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がん免疫療法ガイドライン第2版発刊【Oncologyインタビュー】第9回

がん免疫療法ガイドライン第2版が本年(2019年)3月に発刊された。第1版から2年3ヵ月のスピード改訂である。本版制作の実務を担った日本臨床腫瘍学会がん免疫療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ長である九州大学 馬場 英司氏に、第2版の改訂ポイントを聞いた。2年3ヵ月(第1版は16年12月、第2版は19年3月に発刊)という短期間で第2版を発刊されていますが、その背景について教えてください。このガイドラインの対象は主に免疫チェックポイント阻害薬で、それらを適正に使用することを目的にしています。この分野は新しい薬剤が次々に登場し、適応疾患も急速に拡大しています。そのため、早めの改訂を行いました。改訂の準備段階で、web版で出すか冊子として出すかを検討しました。当初は部分的なものを想定していましたが、実際に始めてみると改訂すべきボリュームがかなり多いことがわかり、web版ではなく第2版として冊子にしようということとなりました。第1版からの改訂ポイントはどのようなところでしょうか。全体の構成は第1版と同様です。1つ目が「がん免疫療法の分類と作用機序」、2つ目は「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」、最後に「がん免疫療法の癌種別エビデンス」という3つの大項目からなっています。まずがん免疫療法の概論、次に副作用の説明、最後に各臓器における免疫療法の使い方という組み立てです。1つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」は、全体的に大きく変わっていませんが、より詳細な記載になっています。2つ目の「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」については、各項目でボリュームが増しています。なかでも「15.心筋炎を含む心血管障害」については、頻度が高くないという理由から、第1版では独立させていませんでしたが、今回は新たな項目として独立させ、より詳細に記載しました。この分野は腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)と呼ばれ、がん治療、あるいはがんそのものによる循環器系の合併症対策として、腫瘍と循環器との連携の重要性についての認識が高まっています。免疫療法においてもこの分野は重要なものとなっています。3つ目の「がん免疫療法の分類と作用機序」で特徴的なことは「19.高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能の欠損(dMMR)を有する切除不能・転移性の固形癌」を加えたことです。このテーマは第2版作成当初から重要性に注目し、準備していました。MSI-H検査が保険診療で使えるようになったのは、この第2版が出る数ヵ月前(2018年12月)であり、タイミング良く載せられたと思います。このような臓器横断的な遺伝子変化を対象とした治療薬は今後もでてきますので、他学会と協力した取り組みも進めています。副作用対策も治療エビデンスも広範囲にわたります。貴学会内だけでなく、他学会のサポートもあったのでしょうか制作に関わっていただいたのは全部で23名です。適応がん種は幅広いので、日本臨床腫瘍学会のがん種横断的な先生方の協力をいただいています。また、他学会からの協力もいただいており、日本免疫学会から玉田耕治先生、日本臨床免疫学会から鳥越俊彦先生に代表として入っていただき、腫瘍循環器学の分野からは向井幹夫先生にご協力いただきました。医療者の方々に有効に活用いただくためのアドバイスをお願いします。免疫チェックポイント阻害薬は非常に期待されている薬剤である一方、従来の抗がん剤とはまったく異なる副作用が発現します。これらの有害事象を上手にマネジメントしないとせっかくの薬が有効活用できません。また循環器や内分泌など、腫瘍専門家に馴染みの少ない分野の有害事象への対応も必要となります。このガイドラインを活用し、さまざまな臓器の有害事象を頭に入れ、対策に役立てていただきたいと思います。そして、ガイドラインの活用と共に、他の専門家とのネットワーク構築などを進めていただければ、期待される薬剤をさらに有効に活用できると思います。

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がんゲノム医療始動!~がん遺伝子パネル検査保険適用へ~【Oncologyインタビュー】第8回

出演:聖マリアンナ医科大学 砂川 優氏、慶應義塾大学 西原 広史氏2019年6月、がん遺伝子パネル検査保険適用となった。がんゲノム連携病院で診療を行う砂川 優氏が、当該領域スペシャリストの西原 広史氏に、実臨床での疑問を問う。

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高齢者NSCLCの1次治療、カルボプラチン+ペメトレキセドがドセタキセルに非劣性/日本臨床腫瘍学会

 高齢者の進行期非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対しては、ドセタキセル単剤(DOC)が標準治療である。一方、カルボプラチン+ペメトレキセドからペメトレキセドの維持療法(CBDCA/PEM)は、その実用性から非扁平上皮NSCLCの1次治療として多く使われており、また高齢者の進行期非扁平上皮NSCLCの第II相試験においても有効性を示している。そのような中、徳島大学の軒原 浩氏らは、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会でCBDCA/PEMのDOC単剤治療に対する非劣性を検証するJCOG1210/WJOG7813L試験の結果を発表した。対象:化学療法未治療の75歳以上のStageIII/IVまたは術後再発非扁平上皮NSCLC試験薬:カルボプラチン(AUC5)+ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと4サイクル→ペメトレキセド(500mg/m2)3週ごと病勢悪化まで対照薬:ドセタキセル60mg/m2 3週ごと病勢悪化まで評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効割合(ORR)、症状スコア、有害事象などCBDCA/PEMの非劣性マージンは、ハザード比(HR)1.154に設定された。 主な結果は以下のとおり。・433例がドセタキセル群217例とCBDCA/PEM群216例に無作為に割り付けられた。治療対象は両群共に214例であった。・患者の年齢中央値は両群とも78歳、男性はCBDCA/PEM群57%とDOC群58%、StageIVが75%と76%、腺がんが98%と96%であった。・OS中央値はCBDCA/PEM群18.7ヵ月、DOC群15.5ヵ月(HR:0.850、95%CI:0.684~1.056、片側p<0.0029)と、予め設定された非劣性マージン(1.154)を達成し、CBDCA/PEMのドセタキセルに対する非劣性が証明された。・PFS中央値はCBDCA/PEM群6.4ヵ月、DOC群4.3ヵ月であった(HR:0.739:95%CI:0.609~0.896)。・ORRはCBDCA/PEM群36.8%、DOC群28.2%であった(p=0.0740)。・Grade3~4の好中球減少症の発現(46.3%対86.0%)および白血球減少の発現(28.0%対68.7%)はCBDCA/PEM群で低く、Grade3~4の血小板減少の発現(25.7%対1.4%)および貧血の発現(29.4%対1.9%)はCBDCA/PEM群で高かった。また、Grade3~4の発熱性好中球減少の発現(4.2%対17.8%)はCBDCA/PEM群で低かった。

