サイト内検索|page:5

検索結果 合計:2179件 表示位置:81 - 100

81.

お腹の張りも奥が深いのです【非専門医のための緩和ケアTips】第111回

お腹の張りも奥が深いのです「お腹の張り」を訴える患者さん、内科診療をしている方であればしばしば遭遇するでしょう。皆さんはこうしたケースにどのように対応していますか? ちょっと曖昧な訴えにも感じられ、ついつい便秘と決めがちではないでしょうか。今回の質問肝臓がんでお腹の張りを訴える患者さんがいます。毎日というわけではないですが排便はあるようで、腹水が原因かと思っています。ただ、そこまで緊満しているわけではなく、対応を悩んでいます。これは腹水が溜まっている患者さんなどでよく遭遇する状況かと思います。患者さんの訴えも曖昧で、詳しく聞いてみても「とにかくお腹が張ってつらいんです」といった訴えが続くこともよくあります。緩和ケアは高齢患者も多く、詳細な情報収集が難しいのはよくあることなので、診察や検査といった客観的な情報と総合して、アプローチを考えるのが基本です。こういった時、我々の思考プロセスとしてまず考えたいのは、「緊急性の高い疾患がないか」という点です。とくに消化管穿孔、絞扼性イレウスといったところは見逃したくないですね。私の経験上では、普段から腹痛を訴えることの多い患者さんだったものの、痛みがいつもより強いようであることに違和感を覚え、検査をしました。その結果、腫瘍破裂による、腹腔内出血でした。血液は腹膜への刺激となるため、腹痛の原因となります。その典型的な例が子宮外妊娠ですが、がん患者にも同じような機序の痛みが起こりえます。「いつもの腹痛」と片付けていれば、対応が遅れるところでした。さて、上記のような緊急性の高い疾患がないことが確認できた後は、便秘や腹水貯留といった頻度の高い病態や症状であるの可能性を念頭に置いて、排便コントロールと腹水に対する介入を複数試すことになるでしょう。腹水であれば減塩、輸液量の調整、利尿薬を追加し、それでもコントロールが難しい場合は腹腔穿刺をして排液を試みます。それでも改善が乏しければ、NSAIDsやステロイドなどで腹膜の炎症を軽減しつつ、オピオイドの使用も検討します。その経過中に便秘が生じないように、緩下薬なども調整します。いずれにしても、患者さんの主観的な症状を否定せず、可能性のある病態に対し、安全な範囲で介入しながら様子を見る、という地道な診療が続きます。看護師にも観察してもらい、ケアで工夫できることを発見してもらったり、良い変化があれば小さいことでも患者と医師に共有してもらったりすることも重要です。なかなかすっきりしない症状ではありますが、私自身はこのような対応をすることが多いです。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips腹部の張りは鑑別に立ち返り、試行錯誤しながら対応しましょう。

82.

第35回 コロナワクチンが「がん治療」の効果を劇的に向上させる可能性

がん治療の切り札として登場した「免疫チェックポイント阻害薬」は、多くの患者さんの命を救う一方で、すべての人に効果があるわけではありません。とくに、免疫細胞ががんを敵として認識していない「冷たいがん」と呼ばれるタイプの腫瘍には効果が薄いことが、大きな課題でした。しかし、この状況を一変させるかもしれない驚くべき研究結果が、Nature誌に発表されました1)。なんと、私たちが新型コロナウイルス対策で接種したmRNAワクチンが、がん細胞を標的とするものではないにもかかわらず、がんを免疫チェックポイント阻害薬に反応しやすい「熱いがん」に変え、治療効果を劇的に高める可能性が示されたのです。ワクチン接種と生存期間の延長が関連この研究では、米国のがん専門病院であるMDアンダーソンがんセンターの臨床データが分析されています。研究チームは、非小細胞肺がんや悪性黒色腫(メラノーマ)の患者さんで、免疫チェックポイント阻害薬を開始する前後100日以内にコロナのmRNAワクチンを接種したグループと、接種しなかったグループの予後を比較しました。すると、非小細胞肺がんの患者さんを比較したところ、ワクチンを接種したグループの3年生存率が55.7%であったのに対し、未接種のグループでは30.8%と、明らかな差がみられました。同様の生存率の改善は、メラノーマの患者でも確認されました。この効果は、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを免疫チェックポイント阻害薬の前後で接種した患者さんではみられませんでした。このことは、観察された生存率の改善が、単に「ワクチンを接種する」という行為や、健康意識の高さだけによるものではなく、mRNAワクチンが持つ特有の強力な免疫反応によって引き起こされている可能性を示唆しています。なぜコロナワクチンががんに効くのか?では、なぜがんとは無関係のコロナウイルスを標的とするワクチンが、がんに対する免疫療法の効果を高めるのでしょうか? 研究チームは、動物モデルや健常人の血液サンプルを用いて、そのメカニズムを詳細に解明しました。鍵を握っていたのは、「I型インターフェロン」という物質でした。まず、mRNAワクチンが体内に投与されると、ウイルスに感染した時と似たような「偽の緊急事態」が引き起こされます。これにより、体内でI型インターフェロンが爆発的に放出されます。このI型インターフェロンの急増が、全身の免疫細胞、とくに「抗原提示細胞」と呼ばれる偵察役の細胞を「覚醒」させます。覚醒した偵察役の細胞は、リンパ節などの免疫器官に移動し、そこでT細胞(免疫の実行部隊)に対し、「敵(抗原)」の情報を伝達します。この時、偵察役の細胞はウイルスの情報(スパイクタンパク)だけでなく、体内に存在する「がん抗原」の情報も同時にT細胞に提示し始めることがわかりました。がんの情報をキャッチしたT細胞は、増殖して腫瘍組織へと侵入していきます。これにより、これまでT細胞が存在しなかった「冷たいがん」が、T細胞が豊富に存在する「熱いがん」へと変化します。しかし、T細胞の攻撃にさらされたがん細胞は、生き残るために「PD-L1」というバリアを表面に出して、T細胞の攻撃を無力化しようとします。しかし実際、ワクチンを接種した患者さんのがん組織では、このPD-L1の発現が著しく増加していることが確認されました。ここで免疫チェックポイント阻害薬が登場します。免疫チェックポイント阻害薬は、まさにこのPD-L1のバリアを無効化する薬剤です。つまり、mRNAワクチンがT細胞をがんへ誘導し、免疫チェックポイント阻害薬がそのT細胞が働けるように「最後のバリア」を取り除く。この見事な連携プレーによって、がんに対する強力な免疫応答が引き起こされ、治療効果が飛躍的に高まると考えられます。今後の展望と研究の限界この研究の最大の意義は、がん患者さんごとに製造する必要がある高価な「個別化mRNAがんワクチン」でなくても、すでに臨床で広く利用可能な「既製のmRNAワクチン」が、がん免疫療法を増強する強力なツールになりうることを示した点にあります。とくに、これまで免疫チェックポイント阻害薬が効きにくかったPD-L1陰性の「冷たいがん」の患者さんに対しても、生存期間を改善する可能性が示されたことは大きな希望です。一方で、この研究の限界も認識しておく必要があります。最も重要なのは、患者さんを対象とした解析が「後ろ向き観察研究」である点です。つまり、過去のデータを集めて解析したものであり、「mRNAワクチン接種」と「生存期間の延長」の間に強い関連があることは示せましたが、mRNAワクチンが原因となって生存期間が延びたという因果関係を完全に証明したわけではありません。たとえば、「治療中にあえてコロナワクチンも接種しよう」と考える患者さんは、全般的に健康意識が高く、それ以外の要因(たとえば、栄養状態や運動習慣など)が生存期間に影響した可能性(交絡因子)も否定できません。研究チームは、インフルエンザワクチンなど他のワクチンとの比較や、さまざまな統計的手法(傾向スコアマッチングなど)を用いて、これらの偏りを可能な限り排除しようと試みていますが、未知の交絡因子が残っている可能性があります。この発見をさらに確実なものとするためには、今後、患者さんをランダムに「mRNAワクチン接種+免疫チェックポイント阻害薬群」と「免疫チェックポイント阻害薬単独群」に分けて比較するような、前向きの臨床試験で有効性を確認することが不可欠です。とはいえ、mRNAワクチンががん治療の新たな扉を開く可能性を示した本研究のインパクトは大きいでしょう。感染症予防という枠を超え、がん免疫療法の「増強剤」として、既製のmRNAワクチンが活用されるという場面も、今後訪れるのかもしれません。 参考文献・参考サイト 1) Grippin AJ, et al. SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumours to immune checkpoint blockade. Nature. 2025 Oct 22. [Epub ahead of print]

