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第77回 コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国

<先週の動き>1.コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国2.COVID-19後遺症でも労災認定/兵庫県3.2018年度公立病院の廃止は前年度より4件減少/総務省4.2021年の出生数は昨年に続き85万人以下が確実/厚労省5.コロナ対策予算、35%の22兆円が未執行/会計検査院6.早期がんの診断件数が1年で8,000件減少/対がん協会1.コロナ経口薬「molnupiravir」、世界初承認は英国英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は4日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口治療薬「molnupiravir」を世界で初めて承認した。本剤は米・メルクによって開発された。軽症~中等症COVID-19の重症化リスク因子を有する成人患者を対象にした第III相MOVe-OUT試験の中間解析で、molnupiravirは発症後5日以内に投与した場合、入院または死亡リスクを約50%低減し、早期承認を目指して欧州で申請していた。これを受け、磯崎 仁彦官房副長官は5日の記者会見で、有効性や安全性を確認ののち、速やかに承認を進めるとコメントしている。また、米・ファイザー社が開発中の「パクスロビド(PAXLOVID)」は、発症後3日以内の患者に投与することで、投与していない群と比較して入院・死亡リスクが89%減ったことを発表しており、今後わが国での承認も目指す。(参考)米メルクのコロナ経口薬「モルヌピラビル」、英が飲み薬では世界初の承認(読売新聞)米ファイザーのコロナ飲み薬、入院・死亡リスク9割減(日経新聞)コロナ飲み薬「年内実用化へ全力」 官房副長官(日経新聞)2.COVID-19後遺症でも労災認定/兵庫県COVID-19の後遺症で労働災害が認められたことを、ひょうご労働安全衛生センターが明らかにした。今回、兵庫県内の特別養護老人ホームで働く理学療法士の男性が新型コロナウイルスに感染し、職場に復帰した後も強い倦怠感などが続いたため、約4ヵ月後に医師により「新型コロナウイルス感染後遺症」と診断され、労災と認められた。COVID-19に関する労災請求件数は、2021年9月30日時点で、全国1万8,637件、そのうち労災と認められたのは1万4,567件。78.1%と高い認定率だが、国内のCOVID-19患者総数は172万人以上に上っており、労災請求が進んでいない可能性もある。国は後遺症も労災の対象になるとして、労働基準監督署に相談するよう呼び掛けている。(参考)新型コロナ 後遺症でも労災認定 国が労基署への相談呼びかけ(NHK)新型コロナウイルス感染後遺症で労災申請 監督署が労災と認定(ひょうご労働安全衛生センター)3.2018年度公立病院の廃止は前年度より4件減少/総務省総務省は公営企業の経営改革について抜本的な改革を進めているが、2018年度に廃止となった公立病院が5件となり、前年度より4件減ったことを明らかにした。うち公立病院から公営企業型地方独立行政法人と指定管理者制度への移行がそれぞれ1件で、PFI(民間資金等活用事業)などの民間委託は0件だった。公立病院数および病床数は、ピーク時2012年の1,007病院(病床数:23万9,921床)から2020年度には853病院(同:20万3,882床)と大きく減少している。今年10月に立ち上げられた「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会」では、これまで進めてきた再編・ネットワーク化・地域医療構想による改革について、公立病院が新型コロナ感染症対応において果たしている役割を考慮に入れつつ、引き続き第8次医療計画の策定スケジュールを踏まえて、公立病院改革の次期ガイドラインの策定について議論していく。(参考)公立病院の事業廃止4件、民営化・民間譲渡は1件 20年度(CBnewsマネジメント)公営企業における更なる経営改革の取組状況(総務省)持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化に関する検討会(総務省)4.2021年の出生数は昨年に続き85万人以下が確実/厚労省厚生労働省は、2021年8月分の人口動態統計速報で今年の1~8月の出生数の合計は55万5,080人と、前年の同期間と比べ、2万8,138人(4.8%)下回っていることを明らかにした。昨年のコロナウイルス感染拡大により、今年の1月の出生数は前年同月比で14.6%の減少となった。その後出生数は回復傾向だが、このまま推移すると、前年の出生数84万832人に続いて85万人を下回ることが確実となる。一方、死亡者数は前年の1~8月に比べて5万1,572人多く、前年の137万2,648人よりも3.7%ほど上回り、自然減が加速している。(参考)2021年の出生数・死亡数の見通しー新型コロナの影響は限定的だが、一部に見過ごせない動きも(日本総研)2021年の出生数、85万人割り込む恐れ コロナ禍での受診控えが“子づくり”にも影響(CBnewsマネジメント)人口動態統計速報(令和3年8月分)(厚労省)5.コロナ対策予算、35%の22兆円が未執行/会計検査院会計検査院は5日に提出した決算検査報告により、新型コロナウイルス対策で政府が計上した総額65兆4,165億円のうち3割超の22.8兆円余りが未執行となり、このうち21兆7,796億円が翌年度に繰り越されたことを明らかにした。コロナウイルスに関する個別事業については妥当性が検証され、接触確認アプリ「COCOA」の不具合やアベノマスク約8,200万枚が未配布のため、2020年8月~21年3月で保管費用の約6億円などが指摘され、会計検査院は適切な予算執行と国民への十分な説明を国に求めている。(参考)コロナ対策費22.8兆円使われず…検査院、国民への説明求める報告書(読売新聞)巨額投じた国の新型コロナ対策 浮かび上がるずさんな予算執行(朝日新聞)令和2年度決算検査報告の概要(会計検査院)6.早期がんの診断件数が1年で8,000件減少/対がん協会日本対がん協会は4日に、日本癌学会、日本鴈治療学会、日本臨床腫瘍学会と共同で実施した調査結果を発表した。調査はアンケートにより実施され、全がん協会加盟施設、がん診療連携拠点病院、がん診療病院、大学病院など486施設を対象に、今年の7~8月に5種類のがん(胃、大腸、肺、乳、子宮頸)の診断数、臨床ステージ、手術数、内視鏡治療件数などについて聞き取った。その結果、去年の胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんの診断件数は8万660件と、一昨年より8,000件余り(9.2%)減少しており、コロナによる受診控えや検診受診者数の減少によって、がんの診断件数が減った可能性が明らかとなった。今後、進行がんの発見が増える恐れもあり、早期受診やがん検診受診率の向上を求めている。(参考)2020年のがん診断数9%減 コロナ禍で 日本対がん協会調査(毎日新聞)がん診断が1割減…コロナ禍で受診控え影響、進行がん増加懸念(読売新聞)“新型コロナで受診控え” がん診断件数 約9%減少(NHK)2020年のがん診断件数 早期が減少 進行期の増加を懸念 日本対がん協会とがん関連3学会が初の全国調査(日本対がん協会)

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アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法のNSCLC1次治療、EGFR変異、肝臓/脳転移例への有効性(IMpower150)/JTO

 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ABCP)またはアテゾリズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ACP)とベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(BCP)を評価する第III相IMpower150試験の、EGFR変異および肝臓または脳転移サブグループに関する全生存(OS)の最終解析が報告された。 IMpower150試験の対象は、化学療法未治療の切除不能な進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者1,202例。安定した既治療の脳転移症例は許可されている。 試験群はABCP群とACP群で対照群はBCP群である。対象患者は各群に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2019年9月13日)の追跡期間中央値は39.3ヵ月であった。[ABCP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOSハザード比[HR]は0.60(95%CI:0.31~1.14)、EGFR-TKI既治療例のHRは0.74(95%CI:0.38~1.46)、とABCP群はBCP群に比べOSの改善を維持した。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは0.68(95%CI:0.45~1.02)、とABCP群のOS改善が維持されていた。[ACP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOS HRは1.0(95%CI:0.57~1.74)、EGFR-TKI既治療例のHRは1.22(95%CI:0.68~2.22)、とACP群は生存ベネフィットを示せなかった。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは1.01(95%CI:0.68~1.51)、とACP群の生存ベネフィットを示されなかった。[脳転移]・新たな脳転移の発症全体は100例(8.3%)にみられた。・正式な評価ではないが、ABCP群ではBCP群に比較して、新たに脳転移が発現するまでの時間(TTD)に改善が見られた(HR:0.68、95%CI:0.39~1.19)。 今回の探索的研究の最終解析は、EGFR変異症例および肝転移を有する症例において、ABCP群のBCP群に対するOSベネフィットを示した。一方、ABCP群の脳病変のTTD延長については、さらなる調査が必要だと筆者は述べている。

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固形がん治療をリードする頭頸部がんその全体像を見る【Oncologyインタビュー】第35回

出演:国立がん研究センター東病院 頭頸部内科 田原 信氏近年大幅に増加している頭頸部がん。その罹患率は世界では4位、日本人男性では7位、と決して希ながんではない。治療には新治療が続々と登場する頭頸部がんの現状と将来について、スペシャリストである、国立がん研究センター東病院の田原 信氏が解説する。

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副作用の説明にこんな工夫【非専門医のための緩和ケアTips】第14回

