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米国、麻疹排除国の地位を失う瀬戸際に

 米国が麻疹(はしか)排除国としての地位喪失に急速に向かっていることが、新たな研究で示された。米国は2000年に麻疹排除の達成を宣言したが、同年に米疾病対策センター(CDC)が設定した麻疹排除状態の維持の7つの指標のうち4項目を満たせていない状況にあるという。この研究は米ボストン小児病院の小児科医で博士研究員のAnne Bischops氏らのグループによるもので、詳細は、「The Lancet」に5月2日掲載された。Bischops氏は、「米国が2026年中に麻疹排除国の地位を失う可能性は極めて高いと考えられる」と結論付けている。 世界保健機関(WHO)によると、重症の麻疹感染は命に関わる肺炎や脳炎を引き起こす可能性がある。また、視力や聴力に長期的な障害が残ることもある。論文の上席著者であるボストン小児病院のMaimuna Majumder氏は、「麻疹は回復したとしても、生涯にわたる問題が残る可能性がある。特に1歳未満の乳児は重篤な合併症のリスクが極めて高い。この流行で感染した子どもが受ける真の影響は何年も経過してから初めて明るみに出るかもしれない」とニュースリリースで述べている。  本研究の背景情報によると、米国で最近相次いでいるアウトブレイクは2025年1月にテキサス州から始まり、その後45州に広がった。研究グループは今回、現在の米国の状況を、CDCの国家予防接種プログラムが定めた、麻疹排除状態が維持されているかを評価する7指標と照らし合わせた。その結果、7項目のうち4項目が既に排除維持の基準を満たしていないことが明らかになった。・麻疹罹患率が低い:患者数は人口1000万人当たり1例未満米国では2026年初頭の時点で人口1,000万人当たり93.2例が報告されている・麻疹症例の大多数を国外から持ち込まれた症例が占めている2025年初頭以降、国外由来の症例は全体の6~7%に過ぎず、大半は国内感染例であった。・アウトブレイクの発生数が少なく(中央値が年間4件以内)規模が小さい(1回のアウトブレイクの症例数が中央値6例)米国では2025年には48件のアウトブレイクが発生し、2,000例超の感染例が報告された。今年もすでに19件のアウトブレイクが発生し、1,600例超の感染例が報告されている。・伝播レベルが低い:1人の感染者が平均して1人未満に感染させる2025年初頭以降の期間の75%以上でこの基準を超えていた。 また、残る3つについても悪化傾向が認められた。・感染源不明症例が4週連続で発生していない2025年1月の最初の感染例以降、米国では4週連続で症例報告がなかった期間は一度もなく、また全体の90%が国内感染例だった。・ワクチン接種による集団免疫集団免疫の達成には95%の人々が2回の麻疹ワクチン接種を受ける必要があるが、2024~2025年度の米国の幼稚園児の平均接種率は92.5%、6~59歳における麻疹抗体保有率(2017~2020年)は95.7%だった。・国内に定着して持続的に感染を広げている麻疹ウイルス株がない大多数の症例でウイルスの遺伝子型が同一であり、多くが同一配列を有していることから、同じ系統のウイルスが国内で伝播している可能性が示唆されている。 この研究結果は、今後開催予定の汎米保健機関(PAHO)の感染症専門家委員会にも影響を及ぼす可能性がある。同委員会は11月の会議で米国の麻疹排除国としての地位の再評価を予定している。なお、研究グループによると、カナダは2025年11月に麻疹排除国の地位を失っている。 「こうした流れを食い止めるには、ワクチン接種の取り組みを強化し、接種免除率を低下させ、現在も広がりつつある地域内感染を断ち切ることが不可欠だ」と研究グループは主張している。

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細菌性髄膜炎・HSV脳炎GL改訂、経験的治療の薬剤選択を見直し/日本神経学会

 2026年3月、『細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014』と『単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2017』を統合した『細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026』(日本神経学会・日本神経感染症学会監修、南江堂)が発刊された1)。今回の改訂では、ワクチン定期接種化による起炎菌の変遷、薬剤耐性菌の動向、FilmArray髄膜炎・脳炎パネルに代表される遺伝子検査の普及などを反映し、初期治療から退院後のフォローアップに至る一連の流れが大幅に刷新されている。 5月20~23日に開催された第67回日本神経学会学術大会の生涯教育セミナーにおいて、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた中嶋 秀人氏(日本大学医学部内科学系神経内科学分野 主任教授)が「細菌性髄膜炎・単純ヘルペス脳炎診療ガイドライン2026の改訂のポイント」と題して講演を行った。講演レポートとして、前編では「細菌性髄膜炎」、後編では「単純ヘルペス脳炎」について、2回にわたって紹介する。ガイドライン改訂の主なポイント【細菌性髄膜炎】初期の経験的治療(エンピリックセラピー)のレジメン変更と迅速性 今回の改訂では、経験的治療の薬剤選択が見直された。髄液由来肺炎球菌では第3世代セフェム耐性率・メロペネム(MEPM)耐性率がともに上昇傾向にあり、2023年のJANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)データではMEPM耐性率が18.2%に上昇している。一方でバンコマイシン(VCM)は感性を維持している。そのため、第3世代セフェム(セフォタキシム[CTX]/セフトリアキソン[CTRX])またはMEPMのいずれを用いる場合もVCMを併用することが推奨され、年齢・免疫状態に応じた迅速な薬剤選択が求められる。年齢・免疫状態別のレジメン例・免疫正常(16〜49歳):肺炎球菌(60%以上)、髄膜炎菌 第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・免疫正常(50歳以上):肺炎球菌が最多。リスクの高まるリステリア菌をカバーするためABPCを追加 アンピシリン(ABPC)+第3世代セフェム(CTXまたはCTRX)+VCM MEPM+VCM ・慢性消耗疾患・免疫不全:肺炎球菌・リステリア菌に加え、グラム陰性桿菌(GNR)やMRSAも考慮 ABPC+セフタジジム(CAZ)+VCM MEPM+VCM ・頭部外傷後・外科手術後:ブドウ球菌に加え、緑膿菌を含むGNRを考慮 MEPM+VCM CAZ+VCMTime is Brainの原則 細菌性髄膜炎は「Time is Brain」の病態であり、病院到着から1時間以内の抗菌薬投与開始を目標とする。頭部CTや腰椎穿刺によって投与が遅れる場合は、検査の完了を待たずに抗菌薬を先行投与する。なお、古典的三徴(発熱・項部硬直・意識障害)が揃う例は成人全体でも33%にすぎず、とくに高齢者では発熱が目立たないことや、意識障害が認知症・せん妄と誤認されやすいことから、厳重な警戒を要する。デキサメタゾン併用による炎症反応の抑制 炎症抑制による予後改善のため、すべての成人患者にデキサメタゾンの併用(最初の抗菌薬投与の前または同時開始、4日間)が推奨される。死亡率・神経学的後遺症・聴力障害の減少が期待できる。ただし、起炎菌が肺炎球菌・インフルエンザ菌以外なら中止し、とくにリステリアが起炎菌として判明した場合は死亡率悪化のエビデンスがあるため直ちに中止する。診断技術のアップデート:FilmArray髄膜炎・脳炎パネル 約1時間で主要病原体14種を同定できるマルチプレックスPCR遺伝子検査「FilmArray髄膜炎・脳炎パネル」が2022年10月に保険収載され、診断フローに位置づけられた。従来は培養検査やグラム染色の結果判明まで数日を要していたが、本検査による迅速な病原体同定は、経験的に開始したアシクロビル(ACV)の投与期間短縮など医療資源の適正使用に寄与する。起炎菌・感受性が判明した後は、速やかに狭域スペクトラムの抗菌薬へ変更する(De-escalation)。FilmArray検査のピットフォール 一方で、FilmArray検査には実臨床上の限界(ピットフォール)があり、結果は臨床症状・髄液所見と合わせて総合的に判断する必要がある。細菌性髄膜炎では、本検査で薬剤感受性(耐性菌の有無)が判別できないため、培養検査・グラム染色を省略せず必ず並行して実施しなければならない。また、結核菌はパネルに含まれず、院内感染や基礎疾患を有する例、脳外科術後の髄膜炎例には不向きである点にも注意を要する。抗補体薬を使用する患者への対応 重症筋無力症や視神経脊髄炎スペクトラム障害など神経疾患への抗補体薬(C5阻害薬:エクリズマブ、ラブリズマブ、ジルコプランなど)の適応拡大を反映し、抗補体薬使用患者への対応が新設された。抗補体薬使用患者では侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)のリスクが1,000〜2,000倍に上昇し、劇症型を呈しうる。本邦のIMD致命率は10〜12%と高く、発症から24〜48時間で致命的合併症を来しうるため、予防と早期対応がきわめて重要である。投与開始の2週間前までに4価髄膜炎菌ワクチン(販売名:メンクアッドフィ)を接種する(B群髄膜炎菌は本ワクチンの対象外で、B群ワクチンは国内未承認)。発熱時には髄膜炎症状がなくてもIMDを念頭に血液培養2セットを採取し、結果を待たずに第3世代セフェム(CTRXなど)を直ちに開始する。(後編は6/11公開予定)

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未就学児の急性喘鳴へのアジスロマイシン、症状改善せず/NEJM

 救急外来を受診した中等度~重度の急性喘鳴を呈する未就学児において、アジスロマイシンはプラセボと比較して喘鳴関連症状を改善しなかった。米国・アリゾナ大学のKurt R. Denninghoff氏らPECARN AZ-SWED Trial Study Groupが、米国のPediatric Emergency Care Applied Research Network(PECARN)に加盟している小児救急外来8施設で実施した無作為化プラセボ対照試験「Azithromycin Therapy in Preschoolers with a Severe Wheezing Episode Diagnosed at the Emergency Department trial:AZ-SWED試験」の結果を報告した。喘鳴を伴う疾患は未就学児の入院の主な原因であり、また、抗菌薬による治療がしばしば行われている。観察研究では、喘鳴を繰り返す小児では喘鳴のない小児と比較し、鼻咽頭検体から3種類の病原性細菌(肺炎連鎖球菌、モラクセラ・カタラーリス、インフルエンザ菌)が高頻度に分離されることが示されていた。NEJM誌オンライン版2026年5月18日号掲載の報告。喘鳴で救急外来を受診した未就学児をアジスロマイシン群とプラセボ群に無作為化 研究グループは、救急外来を受診した中等度~重度の呼気性喘鳴(小児呼吸器評価尺度[Pediatric Respiratory Assessment Measure:PRAM]スコア4以上[スコア範囲:0~12、高スコアほど喘鳴が重度])の月齢18~59ヵ月児を、アジスロマイシン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1回12mg/kgを盲検下で1日1回5日間投与した。 主要アウトカムは、無作為化後5日間の幼児喘息発作日誌「Asthma Flare-up Diary for Young Children(ADYC)」スコアの合計スコアであった。ADYCは、17の質問(各質問のスコアは1~7で評価、高得点ほど喘鳴関連症状が重度であることを示す)から成り、1日のADYCスコアは、各質問の平均スコアとして算出。主要アウトカムとしたADYC合計スコアはその5日分の合計スコアで、想定されるスコア範囲は5~35であった。 副次アウトカムは、救急外来滞在時間、入院期間、および72時間以内の再受診(救急外来再受診または入院)とした。 投与前に病原性細菌が検出された患者については、無作為化後5~8日および14~21日の間に追跡調査を行い、細菌の有無と抗菌薬耐性を検査した。 有効性は、3種の病原性細菌検査で少なくとも1種について陽性であった患者(陽性コホート)と陰性であった患者(陰性コホート)で別々に評価した。喘鳴関連症状に関するADYCスコア、アジスロマイシン群9.59 vs.プラセボ群9.72 2021年9月~2024年12月に840例が登録され無作為化された。このうち、521例(62.0%)が病原性細菌陽性、312例(37.1%)が陰性、7例(0.8%)は不明であった。 事前に計画された中間解析の結果に基づき、データ安全性監視委員会は無益性のため本試験を中止した。 5日間のADYC合計スコアは、陽性コホートおよび陰性コホートのいずれにおいても、アジスロマイシン群とプラセボ群で有意差は認められなかった。ADYC合計スコアの中央値は陽性コホートでそれぞれ、9.59(四分位範囲[IQR]:7.29~12.60)vs.9.72(7.66~12.17)(p=0.70)、および陰性コホートで9.30(IQR:6.97~11.62)vs.9.10(7.19~11.45)(p=0.69)であった。 陽性コホートでは、細菌消失率はアジスロマイシン群で58.7%、プラセボ群で11.4%であった。 副次アウトカムも両コホートにおいて両群で類似しており、細菌耐性や有害事象の発現率も同様であった。

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開発中の塩基編集治療薬、単回投与でPCSK9およびLDL-Cを低下/NEJM

