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肺がん患者に分子標的治療を説明する工夫

 2016年3月16日都内にて、「薬剤耐性獲得後の治療を決定する遺伝子検査の重要性~医師は患者にどのように説明するか~」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。肺がん治療は、分子標的薬や免疫療法の出現で大きく進歩している。患者さんにも科学的に高度な内容を理解いただき、納得のうえで治療を受けてもらうための工夫が求められている。演者である岡本 勇氏 (九州大学病院呼吸器科 診療准教授)は、分子標的薬による治療例を中心に、患者説明における工夫の一端を紹介するとともに、次世代の薬への期待を述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。遠隔転移例には予後告知まで 肺がん死亡数は年間7万人以上と、実に1時間に6~8人が命を落とす計算だ。これは、診断時点で3分の2もの症例に遠隔転移があることに起因する。それにもかかわらず、告知について国内でのコンセンサスはとれていない。同じ病院であっても、診療科や先生により異なるのが実情だ。「病名告知」「病期告知」までされていても、「予後告知」が行われていないケースもある。 もちろん、「その患者さんが何年生きられるか」はわからないが、臨床データから「同じ病気の方はこのくらい生きられる」ことは伝えられる。とくに遠隔転移がある患者さんには、告知をもとに適切な治療法を決定いただくことが重要だ。 ただし、抗がん剤治療患者における平均生存期間は1年~1年半と短く、生活の質を維持したうえで生存期間を伸ばすことが、長く求められてきた。EGFR遺伝子変異のある患者さんへの説明 分子標的治療薬の登場は生存期間を延長させた。たとえばEGFR遺伝子変異例へのEGFR-TKI投与による平均生存期間は2年~2年半である。1年以上寿命が伸びることは患者さんにとって大きな進歩といえる。 EGFR遺伝子変異のある患者さんに、治療法を紹介する手順を紹介する。 まず、患者自身のがん細胞にEGFR遺伝子変異が起こっていることを伝える。そして、ご家族に、EGFRの変異は遺伝するものではない、ということを話す。家族と共に説明を聞くケースが多いためである。また、EGFR-TKIの効果は「治療を受けた患者さんの10人中6~8人で、がんが小さくなります。効果の出ている期間はさまざまですが半年くらいで効果が無くなる方もおられますし、1年2年と続けられる方もおられます」といった形で伝えると同時に、EGFR-TKI全般にみられる間質性肺炎の副作用にも触れたうえで、最終的に患者自身に服用の有無を決断してもらう。 多くの場合、EGFR-TKIによる治療は奏効する。しかし、1年間真面目に服用したとしても、効かなくなることは多い。ところが近々、第3世代EGFR-TKIが登場し、状況は変わろうとしている。第3世代EGFR-TKIへの期待 EGFR-TKIの耐性例の約半数ではT790M耐性変異がみられることがわかっている。このT790M変異に効果を示すのが、現在開発中の第3世代EGFR-TKIである。 第3世代EGFR-TKIの使用にあたっては、耐性遺伝子の確定診断が必須であり、その手段には再生検が用いられる。再生検は患者さんの一時的な肉体的負担を伴うものの、T790M変異有無を確認することで、第3世代EGFR-TKIという新たな治療選択肢を提供できるメリットは大きく、その選択が可能な時代となったことは喜ばしい。 患者さんの腫瘍が大きくなった時に「今後の最良の治療方法を検討するために、もう一度、腫瘍細胞を採取して遺伝子検査をやってみましょう」と、提案できる日も近づいている。

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タバコと肺がんは関係ない!?

タバコと肺がんは関係ない!?米国の喫煙者と肺がん死の関係(本)(人/10万人当たり)5000---1004500--- 904000--- 803500-たとえば…グラフのこの部分だけ抜き出したメディアの報道がありました。-- 703000-1人当たりのタバコ消費量-- 602500--- 50男性の肺がん死亡率2000--- 402000-1990-1980-1970-1960-1900-01950-女性の肺がん死亡率 -- 101940-500-タバコ消費量は減っているのに肺がん死亡率は増えている!?-- 201930-1000-1920--- 301910-1500-0(年)喫煙と肺がんは関係ない!?グラフの一部分だけでは正確な情報とはいえません!グラフを都合良く切り出し、誤解を広めるようなメディアの説明に惑わされてはいけません!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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長期アスピリン使用によるがん予防効果~13万6千人の前向き研究

