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患者さんの心をキャッチする【Dr. 中島の 新・徒然草】(444)

四百四十四の段 患者さんの心をキャッチする関西を直撃するかと思いきや、日本海側に抜けてしまった台風14号。皆さまの所では雨や風はいかがだったでしょうか?大阪では拍子抜けするほど雨も風もありませんでした。暑くてどうしようもなかった気温も、台風が過ぎた後はむしろ寒くなりました。いきなり季節が切り替わったみたいです。さて、総合診療科では、ローテートしてきた研修医に目標を言わせています。9月は「目標:患者さんの心をキャッチする」という研修医がいました。中島「具体的にどうやってキャッチするのかな」研修医「何度も訪室して、コミュニケーションの機会を増やします」中島「いろいろな話題で盛り上がるとか?」研修医「そうですね」中島「なるほど、それも悪くないとは思うけど……」患者さんというのは病気を治しに来ているのですから、芸能ニュースとか野球の話で盛り上がっても仕方ないわけですね。研修医「何か秘策があるんですか」中島「あるよ」別に勿体をつけているわけではありません。中島「先生自身が言ってた『キャッチする』ってやつ!」研修医「??」中島「患者さんっていろいろと訴えるでしょ。それにキチンと向き合うわけ」たとえば肺炎で入院している患者さんがいたとしましょう。熱が下がったとか、食欲が出てきたとか、そういう話には誰でも耳を傾けます。でも、そこで膝が痛いとか物忘れがある、とか言われると、ついスルーしがちになります。でも、1回は膝を見るとか、具体的な物忘れのエピソードを聞くとか。そのくらいのことはしてもいいと思います。必ずしも診断をつけることができなくても構いません。チラッと膝を見るひと手間で、患者さんの満足度が上がるのではないでしょうか。同じことは人間関係全般にも言えると最近思うようになりました。人というのは、自分の言動の結果を知りたがる傾向にあります。なので、何かしてもらったら結果を報告し、メールが来たら返事をする。できれば、「ありがとうございました」だけではなく、「おかげさまで○○ができました」くらいを添えるといいですね。私自身、必ずしも出来ているわけでもないのですが。そういえば、病院で天井の蛍光灯が切れていたのを、施設係の人に交換してもらいました。「部屋が明るくなったら、急に勤労意欲が湧いてきました!」そう言ったら、係の人に随分ウケたみたいです。このギャグ、関西以外でも通用するのかな。読者の皆さん、よかったら試してみてください。最後に1句秋深し 勤労意欲が 倍増だ

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日本でのコロナ死亡例の分析結果/COVID-19対策アドバイザリーボード

 第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードが、9月7日に開催された。その中で大曲 貴夫氏(国立国際医療研究センター 国際感染症センター/COVIREGI解析チーム)らのチームが、「COVID-19レジストリに基づく死亡症例の分析」を報告した。 レジストリ研究は、わが国におけるCOVID-19患者の臨床像および疫学的動向を明らかにすることを目的に、2020年1月から行われている。COVID-19と診断され、医療機関において入院管理されている症例を対象に(8月22日時点で登録症例数は7万920症例)、COVID-19の臨床像・経過・予後、重症化危険因子の探索、薬剤投与症例の経過と安全性について解析、検討が行われている。軽症例での死亡率が徐々に上昇【各波の死亡症例】 各波の死亡症例を比較すると、第6波と第7波は中等症および軽症からの死亡が増加していた。登録数で1番死亡例が多かった第3波と比較すると次のようになる〔( )の死亡率は編集部で算出した〕。・第3波 総死亡:1,218、重症死亡数:235(19.3%)、中等症死亡数:957(78.6%)、軽症:26(2.13%)・第6波 総死亡:300、重症死亡数:40(13.3%)、中等症死亡数:250(83.3%)、軽症:10(3.3%)・第7波 総死亡:19、重症死亡数:1(5.2%)、中等症死亡数:17(89.0%)、軽症:1(5.2%)【中等症での死亡症例】 中等症のうち、第4波以降ネーザルハイフローの利用が進んだが、第6波以降酸素のみ使用で死亡する症例が増えている。第5波で約50%、第6波で約65%、第7波で約80%と上昇。【中等症のリスク因子】 第1波~第7波まで共通して、基礎疾患ありの患者の方が死亡していた。第1波 224人中209人が基礎疾患あり(93.3%)第2波 208人中200人が基礎疾患あり(96.2%)第3波 924人中868人が基礎疾患あり(93.9%)第4波 254人中235人が基礎疾患あり(92.5%)第5波 118人中103人が基礎疾患あり(87.3%)第6波 233人中223人が基礎疾患あり(95.7%)第7波 17人中16人が基礎疾患あり(94.1%)【第5波と第6・7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(ステロイド、抗凝固薬、レムデシビル順で多い)ワクチン接種なし(サリルマブ、モルヌピラビル、ナファモスタット、カモスタットの順で多い)(第6・7波) ワクチン接種あり(ステロイド、レムデシビル、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第5波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第6・7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【第6波と第7波の比較】・入院中のCOVID-19治療目的での薬物投与の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、カモスタット、サリルマブが同順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(レムデシビル、ステロイド、抗凝固薬の順で多い)ワクチン接種なし(ファビピラビル、トシリズマブ、ナファモスタット、カモスタット、サリルマブ、カシリビマブ/イムデビマブが同順で多い)・入院中の呼吸補助の登録割合 (第6波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)(第7波)ワクチン接種あり(酸素投与、ネーザルハイフロー、侵襲的機械換気の順で多い)ワクチン接種なし(体外式膜型人工肺、非侵襲的機械換気、侵襲的機械換気の順で多い)【まとめ】・第5波と第6-7波の死亡例比較では、第6-7波の方が人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイド処方が下っていた。また、ともに90%の事例では酸素を必要としていた。・第6波と第7波の死亡例比較では、第7波の方が、さらに人工呼吸・ネーザルハイフローの使用率やステロイドの処方率が下がっていた。・ワクチン3回、4回接種者の割合が増加していることから、重篤なCOVID-19肺炎による呼吸不全の方が占める比率が下がっていると推測される。※なお、本報告のレジストリ登録患者は入院患者かつわが国全体の患者の一部であり、すべてのCOVID-19患者が登録されているわけではないこと、また報告では統計学的な検討は実施していないことに注意が必要。

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5~11歳への3回目接種を追加、新型コロナ予防接種の手引き9版/厚労省

 厚生労働省は、9月6日に全国の市町村に「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(9版)」を発出するとともに、同省のホームページでも公開した。本手引きは2020年12月17日の初版以来、十数回の更新を行い、その時どきの臨床知見、行政施策を反映した内容に改訂されている。今回の主な改訂点【第4章 3(13)(接種を受ける努力義務等の取扱い)】 接種を受ける努力義務などの取扱いについて更新(本文抜粋) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種については、予防接種法附則第7条第2項の規定により同法第6条第1項の臨時接種とみなして実施するものであり、市町村長は対象者に対して接種勧奨をすることとされていること。 また、対象者については原則として接種を受ける努力義務の規定が適用されるが、第2期追加接種(4回目接種)に関しては60歳未満の者について、努力義務の規定の適用が除外されていること。【第5章 1(3)対象者、(4)、接種間隔、(5)ワクチンの種類】5歳以上11歳以下の者への3回目接種について追記(本文抜粋)(3)対象者ア 第1期追加接種(3回目接種) 第1期追加接種(3回目接種)については、初回接種(1、2回目接種)の完了から一定期間経過した者を対象に、1回行うこととする。現時点で3回目接種において使用するワクチンとしているものは、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(商品名:ノババックス)であり、各ワクチンの対象年齢は、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上となっていることに留意すること。(4)接種間隔 3回目接種は、1、2回目接種の完了から、ファイザー社ワクチン(5~11歳用のものを含む)またはモデルナ社ワクチンについては5ヵ月以上、武田社ワクチン(ノババックス)については6ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 また、4回目接種は、3回目接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。(5)ワクチンの種類 3回目接種に用いる新型コロナワクチンは、1、2回目接種で使用したワクチンの種類にかかわらず、現時点ではファイザー社、モデルナ社および武田社(ノババックス)のものである。なお、5~11歳用ファイザー社ワクチンについては5~11歳、12歳以上用ファイザー社ワクチンについては12歳以上、モデルナ社ワクチンおよび武田社ワクチン(ノババックス)については18歳以上の者に対する3回目接種に使用することに留意すること。【第5章 3(4)イ(ウ)(接種券の発行申請の方法)】 接種券発行申請書(4回目接種用)の様式(図参照)について更新【第7章 2(2)(5歳以上11歳以下の者への接種)】 5~11歳用ファイザー社ワクチンの3回目接種について追記(本文抜粋)ア 5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)(ア)対象者 市町村長は、5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を用いて、接種を受ける日に当該市町村に居住する5歳以上11歳以下の者に対して新型コロナウイルス感染症にかかわる第1期追加接種(3回目接種)を実施する。 なお、戸籍および住民票に記載のない5歳以上11歳以下の者のうち、当該市町村に居住していることが明らかなものおよびこれに準ずるものについても対象者に含まれる。(イ)接種方法 1.3ミリリットルの生理食塩液で希釈した5~11歳用ファイザー社コロナウイルス修飾ウリジンRNAワクチン(SARS-CoV-2)を1回筋肉内に注射するものとし、接種量は、0.2ミリリットルとすること。(ウ)接種間隔 初回接種の完了から5ヵ月以上の接種間隔をおいて行うこと。 前後に他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を行う場合においては、原則として13日以上の間隔をおくこととし、他の予防接種(インフルエンザの予防接種を除く)を同時に同一の接種対象者に対して行わないこと。(エ)その他 対象者、接種方法および接種間隔以外の事項については、1(1)ア(イ)[予防接種要注意者]および(キ)[接種後の経過観察]ならびに1(2)ア(エ)[接種の用法]~(カ)[配送資材]の記載事項に従うこと。

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20歳未満のコロナ死亡例、基礎疾患やワクチン接種状況は?/国立感染症研究所