第14回 副作用の説明にこんな工夫患者さんに新しい薬を処方するとき、いつも以上に慎重な説明が求められますよね。とくに副作用についてはしっかりと説明しておかないと、後から「聞いてなかった!」なんてクレームにもなりかねません。今回はそんな副作用の説明についてです。今日の質問外来でフォロー中の進行がん患者さん。腫瘍が増大傾向で現在の鎮痛薬では効果不十分と判断してオピオイドを勧めました。眠気、吐き気、便秘といった副作用を説明したところ顔を曇らせ、「そんなに副作用がある薬は飲みたくないです」と拒否されてしまいました。副作用を伝えないわけにはいかないと思いますが、どうすればよかったのでしょうか?今回のご質問も緩和ケアの実践ではよくあるテーマですね。まずはこういった病状の方の外来診療をしっかりされていることや、地域の診療所で緩和ケアが届けられるようご尽力いただいていることに感謝を申し上げたいと思います。さて、この「しっかり説明すると不安にさせてしまう」という問題、なかなか難しいのですが、工夫の余地はありそうです。人にはそれぞれ「バイアス」が存在します。何かをやった結果としての「良いこと」と「悪いこと」を比較すると、悪いことの影響のほうを大きく感じることが知られています。行動経済学ではこういった特性を「損失回避」という言葉で説明しています。「人は何かしたせいで良くないことが起きることを嫌う傾向が強い」というわけです。処方の時点で、医師としては使用するメリットが副作用のデメリットよりも大きいと判断しているわけです。医師側は自明と思いがちですが、その点をあらためて患者さんに伝えましょう。「メリット」と「デメリット」の説明量を同じにすると患者さんはデメリットのほうを強く感じます。まして、「後々にトラブルにならないよう、副作用についてしっかり説明した」といった説明量のバランスであれば、おそらく患者さんを「めちゃくちゃビビらせる」説明になっていることでしょう。ではどうすればよいか、具体例を少し考えてみましょう。「今の症状に対して、オピオイドを使用したほうがいいと思います(=明確に言い切る)。症状に悩まされる時間が少なくなるはずです(=メリットを先に)。人によっては眠気や吐き気といった症状が出ることがありますが(=デメリットを事実ベースで)、予防薬もあるので安心してください。便秘が続く場合も便秘薬を調整しながら経過を見ます(=デメリットにも対処できる)。今の症状を減らすことで、ご自宅でより過ごしやすく、夜も眠りやすくなると思うので、試してみませんか?(=再びメリットを伝えたうえで、最終判断は委ねるというトーン)」いかがでしょう? 私もまだまだ試行錯誤中なので、皆さんの工夫もぜひ教えていただければと思います。今回のTips今回のTips薬剤の説明はメリットを先に。副作用などのデメリットも共有しつつ、安心感が伝わるコミュニケーションを工夫しよう。

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進むがん遺伝子パネル検査普及と見える課題/日本癌治療学会

 1万8,329例中607例、8.1%。C-CATに登録されたわが国のがん遺伝子パネル累積検査数と、そこから治療に結び付いた症例数および割合である。 2021年10月21~23日に開催された第59回日本癌治療学会学術集会のワークショップにおいて、わが国のがん遺伝子パネル検査の現状が発表された。大幅な検査の増加とともに、いくつかの課題が示されている。検査数も治療に結びついた症例割合も増加 東北大学の小峰 啓吾氏は、がんゲノム医療中核拠点病院における、がん遺伝子パネル検査の経時的な解析結果を発表した。 調査は、がんゲノム医療中核拠点病でのがん遺伝子パネル検査を対象に行われ、2019年6月~2020年1月の第1期と、2020年2月~2021年1月の第2期に分けて分析された。 がん遺伝子パネル検査数は、第1期754例、第2期では2,295例、と第2期で大きく増加した。また、検査から治療に結び付いた症例の割合も、第1期3.7%、第2期7.7%、と第2期で有意に増加した(p<0.001)。 治療に結び付いた症例の治療内訳では治験がもっとも多く、割合は第1期で2.1%、第2期では4.7%と増加していた。また、治験登録数は治療に結びつく症例数と相関していた(R=0.72)。 遺伝カウンセリングが推奨された割合についても、第1期2.4%、第2期では11.1%、と第2期で増加した(p

