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EGFR exon19挿入変異NSCLCへのEGFR-TKI、第1~3世代の効果は?/WCLC2024

 EGFR遺伝子exon19挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)に対して、第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)が有効であることが示唆された。EGFR-TKIの登場により、主要なEGFR遺伝子変異(exon21 L858R、exon19欠失変異)を有するNSCLC患者の予後は改善している。しかし、uncommon変異を有するNSCLC患者に対するEGFR-TKIの有効性はさまざまであり、希少変異であるexon19挿入変異に対する有効性は明らかになっていなかった。そこで、上原 悠治氏、泉 大樹氏(国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)らの研究グループは、遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」において、NSCLC患者のEGFR遺伝子exon19挿入変異の発現割合およびEGFR-TKIの有効性を検討した。本研究結果は、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において発表された。 研究グループは、遺伝子スクリーニングプロジェクト「LC-SCRUM-Asia」の対象となったNSCLC患者1万6,204例について、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析によりEGFR遺伝子exon19挿入変異を有する割合を調べた。また、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者の共変異の割合も検討した。さらに、EGFR遺伝子exon19挿入変異(K745_E746insIPVAIK)またはexon19欠失変異(E746_A750)を導入したEGFR分子を発現するBa/F3細胞モデルを用いて、EGFR-TKIへの感受性を検討した。また、AlphaFoldとOpenFoldを用いた立体構造予測により、EGFR exon19挿入変異体とEGFR-TKIとの結合状態を予測した。最後に、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者における第1~3世代EGFR-TKIの臨床的有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析が可能であった1万5,226例中3,269例(21%)にEGFR遺伝子変異が認められ、そのうちexon19挿入変異が認められた患者は13例であった(0.1%)。EGFR遺伝子exon19挿入変異の内訳は、K745_E746insIPVAIKが12例、 K745_E746insVPVAIKが1例であった。・主要なEGFR遺伝子変異を有するNSCLC患者とEGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者の背景には違いがみられなかった。・EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者における主な共変異は、TP53遺伝子変異(62%)、EGFR遺伝子増幅(15%)、CDKN2B遺伝子増幅(8%)、PIK3CA遺伝子変異(8%)、FGFR遺伝子変異(8%)であった。・Ba/F3細胞モデルを用いた解析では、EGFR遺伝子exon19挿入変異(K745_E746insIPVAIK)を導入したEGFR分子を発現する細胞株のEGFR-TKIに対する感受性は、第2世代EGFR-TKIが最も高かった(IC50の範囲:0.57~0.95pM)。第1世代EGFR-TKI、第3世代EGFR-TKI、EGFR exon20挿入変異体への活性を示すEGFR-TKIのIC50は、それぞれ61~158nM、13.8nM、1.78~21.3nMであった。・立体構造予測においても、第2世代EGFR-TKIのアファチニブがEGFR exon19挿入変異体のcavityに入り込み、結合すると予測された。・EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者13例中12例がEGFR-TKIによる治療を受けた。無増悪生存期間(PFS)中央値は7.2ヵ月(95%信頼区間:6.0~推定不能)、全生存期間(OS)中央値は20.1ヵ月(同:16.3~推定不能)であった。・細胞株と立体構造予測の知見に基づいて、EGFR-TKIの世代別に抗腫瘍効果を比較したところ、第2世代EGFR-TKIが最も高い奏効割合を示した。【PFS中央値】 第1世代(2例):8.7ヵ月 第2世代(5例):14.7ヵ月 第3世代(5例):4.4ヵ月【OS中央値】 第1世代(2例):25.5ヵ月 第2世代(5例):未到達 第3世代(5例):15.9ヵ月【奏効】 第1世代(2例):PR 1例、SD 1例 第2世代(5例):PR 4例、SD 1例 第3世代(5例):SD 3例、PD 2例 以上の結果について、研究グループは「細胞株、立体構造予測、大規模臨床データベースのすべての結果が一致し、EGFR遺伝子exon19挿入変異を有するNSCLC患者に対して、第2世代EGFR-TKIが最も有効であることが示唆された」とまとめた。

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アミバンタマブ、化学療法との併用でEGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに承認/ヤンセン

 Johnson & Johnson (法人名:ヤンセンファーマ)は2024年9月24日、アミバンタマブ(商品名:ライブリバント)と化学療法(カルボプラチンおよびペメトレキセド)の併用療法について、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の効能又は効果で、日本における製造販売承認を取得したと発表。 今回の承認は、化学療法歴のないEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象に、アミバンタマブと化学療法との併用による有効性と安全性を化学療法群と比較する第III相PAPILLON試験の結果に基づくものである。 同試験では、アミバンタマブと化学療法併用(ACP)群の無増悪生存期間(PFS)が、化学療法(CP)群と比較し統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目を達成した。PFS中央値はACP群で11.37ヵ月、CP群で6.70ヵ月であった(ハザード比:0.395、95%信頼区間:0.296~0.528、p<0.0001)。ACP群はCP群と比較し、より深い奏効と持続的な奏効に関与し、高い奏効率および長い奏効期間を示した。アミバンタマブと化学療法の併用療法に関する安全性プロファイルは、それぞれの安全性プロファイルと一貫していた。  エクソン20挿入変異はNSCLCにおける最も一般的なドライバー遺伝子変異であるEGFR遺伝子の変異の中で3番目に多いことが知られている。また、実臨床におけるEGFRエクソン20挿入変異患者の5年生存率は8%と、エクソン19欠失またはL858R変異患者の19%と比べ低く、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域である。

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既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibが約7割に奏効(Beamion LUNG-1)/WCLC2024

 HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するzongertinibの有望な結果が報告された。HER2遺伝子変異はNSCLC患者の約2~4%に認められ、脳転移が生じることが多く、予後は不良であるとされている。zongertinibはHER2チロシンキナーゼドメイン選択的に共有結合するHER2チロシンキナーゼ阻害薬である。zongertinibの用量探索および安全性・有効性を検討する国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」が実施され、第Ib相の既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性コホートにおける結果が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で報告された。今回の報告では、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けた患者の66.7%に奏効が認められ、忍容性も高かった。オランダがん研究所のGerrina Ruiter氏が本研究結果を発表した。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ia相の結果から1日1回120mg、240mgの用量が選択された。今回は、プラチナ併用化学療法による治療歴のある(抗体薬物複合体による治療は除外)HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者を対象とした、第Ib相のコホート1の結果が報告された。コホート1では、zongertinibを1日1回120mg投与する群(120mg群)、240mg投与する群(240mg群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中間解析により1日1回120mgの用量が選択され、中間解析以降の組み入れ患者には、1日1回120mgの用量で投与した。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効率(ORR)で、期待値を30%とした。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月23日)において、zongertinibによる治療を受けたのは132例であり(120mg群:75例、240mg群:57例)、有効性に関する追跡期間中央値は約13週間であった。・前治療ライン数が1ラインの割合は120mg群56%(42例)、240mg群49%(28例)であり、2ラインはそれぞれ16%(12例)、28%(16例)、3ライン以上はそれぞれ28%(21例)、23%(13例)であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合はそれぞれ37%(28例)、46%(26例)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は120mg群17%(13例)、240mg群19%(11例)に発現したが、死亡に至ったTRAEは認められなかった。減量に至った有害事象(AE)の発現率は全体の11%(14例)であったが、治療中止に至ったAEの発現率は3%(4例)と低かった。・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは、120mg群全体(75例)で66.7%であり(期待値30%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。腫瘍縮小はzongertinibによる治療を受けた患者全体の94%(124例)に認められた。・120mg群、240mg群に無作為に1対1の割合で割り付けられた患者における中央判定によるORRは、120mg群72.4%(42例)、240mg群78.2%(43例)であり、完全奏効(CR)はそれぞれ1例、2例に認められた。病勢コントロール率はそれぞれ94.8%(55例)、100%(55例)であった。・頭蓋内ORRは、120mg群33%(9例)、240mg群40%(10例)であり、CRはそれぞれ4例、5例に認められた。 Ruiter氏は、本研究結果について「zongertinibは、脳転移を有する患者も含む既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者において、統計学的有意かつ臨床的に意義のある抗腫瘍活性を示した。治療関連死は認められず、減量や中止に至ったAEの発現も少なく、zongertinibの忍容性は非常に高かった」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療として、zongertinibと標準治療を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が実施されており、現在患者を組み入れ中である。

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完全切除NSCLCへのデュルバルマブ、第III相試験結果(BR.31)/ESMO2024

 抗PD-L1抗体デュルバルマブは、切除不能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法後の地固め療法、切除可能なStageII~IIIB期NSCLCの周術期治療において有効性が示されている1,2)。そこで、完全切除NSCLC患者の術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性を検討することを目的として、国際共同第III相無作為化比較試験「BR.31試験」が実施された。本試験の結果、完全切除NSCLCの術後補助療法におけるデュルバルマブの有効性は示されなかった。本結果は、カナダ・オタワ大学のGlenwood Goss氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:完全切除(R0切除)を達成したStageIB(≧4cm)〜IIIA(AJCC第7版)のNSCLC患者1,415例・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(20mg/kgを4週ごと、最長1年) 944例・対照群(プラセボ群):プラセボ(4週ごと、最長1年) 471例・評価項目:[主要評価項目]PD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者における無病生存期間(DFS)[主要な副次評価項目]PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFS、OS、有害事象など 今回の発表では、EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の集団の結果が報告された。本発表における主な結果は以下のとおり。・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者の割合は86%であり、この集団における年齢中央値は64歳、男性の割合は65%、腺がんの割合は64%であった。・追跡期間中央値60.0ヵ月時点において、主要評価項目のPD-L1 TC≧25%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群69.9ヵ月、プラセボ群60.2ヵ月であり(ハザード比[HR]:0.935、95%信頼区間[CI]:0.706~1.247)、主要評価項目は達成されなかった。・PD-L1 TC≧1%およびEGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群59.9ヵ月、プラセボ群60.3ヵ月であった(HR:0.989、95%CI:0.788~1.248)。・EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性(PD-L1の発現状況は問わない)の患者におけるDFSは、デュルバルマブ群60.0ヵ月、プラセボ群53.9ヵ月であった(HR:0.893、95%CI:0.752~1.065)。・Grade3/4の治療関連有害事象は、デュルバルマブ群の13.0%(122例)、プラセボ群の4.5%(21例)に発現した。 Goss氏は、本研究結果について「EGFR遺伝子変異・ALK融合遺伝子陰性の完全切除NSCLC患者において、術後補助療法としてデュルバルマブを用いる治療法は、PD-L1の発現状況にかかわらずDFSを改善しなかった。NSCLC患者において最適な効果を得るためには、周術期でのアプローチと同様に、原発巣の存在と関連する腫瘍抗原の存在が必要であることが示唆された」とまとめた。

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第233回 コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024

コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024がん患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を生じ易いことが知られます。幸い、がん患者の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種の安全性はおおむね良好です。いまや可能な限り必要とされるがん患者のSARS-CoV-2ワクチン接種が、その本来のCOVID-19予防効果に加えて、なんとがん治療の効果向上という思わぬ恩恵ももたらしうることが、今月13~17日にスペインのバルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)での報告で示唆されました1)。報告したのは米国屈指のがん研究所であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏です。Grippin氏らは今回の報告に先立ち、mRNAワクチンがその標的抗原はどうあれ、腫瘍のPD-L1発現を増やして抗PD-L1薬などの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を高めうることを、げっ歯類での検討で見出していました。そこでGrippin氏らはCOVID-19予防mRNAワクチンがPD-L1発現を促すことでICIが腫瘍により付け入りやすくなるのではないかと考え、StageIII/IVの進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者2,406例や転移黒色腫患者757例などの記録を使ってその仮説を検証しました。予想どおり、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種から100日以内のNSCLC患者の腫瘍では、PD-L1がより発現していました。また、5千例強(5,524例)の病理報告の検討でもSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種とPD-L1を擁する腫瘍細胞の割合の55%上昇が関連しました。SARS-CoV-2 mRNAワクチンとICI治療効果の関連も予想どおりの結果となりました。ICIが投与されたNSCLC患者群のうち、その開始100日以内にSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種していた患者は、そうでない患者に比べて全生存期間(OS)がより長く(それぞれ1,120日と558日)、より多くが3年間を生きて迎えることができました(3年OS率はそれぞれ57.2%と30.7%)。一方、ICI非治療の患者の生存へのSARS-COV-2 mRNAワクチン接種の影響はありませんでした。黒色腫患者でも同様の結果が得られており、ICI治療開始100日以内のSARS-COV-2 mRNAワクチン接種はOS、無転移生存期間、無増悪生存期間の改善と関連しました。SARS-COV-2 mRNAワクチンはPD-L1発現亢進と黒色腫やNSCLC患者のICI治療後の生存改善と関連したとGrippin氏らは結論しています。Grippin氏らの研究はmRNAワクチンに的を絞ったものですが、昨年9月に中国のチームが報告した解析結果では、mRNA以外のSARS-CoV-2ワクチン接種とICI治療を受けたNSCLC患者の生存改善の関連が認められています2)。不活化ワクチン2種(BBIBP-CorVとCoronaVac)を主とするSARS-CoV-2ワクチンを接種してICI治療を受けたNSCLC患者は非接種群に比べてより長生きしました。中国からの別の2つの報告でもmRNA以外のSARS-CoV-2ワクチンのICIの効果を高める作用が示唆されています。それらの1つでは抗PD-1抗体camrelizumab治療患者2,048人が検討され、BBIBP-CorV接種と全奏効率(ORR)や病勢コントロール率(DCR)が高いことが関連しました3)。ただし年齢、性別、がんの病期や種類、合併症、全身状態指標(ECOG)を一致させたBBIBP-CorV接種群530例と非接種群530例のORRやDCRの比較では有意差はありませんでした。同じ研究者らによる翌年の別の報告では、抗PD-1薬で治療された上咽頭がん患者1,537例が調べられ、CoronaVac接種とORRやDCRの向上が関連しました4)。参考1)Association of SARS-COV-2 mRNA vaccines with tumor PD-L1 expression and clinical responses to immune checkpoint blockade / ESMO Congress 20242)Qian Y, et al. Infect Agent Cancer. 2023;18:50.3)Mei Q, et al. J Immunother Cancer. 2022;10:e004157.4)Hua YJ, et al. Ann Oncol. 2023;34:121-123.