 米国での医療従事者の2つの大規模前向きコホート研究における検討で、長期のアスピリン使用が、がん全体とくに消化管腫瘍のリスク低下に、わずかではあるが有意に関連することが認められた。また、定期的なアスピリン使用が大腸がんのかなり高い割合で予防し、スクリーニング検査によるがん予防を補う可能性が示唆された。JAMA oncology誌オンライン版2016年3月3日号に掲載。 U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は、米国の成人における大腸がんおよび心血管疾患予防のためにアスピリン使用を推奨しているが、アスピリン使用と他のがんリスクとの関連や、集団全体でのアスピリン使用の効果は明らかになっていない。米国ハーバード大学のYin Cao氏らは、アスピリンのさまざまな用量・使用期間で、がん全体およびサブタイプ別のがん予防における潜在的なベネフィットを調べ、さらに、スクリーニング検査の有無別にアスピリンの絶対ベネフィットを推定した。 対象は、米国の大規模前向きコホート研究であるNurses' Health Study(1980~2010年)とHealth Professionals Follow-up Study(1986~2012年)において、アスピリン使用を報告した医療従事者13万5,965人(女性8万8,084人、男性4万7,881人)で、1年おきにフォローアップした。女性は1976年の登録時に30~55歳、男性は1986年に40~75歳であった。主なアウトカムは、がん発症の相対リスク(RR)および人口寄与リスク(PAR)であった。 主な結果は以下のとおり。・32年間追跡した女性8万8,084人と男性4万7,881人のうち、女性2万414例、男性7,571例にがんが発症した。・定期的なアスピリン使用は不定期の使用と比較して、がん全体のリスク低下と関連していた(RR:0.97、95%CI:0.94~0.99)。これは、主に消化管がんの発症率低下(RR:0.85、95%CI:0.80~0.91)、とくに大腸がんの発症率低下(RR:0.81、95%CI:0.75~0.88)によるものであった。・消化管がん予防におけるアスピリンのベネフィットは、少なくとも、アスピリンの標準的な錠剤0.5~1.5錠/週の使用でみられた。定期的使用とリスク低下との関連がられる最短期間は6年であった。・50歳超の被験者のうち、定期的なアスピリン使用は下部内視鏡検査によるスクリーニングを受けていない人では10万人年当たり33の大腸がん(PAR:17.0%)を、受けた人では10万人年当たり18の大腸がん(PAR:8.5%)を防ぐことができた。・定期的なアスピリン使用は、乳がん・進行前立腺がん・肺がんのリスクには関連していなかった。

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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ベジタリアン/ヴィーガンダイエットって実際どうなの?

 ベジタリアン1)ダイエットは虚血性心疾患とすべてのがんの発症および死亡リスクを、また、ヴィーガン(完全菜食主義)2)ダイエットはすべてのがんの発症リスクを有意に低下させることが、イタリア・フィレンツェ大学のMonica Dinu氏らによるメタ解析で明らかになった。Critical reviews in food science and nutrition誌オンライン版 2016年2月6日号の報告。 ベジタリアンおよびヴィーガンダイエットの有益な効果は、すでに報告されている。 本研究では、ベジタリアン/ヴィーガンダイエットと、慢性疾患のリスク因子、すべての原因による死亡、心血管疾患の発症および死亡、すべてのがん・特定のがんの発症および死亡リスク(大腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん)との関連を明確にする目的でメタ解析を行った。 文献データベースは、MEDLINE、EMBASE、Scopus、The Cochrane Library、Google Scholarを用い、包括的な検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・横断的研究86件と前向きコホート研究10件を解析対象とした。<横断的研究の解析結果>・ベジタリアン/ヴィーガン群は雑食群よりも、BMI・総コレステロール・LDLコレステロール・血糖値が有意に低下した。<前向きコホート研究の解析結果>・ベジタリアン群の虚血性心疾患の発症および/または死亡リスク(RR 0.75、95%CI:0.68~0.82)とすべてのがん発症リスク(RR 0.92、95%CI:0.87~0.98)は、雑食群よりも有意に低下したが、心血管疾患・脳血管疾患の発症および死亡リスク、すべての原因による死亡リスク、がんによる死亡リスクに有意な低下はみられなかった。また、特定のがんの発症および死亡リスクとの間には有意な関連は認められなかった。・ヴィーガンのみを対象とした解析では、研究数が限られているものの、すべてのがんの発症リスクが雑食群よりも有意に低下した(RR 0.85、95%CI:0.75~0.95)。・以上の結果より、ベジタリアンダイエットは、虚血性心疾患の発症および/または死亡リスクを25%低下、すべてのがん発症リスクを8%低下させ、ヴィーガンダイエットは、すべてのがんの発症リスクを15%低下させることが示された。1)ベジタリアン:菜食主義者。野菜中心の食生活をする。2)ヴィーガン:完全菜食主義者。肉、魚、卵、乳製品、ハチミツを一切摂取しない。

