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<先週の動き> 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に 1.診療科名に「睡眠障害」追加へ 18年ぶり見直し、受診導線改善狙う/厚労省厚生労働省は、医道審議会医道分科会の専門部会で、医療機関が看板や広告で掲げる診療科名に「睡眠障害」を追加することを了承した。診療科名の見直しは2008年以来で、政令改正を経て、今春にも施行される見通し。医療機関は「睡眠障害内科」「睡眠障害精神科」など、既存の基本診療科名と組み合わせた形で標榜できるようになる。診療科名は医療法に基づき規制されており、医療機関が自由に名乗ることはできない。現在は「内科」「外科」「小児科」など約20の基本診療科名に加え、「糖尿病」「腫瘍」など疾患名や臓器名を組み合わせる形で標榜が認められている。今回の見直しで「睡眠障害」もこの組み合わせ名称の1つとして追加される。背景には、睡眠に関する医療ニーズの拡大がある。不眠症や睡眠時無呼吸症候群、過眠症など睡眠障害は多様で、成人の約5人に1人が何らかの睡眠問題を抱えるとされる。その一方で、どの診療科を受診すればよいか、わかりにくいことから受診が遅れるケースも多いとされ、日本睡眠学会が診療科名の追加を要望していた。睡眠障害の診療は内科、精神科、耳鼻咽喉科など複数の領域にまたがる。精神科受診への心理的抵抗から適切な診療につながるまで時間を要する例もあり、診療科名として明示することで受診先の選択が容易になり、早期診断や治療につながることが期待されている。一方、制度上は専門資格がなくても「睡眠障害科」を標榜できるため、専門性を伴わない医療機関が患者集めを目的に掲げる可能性も指摘されている。睡眠障害治療では、睡眠薬の長期使用による依存や離脱症状の問題もあり、専門的な診断や治療体制の整備が課題とされる。日本睡眠学会の専門医は約660人にとどまり、地域偏在も大きい。診療科名の追加を契機に、専門医育成や診療体制整備をどう進めるかが今後の課題となる。 参考 1) 第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会(厚労省) 2) 病院の診療科名に「睡眠障害」追加 厚労省部会が了承(日経新聞) 3) 「睡眠障害」の診療科名追加を了承、今春にも導入…通院先選びの利便性向上期待(読売新聞) 4) 「睡眠障害」診療科名に追加へ、受診の目印に 08年以来の見直し(朝日新聞) 2.MMRワクチン承認へ、麻疹再拡大で接種体制強化が課題に/厚労省厚生労働省は3月2日に開かれた薬事審議会医薬品第二部会で、麻疹(はしか)、おたふくかぜ、風疹を防ぐ3種混合ワクチン(MMRワクチン)の製造販売承認を了承した。開発した第一三共の製品「ミムリット皮下注用」が正式に承認されれば、わが国で使用可能なMMRワクチンは約30年ぶりとなる。今後、定期接種に組み込むかどうかの検討が進められる。わが国では1989年にMMRワクチンが導入されたが、おたふく風邪成分に関連した無菌性髄膜炎の報告が相次ぎ、1993年に使用が中止された経緯がある。今回のワクチンは、無菌性髄膜炎の発生頻度が極めて低い株を使用しており、臨床試験でも重大な副作用は確認されていないとされる。海外では100以上の国・地域でMMRワクチンが定期接種として導入されており、わが国でも接種回数の減少など接種体制の効率化が期待される。その一方で、麻疹の感染は国内外で拡大の兆しを見せている。国内では愛知県で高校を中心に感染が広がり、2026年に入ってすでに20例以上の感染が確認された。東京都や埼玉県、神奈川県、岐阜県、鹿児島県などでも散発的な患者が報告され、医療機関や商業施設で不特定多数と接触した可能性のある事例も相次いでいる。海外渡航歴のない患者も複数確認されており、地域内感染の可能性も指摘されている。麻疹は、空気感染で感染する極めて感染力の強いウイルス感染症で、発熱や咳、結膜充血などの症状の後に高熱と発疹が出現する。肺炎や脳炎を合併すると重症化することがあり、ワクチン接種が最も有効な予防策とされる。海外でも流行は深刻化している。米国では、今年に入り約2ヵ月で1,100例以上の感染が報告され、前年の年間患者数を上回る可能性が指摘されている。患者の大半はMMRワクチン未接種、または2回接種を完了していない人だった。