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ベムラフェニブ、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんにも有効/NEJM

 ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)はBRAF V600キナーゼの選択的阻害薬で、BRAF V600変異陽性の転移性悪性黒色腫の標準治療である。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDavid M. Hyman氏らは、今回、本薬はBRAF V600変異陽性の他のがん腫にも有効であることを確認しことを報告した。近年、BRAF V600変異は悪性黒色腫以外のさまざまながん腫で発現していることがわかっているが、半数以上は変異陽性率が5%未満であるため疾患特異的な試験を行うのは困難だという。本研究では、「basket試験」と呼ばれる新たな試験デザインが用いられている。このアプローチでは、同じバイオマーカーの発現がみられる組織型の異なる多彩ながん腫において、抗腫瘍活性のシグナル伝達の検出と薬剤感受性の評価が同時に可能で、生物統計学的デザインの柔軟性が高いため希少がんでの抗腫瘍活性の同定に有用であり、新たな治療法を迅速に評価できるとされる。NEJM誌2015年8月20日号掲載の報告より。大腸がん、NSCLC、脳腫瘍などへの効果を第II相basket試験で評価 研究グループは、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんに対するベムラフェニブの有用性を評価する第II相試験を行った(F. Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、ECOG PSが0~2のBRAF V600変異陽性がん患者とし、悪性黒色腫のほか、全般に変異陽性率が高く疾患特異的な試験が可能と考えられる甲状腺乳頭がんや有毛細胞白血病は除外した。 被験者は、ベムラフェニブ960mgを1日2回経口投与された。大腸がんのうち、ベムラフェニブ単剤では効果が不十分と予測される患者には、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬セツキシマブを併用投与した。 主要評価項目は8週時の奏効率とし、副次評価項目には無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などが含まれた。 2012年4月11日~2014年6月10日までに、欧米の23施設に122例が登録された。内訳は、症例数が多い順に、大腸がんが37例(単剤:10例、併用:27例)、非小細胞肺がん(NSCLC)が20例、エルドハイム・チェスター病(ECD)/ランゲルハンス細胞性組織球症(LCH)が18例、原発性脳腫瘍が13例、胆管がんが8例、甲状腺未分化がんが7例、多発性骨髄腫が5例などであった。NSCLC、ECD/LCHで40%以上の奏効率、希少ながん腫にも奏効 NSCLCの評価可能19例のうち8例で部分奏効(PR)、8例で安定(SD)が得られ、8週時の奏効率は42%(95%信頼区間[CI]:20~67)であった。また、PFS中央値は7.3ヵ月(95%CI:3.5~10.8)、1年PFSは23%であった。OS中央値には未到達であったが、初期データに基づく1年OSは66%だった。 ECD/LCHの評価可能14例では、完全奏効(CR)が1例で達成され、PRが5例、SDが8例で、奏効率は43%であった。12例に病変の退縮が認められ、いずれの症例でも疾患関連症状が改善した。治療期間中央値は5.9ヵ月(範囲:0.6~18.6)で、治療中に病勢が進行した症例はなかった。また、PFS中央値には未到達で、初期データによる1年PFSは91%(95%CI:51~99)、1年OSは100%だった。 大腸がんのベムラフェニブ単剤の10例では奏効例はなく、PFS中央値は4.5ヵ月(95%CI:1.0~5.5)、OS中央値は9.3ヵ月(95%CI:5.6~未到達)であった。ベムラフェニブ+セツキシマブ併用の評価可能26例ではPRが1例で得られ、SDが18例であり、奏効率は4%(95%CI:<1~20)だった。PFS中央値は3.7ヵ月(95%CI:1.8~5.1)、OS中央値は7.1ヵ月(4.4~未到達)であった。 甲状腺未分化がんの7例中、CRが1例、PRが1例で得られた。また、未分化型の多形黄色星状細胞腫の4例中3例でPRが得られたほか、胆管がん、唾液腺導管がん、軟部組織肉腫、卵巣がんで1例ずつ奏効例が認められた。甲状腺未分化がん、胆管がん、卵巣がんの各1例は奏効期間が1年以上持続した。さらに、膠芽腫、未分化型上衣腫、膵がんなどで奏効基準を満たさない腫瘍の退縮がみられたが、解析の時点で多発性骨髄腫には奏効例は確認されなかった。 ベムラフェニブ単剤の安全性は、悪性黒色腫の既報のデータと類似していたが、症例数が少ないため比較はできない。最も高頻度に発現した有害事象は、皮疹(68%)、疲労(56%)、関節痛(40%)だった。 著者は、「BRAF V600変異は、すべてではないがいくつかのがん腫で治療標的となるがん遺伝子であることが示された」とし、「組織型にかかわらず、バイオマーカーに基づいて患者を選択するbasket試験は実行可能であり、がんの分子標的治療の開発ツールとして役立つ可能性があるが、多くの場合、同定された有望な抗腫瘍活性を確証するためにさらなる試験を要すると考えられる」と指摘している。

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ニボルマブ、FDAに非扁平上皮NSCLCへの適応拡大を申請

 2015年9月2日、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は、米国食品医薬品局(FDA)が、治療歴を有する非扁平上皮非小細胞肺がん(非小細胞肺がん、以下NSCLC)患者を対象としたニボルマブ(商品名:オプジーボ)に関する生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を受理したことを発表した。このsBLAは、ニボルマブの現在の適応である、治療歴を有する扁平上皮NSCLCからの拡大を目的とするもの。FDAによる審査完了の目標期日は 2016年1月2日。 FDAはこの申請を優先審査の対象に指定すると共に、ニボルマブをブレークスルー・セラピーに指定した。 この申請は、プラチナ製剤を含む化学療法の2剤併用レジメンの前治療中または前治療後に病勢進行がみられた非扁平上皮NSCLC患者を対象に、全生存期間を評価した第III相臨床試験であるCheckMate‐057試験に基づいている。プレスリリースはこちら。(PDF)

