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早期肺がん、肺葉切除か区域切除か

 肺葉切除と縮小手術を比較したLung Cancer Study Groupの試験結果などから、現在の肺がんの標準術式は肺葉手術となっている。しかし、近年の後ろ向き観察試験では、区域切除の予後成績が、肺葉切除に近づいてきたとの報告もある。 この試験では、傾向スコアマッチング法によって、ステージI非小細胞肺がんにおける、この2つの切除手技の予後を比較している。米国・ピッツバーグ大学のRodney J Landreneau氏らによる研究。Journal of clinical oncology誌 オンライン版 2014年6月30日の掲載報告。 ピッツバーグ大学の肺がんデータベースから、後ろ向きに区域切除または肺葉切除を実施したステージI非小細胞肺がん患者、それぞれ392例と800例を解析し、術前の患者の交絡因子を組み入れた傾向スコアマッチングアルゴリズムを用いて、傾向スコアの対応した肺区域切除実施例と肺葉切除実施例を各312例特定した。主要評価項目は、無再発率と全生存率。生存期間に影響する因子は、cox回帰分析とカプランマイヤー推定法で評価した。 主な結果は以下のとおり。・周術期死亡率(30日)は、区域切除群1.2%、肺葉切除群2.5%(p=0.38)であった。・同(90日)は、区域切除群2.6%、肺葉切除群4.8%(p=0.20)であった。・観察期間中央値5.4年における局所再発率は、区域切除群5.5%、肺葉切除群5.1%(p=1.00)であった。・同期間における遠隔再発率は、区域切除群14.8%、肺葉切除群11.6%(p=0.29)であった。・5年無再発率は、区域切除群70%、肺葉切除群71%(p=0.467)であった。・5年生存率は、区域切除群54%、肺葉切除群60%(p=0.258)であった。・肺区域切除は、独立した再発因子にはならなかった(HR=1.11, 95%CI: 0.87~1.40)。また、独立した生存期間の影響因子にもならなかった(HR=1.17, 95%CI: 0.89~1.52)。 この傾向スコアマッチング法による比較では、肺葉切除は肺区域切除に比べ、統計学的に有意な無再発率と生存率の増加を示すことはなかった。区域が限定された末梢の小さな腫瘍における、肺区域切除の可能性を示唆するものであった。この結果を踏まえ、今後は前向き無作為化比較試験による検証が必要であろう。

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日本における大腸がんの新薬開発状況

 切除不能大腸がんに対する化学療法においては、既に発売されている薬剤のHead to Headの比較試験が実施されている一方で、新たな治療薬の開発治験も進んでいる。7月17~19日に開催された第12回日本臨床腫瘍学会学術集会では、「切除不能大腸がん治療戦略の展望」をテーマとしたインターナショナルセッションが企画され、そのなかで、日本における切除不能大腸がんに対する新規薬剤の開発状況について、吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院消化管内科)が講演した。その内容を紹介する。TAS-102 日本で開発されたTAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)が今年3月に承認され、現在は日本でのみ販売されている。 本剤の国際共同第III相試験(RECOURSE試験)は、標準治療に不応・不耐の治癒切除不能進行・再発大腸がん800例を対象に、プラセボを対照として実施された。その結果、生存期間中央値はプラセボ群5.3ヵ月に対しTAS-102群で7.1ヵ月と延長し、全生存のハザード比は0.68(p<0.0001)であった。副作用は、骨髄抑制が比較的強いが、吉野氏によると発熱性好中球減少に注意すれば使いやすい薬剤という。TAS-102と他の薬剤との併用 実験モデルでは、TAS-102とイリノテカンとの併用で最も強い抗腫瘍効果が認められたが、イリノテカンの薬物強度が低く、さらなる検討が必要である。現在米国で投与スケジュールを変更した臨床試験が進行中である。 ベバシズマブとの併用レジメンの有用性を検討する多施設第Ib/II相試験(C-TASK FORSE)が、医師主導治験として吉野氏を中心に今年2月から実施されており、来年のASCOで最初の報告を予定している。nintedanib nintedanibは、VEGFR1-3、FGFR1-3、PDGFRα/β、RETをターゲットとする低分子チロシンキナーゼ阻害薬であり、現在、非小細胞肺がん、腎がん、肝がん、卵巣がんなどに対しても臨床試験が行われている。大腸がんにおいては、標準治療不応症例に対するプラセボとの比較試験(LUME Colon 1 Trial)が近々開始予定とのことである。BRAF阻害薬 大腸がんにおけるBRAF遺伝子変異陽性の割合は少ないものの非常に予後が悪い。BRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する治療としては、FOLFOXIRI単独またはFOLFOXIRIとベバシズマブの併用が有効であるが、副作用が強く全身状態(PS)が悪い場合は投与できない。 開発中のBRAF阻害薬のうち、悪性黒色腫に有効なvemurafenib(申請中)は、単独ではBRAF遺伝子変異陽性大腸がんに対する効果は小さく、現在、セツキシマブとイリノテカンとの併用で検討されている。また、encorafenib、dabrafenibにおいても、抗EGFR抗体(セツキシマブ、パニツムマブ)との併用や、さらにPI3Kα阻害薬、MEK阻害薬も併用するレジメンでの第II相試験が進行している。 最後に吉野氏は、自らが代表を務める多施設共同研究(GI screen 2013-01)における進捗状況を紹介した。本研究は、今後の新薬開発に役立てるため、日本人の切除不能大腸がん症例におけるKRAS、BRAF、NRAS、PIK3CAの遺伝子変異割合を検討することを目的に今年2月に開始。来年3月までに1,000例の登録を目標としているが、7月14日時点で313例に達していると報告した。