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砂糖入り飲料、がんのリスク増大/BMJ

 砂糖入り飲料の消費は、全がんおよび乳がんのリスクを増加させ、100%果物ジュースも全がんのリスクと関連することが、フランス・パリ第13大学のEloi Chazelas氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2019年7月10日号に掲載された。砂糖入り飲料の消費は最近10年で世界的に増加しているという。砂糖入り飲料と肥満リスクには明確な関連が認められ、肥満は多くのがんの強力なリスク因子とされる。10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究 研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。 解析には、フランスで2009年にWebベースで登録が開始されたNutriNet-Santeコホートの2018年までのデータ(10万1,257例)を用いた。 砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料の消費の評価には、3,300項目の食品および飲料に関して、参加者の日常的な消費状況が記録されるようデザインされた反復的24時間食事記録法を用いた。飲料のタイプごとに、男女別の消費量をそれぞれ4段階に分けて解析した。 主要アウトカムは、飲料の消費と全がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの関連とした。競合リスクを考慮し、多変量で補正したFineとGrayのハザードモデルを用いて評価を行い、部分分布のハザード比(HR)を算出した。がん予防における修正可能なリスク因子である可能性 10万1,257例(平均年齢42.2[SD 14.4]歳)のうち、女性が7万9,724例(78.7%)を占め、男性は2万1,533例(21.3%)であった。飲料のタイプ別の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。 追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症した。内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。 砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。 砂糖入り飲料の消費は、前立腺がんおよび大腸がんとは関連がなかった。また、肺がんにも関連は認めなかったが(p=0.1)、統計学的検出力がきわめて低かった。 人工甘味料入り飲料の消費は、がんのリスクとは関連しなかったが、全サンプルに占める消費の割合が相対的に低かったことから、統計学的検出力が不十分であった可能性がある。 サブ解析では、100%果物ジュースの消費は全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)のリスクと有意な関連を示した。 著者は、「これらの結果は、他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、がん予防における修正可能なリスク因子である可能性が示唆される」と指摘している。

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ニボルマブ・イピリムマブによるNSCLC術前治療(NEOSTAR)/ASCO2019

 Stage I〜IIIの切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)の50%は再発する。そのような中、免疫チェックポイント阻害薬による術前治療の研究が数多く進行している。ニボルマブ・イピリムマブ併用による術前治療の有効性と安全性を評価する第II相NEOSTAR試験の追跡結果が米国臨床腫瘍学会年次総会(ACO2019)で発表された。・対象:切除可能Stage I~IIIA NSCLC(Single N2)患者・arm A:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(NI群)・arm B:ニボルマブ3mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(N群)・評価項目:[主要評価項目]N群とNI群のMPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下)[副次評価項目]毒性、周術期罹患率/死亡率、奏効率(ORR)、無再発生存期間、全生存期間など 主な結果は以下のとおり。・44例が登録され、ニボルマブ単剤(N)群とニボルマブ・イピリムマブ併用(NI)群に無作為に1対1で割り付けられた。・44例中41例(93%)が術前治療を完遂(N群96%、NI群90%)し、39例(89%)が手術を受けた(N群96%、NI群81%)。・ITTグループのMPRはN群17%(4/23例)、NI群33%(7/21例)であった。・手術実施例のMPRはN群19%(4/21例)、NI群44%(7/16例)であった。・ORRはN群22%(5/23例)、NI群19%(14/221例)であった。・頻度の高い治療関連有害事象は、疲労感(N群35%、NI群33%)、ざ瘡様皮疹(N群26%、NI群52%)などであった。

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アテゾリズマブによるNSCLC術前治療(LCMC3)/ASCO2019

 LCMC3試験は非小細胞肺がん(NSCLC)におけるアテゾリズマブ術前治療の第II相試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)では、有効性の中間解析結果(n=101)が報告された。・対象:StageIB、II、IIIA、および切除可能IIIBのNSCLC・介入:アテゾリズマブ(2サイクル)・主要評価項目:手術時MPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下)・副次評価項目:無病生存期間、全奏効率、全生存期間、バイオマーカー、有害事象 主な結果は以下のとおり。・中間解析における登録患者は101例、年齢中央値は65歳、非扁平上皮65%、Stage IIIA/B 46%(A39%/B7%)であった。・アテゾリズマブ治療2サイクル完遂率は95%(96例)、1サイクル完遂率は5%(5例)であった。・手術実施率は90例(89%)、有効性評価対象は77例(76%)であった。・有効性評価対象におけるMPRは19%(15/77例)、病理学的完全奏効(pCR)は5%(4/77例)であった。・MPRはPD-L1発現との関連はみられなかった。・Grade3~4の有害事象発現は29%(29例)、Grade5の発現は2%(2例)にみられた。

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高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。NEXTAC介入群と介入なしの対象群に130例の被験者を無作為に割り付け・対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 2以下で適切な臓器機能を持ち介護を要しない患者・介入群:1次治療開始とともに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー)と栄養カウンセリング、低強度在宅運動プログラム、身体活動計により測定された歩数に基づく身体活動量促進プログラムを医師のほか栄養士、理学療法士、看護師より成る多職種チームによる介入を行う・対照群:介入なし・評価項目:[主要評価項目]介護不要生存期間[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など わが国の15施設から130例の被験者を登録する。被験者を介入群と対照群に無作為に割り付け、無作為化から4回(登録時、4±2週、8±2週、12±2週)介入と評価を実施する。層別化因子は、PS(0~1対2)、原発がんの部位(肺と膵)、病期(Stage IIIとIV)、化学療法の種類(ドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ療法とその他)など。筆頭著者 三浦 理氏のNEXTAC-TWO試験についてのコメント がん治療、とくに非小細胞肺がんの世界ではドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療開発が非常に活発に行われている。それに伴い、長期生存が得られる症例が増えており、今後はQOLの改善、維持ということが重要視されるだろう。2019年、抗悪液質治療薬であるグレリン誘導体のアナモレリンが臨床導入される予定である。この薬剤は食欲改善効果と共に除脂肪体重増加効果はあるが、筋力の改善、増強は得られがたいことが臨床試験で示唆されている。今まで前向き試験で示されることができなかった多職種介入の有効性が本試験で示されれば支持療法の分野における大きな一歩であると考えられる。本試験はすでに症例登録は終了し観察期間に入っており、結果の公表が待たれる。