米疾病対策センター(CDC)はワクチン接種を改めて呼びかけている。国内でのMMRワクチン承認は、麻疹対策の強化に向けた制度的転換となる可能性がある。麻疹排除状態の維持には、2回接種率の向上とともに、集団免疫を維持するためのワクチン政策の整備が重要となりそうだ。 参考 1) 新薬等15製品が承認へ 第一三共のMMRワクチン・ミムリットなど 薬事審・第二部会が了承(ミクスオンライン) 2) 麻疹・おたふく・風疹の3種混合ワクチン承認へ…かつて報告された無菌性髄膜炎の発生頻度、極めて少なく(読売新聞) 3) はしか感染の20歳代男性、2月21日に日本医科大付属病院で不特定多数と接触か…東京都が注意呼びかけ(同) 4) 愛知県内で新たに2人が「はしか」に感染(NHK) 5) 米はしか感染 2カ月で1、100人 高水準だった去年の年間2,300人を上回る見通し(東日本放送) 6) 米CDC所長代理、はしかワクチン接種呼びかけ(ロイター) 3.急性期病院の要件厳格化 救急・手術実績で拠点化進める/厚労省令和8(2026)年度の診療報酬改定の詳細が明らかになってきた。今回の改定では、急性期入院医療の評価軸が「病棟単位」から「病院全体の急性期機能」へと変更され、実質的に急性期の担い手は急性期A、看護・多職種協働加算を組み合わせた急性期B、急性期1、同様の急性期4に集約される流れが強まった。厚生労働省は、3月5日に「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」として通知を発出し、その中で急性期病院Bの実績要件として救急搬送1,500件以上、または500件以上+全麻手術500件以上などを示し、さらに急性期総合体制加算では、総合性と高い手術実績を備えた拠点病院を評価する仕組みに再編した。中央社会保険医療協議会(中医協)でも、人口の少ない地域では救急搬送の受入件数に加え、外来・在宅診療体制の確保を支援する拠点病院を評価する方向性が示されている。その一方で、人口減少地域への影響は大きい。地域の急性期病床を持つ病院が同時に高度急性期を目指せば、看護師やリハビリスタッフ、症例数が分散し、どこも基準を満たせず、かえって経営不振や医療の質の低下を招きかねない。仮に50床の病棟で多職種7対1を実現するには看護師24人に加え、多職種約10人が必要で、人材が少ない地域の病院にはハードルが高くなる。結果として、急性期機能は一部病院へ集約され、周辺病院は包括期医療や在宅医療へ役割転換を迫られる可能性が高い。住民にとっては、高度急性期病院へのアクセスが遠のく一方で、地域内での「救急受け止め→早期転院→在宅復帰」の流れが整えばメリットもある。ただし、その前提は地域のかかりつけ医や在宅医療機関や介護施設の協力医療機関が軽症の救急患者の受け入れ、退院後のフォロー、看取りの支援を担えることだ。今回、介護施設の入所者の救急搬送は、協力医療機関で対応可能な例を原則として急性期A・Bの実績に算入しない方針も示され、急性期病院と地域密着病院で役割分担する発想がより鮮明になった。過疎地では、病院再編だけでなく、クリニックや訪問看護ステーションとの連携強化、訪問診療、余剰病床の介護施設への転換を含めた検討が不可欠になる。 参考 1) 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(厚労省) 2) 急性期入院医療の提供主体は「急性期A、多職種7対1の急性期B、急性期1、多職種7対1の急性期4」に集約されるのでは(Gem Med) 3) 急性期総合体制加算の施設基準詳細、「総合的かつ高度な体制を整え、小児・周産期含めた十分な手術実績」持つ病院が加算1を取得(同) 4) 救急患者応需係数で底上げ、地ケア病棟は対象外 看護必要度 C項目に腰椎穿刺など追加(CB news) 4.医師偏在対策が次の段階へ 地域医療構想と医師養成を一体で見直し/厚労省厚生労働省は、3月3日に「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」を開き、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」についてガイドラインを取りまとめた。