83.

がんと心房細動、合併メカニズムと臨床転帰/日本腫瘍循環器学会

 がん患者では心房細動(AF)が高率に発症する。がん患者の生命予後が改善していく中、その病態解明と適切な管理は喫緊の課題となっている。第8回日本腫瘍循環器学会学術集会では、がん患者におけるAFの発症メカニズムおよび活動性がん合併AF患者の管理について最新の大規模臨床研究の知見も含め紹介された。がん患者におけるAFの発症メカニズム 東京科学大学の笹野 哲郎氏はがん患者におけるAF発症について、がん治療およびがん自体との関連を紹介した。 肺がんや食道がんに対する心臓近傍への手術や放射線照射では、術後炎症や心筋の線維化がAF発症と関連している。AF発症が高率な薬剤としてドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤やイブルチニブなどのBTK阻害薬が代表的である。これらの抗がん剤は心筋細胞の脱落や線維化など構造的な変化と電気生理的な変化によってAFを発症する。 また、腫瘍細胞の直接浸潤は催不整脈性を有し、AF発症の原因となる。これには腫瘍によるギャップ結合チャネルの低下や心房の線維化によるAF誘発の可能性が示唆されている。しかし、発症メカニズムについては未解明な部分も多い。大規模レジストリで明らかになったAF患者へのがん合併の影響 東邦大学大学院医学研究科の池田 隆徳氏は、全国的に実施された高齢者の心房細動のANAFIE(All Nippon AF in Elderly)レジストリのサブスタディとして、活動性がんの合併がAF患者の血栓塞栓症や出血性イベントおよび死亡に与える影響を発表した。 ANAFIEレジストリに登録された3万例を超える高齢患者のうち11%に活動性がんの合併が確認された。非がん群と比較してがん群ではCHADS2スコアおよびHAS-BLEDスコアが高く、ハイリスク例が多かった。経口抗凝固薬(OAC)の投与実態を見ると、がん群においてDOACの使用率が高いことが明らかになった。 臨床転帰を見ると、がん群と非がん群における有効性イベント(脳卒中、全身性塞栓症)の発現率は同程度であったが、安全性イベント(大出血、頭蓋内出血、全死亡、ネットクリニカルアウトカム)はがん群で高率であった。OACの投与は非がん群、がん群ともに7割がDOACであった。DOACとワルファリンの臨床イベントを比較すると、非がん群ではDOACのワルファリンに対し優位性が認められた。一方、がん群ではDOACのワルファリンに対する優位性は認められなかった。

84.