 国立感染症研究所は9月14日、新型コロナウイルス感染後の20歳未満の死亡例に関する積極的疫学調査(第一報)の結果を発表した。オミクロン株の感染拡大に伴い、小児の感染者数が増加し、重症例や死亡例発生も報告されている。厚生労働省および同研究所は、日本小児科学会、日本集中治療医学会、日本救急医学会とともに、急性期以降の死亡例も含めて、積極的疫学調査を実施した。その結果、基礎疾患の有無がほぼ同数であり、ワクチン接種対象年齢でも87%が未接種で、発症から死亡まで1週間未満が73%(中央値4日)を占めていることなどが明らかになった。 本結果は、2022年1月1日~8月31日に報告された小児等の死亡例に関する暫定的な報告となる。調査対象となったのは、急性期の死亡例、加えて、死因を新型コロナとは別原因とした症例で、発症からの日数は問わないとする急性期以降に死亡した症例の計41例。そのうち32例について8月31日までに実地調査を行うことができ、明らかな内因性死亡と考えられたのは29例であった。調査項目は、年齢、性別、基礎疾患、新型コロナワクチン接種歴、発症日、死亡日、症状/所見、死亡に至る経緯等となっている。小児の死亡例は、2022年1月から継続的に発生し、疫学週28週目(7月11~17日)から増加していた。 実地調査で内因性死亡と考えられた29例の主な調査結果は以下のとおり。・年齢・年代の内訳は、0歳8例(28%)、1~4歳6例(21%)、5~11歳12例(41%)、12~19歳3例(10%)であった。・性別は、男性16例(55%)、女性13例(45%)であった。・基礎疾患は、あり14例(48%)、なし15例(52%)であった。基礎疾患の内訳は、中枢神経疾患7例(50%)、先天性心疾患2例(14%)、染色体異常2例(14%)などであった(重複あり)。・新型コロナワクチンは、29例のうち接種対象外年齢の者が14例(48%)、接種対象年齢の者が15例(52%)であった。接種対象年齢となる5歳以上の15例では、未接種が13例(87%)、2回接種が2例(13%)であった。接種を受けた2例はともに12歳以上であり、発症日は、最終接種日から最低3ヵ月を経過していた。・医療機関到着時の症状/所見は、発熱23例(79%)、悪心嘔吐15例(52%)、意識障害13例(45%)、咳嗽9例(31%)、経口摂取不良9例(31%)、痙攣8例(28%)、呼吸困難7例(24%)の順に多かった。・死亡に至る主な経緯は、循環器系の異常7例(24%:心筋炎、不整脈等)、中枢神経系の異常7例(24%:急性脳症等)、呼吸器系の異常3例(10%:肺炎、細菌性肺炎等)、その他6例(21%:多臓器不全等)、原因不明6例(21%)であった。・発症日は26例について得られ、発症から死亡までの日数が、中央値4日(範囲:0~74日)、内訳は0~2日が8例(31%)、3~6日が11例(42%)、7日以上が7例(27%)であった。・上記のほか、基礎疾患の有無別に詳細が報告されている。 著者は本結果について、小児の死亡例のうち基礎疾患の有無がほぼ同数であったことから、基礎疾患のない者においても症状の経過を注意深く観察することが必要であるとしている。発症から死亡まで1週間未満が73%を占めており、とくに発症後1週間の症状の経過観察が重要だとし、小児の場合、呼吸器症状以外では、痙攣、意識障害などの神経症状や、嘔吐、経口摂取不良等の呼吸器症状以外の全身症状の出現にも注意を払う必要があると指摘している。本調査は今後も継続される予定。

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第116回 他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省

<先週の動き>1.他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省2.インフルエンザ予防接種、コロナワクチンと同時接種容認へ/厚労省3.女性差別の医学部不正入試の東京医科大に1,800万円賠償判決/東京地裁4.特定健診、医療費抑制効果なし/京都大学5.高齢者のオーラルフレイル(口腔機能低下)で死亡リスクが2倍以上に/東京都健康長寿医療センター6.刑務所の受刑者のワクチン接種に遅れ、コロナウイルス感染者が急増1.他院の受診歴や診療内容がマイナポータルで閲覧可能に/厚労省厚労省は9月5日マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」で閲覧できる情報の拡充を発表した。これまでは、特定健診等情報・薬剤情報だけだったものが、9月11日からは過去3年分の「診療情報」を閲覧できるようになり、医療機関名、受診歴、診療行為内容などの閲覧が可能となる。ただし、診療レセプトベースのため、画像診断や病理診断などの結果の閲覧はできない。この他、医療機関同士で情報共有も可能になるが、まだ対応している医療機関が少ないため、医療機関間での対応が課題となっている。(参考)「全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大」の運用開始について(厚労省)マイナポータルで診療情報閲覧 11日から(産経新聞)医療機関で受診歴を共有可に マイナポータルで閲覧も 11日から(朝日新聞)診療情報の閲覧11月から可能に、画像診断など 過去3年分のデータを共有(CB news)2.インフルエンザ予防接種、コロナワクチンと同時接種容認へ/厚労省松野博一官房長官は9月9日の記者会見において、今年の冬には新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念されるため、ワクチンの同時接種が可能になったことを踏まえ、感染防止目的で接種を推進することを明らかにした。厚生労働省はこれに先立ち、9月5日に開催された厚生科学審議会の予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会で、10月から65歳以上のインフルワクチン定期接種が始まることを積極的に呼びかけることを決定した。今冬のインフルエンザワクチンは、平成27年以降で最大の供給量となる約3,521万本(成人量では7,042万回分に相当)を確保できる見込み。(参考)今シーズン(2022/23)のインフルエンザワクチンについて(厚労省)インフルワクチン、高齢者らへ開始時期など周知 コロナ同時流行懸念(朝日新聞)コロナ・インフルのワクチン同時接種容認 厚労省、安全性問題なし(産経新聞)3.女性差別の医学部不正入試の東京医科大に1,800万円賠償判決/東京地裁東京医科大学が、医学部入試において、女性や浪人生が不利になるように得点を調整していた問題で、同大に受験して不合格となった女性28人が慰謝料を含め、合計1億5,000万円余りの損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は9月9日に同大に対して、合計1,800万円を賠償するよう命じる判決を下した。平城恭子裁判長は「性別という自らの努力や意思で変えることのできない属性を理由に女性を一律に不利益に扱った」と批判した。同大は「判決内容を精査して、対応を検討する」とコメントした。(参考)女性差別の不正入試 東京医科大に賠償命じる判決 東京地裁(朝日新聞)医学部不正入試 東京医科大に1,800万円賠償命令 東京地裁(毎日新聞)4.特定健診、医療費抑制効果なし/京都大学京都大学の人間健康科学科准教授の福間 真悟氏らは、2014年1~12月に特定健診を受けた11万3,302例を対象に特定保健指導の介入3年後の効果を調べた。その結果、特定保健指導は、外来患者の訪問日数の減少(1.3日減少)と関連していたが、医療費、投薬回数、入院回数とは関連していなかったことが明らかとなった。政府や厚生労働省は、これまで糖尿病などの生活習慣病の発症や重症化を予防する目的で特定健康診査の特定保健指導を推奨していたが、2020年には心血管リスク低減効果が認められなかったことも明らかになっていた。厚生労働省の「特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会」でも、アウトカム評価を入れるなど2024年度からはじまる第4期に向け、特定健診・特定保健指導について議論が先月まとめており、今後さらに見直しを迫られると考えられている。(参考)メタボ健診に医療費抑制効果なし(時事通信 2022/9/5)特定健診(メタボ健診)における特定保健指導に医療費抑制効果なし(京都大学)特定健診・特定保健指導の効率的・効果的な実施方法等について(議論のまとめ)(厚生労働省)Impact of the national health guidance intervention for obesity and cardiovascular risks on healthcare utilisation and healthcare spending in working-age Japanese cohort: regression discontinuity design(BMJ Open)5.高齢者のオーラルフレイル(口腔機能低下)で死亡リスクが2倍以上/東京都健康長寿医療センター高齢者の2割は口腔状態に問題があり、問題がない高齢者に比べて要介護リスクや死亡リスクが2倍超となることが、東京都健康長寿医療センター研究所の研究で明らかとなった。報告によれば、歯の数、咀嚼や嚥下の困難感、舌の力、舌口唇運動機能、咀嚼力の6項目で評価し、3項目以上該当した場合はオーラルフレイルと定義したところ、高齢者のうち19.3~20.4%がオーラルフレイルであり、そうでない人と比べて低栄養状態である割合が2.17倍高く、4年間の追跡調査により、オーラルフレイルの人は、死亡リスクが2.1倍、要介護認定が2.4倍になることが明らかとなった。以前から、口腔機能低下が、全身状態や生活にも大きく影響を与えることがわかっており、歯科医師が入院患者の口腔の管理を行うことによって、在院日数が削減できたり、肺炎発症を抑制することが判明しており、今後、医科歯科連携の強化が求められる。(参考)高齢期における口腔機能の重要性-オーラフレイルの観点から-(健康長寿医療センター)口腔状態に問題ある高齢者は要介護や死亡リスクが2倍超、地域で「オーラルフレイル改善」の取り組み強化を-都健康長寿医療センター(GemMed)医師以外の医療従事者の確保について(厚労省)6.刑務所の受刑者のワクチン接種に遅れ、コロナウイルス感染者が急増新型コロナウイルスワクチンの受刑者への接種が遅れていることが読売新聞などの報道で明らかになった。接種には住所のある自治体の発行した接種券が必要だが、受刑者の多くは服役先に住民票がないため、新型コロナウイルスのワクチン接種に遅れが発生した。このため、刑務所内で受刑者の感染者は急増しており、実際に熊本刑務所では、全収容者の約半数の159人が感染したことが判明しており、自治体側が接種券の二重発行を懸念したため、受刑者は後回しになってしまったために生じている。今後、自治体による柔軟な対応が求められる。(参考)服役先に住民票なし・家族が接種券送ってくれない…感染者急増の受刑者、接種に遅れ(読売新聞)刑務所で受刑者159人感染、全収容者の約半数「ずっと部屋の中にいる…防ぐのは難しい」(読売新聞)