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特発性肺線維症の死亡率は悪性腫瘍よりも高い

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、特定疾患治療研究事業の対象疾患である「特発性肺線維症」(IPF)の治療薬ニンテダニブ(商品名:オフェブ)の製品記者発表会を、8月20日都内において行った。 ニンテダニブは、本年7月に製造販売を取得、今秋にも発売が予定されている治療薬で、特発性肺線維症では初めての分子標的薬となる。特発性肺線維症は特徴的な所見で気付 はじめに本間 栄氏(東邦大学医学部医学科 内科学講座呼吸器内科学分野 教授)が、「特発性肺線維症 -病態・疫学-」と題してレクチャーを行った。 特発性肺線維症は、肺胞壁などに炎症ができるため抗生物質、ステロイド、免疫抑制薬が効果を発揮しない治療抵抗性の難病である。 画像所見による診断では、X線単純所見で横隔膜の拳上が確認され、HRCT(高分解能胸部断層撮影)で胸膜下に蜂巣肺が確認されるのが特徴となる。また、臨床症状としては、慢性型労作性呼吸困難、乾性咳嗽、捻髪音(ベルクロ・ラ音)、ばち状指、胃食道酸逆流などが認められる。臨床経過で注意するポイントは、本症では急性増悪がみられ、わずか1年で呼吸不全に至る点である。 確定診断では、「特発性間質性肺炎診断のためのフローチャート」が使用され、原因不明のびまん性肺疾患をみたら、特発性肺線維症を疑いHRCT検査の施行、専門施設での診断などが望まれる。特発性肺線維症に喫煙をする高齢の男性は注意 特発性肺線維症の疫学として「北海道スタディ」より有病率は10万人当たり10.0人、わが国での推定患者数は1万3,000人程度と推定されている。男性に多く、中年以降の発症が多いのが特徴で、高齢化社会を背景に患者数は増加している。 予後について5年生存率でみた場合、肺がん(20%未満)に次いで悪く(20~40%未満)、死亡者数も増えている。また、わが国では患者の40%が「急性増悪」で亡くなっているほか、特発性肺線維症は発がん母地ともなり、30%程度の患者が肺がんへと進行する。 特発性肺線維症のリスクファクターは、患者関連因子と環境関連因子に分けられ、前者では、男性、高齢、喫煙、特定のウイルス(例:EBウイルス)、遺伝的素因、胃食道逆流などが挙げられ、後者では動物の粉塵曝露、鳥の飼育、理髪、金属や木材、石などの粉塵が挙げられる。問診などで社会歴も含め、よく聴取することが診断の助けとなる。特発性肺線維症治療の歴史 続いて、杉山 幸比古氏(自治医科大学 呼吸器内科 教授)が、「特発性肺線維症治療の現状と将来展望」と題して、解説を行った。 はじめに特発性肺線維症の病因として慢性的な刺激による肺胞上皮細胞傷害が、傷害の修復異常・線維化を引き起こすという考えに基づき、抗線維化薬の開発が行われた経緯などを説明した。 効果的な治療薬がない中で、吸入薬であるアセチルシステイン(商品名:ムコフィリン)は、導入薬としてながらく、安全かつ有害事象が少ない、安価な治療薬として使用されてきたことを紹介する一方で、経口薬で行われた海外の試験では効果が否定的とされたことと、ネブライザーでの吸入が必要なことで、コンプライアンスに問題があることを指摘した。 次に2008年に初めての抗線維化薬として登場したのが、ピルフェニドン(同:ピレスパ)であり、欧米で広く使用され、無増悪生存期間を延長し、呼吸機能の低下を抑制することが知られていると説明した。本剤の開発がきっかけとなり、世界的に抗線維化薬の開発が進んだ。特発性肺線維症に抗線維化薬で初めての分子標的薬 次に登場したのが、ニンテダニブ(同:オフェブ)である。ニンテダニブは、肺の線維化に関与する分子群受容体チロシンキナーゼを選択的に阻害する分子標的薬で、25ヵ国が参加した第II相試験では、用量依存的に努力性肺活量(FVC)の低下率を68.4%抑制し、急性増悪を有意に低下させたほか、QOLの有意な改善を認めたとする結果が報告された。また、第III相試験では、40歳以上の軽症~中等の特発性肺線維症患者、約1,000例について観察した結果、プラセボとの比較でFVCの年間減少率を約半分に抑える結果となった(-113.6% vs. -225.5%)。また、373日間の期間で初回急性増悪発現までの割合を観察した結果、ニンテダニブが1.9%(n=638)であるのに対し、プラセボでは5.7%(n=423)と急性増悪の発生を抑えることも報告された。 主な有害事象としては、下痢(62.4%)、悪心(24.5%)、鼻咽頭炎(13.6%)などが報告されている(n=638)。とくに下痢に関しては、対症療法として補液や止瀉薬の併用を行うか、さらに下痢が高度な場合は、ニンテダニブの中断または中止が考慮される。 今後は、国際ガイドラインでも推奨されているように広く適用があれば使用すべきと考えられるほか、がんとの併用療法も視野に入れた治療も考える必要がある。 最後に特発性肺線維症治療の展望と課題として、「線維化の機序のさらなる解明、急性増悪因子の解明とその予防、患者ごとに治療薬の使い分けと併用療法の研究、再生医療への取り組みなどが必要と考えられる」とレクチャーを終えた。

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Stage IIIA/N2のNSCLC、術前化学放射線療法は有用か/Lancet