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EGFR陽性NSCLCへのamivantamab+lazertinib、耐性変異の内訳は?(MARIPOSA)/ESMO2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のlazertinibの併用療法は、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」で報告されている1)。EGFR-TKIに対する耐性変異の主なものは、EGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅であるが、amivantamab+lazertinibの耐性変異に関する詳細は明らかになっていなかった。そこで、MARIPOSA試験におけるamivantamab+lazertinibの耐性変異に関する解析が実施された。フランス・パリ・サクレー大学のBenjamin Besse氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で本結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]全生存期間など 今回は、ami+laz群とosi群の試験治療終了となった患者を対象として、耐性変異の発現率を比較した結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・試験治療終了時の血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が得られたのは、ami+laz群119例、osi群155例であり、それぞれ113例、140例が対象となった。・EGFR遺伝子変異(C795S、L718X、G724X)による耐性獲得は、ami+laz群0.9%、osi群7.9%に認められ、MET遺伝子増幅による耐性獲得は、それぞれ4.4%、13.6%に認められた。いずれもami+laz群で有意に少なかった(それぞれp=0.014、0.017)・その他の耐性獲得変異の発現率は以下のとおりであった(ami+laz群、osi群の順に記載)。 HER2遺伝子増幅:7.1% vs.3.6% RAS/RAF遺伝子変異:9.7% vs.12.1% PI3K遺伝子変異:8.0% vs.8.6% 細胞周期関連遺伝子変異※1:13.3% vs.8.6% TP53/RB1遺伝子異常(欠失変異)※2:0.9% vs.2.9% ※1:CCNE1、CDKN2A、CDK4、CDK6、CCND2遺伝子 ※2:小細胞肺がん(SCLC)への形質転換と関連があるとされる遺伝子変異・2つ以上の耐性メカニズムに関する遺伝子変異は、ami+laz群27.8%、osi群42.6%にみられた。 Besse氏は、本結果について「ctDNAの解析において、amivantamab+lazertinib併用療法はEGFR遺伝子変異やMET遺伝子増幅による耐性獲得を減少させ、その他の耐性獲得変異の有意な増加はみられないことが示された。amivantamab+lazertinib併用療法は、SCLCへの形質転換と関連するTP53/RB1遺伝子異常(欠失変異)の発現率が低く、2つ以上の耐性メカニズムに関する遺伝子変異も少ない傾向にあった」とまとめた。

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ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、安全性の評価は?(ALINA)/WCLC2024

 切除可能なALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相試験「ALINA試験」では、術後補助療法としてアレクチニブを用いた場合、プラチナベースの化学療法を用いた場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている1)。この結果を基に、本邦でもアレクチニブの術後補助療法での使用が承認されているが、ALINA試験におけるアレクチニブの用量は600mg×2/日であり、本邦における進行・再発時の使用および術後補助療法の承認用量とは異なっている。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)がALINA試験の安全性について詳細データを発表した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ600mg(1日2回、2年間または再発まで) 130例・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例・評価項目:[主要評価項目]DFS[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS(CNS DFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・治療期間中央値はアレクチニブ群23.9ヵ月、化学療法群2.1ヵ月であり、アレクチニブ群の安全性追跡期間が長かった。・Grade3/4の有害事象(AE)の発現割合は、アレクチニブ群30%、化学療法群31%であり、Grade5のAEはいずれの群にも認められなかった。・AEにより減量、中断に至った患者の割合はそれぞれアレクチニブ群で26%、27%、化学療法群で10%、18%であった。・AEにより治療中止に至った患者の割合はアレクチニブ群で5%、化学療法群で13%であった。・アレクチニブ群で多く認められたAEは、CPK上昇(43.0%)、便秘(42.2%)、ASTもしくはALT上昇(43.8%)、血中ビリルビン上昇(39.1%)などであり、最初の発現までの期間中央値は投与1ヵ月以内が多かった。また、これらのAEの多くはグレードが低く、アレクチニブの投与中止には至らなかった。・安全性プロファイルは、進行・再発時の使用において報告されているものと同様であった。 堀之内氏は、アレクチニブ群の治療期間の長さとAEの発現割合、治療中止に至った患者の割合に触れたうえで、忍容性は良好で安全性プロファイルは管理可能なものであるとし、今回の結果を「DFS改善のベネフィットと併せて、術後補助療法としてのアレクチニブの使用が重要な新規標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

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緩和的鎮静に用いる薬剤【非専門医のための緩和ケアTips】第84回