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肺がんに分子標的薬の同時併用? 臨床腫瘍学会2014

 非小細胞肺がんの化学療法未治療例に対し、EGFR-TKIと抗VEGF抗体の併用がPFSを延長する可能性が、第二相試験の結果から示された。2014年7月17日~19日まで福岡市で開催された第12回日本臨床腫瘍学会において、国立がん研究センター東病院 後藤功一氏が、再発非小細胞肺がんの一次治療におけるエルロチニブとベバシズマブの併用療法の試験結果を発表した。 EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるEGFR-TKIの有効性は既に証明されているものの、EGFR-TKIを単独で用いるか併用するか、併用するならどの薬剤を用いるか、などは未だ明らかになっていない。前臨床試験では、EFGRとVGEFRの同時阻害による抗腫瘍活性の相乗効果が示唆されている。臨床試験では、第三相試験であるBeTa Lung studyで、EGFR変異陽性NSCLCの二次治療において、エルロチニブとベバシズマブの併用が、エルロチニブ単独に比べ、OSを延長する可能性を示唆している。そこで今回は、一次治療における同薬剤の併用療法を評価する、オープンラベル第二相無作為比較試験を行った。 対象患者は、化学療法未実施のステージIIIB~IVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)。2011年2月から2012年3月まで、30施設で154例の患者が登録され、エルロチニブ+ベバシズマブ群77例、エルロチニブ群77例に無作為に割り付けられた。エルロチニブの用量は150mg/日、ベバシズマブの用量は15mg/kg。3週毎にPDとなるまで投与された。 主要エンドポイントはPFS。副次的エンドポイントはOS、奏効率、安全性、QOLである。統計的な優越性の検出をHR0.7に設定し、サンプルサイズは150とした。主要エンドポイントであるPFS中央値は、・エルロチニブ+ベバシズマブ群16.0ヵ月、エルロチニブ群の9.7ヵ月と、併用群で有意なPFSの延長を認めた(HR=0.54 95%CI:0.36~0.79、P=0.0015)。副次的エンドポイントについて奏効率は、・エルロチニブ+ベバシズマブ群69%、エルロチニブ群63%と同等であったが、病勢コントロール率は、エルロチニブ+ベバシズマブ群99%、エルロチニブ群88%と併用群で有意に高かった。・奏効期間の中央値は、エルロチニブ+ベバシズマブ群13.3ヵ月、エルロチニブ群9.3ヵ月と有意に併用群で長かった。安全性については、・有害事象による治療中断は両群で同程度であった。・両群に共有する主な有害事象は、皮疹、高血圧、タンパク尿、肝機能障害であり、高血圧とタンパク尿については、併用群で有意に多かった。・グレード3の間質性肺炎は、エルロチニブ群に3例認められた。・ベバシズマブの主な投与中止理由はタンパク尿と出血イベント。中断時期の中央値はそれぞれ、329日と128日で、出血イベントについては比較的早期に発現していた。 ちなみに、OSは中央値に達していない。 エルロチニブ+ベバシズマブ群はエルロチニブ群に比較して有意にPFSを延長し、新たな有害事象を認めることはなく、毒性に関しても従来の試験と同等であった。

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高齢者のがん診療、その実態は…

 がん患者は多くが高齢であるが、がん治療のエビデンスは、ほとんどが非高齢者を対象としたデータであり、高齢者のがん診療については大いに検討の余地がある。 2014年7月17日〜19日、福岡市で開催された日本臨床腫瘍学会において、国立がん研究センターがん対策情報センター東尚弘氏が「がん診療パターンの高齢患者・若年患者の間での相違の現状」と題し、本邦において高齢者の受けているがん診療の実態をデータとともに紹介した。 東氏は、厚生労働省の人口動態統計をもとに、一般高齢者の健康状態3段階(上位25%層、平均層、下位25%層)に分けて、年齢別に余命を分析した。 その結果、同じ年齢でも健康状態により大きな違いがあり、70歳時では上位25%の方は下位25%の方に比べ、2倍程度の余命が長いことが分かった。治療を選択する際は、単に年齢だけではなく、目の前の患者さんがどのくらい生きるのかを考慮することが非常に重要だといえる。 また、2011年の全国のがん診療連携拠点病院の院内がん登録とDPCのリンクデータから、168施設での5大がんの標準診療の実施率を年齢別に分析している。 その結果、手術および化学療法については、年齢が上がるにつれて標準療法の実施率が下がる傾向にあることを、非小細胞肺がん、大腸がんのデータを基に紹介した。また、高催吐性化学療法時の予防的制吐剤投与、外来オピオイド鎮痛薬開始時の下剤処方など支持療法の標準診療実施率も年齢と共に下がっていた。 さらに、全国395施設の5大がんの院内がん登録のデータを用い、施設別に75歳以上の患者さんの割合を分析している。 中央値は33%であった。施設間のばらつきは大きく、最も割合の低い施設では13%であるのに対し、最も高い施設では60%と、4倍以上の差があった。施設区分でみると、がん専門施設および大学病院での割合は相対的に低く、それ以外の施設、即ちがん非専門施設において割合が高かった。

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肺がん二次治療のマイルストーンになる試験かもしれない(解説:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(222)より-