 Stage IIIA/N2の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、術前の化学療法に放射線療法を併用しても、さらなるベネフィットは得られないことが、スイス・Kantonsspital WinterthurのMiklos Pless氏らSAKK Lung Cancer Project Groupの検討で示された。局所進行Stage III病変は治癒の達成が可能な最も進行したNSCLCであるが、最終的に患者の60%以上ががんで死亡する。Stage IIIA/N2の標準治療は同時併用化学放射線療法と手術+化学療法で、後者については術後または術前化学療法+手術が、手術単独よりも生存期間において優れることが示されているが、術前化学放射線療法+手術の第III相試験はこれまで行われていなかった。Lancet誌オンライン版2015年8月11日号掲載の報告より。術前放射線療法の逐次的追加の有用性を評価 研究グループは、術前放射線療法の追加により局所病変の奏効率や完全切除率が改善することで、無イベント生存期間(EFS)が延長し、全生存期間(OS)の延長の可能性もあるとの仮説を立て、これを検証するために無作為化第III相試験を行った(Swiss State Secretariat for Education, Research and Innovation[SERI]などの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、T1~3N2M0、Stage IIIA/N2の局所進行NSCLCであり、全身状態が良好(ECOG PS:0、1)で、主要臓器機能が正常な患者であった。 被験者は、術前化学療法(シスプラチン100mg/m2+ドセタキセル85mg/m2、3週ごと)を3サイクル施行後に、術前放射線療法(総線量44Gy、22分割、3週間)を行う群(化学放射線療法群)、または同一レジメンの術前化学療法のみを行う群(化学療法単独群)に無作為に割り付けられた。術前化学放射線療法群は終了後21~28日に、術前化学療法単独群は21日に手術が予定された。 主要評価項目はEFS(割り付け時から再発、進行、2次がん、死亡のうち最初のイベント発生までの期間)とし、intention-to-treat解析を行った。 2001~2012年までに、スイス、ドイツ、セルビアの23施設に232例が登録され、化学放射線療法群に117例(年齢中央値60.0歳、女性33%、PS0 71%、喫煙者91%)が、化学療法単独群には115例(59.0歳、33%、69%、96%)が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は52.4ヵ月だった。 本試験は、3回目の中間解析(イベント発生数134件)の結果を踏まえ、独立データ監視委員会の勧告により無効中止となった。奏効率は優れたが、EFSとOSに差なし 化学療法の完遂率は、化学放射線療法群が92%(108/117例)、化学療法単独群は90%(103/115例)であり、比較的高かった。化学放射線療法群の16%(19/117例)が放射線療法を開始できなかったが、予定線量の完遂率は96%(94/98例)だった。 化学療法を受けた患者では毒性作用が高頻度にみられ、Grade 3/4の発現率は化学放射線療法群が45%(49/110例)、化学療法単独群は60%(73/121例)であった。しかし、治療関連有害事象で化学療法が永続的に中止となった患者はそれぞれ4%(5/117例)、6%(7/115例)のみであった。放射線誘発性のGrade 3の嚥下障害が7%(7/98例)に認められた。 抗腫瘍効果は、化学放射線療法群で完全奏効(CR)が4例(3%)、部分奏効(PR)が67例(57%)にみられ、客観的奏効率は61%であったのに対し、化学療法単独群ではCRが2例(2%)、PRが48例(42%)で客観的奏効率は44%であり、両群間に有意な差が認められた(p=0.012)。 手術は、化学放射線療法群が85%(99/117例)、化学療法単独群は82%(94/115例)で行われた。完全切除率は両群間に有意な差はなく(p=0.06)、病理学的完全奏効(16 vs. 12%)やリンパ節転移のdownstaging(N2からN1/N0へ)(64 vs. 53%)も同等であった。術後30日以内に、化学療法単独群の3例が死亡した。 EFS中央値は、化学放射線療法群が12.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.7~22.9)、化学療法単独群は11.6ヵ月(95%CI:8.4~15.2)であり、両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:1.1、95%CI:0.8~1.4、p=0.67)。また、OS中央値も、化学放射線療法群が37.1ヵ月(95%CI:22.6~50.0)、化学療法単独群は26.2ヵ月(95%CI:19.9~52.1)と、両群間に差はなかった(HR:1.0、95%CI:0.7~1.4)。 著者は、「Stage IIIA/N2 NSCLCに対する術前化学療法+手術はきわめて良好な予後をもたらし、術前放射線療法を追加してもそれ以上のベネフィットは得られなかった」とまとめ、「これまでの知見も考慮すると、放射線療法と手術のいずれか1つの局所治療と化学療法の組み合わせは、Stage IIIA/N2 NSCLCの患者に施行可能であり、標準治療とみなすべきと考えられる」と指摘している。

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肺がん左上葉切除術は脳梗塞の危険因子か

 脳梗塞は肺切除術後のまれな合併症であるが、重度の後遺症をもたらしうる。千葉大学の山本 高義氏らが、肺がん術後に脳梗塞を発症した患者の特徴を検討したところ、脳梗塞が左上葉切除を受ける肺がん患者で高頻度に発症しており、左上肺静脈断端における血栓症がその原因となっている可能性が示唆された。Surgery Today誌オンライン版2015年8月14日号に掲載。 著者らは、自施設で2008年1月~2013年10月に葉切除以上を受けたすべての肺がん患者562例を後方視的に検討し、術後30日以内に脳梗塞を発症した患者としなかった患者を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全562例のうち、男性5例と女性1例が脳梗塞を発症していた[平均66歳(55~72歳)、術後平均3.3日(1~9日)に発症]。・5例は左上葉切除が、1例は左下葉切除が施行された。・術後脳梗塞発症例6例と非発症例556例の間で、年齢、性別、BMI、喫煙指数、手術時間に有意差は認めなかったが、術式のみ左上葉切除術の割合が発症例で有意に高かった(p<0.001)。・術後脳梗塞例において、左上肺静脈断端に造影CTにて血栓が認められた。