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エバシェルドの追加など、コロナ薬物治療の考え方14版/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏)は、8月30日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬について指針として「COVID-19に対する薬物治療の考え方第14版」をまとめ、同会のホームページで公開した。 今回の改訂では、チキサゲビマブ/シルガビマブ(商品名:エバシェルド)の追加、治療薬の削除など整理も行われたほか、最新の知見への内容更新が行われた。 以下に主な改訂点について内容を抜粋して示す。全体の考え方について【2 使用にあたっての手続き】・チキサゲビマブ/シルガビマブとバリシチニブを追加【3 抗ウイルス薬等の対象と開始のタイミング】・「図 COVID-19の重症度と治療の考え方」の注釈を改訂。・「2 主な重症化リスク因子」で65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、COPDなどの慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患、肥満(BMI 30kg/m2以上)、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期など内容を改訂。・「3」で「一般に、重症化リスク因子のない軽症例では薬物治療は推奨しない」と改訂。・「表1 軽症~中等症I」で治療薬の使用を優先させるべきリスク集団を追加。・「4 抗ウイルス薬等の選択」で知見より「高齢者、複数の重症化リスク因子がある患者、ワクチンの未接種者などでは症状が進行しやすいことを踏まえ、患者ごとの評価において、中等症への急速な病状の進行など、非典型的な臨床経過の症例や免疫抑制状態などの重症化リスクが特に高い症例などでは、併用投与または逐次投与の適応を考慮する」と表現を改訂。個々の治療薬について【抗ウイルス薬】・レムデシビル(商品名:ベクルリー)の「投与時の注意点」で「7)2022年1月21日の中央社会保険医療協議会(中医協)において、保険医の指示の下で看護師による在宅・療養施設等の患者へのレムデシビル投与が可能となった」を追加。・モルヌピラビル(同:ラゲブリオ)の「入手方法」で「2022年8月18日に薬価収載されたことから、今後、一般流通の開始およびそれに伴う国購入品と一般流通品の切替えが行われる見込みである」を追加。・ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッドパック )の「国内外での臨床報告」で「10万9,254例の後方視コホート研究(65歳以上の高齢者ではニルマトレルビルの治療介入により入院の有意なリスク減少を認めた(HR:0.27、95%CI:0.15~0.49)。一方で40~64歳では、有意なリスク減少を認めなかった (HR:0.74、95%CI:0.35~1.58)を追加。また、投与時の注意点に「5)新型コロナウイルスワクチンの被接種者は薬剤開発のための臨床試験で除外されているが、市販後の評価では、高齢者での重症化予防などの有効性が示唆されている」を追加。そのほか、投与時の腎機能の評価の詳細についても追加。・ファビピラビルの項目は削除。【中和抗体薬】・「チキサゲビマブ/シルガビマブ(同:エバシェルド)」を新しく追加。〔国内外での臨床報告〕重症化リスク因子の有無を問わない、軽症~中等症IのCOVID-19外来患者822人を対象としたランダム化比較試験では、発症から7日以内のチキサゲビマブ/シルガビマブの単回筋肉内投与により、プラセボと比較して、COVID-19の重症化または全死亡が50.5%(4.4%対8.9%、p=0.010)有意に減少したなどを記載。〔投与方法〕・発症後通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ300mgを併用により筋肉内注射。・曝露前の発症抑制通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、チキサゲビマブおよびシルガビマブとしてそれぞれ150mgを併用により筋肉内注射する。なお、SARS-CoV-2変異株の流行状況などに応じて、それぞれ300mgを併用により筋肉内注射することもできる。〔投与時の注意点〕オミクロン株(BA.4系統及びBA.5系統) については、本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に本剤の投与を検討することなど。〔発症後での投与時の注意点〕1)臨床試験における主な投与経験を踏まえ、COVID-19の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。2)他の抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された高流量酸素または人工呼吸管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。3)COVID-19の症状が発現してから速やかに投与すること。4)重症化リスク因子については、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」などにおいて例示されている重症化リスク因子が想定。〔発症抑制での投与時の注意点〕1)COVID-19の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。2)COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者ではない者に投与すること。COVID-19患者の同居家族または共同生活者などの濃厚接触者における有効性は示されていない。3)本剤の発症抑制における投与対象は、添付文書においては、COVID-19に対するワクチン接種が推奨されない者または免疫機能低下などによりCOVID-19に対するワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者とされているが、原発性免疫不全症、B細胞枯渇療法を受けてから1年以内の患者など免疫抑制状態にある者が中和抗体薬を投与する意義が大きいと考えられる。4)3)の投与対象者については、チキサゲビマブ/シルガビマブを用いた発症抑制を行うことが望ましいと考えらえる。〔入手方法〕本剤は、安定的な入手が可能になるまでは、一般流通は行われず、厚生労働省が所有した上で、発症抑制としての投与について、対象となる免疫抑制状態にある者が希望した場合には、医療機関からの依頼に基づき、無償で譲渡される。・カシリビマブ/イムデビマブ(同:ロナプリーブ)とソトロビマブ(同:ゼビュディ)の「投与時の注意点」として「1)オミクロン株(B1.1.529系統/BA.2系統、BA.4系統およびBA.5系統) では本剤の有効性が減弱するおそれがあることから、他の治療薬が使用できない場合に投与を検討する」を追記。【免疫調整薬・免疫抑制薬】・シクレソニド(国内未承認薬)の項目を削除。【その他】・その他の抗体治療薬(回復者血漿、高度免疫グロブリン製剤)の項目を削除。・附表1と2の「重症化リスクを有する軽症~中等症IのCOVID-19患者への治療薬の特徴」の内容を更新。・参考文献を52本に整理。 なお、本手引きの詳細は、同学会のサイトなどで入手の上、確認いただきたい。■関連記事ゾコーバ緊急承認を反映、コロナ薬物治療の考え方第15版/日本感染症学会

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T-DXd単剤療法におけるILD発生状況、9試験のプール解析結果/ESMO Open

 間質性肺疾患(ILD)/肺炎は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)に関連する重要な有害事象である。米国・マウントサイナイ医科大学のC A Powell氏らは、T-DXd単剤療法に関する9つの第I相および第II相試験のプール解析を実施し、ILD/肺炎のリスクを評価した。ESMO Open誌2022年8月10日号に掲載。 治験責任医師が評価したILD/肺炎について、独立判定委員会が後ろ向きにレビューし、薬剤関連ILD/肺炎と判定された事象について要約した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は1,150例(乳がん44.3%、胃がん25.6%、肺がん17.7%、大腸がん9.3%、その他のがん3.0%)。・治療期間中央値は5.8ヵ月(0.7~56.3)、前治療歴中央値は4ライン(1~27)だった。・薬剤関連ILD/肺炎の発生率は15.4%(Grade5:2.2%)だった。・ほとんどのILD/肺炎症例が低Grade(Grade1または2:77.4%)で、87.0%がT-DXdの初回投与から12ヵ月以内(中央値:5.4ヵ月[0.1~46.8])に最初のイベントを経験していた。・データレビューによると、判定されたILD/肺炎の発症日は、53.2%で治験責任医師が特定した日よりも早かった(発症日の差の中央値:43日[1~499])。・ステップワイズCox回帰分析により、薬剤関連ILD/肺炎リスク上昇に関連するいくつかのベースライン因子が同定された:年齢65歳未満、日本での登録、T-DXd用量>6.4 mg/kg、酸素飽和度<95%、中度/重度の腎障害、肺合併症、初診から4年以上経過していること。 著者らは、今回の解析の結果、ILD/肺炎の発生率は15.4%であり、その多くは低悪性度で治療開始後12ヵ月に発生したものであったとまとめている。T-DXd治療のリスクとベネフィットの評価は肯定的であるが、一部の患者ではILD/肺炎の発症リスクが高まっている可能性があり、ILD/肺炎リスク因子を確認するためのさらなる調査が必要とし、ILD/pneumonitis に対する綿密なモニタリングと積極的な管理がすべての患者に求められるとしている。

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第7波のコロナ重症化リスク因子/COVID-19対策アドバイザリーボード

 8月13日に開催された厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで「第7波における新型コロナウイルス感染症 重症化リスク因子について(速報)」が報告された。 本報告は、蒲川 由郷氏(新潟大学大学院医学総合研究科 十日町いきいきエイジング講座 特任教授)らのグループが、2022年7月1日~31日までに新潟県内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断・届け出された3万6,937件を対象に調査したもの。 その結果、重症化のリスク因子として70代以上の高齢者、ワクチンの未接種、慢性呼吸器疾患、(非透析の)慢性腎臓病、男性、やせ体形につき、統計学的な有意差があった。第7波3万6,937件の新潟のCOVID-19患者を解析【調査概要】対象など: 2022年7月1日〜31日までに新潟県内でCOVID-19と診断届出された3万6,937件(重症度などの最終確認日は8月10日)。調査方法:陽性判明時点で収集可能な患者背景から、年齢・性別・ワクチン接種の有無などの患者基礎情報と高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患情報の項目を同時に投入し、多重ロジスティック回帰分析を実施。重症化リスク因子のオッズ比を算出。【結果】(1)年代別・3万6,937例中、103例が中等症II以上だった(中等症・重症化率 0.3%)。・中等症II以上103例のうち、施設入所者は41例(約40%)で、80代以上は41例中35例。・年代が高くなるほど、重症化のオッズ比は高い傾向にあり、30代と比較して、70代以上のオッズ比が63〜283と高い値。(2)性別・ワクチン接種・女性よりも男性が重症化リスクが高い(オッズ比2.67)。・ワクチン接種(2回以上)をしていると、重症化リスクが低くなる(オッズ比:2回で0.27、3回で0.2、4回で0.25)。(3)肥満・肥満(BMI 25以上)は有意差があるとはいえなかった(オッズ比:BMI 25~30未満で1.6、30以上で1.55)。・やせ型(BMI 18.5未満)のオッズ比は2.05と高い値だった。これは、やせの高齢者(いわゆるフレイル)が中等症IIとなる割合が大きいためと考えられる。(4)基礎疾患(オッズ比2以上のみ記載)・慢性呼吸器疾患(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息などを含む)のオッズ比は2.84・慢性腎臓病の非透析のオッズ比は3.42、透析のオッズ比は2.67・持続陽圧呼吸療法(CPAP)使用のオッズ比は2.47・悪性腫瘍のオッズ比は2.24高齢者では肥満よりもやせ型の感染者に注意【追加解析】 2022年1~6月(第6波:6万4,000件)と2022年7月(第7波:3万6,937件)を追加解析(合計:10万937件)。・第6波と第7波での中等症II以上の割合の比較では、第6波の中等症I以下は99.5%、中等症II以上は0.5%だったのに対し、第7波での中等症I以下は99.7%、中等症II以上は0.3%と減少した。・第7波では少数だが10歳未満でも中等症II以上の患者が発生している(第6波ではみられていない)。【解析のまとめ】・中等症II以上のリスクは第6波と比べて第7波で低下。・80代以上でも、中等症II以上は2.3〜5.8%程度。・第7波の中等症II以上は、年齢中央値は83歳、4割が施設入所者。・ワクチン未接種は重症化リスクを上昇させる。中等症II以上の患者のうち、ワクチン未接種は約20%(ワクチン未接種者割合は5〜11歳67.9%、65歳以上4.4%)。・中等症IIのリスク上昇には、基礎疾患のほとんどは明確な寄与がなく、有意な差があったのは、(1)高齢(70、80代以上で高い)(2)ワクチン未接種(3)慢性呼吸器疾患*(COPD、間質性肺炎、治療中の喘息を含む)(4)非透析の慢性腎臓病(5)男性(6)やせ(BMI<18.5:高齢者のフレイルなど)であった。 また、第7波では小児の中等症II以上もみられており、注視が必要(小児へのワクチン接種が重要)。と同時にワクチン未接種者へのワクチン接種が重要である。*慢性呼吸器疾患ではもともと酸素飽和度が低い状態の方もおり、解釈に留意を要する。

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第127回 インフルエンザワクチン高用量投与で高齢者の死亡リスク低下