緩和的鎮静に用いる薬剤「緩和的鎮静」とは、ほかの手段での苦痛緩和が難しく、意識レベルを低下させることでしか症状を和らげることができない場合に検討されるものです。その適応は慎重に議論される必要があります。では、実際に緩和的鎮静を実施する際には、何に注意すればよいのでしょうか?今回の質問肺がんの患者さんを訪問診療で担当していた時に、予後数日程度のタイミングで非常に呼吸困難が強い状態となりました。鎮静が必要と判断し、モルヒネの増量で対応したのですが、もっと良い対応があったのではないかと感じています。呼吸困難は在宅緩和ケアの継続を難しくする症状の1つであり、入院時でも鎮静をせざるを得ないことがしばしばです。そうした難しい症状の患者さんを終末期まで在宅で支えたこと、本当に頭が下がります。緩和的鎮静に用いられる薬剤の第1選択はミダゾラムです。日本緩和医療学会の『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』1)や各種書籍でもミダゾラムを推奨していることが多いですが、安全に使用できるのであれば、ほかのベンゾジアゼピンでも問題はありません。入手のしやすさや自分の慣れ具合も加味して選択します。さて、今回のご質問にある「モルヒネで鎮静」はどうなのでしょうか? これは実は「推奨されない」処方です。モルヒネはあくまでも“鎮痛”作用を期待して投与します。もちろん、投与量を増やせば“鎮静”作用も強まりますが、それは薬剤のメインの効果ではなく、副作用的な効果です。結果として副作用が懸念される投与量になる危険性があります。“鎮静”を主な薬理作用とするほかの薬剤がある中で、モルヒネを選択する理由がありません。緩和的鎮静を行うのは、症状が強く、厳密に意識レベルを見ながら投与量を調整しなければならない場面です。だからこそ、“鎮静”薬が推奨されるのです。同じ理由で、せん妄などに用いるハロペリドールなどの抗精神病薬を鎮静に使うことも推奨されません。緩和的鎮静では、「完全に意識を低下させて眠った状態」の前に、「意識を保ちながら、本人の許容できる程度に症状が軽減しないか試みる」ことが推奨されています。これは「調節型鎮静」と呼ばれ、鎮静薬を苦痛症状の程度に合わせて調整することに由来します。症状が和らいだ時点で意識が保てていれば、それ以上の鎮静薬投与は行いません。緩和的鎮静の目的は症状を和らげることであり、目的が達成されたのであれば、意識はあったほうが患者のQOLが保てる、という観点に基づいています。調節型鎮静はまだあまり知られていない方法なので、ぜひ前述した『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』中の「V章6 実際の投与方法と評価・ケア」の項に目を通してみてください。今回のTips今回のTips緩和的鎮静では、鎮静薬を調整して使うことが大切。1)日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会編. がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版. 金原出版;2023.

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日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性)・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]病理学的奏効(MPR)、画像判定による奏効率(ORR)、安全性など・解析計画:pCR率の90%信頼区間の下限値が10%を上回った場合に、主要評価項目を達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は71歳(範囲:53~82)、男性は78.8%(41例)であった。組織型は腺がん55.8%(29例)、扁平上皮がん42.3%(22例)、腺扁平上皮がん1.9%(1例)であり、T因子はT1bが15.4%(8例)、T1cが38.5%(20例)、T2aが46.2%(24例)であった。・52例全例が完全切除を達成した。・pCR率は23.1%(90%信頼区間[CI]:13.9~34.7)であり、主要評価項目を達成した。・MPR率は46.2%であった。・術前ニボルマブの画像判定によるORRは34.6%(CRは2例)であった。・追跡期間中央値33.7ヵ月時点において、3年無再発生存率は85.6%、3年全生存率は89.1%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、13.5%(7例)に発現した。死亡に至った有害事象は1例に認められたが、治療との関連は否定された。 津谷氏は、本研究結果について「主要評価項目を達成し、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。再発リスクの高いStage IのNSCLC患者に対するニボルマブ単剤による術前補助療法の安全性と有効性が示された」とまとめた。

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Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR exon20挿入変異」【肺がんインタビュー】第103回

第103回 Dr.光冨の肺がんキーワード解説「EGFR exon20挿入変異」肺がんではさまざまなドライバー変異が解明されている。それに伴い、種々の標的治療薬が登場する。それら最新の情報の中から、臨床家が知っておくべき基本情報を近畿大学の光冨徹哉氏が解説する。

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オンコマインDx、EGFRエクソン20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/サーモフィッシャ

 サーモフィッシャーサイエンティフィックは2024年9月10日、次世代シーケンシングコンパニオン診断システム「オンコマインDx Target Test マルチCDxシステム(オンコマインDx)」に関して、Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺がんに対するアミバンタマブと化学療法の併用療法」を対象としたコンパニオン診断システムとして、一部変更承認を取得したことを発表した。 この承認によりオンコマインDxは、非小細胞肺がんに対して8種類、甲状腺がんに対しては2ドライバー遺伝子、甲状腺髄様がんに対しては1ドライバー遺伝子の変異等を網羅するコンパニオン診断となった。非小細胞肺がん ●BRAF遺伝子V600E変異:ダブラフェニブ/トラメチニブ ●EGFR遺伝子変異(エクソン20挿入変異を除く):ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ ●EGFR遺伝子エクソン20挿入変異:アミバンタマブ ●HER2遺伝子変異:トラスツズマブ デルクステカン ●ALK融合遺伝子:クリゾチニブ、アレクチニブ、ブリグチニブ、ロルラチニブ ●ROS1融合遺伝子:クリゾチニブ、エヌトレクチニブ ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●MET遺伝子エクソン14スキッピング変異:カプマチニブ、テポチニブ甲状腺がん ●RET融合遺伝子:セルペルカチニブ ●BRAF遺伝子V600E変異:エンコラフェニブ/ビニメチニブ甲状腺髄様がん ●RET遺伝子変異:セルペルカチニブ

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オシメルチニブ耐性NSCLCへのamivantamab+化学療法、第2回OS中間解析(MARIPOSA-2)/ESMO2024

 オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、amivantamab+化学療法±lazertinibの併用療法は、化学療法単独と比べて無増悪生存期間(PFS)を改善したことが、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA-2試験」で報告されている。また、同時に実施された全生存期間(OS)の第1回中間解析において、amivantamab+化学療法の併用療法はOSも良好な傾向にあったことも報告されている1)。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、英国・Royal Marsden HospitalのSanjay Popat氏がOSの第2回中間解析の結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:オシメルチニブ単剤療法で病勢進行が認められたEGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者・試験群1(ALC群):amivantamab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)263例・試験群2(AC群):amivantamab+化学療法(同上)131例・対照群(C群):化学療法(同上)263例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価に基づくPFS(ALC群vs.C群、AC群vs.C群)[副次評価項目]全生存期間(OS)、症状進行までの期間(TTSP)、治療開始から後治療までの期間(TTST)、PFS2(後治療後のPFS)、安全性など[探索的評価項目]治療開始から中止までの期間(TTD)など・解析計画:OSの第2回中間解析は、75%のイベント発現時に実施することが事前に規定され、本解析の有意水準は両側α=0.0142であった。 今回は、AC群とC群の比較結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値18.1ヵ月時点におけるOS中央値は、AC群17.7ヵ月、C群15.3ヵ月であり、AC群が改善する傾向にあったが、今回の解析では統計学的有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.54~0.99、p=0.039)。18ヵ月OS率は、それぞれ50%、40%であった。・TTSP中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.8ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.73、95%CI:0.55~0.96、p=0.026[層別log-rank検定])。・TTD中央値はAC群10.4ヵ月、C群4.5ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.42、95%CI:0.33~0.53、p<0.0001[層別log-rank検定])。18ヵ月時点の試験治療継続率は、それぞれ22%、4%であった。・TTST中央値は、AC群12.2ヵ月、C群6.6ヵ月であり、AC群が長かった(HR:0.51、95%CI:0.39~0.65、p<0.0001[層別log-rank検定])。・PFS2中央値は、AC群16.0ヵ月、C群11.6ヵ月であり、AC群が良好であった(HR:0.64、95%CI:0.48~0.85、p=0.002[層別log-rank検定])。18ヵ月PFS2率は、それぞれ39%、27%であった。 Popat氏は、本結果について「第2回OS中間解析においても、amivantamab+化学療法は化学療法単独と比べてOSが良好な傾向がみられた。病勢進行後の評価項目についても、amivantamab+化学療法は化学療法単独と比べて、持続的な改善が認められた」とまとめた。なお、本試験は継続中であり、OSの最終解析が予定されている。

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限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、OS・PFSサブグループ解析(ADRIATIC)/ESMO2024

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験では、予防的頭蓋照射(PCI)の有無は問わず、cCRT時の放射線照射の回数も1日1回と1日2回が許容されていた。そこで、それらの違いによるOS・PFSへの影響を検討するサブグループ解析(post hoc解析)が実施された。本結果は、オランダ・アムステルダム大学のSuresh Senan氏によって欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で発表された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない)・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例・試験群2(デュルバルマブ+トレメリムマブ群):デュルバルマブ(同上)+トレメリムマブ(75mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 200例・対照群(プラセボ群):プラセボ 266例・評価項目:[主要評価項目]OS、RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS(いずれもデュルバルマブ群vs.プラセボ群)[副次評価項目]OS、RECIST v1.1に基づくBICRによるPFS(いずれもデュルバルマブ+トレメリムマブ群vs.プラセボ群)、安全性など 今回は、デュルバルマブ群とプラセボ群のOS・PFSのサブグループ解析の結果が報告された。報告された主な結果は以下のとおり。・PCIを受けたのはデュルバルマブ群54%、プラセボ群54%であった。cCRT時のプラチナ製剤は、シスプラチンがそれぞれ66%、67%、カルボプラチンがそれぞれ34%、33%であった。放射線照射の回数は、1日1回がそれぞれ73.9%、70.3%、1日2回がそれぞれ26.1%、29.7%であった。・PCIの有無別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(調整ハザード比[aHR]、95%信頼区間[CI])は以下のとおり。 【OS】 PCIあり:未到達vs.42.5ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.50~1.03) PCIなし:37.3ヵ月vs.24.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.52~1.02) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 PCIあり:28.2ヵ月vs.13.0ヵ月(aHR:0.72、95%CI:0.52~0.99) PCIなし:9.1ヵ月vs.7.4ヵ月(aHR:0.84、95%CI:0.61~1.15) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・cCRT時のプラチナ製剤別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットは、シスプラチンを用いた集団で小さい傾向にあったが、用いたプラチナ製剤による有意な交互作用は認められなかった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。 【OS】 シスプラチン:41.9ヵ月vs.34.3ヵ月(aHR:0.81、95%CI:0.60~1.08) カルボプラチン:未到達vs.33.4ヵ月(aHR:0.55、95%CI:0.35~0.87) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 シスプラチン:11.4ヵ月vs.9.7ヵ月(aHR:0.89、95%CI:0.67~1.17) カルボプラチン:27.9ヵ月vs.9.2ヵ月(aHR:0.60、95%CI:0.40~0.88) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・放射線照射の回数別にみたサブグループ解析において、OSとPFSに関するデュルバルマブ群のベネフィットはいずれのサブグループでも同様であった。各群のOS・PFS中央値(aHR、95%CI)は以下のとおり。 【OS】 1日1回:41.9ヵ月vs.26.1ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.55~0.96) 1日2回:未到達vs.44.8ヵ月(aHR:0.71、95%CI:0.42~1.18) ITT集団:55.9ヵ月vs.33.4ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.57~0.93) 【PFS】 1日1回:11.4ヵ月vs.7.8ヵ月(aHR:0.79、95%CI:0.61~1.03) 1日2回:38.7ヵ月vs.14.3ヵ月(aHR:0.73、95%CI:0.46~1.14) ITT集団:16.6ヵ月vs.9.2ヵ月(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)・Grade3/4の有害事象の発現率は、PCIありのサブグループがPCIなしのサブグループよりも高く、同様にカルボプラチンを用いたサブグループがシスプラチンを用いたサブグループよりも高かった。デュルバルマブの中止に至った有害事象の発現率は、いずれのサブグループでも同様であった。 Senan氏は、本結果について「LD-SCLC患者において、cCRT後のデュルバルマブによる地固め療法は新たな標準治療となることを支持するものである」とまとめた。