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。国際的な無作為化第III相試験 FLAURA2試験は、日本の施設も参加した国際的な非盲検無作為化第III相試験(AstraZenecaの助成を受けた)。2020年1月~2021年12月に患者のスクリーニングが行われ、年齢18歳以上(日本は20歳以上)で、EGFR変異(exon19delまたはL858R)陽性の局所進行・転移のある非扁平上皮NSCLCと診断され、進行病変に対する全身療法を受けていない患者を対象とした。 被験者を、導入療法としてオシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与と、ペメトレキセド(500mg/m2体表面積)+白金製剤(シスプラチン[75 mg/m2体表面積]またはカルボプラチン[AUC 5 mg/mL/分])の3週ごとの静脈内投与を4サイクル受ける群(化学療法併用群)、またはオシメルチニブ(80mg)単剤の1日1回経口投与を受ける群(オシメルチニブ単剤群)のいずれかに無作為に割り付けた。化学療法併用群は、導入療法終了後に維持療法として、オシメルチニブ(80mg)の1日1回経口投与とペメトレキセド(500mg/m2体表面積)の3週ごとの静脈内投与を受けた。 557例(最大の解析対象集団)を登録し、化学療法併用群に279例(年齢中央値61歳[範囲26~83]、女性173例[62%])、オシメルチニブ単剤群に278例(62歳[30~85]、169例[61%])を割り付けた。全生存期間中央値が約10ヵ月延長 データカットオフ時点での投与期間中央値は化学療法併用群が30.5ヵ月、オシメルチニブ単剤群は21.2ヵ月で、全生存の追跡期間中央値はそれぞれ42.6ヵ月および35.7ヵ月であった。この時点で化学療法併用群の144例(52%)、オシメルチニブ単剤群の171例(62%)が死亡した。 OS中央値は、オシメルチニブ単剤群が37.6ヵ月(95%CI:33.2~43.2)であったのに対し、化学療法併用群は47.5ヵ月(41.0~算出不能)と有意に優れた(HR:0.77、95%CI:0.61~0.96、p=0.02)。また、36ヵ月時のOS率は、化学療法併用群が63%、オシメルチニブ単剤群は51%であり、48ヵ月OS率はそれぞれ49%および41%であった。 ベースラインで中枢神経系転移を認めた患者の36ヵ月OS率は、化学療法併用群が57%、オシメルチニブ単剤群は40%であり、同転移のない患者ではそれぞれ67%および58%だった。新たな毒性作用は認めず、Grade3以上が多い 551例(安全性解析集団:化学療法併用群276例、オシメルチニブ単剤群275例)が少なくとも1回の試験薬の投与を受けた。主解析から2年超の時点での安全性の知見は、主解析時の解析結果と一致しており、新たな毒性作用は認めなかった。 Grade3以上の有害事象は、化学療法併用群で193例(70%)、オシメルチニブ単剤群で94例(34%)に、重篤な有害事象はそれぞれ126例(46%)および75例(27%)に発現した。死亡に至った有害事象はそれぞれ22例(8%)および10例(4%)で認め、このうち試験薬との関連の可能性があると判定されたのは5例(2%)および2例(1%)であり、オシメルチニブ単剤群の1例を除き、いずれも主解析のデータカットオフ日の前に死亡していた。オシメルチニブの投与中止に至った有害事象は、それぞれ34例(12%)および20例(7%)で報告された。 著者は、「Grade3以上の有害事象は化学療法併用群で高頻度であったが、このオシメルチニブ単剤群との差は、主に化学療法を含むレジメンで予想される骨髄抑制作用に起因する有害事象によるものであった」「病勢進行のため投与を中止したオシメルチニブ単剤群の患者の多くが最初の後治療として白金製剤ベースの2剤併用化学療法を受けたが、これらの患者のOSは化学療法併用群よりも劣ったことから、発症後の最初の治療は併用療法で開始するのが好ましい可能性が示唆され、本試験の化学療法併用群におけるOSの有益性は、1次治療を有効性の高い併用療法で開始することの重要性を強調するものである」としている。

85.

がん治療のICI、コロナワクチン接種でOS改善か/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん患者の生存期間を延長するが、抗腫瘍免疫応答が抑制されている患者への効果は限定的である。現在、個別化mRNAがんワクチンが開発されており、ICIへの感受性を高めることが知られているが、製造のコストや時間の課題がある。そのようななか、非腫瘍関連抗原をコードするmRNAワクチンも抗腫瘍免疫を誘導するという発見が報告されている。そこで、Adam J. Grippin氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンもICIへの感受性を高めるという仮説を立て、後ろ向き研究を実施した。その結果、ICI投与前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチン接種を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)患者および悪性黒色腫患者は、全生存期間(OS)や無増悪生存期間(PFS)が改善した。本研究結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表され、Nature誌オンライン版2025年10月22日号に掲載された1)。 本発表では、切除不能StageIIIまたはStageIVのNSCLC患者884例および転移を有する悪性黒色腫患者210例を対象とし、ICI初回投与の前後100日以内のCOVID-19 mRNAワクチン接種の有無で分類して解析した結果が報告された。また、COVID-19 mRNAワクチン接種が抗腫瘍免疫応答を増強させ得るメカニズムについて、前臨床モデル(マウス)を用いて検討した結果とその考察も紹介された。 主な結果は以下のとおり。【後ろ向きコホート研究】・NSCLC患者(接種群180例、未接種群704例)において、ICI初回投与の前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、StageやPD-L1発現状況にかかわらずOSが延長した。各集団のハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり(全体およびStage別の解析は調整HRを示す)。 全体:0.51、0.37~0.71 StageIII:0.37、0.16~0.89 StageIV:0.52、0.37~0.74 TPS 1%未満:0.53、0.36~0.78 TPS 1~49%:0.48、0.31~0.76 TPS 50%以上:0.55、0.34~0.87・悪性黒色腫患者(接種群43例、未接種群167例)においても、ICI初回投与の前後100日以内にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、OS(調整HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)およびPFS(同:0.63、0.40~0.98)が延長した。・NSCLC患者において、生検前100日未満にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群は、未接種群、100日後以降接種群と比較してPD-L1 TPS平均値が高かった(31%vs.25%vs.22%)。同様に、生検前100日未満にCOVID-19 mRNAワクチンを接種した群はPD-L1 TPS 50%以上の割合も高かった(36%vs.28%vs.25%)。【前臨床モデル】・免疫療法抵抗性NSCLCモデルマウス(Lewis lung carcinoma)と免疫療法抵抗性悪性黒色腫モデルマウス(B16F0)において、COVID-19 mRNAワクチンとICIの併用は、ICI単独と比較して腫瘍体積を縮小した。・COVID-19 mRNAワクチンは、IFN-αの産生を増加させた。・悪性黒色腫モデルマウスにおいて、IFN-αを阻害するとCOVID-19 mRNAワクチンとICIの併用の効果は消失した。・COVID-19 mRNAワクチンは、複数の腫瘍関連抗原について、腫瘍反応性T細胞を誘導した。・COVID-19 mRNAワクチン接種によりCD8陽性T細胞が増加し、腫瘍におけるPD-L1発現も増加した。 COVID-19 mRNAワクチン接種が抗腫瘍免疫応答を増強させ得るメカニズムについて、Grippin氏は「免疫学的にcoldな腫瘍に対して、COVID-19 mRNAワクチンを接種するとIFN-αが急増し、腫瘍局所での自然免疫が活性化される。その活性化により腫瘍反応性T細胞が誘導され、これらが腫瘍に浸潤して腫瘍細胞を攻撃すると、腫瘍はT細胞応答を抑制するためにPD-L1の発現を増加させる。そこで、COVID-19 mRNAワクチンとの併用でICIを投与し、PD-1/PD-L1の相互作用を阻害することで、患者の生存期間の改善が得られるというメカニズムが示された」とまとめた。 なお、今回示された効果を検証するため、無作為化比較試験「Universal Immunization to Fortify Immunotherapy Efficacy and Response(UNIFIER)試験」が計画されている。

86.