およそ20万人を募る大規模試験を無理なく実施するための下調べ試験DANFLU-1で早くも高齢者へのインフルエンザワクチン高用量投与の死亡予防効果が認められました1)。インフルエンザと心血管疾患(CVD)の関連を調べた試験は幾つかあり、たとえばその1つではインフルエンザ感染判明後1週間は心筋梗塞を約6倍生じ易いことが示されています2)。別の試験ではインフルエンザの季節の心不全入院のおよそ19%がインフルエンザにどうやら起因していました3)。インフルエンザ入院成人の退院時データを調べたところ約12%が急な心血管イベントを被っていたという試験結果もあります4)。そういう心血管イベントの予防にインフルエンザワクチンがどうやら有効なことが観察試験5)や無作為化試験6)で示唆されています。目当てのインフルエンザウイルス株の血球凝集素(HA)抗原60μgを含む高用量ワクチンはほとんどの国で65歳以上の高齢者に使うことが承認されています。また幾つかの国では60歳以上から使えるようになっています。しかしながら高齢者にまず投与すべきを高用量ワクチンとしている国は数えるほどしかなく、ゆえにその接種はあまり普及していません1)。高用量ワクチンはHA抗原量15μgの標準用量ワクチンに比べてインフルエンザやインフルエンザ関連死亡をより防ぐことを裏付ける試験結果は増えてはいます。しかし巷の高齢者の入院や死亡などの深刻な事態の予防効果を高用量ワクチンと標準用量ワクチンで比較した無作為化試験はこれまでありませんでした。そういう無作為化試験では多くの被験者を募らなければならず、その実現のためには無理なく実施できるようにする工夫が必要です。DANFLU-1試験はその工夫の検証のために準備され、デンマークで実施されてその結果が今回ESC Congress 2022で発表されました。試験には65~79歳の高齢者が参加し、1対1の割合で高用量4価ワクチンか標準用量4価ワクチン投与に割り振られました。1,000回を超えるそれらの接種の場はワクチン販売会社が手配しました。各地で得られた被験者の情報は1箇所に集められ、デンマーク人の健康情報登記簿(administrative health registries)と紐づけすることでそれら被験者のワクチン接種後の経過や安全性情報が追跡されました。必要な情報のほぼすべてはその健康情報登記簿から入手します。よって試験で被験者が必要とする来院はわずか1回きりであり、被験者と試験担当者の負担を大幅に減らすことができました。DANFLU-1試験の主な目的はやがて実施予定の大規模試験の被験者数などの仕様の検討であり、副次的目的として高用量ワクチンと標準用量ワクチンの効果が比較されました。最終的な解析対象の被験者は12,477人で、高用量ワクチンにそのうち6,245人、標準用量ワクチンには6,232人が割り振られました。試験の要である健康情報登記簿からのデータ取得は実現可能であり、被験者のほぼ全員(99.97%)の必要な経過情報すべてが手に入りました。被験者の特徴はデンマークの巷の65~79歳高齢者と同等でした。たとえば慢性心血管疾患の有病率はどちらも20%ほどです(被験者は20.4%、巷の高齢者は22.9%)。副次的目標であった効果も早速認められ、高用量ワクチン接種群のインフルエンザや肺炎での入院率は標準用量ワクチン接種群の半分で済んでいました(0.2% vs 0.4%)。その結果によると高用量ワクチンの標準用量ワクチンに比べたそれら入院の予防効果は64.4%(95%信頼区間:24.4~84.6%)です。高用量ワクチンは死亡もより減らしました。死亡率は高用量ワクチンでは0.3%、標準用量ワクチンでは0.7%であり、高用量ワクチンは標準用量ワクチンに比べて死亡リスクをおよそ半分に抑えました(効果:48.9%、95%信頼区間:11.5~71.3%)。深刻な有害事象に有意差はありませんでした。以上のようなDANFLU-1試験結果からデンマーク国民の健康情報登記簿のデータを拠り所とする無作為化試験の実施が可能と分かりました1)。次はいよいよ高齢者への高用量ワクチンと標準用量ワクチンを比較する本番の試験です。被験者数はおよそ20万人になる見込みです。参考1)Innovative randomised trial hints at mortality benefits with high-dose influenza vaccines/European Society of Cardiology2)Kwong JC,et al. N Engl J Med. 2018 Jan 25;378:345-353.3)Kytomaa S, et al. JAMA Cardiol. 2019 Apr 1;4:363-369.4)Chow EJ, et al. Ann Intern Med. 2020 Oct 20;173:605-613.5)Modin D, et al. Circulation. 2019 Jan 29;139:575-586.6)Frobert O, et al. Circulation. 2021 Nov 2;144:1476-1484.

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第29回 患者を帰す前の一工夫:病状や処方の説明を十分しよう【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)病状説明は、患者さんが陥りがちな点を踏まえた上で、具体的に、わかりやすく行おう!【症例】71歳男性。高血圧以外の特記既往なく、ADLは自立している。来院前日から喉の痛みを自覚した。来院当日起床時から倦怠感、発熱を認めた。別棟に住む孫が2日前に近医小児科で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の陽性診断を受けており、濃厚接触はしていないものの心配になり受診。●受診時のバイタルサイン意識清明血圧148/91mmHg脈拍90回/分(整)呼吸20回/分SpO297%(RA)体温38.1℃所見全身状態は良好で、流行状況も考慮しCOVID-19迅速抗原検査を施行したところ陽性。飲食も可能であり、解熱薬のみの処方で帰宅の判断となった。〔初診外来での会話〕医師「コロナ陽性だったので、薬を出しておきますので、それで対応してください。保健所から連絡があると思うので、あとはその指示に従ってくださいね。お大事に」患者「あ、はい…」翌日、喉の痛みは改善傾向にあるものの、発熱が持続しているため再度受診したが…。COVID-19禍での外来診療みなさん、体調を崩してはいないでしょうか? 私が勤務する救急外来にも連日多くの患者さんが来院し、「コロナ疑いの患者さんもたぁくさん」という、そんな毎日です。なるべくなら自宅で経過をみることが可能な方への受診は控えてもらいたいと思いながらも、その判断って私たちが思っているほど簡単ではありません。まして子を持つ親であれば、子どもの体調には自分以上に心配になりますし、家族内感染の場合には自宅内隔離を実践しようとするも現実は難しく、日毎に症状を認める家族の対応に悩むことが多いでしょう。日本感染症学会、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本臨床救急医学会の4学会から「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」が8月2日に提出され、国民一人一人がこの内容を理解することも大切ですが、受診した患者さんに対しても意識させる必要があります1)。再受診患者を防ぐことはできないか救急外来で帰宅可能と判断した患者さんが数日内に再度受診することは、避けたいところですが珍しくありません。現在、ベッド事情が厳しい病院も多いことから、本来入院で経過をみることが望ましい患者さんを外来でフォローすることも増えているかもしれません。このようなケースは致し方ない部分もあるとは思いますが、なかには再度受診したものの、帰宅可能の判断となる患者さんもいます。その多くがちょっとしたことで防ぐことができるものであり、今回の事例ではその辺りを取り上げたいと思います。ちなみに、状態の悪化によって数日内に救急外来を再受診する患者さんは、そうでない患者さんと比較し、初診時に呼吸数が上昇していることが多く、呼吸数は臨床的悪化の独立した危険因子です2)。帰宅可能と最終判断する前に、呼吸数に着目することをお勧めします。バイタルサインは普段の状況で評価を最近は、呼吸困難を主訴に来院する患者さんが多いように感じます。その際、安静時のバイタルサインのみで帰宅の判断をしていないでしょうか。以前にもこの点は取り上げましたが(第12回 呼吸困難)、バイタルサインは「普段の状況」でも確認することを忘れないようにしましょう。普段歩行可能な方であれば、歩行してもらい、それでも症状の再燃が認められないかを確認しましょう。安静時、SpO2が問題ないから帰宅可能、それではダメですよ。歩いてもらったら、呼吸困難の訴えあり、呼吸数上昇、SpO2低下、そんな場合には再度精査が必要かもしれませんし、入院が必要かもしれませんから。帰宅の判断、その前に高齢者が多い救急外来では、特に表の内容を意識しましょう3)。肺炎や圧迫骨折、診断が正しく安静時に状態は落ち着いていたとしても、自宅では管理が難しいことはいくらでもあります。病気の重症度のみで帰宅or入院の判断ができないことを忘れてはいけません。表 帰宅の判断、その前に-高齢者がERから帰る前に必ず確認すべき8つのこと-画像を拡大するまた、救急外来で診断、治療介入し、その後の治療、経過観察をかかりつけの病院や診療所でフォローしていただくことも少なくありません。その場合も、このように対応する理由を患者さん、家族に理解してもらい、治療方針(ケアプラン)をかかりつけ医と共有する必要があります。紹介状は必須とは思いませんが、患者さんや家族が伝えることが難しい状態であれば、一筆でも簡潔に記載し、その助けとしてもらうのが望ましいでしょう。これを面倒くさいなどと思ってはいけません。薬の説明、ちゃんとしていますか?肺炎に対する抗菌薬や解熱薬、なんらかの痛みに対する鎮痛薬など、救急外来や一般の外来で処方することは日常茶飯事です。その際、薬の説明をどの程度行っているでしょうか?医療者に対して処方する場合には、薬の名前のみ伝えればよいかもしれませんが、一般の患者さんへ処方する際には、当然ながら十分な説明が必要です。みなさんが処方している薬を、患者さんは十分理解しないまま内服していることは少なくないのです。救急外来では、抗血栓薬や利尿薬を内服している患者さんに多く出会いますが、内服理由を確認すると「わからない」と返答されることもしばしばです(みなさんもそんな経験ありますよね?)。表にも「(5)新しい処方箋があれば、薬の相互作用について再確認して理解できているか?」という項目がありますが、救急外来では特に処方に関しては注意が必要です。初診の患者さんも多く、定期内服薬の詳細が把握できないこともあるかもしれません。また、アレルギーの確認を怠ってしまうかもしれません。しかし、それでは困ります。当たり前のことではありますが、きちんと把握する努力を怠らないようにしましょう。解熱鎮痛薬処方の際のポイントは?COVID-19の診断を受けた患者さんや家族から頻繁に相談されるのが、「熱が下がらない」、「喉の痛みが辛い」、「薬が効かない」といった内容です。外来診療中にも電話がかかってくることも多いです。そのような場合に、よくよく話を聞いてみると、病状の悪化というよりも薬の内服方法が不適切なことが少なくありません。薬が効かない? 本当は効いているんじゃない?患者さんが訴える「薬が効かない」、これはまったく効果がないというわけでは必ずしもなく、飲めば熱は下がるけれどもまた上がってきてしまう、その意味合いで使用していることもあるのです。これは薬が効いていないのではなく、薬効が切れただけですよね。つまり、薬の具体的な効果を説明していない、もしくは患者さんが理解していないが故に生じた訴えといえます。薬が効かない? 飲むタイミングの問題では?また、こんなこともあります。頭痛や喉の痛みを訴える患者さんが「薬が効かない」と訴えるものの、よくよく聞いてみると、「薬はあまり飲まない方がよいと思って、なるべく使用しないようにしていた。どうしても痛みが辛いから使用したがあまり効かない」と訴えるものです。なんでもかんでも薬を飲むのはお勧めできませんが、痛みに関してはピークに達してから内服するよりも、痛くなりかけている際に内服した方がピークを抑えることができ、症状はコントロールしやすいでしょう。片頭痛に対する鎮痛薬の内服のタイミングなど有名ですよね。さいごに今回の症例のように、COVID-19で予期される症状に関しては、具体的にいつどのように解熱鎮痛薬を使用するのかをわかりやすく説明する必要があります。「頓服」、この言葉も意外と伝わっていないので要注意です。薬剤師さんが丁寧に教えてくれる場合には問題ないかもしれませんが、市販薬や院内処方の場合には十分な説明がなされないこともありますよね。私は、解熱鎮痛薬を処方する際は、まずは毎食後に定期内服してもらい、症状が改善したら頓服へ切り替えていただくようにお話することが多いです。「今日、明日あたりは食後にこの薬を飲みましょう。朝起きて痛みがない、熱が下がって楽、そのような場合には、朝食後には飲まず、症状が出てきたら飲むようにしましょう」とこんな感じで説明しています。COVID-19の診断は、急性腹症や骨折診療に比べればすぐにつきます。診断に時間がかからないぶん、説明には十分時間をかけ、可能な限り患者さんの不安を取り除きつつ、不要な再受診を防ぐ努力をしていきましょう。1)「国民の皆さまへ 限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」2)Mochizuki K, et al. Acute Med Surg. 2016;4:172-178.3)Southerland LT, et al. Emerg Med Australas. 2019;31:266-270.