 LDLコレステロール(LDL-C)を管理する現行の治療モデルの限界を打ち破るために開発中のVERVE-102の第I相試験の結果が、米国・Verve Therapeutics(Eli Lillyの完全子会社)のScott B. Vafai氏らによって報告された。単回投与により、PCSK9およびLDL-C値が用量依存的に持続的かつ顕著に低下したことが示されたという。PCSK9機能喪失型変異を有する人は有さない人よりも、LDL-C値が低く、アテローム動脈硬化性心血管疾患を呈する人が少ないことが知られている。VERVE-102は、肝臓でのPCSK9産生を永続的に抑制するようデザインされた、体内で塩基編集を行う治療薬であり、アデニン塩基編集タンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)と、PCSK9を標的とするガイドRNA(gRNA)から構成され、これらがN-アセチルガラクトサミンを含む脂質ナノ粒子(LNP)に封入されている。NEJM誌オンライン版2026年5月25日号掲載の報告。35例に6用量のいずれかを投与した第I相試験 第I相試験は非盲検の単回投与漸増デザインにて行われた。  研究グループは、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症または早発性冠動脈疾患(PCAD)を有する成人患者に、6用量のVERVE-102(総RNA量の範囲:0.3~1.0mg/kg)のうち、いずれか1用量を静脈内投与した。  本試験の目的は、安全性の評価と血中PCSK9値およびLDL-C値の変化を評価することであった。  35例がVERVE-102の静脈内投与を受けた。内訳は、0.3mg/kgが4例、0.45mg/kgが6例、0.6mg/kgが4例、0.7mg/kgが8例、0.8mg/kgが6例、1.0mg/kgが7例であった。  本報告では、中間解析の結果が報告された。15例で少なくとも1年間、血中のPCSK9値、LDL-C値の低下を確認 平均年齢は52歳(範囲:27~66)、男性が24例(69%)、29例(83%)がヘテロ接合型家族性高コレステロール血症を有し、うち9例がPCADも有していた。PCADのみは6例(17%)。アジア人は6例(17%)で、黒人1例(3%)、白人30例(86%)(参加者自身による複数の人種の申告が可能)であった。ベースラインの平均LDL-C値は129mg/dL。32例(91%)がベースラインでスタチン治療を受けており、うち25例(71%)は強化スタチン療法を受けていた。 全被験者の追跡評価期間中央値は約9ヵ月で、2026年2月27日のデータカットオフ時点で、少なくとも28日間の追跡評価を受けていた(最終試験来院は投与後28日~18ヵ月)。 用量制限毒性は認められなかった。軽度~中等度の注入に伴う反応が7例(すべてGrade1または2で7例)、ALT値の一時的な上昇(正常範囲上限の2倍以上となるも8日目までに2倍未満に低下)が3例(0.7mg/kg群1例、1.0mg/kg群2例)に観察された。また、胃食道逆流症の被験者1例で誤嚥性肺炎が発生した。 血中PCSK9値の用量依存的な低下がみられ、平均低下率は、0.3mg/kg投与群で51%、1.0mg/kg投与群で88%であった。LDL-C値の平均低下率は、0.3mg/kg投与群の9%から1.0mg/kg投与群の62%にわたり、1.0mg/kg群では絶対値で78mg/dLの低下が認められた。  これらの低下は、被験者15例で少なくとも1年間にわたって持続的に認められた。

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抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」【最新!DI情報】第64回

抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」今回は、経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4B阻害薬「ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド錠9mg/18mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)」を紹介します。本剤は抗線維化作用と免疫調整作用を有し、PDE4Bに対して高い選択性を持つ阻害薬であり、希少難病である特発性肺線維症および進行性肺線維症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>特発性肺線維症および進行性肺線維症の適応で、2026年5月18日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはネランドミラストとして1回18mgを1日2回経口投与します。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg 1日2回に減量することができます。<安全性>重大な副作用として、重度の下痢(1.3%)があります。その他の副作用として、下痢(30.8%)、食欲減退、悪心、体重減少(いずれも1%以上10%未満)、心房細動、背部痛(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、抗線維化薬および免疫調整薬と呼ばれる薬です。ホスホジエステラーゼ(PDE)4Bという酵素を阻害することによって、特発性肺線維症および進行性肺線維症の病態形成や進行に関与する反応を抑えます。 2.この薬は光に不安定なため、服用する直前にシートから取り出してください。 3.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了後4日間は適切に避妊してください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、医師または薬剤師に相談してください。 <ここがポイント!>特発性肺線維症(IPF)は、原因不明で肺が硬くなる特発性間質性肺炎の一種で、国の指定難病です。予後は不良で、未治療の場合の生存期間中央値は3~5年とされています。発症原因は完全には解明されていませんが、加齢、喫煙、生活環境、遺伝的素因などの関与が考えられています。一方、進行性肺線維症(PPF)は、IPF以外の間質性肺疾患のうち、IPFに類似した進行性の線維化を特徴とする疾患群の総称です。これらの肺線維化および炎症の病態形成には、肺に高発現するホスホジエステラーゼ(PDE)4Bが中心的な役割を担っていると考えられています。ネランドミラストは、PDE4Bに対して高い選択性を有する阻害薬です。本剤は、PDE4Bを阻害することで、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPの濃度を上昇させます。その結果、IPFおよびPPFで過剰に産生される線維化促進性の増殖因子や炎症性サイトカインの発現を抑制し、抗線維化作用および免疫調整作用を発揮すると考えられています。IPF患者を対象とした国際共同第III相試験(FIBRONEER-IPF試験[1305-0014試験])において、主要評価項目である52週時の努力性肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群-183.5mL(95%信頼区間[CI]:-210.9~-156.1)、本剤9mg群-138.6mL(95%CI:-165.6~-111.6)、本剤18mg群-114.7mL(95%CI:-141.8~-87.5)でした。プラセボ群との調整済み平均値の差は、本剤9mg群では44.9mL(95%CI:6.4~83.3、p=0.0222)、本剤18mg群では68.8mL(95%CI:30.3~107.4、p=0.0005)であり、いずれの用量においてもプラセボ群に対し統計学的に有意な差が認められました。

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六病位~乾姜と附子~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第7回

六病位~乾姜と附子~これまで、感冒初期に使う葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)、少し時間が経ってから使う小柴胡湯(しょうさいことう)を解説してきました。そろそろ感冒初期、少し時間が経った状態に相当する用語を勉強する頃合いかと思います。漢方の世界では、急性熱性疾患のステージング、進行度を六病位といって、6つに分類します。六病位の順番は漢方の流派によっても若干異なるのですが、大塚流の場合は、太陽病(たいようびょう)、少陽病(しょうようびょう)、陽明病(ようめいびょう)、太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の順番で病気が進んでいきます(図1)。どれくらい体の抵抗力があるかによっても、この進み具合は変わります。虚証が強く出ている方、たとえば高齢で痩せた患者は、太陽病、少陽病、陽明病をすっ飛ばして、いきなり太陰病や少陰病から始まることもあります。今回は、この六病位を絵的なイメージに落とし込んで、漢方の世界観を皆さんと共有することを目標にします。図1 六病位画像を拡大する太陽病まず、感冒初期に相当する太陽病です。便宜上、ここではウイルス感染症ということにしておきますが、最初にウイルスが外から体表へと侵入しようとしてきます。それによって、空気に触れているところから症状が起こっているというイメージで捉えてください。具体的には、悪寒とか頭痛、もう少し体の奥だと咽頭痛ですね。こういった体表部、空気に触れやすいところに症状が出てくるわけです。それに対して、漢方医学では発汗とともにウイルスを追い出すイメージで治療します。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯などは、そういったコンセプトで用いられます(図2)。図2 太陽病画像を拡大する少陽病次に、感冒の5~6日目以降に相当する少陽病です。ウイルスが体表から体のもう少し奥へと侵入して、横隔膜のあたりまで到達するイメージを思い描いてください。胃とか肺のあたりです。そうすると、吐き気が出たり、食欲がなくなったり、咳が出たりしますよね。時間経過で体が消耗してもいるので、倦怠感もあります。この深さまでウイルスが侵入してくると、汗とともにウイルスを追い出す治療が効かなくなってくるため、今度は横隔膜周囲に生じている炎症を緩和するイメージで治療します。東洋のステロイドこと柴胡剤がここで活躍してくるわけです。胸脇苦満(きょうきょうくまん)というキーワードを思い出していただければと思います(図3)。図3 少陽病画像を拡大する陽明病さらに病気が長引いてしまうと、体のさらに深部に熱がたまってきて、たとえば、大腸のあたりも調子を崩してきて、便秘になる方がいます。この状態を陽明病といいます。少しイメージが難しいのですが、急性期病院で肺炎などの急性期疾患がうまく治った患者さんが、転院調整中にやたら便秘を起こしたり、せん妄を起こしたりしている「あの状態」をイメージしていただけるとしっくり来るかもしれません。このような状態を治すには、西洋医学だとセンノシドや酸化マグネシウムを使うことが多いと思うのですが、漢方の場合もかなり似ていて、承気湯(じょうきとう)というグループの漢方薬を使うことがあります。たとえば、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)は、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、芒硝(ぼうしょう)からなる漢方薬です。大黄がセンノシドを含んでいて、芒硝が硫酸ナトリウムを含みます。要は浸透圧性下剤ですね。そのため、誤解を恐れずに言えば、センノシドと酸化マグネシウムを同時に使用しているようなイメージの漢方薬ということになります(図4)。あとは、葛根湯を説明した時の条文クイズで簡単に触れた白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)も用いられます。喉が渇いてしょうがない時に使う薬ですね。これも、体の深部を冷やす漢方薬なので、陽明病の薬に分類できます。図4 陽明病画像を拡大する太陰病太陽病、少陽病、陽明病をまとめて陽証と呼びますが、これらは体の抵抗力が病気の勢いを上回っている状態です。要は炎症という防御反応がちゃんと機能している状態です。逆に、もともと抵抗力が少ない方、抵抗力があったけれど長い闘病生活でだんだんと病気に負けていった方などの場合は、いわゆる陰証という状態に入っていきます(図5)。図5 陽証と陰証画像を拡大するたとえば、感染症診療に精通されている先生方は、敗血症では高熱の時よりも低体温になっている時の方が危ないということを経験的にご存じかと思うのですが、まさしくその低体温に相当する状況になっていくわけです。その陰証の最初のフェーズが太陰病です。病気に屈すると、まずは腸が冷えてきて下痢をします。この場合の治療では、単純に腸を温めれば良いのです。これまで、お腹に優しい漢方薬をいくつか紹介してきました。桂枝湯の延長線上にある桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や小建中湯(しょうけんちゅうとう)などは、太陰病の治療にうってつけです(図6)。図6 太陰病画像を拡大する少陰病・厥陰病問題はそこから先で、さらに病状が進むと腸だけでなく全身が冷えてきます。体がとにかく冷たくて、脈をとっても弱々しい。この状態を少陰病と呼んでいて、さらに進んで危篤状態になると厥陰病といいます。とにかく体全体を温めないとまずいということで、こういう状況下では乾姜(かんきょう)や附子(ぶし)を含む漢方薬を使うことが多いです。乾姜というのは、ショウガを加熱したもので、成分も加熱によってギンゲロールからショウガオールに変わっています。あと、附子はトリカブトの根っこの部分です。この2種類の生薬はとにかく体を温める力が強いのです(図7)。たとえば、人参湯や大建中湯(だいけんちゅうとう)には乾姜が入っていますし、真武湯(しんぶとう)には附子が入っています。いろいろと漢方薬の名前を出してしまいましたが、ここでは乾姜と附子は体を温める力が強いことだけ覚えていただければ十分です。少陰病の治療薬は、乾姜や附子に、人参(にんじん)のような胃腸に優しい生薬が加わってできているものが多いという話でした。図7 少陰病・厥陰病画像を拡大するまとめ最後に少しだけ補足します。実証・虚証の話と、陽証・陰証の話がごちゃまぜになって混乱する方もいるかと思うので、念を押しておきます。実証・虚証は、患者さんの病気に対する抵抗力です。陽証・陰証は、その結果、病気が今どこのstageにあるかということです。たとえば、ご高齢で痩せている方は虚証ですが、その方が軽いかぜをひいて頭痛や微熱が出ていれば太陽病で陽証ですよね。逆に、その方が敗血症性ショックになっていたら厥陰病で陰証です(図8)。もちろん、実証の患者は陽証に留まりやすく、虚証の患者は陰証に進みやすいため、両軸にはちゃんと結びつきがあるのですが、虚実と陰陽は別々に考えてほしいと思います。図8 虚実と陰陽画像を拡大するとりあえず、今回は皆さんに太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病という六病位を覚えてもらえると嬉しいです。このシリーズは、ここまでで一区切りのため、このタイミングで復習することをお勧めします。

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広域抗菌薬が投与された肺炎患者の予後は?/感染症学会・化学療法学会

 市中肺炎(CAP)では、緑膿菌などを想定した広域抗菌薬が経験的に使用されることがある。実際に、本邦の研究において全CAP患者の27.4%に抗緑膿菌薬が投与されており、そのうち97.3%が潜在的に不必要な投与であったことが報告されている1)。また、β-ラクタム系薬が投与された耐性菌リスクの低いCAP患者において、β-ラクタム系薬の抗緑膿菌作用の有無別に臨床転帰を後ろ向きに検討した結果、抗緑膿菌作用のあるβ-ラクタム系薬を用いた群は、30日死亡率が有意に高かったことも報告されている2)。 そこで、市中発症肺炎(CAPおよび医療・介護関連肺炎[NHCAP])に対する広域抗菌薬投与の有益性を検討することを目的として、多施設共同後ろ向き観察研究が実施された。その結果、喀痰培養が提出された市中発症肺炎患者の30.9%に抗緑膿菌作用を有する広域抗菌薬が投与されており、広域抗菌薬を使用した群で入院死亡および入院肺炎死亡のオッズが有意に高かった。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、岩永 直樹氏(長崎大学病院 呼吸器内科)が本結果を報告した。 本研究は、2017~19年に長崎大学病院を含む関連7施設で実施された多施設共同後ろ向き観察研究である。解析対象は、CAPまたはNHCAPとして治療された市中発症肺炎患者1,907例中、喀痰培養検査が実施された1,542例とした。対象患者を広域抗菌薬群と狭域抗菌薬群に分類し、患者背景、死亡、入院期間、治療期間などを比較した。また、広域抗菌薬群におけるde-escalation実施の有無別にみたサブグループ解析も行った。なお、広域抗菌薬は「グラム陽性菌からグラム陰性菌(緑膿菌を含む)までカバーする抗菌薬」と定義した。 主な結果は以下のとおり。・喀痰培養が提出された1,542例のうち、広域抗菌薬が投与されたのは476例(30.9%)であった。・初期治療薬の割合は、広域抗菌薬群でタゾバクタム・ピペラシリン(68%)が最も多かった。次いでレボフロキサシン(16%)、カルバペネム系抗菌薬(10%)が使用されていた。狭域抗菌薬群では、スルバクタム・アンピシリン(63%)が最も多く、次いでセフトリアキソン(22%)が使用されていた。・広域抗菌薬が投与されやすい患者背景として、単変量解析では男性、NHCAP、PS不良、長期療養病床からの入院、ステロイドまたは免疫抑制薬の使用、90日以内の血管内治療歴、90日以内の入院歴、A-DROP高値が挙げられた。・同様に単変量解析において、併存疾患として間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がん、臓器移植歴などを有する患者で、広域抗菌薬が投与されやすい傾向がみられた。・多変量解析では、男性、長期療養病床からの入院、A-DROP 3点以上、間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がんが広域抗菌薬投与と有意に関連する因子として抽出された。・傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院死亡のオッズが広域抗菌薬群で有意に高かった(調整オッズ比[aOR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.00~1.69、p=0.0473)。広域抗菌薬群は入院肺炎死亡のオッズも有意に高かった(同:1.65、1.11~2.03、p=0.0076)。・入院生存例のみを対象としたサブグループ解析では、入院期間および抗菌薬治療期間が広域抗菌薬群で有意に長かった(いずれもp<0.0001)。・広域抗菌薬群476例のうち、de-escalationが実施されたのは116例(24.4%)、実施されなかったのは360例(75.6%)であった。de-escalation実施の有無で患者背景を比較したところ、有意差のある項目はなかった。・de-escalationの有無で予後を比較すると、傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院肺炎死亡のオッズがde-escalation実施群で有意に低かった(aOR:0.54、95%CI:0.33~0.89、p=0.0138)。 de-escalation実施群で入院肺炎死亡のオッズが有意に低下していたことについて、岩永氏は「de-escalationを実施した患者は、臨床経過が良いという主治医の判断のもとでde-escalationを実施していると考えられ、そのことが結果に反映されている可能性がある」と考察した。

