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1941.

要注意…論文のアブストラクトと本文の結語の不一致:肺がん全身療法のRCTを分析

臨床医は、新たなRCT(Randomized Control Study)の情報に乗り遅れないよう、論文のアブストラクトだけを読むことがある。しかし、論文の結語(conclusion)は、アブストラクトと本文中で記載内容が一致していないことがある。このアブストラクトの不一致についてカナダQueen’s UniversityのAltwairgi氏らが分析し、その結果がJournal of Clinical Oncologyオンライン版2012年5月29日に掲載された。分析対象となったのは2004年~2009年の間に発表された肺がん全身療法のRCTである。アブストラクト中と本文中の結語は、7段階のリッカート尺度を用いて階層化された(スコア1は対照群を強く支持、4は双方に中立、7は試験群を強く支持)。双方の点数差が2以上の場合、不一致と判定された。また、不一致関連因子の特定にはχ2検定とロジスティック回帰分析が用いられた。結果、114件のRCT(非小細胞肺がん90件、小細胞肺がん24件)が選出され、そのうち11件(10%)の論文で、結語の不一致が示された。不一致は、実験群がアブストラクト中の結語で強く支持されるケースで最も多かった(9/11 件、82%)。また、不一致の要因を分析したところ、掲載誌のインパクトファクター、肺がん進行度、スポンサーシップの有無など試験関連因子からは独立したものであることがわかった。Altwairgi氏らは、実臨床において、RCTに関する論文のアブストラクトだけを確認して診療変更を検討するような場合は、注意を払うべきであると、結語で述べている。(ケアネット 細田 雅之)

1942.

高齢の進行非小細胞肺がんに単剤療法と併用療法はどちらが有用か?:無作為化第II相試験

高齢者に対する化学療法において併用療法の有用性が議論されている。今回、高齢の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、隔週ゲムシタビン(商品名:ジェムザールなど)+低用量カルボプラチン(商品名:パラプラチンなど)併用療法が、有効性、安全性、忍容性において容認されるという結果が、無作為化第II相試験で得られた。2012年6月15日付Lung Cancer誌オンライン版に掲載された。著者の浜松医科大学の草ヶ谷氏らは、今回の結果を確認するために多数の患者でのさらなる検討が必要としている。本試験では、76歳以上の未治療NSCLC患者が、隔週ゲムシタビン+カルボプラチン併用療法(ゲムシタビン1,000mg/m2+カルボプラチンAUC3、1,15日目、4週ごと)に31例、ゲムシタビン単剤療法(1,000mg/m2、1,8,15日目、4週ごと)に30例が、無作為に割り付けられ検討された。患者の平均年齢は79.0歳、主要エンドポイントは全奏効率。主な結果は以下のとおり。 ・全奏効率は、併用療法が22.6%(95%CI:11.4~39.8)、単剤療法10.0%(95%CI:3.5~25.6)であった。・無増悪生存期間中央値は、併用療法が3.9ヵ月(95%CI :0.5~8.5)で、単剤療法の2.4ヵ月(95%CI:0.5~6.7)に比べて有意に長かった。・グレード3/4の血液学的および非血液学的有害事象の発現率は、両群で有意差はなかった。(ケアネット 金沢 浩子)

1943.