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長時間労働とがんリスク

 長時間労働は心血管疾患リスクの増加と関連しているが、がんとの関連は不明である。英国London School of Hygiene & Tropical MedicineのKatriina Heikkila氏らのマルチコホート研究により、長時間労働は、がん全体、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクに関連がないことが示唆された。一方、乳がんリスクとの関連については「さらなる研究が必要とされる」と記している。British Journal of Cancer誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、登録時にがんを発症していない男女11万6,462人について、労働時間とがんリスクの関連を調査した。がんの発症は全国のがん・入院・死亡登録で確認、また週単位での労働時間は自己申告による。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.8年間に4,371人ががんを発症した(大腸がん393人、肺がん247人、乳がん833人、前立腺がん534人)。・労働時間とがん全体のリスクの間に明らかな関連は認められず、大腸がん、肺がん、前立腺がんのリスクとの間にも関連は認められなかった。・女性の乳がんにおいて、年齢、社会・経済的地位、シフト時間や夜間労働、ライフスタイル因子に関係なく、週55時間以上の労働で1.60倍(95%信頼区間:1.12~2.29)に増加した。ただし、この結果は出産歴による残余交絡が影響している可能性がある。

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がん免疫療法薬・安全性は「多職種連携」がカギ

 2016年2月17日、都内にて「がん免疫療法で変わる肺がん治療」をテーマにプレスセミナーが開催された(主催:小野薬品工業株式会社/ブリストル・マイヤーズ株式会社)。脚光を浴びているがん免疫療法、安全性は? ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は2014年9月に発売された、世界初の抗PD-1モノクローナル抗体で、がん免疫療法薬と呼ばれている。がん免疫療法は従来の化学療法や手術、放射線療法とはまったく異なる新たな治療法で、身体の免疫系に直接作用してがんと闘う機序を持つ。本邦において、ニボルマブは「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の2つの疾患に適応がある。免疫系に作用するという新しいアプローチと、治験時における有害事象、とくに骨髄抑制の少なさからがん治療において大きな期待を寄せられている。 しかし、使用経験の蓄積からこれまでの薬剤では経験のない免疫関連有害事象が報告されている。注意すべき、免疫関連有害事象とは? がん免疫療法薬は全身の臓器にも働きかけるといわれており、過度の免疫反応により免疫関連有害事象が複数の臓器で報告されている。演者の中西 洋一氏(九州大学大学院 呼吸器内科学分野 教授)は、とくに注意すべき副作用として間質性肺炎、重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害の4つを挙げた。 とくに劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖を来す。また、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障を来す重大な疾患である。ニボルマブの臨床試験において、劇症1型糖尿病は報告されていなかったが、使用経験の蓄積により報告が上がってきた。2016年1月に日本腫瘍学会と日本糖尿病学会より、連名でステートメントが出たことは記憶に新しい1)。副作用に立ち向かうには? 九州大学病院の事例 上記の重症筋無力症、劇症1型糖尿病、甲状腺機能障害などの副作用は必ずしもオプジーボを使用している医師の専門であるとはいえない。このような副作用に、どのように対応していけばよいのだろうか? 対応策の一例として、中西氏は九州大学病院の「免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会」を挙げた。同委員会では、副作用対策において、呼吸器内科・腫瘍内科・皮膚科など免疫療法実施診療科を、他の専門科や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどがサポートする、診療科・職域横断的なチェック体制づくりに取り組んでいる。専門外の医師をはじめとし、看護師・薬剤師などコメディカルとの連携によって、副作用の早期発見や適切な管理、細やかな対応が可能になるという。 ニボルマブは安全性の面以外にも、コストとの兼ね合い、バイオマーカーの探索、他剤との併用などさまざまな点に課題があるものの、これまで治療の選択肢に難渋していた患者にとって希望の光となりうる薬剤である。しかし、2016年2月より包括医療費支払い制度(DPC)の対象外となったため、今後さらなる使用患者数の増加が予想され、これに伴い予期せぬ副作用が生じる可能性も否定できない。治療医師のみならず、多職種が連携することで患者にとって最適な医療を行うことが望まれる。【参考】1)免疫チェックポイント阻害薬に関連した劇症 1 型糖尿病の発症について(PDFがダウンロードされます)

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がん治療で気付いてほしい1型糖尿病

 1月29日、日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝氏)は、日本臨床腫瘍学会(理事長:大江 裕一郎氏)とともにお知らせとして「免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病ことに劇症1型糖尿病の発症について」と題し、注意喚起を行った。 抗PD-1(programmed cell death-1)抗体をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、抗がん剤として発売され、また現在も多くが開発されている。そのうち、ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、従来の「根治切除不能な悪性黒色腫」に加え、2015年12月17日からは「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」にも承認され、2016年2月からは包括医療費支払制度の対象外となることもあり、使用患者の増加が予想されている。 そうしたなか、薬事承認以降に因果関係不明例を含め1型糖尿病(劇症1型糖尿病も含む)が7例(うち死亡例はなし)、副作用として報告されている(2015年11月に添付文書は改訂され、「1型糖尿病」が副作用として記載された)。(劇症)1型糖尿病の病態 1型糖尿病は、膵β細胞の破壊により絶対的インスリン欠乏に陥る疾患があり、とりわけ劇症1型糖尿病は、きわめて急激な発症経過をたどり、糖尿病症状出現から早ければ数日以内にインスリン分泌が完全に枯渇し、重篤なケトアシドーシスに陥る病態である。適切に診断し、ただちにインスリン治療を開始しなければ死亡する可能性が非常に高い。しかし、診断時に劇症1型糖尿病の可能性が念頭にないと、偶発的な高血糖として経過観察とされたり、通常の2型糖尿病として誤った対応がなされ、不幸な転帰をたどることも危惧される。 そこで、免疫チェックポイント阻害薬使用中に、急激な血糖値の上昇、もしくは口渇・多飲・多尿・全身倦怠感などの糖尿病症状の出現をみた際には、劇症1型糖尿病の可能性も考慮し、糖尿病専門医との緊密な連携のもと早急な対処が必要となる。また、患者に対しても、劇症1型糖尿病の可能性や、注意すべき症状について、あらかじめ十分に説明しておくことが求められるとしている。参考資料:劇症1型糖尿病診断基準(2012) 下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)。2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dL(16.0 mmol/L)以上であり、かつHbA1c値(NGSP)<8.7%※である。3. 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/mLかつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/mLである。 ※劇症1型糖尿病発症前に耐糖能異常が存在した場合は、必ずしもこの数字は該当しない。〔参考所見〕 A)原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。 B)ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。 C)約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。 D)約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。 E)妊娠に関連して発症することがある。 F)HLA DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。詳しくは、「日本糖尿病学会 重要なお知らせ」まで