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市中肺炎で検出された肺炎球菌、ワクチンカバー率は?/感染症学会・化学療法学会

 肺炎球菌は市中肺炎(CAP)の主要な原因菌である。侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスは、日本を含む多くの国で確立されているものの、肺炎球菌性CAPの血清型分布については、国内データが十分に蓄積されているとはいえない。そこで、日本の成人入院CAP患者を対象に、肺炎球菌性CAPの臨床的特徴、臨床転帰、肺炎球菌血清型の分布を明らかにすることを目的として、多施設共同前向き研究「PNEUMO Japan」が実施されている。本研究の中間解析の結果、肺炎球菌陽性と判定された患者は17.6%であり、CAP患者から検出された計76血清型のうち、89.5%は21価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV21)に含まれる血清型であることが示された。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、柳原 克紀氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科病態解析・診断学分野)が結果を報告した。なお本結果は、2026年5月17~21日に開催された第14回国際肺炎肺炎球菌感染症学会(International Society of Pneumonia and Pneumococcal Diseases:ISPPD-14)のアンコール演題として発表された。 本研究は、日本国内23施設で実施されている多施設共同前向き研究であり、登録は2025年2月に開始され、2026年まで継続予定である。対象は、18歳以上の入院を要するCAP患者とした。肺炎球菌の検出には、無菌・非無菌検体の培養検査、迅速尿中抗原検査(BinaxNOW)、および32血清型を検出可能な血清型特異的尿中抗原検出法(Serotype Specific Urinary Antigen Detection:SSUAD)を用いた。患者背景および臨床転帰の解析対象は、2025年8月22日までに登録されたCAP患者318例、血清型分布の解析対象は、2025年11月18日までに登録されたCAP患者536例の尿検体のうち、SSUADで陽性の66例、計76血清型であった。 主な結果は以下のとおり。・CAP患者318例の平均年齢は71.6歳、女性の割合は43.1%であった。培養検査または迅速尿中抗原検査で肺炎球菌陽性と判定された患者の割合は17.6%(56例)、非肺炎球菌性CAPは82.4%(262例)であった。・肺炎球菌性CAP群は、非肺炎球菌性CAP群より若年であった。平均年齢は肺炎球菌性CAP群68.6歳、非肺炎球菌性CAP群で72.2歳であり(p=0.042)、75歳以上の割合は、それぞれ39.3%、53.8%であった。・CAP患者の20.1%に肺炎球菌ワクチン接種歴があり、5年以内の接種は5.7%であった。接種歴不明の割合が35.5%と高かった。各群の肺炎球菌ワクチン接種歴ありの割合は、肺炎球菌性CAP群32.1%(18例)、非肺炎球菌性CAP群17.6%(46例)であり、5年以内の接種歴ありの割合は、それぞれ7.1%(4例)、5.3%(14例)であった。・全CAP患者318例における院内死亡は2.5%(8例)に認められた(いずれも非肺炎球菌性CAP群の患者)。・入院期間中央値は、肺炎球菌性CAP群が9日であったのに対し、非肺炎球菌性CAP群では12日と長かった(p=0.007)。・SSUADで陽性の66例から検出された76血清型のうち、頻度が高かった血清型は、3型(15.8%)、35B型(11.8%)、19A型(10.5%)、11A型(7.9%)、22F型(6.6%)、23B型(6.6%)であった。・肺炎球菌ワクチンの血清型カバー率は、PCV21が89.5%、PCV20が60.5%であった。PCV21に含まれるがPCV20には含まれない血清型は39.5%を占めた。 本結果の結語として「肺炎球菌性CAPは全CAPの17.6%を占めており、とくに高齢者や慢性疾患を持つ人々の間で、大きな疾病負荷となっていることが示された。PCV21は、本研究で特定された肺炎球菌血清型の89.5%をカバーしており、疾患予防に寄与する可能性が示唆された。これらの知見は、日本の成人の予防接種プログラムにおいて、現行および次世代の肺炎球菌ワクチンの継続的な使用と評価を支持するものである」とまとめた。

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未治療の肺MAC症への吸入アミカシン上乗せ、呼吸器症状と培養陰性化を改善(ENCORE)/ATS2026

 肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)のうち、Mycobacterium avium complex(MAC)を原因菌とする肺MAC症では、初回治療において呼吸器症状の改善と培養陰性化を達成する有効な治療選択肢に関するエビデンスは十分でない。肺MAC症に対する新規治療薬としてアミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS、商品名:アリケイス)が使用されているが、本邦での適応は「多剤併用療法による前治療において効果不十分な患者」である。そこで、新規に肺MAC症と診断された患者を対象に、アジスロマイシン+エタンブトールへのALIS併用の有用性を検討することを目的として、国際共同第IIIb相無作為化二重盲検比較試験「ENCORE試験」が実施されている。その結果、ALIS併用群では対照群と比較して、13ヵ月時点の呼吸器症状スコアの改善が有意に大きく、培養陰性化率も高かった。米国胸部学会国際会議(ATS2026 International Conference)において、Charles L. Daley氏(米国・National Jewish Health/コロラド大学医学部)が本結果を発表した。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第IIIb相試験対象:新規に肺MAC症と診断され、現在のエピソードに対する抗菌薬治療を開始していない非空洞性肺MAC症成人患者425例試験群(ALIS群):アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+ALIS(590mg/日)を12ヵ月 213例対照群:アジスロマイシン(250mg/日)+エタンブトール(15mg/kg/日)+吸入プラセボを12ヵ月 212例評価項目:[主要評価項目]13ヵ月時点のRespiratory Symptom Score(RSS)のベースラインからの変化量[副次評価項目]13ヵ月時点の培養陰性化率(すべての喀痰培養が2回連続で陰性)、15ヵ月時点の培養陰性持続率(11、12、13、15ヵ月時点ですべて陰性)、15ヵ月時点のRSSのベースラインからの変化量、安全性など 主な結果は以下のとおり。・試験完遂率はALIS群90.6%、対照群93.4%であり、治療完遂率はそれぞれ81.7%、88.2%であった。・患者背景は両群でおおむね均衡していた。年齢中央値はALIS群68.0歳、対照群69.0歳で、女性の割合はそれぞれ80.3%、78.3%であった。日本からの登録はALIS群43例(20.2%)、対照群41例(19.3%)であった。・主要評価項目である13ヵ月時点(治療終了1ヵ月後)のRSSのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、ALIS群17.77点、対照群14.66点であった。群間差は3.11(95%信頼区間[CI]:0.30~5.92、p=0.0299)であり、ALIS群で有意に改善した。・15ヵ月時点(治療終了3ヵ月後)でも、RSSの改善はALIS群で大きかった。ベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、ALIS群16.63点、対照群11.83点(群間差:4.80点[95%CI:1.83~7.76]、名目上のp=0.0015)であった。・6ヵ月、12ヵ月、13ヵ月時点の培養陰性化率は、いずれもALIS群が高かった。また、15ヵ月時点の培養陰性持続率もALIS群で高かった。詳細は以下のとおり(ALIS群vs.対照群、p値を示す)。 6ヵ月時点:87.8%vs.57.0%、p<0.001 12ヵ月時点:84.7%vs.61.3%、p<0.001 13ヵ月時点:82.4%vs.55.6%、p<0.001 15ヵ月時点(陰性持続率):76.2%vs.47.6%、p<0.001・試験治療下における有害事象(TEAE)は、ALIS群98.1%、対照群97.2%に認められた。重篤なTEAEはそれぞれ14.1%、11.3%、投与中止に至ったTEAEはそれぞれ14.6%、8.5%に認められた。死亡に至ったTEAEは各群1例に発現したが、いずれも試験治療との関連はないと判断された。・ALIS群で10%以上に認められ、対照群よりも多かったTEAEは、発声障害(ALIS群58.7%、対照群8.5%)、咳嗽(32.9%、14.6%)、疲労(17.4%、11.3%)、呼吸困難(16.4%、5.7%)、悪心(15.5%、12.7%)、頭痛(12.7%、11.8%)であった。・とくに注目すべきTEAEについて、気管支攣縮はALIS群23.0%、対照群11.8%に認められた。また、過敏性肺炎は対照群では認められなかったのに対し、ALIS群では2.3%に認められた。 本結果について、Daley氏は「新規に肺MAC症と診断された患者において、検証済みの患者報告アウトカム指標による呼吸器症状の改善が認められた。ENCORE試験は、臨床的に意義のあるベネフィットを検証した初の試験である」とまとめた。

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小柴胡湯~胸脇苦満と往来寒熱~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第6回

小柴胡湯~胸脇苦満と往来寒熱~これまで解説してきた葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)は、いずれも感冒の初期に使うものでした。言い換えると、これらの薬は感冒を患ってから5~6日経った時に使うものではないということです。では、時間が少し経った感冒には何を使えばいいかというのが、今回のお話です。導入として、西洋医学の話をさせてください。感冒に対して西洋医学では、どんな時でも症状に合わせてアセトアミノフェンやデキストロメトルファンなどを使うと思います。つまり、西洋医学では一見すると感冒初期とそれ以降とをそんなに区別していないわけです。しかし、COVID-19の場合はちょっと違いますね。罹患初期には抗ウイルス薬、たとえばレムデシビルなどを使って、ウイルス量を減らしにいきます。少し時間が経ってからは、ウイルスそのものよりも炎症反応によって肺炎が悪化していくため、それを抑えるためにステロイドが重要になってきます。このような感じで、COVID-19では感冒初期とそれ以降を区別します。じつは、漢方薬の考え方もこれにちょっと似ています。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯の解説をしている時に、やたら汗の話が出てきたのを覚えているでしょうか(図1)。じつは、感冒初期ではこれらの漢方薬を使うことで発汗を調整して、汗とともに悪いものを体表から体外へと追い出すイメージを昔の人は考えていたんです。図1 感冒初期に対する漢方薬の選び方画像を拡大する一方で、発症してから時間が経ってくると「悪いもの」、要はウイルスのことですね。それが体表や喉のあたりから肺、胃といった横隔膜レベルの臓器まで侵入してしまい、そこでも炎症を起こしてくるわけです。そこまで侵入されると、汗とともに追い出すことができなくなります。そこで、肺や胃のあたりの炎症を鎮静化するために、漢方では柴胡(さいこ)を含む漢方薬を使うことになるわけです。いわゆる柴胡剤。「東洋のステロイド」のイメージです(図2)。図2 COVID-19治療イメージ:西洋医学と漢方医学の比較画像を拡大する柴胡剤柴胡を含む漢方薬を柴胡剤と呼んでいて、その代表格が小柴胡湯(しょうさいことう)です。これを「こしば」なんとかと読まなくなったら、漢方の初心者卒業かなと勝手に思っています。冗談はさておき、小柴胡湯は、柴胡、半夏(はんげ)、黄芩(おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、甘草(かんぞう)、生姜(しょうきょう)の7種類の生薬で構成されます。大棗と生姜は以前紹介したように、胃腸に優しい生薬ですが、半夏と黄芩は胃のむくみや熱を除いてくれて、人参も胃を温めて支える生薬のため、構成生薬の作用点が胃に集中しているのが特徴的です。また、感冒初期の漢方薬には桂皮(けいひ)が必ずといっていいほど入っていましたが、小柴胡湯ではなくなりました(図3)。桂皮は気逆といって頭のほうに向かう症状を抑えてくれる生薬です。要は頭痛です。感冒初期では頭痛が症状として出やすいですが、少し時間が経つと頭痛はあまり目立たなくなってきますよね。そのため桂皮は要らなくなるのです。図3 小柴胡湯の構成生薬画像を拡大する小柴胡湯は虚実中間の患者に使う漢方薬です。結構幅広い体力の患者さんに使うことができます。一方で、世の中には実証の患者も虚証の患者もいて、その両極に対応する形で柴胡剤の派生処方が存在します。たとえば、実証であれば、便秘を目安に使う大柴胡湯(だいさいことう)、イライラを目安に使う柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)があります。虚証であれば、寒がっているのを目安に使う柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)が該当します。また、症状から桂枝湯と小柴胡湯の中間、つまり過渡期に位置する患者には、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)という漢方薬もあります(図4)。たくさん薬が出てきましたが、ここは無理に覚えず、軽く流しておきましょう。図4 柴胡剤の派生処方画像を拡大する胸脇苦満と往来寒熱ここまで柴胡剤というもの紹介しましたが、これらの共通点として「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」というお腹の所見を覚えてください。これは、肋骨弓の下に手を差し入れようとすると強い抵抗がある状態で、柴胡剤を使う目安として重要です(図5)。現代人はストレスを抱えて胃に負担をかけているので、この胸脇苦満が出ている人が結構多いです。ご自身の体に手を入れて確認してみてください。図5 胸脇苦満画像を拡大する日本漢方ではお腹の所見が大事で、個人的には再現性もあるため、学び始めの段階から勉強する価値があると思っています。たとえば、前回まで桂枝湯、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、建中湯(けんちゅうとう)の話をしましたが、こういった「芍薬が要になる漢方薬」が効く人のお腹は腹直筋が張っています。これを「腹直筋攣急(ふくちょくきんれんきゅう)」と呼ぶのですが、昔の人は「お腹に2本の棒を触れる」と表現しています(図6)。図6 腹直筋攣急画像を拡大する最後に、古典で小柴胡湯の話を締めておきましょう。こちらの条文は、長いですね(図7)。図7 小柴胡湯の古典条文画像を拡大する胸脇苦満はさっき出てきましたね。ここで注目してほしいのが「往来寒熱(おうらいかんねつ)」という言葉で、これは潮の満ち引きのように、熱が1日のなかで出たり引いたりすることを指しています。ときどきいませんか? かぜをひいてしばらくたった後に「夜だけ熱が出る」といって受診する方。医者目線だと少し説明に困るものです。これこそが往来寒熱ですね。そういう方は、倦怠感や食欲不振も訴えてくることが多いため、この条文通りの症状になってくるんです。また、この条文にはないですが「口の中が苦い」というのも柴胡剤を使うヒントになります。胃が悪いと舌苔が分厚くなってきて、舌の見た目もちょっと変わってきます。まとめ漢方の世界では感冒初期とそれ以降を区別します。治療のコンセプトも薬の選択肢も異なります。感冒初期が終わってからは、東洋のステロイドこと柴胡剤の出番です。ここでは、小柴胡湯を覚えておきましょう。使用にあたっては、胸脇苦満の存在を確認しておくと、勝率が上がってくると思います。胸脇苦満以外にも往来寒熱という言葉を覚えました。こういう独特の用語を知っていると、漢方の上達が早くなるため、もし余裕があれば、こちらも覚えていってください。次回は、これまでの内容をもう少し俯瞰的におさらいして、漢方の世界ならではの病気の捉え方を一緒にみていきましょう。それでは、お楽しみに!

