種必携 令和元年度(2019).公益財団法人予防接種リサーチセンター.2019.2)藤岡雅司ほか. 予防接種マネジメント. 中山書店;2013.3)中山久仁子編集. おとなのワクチン. 南山堂;2019.参考になるサイト1)予防接種後の有害事象.予防接種基礎講座〔2017年3月開催資料〕(厚生労働省)2)予防接種後副反応疑い報告制度(厚生労働省)[予防接種法に基づく医師等の報告のお願い][予防接種法に基づく副反応疑い報告(医療従事者向け)]3)予防接種後副反応疑い報告書〔別紙様式1〕(厚生労働省)4)「予防接種後副反応疑い報告書」入力アプリ(国立感染症研究所)5)予防接種健康被害救済制度(厚生労働省)6)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構〔PMDA〕).[制度の概要][医療関係者向け][一般の方向け]7)日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」予防接種の副反応と有害事象(日本小児科学会)講師紹介

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インフルエンザ様疾患にも抗インフル薬が有益か/Lancet

 インフルエンザ様疾患でプライマリケア医を受診し、通常治療に加えオセルタミビルの投与を受けた患者は、通常治療のみの患者に比べ、平均で1日早く回復し、高齢で症状が重く、併存疾患があり症状持続期間が長い患者では回復までの期間が2~3日短縮することが、英国・オックスフォード大学のChristopher C. Butler氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年12月12日号に掲載された。欧州のプライマリケアでは、インフルエンザ様疾患への抗ウイルス薬の処方はまれだという。その主な理由は、プライマリケアの実臨床では抗ウイルス薬の効果はないとの認識があること、また、独立の臨床試験で、とくに利益を得ると予測される患者が特定されていないこととされる。欧州15ヵ国のプライマリケア施設が参加した実際的臨床試験 本研究は、欧州15ヵ国のプライマリケア施設で行われた実際的な非盲検無作為化対照比較試験であり、2016年1月15日~2018年4月12日の期間に患者登録が実施された(欧州委員会第7次研究開発枠組計画の助成による)。 対象は、年齢1歳以上、インフルエンザ様疾患でプライマリケア施設を受診した患者であった。インフルエンザ様疾患は、季節性インフルエンザ流行期に、自己申告による突然の発熱がみられ、1つ以上の呼吸器症状(咳、喉の痛み、鼻水、鼻づまり)および1つの全身症状(頭痛、筋肉痛、発汗/悪寒、疲労感)を伴い、症状持続期間が72時間以内と定義された。被験者は、通常治療+オセルタミビルまたは通常治療のみを行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは患者報告による回復までの期間とした。回復は、発熱、頭痛、筋肉痛が軽減または消失し、通常の日常活動への復帰が達成された場合と定義された。便益はインフルエンザ感染の有無にかかわらない 3回の季節性インフルエンザ流行期に3,266例(2015~16年:495例、2016~17年:1,225例、2017~18年:1,546例)が登録された。オセルタミビル群に1,629例、通常治療群には1,637例が割り付けられ、主要エンドポイントの解析にはそれぞれ1,533例(94%)および1,526例(93%)が含まれた。 ベースラインの年齢層別の患者割合は、両群とも12歳未満が14%、12~65歳が80%、65歳以上が6%であった。オセルタミビル群の56%、通常治療群の55%が女性だった。3,059例中1,590例(52%)が、PCRによりインフルエンザ感染症と確定された。 全体の回復までの期間は、オセルタミビル群が通常治療群に比べ短かった(ハザード比[HR]:1.29、95%ベイズ信用区間[BCrI]:1.20~1.39)。事前に規定された36のサブグループ(年齢層、症状の重症度、併存疾患の有無、症状持続期間で分類)のうち30サブグループのHRの範囲は1.13~1.72であり、類似していた。 オセルタミビルによる推定平均便益は、全体では1.02日(95%BCrI:0.74~1.31)であり、オセルタミビル群のほうが約1日回復が早かった。便益のサブグループ解析では、12歳未満/症状が重症でない/併存疾患なし/症状持続期間が短い集団の0.70日(95%BCrI:0.30~1.20)から、65歳以上/症状が重症/併存疾患あり/症状持続期間が長い集団の3.20日(1.00~5.50)までの幅が認められた。 インフルエンザ感染患者におけるオセルタミビル群の推定平均便益のHRは1.27(95%BCrI:1.15~1.41)、非感染患者のHRは1.31(1.18~1.46)であり、感染の有無にかかわらずオセルタミビルによる類似の便益が示された。 抗菌薬の使用割合(オセルタミビル群9%、通常治療群13%)は、オセルタミビル群で低く、家族内の新規感染(39%、45%)も少なかった。一方、医療機関への再受診(3%、4%)、X線で確定された肺炎(47%、57%)、市販のアセトアミノフェン(60%、64%)またはイブプロフェン(38%、41%)含有薬の使用の割合には差がなかった。 嘔吐/悪心の新規発症または増悪が、オセルタミビル群で21%(325/1,535例)に認められ、通常治療群の16%(248/1,529例)に比べ頻度が高く、症状軽減までの期間も長かった(HR:0.94、95%CI:0.86~1.01)。これ以外の症状は、オセルタミビル群のほうが迅速に軽快した。 重篤な有害事象は29件(オセルタミビル群12件、通常治療群17件)報告された。オセルタミビル群では、2件がオセルタミビル関連と考えられたが、残りの10件は関連がなかった。 著者は、「併存疾患を有し、体調不良が長く続く症状が重い患者や高齢患者では、オセルタミビルにより2~3日早い回復の可能性があるため、本薬を考慮してよいと考えられる」としている。