ロボット支援気管支鏡が肺の奥深くの腫瘍に到達

 最先端のロボット支援気管支鏡が肺の奥深くにある極めて小さな腫瘍にまで到達できることが、チューリッヒ大学病院(スイス)のCarolin Steinack氏らによる臨床試験で示された。Steinack氏らによると、このロボット支援気管支鏡は、特殊なCTスキャナーにより、肺の中の到達が難しい位置に隠れた腫瘍を見つけることができるという。この研究結果は、欧州呼吸器学会議(ERS 2025、9月27日~10月1日、オランダ・アムステルダム)で発表された。 Steinack氏は、「この技術によって、専門医は肺のほぼ全領域にアクセスできるようになった。これは、より多くの患者に生検を実施できること、より高い治療効果が期待できる早期の段階でがんを診断できるようになることを意味している」とERSのニュースリリースの中で述べている。 ERSの呼吸器インターベンション専門家グループ代表で、Golnik大学クリニック(スロベニア)内視鏡部長のAles Rozman氏も、肺がんを治療可能な早期の段階で発見して治療するのにこの技術が役立つ可能性があるとの見方を示している。同氏は、「がんは通常、早期に診断されれば生存率の大幅な向上を望める。しかし、こうした極めて小さな腫瘍は診断が難しい。今回の研究は、ロボット支援技術が肺の奥深くにある小さな腫瘍の多くを診断する助けになることを示している」と付け加えている。 Steinack氏らは今回の臨床試験で、肺の周縁部に異常増殖がある78人の患者に気管支鏡検査を実施した。異常増殖の数は合計で127個だった。肺の周縁部は接続する気道がない場合が多く、通常は容易に到達できない領域である。腫瘍は直径が中央値11mmで、18個(14.2%)は気管支サインが陽性(病変に向かって走行する気管支が明確に認められる)で、35個(27.6%)は均一なすりガラス陰影に分類された。患者の半数(39人)はX線画像を用いた従来型の気管支鏡検査を受け、残る半数(39人)はCTスキャンを用いたロボット支援気管支鏡検査を受けた。 その結果、診断に至った対象者の割合は、ロボット支援気管支鏡群で84.6%(33人)であったのに対し、従来の気管支鏡では23.1%(9人)にとどまった。通常の気管支鏡の方法で生検が成功しなかった人に対してロボット支援気管支鏡を用いると、92.9%(26/28人)で腫瘍への到達と生検に必要な組織の採取に成功した。最終的に68人(53.5%)が肺がんと診断され、そのうち50人は最も早期の治療可能な段階のがんであった。Steinack氏は、「臨床的に従来の気管支鏡が選択肢とはならない患者において、この技術は正確な診断を可能にする」と述べている。 ただし、この技術は安価ではない。この新しいシステムの導入には110万ドル(1ドル150円換算で1億6500万円以上かかり、検査1回当たりの費用は約2,350ドル(同35万2,500円)になるとSteinack氏らは説明している。チューリッヒ大学病院の呼吸器内科医で主任研究者のThomas Gaisl氏は、「こうした腫瘍がある患者を多く診ている医療機関では、この技術により得られるメリットは投資に見合うものだと考えている。ただし、このロボットシステムは従来の気管支鏡が使えない、小さくて到達が難しい病変に限定して使用すべきだ」とニュースリリースの中で述べている。 一方、Rozman氏は、「この装置を導入し、使用するために必要となる莫大な追加コストを正当化するためには、この種のゴールドスタンダードの研究を実施することが極めて重要だ」と指摘している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

87.

エンゼルケアについて考えてみる【非専門医のための緩和ケアTips】第110回

エンゼルケアについて考えてみる患者さんが亡くなった際に、多くの施設で看護師を中心にエンゼルケアが行われています。患者さんにとってはもちろん、ご家族にとっても大切な時間なので、丁寧なケア提供が求められます。今回の質問患者さんが亡くなった時、訪問看護師がエンゼルケアをしていますが、どういったことを行うのが標準的なのでしょうか? 在宅医療だと人手も少ないので、医師である私も少し手伝ったほうが良いかなと思う時もありますが、やり方を学んだことがないため、言い出しにくく感じます。死亡確認後にご遺体へのケアを「エンゼルケア」と言います。施設によっては化粧をするといったケアにも取り組んでおり、これは「エンゼルメイク」と言います。私が勤務する施設では、看護師が清拭で身体をきれいにしたうえでメイクをしています。男性の私は普段は化粧をする機会はなく、美容にも関心はありませんが、エンゼルメイクをした患者さんは男女を問わず顔色が良くなり、ご家族に喜んでもらえることを実感します。エンゼルケアを通じて、何を提供しているのか考えてみましょう。エンゼルメイクをテーマにした研究では、家族から「穏やかな表情にしてくれた」「生前と同じような扱いをしてくれた」といった声が寄せられました1)。確かに看護師のエンゼルケアを見学すると、とても丁寧に遺体を扱っています。同時に「頑張りましたね」と声掛けをしたり、ご家族をねぎらったりもします。こうしたケアが「故人を大切にしてもらった」という感覚を生むのでしょう。看護師によっては、ご家族が希望するケアを取り入れるケースもあります。たとえば、お風呂が好きだった患者さんであれば、清拭ではなく湯灌(ゆかん)し、故人をしのびながら、身体をきれいにします。あるケースでは、お孫さんにも湯灌を手伝い、ご家族から「非常に良い時間でした」と言ってもらいました。お孫さん自身も「おじいちゃんが最期に教えてくれた、大切な経験として忘れないようにしたい」と言っており、エンゼルケアは死生観を育む機会にもなるのだなと感じました。ご家族が最期に着せたい服に着替えてもらったうえで、お別れをすることもあります。病院では自動的に病衣に着替えてもらうことが多いですが、スーツなど思い出のある服に着替えた姿からは、患者さんのかつての生き生きとした姿を感じることができます。あれこれ思い出を振り返ってきましたが、このようにエンゼルケアは非常にナラティブなものです。そして、そのケアに対して私が何かするかというと、基本的にはすべて看護師に任せています。とくに在宅でのお見取りの際は、医療機器を外すなど死後の処置が必要なケースも少ないため、死亡確認をして死亡診断書を作成したら、その場を離れることが多いです。長くお世話になっている緩和ケアの看護師は、「エンゼルケアはその患者さんに私たち看護師が提供できる最後のケア」と言っていました。そんな看護師を尊敬しており、看護師とご家族で取り組むケアに医師が無理に割り込む必要はないのかな、と感じます。もちろん、人手が足りないなど事情があれば、邪魔にならないよう手伝うことはありますが、基本的にエンゼルケアはそれを専門とする看護師と患者さん、ご家族のものだと思います。今回のTips今回のTipsエンゼルケアは最後のケアとして、患者さんはもちろんご家族にとっても非常に大切。1)山脇 道晴ほか. ホスピス・緩和ケア病棟におけるご遺体へのケアに関する 遺族の評価と評価に関する要因. Palliative Care Research. 2015;10:101-107.