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オミクロン流行期、小児コロナ入院患者の症状に変化/国立成育医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波が全国的に猛威をふるっている。一般報道では第7波の特徴として小児の陽性感染が多いことが指摘され、全国の小児科はいつにも増して診療を待つ患者であふれているという。小児がCOVID-19に感染した場合、症状が軽微とあると従来言われてきたが、実際入院した患者ではどのような特徴があるだろう。 国立成育医療研究センター感染症科の庄司 健介氏らのグループは、国立国際医療研究センターの研究チームと合同で、オミクロン株流行期における小児新型コロナウイルス感染症による入院例の疫学的・臨床的な特徴を、デルタ株流行期と比較検討し、その結果を公表した。 この研究は、国立国際医療研究センター運営の国内最大のCOVID-19レジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」利用し、今回初めてわが国の小児COVID-19患者の特徴を、オミクロン株流行期とそれ以前とで比較した大規模な研究となる。 本研究は、デルタ株流行期(2021年8月~2021年12月)、オミクロン株流行期(2022年1月~3月)に、それぞれの期間に登録された18歳未満の小児COVID-19入院例847人(デルタ株流行期:458人、オミクロン株流行期:389人)を対象に実施したもの。その結果、オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多かったことが判明した。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期には少なかったこともわかった。 また、新型コロナウイルスワクチンの接種歴の有無が入力されていた790名に着目してみると、酸素投与・集中治療室入院・人工呼吸管理などのいずれかを要した「より重症と考えられる患者」43名は、いずれも新型コロナウイルスワクチン2回接種を受けていなかったことからワクチン接種が子ども達を重症化から守る方向に働いている可能性があることも示唆された。オミクロン株流行期では発熱やけいれんが多い【背景・目的】わが国におけるオミクロン株流行期の小児COVID-19の臨床的特徴についての情報の解明【研究概要・結果】研究対象:2021年8月~2021年12月(デルタ株流行期)と2022年1月~3月(オミクロン株流行期)の間にCOVIREGI-JPに登録された18歳未満のCOVID-19患者研究方法:COVIREGI-JPに登録されている、患者の背景や臨床経過、ワクチン接種歴、予後などのデータを集計・分析【研究結果概要】・研究対象となった18歳未満の患者はデルタ株流行期458人、オミクロン株流行期389人。・入院患者の年齢の中央値はデルタ株流行期が8歳、オミクロン株流行期が6歳。オミクロン株流行期の方が若年化している傾向にあった。・オミクロン株流行期は、デルタ株流行期に比べて2~12歳の患者で発熱やけいれんが、13歳以上の患者では咽頭痛が有意に多くあった。一方で、6歳以上の患者の嗅覚・味覚障害はオミクロン株流行期に少なかった。・酸素投与を要した患者はオミクロン株流行期に多かったが、人工呼吸管理や集中治療室入院を要した患者の数、割合には大きな変化はなかった。・新型コロナワクチン2回接種を終えていた患者は、研究対象847人のうち50人(5.9%)だった(接種の有無不明は57人)。この50人は、いずれも軽症だった。・ワクチン接種歴の有無が判明していた790人の中で、酸素投与、集中治療室入院、人工呼吸管理のいずれかを要したより重症と考えられる患者43人のうち、新型コロナワクチン2回接種を受けていた患者はいなかった。ワクチンが重症化から子ども達を守る これらの研究結果を踏まえ庄司氏らは、「発熱やけいれんが増えていたことは、小児COVID-19の診断を考える上で重要な情報と考えられる。また、小児新型コロナワクチン接種者自体が少ない時期の研究なので限界はあるが、ワクチン接種が子ども達をCOVID-19の重症化から守る方向に働いている可能性を示唆している結果であったことは重要な結果と考える。小児COVID-19の特徴はそのときに流行している変異株により変化しうるので、引き続き情報の収集、解析を続けていくことが重要」と今後の展望を述べている。※なお、本研究は、オミクロン株(BA.5)流行前に実施されているためその影響は検討できていないこと、また、それぞれの株が国内の主流であった時期の患者を比較した研究であることなど注意を喚起している。

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この患者紹介は常識?非常識?【紹介状の傾向と対策】第1回

より良い患者紹介とは―患者紹介を深く考える現代医療は1つの医療機関のみで完結することがほとんどありません。患者を高次医療機関に紹介することもあれば、逆紹介されることもあります。また、院内でも他科に診療を依頼することもあれば、されることもあります。皆さまもご経験のとおり、臨床現場では、紹介状のやり取りを筆頭に、患者紹介に関する困り事やストレスを感じる場面は少なくありません。また、大学で私たちが受けた医学教育には、患者紹介のエチケットやマナー、診療情報提供書(以下、紹介状)の書き方などの実務的な講義はありませんでした。私が知る限り、患者紹介に関するルールやガイドラインも存在しません。そのためか、紹介状の質は非常に不均一だと感じています。しかし、患者紹介の仕方をルールやガイドラインで縛ることは、業務の柔軟性を損ないかねません。出来る限り、現場医師の自主努力に任されるのが理想だと考えていますが、最低限の患者紹介のエチケット・マナーに対し共通の認識を持つべきではないでしょうか。医師の7割が不満を抱えている、その理由は…本連載では患者紹介に関する医師同士のやり取り、診療科間の患者紹介をより円滑にするための方法を模索します。筆者が考える良い患者紹介とは、「最低限、紹介先の医師を困らせない」ことだと考えています。医師同士のやり取りの不調和は、最終的に患者さんの不利益につながります。そのためこの連載では患者を紹介するにあたり「すべきこと」「すべきでないこと」「留意すべきこと」をご提案していきたいと思います。第1回はその前段階として、勤務医、開業医の双方が各診療科の立場で何に困り、何にストレスを感じているか、現状を共有します。2022年2月にケアネットが「紹介状で困っていること」についてアンケートを実施しました。このアンケートには多くのフリーコメントが寄せられたので、その一部のコメントを見てみましょう。 「勤務医が感じる開業医への不満」併存疾患が多い患者は内科に丸投げ紹介先の診療科が不適切時間外・休日前の夕方ギリギリの紹介開業医の診療時間が過ぎると問い合わせても電話に出ない患者の言いなりで紹介してくる紹介についての患者説明と同意が不十分名刺に依頼を書く前医と患者間に生じたトラブルの情報を伝えない悪い情報を伏せている培養検体を取らず抗菌薬を開始してから患者を送ってくる処方理由が不明で問い合わせても不明のまま「開業医の勤務医への不満」必要な情報が記載されていない当該臓器以外の情報がない診断結果が分からない返信が遅い画像・採血データが添付されていない何も解決なく返される紹介の意図が不明患者への説明と紹介状の内容が食い違う抗血小板薬の継続期間の指示がない添付された画像を読み出せない<アンケート概要>内容  紹介状のやり取りで開業医/勤務医それぞれが困っていること、良かったと感じたことを調査実施日 2022年2月24日(木)調査方法インターネット対象  30代以上の会員医師 1,000人(開業医:500人、勤務医:500人)次回、具体的にどのような患者紹介をすればよいか、どのように紹介状を記載していけばよいか、考えていきたいと思います。

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第121回 「コロナ検査で陽性でも治療方針は変わらない」-NHK党・浜田氏に聞く(前編)