教育講演「分子標的薬の現状と展望―副作用対策を含めて―」

座長 清原 祥夫氏 (静岡がんセンター 皮膚科)中川 秀己氏(東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座)ビスフォスフォネートの抗腫瘍効果についてはいまだ賛否両論がある。現在までにいくつかの臨床試験の結果が報告されており、システマティックレビューとメタ分析が行われた。ここでは、主にチロシンキナーゼ阻害薬による皮膚症状の特徴と対処法、抗体医薬使用時の注意すべき副作用について前編、後編に分けてレポートする。皮膚科医とチロシンキナーゼ阻害薬・抗体医薬の関わりとは?本教育講演では、まず、自治医科大学皮膚科学教室 大槻マミ太郎氏が分子標的薬の概要について講演を行った。初めに、大槻氏は、今後、シェアを確実に伸ばしていく薬剤として低分子のチロシンキナーゼ阻害薬や高分子の抗体医薬などを挙げ、これらの薬剤がターゲットを絞り込む分子特異的治療の両輪となっていると述べた。キナーゼ阻害薬は主に抗がん剤として用いられており、皮膚科領域でも、悪性黒色腫などに対する開発に期待が高まっている一方、現時点では、その副作用として高頻度に発現する皮膚症状とその対処法に注目が集まっている。また、抗体医薬は免疫疾患のQOL改善に貢献度が高く、皮膚科では乾癬治療薬としてTNFαやIL-12、IL-23を標的とした生物学的製剤に期待が寄せられているが、ほかの適応疾患における使用により、乾癬型の薬疹の発現が報告されており、その対処も議論されている。このことを踏まえ、乾癬の治療に関しては、新しい分子標的薬は標的がピンポイントであるため、副作用も絞り込まれると期待されているが、特定の経路のみ抑制すると別の経路が活性化される可能性があり、未知なる「逆説的副作用」が生じる可能性がある。一方で、シクロスポリンなど作用点は多岐にわたるがさまざまな経路を幅広く抑制しうる薬剤は、副作用も経験的に熟知されており、古典的であるがゆえに、使い勝手の良い薬剤ともいえる、と大槻氏は述べた。EGFR阻害薬の皮膚症状と対処法:主にざ瘡様発疹について滋賀医科大学皮膚科学講座 藤本徳毅氏はEGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による皮膚症状と対処法について、考察を述べた。EGFR阻害薬には、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)やエルロチニブ(同:タルセバ)などのチロシンキナーゼ阻害薬と、セツキシマブ(同:アービタックス)やパニツムマブ(同:ベクティビックス)などのモノクローナル抗体があり、非小細胞肺がんや大腸がん、膵がんなどに使用されている。これらの薬剤は、EGFRシグナルを阻害することにより、腫瘍の増殖を抑制し、原疾患への効果を発揮する。一方でEGFRは正常皮膚の表皮基底細胞や外毛根鞘細胞などにも発現することがわかっており、EGFR阻害により、活性化EGFRが減少し、ケラチノサイトの角化異常、角質の菲薄化、角栓の形成が亢進することで高頻度で皮膚障害が生じると言われている。EGFR阻害薬の皮膚症状としては、主にざ瘡様発疹や乾皮症、爪囲炎などが多く、稀なものとしては脱毛性病変などが挙げられる。これら皮膚症状は、重症度が高いほど、原疾患に対するEGFR阻害薬の有効性が高い、つまり生存期間が長いことが示されており、治療効果をはかる指標となる可能性も示唆されている。ざ瘡様発疹の対処法とは?続いて、それぞれの皮膚障害の特徴や対処法について言及した。ざ瘡様発疹はEGFR阻害薬投与後、数日で発現し、4~6週でピークを迎え、6~8週で軽快するケースが多い。また、顔面や体幹に好発し、掻痒や疼痛を伴うが面疱は認められず、大半が無菌性であると言われている。藤本氏は、ざ瘡様発疹は高頻度に発現することがわかっているが、チロシンキナーゼ阻害薬よりもモノクローナル抗体のほうが重症な皮疹が出る印象がある、とつけ加えた。重症度については、日本臨床腫瘍研究グループによって公表されている「有害事象共通用語規準ver4.0 日本語訳JCOG版」(CTCAE v4.0 - JCOG)を用いるのが一般的である。ここでは、体表面積と社会的要素を中心に5段階のGradeに分類されている。ほかにも、各製品の適正使用ガイド等に、掻痒、疼痛の有無によるGradeの目安や発疹出現時の用量調節の基準などが掲載されており、参考にできるとした。対処法については、基本的に、皮膚症状による薬剤の休薬や減量は避けたいとしながら、確立していないものの経験的に実施されているいくつかの治療法について紹介した。ざ瘡様発疹の場合、炎症性ざ瘡の治療に準じて、外用抗菌薬が用いられる。また、局所療法の1つとして、ステロイド外用薬が使用されており、藤本氏は、顔面については、Grade2の場合はstrong class、Grade3でvery strong classを使用すると述べた。しかし、これまでの国内外の文献を見てみると、その評価は一定していないことにも触れ、ステロイド外用薬は即効性はあるが、上手に使いこなすことが重要であると強調した。さらに、Grade2以上または細菌感染合併例には、テトラサイクリン系抗菌薬内服(とくにミノサイクリン)が有効であることも述べた。ミノサイクリンに関しては、海外から、「6週間程度の服用を推奨する」、「皮膚症状の予防効果がある」などの報告がある一方で、「そのエビデンスレベルは不明」とする報告もあるとした。ほかにも、免疫抑制剤の外用薬を使用し、有効性が認められた報告やアダパレンゲルについても言及したが、いずれも一定の評価は得られていないとした。その他の副作用への対処法は?乾皮症は4~35%程度の発現頻度であり、EGFR阻害薬投与後、1~2ヵ月で症状が発現することが多い。治療としては、まずはヘパリン類似物質やワセリン、尿素製剤外用などによって保湿を行い、効果が得られない場合は、ステロイド外用薬を併用する。この症状に関しては、保湿による予防が重要である、と述べた。また、爪囲炎は6~12%程度の発現頻度であり、薬剤投与後2~4ヵ月くらいから見られる症状である。基本的には、浸出液が見られる場合、洗浄、クーリング、テーピング、保湿剤等による処置を行うが、発赤や腫脹が見られる場合には、初期から、very strong~strong classのステロイド外用薬を積極的に用いることが重要である。そのほか、細菌感染合併例には短期間のミノサイクリン内服、さらに外科的処置として部分抜爪や人口爪も考慮されるとした。毛髪異常に関しては、薬剤投与開始後2、3ヵ月で見られることが多いが、頻度は不明であり、中にはまつ毛や眉毛が伸びる症例も見られる。基本的には、EGFR阻害薬を中止しないことには改善しないが、患者さんからの訴えも多くはないため、中止・休薬するケースは少ないと述べた。このようなEGFR阻害薬による皮膚症状では、予防が重要であると言われている。スキンケアの指導は、清潔、保湿、刺激からの保護を基本とし、たとえば、「保湿剤はこすらずに、手のひらでおさえて塗る(スタンプ式塗布)」「外出時は日焼け止めを使用する」「爪は長く伸ばしてまっすぐ切る」などこまめな指導が必要となってくる。藤本氏は、これらスキンケアの方法を患者にわかりやすく説明し、薬剤の写真が入った説明書を配布するなどして、皮膚症状が出ても患者があわてずにすむように指導を行うことも重要である強調し、講演を締めくくった。

1944.