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ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本人における糖尿病とがん 日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。チアゾリジン薬であるピオグリタゾンとがん ピオグリタゾン(商品名:アクトス)は承認前の動物実験において、雄ラットにおける膀胱腫瘍の増加が確認されていた。そのため、欧米の規制当局により米国の医療保険組織であるKPNC(Kaiser Permanente North California)の医療保険加入者データベースを用いた前向きの観察研究が2004年から行われ、2011年に公表された5年時の中間報告で、ピオグリタゾンを2年間以上使用した患者において、膀胱がんのリスクが1.40倍(95%信頼区間:1.03~2.00)と、有意に上昇することが確認された。さらに、フランスでの保険データベースによる、糖尿病患者約150万例を対象とした後ろ向きコホート研究でも、膀胱がんのリスクが1.22倍(95%信頼区間:1.05~1.43)であることが報告され、フランスとドイツではピオグリタゾンが販売停止となった。また、日本においても、アクトスの添付文書における「重要な基本的注意」に、(1)膀胱がん治療中の患者には投与しないこと、(2)膀胱がんの既往がある患者には薬剤の有効性および危険性を十分に勘案したうえで、投与の可否を慎重に判断すること、(3)患者またはその家族に膀胱がん発症のリスクを十分に説明してから投与すること、(4)投与中は定期的な尿検査等を実施することなどが記載されるようになった。多国間における国際データでの評価 その後、欧州と北米の6つのコホート研究を対象に、100万例以上の糖尿病患者を対象として、割り付けバイアス(allocation bias)を最小化したモデルを用いた検討が2015年3月に報告された。その論文では、年齢、糖尿病の罹患期間、喫煙、ピオグリタゾンの使用歴で調整した後の100日間の累積使用当たりの発症率比は、男性で1.01(95%信頼区間:0.97~1.06)、女性で1.04(95%信頼区間:0.97~1.11)であり、ピオグリタゾンと膀胱がんのリスクは関連が認められないと報告された1)。KPNCの最終報告 今回、JAMA誌に報告されたのが、5年時の中間報告で物議を醸しだしたKPNCの10年時における最終解析である。ピオグリタゾンの使用と膀胱がんのみならず前立腺がん、乳がん、肺がん、子宮内膜がん、大腸がん、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、腎がん、直腸がん、悪性黒色腫の罹患リスクとの関連を、40歳以上の糖尿病患者約20万例のコホート分析およびコホート内症例対照分析で検証したものである。 その結果、ピオグリタゾン使用は、膀胱がんリスクの増加とは関連しなかった(調整後ハザード比1.06:95%信頼区間:0.89~1.26)と結論付けられた。 しかし、解析対象とした10種の悪性疾患中8種の悪性疾患とピオグリタゾンの関連は認められなかったものの、前立腺がんのハザード比は1.13(95%信頼区間:1.02~1.26)、膵がんのハザード比は1.41(95%信頼区間:1.16~1.71、10万例/年当たりの膵臓がんの粗発生率は、使用者で81.8例、非使用者で48.4例)であったことが報告されている。 チアゾリジンの膀胱がんを発症するリスクに対する懸念は払拭されたのか、前立腺がんと膵がんのリスクに関するデータは、偶然なのか、交絡因子の影響なのか、事実なのか……、また1つの問題が提示されたのかもしれない。

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アストラゼネカ、肺がん免疫併用療法で提携を発表

 アストラゼネカは、8月5日、自社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門であるメディミューンと、ドライバー遺伝子およびエピジェネティックに特化するオンコロジー専門企業Mirati Therapeutics, Inc.(本社:米国カリフォルニア州、以下、Mirati社)が臨床試験に関する独占的提携を締結したことを発表した。当該第I/II相試験では、メディミューンの治験薬である抗PD-L1免疫チェックポイント阻害剤durvalumab(MEDI4736)とMirati社の治験薬であるスペクトラム選択性ヒストンデアセチラーゼ(ヒストン脱アセチル化酵素)(HDAC)阻害剤mocetinostatとの併用療法について、安全性および有効性を評価する。 Durvalumab (MEDI4736)はプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とするヒトモノクローナル抗体。一方、Mocetinostatはクラス1HDAC酵素を選択的に阻害することで、durvalumabのようなチェックポイント阻害剤の免疫系に対する効果を向上させる可能性を持つ。アストラゼネカのプレスリリースはこちら(PDFがダウンロードされます)

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新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会