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進行NSCLC治療、全例への遺伝子検査は有用か/Lancet

 進行性非小細胞肺がん(NSCLC)治療に関して、患者の分子プロファイリングを日常診療として全国的に実施することは可能であり、その作業は遺伝子変異や融合遺伝子など遺伝子異常の頻度、所要日数および治療効果からみても有用であることが確認された。フランス・マルセイユ公立病院機構(APHM)のFabrice Barlesi氏らが、French Collaborative Thoracic Intergroup(IFCT)による1年間のプログラムの成果を踏まえて報告した。NSCLCの治療においては、既知のドライバー遺伝子について日常的に患者の分子プロファイルを調べることが推奨されているが、その国家的な実現性や有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2016年1月14日号掲載の報告。仏国内の全NSCLC患者で遺伝子検査を実施し、遺伝子異常の頻度や予後等を調査 研究グループは、2012年4月~13年4月の間、フランス各地の分子遺伝学センター28施設(フランス全土をカバー)において、進行性NSCLC患者全症例を対象に、EGFR、HER2(ERBB2)、KRAS、BRAF、PIK3CAの遺伝子変異およびALK融合遺伝子の検査を行った。遺伝子検査は進行性NSCLCに義務づけられ、検査の処方は治療している医師の責任で行われた。患者は、各地の集学的腫瘍検討会による調査の後、国内外のガイドラインに従ってルーチン治療を受けた。 主要評価項目は、前述の6つの遺伝子異常の頻度、副次評価項目は検査結果報告までの所要時間、および患者の臨床転帰(奏効率[ORR]、無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS])とした。遺伝子異常は、約半数の患者で認められ、治療効果改善と関連 NSCLC患者1万7,664例(平均年齢64.5歳[範囲18~98]、男性65%、喫煙歴あり81%、腺がん76%)において、1万8,679件の遺伝子検査が行われた。検体採取から検査開始までの期間中央値は8日(四分位範囲[IQR]:4~16)、検査開始から結果報告書提出までの期間中央値は11日(IQR:7~16)であった。 遺伝子異常は、約50%で確認された。EGFR遺伝子変異は解析し得た1万7,706件中1,947件(11%)、HER2遺伝子変異は1万1,723件中98件(1%)、BRAF遺伝子変異は1万3,906件中262件(2%)、KRAS遺伝子変異は1万7,001件中4,894件(29%)、PIK3CA遺伝子変異は1万678件中252件(2%)、ALK融合遺伝子は8,134件中388件(5%)に認められた。遺伝子異常の存在が1次治療の決定に際して考慮されたのは、データを入手し得た8,147例中4,176例(51%)であった。 検査実施日からの追跡期間中央値24.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:24.8~25.0)の時点で、遺伝子異常なしと比較して遺伝子異常ありでは、1次治療および2次治療いずれにおいてもORRが有意に改善した。1次治療は、あり37%(95%CI:34.7~38.2) vs.なし33%(29.5~35.6)(p=0.03)、2次治療は、あり17%(15.0~18.8) vs.なし9%(6.7~11.9)(p<0.0001)であった。 1次治療後のPFSならびにOSも同様の結果であった。PFSは、あり10.0ヵ月(9.2~10.7) vs.なし7.1ヵ月(6.1~7.9)(p<0.0001)、OSは、あり16.5ヵ月(15.0~18.3) vs.なし11.8ヵ月(10.1~13.5)(p<0.0001)であった。 Cox多変量解析の結果、ALK融合遺伝子(ハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.5~0.9)、EGFR遺伝子変異(HR:0.53、95%CI:0.4~0.6)、HER2遺伝子変異(HR:0.60、95%CI:0.4~1.0)が、予後良好因子であることが認められた。