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NSCLCへの周術期デュルバルマブ、OS・DFSの改善は?(AEGEAN)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助化学療法に周術期デュルバルマブを上乗せすることで、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)を改善したことが、国際共同第III相試験「AEGEAN試験」のEFSの第1回中間解析およびpCRの最終解析において報告されている1)。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において、AEGEAN試験の事前に規定されたEFSの第2回中間解析、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)の第1回中間解析の結果が報告された。EFSの第2回中間解析においても、引き続きEFSの改善傾向がみられ、DFSの臨床的に意義のある改善が認められた。また、OSについても改善傾向がみられた。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏が、本研究結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIIA〜IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル) 400例・対照群(プラセボ群):プラセボ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル) 402例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくEFS、pCR[主要な副次評価項目]病理学的奏効、BICRに基づくDFS、OS 主な結果は以下のとおり。・EFSの第2回中間解析時点において、すべての患者が試験治療を終了していた。・術後補助療法を開始した患者のうち、デュルバルマブ群の68.6%(166/242例)、プラセボ群の63.7%(151/237例)が治療を完遂した。・EFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群30.0ヵ月であり、デュルバルマブ群で引き続き改善する傾向がみられた(層別ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88)。3年EFS率は、それぞれ60.1%、47.9%であった。・術前補助化学療法に用いたプラチナ製剤別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。シスプラチンを用いたサブグループにおけるEFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群45.0ヵ月であり(HR:0.85、95%CI:0.35~0.93)、カルボプラチンを用いたサブグループでは、それぞれ未到達、26.2ヵ月であった(同:0.75、0.57~0.97)。・術後補助療法の有無別にEFSを比較すると、術後補助療法を受けたサブグループでデュルバルマブ群のベネフィットが大きい傾向にあった。術後補助療法を受けたサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.62、95%CI:0.44~0.86)、術後補助療法を受けていないサブグループでは、それぞれ5.1ヵ月、5.2ヵ月であった(同:0.83、0.60~1.14)。・pCR達成の有無別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。pCR達成のサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.73、95%CI:0.22~3.28)、pCR未達成のサブグループでは、それぞれ41.2ヵ月、25.9ヵ月であった(同:0.81、0.64~1.03)。・DFS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.66、95%CI:0.47~0.92、層別log-rank検定のp=0.0137)。デュルバルマブ群でDFSが改善する傾向にあったが、本解析における有意水準は0.0123であり、統計学的有意差は認められなかった。3年DFS率は、それぞれ71.2%、61.4%であった。・OS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.89、95%CI:0.70~1.14)。デュルバルマブ群でOSが改善する傾向にあり、3年OS率は、それぞれ67.1%、63.9%であった。なお、本解析時点におけるOSの成熟度は35.3%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験期間全体ではデュルバルマブ群33.4%(134/401例)、プラセボ群33.4%(133/398例)に認められ、術後補助療法の期間中ではそれぞれ7.5%(20/266例)、3.5%(9/254例)に認められた。 Heymach氏は、本研究結果について「米国食品医薬品局(FDA)が切除可能なNSCLCの周術期の治療薬として承認したデュルバルマブが、切除可能なNSCLC患者の新たな治療選択肢の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。 本研究では、国際がん研究機関(IARC)による日本を含む185の国と地域対象の2022年のGLOBOCAN推定値を用いて、30種類のがんについて死亡率罹患率比(MIR、年齢調整死亡率/罹患率)を算定した。2050年の予測値については、人口動態予測を用いて計算された。労働年齢(15~39歳と40~64歳)および高齢者(≧65歳)に分類され、185の国と地域は人間開発指数(HDI)に基づき4分類された(低、中、高、非常に高)。 主な結果は以下のとおり。・2022年、世界の男性におけるがん罹患数は1,030万例、がんによる死亡数は540万例と推定され、罹患数と死亡数の約3分の2が高齢者(≧65歳以上)であった。・罹患数と死亡数でみると肺がんが最も多かったが、年齢層によって若干のばらつきがみられた(例:15~39歳では、罹患数は精巣がん、死亡数は白血病が最も多い)。・2022年、世界の男性におけるがんのMIRは54.9%と推定された。がん種別にみると甲状腺がんの7.6%から膵臓がんの90.9%までの範囲で、MIRが高かった3つのがん種は、膵臓がん、肝臓がん、食道がんであった。・MIRはHDIと逆相関しており、HDIが低い国で最も推定値が高く(73.5%)、HDIが非常に高い国で最も低かった(41.1%)。世界中の国と地域間でMIRに大きな差(約3倍)があり、ノルウェーの28.0%からガンビアの86.6%までの範囲であった(日本は32.7%)。・2050年までに世界の男性におけるがん罹患数は1,900万例に達すると予測され、2022年の推定値と比較して変化率は84.3%増となる。また、がんによる死亡数は1,050万例に達すると予測され、93.2%増となる。肺がんは引き続き最も一般的ながん種であり、罹患数と死亡数は2022年と比較して87%超の増加と予測された。・2022年から2050年の間に最も大きな増加が見込まれるがん種は、罹患数では中皮腫(105.5%増)、死亡数では前立腺がん(136.4%増)であった。・2022年から2050年の間にHDIの低い国や地域ではがんの罹患数と死亡数が2倍超(140%増)になると予測された一方、HDIの非常に高い国や地域では罹患数が50.2%増、死亡数が63.9%増と予測された。また、HDIが高いおよび非常に高い国・地域の15~39歳においては、罹患数と死亡数が約11%減少すると予測された。 著者らは、2022年に確認された男性におけるがん罹患数と死亡数の格差は、2050年までに拡大すると予測され、健康インフラの確保や国内外の協力、国民皆保険の推進などが極めて重要としている。

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近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門【大学医局紹介~がん診療編】