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ESMO2021レポート 肺がん

レポーター紹介2021年のESMOは、6月のASCO、8月のWCLCに続く9月開催ということもあり、肺がん領域では大きなインパクトのある発表はないと思われましたが、重要な試験のアップデート、EGFR-TKIや免疫チェックポイント阻害薬の耐性後の治療開発、希少ドライバー変異に対する新薬や、がん免疫療法の第III相試験など、新たな知見の報告が多くありました。今回はその中から、とくに実臨床や近い将来に影響すると思われる演題について概括します。WJOG9717L試験EGFR遺伝子変異陽性、未治療進行再発、非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、オシメルチニブを標準治療に、オシメルチニブ+ベバシズマブの優越性を評価した無作為化第II相試験である。活性型EGFR遺伝子変異タイプの割合や約2割の術後再発症例を含むなど、患者背景は同じ対象の過去の試験と同様であった。122例が登録され1:1に割り付けられた。主要評価項目は中央判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は主治医判定のPFS、全生存期間、奏効割合が設定されている。第1世代のEGFR-TKIであるエルロチニブにベバシズマブ(BEV)を併用することでPFS延長効果が第III相試験で示されており、オシメルチニブにBEVを併用することでPFSのさらなる延長効果に大きな期待が集まっていた試験である。BEV併用効果を示すことができなかった本試験の結果は、BEV併用群のPFS中央値22.1ヵ月、オシメルチニブ単剤群20.2ヵ月であった。生存曲線を見ると、治療開始早期から離れていたが24ヵ月あたりでほぼ重なってしまい、ハザード比0.862(95%信頼区間0.531~1.397)という結果だった。医師判定による結果も同様で、BEV併用群24.3ヵ月、オシメルチニブ単剤群17.1ヵ月であり、ハザード比0.801(95%信頼区間0.504~1.272)で差がなかった。サブ解析では、喫煙歴のある集団、del19の集団で併用群のPFSが良い傾向が認められた。奏効率は、BEV併用群82%、オシメルチニブ単剤群86%で同等であるが、Waterfall plotでは併用群は全例で縮小が認められた。しかし、血管新生阻害薬併用時に見られる腫瘍縮小の深さは見られなかった。有害事象で1つ興味深い結果があった。併用群でオシメルチニブに関連する肺臓炎発症頻度が少ないことである。オシメルチニブ単剤群18.3%、併用群3.3%であり、肺臓炎発症リスクを低減させる可能性が示唆される。この傾向は血管新生阻害薬併用の他試験でも見られている。本試験以外に、オシメルチニブにBEVを併用した試験は、T790M遺伝子変異陽性既治療症例を対象に実施された比較試験が2つあり(BOOSTER、WJOG8715L)、いずれも併用によるPFS延長効果を示すことができていない。血管新生阻害薬併用は単純ではなく、EGFR変異タイプ、胸水貯留や間質性肺炎の懸念など、使いどころを考える必要がある。DESTINY-Lung01試験HER2を標的としたADC(Antibody Drug Conjugate活性を:抗体薬物複合体)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)の第II相試験である。本試験には、標的とするHER2の免疫染色による、HER2過剰発現、またはHER2遺伝子変異を対象とした2つのコホートがある。2020年のASCOでHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん42例の中間解析結果が発表されたが、今回は91例の結果が発表された。主要評価項目は独立評価による奏効割合である。観察期間中央値は13.1ヵ月、年齢中央値60歳、36.3%に脳転移を有し、変異部位はキナーゼドメインが93.4%であった。ほぼ全例が標準治療を受けた既治療例で、HER2-TKI既治療例も一部いた。解析時、15例(16.5%)が治療継続していた。CR 1.1%を含む、54.9%の奏効割合、病勢制御率は92.3%。HER2変異部位、蛋白発現や遺伝子増幅レベル、TKI既治療の有無に関係なく奏効していた。PFS中央値は8.2ヵ月、生存期間中央値は17.8ヵ月で、標準治療後の成績として有望な結果である。有害事象において特筆すべきは間質性肺疾患(ILD)である。24例(26.4%)に薬剤関連のILDが発現し、多く(75%)はGrade1/2であるが、死亡2例(2.2%)を認めた。細胞傷害性抗がん剤がリンカーで結合している薬剤のため、30%を超える消化器毒性と骨髄抑制の発現があり、50%を超える嘔気と倦怠感が最も多い減量理由であった。RET阻害薬が最近承認され、KRAS阻害薬は承認申請中であり、希少ドライバー変異に対する分子標的治療薬が臨床に届き始めた。HER2を標的にする阻害薬はなく、この試験結果から間違いなく期待される薬剤であるが、リスクベネフィットを考慮する必要がある。本研究は発表と同時にNEJM誌に掲載されている。ZENITH20試験(コホート4)HER2エクソン20挿入変異陽性、未治療の非小細胞肺がんを対象にした、経口の汎HERチロシンキナーゼ阻害薬poziotinibの第II相試験である。EGFRとHER2のエクソン20の挿入変異は、非小細胞肺がんにおいてそれぞれ約2~4%に認められ、変異全体の約10%を占めている。またエクソン20挿入変異は既存のTKIに対して耐性を示すことが知られている。HER2エクソン20挿入変異陽性非小細胞肺がんに対し有効な治療はない。本試験には7つのコホートがあり、主に既治療・未治療、EGFR・HER2のそれぞれに対する有効性を検討している。今回のコホートでは、最初の48例にpoziotinib 16mgを1日1回経口投与、以後登録される被験者には8mgが1日2回投与された。年齢中央値は60歳で肺がん試験では比較的若い。未治療48例中21例が奏効し、奏効率43.8%(95%信頼区間:29.5~58.8)であり、主要評価項目を達成した。PFS中央値は5.6ヵ月、そのうち26%の症例はPFSが12ヵ月を超えて持続していた。有害事象は、下痢(83%)、口内炎(81%)、皮疹(69%)、爪囲炎(46%)が認められ、投与中断割合88%、減量割合77%で治療中止割合は13%、と既存の第2世代EGFR-TKIと同程度であり、毒性がやや強いと思われる。治療薬がないドライバー変異に対する新規治療として有効性を示しているが、初回治療成績として臨床的に意義のある有効性とは言い難い。IMpower010試験完全切除された術後IBからIIIA期(UICC第7版)の非小細胞肺がんで、術後化学療法を最大で4サイクル受けた患者を対象に、アテゾリズマブを16サイクル投与する試験治療を経過観察と比較した第III相試験である。PD-L1(SP263)発現陽性54.6%、EGFRまたはALK遺伝子陽性例14.9%が含まれていた。無病生存期間(DFS)を主要評価項目とした中間解析の結果がすでにASCO2021で発表されており、アテゾリズマブは経過観察に比べて、再発または死亡リスクを34%低下させた(ハザード比:0.66、95%信頼区間0.50~0.88)。ASCO、WCLCでの発表に続く今回は、再発の詳細と再発後の治療についての発表で、少しずつ試験の全貌が明らかになってきている。再発率は、PD-L1 TC 1%以上でII~IIIA期の集団で、アテゾリズマブ群29.4%、経過観察群44.7%であった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団では33.3%と43.0%、ITT集団(IB~IIIA期)では30.8%と40.8%であった。再発形式は局所または遠隔のみ、その両方と中枢神経再発別で比較しているが、2群間で大きな差はない。再発形式は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期の集団で、局所領域のみの再発はアテゾリズマブ群47.9%、経過観察群41.2%、遠隔再発のみは38.4%と39.2%、局所と遠隔再発は12.3%と16.7%、中枢神経再発のみは11.0%と11.8%だった。PD-L1発現を問わずII~IIIA期の全集団やITT集団でも、再発形式、その割合はほとんど一緒であり、2群間に大きな差はなかった。無作為化から再発までの期間は、PD-L1 TC 1%以上のII~IIIA期集団でアテゾリズマブ群のほうが経過観察群より長く、中央値がそれぞれ、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(0.7~42.3ヵ月)、経過観察群10.9ヵ月(1.3~37.3ヵ月)であった。また、同集団の再発形式別に見た再発までの期間は、いずれもアテゾリズマブ群のほうが長かった。しかし、無作為化されたII~IIIA期の集団やITT集団では、2群間の再発までの期間中央値は差が小さかった。再発後の治療においても外科治療、放射線治療、化学療法いずれも2群ともほとんど同じ割合であり、免疫療法を受けた割合は経過観察群(35.3%)で、アテゾリズマブ群(11.0%)より多かった。アテゾリズマブ群の再発に関しては経過観察群と比べて特徴のある因子はなく、局所から脳転移などの遠隔転移まで、満遍なく制御していることでDFS延長効果を示した結果であった。また、PD-L1発現50%以上の強発現集団では、DFSのハザード比は0.43と報告されている。現在、アテゾリズマブは術後化学療法に対して承認申請を行っている。本試験の観察期間中央値が32ヵ月であり、生存曲線もテイルプラトーが見られておらず、本当の意味での術後治療の有効性を見極めるためにはもうしばらく時間が要りそうである。IMpower010試験のデータは、Lancet誌に掲載されている。PACIFIC-R Real-World Study切除不能III期非小細胞肺がんを対象として、根治的同時化学放射線療法(CRT)後にデュルバルマブ維持療法を1年間投与する治療を、プラセボと比較して検証したPACIFIC試験のリアルワールドデータである。今年のASCO2021でデュルバルマブ投与による5年生存割合40%と長期生存改善効果が報告され、切除不能III期の予後を大きく改善しているが、試験データがこの1つしかない。良好な治療成績を示したPACIFIC試験だが、プラセボ群の治療成績も良い。そのため、試験に登録された対象全体が全身状態を含め条件の良い症例であると考えられ、患者背景もさまざまな実臨床で治験と同様の成績が証明できるのか疑問があった。この試験は、PACIFICレジメンの実臨床における有効性を後ろ向きに評価した観察研究である。11ヵ国、29施設から登録された1,399例が解析対象となった。患者背景は年齢中央値66歳、StageIIIA 43.2%、扁平上皮がん35.5%、CRT同時併用は76.6%、PD-L1≧1%は72.5%であった。放射線治療終了からデュルバルマブ投与までの期間中央値は56日、デュルバルマブ投与回数中央値22回、PFS中央値は21.7ヵ月で治験成績(16.9ヵ月)より良好であった。デュルバルマブ投与完遂率47.1%、有害事象による中止率16.7%、PDによる中止率26.9%も治験と同様であった。切除不能III期非小細胞肺がんに対するCRT後のデュルバルマブ維持療法の有用性は、リアルワールドでも裏付けられた結果といえる。CASPIAN試験進展型小細胞肺がんを対象に、プラチナ+エトポシドを標準治療とし、デュルバルマブの併用、デュルバルマブ+tremelimumabの併用をそれぞれ評価した第III相試験である。主要評価項目である全生存期間の延長効果がデュルバルマブの上乗せによって示され、肺がん診療ガイドラインで推奨されている。最近、Lancet Oncology誌に掲載された2年フォローアップ解析の生存データの報告も新しい。今回の発表では、追跡期間中央値39.4ヵ月の3年生存割合のアップデート結果が示された。進展型小細胞肺がんで3年生存まで解析するのは珍しい。報告された生存に関する解析では、両群のハザード比が0.71、95%信頼区間0.60~0.86、3年生存割合が試験治療群17.6%、標準治療群5.8%という結果で、生存曲線の開きを維持しつつ、3年生存率の差が3倍になりテイルプラトーも見られた。小細胞肺がんにおいても免疫チェックポイント阻害薬の上乗せによる長期生存効果が確認できたが、非小細胞肺がんと違い、有望なバイオマーカーがなく、開発に期待したい。CheckMate-743試験切除不能進行、未治療悪性胸膜中皮腫の1次治療に対して、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の試験治療を、標準化学療法であるペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンと比較した第III相試験である。観察期間中央値29.7ヵ月で実施された事前指定の中間解析においてハザード比0.74(96.6%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0020)と、ニボルマブとイピリムマブ併用療法による生存延長効果が示されているが、今回、観察期間中央値43.1ヵ月の3年長期生存結果と探索的バイオマーカーの解析結果が発表された。生存期間中央値は、ニボルマブとイピリムマブ併用群18.1ヵ月、標準治療群14.1ヵ月でハザード比0.73(95%信頼区間0.61~0.87)であった。3年生存割合は、23%と15%で、少しずつ年次生存率の差は小さくなっている。生存曲線はしっかり離れているがテイルプラトーは見え始めたような印象である。腫瘍組織のRNAシークエンスを用いてCD8A、STAT-1、LAG-3、PD-L1の4遺伝子の発現スコア、TMB、LIPI(Lung immune prognostic index、好中球/リンパ球比とLDHから算出される)と生存の関連が解析された。ニボルマブとイピリムマブ治療を受けた集団において、4遺伝子の発現スコアが高い集団で生存が良かった(21.8ヵ月vs.16.8ヵ月)。一方、化学療法群ではスコアによって生存に差がなかった。TMBやLIPIスコアに関係なく、ニボルマブとイピリムマブ群の生存が良い傾向が示された。WJOG9616L試験PD-1(L1)抗体が有効であった進行再発非小細胞肺がんに対して、ニボルマブ投与の有効性を検討した第II相試験である。主要評価項目は奏効割合、副次評価項目は無増悪生存期間、全生存期間などとなっている。標準治療を受けた既治療進行肺がんでは、前治療で奏効が得られた抗がん剤の再投与による治療は、比較的広く受け入れられている。免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の再投与の有効性は、症例報告で散見されている程度である。対象は、CR、PRもしくは6ヵ月以上のSDの臨床的有効性が得られ、その後に増悪し、最終投与から60日以上経過している61症例で、59例で有効性が解析された。奏効割合は8.5%、無増悪生存期間中央値2.6ヵ月、全生存期間中央値は11.0ヵ月だった。診断時のPD-L1発現や前治療ICIの効果(41例がCRまたはPR)と有効性は関連性がなかった。ICI無効後のリチャレンジの有効性はない結果となったが、irAEなどで中止後の再投与とは違うと思われる。おわりに今回取り上げた演題以外にも知っていただきたい発表がたくさんありますが、臨床に反映できる内容が良いと考えて演題を選び概括させていただきました。まずはこのレポートが、多くの先生方に読んでいただき、今の臨床に役立つ内容になっていれば幸いです。

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ESMO2021レポート 消化器がん(上部下部消化管)