肺がん領域における抗体医薬品といえば、セツキシマブやベバシズマブを思い浮かべる方も多いだろう(ただし現在セツキシマブは日本の肺がん診療で用いられていない)。 さて、このラムシルマブという抗がん剤も抗体医薬品である。ラムシルマブは胃がんの世界ではよく知られている。というのも、胃がんの2次治療において単剤使用(REGARD試験)1)あるいはパクリタキセルとの併用(RAINBOW試験)2)にて全生存期間を有意に延長することがすでに示されているからである。 では、肺がんの2次治療ではどうだろうかと検証したものがこのREVEL試験である。実臨床における肺がんの2次治療では、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬を除くとドセタキセルやペメトレキセドといった薬剤を使用することが多い。ラムシルマブを使用することでその上乗せ効果が期待されるというのである。この研究デザインの特筆すべき点は、扁平上皮がん・非扁平上皮がんの両方を含んでいることである。ベバシズマブのように扁平上皮がんの患者は除外されていないのである。 REVEL試験の結果、肺がんの治療効果に関わる指標のいずれもがラムシルマブ併用群で有意に良好であったという結果が得られた。全生存期間のインパクトは決して強いとはいえないハザード比ではあるものの、ベバシズマブとは異なり扁平上皮がんに対しても効果が認められていることから、肺がん診療における臨床的意義は極めて大きいと考える。また、全生存期間の延長だけでなく忍容性も高かったことは注目に値する。 過去のセツキシマブにおけるFLEX試験3)で有意な結果が得られたものの、その後承認には至っていないことを考えると、同じ抗体医薬品であるラムシルマブも肺がんの治療選択肢としてすぐに用いられるようになるかどうかは現時点では不明である。ただ、QOLを低下させることなく生存期間を伸ばすことができる薬剤の登場は、固形がんの診療において望ましいことである。将来的にベバシズマブとラムシルマブのどちらを使うかという命題が出てくる可能性があるほど、個人的に期待したい薬剤である。

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【JSMO見どころまとめ(1)】トランスレーショナルリサーチ

 2014年7月17日(木)から3日間にわたり、福岡国際会議場ほかにて、第12回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、先月27日、東京都中央区にて日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催された。そこで行われた、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)による講演「トランスレーショナルリサーチ」について簡潔にまとめる。【まとめ】・近年、非小細胞肺がんにおいてEGFR遺伝子をはじめ、さまざまなドライバー遺伝子が同定されているが、EGFR遺伝子変異を除く多くのドライバー遺伝子の頻度は5%未満であり、これら希少肺がんに対する治療薬開発は困難となっている。・トランスレーショナルリサーチとは、新薬を開発し、臨床での試用経験から、その有効性・安全性を確認して日常診療へ応用していくまでの一連の研究過程をいい、橋渡し研究ともいう。・日本は、トランスレーショナルリサーチが遅く、弱点となっている。これは、研究機関だけの問題ではなく、産官学が一体となって取り組んでいく必要がある。・後藤氏らは、厚生労働科学研究費を基に、わが国初となる全国規模の遺伝子診断ネットワーク(LC-SCRUM-Japan)を組織し、2013年2月より希少肺がんの遺伝子スクリーニングを開始している。 本学術集会では、LC-SCRUM-Japanの詳細情報や、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)との合同シンポジウムを通し、日本と欧州における肺がんを中心としたトランスレーショナルリサーチの現状について議論していく。〈 トランスレーショナルリサーチに関する注目演題 〉・ESMO/JSMO Joint Symposium テーマ:“Translational Research” 日時:2014年7月17日(木)13:20~15:20  会場:Room 3(福岡国際会議場3F「メインホール」)・日本臨床腫瘍学会/ 日本がん分子標的治療学会/ 抗悪性腫瘍フォーラム/ 日本製薬医学会合同シンポジウム2 テーマ:“創薬における必要な橋渡し研究” 日時:2014年7月17日(木)15:20~17:20  会場:Room 3(福岡国際会議場3F「メインホール」)【第12回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2014年7月17日(木)~19日(土)■会場:福岡国際会議場、福岡サンパレス、福岡国際センター■会長:田村 和夫氏(福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学 教授)■テーマ:包括的にがん医療を考える~橋渡し研究、がん薬物療法からサバイバーシップまで~第12回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページ

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Stage IV非小細胞肺がんの2次治療におけるラムシルマブの有用性/Lancet

 ラムシルマブ(国内未承認)+ドセタキセル併用療法は、Stage IV非小細胞肺がん(NSCLC)の2次治療において生存期間を有意に延長し、ラムシルマブ追加によるQOLの増悪も認めないことが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のEdward B Garon氏らが行ったREVEL試験で示された。ラムシルマブは、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)-2の細胞外ドメインを標的とするヒトIgG1モノクローナル抗体で、すべてのVEGFリガンドの結合と受容体の活性化を阻害する。本薬剤は、進行胃がんの2次治療に関する2つの第III相試験で、単剤またはパクリタキセルとの併用で生存期間を有意に改善することが示されている。Lancet誌オンライン版2014年6月2日号掲載の報告。ラムシルマブ上乗せの有用性を無作為化試験で評価 REVEL試験は、Stage IV NSCLCに対する2次治療としてのラムシルマブ+ドセタキセル療法の有用性を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの化学療法による1次治療中または終了後に病勢が進行した扁平上皮がんまたは非扁平上皮がん患者であった。 患者は、性別、地域、全身状態(PS)、前維持療法の有無で層別化され、1サイクル(21日)の第1日にラムシルマブ(10mg/kg)+ドセタキセル(75mg/m2)を投与する群またはプラセボ+ドセタキセル(75mg/m2)を投与する群に無作為に割り付けられた。治療は、病勢進行、許容されない有害事象、患者の希望による治療中止、死亡のいずれかのイベントが起きるまで継続された。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)とし、有害事象、QOLの評価も行った。2次治療でとくに重要となる上乗せに伴う総QOLの増悪はなかった 2010年12月3日~2013年1月24日までに、6ヵ国26施設から1,253例が登録され、ラムシルマブ群に628例(年齢中央値62歳、男性67%)、プラセボ群には625例(61歳、66%)が割り付けられた。東アジア人(韓国、台湾)が各群に7%ずつ含まれた。データのカットオフ日(2013年12月20日)までに884例が死亡した(打ち切り率は29%)。 OS中央値は、ラムシルマブ群が10.5ヵ月であり、プラセボ群の9.1ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.75~0.98、p=0.023)。また、PFS中央値はラムシルマブ群が4.5ヵ月、プラセボ群は3.0ヵ月で、やはり有意差を認めた(0.76、0.68~0.86、p<0.0001)。 担当医判定によるORR(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])は、ラムシルマブ群が23%と、プラセボ群の14%よりも有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.89、95%CI:1.41~2.54、p<0.0001)。また、病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])は、それぞれ64%、53%であり、有意差を認めた(1.60、1.28~2.01、p<0.0001)。扁平上皮がんと非扁平上皮がんのORR、DCRは全体の成績と同等であった。 治療関連有害事象は、ラムシルマブ群の98%(613/627例)、プラセボ群の95%(594/618例)に発現した。最も高頻度に認められたGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(ラムシルマブ群:49%、プラセボ群:40%)、発熱性好中球減少(16%、10%)、疲労感(14%、10%)、白血球減少(14%、12%)、高血圧(6%、2%)であった。 治療関連有害事象による死亡(5%[31例]、6%[35例])およびGrade 3以上の肺出血(1%[8例]、1%[8例])の頻度は両群間に差はなかった。毒性は適切な減量や支持療法で管理可能であった。 著者は、「ラムシルマブ+ドセタキセル併用療法は、Stage IV NSCLC患者の2次治療において生存期間を改善した」とまとめ、「プラチナ製剤ベースの1次治療が無効であった進行NSCLC患者の2次治療におけるVEGFRを標的とする治療法の有用性を示すエビデンスが得られた。また、新規のがん治療法のリスク・ベネフィット評価では、とくに2次治療においては緩和的効果をも考慮する必要があるため、QOL評価が重要となるが、ラムシルマブを追加しても、患者の自己申告による総QOLの増悪は認めなかった」と考察している。