 7月27日(月)、都内で第8回肺がん医療向上委員会※が開催された。その中で、委員長である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学 教授)が、注目を集める新しいがん免疫療法について、これまでの免疫療法との違い、抗PD-1抗体薬の試験成績と今後の課題について講演した。これまでの免疫療法との違い 免疫療法は、患者の免疫応答と関係なく、一定期間経過すると消失する「受動免疫療法」と、患者の免疫応答を誘導する「能動免疫療法」に分けられる。また、この分類とは別に、特定のがん抗原に対する免疫を強化する「特異的免疫療法」と、免疫機能全般を強化する「非特異的免疫療法」に分けられる。 中西氏によると、非特異的免疫療法の中には、免疫力全般を高め、ある程度の有効性が示されている免疫グロブリンやピシバニールのほか、プロポリスやアガリクス、丸山ワクチンなど有効性に関しては“怪しい”と言わざるを得ないものが含まれる。これらはまったく効果がないわけではなく、免疫力を若干高めるというもので、そのもの自体が怪しいわけではない。しかしながら、それらを「免疫を高めるから、がんに効く」と紹介したり、宣伝したりすることで“怪しい”ものになってしまっているという。 がんの免疫療法としては、受動免疫療法においては、がんを標的とした抗体や細胞療法、また、能動免疫療法には、がんワクチン、サイトカイン(IL、TNFα、GM-CSF)、T細胞活性化メディエーターがある。現在注目されている新たな免疫療法は、このT細胞活性化メディエーターである。これまで開発されてきた免疫療法の多くは特異的免疫療法であるが、T細胞活性化メディエーターは非特異的免疫療法である、と中西氏は強調した。また、T細胞活性化メディエーターには、アクセルである共刺激経路と、大きな注目を集めている、免疫のブレーキである免疫チェックポイント(免疫抑制経路)がある。 現在、肺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬として期待されているものとして、抗PD-1抗体(ニボルマブやペムブロリズマブなど)と抗CTLA-4抗体(イピリムマブなど)がある(肺がんに対しては現在、国内未承認)。その違いについて中西氏は次のように説明した。CTLA-4はリンパ組織における抗原提示を制御し免疫系全体を抑制するのに対し、PD-1は不特定多数のがん特異的免疫を抑制する。よって、抗CTLA-4抗体のほうが、抗PD-1抗体より効果が強いが副作用も多い可能性がある。ニボルマブの肺がんにおける試験成績と今後の課題 ニボルマブの扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するCheckMate017試験、非扁平上皮NSCLCに対するCheckMate057試験は、どちらも進行期肺がんのセカンドラインにおけるドセタキセルとの比較で、全生存期間(OS)を主要評価項目として実施された第III相試験である。これらの試験のOSのハザード比は、扁平上皮がんで0.59、非扁平上皮がんで0.73と、どちらも驚くべき結果が認められ、肺がんに対する免疫療法で初めて科学的に有効性を証明した。さらに、安全性にも期待が持てる結果であった。 一方、これらの試験では、ニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線の交差と、PD-L1発現とニボルマブの効果の相関という2つの点において、検討すべき結果が示されている。非扁平上皮がんではニボルマブ群とドセタキセル群の生存曲線が交差しており、ニボルマブにまったく効果のない例が存在する可能性があるという。また、非扁平上皮がんではPD-L1の発現割合の多い症例でニボルマブ群が優れており、PD-L1発現とニボルマブの効果に相関がみられたが、扁平上皮がんにおいてはPD-L1の発現の有無にかかわらず、ニボルマブ群が優れていた。 中西氏はこれらの結果をまとめ、抗PD-1抗体ニボルマブは既治療のNSCLC(扁平上皮がん、非扁平上皮がん)に対して、従来の抗がん剤に比べ、明らかに優れた結果が示されたと述べた。しかしながら、ニボルマブの効果を予測するバイオマーカーについて、PD-L1は関連がある場合とない場合があるため不十分であるとし、また、治療開始の早い段階で効果のない症例を見極めて次の治療を考えることが必要であると強調した。 最後に、中西氏は、肺がんに対する薬物療法において、これまでの化学療法と分子標的療法に加え、免疫療法というもう1つの武器が手に入ったが、今後、どのように使い分けていくか、どのように併用するかを、安全性の点を含めてしっかりと検討する必要がある、と結んだ。※肺がん医療向上委員会特定非営利活動法人日本肺癌学会が、肺がん患者とその家族に正しい情報を提供するとともに、正しい診断と治療がなされる環境を目指し、学術団体、がん領域に関わる患者支援団体、臨床試験グループ、製薬・臨床検査関連企業など、肺がん医療に関わるすべての関係者との連携の下、2013年11月に設置。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第22回