レポーター紹介2021年9月16日から21日にかけて、パリでESMOが開催された。「パリ」ということで楽しみにされていた先生も多かったのではないだろうか。私もその1人である。今回も新型コロナウイルスの影響で現地参加はかなわなかったが、感染は現地で比較的制御されているのかハイブリッドでの開催であり、欧米の先生の中にはリアルに参加されている方がいたのが大変うらやましく、印象的だった。今年のESMO、消化管がんの演題はpractice changingではないものの、来るべき治療の影が見え隠れする、玄人受けする(?)演題が多い印象であった。後述するように、とくに中国の躍進を感じさせる演題が多く、個人的には強い危機感を覚えている。食道がんいまや消化管がんにおける免疫チェックポイント阻害剤(ICI)のショーケースともいえるのが食道がん1st lineである。これまでに出そろったデータとして、ペムブロリズマブ+chemo(KEYNOTE-590試験)、ニボルマブ+chemo or イピリムマブ(CheckMate 648試験)、camrelizumab+apatinib(ESCORT-1st試験)がある。それにさらに加わったのが、中国発のICI、sintilimabとtoripalimabである。抗PD-1抗体sintilimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル or 5-FU)に対する上乗せを検証したORIENT-15試験では、食道扁平上皮がん(ESCC)のみの全体集団で、主要評価項目の全生存期間(OS)における有意な延長を示した(OS median:16.7 vs.12.5 months、HR:0.628、p<0.0001)。同じく抗PD-1抗体toripalimabのchemotherapy(シスプラチン+パクリタキセル)に対する上乗せを検証したJUPITER-06試験では、ESCCのみの全体集団で主要評価項目のOS、無増悪生存期間(PFS)の両方において有意な延長を示した(OS median:17.0 vs.11.0 months、HR:0.58、p<0.00036、PFS median:5.7 vs.5.5 months、HR:0.58、p<0.0001)。胃がんCheckMate 649試験(CM 649)の成功によって、胃がん1st lineの標準治療がICI+chemotherapyとなったのは昨年のESMOであった。CM 649はそもそも3アーム試験であり、chemo±ニボルマブ(nivo)のほかにニボルマブ(1mg/kg q3w)+イピリムマブ(ipi)(3mg/kg q3w)というexperimental armがあったのだが、毒性の問題で登録中止となり主解析から外れていた。nivo+ipiにはさまざまなvariationがあるが、CM 649では高用量のipiが採用されている点は注意されたい。今回のESMOではnivo+ipiアームのデータが、chemo±nivoの長期フォローアップ、MSI解析に加えて公表された。結論から言えば、nivo+ipiはchemoに対して期待されたCPS≧5の集団において優越性を示すことはできなかった(OS:11.2 vs.11.6 months、HR:0.89、p=0.232)。MSI-Hは試験全体の3%であった。chemoとの比較において、chemo+nivoは高い有効性を示した(OS:38.7 vs.12.3 months、HR:0.38、ORR:55% vs.39%)。途中で中止となったアームなので比較はできないが、nivo+ipiはMSI-Hに対して、さらなる有効性を示唆した(OS:NR vs.10.0 months、HR:0.28、ORR:70% vs.57%)。MSI-Hに対しては5-FUがdetrimentalに作用する可能性が示唆されており、殺細胞性抗がん剤を含まないレジメンの有効性を示唆する結果であると考えている。現在、未治療のMSI-H胃がんに対するニボルマブ(240mg, fix dose, q2w)+low doseイピリムマブ(1mg/kg q6w)の有効性を探索する医師主導phase II試験(NO LIMIT, WJOG13320G/CA209-7W7)が進行中である(プロトコル論文:Kawakami H, et al. Cancers (Basel). 2021;13:805.)。nivo+ipiについてはもうひとつ、HER2陽性胃がん初回治療におけるニボルマブ+トラスツズマブにイピリムマブvs. FOLFOXの上乗せ効果を比較したランダム化phase II、INTEGA試験の結果も興味深かった。試験デザインは先進的である。つまりCM 649でnivo+ipiがchemoに対する優越性を証明でき、かつKEYNOTE-811においてchemo+トラスツズマブ+ペムブロリズマブの優越性が証明できれば、その次に浮かぶclinical questionがこのデザインだったからである。すでにHER2陰性胃がんに対して、nivo+ipiが化学療法を凌駕することがないことは、CM 649にて示されていたが、残念ながらこの試験結果もそれを追認するものであった。この結果から、HER2陽性胃がんに対する1st lineとしてのKEYNOTE-811の重要性が増した印象であり、生存データの結果公表が待たれる。HER2陽性胃がんといえば、本邦発のHER2 ADC、T-DXdの2次治療における欧米患者集団でのsingle arm phase II試験、DESTINY-Gastric02のデータが公表された。T-DXdは日本では3次治療以降の承認であるが、米国FDAにおいては2次治療ですでに承認となっている。主要評価項目を奏効率とし、トラスツズマブを含む1次治療に不応となったHER2陽性胃がん79例が登録された。有害事象は既報と変わりなかった。肝心の奏効率は38%と3次治療以降を対象としたDESTINY-Gastric01で認められた51%より低い数字であった(もちろん直接比較するものではないが)。Gastric-01と02の違いとして注意しなければならないのは、人種の違い以外(01は日本と韓国、2ヵ国の試験)に、02が2次治療すなわちトラスツズマブ不応直後の症例を対象としている、ということである。胃がんの治療開発の歴史においてトラスツズマブを含むanti-HER2 beyond PDは、これまで開発がことごとく失敗している。その原因の1つと考えられているのが、細胞表面上に発現しているHER2タンパクがトラスツズマブ治療中に欠失することにより不応となるという獲得耐性メカニズムである。複数の報告があるが、一例を挙げると、トラスツズマブbeyond PDの有効性を探索したT-ACT試験では2nd line前のHER2 statusが調べられた16症例のうち、実に11例(69%)でHER2陰性であった(Makiyama A, et al. J Clin Oncol. 2020;38:1919-1927.)。そうした背景からGastric-02試験においては、試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっている。こうしてみると、01試験の高い奏効率はどう説明できるのか、という疑問も生じる。現在、トラスツズマブ不応となったHER2陽性胃がんを対象としたphase III、DESTINY-Gastric04試験(weeklyパクリタキセル+ラムシルマブvs.T-DXd)が進行中である。この試験でも試験開始前に再度HER2陽性であることが確認されたことが適格条件となっており、今後注目の試験である。食道がんでもpositiveとなったsintilimabは、胃がん1次治療でもpositiveな結果であった(ORIENT-16試験)。CapeOxに対してsintilimabは、主要評価項目のOSにおいてCPS≧5(18.4 vs.12.9 months、HR:0.766、p=0,0023)および全患者集団(15.2 vs.12.3 months、HR:0.766、p=0.0090)において有意な延長を示した。中国の薬剤開発状況を「#MeToo」戦略といってばかにするのは簡単だが、昨年のESMOであればpresidential sessionに選出されたような開発を国内のみで短期間、しかも複数で成しえていること事態が驚異的である。ただ、これだけ同じような治療法が乱立した場合、どのような使い分けが中国国内で議論されるのかは知りたい気がする。しかし今回のESMOで一番衝撃を受けたのは、これからご紹介するClaudin(CLDN)18.2に対するCAR-Tである。CAR(Chimeric antigen receptor)-Tとは、患者さんのT cellに、がん細胞などの表面に発現する特定の抗原に対するキメラ受容体を人為的に発現させたものである。現在、CAR-T治療は本邦では白血病や悪性リンパ腫にのみ保険適用である一方、固形がんでの開発はまだまだ途上という印象である。CLDNは細胞間結合、とくにタイトジャンクションに関与するタンパク質で、少なくとも24種類のアイソフォームが知られている。CLDN18は、胃と肺で特異的に発現し、CLDN18.2は、タイトジャンクションが破壊された胃がん(低分化)での発現が高く、高度に選択的なマーカーと考えられている。すでにCLDN18.2を標的とする臨床開発は行われている。最も進んでいるのはCLDN18.2抗体zolbetuximabと化学療法を併用する治療戦略で、phase IIIが進行中である。そのCLDN18.2を標的とするCAR-Tの有効性と安全性に関するphase I試験の結果が報告された。対象はECOG PS-0,1、18~75歳のCLDN18.2発現陽性、既治療の胃がん症例であった。CLDN18.2陽性を背景に、42.9%がSignet ring cell carcinomaであった。前治療として抗PD-(L)1抗体が42.9%、Multi kinase inhibitorが35.7%で投与されていた。懸念された有害事象で治療中止となったものは1例のみで、忍容性が示される結果であった。有効性に関しては以下のとおりである。標的病変を有する36例中13例(48.6%)で奏効が認められた。病勢制御率は73%であった。また、少なくとも2ライン以上の治療を受けた症例(40%以上が抗PD-[L]1抗体既治療)でみると、奏効率は61.1%、病勢制御率は83.3%、median PFS 5.6ヵ月、median OS 9.5ヵ月というものであった。もちろんpreliminaryな結果ではあるが、この分野で中国の開発が一歩先に出ていることを示した重要なデータである。大腸がんMSS大腸がんに対しては、なかなか革新的な治療がなく、以前効果のあった薬を再利用するrechallengeの有効性が議論されるほど、「冬の時代」といえるのが大腸がんである。その理由としては、「大半を占めるMSSに対してICIが無効である」ことと「治療抵抗因子としてのRAS変異の存在(大腸がんの半数を占める)」が挙げられる。この大きな課題に対して、わずかずつではあるが光明が差してきていることを感じさせる結果が報告された。まずはICIについて注目した演題が2つ。1つはFOLFOXIRI+ベバシズマブ(Bmab)+アテゾリズマブ(atezo)の有効性を探索したランダム化phase II、AtezoTRIBE試験である。イタリアのGONO study groupらしく、1次治療としてFOLFOXIRI+Bmabがbackbone chemotherapyに選択された。主要評価項目をPFSとし、218例がatezo+chemo群vs.chemo群に2:1で割り付けされた。MSI-Hはそれぞれ6%、7%であった。結果として、atezo+chemo群が有意なPFSの延長を示した(mPFS:13.1 vs.11.5 months、HR:0.69、80%CI:0.56~0.85、p=0.0012)。一方で奏効率については59% vs.64%、R0 resection rateは26% vs.37%と有意差はないものの、atezo+chemo群で不良な傾向が認められた。この結果をどう捉えるか? 個人的には、この結果はby chanceの可能性が高く有効性については疑問符と考えている。この試験で気になっているのは、「客観性」が保たれていたのか、つまりblindが機能したのかということであり、それは主要評価項目PFSの確からしさに直結する。この試験にはopen labelなのかという記載がなく不明であるが、仮にblindされていたとしても経験のあるoncologistであれば、毒性からICIが投与されているかどうかは感覚的にわかる部分がある。その場合、PFSの評価が甘くなる可能性がある。つまりinvestigator PFSなのかcentral PFSなのかによって、ここが大きく揺らぐ可能性があるが、そこも明言されていない。一方、responseについては客観的な評価となるわけで、そこで優越性が示されていないことが上記の疑念をさらに増幅させる。さらなる情報の追加が求められる。もうひとつ、MSS、MGMT不活化切除不能大腸がんに対する、テモゾロミド(TMZ)、TMZ+LD-イピリムマブ+ニボルマブ併用療法の逐次治療の有効性を検討する(phase II)MAYA試験も注目した演題であるが、これも客観性に乏しいという問題があり、現時点での評価はやはり疑問符である。MSSに対するICIのチャレンジは道半ばという印象であった。一方、光明が見られたのはKRAS mutationに対してである。KRAS G12Cに対する開発が非小細胞肺がんに対するsotorasibを嚆矢に急激な発展を遂げているが、今回、既治療大腸がんKRAS G12Cを対象に、RAS G12C阻害剤adagrasib単剤もしくはセツキシマブ併用の有効性を探索したKRYSTAL-1試験の結果が報告された。個人的には、すでに基礎的に有効性が示されているセツキシマブ併用に注目していた。結果としては奏効率が単剤で22%、併用で43%と、別のRAS G12C阻害剤であるsotorasibでは見られなかった「手応え」を感じさせる結果であった。こうしたearly phaseでの良好な結果を見るとすぐに飛びつきたくなるが、Cobi Atezoの苦い経験からも、今回の結果はいずれもpreliminaryであり、まだ信じてはいけないな、と思っている(でも期待している)。したがって、1次治療不応となった症例を対象としたphase III試験KRYSTAL-10(adagrasib+セツキシマブvs.FOLFIRI/FOLFOX based)の結果を待ちたい。KRAS G12Cは大腸がんKRAS exon2変異の6~7%、つまり大腸がん全体の症例の2~3%という希少フラクションであり、その開発には少なからぬ困難が伴うが、少しずつではあるが着実に、この難しいパズルは解決に向かっていると信じている。最後に:ESMOの感想に代えて実は、筆者は6月に中国で行われた第11回CGOG(Chinese Gastrointestinal Oncology Group)総会に教育講演のinvited speakerとして参加した際に、このCLDN18.2に対するCAR-Tで実際に治療された症例報告を目にしていた。CAR-Tは血液悪性腫瘍では有効だが、消化器がんのような固形がんでの応用はまだまだ先と信じていた筆者にとって、すでに有効例が多数存在していることは衝撃的であった。さらに北京大学の若手医師たちが、この研究を通じてCAR-Tの治療経験をだいぶ積んでいる様子がディスカッションからうかがえ、言いようのない焦りを覚えた。こんな連中を相手にどんな教育講演をすればよいのか、頭が真っ白になった(会議のほとんどは中国語でやりとりされていて、急に英語で話を振られるので気が気でなかったというのもあるが)。さらに驚いたのは、「もうすでにphase Iを終えて、high impact journalへ投稿準備中である。そして新たにphase IIを計画中である」と北京大学の医師が語っていたことであった。CAR-Tは胃がんに対する新しい有望な治療の登場であり、喜ばしい報告であるのだが、正直筆者は強い危機感を覚えている。それはアジアにおける薬剤開発において、日本の優位性はもはや存在しないという事実を突き付けられたからにほかならない。胃がんに対するCAR-Tだけではない。CGOG総会で発表された基礎研究は非常にレベルが高いものが多かったが、アカデミアからだけでなく企業からのそうした発表も多く、産学連携が非常にうまく作用しているように思えた。CAR-Tはscienceであると同時にengineeringの側面が大きく、臨床のアイデアを形にするテクノロジーとの協調は必須である。この彼我の差は個々人の能力というより国を挙げての投資の結果の違いだと信じたいが、日本の基礎医学への冷淡な姿勢を見ていると、この状況はすぐには変わりそうになく暗澹たる気持ちになる。今後、薬剤開発においてこうした「格差」を感じる場面が増えてくるのではないかと思っている。個人的な話で恐縮だが、『三体』という中国発のSF小説を間もなく読了するところである(第三部は2021年5月に日本発売)。世界中で異例の大ヒットとなっている小説なのでご存じの方も多いと思うが、第一部、第二部でこの小説の世界観、想像力の大きさに圧倒され第三部を楽しみにしていた。そしてここまで読んで「中国はここまで来ているのか」と空恐ろしさを感じている。もちろん小説であり、そこに描かれているのは現実ではないが、それを感じさせる充実した内容であった。今年のESMOを見ていてふと思い出したのが、この小説『三体』であった。『三体』を読んで無意識に感じていた、まい進する中国に対する漠然とした「焦燥感」もしくは現状に対する「危機感」を、形にして突き付けられたような気がしたからかもしれない。最後に、この『三体』の単行本が中国で発売されたのが2008年1月であることを付記しておきたい。