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ASCO2019レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介# LBA2 転移性ホルモン感受性前立腺がんにおけるエンザルタミドの生存期間延長効果Sweeney C, et al. J Clin Oncol 37, 2019米国臨床腫瘍学会(ASCO)は毎年Plenary sessionとして時代を変える結果となった臨床試験を4題選択し、学会3日目にほかのsessionは行わず、単独で最も収容人数の多い会場で演題発表を行う。泌尿器がんでこの名誉あるPlenary sessionに選ばれたのが、ENZAMET試験であった。エンザルタミドは、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)においてドセタキセル後でもドセタキセル前であってもプラセボと比較し生存期間(OS)の延長効果が示され、日本でも保険償還されている。2019年2月のASCO-GUでは、ARCHES試験の結果が報告され、転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)においての画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長効果が報告され、アビラテロン+プレドニゾロン療法と同様にホルモン感受性期での使用のメリットが示されていた。今回ASCO2019で報告されたのは、オーストラリア・ニュージーランドの臨床試験グループが主導する国際共同臨床試験で、mHSPCに対し非ステロイド系抗アンドロゲン薬 (NSAA)とエンザルタミドをランダム化比較し、OSの延長効果を検証するデザインであった。このENZAMET試験において観察期間中央値34ヵ月時点における中間解析が報告された。対象患者は、転移量(High/Low volume)、早期ドセタキセルの計画(あり/なし)、Performance status(0~1/2)、骨修飾薬(あり/なし)、合併症(少ない/多い)、施設で割り付け調整され、テストステロン抑制療法に加えて通常のNSAA(ビカルタミド、フルタミド、lilutamide)を行う群と、エンザルタミド160mgを行う群の2群に分けられた。ARCHES試験と異なりドセタキセルの併用が許容されており、約45%が併用していた。プライマリエンドポイントの3年OSは、NSAA群で72%、エンザルタミド群で80%であり、ハザード比(HR)0.67(95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)であった。セカンダリーエンドポイントの、PSA無増悪生存期間のHRは0.39(95%CI:0.33~0.47)であった。計画的に設定されたサブグループであるドセタキセルの併用群と非併用群の治療成績も発表され、非併用群では3年OSはNSAA群70%、エンザルタミド群83%(HR:0.53[95%CI:0.37~0.75])であったのに対し、併用群では75%と74%(HR:0.90[95%CI:0.62~1.31])であり、エンザルタミドの上乗せ効果は不明瞭であった。有害事象は、ドセタキセル併用なしでは倦怠感Grade2が3%から10%に増加する程度で、エンザルタミドの既報と大差はなかったが、ドセタキセルと併用した場合は知覚神経障害と爪の変化、流涙、倦怠感が増加した。この試験は、発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にもオンライン出版された。mHSPCの標準治療は、転移量の多いHigh volume症例では早期ドセタキセルとアビラテロン+プレドニゾロン療法のいずれかであったが、本試験により転移量の少ないLow volume症例も含めたmHSPCの新たな治療オプションが選択可能となった。# 5006 転移性ホルモン感受性前立腺がんに対するアパルタミドの無増悪生存期間延長効果Chi KN, et al. J Clin Oncol 37, 2019アパルタミドはアンドロゲン受容体拮抗薬として遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)の標準治療として、日本でも2019年3月に承認となった新規ホルモン製剤である。ASCO2019では、mHSPCにおいてプラセボと比較した二重盲検国際第III相試験であるTITAN試験の結果がOral abstract sessionで報告された。mHSPCの症例のうち、アンドロゲン抑制療法+プラセボ群は527例、アンドロゲン抑制療法+アパルタミド群は525例であり、High volume症例は両群とも60%程度含まれていた。プライマリエンドポイントは、rPFS(α=0.005)とOS(α=0.045)の2つ設定しており、今回はrPFSの最終解析とOSの中間解析であった。2年rPFS割合はプラセボ群48%、アパルタミド群68%であり、HR:0.48(95%CI:0.39~0.60、p<0.0001)と有意にアパルタミド群で良好な結果となった。OSの中間解析ではα<0.009で有効性ありと判断される解析計画であり、観察期間中央値約22ヵ月の現時点において、2年OS割合はプラセボ群74%、アパルタミド群82%、HR:0.67(95%CI:0.51~0.89、p=0.0053)であった。独立データモニタリング委員会は、盲検下での試験継続は倫理性に問題が生じると判断し、盲検解除とプラセボ群にクロスオーバーでのアパルタミド投与を推奨した。rPFSやOSのサブグループ解析から、本試験前のドセタキセルの有無や腫瘍量によらず、アパルタミド群に良好な結果であった。有害事象は、All gradeで皮疹8.5% vs.27%、甲状腺機能低下症1.1% vs.6.5%など、アパルタミド群で多い傾向はあったが、痙攣は0.4% vs.0.6%と両群で差はなく、健康関連QOLも2群の差は認められなかった。ENZAMET試験とTITAN試験は、ほぼ同じmHSPCを対象として新規アンドロゲン受容体拮抗薬の有効性が再現性をもって証明されたが、薬剤の使い分けを要する臨床像は明らかではない。# 4504 尿路上皮がん化学療法後のペムブロリズマブ維持療法の可能性Galsky MD, et al. J Clin Oncol 37, 2019尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ療法は、KEYNOTE-045試験の結果を受けてがん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がんに対し、日本でも2017年12月に承認された。1次治療のプラチナ併用療法は、シスプラチンの蓄積毒性の懸念から8サイクル程度までで終了することが一般的である。非小細胞肺がんでは、プラチナ併用療法後にペメトレキセドやエルロチニブを用いたswitch maintenance(1次治療で用いた薬剤から変更して維持療法を行うこと)の有効性が第Ⅲ相試験で示されており、今回の報告はその可能性を尿路上皮がんで評価したランダム化第II相試験である。転移性の尿路上皮がんを初回治療としてプラチナ併用療法を8コース以下で行い、病勢安定以上の効果を得ている症例を対象に、プラセボ群とペムブロリズマブ群にランダム化し、以後の治療を行った。プライマリエンドポイントはPFSであり、中央値は3.2ヵ月 vs.5.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~0.98]、p=0.038)と有意に腫瘍進行を遅らせた。何らかの重篤な有害事象が生じた症例は、プラセボ群35%、ペムブロリズマブ群53%であり、有害事象の増加は否めないが、生存期間の延長が可能となるかどうか、第III相試験での検証が待たれる有望な結果であった。# Poster Discussion 肉腫様腎がんの新たな治療戦略Brugarolas J. Poster Discussion 3rd June, 2019肉腫様腎がんは2~11%の割合でさまざまな組織型に混在し、淡明細胞がんと比較すると予後不良であり、既存の血管新生阻害薬の効果も限定的である。ASCO2019では、大規模第III相試験の追加解析が3報報告され、ポスターディスカッションが企画された。IMmotion151試験からアテゾリスマブ+ベバシズマブ療法(#4512)、CheckMate214試験からニボルマブ+イピリムマブ療法(#4513)、ハーバード大学の後方視解析(#4514)、KEYNOTE-426試験からペムブロリズマブ+アキシチニブ療法(#4500)の治療成績をレビューした。これらの比較第III相試験はいずれもスニチニブを対照群としており、PFSはIMmotion151試験では中央値8.3ヵ月 vs.5.3ヵ月(HR:0.52[95%CI:0.34~0.79])、CheckMate214試験では8.4ヵ月 vs.4.9ヵ月(HR:0.61[95%CI:0.38~0.97])、KEYNOTE-426試験では1年PFS割合で57% vs.26%(HR:0.54[95%CI:0.29~1.00])と報告された。OS中央値は、IMmotion151試験では21.7ヵ月 vs.15.4ヵ月(HR:0.64[95%CI:0.41~1.01])、CheckMate 214試験では31.2ヵ月 vs.13.6ヵ月(HR:0.55[95%CI:0.33~0.90])、KEYNOTE-426試験では未報告である。ハーバード大学からの後方視コホートでは、肉腫様腎がんで免疫チェックポイント阻害薬を使用した症例と使用しなかった症例のOSは、中央値24.5ヵ月 vs.10.3ヵ月(adjusted 0.43[95%CI:0.30~0.63]、p<0.0001)と報告されていた。奏効割合は、IMmotion151試験では全組織型で41%であったのに対し肉腫様腎がんでは59%、CheckMate 214試験では53%と75%、KEYNOTE-426試験では65%と72%と報告され、肉腫様腎がんでの免疫チェックポイント阻害薬併用療法の効果は全体集団よりインパクトが大きい可能性が示唆された。肉腫様腎がんではProgrammed death-ligand 1(PD-L1)の発現割合が高いことや、遺伝子ではSETD2やTP53、NF2、BAP1などの変異が多く、またTumor Mutation Burdenや遺伝子不安定性が高いことが過去に報告されており、これらの免疫チェックポイント阻害薬の効果が高まる要因となっていると考えられる。Brugarolas氏は未解決の問題として、肉腫様腎がんの最適な治療レジメンがどれか、肉腫様腎がんのみの前向き試験が必要かどうか、肉腫成分の比率は治療経過に影響を与えるか、免疫療法に効果を示すメカニズムに関してなど、さまざまな課題があるものの、肉腫様腎がんは免疫チェックポイント阻害薬のよい適応となるだろう、と結んだ。