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第295回 MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省

<先週の動き> 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県 1.MMRワクチン、約30年ぶり国内使用へ 麻しん拡大下で定期接種化を検討/厚労省厚生労働省は5月11日、第一三共の麻しん・おたふくかぜ・風しん混合ワクチン「ミムリット皮下注用」を承認した。3疾患を1度に予防するMMRワクチンで、効能・効果は「麻しん、おたふくかぜ及び風しんの予防」。国内でMMRワクチンが使用されるのは約30年ぶりとなる。ミムリットは、現在定期接種の対象となっている第一三共の麻しん・風しん2種混合ワクチンに、世界で広く用いられているおたふくかぜワクチン株を組み合わせた3種混合の弱毒生ワクチンである。添付の溶剤0.7mLで溶解し、その0.5mLを1回皮下に注射する。接種対象は生後12ヵ月以上で、性別や年齢にかかわらず接種可能とされるが、具体的な接種年齢は学会などの最新情報を踏まえ総合的に判断する。明らかな発熱がある人、免疫機能に異常がある人や免疫抑制治療中の人、妊娠していることが明らかな人などは接種不適当者とされる。わが国では1989年に別のMMRワクチンが定期接種に導入されたが、含有されていたおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎の発生が社会問題となり、1993年に事実上中止された。今回のミムリットについて厚労省は、国内第III相臨床試験で小児約400例に無菌性髄膜炎の発現は認められなかったこと、含まれるムンプスウイルス株がWHOで事前認定された株の1つであること、海外で豊富な使用実績があり、無菌性髄膜炎の発現率が相対的に低いとの報告がある株を選択したことなどを踏まえ、リスクは許容可能と判断した。現在、麻しん・風しんはMRワクチンとして定期接種の対象だが、おたふくかぜワクチンは任意接種で自己負担となっている。おたふくかぜは無菌性髄膜炎、脳炎、難聴などの合併症を起こし得る。2015~16年の流行では成人を含め少なくとも359例がムンプス難聴と診断され、医学系学会が定期接種化を要望してきた。海外では120ヵ国以上で定期接種化されており、ミムリットの承認により、接種回数の削減と保護者負担の軽減、さらにおたふくかぜ対策の前進が期待される。 参考 1) 麻疹・おたふく・風疹のMMRワクチン承認 約30年ぶり使用へ(毎日新聞) 2) MMRワクチン、国内でも使用可能に-第一三共の「ミムリット」承認取得(日本医事新報) 3) 第一三共の3種混合ワクチン承認 はしかと風疹におたふく追加(日経新聞) 4) 厚労省 第一三共のMMRワクチン・ミムリット皮下注用を承認 2つの再生医療等製品も(ミクスオンライン) 2.備蓄手袋を医療機関向けに供給 18日から申請開始/厚労省厚生労働省は、中東情勢悪化による医療用物資の供給不安を踏まえ、国が備蓄する医療用手袋のうち、まず5,000万枚を医療機関向けに放出する。医療用手袋は現時点で全体としてただちに不足する状況ではないが、通常量を超える発注や一般のネット通販で取引が停止されており、歯科診療所など一部の医療機関で確保困難が生じている。国は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、非滅菌手袋などの個人防護具を備蓄しており、今回の放出は需給の偏在を緩和する措置となる。要請は医療機関等情報支援システム「G-MIS」を通じて行う。医療機関は週次調査で在庫量、1週間の想定消費量、1週間の購入見込み量を入力し、あわせて販売業者であるアスクルの専用サイトに施設名、住所、医療機関コード、メールアドレスなどを登録する。都道府県が要請内容と配布要否、枚数を確認し、厚労省が承認した後、対象医療機関のリストが販売業者に送られ、医療機関は案内メールを受けて購入手続きを行う。G-MISでの申請が困難な場合は、都道府県への相談による個別シート対応も用意されている。対象となるのは、在庫量が「今後1週間の想定消費量から購入見込み量を差し引いた量の4週間分」を下回る医療機関である。購入可能数は想定消費量2週間分を基準に1,000枚単位で切り上げ、1セット1,000枚から購入できるほか、セット単位でサイズ指定も可能とされる。第1弾は5月18日午前9時から20日午後5時まで申請を受け付け、以後も毎週水曜午後5時締めで受け付ける予定。感染対策資材の不足は、病院、歯科、在宅、訪問看護など幅広い診療継続に直結する。医療機関には、在庫と使用量を踏まえた適正申請が求められ、国と都道府県には配送状況や追加放出の情報を迅速に示す対応が求められる。 参考 1) 中東情勢を踏まえた医療用手袋の放出について(厚労省) 2) 上野厚労相「国備蓄の手袋5千万枚を放出」 中東情勢影響による医療機関での不足受け(産経新聞) 3) 医療用手袋 5月18日から購入申請受け付け開始 政府備蓄放出分(NHK) 4) 国備蓄の医療用手袋放出発表うけ 看護現場からは安堵の声(日本テレビ) 3.がん拠点病院の整備指針見直しへ 2030年度から実績要件を強化/厚労省厚生労働省は5月14日に「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、がん診療連携拠点病院などの整備指針見直し案を示した。柱となるのは、がん医療の高度化と人口減少を踏まえた「集約化」と「均てん化」の切り分けである。2026年夏ごろに新たな整備指針を取りまとめ、2027年度から新体制を始める見通し。とくに注目されるのは、がんゲノム医療体制の強化である。厚労省は2026年度の指針改定で、がん診療連携拠点病院などが「がんゲノム医療中核拠点病院」「同拠点病院」「同連携病院」のいずれかに指定されていることを「望ましい要件」とし、2029年度の改定時には必須要件化する方針を示した。がんゲノム医療の進展により、患者ごとに最適な薬物療法を選択する重要性が高まっているためである。ただ、2026年4月1日時点で地域がん診療連携拠点病院357施設のうち、がんゲノム医療中核拠点病院などの指定を受けているのは7割弱にとどまる。別資料でも、2026年3月時点で拠点病院等463施設のうち指定済みは295施設(63.7%)とされ、遺伝カウンセリング体制、C-CATへのデータ登録、エキスパートパネル実施などが課題となっている。手術療法と放射線療法についても、実績要件の厳格化が進む。現行指針では、地域拠点病院の要件として、悪性腫瘍の手術年400件以上、放射線治療の延べ患者年200人以上などの絶対数要件がある一方で、同一がん医療圏に1施設のみの場合は、地域患者の約2割を診療していれば要件を満たす「カバー率要件」も認められている。厚労省は2029年度の見直しでこの緩和要件を廃止し、2030年度から手術年400件以上、放射線治療年200人以上を必須要件とする方向。現在、手術件数を満たさず、カバー率で指定されている施設は13施設、放射線治療の基準を下回る地域拠点病院は38施設ある。また、手術、放射線治療、薬物療法の実績や専門職配置、機器情報などを都道府県に報告し、都道府県がん診療連携協議会の求めに応じて情報提供すること、診療実績をウェブサイトなどで公表することも必須要件とする。協議会には、地域でどの医療を集約し、どの医療を身近に提供するかを議論する役割が期待される。その一方で、ワーキンググループでは、拠点病院が減少した場合の地域医療の質や患者アクセスへの影響を懸念する意見も出た。集約化は質の維持や人材確保には不可欠だが、患者や住民に必要性をわかりやすく説明し、地域がん診療病院や周辺医療機関との連携を強めることが求められる。今回の見直しは、がん医療を「どこでも同じ」から「高度医療は集約し、継続診療は地域で支える」体制へ再編する転換点となる。 参考 1) 第10回がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ(厚労省) 2) がん拠点病院、ゲノム中核指定を「望ましい要件」に 整備指針改定で 29年度からは必須要件化(CB news) 3) がん診療連携拠点病院、2030年度から「ゲノム中核拠点病院等であること」を必須要件へ-がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 4.東京都で麻しん急増、緊急ワクチン接種開始 接触後72時間以内が鍵/JIHS国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、2026年第18週(4月27日~5月3日)の麻しん(はしか)報告数は23例で、年初からの累計は462例となった。過去10年で患者数が最多だった2019年の同時期467例に迫る水準で、感染は首都圏を中心に広がっている。累計では東京都226例が最多であり、神奈川県41例、鹿児島県34例、埼玉県33例、千葉県28例、愛知県25例と続く。東京都では5月14日までに239例の患者が確認され、現在の集計方法となった2008年以降で過去2番目、過去10年では最多となった。麻しんは空気感染する極めて感染力の強い感染症で、免疫を持たない人が同じ空間にいれば、ほぼ感染するとされる。発熱、咳、発疹などを来し、肺炎、中耳炎、脳炎などを合併し、重症化すれば死亡することもある。国内は麻しんウイルスが定着していない「排除状態」とされるが、今年の患者の約7割は国内感染とみられ、海外から持ち込まれたウイルスが国内で連鎖している可能性がある。5月5日には埼玉県所沢市のベルーナドームで野球観戦した来場者の麻しん陽性が判明し、ゴールデンウイーク後の拡大が警戒されている。東京都は感染拡大を受け、保健所が接触者と特定した都民のうち、接触から72時間以内で、麻しんの既往がなく、接種歴が不明または1回以下の人を対象に、5月18日から都内8ヵ所の感染症指定医療機関で無料の緊急ワクチン接種を始める。接触後72時間以内の接種により、発症を予防できる可能性があるためだ。厚生労働省も、子どもの定期接種の徹底に加え、乳幼児や渡航者と接する機会の多い職種で未接種者に接種検討を呼びかけている。医療機関での対応も重要になっている。国立国際医療センターでは、病棟勤務の医療従事者2人と外来受診患者1人の麻しん陽性が判明した。職員2人は麻しん含有ワクチンを複数回接種済みで、修飾麻しんでは典型例より症状や感染性が低い傾向があるとされるが、同院は通常の麻しん発生時に準じ、接触者調査、免疫確認、健康観察を実施している。疑い患者には事前連絡を求め、一般患者と動線や診察時間を分け、医療従事者はN95マスクを着用するなど、院内感染対策の徹底が求められる。背景には、世界的なワクチン接種率の低下がある。新型コロナ禍で接種機会が失われ、医療資源もコロナ対応に偏った。麻しん流行国は2024年に59ヵ国と2022年の1.6倍に増え、集団免疫に必要とされる95%以上の接種率を1回目接種で達成した国・地域は、2019年の84から2024年には69に減少した。わが国でも麻しんワクチン1回目の接種率は2024年度に92%と、2008年度以降で最低となった。ワクチン供給の混乱に加え、否定的な印象の拡大も指摘されており、麻しん対策は国内流行への対応にとどまらず、予防接種への信頼回復を含む公衆衛生上の課題となっている。 参考 1) 世界でワクチン離れ、接種率「コロナ前」遠く はしか流行1.6倍の59カ国(日経新聞) 2) 麻疹報告数462例に、過去10年で最多だった2019年同時期に迫る(日経メディカル) 3) はしか感染者 過去10年で最多の2019年に迫るペースで増加(NHK) 4) 東京都 はしか感染拡大で接触者に無料ワクチン接種の緊急対策(同) 5) はしか患者10年で最多の東京都、ワクチン緊急接種の開始を発表…患者との接触者が対象(読売新聞) 6) 当院職員の麻しん発症に関するご報告(国立国際医療センター) 7) 当院受診患者の麻しん発症に関するご報告(同) 5.電子カルテ停止で診療一時停止 市立奈良病院、再発防止へ検証/奈良県奈良市の市立奈良病院で4月に電子カルテなどのシステムに異常が検知され、外来診療や救急受け入れが一時停止した問題で、市は原因究明と再発防止に向け、情報セキュリティーの専門家らによる第三者委員会を設置する方針を明らかにした。病院では4月21日夜、ネットワーク監視装置が異常な通信を検知。電子カルテなどに関係するサーバーをネットワークから切り離したため、電子カルテの入力や閲覧ができなくなった。これを受け、同病院は翌22日から2日間にわたり、救急患者と一般外来患者の新規受け入れを停止した。外来診療や救急搬送の受け入れは4月24日朝から通常通り再開したが、その後も受付、会計、一部診療、診療報酬関連システムなどで復旧作業が続き、業務に遅れが生じていた。奈良市は5月13日午後、残っていたシステムを含め、すべての復旧作業が完了したと発表した。現時点で、異常の原因は明らかになっていない。サイバー攻撃の疑いも含めて検証が必要とされており、市は6月初めごろにも第三者委員会を開き、病院側の分析の妥当性を外部の専門家が確認する。仲川 げん市長は記者会見で、「日常の病院業務がいとも簡単に止まってしまうリスクを今回感じた」と述べ、原因を分析した上で国に報告し、全国の自治体にも事例を共有できるよう取り組む考えを示した。今回の障害は、電子カルテや会計、診療報酬請求など、病院運営の基盤となる情報システムが停止した場合、地域の救急・外来機能にただちに影響が及ぶことを改めて示した。医療機関では、サイバー攻撃対策だけでなく、異常検知後の初動対応、ネットワーク遮断時の診療継続体制、紙運用への切り替え、復旧手順、自治体や国への報告体制などを含めた事業継続計画の実効性が問われている。第三者委員会の検証結果は、自治体病院を含む全国の医療機関にとっても重要な教訓となりそうだ。 参考 1) サイバー攻撃疑いで診療停止の市立奈良病院 原因究明に向け、奈良市が第三者委員会設置へ(産経新聞) 2) 市立奈良病院のシステム障害 完全復旧し原因解明へ(NHK) 3) 電子カルテシステムの大規模障害、市立奈良病院は全てのシステムが復旧したと明らかに…第三者委員会で検証(読売新聞) 6.病院再編に現場反発、4割が退職希望 静岡市立清水病院/静岡県静岡市は、20年連続で赤字が続く市立清水病院について、清水厚生病院との一体的運用と指定管理者制度の導入により、市立病院としての存続を図る方針を示した。開始目標は2027年4月。市立清水病院は463床、29診療科を持つ総合病院だが、稼働病床は291床にとどまる。2025年度の赤字額は29.5億円、赤字率は29.9%に達する見込みで、市は従来型の改善策では再建困難と判断した。背景には、清水区全体の医療需要の縮小がある。市立清水病院のほか、154床の清水厚生病院、159床の清水さくら病院が存在するが、人口減少下で各病院が同じ機能を維持すれば、患者と症例が分散し、医師確保や若手医師育成にも悪影響を及ぼす。市は「共倒れ」を避けるため、清水厚生病院の入院機能を市立清水病院に集約し、約400床規模で一体運用する計画。清水厚生病院は外来診療所として地域医療を継続し、指定管理者の最有力候補には同院を運営するJA静岡厚生連が挙がっている。その一方で、現場の反発は大きい。労働組合のアンケートでは、指定管理導入後も継続勤務を希望する職員は12.0%にとどまり、「退職したい」が41.4%、「悩んでいる」が44.1%を占めた。退職希望の理由は「給与が下がる可能性」が95.5%、「手当がなくなる可能性」が87.2%と、処遇悪化への不安が中心となっている。職員からは、「説明が突然で、行政から見放されたようだ」との声もある。難波 喬司市長は説明不足を認め、職員説明会や個別相談窓口の設置を表明した。市は、指定管理者への転籍に際して数年間の給与水準保障や、市職員としての配置転換も検討する。病院再編は地域医療を守るための選択肢となり得るが、医療提供体制の根幹である職員の納得と定着を欠けば、かえって診療機能の低下を招きかねない。今回の事例は、再編の成否が病床数の最適化だけでなく、雇用不安への対応と現場との合意形成に左右されることを示している。 参考 1) 静岡市、指定管理で赤字病院の存続図る 清水区の市立・公的病院を一体的運用(CB news) 2) 市立病院で職員の4割が「退職したい」 突然の方針表明に「あまりに突然。行政から見放されたような思い」 指定管理者制度の導入で待遇面の悪化を危惧 不十分な説明に怒りと困惑(FNNプライムオンライン) 3) 民営化待遇低下不安視 「退職したい」4割 職員向け説明会へ 静岡市立清水病院(読売新聞) 4) 市立清水病院・清水厚生病院の一体的運営方針発表の静岡市…病院職員反発に市長“説明不足”を謝罪し詳細説明会開催へ(静岡第一テレビ)