第22回:成人の頸部リンパ節腫脹について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの現場で、頸部リンパ節腫脹はそれ自体を主訴に受診する場合のほか、急性疾患に罹患して受診した際に気付かれる、時に見られる症候の一つです。 生理的な範疇なのか、反応性なのか、それとも悪性なのかの区別をつけることが、臨床的には重要になります。 以下、American Family Physician 2015年5月15日号1)より原則として、経過が急性・亜急性・慢性かで鑑別を考える。急性【外傷性】外傷性の場合、組織や血管系の損傷による。少量であれば自然軽快するが、大きく、急性に増大する場合はすぐに処置や外科的精査を要する。剪断力が追加されると偽性動脈瘤の形成・動静脈瘻の形成につながる。その場合はスリルや雑音を伴った柔らかい、拍動性腫瘤として触れる。【感染・炎症性】最も多い原因である。歯や唾液腺のウイルス・細菌によるものが代表的である。性状は腫脹、圧痛、発赤や熱感を伴う。可動性がある。ウイルス性の上気道症状は1~2週続くことが一般的だが、リンパ節腫脹は上気道症状改善後3~6週以内に治まってくることが多い。そのため、上気道症状改善後にも頸部腫脹が続くことで心配して受診する患者さんもいる。病原ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザが多い。生検が適応になるのは、4~6週経っても改善しなかったり、夜間の寝汗・発熱・体重減少・急速な腫瘤増大といった悪性を示唆する所見があったりする場合である。よって、この点について病状説明を行うべきと考える。細菌性感染では、頭部・頸部がフォーカスの場合に主に頸部リンパ節腫脹を来す。肺外結核も頸部リンパ節腫脹を起こす。びまん性、かつ両側性にリンパ節腫脹があり、多発し、可動性もなく、硬く圧痛もなく、胸鎖乳突筋より後ろの後頸三角地帯に存在していることが特徴である。疑えば、ツベルクリン反応を行うべきだが、結果が陰性だからといって否定はできない。亜急性週~月単位の経過で気付かれる。ある程度は急速に増大しうるが、無症候性に増大するため発症スタートの段階では気付かれない。成人で持続する無症候性の頸部腫瘤は、他の疾患が否定されるまでは悪性を考えるべきである。喉頭がんなどでは診断が遅れる事で生存率が下がるため、家庭医にとって頭頸部がんの一般的な症状については認識しておくことが最重要である。【悪性腫瘍】頭頸部の原発性悪性腫瘍で最も多いのは上気道消化管の扁平上皮がんである。よくある症状としては、改善しない潰瘍・構音障害・嚥下障害・嚥下時痛・緩いもしくは並びの悪い歯・咽頭喉頭違和感・嗄声・血痰・口腔咽頭の感覚異常がある。悪性疾患を示唆するリンパ節の性状は、硬い・可動性がない・表面不整であることが多い。上気道消化管がんのリスクファクターとしては、男性・アルコール・タバコ・ビンロウの実(betel nut:東南アジアではガムを噛むようによく使用されている)である。口腔咽頭がんのリスクファクターは頭頸部扁平上皮がんの家族歴・口腔衛生不良である。扁平上皮がんの一部はヒトパピローマウイルス感染との関連も指摘されている(とくにHPV-16がハイリスク)。病変は急速に腫大し、嚢胞性リンパ節(持続性頸部リンパ節過形成)、口蓋・舌扁桃の非対称性、嚥下障害、声の変化、咽頭からの出血といった症状を来す。集団としてリスクが高いのは、35歳~55歳の白人男性で喫煙歴・重度のアルコール常用者・多数の性交渉相手(とくにオーラルセックスを行っている場合)の存在である。唾液腺腫瘍の80%近くが良性であり、耳下腺由来である。これらの腫瘍は一側性で無症候性、緩徐に増大し可動性のある腫瘤である。一方、悪性腫瘍では、急速増大、可動性がなく、痛みを伴い、脳神経(とくにVII)も巻き込むという違いがある。黒色腫のような皮膚がんもまた局所のリンパ節に転移する。局所のリンパ節腫脹を説明しうる原発の頭頸部がんが存在しない場合、臨床医は粘膜に関わる部位(鼻・副鼻腔・口腔・鼻咽頭)の黒色腫を検索するべきである。まれに基底細胞がんや扁平上皮がんからの転移でリンパ節腫脹を来すこともある。発熱、悪寒、夜間寝汗、体重減少といった全身症状は遠隔転移を示唆しうる。頸部リンパ節腫脹を来す悪性腫瘍の原発部位は肺がん、乳がん、リンパ腫、子宮頸がん、胃食道がん、卵巣がん、膵がんが含まれる。頸部はリンパ腫の好発部位であり、無痛性のリンパ節腫脹で出現して急速に進行し、その後有痛性へと変わる。びまん性のリンパ節腫脹や脾腫よりも先に全身症状が出現することが多い。転移によるリンパ節腫脹と比べ、リンパ腫の性状は弾性軟で可動性がある。Hodgkinリンパ腫では二峰性の年齢分布(15~34歳、55歳以上)があり、節外に症状が出る事はまれである。Non-Hodgkinリンパ腫では高齢者で多く、咽頭部の扁桃輪のようにリンパ節外にも症状が出る。リウマチ性疾患では唾液腺腫大を来すのは3%、頸部リンパ節腫脹を来すのは4%存在する。唾液腺腫大や頸部リンパ節腫大を来すリウマチ性疾患にはシェーグレン症候群やサルコイドーシスがある。慢性小児期から存在する先天性腫瘤がほとんどで、緩徐に進行し成人になっても持続している。慢性の前頸部腫瘤の原因として最も多いのは甲状腺疾患であるが、進行が緩徐であることがほとんどである。びまん性に甲状腺腫大がみられた場合、バセドウ病・橋本病・ヨード欠乏による可能性があるが、甲状腺腫を誘発するリチウムのような物質曝露によるものも考える。傍神経節腫は神経内分泌腫瘍で、側頸部の頸動脈小体の化学受容体・頸静脈・迷走神経を巻き込む。通常無症候性だが、機能性になる時はカテコラミン放出の結果として顔面紅潮・動悸・高血圧を起こす。診断的検査は血漿もしくは24時間蓄尿でカテコラミン・メタネフリンを測定する事である。診断手段成人の持続する頸部腫瘤に対しては、まず造影CTを選択する。大きさ・広がり・位置・内容などに関して評価しうる初期情報が得られるためである。加えて、造影剤は腫大していない悪性リンパ節を同定する助けにもなり、血管とリンパ節の区別の一助になりうる。造影CTでの精査は頸部腫瘤の評価に対しては第1選択として推奨される。しかし、ヨードを用いた造影剤検査は甲状腺疾患の病歴のある、もしくは転移性甲状腺がんの心配のある患者へは避けるべきである。PET-CTは予備的診断として使用するには効果的でなく、悪性腫瘍の最終的な評価目的で使用すべきである。超音波検査はCTの代わり、もしくは追加で行われるとき、嚢胞性疾患と充実性疾患との区別に有用であり、結節の大きさや血流の評価にも有用である。CTと超音波の使い分けとして、より若年で放射線被曝を減らしたい場合に超音波を選択する。また、造影剤腎症を避けるために腎疾患が基礎疾患にある方へは造影剤使用を控える。FNAB(fine needle aspiration biopsy:穿刺吸引生検)については、施行に当たり重要な構造物を含んでいないことが確認できていれば進めていく。FNABでは、細胞診、グラム染色、細菌培養、抗酸菌培養を通じて得られる情報が多い。FNABでの悪性腫瘍診断については、感度77~97%、特異度93~100%である。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) James Haynes, et al. Am Fam Physician. 2015; 91: 698-706.