88.

HER2変異陽性NSCLCの1次治療、sevabertinibの奏効率71%(SOHO-01)/ESMO2025

 HER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、sevabertinibは奏効率(ORR)71%と有望な治療成績を示した。また、既治療の集団でも有望な治療成績が示された。Xiuning Le⽒(米国・テキサス⼤学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第I/II相試験「SOHO-01試験」の第II相の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。なお、本結果は、NEJM誌オンライン2025年10月17日号に同時掲載された1)。 現在開発が進んでいるHER2チロシンキナーゼ阻害薬の違いとして、ゾンゲルチニブは野生型EGFRを阻害せずHER2を選択的に阻害するのに対し、sevabertinibはEGFRとHER2の両者に対する阻害活性を有し(野生型EGFRに対する活性は弱い)、多様なHER2変異体に対しても阻害活性を示すことが挙げられる。また、ゾンゲルチニブが共有結合による不可逆的な阻害様式であるのに対し、sevabertinibは可逆的な阻害様式を有する。 本試験は第I相と第II相で構成され、第I相の結果から20mgを1日2回の用量が選択された。今回は、用量拡大・継続パートの3つのコホートの結果が報告された。対象のコホートは、既治療かつHER2標的薬未治療(コホートD、81例)、HER標的薬既治療(コホートE、55例)、未治療(コホートF、73例)であった。用量拡大・継続パートの主要評価項目は、盲検下独立中央判定(BICR)によるORR、副次評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などであった。データカットオフ日は2025年6月27日であった。 主な結果は以下のとおり。・各コホートの有効性に関する結果は以下のとおりであった(いずれもBICR評価)。【コホートD(既治療かつHER2標的薬未治療)】 ORR 64%(CR 2%) 病勢コントロール率(DCR) 81% 脳転移例のORR 61%(11/18例) DOR 9.2ヵ月 1年DOR率42% PFS中央値8.3ヵ月 1年PFS率44%【コホートDのチロシンキナーゼドメインの変異陽性非扁平上皮NSCLC(70例)】 ORR 71%(CR 3%) PFS中央値9.6ヵ月【コホートE(HER標的薬既治療)】 ORR 38%(CR 5%) DCR 71% 脳転移例のORR 27%(4/15例) DOR 8.5ヵ月 1年DOR率29% PFS中央値5.5ヵ月 1年PFS率28%【コホートF(未治療)】 ORR 71%(CR 4%) DCR 89% 脳転移例のORR 78%(7/9例) DOR 11.0ヵ月 PFS中央値未到達 1年PFS率55%・Grade3以上の有害事象は、コホートD、E、Fでそれぞれ36%、31%、21%に発現した。・主な有害事象(コホートD、E、Fを統合)は、下痢(87%)、発疹(49%)、爪囲炎(26%)などであった。・間質性肺疾患/肺臓炎の発現はなかった。 本結果について、Le氏は「HER2遺伝子変異陽性のNSCLC患者に対し、sevabertinibは既治療および未治療のいずれの集団においても、頑健かつ持続的な奏効を示した。この結果は、sevabertinibがHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する新たな分子標的治療薬となり得ることを支持するものである」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療におけるsevabertinibの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「SOHO-02試験」が進行中である。

89.

低用量アスピリンが再発予防効果を認める大腸がんのタイプが明らかになった(解説:上村 直実氏)

 観察研究やコホート研究の結果からアスピリンや非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)が大腸がんの発生や再発のリスクを低下することがよく知られているが、プラセボとの無作為化比較試験(RCT)による厳密な研究デザインによるエビデンスは少なく、さらに、どのような大腸腫瘍に対して有効なのか無効なのかは判明していないのが現状であった。 これらの課題を克服するため、今回、細胞の成長や増殖などさまざまな細胞機能の調節に重要な役割を果たす酵素であるPI3K(Phosphoinositide 3-kinase)をコードするPI3K遺伝子の変異が陽性の大腸がん切除後症例を対象として施行されたプラセボ対照RCTの結果、低用量アスピリン(LDA)(160mg/日)の内服により手術後の再発率が有意に低下することが2025年のNEJM誌に報告された。すなわち、LDAがPI3K遺伝子変異を有する大腸がんに対する再発予防効果を有することがRCTにより明確になったのである。 アスピリンは、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)・プロスタグランジンE2(PGE2)経路を阻害することが知られているが、PI3Kシグナル経路はその下流に位置して腫瘍形成に働く可能性が謳われているが、PI3K遺伝子変異は大腸がんの約40%に認められている。従来の報告からLDAの抗大腸腫瘍効果はPI3K遺伝子変異を有するものやリンチ症候群および家族性大腸腺腫症(FAP)などの遺伝性大腸腫瘍に限定されている可能性が指摘されていたが、手術後の切除組織を用いた遺伝子解析によりLDAの抑制効果を認める適応病変が明確になった点で重要な研究成果と思われる。 30年前からLDAによる大腸腫瘍の抑制効果に関する報告が散見されていたが、日本においてもFAP患者に対するLDA(100mg/日)によりポリープの発生や再発を抑制することが、京都府立医科大学の石川 秀樹特任教授らにより2021年のLancet Gastroenterology & Hepatology誌に報告されている。この研究は、全大腸切除が標準治療とされているFAP患者に対する画期的な予防的薬物療法を提供する可能性を秘めているために、今後の研究結果が注目されている。さらに、異時性あるいは同時性の大腸多発がんや子宮内膜がんの若年発症を特徴として、小腸、胃、腎盂尿管、胆管、膵臓、皮膚および脳腫瘍など多臓器にがんが発症するリンチ症候群におけるLDA服用の長期的な有効性のデータも報告されている。 このように遺伝子変異を伴う大腸がんに対するLDAの予防効果が明確になってきたことから、近い将来、循環器や脳神経領域の臨床現場において頻繁に使用されているLDAが、大腸がんをはじめとするがんの予防効果を有する薬剤である可能性に熟知して患者に対応することが必要となる。 一方、わが国においても大規模データベースを利用した臨床疫学研究が盛んに行われるようになっており、冠動脈疾患や脳血管障害の再発予防に対してLDAを内服している患者における大腸がんの有病率や再発率に関する詳細な疫学調査が期待される。なお、大腸がん以外にも胃がん、食道腺がん、肺がんなどもアスピリンによる抑制効果が報告されており、今後も安価ながん予防策としてのLDAのリスク・ベネフィットに関する詳細な研究も期待される。