先日の参議院選挙直前に各党の政策をやや斜に構えて紹介(第115回、第116回)したが、その際私が一番驚いたのはNHK党の新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策だった。なんせ同党は党首の立花 孝志氏が「NHKをぶっ壊す!」と、いつもながらに標的のNHKの政見放送で叫ぶ強烈さが頭を離れず、どうしてもシングル・イシューの政党のイメージが強かった。その意味でこの公約を読んだ私は、半ば「鳩が豆鉄砲を食らった」ような状態だった。本連載記事では、「誰か新たなブレーンが入ったのだろうか?」と書いていたが、直後に政治界隈に詳しい知り合いから、「あれはたぶん浜田さんが作ったものじゃないか」という情報が入ってきた。同党は2019年参議院選挙の比例代表で初めて1議席を獲得し、立花氏が晴れて国会議員になったが、なんとその3ヵ月後、立花氏は参議院埼玉選挙区の補欠選挙に出馬するとして辞職。その結果、同党からは繰り上げ当選者が発生した。「浜田さん」とは、この時繰り上げ当選者となった浜田 聡氏である。浜田氏の同参議院議員選挙での個人得票は9,308票。参議院比例代表当選者では史上2番目に少ない得票で議員に就任した。その後は同党の政策調査会長に就任している。率直に言うと、私は浜田氏のことはまったくフォローしていなかったが、情報を得た後に調べると東京大学卒業後、京都大学医学部医学科に再受験で入学し、2011年卒業。政治家になる前は放射線科医として働いていたという。前述の政治界隈事情通から浜田氏のことを聞いた直後、同党が毎週金曜日に開催している定例記者会見への参加を模索していた。参議院選投開票の前週金曜日は東京を不在にしていたため、投開票2日前の会見に出席するつもりだった。ところがご存じのようにその前日、奈良県で安倍 晋三元首相が凶弾に倒れる事件があり、そちらへの対応でてんてこ舞になってしまった(一応、医療ジャーナリストを名乗りながらも国際紛争やテロもカバーしているため)。その最中、本連載の担当編集者から、なんと浜田氏から私宛に同党の政策を評価してもらえたことの謝辞メールが届いたことを知った。それによると今回の政策は昨年末の衆議院選挙最中に浜田氏が作成して発表したものを一部改変したもので、たまたま私が同党ホームページを見た時にはなかったのだろうとの説明が記されていた。謝辞メールには浜田氏のメールアドレスも記載してあったが、私は記者根性の一端でやっぱり直撃しようと7月22日の同党定例会見に向かい、そこで初めてこの件について質問した。これは同党が配信するyoutube動画(私の質問は49:38ぐらいから)でも配信されている。もっとも会見という時間の制約がある現場でもあったため、浜田氏の説明は極めて簡潔なもの。そこで改めてインタビューをお願いし、参議院議員会館で話を聞いた。今回と次回の2回に分けて報告したいと思う。NHK党・浜田氏×医療ジャーナリスト・村上氏今回の公約でマスク外しを提唱された背景を教えてください。(インタビューは屋内であるため、浜田氏も私もこの時はマスクを着用)マスク外しに関しては後藤厚労相の発言がありますが、それ以前から厚生労働省は「屋外やリスクの低い環境でマスクを外して良い」と言っていたはずです。しかし、ご存じの通り、現状で外を歩けばそうした人は全然いないと言っても良い状態です。その意味では政治の側からもリスクの低い屋外などで積極的にマスクを外していきましょうという主張があっていいはずです。過去に曲がりなりにも政治の立ち位置からそのような主張をしていたのは、私の知る限り、以前NHK党から参議院選挙に立候補し、その後、国民主権党を自ら設立した平塚 正幸さんぐらいでしょう。彼の主張は周囲から白眼視されていますし、私も若干そういう目で見ていたところはありますが。そうした観点で、公約を発表した昨年衆議院議員選挙時や先日の参議院選挙時は感染状況がかなり落ち着いていたこともあり、公約の中に入れました。炎天下の中、多くの人がマスクを外さず屋外を闊歩する状況を浜田さんはどのように分析されていますか?一度始めた習慣が定着し、マスクを外すという行動に至り難くなっているのではないでしょうか。日本人の特性と言って切って良いかはさまざまな意見があるでしょうが、個人的には良くも悪くも日本人らしいと考えています。政治家が呼びかけることで一般人の行動変容は起こるでしょうか?効果の程は、正直私もわかりかねます。呼びかけの主体が自民党である場合とわれわれNHK党である場合でもかなり状況が異なるとは思います。ただ、最大与党の自民党がそうした呼びかけをしないのなら、リスクの低い局面でのマスク外しをわれわれが主張をする意味はあると思っています。一方、NHK党は「検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす」とPCR検査などの検査拡充に異議を唱えています。多くの政党がむしろ検査拡充を訴える中で目を引きました。参議院選挙後に起きた現在の第7波の最中では検査拡充の持つ意味はやや異なってきますが、まず検査について一般の方々の誤解が多いと感じています。医療者の立場からすれば、検査とは必ず白黒がはっきりするものではなく、限界があるというのが当然の認識です。しかし、一般の方々の多くはそのことを知らないのだろうという印象を持っています。私は2011年に医学部を卒業していますが、学部では臨床教育移行時にどのような場合に検査をすべきかについて、いわゆる「ベイズの定理」に基づき、事前確率の高さを基準に検査をすべきとの教育を受けました。ところが最近の国会での議論を見てると、率直に言って医師免許を有する比較的高齢の国会議員の方々がそうしたことを十分に理解されていない点にやや危機感を覚えます。事前確率で絞り込むことなしに闇雲に検査件数を増やせば、間違った検査結果も必然的に増加します。近年の医学教育を受けた自分としては、この点は国政の場でしっかりと伝えていくべきだと思っています。他方、一部の地方首長はこの検査の限界を理解して発言されています。国会で同じ方向で議論が進めば良いと願い、公約に入れさせていただいたのが経緯です。先ほど、第7波突入を念頭に置いた次元の変化に触れましたが、では第7波下の検査のあり方についてはどのようにお考えですか?まず陽性者の受け入れ態勢を一旦脇に置いて考えると、自治体によっては時に検査陽性率90%超というケースも報告されている現在は、理論上から言えば検査件数がまったく足りないことになるので、検査を拡充したほうが良いという判断になるでしょう。しかし、受け入れ態勢を含めて考えるとかなり厄介です。現在主流のオミクロン株(BA.5)の感染では、基本的に自宅療養をすれば良い方がほとんどです。しかし、一般の方は陽性と判定されれば、ほとんどの方が不安を抱えます。その結果、軽症患者が医療機関の外来に殺到しているという悩ましい状況が今現在です。政府は抗原検査キットの無料配布政策まで打ち出しました。一般の方々は興味本位も含め自分の感染有無を知りたい方が多いでしょうし、その気持ちもわかります。その気持ちに配慮した上で行われている政策であることは理解できます。しかし、医師でもある自分の考えは、検査結果次第で治療方針が変わるならば検査の意味はありますが、新型コロナの場合は重症化リスクのある人を除けば、陽性が確定しても特別な治療があるわけではありません。これは検査によって治療方針がほとんど変わらない事例の典型例とも言えます。今回の幅広い層への抗原検査キットや無料検査所の拡大は、こうした医学的視点が反映されていない政策です。私自身はどちらかといえばやらないほうが良いのではと思っています。現在も診療に従事されているとのことですが、その現場で第7波の影響を感じることはありますか?私自身は、放射線科医なので新型コロナの肺炎に至った患者さんのCT画像を見ることはありますが、現状はそうした事例は必ずしも多くはありません。また、勤務先の病院は新型コロナ患者で逼迫しているという状況でもないです。ただ一方で、友人や恩師の医師のSNSの投稿やコメントでは、軽症患者が殺到して混乱に陥っていること、また保健所も大変な状況にあることは認識しています。そうした中で、当事者たちからそろそろ全数把握は止めて、入院患者に限定した患者数把握で良いのではないかとの意見が出ていることも承知しています。私自身もその通りだと考えています。その意味では新型コロナに関しては従来から感染症法上の5類扱いにすべきという意見があります。この論調はデルタ株などに比べ感染力が強いわりに重症化リスクは低いと言われているオミクロン株に入れ替わってから、一般人を中心に勢いを増し、一方でこの点に慎重な医療従事者との溝が深まっている印象も受けます。私自身は新型コロナを感染症法上の5類扱いにするか否かについて、あまり強いこだわりはありません。そもそも5類に分類されている感染症の中でも現実の臨床現場での対応には差がつけられているように感じています。新型コロナについても同様で今後のワクチン接種の進展などに応じてケースバイケースで少しずつ緩やかに設定を進めていけば良いのではないでしょうか。もっとも一般の方々からすると、この5類か否かという議論はある意味わかりやすさもあるのでしょうし、議論すること自体を私は否定しているわけではありません。印象論になってしまいますが、この件に関して、厚生労働省は保健所が過度な負担を抱えていることを認識しているにもかかわらず、あまり現状を動かしたがっていないように感じています。この認識に立つと、厚生労働省の対応は以前から少し不思議ですね。もっともこの点も厚生労働省自体が未曽有のコロナ禍でなかなか身動きがとりにくい状況なのかもしれないと推察しています。次回は日本版CDCや日本版ACIP、ナースプラクティショナー導入を提唱した経緯やワクチン政策などについて浜田氏の考えを取り上げる予定である。

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AIがやって来た!【Dr. 中島の 新・徒然草】(438)

四百三十八の段 AIがやって来た!暑いですね。蝉もうるさいです。ところが、いつの間にか夜は秋の虫が鳴いています。虫の声を聞くと、少し物悲しい気にさせられるのはなぜでしょうか。大した成果もなく1年の半分以上が過ぎてしまった……。そんな後悔の念からくる寂しさかもしれません。さて、ウチの病院にもついにAI、いわゆる人工知能が導入されました。胸部レントゲンを読影してくれるのです。結節影、浸潤影、気胸を見つけては、赤黄緑青などのカラフルな色で表示してくれます。イメージとしては、ちょっと愛想のないSPECTみたいな感じです。これがルーチン的に画像上に表示されるのですが、結構、役に立つ気がします。救急外来での肺炎疑いの場合、「浸潤影かも?」と思うところに色が付いています。実は、私も胸部単純レントゲンの読影にはまったく自信がなかったので、これまでにいろいろな裏ワザを考案してきました。1つは、胸部CTで確認するもの。単純レントゲンで不明瞭でも、胸部CTならクッキリ見えることが多々あります。もう1つは、以前の画像と比較するもの。過去の胸部単純レントゲンがあれば、横に並べて立体視してみます。すると、新たに出現した浸潤影や結節影は浮かび上がって見えるので、この現象を活用してきました。ここにもう1つ加わった新たな裏ワザが、AIです。これで見落としの確率も格段に減るというもの。実際に何例か見たところでは……肺炎初期の浸潤影を指摘した。AIもあまり自信ないのか、緑~紫程度の表示でした。脱水があって不明瞭な段階の浸潤影を、うまく指摘していたと思います。20代の若い女性の結節影を指摘した。AIは自信満々で、赤で表示しました。拡大してみると、直径数ミリの丸いものがあります。年齢からして、肺がんの可能性はあまりないと思うのですが。後で放射線科の先生に確認してみたいと思います。でも、何もなさそう。現時点のAIには、全面的に頼ることはできません。が、徐々に信頼度が上がっていくのだと思います。我々医師も、正しい距離感でAIと付き合っていく必要がありますね。最後に1句暑くても ひたすら働く AIくん

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コロナ感染後の心筋梗塞・脳卒中発生率、ワクチン接種者vs.未接種者/JAMA