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非小細胞肺がんの早期診断には無細胞DNA解析が有用

 非小細胞肺がん患者の血漿における無細胞DNA値の上昇は、炎症反応が原因ではなく、腫瘍の発生が主な原因であることをポーランド・結核・肺疾患研究所のAdam Szpechcinski氏らが報告した。British Journal of Cancer誌オンライン版2015年6月30日号の掲載報告。 血漿中の無細胞DNA値の解析は、非小細胞肺がんの早期診断に役立つバイオマーカーと期待されている。しかしながら、非小細胞肺がん患者の血流に多くの無細胞DNAが放出される理由が悪性腫瘍によるものなのか、慢性炎症反応によるものなのかはいまだ明らかになっていない。 このため、慢性の呼吸器炎症を有する患者において血漿の無細胞DNAの定量化が診断を付けるうえで有用かは、明確になっていないのが現状である。そこで、慢性の呼吸器炎症を有する患者における血漿の無細胞DNA値の解析が有効なのかを検討し、早期の肺がんの診断ツールとしての潜在的な臨床的意義を評価した。 対象は切除可能な非小細胞肺がん患者50人と慢性の呼吸器炎症(COPD、サルコイドーシス、喘息)を有する患者101人、リアルタイムPCRを利用している健常人40人で、それぞれの血漿の無細胞DNA値を測定した。 主な結果は以下のとおり。・非小細胞肺がんの患者では、慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人に比べて、有意に血漿の無細胞DNA値が高いことがわかった(p<0.0001)・慢性の呼吸器炎症を有する患者と健常人との間で血漿の無細胞DNA値に有意な差は認められなかった。・2.8 ng ml-1以上をカットオフとしたとき、非小細胞肺がん患者と健常人とを鑑別する感度は90%、特異度は80.5%であった(Area Under the Curve[AUC]0.90)。・ROC曲線による非小細胞肺がん患者と慢性の呼吸器炎症を有する患者を鑑別するカットオフは5.25 ng ml-1以上で感度は56%、特異度は91%であった(AUC=0.76)。 本研究は、肺がんの早期スクリーニングや早期診断において、血漿無細胞DNA値の潜在的な臨床的意義を向上させたといえる。非小細胞肺がん患者で血漿の無細胞DNA値が上昇する要因や過程の特徴付けや同定をするためには、今後さらなる研究が必要である。

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【JSMO2015見どころ】肺がん

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 肺がんについては、大泉 聡史氏(北海道大学大学院医学研究科 呼吸器内科学分野)より、トピックスや注目演題などが紹介された。 大泉氏は、肺がん領域で取り上げられるトピックスとして4つを挙げ、それぞれの主な注目演題を紹介した。1)免疫チェックポイント阻害薬の非小細胞肺がんへの応用肺扁平上皮がんの2次治療におけるニボルマブ対ドセタキセルの第III相試験(Checkmate-017試験)で、ニボルマブの有用性が確認された。わが国でも早く承認されることが期待されている。・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・オーラルセッション呼吸器7 免疫チェックポイント阻害薬による肺がん治療日時:2015年7月18日(土)8:00~9:30会場:Room2(ロイトン札幌3FロイトンホールA)2)EGFR遺伝子変異陽性肺がんのEGFR-TKI耐性時の治療戦略EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に抵抗性となる患者の5~6割がT790Mという遺伝子変異である。これを標的とする新規EGFR-TKIのAZD9291の臨床研究結果が報告されているが、JSMOでは日本人集団のみのデータが報告される予定である。・オーラルセッション呼吸器1 EGFR-TKI 耐性日時:2015年7月16日(木)12:30~13:40会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)3)わが国で開発された進行期肺扁平上皮がんの新規治療法進行再発肺扁平上皮がんの初回治療では、今までシスプラチン+ドセタキセルが標準治療であった。今回、標準治療と新たな治療法であるネダプラチン+ドセタキセルについて、西日本がん研究機構(WJOG)による第III相試験で比較したところ、ネダプラチン+ドセタキセルの有用性が認められた。・オーラルセッション呼吸器5 肺がんの新たなる治療戦略日時:2015年7月17日(金)9:30~10:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)4)肺がんの遺伝子学的解析の最前線・インターナショナルセッション2-2肺がん(2)肺がんの遺伝子学的解析の最前線日時:2015年7月17日(金)8:30~9:30会場:Room7(ホテルさっぽろ芸文館3F瑞雪の間)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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【JSMO2015見どころ】最新のがん免疫療法

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 いま最も注目されているがん免疫療法については、北野 滋久氏(国立がん研究センター中央病院 先端医療科)より、免疫チェックポイント阻害薬の開発状況や注目演題などが紹介された。 がん医療の進歩に貢献してきた「手術療法」「放射線療法」「化学(薬物)療法」の3大治療に続き、第4の治療として「がん免疫療法」への期待がますます高まっている。わが国でも昨年、「免疫チェックポイント阻害薬」の1つである抗PD-1抗体療法が進行悪性黒色腫に対して承認された。現在、非小細胞がんに対しても国内承認の期待が高まり、さらに他の多くのがん種においても後期臨床試験が実施されている。  「がん免疫療法」の中でも臨床開発が最も成功し、世界的な注目を集めている「免疫チェックポイント阻害薬」の開発状況は、以下のようである。●メラノーマ・進行メラノーマに対して、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)が2011年3月に米国FDA承認済みで、国内でも承認(2015年7月3日)。・進行メラノーマに対して、抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2014年7月国内承認、次いで米国FDAがペムブロリズマブ、ニボルマブの順で承認。・B-raf変異陰性進行メラノーマに対して、1次治療として抗PD-1抗体がダカルバジンを上回る臨床効果を認められた。●肺がん・進行扁平上皮肺がんに対して抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2015年3月にFDA承認。国内申請中。・進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対して抗PD-1抗体がFDA承認申請。・既治療進行非小細胞肺がんに対して、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行されている。・進行非小細胞肺がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第II相試験が実施または計画中。●その他・既治療の腎細胞がん、頭頸部がん、胃がん、膀胱がんなどにおいて、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行または準備されている。 また、JSMOでのがん免疫療法に関する注目演題は以下の通り。・Special LectureImmune checkpoint inhibitors日時:2015年7月17日(金)8:45~9:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・ESMO/JSMO合同シンポジウムImmune checkpoint blockade in cancer therapy: new insights, opportunities, and prospects for a cure日時:2015年7月17日(金)9:30~11:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)PS-3 Phase III study of pembrolizumab (MK-3475) versus ipilimumab in patients with ipilimumab-naïve advanced melanoma日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・教育講演EL-23 免疫チェックポイントの基礎日時:2015年7月18日(土)10:30~11:00会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)EL-24 使って分かる免疫チェックポイント阻害薬日時:2015年7月18日(土)11:00~11:30会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)・シンポジウムSY-5 がん免疫制御の現況と次なるホープ日時:2015年7月16日(木)9:00~11:00会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)SY-6 がん幹細胞の分子標的・免疫制御の新展開日時:2015年7月16日(木)12:30~14:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)・セミナーCAR-T細胞療法セミナー 基礎と臨床日時:2015年7月17日(金)16:00~17:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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タバコには放射性物質が?!