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ネランドミラスト、日本人IPF/PPFでもFVC低下を抑制/日本呼吸器学会

 厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は2026年4月27日に、ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド)について、特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)を効能・効果として承認することを了承した。これは、主に国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)および「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果に基づくものである。第66回日本呼吸器学会学術講演会では、両試験の日本人集団の結果が報告された。西岡 安彦氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野)が両試験の日本人集団を対象とした併合解析結果を報告し、近藤 康博氏(愛知医科大学 呼吸器・アレルギー内科)がFIBRONEER-ILD試験の日本人PPF患者サブグループ解析結果を報告した。 FIBRONEER-IPF試験は、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLCO(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上のIPF患者を対象とした。FIBRONEER-ILD試験は、IPF以外の間質性肺疾患(ILD)と診断され、HRCTで10%超の線維化を認め、%FVCが45%以上、%DLCOが25%以上のPPF患者を対象とした。両試験とも、対象患者をネランドミラスト9mgを1日2回投与する群(9mg群)、ネランドミラスト18mgを1日2回投与する群(18mg群)、プラセボ群に1:1:1の割合で割り付けた。両試験の日本人集団は281例(IPF 135例、PPF 146例)で、主要評価項目は52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量、主要な副次評価項目は治験期間中におけるIPF/ILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生までの期間とした。【2試験の併合解析】 2試験の併合解析の主な結果は以下のとおり。・日本人集団281例の男性の割合は68.3%、平均年齢68.6歳、平均体重63.5kgで、喫煙歴ありの割合は71.2%であった。ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は45.2%、ピルフェニドンによる治療を受けていた患者は4.6%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、ピルフェニドン使用者が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-158.3mL、9mg群-105.9mL、18mg群-70.5mLであった。プラセボ群との差は、9mg群52.4mL(95%信頼区間[CI]:-19.1~123.9)、18mg群87.8mL(同:18.0~157.7)であり、18mg群でFVC低下抑制効果がより大きい傾向となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群37.3%(31/83例)に対し、9mg群24.7%(23/93例)、18mg群17.1%(18/105例)であり、プラセボ群に対するハザード比(HR)は、それぞれ0.71(95%CI:0.41~1.23)、0.45(95%CI:0.25~0.81)であった。・主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%CIは、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.62(0.29~1.31)18mg群:0.30(0.12~0.73)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.72(0.41~1.24)18mg群:0.43(0.23~0.77)<死亡>9mg群:0.66(0.25~1.78)18mg群:0.45(0.15~1.35)・主な有害事象(いずれかの群で20%以上に発現)は、下痢(プラセボ群19.3%、9mg群36.6%、18mg群38.1%)、上咽頭炎(それぞれ15.7%、23.7%、23.8%)、COVID-19(それぞれ16.9%、36.6%、38.1%)であった。投与中止に至った下痢はそれぞれ0%、1.1%、3.8%にみられた。【FIBRONEER-ILD試験】 FIBRONEER-ILD試験の日本人集団における主な結果は以下のとおり。・日本人集団146例の男性の割合は56.2%、平均年齢67.6歳、平均体重60.3kgで、喫煙歴ありの割合は50.9%であった。UIP(通常型間質性肺炎)パターン/UIP-likeパターンを有する割合は83.6%であり、ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は42.5%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、UIP/UIP-likeパターンが多い傾向にあった。・PPFの分類は、分類不能型特発性間質性肺炎(uIIP)32.2%、自己免疫性ILD 30.1%、特発性非特異性間質性肺炎が12.3%、線維性過敏性肺炎が11.6%、その他が13.7%であり、全体集団と比較して、uIIPが多く線維性過敏性肺炎が少ない傾向にあった。・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-179.2mL、9mg群-68.9mL、18mg群-122.3mLであった。プラセボ群との差は、9mg群110.3mL(95%CI:9.6~211.0)、18mg群56.9mL(同:-43.5~157.2)となった。・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、最終データベースロック時において、プラセボ群47.8%(22/46例)に対し、9mg群28.6%(14/49例)、18mg群27.5%(14/51例)であり、プラセボ群に対するHRは、それぞれ0.71(95%CI:0.37~1.36)、0.54(同:0.27~1.07)であった。・最終データベースロック時において、主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%は、以下のとおりであった。<初回急性増悪または死亡>9mg群:0.49(0.21~1.16)18mg群:0.33(0.13~0.86)<呼吸器疾患による初回入院または死亡>9mg群:0.71(0.37~1.36)18mg群:0.54(0.27~1.07)<死亡>9mg群:0.51(0.18~1.49)18mg群:0.48(0.16~1.41) これらの結果について、西岡氏は探索的な解析であり日本人の患者数が少ないという限界を指摘しつつ「FIBRONEER-IPF試験およびFIBRONEER-ILD試験の日本人集団の併合解析において、ネランドミラスト18mg 1日2回投与は、52週時のFVC低下を抑制し、主要な副次評価項目およびその構成要素の発生リスクを抑制する傾向を示した。また、今回示したすべての評価項目で、ネランドミラスト18mg 1日2回投与がより良好な有効性を示した。日本人患者におけるネランドミラストの有効性および安全性は全体集団と一貫していた」とまとめた。また、近藤氏は「ネランドミラストはFIBRONEER-ILD試験の日本人患者において、プラセボと比較して52週時のFVC低下を抑制し、試験期間中の臨床アウトカムのリスクを数値的に抑制した。これらの結果は、FIBRONEER-ILD試験の全体集団の結果と一貫していた」とまとめた。<FIBRONEER-IPF試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIPまたはUIP-likeパターンを有する)患者1,177例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  392例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  392例対照群(プラセボ群):プラセボ 393例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生<FIBRONEER-ILD試験の概要>・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験・対象:%FVCが45%以上で、%DLCOが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外のILD)患者1,176例試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回  393例試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回  391例対照群(プラセボ群):プラセボ 392例・評価項目[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生

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市中肺炎への抗菌薬、3~4日vs.5日以上

 市中肺炎(CAP)に対する治療において、抗菌薬投与期間の短縮により有害事象や薬剤耐性リスクが抑制される可能性がある。一方、入院患者における3~4日間の短期治療を支持する実臨床データは限られている。そこで、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのGeorge Doumat氏らの研究グループは、CAPで入院し、抗菌薬投与3日目までに臨床的安定が得られた患者を対象として、3~4日間の抗菌薬治療と5日間以上の抗菌薬治療をtarget trial emulationの手法を用いて比較した。その結果、短期抗菌薬治療の適格基準を満たした患者は全体の10.1%にとどまっていた。また、この集団では3~4日間と5日間以上の治療で30日死亡や再入院などの評価項目に明確な差はみられなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載された。 研究グループは、米国ミシガン州の67施設のデータを用い、2017年2月23日~2024年7月31日にCAPで入院した成人患者5万5,517例を対象として、観察研究を実施した。対象患者のうち、入院1~2日目に抗菌薬治療を受けて抗菌薬投与3日目までに解熱し、臨床的に安定した短期抗菌薬治療の適格患者について解析した。解析対象患者を抗菌薬投与3日目以降に0~1日追加された短期治療群(総治療期間3~4日)、2日以上追加された長期治療群(総治療期間5日以上)に分類した。両群の比較には、target trial emulationの手法を用いた。主要評価項目は30日死亡とした。その他の評価項目として、30日以内の再入院、救急外来・緊急受診、Clostridioides difficile感染症を評価した。 主な結果は以下のとおり。・CAPで入院した5万5,517例のうち、短期抗菌薬治療の適格基準を満たしたのは5,620例(10.1%)であった。・適格患者5,620例の年齢中央値は68.2歳、男性の割合は54.3%であった。Charlson併存疾患指数の中央値は2、CURB-65スコアの中央値は2であり、中等度の重症度を有する集団であった。・適格患者における抗菌薬総投与期間の中央値は7日であり、3~4日間の短期治療を受けた患者は444例(7.9%[3日間4.4%、4日間3.5%])にとどまった。・エンピリック治療として多く使用された抗菌薬は、セフトリアキソン(89.3%)、アジスロマイシン(76.9%)であった。退院時に抗菌薬が処方された患者は80.8%で、退院時処方薬として多かったのは、経口セファロスポリン系薬(39.4%)、アジスロマイシン(34.2%)、アモキシシリン・クラブラン酸(19.9%)などであった。・30日死亡は短期治療群で3例(0.7%)、長期治療群で37例(0.7%)に発生した。短期治療群の長期治療群に対する30日死亡の調整リスク比(aRR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.01~2.25)であった。・30日以内の再入院は短期治療群40例(8.8%)、長期治療群417例(8.1%)に認められた(aRR:1.07、95%CI:0.81~1.42)。・緊急受診は短期治療群37例(8.1%)、長期治療群458例(8.8%)であった(aRR:0.94、95%CI:0.70~1.28)。・Clostridioides difficile感染症は、短期治療群1例(0.2%)、長期治療群11例(0.2%)に認められた(aRR:1.01、95%CI:0.18~5.68)。・抗菌薬に関連する有害事象は全体で131例(2.3%)に発現し、各群の発現割合は短期治療群3.3%、長期治療群2.2%であった。 本研究結果について、著者らは「CAPで入院した患者のうち、短期治療の適格基準を満たしたのは10.1%にとどまった。この集団では、死亡率は短期治療群、長期治療群のいずれにおいても低く、その他のアウトカムについても、短期治療と長期治療の間に差は認められなかった」とまとめた。