林 秀敏 氏(主任教授)三谷 誠一郎 氏(医学部講師)渡邉 諭美 氏(医学部講師)村岡 未沙子 氏(専攻医)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴われわれの理念は「がん患者さんの健康と幸福のためにすべてを行う」です。腫瘍に関わる内科診療をすべて自科で行います。肺、消化器、乳房、頭頸部、希少がんなど年間900例の新規患者さんを診療します。病棟は50床、化学療法目的は20%程度でほかは腫瘍救急や緩和ケア、ゲノム診療など内科的力量が鍛えられる環境となります。臨床、橋渡し、基礎研究(Mayoなどへの海外留学も!)も積極的に行っており、卒後10年以内でJAMA oncologyなど一流誌への筆頭著者としての論文発表も可能です。さまざまながんに対する治験も100以上行われており、われわれも研究者として名を連ねるNEJMやLancetなどにある新しい治療を先んじて経験可能です。文字通り、「すべてを行う」ことが可能な環境です。医師の育成方針専攻医は当初病棟にて腫瘍に関わる内科的診療や手技(実は手技が多いのも特徴です)を学びます。習熟度に応じて外来を1年目の下半期から開始とし、化学療法の決定、マネジメントをがん薬物療法専門医(国内大学最大数です)のサポートの元で行います。がんセンターはもちろん、大阪や関東など多くの基幹市中病院より当院で育成された腫瘍内科医が欲しい、という要望があり、実際に300~1,000床クラスの病院へ腫瘍内科を輩出してきました。オンオフははっきりしており、業務時間内はハードな勤務となりますが、いち早く「腫瘍内科医として1人で生きていける」ように支援します。医局における取り組み当科は、肺がん・消化器がん・乳がん・頭頚部がん・原発不明がんを中心として、さまざまな固形腫瘍を1つの科で臓器横断的に診療する点においては、日本で唯一無二と言っても過言ではありません。外来から入院まで途切れることなく診療に携わり、緩和医療にも関わる機会が多くあることも、当科の特徴と考えています。また、カンファレンスだけでなく、普段から若手の先生が質問、発言しやすい雰囲気づくりを心掛けています。医学生/初期研修医へのメッセージ実際に、上記のような点を、当科の魅力として捉えてもらって、本学内外を問わず、2024年度は6名の新入局員(専攻医5名)が加わり、来年度も複数名の先生を、新たな専攻医として迎える予定です。がん診療、とくに薬物療法の領域は、まだまだ発展途上の領域です。今後、ますます多くの仲間を加えて、がん診療の発展に貢献できればと考えています。当医局を選んだ理由私は元々臨床医を志していたのですが、この医局から新しいエビデンスが次々に生み出される様子を目の当たりにし、目の前にいる患者さんだけでなくこれからの患者さんによりよい治療を届けていくための研究の重要性を痛感し、自分も臨床だけでなく研究の側面でもがん治療に貢献していきたいと思い入局しました。医局の雰囲気、魅力産休・育休を二度経験しましたが、時短や日当直免除等その時々の状況に合わせて働き方を決めさせてもらっています。またオンラインカンファレンスを導入し、朝、子供の見送りがある医師が道中でも参加できるようになっています。男性医師も育休を取り、小さいお子さんがいる場合には8~16時といったフレキシブルな働き方も可能で、比較的自由度の高い職場であると感じています。カンファレンスは忌憚のない意見を言い合う雰囲気が良く、切磋琢磨しあえる環境があります。ぜひわれわれの医局に新しい風を吹き込みにやってきてください。当医局を選んだ理由私が腫瘍内科を志望したのは、絶えず進歩している抗がん剤治療を幅広く知りたいという気持ちがきっかけです。抗がん剤治療について調べる中で、近畿大学腫瘍内科の存在を知りました。そこでの多種多様ながん種に対する取り組みや豊富な臨床経験を持つ医師の層の厚さを見学の際に実感しました。その経験が決め手となって、入局を決意しました。現在学んでいること現在は、専攻医の1年目として肺がんや消化器がんをはじめとしたさまざまながん種の治療法や副作用マネジメント、緩和医療などを学んでいます。病棟業務から外来対応まで、多くの患者さんと接する機会があり、1人ひとりの異なるニーズに応えるのはとても難しいですが、上級医のサポートに助けられながら日々診療を行っています。この経験はこれから出会う患者さんへより良い医療を提供するための大きな財産になると思い、日々努力を重ねております。医学生/初期研修医へのメッセージ腫瘍内科に興味がある方には、ぜひ一度見学にお越しいただき当科での診療について、より具体的なイメージを持っていただければと思います。近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門住所〒589-8511 大阪府大阪狭山市大野東377-2問い合わせ先seiichiro.mitani@med.kindai.ac.jp医局ホームページ近畿大学医学部 内科学腫瘍内科部門専門医取得実績のある学会日本内科学会日本臨床腫瘍学会日本緩和医療学会日本呼吸器学会日本呼吸器内視鏡学会日本消化器病学会研修プログラムの特徴(1)臓器横断的な診療を、外来から入院まで主体的に担っており、緩和医療を実践する経験も豊富。(2)全国でも有数の治験実施施設であり、臨床研究が盛んであるだけでなく、橋渡し研究や基礎研究にも従事でき、学位取得も可能。希望者には海外留学を支援。(3)ライフワークバランスを考慮した勤務体制で、産休・育休取得も随時相談可能。

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EGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibはOS・PFS2も改善か/WCLC2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療について、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが報告されている1)。米国・Henry Ford Cancer InstituteのShirish Gadgeel氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)でMARIPOSA試験の最新の解析結果を発表した。本発表では、amivantamabとlazertinibの併用療法はPFS2(後治療開始後のPFS)、全生存期間(OS)を改善する傾向がみられた。また、効果は長期にわたって持続することが示唆された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のEGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性の進行・転移NSCLC患者・試験群1(ami+laz群):amivantamab(体重に応じ1,050mgまたは1,400mg、最初の1サイクル目は週1回、2サイクル目以降は隔週)+lazertinib(240mg、1日1回) 429例・試験群2(laz群)lazertinib(240mg、1日1回) 216例・対照群(osi群):オシメルチニブ(80mg、1日1回) 429例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づくPFS(ami+laz群vs.osi群)[副次評価項目]OS、PFS2、頭蓋内PFSなど 今回の報告は事前に規定された中間解析ではないが、保健当局の要求により解析が実施され、ami+laz群とosi群における治療開始から中止までの期間(TTD)、後治療開始までの期間(TTST)、頭蓋内PFS、頭蓋内奏効率(ORR)、頭蓋内奏効期間(DOR)、PFS2、OSの比較結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月)における追跡期間中央値は31.1ヵ月であり、ami+laz群の44%(185/421例)、34%(145/428例)が割り付け治療を継続していた。・ami+laz群の155例、osi群の233例が病勢進行により治療を中止した。そのうち、それぞれ72%(111/155例)、74%(173/233例)が後治療を開始した。・TTD中央値は、ami+laz群26.3ヵ月、osi群22.6ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.68~0.96、名目上のp=0.014)。・TTST中央値は、ami+laz群30.0ヵ月、osi群24.0ヵ月であり、ami+laz群が長い傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.65~0.93、名目上のp=0.005)。・頭蓋内PFS中央値は、ami+laz群24.9ヵ月、osi群22.2ヵ月であった(HR:0.82、95%CI:0.62~1.09、名目上のp=0.165)。・頭蓋内ORRは、ami+laz群77%、osi群77%であった。頭蓋内DOR中央値は、それぞれ未到達、24.4ヵ月であった。・PFS2中央値は、ami+laz群未到達、osi群32.4ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.73、95%CI:0.59~0.91、名目上のp=0.004)。・OS中央値は、ami+laz群未到達、osi群37.3ヵ月であり、ami+laz群が良好な傾向にあった(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、名目上のp=0.019)。3年OS率は、それぞれ61%、53%であった。