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんのOSを有意に延長(CASPIAN)/AstraZeneca

 AstraZenecaは、2019年6月27日、進展型小細胞肺がん(SCLC)の1次治療を対象としたデュルバルマブの第III相CASPIAN試験で、主要評価項目である全生存率(OS)を達成したと発表。 CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療における無作為化オープンラベル多施設共同国際第III相試験。この試験では、化学療法単独とデュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)およびデュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法(上記と同様)とを比較しており、米国、欧州、南米、アジア、中東を含む22ヵ国、200以上の施設で実施されている。 独立データモニタリング委員会による中間分析では、デュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン)群は、化学療法単独に比べ主要評価項目であるOSを統計学的に有意に改善した。デュルバルマブ併用療法の安全性と耐容性は、これらの既知の安全性プロファイルと一致していた。 AstraZenecaは、今後の医学会での発表のために、今回のデータを提出するとしている。

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FoundationOne CDx、エヌトレクチニブのコンパニオン診断として承認/中外

 中外製薬は、2019年6月27日、遺伝子変異解析プログラムFoundationOne CDx がんゲノムプロファイルに関し、ROS1/TRK阻害剤エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)のNTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対するコンパニオン診断としての使用目的の追加について、6月26日に厚生労働省より承認を取得したと発表。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルは、NTRK融合遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3遺伝子と他の遺伝子の融合遺伝子)を検出することにより、エヌトレクチニブの適応判定補助を行う。エヌトレクチニブは、成人および小児の NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんに対する治療薬として本年6月18日に承認を取得している。 本プログラムは、米国のファウンデーション・メディシン社 により開発された、次世代シークエンサーを用いた包括的ながん関連遺伝子解析システムである。患者の固形がん組織から得られたDNAを用いて、324の遺伝子における置換、挿入、欠失、コピー数異常および再編成などの変異等の検出および解析、ならびにバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性の判定や腫瘍の遺伝子変異量の算出を行う。また、国内既承認の複数の分子標的薬のコンパニオン診断として、適応判定の補助に用いることが可能である。FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル、コンパニオン診断の適応 [EGFRエクソン19 欠失変異及びエクソン21 L858R変異]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ [EGFRエクソン 20 T790M変異]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:オシメルチニブ [ALK融合遺伝子]  がん種:非小細胞肺がん  関連する医薬品:アレクチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ [BRAF V600Eおよび V600K変異]  がん種:悪性黒色腫  関連する医薬品:ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ [ERBB2コピー数異常(HER2遺伝子増幅陽性)  がん種:乳がん トラスツズマブ [KRAS/NRAS野生型]  がん種:直腸・結腸がん  関連する医薬品:セツキシマブ(遺伝子組換え)、パニツムマブ(遺伝子組換え) [NTRK1/2/3融合遺伝子]  がん種:固形がん  関連する医薬品:エヌトレクチニブ

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IV期でも積極的な局所治療を?―オリゴメタ症例に対する治療戦略【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第8回