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高齢がん患者の病院死亡率とコスト、欧米7ヵ国で比較/JAMA

 欧米先進7ヵ国で、がん患者の死亡した場所や死亡前半年間の医療費などを比べたところ、急性期病院での死亡割合はベルギーとカナダが最も高く過半数を占め、一方、米国やベルギーは20%台と低かった。死亡前半年間の医療費については、高額だったのはカナダ、ノルウェー、米国で1万9,000~2万2,000ドル、低額だったのは英国、オランダで9,000~1万1,000ドルだった。米国・ペンシルベニア大学のJustin E. Bekelman氏らが、2010年以降にがんで死亡した65歳超について、後ろ向きコホート試験を行った結果、明らかにされた。JAMA誌2016年1月19日号掲載の報告より。ベルギー、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、ノルウェー、米国を比較 研究グループは、ベルギー、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、ノルウェー、米国の欧米先進7ヵ国について、2010年以降のデータを基に、がん患者が死亡した場所や、医療サービスの利用状況、病院医療費などについて比較した。被験者は65歳超で、がんで死亡した人。対象被験者数は、ベルギー(2万1,054人)、カナダ(2万818人)、英国(9万7,099人)、ドイツ(2万4,434人)、オランダ(7,216人)、ノルウェー(6,636人)、米国(21万1,816人)だった。 また、2次解析として、年齢を問わずがんで死亡した人や、65歳超で肺がんで死亡した人、2012年以降に65歳超で米国とドイツで死亡した人などを対象とした分析も行った。ベルギーとカナダで50%超、コスト高はカナダ、ノルウェー、米国 その結果、急性期病院で死亡した人の割合は、米国とオランダで最も低く、それぞれ22.2%と29.4%だった。一方、同割合が最も高かったのは、ベルギーとカナダで、それぞれ51.2%、52.1%と過半数だった。次いで、同割合が約4割を占めていたのは、英国、ドイツ、ノルウェーで、それぞれ41.7%、38.3%、44.7%だった。 死亡前180日間に、集中治療室(ICU)に入室した人の割合は、米国が40.3%と高く、それ以外の国では同割合は18%未満だった。 死亡前180日間の医療費について比較したところ、最も高かったのはカナダ(2万1,840ドル)で、次いでノルウェー(1万9,783ドル)、米国(1万8,500ドル)だった。その後、ドイツ(1万6,221ドル)、ベルギー(1万5,699ドル)、オランダ(1万936ドル)、英国(9,342ドル)と続いた。

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耐性克服に再生検を!~肺がん治療~

 2016年1月21日都内にて、「肺がん治療におけるアンメットメディカルニーズ」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科 教授)は、第3世代EGFR-TKIの登場に伴う再生検の重要性に触れ、「耐性変異を調べることが、最終的に患者さんの利益につながる」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。適切なバイオマーカーによる患者選択を 肺がん治療は劇的な進歩を遂げているが、依然アンメットニーズは高い。だからこそ、「希望の光」となるのが臨床試験だ。肺がん治療に影響を与えた代表的試験として、ゲフィチニブのIPASS試験1)がある。EGFR遺伝子変異の有無による効果の違いを実証した本試験は、適切なバイオマーカーで患者選択を行う有用性をわれわれに教えた。 しかし、ゲフィチニブ等のEGFR-TKIが著効した症例も1年~1年半以内に再発が認められる。この「耐性獲得」は深刻なアンメットニーズである。T790M変異の確認に不可欠な再生検 EGFR-TKI耐性患者の約6割がT790M変異を有する2)。今後、T790M変異を標的とした、第3世代EGFR-TKIが市場に登場すれば、同時にEGFR-TKI耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。T790M変異を確認するには再生検は不可欠だ。 しかし、気管支内視鏡検査をはじめとした検体採取は患者負担が大きい、また脳転移や骨転移での再発例では困難、との指摘もある。そこで現在、血液検体からT790Mを測定する検査の開発が進められている。血液検体、その後に組織診断という流れを作るべく、臨床試験が進行中であり、今後に期待したい。2度目の遺伝子検査が、患者さんのメリットに EGFRに限らず、肺がんのドライバー遺伝子は多岐にわたる。ALK、ROS1、RET、BRAF等があり、それぞれを標的とした新薬が開発段階にある。もはや問題となる遺伝子を探索し、適切な薬を選択する時代である。当然、薬剤費や手間の問題が浮上するが、たとえば、近畿大学ではDNAとRNAを一度に抽出し、遺伝子変異を探索している。 今後、第3世代EGFR-TKIを始めとする各種新薬の登場に伴い、再生検の重要性は増すだろう。再生検で耐性変異を調べることは、最終的に患者さんの利益につながると期待している。

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悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)〔malignant soft tissue tumor / soft tissue sarcoma〕