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薬剤性過敏症症候群〔DIHS:drug-induced hypersensitivity syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は、発熱と多臓器障害を伴う重症型薬疹の1つである。抗けいれん薬など特定の薬剤を内服開始後、遅発性に発症し、原因薬剤を中止しても症状の再燃や遷延化がみられることが特徴である。多くの場合、発症後3週間前後でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)に代表されるヘルペスウイルスの再活性化を伴うことから、薬剤アレルギーとヘルペスウイルス感染症が複合して生じる新たな病態として認識されている(図1)。DIHSのもう1つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することが知られている。なお、欧米を中心にDRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)という疾患概念が用いられるが、DRESSの診断基準にはヘルペスウイルスの再活性化については言及されておらず、DIHSよりも広い範囲の薬疹が含まれる。図1 DIHSの病態の仮説■ 疫学2021年の全国調査によれば、年間受療患者数は人口100万人当たり2.82人と推計されている。男女比は1:1で、発症年齢は40~60代(中央値58歳)が最多である。原因薬剤は比較的限定的であり、カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、フェノバルビタール、ゾニサミドなどの抗てんかん薬のほか、アロプリノール、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、メキシレチンなどが代表的である。DIHSの致死率は約10%程度と高く、死因の多くはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎やニューモシスチス肺炎などの感染症である。■ 病因本症は、原因薬剤を通常2~6週間(平均1ヵ月)内服した後に発症する。病態は、T細胞を主体とする薬物アレルギー反応とヘルペスウイルスの再活性化が中心である。急性期にはTARC/CCL17の著明な上昇や好酸球増多に象徴されるTh2反応の亢進がみられる。また、急性期には制御性T細胞(Treg)の増加がみられるが、経過中にその機能やバランスが崩れることが、ウイルス再活性化や後遺症としての自己免疫疾患発症に関与すると考えられている。さらに、急性期には末梢血のCD4陽性T細胞表面にHHV-6の受容体であるCD134/OX40の発現が亢進しており、これがウイルスの効率的な感染拡大を許容する一因である可能性が示唆されている。■ 症状初期症状として発熱、頸部リンパ節腫脹、顔面や躯幹の紅斑が生じる。皮疹は播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型で始まり、急速に拡大してしばしば紅皮症状態に移行する(図2)。特徴的な顔貌として、顔面の浮腫を伴う紅斑、眼周囲の蒼白、鼻孔・口周囲に鱗屑・痂皮を伴う丘疹や小膿疱がみられる(図3)。肝機能障害や腎機能障害などの内臓病変や、異型リンパ球の出現、好酸球増多、白血球増多などの血液学的異常を伴う。図2 DIHSにおける紅皮症状態画像を拡大する図3 DIHSに特徴的な顔貌■ 予後原因薬剤を中止しても皮疹や臓器障害が遷延し、経過中に再燃を繰り返す。発症3~5週間前後にCMVの再活性化が生じ、肺炎、腸炎、消化管出血、肝障害などの致死的な合併症を引き起こすことがある。また、DIHSの症状が軽快した数ヵ月から数年後に、橋本病、劇症1型糖尿病、円形脱毛症、白斑などの自己免疫疾患を発症することがあり、長期的な経過観察が必要である。2 診断診断は、厚生労働省研究班による診断基準(2005年)(表)に基づいて行う。表 薬剤性過敏症症候群(DIHS)診断基準(2005)■ 概念高熱と臓器障害を伴う薬疹で、薬剤中止後も遷延化する。多くの場合、発症2~3週間後にHHV-6の再活性化を生じる。■ 主要所見1. 限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑、多くの場合紅皮症に移行する。2. 原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3. 38℃以上の発熱4. 肝機能障害5. 血液学的異常:a、b、cのうち1つ以上a. 白血球増多(11,000/mm3以上)b. 異型リンパ球の出現(5%以上)c. 好酸球増多(1,500/mm3以上)6. リンパ節腫脹7. HHV-6の再活性化典型DIHS1~7すべて非典型DIHS1~5すべて、ただし4に関しては、その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる。■ 参考所見1. 原因医薬品は、抗けいれん薬、ジアフェニルスルホン、サラゾスルファピリジン、アロプリノール、ミノサイクリン、メキシレチンであることが多く、発症までの内服期間は2~6週間が多い。2. 皮疹は、初期には紅斑丘疹型、多形紅斑型で、後に紅皮症に移行することがある。顔面の浮腫、口囲の紅色丘疹、膿疱、小水疱、鱗屑は特徴的である。粘膜には発赤、点状紫斑、軽度のびらんがみられることがある。3. 臨床症状の再燃がしばしばみられる。4. HHV-6の再活性化は、(1)ペア血清でHHV-6 IgG抗体価が4倍(2管)以上の上昇、(2)血清(血漿)中のHHV-6 DNAの検出、(3)末梢血単核球あるいは全血中の明らかなHHV-6 DNAの増加のいずれかにより判断する。ペア血清は発症後14日以内と28日以降(21日以降で可能な場合も多い)の2点で確認するのが確実である。5. HHV-6以外に、サイトメガロウイルス、HHV-7、EBウイルスの再活性化も認められる。6. 多臓器障害として、腎障害、糖尿病、脳炎、肺炎、甲状腺炎、心筋炎も生じうる。■ 早期診断の補助検査診断基準項目に「中止後2週間以上の症状の遷延」や「発症2~3週間後のHHV-6再活性化」が含まれるため、発症早期の確定診断は困難である。早期にDIHSを疑う指標として、急性期の血清TARC値の測定が有用であり(4,000pg/mL以上で疑う)、2023年に「DIHS/DRESSの診断の補助」としての保険適用が追加された。■ 鑑別診断と原因薬剤の特定通常の薬疹や、麻しん・風しんなどのウイルス性発疹症との鑑別を要する。DIHSを疑う臨床的ポイントとして、原因薬剤が比較的限られていることから、詳細な薬剤内服歴(2~6週間の服用歴)の聴取が不可欠である。また、原因薬剤中止後も皮疹や臓器障害が遷延・悪化することも、他の薬疹との重要な鑑別点となる。特有の顔貌(図3)や、皮疹が急速に紅皮症化する経過(図2)も診断の有力な手掛かりとなる。HHV-6の再活性化は、一般に末梢血液中のHHV-6 DNAの定量(リアルタイムPCR法)によって判断するが、現時点では保険適用外の検査である。被疑薬の特定には、薬剤添加リンパ球刺激試験(DLST)やパッチテストが有用である。ただし、DLSTは発症早期には偽陰性となりやすく、発症後5週目以降の回復期に実施する必要がある。なお、重症化リスクを考慮し、薬剤の再投与試験(誘発試験)は行わない。3 治療■ 治療の実際DIHSを疑った場合は、第一に被疑薬を中止し、原則として入院加療とする。病初期に起こる全身症状と臓器障害の寛解を目指し、副腎皮質ステロイドの全身投与が治療の基本となる。中等~高用量(プレドニゾロン換算0.5~1mg/kg/日)で開始し、症状が十分に改善するまで(通常7~14日間)維持する。その後は、症状をみながら1~2週間ごとに5~10mg/日ずつ緩徐に漸減する。急激なステロイドの減量は、免疫再構築症候群を招きCMV感染症を顕在化させるリスクがあるため避けるべきである。臓器病変を伴わない軽症例に対しては、ステロイド全身投与を行わず、局所ステロイド外用や補液などの支持療法(supportive therapy)で経過観察することもある。ステロイドパルス療法は、CMVの再活性化や自己免疫疾患の発症に関与するとの否定的見解が主流であり、重篤な臓器障害への進展など特殊な状況に限り検討される。■ CMV感染症への対応発症3~5週前後にCMVが再活性化し、ステロイドの減量を契機として突然、肺炎や消化管出血などの致死的合併症を発症することがある。経過中は常にCMVのモニタリングを行い、顕性感染症を認めた場合には、抗ウイルス薬(ガンシクロビル)の投与による積極的な介入を行う。■ 多剤感作への配慮DIHSの経過中は多剤感作を引き起こしやすいため、解熱や感染予防目的での非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗菌薬の新たな投与は可能な限り避けるべきである。4 今後の展望DIHSの病態については、HHV-6やCMV再活性化の病態への関与について多くの知見が得られてきたものの、依然として未解明な点が残されている。とくに、最適なステロイド減量プロトコールの確立は急務であり、大規模な症例レジストリに基づくエビデンスの蓄積と治療指針の更新が期待される。また、回復期に発症する自己免疫疾患などの遅発性合併症は、患者の長期予後を左右する重要な課題である。今後は、これらの合併症を予測するバイオマーカーの同定や、その発症を制御する新たな介入法の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科(重篤な臓器障害を伴うため、十分な検査と全身管理を行える施設への早期のコンサルテーションが重要である)。6 参考になるサイト診療、研究に関する情報薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(日本皮膚科学会/重症多形滲出性紅斑に関する厚労省調査研究班)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)重篤副作用疾患別対応マニュアル(厚生労働省)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)医薬品副作用被害救済制度(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)公開履歴初回2026年5月12日

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麻疹・風疹の違いは?

麻疹・風疹の違いは?麻疹(はしか)風疹(3日はしか)原因ウイルス 麻疹ウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)風疹ウイルス(Togavirus科Rubivirus属)感染経路空気感染、飛沫感染、接触感染感染力が非常に強い飛沫感染感染力が強い潜伏期間10~12日間14~21日間症状発熱(38℃前後、発疹期は39.5℃以上)、上気道炎症状(せき、鼻みず、のどの痛み)、結膜炎症状(結膜充血、目やに、まぶしさ)、消化器症状(下痢、腹痛)、発疹、コプリック斑(口腔内の白色の小斑点)など発熱(約半数)、発疹、リンパ節の腫れが3つの特徴的な症状とされる関節炎が出る場合もある(成人の5~30%)麻疹より症状は軽く、無症状が15~30%注意が必要な合併症肺炎、脳炎、亜急性硬化性全脳炎(麻疹の二大死因は肺炎と脳炎)中耳炎、クループ症候群(喉頭炎、喉頭気管支炎など)、心筋炎など先天性風疹症候群(妊娠20週までの妊婦さんが感染すると、生まれた子が発症して、先天異常など、さまざまな症状があらわれる)血小板減少性紫斑病、急性脳炎分類(1人の感染者が12~17人感染させる)(1人の感染者が5~7人感染させる)5類感染症国立感染症研究所. 風疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html)国立感染症研究所. 麻疹とは(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.麻疹・風疹の発生状況(2026年4月30日現在)麻疹(例)(例)3,0003,0002,5002,5002,0002,0001,5001,5001,000風疹2,9412,2981,000744※5000165 18627910 66 28 45265436500126 910年101※12 15 12 9 11 1年※:第17週(2026年4月30日現在)の速報値国立感染症研究所. 感染症発生動向調査(IDWR):2026年4月30日現在(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/measles/graph/index.html)(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/diseases/rubella/graph/index.html)より作成Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ハンタウイルスとは

ハンタウイルスとは?患者さんからの質問に答える(2026年5月7日時点)出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.ハンタウイルスとは?⚫ ハンタウイルスとは、ブニヤウイルス科のハンタウイルス属の総称。⚫ 南北アメリカ大陸(カナダ、米国、アルゼンチン、チリ、パラグアイ、ボリビア、ペルー)でさまざまなウイルス種が特定されているが、いずれも特定のげっ歯類を宿主とする。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)と腎症候性出血熱(HFRS)を引き起こす。⚫ HFRSの原因ウイルスは1976年に韓国で同定・分離され、HPSは1993年に米国南西部の砂漠地帯で発生し、初報告された。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.感染経路は?⚫ 自然宿主であるネズミの排泄物(糞、尿、唾液)の吸入により感染するが、汚染された巣材や物品を直接触る、汚染された食事を飲食する、感染したネズミに咬まれる/引っかかれるなどで感染する。⚫ 基本的にヒトからヒトへの感染はまれだが、例外的にハンタウイルスの一種のアンデスウイルスによるヒト-ヒト感染事例が報告されている。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.流行地は?⚫ 世界全体では、毎年1万~10万人以上の感染が発生していると推定されている。⚫ 欧州では、ハンタウイルス属プーマラウイルスが流行している北部および中部地域を中心に、毎年数千例が報告されている。⚫ 南米諸国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイなど)では、発生率は米国に比べて低いが、ハンタウイルス肺症候群(HPS)による致死率は米国よりも高いとされる。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(1)⚫ ハンタウイルスの潜伏期間は1~5週間程度(通常約2週間)とされ、症状は感染後1~8週間で出現するとされる。⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の主な初期症状には、倦怠感、発熱、筋肉痛(とくに太もも、腰、背中)があり、頭痛、めまい、悪寒、消化器症状(腹痛、吐き気、嘔吐、下痢)などを呈する。⚫ HPSの場合、発症初期から4~10日後に咳、息切れ、肺への体液貯留、ショックなどの症状が急速に進行する可能性がある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.症状は?(2)⚫ ハンタウイルスによる腎症候性出血熱(HFRS)は通常、感染後1~2週間以内に出現するが、まれに症状出現までに8週間かかる場合もある。⚫ HFRSの主な初期症状は、頭痛、背中や腹部の痛み、発熱、悪寒、吐き気、顔面紅潮、目の炎症や充血、発疹などの出血症状など。⚫ HFRSの重症例は、有熱期、低血圧・急性ショック期(4~10日)、乏尿期(尿量減少、8~13日)、利尿期(尿量増加、20~28日)、回復期に分けられ、内出血、急性腎不全などがみられることがある。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予後は?⚫ ハンタウイルス肺症候群(HPS)の致死率は40%程度**国内の発生例や輸入例の報告はない⚫ 腎症候性出血熱(HFRS)の致死率は、原因となるウイルスにより異なる**ため、1%未満から最大15%と言われている。**ハンタウイルスの一種であるプーマラウイルス、ハンターンウイルスなども原因となる出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.診断方法、届け出は?⚫ 初期症状が類似する疾患(インフルエンザ、COVID-19、ウイルス性肺炎、レプトスピラ症、デング熱、敗血症)との鑑別が必要になる。⚫ 渡航歴、接触歴、臨床像などから本疾患を疑った場合には、行政検査が依頼される。⚫ 血液、肺組織からウイルスの分離・同定による病原体の検出、PCR法による病原体遺伝子の検出、血清学的検査が行われる。⚫ 感染症法で4類感染症に指定されており、診断した医師はただちに最寄りの保健所に届け出を行う。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.治療方法は?⚫ 対症療法(安静、水分補給、症状に対する治療)が行われる。⚫ 早期の集中治療管理(とくに肺浮腫、低酸素血症、低血圧に対する治療)が重要である。また、HFRSの場合は血液透析が必要になることもある。⚫ 現時点でハンタウイルスに対する特異的な抗ウイルス治療薬やワクチンは存在しない。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.Q.予防・感染対策は?⚫ 流行地域では、げっ歯類との接触を避け、とくにネズミの尿、糞、唾液、巣材への接触を避ける。⚫ ネズミの糞を片付ける際には、清掃前に汚染部分を漂白剤で十分に湿らせ、その後ペーパータオルなどで拭き取り、ごみ袋に入れて廃棄する。乾拭きしたり、掃除機で吸い取ったりすることは避ける。⚫ ネズミが建物に侵入できる開口部を塞いだり、食品を安全に保管するために、容器に蓋をして管理する。出典:WHO:Hantavirus(https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hantavirus)CDC:About Hantavirus(https://www.cdc.gov/hantavirus/about/index.html)ECDC:Hantavirus infection(https://www.ecdc.europa.eu/en/hantavirus-infection)日本感染症学会:ハンタウイルス肺症候群(https://www.kansensho.or.jp/ref/d65.html)日本感染症学会:腎症候性出血熱(https://www.kansensho.or.jp/ref/d35.html)厚生労働省検疫所 FORTH:感染症情報(https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/infectious_disease_name.html)Copyright © 2026 CareNet,Inc. All rights reserved.