また、医師の偏在について「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」での検討を重ねてきていた第8次「医師確保計画」の見直し方針をとりまとめ、公開した。今回の2つの検討会の取りまとめは、病床数の議論だけでなく、医師偏在対策や医師養成過程の見直しまで一体で進める点にある。人口減少と高齢化、医療人材不足を前提に、地域ごとに「どの病院が急性期を担い、どこが高齢者救急や在宅を支えるか」を再設計する考えだ。まず、新たな地域医療構想では、人口減少と高齢化を前提とした医療提供体制の再編を進めるため、2040年の必要病床数を最新のNDBデータで推計し、高度急性期79%、急性期84%、包括期89%、慢性期92.5%の病床稼働率で換算する。急性期は少なめ、包括期は厚めに見積もる方向で、厚労省はこの数値を「必要病床数を算定するための換算値」であって、各病院が目標とすべき経営指標ではないと明示した。また、2028年度までに全病院・有床診療所が将来担う医療機関機能を整理し、地域で協議する枠組みを示している。医師確保計画の見直しでは、従来の「目標医師数」だけでなく、「地域で不足する診療科」などの定量指標を導入する。さらに、医師数は極端に少なくなくても、へき地尺度(RIJ)が高くアクセスに課題のある地域を新たに支援対象とする。小児科や産科に加え、皮膚科、耳鼻咽喉科、眼科なども、人口減少地域では常勤確保が難しい診療科として位置付けられ、遠隔医療の活用も検討対象となる。医師にとって重要なのは、外来医師過多区域への新規開業で、地域に不足する医療機能の提供を要請する仕組みが本格化する。その一方で、医療資源が乏しい地域では、承継支援や医師派遣、代替医師確保への支援が行われる。また、国は都道府県任せにせず、運用状況を毎年度把握し、必要なフォローを行う方針も示している。今後は、病院の再編だけでなく、診療所が休日夜間対応、在宅医療、退院後フォロー、遠隔診療をどう担うかが、地域医療構想の実効性を左右しそうだ。医師養成では、医学部の地域枠、臨床研修、専門研修、総合的な診療能力を持つ医師の育成を組み合わせる方向性が整理された。政府は、2040年の医療提供体制を「病床再編」と「医師配置」、さらに「医師の育て方」まで連動させて作り直そうとしている。2040年に向けた医療体制は、急性期医療の集約、高齢者救急への対応、在宅医療との連携、医師偏在是正を一体で進める形となる。病院にとっては、自院が地域で担う医療機能を明確にすることが求められ、外来患者数減少に直面する開業医は、医師会や地域の病院と連携して、地域で何を担うかがこれまで以上に問われる局面に入った。今後は限られた医療人材の中で、どう医療提供体制を維持するか重要な課題となりそうだ。 参考 1) 第12回地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(厚労省) 2) 「医師確保計画策定ガイドラインの見直しに向けた医師養成過程における取組のとりまとめ」(同) 3) 急性期病床2040年の必要数、稼働率84%で推計 高度急性期79%、包括期89%、慢性期92.5%(CB news) 4) 2040年の必要病床数、病床利用実態・業務効率化等加味し「急性期は少なめ・包括期は多め」に推計-地域医療構想・医療計画検討会(Gem Med) 5.社会保険料抑制へ制度改革 OTC類似薬と高額療養費が焦点/政府政府が進める医療保険制度改革により、公的医療保険の加入者1人当たりの社会保険料が年間約2,200円減少する見通しであることがわかった。上野 賢一郎厚生労働大臣が3月6日の閣議後の会見で明らかにした。改革の柱は、高額療養費制度の見直しと、市販薬と成分や効能が類似する「OTC類似薬」の保険給付の見直しなどで、医療費の抑制を通じて保険料負担の軽減を図る狙いがある。高額療養費制度では、医療費が高額になった場合の患者自己負担の月額上限を段階的に引き上げる。2026年8月と2027年8月の2段階で実施され、最終的には現行より最大38%引き上げられるケースも想定される。厚生労働省は、この見直しにより医療費を年間約2,450億円削減できると試算しており、保険料は加入者1人当たり年間約1,400円程度の軽減効果が見込まれるとしている。薬剤費の見直しも改革の柱となる。市販薬と成分や効能が近い「OTC類似薬」については、保険給付を受ける場合でも薬剤費の4分の1を患者が「特別の料金」として負担する制度を新設する。