90.

ALK陽性NSCLCへの術後アレクチニブ、4年OS率98.4%(ALINA)/ESMO2025

 ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の完全切除達成患者を対象に、術後アレクチニブの有用性を検討した国際共同第III相試験「ALINA試験」の主解析において、アレクチニブはプラチナ製剤を含む化学療法と比較して、無病生存期間(DFS)を改善したことが報告されている(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.43)1)。ただし、とくに全生存期間(OS)に関するデータは未成熟(主解析時点のイベントは6例)であり、より長期の追跡結果が望まれていた。そこで、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Rafal Dziadziuszko氏(ポーランド・グダニスク大学)が、本試験の約4年追跡時点の結果を報告した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB(4cm以上)/II/IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者で完全切除を達成した患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回)を2年間もしくは再発まで 130例(日本人15例)・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビンを3週ごと4サイクルもしくは再発まで 127例(日本人20例)・評価項目:[主要評価項目]DFS(StageII/IIIA集団→ITT集団の順に階層的に解析)[その他の評価項目]中枢神経系再発または死亡までの期間(CNS-DFS)、OS、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・UICC/AJCC第7版に基づくStageIB/II/IIIAの割合は、アレクチニブ群11%/36%/53%、化学療法群9%/35%/55%で、UICC/AJCC第8版に基づくStageIB/IIA/IIB/IIIA/IIIBの割合は、それぞれ5%/8%/31%/51%/5%、4%/3%/35%/54%/5%であった。・UICC/AJCC第7版に基づくStageII/IIIA集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.36、95%CI:0.23~0.56)。4年DFS率はそれぞれ74.5%、46.3%であった。・ITT集団におけるDFS中央値は、アレクチニブ群未到達、化学療法群41.4ヵ月であった(HR:0.35、95%CI:0.23~0.54)。4年DFS率はそれぞれ75.5%、47.0%であった。・DFSのサブグループ解析において、いずれのサブグループにおいてもアレクチニブ群が良好な傾向にあった。・ITT集団における4年CNS-DFS率は、アレクチニブ群90.4%、化学療法群76.1%であった(HR:0.37、95%CI:0.19~0.74)。・ITT集団における4年OS率は、アレクチニブ群98.4%、化学療法群92.4%であった(HR:0.40、95%CI:0.12~1.32)。

91.

第285回 コロナワクチンがICI治療のOSを有意に延長

INDEXええええ!ESMO2025のProffered Paper session新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待ええええ!ここ半月以上、自民党の総裁選とそれに伴う政局のドタバタに振り回されてしまい、何とも言えないもどかしさを感じている。本来ならばコロナ禍の影響を受けて、今やオンラインでも視聴可能になった欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)にプレス登録して聴講するはずだったが、その機会も逃してしまった。とはいえ、悔しいのでここ数日、時間を見つけては同学会の抄録を眺めていたが、その中で個人的に「ええええ!」と思う発表を見つけた。演題のタイトルは「SARS-CoV-2 mRNA vaccines sensitize tumors to immune checkpoint blockade」。端的に結論を言えば、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)のワクチン接種が免疫チェックポイント阻害薬による抗腫瘍効果を高める可能性の研究1)だ。抄録ベースだが、この研究内容を取り上げてみたい。ESMO2025のProffered Paper session発表者は米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏である。mRNA関連創薬は、もともとはがんをターゲットとした治療ワクチンの開発を主軸としていて、米国・モデルナ社もこの路線でのパイプラインが形成され、たまたまコロナ禍が起きたことで、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンという形で日の目を見たことはよく知られている。Grippin氏らは、mRNAがんワクチンの研究から、同ワクチンが炎症性サイトカインへの刺激を通じて免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強が得られることをヒントに、「もしかしたらがんに非特異的なmRNAワクチンでも同様の効果が得られるのではないか」と考えたらしい。そこで同センターで2017年1月~2022年9月までに生検で確定診断を受けた非小細胞肺がん(NSCLC)、2019年1月~2022年12月までに治療を受けた悪性黒色腫の臨床データを抽出し、カプランマイヤー曲線、傾向スコアマッチング、およびCox比例ハザード回帰モデルを利用して全生存期間(OS)を評価したとのこと。ちなみに抄録レベルでは症例数は未記載だが、MDアンダーソンがんセンターのレベルでいい加減な臨床研究の可能性は低い。実際、抄録では研究にあたって同センターの倫理審査委員会の承認を受けていることが記載されている。その結果によると、免疫チェックポイント阻害薬による治療開始から100日以内の新型コロナmRNAワクチン接種有無で比較したOS中央値は、NSCLCで非接種群が20.6ヵ月、接種群が37.3ヵ月。3年OS率は非接種群が30.6%、接種群が55.8%だった。調整ハザード比[HR]は0.51(95%信頼区間[CI]:0.37~0.71、p<0.0001)であり、有意差が認められた。また、悪性黒色腫ではOS中央値は非接種群が26.67ヵ月、接種群が未到達。3年OS率は非接種群が44.1%、接種群が67.5%。調整HRは0.34(95%CI:0.17~0.69、p=0.0029)でこちらも有意なOS延長が認められたという。新型コロナmRNAワクチンへの新たな期待研究は明らかに後ろ向きではあるが、NSCLCでOS中央値が10ヵ月も違うことに個人的には正直驚きを隠せない。しかも、抄録によると、NSCLCではPD-L1検査(TPS)で低発現(TPS<1%)の症例でも新型コロナmRNAワクチン接種によるOSの延長効果が認められたとある。また、動物モデルでは、新型コロナmRNAワクチン接種によりI型インターフェロンの急増が誘発され、複数のがん抗原を標的とするCD8陽性T細胞のプライミングとがん細胞のPD-L1発現を上方制御することがわかった。さらに複数の動物がんモデルでも新型コロナmRNAワクチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用で、免疫チェックポイント阻害薬の効果増強を確認したという。いずれにせよこの研究結果を見る限り、がんに特異的ではない新型コロナmRNAワクチンががん特異的抗原の発現を促すということになる。現在、モデルナは日本国内でもNSCLCと悪性黒色腫の個別化がん治療ワクチンの臨床試験中だが、今回の研究で示された可能性が前向き試験でも確認されれば、結構安上がり(あくまで個別化がん治療ワクチンや昨今発売された各種がんの治療薬との比較だが)ながん治療になるのではないか。個人的にはそこそこ以上に期待してしまうのだが。1)Grippin AJ, et al. Nature. 2025 Oct 22. [Epub ahead of print]