高齢者の非小細胞肺がんに化学放射線療法は有益 日本臨床腫瘍研究グループ無作為化第III相試験の結果(JCOG0301)

化学放射線療法が、高齢者の局所進行非小細胞肺がんの全生存期間を改善するかは知られていない。Atagi氏らは、胸部放射線照射+低用量連日カルボプラチン併用療法が、放射線単独療法に比べ、高齢者の非小細胞肺がん患者の生存期間を延長するか評価している。結果の概要は昨年11月開催の第52回日本肺癌学会総会で発表されたが、その詳細がThe Lancet Oncology 2012年5月21日オンライン版に掲載された。試験は、日本臨床腫瘍研究グループ(以下JCOG)が無作為化比較第III相試験として実施したもの(JCOG0301)。対象は2003年9月1日から2010年5月27日に登録された70歳以上の切除不能StageIII非小細胞肺がん患者200例で、化学放射線療法群(60Gy照射+低用量カルボプラチン30mg/m2/日x週5日)と放射線療法単独群(60Gy照射x週5日)に、無作為に100例ずつ割り付けられた。主要エンドポイントは全生存期間。試験の結果、全生存期間の中央値は、化学放射線療法群で22.4ヵ月(95%CI:16.5~33.6)、放射線療法単独群で16.9ヵ月(95%CI:13.4~20.3)であった(HR:0.68、95.4%CI:0.47~0.98、p=0.0179)。有害事象については、Grade3/4の白血球減少・好中球減少・血小板減少を含む血液毒性、Grade3の感染が化学放射線療法群に多くみられた。Grade3/4の肺炎および晩期肺障害の発生は両群とも同等であった。化学放射線療法群の全生存期間が良好であったことから、JCOG効果・安全性評価委員会は、この試験の早期発表を推奨している。切除不能局所進行非小細胞肺がんの高齢患者にとって、化学放射線療法は放射線単独療法より臨床上有意な治療ベネフィットがあり、標準治療として考えられるべきであると述べている。(ケアネット 細田 雅之)

1945.

EGFR変異陽性非小細胞肺がん患者のQOLを改善するゲフィチニブ NEJ(North East Japan)002 試験 QOL分析

Oizumi氏らは、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん患者のQOLに対するゲフィチニブの効果を評価した。本報告は、The Oncologist誌オンライン版2012年5月11日号に掲載された。NEJ002試験では、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんにおいて、ゲフィチニブ一次治療は無増悪生存期間(PFS)の有意差を証明したものの全生存期間(OS)の有意差を示すにはいたっていない。このレポートでは、同試験におけるQOL分析を紹介している。EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん患者は、ゲフィチニブ群と化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)群に無作為に振り分けられ、それぞれのQOLについてケアノートを用いて評価した。主要エンドポイントは、身体性、心理的、生活の各QOL尺度の無増悪期間である。148例(ゲフィチニブ群 72例、カルボプラチン+パクリタキセル群76例)のQOLデータ分析の結果、身体性QOL尺度と生活QOL尺度は、化学療法群に比べゲフィチニブ群で有意に無増悪期間が長かった(HR:0.34、95%CI:0.23~0.50、p

1946.

抗悪性腫瘍剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」新発売

ファイザーは29日、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC:Non-Small Cell Lung Cancer)の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ、以下:ザーコリ)を発売した。また、同日付で薬価収載もされた。ザーコリは、ALKを阻害する世界初の化合物。ALK遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)などの腫瘍の発生や形成に関わる重要な因子である。肺がんにおけるALK 融合遺伝子の存在は日本人研究者によって発見され、2007年に初めて発表された。予備的な疫学調査ではNSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性とされている。ザーコリは、ALK融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内シグナル伝達経路を遮断する。同社は、ザーコリがより安全かつ有効に使用されるために一層の臨床データの蓄積が重要であると考え、同剤の承認条件にしたがい、製造販売後の特定使用成績調査(全例調査)を通じて、安全性および有効性に関するデータを早期に収集し、適正使用に必要な措置を講じていくという。また、全例調査契約時には、施設・医師要件を確認し、同剤の納入前にはMRによる適正使用情報の提供を行い、納入後には定期的な情報収集訪問を義務付けるとのこと。医療関係者向けには「適正使用ガイド」を、患者向けには冊子などを作成する。市販後に集収される副作用情報は、同社医療従事者向けのサイト「Pfizer for PROFESSIONALS」内にて週1回案内するとのこと。なお、保険償還前の薬剤提供については、ザーコリの早期使用が必要な場合を想定し、承認後から薬価基準収載までの期間、同剤開発治験実施施設に限定するなどの制限付きで提供していたが、今回の薬価基準収載をもって終了した。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_05_29.html

1947.

富士フイルム 静岡がんセンターとCTの類似症例検索システムを開発

富士フイルムは10日、静岡県立静岡がんセンターと共同で人工知能の技術を用いて医師の画像診断をサポートする世界で初めての「類似症例検索システム」の開発に成功したと発表した。富士フイルムは、同システムは本年秋に発売予定。まずは、肺がんを対象に類似CT画像検索機能を提供するという。「類似症例検索システム」は、富士フイルムの人工知能の技術に、静岡がんセンターの約1000例の確定診断のついた豊富な症例データベースを組み合わせることで実現した。同社の医用画像情報システム「SYNAPSE(シナプス)」上で使用できる。同システムは、CT画像の読影を行う際に、組み込まれた症例データベースから、病変の特徴が類似した症例を瞬時に検索し、似ている順に複数表示する。医師は、表示された画像を参考にして、検査画像と比較しながら画像診断を行うことができる。さらに、導入施設ごとに蓄積された過去の症例を追加登録することで、症例データを充実させることも可能だ。また、検索・表示された類似症例の診断結果をもとに、読影レポートの作成を効率的に行える機能も備えている。また、静岡がんセンターの読影実験による検証では、類似症例の検索は、約9割の確率で適切な症例が表示され、それを参考にして読影レポートの作成時間も短縮することができたという。同システムは、4月13日からパシフィコ横浜にて開催される「国際医用画像総合展(ITEM2012)」富士フイルムブースにて技術展示される。詳細はプレスリリースへhttp://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0626.html

1948.