1 疾患概要■ 定義全身の軟部組織(リンパ・造血組織、グリア、実質臓器の支持組織を除く)より発生し、骨・軟骨を除く非上皮性間葉系組織(中胚葉由来の脂肪組織、線維組織、血管・リンパ管、筋肉、腱・滑膜組織および外胚葉由来の末梢神経組織などを含む)から由来する腫瘍の総称で、良性から低悪性~高悪性まで100種類以上の多彩な組織型からなる軟部腫瘍のうち、生物学的に悪性(局所再発や遠隔転移しうる)のものを悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)と呼ぶ。■ 疫学人口10万人あたり約3人の発生率で、全悪性腫瘍の0.7~1.0%程度とまれな悪性腫瘍である(わが国では胃がんや肺がんの1/20程度)が、経年的には増加傾向にある。また、骨・軟部肉腫が通常のがん腫に比し、若年者に多い傾向があることから、20歳未満の小児悪性腫瘍の中では約7.4%を占める。発生部位は軟部肉腫全体の約60%が四肢に発生し、そのうち約2/3が下肢(とくに大腿部に最も好発)に発生するが、その他の部位(臀部や肩甲帯、胸・腹壁などの表在性体幹部、後腹膜や縦隔などの深部体幹)にも広く発生するのが、軟部肉腫の特徴である。■ 病因近年の分子遺伝学的解析の進歩により、軟部肉腫においても種々の遺伝子異常が発見されるようになった。なかでも、特定の染色体転座によって生じる融合遺伝子異常が種々の組織型の軟部肉腫で検出され(表1)、その病因としての役割が明らかになってきた。こうした融合遺伝子異常は、すべての軟部肉腫のうち約1/4で認められる。一方、融合遺伝子異常を示さない残り3/4の軟部肉腫においても、いわゆるがん抑制遺伝子として働くP53、RB1、PTEN、APC、NF1、CDKN2などの点突然変異や部分欠失による機能低下、細胞周期・細胞増殖・転写活性・細胞内シグナル伝達などを制御する種々の遺伝子(CDK4、MDM2、KIT、WT1、PDGF/PDGFR、VEGFR、IGF1R、AKT、ALKなど)異常が認められ、その発症要因として関与していると考えられる。また、NF1遺伝子の先天異常を有する常染色体優性遺伝疾患である多発性神経線維腫症(von Recklinghausen病)では神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)やその他の悪性腫瘍が発生しやすく、乳がんなどの治療後の上肢リンパ浮腫を基盤に生じるリンパ管肉腫(Stewart-Treves症候群)、放射線照射後に発生するpostradiation sarcomaなども知られている。画像を拡大する■ 症状無痛性のしこり(軟部腫瘤)として発見されることが最も多い。疼痛(自発痛や圧痛)や局所熱感、患肢のしびれなどは時にみられるが必発ではなく、良悪性の鑑別にはあまり役立たない。腫瘤の大きさは米粒大~20cmを超えるような大きなものまでさまざまであるが、明らかに増大傾向を示すような腫瘤の場合、悪性の可能性が疑われる。ただし、一部の腫瘍(とくに滑膜肉腫)ではほとんど増大せずに10年以上を経過し、ある時点から増大し始めるような腫瘍もあるので注意が必要である。縦隔や後腹膜・腹腔内の軟部肉腫では、相当な大きさになり腫瘤による圧迫症状が出現するまで発見されずに経過する進行例が多いが、時に他の疾患でCTやMRI検査が行われ、偶然に発見されるようなケースも見受けられる。■ 分類正常組織との類似性(分化度: differentiation)の程度により病理組織学的に分類される。脂肪肉腫、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫(かつての悪性線維性組織球腫)、線維肉腫、横紋筋肉腫、神経原肉腫(悪性末梢神経鞘腫)、滑膜肉腫などが比較的多いが、そのほかにもまれな種々の組織型の腫瘍が軟部肉腫には含まれ、組織亜型も含めると50種類以上にも及ぶ。■ 予後軟部肉腫には低悪性のものから高悪性のものまで多彩な生物学的悪性度の腫瘍が含まれるが、その組織学的悪性度(分化度、細胞密度、細胞増殖能、腫瘍壊死の程度などにより規定される)により、生命予後が異なる。また、組織学的悪性度(G)、腫瘍の大きさ・深さ(T)、所属リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)により病期分類が行われ、予後とよく相関する(表2)。画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)軟部腫瘤の局在・局所進展度とともに、質的診断をするための画像診断としてはMRIが最も有用であり、必須といってもよい。