92.

ALK陽性進行NSCLCへのアレクチニブ、OS中央値81.1ヵ月(ALEX)/ESMO2025

 ALK融合遺伝子陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するアレクチニブは、海外第III相無作為化比較試験「ALEX試験」において、全生存期間(OS)中央値81.1ヵ月、奏効期間(DOR)中央値42.3ヵ月と良好な治療成績を示した。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が本試験のOSの最終解析結果を発表した。本試験は、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLC患者を対象として、アレクチニブの有用性をクリゾチニブとの比較により検証する試験である。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の最終解析結果はすでに報告されており、アレクチニブのクリゾチニブに対する優越性が示されている1,2)。今回は、PFSの最終解析時から約6年の追跡期間が追加された。なお、本結果はAnnals of Oncology誌オンライン版2025年10月17日号に同時掲載された3)。・試験デザイン:海外第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療のStageIIIB/IV(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ(1回600mg、1日2回) 152例・対照群(クリゾチニブ群):クリゾチニブ(1回250mg、1日2回) 151例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OS、DOR、安全性など 今回発表された主な結果は以下のとおり。・StageIII/IVの割合は、アレクチニブ群2.6%/97.4%、クリゾチニブ群4.0%/96.0%であった。中枢神経系(CNS)転移ありの割合は、それぞれ42.1%、38.4%であった。・OS中央値は、アレクチニブ群81.1ヵ月、クリゾチニブ54.2ヵ月であった(層別ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.56~1.08)。7年OS率は、それぞれ48.6%、38.2%であった。・CNS転移の有無別にみたアレクチニブ群とクリゾチニブ群のOS中央値は、以下のとおりであった。 【CNS転移あり】 63.4ヵ月vs.30.9ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.40~1.15) 【CNS転移なし】 94.0ヵ月vs.69.8ヵ月(HR:0.87、95%CI:0.58~1.32)・DOR中央値は、アレクチニブ群42.3ヵ月、クリゾチニブ群11.1ヵ月であった(HR:0.41、95%CI:0.30~0.56)。・治療期間中央値は、アレクチニブ群28.1ヵ月、クリゾチニブ群10.8ヵ月であった。・治療中止に至った有害事象の発現割合は、アレクチニブ群17.8%、クリゾチニブ群14.6%であった。減量に至った有害事象の発現割合は、それぞれ23.0%、19.9%であった。アレクチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、血中ビリルビン増加(中止3.3%、減量5.3%)であった。クリゾチニブの中止または減量に至った主な有害事象は、ALT(6.6%、8.6%)であった。 本結果について、Mok氏は「アレクチニブは、ALK融合遺伝子陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

94.

ALK陽性非小細胞肺がんにおけるアレクチニブ後ブリグチニブの有効性/ESMO2025

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療にはアレクチニブが広く使われるが、後治療については確立されていない。ALK陽性NSCLCに対する第2世代ALK-TKIブリグチニブの前向き多施設共同観察研究であるWJOG11919L/ABRAID試験が行われている。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)では、アレクチニブ直後治療として同剤を評価したコホートAの初回解析結果が発表された。 対象はStageIIIB/IIIC/IVまたは再発のALK陽性NSCLC、主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、CNS病変症例におけるPFS(CNS-PFS)、安全性である。 主な結果は以下のとおり。・登録対象から102例が有効性評価対象となった。患者の年齢中央値は66.5歳、PS 0~1が89%を占め、CNS転移は36%に認められた。アレクチニブ中止の理由は94%が疾患進行であった。・ブリグチニブのPFS中央値は6.5ヵ月で95%信頼区間は4.83〜8.84ヵ月、12ヵ月PFS割合は33.3%、24ヵ月PFS割合は20.5%であった。事前に特定した95%信頼区間の下限値4.0ヵ月を達成した。・ORRは31.4%、DCRは70.6%であった。・CNS-PFS中央値は10.8ヵ月であった。・ctDNAを解析した87例中16例(18.3%)でALK変異が検出され、ALK変異陽性例と陰性例のPFS中央値は同程度であった(7.3ヵ月対6.9ヵ月)。・TP53変異は87例中19例(21.8%)で検出され、TP53変異陽性例では陰性例に比べPFS中央値が短い傾向が見られた(5.8ヵ月対8.3ヵ月)。・安全性は従来の知見と一貫していた。頻度が高い有害事象は、CPK上昇(48.1%)、AST上昇(34.6%)、ALT上昇(26.9%)など。肺臓炎/ILDは10.6%(Grade3は4.8%)に発現した。

96.

大会長に聞く第66回日本肺癌学会学術集会(JLCS2025)の注目トピック【肺がんインタビュー】第115回

第115回 大会長に聞く第66回日本肺癌学会学術集会(JLCS2025)の注目トピック2025年11月6~8日に開催される第66回日本肺癌学会学術集会。開催に先立ち、会長である順天堂大学の髙橋 和久氏に大会のテーマや見どころを聞いた。 参考 第66回日本肺癌学会学術集会ホームージ

97.