非小細胞肺癌治療剤「ザーコリ」 製造販売承認を取得

ファイザーは30日、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC:Non-Small Cell Lung Cancer)の効能・効果で、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤「ザーコリカプセル200mg/250mg」(一般名:クリゾチニブ、以下、ザーコリ)の製造販売承認を取得したと発表した。ザーコリは、ALKを阻害する世界初の化合物。ALK遺伝子変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)などの腫瘍の発生や形成に関わる重要な因子である。肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在は日本人研究者によって発見され、2007年に初めて発表された。予備的な疫学調査ではNSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性とされている。ザーコリは、ALK融合蛋白質のチロシンキナーゼ活性を阻害することにより、腫瘍細胞の成長と生存に必要な細胞内シグナル伝達経路を遮断します。国内においては、2010年3月より非小細胞肺がん患者を対象とした治験を開始し、2011年1月には希少疾病用医薬品(オーファンドラック)に指定された。第1相臨床試験の成績については、2010年10月28日付のNew England Journal of Medicine(NEJM)誌に発表されておりまた、米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)などの学会において、第1相試験および第2相試験の結果が発表されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_03_30.html

1949.

新開発の分子アッセイ、早期NSCLCのリスク評価に有用

扁平上皮がんを除く早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例を高精度で判別する分子アッセイが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohannes R Kratz氏らによって開発された。早期のNSCLCは、切除術時に検出されなかった転移病変が原因で再発することが多い。これらの患者の管理では予後の予測が重要で、潜在病変を有する可能性が高い患者を同定する必要がある。Lancet誌2012年3月3日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。再発リスクの高い患者を同定する分子アッセイを開発し、妥当性を検証研究グループは、扁平上皮がんを除くNSCLCのリスク分類において、従来の判定法で早期病変とされた患者のうち切除術後の治療不成功の可能性が高い例を同定する際に、実用的で信頼性の高い分子アッセイを開発し、その妥当性の検証を行った。アッセイの開発には、カリフォルニア大学サンフランシスコ校で切除術を受けた扁平上皮がん以外のNSCLC患者コホート(361例)を用いた。ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料を作製して定量的PCR解析を行い、統計学的な予後予測法で患者を判別する14遺伝子の発現アッセイを開発した。次いで、カイザー・パーマネンテの研究部門によってアッセイの妥当性の検証が行われた。この妥当性確認試験は、カイザー・パーマネンテ北カリフォルニア病院で切除術を受けた扁平上皮がんを除くStage IのNSCLC患者のマスクされたコホート(433例)、および中国臨床試験コンソーシアム(CCTC)の一部として中国の主要ながんセンターで切除術を施行された扁平上皮がん以外のStage I~III NSCLC患者コホート(1,006例)で行われた。NCCN判定基準よりも高い正確度を達成カイザー妥当性検証コホートに関するKaplan-Meier法による解析では、低リスク例の5年全生存率は71.4%、中リスク例は58.3%、高リスク例は49.2%であった(傾向性検定:p=0.0003)。CCTCコホートに関する同様の解析では、5年全生存率は低リスク例74.1%、中リスク例57.4%、高リスク例44.6%だった(傾向性検定:p<0.0001)。多変量解析では、いずれのコホートにおいても、腫瘍の遺伝子発現に基づく予後予測情報をもたらす臨床的リスク因子は認めなかった。このアッセイによって、Stage I NSCLCのうち高リスク例の予測の正確度が、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)判定基準に比べて有意に改善され(p<0.0001)、全Stageで低リスク、中リスク、高リスク例の判別が可能であった。著者は、「われわれが開発した実用性の高い定量的PCRに基づくアッセイは、扁平上皮がんを除く早期NSCLC患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例の同定において高い信頼性を示した」と結論している。(菅野守:医学ライター)

1950.

胸部X線による肺がん検診、肺がん死亡率低下に効果なし

胸部X線による年1回の肺がん検診は、肺がん死亡率を低下しないと結論する報告が発表された。米国・ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが、15万人超を対象に行われた、がんスクリーニング無作為化比較試験「PLCO」から肺がんスクリーニング4年間の追跡結果を解析した結果で、JAMA誌2011年11月2日号(オンライン版2011年10月26日号)で発表した。胸部X線による肺がん検診の死亡率に対する有効性は、これまで明らかにされていなかった。追跡期間13年間で、肺がん死亡率、肺がん罹患率などを分析PLCOは前立腺、肺、大腸、卵巣の4つのがんスクリーニングを対象とする試験。被験者は毎年スクリーニングを受ける群と、通常の医療ケアを受ける群に割り付けられフォローアップが行われた。研究グループは、それら被験者の胸部X線による肺がんスクリーニングの死亡率の影響を調べた。1993~2001年にかけて、55~74歳の15万4,901人が無作為に割り付けられ、一方の群(7万7,445人)には年1回の胸部X線正面像撮影による肺がんスクリーニング検査が4年間にわたり行われた。もう一方の群(7万7,456人)には通常の医療ケアが行われた。スクリーニング検査の陽性結果に対するフォローアップについては、被験者とその医師らによって決定した。主要アウトカムは肺がん死亡率、副次アウトカムは肺がん罹患率と診断目的の処置による合併症、総死亡率とされた。追跡期間は13年、または2009年末時点までのいずれかで、先に到達した時点までで調査が行われた。累積肺がん罹患率、肺がん死亡率ともに両群で有意差なし検診群における肺がん検診実施率は、初回が86.6%、1~3年後は79~84%だった。対照群における検診実施率は、11%だった。追跡期間中の累積肺がん罹患率は、1万人・年当たり、検診群20.1、対照群19.2と、両群で有意差はなかった(累積肺がん罹患率比:1.05、95%信頼区間:0.98~1.12)。同期間中の肺がん死亡数も、検診群1,213人、対照群1,230人と、両群で同等だった(肺がん死亡率比:0.99、同:0.87~1.22)。肺がんの組織学的状態や病期についても、両群で有意差は認められなかった。また、大量喫煙者3万人超について6年間追跡して行ったサブグループ分析でも、検診群と対照群で、肺がん死亡率に有意差はなかった(肺がん死亡率比:0.94、同:0.81~1.10)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1951.

臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。がん全体の標準化罹患比は2.10、過剰絶対リスクは10万人・年当たり719.3研究グループは、1987~2008年の米国移植レシピエントの登録簿「US Scientific Registry of Transplant Recipient」に登録された17万5,732人の臓器移植レシピエントを元に、多種のがん発症リスクについて分析した。同レシピエントのうち、腎臓が58.4%、肝臓が21.6%、心臓が10.0%、肺が4.0%だった。全体では、がんを発症したのは1万656人で、発症率は1,375人/10万人・年、標準化罹患比は2.10(95%信頼区間:2.06~2.14)、過剰絶対リスクは719.3/10万人・年(同:693.3~745.6)だった。肝臓移植後6ヵ月以内の肝臓がん発症リスクは500倍超なかでも、非ホジキンリンパ腫の発症頻度が最も高く、発症者数は1,504人、発症率は194.0/10万人・年、標準化罹患比は7.54(同:7.17~7.93)、過剰絶対リスクは168.3/10万人・年(同:158.6~178.4)だった。次いで頻度が高かったのは肺がんで、発症者数は1,344人、発症率は173.4/10万人・年、標準化罹患比は1.97(同:1.86~2.08)、過剰絶対リスクは85.3/10万人・年(同:76.2~94.8)。続いて肝臓がんで、発症者数は930人、発症率は120.0/10万人・年、標準化罹患比は11.56(同:10.83~12.33)、過剰絶対リスクは109.6/10万人・年(同:102.0~117.6)、腎臓がんの、発症者数752人、発症率は97.0/10万人・年、標準化罹患比は4.65(同:4.32~4.99)、過剰絶対リスクは76.1/10万人・年(同:69.3~83.3)だった。肺がんについては、肺移植レシピエントで最も発症リスクが高く標準化罹患比は6.13だったが、他の臓器移植レシピエントでも高く、心臓2.67、肝臓1.95、腎臓1.46であった。肝臓がんについては、肝移植レシピエントでのみ発症リスクが増大し、標準化罹患比は43.83、なかでも移植後6ヵ月の同リスクは著しく高く同比508.97に上った。術後10~15年のリスクも2倍以上に上った(標準化罹患比:2.22、95%信頼区間:1.57~3.04)。腎臓がんは、腎移植レシピエントで高く標準化罹患比は6.66で、その値は追跡期間中に上昇したり下降したりした。また肝移植レシピエント(同1.80)、心移植レシピエント(同2.90)でもリスク増大が認められた。

1952.

婦人科がんのNCCNガイドライン日本語版を公開

先端医療振興財団 臨床研究情報センターは11月4日、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)婦人科がんガイドライン 日本語版を公開。 本ガイドラインは、 日本婦人科腫瘍学会に監訳・監修、および日本の治療との相違点等に関するコメントも掲載している。日本語版は大腸がん、泌尿器がん、肺がんに引き続き第四弾。婦人科がんガイドラインの内容は ・子宮頸がん (Cervical Cancer)・子宮体がん(Uterine Neoplasms)・卵巣がん(Ovarian Cancer)・子宮頸がんのスクリーニング(Cervical Cancer Screening)・乳がんおよび卵巣がんにおける遺伝的 / 家族性リスク評価 (Genetic/Familial High-Risk Assessment: Breast and Ovarian) は近日公開予定詳しくはこちらhttp://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/index.html

1953.

現在・元ヘビースモーカーへの低線量CT肺がんスクリーニングで、COPD検出可能

現在および以前にヘビースモーカーであった人に対する、低線量CT肺がんスクリーニングは、感度63%、特異度は88%と、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を検出可能であることが示された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのOnno M. Mets氏らが、1,140人を対象に行った前向き横断試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月26日号で発表した。50~75歳、1日16本、25年間喫煙といったヘビースモーカーを対象研究グループは、2007年7月~2008年9月にかけて、50~75歳の現在または過去の喫煙者男性、1,140人について試験を行った。被験者は、1日16本以上の喫煙を25年以上、または11本以上を30年以上などのヘビースモーカーだった。研究グループは被験者に対し、同一日に行う吸・呼気CT検査で、気管支拡張薬服用前の肺機能検査を行った。肺気腫の定義は、FEV1/FVCが70%未満だった。感度63%、特異度88%、陽性適中率76%、陰性適中率79%その結果、肺気腫が認められたのは、全体の38%にあたる437人だった。CTによる肺気腫や空気とらえ込み現象の検出、BMI、喫煙量(パック・年)、喫煙状況などで補正を行った結果、CT検査によるCOPD検出モデルのROC曲線下面積は0.83(95%信頼区間:0.81~0.86)だった。同モデルによって、COPD陽性と判定されたのは274人で、うち85人が偽陽性だった。COPDの同モデルによる検出感度は63%(同:58~67)、特異度は88%(同:85~90)、陽性適中率は76%(同:72~81)、陰性適中率は79%(同:76~82%)だった。被験者で症状のある人については、ROC曲線下面積は0.87(同:0.86~0.88)、症状のない人については0.78(同:0.76~0.80)だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1954.