第8回 IV期でも積極的な局所治療を?―オリゴメタ症例に対する治療戦略1)Palma DA, et al. Stereotactic ablative radiotherapy versus standard of care palliative treatment in patients with oligometastatic cancers (SABR-COMET): a randomised, phase 2, open-label trial. Lancet. 2019;393:2051-2058.2)P Iyengar, et al. Consolidative radiotherapy for limited metastatic non-small-cell lung cancer: a phase 2 randomized clinical trial. JAMA Oncol. 2018 Jan 11.[Epub ahead of print]3)Gomez DR, et al. Local Consolidative Therapy Vs. Maintenance Therapy or Observation for Patients With Oligometastatic Non-Small-Cell Lung Cancer: Long-Term Results of a Multi-Institutional, Phase II, Randomized Study. J Clin Oncol. 2019;37:1558-1565.IV期NSCLCに対する局所治療(放射線照射や外科切除)は症状緩和が主な目的のため、無症状の時点で積極的に考慮される事はなかった。しかし近年、腫瘍量の少ない「オリゴメタ」に対する早期の局所治療が生存期間延長に寄与するのでは?という報告が相次いでいる。最近の主要な報告を概説する。1)についてSABR-COMET試験は欧州を中心に行われた無作為化第II相試験(SABR vs.経過観察)。「オリゴ」の定義は、転移巣が5つ以下(1臓器3個以下)で、全ての転移巣にSABR可能なもの。脳転移症例は除外されている。SABRは30-60Gy/3-8frs、状況によって単回照射も許容された。照射前後4週間の化学療法は休止が必須とされた。99例が登録され、乳がん・大腸がん・肺がんが各18例。16例登録された前立腺がんについては、14例がSABR群と偏りが大きい。登録症例の約80%は転移巣1~2個と、腫瘍量はかなり少なそう。主要評価項目であるOSはSABR群41ヵ月 vs.観察群28ヵ月と有意にSABR群で良好であった。PFSも12ヵ月 vs.6.0ヵ月とSABR群で良好であった。QOL評価としてFACT-Gが用いられているが、両群で有意差はなし(QOLが同等であった、というよりはFACT-GがQOL指標として適切でなかった可能性がある)。SABR群における治療関連死が3例(4.5%)に生じている(肺臓炎・肺膿瘍など)。2)について米国単施設における無作為化第II相試験(SABR vs.経過観察)。NSCLCのみ(遺伝子変異陽性例は除く)を対象とし、プラチナ併用後の維持療法にSABR追加の有無を比較している。免疫治療は含まれていない。「オリゴ」の定義は転移巣が5つ以下(肺・肝臓の転移は3個以内)とされ、未治療もしくは活動性の脳転移は不適格とされている。SABRは単回照射(21-27Gy)、26.5-33Gy/3frs、30-37.5Gy/5frs。状況によって、45Gy/15frsなども許容された。29例登録時点で有効中止となった(当初目標は36例)。主要評価項目であるPFSはSABR群9.7ヵ月 vs.3.5ヵ月。OSは未報告。治療関連死は認めなかったが、SABR群の4例(約30%)でgrade 3の有害事象を認めている(2例は呼吸器関連との事だが、詳細な情報は不明)。3)について米国を中心とした3施設での無作為化第II相試験。2016年にLancet Oncology誌に報告された内容のアップデート。NSCLCのみを対象とし、遺伝子変異陽性例は許容されている。「オリゴ」の定義は、転移巣が3つ以下。脳転移は既治療であれば適格。照射もしくは外科切除は無作為化時点で残存するすべての病変(原発巣を含む)に行われた。局所治療として外科切除を含んでいる点が前述した2つの試験と異なる。本試験も49例が無作為化された時点で有効中止となった(当初目標は94例)。主要評価項目であるPFSはSABR群14.2ヵ月 vs.4.4ヵ月。今回のアップデートで報告されたOSは41.2ヵ月 vs.17.0ヵ月。遺伝子変異以外の臨床背景(転移個数、初回化学療法の効果、N因子、脳転移の有無)はOSに影響せず。SABR群で4例(17%)がgrade 3以上の治療関連有害事象を発症している(食道炎2例(ともに入院が必要)、脾臓への照射に伴う貧血1例、肋骨骨折1例)。解説このところ、オリゴメタに対する臨床試験が立て続けにBig Journalに掲載されており、ニッチな対象ながら注目を集めている。ただ、いずれも様々な問題点を孕んでおり、現時点で日常臨床を変えるには至っていないというのが正直なところである。最も重要なポイントは「オリゴメタ」の定義・介入内容が試験によってまちまちであること。ちょうどJournal of Thoracic Oncology誌にオリゴメタに関するシステマティックレビューが掲載されているが(GiajLevra N, et al. J Thorac Oncol.2019 Jun 10. [Epub ahead of print])、この中でも定義の明確化(転移個数、臓器辺りの転移数のみならず、縦隔リンパ節の取り扱いも試験によって異なるとの事)が問題点として挙げられている。次に、これらはいずれも第II相試験であること、2)、3)は早期有効性中止となった試験ではあるが、主要評価項目はいずれもPFSであったことが挙げられる。1)はOSを主要評価項目としているものの、試験治療群に予後の良い前立腺がんが偏っていたり、乳がん、NSCLCについてもそのサブタイプが明確にされていないなどの問題がある(学会発表の際には前立腺がんを省いた解析が行われているようであるが、論文でははっきりしない)。最後に、IV期NSCLCでこの治療戦略を臨床導入する上での懸念事項を挙げる。IV期NSCLCの治療成績は近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤の導入によって飛躍的に向上した。今回紹介したオリゴメタに対する試験治療の成績は、これら新規薬剤の影響をほぼ受けていないにも関わらず非常に良好であり注目に値する。一方で、あくまで症状緩和・延命が最終目標であるにも関わらず、肺臓炎をはじめとする有害事象の増加は認容性に疑問を残す(新規薬物療法の多くが毒性が比較的軽いことと対照的)。進行期肺がんにおける積極的な局所治療はこれまでさまざまな点で失敗してきた。進展型SCLCでは予防的全脳照射は定期的な頭部画像検査に劣るという結果であったし(Takahashi T, et al. Lancet Oncol.2017; 18:663-671.)、III期NSCLCにおける化学放射線療法で検討された線量増加は、第II相試験では非常に有望視されたにも関わらず第III相試験では無効中止という結果に終わった(RTOG0617試験)。とくに放射線治療に関しては、参加施設が大幅に拡大される第III相試験においてこういった状況が得てして起こりうるようである。オリゴメタに対する局所治療戦略を成功させるためには、臨床医の納得しうる対象集団の定義づけ・適切な対照群設定(ランダム化)が重要と思われる。なお海外では既に第III相試験が開始されており、この結果が今後の標準治療を決めるのみならず、対象集団の定義についても重要な方向性を示すと思われる。

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ロズリートレク:NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん治療薬