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タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究

 欧州の集団では、いくつかの研究でタバコの煙の吸入が肺がんリスクの増加と関連していることが示されている。愛知県がんセンター研究所の福本 紘一氏らは、日本の集団におけるタバコの煙の吸入と肺がんリスクとの関係を明らかにするために、大規模な症例対照研究を実施した。その結果、日本の集団においても、累積喫煙量にかかわらず、タバコの煙を吸い込むことが肺がんリスクであることが示唆された。European Journal of Cancer Prevention誌オンライン版2014年6月6日号に掲載。 組織学的に確認され新たに肺がんと診断された患者を症例群(n=653)とし、対照群(n=1,281)には病院対照(n=453)と地域対照(n=828)を含めた。オッズ比と95%信頼区間(CI)は、年齢、性別、飲酒状況、果物や野菜の摂取量、肺がんの家族歴、職業、教育年数などの基本的な交絡変数を調整し、無条件ロジスティック回帰分析を用いて推計した。 主な結果は以下のとおり。・基本的な交絡因子を調整したオッズ比は、非喫煙者に比べ、タバコの煙を吸い込まない喫煙経験者で1.72(95%CI:1.15~2.59)、タバコの煙を吸い込む喫煙経験者で3.28(95%CI:2.38~4.53)であった。・喫煙経験者に限定すると、基本的な交絡因子と肺がんリスクの累積喫煙量(pack-year)を調整したオッズ比は、煙を吸い込む群が吸い込まない群に比べ1.52(95%CI:1.06~2.18、p=0.021)であった。・腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、および他の組織型でのサブグループ解析においても、統計学的に有意ではなかったが、同様のパターンが認められた。

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喫煙者では血清尿酸値が低いと肺がんになりやすい?

 血清尿酸値が低い喫煙群ではCOPDと肺がんの有病率が高かったことが英国Research Department of Primary Care and Population HealthのLaura J Horsfall氏らにより報告された。Thorax誌オンライン版2014年6月5日の掲載報告。 人間の血清中で抗酸化作用のある分子で最も数の多いものは尿酸である。今回、血清尿酸値と呼吸器疾患の有病率との間に関係があるのか、さらに喫煙状況による影響の変化も含めて調査した。 2000年1月1日~2012年12月31日の間に血清尿酸値が測定されていたコホートを「The Health Improvement Network(THIN)英国プライマリ・ケア・データベース」より抽出した。新たにCOPDと肺がんを診断する場合は診療記録の診断コードで確認した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中の対象人数は100万2,496人年であり、そのうちCOPDは3,901例、肺がんは1,015例であった。・多変量解析の結果、喫煙群において血清尿酸値と呼吸器疾患の有病率との間に強い負の相関が認められたが(p<0.001)、非喫煙群や過去に喫煙歴のあった群(現在は非喫煙)では、その関係が認められなかった。・1日に20本以上喫煙する群における肺がんで最も強い負の相関が認められ、血清尿酸値が100~250 µmol/Lの群では1万例あたり97例だったのに対し(95%CI:68~126)、438~700 µmol/Lの群では1万例あたり28例であった(95%CI:14~41)。

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COPD合併肺がん患者、肺線維症で肺切除後の生存率が低下

 肺切除後のCOPD合併肺がん患者において、肺線維症は生存率を低下させる独立したリスクファクターとなることが、東京女子医科大学八千代医療センターの関根 康雄氏らにより報告された。The Thoracic and Cardiovascular Surgeon誌オンライン版2014年5月30日の掲載報告。 本研究の目的はCOPD合併肺がん患者を対象に、肺線維症の有無が肺切除術後合併症や長期の生存率にどれほどインパクトを与えるかを調べる事である。1990年~2005年の期間中に大学病院で肺がんによる肺切除が実施された患者のうち、COPDを合併していた380例を対象にレトロスペクティブなカルテレビューを行った。COPDの定義は術前の1秒率(FEV1/FVC)が70%未満で、肺線維症の定義はCTにより下肺野に明らかな両肺の線維化病変が認められた場合とした。 主な結果は以下のとおり。・COPD合併患者380例のうち、肺線維症が認められたのは41例(10.8%)で、339例(89.2%)では認められなかった。・術前の1秒量は肺線維症を有する患者群で有意に低かった(p<0.05)。・術後急性肺傷害(ALI)と在宅酸素療法は肺線維症を有する患者群で有意に高かったが、30日死亡率は同等であった。・3年間と5年間の累積の生存率は、肺線維症を有する患者群でそれぞれ53.6%、36.9%、肺線維症が認められない患者群では71.4%、66.1%であった(p=0.0009)。・加齢、BMI低値、病理病期の進行、肺線維症の存在は、生存率を低下させる独立したリスクファクターであった。