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HER2 exon20変異肺がんにpoziotinibが有力な成績示す(ZENITH20)/ESMO2021

 EGFRおよびHER2のexon20挿入変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の2〜4%である。しかし、その予後は不良かつ治療も困難で、exon20への非特異的な治療の無増悪生存期間(PFS)は3〜7ヵ月とされる。 そのような中、EGFR-MET二重特異性抗体amivantamab、DZD9008、mobocertinibなど、EGFRおよびHER2のexon20挿入変異陽性NSCLCの新薬開発が進んでいる。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)では、汎HER-TKIであるpoziotinibのマルチコホート試験ZENITH20の一部結果が発表され、HER2 exon20挿入変異への有力な成績が示された。 ZENITH20試験は、7つのコホートからなるマルチコホート試験である。今回のESMO2021では、コホート4のHER2 exon20挿入変異NSCLCの結果が発表されている。・対象:HER2 exon20挿入変異陽性のNSCLC・介入:初回登録poziotinib16mg/日、後続登録poziotinib 8mgx2/日・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]病勢制御率(DCR)、奏効期間(DoR)、安全性などORR閾値:95%信頼区間の下限が20%以上今回の発表は、初回登録のpoziotinib16mg/日投与例(n=48)の解析 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目のORRは43.8%(95%CI:29.5〜58.8)、DCRは75%(CR1例、PR20例、SD15例)であった。・腫瘍縮小は88%の症例に認められた。・DoR中央値は5.4ヵ月であった。・PFS中央値は5.6ヵ月で、6ヵ月PFS率は42%、12ヵ月PFS率は26%であった。・poziotinibの新たな毒性は認められなかった。・治療関連有害事象(TRAE)の発現は100%だが、重篤な事象は10%であった。・頻度が高い(20%以上)TRAEは、下痢、皮疹、胃炎、爪囲炎など、第2世代EGFR-TKIと同様であった。 poziotinibは、未治療のHER2 exon20挿入変異陽性NSCLCにおいて、臨床的に意味のある効果を示した。また、毒性は既存の報告と同様であり、管理可能なものであった、と発表者は述べた。

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アテゾリスマブの非小細胞肺がん術後アジュバントが米国で承認/ロシュ

 ロシュは、2021年10月15日、米国食品医薬品局(FDA)が、PD-L1≧1%であるStageII-IIIA非小細胞肺がん(NSCLC)の手術後、プラチナベース化学療法後の補助療法としてアテゾリズマブ(製品名:テセントリク)を承認したと発表した。 IMpower010試験でアテゾリスマブによる補助療法は死亡リスクを34%減少 承認は、第III相IMpower010試験の中間分析の結果に基づいたもの。 IMpower010試験は、外科的切除後のステージIB-IIIA NSCLC(UICC / AJCC第7版)患者を対象に、アテゾリズマブの有効性と安全性を評価する第III相国際多施設非盲検無作為化試験である。 IMpower010試験でアテゾリスマブによる補助療法は、PD-L1≧1%のStage II/IIIAのNSCLCの再発または死亡リスクを34%(ハザード比[HR] :0.66、95%CI:0.50〜0.88)減少させている。毒性は、既報のプロファイルと一致しており、新たな安全性シグナルは特定されなかった。

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進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは【見落とさない!がんの心毒性】第7回