70歳以上の非小細胞肺がん患者への併用化学療法は生存ベネフィットあり

非高齢の進行型非小細胞肺がん患者に対して推奨されるプラチナ製剤ベースの併用化学療法カルボプラチン(同:パラプラチンなど)+パクリタキセル(同:タキソールなど)は、従来推奨されていなかった70歳以上の高齢患者においても、ビノレルビン(商品名:ナベルビンなど)やゲムシタビン(同:ジェムザールなど)の単剤療法との比較で、毒性作用の増大はあるものの生存ベネフィットが認められることが示された。フランス・ストラスブール大学Elisabeth Quoix氏らが、第3相無作為化試験「IFCT-0501」の結果、報告したもので、「現在の高齢患者への治療パラダイムを再考すべきと考える」と結論している。がんの疾患リスクは先進諸国では、長寿社会の進展とともに増大しており、肺がんの診断時の年齢中央値は現在63~70歳と、高齢患者の顕著な増加が認められているという。Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。WHOパフォーマンスステータススコア0-2の、70~89歳の高齢患者を被験者に試験は、2006年4月~2009年12月の間に多施設共同オープンラベルにて61施設から、進行型または転移性非小細胞肺がんで、WHOパフォーマンスステータススコアが0-2の、70~89歳の高齢患者が登録され行われた。被験者は、カルボプラチン(1日目)+パクリタキセル(1、8、15日目)の併用化学療法(3週投薬1週休薬)の4サイクル投与群か、ビノレルビンまたはゲムシタビン単剤化学療法(1、8日目)(2週投薬1週休薬)の5サイクル投与群に無作為に割り付けられ追跡された。主要エンドポイントは、全生存率とし、intention to treat解析された。全生存率中央値、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月登録患者451例(併用療法群225例、単剤療法群226例)は、年齢中央値77歳、追跡期間中央値は30.3ヵ月(範囲:8.6~45.2)であった。全生存率の中央値は、併用療法群10.3ヵ月、単剤療法群6.2ヵ月であった(ハザード比:0.64、95%信頼区間:0.52~0.78、p<0.0001)。また、1年生存率は、併用療法群44.5%(95%信頼区間:37.9~50.9)、単剤療法群25.4%(同:19.9~31.3)であった。毒性作用は、併用療法群のほうが単剤療法群より頻度が高かった。最も頻度が高かったのは好中球減少症で108例(48.4%)対28例(12.4%)、また無力症は23例(10.3%)対13例(5.8%)であった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1955.

年1回の低線量CTによる肺がんスクリーニング、死亡率を低下:NLST

年1回の低線量CTによる肺がんスクリーニングが、肺がんによる死亡率を低下することが、米国内33施設5万3,000人超を対象に行われた大規模な無作為化試験「NLST」の結果、報告された。進行が早く不均一という肺がんの性質がスクリーニング効果の妨げとなり、これまで可能性が示された高リスク群への胸部X線および喀痰細胞診による集団検診も、無作為化試験で死亡率低下が示されなかった。しかし、低線量CTの登場で状況は一変、観察的研究で胸部X線よりも多くの初期がんを含む小結節や肺がんを検出することが示されていた。NEJM誌2011年8月4日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。肺がんリスクの高い53,454例を低線量CT群か胸部X線群に無作為化し追跡NLST(National Lung Screening Trial)は2002年8月~2004年4月に、全米33施設から肺がんリスクの高い53,454例が登録され行われた。被験者は、55~74歳、30箱/年の喫煙者か禁煙が15年以内の元喫煙者だった。被験者は無作為に、低線量CT群(2万6,722例)か胸部正面単純X線群(2万6,732例)に割り付けられ、年1回、3年にわたってスクリーニングが行われ、2009年12月31日まで肺がん発症、肺がんによる死亡のデータが収集された。スクリーニング受診アドヒアランスは90%以上であった。肺がんによる死亡、低線量CT群が20.0%低い3回にわたるスクリーニングでの陽性率は、低線量CT群24.2%、胸部X線群は6.9%だった。偽陽性率は、低線量CT群96.4%、胸部X線群は94.5%だった。肺がん発生率は、10万人年当たり、低線量CT群645例(がん1,060個)、胸部X線群は572例(がん941例)で、発生率比は1.13(95%信頼区間:1.03~1.23)だった。肺がんによる死亡は、10万人年当たり、低線量CT群247例、胸部X線群は309例で、低線量CT群の死亡は胸部X線群よりも相対的に20.0%(95%信頼区間:6.8~26.7、p=0.004)低下が認められた。また全死因死亡は、同6.7%(同:1.2~13.6、P=0.02)であった。(武藤まき:医療ライター)

1956.