腫瘍内の石灰化の有無、隣接骨への局所浸潤の有無、隣接主要血管・神経との位置関係をみるにはCTのほうが有用であるが、腫瘍自体の質的診断という点ではMRIよりも劣る。したがって、まずはMRIを施行し、画像診断できるもの(皮下に局在する良性の脂肪腫、典型的な神経鞘腫や筋肉内血管腫など)の場合には、外科的腫瘍切除を含め治療方針を生検なしに決定できる。しかし、軟部腫瘍の場合には画像診断のみでは診断確定できないものも少なくなく、良悪性の鑑別を含む最終診断確定のためには、通常生検が必要となる。生検はある程度の大きさの腫瘤(最大径がおおむね3cm以上)では、局麻下での針生検(ベッドサイドで、または部位によってはCTガイド下で)を行うが、針生検のみでは診断がつかない場合には、あらためて全麻・腰麻下での切開生検術が必要となることもある。また、径3cm未満の小さな表在性の腫瘍の場合、生検を兼ねて一期的に腫瘍を切除する(切除生検)こともあるが、この場合、悪性腫瘍である可能性も考慮し、腫瘍の周辺組織を腫瘍で汚染しないよう注意する(剥離の際に腫瘍内切除とならないよう気を付ける、切除後の創内洗浄は行わない、など)とともに、後の追加広範切除を考慮し、横皮切(とくに四肢原発例)は絶対に避けるなどの配慮も必要となる。皮下に局在する小さな腫瘍の場合、良悪性の区別も考慮されることなく一般診療所や病院で安易に局麻下切除した結果、悪性であったと専門施設に紹介されることがしばしばある。しかし、その後の追加治療の煩雑さや機能予後などを考えると、診断(良悪性の鑑別も含む)に迷った場合には、安易に切除することなく、骨・軟部腫瘍専門施設にコンサルトまたは紹介したほうがよい。生検により悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の確定診断がついたら、組織型・悪性度や必要に応じて肺CT、局所CT、骨シンチグラム、FDG-PET/CTなどを行い、腫瘍の局所進展度・遠隔転移(とくに肺転移)などを検索したうえで、治療方針を決定する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の原則は、外科的腫瘍広範切除(腫瘍を周囲の正常組織を含め一塊に切除する術式)であるが、必要に応じて術前あるいは術後に放射線治療を併用し、術後局所再発の防止を図る。組織型(とくに滑膜肉腫、横紋筋肉腫、未分化神経外胚葉腫瘍、粘液型脂肪肉腫など)や悪性度によっては、また、遠隔転移を有する腫瘍の場合には、抗悪性腫瘍薬による全身化学療法を併用する。4 今後の展望これまで長い間、軟部肉腫に対する有効な抗悪性腫瘍薬としてはドキソルビシン(商品名:アドリアシンなど)とイホスファミド(同:イホマイド)の2剤しかなかったが、近年ようやくわが国でも軟部肉腫に対する新規薬剤の国際共同臨床試験への参加や治験開発が進むようになってきた。2012年9月には、軟部肉腫に対する新規分子標的治療薬であるパゾパニブ(同:ヴォトリエント)が、わが国でもオーファンドラッグとして製造・販売承認され、保険適応となった。また、トラベクテジン〔ET-743〕(同:ヨンデリス/2015年9月に承認)やエリブリン(同:ハラヴェン/わが国では軟部肉腫に対しては保険適応外)など複数の軟部肉腫に対する新規抗腫瘍薬の開発も行われている。5 主たる診療科整形外科、骨軟部腫瘍科 など軟部肉腫は希少がんであるにもかかわらず、組織型や悪性度も多彩で診断の難しい腫瘍である。前述のMRIでの画像診断のみで明らかに診断がつく腫瘍以外で良悪性不明の場合、小さな腫瘍であっても安易に一般診療所や病院で生検・切除することなく、骨・軟部腫瘍を専門とする医師のいる地域基幹病院の整形外科やがんセンター骨軟部腫瘍科にコンサルト・紹介するよう心掛けてほしい。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス(各種がんのエビデンスデータベース「軟部肉腫」の情報)日本整形外科学会(骨・軟部腫瘍相談コーナーの情報)日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)(骨軟部腫瘍グループの研究に関する情報)NPO骨軟部肉腫治療研究会(JMOG)(医療従事者向けの診療・研究情報)患者会情報日本に「サルコーマセンターを設立する会」(肉腫患者および家族の会)1)上田孝文. 癌と化学療法. 2013; 40: 318-321.公開履歴初回2013年06月06日更新2016年01月26日