今回のお話ひと昔前までの放射線治療(RT)では、がん病変に関連した広範囲を対象に照射していたため、ホジキンリンパ腫、乳がん、食道がん、肺がんなど胸部RTが必要ながん腫では心臓縦隔が広範囲に照射されてしまい、急性期および遠隔慢性期に放射線関連心血管合併症(RACD :Radiation Associated Cardiovascular diseases:)を発症していました。しかし、最近は心臓回避技術の向上、いわゆるRTのオーダーメイド治療が進化しRACDの発症頻度は減少しています。ゆえに一昔前と同様の考察でRACDに対峙していては時代遅れです。一方、放射線による組織障害、その結果として生じた心血管障害への対応には案外これまで通りのRACDへの理解が不可欠であり、RACDリスク管理として一般的心血管リスク因子の適正化が重要です。つまるところ、従来から循環器医が注力している診療要素がここでも大事なのは明らかで、結局は、臨床におけるRACDに対する急な理論武装は不要な様に思っています。もちろん、現代のRTに精通し、それによる新規RACDへの探究は極めて重要と考えますが、まずは基本に忠実な診療を施す事、そしてこれは放射線治療医の先生方へのお願いとなりますがRACDスクリーニングへも目を向ける重要性をお届けしたいと思います。そのほかにも、最新RTが不整脈治療に有効となる可能性!? なんていう話題についてもご紹介してみたいと思います。なお、RACDという表記について、別のRIHD(Radiation Induced Heart Disease)の表記も見かけます。この領域において、まだ統一表記になっていないと理解しています。今回は筆者が従来から使用し、また今回2021年第4回日本腫瘍循環器学会でも表記で利用されたRACDを本稿では使用します。RACDの基本の基:平均心臓照射量とのリニアな関係まずは2013年NEJM誌からの報告です。乳がん患者においてRT治療後5年目から冠動脈イベント頻度は高まりはじめ、少なくとも20年間はリスクが続き、平均心臓照射量が多ければ多いほど冠動脈イベントの増加に関連する事が示されました1)(図1)。(図1)心臓への平均照射量に応じた冠動脈イベントの割合1)画像を拡大する「線量依存性」かつ「慢性期発症」というのがRACDの基本の基です。多くはないものの急性発症もある事は申し添えておきます。RACDの発症は近年の技術革新により減少しています。しかし、がん患者、がんサバイバーが更に増加する昨今、そして、高齢化により心疾患を抱えたRT患者の増加も想像にたやすく、今後も臨床においてRACDを診療する機会はなくならないでしょう。別途、胸部以外の部位へのRTでも炎症やほかの機序により心血管障害を起こす可能性もあるのですが2)、混乱を来すのでここでは扱いません。RTの技術革新、New RACDは従来型とは違うのか次にホジキンリンパ腫に対するRTを例に技術革新を紹介します3)。(図2)ホジキンリンパ腫に対するRTの時代ごとの変遷画像を拡大する(A)時代ごとで分かるRT技術革新。拡大放射線療法であるマントル照射(B)以前の治療法(D)(B)に比較しIMRTを用いたinvolved-site RTでは(C)心臓を回避したより限局的治療を可能とし、DIBH(deep inspiration breath-hold、深吸気呼吸停止)法も適用し心臓部位への照射量は軒並み抑えられています3)(図2)を見ると心臓への照射量は劇的に減少しています。強度変調放射線治療(IMRT:intensity-modulated RT)、定位放射線治療(SRT:Stereotactic RT)のほか、粒子線治療といった高精度放射線療法の導入により、オーダーメイド放射線治療ができるようになった近年、一昔前のRTと現在のものとでは、もう同等比較はできません。心臓照射はより回避され、がん病変へのより限局的治療へと進化し、冠動脈、心筋、弁膜など心臓内の各重要部位が回避できるRTに進化を遂げています。この新時代RTいわゆるNew RACDは従来のものとは異なり、より限局的な心血管障害になるでしょうし、患者毎、がん病変毎で個々に異なるRACDの病態を呈する前提で行われていくでしょう。そういう意味で、New RACDとRACDは確実に異なります。問題点は…当の小生もですが、New RACDについて深く語れるほど循環器医がRTの進化に追いついておらず、New RACDの詳細を大して認識できていないという事です。ただし、New RACDの発症形態、特有の予後などまだ不明な点が多いものの、結果として生じた心血管系組織障害に対する臨床的対応はそれほど変わらないとも言えます。 結局、主治医がとるべき臨床的対応は、従来のRACDに対するものとさほど変わらないのではないかと思っています。よく知られているRACD前述した通り、New RACDはより限局的な心血管障害となり、発症形態は従来のRACDとは異なると推察されます。、その臨床的病型について、注意点はこれまでとさほど変わらないとし、まずはRACDの代表的な所をお示しします。RACDとしておさえておきたい病態を(図3)に示しました4),5)。RTにより心室では拘束性障害や収縮性障害をきたします。そのほか、冠動脈硬化、弁膜硬化、刺激伝導障害、自律神経機能障害、心膜疾患、心嚢水貯留、上行大動脈の全周性高度石灰化 (porcelain aorta)などが生じます。(図3)RACDとして挙げられる心臓関連病態4),5)画像を拡大するRACDの多くは遠隔慢性期に発症―RT後にも症例に応じたRACDスクリーニング計画、心血管リスク因子の適正化が重要RACDの特徴は急性期障害もあるものの、問題の多くが治療後遠隔期の慢性期障害となる事です。ゆえに、がん治療病院の管理から離れた後に発症する懸念から、いかにあらかじめの患者教育が大事かということになります。そして、RACDリスクが高い患者にはRT後の定期的なRACDスクリーニングの計画が推奨されます。(表1)にRACDのリスク因子を示しました。中には「心血管疾患リスク因子の保有」とあります。この心血管疾患リスク因子管理がRACDの進行回避において非常に重要なのです。そして、項目にある「コバルト線源」については近年における臨床現場ではあまり一般的治療ではないと聞いています。ただし、過去に治療歴がある患者の場合には注意すべきであり知っておくことは望ましいですよね。(表1)RACDのリスク因子4),7)RACDによる冠動脈病変は周囲組織を含め硬化が強くPCIでもバイパス手術でも成績が不良と言われます6)。これらを改善させるためにもスクリーニングによる早期検出で少しでも安全な治療が可能になる事に期待がもたれます。(図4)にはスクリーニングを含めたRACD管理アルゴリズムを示しました。(図4)RACD管理アルゴリズム5),8)画像を拡大する逆の発想!?心室性不整脈に対するRTの可能性RACDを起こす放射線障害ですが、その組織傷害性を利用したRTによる不整脈源性障害心筋への治療利用が考えられています。phase I/II ENCORE-VT(Electrophysiology-Guided Noninvasive Cardiac Radioablation for Ventricular Tachycardia) trialが行われ、難治性心室性頻拍に対してその有効性と安全性が報告されました9)。今後、そういう治療が主流になって行くのでしょうか、興味津々です。おわりに進化したRTによるRACD、いわゆるNew RACDについて、発症形態や予後など不明な点が多く、われわれはそれを明らかにすべく更なる探求が必要であると思います。しかし、その臨床的対応については、まずは従来のRACD対する対応と大きく変える必要は無いのではないでしょうか。重要なのは、治療後遠隔慢性期の発症形態をとるRACDの発見が遅れないよう、あらかじめ患者教育を施し、RACDリスク因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常などのリスク管理、そしてRACDに対するスクリーニングの計画が検討される事、つまりRT後の患者が放置されない医療的アプローチが肝要であるのだと思います。循環器医も腫瘍科医も現段階ではRT新時代に取り残されているのかもしれませんが、これまでの知識や経験をもってNew RACDへ対応して行くことが先決でしょう。また、そんな状況だからこそ、腫瘍科医や放射線科医、そして循環器医が互いの強みを発揮しながらの協働が必要になってくるわけです。そして、当然、新世代RT特有のNew RACDの側面も今後明らかになってくることにも期待が高まります。最新の情報をアップデートしていきましょう。1)Darby SC, et al. N Engl J Med. 2013;368:987-998.2)Haugnes HS, et al. J Clin Oncol. 2010;28:4649-4657.3)Bergom C, et al. JACC CardioOnc. 2021;3:343-359.4)Desai MY, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;74:905-927.5)志賀太郎編. 医学書院. 2021. 循環器ジャーナル.(II章, がん放射線療法に関連した心血管合併症[RACD])6)Reed GW, et al. Circ Cardiovasc Interv. 2016;9:e003483.7)Jaworski C, et al. J Am Coll Cardiol. 2013;61:2319-2328.8)Ganatra S, et al. J Am Coll Cardiol CardioOnc. 2020;2:655-660.9)Robinson C, et al. Circulation. 2019;139:313-321.講師紹介

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提案した治療を拒否された…【非専門医のための緩和ケアTips】第13回