小細胞肺がん1次治療、タルラタマブ上乗せで1年OS率80.6%(DeLLphi-303)/ESMO2025

 PS0/1の進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の標準治療は、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬、およびPD-L1阻害薬単剤による維持療法である。この標準治療による全生存期間(OS)中央値は12~15ヵ月と報告されており、さらなる治療成績の向上を目的として、タルラタマブの上乗せが検討されている。1次治療でのタルラタマブの安全性・有効性を検討する国際共同第Ib試験「DeLLphi-303試験」では、タルラタマブの上乗せ方法の1つとして、プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬を1サイクル実施後にタルラタマブを上乗せし、維持療法にもタルラタマブを上乗せする治療法が検討されている(パート2、4、7)。その結果、タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達、1年OS率80.6%と良好な治療成績が示されたことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)でMartin Wermke氏(ドイツ・ドレスデン工科大学)により報告された。DeLLphi-303試験パート2、4、7の概要試験デザイン:国際共同第Ib相試験対象:1次治療としてプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬の併用療法を1サイクル実施したED-SCLC患者96例投与方法:タルラタマブ(20mg、3週ごと)+プラチナ製剤(カルボプラチンAUC5、各サイクルのday1)+エトポシド(100mg/m2、各サイクルのday1~3)+PD-L1阻害薬(アテゾリズマブ1,200mgまたはデュルバルマブ1,500mg、3週ごと)を3サイクル→タルラタマブ(同)+PD-L1阻害薬(同)を病勢進行まで評価項目:[主要評価項目]用量制限毒性、治療中に発現した有害事象(TEAE)、治療関連有害事象(TRAE)[副次評価項目]OS、無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、病勢コントロール率(DCR)など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は63.0歳(範囲:37~86)、男性の割合は67%、PS1の割合は55%であった。ベースライン時に脳転移、肝転移を有していた割合はそれぞれ16%、45%であった。標的病変の径の和の中央値は82.3mmであった。PD-L1阻害薬の内訳はアテゾリズマブ56例、デュルバルマブ40例であった。・追跡期間中央値13.8ヵ月時点における治療期間中央値は46週(四分位範囲:14~60)であった。・用量制限毒性は3例(いずれもアテゾリズマブ使用集団)に認められた。・Grade3、4のTRAEの発現割合は、それぞれ43%、35%であった。死亡に至ったTRAEは1例報告された(カルボプラチン+エトポシドに関連する敗血性ショックと判定)。・タルラタマブの中止に至ったタルラタマブに関連するTRAEは6%に発現した。・サイトカイン放出症候群(CRS)のほとんどがサイクル1に発現し、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)はすべてサイクル1に発現した。これらのほとんどはGrade1/2であった。・タルラタマブ開始時を基準としたORRは71%(CRは5%)で、DOR中央値は11.0ヵ月であった。DCRは82%であった。・タルラタマブ開始後のOS中央値は未到達で、1年OS率は80.6%であった。・同様に、PFS中央値は10.3ヵ月であり、1年PFS率は43.1%であった。 本試験結果について、Wermke氏は「ED-SCLCの1次治療におけるプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬へのタルラタマブ上乗せは、管理可能な安全性プロファイルと生存に関する有望な成績を示した。これは、タルラタマブ上乗せの有用性を標準治療との比較により検証する国際共同第III相試験『DeLLphi-312試験』の実施を支持する結果である」とまとめた。

98.

薬物療法で効果不十分の呼吸苦【日常診療アップグレード】第41回

薬物療法で効果不十分の呼吸苦問題87歳男性。肺がんが進行し、慢性的な呼吸困難が徐々に進行している。発熱や咳の増悪、喀血はないが、呼吸困難のため不安が増悪している。既往歴は高血圧である。オキシコドンの徐放性製剤とレスキューのための速放性製剤は使用している。バイタルサインは正常で、安静時の酸素飽和度は97%である。左上肺部と右下肺部の呼吸音が減弱している。呼吸苦を改善する目的で携帯用扇風器の購入を勧めた。

100.

HER2変異陽性NSCLCの1次治療、ゾンゲルチニブの奏効率77%(Beamion LUNG-1)/ESMO2025

 ベーリンガーインゲルハイムは、2025年9月19日にゾンゲルチニブについて「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」を適応として、厚生労働省より製造販売承認を取得した。本承認は、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」の既治療コホートの結果に基づくものである。本承認により、ゾンゲルチニブは既治療のHER2遺伝子変異陽性NSCLCに対する治療選択肢の1つとなったが、1次治療における有用性は明らかになっていなかった。そこで、Sanjay Popat氏(英国・Royal Marsden Hospital)が、本試験の1次治療コホートの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表した。HER2遺伝子変異陽性の進行NSCLCの1次治療は、免疫チェックポイント阻害薬±化学療法が標準治療であり、1次治療におけるHER2標的療法の有用性は確立していない。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、第Ib相の未治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者74例の結果が報告された。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効率(ORR)とし、副次評価項目は病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)とした(いずれも中央判定)。 主な結果は以下のとおり。・ゾンゲルチニブ 1日1回120mgによる治療を受けた患者(74例)の年齢中央値は67歳(範囲:35~88)、65歳以上75歳未満の割合は40%、75歳以上の割合は18%であった。女性の割合は50%、アジア人の割合は46%であった。元/現喫煙者の割合は35%、脳転移を有する割合は30%であった。・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは77%(CRは8%)であり(期待値40%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。DCRは96%であった。・奏効が認められた患者(57例)のうち、データカットオフ時点で47%がゾンゲルチニブによる治療を継続していた。・6ヵ月PFS率は80%、6ヵ月DOR率は79%であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は18%であった。主なTRAEは下痢(54%)、皮疹(23%)、ALT増加(18%)、AST増加(16%)、味覚異常(16%)であり、多くがGrade1~2であった。Grade4/5のTRAEは認められず、間質性肺疾患(ILD)/肺臓炎は2例に発現した(いずれもGrade2)。減量に至った有害事象(AE)の発現割合は15%、治療中止に至ったAEの発現割合は9%と低かった。 本結果について、Popat氏は「ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性の進行NSCLC患者において、統計学的有意かつ臨床的に意義のある治療効果を示した」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLCの1次治療におけるゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。

検索結果 合計:2179件 表示位置:81 - 100