抗悪性腫瘍剤 クリゾチニブ

世界初の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であるクリゾチニブが、ALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬として、米国FDAに新薬承認申請し、2011年5月受理され、優先審査対象に指定された。また、わが国でも厚生労働省への申請が行われ、外資系製薬企業では初の日米新薬承認同時申請となった。NSCLCの現状と課題NSCLC患者の約75%は診断時に進行や転移が認められ、その時点からの5年生存率は、わずか6%とされている1)。進行NSCLCに対する現在の標準治療の奏効率は15~35%程度である2)。手術不能の進行NSCLCは完治が困難であり、予後が悪いのが現状である。この状況はここ10年において、さほど大きく変わっていない。ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCに新たな可能性ALK遺伝子は、NSCLCの腫瘍発現における重要な遺伝子であると考えられている3)。2007年、自治医科大学教授の間野博行氏によって、肺がんにおけるALK融合遺伝子の存在が初めて報告されたが、NSCLC患者の約3~5%がALK融合遺伝子陽性であるとされている。こうした状況を背景に、ファイザー社はALK融合遺伝子陽性患者にフォーカスした世界初のALK阻害剤となる経口製剤クリゾチニブを開発した4)。ターゲット遺伝子を先に特定し、そのターゲット遺伝子を持つ患者を対象に薬剤開発を行ったのは、肺がん領域ではクリゾチニブが最初の薬剤となる。また、クリゾチニブは経口製剤であるため、患者にとって使いやすい薬剤といえる。高い奏効率、高い忍容性2011年にASCOで発表されたデータによると、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者116例にクリゾチニブを連続経口投与したところ、完全奏効(CR)が2%(2例)、部分奏効(PR)が59%(69例)、不変 (SD)6週間以上が27%(31例)であり、奏効率(CR+PR)は61%、臨床的ベネフィットが見られた割合(CR+PR+SD)は88%に上った5)。大半の患者は、すでに他治療を受けており、そのうち44%の患者は3レジメン以上の治療を受けていた。また、最も多かった副作用は、視覚障害、悪心、下痢、嘔吐などであり、程度は、軽度(グレード1または2)のものが多かった。ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者の特徴現段階ではALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者の特徴は明確ではないが、傾向としては、腺がん患者であること、喫煙歴がない、もしくはライトスモーカー患者が比較的多いことが挙げられる。また、患者の年齢層としては、高齢者だけではなく、若い年齢層の患者が多いこともその特徴といえる。まとめ腫瘍発現における重要な遺伝子であるALK遺伝子をターゲットとし、奏効率が高く、忍容性が高いという本剤の特徴は、患者の身体的負担の軽減など、多くのメリットにつながり、今後、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC治療においてパラダイムシフトをもたらすことが期待される。

1957.

英国がん生存率の低さは、レジストリの問題ではない

がんレジストリ・データから推定するがん生存率が、英国のデータは他のヨーロッパ諸国よりも低いデータが示されることに関して、London School of Hygiene and Tropical medicineのLaura M Woods氏らは、最近のBMJエディトリアルで指摘された、登録プロセスにおける2つの特異的なエラーがミスリードの原因なのかどうかを検証した。英国の低過ぎるがん生存率をめぐっては、10年以上の間、それが治療によりもたらされる違いなのかどうかが議論されているという。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月9日号)掲載より。診断日ではなく再発日の記録、5年以上生存者未登録が問題なのかをシミュレーションWoods氏らはシミュレーション研究にて、仮定されている2つのエラーのエビデンスについて検証した。すなわち、(1)死亡診断書からの登録者について診断日の代わりに再発日を記録していること、(2)レジストリに登録されていない5年以上の長期生存者がいること、についてシミュレーションし、それらの相対生存率への影響の可能性を推定し、英国の低い生存率はいずれか一方のエラーまたは両方によるものかを確認した。対象としたのは、イングランドとウェールズの全国がんレジストリ。具体的には、1995~2007年の間にイングランドとウェールズで登録され、2007年12月31日まで追跡された、乳がん(女性のみ)、肺がん、大腸がんと診断された患者だった。主要評価項目は、各シミュレーションとの関連でみた、1年相対生存率、5年相対生存率の平均絶対パーセントの変化とした。たとえエラー要因のレベルが極端に大きくても説明がつかない結果、英国とスウェーデンとの間にみられる乳がん1年生存率の格差は、(1)の仮定によっては説明することができた。診断日が死亡に至った女性の70%以上で、平均1年以上の誤差を有し記録されていた。一方で、(2)の仮定については、長期生存者が40%であったとしても、1年生存率の格差を説明する半分にも満たなかった。肺がんと大腸がんについても、同様の結果だった。Woods氏は、「がん登録データについて仮定されたエラー要因のレベルが極端に大きくても、英国とその他のヨーロッパ各国とにみられる生存率の国際間格差は説明することが不可能だった」と結論。最後に、英国のがん患者の生存率は実際のところ低いと言え、診断の遅れ、ヘルスケアへの投資の低さ、最適とは言えないケアに関連していそうだと述べ、「問題とすべきは、根底にある原因は何か、何をすれば英国のがん患者のアウトカムが改善されるかである」とまとめている。

1958.

卵巣がん検診、卵巣がん死亡を低下せず、偽陽性による過剰検査を誘導

卵巣がん検診は、卵巣がんによる死亡の低下に結びついておらず、むしろ偽陽性による過剰検査やそれによる有害事象の発生につながっていることが報告された。米国・ユタ大学健康科学センターのSaundra S. Buys氏らが行った無作為化比較対照試験の結果で、JAMA誌2011年6月8日号で発表した。本報告は、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんの検診有効性について行った試験「Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial」の一環。これまで、腫瘍マーカーCA-125測定と経膣的超音波により行われる卵巣がん検診の、死亡リスクに対する効果は明らかになっていなかった。8万人弱を2群に分けCA-125・経膣的超音波で検診、中央値12年追跡Buys氏らは、1993年11月~2001年7月にかけて、55~74歳の女性7万8,216人を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の3万9,105人(検診群)は、年1回の腫瘍マーカーCA-125によるスクリーニングが6年間と、経膣的超音波による検査が4年間行われた。もう一方の3万9,111人(対照群)には、スクリーニングは実施されず、通常の医療的ケアが行われた。被験者は2010年2月末まで追跡された。追跡期間は最大で13年、中央値は12.4年だった。検診群の死亡リスク1.18倍、偽陽性で外科的フォローアップ受けた人の15%に重篤な有害事象結果、卵巣がんと診断を受けたのは、検診群が212人(1万人・年当たり5.7人)、対照群が176人(同4.7人)だった(リスク比:1.21、95%信頼区間:0.99~1.48)。卵巣がんによる死亡は、検診群が118人(同3.1人)で、対照群が100人(同2.6人)だった(死亡リスク比:1.18、95%信頼区間:0.82~1.71)。検診群における偽陽性は3,285人にみられた。そのうち1,080人が外科的フォローアップを受け、1つ以上の重篤な有害事象が163人(15%)に発生していた。なおその他の原因(卵巣がん、大腸がん、肺がんを除く)による死亡は、検診群が2,924人(1万人・年当たり76.6人)、対照群2,914人(同76.2人)だった(リスク比:1.01、95%信頼区間:0.96~1.06)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1959.