国内で2番目となるがん種を問わない抗がん剤の登場ROS1/TRK阻害薬ロズリートレクは、成人および小児のNTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がんを対象とする臓器横断的ながんの分子標的薬であり、2019年6月、世界に先駆けて日本で製造販売承認を得た。本薬は、先駆け審査指定制度対象品目、希少疾病用医薬品の指定を受けていた。希少かつ臓器横断的に発生するNTRK融合遺伝子NTRK融合遺伝子は、NTRK遺伝子(NTRK1、NTRK2、NTRK3、それぞれTRKA、TRKB、TRKC蛋白質をコードする)と、他の遺伝子(ETV6、LMNA、TPM3など)が染色体転座を起こした結果として、融合して発現する異常な遺伝子である。NTRK融合遺伝子からつくられる融合TRKにより、がん細胞の増殖が促進されると考えられている。NTRK融合遺伝子の発生はきわめてまれであるが、成人や小児のさまざまな固形がんや肉腫などで確認されている。これまでにその発生が確認されたがん種としては、乳児型線維肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫、びまん性橋グリオーマ、先天性中胚葉性腎腫、悪性黒色腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)、子宮肉腫、その他の軟部腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、乳腺分泌がん、唾液腺分泌がん、原発不明がん、肺がん、大腸がん、虫垂がん、乳がん、胃がん、卵巣がん、甲状腺がん、胆管がん、膵臓がん、頭頸部がんなどが挙げられる。NTRK融合遺伝子陽性固形がんにおける奏功が認められるロズリートレクは、ROS1(c-rosがん遺伝子1)およびTRK(神経栄養因子受容体)ファミリーを強力かつ選択的に阻害する経口チロシンキナーゼ阻害薬であり、脳転移巣への効果も示唆されている。本薬は、ROS1およびTRKキナーゼ活性を阻害することにより、ROS1またはNTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制する。また、本薬は、前治療後に病勢進行、または許容される標準治療がないNTRK融合遺伝子陽性の局所進行または遠隔転移を有する成人および小児の固形がんに対し、米国食品医薬品局(FDA)より画期的治療薬(breakthrough therapy)に、欧州医薬品庁(EMA)によりPRIME(PRIority MEdicines)に指定されている。今回の承認の根拠となったのは、主に非盲検多施設国際共同第II相臨床試験であるSTARTRK-2試験の成績である。本試験は、臓器を問わないバスケット試験として、NTRK融合遺伝子陽性固形がんの成人患者51例を対象に行われ、主要評価項目である独立評価委員判定による奏効率は56.9%(95%信頼区間: 42.3〜70.7)であった。また、小児の有効性評価は海外の第Ⅰ/Ⅰb相臨床試験であるSTARTRK-NG試験に登録されたNTRK融合遺伝子陽性の固形がん患者5例で行われ、主治医判定により4例(完全奏効1例[3歳の類表皮性膠芽腫]、部分奏効3例[4歳の高グレード神経膠腫、4歳の悪性黒色腫、4歳の乳児型線維肉腫])で奏効が得られた(残りの1例は0歳の乳児型線維肉腫で、判定は安定)。今後のNTRK融合遺伝子陽性進行・再発固形がん診療への期待ロズリートレクの登場は、治療選択肢の少ない希少ながん種に、新たな治療戦略をもたらす。本薬の製造販売元である中外製薬は、同社の次世代シークエンサーを用いた網羅的がん関連遺伝子解析システム「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」について、本薬のコンパニオン診断としての使用目的の追加に関する承認を取得している。今後、このような網羅的ゲノムプロファイリングの普及を通じて、がん領域におけるより高度な個別化医療がさらに進展すると考えられる。

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デュルバルマブの肺がんCCRT維持療法、3年後も一貫した効果(PACIFIC)/ASCO2019

 化学放射線同時併用療法(CCRT)を受けた切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第III相PACIFIC試験において、デュルバルマブは無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の有意な改善を示した。本年の米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)では、PACIFIC試験の3年OSデータが発表された。・対象:CCRT後に進行していない切除不能StageIII NSCLC患者・試験群:デュルバルマブ10mg/kg、2週ごと12ヵ月(473例)・対照群:プラセボ、2週ごと12ヵ月(236例)・評価項目:[主要評価項目]盲検独立中央評価委員会(BICR)判定によるPFS、OS[副次評価項目]死亡または遠隔転移までの時間、2回目の進行までの時間、安全性などCCRTの1~42日後に、被験者はデュルバルマブとプラセボに2対1に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間の中央値は33.3ヵ月。・データカットオフ時(2019年1月31日)の死亡患者はデュルバルマブ群44.1%、プラセボ群56.5%であった。・最新のOS中央値はデュルバルマブ群未達(38.4~NR)、プラセボ群29.1ヵ月(22.1~35.1)と、以前の報告と一貫していた(HR:0.69、95%CI:0.55~0.86)。・12ヵ月OS率はデュルバルマブ群83.1%、プラセボ群74.6%、24ヵ月OS率は66.3%対55.3%、36ヵ月OS率は57.0%対43.5%であった。・後治療は、デュルバルマブ群の43.3%(9.7%が免疫療法)、プラセボ群の57.8%(26.6%が免疫療法)が受けていた。 著者らは、PACIFIC試験の最新OSデータは、CCRT後デュルバルマブの長期臨床的有益性を強調し、さらにこの集団における標準治療としてのPACIFICレジメンを確立するものだとしている。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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非扁平上皮NSCLCへの維持療法、Bev対Pem対Bev+Pem(ECOG-ACRIN 5508)/ASCO2019

 進行非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者における維持療法として、ベバシズマブ、ペメトレキセド、およびその併用の3群を比較した第III相ECOG-ACRIN 5508試験の結果を、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、米国・Winship Cancer Institute of Emory UniversityのSuresh Ramalingam氏が発表した。・対象:全身療法歴のない、ECOG PS 0~1の進行非扁平上皮NSCLC患者(カルボプラチン・パクリタキセル・ベバシズマブ併用3週ごと4サイクルの導入療法実施後、CR/PR/ SDとなった患者が、維持療法として、ベバシズマブ群とペメトレキセド群、ベバシズマブ・ペメトレキセド併用群に1:1:1の割合で無作為に割り付けられた)・試験群:ペメトレキセド3週ごとPDまで(Pem群)ベバシズマブ+ペメトレキセド3週ごとPDまで(Bev+Pem群)・対照群:ベバシズマブ3週ごとPDまで(Bev群)・評価項目:[主要評価項目]無作為化後の全生存期間(OS)[副次評価項目]無作為化後の無増悪生存期間(PFS)、RECIST1.1による奏効率(RR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・導入療法後、874例が3群に無作為化された(Bev群287例、Pem群294例、Bev+Pem群293例)。年齢中央値:64歳、男性:49%、ECOG PS1:55%。ベースライン特性は、3群でバランスがとれていた。・治療サイクル数の中央値はBev群およびPem群で6サイクル、Bev+Pem群8サイクルであった。無作為化後の追跡期間中央値は50.6ヵ月。・無作為化後のOS中央値はBev群14.4ヵ月に対し、Pem群15.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.70~1.07、p=0.12)、Bev+Pem群16.4ヵ月(HR:0.90、95%CI:0.73~1.12、p=0.28)。・無作為化後のPFS中央値はBev群4.2ヵ月に対し、Pem群5.1ヵ月(HR:0.85、95%CI:0.69~1.03、p=0.06)、Bev+Pem群7.5ヵ月(HR:0.67、95%CI:0.55~0.82、p<0.001)。・維持療法のRRはBev群13%、Pem群19%、Bev+Pem群21%であった。・維持療法におけるGrade3以上の有害事象は、Bev群29%、Pem群37%、Bev+Pem群50%と併用群で多い傾向がみられた。Pem群およびBev+Pem群で多くみられたのはリンパ球減少症(1%、5%、8%)、好中球減少症(1%、7%、11%)、血小板減少症(0%、3%、4%)など。Bev群で多くみられたのはタンパク尿(4%、1%、3%)、高血圧(16%、5%、19%)であった。 これらの結果を受けてRamalingam氏は、併用群では、Bev群と比較してPFS中央値を延長したものの、OS中央値は有意な差が認められなかったと結論付けている。