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喫煙によるがん死亡リスクの増加

タバコを吸っていると、がんによる死亡の危険性は高くなります全てのがん男性 1.97倍、女性1.57倍喉頭がん男性 5.47倍肺がん男性4.79倍、女性3.88倍肝臓がん男性1.81倍、女性1.73倍口腔・口唇・咽頭がん男性2.66倍、女性1.97倍食道がん男性3.39倍、女性1.90倍胃がん男性1.51倍、女性1.22倍膵臓がん男性1.58倍、女性1.73倍尿路(膀胱、腎盂、尿管)がん男性5.35倍、女性1.86倍タバコを吸わない人を1としたときの、タバコを吸っている人のがんによる死亡の危険性Katanoda K, et al. J Epidemiol 2008;18:251-264.Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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進行非小細胞肺がんの2次・3次治療におけるエルロチニブとドセタキセルの比較

 既治療のEGFR変異不特定の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者における、エルロチニブとドセタキセルの有効性を評価したDELTA試験の結果が、国立病院機構近畿中央胸部疾患センターの川口 知哉氏らにより報告された。同試験は、国内で行われた第III相無作為化試験である。Journal of Clinical Oncology誌 2014年5月19日号の掲載報告。 主要エンドポイントは無増悪生存期間(PFS)、副次的エンドポイントは、全生存期間(OS)、奏効率、安全性、またEGFR野生型腫瘍に対する効果についても検討している。対象は既治療(1または2レジメンの化学療法治療歴あり、ドセタキセルおよびEGFR-TKIは未使用)、IIIBまたはIV 期かつECOG PSが0~2の非小細胞肺がん患者。 主な結果は以下のとおり。・2009年8月から2012年7月まで、エルロチニブ群(150mg/日)150例とドセタキセル群(3週毎に60mg/m2)151例に無作為割り付けされた(そのうちEGFR野生型:エルロチニブ群109例、ドセタキセル群90例)。・全体におけるPFS中央値は、エルロチニブ群、ドセタキセル群でそれぞれ、2.0ヵ月、3.2ヵ月であった(HR 1.22、95%CI:0.97~1.55、p=0.09)。・全体におけるOS中央値は、エルロチニブ群、ドセタキセル群でそれぞれ、14.8ヵ月、12.2ヵ月であった(HR 0.91、95%CI:0.68~1.22、p=0.53)。 EGFR野生型のサブセット解析では・PFS中央値は、エルロチニブ群、ドセタキセル群でそれぞれ、1.3ヵ月、2.9ヵ月であった(HR 1.45、95%CI:1.09~1.94、p=0.01)。・OS中央値は、エルロチニブ群、ドセタキセル群でそれぞれ、9.0ヵ月、10.1ヵ月であった(HR 0.98、 95%CI:0.69~1.39、p=0.91)。

1873.

肺腺がんの分子標的薬選択に多重アッセイ法が有用か/JAMA

 腫瘍形成ドライバー(がん化と増殖に関わる遺伝子変異)をターゲットとする治療薬(分子標的薬)の開発は、肺腺がん患者の治療を変貌させたといわれる。米国・スローンケタリング記念がんセンターのMark G. Kris氏らLung Cancer Mutation Consortiumは、試験担当医が適切に標的治療薬を選択でき、患者を臨床試験に登録できるよう、肺がんの腫瘍形成ドライバーの10遺伝子について検査する多重アッセイを用いて検討した。その結果、検討した肺腺がん患者の64%でターゲットとなるドライバーが検出され、医師が治療法を選択するうえで多重アッセイ法が有用であることが示されたという。JAMA誌2014年5月21日号掲載の報告より。10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療の割合と生存を評価 本検討は、肺腺がん患者の腫瘍形成ドライバーの検出頻度を明らかにし、特定ドライバーをターゲットとした治療の選択および生存評価に、そのデータを活用することが目的だった。 2009~2012年に米国14地点において、転移性肺腺がんで、全身状態(PS)が0~2の患者を登録し、10遺伝子について調べ、患者、および治療法と生存に関する情報を集めた。検討では、10遺伝子について調べた後、その結果を用いて適合したターゲット治療を選択した。 主要評価項目は、10遺伝子の発現頻度と、分子標的薬治療を受けた患者の割合、生存率とした。遺伝子を検出し分子標的薬治療を受けていた患者の生存は有意に延長 試験期間中に、1,007例の患者が1遺伝子以上の検査を受け、733例が10遺伝子の検査を受けた。 結果、733例のうち466例(64%)の患者で、腫瘍形成ドライバーが見つかった。検査した腫瘍733例のうち見つかったドライバーの内訳は、KRASが182例(25%)、感作EGFRが122例(17%)、ALK再配列が57例(8%)、その他のEGFRが29例(4%)、2以上の遺伝子が見つかったのは24例(3%)、ERBB2(HER2)が19例(3%)、BRAFが16例(2%)、PIK3CAが6例(1%未満)、MET増幅5例(1%未満)、NRASが5例(1%未満)、MEK1が1例(1%未満)、AKT1はゼロだった。 生存期間中央値は、腫瘍形成ドライバーを有し分子標的薬治療を受けていた260例は3.5年(範囲[IQR]:1.96~7.70)、腫瘍形成ドライバーを有していたが分子標的薬治療は受けていなかった318例は2.4年(IQR:0.88~6.20)だった(傾向スコア補正後ハザード比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.53~0.9、p=0.006)。 結果を踏まえて著者は、「ドライバーと適合した治療を受けていた患者の生存は延長したが、それが標的治療に基づくものかを調べる無作為化試験を行うことが必要である」とまとめている。

1874.