再発性・治療抵抗性非小細胞肺がんへのベバシズマブ+エルロチニブ:BeTa試験

再発性または治療抵抗性の標準第一療法治療後の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、ベバシズマブ(商品名:アバスチン)+エルロチニブ(同:タルセバ)の併用レジメンの有効性と安全性について検討された第3相二重盲検プラセボ対照試験「BeTa」の結果が、Lancet誌2011年5月28日号に掲載された。試験は、米国テキサス大学腫瘍学部門のRoy S Herbst氏らにより行われた。ベバシズマブとエルロチニブは腫瘍増殖ターゲット、細胞毒性効果がそれぞれ異なる。第1相、第2相試験で同併用レジメンの安全性および細胞活性が認められたことを踏まえて行われた試験であった。12ヵ国177施設からの636例を対象にBeTa試験は2005年6月~2008年4月に、12ヵ国177施設から登録された636例を対象に行われた。コンピュータシステムにて無作為に、エルロチニブ+ベバシズマブ群(ベバシズマブ群:319例)かエルロチニブ+プラセボ群(対照群:317例)に割り付けられた。割り付け情報は被験者、試験スタッフ、研究者には知らされなかった。主要エンドポイントは、全被験者の全生存期間とし、副次エンドポイントには、無病生存期間、客観的奏効率および期間、安全性(有害事象の発生率)、有効性エンドポイントとの評価、生物マーカー解析が含まれた。全生存期間中央値、ベバシズマブ群9.3ヵ月、対照群9.2ヵ月結果、全生存期間中央値は、ベバシズマブ群9.3ヵ月(IQR:4.1~21.6)、対照群9.2ヵ月(同:3.8~20.2)と、両群間に差は認められなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.80~1.18、p=0.7583)。無病生存期間は、ベバシズマブ群3.4ヵ月(同:1.4~8.4)、対照群1.7ヵ月(同:1.3~4.1)と、ベバシズマブ群のほうが長期であることが示された(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.52~0.75)。また、ベバシズマブとエルロチニブには臨床作用があることも示されたが、これら副次エンドポイントの結果は、有意差があると評価することはできなかった。本試験では、主要エンドポイントが副次エンドポイントよりも先に有意であることが示されていなければならないとされていたことによる。重篤な有害事象は、ベバシズマブ群で42%(安全性に関するデータが利用できた313例中130例)、対照群は36%(114/317例)報告された。グレード5の事象発生は、ベバシズマブ群では、動脈血栓塞栓症イベント2例などを含む20件(6%)が、対照群では14件(4%)が報告された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

1960.

血清ビリルビン値正常域内では、高値ほど呼吸器疾患リスクや総死亡リスクが減少

血清ビリルビン値が正常域内では、その値が高い人の方が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患や総死亡のリスクがいずれも低いことが明らかにされた。英国University College LondonのLaura J. Horsfall氏らが、50万人超を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月16日号で発表した。肝胆道系疾患や溶血性疾患のない50万人超を中央値8年追跡研究グループは、1988年1月~2008年12月にかけて、英国プライマリ・ケアに関するデータベース「Health Improvement Network」の中から、血清ビリルビン値の測定記録があり、肝胆道系疾患や溶血性疾患の診断歴のない、50万4,206人についてコホート試験を行った。主要評価項目は、COPDや肺がんの罹患率と、総死亡率だった。追跡期間の中央値は8年だった。被験者の血清ビリルビン値の中央値は、男性が0.64mg/dL(四分位範囲:0.47~0.88)で、女性が0.53mg/dL(同:0.41~0.70)だった。肺がんを発症したのは1,341人(罹患率2.5/1万人・年)、COPDは5,863人(罹患率11.9/1万人・年)、総死亡は2万3,103人(死亡率42.5/1万人・年)だった。血清ビリルビン値0.1mg/dLごと上昇で、肺がん罹患率は男性で8%、女性で11%減少血清ビリルビン値が高い方が、男性の肺がん罹患率は低く、低い方から第1番目の十分位群(血清ビリルビン値:0.18~0.34mg/dL)では5.0(95%信頼区間:4.2~6.0)/1万人・年だったのに対し、第5番目の十分位群(血清ビリルビン値:0.58~0.63mg/dL)では3.0(同:2.3~3.8)/1万人・年だった。同じく男性のCOPD罹患率も、それぞれ19.5(同:17.7~21.4)と14.4(同:12.7~16.2)と、血清ビリルビン値が高い方が低率だった。また男性の総死亡率も、第1番目の十分位群が51.3(同:48.5~54.2)/1万人・年に対し、第5番の十分位群では38.1(同:35.5~40.8)/1万人・年と低率だった。同様の傾向は女性についても認められた。重要な健康指標で補正後、血清ビリルビン値が0.1mg/dLごと上昇により、肺がん罹患率は男性で8%、女性で11%減少した。またCOPD罹患率も、血清ビリルビン値0.1mg/dLごと上昇により男性で6%減少し、総死亡率は3%減少した。COPD罹患率、総死亡率については、女性においても同様の傾向が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

検索結果 合計:2006件 表示位置:1941 - 1960