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1人でも多くの人に正しい理解を―『がん悪液質ハンドブック』発信。シリーズがん悪液質(3)【Oncologyインタビュー】第7回

昨今、がん悪液質に関しては認知度が徐々に高まっているが、決定打となる治療方針はないのが実情である。そのような状況下で日本がんサポーティブケア学会は、2019年3月より、同学会監修によるガイドブックのダイジェスト電子版を学会HPで公開している。こうした取り組みについて、同学会で作成の実務を担当した、静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科の内藤 立暁氏に聞いた。―まず『がん悪液質ガイドブック』電子版作成の経緯を教えていただけますか。がん悪液質に関するガイドライン、治療指針は、欧州のEuropean Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)によるガイドラインを除くと、世界的にもほとんどないのが現状です。日本では日本緩和医療学会、日本静脈経腸栄養学会などの関連ガイドラインの中で一部言及がある程度で、やはりまとまったマニュアル、ガイドラインはありませんでした。こうした中、日本がんサポーティブケア学会(JASCC)代表理事である田村 和夫先生(福岡大学医学部 総合医学研究センター 教授)から、最新研究をまとめた英文学術書『Cancer cachexia: mechanisms and progress in treatment(がん悪液質:機序と治療の進歩)』(著者:Egidio Del Fabbroら)の翻訳書を学会から発行しようという提案があり、そこから、学会内に高山 浩一先生(京都府立医科大学 呼吸器内科 教授)を部会長としたJASCC Cachexia部会で翻訳が始まりました。その結果、学会監修で『がん悪液質:機序と治療の進歩』が発刊されましたが、非常に膨大なものなので読み切ることは難しく、コンパクトにまとめたものが欲しいとの要望がありました。その要望にお応えしたのが、2019年3月にJASCCより発刊された全16ページの『がん悪液質ハンドブック』(以下ハンドブック)です。―ハンドブック作成の目的、無料の電子版を公表した意図を教えていただけますか。ハンドブックを作成した目的は大きく3つあります。1つ目は、がん悪液質の正しい理解を広め、社会の認知度を高めることです。臨床現場では「がん悪液質は終末期の緩和病棟などで起こる症状」という誤った固定概念が根付いてしまっています。しかし最近、がんの種類によっては、手術で治癒が見込める症例であっても、術前の体重や骨格筋の減少が術後転帰を悪化させることが報告されています。つまり進行がんだけでなく、治癒可能な早期のがんでも悪液質はすでに共存しているのです。この事実を医療従事者が広く知り、イメージを変えてもらいたいのです。2つ目は、医療従事者に、がん患者さんの体重への関心を高めていただくことです。がん悪液質の診断には体重測定が重要ですが、がん治療を専門とする医療機関であっても、定期的な体重測定の習慣が根付いていないことが少なくありません。がん患者さんの体重減少の重要性が認知されていないのです。体重を定期的に測定することによって、医療従事者にも患者さんにも栄養状態の変化に関心を持っていただきたいのです。3つ目の目的は、医師以外の医療従事者にも気軽に読んでいただき、多職種の連携に役立てていただくことです。ハンドブックでも述べたように、がん悪液質の治療は医師の力だけでは難しいのです。栄養士の栄養管理、理学療法士による運動療法、看護師の生活指導、薬剤師の薬剤管理、心理療法士の心理介入など、がん悪液質の治療には多職種の協力が不可欠です。そのため、内容を絞り込み、図説を多用することで、多くの職種の皆さんに受け入れやすいハンドブックとなるよう心がけました。―ガイドブックの内容について簡単にご説明ください画像を拡大する内容は3章立てで、第1章ではがん悪液質がどのような症状で、臨床転帰にどのような影響を及ぼすかを解説しています。それは、がん悪液質は生命予後に影響するという大枠はもちろんのこと、悪液質があれば、化学療法の効果減弱と副作用増加を引き起こし、結果として治療の継続性に関わる疾患であるという点です。また、筋肉量の減少に伴う体重低下と食欲の低下は、外見の変貌なども相まって外出・外食を控える、その結果、家族との軋轢が生じるなど、心理面の影響も大きいのです。加えて、前述のEPCRCガイドラインで示されている悪液質のステージも紹介しています。このステージ分類では「前悪液質」→「悪液質」→「不応性悪液質」という段階を踏み、すでに「前悪液質」で集学的介入の必要性があることをうたっています。前述した悪液質に対する誤ったイメージは、「不応性悪液質」と呼ばれる最終段階のみを悪液質だと思い込んでいるためではないかと考えられます。画像を拡大する第2章では、悪液質の症状と現在わかっているそのメカニズムを解説しています。骨格筋減少では慢性的炎症とそれに伴うサイトカインの分泌物が特殊な代謝状況を引き起こしていること、また脂肪組織から分泌され食欲を抑えるホルモン「レプチン」と、胃から分泌され食欲を増進するホルモン「グレリン」のバランスが治療の鍵を握ることなど、図解を用いて説明しています。第3章では、現在までにわかっている各種治療の実態を解説しています。早期診断・早期介入の必要性、薬物だけでなく栄養、運動、社会心理面など、集学的介入の必要性を示しています。要は、がん悪液質の治療はどこか1つのスイッチを押せばよいというのではなく、多職種連携のもとで集学的に取り組む必要性があることが、この章でお伝えできればと思います。また、新規に開発されている薬物療法も紹介しています。―臨床現場でどのような活用を期待していますか?まずは病棟や外来で設置や配布し、看護師、薬剤師、理学療法士など多くの医療従事者に目を通していただき、がん悪液質の認知を広めてほしいということに尽きます。患者さんに見ていただいても差し支えないとも思っています。患者さんにとってはやや難しい内容かもしれませんが、「がん悪液質」という病名とその概要を大まかに知っていただき、医療スタッフと体重についてお話するきっかけになるかもしれません。医療現場でこのような対話が増えることが、がん悪液質の早期発見と早期治療の鍵となると考えています