呼吸器の薬の考え方,使い方

呼吸器疾患の治療薬の羅針盤。エキスパートがそのコツを伝授吸入薬、禁煙補助薬、抗結核薬、対症療法に用いる去痰薬や鎮咳薬、肺高血症の治療に用いる循環器系の薬剤、肺がん治療の分子標的薬、意外に深い含嗽薬やトローチまで、呼吸器科で用いる様々な薬の薬剤情報、薬理と臨床試験、処方に際しての注意点など医療従事者が知っておきたい薬の必要知識+αを人気ブログ「呼吸器内科医」の著者が膨大な資料と知見を基に解説します。合間のコラム「本当にあった医学論文」や一口メモも必読!画像をクリックすると、内容の一部をPDFでご覧いただけます。   呼吸器の薬の考え方,使い方定価 4,800円+税判型 A5判頁数 372頁発行 2014年3月著者 倉原 優Amazonでご購入の場合はこちら

1875.

NSCLCに対する術前化学療法の生存ベネフィットをメタ解析で確認/Lancet

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術前化学療法は、全生存率、無遠隔転移再発、無再発生存を有意に改善することが、英国・ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのSarah Burdett氏らNSCLC Meta-analysis Collaborative Groupの検討で明らかとなった。NSCLCに対する最良の治療選択肢は手術とされるが、治癒切除が可能な腫瘍は20~25%にすぎない。術前化学療法は、腫瘍を縮小させて手術可能例を増やし、微小転移を消失させる可能性があるが、手術の時期を遅らせ、無効の場合は腫瘍が切除不能となるリスクがある。術後化学療法の全生存率改善効果はメタ解析で確証されているが、術前化学療法については十分なエビデンスは示されていなかった。Lancet誌2014年5月3日号(オンライン版2014年2月25日号)掲載の報告。術前化学療法の効果をメタ解析で評価 研究グループは、切除可能NSCLCに対する術前化学療法の効果を検証するために、文献の系統的なレビューを行い、個々の患者データに基づくメタ解析を実施した。 1965年1月1日以降に開始された手術単独と術前化学療法+手術を比較した臨床試験の文献を系統的に検索し、個々の試験の最新データについて評価を行った。選出された個々の試験の結果を、固定効果モデルを用いて統合した。 主要評価項目である全生存は、無作為割り付け時から全死因死亡までの期間と定義し、生存例は最終フォローアップ時で打ち切りとした。副次評価項目は、無再発生存、無局所再発、無遠隔転移再発、がん特異的死亡、切除率などであった。5年後の絶対的な生存ベネフィットは5% 日本のJCOG 9209試験を含む15の無作為化対照比較試験に登録された2,385例(無作為割り付けの対象となった患者の92%)が解析の対象となった。男性が80%、年齢中央値は62歳、全身状態(PS)良好が88%で、臨床病期はIB~IIIAが93%を占め、扁平上皮がんが50%、腺がんが29%であり、フォローアップ期間中央値は6年であった。 全生存率は、術前化学療法群が手術単独群に比べ有意に改善し(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.78~0.96、p=0.007)、相対的な死亡リスクが13%減少した。また、全生存率に関して試験間に有意な差は認めなかった(p=0.18、I2=25%)。これは、5年後の全生存率が絶対的に5%改善されたことを意味する(40%から45%へ)。 化学療法レジメンや投与スケジュール、薬剤数、使用されたプラチナ製剤の種類、術後放射線療法の有無が生存に及ぼす影響に関する明確なエビデンスは得られなかった。また、術前化学療法によるベネフィットに、年齢、性、PS、組織型、臨床病期別の差は認めなかった。 ほとんどの患者が臨床病期IB~IIIAであったにもかかわらず、無再発生存(HR:0.85、95%CI:0.76~0.94、p=0.002)および無遠隔転移再発(HR:0.69、95%CI:0.58~0.82、p<0.0001)も術前化学療法群で有意に良好であった。無局所再発は、術前化学療法群で良好な傾向がみられたが、有意な差はなかった(HR:0.88、95%CI:0.73~1.07、p=0.20)。 著者は、「切除可能NSCLCに対する術前化学療法は、全生存率、無遠隔転移再発、無再発生存を有意に改善したことから、妥当な治療選択肢であることが示唆される。手術を延期して術前化学療法を行っても早期死亡が増加することはないと考えられる」とまとめ、「術前化学療法では毒性とのバランスが重要で、本試験では毒性評価はできなかったが、多くの試験では十分に耐容可能と判定されていた」としている。

1876.

EGFR野生型の非小細胞肺がんに対するEGFR-TKIと化学療法を比較した初のメタアナリシス(コメンテーター:倉原 優 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(195)より-