 韓国・国民健康保険公団(National Health Insurance Service)のKim Young-Eun氏らが、新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞(AMI)および虚血性脳卒中との関連を調査した。その結果、新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率の増加は、血栓症のリスク増加に関連しており、ワクチンを完全接種することでワクチン接種が感染後の二次合併症のうちAMIおよび虚血性脳卒中のリスク低下に関連していることが明らかになった。JAMA誌オンライン版2022年7月22日号リサーチレターに掲載。ワクチン接種状況によるコロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率 研究者らはワクチン未接種者とワクチン完全接種者(mRNAワクチンまたはウイルスベクターワクチンを2回接種)の新型コロナ感染後の急性心筋梗塞および虚血性脳卒中の発生率を比較した。研究には韓国の全国新型コロナレジストリ(感染と予防接種に関する)と国民健康保険公団のデータベースが使用された。対象者は2020年7月~2021年12月に無症候性感染を含む新型コロナと診断された18歳以上の成人。主要評価項目は新型コロナの診断から31~120日後に発生した急性心筋梗塞と虚血性脳卒中による入院の複合アウトカムとした。 新型コロナウイルス感染後のワクチン接種状況と急性心筋梗塞および虚血性脳卒中との関連を調査した主な結果は以下のとおり。・研究期間中の新型コロナ患者59万2,719例のうち、23万1,037例が該当した。そのうち6万2,727例はワクチン接種を受けておらず、16万8,310例はワクチン完全接種をしていた。・ワクチン完全接種者は年齢が高く、併存疾患を有する者が多かった。その一方で、新型コロナの重症例はみられなかった。・複合アウトカムの発生は、ワクチン未接種群で31例、ワクチン完全接種群で74例であり、100万人日あたりの発生率はそれぞれ6.18と 5.49だった。また、調整ハザード比[aHR]は0.42(95%信頼区間[CI]:0.29~0.62)とワクチン完全接種群で有意に低かった。・急性心筋梗塞と虚血性脳卒中それぞれのaHRもワクチン完全接種群で有意に低かった(0.48[同:0.25~0.94]vs. 0.40[同:0.26~0.63]。・年齢区分で見た場合、40~64歳のaHRは0.38(同:0.20~0.74)、65歳以上では0.41(同:0.26~0.66)だった。・ただし、ワクチン接種者の転帰イベントリスクは全サブグループで観察されたものの、重症または重篤患者の一部では統計学的有意差が得られなかった。 本調査結果は「心血管疾患の危険因子を持つ人々へのコロナワクチン接種を支持する。しかし、患者の特徴にばらつきがあり、予防接種を受けるかどうかの決定には心血管リスクに関連する可能性のある複数の因子の影響を受ける」としている。コロナワクチン接種と心疾患 7月25日に開催された疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会でコロナワクチン接種と「死亡」との因果関係が初めて認められた1)。これまでもアナフィラキシーなどが理由で請求が認定されたのは850件にのぼるが、死亡一時金が支払われるのは今回が初めて。認定事例は90代女性で、死因は急性アレルギー反応と急性心筋梗塞。基礎疾患として脳虚血発作、高血圧症、心肥大を有していた。このようなニュースが報道されると心疾患のある方がコロナワクチン接種をためらってしまいそうだが、第7波の爆発的に感染が広がりいつ自分が感染してもおかしくない状況下では、上記の論文を踏まえ、ワクチンの推奨はやはり大切なのかもしれない。

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未接種者とブレークスルー感染者、臨床転帰と免疫の違いは?

 国内における新型コロナ感染流行の第7波においては、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染も多数報告されている。ワクチン接種を受けた感染者の大半は軽症か無症状だが、入院を要する者もいる。ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者について免疫および臨床的特徴を調べたイタリア・フローレンス大学のGiulia Lamacchia氏らの研究がJournal of Clinical Immunology誌2022年7月9日号オンライン版に掲載された。ワクチン未接種の新型コロナ感染者は有意に高い重症度指数を示した 本試験では、2021年11月~12月中旬のデルタ株の流行時に、イタリア・フィレンツェのカレッジ大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症患者を、発症からの期間や重症度に関係なく対象とし、臨床データおよび検査データを収集した。ウイルスベクターまたはmRNAワクチンを完全接種した患者36例(うち4例はブースター接種まで完了)、ワクチン未接種者29例だった。最後のワクチン接種から感染までの平均時間は139±63日であった。 ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者の症状を調べた主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群の平均年齢は73歳、ワクチン非接種群は67歳だった。入院時、ワクチン接種群は併存疾患がワクチン未接種群と比較して有意に多かった(平均4.3 vs. 2.9)。一方で、ワクチン未接種群はワクチン接種群と比較して血清フェリチン値、乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に上昇していた。肺機能障害、他の炎症マーカー(反応性タンパク質、IL-6、Dダイマー)レベルについては両群間に有意差はなかった。・ワクチン未接種者群はワクチン接種群に比べ、有意に高い重症度指数を示した。肺炎の発症率はワクチン未接種群93%(27/29)に対し、ワクチン接種群69%(24/36)、死亡率はワクチン未接種群31%(9/29)、ワクチン接種群11%(4/36)であった。・ワクチン接種の有無にかかわらず、生存例(52例)と死亡例(13例)の入院時の抗SARS-CoV-2免疫を比較したところ、抗N IgGおよび抗S IgMは両群間に差がなかったが、抗S IgGおよび中和Igは生存例で有意に高かった(生存例は死亡例よりも高いレベルの抗S IgGとスパイク特異的CD4+T細胞を示した)。・新型コロナ感染入院時、65例中6例(9.2%)が高い抗IFN-α抗体価を示した。6例中の5例が男性で、女性は最年長者(90歳)のみであった。平均年齢は79歳で、他のコホートの平均年齢70歳よりも高かった。高抗IFN-α抗体保有者6例のうち、ワクチン未接種群の3例は死亡し、ワクチン接種群の3例は生存して退院した。 著者らは「ワクチン接種者はワクチン未接種者より入院前の身体状態が不良であったにもかかわらず、転帰は良好であった。抗SARS-CoV-2特異的免疫の迅速な活性化は、感染症の治癒のために不可欠であり、ワクチン接種による事前の免疫獲得は疾患の悪化防止に大きく貢献し、高リスク因子(高齢、合併症、抗IFN-α自己抗体)の存在さえも克服することが可能である」としている。

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コロナ禍で医療資源確保のために国民へのお願い/4学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第7波の流行拡大が深刻な様相を呈している。発熱外来には連日長蛇の受診者がならび診療予約の電話が鳴りやまない。また、救急搬送は大都市圏で稼働率9割を超え、受け入れ先医療機関の不足や長い待機時間などが大きな問題となっている。 こうした事態を鑑み、日本感染症学会(理事長:四柳 宏)、日本救急医学会(代表理事:坂本 哲也)、日本プライマリ・ケア連合学会(理事長:草場 鉄周)、日本臨床救急医学会(代表理事:溝端 康光)の4学会は連名で「限りある医療資源を有効活用するための医療機関受診及び救急車利用に関する4学会声明」を8月2日に急遽発表した。 声明では、COVID-19に罹患したと思われる際の個々人の行動について、軽症で重篤化リスクのない人については、自宅療養を勧めるとともに、救急車を利用する際の指針について示している。COVID-19かなと思ったら?【声明の4つのポイント】1)症状が軽い*場合は、65歳未満で基礎疾患や妊娠がなければ、あわてて検査や受診をする必要はありません。自宅療養を続けられます。この場合、新型コロナウイルス専用の特別な治療は行いません。医療機関での治療は、つらい発熱や痛みを和らげる薬が中心になり、こうした薬は薬局などで購入できます。限りある医療資源を有効活用するためにも、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診することは避けてください。 *症状が軽いとは「飲んだり食べたりできる、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い」2)症状が重い**場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続く場合、65歳以上の方や65歳未満でも基礎疾患がある方、妊娠中、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があります。早めにかかりつけ医に相談してください。高熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようでしたら、かかりつけ医や近隣の医療機関へ必ず相談、受診(オンライン診療を含む)してください。 **症状が重いとは「水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしてもおさまらない」3)救急車を呼ぶ必要がある症状は、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがあります。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわないでください。4)救急車の利用の目安については「救急車利用リーフレット(高齢者版、成人版、子供版)」をご活用ください。 判断に迷う場合には、普段からの体調を把握しているかかりつけ医への相談、各種相談窓口(行政などが設置している発熱相談窓口や♯7119などの救急安心センター・救急相談センター、♯8000)などの活用をしてください。7項目で診療集中の弊害を説明 上記の診療を受ける、救急車を利用する前のポイントを踏まえ、解説として7項目のCOVID-19のとくにオミクロン株に関する疾患情報やリスクの高い場合の対応を記している。以下に抜粋して示す。【オミクロン株にかかったときの自然経過】・オミクロン株への曝露があってから平均3日で急性期症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳・全身のだるさ)が出現するが、そのほとんどが2~4日で軽くなること。・COVID-19の検査を受けることは大切だが、検査を受けることができなくてもあわてないで療養(自宅での静養)することが大切。・重症化する人の割合は数千人に1人程度と推定(厚生労働省資料より)。【COVID-19を疑う症状が出た場合】・COVID-19の症状(発熱・のどの痛み・鼻水・咳・全身のだるさなど)が出た場合は、まず仕事や学校を休んで外出を避け、自宅療養を始める。【症状が軽く65歳未満で基礎疾患がない場合、妊娠中でない場合】・症状が軽く(飲んだり食べたりできて、呼吸が苦しくない、乳幼児で顔色が良い)、基礎疾患がない場合や妊娠がない場合は、検査や薬のためにあわてて医療機関を受診をする必要はない。・COVID-19専用の特別な治療は行わない。つらい発熱や痛みを和らげる薬(アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬)が治療の中心で、このような薬は薬局など(ドラッグストアやインターネット販売も含む)で購入できる。・限りある医療資源を有効活用するためにも、検査を目的とした医療機関の受診は避ける。・市販の医療用抗原検査キットを使い、症状が出た翌日以降に自分で検査することもできるが、症状が出た当日に検査をすると新型コロナウイルスに感染しているのに陰性になる可能性が高いため、翌日以降の検査をお勧めする。【症状が重い、発熱が4日以上、65歳以上、基礎疾患がある場合、妊娠中の場合】・症状が重い(水分が飲めない、ぐったりして動けない、呼吸が苦しい、呼吸が速い、乳幼児で顔色が悪い、乳幼児で機嫌が悪くあやしても治まらない)場合や、37.5℃以上の発熱が4日以上続いている場合は、医療機関への受診(オンライン診療を含む)が必要。・たとえ症状が軽くても、65歳以上の方、基礎疾患がある方や妊娠中の方、ワクチン未接種の方などは、重症になる可能性があるので、早めにかかりつけ医に相談。・熱が続くなど症状が長引いたり、重くなるようだったら、かかりつけ医や近隣の医療機関に必ず相談、受診(オンライン診療を含む)。・次の主な重症化のリスク因子がある方は受診が必要。〔主な重症化のリスク因子〕65歳以上の高齢者/悪性腫瘍(がん)/慢性呼吸器疾患(COPDなど)/慢性腎臓病/糖尿病/高血圧/脂質異常症/心臓や血管の病気/脳梗塞や脳出血など脳血管の病気/高度肥満(BMIが30以上)/喫煙(ヘビースモーカーの場合)/固形臓器移植後の免疫不全/妊娠後期/免疫抑制・調整薬の使用/HIV感染症(参考:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第8.0版を改変)【医療機関への受診について】・医療機関に受診が必要な場合は、通常診療中の時間帯(平日の日中など)に、かかりつけ医や近所の医療機関に電話相談してから受診。【救急車の利用の目安について】・COVID-19により救急車を呼ぶ必要がある症状としては、顔色が明らかに悪い、唇が紫色になっている、(表情や外見などが)いつもと違う、様子がおかしい、息が荒くなった、急に息苦しくなった、日常生活で少し動いただけで息苦しい、胸の痛みがある、横になれない、座らないと息ができない、肩で息をしている、意識がおかしい(意識がない)などがある。このようなときには救急車を呼ぶことをためらわない。 以上、国民向けの内容であるが、外来診療などの際に患者さんにお伝えすることで、現在の診療への集中化の緩和につながればと期待する。