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局所進行非小細胞肺がん、予防的全脳照射のメリットは?/JAMA Oncol

 非小細胞肺がん(NSCLC)患者への予防的全脳照射(PCI)は有益か無益か。カナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのAlexander Sun氏らは、RTOG 0214試験の最新の長期追跡結果より、治療後の病勢進行を認めないStageIIIの局所進行NSCLC(LA-NSCLC)患者において、PCIは5年および10年脳転移率を低下し、5年および10年無病生存期間(DFS)を改善したが、全生存期間(OS)は改善しなかったことを報告した。ただし、結果を踏まえて著者は、「主要評価項目を達成できなかったが、今回の長期結果は将来の研究に役立つ多くの重要な知見をもたらした。PCIが適切な患者集団と安全な介入を特定することが重要である」とまとめている。LA-NSCLCは脳転移率が高く、PCIは脳転移率を低下することは示されているが、OSを改善するかは不明であった。JAMA Oncology誌オンライン版2019年3月14日号掲載の報告。 RTOG 0214試験は、米国、カナダ等の291施設で実施された国際共同無作為化第III相臨床試験。 StageIIIのLA-NSCLC患者340例を、Stage(IIIA vs.IIIB)、組織型(非扁平上皮がん vs.扁平上皮がん)および手術の有無(手術なし vs.手術あり)で層別化してPCI群と経過観察群に無作為に割り付けた。 主要評価項目はOS、副次評価項目はDFSおよび脳転移率であった。 主な結果は以下のとおり。・340例の患者背景は平均年齢61歳、男性213例、女性127例、追跡期間中央値は全例で2.1年、生存例で9.2年であった。・PCI群のOSは、経過観察群と比較して有意な改善は認められなかった(5年生存率:24.7% vs.26.0%、10年生存率:17.6% vs.13.3%、HR:0.82、95%CI:0.63~1.06、p=0.12)。・DFSは、PCI群が経過観察群より有意に良好であった(5年DFS:19.0% vs.16.1%、10年DFS:12.6% vs.7.5%、HR:0.76、95%CI:0.59~0.97、p=0.03)。・脳転移率はPCI群が経過観察群より有意に低く、PCIは脳転移リスクを57%減少させた(16.7% vs.28.3%、HR:0.43、95%CI:0.24~0.77、p=0.003)。・若年者(<60歳)および非扁平上皮がん患者で、脳転移率が高かった。・多変量解析の結果、PCIは脳転移およびDFSの改善と関連していたが、OSの改善は示されなかった。

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オンコマインは4つのドライバー遺伝子を同時測定するコンパニオン診断システム

 肺がん治療においては、現在、4つのドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)に対して分子標的薬が承認されている。6月1日、これら4つのドライバー遺伝子を少量の検体で同時に測定できるコンパニオン診断システム「オンコマイン Dx Target Test マルチCDxシステム」(以下オンコマイン)が保険収載された。6月10日に開催されたメディアセミナー(サーモフィッシャーサイエンティフィック/ノバルティス ファーマ共催)で、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院呼吸器内科長/サポーティブケアセンター長)が有効な治療薬を患者さんに届けることの重要性を強調した。ゲノム医療=遺伝子解析ではない! オンコマインの保険収載と同じ日に、がん遺伝子パネル検査であるFoundationOne CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬)およびOncoGuide NCCオンコパネルシステム(シスメックス)も保険収載された。後藤氏は、一部のマスメディアがこれらの保険収載を報道する際に、遺伝子解析をすることがゲノム医療であるように報道していることについて、「ゲノム医療(「個別化医療」「Precision Medicine」とほぼ同義)とは、遺伝子解析に基づいて有効な治療薬を患者に届けることであり、遺伝子解析=ゲノム医療ではない。遺伝子検査ができても有効な治療薬が届かなければ、ゲノム医療とは言えない」と指摘した。オンコマインはコンパニオン検査、プロファイリング検査との違いは? 次に、遺伝子検査を理解するうえで知っておくべき重要なキーワードとして、後藤氏はコンパニオン検査とプロファイリング検査の2つを説明した。 コンパニオン検査は、治療薬と1対1対応になっており、陽性になれば承認された有効な治療薬が投与可能になる検査である。一方、プロファイリング検査とは、標準治療の完了後にさらなる治療の可能性を求めて行う検査で、治療は主に未承認薬である(臨床試験)。オンコマインは前者であり、がん遺伝子パネル検査であるFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルおよびOncoGuide NCCオンコパネルシステムは後者である。後藤氏は「後者がゲノム医療の主体であるかのような報道があるがそうではなく、主体はコンパニオン検査であることを認識してほしい」と訴えた。 なお、オンコマインはがん遺伝子パネル検査とは異なり、がん診療を実施しているすべての医療施設で使用できる。 検査費用は、オンコマインは11万7,000円、がん遺伝子パネル検査はいずれも56万円(検査実施料8000点、検査判断・説明料4万8000点)である。後藤氏は、がん遺伝子パネル検査で遺伝子変異が判明しても、臨床試験に登録されていて治療が可能になるのは約5%しかないことを指摘し、「5%しか治療に結び付かない検査を国民皆保険制度の中で保険収載して、税金で賄っていくことについて、もっと検討すべきではないか」と見解を述べた。オンコマインは46種類の遺伝子検査が可能だが、4つのドライバー遺伝子のコンパニオン検査として承認 オンコマインは次世代シーケンスを用いた遺伝子パネル検査で、46種類の遺伝子検査が可能である。そのうち4つのドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)の薬剤適応判定補助の目的で承認された。原則、この4種類の遺伝子の測定結果のみがレポートされ、残りの42種類については、医師から申し出があった場合に限り、例外的に参考情報として返却されるという。 現在、進行肺がんの治療開始前には、これらの4つのドライバー遺伝子を診断することが必須となっている。従来は別々に検査しなければならなかったが、オンコマインにより1回でまとめて検査できるようになり、短期間で検査できる。また、個々に遺伝子検査をすると最大33枚の標本スライドが必要であるが、オンコマインでは2~9枚で解析できる。後藤氏らの施設では、標本スライドをわずか2枚用いるだけでも約50%が解析可能であったという。 講演中、後藤氏はたびたび、患者さんに有効な治療薬を届けることの重要性を強調した。現在、治療薬が承認されている遺伝子変化を、少ない検体量と短い期間で、どの医療施設でも検査できるオンコマインによって、より早く、有効な治療薬が届くことが期待される。

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