第13回 提案した治療を拒否された…入院と違って短時間でさまざまな患者さんの健康問題への対応が求められる外来診療。時折、医療者が勧める治療法を受け入れない患者さんがいますよね。医師としてはちょっと「イラッ」としてしまうこんな場面に役立つ、緩和ケア的なアプローチはあるのでしょうか?今日の質問乳がんの患者さん。地域の基幹病院と私の診療所に通院し、私は主に支持療法を提供しています。ご本人から「痛み(がん疼痛)が強くなってきて、もう少し和らげたい」とあったので少量の経口オピオイドを勧めたのですが、説明後には「痛み止めはまだ飲みたくありません」と言います。丁寧に説明した後にそう言われると、ちょっとがっくりしてしまいます…。今回のご質問、心中穏やかでないようですね。私も以前はよくこの方と同じ気持ちになっていました。患者さんの困り事に対し、しっかり検討したうえで提案したにもかかわらず、受け入れてもらえないという状況は緩和ケアの場でもしばしば経験します。先日、医療コミュニケーションの復習をしていて、米国の緩和ケアに関する情報サイトを見たところ、まったく同じトピックを扱っていました。われわれを悩ませるこの問題は万国共通のようです。ここでは、ともすると忘れがちな「大前提」があります。それは「判断能力のある成人は、医学的には妥当で有益であっても、その治療を拒否する権利がある」ということです。言われてみれば当たり前ですが、私たち医療者は無意識下に「患者さんは指導には従うべき!」といった認識を抱いています。そんな気持ちに駆られると、医師の言うことを聞くのが「良い患者」、聞かないのは「悪い患者」といった感覚に陥りがちです。ここはその時々で振り返りたいところです。さて、推奨する治療を拒否する患者さんに遭遇したとき、相手が「状況や内容を理解できていない」ために拒否的な態度なのか、「理解したうえで、あえて選択しない」のかを見極めることが大切です。「状況や内容を理解できていない」のであれば、より伝わる方法を考え、意思決定を支援するご家族とやり取りすることが重要です。私たちが多く接する高齢の患者さんも、こうした配慮が必要なことがよくあります。具体的な工夫としては、「説明する情報を最小限にする」「ポイントを書きながら伝える」「時間を置いて看護師から理解を確認する」などが挙げられます。一方、「理解したうえで、あえて選択しない」のであれば、そこに何か理由があるはずです。そして、その理由に合わせた代替案を提案するアプローチが大切です。ここでは、「ああ、そんなふうに思われているんですね。それはどうしてですか?」と共感を示しつつ、探索的なコミュニケーションを取ることが効果を発揮します。たとえばこんな感じです。医師「『薬を使いたくない』とのことですが、気になっていることを教えてもらえませんか?」患者「薬に頼ると、病気に負けてしまう気がするのですよね…」医師「そんなふうに感じるのですね。そんなふうに感じるようになった経験があったのでしょうか? よかったら、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」相手の懸念を深堀りしたうえで、頭ごなしに否定や説得するような態度にならないよう、留意して対話します。いかがでしょう? 探索的なコミュニケーションや相手の理解をアセスメントするといった緩和ケア的アプローチを、ぜひ臨床の場で活用してください。今回のTips今回のTips治療を拒否されたら、「状況や内容を理解できていない」のか、「理解したうえで、あえて選択しない」のかを見極め、次のアクションにつなげましょう。

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デュルバルマブの小細胞肺がん1次治療、3年の成績(CASPIAN)/ESMO2021

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療として、デュルバルマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン、EP)併用はEP単独と比較して、追跡期間中央値3年超の時点でも持続的な全生存期間(OS)の延長が示された。 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏が、「CASPIAN試験」の3年フォローアップの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。CASPIAN試験でデュルバルマブと化学療法併用が進展型小細胞肺がんのOS改善 CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブ±tremelimumab+EPとEP単独療法の安全性と有効性を比較した第III相の国際多施設共同無作為化非盲検無作為化試験。追跡期間中央値25.1ヵ月時点で、デュルバルマブ+EP併用群のEP単独群に対する有意なOS改善が示され(HR:0.73、p=0.0047)、2年フォローアップ時でも持続的な改善が確認されていた(HR:0.75、p=0.0032)。デュルバルマブ+tremelimumab+EP併用群は、数値上のOS改善は示されたが統計的な有意性の基準は達成しなかった。・対象:未治療進展型小細胞肺がん(WHO PS0/1、無症候性/治療安定性の脳転移許容、平均余命≧12週、RECIST v1.1測定可能病変)患者805例・試験群:デュルバルマブ(1,500mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群)3週ごと4サイクル、その後病勢進行(PD)までデュルバルマブ4週ごとデュルバルマブ(1,500mg)+tremelimumab(75mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)3週ごと4サイクル、その後PDまでデュルバルマブ4週ごと・対照群:EP単独、3週ごと最大6サイクル、その後オプションで予防的全脳照射・評価項目[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性、患者報告アウトカム(PRO) 進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブと化学療法併用とEP単独療法の安全性と有効性を比較したCASPIAN試験の主な結果は以下のとおり。・3年OSを評価したデータカットオフ時点(2021年3月21日、追跡期間中央値39.4ヵ月)で、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続していることが示された(HR:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.86、nominal p=0.0003)。・OS中央値は、D+EP群12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群10.5ヵ月(9.3~11.2)であり、36ヵ月時点で生存していた患者はそれぞれ17.6%、5.8%であった。・年齢、性別、PSなどのサブグループ解析では、D+EP群のすべての患者にベネフィットがあることが認められた。・D+T+EP群のOS中央値は10.4ヵ月(95%CI:9.5~12.0)であり、EP群に対する数値上のOS改善は持続していた(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97、nominal p=0.0200)。36ヵ月時点で生存していた患者は15.3%であった。・データカット時点でデュルバルマブ投与が継続されていたのは、D+EP群10.2%(投与回数中央値7.0)、D+T+EP群7.1%(6.0)であった。・重篤有害事象(あらゆる原因による)の発現率は、D+EP群32.5%、D+T+EP群47.4%、EP群36.5%であった。死亡に結びついた治療関連有害事象はそれぞれ、2.3%、4.5%、0.8%であった。 Paz-Ares氏は、「これまでに行われたES-SCLC患者を対象としたEP+抗PD(L)-1療法の第III相試験の中で、今回のOS解析の追跡期間中央値は3年超と最長であった。既報のとおり、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続しており、安全性プロファイルも忍容されるものであった。3年時点でEP群と比べてD+EP群の生存患者の割合は3倍超高く、多くの患者のEP治療が継続されており、ES-SCLCの1次治療の標準治療としてのD+EPの地位を、さらに確固とする結果であった」とまとめた。

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非小細胞肺がん1次治療cemiplimab+化学療法(EMPOWER-Lung3)/ESMO2021

 変異のない進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療に対する新PD-1阻害薬cemiplimabと化学療法の併用を評価するEMPOWER-Lung3試験の結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表された。cemiplimab+化学療法のNSCLC1次治療としての可能性が示唆されている。 EMPOWER-Lung3は2部構成の無作為化第III相試験。今回発表されたのは、Part2試験の2回目の中間解析の結果である。・対象:未治療の進行NSCLC(組織形/PD-L1発現レベルは問わず、既治療の安定した脳転移例は許容)・試験群:cemiplimab(350mg)3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル・対照群:プラセボ 3週ごと+治験担当医が選んだプラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル ※治療は108週(あるいは進行するまで)行われた。・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、最良総合効果、安全性、患者報告アウトカムなど 主な結果は以下のとおり。・適格患者466例は、無作為にcemiplimab+化学療法群312例とプラセボ+化学療法群154例に割り付られた。・患者の年齢中央値は63.0歳、 57.1%が非扁平上皮がん、85.2%がStage4であった。・OS中央値はcemiplimab+化学療法群21.9ヵ月に対し、プラセボ+化学療法群では13.0ヵ月であった。cemiplimab+化学療法群で有意な改善し、主要評価項目を達成した(HR:0.71、 p=0.014)。・PFS中央値はcemiplimab+化学療法群8.2ヵ月に対しプラセボ+化学療法群は5.0ヵ月で、cemiplimab+化学療法群が有意に改善した(HR:0.56、p<0.0001)。・サブグループでのOS/PFSのHRでは、組織形を問わず(非扁平上皮がん0.79、扁平上皮がん0.56)、PD-L1を発現している場合は発現レベルを問わず(PD-L1

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カボザンチニブとアテゾリズマブの併用は去勢抵抗性前立腺がんに有用な可能性(COMIC-021)/ESMO2021

 カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性の前立腺がん(mCRPC)に対して良好な抗腫瘍効果を示すことが、米国・The University of Utah Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 この試験はCOSMIC-021試験で、腎細胞がん、尿路上皮がん、肺がんなどを対象にした第I相b試験でる。今回はそのなかから、mCRPC(コホート6)の解析結果が報告された。・対象:エンザルタミドまたはアビラテロンの治療歴があり、測定可能病変を有するmCRPC 132例・試験群:カボザンチニブ40mg/日内服+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性[探索的評価項目]バイオマーカー検索、独立評価委員会(BIRC)評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数30例の目標で試験開始されたが、2回の登録数拡大により今回の解析時(データカットオフ2021年2月、観察期間中央値15.2ヵ月)では対象が132例となった。・登録症例の年齢中央値は70歳、グリソンスコア8以上が63%、ドセタキセル治療歴ありが25%、内臓転移ありが32%で、骨盤外リンパ節転移ありが60%であった。・主治医判定によるORRは23%(CR2%/PR21%)で、病勢制御率は84%、奏効期間中央値は6.9ヵ月であった。・内臓転移または骨盤外リンパ節転移あり(Vis/L)群101例のORRは、27%であった。これらの奏効率とPD-L1ステータスとの関連性は見い出されなかった。・BIRCによるPFS中央値は全症例で5.7ヵ月、Vis/LN群では6.8ヵ月であった。OS中央値は全症例Vis/LN群ともに18.4ヵ月であった・PSAが50%以上低下した症例割合は、全症例で23%、Vis/LN群では26%であった。・有害事象による用量減量は、カボザンチニブ、アテゾリズマブともに43%で、有害事象による投与中止はカボザンチニブ18%、アテゾリズマブ14%であった。・Grade3/4の主な有害事象は、高血圧、下痢、全身倦怠感が共に6.8%、肺塞栓が8.3%、膵炎6.1%、肝炎5.3%、腸炎3.0%、発疹3.0%などであり、高用量のステロイド剤投与が必要となった症例は17%であった。 mCRPCに対しては、今回のCOMIC-021と同レジメン(カボザンチニブとアテゾリズマブの併用)で、第III相試験CONTACT-02が進行中である。