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コントロール不良な気管支喘息へのトリプル合剤吸入療法について(解説:小林英夫氏)-1163

 気管支喘息治療の基本が吸入ステロイド薬であることは、標準医療として認知されている。日本では1978年に吸入ステロイド薬としてアルデシンとベコタイドが導入された。その後、吸入ステロイドだけでは良好なコントロールが得られずβ2刺激薬の追加吸入を要する症例に対し、吸入ステロイド+吸入β2刺激薬の2剤合剤であるアドエアが1998年にスウェーデン、2007年に日本で、シムビコートが2000年にスウェーデンで、日本では2010年に発売となった。またシムビコートは2012年にSMART療法(シムビコートを定期吸入と悪化時頓用とする用法、CLEAR!ジャーナル四天王-845「持続型気管支喘息におけるSMART療法について」)の適応も取得した。 そして長時間作用型抗コリン薬を加え3剤へと含有成分が増えれば効果も強まるであろうことは、高血圧や糖尿病に例を取るまでもなく感覚的に推測しえよう。また3つの吸入薬を各々別々に吸入したり、デュアル(2剤)薬の合剤にもう1種を吸入するという手順をトリプル製剤1つで完了できることも、利便性が向上し、アドヒアランスも改善する。すでに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対するトリプル製剤の有効性について、ケアネット ジャーナル四天王2018年2月22日配信記事や2018年11月15日配信記事において紹介されてきた。 筆者のトリプル製剤使用における危惧として、診断・病態の把握が不十分な症例にも第1選択として過剰投与されてしまうことが挙げられる。イタリアでの開業医データベースでは、COPD症例の21%にトリプル製剤が処方されていたとされる(Vetrano DL, et al. Respir Med. 2019;154:12-17.)。21%が適正かどうか評価しかねるが、筆者には少々多すぎるように感ずる。また、トリプル製剤内の各薬剤含有量はワンパターンしか販売されていないので、症例に応じた投与量調整が困難である。病態の安定が得られた後に、どのように治療法をステップダウンしていくのかも明らかではない。滅多に経験しないが吸入ステロイドは肺炎のリスクになることも報告されており、本研究でも有害事象として記載されている。 注意点として、日本で販売されているトリプル製剤の適応はCOPDのみで、現状では気管支喘息は適応外であり、ただちに日常使用できない。ただしCOPDと気管支喘息の合併病態であるACO(asthma COPD overlap)には処方可能であろう。また、本邦発売の2製品について優劣は不明だが、ビレーズトリは加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)で、テリルジーはドライパウダー製剤であるため、吸入手技や吸入時刺激感などが異なることにも留意しておきたい。

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