タバコには放射性物質が?!タバコから取り込まれる放射性物質 タバコには、肥料由来とされる放射性物質(ポロニウム210など)が含まれていることが知られています。タバコ煙の粒子BベンツピレンPo ポロニウムPb 鉛210…気管分岐部にポロニウムなどの煙の粒子が付着し、放射線(α線)を出し続ける。(10シーベルト/20年※) タバコを吸うと、ポロニウムが肺内に入り、気管分岐部に付着して、放射線(α線)を出し続けます。肺がんを発症??※一生の内部被ばくは0.1シーベルト以下に抑える(厚生労働省)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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肺がん患者が禁煙したときの延命効果は?

 米国・ロズウェルパークがん研究所のKatharine A Dobson Amato氏らは、同研究所の肺がん患者における禁煙パターンの特徴、および禁煙と生存率との関連を調査した。その結果、肺がんと診断された患者において、禁煙によって全生存期間が延長する可能性を報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年6月20日号に掲載。 この研究所を受診した肺がん患者について、標準化された喫煙評価でスクリーニングし、過去30日以内に喫煙した患者には、自動的に禁煙電話サービスが紹介された。2010年10月~2012年10月にこのサービスを紹介されたすべての肺がん患者について、電子カルテとロズウェルパークがん研究所の腫瘍登録を介して、人口統計的情報や臨床情報、および最終コンタクト時の自己申告による喫煙状況を取得した。禁煙およびその他の要因が2014年5月までの生存と関連するかを評価するために、記述統計とCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・禁煙サービスを紹介された388例の肺がん患者のうち313例に、禁煙コールが試行された。・そのうち80%の患者(313例中250例)にコンタクトでき、これらの患者は少なくとも1回の電話による禁煙指導を受けた。・コンタクトできた患者のうち40.8%(250例中102例)は、最終コンタクトで禁煙したことを報告した。・年齢、喫煙歴(pack-year)、性別、ECOG performance status、診断から最終コンタクトまでの期間、腫瘍の組織、臨床ステージによる調整後、禁煙は、最終コンタクトで継続的に喫煙していた場合と比べ、統計的に有意な生存期間の延長と関連した(HR 1.79、95%信頼区間:1.14~2.82)。また、全生存期間中央値は9ヵ月改善した。

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進行扁平上皮NSCLC、ニボルマブで生存期間延長/NEJM

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)で化学療法中または療法後に疾患進行が認められた患者に対し、ニボルマブ(本邦ではメラノーマを対象に商品名オプジーボとして承認)投与はドセタキセル投与に比べ、生存を有意に改善したことが示された。米国ジョンズ・ホプキンス病院シドニー・キメル総合がんセンターのJulie Brahmer氏らが行った無作為化非盲検国際共同第III相試験の結果、報告された。ニボルマブは、完全ヒト型抗PD-1免疫チェックポイント阻害薬IgG4抗体の新しい分子標的薬である。一方、既治療で疾患進行が認められた進行扁平上皮NSCLC患者への治療オプションは限定的で、研究グループは、NSCLCでは腫瘍細胞においてPD-L1発現が一般的であることから本検討を行った。NEJM誌オンライン版2015年5月31日号掲載の報告より。ニボルマブを2週間ごと vs.ドセタキセルを3週間ごと投与 試験は2012年10月~2013年12月にかけて、272例を対象に行われた。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはニボルマブ(3mg/kg)を2週間ごと、もう一方の群にはドセタキセル(75mg/体表面積m2)を3週間ごと投与した。 被験者の年齢中央値は63歳、男性の割合は76%だった。 主要評価項目は、全生存期間だった。全生存期間中央値はドセタキセル群6.0ヵ月、ニボルマブ群9.2ヵ月 結果、全生存期間中央値は、ドセタキセル群が6.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.1~7.3ヵ月)だったのに対し、ニボルマブ群は9.2ヵ月(同:7.3~13.3)だった。 ニボルマブ群のドセタキセル群に対する死亡に関するハザード比は、0.59(同:0.44~0.79、p<0.001)で、ニボルマブ群の死亡リスクが41ポイント有意に低かった。 1年時点の全生存率は、ドセタキセル群24%(同:17~31)に対し、ニボルマブ群は42%(同:34~50)で、奏効率はそれぞれ9%、20%だった(p=0.008)。 無増悪生存期間の中央値も、ドセタキセル群2.8ヵ月に対し、ニボルマブ群は3.5ヵ月だった(死亡または疾患進行についてのハザード比:0.62、同:0.47~0.81、p<0.001)。 なお、検討では、PD-1のリガンドであるPD-L1発現レベル別(事前規定1、5、10%)で評価したが、有効性エンドポイントとの関連は示されなかった。 治療に関連したグレード3、4の有害事象の発生は、ドセタキセル群55%に対し、ニボルマブ群は7%だった。 上記を踏まえて著者は、「既治療の進行扁平上皮NSCLC患者に対し、全生存期間、奏効率、無増悪生存期間はいずれも、PD-L1発現レベルに関係なく、ドセタキセル投与群よりもニボルマブ群で有意に良好だった」とまとめている。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)関連記事 ASCO : nivolumab、肺がんに“前例なき”効果

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