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EGFR変異陽性肺がん1次治療、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用の結果は?(WJOG9717L)/ESMO2021

 未治療の進行EGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞肺がん(Ns-NSCLC)に対して、オシメルチニブとベバシズマブの併用療法はオシメルチニブ単剤と比べて、無増悪生存(PFS)を有意に改善できなかった。静岡県立静岡がんセンターの釼持広知氏が、日本で行われた「WJOG9717L試験」の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)プレジデンシャル・シンポジウムで発表した。 WJOG9717L試験は、2018年1月~9月に21医療機関で行われた第II相無作為化試験。・対象:未治療の進行EGFR変異陽性Ns-NSCLCで、Stage IIIB、IIIC、IVまたは外科的切除後再発なし、ECOG PS 0-1、有症状の脳転移がない20歳以上の患者・試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+ベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと)・対照群:オシメルチニブ単剤(80mg/日)・評価項目[主要評価項目]PFS(BICR評価による)[副次評価項目]PFS(治験医評価による)、全奏効率(ORR)、全生存(OS)、有害事象(AE) 主な結果は以下のとおり。・122例が登録され、1対1の割合で併用群(61例)、単剤群(61例)に割り付けられた。・追跡期間中央値30.4ヵ月時点で、PFS(BICR評価)は併用群22.1ヵ月、単剤群20.2ヵ月で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.86[60%信頼区間[CI]:0.700~1.060、95%CI:0.531~1.397]、片側p=0.213)。・ITT集団のサブグループ解析で、併用療法が喫煙歴ありの患者(あり群HR:0.481 vs.なし群同1.444)、del19の患者(del19患者のHR:0.622 vs. Leu858Arg患者の同1.246)で、有益である傾向が示された。PFS中央値は、喫煙歴あり併用群32.4ヵ月、単剤群13.6ヵ月、del19患者で併用群NE、単剤群20.3ヵ月であった。・ORRは、併用群82%(95%CI:72~92)、単剤群86%(77~96)であった。・OSは、両群ともにNEで、HR:0.970(95%CI:0.505~1.866)であった。・各群の投与期間中央値は併用群94.0週、単剤群57.6週であり、ベバシズマブは同33.4週であった。治療に関連する死亡の報告は両群ともになかった。・全Gradeの肺炎の発現頻度が、併用群3.3%に対し単剤群18.3%であった。 釼持氏は、「未治療のEGFR変異陽性Ns-NSCLC患者において、オシメルチニブ+ベバシズマブ併用療法の有効性を示すことができなかったが、喫煙歴のある患者やdel19患者の初回治療として有益である可能性と、併用療法はオシメルチニブ関連肺炎のリスクを低減する可能性が示唆された」とまとめた。

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ニボルマブとイピリムマブが悪性胸膜中皮腫に引き続き良好な成績(CheckMate743)/ESMO2021

 転移を有する悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブとイピリムマブの併用第III相試験CHeckMate743の3年追跡結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress2021)で発表され、良好な長期ベネフィットが示された。これが転移のある悪性胸膜中腫に対する免疫療法としては、初めての長期成績の報告となる。・対象:転移のある切除不能な未治療の悪性胸膜中皮腫・試験群:ニボルマブ(3mg/m2)2週ごと+イピリムマブ(1mg/m2)6週ごと・対照群:シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド3週ごと6サイクル・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS )[副次評価項目]全奏効率(ORR)、病勢制御率(DCR)、盲検化独立評価委員会(BICR)による無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・OS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群18.1ヵ月に対し、化学療法群は14.1ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.61~0.87)であり、ニボルマブ+イピリムマブ群の優越性は引き続き示された。・組織別にみると、上皮型中皮腫では18.2ヵ月に対し16.7ヵ月(HR:0.85)、非上皮型中皮種では18.1に対し8.8ヵ月(HR:0.48)、といずれもニボルマブ+イピリムマブで良好であった。・その他のサブグループにおいてもすべてニボルマブ+イピリムマブ群で良好であった。・PFS中央値はニボルマブ+イピリムマブ群6.8ヵ月に対し、化学療法群は7.2ヵ月であった(HR:0.92)。・ORRはニボルマブ+イピリムマブ群39.6%に対し、化学療法群は44.0%であった。・奏効期間はニボルマブ+イピリムマブ群11.6ヵ月に対し、化学療法群は6.7ヵ月であった。・全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はニボルマブ+イピリムマブ群では80%、化学療法群では92%に発現した。・TRAEのため治療中止となったニボルマブ+イピリムマブ群症例におけるOS中央値は25.4ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群全体に対しても劣っていなかった。 発表者は、3年追跡結果においても、ニボルマブとイピリムマブの併用は、切除不能悪性胸膜中皮腫の標準治療であることを確認できたとしている。

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アテゾリズマブ術後補助療法、PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者で有益(IMpower010)/ESMO2021

 完全切除および補助化学療法後の早期(Stage IB~IIIA)肺がん患者へのアテゾリズマブを評価した「IMpower010試験」の最新の中間解析結果を、スペイン・Vall d'Hebron University HospitalのEnriqueta Felip氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 腫瘍細胞でPD-L1が1%以上発現している(PD-L1 TC≧1%)Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)において、アテゾリズマブは再発または死亡リスクを34%低下したこと、再発部位について両群で明確な違いはみられないが、再発までの期間はアテゾリズマブ群のほうが延長したことなどが報告された。 IMpower010試験は、完全切除および補助化学療法後の早期肺がん患者へのアテゾリズマブによるアジュバント免疫療法(CIT)の有効性と安全性を、支持療法(BSC)と比較した初となる第III相無作為化試験。「ASCO 2021」において、アテゾリズマブ群で無病生存期間(DFS)に関する有益性が統計的に有意であったことが報告されたが、今回研究グループは、再発部位と再発後治療に着目した探索的結果を加えて報告した。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStage IB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンを含む補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクル・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団、(2)Stage II~IIIA全集団、(3)ITT(Stage IB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% Stage II~IIIA集団のDFS、全3集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。・DFSに関する有意性の境界を越えていたのは、(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団(ハザード比[HR]:0.66[95%信頼区間[CI]:0.50~0.88]、p=0.004)、(2)Stage II~IIIA全集団(0.79[0.64~0.96]、p=0.02)であった。(3)ITT集団は越えていなかった(0.81、0.67~0.99)、p=0.04)。・PD-L1発現率が高いほどDFSの改善が大きいことが認められた。サブグループ解析で、PD-L1 TC 1~49%はHR:0.87(95%CI:0.60~1.26)、≧50%はHR:0.43(0.27~0.68)であった。・PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団の再発率は、アテゾリズマブ群29.4%、BSC群44.7%であった。・再発パターンは両群で差はなかった。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団における、局所領域のみの再発率はアテゾリズマブ群47.9%、BSC群41.2%、遠隔再発のみは38.4%、39.2%などであった。・無作為化から再発までの期間は、3集団ともにアテゾリズマブ群が延長した。PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団では、アテゾリズマブ群17.6ヵ月(範囲:0.7~42.3)、BSC群10.9ヵ月(1.3~37.3)であった。・再発後の治療は両群とも化学療法が最も多かったが、CITの使用は3集団ともにBSC群で多かった。PD-L1 TC≧1%のStage II~IIIA集団ではアテゾリズマブ群11.0%に対し、BSC群35.3%であった。また、同集団での再発後放射線治療の実施は、アテゾリズマブ群43.8%、BSC群47.1%、手術の施行は16.4%、10.8%であった。 Felip氏は、「IMpower010試験において、アテゾリズマブはPD-L1 TC≧1% Stage II~IIIAのNSCLC患者の再発または死亡リスクを34%低下したことが示され、同集団の標準治療を変え得る可能がある」とまとめた。

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セルペルカチニブがRET陽性非小細胞肺がんに国内承認/イーライリリー

 日本イーライリリーは、2021年9月27日、セルペルカチニブ(製品名:レットヴィモ)について、厚生労働省より「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」に対する治療薬として、製造販売承認を取得したと発表。  今回の承認は、国際共同第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験に基づいたもの。 セルペルカチニブは、RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がんに対して世界で初めて承認された、RETのキナーゼ活性を選択的に阻害する低分子チロシンキナーゼ阻害薬である。 RETの活性化は、RETのキナーゼドメインとパートナータンパク(CCDC6、KIF5B、NCOA4 等)の二量体化ドメインが融合することで、リガンドに依存せず恒常的にキナーゼが活性化した状態になる染色体再構成(RET融合遺伝子)により起こると考えられている。セルペルカチニブは、活性化されたRETを選択的に阻害することで、腫瘍の増殖を阻害すると考えられている。

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