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卵巣明細胞がんの新規経口薬「ハイツエキシン錠10mg」【最新!DI情報】第62回

卵巣明細胞がんの新規経口薬「ハイツエキシン錠10mg」今回は、PI3Kα阻害薬「リソバリシブメシル酸塩水和物(商品名:ハイツエキシン錠10mg、製造販売元:海和製薬、販売元:大鵬薬品工業)」を紹介します。卵巣明細胞がんは治療選択肢が限られる希少がんであり、従来の治療法に抵抗性を示す卵巣明細胞がんに対する新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がんの適応で、2026年3月23日に製造販売承認を取得しました。なお、投与にあたっては、コンパニオン診断薬であるAmoyDx PIK3CA変異検出キットを用いて遺伝子変異の有無を確認する必要があります。<用法・用量>通常、成人にはリソバリシブメシル酸塩として1回40mgを1日1回空腹時に経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。本剤は食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けます。<安全性>重大な副作用として、間質性肺疾患(8.6%)、高血糖(89.2%)による糖尿病性ケトアシドーシス(1.1%)、多形紅斑(2.2%)などの重度の皮膚障害、血小板減少症(35.5%)、重度の下痢(6.5%)、体液貯留(末梢性浮腫[26.9%]、顔面浮腫[15.1%]、低アルブミン血症[5.4%]、腹水[1.1%]など)、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎(1.1%)などの重篤な感染症、QT間隔延長(2.2%)があります。その他の副作用として、発疹(72.0%)、口内炎(68.8%)、悪心(52.7%)、疲労(41.9%)、食欲減退(38.7%)、下痢(36.6%)、体重減少(35.5%)、嘔吐、蛋白尿(いずれも20%以上)、腹痛、低カリウム血症、貧血、好中球減少症、ALT増加、AST増加、高クレアチニン血症(いずれも10~20%未満)、腹部膨満、便秘、腹部不快感、レッチング、排便回数増加、高コレステロール血症、低ナトリウム血症、発熱、白血球減少症、γ-GTP増加、血中ビリルビン増加、血中アルカリホスファターゼ増加、頭痛、味覚不全、浮動性めまい、皮膚乾燥、湿疹、手掌・足底発赤知覚不全症候群、そう痒症、皮膚亀裂、皮膚炎(いずれも10%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、PI3Kα阻害薬であり、がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がんに用いられます。 2.下記の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 咳、息切れ、息苦しさ、発熱などが現れた場合 のどが渇く、多飲(お水をたくさん飲む)、多尿(トイレの回数が増える)、体重が減る、 疲れやすい・だるいなどが現れた場合 皮膚に発疹、発赤、乾燥、かゆみなどが現れた場合 便が泥状か、完全に水のようになる、便意切迫感がある、トイレから離れられないほど頻回の下痢などが現れた場合 手足のむくみ、靴が履きにくい、体重が増える、お腹の張り、息切れなどが現れた場合 動悸、胸の痛み、胸部の不快感、冷や汗、全身倦怠感、めまい、失神などが現れた場合 <ここがポイント!>卵巣がんは早期発見が困難で、症状が現れたときには進行していることが多いため「サイレントキラー」とも呼ばれ、婦人科の悪性腫瘍の中でもとくに治療が困難な疾患の1つです。卵巣がんは、組織学的に漿液性、類内膜、粘液性および明細胞の4つの主要な型に分類されます。このうち卵巣明細胞がんは、欧米では卵巣がん全体の約8%とまれですが、日本では約25%と高頻度に認められ、発生率に人種差が存在します。卵巣明細胞がんは、子宮内膜症を背景に発生することが古くから知られており、多くの症例がStageIで診断されます。しかし、早期発見にもかかわらず、他の組織型と比較して予後不良であることが大きな特徴です。その主要因は、卵巣がんの標準的化学療法である白金製剤をはじめとする抗がん薬に対して治療抵抗性を示すことにあります。卵巣明細胞がんの病態において、PIK3CA遺伝子の点突然変異は極めて重要な役割を果たしています。PIK3CA遺伝子変異は、患者の30~40%という高頻度で認められ、これは他の上皮性卵巣がんと比較して最も高い割合です。PIK3CA遺伝子は、細胞の増殖・生存などのコントロールにおいて中心的役割を担うPI3Kα(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼアルファ)の触媒サブユニットをコードしています。とくにエクソン9およびエクソン20領域は変異のホットスポットとして知られ、これらの活性化変異や遺伝子増幅は腫瘍の発生・進行・維持に深く関与し、さらに薬剤耐性にも寄与すると考えられています。リソバリシブメシル酸塩水和物は、PI3KαのATP結合部位に結合してキナーゼ活性を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。投与対象は白金系抗悪性腫瘍薬を含む化学療法歴を有する患者であり、成人には1日1回空腹時に経口投与します。本剤は、従来の治療法に抵抗性を示す卵巣明細胞がんに対する新たな治療選択肢として期待されています。化学療法歴のあるPIK3CA遺伝子変異陽性の卵巣明細胞がん患者を対象とした国際共同第II相試験(CYH33-G201試験)において、主要評価項目である盲検下独立評価委員会評価による奏効率(RECISTv1.1に基づく)は、有効性評価対象全体において34.5%(95%信頼区間[CI]:24.48~45.69)であり、95%CIの下限はヒストリカルコントロールの8%を上回ることが示されました。

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第293回 医師にとっての2040年-地域医療構想の転換で働き方はどう変わるか-

診療報酬改定、医療機関の経営悪化、医師需給の議論――個別に語られてきたこれらの変化は、いま1つの方向へ収斂しつつある。2026年に示された新たな地域医療構想は、「病床」から「機能」への転換を明確に打ち出した。本稿では、特別編としてこの構造変化が医師の働き方やキャリアにどのような影響を及ぼすのかを考える。はじめに大型連休に入り、今年の初めからの医療関連ニュースや厚生労働省の資料を改めて見直してみた。診療報酬改定、医療機関の経営悪化、医師需給の議論、そして地域医療構想の見直し――個別に見ればそれぞれ独立した話題に思えるが、俯瞰すると1つの方向性が浮かび上がる。それは、「医療提供体制そのものが転換期にある」という点に尽きる。地域医療構想の変化:病床から機能へ厚労省は2026年3月に「2040年に向けた地域医療構想の取りまとめ」を公表した。従来の地域医療構想は、2025年に向けて各2次医療圏に必要病床数を医療機能ごとに整理する、いわば「病床配分」の枠組みであった。その一方で、今回の見直しは単なる病床再編にとどまらず、「どの医療をどこで担うか」という機能そのものの再設計を志向するものと考えられる。画像を拡大する画像を拡大する稼働率引き上げが意味するもの:静かなハードル設定今回の見直しで見過ごされがちだが重要なことは、各医療機能における病床稼働率の前提が引き上げられている点である。従来は高度急性期75%、急性期78%、回復期90%、慢性期92%とされていたが、新たな構想では高度急性期78%、急性期83%、回復期(包括期)87%、慢性期92%と見直されている。一見すると数%の変化にすぎないが、稼働率は単なる運営指標ではなく、「その機能を担うに足る患者数を安定的に確保できるか」を示す指標と解釈することもできる。すなわち、この引き上げは各機能を維持するための実質的な参入基準の引き上げとみることができる側面がある。とくに急性期においては、稼働率83%を安定的に維持するためには一定規模以上の患者集約が不可欠となる。これは結果として、「患者が集まらない急性期は成立しにくい」という政策的メッセージを内包している。従来であれば一定程度の稼働で維持できていた機能も、今後は重症度や医療・看護必要度といった要件とあわせて基準を満たせなければ、機能転換を余儀なくされる可能性がある。この意味で、稼働率の引き上げは単なる数値の修正ではなく、「機能を満たす医療機関のみが残る」というハードルが設けられたとみることもできる。急性期集約と高齢者救急の拡大新たな地域医療構想では、「急性期医療の集約化」と「高齢者救急・在宅医療への対応強化」が明確に示されている。背景には、85歳以上人口の増加と生産年齢人口の減少がある。若年人口の減少により手術を中心とする急性期医療のニーズは減少する一方で、誤嚥性肺炎や心不全といった内科系救急患者は増加すると考えられる。すなわち、医療需要は単純な量的減少ではなく、質的転換の局面に入っているといえる。医療機関経営に現れた構造変化コロナ禍後も病床稼働率や外来患者数の回復は限定的であり、2025年度の医療機関倒産は過去最多となった。民間病院でも赤字法人の増加が報道されている(病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減)。これは一時的な現象というより、医療需要や環境の変化に対して適応できない医療機関が市場から退出しつつある状況を示している。厚労省の政策の中核として、「急性期拠点機能の集約」が挙げられる。急性期拠点病院を人口20〜30万人当たり1施設とする考え方は、従来の地域分散型モデルの見直しを意味する。その結果、中小規模の急性期病院は、(1)統合、(2)機能転換(包括期・慢性期+在宅支援)、(3)病床縮小といった選択が迫られる構図となる。この再編は、勤務医と開業医の双方に影響を及ぼすと考えられる。勤務医への影響:専門医と総合医の分化この変化は勤務医のキャリアにも影響を及ぼすとみられる。急性期拠点病院では、高度医療・手術・重症救急を担う専門医の集約が進む。その一方で、そのポジションは限られるため、選抜性が高まる可能性がある(今後の医療需要の変化を見据えた専門医の養成について)。今後は医療と介護の複合ニーズが一層高まるため、勤務医の多くは高齢者救急や地域急性期、包括期を担うことが求められると考えられる。この領域では、多疾患併存患者への対応や在宅復帰支援など、総合的な診療能力がより重要となる。また、文部科学省による地域実習プログラムや、日本病院協会と日本プライマリ・ケア連合学会が運営する総合医育成事業「総合医リカレント実践事業 ReGeneral」は、こうした変化を背景とした人材政策と位置付けることができる。結果として、医師の役割は「高度専門医」と「総合診療型医師」に分化していく可能性がある。開業医への影響:外来モデルの転換開業医にとっても影響は小さくない。人口減少の進行により外来患者数は長期的に減少する可能性があり、診療所数の増加(診療所数は1980年代前半約8万施設のところ2020年約10万施設と約1.25倍)とあわせて競争環境は厳しさを増すと考えられる。従来の外来中心モデルは、持続性の観点から再検討が必要となる可能性がある。その一方で、在宅医療の需要は今後も間違いなく増加していく。高齢者医療では早期退院と在宅復帰が前提となるため、開業医には退院後の受け皿としての役割が求められる場面が増えていくとみられる。医師需給と報酬構造の変化医師数は増加しているものの、地域偏在や診療科偏在は依然として残る。その結果、急性期拠点では医師不足が続く一方で、都市部では供給過剰が生じる可能性がある。これに伴い、医師の報酬構造も均一ではなくなり、主治医として担う機能や地域によって格差が広がる可能性がある。医学部定員削減のリスク医学部定員削減について医道審議会医師分科会医師専門研修部会や経済財政諮問会議で話し合われているが、地方医療提供体制への影響には慎重な検討が必要となる。全国的に医師数が増加しても、地方における医師不足が解消されるとは限らない。とくに地方の救急医療体制では、若手医師の確保が困難となれば、診療体制の維持そのものが難しくなる可能性がある。今後は医師数の総量よりも、機能に応じた配置がより重要な論点となる。医療再編の本質:機能を満たすかの選択2040年に向けた医療再編は、医療機関に対して「どの機能を担うか」を問うものである。急性期に特化するのか、地域急性期や包括期(従来の回復期リハビリテーション病棟・地域包括ケア病棟)を担うのか、あるいは在宅医療や介護との連携を強化するのか--それぞれの選択は、医師の働き方やキャリアにも直結する。おわりに:変化の中での医師の選択以上のように、新たな地域医療構想は医療提供体制の構造変化を伴うものであり、医師の役割にも影響を及ぼす可能性がある。重要なのは、今年の診療報酬改定を2年に1度の恒例行事として受け取らず、改定の全体像を通して政府が医療提供体制の変化への第1歩として捉え、自らの専門性や立ち位置を見直す契機とすることであろう。今後の医療提供体制が変化する中、読者の先生方は、どのような役割を選択されるだろうか。 参考 1) 新たな地域医療構想に関する取りまとめ(厚労省) 2) 人口減少社会の中での総合的な国力の強化(経済財政諮問会議) 3) 25年度の医療機関倒産、過去20年で最多の71件 商工リサーチ調べ(日経新聞) 4) 病院経営の法人、採算悪化で赤字法人が5割に迫る 収入は微増、利益はコロナ禍から1兆円以上の大幅減(同) 5) 医療提供体制の現状~病院数の推移~(厚労省) 6) 地域の医師、文科省が育成支援へ…中小病院で長期間学ぶ「地域実習プログラム」開発支援(読売新聞) 7) 総合医育成プログラム 「総合医リカレント実践事業 ReGeneral」(日本プライマリ・ケア連合学会) 8) 今後の医療需要の変化を見据えた専門医の養成について(厚労省)

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移植患者に対するワクチン接種/日本造血・免疫細胞療法学会