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切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。 本研究は、CheckMate 77T試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと4サイクル]→手術→ニボルマブ[4週ごと1年間])またはCheckMate 816試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと3サイクル]→手術)に参加した患者のIPDを用いて実施した。評価項目は根治手術後のEFSとした。解析には傾向スコアマッチングの手法を用い、平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の重み付け、治療群における平均処置効果(ATT:Average Treatment effect on the Treated)の重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate 77T試験に参加した139例(術前術後群)、CheckMate 816試験に参加した147例(術前群)が、今回の解析の対象となった。・根治手術後のEFSは、術前術後群が術前群と比較して良好であった。解析方法別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ATEの重み付け:0.61、0.39~0.97 ATTの重み付け:0.56、0.35~0.90 重み付けなし:0.59、0.38~0.92・根治手術後のEFSを病理学的完全奏効(pCR)の有無別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、pCR未達成のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 pCR達成:0.58、0.14~2.40 pCR未達成:0.65、0.40~1.06・根治手術後のEFSをPD-L1発現レベル別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、PD-L1<1%のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 PD-L1<1%:0.51、0.28~0.93 PD-L1≧1%:0.86、0.44~1.70・根治手術後のEFSをベースライン時のStage別にみると、全体集団と同様に術前術後群が良好な傾向がみられた。HRおよび95%CIは以下のとおり。 StageIB~II:0.53、0.25~1.11 StageIII:0.63、0.37~1.07・安全性は両群間で同様であった。Grade3~4の治療関連有害事象は術前術後群27%(38例)、術前群35%(52例)に発現し、中止に至った治療関連有害事象はそれぞれ6%(9例)、5%(8例)に発現した。

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75歳以上=高齢者は正しい?高齢者総合機能評価に基づく診療・ケアガイドライン

 2017年より日本老年学会・日本老年医学会の合同ワーキンググループが再検討・提言していた「高齢者」の定義が7年の時を経て、現行の65歳以上から“75歳以上を高齢者”とする動きにシフトしていく1)。しかし、患者を一概に年齢だけで判断し、治療時の判断基準にしてはいけない。その理由はこれと同時に発刊された『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』が明らかにしている。今回、ガイドライン(GL)作成代表者である秋下 雅弘氏(東京都健康長寿医療センター センター長)に本書の利用タイミングや活用方法について話を聞いた。いつ、どこで、誰がCGAする? 本GLの使い方(p.X)にも「明確な年齢上の区分は設けない。高齢者総合機能評価(CGA:comprehensive geriatric assessment)の最もよい対象は老年疾患や老年症候群を抱えて日常生活機能が低下した方であるが、必ずしも65歳以上とは限らない」と記載がある。同氏は「75歳以上が高齢者という定義を念頭に置きつつも、個々の生物学的年齢で判断することが重要。そのためにも機能低下がみられる成人の場合、75歳未満であっても本GLに掲載されている機能評価を使ってもらいたい」と個別化医療の観点から説明した。 CGAとは、疾患の評価に加えて日常生活活動度(ADL、基本的ADL・手段的ADL)、認知機能、気分・意欲・QOL、療養環境や社会的背景などを構成要素とし、評価/スクリーニングツールを使って系統的に評価する手法のことである。医療者であれば患者と接する際におのずと頭の中で意識していた内容が、構成要素として整理されたものだ。これを作成した目的について、同氏は「高齢者の状態に適した個別化医療やケアの提供のために利用するのはもちろん、高齢者の医療・ケアに関わる医師、医療者や介護福祉関係者が、多職種協働する際の共通言語となるように」と述べ、医療と介護福祉に携わる全職域が本GLの利用対象者であることを説明した。<CGAの構成要素とその主なツール>(1)スクリーニング(p.8~11)  CGA7、基本チェックリストなど(2)日常生活活動度(p.13~18)  ・基本的ADL:Barthel Index  ・手段的ADL:Lawton’s IADL、老研式活動能力指標(3)認知機能(p.19~26)  ・MMSE(Mini-Mental State Examination)、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、DASC-21、ABC認知症スケールなど(4)気分・意欲・QOL(p.27~35)  ・GDS(Geriatric Depression Scale)、意欲の指標(Vitality Index)  ・QOL:Short From(SF)-8など(5)社会的背景(p.36~47)  ・要介護認定、家族関係、自宅環境、財産、地域医療福祉資源など 患者へCGAの介入をするタイミングは、職種によって異なる。同氏は「医師であれば、初診時、入院時、退院前、病状の変化時など日常的に実施してほしい。看護師は入院、退院支援、訪問看護の導入、高齢者施設の入所・入居に際して、その他の専門職は療養環境の変化時に、薬剤師は処方見直しに際して実施してほしい」とし、「現場で利用する→多職種共通の言語になる→高齢者に最適な医療提供ができる→それぞれの診療科でも利用価値が高まるというように、臨床でのCGAのメリットを実感してもらいたい」と強調した。 その一方で、今回の改訂までに21年もの年月を要した経緯について、「実際のところ、高齢者一人ひとりを評価するには手間がかかり、マンパワーが必要なゆえ、現場に広がらなかった。CGAを行う場所も確保できなかった」と説明。現時点でも外来での診療報酬加算がなく、CGAを実践してもそれに対する評価がされないことから、CGA実践のハードルの高さは否めないという。疾患ごとの有用性 とはいえ、昨今ではさまざまなガイドラインがMinds診療ガイドライン作成マニュアルに則り作成されているが、それらを高齢者に対して有効活用するためには、目の前の患者の身体・精神機能が高齢者あるいは高齢者に準ずるのかどうかをCGAできちんと判断したうえで、治療にあたることが求められるようになるだろう。p.50 からは高齢者が罹患しやすい疾患や症候群の管理について、各論が記載されている(1.フレイル/低栄養 2.認知症 3.ポリファーマシー 4.Multimorbidity 5.糖尿病 6.高血圧、心疾患 7.[誤嚥性]肺炎 8.骨折 9.外科手術[周術期] 10.悪性腫瘍)が、たとえば糖尿病の場合、研究報告の結果のみならず、本邦の『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』との整合性も考慮し、高齢糖尿病患者の管理にCGAを用いることを提案する(エビデンスの強さ:D、推奨度:2)となっている。悪性腫瘍については、疾患管理において唯一、エビデンスの強さA、推奨度1で合意されている。この領域ではCGAをgeriatric assessment(GA)と称し、診断と並行して行うアセスメントツールとして用いているため、他の疾患領域と比較し、生存効果、有害事象、QOL、入院に関する結果が見いだされている。 方や、(誤嚥性)肺炎に至っては、“CGAの有用性はFRQ(future research question)とし今後の研究に期待する”と記されており、以前より老年疾患として注目のある領域でも有用性の違いが生じていた。 このような課題を残しての次回改訂について、同氏は「エビデンスがないRCTを中心にシステマティックレビューを行ったこともあるが、LIFE(介護保険データ)が集積されるとFRQという次のステップにいけるのではないか」とコメント。さらに、同氏の専門領域であるポリファーマシーについても、「薬剤師は当然ながら、ほとんどの医師にもポリファーマシーが認識されるようになった。しかし、患者さんにポリファーマシーの重要性が届いているかは疑問が残るため、医療費適正化も踏まえて医療従事者へのCGAの啓発を行っていきたい」と締めくくった。

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