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既治療PD-L1陽性NSCLCへのpembrolizumabの有効性を確認/Lancet

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、pembrolizumabは標準治療に比べ全生存期間(OS)を延長し、良好なベネフィット・リスク比を有することが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S Herbst氏らが行ったKEYNOTE-010試験で示された。免疫療法はNSCLCの新たな治療パラダイムであり、活性化B細胞やT細胞表面のPD-1受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が有望視されている。pembrolizumabは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、米国では第Ib相試験(KEYNOTE-001試験)のデータに基づき、プラチナ製剤ベースレジメンによる治療中または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCの治療薬として迅速承認を取得している。Lancet誌オンライン版2015年12月18日号掲載の報告。2種の用量をドセタキセルと比較する第II/III相試験 KEYNOTE-010試験は、既治療のPD-L1(PD-1のリガンド)陽性NSCLCに対するpembrolizumabの有用性を評価する非盲検無作為化第II/III相試験(Merck & Co助成)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)と判定された進行NSCLCとした。 被験者は、pembrolizumab 2mg/kg、同10mg/kg、ドセタキセル75mg/m2をそれぞれ3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24ヵ月であった。 主要評価項目は、全例および腫瘍細胞の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるOSおよび無増悪生存期間(PFS)とした。有意性の閾値は、OSがp<0.00825(片側検定)、PFSはp<0.001に設定した。 2013年8月28日~2015年2月27日に、日本を含む24ヵ国202施設に1,034例が登録され、pembrolizumab 2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、ドセタキセル群には343例が割り付けられた。それぞれ344例、346例、343例がITT解析の対象となり、そのうち139例、151例、152例がPD-L1≧50%であった。PD-L1≧50%ではOS、PFSとも有意に延長、高用量群でも有害事象が少ない 年齢中央値は、pembrolizumab 2mg/kg群と同10mg/kg群が63.0歳、ドセタキセル群は62.0歳であり、男性はそれぞれ62%、62%、61%であった。東アジア人が、19%、18%、18%含まれ、元喫煙者/喫煙者は81%、82%、78%、治療ライン数が3以上の患者は8%、10%、8%だった。 2015年9月30日までに521例が死亡した。OS中央値は、2mg/kg群が10.4ヵ月、10mg/kg群が12.7ヵ月、ドセタキセル群は8.5ヵ月であり、ドセタキセル群と比較して2mg/kg群が29%(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0008)、10mg/kgは39%(0.61、0.49~0.75、p<0.0001)有意に延長した。 OSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでpembrolizumab群(2群を統合)が良好であり、その多くで有意差が認められた。65歳以上、ECOG PS 0、扁平上皮がん、EGFR変異型では有意差がないのに対し、それぞれ65歳未満、ECOG PS 1、腺がん、EGFR野生型では有意差が認められた。 PFS中央値は、それぞれ3.9ヵ月、4.0ヵ月、4.0ヵ月であり、ドセタキセル群との比較で有意な差は認めなかった(2mg/kg群:p=0.07、10mg/kg群:p=0.004)。サブグループ解析では、女性、ECOG PS 0、EGFR変異型では有意差がなかったのに対し、それぞれ男性、ECOG PS 1、EGFR野生型ではpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であったが、組織型による効果の差はなかった。 PD-L1≧50%の患者では、OS中央値が2mg/kg群で46%(14.9 vs.8.2ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.77、p=0.0002)、10mg/kg群では50%(17.3 vs.8.2ヵ月、0.50、0.36~0.70、p<0.0001)有意に改善した。この集団では、PFS中央値も2mg/kg群で41%(5.0 vs.4.1ヵ月、0.59、0.44~0.78、p=0.0001)、10mg/kg群でも41%(5.2 vs.4.1ヵ月、0.59、0.45~0.78、p<0.0001)有意に改善した。 なお、PD-L1発現が1~49%の患者では、OSがpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.96)が、PFSには差がなかった(1.04、0.85~1.27)。 有害事象の発現率は2mg/kg群が63%(215/339例)、10mg/kg群が66%(226/343例)、ドセタキセル群は81%(251/309例)であった。pembrolizumab群で頻度の高いものとして、食欲不振、疲労、悪心、皮疹が認められた(9~14%)。 pembrolizumabでとくに注意すべき有害事象では、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症の頻度が高かった(4~8%)。 Grade3~5の治療関連有害事象の発現率は、2mg/kg群が13%(43/339例)、10mg/kg群が16%(55/343例)、ドセタキセル群は35%(109/309例)であり、pembrolizumab群で頻度が低かった。 著者は、「pembrolizumabは、プラチナ製剤ベースの治療後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLCの新たな治療選択肢であり、EGFR変異やALK転座のみられる患者にも適切な治療法である。PD-L1は、本薬によるベネフィットを得る可能性が高い患者を同定するバイオマーカーとして妥当と考えられる」としている。

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侍オンコロジスト奮闘記~Dr.白井 in USA~ 第13回

第13回:米国オンコロジストのweb活用勉強法ビデオレター中で紹介しているwebサイトMedscape Oncology:www.medscape.com/oncologyClinical Care Options Oncology:www.clinicaloptions.com/Oncology.aspxResearch to Practice:www.researchtopractice.comGrace(Global Resourch for Advancing Cancer Education):cancergrace.orgASCO University:university.asco.orgTargeted Oncology:targetedonc.com

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喫煙で死亡リスクが上がる疾患

喫煙する女性は、さまざまな疾患の死亡リスクが高くなります<喫煙経験のない女性の死亡確率を1としたときの値>110203035.3慢性肺疾患21.4肺がん大動脈瘤腸間膜虚血口腔・咽頭がんなど冠動脈性心疾患アルコール性肝硬変膀胱がん食道がん肺炎脳血管疾患406.325.584.834.473.353.293.103.093.06※3以上の疾患を抜粋Pirie K, et al. Lancet. 2013;381:133-141.Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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