 造血幹細胞移植後の患者において、ワクチン接種は感染症予防のための重要な手段となる。しかし、免疫再構築の個別性やワクチン免疫原性の低下、さらには費用・制度面の課題などにより、実臨床における実装状況には施設間差が見られる。 2026年2月27日~3月1日に開催された第48回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「移植患者に対するワクチン接種」をテーマとしたシンポジウムが企画され、国内実態調査、優先度の高い予防接種の科学的根拠、実臨床における運用体制という3つの視点から、移植後ワクチン接種の現状と課題が提示された。造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する国内実態調査より 冒頭、黒澤 彩子氏(伊那中央病院 腫瘍内科)は造血幹細胞移植後のワクチン接種に関する日本国内の実態を把握するために実施された全国規模のアンケート調査の結果について報告した。本調査は、厚生労働科学研究費補助金による研究班の一環として行われたもので、日本国内の移植認定施設(成人診療科・小児科)を対象に実施され、85%(成人診療科施設86%、小児科施設85%)という非常に高い回答率が得られている。 移植後は免疫が再構築される過程で既存の免疫が失われるため、ワクチン再接種が必要とされるが、その方針や実際の接種状況、さらにワクチンで予防可能な疾患(vaccine-preventable diseases:VPD)の発症状況を把握し、今後の施策や提言につなげることが本調査の目的であった。 まず、ワクチン再接種に対する認識について、同種移植後では成人診療科・小児科ともにほぼ100%の施設がその必要性と重要性を認識しており、約75〜80%の施設で統一した接種方針が定められていた。一方、自家移植後では診療科間で大きな差が見られた。小児科では約70%が必要性を認識し、半数以上が統一方針を有していたのに対し、成人診療科では必要性の認識は24%にとどまり、方針を持つ施設はわずか6%であった。その背景として「有用性が低い」「コストの問題」などが挙げられ、自家移植後の位置付けが十分に共有されていない実態が浮き彫りとなった。 接種されているワクチンの種類にも違いがある。回答した成人診療科の80%以上が“推奨”と回答したものはインフルエンザウイルス、肺炎球菌、麻疹風疹混合(MR)であり、接種率についてはそのうちインフルエンザと肺炎球菌で高い(対象の半数以上に接種という回答が75%超)傾向にあった。一方、小児科ではMR、おたふくかぜ、水痘、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)、インフルエンザウイルスについて8割を超える施設が“推奨”とし、接種率も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を除いて成人診療科と比較して小児科で高かった。施設体制の面では、すべてのワクチンを院内で接種可能な施設は20〜30%にとどまり、70〜80%の施設ではワクチンの種類や症例によっては接種を他院へ依頼しているという現状が示された。 水痘・帯状疱疹対策では、成人診療科では不活化ワクチンの推奨が進む一方、高額な費用負担が障壁となっている。不活化帯状疱疹ワクチンは18歳未満に適応がなく、小児は水痘に未罹患なことが多いため、小児科では水痘予防として生ワクチンが主に使用されている。また、抗ウイルス薬は移植後1〜2年、あるいは免疫抑制薬終了時まで予防投与されることが多いが、投与のタイミングや中止時期には施設間でばらつきがあった。 VPDの発症経験については、成人診療科・小児科ともに60〜90%の施設がCOVID-19、インフルエンザ、帯状疱疹、肺炎球菌感染症などを経験しており、移植患者が依然として高リスクであることが示された。死亡例は成人診療科では半数以上の施設が経験しており、とくにCOVID-19の影響が大きかった。一方、小児科では80%以上の施設が死亡例なしと回答し、成人診療科と比べて致死的転帰は少ない傾向が見られた。注目すべきは、自家移植後であってもVPD発症は決して少なくなく、軽視できない点である。加えて、COVID-19については、致死率の観点からとくに成人診療科において重要な課題であることが示された。一方で、ワクチン接種率はインフルエンザや肺炎球菌と比較して低く、対象の半数以上に接種しているとの回答は50%未満にとどまっており、この点も本調査より明らかとなった。 ワクチン接種率向上のための課題として、保険収載、自治体等による費用助成、長期フォローアップ(long-term follow-up:LTFU)体制の強化、最新の推奨を反映した資材の整備などが挙げられた。総じて、同種移植後の再接種の重要性は定着している一方で、自家移植後の再接種に関する認識不足や成人領域での接種されるワクチンの種類が限定されていること、さらに自己負担による費用面の問題が大きな障壁となっている。今後は制度的整備と情報の標準化を進め、移植患者をVPDから守る体制の構築が不可欠であると黒澤氏は結論付けた。同種移植患者に対する優先度の高い予防接種に関する研究について 同種造血幹細胞移植後の長期生存例が増加する一方、晩期合併症としての感染症対策は依然として重要な課題となっている。とくに移植後晩期には液性免疫の回復が遅延し、VPDに対する防御能が十分に再構築されない症例が少なくない。このような背景において、冲中 敬二氏(国立がん研究センター東病院 感染症科/造血幹細胞移植科)は、同種造血幹細胞移植患者に対する優先度の高いワクチン接種について、晩期感染症の疾病負荷および再接種戦略の最新エビデンスを整理し講演した。 移植後晩期に問題となるのは、肺炎球菌などの被包化細菌、帯状疱疹・単純ヘルペスを含むヘルペスウイルス群、さらに呼吸器ウイルスなどである。なかでも、移植片対宿主病(GVHD)予防として普及した移植後シクロホスファミド(PTCy)を用いたレジメンでは、CD4陽性T細胞の回復遅延に加え、サイトメガロウイルス(CMV)感染や非CMVヘルペスウイルス感染(HHV-6血症)、呼吸器ウイルス感染などの増加が米国のレジストリ解析によって示唆されている。このように、移植後晩期には液性免疫不全のみならず細胞性免疫の再構築不全も問題となることは少なくない。 海外でのアンケート調査によると、成人患者の40%以上が移植後晩期にVPD(インフルエンザ様疾患、帯状疱疹、子宮頸部細胞診異常など)を経験していることが示されている。小児データベース研究では、VPD発症頻度は7%程度と低いものの、帯状疱疹や侵襲性肺炎球菌感染症、インフルエンザなどの発症中央値は移植後190~300日で、移植から6ヵ月以降に多いことがわかる。すなわち、移植後晩期も感染症のリスクは持続し、長期にわたる免疫学的脆弱性を前提とした管理が必要となる。 同種移植患者の市中肺炎罹患率は一般人口より著明に高く、原因菌として肺炎球菌が約9%と最も頻度が高く、重症化リスクも高いことが海外から報告されている。呼吸器ウイルス感染については、RSウイルス(RSV)、インフルエンザ、COVID-19の米国での罹患後30日以内の寄与死亡率が4~6%とされ、日本からはインフルエンザ罹患後90日以内の寄与死亡率が2.2%とのデータが示されている。日本では約4分の3の症例で発症48時間以内に抗ウイルス薬が処方されているのに対し、米国では同期間内に処方を受ける症例は約4分の1にとどまっており、この差が寄与死亡率の違いの一因と考えられる。呼吸器ウイルス感染症を疑う症状が出現した際には、速やかな受診を促す患者教育の重要性が示唆される。 院内感染で呼吸器ウイルス感染症に罹患した場合はさらに予後が不良であり、院内での伝播は防がなければいけない。このためには外来での呼吸器感染症状スクリーニング、必要に応じた迅速PCR診断、感染判明時の接触・飛沫予防策の徹底が推奨される。また、患者本人のみならず同居家族や医療従事者へのワクチン接種も重要な間接防御策となる。 免疫記憶の消失も見逃せない。国内データでは、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)の抗体保有率が移植5年で50%未満に低下しえること、B型肝炎表面(HBs)抗体の陰性化が再活性化リスクに関与することが示されている。つまり、小児期に定期接種歴があっても、移植後の防御免疫は保証されないことになる。このため、移植後のワクチン再接種が重要となり、厚労科研研究班は優先度の高いワクチン再接種に関する研究を通じ、水痘、MMR、ジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)、肺炎球菌、B型肝炎ウイルス(HBV)などのワクチン再接種戦略をレビューしている。加えて、帯状疱疹ワクチン、RSVワクチン、COVID-19ワクチンなど、新規・更新ワクチンの有効性データも蓄積されつつある。 冲中氏は、同種移植患者では、晩期においても液性免疫不全が残存し、VPDは現実的かつ重篤な脅威となるとし、「免疫再構築の特性、GVHD治療状況、地域流行状況を踏まえ、計画的かつ優先順位を明確にしたワクチン再接種を実装することが、長期予後改善には重要となる」と強調した。同種造血細胞移植患者におけるワクチン接種の実際 移植後の患者では、続発性免疫不全や既存免疫記憶の低下により感染症リスクが高まるため、移植後の再予防接種が重要であることは広く認識されている。しかし、実際にワクチン再接種を確実に実施するためには、院内外での運用体制の整備が不可欠となる。そこで、森 有紀氏(虎の門病院 輸血・細胞治療部/造血細胞移植後長期フォローアップセンター)は、実臨床でワクチン接種を円滑に進める具体例として、虎の門病院における体制整備や役割分担の取り組みを紹介し、移植後ワクチン接種を実装するためのポイントについて解説した。 移植後ワクチン接種の運用体制を整備するには、まず、どこで接種を行うのか(移植施設か他の医療機関か)を明確にする必要がある。そのうえで、どの診療科が中心となって担うのか(血液内科、感染症科、小児科、一般内科など)を決め、さらに看護師や薬剤師を含めた多職種連携を具体的に設計していくことが求められる。 虎の門病院では、LTFU外来で血液内科医が適応と開始時期を判断し、その後臨床感染症科医へ紹介して、詳細説明、スケジュール作成、実際の接種を行う分業体制を構築することで専門性を担保しつつ、マンパワーの軽減にもつながっている。 一方、他の医療機関に接種を依頼する場合、移植施設側が適応判断を行い、紹介状や説明文書、患者手帳などを活用して情報共有を徹底することが重要である。とくにクリニック等に紹介する際には、具体的な日程を記載した接種スケジュールの提案や、無断キャンセル防止に関する事前説明(ワクチンを個別に取り寄せる場合があるため)なども大切なポイントとなる。 接種手順は、適応・開始時期の判断、インフォームド・コンセント、接種スケジュール作成、接種、接種後の注意点説明の流れとなる。ガイドラインでは、不活化ワクチンは、GVHDの増悪がなければ移植後3ヵ月(種別により6ヵ月ないし12ヵ月)を経過した後接種可能となっているが、開始時期が遅いほど免疫応答が得られやすいとされる。生ワクチンは、免疫抑制薬が終了し慢性GVHDを認めなければ移植後24ヵ月以降で接種可能とされるが、十分な免疫回復や輸血および所定の薬剤との間隔などの条件を満たすことが前提となる。いずれにしても、個々の患者の状況に応じた判断が必要となる。 さらに、帯状疱疹ワクチン接種後の抗体価上昇や安全性に関する施設データの提示、情報共有テンプレートの整備などの実践的工夫も紹介された。一方で、多くが任意接種・自費負担であること、自治体助成が限定的であること、接種歴証明の困難さや年齢制限といった制度的課題も残されている。 最後に森氏は「移植後ワクチン接種は、単なる推奨事項ではなく、長期予後を左右する重要な支持療法である。各施設の実情に応じた体制構築と地域連携を通じて、標準化と実装を進めていくことが、今後の移植医療の質向上に直結する」と締めくくった。

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米国のCOVID-19死亡数、過小評価の可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック初期における米国での実際の死亡数は、公式発表よりも大幅に多かった可能性が新たな研究で示唆された。2020年から2021年にかけて、COVID-19関連死亡のうち、最大で約15万5,000人分が見逃されていた可能性が示されたという。同期間に死亡診断書に記録されたCOVID-19による死亡数は約84万人であることから、今回の推計に基づくと、関連死亡の約19%がカウントされていなかったことになる。米ミネソタ大学社会学准教授のElizabeth Wrigley-Field氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」3月20日号に掲載された。 研究グループによれば、2020年3月から2021年12月にかけてのパンデミック初期には、病院内で死亡した患者のほぼ全例が新型コロナウイルスの検査を受けており、また、この期間の病院内における内因死の超過死亡数は、COVID-19による院内死亡数と概ね一致していた。これらの点を踏まえてWrigley-Field氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて病院内で確認されたCOVID-19死亡の特徴を学習させ、そのモデルを肺炎や糖尿病など別の死因として記録された病院外死亡に適用することで、見逃されたCOVID-19による死亡数を推定した。パンデミック初期には、病院外で死亡した多くの人が新型コロナウイルスの検査を受けていなかった。 その結果、この期間におけるCOVID-19による死亡数は、公式発表では84万251人であったが、研究グループの推計では99万5,787人であった。これは、死亡数が公式発表より19%、人数にすると15万5,536人多いことに相当する。また、このような見逃された死亡が多く見られたのは、ヒスパニック系やネイティブ・アメリカン、アラスカ先住民、アジア系、黒人、アラバマ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州などの南部および南西部の地域、さらに世帯収入が低く住民の健康状態が不良な郡であった。 専門家は、こうした差は医療アクセスの問題を反映していると指摘している。本研究には関与していない、米バージニア・コモンウェルス大学、社会・健康センターのSteven Woolf氏は、「社会的に周縁に置かれた人々は、医療にアクセスできないために、依然として不均衡に高い割合で死亡している」とAP通信に語った。 パンデミック初期には、特に病院外での検査体制が限られており、自宅で使える検査キットも普及していなかった。そのため、診断を受けることなく死亡した人もいた。また、地域によっては、死因調査を選挙で選ばれた検視官が担っているが、そうした検視官は法医学専門医と同等の訓練を受けていない場合もある。さらに、家族が死因としてCOVID-19の記載を望まなかったケースや、死後に検査が実施されなかったケースもあった。 論文の上席著者である米ボストン大学グローバルヘルス分野のAndrew Stokes氏は、「特に大都市以外では、時代遅れの死因調査制度が正確な死亡数の把握を妨げた主な要因の一つだ」と述べている。 米疾病対策センター(CDC)によると、パンデミックの発生以降、米国でのCOVID-19による死亡数は120万人を超えており、その3分の2以上が2020年と2021年に集中しているという。パンデミックによる正確な死亡数をめぐっては、オンライン上で誤情報が拡散したこともあり、過大評価か過小評価かを含めて広く議論されている。

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