対象は鼻炎、胃痛、解熱鎮痛薬など77成分、約1,100品目とされ、2027年3月の施行を予定している。これにより社会保険料は年間約400円の減少が見込まれる。また、後発医薬品(ジェネリック)があるにもかかわらず先発薬を選択した場合の追加負担も拡大する。現在は差額の4分の1を患者が負担しているが、これを差額の2分の1まで引き上げる方針だ。こうした薬剤関連の見直し全体では年間約800円の保険料軽減効果が見込まれている。その一方で、高額療養費の上限引き上げに対しては、患者団体や野党から「重症患者の負担増につながる」との批判も出ている。国会審議では、保険料軽減が月額150円程度にとどまるとの指摘もあり、受診控えが生じる可能性への懸念も示された。政府は制度の持続可能性確保のための改革と説明するが、患者負担と保険財政のバランスをどう取るかが引き続き議論となりそうだ。 参考 1) 医療保険制度改革で保険料1人当たり年2,200円減、高額療養費制度やOTC類似薬の負担見直し(読売新聞) 2) 高額療養費見直しなどで社会保険料年2,200円減 厚労相が見通し(毎日新聞) 3) OTC類似薬の負担見直し、保険料減は月額33円程度 高額療養費は117円減 上野厚労相(CB news) 4) 「ペットボトル1本分の社会保険料負担軽減のために、高額療養費の負担増やすのか」共産議員が見直し迫る 衆院予算委で質疑(ABEMA TIMES) 6.美容クリニックの再生医療で訴訟相次ぐ 安全性と説明責任が焦点に美容医療を巡る訴訟が相次いでいる。焦点となっているのは、顔のしわやたるみ改善をうたう「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた後に、頬や目の下にしこりや隆起が残ったとする事案だ。2026年2月には女性3人が東京都内のクリニックを東京地裁に提訴し、施術費用の返還、原状回復のための治療費、慰謝料など計約1,850万円を求めた。原告側は、施術前に重い合併症や除去の困難さ、使用成分の実態について十分な説明がなく、安全性を強調する宣伝の下で同意が取られたと主張している。被害相談の増加を受け、医療問題弁護団は3月1日にプレミアムPRP皮膚再生療法の被害者救済を目的に無料ホットラインも開設し、同種事案の掘り起こしを進めている。この訴訟で争点となるのは、単なる仕上がり不満ではなく、説明義務違反と再生医療法令への適合性だ。報道では、「bFGFを加えたPRP療法は未承認の再生医療に当たり、患者への説明事項は省令で定められているのに、同意書や説明内容が不十分だった可能性」が指摘されている。実際、2025年1月には同種の美容目的再生医療を巡る別件で、東京地裁が医療法人の責任を認める決定が確定した。そこでは、「施術の有効性に十分な科学的根拠が乏しいこと」、「bFGFによる長期のしこりや隆起が起こりうることを説明すべき義務があったのに尽くされなかった」と判断され、解決金支払いと再発防止が求められた。今回の3人提訴は、この先行事例を踏まえ、同種施術の説明体制や広告表示を改めて司法の場で問う意味合いが大きい。美容医療トラブルが急増する背景として、過度な広告、一括払いの勧誘、十分な訓練を経ない医師の参入が挙げられる。消費者保護の視点から患者側は施術を受ける前に「専門医かどうか」「リスク説明が十分か」を見極める必要性がある。今回の訴訟は、その問題が個人の後悔ではなく、説明不足を伴う構造的な消費者被害として司法判断の対象になり始めたことを示している。美容医療では、適応外使用や未承認技術を含む施術ほど、インフォームド・コンセントの質そのものが法的責任の核心になる。 参考 1) 「鏡向くたびに絶望」顔にしこりなど副作用…美容医療受けた女性ら、都内のクリニック提訴(産経新聞) 2) 「成功してるじゃん」美容医療で“しこり”も医師が失敗認めず…被害者が施術費用の返還など求めクリニックを提訴(弁護士JPニュース) 3) 3月1日(日)プレミアムPRP皮膚再生療法被害ホットラインを実施しました(医療問題弁護団) 4) 「美容目的の再生医療で合併症」 医療法人の責任認定、訴訟が終結(朝日新聞) 5) トラブル急増・美容医療の見極め方 消費者保護に取り組む医師・大塚篤司(TBS)【動画】 6) プレミアムPRP皮膚再生療法で被害相談ホットライン開設 医療問題弁護団が3月1日に電話受付 2026年2月には3人の女性が美容クリニックを提訴