このメタアナリシスは、INTEREST試験、IPASS試験などの有名な試験を含む11の研究において、EGFR野生型の非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、第1世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)と通常の化学療法を比較解析したものである。 結論から言えば、現在の臨床に大きな影響は与えないものと考えてよさそうだ。EGFR遺伝子変異陰性例に対して、おおむね通常の化学療法のほうがEGFR-TKIよりも効果的というプラクティスに変わりはない。このメタアナリシスでは、想定よりもEGFR-TKIの効果が高いように見えるが、EGFR-TKIを使用した研究はクロスオーバーが可能なデザインになっており、これが生存期間の解析に大きな影響を与えていることを加味しなければならない。 現在の進行NSCLCに対する治療は、EGFR遺伝子変異が陽性であればファーストライン治療としてEGFR-TKIあるいは白金製剤を用いた併用療法が推奨される。しかし、EGFR遺伝子変異陰性例であっても、セカンドライン以降でエルロチニブのエビデンスが高いことが知られている。ただ、EGFR遺伝子変異陰性例に対するゲフィチニブについては、エルロチニブほど効果が高くないと考えられている。これはINTEREST試験やIPASS試験の結果によるものと思われる(議論の余地がまだまだある論点ではあるが)。2011年にイレッサの添付文書が改訂され、適応はEGFR遺伝子変異陽性例のみとなった。  一方で、前述したとおりエルロチニブはEGFR遺伝子変異陰性例にも効果があると考えられている。有名な試験としてSATURN試験がある。白金製剤を含む併用療法を4サイクル行い、スイッチメンテナンスとしてエルロチニブまたはプラセボを投与した試験である。これによれば、エルロチニブはEGFR遺伝子変異陰性でも無増悪生存期間(PFS)、OSを延長した。また、本メタアナリシスに含まれる研究としては、近年発表されたTAILOR試験がやはりエルロチニブによってPFSを延長している。  厳密にどのキナーゼを阻害するかがEGFR-TKIごとに異なっているため、そもそも第1世代EGFR-TKIとしてまとめてメタアナリシスすることにどこまで意義があるのか、いささか疑問は残るが、本メタアナリシスはEGFR野生型に対するEGFR-TKIと通常の化学療法を比較した初めてのメタアナリシスであるため、今後のEGFR-TKIの研究に参考になることは間違いないだろう。

1877.

非小細胞肺がん治療の新規EGFR-TKI「ジオトリフ」薬価収載

 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の肺がん治療薬ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)が、2014年4月17日薬価収載された。適応症は、EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺がん。同社は、同日「ジオトリフ発売記者説明会」を開催。和歌山県立医科大学 山本 信之氏、国立がん研究センター中央病院 山崎 直也氏、神奈川県立循環器呼吸器病センター 加藤 晃史氏が、同薬剤の有効性および有害事象について紹介した。 山本氏は、ジオトリフの薬剤特性および臨床試験の結果について紹介。同薬剤は、EGFRのみならずHER2、HER3、HER4といったすべてのErbBファミリーの受容体を持続的かつ選択的に阻害することで、従来阻害できなかったヘテロ二量体によるシグナル伝達も複合的に阻害する。また、共有結合により不可逆的に結合することで、シグナル伝達をより効果的に阻害できる可能性がある。国際共同第III相臨床試験であるLUX-Lung3試験では、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がんにおいて、化学療法(CDDP+PEM)と比較し有意に無増悪生存期間(PFS)を延長している。とくに日本人のサブグループのPFS中央値は13.8ヵ月と良好である。山本氏は、近年著しい改善を示すPFSをさらに延長させる可能性があると述べた。 次に、山崎氏は、同薬剤の有害事象である皮膚障害について紹介。従来のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(以下EGFR-TKI)共通の有害事象として皮膚障害があり、ジオトリフも同様に皮膚障害が発生する。なかでも、同薬剤に特徴的なのは、他のEGFR-TKIと比較して爪囲炎など爪の異常の発生頻度が高い印象があることだと述べた。山崎氏はまた、皮膚障害の発生頻度と治療効果が相関することに触れ、皮膚障害の悪化により治療を断念することのないよう、予防と適切な治療により重症化を防ぐことが肝要であると述べた。 最後に、加藤氏は、同薬剤の有害事象である下痢・間質性肺疾患のマネジメントについて紹介。同薬剤による下痢は、グレード3以上の重症例も少なくない。しかしながら、下痢が原因の投与中止例はなく、早期に適切な対応を行うことで、コントロール可能であると述べた。一方、間質性肺疾患は、同薬剤の投与中止理由の最も多い有害事象である。とはいえ、日本人における発生頻度は3%程度と、他のEGFR-TKIと比較し高いとはいえないようである。加藤氏はまた、間質性肺疾患についても、症状チェック、リスク因子の鑑別などで早期発見、早期治療が重要であると述べた。ジオトリフの薬価は以下のとおり。ジオトリフ錠20mg1錠:5,840.70円、30mg1錠:8,547.40円、40mg1錠:11,198.50円 、50mg1錠:12,760.00円

1878.

EGFR野生型NSCLCにおける第1世代TKI vs. 化学療法/JAMA

 EGFR野生型(WT-EGFR)進行非小細胞肺がん(NSCLC)では、第1世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)と比較して、従来化学療法のほうが、無増悪生存(PFS)の改善が有意であることが示された。全生存率も化学療法のほうが高かったが有意ではなかった。韓国・ソウル大学のJune-Koo Lee氏らによる無作為化試験11件のメタ解析の結果、示された。現行ガイドラインでは治療歴のあるNSCLC患者について、EGFR TKIと化学療法の両方を標準治療の選択肢として推奨している。しかし、WT-EGFRを有する患者においてEGFR TKIの有効性が化学療法と同程度であるのかについては、明らかになっていなかった。JAMA誌2014年4月9日号掲載の報告より。WT-EGFR患者1,605例が含まれた11論文をメタ解析 WT-EGFR進行NSCLC患者について、第1世代EGFR TKIと化学療法の、生存との関連を調べるメタ解析は、2013年12月までに発表された各データソースの論文を探索して行われた。具体的には、PubMed、EMBASE、Cochrane databaseほか、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のミーティングアブストラクトから、進行NSCLC患者におけるEGFR TKIと化学療法を比較した無作為化試験を選択した。 検索で得られた1,947本の論文のうち、WT-EGFRを有する患者1,605例が含まれていた11論文を解析に組み込んだ。 データの抽出はレビュワー2名によって行われ、試験特徴とアウトカムを抽出。バイアスのリスクについては、コクランツールを用いて評価し、すべての計測値をランダム効果モデルを用いてプールし、95%信頼区間(CI)を算出した。 主要アウトカムはPFSで、ハザード比(HR)で評価した。副次アウトカムは、客観的な奏効率と全生存で、それぞれ相対リスク、HRで評価した。化学療法のほうがPFSを有意に改善、全生存の有意差はみられず 結果、WT-EGFRを有する患者において、化学療法はTKIと比較して、PFSを有意に改善した(TKIのHR:1.41、95%CI:1.10~1.81、p<0.001)。 治療選択順位(第1選択か第2選択か、それ以降か)、試験薬の違い、人種/民族性、EGFR変異解析法のサブグループ間の差は統計的に有意ではなかった。ただし、EGFR変異解析法に関して、直接塩基配列決定法よりも高感度検出法を用いた試験のほうが、化学療法のPFSベネフィットとの関連が有意であった(TKIのHR:1.84、95%CI:1.35~2.52)。また、治療選択順位に関して、化学療法のPFS改善との関連は、第2選択かそれ以降であった試験でも、有意であった(同:1.34、1.09~1.65)。 客観的奏効率は、化学療法でより高かった[化学療法:92/549例(16.8%)対TKI:39/540(7.2%)、TKIの相対リスク:1.11、95%CI:1.02~1.21]。しかし、全生存に関して統計的有意差は観察されなかった(TKIのHR:1.08、95%CI:0.96~1.22)。