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第5回 発熱外来に飛び交う怒号

「何かあったら責任取ってくれるんですか」発熱患者さんが増えているということもあるのですが、「医療」よりも「診断」を求めて発熱外来を受診している人が多く、医学的に本来受診すべき人が満足に受診できない状況があるようです。雇用者が発熱外来の受診を指示したり、職場を休む場合に証明書が必要だったりすることもあり、非医学的な受診を求めるケースが相次いでいます。そのため、無症状や軽症者の受診を控えるよう呼び掛けている自治体もあります。濃厚接触者が自宅待機期間の解除のために発熱外来を利用するというのは、モラルハザードにもほどがあります。もちろん、待機解除を容認した政府や、記事で広めたわれわれのリスクコミュニケーションにも責任はあるかもしれません。しかし、鶴の一声で一気にそういう流れが進むわけではなく、発熱外来を受診できない人や、その待ち時間が長い人から、医療従事者に厳しい言葉が浴びせられています。国民皆保険制度の弊害なのか、自分や自分の家族が優先的に診てもらえないことに対して怒りが収まらず、「何かあったら責任取ってくれるんですか」などの言葉が、多忙な発熱外来ではお決まりのフレーズになってきました。パンデミック初期の頃は、PCR検査が全然普及しておらず、4日以上発熱が続く場合に病院を受診するという施策でした。若年者層ではそこまで肺炎のリスクは変わっていないので、あの時を思い出していただきたいと思います。陽性登録から療養までの仕組みづくりが急務まずは陽性であったときの報告を、感染者自身が行う仕組みを作る必要があります。厚労省は、自らが検査した陽性結果を自治体の健康フォローアップセンター等に登録し、外来受診を経ることなく迅速に療養につなげる仕組みを導入することを勧めるよう通達を出しています1)。実際にこれを導入している千葉県がモデルケースとして紹介されています(図)。画像を拡大する図. 千葉県の健康フォローアップセンター活用例千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて(2022年8月3日最終更新)より引用東京都も、これと似た運用を8月3日から開始しています2)。とはいえ、オンラインに慣れていない年齢層もあるため限界がありますが、My HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)から療養証明が取得できることを周知し3,4)、これを企業等が活用することが重要です。解決策はピークアウトを待つことか医療従事者の感染が増えています。発熱外来の医療従事者が感染すると、病棟のスタッフを応援に出す必要があるなど、真綿で首を絞められるような弊害が出てきます。とくに国公立病院は、すでに自治体から発熱外来の拡充を要請されていると思います。なおさら医療従事者としては感染しにくい状況にあり、危機感を持って診療に当たっているところも多いでしょう。8月中に訪れると予想される、いや、むしろそう祈っている流行曲線のピークアウトを待つしかないのかもしれません。早く来てください。参考文献・参考サイト1)千葉県新型コロナウイルス感染症検査キット配付・陽性者登録センターについて2)東京都福祉保健局 東京都陽性者登録センター3)厚生労働省 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)4)My HER-SYSで療養証明書を表示する場合の方法

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コロナによる嗅覚・味覚障害が長期持続する人の割合~メタ解析/BMJ

 成人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による嗅覚・味覚障害の長期持続者は、それぞれ5.6%と4.4%に認められ、女性は男性に比べ、両障害ともに回復しにくい傾向がみられるという。180日回復率は、嗅覚障害が95.7%、味覚障害は98.0%だった。シンガポール国立大学のBenjamin Kye Jyn Tan氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、「COVID-19患者のかなりの割合で、長期にわたり嗅覚や味覚に変化を生じる可能性があり、このことがlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の負荷を増す可能性も示唆された」と述べている。BMJ誌2022年7月27日号掲載の報告。嗅覚と味覚障害を有するCOVID-19患者の観察研究を抽出 検討では、PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、medRxivを創刊から2021年10月3日まで検索し、18歳以上で嗅覚または味覚障害を有するCOVID-19患者を対象にした観察研究を抽出した。time-to-event曲線を含む記述的予後研究と、予後因子に関する試験を分析対象とした。 データの抽出は2人のレビュアーがそれぞれ行い、試験のバイアスについてはQUIPS(Quality In Prognosis Studies)を、エビデンスの質(確実性)についてはGRADEを用いて評価し、さらにPRISMAとMOOSEの報告ガイドラインに従って解析した。 反復数値アルゴリズムを用いて、個別被験者データ(IPD)のtime-to-eventを再構築・統合し、distribution-free要約生存曲線(生存を維持した被験者の30日間隔で報告された回復率)を取得した。嗅覚・味覚障害持続者の割合を推算するために、プラトー生存曲線のWeibull non-mixture cureモデルからの治癒数をロジット変換し、2段階メタ解析でプールした。また従来の集計データのメタ解析により、予後因子と回復の補正前の関連性を調べた。 主要アウトカムは嗅覚または味覚障害が残る患者の割合、副次アウトカムは嗅覚・味覚の回復に関連する予後変数のオッズ比(OR)だった。嗅覚・味覚障害持続者の割合は5.6%と4.4% 4,180のレコードから18試験(被験者総数3,699例)を抽出し、IPDメタ解析を行った。バイアスリスクは、低~中等度で、エビデンスの質は中等~高度だった。 パラメトリック治癒モデルでは、全患者のうち自己申告による障害持続者の割合は、嗅覚が5.6%(95%信頼区間[CI]:2.7~11.0、I2=70%、τ2=0.756、95%予測区間[PI]:0.7~33.5)、味覚が4.4%(95%CI:1.2~14.6、I2=67%、τ2=0.684、95%PI:0.0~49.0)と推定された。感度分析では、この結果は過小評価である可能性が示唆された。 30日、60日、90日、180日時点の嗅覚回復率は、それぞれ74.1%(95%CI:64.0~81.3)、85.8%(77.6~90.9)、90.0%(83.3~94.0)、95.7%(89.5~98.3)だった(I2=0.0~77.2%、τ2=0.006~0.050)。同様に味覚回復率は、それぞれ78.8%(70.5~84.7)、87.7%(82.0~91.6)、90.3%(83.5~94.3)、98.0%(92.2~95.5)だった(I2=0.0~72.1%、τ2=0.000~0.015)。 女性は男性に比べ、嗅覚・味覚障害が回復しにくい傾向がみられた。嗅覚回復に関するORは0.52(95%CI:0.37~0.72、7試験、I2=20%、τ2=0.0224)、味覚回復に関するORは0.31(95%CI:0.13~0.72、7試験、I2=78%、τ2=0.5121)だった。嗅覚回復を困難にした要因としては、初期障害が重度であったこと(OR:0.48、95%CI:0.31~0.73、5試験、I2=10%、τ2<0.001)、鼻詰まり(0.42、0.18~0.97、3試験、I2=0%、τ2<0.001)が認められた。

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コロナとインフルワクチンの同時接種での副反応、ファイザー製vs.モデルナ製

 日本国内でも先日開催された厚生労働省の厚生科学審議会・予防接種・ワクチン分科会にて、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種が了承された1)2)。世界ではすでに新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種を行う例もあり、米国・CDC COVID-19 Response TeamのAnne M Hause氏らが同時接種による有害事象の増加有無、ワクチンメーカーによる違いについて調査した結果、新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時接種した者は新型コロナワクチンのみを接種した者と比較して、接種後0~7日の全身反応の報告が有意に増加していたことが明らかになった。ただし、それらは軽度~中等度であること、また、同時接種による調整オッズ比[aOR]はファイザー製で1.08、モデルナ製で1.11であったことも示唆された。本研究はJAMA Network Open誌2022年7月15日号に掲載された。コロナとインフルエンザワクチンの同時接種の全身反応は軽度または中等度 研究者らは米国における新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチンを同時に接種した際の有害事象を評価するため、後ろ向きコホート研究を実施。用いたデータはv-safe*から収集したもので、12歳以上の2021年9月22日~2022年5月1日のワクチン接種後0〜7日目の情報(接種部位反応[注射部位疼痛]と全身反応[倦怠感、頭痛、筋肉痛…]および健康への影響)だった。新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種後7日間の全身反応のオッズ比を性別、年齢、ワクチン接種の週で調整し、新型コロナワクチンのブースター接種単独とインフルエンザワクチンとの同時接種を評価した。*v-safeとは、CDCが新型コロナワクチン接種プログラムのために特別に確立した安全監視システム。ワクチン接種後の個々の健康状態を把握するため、テキストメッセージとWebで調査するためのスマートフォンベースのツール。ワクチン接種後の最初の週に、登録者は局所注射部位と全身反応に関する調査を毎日行う。登録者は、欠勤の有無、日常生活の可否、症状が出現した場合に医療者からケアを受けたかなどを尋ねられる。 コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種による副反応を調査した主な結果は以下のとおり。・v-safeに登録されている12歳以上98万1,099例のうち、9万2,023例(9.4%)が新型コロナワクチンのブースター接種とインフルエンザワクチン接種を同時に行った。女性が5万4,926例(59.7%)、男性が3万6,234例(39.4%)で、性別不明は863例(0.9%)だった。・年齢構成は、12〜49歳が3万7,359例(40.6%)、50〜64歳は2万3,760例(25.8%)、65〜74歳は2万4,855例(27.0%)、75歳以上は6,049例(6.6%)だった。・ワクチン接種翌週の回答によると、ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの3万6,144例(58.9%)と、モデルナ製コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種したうちの2万1,027例(68.6%)が全身反応を報告し、ほとんどの反応は軽度または中等度だった。・報告はワクチン接種の翌日が最も多く、その症状は倦怠感、頭痛、筋肉痛だった。ファイザー製コロナワクチンとインフルエンザワクチン同時接種群(6万1,390例)とファイザー製コロナワクチン単独群(46万6,439例)を比較した場合の報告割合は、接種部位反応(注射部位疼痛):62.2% vs.61.1%、疲労:44.2% vs.43.6%、筋肉痛:33.2% vs.33.4%、頭痛:33.7% vs.34.8%だった。一方、モデルナ製コロナワクチン群(3万633例)とインフルエンザワクチン同時接種群(42万2,637例)では、接種部位反応(注射部位疼痛):70.6% vs.67.4%、疲労:52.8 vs.48.9%、筋肉痛:43.6 vs.39.6%、頭痛:43.1 vs.40.3%だった。・コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時接種した場合のファイザー製とモデルナ製でのaORを算出したところ、さまざまな全身反応については、ファイザー製が1.08(95%信頼区間[CI]:1.06~1.10)、モデルナ製が1.11(同:1.08~1)だった。接種部位反応については、ファイザー製が1.10(同:1.08~1.12)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。・さまざまな健康への影響についてはファイザー製が0.99(0.97~1.02)、モデルナ製が1.05(1.02~1.08)だった。そのうち、通学や業務への支障は、ファイザー製が1.04(1.01~1.07)、モデルナ製が1.08(1.04~1.12)だった。 なお、本結果は、第33回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(令和4年7月22日)における同時接種の有効性・安全性に関する資料1)にも引用されている。

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