1879.

特発性肺線維症(IPF)への挑戦

 2014年4月3日(木)都内にて、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社主催のメディアセミナー「呼吸器領域における難病への挑戦~特発性肺線維症(IPF)~」が開催された。当日は、自治医科大学呼吸器内科 教授 杉山幸比古氏、東邦大学医学部呼吸器内科学分野 教授 本間 栄氏が、特発性肺線維症(以下IPF)について、それぞれ疫学・病態、治療の進歩に関して講演した。 杉山氏は、IPFの疫学と病態について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎に属するが、その中でも症例数が最も多く、また予後が不良な病態である。本邦におけるIPFの発症率はおおよそ10万人対2人、有病率は10万人対10人であり、全国で1万3,000人以上の患者がいるとされる。杉山氏は実際には、それ以上の患者がいるとも考えられると述べた。 IPFの生存中央値は鑑別診断後35ヵ月であり、予後不良のがんと大きな差はない。とはいえ、進行パターンはさまざまで、緩除に進行するものもあれば急速に進行するケースもある。主な症状は労作時呼吸困難、乾性咳嗽であるが、初期には年齢のせいとされることも少なくないという。IPFの死亡原因は慢性呼吸不全、急性増悪、肺がんが多くを占めるが、重要な問題として挙げられるのが、急性増悪と肺がんの合併といえる。急性増悪では、緩除に進行していたケースが急激に死に至ることも少なくなく、IPF患者では通常の喫煙者に比べ数十倍肺がんを発生しやすいという。 本間氏はIPFの治療について紹介した。IPFは特発性間質性肺炎の中でも最も治療反応性が低く、ほかの病型とは異なった治療戦略がとられる。IPFの治療ゴールは、生存期間の延長、呼吸機能の維持・低下の抑制、急性増悪の予防である。 治療法としては、酸素療法、呼吸リハビリテーション、薬物療法が主なものである。呼吸リハビリテーションについては近年、運動耐容能、症状、健康関連QOLの改善など、その有効性が明らかになってきている。 薬物療法については、従来ステロイドパルス療法が中心であったが、近年N-アセチルシステイン(NAC)、ピルフェニドンの有効性が明らかになってきている。さらに、本年5月に開催されるATS(米国胸部学会)では、INPULSIS試験(チロシンキナーゼ阻害薬)、ASCEND試験(ピルフェニドン)、PANTHER試験(NAC単独療法)などの臨床試験も発表予定であり、IPFの薬物療法に関するエビデンスが一気に充実してくると期待される。

1880.

進行NSCLC1次治療のプラチナダブレット:VNR+CDDP vs DTX+CDDP

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、VNR+CDDP(VC療法)とDTX+CDDP(DC療法)の効果の同等性については議論の残るところである。中国・安徽省立医院のGuodong Shen氏らは、進行NSCLCの1次治療におけるVCとDC療法の比較を目的としてメタアナリシスを行った。Molecular and Clinical Oncology誌2014年1月2日号の掲載報告。 論文は、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials (CENTRAL)、EMBASE、Chinese Biomedical Literature database(CBM)を通し2013年5月分まで検索され、9件の無作為比較試験(総患者数1,886例)が分析された。エンドポイントは、全奏効率、生存率と毒性であった。 主な結果は以下のとおり。・奏効率はDC群で有意に高かった(RR=0.83、95%CI:0.73~0.95、p=0.007)。・2年生存率はDC群で有意に高かった(RR=0.65、95%CI:0.50~0.84、p=0.001)。・1年生存率は同等であった(RR=0.90、95%CI:0.81~1.01、p=0.07)。・毒性については、VC群でグレード3/4の白血球減少(OR=1.26、95%CI:1.02~1.54、p<0.05)、貧血(OR=3.40、95%CI:2.42~4.76、p<0.05)、嘔吐(OR=1.58、95%CI:1.14~2.20、p<0.05)が多く、DC群でグレード3/4の下痢が多かった(OR=0.31、95%CI:0.18~0.55、p<0.0001)。グレード3/4の好中球減少、血小板減少、悪心については両群間で有意な差はなかった。 DC療法がVC療法と比較してQOLを改善するというエビデンスはないが、このメタアナリシスではDC療法の進行NSCLCの1次治療としての利点が示された。近年、がん細胞シグナル伝達研究の進化により、分子標的治療が新たな治療選択肢として現れた。著者らは、将来、これらのレジメンは標的治療を追加する際の潜在的プラットフォームとなる可能性があるとしている。

検索結果 合計:2006件 表示位置:1861 - 1880